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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】光起電力装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 122
H01L31/04 135
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565922
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 GB2020051173
(87)【国際公開番号】W WO2020229826
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】1906926.9
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517427978
【氏名又は名称】オックスフォード フォトボルテイクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム,ベン
(72)【発明者】
【氏名】ボーモント,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】クロスランド,エドワード ジェイムス ウィリアム
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA10
5F151AA20
5F151BA11
5F151CB11
5F151DA04
5F151DA15
5F151DA20
5F151FA04
5F151GA03
(57)【要約】
光起電力装置は、PIN構造を有し、p型ホール輸送層(2)は、基板(1)で担持され、ペロブスカイト層(3)およびn型電子輸送層(4)は、p型層上に順次配置される。n型電子輸送層の上部には、光透過導電層(9)が設置され、受光上部表面が形成される。n型電子輸送層と光透過性導電層との間には、間に導電性材料(7)の層を有する2つの無機電気絶縁層(6、8)が提供される。2つの無機電気絶縁層は、4.5eVよりも大きなバンドギャップを有する材料を有し、導電性材料の層は、電気絶縁層のバンドギャップよりも小ささバンドギャップを有する材料を有する。各電気絶縁層は、導電性材料の層と、タイプ1のオフセット接合を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PIN構造を有する光起電力装置であって、
p型ホール輸送層が基板に担持され、
前記p型層上に、ペロブスカイト層およびn型電子輸送層がこの順に配置され、
前記n型電子輸送層の上部には、光透過性導電層が提供され、受光上部表面が形成され、
前記n型電子輸送層と前記光透過性導電層の間には、間に導電性材料の層を有する2つの無機電気絶縁層を有する界面構造が提供され、
前記電気絶縁層は、バンドギャップが4.5eVよりも大きい材料を有し、前記導電性材料の層は、前記電気絶縁層のバンドギャップよりもバンドギャップが小さい材料を有し、
各電気絶縁層は、前記導電性材料の層とタイプ1のオフセット接合を形成する、光起電力装置。
【請求項2】
前記導電性材料の層は、バンドギャップが2eVよりも大きく、4.0eV以下の材料を有する、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項3】
前記基板は、別の光起電力サブセルを有し、モノリシックな一体化マルチ接合光起電力装置が形成される、請求項1または2に記載の光起電力装置。
【請求項4】
前記2つの無機電気絶縁層は、Al2O3を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光起電力装置。
【請求項5】
前記2つの無機電気絶縁層の間の前記導電性材料の層は、SnOx;ZnOx;(Zn:Sn)Ox;TiOxおよびInOxからなる群から選定された1または2以上の材料を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光起電力装置。
【請求項6】
前記2つの無機電気絶縁層の間の前記導電性材料の層は、SnOxを有する、請求項5に記載の光起電力装置。
【請求項7】
前記別の光起電力サブセルは、ペロブスカイト、単結晶シリコン、ポリシリコン、Cu(In,Ga)Se2、またはCu2ZnSn(S,Se)4サブセルを有する、請求項3に記載の光起電力装置。
【請求項8】
前記ペロブスカイト層は、有機カチオンおよびセシウムカチオン、Pb、Sn、Sb、もしくはTiの1もしくは2以上から選択された1または2以上のカチオンと、Cl、BrおよびIから選択された1もしくは2以上のハロゲン化物アニオンと、を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光起電力装置。
【請求項9】
前記2つの無機電気絶縁層は、0.4から3nmの間の厚さを有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光起電力装置。
【請求項10】
前記2つの無機電気絶縁層の間の前記導電性材料の層は、3から12nmの間の厚さを有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光起電力装置。
【請求項11】
光起電力装置であって、
p型層およびn型層を有するCu(In,Ga)Se2またはCu2ZnSn(S,Se)4のp-n接合と、
前記n型層の上部に提供され、受光上部表面を形成する光透過性導電層と、
を有し、
前記n型層と前記光透過性導電層との間には、間に導電性材料の層を有する2つの無機電気絶縁層を有する構造が提供され、
前記2つの無機電気絶縁層は、バンドギャップが4.5eVよりも大きい材料を有し、
前記導電性材料の層は、バンドギャップが2eVよりも大きく、4.0eVよりも小さい材料を有する、光起電力装置。
【請求項12】
前記2つの無機電気絶縁層、および間の前記導電性材料の層は、原子層成膜により、前記n型電子輸送材料の層上に、この順に成膜される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光起電力装置を製造する方法。
【請求項13】
前記原子層成膜は、125℃以下の温度で実施される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光起電力(PV)装置に関し、特に、ペロブスカイトPV装置、およびペロブスカイト系のサブセルを有するタンデム太陽電池のような、マルチ接合光起電力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーは、再生可能エネルギーを提供できる最も将来性のある技術である。ただし、歴史的に、高い材料コストを含む、太陽エネルギーを取得するための装置製造の高コストがその幅広い普及を妨げている。
【0003】
例えば、シリコンp-n接合で構成される単接合太陽電池のような単接合太陽電池は、AM1.5G条件(例えば、A.Reindersらの“ペロブスカイト太陽エネルギー-基礎から応用まで”,Wiley,ISBN9781118927465[2017],p164参照)下で、約29%の最大理論効率を有し、実質効率は、最大26%である。しかしながら、シリコン単接合セル(または別のタイプの単接合セル)の上に、より高いバンドギャップを有する材料のセルを積層し、直列に接続した場合、限界理論効率は、40%を超えるまで上昇する。従って、タンデムおよび他のマルチ接合セル技術には、大きな関心がある。
【0004】
また、単接合ペロブスカイト太陽電池は、シリコンに匹敵する効率を示す。
【0005】
太陽電池は、典型的な構造または反転構造を有し得る。本願に記載のような反転ペロブスカイト太陽電池の場合、しばしば、P-I-N(p型コンタクト(P)、ペロブスカイト(I)、n型コンタクト(N)の連続層)と称される構成で開発され、通常、これには、有機nコンタクトが使用される。しかしながら、この有機材料は、連続層形成プロセスの間に劣化し得る。この問題は、例えば、n型コンタクトへのスパッタリングにより、後続のTCO(透明導電性酸化物電極)層がコーティングされる場合、特に深刻になる可能性がある。後続の材料層のスパッタリングの間のスパッタ損傷から、有機nコンタクト層を保護するため、有機nコンタクト層の成膜の直後に、緻密なn型無機コンタクトが成膜され得る。
【0006】
例えば、反転PINペロブスカイト太陽電池において、有機フラーレンコンタクトの電子選択およびスパッタ保護のため、原子層成膜(ALD)成長n型SnO2を使用することが提案されている(Bushら,2017(10.1038/nenergy.2017.9))。また、2018年6月11日に、Nature Materialsにおいて、Sahliらのオンライン公開(https://doi.org/10.1038/s41563-018-0115-4)により、完全にテクスチャ化されたモノリシックペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池が開示されている。原子層成膜法により、スタックの上にSnO2のバッファ層が成膜される。ペロブスカイト太陽電池へのALDの使用に関するレビューが最近公開されている-V.Zardetto,B.L.Williamsら,持続可能エネルギーと燃料,vol.1,p30-55(2017)参照。反転PINペロブスカイト装置構造は、“Organic-Inorganic Halide Perovskite Photovoltaics”Park編集,Gratzel,Miyasaka,Springer(2016)ISBN978-3-319-35112-4(特に第12章p307-p324参照)に、より詳しく記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、既存の技術には、次のような多くの潜在的な欠点がある:
1)プロセスの再現性:多くのALDプロセスの核発生の表面依存性のため、膜厚は、処理ごとに異なり得る。SnO2の場合、これは、最大10から15%になり得る。
2)未パッシベーション結合による無機-n/フラーレン界面でのキャリア再結合により、太陽電池装置における開回路電圧(VOC)およびフィルファクタ(FF)のロスが生じる。
3)無機n型層の目的は、有機n型層およびペロブスカイト層をスパッタ損傷から保護すること、ならびに有害なITO/有機nコンタクト、およびITO/ペロブスカイトコンタクトの領域の形成を抑制することである。無機層の不十分な密度および/または表面被覆率、あるいは過剰に高い導電率は、この効果を制限し得る。
【0008】
本発明の目的は、従来のこれらの問題に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様では、請求項1から11に規定の光起電力装置が提供される。
【0010】
マルチレイヤ界面層を有する光起電力装置は、米国特許第9,416,279号で知られている。しかしながら、この特許では、本発明のPIN構造ではなく、典型的なNIP構造が示されている。NIP構造とPIN構造が直面する製造プロセスの考慮事項は、異なる。通常、スパッタリングは、NIP構造において問題は少ないが、PIN構造に対するスパッタリングの使用は、前述のように、材料を損傷する可能性がある。本発明は、反転ペロブスカイト太陽電池に関し、無機の「真性-n型-真性(INI)」サンドイッチ構造を提供し、前述の従来技術の整然とした無機n型層を置換する。本発明の3層スタックを使用した場合に比べて、単一の「整然とした」SnO2層を使用した場合、変動が大きくなり、ピークおよび平均効率が低くなる。
【0011】
本発明の界面3層構造の使用は、いくつかの理由から、単一のSnO2層を使用する場合よりも有意である。スタックにおいて、第1の電気絶縁層、例えばAl2O3を使用することにより、ALDを使用した際に、スタック全体において再現性の高い成長が可能となる。ALDの成長は、ほぼ表面化学に依存する。Al2O3層は、迅速な核発生層として機能し、OH表面終端化の形成により、表面が官能化される。これにより、スタックにおいて、次の層の成長が助長される。最終的に、第1の層の包含により、ランツーランの厚さの変動が抑制される。
【0012】
また、第1の層(例えば、Al2O3)は、無機-n/有機-n界面に存在する任意の自由結合を化学的にパッシベートするように機能でき、その後、キャリア再結合に利用可能な電子トラップの密度が低減され、従って、飽和電流密度、およびダイオードの理想係数が低減される。これは、開路電圧およびフィルファクタの両方を増加させるように機能できる。
【0013】
最後に、Al2O3のような材料は、フリーラジカルのリザーバとして機能できる。スパッタ損傷からの追加の保護、およびITO/有機-nまたはITO/ペロブスカイト欠陥界面の防止により、寄生シャント経路および/または弱いダイオード領域の形成を抑制することができる。
【0014】
本発明の第2の態様では、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光起電力装置を製造する方法が提供される。原子層成膜により、n型電子輸送材料の層の上に2つの無機電気絶縁層、およびそれらの間の導電性材料の層が順次成膜される。そのような成膜は、125℃以下の温度で行われることが好ましい。
【0015】
以下、添付の概略図を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態は、単なる一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】従来の光起電力装置を示した断面図である。
図1B】本発明による一例としての装置を示した断面図である。
図2】予想厚さに対して正規化された、測定厚さのプロットである。繰り返しラン:(a)SnO2のみ、(b)Al2O3/SnO2/Al2O3
図3】あるダイオードモデルを暗電流-電圧データにフィッティングさせることにより抽出された、直列抵抗、理想ファクタ、および逆飽和電流の最良値と、(各装置タイプの20個の単一接合ペロブスカイト装置からの)関連する範囲とを示した表である。光電流-電圧データから測定された、SnO2のみの代わりに3層を用いて得られたVOCおよびFFのゲインも示されている。
図4】ALDの3層内の第1のAl2O3層の厚さxの関数として、ペロブスカイト/Siタンデム太陽電池のシャント抵抗Rshuntを示した図である。xnmのAl2O3/SnO2/1nmのAl2O3。プロットには、最良のセルと、各厚さの20の装置の平均とが示されている。
図5】ストラッドル(straddle)タイプ1のオフセット接合を示すエネルギー準位図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ある実施形態では、ペロブスカイト装置は、PIN構造を有し、p型ホール輸送層が基板上に配置され(または担持され)、ペロブスカイト層およびn型電子輸送層がp型層の上にこの順に配置され、光透過性導電層がn型電子輸送層の上部に提供され、受光上部表面が形成される。n型電子輸送層と光透過性導電層の間には、界面構造が提供され、これは、間に導電性材料の層を有する2つの無機電気絶縁層を有する。2つの無機電気絶縁層は、バンドギャップが4.5eVよりも大きい材料を有し、導電性材料の層は、バンドギャップが電気絶縁層未満(例えば、2eVよりも大きく、4.0eV以下)の材料を有する。
【0018】
基板は、別の光起電力サブセルを有し、モノリシックに一体化されたマルチ接合光起電力装置が形成されることが有意である。この別の光起電力サブセルは、例えば、別のペロブスカイト、単結晶シリコン、ポリシリコン、Cu(In,Ga)Se2、またはCu2ZnSn(S,Se)4のサブセルを有してもよい。
【0019】
光起電力装置は、モノリシックに一体化された太陽電池であり、別のサブセルは、ペロブスカイト材料の層を有することが有意である。
【0020】
ペロブスカイト材料は、両極性であることが好ましい。
通常、これは、一般式ABX3を有する三次元結晶構造を有する。ここで、Aは、1以上の有機または無機カチオン(例えば、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジニウム等、およびセシウム、ルビジウム等のカチオン)を含み、Bは、Pb、Sn、SbまたはTiからなる群の1以上から選択される2価金属を表し、Xは、例えば、Cl、BrおよびIから選択される1以上のハロゲン化物アニオンを表す。
【0021】
別の実施形態では、p型層とn型層とを含むCu(In,Ga)Se2またはCu2ZnSn(S,Se)4のpn接合と、n型層の上部に設けられ、受光上部表面を形成する光透過性導電層と、を有する光起電力装置が提供される。n型層と光透過性導電層の間には、間に導電性材料の層を含む2つの無機電気絶縁層を有する構造が提供される。2つの無機電気絶縁層は、バンドギャップが導電性材料よりも大きい材料(例えば4.5eV超)を有し、導電性材料の層は、バンドギャップが2eVよりも大きく、電気絶縁層よりも小さい材料(例えば、4.0eV未満)を有する。
【0022】
図1Aには、従来の装置スタックの断面を概略的に示す。一方、図1Bには、本発明による光起電力装置の概略的な断面を示す。各スタック(1)の底部の基板は、上部のITOのようなTCO層を有する、ガラスのような材料を有し、またはシリコン太陽電池のような底部サブセルを有する。ペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池は、例えば、Werner ら、Adv.Mater.Interfaces 5,1700731(2017)により詳しく示されている。
【0023】
図1Bには、本発明による一実施形態を示す。図に示すように、スタック(1)の底部は、Si底部セルまたはITO/ガラスを有する。次に、これは、p型層(2)により被覆され、これは、その後ペロブスカイト層(3)に覆われる。ペロブスカイト層は、有機n型層(4)により被覆される。スタックの上部は、ITO層(9)で構成される。ITO層と有機n型層の間には、本発明の新たな3層界面構造(6、7、8)が存在する。
【0024】
p型層(2)は、ホール輸送材料を有し、これは、無機であっても有機であってもよい。p型層の上部は、ペロブスカイト層(3)であり、これは、例えば、MAPbI3またはFA0.8:Cs0.2PbI2Brのような、3次元結晶構造を有する。ペロブスカイト層の組成は、光活性層の所望のバンドギャップのため、好適に選択され得る。
【0025】
p型層は、ホール輸送(すなわち、p型)材料の層である。 p型材料は、単一のp型化合物または元素材料、あるいは2以上のp型化合物または元素材料の混合物であってもよく、これらは、未ドープであっても、1または2以上のドーパント元素でドープされてもよい。
【0026】
p型層は、無機または有機のp型材料を有してもよい。通常、p型領域は、有機p型材料の層を有する。
【0027】
好適なp型材料は、ポリマーまたは分子のホール輸送体から選択されてもよい。本発明の光起電力装置に使用されるp型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N、N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン)、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1- b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)またはtBP(tert-ブチルピリジン)を有してもよい。p型領域は、カーボンナノチューブを有してもよい。通常、p型材料は、スピロOMeTAD、P3HT、PCPDTBT、およびPVKから選択される。好ましくは、p型領域は、スピロOMeTADを含むp型層で構成される。
【0028】
p型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2’、7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル]])、またはPVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))を有してもよい。
【0029】
また、好適なp型材料には、分子ホール輸送体、ポリマーホール輸送体、およびコポリマーホール輸送体が含まれる。p型材料は、例えば、分子ホール輸送材料、以下の部分の1以上を含むポリマーまたはコポリマーであってもよい:チオフェニル、フェネレニル、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル、エトキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルボゾリル、エチレンジオキシチオフェニル、
ジオキシチオフェニル、またはフルオレニル。 従って、、本発明の光起電力装置で使用されるp型層は、例えば、前述の任意の分子ホール輸送材料、ポリマー、またはコポリマーを有してもよい。
【0030】
また、好適なp型材料は、m-MTDATA(4,4’,4”トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5’-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン)、Di-NPB(N、N’-Di-[(1-ナフチル)-N、N’-ジフェニル]-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、α-NPB(N、N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N、N’-ジフェニル-ベンジジン)、TNATA(4,4’、4”-トリス-(N-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-Di-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、PEDOT:PSSおよびスピロ-OMeTADを含む。
【0031】
p型層は、例えば、tertブチルピリジンおよびLiTFSiでドープされてもよい。p型層は、ホール密度を増加させるためドープされてもよい。p型層は、例えば、NOBF4(ニトロソニウムテトラフルオロボレート)でドープされ、ホール密度が高められてもよい。
【0032】
別の例では、p型層は、無機ホール輸送体を有してもよい。例えば、p型層は、バナジウム、銅、ニッケルまたはモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuOまたはCIS;ペロブスカイト;アモルファスSi;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、およびp型II-V族半導体を含む無機ホール輸送体を有してもよい。これらには、無機材料がドープされても、されなくてもよい。p型層は、多孔質ではない前記無機ホール輸送体の緻密な層であってもよい。
【0033】
p型層は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅またはモリブデンの酸化物を含む無機ホール輸送体;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuOまたはCIS;アモルファスSi;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-IV族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、およびp型II-V族半導体を有してもよい。これらには、無機材料がドープされても、されなくてもよい。
【0034】
p型領域は、例えば、厚さが5nmから100nmであってもよい。例えば、p型領域は、50nmから500nm、または100nmから500nmの厚さを有してもよい。前述のマルチ接合光起電力装置において、第1のサブセルのp型領域112は、厚さが10nmから50nmであることが好ましく、約20nmであることがより好ましい。また、p型領域は、異なる材料の2または3以上の層で構成された、バイレイヤ構造またはマルチレイヤ構造を有してもよい。
【0035】
ペロブスカイト材料は、一般式(I)

[A][B][X]3 (I)

を有してもよい。ここで、[A]は、1または2以上の1価のカチオンであり、[B]は、1または2以上の2価の無機カチオンであり、[X]は、1または2以上のハロゲン化物アニオンであり、好ましくはフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物から選択された、1または2以上のハロゲン化物アニオンを有し、より好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択される。より好ましくは、[X]は、臭化物およびヨウ化物から選択される1または2以上のハロゲン化物アニオンを有する。ある例では、[X]は、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物から選択される2つの異なるハロゲン化物アニオンを有することが好ましく、より好ましくは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択され、さらに好ましくは臭化物およびヨウ化物を有する。
【0036】
[A]は、メチルアンモニウム(CH3NH3 +)、ホルムアミジニウム(HC(NH)22 +)、およびエチルアンモニウム(CH3CH2NH3 +)から選択される1または2以上の有機カチオンを有することが好ましく、メチルアンモニウム(CH3NH3 +)およびホルムアミジニウム(HC(NH)22 +)から選択される1つの有機カチオンを有することが好ましい。[A]は、Cs +、Rb +、Cu+、Pd +、Pt +、Ag +、Au +、Rh +、およびRu +から選択された1または2以上の無機カチオンを有してもよい。
【0037】
[B]は、Pb2+およびSn2+から選択された少なくとも1つの2価の無機カチオンを有し、Pb2+を有することが好ましい。
【0038】
好適実施例では、ペロブスカイト材料は、一般式

AxA’1-xB(XyX’1-y3 (IA)

を有する。ここで、Aは、ホルムアミジニウム(FA)であり、A’は、セシウムカチオン(Cs +)であり、Bは、Pb2+であり、Xは、ヨウ化物であり、X’は、臭化物であり、0<x≦1および0<y≦1である。従って、これらの好適実施形態では、ペロブスカイト材料は、2つの1価のカチオンの混合物を有し得る。また、好適実施例では、従って、ペロブスカイト材料は、単一のヨウ化物アニオン、またはヨウ化物アニオンと臭化物アニオンの混合物のいずれかを有し得る。本願発明者らは、そのようなペロブスカイト材料は、1.5eVから1.75eVのバンドギャップを有し得ること、およびそのようなペロブスカイト材料の層は、好適な結晶形態および相で容易に形成できることを見出した。より好ましくは、ペロブスカイト材料は、FA1-xCsxPbI3-yBryである。
【0039】
高効率の光起電力装置を提供するため、理想的には、吸収体の吸収を最大にして、最適な量の電流を発生させる必要がある。その結果、ペロブスカイトを光起電力装置またはサブセルの吸収体として使用する場合、可視スペクトルにわたって太陽光の大部分を吸収するため、ペロブスカイト層の厚さは、理想的には300から600nmのオーダーである必要がある。従って、通常、ペロブスカイト材料の層の厚さは、100nmよりも大きい。光起電力装置におけるペロブスカイト材料の層の厚さは、例えば、100nmから1000nmであってもよい。光起電力装置におけるペロブスカイト材料の層の厚さは、例えば、200nmから700nmであってもよく、300nmから600nmであることが好ましい。前述のマルチ接合光起電力装置において、第1/上部サブセル210の光活性領域におけるペロブスカイト材料11の平坦層は、350nmから450nmの厚さを有することが好ましく、約400nmの厚さを有することがより好ましい。
【0040】
ペロブスカイト層は、WO2013/171517号、WO2014/045021号、WO2016/198889号、WO2016/005758号、WO2017/089819号、書籍“光起電力太陽エネルギー:基礎から応用まで”,Angele Reinders,Pierre Verlinden編集,Wiley-Blackwell(2017)ISBN-13:978-1118927465、および“有機-無機ハロゲン化ペロブスカイト光起電力技術:基礎から装置構造まで”,Nam-Gyu Parkら編集,Springer(2016)ISBN-13:978-3319351124に記載されているように、調製されてもよい。
【0041】
このペロブスカイト層の上部には、電子輸送材料(4)の層がある。本実施形態におけるペロブスカイト光起電力セルでの使用に適した電子輸送層は、最近のレビュー論文“ペロブスカイト太陽電池における電子輸送層の現状:材料および特性”、Mahmood、SarwarおよびMehran,RSCAdv.2017.7.17044に記載されている。
【0042】
電子輸送層は、通常、n型領域を含む。前述のマルチ接合光起電力装置では、第1のサブセルのn型領域は、1または2以上のn型層を有する。しばしば、n型領域は、n型層、すなわち単一のn型層である。しかしながら、他の例では、n型領域は、n型層と、別個のn型励起ブロック層またはホールブロック層とを有してもよい。
【0043】
励起ブロック層は、光活性材料よりも広いバンドギャップを有する材料であるが、その伝導帯または価電子帯のいずれかは、光活性材料と接近している。励起ブロック層の伝導帯(または最も低い空の分子軌道エネルギーレベル)が光活性材料の伝導帯と近づくように配列されている場合、電子は、光活性材料から励起ブロック層に入り、または励起ブロック層を通過し光活性材料に入る。我々は、これをn型励起ブロック層と称する。そのような例は、バソクプロイン(BCP)であり、これは、P.Peumans,A.Yakimov,S.R.Forrest,“小分子量有機薄膜光検出器および太陽電池”,J.Appl.Phys.93,3693 (2001)、およびMasaya Hirade,Chihaya Adachi,“アノード界面に装置特性改善のための励起ブロック層を有する小分子量有機光起電力セル”,Appl.Phys.Lett.99,153302(2011)
に記載されている。
【0044】
n型層(4)は、電子輸送(すなわち、n型)材料の層である。n型材料は、単一のn型化合物または元素材料、あるいは2つ以上のn型化合物または元素材料の混合物であってもよく、これらは、未ドープであっても、1または2以上のドーパント元素でドープされていてもよい。
【0045】
使用される電子輸送材料は、無機または有機のn型材料を有してもよい。
【0046】
好適な無機n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、アモルファスまたはナノ結晶Si、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体、およびn型II-V族半導体から選択されてもよい。これらのいずれかは、ドープされても、されなくてもよい。
【0047】
より典型的には、n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、および金属テルル化物から選択される。
【0048】
従って、n型層は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、もしくはカドミウムの酸化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物の酸化物から選択される無機材料を有してもよい。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbOまたはCdOを有してもよい。
【0049】
使用可能な他の好適なn型材料には、カドミウム、スズ、銅、または亜鉛の硫化物が含まれ、前記金属の2または3以上の混合物の硫化物が含まれる。
例えば、硫化物は、FeS2、CdS、ZnS、SnS、BiS、SbS、またはCu2ZnSnS4を有してもよい。
【0050】
n型層は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム、もしくはガリウムのセレン化物、もしくは前記金属の2もしくは3以上の混合物のセレン化物、またはカドミウム、亜鉛、カドミウムもしくはスズのテルル化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物のテルル化物を有してもよい。例えば、セレン化物は、Cu(In,Ga)Se2であってもよい。通常、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウムまたはスズのテルル化物である。例えば、テルル化物は、CdTeであってもよい。
【0051】
n型層は、例えば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウムの酸化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物の酸化物;カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物の硫化物;カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物のセレン化物;またはカドミウム、亜鉛、カドミウムまたはスズのテルル化物、または前記金属の2もしくは3以上の混合物のテルル化物;から選択される無機材料を有してもよい。
【0052】
好適なn型材料であり得る他の半導体の例には、例えば、それらがnドープされている場合、IV族元素または化合物半導体;アモルファスSi;III-V族半導体(例えばガリウムヒ素);II-VI族半導体(例えばセレン化カドミウム);I-VII族半導体(例えば塩化第一銅);IV-VI族半導体(例えばセレン化鉛); V-VI族半導体(例えばテルル化ビスマス);およびII-V族半導体(例えばヒ素化カドミウム)が含まれる。
【0053】
n型層が無機材料、例えば、TiO2または前述の任意の他の材料である場合、これは、前記無機材料の緻密な層であることが有意である。好ましくは、n型層は、TiO2の緻密層である。
【0054】
有機およびポリマーの電子輸送材料および電解質を含む、他のn型材料を使用してもよい。好適な例には、これに限られるものではないが、フラーレンもしくはフラーレン誘導体、ペリレンもしくはその誘導体を含む有機電子輸送材料、またはポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-alt-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))が含まれる。例えば、n型領域は、C60、C70、C84、C60-PCBM、C70-PCBM、C84-PCBM、およびカーボンナノチューブの1または2以上を含むn型層を有してもよい。これは、C60-IPB、C60-IPH、C70-IPB、C70IPH、またはこれらの混合物を有してもよい。そのような材料は、オランダ、Solenne BV,Zernikepark 6,9747AN Groningenから市販されている。
【0055】
n型領域は、3nmから1000nmの厚さを有し得る。n型領域がn型半導体の緻密層を含む場合、緻密層は、3nmから200nmの厚さを有する。
【0056】
本発明の界面構造(6、7、8)は、2つの電気絶縁層(6、8)の間に挟まれた導電性材料(7)を有する。2つの電気絶縁層は、4.5eVよりも大きな適切なバンドギャップを有する材料を有する。各電気絶縁層は、同じ材料を有する必要はないが、両層は、同じ材料を有することが好ましい。広いバンドギャップは重要である。材料は、下側のn型領域と上側の導電層(例えばSnO2)により導入されるバンドギャップ状態のパッシベーションを提供する。
【0057】
図1Bには、本発明による界面構造の一例を示す。n型層(4)の上には、バンドギャップが4.5eVを超える材料を含む2つの無機電気絶縁層(6、8)と、その間の導電性材料(7)の層とが成膜される。後者は、2eV超、4.0eV未満のバンドギャップを有する材料を有することが好ましい。電気絶縁層は、原子層成膜(ALD)により成膜されることが好ましい。
【0058】
図5に示すように、導電性材料の層は、各電気絶縁層によるストラッドルタイプ1のオフセット接合を形成する。この図において、

Eg-A>Wg-B
EC-A>EC-B
EV-A<EV-B

電気絶縁層(6、8)は、4.5eVを超えるバンドギャップを有する材料から形成され、好ましくは5、5.5、6、6.5または7eVを超える。好適な材料は、Al2O3およびLiFを有する。最も好ましい材料は、Al2O3である。
【0059】
電気絶縁層は、隣接する層との界面に伝導帯および原子価帯の障壁を形成し、これらの位置にタイプ1のヘテロ接合が生成される。
【0060】
電気絶縁材料の各層は、0.1から10nmの範囲の厚さを有することが好ましく、0.4から3nmの範囲が好ましく、約1nmの厚さが最も好ましい。
【0061】
導電層7は、電気絶縁層(6、8)の材料のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する材料から形成される。各導電層が異なる材料で構成される場合、導電層は、両材料よりも小さいバンドギャップを有する材料から形成される。これは、2eVよりも大きく、4.0eVよりも小さいことが好ましい。導電層は、導電性のn型酸化物で形成されることが好ましい。好適な材料には、SnOx;ZnOx;(Zn:Sn)Ox;TiOxおよびInOxが含まれる。最も好ましくはSnO2、ZnO、In2O3およびTiO2である。
【0062】
導電層用の最も好ましい材料は、SnO2である。2つの無機電気絶縁層の間の導電性材料(7)の層は、3から12nmの厚さを有することが好ましい。
【0063】
バンドギャップは、当技術分野で良く知られた方法を用い、UV-VIS分光法を用いて測定される。例えば、バンドギャップがガラス基板よりも広い場合、エリプソメトリー(UVまで十分に延びる)を用いて、パラメータkのより正確な決定が行える。次に、k分散から生じたTaucプロットから、バンドギャップを定めることができる。
【0064】
バンドギャップは、Vosら,Journal of Vacuum Science&Technology,A34,01A103(2016)による論文の第3章に記載のように測定することができる。
【0065】
次に、n型電子輸送層の上部に、光透過性導電層(9)が成膜され、受光上部表面が形成される。この層は、典型的には、厚さが10から200nmの、ITO層のような、スパッタされた透明導電性酸化物を有するが、それとは別にまたはそれに加えて、金属ナノワイヤのような他の酸化物または材料を使用することもできる。選定される厚さは、透過性と導電性との間で妥協して定められる。
【0066】
以下、実施例により、本発明について説明する。
【0067】
(実施例)
図1Bに示されるような無機「真性-n型-真性(INI)」サンドイッチ界面構造を有するPIN光起電力装置についての結果が示される。ここで、INI構造は、具体的に、Al2O3/SnO2/Al2O3である。
【0068】
Al2O3層は1nmの厚さであり、SnO2層は6nmの厚さであり、ALDにより成膜されたSnO2を有する。
【0069】
Al2O3の熱ALDのため、基板を80から120℃に保持する。室温で、別々のステンレス鋼容器にTMAおよびH2Oを保持し、ALDシーケンスは、TMAドース/TMAパージ/H2Oドース/H2Oパージとした。
【0070】
SnOxの熱ALDのため、基板を80から120℃に保持する。別々のステンレス製容器に、TDMASnおよびH2Oを、それぞれ、60℃および室温で保持し、ALDシーケンスは、TDMASnドース/TDMASnパージ/H2Oドース/H2Oパージとした。
【0071】
Al2O3層およびSnO2層の単位サイクル当たりの成長は、それぞれ、0.1~0.12nmおよび0.12~0.14nmであり、サイクル数は、所望の厚さが生じるよう適切に選択される。
【0072】
熱ALDにより、スタック全体が成膜され、スタックの各構成物の厚さ制御および膜完遂が確実に実施される。H2Oは、SnO2およびAl2O3プロセスの両方の共反応体として使用される。TDMASnおよびTMAは、それぞれの金属前駆体として用いられる。次に、
本発明のスタックおよび従来技術に対応するスタックに対して、一連の実験を実施した。後者は、3層の代わりに、SnO2層で構成した。その他の点では、両スタックは同じあった。
【0073】
(例1:測定厚さ)
図2は、繰り返しラン数の予想厚さに正規化された測定厚さのプロットであり、a)は、SnO2のみの場合、b)は、Al2O3/SnO2/Al2O3の場合であり、単層に比べて、3層ではランツーラン変動が減少することが示されている。これは、SnO2層の核発生を促進するように作用する、第1のAl2O3層によるものである。
【0074】
分光エリプソメトリーを用いて、ペロブスカイト装置の成膜ランに含まれるSi観察試料から、厚さを測定した。測定厚さは、公称厚さに対するものであり、これは、使用ALDサイクル数により設定される。Woollam M2000エリプソメータを用いて厚さを測定した。単一のTauc-Lorentz発振器で構成される汎用発振器モデルを用いて、複素誘電関数を表記し、これにより、生のpsi‐デルタ分散データをフィッティングした。Tauc‐Lorentz発振器から抽出されたフィッティングパラメータは、nおよびk分散を構成する。データフィッティングの後、632nmでのnは、1.8~1.85の間にあった。
【0075】
(例2:直列抵抗、理想ファクタ、逆飽和電流)
電流‐電圧(I‐V)曲線を構成し、本発明の構造を使用した際の改善されたダイオードパラメータを評価した。Keithley線源メータを用いて測定を行った。最初に、J‐V曲線を作成し、単一のダイオード太陽電池等価回路にフィッティングさせ、n(理想ファクタ)、J0(逆飽和電流)、およびRs(直列抵抗)を抽出した。Voc、FF等は、照射J‐V測定のAM1.5から取得した。
【0076】
図3は、暗電流-電圧データに対して1ダイオードモデルをフィッティングすることにより抽出した、(各装置タイプに対して20個の単一接合ペロブスカイト装置からの)直列抵抗、理想ファクタ、および逆飽和電流の最適値と関連する範囲を示した表である。光電流‐電圧データから測定された、SnO2の代わりに3層を用いて得られたVocおよびFFのゲインも、同時に示されている。
【0077】
理想ファクタ(n)および飽和電流(J0)の両方を含む、図3に記載された装置パラメータは、INI構造の導入により低減され、これは、再結合が減少していることを示す。開路電圧およびFFが向上する。暗環境I‐V曲線の対数プロットを作成した場合、寄生シャント電流の減少が示された。
【0078】
(例3:シャント抵抗)
この実験では、0~2nmで変化する第1のAl2O3層の厚さの重要性が検証される。Keithley線源メータおよびAM1.5照明を用いて、光I-V測定が実施される。短絡回路でのJ‐V勾配の逆数からシャント抵抗が求められた。
【0079】
図4には、ALDの3層内の第1のAl2O3層の厚さxの関数としての、ペロブスカイト/Siタンデム太陽電池のシャント抵抗Rshuntを示す。3層は、xnmのAl2O3/SnO2/1nmのAl2O3である。
【0080】
上部に反転ペロブスカイト上部セルが成膜された、2つの異なる底部セルウェハタイプについて、実験を実施した。Al2O3の厚さとともに、装置の効率、フィルファクタ、およびシャント抵抗の全てが増加した。
【0081】
図4のプロットには、各厚さに関する、最適セル、および20個の装置の平均を示す。この実験を2回行い、両方のバッチの結果が示されている。特に最適特性の装置について、一定の正の傾向が認められた。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】