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特表2022-533043アパーチャ・チューニング技術を用いたアンテナ・アレイ・パターン増強
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】アパーチャ・チューニング技術を用いたアンテナ・アレイ・パターン増強
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/30 20060101AFI20220713BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20220713BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01Q3/30
H01Q21/06
H01Q9/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566473
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 US2020033765
(87)【国際公開番号】W WO2020236910
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/850,219
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ザマニフェクリ,アボルグハセム
(72)【発明者】
【氏名】ガッディ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】トルナッタ,ポール・アンソニー
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA04
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021DB03
5J021FA04
5J021GA02
5J021HA05
5J021JA08
(57)【要約】
アパーチャ・アンテナ・チューニング技術を使用することにより、無線装置用にアンテナ・アレイの性能を向上させ、したがって、系全体の効率を高める。アパーチャ・チューニングは、アパーチャ・チューナを使用して、アンテナ・アレイ放射パターンの位相応答を変化させることによって行われる。アパーチャ・チューニングは、アレイ放射パターンを所望の方向に増強することによって、信号対雑音比(SNR)を向上させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ(402)を有するアンテナ・アレイ(400)と、
前記複数のアンテナ(402)のうちの少なくとも1つのアンテナ(402)に結合される少なくとも1つの構成要素(404)であって、共振周波数を変化させ、それによって前記複数のアンテナ(402)のアンテナ(402)間の相対的な位相を変化させることができる構成要素と、
を具備する電子装置(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、任意の調整可能なインピーダンスを合成することができるネットワークである、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項3】
位相シフトを作り出す前記少なくとも1つの構成要素(404)に結合されたインピーダンス整合器をさらに具備する、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、1つまたは複数のインダクタ(412)が結合されたスイッチ、1つまたは複数のキャパシタ(408、410)が結合されたスイッチ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの構成要素(404)の構成要素(404)の数が、前記複数のアンテナ(402)のアンテナ(402)の数と等しい、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、デジタル式可変キャパシタ(200)である、請求項5に記載の電子装置(100)。
【請求項7】
前記デジタル式可変キャパシタ(200)が、少なくとも1つの微小電気機械(MEMS)構成要素(300)を含む、請求項6に記載の電子装置(100)。
【請求項8】
前記アンテナ・アレイ(400)が2×2アレイである、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項9】
前記複数のアンテナ(402)のうちの前記少なくとも1つのアンテナ(502)が、第1の梁部(710)と、少なくとも1つのRF入力(706、708)とを含む、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項10】
前記複数のアンテナ(402)のうちの前記少なくとも1つのアンテナ(402)が、少なくとも1つのRF入力(706、708)を含む、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、第2の梁部(712)を含み、前記第2の梁部(712)が、前記第1の梁部(710)と平行であってその近傍にある、請求項9に記載の電子装置(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、容量性チューナを含む、請求項11に記載の電子装置(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、デジタル式可変キャパシタ(200)である、請求項11に記載の電子装置(100)。
【請求項14】
前記デジタル式可変キャパシタ(200)が、少なくとも1つの微小電気機械(MEMS)装置(300)を含む、請求項13に記載の電子装置(100)。
【請求項15】
多入力多出力(MIMO)機能を利用する、請求項1に記載の電子装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は概して、無線通信回路を内蔵する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1973年に行われた最初の携帯電話の通話以来、セルラーおよびワイヤレスの世界では、より高いサービス品質(QoS)と体験品質(QoE)を多種多様なエンドユーザに提供するために、多大な努力があり、それゆえの進歩があった。混雑度の高い周波数帯で高速データ速度を提供することが、5Gネットワークで期待されるQoEを満足させる重要な前提条件である。例えば、5Gのピークでのダウンリンク・スループットは、密集した都市環境では10Gbps程度になると予想される。
【0003】
5Gネットワークの要件を満足させるには、基地局(BS)側とユーザ機器(UE)側の両方で困難な設計タスクが課せられる。UE側での無線設計の実装は、エネルギー効率、バッテリ寿命、そして利用可能なハードウェアの寸法に大きな制限があることに起因して、BS側よりもはるかに困難である。
【0004】
5Gに含まれる2つの重要な実現技術は、高次(すなわち大規模)多入力多出力(Multiple Input Multiple Output(MIMO))と、フェイズド・アレイ・アンテナ技術の使用とである。携帯電話機の物理的な設計による多くの制約のせいで、MIMOやフェイズド・アレイ・アンテナ技術のどちらも、実装することは非常に困難である。MIMOやフェイズド・アレイ・アンテナのどちらの技術でも、アンテナの設計と最適化が、いかなる設計手順においてもその手順がうまく行くために重要な役割を果たす。さらなる課題は、非常に広範囲の周波数(例えば、600MHzから6GHz、さらにはミリ波周波数まで)を占める異なる通信プロトコル(例えば、セルラー(Cellular)、WIFI、ブルートゥース(Bluetooth)、近距離無線通信など)用の複数帯域および複数規格をサポートするアンテナ系を一体化することである。
【0005】
5Gアンテナ設計要件に対する現状の解決策は、データ・ストリームにおいて、信号対雑音比(signal-to-noise ratio(SNR))を高めること、そしてチャネル干渉を低減することのできるビーム・フォーミング(beamforming (BF))モジュールとして、従来のフェイズド・アレイを実装することが基本である。フェイズド・アレイ・アンテナ技術では、各アンテナ・モジュールの前にある位相シフタが、各アンテナ放射パターンの位相を制御する。各アンテナの振幅と位相を制御できることで、アンテナ設計者は、ビームを所望の方向に走査(よってSNRを向上)させたり、または空間のいかなる目標点におけるヌル位置も制御(よってチャネル干渉を低減)したりすることが可能になる。小型の装置(例えば、スモール・セル、CPE、ルータ、携帯電話)については、フェイズド・アレイ用の多数のアンテナ構成要素を支持するための十分な空間がない。さらにありふれた構成には、アレイ内に4つの構成要素しか内蔵されていないこともある。アレイが小さいと、位相シフタのなすネットワークにおける損失が、アレイ実装の利点を打ち消してしまう。この理由により、アレイ構成要素の相対的な位相を制御する代替方法が求められている。
【0006】
MIMOの実装の観点では、現状の最先端技術は、UEの形状因子と両立するアップリンク(UPLINK)およびダウンリンク(DOWNLINK)の寸法の観点での機能をまだ完全には実証できているわけではない。
【0007】
したがって、当技術分野では、アンテナを効果的に調整することが求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は概して、アンテナ・アレイで使用されて、無線装置用に性能を向上させる、したがって、系全体の効率を高めるアパーチャ・アンテナ・チューニング技術に関する。アパーチャ・チューニングは、アンテナ放射パターンの位相応答を変更する目的で、アレイの各アンテナ上でアパーチャ・チューナを使用することによって行われる。アパーチャ・チューニングは、所望の方向に全体のアレイ放射パターンを増強することによって、SNRを向上させる。
【0009】
一実施形態では、電子装置が、複数のアンテナを有するアンテナ・アレイと、アレイ内のすべてのアンテナに結合された複数のアンテナ・アパーチャ・チューニング構成要素と、を具備する。
【0010】
当業者であれば、添付図面と併せて、好ましい実施形態の以下の詳細な記載を読めば、本開示の範囲を理解し、そのさらなる態様を実現することになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本開示のいくつかの態様を例示しており、記載と合わせて本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0012】
図1図1は、DVC(デジタル式可変キャパシタ)とアンテナとを具備する装置、この例では携帯電話機の模式図である。
図2図2は、一実施形態による、可変リアクタンスの多くの可能な具体化の1つとしてのDVCの模式図である。
図3A図3Aは、一実施形態による、可変リアクタンスとして利用することができる微小電気機械(MEMS)DVC装置の模式断面図である。
図3B図3Bは、一実施形態による、可変リアクタンスとして利用することができる微小電気機械(MEMS)DVC装置の模式断面図である。
図3C図3Cは、一実施形態による、可変リアクタンスとして利用することができる微小電気機械(MEMS)DVC装置の模式断面図である。
図4図4は、アパーチャ・チューニングされたフェイズド・アレイの一実装の模式図である。
図5図5Aは、アンテナ放射パターンの位相と、対応する反射係数とが、チューナ設定(アパーチャに接続)に対してどのように変化するかの模式図を示す。
図5B図5Bは、4つの代替制御状態について、単一のアンテナ放射パターンと、対応する反射係数(帰還損失)とを示す。
図6A図6Aは、提案された概念の模式図である。
図6B図6Bは、図6Aのアレイについての放射パターンの対応図である。
図7図7は、アンテナ・アレイの一実装において使用されるアンテナ構成要素を示す。
図8図8は、一実装について、球面座標におけるphi=0面での2×2アンテナ・アレイの実現利得を例示する。
図9図9は、3dBの挿入損失を有する位相シフタ実装に対する、損失のあるアパーチャ・チューニングされたアンテナの実装の達成可能な最良の実現利得の確率分布を比較したものを示す。
図10図10は、一実装について、4つの接続されたチューナすべての制御状態に対する、2×2アレイのうち一対のアンテナの相関係数を示す。
【発明を実施する形態】
【0013】
理解を容易にするために、図どうしで共通する同一構成要素を指定するために、可能な限り同一参照符号を使用した。一実施形態の構成要素および特徴が、さらなる言及がなくとも他の実施形態に有益に組み込まれている場合があることは、意図される。
【0014】
以下に記載の実施形態は、当業者が実施形態を実施できるようにするのに必要な情報を表しており、当業者は、実施形態を実施する最良の態様を例示している。添付図面に照らして以下の説明を読めば、本開示の概念を理解すること、そして本明細書において具体的に取り上げられていないこれらの概念の用途を理解することになろう。これらの概念および用途が本開示および添付の請求項の範囲に収まることを理解することが望ましい。
【0015】
本明細書では、第1、第2等の用語が様々な構成要素を記載するのに使用される場合があるが、これらの構成要素がこれらの用語によって限定されないのが望ましいことは理解されよう。これらの用語は、1つの構成要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の構成要素を第2の構成要素と称することができ、同様に、第2の構成要素を第1の構成要素と称することができる場合がある。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0016】
層、領域、または基板などの構成要素が、別の構成要素の「上に」存在する、または「上まで」延びていると称される場合には、それがその別の要素の直接上に存在する、もしくは直接上まで延びているものとすることができること、または介在する構成要素が存在してもよいことは、理解されよう。対照的に、ある構成要素が別の構成要素の「直接上に」存在する、または「直接上まで」延びていると称される場合には、介在する構成要素は存在しない。同様に、層、領域、または基板などの構成要素が、別の構成要素の「上全体に」存在する、または「上全体に」延びていると称される場合には、その別の要構成素の直接上全体に存在する、もしくは直接上全体に延びているものとすることができること、または介在する構成要素が存在してもよいことは、理解されよう。対照的に、ある構成要素が別の構成要素の「直接上全体に」存在する、または「直接上全体に」に延びていると称される場合には、介在する構成要素は存在しない。また、ある構成要素が別の構成要素に「接続されている」または「結合されている」と称される場合には、その別の構成要素に直接接続もしくは結合されたものとすることができること、または介在する構成要素が存在してもよいことは、理解されよう。対照的に、ある構成要素が別の構成要素に「直接接続されている」または「直接結合されている」と称される場合には、介在する構成要素は存在しない。
【0017】
本明細書では、図に示されているとおり、1つの構成要素、層、または領域と別の構成要素、層、または領域との関係を説明するために、「下方」もしくは「上方」、「さらに上」もしくは「さらに下」、または「水平」もしくは「垂直」などの相対的な用語が使用される場合がある。これらの用語および上述の用語は、図に描かれている向きに加えて、装置の異なる向きを包含することを意図していることは、理解されよう。
【0018】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的だけのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示しているのでない限り、複数形も含むことを意図している。用語「具備する(comprises)」、「具備している(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」は、本明細書で使用される場合には、記載の特徴、完全体、ステップ、操作、構成要素、および/または構成成分の存在を指定するが、しかし1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、操作、構成要素、構成成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことは、さらに理解されよう。
【0019】
特に定義されているのでない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の業者が共通に理解しているものと同一の意味を有する。さらに、本明細書で使用される用語は、本明細書および関連技術の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるのが望ましいこと、そして本明細書で明示的に定義されているのでない限り、理想化されたまたは形式にとらわれ過ぎた意味では解釈されないことは、理解されよう。
【0020】
本開示は概して、アンテナ・アレイにおいて使用されて、無線装置向けに性能を向上させる、したがって系全体の効率を高めるアパーチャ・アンテナ・チューニング技術に関する。アパーチャ・チューニングは、アパーチャ・チューナを使用して、アンテナ・アレイ放射パターンの位相応答を変化させることによって行われる。アパーチャ・チューニングは、所望の方向にアレイ放射パターンを増強することによって、SNRを向上させる。
【0021】
本開示では、アンテナ・アレイ内の構成要素として、アパーチャ・チューニングされたアンテナを用いる。アンテナ・アレイ内の構成要素の周波数チューニングを変化させることにより、構成要素間の効果的な位相シフトを実現することができる。この位相シフトは、各アンテナのRF経路にさらなる損失を招くことなしに行われる。例えば、MEMSを用いたアパーチャ・チューナの挿入損失は約0.2dBである。しかし、位相シフタの挿入損失は、カバーされる帯域幅に応じて2から5dBの間である。したがって、アパーチャ・チューナという解決策は、位相シフタの実装に比べて10分の1未満の低損失を実現している。
【0022】
本明細書で開示される装置は、基地局、スモール・セル、もしくは顧客構内設備(CPE)のような無線通信ネットワークのインフラストラクチャの一部とすることができるか、または計算機、タブレット、もしくは携帯電話のようなエンドユーザによって使用されるように設計することができる。無線回路を内蔵する装置は、WiFi、LTE、5Gなど、複数アンテナおよび/または非常に高い信号対雑音比を必要とする先進的な通信プロトコルをサポートすることができる。5Gのような先進的な通信系の場合、通信装置には、空間内の任意の方向に実現アレイ利得(系の効率)を向上さることのできる、そして装置が手の中に保持されたり頭に隣接した位置にあったりする場合に発生する変化を補償することのできる、アンテナ・チューニング用アーキテクチャが必要となる。
【0023】
図1は、デジタル式可変キャパシタ(DVC)102とアンテナ104とを具備する電子装置100、この例では携帯電話機の模式図である。図2は、一実施形態による、アンテナ・アレイを調整するのに利用することができる、微小電気機械系(Micro Electro Mechanical System(MEMS))を用いたDVC200の模式図である。MEMS DVCは、共通のRFバンプ206に結合されたRF電極204をそれぞれ有する複数のキャビティ202を含む。各キャビティ202は、1つまたは複数のプルインまたはプルダウン電極208と、1つまたは複数の接地電極210とを有する。スイッチング構成要素212が、RF電極204から遠い位置と、RF電極204に近い位置とから移動して、MEMS DVC200内の静電容量を変化させる。MEMS DVC200は、多数のスイッチング構成要素212を有しており、したがって、一定の共振周波数を維持すること、そして環境変化の影響や頭/手の影響の下にあるアンテナの電気的特性の変化を補償することを目的としてアンテナ・アパーチャに印加/除去可能な可変静電容量範囲が大きい。MEMS DVC200は本質的に、個別に制御される複数のMEMS構成要素の集合体である。
【0024】
図3A図3Cは、一実施形態による、MEMS DVC200内の複数のキャビティ202内に複数のスイッチング構成要素212を作り出すことができる単一のMEMS構成要素300の模式断面図である。MEMS構成要素300は、RF電極302と、1つまたは複数のプルダウン電極304と、1つまたは複数のプルアップ電極306と、RF電極302および1つまたは複数のプルダウン電極304に重なり合う第1の誘電体層308と、1つまたは複数のプルアップ電極306に重なり合う第2の誘電体層310と、第1の誘電体層308および第2の誘電体層310の間で移動可能なスイッチング構成要素312とを含む。スイッチング構成要素312は、接地電極314に結合される。図3Bに示すとおり、MEMS構成要素300は、スイッチング装置312がRF電極302に最も近い場合に、最大静電容量位置にある。図3Cに示すとおり、MEMS構成要素300は、スイッチング装置312がRF電極302から最も遠い場合に、最小静電容量位置にある。よって、MEMS構成要素300は、2つの異なる静電容量段階を有する可変キャパシタを作り出し、そのような複数のMEMS構成要素300を一体化して単一のMEMS DVC200にすることで、大きな粒度と静電容量範囲を有するDVCを作り出すことができ、このDVCによって、一定の共振周波数を維持するのに要求されるリアクタンス性のアパーチャ・チューニングを実現し、環境変化の影響や頭/手の影響の下にあるアンテナの電気的特性の変化を補償する。
【0025】
図4は、一実装用の2×2アンテナ・アレイ400における提案された1つの手法を示す模式図である。アンテナ・アレイ400では、4つのアンテナ系が示されており、各アンテナは、アンテナ402と、構成要素404、例えばアパーチャ・チューニング構成要素とを具備する。各アンテナ402(しばしば、アンテナ・アパーチャと称される)は、構成要素404、例えば容量性チューナに接続される。構成要素404は、アンテナ402に容量負荷を与え、よって、アレイ400の各アンテナ402の周波数応答と放射場の両方に影響を与える。図4に示すとおり、構成要素404は、1つまたは複数のキャパシタ408、1つまたは複数の可変キャパシタ410、1つまたは複数のインダクタ412、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。よって、構成要素404が、複数のキャパシタ408、複数の可変キャパシタ410、複数のインダクタ412、およびこれらの組み合わせを含んでもよいことは、理解されたい。さらに、スイッチ406が、1つまたは複数のキャパシタ408、1つまたは複数の可変キャパシタ410、および1つまたは複数のインダクタ412を選択的に結合しているのが示される。
【0026】
図4では、2×2アンテナ・アレイが例示されているが、本開示が2×2アンテナ・アレイに限定されるものではないことは、理解されたい。むしろ、本開示は、アンテナ・アレイ内のいかなる数のアンテナ系にも適用可能である。
【0027】
図5Aは、アンテナ402の帰還損失がチューナ設定(アパーチャに接続される)に対してどのように変化するかの模式図を示す。図5Bについては、単一のアンテナ402の放射パターンが、4つの代替制御状態についての放射場の位相の観点で示されている。
【0028】
図6Aに例示されるとおり、4つの個々の放射パターンの重畳により、本出願におけるアレイ400の増強された全放射パターンが生成される。各アンテナ(E1、E2、E3、E4)のフェーザ(phasor)は、全アレイ放射パターンを所望のとおりに調整するために、各アンテナ・アパーチャ402に接続されたチューナを通じて変化させることができる。
【0029】
図7は、2×2アレイの一実装において使用されるアンテナ系700を示す。アンテナ系700は、アンテナ702(これは、図4のアンテナ402であってもよい)と、アパーチャ・チューニング構成要素704(これは、図4の構成要素404であってもよい)とを含む。アンテナ702は、第1の放射体部分710と、1つのRF入力706と、1つの接地脚708とを含む。2つ以上のRF入力が存在し得る一方で、接地脚が存在しなくともよいこと、または2つ以上の接地脚が存在し得ることは、理解されたい。第1の放射体部分710は、金属板を具備してもよい。アパーチャ・チューニング構成要素704は、第2の導電性部分712を含む。第2の導電性部分712は、金属板を具備してもよい。また、支柱部分714が図示されているが、ただし支柱部分714はなくてもよい。また、チューニング構成要素704は、シャント・チューナ(shunt tuner)716を含む。シャント・チューナ716は、一方の側で第2の導電性部分712に結合され、電場をアンテナ・アパーチャに容量性結合する。シャント・チューナ716の他方の側は、装置の接地面に接続される。梁部および導電性部分710、712は、互いに平行である。図7は、アンテナ構成要素の1つの可能な実装を示す。このアンテナ構成要素の重要な特徴は、チューナが、RF入力フィード線にではなく、アンテナ・アパーチャに結合されることである。チューナ構成要素は、アンテナと無線系の残りの部分との間の直接的なフィード経路にはない。
【0030】
達成される結果を評価するために、関連する性能指数としてアンテナの実現利得の定義を使用してもよい。アンテナの実現利得は以下のように定義される。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、Uはアンテナの放射強度(ワット/ステラジアン(Watt/sr)で表される)であり、Pincはアンテナへの入射電力(ワットで表される)である。Pincは、ミスマッチ損失とアンテナ損失も考慮するために、全放射電力の代わりに使用される。
【0033】
図8は、一実装について、球面座標におけるphi=0面での2×2アレイの実現利得を示し、これは、4つの個別の構成要素404の状態の81通りの異なる組み合わせについて計算されたものである。X軸(空間方向シータ(Theta))の各値において、重畳された放射パターンが、接続された4つのチューナの4つの状態に依存して異なる値を有するということに気づかされるであろう。
【0034】
さらに興味深いのは,単一の切断面に沿ってではなく、3D元空間の全方向におけるアンテナ利得を評価することである。これは、ファイ(Phi)とシータの両方で10度ごとに放射パターンを解析し、合計648通りの空間方向を用いて全球をカバーすることによって、行われる。図9は、本実施形態のカバレッジ効率のプロットを示す。各データ点は、4つのアンテナ構成要素に接続される4つのチューナの81通りの可能な設定にわたり、最大の実現利得を定量化するものである。
【0035】
系設計の観点からは、潜在的な利点をさらに理解するために、これらの結果を、チューニングされていないアンテナと比較することは、意味がある。この比較を表1にまとめる。アパーチャ・チューニングされた手法を採用することにより、アンテナ系の実現利得は、平均して1dBに近い値だけ向上し、最良の場合では5dBより高い。表中の最後の行に示されるとおり、解析された空間方向の100%で、向上が示されている。
【表1】
【0036】
位相シフタでは、避けられないそして大きな電力損失(対象の周波数にもよるが典型的には数dB)が加わるので、アパーチャ・チューニングされたアンテナ構成要素を使用して達成されるビーム・フォーミング性能が、この位相シフタを使用する従来手法にいかに勝っているかということは、強調しておきたい。
【0037】
図9[差し替え]は、アパーチャ・チューニング・アンテナ・アレイ実装(損失を含む)と、従来実装との間のカバレッジ効率の比較を示しており、従来実装は、3dBの挿入損失を有する位相シフタを使用し、この値は最先端の位相シフタの典型的な値である。本開示において提案された技術は、空間内のシミュレートされたあらゆる方向のほぼ80%において、アンテナ・アレイの実現利得を向上させている。
【0038】
図4における提案された2×2アレイは、MIMOアレイとしても使用できる。ビーム・フォーミングに位相シフタを使用しないようにすることで、MIMO構成においてアンテナを独立に使用する場合にも即座に利点がもたらされる。さらに、アパーチャ・チューニングされたアンテナ構成要素をMIMO用途に使用することには、さらに多くの利点がある。
【0039】
MIMOアンテナについて周知の性能指数(FOM)は、相関係数(CC)と呼ばれている。この量は0から1まで変化し、あらゆるアンテナ対の放射パターンがいかに無相関であるかの表示であり、0は無相関、1は完全な相関を意味する。図9は、接続された4つのチューナの制御状態に対する、2×2アレイのうち一対のアンテナの相関係数を示す。アンテナ設計者の観点からすると、チューナの制御状態を変えることによりCCを制御できることで、望ましい一自由度が、アンテナ設計空間に加わる。
【0040】
図10は、図4において提示された開示の一実装について、4つの接続されたチューナすべての制御状態に対する、2×2アレイのうち一対のアンテナの相関係数を示す。
【0041】
一実施形態では、電子装置が、複数のアンテナを有するアンテナ・アレイと、アンテナに結合された複数のアパーチャ・チューニング構成要素と、を具備する。複数のアパーチャ・チューニング構成要素のアパーチャ・チューニング構成要素の数は、複数のアンテナの数に等しい。少なくとも1つのアパーチャ・チューニング構成要素が、デジタル式可変キャパシタである。デジタル式可変キャパシタは、少なくとも1つのMEMS構成要素を含む。複数のアパーチャ・チューニング構成要素のうち少なくとも1つのアパーチャ・チューニング構成要素が、容量性チューナである。一実施形態では、アンテナ・アレイは、2×2アレイである。複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナが、第1の放射体部分と、少なくとも1つのRF入力と、を含む。複数のアンテナのうち少なくとも1つのアンテナが、少なくとも1つのRF入力を含む。複数のアパーチャ・チューニング構成要素のうち少なくとも1つのアパーチャ・チューニング構成要素が、第2の導電性部分を含み、第2の導電性部分は、第1の放射体部分と平行である。少なくとも1つのアパーチャ・チューニング構成要素が、容量性チューナを含む。少なくとも1つのアパーチャ・チューニング構成要素が、デジタル式可変キャパシタである。デジタル式可変キャパシタは、少なくとも1つのMEMS装置を含む。電子装置は、ビーム・フォーミング機能を利用する。電子装置は、MIMO機能を利用する。
【0042】
アンテナ・アレイの各アンテナにチューニング構成要素を有することにより、以下の項目が実現される。所望の方向へのアレイ放射パターンを増強することにより、アンテナ系のSNRを向上させること。アレイ放射パターンを調整することにより、チャネル干渉を低減すること。位相シフタ実装と比較して、要求される物理的寸法を大幅に低減すること。アパーチャ・チューナ制御状態を調整するにより、MIMO機能を向上させること(相関係数の減少)。ビーム・フォーミング用途、またはMIMO用途のいずれにおいても、位相シフタの大きな挿入損失を回避すること。各アンテナ構成要素の制御状態を変化させることにより頭や手の影響を補償する機能を有すること。アレイ実装のコストを大幅に削減すること。
【0043】
当業者であれば、本開示の好ましい実施形態に対する改良例および修正例を認められよう。そのようなすべての改良例および修正例は、本明細書に開示された概念および以下の請求項の範囲内にあると見なされる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ(402)を有するアンテナ・アレイ(400)と、
前記複数のアンテナ(402)のうちの少なくとも1つのアンテナ(402)に結合される少なくとも1つの構成要素(404)であって、共振周波数を変化させ、それによって前記複数のアンテナ(402)のアンテナ(402)間の相対的な位相を変化させることができる構成要素と、
を具備する、電子装置(100)であって、前記少なくとも1つの構成要素(404)が、
少なくとも1つのキャパシタと、
少なくとも1つのインダクタと、
前記少なくとも1つのキャパシタおよび前記少なくとも1つのインダクタのうちの1つまたは複数を結合するように構成される少なくとも1つのスイッチと、
を具備する、電子装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、任意の調整可能なインピーダンスを合成することができるネットワークである、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項3】
位相シフトを作り出す前記少なくとも1つの構成要素(404)に結合されたインピーダンス整合器をさらに具備する、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、1つまたは複数のインダクタ(412)が結合されたスイッチ、1つまたは複数のキャパシタ(408、410)が結合されたスイッチ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの構成要素(404)の構成要素(404)の数が、前記複数のアンテナ(402)のアンテナ(402)の数と等しい、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、デジタル式可変キャパシタ(200)である、請求項5に記載の電子装置(100)。
【請求項7】
前記デジタル式可変キャパシタ(200)が、少なくとも1つの微小電気機械(MEMS)構成要素(300)を含む、請求項6に記載の電子装置(100)。
【請求項8】
前記アンテナ・アレイ(400)が2×2アレイである、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項9】
前記複数のアンテナ(402)のうちの前記少なくとも1つのアンテナ(502)が、第1の梁部(710)と、少なくとも1つのRF入力(706、708)とを含む、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項10】
前記複数のアンテナ(402)のうちの前記少なくとも1つのアンテナ(402)が、少なくとも1つのRF入力(706、708)を含む、請求項1に記載の電子装置(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が、第2の梁部(712)を含み、前記第2の梁部(712)が、前記第1の梁部(710)と平行であってその近傍にある、請求項9に記載の電子装置(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの構成要素(404)が容量性チューナを含む、請求項11に記載の電子装置(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの構成要素(404)がデジタル式可変キャパシタ(200)である、請求項11に記載の電子装置(100)。
【請求項14】
前記デジタル式可変キャパシタ(200)が、少なくとも1つの微小電気機械(MEMS)装置(300)を含む、請求項13に記載の電子装置(100)。
【請求項15】
多入力多出力(MIMO)機能を利用する、請求項1に記載の電子装置(100)。
【国際調査報告】