(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポリペプチド誘導体およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07K 2/00 20060101AFI20220713BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20220713BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220713BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220713BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220713BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220713BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20220713BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220713BHJP
A61K 38/29 20060101ALI20220713BHJP
C12N 15/16 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
C07K2/00 ZNA
C07K14/575
C12P21/02 B
A61P19/10
A61P3/10
A61K38/02
A61K38/28
A61K47/64
A61K38/29
C12N15/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567053
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2020089217
(87)【国際公開番号】W WO2020228610
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】201910390476.3
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521437770
【氏名又は名称】ニンポー クンペン バイオテック カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NINGBO KUNPENG BIOTECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Xingbin Road,ZhongyiNingbo Ecological Park,Yuyao,Ningbo,Zhejiang 315400,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ゼンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ソン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フイリン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG15
4B064AG16
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4C076BB11
4C076CC21
4C076CC30
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA02
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4C084CA56
4C084CA59
4C084DB32
4C084DB33
4C084DB34
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA37
4H045EA30
4H045FA10
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
ポリペプチド誘導体およびその調製方法を提供する。具体的には、ポリペプチド誘導体を提供する。実験結果は、前記ポリペプチド誘導体が生物学的活性を維持する同時に半減期を有意に延長することを示す。前記ポリペプチド誘導体の調製方法、および治療におけるその作用がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド誘導体であって、
前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Iに示される基である修飾基Lを含み、
【化1】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であり、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体。
【請求項2】
前記基Yは、
【化2】
からなる群から選択される基であることを特徴とする、
請求項1に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、
請求項1に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項4】
前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1または2に示されるような配列を有し、および/または
前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4、5または6に示されるような配列を有し、および/または
前記GLP-1は、SEQ ID NO.:7~9のいずれかに示されるような配列を有し、および/または
前記PTHは、SEQ ID NO.:10に示されるような配列を有することを特徴とする、
請求項1に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項5】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項1に記載のポリペプチド誘導体、および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチド誘導体の使用であって、
骨粗鬆症、糖尿病、高血糖症および血糖値を下げることで利益を得ることができる他の疾患を予防および/または治療するための薬物または製剤の調製に用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項7】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)X基-リジン、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、インスリンコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、ポリペプチド誘導体を生成し、ここで、前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド鎖、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ基Xである修飾基Lを含み、基Xは、請求項1に定義されたとおりである段階、および任意選択で
(2)発酵生成物から前記ポリペプチド誘導体を分離する段階を含むことを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項8】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)式IIIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、式IVの化合物を得る段階、および
【化3】
(2)不活性溶媒中で、式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階を含み、
【化4】
式Vにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項9】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)式VIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、式VIIの化合物を得る段階、および
【化5】
(2)不活性溶媒中で、式VIIの化合物を式VIIIの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階を含み、
【化6】
式VIIIにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項10】
中間体であって、
前記中間体は、
(a)インスリン、GLP-1またはPTHであるポリペプチド、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Aに示される基である修飾基Lを含み、
【化7】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であることを特徴とする、前記中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野に属し、具体的には、本発明は、ポリペプチド誘導体およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物動態学研究は、リペプチド/タンパク質薬物が、主に分解、排泄、および受容体によって媒介されるエンドサイトーシス等によって体内で排除されることを示す。ここで、分子量が20kDa未満のポリペプチド因子は、代謝中に糸球体によって簡単にろ過され、尿細管を通過する際にポリペプチド因子は、プロテアーゼによって部分的に分解されて尿中に排泄されるため、半減期が短くなる。GLP-1を例として、体内での生物学的半減期は一般に20分であり、治療効果を得るために、頻繁な高用量の投薬が必要であり、長期にわたる頻繁な注射は、患者の痛みおよび治療費を増加させるだけでなく、一連の深刻な毒副作用を引き起こしやすくなる。長時間作用型ポリペプチド/タンパク質薬物の開発は、第1の世代遺伝子操作されたポリペプチド/タンパク質薬物に対して二次開発を行う重要な方向性になっている。現在、タンパク質薬物の半減期を延長することは、主にタンパク質薬物の分子量を増加させ、糸球体ろ過率を低下させ、異種タンパク質の免疫原性を低下させることにより、体内でのその排除率を低下させ、および連続的かつ徐々に放出して薬物の濃度を維持し、薬物の作用時間を延長する等の二つに基づいて考慮する。従来の技術には、徐放性製剤の調製、突然変異体の構築、化学修飾および遺伝子融合等が含まれる。
【0003】
従って、本発明において、タンパク質またはポリペプチドへの脂肪酸化修飾、脂肪酸とアルブミンとの非共有結合を介して、血液中のタンパク質またはポリペプチドの半減期を延長することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新しく、より長時間作用するポリペプチド誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、ポリペプチド誘導体を提供し、前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチドと、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Iに示される基である修飾基Lとを含み、
【化1】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であり、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0006】
別の好ましい例において、前記基Yは、
【化2】
からなる群から選択される基である。
【0007】
別の好ましい例において、前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、インスリン誘導体、GLP-1誘導体、PTH誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1または2に示されるような配列を有する。
別の好ましい例において、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4、5または6に示されるような配列を有する。
【0009】
別の好ましい例において、前記GLP-1は、SEQ ID NO.:7~9のいずれかに示されるような配列を有する。
別の好ましい例において、前記PTHは、SEQ ID NO.:10に示されるような配列を有する。
【0010】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体の構造は、次のように示され、ここで、
【化3】
は、インスリン、GLP-1またはPTHであり、
【化4】
ここで、mは、0~8の整数であり、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0011】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、以下のグループから選択され、ここで、
【化5】
は、インスリン、GLP-1またはPTHである。
【化6】
【0012】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、L0-GFA16-ポリペプチド、L2-GFA16-ポリペプチド、L3-GFA16-ポリペプチド、L4-GFA16-ポリペプチド、L5-GFA16-ポリペプチド、またはL6-GFA16-ポリペプチドからなる群から選択される。
【0013】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L0-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりであり、ここで、
【化7】
は、ポリペプチドである。
【化8】
【0014】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L2-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりであり、ここで、
【化9】
は、ポリペプチドである。
【化10】
【0015】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L3-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりであり、ここで、
【化11】
は、ポリペプチドである。
【化12】
【0016】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L4-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりであり、ここで、
【化13】
は、ポリペプチドである。
【化14】
【0017】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L5-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりであり、ここで、
【化15】
は、ポリペプチドである。
【化16】
【0018】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体L6-GFA16-ポリペプチドの構造は、以下のとおりである。
【化17】
【0019】
別の好ましい例において、前記インスリンは、インスリンA鎖およびB鎖を含む。
別の好ましい例において、前記インスリンは、ヒトインスリンまたは動物インスリンを含み、好ましくは、前記インスリンは、ヒトインスリンである。
【0020】
別の好ましい例において、前記動物インスリンは、ブタインスリンおよびウシインスリンを含む。
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖とB鎖との間には、一つまたは複数のジスルフィド結合がさらに含まれる。
【0021】
別の好ましい例において、前記インスリンは、天然インスリン、インスリン前駆体、またはインスリンの変異体を含む。
別の好ましい例において、前記インスリン誘導体は、インスリン前駆体および前記修飾基Lを含む。
【0022】
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1または2に示されるような配列を有する。
別の好ましい例において、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4、5または6に示されるような配列を有する。
【0023】
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1に示されるような配列を有し、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、5または6に示されるような配列を有する。
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:2に示されるような配列を有し、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:4または6に示されるような配列を有する。
【0024】
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)部位に共有結合する。
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)のε-アミノ基に共有結合する。
【0025】
別の好ましい例において、前記インスリンは、PK、DKT、PKTまたはKPTモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
別の好ましい例において、前記インスリンは、TPK、TKPまたはTDKモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
別の好ましい例において、前記インスリンは、YTPK、YTDKT、YTPKTまたはYTKPTモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
【0026】
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記B鎖の28番目または29番目のリジン(K)に接続される。
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、SEQ ID NO.:3、4または6に示される配列に対応する29番目のリジン(K)に共有結合する。
【0027】
別の好ましい例において、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4または6に示されるような配列を有し、前記修飾基Lは、SEQ ID NO.:3、4または6に示される配列の29番目のリジン(K)に接続される。
別の好ましい例において、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:5に示されるような配列を有し、前記修飾基Lは、SEQ ID NO.:5に示される配列の28番目のリジン(K)に接続される。
【0028】
別の好ましい例において、前記インスリン誘導体は、L0-GFA16-インスリン、L2-GFA16-インスリン、L3-GFA16-インスリン、L4-GFA16-インスリン、L5-GFA16-インスリン、またはL6-GFA16-インスリンからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記GLP-1誘導体は、GLP-1類似体および前記修飾基Lを含む。
別の好ましい例において、前記GLP-1は、SEQ ID NO.:7~9のいずれかに示されるような配列を有する。
【0029】
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)部位に共有結合する。
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)のε-アミノ基に共有結合する。
【0030】
別の好ましい例において、前記GLP-1は、AKEモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
別の好ましい例において、前記GLP-1は、AAKEFモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記鎖の20番目または26番目のリジン(K)に接続される。
【0031】
別の好ましい例において、前記GLP-1誘導体は、L0-GFA16-GLP-1、L2-GFA16-GLP-1、L3-GFA16-GLP-1、L4-GFA16-GLP-1、L5-GFA16-GLP-1、またはL6-GFA16-GLP-1からなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい例において、前記PTH誘導体は、PTH類似体および前記修飾基Lを含む。
別の好ましい例において、前記PTHは、SEQ ID NO.:10に示されるような配列を有する。
【0033】
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)部位に共有結合する。
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記リジン(K)のε-アミノ基に共有結合する。
【0034】
別の好ましい例において、前記PTHはRKRモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
別の好ましい例において、前記PTHはLRKRLモチーフを含み、前記修飾基Lは、前記モチーフのリジン(K)部位に接続される。
【0035】
別の好ましい例において、前記修飾基Lは、前記PTHの26番目のリジン(K)に接続される。
別の好ましい例において、前記PTH誘導体は、L0-GFA16-PTH、L2-GFA16-PTH、L3-GFA16-PTH、L4-GFA16-PTH、L5-GFA16-PTH、またはL6-GFA16-PTHからなる群から選択される。
【0036】
本発明の第2の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド誘導体、および薬学的に許容されるベクターを含む。
【0037】
本発明の第3の態様は、骨粗鬆症、糖尿病、高血糖症および血糖値を下げることで利益を得ることができる他の疾患を予防および/または治療するための薬物または製剤の調製に使用される、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド誘導体の用途を提供する。
【0038】
本発明の第4の態様は、ポリペプチド誘導体の調製方法を提供し、前記方法は、
(1)X基-リジン、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、インスリンコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジンのコード配列をTAG(コードリジン誘導体)に置き換えることにより、ポリペプチド誘導体を生成し、ここで、前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド鎖と、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ基Xである修飾基Lとを含み、基Xは、本発明の第1の態様に定義されたとおりである段階と、および任意選択で
(2)発酵生成物から前記ポリペプチド誘導体を分離する段階とを含む。
【0039】
別の好ましい例において、前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、インスリン誘導体、GLP-1誘導体、PTH誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
本発明の第5の態様は、ポリペプチド誘導体の調製方法を提供し、前記方法は、
(1)式IIIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジンのコード配列をTAG(コードリジン誘導体)に置き換えることにより、式IVの化合物を得る段階と、および
【化18】
(2)不活性溶媒中で、式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階とを含み、
【化19】
式Vにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0041】
別の好ましい例において、前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、インスリン誘導体、GLP-1誘導体、PTH誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
本発明の第6の態様は、ポリペプチド誘導体の調製方法を提供し、前記方法は、
(1)式VIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジンのコード配列をTAG(コードリジン誘導体)に置き換えることにより、式VIIの化合物を得る段階と、および
【化20】
(2)不活性溶媒中で、式VIIの化合物を式VIIIの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階とを含み、
【化21】
式VIIIにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0043】
別の好ましい例において、前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、インスリン誘導体、GLP-1誘導体、PTH誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
本発明の第7の態様は、中間体を提供し、前記中間体は、
(a)インスリン、GLP-1またはPTHであるポリペプチドと、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Aに示される基である修飾基Lとを含み、
【化22】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数である。
【0045】
別の好ましい例において、前記中間体は、式IVに示されるような構造を有し、ここで、
【化23】
は、インスリン、GLP-1またはPTHであり、
【化24】
【0046】
別の好ましい例において、前記中間体は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド誘導体を調製するために使用される。
本発明は、本発明の第7の態様に記載の中間体の用途を提供し、前記中間体は、本発明の第1の態様に記載のポリペプチド誘導体を調製するために使用される。
【発明の効果】
【0047】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究を通じてポリペプチド誘導体を得、実験結果は、前記ポリペプチド誘導体が生物学的活性を維持する同時に有意に延長された半減期を有りすることを示す。本発明は、前記ポリペプチド誘導体の医薬的用途、および糖尿病の治療または予防、骨細胞の骨形成の促進等におけるその効果を提供する。これに基づいて、本発明者らは本発明を完成した。
【0049】
長時間作用型インスリンの理想的な効果は、可能な限り少ないインスリン注射の回数によって糖尿病患者のインビボで基本的なインスリン分泌を再構築することである。化学修飾は、長時間作用型インスリンを得る方法の一つであり、化学修飾剤の構造は、安定し、毒性がなく、抗原性がなく、適切な大きさの分子量を有する必要がある。本発明の特定の化学修飾により、インスリンは、生物学的活性を維持する同時に半減期を延長し、抗原性を低下させる。本発明の修飾されたインスリン誘導体は、良好な生体的合成を有するポリマー化合物であり、人体に対して無毒であり、薬物の水溶性が増加する。さらに、それに対する糸球体の排除率を低下させ、体内を循環する薬物の半減期を延長することにより、長期的な効果を得ることができる。本発明のブチニルオキシカルボニル-リジンを含むインスリン、GLP-1、PTHタンパク質と脂肪酸アシル化合物とは、クリック反応を介して接続して、半減期が有意に延長されるGLP-1、PTH誘導体を得る。
【0050】
用語
本発明を説明する前に、本発明は、記載された具体的な方法および実験条件に限定されないことを理解されたく、そのような方法および条件は、変化し得るからである。本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明することのみを意図し、限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0051】
別に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0052】
本明細書で使用されるように、具体的に記載された数値に関して使用される場合、「約」という用語は、当該値が記載された値から1%以下しか変化できないことを意味する。例えば、本明細書で使用されるように、「約100」という用語は、99~101の間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0053】
本明細書で使用されるように、「含有」または「包括(含む)」という用語は、開放式、半閉鎖式および閉鎖式であり得る。言い換えれば、前記用語も、「基本的にからなる」、または「からなる」を含む。
【0054】
GLP-1
GLP-1は、グルコース依存性腸を低下させるポリペプチドホルモンであり、GLP-1は、低血糖を伴わずにインスリン分泌を刺激し、このようなグルコース依存性のインスリン分泌促進特性は、糖尿病の治療にしばしば存在する低血糖症のリスクを回避し、これらの生理学的機能により、2型糖尿病治療薬としてのGLP-1の開発には幅広い展望がある。GLP-1は、通常膵臓のβ細胞膜上の受容体GLP-1受容体(GLP-1R)に作用して、インスリンの分泌を促進する。しかしながら、天然のGLP-1は、糖尿病の治療に多くの利点があるが、体内のジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)によって急速に分解される。さらに、天然のGLP-1は、腎臓によって急速にろ過および代謝されるため、DPP-IV分解に抵抗して、腎臓による急速な代謝を回避できるGLP-1類似体を見つけるには、天然のGLP-1を変更する必要がある。
【0055】
GLP-1は、血糖依存性のインクレチン分泌効果があり、膵臓のβ-細胞退化を防ぎ、β-細胞の増殖および分化を刺激し、プレインスリン遺伝子の転写を誘導し、プレインスリンの生合成を促進し、インスリンの感受性を増加し、ソマトスタチンの分泌を増加させ、インスリングルカゴンの生成を抑制する(この効果は血糖依存性でもある)。
【0056】
副甲状腺ホルモン(PTH)
副甲状腺ホルモン(PTH)は、副甲状腺から分泌された84個のアミノ酸を含む一本鎖ポリペプチドタンパク質であり、カルシウムおよびリンの代謝および骨代謝転換を調節する最も重要なペプチドホルモンの一つである。hPTHの生理学的機能は、主に骨細胞の骨形成の効果を促進し、腎臓のカルシウムの再吸収、リンの分泌、および骨の再建を刺激することである。PTHの現在の欠点は、主にhPTH分子がシステインを含まず、体内で非常に不安定であることである。PTHI分子量が小さくて、糸球体によってろ過されやすいため、体内での半減期が短く、皮下投与または筋肉注射での半減期は、通常約12時間である。治療効果を得るために、一般に頻繁かつ大量の投薬が必要であるが(皮下注射は1日1回、数ケ月間持続する)、そのような頻繁な投薬と長い治療サイクルは、患者が絶えることができず、臨床的には頭痛、嘔吐、発熱などの副作用を引き起こし、患者のコンプライアンスが悪い。従って、現在、副甲状腺ホルモンによってその半減期を延長するように改変することができる、PTH長時間作用型製剤または類似体などが緊急に必要とされる。
【0057】
脂肪酸アシル化合物
ブチニルオキシカルボニル-リジンを含む本発明のポリペプチド(例えば、インスリン、PTH、GLP-1)と脂肪酸アシル化合物とは、クリック反応を通じて接続されて、一連の半減期が有意に延長されるポリペプチド誘導体を得る。
【0058】
本発明の脂肪酸アシル化合物は、14~18個の炭素を有する脂肪酸アシル化合物であり、構造式は、以下の式Vまたは式VIIIの化合物であり、
【化25】
ここで、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0059】
別の好ましい例において、前記脂肪酸アシル化合物は、L0-GFA、L2-GFA、L3-GFA、L4-GFA、L5-GFA、またはL6-GFAからなる群から選択され、ここで、nは、14~16の整数である。
【化26】
【0060】
別の好ましい例において、前記脂肪酸アシル化合物は、L0-GFA16、L2-GFA16、L3-GFA16、L4-GFA16、L5-GFA16、またはL6-GFA16からなる群から選択される。
【化27】
【0061】
ポリペプチド誘導体
本明細書に使用されるように、「ポリペプチド類似体」、「ポリペプチド誘導体」、「本発明の誘導体」という用語は、交換可能に使用され、すべて本発明の第1の態様に記載のポリペプチド誘導体を指す。
本発明は、ポリペプチド誘導体を提供し、前記ポリペプチド誘導体は、本発明の第1の態様に記載される。
【0062】
具体的には、前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド鎖と、および
(b)前記ポリペプチド鎖のリジン部位に接続され、かつ式Iに示される基である修飾基Lを含み、
【化28】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であり、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数である。
【0063】
別の好ましい例において、前記ポリペプチド誘導体は、インスリン誘導体、GLP-1誘導体、PTH誘導体、またはその組み合わせを含む。
別の好ましい例において、前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1または2に示されるような配列を有する。
別の好ましい例において、前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4、5または6に示されるような配列を有する。
【0064】
GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(SEQ ID NO.:1)
GIVEQCCTSICSLYQLENYCG(SEQ ID NO.:2)
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(SEQ ID NO.:3)
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPK(SEQ ID NO.:4)
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(SEQ ID NO.:5)
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTDKT(SEQ ID NO.:6)
【0065】
別の好ましい例において、前記GLP-1は、SEQ ID NO.:7~9のいずれかに示されるような配列を有する。
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(SEQ ID NO.:7)
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVRGRG(SEQ ID NO.:8)
HXEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVRGRG(SEQ ID NO.:9)(ここで、Xは、2-アミノイソ酪酸(Aib)である)
【0066】
別の好ましい例において、前記PTHは、SEQ ID NO.:10に示されるような配列を有する。
SVSEIQLMHNLGRHLNSMERVEWLRKRLQDVHNF(SEQ ID NO.:10)
【0067】
本発明において、インスリン誘導体は、インスリン、インスリン前駆体およびインスリン変異体を含む。前記インスリン変異体は、天然に存在するインスリンとは異なるが、依然に血糖コントロールの方法で、人体のヒトインスリンと同様の効果を発揮することができる。基本的な(underlying)DNAの遺伝子工学により、インスリンのアミノ酸配列を変更することにより、その吸収、分布、代謝および分泌の特性を変更することができる。改善には、注射部位に吸収されやすいインスリン類似体が含まれるため、皮下注射された天然インスリンよりも速く作用し、食事時間に必要なレベルのインスリンを提供するように設計され(食事インスリン)、8時間~24時間の間にゆっくりと放出されるこれらのインスリン類似体は、日中、特に夜間に基礎レベルのインスリン(基礎インスリン)を提供するように設計される。速効型インスリン類似体は、インスリンリスプロ(礼来会社)およびインスリンアスパルト(Novo Nordisk会社)を含み、長時間作用型インスリン類似体は、NPHインスリン、インスリングルリジン(Sanofi-Aventis会社)、インスリンデテミル(Novo Nordisk会社)およびインスリングラルギン(Sanofi-Aventis会社)を含む。
【0068】
本明細書に使用されるように、「変異体」という用語は、(a)一つまたは複数のアミノ酸残基が、一つの天然または非天然に存在するアミノ酸残基によって置換され、(b)二つまたは複数のアミノ酸残基の順序が逆になり、(c)(a)と(b)とが同時に存在し、(d)任意の二つのアミノ酸残基の間にスペーサー基が存在し、(e)一つまたは複数のアミノ酸残基がペプトイド形態であり、(f)ペプチドの一つまたは複数のアミノ酸残基の(N-C-C)主鎖が修飾されるか、または(a)~(f)の任意の組み合わせである、の任意の変異体を含む。好ましくは、前記変異体は、(a)、(b)または(c)のうちの一つである。
【0069】
より好ましくは、一つまたは二つのアミノ酸残基は、一つまたは複数の他のアミノ酸残基によって置換される。さらにより好ましくは、一つのアミノ酸残基は、もう一つのアミノ酸残基によって置換される。好ましくは、前記置換は、相同性である。
【0070】
相同置換(本明細書で使用される置換および代替は、既存のアミノ酸残基および任意の残基の交換を指す)、即ち、塩基性置換塩基性、酸性置換酸性、極性置換極性等の同性置換が発生されることができる。非相同置換が発生されることもでき、即ち、一つの残基が別の残基に置換されるか、またはオルニチン、オルニチンジアミノブチレート、ノルロイシンオルニチン、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリシン等の非天然アミノ酸を選択的に含み、以下にはより詳細なリストが示される。同時に、複数のアミノ酸残基が修飾されることができる。本明細書に使用されるように、アミノ酸は、塩基性:H、KおよびR、酸性:DおよびE、非極性:A、F、G、I、L、M、P、VおよびW、ならびに極性:C、N、Q、S、TおよびYに従って分類される。
【0071】
アミノ酸スペーサー基(例えば、グリシンまたはβ-アラニン残基)に加えて、ベクター部分の任意の二つのアミノ酸残基の間に挿入することができる適切なスペーサー基は、メチル基、エチル基またはプロピル基等のアルキル基を含む。当業者は、ペプトイド形態で存在する一つまたは複数のアミノ酸残基を含む別の変異体形態、(e)型を理解することができる。誤解を避けるために、本明細書は、「ペプトイド形態」を使用して、α-C置換基がα-Cではない前記残基のN原子に位置する変異体アミノ酸残基を指す。ペプトイド形態のペプチドを調製することは、当技術分野で知られており、例えば、SimonRJら、PNAS(1992)89(20)、9367-9371およびHorwell DC、Trends Biotechnol.(1995)13(4)、132-134である。(f)型の修飾は、International Publication PCT/GB99/01855に記載される方法で実行されることができる。アミノ酸変異体(好ましくは(a)型または(b)型である)は、好ましくは任意の位置で独立して存在する。上記のように、一つ以上の相同または非相同置換が同時に発生することができる。配列内のいくつかのアミノ酸残基の配列を逆にすることにより、他の変異体を得ることができる。一実施形態において、置換アミノ酸残基は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、Aチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンから選択される。
【0072】
本発明のポリペプチド誘導体は、塩またはエステルの形態で存在することができ、特に薬学的に許容される塩またはエステルの形態で存在することができる。
【0073】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適切な酸付加塩またはその塩基塩を含む。適切な薬学的に許容される塩は、Bergeら、概説J Pharm Sci、66、1-19(1977)を参照することができる。ミネラル酸(例えば、硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)等の強無機酸と、1~4個の炭素原子を有する非置換または置換(例えば、ハロゲン置換)のアルカン酸(例えば、酢酸)等の強有機カルボン酸と、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸などの飽和または不飽和ジカルボン酸と、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸等のヒドロキシカルボン酸と、アスパラギン酸またはグルタミン酸等のアミノ酸と、安息香酸と、または非置換または置換(例えば、ハロゲンによって置換)の(C1~C4)-アルキル-またはアリール-スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸またはp―トルエンスルホン酸)等の有機スルホン酸と、塩を形成する。
【0074】
本発明は、本発明の誘導体の溶媒和物の形態も含む。請求項に使用される用語は、これらの形態を含む。本発明は、本発明の類似体の様々な結晶形態、多形(無水)および水和型にさらに関する。製薬産業は、化合物の合成調製に使用される溶媒の精製方法および/または分離方法をわずかに変更することによって、化学的化合物をそのような形態で分離することができる方法を確立した。
【0075】
本発明は、プロドラッグ形態の本発明の誘導体をさらに含む。このようなプロドラッグは、一般に本発明の誘導体であり、ここで、一つまたは複数の適切な基を修飾することにより、ヒトまたは哺乳動物の被験者に投与されるときに当該修飾を逆転させることができる。そのようなプロドラッグと一緒に第2の試薬を投与してインビボで逆転を行うことも可能であるが、そのような逆転は、通常当該被験者の体内に天然に存在する酵素によって実行される。このような修飾の例としては、エステル(例えば、上記のもののいずれか)を含み、ここで、前記逆転は、エステラーゼによって実行されることができる。他のこのようなシステムは、当業者によく知られている。
【0076】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は次のとおりである。
(1)従来技術と比較して、本発明のインスリン誘導体およびGLP-1誘導体は、薬効がより長く持続され、安定し、長期の血糖降下作用を有し、それらの半減期を有意に延長する。
(2)本発明のインスリン誘導体およびGLP-1誘導体は、低血糖を引き起こさず、注射の回数を減少することができ、副作用が小さい。
(3)従来技術と比較して、本発明のPTH誘導体は、薬効がより長く持続され、安定し、長期の血糖降下作用を有し、それらの半減期を有意に延長する。
(4)本発明のPTH誘導体は、注射の回数を減少することができ、副作用が小さい。
(5)本発明の調製方法は、副生成物が少なく、収率が高く、コストが低く、プロセスが簡単であり、大量生産に適している。臭化シアンの分解、酸化亜硫酸塩の分解および関連する生成段階は必要ない。高濃度のメルカプタンまたは疎水性吸着樹脂を使用する必要はない。精製段階が少なく、製造コストが低い。
【0077】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。以下の実施例で使用される実験材料および試薬は、特に明記しない限り、市販のチャネルから入手することができる。
【0078】
実施例1:ブチニルオキシカルボニル-リジンを含む組換えインスリンタンパク質の合成
化学的方法を使用して、SEQ ID NO.:11のアミノ酸配列を含むブチニルオキシカルボニル-リジンの組換えインスリンタンパク質をコードDNAフラグメントを合成し、ここで、80番目のリジン(K)のコード配列は、TAG(リジン誘導体をコードする)に置き換えられる。次に、SEQ ID NO.:11の完全なアミノ酸配列をコードするDNAフラグメントを、修飾されたpBAD-HisAベクターにクローン化する。得られたプラスミドは、ブチニルオキシカルボニル-リジンの構造を有する組換えインスリンタンパク質の発現に使用される。当該プラスミドおよび酵素プラスミドpEvol-pylRs-pylTを一緒に大腸菌株Top10に形質転換する。形質転換液は、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地で、37℃で一晩培養する。単一のコロニーを採取し、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB液体培地で、37℃、220rpmの恒温振とう機で一晩培養する。次に、前記一晩培養物を、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含む100mlのTB液体培地に接種し、OD600が2~4になるまで37℃で培養する。次に、25%のアラビノース溶液を最終濃度が0.25%になるように前記培地にを加え、0.1Mのブチニルオキシカルボニル-リジン溶液を最終濃度が5mMになるように加え、前記融合タンパク質の発現を誘導する。前記培養液を引き続き16~20時間培養し、次に遠心分離(10000rpm、5min、4℃)で収集する。
【0079】
SEQ ID NO.:11のアミノ酸配列:
MVSKGEELFTGVTYKTRAEVKFEGDDDDDKTLVNRIELKGIDFENLYFQGRFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN、ここで、80番目のKは、ブチニルオキシカルボニル基に共有結合するリジンである。
【0080】
融合タンパク質は、不溶性「封入体」形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を粉砕し、5000gの遠心分離法で細胞片および可溶性大腸菌宿主タンパク質を除去し、tween80、EDTA、NaClを含む溶液で封入体を洗浄し、純水で封入体を1~2回洗浄する。洗浄した封入体をpHが10.5~11.5であり、かつ2~10mMのβ-メルカプトエタノールを含む7.5M尿素に溶解し、溶解後の総タンパク質の濃度が10~25mg/mlになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃に維持し、pH値が10.5~11.7である条件下で14~30時間一般的なフォールディングを実行する。18~25℃下で、pH値を8.0~9.5に維持し、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで10~20時間酵素消化し、次に0.45Mの硫酸アンモニウムを加えて酵素消化反応を停止させる。逆相HPLC分析の結果は、当該酵素消化段階の収率が90%を超えることを示す。トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで酵素消化した後得られるインスリン類似体は、ブチニルオキシカルボニル-リジン-ヒトインスリンと呼ばれる。緩衝液Aとして0.45M硫酸アンモニウム、緩衝液Bとして純水を用いて膜ろ過によりサンプルを清澄化し、疎水性クロマトグラフィーにより最初に精製して、ブチニルオキシカルボニル-リジン-ヒトインスリン粗抽出液を得、電気泳動純度は、90%に達する。ポリマー逆相充填剤およびC8逆相充填剤により精製し、最終的に純度が99%を超えるブチニルオキシカルボニル-リジン-ヒトインスリンを得る。
【化29】
【0081】
実施例2:L0-GFA16-インスリンの合成(nは、14である)
脂肪酸アシル化合物はアジド基を有するため、末端アルキンを含むインスリンタンパク質を導入し、「クリック化学」反応原理を使用して、アルキンは、アジドと反応して、1,2,3-トリアゾール環を形成し、架橋を形成する。1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例1で調製した10μLのIV化合物(N-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのヒトインスリンタンパク質)(約5μM)を順次加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈することができる。当該溶液に、1μLのL0-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化30】
【0082】
実施例3:L2-GFA16-インスリン、L3-GFA16-インスリン、L4-GFA16-インスリン、L5-GFA16-インスリン、L6-GFA16-インスリンの合成(nは、14である)
1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例1で調製した10μLのN-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのヒトインスリンタンパク質(約5μM)を順次加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈するために、水を追加する必要がある場合がある。当該溶液に、1μLのL0-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化31】
【0083】
同様に、実施例1で調製したIV化合物は、L3-GFA16、L4-GFA16、L5-GFA16、L6-GFA16とそれぞれクリック反応して得られる生成物の構造は次のとおりである。
【化32】
【0084】
実施例4:ラット体内における本発明のインスリン誘導体の薬物代謝動態学研究
実験は、対照品グループおよび試験品グループに分けられ、それぞれ組換えヒトインスリン、L6-GFA16-インスリンを皮下注射し、単回投与の投与量は、すべて0.45mg/kgである。各グループの動物は、すべて投与後15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、12時間、24時間の時点で採血する。LC-MS/MS分析法を使用して、様々なインスリン類似体の含有量を検出する。代謝動態学データ分析ソフトウェアWinNonlin7.0を使用して、血漿濃度データを統計し、非コンパートメントモデル法(NCA)を使用して、薬物動態パラメーターを計算する(表1)。表1から、各グループの動物における薬物のピーク時間は、類似しており、すべて約0.5~1時間であることが分かり、L6-GFA16-インスリンの半減期は、組換えヒトインスリンの3~4倍であり、体内での薬物の曝露時間が延長され、曝露量が増加することが分かる。
【表1】
【0085】
上記の実験を繰り返し、違いは、本発明に記載のL0-GFA16-インスリン、L2-GFA16-インスリン、L3-GFA16-インスリン、L4-GFA16-インスリン、L5-GFA16-インスリンを使用することである。結果によると、本発明に記載のインスリン誘導体は、生物学的活性を維持する同時に半減期を有意に延長することができることが見出された。
【0086】
実施例5:ブチニルオキシカルボニル-リジンを含むGLP-1タンパク質の合成
化学的方法を使用して、SEQ ID NO.:12のアミノ酸配列を含むブチニルオキシカルボニル-リジンのGLP-1タンパク質をコードするDNAフラグメントを合成し、ここで、70番目のリジン(K)のコード配列は、TAG(コードリジン誘導体)に置き換えられる。次に、SEQ ID NO.:12の完全アミノ酸配列をコードするDNAフラグメントを、修飾されたpBAD-HisAベクターにクローン化する。得られたプラスミドは、ブチニルオキシカルボニル-リジンの構造を有する組換えGLP-1タンパク質の発現に使用される。当該プラスミドおよび酵素プラスミドpEvol-pylRs-pylTを一緒に大腸菌株Top10に形質転換する。形質転換液は、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地で、37℃で一晩培養する。単一のコロニーを採取し、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB液体培地で、37℃、220rpmの恒温振とう機で一晩培養する。次に、前記一晩培養物を、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含む100mlのTB液体培地に接種し、OD600が2~4になるまで37℃で培養する。次に、25%のアラビノース溶液を最終濃度が0.25%になるように前記培地にを加え、0.1Mのブチニルオキシカルボニル-リジン溶液を最終濃度が5mMになるように加え、前記融合タンパク質の発現を誘導する。前記培養液を引き続き16~20時間培養し、次に遠心分離(10000rpm、5min、4℃)で収集する。
【0087】
SEQ ID NO.:12のアミノ酸配列:
MVSKGEELFTGVTYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFENLYFQGDDDDKHAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG、ここで、70番目のKは、ブチニルオキシカルボニル基に共有結合するリジンである。
【0088】
融合タンパク質は、不溶性「封入体」形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を粉砕し、5000gの遠心分離法で細胞片および可溶性大腸菌宿主タンパク質を除去し、tween80、EDTA、NaClを含む溶液で封入体を洗浄した後、純水で封入体を1~2回洗浄する。洗浄した封入体をpHが10.5~11.5であり、かつ2~10mMのβ-メルカプトエタノールを含む7.5M尿素に溶解し、溶解後の総タンパク質の濃度が10~25mg/mlになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃に維持し、pH値が10.5~11.7である条件下で14~30時間一般的なフォールディングを実行する。リフォールディング溶液を清澄化処理した後、pH9.0の条件下で、弱陰イオン充填剤で融合タンパク質を分離および精製し、標的タンパク質の電気泳動純度は、80%に達する。高塩でサンプルを溶出し、脱塩処理した後、25℃下で、pH値を約8.0~9.0に維持し、エンテロキナーゼで約10~20時間酵素消化し、逆相HPLC分析の結果は、当該酵素消化段階の収率が90%を超えることを示す。エンテロキナーゼで溶解した後得られるGLP-1類似体は、ブチニルオキシカルボニル-リジン-GLP-1と呼ばれる。酵素消化した後疎水性充填剤で精製し、ブチニルオキシカルボニル-リジン-GLP-1を抽出し、電気泳動純度は、90%に達する。
【化33】
【0089】
実施例6:L0-GFA16-GLP-1の合成(nは、14である)
脂肪酸アシル化合物はアジド基を有するため、末端アルキンを含むGLP-1タンパク質を導入し、「クリック化学」反応原理を使用して、アルキンは、アジドと反応して、1,2,3-トリアゾール環を形成し、架橋を形成する。1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例5で調製した10μLのIV化合物(N-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのGLP-1タンパク質)(約5μM)を順次に加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈することができる。当該溶液に、1μLのL0-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化34】
【0090】
実施例7:L2-GFA16-GLP-1、L3-GFA16-GLP-1、L4-GFA16-GLP-1、L5-GFA16-GLP-1、L6-GFA16-GLP-1の合成(nは、14である)
1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例5で調製した10μLのN-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのGLP-1タンパク質(約5μM)を順次に加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈するために、水を追加する必要がある場合がある。当該溶液に、1μLのL0-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化35】
【0091】
同様に、実施例5で調製したIV化合物は、L3-GFA16、L4-GFA16、L5-GFA16、L6-GFA16とそれぞれクリック反応して得られる生成物の構造は次のとおりである。
【化36】
【0092】
実施例8:ラット体内における本発明のGLP-1誘導体の薬物代謝動態学研究
実験は、対照品グループおよび試験品グループに分けられ、それぞれGLP-1、L6-GFA16-GLP-1を静脈内注射し、単回投与の投与量は、すべて0.5mg/kgである。各グループの動物は、投与後15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、12時間、24時間に採血する。LC-MS/MS分析法を使用して、様々なインスリン類似体の含有量を検出する。代謝動態学データ分析ソフトウェアWinNonlin7.0を使用して、血漿濃度データを統計し、非コンパートメントモデル法(NCA)を使用して、薬物動態パラメータを計算する(表2)。
【0093】
表2から、各グループの動物における薬物のピーク時間は、類似しており、すべて約4.8分間であり、体内でのL6-GFA16-GLP-1の曝露時間は、長くなり、曝露量は、有意に増加する。
【表2】
【0094】
上記の実験を繰り返し、違いは、本発明に記載のL0-GFA16-GLP-1、L2-GFA16-GLP-1、L3-GFA1-GLP-1、L4-GFA16-GLP-1、L5-GFA16-GLP-1を使用することである。結果によると、本発明に記載のGLP-1誘導体は、生物学的活性を維持する同時に半減期を有意に延長することができることが見出された。
【0095】
実施例9:ブチニルオキシカルボニル-リジンを含むPTHタンパク質の合成
化学的方法を使用して、SEQ ID NO.:13のアミノ酸配列を含むブチニルオキシカルボニル-リジンのPTHタンパク質をコードするDNAフラグメントを合成し、ここで、76番目のリジン(K)のコード配列は、TAG(コードリジン誘導体)に置き換えられる。次にSEQ ID NO.:13の完全アミノ酸配列をコードするDNAフラグメントを、修飾されたpBAD-HisAベクターにクローン化する。得られたプラスミドは、ブチニルオキシカルボニル-リジンの構造を有する組換えPTHタンパク質の発現に使用される。当該プラスミドおよび酵素プラスミドpEvol-pylRs-pylTを一緒に大腸菌株Top10に形質転換する。形質転換液は、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地で、37℃で一晩培養する。単一のコロニーを採取し、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB液体培地で、37℃、220rpmの恒温振とう機で一晩培養する。次に、前記一晩培養物を、25μg/mLのカナマイシンおよび17μg/mLのクロラムフェニコールを含む100mlのTB液体培地に接種し、OD600が2~4になるまで37℃で培養する。次に、25%のアラビノース溶液を最終濃度が0.25%になるように前記培地にを加え、0.1Mのブチニルオキシカルボニル-リジン溶液を最終濃度が5mMになるように加え、前記融合タンパク質の発現を誘導する。前記培養液を引き続き16~20時間培養し、次に遠心分離(10000rpm、5min、4℃)で収集する。
【0096】
SEQ ID NO.:13のアミノ酸配列:
MVSKGEELFTGVTYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFENLYFQGDDDDKSVSEIQLMHNLGRHLNSMERVEWLRKRLQDVHNF、ここで、76番目のKは、ブチニルオキシカルボニル基に共有結合するリジンである。
【0097】
融合タンパク質は、不溶性「封入体」形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を粉砕し、5000gの遠心分離法で細胞片および可溶性大腸菌宿主タンパク質を除去し、tween80、EDTA、NaClを含む溶液で封入体を洗浄した後、純水で封入体を1~2回洗浄する。洗浄した封入体をpHが10.5~11.5であり、かつ2~10mMのβ-メルカプトエタノールを含む7.5M尿素に溶解し、溶解後の総タンパク質の濃度が10~25mg/mlになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃に維持し、pH値が10.5~11.7である条件下で14~30時間一般的なフォールディングを実行する。リフォールディング溶液を清澄化処理した後、pH9.0の条件下で、弱陰イオン充填剤で融合タンパク質を分離および精製し、標的タンパク質の電気泳動純度は、80%に達する。高塩でサンプルを溶出し、脱塩処理した後、25℃下で、pH値を約8.0~9.0に維持し、エンテロキナーゼで約10~20時間酵素消化し、逆相HPLC分析の結果は、当該酵素消化段階の収率が90%を超えることを示す。エンテロキナーゼで溶解した後得られるPTH類似体は、ブチニルオキシカルボニル-リジン-PTHと呼ばれる。酵素消化した後疎水性充填剤で精製し、ブチニルオキシカルボニル-リジン-PTHを抽出し、電気泳動純度は、90%に達する。
【化37】
【0098】
方法は、実施例6および7と同じであり、N-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンを含むPTHタンパク質をN-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンを含むGLP-1タンパク質に置き換えて、L0-GFA16-PTH、L2-GFA16-PTH、L3-GFA16-PTH、L4-GFA16-PTH、L5-GFA16-PTHおよびL6-GFA16-PTHを合成する。
【0099】
実施例10:ラット体内における本発明のPTH-1誘導体の薬物代謝動態学研究
実験は、対照品グループおよび試験品グループに分けられ、それぞれPTH、L6-GFA16-PTHを皮下注射し、投与量は、すべて8.6μg/kgであり、単回投与である。各グループの動物は、投与後0分間、5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間の時点で採血する。LC-MS/MS分析法を使用して、様々なインスリン類似体の含有量を検出する。代謝動態学データ分析ソフトウェアWinNonlin7.0を使用して、血漿濃度データを統計し、非コンパートメントモデル法(NCA)を使用して、薬物動態パラメータを計算する(表3)。表3から、L6-GFA16-PTH動物のピーク時間は、約1.6時間に延長され、体内での薬物の曝露時間が延長され、曝露量が増加することが分かる。
【表3】
【0100】
上記の実験を繰り返し、違いは、本発明に記載のL0-GFA16-PTH、L2-GFA16-PTH、L3-GFA16-PTH、L4-GFA16-PTH、L5-GFA16-PTHを使用することである。結果は、本発明に記載のPTH誘導体は、生物学的活性を維持する同時に半減期を有意に延長することができることが見出された。
【0101】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド誘導体であって、
前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Iに示される基である修飾基Lを含み、
【化1】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であり、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体。
【請求項2】
前記基
Lは、
【化2】
からなる群から選択される基であることを特徴とする、
請求項1に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、インスリン、GLP-1、PTH、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、
請求項1
または2に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項4】
前記インスリンのA鎖は、SEQ ID NO.:1または2に示されるような配列を有し、および/または
前記インスリンのB鎖は、SEQ ID NO.:3、4、5または6に示されるような配列を有し、および/または
前記GLP-1は、SEQ ID NO.:7~9のいずれかに示されるような配列を有し、および/または
前記PTHは、SEQ ID NO.:10に示されるような配列を有することを特徴とする、
請求項1
~3のいずれか一項に記載のポリペプチド誘導体。
【請求項5】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項1
~4のいずれか一項に記載のポリペプチド誘導体、および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項6】
請求項1
~4のいずれか一項に記載のポリペプチド誘導体の使用であって、
骨粗鬆症、糖尿病、高血糖症および血糖値を下げることで利益を得ることができる他の疾患を予防および/または治療するための薬物または製剤の調製に用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項7】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)X基-リジン、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、インスリンコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、ポリペプチド誘導体を生成し、ここで、前記ポリペプチド誘導体は、
(a)ポリペプチド鎖、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ基Xである修飾基Lを含み、基Xは、請求項1に定義されたとおりである段階、および任意選択で
(2)発酵生成物から前記ポリペプチド誘導体を分離する段階を含むことを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項8】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)式IIIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、式IVの化合物を得る段階、および
【化3】
(2)不活性溶媒中で、式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階を含み、
【化4】
式Vにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項9】
ポリペプチド誘導体の調製方法であって、
前記方法は、
(1)式VIの化合物、ピロリシル-tRNAシンテターゼおよびその相同関連tRNAの存在下で、ポリペプチドコード配列を含む菌株を培養し、ここで、前記コード配列において、ポリペプチドのリジン部位のコード配列は、TAGであることにより、式VIIの化合物を得る段階、および
【化5】
(2)不活性溶媒中で、式VIIの化合物を式VIIIの化合物と反応させて、ポリペプチド誘導体を得る段階を含み、
【化6】
式VIIIにおいて、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~10の整数から選択され、nは、14~16の整数であることを特徴とする、前記ポリペプチド誘導体の調製方法。
【請求項10】
中間体であって、
前記中間体は、
(a)インスリン、GLP-1またはPTHであるポリペプチド、および
(b)前記ポリペプチドのリジン部位に接続され、かつ式Aに示される基である修飾基Lを含み、
【化7】
ここで、波線は、前記リジン部位との接続位置を示し、mは、0~8の整数であることを特徴とする、前記中間体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
別の好ましい例において、前記基
Lは、
【化2】
からなる群から選択される基である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
実施例3:L2-GFA16-インスリン、L3-GFA16-インスリン、L4-GFA16-インスリン、L5-GFA16-インスリン、L6-GFA16-インスリンの合成(nは、14である)
1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例1で調製した10μLのN-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのヒトインスリンタンパク質(約5μM)を順次加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈するために、水を追加する必要がある場合がある。当該溶液に、1μLの
L2-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化31】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
実施例6:L0-GFA16-GLP-1の合成(nは、14である)
脂肪酸アシル化合物はアジド基を有するため、末端アルキンを含むGLP-1タンパク質を導入し、「クリック化学」反応原理を使用して、アルキンは、アジドと反応して、1,2,3-トリアゾール環を形成し、架橋を形成する。1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例5で調製した10μLのIV化合物(N-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのGLP-1タンパク質)(約5μM)を順次に加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈することができる。当該溶液に、1μLのL0-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化34】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
実施例7:L2-GFA16-GLP-1、L3-GFA16-GLP-1、L4-GFA16-GLP-1、L5-GFA16-GLP-1、L6-GFA16-GLP-1の合成(nは、14である)
1.5mlの綺麗な遠心分離管に4μLの硫酸銅(50μM)を加え、次に3μLのBTTAA(300μM)および実施例5で調製した10μLのN-(ブチニルオキシカルボニル)-リジンのGLP-1タンパク質(約5μM)を順次に加える。この時点で、溶液を適切な体積またはタンパク質濃度に希釈するために、水を追加する必要がある場合がある。当該溶液に、1μLの
L2-GFA16(1mM)および2μLのアスコルビン酸ナトリウム(2.5mM)を加えて反応を開始する。室温下で約1時間後、5μLのSDS-PAGEサンプル緩衝液を加え、100℃に加熱して10分間維持し、12%のSDS-PAGEで分析する。当該ゲルを回収し、ゲルイメージング、蛍光分析を行った後、クマシーブリリアントブルーで染色する。
【化35】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
実施例8:ラット体内における本発明のGLP-1誘導体の薬物代謝動態学研究
実験は、対照品グループおよび試験品グループに分けられ、それぞれGLP-1、L6-GFA16-GLP-1を静脈内注射し、単回投与の投与量は、すべて0.5mg/kgである。各グループの動物は、投与後15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、12時間、24時間に採血する。LC-MS/MS分析法を使用して、様々なGLP-1類似体の含有量を検出する。代謝動態学データ分析ソフトウェアWinNonlin7.0を使用して、血漿濃度データを統計し、非コンパートメントモデル法(NCA)を使用して、薬物動態パラメータを計算する(表2)。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
実施例10:ラット体内における本発明のPTH-1誘導体の薬物代謝動態学研究
実験は、対照品グループおよび試験品グループに分けられ、それぞれPTH、L6-GFA16-PTHを皮下注射し、投与量は、すべて8.6μg/kgであり、単回投与である。各グループの動物は、投与後0分間、5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間の時点で採血する。LC-MS/MS分析法を使用して、様々な
PTH-1類似体の含有量を検出する。代謝動態学データ分析ソフトウェアWinNonlin7.0を使用して、血漿濃度データを統計し、非コンパートメントモデル法(NCA)を使用して、薬物動態パラメータを計算する(表3)。表3から、L6-GFA16-PTH動物のピーク時間は、約1.6時間に延長され、体内での薬物の曝露時間が延長され、曝露量が増加することが分かる。
【表3】
【国際調査報告】