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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】流体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20060101AFI20220713BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20220713BHJP
   B05B 11/04 20060101ALI20220713BHJP
   B05B 15/40 20180101ALI20220713BHJP
【FI】
B05B11/00 101G
B65D83/00 K
B05B11/00 101B
B05B11/04 J
B05B15/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567806
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 FR2020050769
(87)【国際公開番号】W WO2020229762
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】1905016
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】カゾラ シャルル
(72)【発明者】
【氏名】ミショー セバスチャン
【テーマコード(参考)】
3E014
4D073
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC07
3E014PD11
3E014PE08
3E014PE09
3E014PE17
4D073BB03
4D073CA01
4D073CA04
4D073CA12
4D073CA16
4D073CA19
4D073CB03
(57)【要約】
本発明に係る流体吐出装置は、容器(100)を収容する本体(101)と、容器(100)に取り付けられているポンプと、吐出ノズル(110)とを備え、前記ポンプは、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力(P)で流体を吐出し、吐出ノズル(110)は、複数の開口または孔を含むマイクロホールノズル(200)を備え、前記ノズル(200)の前記孔は、5μm未満、特には2μm未満の直径を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出装置であって、
容器(100)を収容する本体(101)と、
容器(100)に取り付けられているポンプと、
吐出ノズル(110)と、
を備え、
前記ポンプは、
ピストン(1)がスライドするポンプ本体(3)と、
前記ポンプ本体(3)から軸方向下方に延在しているスリーブ(9)と、
を備え、
前記ピストン(1)は、入口弁(11)と出口弁(12)との間で前記ポンプ本体(3)内に画定されたポンプ室(5)内をスライドし、
前記スリーブ(9)は、前記ポンプ本体(3)に対して縮径され、バネ(20)を受け止めており、休止位置では入口弁要素(10)が前記スリーブ(9)と非密封状態で協働し、作動中には前記入口弁要素(10)が前記スリーブ(9)内を密封状態で前記バネ(20)を圧縮しながらスライドするように、前記入口弁要素(10)と協働し、
前記ポンプは、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力(P)で流体を吐出し、
前記吐出ノズル(110)は、複数の吐出口または孔を含むマイクロホールノズル(200)を備え、前記ノズル(200)の前記孔は、5μm未満、特には2μm未満の直径を有することを特徴とする流体吐出装置。
【請求項2】
前記ポンプの出口と前記マイクロホールノズル(200)との間にフィルタ(150)が介在されていることを特徴とする請求項1に記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記容器(100)は、吸気口を有しないことを特徴とする請求項1または2に記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記容器(100)は、前記流体を収容する可撓性パウチ(105)を含むことを特徴とする請求項3に記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記本体(101)は、横方向の動きによって前記ポンプを作動させる側部作動アーム(160)を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記ピストン(1)は、ユーザがポンプを作動させるために手動で押圧する作動ロッド(2)に固定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幾つかの吐出口を有するスプレーノズルと、計量された量の流体製品を吐出するためのポンプとを含む流体吐出装置に関する。より具体的には、ポンプは、予備圧縮ポンプであり、流体製品の吐出は、少なくとも15バールの高圧で行われる。本発明は、このようなポンプを組み立てる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
複数の吐出口または孔を有する吐出ノズルを備える流体吐出装置は、特に特許文献1、2により知られている。これらの文献では、その孔の直径は一般に8~20μmである。特許文献1には、7バール未満の圧力で流体製品をノズルに送る予備圧縮ポンプが開示されている。特許文献2には、圧力が2~7バールであるポンプ、または圧力が6~13バールである推進用ガスで作動する加圧バルブのいずれかに関連しているノズルが開示されている。ノズルの構成によっては、特に孔の直径が5μm未満の場合、上記の圧力では、装置の最適な動作を保証するのに不十分である可能性がある。さらに、ユーザおよび/または環境にとって潜在的に有害な、バルブからの推進用ガスを回避するために、予備圧縮ポンプを使用することが望ましい場合がある。特許文献3、4、5には、マイクロホールを有するノズルの他の例が記載されている。
【0003】
特許文献6、7、8、9には、流体製品の吐出がユーザの作動速度および/または作動力から独立しているポンプが開示されている。ポンプの作動中、ポンプ室内の圧力の影響下でバネが圧縮され、そのバネは、出口弁の開放後の作動終了時に解放される。その結果、ポンプ室内の製品のドーズが、ユーザの作動速度から独立して、そのバネによって排出される。典型的には、これらのポンプは、約6~7バールの圧力を供給する。
【0004】
特許文献10、11には、50~600バールの間の圧力を発生することができる推進剤なしのポンプが記載されている。これらのポンプは、特定の構造を有し、特に、流体吐出装置に一般的に使用される標準的なポンプとは異なる。特許文献12には、2~20バールの圧力を発生させることができる、推進剤で作動するポンプまたは弁を使用する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1878507号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/100321号
【特許文献3】欧州特許第1698399号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/194962号
【特許文献5】国際公開第2018/219798号
【特許文献6】国際公開第2014/125216号
【特許文献7】国際公開第2001/002100号
【特許文献8】国際公開第1987/004373号
【特許文献9】欧州特許第0265270号明細書
【特許文献10】米国特許第5497944号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/164186号明細書
【特許文献12】欧州特許第0761246号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題が生じない装置及びポンプを提供することである。
【0007】
特に、本発明の目的は、高圧を手動で供給するように作動される予備圧縮ポンプを、いくつかの吐出口が設けられた吐出ノズルと関連付けることを可能にする流体吐出装置を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、従来のポンプと比較してより大きな圧力で流体製品を送るポンプを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、製造および組み立てが簡単かつ容易であり、その使用において信頼性を有するポンプを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、ユーザによる作動速度にかかわらず、各作動時にポンプ室内の内容物を完全かつ再現可能に吐出することを保証できるポンプを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、貯蔵中および使用中のポンプの信頼性の改善を、特に作動中に高圧にさらされる部品の完全性を改善することによって可能にするポンプを組み立てるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る流体吐出装置は、容器を収容する本体と、容器に取り付けられているポンプと、吐出ノズルと、を備え、前記ポンプは、ピストンがスライドするポンプ本体と、前記ポンプ本体から軸方向下方に延在しているスリーブと、を備え、前記ピストンは、入口弁と出口弁との間で前記ポンプ本体内に画定されたポンプ室内をスライドし、前記スリーブは、前記ポンプ本体に対して縮径され、バネを受け止めており、休止位置では入口弁要素が前記スリーブと非密封状態で協働し、作動中には前記入口弁要素が前記スリーブ内を密封状態で前記バネを圧縮しながらスライドするように、前記入口弁要素と協働し、前記ポンプは、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力で流体を吐出し、前記吐出ノズルは、複数の吐出口または孔を含むマイクロホールノズルを備え、前記ノズルの前記孔は、5μm未満、特には2μm未満の直径を有することを特徴とする。
【0013】
有利には、前記ポンプの出口と前記マイクロホールノズルとの間にフィルタが介在されている。
【0014】
有利には、前記容器は、吸気口を有しない。
【0015】
有利には、前記容器は、前記流体を収容する可撓性パウチを含む。
【0016】
有利には、前記本体は、横方向の動きによって前記ポンプを作動させる側部作動アームを含む。
【0017】
有利には、前記ピストンは、ユーザがポンプを作動させるために手動で押圧する作動ロッドに固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の特徴、利点および他の事項は、非限定的な例として以下に示す詳細な説明および添付の図面を参照することにより、さらに明らかになる。
図1】休止位置における従来のポンプの概略断面図である。
図2】上部ピストンの組み立て中における図1に記載のポンプの部分概略断面図である。
図3】1つの有利な実施形態に係る流体吐出装置の概略断面図である。
図4図3に記載のポンプの一部を詳細に示す拡大断面図である。
図5図3に記載のポンプの別の部分を詳細に示す拡大斜視図である。
図6】第1の有利な実施形態に係るポンプの休止位置における概略断面図である。
図7】第1の有利な実施形態に係るポンプの動作ストロークの開始時における概略断面図である。
図8】第1の有利な実施形態に係るポンプの動作ストローク中における概略断面図である。
図9】第1の有利な実施形態に係るポンプの動作ストロークの終了時における概略断面図である。
図10】本発明の有利な変形例に係るポンプの休止位置における概略断面図である。
図11】本発明の有利な変形例に係るポンプの動作ストロークの終了時における概略断面図である。
図12】上部ピストンの組み立て中における図6に記載のポンプの部分概略断面図である。
図13】上部ピストンの組み立て終了時における図6に記載のポンプの部分概略断面図である。
図14】下部ピストンの組み立て中における図6に記載のポンプの部分概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の異なる態様を、いくつかの変形する実施形態を参照して説明する。ただし、本発明は、図面に示す実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0020】
図1および図2は、特許文献6による従来技術のポンプを示す。
【0021】
図1および図2を参照すると、従来技術のポンプは、ポンプ本体3を備え、ユーザがポンプを作動させるために押圧する作動ロッド2に固定されたピストン1がポンプ本体3内をスライドする。ピストン1は、入口弁11と出口弁12との間でポンプ本体3内に画定されるポンプ室5内をスライドする。例えば、圧着、ネジ留めまたはスナップ留めが可能な固定リング4は、ポンプを容器に固定することを可能にする。
【0022】
図1に示されるように、ポンプの休止位置で開く入口弁11は、入口弁要素10によって形成される。入口弁要素10は、ポンプの作動中にポンプ本体3内で動くことができ、ポンプの作動開始時にポンプ本体3の一部と協働して前記入口弁11を閉じるように構成される。入口弁要素10は、一方の側が底壁によって閉じられた中空シリンダの形態で形成され、この中空シリンダの開口側の端縁部は、ポンプの作動開始からポンプ本体3のシリンダ9と密封状態で協働して、入口弁11を閉鎖する。バネ20は、一方の側が入口弁要素10の底壁を押圧し、他方の側がポンプ本体3の一部を押圧する。
【0023】
出口弁12は、出口弁要素39を備え、ポンプが作動すると、ポンプの作動終了時にのみ開いて、ポンプ室内に収容されている製品の排出が可能になるように形成されている。出口弁要素39は、有利にはピストン1の下部リップによって形成されている。出口弁12の開放は、ポンプ本体の半径方向内側肩部40に形成された通路手段により行われる。この通路手段40の目的は、ポンプの全作動ストローク中にポンプ本体3と密封状態で協働する出口弁要素39が、作動ストロークの終わりに通路手段40の位置に来たときに、少なくとも1つの流体通路を閉じることである。
【0024】
ポンプ室5に収容されている製品の排出は、ユーザによる作動速度とは無関係に行われる。これを行うために、入口弁要素10は、バネ20と協働する。バネ20は、ポンプの作動中に、ポンプ室内に生成される圧力の影響下で注入口弁要素10の移動によって圧縮される。ポンプの作動ストロークの終了時に、出口弁12が開いているときに、圧縮されたバネ20が突然解放される。その結果、ポンプ室内に収容された製品がこの解放されたバネによって排出される。有利には、入口弁11のバネ20は、ポンプの戻しバネとしても作用し、製品が排出された後、ピストン1をその休止位置に戻す。
【0025】
このように図1および図2に記載のポンプは、2つのピストンを備える。一方は、ピストン1であり、その一部が出口弁を規定する。他方は、入口弁を規定する入口弁要素10であり、作動中にポンプ本体3のシリンダ9の外面に対してピストンとして作用する。
【0026】
図2では、組み立て中に、2つのピストンが上から本体に組み付けられていることがわかる。この組み立てでは、出口弁要素を形成するピストン1の下部リップ39がポンプ本体3の入口に当接して、リップ39を弱める可能性がある。リップ39を図2の位置で軸方向下方に向けると、組立中にポンプ本体と接触するシールを生成するのは、必然的に半径方向外側端部になる。この端部がポンプ本体内に組み付けられる力によっては、その完全性が損なわれる可能性があり、特に高圧においてそのシール能力を低下させるリスクがある。
【0027】
同様に、入口弁要素10もスリーブ9の周囲に組み立てられるときに、入口弁要素10の密封用のリップがそのスリーブ9の上縁に当たる。ここでも、そのリップのシール面を損傷し、入口弁要素のシール性能を損なわせるリスクがある。
【0028】
図1および図2に例示する従来技術のポンプは、典型的には、約7バール(bar)の圧力を供給する。この圧力Pは、(式)P=F/Sにより、バネの力Fをその作用面の面積Sで割ったものに等しい。図1および図2に例示するポンプでは、バネ20は、典型的には、13N(ニュートン)の力Fを有し、作動中に入口弁要素10によって周囲をスライドされるスリーブ9の外径に対応する作用面の面積Sは、典型的には、18.8mm2である。ここで、スリーブ9の外径は、典型的には、4.9mmである。したがって、圧力Pは約7バールである。バネ20を変えて、例えば25Nの力を有するバネを使用することで、約13バールの圧力に達することができる。しかし、いくつかの理由でこれを実際には考慮することができない。図1に記載のポンプにおいて、そのサイズによっては25Nのような大きさの力を有するバネを作動させることは、特に高齢者または虚弱なユーザにとって困難になり得る。また、このような高い圧力になると2つのピストンでは支えられなくなるリスクがあり、各ピストンのシール用のリップは、上記のようにポンプの組み立て中に損傷する可能性が高い。このため漏れおよび誤動作の危険性が高くなりすぎて、各作動時に流体製品の完全な用量を確実に吐出することができない。
【0029】
本発明は、特に、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力を供給するのに適した予備圧縮ポンプを提供することを目的とする。
【0030】
これを行うために、図1および図2に記載の従来技術のポンプは、以下に説明するように、構造的および動作的に変更される。図3図14において、同一または類似の部品は、同一の参照符号で示されている。
【0031】
本発明によるポンプは、図1および図2に記載のポンプのようにポンプ本体3を備え、ユーザがポンプを作動させるために押圧する作動ロッド2に固定されたピストン1がポンプ本体3内をスライドする。ピストン1は、入口弁11と出口弁12との間でポンプ本体3内に画定されたポンプ室5内をスライドする。例えば、圧着、ネジ留めまたはスナップ留めが可能な固定リング4は、ポンプを容器に固定することを可能にする。
【0032】
ポンプ室5の側壁は、ポンプ本体3内へのスリーブ50の挿入によって補強されている。このスリーブ50は、例えば一部を固定リング4に固定することができる。スリーブ50は、ポンプ室5に二重壁を形成し、これにより作動中にポンプによって生成される高圧のためにポンプ室5の内側壁が変形するのを回避することを可能にする。スリーブ50は、出口弁40を規定する半径方向肩部を備える。有利には、図4に示されるようにスリーブ50とポンプ本体3との間の漏れを回避するためにシールされた溶接部55が設けられる。溶接部55の溶接は、例えば超音波によるものであり、ポンプ本体3の2つの半径方向フランジのそれぞれとスリーブ50を組み込んだ固定リング4との間に溶接部55を設けることが望ましい。
【0033】
同様に、入口弁要素10と協働するスリーブ9は、図6図14に示すようにポンプ本体3の下部が軸方向の下方に向かって延在したものであり、入口弁要素10とバネ20を収容する。入口弁要素10は中実であり、半径方向外側に延びる周辺シールリップを備える。休止位置では、特に図6に示されるようにシーリングリップがスリーブ9と密封状態で協働していないことから入口弁11が開いている。作動中、入口弁要素10は、スリーブ9内で軸方向にスライドして、バネ20を圧縮する。このスライドは、密封状態で行われ、入口弁要素10のシールリップは、スリーブ9と密封状態で協働する。
【0034】
スリーブ9は、ポンプ本体3に対して縮径している。スリーブ9は、有利には、特に図5および図7図9に見ることができるように外側補強リッジ90を含む。スリーブ9の実施は、その半径方向寸法を減少させることを可能にし、典型的には、図1に記載のポンプのスリーブ9の外径よりも小さい内径を有する。したがって、例えば、図6に示すポンプのスリーブ9は、4.2mm未満、有利には4mm未満、好ましくは3.9mmの直径を有することができる。
【0035】
ピストン1と出口弁要素39は、単一のワンピースの部品として作製できるが、好ましくは、図3および図6図14に示すように、出口弁要素39は、別個の部品で形成され、ピストン1に固定される。この固定は、圧力嵌め、スナップ留め、ネジ止め、または他の任意の適切な固定によって行うことができる。ピストン1と出口弁要素39の各シールリップは、同じ方向を向いており、図6に示す位置において下向きになっている。
【0036】
本発明に係るポンプの特徴の1つは、ピストン1と出口弁要素39のスリーブ50内への組み立てである。図1および図2のポンプとは対照的に、この組み立ては、図12および図13に示されるように、下側から上向きに行われる。各シールリップは、組み立ての方向とは反対の下方向を向いており、この組み立てによって弱められることがない。このように各シールリップの弾性変形は、当該リップの半径方向外側表面がポンプ室5のスリーブ50に対して前方部から接触することによって生じない。逆に、各リップは次第に半径方向内側に変形されるので、各リップのシール表面は、シール能力を変化させるリスクのある急激な応力を受けないようになる。
【0037】
入口弁要素10は、ピストン1と出口弁要素39の各シールリップとは反対方向を向くシールリップを備える。図14から分かるように、入口弁要素10は、上からポンプ本体のスリーブ9内に組み立てられる。このように各シールリップは、組み立て中にも損傷することがない。
【0038】
それ故、本発明に係るポンプは、ピストン1、出口弁要素39および入口弁要素10という異なるシール部品のシール能力を大幅に改善する。
【0039】
したがって、より大きな力、典型的には少なくとも20N、有利には25Nを有するバネを使用することが可能になる。
【0040】
スリーブ9の内径が3.9mm、すなわち面積Sが12mm2、バネの力が20Nの場合、約16.5バールの圧力Pが得られる。25Nの力を有するバネでは、圧力は約21バールまで上昇する。
【0041】
したがって、本発明は、標準型の予備圧縮ポンプを提供することを可能にし、少なくとも15バール、有利には約20バールの圧力で流体製品を吐出することができる。この圧力は、従来の標準ポンプよりも大きく、推進ガスで作動する弁よりも大きい。
【0042】
バネの力が25N、面積Sが12mm2のこのようなポンプの作動力は、60N未満であり、有利には約50Nであり、これは容認できる範囲内のままである。
【0043】
本発明はまた、有利な組み立て方法を提供する。この組み立て方法は、以下の工程(ステップ)を含む。
【0044】
作動ロッド2に固定されたピストン1を準備する。
【0045】
ポンプ室5を有するポンプ本体3を準備する。
【0046】
スリーブ50、有利には固定リング4に固定されたスリーブを準備する。
【0047】
作動中にポンプ室5内において密封状態でスライドする出口弁要素39を準備する。
【0048】
ポンプ本体3における縮径されたスリーブ9内でスライドする入口弁要素10を準備する。
【0049】
バネ20を準備する。
【0050】
さらに、この方法は、以下の工程を含む。
【0051】
ピストン1内への出口弁要素39の固定。
【0052】
ピストン1と出口弁要素39をスリーブ50内に挿入する。この挿入は、排出中に流体が流れる方向に、スリーブ50の底部から行われる。
【0053】
バネ20と入口弁要素10を縮径されたスリーブ9内に挿入する。この挿入は、排出中に流体が流れる方向とは反対の方向に、スリーブ9の上部から、スリーブ9の底部と入口弁要素10との間にバネ20を割り込ませるようにして行われる。
【0054】
スリーブ50をポンプ本体3内に挿入する。この挿入は、排出中に流体が流れる方向とは反対の方向に、ポンプ本体3の上部から行われる。
【0055】
任意に、縮径されたスリーブ9内にバネ20と入口弁要素10を挿入する工程は、ピストン1と出口弁要素39をスリーブ50内に挿入する工程の前に実施することができる。
【0056】
図6図9は、ポンプの動作を示す図である。
【0057】
図6は、休止位置を示し、休止位置では、入口弁11が開いており、出口弁12が閉じている。作動の開始時には、図7に示すように入口弁11は、入口弁要素10のリップとこれと協働するスリーブ9の内周面との間の密封によって閉じられ、一方、出口弁12は閉じたままになっている。バネ20は、スリーブ9内をスライドする入口弁要素10の影響下で圧縮される。スリーブ9は、スリーブ50に対して縮径されており、ポンプ本体3に配されている。ポンプ室5内に収容された流体は、非圧縮性であり、上記のようにバネ20の力が増大しているにもかかわらず、バネ20は比較的容易に圧縮される。
【0058】
作動の終了が近づくと、図8に示されるように出口弁要素39は出口弁の肩部40に近づき、出口弁を開く。
【0059】
図9は作動位置を示しており、出口弁が開いている。それゆえ、圧縮されていたバネ20が膨張し、その膨張したバネ20の影響下で、ポンプ室5の内容物が排出される。流体製品は、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力で排出される。
【0060】
図10図11は、実施形態の変形例を示しており、この変形例では、ユーザの作動力を低減するための第2のバネ80がユーザの補助用として設けられている。この第2のバネ80は、有利にはピストン1の周りに配置され、ピストン1をその作動位置に向かって付勢する。それゆえ、第2のバネ80は、バネ20に抗して作用することになり、そのため、第2のバネ80の力は、バネ20の力よりも小さくなければならない。
【0061】
このような第2のバネ80を用いる場合、バネ20としては、より大きな力、例えば30Nより大きい力F、有利には35Nより大きい力F、例えば38Nのものを使用することが考えられる。面積Sが12mm2の場合、25バールより大きい圧力P、有利には30バールより大きい、例えば32バールの圧力Pを達成することを可能にする。
【0062】
有利には、ピストン1が外側スリーブ2´に固定されるとしてもよい。外側スリーブ2´は、出口弁要素39に固定された作動ロッド2の周囲に組み立てられている。この構成は、図6図9の変形例として適用することもできる。
【0063】
本発明はまた、複数の吐出口を備えるスプレーノズルに関連する、上述のようなポンプを含む流体吐出装置に関する。
【0064】
例えば、特許文献2に記載されているようなマイクロホールノズルの使用は、ノズルの設計によると、特に各微小孔(microholes)の直径が5μm未満、さらには2μm未満であれば、典型的には15バールを超える高圧に達する流体が必要になることがある。
【0065】
本発明は、推進ガスを使用することなく、少なくとも15バール、有利には少なくとも20バールの圧力を保証することを可能にする。
【0066】
図3に示すように装置は、容器100を収容する本体101を備え、その容器の上に、上記のようなポンプが固定リング4によって取り付けられる。
【0067】
容器100は、好ましくは、吸気口を有しない。有利には、変形可能なパウチ105が容器100の内側に固定され、このパウチは、流体製品を収容し、投与量が吐出されるに連れて変形される。好ましくは、パウチへの充填は、真空下で行うことができる。この実施は、パウチ内に収容された製品のほとんど全ての送達を保証し、装置を任意の向きで作動させることを可能にし、パウチ内に収容された流体製品の汚染のいかなるリスクも回避する。パウチの変形例として、従動ピストンを容器100に使用することもできる。
【0068】
場合によっては、吸気口を有する装置を使用することもでき、その場合、通気される空気を濾過するためにフィルタが有利に設けられる。
【0069】
マイクロホールノズル200は、その動作について以下では、より詳細に説明しないが、例えば特許文献1~5に記載されているような任意の既知のタイプのものとすることができ、本体101に固定された吐出ノズル110内に配置される。この吐出ノズル110は、例えばマウスピースとすることができる。通常、ポンプによって排出された流体が複数の微小孔が開けられたプレートに衝突して流体の噴霧を生じさせるようになっている。
【0070】
ノズル200の微小孔は、5μm未満、好ましくは2μm未満の直径を有する。
【0071】
有利には、フィルタ150が、ポンプの出口とノズル200との間に介在する。このフィルタは、流体がさまざまなプラスチック部品を通過するときに流体によって運ばれる可能性のある不純物を濾過するために使用される。実際に、製造および組み立てプロセス中に微粒子が生成されるリスクが常に存在し、ノズルの微小孔を塞ぐリスクがある。
【0072】
有利には、本体101は、側部作動アーム160を備え、横方向の動きによってポンプを作動させることができる。
【0073】
もちろん、本発明は、図面に示される実施形態に限定されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
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【国際調査報告】