(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】体積膨張に適応可能なアノードフリー固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220713BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220713BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220713BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220713BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M4/64 A
H01M10/0587
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567917
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020032796
(87)【国際公開番号】W WO2020232196
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521240527
【氏名又は名称】テラワット テクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】星 肇
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅継
(72)【発明者】
【氏名】井本 浩
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE06
5H017HH03
5H017HH10
5H029AJ05
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ16
5H029DJ07
5H029EJ04
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ19
(57)【要約】
本明細書では、アノードフリー固体電池セルの様々な配置が提示される。電池セルは、固体電解質とアノード集電体との間に位置付けられたリチウムイオン緩衝層を含むことができる。リチウムイオンは電池セルが充電されるときにリチウムイオン緩衝層の中に保存されてよく、これは電池セル内の膨張量を減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードフリー固体電池セルであって、
カソード集電体層と、
前記カソード集電体層と積層されたカソードと、
固体電解質層と、
リチウムイオン緩衝層であって、
前記固体電解質層は前記カソードと前記リチウムイオン緩衝層との間に位置付けられ、
前記リチウムイオン緩衝層は多孔質であり、
前記リチウムイオン緩衝層は前記固体電解質層と直接接触し、
前記アノードフリー固体電池セルが充電されるときにリチウムイオンは前記リチウムイオン緩衝層内に保存される、
リチウムイオン緩衝層と、
前記リチウムイオン緩衝層と直接接触するアノード集電体と、
を含む、アノードフリー固体電池セル。
【請求項2】
前記リチウムイオン緩衝層は導電性を有し、前記アノードフリー固体電池セルをジェリーロール型電池セルの状態に巻くことができるように柔軟である、請求項1に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項3】
前記アノード集電体は銅箔層である、請求項2に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項4】
前記アノードフリー固体電池セルは円筒型電池セルハウジングをさらに含み、前記カソード集電体層、前記カソード、前記固体電解質層、前記リチウムイオン緩衝層、及び前記アノード集電体はまとめて巻かれてジェリーロール型アノードフリー固体電池セルを形成し、前記円筒型電池セルハウジングの中に挿入される、請求項3に記載のアノードフリー固体電池セル。
セル。
【請求項5】
前記リチウムイオン緩衝層の厚さは20μm未満である、請求項4に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項6】
前記リチウムイオン緩衝層はグラファイトである、請求項5に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項7】
出力密度が少なくとも1000ワット時毎リットルである、請求項4に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項8】
エネルギ密度が少なくとも400ワット時毎キログラムである、請求項4に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項9】
前記アノードフリー固体電池セルがフル充電されると、前記アノード集電体に前記固体電解質層を通じて移動した前記リチウムイオンの少なくとも80%が前記リチウムイオン緩衝層内に保存される、請求項4に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項10】
前記リチウムイオン緩衝層の気孔率は70%より高い、請求項4に記載のアノードフリー固体電池セル。
【請求項11】
電池セルの製造方法であって、
リチウムイオン緩衝層をアノード集電体上に直接設置することであって、
前記リチウムイオン緩衝層は多孔質であり、
アノードフリー固体電池セルが充電されるとき、リチウムイオンが前記リチウムイオン緩衝層内に保存される、
設置することと、
固体電解質層を前記リチウムイオン緩衝層に直接当接するように設置することと、
カソードを前記固体電解質層に当接すように設置することと、
カソード集電体を前記カソードに当接するように設置することと、
を含む、電池セルの製造方法。
【請求項12】
前記リチウムイオン緩衝層は導電性を有し、前記アノードフリー固体電池セルをジェリーロール型電池セルの状態に巻くことができるように柔軟である、請求項11に記載の電池セルの製造方法。
【請求項13】
前記アノード集電体、前記リチウムイオン緩衝層、前記固体電解質層、前記カソード、及び前記カソード集電体をまとめて巻くことによって円筒型ジェリーロール型固体電池を製作すること
をさらに含む、請求項12に記載の電池セルの製造方法。
【請求項14】
前記電池セルを充電することと、
前記アノード集電体へと移動するリチウムイオンを前記緩衝層を使って保存することと、
をさらに含む、請求項13に記載の電池セルの製造方法。
【請求項15】
前記リチウムイオン緩衝層の厚さは20μm未満である、請求項14に記載の電池セルの製造方法。
【請求項16】
前記リチウムイオン緩衝層はグラファイトである、請求項15に記載の電池セルの製造方法。
【請求項17】
前記アノードフリー固体電池セルの出力密度は少なくとも1000ワット時毎リットルである、請求項16に記載の電池セルの製造方法。
【請求項18】
前記アノードフリー固体電池セルのエネルギ密度は少なくとも400ワット時毎キログラムである、請求項17に記載の電池セルの製造方法。
【請求項19】
前記アノードフリー固体電池セルがフル充電されると、前記アノード集電体に前記固体電解質層を通じて移動した前記リチウムイオンの少なくとも80%が前記リチウムイオン緩衝層内に保存される、請求項18に記載の電池セルの製造方法。
【請求項20】
前記アノード集電体は銅箔層である、請求項19に記載の電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2019年5月16日に出願された米国特許出願第16/414,748号の優先権の利益を主張するものであり、同出願の内容の全体をあらゆる目的のために参照によって本願に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 高いエネルギ密度及び/又は高い出力密度を有するアノードフリー固体電池セルには、充電時に膨張する傾向がある。充電中、リチウムイオン等のイオンが電池のカソードから電池のアノードへと、電池の電解質を通って移動する。アノードフリー固体電池の場合、アノード集電体は事実上、アノードと集電体の両方の機能を果たす。電池セルが充電される際、イオンが電池のアノード集電体に堆積し、体積の実質的な量を占有し得る。これらのイオンがアノード集電体に堆積することにより、電池セルが膨張し得る。この膨張は、大きな問題の原因となり得る。例えば、膨張により電池セル内に圧力が発生し、おそらくは電池セル内の構成要素が劣化し得る。この膨張によって、時間が経つとアノード集電体が劣化し、それが割れたり、それにひびが入ったり、又はそれがばらばらに壊れたりし、ひいては電池セルの性能が低下し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003] 本明細書ではアノードフリー固体電池セルの様々な配置が提示される。電池セルは、カソード集電体層を含んでいてよい。電池セルはカソードを含んでいてよく、これはカソード集電体層と積層される。電池セルは、固体電解質層を含んでいてよい。電池セルは、リチウムイオン緩衝層を含んでいてよい。固体電解質層は、カソードとリチウムイオン緩衝層との間に位置付けることができる。リチウムイオン緩衝層は多孔質とすることができる。リチウムイオン緩衝層は、固体電解質層と直接接触させることができる。リチウムイオンは、アノードフリー固体電池セルの充電時にリチウムイオン緩衝層の中に保存できる。アノード集電体はリチウムイオン緩衝層と直接接触していてよい。
【0004】
[0004] このようなアノードフリー固体電池セルの実施形態は以下の特徴の1つ又は複数を含んでいてよい:リチウムイオン緩衝層は、導電性を有し、また、アノードフリー固体電池セルを巻いてジェリーロール型の電池セルの状態にすることができるような柔軟性を有することができる。アノード集電体は銅箔層であってよい。円筒型電池セルハウジングがあってよい。カソード集電体層、カソード、固体電解質層、リチウムイオン緩衝層、及びアノード集電体は、まとめて巻いてジェリーロール型アノードフリー固体電池セルを形成し、円筒型電池セルハウジングの中に挿入できる。リチウムイオン緩衝層の厚さは20μm未満であってよい。リチウムイオン緩衝層はグラファイトであってよい。アノードフリー固体電池セルの出力密度は少なくとも1000ワット時毎リットルとすることができる。アノードフリー固体電池セルのエネルギ密度は少なくとも400ワット時毎キログラムとすることができる。アノードフリー固体電池セルがフル充電されると、固体電解質層を通じてアノード集電体へと移動したリチウムイオンの少なくとも80%がリチウムイオン緩衝層の中に保存され得る。リチウムイオン緩衝層の気孔率は70%より高くてよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0005]リチウムイオンを構造的に保存する緩衝層を含む電池セルのある実施形態を示す。
【
図2】[0006]緩衝層がリチウム堆積を構築する時のリチウム堆積を示す充放電サイクルのある実施形態を示す。
【
図3】[0007]リチウムイオンを保存する緩衝層を有する固体電池の断面に関する、充放電サイクルのある実施形態を示す。
【
図4】[0008]減少した膨張量を示す電池セルの製作方法のある実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0009] アノードフリー固体電池セルの寿命を延ばすために、充電サイクル中に発生する膨張の量が減らされてよい。膨張の量を減らすことによって、電池セル内の構成要素の充放電サイクルを経た劣化速度が低下し得る。例えば、アノードフリー固体電池(SSB:solid-state battery)のアノードとアノード集電体の両方に銅箔が用いられる場合、銅箔は1つ又は複数のサイクル中に電池セルが膨張することによってひび割れしやすいかもしれない。さらに、ジェリーロール型電池では、電池セルの層がまとめて巻かれ得るため、ジェリーロール内で電池セル層が何度も繰り返され得ることから、膨張の量はより増大し得る。
【0007】
[0010] 膨張の量を減らすために、多孔質の緩衝層がアノード集電体と固体電解質との間に形成されてよい。緩衝層は、導電性であること、柔軟であること、薄いこと、及びリチウムイオンを収容できるだけの多孔性を有すること等、幾つかの要求事項を満たす必要があり得る。緩衝層は、電池セルの充電時にリチウムイオンのための「保存場所」を提供する足場として機能し得る。リチウムイオンの大部分がアノード集電体の上に直接堆積してアノード集電体と固体電解質との間の膨張を引き起こすのではなく、リチウムイオンは緩衝層の多孔質構造の中に堆積し、又はそれ以外に保存されてよい。緩衝層は、充電中のアノード集電体に向かって移動するリチウムイオンを収容するための空隙が存在するのに十分な多孔性を有していてよい。イオンがこれらの既存の空隙を埋めることによって、膨張が大きく回避される。放電中、リチウムイオンが固体電解質を通じてカソードへと移動すると、バッファ物質内の空隙が再び空になる。したがって、バッファ物質及び電池セル全体の体積が充放電サイクルによって示す膨張は、緩衝層が存在する場合、小さくなり得る。
【0008】
[0011] このような実施形態の詳細をさらに図面を参照しながら提供する。
図1は、電池セル100のある実施形態を示しており、これはリチウムイオンを構造的に保存するための緩衝層を含む。電池セル100は、固体電池セルであってよい。さらに、電池セル100はアノードフリー電池セルであってよく、これは、アノード集電体が集電体とアノードの両方の機能を果たすことを意味する。電池セル100は、カソード集電体101と、カソード層102と、固体電解質層103と、緩衝層104と、アノード集電体105と、を含んでいてよい。このような電池セルは、少なくとも1000ワット時毎リットルの出力密度及び/又は少なくとも400ワット時毎キログラムのエネルギ密度を有するように設計されてよい。
【0009】
[0012] 電池セル100は、層101~105が一体に積層され、「ジェリーロール」型電池セルへと巻かれることによって作られてよい。巻かれた後、電池セル100の巻かれた層を格納するために円筒型ハウジングが使用されてよい。電池セル100は巻かれ得るため、層101~105は、層が巻かれることによって層101~105が損傷を受けないように柔軟である必要があり得る。さらに、ジェリーロール型電池セル内の膨張の低減化は、電池セルの層がまとめて巻かれることから、特に有利であり得、すなわち、膨張が発生しても、電池セルの層がジェリーロール内で何度も繰り返されるために複合的となり得るからである。
【0010】
[0013] カソード集電体101とアノード集電体105は、導電性を有し、電気化学的安定性を示す材料であってよい。カソード集電体101は、導電性を有し、カソード層102と反応せず、カソード層102の動作電位で安定な金属層であってよい。例えば、カソード集電体101はアルミニウムで構成されてよい。典型的に、薄いアルミニウム箔が使用されてよい。同様に、アノード集電体105は、導電性を有し、緩衝層104と反応せず、アノード集電体105が(電池セルのアノードとして)機能する際の動作電位で安定な金属層であってよい。例えば、アノード集電体105は銅で構成されてよい。典型的に、薄い銅箔が使用されてよい。
【0011】
[0014] カソード層102は、カソード集電体101と直接接触させることができる。カソード層102は、様々な種類のカソード材料であってよい。例えば、カソード層102は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(「NCA」、LiNiCoAlO2)であってよい。その他のニッケル系カソードもまた可能であり得、これは例えばNCM622、NCM811、及びOLOである。
【0012】
[0015] 固体電解質層103はカソード層102と直接接触していてもよい。固体電解質層103は、様々な形態の有機又は無機固体電解質であってよい。使用可能な考え得る電解質には、LPS、LSPSC、LGPS、LBSO、LATSPO、LISICON、LICGC、LAGP、LLZO、LZO、LAGTP、LiBETI、LiBOB、LiTf、LiTF、LLTO、LLZP、LTASP、LTZPが含まれる。
【0013】
[0016] 固体電解質層103とアノード集電体105との間にリチウムイオン緩衝層104があるようにすることができる。緩衝層104は、導電性を有し、柔軟で、高い気孔率を有していてよい。緩衝層104の厚さは100nm~30μmであってよい。幾つかの実施形態において、緩衝層104の好ましい厚さは5μmであってよい。具体的には、緩衝層104の厚さは、電池セル100の体積又は重量をそれほど増大させないように選択されてよい。具体的には、緩衝層104が厚いほど、電池セル100のエネルギ及び出力密度は低くなり得る。したがって、緩衝層104の厚さは、エネルギ/出力密度と膨張を回避する能力とのバランスが取れるように選択されてよい。
【0014】
[0017] 緩衝層104は、高い気孔率、例えば5%~90%を有していてよい。幾つかの実施形態において、気孔率は70%より高くてよい。緩衝層104内の空隙は、充電中にアノード集電体105へと移動するリチウムイオンを収容するのを助け得る。すなわち、リチウムイオンは、電池セル100の充電中及び充電時に緩衝層104内の空隙を満たす。好ましくは、充電中にアノード集電体105へと移動するリチウムイオンの50%~95%が緩衝層104内にとどまる。残りの5%~50%又は5%~50%未満は、緩衝層104とアノード集電体105との間に堆積するか、又は固体電解質層103と緩衝層104との間に存在若しくは堆積する。
【0015】
[0018] 緩衝層104は、電池セル100がジェリーロール状に巻かれるとき、緩衝層104への損傷が全く、又は限定的にしか生じないように、十分に柔軟であってよい。具体的には、アノード集電体105の材料(例えば、銅)と緩衝層104との間の強力な電気的及び物理的界面が存在し続ける必要がある。
【0016】
[0019] 十分な気孔率、導電性、柔軟性、及び銅との界面形成能力を有する材料としては、グラフェン、カーボンブラック、アセチレンブラック(AB)、及びケッチェンブラック(KB)を含めることができる。これらの材料は、以下のバインダのうちの1つにより結合できる:SBR-CMC、LiPAA、PvDF。炭素は、繊維の形態(すなわち、炭素繊維)又は薄片形状であってよい。その他の形態の炭素又はその他の材料も、緩衝層104として使用されてよい。電池セル100の製造にあたり、緩衝層104はアノード集電体105の上に堆積されてもよい。
【0017】
[0020]
図2は、緩衝層がアノード集電体に当接して存在する場合のリチウムイオン保存を示す充放電サイクルのある実施形態200を示す。実施形態200では、電池セル100の一部のみが示されている。実施形態200では、アノード集電体105及び緩衝層104の高倍率拡大表現が示されている。
【0018】
[0021] 未充電の状態210では、緩衝層104は、緩衝層104の粒子により形成される空隙の中にリチウムイオンが、あったとしてもわずかしかない状態で存在する。この図の実施形態では、緩衝層104の厚さは、厚さ211により示されるように約200nmである。充電が行われると、充電状態220で示されているように、リチウムイオン201が緩衝層104の粒子により形成される空隙を満たす。したがって、リチウムイオンは依然としてアノード集電体105のみに直接堆積しているが、リチウムイオンの体積は、ほとんどが緩衝層104の粒子により形成される空隙の中に存在する。図の実施形態において、リチウムイオンの堆積によりわずかな膨張が起こっている。厚さ221は厚さ211より約3%~10%大きいが、これはリチウムイオンの量が緩衝層104の空隙内の空間の量を超えるからである。他の実施形態において、緩衝層104は、電池セルがフル充電されたときにリチウムイオンを完全に収容するか、又はほぼ完全に収容するように、より厚くされてよい。
【0019】
[0022] 放電後、リチウムイオンはアノード集電体105からカソードへと移動する。リチウムイオンの堆積による膨張が収まり、緩衝層104の厚さはほぼ厚さ211まで戻る。緩衝層104が存在する場合の膨張の量は、緩衝層104が存在せず、多孔質のバッファが存在しないためにリチウムイオンがアノード集電体105に堆積し得る場合よりかなり少ないかもしれない。
【0020】
[0023]
図3は、リチウムイオンを保存するための緩衝層を有する固体電池の断面に関する充放電サイクルのある実施形態300を示す。
【0021】
[0024] 放電状態310では、緩衝層104は、緩衝層104の粒子により形成される空隙の中にリチウムイオンが、あったとしてもわずかしかない状態で存在する。厚さ302は、リチウムイオンの堆積による何れの膨張も含まない基本厚さを表す。同様に、厚さ301は、膨張が存在しない時の電池セルの基本厚さを表す。充電が行われると、充電状態320で示されているように、リチウムイオンは緩衝層の粒子により形成される空隙を満たし、それゆえ緩衝層104とリチウム堆積物を含む層330が作られる。厚さ303は、リチウムの堆積が幾分かの量の膨張を引き起こすために、厚さ302よりわずかに大きくてよい。厚さ303は厚さ302より約3%~10%大きくなり得るが、これはリチウムイオンの量が緩衝層104の空隙内の空間の量を超えるからである。同様に、厚さ302は厚さ301よりわずかに大きいかもしれず、これはリチウムイオンの量が緩衝層104の空隙内の空間の量を超えるからである。他の実施形態において、緩衝層104は、電池セルがフル充電されたときにリチウムイオンを完全に収容するか、又はほぼ完全に収容するように、より厚くされてよい。
【0022】
[0025] 放電中、リチウムイオンはアノード集電体105から固体電解質層103を通じてカソード層102へと移動する。リチウムイオンの全部又はほとんどが移動すると、放電状態310が再び存在してよい。リチウムイオンの堆積による膨張が収まり、緩衝層104の厚さはほぼ厚さ302まで戻る。同様に、電池セルの厚さは厚さ301に戻ってよい。緩衝層104が存在する場合の膨張の量は、緩衝層104が存在せず、多孔質のバッファが存在しないためにリチウムイオンがアノード集電体105に堆積し得る場合よりかなり少ないかもしれない。
【0023】
[0026] SSBのアノード集電体に当接するイオン(例えば、リチウムイオン)緩衝層を有する電池セルを製作するために様々な方法が実行されてよい。
図4は、充電時の電池セルの膨張を減少させるための方法400のある実施形態を示す。ブロック405で、アノード集電体層が製作されてよい。このアノード集電体層は、銅箔又は他の何れかの形態の導電性の柔軟な層、例えばNi、Fe、Ni+Fe、炭素繊維シート等であってよい。SSBは、「アノードフリー」SSBであってよく、したがってアノード集電体はアノードとアノード集電体の両方としての機能を果たしてよい。ブロック405で、緩衝層はアノード集電体の上に製作されてよい。例えば、炭素粒子がアノード集電体の箔の上に堆積されてよい。炭素層の厚さは100nm~30μmであってよい。
【0024】
[0027] ブロック410で、固体電解質層が緩衝層の上に設置又は堆積されてよい。ブロック415で、カソード及びカソード集電体が固体電解質層の上に設置又は堆積されてよい。幾つかの実施形態において、アノード集電体と緩衝層を含む第一の層群が製作されてよい。カソード集電体、カソード、及び固体電解質層を含む第二の層群が製作されてよい。2つの層群はその後、相互に積層されてよい。他の実施形態において、固体電解質層は、第二の層群ではなく第一の層群に含められるか、又はその代わりに電池セルが組み立てられるときに2つの群間に積層されてもよい。
【0025】
[0028] ブロック420で、層をまとめて巻くことによって、円筒型ジェリーロール型固体電池が製作されてよい。その結果として得られた円筒型ジェリーロールは、保存のために円筒型ハウジング、例えば円筒型キャニスタの中に挿入されてよい。集電体につながる電気リードは電池セルの端子に接続されてよい。
【0026】
[0029] ブロック425で、電池セルが充電されてよい。充電の結果、リチウムイオンはカソードからアノード集電体へと移動する。ブロック430で、イオンはアノード集電体に直接隣接する緩衝層の空隙内に保存される。すでに存在する層の空隙はイオンにより満たされているため、電池の膨張は、緩衝層が存在しない場合よりかなり少ないかもしれない。
【0027】
[0030] ブロック435で、電池は放電されてよい。放電により、イオンは固体電解質を通じてカソードに移動し得る。したがって、緩衝層内の空隙は再び空になり得る。ブロック425~435は、何度も繰り返されてよい。例えば、このような電池セルは、電気自動車のバッテリモジュールの一部として組み込まれてよい。
【0028】
[0031] 例えば、ブロック405~420により製作された電池セルは、7559Ahで充電されてよい。電池セルは、初期クーロン効率82.4%の場合に6229Ahで放電されてよい。この電池は、約86%の半径方向の体積膨張が起こり得る。
【0029】
[0032] 上述の方法、システム、及び機器は例である。各種の構成では、様々な手順又は構成要素を適切に省き、置換し、又は追加してもよい。例えば、代替的な構成において、方法は、記載されているものとは異なる順番で行われてよく、及び/又は各種のステージを追加し、省き、及び/又は組み合わせてもよい。また、特定の構成に関して記載された特徴を、他の様々な構成で組み合わせてよい。構成の異なる態様と要素を同様の方法で組み合わせてもよい。また、技術は進歩し、それゆえ、要素の多くは例であり、本開示又は特許請求項の範囲を限定しない。
【0030】
[0033] 説明の中では具体的な詳細事項を提示して、例示的な構成(実装を含む)をよく理解できるようにしている。しかしながら、構成はこれらの具体的な詳細事項がなくても実施されてよい。例えば、よく知られている回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び技術は、構成を曖昧にしないようにするために、不必要な詳細事項を含めずに示されている。この説明は、例示的な構成を提供しているにすぎず、特許請求項の範囲、適用可能性、又は構成を制限しない。むしろ、構成に関する上述の説明は、当業者に対し、記載の技術を実装することを可能にする説明を提供する。本開示の主旨又は範囲から逸脱することなく、要素の機能や配置において様々な変更を加えてよい。
【0031】
[0034] また、構成は、フロー図又はブロック図として描かれるプロセスとして説明され得る。各々は動作を連続プロセスとして説明し得るが、動作の多くは並行して、又は同時に行うことができる。それに加えて、動作の順序は配置し直してもよい。プロセスは、図に含まれない追加のステップを有していてもよい。
【0032】
[0035] 幾つかの例示的な構成を説明したが、本開示の主旨から逸脱することなく、様々な改良、代替的な構成、及び等価物を使用してもよい。例えば、上述の要素はより大きなシステムの構成要素であってもよく、本発明の適用には他のルールを優先しても、又はそれ以外に変更してもよい。また、上述の要素を考慮する前、考慮しているとき、又は考慮した後に多くのステップがとられてもよい。
【国際調査報告】