(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】デンプンを紙または板紙ウェブに適用する方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/56 20060101AFI20220713BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
D21H21/56
D21H19/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567938
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2020054505
(87)【国際公開番号】W WO2020230035
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】リーティカイネン、ヨハンナ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG46
4L055AG47
4L055AG48
4L055BE08
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA25
4L055EA31
4L055EA32
(57)【要約】
本発明は、デンプンを紙または板紙のウェブに適用するための方法であって、以下のステップ:水性懸濁液であって、デンプン粒子、およびこの水性懸濁液の乾燥固形分に基づいて少なくとも1重量%の両親媒性ポリマーを含む水性懸濁液を提供するステップ;前記水性懸濁液の発泡体を作成するステップ;ならびに、前記発泡体を紙または板紙のウェブに適用するステップを含む方法に関する。さらに本発明は、この方法によって得られた紙または板紙製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを紙または板紙のウェブに適用する方法であって、以下のステップ:
- 水性懸濁液であって、デンプン粒子、およびこの水性懸濁液の乾燥固形分に基づいて少なくとも1重量%の両親媒性ポリマーを含む水性懸濁液を提供するステップ、
- 前記水性懸濁液の発泡体を作成するステップ、ならびに
- 前記発泡体を紙または板紙のウェブに適用するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記両親媒性ポリマーが、エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水性変性エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル化セルロース、疎水性変性カルボキシメチルセルロース、疎水性変性デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、または、それらの組み合わせもしくは混合物の群から選択される、請求項1に記載の板紙。
【請求項3】
前記水性懸濁液が、懸濁液の乾燥固形分に基づいて1重量%以上~10重量%以下の範囲の量で両親媒性ポリマーを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性懸濁液が、懸濁液の乾燥固形分に基づいて30重量%以上~99重量%以下、または50重量%以上~99重量%以下、好ましくは70重量%以上~99重量%以下または90重量%以上~99重量%以下の範囲の量でデンプン粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記デンプン粒子が、0.5μm以上~200μm以下の範囲、好ましくは1μm以上~200μm以下の範囲、より好ましくは2μm以上~200μm以下の範囲のメディアン粒子径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性懸濁液がミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水性懸濁液の発泡体の固形分が、この水性懸濁液の発泡体の全重量である100重量%に基づいて、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発泡体が、スプレーコーティング、カーテンコーティング、またはフォームコーティングから選択される非衝撃コーティング技法によって紙または板紙のウェブに適用される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡体が、紙または板紙のウェブの全重量である100重量%に基づいて、50重量%未満、好ましくは70重量%未満の固形分を有する紙または板紙のウェブに適用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、紙または板紙のウェブを表面サイジングする方法である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、多層板紙の製造において層の間にデンプンを投与する方法である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法によって得られた紙または板紙製品。
【請求項13】
前記紙または板紙製品が、0.1g/m
2以上~30g/m
2以下の範囲、好ましくは0.5g/m
2以上~20g/m
2以下の範囲、より好ましくは1g/m
2以上~10g/m
2以下の範囲のコーティング重量を有する少なくとも1つのデンプン層を含む、請求項12に記載の紙または紙板製品。
【請求項14】
前記板紙製品が多層板紙である、請求項12または13に記載の紙または紙板製品。
【請求項15】
前記板紙製品が表面サイジングされた紙または板紙である、請求項12~14のいずれか1項に記載の紙または板紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙または板紙の製造に関するものであり、特に、紙または板紙ウェブへのデンプンの適用(塗布)に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプン(澱粉)は、製紙(抄紙)工程で使用される重要な非繊維材料である。デンプンは、望ましい結果を達成するために、いくつかの異なる方法によっていくつかのステップで工業製紙プロセスの間に利用される。例えば、デンプンはシート形成の前にパルプに加えることができ、それは多層板紙の層間に噴霧することができ、そしてそれは表面サイジングのために紙の表面上に適用することができる。デンプンの原料には、トウモロコシ、小麦、大麦、ジャガイモ、タピオカなどの植物が含まれ、その塊茎、種子などがデンプンの供給源である。
【0003】
カップストックなどの多層板紙の製造における層間の接着剤として使用するために、デンプンは、ウェットエンド(wet-end)で、デンプン粒子の形態で、すなわち未調理のデンプンの形態であるデンプンが使用される。デンプンは、複数の層を組み立てる前に、ウェットエンドでまたは最も遅い段階で表面上に添加され得る。多層板紙の層の間のウェットエンドでの未調理のデンプンの使用は、層の結合強度を高めるのに効果的であることが見出されている。しかしながら、デンプン粒子の形態の未調理のデンプンは、デンプンが次に調理される乾燥セクションの前に、湿った紙または板紙のウェブ上にのみ適用される。層間のデンプン投与は、一般的に、溶液のスプレーまたはカーテンコーティングで行われる。スプレーおよびカーテンの両方の方法は、レオロジー特性、固形分、および液体の配合に依存する。スプレーの適用は通常、低粘度の液体を使用して行われ、少ない固形分をもたらす。さらに、スプレーの適用は多くの塵を発生させ、したがって混入物質や堆積物の原因となり、板紙の環境での微生物の増殖を引き起こす。紙または板紙のウェブへの希薄溶液の投与は、費用効率的でなく、不均一な分布および不必要な濡れにつながる虞がある。
【0004】
デンプンは、紙や板紙のサイジングにも使用される。多くの紙のプロセスは、サイジングとして知られている表面処理を利用する。通常、これは、サイズプレスとして知られている抄紙機のセクションで紙を乾燥させた後、デンプンの薄層を適用することによって達成される。全デンプンの大部分は、紙の表面上でのサイズプレスによって適用される。表面サイジング処理により、紙シートの空隙が埋められ、表面の完全性と印刷適性だけでなく、表面強度も改善される。ドライエンド(dry-end)での紙または板紙のサイジングは、調理されたデンプンの適用を利用する。デンプンは、乾燥した紙の上に調理された形態で加えられることが多い。
【0005】
従来の表面処理で使用される大量の液体媒体によって引き起こされる諸問題を軽減するために、フォームコーティング(発泡コーティング)が提案されている。フォームコーティングにおいて、発泡体(フォーム)は、適用される化学物質または薬剤のキャリア(career:担体)相として使用される。発泡体は、紙または板紙の表面に適用した後、機械的に壊される。EP2744728B1は、例えば、板紙上にバリアコーティングを適用するプロセスを開示しており、コーティング混合物は好ましくはフォームコーティングによって適用される。このバリアは、デンプンまたは多糖類ベースのバリアなどのバイオバリアに基づく別のバリア構造と組み合わせることができる。しかし、当該文献の教示は、フォームコーティング法を介してデンプンを適用することの示唆を与えない。WO2016/207783A1は、両親媒性ポリマーを含む発泡体形成を使用することによってナノフィブリル化多糖のフィルムを製造する方法を開示している。しかしながら、この教示は、紙ウェブを製造するウェットエンドプロセスに言及しており、フォームコーティング法またはデンプン粒子の適用には関係していない。WO2018/011667A1は、紙または板製品を製造するためのフォームコーティングプロセスで発泡体を作成し、その発泡体を使用するためのプロセスを開示している。このコーティングには抗菌デンプンが使用される。しかしながら、当該文献の教示は、未調理のデンプン粒子について言及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ウェットオンウェット投与、すなわち湿潤ウェブへの投与に好適であると共に、より高い固形分を適用することを可能にする方法の必要性が存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明の独立請求項による方法および紙または板紙製品で満たされる。従属クレームは、好ましい実施形態に関連している。それ以外の事項が文脈で明確に示されていない限り、これらは自由に組み合わせることができる。
【0008】
本発明は以下を提供する。
デンプンを紙または板紙のウェブに適用する方法であって、以下のステップ:
- 水性懸濁液であって、デンプン粒子、およびこの水性懸濁液の乾燥固形分に基づいて少なくとも1重量%の両親媒性ポリマーを含む水性懸濁液を提供するステップ、
- 前記水性懸濁液の発泡体(フォーム)を作成するステップ、ならびに
- 前記発泡体を紙または板紙のウェブに適用するステップ
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発泡体形成のための水性懸濁液は、デンプンの粒子および両親媒性ポリマーを含む。驚くべきことに、発泡体組成物が両親媒性ポリマーをさらに含む場合、デンプン粒子、すなわち未調理または部分的に未調理のデンプンの粒子を紙または板紙のウェブに適用するためにフォームコーティング技法を使用することが可能であることが見出された。特定の理論に拘束されることなく、両親媒性ポリマーは、高固形分でデンプン粒子のフォームコーティングを使用する可能性を提供すると想定される。両親媒性ポリマーを使用して粒子状の未調理デンプンの懸濁液から作成された発泡体は、発泡添加剤として通常使用されるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤の使用と比較して、予想外にも、はるかに高いデンプンの固形分を与えた。これは、未調理の粒子状デンプンの懸濁液が発泡体の生成に使用されたことを考えると、特に予想外である。さらに、両親媒性ポリマーの使用により、界面活性剤を含まないか、あるいは基本的に含まない、特にSDSなどの油性界面活性剤(oil-based surfactant)を含まない発泡体の生成が可能になる。
【0010】
多層板紙の層間に高固形分のデンプンのフォームコーティングを施し、それによって板紙の改善された接着性および向上した層間強度を提供し得ることが、この方法のさらに重要な利点である。これは、ウェブへの大量の液体の適用を必要とし、更にその後の乾燥およびそれぞれのエネルギー消費を必要とする低固形分溶液の液体コーティングと比較して、特に有利である。乾燥コストの減少により、例えば排水の改善によって、コスト削減がさらに可能になる。この方法は、多層板紙の層間、または湿った紙/板紙のウェブ上への表面処理として、デンプン粒子の投与を可能にする。フォームコーティング技法を使用してデンプン粒子を紙または板紙のウェブに適用する方法は、いくつかの利点を達成する。この方法は、ウェットオンウェット投与に使用され得る。この方法はより高い固形分の適用を可能にするため、それによって乾燥コストも少なくなる。この方法は、板紙の環境での混入や堆積の問題を回避する。そして、この方法は、より向上した層間強度を提供する多層板紙の製造を可能にする。
【0011】
本明細書で使用される場合、「紙」および「板紙」は、少なくとも部分的に植物繊維、木材繊維、および/または合成繊維を含んでいてよい繊維の融合体の紙ベースの基材を指す。紙または板紙のウェブは、好ましくはセルロース繊維を含む。ウェブは、好ましくは、硬材(広葉樹)および/または軟材(針葉樹)からのセルロース繊維を含む。紙または板紙のウェブは、例えば15~150gsm、または20~150gsmの範囲の坪量を有し得る。最終的な紙または板紙の坪量は、30~800gsmの範囲であってよい。
【0012】
本明細書で使用されるデンプンという用語は、製紙産業で通常使用され、コメ、大麦、小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、またはタピオカのデンプンであり得る植物材料に由来するデンプンを指す。デンプン粒子という用語は、完全に溶解するように調理されていない、すなわち可溶性のポリマーの形態であるが、その天然の、事前にゼラチン化された、または部分的にゼラチン化された顆粒形態であるデンプンを指す。そのような「未調理」または部分的に未調理のデンプンは、例えば顕微鏡で、識別され得る粒子状デンプン材料を含む。未調理のデンプンという用語は、デンプンが調理されておらず、その結果、デンプン粒子の主要な部分が光学顕微鏡で視認され得ることを意味する。未変性および未調理の形態のデンプンでさえ、特により高いpHまたは高められた温度で保存された場合、膨潤する傾向がある。つまり、未調理のデンプンもある程度膨潤する可能性がある。したがって、本明細書で使用されるデンプン粒子という用語は、ゲル化デンプンまたは膨潤デンプンも含む。全ての形態の膨潤および天然粒子は、光学顕微鏡で識別され得る。デンプンの粒子径は、例えばレーザー光散乱またはローアングルレーザー光散乱を使用して測定することができる。一例としては、Mastersizer 2000粒子径分析装置(Malvern、UK)が挙げられ、これは特定の直径サイズ間隔での総デンプン体積のパーセンテージを測定する。平均粒子径を測定する他の方法は、例えば、光学画像分析である。本明細書で論じられる方法におけるデンプンの使用は、そのようなデンプン粒子状材料について実行される。
【0013】
「両親媒性ポリマー」という用語は、親水性基と疎水性基(または親油性基)の両方を有する、いわゆる界面活性ポリマーを指す。両親媒性ポリマーまたは界面活性ポリマーは、いわゆる疎水性表面活性ポリマーであり得る。一実施形態によれば、両親媒性ポリマーは、20000g/モルを超える、好ましくは40000g/モルを超える、または50000g/モルを超える分子量(Mw)を有する。これは、形成された発泡体の固形分を増大させることに貢献する。両親媒性ポリマーはまた、40~80℃の範囲の曇り点を有していてよく、これにより、形成された発泡体の安定性がさらに向上する。一実施形態によれば、両親媒性ポリマーは、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、疎水性変性(HM)エチルヒドロキシエチルセルロース(HM-EHEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(HM-HEC)、ヒドロキシプロピル化セルロース(HPC)、疎水性変性カルボキシメチルセルロース(HM-CMC)、疎水性変性デンプン(HM-デンプン)、ヒドロキシプロピル化デンプン、または、それらの組み合わせもしくは混合物の群から選択される。両親媒性ポリマーはまた、オクテニル無水コハク酸(OSA)デンプン、ドデシル無水コハク酸(DDSA)デンプン、疎水性特性を有するカルボキシメチルセルロース(CMC)、またはそれらの組み合わせもしくは混合物の群から選択され得る。これらの両親媒性ポリマーは、特に有利であることが示されており、さらに生分解性である。さらなる実施形態によれば、両親媒性ポリマーは、エチレン変性PVOH、またはシラノール、カチオン性官能基もしくはカルボキシル官能基で変性されたPVOHなどの疎水性変性ポリビニルアルコール(PVOH)の群から選択され得る。さらなる実施形態によれば、両親媒性ポリマーは、2%以上のアセテート基を含み、または10%以上のアセテート基を含み、好ましくは15%以上のアセテート基を含むポリビニルアルコールであり得る。両親媒性ポリマーはまた、荷電両親媒性ポリマーであり得る。電荷は、保持(retention)を促進し得る。両親媒性ポリマーはまた、これらの異なる両親媒性ポリマーの混合物であってよい。「両親媒性ポリマー」という用語はさらに、合成ブロック共重合体やタンパク質など、自己会合する傾向のあるポリマーを指す。両親媒性ポリマーはさらに、例えば、収着または沈殿または架橋またはイオン交換によって、一例としては、金属塩または反対に帯電したポリマーを用いて物理的にグラフトされた高分子電解質であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて0.5重量%以上~30重量%以下の範囲、好ましくは1重量%以上~10重量%以下の範囲の量で両親媒性ポリマーを含む。水性懸濁液は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて1重量%以上~5重量%以下の範囲の量の両親媒性ポリマーを含み得る。これらの量のエチルヒドロキシエチルセルロースなどの両親媒性ポリマーは、懸濁液の発泡体の有利な高固形分を与えることが示されている。
【0015】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は通常、発泡助剤として使用される。有利なことには、水性懸濁液を使用すると、SDSなどの界面活性剤の非存在下で発泡体を作成することができ、SDSの使用を回避または大幅に減らすことが可能になる。特に、懸濁液の発泡体の高い固形分は、懸濁液にSDSを添加することなく達成された。水性懸濁液は、好ましくは、SDS、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(SDBS)などの油性界面活性剤を含まないか、または実質的に含まず、これは、これらの油性界面活性剤の量が懸濁液の乾燥固形分に基づいて1重量%未満であることを意味する。有利なことには、これにより層間の接着を改善することが可能になる。というのも、油性界面活性剤は弱い結合層を引き起こし、したがって接着を阻害し得るためである。組成物が界面活性ポリマーを含むが、油性界面活性剤を実質的に含まない場合、より高い固形分で発泡体が形成され得ることが示されている。特定の理論に拘束されることなく、界面活性剤を含まない懸濁液は、より高い層間強度を可能にすると考えられている。
【0016】
両親媒性ポリマーは、発泡体を作成および/または安定化するのに有用な他の薬剤と組み合わせて使用することができる。水性懸濁液は、共添加剤(co-additive)、例えば、ゲル化および/または溶解したデンプン、ナノセルロース、充填剤、およびナノ顔料から選択される添加剤を含み得る。本明細書で使用される「充填剤」は、製紙業界で通常言及される、製紙に用いられる無機の粒子状材料を指す。ナノ顔料という用語は、ナノスケールの粉末を指し、したがって1~100nmの範囲の平均粒子径を伴う少なくとも1つの寸法を有する。顔料は、クレー(粘土)および/またはタルクから選択され得る。水性懸濁液は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて0.01重量%以上~70重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~50重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~30重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~10重量%以下の範囲の量の共添加剤を含み得る。
【0017】
水性懸濁液は、ナノセルロース、すなわち、ナノフィブリル化またはミクロフィブリル化セルロースを含み得る。好ましい実施形態では、水性懸濁液はミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む。ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、ナノセルロースとしても知られている。この用語は、通常、硬材(広葉樹)繊維または軟材(針葉樹)繊維の両方に由来する木材セルロース繊維から得られた材料を指す。また、これは、微生物源、麦わらパルプなどの農業用繊維、竹、またはその他の非木材繊維源から得ることもできる。ミクロフィブリル化セルロースでは、個々のミクロフィブリルが部分的または完全に互いに分離されている。ミクロフィブリル化セルロースのフィブリルは通常、約20nmなど非常に薄く、その長さは100nm~10μmの間であることが多い。ミクロフィブリルはまた、より長く、例えば10~200μmの間であることがあるが、長さの分布が広いため2000μmもの長さも見出され得る。MFCの定義には、フィブリル化されており、表面にミクロフィブリルを有する繊維や、分離されてスラリーの水相に存在するミクロフィブリルも包含される。さらに、セルロースウィスカーもMFCの定義に含まれる場合がある。フィブリルはまた、ポリマーでコーティングされたフィブリル、すなわち、化学的または物理的に変性されたフィブリルであり得る。有利なことに、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、発泡体の安定化のため、および/または適用されたデンプン懸濁液の紙または板紙のウェブへの浸入を回避するために有用である。ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて0.01重量%以上~70重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~50重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~30重量%以下の範囲、または0.01重量%以上~10重量%以下の範囲の量で適用することができる。水性懸濁液は、着色剤、顔料、架橋剤、保湿剤などのさらなる機能性化学物質を含み得る。
【0018】
特に明記しない限り、所与の%は重量%(wt%)であり、懸濁液などの各対象の100重量%の乾燥重量または100重量%の総重量のいずれかに基づいて計算される。各成分の全ての総量は100重量%を超えない。さらに、水性懸濁液の残りは水であり、水性懸濁液の総重量は100重量%になることが理解される。
【0019】
水性懸濁液は、デンプン粒子の形態のデンプンを含む。懸濁液は、デンプン顆粒を含み得る。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて30重量%以上~99重量%以下、または50重量%以上~99重量%以下、好ましくは70重量%以上~99重量%以下、または90重量%以上~99重量%以下の範囲の量のデンプン粒子を含む。発泡前の水性懸濁液は、大量のデンプン粒子を含む。いくつかの実施形態では、懸濁液は、懸濁液の乾燥固形分に基づいて、両親媒性ポリマーを1重量%以上~10重量%以下の範囲の量で含み、デンプン粒子を30重量%以上~99重量%以下、または50重量%%以上~99重量%以下、または70重量%以上~99重量%以下、または90重量%以上~99重量%以下の範囲の量で含む。
【0020】
天然デンプン粒子は、使用前に特定の粒子径を達成するためにさらに造粒され得るが、デンプンはその顆粒形態のままである。いくつかの実施形態において、デンプン粒子は、0.5μm以上~200μm以下の範囲のメディアン粒子径を有する。驚くべきことに、そのような大きな粒子は発泡体の用途に使用され得ることが見出された。メディアン粒子径は、少なくとも1μmまたは少なくとも2μmであってよい。好ましくは、メディアン粒子径は、1μm以上~200μm以下の範囲であり、より好ましくは2μm以上~200μm以下の範囲である。デンプン粒子は、例えば分級または機械的もしくは化学的変性によって、より小さな粒子径のデンプンに加工することができる。デンプンの平均粒子径は、供給源によって異なるが、通常は10μm以上~30μm以下の範囲であり得る。本明細書で使用される場合、「メディアン粒子径」(D50)は、デンプン粒子の50(体積)パーセントがその粒子径を超え、50パーセントがその粒子径未満である粒子径を指す。本明細書に記載の粒子径は、希薄水性懸濁液中でpH5~9、電解質濃度0.001~0.01M NaCl、および温度20~25℃で、Mastersizer 2000粒子径分析装置(Malvern、英国)を使用して測定された粒子径を指す。
【0021】
デンプンは、天然のものでも変性されたものでもよい。一つの好ましい実施形態では、デンプンは天然デンプンである。デンプン粒子はまた、Ecosynthetixから入手可能なナノデンプンなどのナノデンプンであり得る。ナノデンプンという用語は、ナノメートル範囲の粒子径を有するデンプン顆粒を指す。デンプンおよび天然デンプンのナノ粒子の混合物も使用可能である。有利なことに、デンプン粒子は、粒子径が大きく異なり、および/または広い粒子径分布(粒度分布)を有し得る。
【0022】
デンプン粒子と両親媒性ポリマーを含む水性懸濁液は、発泡体を作成するために使用される以下の方法ステップにある。発泡体(foam)という用語は、液体ラメラによって分離された気泡の二相系を指す。発泡体の作成は、機械的な操作として攪拌することによって、または化学的な操作として発泡体形成用の化学物質を加えることなど、任意の従来の手段によって達成することができる。発泡体は、空気の存在下で、例えば空気の流れを用いて、または攪拌機の助けを借りて、水性懸濁液を攪拌することによって得ることができる。高圧空気を使用して発泡体を作成することができる。発泡体を生成させるために、通常の発泡体生成機を使用することができる。
【0023】
本方法により、デンプン顆粒を含む安定した発泡体の驚くほど高い固形分を達成することが可能であることが示されている。いくつかの実施形態において、水性懸濁液の発泡体の固形分は、懸濁液の発泡体の総重量100重量%に基づいて5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。水性懸濁液の発泡体の固形分は、懸濁液の発泡体の総重量100重量%に基づいて5重量%以上~50重量%以下の範囲、5重量%以上~40重量%以下の範囲、または5重量%以上~20重量%以下の範囲であり得る。与えられた発泡体の固形分は、デンプンの固形分に関連している。固形分は、IR乾燥機を使用するなど、乾燥および加重などの当技術分野で知られている方法を使用して測定することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、水性懸濁液の発泡体の密度は、10g/100ml以上であり、好ましくは14g/100ml超である。
【0025】
次の方法ステップにおいて、発泡体は、紙または板紙のウェブのコーティングに使用される。発泡体を使用する利点は、発泡体でコーティングされた粒子がウェブの表面上に留まる傾向が向上することである。これにより、デンプン粒子のウェブへの浸透が少なくなり得る。作成された発泡体によって、製造中の紙または板紙の構造内へのコーティングされたデンプンの浸入が防止されることは、発泡体、より具体的には発泡体中の気泡の利点を与える。これは、表面サイジングされたデンプンにとって特に価値のある利点である。
【0026】
発泡体(フォーム)は、キャストコーティングやブレードコーティングなどの製紙プロセスで一般的に使用されるコーティング技法を使用して適用することができる。しかしながら、非衝撃コーティング技法を使用することにより、発泡体を基材に適用することが好ましい。「非衝撃」(“non-impact”)コーティングという用語は、アプリケーターのヘッドの機械的要素と紙との間の接触を回避するか、または適用中の接触圧力を最小限に抑えるコーティング手順を指す。これは、走行性に関してかなりの利点をもたらす。例えば、起こり得るウェブの破損の回避、表面品質、縞(streak)などの欠陥の回避である。「非衝撃」コーティングという用語は、その後のロッド、ブレード、またはエアジェットによる穏やかなレベリングを除外することを意図するものではない。いくつかの実施形態では、発泡体は、スプレーコーティング、カーテンコーティングまたはフォームコーティングから選択される非衝撃コーティング技法によって紙または板紙のウェブに適用される。カーテンコーティングおよびスプレーコーティングは、縞をなくし、ウェブの破損のリスクを減らすことにより、従来のブレードコーティングまたはロールコーティングを上回る利点を与える。好ましい適用方法は、スプレーコーティングである。この適用方法は、以前に形成された層またはウェブの破壊を効率的に回避する。最も好ましいのはフォームコーティングである。発泡体の適用方法は、高い乾燥含有量の使用を可能にする。フォームコーティングは、ウェブの表面上に薄いコーティングを、例えば2gsm未満のコーティング重量で適用するという利点を提供する。フォームコーティングは、フォームコーティング用のアプリケーターまたはコーターを使用して紙または板紙のウェブに適用され得る。
【0027】
本方法は、多層板紙の層の間、または湿った紙/板紙のウェブ上への表面処理として、デンプン粒子の投与を可能にする。本方法によるデンプン粒子の適用は、紙または板紙の製造プロセスのウェットエンドおよび/またはドライエンドで実施することができる。本方法は、デンプン粒子を伴う板紙ウェブに表面サイジングを施すために有用である。したがって、本方法は、紙および板紙に表面サイジングするプロセスの改善に関与し得る。本方法はさらに、多層板紙の製造における層の間にデンプンを投与するために特に有用である。したがって、本方法は更に、多層板紙を製造するプロセスの改善に関与し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、発泡体は、紙または板紙のウェブの総重量100重量%に基づいて50重量%未満、好ましくは70重量%未満の固形分を有する紙または板紙のウェブに適用される。
【0029】
本方法は、デンプン粒子を伴う板紙のウェブに表面サイジングを施すために使用され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、紙または板紙のウェブを表面サイジングする方法である。表面サイジングの適用では、発泡体は、乾燥セクションの前に、50重量%未満、好ましくは85重量%未満または90重量%未満の固形分を有するなどの湿潤ウェブに適用され得る。
【0030】
好ましい実施形態では、本方法は、多層板紙の製造において、層の間にデンプンを投与する方法である。これらの実施形態では、デンプン粒子は、これが別のウェブに付着する前に湿潤ウェブに適用される。本発明の方法は、改善された層間強度を可能にする。層間接着を改善することに加えて、デンプン顆粒のより良い被覆およびより均一な広がりに起因して、板(ボード)の変換も改善される。本発明を用いて層の間にデンプンを投与するときに開かれる別の可能性は、板紙の製造において、ウェブが水平に走行しているときだけでなく、ウェブが垂直に走行しているときにも、デンプンがウェブに適用され得ることである。これは多くの場合、製造プロセスの間において、より実際的に行われる。
【0031】
適用されるコーティング重量は、0.1g/m2以上~30g/m2以下の範囲、好ましくは0.5g/m2以上~20g/m2以下の範囲、より好ましくは1g/m2以上~10g/m2以下の範囲であり得る。コーティングの重量または坪量は、平方メートルあたりのグラム数、gsmまたはg/m2として表される重量を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、gsmおよびg/m2は交換可能に使用され得る。本発明の方法は、有利には、薄い層の適用を可能にするが、それでも良好な被覆を達成する。それぞれの投与は、フォームコーティング装置、カーテンコーティング装置またはスプレーコーティング装置で行うことができる。
【0033】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られた紙または板紙製品に関する。紙または板紙製品は、水性懸濁液であって、デンプン粒子と、水性懸濁液の乾燥固形分に基づいて少なくとも1重量%の両親媒性ポリマーとを含む水性懸濁液から得られた発泡体のフォームコーティングを介して適用された少なくとも1つのデンプン層を含む。紙または板紙製品は、少なくとも1つの面および少なくとも1つの層の上に適用された少なくとも1つのデンプン層を含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、紙または板紙製品は、0.1g/m2以上~30g/m2以下の範囲、好ましくは0.5g/m2以上~20g/m2以下、より好ましくは1g/m2以上~10g/m2以下の範囲のコーティング重量を有する少なくとも1つのデンプン層を含む。与えられたコーティング重量は乾燥重量を指す。
【0035】
デンプンは、粒子の形態で紙または板紙のウェブに適用される。後続の製造工程中にデンプンを適用した後、紙または板紙のウェブを加熱し、デンプンを調理して、紙または板紙ウェブ上でゼラチン化することができる。したがって、製造された紙または板紙製品は、少なくとも1つのデンプン層を含み、ここでデンプンは、未調理のデンプンおよび/または調理済みもしくはゼラチン化されたデンプンであってよい。製造された紙または板紙製品は、好ましくは、調理されたまたはゼラチン化されたデンプンの層を含む。
【0036】
デンプン層は、サイジング層として、または層間の層として適用することができる。いくつかの実施形態では、板紙製品は多層の板紙である。紙または板紙製品は、少なくとも1つの層、好ましくはいくつかの層、例えば、頂部層および背面層、ならびに少なくとも1つの中間層を含み得る。紙または板紙製品は、いくつかの中間デンプン層、例えば2つまたは3つの中間デンプン層を含み得る。多層板紙は、有利には、複数の層の改善された接着を提供し得る。
【0037】
さらなる実施形態では、板紙製品は、表面サイジングされた紙または板紙である。紙または板紙製品は、少なくとも1つの表面サイジング層を含み得る。デンプン粒子および両親媒性ポリマーを使用するフォームコーティングを介して本方法によって適用されたサイジング層は、有利には、最小の粗さを含む非常に均一なデンプンサイジング層を提供することができる。
【0038】
板紙製品は、少なくとも2つの層、頂部層および背面層、ならびに好ましくは少なくとも1つの中間層またはいくつかの中間層を含む多層板紙であり得る。板紙製品は、30~800gsmの範囲の坪量を有していてよい。製造された紙または板紙は、液体包装用の板紙、折りたたみボックス板紙、固い漂白済みの板紙、固い無漂白の板紙または容器板紙など、任意の種類の紙または板紙であってよい。可能性がある製品の1つは段ボールであり、ここでウェブはライナーまたは段ボール紙のいずれかであり、デンプン粒子と両親媒性ポリマーとを含む水性懸濁液は、段ボール紙をライナーに取り付けるために適用される接着剤である。
【実施例】
【0039】
本発明のさらなる特徴は、以下の実施例から明らかになるであろう。
【0040】
実験材料と方法
水性コーティング懸濁液の生成に使用した材料は、未調理のデンプン粒子(大麦、Altia Plc、フィンランド)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(EHEC、Bermocoll EHM200、AkzoNobel Chemicals AG、スウェーデン)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Merck KGaA、ドイツ)であった。使用した未調理のデンプン粒子の粒子径分布(体積)を表1に示す。粒子径は、Mastersizer 2000粒子径分析装置(Malvern、英国)を使用して、pH約7、温度23℃で測定した。
【0041】
【0042】
Cupformaクラシック210gsmを基材として使用した。デンプンは、冷水中でさらに処理することなく入手したままの状態で混合した。発泡体は、A Rollmix BGR13(Rollmac、イタリア)を用いて生成させた。基材のコーティングをベンチコーター(ロッド)を用いて行った。
【0043】
発泡体を生成させる前に、水性懸濁液のpHおよび粘度を測定した。発泡体の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)デジタル粘度計(Model DVII+、Brookfield Engineering Laboratories, Inc.)によって、スピンドル#6を使用して、以下の表に示す温度にて10rpmおよび50rpmの速度で測定した。水性懸濁液の粘度の測定にはスピンドル#1および50rpmを使用したが、例外的にサンプル6では10rpmを使用した。固形分はIR乾燥機で測定した。サンプル量は約1gであった。発泡体の密度は、発泡体の測定重量を測定体積で除することによって測定した。
【0044】
参考例1および2
参考例1および2を実施し、発泡体生成剤を添加しない水性懸濁液の発泡能力を実験室試験で評価した。参考例1および2の懸濁液の成分および特性を、表2に要約する。
【0045】
【0046】
参考例1および2の懸濁液は発泡しなかった。これにより、添加剤なしでは発泡が観察されないことが確認される。
【0047】
例3~6
一連の試験を実施し、本発明による未調理のデンプン粒子および両親媒性ポリマーを含む懸濁液の発泡能力を評価した。発泡剤としてEHECを使用して実験を行った。例3~6の水性懸濁液の成分および特性を、表3に要約する。
【0048】
【0049】
pHおよび粘度に加えて、発泡体の固形分を例5および例6について測定した。これらの例は、それぞれ12重量%および18重量%の固形分を有するデンプン水溶液を提供した。固形分はIR乾燥機で測定した。サンプル量は約1gであった。表2に見られるように、例5および例6の発泡体中のデンプンの含有量は非常に高かった。EHECベースの発泡体は安定しており、コーティング操作のうちに完全に壊れなかった。さらに、コーティング中のEHEC発泡体の破壊は、より抑制された。
【0050】
これにより、未調理のデンプンを使用したフォームコーティングが使用可能であるだけでなく、界面活性剤を含まない発泡体の生成が達成され得、予想よりもはるかに高いデンプン含有量が得られることが示されている。これは、SDSを界面活性剤として使用する従来技術に比べて大幅な改善である。
【0051】
参考例11~14
さらに一連の試験を実施し、発泡剤としてSDSを用いたデンプン水溶液の発泡挙動を評価した。参考例11~14の水性懸濁液の成分および特性を、表4に要約する。
【0052】
【0053】
1重量%のSDSを使用した参考例11の発泡体は、ほとんど即座に壊れた。しかしながら、5重量%のSDSを使用する参考例12の発泡体は非常に安定しており、ロッドでコーティングされたときに壊れなかった。しかし、液体懸濁液中の固形分を12重量%および18重量%に増加させても、発泡体の固形分が低いままであった参考例サンプル13および14に見られるように、SDS発泡体を使用する場合の発泡体の固形分がより高くなることはなかった。また、水はすぐに分離した。これは、発泡剤としてのSDSは不十分な発泡体の生成をもたらすに過ぎず、発泡体中のデンプン含有量がより少ないことを示している。
【0054】
参考例15~18
さらなる一連の試験を実施して、発泡剤を含まないデンプン水溶液の発泡挙動を評価した。参考例15~18の水性懸濁液の成分および特性を表5に要約する。
【0055】
【0056】
これらの参考例は、固形分が増加するにつれて粘度が増加することを例証している。
【国際調査報告】