(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】高温保護被覆材
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20220713BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20220713BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20220713BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20220713BHJP
C09D 163/04 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C09D163/00
C08G59/50
C08G59/20
C09D7/43
C09D163/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568045
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020032670
(87)【国際公開番号】W WO2020232118
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512115807
【氏名又は名称】エー. ダブリュー. チェスタートン カンパニー
【氏名又は名称原語表記】A.W. CHESTERTON COMPANY
【住所又は居所原語表記】860 Salem Street, Groveland, MA 01834 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】ラマクリシュナン, ムニ
【テーマコード(参考)】
4J036
4J038
【Fターム(参考)】
4J036AF06
4J036DC03
4J036DC09
4J036FA03
4J036FA05
4J036FA13
4J036FB03
4J036FB16
4J036GA28
4J036JA01
4J038DB071
4J038HA446
4J038JC32
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA14
(57)【要約】
保護被覆剤は、反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を有するバインダー成分混合物を含み、反応性混合物部分は、エポキシ樹脂部及びエポキシシラン部を含み、エポキシシラン部は、反応性混合物部分の約10重量%と反応性混合物部分の約40重量%との量で存在し、保護被覆剤は、1つ又は複数のアミン硬化化合物を有する硬化成分を含み、硬化成分のアミン硬化化合物は、硬化成分の約70重量%と、約100重量%との間の量で存在する未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を有するバインダー成分混合物であって、前記反応性混合物部分は、エポキシ樹脂部及びエポキシシラン部を含み、前記エポキシシラン部は、前記活性混合物部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との量で存在する、バインダー成分混合物と、
1つ又は複数のアミン硬化化合物を有する硬化成分とを含む、保護被覆材。
【請求項2】
前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、前記反応性混合物部分の約60重量%と、前記反応性混合物部分の約90重量%との間の量で存在する、請求項1の保護被覆材。
【請求項3】
前記反応性混合物部分は、実質的に前記エポキシ樹脂部と前記エポキシシラン部とからなり、前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、前記反応性混合物部分の約60重量%と、前記反応性混合物部分の約90重量%との間の量で存在し、前記反応性混合物部分の前記エポキシシラン部は、前記反応性混合物部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との間の量で存在する、請求項1の保護被覆材。
【請求項4】
前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、多官能フェノール・ノバラックエポキシ樹脂を含む、請求項1の保護被覆材。
【請求項5】
前記樹脂成分混合物の前記反応性混合物部分は、前記樹脂成分混合物の約30重量%と、約45重量%との間の量で存在する、請求項1の保護被覆材。
【請求項6】
前記フィラー混合物部分は、増粘剤成分と、顔料成分と、クレーター防止成分と、撥水性成分と、乾燥成分と、添加剤成分と、フィラー成分との任意の組合せを含む、請求項1の保護被覆材。
【請求項7】
前記増粘剤成分はシリカを含み、前記顔料成分は酸化チタンを含み、前記クレーター防止成分はポリアクリレート材料を含み、前記撥水性成分はシリコーン変性ポリアクリレートを含み、前記乾燥成分は酸化アルミニウムを含み、前記添加剤成分は長石を含み、前記フィラー成分は炭酸カルシウムを含む、請求項6の保護被覆材。
【請求項8】
前記硬化成分の前記アミン硬化化合物は複数のアミン化合物を含む、請求項1の保護被覆材。
【請求項9】
前記硬化成分の前記アミン硬化化合物はジアミノシクロヘキサン(DACH)を含む、請求項1の保護被覆材。
【請求項10】
前記DACHは未変性DACHを含む、請求項9に記載の保護被覆材。
【請求項11】
前記DACHは、前記硬化成分の約70重量%と約100重量%との間の量で存在する、請求項10の保護被覆材。
【請求項12】
前記アミン硬化化合物は別のアミン硬化剤を含む、請求項10の保護被覆材。
【請求項13】
前記別のアミン硬化剤は、DETA、TETA、Ancamine(登録商標) 2903、又はAncamine(登録商標) 2904を含む、請求項12の保護被覆材。
【請求項14】
前記樹脂成分混合物と前記硬化成分の重量比は、約16.8:1である、請求項1の保護被覆材。
【請求項15】
反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を有するバインダー成分混合物であって、前記反応性混合物部分は、エポキシ樹脂部及びエポキシシラン部を含み、前記エポキシシラン部は、前記反応性混合物部分の約10重量%と前記反応性混合物部分の約40重量%との量で存在する、バインダー成分混合物と、
1つ又は複数のアミン硬化化合物を有する硬化成分とを含み、前記硬化成分の前記アミン硬化化合物は、前記硬化成分の約70重量%と、約100重量%との間の量で存在する未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)を含む、保護被覆材。
【請求項16】
前記樹脂成分混合物の前記反応性混合物部分は、前記樹脂成分混合物の約30重量%と、約45重量%との間の量で存在する、請求項15の保護被覆材。
【請求項17】
前記フィラー混合物部分は、増粘剤成分と、顔料成分と、クレーター防止成分と、撥水性成分と、乾燥成分と、添加剤成分と、フィラー成分との任意の組合せを含む、請求項15の保護被覆材。
【請求項18】
前記アミン硬化化合物は別のアミン硬化剤を含み、前記別のアミン硬化剤は、DETA、TETA、Ancamine(登録商標) 2903、又はAncamine(登録商標) 2904を含む、請求項12の保護被覆材。
【請求項19】
前記樹脂成分混合物と前記硬化成分の重量比は、約14:1と約20:1との間である、請求項15の保護被覆材。
【請求項20】
化学量論比は約0.9と約1.1との間である、請求項19に記載の保護被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、引用してその内容を本明細書に援用する、「高温保護被覆材」と題した2019年5月15日付けの米国特許仮出願第62/848,423号の優先権を主張する。
【0002】
背景技術
本発明は、商業製品や工業製品の被覆材に関するもので、特に高温での用途に適した保護被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の保護被覆材技術は、エポキシ、ウレタン、ポリエステルなどの様々な有機樹脂を用いることで、下層にある基材を保護するのに役立ってきた。従来の保護被覆材は、活性成分であるバインダーと硬化成分を含んでいるのが一般的である。従来の保護被覆材の種類としては、金属などの基材への密着性、耐久性、強度、防食性、及び耐薬品性の点でよく知られているエポキシ樹脂ベースの被覆材がある。さらに、ビスフェノールA系樹脂に基づいた従来のエポキシ被覆材は、使用温度が80℃以下に制限されている。この被覆材は、ビスフェノールF系樹脂を使用するように変性させることができ、これにより、被覆材の使用温度能力を約100°Cまで高めることができる。
【0004】
しかし、従来の保護被覆材は、前述の温度を超える温度に曝されると破壊されてしまうため、高温用途には適さない場合が多くある。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、樹脂成分混合物及び別個の硬化成分を含む保護被覆材に関する。前記樹脂成分混合物は、反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を含むことができる。前記反応性混合物部分は、エポキシ樹脂成分及びエポキシシランを含み、前記エポキシシラン部は、前記反応性混合物部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との量で存在する。前記硬化成分は、未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)などの1つ又は複数のアミン硬化化合物を含むことができる。前記DACHは、前記硬化成分の約70重量%と約100重量%との間の量で存在することができる。フェノール・ノバラック樹脂を適切な未変性の脂環式硬化剤と共に使用すれば、前記被覆材の架橋能力及びガラス転移温度を増加させることができ、130°Cを上回って200°C付近の使用温度を実現する。さらに、本発明の保護被覆材は、侵食/腐食、摩耗、衝撃、及び化学的攻撃からの保護に役立ちうる。前記保護被覆材は、耐久性があり、強く、金属及び他の種類の基材に付着する卓越した能力を示し、耐腐食性及び耐薬品性がある。本発明で多量のエポキシシランを使用すると、エポキシ樹脂のみを採用した従来の保護被覆材よりも高い温度使用能力を有するエポキシ-シリコーン・ハイブリッドマトリックスの形成が可能となる。
【0006】
本発明は保護被覆材に関し、当該保護被覆材は、反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を有するバインダー成分混合物であって、前記反応性混合物部分は、エポキシ樹脂部及びエポキシシラン部を含み、前記エポキシシラン部は、前記活性混合物部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との量で存在する、バインダー成分混合物を含む。前記被覆材は、1つ又は複数のアミン硬化化合物を有する硬化成分をさらに含む。
【0007】
前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、前記反応性混合物部分の約60重量%と、前記反応性混合物部分の約90重量%との間の量で存在する。前記反応性混合物部分は、実質的に前記エポキシ樹脂部と前記エポキシシラン部とからなり、前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、前記反応性混合物部分の約60重量%と、前記反応性混合物部分の約90重量%との間の量で存在し、前記反応性混合物部分の前記エポキシシラン部は、前記反応性混合物部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との間の量で存在する。前記反応性混合物部分の前記エポキシ樹脂部は、多官能フェノール・ノバラックエポキシ樹脂を含むことができる。さらに、前記樹脂成分混合物の前記反応性混合物部分は、前記樹脂成分混合物の約30重量%と、約45重量%との間の量で存在する。
【0008】
前記フィラー混合物部分は、増粘剤成分と、顔料成分と、クレーター防止成分と、撥水性成分と、乾燥成分と、添加剤成分と、フィラー成分との任意の組合せを含むことができる。前記増粘剤成分はシリカを含み、前記顔料成分は酸化チタンを含み、前記クレーター防止成分はポリアクリレート材料を含み、前記撥水性成分はシリコーン変性ポリアクリレートを含み、前記乾燥成分は酸化アルミニウムを含み、前記添加剤成分は長石を含み、前記フィラー成分は炭酸カルシウムを含む。
【0009】
本発明の教示によれば、前記硬化成分の前記アミン硬化化合物は、1つ又は複数のアミン化合物を、好適には複数のアミン化合物を含む。前記硬化成分の前記アミン硬化化合物は、ジアミノシクロヘキサン(DACH)を、好適には未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)を含むことができる。前記DACHは、前記硬化成分の約70重量%と約100重量%との間の量で存在する。複数のアミン化合物が使用される場合は、前記別のアミン硬化剤は、DETA、TETA、Ancamine(登録商標) 2903、又はAncamine(登録商標) 2904を含むことができる。
【0010】
さらに、前記樹脂成分混合物と前記硬化成分の重量比は、約14:1と約20:1との間とすることができ、好ましくは約16.8対1である。
【0011】
本発明の別の側面によれば、前記保護被覆材は、反応性混合物部分及びフィラー混合物部分を有するバインダー成分混合物を含み、前記反応性混合物部分は、エポキシ樹脂部及びエポキシシラン部を含み、前記エポキシシラン部は、前記反応性混合部分の約10重量%と、前記反応性混合物部分の約40重量%との量で存在する。前記保護被覆材は、1つ又は複数のアミン硬化化合物を有する硬化成分をさらに含み、前記硬化成分の前記アミン硬化化合物は、前記硬化成分の約70重量%と、約100重量%との間の量で存在する未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)を含む。
【0012】
前記樹脂成分混合物と前記硬化成分の重量比は、約14:1と約20:1との間であり、好ましくは約16.8:1である。さらに、化学量論比は約0.9と約1.1との間でよく、好適には約1.0である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、保護被覆材に関するものであり、特に、基材の表面を保護するのに役立つ高温保護被覆材に関するものである。この保護被覆材は、侵食/腐食、摩耗、衝撃、及び化学的攻撃からの保護に役立ちうる。本発明の保護被覆材は、耐久性があり、強く、金属及び他の種類の基材に付着する卓越した能力を示し、耐腐食性及び耐薬品性がある。
【0014】
本発明の高温保護被覆材は、2つの主要部分又は成分、すなわちA部の樹脂バインダー成分混合物と、別のB部の硬化成分からなる保護被覆材調合物を含む。A部とB部の成分は予め混合されているのではなく、使用直前に混合される別個の成分又は混合物として形成されている。この保護被覆材は、本発明の分野で知られているように、他の材料、成分又は溶液を含むことができる。A部の樹脂成分混合物は、反応性混合物部分とフィラー混合物部分を含むか、又はそれらからなることができる。このように、本明細書に記載されている様々な成分の重量パーセントは、特に断らない限り、各特定の混合物部分を形成又は構成する重量パーセントに対して記載されており、樹脂マトリックスのパーセントともいう。
【0015】
本発明の保護被覆材調合物のA部の樹脂成分混合物は、エポキシ樹脂などの反応性プレポリマー又はポリマーと、エポキシシランなどのシランカップリング剤とを、混合物の主たる又は主要な樹脂バインダー部又は成分として含む又はそれらから成ることができる。このエポキシ樹脂は、好ましくは、多官能フェノール・ノバラック(novalak)エポキシ樹脂とすることができ、約2.5から約4.0の範囲の官能価を有する。ノボラックエポキシ樹脂は、エポキシシランの粘度よりも高い粘度を有する。具体的には、ノバラックエポキシ樹脂の官能価が高いほど、全体の粘度が高くなる。本発明の一実施態様によれば、A部の樹脂成分混合物の活性混合物部分は、反応性ポリマー又はプレポリマー及びシランカップリング剤のような2種類の活性成分のみを含む。
【0016】
従来の保護被覆材では、例えエポキシシランが使用されているとしても、反応性有機成分の1重量%未満の量で存在するのが一般的である。本発明では、エポキシシランは、反応性有機成分の約10重量%と約40重量%との間など、かなり高い量で存在する。記載された範囲は、記載された範囲内の任意及びすべての選択された量を網羅することを意図している。このように、現在の保護被覆材調合物の1つの特性は、比較的多量又は高量のエポキシシランがバインダーとして使用されていることである。エポキシシランの粘度が比較的低いことは、ノバラックエポキシ樹脂の比較的高い粘度を補うのに役立つ。
【0017】
本発明の教示に従って多量のエポキシシランを使用することの利点は、エポキシ樹脂のみを採用した従来の保護被覆材よりも優れた耐熱性と高い温度使用能力を有するエポキシ-シリコーン・ハイブリッドマトリックスの形成を可能にすることである。さらに、エポキシシランの比較的低い粘度が、保護被覆材の全体的な粘度を低下させ、有利なことに、保護被覆材に比較的多量の固体フィラーの添加を可能にして高い耐浸透性をもたらす。
【0018】
A部の樹脂成分混合物のうち、フィラー混合物成分又は部分は、被覆材の意図された目的に適した安定した混合物を提供する役割を果たす。このフィラー混合物部分は、刷毛塗り、こて塗り、又はスプレーなどによって簡単に塗布できる適切な粘度などの選択された機能と特性を提供して、垂直方向のたるみ耐性を示す所望の厚さを形成する一方で、同時により高価な成分の重量パーセントを減らすことで混合物全体のコストを削減する。フィラーを適切に選択して混合することで、圧縮強度の向上、耐侵食性及び耐摩耗性の向上、耐浸透性の向上、耐薬品性の向上(浸漬サービスでの化学物質の摂取量の低減)、剛性率の向上が得られる。フィラー混合物部分は、シリカ、好ましくはヒュームドシリカなどの増粘成分若しくは補強成分又はフィラー;任意のタイプの酸化チタン(例えば、TiO又はTiO2)などの顔料成分;並びに粉砕長石、好ましくはMinspar、Minex(霞石閃長岩)、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムなどの鉱物フィラーを含むか、又はこれらの組み合わせとすることができる。このフィラーは、酸化アルミニウムや好ましくは酸化アルミニウム400などのセラミック材料、及び好ましくはSiC 400などの炭化ケイ素も含むことができる。この調合物はまた、1つ又は複数の液体添加剤を含むことができ、これらは典型的には非反応性であるが、重要な形態的及び表面的特性を提供する。適切な添加剤の例としては、ポリアクリレート材料、好ましくはBYK 354などのクレーター防止成分;シリコーン変性ポリアクリレート、好ましくはBYK-Silclean 3700などの撥水性(例えば、洗浄効果)成分;シリカゲル又は酸化アルミニウム、好ましくは酸化アルミニウムBR 400などの乾燥成分;粉砕長石、好ましくはMinspar 3などの添加剤;及び炭酸カルシウムなどのフィラーが挙げられる。A部の樹脂成分混合物の活性混合物部分は、好ましくは約30重量パーセントと約45重量パーセントとの間の範囲にある。前述のフィラー及び添加剤は、非反応性成分である。典型的には、フィラーは固体成分であり、比較的多い量(例えば、約1パーセント重量と約50パーセント重量との間)で使用され、一方、添加剤は液体成分であり、典型的には2重量パーセント未満である。
【0019】
本発明の保護被覆材調合物のB部硬化成分は、1つ又は複数のアミン硬化化合物又はアミン硬化剤を含むことができ、好ましくは、複数の異なるアミン硬化剤(例えば、硬化剤の配合物)を含むことができる。一実施形態によれば、アミン硬化成分は、ジアミノシクロヘキサン(DACH)のみからなることができ、又はDACHを1つ又は複数の他のアミン硬化剤と組み合わせて含むことができる。本発明のDACHは、好ましくは未変性のジアミノシクロヘキサン(DACH)である。典型的には、DACHは、硬化の速度を調節し、所望の硬化状態を達成するように、他のアミンとの物理的配合物、又は化学修飾された形態である付加物で使用される。したがって、B部の硬化成分は、比較的高い割合の未変性ジアミノシクロヘキサン(DACH)からなり、硬化成分(例えば、樹脂マトリックス)の約70重量パーセント以上の量であり、単一のアミン材料を使用する場合には、硬化成分(例えば、樹脂マトリックス)の100%にも及ぶ量を含むことができる。あるいは、DACHが1つ又は複数の他のアミンと組み合わされる場合、DACHの量は、硬化成分の約70重量パーセントと約99重量パーセントと間の範囲とすればよい。これら記載された範囲は、記載された範囲内の任意の及びすべての選択された量を網羅することを意図している。DACHは、オプションで、被覆材の硬化速度を最適化するために、市販のアミン配合物(約30%以下)などの、1つ又は複数の他のアミンと組み合わせたり、混合したりすることができる。一実施形態によれば、未変性DACHは、例えばAncamine (登録商標) 2903又は2904、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)などの変性脂肪族、シクロ脂肪族、又は芳香族アミン又はポリアミン硬化剤と組み合わせることができる。フィラーの種類と組み合わせに応じて、A部の樹脂成分混合物とB部の硬化成分の重量比は、約14 :1から約20 :1の間とすることができ、好ましくは約16.8対1である。さらに、対応する化学量論比は、約0.9から約1.1の範囲とすることができる。
【0020】
関連する高い架橋能力を有するDACH硬化剤は、本発明の樹脂成分混合物(例えば、エポキシ-シラン配合物)と組み合わされたときに、緊密に架橋された構造をもたらす。本発明の保護被覆材で使用される量のDACH硬化剤は、約5cpsから約10cpsの間の比較的低い粘度を有し、保護被覆材混合物の全体的な粘度を低下させ、そのため、高い耐浸透性をもたらす比較的多量の固体フィラーの添加を可能にする。その結果、約200°Cまでの使用温度に加え、高い耐浸透性を持つバインダー系が得られ、しかも溶剤の使用を最小限に抑えてスプレーすることができる。すなわち、A部の樹脂成分混合物とB部の硬化成分を約1.0の化学量論比で混合すれば、約220°Cのガラス転移温度Tg(例えば、被覆材の熱抵抗の尺度)を有する被覆材を製造することができる高度に架橋可能な系が得られる。保護被覆材の混合粘度は、高粘度のノバラック樹脂を多量に使用しても、十分に低い粘度であるため、他の機能性フィラーを混合・充填して耐浸透性を最大限に高めることができる。この特徴は、高温の水性環境を扱う様々な用途で重要である。
【0021】
本発明の保護被覆材は、このように、バインダー組成物全体のかなりの割合としてエポキシシラン混合物を使用している。この比較的高い割合のエポキシシランにより、エポキシ-シリコーン・ハイブリッドマトリックスが形成され、このマトリックスは、エポキシマトリックスのみの場合よりも優れた耐熱性と高い使用温度性能を有する。さらに、エポキシシラン混合物が低粘度であるため、樹脂混合物全体の粘度が低下し、これにより、優れた耐浸透性を得るため機能性フィラーをより多くリーディングすることが可能となる。
【0022】
本発明の保護被覆材の別の態様は、B部の硬化成分の主要成分としてDACHを使用することである。DACHは、硬化速度、流動挙動、外観、作業時間などの点で、硬化剤を使用者本位の使いやすいものにするために、典型的には、市販業者によって変性又は希釈された形で販売されている。典型的には、ベンジルアルコールも同じ理由で市販品に使用されている。本発明者らは、変性された形態ではなく、未変性のDACHを直接使用することで、高い架橋能力と非常に低い粘度を有する保護被覆材を作り出すことができることに気付いた。
【0023】
本発明はまた、本発明の保護被覆材で基材の表面を被覆又は処理する方法にも関する。本明細書で使用する場合、「被覆材」という用語は、物体の表面に塗布することができる任意の形態(例えば、液体、半液体、又は固体)の任意の種類の被覆材を含むことを意図している。この被覆材は、表面の一部にも、表面のすべてにも塗布することもでき、又、単層又は複数の層として塗布することもできる。本明細書では、「基材」という用語は、1つ又は複数の表面を有する、任意の種類の、任意の適切な材料で作られた任意の物体を含むことを意図している。本発明の保護被覆材を塗布することができる材料の種類の例としては、金属及びコンクリートが挙げられる。被覆材は、公知の技術に従って基材の表面に塗布することができ、例えば、刷毛塗り、こて塗り、又はスプレー、ロール塗、流し込み、塗装などによって行われる。被覆材は、表面に単層又は複数の層として塗布できる。
【0024】
エポキシ樹脂ベースの被覆材は、典型的には80°C未満の使用条件で、産業環境で保護被覆材として使用されている。被覆材の耐熱性の尺度となるガラス転移温度(Tg)は、一般的に80乃至90°Cの範囲である。ビスフェノールA系エポキシ樹脂の代わりにノバラック系エポキシ樹脂を選択し、適切な硬化剤を使用することで、高温硬化に続いてTgは約120°Cから約130°Cの間まで上昇する。ガラス転移温度は、樹脂成分混合物(例えば、結合成分)をDACH硬化成分と組み合わせることで、約200°Cまでさらに上昇させることができる。
【0025】
本発明の保護被覆材は、約180°Cの高温硬化後には220°Cのガラス転移温度を有する。高温硬化は、製品を使用に供するのに十分な初期硬化を行った後、現場で(例えば、使用時に)で達成することができる。この被覆材を使用する前の典型的な硬化は、約23°Cで約2日間である。この比較的高い転移温度により、約190°C以上の使用温度が可能になる。これにより、本発明の保護被覆材は、石油及びガス産業などの高温環境下での使用に適するようになる。この保護被覆材調合物の活性混合成分のエポキシ-シリコーンハイブリッド樹脂混合物は、従来のエポキシ樹脂ベースの被覆材よりも熱的能力を増大させている。さらに、ジアミノシクロヘキサン(DACH)硬化剤を未変性の状態で使用することで、被覆材の架橋及び熱的能力がさらに向上する。また、この被覆材には、耐浸透性を向上させるために、体積が約31%のフィラーが使用されている。
【0026】
以下は、本発明の高温保護被覆材の具体的な成分と関連する量の例にすぎず、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【実施例】
【0027】
例1
本発明の保護被覆材の調合物は、以下の一般的な成分を含むことができる。A部の樹脂成分混合物は、好ましくは液状である反応性混合物成分を含むことができ、この反応性混合物成分は、エポキシシラン及びエポキシ樹脂、例えばエポキシフェノール・ノバラック3(EPN3)を含む。ノバラックエポキシ樹脂は、約2.4から約4.0の範囲の官能価を有することができる。樹脂成分のフィラー混合物部分は、保護被覆材の容易な洗浄効果を向上させるように、例えばBYK 354などのポリアクリレート系添加剤、例えばBYK Silclean 3700などのケイ素含有添加剤などの添加剤を有することができる。また、保護被覆材は、保護被覆材のフィラー混合物部分を構成する付加的な機能性フィラーを含むことができる。フィラー混合物部分は、例えばヒュームドシリカなどのシリカ、酸化チタン(TiO又はTiO2)、酸化アルミニウムBR 400又は他の類似成分、Minspar 3又は他の類似成分、及び炭酸カルシウム又は他の類似成分を含むことができる。保護被覆材の好ましい配合は以下の通りである。
【0028】
【0029】
【0030】
Ancamine(登録商標) 2903の代わりに、DETA、TETA、Ancamine (登録商標) 2904などの他の速硬化剤を使用できることは、当業者であれば容易に理解するはずである。
【0031】
さらに、A部とB部の重量比は、約16.8対1とすることができる。さらに、対応する化学量論比は約1.0であり、重量比は約14:1から約20:1までの間で変化させてもよく、化学量論比は約0.9から約1.1までの間で変化させてもよい。
【国際調査報告】