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特表2022-533099高粘度流体に最適化された圧電液滴堆積装置、ならびにその方法および制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】高粘度流体に最適化された圧電液滴堆積装置、ならびにその方法および制御システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20220713BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20220713BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20220713BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/015 101
B41J2/045
B41J2/14 607
B41J2/14 605
B41J2/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568048
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 GB2020051234
(87)【国際公開番号】W WO2020234592
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1907185.1
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516154934
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XAAR TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン ニコラス マーク
(72)【発明者】
【氏名】コンディ アンガス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイト ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】コックス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】レディッシュ マイケル
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EA28
2C056HA15
2C056KB16
2C057AF71
2C057AG14
2C057AG31
2C057AG45
2C057AK01
2C057AN01
2C057AR08
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
液滴堆積ヘッド、流体供給部、およびコントローラーを備える液滴堆積装置であって、液滴堆積ヘッドは、それぞれが、ノズルと、ヘッド内への流体入口を有し、一つまたは複数のノズルで終わる流体入口経路と、一つまたは複数のノズルで始まりヘッドの流体戻り口で終わる流体戻り口経路と、を有する一つまたは複数の流体チャンバーを備え、各流体チャンバーは、圧電材料からなる、およびノズルから流体液滴を吐出するように電気駆動信号の印加時に変形可能である、二つの対向するチャンバー壁を備え、流体供給部は、前記流体入口と流体戻り口との間で測定される差圧で流体入口に流体を供給するように構成され、コントローラーは、一つまたは複数のノズルが20℃~90℃の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるために、駆動信号を圧電チャンバー壁に印加するように構成され、流体供給部によって加えられる差圧は、50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を流体戻り口内へ流れ込ませる、液滴堆積装置。液滴堆積装置を動作させる方法、および方法を実行するための制御システムも提供される。
【選択図】図13

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴堆積ヘッド、流体供給部、およびコントローラーを備える液滴堆積装置であって、
前記液滴堆積ヘッドは、それぞれが、ノズルと、前記ヘッド内への流体入口を有し、一つまたは複数のノズルで終わる流体入口経路と、前記一つまたは複数のノズルで始まり前記ヘッドの流体戻り口で終わる流体戻り口経路と、を有する一つまたは複数の流体チャンバーを備え、
各流体チャンバーは、圧電材料からなる、および前記ノズルから流体液滴を吐出するように電気駆動信号の印加時に変形可能である、二つの対向するチャンバー壁を備え、
前記流体供給部は、前記流体入口と前記流体戻り口との間で測定される差圧で前記流体入口に流体を供給するように構成され、
前記コントローラーは、前記一つまたは複数のノズルが20℃~90℃の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるために、駆動信号を前記圧電チャンバー壁に印加するように構成され、
前記流体供給部によって加えられる前記差圧は、50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を前記流体戻り口内に流れ込ませる、液滴堆積装置。
【請求項2】
前記流体供給部は、前記流体を20℃~90℃の範囲のそれぞれの温度に加熱し、前記加熱された流体を45mPa・s~130mPa・sの対応する粘度で前記流体入口に供給するように構成される、請求項1に記載の液滴堆積装置。
【請求項3】
前記液滴堆積ヘッドは、前記流体を射出温度に加熱するように構成されるヒーターをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の液滴堆積装置。
【請求項4】
30℃における前記流体の前記粘度は、60mPa・s~660mPa・sの範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項5】
前記流体入口と前記流体戻り口との間の流体抵抗は、流体チャンバー当たり800mbar/(ml・分)以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項6】
前記駆動信号の最大ピーク間電圧は35V以下であり、11m/秒の液滴吐出速度で7~120plの体積の液滴を吐出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項7】
前記流体は、1.5より大きいオーネゾルゲ数を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項8】
前記駆動信号は、第一のハイレイダウン駆動モードに従って印加され、前記チャンバー内の前記流体は、20℃~90℃の射出温度で45mPa・sから最大で130mPa・s以下の範囲内の粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項9】
前記駆動信号は、第二の三サイクル駆動モードに従って印加され、前記チャンバー内の前記流体は、20℃~90℃の射出温度で、45mPa・s~65mPa・sの範囲内の粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項10】
前記流体は、1より大きく2より小さいオーネゾルゲ数を有する、請求項9に記載の液滴堆積装置。
【請求項11】
前記流体は、1.5より大きいオーネゾルゲ数を有する、請求項10に記載の液滴堆積装置。
【請求項12】
前記流体は、0.44より大きく4より小さいオーネゾルゲ数を有する、請求項8に記載の液滴堆積装置。
【請求項13】
前記流体は、0.44より大きく2.5より小さいオーネゾルゲ数を有する、請求項12に記載の液滴堆積装置。
【請求項14】
前記流体は、1.5より大きいオーネゾルゲ数を有する、請求項12または請求項13に記載の液滴堆積装置。
【請求項15】
前記ヘッドは、駆動信号生成回路をさらに備え、前記コントローラーは、前記駆動信号生成回路によって消費される電流値を受信するように、および前記吐出される液滴の前記液滴速度を変更するために、前記電流値に応答して前記駆動信号の変更されたピーク間電圧を決定するように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項16】
前記駆動信号生成回路は、前記コントローラーから前記変更されたピーク間電圧を受信するように、および前記吐出される液滴の前記液滴速度を変更するために、前記変更されたピーク間電圧で駆動信号を生成するように構成される、請求項15に記載の液滴堆積装置。
【請求項17】
第一の駆動モードは、同じ速度の液滴を吐出するために、第二の駆動モードよりも低い最大ピーク間駆動電圧を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の液滴堆積装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の液滴堆積装置を動作させる方法であって、前記方法は、
50ml/分~200ml/分の流量で、各チャンバーを通る流体の再循環流を生じさせるために、前記液滴堆積ヘッドの前記流体チャンバーに流体を供給する工程と、
前記流体チャンバー内の前記流体が、20℃~90℃の所定の射出温度であり、45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度に対応するように、前記流体を前記ヘッドの前記流体入口に供給する前および/または後に前記流体を加熱する工程と、
一つまたは複数の液滴の形で前記チャンバーに供給された前記流体の一部を吐出するために、駆動信号を一つまたは複数の前記チャンバーの前記圧電壁に印加する工程、および前記チャンバーに供給されたが吐出されない過剰な流体を、前記ヘッドの前記流体戻り口に50ml/分~200ml/分の流量で戻す工程と、を含む、方法。
【請求項19】
前記方法は、前記コントローラーに、前記チャンバー壁の作動のデューティサイクルに基づく電流信号を提供する駆動信号生成回路をさらに含み、前記コントローラーは、前記吐出された液滴の前記液滴速度を所定の液滴速度に実質的に等しく保つために、電流値に応答して前記駆動信号のピーク間電圧を調整する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記流体チャンバーに到達する前記加熱された流体が前記所定の射出温度に実質的に等しくなるために、前記流体供給部内の前記流体を加熱することをさらに含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記流体チャンバーに到達する前記加熱された流体が実質的に前記所定の温度になるように、前記液滴堆積ヘッドのオンボードの前記流体を加熱することをさらに含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
コントローラーおよび駆動信号生成回路を備え、前記コントローラーは、前記駆動信号生成回路から所定の液滴速度および電流値を受信するように、および格納されたテストデータに基づいて、前記電流値および前記所定の液滴速度に応答して変更されたピーク間電圧を決定するように構成され、前記駆動信号生成回路は、前記変更されたピーク間電圧を受信し、および前記変更されたピーク間電圧で駆動信号を生成し、そして前記生成された駆動信号が前記液滴堆積ヘッドの前記一つまたは複数の流体チャンバーの前記一つまたは複数のノズルから吐出される前記液滴の前記液滴速度を変更するように構成され、前記コントローラーは、
前記ノズルが、20℃~90℃の所定の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるために、前記駆動信号を前記圧電チャンバー壁に印加するようにさらに構成される、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法を実行するための制御システム。
【請求項23】
ヒーターおよびヒーターコントローラーをさらに備え、前記ヒーターは、前記チャンバーに供給される前記流体を加熱するように構成され、前記ヒーターコントローラーは前記コントローラーから動作データを受信するように構成され、前記動作データは前記所定の液滴速度および前記駆動信号生成回路の前記電流値に基づいており、前記ヒーターコントローラーは、前記チャンバー内の前記流体を実質的に前記所定の射出温度に加熱するように、前記動作データに基づいて前記ヒーターを制御するようにさらに構成される、請求項22に記載の制御システム。
【請求項24】
前記流体入口と前記流体戻り口との間で測定される差圧で前記流体入口に流体を供給するように構成される流体供給部を制御するための流体供給コントローラーをさらに備え、前記流体入口経路は前記ヘッド内への前記流体入口で始まり前記一つまたは複数のノズルで終わり、前記流体戻り口経路は前記一つまたは複数のノズルで始まり前記ヘッドの前記流体戻り口で終わり、および前記流体供給部によって加えられる前記差圧により、50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を前記流体戻り口に流れ込ませる、請求項22または請求項23に記載の制御システム。
【請求項25】
前記駆動信号生成回路は、前記ヘッド制御回路内に設けられる、請求項22~24のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項26】
前記ヒーターは前記プリントヘッドに搭載されて配置され、前記ヒーターコントローラーは前記プリントヘッドの前記ヘッド制御回路内に設けられる、請求項23に記載の、または請求項23に従属する場合は請求項25に記載の制御システム。
【請求項27】
前記駆動信号生成回路は、前記生成される駆動信号が、前記所定の液滴速度に実質的に等しい液滴速度を生じるように、前記変更されたピーク間電圧で駆動信号を生成するように構成される、請求項22~26のいずれか一項に記載の制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高粘度流体の印刷に好適な圧電液滴堆積装置、装置を動作させる方法、およびその制御システムに関する。液滴堆積装置は、高分子量ポリマー成分流体を必要とする3D印刷およびフォトポリマーの射出などの用途で特に有益に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
インクジェット業界は、生産性の向上やコスト削減などの新しい機能を必要とする、新しい困難な用途のニーズに応えるために絶えず進化している。
【0003】
圧電インクジェットプリントヘッドは、ノズルを通る流れの流体抵抗のために、30mPa・s未満(オーネゾルゲ数Oh<1)の粘度を有する流体の小滴を堆積させることに限定され、インクチャネルを補充できないために、過剰な駆動電圧の要求またはインクの欠乏をもたらすことが、長い間確立された原理である。これにより、流体、例えば、高分子量のポリマー鎖を含み、従来のインクジェット流体よりもはるかに高い粘度を有する樹脂を必要とする機械的に強靭で柔軟な部品を印刷する機能が制限される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様は添付の独立請求項に記載され、本発明の特定の実施形態は添付の従属請求項に記載される。
【0005】
以下の開示は、一態様では、液滴堆積ヘッド、流体供給部、およびコントローラーを備える液滴堆積装置を説明し、液滴堆積ヘッドは、それぞれがノズルを有する一つまたは複数の流体チャンバーと、ヘッド内への流体入口を有し一つまたは複数のノズルで終わる流体入口経路と、一つまたは複数のノズルで始まりヘッドの流体戻り口で終わる流体戻り口経路と、を備え、各流体チャンバーは、圧電材料からなる、およびノズルから流体液滴を吐出するように電気駆動信号の印加時に変形可能である、二つの対向するチャンバー壁を備え、流体供給部は流体入口と流体戻り口との間で測定される差圧で流体入口に流体を供給するように構成され、コントローラーは、一つまたは複数のノズルが20℃~90℃の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるために、駆動信号を圧電チャンバー壁に印加するように構成され、流体供給部によって加えられる差圧により50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を流体戻り口に流れ込ませる。
【0006】
液滴堆積装置を動作させる方法、および方法を実行するための制御システムも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
ここで図面を参照する。
【0008】
図1図1は、標準流体DおよびE、開発流体A、B、C、F、GおよびK、ならびに市販の流体、例えばH、LおよびMの温度に対する粘度のプロットである。
図2図2は、図1のデータの温度に対する粘度の変化率のプロットである。
図3図3は、流体A、B、C、D、E、F、G、H、K、LおよびMについてのレイノルズ数に対するウェーバー数のプロットである。
図4図4は、高粘度流体を使用した第一の駆動モードの飛行中の液滴の画像である。
図5図5は、流体を試験するために使用されるプリントヘッドの低流体抵抗再循環流構成要素の概略断面図である。
図6図6は、図5の断面D-D’に沿って切り取られた概略平面図である。
図7図7は、図5および6の原理による流れ要素を有する低流体抵抗の圧電プリントヘッドの三次元図である。
図8図8は、液滴堆積装置を動作させて第一のパターンを生成する第一のモードの表現であり、チャンバー壁の動きを例示する。
図9図9aは、図8に例示する第一の駆動モードに好適な副滴パルスを含む駆動パルスの図である。図9bは、図8の最初の五つのチャンバー壁に印加される駆動パルスの図である。
図10図10は、図8に例示したのと同じ実施例に従って液滴堆積装置を動作させる第一のモードの表現であるが、異なる入力データが使用されている。
図11図11は、液滴堆積装置を動作させる第二のモードの表現であり、3サイクル印刷のためのチャンバー壁の動きを例示する。
図12図12は、図11の各サイクルに印加される駆動パルスの図である。
図13図13は、本明細書に記載の液滴堆積装置のブロック図である。
図14図14は、本明細書に記載の液滴堆積装置の制御システムのブロック図である。図面中、同様の要素は、全体にわたり同様の参照番号で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、実施形態の機能性およびそれらの様々な実施形態を、図1~14に関して説明する。
【0010】
発明者らは驚くべきことに、いくつかの具体的な条件および組み合わせが採用される場合、予想とは反して、いくつかのタイプの圧電インクジェットプリントヘッドで高粘度流体を射出することが可能であることを見出した。これにより、オーネゾルゲ数が1より大きい高粘度の流体を安定して吐出することができる。
【0011】
予想に反して、プリントヘッドは、その流体入口と流体戻り口との間の差圧を有し、高粘度流体の射出を可能にするのに十分に低い流体抵抗を有するノズルを通過する流体再循を念頭に置いて設計されることができることが見出された。このようなプリントヘッドでは、ノズルを通過する再循環により、十分に高い流体流量が可能になり、圧力チャンバーへの流体の一定供給および継続的なノズル補充を確実にして、粘性流のみよりも速くノズルが補充されることが見出された。試験されたプリントヘッドは、対向するチャンバー壁が圧電材料からなり、これらのアクティブな壁は電圧信号の印加時に変形することができる圧力チャンバーを有する。各壁はまた、隣接するチャンバーのアクティブな壁であり、各壁は二つのチャンバー間で共有されることを意味する。壁は、シェブロンせん断モードで最も効率的に動作し、プリントヘッドは、1よりも大きく、さらには2よりも大きなオーネゾルゲ数(Oh)を有する流体を射出することができることが見出された。高粘度流体の試験に使用されるプリントヘッドでは、圧力チャンバーは細長く、両端がインクマニホールドに開いており、対向する側壁が変形して音響モードで液滴を射出し、チャンバーの両端から二つの圧力パルスが生成され、それらは、チャンバーの中心に配置されたノズルで液滴吐出パルスを強化する。この音響動作により、ノズルへの流体の供給が最大化され、液滴を吐出するために必要なエネルギーが最小化される。
【0012】
さらに、第一の駆動モードは、非常に高い粘度流体を射出するのに特に適していることが見出された。ほぼ共振する単一サイクルの操作可能な「ハイレイダウン(HL)」モードを使用すると、60mPa・sを超え最大約126mPa・s、オーネゾルゲ数Oh>2、最大2.5の流体を射出でき、ミスティングもサテライトもほとんどない、安定した液滴の形成を示す。他の実施例では、「ハイレイダウン(HL)」モードではさらに、最大約130mPa・sの流体を射出でき、オーネゾルゲ数は最大3または最大4になる。この運転モードで飛行中に撮像された液滴を図4に示す。さらに、この第一の印刷モードにより、本明細書に記載の試験に使用される圧電プリントヘッドは、最大80μmの厚さのフォトポリマーの層全体を423mm/sのスキャン速度で1回のパスで印刷できる。
【0013】
さらに、流体が流体チャンバーを通過する場合、流体の温度である射出温度を上げることにより、30℃で600mPa・sを超える粘度を有する流体を射出することが可能である。これにより、特別に配合された流体の印刷が可能になり、高解像度および高速で機械的靭性と可撓性が向上するだけでなく、何らかの既存のステレオリソグラフィー3D印刷樹脂を圧電液滴堆積ヘッドで印刷できる可能性がある。
【0014】
流体パラメーター
開口型再循環圧力チャンバーを備える低流体抵抗インクジェットプリントヘッドを使用して試験された流体は、(潜在的な射出温度での特性を評価するため)温度に対するそれらの特性に関して分析され、以下のように標準的なインクジェット流体と比較された。図1は、A、B、C、D、およびEと表示され、表3に記載される流体に対応する五つの異なる流体の粘度対温度のプロットを示す。流体AおよびBは、BASF製の高粘度開発流体であり、30℃での粘度は293mPa・s(流体B)および656mPa・s(流体A)である。またBASF製の流体C、F、G、L、およびMは、30℃でそれぞれ74mPa・s、156mPa・s、108mPa・s、63mPa・s、および119mPa・sの中間粘度を有している。Delo製の流体Hの中間粘度は30℃で182mPa・sであるが、流体Kの中間粘度は30℃で72mPa・sである。流体DおよびEは、30℃で32mPa・s以下の粘度を有する標準的なインクジェット流体である。流体D、Sunjet ULX5832 Cyanは、標準的なUVインクであり、流体E、Itaca MA5115は、標準的なセラミックインクである。流体の凡例を表3に示す。
【0015】
図1はさらに、粘度限界L1、L2、およびL3を示す。L1は、約30mPa・sの「従来の」限界を示し、それを超えると、従来のインクジェットヘッドは、安定した良質の液滴を提供できないと考えられる。L1を超えると、発明者らは、予想に反して、はるかに高い粘度:一つの駆動モード、3サイクルモードで最大約L2(65mPa・s)、および別のシングルサイクル、駆動モードで最大約L3(126mPa・s)の流体が射出される可能性があることを見出した。他の実施例では、L3は130mPa・sであってもよい。図1の90℃の流体温度より上の灰色の領域は、それを超えると流体が劣化し、液滴が吐出されない可能性がある最高温度を示す。これは、例えば、プリントヘッド内で熱硬化するUV硬化流体が原因である可能性がある。図1のプロットに使用される値はまた、後の説明で参照しやすいように、表2に記載されている。劣化の実際の値は、特定の流体および流体温度に依存する。
【0016】
図1から、流体粘度のプラトーを増加させると、図1のプロットで粘度曲線が上方にシフトするだけではなく、それをより高い温度にもシフトさせる、つまり、プラトーでの粘度が全体的に増加する一方で、プラトー自体の開始はより高い温度にシフトすることが分かる。
【0017】
Xaar 1003ファミリーの2種類の流体再循環プリントヘッドを使用して、高粘度流体をテストした。ノズル容積のみが異なり、第一モードの印刷では7.5plの副滴(「GS6」)および15pl(「GS12」)の副滴(HLモード)、第二モードの印刷では6plの副滴および12pl(「GS12」)の副滴(3サイクルモード)を吐出した。二つのプリントヘッドの流体流路は、それ以外は同じである。各プリントヘッドには、圧力チャンバーごとに一つずつ、1000個のノズルがあり、それぞれ500個のノズルが2列に平行に配置されている。圧力チャンバーは細長く、圧力チャンバーの両端の断面を変えることなく、圧力チャンバーの両端で流体の流れに対して開口している。各圧力チャンバーは、圧電材料からなるチャンバー壁によって対向する細長い側面で囲まれている。駆動信号の駆動パルスによって作動させると、これらの壁は変形してノズルから液滴を吐出させる。この構造はまた、「共有壁」と呼ばれ、二つの隣接するチャンバー間で共有される各圧電壁を指す。圧電材料は、チャンバーの伸長方向に垂直な方向であり、ノズルの横方向に垂直である方向に、すなわち、Xaar 1003ヘッドの場合ノズル軸の方向に分極されている。これにより、せん断モードの変形が生じる。このモードは、圧電壁が一方向に分極された上部で形成され、下部は反対方向に分極されるように圧電壁を構築することによって最も効率的になり、伸長方向に垂直なチャンバーの断面に沿って見た場合、変形が「シェブロン形状」になる。Xaar 1003プリントヘッドシリーズは、効率的な共有壁の「シェブロン」せん断モードで動作できる。ここで、Xaar 1003ヘッドの流路を、図5、6、および7に関してより詳細に説明する。
【0018】
再循環の流路
開口型圧力チャンバーの再循環に関して、このようなプリントヘッドの例は国際公開第00/38928号に示され、記載された。国際公開第00/38928号は、流体が入口マニホールドに供給され、戻りマニホールドを介して戻り、マニホールドが各圧力チャンバーに共通であり各圧力チャンバーを介して連結しており、その結果各チャンバーを通って流体流を生成し、したがってプリントヘッド動作中に各ノズルを通過することができると教示する。
【0019】
プリントヘッド30、例えばXaar1003の流路は、図5および6に概略的に例示されており、図5は、チャンバーの細長い方向に沿って、および図6に示される断面E-E’に沿って圧力チャンバー10を二等分する流れ要素20の断面図である。Xaar1003のようなこのタイプのプリントヘッドについては、これはノズル6の列に垂直な方向である。一方、図6は、図5の断面D-D’に沿った流れ要素の平面図であり、すなわち、ノズルプレート16が取り除かれた状態で流れ要素を見上げている。
【0020】
流体は、流れ要素20のマニホールド部19に設けられる入口ポート22を介して、プリントヘッドの流れ要素20に入る。入口ポート22は、2列のノズル6に共通である。図5では、ノズル6の列は、ページ内(ここでは方向y)に延在する。そして、流体は、共通の入口12を通って入口流42として移動し、異なる列の圧力チャンバー10(図6に示す)を通って逆方向に(ここではxに沿って)流れる二つの流れに分かれる。圧力チャンバーは、一方の側では壁8によって囲まれて示され、もう一方の側では同一の壁を有する。
【0021】
圧力チャンバー10ならびに電極および電極への接点を形成するための製造技術は、例えば、国際公開第00/29217号に詳細に記載されている。簡潔に述べると、チャンバー10は、圧電チャネル壁8を画定するように、圧電材料の基部構成要素に機械加工される。チャンバーの二つの列は、基材15の平面に接合する圧電材料のそれぞれの細片に形成される。各チャンバー壁に対処するために、電極は、チャンバーの壁上に設けられ、それによって、例えば、欧州特許出願公開第0277703A1号により公知のように、チャンバー壁8からアクチュエータを形成し、それにより電気信号を壁に選択的に印加することができる。電極の分割により、各列のチャンバー壁は、電気入力(図示せず)により印加される電気信号によって互いに独立して動作することができる。したがって、チャンバー壁は、液滴を吐出させることができるアクチュエータ部材として機能することができる。基材15は、導電性トラック(図示せず)で形成され、これはそれぞれのチャンバー壁の電極に電気的に接続し、基材15の縁まで延在し、そこにチャンバーの各列のそれぞれの駆動回路(集積回路)が位置する。
【0022】
圧力チャンバー10の配置は、2列のノズル間で同一である。流体は、各圧力チャンバーを通って移動し、チャンバーを出て、戻り流44aとして一方の列のための共通の戻り口14aに、および戻り流44bとして他方の列のための共通の戻り口14bに流れる。
【0023】
各圧力チャンバー10は、その中心に、またはその中心近傍にノズル6を有し、一方の側でチャンバーと隣接するノズルプレート16に設けられる。これは、Xaar1003において、それぞれ500を超えるノズルに延在する2列のノズルの一部を示す図6でより簡単に分かる。さらに、図6は、3サイクルモードパターンの各列のノズルを示す。三つの隣接するノズルは、圧力チャンバーの細長い方向に沿って連続的にオフセットされ、三つのノズルの後続のノズル群に対して繰り返しパターンである。三つの各群におけるノズルは、A、B、およびC群ノズルと呼ばれてもよい。このグループ化は、第二の駆動モード、共有壁プリントヘッドの3サイクル駆動モードに関して以下でさらに説明される。
【0024】
図6は、各側面のチャンバー壁8によって囲まれる各チャンバー10を示す。入口12は、(zに沿う)液滴吐出方向の共通の流れ42の流量インジケーターと共に示され、その後、これが分岐して各チャンバー10を流れる。戻り流は、各チャンバー10を出て、同じ列からの他の戻り流と組み合って戻り流44を形成する。戻り流44は、共通の戻り口14を通過し、共通の戻りポート24内に入る。
【0025】
チャンバー壁に駆動信号が提供されると、壁8は変形し、液滴はノズル6から吐出される。戻り流44に寄与するノズルを通過する流れは、液滴の形態でノズル6から吐出される流れよりも大きく、プリントヘッドを“再循環”モードで動作させることができる。このために、入口パイプ23(図7に示す)を介して入口ポート22に入る流体に陽圧が印加され、戻りポート24および戻りパイプ25を介して戻る流体に陰圧が印加される。Xaar1003の場合、二つの戻りポート24a、24bは、下流に連結して一つの複合戻りパイプ25に流れる。陽圧および陰圧は、例えば、プリントヘッド30の入口パイプおよび戻りパイプに連結する外部流体供給部によって提供されてもよい。本明細書で言及される流体再循環は、チャンバー10を通る流体流量が、チャンバーからのインク吐出の量よりも高い場合にもたらされ、場合によっては、その量の5倍または10倍であってもよい。
【0026】
(作動していない)圧力チャンバーの断面は一定のままであり、各圧力チャンバー10の各「開口端」18a、18bは、圧力チャンバー自体と同じ断面を有する圧力チャンバー10の中への開口部を示すことに留意されたい。Xaar1003プリントヘッドファミリーの場合、この断面は、1.8mmのチャンバー長に対して0.0225mmである。平行な2列のマニホールドを有するプリントヘッド全体の結果として生じる流体抵抗は、Xaar1003プリントヘッドGS6およびGS12では約0.8mbar/(ml・分)である。これは、各マニホールドの列の抵抗が1.6mbar/(ml・分)であり、各チャンバーが800mbar/(ml・分)の流体抵抗を有することを意味する。
【0027】
図7は、プリントヘッド30を下からの三次元遠近図で示しており、2列のノズル6を備えるノズルプレート16、および流れ要素20の入口パイプ23および組み合わされた戻りパイプ25が分かる。パイプは、例えば輸送中に使用されるカバー26、28付きで示されている。
【0028】
次に、再循環ヘッド、例えばXaar1003から高粘度流体を射出するのに好適であることが見出された第一および第二の駆動モードを説明する。
【0029】
ハイレイダウン/第一モード
図8(a)および図8(b)は、国際公開第2018/224821号および同第2019/058143号に既に詳細に記載されている第一の駆動モードによる方法を示す。このモードでは、副滴は両方の壁が同じ駆動信号内で反対方向に内側方向に動く各圧力チャンバー10から吐出される。結果として、駆動信号持続時間内に吐出された液滴は、媒体上の同じピクセルラインに沿って全て着地する。図8(a)および図8(b)の太字の水平線で示されるように、入力データに基づいて、ノズル列内の特定のチャンバーは、駆動信号の印加中に射出チャンバーとして割り当てられ(図示の例では、チャンバー10(b)、10(c)、10(d)、10(h)、10(i)、10(l))、そして駆動信号の印加中に液滴を堆積させ、一方、残りのチャンバー(示されている例では、チャンバー10(a)、10(e)、10(f)、10(g)、10(j)、10(k)、10(m)、10(n))は非射出チャンバーとして割り当てらる。図面から明らかなように、この割り当ては、駆動信号の1サイクルの間、一つまたは複数の隣接する非射出チャンバーの領域によって分離された、太字の水平線によって示される、一つまたは複数の隣接する射出チャンバーの領域をもたらす。
【0030】
この割り当てが実行された場合、特定のチャンバーの壁は次に駆動信号によって起動される。図8(a)および図8(b)は、駆動信号の動作サイクルのそれぞれの位置におけるヘッドを示す。より具体的には、図8(a)は、壁がそれらの動作のうちの一つの極限にある動作サイクルにおける位置を示し、一方、図8(b)は、壁が反対の極限にある場合の、サイクルのほんの少し後の位置を示す。図8(a)および8(b)のそれぞれの駆動信号を図9に例示する。
【0031】
図9(a)は、副滴パルス61から成る駆動信号60のクローズアップを示す。四つの副滴パルスが一つのピクセル期間62について示され、その期間にわたって四つの副滴が液滴を形成してピクセルラインに沿ってピクセル内に着地する。第一のモードまたはハイレイダウンモードでは、各副滴パルスは、隣接するチャンバーからの吐出を引き起こすかのうせいがある。例えばチャンバー10(b)の場合、副滴パルス63の第一の部分は、チャンバー10(b)の一つの壁、例えば10(b)と10(c)との間の共有壁、およびもう一方の壁、すなわちチャンバー10(b)と10(a)の共有壁に対して、図8(a)に示すように、チャンバー10(b)の壁を内側方向に動かし、そしてチャンバー10(b)は副滴を吐出する。チャンバー10(b)の一つの壁、例えば10(b)と10(c)の間の共有壁に対する副滴パルス64の第二の部分、およびチャンバー10(c)と10(d)の間の共有壁に印加される同様のパルスは、10(b)と10(c)の間の共有壁をチャンバー10(b)の外側方向に動かし、図8(b)に示すように、チャンバー10(c)の両方の壁が内側方向に動き、チャンバー10(c)は副滴を吐出するが、チャンバー10(b)は副滴を吐出しない。次の副滴パルスは、合計で四つの副滴が吐出されるまで壁の動きを繰り返し、媒体上のピクセルに堆積される液滴を形成する。図9(b)は、図8のチャンバー10(a)~10(e)への駆動パルスの例を示し、ここで、射出チャンバー10(b)~10(d)は駆動信号を受信するが、非射出チャンバー10(a)および10(e)は受信しない。図8(a)および図8(b)に示すように、チャンバー10(c)の駆動信号は、チャンバー10(b)および10(d)の駆動信号とは反対であることが分かる。その図はまた、各チャンバーに送信される駆動信号のタイミングも例示する。駆動信号は、ピクセルクロックトリガーPCLKによって開始される。ピクセルクロックは、印刷媒体の移動機構のエンコーダーに関連し、液滴堆積装置のコントローラーが、媒体上のピクセルラインの位置を決定し、駆動信号の印加の結果として圧力チャンバーのノズルからの液滴の吐出を調整する。ピクセルクロックトリガーを受信すると、駆動信号をチャンバーに送信するコントローラーにより、チャンバーは駆動信号を受信する。第一のピクセルラインの駆動信号を開始してから所定の時間であって、所定の時間は媒体速度およびチャンバーの音響効果に関連する、所定の時間、の後、駆動信号は再び送信されて、ノズルに液滴を第二のピクセルライン内に吐出させる。
【0032】
図8の二つの図面を比較することによって明らかであるように、射出チャンバー10(b)、10(c)、10(d)、10(h)、10(i)、10(l)のそれぞれについて、壁は反対方向に動く。
【0033】
非射出チャンバーに関しては、それらの壁の二つの異なるタイプの動作を識別ができる。非射出チャンバーの一部、具体的には射出チャンバーの領域に隣接するもの(示されている例では、チャンバー10(a)、10(e)、10(g)、10(j)、10(k)、10(m))の場合、一方の壁は動かされるが他方は静止したままであり、他の非射出チャンバー、具体的には射出チャンバーの領域に隣接しないもの(示されている例の場合、チャンバー10(f)、10(n))では、両方の壁が静止したままである。
【0034】
次に、図10(a)および10(b)に注目する。異なる入力データに従って液滴を堆積させるために利用される場合、これらは図8(a)および(b)と同じ実施例による第一のモードを示す。図8(a)および8(b)と同様に、図10(a)および10(b)は、動作サイクルのそれぞれの位置におけるヘッドを示す。図10(a)および図10(b)から分かるように、新しい入力データに基づいて、異なるチャンバー10が、射出チャンバーおよび非射出チャンバーとして割り当てられている。より具体的には、割り当てにより、単一の非射出チャンバー、特にチャンバー10(e)のみからなる非射出チャンバーの領域が生じたことに留意されたい。
【0035】
二つの図面を比較することによって明らかであるように、射出チャンバー10(b)、10(c)、10(d)、10(f)、10(g)、10(h)、10(i)、10(l)のそれぞれについて、図8(a)および8(b)のように、壁は反対方向に動く。
【0036】
しかし非射出チャンバーでは、それらの壁の(二つではなく)三つの異なるタイプの動作を識別できる。非射出チャンバーの一部、具体的には射出チャンバーの領域に隣接するもの(示されている例では、チャンバー10(a)、10(j)、10(k)、10(m))の場合、一方の壁は動かされるが他方は静止したままであり、他の非射出チャンバー、具体的には射出チャンバーの領域に隣接しないもの(示されている例では、チャンバー10(n))の場合、両方の壁が静止したままであり、さらに他のもの、具体的には非射出チャンバーの単一チャンバーの広い領域内のチャンバー10(e)の場合、壁は同じ方向に動く。
【0037】
図8および図10に示すように、各射出チャンバーの壁を動かすことにより、一つまたは複数の作動パルスの印加時に、問題のチャンバーから一つまたは複数の液滴を放出させることが理解されよう。得られた液滴は、媒体上のライン上に配置される流体の本体を形成し、流体の本体は、非射出チャンバーの各領域のそれぞれのギャップによってこのライン上で分離されている(着地時に少なくとも瞬時に-流体本体は媒体上で合流する可能性がある)。したがって、このような各ギャップのサイズは、一般的に非射出チャンバーのそれぞれの領域の幅にサイズが対応することは言うまでもない。
【0038】
図8および図10の動作シーケンスから分かるように、例えば、図10で印加される駆動信号が、図8の駆動信号に直接従う場合、一部の非射出チャンバーは、非射出チャンバーから射出チャンバーへの移行を提供するために、小さな壁の動きのみを必要とする場合がある。さらに、非射出チャンバーの多数の壁が静止したままである可能性がある。これは、基材上の液滴流体の特定のレイダウン密度を達成するために、壁によって実行される壁の動きの数を減らすことによって、ヘッドの寿命を改善する可能性がある。
【0039】
図8、9および10に例示する方法は、ハイレイダウンド駆動モードを表し、ハイレートのスループットをもたらす。射出チャンバーは、共振周波数またはその近傍で作動し、これにより500μl/(s・インチ)よりも非常に高く、場合によっては750μl/(s・インチ)よりも高く、潜在的に1000μl/(s・インチ)「ポンピングパワー」(ヘッドの幅の1インチごとに1秒あたりに堆積する液滴流体の量)を達成することができる。低減された駆動電圧および作動壁のより効率的な使用の両方により、ヘッドの寿命は改善される。
【0040】
プリントヘッドは、最大許容駆動電圧を有し、このため、流体に与えることができる最大インパルスを制限し、したがって、ノズルから吐出できる最大粘度を制限する。共振に近いシングルサイクルハイレイダウン駆動モード(第一モード)に起因する低い駆動電圧は、プリントヘッドの電圧制限に到達する前に粘度をさらに増加させることができることを意味する。
【0041】
図8および図10に示すように、各射出チャンバーの対向する壁を内側方向に動かす駆動信号を印加すると、射出チャンバーから一つまたは複数の副滴が放出される。得られた副滴は、媒体上のピクセルライン上に配置される流体の本体を形成し、流体の本体は、ピクセルラインの各ピクセルにそれぞれ着地し、非射出チャンバーの領域の各射出領域間の各ギャップによってこのライン上で分離されている(着地時に少なくとも瞬時に-流体本体は媒体上で合流する可能性がある)。したがって、このような各ギャップのサイズは、一般的に非射出チャンバーのそれぞれの領域の幅にサイズが対応することは言うまでもない。
【0042】
このように堆積された流体の本体が媒体上のライン上にあるためには、多くの場合、射出チャンバーおよび非射出チャンバーの作動が時間内に重複することが好都合である。ただし、例えば、ヘッドのノズル、例えば図6に示す吐出グループA、B、Cが何らかの方法でオフセットされている場合、これは必須ではない。さらに、場合によっては、それらは、全てのチャンバーの作動が同時に開始するように同期されてもよい(もちろん、それらが同時に終了するように同期されることも可能である)。
【0043】
3サイクルモード/第二のモード
第二の駆動モードでは、プリントヘッドは3サイクルモードで駆動される。各列のノズルは、三つのグループに配置される。各グループのノズルは、列方向に垂直な方向にオフセットされる。列方向に対して同じオフセット距離を有する別のグループのノズルは、同じ吐出グループ(サイクルグループ)にあり、これにより、グループA、B、およびCのノズルによって図6に示されるように、三つの吐出グループA、B、およびCが提供される。図6では、オフセットはxに沿っている。印刷中、プリントヘッドが媒体に対して印刷方向に移動すると、印刷方向に対して最も下流に位置するグループが最初に作動され、中間グループが2番目に作動され、そして印刷方向の最も上流に位置するグループが最後に作動されるように、ノズルは液滴をピクセルラインに吐出する(図6では、これはx方向に沿っている可能性がある)。各グループの作動間のタイミングは、媒体の速度および圧力チャンバーの音響特性に関連している。
【0044】
第二の駆動モードの3サイクル印刷では、圧力チャンバーの両方の壁が内側方向に動いてチャンバーに沿って圧力パルスを生成する場合、液滴が吐出される。隣接するチャンバーは、その反対側のチャンバー壁が静止したままであるため、低圧になる。図11(a)に、最初のサイクルの「グループA」のチャンバー壁の動きを示す。チャンバー10(a)~10(n)の場合、三つ目のチャンバーごとに作動し、その壁は内側方向に動く。これらは、太字の数字で示されているチャンバー10(a)、10(d)、10(g)、10(j)、および10(m)である。これらのチャンバーは、ピクセルラインのそれぞれのピクセルに液滴を堆積させる。次に、図11(b)に示すように、チャンバー10(b)、10(e)、10(h)、10(k)、および10(n)によって、2番目のサイクルであるグループBが作動する。ここで、これらのBグループチャンバーは、同じピクセルラインのそれぞれのピクセルに液滴を堆積させる。その間、残りのチャンバーは低圧になる(流体の取り込みを引き起こす)。最後のサイクルのCサイクルは、太字の数字で示されている作動されたチャンバー10(c)、10(f)、10(i)、および10(l)について図11(c)に示されている。その間、これらのチャンバーが作動して、同じピクセルラインのそれぞれのピクセルに液滴を堆積させる。これで、ピクセルラインは完全に印刷される。
【0045】
図12は、グループA、B、およびCの各チャンバーに送信される駆動パルスのタイミングを例示する。前と同様に、ピクセル期間62にわたって適用される駆動信号は、ピクセルクロックトリガーPCLKによって開始される。ピクセルクロックトリガーを受信すると、コントローラーはグループAのチャンバーに副滴パルス61を受信させる(グループCについて示されているが、他の全てのグループの形状は同じである)。グループAの副滴パルスを開始してから所定の時間であって、所定の時間とは中速およびチャンバー音響に関連している、所定の時間、の後、副滴パルスはグループBに送信される。グループBの副滴パルスの開始から所定の時間がさらに経過した後、副滴パルスはグループCに送られる。中速が変わらない場合、所定の時間は一定のままである。三つのサイクルのそれぞれは、チャンバーごとに一つの副滴を吐出する。ピクセルラインへの印刷を完了するために、このサイクルはそのピクセルに必要な副滴の数、繰り返される。
【0046】
射出試験
Xaar1003 GS6およびGS12プリントヘッドを、第一および第二のモードで使用して、様々な標準流体を高いから非常に高い射出粘度の開発インクに対して試験した。ノズルを通る吐出流量は、吐出される副滴の数によって決定される。
【0047】
ハイレイダウン(HL)または第一のモードでそれぞれ15plの体積の副滴を吐出できるGS12ヘッドを使用すると、ピクセルあたり四つの副滴(つまり、合計60plの液滴体積)を用いて全て使用して印刷すると、全てのノズルが射出している場合(または100%の負荷)、28kHzのピクセルクロック周波数で65mPa・sの粘度の流体に対して約100ml/分の吐出速度が得られる。
【0048】
信頼性の高い印刷条件は、再循環体積流量(再循環流量)のドロップ吐出体積流量(吐出流量)に対する低流量比1.5:1で見いだされた。これは、150ml/分の再循環流量に対応する。Xaar1003プリントヘッドの低流体抵抗経路では、この65mPa・sの流体で150ml/分の再循環流量を達成するために、約529mbarの比較的低い差圧DP(DPは、プリントヘッドへの入口パイプ23と戻りパイプ25の間の圧力差である)が必要である。97mPa・sの粘度、および150ml/分の同じ再循環流量の場合、DPは790mbarである必要がある。例えば790mbarを含む印加される差圧の上限は、印加される圧力の変動を低減するために、流体供給要素のより高い仕様を必要とする場合があり、このような流体供給部の設計は標準的なエンジニアリング能力の範囲内である。流体Aの値を表1Aに要約する。これにより、標準的なインクジェット流体、例えば流体D(Sunjet ULX5832)を、30℃で32mPa・sの粘度、非従来型インクジェット流体、例えば、流体A(BASF高粘度開発流体)、C(PEG 400)、K(高粘度開発流体)、H(Delo Katiobond OM6600)、L(BASF Ultracur3D WS07)、およびM(BASF Ultracur3D ST30LV)と比較できる。
【0049】
表1Aで確認できるように、流体A、C、K、H、L、およびMは、従来のインクジェット流体よりも高い粘度を有する。流体Aは30℃で656mPa・sの最も高い粘度を有し、次が流体Hの30℃で182mPa・sの粘度である。流体C、K、L、およびMは、30℃で、63~87mPa・sの範囲内の粘度を有する。流体Aは60℃および70℃の異なる射出温度に加熱され、それぞれ97mPa・sおよび65mPa・sの粘度を達成した。
【0050】
GS6を参照すると、第一のモードで駆動する場合、このヘッドは、ノズル当たりのピクセル当たりの総液滴体積が30plと、より低く堆積させる。これは、7.5plでの四つの副滴、つまり第一の駆動モードを使用するGS12の総液滴量の半分であることに起因する。したがって、28kHzの同じ印刷周波数では、GS12と比較してGS6の場合、吐出流量は100%の負荷(すべてのノズルが射出している場合)で約50ml/分に半減され、同様に1.5:1の流量比は約75ml/分の再循環流量に対応する。粘度が65mPa・sの流体の場合、この流量を達成するために必要な差圧は約250mbarである。粘度97mPa・sの流体の場合、必要なDPは370mbarであり、126mPa・sの粘度の場合、必要なDPは475mbarである。これらの値を、流体AおよびBについて表1Bに要約する。以前の通り流体Aは70℃と60℃の射出温度でそれぞれ65mPa・sおよび97mPa・sの粘度を示し、流体Bを使用し45℃の射出温度で126mPa・sの粘度を示した(30℃での293mPa・sの粘度から低下)。流体Bはまた、高粘度開発流体である。
【0051】
3サイクルモードまたは第二のモードを使用した結果を参照すると、GS6およびGS12ヘッドの副滴量は、第一のモードと比較してわずかに少なく、印刷周波数は、28kHzでの第一のモードと比較して、3サイクル駆動のためにわずか6kHzである。3サイクルモードでは、(第一のHLモードよりも多い)7つの副滴を射出して、ピクセル内に堆積される総液滴体積を形成した。
【0052】
GS12の場合、副滴はそれぞれ12plの体積を有し、または総液滴体積は84plである。GS6の場合、副滴は6plの体積を有し、ピクセルあたりの総液滴体積は42plである。GS12の5:1の再循環比およびGS6の10:1の再循環比の場合、これも150ml/分の再循環流量と約30ml/分の吐出量に相当する。
【0053】
流体A、C、D、H、K、LおよびMをGS12で試験した。流体AおよびKは、流体Dのような従来のインクジェット流体よりもはるかに高い粘度の開発流体である。30℃で32mPa・sの流体D(Sunjet ULX5832 Cyan)と比較して、流体Aは656mPa・sの粘度を示し、流体Kは30℃で72mPa・sの粘度を示す。流体が異なれば、再循環流量を150ml/分に保つために、異なる差圧DPが必要となる。例えば、流体Aは、70℃の温度で65mPa・sの流体粘度で150ml/分の再循環流量を供給するために、約494mbarの差圧DPを必要とする。一方で流体Kは、35℃の温度で53mPa・sの流体粘度で約403mbarの差圧を有する。
【0054】
別の例は、25℃の温度で95mPa・sの流体粘度で774mbarの差圧を有する流体C(PEG400)、45℃の温度で66mPa・sの流体粘度で502mbarの差圧を有する流体H(Delo Katiobond OM6600)、30℃の温度で63mPa・sの流体粘度で479mbarの差圧を有する流体L(BASF Ultracur3D WS07)、27℃の温度で91mPa・sの流体粘度で742mbarの差圧を有する流体M(BASF Ultracur3D ST30 LV)である。
【0055】
対照的に、流体Dは45℃、17mPa・sの粘度で射出された。ピクセル当たりの副滴の頻度および数が同じ設定では、150ml/分の再循環流量を供給するために、わずか129mbarの差圧DPが必要である。
【0056】
第二のモードでの射出可能な流体およびその特性の要約を、GS12プリントヘッドの場合は表1Aに、GS6プリントヘッドの場合は表1Bに示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0057】
したがって、液滴堆積装置1は、液滴堆積ヘッド30、流体供給部40、およびコントローラーを備えて提供され、液滴堆積ヘッドはそれぞれが、ノズル6と、ヘッド内への流体入口23を有し一つまたは複数のノズルで終わる流体入口経路と、一つまたは複数のノズルで始まりヘッドの流体戻り口25で終わる流体戻り口経路と、を有する一つまたは複数の流体チャンバー10を備える。各流体チャンバー10は、圧電材料からなる、およびノズル6から流体液滴を吐出するように電気駆動信号60の印加時に変形可能である、二つの対向するチャンバー壁8を備える。流体供給部40は、流体入口23と流体戻り口25との間で測定される差圧で流体入口23に流体を供給するように構成される。コントローラーは、一つまたは複数のノズルが20℃から90℃の間の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるように、駆動信号を圧電チャンバー壁に印加するように構成されており、流体供給部40によって加えられる差圧は、戻り流体を50ml/分~200ml/分の流量で流体戻り口へ流れ込ませる。
【0058】
Xaar 1003プリントヘッドは、射出温度90℃の流体、例えばホットメルトワックスを用いて動作されている。前述したように、射出温度の上限、およびそれを超えると流体が劣化して射出不能または信頼性が低くなる上限は、特定の流体特性に依存する。
【0059】
液滴堆積装置のいくつかの実施形態では、再循環体積流量(再循環流量)の液滴吐出体積流量(吐出量)に対する比は、信頼性の高い印刷条件を確保するために1.5:1であってもよい。さらに、1.5:1のこの比は、150ml/分の再循環流量に相当することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、流体の粘度は65mPa・sであってもよく、この65mPa・sの流体で150ml/分の再循環流量を達成するには、約529mbarの差圧DP(DPは、プリントヘッドへの入口パイプ23と戻りパイプ25との間の圧力差である)が必要である。別の実施形態では、流体の粘度は、97mPa・sであってもよく、790mbarの差圧DPを必要とする。
【0061】
差圧は、流体入口23に陽圧を印加し、戻り口25に負圧を加えることによって加えられることができる。二つのノズル列のプリントヘッドの場合、二つの戻りポート24a、24bは、下流で組み合わされて、一つの組み合わせた戻り口25内に流れてもよい。
【0062】
いくつかの配置では、流体供給部40は、流体を20℃~90℃の範囲の温度に加熱し、加熱された流体を45mPa・s~130mPa・sの対応する粘度で流体入口に供給するように構成されることができる。そして、流体入口に供給される対応する粘度は、流体が圧力チャンバー10に入る場合、流体の所定の射出粘度を提供することができる。所定の射出粘度は、射出に好適であると予め決定された粘度である。所定の射出粘度は、例えば、表2に示されるような測定値から決定されるように、所定の射出温度に対応することができる。表2の太字の値は、流体が射出された温度および対応する粘度を示す。
【0063】
液滴堆積ヘッドは、流体を射出温度に加熱するように構成されるヒーター58、59をさらに備えてもよい。このようなヒーター、ヒーター58は、流体供給部40内に設けられてもよい。さらに、または代わりに、オンボードヒーター59をプリントヘッド30内に設けることができ、ヒーター59は圧力チャンバー10に近接して熱的に接触して配置されることが望ましい。
【0064】
図1(および表1)から、高粘度流体の射出温度での粘度は、最大30mPa・s程度の従来の粘度範囲よりもはるかに高い可能性があることが分かる。これらの流体では、30℃での粘度は、極めて高い場合がある。したがって場合によっては、30℃での流体の粘度は、60mPa・s~660mPa・sの範囲にあってもよい。好適な射出粘度は、流体を加熱することによって得られることができる。流体A、B、F、およびGは、BASFによって配合された高粘度開発流体であり、日常の実験により、好適な射出粘度で射出できる好適な高粘度流体を特定できることが期待される。例えば、流体Aの場合、30℃で656mPa・sの粘度は70℃で65mPa・sに低下し射出可能になる。このような流体は、例えば、標準流体の高分子量および/または粒子充填量の変形であり、標準的な溶媒を使用してもよい。別の例は、流体Hによって示され、これは、50℃で48mPa・sまで低下する30℃で182mPa・sの比較的高い粘度を有する。したがって、実験から、30℃で60~660mPa・sの範囲の粘度(または20℃で30mPa・s~1392mPa・sの範囲の粘度)を有する流体の場合、各流体は、20℃~90℃の範囲の温度で45mPa・s(90℃で流体A、図1)~120mPa・s(20℃で流体C、図1)の範囲の対応する粘度を有することが見出された。同様に、表1の実験から、20℃で30mPa・s~1392mPa・sの範囲の粘度を有する流体の場合、流体を射出できる対応する粘度の温度を明らかにできた。この場合、20℃~90℃の射出温度により、45mPa・s(流体D、25℃で42mPa・s、および20℃で55mPa・sの粘度でも射出可能)~120mPa・s(流体G、30℃で108mPa・s、もしくは流体F、35℃で119mPa・s)の範囲、または流体A(55℃で125mPa・s)、B(45℃で126mPa・s)、C(20℃で126mPa・s)、およびH(35℃で129mPa・s)の場合は、最大130mPa・s)の射出可能な粘度が選択された。
【0065】
ヘッドの流路に関して、流体入口と流体戻り口との間で測定される流体抵抗は、流体チャンバー当たり800mbar/(ml・分)以下であってもよい。開口型設計の圧力チャンバーは、プリントヘッド内で最高の流体抵抗をもたらす。このような流体抵抗は、0.0225mmの一定の断面積(非作動状態)、1.8mmのチャンバー長さ(チャンバー長さは断面積に垂直な方向に沿っている)を有する圧力チャンバーによってもたらされる抵抗と同じか、それよりも低くてもよい。
【0066】
さらに、ヘッド30のいくつかの実施態様では、ヘッドの動作は、効率的な動作モードを表す場合があり、駆動信号の最大ピーク間電圧は35V以下であり、11m/秒の液滴吐出速度で7~120plの体積の液滴を吐出する。いくつかの実施形態では、ピーク間電圧は、30V未満であってもよく、11m/秒の液滴吐出速度で7~120plの体積の液滴を吐出する。さらに、いくつかの実施形態では、ピーク間電圧は20V未満であってもよく、11m/秒の液滴吐出速度で7~120plの体積の液滴を吐出する。
【0067】
粘度勾配
粘度曲線の変化率も評価した。これらは図2にプロットされている。粘度勾配は、流体の温度が増加するにつれて減少し、標準流体D、Eは、35~40℃付近の温度で勾配は1未満に低下することが分かる。残りの高粘度流体は、50℃以上の温度で勾配が1未満に低下する。具体的には、高粘度流体A、Bは、流体の分解限界の近傍で、1未満の粘度勾配に低下するか、または到達するだけである。
【0068】
オーネゾルゲ数
本発明者らは、信頼できる印刷とオーネゾルゲ数Ohとの間に非常に強い関係があることを見出した。オーネゾルゲ数は以下のように定義される。
【数1】
式中、
ηは液体粘度であり、
ρは液体密度であり、
σは表面張力であり、
Lは代表長さ(典型的には、液滴径)であり、
Reはレイノルズ数であり、
Weはウェーバー数である。
【0069】
レイノルズ数は、流体密度ρ、流体速度v(この場合は吐出時の液滴速度)、代表長さ寸法L(この場合はノズル径)、および流体の動的粘度の積の比として定義される。
【数2】
【0070】
ウェーバー数Weは、慣性力と流体の表面張力σから生じる力の比である。これは、
【数3】
と、定義され、上記のρは流体密度、vは流体速度(この場合は吐出時の液滴速度)、およびLは代表長さ寸法(この場合はノズル直径)である。
【0071】
したがって、様々な温度での各流体のオーネゾルゲ数を計算でき、入力値と数値を表4に示す。値は、11m/秒の液滴吐出速度、およびGS12ノズル直径の長さL=3.50E-05mに関する。
【表5】
【0072】
図3は、流体A、B、C、D、E、F、G、H、K、L、およびMについて、ウェーバー数We対レイノルズ数Reのプロットである。流体の凡例は、表3に記載されている。従来の「良好」領域である「印刷可能流体」領域内の三つのデータポイントは、標準インクジェットインクD、E(Itaca MA5115およびSunjet ULX5832)、ならびにほぼ標準粘度34mPa・sの開発流体Gである。これらの三つのインクの場合、オーネゾルゲ数は1未満、Oh<1である。
【0073】
他の正常に射出された流体のデータ位置は、Oh=1のトレンドラインの左側、すなわちOh>1の「粘性が高すぎる」領域に位置し、全てが「液滴形成に不十分なエネルギー」領域を示す、傾向線T1で示される線より上にある。傾向線T2は「スプラッシング」の開始を表し、その上では液滴が噴霧に分解する。傾向線Oh=0.1より右側、すなわちOh<0.1では、サテライトは、吐出された液滴と共に形成される傾向があり、印刷品質が劣化する。
【0074】
低抵抗ヘッド、例えばXaar 1003プリントヘッドと組み合わせて第二の駆動モード(3サイクルモード)を使用すると、オーネゾルゲ数0.25<Oh<1.75の様々な流体を射出できることが分かった。第一の駆動モードを使用して、ハイレイダウンモードの、さらにより高いOhの値を有する流体を0.44<Oh<4の範囲で射出することができる。他の実施例では、オーネゾルゲ数が0.44<Oh<3の範囲、または0.44<Oh<2.5の範囲の流体を、第一の駆動モードを使用して射出することができる。
【0075】
したがって、液滴堆積装置のいくつかの実装形態では、流体の特性は、流体のオーネゾルゲ数が1.5より大きなものであることができる。
【0076】
液滴堆積装置が、上記のように第一の駆動モード(またはハイレイダウンモード)に従って動作される場合、チャンバー内の流体は、20℃~90℃の射出温度で、45mPa・s~130mPa・sまでの範囲内の粘度を有することができる。第一の駆動モードを使用する場合、このような流体は0.44より大きく2.5より小さいオーネゾルゲ数を有することができる。別の実施例では、流体は、0.44より大きく4未満または3未満のオーネゾルゲ数を有することができる。さらに、流体は、好ましくは1.5より大きいオーネゾルゲ数を有することができる。
【0077】
あるいは、液滴堆積装置1は、第二の三サイクルの駆動モードで動作され、チャンバー10内の流体は、20℃~90℃の射出温度で45mPa・s~65mPa・sまでの範囲内の粘度を有することができる。このような流体について、オーネゾルゲ数は1より大きく2未満であってもよく、さらに流体は、好ましくは1.5より大きく2未満であるオーネゾルゲ数を有してもよい。
【0078】
第一の駆動モードは、同じ速度の液滴を吐出するために、第二の駆動モードの最大ピーク間駆動電圧よりも低い最大ピーク間駆動電圧を有する場合がある。いくつかの実施形態では、第一の駆動モードと第二の駆動モードとの間の駆動信号60のピーク間電圧は、同じ射出粘度で同じ流体に対して10Vであってもよく、同じ液滴速度を達成してもよい。
【0079】
流体供給部および液滴速度
流体は、図7の入口パイプ23および戻りパイプ25を介してプリントヘッド30との間で供給されることができる。
【0080】
流体供給部40は、例えば、好適な範囲、例えば適用される駆動モード好適な範囲内に粘度を下げるのに十分高い射出温度に流体を加熱することができるヒーター58を備えてもよい。さらに、または代わりに、オンボードヒーター59を、流体を安定な射出温度で供給および/または維持するために、流体チャンバー10を含む層の近傍にまたは層にプリントヘッド30に搭載されて設けてもよい。
【0081】
駆動モード、例えば第一のモードを使用する場合、圧電壁8の高い作動速度は、壁の著しい加熱、したがってチャンバー内の流体の著しい加熱を引き起こす可能性があることが分かった。作動速度は、典型的には、デューティサイクルによって表される。デューティサイクルは、プリントヘッドのサイクル当たりのノズル吐出の割合を表す。より多くの液滴を吐出するためにデューティサイクルを増やすことは、アクチュエータに送信する駆動信号の数を増やすことを意味する。これにより、圧電壁8内で発生する熱が増加する。この発生した熱は、流体チャンバー内の流体中に放散され、それにより流体を加熱し、物理的特性を変更、例えば粘度の低下、および図1の粘度-温度曲線上の位置を変更させる。
【0082】
低負荷から高負荷への移行することは、一般的に流体の粘度が低下することを意味し、これは、流体のオーネゾルゲ数を瞬時に変更させ、図3のウェーバー数-レイノルズ数プロット上の位置のシフトにより、液滴安定性の位置を変更させる可能性がある。さらに、粘度が低下すると、液滴の速度が増加するため、液滴の着地位置に影響を及ぼし、印刷品質が低下する可能性がある。
【0083】
チャンバー壁の作動によって発生する熱を管理または放散しなければ、印刷の信頼性に影響を与える可能性がある。
【0084】
したがって、信頼できる印刷品質を確保するために、デューティサイクルの変更中に液滴速度を動的に(すなわち、ヘッドの動作中に定期的に)制御することが望ましい。これは、液滴速度を変化させる流体温度の変更に応答して駆動電圧を変化させることによって達成することができる。例えば、駆動電圧が低いと、液滴の速度は低下する。さらに、作動壁は強くは駆動されず、作動壁によって発生する熱も減少する。液滴速度は、流体温度と駆動電圧との間のフィードバックループを使用することによって動的に制御されることができ、液滴速度、および流体の温度および粘度は、ある程度プリントヘッドの操作中に能動的に管理されることができる。
【0085】
作動チャンバー壁の駆動信号を生成するために駆動信号生成回路によって消費される電力は、作動チャンバー壁によって生成される熱の尺度として使用されてもよい。例えば、デューティサイクルが増加するにつれて、駆動信号を生成するために駆動信号生成回路によって引き出される電流および駆動信号の数の増加が増加する。したがって、引き出される電流の測定により、圧力チャンバー10内の流体に対する作動壁による加熱の効果を、およびしたがって、より高いデューティサイクル信号の印加時にチャンバー内の流体が瞬時に加熱されるため、液滴速度の予想される増加を好適に測定する。したがって、駆動信号生成回路80によって引き出される電流は、定期的に測定され、コントローラー54に提供されてもよい。コントローラーは、電流値から、駆動信号の新しいピーク間電圧を決定し、駆動信号生成回路80に新しい値を提供する。駆動信号生成回路80は、液滴速度が、確実に液滴速度の所定の値に実質的に等しいままにするために、新しいピーク間電圧を有する後続の駆動信号(および副滴信号)を生成する。
【0086】
液滴粘度の所定の値は、液滴堆積装置の動作に好適であるように以前に決定された値である。好ましくは、吐出された液滴の速度は、信頼できる印刷品質を確保するために、所定の液滴速度の近く、または実質的に等しく保たれる。
【0087】
コントローラーが、低減されたピーク間電圧を印加することを決定した場合、結果として生じる低減されたピーク間電圧を印加する駆動信号はまた、作動壁によって発生する熱を減少させ、流体に対するチャンバー壁の加熱効果をある程度修正する。
【0088】
したがって、駆動信号生成回路によって引き出される電流に応答するピーク間電圧の調整は、圧力チャンバー10内の流体の温度を制御するために、(液滴速度への影響と比較して、より少ないが)ある程度使用されてもよい。
【0089】
コントローラー54は、駆動信号生成回路80によって得られる電流値を、例えば、以前に生成されコントローラー54によってアクセス可能なルックアップテーブルの形で格納されたテストデータと比較することができる。ルックアップテーブルから、コントローラー54は、電流値および所定の液滴電圧に対応する低減されたピーク間電圧値を選択し、ここで、新しいピーク間電圧は、測定された電流値によって生じると予想される新しい流体粘度の液滴速度を安定させるために、テスト実行で以前に決定されている。この方法で、液滴速度は安定したままであり、確実に動作するプリントヘッドを提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、駆動信号生成回路80は、プリントヘッド30のヘッド制御回路56内に配置される場合がある。この場合、修正されたピーク間の値の決定は、駆動信号生成回路80によって引き出される電流の測定値を受信すると、ヘッド制御回路によって実行されることができる。ヘッド制御回路56は、電流値および所定の液滴電圧に対応する変更されたピーク間電圧値を選択し、それを駆動信号生成回路80に提供する。
【0091】
再循環プリントヘッドを使用する液滴堆積装置のいくつかの実施形態では、インクの戻り流を使用して、作動壁によって発生する熱を運び去ることができる。例えば、フィードバックループは、流体の温度測定値を提供するプリントヘッドと、それに応じて再循環流量を変更する流体供給部との間に存在してもよい。
【0092】
高粘度流体で動作する場合、上記の低抵抗プリントヘッドを備える液滴堆積装置は、装置の制御システムの様々な構成要素によって制御されることができる。ここで、これらは、液滴堆積装置1のブロック図である図13、および液滴堆積装置の制御システム90のブロック図である図14を参照して説明される。
【0093】
液滴堆積装置1は、プリントヘッド30、ユーザインターフェース50、例えばPC、流体供給部40、およびコントローラー54を備える。コントローラー54は、ユーザインターフェース50から画像データを受信し、各ピクセルラインについて、プリントヘッド30内の流れ要素20のチャンバー10から吐出される液滴のピクセルクロックトリガーおよび副滴データを決定する。コントローラーは、プリントヘッド30のヘッド制御回路56内に備えられる駆動信号生成回路80に、ピクセルクロックトリガーおよび副滴データを供給する。駆動信号生成回路は、各圧力チャンバー10に対して駆動信号60を生成し、それらをプリントヘッド30内に備えられる流れ要素20のチャンバー10(a)~10(n)に提供する。流体は、流体供給部40から流れ要素20に供給される。流体供給部40は、例えば、所定の再循環流量を提供するために、ヘッドを通る流体の流量を適合させるように構成される流体供給コントローラー52を備える。流体供給コントローラー52は、プリントヘッド30の入口パイプと戻りパイプとの間に必要な差圧を印加するために、流体供給部内のポンプ(図示せず)を制御するように構成される。必要な差圧値は、ユーザインターフェース50によって流体供給コントローラー52に提供されてもよい。
【0094】
より具体的には、制御システム90は、流体入口と流体戻り口との間で測定される差圧で流体入口に流体を供給するように構成される流体供給部を制御するための流体供給コントローラー52を備えることができ、流体入口経路はヘッド内への流体入口で始まり一つまたは複数のノズルで終わり、流体戻り口経路は一つまたは複数のノズルで始まりヘッドの流体戻り口で終わり、および流体供給部によって加えられる差圧により、50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を流体戻り口内に流れ込ませる。
【0095】
インクを所定の温度に加熱することを可能にするために、流体供給部40は、流体と熱的に接触しているヒーター58をさらに備えてもよい。ヒーターは、例えば、流体供給コントローラー52内の流体供給部40内に設けられるヒーターコントローラーによって制御されてもよい。ユーザインターフェースは、流体が圧力チャンバー10に入る場合に流体の所定の温度を確保するように、流体供給部内の流体が加熱される温度を決定するヒーターコントローラーに所定の温度の値を提供することができる。
【0096】
さらに、または代わりに、オンボードヒーター59は、プリントヘッド内に、ならびに圧力チャンバー内の流体または圧力チャンバーへの入口近傍の場所に近接して、および熱的に接触して設けられてもよい。ヒーター59は、ヘッド制御回路56内に設けられるヒーターコントローラーによって制御されてもよい。ユーザインターフェース50は、例えば、コントローラー54を介して、圧力チャンバー10内の流体の所定の温度を確保するために、ヒーターが提供する熱量を決定する所定の温度の値を、オンボードヒーターコントローラーに提供することができる。流体の流路内にヒーターを設けることにより、高粘度流体の射出を支援し、確実に流体の射出温度以上に維持し、所定の射出粘度で流体を提供する。
【0097】
図13はさらに、液滴堆積装置1内に設けられる媒体エンコーダー回路70を示す。メディアエンコーダ回路70は、ピクセルクロック信号をコントローラー54に提供して、コントローラーが、ピクセルクロックトリガーの形で、媒体上のピクセルラインへの液滴のタイミング、およびしたがって正しい配置を決定できるようにする。ピクセルクロックトリガーは、ピクセルクロックトリガーに応答して作動壁への駆動信号の提供を制御する駆動信号生成回路80に提供される。
【0098】
デューティサイクルの変化によって引き起こされる流体温度の変化中に液滴速度を安定化させるために、液滴堆積装置1は、それゆえ駆動信号生成回路80を備えてもよく、コントローラー54は、駆動信号生成回路80によって消費される電流値を受け取り、吐出される液滴の液滴速度を変更するように電流値に応答して駆動信号60の変更されたピーク間電圧を決定するように構成される。そして、変更されたピーク間電圧を駆動信号生成回路に提供することができ、これにより変更されたピーク間電圧を有する後続の駆動信号を生成する。 したがって、駆動信号生成回路80は、コントローラー54から変更されたピーク間電圧を受信し、液滴堆積ヘッドの一つまたは複数の流体チャンバーの一つまたは複数のノズルから吐出される液滴の液滴速度を変更するために、変更されたピーク間電圧で駆動信号60を生成するように構成されることができる。コントローラーはさらに、ノズルが20℃~90℃の所定の射出温度で45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるために、駆動信号を圧電チャンバー壁に印加するように構成されることができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、駆動信号生成回路80はヘッド制御回路56内に設けられてもよい。さらに、コントローラー54の代わりに、ヘッド制御回路56は、駆動信号生成回路80によって消費される電流値を受信し、吐出される液滴の液滴速度を変更するために電流値に応答して駆動信号60の変更されたピーク間電圧を決定するように構成されることができる。そして、変更されたピーク間電圧を波形生成回路80に提供することができ、これにより、変更されたピーク間電圧を有する後続の駆動信号60を生成する。
【0100】
さらに、液滴堆積装置1を動作させる方法が提供される。方法は、(i)50ml/分~200ml/分の流量で各チャンバー10を通る流体の再循環流を生じさせるために、液滴堆積ヘッド30の流体チャンバー10に流体を供給する工程と、(ii)流体チャンバー10内の流体が、20℃~90℃の所定の射出温度であり45mPa・s~130mPa・sの範囲の粘度に対応するように、流体をヘッドの流体入口23に供給する前および/または後に流体を加熱する工程と、(iii)一つまたは複数の液滴の形でチャンバーに供給された流体の一部を吐出するために、駆動信号60を一つまたは複数のチャンバーの圧電壁8に印加する工程、およびチャンバーに供給されたが吐出されない過剰な流体をヘッド30の流体戻り口25に50ml/分~200ml/分の流量で戻す工程と、を含む。
【0101】
方法は、液滴堆積装置1のコントローラー56に、チャンバー壁8の作動のデューティサイクルに基づく電流信号を提供する工程をさらに含み、コントローラー54、56は、吐出された液滴の液滴速度を所定の液滴速度に実質的に等しく保つために、電流値に応答して駆動信号60の変更されたピーク間電圧を決定する。印刷の信頼性における目に見える欠陥を避けるために、液滴速度は所定の液滴速度の+/-1V以内に保たれることができる。
【0102】
方法は、流体チャンバー10に到達する加熱された流体が所定の射出温度に実質的に等しくなるようにするために、流体供給部40内の流体を加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0103】
あるいは、または代わりに、方法は、流体チャンバー10に到達する加熱された流体が所定の温度に実質的に等しくなるようにするために、液滴堆積ヘッド30のオンボードの流体を加熱する工程をさらに含んでもよい。
【0104】
印刷の信頼性における目に見える欠陥を避けるために、射出温度は所定の温度の+/-1℃以内に保たれることができる。いくつかの実施形態では、射出温度は所定の温度の+/-0.5℃内に保たれることができる。
【0105】
方法は、液滴堆積装置1の制御システム90によって実行されてもよい。制御システムのブロック図を図14に示す。制御システム90は、コントローラー54および駆動信号生成回路80を備える。コントローラー54は、駆動信号生成回路80から所定の液滴速度および電流値92を受信し、格納されたテストデータに基づいて、電流値および所定の液滴速度に応答して変更されたピーク間電圧を決定するように構成される。駆動信号生成回路80は、変更されたピーク間電圧を受信し、変更されたピーク間電圧94で駆動信号60を生成するように構成され、そして生成された駆動信号60は吐出された液滴の液滴速度を変更する。生成された駆動信号60は、それが所定の液滴速度に実質的に等しくなるように液滴速度を変更することができる。印刷の信頼性における目に見える欠陥を避けるために、液滴速度は所定の液滴速度の+/-1V以内に保たれることができる。
【0106】
図14のブロック図に示される実施形態では、駆動信号生成回路80は、プリントヘッドに搭載されてもよいが、これは必須ではない。
【0107】
制御システムの別の実施形態では、上記のコントローラー54の機能は、ヘッド制御回路56によって代わりに実行されてもよく、コントローラー54をコントローラー56に置き換える同一のブロック図が想定されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、制御システムは、ヒーター58、59およびヒーターコントローラー57をさらに備えてもよく、ヒーターは、チャンバー10に供給される流体を加熱するように構成され、ヒーターコントローラー57はコントローラー56から動作データ96を受信するように構成され、動作データは所定の液滴速度および駆動信号生成回路80の電流値92に基づいており、ヒーターコントローラー57は、チャンバー内の流体を実質的に所定の射出温度に加熱するために、動作データ96に基づいてヒーターを制御するようにさらに構成される。ヒーター58は流体供給部40内に配置されてもよく、ヒーターコントローラー57は流体供給コントローラー52内に設けられてもよい。さらに、または代わりに、ヒーター59はプリントヘッド30に搭載されて配置されてもよく、ヒーターコントローラー57はプリントヘッドのヘッド制御回路56内に設けられてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、駆動信号生成回路80はヘッド制御回路56内に設けられてもよい。別の実施形態では、駆動信号生成回路80はコントローラー54内に設けられてもよい。
【0110】
上記および本明細書の液滴堆積装置への参照はインクジェットプリンタを含み、液滴堆積ヘッドへの参照はインクジェットプリントヘッドを含むことは言うまでもない。印刷の信頼性における目に見える欠陥を避けるために、液滴速度は所定の液滴速度の+/-1V以内に保たれることができる。さらに、または代わりに、射出温度は所定の温度の+/-1℃内に保持されてもよく、いくつかの実施形態では、射出温度は所定の温度の+/-0.5℃内に保持されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、第一の駆動モードと第二の駆動モードとの間の駆動信号のピーク間電圧は、同じ射出粘度で同じ流体に対して10Vであってもよく、同じ液滴速度を達成してもよい。
【0112】
本開示はまた、液滴堆積ヘッド、流体供給部およびコントローラーを備える液滴堆積装置を提供し、液滴堆積ヘッドは、それぞれがノズルを有する一つまたは複数の流体チャンバーと、ヘッド内への流体入口を有し、一つまたは複数のノズルで終わる流体入口経路と、一つまたは複数のノズルで始まり、ヘッドの流体戻り口で終わる流体戻り口経路と、を備え、各流体チャンバーは、圧電材料からなる、およびノズルから流体液滴を吐出するように電気駆動信号の印加時に変形可能である、二つの対向するチャンバー壁を備え、流体供給部は流体入口と流体戻り口との間で測定される差圧で流体入口に流体を供給するように構成され、コントローラーは、一つまたは複数のノズルが20℃~90℃の射出温度で45mPa・s~120mPa・sの範囲の粘度を有する流体の液滴を堆積させるように駆動信号を圧電チャンバー壁に印加するように構成され、流体供給部によって加えられる差圧により、50ml/分~200ml/分の流量で戻り流体を流体戻り口に流れ込ませる。このような液滴堆積装置の任意のまたは好ましい特徴は、上記の実施形態に関連して説明された通りである。
【0113】
このような液滴堆積装置を動作させるための方法も提供され、方法は、液滴堆積ヘッドの流体チャンバーに流体を供給して、吐出量よりも大きな量で各チャンバーを通る流体の再循環流を生じさせる工程と、流体チャンバー内の流体が、所定の射出温度にあり、45mPa・s~120mPa・sの範囲の粘度に対応するように、流体をヘッドの流体入口に供給する前および/または後に流体を加熱する工程と、一つまたは複数の液滴の形でチャンバーに供給された流体の一部を吐出するために、駆動信号を一つまたは複数のチャンバーの圧電壁に印加する工程、およびチャンバーに供給されたが吐出されない過剰な流体をヘッドの流体戻り口に戻す工程と、を含む。このような方法の任意のまたは好ましい特徴は、上記の実施形態に関連して記載されるとおりである。このような方法を実行するための制御システムも提供される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】