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特表2022-533112多数回使用の飲用ストローおよびその製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】多数回使用の飲用ストローおよびその製造
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/30 20060101AFI20220713BHJP
   C03C 17/32 20060101ALI20220713BHJP
   A47G 21/18 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C03C17/30 A
C03C17/32 A
A47G21/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568164
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020062362
(87)【国際公開番号】W WO2020229218
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19174512.4
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521264109
【氏名又は名称】ヒルゲンベルク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HILGENBERG GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲンベルク,インゴ
【テーマコード(参考)】
3B115
4G059
【Fターム(参考)】
3B115AA03
3B115AA22
3B115BA18
3B115DA06
4G059AA04
4G059AC22
4G059FA25
4G059FA27
4G059FA30
(57)【要約】
本発明は、ガラスで構成されるチューブベース本体(2)を備えるチューブ(1)を扱い、チューブベース本体(2)の少なくとも内部は疎水性コーティング(3)で少なくとも部分的に覆われている。このようなチューブ(1)の飲用ストローとしての使用は、衛生要求を満たし良好な洗浄可能性を有する、多数回使用の環境に優しい飲用ストローをもたらす。本発明は、このようなチューブを製造するためのプロセスも扱う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲用ストローとして用いられるように適合されるチューブ(1)であって、ガラスで作製されたまたはガラスで構成されるチューブベース本体(2)を備え、前記チューブベース本体(2)の少なくとも内部は疎水性コーティング(3)で少なくとも部分的に覆われており、前記ガラスチューブ本体(2)は、少なくとも前記疎水性コーティング(3)によって覆われる部分において、疎水化、好ましくはシラン化されており、前記コーティング(3)は抗菌剤(4)をさらに含む、チューブ(1)。
【請求項2】
前記チューブベース本体(2)の前記内部は、疎水性コーティング(3)で全体的に覆われている、請求項1に記載のチューブ(1)。
【請求項3】
前記チューブ本体(2)は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスで作製される、請求項1または2に記載のチューブ(1)。
【請求項4】
前記コーティング(3)は疎水性ポリマー材料を含み、前記疎水性ポリマー材料は、好ましくは、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素および疎水性無機-有機ハイブリッドポリマーからなる群から選択される、先述請求項の一項に記載のチューブ(1)。
【請求項5】
前記抗菌剤は、銀、好ましくは元素またはコロイド状の銀、銀の化合物、好ましくは硝酸銀、ならびに銅およびその化合物からなる群から選択される、請求項1~4の一項に記載のチューブ(1)。
【請求項6】
前記チューブ(1)は、3~10mmの間、好ましくは5~8mmの間の内径、および/または、0.8~3mmの間、好ましくは1~2mmの間の壁厚、および/または、100~350mmの間、好ましくは120~300mmの間の長さを有し、および/または、前記コーティング(3)は、0.1μm~1000μmの間、好ましくは1μm~500μmの間、より好ましくは10μm~100μmの間の厚さを有する、先述請求項の一項に記載のチューブ(1)。
【請求項7】
前記チューブ本体(2)は、真っ直ぐな円筒形状または角度の付いた円筒形状またはよじれた円筒形状を有する、先述請求項の一項に記載のチューブ(1)。
【請求項8】
コーティングされたガラスチューブを製造するためのプロセスであって、
a)ガラスチューブベース本体(2)を提供するステップと、
b)疎水性ポリマー材料を含む溶液または懸濁液を提供するステップと、
c)前記管状本体(2)を前記溶液または前記懸濁液に浸漬させることによって、前記管状本体(2)とステップb)で提供された前記溶液または前記懸濁液とを、前記管状本体(2)の少なくとも内面において接触させるステップと、
d)任意選択的に、ステップc)で得られた前記管状本体(2)を乾燥させるステップと、
e)ステップc)で得られた前記チューブ(1)を熱処理するステップと、を含む、プロセス。
【請求項9】
ステップb)で提供される前記溶液は、0.5~10重量%、好ましくは1.0~2.0重量%の疎水性ポリマー材料を含む溶液であり、溶媒は好ましくは水であり、および/または、前記疎水性ポリマー材料は、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素および無機-有機ハイブリッドポリマーからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップb)の前記溶液は、好ましくは銀、銅およびそれらの化合物からなる群から選択され、好ましくは元素もしくはコロイド状の銀または硝酸銀である抗菌剤をさらに含む、請求項8または9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップd)において、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも250℃、より好ましくは少なくとも300℃の温度が用いられ、および/または、ステップd)の前記熱処理は、少なくとも5分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分、さらにより好ましくは少なくとも60分の間実行される、請求項8~10の一項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップc)は、ステップb)で提供された前記溶液に前記チューブを浸漬させること、または、ステップb)で提供された前記溶液とともに前記チューブを気化させること、または、表面拡散を含む、請求項8~11の一項に記載のプロセス。
【請求項13】
疎水性コーティング(3)を備えるガラスで作製された管状ベース本体(2)の飲用ストローとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、多数回使用のためのガラスで作製された飲用ストローおよびその製造に関する。本発明の多数回使用のストローは多数回使用可能であり、その洗浄可能性が向上されており、さらには食器洗浄機で使用可能である。その製造方法は、低コストかつ高耐久を有する上記飲用ストローの製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
従来の飲用ストローは硬質プラスチックで作製されており、非常に薄い壁および非常に滑らかな表面を可能にする。通常、飲用ストローは、飲用ストローの一部がある方向に曲げられることが可能となる、よじれ点を有している。
【0003】
しかしながら、最近のヨーロッパ規制は、将来のために、プラスチック廃棄物を回避するために、飲用ストローがプラスチックなどの1回使用の材料から製造され得ることを禁止する。そのため、飲用ストローを製造するために、およびヨーロッパ連合による環境保護要求を満たすために、他の材料を探さなければならない。
【0004】
特許文献DE 10 2007 045935 A1は、キャリア本体、任意選択的には孔の大きさが低減されたフィルタ層であって、任意選択的にはそのうちの1つが試薬層である少なくとも2つの細長いきれで構成されたものに関する、生産力試験を開示している。
【0005】
特許文献US2018/112083A1は、チューブ、およびチューブの内壁のためのコーティングを開示している。
【0006】
特許文献US2006/029808A1は、150°よりも大きい水接触角度を有する超疎水性コーティングを開示している。コーティングは、1週間水に浸漬された後も超疎水性を維持し得る。
【0007】
特許文献US 5 112 658 A1は、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノエンとポリエンと硬化開始剤との反応生成物である表面硬化された組成物を有する、コーティングされたガラス容器を開示している。コーティングは、ガラス容器の外面または内面に結合されて硬度および強度を増大させる。
【0008】
特許文献US2004/082699A1は、フッ素化成分と接着促進化合物とを含む組成物によって提供される、耐久性、耐候性および耐擦傷性のコーティングを開示している。接着促進化合物は、アルコキシ基、フルフリル含有リング構造、および反応基を含み得る。
【0009】
特許文献TWM572182は、たとえばアシ、コムギまたは竹などの植物の中空茎で作製される飲用ストローを開示している。上記飲用ストローの内面は、飲用ストローの内面をより滑らかで耐久性のあるものにするために、亜麻仁油または粘り気のある米水のようなグリースで覆われ得る。
【0010】
さらに、特許文献AU2018102071A4は、コムギ茎で作製された環境に優しい飲用ストローを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、多数回使用される飲用ストローは、各使用後に定期的に洗浄されなければならないが、これは飲用ストローの長い円筒形の形状のため難しい。特に美食学の分野においては、飲用ストローの効率的で速い洗浄が保証されなければならない。
【0012】
水および洗浄液で飲用ストローを洗浄するほか、こびり付いたオフまたは飲み物の残り、たとえばフルーツミルクセーキまたはスムージに含まれ得る果実粒子を取り除くために、たとえばパイプクリーナなどの小さなブラシの使用も必要とされ得る。しかしながら、上記パイプクリーナは、容易によじれて、それ自体、再び洗浄なれなければならず、しばしば衛生要求を満たさない。
【0013】
そのため、先行技術の環境保護のための飲用ストローの典型的な課題は、非常に洗浄が難しいことであり、使用者の嫌悪の一因となり得る。さらに、たとえば美食に関する目的のための迅速で効率的な洗浄は保証され得ない。
【0014】
したがって、本出願の目的となる技術的課題は、容易な洗浄可能性を有する、多数回使用の環境に優しい飲用ストローを提供することである。さらに、本出願の目的となる技術的課題は、このような飲用ストローの製造のプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的となる技術的課題は、請求項1に記載のチューブ、請求項8に記載のこのようなチューブを製造するためのプロセス、および請求項13に記載の飲用ストローのための疎水性コーティングを有するガラスチューブの使用によって解決される。さらなる利点および好ましい実施形態は、従属請求項において規定される。
【0016】
本発明は、それぞれ単独でまたは組み合わせでなされ、さらに、本発明の目的となる技術的課題を解決することに貢献する、以下の局面、主題および好ましい実施形態を提供する。
【0017】
1.ガラスで作製されたまたはガラスで構成されるチューブベース本体を備えるチューブであって、チューブベース本体の少なくとも内部が疎水性コーティングで少なくとも部分的に覆われている、チューブ。
【0018】
2.チューブ本体がソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスまたは石英ガラスで作製される、項目1に係るチューブ。
【0019】
3.コーティングが疎水性ポリマー材料を含む、先行する項目の1つに係るチューブ。
4.ポリマー材料が、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素および無機-有機ハイブリッドポリマーからなる群から選択される、項目3に係るチューブ。
【0020】
5.コーティングが抗菌剤をさらに含む、項目3または4の1つに係るチューブ。
6.上記抗菌剤が、銀および銅ならびにそれらの化合物からなる群から選択される、項目5に係るチューブ。
【0021】
7.抗菌剤が銀であり、元素またはコロイド状である、項目6に係るチューブ。
8.抗菌剤が硝酸銀である、項目6に係るチューブ。
【0022】
9.上記チューブが3~10mmの間、好ましくは5~8mmの間の内径を有する、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0023】
10.チューブが0.8~3mmの間、好ましくは1~2mmの間の壁厚を有する、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0024】
11.コーティングが0.1μm~1000μmの間、好ましくは1μm~500μmの間、より好ましくは10μm~100μmの間の厚さを有する、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0025】
12.上記チューブが100~350mmの間、好ましくは120mm~300mmの間の長さを有する、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0026】
13.チューブ本体が真っ直ぐな円筒形状または角度の付いた円筒形状またはよじれた円筒形状を有する、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0027】
14.チューブベース本体の少なくとも内部が疎水性コーティングで全体的にコーティングされている、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0028】
15.チューブベース本体が疎水性コーティングで全体的に覆われている、先行する項目の1つに係るチューブ。
【0029】
16.ガラスチューブ本体が、少なくとも疎水性コーティングによって覆われる部分において、疎水化、好ましくはシラン化される、先行する請求項の1つに係るチューブ。
【0030】
そのため、ガラスに対する疎水性ポリマーコーティングの接着をさらに向上させるために、コーティングが施される前にガラス自体が疎水性処理を受ける。
【0031】
17.コーティングされたガラスチューブを製造するためのプロセスであって、
a)ガラスチューブベース本体を提供するステップと、
b)疎水性ポリマー材料を含む溶液または懸濁液を提供するステップと、
c)管状本体とステップb)で提供された溶液または懸濁液とを、管状本体の少なくとも内面において接触させるステップと、
d)任意選択的に、ステップc)で得られた管状本体を乾燥させるステップと、
e)ステップc)で得られたチューブを熱処理するステップと、を備える、プロセス。
【0032】
18.ステップb)で提供される溶液が0.5~10重量%、好ましくは1.0~2.0重量%の疎水性ポリマー材料を含む溶液であり、溶媒は好ましくは水である、項目18に係るプロセス。
【0033】
19.疎水性ポリマー材料が、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素および無機-有機ハイブリッドポリマーからなる群から選択される、項目17または18に係るプロセス。
【0034】
20.ステップb)の溶液が抗菌剤をさらに含む、項目17~19のいずれか1つに係るプロセス。
【0035】
21.抗菌剤が、銀および銅ならびにそれらの化合物からなる群から選択される、項目20に係るプロセス。
【0036】
22.抗菌剤が銀であり、元素またはコロイド状である、項目21に係るプロセス。
23.抗菌剤が硝酸銀である、項目21に係るプロセス。
【0037】
24.ステップd)において、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも250℃の温度が用いられる、先行する項目の1つに係るプロセス。
【0038】
25.ステップd)の熱処理が、少なくとも5分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分、さらにより好ましくは少なくとも60分の間実行される、先行する項目の1つに係るプロセス。
【0039】
26.ステップc)が、ステップb)で提供された溶液にチューブを浸漬させることを含む、先行する項目の1つに係るプロセス。したがって、これは、ディップコーティングである。
【0040】
27.ステップc)が、ステップb)で提供された溶液とともにチューブを気化させることを含む、先行する項目の1つに係るプロセス。
【0041】
28.ステップc)が表面拡散を含む、先行する項目の1つに係るプロセス。
29.チューブ全体がコーティングされる、先行する項目の1つに係るプロセス。
【0042】
これは、チューブの内面および外面の両方がコーティングされることを意味する。
30.ガラスで作製された飲用ストローのための疎水性コーティングの使用。
【0043】
31.疎水性コーティングが、シラン、シリコーン油およびハロゲン化炭化水素からなる群から選択される、項目30に係る使用。
【0044】
本発明の主要な局面は、ガラスで構成されるチューブベース本体を備えるチューブであって、チューブベース本体の少なくとも内部が疎水性コーティングを有するチューブにある。
【0045】
疎水性コーティングは、ガラスベース本体に対して撥水特性を提供する。さらに、それは、関連する部分、すなわちベース本体の少なくとも内部に対して、液体がコーティングの表面上に広がらずに、液滴形状で、好ましくは小さい液滴の形態で存在するように、効率的な液滴生成を可能にする。
【0046】
コーティングの好適な疎水性は、適切な有機またはハイブリッド有機コーティング材料を選択することによって達成可能であり、任意選択的には、たとえばゴニオメータのような液滴形状分析器によって測定可能な、少なくとも90°、好ましくは少なくとも120°、より好ましくは少なくとも160°の水滴を伴う、コーティングの接触角度を示すことなどによって、適切な測定またはパラメータにより確認または定義されることができる。
【0047】
疎水性コーティングは、好ましくは、疎水性ポリマーで作製される。
上記疎水性ポリマーコーティングは、チューブの内側に入る洗浄液がチューブ内に洗浄液を残すことなくチューブから容易に排出されることが可能であることを保証し、毛細管力およびいわゆるボトルネック効果が回避され得るように、チューブがより容易に洗浄可能であるという事実をもたらす。さらに、汚れが蓄積し、ベース本体の内面に付着する可能性は低い。疎水性ポリマーコーティングは、特に準備中にガラスチューブ本体と接触するときに熱処理を受けるとき、および特に好適なポリマー材料から選択されるとき、メインのガラスチューブ本体へのコーティングの十分な結合および付着を保証し得る。これにより漏出、ひいては健康にとって重大である問題を防止する。
【0048】
コーティングの疎水性挙動、および結果としてボトルネック効果の回避によって、飲用ストローとして使用されるチューブが液体のグラスから取り出されるときに液滴を滴下するまたは放つことも回避され得る。そのため、使用者の服に染みが付く可能性を回避する。チューブベース本体と疎水性ポリマーコーティングとの間における結合強度は、好ましくは、チューブベース本体表面の事前の疎水化または撥水処理によって、好ましくは少なくとも疎水性コーティングで覆われることとなる部分におけるシラン化によってさらに高められることが可能である。そのため、ガラスに対する疎水性ポリマーコーティングの接着をさらに向上させるために、コーティングが施される前にガラス自体が疎水化処理を受ける。
【0049】
さらに、疎水性コーティングはさらなる耐久性を提供し得るため、いつもの食器洗浄機におけるチューブの洗浄さえも実施可能となる。
【0050】
さらに、疎水性コーティングはガラスに光沢効果を提供し、飲用ストローとしてのこのようなガラスチューブの使用者への受け入れやすさを向上させる。
【0051】
好ましくは、上述された有利な効果を十分に発揮するために、チューブベース本体の内部は疎水性コーティングで全体的に覆われる。
【0052】
より好ましくは、チューブベース本体の内面および外面が疎水性コーティングで全体的に覆われる。これは、ガラスの触り心地をさらに向上させ、同様に、コーティングされたガラスチューブ本体を使用する飲用ストローの受け入れやすさをさらに向上させる。
【0053】
チューブベース本体は、ガラス、好ましくはソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスもしくは、さらには石英ガラスで作製される、またはそれらで構成される。このような材料は、環境に優しく、多数回使用に好適である。
【0054】
さらなる好ましい実施形態によれば、チューブベース本体のためのコーティングは、シラン、シリコーン油、テフロン(Teflon)(登録商標)などのハロゲン化炭化水素、および無機-有機ハイブリッドポリマーの群から選択されるポリマー材料を含む。無機-有機ハイブリッドポリマーの好ましい例は、商標オルモサー(Ormocer)(登録商標)(https://www.ormocere.de)によって知られる材料である。このような材料は、一般に、優れた耐熱性および熱形状安定性、複数の材料への優れた接着性、ならびに多くの他の有利な特性を示す(米国特許US7687654B2参照)。
【0055】
述べられた材料は扱いが容易であり、さらにガラスに用いるのに好適である。ガラス上における、たとえばシランまたはシリコーン油のコーティングが、高温でテンパリングされた(tempered)場合、上記コーティングとガラスの間には結合が形成され、そのため、このようなコーティングは非常に耐久性が高く、多数回の洗浄に好適である。オルモサー(登録商標)のような無機-有機ハイブリッドポリマーもガラス上にコーティングされたとき優れた耐久性を有する。オルモサー(登録商標)のようなこのような無機-有機ハイブリッドポリマーは、さらに、ガラス上にコーティングされたとき優れた耐摩耗性および食器洗浄機耐性を有する。
【0056】
疎水性ポリマーコーティングのためのさらなる好適な材料は、(たとえば、ナノコンポジット形態の)酸化マンガンポリスチレン複合材料、(これもまた、たとえば、ナノコンポジット形態の)酸化亜鉛ポリスチレン複合材料、脂肪酸および/またはトリグリセリドと組み合わされた沈降炭酸カルシウム、カーボンナノチューブ構造、シリカナノコーティング、ならびにフッ素化シランである。
【0057】
さらに、上記コーティングは、少なくとも1つの抗菌剤、より好ましくは銀および銅ならびにそれらの化合物からなる群から選択された抗菌剤をさらに含む。たとえば、銀はその元素形態またはコロイド形態で存在することができ、または硝酸銀であってもよい。二酸化チタンも好適な殺生物剤であり、UV光の影響下で有機化合物を分解する。洗浄目的のためにUV光を当てることも容易に達成可能である。このようなさらなる抗菌特性は、多数回使用にもかかわらず美食学の衛生要求をさらに向上させる。
【0058】
ガラスチューブは、好ましくは、0.8mm~3mmの間の厚さ、100mm~350mmの間、より好ましくは120~300mmの間の長さを有し、チューブ本体は、好ましくは、真っ直ぐな円筒形状または角度の付いた円筒形状を有する。好ましくは、チューブは、3~10mmの間、より好ましくは5~8mmの間の内径を有する。好ましくは、チューブは、0.8~3mmの間、好ましくは1~2mmの間の壁厚を有する。好ましくは、コーティングは、0.1μm~1000μmの間、より好ましくは1μm~500μmの間、最も好ましくは10μm~100μmの間の厚さを有する。
【0059】
そのため、このようなチューブの製造は容易であり、さらに、チューブの単純な形状によって、疎水性コーティングは、コーティング液の蓄積および/または肥厚もしくは膨隆の危険性なく、均等かつ連続的に施され得る。
【0060】
本発明は、さらに、ガラスチューブ本体を提供するステップと、疎水性ポリマー材料を含む溶液または懸濁液を提供するステップと、管状本体の少なくとも内面において先のステップで提供された溶液または懸濁液中で管状本体を接触させるステップと、任意選択的に管状本体を乾燥させるステップと、チューブを加熱するステップとを含む、コーティングされたガラスチューブを製造するためのプロセスを提供する。
【0061】
このような加熱処理はいわゆるテンパリングである。上述されたポリマー材料などのコーティング物質は、ガラス、および特にガラス表面との結合を形成することができ、得られたコーティングされたガラスは、コーティングが除去される、分解されるまたはさらにはガラスに傷が付くといった危険性なく、非常に高い耐久性を有するという事実をもたらす。
【0062】
コーティングのための水系溶液または懸濁液は、0.5~10重量%、好ましくは1.0~2.0重量%の疎水性ポリマー材料を含む。溶媒は好ましくは水である。
【0063】
疎水性ポリマーの特定的に選択された濃度は、特に好ましい。なぜなら、好適な粘度範囲はコーティングステップのために良好な態様で調節されることができるため、チューブベース本体は均質に接触されて濡らされ、疎水性ポリマーを含む溶液または懸濁液は膨隆または残部を形成することなくチューブベース本体に垂れる。
【0064】
好ましくは、疎水性ポリマー材料は、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素および無機-有機ハイブリッドポリマーからなる群から選択される。
【0065】
好ましくは、疎水性ポリマー材料を含む溶液は抗菌剤をさらに含む。
好ましくは、抗菌剤は、銀および銅ならびにそれらの化合物からなる群から選択される。より好ましくは、抗菌剤は銀であり、元素またはコロイド状である。最も好ましくは、抗菌剤は硝酸銀である。
【0066】
好ましくは、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも200℃、最も好ましくは少なくとも250℃の温度が加熱ステップにおいて用いられる。
【0067】
好ましくは、加熱ステップは、少なくとも5分、より好ましくは少なくとも15分、さらにより好ましくは少なくとも30分、最も好ましくは少なくとも60分の間実行される。
【0068】
この発明は、ガラスで作製された飲用ストローのための疎水性コーティングの使用にも関する。好ましくは、疎水性コーティングは、シラン、シリコーン油およびハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。
【0069】
本発明が、以下の好ましいが非限定的な実施形態の開示において詳細に、添付の図面を参照することによって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明に係るガラスチューブの第1の実施形態の断面図である。
図2】本発明に係るガラスチューブの第2の実施形態の断面図である。
図3】本発明に係るガラスチューブの第3の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、チューブベース本体2と、疎水性コーティング3とを備える、本発明の第1の実施形態に係るチューブ1の断面図を示す。ここで、疎水性コーティング3はチューブベース本体2の内面に施されていることが示される。ここで、疎水性コーティングは、本明細書に開示されるように、シラン、シリコーン油、ハロゲン化炭化水素または無機-有機ハイブリッドポリマーで構成され得る。
【0072】
たとえば、Wacker社によるシリコーン油が使用可能である。上記シリコーン油は非常に効率的な費用対効果率を有し、容易な扱いを可能にし、表面の良好な疎水化が達成可能である。
【0073】
さらに、Evonik Industriesによって製造される異なるタイプのダイナシラン(Dynasilan)(登録商標)が使用可能であり、これは優れた疎水特性を提供する。
【0074】
さらに、異なるタイプのバイシロン(Baysilon)(商標登録)M100が使用可能である。
【0075】
さらに、塩素化または塩素化炭化水素、たとえばテフロン(登録商標)がコーティングとして機能し得る。
【0076】
疎水性コーティングのために例示される別の特定の実施形態は、オルモサー(登録商標)のような異なるタイプの無機-有機ハイブリッドポリマーである。このようなハイブリッドポリマー材料は、モノマーまたは予め縮合された成分(一般に、部分的に付加的な金属アルコキシ化合物および/または他の化合物との組み合わせで、任意選択的にオルガノ修飾されたシラン)が適切な基の加水分解および縮合を受けることによる、ゾルゲル法によって合成可能である(米国特許US7687654B2参照)。
【0077】
たとえば、有機修飾されたSi-アルコキシドのターゲットとなる加水分解および縮合を介して、無機ネットワークが主に構築される。さらに、他の金属アルコキシド、たとえばTi、ZrまたはAl-アルコキシドとの共縮合も可能である。続くステップにおいて、無機ネットワークに固定される重合性基が互いに架橋される。さらに、有機修飾されたSi-アルコキシドが使用可能であり、これは有機重合反応に参加しないため、無機ネットワークの有機官能基化に寄与する。このようなポリマーは表面の官能基化のために大いに用いられることができる。
【0078】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す。ここで、抗菌剤4がコーティング3に組み込まれる。上記抗菌剤は、銀、銅およびそれらのそれぞれの化合物ならびに二酸化チタンを含む群から選択される材料の粒子として提供され得る。たとえば、元素またはコロイド状の銀がコーティング3に組み込まれ得る。また、抗菌剤は硝酸銀であってもよいが、これはコーティング3中に溶解され、均質に分散され得る。
【0079】
図3は、本出願のさらなる実施形態を示し、チューブベース本体の内部および外部におけるコーティング層3を示す。この場合、飲用ストロー全体が疎水性コーティング3で保護され得る。
【0080】
以下において、さらに、3つの上記に描写された実施形態の1つに係るコーティングされたガラスチューブの製造のためのプロセスが示される。
【0081】
上記プロセスは、ガラスチューブ本体2、および疎水性ポリマー材料を含む溶液または懸濁液を提供するステップを提供する。上記疎水性ポリマー材料は上記で規定されている。その後、管状本体が溶液または懸濁液と接触され、管状本体の少なくとも内面が接触される。第3の実施形態に関しては、ガラスチューブ本体全体が疎水性ポリマー材料を含む溶液または懸濁液と接触される。
【0082】
その後、管状本体は、任意選択的に乾燥される。
最後に、管状本体は、コーティングをガラス表面に固定するために、典型的にはコーティング材料のためにまだ許容される比較的高温で、たとえば少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも250℃、さらにより好ましくは少なくとも300℃の温度で熱処理される。熱処理時間は、典型的には、少なくとも5分、好ましくは少なくとも15分、より好ましくは少なくとも30分、さらにより好ましくは少なくとも60分である。コーティングプロセスのために有利な粘度を得るために、水系溶液は、0.5~10重量%、好ましくは1.0~2.0重量%の疎水性ポリマー材料を含む。溶媒は好ましくは水である。しかしながら、別の溶媒、特に有機溶媒も可能である。
【0083】
好ましくは、ガラスチューブ本体と溶液または懸濁液との接触は、溶液中にチューブ2を浸漬させることを含む。このディップコーティングは、非常に容易で安価であり、さらに、飲用ストローの面全体が疎水性ポリマー溶液または懸濁液と接触可能である。
【0084】
別の実施形態において、疎水性ポリマーを含む溶液または懸濁液は気化されてガラスチューブ上へ噴射される。内面のみが接触されるべきである場合、噴射ノズルはガラスチューブ本体内へ挿入され、均質なコーティングを保証するためにガラスチューブ本体に沿って動かされることになるであろう。
【0085】
別の代替的な実施形態において、ガラスチューブベース本体は、表面拡散プロセスによって疎水性ポリマーと接触される。
【0086】
本発明は、上述された実施形態に限定されない。チューブは、対応する形状のチューブベース本体によって、三角形、正方形または矩形断面、さらには多角形または長円形断面を有してもよい。
【0087】
また、チューブの内側の一部のみに疎水性コーティングを施すことも可能である。そのため、たとえば、ある範囲、たとえば上端および下端において0.5cmがコーティングされていなくてもよい。
【0088】
本発明に係るチューブは、飲用ストローとして非常に有利に用いられることができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】