(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポリマーの触媒熱分解によるオレフィン及び芳香族化合物の生成
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20220713BHJP
【FI】
C10G1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568183
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020017031
(87)【国際公開番号】W WO2020231488
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515198810
【氏名又は名称】アネロテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ANELLOTECH,INC.
【住所又は居所原語表記】401 N.Middletown Road,Bldg.170A,Pearl River,New York 10965 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・カルトラーノ
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ・ゴウド
(72)【発明者】
【氏名】ユイ-ティン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】サム・セファ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ソレンセン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・フュネ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB04
4H129BC13
4H129BC14
4H129BC26
4H129KC13X
4H129KC16Y
4H129NA20
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA43
4H129NA45
(57)【要約】
本発明は、プラスチックを触媒的に熱分解する方法を含む。プラスチックが触媒再生中に適当な熱を提供するのに不十分なコークスを提供することが発見されているため、熱形成添加剤を方法に導入することができる。プラスチックの触媒熱分解に有用なシステム及び組成物も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の混合供給物を触媒的に熱分解する方法であって、
ポリマーを含む第1の流れを提供することと、
コークス形成材料を添加して、材料の混合供給物を形成することと、
前記材料の混合供給物を流動床反応器に添加することと、
前記流動床反応器内で、固体触媒の存在下で前記混合供給物を熱分解して、流体生成物流と、コークスを有する使用済み触媒と、を生成することであって、前記混合供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換される、前記生成することと、
前記コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、前記コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、前記高温再生触媒の少なくとも一部分を前記流動床反応器に戻すことであって、前記高温再生触媒からの熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する、前記戻すことと、を含み、
(a)前記コークスの燃焼からの熱が、前記熱分解ステップに前記エネルギーの少なくとも90%を提供することであって、
前記第1の流れが、前記第1の流れのみからなる流れが前記熱分解ステップを受け、かつ前記コークスを有する使用済み触媒のすべてが、前記コークスが酸素で燃焼される前記再生器に移送されて、前記高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、前記高温再生触媒のすべてを前記流動床反応器に戻し、前記高温再生触媒からの前記熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、前記触媒の熱及び前記燃焼ガスから回収された熱を含む前記コークスの前記燃焼によって提供された前記熱が、前記第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される前記触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有する、前記提供すること、または
(b)コークス、及び前記揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、前記熱分解ステップに前記エネルギーの少なくとも90%を提供することであって、
前記第1の流れが、前記第1の流れのみからなる流れが前記熱分解ステップを受け、かつ前記コークスを有する使用済み触媒のすべて、及び前記揮発性生成物の一部分が、前記コークス、及び前記揮発性生成物の前記一部分が酸素で燃焼される前記再生器に移送されて、前記高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、前記高温再生触媒のすべてを前記流動床反応器に戻し、前記高温再生触媒からの前記熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、前記触媒の熱及び前記燃焼ガスから回収された熱を含む前記コークスの前記燃焼によって提供された前記熱が、前記第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される前記触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有する、前記提供すること、のいずれかであり、
前記コークス形成材料の前記混合供給物への前記添加が、前記混合供給物中の前記炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される触媒熱分解プロセスに必要な少なくとも最小エネルギーを提供するのに十分なコークスをもたらす、前記方法。
【請求項2】
コークス及び前記揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、前記熱分解ステップに前記エネルギーの少なくとも90%を提供し、燃焼された前記揮発性生成物の前記一部分が、前記揮発性生成物から分離されたCO及びH2濃縮流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コークス及び前記揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、前記熱分解ステップに前記エネルギーの少なくとも90%を提供し、燃焼された前記揮発性生成物の前記一部分が、前記揮発性生成物からC5+生成物を除去した後に回収されたガス混合物の画分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合供給物材料が、バイオマス、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセチレン、ポリブチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール、エポキシ、ポリシアヌレート、ポリアクリル酸、ポリ尿素、ビニルエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、エチレン-プロピレンなどのコポリマー、EPDM、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム、天然及び合成ゴム、タイヤ、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-イソプレン、スチレン-無水マレイン酸、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン12/6/66、充填ポリマー、ポリマー複合材料、プラスチック合金、他のポリマー材料、ならびに廃棄物としてポリマーまたはプラスチックの製造プロセスから得られたか、または処分材料であるかどうかにかかわらず、溶媒中に溶解されたポリマーもしくはプラスチック、消費者リサイクル後ポリマー材料、都市固形廃棄物、黒液、木材廃棄物もしくは他の生物学的に生成された材料などの廃棄物流から分離された材料、またはこれらのいくつかの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
コークスの燃焼からの熱が、前記熱分解ステップに必要な前記エネルギーの少なくとも90%を提供する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレン、またはそれらの混合物の中から選択され、高コークス形成材料が、バイオマス、ポリエチレンテレフタレート、タイヤ、セルロース、酢酸セルロース、綿衣類及びナイロン、またはそれらの混合物の中から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される、請求項1~6のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項8】
エチレンもしくはプロピレン、またはそれらの両方を濃縮した流れが、前記揮発性生成物から分離される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記揮発性生成物が、少なくとも10質量%のオレフィンまたは少なくとも20質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、5~90質量%の範囲のオレフィンを含む、請求項1~8のいずれかに1項に記載の方法。
【請求項10】
C5+生成物を含む流れが、前記揮発性生成物から分離される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ベンゼン、トルエン、キシレンまたはこれらのいくつかの組み合わせ中で濃縮された流れが、前記揮発性生成物から分離される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
BTXの質量収率が、前記ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも35%、もしくは少なくとも40%、または10%~70%、もしくは20%~65%、もしくは25%~60%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合供給物が、5~98もしくは5~90、または20~70もしくは20~90もしくは40~90もしくは40~60質量%のPE、PP、PS、またはそれらの混合物を含み、前記混合供給物の残りが、少なくとも95質量%の高コークス形成材料を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合供給物が、5~98もしくは5~90、または20~70もしくは20~90もしくは40~90もしくは40~60質量%のPE、PP、PS、またはそれらの混合物;及び2~60もしくは10~60もしくは10~50もしくは15~25もしくは2~15もしくは2~6もしくは2~5もしくは3~4質量%の高コークス形成材料、または20~60もしくは4~15質量%のPET、または2~50もしくは10~50もしくは2~3質量%のバイオマス、または2~55もしくは10~50もしくは40~55もしくは5~20もしくは2~5質量%のタイヤポリマーを含み、汚染物質の質量を含まない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
プラスチックをオレフィンに変換する方法であって、
ポリマーまたはポリマー混合物を反応器に供給することと、
前記反応器内の前記材料を、触媒の存在下で、1つ以上のオレフィンを含むガス状原生成物混合物を生成するのに十分な反応条件下で熱分解することと、を含む、前記方法。
【請求項16】
複数の前記オレフィンが生成され、前記オレフィンが、別のプロセスにおけるその後の変換のために前記ガス状原生成物混合物から分離される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オレフィン変換プロセスが、水素化、加水分解、ヒドロホルミル化、環化、二量化、重合またはアルキル化を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オレフィン変換プロセスが、以下のステップ:オレフィンのアルコールまたはエーテルへの変換;オレフィンの低温(80℃~400℃)重合;カルボン酸またはアルデヒドを形成するためのCOとの反応;アルキル化芳香族化合物を形成するための芳香族化合物とのアルキル化、及びパラフィンへの水素化のうちの1つまたは任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーまたはポリマー混合物が、溶融され、熱分解前に前記溶融混合物から固体を濾過することをさらに含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱分解ステップが、触媒の存在下での高速固体熱分解を含む、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が、ゼオライトを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーまたはポリマー混合物が、少なくとも80質量%のポリエチレンもしくはポリプロピレン、またはそれらの両方の組み合わせを含む、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマーまたはポリマー混合物が、少なくとも80質量%のPETまたは他のポリエステルを含む、請求項15~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ガス状原生成物混合物が、少なくとも20質量%のオレフィンまたは少なくとも50質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、20~90質量%の範囲のオレフィンを含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
オレフィンの質量収率が、前記ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも45%、もしくは少なくとも50%、または少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、または20%~70%、もしくは30%~65%、もしくは45%~60%である、請求項15~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項15~26のいずれか1項に記載の方法であって、
前記反応器が、流動床反応器であり、
前記触媒が、固体触媒であり、前記熱分解ステップが、流動床反応器内で、前記固体触媒の存在下で熱分解して、流体生成物流及びコークスを有する使用済み触媒を生成し、前記供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換され、
前記コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、前記コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、前記高温再生触媒の少なくとも一部分を前記流動床反応器に戻すことであって、前記高温再生触媒からの熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する、前記戻すことと、を含む、前記方法。
【請求項28】
前記生成物混合物中の前記ガスの少なくとも一部分が、前記再生器内で燃焼される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ガス状原生成物混合物が、分離プロセスを受けて、CO及びH
2中に濃縮されたガスの流れを生成し、前記CO及びH
2中に濃縮されたガスの流れの少なくとも一部分を、前記濃縮されたガスの流れが燃焼される前記再生器に渡す、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーまたはポリマー混合物が、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物を含み、
前記ガス状原生成物混合物が、H2及びCOを含み、かつ10~25質量%の前記H2及びCOが、前記再生器内で燃焼される、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
材料の混合供給物を触媒的に熱分解する方法であって、
ポリマーを含む第1の流れを流動床反応器の中に添加することと、
前記流動床反応器内で、固体触媒の存在下で前記ポリマーを熱分解して、流体生成物流、及びコークスを有する使用済み触媒を生成することであって、前記混合供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換される、前記生成することと、
前記コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、前記コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、前記高温再生触媒の少なくとも一部分を前記流動床反応器に戻すことであって、前記高温再生触媒からの熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する、前記戻すことと、を含み、
前記第1の流れが、前記第1の流れのみからなる流れが前記熱分解ステップを受け、かつ前記コークスを有する使用済み触媒のすべてが、前記コークスが酸素で燃焼される前記再生器に移送されて、前記高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、前記高温再生触媒のすべてを前記流動床反応器に戻し、前記高温再生触媒からの前記熱が、前記熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、前記触媒の熱及び前記燃焼ガスから回収された熱を含む前記コークスの前記燃焼によって提供された前記熱が、前記第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される前記触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有し、前記第1の流れ中の前記炭素の少なくとも95%をコークス及び揮発性生成物に変換するのに十分なエネルギーがあるように、酸素の量を前記第1の流れに導入する、前記方法。
【請求項32】
前記プロセス流に導入された前記酸素の量が、前記第1の流れの質量の0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、1重量%~6重量%もしくは2重量%~4重量%、または少なくとも0.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%もしくは少なくとも6重量%である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記酸素が、好ましくは前記流動化流体の成分としての空気もしくはO2の添加によって、またはプラスチックと注入された前記ガスで、または前記流動床への別個の直接的な注入によって、あるいはそれらのいくつかの組み合わせによって導入される、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記触媒が、ゼオライトである、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ポリマーを含む供給物を流動床反応器内で触媒的に熱分解する方法であって、前記プロセスに導入された酸素の量が、供給物材料または他の成分と前記導入された酸素との燃焼が前記反応混合物の温度を少なくとも25℃、もしくは少なくとも100℃、もしくは少なくとも200℃、もしくは少なくとも300℃、または100℃~400℃まで上昇させるのに少なくとも十分である、前記方法。
【請求項36】
前記プロセス流に導入された酸素の量が、前記混合供給物の質量の0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、1重量%~6重量%もしくは2重量%~4重量%、または少なくとも0.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%もしくは少なくとも6重量%である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記酸素が、好ましくは前記流動化流体の成分としての空気もしくはO2の添加によって、またはプラスチックと注入された前記ガスで、または前記流動床への別個の直接的な注入によって、あるいはそれらのいくつかの組み合わせによって導入される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
芳香族化合物もしくはオレフィン、またはそれらの混合物を生成する方法であって、
ポリマーまたはポリマー混合物を流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器に供給することと、
前記反応器内の前記材料を、1つ以上のオレフィンもしくは1つ以上の芳香族化合物、またはそれらの両方を含むガス状原生成物混合物を生成するのに十分な反応条件下で、触媒の存在下で熱分解することと、
少なくとも前記ガス状原生成物混合物の画分を、スチームクラッキング設備内のプロセス流に導入することと、を含む、前記方法。
【請求項39】
オレフィン、芳香族化合物またはそれらの両方を濃縮した流れを、スチームクラッキング設備内の流れに分離することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記オレフィンもしくは前記芳香族化合物、または前記オレフィン及び前記芳香族化合物の両方を、前記スチームクラッキング設備内で分離及び精製することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記触媒熱分解ユニット内を循環する触媒が、スチームクラッカー生成物ガスによって加熱され、その少なくとも一部分が、前記触媒熱分解プロセス反応器にリサイクルされる、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
プラスチックの前記触媒変換からの高温蒸気生成物が、スチームクラッカーガス及び蒸気生成物と共に前記スチームクラッキング設備の急冷塔に導入される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記スチームクラッキング設備内で生成されたメタンの少なくとも一部分が、プラスチック触媒熱分解プロセスの前記流動化流体として含まれる、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記スチームクラッキングプロセスにおいて生成された水素もしくは前記触媒熱分解において生成された水素、またはそれらのいくつかの組み合わせが、本発明のプロセス
(a)アセチレン、メチルアセチレン/プロパジエン、熱分解ガソリンもしくは他の生成物、もしくはそれらのいくつかの組み合わせを水素化するため、または
(b)芳香族化合物、パラフィン、またはそれらのいくつかの組み合わせを水素処理して、それらの硫黄、窒素、酸素、トリエン、ジエン及びスチレンの含有量を減少させるため、または
(c)水素化及び水素処理のいくつかの組み合わせ、のいずれかで使用される、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
エタン及びプロパン、もしくはC4オレフィン及びパラフィン、またはそれらの組み合わせを含む流れの少なくとも一部分が、前記スチームクラッカーにリサイクルされて、追加のエチレン及びプロピレンを生成するか、または前記流動化ガスの成分として、前記プラスチック触媒熱分解反応器にリサイクルされる、請求項40~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
熱分解ガソリンナフサの少なくとも一部分、及び前記プラスチック触媒熱分解からのナフサの凝縮可能な流れの一部分が、水素処理されて、ジエン、トリエン、アセチレンもしくはビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)、またはそれらのいくつかの組み合わせの濃度を低減し、極微量のヘテロ原子、硫黄、窒素、塩素もしくは酸素、またはそれらのいくつかの組み合わせの濃度を低減する、請求項40~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記水素処理生成物が、さらに分離され、精製されて、ポリマーグレードのベンゼン、トルエン、p-キシレン、またはそれらのいくつかの組み合わせを生成する、請求項40~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記触媒熱分解に使用された前記触媒が、ゼオライトを含む、請求項40~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ゼオライトが、1~12の範囲の拘束指数を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ゼオライトが、ZSM-5である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記供給物混合物の少なくとも一部分が、加熱されて、懸濁した固形物を除去するために高温濾過される溶融塊を提供する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記熱分解ステップが、触媒の存在下での高速固体熱分解を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記触媒が、ゼオライトを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記触媒熱分解反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
10~95、または少なくとも10、20、30、50、60、または10~80質量%のポリマーを含み、残りが、少なくとも95質量%の高コークス形成材料である、触媒熱分解プロセスのための供給物混合物。
【請求項56】
前記供給物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%が、高コークス形成材料を含む、請求項55に記載の供給物混合物。
【請求項57】
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはそれらのいくつかの組み合わせを含む、請求項55または56に記載の供給物混合物。
【請求項58】
前記高コークス形成材料が、バイオマス、タイヤ側壁、タイヤトレッド、またはそれらのいくつかの組み合わせである、請求項55~57のいずれか1項に記載の供給物混合物。
【請求項59】
前記混合物が、0.1重量%~3重量%、もしくは0.2重量%~2重量%、もしくは0.4重量%~1重量%、または少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%、もしくは少なくとも0.3重量%、もしくは少なくとも0.5重量%、または3重量%未満、もしくは2重量%未満、もしくは1重量%未満の汚染物質を含む、請求項55~58のいずれか1項に記載の供給物混合物。
【請求項60】
前記ポリマーの10~99質量%、または少なくとも30、50、80、90、もしくは50~99質量%のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはこれらの混合物、及び少なくとも1質量%、もしくは少なくとも2質量%、もしくは少なくとも3質量%、もしくは少なくとも4質量%、もしくは少なくとも10質量%、または0.5質量%~20質量%、もしくは1質量%~15質量%、もしくは2質量%~13質量%の高コークス形成材料を含む触媒熱分解プロセスのための供給物混合物であって、前記ポリマー及び前記高コークス形成材料の質量の合計が、100質量%である、供給物混合物。
【請求項61】
前記高コークス形成材料が、バイオマス、セルロース、綿衣類、PET、PET衣類、酢酸セルロース、またはこれらのいくつかの組み合わせである、請求項60に記載の供給物混合物。
【請求項62】
前記混合物が、任意の汚染物質除去プロセスの前に、1重量%~10重量%、もしくは2重量%~8重量%、もしくは4重量%~7重量%、または少なくとも1重量%、もしくは少なくとも2重量%、もしくは少なくとも3重量%、もしくは少なくとも5重量%の汚染物質を含む、請求項60または61に記載の供給物混合物。
【請求項63】
前記高コークス形成材料が、触媒熱分解プロセスに添加する前に、少なくとも部分的に前処理されて、汚染物質除去プロセスにおいて汚染物質濃度を低減する、請求項60~62のいずれか1項に記載の供給物混合物。
【請求項64】
前記供給物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%が、高コークス形成材料を含み、残りが、少なくとも95質量%のポリマーである、前記供給物混合物。
【請求項65】
請求項55~64に記載の供給物混合物のいずれか、及び熱分解反応器を含む、システム。
【請求項66】
前記熱分解反応器が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器を含む、請求項65に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月14日に出願された米国特許仮出願第62/847,933号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、外部源からのエネルギー消費が最小限または全くない、廃プラスチック、ポリマー及び他の廃棄物、またはバイオマス材料の、パラフィン、オレフィン及びBTXなどの有用な化学的生成物及び燃料生成物への変換に関する。
【0003】
序文
2018年には、米国におけるプラスチックの生産は3850万トンであり、これは、MSWの生産の13.1パーセントであった。世界中で3億5000万トンを上回るプラスチックが生成された。プラスチックのリサイクルは、スクラップまたは廃プラスチックを回収し、材料を有用な生成物に再加工する。しかしながら、中国が廃プラスチックの輸入を禁止したため、米国におけるリサイクル率は、4.4%にまで低下したと推定される。
【0004】
プラスチックのリサイクルは、長鎖有機ポリマーの化学的性質及び低い経済的利益という理由で困難である。さらに、廃プラスチック材料は、多くの場合、別個のリサイクル処理のために、様々なプラスチック樹脂タイプ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリエチレン-テレフタレート(PET)に選別する必要がある。
【0005】
Bio-TCat(商標)は、再生可能なバイオマス材料を、永久ガス、C2~C4軽質オレフィン、C1~C4軽質パラフィンと、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(「BTX」)の芳香族化合物ならびに非芳香族のナフサ範囲分子を含むC5+炭化水素、C11+炭化水素、コークス及び炭化物、ならびに微量の副生成物との混合生成物に変換する触媒熱分解技術である。変換は、ZSM-5ゼオライトまたは類似の触媒を使用して流動床反応器内で生じる。反応によって生成された軽質ガスの一部分は、流動化ガスを提供するために、かつ容器にバイオマス原料を注入するために、反応器にリサイクルされ得る。触媒上に蓄積され、触媒を一時的に非活性化するコークス及び炭化物の副生成物は、連続的に動作する触媒再生器内で、酸化によって除去される。Bio-TCatによって加工することができる廃材料としては、バイオマス、廃タイヤ、潤滑油、石炭及び石油残渣が挙げられる。
【0006】
新しい技術は、ゼオライト触媒を使用する触媒流動床プロセスでもあるPlas-TCat(商標)であるが、原料は、ポリマー/プラスチック材料、特に、他の方法で、埋立地または焼却炉に送られる場合がある廃プラスチックである。比較的高い水素と炭素のモル比を有し、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリスチレン及び組み合わせなどの塩素ならびに窒素を除外するプラスチック混合物は、オレフィン及び芳香族化合物に変換することができるが、副生成物の燃焼はプロセスで必要なエネルギーを生成しない場合があるため、プロセスは化石燃料などの外部源からのエネルギーを必要とする。
【0007】
US5,158,983には、水素の高圧下で油溶性触媒を使用して、廃プラスチック及びスクラップゴムタイヤの混合物を高品質の合成原油に直接変換することができるプロセスが教示されている。少量のコークスが形成される。
【0008】
US5,364,995には、触媒の不存在下でプラスチックを気化させて、軽質オレフィン、パラフィン、ナフテン、オレフィンオリゴマー及びワックスを生成するためのプロセスが教示されている。スチームクラッキングによる生成物流のさらなるアップグレードが開示される。
【0009】
US8,895,790には、プラスチックをオレフィン及び芳香族化合物に変換する方法が記載されている。本特許では、熱分解反応は、550℃超で実行される。
【0010】
US9,428,695には、FCC及びZSM-5触媒の流動床を使用して、プラスチックの混合物をオレフィン及び芳香族化合物に変換するためのプロセスが記載されており、このプロセスは、外部熱源からの補助的な熱投入を必要とする場合がある。
【0011】
世界特許のWO2017/103010には、500℃未満の温度範囲でプラスチックを生成物に変換する方法が記載されている。
【0012】
本発明の目的は、廃プラスチック、ポリマー及び他の材料の、外部源からのエネルギー消費が最小または全くないパラフィン、オレフィン及びBTXなどの有用な化学的生成物及び燃料生成物への変換を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様では、ポリマーを含む混合物は、流動床触媒熱分解プロセスにおいて変換されて、オレフィン、芳香族化合物、コークス、ガス及び他の副生成物を生成し、触媒再生器内でのコークス、もしくはコークス及び他の副生成物の燃焼から、または他の手段によって生成されたエネルギーは、熱分解プロセスの動作に必要なエネルギーに少なくとも等しい。
【0014】
別の態様では、本発明は、プラスチックをオレフィンに変換する方法であって、ポリマーまたはポリマー混合物を反応器に供給することと、
反応器内の材料を、1つ以上のオレフィンを含むガス状原生成物混合物を生成するのに十分な反応条件下で、触媒の存在下で熱分解することと、を含む、方法、を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、以下の特徴:複数のオレフィンが生成され、オレフィンが、別のプロセスにおけるその後の変換のためにガス状原生成物混合物から分離される;オレフィン変換プロセスが、水素化、加水分解、ヒドロホルミル化、環化、二量化、重合またはアルキル化を含む;オレフィン変換プロセスが、以下のステップ:オレフィンのアルコールまたはエーテルへの変換;オレフィンの低温(80℃~400℃)重合;カルボン酸またはアルデヒドを形成するためのCOとの反応;アルキル化芳香族化合物を形成するための芳香族化合物とのアルキル化、及びパラフィンへの水素化のうちの1つまたは任意の組み合わせを含む;ポリマーまたはポリマー混合物が、溶融され、熱分解前に溶融混合物から固体を濾過することをさらに含む;熱分解ステップが、触媒の存在下での高速固体熱分解を含む;触媒が、ゼオライトを含む;反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される;ポリマーまたはポリマー混合物が、少なくとも80質量%のポリエチレンもしくはポリプロピレン、またはそれらの両方の組み合わせを含む;ポリマーまたはポリマー混合物が、少なくとも80質量%のPETまたは他のポリエステルを含む;ガス状原生成物混合物が、少なくとも20質量%のオレフィンまたは少なくとも50質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、20~90質量%の範囲のオレフィンを含む;オレフィンの質量収率が、ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも45%、もしくは少なくとも50%、または少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、または20%~70%、もしくは30%~65%、もしくは45%~60%である;反応器が、流動床反応器である;触媒が、固体触媒であり、熱分解ステップが、流動床反応器内で、固体触媒の存在下で熱分解して、流体生成物流及びコークスを有する使用済み触媒を生成し、供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換される;
コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、高温再生触媒の少なくとも一部分を流動床反応器に戻すことであって、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する、戻すこと;生成物混合物中のガスの少なくとも一部分が、再生器内で燃焼される;ガス状原生成物混合物が、分離プロセスを受けて、CO及びH2中に濃縮されたガスの流れを生成し、CO及びH2中に濃縮されたガスの流れの少なくとも一部分を、濃縮されたガスの流れが燃焼される再生器に渡す;ポリマーまたはポリマー混合物が、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物を含む;ガス状原生成物混合物が、H2及びCOを含む;かつ10~25質量%のH2及びCOが、再生器内で燃焼される、のうちの1つまたは任意の組み合わせによって特徴付けることができる。本発明のすべての記載と同様に、いくつかの実施形態では、用語「含む(comprises)」は、用語「から本質的になる」または「からなる」によって置き換えられ得る。
【0015】
別の態様では、本発明は、材料の混合供給物を触媒的に熱分解する方法であって、ポリマーを含む第1の流れを提供することと、
コークス形成材料を添加して、材料の混合供給物を形成することと、材料の混合供給物を流動床反応器に添加することと、流動床反応器内で、固体触媒の存在下で混合供給物を熱分解して、流体生成物流と、コークスを有する使用済み触媒と、を生成することであって、混合供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換される、生成することと、コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、高温再生触媒の少なくとも一部分を流動床反応器に戻すことであって、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する、戻すことと、を含み、(a)コークスの燃焼からの熱が、熱分解ステップにエネルギーの少なくとも90%を提供することであって、第1の流れが、第1の流れのみからなる流れが熱分解ステップを受け、かつコークスを有する使用済み触媒のすべてが、コークスが酸素で燃焼される再生器に移送されて、高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、高温再生触媒のすべてを流動床反応器に戻し、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、触媒の熱及び燃焼ガスから回収された熱を含むコークスの燃焼によって提供された熱が、第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有する、提供すること、または
(b)コークス、及び揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、熱分解ステップにエネルギーの少なくとも90%を提供することであって、第1の流れが、第1の流れのみからなる流れが熱分解ステップを受け、かつコークスを有する使用済み触媒のすべて、及び揮発性生成物の一部分が、コークス、及び揮発性生成物の一部分が酸素で燃焼される再生器に移送されて、高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、高温再生触媒のすべてを流動床反応器に戻し、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、触媒の熱及び燃焼ガスから回収された熱を含むコークスの燃焼によって提供された熱が、第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有する、提供すること、であり、
コークス形成材料の混合供給物への添加が、混合供給物中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される触媒熱分解プロセスに必要な少なくとも最小エネルギーを提供するのに十分なコークスをもたらす、方法、を提供する。これらの計算は、混合供給物が一定速度で流動床反応器に添加されることを仮定して実施されることに留意されたい。
【0016】
本態様は、上述の特徴のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができるか、または以下の特徴:コークス及び揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、熱分解ステップにエネルギーの少なくとも90%を提供し、燃焼された揮発性生成物の一部分が、揮発性生成物から分離されたCO及びH2濃縮流を含む;コークス及び揮発性生成物の一部分の燃焼からの熱が、熱分解ステップにエネルギーの少なくとも90%を提供し、燃焼された揮発性生成物の一部分が、揮発性生成物からC5+生成物を除去した後に回収されたガス混合物の画分を含む;混合供給物材料が、バイオマス、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセチレン、ポリブチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール、エポキシ、ポリシアヌレート、ポリアクリル酸、ポリ尿素、ビニルエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、エチレン-プロピレンなどのコポリマー、EPDM、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム、天然及び合成ゴム、タイヤ、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-イソプレン、スチレン-無水マレイン酸、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン12/6/66、充填ポリマー、ポリマー複合材料、プラスチック合金、他のポリマー材料、ならびに廃棄物としてポリマーまたはプラスチックの製造プロセスから得られたか、または処分材料であるかどうかにかかわらず、溶媒中に溶解されたポリマーまたはプラスチック、消費者リサイクル後ポリマー材料、都市固形廃棄物、黒液、木材廃棄物もしくは他の生物学的に生成された材料などの廃棄物流から分離された材料、またはこれらのいくつかの組み合わせから選択される;ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレン、またはそれらの混合物の中から選択され、高コークス形成材料が、バイオマス、ポリエチレンテレフタレート、タイヤ、セルロース、酢酸セルロース、綿衣類及びナイロン、またはそれらの混合物の中から選択される;反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される;エチレンもしくはプロピレン、またはそれらの両方を濃縮した流れが、揮発性生成物から分離される;揮発性生成物が、少なくとも10質量%のオレフィンまたは少なくとも20質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、5~90質量%の範囲のオレフィンを含む;C5+生成物を含む流れが、揮発性生成物から分離される;ベンゼン、トルエン、キシレンまたはこれらのいくつかの組み合わせ中で濃縮された流れが、揮発性生成物から分離される;BTXの質量収率が、ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも35%、もしくは少なくとも40%、または10%~70%、もしくは20%~65%、もしくは25%~60%である;かつ混合供給物が、5~98もしくは5~90、または20~70もしくは20~90もしくは40~90もしくは40~60質量%のPE、PP、PS、またはそれらの混合物を含み、混合供給物の残りが、少なくとも95質量%の高コークス形成材料を含む;混合供給物が、5~98もしくは5~90、または20~70もしくは20~90もしくは40~90もしくは40~60質量%のPE、PP、PS、またはそれらの混合物;及び2~60もしくは10~60もしくは10~50もしくは15~25もしくは2~15もしくは2~6もしくは2~5もしくは3~4質量%の高コークス形成材料、または20~60もしくは4~15質量%のPET、または2~50もしくは10~50もしくは2~3質量%のバイオマス、または2~55もしくは10~50もしくは40~55もしくは5~20もしくは2~5質量%のタイヤポリマーを含む(汚染物質の質量を含まない)、のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができる。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、材料の混合供給物を触媒的に熱分解する方法であって、ポリマーを含む第1の流れを流動床反応器の中に添加することと、流動床反応器内で、固体触媒の存在下でポリマーを熱分解して、流体生成物流、及びコークスを有する使用済み触媒を生成することであって、混合供給物中の炭素の少なくとも95%が、コークス及び揮発性生成物に変換される、生成することと、コークスを有する使用済み触媒の少なくとも一部分を、コークスが酸素と反応する再生器に移送して、高温再生触媒を形成し、高温再生触媒の少なくとも一部分を流動床反応器に戻すことであって、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する、戻すことと、を含み、第1の流れが、第1の流れのみからなる流れが熱分解ステップを受け、かつコークスを有する使用済み触媒のすべてが、コークスが酸素で燃焼される再生器に移送されて、高温再生触媒及び高温燃焼ガスを形成し、高温再生触媒のすべてを流動床反応器に戻し、高温再生触媒からの熱が、熱分解ステップにエネルギーを提供する場合、触媒の熱及び燃焼ガスから回収された熱を含むコークスの燃焼によって提供された熱が、第1の流れ中の炭素の少なくとも95%がコークス及び揮発性生成物に変換される触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーよりも小さいエネルギーを提供するような、特性を有し、第1の流れ中の炭素の少なくとも95%をコークス及び揮発性生成物に変換するのに十分なエネルギーがあるように、酸素の量を第1の流れに導入する、方法、を提供する。
【0018】
本態様は、上述の特徴のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができるか、または以下の特徴:プロセス流に導入された酸素の量が、第1の流れの質量の0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、1重量%~6重量%もしくは2重量%~4重量%、または少なくとも0.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%もしくは少なくとも6重量%である;酸素が、好ましくは流動化流体の成分としての空気もしくはO2の添加によって、またはプラスチックと注入されたガスで、または流動床への別個の直接的な注入によって、あるいはそれらのいくつかの組み合わせによって導入される、のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができる。
【0019】
別の態様では、本発明は、ポリマーを含む供給物を流動床反応器内で触媒的に熱分解する方法であって、プロセスに導入された酸素の量が、供給物材料または他の成分と導入された酸素との燃焼が反応混合物の温度を少なくとも25℃、もしくは少なくとも100℃、もしくは少なくとも200℃、もしくは少なくとも300℃、または100℃~400℃まで上昇させるのに少なくとも十分である、方法、を提供する。いくつかの実施形態では、プロセス流に導入された酸素の量は、混合供給物の質量の0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、1重量%~6重量%もしくは2重量%~4重量%、または少なくとも0.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%もしくは少なくとも6重量%である。いくつかの実施形態では、酸素は、好ましくは流動化流体の成分としての空気もしくはO2の添加によって、またはプラスチックと注入されたガスで、または流動床への別個の直接的な注入によって、あるいはそれらのいくつかの組み合わせによって導入される。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、芳香族化合物もしくはオレフィン、またはそれらの混合物を生成する方法であって、ポリマーまたはポリマー混合物を流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器に供給することと、反応器内の材料を、1つ以上のオレフィンもしくは1つ以上の芳香族化合物、またはそれらの両方を含むガス状原生成物混合物を生成するのに十分な反応条件下で、触媒の存在下で熱分解することと、少なくともガス状原生成物混合物の画分を、スチームクラッキング設備内のプロセス流に導入することと、を含む、方法、を提供する。
【0021】
本態様は、上述の特徴のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができるか、または以下の特徴:オレフィン、芳香族化合物またはそれらの両方を濃縮した流れを、スチームクラッキング設備内の流れに分離することをさらに含む;オレフィンもしくは芳香族化合物、またはオレフィン及び芳香族化合物の両方を、スチームクラッキング設備内で分離及び精製することをさらに含む;触媒熱分解ユニット内を循環する触媒が、スチームクラッカー生成物ガスによって加熱され、その少なくとも一部分が、触媒熱分解プロセス反応器にリサイクルされる;プラスチックの触媒変換からの高温蒸気生成物が、スチームクラッカーガス及び蒸気生成物と共にスチームクラッキング設備の急冷塔に導入される;スチームクラッキング設備内で生成されたメタンの少なくとも一部分が、プラスチック触媒熱分解プロセスの流動化流体として含まれる;スチームクラッキングプロセスにおいて生成された水素もしくは触媒熱分解において生成された水素、またはそれらのいくつかの組み合わせが、本発明のプロセス(a)アセチレン、メチルアセチレン/プロパジエン、熱分解ガソリンもしくは他の生成物、もしくはそれらのいくつかの組み合わせを水素化するため、または(b)芳香族化合物、パラフィン、またはそれらのいくつかの組み合わせを水素処理して、それらの硫黄、窒素、酸素、トリエン、ジエン及びスチレンの含有量を減少させるため、または(c)水素化及び水素処理のいくつかの組み合わせ、のいずれかで使用される;エタン及びプロパン、もしくはC4オレフィン及びパラフィン、またはそれらの組み合わせを含む流れの少なくとも一部分が、スチームクラッカーにリサイクルされて、追加のエチレン及びプロピレンを生成するか、または流動化ガスの成分として、プラスチック触媒熱分解反応器にリサイクルされる;熱分解ガソリンナフサの少なくとも一部分、及びプラスチック触媒熱分解からのナフサの凝縮可能な流れの一部分が、水素処理されて、ジエン、トリエン、アセチレンもしくはビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)、またはそれらのいくつかの組み合わせの濃度を低減し、極微量のヘテロ原子、硫黄、窒素、塩素もしくは酸素、またはそれらのいくつかの組み合わせの濃度を低減する;水素処理生成物が、さらに分離され、精製されて、ポリマーグレードのベンゼン、トルエン、p-キシレン、またはそれらのいくつかの組み合わせを生成する;触媒熱分解に使用された触媒が、ゼオライトを含む;ゼオライトが、1~12の範囲の拘束指数を有する;ゼオライトが、ZSM-5である;供給物混合物の少なくとも一部分が、加熱されて、懸濁した固形物を除去するために高温濾過される溶融塊を提供する;熱分解ステップが、触媒の存在下での高速固体熱分解を含む;触媒が、ゼオライトを含む;触媒熱分解反応が、300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度で、流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器内で実施される、のうちの1つもしくは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、10~95、または少なくとも10、20、30、50、60、または10~80質量%のポリマーを含み、残りが、少なくとも95質量%の高コークス形成材料である、触媒熱分解プロセスのための供給物混合物を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、供給物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%は、高コークス形成材料を含む。いくつかの好ましい実施形態では、ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはそれらのいくつかの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、高コークス形成材料が、バイオマス、タイヤ側壁、タイヤトレッド、またはそれらのいくつかの組み合わせである。
【0024】
いくつかの実施形態では、混合物は、0.1重量%~3重量%、もしくは0.2重量%~2重量%、もしくは0.4重量%~1重量%、または少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%、もしくは少なくとも0.3重量%、もしくは少なくとも0.5重量%、または3重量%未満、もしくは2重量%未満、もしくは1重量%未満の汚染物質を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、ポリマーの10~99質量%、または少なくとも30、50、80、90、もしくは50~99質量%のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはこれらの混合物、及び少なくとも1質量%、もしくは少なくとも2質量%、もしくは少なくとも3質量%、もしくは少なくとも4質量%、もしくは少なくとも10質量%、または0.5質量%~20質量%、もしくは1質量%~15質量%、もしくは2質量%~13質量%の高コークス形成材料を含む触媒熱分解プロセスのための供給物混合物であって、ポリマー及び高コークス形成材料の質量の合計が、100質量%である、供給物混合物、を提供する。
【0026】
本態様は、以下の特徴:高コークス形成材料が、バイオマス、セルロース、綿衣類、PET、PET衣類、酢酸セルロース、またはこれらのいくつかの組み合わせである;混合物が、任意の汚染物質除去プロセスの前に、1重量%~10重量%、もしくは2重量%~8重量%、もしくは4重量%~7重量%、または少なくとも1重量%、もしくは少なくとも2重量%、もしくは少なくとも3重量%、もしくは少なくとも5重量%の汚染物質を含む;高コークス形成材料が、触媒熱分解プロセスに添加する前に、少なくとも部分的に前処理されて、汚染物質除去プロセスにおいて汚染物質濃度を低減する;供給物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%が、高コークス形成材料を含み、残りが、少なくとも95質量%のポリマーである、のうちの1つまたは任意の組み合わせによってさらに特徴付けることができる。
【0027】
本発明はまた、これらの供給物混合物及び熱分解反応器を含むシステムを含む。例えば、本明細書に記載される反応器タイプのいずれかの内部にある本明細書に記載の供給物混合物のいずれか。システムは、本明細書に記載される条件のいずれかによってさらに特徴付けることができる。
【0028】
本発明の態様のいずれにおいても、「コークス」という用語は、コークス及び炭化物の両方を含む。典型的には、プラスチックの触媒熱分解では、ごくわずかな炭化物が形成される。
【0029】
本発明は、外部源からエネルギーを供給する必要なく、廃プラスチックをリサイクルして、有用な化学物質を生成するための、効率的で、環境に優しく、かつ費用対効果の高い方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】プラスチックをBTX及びオレフィンなどの有用な生成物に変換するためのプロセスにおけるエネルギー回収及び統合スキームの概略図を表す。
【
図2】オレフィンが生成物混合物から分離され、BTXにアップグレードされるプロセスの概略図を表す。
【
図3】BTXにアップグレードするために、オレフィンが生成物から分離され、未変換のオレフィンが触媒熱分解反応器にリサイクルされるプロセスの概略図を示す。
【
図4】オレフィンが生成物から分離され、さらなる加工のために触媒熱分解反応器にリサイクルされるプロセスの概略図を表す。
【
図5】コークス形成供給物を別個の反応器内で熱分解し、蒸気をPlas-TCatプロセスに導入し、固体を別個に燃焼させて、プロセスのためのエネルギーを生成するプロセスの概略図を示す。
【
図6】スチームクラッカー反応器、ならびに下流の生成物回収及び分離手順のための簡略化された一般的なプロセスフロー図。
【
図8】7%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するタイヤが触媒熱分解プロセスにおいてポリエチレンと共にコークス形成供給物として供給されるときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の定常状態負荷を示す。
【
図9】0.4%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するバイオマスが触媒熱分解プロセスにおいてポリエチレンと共にコークス形成供給物として供給されるときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の定常状態負荷を示す。
【
図10】7%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するタイヤが別個のプロセスで予備熱分解されて、不活性汚染物質の99%を除去し、蒸気を触媒熱分解プロセスでポリエチレンと共に供給するときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の定常状態負荷を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
供給物材料の混合物は、触媒再生器内での触媒熱分解の選択された副生成物の燃焼または別の方法により、触媒熱分解変換プロセス、触媒熱分解変換プロセスの有益な生成物の分離、触媒熱分解変換生成物のアップグレード、またはこれらのいくつかの組み合わせを駆動するのに十分なエネルギーが発生するように、廃プラスチック、ポリマー、または他の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、副生成物の燃焼に由来するエネルギーは、プラント内で必要とされるエネルギーを超過し、エネルギーは、グリッドまたは他の場所に送出するための電気エネルギーに変換され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の態様のいずれかは、以下の特徴:ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはそれらの混合物の中から選択される;触媒熱分解プロセスへの供給物混合物が、バイオマス、ポリエチレンテレフタレート、タイヤ、セルロース、酢酸セルロース、綿衣類及びナイロン、またはそれらの混合物を含み得る;供給物材料の混合物が、触媒熱分解プロセスで生成されたコークス及び炭化物などの固体炭素質生成物の量が触媒再生器または他の方法での固体の燃焼時のプロセスに必要なエネルギーを提供するのに少なくとも十分であるように、選ばれる;供給物材料の混合物が、固体炭素質生成物、及び触媒熱分解プロセスで生成されたガス状生成物の一部分の量が触媒再生器または他の方法での燃焼時のプロセスに必要なエネルギーを提供するのに少なくとも十分であるように、選ばれる;供給物材料の混合物が、固体炭素質生成物、及び触媒熱分解プロセスで生成されたガス状生成物から分離されたガスのオレフィン減損混合物の一部分の量が触媒再生器または他の方法での燃焼時のプロセスに必要なエネルギーを提供するのに少なくとも十分であるように、選ばれる、のうちの1つまたは任意の組み合わせによって特徴付けることができる。
【0033】
一態様では、オレフィン流は、ポリマーの触媒熱分解によって生成され、有益な生成物にアップグレードするために分離される。別の態様では、本発明は、ポリマー材料または共混ポリマー材料から1つ以上のオレフィン生成物を生成するための方法を提供する。したがって、本発明は、プラスチックのリサイクルにおける特定の実用性を有する。この方法では、ポリマー、またはより典型的にはポリマー混合物が反応器に供給され、材料の少なくとも一部分が、1つ以上のオレフィンを生成するのに十分な反応条件下で、触媒の存在下で反応器内で熱分解される。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、エチレン及び/またはプロピレンの驚くほど高い収率によって特徴付けることができる。オレフィンは、別のプロセスにおけるその後の変換のために、ガス状原生成物混合物から分離することができる。オレフィン変換プロセスは、例えば、水素化、加水分解、ヒドロホルミル化、環化、二量化、重合、アルキル化、または他の変換プロセスもしくは変換プロセスの組み合わせを含むことができる。しかしながら、本発明は、これらの変換プロセスに限定されない。いくつかの実施形態では、変換プロセスは、以下のステップ:オレフィンのアルコールまたはエーテルへの変換;オレフィンの低温(80~400℃)重合;カルボン酸またはアルデヒドを形成するためのCOとの反応;アルキル化芳香族化合物を形成するための芳香族化合物とのアルキル化、及びパラフィンへの水素化のうちの1つまたは任意の組み合わせを含む。
【0034】
触媒熱分解プロセスからのガス状生成物流は、オレフィン欠乏流及びオレフィン豊富流に分離し、オレフィン分離器から来るオレフィン豊富流の少なくとも一部分は、価値が高い生成物に変換される前に精製され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法によって生成されたガス状原生成物混合物(反応器の外側で生じる任意の分離ステップの前に流動床反応器を離れる気相生成物)は、少なくとも20質量%のオレフィン、または少なくとも50質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、20質量%~90質量%の範囲のオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、オレフィンの質量収率は、ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも45%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、または20%~70%、もしくは30%~65%、もしくは45%~60%である。
【0036】
本プロセスは、生成物の分離時にBTX混合物を生成し得る。いくつかの実施形態では、BTXの質量収率は、ポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも35%、もしくは少なくとも40%、または10%~70%、もしくは20%~65%、もしくは25%~60%である。
【0037】
本発明はまた、本明細書に記載される装置及び組成物を含む化学的システムを含む。本発明はさらに、本明細書に記載される中間体または最終生成物として生じるか、または本明細書に記載される方法から得られる化学的組成物を含む。例えば、本発明は、ポリオレフィン、アルコール、アルデヒド、酸、または他のより多価の化学物質を追加的に含むオレフィン変換生成物を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、供給組成物は、ポリマー材料と触媒との混合物を含む。混合物は、例えば、固体、液体、及び/またはガスを含み得る。ある特定の実施形態では、混合物は、固体触媒及び固体ポリマー材料の組成物を含む。他の実施形態では、触媒は、ポリマー供給物流とは別個に提供され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、例えば、リサイクルポリマー材料が使用されるとき、不純物は、例えば任意選択の精製ステップによって反応器に供給される前に、任意選択で、供給物組成物から除去され得る。いくつかの場合では、固体ポリマー供給物組成物の粒径は、供給物を触媒熱分解反応器に渡す前に、サイズ低減システムにおいて低減され得る。いくつかの実施形態では、サイズ低減システムから出る低減されたサイズの供給物組成物の平均直径は、粉砕システムに供給された供給物組成物の質量平均直径の約50%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約2%以下を含み得る。供給物混合物は、粒子の少なくとも85質量%、または少なくとも90質量%、または少なくとも95質量%が、0.25インチ(0.6cm)、もしくは0.5インチ(1.2cm)、もしくは1.0インチ(2.5cm)、もしくは1.5インチ(3.7cm)、もしくは2インチ(5.0cm)のふるいを通過するプラスチック混合物を含み得るか、または供給物が、粒子の少なくとも85質量%、または少なくとも90質量%、または少なくとも95質量%が2:1、または3:1、または5:1、または10:1、または40:1、または77:1、または1:1~100:1、または1.5:1~40:1、または2:1~10:1のアスペクト比(長さと幅の比)を有するプラスチック混合物を含む。平均直径(サイズ)は、メッシュ(ふるい)を通してふるうことによって測定することができる。大粒子の供給物材料は、小粒子の供給物材料よりも容易に輸送可能であり、加工が困難ではない場合がある。他方で、場合によっては、(以下で述べるように)小さい粒子を反応器に供給することが有利である場合がある。サイズ低減システムの使用により、反応器への小さい粒子の供給を可能にしながら、供給源とプロセスの間で大きい粒子の供給物を輸送することもできる。
【0040】
触媒熱分解からの触媒が再生されるプロセスでは、プロセスで使用するために、または送出用の電気に変換するために、触媒再生器内のコークス、炭化物及び他の材料の酸化によって熱が発生する。1組の実施形態では、酸化剤は、
図1に「空気」として示される流れを介して再生器に供給される。酸化剤は、とりわけ、例えば、酸素、大気、スチームのタンクを含む任意の供給源を起源とし得る。再生器では、触媒を酸化剤と反応させることにより触媒が再活性化され、熱が発生する。非活性化触媒を含む固体混合物は、プロセスからの残留炭素及び/またはコークス、ならびにコークスまたは炭化物を含むことができ、これらは、再生器内の酸化剤との反応を介して除去され得る。いくつかの実施形態では、触媒熱分解プロセスからのガス状生成物の一部分は、固体材料と燃焼されるように、触媒再生器に供給される。ガス状生成物は、最初にオレフィン豊富流及びオレフィン欠乏流に分離することができ、オレフィン欠乏流の少なくとも一部は、触媒再生器に供給される。
図1の再生器は、再生反応生成物、残留酸化剤などを含み得る排出流を含む。
【0041】
図1は、本発明のプロセスの概略図を表す。プラスチック及び他の材料の供給物混合物は、供給物混合物が反応するPlas-TCat流動床触媒熱分解反応器に供給されて、蒸気生成物流、及び固体触媒含有流を形成する。触媒含有流は触媒再生器に渡され、ここで触媒含有流が空気などの酸化ガスと接触して、触媒を再生し、燃焼からエネルギーを生成する。プロセスで使用するためのエネルギー、例えば、供給物材料を加熱するか、もしくはガスをリサイクルするための、または他の目的のためのエネルギーは、1つ以上の熱交換器内の熱交換によって、再生器内で生成された高温燃焼ガスから回収され得る。触媒熱分解からの蒸気生成物流は、オレフィン及び芳香族化合物を含有する有益な生成物流と、メタン、エタン、プロパン、H2、CO2、及びCOを含有する副生成物流とに分離される。任意選択で、副生成物ガス流の一部分を再生器に渡して、その中の発熱を増加させることができる。触媒再生器で発生したエネルギーの一部分は、触媒熱分解反応器内の熱エネルギーとして、もしくは生成物の分離のために、またはそれらの両方に使用することができるか、あるいはエネルギーは、電気エネルギーに変換することができるか、あるいは発生したエネルギーは、プラント内の熱エネルギー及び電気エネルギーとして使用するか、または送出することができる。再生された触媒の少なくとも一部分は、触媒熱分解反応器に戻される。
【0042】
図1の例示的な実施形態に示すように、再生された触媒は、再生器から出ることができ、リサイクル流を介してリサイクルされて触媒熱分解反応器に戻され得る。場合によっては、動作中に触媒がシステムから失われる場合がある。いくつかのそのような及び他の場合では、追加の「補給」触媒が、補給流を介してシステムに添加され得る。
図1には図示していないが、再生された触媒及び補給触媒は、リサイクル流を介して流動化流体と共に反応器に供給することができるが、他の実施形態では、触媒及び流動化流体は、別個の流れを介して反応器に供給され得る。
【0043】
オレフィンは、
図2に示すように、ポリマー変換の生成物混合物から分離され、別個のプロセスにおいてBTXにアップグレードすることができる。これは図には示されていないが、オレフィンから芳香族化合物へのステップから変換されないオレフィンは、オレフィンから芳香族化合物へのプロセスにリサイクルされ得る。本発明のこの実施形態では、Plas-TCat反応器からの生成物流、及びオレフィンから芳香族化合物へのプロセスは、別個に扱うことができ、生成物の精製におけるより高い柔軟性、または他の設備との統合のための他の機会を可能にする。オレフィンから芳香族化合物への変換プロセスは、別のプロセスと共有されるか、または本発明のプロセスとの統合によって収率または効率が向上する既存のプラントであるプロセスであり得る。利点としては、インフラストラクチャの必要性の低減、ならびにコスト及びエネルギーの集中的な分離スキームが挙げられる。
【0044】
図3は、BTXにアップグレードするために触媒熱分解生成物からオレフィンが分離され、未変換のオレフィンの少なくとも一部分が触媒熱分解(Plas-TCat)反応器にリサイクルされるプロセスの実施形態を示す。本発明のプロセスのこの構成は、オレフィンを芳香族化合物に変換するPlas-TCatプロセスの能力を利用し、Plas-TCat反応器から得た芳香族化合物の収率を向上させ、プロセス全体の効率を改善する。本発明のこの実施形態では、Plas-TCat、及びオレフィンから芳香族化合物へのプロセスの生成物は、所望の有価生成物への精製及び分離のために別個に扱うことができるか、または組み合わせることができる。
【0045】
本発明のプロセスの別の実施形態は、
図4に表され、ここで、生成されたオレフィンの少なくとも一部分は、Plas-TCatプロセスの生成物から分離され、さらなる処理及び有用な生成物への変換のために触媒熱分解(Plas-TCat)反応器にリサイクルされる。この実施形態では、単位動作の数が最小限に抑えられ、プロセスのいくつかの他の実施形態と比較して、資本投資が削減され、この実施形態は、近傍プロセスとの統合のための機会が利用可能ではない単独プラントに、より適用可能であり得る。
【0046】
本発明のプロセスの別の実施形態では、
図5に概略的に示すように、コークス形成供給物は、別個の反応器内で熱分解され、熱分解からの蒸気は、Plas-TCatプロセスに導入され、熱分解からの固体は、別個に燃焼されて、プロセスのためのエネルギーを生成する。この実施形態は、Plas-TCat触媒を損傷もしくは非活性化する場合があるか、または別の点で、生成物の精製及び分離の問題を表す場合があるか、またはプロセス中に単純に蓄積する場合がある汚染物質を含有する熱分解ユニットに供給物を使用する利点を有する。このスキームでは、非揮発性汚染物質、例えば、シリカ、アルミナ、砂などは、主に固体中に保持され、触媒が汚染されないように、Plas-TCatプロセスには送られない。
【0047】
プロセスへの混合ポリマー供給物は、以下の材料:バイオマス、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセチレン、ポリブチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポリアセタール、エポキシ、ポリシアヌレート、ポリアクリル酸、ポリ尿素、ビニルエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、エチレン-プロピレンなどのコポリマー、EPDM、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム、天然及び合成ゴム、タイヤ、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-イソプレン、スチレン-無水マレイン酸、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン12/6/66、充填ポリマー、ポリマー複合材料、プラスチック合金、他のポリマー材料、及び溶媒中に溶解されたポリマーまたはプラスチックから選択される1つまたは任意の組み合わせを含む。供給物材料は、廃棄物としてポリマーまたはプラスチックの製造プロセスから得られた材料、または処分材料、消費者リサイクル後ポリマー材料、都市固形廃棄物、黒液、木材廃棄物または他の生物学的に生成された材料などの廃棄物流から分離された材料を含み得る。供給物混合物は、流動床反応器内で触媒熱分解を受けたとき、十分なコークス、及びCO、H2、CH4、C2H6、C3H8などの軽質ガスを生成する材料を含み、その結果、触媒再生器または他のデバイス内で燃焼されるとき、コークス、またはコークス及び軽質ガスの一部分の燃焼が、天然ガス、油、石炭、もしくは他の材料の燃焼などの外部源からのエネルギー、または電気エネルギー、または本発明のプロセスの副生成物以外の材料から生成されたエネルギーを添加することなく、触媒熱分解プロセスを持続するのに十分なエネルギーを生成する。
【0048】
いくつかの実施形態では、供給物混合物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、またはそれらの混合物に加えて、添加された高コークス形成材料を含み、その結果、供給物混合物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%が、標準的なドロップチューブ実験における添加された材料の触媒熱分解において、1重量%を超える、もしくは2重量%を超える、もしくは5重量%を超える、もしくは10重量%を超える、もしくは20重量%を超える、もしくは40重量%を超える、または1重量%~40重量%、もしくは5重量%~40重量%、もしくは10重量%~40重量%のコークス及び炭化物を生成する材料(material)または材料(materials)を含む。コークス及び炭化物の量は、標準的なドロップチューブ実験においてZSM-5を触媒として使用して、実施例の項に記述するような方法及び条件に従って決定される。特に明記しない限り、「標準的なドロップチューブ実験」という語句は、ZSM-5を使用する実施例に記述するような方法及び条件を指す。本明細書全体を通して、「コークス及び炭化物」という語句は、実施例における「コークス」と同じであり、熱分解によって生成されたすべての黒色または灰色の炭素質固体材料を指す。
【0049】
いくつかの実施形態では、供給物混合物は、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物に加えて、添加された高コークス形成材料を含み、その結果、供給物混合物の少なくとも5質量%、もしくは少なくとも10質量%、もしくは少なくとも20質量%、もしくは少なくとも30質量%、もしくは少なくとも40質量%、もしくは少なくとも50質量%、または5質量%~60質量%、もしくは10質量%~60質量%、もしくは20質量%~60質量%、もしくは40質量%~60質量%が標準的なドロップチューブ実験における添加された材料の触媒熱分解において、1重量%を超える、もしくは2重量%を超える、もしくは5重量%を超える、もしくは10重量%を超える、もしくは20重量%を超える、もしくは40重量%を超える、または1重量%~40重量%、もしくは5重量%~40重量%、もしくは10重量%~40重量%のコークス及び炭化物を生成する材料(material)または材料(materials)を含み、添加された材料が、0.1重量%~3重量%、もしくは0.2重量%~2重量%、もしくは0.4重量%~1重量%、または少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%、もしくは少なくとも0.3重量%、もしくは少なくとも0.5重量%、または3重量%未満、または2重量%未満、もしくは1重量%未満の汚染物質を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、供給物混合物は、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物に加えて、添加された高コークス形成材料を含み、その結果、供給物混合物の少なくとも1質量%、もしくは少なくとも2質量%、もしくは少なくとも3質量%、もしくは少なくとも4質量%、もしくは少なくとも10質量%、または0.5質量%~20質量%、もしくは1質量%~15質量%、もしくは2質量%~13質量%が、標準的なドロップチューブ実験において添加された材料の触媒熱分解において、1重量%を超える、もしくは2重量%を超える、もしくは5重量%を超える、もしくは10重量%を超える、もしくは20重量%を超える、もしくは40重量%を超える、または5重量%~40重量%、もしくは10重量%~25重量%のコークス及び炭化物を生成する材料(material)または材料(materials)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、供給物混合物は、ポリエチレン、もしくはポリプロピレン、もしくはポリスチレン、またはそれらの混合物に加えて、添加された高コークス形成材料を含み、その結果、供給物混合物の少なくとも1質量%、もしくは少なくとも2質量%、もしくは少なくとも3質量%、もしくは少なくとも4質量%、もしくは少なくとも10質量%、または0.5質量%~20質量%、もしくは1質量%~15質量%、もしくは2質量%~13質量%が、添加された材料が標準的なドロップチューブ実験における触媒的に熱分解されるとき、1重量%を超える、もしくは2重量%を超える、もしくは5重量%を超える、もしくは10重量%を超える、もしくは20重量%を超える、もしくは40重量%を超える、または5重量%~40重量%、もしくは10重量%~25重量%のコークス及び炭化物を生成する材料(material)または材料(materials)を含み、添加された材料が、任意の汚染物質除去プロセスの前に、1重量%~10重量%、もしくは2重量%~8重量%、もしくは4重量%~7重量%、または少なくとも1重量%、もしくは2重量%、もしくは少なくとも3重量%、もしくは少なくとも5重量%の汚染物質を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセスで使用される添加された材料は、触媒熱分解プロセスへの添加の前に、汚染物質除去プロセスにおいて汚染物質濃度を低減するために、少なくとも部分的に前処理される。「汚染物質」は、典型的な熱分解条件下で熱分解しないシリカもしくは金属、または金属酸化物などの材料である。除去は、溶液または溶融物から固体を濾過することによって、またはいくつかの好ましい実施形態では、第1の熱分解ステップによって、触媒を添加せずに(またはゼオライト触媒なしで)達成することができ、いくつかの実施形態では、第1の熱分解ステップは、流動床内ではない。汚染物質除去プロセスは、水または溶媒で洗浄する、US10,336,628、US6,792,881、US7,303,649、US7,503,981、US8,101,024、US9,109,049、US9,468,950、及び米国特許出願公開第2015/0166683号に記載されるものによって、または当業者に既知の任意の方法などのもののいずれかであり得る。
【0053】
供給物の好ましい組成物は、供給物の成分の各々からコークス、またはコークス及び副生成物ガスの一部分の収率の線型結合を計算し、そのコークスと副生成物ガスとの混合物の燃焼によって生成されたエネルギーを、供給物混合物の成分及び加工ステップから計算することもできる触媒熱分解プロセスに必要なエネルギーと比較することによって概算することができる。触媒熱分解プロセスに必要なエネルギーは、1)生成物を形成する熱と供給物材料を形成する熱との間のエネルギー差と、2)変換プロセスにおいて失われたエネルギー、ならびに変換、及び分離、及び精製プロセスに必要なエネルギーとの合計によって概算することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、少なくとも部分的に溶融材料としてポリマーを供給することが有利であり得る。これは、ポリマーまたはプラスチック単独で、または200℃を下回る温度で溶融するポリマーとプラスチックとの混合物として行うことができる。いくつかの実施形態では、溶融ポリマーは、熱分解反応器に入る前に噴霧され得る。これは、キャリアガス注入または熱分解生成物分離区域からリサイクルされたガス混合物で行うことができる。ガス混合物は、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、プロパン、エチレンもしくはプロピレン、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、当業者に既知の様々な濾過手順のいずれかを使用して、ポリマーもしくはプラスチック、またはポリマー及びプラスチックの溶融混合物を濾過して、選ばれたプロセス条件で容易に溶融しない固体を除去することができる。ポリマーもしくはプラスチック、またはポリマー及びプラスチックの溶融混合物が炭素質固体を含有する材料を含むいくつかの実施形態では、これらの固体は、高温濾過によって分離され、任意選択でプロセスのためのエネルギーを提供するために燃焼され得る。
【0056】
使用される反応器は、当業者に既知の任意の好適な反応器であり得る。例えば、いくつかの場合では、反応器は、とりわけ、連続撹拌タンク反応器(CSTR)、バッチ反応器、半バッチ反応器、流動床反応器または固定床触媒反応器を含み得る。場合によっては、反応器は、流動床反応器、例えば循環流動床反応器、ライザー反応器などの移動床反応器、または気泡床反応器を含む。流動床反応器は、場合によっては、熱分解及び/またはその後の反応中に、触媒及び/またはポリマー材料の改善された混合を提供することができ、これは、形成された反応生成物にわたる強化された制御につながり得る。流動床反応器の使用はまた、反応器内の改善された熱伝達につながり得る。加えて、流動床反応器内の改善された混合は、触媒に付着したコークスの量の減少につながり、場合によっては、触媒の不活性化の低減、ならびにオレフィン及び他の望ましい生成物のより高い収率をもたらし得る。本明細書全体を通して、様々な組成物がプロセス流と称されるが、プロセスがバッチモードでも実施され得ることを理解されたい。
【0057】
オレフィンを他の流体炭化水素生成物から分離するための好適な方法は、当業者に既知である。例えば、オレフィンは、生成物流を、オレフィンの沸点と他の流体炭化水素生成物の沸点との間にある温度まで冷却することによって、他の流体炭化水素生成物から分離することができる。任意選択で、オレフィン分離器は、多段階分離器を含むことができる。例えば、オレフィン分離器は、ガス状生成物(オレフィンを含む)を液体生成物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、高級オレフィン、高級パラフィンなどの高沸点材料)から直接分離する第1の分離器と、オレフィンの少なくとも一部分を他のガス状生成物(例えば、ガス状の芳香族化合物、メタン、水素、窒素、HCl、HCN、NH3、CO2、CO、H2Oなど)から分離する第2の分離器と、を含むことができる。分離を実行するために使用される方法及び/または条件は、流体炭化水素生成物流中に存在する化合物の相対的な量及びタイプに依存する場合があり、当業者であれば、本明細書に提供された案内に与えられた、所与の分離を達成するのに好適な方法及び条件を選択することができよう。
【0058】
1組の実施形態では、分離された触媒は、固体出口導管を介して触媒熱分解反応器を出ることができる。場合によっては、触媒熱分解反応器から出る触媒は、少なくとも部分的に非活性化され得る。分離された触媒は、いくつかの実施形態では、少なくとも部分的に非活性化された任意の触媒が再活性化され得る再生器に供給され得る。いくつかの実施形態では、再生器は、任意選択のパージ流を含むことができ、これは、コークス、灰及び/または触媒などの固体を再生器からパージするために使用することができる。
【0059】
反応器から除去された非活性化固体触媒は、供給物材料に由来する固体炭素含有材料、または供給物混合物中にあり、触媒熱分解プロセスにおいて形質変換されていない固体炭素含有材料と混合され得る。例えば、タイヤは、触媒熱分解プロセスにおいて有意に形質変換されない炭素の固体形態であるカーボンブラックを含有する。部分的に非活性化された触媒と混合されるカーボンブラックは、プロセスにおいて作製された触媒上のコークス及び任意の炭化物と共に酸化(燃焼)される触媒再生器に渡されて、熱を生成することができる。熱は、高温触媒中及び燃焼ガスから回収され、触媒熱分解プロセスのための熱エネルギーを提供するために使用されるか、または任意選択で、蒸留塔、圧縮機、ポンプ、ファン、コントローラなどのプラント内の機器を動作させるための電気エネルギーに変換され得る、または電気は、他の設備もしくはグリッド、またはこれらのいくつかの組み合わせに伝達され得る。
【0060】
1組の実施形態では、酸化剤は、ガス供給物流を介して再生器に供給される。酸化剤は、とりわけ、例えば、酸素、大気、リサイクルされた排気ガスまたはスチームのタンクを含む任意の供給源を起源とし得る。再生器では、触媒を酸化剤と反応させることによって、触媒が再活性化される。場合によっては、非活性化触媒は、残留炭素及び/またはコークスを含むことができ、これらは、再生器内の酸化剤との反応を介して除去され得る。再生器は、再生反応生成物、残留酸化剤などを含み得る排出流を含む。再生器からの排気ガス排出流は、触媒排気ガスクリーンアップシステムを通過して、CO及び炭化水素の濃度をさらに低減し、大気に排出される放出物を低減することができる。排気ガス排出流の一部分は、再生器のガス供給物にリサイクルされて、再生プロセスの熱放出を制御することができる。
【0061】
再生器は、反応器または固体分離器に関連して上述した任意の好適なサイズのものであり得る。さらに、再生器は、場合によっては、高温(例えば、少なくとも約300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃またはそれ以上)で動作され得る。触媒の再生器内での滞留時間はまた、上記で概説したものを含む、当業者に既知の方法を使用して制御され得る。いくつかの場合では、再生器を通る触媒の質量流量は、システム内の質量バランスを保つために、反応器及び/または固体分離器内の流量(複数可)に結合される。
【0062】
再生された触媒は、再生器を出て、触媒リサイクル流を介してリサイクルされて反応器に戻され得る。場合によっては、動作中に触媒がシステムから失われる場合がある。場合によっては、追加の「補給」触媒が、補給流を介してシステムに添加され得る。再生された触媒及び補給触媒は、リサイクル流を介して流動化流体と反応器に供給することができるが、他の実施形態では、触媒及び流動化流体は、別個の流れを介して反応器に供給され得る。
【0063】
反応生成物(例えば、流体炭化水素生成物)は、固体触媒を流体生成物から分離することができる固体分離器に供給され得る。
【0064】
いくつかの場合では、プロセスの初期生成物は、生成物流と共に冷却流体、好ましくは液体を供給されて、生成物を冷却及び凝縮する急冷塔に供給され得る。いくつかの実施形態では、望ましい反応生成物(複数可)(例えば、液体芳香族炭化水素、オレフィン炭化水素、ガス状生成物など)は、生成プロセスにおける任意の時点(例えば、反応器を通過した後、分離後、凝縮後など)で回収され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、反応生成物を急冷部に送って、重質炭化水素を急冷流体の中に除去する。場合によっては、急冷流体は、後続の分離ステップで回収される液体生成物を含む。急冷部からのガス状流は、様々な芳香族化合物液体成分を回収することができる分留塔に送ることができる。この急冷部及び分留塔は、より効率的な液体回収のために1~7バラの高圧で動作することができる。分留塔の上部からのガス状流は、残りの液体有機物の最終画分が回収される吸着塔に送ることができる。これは、分留塔から回収された液体生成物、または当業者に既知の他の利用可能な液体を含むことができる吸収流体として、リーンオイル画分を使用して行うことができる。ここで、ほとんどの高沸騰生成物から取り除かれたガス状流の一部分は、オレフィンのさらなる変換のために反応器に送って戻すことができ、別の部分は、オレフィン精製区域に供給するために送られ得る。
【0066】
用語集
芳香族化合物-本明細書で使用される場合、「芳香族」または「芳香族化合物」という用語は、炭化水素化合物、または例えば単一芳香族環系(例えば、ベンジル、フェニルなど)及び縮合多環式芳香族環系(例えば、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなど)などの1つ以上の芳香族基を含む化合物を指すために使用される。芳香族化合物の例としては、ベンゼン、トルエン、インダン、インデン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン、トリメチルベンゼン(例えば、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼンなど)、エチルベンゼン、スチレン、クメン、メチルベンゼン、プロピルベンゼン、キシレン(例えば、p-キシレン、m-キシレン、o-キシレンなど)、ナフタレン、メチル-ナフタレン(例えば、1-メチルナフタレン、アントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレン、ジメチル-ナフタレン(例えば、1,5-ジメチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,5-ジメチルナフタレンなど)、エチル-ナフタレン、ヒドリンデン、メチル-ヒドリンデン及びジメチル-ヒドリンデンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、単環及び/または多環の芳香族化合物も生成され得る。
【0067】
流体-「流体」という用語は、ガス、液体、ガスと液体との混合物、または分散した固体、液滴及び/またはガス状気泡を含有するガスもしくは液体を指す。「ガス」及び「蒸気」という用語は同じ意味を有し、時には互換的に使用される。いくつかの実施形態では、反応器内の流動化流体の滞留時間を制御することが有利であり得る。流動化流体の流体化滞留時間は、温度及び圧力のプロセス条件下で、反応器の体積を流動化流体の体積流量で除算したものとして定義される。
【0068】
流動床反応器-「流動床反応器」という用語は、当該技術分野におけるその従来の意味を与えられ、流体(例えば、ガスまたは液体)が固体材料を懸濁させるのに十分高い速度で粒状固体材料を通過させ、それを流体であるかのように挙動させる、粒状固体材料(例えば、シリカ粒子、触媒粒子など)を含有し得る容器を備える反応器を指すために使用される。流動床反応器の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(online),Vol.11,Hoboken,N.J.:Wiley-Interscience,2001,pages791-825に記載されている。「循環流動床反応器」という用語はまた、当該技術分野におけるその従来の意味も与えられ、粒状固体材料が反応器から出て渡され、反応器と流体連通するラインを通して循環され、リサイクルされて反応器に戻る、流動床反応器を指すために使用される。循環流動床反応器の例は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(Online),Vol.11,Hoboken,N.J.:Wiley-Interscience,2001,pages791-825に記載されている。
【0069】
気泡流動床反応器及び乱流流動床反応器は、当業者にも既知である。気泡流動床反応器では、粒状固体材料を流動化するために使用される流体流は、動作中に気泡及び空隙が流動床の体積内で観察されるように、十分に低い流量で動作される。乱流流動床反応器では、流動流の流量は、気泡流動床反応器内で採用された流量よりも多く、したがって、動作中に流動床の体積内で気泡及び空隙が観察されない。気泡流動床反応器及び乱流流動床反応器の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(online),Vol.11,Hoboken,N.J.:Wiley¬Interscience,c2001-,pages791-825に記載されている。
【0070】
オレフィン-「オレフィン」または「オレフィン化合物」(別名「アルケン」)という用語は、当該技術分野においてそれらの通常の意味で与えられ、二重結合によって連結された1つ以上の炭素原子対を含有する任意の不飽和炭化水素を指すために使用される。オレフィンには、環式(閉環)または開鎖基の一部を形成する炭素原子間に二重結合がそれぞれ位置する環式オレフィン及び非環式(脂肪族)オレフィンの両方が含まれる。加えて、オレフィンは、任意の好適な数の二重結合(例えば、モノオレフィン、ジオレフィン、トリオレフィンなど)を含み得る。オレフィン化合物の例としては、とりわけ、エテン、プロペン、アレン(プロパジエン)、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン(2メチルプロペン)、ブタジエン及びイソプレンが挙げられるが、これらに限定されない。環式オレフィンの例としては、とりわけ、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘプテンが挙げられる。トルエンなどの芳香族化合物は、オレフィンとはみなされないが、芳香族部分を含むオレフィンは、オレフィン、例えばアクリル酸ベンジルまたはスチレン、とみなされる。
【0071】
触媒-本発明の文脈で有用な触媒成分は、当業者に既知であるか、または当業者に理解されるような、任意の触媒から選択され得る。触媒は反応を促進する及び/または効果をもたらす。したがって、本明細書で使用される場合、触媒は、化学的プロセスの活性化エネルギーを低下させる(速度を上昇させる)、及び/または化学反応における生成物もしくは中間体(例えば、形状選択触媒)の分布を改善する。触媒され得る反応の例としては、脱水、脱水素化、異性化、水素転移、水素化、重合、環化、脱硫、脱窒、脱酸素、芳香族化、脱カルボニル化、脱炭酸、アルドール縮合及びそれらの組み合わせが挙げられる。触媒成分は、当業者に理解されるように、酸性、中性または塩基性とみなすことができる。
【0072】
触媒熱分解については、特に有利な触媒としては、孔径(例えば、メソ細孔、及びゼオライトに典型的に関連する孔径)、例えば、約100オングストローム未満、約50オングストローム未満、約20オングストローム未満、約10オングストローム未満、約5オングストローム未満、またはそれよりも小さい平均孔径に従って選択された内部多孔度を含有するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、約5オングストローム~約100オングストロームの平均孔径を有する触媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、約5.5オングストローム~約6.5オングストローム、または約5.9オングストローム~約6.3オングストロームの平均孔径を有する触媒を使用することができる。場合によっては、約7オングストローム~約8オングストローム、または約7.2オングストローム~約7.8オングストロームの平均孔径を有する触媒を使用することができる。
【0073】
触媒熱分解のいくつかの好ましい実施形態では、触媒は、天然に生じるゼオライト、合成ゼオライト及びそれらの組み合わせから選択され得る。ある特定の実施形態では、触媒は、当業者に理解されるように、ZSM-5ゼオライト触媒であり得る。任意選択で、そのような触媒は、酸性部位を含み得る。他のタイプのゼオライト触媒としては、とりわけ、フェリエライト、ゼオライトY、ゼオライトベータ、モルデナイト、MCM-22、ZSM-23、ZSM-57、SUZ-4、EU-1、ZSM-11、(S)AlPO-31、SSZ-23が挙げられる。ゼオライト及び他の小孔材料は、多くの場合、それらの拘束指数によって特徴付けられる。
【0074】
拘束指数の単純な決定は、等重量の通常のヘキサンと3-メチルペンタンの混合物を、以下の手順に従って、大気圧で約1グラム以下の結晶性材料の小さい試料の上に連続的に通すことによって行うことができる。ペレットまたは押出物の形態の結晶性材料の試料を、粗砂の粒径程度に砕き、ガラス管に取り付ける。試験の前に、結晶性材料を537℃の空気の流れで少なくとも15分間処理する。次いで、結晶性材料をヘリウムで及び287℃~510℃以上で調整された温度で洗い流して、炭化水素の混合物がヘリウム希釈物を有する結晶性材料の上を1空間速度(すなわち、1時間当たりの結晶性材料体積当たり、1体積の液体炭化水素)で通るときに10%~60%の全体的な変換を可能にし、4:1のヘリウムと総炭化水素のモル比を与える。流れ上で20分後、最も便利にはガスクロマトグラフィーによって、流出物の試料を分析して、2つの炭化水素の各々について変化しないままの画分を決定する。拘束指数は、残りのn-ヘキサンの対数を、残りの3-メチルペンタンの対数で除算した比である。拘束指数は、2つの炭化水素についてのクラッキング率定数の比を概算している。拘束指数を決定する方法は、方法の詳細について参照により組み込まれる、米国特許第4,029,716号により完全に記載されている。
【0075】
いくつかの典型的な材料の拘束指数(CI)値は、次のとおりである。
【0076】
【表1】
CI値は、典型的には、指定された結晶性材料を特徴付けるが、その決定及び計算に有用ないくつかの変数の累積結果である。したがって、試験方法中に採用された温度に依存して、1~12の範囲内のCI値を呈し、10~60%の変換を伴う所与の結晶については、CIは、1~12の示した範囲内で変化し得る。同様に、結晶サイズ、または場合により閉塞された汚染物質の存在、及び結晶と密接に組み合わされた結合剤などの他の変数は、CIに影響を及ぼし得る。当業者であれば、本明細書で利用されるようなCIは、目的の分子ふるいを特徴付けるための非常に有用な手段を提供する一方で、その決定の様態を考慮して、いくつかの場合では、可変極値を複合する可能性を有し、概算であることが理解される。しかしながら、すべての場合において、上記で指定された範囲内の温度で、CIは、約1~12の範囲内の本明細書で有用な任意の所与の分子ふるいについての値を有する。
【0077】
他の実施形態では、非ゼオライト触媒、例えばWOx/ZrO2、リン酸アルミニウムなどを使用することができる。いくつかの実施形態では、触媒は、金属及び/または金属酸化物を含み得る。好適な金属及び/または酸化物としては、とりわけ、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、銅、ガリウム及び/またはそれらの酸化物のいずれかが挙げられる。場合によっては、希土類元素、すなわち、元素57~71、セリウム、ジルコニウム、またはこれらを組み合わせるためのそれらの酸化物の中から選ばれるプロモーター元素は、触媒の活性または構造を修飾するために含まれ得る。さらに、場合によっては、触媒の特性(例えば、細孔構造、酸部位のタイプ及び/または数など)を選んで、望ましい生成物を選択的に生成することができる。
【0078】
オレフィンのアルキル化、水素化、水素処理、脱酸素、脱窒、及び脱硫などの他のプロセスについての触媒は、よく知られており、本明細書に記載のオレフィン変換または他のプロセスのために選択することができる。
【0079】
低及び高コークス形成材料
材料は、プラスチックまたは類似材料については500℃、及びバイオマスまたは類似材料については525℃のいずれかで、ドロップチューブ反応器及びZSM-5触媒を使用する実施例に記載するように、単純な実験を実施することによって、高コークス形成または低コークス形成に分類することができる。低コークス形成材料は、実施例に記載する方法に従って、ZSM-5の存在下で触媒的に熱分解されたとき、生成物混合物中で5質量%未満の固体コークス及び炭化物を生成するものである。高コークス形成材料は、実施例に記載する方法に従って、ZSM-5の存在下で触媒的に熱分解されたとき、生成物混合物中で10質量%超の固体コークス及び炭化物を生成するものである。実施例に記載する方法に従って、ZSM-5の存在下で触媒的に熱分解されたとき、コークス及び炭化物の中間収率、すなわち5質量%~10質量%を生成する材料は、混合物の他の成分に依存して、低コークス形成材料または高コークス形成材料のいずれかとみなすことができる。本発明のいくつかの実施形態では、5%~10%のコークス及び炭化物を生成する材料は、コークス、またはコークス及び副生成物ガスの一部分の燃焼がプロセスで必要なエネルギーを提供するように、生成されたコークスを増加させるために、低コークス形成材料(複数可)と混合され得る。他の場合では、5%~10%のコークス及び炭化物を生成する材料は、コークス、またはコークス及び生成される副生成物ガスの一部分の燃焼がプロセスで必要なエネルギーを提供するように、適切な割合で高コークス形成材料(複数可)と混合され得る。
【0080】
プラスチックまたはポリマー-「プラスチック」及び「ポリマー」という用語は、本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、主に繰り返し単位で構成され、少なくとも100、典型的には1000超、または10,000超の数平均分子量を有する、炭素系(少なくとも50質量%のC)材料である。
【0081】
熱分解-「熱分解」及び「熱分解すること」という用語は、当該技術分野におけるそれらの従来の意味を与えられ、化合物、例えば固体炭化水素質材料を、好ましくは、O2の添加なしでまたはO2不存在下で、熱によって、1つ以上の他の物質、例えば揮発性有機化合物、ガス及びコークスに形質変換することを指すために使用される。好ましくは、熱分解反応チャンバ内に存在するO2の体積分率は、0.5%以下である。熱分解は、触媒の使用の有無にかかわらず行うことができる。「触媒熱分解」は、触媒の存在下で実行される熱分解を指し、以下でより詳細に記載するようなステップを伴い得る。触媒熱分解プロセスの例は、例えば、Huber,G.W.et al,「Synthesis of Transportation Fuels from Biomass:Chemistry,Catalysts,and Engineering,」Chem.Rev.106,(2006),pp.4044-4098に概説されている。
【0082】
選択性-「選択性」という用語は、生成物の選択と比較した特定の生成物の生成量を指す。生成物に対する選択性は、特定の生成物の量を生成された生成物の数の量で除算することによって計算することができる。例えば、75グラムの芳香族化合物が反応において生成され、20グラムのベンゼンがこれらの芳香族化合物中に見出された場合、芳香族生成物中のベンゼンに対する選択性は、20/75=26.7%である。選択性は、前述の実施例のように、質量ベースで計算することができるか、または炭素ベースで計算することができ、選択性は、特定の生成物中に見出される炭素の量を、生成物の選択において見出される炭素の量で除算することによって計算される。特に明記しない限り、反応物としてのポリマーを伴う反応については、選択性は質量ベースである。特定の分子反応物(例えば、エテン)の変換を伴う反応については、選択性は、選択された生成物(特に明記しない限り、質量ベースで)を、生成されたすべての生成物で除算した百分率である。
【0083】
収率-収率という用語は、本明細書では、反応器から流出する生成物の量を、反応器に流入する反応物の量で除算したものを指すために使用され、通常は、百分率または分数として表現される。収率は、多くの場合、質量ベース、炭素ベースまたは特定の供給物成分に基づいて計算される。質量収率は、特定の生成物の質量を、その生成物を調製するために使用される供給物の重量で除算したものである。例えば、500グラムのポリマーを反応器に供給し、45グラムのベンゼンが生成された場合、ベンゼンの質量収率は、45/500=9%のベンゼンである。炭素収率は、特定の生成物中に見出された炭素の質量を、反応器への供給物中の炭素の質量で除算したものである。例えば、90%の炭素を含有する500グラムのポリマーを反応させて、92.3%の炭素を含有する400グラムのベンゼンを生成する場合、炭素収率は、[(400*0.923)/(500*0.90)]=82.0%である。
【0084】
標準的な特許専門用語として、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味し、追加の成分を除外しない。「含む(comprising)」という用語と併せて記載される本発明の態様のいずれかには、「含む(comprising)」という用語が「から本質的になる」または「からなる」という、より狭義の用語によって置き換えられるより狭義の実施形態も含まれる。この明細書で使用されるとき、「含む(includes)」または「含む(including)」という用語は、本発明を限定するものではなく、むしろ例示的な成分を列挙するものと解釈されるべきである。
【0085】
いくつかの好ましい実施形態の説明
本明細書に記載する様々の特徴、特性、実施形態などは、単一の態様または実施形態に限定されず、本明細書に記載する本発明の態様のいずれかに適用可能であるものとして理解されるべきである。
【0086】
本発明の一実施形態では、ポリマーもしくはプラスチック、またはポリマー及びプラスチックを触媒熱分解反応器に供給して、芳香族化合物及びオレフィンを含有するガス状生成物を形成し、オレフィンが生成物から分離され、オレフィンが精製され、様々な成分のオレフィンに分離され、各オレフィン流が、有用な生成物への変換のためのさらなる加工のために送られる。
【0087】
オレフィンは一般的に生成されるため、本発明は、一般に、任意のポリマー熱分解反応に適用可能である。好ましくは、ポリマー原料は、固体材料を含む。熱分解反応器は、高速触媒熱分解のための固体触媒を含む。反応器のタイプ及び固体触媒のタイプ(存在する場合)は限定されず、一般に、ポリマー材料の流体炭化水素質流への変換について知られているタイプのものであり得る。ポリマーの触媒熱分解のための条件は、以下の特徴(本発明のより広範な態様を限定することを意図するものではない):ゼオライト触媒、ZSM-5触媒;1~12の拘束指数を有する微孔性触媒;以下の金属:チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、白金、パラジウム、銀、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、タングステン、ジルコニウム、セリウム、ランタン及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含むゼオライト触媒;流動床、循環床、気泡床またはライザー反応器;300℃~1000℃、または400℃~650℃、または450℃~600℃、または500℃~575℃の範囲の動作温度;0.1~20、または0.5~15、または1~10、または3~8の固体触媒とポリマーの供給物質量比;空間速度が0.1~10、または0.2~8、または0.5~5、または1~4の範囲である;圧力が1バラ(実際のバール)~30バラ、もしくは2バラ~15バラ、もしくは3バラ~10バラ、もしくは4~7バラ、または少なくとも3バラ、もしくは少なくとも4バラ、もしくは少なくとも6バラである;あるいは0.1~120秒、もしくは1~60秒、もしくは5~30秒、もしくは8~20秒、または60秒未満、もしくは30秒未満、もしくは10秒未満、もしくは8秒未満の供給物滞留時間(供給物滞留時間は、温度及び圧力の実際の条件下で、炭素原子が少なくとも400℃の温度で反応器内で費やす平均時間として計算される)、のうちの任意の1つまたは任意の組み合わせから選択することができる。
【0088】
熱分解プロセスは、標準的には、非常に低いまたはゼロの酸素(O2)濃度、通常は0.5体積%未満の酸素(O2)濃度を有する雰囲気下で実施される。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、熱分解プロセスは、混合物の温度を望ましい反応温度に急速に上昇させるために、もしくはプロセスの吸熱的性質を克服するために、またはその両方のために、0.6体積%以上のO2の濃度で実施することができる。いくつかの実施形態では、プロセス供給物は、100℃~450℃の温度で導入され、温度は、プロセスにおける少濃度のO2の使用によって、少なくとも25℃、もしくは少なくとも100℃、もしくは少なくとも200℃、もしくは少なくとも300℃、または100℃~400℃まで非常に急速に上昇(変化)させることができる。酸素の導入は、供給物材料の変換を達成するために必要とされる熱エネルギーを送給するプロセスにおいて、炭化水素、CO、H2もしくは他の成分、またはいくつかの組み合わせの燃焼を開始する。これらの場合では、この添加から得られる反応器への供給物中のO2の濃度は、0.6重量%~10重量%、0.6重量%~8重量%、1重量%~6重量%もしくは2重量%~4重量%、または少なくとも0.6重量%、少なくとも2重量%、少なくとも4重量%もしくは少なくとも6重量%であり得、O2のパーセント重量は、ポリマー供給物混合物の重量と比較しているが、すべての場合において、導入された酸素濃度は、反応器から出る生成物混合物中に著しい未変換酸素が見出され得る濃度未満に保たれる。酸素は、好ましくは、流動化流体の成分としての空気もしくはO2の添加によって、またはプラスチックと共に注入されたガスで、または流動床への別個の直接的な注入によって、あるいはそれらのいくつかの組み合わせによって導入される。
【0089】
本プロセスのための供給物材料は、以下の材料:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセチレン、ポリブチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、コポリエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリアセタール、エポキシ、ポリシアヌレート、ポリアクリル酸、ポリ尿素、ビニルエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、エチレン-プロピレンなどのコポリマー、EPDM、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ニトリルゴム、天然及び合成ゴム、タイヤ、スチレン-ブタジエン、スチレン-アクリロニトリル、スチレン-イソプレン、スチレン-無水マレイン酸、エチレン-酢酸ビニル、ナイロン12/6/66、充填ポリマー、ポリマー複合材料、プラスチック合金、及び溶媒中に溶解されたポリマーまたはプラスチックのうちの1つ以上を含む。供給物材料は、廃棄物としてポリマーまたはプラスチックの製造プロセスから得られた材料、または処分材料、消費者リサイクル後ポリマー材料、都市固形廃棄物、黒液または木材廃棄物などの廃棄物流から分離された材料を含み得る。いくつかの実施形態では、供給物流は、少なくとも80、または少なくとも90、または少なくとも95質量パーセントのポリエチレンもしくはポリプロピレン、またはそれらの両方の組み合わせを含有する。いくつかの実施形態では、供給物流は、少なくとも80、または少なくとも90、または少なくとも95質量パーセントのPETもしくはポリエステル、またはそれらの両方の組み合わせを含有する。いくつかの実施形態では、プロセスは、従来のプロセスにおいてより破壊的であるハロゲンなどの不純物に驚くほど耐性がある。
【0090】
本明細書で使用するための分子ふるいまたはそれを含む触媒組成物は、高温で熱処理され得る。この熱処理は、一般に、少なくとも370℃の温度で、少なくとも1分間、かつ一般に20時間よりも長くならずに(典型的には、酸素含有雰囲気下、好ましくは空気中で)加熱することによって実行される。熱処理には準大気圧を採用することができるが、利便性のために大気圧が望ましい。熱処理は、最大925℃の温度で実施することができる。熱処理された生成物は、本プロセスにおいて特に有用である。
【0091】
本発明で有用な触媒組成物については、好適な分子ふるいは、例えば、多孔質無機酸化物支持体もしくは粘土結合剤などの支持体または結合剤材料と組み合わせて採用され得る。そのような結合剤材料の非限定的な例としては、一般に、乾燥した無機酸化物ゲル及びゼラチン質沈殿物の形態のアルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、トリア、チタニア、ボリア及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な粘土材料としては、例として、ベントナイト、キーゼルグア及びそれらの組み合わせが挙げられる。総触媒組成物の好適な結晶性分子ふるいの相対的割合は、分子ふるい含有量が組成物の30~90重量パーセント、より通常は40~70重量パーセントの範囲で広範囲に変化し得る。触媒組成物は、押出物、ビーズまたは流動性微粒子の形態であり得る。
【0092】
本明細書で使用するための分子ふるいまたはそれを含む触媒組成物は、当該技術分野でよく知られている技法に従って、少なくとも部分的に、水素もしくは水素前駆体カチオン及び/または周期表のVIII族の非貴金属イオン、すなわちニッケル、鉄及び/またはコバルトとのイオン交換によって置き換えられた元のカチオンを有し得る。
【0093】
本発明のより広い態様では、オレフィン含有生成物流は、多種多様な組成物を有することができる。画分は、単純に、CO、CO2、エチレン、プロピレン及び多数の他の成分を含み、より多いオレフィンを含み得るガス状(非縮合)画分であり得る。オレフィン含有生成物はまた、エチン、プロピン、ブチンなどのアルキンを含有し得る。他の実施形態では、画分は、比較的オレフィン欠乏流から分離される比較的オレフィン豊富流であり得る。ポリマー変換システムで使用され得る分離技法の例としては、極低温分離、蒸留、膜分離、吸着分離または反応性分離が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、オレフィン含有生成物は、少なくとも20質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、少なくとも50質量%のオレフィン、いくつかの実施形態では、20~90質量%またはそれ以上の範囲のオレフィンを含む。オレフィン含有画分中の他のガスとしては、メタン、エタン、プロパン、CO、CO2、水、プロパジエン、メチルアセチレン、H2もしくはN2、またはそれらのいくつかの組み合わせが挙げられ得る。
【0094】
触媒熱分解からのオレフィン生成物流(精製前の熱分解からの原供給物)は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエンを含むC2~C4アルケンを含み得る。オレフィン含有量は、1~70重量%、もしくは5~65重量%、もしくは10~60重量%、もしくは20~50重量%、もしくは30~45重量%、もしくは40~65重量%、もしくは50~70重量%、または少なくとも20重量%、もしくは少なくとも30重量%、もしくは少なくとも40重量%、もしくは少なくとも50重量%、もしくは少なくとも60重量%の範囲であり得る。エチレンとプロピレンの質量比は、反応条件及び原料に依存して0.2から3まで変化し得る。ブテンとプロピレンの質量比は、0.05~0.25の間で変化し得る。C5~C7オレフィンなどの他の微量の成分は、プロピレンに対してはるかに小さい質量比で、一般に0.1未満で存在する。
【0095】
いくつかの実施形態では、オレフィンの質量収率は、ポリマーまたはプラスチック供給物中の質量に基づいて、少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも45%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも55%、もしくは少なくとも60%、または20%~70%、もしくは30%~65%、もしくは45%~60%である。いくつかの実施形態では、BTXの質量収率は、プロセスに対するプラスチックまたはポリマー供給物中の質量に基づいて、少なくとも10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも50%、または3%~60%、もしくは5%~50%、もしくは10%~50%、もしくは20%~50%である。いくつかの実施形態では、コークス及び炭化物の質量収率は、ポリマーまたはプラスチック供給物中の質量に基づいて、10%未満、もしくは5%未満、もしくは2%未満、もしくは1%未満、もしくは0.5%未満、または0.1%~10%、もしくは0.2%~5%、もしくは0.3~2%である。いくつかの実施形態では、オレフィン+芳香族化合物の質量収率は、ポリマーまたはプラスチック供給物中の質量に基づいて、60%超、もしくは70%超、もしくは80%超、もしくは85%超、もしくは90%超、または70%~99%、もしくは80%~98%、もしくは85%~95%、もしくは90%~93%である。いくつかの実施形態では、生成された総オレフィンも百分率としてのエチレンの選択性は、少なくとも20%、もしくは少なくとも25%、もしくは少なくとも30%、または10%~40%、もしくは20%~35%、もしくは25%~30%である。いくつかの実施形態では、生成された総オレフィンの百分率としてのプロピレンの選択性は、少なくとも20%、もしくは少なくとも30%、もしくは少なくとも40%、もしくは少なくとも45%、もしくは少なくとも50%、または20%~70%、もしくは30%~65%、もしくは45%~55%である。いくつかの実施形態では、生成された芳香族化合物の百分率としてのベンゼン+トルエン+キシレンの選択性は、少なくとも70%、もしくは少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも97%、または70%~99.9%、もしくは80%~99.5%、もしくは90%~99%、もしくは95%~98%である。
【0096】
本発明のプロセスによって生成されたオレフィン混合物は、当該技術分野で知られているように、従来の極低温蒸留、膜分離、ハイブリッド膜蒸留、選択的吸着、または容易になった輸送システムによって分離及び精製することができる。CO2、HCl、HCNまたはH2Sなどの不純物は、アミンスクラビングもしくは苛性スクラビング、または当業者に既知の他の従来の手段によって除去することができる。不純物の除去は、任意選択で、オレフィンを他の蒸気成分から分離する前または後に実行することができる。
【0097】
本発明のプロセスによって生成された芳香族混合物は、当該技術分野で知られているように、従来の蒸留、膜分離、ハイブリッド膜蒸留、選択的吸着、または容易になった輸送システムによって分離及び精製することができる。フェノール、チオール、チオフェン、ニトリル、アミンなどの不純物、または他の酸素、硫黄もしくは窒素含有不純物は、当業者知られている水素処理または他の従来の手段によって除去することができる。不純物の除去は、任意選択で、芳香族化合物を他の縮合可能な成分から分離する前または後に実行することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、オレフィン含有流の下流変換は、充填床反応器などの触媒含有反応器内で生じる。変換反応としては、以下の反応:水素化、加水分解、ヒドロホルミル化、環化、二量化及び/または重合のうちの1つ以上が挙げられ得る(が、これらに限定されない)。変換プロセスは、二次反応器内またはより低い温度にある熱分解反応器の区間内での熱分解プロセスよりも低い温度で実施することができ、オレフィン変換中の温度は、好ましくは400℃未満に維持され、好ましくは80℃~400℃の範囲内である。
【0099】
いくつかの実施形態では、オレフィン含有生成物流は、二量化またはオリゴマー化を引き起こすための条件で酸触媒と接触する。酸触媒は、当業者に既知の酸触媒の中から選ぶことができ、H2SO4もしくはHNO3、硫酸化ジルコニアなどの支持酸のような液体酸、または固体リン酸、ゼオライト、柱状粘土もしくは非晶質シリカ-アルミナ混合物などの固体酸を含む。好ましい触媒は、固体リン酸(キーゼルグア上のリン酸など)またはゼオライトZSM5、ZSM11、ZSM12、ZSM22、ZSM23、ZSM35、ZSM49、及びMCM56を含む。熱分解プロセスからの再生ZSM5を含む再生触媒を使用することができる。好ましい温度範囲は、120℃~300℃、より好ましくは150℃~250℃であるが、より高い温度を使用することができる。圧力は、好ましくは1atm~20atm(100kPa~2,000kPa)、より好ましくは1~5atm(100kPa~500kPa)の範囲内である。オレフィンの高い変換が望まれる場合、より高い圧力を使用することができる。二量化/オリゴマー化のための空間速度は、好ましくは5~30GHSVの範囲内である(ガス時空間速度、ガス体積流量と反応器容積の比)。反応は、様々なタイプの反応器内で実施することができるが、好ましくは、固定床反応器内で実施される。この反応は、C3以上の変換に最も効果的であり、したがって、エチレン及びプロピレンを含む混合物については、典型的には、プロピレンのより多くが消費される。
【0100】
1つの下流変換プロセスでは、オレフィンは、芳香族化合物のアルキル化によって変換される。この場合、オレフィン含有流は、好ましくは芳香族化合物含有流と混合され、酸触媒と接触する。酸触媒は、当業者に既知の酸触媒の中から選ぶことができ、H2SO4もしくはHNO3、硫酸化ジルコニアなどの支持酸のような液体酸、または固体リン酸、ゼオライト、柱状粘土もしくは非晶質シリカ-アルミナ混合物などの固体酸を含む。
【0101】
好ましい触媒としては、超安定性ゼオライトY(USY)などのゼオライトY、またはゼオライトZSM5、ZSM11、ZSM12、ZSM22、ZSM23、ZSM35及びZSM49が挙げられる。ゼオライト触媒は、典型的には、シリカ、アルミナもしくはジルコニア、もしくはこれらの混合物などの結合剤と共に存在する。触媒は、性能を改善し、コークス堆積を制限するために、金属で促進することができる。原子番号21~31、57~71の金属、及び貴金属Pd、Pt、AgもしくはAuからの任意の金属、またはこれらの組み合わせを使用することができ、より好ましくは、触媒は、Pd、Ptまたはこれらの組み合わせを含む。Pt及び/またはPdとRu、Ir、Rh、Cu、Re、Ag及び/またはAuとの組み合わせも望ましい。より好ましくは、Pt及び/またはPdに加えて、触媒は、Ni、Co、Mn、Cr、V、Fe、Tiまたはこれらの組み合わせを含む。好ましくは、触媒は、上述の金属の0.1~2質量パーセントを含有する。再生ZSM5または触媒熱分解プロセスからの他の触媒を含む再生触媒を使用することができる。好ましい温度範囲は、120℃~300℃、より好ましくは150℃~250℃であるが、より高い温度を使用することができる。圧力は、好ましくは1atm~20atm(100kPa~2,000kPa)の範囲であり、1~5atm(100kPa~500kPa)の圧力がより好ましい。オレフィンの高い変換が望まれる場合、より高い圧力を使用することができる。いくつかの好ましい実施形態では、オレフィン含有生成物流は、オレフィンをオレフィン含有流から抽出する液体の芳香族化合物含有流と接触し、次いで、芳香族化合物含有流中のオレフィンのアルキル化は、抽出ステップと同時に、またはより好ましくは抽出ステップの後に実施される。好ましくは、アルキル化プロセスで使用される芳香族化合物の少なくとも一部分、及びより好ましくは芳香族化合物のすべては、触媒熱分解反応器の生成物流に由来する。芳香族化合物とオレフィンのモル比は、好ましくは1より大きい、より好ましくは5より大きい。アルキル化反応は、様々な反応器タイプ、好ましくは固定床反応器内で実施することができ、いくつかの実施形態では、オレフィンは、固定床反応器の長さに沿った複数の地点で供給される。
【0102】
いくつかの実施形態では、オレフィン含有生成物流は、二量化/オリゴマー化及びアルキル化の両方を受ける。これらのプロセスは、(いずれかの順序で)順に実施することができる。代替的に、オレフィン含有流は、分割され、二量化/オリゴマー化及びアルキル化で処理された画分を分離してもよい。
【0103】
別の実施形態では、オレフィン生成物流は、水蒸気と混合され、より低い温度でのオレフィンの生成物アルコールへの加水分解に有効な加水分解触媒の上を通る。加水分解触媒は、水とオレフィンとの反応を触媒して、酸性触媒などのアルコールを形成する触媒である。酸触媒は、当業者に既知の酸触媒の中から選ぶことができ、硫酸化ジルコニア、硫酸化シリカもしくは硫酸化アルミナなどの支持酸、または固体リン酸、ゼオライト、柱状粘土もしくは非晶質シリカ-アルミナ混合物などの固体酸を含む。好ましい触媒は、硫酸化シリカ、硫酸化アルミナ、硫酸化ジルコニア、固体リン酸または酸処理された粘土である。触媒を保持する区間内の温度は、好ましくは170℃~400℃、より好ましくは220℃~300℃である。
【0104】
別の実施形態では、オレフィン含有生成物流は、メタノールと混合され(典型的には、気相中で)、触媒の上を通って、エーテルを形成する。エーテル形成段階における温度は、触媒を保持する区間内で200℃~400℃であることが好ましい。触媒は、アルコールとオレフィンとの反応を触媒して、酸性触媒、好ましくは固体酸触媒などのエーテルを形成する触媒である。酸触媒は、当業者に既知の酸触媒の中から選ぶことができ、硫酸化ジルコニア、硫酸化シリカもしくは硫酸化アルミナなどの支持酸、または固体リン酸、ゼオライト、柱状粘土もしくは非晶質シリカ-アルミナ混合物などの固体酸を含む。好ましい触媒は、硫酸化シリカ、硫酸化アルミナ、硫酸化ジルコニア、固体リン酸または酸処理された粘土である。硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、安息香酸塩またはトリフルオロ酢酸塩などの酸性基がAmberlystなどのポリマー骨格に結合したイオン交換樹脂も使用することができる。触媒を保持する区間内の温度は、好ましくは170℃~400℃、より好ましくは220℃~300℃である。反応のための圧力は、好ましくは少なくとも1atm(100kPa)、いくつかの実施形態では1~50atm(100~5,000kPa)の圧力範囲である。アルコールとオレフィンのモル比は、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5及びいくつかの実施形態では、0.5~2の範囲である。
【0105】
オレフィンはまた、エタノール、プロパノール(n-プロパノール、イソ-プロパノール、またはそれらの混合物)、またはアルコールの混合物などの高級アルコールと反応させて、エーテルを形成することができる。この反応は、触媒の存在下、及びメタノールに関して上述した条件下で実施することができる。より好ましい温度範囲は、100℃~200℃である。加えてまたはメタノールについて上述した触媒の代替として、ゼオライト触媒は、エーテルが生成される反応器中に存在してもよい。好適なゼオライトの例としては、ゼオライトY、ゼオライトX、ZSM-3、ZSM-5、ZSM-12、ZSM-20、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-50、MCM-22及びこれらの混合物が挙げられる。
【0106】
本明細書に記載されたプロセスのいずれにおいても、オレフィン含有ガスは、機能化のために異なる画分に部分的に分離されて、非反応性成分を除去するか、または過剰な材料をパージすることができる。
【0107】
本発明の別の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれるWO2017136177及びWO2017136178、「Chemicals and Fuel Blendstocks by a Catalytic Fast Pyrolysis Process」に記載されるように、プロセスから回収された芳香族化合物流を分離し、水素化して、燃料ブレンドストックを生成することができる。
【0108】
スチームクラッキングとの統合
ポリオレフィンがPlas-TCatに対する原料として使用されるとき、BTXを含むC4+炭化水素と共に、高収率のエチレン及びプロピレンが生成される。Plas-TCatプロセス設備は、スチームクラッキング技術に基づく石油原料ベースの一次オレフィン生成企業に隣接して位置することができる。両方のプロセスが併設されるとき、共通の下流分離設備を共有して、効率を高め、運用コスト及び資本コストを削減することができる。軽質パラフィン及び他の炭化水素からの軽質オレフィンの回収ならびに精製には、複雑な一連の蒸留塔、極低温加工、ならびに高い資本コスト及び運用コストを生み出すクリーンアップ反応器が必要である。この理由及び他の理由で、スチームクラッキング設備は、一般に、ユニット生産コストを下げるための規模の経済を利用するために存在する最大の石油化学ユニットである。
【0109】
プラスチック触媒熱分解(Plas-TCat)プロセスとスチームクラッキング設備との併設は、いくつかの利点を提供し、これらの中でも、(1)単一ユニット運転、(2)パージガス燃焼が、触媒に吸熱熱分解反応を実施するのに十分な熱を提供することができる、(3)改善された熱統合、(4)再生器供給物中のパージガスの量による再生器の温度の制御、(5)生成物分離、ガス圧縮、生成物急冷などの共有インフラストラクチャに起因するコストの削減、(6)柔軟なユニット運転、(7)リサイクルオレフィンまたは他のガス状生成物が、流体触媒クラッカー(Fluid Catalytic Cracker:FCC)ユニットまたはPlas-TCatユニットに必要な流動化ガスを提供することができる、(8)芳香族化合物収率の上昇、及び(9)より効率的なオレフィン利用がある。
【0110】
廃プラスチック収集の経済性、好適な供給物材料の分量、収集及び輸送の物流性に起因して、Plas-TCatからの軽質オレフィンの量は、典型的な現代のスチームクラッキングユニットから生成される量よりもはるかに少なくなり、Plas-TCatユニットが孤立して運用されるとき、下流の規模の経済の観点から不利になる可能性が高い。Plas-TCatをスチームクラッカーに統合すると、驚くべき形で経済性が改善される。熱分解ガソリン(熱分解ガス)を作製するスチームクラッカーについては、熱分解ガソリン分離及び水素処理装置が、スチームクラッカー熱分解ガソリン及びPlas-TCatのC5+BTX豊富液体生成物の両方のための統合サービスを提供することができる。
【0111】
本発明のプロセスの一実施形態では、ポリマーまたはプラスチック触媒熱分解のプロセスは、スチームクラッキング設備と統合され、初期の生成物流またはその一部分は、スチームクラッキング設備内で精製及びアップグレードするためにスチームクラッカーのプロセス流と組み合わされる。
【0112】
一実施形態では、スチームクラッカー蒸気生成物からの廃熱を使用して、触媒熱分解反応器に熱を提供することができる。高温スチームクラッカー蒸気からPlas-TCat触媒に伝達された熱は、スチームクラッカー流出液の急冷にも寄与し、これは、望ましくないポストクラッキング反応を回避し、Plas-TCatプロセスにおける生成物収率を向上させるのに役立つ。プラスチック廃棄物リサイクルが提供する軽質オレフィンの量は、流量計及び化学分析器具を使用して容易に測定することができ、したがって、バージンオレフィンとリサイクルオレフィンの混合物は、正確に定量化することができる。廃棄物リサイクル生成物の正確な定量は、廃棄物リサイクルのための貸付けまたは補助金の形態で追加の収入を提供することができる。
【0113】
スチームクラッキング及びPlas-TCatの両方によって生成された水素は、熱分解ガソリンの水素化、水素処理、他の液体生成物のアップグレードプロセスまたは他のプロセスに使用することができる。本発明のプロセスのいくつかの実施形態では、スチームクラッキングからの水素もしくは触媒熱分解からの水素、またはそれらのいくつかの組み合わせは、重質材料の水素化分解もしくは生成物流の水素処理、または設備内の他のプロセスに使用される。
【0114】
図6は、Toyo Engineeringによってインターネット上で公開されているスチームクラッカー反応器、ならびに下流の生成物回収及び分離手順ための簡略化された一般のプロセスフロー図を示す。アルファベットの文字で識別された円は、以下に記載するように、Plas-TCatプロセスとスチームクラッカープロセスとの間の統合が生じ得るプロセス手順内の特定の流れ及び/または位置を示す。
【0115】
位置「A」は、スチームクラッカー用の一次急冷熱交換器である。これは、触媒ヒーターが含まれ得る候補位置である。本発明のこの実施形態では、Plas-TCatユニット内を循環する触媒は、スチームクラッカー生成物ガスによって加熱され、次いで触媒熱分解プロセスを駆動するために使用される。同時に、スチームクラッカーの高温ガスは、部分的に急冷される。
【0116】
位置「B」は、スチームクラッカー急冷塔である。スチームクラッカーの原料設計に依存して、スチームクラッカー急冷塔は、通常は、直列の2つの別個の塔として、直接水冷却急冷部、ホットオイル急冷部、またはホットオイル急冷部と水急冷部との組み合わせであり得る。本発明のこの実施形態では、高温Plas-TCat蒸気生成物は、2つの流れが化学的に類似しているため、スチームクラッカーガス及び蒸気生成物と共に急冷塔に導入される。Plas-TCatガスは、一般に、スチームクラッカーガスよりも冷却され、それによって構成にいくつかの追加の熱統合を提供する。
【0117】
位置「C」及び「E」は、メタンを含有する流れである。本発明の一実施形態では、メタンを含む両方の流れのいずれかは、Plas-TCat反応器内の流動化ガスの成分として使用される。
【0118】
位置「D」は、スチームクラッキング及びPlas-TCatの両方の副生成物である水素である。本発明の一実施形態では、スチームクラッキングにおいて生成された水素は、アセチレン水素化、メチルアセチレン/プロパジエン水素化、ならびに硫黄、窒素、酸素、トリエン、ジエン及びスチレンのそれらの内容物を減少させるための熱分解ガソリンまたは他の生成物の水素処理を含む本発明のプロセスにおけるいくつかの場所で使用される。
【0119】
位置「F」は、エタン及びプロパンの比較的純粋な流れ、ならびにC4オレフィン及びパラフィンからなる第3の流れを含む3つの流れについて示されている。これらの成分はすべて、スチームクラッキング及びPlas-TCatプロセスによって生成される。本発明の別の実施形態では、流れまたはそれらの任意の組み合わせのいずれかをスチームクラッカーにリサイクルして、より多くのエチレン及びプロピレンを生成する。任意選択で、任意の流れの一部分は、Plas-TCat流動化ガスに使用することができる。C4-豊富流をPlas-TCatにリサイクルすると、より多くのBTX及び軽質オレフィンが生成されると予想される。
【0120】
最後に、位置「G」は、組み合わされた熱分解ガソリン及びPlas-TCatのBTX豊富ナフサである。本発明の別の実施形態では、組み合わされた熱分解ガソリン及びPlas-TCatのBTX豊富ナフサを水素処理して、ジエン、トリエン、アセチレン及びビニル芳香族化合物(例えば、スチレン)などの非常に不飽和な化合物の濃度を低減または排除することによってその貯蔵安定性を改善する。硫黄、窒素、塩化物及び酸素などの極微量のヘテロ原子も、同様に水素処理することによって除去することができる。いくつかの実施形態では、水素処理した生成物は、さらに分離され、精製されて、ポリマーグレードのベンゼン、トルエン、p-キシレンまたはこれらのいくつかの組み合わせを作製する。水素処理は、オレフィン及び他の汚染物質を、ポリマー生成または他のアップグレードプロセスに好適な低レベルまで低減するために必要とされる。
【実施例】
【0121】
ドロップチューブ反応器は、溶融石英フリット(40~90μm)をチューブの中心に収容する石英反応器チューブ(ACE Glass)を備える。
図7は、ドロップチューブ反応器の構成を示す。試料セル(外径10mm、内径8mm、長さ25mm、石英、TGP製)を、2片の石英ウール(TGP)を使用して原料を収容するために使用する。
図7に図示するように、試料セルを反応器キャップ(ホウケイ酸塩、ACE Glass)に入れ、ストッパー(1/4インチ(6mm)のアルミニウムロッド、McMaster)によって保持した。次いで、反応器キャップ及び石英反応器を組み立て、固定床反応器システム上に設置した。反応器の底部を、氷水浴(0℃)中に浸漬した穿孔ステンレス鋼パッキング(ACE Glass)を充填した凝縮器(ホウケイ酸塩)に接続した。凝縮器の前のいかなる凝縮も阻止するために、加熱マントルを反応器下部と凝縮器上部との間に適用した。反応中、加熱マントルを210℃に設定した。
【0122】
反応器内では、ZSM-5触媒(1.5g)の少量の試料を石英フリットの上部に入れた。原料(各実行毎に100mg)を、石英ウールで試料セル内に密封した。触媒/原料の重量比は、約15であった。試料セルの内容物を反応器の中に落とす前に、触媒を550℃で、100mL/分の空気流下で20分間焼成した(ランプ速度=12℃/分)。焼成後、反応器を反応温度(プラスチックについては500℃及びバイオマスについては525℃)に冷却した。冷却中、凝縮器に10mLの溶媒(プラスチック変換のための酢酸エチル、及びバイオマス変換のためのアセトン)を充填し、温度ラインアウトのために10分間保持した。次いで、反応器システムを75mL/分のヘリウム流れで20分間パージして、空気を除去し、ガス収集ラインをパージした。試料セルを、ストッパーロッドを引き抜くことによって反応器の中に落として、反応を開始した。
【0123】
10分間の保持期間により、反応が完了した。主に永久ガス、ならびにC1~C3オレフィン及びパラフィンからなるガス生成物をガス袋内に収集した。液体生成物(主にC4+)を凝縮器内に収集した。反応後、ガス流れなしで温度を650℃まで上昇させた。次いで、反応器内に残ったコークス及び炭化物を含む固体生成物を、50mL/分の空気流下で、650℃で10分間焼いた。焼いている間、ガス生成物を第2のガス袋内に収集した。追加の3mLの溶媒を凝縮器に添加して、凝縮器の上部に残る任意の生成物を抽出した。次いで、凝縮器内の液体のすべてを20mLの試料バイアルに移した。秤量した量の内部標準物質(ジオキサン、典型的には3000~5000mg、Sigma-Aldrich)を試料バイアルに添加した。凝縮器をアセトンで洗浄し、乾燥オーブン内で乾燥させた。パッキングを上に持ち上げることにより、凝縮器内に少量の液体が溜まっていたことがわかる。したがって、液体生成物の有無にかかわらず凝縮器の重量を測定して、液体生成物の総量を取得した。液体試料を、炭化水素及び酸素化物について、GC-FID(Shimadzu 2010Plusのフレームイオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ)によって分析した。ガス袋試料を、Agilent GC 7890Bガスクロマトグラフを使用して分析した。
【0124】
様々な供給物の実験の結果を表2に表す。表2で説明していない生成物のバランスは、水、不活性固体、及び燃焼のために容易に回収されない微量の成分を含む。
【0125】
供給物及び流動化ガスの加熱、ならびにBTXの分離及び精製を含む触媒熱分解プロセスについてのエネルギーバランスを計算するために、スプレッドシートを開発した。計算に使用された仮定には以下が含まれる:
1.100kg/時のプラスチックが、プロセスにおいて熱分解される
2.熱交換器効率は、80%である(煙道ガス及び反応器流出液からの熱回収率は80%である)
3.再生器への空気は、コークス(及び必要であれば、ガス)を燃焼するために必要な理論量を超える20%である
4.再生器内の熱損失は、再生器の熱負荷の2%である
5.触媒とプラスチックの比は、15である(反応器内に1500kgの触媒)
6.再生器上での炭素負荷は、15重量%と仮定される。
7.生成物の触媒熱分解収率は、供給物混合物の各構成成分の質量によって秤量された供給物混合物について、表2に列挙されるものの線型結合である。
8.再生器内に放出された燃焼熱は、供給物混合物の各構成成分の質量によって秤量された各実施例におけるコークス及びガス生成物の適切な混合物について、表3に列挙されるものの線型結合である。
9.プロセスに必要な反応の熱は、供給物混合物の各構成成分の質量によって秤量された、表4に列挙されるものの線型結合である。
10.触媒の熱容量は、1.2kJ/kg-Tである。
11.流動化ガスの熱容量は、1.0kJ/kg-Tである。
12.再生器は、670℃で動作される。
13.反応器流出液の熱容量は、1.48kJ/kg-Tである。
14.触媒熱分解は、525℃で動作される。
15.供給物の加熱、及び再生器用の空気の加熱に必要なエネルギー、ならびにプロセス及び再生器からの損失は、約127,000kJである。
【0126】
表2ドロップチューブ実験におけるZSM-5触媒による様々な材料の触媒熱分解の生成物。
全値は、重量パーセントである。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
実施例1~7
触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーは、反応のエネルギー、供給物を加熱するためのエネルギー、プロセスから失われるエネルギー、ならびに生成物の分離及び精製に必要なエネルギーを含む。実施例1については、42.8kgのポリエチレンが触媒的に反応するとき、必要なエネルギーは、128,000kJであり、0.38kgのコークスが生成される。57.2kgのPETが触媒的に熱分解されるとき、必要なエネルギーは、103,000kJであり、10.16kgのコークスが生成される。加熱に必要な127,000kJ及びプロセスから失われたエネルギーを含めると、必要な総最小エネルギーは、(128,000+103,000+127,000)kJ=358,000kJである。生成されたコークスの燃焼は、プロセスが自給自足するために必要な358,000kJを発生させる、すなわち、化石燃料などの外部源からのエネルギーの投入を必要としない。
【0131】
示すように、プロセスに必要な総最小エネルギーを満たすために、PE、PP及びPSと混合する必要のある高コークス形成材料の量を、PET(実施例1、4及び5)、バイオマス(実施例2及び6)、またはPE、PP及びPSのための高コークス形成材料としてのタイヤ(実施例3、及び7)を有するポリマーの各々について計算した。
【0132】
表5の結果は、高コークス形成材料をポリマーと混合することによって、コークスを燃焼させて、プロセスのためのエネルギーを提供するときに、全体的なエネルギーバランスの取れたプロセスを達成することができることを示す。表5の高コークス形成材料の画分は、コークスが燃焼されたときに、プロセスに必要なその最小エネルギーを提供するのに必要なその材料の最小量であり、混合物中の高コークス形成材料の画分が高いほど、他のプロセスの動作またはプラントからの送出に利用可能なエネルギーが過剰になる。
【0133】
表5は、低コークス形成ポリマーを含有する様々な混合物を、有益な芳香族化合物、オレフィン及び他の生成物に変換するためのプロセスに必要な熱のバランスを取るために、コークス及び炭化物の燃焼からの熱に必要な高コークス形成材料の計算量を表す。
【0134】
【0135】
実施例8~14
実施例1~7の計算を繰り返し、コークス、ならびにCO及びH2の副生成物を燃焼させて、混合物の変換に必要なエネルギーを提供する。結果を表6に表す。
【0136】
表6の結果は、外部エネルギー源を必要としない、すなわちコークス、ならびにH2及びCOの副生成物の燃焼において生成されたエネルギーが触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーに少なくとも等しくなるように、触媒熱分解プロセスへの供給物として様々なポリマーを有する様々な高コークス形成材料を含む混合物を配合することができることを示す。表6の高コークス形成材料の画分は、プロセスのエネルギー要件のバランスを取るのに必要な高コークス形成材料の最小量であり、混合物中のコークス形成材料の画分が高いほど、他のプロセスの動作またはプラントからの送出に利用可能なエネルギーが過剰になる。
【0137】
表6は、様々な低コークス形成ポリマーを芳香族化合物、オレフィン及び他の有益な生成物に変換するためのプロセスに必要な熱のバランスを取るために、コークス及び副生成物ガスH2及びCOからの燃焼熱が使用されるときに必要な高コークス形成供給物材料の計算量を表す。
【0138】
【0139】
実施例15~19
前の実施例の計算を繰り返したが、ただし、触媒熱分解プロセスに必要なエネルギーがプロセスにおいて生成されたコークスの燃焼、ならびにC5+生成物を除去した後に回収されたガス混合物、すなわちC2~C4オレフィン及びパラフィン、CH4、CO、CO2ならびにH2を含有するガスの画分によって提供されていることを条件とする。エネルギー要件のバランスを取るために必要なガスの画分を表7に表す。
【0140】
表7の結果は、ポリマーの触媒熱分解に対して、高コークス形成材料を供給物に添加することにより、コークス、及び少なくともガス状副生成物の画分を燃焼して、触媒熱分解プロセスのためのエネルギーを提供するときに、プロセスのエネルギー要件のバランスを取ることができることを示す。表7に表すガス状副生成物の画分は、コークスに加えて、ガスが燃焼されるときに、触媒熱分解プロセスに必要な最小エネルギーに等しくするのに必要な最小量であり、混合物中の高コークス形成材料の画分が高いほど、他のプロセスの動作またはプラントからの送出に利用可能なエネルギーが過剰になる。
【0141】
表7は、様々な低コークス形成ポリマー、及び低コークス形成材料と高コークス形成材料との混合物を芳香族化合物、オレフィン及び他の有益な生成物に変換するためのプロセスに必要なエネルギーを提供するために、プロセスにおいて形成されたコークスのすべてと共に燃焼される必要がある副生成物ガス混合物の計算された画分を表す。
【0142】
【0143】
実施例1~19に表す結果は、コークス形成材料がポリマーと共に供給されるときに、BTX及びオレフィンなどの有用な材料を生成するためのプラスチックを触媒的に熱分解するプロセスの最小エネルギー要件を、コークス、またはコークス及び副生成物ガスのいくつかの画分の燃焼によって発生するエネルギーによって満たすことができることを表す。これらの実施例は、エネルギーバランスの取れたプロセスを生成するために使用することができるコークス形成材料及びポリマーの少数の組み合わせのみを示しており、当業者であれば、遭遇する原料の任意の混合物に本発明の原理を容易に適用することができる。
【0144】
実施例20~22
計算モデルをExcelに構築し、他の点では汚染物質を含まないポリエチレン供給物中のコークス形成材料の画分、コークス形成材料中の汚染物質のレベル、及び触媒交換の速度の関数としての、触媒上の汚染物質の蓄積を計算した。モデルは、流動床内の触媒熱分解プロセスの連続運転で到達される触媒上の汚染物質の定常状態を計算する。
【0145】
実施例20
図8は、7%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するタイヤが触媒熱分解プロセスにおいてポリエチレンと共にコークス形成供給物として供給されるときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の計算した定常状態負荷を示す。供給物中に含まれるタイヤの画分は、2.5重量%、5重量%、10重量%、及び15重量%であった。
図8に表す結果を使用して、触媒コスト、汚染物質に対する触媒耐性、触媒補給率、ならびに供給物材料の有用性及びコストに関してプロセスを最適化することができる。
【0146】
実施例21
図9は、0.4%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するバイオマスが触媒熱分解プロセスにおいてポリエチレンと共にコークス形成供給物として供給されるときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の計算した定常状態負荷を示す。供給物中に含まれるバイオマスの質量分率は、20重量%、40重量%、60重量%及び80重量%である。
図9に表す結果を使用して、触媒コスト、汚染物質に対する触媒耐性、触媒補給率、ならびに供給物材料の有用性及びコストに関してプロセスを最適化することができる。
【0147】
実施例22
図10は、7%の不活性汚染物質(例えば、シリカ)を含有するタイヤを別個のプロセスにおいて予備熱分解して、不活性汚染物質の99%を除去し、触媒熱分解プロセスにおいてポリエチレンと共に蒸気を供給するときの触媒交換率の関数としての、触媒上の不活性汚染物質の計算した定常状態負荷を示す。蒸気を生成したタイヤの分率は、ポリエチレンとの供給物混合物中の2.5重量%、5重量%、10重量%及び15重量%である。
不活性汚染物質の計算した定常状態負荷は、未処理のタイヤをポリエチレンと共供給した実施例20よりもはるかに低く、実施例21の共供給物としてのバイオマスとの共供給物実験からの負荷に匹敵する。これは、タイヤがプロセスにおいて予備熱分解されるときの触媒使用及びコストの利点を示す。予備熱分解は、不活性汚染物質の大部分を含有するタイヤ、及びタイヤの成分であったカーボンブラックに由来する炭素豊富固体を生成する。この炭素豊富固体を燃焼させて、触媒熱分解プロセスに必要なエネルギーの少なくとも一部を提供することができる。予備熱分解からの蒸気は、触媒熱分解に供給されるとき、触媒熱分解プロセスにおける芳香族化合物、オレフィン、及び他の有益な成分の収率を向上させる。
図10に表す結果を使用して、触媒コスト、汚染物質に対する触媒耐性、供給物の前処理コスト、汚染物質除去効率、プロセスの複雑性、触媒補給率、ならびに供給物材料の有用性及びコストに関してプロセスを最適化することができる。
【国際調査報告】