(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】SLS3次元印刷のためのロボット式粉体ベッドカート及びそれと両立するプリンターハウジング
(51)【国際特許分類】
B29C 64/259 20170101AFI20220713BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220713BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20220713BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220713BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220713BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20220713BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20220713BHJP
【FI】
B29C64/259
B29C64/153
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/386
B33Y50/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021568197
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020031895
(87)【国際公開番号】W WO2020231742
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】チェシンスキー トーマス ピー
(72)【発明者】
【氏名】グラチィク ヤクブ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WA97
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL72
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
多数のプリンターハウジング及び粉体ベッドカートは、様々な3D印刷作業を実行するように連係する。プリンターハウジングは、直接又は制御ステーションを介して、粉体ベッドカートを要求する。要求された粉体ベッドカートは、待機エリアから送り出され、床の上の磁気テープの線をたどるように磁気案内センサを自律式に使用して、要求しているプリンターハウジングまで走行する。粉体ベッドカートが、要求しているプリンターハウジングにドッキングして、粉体化媒体のトレイと粉体ベッドを、ジャッキスクリューで所定の位置に上昇させると、印刷作業が開始される。粉体ベッドカートが粉体化媒体を使い果たすと、粉体ベッドカートはプリンターハウジングから分離して、待機エリアに戻り、トレイに粉体化媒体を再充填し、バッテリーを再充電する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的レーザ焼結(SLS)装置のための粉体ベッドカートであって、
粉体ベッドと、
自律式の移動手段と、
SLS装置の印刷ハウジングとドッキングするための手段と、を有する粉体ベッドカート。
【請求項2】
前記自律式の移動手段は、場所センサと、粉体ベッドカートの下面に配置された車輪と、粉体ベッドカートを所望の目的地に誘導し且つ推進させる電気モータと、電気モータに電力を供給するバッテリーと、を含む請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項3】
前記印刷ハウジングとドッキングするための手段は、粉体ベッドの鉛直方向位置を前記プリンターハウジング内の作動位置まで上昇させる鉛直方向調整手段を含む、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項4】
前記粉体ベッドは、引込み可能なカバーによって覆われる、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項5】
前記引込み可能なカバーは、前記粉体ベッドの温度を維持するために、一体加熱要素を含む、請求項4に記載の粉体ベッドカート。
【請求項6】
前記粉体ベッドカートは、供給エリアステーション内でドッキングされるように構成され、前記供給エリアステーションにおいて、前記粉体ベッドカートのバッテリーの再充電が行われ、前記粉体ベッドカートの加熱要素が、前記バッテリーではなく、出力接続部から外される、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項7】
更に、粉体化材料を保持する1つ又は2つ以上のトレイを有する、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項8】
前記粉体ベッドカートは、処理後ステーションにドッキングされるように構成され、前記処理後ステーションにおいて、前記粉体ベッドカートは、荷下ろし、非粉体化、印刷されたパーツのクリーニング、及び、粉体化材料の1つ又は2つ以上のトレイに再充填することのうちの少なくとも1つを行う、請求項7に記載の粉体ベッドカート。
【請求項9】
選択的レーザ焼結(SLS)装置のためのプリンターハウジングであって、
SLS装置用の自律式の粉体ベッドカートとドッキングするように構成された開口と、
レーザビームを発生させるように構成されたレーザ源と、
画像システムと、を有し、
前記自律式の粉体ベッドカートは、粉体ベッドを含み、
前記画像システムは、レーザビームを前記粉体ベッドの中に配置された粉体化材料の上で走査させるように構成され、それにより、粉体化材料は、レーザビームによって加熱された箇所に固形化した塊を形成する、プリンターハウジング。
【請求項10】
更に、粉体化材料を保持する1つ又は2つ以上のトレイを有する、請求項9に記載のプリンターハウジング。
【請求項11】
前記開口は、前記複数の自律式の粉体ベッドカートとドッキングするように構成される、請求項9に記載のプリンターハウジング。
【請求項12】
更に、前記粉体ベッド内の粉体化材料を広げるように構成されたローラを有する、請求項9に記載のプリンターハウジング。
【請求項13】
前記プリンターハウジングは、前記自律式の粉体ベッドカートを待機エリアから前記プリンターハウジングの開口まで移動させる要求を前記自律式の粉体ベッドカートに送信するように構成される、請求項9に記載のプリンターハウジング。
【請求項14】
更に、音声及び/又は映像情報を制御ステーションに送信したり前記制御ステーションから受信したりするように構成された遠隔ユニットを有する、請求項9に記載のプリンターハウジング。
【請求項15】
選択的レーザ焼結(SLS)印刷システムであって、
第1の複数の自律式の粉体ベッドカートと、
第2の複数のプリンターハウジングと、
制御ステーションと、を有し、
前記第2の複数のプリンターハウジングの各々は、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカートの1つ又は2つ以上とドッキングするように構成され、
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングの作動を制御するために、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングと通信可能に接続される、選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項16】
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカートを待機エリアから前記第2の複数のプリンターハウジングのうちの1つの開口まで移動させる要求を送信するように構成される、請求項15に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項17】
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカートの各々の中の材料の種類及び量の記録を維持するように構成される、請求項15に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項18】
前記制御ステーションは、音声及び/又は映像情報を前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングのうちの1つ又は2つ以上から受信するように構成される、請求項15に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項19】
前記制御ステーションは、前記音声及び/又は映像情報を1つ又は2つ以上のクライアントステーションに送信するように構成される、請求項18に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項20】
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングの作動を制御するように構成された命令を1つ又は2つ以上のクライアントステーションから受信するように構成される、請求項15に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年5月14日に出願した米国仮特許出願第62/847、504号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、選択的レーザ焼結(SLS)のための粉体ベッドカート及びそれと関連したプリンターハウジングに関し、1つの実施形態では、粉体ベッドカートに関し、かかる粉体ベッドカートは、自律式の移動手段と、複数のプリンターハウジングのうちの1つとドッキングする手段を含む。
【背景技術】
【0003】
いわゆる、「3D印刷」即ち、より一般的には、付加物製造は、3次元物体をデジタルデータファイルからコンピュータ制御下で製造するプロセスを記載するのに使用される広い用語である。SLSを含む多数の異なる付加物製造技術が発展してきた。SLSは、レーザを使用して、材料、典型的には、金属、ポリマー又はセラミックの粉末を、デジタルモデルファイルによって定められる空間内の複数の点で溶融させることに関わる。モデルの所定の断面層のために、レーザの焦点を粉体化材料のベッドの上で走査し、レーザによって個々に加熱された上記複数の点の材料により、固形化した塊を形成する。各断面を走査した後、粉体ベッドを下降させ、材料の新しい層を付加し、かかるプロセスを繰返す。所望の物体を完成させるまでの製造中、このプロセスは、物体の各断面層の点から点に連続する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態による多数のプリンターハウジング及び多数のカートは、様々な印刷作業を実行するように連係する。プリンターハウジングは、直接又は制御ステーションを介して、粉体ベッドカートを呼び出す。要求された粉体ベッドカートは、待機エリアから送り出され、粉体ベッドカートの磁気案内センサを使用して床の上の磁気テープの線をたどることによって、要求しているプリンターハウジングまで自律的に走行する。粉体ベッドカートが、要求しているプリンターハウジングにドッキングして、ジャッキスクリューで上昇させられることによって、粉体化材料用トレイ及び粉体ベッドを所定位置に移動させると、印刷作業が開始される。粉体ベッドカートの粉体化材料を使い果たしたとき、粉体ベッドカートは、プリンターハウジングから離れて、待機エリアに戻り、待機エリアにおいて、トレイに粉体化材料を再充填し、粉体ベッドカートのバッテリーを再充電する。
【0005】
プリンターハウジングは、粉体ベッドカートとドッキングするように構成された開口を含む。プリンターハウジングは、それに加えて、レーザビームを発生させるように構成されたレーザ源と、画像システムを含み、画像システムは、レーザビームを、粉体ベッドカートの粉体ベッド内に配置された粉体化材料の上を走査するように構成され、それにより、粉体化材料は、レーザビームによって加熱された複数の箇所に固形化した塊を形成する。プリンターハウジングは、それに加えて、粉体ベッド内の粉体化材料を広げるように構成されたローラを含むのがよい。
【0006】
粉体ベッドカートは、粉体ベッドと、自律式の移動手段と、プリンターハウジングとドッキングするための手段を含む。自律式の移動手段は、複数の場所センサと、粉体ベッドカートの下側に配置された複数の車輪と、粉体ベッドカートを所望の目的地まで誘導し且つ推進させる電気モータと、電気モータに電力を供給するバッテリーを含むのがよい。プリンターハウジングとドッキングするための手段は、粉体ベッドの鉛直方向位置をプリンターハウジング内の作動位置まで上昇させる鉛直方向調整手段を含むのがよい。
【0007】
本発明のこれらの及びその他の実施形態を、添付図面と関連させながらより完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態による、3次元物品を粉体ベッド内の粉体化媒体の融合によって形成する装置を示す。
【
図1B】本発明の実施形態による、3次元物品を粉体ベッド内の粉体化媒体の融合によって形成する装置を示す。
【
図1C】本発明の実施形態による、3次元物品を粉体ベッド内の粉体化媒体の融合によって形成する装置を示す。
【
図2】本発明の実施形態による、粉体化媒体を運搬するためのカート及びカートを受入れるように構成されたプリンターハウジングを示す。
【
図3A】本発明の実施形態による、粉体ベッド及び粉体化媒体用の複数のトレイをプリンターハウジング内の作動位置に移動させるための鉛直方向調整手段を示す。
【
図3B】本発明の実施形態による、カートをプリンターハウジング内にドッキングさせた組立体を示す。
【
図4】本発明の実施形態による、多数のプリンターハウジング、カート、及び制御ステーションを統合するシステムを示す。
【
図5】本発明の実施形態による、多数のプリンターハウジング及び多数のカートが配置された作業現場を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明において、本願の一部を構成しており且つ本発明が実施される特定の実施形態が例示として図示されている添付図面を参照する。他の実施形態が利用されてもよいし、本発明の範囲を逸脱することなしに構造的変化が行われてもよいことを理解すべきである。任意の図と関連した説明は、同様の構成要素/ステップを含む異なる図に適用される。
【0010】
図1A~
図1Cを参照すると、粉体ベッド12内の粉体化媒体10の融合によって3次元物品を形成するための装置の例、及び、かかる装置の作動中のステップが示されている。粉体化媒体10(金属、ポリアミド、又はその他の材料)の第1の層が、粉体ベッド12の全体にわたって分配されている。これは、ローラ運動機構14を使用して薄い層の材料を粉体ベッド12の上に広げることによって、又は、その他の方法で薄い層の材料を粉体ベッド12の上に配置することによって達成され、その結果、粉体化媒体10の比較的薄い均一な層が粉体ベッド12の上に分配される。幾つかの例では、粉体化媒体10を、重力による供給によって分配し、次いで、ローラ又はスクレーパを用いて、比較的薄い均一な層を粉体ベッド12の上に形成してもよい。
【0011】
いったん粉体化媒体10を分配したら、作業エリア16内の粉体化媒体10の比較的薄い一様な層又はその少なくとも一部分を、粉体化媒体10の融点以下の温度まで加熱する。この加熱を、任意の様々な仕方で達成することができ、かかる仕方は、赤外線ランプを使用することを含む。
【0012】
図1Bに示すように、レーザ源18及び画像システム20を使用して、ワークピース(即ち、製造すべき物体)の断面層の画像を、粉体ベッド12の作業エリア16全体にわたって分配された粉体化媒体の層の上で合焦させる。このことは、一般的には、レーザビーム22の焦点を粉体化材料のベッド全体にわたって走査することを含み、それにより、粉体化材料は、レーザによって加熱された箇所に、固形化した塊を形成する。レーザビームは、製造すべき物体の第1の断面層の画像に一致する粉体ベッド12の作業エリア16の箇所において、粉体化媒体10の加熱された部分を融合させるのに十分なエネルギーを有し、物体の第1の断面層の画像に一致する形状を有する粉体化媒体の一体層を形成する。粉体ベッドの上の粉体化媒体の他の部分は、融合されないままであり、粉体化媒体の層の一体部分、即ち、融合された部分を包囲して、それを支持する。
【0013】
次に、
図1Cに示すように、粉体ベッド12を下降させ、(例えば、ローラ14を使用して)粉体化媒体10の第2の層を第1の層の上に分配し、製造すべき物体の第2の断面層の画像を使用して上述したプロセスを繰返し、第2の断面層の画像に一致する形状を有する粉体化媒体の一体層を形成する。このプロセスを、粉体化媒体の直前の層の上に分配された粉体化媒体の追加の層及び物体の追加の断面層の追加の画像ごとに繰返して、3次元物品を形成する。
【0014】
図1A~
図1Cにおいて、粉体ベッド12及び粉体ベッド12の何れかの側に配置された(粉体化媒体が入っている)粉体化媒体10用トレイは、カート30内に収容される。装置の光構成要素を含む他の要素は、プリンターハウジング32内に収容される。これらの構成要素を
図2及び
図3A~
図3Bにさらに詳細に示す。カート30は、キャスター36又は他の車輪を備え、プリンターハウジング32の正面の開口34内に嵌められるように構成される。他の車輪は、限定するわけではないが、カートを横方向に駆動可能なメカナム(Mecanum)車輪、即ち、全方位車輪であるのがよく、それにより、カートを操縦するのに必要とされる空間の量を減少させる。カート30を開口34内に収容するとき、カバー40を巻き取って粉体ベッド12及び粉体化媒体10用トレイを露出させ、スクリュージャッキ38を展開して粉体ベッド12及び粉体化媒体10用トレイをプリンターハウジング32内の作動位置に移動させる。
図3Bは、完成した組立体を示す。印刷プロセスを完了した後、又は、カート30内の粉末を使い果たした後、スクリュージャッキ38を緩めて、カート30をキャスター36の上に下降させ、カバー40を広げて、粉体ベッド12及び粉体化媒体10用トレイを覆う。次いで、カート30をプリンターハウジング32から出す。
【0015】
カバー40は、カート30をプリンターハウジング32から出した後で粉体ベッド12の温度を維持するために一体化された加熱要素、例えば抵抗ヒータを有するのがよい。印刷速度を増大させたときに、印刷時間と印刷後の冷却時間の比が減少したことは、印刷プロセス後のバルク材料が低温になるのに、それを印刷するのに要する時間よりも多くの時間を必要とすることを意味する。印刷プロセスの後、カート30を、複数の供給エリアステーションのうちの1つにドッキングさせるのがよく、そこにおいて、カートに電力を供給するのに使用されたバッテリーを再充電し、加熱要素は、バッテリーではなく、出力接続部から外されるのがよい。かかるモジュール設計では、多数のプリンター用カート30が1つのプリンターハウジング32にドッキングすることが好ましく、それにより、全体的な印刷処理量を増大させる。プリンターハウジング32は、次に利用可能なプリンター用カート30を、供給エリアに配備されているカートのプールから要求することができる。プリンター用カート30は、1つの種類の材料だけと働くように専用であるのがよく、それにより、印刷と印刷の間にカート30をクリーニングしたり準備したりするのに必要とされる時間を減少させる。
【0016】
上述した実施形態において注目すべきことは、カート30が粉体化媒体10用のトレイとプリンターベッド又は粉体ベッド12の両方を含んでいることである。しかしながら、他の場合には、プリンター用カート30は、プリンターベッド又は粉体ベッド12だけを含み、(粉体化媒体が入っている)粉体化媒体10用のトレイは、プリンターハウジング32に含まれる。幾つかの実施形態では、カート30は、自律式又は半自律式の車両であり、その動作をプリンターハウジング32及び/又はリモートコントローラの要求及び制御時に応じて行う。
【0017】
ここで
図4を参照すると、多数のプリンターハウジング32a~32n、カート30a~30b、及び制御ステーション60を統合したシステム50の例が示され、システム50において、これらの装置の各々からの遠隔測定が受信され且つ処理され、コマンドが1つ又は2つ以上のネットワーク又は複数のネットワークのうちのネットワーク52を介して送信される。選択的には、1つ又は2つ以上のクライアントステーション72a~72mが、制御ステーション60の一部として含まれ、クライアントステーション72a~72mの各々は、1つ又は2つ以上のネットワーク又は複数のネットワークのうちのネットワーク70によって、遠隔ステーション又は制御ステーション60に通信可能に接続され、プリンターハウジング32a~32n及びカート30a~30bの作業及び行動を、クライアントステーション72a~72mのところで見たり、アクセスしたり、制御することができるのがよい。ネットワーク70の幾つかの又はすべての構成要素は、ネットワーク52の一部であってもよいし、別個のネットワーク又は複数のネットワークのうちのネットワークであってもよい。静止していてもよいし移動してもよいリピーターユニット54が、ネットワーク52へのプリンターハウジング32a及びカート30aのための通信経路を構成するように示されている。実際、多数のリピーターユニットが、多数のプリンターハウジング及び多数のカートを適合させる目的で使用されるのがよい。ばらばらの数のプリンターハウジング、カート、クライアントステーション、及びシステム50のその他の構成要素を図示したけれども、実際には、システム50のインスタンシエーションは、任意の数のかかる装置を含む。同様に、制御ステーション60を単一ユニットとして示しているけれども、実際には、制御ステーション60の機能を多数のコンピュータシステムにわたって分配してもよく、かかるコンピュータシステムは、例えば、多数の物理的コンピュータデバイス上で動作している多数の仮想機械を含むクラウドベースのコンピュータシステムである。したがって、システム50の図は、本願明細書の目的のための例示として考えるべきであり、システム50の物理的構成に関して限定しない。
【0018】
この図示の実施形態では、システム50は、多数のプリンターハウジングと、複数のカートと、1つの制御ステーションと、これらのユニットの間の相互通信のための手段を含む。プリンターハウジング及びカートは、上述した種類のものであるのがよく、音声/映像手段(例えば、カメラ、マイクロホン等)を含み、音声/映像手段は、音声/映像情報を取込んでそれを制御ステーション60に送信する。また、場所センサは、例えば、それぞれのプリンターハウジング及びカートに関する場所情報を提供するGPS又は同様のユニットを含む。幾つかの例では、カート及びプリンターハウジングは、床に固定された接着磁気テープを有する設備内に配置される。変形例として、床通路インジケータの光トラッキングが使用されてもよい。プリンターハウジング32a~32nは、既知の座標に配置され、カート30a~30bは、磁気案内センサを含む自動案内車両である。制御ステーション60、又は、プリンターハウジング32a~32nのうちの1つの指示に応じて、カートは、その磁気案内センサを使用して床の上の磁気テープの線に追従することによって、プリンターハウジングとドッキングするように前進する。電気モータは、カートをその目的地に推進させる1つ又は2つ以上のキャスター又は車輪に動力を供給するのがよい。プリンターハウジングが使用状態にないとき、カートは、供給エリアに配備されるのがよく、供給エリアにおいて、例えば、電気モータに電力を供給するのに使用されるバッテリーを再充電するのがよい。制御ステーション60において、1つ又は2つ以上のクライアントステーション72a~72mは、受信及び表示ステーションとして作用し、受信及び表示ステーションは、監視されているカート及びプリンターハウジング並びにプリンターハウジングで実行される印刷作業に関するデータの図を提供する。
【0019】
供給エリアの他のプリンター用カートのための別の目的地が、処理後ステーションであり、プリンター用カート30は、プリンターハウジングと同様に、処理後ステーションとドッキングして、荷下ろし、非粉体化、印刷された部品の洗浄、及び/又は、トレイへの粉体化媒体の再充填を行う。非粉体化ステーションは、技術者によって手動で操作されてもよいし、完全に自動化されていてもよい。
【0020】
再充填は、制御ステーション60の支援で行われるのがよい。例えば、材料容器に、走査される唯一のコードのラベルを付してから、粉体化材料をカート内のトレイに充填する。次いで、コードを制御ステーション60に提供し、制御ステーション60において、コードを、各印刷用カート30a~30b内の材料の種類と量と一緒に記録する。印刷作業を実施するとき、制御ステーションは、種々のプリンター用カート30a~30bを追跡し続け、どのカートが空であり再充填を必要としているか、及び、どのカートが種々の印刷ジョブを仕上げるのに十分に適切な粉体化材料を有しているかを記録する。このことは、印刷ジョブが、正しい種類の材料及び/又は十分な量の材料に適合していないカートから開始されることを防止するのを助ける。
【0021】
一般的には、プリンターハウジング32a、32b、32nと、カート30a~30bと、制御ステーション60との間の通信は、少なくとも部分的には、ワイヤレス無線周波数(RF)通信である。例えば、プリンターハウジング32a、32b、32n及びカート30a~30bのそれぞれの遠隔ユニットは、音声/映像情報を制御ステーション60に送信したり制御ステーション60から受信したりする無線周波数トランシーバを含むのがよい。幾つかの場合、カートをプリンターハウジングとドッキングさせたとき、カートは、プリンターハウジングの遠隔ユニットを使用するように構成され、例えば、プリンターハウジングへのローカル短距離ワイヤレス通信接続及び/又はローカル有線通信接続を使用する。
【0022】
システム50において、カート30a~30b及びプリンターハウジング32a~32nは、メッシュネットワーク等のその場限りのワイヤレスネットワークを形成するように構成されるのがよく、そのうちのいくつか又はすべては、それぞれの局所的環境に関するデータを、ネットワーク52を介して制御ステーション60にワイヤレスで送信する。各プリンターハウジング32a~32n及びカート30a~30bは、唯一の識別子で結合されるのがよく、かかる識別子は、その情報を制御ステーション60における特定の装置及び場所と関連させるために、それぞれの装置によって送信されるデータと結合されるのがよい。このように、作業現場からのデータ送信は、通信が個々のユニットからの送信に依存している場合よりも強固であり、その理由は、装置間のネットワーク52への多数のワイヤレス接続が接続形態の冗長性をもたらすからである。したがって、余分なリピーター54は、1つ又は2つ以上のカート30a~30b及び/又はプリンターハウジング32a~32nのための中継ステーションとして作用する。
【0023】
制御ステーション60内において、ネットワーク52に通信可能に接続されている1つ又は2つ以上の計算装置は、HTTPサーバー等のサーバー62と、本発明の実施形態に従ってシステム50の複数の側面を実装するアプリケーション66の役割を果たす。アプリケーション66は、プリンターハウジング及びカート(及び他の装置、例えば、位置情報を提供するGPSユニット、作業現場の音声/映像による光景を提供する遠隔操縦ドローン等)から受信したデータに基づく調整と分析を行い、かかるデータをデータ記憶部68に記憶するのがよい。データ記憶部68は、専用の記憶装置であってもよいし、遠隔ステーションを構成する計算装置にアクセス可能なクラウド型の記憶装置であってもよい。
【0024】
アプリケーション66は、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)64を支援するのがよく、API64は、プリンターハウジング32a~32n及びカート30a~30bからの及び/又はサーバー62を介して遠隔データ記憶部68からのライブ音声/映像フィードにアクセスするために、クライアントステーション72a~72mへの外部アクセスを提供する。或る実施形態では、クライアントアプリケーション、例えば、クライアントステーション72a~72m上で作動しているウェブブラウザは、HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)又はFTP(ファイル転送プロトコル)等のプロトコルを使用して、API64を介して且つサーバー62を通してアプリケーション66にアクセスする。或る実施形態では、様々なクライアントステーションは、ラップトップ又はデスクトップコンピュータであってもよいし、スマートホンのようなモバイルデバイスであってもよいし、仮想現実プレーヤーのようなウェアラブルデバイスであってもよい。
【0025】
本発明のシステムは、
図5に示すような作業現場の作業を制御したり監視したりするのに適している。そのような環境において、多数のプリンターハウジング及び多数のカートが、様々な印刷作業を実行するように連係している。プリンターハウジングは、カートを直接呼び出してもよいし、制御ステーションを通して呼び出してもよい。要求されたカートは、待機エリアから送り出され、カートの磁気案内センサを使用して床の上の磁気テープの線をたどることによって、要求しているプリンターハウジングまで自律的に走行する。カートは、要求しているプリンターハウジングにドッキングして、ジャッキスクリューの上で上昇することによって、粉体化媒体用トレイ及び粉体ベッドを所定位置に移動させると、印刷作業が開始される。カートが粉体化媒体を使い果たしたとき、粉体ベッドカートは、プリンターハウジングから離れて、待機エリアに戻り、待機エリアにおいて、トレイに粉体化媒体を再充填し、カートのバッテリーを再充電する。かかる環境において、多くの異なる印刷作業が同時に実行されてもよい。
【0026】
制御ステーションにおいて、プリンターハウジングからの音声/映像情報及びカートからの遠隔測定データは、サーバー62によって受信され、API64を介してアプリケーション66に送られる。アプリケーション66は、記録保管及びトレーニングの目的で、音声/映像情報及び/又は遠隔測定データをデータ記憶部68に記録し及び記憶することを開始する。加えて、アプリケーション66は、音声/映像情報及び遠隔測定データの入力またはフィードを1つ又は2つ以上のクライアントステーション72a~72mに供給し、1つ又は2つ以上のクライアントステーション72a~72mにおいて、これらのステーションを担当している人員が、かかる入力を見ることができる。
【0027】
クライアントステーションは、プリンターハウジング32a~32n及びカート30a~30bからの情報を表示する1つ又は2つ以上のディスプレイを備えているのがよい。クライアントステーションはまた、オペレータが印刷プロセス、カート、及びシステムのその他の作業の側面を制御することを可能にするように構成される。かくして、選択的レーザ焼結(SLS)のための粉体ベッドカート及びそれと関連したプリンターハウジングが記述され、1つの実施形態では、自律移動手段を有し且つプリンターハウジングのうちの1つとドッキングするかかるカートが記述された。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的レーザ焼結(SLS)装置のための粉体ベッドカートであって、
粉体ベッドと、
粉体ベッドカートの自律式の移動手段と、
前記粉体ベッドカートをSLS装置のプリンターハウジングとドッキングさせるための手段と、を有し、
前記自律式の移動手段は、場所センサと、前記粉体ベッドカートの下面に配置された車輪と、前記粉体ベッドカートを所望の目的地に誘導し且つ推進させる電気モータと、前記電気モータに電力を供給するバッテリーを含む、粉体ベッドカート。
【請求項2】
前記ドッキングさせるための手段は、粉体ベッドの鉛直方向位置を前記プリンターハウジング内の作動位置まで上昇させる鉛直方向調整手段を含む、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項3】
粉体ベッドは、引込み可能なカバーによって覆われる、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項4】
前記引込み可能なカバーは、前記粉体ベッドの温度を維持するために、一体加熱要素を含む、請求項3に記載の粉体ベッドカート。
【請求項5】
前記粉体ベッドカートは、供給エリアステーション内でドッキングされるように構成され、前記供給エリアステーションにおいて、前記粉体ベッドカートのバッテリーの再充電が行われ、前記粉体ベッドカートの加熱要素が、前記バッテリーではなく、出力接続部から外される、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項6】
更に、粉体化材料を保持する1つ又は2つ以上のトレイを有する、請求項1に記載の粉体ベッドカート。
【請求項7】
前記粉体ベッドカートは、処理後ステーションにドッキングされるように構成され、前記処理後ステーションにおいて、前記粉体ベッドカートは、荷下ろし、非粉体化、印刷されたパーツのクリーニング、及び、粉体化材料の1つ又は2つ以上のトレイに再充填することのうちの少なくとも1つを行う、請求項6に記載の粉体ベッドカート。
【請求項8】
選択的レーザ焼結(SLS)装置のためのプリンターハウジングであって、
SLS装置用の自律式の粉体ベッドカートとドッキングするように構成された開口と、
レーザビームを発生させるように構成されたレーザ源と、
画像システムと、を有し、
前記自律式の粉体ベッドカートは、粉体ベッドを含み、
前記画像システムは、レーザビームを前記粉体ベッドの中に配置された粉体化材料の上で走査させるように構成され、それにより、粉体化材料は、レーザビームによって加熱された箇所に固形化した塊を形成し、
前記プリンターハウジングは、前記自律式の粉体ベッドカートを待機エリアから前記プリンターハウジングの開口まで移動させる要求を前記自律式の粉体ベッドカートに送信するように構成される、プリンターハウジング。
【請求項9】
更に、粉体化材料を保持する1つ又は2つ以上のトレイを有する、請求項8に記載のプリンターハウジング。
【請求項10】
前記開口は、前記複数の自律式の粉体ベッドカートとドッキングするように構成される、請求項8に記載のプリンターハウジング。
【請求項11】
更に、前記粉体ベッド内の粉体化材料を広げるように構成されたローラを有する、請求項8に記載のプリンターハウジング。
【請求項12】
更に、音声及び/又は映像情報を制御ステーションに送信したり前記制御ステーションから受信したりするように構成された遠隔ユニットを有する、請求項8に記載のプリンターハウジング。
【請求項13】
選択的レーザ焼結(SLS)印刷システムであって、
第1の複数の自律式の粉体ベッドカートと、
第2の複数のプリンターハウジングと、
制御ステーションと、を有し、
前記第2の複数のプリンターハウジングの各々は、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカートの1つ又は2つ以上とドッキングするように構成され、
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングの作動を制御するために、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングと通信可能に接続され、
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自立式の粉体ベッドカートの各々の中の材料の種類及び量の記録を維持するように構成される、選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項14】
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカートを待機エリアから前記第2の複数のプリンターハウジングのうちの1つの開口まで移動させる要求を送信するように構成される、請求項13に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項15】
前記制御ステーションは、音声及び/又は映像情報を前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングのうちの1つ又は2つ以上から受信するように構成される、請求項13に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項16】
前記制御ステーションは、前記音声及び/又は映像情報を1つ又は2つ以上のクライアントステーションに送信するように構成される、請求項15に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【請求項17】
前記制御ステーションは、前記第1の複数の自律式の粉体ベッドカート及び前記第2の複数のプリンターハウジングの作動を制御するように構成された命令を1つ又は2つ以上のクライアントステーションから受信するように構成される、請求項13に記載の選択的レーザ焼結(SLS)印刷システム。
【国際調査報告】