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特表2022-533149発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】発光ダイオードを備えた光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/36 20100101AFI20220713BHJP
   H01L 33/06 20100101ALI20220713BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20220713BHJP
【FI】
H01L33/36
H01L33/06
H01L33/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568396
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 FR2020050819
(87)【国際公開番号】W WO2020234534
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1905332
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ロビン,イヴァン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイ-シン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,フレデリック
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA12
5F241AA21
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA53
5F241CA56
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA88
5F241CA91
5F241CB11
5F241CB33
5F241FF01
(57)【要約】
【解決手段】本開示は光電子デバイス(10)に関し、光電子デバイスは、少なくとも第1及び第2の発光ダイオード(DEL) を備えており、第1及び第2の発光ダイオードは、P型の第1の半導体部分(30)、N型の第2の半導体部分(26)、第1の半導体部分及び第2の半導体部分間に配置されて多重量子井戸を含むアクティブ領域(28)、アクティブ領域(28)の側壁(34)及び第1の半導体部分の少なくとも一部の側壁を覆う導電層(38)、並びにアクティブ領域(28)の側壁(34)と導電層の少なくとも一部の側壁との間に配置されている絶縁層(36)を夫々有している。光電子デバイスは、第2の発光ダイオードの導電層とは無関係に第1の発光ダイオードの導電層を制御する手段を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイス(10; 55; 60)であって、
少なくとも第1の発光ダイオード(DEL) 及び第2の発光ダイオード(DEL) を備えており、
前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオードは、P型にドープされた第1の半導体部分(30)と、N型にドープされた第2の半導体部分(26)と、前記第1の半導体部分及び前記第2の半導体部分の間に配置されて多重量子井戸を含むアクティブ領域(28)と、前記アクティブ領域(28)の側壁(34)及び前記第1の半導体部分の少なくとも一部の側壁(34)を覆う導電層(38)と、前記アクティブ領域(28)の側壁(34)と前記導電層の少なくとも一部の側壁との間に配置されている絶縁層(36)とを夫々有しており、
前記光電子デバイスは、
前記第2の発光ダイオードの導電層とは無関係に前記第1の発光ダイオードの導電層を制御する手段と、
前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオード毎に、前記第1の半導体部分に電気的に連結されている第1の導電性パッド(44)、前記第2の半導体部分に電気的に連結されている第2の導電性パッド(42)及び前記導電層に電気的に連結されている第3の導電性パッド(46)と
を更に備えている、光電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の発光ダイオード(DEL) 及び前記第2の発光ダイオード(DEL) 毎に、前記アクティブ領域(28)は多重量子井戸を有している、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記アクティブ領域(28)毎に、前記第1の半導体部分(30)に最も近い量子井戸(62)の組成は、前記第2の半導体部分(26)に最も近い量子井戸(62)の組成とは異なる、請求項2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記アクティブ領域(28)毎に、量子井戸(62)は、第1の化学元素、第2の化学元素及び第3の化学元素を有する三元化合物を夫々含んでおり、
前記量子井戸(62)の前記第1の化学元素の質量濃度は同一であり、
前記量子井戸(62)の前記第2の化学元素の質量濃度は同一であり、
前記第1の半導体部分(30)に最も近い量子井戸(62)の第3の化学元素の質量濃度は、前記第2の半導体部分(26)に最も近い量子井戸(62)の第3の化学元素の質量濃度とは異なる、請求項3に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記第1の半導体部分(30)に最も近い量子井戸(62)の第3の化学元素の質量濃度と前記第2の半導体部分(30)に最も近い量子井戸(62)の第3の化学元素の質量濃度との差は10パーセントより高い、請求項4に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記第1の化学元素はIII 族元素である、請求項4又は5に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の化学元素はガリウムである、請求項3~6のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
前記第2の化学元素はV族元素である、請求項3~7のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記第2の化学元素は窒素である、請求項3~8のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記第3の化学元素はIII 族元素である、請求項3~9のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記第3の化学元素はインジウムである、請求項3~10のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項12】
前記発光ダイオード(DEL) はメサ構造を夫々有する、請求項1~11のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項13】
前記発光ダイオード(DEL) 毎に、前記第2の半導体部分(26)はワイヤ状である、請求項1~12のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項14】
前記発光ダイオード(DEL) は、前記アクティブ領域(28)と前記第1の半導体部分(30)との間に電子遮断層(66)を夫々更に有している、請求項1~13のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項15】
前記第1の導電性パッド(44)及び前記第2の導電性パッド(42)は、前記導電層(38)から電気的に絶縁されている、請求項1~14のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の光電子デバイス(10; 55; 60)から光を放射する方法であって、
前記第1の発光ダイオード(DEL) 及び前記第2の発光ダイオード(DEL) の各々の前記第1の半導体部分(30)及び前記第2の半導体部分(26)の間に第1の電圧を印加し、
前記第1の発光ダイオードの前記導電層(38)及び前記第1の半導体部分(30)の間に第2の電圧を印加し、
前記第2の発光ダイオードの前記導電層(38)及び前記第1の半導体部分(30)の間に、前記第2の電圧とは異なる第3の電圧を印加する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体材料で形成されている発光ダイオードを備えた光電子デバイス、特にディスプレイスクリーン又は画像投影デバイス、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像の画素は、光電子デバイスによって表示される画像の単位素子に相当する。光電子デバイスがカラー画像のディスプレイスクリーンである場合、光電子デバイスは一般に、画像の各画素を表示するために表示サブ画素とも称される少なくとも3つの要素を備えており、これらの要素は実質的に単一色(例えば赤色、緑色及び青色)で放射光を夫々放射する。3つの表示サブ画素によって放射される放射光を重ね合わせることにより、表示画像の画素に対応する色付けの感覚が観察者に与えられる。この場合、画像の画素を表示するために使用される3つの表示サブ画素によって形成される集合体が光電子デバイスの表示画素と称される。各表示サブ画素は少なくとも1つの発光ダイオードを有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特にコストの理由から、同じ製造方法の同じ工程で複数の発光ダイオードを同時的に形成することが有利な場合がある。そのため、発光ダイオードのアクティブ領域は同じ波長で電磁放射線を放射する。異なる波長で電磁放射線を放射する表示サブ画素を得るために、発光ダイオードによって放射される電磁放射線を異なる波長の電磁放射線に変換することができる蛍光体の層で特定の発光ダイオードを覆うことが可能である。しかしながら、所望の色を正確に得ることは困難な場合がある。更に、蛍光体のコストが高い場合がある。
【0004】
従って、蛍光体の使用を減少させる又は抑制する、異なる波長で電磁放射線を放射する表示サブ画素を有する発光ダイオードを備えた光電子デバイスが必要である。
【0005】
更に、ある用途では、発光ダイオードの電極間に印加される電圧を変更することなく、発光ダイオードのオン及びオフを制御することが必要である。
【0006】
従って、実施形態の目的は、発光ダイオードを備えた上記の光電子デバイスの不利点を少なくとも部分的に克服することである。
【0007】
実施形態の別の目的は、蛍光体の使用を減少させる又は抑制することである。
【0008】
実施形態の別の目的は、異なる波長で電磁放射線を放射することができる複数の発光ダイオードを共通の工程で同時的に形成し得ることである。
【0009】
実施形態の別の目的は、光電子デバイスを工業規模且つ低コストで製造し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、実施形態は、光電子デバイスであって、少なくとも第1の発光ダイオード及び第2の発光ダイオードを備えており、前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオードは、P型にドープされた第1の半導体部分と、N型にドープされた第2の半導体部分と、前記第1の半導体部分及び前記第2の半導体部分の間に配置されて多重量子井戸を含むアクティブ領域と、前記アクティブ領域の側壁及び前記第1の半導体部分の少なくとも一部の側壁を覆う導電層と、前記アクティブ領域の側壁と前記導電層の少なくとも一部の側壁との間に配置されている絶縁層とを夫々有しており、前記光電子デバイスは、前記第2の発光ダイオードの導電層とは無関係に前記第1の発光ダイオードの導電層を制御する手段と、前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオード毎に、前記第1の半導体部分に電気的に連結されている第1の導電性パッド、前記第2の半導体部分に電気的に連結されている第2の導電性パッド及び前記導電層に電気的に連結されている第3の導電性パッドとを更に備えている、光電子デバイスを提供する。
【0011】
実施形態によれば、前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオード毎に、前記アクティブ領域は多重量子井戸を有している。
【0012】
実施形態によれば、前記アクティブ領域毎に、前記第1の半導体部分に最も近い量子井戸の組成は、前記第2の半導体部分に最も近い量子井戸の組成とは異なる。
【0013】
実施形態によれば、前記アクティブ領域毎に、量子井戸は、第1の化学元素、第2の化学元素及び第3の化学元素を有する三元化合物を夫々含んでおり、前記量子井戸の前記第1の化学元素の質量濃度は同一であり、前記量子井戸の前記第2の化学元素の質量濃度は同一であり、前記第1の半導体部分に最も近い量子井戸の第3の化学元素の質量濃度は、前記第2の半導体部分に最も近い量子井戸の第3の化学元素の質量濃度とは異なる。
【0014】
実施形態によれば、前記第1の半導体部分に最も近い量子井戸の第3の化学元素の質量濃度と前記第2の半導体部分に最も近い量子井戸の第3の化学元素の質量濃度との差は10パーセントより高い。
【0015】
実施形態によれば、前記第1の化学元素はIII 族元素である。
【0016】
実施形態によれば、前記第1の化学元素はガリウムである。
【0017】
実施形態によれば、前記第2の化学元素はV族元素である。
【0018】
実施形態によれば、前記第2の化学元素は窒素である。
【0019】
実施形態によれば、前記第3の化学元素はIII 族元素である。
【0020】
実施形態によれば、前記第3の化学元素はインジウムである。
【0021】
実施形態によれば、前記発光ダイオードはメサ構造を夫々有する。
【0022】
実施形態によれば、前記発光ダイオード毎に、前記第2の半導体部分はワイヤ状である。
【0023】
実施形態によれば、前記発光ダイオードは、前記アクティブ領域と前記第1の半導体部分との間に電子遮断層を夫々更に有している。
【0024】
実施形態によれば、前記第1の導電性パッド及び前記第2の導電性パッドは、前記導電層から電気的に絶縁されている。
【0025】
実施形態は、既に定義されているような光電子デバイスから光を放射する方法であって、前記第1の発光ダイオード及び前記第2の発光ダイオードの各々の前記第1の半導体部分及び前記第2の半導体部分の間に第1の電圧を印加し、前記第1の発光ダイオードの前記導電層及び前記第1の半導体部分の間に第2の電圧を印加し、前記第2の発光ダイオードの前記導電層及び第1の半導体部分の間に、前記第2の電圧とは異なる第3の電圧を印加する、方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0027】
図1】発光ダイオードを備えた光電子デバイスの実施形態を示す図である。
図2】光電子デバイスの別の実施形態を示す図である。
図3】光電子デバイスの別の実施形態を示す図である。
図4】シミュレーションを行うために使用された発光ダイオードの実施形態を示す図である。
図5】発光ダイオードを流れる電流の面密度に応じた図4の発光ダイオードの内部量子効率の変化の曲線を示す図表である。
図6】発光ダイオードを流れる電流の面密度に応じた図4の発光ダイオードのウォールプラグ効率の変化の曲線を示す図表である。
図7】発光ダイオードに印加されるアノード-カソード電圧に応じた図4の発光ダイオードを流れる電流の面密度の変化の曲線を示す図表である。
図8図4の発光ダイオードのアクティブ領域における放射再結合率の変化曲線を示す図表である。
図9図4の発光ダイオードのアクティブ領域における価電子帯のエネルギーの変化曲線を示す図表である。
図10図4の発光ダイオードのアクティブ領域におけるホール濃度の変化曲線を示す図表である。
図11図4の発光ダイオードのアクティブ領域における放射再結合率の変化曲線を示す図表である。
図12図10と同様の図表である。
図13図11と同様の図表である。
図14図1の光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図15】方法の別の工程を示す図である。
図16】方法の別の工程を示す図である。
図17】方法の別の工程を示す図である。
図18】方法の別の工程を示す図である。
図19】方法の別の工程を示す図である。
図20】方法の別の工程を示す図である。
図21図2の光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図22】方法の別の工程を示す図である。
図23】方法の別の工程を示す図である。
図24】方法の別の工程を示す図である。
図25】方法の別の工程を示す図である。
図26】方法の別の工程を示す図である。
図27】方法の別の工程を示す図である。
図28】方法の別の工程を示す図である。
図29図3の光電子デバイスを製造する方法の実施形態の工程を示す図である。
図30】方法の別の工程を示す図である。
図31】方法の別の工程を示す図である。
図32】方法の別の工程を示す図である。
図33】方法の別の工程を示す図である。
図34】方法の別の工程を示す図である。
図35】方法の別の工程を示す図である。
図36】方法の別の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
同一の要素は様々な図面において同一の参照番号で示されており、更に、電子回路の表示ではよくあるように、様々な図面は正しい縮尺で示されていない。特に、様々な実施形態に共通する構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有してもよく、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有してもよい。更に、本明細書の理解に有用な要素のみが示され説明されている。特に、発光ダイオードの構造は当業者に広く知られており、詳細に説明されない。
【0029】
以下の記載では、「上側」、「下側」などの相対位置を特定する用語を参照する場合、図面の向き、又は通常の使用位置での光電子デバイスを指す。特に指定されていない場合、「実質的に」、「約」、「略」及び「程度」という表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。更に、発光ダイオードの「アクティブ領域」は、発光ダイオードによる電磁放射線の大部分を放射する発光ダイオードの領域を表す。特に示されていない場合、共に接続された2つの要素を参照するとき、これは、導体以外のいかなる中間要素も無しの直接接続を表し、共に連結された2つの要素を参照するとき、これは、これら2つの要素が接続され得るか、又は一若しくは複数の他の要素を介して連結され得ることを表す。更に本明細書では、「絶縁」及び「導電」という用語は「電気絶縁」及び「電気導電」を夫々意味するとみなされる。
【0030】
図1は、光を放射することができる光電子デバイス10の実施形態を示す部分的な断面略図である。実施形態によれば、光電子デバイス10は少なくとも2つの電子回路12, 14を備えている。第1の電子回路12は発光ダイオードDEL を有している。第2の電子回路14は、第1の電子回路12の発光ダイオードを制御するために使用される不図示の電子部品、特にトランジスタを有している。第1の電子回路12は第2の電子回路14に、例えば分子接合又はフリップチップタイプの接続、特にボール又はマイクロチューブのフリップチップ法によって接合されている。第1の集積回路12は、以下の記載では光電子回路又は光電子チップと称され、第2の集積回路14は集積回路であってもよく、以下の記載では制御回路又は制御チップと称される。
【0031】
光電子デバイス10は、動作中に光を上方に放射するように構成されている。光電子回路12は、図1の上から下に、
- 発光ダイオードによって放射される電磁放射線を少なくとも部分的に通し、光電子デバイス10の放射面18を画定している基板16、例えば絶縁基板(基板は場合によっては設けられない)、
- 発光ダイオードDEL によって放射される電磁放射線を少なくとも部分的に通すドープされた第1の導電型の半導体層20、
- 半導体層20の厚さ全体に亘って延びて、半導体層20に基板部分24を画定する側方絶縁トレンチ22(3つの基板部分24が図1に示されており、側方絶縁トレンチ22は場合によっては設けられない)、
- 基板部分24毎に設けられて、対応する基板部分24と接する上側半導体部分26、アクティブ領域28及び下側半導体部分30を夫々有する少なくとも1つの発光ダイオードDEL (アクティブ領域28は上側半導体部分26と下側半導体部分30との間に配置されており、下側半導体部分30は、アクティブ領域28と反対側に下面32を有し、上側半導体部分26、アクティブ領域28及び下側半導体部分30を有する積層体は、側壁34及び下面32によって画定されたアイランドを形成している)、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、発光ダイオードDEL の周りで基板部分24を覆い発光ダイオードDEL の側壁34を覆う絶縁層36、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、絶縁層36を覆う、以下にゲートと称される導電層38、
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられて、ゲート38及び下側半導体部分30の下面32の一部を覆う絶縁層40(絶縁層40は場合によっては設けられない)、並びに
- 発光ダイオードDEL 毎に設けられている、対応する基板部分24と接する第1の導電性パッド42、下側半導体部分30の下面32と接する第2の導電性パッド44、及びゲート38と接する第3の導電性パッド46
を有している。
【0032】
制御チップ14は、光電子回路12の側に発光ダイオードDEL 毎に3つの導電性パッド48, 50, 52を有しており、導電性パッド48は導電性パッド42に接続されており、導電性パッド50は導電性パッド44に接続されており、導電性パッド52は導電性パッド46に接続されている。制御チップ14が光電子回路12に分子接合によって接合される場合、導電性パッド48, 50, 52は導電性パッド42, 44, 46と接してもよい。制御チップ14が光電子回路12に「フリップチップ」タイプの接続によって接合される場合、半田ボール又はマイクロチューブが導電性パッド42, 44, 46と導電性パッド48, 50, 52との間に配置されてもよい。
【0033】
図1に示されている実施形態では、各発光ダイオードDEL は「メサ」タイプと称され、すなわち、各発光ダイオードDEL は、アイランドを形成すべくエッチングされた平面層の積層体を有している。
【0034】
図2は、光を放射することができる光電子デバイス55の別の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス55は、基板16が設けられていない点、及び各発光ダイオードDEL がアキシャルタイプである、すなわち、上側半導体部分26及び下側半導体部分30がワイヤの形態で製造されている点を除いて、図1に示されている光電子デバイス10の全ての要素を備えている。図2は、基板部分24毎に2つの発光ダイオードDEL を示し、関連付けられた導電性パッド44は、2つの発光ダイオードDEL の各々の下側半導体部分30に接続されている。
【0035】
図3は、光を放射することができる光電子デバイス60の別の実施形態を示す部分的な断面略図である。光電子デバイス60は、基板16及び半導体層20が設けられていない点を除いて、図1に示されている光電子デバイス10の全ての要素を備えている。更に、発光ダイオードDEL は、少なくとも2つの発光ダイオードDEL の組で分散しており、発光ダイオードDEL 毎に、上側半導体部分26はワイヤ状であり、アクティブ領域28は、上側半導体部分26から張り出す円錐形状又は円錐台形状を少なくとも部分的に有し、下側半導体部分30は、同一組の発光ダイオードDEL に共通である。更に、発光ダイオードDEL 毎に、導電性パッド42は上側半導体部分26に導電素子61によって電気的に連結されている。
【0036】
図4は、発光ダイオードDEL のより詳細な部分的な断面略図である。実施形態によれば、アクティブ領域28は、光電子回路12による電磁放射線の大部分が放射される層である。実施形態によれば、アクティブ領域28は多重量子井戸を有している。そのため、アクティブ領域28は、交互に形成された量子井戸層と称される第1の半導体層62及び障壁層と称される第2の半導体層64を有しており、各量子井戸層62は、上側半導体部分26及び下側半導体部分30を形成する材料のバンドギャップより小さいバンドギャップの半導体材料で形成されている。
【0037】
半導体層20、半導体部分26, 30及び半導体層62, 64は、少なくとも1つの半導体材料から少なくとも部分的に形成されている。半導体材料は、III-V 族化合物、例えばIII-N 化合物、II-VI 族化合物、又はIV族半導体若しくはIV族化合物を含む群から選択されている。III 族元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)がある。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN がある。他のV 族元素、例えばリン又はヒ素を更に使用してもよい。II族元素の例として、IIA 族元素、特にベリリウム(Be)及びマグネシウム(Mg)、並びにIIB 族元素、特に亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)がある。VI族元素の例として、VIA 族元素、特に酸素(O) 及びテルル(Te)がある。II-VI 族化合物の例として、ZnO 、ZnMgO 、CdZnO 、CdZnMgO 、CdHgTe、CdTe又はHgTeがある。IV族半導体材料の例として、シリコン(Si)、炭素(C) 、ゲルマニウム(Ge)、炭化珪素(SiC) 合金、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)合金又は炭化ゲルマニウム(GeC) 合金がある。半導体層20、半導体部分26, 30及び半導体層62, 64はドーパントを含んでもよい。例として、III-V 族化合物に関して、ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及び水銀(Hg)であるP型II族ドーパント、例えば炭素(C) であるP型IV族ドーパント、並びに例えばシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、硫黄(S) 、テルビウム(Tb)及びスズ(Sn)であるN型IV族ドーパントを含む群から選択されてもよい。
【0038】
各障壁層64は、上側半導体部分26及び下側半導体部分30の材料と同一の材料で形成されてもよく、特に非意図的にドープされてもよい。実施形態によれば、各量子井戸層62は、上側半導体部分26及び下側半導体部分30を形成する材料と同一のIII -V 族化合物又はII-VI 族化合物を含み、追加の元素を更に含む。実施形態によれば、上側半導体部分26及び下側半導体部分30がGaN で形成されている場合、各量子井戸層62は、Inの質量濃度が10%~30%の範囲内のInGaN で形成されてもよい。各量子井戸層62の厚さは3nm~10nmの範囲内であってもよい。各障壁層64の厚さは3nm~50nmの範囲内であってもよい。
【0039】
実施形態によれば、上側半導体部分26に最も近い量子井戸層62の追加の元素の質量濃度は、下側半導体部分30に最も近い量子井戸層62の追加の元素の質量濃度とは異なる。実施形態によれば、上側半導体部分26に最も近い量子井戸層62の追加の元素の質量濃度と下側半導体部分30に最も近い量子井戸層62の追加の元素の質量濃度との差は10パーセントより高い。
【0040】
実施形態によれば、上側半導体部分26は、III-N 化合物、例えば窒化ガリウムで主に形成されており、第1の導電型、例えばN型にドープされている。N型ドーパントはシリコンであってもよい。上側半導体部分26のドーパント濃度は、1017原子/cm3 ~5×1020原子/cm3 の範囲内であってもよい。実施形態によれば、下側半導体部分30は、III-N 化合物、例えば窒化ガリウムから例えば少なくとも部分的に形成されている。下側半導体部分30は第2の導電型、例えばP型にドープされてもよい。下側半導体部分30のドーパント濃度は、1017原子/cm3 ~5×1020原子/cm3 の範囲内であってもよい。下側半導体部分30は、ドーパントの質量濃度が異なる同一の材料の少なくとも2つの半導体層30の積層体を有してもよく、アクティブ領域28から最も離れた層が最も高濃度にドープされてもよい。
【0041】
各光電子デバイス10, 55, 60は、アクティブ領域28とP型にドープされた半導体部分30との間に配置されて、好ましくはアクティブ領域28及びP型にドープされた半導体部分30と接している電子遮断層66を更に備えてもよい。電子遮断層66により、アクティブ領域28の電気担体が十分に分散し、P型にドープされた半導体部分30に向かう電子の拡散が減少する。電子遮断層66は、三元合金、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN) 又は窒化アルミニウムインジウム(AlInN) で形成されてもよい。電子遮断層66の厚さは20nm程度であってもよい。
【0042】
導電層38は、例えばアルミニウム、銀、銅、チタン、窒化チタン又は亜鉛の金属層に相当することが好ましい。導電層38を形成する材料は、酸化インジウムスズ(ITO) 、アルミニウム若しくはガリウムがドープされているか若しくはドープされていない酸化亜鉛、又はグラフェンなどの、発光ダイオードDEL によって放射される放射光を少なくとも通す導電性材料であってもよい。導電層38の厚さは0.5 μm~10μmの範囲内であってもよい。
【0043】
各絶縁層36, 40は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxは略3であり、yは略4であり、例えばSi3N4)、酸窒化シリコン(SiOxNy、ここでxは略1/2 であってもよく、yは略1であってもよく、例えばSi2ON2)、酸化アルミニウム(Al2O3) 又は酸化ハフニウム(HfO2)で形成されてもよい。絶縁層36が発光ダイオードDEL の側壁34を覆う部分の絶縁層36の最小の厚さは1nm~10μmの範囲内であってもよい。絶縁層40は有機材料で形成されてもよい。例として、絶縁層36はシリコーンポリマー、エポキシポリマー、アクリルポリマー、ポリカーボネート、白色樹脂、黒色樹脂、又は特に酸化チタン粒子が充填されている透明樹脂である。
【0044】
各導電性パッド42, 44, 46, 48, 50, 52は、銅、チタン、タンタル、タングステン、これらの関連する窒化物、ニッケル、金、スズ、アルミニウム及びこれらの化合物の少なくとも2つの合金を含む群から選択された材料で少なくとも部分的に形成されてもよい。
【0045】
実施形態によれば、発光ダイオードDEL の少なくとも一部は、発光団が関連付けられている発光ダイオードDEL によって放射される光によって励起されると、関連付けられている発光ダイオードDEL によって放射される光の波長とは異なる波長で光を放射することができる発光団を含む光輝性層で覆われてもよい。発光ダイオードDEL が光輝性層で覆われていないことが好ましい。
【0046】
図2及び図3に示されている実施形態では、各上側半導体部分26及び場合によっては各下側半導体部分30は、所望の方向に、例えば円筒状、円錐状又は円錐台形状の細長い形状を有し、細長い形状は、5nm~2.5 μmの範囲、好ましくは50nm~2.5 μmの範囲の小寸法と称される少なくとも2つの寸法と、小寸法の内の最大値以上であり、好ましくは最大値の5倍以上であり、更に好ましくは最大値の10倍以上である大寸法と称される第3の寸法とを有する。ある実施形態では、小寸法は、略1μm以下であってもよく、好ましくは100 nm~1μmの範囲内であってもよく、更に好ましくは100 nm~800 nmの範囲内であってもよい。ある実施形態では、各上側半導体部分26の高さは500 nm以上であってもよく、好ましくは1μm~20μmの範囲内であってもよい。上側半導体部分26の基部は、例えば楕円形、円形又は多角形の形状を有し、特には三角形、矩形、正方形又は六角形の形状を有する。
【0047】
発光ダイオードDEL の動作のシミュレーションを、図4に示されている発光ダイオードDEL の構造を用いて行った。発光ダイオードDEL は回転対称の構造を有している。図4は発光ダイオードDEL の半分の断面図であり、縦座標の軸が発光ダイオードDEL の回転軸芯に対応する。シミュレーションでは、発光ダイオードDEL の上側半導体部分26及び下側半導体部分30は、半径5μmの円形の基部を有する円筒体である。上側半導体部分26及び半導体部分20は、ドーパント濃度が1019原子/cm3 のN型にドープされたGaN で形成されている。下側半導体層30は、ドーパント濃度が1019原子/cm3 のP型にドープされたGaN で形成されている。アクティブ領域28は、16%のインジウム質量濃度及び3nmの厚さを夫々有するInGaN 層62及び10nmの厚さを夫々有する非意図的にドープされたGaN 層64が交互に形成された多重量子井戸を有している。アクティブ領域28は5つのInGaN 層62及び6つのGaN 層64を有しており、下側半導体部分30に最も近いアクティブ領域28の層及び上側半導体部分26に最も近いアクティブ領域28の層は障壁層64の1つである。発光ダイオードDEL は、20%のアルミニウム質量濃度及び20nmの厚さを有して下側半導体部分30とアクティブ領域28との間に配置されたAlGaN の電子遮断層66を更に有している。シミュレーションに絶縁層36が設けられている場合、絶縁層36は、SiO2で形成されて3nmの厚さを有する。発光ダイオードDEL のカソードCを、下側半導体部分30の下面32に与えられる0Vの第1の一定の電位によってシミュレートする。発光ダイオードDEL のアノードAを、基板部分24の壁に与えられる、特に指定されていない限り2.5 Vの第2の一定の電位によってシミュレートする。シミュレーションにゲート38が設けられている場合、ゲート38を、側壁34と反対側で絶縁層36に与えられる第3の制御可能な電位によってシミュレートする。ゲート38が設けられていないシミュレーションでは、絶縁層36は無限の厚みを有するとみなされる。
【0048】
あるシミュレーションでは、非放射性ドナー型トラップの面密度QssDによる側壁34での電子の蓄積、及び/又はアクセプタ型トラップの面密度QssAによる側壁34でのホールの蓄積を引き起こす発光ダイオードDEL の側壁34での欠陥の存在をシミュレートした。ドナー型トラップは、電子を捕捉しない限り電気的に正であり、電子を捕捉すると電気的に中性である。アクセプタ型トラップは、電子を捕捉しない限り電気的に中性であり、電子を捕捉すると負の電荷を有する。このような欠陥では、欠陥が存在すると、トラップの面密度は1017原子/cm2 であり、トラップの平均再結合時間は10-11 秒であり、トラップのエネルギーは量子井戸のエネルギーの半分である。
【0049】
図5は、アノードAに供給されて対数目盛に従ってA/cm2 で表現される電源電流Iの面密度に応じた、図4に示されているような発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の内部量子効率IQE の変化の曲線C1~曲線C7を示す。内部量子効率IQE は、アクティブ領域28で生じる光子の数対アクティブ領域28を横切る電子の数の比率である。内部量子効率は0から1の範囲内の無名数の数である。
【0050】
図6は、アノードAに供給されて対数目盛に従ってA/cm2 で表現される電源電流Iの面密度に応じた、図4に示されているような発光ダイオードDEL のウォールプラグ効率WPE の変化の曲線D1~曲線D7を示す。ウォールプラグ効率WPE は、発光ダイオードによる光エネルギー対発光ダイオードによって消費される電気エネルギーの比率である。内部量子効率IQE と比較すると、ウォールプラグ効率WPE では、発光ダイオードDEL の外側での光抽出効率、電気注入効率、及び入射電子と生じた光子との間のエネルギー損失が考慮されている。
【0051】
曲線C1, D1は、ゲート及びトラップ無しで得られた。曲線C2, D2は、ゲート無しでドナー型トラップ有りで得られた。曲線C3, D3は、ゲート無しでアクセプタ型トラップ有りで得られた。曲線C4, D4は、ゲート無しでアクセプタ型トラップ及びドナー型トラップ有りで得られた。曲線C5, D5は、トラップ無しで-2Vに維持されたゲート有りで得られた。曲線C6, D6は、ドナー型トラップ及び-2Vに維持されたゲート有りで得られた。曲線C7, D7は、アクセプタ型トラップ及び-2Vに維持されたゲート有りで得られた。
【0052】
図面に示されているように、変化曲線C1~C7は、減少する前に最大値を夫々通過する。負の電圧をゲートに印加することにより、ドナー型トラップが設けられている場合にはIQE の最大値を増加させることが可能になり、アクセプタ型トラップが設けられている場合にはIQE の最大値を維持してIQE の減少を遅らせることが可能になる。
【0053】
図7は、発光ダイオードDEL に印加されるアノード-カソード電圧VAC に応じた、発光ダイオードを流れて対数目盛に従ってA/cm2で表現される電流Iの面密度の変化の曲線E1, E2を示す。曲線E1は、トラップ及びゲート無しで得られた。曲線E2は、トラップ無しで-2Vに維持されたゲート有りで得られた。ゲートが-2Vに設定されているときの発光ダイオードの閾値電圧は、ゲート無しの発光ダイオードの閾値電圧より小さい。従って、アノード-カソード電圧が一定である場合、発光ダイオードを流れる電流の強度、ひいては発光ダイオードによって放出される光エネルギーを、ゲート38に印加される電圧によって制御してもよい。
【0054】
実施形態によれば、光電子デバイス10, 55, 60は、実質的に一定のアノード-カソード電圧が印加される発光ダイオードDEL を備えており、各発光ダイオードのオフ若しくはオン及び/又は各発光ダイオードによって放出される光エネルギーの制御を、各発光ダイオードのゲート38に印加される電圧の制御によって行う。調節されてゲート38に印加される電圧は、アノード-カソード電圧より低いことが有利である。
【0055】
図8は、発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64における放射再結合率TRR の曲線F1~曲線F4を位置に応じて示し、N型にドープされたGaN の上側半導体部分26に最も近い4つの量子井戸層62のみが示されており、図8の最も左の量子井戸層62は、GaN のN型の上側半導体部分26に最も近い。曲線F1~曲線F4は、トラップ無しで2.5 Vのアノード-カソード電圧有りで得られた。曲線F1は、1Vのゲート電圧有りで得られた。曲線F2は、0Vのゲート電圧有りで得られた。曲線F3は、-1Vのゲート電圧有りで得られた。曲線F4は、-2Vのゲート電圧有りで得られた。ゲート電圧が減少すると、GaN のN型の上側半導体部分26に最も近いInGaN 層62がアクティブ化されるようである。
【0056】
図9は、曲線F1, F2, F3, F4と夫々同一の条件で得られた発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64、電子遮断層66及び上側半導体部分30における価電子帯のエネルギーBVの変化の曲線G1, G2, G3, G4を夫々示す。ゲート38に負の電圧を印加することにより、P型にドープされたGaN の下側半導体部分30から生じるホールに対するポテンシャル障壁が低下する。
【0057】
図10は、発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64における、対数目盛に従ってホール/cm3 で表現されたホール濃度CHの変化曲線Hを示す。変化曲線Hは、トラップ無しで2.5 Vのアノード-カソード電圧有りでゲート無しで得られた。図面に示されているように、ゲートが無い場合、P型にドープされたGaN の半導体部分30までの距離が増加すると、ホール濃度が減少する。
【0058】
図11は、発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64及び電子遮断層66における1cm3 当たりの発生数で表現される放射再結合率TRR の変化曲線Jを示す。変化曲線Jは、トラップ無しで2.5 Vのアノード-カソード電圧有りでゲート無しで得られた。図面に示されているように、ゲートが無い場合、P型にドープされたGaN の半導体部分30に最も近い量子井戸62がアクティブ化される。
【0059】
図12は、発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64における、対数目盛に従ってホール/cm3 で表現されたホール濃度の変化曲線Kを示す。変化曲線Kは、トラップ無しで2.5 Vのアノード-カソード電圧有りで-2Vのゲート電圧有りで得られた。図面に示されているように、-2Vの電圧が印加されるゲート38が有る場合、P型にドープされたGaN の半導体部分30までの距離が増加すると、ホール濃度が増加する。
【0060】
図13は、発光ダイオードDEL のアクティブ領域28の半導体層62, 64における1cm3 当たりの発生数で表現される放射再結合率TRR の変化曲線Lを示す。変化曲線Lは、トラップ無しで2.5 Vのアノード-カソード電圧有りで-2Vのゲート電圧有りで得られた。図面に示されているように、-2Vの電圧が印加されるゲート38が有る場合、P型にドープされたGaN の半導体部分30に最も近い量子井戸62のみが実質的にアクティブ化される。
【0061】
図10~13は、ゲート38に印加される電圧の制御によって、一又は複数のアクティブ化される量子井戸を選択してもよいことを示している。実施形態によれば、各発光ダイオードDEL の少なくとも2つの量子井戸、例えば半導体部分26に最も近い量子井戸及び半導体部分30に最も近い量子井戸は、異なる波長で電磁放射線を放射することが可能である。これは、各発光ダイオードDEL の少なくとも1つの第1の量子井戸が第1の波長で第1の電磁放射線を放射することができ、各発光ダイオードDEL の第2の量子井戸が、第1の波長とは異なる第2の波長で第2の電磁放射線を放射することができることを意味する。量子井戸がInGaN で形成される場合、量子井戸を異なる質量濃度のインジウムで形成することにより、このような構成を得てもよい。第1の発光ダイオードでは、第1の発光ダイオードのゲート電圧を制御して、第1の量子井戸のみを実質的にアクティブ化してもよく、第2の発光ダイオードでは、第2の発光ダイオードのゲート電圧を制御して、第2の量子井戸のみを実質的にアクティブ化してもよい。このようにして、異なる波長で電磁放射を放射する同一の構造の2つの発光ダイオードが得られる。
【0062】
図14図20は、図1に示されている光電子デバイス10を製造する方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。本方法は、以下の工程を有する。
【0063】
1) 半導体層20、前述した上側半導体部分26と同一の組成を有する半導体層70、前述したアクティブ領域28の半導体層62, 64と同一の組成を有する半導体層72、前述した電子遮断層66と同一の組成を有する半導体層73、及び前述した下側半導体部分30と同一の組成を有する半導体層74を有する積層体を支持体16上に、例えばエピタキシャル成長によって形成する工程(図14
【0064】
2) 半導体層70, 72, 73, 74をエッチングして、発光ダイオードDEL 毎に上側半導体部分26、アクティブ領域28、電子遮断層66及び下側半導体部分30を画定する工程(図15
【0065】
3) 半導体層20に不図示の側方絶縁トレンチを形成して、発光ダイオードDEL 毎に、半導体層20及びアイランドの側壁34を覆ってアイランドの表面32を覆わない絶縁層36を形成する工程(図16
【0066】
4) 発光ダイオードDEL 毎に、絶縁層36を覆う、すなわち半導体層20及びアイランドの側壁34を覆ってアイランドの表面32を覆わない導電層38を形成して、各発光ダイオードDEL の導電層38及び表面32を覆う絶縁層40を形成する工程(図17
【0067】
5) 絶縁層36、導電層38及び絶縁層40をエッチングして、各発光ダイオードDEL の表面32の一部、導電層20の一部及び導電層38の一部を露出させる工程(図18
【0068】
6) 発光ダイオードDEL 毎に導電性パッド42, 44, 46を形成する工程(図19
【0069】
7) 図19に示されている光電子デバイスを制御回路14に接合する工程(図20
【0070】
この方法は、支持体16を取り除いて光電子デバイス10を画定すべく切断するその後の工程を有してもよい。
【0071】
図21図28は、図2に示されている光電子デバイス55を製造する方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。本方法は、以下の工程を有する。
【0072】
1’) 半導体層20を支持体16上に形成して、基板部分24毎に、ワイヤ状の半導体部分26、アクティブ領域28及び前述したワイヤ状の半導体部分30を夫々有する少なくとも2つの積層体を、例えばエピタキシャル成長によって形成する工程(図21)(電子遮断層66は図示されていない)
ワイヤ状の半導体部分を成長させる方法の例が米国特許第9245948 号明細書に記載されている。
【0073】
2’) 半導体層20に不図示の側方絶縁トレンチを形成して、発光ダイオードDEL の組毎に、半導体層20及びワイヤの側壁34を覆う絶縁層36を形成する工程(図22
【0074】
3’) 発光ダイオードDEL の組毎に、絶縁層36の一部を覆う導電層38を形成する工程(図23
【0075】
4’) 発光ダイオードDEL の組毎に、導電層38と接する導電性パッド46を形成する工程(図24
【0076】
5’) 絶縁層40を形成する工程(図25
【0077】
6’) 発光ダイオードDEL 毎に、各ワイヤの表面32と接する導電性パッド44を形成する工程(図26
【0078】
7’) 発光ダイオードDEL の組毎に、半導体層20と接する導電性パッド42を絶縁層40, 36を通して形成する工程(図27
【0079】
8’) 図27に示されている光電子デバイスを制御回路14に接合して、支持体16を取り除く工程(図28
【0080】
図29図36は、図3に示されている光電子デバイス60を製造する方法の別の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。本方法は、以下の工程を有する。
【0081】
1”) 半導体層20を支持体16上に形成して、発光ダイオードDEL の組毎に、ワイヤ状の半導体部分26及び張り出したアクティブ領域28を夫々有する少なくとも2つの積層体(3つの積層体が図示されている)を形成し、アクティブ領域28と接する半導体部分30を形成する工程(図29)(電子遮断層66は図示されていない)
【0082】
2”) 半導体層20に不図示の側方絶縁トレンチを形成して、発光ダイオードDEL の組毎に、半導体層20と接する導電性パッド42及び表面32と接する導電性パッド44を形成する工程(図30
【0083】
3”) 図30に示されている光電子デバイスを制御回路14に接合する工程(図31
【0084】
4”) 基板16を除去する工程(図32
【0085】
5”) 発光ダイオードDEL の組毎に、絶縁層36を形成する工程(図33
【0086】
6”) 発光ダイオードDEL の組毎に絶縁層36に開口部82を形成して導電層20の一部を露出させ、絶縁層36を覆って開口部82内に延びる導電層38を形成する工程(図34
【0087】
7”) 発光ダイオードDEL の組毎に、導電層38と接する導電性パッド46を開口部82に形成する工程(図35
【0088】
8”) 発光ダイオードDEL の組毎に、導電性パッド42を半導体部分26に連結する導電素子61を形成する工程(図36
【0089】
様々な実施形態及び変形例が述べられている。これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴が組み合わされてもよいことが当業者によって理解され、他の変形例が当業者に想起される。特に、前述した実施形態では、ゲート38及び絶縁層36を有する組立体が、量子井戸の材料との一又は複数のショットキー接触を形成する一又は複数の金属部分と置き換えられてもよい。この場合、一又は複数の金属部分は量子井戸の半導体材料と直接接しており、半導体材料と金属材料との間に絶縁材料は配置されない。このようなショットキー接触を形成するために、使用される金属は、かなり大きい仕事関数を有する金属、例えばタングステン、略6.1 eVの仕事関数を有する金属、又は白金から選択されることが好ましい。このようなショットキー接触を形成するために使用される材料の選択は、特に使用される半導体材料に応じて決められる。最後に、本明細書に記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上記の機能的な記載に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0090】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている仏国特許出願第19/05332 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
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図18
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図31
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図33
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図35
図36
【国際調査報告】