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▶ インミューン バイオ,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220713BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220713BHJP
   C12N 15/28 20060101ALI20220713BHJP
   C07K 14/525 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K48/00
A61K38/19
A61P1/16
C12N15/28 ZNA
C07K14/525
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568692
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 US2020032649
(87)【国際公開番号】W WO2020232102
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/847,171
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500650
【氏名又は名称】インミューン バイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】テージ,レイモンド ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084DA25
4C084DB01
4C084MA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA14
4H045EA27
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する方法は、対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与することを含み、それによって、対象が処置される。一部の実施形態では、solTNF-αの選択的阻害剤は、DN-TNF-αタンパク質及び/又はDN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、DN-TNF-αタンパク質は、XPRO1595を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する方法であって、
前記対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与することを含み、それによって、前記対象が処置される、方法。
【請求項2】
solTNF-αの前記選択的阻害剤が、DN-TNF-αタンパク質及び/又は前記DN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DN-TNF-αタンパク質が、XPRO1595を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
0.1mg/kg~10.0mg/kgの用量でXPRO1595を投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DN-TNF-αタンパク質が、静脈内;皮下;経口的;エアゾールによって;局所適用によって;又は遺伝子療法によって投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子療法が、前記DN-TNF-αタンパク質の構築物を発現している間葉系幹細胞を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記DN-TNF-αタンパク質が、遺伝子修飾された自己細胞又は同種異系細胞治療によって投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記対象においてNASHの少なくとも1つのバイオマーカーを測定することと(NASHの前記バイオマーカーは、アディポネクチン(ADP)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、レプチン、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、酸化低密度リポタンパク質(OxLDL)、リポタンパク質受容体-1(LOX-1)、インターロイキン-17(IL-17)、サイトケラチン18(CK18)全タンパク質、サイトケラチン18(CK18)カスパーゼ切断フラグメント、可溶性Fas(sFas)、可溶性Fasリガンド(sFasL)、フェリチン、及び血液好中球対リンパ球(N/L)比からなる群から選択される);
測定した前記少なくとも1つのバイオマーカーが、正常閾値を超える場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象においてNAFLD活性スコア(NAS)を測定することと;
測定された前記NASが5以上の場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象においてNASHと関連する線維症を測定することと;
測定されたNASHと関連する線維症の程度がF2以上の場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非アルコール性脂肪性肝炎を処置する方法において使用するためのsolTNF-αの選択的阻害剤であって、前記方法は、対象に治療的有効量のolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与することを含み、任意選択で、olTNF-αの前記選択的阻害剤は、DN-TNF-αタンパク質及び/又は前記DN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を含み、任意選択で、前記DN-TNF-αタンパク質は、peg化DN-TNF-αタンパク質を含み、及び任意選択で、前記DN-TNF-αタンパク質は、XPRO1595を含み、それによって、前記対象が処置される、solTNF-αの選択的阻害剤。
【請求項12】
前記対象においてNASHの少なくとも1つのバイオマーカーを測定することと(NASHの前記バイオマーカーは、アディポネクチン(ADP)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、レプチン、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、酸化低密度リポタンパク質(OxLDL)、リポタンパク質受容体-1(LOX-1)、インターロイキン-17(IL-17)、サイトケラチン18(CK18)全タンパク質、サイトケラチン18(CK18)カスパーゼ切断フラグメント、可溶性Fas(sFas)、可溶性Fasリガンド(sFasL)、フェリチン、及び血液好中球対リンパ球(N/L)比からなる群から選択される);
測定した前記少なくとも1つのバイオマーカーが正常閾値を超える場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象においてNAFLD活性スコア(NAS)を測定することと;
測定した前記NASが5以上の場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記対象においてNASHと関連する線維症を測定することと;
測定したNASHと関連する線維症の程度がF2以上の場合、前記対象に前記治療的有効量のsolTNF-αの前記選択的阻害剤を投与するステップを行うことと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記XPRO1595が、静脈内;皮下;経口的;エアゾールによって;局所適用によって;又は遺伝子療法によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記XPRO1595が、0.1mg/kg~10.0mg/kgの用量で投与される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本発明は、対象において非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する方法を対象とする。
【0002】
[0002] より特定すると、本発明は、可溶性腫瘍壊死因子アルファ(solTNF-α)の選択的阻害剤を投与することによってNASHを患っているこのような対象を処置する方法を対象とし、及び具体的には、solTNF-αの選択的阻害剤は、ドミナントネガティブ腫瘍壊死アルファ(DN-TNF-α)タンパク質又はDN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を含む。
【背景技術】
【0003】
背景技術
[0003] 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、出現しつつある世界的な健康問題、並びに2型糖尿病、心血管疾患、及び慢性腎臓疾患についての潜在的な危険因子である。NAFLDの進行形態である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝硬変及び肝細胞癌の発生についての準備因子である。NASHの蔓延によって、新規な治療的なアプローチの必要性が強調される。NASHに対する治療薬は、今までのところ利用可能でない。NASHの病態形成は、肝臓における様々な細胞型における複数の細胞内/細胞外事象、又は肝臓及び他の器官の間のクロストーク事象が関与する。NASHの病態形成に関する現在の知見及び知識の概説は、Kim KH et al. (“Pathogenesis of nonalcoholic steatohepatitis and hormone-based therapeutic approaches” Front Endocrinol 2018;9:485)によって詳述されている。
【0004】
[0004] NASHの診断は、かなりのアルコール消費量を伴わずに、肝臓生検材料上で脂肪症、炎症及び肝細胞バルーニングの特徴的なパターンの存在によって確立される。NAFLDについてのスコアリングシステムである「NAFLD活性スコア(NAS)」は、NIDDKが支援するNonalcoholic Steatohepatitis Clinical Research Network(NASH CRN)Pathology Committeeによって開発及び検証された(Kleiner,DE et al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease.Hepatology.2005;41(6):1313-1321)。NASは、脂肪症、小葉炎症、及び肝細胞バルーニングスコアの非加重和である。
【0005】
[0005] NAFLD/NASHの診断及び処置に関する現況技術の別の概説は、Leoni,Simona et al.(“Current guidelines for the management of non-alcoholic fatty liver disease:A systematic review with comparative analysis.” World journal of gastroenterology vol.24,30(2018):3361-3373)によって記載されている。
【0006】
[0006] 非アルコール性脂肪性肝炎のための薬物候補のスクリーニング及び評価を助けるために、マウスモデル(「STAMモデル」)は、M.Fujii,et al.(“A murine model for non-alcoholic steatohepatitis showing evidence of association between diabetes and hepatocellular carcinoma”,Med.Mol.Morphol.,46(2013),pp.141-152)によって開発及び公開された。
【0007】
[0007] 本開示の時に、NASは、NASHの活性をアセスメントするための臨床的エンドポイントの1つであり(Sanyal AJ.et al.,Hepatology,2011;54:344)、したがって、臨床解釈における重要な前臨床エンドポイントである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
技術的問題
[0008] 現在、NAFLD/NASHのための治療の基礎である生活習慣への介入、例えば、食事のカロリー制限及び運動は、達成及び維持することが困難であり得、薬物療法の極端な必要性が強調される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
問題の解決策
[0009] solTNFαの選択的阻害剤の投与は、前臨床マウスモデル(STAMモデル)におけるビヒクル群と比較して、NAS及び線維症面積におけるかなりの減少を示したことが驚いたことに発見された。特に、solTNFαの選択的阻害剤は、DN-TNF-αタンパク質、より特定すると、XPRO1595(最近、当業者に「INB03」として知られるようになった)であった。
【0010】
[0010] STAMモデル実験において、試験群(solTNFαの選択的阻害剤による処置)は、ビヒクル群と比較して脂肪症及び小葉炎症において軽度から中等度の改善を示し、恐らくより驚いたことに、試験群は、肝細胞バルーニングを全く示さなかったが、これはビヒクル群より相当により少なかった。したがって、試験群は、相当により低いNASをもたらした。さらに、試験群は、ビヒクル群と比較して、線維症面積(シリウスレッド陽性面積)におけるかなりの低減を示した。これらの結果は、NASHの処置が治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤、さらに具体的には、DN-TNF-αタンパク質、さらにより特定すると、XPRO1595の投与によって達成し得ることを示す。
【0011】
[0011] したがって、問題の解決策は、とりわけ、NAFLD及び/又はNASHと診断された対象に、治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤、例えば、XPRO1595として公知の化合物を含めたDN-TNF-αタンパク質又はDN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を投与することを含む。
【0012】
[0012] 本発明に関する他のフィーチャ及び態様及び/又は上記の問題の解決策は、特に、同封の図面と併せて検討したとき、添付の詳細及び説明の徹底的な検討によって当業者によって認識される。
【0013】
本発明の有利な効果
[0013] 本明細書に記載されている方法、すなわち、NAFLD及び/又はNASHと診断された対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与することは、前臨床STAMモデルにおいてNASを低下させ、及び線維症面積を低減させることが示されてきており、このように、この方法は、適正な規制当局の許可を伴って、臨床治験における検証に供されて、ヒト対象における適用のために有用であり得ると結論づける合理的基礎を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の簡単な説明
図1A】[0014]ヒトTNF-αの核酸配列(配列番号1)を示す。開始コドン及び第1のアミノ酸の間に位置するさらなる6個のヒスチジンコドンに下線を引く。
図1B】[0015]開始コドン及び第1のアミノ酸の間のさらなる6個のヒスチジン(下線を引いた)を有するヒトTNF-αのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。例示的なTNF-αバリアントにおいて変化したアミノ酸をボールド体で示す。
図1C】[0016]ヒトTNF-αのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
図2】[0017]特定のTNF-αバリアントにおける位置及びアミノ酸の変化を示す。
図3】[0018]実施例1の実験を通した対象の体重における変化を示す。
図4】[0019]マウス対象から測定した対象の体重を示す。
図5A】[0020]マウス対象から測定した対象の肝臓重量を示す。
図5B】[0021]マウス対象から測定した肝臓重量対体重比を示す。
図6A】[0022]マウス対象から測定した血漿ALTを示す。
図6B】[0023]マウス対象から測定した肝臓トリグリセリドを示す。
図7A】[0024]50×の倍率でのビヒクル対象についてのHE染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図7B】[0025]200×の倍率でのビヒクル対象についてのHE染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図7C】[0026]50×の倍率での化合物対象についてのHE染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図7D】[0027]200×の倍率での化合物対象についてのHE染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図7E】[0028]マウスのコホートについてのNAFLD活性スコア(NAS)を示す。
図7F】[0029]マウスのコホートについての脂肪症スコアを示す。
図7G】[0030]マウスのコホートについての炎症スコアを示す。
図7H】[0031]マウスのコホートについてのバルーニングスコアを示す。
図8A】[0032]ビヒクル群についてのシリウスレッド染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図8B】[0033]化合物群についてのシリウスレッド染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図8C】[0034]ビヒクル群と比較した、化合物群についての線維症面積(シリウスレッド陽性面積)を示す。
図9A】[0035]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的TNF-α mRNA発現を示す。
図9B】[0036]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的INF-γ mRNA発現を示す。
図9C】[0037]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的1型コラーゲンmRNA発現を示す。
図9D】[0038]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的TGF-β mRNA発現を示す。
図9E】[0039]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的TIMP-1 mRNA発現を示す。
図9F】[0040]ビヒクル群と比較した、化合物群についての相対的MCP-1 mRNA発現を示す。
図10A】[0041]実施例2と関連する実験からの、ビヒクル群についてのF4/80免疫染色された肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図10B】[0042]実施例2と関連する実験からの、化合物群についてのF4/80免疫染色された肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を示す。
図10C】[0043]実施例2と関連する実験からの、ビヒクル及び化合物群のそれぞれについての炎症面積を示す。
図11】[0044]非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と診断されているか、又は患っている対象を処置する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態の説明
[0045] 本明細書において開示するのは、可溶性TNF-αの選択的阻害が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の進行形態である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と診断された対象においてNAFLD活性スコア(NAS)を低下させ、線維症面積を低減させることは新規及び予想外の知見である。この予想外の知見を適用する方法を開示し、NAFLD及び/又はNASHと診断された対象に、治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤、例えば、DN-TNF-αタンパク質又はDN-TNF-αタンパク質をコードする核酸、例えば、XPRO1595として公知のDN-TNF-αタンパク質を投与するステップを含む。
【0016】
可溶性腫瘍壊死因子の選択的阻害剤
[0046] 膜貫通TNF-α(tmTNF-α)を阻害することなくTNF-αの可溶性形態(solTNF-α)を阻害するように機能する、TNF-αアンタゴニスト活性を有するタンパク質、及びこれらのタンパク質をコードする核酸は従前に発見された。集合的に、これらのタンパク質及びこれらのタンパク質をコードする核酸は、本明細書において集合的に「solTNF-αの選択的阻害剤」と称される。
【0017】
[0047] solTNF-αの選択的阻害剤の例は、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,056,695号;米国特許第7,101,974号;米国特許第7,144,987号;米国特許第7,244,823号;米国特許第7,446,174号;米国特許第7,662,367号;及び米国特許第7,687,461号に開示されている。
【0018】
[0048] 好ましいsolTNF-αの選択的阻害剤は、本明細書において「DNTNF-α」、「DN-TNF-αタンパク質」、「TNFαバリアント」、「TNFαバリアントタンパク質」、「バリアントTNF-α」、「バリアントTNF-α」などと称されるドミナントネガティブTNF-αタンパク質であり得る。「バリアントTNF-α」又は「TNF-αタンパク質」とは、少なくとも1個のアミノ酸だけ対応する野生型タンパク質とは異なるTNFα又はTNF-αタンパク質を意味する。このように、ヒトTNF-αのバリアントを、配列番号1(6個のヒスチジンについてのコドンを含む核酸)、配列番号2(6個のN末端ヒスチジンを含むアミノ酸)又は配列番号3(6個のN末端ヒスチジンを有さないアミノ酸)と比較する。DN-TNF-αタンパク質は、参照により本明細書においてその全体が組み込まれている米国特許第7,446,174号において詳細に開示されている。本明細書において使用されるように、バリアントTNF-α又はTNF-αタンパク質は、TNF-αモノマー、二量体又は三量体を含む。「バリアントTNF-α」の定義内に含まれるのは、競争的阻害剤TNF-αバリアントである。特定のバリアントを本明細書に記載する一方、可溶性TNF-αを阻害するが、膜貫通TNF-αを阻害しない機能を保持する一方で、他のバリアントを作製し得ることを当業者は理解する。
【0019】
[0049] このように、本発明の様々な態様において有用なタンパク質は、野生型TNF-αのアンタゴニストである。「野生型TNF-αのアンタゴニスト」とは、バリアントTNF-αタンパク質が野生型TNF-αの少なくとも1つの生物活性を阻害又は相当に減少させることを意味する。
【0020】
[0050] 好ましい実施形態では、バリアントは、可溶性TNF-αのアンタゴニストであるが、膜貫通TNF-αを相当にアンタゴナイズせず、例えば、本明細書に開示されているようなDN-TNF-αタンパク質は、膜貫通TNF-αによってではなく可溶性TNF-αによってシグナル伝達を阻害する。「TNF-αの活性を阻害する」及び文法上の同等物は、野生型可溶性TNF-αにおける少なくとも10%の低減、より好ましくは、野生型可溶性TNF-α活性における少なくとも50%の低減、さらにより好ましくは、野生型可溶性TNF-α活性における少なくとも90%の低減を意味する。好ましくは、膜貫通TNF-αによる低減したシグナル伝達の非存在下で、野生型可溶性TNF-α活性における阻害が存在する。好ましい実施形態では、膜貫通TNF-αの活性は実質的に、好ましくは完全に維持される一方で、可溶性TNF-αの活性は阻害される。
【0021】
[0051] 本発明の様々な実施形態において有用なTNFタンパク質は、野生型タンパク質と比較してモジュレートされた活性を有する。好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、野生型TNF-αと比較して、これらに限定されないが、受容体(p55、p75又は両方)への減少した結合、減少した活性化及び/又は最終的に細胞毒性活性の喪失を含めた減少した生物活性(例えば、アンタゴニズム)を示す。「細胞毒性活性」とは、本明細書において、細胞を選択的に死滅させるか又は阻害するTNF-αバリアントの能力を指す。野生型と比較して50%未満の生物活性を示すバリアントTNF-αタンパク質が好ましい。より好ましいのは、野生型TNF-αの25%未満の生物活性を示すバリアントTNF-αタンパク質であり、さらにより好ましいのは、野生型TNF-αの15%未満の生物活性を示すバリアントタンパク質であり、最も好ましいのは、野生型TNF-αの10%未満の生物活性を示すバリアントTNF-αタンパク質である。適切なアッセイには、これらに限定されないが、当技術分野で公知の方法による、カスパーゼアッセイ、TNF-α細胞毒性アッセイ、DNA結合アッセイ、転写アッセイ(レポーター構築物を使用した)、サイズ排除クロマトグラフィーアッセイ及び放射標識/免疫沈降、並びに安定性アッセイ(円偏光二色性(CD)アッセイ及び平衡研究の使用を含めた)が含まれる。
【0022】
[0052] 一実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質の結合親和性にとって重大な少なくとも1つの特性は、野生型TNF-αの同じ特性と比較したとき変化し、特に、変化した受容体親和性を有するバリアントTNF-αタンパク質が好ましい。特に好ましいのは、野生型TNF-αへのオリゴマー化に対して変化した親和性を有するバリアントTNF-αである。このように、本発明は、バリアントTNF-αタンパク質は野生型TNF-αと優先的にオリゴマー化するが、野生型TNF受容体、すなわち、p55、p75と実質的に相互作用しないように、変化した結合親和性を有するバリアントTNF-αタンパク質を利用する。この場合、「優先的に」は、等量のバリアントTNF-αモノマー及び野生型TNF-αモノマーを所与として、このように得られた三量体の少なくとも25%は、バリアント及び野生型TNF-αの混合三量体であり、少なくとも約50%が好ましく、少なくとも約80~90%が特に好ましいことを意味する。言い換えると、本発明の実施形態において実現されるバリアントTNF-αタンパク質は、野生型TNF-αタンパク質と比較して、野生型TNF-αタンパク質へのより大きな親和性を有することが好ましい。「TNF受容体と実質的に相互作用しない」とは、バリアントTNF-αタンパク質がp55又はp75受容体と会合して、受容体を相当に活性化し、TNFシグナル伝達経路を開始させることができないことを意味する。好ましい実施形態では、受容体活性化における少なくとも50%の減少が見られ、50%超、75%超、80~90%超が好ましい。
【0023】
[0053] 一部の実施形態では、本発明のバリアントは、可溶性TNF-α及び膜貫通TNF-αの両方のアンタゴニストである。しかし、本明細書に記載のように、好ましいバリアントTNF-αタンパク質は、可溶性TNF-αの活性のアンタゴニストであるが、膜貫通TNF-αの活性に実質的に影響を与えない。このように、可溶性TNF-αのためのヘテロ三量体の活性の低減は、上記で概要を述べた通りであり、少なくとも10%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、99%又は100%の生物活性の低減が全て好ましい。しかし、本明細書において概要を述べたバリアントのいくつかは、選択的阻害を含む;すなわち、これらは、可溶性TNF-α活性を阻害するが、膜貫通TNF-αを実質的に阻害しない。これらの実施形態では、膜貫通TNF-α活性の少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%が維持されることが好ましい。これはまた、比として表し得る;すなわち、選択的阻害は、可溶性TNF-α対膜貫通TNF-αの阻害の比を含むことができる。例えば、可溶性TNF-α対膜貫通TNF-α活性の少なくとも10:1の選択的阻害をもたらすバリアントが好ましく、50:1、100:1、200:1、500:1、1000:1又はそれ超は、本発明において特定の使用を見出す。このように、一実施形態は、可溶性TNF-α活性を実質的に阻害又は排除する(例えば、ホモ三量体野生型と置き換えて、TNF-α受容体に結合しないか、又は結合するが、受容体シグナル伝達を活性化しないヘテロ三量体を形成することによって)が、膜貫通TNF-α活性に有意に影響を与えない(好ましくは、全く変化させない)バリアント、例えば、本明細書において概要を述べたような位置87/145における二重変異体を利用する。理論に束縛されるものではないが、このような異なる阻害を示すバリアントは、免疫応答における対応する喪失を伴わずに炎症の減少を可能とする。
【0024】
[0054] 一実施形態では、バリアントの影響された生物活性は、野生型TNF-αタンパク質による受容体シグナル伝達の活性化である。好ましい実施形態では、バリアントTNF-α及び野生型TNF-αを含む複合体が、TNF受容体、すなわち、p55TNF-R又はp75TNF-Rの1つ又は両方を活性化する低減した能力を有し(上記で「実質的な阻害」について概要を述べたように)、好ましい実施形態では、これらを活性化することができないように、バリアントTNF-αタンパク質は、野生型TNF-αタンパク質と相互作用する。好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、野生型TNF-αのアンタゴニストとして機能するバリアントTNF-αタンパク質である。好ましくは、バリアントTNF-αタンパク質は、受容体結合が相当に起こらず、及び/又はTNF-αシグナル伝達が開始しないように、野生型TNF-αと優先的に相互作用して、野生型タンパク質との混合三量体を形成する。混合三量体とは、野生型及びバリアントTNF-αタンパク質のモノマーが相互作用して、ヘテロ三量体TNF-αが形成されることを意味する。混合三量体は、1つのバリアントTNF-αタンパク質:2つの野生型TNF-αタンパク質、2つのバリアントTNF-αタンパク質:1つの野生型TNF-αタンパク質を含み得る。一部の実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質のみを含む三量体を形成し得る。
【0025】
[0055] 本発明の実施形態において実現されるバリアントTNF-αアンタゴニストタンパク質は、TNF-ベータアンタゴニズムと比べてTNF-αアンタゴニズムに対して高度に特異的である。さらなる特徴は、改善された安定性、薬物動態、及び野生型TNF-αに対する高親和性を含む。野生型TNF-αに対してより高い親和性を有するバリアントは、上記で概要を述べたようなTNF-αアンタゴニズムを示すバリアントから生じ得る。
【0026】
[0056] 同様に、バリアントTNF-αタンパク質は、例えば、in vivo及びin vitroでのアッセイにおいて実験的に試験及び検証される。適切なアッセイには、これらに限定されないが、活性アッセイ及び結合アッセイが含まれる。例えば、TNF-α活性アッセイ、例えば、カスパーゼ活性によってアポトーシスを検出することを使用して、野生型TNF-αのアンタゴニストであるTNF-αバリアントを求めてスクリーニングすることができる。他のアッセイは、アクチノマイシン-D感作された細胞系においてTNFによって誘発される細胞透過性を検出するためのSytox green核酸染色を使用することを含む。この染色は生細胞から排除されるが、瀕死の細胞に浸透するため、このアッセイをまた使用して、野生型TNF-αのアゴニストであるTNF-αバリアントを検出することができる。「野生型TNF-αのアゴニスト」とは、バリアントTNF-αタンパク質が野生型TNF-αタンパク質による受容体シグナル伝達の活性化を増進することを意味する。一般に、野生型TNF-αのアゴニストとして機能するバリアントTNF-αタンパク質は好ましくない。しかし、一部の実施形態では、野生型TNF-αタンパク質のアゴニストとして機能するバリアントTNF-αタンパク質が好ましい。NFカッパBアッセイの一例は、参照により本明細書中に明確に組み込まれている米国特許第7,446,174号の実施例7において提示されている。
【0027】
[0057] 好ましい実施形態では、野生型TNF-αタンパク質と比較した、天然のTNF-α並びにTNF受容体タンパク質、例えば、p55及びp75に対するバリアントTNF-αタンパク質の結合親和性を決定する。適切なアッセイには、これらに限定されないが、例えば、当技術分野において公知のように動力学及び平衡結合定数を比較する定量的な比較が含まれる。結合アッセイの例は、参照により本明細書中に明確に組み込まれている米国特許第7,446,174号の実施例6に記載されている。
【0028】
[0058] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、少なくとも1個のアミノ酸だけ野生型TNF-α配列とは異なるアミノ酸配列を有し、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個及び10個のアミノ酸、又はそれ超が全て意図される。百分率として表して、本発明のバリアントTNF-αタンパク質は好ましくは、野生型と90%超同一であり、95%超、97%超、98%超及び99%超が全て意図される。別の言い方をすれば、N末端6ヒスチジンを除いて図1BのヒトTNF-α配列(配列番号2)に基づいて、図1Cに示されているように(配列番号3)、バリアントTNF-αタンパク質は、ヒトTNF-α配列とは異なる少なくとも約1個の残基を有し、少なくとも約2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の異なる残基が意図される。好ましいバリアントTNF-αタンパク質は、3~8個の異なる残基を有する。
【0029】
[0059] アミノ酸配列同一性値%は、合致する同一の残基の数をアラインメントした領域における「より長い」配列の残基の総数で除することによって決定される。「より長い」配列は、アラインメントした領域において最も多くの実際の残基を有するものである(アラインメントスコアを最大化するためにWU-Blast-2によって導入されたギャップは無視する)。同様の様式で、同定されたポリペプチドのコード配列に関して「核酸配列同一性パーセント(%)」は、細胞周期タンパク質のコード配列におけるヌクレオチド残基と同一である候補配列における、ヌクレオチド残基の百分率として定義される。好ましい方法は、デフォルトパラメーターに設定したWU-BLAST-2のBLASTNモジュールを利用し、オーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションを、それぞれ、1及び0.125に設定する。
【0030】
[0060] TNF-αタンパク質は、治療目的又は薬物動態学的目的のために、例えば、他の治療用タンパク質又は他のタンパク質、例えば、Fc若しくは血清アルブミンに融合し得る。この実施形態では、本発明の実施形態において実現されるTNF-αタンパク質は、融合パートナーに動作可能に連結している。融合パートナーは、意図する治療目的又は薬物動態学的効果を実現する任意の部分であり得る。融合パートナーの例には、これらに限定されないが、ヒト血清アルブミン、治療剤、細胞毒性又は細胞毒性分子、放射性ヌクレオチド、及びFcなどが含まれる。本明細書において使用する場合、Fc融合は、従来技術において使用されるような、用語「イムノアドヘシン」、「Ig融合」、「Igキメラ」、及び「受容体グロブリン」と同義である(Chamow et al.,1996, Trends Biotechnol 14:52-60;Ashkenazi et al.,1997,Curr Opin Immunol 9:195-200、両方とも参照により組み込まれている)。Fc融合は、例えば、免疫グロブリンのFc領域とTNF-αタンパク質の標的結合領域とを合わせる。例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,766,883号及び同第5,876,969号を参照されたい。
【0031】
[0061] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、下記の位置21、23、30、31、32、33、34、35、57、65、66、67、69、75、84、86、87、91、97、101、111、112、115、140、143、144、145、146、及び147から選択されるバリアント残基を含む。ヒトTNF-α残基を含めたそれぞれの位置についての好ましいアミノ酸を、図2において示す。このように、例えば、位置143において、好ましいアミノ酸は、Glu、Asn、Gln、Ser、Arg、及びLysなどである。好ましい変化は、V1M、Q21C、Q21 R、E23C、R31C、N34E、V91E、Q21R、N30D、R31C、R31I、R31D、R31E、R32D、R32E、R32S、A33E、N34E、N34V、A35S、D45C、L57F、L57W、L57Y、K65D、K65E、K651、K65M、K65N、K65Q、K65T、K65S、K65V、K65W、G66K、G66Q、Q67D、Q67K、Q67R、Q67S、Q67W、Q67Y、C69V、L75E、L75K、L75Q、A84V、S86Q、S86R、Y87H、Y87R、V91E、I97R、I97T、C101A、A111R、A111E、K112D、K112E、Y115D、Y115E、Y115F、Y115H、Y115I、Y115K、Y115L、Y115M、Y115N、Y115Q、Y115R、Y115S、Y115T、Y115W、D140K、D140R、D143E、D143K、D143L、D143R、D143N、D143Q、D143R、D143S、F144N、A145D、A145E、A145F、A145H、A145K、A145M、A145N、A145Q、A145R、A145S、A145T、A145Y、E146K、E146L、E146M、E146N、E146R、E146S及びS147Rを含む。これらは個々に又は組み合わせて行ってもよく、任意の組合せが可能である。しかし、本明細書において概要を述べたように、好ましい実施形態は、それぞれのバリアントTNF-αタンパク質における少なくとも1~8個、好ましくは、それ超の位置を利用する。
【0032】
[0062] さらなる態様において、本発明は、参照により本明細書中に組み込まれている米国特許第7,662,367号の実施例3において概要を述べたように、XENP268、XENP344、XENP345、XENP346、XENP550、XENP551、XENP557、XENP1593、XENP1594、及びXENP1595からなる群から選択されるTNF-αバリアントを提供する。
【0033】
[0063] さらなる態様において、本発明は、対応する野生型哺乳動物TNF-αと比較して、哺乳動物にバリアントTNF-α分子を投与することを含む、哺乳動物においてin vivoでのTNF-αヘテロ三量体を形成させる方法を利用し、ここで、前記TNF-αバリアントは、アゴニスト活性が実質的にない。
【0034】
[0064] さらなる態様において、本発明は、候補薬剤と可溶性TNF-αタンパク質とを接触させ、TNF-α生物活性についてアッセイすることと;候補薬剤と膜貫通TNF-αタンパク質とを接触させ、TNF-α生物活性についてアッセイすることと、薬剤が選択的阻害剤であるかどうかを決定することとを含む、選択的阻害剤を求めてスクリーニングする方法を利用する。薬剤は、タンパク質(本明細書に記載のようなペプチド及び抗体を含めた)又は小分子であり得る。
【0035】
[0065] さらなる態様において、本発明は、野生型TNF-αと相互作用して、受容体シグナル伝達を活性化することができない混合三量体を形成させるバリアントTNF-αタンパク質を利用する。好ましくは、野生型TNF-αタンパク質と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個及び7個のアミノ酸の変化を有するバリアントTNF-αタンパク質を使用する。好ましい実施形態では、これらの変化は、位置1、21、23、30、31、32、33、34、35、57、65、66、67、69、75、84、86、87、91、97、101、111、112、115、140、143、144、145、146及び147から選択される。さらなる態様において、非天然のバリアントTNF-αタンパク質は、V1M、Q21C、Q21R、E23C、N34E、V91E、Q21R、N30D、R31C、R311、R31D、R31E、R32D、R32E、R32S、A33E、N34E、N34V、A35S、D45C、L57F、L57W、L57Y、K65D、K65E、K651、K65M、K65N、K65Q、K65T、K65S、K65V、K65W、G66K、G66Q、Q67D、Q67K、Q67R、Q67S、Q67W、Q67Y、C69V、L75E、L75K、L75Q、A84V、S86Q、S86R、Y87H、Y87R、V91E、I97R、I97T、C101A、A111R、A111E、K112D、K112E、Y115D、Y115E、Y115F、Y115H、Y115I、Y115K、Y115L、Y115M、Y115N、Y115Q、Y115R、Y115S、Y115T、Y115W、D140K、D140R、D143E、D143K、D143L、D143R、D143N、D143Q、D143R、D143S、F144N、A145D、A145E、A145F、A145H、A145K、A145M、A145N、A145Q、A145R、A145S、A145T、A145Y、E146K、E146L、E146M、E146N、E146R、E146S及びS147Rからなる置換の群から選択される置換を有する。
【0036】
[0066] 別の好ましい実施形態では、置換は、個々に又は組み合わせて行い得、任意の組合せが可能である。好ましい実施形態は、それぞれのバリアントTNF-αタンパク質における少なくとも1個、好ましくは、それ超の位置を利用する。例えば、位置31、57、69、75、86、87、97、101、115、143、145、及び146における置換を合わせて、二重バリアントを形成し得る。さらに、三重、四重、五重などのポイントバリアント(point variants)を生じさせ得る。
【0037】
[0067] 一態様では、本発明は、アミノ酸置換A145R/I97Tを含むTNF-αバリアントを利用する。一態様において、本発明は、アミノ酸置換V1M、R31C、C69V、Y87H、C101A、及びA145Rを含むTNF-αバリアントを提供する。好ましい実施形態では、このバリアントは、PEG化されている。
【0038】
[0068] 好ましい実施形態では、バリアントは、野生型ヒト配列に対してV1M、R31C、C69V、Y87H、C101A、及びA145R変異を含むPEG化タンパク質であるXPRO1595であり、また本明細書において「XPro」と称される。
【0039】
[0069] 本発明の目的のために、修飾される野生型又は天然のTNF-α分子の領域は、大きなドメイン(IIとしてまた公知である)、小さなドメイン(Iとしてまた公知である)、DEループ、及び三量体界面からなる群から選択される。大きなドメイン、小さなドメイン及びDEループは、受容体相互作用ドメインである。修飾は、これらの領域の1つにおいて単独で又はこれらの領域の任意の組合せにおいて行い得る。変更される大きなドメインの好ましい位置は、21、30、31、32、33、35、65、66、67、111、112、115、140、143、144、145、146及び/又は147を含む。小さなドメインについて、修飾される好ましい位置は、75及び/又は97である。DEループについて、好ましい位置の修飾は、84、86、87及び/又は91である。三量体界面は、位置34及び91並びに位置57を含む好ましい二重バリアントを有する。好ましい実施形態では、複数の受容体相互作用及び/又は三量体形成ドメインにおける置換を合わせ得る。例には、これらに限定されないが、大きなドメイン及び小さなドメイン(例えば、A145R及びI97T)、大きなドメイン及びDEループ(A145R及びY87H)、並びに大きなドメイン及び三量体形成ドメイン(A145R及びL57F)におけるアミノ酸の同時の置換が含まれる。さらなる例は、ありとあらゆる組合せ、例えば、I97T及びY87H(小さなドメイン及びDEループ)を含む。さらに具体的には、これらのバリアントは、単一のポイントバリアントの形態、例えば、K112D、Y115K、Y115I、Y115T、A145E又はA145Rであり得る。これらの単一のポイントバリアントは、合わせ得る(例えば、Y115I及びA145E、又はY115I及びA145R、又はY115T及びA145R又はY115I及びA145E;又は任意の他の組合せ)。
【0040】
[0070] 好ましい二重ポイントバリアントの位置は、任意の組合せの、57、75、86、87、97、115、143、145、及び146を含む。さらに、L57F、及びY115I、Y115Q、Y115T、D143K、D143R、D143E、A145E、A145R、E146K又はE146Rの1つを含む二重ポイントバリアントを生じさせ得る。他の好ましい二重バリアントは、Y115Q、及びD143N、D143Q、A145K、A145R、又はE146Kの少なくとも1つ;Y115M、及びD143N、D143Q、A145K、A145R又はE146Kの少なくとも1つ;並びにL57F、及びA145E又は146Rの少なくとも1つ;K65D及びD143K又はD143R、K65E及びD143K又はD143R、Y115Q、並びにL75Q、L57W、L57Y、L57F、I97R、I97T、S86Q、D143N、E146K、A145R及びI97Tのいずれか、A145R及びY87R又はY87H;N34E及びV91E;L75E及びY115Q;L75Q及びY115Q;L75E及びA145R;並びにL75Q及びA145Rである。
【0041】
[0071] さらに、三重ポイントバリアントを生じさせ得る。好ましい位置は、34、75、87、91、115、143、145及び146を含む。三重ポイントバリアントの例は、V91E、N34E、並びにY115I、Y115T、D143K、D143R、A145R、A145E、E146K、及びE146Rの1つを含む。他の三重ポイントバリアントは、L75E及びY87H、並びにY115Q、A145Rの少なくとも1つ、また、L75K、Y87H及びY115Qを含む。より好ましいのは、三重ポイントバリアントV91E、N34E及びA145R又はA145Eである。
【0042】
[0072] バリアントTNF-αタンパク質はまた、バリアントTNF-α核酸によってコードされていると同定し得る。核酸の場合、核酸配列の全体的な相同性はアミノ酸相同性と釣り合うが、遺伝コードにおける縮重及び異なる生物のコドンバイアスを考慮に入れる。したがって、核酸配列相同性は、タンパク質配列の相同性より低いか又はより高くてもよく、より低い相同性が好ましい。好ましい実施形態では、バリアントTNF-α核酸は、バリアントTNF-αタンパク質をコードする。当業者が認識するように、遺伝コードの縮重によって、極度に多数の核酸を作製し得、これらの全ては、本発明のバリアントTNF-αタンパク質をコードする。このように、特定のアミノ酸配列を同定してきて、当業者は、バリアントTNF-αのアミノ酸配列を変化させないような方法で1つ若しくは複数のコドンの配列を単純に修飾することによって、任意の数の異なる核酸を作製することができる。
【0043】
[0073] 一実施形態では、核酸相同性は、ハイブリダイゼーション研究によって決定する。このように、例えば、高ストリンジェンシー下で図1Aにおいて示す核酸配列(配列番号1)又はその相補体にハイブリダイズし、及びバリアントTNF-αタンパク質をコードする核酸は、バリアントTNF-α遺伝子と考えられる。高ストリンジェンシー条件は、当技術分野において公知である;例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれているManiatis et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Edition,1989、及びShort Protocols in Molecular Biology,ed. Ausubel,et al.を参照されたい。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況において異なる。より長い配列は、より高い温度にて特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範囲に亘るガイドは、参照により組み込まれている、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)において見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、確定したイオン強度及びpHにて特定の配列について熱的融点(Tm)より約5~10℃低いように選択される。Tmは、標的に相補的であるプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(確定したイオン強度、pH及び核酸濃度下での)温度である(Tmにて標的配列は過剰に存在するため、プローブの50%は平衡状態で占有されている)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0~8.3にて約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には、約0.01~1.0Mのナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例えば、10~50個のヌクレオチド)について少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50個超のヌクレオチド)について少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件はまた、不安定化剤、例えば、ホルムアミドの添加によって達成し得る。別の実施形態では、よりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件が使用される;例えば、当技術分野において公知のように、中程度又は低ストリンジェンシー条件を使用し得る;Maniatis及びAusubel(上記)、並びにTijssen(上記)を参照されたい。さらに、核酸バリアントは、本明細書に記載されているアミノ酸置換を含むTNF-αタンパク質バリアントをコードする。一実施形態では、TNF-αバリアントは、アミノ酸置換A145R/197Tを含むポリペプチドバリアントをコードする。一態様において、核酸バリアントは、アミノ酸置換V1M、R31C、C69V、Y87H、C101A、及びA145R、又はこれらのバリアントアミノ酸の任意の1、2、3、4若しくは5を含むポリペプチドをコードする。
【0044】
[0074] 本発明のバリアントTNF-αタンパク質及び核酸は、組換えである。本明細書において使用する場合、「核酸」は、DNA若しくはRNA、又はデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの両方を含有する分子を指し得る。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、並びにセンス及びアンチセンス核酸を含むオリゴヌクレオチドを含む。このような核酸はまた、リボース-リン酸骨格における修飾を含有し、生理的環境におけるこのような分子の安定性及び半減期を増加し得る。核酸は、二本鎖、一本鎖であるか、又は二本鎖若しくは一本鎖両方の配列の部分を含有し得る。当業者が認識するように、一本鎖の記述(「Watson」)はまた、他の鎖の配列(「Crick」)を定義する;このように、図1Aにおいて示した配列(配列番号1)はまた、配列の相補体を含む。用語「組換え核酸」とは、一般に、エンドヌクレアーゼによる核酸の操作によって、in vitroで天然には通常見出されない形態で最初に形成された核酸を意味する。このように、線形形態の単離されたバリアントTNF-α核酸、又は通常結合されないDNA分子をライゲーションすることによってin vitroで形成される発現ベクターは両方とも、本発明の目的のために組換えと考えられる。
【0045】
[0075] 「ベクター」とは、適正な制御エレメントと会合するとき複製することができ、及び細胞の間に遺伝子配列を移入することができる、任意の遺伝因子、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどを意味する。このように、この用語は、クローニングビヒクル及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターを含む。
【0046】
[0076] 組換え核酸が作製され、宿主細胞又は生物中に再導入されると、組換え核酸は、組換えによってではなく、すなわち、in vitroでの操作よりむしろin vivoでの宿主細胞の細胞機構を使用して複製することが理解される;しかし、このような核酸は、組換えによって産生されると、それに続いて組換えによってではなく複製されても、本発明の目的のために組換えとまだ考えられる。
【0047】
[0077] 同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を使用して、すなわち、上記で示したような組換え核酸の発現を介して作製されたタンパク質である。組換えタンパク質は、少なくとも1つ若しくは複数の特徴によって天然のタンパク質と区別される。例えば、タンパク質は、それがその野生型宿主において通常会合しているタンパク質及び化合物のいくつか又は全てから単離又は精製し得、したがって、実質的に純粋であり得る。例えば、単離されたタンパク質は、それがその天然状態で通常会合している材料の少なくともいくらかを伴わず、好ましくは、所与の試料中の総タンパク質の少なくとも約0.5重量%、より好ましくは、少なくとも約5重量%を構成する。実質的に純粋なタンパク質は、総タンパク質の少なくとも約75重量%を構成し、少なくとも約80%が好ましく、少なくとも約90%が特に好ましい。定義は、異なる生物又は宿主細胞における1つの生物からのバリアントTNF-αタンパク質の産生を含む。代わりに、タンパク質が増加した濃度レベルで作製されるように、タンパク質は、誘導性プロモーター又は高発現プロモーターの使用を介して、通常見られるより相当に高い濃度で作製し得る。さらに、本明細書において概要を述べるバリアントTNF-αタンパク質の全ては、下記で考察するように、アミノ酸置換、挿入及び欠失を含有するため、天然に通常見出されない形態であり、置換が好ましい。
【0048】
[0078] 本発明のバリアントTNF-αタンパク質の定義内にまた含まれるのは、本明細書において概要を述べ、図において示す、バリアントTNF-α配列のアミノ酸配列バリアントである。すなわち、バリアントTNF-αタンパク質は、ヒトTNF-αと比較してさらなる可変の位置を含有し得る。これらのバリアントは、3つのクラス:置換、挿入又は欠失バリアントの1つ若しくは複数に分類される。
【0049】
[0079] アミノ酸置換は典型的には、単一の残基のものである;挿入は通常、約1~20個程度のアミノ酸であるが、かなりより大きな挿入を許容し得る。欠失は、約1~約20個の残基の範囲であるが、場合によって、欠失は、非常により大きくてもよい。
【0050】
[0080] バリアントTNF-αタンパク質をコードする本明細書において開示される核酸を使用して、種々の発現ベクターが作製される。発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクター、又は宿主ゲノム中に統合されるベクターであり得る。一般に、これらの発現ベクターは、バリアントTNF-αタンパク質をコードする核酸に動作可能に連結している転写及び翻訳制御核酸を含む。用語「制御配列」は、特定の宿主生物における動作可能に連結されたコード配列の発現に必要とされるDNA配列を指す。原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーター、任意選択でオペレーター配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを利用することが公知である。
【0051】
[0081] 核酸は、別の核酸配列との機能的関係に置かれるとき、「動作可能に連結」している。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNAが、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現している場合、ポリペプチドのためのDNAに動作可能に連結されているか;プロモーター又はエンハンサーが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に動作可能に連結しているか;或いはリボソーム結合部位が翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に動作可能に連結している。
【0052】
[0082] 好ましい実施形態では、内因性分泌配列が天然のタンパク質又はバリアントTNF-αタンパク質の低レベルの分泌をもたらすとき、天然の分泌リーダー配列を置き換えすることが望ましい。この実施形態では、無関係の分泌リーダー配列は、核酸をコードするバリアントTNF-αに動作可能に連結され、タンパク質分泌の増加をもたらす。このように、TNF-αの分泌及びその分泌配列と比較したとき、バリアントTNF-αタンパク質の分泌の増進をもたらす任意の分泌リーダー配列が望ましい。タンパク質の分泌をもたらす適切な分泌リーダー配列は、当技術分野において公知である。別の好ましい実施形態では、天然のタンパク質又はタンパク質の分泌リーダー配列は、当技術分野で公知の技術によって除去され、それに続く発現は、組換えタンパク質の細胞内蓄積をもたらす。
【0053】
[0083] 一般に、「動作可能に連結している」は、連結されているDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合、近接しており、及びリーディングフレーム中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、近接している必要はない。連結は、好都合な制限部位におけるライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーは、従来の実践によって使用される。転写及び翻訳制御核酸は一般に、融合タンパク質を発現させるのに使用される宿主細胞に適切である;例えば、バチルス属(Bacillus)からの転写及び翻訳制御核酸配列を好ましくは使用して、バチルス属(Bacillus)において融合タンパク質を発現させる。多数のタイプの適切な発現ベクター、及び適切な制御配列は、種々の宿主細胞について当技術分野において公知である。
【0054】
[0084] 一般に、転写及び翻訳制御配列には、これらに限定されないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始及び終止配列、翻訳開始及び終止配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列が含まれてもよい。好ましい実施形態では、制御配列は、プロモーター並びに転写開始及び終止配列を含む。プロモーター配列は、構成的又は誘導性プロモーターをコードする。プロモーターは、天然のプロモーター又はハイブリッドプロモーターであり得る。複数のプロモーターのエレメントを合わせたハイブリッドプロモーターはまた当技術分野において公知であり、本発明において有用である。好ましい実施形態では、プロモーターは、細胞、特に、哺乳動物細胞における高発現を可能とする強力なプロモーター、例えば、特に、Tet制御エレメントと組み合わせたCMVプロモーターである。
【0055】
[0085] さらに、発現ベクターは、さらなるエレメントを含み得る。例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有し得、したがって、2つの生物において、例えば、哺乳動物又は昆虫細胞において発現のために、及び原核生物宿主においてクローニング及び増幅のために維持されることを可能とする。さらに、発現ベクターを統合するために、発現ベクターは、宿主細胞ゲノムと相同な少なくとも1つの配列、好ましくは、発現構築物に隣接する2つの相同配列を含有する。統合ベクターは、ベクター中に含むために適切な相同配列を選択することによって宿主細胞における特定の座位へと向けられ得る。ベクターを統合するための構築物は、当技術分野で周知である。
【0056】
[0086] さらに、好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能とする選択マーカー遺伝子を含有する。選択遺伝子は当技術分野で周知であり、使用する宿主細胞によって変化する。好ましい発現ベクター系は、レトロウイルスベクター系であり、例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれている、国際出願PCT/US97/01019号及び国際出願PCT/US97/01048号に一般に記載されている。好ましい実施形態では、発現ベクターは、上記の成分、及びバリアントTNF-αタンパク質をコードする遺伝子を含む。当業者によって認識されるように、全ての組合せが可能であり、したがって、本明細書において使用する場合、レトロウイルスであるか、又はレトロウイルスでなくてもよい、1つ若しくは複数のベクターで構成される成分の組合せは、本明細書において「ベクター組成物」と称される。
【0057】
[0087] いくつかのウイルスをベースとするベクターが、遺伝子送達のために使用されてきた。例えば、参照により本明細書中に明確に組み込まれている米国特許第5,576,201号を参照されたい。例えば、レトロウイルス系は公知であり、一般に、ウイルスの遺伝子の全てを発現するが、psi配列として公知のパッケージングシグナルの欠失によってそれ自体のゲノムをパッケージングすることができない統合された欠陥プロウイルス(「ヘルパー」)を有するパッケージングラインを用いる。このように、細胞系は、空のウイルス殻を産生する。プロデューサーラインは、パッケージングラインに由来することができ、パッケージングラインは、ヘルパーに加えて、末端反復配列(LTR)として公知であるウイルスの複製及びパッケージングのためにシスで必要とされる配列を含むウイルスベクターを含有する。目的の遺伝子は、ベクター中に挿入され、レトロウイルスヘルパーによって合成されるウイルス殻中にパッケージングすることができる。次いで、組換えウイルスは、単離して、対象に送達することができる(例えば、米国特許第5,219,740号を参照されたい)。代表的なレトロウイルスベクターには、これらに限定されないが、ベクター、例えば、例えば、参照により本明細書中にその全体が組み込まれている米国特許第5,219,740号に記載されているLHL、N2、LNSAL、LSHL及びLHL2ベクター、並びにこれらのベクターの誘導体が含まれる。レトロウイルスベクターは、当技術分野で周知の技術を使用して構築することができる。例えば、米国特許第5,219,740号;Mann et al.(1983)Cell 33:153-159を参照されたい。
【0058】
[0088] アデノウイルスをベースとする系は、遺伝子送達のために開発されてきており、本明細書に記載の方法による送達に適している。ヒトアデノウイルスは、受容体仲介エンドサイトーシスによって細胞に入る二本鎖DNAウイルスである。これらのウイルスは、これらが成長及び操作することが容易であり、これらがin vivo及びin vitroで広範な宿主範囲を示すため、遺伝子移入のために特に適合している。
【0059】
[0089] アデノウイルスは、静止状態の標的細胞及び複製標的細胞を感染させる。宿主ゲノムに統合されるレトロウイルスとは異なり、アデノウイルスは染色体外で持続し、このように、挿入突然変異誘発と関連する危険性を最小化する。ウイルスは高力価で容易に産生され、安定であり、それゆえ精製及び貯蔵することができる。複製コンピテント形態においてでさえ、アデノウイルスは低レベルの病的状態のみをもたらし、ヒト悪性腫瘍と関連しない。したがって、これらの利点を利用するアデノウイルスベクターが開発されてきた。アデノウイルスベクター及びそれらの使用の説明について、例えば、Haj-Ahmad and Graham(1986)J.Virol.57:267-274;Bett et al.(1993)J.Virol. 67:5911-5921;Mittereder et al.(1994)Human Gene Therapy 5:717-729;Seth et al.(1994) J.Virol.68:933-940;Barr et al.(1994) Gene Therapy 1:51-58;Berkner,K.L.(1988)BioTechniques 6:616-629;Rich et al.(1993)Human Gene Therapy 4:461-476を参照されたい。
【0060】
[0090] 好ましい実施形態では、対象方法において使用されるウイルスベクターは、AAVベクターである。「AAVベクター」とは、これらに限定されないが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAVX7などを含めたアデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味する。典型的なAAVベクターは、全部又は一部が欠失しているAAV野生型遺伝子、好ましくは、rep及び/又はcap遺伝子の1つ若しくは複数を有することができるが、機能的隣接ITR配列を保持することができる。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製及びパッケージングのために必要である。AAVベクターは、ウイルスの複製及びパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされる少なくともそれらの配列を含む。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、例えば、配列が機能的レスキュー、複製及びパッケージングを実現する限り、ヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって変化し得る。AAV血清型についてさらに、例えば、参照により本明細書において明確にその全体が組み込まれている、Cearley et al., Molecular Therapy,16:1710-1718,2008を参照されたい。
【0061】
[0091] AAV発現ベクターは、転写の方向における動作可能に連結している成分として、転写開始領域、目的のDNA及び転写終止領域を含む制御エレメントを提供する公知の技術を使用して構築し得る。制御エレメントは、視床及び/又は皮質ニューロンにおいて機能的であるように選択される。さらなる制御エレメントを含み得る。動作可能に連結している成分を含有するこのように得られた構築物は、機能的AAV ITR配列で境界を画されている(5’及び3’)。
【0062】
[0092] 「アデノ随伴ウイルス逆方向末端反復」又は「AAV ITR」とは、DNA複製の起点として及びウイルスについてのパッケージングシグナルとしてシスで一緒に機能する、AAVゲノムの各末端において見出される当技術分野において承認されている領域を意味する。AAV ITRは、AAV repコード領域と一緒に、効率的な切除及びレスキュー、並びに哺乳動物細胞ゲノムへの2つの隣接ITRの間に挿入されるヌクレオチド配列の統合を実現する。
【0063】
[0093] AAV ITR領域のヌクレオチド配列は、公知である。AAV-2配列について、例えば、Kotin,R.M.(1994) Human Gene Therapy 5:793-801;Berns,K.I.“Parvoviridae and their Replication”in Fundamental Virology,2nd Edition,(B.N.Fields and D.M. Knipe,eds.)を参照されたい。本明細書において使用する場合、「AAV ITR」は、示された野生型ヌクレオチド配列を有する必要はないが、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって変化し得る。さらに、AAV ITRは、これらに限定されないが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAVX7などを含めたいくつかのAAV血清型のいずれかから由来し得る。さらに、AAVベクターにおける選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’ITRは、意図する通りに、すなわち、AAV Rep遺伝子産物が細胞中に存在するとき、宿主細胞ゲノム又はベクターからの目的の配列の切除及びレスキューを可能とし、及びレシピエント細胞ゲノム中への異種配列の統合を可能とするように機能する限り、同一であるか、又は同じAAV血清型若しくは単離物に由来することを必ずしも要しない。
【0064】
[0094] AAVベクターにおいて使用するための適切なDNA分子は、例えば、欠陥であるか又はレシピエント対象から欠損しているタンパク質をコードする遺伝子、又は望ましい生物学的又は治療効果を有するタンパク質(例えば、酵素、又は神経栄養因子)をコードする遺伝子を含む。処置される神経障害に基づいて、どの要素が適切であるかを当業者は決定することができる。
【0065】
[0095] 選択されたヌクレオチド配列は、in vivoでの対象における転写又はその発現を方向付ける制御エレメントに動作可能に連結されている。このような制御エレメントは、選択された遺伝子と通常関連する制御配列を含むことができる。代わりに、異種制御配列を用いることができる。有用な異種制御配列は一般に、哺乳動物遺伝子又はウイルス遺伝子をコードする配列に由来するものを含む。例には、これらに限定されないが、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV即時初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが含まれる。さらに、非ウイルス遺伝子、例えば、マウスメタロチオネイン遺伝子に由来する配列はまた、本明細書において用途が見出される。このようなプロモーター配列は市販されている。
【0066】
[0096] 作製されると、TNF-αタンパク質は、共有結合的に修飾し得る。例えば、バリアントTNF-αの共有結合的修飾の好ましいタイプは、参照により組み込まれている米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号又は同第4,179,337号において記載されている様式で、バリアントTNF-αポリペプチドを種々の非タンパク性ポリマーの1つ、例えば、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンに連結することを含む。これらの非タンパク性ポリマーをまた使用して、受容体結合、及び/又はin vivoでの安定性を乱すバリアントTNF-α’の能力を増進し得る。別の好ましい実施形態では、システインは、(a)特性決定のための標識部位を組込み、(b)ペグ化部位を組み込むために、バリアント又は野生型TNF-α中に組み込まれている。例えば、使用し得る標識は当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、ビオチン、タグ及び蛍光標識(例えば、フルオレセイン)が含まれる。これらの標識は、当技術分野でまた周知のようなアッセイにおいて使用して、特性決定を達成し得る。当技術分野で周知のように、種々のカップリング化学反応を使用して、ペグ化を達成し得る。例には、これらに限定されないが、Shearwater及びEnzonの技術が含まれ、これは、これらに限定されないが、リシン基及びN末端を含めた第一級アミンにおける修飾を可能とする。両方とも参照により本明細書に組み込まれているKinstler et al, Advanced Drug Deliveries Reviews,54,477-485(2002)及びM J Roberts et al, Advanced Drug Delivery Reviews,54,459-476(2002)を参照されたい。
【0067】
[0097] 好ましい一実施形態では、最適な化学修飾部位は、単独で又は任意の組合せで行われる21、23、31及び45である。さらにより好ましい実施形態では、本発明のTNF-αバリアントは、R31C変異を含む。
【0068】
[0098] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、発現の後に精製又は単離される。バリアントTNF-αタンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかによって当業者には公知の種々の方法で単離又は精製し得る。
【0069】
[0099] 別の好ましい実施形態では、TNF-αタンパク質は、遺伝子修飾された自己細胞又は同種異系細胞治療によって投与され、ここで、遺伝子療法は、TNF-αタンパク質、好ましくは、DN-TNF-αタンパク質、より好ましくは、XPRO1595の構築物を発現している間葉系幹細胞を含む。
【0070】
[0100]処置方法
[0101] 用語「処置」、「処置する」などは、本明細書において使用するように、一旦、疾患若しくは状態が確立されれば、その寛解若しくは排除、又はこのような疾患若しくは状態の特徴的な症状の軽減を含む。本明細書に開示されている方法はまた、患者の状態によって、前記疾患若しくは状態による苦痛の前に、疾患若しくは状態又はそれと関連する症状の重症度を低減させることを含めた、疾患若しくは状態の開始、又は疾患若しくは状態と関連する症状の開始を予防するために使用し得る。苦痛の前のこのような予防又は低減は、投与の時において疾患若しくは状態で苦しめられていない患者への本明細書に記載のような化合物又は組成物の投与を指す。「予防すること」はまた、例えば、改善の期間の後で、再発を予防すること、或いは疾患若しくは状態又はそれと関連する症状の再発予防を包含する。
【0071】
[0102] 一実施形態では、本明細書に記載のようなsolTNF-αの選択的阻害剤は、それを必要とする患者に末梢的に投与して、炎症を低減させ、及び/又はNASを低減させ、及び/又は線維症を低減させる。
【0072】
[0103] 一実施形態では、処置方法は、本明細書に記載のようなsolTNF-αの選択的阻害剤をNASHと診断された患者に投与することを含む。処置の前又は後に、患者は、当業者には公知の技術に従って、アディポネクチン(ADP)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、レプチン、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、酸化低密度リポタンパク質(OxLDL)、リポタンパク質受容体-1(LOX-1)、インターロイキン-17(IL-17)、サイトケラチン18(CK18)全タンパク質、サイトケラチン18(CK18)カスパーゼ切断フラグメント、可溶性Fas(sFas)、可溶性Fasリガンド(sFasL)、フェリチン、及び/又は血液好中球対リンパ球(N/L)比のレベルを含めたいくつかのバイオマーカーを測定することによって、最初に選択されるか、又は改善について処置後モニターし得る。さらに、又は代わりに、線維症の程度を測定することによって患者を改善についてモニターし得る。肝生検は、本開示の日付時点で依然としてNASH診断のための判断基準である一方、他の非観血的診断学が開発されている。NASHの非観血的診断のための方法の例を、下にさらに詳細に記載する。
【0073】
[0104] 一実施形態では、この方法は、NASH、肝脂肪症;非アルコール性肝脂肪症;慢性炎症性疾患に続発する肝硬変を含めた線維症肝疾患;及び小腸炎の処置のためのsolTNF-αの選択的阻害剤の皮下注射を含み得る。
【0074】
[0105] 代わりの実施形態では、この方法は、本明細書に記載のようなsolTNF-αの選択的阻害剤の局所投与を含み得る。この実施形態では、DN-TNF-αは、ローション剤又はクリーム剤として製剤化し得る。
【0075】
[0106] 投与の他の方法は、本明細書にさらに記載する。
【0076】
製剤
[0107] 導入の様式によって、医薬組成物は、種々な方法において製剤化し得る。製剤中の治療的に活性なバリアントTNF-αタンパク質の濃度は、約0.1~100重量%で変化し得る。別の好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質の濃度は、0.003~1.0モルの範囲であり、1キログラムの体重当たり0.03、0.05、0.1、0.2、及び0.3ミリモルの投与量が好ましい。
【0077】
[0108] 本発明の実施形態において使用するための医薬組成物は、患者への投与に適した形態でバリアントTNF-αタンパク質を含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、水溶性形態であり、例えば、薬学的に許容される塩として存在し、これは、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含むことを意味する。「薬学的に許容される酸付加塩」は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などと共に形成される、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、及び生物学的に又はその他の点で望ましくないことはないそれらの塩を指す。「薬学的に許容される塩基付加塩」は、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などに由来するものを含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容される無毒有機の塩基に由来する塩は、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然の置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンの塩を含む。
【0078】
[0109] 医薬組成物はまた、下記:担体タンパク質、例えば、血清アルブミン;緩衝液、例えば、NaOAc;充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、トウモロコシ及び他のデンプン;結合剤;甘味剤及び他の香味剤;着色剤;並びにポリエチレングリコールの1つ若しくは複数を含み得る。添加物は当技術分野で周知であり、種々の製剤中で使用される。さらなる実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、ミセル製剤中に加えられる;参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,833,948号を参照されたい。代わりに、リポソームはTNF-αタンパク質と共に用いられ、タンパク質を効果的に送達し得る。医薬組成物の組合せを投与し得る。さらに、本発明のTNF-α組成物は、必要に応じて、実質的に同時に他の治療法と組み合わせて投与するか、又は同時投与するか、又は連続的に投与し得る。
【0079】
[0110] 本明細書において提供する一実施形態では、これらに限定されないが、モノクローナル及びポリクローナル抗体を含めた抗体は、当技術分野において公知の方法を使用してバリアントTNF-αタンパク質に対して産生される。好ましい実施形態では、これらの抗バリアントTNF-α抗体は、免疫療法のために使用される。このように、免疫療法の方法が提供される。「免疫療法」とは、バリアントTNF-αタンパク質に対して産生された抗体によるTNF-αと関連する障害の処置を意味する。本明細書において使用する場合、免疫療法は、受動的又は能動的であり得る。受動免疫療法は、本明細書に定義されているように、レシピエント(患者)への抗体の受動伝達である。能動免疫化は、レシピエント(患者)における抗体及び/又はT細胞応答の誘発である。免疫応答の誘発は、レシピエントにそれに対して抗体が産生されるバリアントTNF-αタンパク質抗原を提供することの結果であり得る。当業者が認識するように、バリアントTNF-αタンパク質抗原は、それに対して抗体が産生されることが望ましいバリアントTNF-αポリペプチドをレシピエントに注射することによって、又はバリアントTNF-αタンパク質抗原の発現のための条件下で、レシピエントとバリアントTNF-αタンパク質抗原を発現させることができる核酸をコードするバリアントTNF-αタンパク質とを接触させることによって提供し得る。
【0080】
[0111] 別の好ましい実施形態では、治療化合物は、抗体、好ましくは、抗バリアントTNF-αタンパク質抗体にコンジュゲートされる。治療化合物は、細胞毒性剤であり得る。細胞毒性剤は、多数及び変化に富み、これらに限定されないが、細胞毒性薬若しくは毒素又はこのような毒素の活性フラグメントが含まれる。適切な毒素及びそれらの対応するフラグメントは、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロタン、フェノマイシン、エノマイシンなどを含む。細胞毒性剤はまた、放射性同位体を細胞周期タンパク質に対して産生された抗体にコンジュゲートすること、又は抗体に共有結合的に付着しているキレート剤への放射性核種の結合によって作製される放射化学物質を含む。
【0081】
[0112] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、治療剤として投与され、上記で概要を述べたように製剤化することができる。同様に、バリアントTNF-α遺伝子(全長配列、部分的配列の両方、又はバリアントTNF-αコード領域の制御配列を含む)は、当技術分野において公知のように、遺伝子療法用途において投与し得る。これらのバリアントTNF-α遺伝子は、当業者が認識するように、遺伝子療法(すなわち、ゲノム中への組込みのため)として、又はアンチセンス組成物としてアンチセンス用途を含むことができる。
【0082】
[0113] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質をコードする核酸はまた、遺伝子療法において使用し得る。遺伝子療法用途において、遺伝子は、例えば、欠陥遺伝子の置換えのための治療的に有効な遺伝子産物のin vivoでの合成を達成するために細胞中に導入される。「遺伝子療法」は、持続的な効果が単一の処置によって達成される通常の遺伝子療法、及び治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は反復投与が関与する遺伝子治療剤の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、in vivoでの特定の遺伝子の発現をブロックするために治療剤として使用することができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞膜によるそれらの制限された取込みによってもたらされるそれらの低い細胞内濃度にも関わらず、細胞中に移入することができ、ここで、これらは阻害剤として作用することが既に示されてきている(参照により組み込まれている、Zamecnik et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:4143-4146(1986))。オリゴヌクレオチドは、例えば、それらの負に帯電しているホスホジエステル基を帯電していない基で置換することによって、修飾されて、それらの取込みを増進させることができる。
【0083】
[0114] 生存細胞へと核酸を導入するために利用可能な種々の技術が存在する。核酸がin vitroで培養細胞中へと移入されるか、又はin vivoで意図する宿主の細胞中に移入されるかによって技術は変化する。in vitroでの哺乳動物細胞中への核酸の移入に適した技術は、リポソーム、電気穿孔、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿方法などの使用を含む。現在好ましいin vivoでの遺伝子移入技術は、ウイルス(典型的には、レトロウイルス)ベクターによるトランスフェクション、及びウイルスコートタンパク質-リポソームが媒介するトランスフェクション(参照により組み込まれている、Dzau et al., Trends in Biotechnology 11:205-210(1993))を含む。いくつかの状況において、標的細胞を標的とする薬剤、例えば、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上の受容体のためのリガンドなどと共に核酸源を提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスと関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、ターゲティングのために、及び/又は取込みを促進するために使用し得る(例えば、特定の細胞型指向性のキャプシドタンパク質又はそのフラグメント、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質の抗体、細胞内局在を標的とし、及び細胞内半減期を増進するタンパク質)。受容体仲介エンドサイトーシスの技術は、例えば、両方とも参照により組み込まれている、Wu et al., J.Biol.Chem.262:4429-4432(1987);及びWagner et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:3410-3414(1990)によって記載されている。遺伝子マーキング及び遺伝子療法プロトコルの概説について、参照により組み込まれている、Anderson et al., Science 256:808-813(1992)を参照されたい。
【0084】
[0115] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-α遺伝子(単一の遺伝子又はバリアントTNF-α遺伝子の組合せ)は、DNAワクチンとして投与される。裸のDNAワクチンは一般に、当技術分野において公知である。Brower,Nature Biotechnology,16:1304-1305(1998)。DNAワクチンとして遺伝子を使用するための方法は当業者には周知であり、処置を必要としている患者における発現のためにプロモーターの制御下でバリアントTNF-α遺伝子又はバリアントTNF-α遺伝子の部分を配置することを含む。DNAワクチンのために使用されるバリアントTNF-α遺伝子は、完全長バリアントTNF-αタンパク質をコードすることができるが、より好ましくは、バリアントTNF-αタンパク質に由来するペプチドを含むバリアントTNF-αタンパク質の部分をコードする。好ましい実施形態では、患者は、バリアントTNF-α遺伝子に由来する複数のヌクレオチド配列を含むDNAワクチンで免疫されている。同様に、本明細書に定義されているように複数のバリアントTNF-α遺伝子又はその部分で患者を免疫することが可能である。理論に束縛されるものではないが、DNAワクチンによってコードされるポリペプチド、細胞毒性T細胞、ヘルパーT細胞及び抗体の発現が誘発され、これは、TNF-αタンパク質を発現している細胞を認識し、破壊又は排除する。
【0085】
[0116] 好ましい実施形態では、DNAワクチンは、DNAワクチンと共にアジュバント分子をコードする遺伝子を含む。このようなアジュバント分子は、DNAワクチンによってコードされるバリアントTNF-αポリペプチドへの免疫原性応答を増加させるサイトカインを含む。さらなる又は代替のアジュバントは、当業者には公知であり、本発明に使用される。
【0086】
[0117] 医薬組成物が意図され、ここで、本発明のTNF-αバリアント及び1つ若しくは複数の治療活性剤が製剤化される。本発明の製剤は、望ましい程度の純度を有するTNF-αバリアントと、任意選択の薬学的に許容される担体、添加剤又は安定剤(全体的に参照により組み込まれている、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.,1980)とを混合することによって凍結乾燥した製剤又は水溶液の形態で貯蔵のために調製される。凍結乾燥は当技術分野で周知である、例えば、全体的に参照により組み込まれている米国特許第5,215,743号を参照されたい。許容される担体、添加剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントには無毒性であり、緩衝液、例えば、ヒスチジン、リン酸、クエン酸、酢酸、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含めた抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含めた他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;甘味剤及び他の香味剤;充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、トウモロコシ及び他のデンプン;結合剤;添加物;着色剤;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。好ましい実施形態では、本発明のTNF-αバリアントを含む医薬組成物は、水溶性形態であり得る。TNF-αバリアントは、薬学的に許容される塩として提示し得、これは、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含むことを意味する。「薬学的に許容される酸付加塩」は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などと共に形成される、遊離塩基の生物学的有効性を保持し、及び生物学的に又はその他の点で望ましくないことはないそれらの塩を指す。「薬学的に許容される塩基付加塩」は、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などに由来するものを含む。特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容される無毒有機の塩基に由来する塩は、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然の置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びエタノールアミンの塩を含む。in vivoでの投与のために使用される製剤は好ましくは、無菌である。これは、除菌濾過膜を通した濾過又は他の方法によって容易に達成される。
【0087】
制御放出
[0118] さらに、いくつかの送達系のいずれかは当技術分野において公知であり、本発明の実施形態によってTNF-αバリアントを投与するために使用し得る。例には、これらに限定されないが、リポソーム、微粒子、ミクロスフィア(例えば、PLA/PGAミクロスフィア)などにおけるカプセル化が含まれる。代わりに、膜又は繊維を含めた多孔質、非多孔質、又はゼラチン様材料の埋込体を使用し得る。持続放出系は、ポリマー材料又はマトリックス、例えば、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド、L-グルタミン酸及びエチル-L-グルタメートのコポリマー、エチレン-酢酸ビニル、乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(登録商標)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含み得る。例えば、レトロウイルス感染、直接の注射、又は脂質によるコーティング、細胞表面受容体、又は他のトランスフェクション剤によって、本発明のTNF-αをコードする核酸を投与することもまた可能である。全ての場合において、制御放出系を使用して、望ましい作用の場所において又はその近くでTNF-αを放出し得る。
【0088】
[0119] 医薬組成物はまた、下記:担体タンパク質、例えば、血清アルブミン;緩衝液、例えば、NaOAc;充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、トウモロコシ及び他のデンプン;結合剤;甘味剤及び他の香味剤;着色剤;並びにポリエチレングリコールの1つ若しくは複数を含み得る。添加物は当技術分野で周知であり、種々の製剤中で使用される。さらなる実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、ミセル製剤中に加えられる;全体的に参照により組み込まれている米国特許第5,833,948号を参照されたい。代わりに、リポソームをTNF-αタンパク質と共に用いて、タンパク質を効果的に送達し得る。医薬組成物の組合せを投与し得る。さらに、本発明のTNF-α組成物は、必要に応じて、実質的に同時に他の治療法と組み合わせて投与するか、又は同時投与するか、又は連続的に投与し得る。医薬組成物はまた、下記:担体タンパク質、例えば、血清アルブミン;緩衝液、例えば、NaOAc;充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、トウモロコシ及び他のデンプン;結合剤;甘味剤及び他の香味剤;着色剤;並びにポリエチレングリコールの1つ若しくは複数を含み得る。添加物は当技術分野で周知であり、種々の製剤において使用される。さらなる実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質は、ミセル製剤中に加えられる;全体的に参照により組み込まれている米国特許第5,833,948号を参照されたい。代わりに、リポソームをTNF-αタンパク質と共に用いて、タンパク質を効果的に送達し得る。医薬組成物の組合せを投与し得る。さらに、本発明のTNF-α組成物は、必要に応じて、実質的に同時に他の治療法と組み合わせて投与するか、又は同時投与するか、又は連続的に投与し得る。
【0089】
[0120] 本明細書において開示されているDN-TNF-タンパク質の局所的又は経皮的投与のための剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ及び吸入剤を含む。DN-TNF-タンパク質は、無菌状態下にて、薬学的に許容される担体と、及び必要とし得る任意の保存剤、緩衝液、又は噴射剤と混合し得る。散剤及びスプレー剤は、DN-TNF-タンパク質に加えて、添加剤、例えば、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含有し得る。スプレー剤は、通例の噴射剤、例えば、クロロフルオロ炭化水素及び揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタン及びプロパンをさらに含有することができる。
【0090】
投与の方法
[0121] 好ましくは、無菌水溶液の形態の本発明の実施形態によるsolTNFの選択的阻害剤の投与は、これらに限定されないが、経口的、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮的、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣的、直腸、又は眼内を含めた種々の方法で末梢的に行われる。場合によって、solTNFの選択的阻害剤は、溶液剤、軟膏剤、クリーム剤又はスプレー剤として直接適用し得る。solTNFの選択的阻害剤はまた、細菌又は真菌発現によってヒト系へと送達し得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第04046346A2号)。
【0091】
[0122]皮下
[0123] 患者は医薬組成物を自己投与し得るため、皮下投与は、いくつかの状況において好ましくあり得る。多くのタンパク質治療法は、皮下投与のための最大の許容される容量で治療有効用量の製剤を可能するには十分に強力でない。この問題は、部分的にアルギニン-HCl、ヒスチジン、及びポリソルベートを含むタンパク質製剤の使用によって取り組み得る。solTNFの選択的阻害剤は、例えば、増加した効力、改善された血清半減期、又は増進された溶解度によって、皮下投与の影響をより受けやすい可能性がある。
【0092】
[0124]静脈内
[0125] 当技術分野において公知のように、タンパク質治療法は、IV注入又はボーラスによって送達されることが多い。solTNFの選択的阻害剤はまた、このような方法を使用して送達し得る。例えば、投与は、注入ビヒクルとして0.9%塩化ナトリウムを有する静脈内注入によってでよい。
【0093】
[0126]吸入用
[0127] 肺の送達は、吸入器又はネブライザー及びエアロゾル化剤を含む製剤を使用して達成し得る。例えば、吸入可能技術、又は肺の送達系を使用し得る。solTNFの選択的阻害剤は、肺内送達の影響をより受けやすくてもよい。solTNFの選択的阻害剤はまた、例えば、改善された溶解度又は変化した等電点によって肺内投与の影響をより受けやすくてもよい。
【0094】
[0128]経口送達
[0129] さらに、solTNFの選択的阻害剤は、例えば、胃のpHにおける改善された安定性、及びタンパク質分解に対する抵抗性の増加によって経口送達の影響をより受けやすくてもよい。
【0095】
[0130]経皮的
[0131] 経皮パッチは、体へのsolTNFの選択的阻害剤の制御された送達を実現する付加された利点を有し得る。適正な媒体にDN-TNF-タンパク質を溶解又は分散させることによって、このような剤形を作製することができる。吸収増強剤をまた使用して、皮膚を横断するDN-TNF-タンパク質の流れを増加させることができる。律速膜を提供すること、又はDN-TNF-タンパク質をポリマーマトリックス若しくはゲルに分散させることによって、このような流れの速度を制御することができる。
【0096】
[0132]眼球内
[0133] 点眼用製剤、眼軟膏剤、散剤、溶液剤などはまた、本発明の実施形態における使用に適していると意図される。
【0097】
[0134] 好ましい実施形態では、solTNFの選択的阻害剤は、治療剤として投与され、上記で概要を述べたように製剤化することができる。同様に、バリアントTNF-α遺伝子(全長配列、部分的配列の両方、又はバリアントTNF-αコード領域の制御配列を含む)は、当技術分野において公知のように、遺伝子療法用途において投与し得る。これらのバリアントTNF-α遺伝子は、当業者が認識するように、遺伝子療法(すなわち、ゲノムへの組込みのため)として、又はアンチセンス組成物としてアンチセンス用途を含むことができる。
【0098】
[0135] 好ましい実施形態では、バリアントTNF-αタンパク質をコードする核酸はまた、遺伝子療法において使用し得る。遺伝子療法用途において、例えば、欠陥遺伝子を置き換えるための、治療的に有効な遺伝子産物のin vivoでの合成を達成するために、遺伝子が細胞中に導入される。「遺伝子療法」は、持続的な効果が単一の処置によって達成される通常の遺伝子療法、及び治療的に有効なDNA又はmRNAの1回又は反復投与が関与する遺伝子治療剤の投与の両方を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、in vivoでの特定の遺伝子の発現をブロックするために治療剤として使用することができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞膜によるそれらの制限された取込みによってもたらされるそれらの低い細胞内濃度にも関わらず、細胞中へと移入することができ、ここで、これらは阻害剤として作用することが既に示されてきている(全体的に参照により組み込まれている、Zamecnik et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:4143-4146(1986))。オリゴヌクレオチドは、例えば、それらの負に帯電しているホスホジエステル基を帯電していない基で置換することによって、修飾されて、それらの取込みを増進させることができる。
【0099】
[0136]投与量
[0137] 投与量は、処置される合併症及び送達の機序によって決定し得る。典型的には、治療効果又は予防効果を達成するのに十分なsolTNFの選択的阻害剤の有効量は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.000001mgから1日当たり体重1キログラム当たり約10,000mgの範囲である。適切には、投与量範囲は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.0001mgから1日当たり体重1キログラム当たり約2000mgである。例示的な処置レジメンは、毎日1回又は週1回又は月1回の投与を必要とする。DN-TNFタンパク質は、複数の場合において投与し得る。単一の投与量の間の間隔は、毎日、週1回、月1回又は年1回でよい。代わりに、DN-TNFタンパク質は、持続放出製剤として投与し得、この場合、より頻繁でない投与が必要とされる。投与量及び頻度は、対象における薬剤の半減期によって変化する。投与量及び投与の頻度は、処置が予防的又は治療的であるかによって変化することができる。予防的用途において、相対的に低い投与量が、長期間に亘り相対的にまれな間隔で投与される。幾人かの対象はその後の人生ずっと処置を受け続ける。治療的用途において、疾患の進行が低減又は終結するまで、好ましくは、対象が疾患の症状の部分的又は完全な寛解を示すまで、相対的に短い間隔で相対的に高い投与量が時折必要とされる。その後、患者に、予防的レジメンを投与することができる。
【0100】
[0138]毒性
[0139] 適切には、本明細書に記載されているDN-TNFタンパク質の有効量(例えば、用量)は、対象に対して実質的な毒性をもたらすことなく治療上の利点を実現する。本明細書に記載されている薬剤の毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な医薬手順によって、例えば、LD50(集団の50%にとって致死性である用量)又はLD100(集団の100%にとって致死性である用量)を決定することによって決定することができる。毒性効果及び治療効果の間の用量比は、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のために毒性ではない投与量範囲を製剤化することにおいて使用することができる。本明細書に記載されている薬剤の投与量は、毒性を殆ど伴わないか若しくは伴わない有効用量を含む循環濃度の範囲内に適切にある。投与量は、用いる剤形及び利用する投与経路によってこの範囲内で変化し得る。正確な製剤、投与経路及び投与量は、対象の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。例えば、Fingl et al., In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1 (1975)を参照されたい。
【0101】
NASHの非観血的診断
NASHのバイオマーカー
[0140]アポトーシスのマーカー
[0141] 肝臓における細胞死の増加は、NASHへの疾患の進行をもたらす重要な機序として出現してきた。プログラム細胞死、又はアポトーシスは、2つの基本的経路:細胞死受容体(例えば、Fas)による外因性媒介又は細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)による内因性媒介を介して起こり得る高度に構築されたプロセスである。両方の経路は、肝細胞における主要な中間径フィラメントタンパク質であるサイトケラチン18(CK18)を含めた異なる細胞内基質を切断するエフェクターカスパーゼ(主に、カスパーゼ3)の活性化をもたらし得る。カスパーゼによって生じたCK18フラグメントレベルは、例えば、M30モノクローナル抗体酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して血漿中で、及びまた血清中で測定することができる。これらのレベルは、NASH患者において有意であることが見出されてきた。
【0102】
[0142] カスパーゼ切断CK18(CK18フラグメント)のみを検出するM30ELISAと対照的に、M65 ELISAは、カスパーゼ切断CK18及び切断されていないCK18(総CK18)の両方を検出することができ、このアッセイは、アポトーシス及び壊死の両方を含めた全体的な肝細胞死のマーカーとして使用される。さらに、このアッセイは、慢性肝疾患を有する患者のコホートにおいて脂肪症、脂肪性肝炎、及び肝線維症を検出するために使用することができる。
【0103】
[0143]酸化ストレスのマーカー
[0144] 酸化ストレスは、肝細胞傷害、及び単純脂肪症(SS)からNASHへの疾患の進行において中心的役割を果たしているが正確な分子種は未だ同定されてこなかった。いくつかの酸化経路は、酵素的及び非酵素的フリーラジカルによって媒介されるプロセスを含めたNASH患者における脂質過酸化産物の過剰産生において役割を果たし得る。これらの経路のそれぞれは、場合によっては定量化することができる異なる酸化生成物を生じさせ得る。全身性脂質過酸化を、生検によって確認されたNASHを有する患者、並びに年齢、性別、及び肥満度指数(BMI)によって合致する対照患者において測定してきた;酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)及びチオバルビツール酸反応性物質の両方のレベルは、NASH患者において相当に高かったことが従前に見出された。
【0104】
[0145]炎症のマーカー
[0146] 肥満及びNAFLDにおいて存在する炎症性状態は、NASHへの疾患の進行をもたらし得る。炎症促進性サイトカイン、例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)及びインターロイキン(IL)-6のレベルは、SS患者よりNASH患者においてより高いことが従前に示されてきた。血液好中球対リンパ球(N/L)比は、がん及び冠動脈疾患を有する患者における予後を予測するのに従前に使用されてきた、体の全体的な炎症性状態の単純な指標である。N/L比は、NAFLDの重症度の非観血的マーカーとして同定されてきており、N/L比は、SSを有する患者よりNASHを有する患者においてより高かったことが従前に示されてきた。
【0105】
[0147] さらに、N/L比は、炎症及び線維症を含めたNAFLDの主要な組織学的フィーチャと相関することが示されてきた。
【0106】
[0148] 血清フェリチンは、慢性全身性炎症の状態において誘発し得る急性期反応体であり、肥満に関連する合併症、例えば、糖尿病及び代謝症候群(MetS)を有する患者において上昇することが観察されてきた。正常上限の1.5倍超のフェリチンレベルは、NASH Clinical Research Network(CRN)に登録した生検によって確認されたNAFLD患者の大きなコホートにおいて、NASH及び進行性線維症の診断と関連したことが示されてきた。
【0107】
予測モデル
[0149] 予測モデルは、型通りにアセスメントされる臨床的変数と実験室試験及びバイオマーカー(例えば、肝細胞アポトーシスマーカー、酸化ストレスマーカー、及び炎症性サイトカイン)とを合わせ、肝生検材料上のNASHの存在を正確に予測する。臨床的及び実験室データの組合せを使用する予測モデルの例は、HAIRスコア(高血圧、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、及びインスリン抵抗性をベースとする)並びにNASH予測インデックス(年齢、性別、BMI、インスリン抵抗性のホメオスタシスモデルアセスメント、及びログ[アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ{AST}×ALT]をベースとする)である。NASHTest(BioPredictive)は、13の臨床的及び生化学的変数:年齢;性別;体重;身長;並びにコレステロール、トリグリセリド、α2マクログロブリン、アポリポタンパク質A1、ハプトグロビン、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、ALT、AST、及びビリルビンの血清レベルを合わせることによって一連の160人の患者において開発した。NASHTestは、異なる施設からの97人の患者のコホートにおいて検証されてきた。
【0108】
[0150] NASH CRNは、肝生検材料上の組織学的診断を予測するための容易に利用可能な臨床的及び実験室変数(NASHの存在を含めた)をベースとする進行性モデルを最近開発した。ASTレベル、ALTレベル、AST/ALT比、人口統計特性(年齢、人種、性別、及び民族性)、併存症(高血圧症、2型糖尿病、BMI、胴囲、ウエスト/ヒップ比、及び黒色表皮腫)、並びに他の実験室試験をベースとするモデルを、肝生検材料上のNASHを予測するために検証した;さらに、このモデルは、NASHの主要な組織学的フィーチャであるバルーニング変性の存在を予測するために検証された。
【0109】
[0151] いくつかの予測モデルは、臨床的変数に加えてNASHバイオマーカーを含む。例えば、CK18は、病的に肥満の患者においてNASHと診断するように設計された新規な複合スコアリングシステム(Niceモデルとして公知である)においてALTレベル、及びMetSの存在と合わせてきた;このシステムは、有望な結果を生じさせてきた。他は、糖尿病、性別、BMI、トリグリセリド、M30(アポトーシスのマーカーとしてCK18フラグメント)、並びにM65プラスM30(壊死のマーカーとして総CK18及びCK18フラグメント)をベースとするNAFLD診断パネル(NASH予測モデルを伴う)を開発してきた。
【0110】
[0152] 危険性スコアoxNASHは、多変量モデリング、及びリノール酸のフリーラジカルによって媒介される酸化の産物がNASHを有する患者において相当により高かったという知見をベースとする。このスコアは、年齢、BMI、ASTレベル、及び13-ヒドロキシオクタデカジエン酸とリノール酸の比から計算した。72超のoxNASHスコアを有する患者は、47未満のoxNASHスコアを有する患者よりNASHを有することが10倍より可能性が高かった。生検によって確認されたNAFLDを有する122人の患者の試料において、oxNASHスコアは、脂肪症、バルーニング、及び炎症を含めたNASHを定義する組織学的フィーチャと相関したことが従前に示されてきた。
【0111】
肝線維症の非観血的診断
[0153] 線維症の存在及び程度は、NAFLDの予後において、並びに肝硬変及びその合併症への進行の危険性の予測において重要な要素である。進行性線維症及び肝硬変の発生を予測する要因は、肥満症、2型糖尿病、45歳を超える年齢、上昇したAST/ALT比、高血圧症、及び高脂血症を含む。過去十年に亘り、この患者集団における肝線維症のステージを予測するために多くの非観血的戦略が開発されてきた。非放射線学的試験は、単純なベッドサイドモデル(bedside models)(年齢、BMI、AST/ALT比、及び他の臨床的変数の組合せを使用する)又はより複雑なモデル、例えば、増進肝線維症(ELF)パネル(線維症の血清マーカーを使用する)へとグループ化することができる。NASHと関連する線維症のステージは、存在しない(ステージF0)から肝硬変(ステージ4)の範囲であり、ステージF2~F4は、臨床的に問題があると考えられ、ステージF3~F4は、進行性線維症と考えられる。
【0112】
進行性線維症についての単純な予測モデル
[0154]AST/ALT比
[0155] ALTレベルは通常、NAFLD患者においてASTレベルより高い;しかし、1超のAST/ALT比は、疾患の進行性線維化形態を示唆する。この比は、進行性線維症についての最も単純な予測モデルであり、2つの容易に利用可能な肝機能検査を使用して計算することができる。その単純さに関わらず、この比は、良好な陰性適中度を有し、進行性線維症の存在を除外するために使用することができる。AST/ALT比はまた、BMI、AST/ALT比、並びに糖尿病(BARD)スコア及びNAFLD線維症スコア(NFS)を含めた他のモデルに組み込まれてきた。
【0113】
[0156]BMI、AST/ALT比、及び糖尿病(BARD)スコア
[0157] このスコアは、進行性線維症を予測するための容易に計算される複合スコア(BMI≧28=1ポイント;AST/ALT比≧0.8=2ポイント;及び糖尿病の存在=1ポイント)を得るために、3つの変数を加重和で合わせる。少なくとも2のBARDスコアは、ステージ3~4の線維症と関連した。
【0114】
[0158]非アルコール性脂肪性肝疾患線維症スコア
[0159] NFSは、年齢、高血糖、BMI、血小板数、アルブミンレベル、及びAST/ALT比をベースとする。スコアは、2つのカットオフ値を有する:-1.455未満のスコアは、進行性線維症が存在しないことを予測し、一方、0.675超のスコアは、進行性線維症が存在することを予測する。NFSは、複数の研究において検証されてきた。最近のNAFLDガイドラインは、NFSが、NAFLDを有する患者における進行性線維症を同定するための臨床的に有用なツールであることを認めた。このスコアはhttp://nafldscore.com/においてオンラインで利用可能であり、これは患者の来院の間に容易に計算することができる。
【0115】
[0160]FIB4インデックス
[0161] FIB4インデックスは、C型肝炎ウイルス感染症を有する患者における肝線維症を段階付けるために当初開発された;このインデックスは、年齢、血小板数、ALTレベル、及びASTレベルをベースとする。FIB4インデックスは、NAFLD患者において使用されてきた。1.3未満のカットオフ値を使用して、FIB4インデックスは、進行性線維症を除外するための90~95%の陰性適中度を有する。
【0116】
[0162]非アルコール性脂肪性肝炎Clinical Research Networkモデル
[0163] NASH CRNモデルは、ASTレベル、ALTレベル、AST/ALT比、人口統計学的要因、併存症、及び他の実験室試験結果をベースとする。このモデルは、肝生検において進行性線維症(ステージF3~F4)を予測するために、及び肝硬変(ステージF4)を予測するために検証されてきた。
【0117】
[0164]線維症増進肝線維症パネル(Fibrosis Enhanced Liver Fibrosis Panel)のバイオマーカーを使用した複合予測モデル
[0165] このパネルは、細胞外マトリックスターンオーバーのマーカーの血漿レベルの増加をもたらす肝線維症が動態過程であるという考えをベースとする。パネルは、線維症の3つのバイオマーカー(ヒアルロン酸、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、及びプロコラーゲンIIIのアミノ末端ペプチド)を含み、パネルは、進行性線維症を検出することにおいて優れている。ELFパネルとNFSとを合わせることは、線維症ステージF3~F4についての診断精度を上昇させた。ELFパネルは、NAFLDを有する44人の患者を含めた慢性肝疾患を有する患者の群における臨床成績(肝臓に関連する罹患率と死亡率)の良好な予測の判断材料であることが従前示されたが、このパネルを有望な予知診断ツールとしている。
【0118】
[0166]FibroTest
[0167] FibroTest(BioPredictive)は、線維症の存在を予測するための、5つのバイオマーカーであるハプトグロビン、アルファ-2-マクログロブリン、アポリポタンパク質A1、総ビリルビン、及びGGTを使用するパネルである。
【0119】
本発明の例示的なフィーチャ及び実施形態
[0168] 特定の好ましい実施形態は、下記のように要約することができる。
[0169] NAFLD及び/又はNASHと診断された対象を処置するための方法が開示され、この方法は、対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与することを含み、それによって、対象が処置される;本明細書における目的のために、これは、「この方法」を構成する。
【0120】
[0170] solTNF-αの選択的阻害剤は、DN-TNF-αタンパク質又はDN-TNF-αタンパク質をコードする核酸を含み得る。
【0121】
[0171] DN-TNF-αタンパク質は、XPRO1595を含み得る。このように、一実施形態では、この方法は、0.1mg/kg~10.0mg/kgの用量でXPRO1595を投与することを含み得る。
【0122】
[0172] DN-TNF-αタンパク質は、静脈内;皮下;経口的;エアゾールによって;局所適用によって;又は遺伝子療法によって投与することができる。遺伝子療法は、DN-TNF-αタンパク質の構築物を発現している間葉系幹細胞を含み得る。DN-TNF-αタンパク質は、遺伝子修飾された自己細胞又は同種異系細胞治療によって投与することができる。
【0123】
[0173] この方法は、対象においてNASHの少なくとも1つのバイオマーカーを測定することと(NASHの前記バイオマーカーは、アディポネクチン(ADP)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、レプチン、C反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)、酸化低密度リポタンパク質(OxLDL)、リポタンパク質受容体-1(LOX-1)、インターロイキン-17(IL-17)、サイトケラチン18(CK18)全タンパク質、サイトケラチン18(CK18)カスパーゼ切断フラグメント、可溶性Fas(sFas)、可溶性Fasリガンド(sFasL)、フェリチン、及び血液好中球対リンパ球(N/L)比からなる群から選択される);測定した少なくとも1つのバイオマーカーが、正常閾値を超える(範囲を超える;すなわち、越える又は未満)場合、対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与するステップを行うこととをさらに含み得る。下記の表0.1は、提案された群におけるNASHバイオマーカーのそれぞれについて現在認められる正常閾値を例示する;しかし、認められる正常閾値は、技術が進歩し、当技術分野における知識がさらに発達するにつれ変化し得ることを認識すべきである。
【0124】
【表1】
【0125】
[0174] この方法は、対象においてNAFLD活性スコア(NAS)を測定することと;測定したNASが5以上の場合、対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与するステップを行うこととをさらに含み得る。
【0126】
[0175] この方法は、対象においてNASHと関連する線維症を測定することと;測定されたNASHと関連する線維症の程度がF2以上の場合、対象に治療的有効量のsolTNF-αの選択的阻害剤を投与するステップを行うこととをさらに含み得る。
【実施例
【0127】
実施例
実施例1:NASHのSTAMモデルにおけるXPRO1595の効果
[0176]材料及び方法。
[0177] 化合物[XPro1595]は、INmune Bio International Limitedによって提供された。投与溶液を調製するために、化合物をビヒクル[生理食塩水]に希釈した。
【0128】
[0178] 16匹の雄性マウスにおいて、誕生の2日後の200μgのストレプトゾトシン(STZ,Sigma-Aldrich,USA)溶液の単一の皮下注射、及び4週齢の後の高脂肪食(HFD、57kcal%脂肪、カタログ番号HFD32、日本クレア、日本)の給餌によってNASHを誘発した。
【0129】
[0179] 化合物を、5mL/kgの容量で皮下に投与した。
【0130】
[0180] 化合物を、8~12週齢で週2回10mg/kgの用量で投与した。
【0131】
[0181] C57BL/6マウス(妊娠14日の雌性)は、日本エスエルシー株式会社(日本)から得た。研究において使用した全ての動物は、Japanese Pharmacological Society Guidelines for Animal Useに従って収容及び世話した。
【0132】
[0182] 動物は、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、点灯(12時間の人工光及び暗サイクル;8:00~20:00の光)及び換気の制御条件下にてSPF施設中に維持した。実験室において高圧を維持し、施設の汚染を防止した。
【0133】
[0183] 動物をゲージ毎に最大で4匹のマウスでTPXケージ(日本クレア)に収容した。殺菌したPaper-Clean(日本エスエルシー)を床敷のために使用し、週1回交換した。
【0134】
[0184] ケージの上の金属のふた上に置いた殺菌した固体HFDを自由に与えた。ゴム栓及び飲用チューブを備えた水のボトルから純水をまた自由に与えた。水のボトルを週1回交換し、浄化し、オートクレーブにおいて殺菌し、再使用した。
【0135】
[0185] マウスは耳パンチによって同定した。各ケージは特定の識別コードを標識した。
【0136】
[0186] 血漿生化学のために、非絶食時の血液を、抗凝血剤(Novo-ヘパリン、持田製薬株式会社、日本)を有するポリプロピレンチューブ中に集め、1,000×gで4℃にて15分間遠心した。上清を集め、-80℃にて使用するまで貯蔵した。血漿ALTは、FUJI DRI-CHEM7000(富士フイルム、日本)によって測定した。
【0137】
[0187] 肝臓総脂質抽出物は、Folchの方法によって得た(Folch J.et al.,J.Biol.Chem.1957;226:497)。肝臓試料はクロロホルム-メタノール(2:1、v/v)中でホモジナイズし、室温にて一晩インキュベートした。クロロホルム-メタノール-水(8:4:3、v/v/v)で洗浄した後、抽出物を蒸発乾固し、イソプロパノールに溶解した。肝臓トリグリセリド含量は、トリグリセリドE検定(和光純薬工業株式会社、日本)によって測定した。
【0138】
[0188] HE染色のために、切片を、ボーインズ溶液に事前固定し、及びLillie-Mayerのヘマトキシリン(武藤化学株式会社、日本)及びエオジン液(和光純薬工業)で染色した肝臓組織のパラフィンブロックから切断した。NAFLD活性スコア(NAS)を、Kleinerの判断基準によって計算した(Kleiner DE.et al.,Hepatology,2005;41:1313)。
【0139】
[0189] コラーゲン沈着を可視化するために、Bouinの固定された肝臓切片をピクロシリウスレッド溶液(Waldeck,Germany)を使用して染色した。
【0140】
[0190] 線維症面積の定量分析のために、中心静脈の周りのシリウスレッド染色した切片の明視野像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して200倍の倍率で取込み、5つの場所/切片における陽性面積をImageJソフトウェア(国立保健研究所、USA)を使用して測定した。
【0141】
[0191] 総RNAは、メーカーの説明書によってRNAiso(タカラバイオ、日本)を使用して肝臓試料から抽出した。1μgのRNAは、20μLの最終容量中の4.4mMのMgCl2(F.Hoffmann-La Roche,Switzerland)、40UのRNA分解酵素阻害剤(東洋紡、日本)、0.5mMのdNTP(Promega,USA)、6.28μMのランダム6量体(Promega)、5×first strand緩衝液(Promega)、10mMのジチオトレイトール(Invitrogen,USA)及び200UのMMLV-RT(Invitrogen)を含有する反応混合物を使用して逆転写した。反応を37℃にて1時間、それに続いて99℃にて5分行った。リアルタイムPCRを、リアルタイムPCR DICE及びTB GreenTM Premix Ex TaqTM II(タカラバイオ)を使用して行った。相対的mRNA発現レベルを計算するために、各遺伝子(TNF-α、IFN-γ、1型コラーゲン、TGF-β、TIMP-1及びMCP-1)の発現を、参照遺伝子36B4(遺伝子記号:Rplp0)の発現に規格化した。PCR-プライマーセットの情報は表1.1において記載し、プレート構成は表1.2において記載する。
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
[0192] 血漿試料について、100μLの非絶食時の血液を、抗凝血剤(Novo-ヘパリン)を有するポリプロピレンチューブ中に集め、1,000×gで4℃にて15分間遠心した。上清を集め、生化学のために-80℃にて貯蔵した。
【0145】
[0193] 血清試料について、非絶食時の血液を、直接の心臓穿刺によって抗凝血剤を有さない血清分離チューブ(アズワン、日本)中に集め、3,500×gで4℃にて5分間遠心した。上清を集め、出荷のために-80℃にて貯蔵した。
【0146】
[0194] 肝臓試料について、左側葉を集め、6つの断片へと切断した。左側葉の2つの断片をボーインズ溶液中で固定し、次いで、パラフィン中に包埋した。パラフィンブロックを組織学的分析のために室温にて貯蔵した。左側葉の他の2つの断片を、O.C.T.コンパウンド中に包埋し、液体窒素中で急速冷凍した。O.C.T.ブロックを出荷のために-80℃にて貯蔵した。左側葉の残りの断片を液体窒素中で急速冷凍し、遺伝子発現アッセイのために-80℃にて貯蔵した。右葉を液体窒素中で急速冷凍し、肝臓生化学のために-80℃にて貯蔵した。左及び右の中葉、並びに尾状葉を液体窒素中で急速冷凍し、出荷のために-80℃にて貯蔵した。
【0147】
[0195] GraphPad Prism6(GraphPad Software Inc.,USA)上でスチューデントt検定を使用して統計分析を行った。P値<0.05は、統計的に有意と考えた。片側t検定がP値<0.1を返したとき、トレンド又は傾向を仮定した。結果は平均±SDとして表す。
【0148】
[0196]実験計画及び処置
[0197] 研究群1(ビヒクル):8匹のNASHマウスに8~12週齢で、ビヒクル[生理食塩水]を5mL/kgの容量で週2回皮下投与した。
【0149】
[0198] 研究群2(化合物):8匹のNASHマウスに8~12週齢で、化合物を補充したビヒクルを10mg/kgの用量で週2回皮下投与した。
【0150】
【表4】
【0151】
[0199] 生存度、臨床的徴候及び挙動を毎日モニターした。処置期間の間に体重を毎日測定した。それぞれの投与の概ね60分後に、毒性、瀕死状態及び死亡の有意な臨床的徴候についてマウスを観察した。イソフルラン麻酔(Pfizer Inc.)下の直接の心臓穿刺による失血によって、12週齢において動物を屠殺した。
【0152】
[0200]結果
[0201] 体重の変化を図3において例示する。ビヒクル群及び化合物群の間で、処置期間の間の任意の日における平均体重において有意差は存在しなかった。
【0153】
[0202] 処置期間の間に、死亡したことが見出されたマウスは下記の通りであった;8匹のマウスのうち1匹は、ビヒクル群において死亡していることが見出された。
【0154】
[0203] 屠殺の日の体重を、図4及び表2において示す。ビヒクル群及び化合物群の間で、屠殺の日の平均体重において有意差は存在しなかった。
【0155】
[0204] 屠殺の日の肝臓重量及び肝臓重量対体重比を、それぞれ、図5A及び5B、並びに表2において示す。化合物群における平均肝臓重量は、ビヒクル群と比較して増加する傾向があった。ビヒクル群及び化合物群の間で、平均肝臓重量対体重比において有意差は存在しなかった。
【0156】
【表5】
【0157】
[0205] 血漿ALTを、図6A及び表3において示す。化合物群における血漿ALTレベルは、ビヒクル群と比較して、増加する傾向があった。
【0158】
[0206] 肝臓トリグリセリドを、図6B及び表3において示す。ビヒクル群及び化合物群の間で、肝臓トリグリセリド含量において有意差は存在しなかった。
【0159】
【表6】
【0160】
[0207] HE染色及びNAFLD活性スコアを、図7(A~H)及び表4.1において例示する。
【0161】
[0208] HE染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を、図7(A~D)において示す。
【0162】
[0209] 図7Eは、マウスのコホートについてのNAFLD活性スコアを示す。
【0163】
[0210] 脂肪症スコア、炎症スコア、及びバルーニングスコアのさらなる詳細は、それぞれ、図7F図7G、及び図7Hにおいて提供する。
【0164】
[0211] ビヒクル群からの肝臓切片は、微小胞及び大小胞の脂肪沈着、肝細胞バルーニング並びに炎症性細胞浸潤を示した。化合物群は、ビヒクル群と比較して、NASにおける有意な減少を示した。
【0165】
【表7】
【0166】
[0212] NASの成分を、表4.2において例示する。
【0167】
【表8】
【0168】
[0213] シリウスレッド染色した肝臓切片の代表的な顕微鏡写真を、図8(A~B)において示す。ビヒクル群からの肝臓切片は、肝小葉の中心周囲領域におけるコラーゲン沈着の増加を示した。化合物群は、図8Cに示されているように、ビヒクル群と比較して、線維症面積(シリウスレッド陽性面積)における有意な低減を示した。シリウスレッド染色を、表5において要約する。
【0169】
【表9】
【0170】
[0214]TNF-α
[0215] 図9A及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、TNF-α mRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0171】
[0216]INF-γ
[0217] 図9B及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、INF-γ mRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0172】
[0218]1型コラーゲン
[0219] 図9C及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、1型コラーゲンmRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0173】
[0220]TGF-β
[0221] 図9D及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、TGF-β mRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0174】
[0222]TIMP-1
[0223] 図9E及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、TIMP-1mRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0175】
[0224]MCP-1
[0225] 図9F及び表6において例示するように、ビヒクル群及び化合物群の間で、MCP-1mRNA発現レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0176】
【表10】
【0177】
実施例2:NASHのSTAMモデルにおけるXPRO1595の効果(続き)
[0226] In vitroでのさらなる分析を行って、実施例1のNASH研究における化合物の効果を評価した。
【0178】
[0227] 2つの群からの肝臓及び血清試料を使用した。
【0179】
[0228] 群1(ビヒクル):8匹のNASHマウスに8~12週齢で、ビヒクル[生理食塩水]を5mL/kgの容量で週2回皮下投与した。
【0180】
[0229] 群2(化合物):8匹のNASHマウスに8~12週齢で、化合物を補充したビヒクルを10mg/kgの用量で週2回皮下投与した。
【0181】
[0230] 血清CK-18レベルは、マウスサイトケラチン18-M30ELISAキット(Cusabio Biotech Co.,Ltd、China)によって定量化した。
【0182】
[0231] 免疫組織化学のために、切片をTissue-Tek O.C.T.コンパウンド中に包埋した冷凍した肝臓組織から切断し、アセトン中で固定した。内因性ペルオキシダーゼ活性を、0.03%H2O2を使用して5分間ブロックし、それに続いてBlock Ace(大日本住友製薬株式会社、日本)と共に10分間インキュベートした。
【0183】
[0232] 切片を、抗iNOS及び抗α-SMA抗体と共に室温にて1時間インキュベートした。二次抗体とのインキュベーションの後、3、3’-ジアミノベンジジン/H2O2溶液(株式会社ニチレイバイオサイエンス、日本)を使用して酵素-基質反応を行った。切片を抗F4/80抗体と共に室温にて1時間インキュベートした。次いで、切片を、ビオチンコンジュゲート二次抗体、それに続いてABC試薬と共にそれぞれ30分間室温にてインキュベートした。3、3’-ジアミノベンジジン/H2O2溶液(株式会社ニチレイバイオサイエンス、日本)を使用して酵素-基質反応を行った。一次抗体及び二次抗体のプロファイルを、表1において示す。
【0184】
[0233] iNOS、α-SMA及びF4/80陽性面積の定量分析のために、中心静脈の周りのiNOS、α-SMA及びF4/80免疫染色された切片の明視野像を、デジタルカメラ(DFC295;Leica,Germany)を使用して200倍の倍率で取込み、5つの場所/切片における陽性面積をImageJソフトウェア(国立保健研究所(National Institute of Health)、USA)を使用して測定した。
【0185】
【表11】
【0186】
[0234] GraphPad Prism6(GraphPad Software Inc.,USA)上でスチューデントt検定を使用して統計分析を行った。P値<0.05は、統計的に有意であると考えた。片側t検定がP値<0.1を返したとき、トレンド又は傾向を仮定した。結果を平均±SDとして表した。
【0187】
[0235] ビヒクル群及び化合物群の間で、血清CK-18レベルにおいて有意差は存在しなかった。
【0188】
【表12】
【0189】
[0236] ビヒクル群及び化合物群の間で、iNOS陽性面積において有意差は存在しなかった。
【0190】
[0237] ビヒクル群及び化合物群の間で、α-SMA陽性面積において有意差は存在しなかった。
【0191】
[0238] F4/80免疫染色された切片の代表的な顕微鏡写真を図10(A~B)において示す。化合物群は、ビヒクル群と比較して、F4/80陽性面積(炎症面積)における有意な減少を示した。図10Cは、炎症面積の結果を要約する。示されるように、炎症は、solTNF-αの阻害剤、特に、XPRO1595による処置の結果として減少する。
【0192】
【表13】
【0193】
[0239]実施例の要約及び結論
[0240] solTNF-αの選択的阻害剤による処置は、ビヒクル群と比較して、NAS及び線維症面積における有意な減少を示した。
【0194】
[0241] NASは、NASHの活性をアセスメントするための臨床的エンドポイントの1つであり(Sanyal AJ et al.,Hepatology,2011;54:344)、したがって、臨床解釈における重要な前臨床エンドポイントである。NASの改善は、ビヒクル群と比較して相当に減少した肝細胞バルーニングにおける変化に起因した。Rangwalaは、肝細胞バルーニング及びNASHに関連する線維症の密接なつながりについて報告した(Rangwala F.et al.,J.Pathol.,2011;224:401)。化合物による処置は、シリウスレッド染色によって示されるように、肝臓におけるコラーゲンの病理学的沈着を実際に相当に低減させた。このように、solTNF-αの選択的阻害剤で処置された群における肝細胞バルーニングの低減は、この研究において観察される抗線維症効果の基礎をなし得る。
【0195】
[0242] 結論として、solTNF-αの選択的阻害剤、すなわち、XPRO1595として公知のドミナントネガティブTNF-αタンパク質は、このNASHモデルにおいて抗NASH及び抗線維症効果を示した。
【0196】
産業上の利用可能性
[0243] 本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置において有用性を見出し、したがって、医療分野に適用可能である。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図11
【配列表】
2022533188000001.app
【国際調査報告】