(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】液体燃料のための添加剤、添加剤に基づく燃料組成物、および製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/18 20170101AFI20220713BHJP
【FI】
C01B32/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568878
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020033849
(87)【国際公開番号】W WO2020236962
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521504005
【氏名又は名称】フューアルジェムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポルンキン, イエブゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヤシンスキ, ヤツェク ボグダン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンニチェンコ, ドミトロ
(72)【発明者】
【氏名】ギチュンツ, キリル
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA07
4G146AB04
4G146AC16B
4G146AC17B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146BA04
4G146CB10
4G146CB35
(57)【要約】
ナノ構造は、1ナノメートル~1000ナノメートルの範囲の直径を有する、複数の実質的に球状の湾曲した炭素層、および炭素層の外側凸面に付着した複数のハロゲン原子を含む。組成物は、液体燃料、ならびに少なくとも1種の液体および複数のカーボンナノオニオンを含む添加剤を含む。液体燃料のための添加剤を製作する方法は、少なくとも1種の炭化水素ガス、ならびに/または炭化水素、有機金属の金属錯体および/もしくは元素有機化合物を含有する少なくとも1種の液体を含む環境においてプラズマを使用して、炭素系材料を作製するステップと、炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップと、炭素系材料をハロゲン化するステップと、ハロゲン化炭素系材料からカーボンナノオニオンを抽出するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ナノメートル~1000ナノメートルの範囲の直径を有する、複数の実質的に球状の湾曲した炭素層、および
前記炭素層の外側凸面に付着した複数のハロゲン原子
を含む、ナノ構造。
【請求項2】
層が、互いに同心である曲率中心を有する、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項3】
前記層が、複数の実質的に球状の湾曲したグラフェン層によって実質的に取り囲まれたフラーレン分子を含む、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項4】
前記複数のハロゲン原子が、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択される1000個未満のハロゲン原子を含む、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項5】
少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子をさらに含む、請求項1に記載のナノ構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、炭素系の多層構造の凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内に存在する、請求項5に記載のナノ構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、前記炭素層の外側凸面に付着している、請求項5に記載のナノ構造。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、前記炭素層の隣接する層の間に存在する、請求項5に記載のナノ構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、1族金属元素、2族金属元素、3族金属元素、4族金属元素、5族金属元素、6族金属元素、7族金属元素、8族金属元素、Li、K、Cu、Ag、Au、Mg、Ca、Zn、Cd、Al、Sn、Pb、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Pt、U、およびそれらの2つまたはそれよりも多くの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載のナノ構造。
【請求項10】
前記少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、鉄を含み、前記ナノ構造が、2%~30%の範囲の重量パーセンテージの鉄を有し、前記複数のハロゲン原子が、臭素を含み、前記ナノ構造が、2%~60%の範囲の重量パーセンテージの臭素を有し、前記炭素層の直径が、2ナノメートル~45ナノメートルの範囲であり、ガウス分布幅が20ナノメートル未満である、請求項5に記載のナノ構造。
【請求項11】
液体燃料、ならびに
少なくとも1種の液体および複数のカーボンナノオニオンを含む添加剤
を含む、組成物。
【請求項12】
前記複数のカーボンナノオニオンが、カーボンナノオニオン1個当たり複数のハロゲン原子を有し、前記複数のハロゲン原子が、前記カーボンナノオニオンの外側凸面に付着している、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記カーボンナノオニオンが、入れ子状態のフラーレン、多層フラーレン、炭素繊維で覆われた球根状物、閉じていない開いたままの炭素およびグラフェン環を含むバラ型のナノボタン状物を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記カーボンナノオニオンの少なくとも一部が、前記カーボンナノオニオンの内側凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内に存在する少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記カーボンナノオニオンの少なくとも一部が、前記カーボンナノオニオンの外側凸面に付着している少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
0.0001%~5%の範囲の重量パーセンテージの前記複数のカーボンナノオニオンを有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記複数のカーボンナノオニオンの重量パーセンテージが、0.0001%~0.5%の範囲である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1種または複数の補助成分をさらに含み、0.0001%~85%の範囲の重量パーセンテージの前記1種または複数の補助成分を有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
前記1種または複数の補助成分の重量パーセンテージが、0.01%~15%の範囲である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記液体燃料が、炭化水素燃料、ディーゼル燃料、バイオエタノール燃料、バイオディーゼル燃料、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、ガソリン、エタノール、陸上輸送燃料、飛行機燃料、鉄道輸送燃料、海上輸送燃料、ロケット燃料、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項21】
液体燃料のための添加剤を製作する方法であって、
少なくとも1種の炭化水素ガス、ならびに/または炭化水素、有機金属の金属錯体および/もしくは元素有機化合物を含有する少なくとも1種の液体を含む環境において、キロヘルツ範囲の高電圧パルス放電によって生じたプラズマを使用して、炭素系材料を作製するステップと、
前記炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップと、
前記炭素系材料をハロゲン化するステップと、
前記ハロゲン化炭素系材料からカーボンナノオニオンを抽出するステップと
を含む、方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の炭化水素ガスが、摂氏5~120度の範囲の温度の環境に、75~250kPaの範囲の圧力で供給されたメタン、エタン、プロパン、ブタン、プロペン、エチレン、テトラフルオロメタン、および/またはテトラフルオロエタンを含み、前記炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップが、前記炭素系材料を、大気圧において摂氏100~300度の範囲の温度に加熱することを含み、前記炭素系材料をハロゲン化するステップが、前記炭素系材料を、少なくとも1つのハロゲン含有材料に曝露すること、および前記炭素系材料から過剰のハロゲン含有材料を蒸発させることを含み、前記カーボンナノオニオンを抽出するステップが、前記ハロゲン化炭素系材料と溶媒の混合物を作製すること、および450ナノメートル未満の孔径を有する少なくとも1つのフィルターを使用して、前記混合物から前記カーボンナノオニオンを濾過して取り出すことを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種の液体が、ベンゼンに溶解したフェロセンを含み、前記少なくとも1種の液体が、2%~25%の範囲の重量パーセンテージの鉄を有し、前記プラズマを生じさせるステップが、前記少なくとも1種の液体にパルス放電を印加するために鉄電極を使用することを含み、前記パルス放電が、2kV~100kVの範囲の電圧、1mA~20Aの範囲の電流、および2kHz~200kHzの範囲の周波数を有し、前記炭素系材料をハロゲン化するステップが、前記炭素系材料を、摂氏30~40度の範囲の温度で10~80時間の範囲の期間、液体臭素に曝露すること、および前記炭素系材料を、真空圧力において摂氏20~120度の範囲の温度で加熱することによって、前記炭素系材料から過剰の臭素を蒸発させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記カーボンナノオニオンを抽出するステップが、前記ハロゲン化炭素系材料と溶媒の混合物を作製することを含み、前記添加剤が、前記溶媒を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、37C.F.R.§1.57の下で参照によりその全体が組み込まれる、2019年5月22日出願の米国仮出願第62/851,375号に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
背景
分野
本願は、液体燃料のための添加剤の分野に関する。より具体的には、本明細書では、炭化水素系液体燃料と混合するためのナノ粒子含有添加剤、添加剤に基づく燃料組成物、および製造方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
液体燃料(例えば、それらに限定されるものではないが、石油系燃料、例えばガソリンおよびバイオ燃料、例えばバイオディーゼルを含めた炭化水素系液体燃料)は、内燃エンジンにおいて使用され、性能の改善(例えば、燃焼効率の改善;燃焼プロセスの触媒作用的な改善;燃焼効率の増大;極圧性、耐摩耗性、および/または酸化防止性の改善)から利益を得ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
ある特定の実施形態では、ナノ構造が提供される。ナノ構造は、1ナノメートル~1000ナノメートルの範囲の直径を有する複数の実質的に球状の湾曲した炭素層、および炭素層の外側凸面に付着した複数のハロゲン原子を含む。
【0005】
ある特定の実施形態では、組成物が提供される。組成物は、液体燃料、ならびに少なくとも1種の液体および複数のカーボンナノオニオンを含む添加剤を含む。
【0006】
ある特定の実施形態では、液体燃料のための添加剤を製作する方法が提供される。方法は、少なくとも1種の炭化水素ガス、ならびに/または炭化水素、有機金属の金属錯体および/もしくは元素有機化合物を含有する少なくとも1種の液体を含む環境において、キロヘルツ範囲の高電圧パルス放電によって生じたプラズマを使用して、炭素系材料を作製するステップを含む。方法は、炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップをさらに含む。方法は、炭素系材料をハロゲン化するステップをさらに含む。方法は、ハロゲン化炭素系材料からカーボンナノオニオンを抽出するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A-1C】
図1A~1Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、凝集ナノ粒子を含む例示的なCNOの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【0008】
【
図2A】
図2Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面の原子間力顕微鏡(AFM)上面画像を示す。
【0009】
【0010】
【0011】
【
図3A】
図3Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
【0012】
【0013】
【
図4A】
図4Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
【0014】
【0015】
【0016】
【
図5A】
図5Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
【0017】
【0018】
【
図6】
図6は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、炭素粒子凝集体を含有する試料からのラマンスペクトルを示す。
【0019】
【
図7】
図7は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、液体燃料のための添加剤を製作する例示的な方法の流れ図である。
【0020】
【
図8】
図8は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、炭素系材料を製作するための例示的な装置を模式的に示す。
【0021】
【
図9】
図9および10は、それぞれ、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/Feおよび試料CNO中の例示的な粒子のTEM画像を表す。
【
図10】
図9および10は、それぞれ、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/Feおよび試料CNO中の例示的な粒子のTEM画像を表す。
【0022】
【
図11】
図11は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/FeおよびCNOからのラマンスペクトルを示す。
【0023】
【
図12A】
図12A~12Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/FeおよびCNOからのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す。
【
図12B】
図12A~12Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/FeおよびCNOからのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す。
【
図12C】
図12A~12Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/FeおよびCNOからのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載されるある特定の実施形態は、液体燃料のための添加剤、添加剤のための製造技術、ならびに/または添加剤および液体燃料を含む燃料組成物を提供する。液体燃料の例は、それらに限定されるものではないが、炭化水素燃料、自動車燃料、バイオエタノール燃料、バイオディーゼル燃料、エタノール、陸上輸送燃料、飛行機燃料、鉄道輸送燃料、海上輸送燃料、ロケット燃料、および燃料の混合物を含む。本明細書に記載されるある特定の実施形態は、添加剤を含まない燃料と比較して、有利なことには、燃料の燃焼プロセスの触媒作用的な改善、燃料の燃焼効率の増大、ならびにそれらに限定されるものではないが、液体燃料の極圧性、耐摩耗性および酸化防止性を含めた燃料の1つまたは複数の性質の改善の少なくとも1つを示す、燃料および添加剤の組合せを提供する。例えば、ある特定の実施形態では、燃料および添加剤の組合せは、添加剤を含まない燃料と比較して、以下の改善の1つまたは複数を提供することができる:
・エンジン効率を最大で15%増大すること、
・燃料を最大で15%節約すること、
・温室ガスを(例えば、未燃炭化水素を最大で50%)低減すること、
・微粒子物質を低減すること、
・エンジン摩擦を最大で80%(例えば、最大で10%)低減すること。
【0025】
本明細書に記載されるある特定の実施形態は、有利なことには、添加剤を含まない液体燃料の燃料消費と比較して、燃料消費を3%~20%低減する。本明細書に記載されるある特定の実施形態は、有利なことには、添加剤を含まない液体燃料の燃料燃焼と比較して、燃料燃焼効率を最大で50%増大する。本明細書に記載されるある特定の実施形態は、有利なことには、添加剤を含まない液体燃料と比較して、ある特定の温室ガス発生を最大で50%低減する。本明細書に記載されるある特定の実施形態は、有利なことには、添加剤を含まない液体燃料を燃焼するエンジンと比較して、添加剤を含む燃料組成物を燃焼するエンジンのシリンダーとピストンの間の摩擦を低減することによって、エネルギー(例えば、エンジンにおける燃料の燃焼から得られる)の喪失を低減する。
【0026】
以下、本開示の具体的な実施形態を、ここにより詳細に記載する。しかし、実施形態は、多くの様々な形態で表すことができ、本明細書に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろこれらの具体的な実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものであり、実施形態の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
ナノ構造
【0027】
ある特定の実施形態では、燃料組成物は、液体燃料(例えば、主要量または基本量の液体燃料)、および多層の「フラーレン様」球形ナノサイズの炭素クラスターである、ハロゲン由来の球形炭素系ナノ粒子(例えば、1ナノメートル~1000ナノメートルの範囲の直径を有する)を含む少なくとも1つの添加剤を含む。例えば、多層炭素系ナノ粒子は、「カーボンナノオニオン」(CNO)であると説明することができる(例えば、Marta E. Plonska-Brzezinska, “Carbon Nano-Onions: A Review of Recent Progress in Synthesis and Applications,” ChemNanoMat, Vol. 5, Issue 5, https://doi.org/10.1002/cnma.201800583 (2018)を参照されたい)。本明細書に記載される様々な実施形態による多層炭素系ナノ粒子の他の例として、それらに限定されるものではないが、入れ子状態のフラーレン、多層フラーレン(例えば、L. Zhou et al., “Facile Functionalization of Multilayer Fullerenes (Carbon Nano-Onions) by Nitrene Chemistry and ”Grafting From” Strategy,” Chemistry, 15(6):1389-96 (2009)を参照されたい)、巨大フラーレン(例えば、B.S. Xu, “Prospects and research progress in nano onion-like fullerenes,” J. New Carbon Materials, 23:289-301(2008)を参照されたい)、球または炭素球(例えば、D. Ugarte, “Curling and Closure of Graphitic Networks Under Electron-Beam Irradiation,” Nature 359:707 (1992); Y. Xia et al., “Monodispersed Colloidal Spheres: Old Materials with New Applications,” Adv. Mater. 12:693 (2000)を参照されたい)、角状物(horn)(例えば、J. Du et al., “Carbon onions synthesized via thermal reduction of glycerin with magnesium,” Mater. Chem. Phys. 93:178 (2005)を参照されたい)、フラスコ状物(flask)(例えば、R.K. Rana and A. Cadanken, “Carbon Nanoflask: A Mechanistic Elucidation of Its Formation,“ J. Phys. Chem. В 106:9769 (2002)を参照されたい)、リボン状物(例えば、J.-S. Lee et al., “Carbon nanosheets by the graphenization of ungraphitizable isotropic pitch molecules,” Carbon 121; 479-489 (2017)を参照されたい)、カーボンナノ球ボール、カーボンビーズ、カーボンブラック、メソ多孔性ビーズ、カーボンオニオン(例えば、M. Rizwan et al., “A highly sensitive electrochemical detection of human chorionic gonadotropin on a carbon nano-onions/gold nanoparticles/polyethylene glycol nanocomposite modified glassy carbon electrode,” Journal of Electroanalytical Chemistry, 833; 462-470 (2018)を参照されたい)、「炭素繊維で覆われた球根状物(bulb)」、「バラ型のナノボタン状物(nano button)」(例えば、閉じていない開いたままの炭素およびグラフェン環を含有する、不完全なカーボンナノオニオン)が挙げられる。これらの多層炭素系ナノ粒子を命名するための単一命名法は存在しないので、本明細書に記載される様々な実施形態による多層炭素系ナノ粒子は、カーボンナノオニオン(CNO)および多層フラーレンと交換可能に呼ばれる。
【0028】
ある特定の実施形態では、CNOは、内側炭素コア、および複数のグラフェン層(例えば、非晶質および/または秩序層)を含むシェルを有する。ある特定の実施形態のCNOは、以下の特質の1つまたは複数を有する:
・完全には球形でない層状構造、
・同心の炭素層、
・非同心の炭素層、
・非晶質ナノ構造、および/または
・不規則形状を有する固体小球。
例えば、ある特定の実施形態のCNOは、同心の層および非晶質ナノ構造の両方を含む。
図1A~1Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、凝集ナノ粒子を含む例示的なCNOの透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図1Aでは、個々のCNO粒子を、層状の同心の構造を有する凝集塊内に見ることができる。
図1Bでは、完全には円形でない炭素層を見ることができる。
図1Cでは、非晶質構造を見ることができる。
【0029】
ある特定の実施形態では、多層炭素系ナノ粒子は、完璧な球でも完全な球でもない複数の層を含む(例えば、層の1つまたは複数は、湾曲した部分的フラーレンである)。ある特定の実施形態では、複数の層の1つまたは複数の層は、一緒に固定されており(例えば、層の少なくとも1つは、層の少なくとも1つの他の層によって少なくとも部分的に結合された領域内に捕捉されている)、一方、ある特定の他の実施形態では、複数の層の1つまたは複数の層は、一緒に固定されていない(例えば、層の少なくとも1つは、層の少なくとも1つの他の層によって少なくとも部分的に結合された領域内に存在するが、捕捉されていない。キャベツ様構造)。
【0030】
ある特定の実施形態のCNOは、「CNOハロゲン2×」によって示すことができ、炭素原子の間の接続当たりハロゲン原子2個を含み、それらのハロゲン原子は、CNOの外側凸面に付着している。例えば、ある特定の実施形態のCNOハロゲン2×のナノ粒子は、20ナノメートルの幅(例えば、直径)を有することができ、1000個未満のハロゲン原子を含むことができる。ある特定の実施形態のCNOハロゲン2×のナノ粒子のハロゲン原子は、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択することができる。ある特定の実施形態のCNOは、窒素化合物または硫黄化合物を含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、CNOの少なくとも一部は、それぞれ、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子をさらに含み、「CNO(Elm)nハロゲン2×」によって示すことができ、ここでnは、非炭素かつ非ハロゲン原子の数を示す。少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子は、1族金属元素、2族金属元素、3族金属元素、4族金属元素、5族金属元素、6族金属元素、7族金属元素、8族金属元素、およびそれらの2つまたはそれよりも多くの組合せからなる群から選択することができる。少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子の例として、それらに限定されるものではないが、Li、K、Cu、Ag、Au、Mg、Ca、Zn、Cd、Al、Sn、Pb、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Pt、U、およびそれらの2つまたはそれよりも多くの組合せが挙げられる。例えば、Feを含むCNO(Elm)nハロゲン2×ナノ粒子は、20ナノメートルの幅(例えば、直径)を有することができ、50~100個のFe原子(例えば、50~250個のFe原子、50~500個のFe原子、100~1000個のFe原子)を含むことができる。ある特定の実施形態では、CNOの少なくとも一部は、エキソヘドラルであり(例えば、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、CNOの凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内に存在する)、一方、ある特定の他の実施形態では、CNOは、エンドヘドラルである(例えば、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子が、カーボンナノオニオンの外側凸面に付着している)。ある特定の他の実施形態では、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子は、CNOの隣接する炭素層の間に存在する。
【0032】
ある特定の実施形態のCNOは、炭素の球形ナノサイズ粒子(例えば、CNOおよび少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子を有するCNO)の、ハロゲンによる化学修飾の生成物である。ある特定の実施形態では、CNOの少なくとも一部は、球形多層フラーレン構造に類似しているが、球形多層フラーレン構造と比較してあまり構造化されず、それほど完全に成形されない。例えば、CNOの多層は、互いに同心である曲率中心を有することができ、および/またはCNOは、複数の実質的に球状の湾曲したグラフェン層によって実質的に取り囲まれたフラーレン分子を含むことができる(例えば、フラーレン分子は、球の形態の濃縮グラフェン層によって取り囲まれた多層フラーレンの内側球形コアとなる)。ある特定のこのような例では、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子は、CNOの内側(例えば、グラフェン層の間またはCNOの中心領域の内側)に含有される。
【0033】
ある特定の実施形態では、ナノ構造(例えば、CNO)は、1ナノメートル~1000ナノメートルの範囲(例えば、1ナノメートル~500ナノメートルの範囲、1ナノメートル~100ナノメートルの範囲)の幅(例えば、直径)を有する、複数の実質的に球状の湾曲した炭素層を含む。ナノ構造は、複数のハロゲン原子(例えば、20ナノメートルのサイズを有するナノ構造の1000個未満のハロゲン原子、塩素、フッ素、臭素、およびヨウ素からなる群から選択されるハロゲン原子)をさらに含み、複数のハロゲン原子は、炭素層の外側凸面に付着している。例えば、ナノ構造は、20ナノメートルの幅(例えば、直径)、および200~4000個の範囲のハロゲン原子(例えば、200~2000個の範囲のハロゲン原子、500~800個の範囲のハロゲン原子)のいくつかのハロゲン原子を有するCNOを含むことができる。
【0034】
例えば、ある特定の実施形態のナノ構造(例えば、CNO(Elm)nハロゲン2×)は、エキソヘドラル位置(例えば、CNOの外側凸面上)に複数のハロゲン原子を有し、CNO内(例えば、CNOの内側凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内)に1つまたは複数の非炭素かつ非ハロゲン原子を有するCNOを含む。別の例では、ある特定の実施形態のナノ構造(例えば、CNOハロゲン2×)は、エキソヘドラル位置(例えば、CNOの外側凸面上)に複数のハロゲン原子を有し、CNO内(例えば、CNOの内側凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内)に1つまたは複数の非炭素かつ非ハロゲン原子を有していないCNOを含む。
例示的なナノ構造
【0035】
本明細書に記載されるある特定の実施形態による、例示的なナノ構造(例えば、CNO(Elm)nハロゲン2×)では、少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子(Elm)は、鉄(Fe)原子を含み、ナノ構造は、2%~30%の範囲の重量パーセンテージの鉄を有し、複数のハロゲン原子(ハロゲン2×)は、臭素(Br)を含み、ナノ構造は、2%~60%の範囲の重量パーセンテージの臭素を有し、炭素層(CNO)の幅(例えば、直径)は、2ナノメートル~45ナノメートルの範囲であり、ガウス分布幅は20ナノメートル未満である。
【0036】
図2Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO(Elm)nハロゲン2×ナノ粒子(「CNO FeBr」ナノ粒子と示される)を含む表面の原子間力顕微鏡(AFM)上面画像を示し、ここで非炭素かつ非ハロゲン原子は、Feであり、ハロゲン原子は、Brである。
図2Bは、
図2Aの表面のAFM斜視画像を示し、
図2Cは、
図2Aの破線に対応するAFM線スキャンを示す。
図2CのAFM線スキャンは、それぞれ36.5ナノメートル、32.7ナノメートル、および36.3ナノメートルのサイズ(例えば、直径)を有する3つのCNO FeBrナノ粒子を示す。
【0037】
図3Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
図3Bは、
図3Aの破線に対応するAFM線スキャンを示す。
図3BのAFM線スキャンは、それぞれ24.1ナノメートル、11.8ナノメートル、および15.1ナノメートルのサイズ(例えば、直径)を有する3つのCNO FeBrナノ粒子を示す。
【0038】
図4Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
図4Bは、
図4Aの表面のAFM斜視画像を示し、
図4Cは、
図4Aの破線に対応するAFM線スキャンを示す。
図4CのAFM線スキャンは、それぞれ19.9ナノメートルおよび29.9ナノメートルのサイズ(例えば、直径)を有する2つのCNO FeBrナノ粒子を示す。
【0039】
図5Aは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、CNO FeBrナノ粒子を含む表面のAFM上面画像を示す。
図5Bは、
図3Aの破線に対応するAFM線スキャンを示す。
図3BのAFM線スキャンは、それぞれ4.6ナノメートル、7.1ナノメートル、および6.4ナノメートルのサイズ(例えば、直径)を有する3つのCNO FeBrナノ粒子を示す。
【0040】
図6は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、炭素粒子凝集体を含有する試料からのラマンスペクトルを示す。スペクトルは、それぞれ約1340cm
-1、1590cm
-1、2680cm
-1、2930cm
-1に位置する4つのピークを有する。約1590cm
-1におけるGバンドは、E
2gフォノンモードに対応する(例えば、F. Tuinstra and J.L. Koenig, “Raman spectrum of graphite,” Journal of Chemical Physics, 53: 1126-1130 (1970); . S. Dresselhaus et al., “Characterizing graphene, graphite, and carbon nanotubes by Raman spectroscopy,” Annual Review of Condensed Matter Physics, 1:89-108 (2010); A.C. Ferrari and J. Robertson, “Raman spectroscopy of amorphous, nanostructured, diamond-like carbon, and nanodiamond,” Phil. Trans. R. Soc. Lond. A, 362:2477-2512 (2004); A. C. Ferrari, “Raman spectroscopy of graphene and graphite: disorder, electron-phonon coupling, doping and nonadiabatic effects,” Solid State Communications, 143:47-57 (2007)を参照されたい)。約1340cm
-1におけるDピークは、ダイアモンド様構造の四面体状に結合した(sp
3)炭素原子に割り当てられることが多いフォノンモードである。黒鉛構造では、Dピークは、高い度合いの無秩序および欠陥から生じる。ラマン線は、相対的に広範であり、そのことは炭素材料の強力な無秩序を示し、HRTEM画像と合致している。約2680cm
-1における2Dピークは、Dバンドのオーバートーンである二次フォノンモードであり、その出現は、sp
2炭素面の存在を示す。しかし、このピークの相対的に低い強度および著しい広幅化は、強力な無秩序を示す。約2930cm
-1におけるD+Gピークは、sp
2およびsp
3C-H伸縮振動に割り当てることができる(例えば、R. Hawaldar et al., “Large-area high-throughput synthesis of monolayer graphene sheet by Hot Filament Thermal Chemical Vapor Deposition,” Sci. Rep., 2:682 (2012); R. Podila et al., “Raman spectroscopy of folded and scrolled graphene,” ACS Nano, 6:5784-5790 (2012); Y. Kawashima and G. Katagiri, “Fundamentals, overtones, and combinations in the Raman spectrum of graphite,” Physical Review B 52:10053-10059 (1995)を参照されたい)。その広幅化は、無秩序のさらに別の指標である。
燃料組成物
【0041】
ある特定の実施形態では、燃料組成物は、液体燃料(例えば、炭化水素燃料、ディーゼル燃料、バイオエタノール燃料、バイオディーゼル燃料、メチル-tert-ブチルエーテル、エチル-tert-ブチルエーテル、ガソリン、エタノール、陸上輸送燃料、飛行機燃料、鉄道輸送燃料、海上輸送燃料、ロケット燃料、およびそれらの組合せからなる群から選択される)、ならびに少なくとも1種の液体および複数のカーボンナノオニオン(例えば、入れ子状態のフラーレン、多層フラーレン、炭素繊維で覆われた球根状物、閉じていない開いたままの炭素およびグラフェン環を含むバラ型のナノボタン状物)を含む添加剤を含む。例えば、添加剤は、少なくとも1種の液体および複数のカーボンナノオニオンから本質的になることができる。ある特定の実施形態では、カーボンナノオニオンは、カーボンナノオニオンの外側凸面に付着した、カーボンナノオニオン1個当たり複数のハロゲン原子(例えば、カーボンナノオニオン1個当たり1000個未満のハロゲン原子、F、Cl、Br、Iからなる群から選択されるハロゲン原子)を含む。
【0042】
ある特定の実施形態のカーボンナノオニオンの少なくとも一部は、カーボンナノオニオンの内側凹面によって少なくとも部分的に結合された領域内に存在する少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子を有し、一方、ある特定の他の実施形態のカーボンナノオニオンの少なくとも一部は、カーボンナノオニオンの外側凸面に付着している少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子を有する。少なくとも1つの非炭素かつ非ハロゲン原子は、1族金属元素、2族金属元素、3族金属元素、4族金属元素、5族金属元素、6族金属元素、7族金属元素、8族金属元素、Li、K、Cu、Ag、Au、Mg、Ca、Zn、Cd、Al、Sn、Pb、Ti、Mo、W、Fe、Co、Ni、Rh、Pd、Pt、U、およびそれらの2つまたはそれよりも多くの組合せからなる群から選択することができる。
【0043】
ある特定の実施形態では、添加剤の少なくとも1種の液体は、1種または複数の脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、ベンゼン、ガソリン、トルエン、ヘプタン、デカンおよび/またはヘキサン、ならびに1リットル当たり0.01グラム~1リットル当たり10グラムの範囲(例えば、1リットル当たり0.05グラム~1リットル当たり5グラムの範囲、1リットル当たり0.1グラム~1リットル当たり5グラムの範囲、1リットル当たり0.2グラム~1リットル当たり5グラムの範囲、1リットル当たり0.05グラム~1リットル当たり3グラムの範囲、1リットル当たり0.2グラム~1リットル当たり3グラムの範囲、1リットル当たり0.01グラム~1リットル当たり1グラムの範囲、1リットル当たり0.2グラム~1リットル当たり1グラムの範囲、またはこれらの値のいずれかの間の任意の範囲、部分範囲もしくは範囲の組合せ)の濃度を有する複数のカーボンナノオニオンを含む。ある特定の実施形態では、添加剤の少なくとも1種の液体は、複数のカーボンナノオニオンの製作中にハロゲン化炭素系材料から複数のカーボンナノオニオンを抽出するのに使用される溶媒を含む。ある特定の実施形態では、燃料組成物は、添加剤および液体燃料を含み、添加剤は、液体燃料1リットル当たり0.5ミリリットル~液体燃料1リットル当たり50ミリリットルの範囲(例えば、液体燃料1リットル当たり0.5ミリリットル~液体燃料1リットル当たり25ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり0.5ミリリットル~液体燃料1リットル当たり5ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり0.5ミリリットル~液体燃料1リットル当たり3ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり1ミリリットル~液体燃料1リットル当たり20ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり2ミリリットル~液体燃料1リットル当たり10ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり2ミリリットル~液体燃料1リットル当たり5ミリリットルの範囲、液体燃料1リットル当たり3ミリリットル~液体燃料1リットル当たり10ミリリットルの範囲、またはこれらの値のいずれかの間の任意の範囲、部分範囲もしくは範囲の組合せ)の濃度を有する。ある特定の実施形態では、燃料組成物は、0.0001%~5%の範囲(例えば、0.001%~5%の範囲、0.0001%~0.1%の範囲、0.0001%~0.5%の範囲、またはこれらの値のいずれかの間の任意の範囲、部分範囲もしくは範囲の組合せ)の重量パーセンテージの複数のカーボンナノオニオンを有する。ある特定の実施形態では、燃料組成物は、1種または複数の補助成分をさらに含み、0.0001%~85%の範囲(例えば、0.01%~15%の範囲)の重量パーセンテージの1種または複数の補助成分を有する。ある特定の実施形態では、液体燃料は、燃料組成物の残余である。
【実施例】
【0044】
例示的な燃料組成物
表1は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、第1の例示的なE-90の燃料組成物を示す。
【表1】
【0045】
表2は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、第2の例示的なE-10燃料組成物を示す。
【表2】
【0046】
本明細書に記載されるある特定の実施形態では、添加剤のナノ粒子(例えば、CNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×)は、ナノサイズの添加剤を含まない燃料と比較して、あらゆる種類の燃料の燃焼プロセスを触媒作用的に改善する。本明細書に記載されるある特定の実施形態では、ナノサイズの添加剤は、ナノサイズの添加剤を含まない燃料と比較して、燃料の極圧性、耐摩耗、および/または抗酸化性を有利に改善する(例えば、自動車バイオエタノール燃料、非極性有機燃料、および/または他の燃料に対して)。
【0047】
ある特定の実施形態では、添加剤のハロゲン誘導体に基づくナノ粒子(例えば、CNO(Elm)nハロゲン2×)は、ナノ粒子を含まない燃料組成物と比較して、化合された自動車バイオエタノール燃料およびイソオクタンについて極圧および耐摩耗性を7%~80%有利に増大し、かつ/またはナノ粒子を含まないものと比較して、ベンジルアルコールの抗酸化物の性質を20%~15倍有利に増大する。
例示的な製作方法
【0048】
ある特定の実施形態では、液体燃料および添加剤を含む燃料組成物を製作する方法は、第1の量の液体燃料(例えば、一次の、主な、またはベースとなる液体燃料)および第2の量の添加剤(例えば、CNOのハロゲン誘導体、例えばCNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×に基づく添加剤)を供給するステップを含む。ある特定の実施形態では、方法は、第1の量の液体燃料および第2の量の添加剤を一緒に混合するステップをさらに含む(例えば、キャビテーターまたは任意の種類の他のミキサー中、室温および大気圧で)。ある特定の実施形態では、添加剤のナノ粒子の均等に分布したミックスが、液体燃料において達成される。
【0049】
図7は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、液体燃料のための添加剤を製作する例示的な方法700の流れ図である。ある特定の実施形態では、例示的な方法700は、気相中に炭化水素からCNOおよび/またはCNO(Elm)を生じさせ、かつ/または液体有機媒体を含有する生成物の導入を使用して、生成方法の原材料の可能性を拡大し、生じた異なるナノ粒子の種別(例えば、品種)を増大する。CNOおよび/またはCNO(Elm)が、ベースとなる液体燃料(例えば、ガソリン)への可溶性が低く、溶液が不安定である、ある特定の実施形態では、CNOおよび/またはCNO(Elm)の化学的ハロゲン化が実施される(例えば、臭素または任意の他のハロゲンを使用する)。ある特定の実施形態では、例示的な方法は、無水エチルアルコールおよびナノ濾過を使用して、ハロゲン化CNOおよび/またはCNO(Elm)を抽出する。
【0050】
操作ブロック710において、方法700は、少なくとも1種の炭化水素ガス、ならびに/または炭化水素、有機金属の金属錯体および/もしくは元素有機化合物を含有する少なくとも1種の液体を含む環境において、キロヘルツ範囲の高電圧パルス放電によって生じたプラズマを使用して、炭素系材料を作製するステップを含む。プラズマは、ガスおよび/または少なくとも1種の液体に印加することができる。
【0051】
例えば、少なくとも1種の炭化水素ガスは、摂氏5~120度の範囲の温度の環境に、75~250kPaの範囲の圧力を用いて供給されたメタン、エタン、プロパン、ブタン、プロペン、エチレン、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエタン、および/または任意の炭素含有ガスを含むことができる。エキソヘドラルナノ粒子を含む炭素系材料を作製するために、少なくとも1種の液体は、物質(例えば、ベンゼン、ガソリン、Kaloshaガソリン、ヘキサール、ヘプタン、ブロモエタン、ブロモベンゼン)に溶解させた、有機金属化合物(例えば、カルシウムカーバイド、フェロセン、鉄(III)アセチルアセトネート、水酸化ニッケル、Zeiss塩、金属カルボニル)の溶液を含むことができ、有機金属化合物は、溶液中、0.5%~50%の範囲(例えば、0.5%~10%の範囲、1%~20%の範囲、5%~50%の範囲、またはこれらの値のいずれかの間の任意の範囲、部分範囲もしくは範囲の組合せ)の重量パーセンテージを有する。
【0052】
図8は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、炭素系材料を製作するための例示的な装置800を模式的に示す。装置800は、少なくとも1種の炭化水素ガス、ならびに/または炭化水素、少なくとも1つの有機金属、金属錯体化合物および/もしくは少なくとも1つの元素有機化合物(例えば、少なくとも1つの有機溶媒に溶解しており、有機溶媒の例として、それらに限定されるものではないが、脂肪族および芳香族炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、ならびに有機アミンおよびアミドが挙げられる)を含む少なくとも1種の液体を含む環境内において、高周波数(例えば、キロヘルツ範囲)の高電圧短パルス放電によって生じる非平衡(例えば、不平衡)プラズマを発生させる高周波数パルス放電方法を使用して、ナノ粒子を製作するように構成されている。
【0053】
ある特定の実施形態では、キロヘルツの繰り返し周波数を用いる放電によって生じる非平衡(例えば、不均一)プラズマにより、大きい体積(例えば、量)の気体または液体化学物質の合成プロセスをもたらす。例えば、プラズマは、反応が生じる環境に、容積測定作用(例えば、ポンピングエネルギー)を行うことができる。気相中にナノカーボン材料を生成するための原材料は、金属を含まないCNOを得るために、炭化水素ガス(例えば、プロパンおよび/またはブタン)を含むことができ、または金属(例えば、鉄)を含むCNOを得るために、容易に揮発する有機金属化合物を含むことができる。
【0054】
図8に模式的に示される通り、装置800は、少なくとも1種の炭化水素ガスおよび/または少なくとも1種の液体を含有するように構成された反応器チャンバ810を含む。装置800は、少なくとも1種の炭化水素ガスおよび/または少なくとも1種の液体を、反応器チャンバ810に制御可能に供給するように構成された、少なくとも1つの供給源820をさらに含む。装置800は、反応器チャンバ810内に製作された炭素系材料を受けるように構成された、少なくとも1つの出力レセプタクル830をさらに含む。装置800は、反応器チャンバ810内に少なくとも1つの第1の電極850と電気的に連通している、AC電気エネルギーの少なくとも1つの供給源840を、および反応器チャンバ810内に少なくとも1つの第2の電極860をさらに含む。少なくとも1つの第2の電極860は、反応器チャンバ810内に移動させられる(例えば、ドライバー870によって)ように構成されている。少なくとも1つの第1の電極850および少なくとも1つの第2の電極860は、反応器チャンバ810内の少なくとも1つの供給源840から少なくとも1種の炭化水素ガスおよび/または少なくとも1種の液体に、AC電気エネルギー(例えば、200kHzまたはそれ未満の周波数における100kVまたはそれ未満の電圧)を印加するように構成されている。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の電極850は、少なくとも1つの第2の電極860(例えば、移動しないように固定されているか、または構成されている)に対して、反応器チャンバ810内で制御可能に移動させられるように構成されている。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の電極850および/または少なくとも1つの第2の電極860は、導電材料を含み、その例として、それらに限定されるものではないが、黒鉛、周期表の1族、2族または3族の金属、ならびに周期表の4族、5族、6族、7族または8族の元素および金属が挙げられる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの第1の電極850および/または少なくとも1つの第2の電極860は、反応器チャンバ810内の反応溶液および環境において使用される金属有機化合物および錯体を含む。例えば、少なくとも1つの第1の電極850および/または少なくとも1つの第2の電極860は、CNO(Elm)ナノ粒子の内側となる材料の原子を含むことができる。
【0055】
操作ブロック720において、方法700は、炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップをさらに含む。例えば、炭素系材料から有機材料を蒸発させるステップは、炭素系材料を、摂氏50~300度の範囲(例えば、摂氏50~100度の範囲、摂氏100~120度の範囲、摂氏120~150度の範囲、摂氏100~300度の範囲、摂氏150~300度の範囲、またはこれらの値のいずれかの間の任意の範囲、部分範囲もしくは範囲の組合せ)の温度に、大気圧で加熱することを含むことができる。
【0056】
操作ブロック730において、方法700は、炭素系材料をハロゲン化するステップをさらに含む。例えば、炭素系材料をハロゲン化するステップは、炭素系材料を少なくとも1つのハロゲン含有材料に曝露すること、および炭素系材料から過剰のハロゲン含有材料を蒸発させることを含むことができる。ある特定の実施形態では、方法700は、少なくとも1つの窒素化合物または少なくとも1つの硫黄化合物を使用して、炭素系材料を改変するステップをさらに含む。例えば、窒素化合物または硫黄化合物のいずれかを用いて炭素系材料を改変するステップは、炭素系材料を、少なくとも1つの窒素含有材料または少なくとも1つの硫黄含有材料に曝露すること、および炭素系材料から過剰の窒素含有材料または過剰の硫黄含有材料を除去することを含むことができる。
【0057】
操作ブロック740において、方法700は、ハロゲン化炭素系材料からカーボンナノオニオンを抽出するステップをさらに含む。例えば、カーボンナノオニオンを抽出するステップは、ハロゲン化炭素系材料と溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、エタノール、ヘプタン、デカン、ガソリン、ヘキサンまたは球形ナノスケール炭素系クラスターを分離するのに有効な他の溶媒)の混合物を作製し、混合物から、450ナノメートル未満(例えば、250ナノメートル未満、200ナノメートル未満、100ナノメートル未満)の孔径を有する少なくとも1つのフィルターを使用してカーボンナノオニオンを濾過して取り出すことを含むことができる。ある特定の実施形態では、カーボンナノオニオンを抽出するステップは、ハロゲン化炭素系材料と溶媒の混合物を作製することを含み、添加剤は、溶媒を含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、得られた燃料組成物は、0.0001%~5%の範囲(例えば、0.001%~5%の範囲、0.0001%~0.1%の範囲、0.0001%~0.5%の範囲)の重量パーセンテージの、添加剤のCNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×ナノ粒子を有する。ある特定の実施形態では、燃料組成物は、1種または複数の補助(例えば、支援)成分をさらに含み、0.0001%~85%の範囲(例えば、0.01%~15%の範囲)の重量パーセンテージの1種または複数の補助成分を有する。ある特定の実施形態では、液体燃料は、燃料組成物の残余である。
【0059】
例えば液体ベースの製作では、溶液は、ベンゼン(例えば、1~20%のフェロセンおよび99%~80%のベンゼンを含有する)に溶解した、計算された量のフェロセン(Fe(C5H5)2)を含むことができ、次に溶液を、ガラス製またはエナメル加工反応器チャンバ810(例えば、石油製品の化学的処理において使用されるような)に注いで、鉄電極850、860および電気エネルギー供給源840(例えば、ジェネレーター)から印加された電流を用いて、溶液中にプラズマ(例えば、2kV~100kVの範囲の電圧、1mA~2Aの範囲の電流、および2kHz~200kHzの範囲の周波数)を生じさせることができる。ある特定の実施形態では、電気エネルギーは、1~10時間の範囲の期間、室温および大気圧で印加することができる。得られた炭素系材料(例えば、炭素すす)は、2wt%~25wt%の範囲の鉄含量を有し、磁性を有する、Fe原子を含むCNOナノ粒子を含有する。炭素系材料は、本明細書に記載される通り、反応器チャンバ810から取り出し、さらなる処理のために乾燥させ、清浄にすることができる。
【0060】
ガスベースの製作の別の例では、少なくとも1種の炭化水素ガスは、プロパンを含むことができ、かつ/またはブタンを室温および1.01気圧の圧力で供給することができ、プラズマ(例えば、摂氏10,000~100,000度の範囲のプラズマ温度を有することができる)に高い率のエネルギーを入力することにより、十分に高い温度および圧力(例えば、ナノカーボン合成が行われるレベルで)を得ることができる。
【0061】
ガスベースの製作によって作製されようと、液体ベースの製作によって作製されようと、得られた炭素系材料(例えば、炭素すす)は、乾燥させ、清浄にすることができ(例えば、乾燥キャビネット内を摂氏100~300度の範囲の温度において大気圧で加熱することによって、有機物質を蒸発させる方法を使用する)、ハロゲン化は、化学反応器内で行うことができる。例えば、炭素系材料は、液体臭素を用いて10~80時間、摂氏30~40度で処理して、CNOナノ粒子を活性化し、改変することができる。
【0062】
過剰のハロゲンは、蒸発させることができ、ハロゲン化炭素系材料は、乾燥させることができ、ナノ粒子は、様々な溶媒(例えば、エタノール)によって抽出することができる。例えば、ハロゲン化炭素系材料は、真空中で摂氏20~120度の温度において3時間乾燥させて、湿気およびCNOナノ粒子と反応しなかった過剰のハロゲン(例えば、臭素)を除去することができる。活性化(例えば、ハロゲン化)ナノ粒子(例えば、CNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×)は、溶媒(例えば、エタノール、または球形ナノスケール炭素系クラスターを分離するのに有効な他の溶媒)に溶解させ、次に濾過する(250~450ナノメートル以下の孔径を有するナノ粒子フィルターを使用する)ことによって抽出することができる。
【0063】
本明細書に記載されるある特定の実施形態は、添加剤のために塩素化、フッ素化、および/または臭素化したCNOおよび/またはCNO(Elm)ナノ粒子を使用する。ある特定の実施形態では、ナノスケール添加剤を得るために、CNOおよび/またはCNO(Elm)ナノ粒子のハロゲン誘導体を、抽出および構造形成のために、アルカノールアルコールと共に化学反応器に供給する。
【0064】
ある特定の実施形態では、CNOおよび/またはCNO(Elm)ナノ粒子の無水エタノール溶液(例えば、0.2wt%の含水量を有するエタノール100ml(79.9g)当たり0.0001wt%のCNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×ナノ粒子のハロゲン誘導体を含有する)を得るために、本明細書に記載されるある特定の実施形態は、0.0001×0.799=0.000079gのCNOハロゲン2×および/またはCNO(Elm)nハロゲン2×ナノ粒子を使用する。得られたナノスケール添加剤は、任意の種類のミキサー内で、処理のために液体燃料と(例えば、任意の補助成分とも)混合して、完成した燃料組成物を得ることができる。
例示的測定
【0065】
図9および10は、それぞれ、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/Feおよび試料CNO中の例示的な粒子のTEM画像を表す。両方の試料の低拡大率画像(上の行の画像)は、相互接続した丸い粒子の凝集体を示している。粒子は、試料CNO/Fe中、約20~30nmの、試料CNO中、約40~50nmの直径を有する。これらの粒子の詳細な構造は、
図9および10の中央の行および下の行に示される高分解(HR)TEM画像に見ることができる。両方の試料において、粒子は、乱層構造の炭素を有する。粒子は、sp
2炭素の黒鉛平面を含む(例えば、それから構成される)。多くの場所で、平面は、互いに同心のかつ平行であり、オニオン様の炭素(OLC)構造を形成する(例えば、C. Portet et al., “Electrochemical performance of carbon onions, nanodiamonds, carbon black and multiwalled nanotubes in electrical double layer capacitors,” Carbon, 45(13), pp.2511-2518 (2007)を参照されたい。しかし、粒子は、高い度合いの無秩序およびいくらかの非晶質炭素も示す。さらに、多くの粒子が、それらのコア内にいくつかの球形の空洞を示す。観察された形態学的特色(例えば、無秩序なOLC構造およびコアの空洞を有する、相互接続した球形粒子の凝集体)は、すす材料に特徴的である(例えば、M. Pawlyta and H. Hercman, “Transmission electron microscopy (TEM) as a tool for identification of combustion products: application to black layers in speleothems,” Annales Societatis Geologorum Poloniae, Vol. 86 (2016)、P. Verma et al., “Impact of fuel oxygen on morphology and nanostructure of soot particles from a diesel engine, (2018)、Y.Z. An et al., “Development of a soot particle model with PAHs as precursors through simulations and experiments,” Fuel, Vol. 179, pp.246-257 (2016)を参照されたい。試料CNO/FeのHRTEM画像のほとんどにおいて、より暗い色の球形スポットとして現れるさらなる特色は、5nm未満のサイズを有する、小さい鉄含有ナノ粒子である。
【0066】
図11は、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/Fe(左)およびCNO(右)からのラマンスペクトルを示す。挿入図は、試料CNO/Feについて背景差分処理した低エネルギー領域を示す。炭素ピークに特徴的な領域にわたって両方の試料において目に見える、強力な広帯域は、これらの試料における高濃度の臭素から生じる強力な発光ピークである。検出することができる唯一のラマンシグナルは、試料CNO/Feについて測定された低エネルギー構造である(左パネルの挿入図を参照されたい)。このスペクトルは、FeBr
4錯体の伸縮モードから生じるものとして特定することができる(例えば、A. Garcia-Saiz et al., “1-Ethyl-2, 3-dimethylimidazolium paramagnetic ionic liquids with 3D magnetic ordering in its solid state: synthesis, structure and magneto-structural correlations,” RSC Advances, 5(75), pp.60835-60848 (2015)、Z. Li et al., “Ionic iron (III) complexes bearing a dialkylbenzimidazolium cation: Efficient catalysts for magnesium-mediated cross-couplings of aryl phosphates with alkyl bromides,” Applied Organometallic Chemistry, 31(8), p. e3671 (2017)を参照されたい)。
【0067】
図12A~12Cは、本明細書に記載されるある特定の実施形態による、試料CNO/Fe(左)およびCNO(右)からのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す。サーベイスペクトル(
図12A)に示される通り、両方の試料がC、O、およびBrを含有していた。さらに、試料CNO/Feは、HRTEMおよびラマンの結果に基づいて予想される通り、Feを含有していた(
図12Aの挿入図を参照されたい)。C1およびBr3d領域の高分解XPSスペクトルは、それぞれ
図12Bおよび12Cに示される。両方の試料について、C1スペクトルの分析により、約284.8、285.5、286.5、および289eVにおいて4つの主成分が得られ、それらは、それぞれ(1)sp
2炭素、(2)sp
3炭素、(3)C-O、O-C-O、およびC-Br群、ならびに(4)COOHに対応している。Br3dの同様の分析は、BrおよびC-Br元素群の存在を示す。
【0068】
本発明の技術はまた、本発明の技術の個々の態様の単一例として意図される、本明細書に記載される特定の態様に関して制限されるべきではない。当業者に明らかな通り、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明のこの技術の多くの修正および変更を行うことができる。先の説明から、本明細書に列挙されるものに加えて、本発明の技術の範囲内の機能的に等価な方法が、当業者に明らかになろう。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本発明のこの技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、標識化合物または生物系に限定されず、それらは当然のことながら変わることができると理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、単に特定の態様を説明することを目的とし、制限することを意図されないことも理解されるべきである。したがって、本明細書は、添付の特許請求の範囲、その定義およびその任意の等価物だけによって示される本発明の技術の幅、範囲および精神を伴い、単に例示的なものとみなされることが意図される。
【0069】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない任意の元素(単数または複数)、制限(単数または複数)の非存在下で、適切に実施され得る。したがって例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」等の用語は、制限なく広範に読まれるべきである。さらに、本明細書で用いられる用語および表現は、制限ではなく説明の用語として使用されており、示され記載される特色またはその一部の任意の均等物を排除するような用語および表現の使用は意図されないが、特許請求される技術の範囲内で、様々な修正が可能であると認識される。さらに、「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、特許請求される技術の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない、具体的に列挙されている要素および追加の要素を含むことを理解されよう。「からなる(consisting of)」という句は、特定されていない任意の要素を排除する。
【国際調査報告】