(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ラクトース粉末床3次元印刷
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20220713BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220713BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220713BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220713BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220713BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20220713BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220713BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220713BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/20
A61K9/24
B33Y10/00
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568918
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020064035
(87)【国際公開番号】W WO2020234335
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520138162
【氏名又は名称】ディーエフイー ファーマ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ヒューベル、コリンデ
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA40
4C076BB01
4C076DD67A
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF05
4C076FF33
4C076GG05
4C076GG14
(57)【要約】
錠剤などの、医薬製剤の3D印刷であって、バインダー液体は粉末の層上に滴下して堆積され、これらの工程は、固体薬物製品を生み出すために、1つ以上のパターンで、繰り返される3D印刷が開示される。本発明に従って、粉末は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)印刷による医薬製剤の製造でのラクトース粒子の使用であって、前記印刷は、粉末床の重ね合わせた層上への液滴の繰り返し堆積を含み、ここで、前記粉末床は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む使用。
【請求項2】
前記D10は、少なくとも10μm、好ましくは少なくとも25μmである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記D10値は、最大でも60μm、好ましくは最大でも50μmである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記D10値は、10μm~25μmの範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記D10値は、25μm~35μmの範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記D10値は、35μm~50μmの範囲にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記ラクトース粒子は、1.10~1.50のHausner比又は30未満のCarrの指数のいずれか又は両方で特徴付けられる嵩密度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記粉末床は、プレゼラチン化デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、親水性ポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から好ましくは選択される、バインダーの粒子を更に含む、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記バインダーは、プレゼラチン化ジャガイモデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記液滴、前記粉末床、又は両方は、原薬を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
3D印刷による医薬製剤の製造に好適な粉末床を生み出すためのキットであって、前記キットは、ラクトース粒子及びバインダー粒子を含み、ここで、前記ラクトース粒子は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するキット。
【請求項12】
前記ラクトース粒子は、請求項2~7のいずれか一項に記載のとおりである、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記バインダー粒子は、請求項8又は9に記載のとおりである、請求項11又は12に記載のキット。
【請求項14】
3次元(3D)印刷による固体医薬製剤の調製方法であって、粉末の第1層を提供する工程、粉末の拘束層を提供するために前記第1層上へバインダー液体のパターンを堆積させる工程、前記第1層上へ前記粉末の第2層を適用する工程、粉末の一連の2つの拘束層を提供するために前記第2層上へバインダー液体のパターンを堆積させる工程、印刷された3次元固体医薬製剤を提供するために、粉末の更なる層を提供し続け、それぞれこれにバインダー液体の更なる堆積が続く工程を含み、前記粉末は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む方法。
【請求項15】
前記ラクトース粒子は、請求項2~7のいずれか一項に記載のとおりであり、好ましくは粉末の前記層の1つ以上は、請求項8又は9に記載のバインダーの粒子を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、3次元印刷による医薬組成物の製造に関する。特に、本発明は、好適なラクトース粒子上への3D印刷によって製造される錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
3次元(3D)印刷は、固体医薬品剤形を製造するための比較的新しい分野の技術である。2015年に、FDAが最初の3D印刷錠剤(てんかんの治療用のSpritam(登録商標))を認可して以降、それは興味を持たれている。そこで用いられる3D印刷技術は、バインダージェッティングとして知られる、インクジェット系3D印刷プロセスである。このプロセスは、バインダーを含む液体の小滴が、粉末の薄層上へプリントヘッドを通って選択的に計量分配される層ごとのやり方で動作する。液体は、液体ペーストを形成するために賦形剤と混合される、溶媒中の薬物の溶液であることができる。液体は、薬物なしであることができ、薬物は、粉末とブレンドして提供される。粉末床上への液滴の前述の堆積は、2次元の層状印刷パターンを生み出し、それによって粉末粒子は、結び付けられることになる。粉末床が次いで下げられ、粉末の新しい層が、一般に逆回転ローラーを用いて、広げられる。その後、バインダー液体の小滴が、粉末の新しい層一面に計量分配される。前述のプロセスは、所望の3D形状が得られるまで繰り返される。
【0003】
医薬品領域において、3D印刷プロセスは、幾つかの分野で潜在的な利点を有する。例えば、臨床段階1及び2試験材料の調製のための3D印刷の使用は、開発時間の節約を潜在的に可能にする。3D印刷はまた、オーダーメイド用量又は用量の組み合わせを含有する錠剤を小規模で製造することがより容易であろうから、オーダーメイド医療への扉を開く。加えて、比較的低い又は比較的高い用量の原薬、難溶性の原薬、及び様々な挑戦的な制御放出メカニズムなどの問題のある製剤を実現することが可能であろう。
【0004】
医薬製剤の3D印刷は、伝統的な製剤技法とはかなり異なる。したがって、異なる要件が使用される賦形剤について当てはまるであろうし、医薬製剤技術の分野における既存の知識は、3D印刷の分野に直接移転することができない。しかしながら、バインダージェッティング用の原材料の選択は、限定されており、規制上の理由から、薬学的に許容されることが知られている賦形剤を超えて見ることは好ましくない。更に、困難はいずれにしても克服されなければならないが、-一般に望まれるように-アルコールなどの有機溶媒よりもむしろ水性バインダージェッティング液体が使用される場合に、これらは、より困難だがやりいがいがあるものである。
【0005】
当業者は、医薬品3D印刷に好適である賦形剤を見出す課題に明らかに直面している。例えば、技術的に好適である全ての賦形剤が薬学的に許容されるとして知られているわけではない。いくつかの(ポリマー)賦形剤は、密な構造をもたらし、即時放出製剤に好適であるよりもむしろ、制御放出へのそれらの適用性を制限する。
【0006】
したがって、従来の錠剤化技法から公知の薬学的に許容される賦形剤であり、且つ、バインダージェッティングによる3D印刷の特有の、全く異なる技法に適した特性を有する賦形剤を見出すことが当技術分野において望ましい。好ましくは、水性バインダージェッティング液体を使用する場合に医薬製剤の3D印刷に好適である賦形剤を提供することが望ましい。
【0007】
好適性の指標には、賦形剤粒子の適切な湿潤、印刷された構造の十分な圧密、及び製剤からの液体のブリーディングの回避が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の願望により良く対処するために、本発明は、一態様において、3次元(3D)印刷による医薬製剤の製造でのラクトース粒子の使用であって、前記印刷は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む、粉末床の重ね合わせた層上への液滴の繰り返し堆積を含む使用を提示する。
【0009】
別の態様において、本発明は、3次元(3D)印刷による固体医薬製剤の調製方法であって、粉末の第1層を提供する工程、粉末の拘束層を提供するために前記第1層上へバインダー液体のパターンを堆積させる工程、第1層上へ粉末の第2層を適用する工程、粉末の一連の2つの拘束層を提供するために前記第2層上へバインダー液体のパターンを堆積させる工程、印刷された3次元固体医薬製剤を提供するために、粉末の更なる層を提供し続け、それぞれこれにバインダー液体の更なる堆積が続く工程を含み、ここで、粉末は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む方法を提供する。
【0010】
もっと更なる態様において、本発明は、3D印刷による医薬製剤の製造に好適な粉末床を生み出すためのキットであって、キットは、ラクトース粒子及びバインダー粒子を含み、ここで、ラクトース粒子は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するキットを提示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
【
図1-3】本発明に従ったラクトース粒子(
図1)及び本発明に従わないラクトース粒子(
図2、3)での印刷正方形の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記述
本発明は、粒度分布が3D印刷でのラクトース粒子の好適性に影響を及ぼし得るという発見に基づいている。特に、本発明者らは、微粒子の比較的低い存在が、印刷液体による好適な湿潤性の提供を可能にすることを見出した。それによって、好ましくは、改善された圧密と印刷液体の低減したブリーディングとを得ることができる。圧密は、粒子が一緒に保たれている程度を意味する。ブリーディングは、粉末床の1つの層上に適用された印刷液体が、粉末床のより低い層へ流れる望ましくない現象を意味する。この問題は、印刷プロセスの層ごとの性質を考慮すると、3D印刷では一般的である。
【0013】
所望のサイズ分布は、パラメータD10が少なくとも6μmであるという要件で特徴付けられる。これは、レーザー回折による粒度分布の測定を意味する。粒度測定は、実施例1に更に開示されるように、Helos Sympatec Particle Size Distribution分析装置を用いてそれに関して行われる。
【0014】
粒度分布を記載する場合に最も一般的に用いられる測定基準は、累積容積ベースの分率の10%、50%及び90%に対する切片であるD値(D10、D50及びD90)である。D値は、粒子が上昇する容積基準で配置されるときに、サンプルの容積を特定の百分率へ分ける球の直径と考えることができる。したがって、D10は、サンプルの容積の10%がこの値未満の直径の粒子からなる直径である。したがって、本発明での使用のために選択されるラクトース粒子は、容積の10%が少なくとも6μm未満の直径を有する粒子を含むようなものである。したがって、容積の90%は、6μm以上の、前述のレーザー回折法によって測定されるような、直径を有する粒子を含む。ラクトース粉末の分野において、これは、比較的大きい粒径、及びいずれにしても微粒子の低い存在を反映している。D値はまた、「d」又は「x」値としても知られている(すなわち、D10は、x10に相当する)。印刷された層状構造を最適化するために、D90値は好ましくは200μm未満、より好ましくは150μm未満である。
【0015】
本発明に使用されるラクトース粒子は好ましくは、少なくとも25μmなどの、少なくとも35μmなどの、少なくとも6μmの、Helos Sympatec Particle Size Distribution分析装置を用いる前述の方法によって測定されるような、D10値を有する。好ましくは、D10値は、最大でも50μmなどの、最大でも60μmである。D10値についての好ましい範囲は、10μm~25μm、或いは25μm~35μm、或いは35μ~50μmである。
【0016】
本発明のある実施形態では、本発明に使用されるラクトース粒子の粒度分布は、D50値で特徴付けられる。D50値は、好適には、50μm超、好ましくは65μm超などの、40μm超である。
【0017】
本発明に使用されるラクトース粒子は好ましくは、それらのHausner比で特徴付けられるなどの好適な流動性を有する。Hausner比は、式
【数1】
によって計算される。
式中、実施例に従って測定されるように、ρ
Bは、粉末の注ぎ(poured)嵩密度であり、ρ
Tは、粉末のタップ嵩密度である。
【0018】
本明細書で使用されるラクトース粒子は好ましくは最大でも1.41などの、1.3未満などの、1.2未満などの、1.50未満のHausner比を有する。Hausner比は、一般に1.10超である。
【0019】
或いは、本ラクトース粉末の流動性は、粉末の圧縮性を反映する、Carrの指数で特徴付けられる。
Carr指数は、式:
【数2】
によって計算される。
式中、V
Bは、自由に沈降することが許される場合に、所与の質量の粉末が占有するであろう容積を意味する。V
Tは、同じ質量の粉末がタッピングダウン後に占有するであろう容積を意味する。Carrの指数はまた、
【数3】
のように、上記のρB及びρTに関連して表すことができる。
【0020】
本明細書で使用されるラクトース粒子は好ましくは、30未満、好ましくは20未満のCarrの指数を有する。
【0021】
粒度分布の幅を示すための追加のパラメータはスパンである。容積ベースのサイズ分布のスパンは、
スパン=(D90-D10)/D50
のように定義され、
中点で正規化された、10パーセント点と90パーセント点とが、どれくらい離れているかの指標となる。
【0022】
本発明に使用されるラクトース粒子は好ましくは、3.0未満、好ましくは、1.0~2.0などの、2.0以下の比較的狭いスパンで特徴付けられる粒度分布を有する。
【0023】
それらの商品名で示される、好ましいラクトース粒子は、次のとおりリストアップすることができる:
【0024】
【0025】
ラクトース粒子は、本発明のD10要件が満たされているという条件で、一般に任意のタイプのものであることができる。ラクトースは、したがって、アルファ-ラクトース、ベータ-ラクトース、又はそれらの混合物であることができる。ラクトースは、結晶質ラクトース、非晶質ラクトース、又はそれらの混合物であることができる。ラクトースは、無水ラクトース、アルファラクトース一水和物などの、水和物又はそれらの混合物であることができる。ラクトースは、篩分けしたラクトース、噴霧乾燥ラクトース、又はそれらの混合物であることができる。ラクトースのタイプの様々な混合物及び粒子を得るための加工技法を使用することができる。好ましくは、ラクトース粒子は、アルファラクトース一水和物、最も好ましくは非噴霧乾燥アルファラクトース一水和物を含む又はそれからなる。
【0026】
カプセル及びとりわけ錠剤などの、伝統的な固体医薬製剤中に、賦形剤の正規の組み合わせが存在する。いくつかの場合には、錠剤は、好適な粉末を直接圧縮することによって製造される。頻繁には、錠剤は、先ず粉状の出発原料を粒状体にし、次いで粒状体を圧縮することによって製造される。顆粒はまた、カプセルを満たすために使用することができる。いくつかの賦形剤は、結果として生じた製剤において、例えば、安定剤又は着色剤の機能を有する。いくつかの賦形剤は、顆粒への粉末の加工において機能を有する。いくつかの賦形剤は、直接の圧縮助剤としての機能を有する。賦形剤はまた、結合機能を有することができる。
【0027】
一般に、医薬製剤における賦形剤は、下記:製剤の大半を製造するための、充填剤又は希釈剤;製剤からの原薬の放出及び溶解を容易にするための錠剤分解物質;成分を一緒に保持する及び製剤に十分な機械的強度を提供するためのバインダー;顆粒が造粒及び/又は錠剤化装置に接着するのを防ぐための加工助剤としての潤滑剤;顆粒又は直接圧縮錠剤がそれから製造される粉末の流動性を向上させるための加工助剤としての流動促進剤の1つ以上を含む。他の賦形剤は、湿潤剤(界面活性剤)、薬物のタイプ及びそれが放出されることになるやり方に応じて望ましい成分(例えば、吸着剤、緩衝剤、酸化防止剤、キレート剤、溶解エンハンサー、溶解遅延剤)、並びに嗜好性及び製剤の患者受容に役立つ試剤(例えば、着色剤、香料、甘味剤)などの、更なる加工助剤を含むことができる。
【0028】
製剤技術のレベルで、3D印刷は、前述の従来の製剤技術とは異なる要件及び可能性を有する。結果として、従来の賦形剤、とりわけ増量剤(充填剤、希釈剤)並びに附随するバインダー及び錠剤溶解物質、並びに潤滑剤は、3D印刷に必ずしも好適であるわけではない。
【0029】
本発明は、特に、増量剤としてのラクトースに関する。ラクトースの利点は、医薬品賦形剤としてのその幅広い受容性である。本発明は、特にインクジェット印刷(すなわち、当技術分野においてバインダージェッティングとして知られている)を用いる、その上広く受け入れられている医薬品賦形剤ラクトースを使った、3D印刷による医薬製剤の製造を可能にする。
【0030】
本発明は製剤技術を指向し、薬物に特有ではないことが理解されるであろう。すなわち、それは、ジェッティング装置によって液滴をそれから生み出すことができる溶液若しくは懸濁液若しくはペースト中に含まれ得る任意の薬物で、又は粉末床へ好適に溶け込み得る任意の原薬で用いることができる。原薬を3D印刷製剤中へ取り入れる技術は、当業者によく知られている。一般に、薬物は、溶液を形成するために好適な溶媒に溶解させられる。この溶液は、均質なペーストを形成するために他の賦形剤と混合することができる。この調製されたペーストは次いで、3Dプリンターへ供給され、所望の形状及び容積の薬物製品を創出するために小さい液滴で粉末床上へ噴霧される。この生成物は一般に錠剤と考えられるが、それは、3D印刷プロセスのおかげで、大部分は任意の所望の形状の固体医薬製剤であることができる。
【0031】
医薬製剤はまた薬物なしでも製造できることが理解されるであろう。これは、例えば、薬物負荷製剤が偽薬製剤と比較して試験される臨床試験にとって重要である。一般に、薬物負荷製剤と偽薬製剤とは外見から互いに区別できないことが望ましい。
【0032】
要望どおり、3D印刷によって製造される医薬製剤は、上で言及されたような従来型の賦形剤の1つ以上を含むことができる。これは、ジェッティング液体中又は粉末床中のどちらかに取り上げられるのに好適な任意の賦形剤であることができる。これは特に、用いられる製剤技術に特有であるわけではない賦形剤に当てはまることが理解されるであろう。これは、薬物のタイプ、所望の放出特性、並びに/又は製剤の所望の外観及び味覚に依存する賦形剤を意味する。
【0033】
本発明の製剤は、上で説明されたように繰り返して、粉末床上へバインダージェッティングすることによって製造される。粉末床は、上で説明されたような粒度特性を有するラクトースを含む。それによって、ある実施形態では、粉末床は、多くても少量の他の賦形剤が粉末床に存在する状態で、前記ラクトース粒子から本質的になる。これは、一般に、5重量%未満などの、2重量%未満などの、最大でも10重量%のそのような他の賦形剤を意味する。別の実施形態では、粉末床は、前記ラクトース粒子からなる。
【0034】
粉末床上へ噴霧される液体は、一般に、「バインダー液体」と称される。これは、バインダーとして働く成分だけをそれが含むことを意味しない。実際に、液体それ自体、例えば、水若しくはエタノール、又は別の好適な有機溶媒は、バインダーであることができる。好適な溶媒は、典型的には、薬学的に許容されると認められている溶媒である。これらの溶媒は、当業者によく知られており、好ましい溶媒は、不純物及び残留溶媒に関する2017年FDA勧告Q3Cの下で決定されたようなICH Class 3に従う。好ましい溶媒には、水、エタノール及びイソプロパノールが含まれる。薬物が液体を介して調合物に添加される場合、前記液体は、一般に、原薬の溶液又は分散系を含むであろう。液体の大半は、好ましくは、ラクトース粒子を湿らせるその能力のために選択され、例えば、水、又はエタノール若しくはイソプロパノールなどのアルコールである。好ましくは、液体は、水性であり、例えば、20/80~80/20などの、60/40~40/60などの、5/95~95/5の容積比の、水とエタノールとの混合物であることができる。より好ましくは、液体は、水又は5%のエタノールとの水である。前記液体に溶解させられる又は分散させられる好適なバインダーは、プレゼラチン化若しくは部分プレゼラチン化デンプン、好ましくはプレゼラチン化ジャガイモデンプン(名称Prejelで販売されるなどの)及び/又は部分プレゼラチン化トウモロコシデンプン;架橋デンプン若しくはカルボキシメチルデンプンなどのデンプン誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)若しくはポリビニルアルコール(PVA)などの親水性ポリマーである。バインダー及びラクトースはまた、単一粒子、同時加工粒子中に存在することができる。後者は、本発明に従ったラクトース粒子と理解されるべきである。そのような同時加工粒子は、したがって、上で定義されたような少なくとも6μmのD10を有するであろう。
【0035】
好ましい実施形態では、バインダーは、ジェッティング液体を介して添加されるのみならず、粉末床中にもまた存在する。これによって、粉末床は、前述のラクトース粒子及び少なくとも1つのバインダーの粒子を含む。バインダー粒子は、一般に、25質量%以下などの、35質量%以下の、好ましくは10質量%~20質量%の範囲で存在するであろう。ある実施形態では、粉末床は、上述のように、多くても少量の他の賦形剤が粉末床に存在する状態で、前記ラクトース粒子及び前記バインダー粒子から本質的になる。
【0036】
好適なバインダー粒子は、一般に、結果として生じる粉末床が好適な流動性を保持するようにラクトース粒子とブレンドすることができる。バインダー粒子はラクトース粒子の大半にわたって均質に分布していることが好ましい。これは、様々な方法で達成することができ、当業者は、ブレンドの結果として生じる流動性を標準方法によって評価することができるであろう。非限定的な更なるガイダンスとして、ラクトース粒子の流動性に匹敵する流動性を有するバインダー粒子を提供することができる。例えば、その場合に、バインダー粒子のCarrの指数値などの流動性パラメータは好ましくは、最大でも15%、好ましくは最大でも10%などの、最大でも25%だけラクトース粒子の同じパラメータから外れる。本発明に従って選択されるラクトース粒子の利点は、それらの流動性特性が一般に、バインダー粒子の不十分な流動性の相殺を可能にすることである。したがって、本発明は、ラクトースの流動性に似た流動性を必ずしも持たない比較的大量のバインダー粒子の存在を可能にする。
【0037】
好ましいバインダー粒子は、ポリビニルピロリドン(PVP)、Prejel(ジャガイモデンプン)などのプレゼラチン化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。
【0038】
粉末床がそれから提供される粉末の別の成分は、原薬であることができる。これらは、一般に、ラクトース粒子とブレンドすることができる、任意の形態、結晶質、溶媒和物、非晶質の固体物質であろう。ここで、また、選択されるラクトース粒子は、異なる流動性の粒子とブレンドされることを可能にするという利点を有する。
【0039】
ある実施形態では、粉末床は、その上へのジェッティング液体の各ランにおいて同じ組成を有するであろう。別の実施形態では、ランの又はそれ以上において適用されるような粉末床は、異なることができる。例えば、3D印刷された固体剤形の外側に接している層よりも多いバインダー粒子を、例えば、有する中心層を生み出すことが考えられる。同様に、ジェッティング液体は、各ランにおいて同じものであることができる、又はランの1つ以上は、異なるジェッティング液体を使って実施することができる。
【0040】
別の態様では、本発明は、3次元(3D)印刷による固体医薬製剤の調製方法である。本方法は、粉末の第1層を提供する工程、粉末の拘束層を提供するために前記第1層上へバインダー液体のパターンを堆積させる工程を含む。その後、通常は第1層を下げることによって、粉末の第2層が第1層上へ適用される。粉末の一連の2つの拘束層を提供するために、この第2層上に再びバインダー液体のパターンが堆積させられる。前述の工程は、印刷された3次元固体医薬製剤を提供するために、すなわち、粉末の更なる層を適用し、それぞれこれにバインダー液体の更なる堆積が続くことによって、続行される。各層におけるパターンは、最終製品の所望の3次元形状に応じて、同じものである又は異なることができる。本発明に従って、粉末は、全てのその実施形態において上で実質的に記載されたように、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む。
【0041】
3D印刷プロセスは、当業者がよく知っている装置及び設定値を用いて行うことができる。
【0042】
好適なプリンターは、例えば、Projet 460 3Dプリンター、Sideswipeプリンター又はRapix3D 2.1.21.0 Forwissである。
【0043】
別の態様では、本発明は、3D印刷による医薬製剤の製造に好適な粉末床を生み出すためのキットを提供する。このキットは、ラクトース粒子及びバインダー粒子を含み、ここで、ラクトース粒子は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有する。バインダー粒子は、上で考察されたとおりであり、好ましくは、プレゼラチン化ジャガイモデンプンなどの、プレゼラチン化デンプン、HPC、HPMC、PVP、及びPVAからなる群から選択される。好ましい実施形態では、粒子は、ラクトース及びバインダーを含む、同時加工賦形剤である。
【0044】
要するに、本発明は、錠剤などの、医薬製剤の3D印刷である。それによって、バインダー液体は、固体薬物製品を生み出すために、粉末の層上に滴下して堆積され、これらの工程は、1つ以上のパターンで、繰り返される。本発明に従って、粉末は、少なくとも6μmのD10で特徴付けられる粒度分布を有するラクトース粒子を含む。
【0045】
本発明は、以下の非限定的な例に関連して更に説明される。
【実施例】
【0046】
実施例1
ラクトースの特徴付け
Duchefa Farmaから入手した、Povidon K30を除いて、全ての原料は、DFE Pharma GmbH、Germanyから入手可能である。3D印刷のために使用した全てのラクトースグレードを、粒径並びに嵩密度及びタップ密度に関して測定した。
【0047】
粒径の測定方法:
粒子サイジング実験は、両方ともSympatec GmbH(Clausthal-Zellerfield, Germany)製の、Windox 5ソフトウェア(5.10.0.04)と連動したHelosレーザー回折装置を用いて行った。光学台に、同じサイズの粒子の回折パターンを検出器リングの配列上の同じ場所に集中させるためのR5フーリエレンズを備え付けた。このレンズは、4.5~850μmの粒径範囲をカバーする。Windoxソフトウェアは、粒度分布を生の散乱データから計算するために自由(FREE)モードに従って計算する。Vibri乾燥粉末供給機(Sympatec)と連動したRodos乾燥粉末計量分配装置を用いてラクトース粉末を乾燥計量分配した。測定の前に、真空にスイッチを入れ、バックグラウンド散乱を10秒間記録した。サンプルを次いで、定常流量で測定ゾーンに導入した。これは、ファンネルと粉末供給機トレイとの間の間隙を2mmに調整することによって得られた。振動供給率を85%に設定し、データ収集をチャネル12>0.2%での信号強度で開始し、データ収集をチャネル12上で0.5%~90%に維持した。粒子が完全に分散する及び磨砕が全く起こらない分散機圧力を評価するために圧力滴定を行った。結果に基づいて、1.5barの分散機圧力を選択した。全てのSympatec設定値を下の表1にまとめる。
【0048】
スパンを式:スパン=(D90-D10)/D50によって計算した。100gの重み付きサンプルをシリンダーに入れることによって嵩密度及びタップ密度を測定した。シリンダーをPoured and Tapped Density Meter Stav 2003上に置き、繰り返し2500タップを提供し、容積を書き留めた。Hausner比は、式:Hausner比=タップ密度/嵩密度によって計算した。注ぎ嵩密度をPBDとして、及びタップ嵩密度をTBDとして下に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
実施例2
正方形の印刷
調合物が錠剤印刷に向いているかどうかを評価するために、正方形(粉末の1層)を印刷し、湿潤、圧密及びブリーディングに関して評価することができる。正方形印刷は、次のとおり行った。
【0052】
表に示されるような調合物を、それが均質になるまでローラーバンク上で混合した。調合物を、Pronterfaceソフトウェアを用いるSideswipeプリンターで印刷した。粉末ブレンドを、手篩(700ミクロン)の助けを借りて印刷机上に手動で広げ、自動的にプリンター上にローラーで圧延した。水/エタノール(95/5容積/容積)混合物を、1.4cm2の9つの正方形へ、0.175barでの0.165mmプリントヘッド(lee社)を使って粉末床上に噴霧した。各正方形について異なるライン間隔を使用し(表3に示されるように)、9つの異なる湿潤正方形をもたらした。
【0053】
【0054】
【0055】
図1及び2において、表3に示されるような9つの異なるライン間隔で95%水/5%エタノールを使って印刷された正方形についての写真を示す。
図1は、10%のPrejelと90%のLactohale 206との組み合わせ(本発明による)で得られたような結果を示す。
図2は、10%のPrejelと90%のPharmatose 350Mとの組み合わせで得られた結果を示す。Pharmatose 350Mの湿潤は不適であり、別の層を適用するのに不適である粗い表面をもたらしたことを明らかに見ることができる。他方では。Lactohale 206は、錠剤を印刷するためにその上に次の層を堆積させることができる非常に滑らかな表面をもたらした。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
サンプルPrejel及びSupertab 11SD(噴霧乾燥ラクトース)について、正方形は、湿った外観を有した(
図3)。乾燥後に、正方形は、湾曲しており、もはや平らではなかった。圧密及び厚さは、最適ではなく、おそらく錠剤印刷は困難であろう。
【0060】
実施例3
錠剤の印刷
表8に示されるような調合物を、それが均質な混合物になるまでローラーバンク上で混合した。調合物を、Pronterfaceソフトウェアを用いるSideswipeプリンターで印刷した。
【0061】
粉末ブレンドを、手篩(700ミクロン)の助けを借りて印刷机上に手動で広げ、自動的にプリンター上にローラーで圧延した。水/エタノール(95/5容積/容積)混合物を、9mm円の形状で、0.45mmのライン間隔で及び2.22滴/分で、0.175barでの0.165mmプリントヘッド(lee社)を使って粉末床上に噴霧した。9mmの直径及び3mmの高さの平らな錠剤を創出するために、粉末堆積及び溶液噴霧を7回繰り返した。錠剤を粉末床から取り出し、オーブン中で50℃において一晩乾燥させた。表9に示されるような寸法及び質量の好適な錠剤が得られた。
【0062】
【0063】
【0064】
実施例4
錠剤の印刷及び錠剤特性の測定。
20μm超のD10の粉砕された及び分類されたラクトース一水和物(90重量%)と完全プレゼラチン化デンプン(10重量%)とを、それが均質な混合物になるまでローラーバンク上で混合した。調合物を、LeeバルブINKA2476210H(0.178mm)のPBP Nextプリンターで印刷した。粉末ブレンドを、ホッパーから粉末プラットフォーム上へ自動的に分散させ、自動的にプリンター上にローラーで圧延した。水/エタノール(95/5容積/容積)混合物を、ライン方向に0.43mmのライン間隔で及び2.22滴/分で粉末床上に噴霧した。9mmの直径及び2.8mmの高さの平らな錠剤を創出するために、粉末堆積及び溶液噴霧を7回繰り返した。錠剤をその後粉末床から取り出し、オーブン中で50℃において一晩乾燥させた。
【0065】
錠剤は、120mm/分(2mm/秒)の一定速度で自動化錠剤テスター(Sotax HT100)を使って測定される、61Nの許容される硬度を有することが分かった。更に、錠剤は、シンカーを備えた崩壊テスター(前Erweka GmbH)を使って37℃の脱塩水中で測定される、52秒の速い崩壊時間を有することが分かった。これらの特性は、錠剤に非常に好適と考えられた。
【国際調査報告】