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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20220713BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20220713BHJP
   C12Q 1/533 20060101ALI20220713BHJP
   C12Q 1/48 20060101ALI20220713BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
C12Q1/6806 ZNA
C12Q1/34
C12Q1/533
C12Q1/48
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569235
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 GB2020051260
(87)【国際公開番号】W WO2020234612
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1907244.6
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブルース,マーク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボーエン,レベッカ ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】マクニール,ルーク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ビジャレアル,シモン ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,サミュエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スタンフォード-アレン,レベッカ アン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA11
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QS34
(57)【要約】
モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法が本明細書に提供される。ポリヌクレオチドアダプターおよびかかるアダプターを含むキットも提供される。これらのアダプターは、ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動する方法においてポリヌクレオチドなどの分析物を特徴付ける際に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)前記ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)前記モータータンパク質を前記スペーサー上に配置することと、を含み、
前記ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止する、方法。
【請求項2】
i)ポリヌクレオチドアダプターを提供することであって、前記ポリヌクレオチドアダプターが、スペーサーと、前記ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含む、ことと、
ii)前記ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)前記モータータンパク質を前記スペーサー上に配置することと、を含み、
前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)前記ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)前記モータータンパク質を前記スペーサー上に前進させることと、
iv)ブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることと、を含み、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止する、方法。
【請求項4】
i)スペーサーに接続されたローディング部位を含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)前記ローディング部位をモータータンパク質と接触させることと、
iii)前記モータータンパク質を前記ローディング部位から前記スペーサー上に前進させることと、
iv)ブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることと、を含み、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて前記ローディング部位に移動するのを防止する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)が前記ローディング部位をモータータンパク質と接触させることを含み、前記モータータンパク質が前記ローディング部位と結合し、
ステップ(iv)がブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることを含み、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動して前記ローディング部位と再結合するのを防止する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止することにより、前記モータータンパク質がポリヌクレオチドに結合されたときと比較して、前記モータータンパク質が燃料分子を代謝回転する速度が低下する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドアダプターがスペーサーに接続されたローディング部位を含み、前記モータータンパク質が前記ポリヌクレオチドアダプターの前記ローディング部位に結合する、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モータータンパク質を前記スペーサー上に前進させることが、物理的または化学的力を前記モータータンパク質に加えることを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モータータンパク質を前記スペーサー上に前進させることが、前記モータータンパク質を1つ以上の燃料分子と接触させることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドアダプターがスペーサーに接続されたローディング部位を含み、前記モータータンパク質が第1のモータータンパク質であり、前記第1のモータータンパク質を前記ローディング部位から前記スペーサー上に前進させることが、第2のモータータンパク質を前記ローディング部位にロードすることと、前記第2のモータータンパク質を前記ローディング部位から前記スペーサーに向かって前進させることと、を含み、前記第2のモータータンパク質が前記第1のモータータンパク質を前記スペーサーに押し付ける、請求項1または3~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、前記モータータンパク質が前記スペーサーに押し付けられる、請求項1または3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドアダプターがスペーサーに接続されたローディング部位を含み、前記ブロッキング部分が前記ローディング部位に結合する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ローディング部位が前記スペーサーと隣接しており、前記ブロッキング部分が前記スペーサーに直接隣接する前記ローディング部位に結合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iii)が、前記スペーサーが前記モータータンパク質の活性部位を占有するように、前記モータータンパク質を前記スペーサー上に前進させることを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドアダプターがスペーサーに接続されたローディング部位を含み、前記ローディング部位が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ローディング部位が約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ブロッキング部分が物理的または化学的ブロッキング部分である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、前記モータータンパク質の前記スペーサーから外れた移動が立体的に防止される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ブロッキング部分を前記ポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、前記モータータンパク質の前記スペーサーから外れた移動を防止する化学基が導入される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記ローディング部分が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、前記ブロッキング部分が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、(ii)前記ブロッキング部分を前記ローディング部位に結合させることが、前記ブロッキング部分を前記ローディング部位にハイブリダイズすることを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ブロッキング部分が約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スペーサーが、
i)1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OCOPO)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC-C(O)NHCH-CNO-CH(CH)OPO]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCHCHOPO]基、もしくは1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCHCHOPO]基、
ii)1つ以上のチオール接続、
iii)1つ以上の脱塩基ヌクレオチド、
iv)前記ローディング部位とは異なる骨格構造を有する1つ以上のヌクレオチド、
v)前記1つ以上のモータータンパク質を失速させる1つ以上の化学基、および/または
vi)ポリマーであって、任意選択的に、ポリペプチドもしくはポリエチレングリコール(PEG)である、ポリマーを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記スペーサーが1つ以上のヌクレオチドを含み、好ましくは、前記スペーサーが1つ以上のヌクレオチドアイランドを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
i)前記ポリヌクレオチドアダプターが、1つ以上のヌクレオチド、好ましくは1つ以上のヌクレオチドアイランドを含むスペーサーと、前記ポリヌクレオチドアダプターに結合したブロッキング部分と、を含み、
ii)前記モータータンパク質を前記スペーサー上に配置することが、前記モータータンパク質を前記スペーサーと接触させることと、前記モータータンパク質が前記スペーサーから離脱するのを防止するように前記モータータンパク質を修飾することと、を含む、請求項1、2、6~9、または12~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記スペーサーが、
-S-N-S-N-S-N-S-、-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-S-、
-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、
-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、および-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-から選択される1つ以上の部分を含み、
式中、各Sがスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モータータンパク質が、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼ、またはそれらの変異形である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドアダプターの前記スペーサー上の前記モータータンパク質が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから離脱するのを防止するように修飾されている、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記または各モータータンパク質が、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼ、TrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、およびDdaヘリカーゼ、またはそれらの変異形から独立して選択されるヘリカーゼである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
v)前記スペーサー上に位置しない過剰なモータータンパク質分子を除去するステップをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)(A)標的ポリヌクレオチド、(B)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプター、および(C)モータータンパク質を提供することと、
ii)請求項1~29のいずれか一項に記載の方法を実行し、それにより、前記ポリヌクレオチドアダプターの前記スペーサー上の前記モータータンパク質を失速させることと、
iii)前記標的ポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドアダプターの前記スペーサー上の前記失速したモータータンパク質を前記ナノポアと接触させることと、
iv)電位を前記膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、前記モータータンパク質を、前記スペーサーを越えて前記標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、前記ナノポアに対する前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記モータータンパク質が前記ポリヌクレオチドアダプター上で失速した後に、前記ポリヌクレオチドアダプターが前記標的ポリヌクレオチドに結合する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドアダプターが前記標的ポリヌクレオチドに結合した後に、前記モータータンパク質が前記ポリヌクレオチドアダプター上で失速する、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)標的ポリヌクレオチドを提供することと、
ii)スペーサーを含み、かつモータータンパク質をその上で失速させるポリヌクレオチドアダプターを提供することであって、前記ポリヌクレオチドアダプターが請求項1~29のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、提供することと、
iii)前記標的ポリヌクレオチドおよび前記ポリヌクレオチドアダプターを前記ナノポアと接触させることと、
iv)電位を前記膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、前記モータータンパク質を、前記スペーサーを越えて前記標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、前記ナノポアに対する前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法。
【請求項34】
標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法であって、
i)請求項30~33のいずれか一項に記載の方法を実行することと、
ii)前記標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときに、前記標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す1回以上の測定を行い、それにより、前記標的ポリヌクレオチドが前記ナノポアに対して移動したときにそれを特徴付けることと、を含む、方法。
【請求項35】
(i)スペーサーと、(ii)前記スペーサー上で失速したモータータンパク質であって、前記モータータンパク質の活性部位が前記スペーサーによって占有されている、モータータンパク質と、(iii)アダプターに結合されたブロッキング部分であって、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止する、ブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプター。
【請求項36】
(i)前記アダプターが前記スペーサーに接続されたローディング部位を含み、前記ブロッキング部分が前記ローディング部位に結合され、(ii)前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記ローディング部位と結合するのを防止する、請求項35に記載のポリヌクレオチドアダプター。
【請求項37】
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lがブロックされたローディング部位であり、Sがスペーサーであり、Dが二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数である)と、
ii)前記スペーサー(S)上で失速した1つ以上のモータータンパク質と、を含み、
前記または各L部分が、前記または各モータータンパク質が前記二本鎖ポリヌクレオチド(D)から離れた方向に前記スペーサー(S)から外れて移動するのを防止する、請求項36に記載のポリヌクレオチドアダプター。
【請求項38】
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lが第1の二本鎖ポリヌクレオチドであり、Sがスペーサーであり、Dが第2の二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数であり、前記第1の二本鎖ポリヌクレオチド(L)が前記スペーサー(S)と隣接しており、前記スペーサー(S)が前記第2の二本鎖ポリヌクレオチド(D)と隣接している)を含み、
ii)1つ以上のモータータンパク質が前記スペーサー(S)上で失速する、請求項36または請求項37に記載のポリヌクレオチドアダプター。
【請求項39】
標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターと、
ii)前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、
iii)前記モータータンパク質が前記ポリヌクレオチドアダプターの前記スペーサー上に位置し、かつ前記モータータンパク質の活性部位が前記スペーサーによって占有されたときに、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのが防止されるように、前記ポリヌクレオチドアダプターに結合することができるブロッキング部分と、を含み、
任意選択的に、前記ポリヌクレオチドアダプターがローディング部位を含み、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記ローディング部位と結合するのが防止されるように、前記ポリヌクレオチドアダプターに結合することができる、キット。
【請求項40】
標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)ポリヌクレオチドアダプターであって、スペーサーと、前記ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプターと、
ii)前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、を含み、
前記モータータンパク質が前記アダプターに結合されたときに、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質が前記スペーサーから外れて移動するのを防止する、キット。
【請求項41】
前記ローディング部位、前記ブロッキング部分、および/もしくは前記スペーサーが各々独立して、請求項12~25のいずれか一項に定義されるとおりである、かつ/または
前記モータータンパク質が、請求項26~28のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項35~40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドアダプターまたはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法、この新規方法を使用してポリヌクレオチドを特徴付ける方法、および新規ポリヌクレオチドアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポアセンシングは、分析物分子とイオン伝導チャネルとの間の個々の結合または相互作用事象の観察に依存する分析物の検出および特徴付けへのアプローチである。ナノポアセンサーは、ナノメートル寸法の単一ポアを絶縁膜内に置き、分析物分子の存在下でポアを通る電圧駆動イオン電流を測定することによって作製することができる。ナノポアの内部または近くに分析物が存在する場合、ポアを通るイオン流が変化し、チャネルにわたって測定されるイオン電流または電流の変化がもたらされるであろう。分析物の同一性は、その固有の電流シグネチャ、とりわけ電流ブロックの期間および程度、ならびにポアとの相互作用時間中の電流レベルの変動を通して明らかになる。
【0003】
ポリヌクレオチドは、この様式で感知するための重要な分析物である。ポリヌクレオチド分析物のナノポアセンシングは、アイデンティティを明らかにし、感知された分析物の単一分子計数を行うことができるが、それらのヌクレオチド配列などのそれらの組成、ならびに塩基修飾、酸化、還元、脱炭酸、脱アミノ化などの特徴の存在に関する情報を提供することもできる。ナノポアセンシングは、迅速かつ安価なポリヌクレオチド配列決定を可能にする可能性があり、何十~何万塩基長ものポリヌクレオチドの単一分子配列リードを提供する。
【0004】
ナノポアセンシングを使用したポリマー特徴付けの重要な構成要素のうちの2つは、(1)ポアを通るポリマーの移動の制御、および(2)ポリマーがポアを通って移動したときの構成ビルディングブロックの識別である。ポリヌクレオチドなどの分析物のナノポアセンシング中に、ポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することが重要である。移動を制御しなければ、ポリヌクレオチドの正確な特徴付けが阻止されるまたは妨げられる可能性がある。例えば、ポアに対するポリヌクレオチドの移動が制御されていない場合、ホモポリマーポリヌクレオチド中の各ヌクレオチドを正確に区別することが厄介になる。
【0005】
この問題に対処するために、ポリヌクレオチドなどのポリマーが特徴付けられている間にそれらの移動を制御するモータータンパク質を使用することが知られている。好適なモータータンパク質には、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼなどのポリヌクレオチドハンドリング酵素が含まれる。モータータンパク質は、ポリヌクレオチドを制御された様式で処理する。したがって、モータータンパク質を使用して、ポアに対するポリヌクレオチドなどのポリマーの移動を制御することができる。
【0006】
モータータンパク質の使用により、ナノポアセンシングによる特徴付けのためのポリヌクレオチドの処理において有意な改善を達成することが可能になっているが、技術的な課題が残っている。1つの問題は、モータータンパク質が特徴付けの開始前に決定されるべきポリヌクレオチド配列に対して正しい位置にあることを確実にすることに関する。例えば、モータータンパク質が特徴付けの開始前にポリヌクレオチドの処理をすでに開始している場合、特徴付けの開始前に処理されたポリヌクレオチドの部分は正確に決定されない可能性がある。
【0007】
これに対処するために、特徴付けの前にポリヌクレオチドアダプター上のモータータンパク質を「失速」させることが知られている。モータータンパク質は、特徴付けが開始されるまで、標的ポリヌクレオチドを処理しない。この方法で、標的ポリヌクレオチドの改善された特徴付けが可能である。
【0008】
当該技術分野で既知の1つの方法は、スペーサーを使用して分子アダプター上のヘリカーゼなどのモータータンパク質を失速させることである。スペーサーは、特徴付けられるべき標的ポリヌクレオチドへのモータータンパク質(例えば、ヘリカーゼ)の移動を妨げるアダプターの一部である。外力の不在下で、標的ポリヌクレオチドへのモータータンパク質(ヘリカーゼ)の移動が防止される。しかしながら、例えば、標的ポリヌクレオチドをナノポアに通すことによって提供され得る外力の影響下で、モータータンパク質は標的ポリヌクレオチドに移動し、それにより、ポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができる。かかる方法は、全内容が参照により組み込まれるWO2014/135838に記載されている。
【0009】
モータータンパク質を失速させる方法が大きな利益をもたらしているが、失速したモータータンパク質による「燃料」分子(例えば、ポリヌクレオチド処理に必要な補因子)の代謝回転を減少させることができた場合にかかる系の効率が改善される可能性があることが認識されている。したがって、これに対処する分子アダプターにポリヌクレオチドをロードするための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法に関する。この方法は、スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することを含む。ポリヌクレオチドアダプターがモータータンパク質と接触し、モータータンパク質をスペーサー上に前進させる。ブロッキング部分がポリヌクレオチドアダプターに結合される。ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのが防止される。モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止することにより、モータータンパク質がポリヌクレオチドに結合されたときと比較してモータータンパク質が燃料分子を代謝回転する速度が低下するなどの有益な効果がもたらされ得る。
【0011】
したがって、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をスペーサー上に配置することと、を含み、
ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、方法が本明細書に提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、
i)ポリヌクレオチドアダプターを提供することであって、ポリヌクレオチドアダプターが、スペーサーと、ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含む、提供することと、
ii)ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をスペーサー上に配置することと、を含み、
ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する。
【0013】
モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をスペーサー上に前進させることと、
iv)ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることと、を含み、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、方法も提供される。
【0014】
一実施形態では、本方法は、
i)スペーサーに接続されたローディング部位を含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)ローディング部位をモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をローディング部位からスペーサー上に前進させることと、
iv)ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることと、を含み、ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れてローディング部位に移動するのを防止する。
【0015】
一実施形態では、本方法のステップ(ii)は、ローディング部位をモータータンパク質と接触させることを含み、モータータンパク質がローディング部位と結合し、本方法のステップ(iv)は、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることを含み、ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動してローディング部位と再結合するのを防止する。
【0016】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、モータータンパク質はポリヌクレオチドアダプターのローディング部位に結合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサー上に前進させることは、物理的または化学的力をモータータンパク質に加えることを含む。一実施形態では、モータータンパク質をスペーサー上に前進させることは、モータータンパク質を1つ以上の燃料分子と接触させることを含み得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、モータータンパク質は第1のモータータンパク質であり、第1のモータータンパク質をローディング部位からスペーサー上に前進させることは、第2のモータータンパク質をローディング部位にロードすることと、第2のモータータンパク質をローディング部位からスペーサーに向かって前進させることと、を含み、第2のモータータンパク質が第1のモータータンパク質をスペーサーに押し付ける。一実施形態では、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、モータータンパク質がスペーサーに押し付けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、ブロッキング部分はローディング部位に結合する。一実施形態では、ローディング部位はスペーサーと隣接しており、ブロッキング部分はスペーサーに直接隣接するローディング部位に結合する。
【0019】
一実施形態では、ステップ(iii)は、スペーサーがモータータンパク質の活性部位を占有するように、モータータンパク質をスペーサー上に前進させることを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、ローディング部位は一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、ローディング部位は、約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、物理的または化学的ブロッキング部分である。一実施形態では、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動が立体的に防止される。一実施形態では、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止する化学基が導入される。
【0022】
いくつかの実施形態では、(i)ローディング部分は一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、ブロッキング部分は一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、(ii)ブロッキング部分をローディング部位に結合させることは、ブロッキング部分をローディング部位にハイブリダイズすることを含む。一実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
i)1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OCOPO)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC-C(O)NHCH-CNO-CH(CH)OPO]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCHCHOPO]基、または1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCHCHOPO]基、
ii)1つ以上のチオール接続、
iii)1つ以上の脱塩基ヌクレオチド、
iv)ローディング部位とは異なる骨格構造を有する1つ以上のヌクレオチド、
v)1つ以上のモータータンパク質を失速させる1つ以上の化学基、および/または
vi)ポリマーであって、任意選択的に、ポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)である、ポリマーを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のヌクレオチドを含み、好ましくは、スペーサーは、1つ以上のヌクレオチドアイランドを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、
i)ポリヌクレオチドアダプターは、1つ以上のヌクレオチド、好ましくは1つ以上のヌクレオチドアイランドを含むスペーサーと、ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含み、
ii)モータータンパク質をスペーサー上に配置することは、モータータンパク質をスペーサーと接触させることと、モータータンパク質がスペーサーから離脱するのを防止するようにモータータンパク質を修飾することと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
-S-N-S-N-S-N-S-、-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-S-、
-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、
-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、および-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-から選択される1つ以上の部分を含み、
式中、各Sがスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。
【0027】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼ、またはそれらの変異形である。一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質は、モータータンパク質がスペーサーから離脱するのを防止するように修飾されている。一実施形態では、当該または各モータータンパク質は、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼ、TrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、およびDdaヘリカーゼ、またはそれらの変異形から独立して選択されるヘリカーゼである。
【0028】
一実施形態では、本方法は、(v)スペーサー上に位置しない過剰なモータータンパク質分子を除去するステップをさらに含む。
【0029】
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)(A)標的ポリヌクレオチド、(B)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプター、および(C)モータータンパク質を提供することと、
ii)上記の実施形態のうちのいずれか1つに記載の方法を実行し、それにより、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質を失速させることと、
iii)標的ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上の失速したモータータンパク質をナノポアと接触させることと、
iv)電位を膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、モータータンパク質を、スペーサーを越えて標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法も提供される。
【0030】
一実施形態では、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプター上で失速した後に、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合した後に、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプター上で失速する。
【0031】
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)標的ポリヌクレオチドを提供することと、
ii)スペーサーを含み、かつモータータンパク質をその上で失速させるポリヌクレオチドアダプターを提供することであって、ポリヌクレオチドアダプターが本明細書に開示される方法に従って得られる、提供することと、
iii)標的ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアダプターをナノポアと接触させることと、
iv)電位を膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、モータータンパク質を、スペーサーを越えて標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法も提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときに、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す1回以上の測定を行い、それにより、標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときにそれを特徴付けることをさらに含む。
【0033】
(i)スペーサーと、(ii)スペーサー上で失速したモータータンパク質であって、モータータンパク質の活性部位がスペーサーによって占有されている、モータータンパク質と、(iii)アダプターに結合されたブロッキング部分であって、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、ブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプターも提供される。
【0034】
一実施形態では、(i)アダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、ブロッキング部分はローディング部位に結合され、(ii)ブロッキング部分は、モータータンパク質がローディング部位と結合するのを防止する。
【0035】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lがブロックされたローディング部位であり、Sがスペーサーであり、Dが二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数である)と、
ii)スペーサー(S)上で失速した1つ以上のモータータンパク質と、を含み、
当該または各L部分は、当該または各モータータンパク質が二本鎖ポリヌクレオチド(D)から離れた方向にスペーサー(S)から外れて移動するのを防止する。
【0036】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lが第1の二本鎖ポリヌクレオチドであり、Sがスペーサーであり、Dが第2の二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数であり、第1の二本鎖ポリヌクレオチド(L)がスペーサー(S)と隣接しており、スペーサー(S)が第2の二本鎖ポリヌクレオチド(D)と隣接している)を含み、
ii)1つ以上のモータータンパク質はスペーサー(S)上で失速する。
【0037】
標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターと、
ii)標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、
iii)モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上に位置し、かつモータータンパク質の活性部位がスペーサーによって占有されたときに、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのが防止されるように、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができるブロッキング部分と、を含む、キットも提供される。
【0038】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはローディング部位を含み、ブロッキング部分は、モータータンパク質がローディング部位と結合するのが防止されるように、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができる。
【0039】
標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)ポリヌクレオチドアダプターであって、スペーサーと、ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプターと、
ii)標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、を含み、
モータータンパク質がアダプターに結合されたときに、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、キットも提供される。
【0040】
いくつかの実施形態では、先行実施形態に記載のポリヌクレオチドアダプターまたはキットは、先行実施形態のうちのいずれか1つに定義されるように各々独立して、ローディング部位、ブロッキング部分、スペーサー、および/またはモータータンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本明細書に開示される方法を使用することにより、無駄な代謝回転が減少する。図1(A)は、二本鎖DNA、続いて、スペーサー(4×Sp18スペーサー群)、続いて、二本鎖DNAを含む構築体の概略図を示す。このスペーサーが二本鎖DNAに隣接しているため、スペーサーの両端にアクセス可能な一本鎖DNAは存在しない。Ddaヘリカーゼがスペーサー上で失速する。図1(B)は、スペーサーが二本鎖DNAに隣接しておらず、かつ下側の鎖に10残基が欠損している同様の構築体を示す。したがって、この構築物は、スペーサーの5’末端に隣接する一本鎖DNAを含む。図1(C)は、それぞれ、図1(A)および図1(B)の構築体上で失速したDdaヘリカーゼ酵素による触媒ATP代謝回転速度を比較する棒グラフを示す。このデータは実施例1で論じられる。
図2】本明細書に定義されるスペーサーを含むアダプター上のモータータンパク質の効果的な失速を示すローディング滴定の結果。このデータは実施例3で論じられる。
図3】本明細書に記載の方法による例示的なアダプターを、本明細書に記載のスペーサーを欠くアダプターと比較して、DNAシーケンシングシステムで試験した際に得られた効率の向上を示す結果。このデータは実施例4で論じられる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつある特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲内のいずれの参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。言うまでもなく、必ずしもすべての態様または利点が本発明のいずれかの特定の実施形態に従って達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者であれば、本明細書で教示または示唆され得る他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または一群の利点を達成または最適化する様式で本発明が具体化または実行され得ることを認識するであろう。
【0043】
本発明は、編成および動作方法の両方に関して、その特徴および利点とともに、添付の図面と併せて読まれたときに以下の発明を実施するための形態を参照することにより最もよく理解され得る。本発明の態様および利点は、以下に記載の実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所での「一実施形態では」または「ある実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本開示を簡素化し、かつ様々な発明態様のうちの1つ以上の理解を支援するために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、またはそれらの説明にまとめられることもあることを理解されたい。しかしながら、本開示の方法は、特許請求される発明が各々の特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明態様は、単一の前述の開示される実施形態のすべての特徴に満たない。
【0044】
文脈が別途指示しない限り、本開示の「実施形態」が具体的に一緒に組み合わせられ得ることを理解されたい。すべての開示される実施形態の特定の組み合わせは(文脈により別途暗示されない限り)、特許請求される発明のさらに開示された実施形態である。
【0045】
加えて、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「モータータンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「ポア」への言及は2つ以上のポアを含む。
【0046】
上記または下記の本明細書で引用されるすべての出版物、特許、および特許出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
定義
単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」または「an」、「the」が使用される場合、他のことが明記されない限り、これは、その名詞の複数形を含む。「含む」という用語が本説明および特許請求の範囲で使用される場合、これは、他の要素またはステップを除外しない。さらに、本説明および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも起こった順序または経時的順序を説明するために使用されるとは限らない。そのように使用されるそれらの用語が適切な状況下で交換可能であり、かつ本明細書に記載される本発明の実施形態が本明細書に記載または例証される順序以外の順序で動作可能であることを理解されたい。以下の用語または定義は、本発明の理解を助けるためのみに提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明の当業者が理解する意味と同じ意味を有する。熟練者は、定義および技術用語について、特にSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley & Sons,New York(2016)を参照する。本明細書に提供される定義は、当業者によって理解される範囲よりも狭いと解釈されるべきではない。
【0048】
量および時間的持続時間などの測定可能な値を指す際に本明細書で使用される「約」は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変動を包含するよう意図されており、かかる変動は開示される方法を行うのに適切である。
【0049】
本明細書で使用される「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」、または「核酸分子」とは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、その分子の一次構造のみを指す。したがって、この用語には、二本鎖および一本鎖DNAおよびRNAが含まれる。本明細書で使用される「核酸」という用語は、各ヌクレオチドの3’末端および5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、一本鎖または二本鎖の共有結合したヌクレオチド配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基で構成されていてもリボヌクレオチド塩基で構成され得る。核酸は、インビトロで合成的に製造され得るか、または天然源から単離され得る。核酸には、修飾されたDNAもしくはRNA、例えば、メチル化されているDNAもしくはRNA、または翻訳後修飾、例えば、7-メチルグアノシンでの5’-キャッピング、切断およびポリアデニル化などの3’-プロセシング、ならびにスプライシングに供されているRNAがさらに含まれ得る。核酸には、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、およびペプチド核酸(PNA)などの合成核酸(XNA)も含まれ得る。本明細書で「ポリヌクレオチド」とも称される核酸のサイズは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの塩基対(bp)の数で、または一本鎖ポリヌクレオチドの場合にはヌクレオチド(nt)の数で表される。1000bpまたはntは、キロベース(kb)に相当する。約40ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチドは、典型的には「オリゴヌクレオチド」と呼ばれ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによるDNAの操作に使用するためのプライマーを含み得る。
【0050】
本開示との関連での「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、各アミノ酸に特異的な側鎖(例えば、R基)とともに、アミン(NH)およびカルボキシル(COOH)官能基を含む有機化合物を含むよう意図されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するL α-アミノ酸または残基を指す。天然に存在するアミノ酸について一般に使用される1文字および3文字略語:A=Ala、C=Cys、D=Asp、E=Glu、F=Phe、G=Gly、H=His、I=Ile、K=Lys、L=Leu、M=Met、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、R=Arg、S=Ser、T=Thr、V=Val、W=Trp、およびY=Tyrが本明細書で使用される(Lehninger,A.L.,(1975)Biochemistry,2d ed.,pp.71-92,Worth Publishers,New York)。「アミノ酸」という一般用語は、D-アミノ酸、レトロ-インベルソアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体などの化学的に修飾されたアミノ酸、ノルロイシンなどのタンパク質に通常組み込まれない天然に存在するアミノ酸、およびβ-アミノ酸などのアミノ酸の特徴を示す当該技術分野で既知の特性を有する化学的に合成された化合物をさらに含む。例えば、天然PheまたはProと同じペプチド化合物の立体構造上の制限を可能にするフェニルアラニンまたはプロリンの類似体または模倣物は、アミノ酸の定義内に含まれる。かかる類似体および模倣物は、本明細書でそれぞれのアミノ酸の「機能的等価物」と称される。アミノ酸の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Roberts and Vellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Gross and Meiehofer,eds.,Vol.5 p.341,Academic Press,Inc.,N.Y.1983によって列記されている。
【0051】
「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマー、ならびにその変異形および合成類似体を指すために、本明細書で互換的に使用される。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体などの天然に存在しない合成アミノ酸であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、グリコシル化、タンパク質分解的切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などを含み得るが、これら限定されない、成熟または翻訳後修飾プロセスも受け得る。ペプチドは、組換え技法を使用して、例えば、組換えまたは合成ポリヌクレオチドの発現により作製され得る。組換えにより産生されたペプチドは、典型的には、培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する。
【0052】
「タンパク質」という用語は、二次または三次構造を有する折り畳まれたポリペプチドを説明するために使用される。タンパク質は、単一のポリペプチドで構成され得るか、または集合して多量体を形成する複数のポリペプチドを含み得る。多量体は、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。タンパク質は、天然に存在するタンパク質または野生型タンパク質であってもよく、または修飾されたタンパク質もしくは天然に存在しないタンパク質であってもよい。タンパク質は、例えば、1つ以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が野生型タンパク質とは異なり得る。
【0053】
タンパク質の「変異形」は、問題となっている未修飾または野生型タンパク質と比較してアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有し、かつそれらが由来する未修飾タンパク質と類似の生物学的および機能的活性を有する、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および酵素を包含する。本明細書で使用される「アミノ酸同一性」という用語は、配列が比較ウィンドウにわたってアミノ酸毎に同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列を比較し、同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列に生じる位置の数を決定して一致した位置の数を算出し、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを算出することによって計算される。
【0054】
本発明のすべての態様および実施形態について、「変異形」は、対応する野生型タンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%完全な配列同一性を有する。配列同一性は、完全長ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの断片または一部分に対するものである場合もある。したがって、配列は、完全長参照配列と全体的に50%のみの配列同一性を有し得るが、特定の領域、ドメイン、またはサブユニットの配列は、参照配列と80%、90%、または99%もの配列同一性を共有し得る。
【0055】
「野生型」という用語は、天然に存在する源から単離された遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、ある集団で最も頻繁に観察され、したがって、その遺伝子の任意に設計された「正常」または「野生型」形態である。対照的に、「修飾された」、「変異体」、または「変異形」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して、配列の修飾(例えば、置換、切断、もしくは挿入)、翻訳後修飾、および/または機能的特性(例えば、改変された特徴)を呈する遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体を単離することができることに留意されたく、これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して改変された特徴を有するという事実によって特定される。天然に存在するアミノ酸を導入または置換するための方法が当該技術分野で周知である。例えば、メチオニン(M)は、変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド中の関連する位置でメチオニンのコドン(ATG)をアルギニンのコドン(CGT)に置き換えることにより、アルギニン(R)で置換され得る。天然に存在しないアミノ酸を導入または置換するための方法も当該技術分野で周知である。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、変異体モノマーを発現させるために使用されるIVTT系中に合成アミノアシル-tRNAを含めることによって導入され得る。あるいは、それらは、特定のアミノ酸の合成(すなわち、天然に存在しない)類似体の存在下で、それらの特定のアミノ酸に対して栄養要求性であるE.coli中で変異体モノマーを発現させることによって導入され得る。それらは、変異体モノマーが部分的ペプチド合成を使用して産生される場合、ネイキッドライゲーション(naked ligation)によって生成される場合もある。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、または類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野で周知であり、以下の表1に定義される20個の主なアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類似の極性を有する場合、それを表2中のアミノ酸側鎖のハイドロパシースケールを参照することにより決定することもできる。
【表1】

【表2】
【0056】
変異体または修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドは、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾することもできる。変異体または修飾モノマーまたはペプチドは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の結合(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の結合、1つ以上の非天然アミノ酸への分子の結合、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学的に修飾される。かかる修飾を実行するための好適な方法が当該技術分野で周知である。修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、任意の分子の結合によって化学的に修飾され得る。例えば、修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、色素またはフルオロフォアの結合によって化学的に修飾され得る。
【0057】
モータータンパク質の失速
本開示は、モータータンパク質を、スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを予防する、方法に関する。以下でより詳細に説明されるように、本方法は、モータータンパク質がポリヌクレオチドに結合されたときと比較して、モータータンパク質が燃料分子を代謝回転する速度を低下させ得る。
【0058】
上で論じられるように、モータータンパク質の標的ポリヌクレオチドへの移動を制御するための方法は、当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知の1つの方法は、スペーサーを使用してモータータンパク質の標的ポリヌクレオチドへの移動を防止することを含む。この方法は、モータータンパク質をスペーサーで(例えば、スペーサーに隣接して)保持することを含む。このようにして、モータータンパク質を、例えば、ポリヌクレオチド鎖上に保持することができる。モータータンパク質は、方向性を有し得る(すなわち、ポリヌクレオチドを5’から3’の方向または3’から5’の方向に処理し得る)。モータータンパク質が処理する方向にモータータンパク質と標的ポリヌクレオチドとの間にスペーサーを提供することにより、モータータンパク質の移動がスペーサーによって制約され得る。一方では、モータータンパク質の標的ポリヌクレオチドへの移動は、スペーサーによって妨げられる。他方では、モータータンパク質の移動は、その方向性によっても制約され、これは、それが標的ポリヌクレオチドから離れた方向にスペーサーから離れて移動することができないことを意味する。このようにして、モータータンパク質がスペーサーに向かって「前方に」またはスペーサーから離れて「後方に」のいずれかで移動することが制約されるため、モータータンパク質を(スペーサーに隣接して)保持することができる。
【0059】
しかしながら、モータータンパク質をこの既知の方法で制約することは、典型的には、モータータンパク質が反応条件下で存在し得る燃料(例えば、モータータンパク質によるポリヌクレオチド処理に必要な補因子)を消費することを防止しない場合がある。理論に拘束されることなく、モータータンパク質をスペーサーで失速させることにより、モータータンパク質の「遅延」がもたらされると考えられている。モータータンパク質はポリヌクレオチドアダプターにロードされ、上記の様式でスペーサーに到達するまで前進する。モータータンパク質がスペーサーに到達すると、その移動が失速する。しかしながら、モータータンパク質はスペーサーで静止したままではない。むしろ、モータータンパク質は、スペーサーに隣接するポリヌクレオチドアダプターへの結合から定期的に離脱し、モータータンパク質をスペーサーから離れてポリヌクレオチドアダプターに沿って戻し拡散させると考えられている。次いで、モータータンパク質はポリヌクレオチドアダプターと再結合し、再びスペーサーに到達するまで前進し、その後、このサイクルが繰り返される。モータータンパク質のポリヌクレオチドアダプターからの連続的な離脱、ポリヌクレオチドアダプターとの再結合、およびモータータンパク質のポリヌクレオチドアダプターに沿ったスペーサーへの前進は、モータータンパク質の全体的な前進に関連しないにもかかわらず、この系に存在する燃料を消費する。スペーサーで失速するモータータンパク質によるこの非生産的な燃料消費は、無駄な代謝回転と呼ばれる。
【0060】
無駄な代謝回転は望ましくなく、本系の全体的な効率を低下させる。例えば、モータータンパク質が記載の様式で長期間にわたってスペーサーで失速した場合、無駄な代謝回転におけるモータータンパク質によって消費される燃料はかなりの量になる可能性がある。かかる非生産的な燃料の使用は、例えば、貯蔵時の本系の寿命を著しく制限する可能性がある。燃料の減少は、例えば、モータータンパク質の速度を望ましくない程度まで低下させる場合もある。無駄な代謝回転は、この望ましくない消費を考慮に入れるために、この反応系における燃料の量を最初に望ましくない程度まで増加させることを必要し得る。標的ポリヌクレオチドの特徴付け中に不純物によって引き起こされるアーチファクトを回避するための高純度燃料の要件は、無駄な代謝回転がコストを著しく増加させる可能性があることを意味する。さらに、モータータンパク質が高濃度の使用済み燃料分子(すなわち、ADPなどのモータータンパク質によって代謝回転された燃料分子)の悪影響を受ける場合、モータータンパク質が特徴付けられている標的ポリヌクレオチドに及ぼす制御が低下する可能性があり、かつ/またはモータータンパク質の速度が望ましくない程度まで低下する可能性がある。
【0061】
これに対する対処法の模索中に、驚くべきことに、スペーサー上のモータータンパク質を失速させることにより、無駄な代謝回転を減少させるまたは防止することができることが見出された。具体的には、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止することにより、無駄な代謝回転が減少する。言い換えれば、モータータンパク質がポリヌクレオチドに結合されたときと比較して、モータータンパク質が燃料分子を代謝回転する速度が低下する。好適なスペーサーは、本明細書により詳細に記載される。
【0062】
現在特許請求されている方法を開発する際に、驚くべきことに、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合することにより、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターに含まれるスペーサーから外れて移動するのを有益に防止することができることが見出された。ブロッキング部分は、例えば、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを立体的に防止することができる。ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを化学的に防止することができる。ブロッキング部分は、本明細書により詳細に記載される。
【0063】
したがって、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をスペーサー上に配置することと、を含み、
ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、方法が本明細書に提供される。
【0064】
一実施形態では、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードする方法であって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターを提供することと、
ii)ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることと、
iii)モータータンパク質をスペーサー上に前進させることと、
iv)ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることと、を含み、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、方法が本明細書で提供される。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、スペーサーに接続されたローディング部位を含む。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、モータータンパク質と接触し得る。ローディング部位をモータータンパク質と接触させることにより、モータータンパク質がローディング部位からスペーサー上に前進するようになる。ポリヌクレオチドアダプターがローディング部位を含む実施形態では、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、典型的には、モータータンパク質がスペーサーから外れてローディング部位に移動するのが防止される。ローディング部位は、本明細書により詳細に記載される。
【0066】
したがって、いくつかの実施形態では、提供される方法は、(i)ローディング部位をモータータンパク質と接触させることであって、モータータンパク質がローディング部位と結合する、接触させることと、(ii)ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることであって、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動してローディング部位と再結合するのを防止する、結合させることとを含む。
【0067】
他の実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、ローディング部位を含まない。かかる実施形態では、モータータンパク質は、典型的には、例えば、スペーサーで、ポリヌクレオチドアダプターと接触する、すなわち、モータータンパク質は、スペーサーと接触し得る。モータータンパク質は、スペーサー上に配置される。モータータンパク質は、任意の好適な手段によってスペーサー上に配置され得る。例えば、本明細書により詳細に記載されるように、モータータンパク質はスペーサーと接触し得、続いて、モータータンパク質がスペーサーから離脱するのを防止するようにモータータンパク質が修飾され得る。スペーサーは、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止するためにブロッキング部分に隣接し得る。スペーサーは、いくつかの実施形態では、スペーサー単位に加えて、天然ヌクレオチドを含み得る。これは、本明細書により詳細に記載される。
【0068】
ポリヌクレオチドアダプター
提供される方法は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードすることを含む。WO2015/110813は、モータータンパク質のアダプターなどの標的ポリヌクレオチドへのローディングについて記載しており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0069】
アダプターは、典型的には、標的ポリヌクレオチドの末端に結合することができるポリヌクレオチド鎖を含む。標的ポリヌクレオチドは、典型的には、本明細書に開示される方法による特徴付けを目的としている。
【0070】
ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチドの両末端に付加され得る。あるいは、異なるアダプターが標的ポリヌクレオチドのそれらの2つの末端に付加され得る。アダプターは、標的ポリヌクレオチドの1つの末端のみに付加され得る。アダプターをポリヌクレオチドに付加する方法は、当該技術分野で既知である。アダプターは、例えば、ライゲーションによって、クリックケミストリーによって、タグメンテーションによって、トポイソメラーゼ変換によって、または任意の他の好適な方法によってポリヌクレオチドに結合し得る。
【0071】
一実施形態では、アダプターは、合成または人工である。典型的には、アダプターは、本明細書に記載のポリマーを含む。アダプターは、本明細書に記載のスペーサーを含む。以下でより詳細に説明されるように、アダプターは、ローディング部位、例えば、スペーサーに接続されたローディング部位も含み得る。ローディング部位は、本明細書により詳細に記載される。
【0072】
いくつかの実施形態では、アダプターは、ポリヌクレオチドを含む。例えば、以下に説明されるように、ローディング部位は、一本鎖ポリヌクレオチド鎖を含み得る。ポリヌクレオチドアダプターは、DNA、RNA、修飾DNA(塩基性DNAなど)、RNA、PNA、LNA、BNA、および/またはPEGを含み得る。通常、アダプターは、一本鎖および/または二本鎖DNAまたはRNAを含む。
【0073】
一実施形態では、アダプターは、Yアダプターである。Yアダプターは、典型的には、ポリヌクレオチドアダプターである。Yアダプターは、典型的には二本鎖であり、(a)一方の末端に2つの鎖が一緒にハイブリダイズされる領域と、(b)他方の末端に2つの鎖が相補的ではない領域とを含む。それらの鎖の非相補的部分がオーバーハングを形成する。Yアダプター中の非相補的領域の存在は、二本鎖部分とは異なりそれらの2本の鎖が典型的には互いにハイブリダイズしないため、アダプターにそのY形状を与える。以下でより詳細に説明されるように、一実施形態では、モータータンパク質は、Yアダプターなどのアダプターのオーバーハングに結合し得る。別の実施形態では、モータータンパク質は、二本鎖領域に結合し得る。他の実施形態では、モータータンパク質は、アダプターの一本鎖領域および/または二本鎖領域に結合し得る。他の実施形態では、第1のモータータンパク質がかかるアダプターの一本鎖領域に結合し得、第2のモータータンパク質がそのアダプターの二本鎖領域に結合し得る。
【0074】
一実施形態では、アダプターは、本明細書により詳細に記載される膜アンカーまたはポアアンカーを含む。いくつかの実施形態では、アンカーは、核酸ハンドリング酵素が結合するオーバーハングに相補的であり、したがって、それにハイブリダイズされるポリヌクレオチドに結合し得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、Yアダプターなどのポリヌクレオチドアダプターの非相補的鎖のうちの1つは、膜貫通ポアと接触したときにナノポアを通ることができるリーダー配列を含み得る。一実施形態では、リーダー配列は、本明細書により詳細に記載されるローディング部位を含み得る。一実施形態では、リーダー配列は、ローディング部位に先行し得る(すなわち、アダプターは、ローディング部位に接続されたリーダー配列を含み得、ローディング部位がスペーサーに接続され、これにより、ローディング部位がリーダー配列とスペーサーとの間に位置するようになる)。一実施形態では、ローディング部位は、リーダー配列に先行し得る(すなわち、アダプターは、リーダー配列に接続されたローディング部位を含み得、リーダー配列がスペーサーに接続され、これにより、リーダー配列がローディング部位とスペーサーとの間に位置するようになる)。
【0076】
リーダー配列は、典型的には、ポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNA、修飾ポリヌクレオチド(脱塩基DNAなど)、PNA、LNA、ポリエチレングリコール(PEG)、またはポリペプチドなどのポリマーを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、ポリdT切片などの一本鎖DNAを含む。リーダー配列は、任意の長さであり得るが、典型的には、10~150ヌクレオチド長、例えば、20~120、30~100、40~80、または50~70ヌクレオチド長である。
【0077】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、ヘアピンループアダプターである。ヘアピンループアダプターは、単一のポリヌクレオチド鎖を含むアダプターであり、ポリヌクレオチド鎖の末端は互いにハイブリダイズすることができるか、または互いにハイブリダイズされ、ポリヌクレオチドの中央部分がループを形成する。好適なヘアピンループアダプターは、当該技術分野で既知の方法を使用して設計することができる。
【0078】
以下でより詳細に説明されるように、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合して、標的ポリヌクレオチドを特徴付けることができる。
【0079】
当業者であれば、したがって、本明細書に提供される方法に使用するための記載のアダプターが、本明細書に記載のブロッキング部分を欠くアダプターと比較して、その上で失速したモータータンパク質による無駄な代謝回転を減少させることを理解するであろう。典型的には、本明細書に提供される方法に使用するための記載のアダプターは、本明細書に提供されるブロッキング部分を欠くアダプターと比較して、燃料使用の効率を改善する。
【0080】
当業者であれば、アダプターがポリヌクレオチド鎖を含む場合、アダプターの配列が典型的には決定的ではなく、モータータンパク質および特徴付けられるべき任意のポリヌクレオチドなどの他の実験条件に従って制御または選択され得ることも理解するであろう。例示的な配列は、実施例に例証としてのみ提供される。例えば、アダプターは、配列番号13などの配列、または配列番号13と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。アダプターは、配列番号14および15に提供される配列などの配列、または配列番号14および15と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を独立して有するポリヌクレオチド配列に隣接している本明細書に記載のスペーサーを含み得る。当業者であれば、配列番号14が配列番号15などの配列を含み、したがって、アダプターが配列番号15などのポリヌクレオチド配列、または配列番号15と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得ることを理解するであろう。アダプターの順序は、典型的には、所与のスペーサーによって提供される無駄な代謝回転の減少に悪影響を及ぼすことなく変更され得る。
【0081】
スペーサー
開示される方法は、モータータンパク質を、スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターにロードすることを含む。1つ以上のスペーサーがポリヌクレオチドアダプターに存在し得る。例えば、ポリヌクレオチドアダプターは、1~約10個のスペーサー、例えば、1~約5個のスペーサー、例えば、1、2、3、4、または5個のスペーサーを含み得る。「スペーサー」および「失速部位」という用語は、互換的に使用され得、モータータンパク質を失速させ、典型的には上記のように無駄な代謝回転を防止するポリヌクレオチドアダプターの一部分を指す。スペーサー(失速部位)は、任意の好適な数のスペーサー単位を含み得る。好適なスペーサー単位が本明細書に記載されており、脱塩基ヌクレオチドおよびスペーサー基、例えば、iSp9、iSp18、およびC3基が含まれる(以下に記載される)。スペーサー(失速部位)は、スペーサー単位に加えて、ヌクレオチド単位を含み得る。例えば、本明細書により詳細に記載されるように、スペーサー(失速部位)は、1つ以上のヌクレオチドによって間隔が空けられたスペーサー単位を含み得る。スペーサー(失速部位)は、1つ以上のポリヌクレオチドなどの1つ以上のヌクレオチド単位に隣接しているまたはそれらによって分離された1つ以上のスペーサー単位を含み得る。この概念は、「ヌクレオチドアイランド」と称されることもあり、以下でさらに論じられる。
【0082】
1つ以上のスペーサーがポリヌクレオチドアダプターに含まれる。典型的には、ポリヌクレオチドアダプターは、一本鎖および/または二本鎖ポリヌクレオチドの鎖を含み得、1つ以上のスペーサーがポリヌクレオチド鎖に含まれて、例えば、鎖を中断するか、またはある鎖を別の鎖から分離することができる。例示的なポリヌクレオチドアダプターは、本明細書により詳細に記載される。
【0083】
ポリヌクレオチドアダプター中の各スペーサーは、モータータンパク質の移動を妨げるエネルギー障壁を提供する。例えば、スペーサーは、モータータンパク質の牽引力を低下させることによってモータータンパク質を失速させ得る。これは、例えば、脱塩基スペーサー、すなわち、塩基がポリヌクレオチドアダプター中の1つ以上のヌクレオチドから除去されたスペーサーを使用することによって達成され得る。スペーサーは、例えば、嵩高い化学基を導入してモータータンパク質の移動を物理的に妨げることによって、モータータンパク質の移動を物理的に遮断することができる。
【0084】
スペーサーは、1つ以上のタンパク質を失速させる任意の分子または分子の組み合わせを含み得る。スペーサーは、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドに沿って移動するのを防止する任意の分子または分子の組み合わせを含み得る。モータータンパク質がスペーサーで失速しているか否かを決定するのは簡単である。例えば、これは、WO2014/135838(その内容は参照により組み込まれる)で論じられるようにアッセイすることができ、例えば、スペーサーを越えて移動してDNAの相補鎖を置換するモータータンパク質の能力は、PAGEによって測定することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、ポリマーなどの直鎖状分子を含み得る。典型的には、かかるスペーサーは、標的ポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、当該または各スペーサーは、典型的には、DNAを含まない。具体的には、標的ポリヌクレオチドがデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である場合、当該または各スペーサーは、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OCOPO)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC-C(O)NHCH-CNO-CH(CH)OPO]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCHCHOPO]基、もしくは1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCHCHOPO]基、または1つ以上のチオール結合を含み得る。スペーサーは、これらの基の任意の組み合わせを含み得る。これらの基のうちの多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。例えば、C3、iSp9、およびiSp18スペーサーはすべてIDT(登録商標)から入手可能である。
【0087】
スペーサーは、スペーサー単位として任意の数の上記の基を含み得る。例えば、スペーサーは、2-アミノプリン、2-6-ジアミノプリン、5-ブロモ-デオキシウリジン、逆位dT、ddT、ddC、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、2’-O-メチルRNA塩基、Iso-dC、Iso-dG、iSpC3基、PC基、ヘキサンジオール基、およびチオール結合から選択される1~約12個またはそれ以上(例えば、約1~約8個、例えば、1~約4個などの1~約6個)のスペーサーを含み得る。スペーサーは、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個のかかる基を含み得る。
【0088】
スペーサーは、1~約12個またはそれ以上(例えば、約1~約8個、例えば、1~約4個などの1~約6個)のC3基を含み得、例えば、スペーサーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個のC3基を含み得る。C3基は、典型的には、-OCOPO-基である。
【0089】
スペーサーは、約1~約8個またはそれ以上(例えば、1~約4個などの約1~約6個)のiSp9基を含み得、例えば、スペーサーは、2、3、4、5、6、7、または8個のiSp9基を含み得る。iSp9基は、典型的には、-(OCHCHOPO-基である。
【0090】
スペーサーは、約1~約8個またはそれ以上(例えば、1~約4個などの約1~約6個)のiSp18基を含み得、例えば、スペーサーは、2、3、4、5、6、7、または8個のiSp9基を含み得る。iSp18基は、典型的には、-(OCHCHOPO-基である。一実施形態では、スペーサーは、4個のiSp18基を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のiSp18基および/または1つ以上のiSp9基および/または1つ以上のC3基を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、モータータンパク質を失速させる1つ以上の化学基を含み得る。いくつかの実施形態では、好適な化学基は、1つ以上のペンダント化学基である。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドアダプター中の1つ以上の核酸塩基に結合し得る。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドアダプターの骨格に結合し得る。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれ以上などの任意の数の適切な化学基が存在し得る。好適な基には、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよび/またはビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニンおよび/または抗ジゴキシゲニン、ならびにジベンジルシクロオクチン基が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施形態では、スペーサー、はポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、ポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)であるポリマーを含み得る。
【0094】
スペーサーがポリペプチドを含む場合、そのポリペプチドは、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチドは、約1~約12個またはそれ以上(例えば、約1~約8個、例えば、1~約4個などの1~約6個)のアミノ酸を含み得、例えば、スペーサーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個のアミノ酸を含み得る。
【0095】
スペーサーがPEG(ポリエチレングリコール)などのポリマーを含む場合、そのポリマーは、任意の数のモノマー単位を含み得る。例えば、ポリマーは、約1~約12個またはそれ以上(例えば、約1~約8個、例えば、1~約4個などの1~約6個)のモノマー単位を含み得、例えば、スペーサーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個のモノマー(例えば、PEG)単位を含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれ以上の脱塩基ヌクレオチドを含み得る。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドにおける-H(idSp)または-OHによって置き換えられ得る。脱塩基スペーサーは、核酸塩基を1つ以上の隣接するヌクレオチドから除去することによって、標的ポリヌクレオチド中に挿入され得る。例えば、ポルヌクレオチドは、3-メチルアデニン、7-メチルグアニン、1,N6-エテノアデニンイノシン、またはヒポキサンチンを含むように修飾されてもよく、核酸塩基はヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去され得る。あるいは、ポルヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾されてもよく、核酸塩基はウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)によって除去され得る。一実施形態では、1つ以上のスペーサーは、いずれの脱塩基ヌクレオチドも含まない。
【0097】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、ヌクレオチドアイランドとも称される1つ以上のヌクレオチド単位を含み得る。スペーサーは、典型的には、モータータンパク質の活性部位を完全に占有するのに十分な長さのポリヌクレオチド鎖を含まない。例えば、スペーサーが1つ以上のヌクレオチド単位を含む実施形態では、スペーサーは、典型的には、1~3つのヌクレオチド、より多くの場合、1~2つのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、スペーサーに存在する当該または各ヌクレオチドアイランドに1~3つの連続するヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、各々1~3つの連続するヌクレオチドを含む、1~5つのヌクレオチドアイランド、例えば、1、2、または3つのヌクレオチドアイランドを含み得る。当業者であれば、モータータンパク質の活性部位(ポリヌクレオチド結合溝)が典型的にはおよそ8ヌクレオチド単位に相当するサイズであることを認識するであろう。したがって、スペーサーが1~3つ、例えば、1~2つのヌクレオチドスペーサー単位を含む実施形態では、ヌクレオチドスペーサー単位は、モータータンパク質の活性部位を完全には占有しない。いくつかの実施形態では、1~3つ、例えば、1~2つのヌクレオチドを含む例示的なスペーサー(失速部位)は、典型的には、-[(S)-(N)-(S)-から選択される1つ以上の部分を含み、式中、各Sがスペーサー単位(例えば、本明細書に記載のスペーサー単位)であり、各Nがヌクレオチドであり、xが1~7の整数であり、yが1~3の整数、典型的には、1または2であり、zが1~7の整数であり、wが1~3までの整数であり、各Sが同じであるかまたは異なり、各Nが同じであるかまたは異なる。より多くの場合、かかる実施形態では、各Sは、C3、iSp9、およびiSp18スペーサー単位から独立して選択されるスペーサー単位であり、各Nは独立して、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンから選択され、xは1~7の整数であり、yは1または2であり、zは1~4の整数であり、wは1~3の整数である。
【0098】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のヌクレオチドアイランドを含み得、アダプターは、モータータンパク質がアダプターと接触する前にそれに結合された本明細書に定義されるブロッキング部分を有し得る。したがって、かかる実施形態では、モータータンパク質は、スペーサーに直接ロードすることができる。モータータンパク質は、スペーサー内に含まれるヌクレオチドアイランドにロードされ得る。モータータンパク質は、スペーサー内に含まれるヌクレオチドアイランドにロードされ、その後、例えば、スペーサーから解離することによって、モータータンパク質がスペーサーから離れるのを防止するように修飾され得る。モータータンパク質の修飾は、本明細書により詳細に記載される。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ヌクレオチドアイランドにロードされ、その後、スペーサー内に含まれるスペーサー単位に前進し得る。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、モータータンパク質をアイランドから外れて移動させる力が加えられるまで、スペーサー内のヌクレオチドアイランドに位置したままであり得る。いくつかの実施形態では、この力は、本明細書に記載されるようにナノポアによって提供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、-S-N-N-S-S-、-S-N-S-N-S-、-S-S-N-N-S-、-S-S-N-S-S-、-N-N-S-N-N-S-、-S-S-N-N-S-S-、
-S-N-N-S-N-N-S-、-S-N-S-N-S-N-S-、-S-S-S-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-N-N-N-S-N-N-S-、-S-S-N-N-S-N-N-N-S-、-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-N-N-N-S-N-S-、-S-S-S-N-S-N-N-N-S-、
-S-S-S-S-N-N-S-N-S-、-S-S-S-S-N-S-N-N-S-、-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、
-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-S-、-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、-N-N-S-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-N-N-S-S-S-S-N-N-S-S-S-、-N-N-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、-N-N-S-S-S-S-S-S-N-N-S-、
-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-S-N-N-S-S-S-、
-S-N-N-S-S-S-S-N-N-S-S-、-S-N-N-S-S-S-S-S-N-N-S-、-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-N-N-S-S-S-N-N-S-S-、-S-S-N-N-S-S-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、
-S-S-S-N-N-S-S-S-S-S-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-S-、-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-S-S-S-などから選択される1つ以上の部分を含み得、式中、各Sが本明細書に記載のスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。
【0100】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
-S-N-S-N-S-N-S-、-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-S-、
-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、
-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-などから選択される1つ以上の部分を含み得、式中、各Sが本明細書に記載のスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。
【0101】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、
-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、
-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-などから選択される1つ以上の部分を含み得、式中、各Sが本明細書に記載のスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。
【0102】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-S-、-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-S-、
-S-S-N-N-S-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-、-S-S-S-N-N-S-S-N-N-S-などから選択される1つ以上の部分を含み得、式中、各Sが本明細書に記載のスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。
【0103】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、
-S-S-N-N-S-S-、-S-N-S-N-S-N-S、-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、-S-S-S-S-N-N-S-S-、
-S-S-S-S-S-S-N-N-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-N-N-S-、S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-S-、-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-、および
-S-S-S-S-S-N-N-S-N-N-S-S-N-N-S-などから選択される1つ以上の部分を含み得、式中、各Sが本明細書に記載のスペーサー単位であり、各Nがヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、各Sは、同じスペーサー単位である。いくつかの実施形態では、S基は、異なるスペーサー単位である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、ヌクレオチドベースのスペーサー単位(例えば、2’-O-メチルRNA塩基などの修飾ヌクレオチド)および非ヌクレオチドベースのスペーサー単位(iSp18、iSp9、およびC3スペーサー単位など)の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、各Sは独立して、iSp18基、iSp9基、2’-O-メチルウリジン、およびC3基から選択される。いくつかの実施形態では、各Sは独立して、iSp18基、iSp9基、およびC3基から選択される。いくつかの実施形態では、各Sは独立して、iSp18基、2’-O-メチルウリジン、およびC3基から選択される。いくつかの実施形態では、各Sは独立して、iSp18基およびC3基から選択される。いくつかの実施形態では、各Nは、同じヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、上記の部分のN基は異なる。いくつかの実施形態では、各N基は独立して、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンから選択される。いくつかの実施形態では、各N基は独立して、シトシンおよびチミンから選択される。いくつかの実施形態では、各N基は、チミン基である。
【0104】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、-8-T-T-9-T-T-8-、-8-T-8-T-8-T-8-、-8-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、-3-3-8-8-T-T-8-8-、
-3-3-3-3-8-8-T-T-8-8-、-3-3-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-8-、-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-T-T-8-、
-3-3-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-T-T-8-、-3-3-3-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、-3-3-3-T-T-8-T-T-8-、
-3-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、-T-T-3-3-T-T-3-3-3-3-8-、-3-T-T-3-3-T-T-3-3-3-8-、
-3-3-T-T-3-3-T-T-3-3-8-、-3-3-3-3-T-T-3-3-T-T-8-、-T-T-3-3-3-T-T-3-3-3-8-、
-T-T-8-T-T-3-3-3-3-3-8-、-3-T-T-8-T-T-3-3-3-3-8-、-3-3-T-T-8-T-T-3-3-3-8-、
-3-3-3-T-T-8-T-T-3-3-8-、-3-3-3-3-T-T-8-T-T-3-8-、-3-3-3-T-T-3-3-T-T-9-、
-3-3-3-T-T-mU-mU-mU-T-T-8-、-3-3-3-T-T-mU-mU-T-T-8-から選択される1つ以上の部分を含み得、式中、3が第1のスペーサーであり、8が第2のスペーサーであり、9が第3のスペーサーであり、mUが第4のスペーサーであり、典型的には、3が本明細書で定義されるC3スペーサーであり、8が本明細書で定義されるiSp18スペーサーであり、9が本明細書で定義されるiSp9スペーサーであり、mUが2’-O-メチルウリジンであり、各Nが独立して、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンから選択され、好ましくはチミンである。
【0105】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、-8-8-N-N-8-8-、-8-N-8-N-8-N-8、-8-N-N-8-N-N-8-N-N-8-、-3-3-8-8-N-N-8-8-、
-3-3-3-3-8-8-N-N-8-8-、-3-3-8-N-N-8-N-N-8-N-N-8-、-3-3-3-3-8-N-N-8-N-N-8-N-N-8-、3-3-8-N-N-8-N-N-8-3-8-、-3-3-3-3-8-N-N-8-N-N-8-3-8-、-3-3-8-N-N-8-N-N-8-3-N-N-8-、および-3-3-3-3-8-N-N-8-N-N-8-3-N-N-8-から選択される1つ以上の部分を含み得、式中、3が第1のスペーサーであり、8が第2のスペーサーであり、典型的には、3が本明細書で定義されるC3スペーサーであり、8が本明細書で定義されるiSp18またはiSp9スペーサーであり、典型的には、8が本明細書で定義されるiSp18スペーサーであり、各Nが独立して、アデニン、シトシン、グアニン、およびチミンから選択され、好ましくはチミンである。
【0106】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、88TTT88、88mUmUmU88、88/iBNA-T//iBNA-T//iBNA-T/88、88T88、8TT88、88TT8、8T8T8、99TT9TT99、8TT9TT8、8TT3TT8、8T8T8T8、8TT8TT8TT8、3388TT88、333388TT88、338TT8TT8TT8、33338TT8TT8TT8、338TT8TT838、33338TT8TT838、338TT8TT83TT8、33338TT8TT83TT8、8TT8TT8、TT8TT8、3TT8TT8、333TT8TT8TT8、333TT8TT8、3TT8TT8TT8、33TT8TT8、333TT8TT838、33338TT8TT8、333TT333333TT8、333TT99TT8、333TT9TT8、333TT3TT8、9TT8TT8、99TT8TT8、3333T8TT8、3333TT8T8、333T8TTT8、333TTT8T8、33TTT8TT8、33TT8TTT8、9TT99TT99、333TT8TT9999、333TT8TT999、333TT8TT99、333TT8TT9、TT3TT333338、3TT3TT33338、33TT3TT3338、333TT3TT338、3333TT3TT38、33333TT3TT8、TT33TT33338、3TT33TT3338、33TT33TT338、333TT33TT38、3333TT33TT8、TT333TT3338、3TT333TT338、33TT333TT38、333TT333TT8、TT3333TT338、3TT3333TT38、33TT3333TT8、TT33333TT38、3TT33333TT8、TT333333TT8、TT8TT333338、3TT8TT33338、33TT8TT3338、333TT8TT338、3333TT8TT38、33333TT8TT8、333TT33TT8、333TT33TT9、333TTmUmUmUTT8、333TTSpSpTT8、333TTSpTT8、9TT33TT99、333TTmUmUTT8、333TTrUTT8、333TTrUrUTT8、333TTrUrUrUTT8、333TTrUrUrUrUTT8、333TT33TTC12、333TT33TTC6、mUmUmUTTmUmUTT8、mUmUmUTT33TT8、333TT33TT88、333TT33TT888、333TT33TT8888、333TT33TT99、333TT33TT999、333TT33TT9999、333TT33TT333、333TT33TT3333、333TT33TT33333、333TT33TT333333、333TT33TT3333333、および333TT33TT33333333から選択される1つ以上の部分を含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、88mUmUmU88、88/iBNA-T//iBNA-T//iBNA-T/88、88T88、88TT88、8TT88、88TT8、8T8T8、8TT9TT8、8TT3TT8、8T8T8T8、8TT8TT8TT8、3388TT88、333388TT88、33338TT8TT838、338TT8TT83TT8、33338TT8TT83TT8、8TT8TT8、TT8TT8、3TT8TT8、333TT8TT8TT8、333TT8TT8、3TT8TT8TT8、TT3TT333338、3TT3TT33338、33TT3TT3338、333TT3TT338、3333TT3TT38、33333TT3TT8、TT33TT33338、3TT33TT3338、33TT33TT338、3333TT33TT8、TT333TT3338、3TT333TT338、33TT333TT38、TT3333TT338、3TT3333TT38、33TT3333TT8、TT33333TT38、3TT33333TT8、TT333333TT8、TT8TT333338、3TT8TT33338、33TT8TT3338、333TT8TT338、3333TT8TT38、33333TT8TT8、333TT33TT9、333TTmUmUmUTT8、333TTSpSpTT8、333TTSpTT8、333TTmUmUTT8、および333TT33TT8から選択される1つ以上の部分を含み得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、-8-8-T-T-8-8-、-8-T-8-T-8-T-8、-8-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、-3-3-8-8-T-T-8-8-、
-3-3-3-3-8-8-T-T-8-8-、-3-3-8-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、-3-3-3-3-8-T-T-8-T-T-8-T-T-8-、
3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-8-、-3-3-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-8-、-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-T-T-8-、および-3-3-3-3-8-T-T-8-T-T-8-3-T-T-8-から選択される1つ以上の部分を含み得、式中、3が第1のスペーサーであり、8が第2のスペーサーであり、典型的には、3が本明細書で定義されるC3スペーサーであり、8が本明細書で定義されるiSp18またはiSp9スペーサーであり、典型的には、8が本明細書で定義されるiSp18スペーサーであり、各Tがチミンである。
【0109】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、2つ以上のスペーサーを含む。かかる実施形態では、2つ以上のスペーサーは、同じであるかまたは異なる。例えば、1つのスペーサーは、本明細書で論じられる直鎖状分子のうちの1つを含んでもよく、別のスペーサーは、1つ以上のモータータンパク質を物理的に失速させる1つ以上の化学基を含み得る。スペーサーは、本明細書で論じられる直鎖状分子のうちのいずれかと、1つ以上のモータータンパク質を物理的に失速させる1つ以上の化学基、例えば、1つ以上の脱塩基と、フルオロフォアとを含み得る。
【0110】
好適なスペーサーは、ポリヌクレオチドアダプターの性質、モータータンパク質、および本方法が実行されるべき条件に応じて設計または選択することができる。例えば、多くのモータータンパク質がDNAをインビボで処理し、かかるモータータンパク質が、典型的には、DNAではないいずれかのものを使用して失速し得る。
【0111】
標的ポリヌクレオチドの特徴付けは、多くの場合、遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子(モータータンパク質の補因子)の存在下で実行される。開示される方法では、モータータンパク質は、典型的には、遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子(モータータンパク質の補因子)の存在下でスペーサーから外れて移動するのが防止される。ポリヌクレオチドアダプターが遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子の存在を伴わない方法で使用されるべきである場合、モータータンパク質は、典型的には、遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子の不在下でスペーサーから外れて移動するのが防止される。これらの実施形態では、異なるスペーサーが使用され得る。例えば、遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子が存在する実施形態では、遊離ヌクレオチドおよび/または燃料分子が存在しない実施形態と比較してより長いスペーサーが有益に使用され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、反応条件下で存在する塩濃度に従って開示される方法による使用に好適なスペーサーを設計または選択することが有益である。例えば、ポリヌクレオチド鎖をナノポアに対して移動させることによる標的ポリヌクレオチド鎖の特徴付けを含む方法は、多くの場合、比較的高い塩濃度の使用を伴う。塩濃度は、1つ以上のモータータンパク質を失速させる1つ以上のスペーサーの能力に影響を及ぼし得る。一般に、本発明の方法に使用される塩濃度が高いほど、典型的に使用される1つ以上のスペーサーは短くなり、その逆も同様である。
【0113】
特徴のいくつかの具体的な組み合わせが以下の表1に示される。
【表3】
【0114】
複数のモータータンパク質の使用を伴う実施形態では、より長いスペーサーが有益であり得る。例えば、本明細書に記載の2つのモータータンパク質の使用を伴う実施形態では、好適なスペーサーは、約1~約25個の上述のスペーサー(例えば、iSp18基、iSp9基、およびC3基から選択される約1~約25個の基)を含み得る。
【0115】
ブロッキング部分
いくつかの実施形態では、開示される方法は、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることを含む。ブロッキング部分は、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターのスペーサーから外れて移動するのを防止する。
【0116】
ブロッキング部分は、典型的には、モータータンパク質が生来ポリヌクレオチドを処理する方向とは反対の方向へのモータータンパク質の移動を防止する部分である。例えば、モータータンパク質がポリヌクレオチド鎖を生来5’から3’の方向に処理する場合、好適なブロッキング部分は、いくつかの実施形態では、モータータンパク質が3’から5’の方向に移動するのを防止する部分である。同様に、モータータンパク質がポリヌクレオチド鎖を生来3’から5’の方向に処理する場合、好適なブロッキング部分は、いくつかの実施形態では、モータータンパク質が5’から3’の方向に移動するのを防止する部分である。
【0117】
開示される方法では、ブロッキング部分は、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止するようにポリヌクレオチドアダプターに結合される。モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止することは、立体ブロックを提供してモータータンパク質の移動を物理的に防止することによって達成することができる。モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止することは、化学的ブロッキング部分であって、モータータンパク質がその上でまたはそれを越えて移動することができない、化学的ブロッキング部分を使用することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、本明細書で論じられるスペーサー基のうちの1つ以上を含む。他の実施形態では、ブロッキング部分は、ポリヌクレオチド鎖を含み得る。これは、以下でより詳細に論じられる。
【0118】
開示される方法では、ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから化ずれて移動するのを防止する。一実施形態では、これは、ブロッキング部分をスペーサーに隣接するポリヌクレオチドアダプターに結合させることによって達成される。
【0119】
例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、スペーサーと隣接しているポリヌクレオチド鎖を含む。かかる実施形態では、ブロッキング部分は、スペーサーに隣接するポリヌクレオチド鎖に結合し得る。例えば、ブロッキング部分は、スペーサーに隣接する20ヌクレオチドのうちの1つ以上に結合し得る。ブロッキング部分は、スペーサーに隣接する10ヌクレオチドのうちの1つ以上に結合し得る。ブロッキング部分は、スペーサーに隣接する5ヌクレオチドのうちの1つ以上に結合し得る。ブロッキング部分は、スペーサーに隣接する2、3、または4ヌクレオチドのいずれかまたは両方に結合し得る。一実施形態では、ブロッキング部分は、スペーサーに隣接する末端ヌクレオチドに結合する。かかる実施形態では、スペーサーに対するブロッキング基の位置は、モータータンパク質がスペーサーから外れてブロッキング部分が結合しているポリヌクレオチドアダプターの一部分に移動することができないような位置である。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、本明細書に記載のローディング部位に結合する。
【0120】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、E.coli一本鎖結合タンパク質などの一本鎖結合タンパク質(SSB)などのタンパク質である。このタンパク質は、ポリヌクレオチドアダプターに結合して、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止する。
【0121】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、インターカレーターである。任意の好適なインターカレーターを使用することができる。インターカレーターは、ポリヌクレオチドアダプターのポリヌクレオチド鎖をインターカレートし、したがって、モータータンパク質のインターカレーターを通る移動を防止する。いくつかの実施形態では、インターカレーターをスペーサーに近接して配置することにより、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動が防止され得る。一実施形態では、インターカレーターは、スペーサーに隣接する20ヌクレオチドのうちの2つの間に導入され得る。一実施形態では、インターカレーターは、スペーサーに隣接する10ヌクレオチドのうちの2つの間に導入され得る。一実施形態では、インターカレーターは、スペーサーに隣接する5ヌクレオチドのうちの2つの間に導入され得る。一実施形態では、インターカレーターは、スペーサーに隣接する2つの末端ヌクレオチド間に導入され得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、ポリヌクレオチド鎖の二次構造を含む。例えば、ブロッキング部分は、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止するためのシュードノットなどの二次構造を含み得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、化学的タグを含み得る。例えば、化学的タグは、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができるポリヌクレオチドなどの基に結合し得る。好適なタグの例には、ビオチン、選択可能なポリヌクレオチド配列、抗体、抗体断片、例えば、FabおよびScSv、抗原、ポリヌクレオチド結合タンパク質、ポリヒスチジンテール、ならびにGSTタグが挙げられるが、これらに限定されない。ビオチンは、ストレプトアビジンなどのアビジンに特異的に結合する。ストレプトアビジンなどのアビジンに結合したビオチン基は、モータータンパク質の移動を防止するであろう。いくつかの実施形態では、ストレプトアビジンなどのアビジンに結合したビオチン基は、ビオチン基を越えるモータータンパク質の移動を防止するであろう。
【0124】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。ブロッキング部分は、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止するようにポリヌクレオチドアダプターにハイブリダイズされ得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約500ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約10~約100ヌクレオチド単位長、約20~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約30~約50ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約1~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。
【0126】
当業者であれば、ブロッキング部分が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む場合、ブロッキング部分ポリヌクレオチドの配列が典型的には決定的ではなく、アダプターおよびモータータンパク質ならびに他の実験条件に従って制御または選択され得ることを理解するであろう。例示的な配列は、実施例に例証としてのみ提供される。例えば、ブロッキング部分は、配列番号19などのポリヌクレオチド配列、または配列番号19と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば、ブロッキング部分は、配列番号10などのポリヌクレオチド配列、または配列番号10と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。ブロッキング部分は、配列番号10または配列番号19に対応し、かつ少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10ヌクレオチド置換を含むポリヌクレオチド配列を含み得る。理論に拘束されることなく、当業者であれば、モータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止するブロッキング部分の機能がアダプターの配列と適合性があるように選択されるブロッキング部分によって達成され得ることを理解するであろう。ブロッキング部分が(例えば、ハイブリダイゼーションによって)アダプターに結合してモータータンパク質のスペーサーから外れた移動を防止するという条件で、ブロッキング部分の構造が改変され得る。
【0127】
ブロッキング部分アダプターは、スペーサーの領域内のポリヌクレオチドアダプターの配列に相補的な配列を有することもあり(例えば、スペーサーの約20ヌクレオチド以内、例えば、スペーサーの約10ヌクレオチド以内、例えば、スペーサーの約5ヌクレオチド以内、例えば、スペーサーの2、3、または4ヌクレオチド以内)、これにより、ブロッキング部分ポリヌクレオチドがスペーサーの領域内のポリヌクレオチドアダプターにハイブリダイズし、したがって、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止することができるようになる。
【0128】
例えばハイブリダイゼーションによってポリヌクレオチドアダプターに結合し得る一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含むブロッキング部分は、「捕捉鎖」とも称され得る。捕捉鎖は、スペーサー上のモータータンパク質を捕捉する。捕捉鎖をポリヌクレオチドアダプターに結合させることは、例えばハイブリダイゼーションによって捕捉鎖をポリヌクレオチドアダプターの配列、例えば、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサーに近接または隣接する配列に結合させることを含み得る。
【0129】
典型的には、ブロッキング部分または捕捉鎖が例えばハイブリダイゼーションによって結合する配列は、ブロッキング部分を含む結果として生じるアダプターが二本鎖ポリヌクレオチドであり得るような一本鎖配列である。したがって、当業者であれば、アダプターがスペーサーに結合した二本鎖ポリヌクレオチドの領域を含み得、かかる実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチドがモータータンパク質のスペーサーから外れた移動を遮断し、二本鎖ポリヌクレオチドの1つの鎖または二本鎖ポリヌクレオチドの1つの鎖の一部分が捕捉鎖を含むことを理解するであろう。これは、実施例でより詳細に論じられる。
【0130】
本明細書でより詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、存在する場合、モータータンパク質がスペーサー部分上に配置されると、アダプターに結合される。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、存在する場合、モータータンパク質がスペーサー単位上に配置される前にアダプターに結合される。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、モータータンパク質が本明細書に記載の1つ以上のヌクレオチドアイランドを含むスペーサー単位上に配置される前にアダプターに結合される。
【0131】
ローディング部位
上で論じられるように、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、スペーサーに接続されたローディング部位を含む。ローディング部位は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードするための部位である。
【0132】
一実施形態では、ローディング部位は、ポリマーなどの直鎖状分子である。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含み得る。ローディング部位は、PEGなどのポリマーを含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドアダプターのローディング部位と結合する。モータータンパク質は、ポリヌクレオチドアダプター(例えば、ポリヌクレオチドアダプターのローディング部位)と接触してポリヌクレオチドアダプターと会合する場合、ポリヌクレオチドアダプター(例えば、ポリヌクレオチドアダプターのローディング部位)と結合し得る。例えば、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドアダプターに結合することによって、またはポリヌクレオチドアダプターに結合しないが、それが結合するポリヌクレオチドアダプターの一部分の周りに複合体を形成することによって、ポリヌクレオチドアダプター(例えば、ローディング部位)に会合し得る。したがって、例えば、モータータンパク質がDNAプロセシング酵素であり、かつローディング部位がDNAではない直鎖状分子を含む(例えば、ローディング部位がRNA、PNA、GNA、TNA、LNA、またはPEGなどを含む)場合、モータータンパク質は、ローディング部位に結合することなくローディング部位と会合(結合)し得る。他方では、ローディング部位がDNAを含む場合、モータータンパク質は、ローディング部位に結合することによってローディング部位と結合し得る。同様に、モータータンパク質がRNAプロセシング酵素であり、かつローディング部位がRNAではない直鎖状分子を含む(例えば、ローディング部位がDNA、PNA、GNA、TNA、LNA、またはPEGなどを含む)場合、モータータンパク質は、ローディング部位に結合することなくローディング部位と会合(結合)し得る。他方では、ローディング部位がRNAを含む場合、モータータンパク質は、ローディング部位に結合することによってローディング部位と結合し得る。言うまでもなく、いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、モータータンパク質の天然基質を含まないローディング部位に結合し得る(例えば、DNA結合酵素は、いくつかの実施形態では、DNA以外の直鎖状分子を含むローディング部位に結合し得る、といった具合である)。
【0134】
したがって、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、モータータンパク質はポリヌクレオチドアダプターのローディング部位に結合する。
【0135】
開示される方法のいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、本明細書に記載のブロッキング部分はローディング部位に結合する。本明細書でより詳細に説明されるように、ブロッキング部分がローディング部位に結合する場合、ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れてローディング部位に移動するのを防止し得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、ローディング部位はスペーサーと隣接している。言い換えれば、ローディング部位は、スペーサーに直接結合し得る。いくつかの実施形態では、ローディング部位はスペーサーと隣接しており、ブロッキング部分はスペーサーに直接隣接するローディング部位に結合する。明らかであろうように、いくつかの実施形態では、ブロッキング部分をスペーサーに直接隣接するローディング部位に結合させることにより、モータータンパク質がスペーサーから外れてポリヌクレオチドアダプターに移動するのが防止される。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分をスペーサーに直接隣接するローディング部位に結合させることにより、モータータンパク質がスペーサーから外れてローディング部位に移動するのが防止される。
【0137】
例えば、ポリヌクレオチドアダプターは、スペーサーに接続されたローディング部位を含み得、ローディング部位が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ローディング部位でポリヌクレオチドアダプターに結合し、ローディング部位からスペーサー上に前進し得る。ブロッキング部分はローディング部位(例えば、上記のもの)に結合し得、ブロッキング部分をローディング部位に結合させることにより、モータータンパク質が一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドに戻り移動するのが防止され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、ローディング部位は、一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。一本鎖ポリヌクレオチド鎖は、二本鎖ポリヌクレオチド鎖のオーバーハング領域を含み得る。非ハイブリダイズポリヌクレオチドは、例えば、上でより詳細に記載されるY字型ポリヌクレオチドを含み得る。
【0139】
いくつかの好ましい実施形態では、ローディング部位は一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、ブロッキング部分は一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含み、(ii)ブロッキング部分をローディング部位に結合させることは、ブロッキング部分をローディング部位にハイブリダイズすることを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、ローディング部位は、約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、約2~約500ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約10~約100ヌクレオチド単位長、約20~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約30~約50ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、約1~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約1000ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約500ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約10~約100ヌクレオチド単位長、約20~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約30~約50ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約1~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約1~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、約2~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約90ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約80ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約70ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約50ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約40ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約30ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約20ヌクレオチド単位長、例えば、約2~約10ヌクレオチド単位長を有する一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチドを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、ローディング部位は、ブロッキング部分の配列に相補的な配列を有する。
【0142】
当業者であれば、ローディング部位の配列が典型的には決定的ではなく、アダプターおよびモータータンパク質ならびに他の実験条件に従って制御または選択され得ることを理解するであろう。例示的な配列は、実施例に例証としてのみ提供される。理論に拘束されることなく、当業者であれば、モータータンパク質のスペーサーへのローディングを促進するローディング部位の機能が本方法で使用されるアダプターおよびモータータンパク質と適合性があるように選択されるローディング部位によって達成され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載されるように、モータータンパク質がローディング部位からスペーサー上に前進することができるという条件で、ローディング部位の配列が改変され得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、ローディング部位およびブロッキング部分の骨格は同じである(例えば、ローディング部位およびブロッキング部分はいずれもDNA骨格を有する、RNA骨格を有する、といった具合である)。他の実施形態では、ローディング部位およびブロッキング部分の骨格は異なる(例えば、ローディング部位がDNA骨格を有し得、ブロッキング部分がRNA骨格を有するか、またはローディング部位がRNA骨格を有し得、ブロッキング部分がDNA骨格を有する、といった具合である)。
【0144】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分のローディング部位へのハイブリダイゼーションにより、スペーサーに隣接する二本鎖ポリヌクレオチドの領域が作製される。かかる領域は、典型的には、モータータンパク質がスペーサーから外れてブロッキング部分にハイブリダイズされるローディング部位の領域に移動するのを防止する。例えば、ローディング部位は一本鎖ポリヌクレオチドを含み得、ブロッキング部分は、スペーサーと隣接している二本鎖ポリヌクレオチドの領域を作製するようにスペーサーと隣接している末端ヌクレオチドで結合し得る。
【0145】
ローディング鎖
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ローディング鎖を含むポリヌクレオチドアダプターにロードされる。いくつかの実施形態では、ローディング鎖は、特に1つのモータータンパク質のみが単一のアダプターにロードされることが望ましい本明細書に提供される方法の実施形態では、モータータンパク質のローディングの効率を改善する。いくつかの実施形態では、ローディング鎖は、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサーに隣接する(またはその1、2、3、4、または5ヌクレオチド以内などの近くの)アダプターの配列に相補的である部分を含む。いくつかの実施形態では、ローディング鎖は、ポリヌクレオチドアダプターの配列に相補的ではない部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、ローディング鎖は、アダプターの配列に相補的であり、したがって、スペーサーの近くの(例えば、スペーサーに隣接する)アダプターにハイブリダイズする部分と、アダプター配列に相補的ではなく、したがって、アダプターにハイブリダイズしない部分とを含む。いくつかの実施形態では、アダプターにハイブリダイズしない部分は、モータータンパク質のアダプターへのローディングを容易にする。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ハイブリダイズされたローディング鎖/アダプター複合体を処理し、そうすることにより、スペーサー上で処理されるようになる。いくつかの実施形態では、スペーサー上のモータータンパク質の処理により、ローディング鎖がポリヌクレオチドアダプターから変位する。いくつかの実施形態では、ローディング鎖のアダプターからの変位により、その後のモータータンパク質のアダプターへのローディングが防止される。
【0146】
いくつかの実施形態では、ローディング鎖は、約2~約500ヌクレオチド単位長、例えば、約5~約100ヌクレオチド単位長、例えば、約10~約60ヌクレオチド単位長、例えば、約20~約40ヌクレオチド単位長を有する。
【0147】
当業者であれば、ローディング鎖の配列が典型的には決定的ではなく、アダプターおよびモータータンパク質ならびに他の実験条件に従って制御または選択され得ることを理解するであろう。例示的な配列は、実施例に例証としてのみ提供される。例えば、ローディング鎖は、配列番号18などのポリヌクレオチド配列、または配列番号18と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性または同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。理論に拘束されることなく、当業者であれば、モータータンパク質のスペーサーへのローディングを促進するローディング鎖の機能が本方法で使用されるアダプターおよびモータータンパク質と適合性があるように選択されるローディング鎖によって達成され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書に記載されるように、モータータンパク質がローディング鎖からスペーサー上に前進することができるという条件で、ローディング鎖の配列が改変され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、変位したローディング鎖の代わりに、スペーサーの近くの(例えば、スペーサーに隣接する)アダプターに結合する。ブロッキング部分は、例えば、一本鎖または非ハイブリダイズポリヌクレオチド(すなわち、ブロッキング鎖)であり得、これは、例えばハイブリダイゼーションによって、変位したローディング鎖の代わりにポリヌクレオチドアダプターに結合し得る。
【0149】
ローディング鎖を使用してモータータンパク質をスペーサー上に前進させ、かつブロッキング鎖を使用してモータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止するいくつかの実施形態では、ブロッキング鎖は、ローディング鎖よりもポリヌクレオチドアダプターに強く結合し得る。例えば、ブロッキング鎖は、ローディング鎖よりも長い長さを有し、したがって、ローディング鎖よりも強くハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態では、ブロッキング鎖は、ローディング鎖を超える濃度で提供される。過剰なブロッキング鎖を提供することにより、変位したローディング鎖の再アニーリングが低減または防止され、したがって、ポリヌクレオチドアダプター上のモータータンパク質の数を制御することが可能になる。例えば、ブロッキング鎖は、ローディング鎖の少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、例えば少なくとも20倍、例えば少なくとも50倍、または少なくとも100倍の濃度で存在し得る。
【0150】
モータータンパク質をスペーサー上に前進させる
本明細書でより詳細に論じられるように、本明細書に提供される方法は、モータータンパク質を、アダプターに含まれるスペーサー上に配置することを含む。
【0151】
本明細書でより詳細に論じられるように、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることにより、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上に前進するようになる。
【0152】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質をローディング部位からスペーサー上に前進させることは、モータータンパク質に、ローディング部位からスペーサーに移行するための推進力を提供することを含む。任意の好適な推進力を使用することができる。
【0153】
典型的には、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターから(例えば、ローディング部位から)スペーサー上に前進するためのエネルギー障壁が存在する。エネルギー障壁は、モータータンパク質が前進する直鎖状分子の化学組成の変化から生じ得る。例えば、いくつかの実施形態では、この変化は、ローディング部位のポリヌクレオチド骨格からスペーサーの非ポリヌクレオチド骨格への変化であり得る。他の実施形態では、エネルギー障壁は、ローディング部位のDNAまたはRNA骨格から脱塩基スペーサーへの変化から生じ得る。エネルギー障壁の典型的な存在は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターから(例えば、ローディング部位から)スペーサー上に前進させるために推進力がしばしば必要とされることを意味する。
【0154】
例えば、いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサー上に前進させることは、物理的または化学的力をモータータンパク質に加えることを含む。いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサー上に前進させることは、モータータンパク質を1つ以上の燃料分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサーに「押し付ける」第2のモータータンパク質によって力が加えられる。言い換えれば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、モータータンパク質は第1のモータータンパク質であり、第1のモータータンパク質をローディング部位からスペーサー上に前進させることは、第2のモータータンパク質をローディング部位にロードすることと、第2のモータータンパク質をローディング部位からスペーサーに向かって前進させることと、を含み、第2のモータータンパク質が第1のモータータンパク質をスペーサーに押し付ける。
【0155】
他の実施形態では、ブロッキング部分をポリヌクレオチドアダプターに結合させることにより、モータータンパク質がスペーサーに押し付けられる。ブロッキング部分のポリヌクレオチドアダプター(例えば、ローディング部位)への結合は、モータータンパク質をスペーサーに押し付けるためのエネルギー障壁を克服するのに十分に有利であり得る。
【0156】
他の実施形態では、モータータンパク質は、ブロッキング部分がアダプターに結合される前または結合された後にスペーサー上に配置される。例えば、モータータンパク質がスペーサー上に配置され得、ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止し得る。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、スペーサーおよびアダプターに結合されたブロッキング部分を含むアダプター上に配置され得る。モータータンパク質は、任意の好適な手段によってアダプター上に配置され得る。例えば、モータータンパク質は、スペーサー内のある特定の場所に優先的に局在し得る。例えば、いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、スペーサー内のヌクレオチドアイランドに結合し得る。したがって、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターをモータータンパク質と接触させることは、モータータンパク質をスペーサーに含まれるヌクレオチドアイランドと接触させることを含み得る。
【0157】
かかる実施形態では、モータータンパク質は、典型的には、例えばスペーサーから外れて移動することによってスペーサーから分離するのを防止するように修飾される。モータータンパク質は、スペーサー上に配置される前または配置された後に修飾され得る。典型的には、モータータンパク質は、スペーサー上に配置された後に修飾される。モータータンパク質の修飾は、本明細書により詳細に記載される。
【0158】
上記の考察から、開示される方法のいくつかの実施形態が、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターからスペーサー上に前進させることを含むことが明らかであろう。
【0159】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質がスペーサー上に存在する場合、スペーサーは、モータータンパク質の活性部位を占有する。いくつかの実施形態では、活性部位は、スペーサーによって部分的に占有される。他の実施形態では、活性部位は、スペーサーによって完全に占有される。活性部位は、モータータンパク質による燃料分子の代謝回転に影響を及ぼすのに十分な程度まで占有され得る。典型的には、本明細書で使用される場合、モータータンパク質の活性部位とは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合溝を指す。当業者であれば、モータータンパク質のATP結合部位がポリヌクレオチドアダプターとは別個のものであり得ることを理解するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合溝はスペーサーによって占有され、モータータンパク質のATP結合部位はスペーサーによって占有されない。他の実施形態では、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合溝およびATP結合部位の両方がスペーサーによって占有される。したがって、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合溝はスペーサーによって占有され得、モータータンパク質のATP結合部位はスペーサーによって閉塞または遮断され得るか、またはATPにアクセス可能であり得る。理論に拘束されることなく、モータータンパク質は依然としてスペーサー上で失速し、ATP結合部位にアクセスできる場合でさえも無駄な代謝回転に関与しない可能性がある。例えば、いくつかの実施形態では、ATP加水分解は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合溝へのポリヌクレオチド結合によって誘導されるモータータンパク質の立体構造変化を必要とする。スペーサー上で失速してポリヌクレオチド結合溝がポリヌクレオチドにアクセスできない場合、かかる立体構造変化は起こらず、無駄な代謝回転が減少するまたは排除される。
【0160】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、モータータンパク質のフットプリントの全体または一部にまたがる。いくつかの実施形態では、スペーサーは、モータータンパク質のフットプリント全体にまたがり、モータータンパク質の活性部位を占有する。言い換えれば、いくつかの実施形態では、モータータンパク質はスペーサー上に前進し、これにより、モータータンパク質が完全にスペーサー上に存在するようになる。
【0161】
当業者であれば、本明細書で定義されるスペーサー上で失速するモータータンパク質と、単にスペーサーの近くで(例えば、スペーサーに隣接して)失速するモータータンパク質との間に有意差があることを理解するであろう。モータータンパク質が単にスペーサーに隣接する場合、またはスペーサーにわずかな量しかまたがっていない場合、無駄な代謝回転は必ずしも防止されるとは限らないであろう。モータータンパク質がスペーサーから外れてこの程度まで移動することを可能にすることは、本特許請求の範囲に定義されるモータータンパク質がスペーサーから外れて移動することを防止することに相当しない。モータータンパク質とスペーサーとの間のわずかな重複によりスペーサー上に存在するが、ポリヌクレオチドに結合されたときと実質的に同じ速度で燃料分子を代謝回転するのが防止されていないモータータンパク質は、本明細書で使用されるスペーサー上に存在しない。
【0162】
したがって、いくつかの実施形態では、スペーサーがモータータンパク質の活性部位を占有する場合、モータータンパク質による燃料分子の代謝回転が減少する。いくつかの実施形態では、モータータンパク質による燃料分子の代謝回転が排除される。
【0163】
モータータンパク質
当業者が理解するであろうように、任意の好適なモータータンパク質を本明細書に提供される方法および製品に使用することができる。一実施形態では、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドに結合することができ、かつ例えばポアを通るナノポアに対するその移動を制御することができる任意のタンパク質であり得る。
【0164】
一実施形態では、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素であるか、またはそれに由来する。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドと相互作用し、かつその少なくとも1つの特性を修飾することができるポリペプチドである。この酵素は、ポリヌクレオチドを切断して個々のヌクレオチドまたはより短い鎖のヌクレオチド、例えばジヌクレオチドもしくはトリヌクレオチドを形成することによってポリヌクレオチドを修飾し得る。この酵素は、ポリヌクレオチドを配向するか、またはそれを特定の位置に移動させることによってポリヌクレオチドを修飾し得る。
【0165】
一実施形態では、モータータンパク質は、より好ましくは、酵素分類(EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30、および3.1.31のうちのいずれかのメンバーに由来する。
【0166】
典型的には、モータータンパク質は、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼ、またはそれらの変異形である。
【0167】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質は、モータータンパク質が(スペーサーの末端から外れて移行すること以外によって)スペーサーから離脱するのを防止するように修飾される。モータータンパク質を任意の好適な方法で適合させることができる。例えば、モータータンパク質がアダプターにロードされ、その後、それがスペーサーから離脱するのを防止するように修飾され得る。あるいは、モータータンパク質がアダプターにロードされる前に、それがスペーサーから離脱するのを防止するように修飾され得る。モータータンパク質がスペーサーから離脱するのを防止するためのモータータンパク質の修飾は、当該技術分野で既知の方法、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれるWO2014/013260で論じられている方法を使用して、かつモータータンパク質がポリヌクレオチド鎖から離脱するのを防止するためのヘリカーゼなどのモータータンパク質の修飾について記載する一節を特に参照して達成することができる。例えば、モータータンパク質は、テトラメチルアゾジカルボキサミド(TMAD)で処理することによって修飾することができる。
【0168】
例えば、モータータンパク質は、モータータンパク質がポリヌクレオチド鎖から離脱したときにその鎖が通過することができるポリヌクレオチド非結合開口部、例えば、空洞、溝、または空隙を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド非結合開口部は、モータータンパク質がスペーサーから離脱したときにスペーサーが通過することができる開口部である。いくつかの実施形態では、所与のモータータンパク質のポリヌクレオチド非結合開口部は、その構造を参照することにより、例えば、そのX線結晶構造を参照することにより決定することができる。X線結晶構造は、ポリヌクレオチド基質の存在下および/または不在下で得ることができる。いくつかの実施形態では、所与のモータータンパク質におけるポリヌクレオチド非結合開口部の位置は、当該技術分野で既知の標準パッケージを使用して分子モデリングによって推定または確認され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド非結合開口部は、モータータンパク質の1つ以上の部分、例えば、1つ以上のドメインの移動によって過渡的に生成され得る。
【0169】
モータータンパク質は、ポリヌクレオチド非結合開口部を閉鎖することによって修飾され得る。したがって、ポリヌクレオチド非結合開口部を閉鎖することにより、モータータンパク質がスペーサーから離脱するのが防止され得る。例えば、モータータンパク質は、ポリヌクレオチド非結合開口部を共有結合的に閉鎖することによって修飾され得る。いくつかの実施形態では、このように対処するのに好ましいモータータンパク質は、ヘリカーゼである。
【0170】
一実施形態では、モータータンパク質は、エキソヌクレアーゼである。好適な酵素には、E.coli由来のエキソヌクレアーゼI(配列番号1)、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号2)、T.thermophilus由来のRecJ(配列番号3)およびバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号4)、TatDエキソヌクレアーゼ、ならびにそれらの変異形が含まれるが、これらに限定されない。配列番号3に示される配列またはその変異形を含む3つのサブユニットが相互作用して、トリマーエキソヌクレアーゼを形成する。
【0171】
一実施形態では、モータータンパク質は、ポリメラーゼである。ポリメラーゼは、PyroPhage(登録商標)3173 DNAポリメラーゼ(Lucigen(登録商標)Corporationから市販されている)、SDポリメラーゼ(Bioron(登録商標)から市販されている)、NEB製のKlenow、またはそれらの変異形であり得る。一実施形態では、酵素は、Phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号5)またはその変異形である。本発明に使用され得るPhi29ポリメラーゼの修飾されたバージョンが米国特許第5,576,204号に開示されている。
【0172】
一実施形態では、モータータンパク質は、トポイソメラーゼである。一実施形態では、トポイソメラーゼは、好ましくは、部分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のうちのいずれかのメンバーである。トポイソメラーゼは、RNA鋳型からのcDNAの形成を触媒することができる酵素である逆転写酵素であり得る。それらは、例えば、New England Biolabs(登録商標)およびInvitrogen(登録商標)から市販されている。
【0173】
一実施形態では、モータータンパク質は、ヘリカーゼである。任意の好適なヘリカーゼを本明細書に提供される方法に従って使用することができる。例えば、本開示に従って使用される当該または各モータータンパク質は独立して、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼ、TrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、およびDdaヘリカーゼ、またはそれらの変異形から選択され得る。単量体ヘリカーゼは、一緒に結合したいくつかのドメインを含み得る。例えば、TraIヘリカーゼおよびTraIサブグループヘリカーゼは、2つのRecDヘリカーゼドメイン、リラクゼースドメイン、およびC末端ドメインを含み得る。これらのドメインは、典型的には、オリゴマーを形成することなく機能することができる単量体ヘリカーゼを形成する。好適なヘリカーゼの具体的な例には、Hel308、NS3、Dda、UvrD、Rep、PcrA、Pif1、およびTraIが挙げられる。これらのヘリカーゼは、典型的には、一本鎖DNAに作用する。二本鎖DNAの両方の鎖に沿って移動することができるヘリカーゼの例には、FtfKおよび六量体酵素複合体、またはRecBCDなどのマルチサブユニット複合体が挙げられる。
【0174】
Hel308ヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/057495などの出版物に記載されている。RecDヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/098562などの出版物に記載されている。XPDヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/098561などの出版物に記載されている。Ddaヘリカーゼは、各々の全内容が参照により組み込まれるWO2015/055981およびWO2016/055777などの出版物に記載されている。
【0175】
一実施形態では、ヘリカーゼは、配列番号6に示される配列(Trwc Cba)もしくはその変異形、配列番号7に示される配列(Hel308 Mbu)もしくはその変異形、または配列番号8に示される配列(Dda)もしくはその変異形を含む。変異形は、本明細書で論じられる方法のうちのいずれかで天然配列とは異なり得る。配列番号8の例示的な変異形は、E94C/A360Cを含む。配列番号8のさらなる例示的な変異形は、E94C/A360C、次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2の付加)を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質(例えば、ヘリカーゼ)は、少なくとも2つの活性動作モード(モータータンパク質が移動を容易にするのに必要なすべての成分、例えば、本明細書で論じられるATPおよびMg2+などの燃料および補因子を備えている場合)および1つの不活性動作モード(モータータンパク質が移動を容易にするのに必要な成分を備えていない場合)でポリヌクレオチドの移動を制御することができる。
【0177】
移動を容易にするのに必要なすべての成分を備えている場合(つまり、活性モードで)、モータータンパク質(エゲリカーゼ)は、ポリヌクレオチドに沿って5’から3’または3’から5’の方向(モータータンパク質によって異なる)に移動する。モータータンパク質を使用してナノポアに対するポリヌクレオチド鎖の移動を制御する実施形態では、モータータンパク質を使用して、ポリヌクレオチドを(例えば、印加された場に逆らって)ポアから離れて(例えば、それから出て)移動させるか、またはポリヌクレオチドを(例えば、印加された場に従って)ポアに向かって(例えば、その中に)移動させるかのいずれかを行うことができる。例えば、モータータンパク質が向かって移動するポリヌクレオチドの末端がポアによって捕捉されると、モータータンパク質は、印加された電位から生じる場の方向に逆らって作用し、ねじ状(threaded)ポリヌクレオチドをポアから(例えばシスチャンバ内に)引き抜く。しかしながら、モータータンパク質が離れて移動する端がポア内で捕捉されると、モータータンパク質は、印加された電位から生じる場の方向に従って作用し、ねじ状ポリヌクレオチドをポア内に(例えば、トランスチャンバ内に)押し込む。
【0178】
モータータンパク質(例えば、ヘリカーゼ)が移動を容易にするのに必要な成分を備えていない場合(すなわち、不活性モードで)、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドに結合し、例えば印加された電位から生じる場によってポア内に引き込まれることによってそれがナノポアに対して移動するときにポリヌクレオチドの移動を遅延させるブレーキとして機能することができる。不活性モードでは、ポリヌクレオチドのどちらの末端が捕捉されるかは問題ではなく、ポリヌクレオチドのポアに対する移動を決定する印加された場が重要であり、モータータンパク質はブレーキとして機能する。不活性モードの場合、モータータンパク質によるポリヌクレオチドの移動の制御は、ラチェッティング、スライディング、およびグレーキングを含むいくつかの方法で説明することができる。
【0179】
上で論じられるように、本明細書に開示される方法は、無駄な代謝回転の概念を減少させ得る。代謝回転は、モータータンパク質による燃料分子の化学的(酵素的)変換である。
【0180】
燃料は、典型的には、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体である。遊離ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)のうちの1つ以上であり得るが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチドは、通常、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、またはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、典型的には、アデノシン三リン酸(ATP)である。
【0181】
モータータンパク質の補因子は、モータータンパク質が機能することを可能にする因子である。補因子は、好ましくは、二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg2+、Mn2+、Ca2+、またはCo2+である。補因子は、最も好ましくは、Mg2+である。
【0182】
過剰なモータータンパク質の除去
いくつかの実施形態では、提供される方法は、スペーサー上に位置しない過剰なモータータンパク質分子を除去するステップをさらに含む。過剰なモータータンパク質の除去は、ストレスステップと称され得る。ストレスステップを使用して、ポリヌクレオチドアダプターから誤って結合されたモータータンパク質を除去することができる。モータータンパク質がスペーサーから離脱するのを防止するようにモータータンパク質を修飾することを含む提供される方法の実施形態では、ストレスステップを使用して、正しく修飾されていないモータータンパク質を除去することができる。
【0183】
過剰なモータータンパク質の除去は、本明細書に記載のポリヌクレオチドアダプター上で失速しない非結合モータータンパク質の存在を低減または排除するのに有益である。失速しないモータータンパク質は、ポリヌクレオチド鎖と結合し得る、かつ/または存在する燃料分子を消費し得る、すなわち、無駄な代謝回転に関与し得る。過剰なモータータンパク質を除去することにより、失速しないモータータンパク質からこの無駄な代謝回転が低減または防止され、したがって、燃料分子の非生産的な消費が低減される。
【0184】
非結合モータータンパク質は、任意の好適な様式で除去することができる(例えば、ストレスステップなど)。例えば、非結合モータータンパク質は、洗浄または濾過によって除去することができる。非結合モータータンパク質は、高塩洗浄緩衝液を使用して除去することができる。非結合モータータンパク質は、それらの除去を促進する特定のpHまたは温度条件を使用して除去することができる。例えば、ストレス条件は、例えば、ATPなどの燃料の存在下での高塩濃度を含み得る。
【0185】
モータータンパク質をスペーサーから外して前進させる
本明細書でより詳細に論じられるように、いくつかの実施形態では、アダプターは、その使用前にモータータンパク質を失速させて標的ポリヌクレオチドの移動を制御するのに有用である。例えば、いくつかの実施形態では、開示されるアダプターは、標的ポリヌクレオチドのナノポアに対する移動を制御するためのモータータンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドのナノポアに対する移動は、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるのに有用である。
【0186】
本明細書でより詳細に論じられるように、開示される方法は、スペーサー上のモータータンパク質を失速させることを含む。ブロッキング部分は、モータータンパク質がスペーサーから外れてポリヌクレオチドアダプターに移動する、例えば、スペーサーからポリヌクレオチドアダプターのローディング部位に移動するのを防止する。
【0187】
典型的には、モータータンパク質がスペーサーから標的ポリヌクレオチドに前進して標的ポリヌクレオチドの移動を制御するためのエネルギー障壁が存在する。エネルギー障壁は、モータータンパク質が前進する直鎖状分子の化学組成の変化から生じ得る。例えば、いくつかの実施形態では、この変化は、スペーサーの非ポリヌクレオチド骨格から標的ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド骨格への変化であり得る。他の実施形態では、エネルギー障壁は、塩基性スペーサーから標的ポリヌクレオチドのDNAまたはRNA骨格への変化から生じ得る。エネルギー障壁の典型的な存在は、モータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターから(例えば、スペーサーから)標的ポリヌクレオチドに前進させるために推進力がしばしば必要とされることを意味する。
【0188】
したがって、いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサーから標的ポリヌクレオチドに前進させることは、モータータンパク質に、スペーサーから標的ポリヌクレオチドに移行するための推進力を提供することを含む。任意の好適な推進力を使用することができる。
【0189】
例えば、いくつかの実施形態では、推進力は、ポリヌクレオチドアダプターをナノポアと接触させることによって提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノポアは、ポリヌクレオチドアダプターと結合し、モータータンパク質を標的ポリヌクレオチドに押し付ける。
【0190】
より詳細には、いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサー上で失速させるポリヌクレオチドアダプターは、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合するような条件下で、標的ポリヌクレオチドと接触する。例えば、本明細書により詳細に記載されるように、ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチドアダプターに、例えば、標的ポリヌクレオチドの末端に連結され得る。ポリヌクレオチドアダプターがナノポアと結合するように、ポリヌクレオチドアダプター-標的ポリヌクレオチドコンジュゲートをナノポアと接触させることができる。例えば、ポリヌクレオチドアダプターは、ナノポアを通ることができる。ポリヌクレオチドアダプターのナノポアに対する(例えば、ナノポアを通る)移動により、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上で失速したモータータンパク質に力が提供され得る。例えば、ポリヌクレオチドアダプターが印加された電位の影響下でナノポアに通される実施形態では、それがナノポアに接近するまたはそれと接触するとナノポアによってモータータンパク質に加えられる力は、モータータンパク質を標的ポリヌクレオチドに押し付けるのに十分である。かかる実施形態では、ナノポアは、モータータンパク質をスペーサーから外して標的ポリヌクレオチドアダプターに「押し付ける」ものとみなすことができる。かかる実施形態は、ポリヌクレオチドアダプターが、(i)ローディング部位と、(ii)標的ポリヌクレオチドに連結され得るまたは別様に結合し得るポリヌクレオチド鎖との間に配置されたスペーサーを含む、本開示の実施形態に特に適している(が、これらに限定されない)。
【0191】
他の実施形態では、モータータンパク質をスペーサーから標的ポリヌクレオチドに前進させるのに必要な力は、モータータンパク質に物理的または化学的力を加えることによって提供される。いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサーから標的ポリヌクレオチドに前進させることは、モータータンパク質を1つ以上の燃料分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、モータータンパク質をスペーサーから外して標的ポリヌクレオチドに「押し付ける」第2のモータータンパク質によって力が加えられる。言い換えれば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターはスペーサーを含み、標的ポリヌクレオチドに結合し、モータータンパク質は第1のモータータンパク質であり、第1のモータータンパク質をスペーサーから標的ポリヌクレオチドに前進させることは、第2のモータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターにロードすることと、第2のモータータンパク質を標的ポリヌクレオチドに向かって前進させることと、を含み、第2のタンパク質が第1のモータータンパク質をスペーサーに押し付ける。かかる実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、典型的には、標的ポリヌクレオチドから離れて(標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端から離れて)スペーサーの末端に接続されたローディング部位を含む。
【0192】
かかる実施形態では、典型的にはモータータンパク質をスペーサーから外して標的ポリヌクレオチドに前進させるためにブロッキング部分を除去することは必要ではないことが理解されるであろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、この方法は、ブロッキング部分を変位させることを含む。例えば、ポリヌクレオチドアダプターをナノポアと接触させることによってブロッキング部分を除去するまたは変位させることができる。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分のポリヌクレオチドアダプターからの除去により、モータータンパク質がスペーサーから外れてポリヌクレオチドアダプターおよび/または標的ポリヌクレオチドに移動することが可能になる。
【0193】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、標的ポリヌクレオチドから離れて(すなわち、標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端から離れて)スペーサー側のポリヌクレオチドアダプターに結合する。かかる実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、典型的には、標的ポリヌクレオチドから離れて(標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端から離れて)スペーサーの末端に接続されたローディング部位を含み、ブロッキング部分は、ローディング部位とスペーサーの間のポリヌクレオチドアダプターに結合する。
【0194】
他の実施形態では、ブロッキング部分は、(標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端に向かって)スペーサーと標的ポリヌクレオチドとの間のポリヌクレオチドアダプターに結合する。かかる実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、典型的には、標的ポリヌクレオチドから離れて(標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端から離れて)スペーサーの末端に接続されたローディング部位を含み、ブロッキング部分は、標的ポリヌクレオチドに結合しているか、または結合するであろうポリヌクレオチドアダプターの末端に向かってポリヌクレオチドアダプターに結合する。
【0195】
移動制御および特性付け
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)(A)標的ポリヌクレオチド、(B)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプター、および(C)モータータンパク質を提供することと、
ii)本明細書に開示される方法を実行し、それにより、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質を失速させることと、
iii)標的ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上の失速したモータータンパク質をナノポアと接触させることと、
iv)電位を膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、モータータンパク質を、スペーサーを越えて標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法も本明細書に提供される。
【0196】
本明細書に開示される実施形態におけるいずれの方法も、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質を失速させるために使用することができる。
【0197】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドアダプターに結合される。一実施形態では、ステップ(iii)は、ポリヌクレオチドアダプターを標的ポリヌクレオチドに結合させることを含む。
【0198】
一実施形態では、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプター上で失速した後に、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合した後に、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプター上で失速する。
【0199】
膜貫通ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御する方法であって、
i)標的ポリヌクレオチドを提供することと、
ii)スペーサーを含み、かつモータータンパク質をその上で失速させるポリヌクレオチドアダプターを提供することであって、ポリヌクレオチドアダプターが本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つに従って得られる、提供することと、
iii)標的ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアダプターをナノポアと接触させることと、
iv)電位を膜貫通ナノポアにわたって印加し、それにより、モータータンパク質を、スペーサーを越えて標的ポリヌクレオチドに移動させ、それにより、ナノポアに対する標的ポリヌクレオチドの移動を制御することと、を含む、方法も本明細書に提供される。
【0200】
本明細書に開示される実施形態におけるいずれの方法も、ポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上のモータータンパク質を失速させるために使用することができる。
【0201】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドアダプターに結合される。一実施形態では、ステップ(iii)は、ポリヌクレオチドアダプターを標的ポリヌクレオチドに結合させることを含む。
【0202】
開示される方法では、ポリヌクレオチドアダプターは、任意の様式で標的ポリヌクレオチドに結合することができる。アダプターは、好ましくは、標的ポリヌクレオチドに共有結合する。アダプターは、標的ポリヌクレオチドに連結され得る。アダプターは、標的ポリヌクレオチドのいずれかの末端、すなわち、5’末端もしくは3’末端、または標的ポリヌクレオチドの両方の末端、すなわち、5’末端および3’末端に連結され得る。アダプターは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して標的ポリヌクレオチドに連結され得る。アダプターは、ATPの不在下で、またはATPの代わりにガンマ-S-ATP(ATPγS)を使用して、標的ポリヌクレオチドに連結され得る。通常、ポリヌクレオチドアダプターが標的ポリヌクレオチドに結合したときにモータータンパク質がポリヌクレオチドアダプター上で失速する場合、アダプターはATPの不在下で標的ポリヌクレオチドに連結される。アダプターは、T4 DNAリガーゼ、E.coli DNAリガーゼ、Taq DNAリガーゼ、Tma DNAリガーゼ、および9N DNAリガーゼなどのリガーゼを使用して連結され得る。リガーゼは、方法のステップ(iii)の前に試料から除去され得る。アダプターは、トポイソメラーゼを使用して結合し得る。トポイソメラーゼは、例えば、部分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のうちのいずれかのメンバーであり得る。
【0203】
標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法であって、
i)上に開示される方法のうちの1つを実行することと、
ii)標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときに、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す1回以上の測定を行い、それにより、標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときにそれを特徴付けることと、を含む、方法も提供される。
【0204】
ポリヌクレオチドアダプター
スペーサーを含み、かつモータータンパク質をスペーサー上で失速させるポリヌクレオチドアダプターも提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書および上で論じられる方法の実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0205】
一実施形態では、(i)スペーサーと、(ii)スペーサー上で失速したモータータンパク質であって、モータータンパク質の活性部位がスペーサーによって占有されている、モータータンパク質と、(iii)アダプターに結合されたブロッキング部分であって、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、ブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプターが本明細書に提供される。
【0206】
いくつかの実施形態では、スペーサー、モータータンパク質、およびブロッキング部分は、本明細書に詳細に記載されるとおりである。
【0207】
一実施形態では、(i)アダプターはスペーサーに接続されたローディング部位を含み、ブロッキング部分はローディング部位に結合され、(ii)ブロッキング部分は、モータータンパク質がローディング部位と結合するのを防止する。いくつかの実施形態では、ローディング部位は、本明細書に記載されるとおりである。
【0208】
一実施形態では、
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lがブロックされたローディング部位であり、Sがスペーサーであり、Dが二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数である)と、
ii)スペーサー(S)上で失速した1つ以上のモータータンパク質と、を含み、
当該または各L部分は、当該または各モータータンパク質が二本鎖ポリヌクレオチド(D)から離れた方向にスペーサー(S)から外れて移動するのを防止する、ポリヌクレオチドアダプターが提供される。
【0209】
いくつかの実施形態では、ローディング部位、スペーサー、およびモータータンパク質は、本明細書に記載されるとおりである。
【0210】
いくつかの実施形態では、nは、1~約10、例えば、1~約5、例えば、1、2、3、または4、多くの場合、1または2の整数である。いくつかの実施形態では、nは1よりも大きく、複数のモータータンパク質が複数のスペーサーS上で失速することができる。
【0211】
いくつかの実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチドは、約1~約1000ヌクレオチド長を有する。いくつかの実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチドは、約5~約500ヌクレオチド長、例えば、約10~約100ヌクレオチド長、例えば、約20~約80ヌクレオチド長、例えば、約30~約50ヌクレオチド長を有する。
【0212】
いくつかの実施形態では、Lは、Dと同じタイプのポリヌクレオチドであるポリヌクレオチドであり得るか、またはDとは異なるタイプのポリヌクレオチドであり得る。Lおよび/またはDは、アダプターが結合し得る標的ポリヌクレオチドと同じタイプのポリヌクレオチドであり得るか、または標的ポリヌクレオチドとは異なるタイプのポリヌクレオチドであり得る。例えば、Lは二本鎖DNAであり得、Dは二本鎖DNAであり得、アダプターは二本鎖DNAである標的ポリヌクレオチドへの結合に好適であり得る。
【0213】
一実施形態では、
i)5’から3’の方向に{L-S-D}または{D-S-L(式中、Lが第1の二本鎖ポリヌクレオチドであり、Sがスペーサーであり、Dが第2の二本鎖ポリヌクレオチドであり、nが整数、任意選択的に、1~約20の整数であり、第1の二本鎖ポリヌクレオチド(L)がスペーサー(S)と隣接しており、スペーサー(S)が第2の二本鎖ポリヌクレオチド(D)と隣接している)を含み、
ii)1つ以上のモータータンパク質はスペーサー(S)上で失速する、ポリヌクレオチドアダプターが提供される。
【0214】
いくつかの実施形態では、スペーサーおよびモータータンパク質は、本明細書に記載されるとおりである。
【0215】
いくつかの実施形態では、nは、1~約10、例えば、1~約5、例えば、1、2、3、または4、多くの場合、1または2の整数である。
【0216】
いくつかの実施形態では、Lは、Dと同じタイプのポリヌクレオチドであるポリヌクレオチドであり得るか、またはDとは異なるタイプのポリヌクレオチドであり得る。Lおよび/またはDは、アダプターが結合し得る標的ポリヌクレオチドと同じタイプのポリヌクレオチドであり得るか、または標的ポリヌクレオチドとは異なるタイプのポリヌクレオチドであり得る。例えば、Lは二本鎖DNAであり得、Dは二本鎖DNAであり得、アダプターは二本鎖DNAである標的ポリヌクレオチドへの結合に好適であり得る。
【0217】
キット
ポリヌクレオチドアダプターおよびモータータンパク質を含むキットも提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書および上で論じられるキットの実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0218】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターと、
ii)標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、
iii)モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターのスペーサー上に位置し、かつモータータンパク質の活性部位がスペーサーによって占有されたときに、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのが防止されるように、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができるブロッキング部分と、を含む、キットが提供される。
【0219】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書により詳細に記載されるポリヌクレオチドアダプターである。一実施形態では、モータータンパク質は、本明細書に記載のモータータンパク質である。一実施形態では、ブロッキング部分は、本明細書に記載のブロッキング部分である。
【0220】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、ローディング部位を含む。ローディング部位は、本明細書に記載のローディング部位のうちのいずれかであり得る。一実施形態では、ブロッキング部分は、モータータンパク質がローディング部位と結合するのが防止されるように、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができる。
【0221】
標的ポリヌクレオチドを修飾するためのキットであって、
i)ポリヌクレオチドアダプターであって、スペーサーと、ポリヌクレオチドアダプターに結合されたブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプターと、
ii)標的ポリヌクレオチドの移動を制御することができるモータータンパク質と、を含み、
モータータンパク質がアダプターに結合されたときに、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、キットも提供される。
【0222】
ポリヌクレオチドアダプター、スペーサー、ブロッキング部分、およびモータータンパク質は、典型的には、本明細書でより詳細に定義されるとおりである。
【0223】

ポリヌクレオチドアダプター、モータータンパク質、およびナノポアを含む系も提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書および上で論じられる系の実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0224】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるための系であって、
-スペーサーを含むポリヌクレオチドアダプターと、
-モータータンパク質であって、モータータンパク質の活性部位がスペーサーによって占有されている、モータータンパク質と、
-アダプターに結合されたブロッキング部分であって、ブロッキング部分が、モータータンパク質がスペーサーから外れて移動するのを防止する、ブロッキング部分と、
-標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときに標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのナノポアと、を含む、系が提供される。
【0225】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書により詳細に記載されるポリヌクレオチドアダプターである。一実施形態では、モータータンパク質は、本明細書に記載のモータータンパク質である。一実施形態では、ブロッキング部分は、本明細書に記載のブロッキング部分である。一実施形態では、ナノポアは、本明細書に記載のナノポアであり、系は、本明細書に定義される膜、制御機器等をさらに含み得る。
【0226】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、ローディング部位を含む。ローディング部位は、本明細書に記載のローディング部位のうちのいずれかであり得る。一実施形態では、ブロッキング部分は、モータータンパク質がローディング部位と結合するのが防止されるように、ポリヌクレオチドアダプターに結合することができる。
【0227】
一実施形態では、系は、標的ポリヌクレオチドをさらに含む。一実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の標的ポリヌクレオチドである。
【0228】
標的ポリヌクレオチド
標的ポリヌクレオチドの特徴付けに関する本開示の実施形態では、標的分析物は、本明細書でより詳細に記載されるように、膜貫通ナノポアに対して、例えば、その内部にまたはそれを通って移動する。
【0229】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドの存在、不在、または1つ以上の特徴が決定される。本方法は、少なくとも1つの標的ポリヌクレオチドの存在、不在、または1つ以上の特徴を決定するためのものであり得る。本方法は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドの存在、不在、または1つ以上の特徴を決定することに関し得る。本方法は、任意の数の標的ポリヌクレオチド、例えば、2、5、10、15、20、30、40、50、100、またはそれ以上の標的ポリヌクレオチドの存在、不在、または1つ以上の特徴を決定することを含み得る。1つ以上の標的ポリヌクレオチドの任意の数の特徴、例えば、1、2、3、4、5、10、またはそれ以上の特徴が決定され得る。
【0230】
ポアのチャネル内での分子(例えば、標的ポリヌクレオチド)の結合は、ポアを通るオープンチャネルイオン流に影響を及ぼし、これはポアチャネルの「分子センシング」の本質である。オープンチャネルイオン流の変動は、電流の変化による好適な測定技法を使用して測定することができる(例えば、WO2000/28312およびD.Stoddart et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2010,106,7702-7またはWO2009/077734)。電流の減少によって測定されるイオン流の減少度は、ポア内またはポアの近くの障害物のサイズに関連している。したがって、ポア内またはポアの近くでの目的とする分子(例えば、標的ポリヌクレオチド)の結合により、検出可能かつ測定可能な事象が提供され、それにより、「生物学的センサ」の基礎が形成される。生体分子の存在を検出することにより、個別化された薬剤開発、医学、診断、ライフサイエンス研究、環境モニタリング、ならびに警備および/または防衛産業での用途が見出される。
【0231】
標的ポリヌクレオチドは、細胞から分泌され得る。あるいは、標的分析物は、細胞内に存在する分析物であり得、したがって、方法が実行され得る前に分析物が細胞から抽出されなければならない。
【0232】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、核酸である。ポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む巨大分子と定義される。DNAおよびRNA中の天然に存在する核酸塩基は、それらの物理的サイズによって区別され得る。核酸分子または個々の塩基がナノポアのチャネルを通過すると、塩基間のサイズの違いにより、チャネルを通るイオン流の直接相関した減少がもたらされる。イオン流の変動が記録され得る。イオン流の変動を記録するための好適な電気測定技法は、例えば、WO2000/28312およびD.Stoddart et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2010,106,pp7702-7(単一チャネル記録機器)、ならびに例えばWO2009/077734(マルチチャネル記録技法)に記載されている。好適な較正により、イオン流の特徴的な減少を使用して、チャネルを横断する特定のヌクレオチドおよび関連塩基をリアルタイムで特定することができる。典型的なナノポア核酸配列決定では、ヌクレオチドによるチャネルの部分的遮断のため、目的とするヌクレオチド配列の個々のヌクレオチドがナノポアのチャネルを連続して通過したときにオープンチャネルのイオン流が減少する。上記の好適な記録技法を使用して測定されるのは、このイオン流の減少である。イオン流の減少は、チャネルを通る既知のヌクレオチドについて測定されたイオン流の減少に較正することができ、結果としてどのヌクレオチドがチャネルを通過するかを決定するための手段が得られ、したがって、連続して行われる場合、ナノポアを通過する核酸のヌクレオチド配列を決定する方法が得られる。個々のヌクレオチドを正確に決定するために、典型的には、チャネルを通るイオン流の減少が、狭窄(または「リーディングヘッド」)を通過する個々のヌクレオチドのサイズに直接相関することが必要とされている。配列決定が、例えば、ポリメラーゼまたはヘリカーゼなどの関連モータータンパク質の作用によりポアに「通される」無傷の核酸ポリマーに対して行われ得ることが理解されるであろう。あるいは、配列は、ポアの近くの標的核酸から連続して除去されたヌクレオチド三リン酸塩基の通過によって決定され得る(例えば、WO2014/187924を参照されたい)。
【0233】
ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然に存在しても人工であってもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化されてもメチル化されてもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷している場合がある。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含み得る。かかるダイマーは、典型的には、紫外線による損傷に関連しており、皮膚メラノーマの主な原因である。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば、標識またはタグで修飾され得、その好適な例は当業者に知られている。ポリヌクレオチドは、1つ以上のスペーサーを含み得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、および少なくとも1つのリン酸基を含む。核酸塩基および糖がヌクレオシドを形成する。核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリンおよびピリミジン、より具体的には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、およびシトシン(C)が含まれるが、これらに限定されない。糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖には、リボースおよびデオキシリボースが含まれるが、これらに限定されない。糖は、好ましくは、デオキシリボースである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、以下のヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、ならびにデオキシシチジン(dC)を含む。ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸、または三リン酸を含む。ヌクレオチドは、3個より多くのリン酸、例えば、4個または5個のリン酸を含み得る。リン酸は、ヌクレオチドの5’側または3’側に結合し得る。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合し得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖およびリン酸基によって結合する。ヌクレオチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続され得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドの少なくとも一部分は、好ましくは、二本鎖である。ポリヌクレオチドは、最も好ましくは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。具体的には、ポリヌクレオチドを分析物として代替的に使用する当該方法は、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されるか否かから選択される1つ以上の特徴を決定することを含む。
【0234】
ポリヌクレオチドは、任意の長さ(i)であり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500ヌクレオチド長またはヌクレオチド対長であり得る。ポリヌクレオチドは、1000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上、5000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上、または100000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上であり得る。任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、本方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100個、またはそれ以上のポリヌクレオチドを特徴付けることに関し得る。2個以上のポリヌクレオチドが特徴付けられる場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの事例であり得る。ポリヌクレオチドは、天然に存在しても人工であってもよい。例えば、本方法を使用して、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を検証することができる。本方法は、典型的には、インビトロで実行される。
【0235】
ヌクレオチドは、任意の同一性(ii)を有し得、ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸塩(AMP)、グアノシン一リン酸塩(GMP)、チミジン一リン酸塩(TMP)、ウリジン一リン酸塩(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸塩、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸塩、シチジン一リン酸塩(CMP)、環状アデノシン一リン酸塩(cAMP)、環状グアノシン一リン酸塩(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸塩(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸塩(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸塩(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸塩(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸塩(dCMP)、およびデオキシメチルシチジン一リン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMP、およびdUMPから選択される。ヌクレオチドは、脱塩基であり得る(すなわち、核酸塩基を欠き得る)。ヌクレオチドは、核酸塩基および糖も欠き得る(すなわち、C3スペーサーである)。ヌクレオチドの配列(iii)は、鎖の5’から3’の方向にポリヌクレオチド株にわたって互いに結合する以下のヌクレオチドの連続した同一性によって決定される。
【0236】
標的ポリヌクレオチドは、PCR反応の産物、ゲノムDNA、エンドヌクレアーゼ消化の産物、および/またはDNAライブラリを含み得る。標的ポリヌクレオチドは、任意の生物または微生物から得られ得るか、またはそれらから抽出され得る。標的ポリヌクレオチドは、多くの場合、ヒトまたは動物から、例えば、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、もしくは羊水から、または全血、血漿、もしくは血清から得られる。標的ポリヌクレオチドは、植物、例えば、穀草類、マメ科植物、果物、または野菜から得られ得る。標的ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAを含み得る。ゲノムDNAは断片化され得る。DNAは任意の好適な方法によって断片化され得る。例えば、DNAを断片化する方法は当該技術分野で既知であり、かかる方法は、MuAトランスポザーゼなどのトランスポザーゼを使用することができる。好ましくは、ゲノムDNAは断片化されない。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、および/またはDNA/RNAハイブリッドであり得る。
【0237】
ナノポア
ナノポアに関する本発明の実施形態では、任意の好適なナノポアを使用することができる。一実施形態では、ナノポアは、膜貫通ポアである。
【0238】
膜貫通ポアは、膜をある程度横断する構造である。それにより、印加電位によって駆動される水和イオンが膜を横切って流れるまたは膜内に流れることが可能になる。膜貫通ポアは、典型的には、膜全体を横断し、これにより、水和イオンが膜の片側から膜の反対側に流れることができるようになる。しかしながら、膜貫通ポアは膜を横断する必要はない。一方の末端が閉鎖していてもよい。例えば、ポアは、膜中のウェル、間隙、チャネル、溝、またはスリットであり得、それに沿ってまたはその中に水和イオンが流れることができる。
【0239】
任意の膜貫通ポアが本明細書に提供される方法で使用され得る。ポアは、生物学的であっても人工であってもよい。好適なポアには、タンパク質ポア、ポリヌクレオチドポア、および固体ポアが含まれるが、これらに限定されない。ポアは、DNA折り紙ポアであり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。好適なDNA折り紙ポアは、WO2013/083983に開示されている。
【0240】
一実施形態では、ナノポアは、膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドなどの水和イオンが膜の片側から膜の反対側へ流れることを可能にするポリペプチドまたはポリペプチドの集合体である。本明細書に提供される方法では、膜貫通タンパク質ポアは、印加電位によって駆動される水和イオンが膜の片側から反対側に流れることを可能にするポアを形成することができる。膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、ポリヌクレオチドがトリブロックコポリマー膜などの膜の片側から反対側に流れることを可能にする。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドをポアを通して移動させることを可能にする。
【0241】
一実施形態では、ナノポアは、モノマーまたはオリゴマーである膜貫通タンパク質ポアである。ポアは、好ましくは、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、または少なくとも16のサブユニットなどのいくつかの繰り返しサブユニットから構成されている。ポアは、好ましくは、六量体、七量体、八量体、または九量体ポアである。ポアは、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。
【0242】
一実施形態では、膜貫通タンパク質ポアは、イオンが通って流れることができるバレルまたはチャネルを含む。ポアのサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α-ヘリックスバンドルもしくはチャネルに寄与する。
【0243】
典型的には、膜貫通タンパク質ポアのバレルまたはチャネルは、標的ポリヌクレオチド(本明細書に記載のもの)などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレルまたはチャネルの狭窄の近くに位置する。膜貫通タンパク質ポアは、典型的には、アルギニン、リジン、もしくはヒスチジンなどの1つ以上の正電荷アミノ酸、またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、ポアと、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸との間の相互作用を促進する。
【0244】
一実施形態では、ナノポアは、βバレルポアまたはαヘリックスバンドルポアに由来する膜貫通タンパク質ポアである。β-バレルポアは、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ-バレルポアには、β-毒素、例えば、α-溶血毒、炭疽毒素、およびロイコシジン、ならびに細菌の外膜タンパク質/ポリン、例えば、Mycobacterium smegmatisポリン(Msp)、例えば、MspA、MspB、MspC、またはMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、およびNeisseriaオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)、ならびに他のポア、例えば、リセニンが含まれるが、これらに限定されない。α-ヘリックスバンドルポアは、α-ヘリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なα-ヘリックスバンドルポアには、内膜タンパク質およびα外膜タンパク質、例えば、WZAおよびClyA毒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0245】
一実施形態では、ナノポアは、Msp、α-溶血素(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、または溶血性タンパク質フラガセアトキシンC(FraC)に由来するか、またはそれらに基づく膜貫通ポアである。
【0246】
一実施形態では、ナノポアは、CsgG、例えば、E.coli株K-12亜株MC4100由来のCsgGに由来する。かかるポアはオリゴマーであり、典型的には、CsgGに由来する7、8、9、または10個のモノマーを含む。ポアは、同一のモノマーを含むCsgGに由来するホモオリゴマーポアであり得る。あるいは、ポアは、他とは異なる少なくとも1つのモノマーを含むCsgGに由来するヘテロオリゴマーポアであり得る。CsgGに由来する好適なポアの例は、WO2016/034591に開示されている。
【0247】
一実施形態では、ナノポアは、リセニンに由来する膜貫通ポアである。リセニンに由来する好適なポアの例は、WO2013/153359に開示されている。
【0248】
一実施形態では、ナノポアは、α-溶血素(α-HL)に由来するか、またはそれに基づく膜貫通ポアである。野生型α-溶血毒ポアは、7つの同一のモノマーまたはサブユニットから形成される(すなわち、それは七量体である)。α-溶血素ポアは、α-溶血素-NNまたはその変異形であり得る。変異形は、好ましくは、E111位およびK147位にN残基を含む。
【0249】
一実施形態では、ナノポアは、Mspに由来する、例えば、MspAに由来する膜貫通タンパク質ポアである。MspAに由来する好適なポアの例は、WO2012/107778に開示されている。
【0250】
一実施形態では、ナノポアは、ClyAに由来するか、またはそれに基づく膜貫通ポアである。
【0251】

膜貫通ナノポアの使用を含む本発明の実施形態では、膜貫通ナノポアは、典型的には、膜中に存在する。任意の好適な膜を系で使用することができる。
【0252】
膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、親水特性および親油特性の両方を有するリン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然に存在するものであり得る。天然に存在しない両親媒性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、それらには、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが一緒に重合されて単一ポリマー鎖を作製するポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットのうちの1つが疎水性(すなわち、親油性)である一方で、他のサブユニットが水性媒体中で親水性であるように操作され得る。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒特性を有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以上のモノマーサブユニットから構築されて両親媒性物質として挙動するより複雑な配置を形成し得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコポリマーであり得る。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
【0253】
古細菌二極性テトラエーテル脂質は、脂質が単分子層膜を形成するように構築される天然に存在する脂質である。これらの脂質は、一般に、厳しい生物環境下で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌、および好酸球で見つけられる。それらの安定性は、最終二分子層の融合性質から得られると考えられている。一般モチーフ親水性-疎水性-親水性を有するトリブロックポリマーを作製することによってこれらの生物学的実体を模倣するブロックコポリマーを構築することは簡単である。この材料は、脂質二分子層と同様に挙動するモノマー膜を形成し、ベシクルから層状膜に至るまでの幅広い相挙動を包含し得る。これらのトリブロックコポリマーから形成された膜は、生体脂質膜に優るいくつかの利点を有する。トリブロックコポリマーが合成されたものであるため、その正確な構造を慎重に制御して、膜を形成し、かつポアおよび他のタンパク質と相互作用するのに必要な正しい鎖長および特性を提供することができる。
【0254】
ブロックコポリマーは、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築される場合もあり、例えば、疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから作製され得る。ブロックコポリマーの親水性サブセクションは低いタンパク質結合特性も有し得、これは、生の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の作製を可能にする。このヘッド基単位は、非分類脂質ヘッド基に由来する場合もある。
【0255】
トリブロックコポリマー膜は、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度またはpH範囲も有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマー系膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0256】
いくつかの実施形態では、膜は、国際出願第WO2014/064443号または同第WO2014/064444号に開示される膜のうちの1つである。
【0257】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。両親媒性層は、単分子層であっても二分子層であってもよい。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲していてもよい。両親媒性層は、支持されていてもよい。
【0258】
両親媒性膜は、典型的には、およそ10-8cm s-1の脂質拡散速度を有する二次元流体として本質的に作用する天然に移動性である。これは、ポアおよびカップリングされたポリヌクレオチドが典型的には両親媒性膜内で移動することができることを意味する。
【0259】
膜は、脂質二分子層であり得る。脂質二分子層は、細胞膜のモデルであり、幅広い実験研究のための優れた基盤として機能する。例えば、脂質二分子層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することができる。あるいは、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして使用することができる。脂質二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、またはリポソームが含まれるが、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好適な脂質二分子層は、WO2008/102121、WO2009/077734、およびWO2006/100484に開示されている。
【0260】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野で既知である。脂質二分子層は、一般にMontal and Mueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法によって形成され、この方法では、脂質単分子層が、水溶液/空気界面上で、その界面に対して垂直な開口の両側を越えて担持される。脂質は、通常、最初にそれを有機溶媒中に溶解させ、その後、少量の溶媒を開口の両側にある水溶液の界面上で蒸発させることによって、電解質水溶液の表面に添加される。有機溶媒が蒸発すると、開口の両側の溶液/空気界面は、二分子層が形成されるまで開口を越えて物理的に上下に移動する。平面脂質二分子層は、開口を横断して膜内にまたは開口部を横断して陥凹部内に形成され得る。
【0261】
Montal & Muellerの方法は、タンパク質ポア挿入に好適な良質の脂質二分子層を形成するための費用対効果の高い、比較的簡単な方法であるため、好評である。二分子層形成の他の一般的な方法には、先端浸漬(tip-dipping)、二分子層の塗装(painting bilayers)、およびリポソーム二分子層のパッチクランプが含まれる。
【0262】
先端浸漬二分子層形成は、脂質の単分子層を担持する試験溶液の表面上に開口面(例えば、ピペットチップ)を接触させることを伴う。この場合もやはり、脂質単分子層は、最初に有機溶媒中に溶解した少量の脂質を溶液表面で蒸発させることによって溶液/空気界面で生成される。その後、二分子層はラングミュア-シェーファー法によって形成され、溶液表面に対して開口を移動させるための機械的自動化を必要とする。
【0263】
二分子層の塗装の場合、有機溶媒中に溶解した少量の脂質が試験水溶液中に浸した開口に直接塗布される。脂質溶液は、塗装用刷毛または同等のものを使用して開口にわたって薄く広げられる。溶媒を薄くすることにより、脂質二分子層の形成がもたらされる。しかしながら、二分子層から溶媒を完全に除去することは困難であり、その結果として、この方法によって形成された二分子層は安定性が低く、電気化学的測定中にノイズを生じやすい。
【0264】
パッチクランプは、生体細胞膜の研究で一般に使用されている。細胞膜は吸引によりピペットの端部に留められ、膜のパッチが開口にわたって結合するようになる。この方法は、リポソームを留めてから破裂させて脂質二分子層をピペットの開口にわたって密封することによって脂質二分子層を産生するように適合されている。この方法は、安定した巨大な単分子層リポソーム、およびガラス表面を有する材料に小さい開口を製造することを必要とする。
【0265】
リポソームは、超音波処理、押出、またはMozafari法(Colas et al.(2007)Micron 38:841-847)によって形成することができる。
【0266】
いくつかの実施形態では、脂質二分子層は、国際出願第WO2009/077734号に記載されるように形成される。この方法では有利に、脂質二分子層は乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二分子層は、WO2009/077734に記載されるように、開口を横断して形成される。
【0267】
脂質二分子層は、脂質の2つの対向する層から形成される。これらの2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、二分子層の両側で水性環境に向かって外側に向いている。二分子層は、液体無秩序相(流体層状)、液体秩序相、固体秩序相(層状ゲル相、櫛型ゲル相)、および平面二分子層結晶(層状サブゲル相、ラメラ結晶相)を含むが、これらに限定されない、いくつかの脂質相に存在し得る。
【0268】
脂質二分子層を形成するいずれの脂質組成物も使用することができる。脂質組成物は、必要な特性、例えば、表面荷電、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的特性を有する脂質二分子層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1つ以上の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質組成物は、最大100個の脂質を含むことができる。脂質組成物は、好ましくは、1~10個の脂質を含む。脂質組成物は、天然に存在する脂質および/または人工脂質を含み得る。
【0269】
脂質は、典型的には、ヘッド基、界面部分、および同じであっても異なってもよい2つの疎水性テール基を含む。好適なヘッド基には、中性ヘッド基、例えば、ジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)、双性イオンヘッド基、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)、負に帯電したヘッド基、例えば、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、およびカルジオリピン(CA)、ならびに正に帯電したヘッド基、例えば、トリメチルアンモニウム-プロパン(TAP)が含まれるが、これらに限定されない。好適な界面部分には、天然に存在する界面部分、例えば、グリセロール系部分またはセラミド系部分が含まれるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基には、飽和炭化水素鎖、例えば、ラウリン酸(n-ドデカノール酸(n-Dodecanolic acid))、ミリスチン酸(n-テトラデコノニン酸(n-Tetradecononic acid))、パルミチン酸(n-ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n-オクタデカン酸)、およびアラキジン酸(n-エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えば、オレイン酸(シス-9-オクタデカン酸)、ならびに分岐炭化水素鎖、例えば、フィタノイルが含まれるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素鎖中の鎖の長さならびに二重結合の位置および数は異なり得る。分岐炭化水素鎖中のメチル基などの鎖の長さならびに分岐の位置および数は異なり得る。疎水性テール基は、エーテルまたはエステルとして界面部分に連結され得る。脂質は、ミコール酸であり得る。
【0270】
脂質は、化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基またはテール基は化学的に修飾され得る。ヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質には、PEG修飾脂質、例えば、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]、官能化PEG脂質、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]、ならびにコンジュゲーションのために修飾された脂質、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ビオチニル)が含まれるが、これらに限定されない。テール基が化学的に修飾されている好適な脂質には、重合性脂質、例えば、1,2-ビス(10,12-トリコサジイノイル(tricosadiynoyl))-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、フッ化脂質、例えば、1-パルミトイル-2-(16-フルオロパルミトイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、重水素化脂質、例えば、1,2-ジパルミトイル-D62-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびエーテル結合脂質、例えば、1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが含まれるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。
【0271】
両親媒性層、例えば、脂質組成物は、典型的には、層の特性に影響を及ぼすであろう1つ以上の添加剤を含む。好適な添加剤には、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、脂肪アルコール、例えば、パルミチンアルコール、ミリスチンアルコール、およびオレインアルコール、ステロール、例えば、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロール、およびスチグマステロール、リゾリン脂質、例えば、1-アシル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびセラミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0272】
別の実施形態では、膜は、固体層を含む。固体層は、マイクロ電子材料、絶縁材料、例えば、Si、A1、およびSiO、有機および無機ポリマー、例えば、ポリアミド、プラスチック、例えば、Teflon(登録商標)、またはエラストマー、例えば、二成分付加硬化シリコンゴム、およびガラスを含むが、これらに限定されない、有機材料および無機材料の両方から形成することができる。固体層は、グラフェンから形成され得る。好適なグラフェン層は、WO2009/035647に開示されている。膜が固体層を含む場合、ポアは、典型的には、固体層内、例えば、固体層内の穴、ウェル、間隙、チャネル、溝、またはスリット内に含まれる両親媒性膜または層内に存在する。当業者であれば、好適な固体/両親媒性ハイブリッド系を調製することができる。好適な系は、WO2009/020682およびWO2012/005857に開示されている。上で論じられるいずれの両親媒性膜または層も使用することができる。
【0273】
本明細書に開示される方法は、典型的には、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二分子層、または(iii)ポアが内部に挿入された細胞を使用して実行される。この方法は、典型的には、人工トリブロックコポリマー層などの人工両親媒性層を使用して実行される。層は、ポアに加えて、他の膜貫通タンパク質および/または膜内タンパク質、ならびに他の分子を含み得る。好適な装置および条件は、以下で論じられる。本発明の方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0274】
アンカー
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、アダプターに結合した膜アンカーまたは膜貫通ポアアンカーを含む。一実施形態では、本明細書に開示される方法に従う標的ポリヌクレオチドのアンカー特徴付け。例えば、標的ポリヌクレオチドを膜貫通ポアと接触させることを含む方法では、膜アンカーまたは膜貫通ポアアンカーは、膜貫通ポアの周りでの選択されたポリヌクレオチドの局在化を容易にし得る。
【0275】
膜アンカーは、膜内に挿入され得るポリペプチドアンカーおよび/または疎水性アンカーであり得る。一実施形態では、疎水性アンカーは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブ、ポリペプチド、タンパク質、またはアミノ酸、例えば、コレステロール、パルミチン酸、またはトコフェロールである。アンカーは、チオール、ビオチン、または界面活性剤を含み得る。
一態様では、アンカーは、(ストレプトアビジンへの結合のための)ビオチン、(マルトース結合タンパク質または融合タンパク質への結合のための)アミロース、(ポリ-ヒスチジンまたはポリ-ヒスチジンタグ付きタンパク質への結合のための)Ni-NTA、または(抗原などの)ペプチドであり得る。
【0276】
一実施形態では、アンカーは、1つのリンカー、または2、3、4、もしくはそれ以上のリンカーを含み得る。好ましいリンカーには、ポリマー、例えば、ポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖、およびポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。これらのリンカーは、直鎖状、分岐状、または環状であり得る。例えば、リンカーは、環状ポリヌクレオチドであり得る。アダプターは、環状ポリヌクレオチドリンカー上の相補的配列にハイブリダイズし得る。1つ以上のアンカーまたは1つ以上のリンカーは、切断または分解され得る成分、例えば、制限部位または光解離性基を含み得る。リンカーは、マレイミド基で官能化されて、タンパク質のシステイン残基に結合する。好適なリンカーは、WO2010/086602に記載されている。
【0277】
一実施形態では、アンカーは、コレステロールまたは脂肪アシル鎖である。例えば、ヘキサデカン酸などの6~30の炭素原子長を有する任意の脂肪アシル鎖が使用され得る。好適なアンカーおよびアンカーをアダプターに結合させる方法の例は、WO2012/164270およびWO2015/150786に開示されている。
【0278】
特徴付け
標的ポリヌクレオチドの特徴付けに関する本開示の実施形態では、標的分析物は、本明細書でより詳細に記載されるように、膜貫通ナノポアに対して、例えば、その内部にまたはそれを通って移動する。
【0279】
特徴付け方法は、ポアが膜内に挿入される膜/ポア系の調査に好適な任意の装置を使用して実行され得る。特徴付け方法は、膜貫通ポアセンシングに好適な任意の装置を用いて実行され得る。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つの区分に分離する障壁とを備え得る。障壁は、膜貫通ポアを含む膜が形成される開口を有し得る。膜貫通ポアは、本明細書に記載されている。
【0280】
特徴付け方法は、WO2008/102120、WO2010/122293、またはWO00/28312に記載の装置を使用して実行され得る。
【0281】
特徴付け方法は、典型的には電流の測定によって、ポアを通るイオン電流の流れを測定することを含み得る。あるいは、ポアを通るイオンの流れは、Heron et al:J.Am.Chem.Soc.9 Vol.131,No.5,2009によって開示されるように、光学的に測定され得る。したがって、装置は、電位を印加し、かつ膜およびポアにわたって電気信号を測定することができる電気回路も備え得る。特徴付け方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実行され得る。特徴付け方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を伴う。
【0282】
特徴付け方法は、各アレイが128、256、512、1024、2000、3000、4000、6000、10000、12000、15000、またはそれ以上のウェルを備えるシリコンベースのウェルアレイで実行され得る。
【0283】
特徴付け方法は、ポアを流れる電流を測定することを含み得る。この方法は、典型的には、電圧が膜およびポアにわたって印加された状態で実行される。使用される電圧は、典型的には+2V~-2V、典型的には-400mV~+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、および0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、および+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、より好ましくは100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは120mV~220mVの範囲内である。増加した印加電位を使用することによって、ポア毎に異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。
【0284】
特徴付け方法は、典型的には、金属塩、例えば、アルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば、塩化物塩、例えば、アルカリ金属塩化物塩などの任意の電荷担体の存在下で実行される。電荷担体には、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。上で論じられる例示的な装置では、塩は、チャンバ内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、または塩化セシウム(CsCl)が典型的に使用される。KClが好ましい。塩は、塩化カルシウム(CaCl2)などのアルカリ土類金属塩であり得る。塩濃度は、飽和時のものであり得る。塩濃度は、3M以下であり得、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、または1M~1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。特徴付け方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して実行される。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対する結合/結合なしを示す電流の特定を可能にする。
【0285】
特徴付け方法は、典型的には、緩衝液の存在下で実行される。上で論じられる例示的な装置では、緩衝液は、チャンバ内の水溶液中に存在する。任意の好適な緩衝液が使用され得る。典型的には、緩衝液は、HEPESである。別の好適な緩衝液は、Tris-HCl緩衝液である。本方法は、典型的には、4.0~12.0、4.5~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、または7.0~8.8、または7.5~8.5のpHで実行される。使用されるpHは、好ましくは、約7.5である。
【0286】
特徴付け方法は、0℃~100℃、15℃~95℃、16℃~90℃、17℃~85℃、18℃~80℃、19℃~70℃、または20℃~60℃で実行され得る。特徴付け方法は、典型的には、室温で実行される。特徴付け方法は、任意選択的に、酵素機能を支持する温度、例えば、約37℃で実行される。
【0287】
特定の実施形態、特定の構成、ならびに材料および/または分子が、本発明による方法について本明細書で論じられているが、形態および詳細の様々な変更または修正が本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行われてもよいことを理解されたい。以下の実施例は、特定の実施形態をよりよく例証するために提供されており、本出願を制限するものとみなされるべきではない。本出願は、特許請求の範囲のみによって制限される。
【実施例
【0288】
実施例1
この実施例は、モータータンパク質がスペーサーに隣接して失速した場合と比較して、モータータンパク質が本明細書に開示される方法に従ってスペーサー上で失速した際に、無駄な代謝回転が減少することを示す。
【0289】
配列番号9の一本鎖ポリヌクレオチド鎖を含み、かつスペーサー(4つのiSp18ユニット、IDT)を含む第1のDNA構築物を、相補的一本鎖DNA鎖(配列番号10および11)にハイブリダイズした。配列番号10は、配列番号9の5’末端とスペーサーの5’末端との間の配列番号9の部分に対して相補的であり、これを「試験」鎖と称する。モータータンパク質(閉鎖T4 Ddaヘリカーゼ)をスペーサー上で失速させた。構築物を図1Aに概略的に示す。
【0290】
第2のDNA構築物を、閉鎖T4 Ddaヘリカーゼをスペーサー上にロードして生成した。第2のDNA構築物は、配列番号12を配列番号10の代わりに使用したことを除いて、第1のDNA構築物と同一であった。配列番号12は、配列番号10の5’末端で末端10ヌクレオチドを欠くことを除いて、配列番号10と同一である。結果として、配列番号12が配列番号9にハイブリダイズして、スペーサーの5’末端に10ヌクレオチド長の一本鎖DNAの領域を残す。したがって、配列番号12を「試験-10」鎖と称する。構築物を図1Bに概略的に示す。
【0291】
分光光度アッセイを使用して、それぞれ、第1のDNA構築物および第2のDNA構築物で失速したモータータンパク質(この実施例では閉鎖T4 Ddaヘリカーゼ)による燃料使用率(ATP代謝回転)を決定した。簡潔には、分光光度アッセイは、共役酵素系を使用してモータータンパク質によるATP使用量を監視する。ピルビン酸キナーゼ(PK、ウサギ筋肉、600~1000U/mL、Sigma)は、モータータンパク質によって形成されたADPをATPに変換する。この反応は、ホスホ(エノール)ピルビン酸(PEP、ホスホ(エノール)ピルビン酸一カリウム塩、Sigma)1分子をピルビン酸に変換することを必要とする。ピルビン酸は乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH、ウサギ筋肉、900~1400U/mL、Sigma)によって乳酸に変換され、結果としてNADH分子が酸化される。NADHの酸化を、340~380nmでの吸光度の減少により、分光光度法で追跡する(吸光係数は、380nmで1210M-1 cm-1であり、340nmで6220M-1 cm-1である)。ADP 1分子がATPに変換される毎にNADH 1分子が酸化されるため、吸光度信号の減少は、モータータンパク質によるATP加水分解の定常状態速度に比例する。
【0292】
図1Cは、それぞれ、第1のDNA構築物および第2のDNA構築物上で失速したときの閉鎖T4 Ddaヘリカーゼによる計算されたATP代謝回転速度を示す。閉鎖T4 Ddaヘリカーゼが第1の構築物のスペーサー上で失速したときの触媒ATP代謝回転速度(kcat)は約115s-1であった。対照的に、閉鎖T4 Ddaヘリカーゼがスペーサーに隣接する第2の構築体上で失速した場合、ATP代謝回転速度はこの速度のおよそ2倍であった(kcat約235s-1)。したがって、閉鎖T4 Ddaヘリカーゼによる無駄な代謝回転速度はおよそ半分になった。
【0293】
実施例2
この実施例は、アダプターを様々な異なるスペーサー設計と比較し、本明細書に提供される方法に従ってモータータンパク質がスペーサー上で失速したときに無駄なATP代謝回転が減少することを実証する。
【0294】
以下の結果の表に示されるように、スペーサー設計を用いて複数の異なるアダプターを調製した。試験したアダプターは、(1)トップ鎖、(2)ボトム鎖、および(3)ブロッキング鎖などのポリヌクレオチド鎖を含んだ。トップス鎖は、両側にポリヌクレオチド配列が隣接する、試験されるスペーサー設計を含んだ。ブロッキング鎖は、本明細書に記載されるような一本鎖ポリヌクレオチドブロッキング部分であった。
【0295】
アダプター配列
トップ鎖:333333333333333333333333333333CCTTTTTTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACC/[スペーサー配列]/CCACAACTTCGTTCAGTTACGTATTGCT(すなわち、配列番号13、スペーサー配列にまたがる配列番号14および16を構成し、配列番号14は配列番号15を構成する)
ボトム鎖:5phos/GCAATACGTAACTGAACGAAGTTGTGG(すなわち、配列番号17)
ローディング鎖:GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTT(すなわち、配列番号18)
ブロッキング鎖:GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCAAAAAAAAGG/3Cy5Sp/(すなわち、配列番号19)
【0296】
アダプター調製およびローディング
モータータンパク質を、最初にトップ鎖、ボトム鎖、およびローディング鎖で構成されたアダプターにロードした。ローディング鎖の使用は、複数のモータータンパク質を単一のアダプターにロードしたアダプターの割合を減少させることが所望される場合に、モータータンパク質のロードの効率を改善することができる任意選択的な機能である。本明細書に提供される方法に従って、モータータンパク質をスペーサー上に前進させ、そうすることにより、モータータンパク質はローディング鎖をアダプターから変位させる。その後、ブロッキング鎖をアダプターにアニールして、モータータンパク質がスペーサー上で失速し、かつブロッキング鎖によって外れて移動するのが防止された完成したアダプターを生成する。ブロッキング鎖の方が長いため、ブロッキング鎖はローディング鎖と比較してアダプターに優先的に結合することができ、優先的結合は、ローディング鎖よりも著しく高い濃度で提供されるブロッキング鎖によってさらに促進される。
【0297】
アダプター調製プロトコル
アダプターポリヌクレオチド鎖を、以下の濃度で酢酸カリウム緩衝液(400mM HEPES pH8.0、400mM酢酸カリウム)中で鎖をアニールすることによって構築した。
【表4】
【0298】
モータータンパク質(Ddaヘリカーゼ)を、50~500nM DNAの最終濃度でアニールしたアダプターおよび周囲条件下で少なくとも7倍モル過剰のタンパク質と10~20分間組み合わせた。酢酸カリウム緩衝液(上記のもの)中TMAD(100μM)を添加し、35℃で1時間インキュベートした。塩/ATP緩衝液(最終濃度:0.5M NaCl、1mM ATP、10mM MgCl2)をブロッキング鎖と一緒に20倍トップ鎖濃度で添加し、混合物を室温で25~30分間インキュベートした。
【0299】
ヘリカーゼが結合したアダプターをSPRIビーズ精製システムを使用して精製し、アダプター生成をTBEゲルを使用して検証した。
【0300】
ATP代謝回転および安定性試験
各アダプターをATP代謝回転および安定性について試験した。
【0301】
ATP代謝回転は、アダプターがいずれのシーケンシング反応にも関与していないときの無駄なATP代謝回転の測定値を提供し、ATP代謝回転が低いほど、無駄なATP使用量が少なくなり、アダプターの燃料効率が高くなる。
【0302】
アダプターの安定性をナノポアシーケンシング反応で典型的に見られる条件下で試験し、所与のアダプターがかかる設定で機能すると予想される期間がどれくらいであるかを示す。異なる条件下で、例えば、より低い塩濃度または低下した温度で実行されるシーケンシング反応により、アダプターの安定性の増加が提供され得ることに留意されたい。
【0303】
試験したアダプターをB1~B52と命名した(以下の結果の表を参照されたい)。これらの結果を、モータータンパク質を含む市販のOxfordナノポアシーケンシングアダプター(本明細書ではアダプター「AA」と称する)と比較した。
【0304】
ATPaseアッセイプロトコル
試験用のアダプター試料を、SPRI溶出緩衝液(50m Tris pH8、20nM NaCl)中10nMの濃度に希釈した。
各10nMアダプター試料の10μLを384ウェルプレートに添加した。
2.2μLの40U/mL乳酸デヒドロゲナーゼ/ピルビン酸キナーゼ、33.3μLの1.33倍シーケンシング緩衝液、3.3μLの3.33mM NADH、0.7μLの5.33mMピルビン酸、および10.4μLのヌクレアーゼフリー水を含むNADHマスターミックスを調製した。
NADHマスターミックスを室温で10分間インキュベートして、溶液中の遊離ADPを代謝回転した。
30μLのNADHマスターミックスを384ウェルプレートの各ウェル中の10μLのアダプター試料に添加し、混合した。
プレートをUV吸光度プレートリーダーに添加し、吸光度を380nm、34℃で120サイクル測定した。
生成されたデータを分析して、kcatおよびATP代謝回転値を決定した。
【0305】
安定性アッセイプロトコル
7.8μLのヌクレアーゼフリー水、10μLの2倍シーケンシング緩衝液、および0.2μLのB-OTGを含むアッセイマスターミックスを調製した。
試験用の試料を、2μLの125nMアダプターをPCRチューブ内の18μLのアッセイマスターミックス+/-ATPに添加することによって調製した。
各試料を、サーマルサイクラー内で34℃、カバー温度45°Cで24時間インキュベートした。
インキュベートした後、試料を5%TBEゲル上(160mV、30分間)または4~20%TBEゲル上(180mV、45分間)で泳動させた。
ゲルをSYBRゴールドで10分間染色し、Cy3設定を使用してAmersham Typhoonスキャナー上で画像化した。
デンシトメトリー分析を行い、結合したアダプターと結合していないアダプターの割合を決定した。
【0306】
結果
ATP代謝回転の結果を、ベースラインとして機能する比較アダプターAAで見られる代謝回転のパーセンテージとして示す。したがって、ATP代謝回転パーセンテージ値が100%未満の場合はすべて、ベースラインと比較して、無駄なATP代謝回転の減少および燃料効率の改善を示す。結果の表に示される試験したアダプターはすべて、アダプターAAと比較して、減少したATP代謝回転、ひいては改善された燃料効率を有した。
【0307】
アダプターの安定性も試験し、結果を、24時間にわたるモータータンパク質に結合していないアダプターポリヌクレオチドのパーセンテージの増加として示した。これらの結果は、モータータンパク質をロードした安定したアダプターが生成されたことを示す。
【表5-1】

【表5-2】
【0308】
実施例3
この実施例は、ブロッキング部分(「ブロッキング鎖」)がすでに所定の位置にあるときにモータータンパク質をポリヌクレオチドアダプターのスペーサーに直接ロードすることができることを実証する。
【0309】
上記の実施例2に記載されるように、トップ鎖、ボトム鎖、およびブロッキング鎖配列を有するポリヌクレオチドアダプターを調製した。トップ鎖は、本明細書に記載されるような複数のヌクレオチドアイランドを含むスペーサー配列を含んだ。
【0310】
アダプターを含むポリヌクレオチド鎖を、以下の濃度で酢酸カリウム緩衝液(400mM HEPES pH8.0、400mM酢酸カリウム)中で鎖をアニールすることによって構築した。
【表6】
【0311】
モータータンパク質(Ddaヘリカーゼ)を、50~500nM DNAの最終濃度でアニールしたアダプターおよび周囲条件下で様々なモル過剰度のタンパク質と10~20分間組み合わせた。酢酸カリウム緩衝液(上記のもの)中TMAD(100μM)を添加し、35℃で1時間インキュベートした。塩/ATP緩衝液(最終濃度:0.5M NaCl、1mM ATP、10mM MgCl2)を添加し、混合物を室温で25~30分間インキュベートした。
【0312】
ヘリカーゼが結合したアダプターにHPLC精製を行い、アダプターの生成をTBEゲルを使用して検証した。
1倍、2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、および30倍過剰なモータータンパク質で調製した試料をゲル上で泳動させ、結果を図2に示す。試料を、塩/ATP緩衝液を添加するステップの前(「閉鎖」)および後(「塩/ATP」)の両方から得た。
【0313】
レーンは、以下のものが得られたことを示す:遊離DNA(モータータンパク質をロードしていないアダプター)、1:1の比率のモータータンパク質とアダプターDNA(正しくロードされたモータータンパク質を示す)、および1:1を超える比率の少量のモータータンパク質とアダプターDNA(複数のモータータンパク質を最初に単一のアダプターにロードした)。DNAアダプターに対するモータータンパク質の過剰が多いほど、高い割合(1:1のタンパク質:DNA)のロードされたアダプターが得られた。
【0314】
したがって、図2に提示される結果は、モータータンパク質が本明細書に記載のDNAアイランドを含むスペーサー区分に直接ロードすることができることを示す。
【0315】
実施例4
この実施例は、本明細書に記載の方法に従って調製した例示的なアダプターをDNAシーケンシングシステムで試験したときに得られる効率の向上を実証する。
【0316】
二本鎖440merライブラリを、標準の市販のシーケンシングアダプター(AMX)または試験アダプター(本明細書でB14、B21、C1と命名したアダプター)のいずれかを使用して、市販のOxfordナノポアシーケンシングキット(SQK-LSK109)で調製した。
【0317】
試験アダプターは上記の実施例2に記載されるとおりであり、それに応じて調製した。スペーサー配列は以下のとおりであった。
B14:33338TT8TT838
B21:333TT8TT8
C1:333TT33TT8
【0318】
440merライブラリを、Oxford Nanopore MinION Mk1bデバイスを使用してMinIONフローセル(FLO-MIN106)で配列決定した。データ収集を、ベースラインLSK109シーケンシングプロトコルを使用してMinKNOWソフトウェアで行った。
【0319】
MiniKNOWソフトウェアによって生成されたバルクFast5データを分析し、個々の鎖データを抽出し、後続のテキストファイルに保存した。鎖データを、鎖内の事象の数および鎖の持続時間を使用してDNA転座の速度を推定するために使用した。
【0320】
図3に提示される結果は、試験したアダプター(B14、B20、およびC1)の燃料効率の向上により、市販のアダプターAMXよりも高速で長時間にわたって配列決定を継続することが可能になったことを示す。これらの結果は、ナノポアシーケンシングシステムで試験したアダプターの安定性も裏付ける。
配列表の説明
配列番号1は、E.coli由来の(ヘキサヒスチジンタグ付き)エキソヌクレアーゼI(EcoExo I)のアミノ酸配列を示す。
配列番号2は、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、T.thermophilus由来のRecJ酵素(TthRecJ-cd)のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。この配列は、トリマーを構築する3つの同一のサブユニットのうちの1つである。(http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp).
配列番号5は、Bacillus subtilisファージPhi29由来のPhi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号6は、Trwc Cba(Citromicrobium bathyomarinum)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、Hel308 Mbu(Methanococcoides burtonii)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、腸内細菌ファージT4由来のDdaヘリカーゼ1993のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、実施例1で論じられるポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド配列を示す。
配列番号10は、実施例1で論じられるポリヌクレオチド鎖(「試験」鎖)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号11は、実施例1で論じられるポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド配列を示す。
配列番号12は、実施例1で論じられるポリヌクレオチド鎖(「試験-10」鎖)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号13は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「トップ鎖」)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号14は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「トップ鎖」、スペーサー単位に先行する部分)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号15は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「トップ鎖」、スペーサー単位に先行する部分、ヌクレオチド領域)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号16は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「トップ鎖」、スペーサー単位に続く部分)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号17は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「ボトム鎖」)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号18は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「ローディング鎖」)のヌクレオチド配列を示す。
配列番号19は、実施例2で論じられるポリヌクレオチドアダプター(「ブロッキング鎖」)のヌクレオチド配列を示す。
配列表
配列番号1-E.coli由来のエキソヌクレアーゼI
MMNDGKQQSTFLFHDYETFGTHPALDRPAQFAAIRTDSEFNVIGEPEVFYCKPADDYLPQ
PGAVLITGITPQEARAKGENEAAFAARIHSLFTVPKTCILGYNNVRFDDEVTRNIFYRNF
YDPYAWSWQHDNSRWDLLDVMRACYALRPEGINWPENDDGLPSFRLEHLTKANGIEHSNA
HDAMADVYATIAMAKLVKTRQPRLFDYLFTHRNKHKLMALIDVPQMKPLVHVSGMFGAWR
GNTSWVAPLAWHPENRNAVIMVDLAGDISPLLELDSDTLRERLYTAKTDLGDNAAVPVKL
VHINKCPVLAQANTLRPEDADRLGINRQHCLDNLKILRENPQVREKVVAIFAEAEPFTPS
DNVDAQLYNGFFSDADRAAMKIVLETEPRNLPALDITFVDKRIEKLLFNYRARNFPGTLD
YAEQQRWLEHRRQVFTPEFLQGYADELQMLVQQYADDKEKVALLKALWQYAEEIVSGSGH
HHHHH
配列番号2-E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素
MKFVSFNINGLRARPHQLEAIVEKHQPDVIGLQETKVHDDMFPLEEVAKLGYNVFYHGQK
GHYGVALLTKETPIAVRRGFPGDDEEAQRRIIMAEIPSLLGNVTVINGYFPQGESRDHPI
KFPAKAQFYQNLQNYLETELKRDNPVLIMGDMNISPTDLDIGIGEENRKRWLRTGKCSFL
PEEREWMDRLMSWGLVDTFRHANPQTADRFSWFDYRSKGFDDNRGLRIDLLLASQPLAEC
CVETGIDYEIRSMEKPSDHAPVWATFRR
配列番号3-T.thermophilus由来のRecJ酵素
MFRRKEDLDPPLALLPLKGLREAAALLEEALRQGKRIRVHGDYDADGLTGTAILVRGLAA
LGADVHPFIPHRLEEGYGVLMERVPEHLEASDLFLTVDCGITNHAELRELLENGVEVIVT
DHHTPGKTPPPGLVVHPALTPDLKEKPTGAGVAFLLLWALHERLGLPPPLEYADLAAVGT
IADVAPLWGWNRALVKEGLARIPASSWVGLRLLAEAVGYTGKAVEVAFRIAPRINAASRL
GEAEKALRLLLTDDAAEAQALVGELHRLNARRQTLEEAMLRKLLPQADPEAKAIVLLDPE
GHPGVMGIVASRILEATLRPVFLVAQGKGTVRSLAPISAVEALRSAEDLLLRYGGHKEAA
GFAMDEALFPAFKARVEAYAARFPDPVREVALLDLLPEPGLLPQVFRELALLEPYGEGNP
EPLFL
配列番号4-バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ
MTPDIILQRTGIDVRAVEQGDDAWHKLRLGVITASEVHNVIAKPRSGKKWPDMKMSYFHT
LLAEVCTGVAPEVNAKALAWGKQYENDARTLFEFTSGVNVTESPIIYRDESMRTACSPDG
LCSDGNGLELKCPFTSRDFMKFRLGGFEAIKSAYMAQVQYSMWVTRKNAWYFANYDPRMK
REGLHYVVIERDEKYMASFDEIVPEFIEKMDEALAEIGFVFGEQWR
配列番号5-Phi29 DNAポリメラーゼ
MKHMPRKMYSCAFETTTKVEDCRVWAYGYMNIEDHSEYKIGNSLDEFMAWVLKVQADLYF
HNLKFDGAFIINWLERNGFKWSADGLPNTYNTIISRMGQWYMIDICLGYKGKRKIHTVIY
DSLKKLPFPVKKIAKDFKLTVLKGDIDYHKERPVGYKITPEEYAYIKNDIQIIAEALLIQ
FKQGLDRMTAGSDSLKGFKDIITTKKFKKVFPTLSLGLDKEVRYAYRGGFTWLNDRFKEK
EIGEGMVFDVNSLYPAQMYSRLLPYGEPIVFEGKYVWDEDYPLHIQHIRCEFELKEGYIP
TIQIKRSRFYKGNEYLKSSGGEIADLWLSNVDLELMKEHYDLYNVEYISGLKFKATTGLF
KDFIDKWTYIKTTSEGAIKQLAKLMLNSLYGKFASNPDVTGKVPYLKENGALGFRLGEEE
TKDPVYTPMGVFITAWARYTTITAAQACYDRIIYCDTDSIHLTGTEIPDVIKDIVDPKKL
GYWAHESTFKRAKYLRQKTYIQDIYMKEVDGKLVEGSPDDYTDIKFSVKCAGMTDKIKKE
VTFENFKVGFSRKMKPKPVQVPGGVVLVDDTFTIKSGGSAWSHPQFEKGGGSGGGSGGSA
WSHPQFEK
配列番号6-Trwc Cbaヘリカーゼ
MLSVANVRSPSAAASYFASDNYYASADADRSGQWIGDGAKRLGLEGKVEARAFDALLRGE
LPDGSSVGNPGQAHRPGTDLTFSVPKSWSLLALVGKDERIIAAYREAVVEALHWAEKNAA
ETRVVEKGMVVTQATGNLAIGLFQHDTNRNQEPNLHFHAVIANVTQGKDGKWRTLKNDRL
WQLNTTLNSIAMARFRVAVEKLGYEPGPVLKHGNFEARGISREQVMAFSTRRKEVLEARR
GPGLDAGRIAALDTRASKEGIEDRATLSKQWSEAAQSIGLDLKPLVDRARTKALGQGMEA
TRIGSLVERGRAWLSRFAAHVRGDPADPLVPPSVLKQDRQTIAAAQAVASAVRHLSQREA
AFERTALYKAALDFGLPTTIADVEKRTRALVRSGDLIAGKGEHKGWLASRDAVVTEQRIL
SEVAAGKGDSSPAITPQKAAASVQAAALTGQGFRLNEGQLAAARLILISKDRTIAVQGIA
GAGKSSVLKPVAEVLRDEGHPVIGLAIQNTLVQMLERDTGIGSQTLARFLGGWNKLLDDP
GNVALRAEAQASLKDHVLVLDEASMVSNEDKEKLVRLANLAGVHRLVLIGDRKQLGAVDA
GKPFALLQRAGIARAEMATNLRARDPVVREAQAAAQAGDVRKALRHLKSHTVEARGDGAQ
VAAETWLALDKETRARTSIYASGRAIRSAVNAAVQQGLLASREIGPAKMKLEVLDRVNTT
REELRHLPAYRAGRVLEVSRKQQALGLFIGEYRVIGQDRKGKLVEVEDKRGKRFRFDPAR
IRAGKGDDNLTLLEPRKLEIHEGDRIRWTRNDHRRGLFNADQARVVEIANGKVTFETSKG
DLVELKKDDPMLKRIDLAYALNVHMAQGLTSDRGIAVMDSRERNLSNQKTFLVTVTRLRD
HLTLVVDSADKLGAAVARNKGEKASAIEVTGSVKPTATKGSGVDQPKSVEANKAEKELTR
SKSKTLDFGI
配列番号7-Hel308 Mbuヘリカーゼ
MMIRELDIPRDIIGFYEDSGIKELYPPQAEAIEMGLLEKKNLLAAIPTASGKTLLAELAM
IKAIREGGKALYIVPLRALASEKFERFKELAPFGIKVGISTGDLDSRADWLGVNDIIVAT
SEKTDSLLRNGTSWMDEITTVVVDEIHLLDSKNRGPTLEVTITKLMRLNPDVQVVALSAT
VGNAREMADWLGAALVLSEWRPTDLHEGVLFGDAINFPGSQKKIDRLEKDDAVNLVLDTI
KAEGQCLVFESSRRNCAGFAKTASSKVAKILDNDIMIKLAGIAEEVESTGETDTAIVLAN
CIRKGVAFHHAGLNSNHRKLVENGFRQNLIKVISSTPTLAAGLNLPARRVIIRSYRRFDS
NFGMQPIPVLEYKQMAGRAGRPHLDPYGESVLLAKTYDEFAQLMENYVEADAEDIWSKLG
TENALRTHVLSTIVNGFASTRQELFDFFGATFFAYQQDKWMLEEVINDCLEFLIDKAMVS
ETEDIEDASKLFLRGTRLGSLVSMLYIDPLSGSKIVDGFKDIGKSTGGNMGSLEDDKGDD
ITVTDMTLLHLVCSTPDMRQLYLRNTDYTIVNEYIVAHSDEFHEIPDKLKETDYEWFMGE
VKTAMLLEEWVTEVSAEDITRHFNVGEGDIHALADTSEWLMHAAAKLAELLGVEYSSHAY
SLEKRIRYGSGLDLMELVGIRGVGRVRARKLYNAGFVSVAKLKGADISVLSKLVGPKVAY
NILSGIGVRVNDKHFNSAPISSNTLDTLLDKNQKTFNDFQ
配列番号8-Ddaヘリカーゼ
MTFDDLTEGQKNAFNIVMKAIKEKKHHVTINGPAGTGKTTLTKFIIEALISTGETGIILA
APTHAAKKILSKLSGKEASTIHSILKINPVTYEENVLFEQKEVPDLAKCRVLICDEVSMY
DRKLFKILLSTIPPWCTIIGIGDNKQIRPVDPGENTAYISPFFTHKDFYQCELTEVKRSN
APIIDVATDVRNGKWIYDKVVDGHGVRGFTGDTALRDFMVNYFSIVKSLDDLFENRVMAF
TNKSVDKLNSIIRKKIFETDKDFIVGEIIVMQEPLFKTYKIDGKPVSEIIFNNGQLVRII
EAEYTSTFVKARGVPGEYLIRHWDLTVETYGDDEYYREKIKIISSDEELYKFNLFLGKTA
ETYKNWNKGGKAPWSDFWDAKSQFSKVKALPASTFHKAQGMSVDRAFIYTPCIHYADVEL
AQQLLYVGVTRGRYDVFYV
配列番号9
/5Biosg/CCTTTTTTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACC/iSp18//iSp18//iSp18//iSp18//iBNA-C//iBNA-C//iBNA-A//iBNA-C//iBNA-A/ACTTCGTTCAGTTACGTATTGC/3Bio/
配列番号10
GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCAAAAAAAAGG
配列番号11/5phos/GCAATACGTAACTGAACGAAGT/iBNA-T//iBNA-G//iBNA-T//iBNA-G//iBNA-G/
配列番号12
CCAAGCAGACGCCAAAAAAAAGG
配列番号13
333333333333333333333333333333CCTTTTTTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACC/[スペーサー配列]/CCACAACTTCGTTCAGTTACGTATTGCT
配列番号14
333333333333333333333333333333CCTTTTTTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACC
配列番号15
CCTTTTTTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACC
配列番号16
CCACAACTTCGTTCAGTTACGTATTGCT
配列番号17
5phos/GCAATACGTAACTGAACGAAGTTGTGG
配列番号18
GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTT
配列番号19
GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCAAAAAAAAGG/3Cy5Sp/
図1
図2
図3
【配列表】
2022533243000001.app
【国際調査報告】