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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】トリシアノヘキサン精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/34 20060101AFI20220713BHJP
   C07C 255/05 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C07C253/34
C07C255/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569325
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020034190
(87)【国際公開番号】W WO2020242931
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,604
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509354042
【氏名又は名称】アセンド・パフォーマンス・マテリアルズ・オペレーションズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASCEND PERFORMANCE MATERIALS OPERATIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】デュベ,サンジャイ
(72)【発明者】
【氏名】エルモア,デリック
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD33
4H006BD40
4H006BD84
(57)【要約】
本明細書において、アジポニトリルプロセス流のような供給流内のTCHを精製する方法が提供される。この方法は、アジポニトリルプロセス流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップを含む。この方法はまた、第1の塔頂流を1つまたは複数の蒸留塔で分離して低沸点成分を含む軽質成分流、高沸点成分を含む重質成分流、およびTCH流を形成する第2の分離ステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TCHを精製する方法であって、
供給流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、
第1の塔頂流を1つまたは複数の蒸留塔で分離して低沸点成分を含む軽質成分流、高沸点成分を含む重質成分流、ならびにTCHおよび10wt.%未満の不純物を含むTCH流を形成する第2の分離ステップと
を含み、
個々の塔内の滞留時間が8時間未満である、
方法。
【請求項2】
第1の塔頂流が0wt.%~20wt.%の重質成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TCH流が1wt.%未満の不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
TCH流がTCH、0wt.%~0.05wt.%のアジポニトリル、0wt.%~0.1wt.%のジ(2-シアノエチル)アミン、0wt.%~0.05wt.%のシアノバレルアミド、および0wt.%~0.05wt.%のトリ(2-シアノエチル)アミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の塔頂流の230℃を超える温度における滞留時間が8時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の塔頂流の50トルを超える圧力における滞留時間が8時間未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
0wt.%~40wt.%の高沸点成分を場合により含む重質成分流の少なくとも一部分をリサイクルするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の分離ステップが、
第1の塔頂流を蒸留塔で分離して第2の塔頂流としての軽質成分流および第2の塔底流を形成するステップと、
第2の塔底流を蒸留塔で分離して第3の塔底流としての重質成分流および第3の塔頂流としてのTCH流を形成するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第3の塔底流の少なくとも一部分をリサイクルするステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リサイクルするステップが、第3の塔底流の少なくとも一部分を第2の塔底流および/または第1の塔頂流にリサイクルするステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リサイクル流が0wt.%~40wt.%の高沸点成分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
リサイクルするステップが、第1の塔頂流内の高沸点成分の濃度を0wt.%~10wt.%となるように制御する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
TCH流を処理して精製TCH流を形成する処理ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
処理ステップが窒素ストリッピングするステップまたはモレキュラーシーブで処理するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
精製TCH流が0.1wt.%未満の不純物、20ppm未満の水、および/または5ppm未満の金属を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
第1の分離ステップがアジポニトリル流をフラッシュするステップまたはアジポニトリル流をワイプドフィルム蒸発器で処理するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1の塔頂流内の高沸点成分の50wt.%未満が第2の分離ステップの間に低沸点成分に分解する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
供給流がアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにより生成された共生成物流である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第1の塔底流および/または軽質成分流がアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにリサイクルされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
TCHを精製する方法であって、
アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、
第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、
第2の塔底流を蒸留してTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと
を含み、
第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、
方法。
【請求項21】
第3の塔底流および/または第2の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
リサイクル流が0wt.%~40wt.%の重質成分を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
TCHを精製する方法であって、
アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、
第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流、重質成分を含む第2の塔底流ならびにTCHおよび軽質成分を含むサイドドローを形成する第2の分離ステップと、
サイドドローを第2のフラッシュ容器中でフラッシュしてTCHおよび5wt%未満の不純物を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと
を含み、
第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、
方法。
【請求項24】
第2の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
リサイクル流が0wt%~40wt%の重質成分を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
TCHを精製する方法であって、
アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、
第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、
第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、
第3の蒸留物を蒸留して低沸点成分を含む第4の塔頂流ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップと
を含み、
第2、第3または第4の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、
方法。
【請求項27】
第4の塔頂流が第2の分離ステップの間に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第2、第3、または第4の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
リサイクル流が0wt%~40wt%の重質成分を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
TCHを精製する方法であって、
アジポニトリルプロセス流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、
第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、
第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、
第3の蒸留物を第2のフラッシュ容器中でフラッシュして低沸点成分を含む第4の塔頂流ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップと
を含み、
第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、
方法。
【請求項31】
第4の塔頂流が第2および/または第3の分離ステップの間に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第2または第3の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
リサイクル流が0wt.%~40wt.%の重質成分を含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年5月24日に出願された米国仮出願第62/852,604号の優先権を主張し、その全内容および開示は参照により本明細書に組み込まれる。
[0002]本開示は、一般に工業プロセスの副産物または共生成物流の精製によるトリシアノヘキサン(TCH)の生産に関する。より詳細には、本開示は、アジポニトリルの生産によって生じる流れの中に存在するTCHを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]シアノカーボン、例えば、シアノ官能基を有する有機化合物は公知であり、様々な用途に広く使用される。これらの化合物の多く、例えばアクリロニトリルおよびアジポニトリルはナイロン、ポリアクリロニトリル、またはアクリロニトリルブタジエンスチレンのような様々なポリマーを製造するモノマーとして使用される。特に、アジポニトリルはナイロン-6,6の生産のための1,6-ジアミノヘキサンに水素化されることができる。シアノカーボンを製造するいくつかの方法が当技術分野で公知である。例えば、アジポニトリルの従来の製造方法は米国特許第3,844,911号に記載されるアクリロニトリルの電解水素二量化である。この方法および他の製造方法は少量の望ましい共生成物および/または副産物を含む流れを産出することが多い。通例これらの流れは廃棄物流として処理され、例えば焼却されるが、これらの流れを別の目的に再利用することはその中に存在する共生成物および/または副産物を考慮して好ましいことが分かっている。例えば、アジポニトリル生産プロセスのいくつかの従来の流れはTCHを含有することがある。TCHは、多数の工業製品の前駆体として、またはリチウムイオン電池用途における添加剤として、を含めて多数の用途を有する。
【0003】
[0004]TCHの有用性は様々な参考文献に記載される。1つの例は米国特許第7,262,256号であり、80重量%以上の1,3,6-ヘキサントリカルボン酸を含むポリカルボン酸混合物を開示し、このポリカルボン酸混合物は98以上の精神測定明度(psychometric lightness)L-値、-2.0~2.0の精神測定彩度(psychometric chroma)a-値および-2.0~3.0の精神測定彩度(psychometric chroma)b-値を有し、5,000重量ppm以下の窒素含量を有する。特に、ポリカルボン酸混合物は主に1,3,6-トリシアノヘキサンからなるニトリル混合物を加水分解することにより得られる加水分解反応混合物から得られる。
【0004】
[0005]別の例は米国特許第5,039,436号であり、潤滑油、燃料および機能液用のカップル化ポリアミン添加剤を開示する。カップル化ポリアミンは少なくとも1種の反応物質ポリアミン反応物質と少なくとも1種のヒドロカルビルポリニトリルとの環化反応により製造される。このカップル化ポリアミンはさらにヒドロカルビルカルボン酸またはその誘導体、ヒドロカルビルフェノール性反応物質またはその混合物と反応させられて、より大きい油溶性を有し、また分散性およびVI改良を付与する添加剤を提供し得る。特に、参考文献による適切なポリニトリル反応物質の例にはアジポニトリル、アルファ-メチレングルタロニトリル、3,3’-イミノジプロピオニトリル、1,3,6-トリシアノヘキサンなどがある。
【0005】
[0006]別の例は米国特許第7,230,112号であり、亜硝酸化合物およびジエタノールアミンからアミドアセタールを製造する触媒方法を開示する。アミドアセタールはさらに、アミドアセタール基を加水分解し、続いて形成されたヒドロキシル基および/またはアミン官能基を反応させることにより架橋されて組成物を架橋することができる。特に、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリルからアミドアセタールを製造する触媒方法が開示される。
【0006】
[0007]さらに別の例は米国特許出願公開第2013/0157119号であり、積層フィルムをパッケージとして使用する場合でも電解液の分解が抑えられ、ガスの発生が低減される二次電池を開示する。そこに開示される二次電池は積重ねられた積層体型のものであり、正極および負極が互いに向かい合って配置された電極集合体、電解液、および電極集合体および前記電解液を収容するパッケージを含み、ここで負極は、リチウムと合金化されることができる金属(a)、リチウムイオンを吸蔵し放出することができる金属酸化物(b)、およびリチウムイオンを吸蔵し放出することができる炭素材(c)を含む負極活物質を、ポリイミドおよびポリアミドイミドから選択される少なくとも1つと共に負極集電体に結合することにより形成され、電解液は所定のニトリル化合物を含む。特に、1,3,6-ヘキサントリカルボニトリルを含有する電解液が開示される。
【0007】
[0008]TCHに対するこれらおよびその他の従来の用途を考慮して、工業プロセスで生産されるTCHを精製する費用効果の高い方法に対するニーズが存在する。特に、アジポニトリルの工業生産中に形成されるTCHを精製する方法に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
[0009]一実施形態によると、本開示は、TCHを精製する方法であって、アジポニトリルプロセス流を分離して、低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、1つまたは複数の蒸留塔において第1の塔頂流を分離して、低沸点成分を含む軽質成分流、高沸点成分を含む重質成分流、ならびにTCHおよび10wt.%未満の不純物を含むTCH流を形成する第2の分離ステップとを含み、個々の塔内の滞留時間が8時間未満である、方法に関する。一部の態様において、第1の塔頂流は0wt.%~20wt.%の重質成分を含む。一部の態様において、TCH流は1wt.%未満の不純物を含む。一部の態様において、TCH流はTCH、0wt.%~0.05wt.%のアジポニトリル、0wt.%~0.1wt.%のジ(2-シアノエチル)アミン、0wt.%~0.05wt.%のシアノバレルアミド、および0wt.%~0.05wt.%のトリ(2-シアノエチル)アミンを含む。一部の態様において、230℃を超える温度における第1の塔頂流の滞留時間は8時間未満である。一部の態様において、50トルを超える圧力における第1の塔頂流の滞留時間は8時間未満である。一部の態様において、方法は、0wt.%~40wt.%の高沸点成分を場合により含む重質成分流の少なくとも一部分をリサイクルすることをさらに含む。
【0009】
[0010]一部の態様において、第2の分離ステップは、蒸留塔の第1の塔頂流を分離して第2の塔頂流としての軽質成分流および第2の塔底流を形成するステップと、蒸留塔の第2の塔底流を分離して第3の塔底流としての重質成分流および第3の塔頂流としてのTCH流を形成するステップとをさらに含む。これらの態様のいくつかにおいて、方法は、第3の塔底流の少なくとも一部分をリサイクルするステップをさらに含む。これらの態様のいくつかにおいて、リサイクルは第3の塔底流の少なくとも一部分を第2の塔底流および/または第1の塔頂流にリサイクルするステップを含む。これらの態様のいくつかにおいて、リサイクル流は0wt.%~40wt.%の高沸点成分を含む。これらの態様のいくつかにおいて、リサイクルは第1の塔頂流の高沸点成分の濃度を0wt.%~10wt.%に制御する。
【0010】
[0011]一部の態様において、方法は、TCH流を処理して精製TCH流を形成する処理ステップをさらに含む。これらの態様のいくつかにおいて、処理ステップは窒素ストリッピングするかまたはモレキュラーシーブで処理することを含む。これらの態様のいくつかにおいて、精製TCH流は0.1wt.%未満の不純物、20ppm未満の水、および/または5ppm未満の金属を含む。
【0011】
[0012]一部の態様において、第1の分離ステップはアジポニトリル流をフラッシュするかまたはアジポニトリル流をワイプドフィルム蒸発器で処理することを含む。一部の態様において、第1の塔頂流の高沸点成分の50wt.%未満が第2の分離ステップ中に低沸点成分に分解する。一部の態様において、アジポニトリルプロセス流はアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにより生産された共生成物流である。これらの態様のいくつかにおいて、第1の塔底流および/または軽質成分流はアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにリサイクルされる。
【0012】
[0013]別の実施形態によると、本開示はTCHを精製する方法であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第3の蒸留物、ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、方法に関する。一部の態様において、第3の塔底流および/または第2の塔底流の少なくとも一部分はリサイクルされる。これらの態様のいくつかにおいて、リサイクル流は0wt.%~40wt.%の重質成分を含む。
【0013】
[0014]別の実施形態によると、本開示はTCHを精製する方法であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流、ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流、重質成分を含む第2の塔底流、ならびにTCHおよび軽質成分を含むサイドドローを形成する第2の分離ステップと、サイドドローを第2のフラッシュ容器中でフラッシュしてTCHおよび5wt%未満の不純物を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、方法に関する。一部の態様において、第2の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる。これらの態様の一部において、リサイクル流は0wt.%~40wt.%の重質成分を含む。
【0014】
[0015]別の実施形態によると、本開示はTCHを精製する方法であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流、ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流、ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物、ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、第3の蒸留物を蒸留して低沸点成分を含む第4の塔頂流、ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップとを含み、第2、第3、または第4の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、方法に関する。一部の態様において、第4の塔頂流は第2の分離ステップ中に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む。一部の態様において、第2、第3、または第4の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる。これらの態様の一部において、リサイクル流は0wt%~40wt%の重質成分を含む。
【0015】
[0016]別の実施形態によると、本開示はTCHを精製する方法であって、アジポニトリルプロセス流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、第3の蒸留物を第2のフラッシュ容器中でフラッシュして低沸点成分を含む第4の塔頂流ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、方法に関する。一部の態様において、第4の塔頂流は第2および/または第3の分離ステップ中に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む。一部の態様において、第2または第3の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる。これらの態様の一部において、リサイクル流は0wt.%~40wt.%の重質成分を含む。
【0016】
[0017]以下本開示が添付の図面を参照して詳細に記載し、同様の数字は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[0018]図1はTCHを精製する方法の一実施形態の概観を示す図である。
図2】[0019]図2はTCHを精製する方法の別の実施形態の概観を示す図である。
図3】[0020]図3はTCHを精製する方法の別の実施形態の概観を示す図である。
図4】[0021]図4はTCHを精製する方法の別の実施形態の概観を示す図である。
図5】[0022]図5はTCHを精製する方法の別の実施形態の概観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
導入
[0023]上述したように、いくつかの従来の生産プロセスの共生成物流、例えばアジポニトリル生産プロセスの共生成物流には、ある量の望ましい副産物、例えばトリシアノヘキサン(TCH)(時には1,3,6-ヘキサントリカルボニトリルおよび/または1,2,6-ヘキサントリカルボニトリルといわれる)を含有するものがある。通例これらの流れは廃棄物流として処理され、例えば、焼却される。しかし、本発明者らは、これらの流れを別の目的に再利用することが、その中に存在する共生成物および/または副産物の観点から好ましいことを見出した。特に、TCHは価値が高いので、回収して(販売できる)TCH産物を得るという願望がある。
【0019】
[0024]TCHを含有する共生成物流には、TCHに加えていくらかの低沸点および高沸点不純物を含有するものがある。異なる沸点に基づいて不純物を分離する従来の方法は公知であるが、本発明者らはかかる方法がTCHを共生成物流から効果的に分離するにはうまくいかないことを見出した。特に、ある種の高沸点不純物は従来の分離プロセス中に他の不純物、例えばより低いまたはより高い沸点のものに分解する傾向があることが発見された。分解産物はTCHの商業的に望ましい純度を満たす可能性を制限することが見出されることがある。従来のTCH回収方法はこの分解を考慮してなく、結果として追加の精製ステップを必要とし、より低い効率を生じさせる。特に、本発明者らは、様々な精製操作における供給流の滞留時間が分解に影響を及ぼすこと、および、滞留時間を、例えば、場合により特定の温度での個々の精製操作において8時間未満に制限することにより、精製の著しい改良が達成されることを見出した。
【0020】
[0025]本発明者らはまた、精製プロセスの流れのある種の(非TCH)成分の濃度が得られるTCH産物の純度に影響を及ぼし得ることも見出した。例えば、本発明者らはこの度、塔底流または精製プロセスの流れ(場合により上流にリサイクルされてもよい)の高沸点成分のより高い濃度が意外なことにより高い純度のTCH産物に寄与することを発見した。従来のTCHの分離および/または精製方法はこれらの成分濃度が最終のTCH収量に及ぼす影響に関してほとんどまたは全く指針を提供しない。重要なことに、本発明者らは、これらの高沸点成分濃度が、著しい効率の改良を提供し、結果としてより高い純度のTCH産物を生じるように効果的に操作されることができるということを見出した。
【0021】
[0026]本開示は供給流、例えばアジポニトリルプロセス流中に存在するTCHを精製する方法に関する。本方法はアジポニトリルプロセス流を分離して第1の塔頂流および第1の塔底流を形成する(第1の)分離ステップを含む。第1の塔頂流は低沸点成分(軽質成分)および高沸点成分(重質成分)を含み、第1の塔底流は高沸点成分を含む。方法は、第1の塔頂流を場合により1つまたは複数の蒸留塔で分離して、低沸点成分を含む軽質成分流、高沸点成分を含む重質成分流、ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含むTCH流を形成する(第2の)分離ステップをさらに含む。重要なことに、方法の個々の操作における供給流の滞留時間は、例えば8時間未満に最小化される。そうすることで、高沸点成分の分解が有利に低減または最小化され、上で述べられた分離効率を提供する。
供給流
[0027]本開示の方法はTCHおよび不純物を含有する特定の供給流から始められ得る。特に、供給流はTCH、高沸点成分、および低沸点成分を含み得る。一部の実施形態において、供給流は別の工業化学生産プロセスの1つまたは複数の共生成物流であり得る。例えば、供給流は異なるプロセスまたは系、例えば、アジポニトリル、アクリロニトリル、シアン化アリル、ブチロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアラミド、またはこれらの組合せの製造からの1つまたは複数の共生成物流を含んでもよい。特定の場合、供給流はアジポニトリルプロセス流、例えば、1つまたは複数のアジポニトリル生産プロセスからの共生成物流、パージ流、またはフラッシュテール(flash tail)であり得る。場合によって、多数のプロセスからの共生成物流が組み合わせられてフィードストック流を形成してもよい。従来のプロセスにおいて、かかるTCHを含有する共生成物流は多くの場合廃棄物流として処理され、例えば、放散または焼却され、価値が高いTCH成分は回収されない。いくつかの従来のTCH回収プロセスにおいては、これらの共生成物流が多数のワイプドフィルム蒸発器を用いて部分的に精製されることがあるが、かかるプロセスは商業的に適当なレベルのTCH純度を達成するのに多数の精製ラウンドを必要とし、比較的低い収率を有する。本明細書に記載されるように、これらの流れからTCHを回収することによって、TCHは回収され、使用され、または販売されることができ、こうして効率および採算性を増大する。
【0022】
[0028]供給流、例えばアジポニトリルプロセス流はTCHを含む。一部の実施形態において、供給流は比較的低い含量のTCHを含む。一実施形態において、供給流はTCHを供給流の総重量に基づいて0wt.%~90wt.%、例えば、0wt.%~89wt.%、0wt.%~88wt.%、0wt.%~85wt.%、0wt.%~84wt.%、10wt.%~90wt.%、10wt.%~89wt.%、10wt.%~88wt.%、10wt.%~85wt.%、10wt.%~84wt.%、20wt.%~90wt.%、20wt.%~89wt.%、20wt.%~88wt.%、20wt.%~85wt.%、20wt.%~84wt.%、30wt.%~90wt.%、30wt.%~89wt.%、30wt.%~88wt.%、30wt.%~85wt.%、30wt.%~84wt.%、40wt.%~90wt.%、40wt.%~89wt.%、40wt.%~88wt.%、40wt.%~85wt.%、40wt.%~84wt.%、50wt.%~90wt.%、50wt.%~89wt.%、50wt.%~88wt.%、50wt.%~85wt.%、または50wt.%~84wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、供給流は60wt.%~90wt.%、例えば、65wt.%~90wt.%、70wt.%~90wt.%、75wt.%~90wt.%、60wt.%~85wt.%、65wt.%~85wt.%、70wt.%~85wt.%、75wt.%~85wt.%、60wt.%~82wt.%、65wt.%~82wt.%、70wt.%~82wt.%、または75wt.%~82wt.%のTCHを含み得る。上限に関して、供給流は90wt.%未満、例えば、89wt.%、88wt.%未満、85wt.%未満、84wt.%以下のTCHを含み得る。下限に関して、供給流は0wt.%より多く、例えば、10wt.%より多く、20wt.%より多く、30wt.%より多く、40wt.%より多く、50wt.%より多く、60wt.%より多く、65wt.%より多く、70wt.%より多く、または75wt.%より多くのTCHを含み得る。
【0023】
[0029]一般に、本明細書で使用されるとき、重量パーセンテージはそれぞれの流れの総重量に基づく。供給流に関して、重量パーセンテージは、水のかなりの部分を含めて流れの全ての成分を含む。より少ない水を含む供給流、例えば、部分的に脱水されたかまたは完全に脱水された供給流が使用され得ると考えられる。かかる場合、本明細書で述べられる成分パーセンテージは、上述した成分パーセンテージから出発し、より少ない量の水に基づいて、例えば、水を重量パーセント計算の基準から除外して、計算し直すことにより容易に計算し直される/導出されることができよう。
【0024】
[0030]供給流はまた低沸点成分(軽質成分)も含む。一般に、低沸点成分は比較的低い沸点を有する不純物である。例えば、各々の低沸点成分は415℃未満、例えば、410℃未満、400℃未満、395℃未満、または390℃未満の沸点を有し得る。供給流中に存在し得る低沸点成分の例には各種のシアノカーボン、例えば、アクリロニトリル、プロピオニトリル、ヒドロキシプロピオニトリル、モノシアノエチルプロピルアミン、スクシノニトリル、メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、2-シアノシクロペンチリデンイミン、ビス-2-シアノエチルエーテル、ジ(2-シアノエチル)アミン、ジ-2-シアノエチルプロピルアミン、シアノバレルアミドおよびこれらの組合せがある。
【0025】
[0031]一実施形態において、供給流は低沸点成分を0wt.%~70wt.%、例えば、0wt.%~65wt.%、0wt.%~60wt.%、0wt.%~55wt.%、0wt.%~50wt.%、5wt.%~70wt.%、5wt.%~65wt.%、5wt.%~60wt.%、5wt.%~55wt.%、5wt.%~50wt.%、10wt.%~70wt.%、10wt.%~65wt.%、10wt.%~60wt.%、10wt.%~55wt.%、10wt.%~50wt.%、12wt.%~70wt.%、12wt.%~65wt.%、12wt.%~60wt.%、12wt.%~55wt.%、12wt.%~50wt.%、15wt.%~70wt.%、15wt.%~65wt.%、15wt.%~60wt.%、15wt.%~55wt.%、または15wt.%~50wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、供給流は0wt.%~20wt.%、例えば0wt.%~15wt.%、0wt.%~12wt.%、0wt.%~10wt.%、0wt.%~8wt.%、2wt.%~20wt.%、2wt.%~15wt.%、2wt.%~12wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~8wt.%、4wt.%~20wt.%、4wt.%~15wt.%、4wt.%~12wt.%、4wt.%~10wt.%、または4wt.%~8wt.%の低沸点成分を含み得る。上限に関して、供給流は70wt.%未満、例えば、65wt.%未満、60wt.%未満、55wt.%未満、または50wt.%未満の低沸点成分を含み得る。下限に関して、供給流は0wt.%より多く、例えば、5wt.%より多く、10wt.%より多く、12wt.%より多く、または15wt.%より多くの低沸点成分を含み得る。
【0026】
[0032]供給流はまた高沸点成分(重質成分)も含む。一般に、高沸点成分は比較的高い沸点を有する不純物である。例えば、各々の高沸点成分は395℃より高い、例えば、400℃より高い、405℃より高い、408℃より高い、410℃より高い、または415℃より高い沸点を有し得る。供給流中に存在し得る高沸点成分の例には異性体のトリシアノヘキサン、トリ(2-シアノエチル)アミン、およびこれらの組合せがある。
【0027】
[0033]一実施形態において、供給流は高沸点成分を0wt.%~50wt.%、例えば、0wt.%~40wt.%、0wt.%~35wt.%、0wt.%~25wt.%、0wt.%~20wt.%、0.5wt.%~50wt.%、0.5wt.%~40wt.%、0.5wt.%~35wt.%、0.5wt.%~25wt.%、0.5wt.%~20wt.%、1wt.%~50wt.%、1wt.%~40wt.%、1wt.%~35wt.%、1wt.%~25wt.%、1wt.%~20wt.%、2wt.%~50wt.%、2wt.%~40wt.%、2wt.%~35wt.%、2wt.%~25wt.%、2wt.%~20wt.%、3wt.%~50wt.%、3wt.%~40wt.%、3wt.%~35wt.%、3wt.%~25wt.%、3wt.%~20wt.%、5wt.%~50wt.%、5wt.%~40wt.%、5wt.%~35wt.%、5wt.%~25wt.%、または5wt.%~20wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、供給流は3wt.%~25wt.%、例えば3wt.%~20wt.%、3wt.%~15wt.%、3wt.%~12wt.%、5wt.%~25wt.%、5wt.%~20wt.%、5wt.%~15wt.%、または5wt.%~12wt.%の高沸点成分を含む。上限に関して、供給流は50wt.%未満、例えば、40wt.%未満、35wt.%未満、30wt.%未満、25wt.%未満または20wt.%未満の高沸点成分を含み得る。下限に関して、供給流は0wt.%より多く、例えば、0.5wt.%より多く、1wt.%より多く、2wt.%より多く、3wt.%より多く、または5wt.%より多く含み得る。
【0028】
[0034]一部の実施形態において、供給流はまた固体不純物も含み得る。これらの不純物は温度および圧力条件下で固体である様々な有機不純物を含み得る。例えば、固体不純物は固体のシアノカーボン化合物を含み得る。一実施形態において、供給流は固体不純物を0wt.%~25wt.%、例えば、0wt.%~20wt.%、0wt.%~15wt.%、または0wt.%~10wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、供給流は25wt.%未満、例えば、20wt.%未満、15wt.%未満、または10wt.%未満含み得る。
【0029】
[0035]供給流はさらにアジポニトリルを含み得る。一実施形態において、供給流はアジポニトリルを0wt.%~15wt.%、例えば、0wt.%~12wt.%、0wt.%~10wt.%、0wt.%~8wt.%、0wt.%~5wt.%、1wt.%~15wt.%、1wt.%~12wt.%、1wt.%~10wt.%、1wt.%~8wt.%、1wt.%~5wt.%、2wt.%~15wt.%、2wt.%~12wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~8wt.%、2wt.%~5wt.%、3wt.%~15wt.%、3wt.%~12wt.%、3wt.%~10wt.%、3wt.%~8wt.%、3wt.%~5wt.%、4wt.%~15wt.%、4wt.%~12wt.%、4wt.%~10wt.%、4wt.%~8wt.%、または4wt.%~5wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、供給流は0wt.%~15wt.%、例えば、0wt.%~12wt.%、0wt.%~10wt.%、0wt.%~8wt.%、2wt.%~15wt.%、2wt.%~12wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~8wt.%、4wt.%~15wt.%、4wt.%~12wt.%、4wt.%~10wt.%、または4wt.%~8wt.%のアジポニトリルを含み得る。上限に関して、供給流は15wt.%未満、例えば、12wt.%未満、10wt.%未満、8wt.%未満、または5wt.%未満のアジポニトリルを含み得る。下限に関して、供給流は0wt.%より多く、例えば、1wt.%より多く、2wt.%より多く、3wt.%より多く、または4wt.%より多く含み得る。
第1の分離ステップ
[0036]上述したように、供給流、例えば、アジポニトリルプロセス流は第1の分離ステップで分離されて、低沸点成分(軽質成分)および(場合により低量の)高沸点成分(重質成分)を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する。第1の分離ステップは、場合によって、供給流中に存在する重質成分および/または固体不純物のかなりの部分(全部でなくても)を除去する。本発明者らは、第2の分離ステップで処理する前の重質成分の除去が高沸点成分の分解を有益に低減し、これにより精製プロセス全体の効率を改良することを見出した。この重質成分の初期の除去がないと、追加の非TCH不純物が形成され、これはその後分離されなければならず、付加的な操作および不確実性を生じる。また、本発明者らは、重質成分および固体不純物の早期の除去が蒸留塔の汚れを低下させ、これが下流の効率を改良し、その後の分離操作の必要性を除外または低減することも見出した。第1の分離ステップにおける供給流の滞留時間は本明細書で考察される短い滞留時間であり得る。
【0030】
[0037]一部の実施形態において、第1の分離ステップはフラッシャー、例えば、フラッシュ蒸発器における分離を含む。これらの実施形態において、供給流は蒸発させられ、第1の塔頂流と第1の塔底流に分離される。各種のフラッシャーが当業者に公知であり、本明細書に記載される分離が達成される限りにおいて任意の適切なフラッシャーが使用され得る。一部の実施形態において、フラッシャーにおける分離は圧力を低下させること、例えば、断熱フラッシュにより、供給流を加熱することなく引き起こされ得る。他の実施形態において、フラッシャーにおける分離は供給流の温度を上げることにより圧力を変えることなく引き起こされ得る。さらにその他の実施形態において、フラッシャーにおける分離は圧力を低下させつつ供給流を加熱することにより引き起こされ得る。一部の実施形態において、第1の分離ステップはワイプドフィルム蒸発器(WFE)によって達成される。
【0031】
[0038]一部の実施形態において、第1の分離ステップは減圧、例えば真空下のフラッシュ蒸発器において供給流を分離することを含む。一部の実施形態において、フラッシュ蒸発器内の圧力は25トル未満、例えば、20トル未満、10トル未満、または5トル未満に低減される。
【0032】
[0039]一部の実施形態において、第1の分離ステップのフラッシュ容器は一定の温度に保たれる。一部の実施形態において、フラッシュ容器の温度は175℃~235℃、例えば、180℃~230℃、185℃~225℃、または190℃~220℃であり得る。
【0033】
[0040]第1の塔底流は高沸点成分(重質成分)を含む。第1の塔底流中に存在し得る重質成分の例は異性体のトリシアノヘキサン、トリ(2-シアノエチル)アミン、およびこれらの組合せを含み得る。一実施形態において、第1の分離ステップはフラッシャーを含み、第1の塔底流は異性体のトリシアノヘキサンおよびトリ(2-シアノエチル)アミンを含む。
【0034】
[0041]第1の塔底流はまた固体不純物も含む。一実施形態において、第1の分離ステップは固体不純物の全て(すなわち、100%)を供給流から除去する。別の言い方をすると、この実施形態において、第1の塔頂流は0wt.%の固体不純物を含む。他の実施形態において、第1の分離ステップは100%未満、例えば、99.9%未満、99%未満、または98%未満の固体不純物を除去し得る。
【0035】
[0042]第1の塔頂流は重質成分および軽質成分を含む。第1の塔頂流はまたTCHも含む。一部の実施形態において、第1の塔頂流はTCHを供給流より高い濃度で含む。一実施形態において、第1の塔頂流はTCHを60wt.%~98wt.%、例えば、60wt.%~97wt.%、60wt.%~96wt.%、60wt.%~95wt.%、65wt.%~98wt.%、65wt.%~97wt.%、65wt.%~96wt.%、65wt.%~95wt.%、70wt.%~98wt.%、70wt.%~97wt.%、70wt.%~96wt.%、70wt.%~95wt.%、75wt.%~98wt.%、75wt.%~97wt.%、75wt.%~96wt.%、または75wt.%~95wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、第1の塔頂流は98wt.%未満、例えば、97wt.%未満、96wt.%未満、または95wt.%未満のTCHを含み得る。下限に関して、第1の塔頂流は60wt.%より多く、例えば、65wt.%より多く、70wt.%より多く、または75wt.%より多くのTCHを含み得る。
【0036】
[0043]一実施形態において、第1の塔頂流は軽質成分を0wt.%~30wt.%、例えば、0wt.%~25wt.%、0wt.%~20wt.%、0wt.%~15wt.%、0wt.%~10wt.%、1wt.%~30wt.%、1wt.%~25wt.%、1wt.%~20wt.%、1wt.%~15wt.%、1wt.%~10wt.%、2wt.%~30wt.%、2wt.%~25wt.%、2wt.%~20wt.%、2wt.%~15wt.%、2wt.%~10wt.%、3wt.%~30wt.%、3wt.%~25wt.%、3wt.%~20wt.%、3wt.%~15wt.%、3wt.%~10wt.%、4wt.%~30wt.%、4wt.%~25wt.%、4wt.%~20wt.%、4wt.%~15wt.%、4wt.%~10wt.%、5wt.%~30wt.%、5wt.%~25wt.%、5wt.%~20wt.%、5wt.%~15wt.%、または5wt.%~10wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、第1の塔頂流は30wt.%未満、例えば、25wt.%未満、20wt.%未満、15wt.%未満、または10wt.%未満の軽質成分を含み得る。下限に関して、第1の塔頂流は0wt.%より多く、例えば、1wt.%より多く、2wt.%より多く、3wt.%より多く、4wt.%より多く、または5wt.%より多くの軽質成分を含み得る。
【0037】
[0044]一実施形態において、第1の塔頂流は重質成分を0wt.%~20wt.%、例えば、0wt.%~15wt.%、0wt.%~10wt.%、0wt.%~8wt.%、0wt.%~5wt.%、0.5wt.%~20wt.%、0.5wt.%~15wt.%、0.5wt.%~10wt.%、0.5wt.%~8wt.%、0.5wt.%~5wt.%、1wt.%~20wt.%、1wt.%~15wt.%、1wt.%~10wt.%、1wt.%~8wt.%、1wt.%~5wt.%、1.5wt.%~20wt.%、1.5wt.%~15wt.%、1.5wt.%~10wt.%、1.5wt.%~8wt.%、1.5wt.%~5wt.%、2wt.%~20wt.%、2wt.%~15wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~8wt.%、2wt.%~5wt.%、2.5wt.%~20wt.%、2.5wt.%~15wt.%、2.5wt.%~10wt.%、2.5wt.%~8wt.%、または2.5wt.%~5wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、第1の塔頂流は20wt.%未満、例えば、15wt.%未満、10wt.%未満、8wt.%未満、または5wt.%未満の重質成分を含み得る。下限に関して、第1の塔頂流は0wt.%より多く、例えば、0.5wt.%より多く、1wt.%より多く、1.5wt.%より多く、2wt.%より多く、または2.5wt.%より多くの重質成分を含み得る。
【0038】
[0045]場合によって、第1の分離ステップは重質成分のかなりの部分を供給流から除去する。別の言い方をすると、第1の塔頂流は供給流中に最初に存在する重質成分を、あるとしても低量で含む。一部の実施形態において、第1の塔頂流は供給流中に存在する重質成分の70%未満、例えば、65%未満、60%未満、55%未満、または50%未満を含む。
第2の分離ステップ
[0046]上述したように、第1の塔頂流は第2の分離ステップでさらなる精製に付される。特に、第1の塔頂流は第2の分離ステップで分離されて、軽質成分(低沸点成分)を含む軽質成分流、重質成分(高沸点成分)を含む重質成分流、およびTCHを含むTCH流を形成する。第1の分離ステップは、場合によって、第1の塔頂流中に存在する低沸点成分および高沸点成分の(全部でなくても)かなりの部分を除去する。第2の分離ステップにおける供給流の滞留時間は本明細書で述べられる短い滞留時間であり得る。
【0039】
[0047]軽質成分流は軽質成分、例えば、比較的低い沸点を有する上記不純物を含む。一実施形態において、軽質成分流は低沸点成分を10wt.%~60wt.%、例えば、10wt.%~55wt.%、10wt.%~45wt.%、10wt.%~40wt.%、10wt.%~35wt.%、15wt.%~60wt.%、15wt.%~55wt.%、15wt.%~45wt.%、15wt.%~40wt.%、15wt.%~35wt.%、20wt.%~60wt.%、20wt.%~55wt.%、20wt.%~45wt.%、20wt.%~40wt.%、20wt.%~35wt.%、25wt.%~60wt.%、25wt.%~55wt.%、25wt.%~45wt.%、25wt.%~40wt.%、25wt.%~35wt.%、30wt.%~60wt.%、30wt.%~55wt.%、30wt.%~45wt.%、30wt.%~40wt.%、または30wt.%~35wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、軽質成分流は10wt.%~30wt.%、例えば、10wt.%~25wt.%、10wt.%~20wt.%、または10wt.%~15wt.%の低沸点成分を含む。上限に関して、軽質成分流は60wt.%未満、例えば、55wt.%未満、45wt.%未満、40wt.%未満、または35wt.%未満の低沸点成分を含み得る。下限に関して、軽質成分流は10wt.%より多く、例えば、15wt.%より多く、20wt.%より多く、25wt.%より多く、または30wt.%より多くの低沸点成分を含み得る。
【0040】
[0048]重質成分流は高沸点成分(重質成分)を含む。一実施形態において、重質成分流は高沸点成分を5wt.%~50wt.%、例えば、5wt.%~45wt.%、5wt.%~40wt.%、5wt.%~35wt.%、5wt.%~30wt.%、8wt.%~50wt.%、8wt.%~45wt.%、8wt.%~40wt.%、8wt.%~35wt.%、8wt.%~30wt.%、10wt.%~50wt.%、10wt.%~45wt.%、10wt.%~40wt.%、10wt.%~35wt.%、10wt.%~30wt.%、12wt.%~50wt.%、12wt.%~45wt.%、12wt.%~40wt.%、12wt.%~35wt.%、12wt.%~30wt.%、15wt.%~50wt.%、15wt.%~45wt.%、15wt.%~40wt.%、15wt.%~35wt.%、または15wt.%~30wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、重質成分流は5wt.%~30wt.%、例えば5wt.%~25wt.%、5wt.%~20wt.%、または5wt.%~15wt.%の高沸点成分を含む。上限に関して、重質成分流は50wt.%未満、例えば、45wt.%未満、40wt.%未満、35wt.%未満、または30wt.%未満の高沸点成分を含み得る。下限に関して、重質成分流は5wt.%より多く、例えば、8wt.%より多く、10wt.%より多く、12wt.%より多く、または15wt.%より多くの高沸点成分を含み得る。
【0041】
[0049]TCH流はTCHを含む。一実施形態において、TCH流はTCHを90wt.%~100wt.%、例えば、90wt.%~99.9wt.%、90wt.%~99wt.%、90wt.%~98wt.%、92.5wt.%~100wt.%、92.5wt.%~99.9wt.%、92.5wt.%~99wt.%、92.5~98wt.%、95wt.%~100wt.%、95wt.%~99.9wt.%、95wt.%~99wt.%、95~98wt.%、97.5wt.%~100wt.%、97.5wt.%~99.9wt.%、97.5~99wt.%、または97.5~98wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、TCH流は100wt.%未満、例えば、99.9wt.%未満、99wt.%未満、または98wt.%未満のTCHを含み得る。下限に関して、TCH流は90wt.%より多く、例えば、92.5wt.%より多く、95wt.%より多く、または97.5wt.%より多く含み得る。従来の方法はかかる高いTCH純度レベルを達成することができなかった。
【0042】
[0050]本明細書に開示されるTCH精製方法は高純度のTCH流を生成する。にもかかわらず、TCH流はまだいくらかの不純物を含むことがある。一般に、これらの不純物は比較的少量で存在する。TCH流中に存在する不純物は通例ニトリル化合物であり、アミドおよび/またはオキシム官能基を有し得る。TCH流中に存在し得る不純物の例にはアジポニトリル、ジ(2-シアノエチル)アミン、ジ(2-シアノエチル)プロピルアミン、トリ(2-シアノエチル)アミン、シアノバレルアミド、およびこれらの組合せがある。TCH流はまた他の高沸点および/または低沸点不純物も少量含み得る。より低い純度の従来のTCH製品中に存在する様々な他の不純物とは異なり、これらの不純物は通例ニトリル化合物である。そのため、それらはTCH製品の最終的な性能を改良し得る。また、TCH流中の不純物の存在は開示された精製方法に対する指紋、例えば、本開示の一実施形態により形成されるTCH産物を確認する手段を提供し得る。
【0043】
[0051]一実施形態において、TCH流は不純物を0wt.%~10wt.%、例えば、0wt.%~7.5wt.%、0wt.%~5wt.%、0wt.%~2.5wt.%、0.1wt.%~10wt.%、0.1wt.%~7.5wt.%、0.1wt.%~5wt.%、0.1wt.%~2.5wt.%、1wt.%~10wt.%、1wt.%~7.5wt.%、1wt.%~5wt.%、1wt.%~2.5wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~7.5wt.%、2wt.%~5wt.%、または2wt.%~2.5wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、TCH流は0wt.%~2.5wt.%、例えば、0wt.%~2wt.%、0wt.%~1.5wt.%、0wt.%~1wt.%、0.5wt.%~2.5wt.%、0.5wt.%~2wt.%、0wt.%~1.5wt.%、または0wt.%~1wt.%の不純物を含む。上限に関して、TCH流は10wt.%未満、例えば、7.5wt.%未満、5wt.%未満、または2.5wt.%未満の不純物を含み得る。下限に関して、TCH流は0wt.%より多く、例えば、0.1wt.%より多く、1wt.%より多く、または2wt.%より多くの不純物を含み得る。
【0044】
[0052]一実施形態において、TCH流は0wt.%~0.05wt.%のアジポニトリル、0wt.%~0.1wt.%のジ(2-シアノエチル)アミン、0wt.%~0.05wt.%のシアノバレルアミド、および0wt.%~0.05wt.%のトリ(2-シアノエチル)アミンを含む。一実施形態において、TCH流は0wt.%~0.01wt.%のアジポニトリル、0wt.%~0.01wt.%の低沸点成分、および0wt.%~1wt.%の高沸点成分を含む。
【0045】
[0053]第2の分離ステップは1つもしくは複数の蒸留塔および/または1つもしくは複数のフラッシュ蒸発器における第1の塔頂流の分離を含み得る。1つまたは複数の蒸留塔の構造は広く変化し得る。様々な蒸留塔が当業者に公知であり、本明細書に記載される分離が達成される限りにおいて任意の適切な塔が第2の分離ステップで使用され得る。例えば、蒸留塔は任意の適切な分離デバイスまたは分離デバイスの組合せを含み得る。例えば、蒸留塔は塔、例えば、標準的な蒸留塔、抽出蒸留塔および/または共沸蒸留塔を含み得る。同様に、上述したように、様々なフラッシャーが当業者に公知であり、本明細書に記載される分離が達成される限りにおいて任意の適切なフラッシャーが第2の分離ステップで使用され得る。例えば、フラッシャーは断熱フラッシュ蒸発器、加熱フラッシュ蒸発器、もしくはワイプフィルム蒸発器、またはこれらの組合せを含み得る。
【0046】
[0054]第2の分離ステップの実施形態は1つもしくは複数の蒸留塔および/または1つもしくは複数のフラッシャーの任意の組合せを含み得、当業者は、軽質成分流、重質成分流、およびTCH流を形成する分離を達成するためにこれらの分離器をどのように組み合わせるか認識し理解するであろう。
【0047】
[0055]一部の実施形態において、第2の分離ステップは2つの蒸留塔における第1の塔頂流の分離を含む。例えば、第1の塔頂流は第1の蒸留塔で蒸留されて第2の塔頂流、第2の塔底流、および/またはサイドドローを形成し得る。第2の塔底流および/またはサイドドローは次いで第2の蒸留塔で蒸留されてTCH流を生成し得る。
【0048】
[0056]一部の実施形態において、第2の分離ステップは3つの蒸留塔における第1の塔頂流の分離を含む。例えば、第1の塔頂流は第1の蒸留塔で蒸留されて第2の塔頂流、第2の塔底流、および/またはサイドドローを形成し得る。第2の塔底流および/またはサイドドローは次いで第2の蒸留塔で蒸留されて第3の塔頂流および第3の塔底流を生成し得る。第3の塔頂流は次いで第3の蒸留塔で蒸留されてTCH流を生成し得る。
分解
[0057]上述したように、本発明者らはこの度、従来のTCH精製プロセスにおいて、ある種の高沸点成分がより高い沸点およびより低い沸点を有する不純物に分解しがちであることを見出した。本発明者らはまた、従来のプロセスにおいてTCHさえ高温で分解することができるということも見出した。特に、本発明者らはこの度、蒸留塔内のような高い温度および/または高い圧力への長期の曝露が高沸点成分の分解に寄与することを見出した。特定のプロセスパラメーターを利用することにより、この分解が効果的に軽減されることができる。
【0049】
[0058]一態様において、精製方法は、例えば分離操作において、プロセス流が高温に曝露される滞留時間を低減することにより分解を抑制し得る。一般に、プロセス流は蒸留塔内で高温に曝露され得る。長期にわたる高温曝露を低減するために、方法は所与の塔における流れの滞留時間を低減し得る。例えば、方法は蒸留塔において第1の塔頂流の滞留時間を制御し得る。一実施形態において、方法は蒸留塔内のプロセス流の滞留時間を8時間未満、例えば、7時間未満、6時間未満、5時間未満、または4時間未満に制限する。
【0050】
[0059]一態様において、精製方法は、プロセス流の高温への曝露を低減することにより分解を抑制し得る。例えば、方法は、例えば分離ステップにおいて、第1の塔頂流が曝露される温度を制御し得る。一実施形態において、精製方法は分離ステップが行なわれる温度を制限する。例えば、操作温度は350℃未満、例えば、325℃未満、300℃未満、275℃未満、または250℃未満に制限され得る。範囲に関して操作温度は225℃~350℃、例えば、250℃~325℃または275℃~300℃、または250℃~275℃の範囲であり得る。
【0051】
[0060]一部の態様において、方法は流れが曝露される温度およびその温度に曝露される時間の両方を制御し得る。例えば、方法は蒸留塔内の第1の塔頂流の滞留時間ならびにその蒸留塔の温度を制御し得る。一実施形態において、230℃を超える温度における流れの滞留時間は8時間未満である。上述した温度および滞留時間の範囲および制限は互いに組み合わせられ得る。
【0052】
[0061]一部の態様において、精製方法はプロセス流の高圧への曝露を低減することにより分解を抑制し得る。例えば、方法は、例えば分離ステップにおいて、第1の塔頂流が曝露される圧力を制御し得る。一実施形態において、精製方法は分離ステップが行なわれる圧力を制限する。例えば、作動圧力は50トル未満、例えば、45トル未満、40トル未満、35トル未満、30トル未満、または25トル未満に制限され得る。長期にわたる高圧への曝露を低減するために、方法は所与の塔内の流れの滞留時間を低減し得る。例えば、方法は第1の塔頂流の高圧蒸留塔(例えば、50トルより高い圧力の塔)における滞留時間を制御し得る。一実施形態において、方法は蒸留塔内のプロセス流の滞留時間を8時間未満、例えば、7時間未満、6時間未満、5時間未満、または4時間未満に制限する。
【0053】
[0062]一部の態様において、方法は流れが曝露される温度および曝露される圧力の両方を制御し得る。一実施形態において、方法は流れが300℃を超える温度または35トルを超える圧力に曝露されないように制御され得る。
【0054】
[0063]他の態様において、精製方法はある種の物理的な特徴をもつ蒸留塔を利用することにより分解を抑制し得る。特に、精製方法に使用される蒸留塔は一定の形状を有し得る。一部の実施形態において、蒸留塔は高温への曝露を最小にするために比較的小さいサンプを有する。これらの実施形態において、各々の塔のサンプはより小さい直径に次第に細くなり得、より高い温度への低減された曝露を可能にする。
【0055】
[0064]従来の精製方法に対するこれらの変更は高沸点成分の分解を低減する。一部の実施形態において、これらの変更は第2の分離ステップ中に分解する第1の塔頂流内の高沸点成分の量を低減する。一実施形態において、分解する高沸点成分の第1の塔頂流内の量は流れの高沸点成分の50wt.%未満、例えば、45wt.%未満、40wt.%未満、または30wt.%未満である。下限に関して、分解する高沸点成分の量は流れ内の高沸点成分の0wt.%より多く、例えば、5wt.%より多く、10wt.%より多く、または15wt.%より多くてよい。範囲に関して、分解する高沸点成分の量は0wt.%~50wt.%、例えば、0wt.%~45wt.%、0wt.%~40wt.%、0wt.%~30wt.%、5wt.%~50wt.%、5wt.%~45wt.%、5wt.%~40wt.%、5wt.%~30wt.%、10wt.%~50wt.%、10wt.%~45wt.%、10wt.%~40wt.%、10wt.%~30wt.%、15wt.%~50wt.%、15wt.%~45wt.%、15wt.%~40wt.%、または15wt.%~30wt.%であり得る。
【0056】
[0065]上述したように、高沸点成分は他の高沸点不純物および/または低沸点不純物に分解し得る。場合によって、高沸点成分は他の場合には系内に存在しなかった他の高沸点不純物に分解し得る。別の言い方をすると、分解は系内の高沸点不純物化合物の総数を増大させ得る。本明細書に記載されるように、分解を抑制することにより、系内に存在する分解により引き起こされた高沸点の不純物化合物の総数の増大が低減され得る。
リサイクルステップ
[0066]上述したように、本発明者らはこの度、TCH精製方法における流れのある種の成分の濃度がTCH製品の最終的な純度に影響を及ぼすことを見出した。例えば、本発明者らはこの度、精製プロセスの1つまたは複数の塔底流中の高沸点成分のより高い濃度がより高い純度のTCH製品と相互に関連することを見出した。特に、本発明者らは、蒸留塔(例えば、第2の分離ステップの蒸留塔)の底流中の高沸点成分(例えば、重質成分)のより高い濃度がその塔の分離効率を改良することを見出した。この驚くべき予想外の発見はある種の流れをリサイクルすることにより本明細書に開示されるTCH精製方法に取り入れられることができる。
【0057】
[0067]一部の実施形態において、例えば、所与の蒸留塔の分離効率はその蒸留塔により生成された底流をリサイクルすることにより制御される(例えば、増大される)ことができる。底流はより大きい割合の高沸点成分(例えば、重質成分)を含むので、底流をリサイクルすることは蒸留塔に供給された流れの高沸点成分の濃度を増大する。これはさらに底流の高沸点成分の含量を増大する。このようにして、蒸留塔の底流の高沸点成分のより高い濃度が達成されることができ、蒸留の分離効率が改良されることができる。
【0058】
[0068]一部の実施形態において、方法は分離ステップ中に形成された流れの少なくとも一部分を上流のある点(標的)にリサイクルするリサイクルステップを含む。例えば、リサイクルステップは1つの塔またはフラッシャーの重質成分流の少なくとも一部分を方法の上流のある点にリサイクルすることを含み得る。一部の実施形態において、リサイクルステップは第2の分離ステップの第2の塔底流の少なくとも一部分を第1の分離ステップの第1の塔頂流にリサイクルすることを含む。一部の実施形態において、リサイクルステップは第3の塔底流の少なくとも一部分を第1の分離ステップの第1の塔頂流および/または第2の分離ステップの第2の塔底流にリサイクルすることを含む。一部の実施形態において、リサイクルステップは第3の塔底流の少なくとも一部分を第2の分離ステップのサイドドローにリサイクルすることを含む。これらの実施形態のいくつかが図1~5に図示される。
【0059】
[0069]一実施形態において、リサイクル流は重質成分を含み、これらの重質成分の濃度は驚くべきことに得られるTCH流の純度に影響を及ぼす。
[0070]場合によって、リサイクル流は重質成分を0wt.%~40wt.%、例えば、0wt.%~37.5wt.%、0wt.%~35wt.%、0wt.%~32.5wt.%、0wt.%~30wt.%、5wt.%~40wt.%、5wt.%~37.5wt.%、5wt.%~35wt.%、5wt.%~32.5wt.%、5wt.%~30wt.%、10wt.%~40wt.%、10wt.%~37.5wt.%、10wt.%~35wt.%、10wt.%~32.5wt.%、10wt.%~30wt.%、15wt.%~40wt.%、15wt.%~37.5wt.%、15wt.%~35wt.%、15wt.%~32.5wt.%、15wt.%~30wt.%、20wt.%~40wt.%、20wt.%~37.5wt.%、20wt.%~35wt.%、20wt.%~32.5wt.%、または20wt.%~30wt.%の範囲の量で含む。一部の実施形態において、リサイクル流は重質成分を0wt.%~30wt.%、例えば、1wt.%~28wt.%、2wt.%~26wt.%、3wt.%~24wt.%、4wt.%~22wt.%、または5wt.%~20wt.%の量で含む。上限に関して、リサイクル流は40wt.%未満、例えば、37.5wt.%未満、35wt.%未満、32.5wt.%未満、または30wt.%未満の高沸点成分を含み得る。下限に関して、リサイクル流は0wt.%より多く、例えば、5wt.%より多く、10wt.%より多く、15wt.%より多く、または20wt.%より多くの高沸点成分を含み得る。
【0060】
[0071]一部の態様において、リサイクルステップは標的内の重質成分の濃度を制御する。例えば、リサイクルステップは重質成分を含有する流れを第1の塔頂流にリサイクルすることにより第1の塔頂流内の重質成分の濃度を制御し得る。
【0061】
[0072]一実施形態において、リサイクルすることに起因して、リサイクルステップは標的内の重質成分の濃度を0wt.%~10wt.%、例えば、0wt.%~9wt.%、0wt.%~8wt.%、0wt.%~7wt.%、1wt.%~10wt.%、1wt.%~9wt.%、1wt.%~8wt.%、1wt.%~7wt.%、2wt.%~10wt.%、2wt.%~9wt.%、2wt.%~8wt.%、2wt.%~7wt.%、3wt.%~10wt.%、3wt.%~9wt.%、3wt.%~8wt.%、または3wt.%~7wt.%に制御する。上限に関して、リサイクルステップは標的内の重質成分の濃度を10wt.%未満、例えば、9wt.%未満、8wt.%未満、または7wt.%未満に制御し得る。下限に関して、リサイクルステップは標的内の重質成分の濃度を0wt.%より多く、例えば、1wt.%より多く、2wt.%より多く、または3wt.%より多くなるように制御し得る。
処理ステップ
[0073]上述したように、第2の分離ステップで生成されたTCH流は不純物を含み得る。これらの不純物はさらなる精製方法により除去され得る。一部の実施形態において、精製プロセスは、TCH流を処理して精製TCH流を形成する処理ステップをさらに含む。
【0062】
[0074]一部の実施形態において、処理ステップは窒素ストリッピングを含み得る。一部の実施形態において、処理ステップは1つまたは複数のタイプのモレキュラーシーブで処理することを含み得る。一部の実施形態において、処理ステップは窒素ストリッピングで処理することとモレキュラーシーブで処理することとの組合せを含み得る。
【0063】
[0075]精製TCHはTCH流より高い濃度のTCHを含む。一実施形態において、精製TCH流はTCHを95wt.%~100wt.%、例えば、95wt.%~99.99wt.%、95wt.%~99.9wt.%、95wt.%~99wt.%、96wt.%~100wt.%、96wt.%~99.99wt.%、96wt.%~99.9wt.%、96~99wt.%、97wt.%~100wt.%、97wt.%~99.99wt.%、97wt.%~99.9wt.%、97~99wt.%、98wt.%~100wt.%、98wt.%~99.99wt.%、98~99.9wt.%、または98~99wt.%の範囲の量で含む。上限に関して、精製TCH流は100wt.%未満、例えば、99.99wt.%未満、99.9wt.%未満、または99wt.%未満のTCHを含み得る。下限に関して、精製TCH流は95wt.%より多く、例えば、96wt.%より多く、97wt.%より多く、または98wt.%より多く含み得る。
【0064】
[0076]精製TCH流はTCH流より低い濃度の不純物を含む。一部の実施形態において、精製TCH流は2wt.%未満、例えば、1.8wt.%未満、1.6wt.%未満、1.4wt.%未満、1.2wt.%未満、または1.0wt.%未満の不純物を含む。一実施形態において、精製TCH流は0.1wt.%未満、例えば、0.09wt.%未満、0.05wt.%未満、または0.01wt.%未満の不純物を含む。例えば、精製TCH流は水を不純物として含み得る。一部の実施形態において、精製TCH流は200ppm未満、例えば、195ppm未満、190ppm未満、185ppm未満、または180ppm未満の水を含む。一実施形態において、精製TCH流は20ppm未満、例えば、15ppm未満、10ppm未満、または1ppm未満の水を含む。精製TCH流は金属を不純物として含み得る。一実施形態において、精製TCH流は5ppm未満、例えば、4ppm未満、3ppm未満、または2ppm未満の金属を含む。
工業用途
[0077]本明細書に開示されたTCH精製方法はTCHおよび他の不純物を含むプロセス流を精製する際に有用である。一部の実施形態において、TCH精製方法は他の工業生産および精製方法の特徴である。例えば、TCH精製方法はアジポニトリルまたは他のシアノカーボンの工業生産中に形成されるTCHを精製するのに使用され得る。一部の実施形態において、供給流はアジポニトリルの生産または精製からのプロセス流、例えば、アジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにより生成される共生成物流である。
【0065】
[0078]従来のTCH精製方法で、精製中に形成されるプロセス流は廃棄物流と考えられ、他の方法で廃棄される。しかしながら、本開示の一部の実施形態において、本明細書に開示されたTCH精製プロセスの間に形成されるプロセス流は他の工業プロセス、例えば、アジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにリサイクルされ得る。これは方法の全体の効率を改良する。一部の実施形態において、第1の塔底流の一部分が他の工業プロセスにリサイクルされ得る。一部の実施形態において、軽質成分流の一部分が他の工業プロセスにリサイクルされ得る。一実施形態において、第1の塔底流および軽質成分流の両方の一部分がアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにリサイクルされる。
構成
[0079]図1~5は本明細書に開示されたTCH精製プロセスのいくつかの構成の図式的概観を示す。
【0066】
[0080]図1は、TCH精製プロセスの一実施形態100を示す。この実施形態において、アジポニトリルプロセス流101はフラッシュ蒸発器102で分離されて第1の塔頂流103および第1の塔底流104を形成する。次いで第1の塔頂流103は第1の蒸留塔105で分離されて軽質成分流を第2の塔頂流106として、そして第2の塔底流107を形成する。次いで第2の塔底流は第2の蒸留塔108で分離されて重質成分流を第3の塔底流109として、TCH流を第3の塔頂流110として形成する。この実施形態はまた任意選択のリサイクルステップ111も特徴とし、それにより第3の塔底流109の一部分が第1の塔頂流103および/または第2の塔底流107にリサイクルされる。
【0067】
[0081]図2は、TCH精製プロセスの別の実施形態200を示す。この実施形態において、アジポニトリルプロセス流201はフラッシュ蒸発器202で分離されて第1の塔頂流203および第1の塔底流204を形成する。次いで第1の塔頂流203は第1の蒸留塔205で分離されて第2の塔頂流206としての軽質成分流、第2の塔底流207、およびサイドドロー208を形成する。次いでサイドドロー208はフラッシャー209で分離されて第3の塔底流210としてのTCH流および第3の塔頂流211を形成する。
【0068】
[0082]図3は、TCH精製プロセスの別の実施形態300を示す。この実施形態において、アジポニトリルプロセス流301はフラッシュ蒸発器302で分離されて第1の塔頂流303および第1の塔底流304を形成する。次いで第1の塔頂流303は第1の蒸留塔305で分離されて第2の塔頂流306としての軽質成分流および第2の塔底流307を形成する。次いで第2の塔底流307は第2の蒸留塔308で分離されて第3の塔底流309としての重質成分流および第3のオーバーヘッドまたは蒸留物流310を形成する。次いで第3の塔頂流310は第3の蒸留塔311で分離されて第4の塔頂流312および第4の塔底流313としてのTCH流を形成する。
【0069】
[0083]図4は、TCH精製プロセスの別の実施形態400を示す。この実施形態において、アジポニトリルプロセス流401はフラッシュ蒸発器402で分離されて第1の塔頂流403および第1の塔底流404を形成する。次いで第1の塔頂流403は第1の蒸留塔405で分離されて第2の塔頂流406としての軽質成分流および第2の塔底流407を形成する。次いで第2の塔底流407は第2の蒸留塔408で分離されて第3の塔底流409としての重質成分流および第3のオーバーヘッドまたは蒸留物流410を形成する。次いで第3の塔頂流410はフラッシャー411で分離されて第4の塔頂流412および第4の塔底流413としてのTCH流を形成する。
【0070】
[0084]図5は、TCH精製プロセスの別の実施形態500を示す。この実施形態において、アジポニトリルプロセス流501はフラッシュ蒸発器502で分離されて第1の塔頂流503および第1の塔底流504を形成する。次いで第1の塔頂流503は第1の蒸留塔505で分離されて第2の塔頂流506としての軽質成分流および第2の塔底流507を形成する。次いで第2の塔底流507は第2の蒸留塔508で分離されて第3の塔底流509としての重質成分流および第3の塔頂流510としてのTCH流を形成する。この実施形態はまた任意選択のリサイクルステップ511も特徴とし、それにより第3の塔底流509の一部分は第1の塔頂流503および/または第2の塔底流507にリサイクルされる。この実施形態はまた処理ステップ512も特徴とし、それによりTCH流510はさらなる処理に付されて精製TCH流513を産出する。
実施形態
[0085]実施形態1:TCHを精製する方法の実施形態であって、アジポニトリルプロセス流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を1つまたは複数の蒸留塔で分離して低沸点成分を含む軽質成分流、高沸点成分を含む重質成分流、ならびにTCHおよび10wt.%未満の不純物を含むTCH流を形成する第2の分離ステップとを含み、個々の塔における滞留時間が8時間未満である、実施形態。
【0071】
[0086]実施形態2:第1の塔頂流が0wt.%~20wt.%の重質成分を含む、実施形態1の実施形態。
[0087]実施形態3:TCH流が1wt.%未満の不純物を含む、実施形態1の実施形態。
【0072】
[0088]実施形態4:TCH流がTCH、0wt.%~0.05wt.%のアジポニトリル、0wt.%~0.1wt.%のジ(2-シアノエチル)アミン、0wt.%~0.05wt.%のシアノバレルアミド、および0wt.%~0.05wt.%のトリ(2-シアノエチル)アミンを含む、実施形態1の実施形態。
【0073】
[0089]実施形態5:230℃を超える温度における第1の塔頂流の滞留時間が8時間未満である、実施形態1の実施形態。
[0090]実施形態6:50トルを超える圧力における第1の塔頂流の滞留時間が8時間未満である、実施形態1の実施形態。
【0074】
[0091]実施形態7:0wt.%~40wt.%の高沸点成分を場合により含む重質成分流の少なくとも一部分をリサイクルすることをさらに含む、実施形態1の実施形態。
[0092]実施形態8:第2の分離ステップが、第1の塔頂流を蒸留塔で分離して第2の塔頂流としての軽質成分流および第2の塔底流を形成するステップと、第2の塔底流を蒸留塔で分離して第3の塔底流としての重質成分流および第3の塔頂流としてのTCH流を形成するステップとをさらに含む、実施形態1の実施形態。
【0075】
[0093]実施形態9:第3の塔底流の少なくとも一部分をリサイクルするステップをさらに含む、実施形態8の実施形態。
[0094]実施形態10:リサイクルするステップが第3の塔底流の少なくとも一部分を第2の塔底流および/または第1の塔頂流にリサイクルするステップを含む、実施形態9の実施形態。
【0076】
[0095]実施形態11:リサイクル流が0wt.%~40wt.%の高沸点成分を含む、実施形態9の実施形態。
[0096]実施形態12:リサイクルが第1の塔頂流内の高沸点成分の濃度を0wt.%~10wt.%となるように制御する、実施形態9の実施形態。
【0077】
[0097]実施形態13:TCH流を処理して精製TCH流を形成する処理ステップをさらに含む、実施形態1の実施形態。
[0098]実施形態14:処理ステップが窒素ストリッピングまたはモレキュラーシーブで処理することを含む、実施形態13の実施形態。
【0078】
[0099]実施形態15:精製TCH流が0.1wt.%未満の不純物、20ppm未満の水、および/または5ppm未満の金属を含む、実施形態13の実施形態。
[0100]実施形態16:第1の分離ステップがアジポニトリル流をフラッシュし、またはアジポニトリル流をワイプドフィルム蒸発器で処理することを含む、実施形態1の実施形態。
【0079】
[0101]実施形態17:第1の塔頂流内の高沸点成分の50wt.%未満が第2の分離ステップの間に低沸点成分に分解する、実施形態1の実施形態。
[0102]実施形態18:アジポニトリルプロセス流がアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにより生成された共生成物流である、実施形態1の実施形態。
【0080】
[0103]実施形態19:第1の塔底流および/または軽質成分流がアジポニトリル生産および/またはアジポニトリル精製プロセスにリサイクルされる、実施形態18の実施形態。
【0081】
[0104]実施形態20:TCHを精製する方法の実施形態であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分および固体不純物を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、実施形態。
【0082】
[0105]実施形態21:第3の塔底流および/または第2の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、実施形態20の実施形態。
[0106]実施形態22:リサイクル流が0wt.%~40wt.%の重質成分を含む、実施形態21の実施形態。
【0083】
[0107]実施形態23:TCHを精製する方法の実施形態であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流、重質成分を含む第2の塔底流、ならびにTCHおよび軽質成分を含むサイドドローを形成する第2の分離ステップと、サイドドローを第2のフラッシュ容器中でフラッシュしてTCHおよび5wt%未満の不純物を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、実施形態。
【0084】
[0108]実施形態24:第2の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、実施形態23の実施形態。
[0109]実施形態25:リサイクル流が0wt%~40wt%の重質成分を含む、実施形態24の実施形態。
【0085】
[0110]実施形態26:TCHを精製する方法の実施形態であって、アジポニトリルプロセス流をフラッシュして低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、第3の蒸留物を蒸留して低沸点成分を含む第4の塔頂流ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップとを含み、第2、第3、または第4の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、実施形態。
【0086】
[0111]実施形態27:第4の塔頂流が第2の分離ステップ中に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む、実施形態26の実施形態。
[0112]実施形態28:第2、第3、または第4の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、実施形態26の実施形態。
【0087】
[0113]実施形態29:リサイクル流が0wt%~40wt%の重質成分を含む、実施形態28の実施形態。
[0114]実施形態30:TCHを精製する方法の実施形態であって、アジポニトリルプロセス流を分離して低沸点成分および高沸点成分を含む第1の塔頂流ならびに高沸点成分を含む第1の塔底流を形成する第1の分離ステップと、第1の塔頂流を蒸留して低沸点成分を含む第2の塔頂流ならびにTCHおよび重質成分を含む第2の塔底流を形成する第2の分離ステップと、第2の塔底流を蒸留してTCHおよび不純物を含む第3の蒸留物ならびに重質成分を含む第3の塔底流を形成する第3の分離ステップと、第3の蒸留物を第2のフラッシュ容器中でフラッシュして低沸点成分を含む第4の塔頂流ならびにTCHおよび5wt.%未満の不純物を含む第4の塔底流を形成する第4の分離ステップとを含み、第2または第3の分離ステップにおける滞留時間が8時間未満である、実施形態。
【0088】
[0115]実施形態31:第4の塔頂流が第2および/または第3の分離ステップ中に高沸点成分の分解により形成された低沸点成分を含む、実施形態30の実施形態。
[0116]実施形態32:第2または第3の塔底流の少なくとも一部分がリサイクルされる、実施形態30の実施形態。
【0089】
[0117]実施形態33:リサイクル流が0wt.%~40wt.%の重質成分を含む、実施形態32の実施形態。
【実施例
【0090】
[0118]本開示は以下の非限定的実施例を参照することによりさらに理解される。
実施例1
[0119]TCHを含有する供給流をアジポニトリル生産および精製プロセスから集めた。すなわち、この実施例の供給流はアジポニトリルプロセス流であった。供給流をワイプドフィルム蒸発器で四回分離した。ワイプドフィルム蒸発器を通った複数の通過液は第1の塔頂流と第1の塔底流を生成し、後者は高沸点成分と固体不純物を含んでいた。第1の塔底流は廃棄した。供給流の第1の塔頂流の組成を下記表1に示す。
【0091】
[0120]第1の塔頂流を第1の蒸留塔で蒸留した。第1の蒸留塔は約255℃の塔底温度で作動し、第1の塔頂流の第1の蒸留塔内の滞留時間は4時間未満であった。第1の蒸留塔は第2の塔頂流(軽質成分流)を生成し、これは低容量の流れであり、廃棄した。第1の蒸留塔はまた第2の塔底流も生成し、これは高濃度のTCHといくらかの重質成分を含有していた。
【0092】
[0121]次に第2の塔底流を第2の蒸留塔で蒸留した。第2の蒸留塔は約263℃の塔底温度で作動し、第2の塔底流の第2の蒸留塔内の滞留時間は4時間未満であった。第2の蒸留塔は第3の塔底流(重質成分流)を生成した。重質成分流はリサイクルおよび/または廃棄することができる。第2の蒸留塔はまた第3の塔頂流(TCH流)も生成した。軽質成分流、第2の塔底流、重質成分流、およびTCH流の組成を下記表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
[0122]上記表が示しているように、実施例1で実施した精製プロセスは高度に純粋なTCH流を生成した。特に、精製プロセスの結果、99wt.%より多くのTCHを含み、測定可能なアジポニトリルまたは軽質成分を含まないTCH流が得られた。示されているように、第2の塔底流および/または重質成分流内の重質成分の濃度は本明細書に開示された範囲と限界内で維持された。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】