(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】高い飽和磁化を有する保磁力強化された窒化鉄ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
H01F 1/047 20060101AFI20220713BHJP
H01F 1/08 20060101ALI20220713BHJP
H01F 1/06 20060101ALI20220713BHJP
B82Y 25/00 20110101ALI20220713BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220713BHJP
【FI】
H01F1/047
H01F1/08
H01F1/06 110
B82Y25/00
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569431
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020034331
(87)【国際公開番号】W WO2020237192
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521509240
【氏名又は名称】ニロン マグネティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】イーミン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン マイケル ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】エル.アンダーソン ブラックバーン
【テーマコード(参考)】
5E040
【Fターム(参考)】
5E040AA11
5E040AA19
5E040BC01
5E040CA01
5E040CA05
5E040NN06
5E040NN12
5E040NN13
(57)【要約】
窒化鉄ナノ粒子、及び窒化鉄ナノ粒子から作られた磁性材料が、説明される。窒化鉄ナノ粒子は、コア及びシェルの形態を有する。シェルは、コアを窒化するための手段を提供するように構成されている。磁性材料は、約160emu/g超のMsat及び約700Oe超の保磁力を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.重量で50%以上のα’’-Fe
16N
2相を含む鉄ベースのコアと;
b.前記鉄ベースのコアの窒化を可能とするように構成された、前記鉄ベースのコア上に隣接して配置された薄い材料と
を備える、複数の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項2】
前記薄い材料が、非強磁性材料を含む、請求項1に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項3】
前記非強磁性材料が、FeO、α-Fe
2O
3、ZnO、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項4】
約145emu/g超のMsat及び約1000Oe超の保磁力を有することを特徴とする、請求項1に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項5】
窒化鉄コアと、前記コアに隣接して配置された非強磁性の薄い材料とを備える複数のナノ粒子であって、前記ナノ粒子の重量に対して50%以上のα’’-Fe
16N
2相を含むことを特徴とする、複数のナノ粒子。
【請求項6】
前記非強磁性の薄い材料の平均厚さが5nm未満である、請求項5に記載の複数のナノ粒子。
【請求項7】
約145emu/g超のMsat及び約1000Oe超の保磁力を有することを特徴とする、請求項5に記載の複数のナノ粒子。
【請求項8】
単波長のCu-Kα X線を発するように構成されたCuターゲットを有するX線源を使用するX線回折によって特性評価した場合に、前記X線回折が、(約82.2°の2θにおける)α-Fe(211)ピーク/(約42.7°の2θにおける)α’’-Fe
16N
2(202)ピークの積分強度の比が0.2以下である回折ピークを生じさせる、複数のナノ粒子。
【請求項9】
a.磁性材料の重量に対して50%以上のα’’-Fe
16N
2相を含むことを特徴とする複数の窒化鉄ナノ相と、
b.前記ナノ相の間に配置された非強磁性材料と
を含む、磁性材料。
【請求項10】
前記ナノ相の間に配置された前記非強磁性材料が、FeO、α-Fe
2O
3、ZnO、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項9に記載の磁性材料。
【請求項11】
重量で50%以上のα’’-Fe
16N
2相を含む鉄ベースのコアと;
延性金属であることを特徴とする材料、非強磁性材料又はその両方を含む、前記鉄ベースのコア上のシェルと
を備える、複数の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項12】
前記コアが、20nm~200nmの主要寸法を有する、請求項11に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項13】
前記シェルの厚さが、0.1nm~5nmである、請求項11に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項14】
前記延性金属が、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項11に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子を含む、バルク磁石。
【請求項16】
前記バルク磁石の飽和磁化の値(M
sat)が、180emu/g以上である、請求項15に記載のバルク磁石。
【請求項17】
前記バルク磁石の保磁力の値(H
ci)が、1500Oe以上である、請求項15に記載のバルク磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月22日に提出された米国仮特許出願第62/851190号明細書に対する優先権を主張し、その開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される発明は、窒化鉄及びそれから作られる磁性材料の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
窒化鉄ナノ粒子は、鉄及び鉄酸化物ナノ粒子前駆体の制御された窒化によって、長年の間製造されてきた。これらの材料は、それらの、高性能の非希土類含有永久磁石に加工される可能性のために、興味を持たれている。高い保磁力(Hci>1000Oe)を有する、α’’-Fe16N2相を有する窒化鉄ナノ粒子は、低い飽和磁化(MSat<180emu/g)を有することが分かっているため、現在まで、商業的に実現可能な窒化鉄永久磁石は未だ開発されていない。従って、高い保磁力(Hci>1000Oe)及び高い飽和磁化(MSat>180emu/g)を有することを特徴とする永久磁石を製造するために、α’’-Fe16N2相を有する窒化鉄ナノ粒子を製造する要求が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明が解決する1つの問題は、高い保磁力(Hci>1000Oe)を有する窒化鉄ナノ粒子が、低い飽和磁化(MSat<180emu/g)を有すると認められることである。そのナノ粒子の微視的調査は、窒化鉄ナノ粒子が、非強磁性酸化鉄シェルを有するコア/シェル構造を特徴としていることを明らかにしている。任意の作用原理によって拘束されるものではないが、そのシェルは、隣接するナノ粒子を磁気的に分離することによって、保磁力を強化していると考えられる。しかし、シェルの厚さは、たいてい少なくとも5nmであることが分かっている。この厚さは、コア/シェルナノ粒子の全体の飽和磁化を大きく弱化する結果をもたらす。この飽和磁化の弱化が、窒化鉄ナノ粒子から製造される永久磁石の性能を、実質的に制限している。
【0005】
本発明が解決するもう1つの問題は、特定の、有利である可能性があるナノ粒子シェル材料が、例えば均一な厚さの薄いコンフォーマル材料が、普通は、α’’-Fe16N2相についての最大安定温度より、約200℃以上である温度最大安定温度より、高い温度を必要とすることである。α’’-Fe16N2の周りの連続的なシェルから構成される構造について、これらの高温材料は、α’’-Fe16N2相がナノ粒子のコアに形成された後に、公知の堆積プロセスによって提供することができず、公知の堆積プロセスによって提供した場合には、α’’-Fe16N2相は分解する。低温堆積方法、例えば電解堆積及び無電解堆積が存在するが、それらは非常に制御しづらく、かつナノ粒子上に薄い材料を容易に堆積することはできない。公知の堆積方法によるシェル層の形成のために200℃超の温度を必要とする材料の例は、窒化物、例えばAlN、又は延性金属、例えばCu、Al、Sn及びZn、を含む。これらの材料と、α’’-Fe16N2相との組み合わせを可能とするために、バルク磁石の形成の間にさらなる利点を提供する新規の構造が提供される。本明細書において提供される組成物は、固められたα’’-Fe16N2コア-シェルナノ粒子から構成される圧縮されたバルク磁石の飽和磁化を最大化して、商業的に許容可能なα’’-Fe16N2ベースのバルク磁石を調製するのを助ける。
【0006】
本発明は、この問題を、1)シェルの厚さを5nm以下、好ましくは4nm以下、好ましくは3.5nm以下、好ましくは3nm以下、好ましくは2.5nm以下、さらにより好ましくは2nm以下、さらにより好ましくは1nm以下に限定すること、及び2)少なくとも20nm、好ましくは少なくとも30nm、好ましくは少なくとも40nm、さらにより好ましくは少なくとも50nmの最小のコアの直径を要件とすること(コアの直径は、典型的には100nm未満又は200nm未満である)、によって解決する。コアの直径が増加し、シェルの厚さが低下するにつれて、コア/シェル磁石の全体の飽和磁化は増加する。本発明の利点は、飽和磁化の弱化を限定的にして、少なくとも180emu/g、好ましくは少なくとも195emu/gの飽和磁化を有する窒化鉄ナノ粒子を製造することである。
【0007】
従って、本発明は、重量で50%以上のα’’-Fe16N2相を含む鉄ベースのコア、及び鉄ベースのコアに隣接して付着した薄い材料、を含む複数の窒化鉄ナノ粒子を提供し、ここで、薄い材料は、鉄ベースのコアの窒化を可能とするように構成されている。好ましくは、窒化鉄ナノ粒子は、非磁性のシェルを有する単結晶のα’’-Fe16N2コアを含有する。これは、複数のランダムに配向された結晶粒を有するナノ粒子が、より磁気的に整列しづらい傾向があるからである。典型的には、磁性材料を作るために有用である適した薄い材料は、非強磁性材料を含む。適した非強磁性材料の薄い材料の非限定的な例は、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む。しばしば、薄い材料は、コア上の連続的な薄いシェルとして提供されるが、薄い材料は、不連続のシェル、例えば凹凸、穿孔、穴又はその両方を、コアナノ粒子上に有する不連続なシェルであってよい。コアをカバーする薄い材料は、窒素を拡散させることができる実質的に連続したシェルであるように、適切に構成されてもよい。例示的な窒化鉄ナノ粒子は、約145emu/gより大きいMSat及び約1000Oeより大きい保磁力を有することを特徴とする。
【0008】
多くの実施態様において、複数のナノ粒子は、単波長のCu-Kα X線を発するように構成されたCuターゲットを有する、X線源を使用するX線回折によって特性評価され、X線回折は回折ピークを生じさせ、(約42.7°の2θにおける)α’’-Fe16N2(202)のピークに対する、(約82.2°の2θにおける)α-Fe(211)のピークの積分強度の比は、0.2以下、好ましくは0.15以下、さらには0.10以下である。
【0009】
さらに、本発明は、磁性材料の重量に対して50%以上のα’’-Fe16N2相を含むことを特徴とする複数の窒化鉄ナノ相と、そのナノ相の間に配置された非強磁性材料とを含む磁性材料を提供する。好適には、ナノ相の間に配置された非強磁性材料は、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む。例示的な磁性材料は、160emu/g超のMSat及び約700Oe超の保磁力を有することを特徴とする。
【0010】
特定の実施態様において、本発明は、非強磁性のシェルを有するコア/シェル窒化鉄ナノ粒子を提供し、非強磁性のシェルの幾らかは1~2nmの厚さである。
【0011】
他の実施態様において、本発明は、約2000Oe超の保磁力及び約195emu/g超の飽和磁化を有することを特徴とする窒化鉄ナノ粒子を提供する。
【0012】
特定の実施態様において、本発明は、窒化鉄コア上に1~2nmの厚さの非強磁性のシェルを提供する。
【0013】
他の実施態様において、本発明は、低温不動態化を使用して、窒化鉄コア上に1~2nmの厚さの非強磁性のシェルを形成する。
【0014】
幾つかの実施態様において、本発明は、前駆体として非晶性の酸化鉄ナノ粒子を使用する。
【0015】
他の実施態様において、本発明は、主にα-Feのコア及び不連続のシェル層を有するナノ粒子構造を提供する。
【0016】
幾つかの実施態様において、本発明は、主にα’’-Fe16N2のコア及び不連続のシェル層を有することを特徴とする窒化鉄ナノ粒子を提供する。
【0017】
特定の実施態様において、シェルは窒化物相の前に提供され、シェルは不連続であり、コアの領域の全体をコーティングせず、次いで、例えば窒化によって主にα’’-Fe16N2のコアをもたらすα-Fe相から構成されるFeコアを窒化し、コアは不連続のシェルによって囲まれる。
【0018】
他の実施態様において、本発明は、Feコアの窒化を可能とする材料から構成される連続したシェルとともに、主にα’’-Fe16N2のコアを有する構造を有することを特徴とするナノ粒子を提供する。例えば、シェル材料の固有の特性に起因するか、又はこのシェルが薄い、例えば3nmの厚さ未満であることが理由である。
【0019】
特定の実施態様において、本発明は、コア/シェル窒化鉄ナノ粒子であって、相の窒化の前に連続したシェルが提供され、シェルが、シェルが存在するにも関わらずFeコアの窒化を可能とし、次いで、例えば窒化によって主にα’’-Fe16N2のコアをもたらすα-Fe相から構成されるFeコアを窒化し、前記コアは不連続のシェルによって囲まれる。
【0020】
他の実施態様において、本発明は、第一の不連続のシェルと、3nm未満の厚さの、第二の薄い連続した又は不連続のシェル層とともに、主にα’’-Fe16N2のコアを有する構造を有することを特徴とするナノ粒子を提供する。
【0021】
幾つかの実施態様において、第一のシェルが窒化物相の前に提供され、シェルが不連続であり、コアの領域の全体をコーティングしていない、コア/シェル窒化鉄ナノ粒子が提供される。これは、次いで、例えば窒化によって主にα’’-Fe16N2のコアをもたらすα-Fe相から構成されるFeコアを窒化し、コアは不連続のシェルによって囲まれる。次いで、第二のシェルが提供され、第二のシェルは、主にα’’-Fe16N2のコア及び第一のシェル材料を、連続的に、又は不連続にコーティングする。
【0022】
一般記載及び以下の詳細の説明は、単に例示的又は説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲において規定される発明を限定するものではない。本発明の他の態様は、本明細書において提供される本発明の詳細な説明に関して、当業者にとって明らかとなる。
【0023】
要約並びに以下の詳細な説明は、添付の図面とあわせて読まれるときに、より良く理解される。本発明を説明する目的で、本発明の例示的な実施態様が図面に示されているが、本発明は、開示されている具体的な方法、構成要素及び装置に限定されない。加えて、図面は、必ずしもスケールどおりに描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1-1】例1において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループを提供する。
【
図1-2】例1において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のX線回折パターンを提供する。
【
図1-3】例1において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図1-4】例1において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図1-5】例1による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の表面に局在するアルミニウムの元素マップを示す。
【
図1-6】例1による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した鉄の元素マップを示す。
【
図1-7】例1による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した窒素の元素マップを示す。
【
図1-8】例1においてAl、Fe及びNの元素マップを得た酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の像を提供する。
【
図1-9】例1において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で10MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図1-10】例1において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で12MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図2-1】例2において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループを提供する。
【
図2-2】例2において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のX線回折パターンを提供する。
【
図2-3】例2において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図2-4】例2において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図2-5】例2による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の表面に局在するアルミニウムの元素マップを提供する。
【
図2-6】例2による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した鉄の元素マップを提供する。
【
図2-7】例2による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した窒素の元素マップを提供する。
【
図2-8】例2においてAl、Fe及びNの元素マップを得た酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のTEM像を提供する。
【
図2-9】例2において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で10MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図2-10】例2において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で12MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図3-1】例3において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループである。
【
図3-2】例3において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のX線回折パターンを提供する。
【
図3-3】例3において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図3-4】例3において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図3-5】例3による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の表面に局在するアルミニウムの元素マップを提供する。
【
図3-6】例3による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した鉄の元素マップを提供する。
【
図3-7】例3による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した窒素の元素マップを提供する。
【
図3-8】例3においてAl、Fe及びNの元素マップを得た酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図4-1】例4において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループを提供する。
【
図4-2】例4において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループを提供する。
【
図4-3】例4において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図4-4】例4において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図4-5】例4による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の表面に局在するアルミニウムの元素マップを提供する。
【
図4-6】例4による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した鉄の元素マップを提供する。
【
図4-7】例4による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した窒素の元素マップを提供する。
【
図4-8】例4においてAl、Fe及びNの元素マップを得た酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図5-1】例5において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のヒステリシスループを提供する。
【
図5-2】例5において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のX線回折パターンを提供する。
【
図5-3】例5において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図5-4】例5において製造された窒化鉄ナノ粒子上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定する透過型電子顕微鏡像を提供する。
【
図5-5】例5による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の表面に局在するアルミニウムの元素マップを提供する。
【
図5-6】例5による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した鉄の元素マップを提供する。
【
図5-7】例5による酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子の塊にわたって分布した窒素の元素マップを提供する。
【
図5-8】例5においてAl、Fe及びNの元素マップを得た酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子のTEM像を提供する。
【
図5-9】例5において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で10MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図5-10】例5において製造された酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を一軸で12MPaの圧力まで圧縮することによって作られた、等方性の圧縮された磁石のヒステリシスループを提供する。
【
図6】10,000多分散球のランダム充填について、密度φ=0.662での最密充填の構成を示す。球の半径の分布は対数正規分布であり、σ=0.3の標準偏差を有する。[提供:Baranau and Tallarek、「Random-close packing limits for monodisperse and polydisperse hard spheres」、Soft Matter.、Vol.10、2014、pp.3826-41]
【
図7-A】ナノ粒子のコアのBSatが225emu/グラムであり、かつ体積充填率が63%である場合についての、飽和磁化(Bsat)がナノ粒子のコアの直径d(nm)及び厚さt(nm)によってどのように変化するかを示す、本発明によって作られたボンドされた窒化鉄ナノ粒子を含むバルク窒化鉄磁石の飽和磁化(Bsat)のコンタープロットを示す。
【
図7-B】ナノ粒子のコアのBSatが250emu/グラムであり、かつ体積充填率が63%である場合についての、飽和磁化(Bsat)がナノ粒子のコアの直径d(nm)及び厚さt(nm)によってどのように変化するかを示す、本発明によって作られたボンドされた窒化鉄ナノ粒子を含むバルク窒化鉄磁石の飽和磁化(Bsat)のコンタープロットを示す。
【
図8】本発明によって作られる2つの例示的な窒化鉄コア/シェルナノ粒子(ケース1及びケース2)の特徴を並べたものである。
【
図9】本発明によって作られる窒化鉄コア/シェルナノ粒子から構成される例示的な磁石の特徴を並べたものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、本開示の一部を形成する添付の図面及び例と関連させて以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解することができる。本発明は、本明細書において説明される及び/又は示される具体的な装置、方法、用途、条件又はパラメータに限定されず、本明細書において使用される専門用語は、単なる例として特定の実施態様を説明する目的のためのものであって、請求される発明を限定することを意図されたものではないと理解される。さらに、文脈が明確に他に規定しない限り、添付の特許請求の範囲を含む本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は複数を含み、特定の数値の言及は、その特定の値を少なくとも含む。本明細書において使用されるとき、用語「複数」は1より多いことを意味する。値の範囲が表現されるとき、ある他の具体例は、一方の特定の値から、及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、前に置かれた「約」の使用によって、値がおおよその値として表現されるとき、特定の値は、ある他の具体例を形成すると理解される。全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。
【0026】
明確にするために個々の実施態様の文脈において本明細書で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせで提供されてもよい。対して、簡潔にするために単一の実施態様の文脈において説明される本発明の種々の特徴は、別々に、又は個々に部分的に組み合わせて提供されてもよい。さらに、範囲において記載される値の言及は、その範囲内にある各値及び全ての値を含む。
【0027】
本発明は、コア/シェル窒化鉄ナノ粒子の形成を可能とする。コアは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%の質量分率のα’’-Fe16N2相から構成されてよい。コアの残りの質量分率は、α-Fe、α’-Fe8N、γ’-Fe4N及びε-Fe2-3N相の混合物から構成されてよい。
【0028】
シェルのための薄い材料は、シェルにおいて1つ又は複数の非強磁性の材料又は相から構成されてよい。非強磁性材料の非限定的な例は、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、AlN、MnN、Cu、Al、Sn及びZnを含む。
【0029】
コアの直径は、20~200nm、好ましくは20~100nm、さらにより好ましくは40~80nmであってよい。シェルの厚さは、0.1~4.0nm、好ましくは0.1~1.0nmであってよい。シェル材料は、4nm未満、3.5nm未満、3nm未満、2.5nm未満、2nm未満、又は1.5nm未満であってもよい。
【0030】
コア/シェルナノ粒子の形状は、球状であるか、又は非球状であってよい。非球状の形状の例は、棒、針、偏長楕円体、扁平楕円体、ディスク及びプレートを含む。非球状の形状のさらなる例は、多孔性構造、例えば泡、ゲル及びスポンジ、を含む。
【0031】
コアは、ナノ粒子前駆体の窒化を含む方法によって製造することができる。ナノ粒子前駆体は、α-Fe、Fe3O4、α-Fe2O3及びγ-Fe2O3を含んでよい。ナノ粒子前駆体は、鉄、酸化鉄、窒化鉄、ホウ化鉄及びそれらの混合物から構成される非結晶性ナノ粒子を含んでよい。酸化鉄ナノ粒子前駆体が使用される場合、ナノ粒子は、窒化の前に還元処理を受けてよい。α-Feナノ粒子前駆体が使用されるとき、ナノ粒子は、直接窒化されてよい。α-Feナノ粒子前駆体が、あらかじめ存在する酸化物シェルを有する場合、α-Feナノ粒子前駆体は、窒化の前に還元処理を受けてよい。α-Feナノ粒子前駆体は、還元及び窒化処理の前に、酸化処理を受けてもよい。
【0032】
非強磁性シェルは、任意の種類の適した化学堆積技術を使用して、コア上に形成することができる。シェルを形成する別の手法は、窒化鉄コアを、制御された酸化ポテンシャルを有する雰囲気に暴露することである。シェルを形成するさらに別の手法は、化学反応及び/又は電気化学反応によって、表面にシェルを沈降させることである。
【0033】
原子層堆積(ALD)は、広い種類の表面及び基材上に、薄い、コンフォーマルなコーティングを製造するための、多用途の技術である。本来は、ALDは、半導体装置の製造のために、化学気相堆積(CVD)及び物理気相堆積(PVD)などの他の方法に対する代替の方法として開発された。動作の原理は、反応体化合物の、露出した基材表面上への順次の吸着である。吸着反応は、自己制御であり、均一な表面層が基材を完全にコーティングしたときに停止する。シークエンスにおける次の反応体の導入は、1)第一の反応体層と反応して、コーティングされる化合物における第一の原子の均一な層を形成し、従って新たな基材表面を形成し、2)次の反応体層から構成される新たな層を吸着する。この手法において、正確に制御された組成及び厚さを有する薄い膜は、一度に1つの原子層で成長することができる。窒化鉄ナノ粒子コアに隣接して配置される薄い材料としての使用のために適した広範の種類の組成物を形成するための、広範の種類の例示的なALD反応体が、以下の表に提供される。
【0034】
窒化鉄ナノ粒子コアに隣接して配置される薄い材料を作るために適したALD反応体の表
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0035】
個々の粉末及び粒子は、ALDコーティングプロセスにおける基材として使用することもできる。流動床反応容器の使用は、粉末と気化されたALD反応体との密接な混合を可能とする。機械的撹拌、例えば反応容器に取り付けられた振動器の使用は、粒子の流動化を促進することができる。この構成において、流動床反応器は、ガスを縦方向に流動させるカラムにおいて流動化された粉末のバッチによって充填される。ALD反応体は、反応器中に順次導入され、パージ工程が使用されて、シークエンスにおいて、ある1つのALD反応体から次のALD反応体へと変更するときに、余剰の反応体を取り除く。反応容器は、ALDのために必要とされる反応温度に流動床を加熱することができる炉の中に含有されてよい。
【0036】
流動床反応器を使用して、磁性鉄ナノ粒子の表面を酸化アルミニウムのコーティングでコーティングすることができる。酸化アルミニウムコーティングの目的は、鉄ナノ粒子の表面を不動態化して、鉄ナノ粒子が空気に暴露されるときの、そのナノ粒子の酸化を抑制することである。適したALD反応体は、トリメチルアルミニウム(TMA)及び水(H2O)を含む。酸化アルミニウムコーティングにおいて、TMAはアルミニウム源であり、H2Oは酸素源である。適したALD反応温度は少なくとも180℃であってよく、TMA+H2OのALD工程の複数のサイクルを使用して、鉄ナノ粒子コア上にAl2O3シェルを形成することができる。理想的には、酸化アルミニウムシェルの厚さは、5nm未満である。
【0037】
流動床反応器を使用して、酸化鉄ナノ粒子を窒化鉄ナノ粒子に変換することもできる。流動床反応器は、上昇した温度で、ナノ粒子の流動床を通じて、H2及びNH3ガスの両方を流動させるように構成されてよい。最初に、適した反応器は、350℃~500℃の温度でのH2の流動を使用して、酸化鉄ナノ粒子を鉄に還元することができる。次いで、同じ反応容器において、鉄ナノ粒子を、110℃~180℃の温度でのNH3の流動を使用して、窒化鉄ナノ粒子に変態することができる。次いで、窒化鉄ナノ粒子を、室温まで冷却して、ナノ粒子に対して、N2と空気との混合物を一時的に流動させることによって不動態化することができる。不動態化プロセスは、さらなる酸化を抑制する、ナノ粒子の表面上の酸化鉄の層をもたらす。適したプロセスは、200emu/g超の飽和磁化及び1000Oeもの高い保磁力を有する窒化鉄ナノ粒子を製造することができる。
【0038】
窒化鉄コアを制御された酸化ポテンシャルを有する雰囲気に暴露することによって薄い材料のシェルを形成することは、窒化鉄コアに対して、酸素と不活性ガスとのガス状混合物を流動させることによって達成することができる。暴露は、窒化の後に即時に行うことができる。混合物において使用される不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素又はそれらの混合物を含んでよい。混合物における酸素の体積分率は、20%以下、好ましくは5%以下であってよい。高いガス流速及び低温のガス温度を使用して、反応の熱を取り去ることによって、シェルの厚さを限定することができる。
【0039】
窒化及び/又はシェル形成は、固定反応容器又は回転反応容器において行うことができる。回転反応容器は、チューブ、ダブルコーン、又は反応を促進する別の形状であってよい。窒化及び/又はシェル形成は、流動床反応器において行うこともできる。
【0040】
反応容器は、窒化及び/又はシェル形成プロセスの間に、断続的に又は連続的に振動させることができる。振動は、プロセスの間の混合を改善することができる。
【0041】
ナノ粒子の処理の制約は、アグロメレートを形成する傾向である。一般に、ナノ粒子のアグロメレートは、完了へと向かう表面媒介反応を妨げることによって、収率を低下させる。永久磁石の場合において、アグロメレートは、磁気異方性の磁石の製造を妨げることによって、性能を低下させる。
【0042】
窒化及び/又はシェル形成における特定の工程は、アグロメレートのサイズ、サイズ分布及び/又はバルク密度の制御から利益を得ることができる。例えば、流動床反応器の動作は、アグロメレートが、流動化を可能とする、サイズ及びバルク密度の範囲にある場合にのみ実用的である場合がある。
【0043】
非アグロメレート化する方法及び/又はナノ粒子のアグロメレート化を制御する方法は、せん断混合、低エネルギー粉砕及び超音波処理を含む。これらの方法は、窒化及び/又はシェル形成の前、間又は後に使用することができる。
【0044】
さらに、最終の永久磁石の特性は、ナノ粒子前駆体のサイズ分布に依存する場合があると認められる。この理由のために、窒化及び/又はシェル形成工程の前、間又は後に、ナノ粒子のサイズ分布を変更することが必要である場合がある。
【0045】
ナノ粒子のサイズ分布を制御する方法は、ろ過、ふるい分け及び機械的摩砕を含む。ろ過方法は、磁気分離、静電分離、及びサイクロンにおける遠心分離を含む。ふるい分け方法は、スクリーンの使用、並びに選択的及び非選択的に透過性の膜の使用を含む。機械的摩砕方法は、超音波処理、高エネルギーボール粉砕及びジェット粉砕を含む。
【0046】
1つの他の実施態様において、具体的には、本発明は、主にα’’-Fe16N2のコア囲む部分的な、不完全な又は不連続のシェルを有するナノ粒子を含む構造、及びこの構造を作るための関連する方法である。以降、この種類のナノ粒子シェル層は、不連続のシェルと規定される。不連続のシェルは、シェル材料によってカバーされていない、コア粒子の表面の部分が存在することを意味する。不連続なシェルを有することによって、窒化プロセスは、シェルが形成された後に起こることができる。このことは、シェルを形成するときに使用される温度に対する制限を排除し、それによって、改善した磁気特性を有するα’’-Fe16N2相を含むバルク磁石を製造するための出発材料の新規の組を提供する。
【0047】
1つの他の実施態様において、具体的には、本発明は、ある材料であって、それを通したFeの窒化を可能とするか、又はこの材料の存在にも関わらずFeの窒化を進めることができるように十分に薄い材料から構成されている実質的に連続したシェル層を有するナノ粒子を含む構造、及びこの構造を作るための関連する方法である。シェル材料、シェル材料の厚さ、又はシェルの厚さ及びシェル材料の両方は、シェル材料が提供された後の窒化を可能とする手段を提供する。シェルの厚さの要件は、その材料に依存する場合があるが、おおよそ1~3原子層、又は3nm以下、又はより厚くてよい。その存在にも関わらずFeの窒化を可能とする材料の例は、ピンホール若しくはポロシティを有するシェル材料、又は本質的に、その薄い固体のシェルを通じて窒素(N)の拡散をさせるシェル材料を含む。拡散する種は、N原子、N2分子、NH3分子又は幾つかの中間形態、例えば(NH4)+イオン、であってよい。さらに、拡散は、シェルの容積にわたって、又はピンホールの表面に沿って、又はピンホールが十分に大きい場合にはピンホール/不連続部を通ってガスとして、起こることができる。より一般的には、シェル層を形成する薄い材料は、メカニズムを介した窒素含有種の質量輸送が体積及び/又は表面拡散を含むことができるように構成される。その利点は不連続のシェル構造と同様であり、窒化工程が、シェルが形成された後に起こることができ、ここでも、シェルを形成するときに使用される温度による温度限定を取り除く。
【0048】
1つの他の実施態様において、本発明は、主にα’’-Fe16N2のコア、不連続の第一のシェル材料、及び構造を作るための薄い(3nm未満)連続した第二のシェル材料を含む構造である。第二の薄い連続したシェル材料は、製造プロセスの間に酸素含有環境に対して幾らか暴露することによるナノ粉末の処理を可能とし、このことは、製造プロセスを単純化することができる。しかし、この第二のシェルは、バルクの、十分に高密度化された最終磁石の飽和磁化に対して負の影響を有する場合がある。
【0049】
これらの実施態様のうち任意のもののさらなる利点が、ナノ粒子のバルク磁石への高密度化及び圧縮の際に理解される。例えば、高せん断変形などの工程を使用するバルク磁石形成プロセスの際に、ナノ粒子のシェル構造が延性金属、例えばCu、Al、Sn又はZn、から構成される場合、個々のナノ粒子における延性金属のシェル領域は、圧縮及び結合することができ、高密度化された材料におけるナノ粒子のコア領域中のα-’’Fe16N2相の周りに、連続した、又はほぼ連続したシェル構造を形成する。作用の理論によって拘束されるものではないが、次ぐ圧縮によって形成される連続した又はほぼ連続したシェルは、最小の量の非磁性材料から構成されていて、結合剤から構成されるバルク磁石の体積を減少又は排除することもでき、それによって材料の飽和磁化を最大化する。さらに、結合されたシェル領域は、単磁区又は単磁区に類似の保磁力メカニズムを可能とする磁気分離を提供する。又は、代わりに、予備高密度化ナノ粒子構造において、より不連続でないシェル材料が使用される場合、より高い飽和磁化とともに、磁壁ピニング保磁力メカニズムが、圧縮に次いで発揮されることができる。
【0050】
説明される種々の実施態様は、(連続した又は不連続の)シェルの形成の後に、ナノ粒子の鉄コア窒化する手段を提供し、シェル構造の形成についての処理温度に対する制限を取り除く。このことは、これまで使用することができなかった1つ又は複数の材料から構成される、連続した又は不連続のいずれかのシェル構造の形成を可能とする。本明細書において説明される方法は、材料、例えば、特定の、Al2O3などの酸化物、AlNなどの窒化物、Cu、Al、Sn及びZnなどの延性金属、それらの材料の組み合わせ、又はナノ粒子及び/若しくは圧縮されたバルク磁石材料の特性をさらに高める特性を有する他の材料、を許容する。
【実施例】
【0051】
例1
例1のための出発材料は、商業的に調達したγ-Fe2O3ナノ粒子の、2インチの直径の回転菅状炉における還元及び窒化によって調製した窒化鉄ナノ粒子であった。それぞれのロットが質量で約1.2グラムである合計9ロットのナノ粒子をともに組み合わせて、酸化アルミニウムコーティング操作のための出発材料を作った。最初に、γ-Fe2O3ナノ粒子を、12時間の335℃における200sccm(標準立方センチメートル毎分)でのH2ガス流における還元によって、α-Feナノ粒子に変態させた。次いで、α-Feナノ粒子を、22時間、135℃において、60sccmの流量でNH3ガスを流動させることによって、窒化鉄ナノ粒子に変態させた。窒化鉄ナノ粒子を取り出し、窒素充填したグローブボックスに貯蔵した。X線回折による相分析は、窒化鉄ナノ粒子がα’’-Fe16N2と、ε-Fe2-3Nと、α-Feとの混合物であったことを示した。相分率のうち多くはα’’-Fe16N2であった。
【0052】
酸化アルミニウムコーティングを、流動床反応容器中で行った原子層堆積(ALD)によって堆積した。流動床反応容器を、窒素(N2)充填したグローブボックス中で、10グラムの窒化鉄ナノ粒子で装填した。反応容器を100℃に加熱して、N2キャリアガス流中で、ナノ粒子床を流動化した。合計9サイクルで、N2キャリアガス中に、気化されたトリメチルアルミニウム(TMA)と水とを交互に導入することによって、一度に一原子層、酸化アルミニウムコーティングを堆積した。残留ガス分析器におけるメタンの信号が弱まり、トリメチルアルミニウムの信号が急増する(反応器中の全ての表面がアルミニウムでコーティングされたことを示す)まで、TMAを流動させることによって、それぞれのサイクルを開始した。H2Oを流動させる前に、N2を流動させることによって、反応容器をパージした。H2Oの信号が急増する(反応器中の全ての表面が酸化アルミニウムでコーティングされたことを示す)まで、H2Oを流動させた。次のサイクルを開始する前に、N2を流動させることによって、反応器を再びパージした。
【0053】
得られた酸化アルミニウムコーティングされた窒化鉄ナノ粒子を空気中で取り出し、それらの磁気特性及びミクロ構造を特性評価した。
図1-1は、コーティングしたナノ粒子のヒステリシスループを示している。固有の保磁力は2008Oeであると測定され、飽和磁化は191emu/グラムであることが測定された。
図1-2は、コーティングしたナノ粒子が未だにα’’-Fe
16N
2相と、ε-Fe
2-3N相と、α-Fe相との混合物であることを示すX線回折パターンである。例1において存在するそれぞれの相の主要なX線回折ピークを、下で表1に特定している。メスバウアー分光法による定量的な相分析は、α-Fe
16N
2相の質量分率が74%であることを示している。
表1:例1において存在するそれぞれの相のX線回折ピーク
【表2】
【0054】
高分解能透過型電子顕微鏡観察を行って、窒化鉄ナノ粒子の表面上の酸化アルミニウムコーティングの厚さを測定した。
図1-3及び
図1-4は、1.6~2.5nmの厚さを有する、ナノ粒子上の均一なコーティングの存在を示している。エネルギー分散型X線分析を使用して、元素マップを得た。
図1-5は、アルミニウムの信号がナノ粒子の表面上に位置することを示す元素マップである。
図1-6及び
図1-7は、それぞれ、Fe及びNの信号が、窒化鉄ナノ粒子のコアに位置することを示している。
図1-8は、元素マップを得たコーティングしたナノ粒子の像である。
【0055】
一軸の圧縮によって、酸化アルミニウムコーティングした窒化鉄ナノ粒子から、等方性磁石を作った。ナノ粒子を、0.25インチの直径の円筒状のダイ中に装填し、水圧プレスで圧縮した。
図1-9は、10MPaの圧力まで圧縮された磁石のヒステリシスループである。この磁石は、180emu/グラムの飽和磁化及び1712Oeの固有の保磁力を有する。
図1-10は、12MPaの圧力まで圧縮された磁石のヒステリシスループである。この磁石は、181emu/グラムの飽和磁化及び1674Oeの固有の保磁力を有する。
【0056】
例2
例2のための出発材料は、例1において説明した方法と同じ方法によって、回転管状炉において調製した、それぞれのロットが質量で約1.2グラムである合計9ロットの窒化鉄ナノ粒子であった。例2における原子層堆積のパラメータは、流動床温度を除いて、例1におけるパラメータと同じであった。例2における流動床温度は、130℃に設定した。コーティングしたナノ粒子について測定したヒステリシスループ(
図2-1)は、181emu/グラムの飽和磁化及び1916Oeの固有の保磁力を示す。ここでも、X線回折パターン(
図2-2)は、α’’-Fe
16N
2相と、ε-Fe
2-3N相と、α-Fe相との混合物を示す。例2において存在するそれぞれの相の主要なX線回折ピークを、下で表2に特定している。メスバウアー分光法は、α-Fe
16N
2相の質量分率が67%であることを示している。高分解能透過型電子顕微鏡観察(
図2-3及び
図2-4)によって、酸化アルミニウムの厚さは2.0~4.0nmであると測定された。元素マップ(
図2-5、
図2-6、
図2-7及び
図2-8)は、コーティングした窒化鉄ナノ粒子の、表面上のAlと、コア中のFe及びNとを示している。
表2:例2において存在するそれぞれの相のX線回折ピーク
【表3】
【0057】
図2-9は、10MPaの圧力まで一軸で圧縮された、0.25インチの直径の等方性磁石のヒステリシスループである。この磁石は、183emu/グラムの飽和磁化及び1617Oeの固有の保磁力を有する。
図2-10は、12MPaの圧力まで圧縮された磁石のヒステリシスループである。この磁石は、180emu/グラムの飽和磁化及び1566Oeの固有の保磁力を有する。
【0058】
例3
例3のための出発材料は、商業的に調達したγ-Fe2O3ナノ粒子であった。流動床反応容器中に装填する前に、γ-Fe2O3ナノ粒子をふるい分けして、25μm~53μmのふるい分級物を得た。流動床反応器に装填した後、γ-Fe2O3ナノ粒子を、15時間の315℃における200sccmでのH2ガス流における還元によって、α-Feナノ粒子に変態させた。次いで、α-Feナノ粒子を、40時間、135℃において、120sccmでNH3ガスを流動させることによって、窒化鉄ナノ粒子に変態させた。100℃でのトリメチルアルミニウムと水とを交互に導入する9サイクルを使用する原子層堆積によって、酸化アルミニウムのコーティングを、窒化鉄ナノ粒子の表面に適用した。
【0059】
コーティングしたナノ粒子におけるヒステリシスループ(
図3-1)は、158emu/グラムの飽和磁化及び1798Oeの固有の保磁力を示している。X線回折パターン(
図3-2)は、α’’-Fe
16N
2相と、ε-Fe
2-3N相と、α-Fe相との所望の混合物を示していて、γ-Fe
2O
3ナノ粒子が窒化の前に完全にはα-Feに変態しなかったことを示す酸化鉄の存在も示している。酸化鉄相を除く、例3において存在するそれぞれの相の主要なX線回折ピークを下で表3に特定している。酸化アルミニウムの厚さは、高分解能透過型電子顕微鏡観察(
図3-3及び
図3-4)によって1.9~3.6nmであると測定された。元素マップ(
図3-5、
図3-6、
図3-7及び
図3-8)は、コーティングした窒化鉄ナノ粒子の、表面上のAlと、コア中のFe及びNとを示している。
表3:例3において存在するそれぞれの相のX線回折ピーク
【表4】
【0060】
例4
例4のための出発材料は、商業的に調達したγ-Fe2O3ナノ粒子であった。γ-Fe2O3ナノ粒子は、乾燥した、アグロメレートされた粉末として供給される。γ-Fe2O3ナノ粒子のアグロメレートは、1~500μmの典型的なサイズ分布を有する。流動床反応容器に装填する前に、γ-Fe2O3ナノ粒子をふるい分けして、25μm~53μmのふるい分級物を得た。流動床反応器に装填した後、γ-Fe2O3ナノ粒子を、24時間の315℃における200sccmでのH2ガス流における還元によって、α-Feナノ粒子に変態させた。次いで、α-Feナノ粒子を、60時間の130℃での120sccmにおけるNH3ガス流によって、窒化鉄ナノ粒子に変態させた。100℃でのトリメチルアルミニウムと水とを交互に導入する9サイクルを使用する原子層堆積によって、酸化アルミニウムのコーティングを窒化鉄ナノ粒子の表面に適用した。
【0061】
コーティングしたナノ粒子におけるヒステリシスループ(
図4-2)は、151emu/グラムの飽和磁化及び1756Oeの固有の保磁力を示している。X線回折パターン(
図4-2)は、α’’-Fe
16N
2相と、ε-Fe
2-3N相と、α-Fe相との所望の混合物を示している。酸化鉄に対応するピークは、X線回折パターンにおいて観察されなかった。例4において存在するそれぞれの相の主要なX線回折ピークを下で表4に特定している。酸化アルミニウムの厚さは、高分解能透過型電子顕微鏡観察(
図4-3及び
図4-4)によって1.6~3.2nmであると測定された。元素マップ(
図4-5、
図4-6、
図4-7及び
図4-8)は、コーティングした窒化鉄ナノ粒子の、表面上のAlと、コア中のFe及びNとを示している。
表4:例4において存在するそれぞれの相のX線回折ピーク
【表5】
【0062】
例5
例5のための出発材料は、商業的に調達したγ-Fe2O3ナノ粒子の、2インチの直径の回転管状炉における還元及び窒化によって調製した窒化鉄ナノ粒子であった。それぞれのロットが質量で約0.3グラムである合計27ロットのナノ粒子をともに組み合わせて、酸化アルミニウムコーティング操作のための出発材料を作った。最初に、γ-Fe2O3ナノ粒子を、5時間の330℃における100sccmでのH2ガス流における還元によって、α-Feナノ粒子に変態させた。次いで、α-Feナノ粒子を、22時間、135℃において、60℃の流量でNH3ガスを流動させることによって、窒化鉄ナノ粒子に変態させた。窒化鉄ナノ粒子を取り出し、窒素充填したグローブボックスに貯蔵した。X線回折による相分析は、窒化鉄ナノ粒子がα’’-Fe16N2と、ε-Fe2-3Nと、α-Feとの混合物であったことを示した。相分率のうち多くはα’’-Fe16N2であった。
【0063】
流動床反応容器を、N2充填したグローブボックス中で、10グラムの窒化鉄ナノ粒子で装填した。200℃でのトリメチルアルミニウムと水とを交互に導入する9サイクルを使用する原子層堆積によって、酸化アルミニウムのコーティングを、窒化鉄ナノ粒子の表面に適用した。コーティングしたナノ粒子を空気中で取り出し、特性評価した。
【0064】
コーティングしたナノ粒子におけるヒステリシスループ(
図5-1)は、143emu/グラムの飽和磁化及び787Oeの固有の保磁力を示している。X線回折パターン(
図5-2)は、窒化鉄ナノ粒子が、α’’-Fe
16N
2と、ε-Fe
2-3Nと、α-Feと、γ’-Fe
4Nとの混合物であったことを示している。相分率のうち多くはα-Feであった。例5において存在するそれぞれの相の主要なX線回折ピークを下で表5に特定している。メスバウアー法による定量的な相分析は、α-Fe
16N
2相の質量分率が18%であることを示している。これらの分析は、200℃のプロセス温度が、α’’-Fe
16N
2相を分解させて、α-Fe及びε-Fe
2-3Nに変態させることを示している。α’’-Fe
16N
2相のα-Feへの分解は、他の例に対する例5の固有の保磁力の減少を引き起こすと考えられる。
表5:例5において存在するそれぞれの相のX線回折ピーク
【表6】
【0065】
高分解能透過型電子顕微鏡観察(
図5-3及び
図5-4)によって、酸化アルミニウムコーティングの厚さは3.0~5.0nmであると測定された。元素マップ(
図5-5)は、Alがナノ粒子の表面上に位置することを示している。さらに、元素マップ(
図5-6及び
図5-7)は、ナノ粒子のコア中に隔離されたFe及びNを、さらに言えば、α’’-Fe
16N
2相の分解の証拠を示している。
図5-8は、元素マップを得たコーティングしたナノ粒子の像である。
【0066】
図5-9は、10MPaの圧力まで一軸で圧縮された、0.25インチの直径の等方性磁石のヒステリシスループである。この磁石は、150emu/グラムの飽和磁化及び681Oeの固有の保磁力を有する。
図5-10は、12MPaの圧力まで圧縮された磁石のヒステリシスループである。この磁石は、148emu/グラムの飽和磁化及び677Oeの固有の保磁力を有する。磁石の保磁力は、シェルの形成の間のα’’-Fe
16N
2相の分解のために、例1及び例2において製造された磁石の保磁力より小さい。
【0067】
これらの結果を考慮すると、本明細書において適切に提供される複数のナノ粒子は、
図1-2、2-2又は3-2において示されるものと実質的に類似したX線回折パターンを有すると特徴づけられる。加えて、X線回折ピークの強度比は、本明細書において提供されるナノ粒子の許容可能な相分率の「フィンガープリント」として使用することができる。例えば、(約82.2°の2θにおける)α-Fe(211)ピーク/(約42.7°の2θにおける)α’’-Fe
16N
2(202)ピークの積分強度の比は、望ましくは、0.20以下、より好ましくは0.15以下である。本明細書において提供されるX線回折パターン及び回折角は、単波長のCu-Kα X線を発するように構成されたCuターゲットを有するX線源を使用するときに測定されたものである。
【0068】
それぞれのナノ粒子についてのα’’-Fe16N2相の粒子サイズ(コアの厚さ)を、α’’-Fe16N2のX線回折ピーク幅に対して適用したScherrerの式を使用して計算した。ピークのパラメータを、回折計の器具的な広幅化について校正したRietveld改良法を使用して決定した。コアの厚さを、表6に記載している。
【0069】
例によって作られた酸化アルミニウムコーティングした窒化鉄ナノ粒子の特性及び特徴のまとめを、下で表6に提供する。
表6:酸化アルミニウムコーティングした窒化鉄ナノ粒子の特性
【表7】
【0070】
酸化アルミニウムコーティングした窒化鉄ナノ粒子の一軸の圧縮によって製造された等方性磁石の磁気特性のまとめを、下で表7に提供する。
表7:等方性磁石の磁気特性
【表8】
【0071】
メスバウアー法によって決定された、例1、2及び5において存在する層の質量分率の定量的な分析のまとめを、下で表8に提供する。
表8:メスバウアー法によって決定された相の質量分率
【表9】
【0072】
分子量などの物理的特性又は化学式などの化学的特性について本明細書において範囲が使用されるとき、その中にある具体的な実施態様についての、範囲の全ての組み合わせ及び部分的な組み合わせが含まれることが意図される。
【0073】
本願において引用又は記載されたそれぞれの特許、特許出願及び公報の開示は、参照によって、その全体が、本明細書に組み込まれる。
【0074】
当業者は、本発明の好ましい実施態様に対して多くの変更及び修正をすることができること、並びにそのような変更及び修正を、本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができることを認識するだろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の正しい趣旨及び範囲の内にある、全てのこのような等価の変形をカバーすることが意図されている。
【0075】
1項. 重量で50%以上のα’’-Fe16N2相を含む鉄ベースのコアと;前記鉄ベースのコアの窒化を可能とするように構成された、前記鉄ベースのコア上に隣接して配置された薄い材料とを備える、複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0076】
2項. 前記薄い材料が、非強磁性材料を含む、1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0077】
3項. 前記非強磁性材料が、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、2項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0078】
4項. 前記薄い材料が、不連続なシェルとして構成されている、1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0079】
5項. 前記薄い材料が、窒素を拡散させることができる実質的に連続したシェルとして構成されている、1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0080】
6項. 約145emu/g超のMsat及び約1000Oe超の保磁力を有することを特徴とする、1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0081】
7項. 前記ナノ粒子の前記α’’-Fe16N2相の質量分率が、メスバウアー法によって60%超であると特徴づけられる、1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0082】
8項. 窒化鉄コアと、前記コアに隣接して配置された非強磁性の薄い材料とを備える複数のナノ粒子であって、前記ナノ粒子の重量に対して50%以上のα’’-Fe16N2相を含むことを特徴とする、複数のナノ粒子。
【0083】
9項. 前記非強磁性の薄い材料の平均厚さが5nm未満である、8項に記載の複数のナノ粒子。
【0084】
10項. 約145emu/g超のMsat及び約1000Oe超の保磁力を有することを特徴とする、8項に記載の複数のナノ粒子。
【0085】
11項. 単波長のCu-Kα X線を発するように構成されたCuターゲットを有するX線源を使用するX線回折によって特性評価した場合に、前記X線回折が、(82.2°の2θにおける)α-Fe(211)ピーク/(42.7°の2θにおける)α’’-Fe16N2(202)ピークの積分強度の比が0.2以下である回折ピークを生じさせる、複数のナノ粒子。
【0086】
12項. 磁性材料の重量に対して50%以上のα’’-Fe16N2相を含むことを特徴とする複数の窒化鉄ナノ相と、前記ナノ相の間に配置された非強磁性材料とを含む、磁性材料。
【0087】
13項. 前記ナノ相の間に配置された前記非強磁性材料が、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、12項に記載の磁性材料。
【0088】
14項. 約160emu/g超のMsat及び約700Oe超の保磁力を有することを特徴とする、12項に記載の磁性材料。
【0089】
15項. 前記ナノ相の間に配置された前記非強磁性材料の厚さが、5nm未満の平均厚さを有する、12項に記載の磁性材料。
【0090】
16項. 重量で50%以上のα’’-Fe16N2相を含む鉄ベースのコアと;延性金属であることを特徴とする材料、非強磁性材料又はその両方を含む、前記鉄ベースのコア上のシェルとを備える、複数の窒化鉄ナノ粒子。
【0091】
17項. 前記コアが、20nm~200nmの主要寸法を有する、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0092】
18項. 前記コアが、40nm~80nmの主要寸法を有する、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0093】
19項. 前記シェルの厚さが、0.1nm~5nmである、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0094】
20項. 前記シェルの厚さが、0.1nm~4nmである、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0095】
21項. 前記シェルの厚さが、0.1nm~3nmである、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0096】
22項. 前記ナノ粒子が、球状である、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0097】
23項. 前記ナノ粒子が、非球状である、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0098】
24項. 前記ナノ粒子が、多孔性構造を有する、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0099】
25項. 前記ナノ粒子が、棒、針、偏長楕円体、扁平楕円体、ディスク及びプレート、泡、ゲル又はスポンジ、の形態である、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0100】
26項. 前記コアが、α-Fe、α’-Fe8N、γ’-Fe4N及びε-Fe2-3Nのうち1つ又は複数の相をさらに含む、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0101】
27項. 前記シェルが、FeO、α-Fe2O3、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CoO、NiO、Mn、Cr、CrN、MnN又はそれらの任意の組み合わせをさらに含む、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0102】
28項. 前記延性金属が、Cu、Al、Sn、Zn又はそれらの任意の組み合わせを含む、16項に記載の窒化鉄ナノ粒子。
【0103】
29項. 前述の項のいずれか1項に記載の複数の窒化鉄ナノ粒子を含む、バルク磁石。
【0104】
30項. 前記バルク磁石の飽和磁化の値(Msat)が、180emu/g以上である、29項に記載のバルク磁石。
【0105】
31項. 前記バルク磁石の飽和磁化の値(Msat)が、195emu/g以上である、29項に記載のバルク磁石。
【0106】
32項. 前記バルクの保磁力の値(Hci)が、1500Oe以上である、29項に記載のバルク磁石。
【0107】
参照
Ahvenniemi,E.ら、「Review Article:Recommended reading list of early publications on atomic layer deposition-Outcome of the 「Virtual Project on the History of ALD」」、Journal of Vacuum Science & Technology A:Vacuum,Surfaces,and Films、Vol.35、2016、010801
King, D.M.ら、「Atomic layer deposition on particles using a fluidized bed reactor with in situ mass spectrometry」、Surface & Coatings Technology、Vol.201、2007、pp 9163-71
L.F.Hakim,L.F.ら、「Synthesis of oxidation-resident metal nanoparticles via atomic layer deposition」、Nanotechnology、Vol.18、(2007)、354093
Sankarら、「Iron nitride powders for use in magnetic, electromagnetic, and microelectronic devices」、米国特許第8535634号明細書、2013年9月17日
【国際調査報告】