(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】セパレータのための機能性コーティング
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20220713BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220713BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220713BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20220713BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20220713BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20220713BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220713BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20220713BHJP
H01G 9/02 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/403 D
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/434
H01M50/491
H01G11/52
H01M50/443 M
H01G9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569510
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020034116
(87)【国際公開番号】W WO2020242902
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,インシク
(72)【発明者】
【氏名】ラプリー,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】アゼィ,フル
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB01
5E078CA02
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA10
5E078CA17
5E078CA19
5E078CA20
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE23
5H021EE24
5H021EE32
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
ミクロ多孔質フィルムおよびミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、コーティングされたセパレータが、140℃以下の温度でシャットダウンする、上記セパレータ。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに15%超、12%超、10%超、または好ましくは5%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。セパレータ自身(コーティングされていない)のミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしない、または、140℃以下の温度でシャットダウンしない。ミクロ多孔質フィルムは、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンし得る。コーティングされたセパレータのコーティングは、ポリエチレン、バインダ、および無機または耐熱性微粒子を含有していてよい。微粒子は、500nm以下の粒子サイズD50を有していてよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ多孔質フィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、前記コーティングされたセパレータが、140℃未満の温度でシャットダウンし、前記コーティングが、水ベースまたは溶媒ベースのコーティングである、前記セパレータ。
【請求項2】
前記コーティングされたセパレータが、135℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項3】
前記コーティングされたセパレータが、130℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項4】
前記コーティングされたセパレータが、125℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項5】
前記コーティングされたセパレータが、120℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項6】
前記コーティングされたセパレータが、115℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項7】
前記コーティングされたセパレータが、110℃未満または100℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項8】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、140℃未満の温度でシャットダウンしない、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項9】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、シャットダウンしない、または140℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項10】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、135℃未満の温度でシャットダウンしない、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項11】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、シャットダウンしない、または、135℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項12】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項13】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンである、請求項12に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項14】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンでできている単層フィルムである、請求項13に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項15】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項11に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項16】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする、請求項11に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項17】
前記コーティングが、ポリエチレンおよびバインダを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、請求項1~16のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項18】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の10%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項17に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項19】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の5%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項18に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項20】
前記無機微粒子が、約500nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項18に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項21】
前記無機微粒子が、約250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項20に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項22】
前記金属酸化物が、アルミナを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項18または20に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項23】
前記ミクロ多孔質フィルムが単層ミクロ多孔質フィルムである、請求項1~22のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項24】
前記単層ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項23に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項25】
前記ミクロ多孔質フィルムが、30%超の平均気孔率を有する、請求項22または23に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項26】
前記ミクロ多孔質フィルムの平均細孔サイズが、0.03ミクロン超である、請求項1~25のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項27】
前記平均細孔サイズが、0.04ミクロン超である、請求項26に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項28】
前記平均細孔サイズが、0.045ミクロン超である、請求項27に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項29】
前記ミクロ多孔質フィルムが、2層、3層、または多層ミクロ多孔質フィルムである、請求項1~28のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載のコーティングされた電池セパレータを含む二次電池。
【請求項31】
ミクロ多孔質フィルムおよびコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに15%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、前記セパレータ。
【請求項32】
前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに12%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項33】
前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに10%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項34】
前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに5%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項35】
前記セパレータが、140℃未満でシャットダウンする、請求項31~34のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項36】
前記セパレータが、135℃未満の温度でシャットダウンする、請求項35に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項37】
前記セパレータが、130℃未満の温度でシャットダウンする、請求項35に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項38】
前記セパレータが、125℃未満の温度でシャットダウンする、請求項35に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項39】
前記セパレータが、120℃未満の温度でシャットダウンする、請求項35に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項40】
前記セパレータが、100℃未満の温度でシャットダウンする、請求項35に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項41】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、140℃未満の温度でシャットダウンしない、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項42】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、シャットダウンしない、または、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項43】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、135℃未満の温度でシャットダウンしない、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項44】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、シャットダウンしない、または、135℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項45】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項46】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンである、請求項45に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項47】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンでできている単層フィルムである、請求項46に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項48】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項42に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項49】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする、請求項42に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項50】
前記コーティングが、ポリエチレンおよびバインダを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、請求項31~49のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項51】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の10%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項50に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項52】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の5%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項50に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項53】
前記無機微粒子が、約500nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項51に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項54】
前記無機微粒子が、約250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項53に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項55】
前記金属酸化物が、アルミナを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項51~53に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項56】
前記ミクロ多孔質フィルムが単層ミクロ多孔質フィルムである、請求項31~55のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項57】
前記単層ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項56に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項58】
前記ミクロ多孔質フィルムが、30%超の平均気孔率を有する、請求項56または57に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項59】
前記ミクロ多孔質フィルムの平均細孔サイズが、0.03ミクロン超である、請求項31~58のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項60】
前記平均細孔サイズが0.04ミクロン超である、請求項59に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項61】
前記平均細孔サイズが0.045ミクロン超である、請求項60に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項62】
前記ミクロ多孔質フィルムが、2層、3層、または多層ミクロ多孔質フィルムである、請求項31~58のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項63】
請求項31~62のいずれか一項に記載のコーティングされた電池セパレータを含む二次電池。
【請求項64】
前記コーティングされたセパレータが、前記ミクロ多孔質フィルムがコーティングされていないとき、前記ミクロ多孔質フィルムよりも低いピン除去力を有する、請求項1または31に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項65】
ミクロ多孔質フィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータのためのコーティングされた膜であって、前記コーティングされた膜の前記コーティングが、140℃未満の温度でシャットダウンする、前記膜。
【請求項66】
ミクロ多孔質ポリオレフィンフィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側に多孔質コーティングを含むコーティングされた膜であって、前記コーティングが、溶融または流動して140℃未満の温度で前記多孔質コーティングの細孔を遮断する材料を有するまたは含む、前記膜。
【請求項67】
ミクロ多孔質ポリオレフィンフィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側にミクロ多孔質コーティングを含むコーティングされた膜であって、前記コーティングが、溶融または流動して140℃未満の温度で前記コーティングの細孔を遮断するポリマー材料を有するまたは含む、前記膜。
【請求項68】
シャットダウンコーティングを有するセパレータであって、前記コーティングが、水ベースまたは溶媒ベースのコーティングである、前記セパレータ。
【請求項69】
前記コーティングが、水ベースのコーティングである、請求項68に記載のセパレータ。
【請求項70】
前記コーティングが、溶媒ベースのコーティングである、請求項68に記載のセパレータ。
【請求項71】
前記コーティングが、500nm以下の粒子サイズD50を有する無機微粒子を含む、請求項68~70のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項72】
前記無機微粒子が、250nm以下の粒子サイズD50を有する、請求項71に記載のセパレータ。
【請求項73】
前記無機微粒子が、200nm以下の粒子サイズD50を有する、請求項71に記載のセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、とりわけ、改良された安全性、1つ以上のコーティング、種々の機能性コーティングなどを有する新規または改良された電池セパレータまたは膜を対象とする。
【背景技術】
【0002】
性能規格、安全性規格、製造要求、および/または環境上の関心の増加により、新しいおよび/または改良された電池セパレータ用コーティング組成物の開発が望ましくなっている。
【0003】
リチウムイオン電池に関する1つの主な安全性の問題は、熱暴走である。酷使状態、例えば、過充電、過放電、および内部短絡は、例えば、電池製造者らが意図している使用される電池の温度をはるかに超える電池温度を引き起こし得る。酷使状態を模倣するための試験として、限定されないが、釘刺試験およびホットボックス試験を挙げることができる。例えば、熱暴走の事象におけるアノードとカソードとの間の電池のシャットダウン、例えば、セパレータを横断するイオン流の停止は、熱暴走を防止するのに使用される安全機構である。少なくともある特定のリチウムイオン電池におけるセパレータは、それらの機械的特性を依然として保持しながらも、熱暴走が起こる温度よりも少なくとも僅かに低い温度でシャットダウンする能力を付与しなければならない。例えば、ユーザーまたはデバイスがシステムを止めるためにより長い時間を有するように、より低い温度およびより長い持続時間でのより速いシャットダウンが非常に望ましい。いくつかの実施形態において、シャットダウンは、溶融したポリマーによるセパレータ細孔の充填および/または閉鎖によって起こり得る。
【0004】
釘刺試験は、(例えば、リチウムイオン電池におけるリチウムデンドライト成長に起因する)内部短絡を模倣するためになされるタイプの電池安全性試験である。典型的には、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間のセパレータを含有するサンプル電池を調製する。サンプル電池に釘を貫通させて内部短絡を模倣し、電池が発火または爆発しないことを検証する。業界において様々な釘刺速度が使用されている。サンプル電池の発火または爆発(熱暴走の起こり得る結果)を防止するための1つの方法は、シャットダウンする電池セパレータを使用することである。典型的には、大部分の電池セパレータはシャットダウンすることができるが、いくつかのシャットダウンが、他よりも高温で起こる。しかし、シャットダウンするさらにいくつかの電池セパレータは、全てまたはいくつかの釘刺試験(例えば、いくつかの釘刺速度を使用する試験であるが、他はそうではない)に不合格となる場合がある。そのため、業界の釘刺試験の全てまたは多くに合格する電池セパレータが望ましいまたは有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書に記載されているコーティングされたセパレータまたは膜は、コーティングを有するミクロ多孔質フィルムを含み得、ミクロ多孔質フィルムのシャットダウンするまたは低温でシャットダウンする能力にかかわらず、低温でのシャットダウンを提供する。
【0006】
上昇する温度でのセパレータの寸法変化(例えば、収縮)はセパレータが釘刺試験に不合格となる1つの理由であり得ることが本願の発明者らによって理論付けられている。電池セパレータが、収縮が閾値量を超える前にシャットダウンしないと、このことが、釘刺試験の不合格につながり得る。典型的には、電池は、セパレータが
図1に示されているような電極を被覆するように設計されている。しかし、収縮が閾値量を超えると、電極が露出されて(
図2を参照されたい)、セパレータがシャットダウンし得る前に起こる場合には発火または爆発につながり得る熱暴走の状況につながり得る。
【0007】
この問題を解決するために、本願の発明者らは、寸法変化(例えば、収縮)が閾値量を超える前にシャットダウンするセパレータを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、セパレータは、ミクロ多孔質フィルムおよびコーティングを含むコーティングされたセパレータである。コーティングされたセパレータは、140℃未満の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、コーティングされたセパレータは、135℃未満、130℃未満、125℃未満、120℃未満、115℃未満、110℃未満、105℃未満、または100℃未満の温度でシャットダウンする。
【0009】
いくつかの好ましい実施形態において、ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)は、140℃未満の温度でシャットダウンしない。ミクロ多孔質フィルムは、いくつかの実施形態において、シャットダウンせず、または、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)は、135℃未満の温度でシャットダウンしない。いくつかの実施形態において、それは、シャットダウンせず、または、135℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンせず、または、160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、それは、シャットダウンせず、または、135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする。
【0010】
いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、ポリプロピレン、または、160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンである。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンでできている単層フィルムである。
【0011】
ミクロ多孔質フィルムは、単層、2層、3層、または多層フィルムであってよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層フィルムであってよい。ミクロ多孔質フィルムは、いくつかの実施形態において、30%超の平均気孔率を有するフィルムであってよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、平均細孔サイズが0.03ミクロン超、0.04ミクロン超、または0.045ミクロン超である細孔を有するフィルムであってよい。
【0012】
本明細書に記載されているコーティングは、ポリエチレンおよびバインダを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になるものであってよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、コーティング中の合計固体の10%以下、または5%以下の量で無機微粒子をさらに含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、無機微粒子は、約500nm以下、250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、アルミナを含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。
【0014】
一態様において、セパレータは、ミクロ多孔質フィルムを含むコーティングされたセパレータであり、コーティングが記載されている。ミクロ多孔質フィルム自体は電池セパレータとして使用され得るが、ミクロ多孔質フィルムをコーティングしてセパレータを形成することによって、セパレータが、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに15%超収縮し得る温度よりも低い温度でシャットダウンする。コーティングは、ミクロ多孔質フィルムの一方または両方の側に適用されてよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに12%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに10%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに5%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。
【0016】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているコーティングされたセパレータは、140℃未満、135℃未満、130℃未満、125℃未満、120℃未満、115℃未満、110℃未満、または100℃未満の温度でシャットダウンする。全ての場合において、セパレータのシャットダウン温度は、ミクロ多孔質フィルム自身、すなわち、いずれのコーティングも無しのシャットダウン温度よりも低い。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態において、ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)は、140℃未満の温度でシャットダウンしない。ミクロ多孔質フィルムは、いくつかの実施形態において、シャットダウンせず、または、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)は、135℃未満の温度でシャットダウンしない。いくつかの実施形態において、それは、シャットダウンせず、または、135℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンせず、または、160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、それは、シャットダウンせず、または、135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする。
【0018】
いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる。いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、ポリプロピレン、または、160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンである。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリプロピレン、または、160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンでできている単層フィルムである。
【0019】
ミクロ多孔質フィルムは、単層、2層、3層、または多層フィルムであってよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層フィルムであってよい。ミクロ多孔質フィルムは、いくつかの実施形態において、30%超の平均気孔率を有するフィルムであってよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、平均細孔サイズが0.03ミクロン超、0.04ミクロン超、または0.045ミクロン超である細孔を有するフィルムであってよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、コーティングは、ポリエチレンおよびバインダを含んでいても、これらからなっていても、これらから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、合計コーティング固体の10%以下の量または合計コーティング固体の5%以下の量で無機微粒子をさらに含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、無機微粒子は、500nm以下、250nm以下または200nm以下の粒子サイズD50を有する。いくつかの実施形態において、無機微粒子は、250nm以下または200nm以下の粒子サイズを有する金属酸化物を含む、これからなる、またはこれから本質的になる。いくつかの実施形態において、金属酸化物はアルミナである。
【0022】
別の態様において、本明細書に記載されているいずれかの実施形態によるコーティングされたセパレータを含む二次電池が記載されている。電池は、少なくとも電極、セパレータ、および電解質を含んでいてよい。
【0023】
別の態様において、本明細書に記載されている実施形態のいずれかによる電池セパレータを含むコンデンサが記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1および
図2は、電池におけるセパレータの寸法変化(例えば、収縮)の効果を示す概略図を含む。セルがアセンブルされているとき(
図1)、電池セパレータは電極を被覆し得るが、後に収縮して電極を露出させ得る(
図2)。
【
図2】
図1および
図2は、電池におけるセパレータの寸法変化(例えば、収縮)の効果を示す概略図を含む。セルがアセンブルされているとき(
図1)、電池セパレータは電極を被覆し得るが、後に収縮して電極を露出させ得る(
図2)。
【
図3】
図3は、典型的なシャットダウンプロファイルを示す。
【
図4】
図4は、1つの側および2つの側がコーティングされた電池セパレータの概略図を含む。
【
図5】
図5は、乾式プロセス多孔質膜の典型的な構造の図を含む。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、乾式プロセス多孔質膜の典型的な構造を示すSEMである。
【
図8】
図8は、本明細書に記載されているコーティングの概略図を示す。
【
図9】
図9は、本明細書に記載されている実施形態に関するシャットダウンプロファイルを含む。
【
図10】
図10は、パッキングにおけるより小さいおよびより大きい無機粒子の影響を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本明細書に記載されている実施形態のカールを示す。
【
図12】
図12は、コーティングされていない3層生成物および95℃のシャットダウンコーティングによる3層生成物の特性の比較を示す。
【
図13】
図13は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態に関するコーティング後のシャットダウンシフトを示す。
【
図14】
図14は、本明細書に記載されているシャットダウンコーティングがピン除去力を低減させることを示すグラフである。
【
図15】
図15は、ピン除去試験に関する良好な結果を示す概略図である。
【
図16】
図16は、115℃、120℃、125℃、および130℃におけるMD収縮およびGurleyを示すグラフである。
【
図17】
図17は、本明細書に記載されているいくつかの実施形態によるフィルムの写真を含む。
【
図18】
図18は、基準アルミナ対ナノアルミナによるコーティングに関するシャットダウン挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載されている好ましいコーティングされた電池セパレータは、140℃以下、135℃以下、130℃以下、125℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、または100℃以下の温度でシャットダウンするものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているコーティングされたセパレータは、寸法変化(例えば、収縮)の閾値量を経験する前にシャットダウンする。閾値量を超える寸法変化は、セパレータが電池において使用されるとき、電極が互いに露出されている(すなわち、
図2に示されているように電極間にセパレータが存在しない)ことにより、セパレータがシャットダウンし得る前に起こる場合には発火または爆発につながり得る熱暴走の状況につながり得る。
【0026】
典型的なシャットダウンプロファイルを
図3に示す。シャットダウンは、「シャットダウン」の開始ではなく、「シャットダウン」のプロファイルにおいて示される。シャットダウンの温度が言及されているとき、「シャットダウンの開始」ではなく「シャットダウン」によって示される温度である。
【0027】
本願の目的で、シャットダウンは、セパレータを横断する抵抗レベルが1,000オーム以上に達し、この値を超えて少なくとも5℃にわたって継続または維持するときに起こる。いくつかの実施形態において、シャットダウンは、セパレータを横断する抵抗が2,000オーム以上、4,000オーム以上、5,000オーム以上、6,000オーム以上、7,000オーム以上、8,000オーム以上、9,000オーム以上、または10,000オーム以上となり得、このレベルを超えて少なくとも5℃の期間にわたって継続するときに起こり得る。時折、当該期間は、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、または少なくとも50℃の期間であり得る。いくつかの実施形態において、当該期間は、シャットダウンの開始からシャットダウンウィンドウの終わりまでである。時折、これは、シャットダウンウィンドウである。
【0028】
本明細書に記載されている電池セパレータは、さほど限定されず、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。好ましい実施形態において、電池セパレータは、ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側にコーティングを含むコーティングされた電池セパレータである。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムの両方の側に適用され得る。例示的な1つの側および2つの側がコーティングされた電池セパレータは、
図4に示されている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているコーティングは、2つの側がコーティングされたセパレータにおいてミクロ多孔質フィルムの1つの側にあってよく、ミクロ多孔質フィルムの他方の側は、異なるコーティングを有していてよい。例えば、それは、セラミックコーティングを有していてよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているコーティングは、ミクロ多孔質フィルムの両方の側にあってよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているコーティングされたセパレータは、140℃未満、135℃未満、130℃未満、125℃未満、120℃未満、115℃未満、110℃未満、または100℃未満の温度でシャットダウンする。好ましい場合において、コーティングされたセパレータのシャットダウン温度は、ミクロ多孔質フィルム自身、すなわち、いずれのコーティングも無しのシャットダウン温度よりも低い。
【0030】
コーティング
本明細書に記載されているコーティングは、さほど限定されず、本明細書において記述されている目標と矛盾しない(および電池に損害を与えない)いずれのコーティングが使用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態において、コーティングは、セパレータを、ミクロ多孔質フィルム自体がシャットダウンするよりも低い温度でシャットダウンさせる。時折、コーティングは、セパレータを140℃未満の温度、130℃未満、120℃未満、110℃未満、または100℃未満でシャットダウンさせ、ここで、ミクロ多孔質フィルム自体は、シャットダウンしないまたはより高温でシャットダウンする、のいずれかである。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに、15%超、12%超、10超、または5%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに20%超、15%超、14%超、13%超、11%超、10%超、9%超、8%超、7%超、6%超、5%超、4%超、3%超、2%超、または1%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。
【0032】
いくつかの実施形態において、コーティングは、ポリエチレンおよびバインダを含んでいても、これらからなっていても、これらから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングは、無機微粒子をさらに含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。コーティングにおける無機微粒子の量は、コーティング中の合計固体の10%を超えなくてよい。いくつかの実施形態において、これらは、コーティング中の合計固体の9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を超えなくてよい。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、コーティングは、水性または水ベースのコーティングであってよい。「水ベース」とは、コーティングが、溶媒が水または水および少量、5%未満の別の溶媒、例えば、アルコールであるスラリーから形成されていることを意味する。コーティングは、溶媒が有機溶媒であるスラリーから形成されるコーティングである、溶媒ベースのコーティングであってもよい。溶媒ベースおよび水ベースのコーティングは、構造的に異なる。いくつかの実施形態において、水ベースのコーティングは、かかるコーティングの高い均一性に起因して好ましくあり得る。
【0034】
ポリエチレン
コーティングにおいて使用されるポリエチレンは、さほど限定されない。本明細書において記述されている目標と矛盾しないいずれのポリエチレンが使用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態において、より低い分子量(およびしたがってより低い融点)のポリエチレンが使用され得る。いくつかの実施形態において、より低い分子量のポリオレフィンが使用され得る。いくつかの実施形態において、ポリエチレンを含めたポリオレフィンは、90℃~140℃の間、100℃~140℃の間、110℃~140℃の間、120℃~140℃の間、または130℃~140℃の間の溶融温度を有していてよい。いくつかの実施形態において、ポリエチレンまたはポリオレフィンの粒子サイズは、0.5~5ミクロン、0.5~4ミクロンの間、0.5~3ミクロンの間、0.5~2ミクロンの間、または0.5~1ミクロンの間であってよい。ポリエチレン粒子またはビーズを含むコーティングが好ましくあり得る。
【0035】
バインダ
コーティングにおいて使用されるバインダは、さほど限定されない。本明細書において記述されている目標と矛盾しないいずれのバインダが使用されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、バインダは、アクリル系であってよい。いくつかの実施形態において、バインダは、ポリマー性、オリゴマー性、またはエラストマー性材料を含む、これからなる、またはこれから本質的になるポリマー性バインダであってよく、限定されない。本開示と矛盾しないいずれのポリマー性、オリゴマー性、またはエラストマー性材料が使用されてもよい。バインダは、イオン伝導性、半伝導性、または非伝導性であってよい。リチウムポリマー電池または固体電解質電池における使用に関して推奨されているいずれのゲル形成性ポリマーが使用されてもよい。例えば、ポリマー性バインダは、ポリラクタムポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、アクリル系樹脂、ラテックス、アラミド、またはこれらの材料の任意の組み合わせから選択される少なくとも1つ、または2つ、または3つなどを含んでいてよい。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、ポリマー性バインダは、ラクタムから誘導されるホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーであるポリラクタムポリマーを含む、これからなる、またはこれから本質的になる。いくつかの実施形態において、ポリマー性材料は、式(1)によるホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーを含む。
【0038】
【0039】
式中、R1、R2、R3、およびR4は、アルキルまたは芳香族置換基であってよく、R5は、アルキル置換基、アリール置換基、または縮合環を含む置換基であってよく;好ましいポリラクタムは、ホモポリマー、あるいは、コポリマー性基Xがビニル、置換もしくは非置換アルキルビニル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル酸、アルキルアクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、スチレン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルバレロラクタム、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、ポリアミド、またはポリイミドから誘導され得るコポリマーであってよく;mは、1~10の間、好ましくは2~4の間の整数であってよく、l対nの比は、0≦l:n≦10または0≦l:n≦1であるようになっている。いくつかの好ましい実施形態において、ラクタムから誘導されるホモポリマー、コポリマー、ブロックポリマー、またはブロックコポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム(PVCap)、およびポリビニル-バレロラクタムからなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つである。
【0040】
別の好ましい実施形態において、ポリマー性バインダは、ポリビニルアルコール(PVA)を含む、これからなる、またはこれから本質的になる。PVAの使用は、低カールコーティング層を結果として生じさせ得、これは、コーティングが適用される基材が安定かつ平坦なままであることを助け、例えば、基材のカールを防止することを助ける。PVAは、特に、低カールが望まれるとき、本明細書に記載されているいずれの他のポリマー性、オリゴマー性、またはエラストマー性材料と組み合わせて添加されてもよい。
【0041】
別の好ましい実施形態において、ポリマー性バインダは、アクリル系樹脂を含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。アクリル系樹脂のタイプは特に限定されず、例えば、改良された安全性を有する電池セパレータを作製するのに使用され得る新しい改良されたコーティング組成物を付与する、本明細書に記述されている目標に反し得ないいずれのアクリル系樹脂であってもよい。例えば、アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)からなる群から選択される少なくとも1つ、または2つ、または3つ、または4つであってよい。
【0042】
他の好ましい実施形態において、ポリマー性バインダは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、イソブチレンポリマー、ラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。これらは、単独で、または、任意の他の好適なオリゴマー性、ポリマー性、もしくはエラストマー性材料と一緒に添加されてよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリマー性バインダは、水のみ、水性もしくは水ベースの溶媒、および/または非水性溶媒である溶媒を含んでいてよい。溶媒が水であるとき、いくつかの実施形態において、他の溶媒は存在しない。水性または水ベースの溶媒は、過半数(50%超)の水、60%超の水、70%超の水、80%超の水、90%超の水、95%超の水、または99%超、しかし100%未満の水を含んでいてよい。水性または水ベースの溶媒は、水に加えて、極性または非極性有機溶媒を含んでいてよい。非水性溶媒は、限定されず、本願において表記されている目標と適合するいずれの極性または非極性有機溶媒であってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー性バインダは、ほんの微量の溶媒を含んでおり、他の実施形態において、50%以上の溶媒、時折、60%以上、時折、70%以上、時折、80%以上などを含む。
【0044】
バインダの量は、いくつかの好ましい実施形態において、コーティング中の合計固体の20%未満、15%未満、10%未満、または5%未満であってよい。いくつかの特に好ましい実施形態において、バインダの量は、コーティング中の合計固体の10%以下、または5%以下であってよい。
【0045】
無機微粒子
無機微粒子は、さほど限定されない。本明細書において記述されている目標と矛盾しないいずれの無機微粒子が使用されてもよい。無機微粒子は、500nm未満、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満、225nm未満、200nm未満、175nm未満、150nm未満、125nm未満、100nm未満、75nm未満、または50nm未満の粒子サイズD50を有していてよい。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、より大きな粒子の使用は、コーティングからおよびセパレータの細孔へのポリマー、例えば、ポリエチレンの流れを遮断することによってシャットダウンを抑制し得るとされている。任意のサイズの多量の無機粒子の使用もまた、セパレータの細孔へのポリマーの流れを遮断してイオン流を遮断し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、無機微粒子は、1つ以上の金属酸化物を含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、金属酸化物(または金属酸化物の1つ)は、アルミナであってよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、無機微粒子は:酸化鉄、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、ベーマイト(Al(O)OH)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化チタンバリウム(BaTiO3)、二酸化スズ(SnO2)、酸化インジウムスズ、遷移金属の酸化物、グラファイト、カーボン、金属、およびこれらの任意の組み合わせ;からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0048】
好ましい実施形態において、無機微粒子のサイズ対ポリマー粒子のサイズの比は、0.5:1以下である。いくつかの好ましい実施形態において、当該比は、0.4:1以下である。0.3:1以下、0.2:1以下、0.1:1以下、または0.05:1以下である。いくつかの実施形態において、ポリマー粒子は、無機微粒子のサイズの2倍、3倍、5倍、10倍、12倍、15倍、または20倍と同程度である。
【0049】
ミクロ多孔質フィルム
ミクロ多孔質フィルムは、さほど限定されず、本明細書に記述されている目標に反しないいずれのミクロ多孔質フィルムを使用してもよい。いくつかの好ましい実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、タイトル「Biaxially Oriented Microporous Membrane」のCelgard(登録商標)の米国特許第8,795,565号に記載されているものであってよい。
【0050】
ミクロ多孔質フィルムは、単層、2層、3層、または多層フィルムであってよい。いくつかの好ましい実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、Celgard(登録商標)乾式延伸プロセスを含めた乾式プロセス、または当該分野において公知である湿式プロセスによって作製される単層、2層、3層、または多層フィルムであってよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリオレフィンを含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、ポリプロピレン、または1~10%のポリエチレンを有するポリプロピレン-ポリエチレンブロックコポリマーを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層フィルムである。
【0052】
好ましい実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、0.1~1.0ミクロンの間の平均細孔サイズを有していてよい。いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムは、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上、最大で80%または90%の気孔率を有していてよい。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、より高い気孔率および/またはより大きい細孔を有するフィルムは、これら自体、すなわち、いずれのコーティングも無しでシャットダウンするさらなる困難な時間を有し得るとされている。これは、ポリマーでできているミクロ多孔質フィルムが溶融するとき、細孔を完全に遮断または閉鎖するのに十分でないことがあるからである。細孔の遮断は、フィルムを横断するイオン流を停止させることであるとされている。
【0053】
乾式プロセスは、いくつかの実施形態において、いずれの細孔形成因子/細孔形成剤、またはベータ-核形成因子/ベータ-核形成剤も使用しないプロセスである。いくつかの実施形態において、乾式プロセスは、いずれの溶媒、ワックス、または油も使用しないものである。いくつかの実施形態において、乾式プロセスは、いずれの細孔形成因子/細孔形成剤、またはベータ-核形成因子/ベータ-核形成剤も使用せず、また、いずれの溶媒、ワックス、または油も使用しないものである。かかる実施形態において、乾式プロセスは、乾式延伸プロセスであってよい。Celgard(登録商標)乾式延伸プロセスとして公知の例示的な乾式延伸プロセスは、全体が参照により本明細書に組み込まれるChen et al.,Structural Characterization of Celgard(登録商標) Microporous Membrane Precursors:Melt-Extruded Polyethylene Films,J. of Applied Polymer Sci.,vol. 53,471-483(1994)に記載されている。Celgard(登録商標)乾式延伸プロセスは、細孔形成が、少なくとも機械方向に非多孔質の配向された前駆体を延伸することから得られるプロセスを指す。Kesting,Robert E.,Synthetic Polymeric Membranes,A Structural Perspective,Second Edition,John Wiley & Sons,New York,N.Y.,(1985),pages 290-297はまた、乾式延伸プロセスも開示しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの好ましい実施形態による乾式延伸プロセスにおいて、プロセスは、延伸工程を含んでいてよい。延伸工程は、単軸延伸(例えば、MD方向のみもしくはTD方向のみの延伸)、二軸延伸(例えば、MDおよびTD方向の延伸)、または多軸延伸(例えば、3つ以上の異なる軸、例えば、MD、TD、および別の軸に沿った延伸)を含んでいても、これからなっていても、これから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、乾式延伸プロセスは、押出工程および延伸工程を、この順序でまたはこの順序でなく含んでいても、これらからなっていても、これらから本質的になっていてもよい。いくつかの実施形態において、乾式延伸プロセスは、押出工程、アニーリング工程、および延伸工程を、この順序でまたはこの順序でなく含んでいても、これらからなっていても、これらから本質的になっていてもよい。押出工程は、いくつかの実施形態において、インフレーションフィルム押出工程またはキャストフィルム押出プロセスであってよい。いくつかの実施形態において、非多孔質前駆体は、押出され、延伸されて、細孔を形成する。いくつかの実施形態において、非多孔質前駆体は、押出され、アニーリングされ、次いで延伸されて、細孔を形成する。他の実施形態において、多孔質または非多孔質前駆体は、押出以外の方法によって、例えば、焼結または印刷によって形成され得、延伸は、前駆体において実施されて、細孔を形成し得、または既存の細孔を大きくし得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、細孔形成因子/細孔形成剤、またはベータ-核形成因子/ベータ-核形成剤が使用されてよく、プロセスは、依然として乾式プロセスとされる。例えば、粒子延伸プロセスは、乾式プロセスであるとされ得る、なぜなら、油または溶媒がポリマーと共に押出されず、押出されたポリマーから抽出されず、細孔を形成するからである。粒子延伸プロセスにおいて、粒子、例えば、シリカまたは炭酸カルシウムがポリマー混合物に添加され、これらの粒子が、細孔を形成することを助ける。かかる方法において、例えば、粒子およびポリマーを含むポリマー混合物が押出されて、延伸された前駆体を形成し、粒子の周りに空隙が作り出される。いくつかの実施形態において、粒子は、空隙が作り出された後に除去され得る。粒子延伸プロセスは、粒子の除去の前後に延伸工程を含んでいてよいが、粒子延伸プロセスは、乾式延伸プロセスとされない、なぜなら、原理の細孔形成メカニズムが、延伸しない粒子の使用であるからである。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の構造は、1つ以上の顕著な特徴を有し得る。例えば、乾式プロセス膜は、10%超の量のポリプロピレンを含んでいてよい。湿式プロセス、または溶媒を使用する他のプロセスは、ポリプロピレンに概して適合性でない、なぜなら、溶媒がポリプロピレンを劣化させるからである。そのため、湿式プロセス多孔質膜は、典型的には、10%を超えない、最も典型的には5%以下のポリプロピレンを含有する。いくつかの乾式プロセス多孔質膜、特に電池セパレータとして使用されるもののうちの1つの他の顕著な特徴は、シャットダウン機能を有することができるとういうことである。シャットダウン機能は、いくつかの場合において、PP/PE/PP構造によって付与され得る。これは、乾式プロセス膜に特有である、なぜなら、主にポリプロピレン(PP)を含む層は、概して、湿式プロセスにおいて形成され得ないからである。乾式プロセスは、PP/PE/PPシャットダウン膜構造を形成するのに比類なく適している。
【0056】
いくつかの実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の識別は、ラメラおよびフィブリルの存在であり得る。例えば、多孔質膜は、
図5または
図6Aおよび
図6Bに示されているもののような構造を有し得る。
図6Aおよび
図6Bは、PE(A)およびPP(B)を含むCelgard(登録商標)ミクロ多孔質膜におけるスリット様のミクロ細孔を示すFESM画像である。いくつかの実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の細孔またはミクロ細孔は、円形、楕円形、半円形、台形などであってよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の顕著な特徴は、ピンホールを含有しないまたは実質的に含有しないということである。ピンホールは、欠陥であるとされ、概して、乾式プロセス多孔質膜の意図的に形成された特徴ではない。いくつかの実施形態において、乾式プロセスのミクロ多孔質膜は、10nmを超えるピンホールを含有しなくてよく、または実質的に含有しなくてよい。いくつかの好ましい実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の細孔は、曲がりくねっている。いくつかの実施形態において、乾式プロセス多孔質膜の顕著な特徴は、ねじれである。いくつかの実施形態において、乾式プロセス多孔質膜のねじれは、1超、1.2超、1.3超、1.4超、1.5超、1.6超、1.7超、1.8超、1.9超、または2.0超である。いくつかの実施形態において、ねじれを大まかに計算するための式は、式(2)であり、
ねじれ=x/t (2)
式中、「x」は、多孔質膜における開口または細孔の長さであり、「t」は、膜の厚さである。ピンホールは、1のねじれを有する、なぜなら、ピンホールの長さが膜の厚さと同じであるからである。曲がりくねった細孔は、
図7に示されているように1を超えるねじれを有する、なぜなら、細孔の長さが、膜の厚さよりも長いからである。
【0058】
いくつかの実施形態において、乾式延伸多孔質膜は、半結晶性である。いくつかの実施形態において、乾式延伸多孔質膜は、半結晶性であり、単一の方向に配向されている。例えば、膜は、MD配向されていてよい。湿式プロセスによって形成される多孔質フィルム、例えば、ベータ-核形成プロセスによって形成されるフィルムは、ランダムに配向されていてよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、ミクロ多孔質フィルムおよびミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、コーティングされたセパレータは、140℃以下の温度でシャットダウンする。いくつかの実施形態において、コーティングは、ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに15%超、12%超、10%超、または好ましくは5%超収縮し得る温度よりも低い温度でセパレータをシャットダウンさせる。セパレータ自身(コーティングされていない)のミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしない、または、140℃以下の温度でシャットダウンしない。ミクロ多孔質フィルムは、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンし得る。コーティングされたセパレータのコーティングは、ポリエチレン、バインダ、および任意選択的な無機または耐熱性微粒子を含有し得る。
【実施例】
【0060】
実施例1
実施例1において、コーティングされたセパレータを、ポリエチレン、ナノサイズのアルミナ、バインダ、および水または水ベースの溶媒を含む溶液を、ポリプロピレン単層ミクロ多孔質フィルムの1つの側にコーティングすることによって形成した。
図8は、コーティングの概略図を示す。ミクロ多孔質フィルムは、Celgard(登録商標)特許第US8,795,565号に開示されているような二軸配向ミクロ多孔質膜であってよい。
【0061】
実施例2
実施例2において、コーティングされたセパレータを、ポリエチレン、ナノサイズのアルミナ、バインダ、および水または水ベースの溶媒を含む溶液を、ポリプロピレン単層ミクロ多孔質フィルムの両方の側にコーティングすることによって形成した。
図8は、コーティングの概略図を示す。ミクロ多孔質フィルムは、Celgard(登録商標)特許第US8,795,565号に開示されているような二軸配向ミクロ多孔質膜であってよい。
【0062】
図8は、フィルムのカールを改良する、コーティングの表面における水分の吸収を示す。ナノサイズのアルミナは水分を吸収する。大きい表面積は、比較的多量の水分を引きつけ得るが、小さい粒子サイズは、PEのパッキングに影響しないはずである。より大きなサイズの無機粒子の使用はPEのパッキング、したがって、シャットダウンに影響し得る。好ましい実施形態において、無機粒子のサイズ対PE粒子のサイズの比は、0.5:1以下である。いくつかの好ましい実施形態において、当該比は、0.4:1以下、0.3:1以下、0.2:1以下、0.1:1以下、または0.05:1以下である。いくつかの実施形態において、PE粒子は、無機微粒子のサイズの12倍、15倍、または20倍と同程度である。
【0063】
図9は、コーティングされていないミクロ多孔質フィルム(青色)および本明細書に記載されているセパレータ(黒色線)のようにコーティングされたミクロ多孔質フィルムに関するシャットダウン温度の差を示す。使用されるミクロ多孔質フィルムは、120℃~125℃の間の温度において収縮が15%である。収縮は、およそ120℃で13%、およそ130℃で19%であり、160℃での収縮は50%を超える。
【0064】
アルミナナノ粒子(無機ナノ粒子)の添加は、
図11に示されているようにカールを改良することが示されている。上部のサンプルは、アルミナが添加されていないが、底部のサンプルは添加されている。いずれの特定の理論によっても拘束されることを望まないが、アルミナ(無機粒子)の使用は、水分吸着を通してカールを改良するとされている。アルミナは、その小さな粒子サイズおよび大きな表面積ゆえに、比較的多量の水分を引きつけ得るが、小さな粒子サイズは、PEのパッキングには影響しないはずであるため、これまでにおけるようなより大きなアルミナ粒子を使用することと比較してシャットダウンへの影響が大きくない。以下、
図10において、なぜより小さな無機粒子が本明細書において好ましいかを実証する。表面積を増加させることによって(より小さな粒子)、比較的多量の電荷中和水分子が引きつけられ、一方で、同時に、より小さな粒子は、
図10に示されているように、より大きな粒子がするようにパッキング均一性を妨げることはしない。
【0065】
実施例3
ポリエチレン、バインダ、およびナノサイズのアルミナを含む水ベースのコーティングを、200℃超の融点を有するポリマーからできているミクロ多孔質フィルムの1つの側(実施例3A)および2つの側(実施例3B)に設けた。ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしないまたは200℃超の温度でシャットダウンするものであってよい。
【0066】
実施例4
ポリエチレン、バインダ、およびナノサイズのアルミナを含む水ベースのコーティングを、250℃超の融点を有するポリマーからできているミクロ多孔質フィルムの1つの側(実施例4A)および2つの側(実施例4B)に設けた。ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしないまたは250℃超の温度でシャットダウンするものであってよい。
【0067】
実施例5
ポリエチレン、バインダ、およびナノサイズのアルミナを含む水ベースのコーティングを、300℃超の融点を有するポリマーからできているミクロ多孔質フィルムの1つの側(実施例5A)および2つの側(実施例5B)に設けた。ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしないまたは300℃超の温度でシャットダウンするものであってよい。
【0068】
実施例6
ポリエチレン、バインダ、およびナノサイズのアルミナを含む水ベースのコーティングを、180℃超の融点を有するポリマーからできているミクロ多孔質フィルムの1つの側(実施例6A)および2つの側(実施例6B)に設けた。ミクロ多孔質フィルムは、シャットダウンしないまたは180℃超の温度でシャットダウンするものであってよい。
【0069】
実施例7
3層生成物(PP/PE/PP)を95℃のシャットダウンコーティングによってコーティングした。コーティングされていない3層生成物および95℃のシャットダウンコーティングによる3層生成物の特性の比較は、
図12に見られる。115℃、120℃、125℃、および130℃におけるMD収縮およびGurleyを示すグラフは、
図16におけるものである。ベースフィルムw/oシャットダウンコーティングは、高い収縮を有するが、125℃ではシャットダウンを有さない。シャットダウンコーティングによるベースフィルムは、細孔遮断を有するが、収縮は低いままである(<15%)。
図17は、115℃で2分間ベークした後に得られるフィルムを示す。コーティングされたフィルムは透明になり始め、これは、シャットダウンコーティングによる115℃での細孔遮断を示唆している。ベースフィルムは、収縮の兆候を示すが、細孔遮断は示さない(不透明なままである)。
【0070】
実施例8
3層生成物(PP/PE/PP)を115℃のシャットダウンコーティングによってコーティングした。コーティングされていない3層生成物および115℃のシャットダウンコーティングによる3層生成物の特性の比較は、
図12に見られる。115℃、120℃、125℃、および130℃におけるMD収縮およびGurleyを示すグラフは、
図16におけるものである。ベースフィルムw/oシャットダウンコーティングは、高い収縮を有するが、125℃ではシャットダウンを有さない。シャットダウンコーティングによるベースフィルムは、細孔遮断を有するが、収縮は低いままである(<15%)。
図17は、115℃で2分間ベークした後に得られるフィルムを示す。コーティングされたフィルムはクリアになり始め、これは、シャットダウンコーティングによる115℃での細孔遮断を示唆している。ベースフィルムは、収縮の兆候を示すが、細孔遮断は示さない(不透明なままである)。
【0071】
実施例9
コーティングされていないときに約160℃でシャットダウンを有するベースフィルムを120℃のシャットダウンコーティングでコーティングし、これにより、シャットダウンを約120℃にシフトさせる。これを
図13に示す。これは、シャットダウンコーティングが所望のベースフィルムに適用され得ること、および、所望のシャットダウンシフトが達成され得ることを示している。
【0072】
実施例10
コーティングされていないときに約130℃のシャットダウンを有するベースフィルムを95℃のシャットダウンコーティングでコーティングする。これは、ベースフィルムのシャットダウンを約95℃にシフトさせる。これを
図13に示す。これは、シャットダウンコーティングが所望のベースフィルムに適用され得ること、および、所望のシャットダウンシフトが達成され得ることを示している。
【0073】
実施例11
高いピン除去を有するベースフィルムをシャットダウンコーティングによってコーティングした。
図14は、シャットダウンコーティングがピン除去力を低減したことを示している。
図15は、ピン除去試験の良好な結果、すなわち、ピンが除去されるときにフィルムが伸縮しないことを実証している。ピン除去を低くするためのコーティングの使用は、加工性に影響し得る添加剤をベースフィルムに添加する必要性を排除する。
【0074】
実施例12
低いピン除去力を有するベースフィルムをシャットダウンコーティングによってコーティングした。
図14は、シャットダウンコーティングがピン除去力を低減したことを示している。
図15は、ピン除去試験の良好な結果、すなわち、ピンが除去されるときにフィルムが伸縮しないことを実証している。ピン除去を低くするためのコーティングの使用は、加工性に影響し得る添加剤をベースフィルムに添加する必要性を排除する。
【0075】
実施例13
2つの同じベースフィルムを、2つの異なる水ベースのシャットダウンコーティングによってコーティングした。一方のコーティングは、ポリエチレン、バインダ、および約0.7ミクロン(700nm)のサイズを有する基準アルミナを含んだ。他方のコーティングは、ポリエチレン、バインダ、および250nmのサイズを有するナノアルミナを含んだ。本明細書において
図18に示されているように、ナノアルミナによるシャットダウンコーティングは、かなり低い温度(約125℃と比較して約100℃)でシャットダウンし、シャットダウンウィンドウは、約190℃まで拡大した。そのため、ナノアルミナによるシャットダウンセパレータは、基準アルミナによるシャットダウンセパレータよりもかなり安全であるとされる。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロ多孔質フィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、前記コーティングされたセパレータが、140℃未満
、または135℃未満の温度でシャットダウンし、前記コーティングが、水ベースまたは溶媒ベースのコーティングである、前記セパレータ。
【請求項2】
前記コーティングされたセパレータが、130℃未満
、125℃未満、120℃未満、または115℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項3】
前記コーティングされたセパレータが、110℃未満または100℃未満の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項4】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、140℃未満の温度でシャットダウンしない
か、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンしないか又はシャットダウンするか、シャットダウンしないかまたは135℃未満の温度でシャットダウンするか、またはシャットダウンしないか140℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項5】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる
か、前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンであるか、または前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンでできている単層フィルムである、請求項1に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項6】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしないか、または160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする
か、または、前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしないか、または135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする、請求項
5に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項7】
前記コーティングが、ポリエチレンおよびバインダを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、請求項
1~6のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項8】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の10%以下
、または5%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項
7に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項9】
前記無機微粒子が、約500nm以下
、約250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項
8に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項10】
前記金属酸化物が、アルミナを含む、これからなる、またはこれから本質的になる
か、または、前記金属酸化物が、アルミナを含む、これからなる、またはこれから本質的になり、かつ前記ミクロ多孔質フィルムが、30%超の平均気孔率を有する、請求項
8に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項11】
前記ミクロ多孔質フィルムが単層ミクロ多孔質フィルムであ
る、コーティングされたセパレータであって、
前記単層ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になるか、
前記ミクロ多孔質フィルムが、30%超の平均気孔率を有するか、または
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、請求項1~
6のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項12】
前記ミクロ多孔質フィルムの平均細孔サイズが、0.03ミクロン超、
0.04ミクロン超、または0.045ミクロン超である、請求項1
~6、11のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項13】
前記ミクロ多孔質フィルムが、2層、3層、または多層ミクロ多孔質フィルムである、請求項1~
6、11のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項14】
ミクロ多孔質フィルムおよびコーティングを含むコーティングされたセパレータであって、前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに15%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、前記セパレータ。
【請求項15】
前記コーティングが、前記ミクロ多孔質フィルムがいずれのコーティングも無しに12%超
、10%超、または5%超収縮し得る温度よりも低い温度で前記セパレータをシャットダウンさせる、請求項
14に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項16】
前記セパレータが、140℃未満
、または135℃未満の温度でシャットダウンする、請求項
14または15に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項17】
前記セパレータが、130℃未満
、125℃未満、120℃未満、または100℃未満の温度でシャットダウンする、請求項
16に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項18】
前記ミクロ多孔質フィルム自体(コーティングされていない)が、140℃未満の温度でシャットダウンしない
か、シャットダウンしない、または、140℃~350℃の間の温度でシャットダウンするか、135℃未満の温度でシャットダウンしないか、または、シャットダウンしない、または、135℃~350℃の間の温度でシャットダウンする、請求項
14に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項19】
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる
か、
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になり、かつ前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンであるか、または
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリオレフィンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層フィルムであり、かつ前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンまたは160℃もしくはこれを超える溶融温度を有する別のポリオレフィンである、請求項
14に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項20】
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、160℃~350℃の間の温度でシャットダウンする
か、または
前記ミクロ多孔質フィルムが、シャットダウンしない、または、135℃~160℃の間の温度でシャットダウンする、請求項
18に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項21】
前記コーティングが、ポリエチレンおよびバインダを含む、これらからなる、またはこれらから本質的になる、請求項
14、15、18または19のいずれか一項に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項22】
前記コーティングが、前記コーティングにおける合計固体の10%以下
、または5%以下の量で無機微粒子をさらに含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項
21に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項23】
前記無機微粒子が、
500nm以下
、250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する金属酸化物を含む、請求項
22に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項24】
前記金属酸化物が、アルミナを含む、これからなる、またはこれから本質的になる、請求項
22に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項25】
前記ミクロ多孔質フィルムが単層ミクロ多孔質フィルムである
か、
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層ミクロ多孔質フィルムであるか、
前記ミクロ多孔質フィルムが単層ミクロ多孔質フィルムであり、かつ30%超の平均気孔率を有するか、または
前記ミクロ多孔質フィルムが、ポリプロピレンを含む、これからなる、またはこれから本質的になる単層ミクロ多孔質フィルムであり、かつ30%超の平均気孔率を有する、請求項
14、15、18または19に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項26】
前記ミクロ多孔質フィルムの平均細孔サイズが、0.03ミクロン超
、0.04ミクロン超、または0.045ミクロン超である、請求項
14、15、18または19に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項27】
前記ミクロ多孔質フィルムが、2層、3層、または多層ミクロ多孔質フィルムである、請求項
14、15、18または19に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項28】
前記コーティングされたセパレータが、前記ミクロ多孔質フィルムがコーティングされていないとき、前記ミクロ多孔質フィルムよりも低いピン除去力を有する、請求項1または
14に記載のコーティングされたセパレータ。
【請求項29】
ミクロ多孔質フィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側におけるコーティングを含むコーティングされたセパレータのためのコーティングされた膜であって、前記コーティングされた膜の前記コーティングが、140℃未満の温度でシャットダウンする、前記膜。
【請求項30】
ミクロ多孔質ポリオレフィンフィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側に多孔質コーティングを含むコーティングされた膜であって、前記コーティングが、溶融または流動して140℃未満の温度で前記多孔質コーティングの細孔を遮断する材料を有するまたは含む、前記膜。
【請求項31】
ミクロ多孔質ポリオレフィンフィルムおよび前記ミクロ多孔質フィルムの少なくとも1つの側にミクロ多孔質コーティングを含むコーティングされた膜であって、前記コーティングが、溶融または流動して140℃未満の温度で前記コーティングの細孔を遮断するポリマー材料を有するまたは含む、前記膜。
【請求項32】
シャットダウンコーティングを有するセパレータであって、前記コーティングが、水ベースまたは溶媒ベースのコーティングである、前記セパレータ。
【請求項33】
前記コーティングが、500nm以下
、250nm以下、または200nm以下の粒子サイズD50を有する無機微粒子を含む、請求項
32に記載のセパレータ。
【国際調査報告】