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特表2022-533268がんを処置するためのバリアントNRF2の遺伝子ノックアウト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】がんを処置するためのバリアントNRF2の遺伝子ノックアウト
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220713BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20220713BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20220713BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20220713BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220713BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220713BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20220713BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220713BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/09 ZNA
C12N15/864 100Z
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
A61K38/46
A61K31/7105
A61K33/243
A61K31/282
A61K31/475
A61K47/64
A61K35/76
A61K31/711
C12N15/12
C12N9/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569848
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020034369
(87)【国際公開番号】W WO2020237208
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/852,123
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521509929
【氏名又は名称】クリスティアナ ケア ヘルス サービシズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クミック,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ビアルク,パウエル
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK07
4B050LL10
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA60
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA04
4C084DC22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB21
4C086EA16
4C086HA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、DNA結合ドメインおよびクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインを含むガイドRNA(gRNA)であって、DNA結合ドメインは、がん細胞で見出されるが非がん性細胞では見出されないバリアントNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的である、gRNAを提供する。本開示はまた、gRNAをコードする核酸配列も提供する。本開示はさらに、対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量のクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼおよび対象におけるバリアントNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。がんを処置する方法であって、対象におけるバリアントNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAをコードするDNA配列;およびクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む医薬組成物を投与することを含む、方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞におけるNRF2の発現または活性を低減させる方法であって、(a)バリアントNRF2遺伝子における1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上のDNA配列、および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列をがん細胞に導入することを含み、それによって1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、バリアントNRF2遺伝子を切断し、がん細胞において、NRF2の発現または活性が、1つ以上のgRNAをコードする1つ以上のDNA配列およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列が導入されていないがん細胞と比べて低減される、方法。
【請求項2】
1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のgRNAが、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上のgRNAが、1つ以上の単一ガイドRNAである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
がん細胞において、バリアントNRF2遺伝子の1つ以上の対立遺伝子の発現が低減される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
がん細胞において、NRF2活性が低減される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
がん細胞において、NRF2の発現または活性が完全には排除されない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
がん細胞において、NRF2の発現または活性が完全に排除される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
がん細胞が、肺がん細胞である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
肺がん細胞が、非小細胞肺がん細胞(NSCLC)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
がん細胞を含有する対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性が、(a)の1つ以上のDNA配列および(b)の核酸配列の導入による影響を受けない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
がん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドが、
(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;あるいは
(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D
のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
バリアントNRF2遺伝子が、
(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは
(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって生産された変異バリアントNRF2遺伝子を含むがん細胞。
【請求項17】
がん細胞におけるバリアントNRF2の発現または活性を低減させる方法であって、(a)バリアントNRF2遺伝子における1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のgRNA、および(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼをがん細胞に導入することを含み、それによって1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、バリアントNRF2遺伝子を切断し、がん細胞において、バリアントNRF2の発現または活性が、1つ以上のgRNAおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼが導入されていないがん細胞と比べて低減される、方法。
【請求項18】
1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のgRNAが、tracrRNAおよびcrRNAを含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のgRNAが、1つ以上の単一ガイドRNAである、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
がん細胞において、バリアントNRF2遺伝子の1つ以上の対立遺伝子の発現が低減される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
がん細胞において、NRF2活性が低減される、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
がん細胞において、NRF2の発現または活性が完全には排除されない、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
がん細胞において、NRF2の発現または活性が完全に排除される、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
がん細胞が、肺がん細胞である、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
肺がん細胞が、NSCLCである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
がん細胞を含有する対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性が、(a)の1つ以上のDNA配列および(b)の核酸配列の導入による影響を受けない、請求項17から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
がん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドが、
(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;あるいは
(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D
のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
バリアントNRF2遺伝子が、
(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは
(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列
を含む、請求項17から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項17から31のいずれか一項に記載の方法によって生産された変異バリアントNRF2遺伝子を含むがん細胞。
【請求項33】
DNA結合ドメインおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインを含むgRNAであって、DNA結合ドメインは、バリアントNRF2遺伝子における標的配列に相補的である、gRNA。
【請求項34】
バリアントNRF2遺伝子が、
(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは
(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列
を含む、請求項33に記載のgRNA。
【請求項35】
バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である、請求項33または34に記載のgRNA。
【請求項36】
DNA結合ドメインが、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号53、配列番号55の核酸配列、またはそれらの生物学的に活性な断片を含む、請求項33から35のいずれか一項に記載のgRNA。
【請求項37】
gRNAが、tracrRNAおよびcrRNAを含む、請求項33から36のいずれか一項に記載のgRNA。
【請求項38】
gRNAが、単一ガイドRNAである、請求項33から36のいずれか一項に記載のgRNA。
【請求項39】
請求項33から38のいずれか一項に記載のgRNAを含む医薬組成物。
【請求項40】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼをさらに含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
請求項33から38のいずれか一項に記載のgRNAおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体。
【請求項44】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項43に記載のRNP複合体。
【請求項45】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項44に記載のRNP複合体。
【請求項46】
請求項43から45のいずれか一項に記載のRNP複合体を含む医薬組成物。
【請求項47】
請求項33から38のいずれか一項に記載のgRNA、またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするDNA配列。
【請求項48】
生物学的に活性な断片が、tracrRNAまたはcrRNAである、請求項47に記載のDNA配列。
【請求項49】
配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号54、または配列番号56の核酸配列を含む、請求項47に記載のDNA配列。
【請求項50】
生物学的に活性な断片が、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号54、または配列番号56の核酸配列を含むcrRNAである、請求項48に記載のDNA配列。
【請求項51】
請求項47から50のいずれか一項に記載のDNA配列を含むベクター。
【請求項52】
DNAベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項51または52に記載のベクター。
【請求項54】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項53に記載のベクター。
【請求項55】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項54に記載のベクター。
【請求項56】
請求項47から50のいずれか一項に記載のDNA配列または請求項51から55のいずれか一項に記載のベクターを含む医薬組成物。
【請求項57】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質をコードする核酸配列をさらに含む、請求項47から50のいずれか一項に記載のDNA配列を含む医薬組成物。
【請求項58】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量の請求項39から42、46、または56から59のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項61】
対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性が、医薬組成物の投与による影響を受けない、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
がんが、1種以上の化学療法剤に対して耐性である、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
がんが、肺がん、黒色腫、食道扁平上皮がん(ESC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、および乳がんからなる群から選択される、請求項60から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
肺がんが、NSCLCである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
1種以上の化学療法剤を対象に投与することをさらに含む、請求項60から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
1種以上の化学療法剤が、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
医薬組成物が、医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、がんの細胞の増殖を低減させるのに十分な量で投与される、請求項60から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
医薬組成物が、医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される、請求項60から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
医薬組成物が、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、がんの細胞の増殖を低減させるのに十分な量で投与される、請求項65または66に記載の方法。
【請求項70】
医薬組成物が、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される、請求項65または66に記載の方法。
【請求項71】
対象が、ヒトである、請求項60から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
医薬としての使用のためのCRISPRシステムであって、(a)DNA結合ドメインおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインを含むgRNAであって、DNA結合ドメインは、バリアントNRF2遺伝子における標的配列に相補的である、gRNA、および(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼを含む、CRISPRシステム。
【請求項73】
gRNAが、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である、請求項72に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項74】
gRNAが、tracrRNAおよびcrRNAを含む、請求項72または73に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項75】
gRNAが、単一gRNAである、請求項72から74のいずれか一項に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項76】
がんを処置することにおける使用のための、請求項72から75のいずれか一項に記載のCRISPRシステム。
【請求項77】
がんが、1種以上の化学療法剤に対して耐性である、請求項76に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項78】
がんが、肺がん、黒色腫、ESC、HNSCC、および乳がんからなる群から選択される、請求項76または77に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項79】
肺がんが、NSCLCである、請求項78に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項80】
NSCLCが、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である、請求項79に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項81】
1種以上の化学療法剤をさらに含む、請求項72から80のいずれか一項に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項82】
1種以上の化学療法剤が、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項81に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項83】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項72から80のいずれか一項に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項84】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項83に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項85】
がん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドが、
(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;
(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;
(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;あるいは
(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D
のうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む、請求項72から83に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項86】
バリアントNRF2遺伝子が、
(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは
(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列
を含む、請求項72から85に記載の使用のためのCRISPRシステム。
【請求項87】
医薬として使用するためのRNP複合体であって、(a)DNA結合ドメインおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインを含むgRNAであって、DNA結合ドメインは、バリアントNRF2遺伝子における標的配列に相補的である、gRNA、および(b)CRISPR関連エンドヌクレアーゼを含む、RNP複合体。
【請求項88】
gRNAが、NRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である、請求項87に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項89】
gRNAが、tracrRNAおよびcrRNAを含む、請求項87または88に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項90】
gRNAが、単一gRNAである、請求項87から89のいずれか一項に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項91】
バリアントNRF2遺伝子が、
(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは
(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列
を含む、請求項87から90のいずれか一項に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項92】
がんを処置することにおける使用のための、請求項87から91のいずれか一項に記載のRNP複合体。
【請求項93】
がんが、1種以上の化学療法剤に対して耐性である、請求項92に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項94】
がんが、肺がん、黒色腫、ESC、HNSCC、および乳がんからなる群から選択される、請求項92または93に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項95】
肺がんが、NSCLCである、請求項94に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項96】
NSCLCが、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である、請求項95に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項97】
1種以上の化学療法剤をさらに含む、請求項92から96のいずれか一項に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項98】
1種以上の化学療法剤が、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項97に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項99】
CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼである、請求項92から98のいずれか一項に記載の使用のためのRNP複合体。
【請求項100】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9またはCas12aである、請求項99に記載の使用のためのRNP複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書にその全体が組み入れられる2019年5月23日に出願された米国仮出願第62/852,123号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願に関連する配列表は、EFS-Webを介して電子フォーマットで出願され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。配列表を含むテキストファイルの名称は、130949_00220_SEQUENCELISTING.TXTである。テキストファイルのサイズは21KBであり、テキストファイルは、2020年5月22日に作成された。
【0003】
分野
本発明の開示は、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat;CRISPR)/エンドヌクレアーゼ遺伝子編集を使用してこのようながんを処置するために、特定のがんに見出されるバリアントNRF2をノックアウトするための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは現在、先進国における主な死亡原因の1つである。従来、がんの診断は、重篤な健康上の合併症を伴う。がんは、外観を損なうこと、慢性または急性疼痛、病変、臓器不全を引き起こす可能性があり、または死をも引き起こす可能性がある。一般的に診断されるがんとしては、肺がん、膵臓がん、乳がん、黒色腫、リンパ腫、癌腫、肉腫、白血病、子宮内膜がん、結腸および直腸がん、前立腺がん、ならびに膀胱がんが挙げられる。従来、多くのがんは、外科手術、化学療法、放射線、またはそれらの組合せで処置される。
【0005】
核内因子(赤血球由来2)様2は、NFE2L2またはNRF2としても公知であり、ヒトではNFE2L2遺伝子によってコードされる転写因子である。NRF2は、傷害や炎症によって引き起こされる酸化ダメージから保護する抗酸化剤タンパク質の発現を調節する塩基性ロイシンジッパー(bZIP)タンパク質である。
【0006】
近年の研究は、The Cancer Genome Atlas. Kerins、M. J.およびOoi, A、Sci. Rep. 8、論文番号12846 (2018)で報告された様々ながんのケースにおけるNRF2の体細胞突然変異を列挙した。この研究は、33種の異なる腫瘍タイプにわたり見出されたNRF2およびKEAP1突然変異のパーセンテージ、加えて、構成的NRF2活性化に関与する共通の突然変異を特定した。この研究はNRF2突然変異の214のケースを報告しており、ほとんどのケースが肺扁平上皮癌で見られた。腫瘍タイプ間で一般的に見られるNRF2突然変異は、タンパク質のNeh2ドメイン内に見出されており、このドメインは、KEAP1結合ドメインとして公知である。KEAP1は、NRF2の負の調節因子であり、基礎条件下でNRF2の分解を媒介する。この研究で報告された突然変異は、KEAP1結合の喪失を引き起こし、がん性細胞においてNRF2の構成的発現をもたらす。LUSCにおいて報告された最も一般的な突然変異であるR34Gが特に興味深く、なぜならこの突然変異は、Cas9認識のための新しいPAM部位を形成するためである。NRF2におけるコドン34の第1の塩基は、シトシンからグアニンに突然変異している。この新しいPAM部位は、がん性および非がん性細胞の分化を可能にする。NRF2のNeh2ドメイン内の数々の他の突然変異が報告されており、これらも同様に新しいPAM部位を形成する。Frank, R.ら、Clin. Cancer Res. 24:3087~96 (2018);Menegon, S.、Columbano, A.およびGiordano, S. The Dual Roles of NRF2 in Cancer. Trends in Molecular Medicine (2016);Shibata, T.ら、Proc Natl Acad Sci USA 105:13568~73 (2008)。類似の実験が、CRISPR/Cas9の新しい認識部位として公知の突然変異を使用して行われた。Cheung, A. H. K.ら、Lab. Investig. 98:968~76 (2018)。
【0007】
がんの処置で使用される化学療法剤は、患者において数々の重篤で不快な副作用を生じさせることがわかっている。例えば、一部の化学療法剤は、ニューロパチー、腎毒性、口内炎、脱毛、免疫性の減少、貧血、心臓毒性、疲労、ニューロパチー、骨髄抑制、またはそれらの組合せを引き起こす。しばしば化学療法は、処置中に、または処置レジメンが終了した直後のいずれかに、有効ではないか、または効能を有する期間後の有効性を喪失する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、改善されたがんの処置方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様は、がん細胞におけるNRF2の発現または活性を低減させる方法であって、(a)バリアントNRF2遺伝子における1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上のDNA配列、および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列をがん細胞に導入することを含み、それによって1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、バリアントNRF2遺伝子を切断し、がん細胞において、NRF2の発現または活性が、1つ以上のgRNAをコードする1つ以上のDNA配列およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列が導入されていないがん細胞と比べて低減される、方法に関する。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)を含む。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、1つ以上の単一ガイドRNAである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり、一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。一部の実施形態において、がん細胞において、バリアントNRF2遺伝子の1つ以上の対立遺伝子の発現が低減される。一部の実施形態において、NRF2活性は、がん細胞において低減される。一部の実施形態において、NRF2の発現または活性は、がん細胞において完全には排除されない。一部の実施形態において、NRF2の発現または活性は、がん細胞において完全に排除される。一部の実施形態において、がん細胞は、肺がん細胞であり;一部の実施形態において、肺がん細胞は、非小細胞肺がん細胞(NSCLC)であり;一部の実施形態において、NSCLCは、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である。一部の実施形態において、がん細胞を含有する対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性は、(a)の1つ以上のDNA配列および(b)の核酸配列
の導入による影響を受けない。一部の実施形態において、がん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドは、(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;または(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185Dのうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子は、(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、
配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。
【0010】
別の態様は、前述の方法によって生産された変異型バリアントNRF2遺伝子を含むがん細胞に関する。
【0011】
さらなる態様は、がん細胞におけるバリアントNRF2の発現または活性を低減させる方法であって、(a)バリアントNRF2遺伝子における1つ以上の標的配列に相補的な1つ以上のガイドRNA(gRNA)、および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをがん細胞に導入することを含み、それによって1つ以上のgRNAが、バリアントNRF2遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、バリアントNRF2遺伝子を切断し、がん細胞において、バリアントNRF2の発現または活性が、1つ以上のgRNAおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼが導入されていないがん細胞と比べて低減される、方法に関する。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)を含む。一部の実施形態において、1つ以上のgRNAは、1つ以上の単一ガイドRNAである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり;一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。一部の実施形態において、がん細胞において、バリアントNRF2遺伝子の1つ以上の対立遺伝子の発現が低減される。一部の実施形態において、NRF2活性は、がん細胞において低減される。一部の実施形態において、NRF2の発現または活性は、がん細胞において完全には排除されない。一部の実施形態において、NRF2の発現または活性は、がん細胞において完全に排除される。一部の実施形態において、がん細胞は、肺がん細胞であり;一部の実施形態において、肺がん細胞は、非小細胞肺がん細胞(NSCLC)であり;一部の実施形態において、NSCLCは、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である。一部の実施形態において、がん細胞を含有する対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性は、(a)の1つ以上のDNA配列および(b)の核酸配列の導入による影響を受けない。一部の実施形態において、がん細胞におけるバリアント
NRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドは、(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;または(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185Dのうちの1つ以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子は、(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、または配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、または配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、または配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、または配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。
【0012】
追加の態様は、前述の方法によって生産された変異型バリアントNRF2遺伝子を含むがん細胞に関する。
【0013】
別の態様は、DNA結合ドメインおよびクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインを含むガイドRNA(gRNA)であって、DNA結合ドメインは、バリアントNRF2遺伝子における標的配列に相補的である、gRNAに関する。一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子は、(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、バリアントNRF2遺伝子のエクソン2における標的配列に相補的である。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号53、配列番号55の核酸配列、またはそれらの生物学的に活性な断片を含む。一部の実施形態において、gRNAは、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)を含む。一部の実施形態において、gRNAは、単一ガイドRNAである。
【0014】
さらなる態様は、前述のgRNAを含む医薬組成物に関する。一部の実施形態において、医薬組成物は、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをさらに含み;一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり;一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。
【0015】
追加の態様は、前述のgRNAおよびクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体に関する。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり;一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。
【0016】
別の態様は、前述のRNP複合体を含む医薬組成物に関する。
【0017】
さらなる態様は、前述のgRNA、またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするDNA配列に関する。一部の実施形態において、生物学的に活性な断片は、tracrRNAまたはcrRNAである。一部の実施形態において、DNA配列は、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号54、または配列番号56の核酸配列を含み;一部の実施形態において、生物学的に活性な断片は、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号54、または配列番号56の核酸配列を含むcrRNAである。
【0018】
追加の態様は、前述のDNA配列を含むベクターに関する。一部の実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態において、ベクターは、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質をコードする核酸配列をさらに含み;一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり;一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。
【0019】
別の態様は、前述のDNA配列または前述のベクターを含む医薬組成物に関する。一部の実施形態において、医薬組成物は、前述のDNA配列を含み、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質をコードする核酸配列をさらに含み;一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり;一部の実施形態において、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9またはCas12aである。
【0020】
さらなる態様は、対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量の前述の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。一部の実施形態において、対象の非がん性細胞における野生型NRF2の発現または活性は、医薬組成物の投与による影響を受けない。一部の実施形態において、がんは、1種以上の化学療法剤に対して耐性である。一部の実施形態において、がんは、肺がんであり;一部の実施形態において、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)であり;一部の実施形態において、NSCLCは、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である。一部の実施形態において、本方法は、1種以上の化学療法剤を対象に投与することをさらに含み;一部の実施形態において、1種以上の化学療法剤は、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、およびそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態において、医薬組成物は、医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、がんの細胞の増殖を低減させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、がんの細胞の増殖を低減させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される。一部の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0021】
他の目的および利点は、以下に記載の詳細な説明を参照すれば当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】CRISPR設計およびNRF2ノックアウト実験ワークフローを示す図である。6つの既知の遺伝子アイソフォームを含有するNRF2コード領域をCRISPR/Cas9による標的化のために利用した。gRNA配列を、それらの染色体座およびクローニングの詳細と共に示す(A)。NRF2タンパク質のCRISPR指向遺伝子編集の構造ドメインおよび位置(B)。標的化集団ならびに単離され、増殖されたクローン細胞株におけるNRF2のCRISPR/Cas9ノックアウトの効果を試験するための実験ワークフロー(C)。
図1B図1Aの続きである。
図1C図1Bの続きである。
図2A】NRF2ノックアウトクローンのゲノム解析を示す図である。gRNA1またはgRNA2のいずれかをトランスフェクトしたバルク選別したGFP+ A549細胞をサンガー配列決定し、TIDEによるインデル活性について解析した(A)。クローン的に単離したNRF2を標的とした細胞を、CRISPR/Cas9誘導NHEJ活性についてゲノム的に解析した。ゲノムDNAをサンガー配列決定し、TIDEを使用して、クローン1~40および2~11に示されるように、NRF2のインデルスペクトル、配列分解および対立遺伝子パターンを開発した(B)。
図2B図2Aの続きである。
図3A】NRF2ノックアウトA549細胞の細胞増殖プロファイルおよびウェスタンブロット解析を示す図である。細胞をエタノールで72時間固定し、Alexa Fluor 647 Anti-Ki67で染色した。蛍光活性化細胞分類(FACS)を使用してKi67染色細胞の強度を捕捉し、FlowJoソフトウェアを使用してヒストグラムとしてプロットした(左パネル)(A)。細胞増殖をホルマザン生成物へのMTSの生物還元により測定し、平均生吸光度値としてプロットし(右パネル)、エラーバーは±SEMを表す(A)。リン酸化NRF2に対する抗体を使用した野生型A549細胞およびNRF2ノックアウト2~11細胞のウェスタンブロット解析(B)。
図3B図3Aの続きである。
図4】化学療法薬に応答する野生型およびNRF2改変A549細胞(2~11)の増殖能を示す図である。ホルマザン生成物へのMTSの生物還元により増殖を測定した。漸増投薬量のシスプラチン(A)および漸増投薬量のシスプラチンと5μMのビノレルビン(B)で細胞を72時間処理し、次いで細胞増殖を評価した。エラーバーは±SEMを表す。
図5A】腫瘍内でNRF2ノックアウトを伴うマウスにおける回復した化学感度を示す図である。マウス異種移植の実験ワークフロー。無胸腺ヌードマウスに、野生型A549細胞またはNRF2ノックアウトA549細胞のいずれかを皮下注射し、腫瘍が100mm3に達することを確立したら、0日目に化学療法剤の初回投与で処置した。その後、3、6、9日目にマウスを化学療法剤で処置した。腫瘍が2000mm3に達するまで腫瘍体積を16日間毎日測定した(A)。野生型A549またはNRF2ノックアウトA549腫瘍を、2mg/kgのシスプラチン(B)、5mg/kgのシスプラチンと5mg/kgのビノレルビン(C)、25mg/kgのカルボプラチン(D)、または生理食塩水のいずれかで処置し、腫瘍サイズを16日間測定した。エラーバーは±SEMを表す。腫瘍(2mg/kgのシスプラチンまたは生理食塩水で処置した)を、野生型A549およびNRF2ノックアウトA549(2~11)移植マウスの両方から摘出した。各群からの代表的な腫瘍を示す(n=3)(E)。
図5B図5Aの続きである。
図5C図5Bの続きである。
図5D図5Cの続きである。
図5E図5Dの続きである。
図6】異種移植腫瘍の増殖を示す図である。2mg/kgシスプラチンまたは生理食塩水のいずれかの初期の処置から16日後の野生型A549またはNRF2ノックアウトA549細胞(2~11)のいずれかを移植したマウスから摘出された異種移植腫瘍の代表的な画像を分割し、Ki67(緑)およびDAPI(青)で染色した。DAPIおよびKi67についての蛍光強度平均値を、Zeiss Zenソフトウェアを使用して画像について取得し、相対値をKi67の蛍光強度について取得した。スケールバーは100μmを表す。
図7A】野生型A549細胞およびクローン2-11におけるNRF2のシスプラチン誘導性核および細胞質局在化を示す図である。細胞を2μMシスプラチンで処理し、固定し、NRF2を染色した。蛍光顕微鏡を使用して免疫細胞化学を実施した。ランダムフィールドを画像化し、細胞/フィールドの総数をカウントした。各カテゴリーで解析した全細胞に対するNRF2陽性染色細胞のパーセントをこのグラフにプロットした。エラーバーは±SEMを表し、*は、0.05未満である有意なp値を示す(スチューデントのt検定)(A)。野生型A549およびNRF2ノックアウトA549(2-11)におけるNRF2の核および細胞質局在化の代表的な画像(B)。スケールバーは50μmを表す。
図7B図7Aの続きである。
図8】NRF2のエクソン4における103塩基を切断するために2つのCRISPRプラスミド構築物を使用したクローン解析を示す図である。上側パネルは、Bialkら、Mol. Ther. - Oncolytics 11、75-89 (2018)によって設計され、使用されたgRNA1およびgRNA2の構造ドメインおよび標的領域を示す。下側パネルは、蛍光活性化単一細胞選別(FACS)によって回収された様々なクローンの遺伝子解析を示す。緑色の配列は野生型配列を示し、赤色で強調された塩基は終止コドンをもたらすフレームシフトを示す。
図9】CRISPR/Cas9標的化細胞の集団配列解析を示す図である。gRNA 5' TGGATTTGATTGACATACTTTGG 3'(配列番号13)を使用してエクソン2におけるNeh2ドメインを標的とするRNP複合体をA549細胞株にトランスフェクトした。トランスフェクションの1、4、8、12、24、48時間後に細胞を収集した。DNAを単離し、配列決定し(NRF2のエクソン2にわたって)、Tracking of Indels by DEcomposition)(TIDE)を使用して解析した。インデル効率(%)を図に示す。
図10】CRISPR/Cas12a標的化細胞の集団配列解析を示す図である。gRNA 5' TTTGATTGACATACTTTGGAGGCAA 3'を使用してエクソン2におけるNeh2ドメインを標的とするRNP複合体をA549細胞株にトランスフェクトした。細胞をトランスフェクションの1、4、8、12、24、48時間後に収集した。DNAを単離し、配列決定し(NRF2のエクソン2にわたって)、TIDEを使用して解析した。インデル効率(%)を図に示す。
図11】肺腫瘍DNA配列のCRISPR標的認識を示す図である。R34G突然変異を標的とするgRNAを使用して、in vitro切断反応をCRISPR/Cas9 RNP複合体で実行した。反応には、R34G突然変異を含有するNRF2発現プラスミドの切断の試験および発現プラスミドからの長い901塩基対のアンプリコンの使用が含まれた。どちらの場合も、R34G RNPが、存在する突然変異のみを認識し、切断し、これにより新たなPAM部位が生じる。
図12】様々な長さのR34G sgRNAを使用してオフ標的を評価するための概略図および実験設計を示す図である。PAM部位としてR34G突然変異を使用して5つのsgRNAを設計して、オン標的およびオフ標的のインデル効率を評価した。この図は、CRISPR/Cas9複合化、肺がん細胞株のトランスフェクション、試料収集および解析を含む実験設計の概要を示す。
図13】様々な長さのR34G sgRNA - 複製1のインデル効率についてのTIDEによる遺伝子解析を示す図である。複合体化CRISPR/Cas9 RNP(250pmol sgRNA対50pmol Cas9)をH1703親細胞株にトランスフェクトした。72時間の回復時間の後、各R34G sgRNAの長さの試料をゲノムDNA単離、PCR増幅、サンガー配列決定およびTIDE解析のために収集した。この図は複製1のTIDEによる遺伝子解析を示す。
図14】様々な長さのR34G sgRNA - 複製2のインデル効率についてのTIDEによる遺伝子解析を示す図である。複合体化CRISPR/Cas9 RNP(250pmol sgRNA対50pmol Cas9)をH1703親細胞株にトランスフェクトした。72時間の回復時間の後、各R34G sgRNAの長さの試料をゲノムDNA単離、PCR増幅、サンガー配列決定およびTIDE解析のために収集した。この図は複製2のTIDEによる遺伝子解析を示す。
図15】オン標的解析の要約を示す図である。図に示される表は、各複製の各実験からの合計インデル効率(切断として示される)をまとめたものである。「切断なし」の列は、対照試料に対して整列された配列のパーセンテージを指す。
図16】A549エクソン(Neh2)KOクローンのDECODRによるインデルデコンボリューションを示す図である。単一gRNAを使用して、エクソンの開始から78bp下流のNeh2ドメインをコードするエクソン2を標的とした。3つのクローン、1-17、2-16、2-23をクローン的に増殖させ、DECODRツールを使用してインデル効率について解析した。クローン1-17は、NRF2遺伝子のエクソン2における切断部位に-2、-2、-13bpの欠失を含む。クローン2-16は、切断部位における全ての対立遺伝子にわたって-1bpの欠失を含む。クローン2-23は2つの野生型対立遺伝子を含み、別の対立遺伝子は切断部位に-2bpの欠失を含む。
図17】シスプラチンで処理したA549 Neh2 KOクローンを使用してMTSによって測定した相対的な細胞増殖の散布図を示す図である。この図は、同じ実験手順を使用して行った2つの別々の実験からのMTSアッセイからのコンパイルしたデータを含む。各クローン由来の細胞株(クローン1-17、2-16、2-23)を4連でプレーティングし、漸増濃度のシスプラチン(1、2、3、5、10μM)で処理した。全ての吸光度値を正規化し、各濃度値について平均化し、両方の複製にわたってクローニングし、次いでグラフ化した。エラーバーは、グラフの下の表に示されるように±SEMを表す。
図18】シスプラチンで処理したA549 Neh2 KOクローンを使用してMTSによって測定した相対的な細胞増殖の棒グラフを示す図である。この図は、同じ実験手順を使用して行った2つの別々の実験からのMTSアッセイからのコンパイルしたデータを示す。各クローン由来の細胞株(クローン1-17、2-16、2-23)を4連でプレーティングし、漸増濃度のシスプラチン(1、2、3、5、10uM)で処理した。全ての吸光度値を正規化し、各濃度値について平均化し、両方の複製にわたってクローニングし、次いでグラフ化した。エラーバーは、グラフの下の表に示されるように±SEMを表す。
図19】報告され、特徴付けられたNRF2突然変異の一覧を示す図である。NRF2突然変異は主にタンパク質のNeh2ドメインに見られ、遺伝子のエクソン2に見出される。各突然変異についての塩基の変化は赤色の文字である。Cas9認識のための新たなPAM部位を生じる突然変異はマゼンタ色で示される。他の報告された突然変異は緑色で示される。
図20】NRF2の構造ドメインおよび選択的標的化を示す図である。R34G突然変異は、NRF2タンパク質のNeh2ドメインをコードする、NRF2遺伝子のエクソン2において発生し、上側のパネルに示される。下側のパネルは、R34G突然変異(TCG→TGG)による新たなCRISPR/Cas9 PAM部位の生成の概略を示す。
図21】NRF2発現プラスミドにおけるR34G突然変異の再現を示す図である。NRF2発現プラスミド(pcDNA3-EGFP-C4-NRF2、Addgene)を、2つのCRISPR/Cas12a切断部位および二重オリゴヌクレオチドと共にCRISPR指向突然変異誘発を使用してR34G突然変異を含むように突然変異させた。
図22】CRISPR/Cas9切断部位としてR34G突然変異を使用したin vitro切断反応の概念実証を示す図である。野生型(WT NRF2)および突然変異型(R34G NRF2)のNRF2発現プラスミドのアンプリコンを切断反応のために使用し、ゲル電気泳動によって可視化した。レーン1および5は、緩衝剤のみ(陰性対照)とインキュベートしたアンプリコンである。レーン2および5は、非特異的RNP(HBB RNP)とインキュベートしたアンプリコンである。レーン3および6は、R34G RNPとインキュベートしたアンプリコンである。赤色のバーは、非切断アンプリコン(901bp)および切断産物(222bp)のサイズを示す。
図23】A549およびH1703親細胞株ならびにA549 R34G突然変異細胞株のNRF2配列解析を示す図である。各細胞株からのゲノムDNAをサンガー配列決定し、Neh2ドメイン(エクソン2)における突然変異について解析した。A549およびH1703親細胞株は野生型配列を含み、一方、A549 R34G-6クローンは、赤色の矢印によって示されるヘテロ接合性R34G突然変異を含む。
図24】種々の濃度のR34G RNPによる野生型およびR34G突然変異NRF2アンプリコンのin vitro切断反応を示す図である。A549親およびR34G-6細胞からのNRF2アンプリコンを、漸増濃度のR34G RNPとインキュベートし、ゲル電気泳動によって可視化した。レーン1および6は、緩衝剤のみとインキュベートしたNRF2アンプリコンである。レーン2~5は、R34G RNPとインキュベートした野生型NRF2アンプリコンである。レーン7~10は、R34G RNPとインキュベートしたR34G突然変異NRF2アンプリコンである。赤色のバーは、非切断アンプリコン(530bp)および切断産物(145および385bp)のサイズを示す。
図25】種々の濃度のNeh2標的化RNPおよびR34G標的化RNPによる野生型およびR34G突然変異NRF2アンプリコンのin vitro切断反応を示す図である。A549親およびR34G-6細胞からのNRF2アンプリコンを、遺伝子のエクソン2内の天然部位を標的とするRNP(Neh2と標識した)または突然変異細胞にのみ存在するR34G突然変異のいずれかとインキュベートした。漸増濃度のそれぞれのRNPをNRF2アンプリコンとインキュベートし、ゲル電気泳動によって可視化した。レーン1、5、9および13は、緩衝剤のみとインキュベートしたNRF2アンプリコンである。レーン2~4および10~12は、Neh2標的化RNPとインキュベートしたNRF2アンプリコンである。非切断アンプリコンは530bpで可視化され、切断産物は116および414bpで可視化される。レーン6~8および14~16は、R34G標的化RNPとインキュベートしたNRF2アンプリコンである。非切断アンプリコンは530bpで可視化され、切断産物は145および385bpで可視化される。
図26】種々の濃度のR34G RNPによる野生型およびR34G突然変異NRF2アンプリコンを使用したin vitro切断反応を示す図である。A549親、H1703親およびA549 R34G-6細胞からのNRF2アンプリコンを、1および5pmolのR34G RNPとインキュベートし、ゲル電気泳動によって可視化した。レーン1、4および7は、緩衝剤のみとインキュベートしたNRF2アンプリコンである。レーン2、3および5、6は、R34G RNPとインキュベートした野生型NRF2アンプリコンである。レーン8および9は、R34G RNPとインキュベートしたR34G突然変異NRF2アンプリコンである。赤色のバー(ラダーの右側)は、非切断アンプリコン(530bp)および切断産物(145および385bp)のサイズを示す。
図27】A549親細胞におけるR34G標的化RNP活性の遺伝子解析を示す図である。遺伝子編集活性の尺度としてTIDE解析によってゲノムDNAを解析した。上側のパネルは、バルクの非選別集団のインデル効率および配列アラインメントを示す。合計インデル効率11.4%であり、ピンク色のバーによって示される1つの統計的に有意な欠失が存在するが、挿入および欠失の残りは統計的に有意ではないとみなされる(黒色のバー-p値>0.001)。中央のパネルは、バルクのGFP陽性選別集団からの3.0%の合計インデル効率を示し、統計的に有意ではない挿入または欠失のみが存在する。下側のパネルは、バルクのGFP陽性選別集団からの11.3%の合計インデル効率を示し、1つの統計的に有意な挿入が存在する。
図28】A549 R34G突然変異クローン細胞株(A549 R34G-6)におけるR34G標的化RNP活性の遺伝子解析を示す図である。TIDE解析によってゲノムDNAを解析した。上側のパネルは、バルクの非選別集団のインデル効率および配列アラインメントを示し、合計インデル効率は34.2%であり、いくつかの有意ではない欠失と共に統計的に有意な挿入(+1bp)および欠失(-9bp)が存在する。中央のパネルは、バルクのGFP陽性選別集団からの55.7%の合計インデル効率を示し、いくつかの統計的に有意な挿入および欠失ならびに有意ではない欠失が存在する。下側のパネルは、バルクのGFP陽性選別集団からの32.7%の合計インデル効率を示し、有意および有意ではない両方の挿入および欠失が存在する。
図29】H1703親細胞株におけるR34G標的化RNPのトランスフェクション後の遺伝子解析を示す図である。ゲノムDNAはTIDE解析によった。上側のパネルは、バルクの非選別集団からの0.0%の合計インデル効率を示す。下側のパネルは、バルクのGFP選別集団からの4.6%の合計インデル効率を示し、有意ではないインデルのみが存在する。
図30】H1703 NRF2 KOクローン由来細胞株の遺伝子解析を示す図である。エクソン2 gRNA3およびR34G ssDNAテンプレートをH1703細胞株にトランスフェクトした。細胞を増殖させ、解析した。いくつかのNRF2 KOクローンをさらなる特徴付けのために選択した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この開示は、化学療法耐性A549肺がん細胞におけるCRISPR/Cas9を使用したNRF2遺伝子のノックアウトの成功は、がん細胞の増殖を減少させ、in vitroの培養と異種移植片マウスモデルの両方において抗がん薬であるシスプラチン、カルボプラチンおよびビノレルビンの有効性を増加させたという発見に少なくとも部分的に基づいている。全体的な戦略は、CRISPR/Cas遺伝子編集ツールを設計し、それを利用して、がん細胞においてNRF2遺伝子を無力化して、それが機能性タンパク質を生産できなくすることであった。CRISPR/Cas9複合体は、標的遺伝子との相同域とアライメントされることで、それが二本鎖DNA破断を実行することを可能にする。この作用に続いて、ほとんどの場合、非相同末端結合(NHEJ)として公知のプロセスを介して切断部分を再び閉じることが細胞によって試みられる。再び閉じることは、プロセス中にいくつかのヌクレオチドが失われ、結果として遺伝学的なフレームシフト、それに続いて機能を有さない転写物の生産、NRF2の遺伝子ノックアウトを引き起こすため、不完全であり忠実ではないことが多い。
【0024】
本明細書に記載される組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)およびNRF2遺伝子に相補的なガイドRNA(例えばNRF2遺伝子のエクソン1、2、3、4、または5)をコードする核酸を含む。ガイドRNAおよびCRISPR関連エンドヌクレアーゼを含む組成物、加えてがんの処置のために組成物を対象に投与する方法も記載される。
【0025】
一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出され、正常(すなわち、非がん性)細胞における野生型NRF2遺伝子では見出されないバリアントNRF2遺伝子(例えばエクソン1、2、3、4、または5)に相補的である。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子のエクソン2における配列に相補的である。
【0026】
定義
出願人はこの開示で引用された全ての参考文献の内容全体を具体的に組み込む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが範囲または上限値と下限値の列挙のいずれかとして示される場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく、いずれかの上の範囲限定または値といずれかの下の範囲限定または値とのいずれかの対から形成される全ての範囲を具体的に開示するとして理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、別段の指定がない限り、その範囲は、その端点、ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。範囲を定義する場合、本発明の開示の範囲が、列挙された具体的な値に限定されることは意図されない。
【0027】
不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書で使用される場合、明細書および特許請求の範囲において、そうではないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つの」を意味するものとして理解されるべきである。
【0028】
語句「および/または」は、本明細書で使用される場合、明細書および特許請求の範囲において、それによって連結された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、一部のケースでは接続的に存在する要素、および他のケースでは離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味するものとして理解されるべきである。他の要素は、任意選択で、そうではないことが明確に示されない限り、具体的に関連付けられたこれらの要素に関連するかまたは関連しないかに関わらず、「および/または」節で具体的に関連付けられた要素以外のものが存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と共に使用される場合、一実施形態において、Aを含むがBを含まないこと(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態において、Bを含むがAを含まないこと(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AとBの両方であること(任意選択で他の要素を含む)などを指すことができる。
【0029】
本明細書で使用される場合、明細書および特許請求の範囲において、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、列挙中の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的であるとして解釈されるものとし、すなわち、要素の数または列挙のうち少なくとも1つだけでなく、それらの1つより多く、および任意選択で追加の列挙されていない項目も含むと解釈されるものとする。そうではないことが明らかに示された用語のみ、例えば「のうち1つのみ」または「のうち正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合は「からなる」は、要素の数または列挙のうちの正確に1つの要素の包含を指すことになる。一般的に、用語「または」は、本明細書で使用される場合、排他性を有する用語、「~のいずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうち1つのみ」、「~のうち正確に1つ」の後に続く場合のみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方、ただし両方ではない」)を示すものとして解釈されることとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるようにその通常の意味を有するものとする。
【0030】
用語「約」は、本明細書で使用されるように、例えば量、時間経過などの測定可能な値を指す場合、特定された値からの±20%、±10%、±5%、±1%、または±0.1%の変動を包含し、このような変動は開示された方法を実行するのに適切であることが意図される。
【0031】
「クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメイン」または「Cas結合ドメイン」は、有効量で、1つ以上のCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(またはその機能的な断片)と結合するかまたはそれに対する親和性を有する、核酸配列またはポリヌクレオチド配列内の核酸エレメントまたはドメインを指す。一部の実施形態において、1つ以上のタンパク質(またはその機能的な断片)および標的配列の存在下で、1つ以上のタンパク質および核酸エレメントは、生物学的に活性なCRISPR複合体を形成するか、および/または標的配列において酵素的に活性であり得る。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、クラス1またはクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであり、一部の実施形態において、Cas9またはCas12aエンドヌクレアーゼである。Cas9エンドヌクレアーゼは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)の配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、他の種由来の配列であってもよく、例えば他の連鎖球菌属種、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus);緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、または他のシーケンシングされた細菌ゲノムおよび古細菌、または他の原核性の微生物由来の配列であってもよい。このような種としては、アシドボラックス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)、放線菌属種、シクリフィルス・デニトリフィカンス(Cycliphilusdenitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミチイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス属種、ブラストピレルラ・マリーナ(Blastopirellula marina)、ブラジリゾビウム属種、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンジダトス・プニセイスピリルム(Candidatus puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム・マツルショッティ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユーバクテリウム・ドリクム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトルム(Haemophilus sputorum)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロパス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア科細菌(Listeriaceae bacterium)、メチロシスティス属種、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラベッセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ナイセリア属種、ナイセリア・ワズワージイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス属種、パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラークトバクテリウム・スクシナテュテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、
ラルストニア・シジジイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム属種、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス属種、スポロラクトバチルス・ビネア(Sporolactobacillus vineae)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、連鎖球菌属種、サブドリグラヌラム属(Subdoligranulum)種、チストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ属種、およびベルミネフロバクター・エイセニエ(Verminephrobacter eiseniae)(または前述のCas9エンドヌクレアーゼのいずれかと、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、前述の配列のいずれかの機能的な断片またはバリアント)が挙げられる。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼであってもよい。Cas12aヌクレアーゼは、野生型プレボテラ属またはフランキセラ属の配列と同一なヌクレオチド配列(または前述のCas12エンドヌクレアーゼのいずれかと、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、前述の配列のいずれかの機能的な断片もしくはバリアント)を有していてもよい。
【0032】
一部の実施形態において、用語「(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメイン」または「Cas結合ドメイン」は、有効量で、1つ以上のCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(またはCRISPR関連エンドヌクレアーゼに、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同な、その機能的な断片もしくはバリアント)に結合するかまたはそれへの親和性を有する核酸配列内の核酸エレメントまたはドメイン(例えばおよびRNAエレメントもしくはドメイン)を指す。一部の実施形態において、Cas結合ドメインは、少なくとも、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、もしくは250ヌクレオチド、またはそれら以下のヌクレオチドからなり、CRISPRシステム形成に好適な濃度、微環境内で、生物学的に活性なCRISPR関連エンドヌクレアーゼに部分的に会合または結合するヘアピンまたは二重鎖を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0033】
「クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)-CRISPR関連(Cas)(CRISPR-Cas)システムガイドRNA」または「CRISPR-CasシステムガイドRNA」は、転写ターミネータードメインを含んでいてもよい。用語「転写ターミネータードメイン」は、1つ以上のタンパク質(またはその機能的な断片)の存在下で、1つ以上のCasタンパク質および核酸エレメントが、生物学的に活性なCRISPR複合体を形成するか、および/またはこのような標的配列およびDNA結合ドメインの存在下で、標的配列において酵素的に活性であり得るように、CRISPR複合体が細菌種中にあるとき、および/または1つ以上のCasタンパク質(またはその機能的な断片)への核酸配列の会合を安定化させる二次構造を作り出すとき、有効量で、細菌での転写を防止する核酸配列(またはポリヌクレオチド配列)内の核酸エレメントまたはドメインを指す。一部の実施形態において、転写ターミネータードメインは、少なくとも、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、もしくは250ヌクレオチド、またはそれら以下のヌクレオチドからなり、CRISPR複合体形成に好適な濃度および微環境で、生物学的に活性なCRISPR複合体への核酸配列(sgRNA、tracrRNAを有するcrRNA、または他の核酸配列)の会合を部分的に促進するヘアピンまたは二重鎖を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0034】
用語「DNA結合ドメイン」は、標的配列(例えばNRF2遺伝子)に相補的な核酸配列(例えばガイドRNA)内の核酸エレメントまたはドメインを指す。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、生物学的に活性なCRISPR複合体の存在下で、1つ以上のCasタンパク質が、標的配列において酵素的に活性であり得るように、NRF2遺伝子と結合するかまたはそれへの親和性を有する。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、CRISPRシステム形成に好適な濃度および微環境で、生物学的に活性なCRISPRシステムの一部として標的配列とワトソンクリック塩基対を形成することが可能な少なくとも1つの配列を含む。
【0035】
「CRISPRシステム」は、集合的に、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するかまたはその活性を方向付ける、転写物または合成的に生産された転写物および他のエレメントを指し、Cas遺伝子、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNAまたは活性な部分的なtracrRNA)、tracr-mate配列(「ダイレクトリピート」および内因性CRISPRシステムの文脈ではtracrRNAプロセシングされた部分的なダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムの文脈では「スペーサー」とも称される)、またはCRISPR遺伝子座からの他の配列および転写物をコードする配列を含む。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントは、タイプI、タイプII、またはタイプIII CRISPRシステムから誘導される。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントは、内因性CRISPRシステムを含む特定の生物、例えばストレプトコッカス・ピオゲネスから誘導される。一般的に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でCRISPR複合体の形成を促進するエレメント(内因性CRISPRシステムの文脈ではプロトスペーサーとも称される)を特徴とする。CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的配列」は、ガイド配列がそれと相補性を有するように設計される核酸配列を指し、この場合、標的配列とガイド配列とのハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを生じさせ、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。標的配列は、あらゆるポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNAポリヌクレオチドを含んでいてもよい。一部の実施形態において、標的配列は、DNAポリヌクレオチドであり、DNA標的配列と称される。一部の実施形態において、標的配列は、Casタンパク質が、このようなシステムの会合に好適な濃度および微環境内で、CRISPR複合体、または少なくとも1つのsgRNAもしくは1つのtracrRNA/crRNA二重鎖を含むシステムに会合するときCas-タンパク質によって認識される少なくとも3つの核酸配列を含む。一部の実施形態において、標的DNAは、少なくとも
1つの、またはそれより多くのプロトスペーサー隣接モチーフを含み、その配列は、当業界において公知であり、この研究で採用されたsgRNAまたはcrRNA/tracrRNAと共に使用されているCasタンパク質システムに依存する。一部の実施形態において、標的DNAは、NNGを含み、式中、Gはグアニンであり、Nはあらゆる天然に存在する核酸である。一部の実施形態において、標的DNAは、NNG、NNA、GAA、NNAGAAWおよびNGGNGのいずれか1つまたは組合せを含み、式中、Gはグアニンであり、Aはアデニンであり、Nは、あらゆる天然に存在する核酸である。
【0036】
一部の実施形態において、標的配列は、細胞の核または細胞質中に配置される。
【0037】
典型的には、内因性CRISPRシステムの文脈では、CRISPR複合体の形成(標的配列にハイブリダイズし、1つ以上のCasタンパク質と複合体化したガイド配列を含む)は、標的配列中で、またはその近くで(例えば、標的配列から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、またはそれより多くの塩基対内で)一方または両方の鎖の切断をもたらす。理論に制限されることは望まないが、tracr配列は、野生型tracr配列の全部または一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはそれより多くのヌクレオチド、またはそれより多く)を含んでいてもよく、またはそれからなっていてもよく、例えば、少なくともtracr配列の部分に沿って、ガイド配列に作動可能に連結されたtracr mate配列の全部または一部へのハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の一部を形成していてもよい。一部の実施形態において、tracr配列は、ハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成に参加するのに十分なtracr mate配列への相補性を有する。標的配列の場合も同様に、機能的であるのに(Casタンパク質またはその機能的な断片と結合するのに)十分であれば、完全な相補性は必要ないと考えられる。一部の実施形態において、tracr配列は、最適にアライメントされる場合、tracr mate配列の長さに沿って、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相補性を有する。一部の実施形態において、CRISPRシステムの1つ以上のエレメントの発現を促進する1つ以上のベクターは、CRISPRシステムのエレメントの存在および/または発現が、1つ以上の標的部位でCRISPR複合体の形成を指示するように宿主細胞に導入される。例えば、Cas酵素、tracr-mate配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列は、それぞれ別々のベクター上の別々の調節エレメントに作動可能に連結していてもよい。代替として、同一または異なる調節エレメントから発現されるエレメントの2つまたはそれより多くは、単一のベクターに組み合わされていてもよく、1つ以上の追加のベクターが、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムのいずれかの要素を提供する。一部の実施形態において、この開示によって予期される改変の少なくとも一部を用いて、CRISPR複合体を形成するガイド配列またはRNAもしくはDNA配列は、少なくとも部分的に合成である。単一のベクターに組み合わされたCRISPRシステムエレメントは、あらゆる好適な方向で整列されていてもよく、例えば1つのエレメントが、第2のエレメントに対して5'(第2のエレメントの「上流」)に、または第2のエレメントに対して3'(第2のエレメントの「下流」)に配置される。一部の実施形態において、本開示は、化学的に合成されたガイド配列を含む組成物に関する。一部の実施形態において、化学的に合成されたガイド配列は、CRISPR酵素、例えばクラス2 Cas9またはCas12aタンパク質をコードするコード配列を含むベクターと共に使用される。一部の実施形態において、化学的に合成されたガイド配列は、1つ以上のベクターと共に使用され、各ベクターは、CRISPR酵素、例えばクラス2 Cas9またはCas12aタンパク質をコードするコード配列を含む。1つのエレメントのコード配列は、第2のエレメントのコード配列の同じ鎖または逆の鎖に配置されていてもよく、同じ方向または逆の方向に向けられていてもよい。一部の実施形態において、単一のプロモーターは、CRISPR酵素、ならびに1つ以上の追加の(第2、第3、第4などの)ガイド配列、tracr mate配列(任意選択でガイド配列に作動可能に連結した)、および1つ以上のイントロン配列内に埋め込まれたtracr配列(例えばそれぞれが異なるイントロン中に、少なくとも1つのイントロン中に2つまたはそれより多く、または全て単一のイントロン中に)をコードする転写物の発現を促進する。一部の実施形態において、CRISPR酵素、1つ以上の追加のガイド配列、tracr mate配列、およびtracr配列は、それぞれ異なる核酸配列の要素である。
例えば、tracrおよびtracr mate配列のケースにおいて、一部の実施形態において、本開示は、少なくとも第1および第2の核酸配列を含む組成物であって、第1の核酸配列はtracr配列を含み、第2の核酸配列はtracr mate配列を含み、二重鎖の第1および第2の核酸が、さらに、第1の核酸と第2の核酸がそれぞれ個々に、または集合的に、DNA標的化ドメイン、Casタンパク質結合ドメイン、および転写ターミネータードメインを含むように、第1の核酸配列が少なくとも部分的に第2の核酸配列に相補的である、組成物に関する。一部の実施形態において、CRISPR酵素、1つ以上の追加のガイド配列、tracr mate配列、およびtracr配列は、同じプロモーターに作動可能に連結され、それから発現される。一部の実施形態において、本開示は、1つのガイド配列または2つの別々のtracrRNA/crRNA配列上に、開示された改変を含む、または含まない開示されたドメインのいずれか1つまたは組合せを含む組成物に関する。本明細書で開示されるあらゆる方法はまた、組成物が、本明細書で開示される改変されたドメインのいずれか1つまたは組合せと共に単一の合成ガイド配列および/または合成tracrRNA/crRNAを含み得るように、ガイド配列の使用と交換可能なtracrRNA/crRNA配列の使用にも関する。
【0038】
一部の実施形態において、ガイドRNAは、短い合成のキメラtracrRNA/crRNA(「単一ガイドRNA」または「sgRNA」)であってもよい。ガイドRNAはまた、2つの短い合成のtracrRNA/crRNA(「デュアルガイドRNA」または「dgRNA」)を含んでいてもよい。
【0039】
用語「がん」または「腫瘍」は当業界において周知であり、制御不能な増殖、不死、転移能、急速な成長および増殖速度、細胞死/アポトーシスの減少、および特定の特徴的な形態学的特色などの発がん性細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在、例えば対象におけるそのような存在を指す。
【0040】
「がん」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫および肉腫などの、ヒトに見出される全てのタイプのがんまたは新生物または悪性腫瘍を指す。用語または言語「がん」、「新生物」、および「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、同義的に、さらに単数形または複数形の形態のいずれかで使用され、宿主生物にとってそれを病的にする悪性転換を経た細胞を指す。原発性がん細胞(すなわち、悪性転換部位の近くから得られた細胞)は、十分に確立された技術、特に組織学的検査によって非がん性細胞と容易に区別することができる。がん細胞の定義は、本明細書で使用される場合、原発性がん細胞だけでなく、がん幹細胞、加えて、がん前駆細胞またはがん細胞祖先由来のあらゆる細胞も含む。これは、転移したがん細胞、およびin vitroにおけるがん細胞由来の培養物および細胞株を含む。特定の実施形態において、がんは、血腫(すなわち、非固形腫瘍)である。一部の実施形態において、がんは、リンパ系腫瘍びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胆管細胞癌、子宮癌肉腫、嫌色素性腎(kidney chromophobe)、ブドウ膜黒色腫、中皮腫、副腎皮質癌、胸腺腫、急性骨髄性白血病、精巣胚細胞腫瘍、直腸腺癌、膵臓腺癌、クロム親和性細胞腫(phenochromocytoma)およびパラガングリオーマ、食道癌、肉腫、腎臓の乳頭状腎細胞癌、子宮頸部扁平上皮癌および子宮頸管腺癌、腎臓の腎明細胞癌、肝臓の肝細胞癌、多形性膠芽腫、膀胱の尿路上皮癌、結腸腺癌、胃腺癌、卵巣の漿液性嚢胞腺癌、皮膚の皮膚黒色腫、前立腺腺癌、甲状腺癌、肺扁平上皮癌、頭頸部扁平上皮癌、脳の低悪性度神経膠腫、子宮体部の子宮内膜癌、肺腺癌、または浸潤性乳癌である(例えば、Kerinsら、Sci. Rep. 8:12846 (2018)を参照)。
【0041】
特定の実施形態において、がんは、固形腫瘍である。「固形腫瘍」は、例えば、CATスキャン、磁気共鳴映像法、X線、超音波または触診などの手順によって、腫瘍体積に基づき検出可能な腫瘍であるか;および/または患者から入手可能なサンプル中での1つ以上のがん特異的抗原の発現のために検出可能な腫瘍である。腫瘍は、必ずしも測定可能な寸法を有していなくてもよい。
【0042】
がんの病期分類の具体的な基準は、腫瘍サイズ、組織学的な特徴、腫瘍マーカー、および当業者公知の他の基準に基づき、具体的ながんのタイプに依存する。一般的に、がんステージは、以下のように説明することができる:
ステージ0 - 上皮内癌。
ステージI、ステージII、およびステージIII - 数値が高いほど、疾患の範囲がより大きくなること:より大きい腫瘍サイズを示すか、および/またはすぐ近くのリンパ節および/もしくは組織または原発性腫瘍の位置に隣接する臓器まで発達する臓器を超えたがんの拡がりを示す。
ステージIV - がんが、遠位の組織または臓器に拡がっている。
【0043】
「バリアント」、「突然変異体」、または「変異」ポリヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、対応する野生型または親ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列と比較した場合の、少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の変更を含有する。突然変異は、天然、計画的、または偶発的であってもよい。突然変異としては、置換、欠失、および挿入が挙げられる。
【0044】
用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、疾患または状態の1つ以上の兆候または症状の軽減または緩和(例えば、寛解、部分寛解または完全寛解)、疾患の程度を小さくすること、疾患の状況の安定性(すなわち、悪化しないこと、安定疾患を達成すること)、病態の緩和または一時的緩和、進行速度または進行までの時間を小さくすること、および寛解(部分寛解かまたは全寛解かにかかわらず)などの、有益な、または望ましい臨床結果を得るための動作を指す。がんの「処置」はまた、処置が行われない場合に期待される生存と比較して生存を引き延ばすことを意味する場合もある。処置は、必ずしも治癒的でなくてもよい。特定の実施形態において、処置は、資格を有するもの、例えば処置する医師によって、例えば容認された疼痛およびQOLの評価ツールを使用して判断した場合の、疼痛の減少または生活の質(QOL)の増加の1つ以上を含む。特定の実施形態において、資格を有するもの、例えば処置する医師によって、例えば容認された疼痛およびQOLの評価ツールを使用して判断した場合の、疼痛の減少またはQOLの増加は、がんの「処置」であるとはみなされない。
【0045】
「化学療法剤」は、がんの処置のために使用される薬物を指す。化学療法剤としては、これらに限定されないが、小分子、ホルモンおよびホルモンアナログ、ならびに生物製剤(例えば、抗体、ペプチド薬物、核酸薬物)が挙げられる。特定の実施形態において、化学療法は、ホルモンおよびホルモンアナログを含まない。
【0046】
「1種以上の化学療法剤に対して耐性であるがん」は、化学療法レジメンを用いた処置に応答しない、または応答しなくなったがんであり、すなわち、化学療法レジメンの間またはその終了後のいずれかに標的病変において少なくとも安定疾患(すなわち、安定疾患、部分奏効、または完全奏効)を達成しないがんである。1種以上の化学療法剤に対する耐性は、例えば、腫瘍成長、腫瘍負荷量の増加、および/または腫瘍転移を引き起こす。
【0047】
「治療有効量」は、必要な投薬量および期間で、例えば疾患(例えばがん)、状態、または障害を処置に関する望ましい治療結果、および/または対象における処置の薬物動態学的または薬力学的効果を達成するのに十分な量である。治療有効量は、1回以上の投与で投与することができる。治療有効量は、対象の病態、年齢、性別、および体重などの要因に従って変更することができる。
【0048】
NRF2
核内因子赤血球2関連因子(NRF2)は、酸化性/求電子性ストレスに対する細胞の応答に関与する100~200種の標的遺伝子のマスターレギュレーターとみなされる。標的としては、グルタチオン(GSH)メディエーター、抗酸化剤および排出ポンプを制御する遺伝子が挙げられる。Haydenら、Urol. Oncol. Semin. Orig. Investig. 32、806~814 (2014)。NRF2はまた、タンパク質の分解および解毒に関与する遺伝子の発現を調節することも公知であり、Cul3依存性E3ユビキチンリガーゼ複合体の基質アダプターであるケルチ(Kelch)様ECH関連タンパク質1(KEAP1)によって負に調節される。標準状態下で、Keap1は絶えずユビキチン依存性の分解のためにNRF2を標的化し、下流の標的遺伝子でNRF2の低い発現を維持する。しかしながら、化学療法は、NRF2標的遺伝子の転写活性を活性化し、しばしば細胞保護応答を促進することが示され、環境ストレスまたは有害な成長条件に応答してNRF2の発現の強化が起こる。NRF2上方調節をもたらす他のメカニズムとしては、KEAP1における突然変異またはプロモーター領域のエピジェネティックな変化が挙げられる。NRF2の発現の上方調節は、がん細胞の化学療法薬に対する耐性の強化をもたらし、これは、まさしくその作用によって細胞増殖にとって好ましくない環境を誘発する。実際に、Haydenら(同書中)は、NRF2の発現の増加は、がん細胞のシスプラチンなどの化学療法薬に対する耐性をもたらすことを明らかに実証した。Singhら(2010、Antioxidants & Redox Signaling 13)はまた、NRF2の構成的発現は、放射線抵抗性をもたらし、NRF2の阻害は、内因性活性酸素種(ROS)レベルの増加に加えて生存の減少を引き起こすことも示した。近年、Torrenteら(Oncogene (2017). doi:10.1038/onc.2017.221)は、NRF2とホメオドメイン相互作用プロテインキナーゼである2つのHIPK2とのクロストークを同定し、HIPK2がNRF2を介して細胞保護作用を示すことを実証した。
【0049】
CRISPR/Cas9を使用することによって、野生型NRF2タンパク質の機能を損なわずに、化学療法耐性を引き起こす変異NRF2タンパク質を標的化しノックアウトすることが可能である。したがって、一部の実施形態は、がん細胞でのみ見出され、非がん性細胞では見出されないバリアントNRF2の発現を低減させること、または一部の実施形態においてそれを排除することに向けられる。これらのバリアントは、一般的に、NRF2のNeh2ドメイン内に見出され、これはKEAP1結合ドメインとして公知である。一部の実施形態において、NRF2突然変異は、以下の表1に見出されるものであってもよい。
【0050】
【表1】
【0051】
一部の実施形態において、がん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子によってコードされるバリアントNRF2ポリペプチドは、(a)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(b)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(c)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(d)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82W、またはE185D;(e)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(f)配列番号8に関して、Q26E、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;(g)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34G、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185D;または(h)配列番号8に関して、Q26P、D29G、V32G、R34P、F71S、Q75H、D77G、E79G、T80P、E82G、またはE185Dのうちの1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0052】
一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子は、(a)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(b)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(c)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(d)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号51、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(e)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;
(f)配列番号7の205~227位を置換する配列番号41、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;(g)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の230~252位を置換する配列番号45、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列;あるいは(h)配列番号7の逆相補物の249~227位を置換する配列番号42、配列番号7の215~237位を置換する配列番号43、配列番号7の224~246位を置換する配列番号44、配列番号7の逆相補物の273~251位を置換する配列番号46、配列番号7の逆相補物の385~363位を置換する配列番号47、配列番号7の逆相補物の398~376位を置換する配列番号48、配列番号7の366~388位を置換する配列番号49、配列番号7の逆相補物の411~389位を置換する配列番号50、配列番号7の374~396位を置換する配列番号58、配列番号7の逆相補物の728~706位を置換する配列番号52、または配列番号7の360~381位を置換する配列番号57からなる群から選択される1つ以上のポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0053】
CRISPR/エンドヌクレアーゼ
CRISPR/エンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9)システムは、当業界において公知であり、例えば、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,925,248号に記載されている。CRISPR指向遺伝子編集は、驚くほど高い効率および精度で、染色体内の特異的な部位におけるDNA切断を同定し、実行することができる。CRISPR/Cas9の天然活性は、細菌細胞に感染するウイルスゲノムを無力化することである。それに続くヒト細胞におけるCRISPR/Cas機能の遺伝学的再構築は、著しい頻度でヒト遺伝子を無力化する可能性をもたらす。
【0054】
細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、可動性遺伝学的エレメント(ウイルス、転移エレメントおよび接合性プラスミド)に対するRNAガイド適応免疫システムをコードする。3つのタイプ(I~III)のCRISPRシステムが同定されている。CRISPRクラスターは、スペーサー、先行する可動性エレメントに相補的な配列を含有する。CRISPRクラスターは転写され、標的遺伝子に相補的なDNA結合領域(スペーサー)を含有する成熟CRISPR(クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復)RNA(crRNA)にプロセシングされる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、Cas9は、タイプII CRISPR/Casシステムに属し、標的DNAを切断するための強いエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、約20塩基対(bp)の固有な標的配列(スペーサーと呼ばれる)、およびリボヌクレアーゼIIIによって補助されるpre-crRNAのプロセシングのためのガイドとして役立つトランス活性化低分子RNA(tracrRNA)を含有する成熟crRNAによってガイドされる。crRNA:tracrRNA二重鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補配列(プロトスペーサーと呼ばれる)との間の相補的塩基対合を介して、Cas9を標的DNAに方向付ける。Cas9は、トリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識して、切断部位(PAMから3番目のヌクレオチド)を特定する。
【0055】
本明細書に記載される組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸を含んでいてもよい。CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば、クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼまたはクラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼであってもよい。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、タイプI、タイプIII、およびタイプIV CRISPR-Casシステムを含み、これらは、複数のサブユニットを含むエフェクター分子を有する。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼの場合、エフェクター分子は、一部の実施形態において、Cas7およびCas5、それと共に、一部の実施形態において、SS(Cas11)およびCas8a1;Cas8b1;Cas8c;Cas8u2およびCas6;Cas3"およびCas10d;CasSS(Cas11)、Cas8e、およびCas6;Cas8fおよびCas6f;Cas6f;Cas8様(Csf1);SS(Cas11)およびCas8様(Csf1);またはSS(Cas11)およびCas10を含んでいてもよい。クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼはまた、一部の実施形態において、標的切断分子とも会合していてもよく、このような標的切断分子は、Cas3(タイプI)またはCas10(タイプIII)であってもよく、さらに、スペーサー獲得分子、例えば、Cas1、Cas2、および/またはCas4などにも会合していてもよい。例えば、Kooninら、Curr. Opin. Microbiol. 37:67~78 (2017);StrichおよびChertow、J. Clin. Microbiol. 57:1307~18 (2019)を参照されたい。
【0056】
クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、タイプI、タイプV、およびタイプVI CRISPR-Casシステムを含み、これらは、単一のエフェクター分子を有する。クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼの場合、エフェクター分子は、一部の実施形態において、Cas9、Cas12a(cpf1)、Cas12b1(c2c1)、Cas12b2、Cas12c(c2c3)、Cas12d(CasY)、Cas12e(CasX)、Cas12f1(Cas14a)、Cas12f2(Cas14b)、Cas12f3(Cas14c)、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12k(c2c5)、Cas13a(c2c2)、Cas13b1(c2c6)、Cas13b2(c2c6)、Cas13c(c2c7)、Cas13d、c2c4、c2c8、c2c9、および/またはc2c10を含んでいてもよい。例えば、Kooninら、Curr. Opin. Microbiol. 37:67~78 (2017);StrichおよびChertow, J. Clin. Microbiol. 57:1307~18 (2019);Makarovaら、Nat. Rev. Microbiol. 18:67~83 (2020)を参照されたい。
【0057】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼであってもよい。Cas9ヌクレアーゼは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、例えば他の連鎖球菌属種、例えばストレプトコッカス・サーモフィラス;緑膿菌、大腸菌、または他のシーケンシングされた細菌ゲノムおよび古細菌、または他の原核性の微生物他の種由来の配列であってもよい。このような種としては、アシドボラックス・アベナエ、アクチノバチルス・プルロニューモニア、アクチノバチルス・サクシノゲネス、アクチノバチルス・スイス、放線菌属種、シクリフィルス・デニトリフィカンス、アミノモナス・パウシボランス、バチルス・セレウス、バチルス・スミチイ、バチルス・チューリンゲンシス、バクテロイデス属種、ブラストピレルラ・マリーナ、ブラジリゾビウム属種、ブレビバチルス・ラテロスポラス、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・ラリ、カンジダトス・プニセイスピリルム、クロストリジウム・セルロリティカム、ウェルシュ菌、コリネバクテリウム・アクコレンス、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・マツルショッティ、ディノロセオバクター・シバエ、ユーバクテリウム・ドリクム、ガンマプロテオバクテリア綱、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス、パラインフルエンザ菌、ヘモフィルス・スプトルム、ヘリコバクター・カナデンシス、ヘリコバクター・シネディ、ヘリコバクター・ムステラエ、イリオバクター・ポリトロパス、キンゲラ・キンゲ、ラクトバチルス・クリスパタス、リステリア・イバノビイ、リステリア・モノサイトゲネス、リステリア科細菌、メチロシスティス属種、メチロサイナス・トリコスポリウム、モビルンカス・ムリエリス、ナイセリア・バシリフォルミス、ナイセリア・シネレア、ナイセリア・フラベッセンス、ナイセリア・ラクタミカ、髄膜炎菌、ナイセリア属種、ナイセリア・ワズワージイ、ニトロソモナス属種、パルビバクラム・ラバメンティボランス、パスツレラ・ムルトシダ、ファスコラークトバクテリウム・スクシナテュテンス、ラルストニア・シジジイ、ロドシュードモナス・パルストリス、ロドブラム属種、シモンシエラ・ムエレリ、スフィンゴモナス属種、スポロラクトバチルス・ビネア、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス、連鎖球菌属種、サブドリグラヌラム属種、チストレラ・モビリス、トレポネーマ属種、およびベルミネフロバクター・エイセニエが挙げられる。
【0058】
代替として、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネスCas9配列は、改変されていてもよい。核酸配列は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞における効率的な発現のためにコドン最適化されていてもよい。ヒト細胞配列における発現のためにコドン最適化されたCas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbank受託番号KM099231.1GI:669193757;KM099232.1GI:669193761;またはKM099233.1GI:669193765で列挙される発現ベクターのいずれかによってコードされたCas9ヌクレアーゼ配列であってもよい。代替として、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、商業的に入手可能なベクター、例えばAddgene(Cambridge、Mass.)からのpX458、pX330またはpX260内に含有される配列であってもよい。一部の実施形態において、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbank受託番号KM099231.1GI:669193757;KM099232.1GI:669193761;もしくはKM099233.1GI:669193765のCas9エンドヌクレアーゼ配列のいずれかのバリアントもしくは断片であるアミノ酸配列、またはpX458、pX330もしくはpX260のCas9アミノ酸配列(Addgene、Cambridge、Mass.)を有していてもよい。Cas9ヌクレオチド配列は、Cas9の生物学的に活性なバリアントをコードするように改変されていてもよく、これらのバリアントは、1つ以上の突然変異(例えば、付加、欠失、もしくは置換突然変異またはこのような突然変異の組合せ)を含有することにより、野生型Cas9とは異なるアミノ酸配列を有していてもよいし、または例えばそれを含んでいてもよい。置換突然変異の1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であってもよい。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cas9ポリペプチドと、少なくとも、または約50%の配列同一性(例えば、少なくとも、または約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
【0059】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas12aヌクレアーゼであってもよい。Cas12aヌクレアーゼは、野生型プレボテラ属またはフランキセラ属の配列と同一なヌクレオチド配列を有していてもよい。代替として、野生型プレボテラ属またはフランキセラ属のCas12a配列は、改変されていてもよい。核酸配列は、哺乳類細胞、例えばヒト細胞における効率的な発現のためにコドン最適化されていてもよい。ヒト細胞配列における発現のためにコドン最適化されたCas12aヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbank受託番号MF193599.1GI:1214941796、KY985374.1GI:1242863785、KY985375.1GI:1242863787、またはKY985376.1GI:1242863789で列挙される発現ベクターのいずれかによってコードされたCas9ヌクレアーゼ配列であってもよい。代替として、Cas12aヌクレアーゼ配列は、例えば、商業的に入手可能なベクター、例えばAddgene(Cambridge、Mass.)からのpAs-Cpf1またはpLb-Cpf1内に含有される配列であってもよい。一部の実施形態において、Cas12aエンドヌクレアーゼは、Genbank受託番号MF193599.1GI:1214941796、KY985374.1GI:1242863785、KY985375.1GI:1242863787、もしくはKY985376.1GI:1242863789のCas12aエンドヌクレアーゼ配列のいずれかのバリアントもしくは断片であるアミノ酸配列、またはpAs-Cpf1もしくはpLb-Cpf1のCas12aアミノ酸配列(Addgene、Cambridge、Mass.)を有していてもよい。Cas12aヌクレオチド配列は、Cas12aの生物学的に活性なバリアントをコードするように改変されていてもよく、これらのバリアントは、1つ以上の突然変異(例えば、付加、欠失、もしくは置換突然変異またはこのような突然変異の組合せ)を含有することにより、野生型Cas12aとは異なるアミノ酸配列を有していてもよいし、または例えばそれを含んでいてもよい。置換突然変異の1つ以上は、置換(例えば、保存的アミノ酸置換)であってもよい。例えば、Cas12aポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、野生型Cas12aポリペプチドと、少なくとも、または約50%の配列同一性(例えば、少なくとも、または約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有していてもよい。
【0060】
本明細書に記載される組成物はまた、NRF2遺伝子からの標的ドメイン(例えば、NRF2遺伝子のエクソン1、2、3、4、または5からの標的ドメイン)に相補的なDNA結合ドメインを含むガイドRNA(gRNA)、およびクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼタンパク質結合ドメインをコードする配列を含んでいてもよい。一部の実施形態において、gRNAは、がん細胞でのみ見出され、正常(すなわち、非がん性)細胞における野生型NRF2遺伝子では見出されないバリアントNRF2遺伝子からの標的ドメイン(例えば、バリアントNRF2遺伝子のエクソン1、2、3、4、または5からの標的ドメイン)に相補的なDNA結合ドメインを含む。ガイドRNA配列は、センスまたはアンチセンス配列であってもよい。ガイドRNA配列は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含んでいてもよい。PAMの配列は、使用されるCRISPRエンドヌクレアーゼの特異性の要件に応じて様々であってもよい。S.ピオゲネス由来のCRISPR-Casシステムにおいて、標的DNAは、典型的には、5'-NGGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前にある。したがって、S.ピオゲネスのCas9の場合、PAM配列は、AGG、TGG、CGGまたはGGGであり得る。他のCas9オーソログは、異なるPAM特異性を有していてもよい。ガイドRNAの具体的な配列は変化する場合があるが、配列に関係なく、有用なガイドRNA配列は、オフターゲット作用を最小化しながら高い効率を達成するものである。一部の実施形態において、ガイドRNA配列は、NRF2遺伝子の完全な除去を達成する。一部の実施形態において、ガイドRNA配列は、野生型NRF2遺伝子の発現または活性に影響を及ぼさずに、バリアントNRF2遺伝子の完全な除去を達成する。
【0061】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、約20~約55ヌクレオチドの様々な長さであり、例えば、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、または約55ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態において、Casタンパク質結合ドメインは、約30~約55ヌクレオチドの様々な長さであり、例えば、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、または約55ヌクレオチドの長さである。
【0062】
一部の実施形態において、組成物は、ガイドRNAおよびCRISPRエンドヌクレアーゼをコードする1つ以上の核酸(すなわちDNA)配列を含む。組成物は核酸として投与されるか、または発現ベクター内に含有される場合、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列と同じ核酸またはベクターによってコードされていてもよい。一部の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNA配列とは物理的に別々の核酸、または別々のベクター中にコードされていてもよい。ガイドRNAをコードする核酸配列は、DNA結合ドメイン、Casタンパク質結合ドメイン、および転写ターミネータードメインを含んでいてもよい。
【0063】
ガイドRNAおよび/またはCRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、単離された核酸であってもよい。「単離された」核酸は、例えば、通常は天然に存在するゲノム中のそのDNA分子のすぐ近くに隣接する核酸配列の少なくとも1つが除去されているかまたは存在しないという条件での、天然に存在するDNA分子またはその断片であってもよい。単離された核酸分子は、標準的な技術によって生産することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、本明細書に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列などの本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含有する単離された核酸を得ることができる。PCRを使用して、DNAから、加えてRNAからも、例えば総ゲノムDNAまたは総細胞RNAからの配列などから、特異的な配列を増幅することができる。様々なPCR方法は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, DieffenbachおよびDveksler編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995に記載されている。一般的に、目的の領域の末端またはそれを超える部分からの配列情報は、増幅させようとする鋳型の逆の鎖において配列が同一な、または類似のオリゴヌクレオチドプライマーを設計するのに採用される。また、部位特異的なヌクレオチド配列改変を鋳型核酸に導入できる様々なPCR戦略も利用可能である。
【0064】
単離された核酸はまた、単一の核酸分子(例えば、ホスホアミダイト技術を使用する3'から5'方向への自動DNA合成を使用して)または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして化学的に合成することもできる。例えば、オリゴヌクレオチド対がアニールすると二重鎖が形成されるように、各対が相補性を有する短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する望ましい配列を含有する長いオリゴヌクレオチド(例えば、>50~100ヌクレオチド)の1つ以上の対を合成することができる。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長させ、結果として、オリゴヌクレオチド対ごとに一本鎖、二本鎖核酸分子を得て、これを次いでベクターにライゲートさせてもよい。また単離された核酸は、例えば、Cas9をコードするDNAの天然に存在する部分の変異誘発(例えば、上記の式に従って)によっても得ることができる。
【0065】
また組換え構築物も本明細書で提供され、これを使用して、CRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはNRF2遺伝子(一部の実施形態において、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子)に相補的なガイドRNAを発現させるために、細胞を形質転換することができる。組換え核酸構築物は、細胞中でCRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはNRF2遺伝子(一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子)に相補的なガイドRNAを発現させるのに好適なプロモーターに作動可能に連結した、CRISPRエンドヌクレアーゼ、および/またはNRF2遺伝子(一部の実施形態において、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子)に相補的なガイドRNAをコードする核酸を含んでいてもよい。一部の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、ガイドRNAをコードする核酸と同じプロモーターに作動可能に連結されている。他の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸およびガイドRNAをコードする核酸は、異なるプロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態において、CRISPRエンドヌクレアーゼをコードする核酸および/またはガイドRNAをコードする核酸は、肺特異的なプロモーターに作動可能に連結されている。好適な肺特異的なプロモーターとしては、これらに限定されないが、クララ細胞の10kDaタンパク質(CC10)(通称Scgb1a1)プロモーター(Strippら、J. Biol. Chem. 267:14703~12 (1992))、SFTPCプロモーター(Wertら、Dev. Biol. 156:426~43 (1993))、FOXJ1プロモーター(Ostrowskiら、Mol. Ther. 8:637~45 (2003))、アクアポリン(Aqp5)プロモーター(Funakiら、Am. J. Physiol. 275:C1151~57 (1998))、ケラチン5(Krt5)プロモーター(Rockら、Dis. Model Mech. 3:545~56 (2010))、ケラチン14(Krt14)プロモーター(Rockら、Dis. Model Mech. 3:545~56 (2010))、サイトケラチン18(K18)プロモーター(Chowら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:14695~14700 (1997))、サーファクタントタンパク質B(SP-B)プロモーター(Strayerら、Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 282:L394~404 (2002))、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素プロモーターおよびヒトサーファクタントタンパク質A1プロモーターの制御下でのTTF1遺伝子(Fukazawaら、Cancer Res. 64:363~69 (2004))、サーファクタントタンパク質C(SP-C)プロモーター(Zhuoら、Transgenic Res. 15:543~55 (2006))、インスリノーマ関連抗原-1(INSM1)プロモーター(Liら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 236:776~81 (1997))、およびサーファクタントタンパク質A(SP-A)プロモーター(Brunoら、J. Biol. Chem. 270:6531~36 (1995))が挙げられる。
【0066】
一部の実施形態において、1つ以上のCRISPRエンドヌクレアーゼおよび1つ以上のガイドRNAは、組み合わせて、リボ核タンパク質粒子(RNP)の形態で提供されてもよい。RNP複合体は、例えば、注射、エレクトロポレーション、ナノ粒子、小胞の手段によって、および/または細胞透過性ペプチドの助けで、対象に導入することができる。
【0067】
核酸を含有するDNAベクター、例えば本明細書に記載されるものも提供される。「DNAベクター」は、別のDNAセグメントを挿入して、挿入されたセグメントの複製が実行できるようになっているレプリコン、例えばプラスミド、ファージ、またはコスミドである。一般的に、DNAベクターは、適した制御エレメントと関連付けられている場合、複製が可能である。好適なベクターバックボーンとしては、例えば、当業界において慣例的に使用されるもの、例えばプラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YAC、またはPACが挙げられる。用語「DNAベクター」は、クローニングおよび発現ベクター、加えて、ウイルスベクターおよび組み込み型ベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。様々な宿主/発現ベクターの組合せが、本明細書に記載される核酸配列を発現させるために使用することができる。好適な発現ベクターとしては、これらに限定されないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルス由来のプラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。多数のベクターおよび発現システムが、Novagen(Madison、Wis.)、Clontech(Palo Alto、Calif.)、Stratagene(La Jolla、Calif.)、およびInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad、Calif.)のような会社から商業的に入手可能である。
【0068】
本明細書で提供されるDNAベクターはまた、例えば、複製起点、足場付着領域(SAR)、および/またはマーカーを含んでいてもよい。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、殺生剤耐性、例えば抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはハイグロマイシン)に対する耐性を付与することができる。上述したように、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を容易にするために設計されたタグ配列を含んでいてもよい。タグ配列、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、またはFlag(商標)タグ(Kodak、New Haven、Conn.)配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。このようなタグは、ポリペプチド内のどこに挿入してもよく、例えば、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかに挿入してもよい。
【0069】
DNAベクターは、調節領域を含んでいてもよい。用語「調節領域」は、転写または翻訳の開始および速度、ならびに転写または翻訳生成物の安定性および/または移動度に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、これらに限定されないが、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5'および3'非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル、およびイントロンが挙げられる。
【0070】
用語「作動可能に連結した」は、本明細書で使用される場合、核酸中における調節領域(例えばプロモーター)および転写しようとする配列が、このような配列の転写または翻訳に影響を与えるように配置されていることを指す。例えば、コード配列をプロモーターの制御下に置くことにより、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的にはプロモーターから1~約50ヌクレオチド下流に配置される。しかしながら、プロモーターは、翻訳開始部位から約5,000ヌクレオチドも上流に、または転写開始部位から約2,000ヌクレオチド上流に配置されていてもよい。プロモーターは、典型的には、少なくともコア(基本)プロモーターを含む。プロモーターとしてはまた、少なくとも1つの制御エレメント、例えばエンハンサー配列、上流エレメントまたは上流活性化領域(UAR)も挙げることができる。含めようとするプロモーターの選択は、これらに限定されないが、効率、選択可能性、誘導能、望ましい発現レベル、および細胞または組織優先的な発現などの数々の要因に依存する。プロモーターおよび他の調節領域を適切に選択し、コード配列に対してそれらを配置することによって、コード配列の発現をモジュレートすることは、当業者にとって慣例的なことである。
【0071】
ベクターとしては、例えば、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、および水疱性口内炎ウイルス(VSV)およびレトロウイルス)、リポソームおよび他の脂質を含有する複合体、ならびに宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することが可能な他の高分子複合体が挙げられる。肺腫瘍へのアデノウイルスベクターの直接注射は、肺がんの遺伝子療法を評価する臨床治験における慣例的な手順であり続けている。Dongら、J. Int. Med. Res. 36、1273~1287 (2008);Liら、Cancer Gene Ther. 20、251~259 (2013);Zhouら、Cancer Gene Ther. 23、1~6 (2016)。ベクターはまた、遺伝子送達および/または遺伝子発現をさらにモジュレートする、またはそれ以外の方法で標的化された細胞に有益な特性を提供する他の要素または機能性を含んでいてもよい。以下でより詳細に記載され例示されるように、このような他の要素としては、例えば、細胞への結合または標的化に影響を与える要素(細胞型または組織特異的な結合を媒介する要素など);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える要素;取り込み後の細胞内へのポリヌクレオチドの局在化に影響を与える要素(例えば核局在化を媒介する薬剤);およびポリヌクレオチドの発現に影響を与える要素が挙げられる。このような要素としてはまた、マーカー、例えば、ベクターによって送達された核酸を取り込んで、それを発現している細胞を検出または選択するのに使用できる検出可能および/または選択可能マーカーも挙げることができる。このような要素は、ベクターの天然の機構として提供することができ(例えば結合や取り込みを媒介する要素または機能性を有する特定のウイルスベクターの使用)、またはベクターは、このような機能性を提供するように改変してもよい。他のベクターとしては、Chenら;Bio Techniques、34: 167~171 (2003)によって記載されたものが挙げられる。多種多様のこのようなベクターが当業界において公知であり、一般的に利用可能である。
【0072】
好適な核酸送達システムとしては、組換えウイルスベクター、典型的には、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存性アデノウイルス、レトロウイルス、またはセンダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan)-リポソーム(HVJ)複合体のうちの少なくとも1つからの配列が挙げられる。このようなケースにおいて、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドに作動可能に連結した強い真核生物プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。組換えウイルスベクターは、その中にポリヌクレオチドの1つ以上を含んでいてもよく、一部の実施形態において、約1つのポリヌクレオチドを含んでいてもよい。ポリヌクレオチドが非ウイルスベクターと共に投与される実施形態において、約0.1ナノグラム~約4000マイクログラムの使用が、有用であることが多く、例えば、約0.1ng~約3900μg、約0.1ng~約3800μg、約0.1ng~約3700μg、約0.1ng~約3600μg、約0.1ng~約3500μg、約0.1ng~約3400μg、約0.1ng~約3300μg、約0.1ng~約3200μg、約0.1ng~約3100μg、約0.1ng~約3000μg、約0.1ng~約2900μg、約0.1ng~約2800μg、約0.1ng~約2700μg、約0.1ng~約2600μg、約0.1ng~約2500μg、約0.1ng~約2400μg、約0.1ng~約2300μg、約0.1ng~約2200μg、約0.1ng~約2100μg、約0.1ng~約2000μg、約0.1ng~約1900μg、約0.1ng~約1800μg、約0.1ng~約1700μg、約0.1ng~約1600μg、約0.1ng~約1500μg、約0.1ng~約1400μg、約0.1ng~約1300μg、約0.1ng~約1200μg、約0.1ng~約1100μg、約0.1ng~約1000μg、約0.1ng~約900μg、約0.1ng~約800μg、約0.1ng~約700μg、約0.1ng~約600μg、約0.1ng~約500μg、約0.1ng~約400μg、約0.1ng~約300μg、約0.1ng~約200μg、約0.1ng~約100μg、約0.1ng~約90μg、約0.1ng~約80μg、約0.1ng~約70μg、約0.1ng~約60μg、約0.1ng~約50μg、約0.1ng~約40μg、約0.1ng~約30μg、約0.1ng~約20μg、約0.1ng~約10μg、約0.1ng~約1μg、約0.1ng~約900ng、約0.1ng~約800ng、約0.1ng~約700ng、約0.1ng~約600ng、約0.1ng~約500ng、約0.1ng~約400ng、約0.1ng~約300ng、約0.1ng~約200ng、約0.1ng~約100ng、約0.1ng~約90ng、約0.1ng~約80ng、約0.1ng~約70ng、約0.1ng~約60ng、約0.1ng~約50ng、約0.1ng~約40ng、約0.1ng~約30ng、約0.1ng~約20ng、約0.1ng~約10ng、約0.1ng~約1ng、約1ng~約4000μg、約1ng~約3900μg、約1ng~約3800μg、約1ng~約3700μg、約1ng~約3600μg、約1ng~約3500μg、約1ng~約3400μg、約1ng~約3300μg、約1ng~約3200μg、約1ng~約3100μg、約1ng~約3000μg、約1ng~約2900μg、約1ng~約2800μg、約1ng~約2700μg、約1ng~約2600μg、約1ng~約2500μg、約1ng~約2400μg、約1ng~約2300μg、約1ng~約2200μg、約1ng~約2100μg、約1ng~約2000μg、約1ng~約1900μg、約1ng~約1800μg、約1ng~約1700μg、約1ng~約1600μg、約1ng~約1500μg、約1ng~約1400μg、約1ng~約1300μg、約1ng~約1200μg、約1ng~約1100μg、約1ng~約1000μg、約1ng~約900μg、約1ng~約800μg、約1ng~約700μg、約1ng~約600μg、約1ng~約500μg、約1ng~約400μg、約1ng~約300μg、約1ng~約200μg、約1ng~約100μg、約1ng~約90μg、約1ng~約80μg、約1ng~約70μg、約1ng~約60μg、約1ng~約50μg、約1ng~約40μg、約1ng~約30μg、約1ng~約20μg、約1ng~約10μg、約1ng~約1μg、約1ng~約900ng、約1ng~約800ng、約1ng~約700ng、約1ng~約600ng、約1ng~約500ng、約1ng~約400ng、約1ng~約300ng、約1ng~約200ng、約1ng~約100ng、約1ng~約90ng、約1ng~約80ng、約1ng~約70ng、約1ng~約60ng、約1ng~約50ng、約1ng~約40ng、約1ng~約30ng、約1ng~約20ng、約1ng~約10ng、約10ng~約4000μg、約20ng~約4000μg、約30ng~約4000μg、約40ng~約4000μg、約50ng~約4000μg、約60ng~約4000μg、約70ng~約4000μg、約80ng~約4000μg、約90ng~約4000μg、約100ng~約4000μg、約200ng~約4000μg、約300ng~約4000μg、約400ng~約4000μg、約500ng~約4000μg、約600ng~約4000μg、約700ng~約4000μg、約800ng~約4000μg、約900ng~約4000μg、約1μg~約4000μg、10μg~約4000μg、20μg~約4000μg、30μg~約4000μg、40μg~約4000μg、50μg~約4000μg、60μg~約4000μg、70μg~約4000μg、80μg~約4000μg、90μg~約4000μg、100μg~約4000μg、200μg~約4000μg、300μg~約4000μg、400μg~約4000μg、500μg~約4000μg、
600μg~約4000μg、700μg~約4000μg、800μg~約4000μg、900μg~約4000μg、1000μg~約4000μg、1100μg~約4000μg、1200μg~約4000μg、1300μg~約4000μg、1400μg~約4000μg、1500μg~約4000μg、1600μg~約4000μg、1700μg~約4000μg、1800μg~約4000μg、1900μg~約4000μg、2000μg~約4000μg、2100μg~約4000μg、2200μg~約4000μg、2300μg~約4000μg、2400μg~約4000μg、2500μg~約4000μg、2600μg~約4000μg、2700μg~約4000μg、2800μg~約4000μg、2900μg~約4000μg、3000μg~約4000μg、3100μg~約4000μg、3200μg~約4000μg、3300μg~約4000μg、3400μg~約4000μg、3500μg~約4000μg、3600μg~約4000μg、3700μg~約4000μg、3800μg~約4000μg、または3900μg~約4000μgが有用である。
【0073】
追加のベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルスおよびHIVベースのウイルスが挙げられる。1つのHIVベースのウイルスベクターは、少なくとも2つのベクターを含み、gagおよびpol遺伝子はHIVゲノム由来であり、env遺伝子は別のウイルス由来である。DNAウイルスベクターとしては、ポックスベクター、例えばオルソポックス(orthopox)またはアビポックス(avipox)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター[Geller, A. I.ら、J. Neurochem、64: 487 (1995);Lim, F.ら、DNA Cloning: Mammalian Systems、D. Glover編(Oxford Univ. Press、Oxford England) (1995);Geller, A. I.ら、Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A.:90 7603 (1993);Geller, A. I.ら、Proc Natl. Acad. Sci USA: 87:1149 (1990)]、アデノウイルスベクター[LeGal LaSalleら、Science、259:988 (1993);Davidsonら、Nat. Genet. 3: 219 (1993);Yangら、J. Virol. 69: 2004 (1995)]およびアデノ随伴ウイルスベクター[Kaplitt, M. G.ら、Nat. Genet. 8:148 (1994)]が挙げられる。
【0074】
必要に応じて、本明細書に記載されるポリヌクレオチドはまた、マイクロデリバリー媒体(microdelivery vehicle)、例えばカチオン性リポソーム、アデノウイルスベクター、およびエキソソームと共に使用することもできる。リポソーム調製、標的化および内容物の送達の手順の総論に関して、ManninoおよびGould-Fogerite、BioTechniques、6:682 (1988)を参照されたい。またFeignerおよびHolm、Bethesda Res. Lab. Focus、11(2):21 (1989)およびMaurer, R. A.、Bethesda Res. Lab. Focus、11(2):25 (1989)も参照されたい。一部の実施形態において、エキソソームは、標的細胞、例えばがん細胞へのCRISPRエンドヌクレアーゼおよび/またはガイドRNAをコードする核酸の送達のために使用することができる。エキソソームは、様々な細胞によって分泌されたナノサイズ化された小胞であり、細胞膜で構成される。エキソソームは、様々な表面接着タンパク質およびベクターリガンド(テトラスパニン、インテグリン、CD11bおよびCD18受容体)によって標的細胞に付着して、そのペイロードを標的細胞に送達することができる。数々の研究が、エキソソームは、その特徴および起源に従って特異的な細胞親和性を有し、それを使用して、それらを罹患組織および/または臓器に標的化できることを示している。Batrakovaら、2015、J Control Release 219: 396~405を参照されたい。例えば、がん由来のエキソソームは、がん細胞にCRISPR/Cas9プラスミドを効率的に送達できる天然担体として機能する。Kimら、2017、J Control Release 266: 8~16を参照されたい。
【0075】
複製欠損組換えアデノウイルスベクターは、公知の技術に従って生産することができる。Quantin,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:2581~2584 (1992);Stratford-Perricadetら、J. Clin. Invest.、90:626~630 (1992);およびRosenfeldら、Cell、68:143~155 (1992)を参照されたい。
【0076】
別の送達方法は、細胞内で発現された生成物を生産できる一本鎖DNA生産ベクターを使用することである。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるChenら、Bio Techniques、34: 167~171 (2003)を参照されたい。
【0077】
医薬組成物
本明細書で開示される医薬組成物のいずれかは、医薬調製における使用のために製剤化することができ、特定の使用が、以下の処置、例えばがんを有する対象の処置の文脈において示される。医薬品として採用される場合、核酸およびベクターのいずれかは、医薬組成物の形態で投与することができる。投与は、肺(例えば、粉末またはエアロゾルの吸入法または通気法によって、例えばネブライザーによる;気管内、経鼻、表皮および経皮など)、局所(例えば眼および粘膜への、例えば経鼻、経膣および直腸送達など)、眼、経口または非経口であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内または筋肉内への注射または輸注;または頭蓋内、例えば髄腔内もしくは脳室内投与が挙げられる。非経口投与は、単回の大量投与の形態であってもよいし、または例えば連続的な灌流ポンプによる投与でもよい。局所投与のための医薬組成物および医薬製剤としては、経皮パッチ、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ、坐剤、スプレー剤、液剤、散剤などを挙げることができる。従来の医薬用担体、水性、粉末または油性基材、増粘剤などが必要であるか、または望ましい場合がある。
【0078】
一部の実施形態において、医薬組成物は、活性成分として本明細書に記載される核酸およびベクターを、1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含有していてもよい。用語「薬学的に許容される」は、動物またはヒトに必要に応じて投与されるとき、有害な、アレルギー性の、または他の好ましくない反応を起こさない分子実体および組成物を指す。用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される物質のための媒体として使用することができる、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、賦形剤、結合剤、潤滑剤、ゲル、界面活性剤などを含む。本明細書で開示される医薬組成物の作製において、活性成分は、典型的には賦形剤と混合され、賦形剤によって希釈されるか、またはこのような担体内に、例えばカプセル、錠剤、小容器、ペーパー、または他の容器の形態で封入される。賦形剤が希釈剤として役立つ場合、それは、活性成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用する固体、半固体、または液体材料(例えば、生理食塩水)であってもよい。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ剤、小容器、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体として、または液状媒体中)、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ソフトおよびハードゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射用溶液、および滅菌されたパッケージ化された散剤の形態であってもよい。当業界において公知のように、希釈剤のタイプは、意図される投与経路に応じて様々であってもよい。得られた組成物は、追加の薬剤、例えば保存剤を含んでいてもよい。一部の実施形態において、担体は、脂質ベースまたはポリマーベースのコロイドであってもよいし、またはそれを含んでいてもよい。一部の実施形態において、担体材料は、リポソーム、ヒドロゲル、マイクロパーティクル、ナノ粒子、またはブロックコポリマーミセルとして製剤化されたコロイドであってもよい。述べたように、担体材料は、カプセル剤を形成することができ、その材料は、ポリマーベースのコロイドであってもよい。
【0079】
本明細書で開示される核酸配列は、対象の適切な細胞、例えばがん細胞に送達することができる。これは、例えば、マクロファージなどの食細胞による貪食を最適化するようなサイズにしたポリマーの生分解性マイクロパーティクルまたはマイクロカプセル送達媒体の使用によって達成することができる。in vivoの発現を達成するための別の手段は、筋肉内、皮内、または皮下の部位への「裸のDNA」(すなわち、送達媒体なしの)の送達である。関連するポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびガイドRNAをコードする配列を含む単離された核酸配列をコードする核酸配列は、プロモーターまたはエンハンサー-プロモーターの組合せに作動可能に連結されていてもよい。プロモーターおよびエンハンサーは上述されている。
【0080】
一部の実施形態において、医薬組成物は、ナノ粒子として、例えば、DNAと複合体化した高分子量の直鎖状ポリエチレンイミン(LPEI)のコアで構成され、ポリエチレングリコールで改変された(ペグ化した)低分子量LPEIのシェルで取り囲まれたナノ粒子として製剤化することができる。
【0081】
核酸およびベクターはまた、デバイス(例えば、カテーテル)の表面に適用してもよいし、またはポンプ、パッチ、または他の薬物送達デバイス内に含有されてもよい。本明細書で開示される核酸およびベクターは、薬学的に許容される賦形剤または担体(例えば、生理的塩類溶液)の存在下で、単独で、または混合物で投与することができる。賦形剤または担体は、投与の様式および経路に基づき選択される。好適な医薬用担体、加えて医薬製剤における使用のための医薬上の必要性は、この分野における周知の参考書であるRemington's Pharmaceutical Sciences (E. W. Martin)、およびUSP/NF(米国薬局方および国民医薬品集)に記載されている。
【0082】
一部の実施形態において、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびNRF2遺伝子(または一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子)に相補的なガイドRNA配列をコードする核酸をカプセル化したナノ粒子として、またはCRISPR関連エンドヌクレアーゼおよびNRF2遺伝子(または一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子)に相補的なガイドRNA配列をコードする核酸を含むベクターとして製剤化することができる。
【0083】
細胞におけるNRF2の発現または活性を低減させる方法
特定の態様において、本開示は、細胞においてNRF2の発現または活性を低減させる方法であって、(a)NRF2遺伝子における標的配列に相補的なガイドRNA(gRNA)をコードする1つ以上のDNA配列、および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を細胞に導入することを含み、それによって、gRNAが、NRF2遺伝子にハイブリダイズし、CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、NRF2遺伝子を切断し、NRF2の発現または活性が、細胞において、gRNAをコードする1つ以上のDNA配列およびCRISPR関連ヌクレアーゼをコードする核酸配列が導入されていない細胞と比べて低減される、方法に関する。
【0084】
細胞におけるNRF2の発現を低減させることは、細胞におけるNRF2 mRNAの発現を低減させること、細胞におけるNRF2タンパク質の発現を低減させること、またはその両方を含んでいてもよい。一部の実施形態において、NRF2遺伝子の1つ以上の対立遺伝子の発現が低減される。一部の実施形態において、gRNAをコードする1つ以上のDNA配列およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を細胞に導入することは、細胞におけるNRF2の発現および/または活性を低減させるが、それを完全には排除しない。他の実施形態において、細胞におけるNRF2の発現および/または活性は、完全に排除される。
【0085】
gRNAは、NRF2遺伝子のエクソンにおける標的配列に相補的であってもよい。特定の実施形態において、gRNAは、NRF2遺伝子のエクソン1、2、3、4、または5における標的配列に相補的である。一部の実施形態において、gRNAは、単一のDNA配列によってコードされる。他の実施形態において、gRNAは、2またはそれより多くのDNA配列によってコードされる。例えば、一部の実施形態において、gRNAは、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)をコードする第1のDNA配列およびCRISPR RNA(crRNA)をコードする第2のDNA配列によってコードされる。tracrRNAおよびcrRNAは、細胞内でハイブリダイズして、ガイドRNAを形成することができる。したがって、一部の実施形態において、gRNAは、トランス活性化低分子RNA(tracrRNA)およびCRISPR RNA(crRNA)を含む。
【0086】
一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出され、正常(すなわち、非がん性)細胞における野生型NRF2遺伝子では見出されないバリアントNRF2遺伝子(例えばエクソン1、2、3、4、または5)に相補的である。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子のエクソン2における配列に相補的である。一部の実施形態において、gRNAをコードする1つ以上のDNA配列およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を細胞に導入することは、細胞におけるバリアントNRF2の発現および/または活性を低減させるが、それを完全には排除しない。他の実施形態において、細胞におけるバリアントNRF2の発現および/または活性は、完全に排除される。
【0087】
一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子の発現を低減させることにおける使用に好適なCRISPR関連エンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、クラス1 CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、例えば例えば、Cas7およびCas5、それと共に、一部の実施形態において、SS(Cas11)およびCas8a1;Cas8b1;Cas8c;Cas8u2およびCas6;Cas3"およびCas10d;Cas SS(Cas11)、Cas8e、およびCas6;Cas8fおよびCas6f;Cas6f;Cas8様(Csf1);SS(Cas11)およびCas8様(Csf1);またはSS(Cas11)およびCas10などが挙げられる。クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼとしては、単一のエフェクター分子を有する、タイプI、タイプV、およびタイプVI CRISPR-Casシステムが挙げられる。一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子の発現を低減させることにおける使用に好適なCRISPR関連エンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、クラス2 CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas13a、Cas13b、Cas13c、c2c4、c2c5、c2c8、c2c9、および/またはc2c10などが挙げられる。一部の実施形態において、バリアントNRF2遺伝子の発現を低減させることにおける使用に好適なCRISPR関連エンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、CasX、CasY、および/またはMAD6が挙げられる(例えば、Liuら、Nature 566:218~23 (2019)を参照)。
【0088】
バリアントNRF2遺伝子を含有するあらゆる細胞が、本明細書に記載されるバリアントNRF2の発現または活性を低減させる方法における使用に適している可能性がある。一部の実施形態において、細胞は、真核細胞、例えば哺乳類細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態において、NRF2遺伝子は、ヒトNRF2遺伝子である。
【0089】
特定の態様において、本開示はまた、本明細書に記載されるNRF2の発現または活性を低減させる方法によって生産された変異NRF2遺伝子を含む細胞にも関する。一部の実施形態において、変異NRF2遺伝子は、バリアントNRF2遺伝子と比べて挿入または欠失を含む。一部の実施形態において、挿入または欠失は、NRF2遺伝子におけるプロトスペーサー隣接モチーフ配列(PAM)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20ヌクレオチド内で生じる。
【0090】
がんを処置するための方法
特定の態様において、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、治療有効量のクラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼおよび対象におけるNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。特定の態様において、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ、および対象のがん細胞におけるバリアントNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAを含む治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0091】
特定の態様において、本開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、(a)対象におけるNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAをコードするDNA配列;および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出され、正常(すなわち、非がん性)細胞における野生型NRF2遺伝子では見出されないバリアントNRF2遺伝子(例えばエクソン1、2、3、4、または5)に相補的である。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子のエクソン2における配列に相補的である。
【0092】
特定の実施形態において、がんは、固形腫瘍である。特定の実施形態において、がんは、非小細胞肺がんである。特定の実施形態において、がんは、クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ、および対象におけるNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAを含む医薬組成物でのみ処置されるか、または(a)対象におけるNRF2遺伝子からの標的ドメインに相補的なガイドRNAをコードするDNA配列;および(b)クラスター化された規則的間隔の短いパリンドローム反復(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む医薬組成物でのみ処置される。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出され、正常(すなわち、非がん性)細胞における野生型NRF2遺伝子では見出されないバリアントNRF2遺伝子(例えばエクソン1、2、3、4、または5)に相補的である。一部の実施形態において、ガイドRNAは、がん細胞でのみ見出されるバリアントNRF2遺伝子のエクソン2における配列に相補的である。特定の実施形態において、がんは、本明細書に記載される医薬組成物および追加の薬剤、例えば化学療法剤で処置される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、医薬組成物での処置と同時に開始される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、医薬組成物での処置が開始された後に開始される。特定の実施形態において、化学療法剤での処置は、医薬組成物での処置の前に開始される。
【0093】
特定の実施形態において、本発明の開示の医薬組成物は、がんの処置のために利用することができ、対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している。例えば、一部の実施形態において、がんは、1種以上の化学療法剤に対して耐性である。したがって、本発明の開示は、対象におけるがんを処置する方法であって、対象は、がんのための少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗しており、方法は、本明細書に記載される医薬組成物をがんを処置するのに十分な量で対象に投与すること、それによってがんを処置することを含む、方法を提供する。本明細書に記載される医薬組成物はまた、対象における腫瘍細胞成長を阻害することにも利用することができ、対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している。したがって、本発明の開示はさらに、対象における腫瘍細胞成長を阻害する方法であって、例えば対象は、少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗しており、方法は、腫瘍細胞成長が阻害されるように本明細書に記載される医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。特定の実施形態において、対象は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0094】
例えば、本明細書に記載される医薬組成物は、医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べてがん細胞の増殖を低減させるのに十分な量で対象に投与されてもよい。医薬組成物は、医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、がん細胞の増殖を、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低減させることができる。
【0095】
一部の実施形態において、医薬組成物は、医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される。医薬組成物は、医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、腫瘍成長を、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低減させることができる。特定の実施形態において、対象への医薬組成物の投与は、腫瘍成長を完全に阻害する。
【0096】
一実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物の投与は、適切な対照と比較して、少なくとも安定疾患を達成する、腫瘍サイズを低減させる、腫瘍成長を阻害する、および/または腫瘍を有する対象の生存時間を引き延ばす。したがって、この開示はまた、ヒトまたは他の動物、例えば少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している対象における腫瘍を、本明細書に記載される有効量の医薬組成物をこのようなヒトまたは動物に投与することによって処置する方法にも関する。当業者は、本明細書で提供される指針を用いた慣例的な実験によって、例えば少なくとも1回の先行する化学療法レジメンに失敗している対象における悪性腫瘍を処置する目的のために、どの程度の有効量の医薬組成物を要するかを決定することが可能であり得る。例えば、医薬組成物の治療活性を有する量は、対象の疾患のステージ(例えば、ステージIかステージIV)、年齢、性別、内科的な合併症、および体重などの要因、ならびに対象において望ましい応答を惹起する医薬組成物の能力に従って変化する可能性がある。投薬レジメンは、最適な治療応答が提供されるように調整することができる。例えば、1日に数回に分けた用量を投与してもよく、用量は、連続的な輸注によって投与されてもよいし、または用量は、治療状況の緊急性で示されるように比例的に低減してもよい。
【0097】
特定の実施形態において、本方法はさらに、外科手術、放射線、化学療法、例えば、ホルモン療法、抗体療法、増殖因子、サイトカインでの療法、および抗血管新生療法のいずれか1つまたは組合せを含む処置レジメンを含む。
【0098】
本明細書で開示される方法を使用する処置に関するがんとしては、例えば、哺乳動物に見出される全てのタイプのがんまたは新生物または悪性腫瘍、これらに限定されないが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫および肉腫などが挙げられる。一実施形態において、本明細書で開示される方法を使用する処置に関するがんとしては、黒色腫、癌腫および肉腫が挙げられる。一部の実施形態において、補酵素Q10組成物は、様々な種類の固形腫瘍、例えば乳がん、膀胱がん、結腸および直腸がん、子宮内膜がん、腎臓(腎細胞)がん、肺がん、黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、皮膚がん、骨がん、脳がん、子宮頸がん、肝臓がん、胃がん、口および口腔がん、神経芽細胞腫、睾丸がん、子宮がん、甲状腺がん、頭頸部がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がんおよび髄芽細胞腫、ならびに外陰がんの処置に使用される。特定の実施形態において、固形腫瘍としては、乳がん、例えばトリプルネガティブ乳がんなどが挙げられる。特定の実施形態において、皮膚がんとしては、黒色腫、扁平上皮癌、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)が挙げられる。特定の実施形態において、がんとしては、白血病が挙げられる。特定の実施形態において、がんは、肺がん、黒色腫、食道扁平上皮がん(ESC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、および乳がんからなる群から選択される。
【0099】
特定の実施形態において、がんは、肺がん、例えば非小細胞肺がん(NSCLC)である。一部の実施形態において、NSCLCは、腺癌、扁平上皮癌、または大細胞癌である。NSCLCを処置するのに使用される現在の十分に確立されたコンビナトリアル薬物戦略以外にも、数々の異なるコンビナトリアルアプローチもがんの処置のために調査されている。例えば、腫瘍細胞に感染する腫瘍溶解性ウイルスの使用は、化学療法の活性を強化することが見出されている。シスプラチンまたはゲムシタビンと組み合わされた粘液腫ウイルスでの感染は、卵巣がん細胞を、ウイルス追加なしで必要な投薬量より一層低い投薬量で効率的に破壊した。Nounamoら、Mol. Ther. oncolytics 6、90~99 (2017)。がん処置の有効性改善のための腫瘍溶解性ウイルス療法および細胞傷害性の化学療法の使用は、活発な開発領域である。Wennierら、Curr. Pharm. Biotechnol. 13、1817~33 (2012);Pandhaら、Oncolytic Virotherapy 5、1 (2016)。シスプラチンでの処置の前の複製能を有するウイルスでの感染は、化学療法の治療的有用性を著しく強化する。
【0100】
標的療法(標的化EGFR突然変異、ALKリアレンジメントなど)および免疫療法(チェックポイント阻害剤、抗PD1、抗CTLA4など)を利用して、NSCLCの臨床管理は大幅に改善された。患者は、より長くより優れた生活の質を有する可能性がある。しかしながら、これらの療法は、全ての問題を解決することはできない。例えば、特異的な分子を標的化する薬剤は、典型的には、約70%の応答率を有する。しかしながら、中央値の8~16か月の期間の後、不可避の耐性のために、ほとんど全て患者で再発が起こる。Anichiniら、Cancer Immunol. Immunother. 67、1011~1022 (2018)。免疫療法に関して、特定の肺がん患者において第1の処置としてペンブロリズマブ(キイトルーダ)が使用できるが、応答するのは彼らのうちほんの一部である。Biancoら、Curr. Opin. Pharmacol. 40、46~50 (2018)。
【0101】
一方で、肺がん処置パラダイムにおいて、それでもなお化学療法は必要不可欠である。局所領域的なNSCLCを有する患者において、化学療法は、外科手術または放射線と組み合わせた場合の根治可能性を改善することが証明された唯一の全身療法である。Wangら、Investig. Opthalmology Vis. Sci. 58, 3896 (2017)。転移を有する患者において、化学療法は、それでもなお標的療法剤に対する耐性が生じた患者のケアの頼みの綱である。それまでは、免疫システムを刺激して免疫療法の有効性をブーストすることも可能である。
【0102】
併用療法
特定の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1種の追加の抗がん剤、例えば化学療法剤との併用療法で使用することができる。
【0103】
小分子化学療法剤は、一般的に、例えば、1.トポイソメラーゼII阻害剤(細胞傷害性の抗生物質)、例えばアントラサイクリン/アントラセンジオン、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン、アントラキノン、例えば、ミトキサントロンおよびロソキサントロン、ならびにポドフィロトキシン(podophillotoxines)、例えば、エトポシドおよびテニポシド;2.微小管形成に影響を与える薬剤(有糸分裂阻害剤)、例えば植物性アルカロイド(例えば、生物学的に活性であり細胞傷害性である植物由来のアルカリ性の窒素を含有する分子のファミリーに属する化合物)、例えば、タキサン、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン、ならびにポドフィロトキシンの誘導体;3.アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物、スルホン酸アルキルおよびアルキル化作用を有する他の化合物、例えばニトロソウレア、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファラン;4.代謝拮抗物質(ヌクレオシド阻害剤)、例えば、フォレート、例えば、葉酸、フルオロピリミジン(fiuropyrimidine)、プリンまたはピリミジンアナログ、例えば5-フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メトトレキセート、およびエダトレキセート;5.トポイソメラーゼI阻害剤、例えばトポテカン、イリノテカン、および9-ニトロカンプトテシン、カンプトテシン誘導体、およびレチノイン酸;ならびに6.白金化合物/複合体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチンを含む様々なクラスに属する。本明細書で開示される方法における使用のための例示的な化学療法剤としては、これらに限定されないが、アミフォスチン(エチオール(ethyol))、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(doxorubicin lipo)(doxil)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(daunorubicin lipo)(daunoxome)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-Il、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、カペシタビン、フトラフル、5'デオキシフルオロウリジン(deoxyflurouridine)、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5-アザシトシン、5-アザデオキシシトシン、アロプリノール、2-クロロアデノシン、トリメトレキセート、アミノプテリン、メチレン-10-デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサリプラチン(oxaplatin)、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金-DACH、オルマプラチン、CI-973(およびそのアナログ)、JM-216(およびそのアナログ)、エピルビシン、9-アミノカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9-ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L-フェニルアラニンマスタード、イホスファミド、メフォスファミド(ifosphamidemefosphamide)、ペルホスファミド、トロホスファミド、カルムスチン(trophosphamide carmustine)、セムスチン、エポチロンA~E、トミュデックス、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アムサクリン、リン酸エトポシド、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ペントスタチン、フロクシウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ピポブロマン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、mTor、上皮増殖因子受容体(EGFR)、および線維芽細胞増殖因子(FGF)ならびにそれらの組合せが挙げられ、これらは、特定の腫瘍またはがんにとって適切な標準的治療に基づき当業者には容易に明らかになる。
特定の実施形態において、化学療法剤は、シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、およびそれらの組合せ(例えば、シスプラチンおよびビノレルビン;シスプラチンおよびカルボプラチン;ビノレルビンおよびカルボプラチン;シスプラチン、ビノレルビン、およびカルボプラチン)からなる群から選択される。
【0104】
一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていない腫瘍と比べて、腫瘍成長を低減させるのに十分な量で投与される。医薬組成物は、少なくとも1種の化学療法剤で処置されているが医薬組成物で処置されていないがん細胞と比べて、腫瘍成長を、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低減させることができる。
【0105】
【表2-1】
【表2-2】
【0106】
NM_006164.5(配列番号7)
NP_006155.2(配列番号8)
【0107】
[実施例]
[実施例1]
CRISPR指向遺伝子編集アプローチを使用したNRF2ノックアウトクローンA549細胞株の作製
方法
細胞培養条件
ヒト肺癌A549細胞をATCC(Manassas、VA、USA)から購入した。A549は十分に確立された非小細胞肺腺癌細胞株であり、KEAP1のKelchドメインに突然変異を有し、NRF2の過剰発現を引き起こす。これは、多くの場合、がんに対する新規治療剤を発見するための標準物として使用されている。製造業者のプロトコールに従って細胞を解凍し、10%FBS(ATCC、Manassas、VA、USA)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(ATCC、Manassas、VA、USA)を補充したF-12K培地(ATCC、Manassas、VA、USA)中で増殖させた。細胞を培養し、2×103から1×104生存細胞/cm2の間の濃度に維持し、37℃および5%CO2でインキュベートした。血球計を使用して細胞数を決定した。
【0108】
ガイドRNA設計および構築
NRF2遺伝子コード配列をZhang研究室のオンラインジェネレーター(crispr.mit.edu/)に入力し、最も高いスコアを有するgRNAを、gRNA1(5'-UCGAUGUGACCGGGAAUAUCAGG)(配列番号2)として選択し、また、以前に検証されたNRF2を標的化するgRNA(Sanjanaら、2014、Nature Methods 11(8); 783-784)を、gRNA2(5'-UGAUUUAGACGGUAUGCAACAGG)(配列番号4)として選択した。NRF2のNESドメインを無効にするようにCRISPR指向遺伝子編集システムを設計し、これにより、タンパク質が核に再び侵入し、転写因子を活性化する能力を低減させる。単一ステップの消化-ライゲーションによる標準的なクローニング法を使用してCRISPRプラスミドをクローニングした。適切な5'オーバーハングを有するCRISPRガイド配列を、BbsIで消化したpX458バックボーンベクター(プラスミド48138;Addgene)、ヒトコドン最適化pSpCas9およびAddgene(addgene.org)から購入した2AeGFPを有するキメラガイドRNA発現プラスミドにクローニングした。ガイドRNA配列は構成的U6プロモーターの転写調節下にあった。図1Aを参照のこと。構築後、サンガー配列決定によってプラスミドを検証した(Genewiz Inc.、South Plainfield、NJ、USA)。
【0109】
トランスフェクションおよびクローン単離
A549細胞を、4mmギャップのキュベット(BioExpress、Kaysville、UT、USA)において5×105細胞/100μlの濃度でトランスフェクトした。NRF2標的化pX458構築物を、Bio-Rad Gene Pulser XCell Electroporation System(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA、USA)を使用してA549細胞内に別々にエレクトロポレーションした(250V、LV、13msパルス長、2パルス、1秒間隔)。次いで細胞を、37℃で72時間、完全増殖培地を含む6ウェルプレート内に回収した後、選別した。FACS AriaIIフローサイトメーター(BD Biosciences, Franklin Lakes、NJ、USA)を用いてA549を96ウェルプレート内に選別し、個々のeGFP+細胞を各ウェルに選別した。クローンを増殖させ、個々のクローンがコンフルエンスに達すると、より大きなプレートに移し、細胞が6ウェルプレート内でコンフルエンス(1×106細胞/mL)に達した場合にDNA単離を行った。
【0110】
配列決定および配列解析
CRISPR/Cas9が標的としたA549クローンを、Amplitaq Gold Fast PCR Master Mix (Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用してPCR増幅させた(フォワード5'-gtagtggtgccttagagcttactcatcc(配列番号5)、リバース5'-ctagcatgggcagtactcatgactaag(配列番号6))。簡潔に述べると、テンプレートDNA、プライマー、水およびマスターミックスを合わせ、サイクルした:95℃で10分間、(96℃で3秒間、60℃で3秒間、68℃で5秒間)×35サイクル、および72℃で10秒間。402bp産物を精製し(Qiagen、Hilden、ドイツ)、フォワードPCRプライマーを使用してサンガー配列決定した。個々のA549細胞クローンのクローン対立遺伝子解析を、ソフトウェアプログラム、Tracking of Indels by DEcomposition(TIDE)によって解析して、CRISPR/Cas9活性後の複数のピークがある分解産物内の個々のサブ配列を決定した。Brinkmanら、Nucleic Acids Res. 42、e168--(2014)。TIDE解析は、配列分解、クローンのインデルパターン、および各クローンのインデルパターンの相対比を視覚的に提供し、各対立遺伝子プロファイルを決定する際の中間ステップとして機能する。TIDEによって提供されるインデルパターンおよびそれらの相対比を利用することによって、対照トレース配列およびクローントレース配列を手動で整列させ、クローンの各対立遺伝子のインデルパターンの視覚化を可能にした。
【0111】
ウェスタンブロット解析
プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する標準的なRIPA溶解緩衝剤を使用してA549細胞株から全細胞タンパク質を収集した。BCA Protein Assay Kit(Pierce、Rockford、IL、USA)を使用してタンパク質濃度を決定した。試料を95℃で10分間加熱し、次いで10%ポリアクリルアミドゲル上で100Vにて90分間SDS-PAGEに供した。ゲルを100Vにて1時間、ニトロセルロース膜に移した。ブロットを3%BSAに入れ、4℃にてシェーカーで一晩ブロックした。一次抗体インキュベーションを、NRF2(ホスホS40)(1:10,000、Abcam ab76026)について4℃にてシェーカーで一晩、およびベータアクチン(1:8,000、Abcam ab8226)について室温にて1時間実施し、二次抗体(Jackson Immunoresearch、West Grove、PA、USA)インキュベーションを全て、1:10,000希釈で室温にて1時間行った。Super signal west dura extended duration ECL(Pierce)を使用して化学発光によってタンパク質バンドを可視化し、LiCor Odyssey FCで検出した。全てのバンドを、Image Studioソフトウェアシステムで濃度測定のために定量した。
【0112】
FACS解析による細胞増殖
A549細胞株をトリプシン処理し、50~70%コンフルエンシーで収集した。細胞をボルテックスしながら氷冷70%エタノールを滴下して固定し、4℃で最低72時間インキュベートした。固定した細胞をペレット化し、PBSで2回洗浄し、続いて氷上で30分間インキュベートした。製造業者のプロトコール(BD Biosciences)に示されるように、Alexa Fluor 647 Mouse anti-Ki67(561126、BD Biosciences)の106細胞当たり20μlを細胞に添加し、30分間インキュベートした。対照は、同じ希釈率でAlexa Fluor 647 Mouse IgG1 kアイソタイプ対照(557714、BD Biosciences)を含んだ。インキュベーション後、細胞を2回洗浄し、染色緩衝剤(1×PBS中の5%BSA)中に再懸濁した。FACS AriaIIフローサイトメーターにより細胞を解析し、FlowJoソフトウェアを使用して処理した。
【0113】
結果
ストラテジーは、CRISPR指向遺伝子編集を使用して、A549肺癌細胞におけるNRF2対立遺伝子を機能的に無効にすることであった。遺伝子編集技術が標的遺伝子をノックアウトすることができるという事実を確立することは重要である。以下に、A549細胞におけるNRF2を無効にするために使用される遺伝子ツールを生成するために利用したストラテジーの詳細を提供する。図1Aは、NRF2を標的とし、ノックアウトするように設計されたCRISPR/Cas9機構を示す。パネルの上部に沿って伸びている灰色のバーはNRF2のゲノム配列を表し、赤色のブロックはコード領域を示す。青色の括弧は、各CRISPR/Cas9がDNAを切断するように設計される相対的な領域を示す。遺伝子の完全な除去を確実にするために全ての既知のアイソフォームを含有する領域においてNRF2の4つのエクソンを標的とするように各gRNAを設計した(ncbi.nlm.nih.gov/gene/4780)。Broad Institute's CRISPR Designソフトウェア(crispr.mit.edu/)に従って、最も高いスコアを有するgRNAをgRNA1として選択し、以前に検証されたgRNA(Sanjanaら、bioRxiv 006726 (2014). doi:10.1101/006726)をgRNA2として選択した。crRNAオリゴをアニーリングし、それらを、各パネルに示されるように、BbsIで消化したプラスミドpx458(Addgene#48138)における相補的切断部位オーバーハングにライゲーションすることによってgRNAを組み立てた。
【0114】
図1Bは、KEAP1結合ドメイン、トランス活性化ドメイン、リプレッサー結合ドメイン、β-TrCP結合ドメイン、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含むNRF2タンパク質の機能ドメインを示す。Pandeyら、Crit. Rev. Oncol. Hematol. 116、89-98 (2017);Jungら、Molecular Mechanisms to Therapeutic Opportunities. 26、57-68 (2018);Namaniら、Biochim. Biophys. Acta - Mol. Cell Res. 1843、1875-1885 (2014)。Neh5ドメインはエクソン4および5におよび、NRF2の細胞内局在化を調節する、酸化還元感受性の核外輸送シグナル(NES)を含有する。Jungら、Molecular Mechanisms to Therapeutic Opportunities. 26、57-68 (2018)。理論的には、Neh4およびNeh5ドメイン内の遺伝子/タンパク質を破壊することにより、NESがシフトし、機能しなくなる。図1Cは、gRNA1またはgRNA2のいずれかを含有するpX458のA549肺腺癌細胞へのトランスフェクションから始まり、個々のクローン集団の対立遺伝子解析の最終ステップまで進行する実験ワークフローを示す。重要なことに、プラスミドpX458はeGFP受容体を含有し、これにより、FACSによる個々のトランスフェクト細胞の単離が可能になる。全ての標的化集団におけるCRISPR指向NRF2ノックアウトの効率を評価するために、eGFP+細胞を集団として単離し、gRNA1またはgRNA2 pX458のいずれかをトランスフェクトした細胞内のNRF2遺伝子座における遺伝子破壊の程度を決定した。選別した集団をサンガー配列決定し、得られたトレースファイルを、遺伝子破壊のマーカーであるインデルの存在について解析した。これらのデータは、Tracking of Indels by Decomposition (TIDE)として知られているプログラムを使用して得た。Brinkmanら、Nucleic Acids Res. 42、e168--(2014)。図2Aに表すように、両方のCRISPR/Cas9設計は、TIDE結果によって明らかなようにかなりの量のインデルを生じ、高度のNRF2破壊を示した。これらの結果は、このアプローチが有効であることを立証し、NRF2の破壊がCRISPR/Cas9によりA549細胞において可能であることを示している。
【0115】
次に、この場合に、個々の細胞をFACS選別によって単離して単一細胞のクローン増殖を得たことを除いて同じ実験を実行した。単離した単一細胞を十分な量まで増殖させてから、各クローン集団の半分を凍結保存し、上記と同じストラテジーおよび方法を使用して対立遺伝子配列解析を残りの半分に対して実施した。図2Bは、後の実験および解析のための合計で9つ(図の補足1)から選択した、gRNA1およびgRNA2トランスフェクト細胞のそれぞれに由来する、2つのクローン、1-40および2-11の対立遺伝子解析を示す。ATCCから得たA549細胞のこの親ロットから生成した単離したクローンの全てが、NRF2遺伝子座において3つの対立遺伝子を有することがすぐに明らかになった。赤色の柱は、存在するインデルサイズおよびそのクローン内のそれらのそれぞれの代表的な比率を示す。クローン1-40は、0bpのインデルに対して2:1の比で9bpの欠失を含有し、NRF2のヘテロ接合性KOを明らかにしている。クローン2-11は、1:1:1の比で10bpの欠失、6bpの欠失および1bpの欠失、NRF2のホモ接合性KOを含有する。両方のクローンの各対立遺伝子における特定のインデルパターンを、ガイドとしてTIDEインデルデータを用いて、配列トレースファイルを野生型配列に手動で整列させることによって特徴付けた。便宜上、本発明者らは、クローン1-40をヘテロ接合性ノックアウトおよびクローン2-11をホモ接合性ノックアウトと称する。
【0116】
NESの欠如によって影響を受け得る基本的な細胞表現型は、細胞が培養中に増殖する速度である。Murakamiら、Free Radic. Biol. Med. 88、168-178 (2015);Mitsuishiら、Cancer Cell 22、66-79 (2012)。野生型A549細胞は典型的に24時間の倍加時間を有するが、クローン1-40、しかしより明確には2-11は、クローン増殖プロセスにおいて、より遅く増殖することがわかった(データは示さず)。この観察により、本発明者らは、Ki67に対する抗体で細胞を染色し、続いてFACS解析を行うことによってクローン1-40および2-11の増殖プロファイルをさらに調査することにした。Ki67は活発に増殖している細胞で発現する核抗原である。したがって、細胞培養において見られる増殖特性に基づいてKi67発現の減少を予測することができる。エタノール固定細胞を、Alexa Fluor 647抗Ki67で染色し、FACSにより解析し、ヒストグラムとしてプロットした(左側のパネル、図3A)。FlowJoで提供され、ゲートされたマウスIgG1 κアイソタイプ対照を使用して非特異的結合を制御した。x軸は、アロフィコシアニン(APC)がコンジュゲートした抗Ki67の蛍光強度を表し、その左へのシフトをクローン2-11において見ることができ、これは、細胞増殖の減少と相関する蛍光強度の減少を示す。
【0117】
2-11細胞の増殖の減少は顕著であったが、1-40細胞の増殖の減少はそれほど大きくはなかった。したがって、本発明者らは、2-11細胞のみを使用してNRF2ノックアウトの効果に関する本発明者らの研究を継続することを決定した。なぜなら、CRISPR指向遺伝子編集が、これらの細胞において、より完全に機能を破壊することに成功したからである。細胞培養における増殖特性およびFACS解析に基づいて、野生型細胞と比較して2-11細胞の増殖を評価するためにMTSアッセイを利用した(右側パネル、図3A)。クローン2-11の対立遺伝子解析により、NRF2が遺伝的に無効になっていることが示され、ベータ-アクチンに正規化して、野生型A549細胞と比較した場合、クローン2-11は約68%のノックダウンを示した(図3B)。クローン2-11における3つの対立遺伝子のうちの1つは機能的リーディングフレームを維持しているので、この結果は予想外ではない。遺伝子解析により、NESを含有するNeh5ドメインが破壊されたことが示された。したがって、本発明者らは、機能的ノックアウトとして特定したこのクローンを特徴付けることを進めた。
【0118】
[実施例2]
化学感度はNRF2ノックアウトA549細胞株において増加する
方法
MTS細胞増殖アッセイ
CellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay(Promega、Madison、WI)を使用して細胞生存率を評価した。A549細胞株をウェル当たり2×103細胞でプレーティングし、24時間培養した。次いで細胞培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、次いでMTS試薬に3時間曝露した。増殖細胞による3時間のMTS生物還元後、Infinite 2000 PROマイクロプレートリーダー(Tecan、Mannadorf、スイス)において450nmフィルターを使用してホルマザン生成物の吸光度を測定した。CellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assayを使用して薬物曝露後の細胞生存率を評価した。A549細胞株をウェル当たり2×103細胞でプレーティングし、24時間培養した。次いで細胞を、シスプラチン、カルボプラチン、またはシスプラチンとビノレルビンの組合せで3日間処理した。次いで細胞培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、次いでMTS試薬に3時間曝露した。増殖細胞による3時間のMTS生物還元後、Infinite 2000 PROマイクロプレートリーダーにおいて450nmフィルターを使用してホルマザン生成物の吸光度を測定した。
【0119】
結果
遺伝子操作されたNRF2欠損A549細胞株の化学感度を調べるために、図4に示したMTSアッセイを利用した。4Aでは、野生型および2-11 A549細胞を漸増投薬量のシスプラチンに曝露した。72時間後、シスプラチンを除去し、MTS試薬を3時間添加し、その時間後、集団をホルマザンの吸光度について測定した。このデータにより、予測されるように、野生型A549細胞が高投薬量のシスプラチンに耐性があることが示される。実際に、野生型A549は、増殖が5μMおよび10μMのそれぞれの最終濃度で悪影響を受ける前に3μMまでのシスプラチンで細胞増殖のわずかな増加を示す。遺伝子操作されたノックアウト細胞株では、本発明者らは、用量依存的に化学感度の増加を明確に観察する。2-11ホモ接合性ノックアウト細胞は、1μM以上の濃度で増殖を喪失し、最も低い用量でさえも明らかな感度の増加を示す。したがって、本発明者らは、ヘテロ接合性細胞株が、少なくとも1つの生存可能な遺伝子コピーを含有しているため、ホモ接合性ノックアウト細胞よりシスプラチンに対して強い耐性を示しているという点で、ある種の遺伝子量効果を観察することができる。図4では、本発明者らは、ビノレルビンが5μMの最終濃度で添加されたことを除いて、パネルAに記載されるものと同じ漸増量のシスプラチンに曝露された細胞からの結果を示す。ビノレルビンは、シスプラチンおよび併用化学療法レジメンNSCLCに対する確立された手引きである。Hellmannら、Ann. Oncol. Off. J. Eur. Soc. Med. Oncol. 27、1829-35 (2016)。野生型A549細胞は再び、より低い用量でさえも増殖の劇的な増加を示し、投薬量が5μmを超えるまで感度の上昇を示さなかったが、ノックアウト細胞株(2-11)は、併用薬物療法に対して感度の増加を示した。関連する抗がん薬物であり、NSCLCのために一般的に使用される化学療法剤(Hellmannら、同書)であるカルボプラチンもまた、これらの遺伝子操作されたA549細胞における化学感度の増強について評価し、細胞死滅応答は、シスプラチンを使用した実験において観察されたものを反映した(データは示さず)。
【0120】
[実施例3]
遺伝子的に再操作されたA549細胞は、肺がんの異種移植マウスモデルにおいて、より遅い増殖速度および増加した化学感度を示した。
方法
動物実験および統計解析
本明細書に提示される動物試験は、Washington Biotechnology Inc.の動物の管理および使用委員会によって承認された動物の使用および管理プロトコール(SOP 505、SOP 520、SOP 522、SOP 1610、SOP1650)の下で、Washington Biotech Inc.、Simpsonville Marylandで実行した(AAALACにより認可されたAnimal Welfare Assurance番号A4192-01)。以前に報告された方法論を使用してヒト異種移植モデルを確立した。Kellarら、Biomed Res. Int. 2015、1-17 (2015)。雌の無胸腺ヌードマウス(Envigo、5~6週齢)をこの研究に使用した。20%のマトリゲルを含むPBS中に懸濁した約5×106細胞(野生型A549またはホモ接合性ノックアウト(クローン増殖2-11))を、各マウスの右脇腹に皮下注射した。腫瘍体積を、触知可能になってからデジタルノギスを用いて1週間に3回測定し、式、腫瘍サイズ=ab2/2(式中、「a」は2つの寸法の大きい方であり、「b」は小さい方である)を使用して計算した。腫瘍が100mm3付近の平均体積まで成長したら、A549腫瘍保有マウスまたはA549-2-11腫瘍保有マウスをそれぞれ7つの群に無作為に分け(各群についてN=5)、用量/レジメン設定試験に供した。それらを、0、3、6および9日目に(1)シスプラチン(2mg/kg)、(2)カルボプラチン(25mg/kg)、(3)シスプラチン(5mg/kg)およびビノレルビン(5mg/kg)または(4)生理食塩水の尾静脈注射により処置した(0日を投与開始日と指定する)(Sanjanaら、2014、Nature Methods 11(8); 783-784)。腫瘍体積および体重を経時的に厳密にモニタリングした。16日後、動物を屠殺し、腫瘍を除去し、体重を量り、分子解析のために処理した。マウスを安楽死させた。データは平均±SDとして表した。スチューデントのt検定および一元または二元ANOVAを使用して差の有意性を評価した。P値<0.05を有意とみなした。
【0121】
免疫蛍光染色
A549異種移植片を16日目に切除し、液体窒素中で急速凍結し、使用するまで-80℃に保存した。全ての免疫蛍光染色は、以前に記載されているように実施した。Wangら、Investig. Opthalmology Vis. Sci. 58、3896 (2017)。簡潔に述べると、腫瘍を、Optimum Cutting Temperature(Tissue Tek、Torrance、CA、USA)に包埋し、Leica CM3050クライオスタット(Leica Microsystems、Buffalo Grove、IL、USA)を用いて16μm厚の切片を得、スライドに載せた。スライドを固定し、ブロッキング緩衝剤と室温で1時間インキュベートした。次いで切片を一次抗体とインキュベートし(より詳細については表3を参照のこと)、次いでPBS中で洗浄し、Alexa Fluor 488で標識した二次抗体(1:200希釈、Invitrogen、Grand Island、NY、USA)とRTで1時間インキュベートした。切片をPBS中で洗浄し、次いでDAPI(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)と共にSlowFade Gold褪色防止用封入剤で封入した。Zeiss Observer.Z1顕微鏡(Carl Zeiss, Inc.、Gottingen、ドイツ)を用いて画像を得た。製造業者の使用説明書に従って、In Situ細胞死検出キット、フルオレセイン(Roche、Base、スイス)を用いてTUNELアッセイを行った。
【0122】
【表3】
【0123】
免疫細胞化学および画像定量化
A549細胞株を8ウェルチャンバスライド(LabTek II)に播種し、24時間増殖させた。2μMのシスプラチンに48時間曝露した後、細胞をPBSで洗浄し、固定し、室温で振盪しながら4%パラホルムアルデヒド+0.1% Triton X-100で45分間透過処理した。細胞をPBSで3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(1×PBS中で作製した5%正常ヤギ血清+0.3% Triton X-100)で室温にて2時間ブロックした。ブロックした後、細胞を、抗体希釈緩衝剤(1×PBS中で作製した1% BSA+0.3% Triton X-100)中で作製した一次抗体(NRF2 1:500、Abcam ab62352)と、加湿チャンバ内で4℃にて一晩インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、1:200の濃度で抗体希釈緩衝剤中で作製したコンジュゲートした二次抗体(ヤギ抗ウサギAlexafluor 594、Thermo Fisher A-11037)とインキュベートした。対照は同じ希釈率で二次抗体のみの染色を含んだ。細胞を暗所で室温にて1時間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、チャンバをスライドガラスから分離した。このステップの直後に、DAPI(S36938、Invitrogen)を含む5μlのSlow Fade Gold褪色防止用試薬をスライドの各切片に添加し、カバースリップを付加し、密封した。Zeiss Axio蛍光観測器でスライドを画像化した。Z1顕微鏡および画像をAxioVisionソフトウェアで処理した。ランダムフィールドを画像化し、細胞/フィールドの総数をカウントした。染色なし(なし)、核染色、または細胞質染色について各フィールドを定量した。2人が独立して画像をカウントし、定量し、値を平均化した。各カテゴリーにおいて解析した全細胞に対するNRF2陽性染色細胞のパーセントをグラフにプロットした。エラーバーは±SEMを表し、*は、0.05未満である有意なp値を示す(スチューデントのT検定)。
【0124】
結果
CRISPR/Cas9媒介NRF2ノックダウンは、in vitroでA549細胞の化学感度を増加させたので、本発明者らは、異種移植マウスモデルにおける遺伝子編集によって駆動される化学感度の増強を調べる。ホモ接合性ノックアウトA549細胞(クローン2-11)および野生型A549細胞(対象群)をヌードマウスの背部に移植し、細胞(細胞株当たり5×106)を、約100mm3の直径を有する腫瘍に増殖させた。ワークフローを図5Aに示す。ストラテジーの一環として、化学療法剤を、図に示すように、尾静脈注射を介して、0日、3日、6日および9日目のそれぞれに添加した。体積および増殖による腫瘍成長を、0日目の化学療法剤の最初の注射の時から開始して16日間にわたって測定し、その結果を図5B、5Cおよび5Dに提示する。
【0125】
図5Bは16日間にわたる腫瘍成長の結果を示す。予想通り、生理食塩水または2mg/kgのシスプラチンのいずれかで処置した野生型A549細胞の増殖は薬物によって阻害されず、A549細胞のシスプラチンに対する十分に確立された耐性が確認された。NRF2ノックアウト異種移植片はマウスにおいて増殖したが、シスプラチンを添加しなくても速度は低下した。最も劇的な効果は、NRF2ノックアウト細胞を16日間にわたってシスプラチンで処置する、併用アプローチを行った場合に見られる。この場合、移植された細胞の増殖は停止し、腫瘍サイズは実験の全過程を通じて同じレベルに維持され、これは、細胞培養において行った実験から得られた本発明者らの以前の結果(図4)を裏付ける。
【0126】
図5Cは、同じ異種移植マウス実験プロトコールに従って、一定濃度の5mg/kgのシスプラチンおよび5mg/kgのビノレルビンを組み合わせて使用した場合の同様の結果を示す。興味深いことに、野生型A549細胞は、この薬物の組合せに対して、より感度が高いように見える。この観測は、ビノレルビンがA549細胞のシスプラチン死滅に及ぼす相乗効果を反映している可能性があり、本発明者らの実験システムが以前に知られている転帰を再現する十分な内部制御を提供する。再び、ホモ接合性ノックアウト2-11細胞株は、薬物処置の不在下で野生型細胞より遅い速度で増殖するが、NRF2ノックアウトおよび薬物処置の組合せは、16日間にわたって腫瘍成長の停止および腫瘍サイズの維持をもたらす。同じ応答が、25mg/kgのカルボプラチンを尾静脈に注射する、図5Dに提示したデータにおいて再び見られ、上記と同じ減少した増殖および成長の傾向が再現される。これらの結果は、化学療法における遺伝子編集の組合せが、細胞培養および異種移植マウスモデルの両方でA549細胞において増強した化学感度を生じることを示唆している。
【0127】
A549腫瘍増殖の解析
代表的な腫瘍試料を、4つの群(生理食塩水による野生型A549、シスプラチン2mg/kgによる野生型A549、生理食塩水によるノックアウト2-11、シスプラチン2mg/kgによるノックアウト2-11)(各群についてN=3)から採取した。図5Eに示すように、4つの摘出した腫瘍群の間の明確な差が明らかである。上記のように、野生型細胞から生じた腫瘍は、シスプラチンの不在下または存在下で異種移植マウスモデル内で積極的に増殖する。NRF2ノックアウト細胞株は薬物の不在下でさえも野生型よりもゆっくり増殖する。しかし、最小の腫瘍が、シスプラチンで処置したNRF2ノックアウト細胞を有するマウスからの全ての試料において観察される。
【0128】
A549 2-11ノックアウト異種移植腫瘍は、それらの野生型の対応物と比較して小さい腫瘍体積を示したので、本発明者らは、細胞周期の全ての活動期(G1、S、G2および有糸分裂)の間に存在する、増殖についての周知のマーカーであるKi67を使用して腫瘍内の増殖活性を調べることを望んだ。Scholzenら、J. Cell. Physiol. 182、311-322 (2000)。図6に示すように、生理食塩水のみで処置したA549細胞内で、豊富なKi67陽性細胞を観察し、シスプラチンで処置したマウスから摘出した腫瘍は同様のレベルのKi67陽性細胞を産生した。2-11細胞から生じた腫瘍の場合、Ki67染色は著しく減少し、シスプラチンによる処置はさらに低いレベルのKi67をもたらし、シスプラチンが、さらにもっと増殖を遅くすることによってKO2-11細胞の応答を増強することを示唆している。
【0129】
まとめると、蓄積されたデータは、機能的ノックアウトとしてのクローン2-11についての強力な事例を構成している。なぜなら、これらの細胞は、野生型の対応物と比較して化学療法に対して、より高い感度を可能にするからである。本発明者らは、細胞培養およびマウスの両方において観察されたこの表現型についてのいくつかの説明を提供しようとした。NRF2のNeh5ドメインに位置するNES領域の破壊の効果を、免疫細胞化学を使用してさらに特徴付けた。野生型A549およびクローン2-11細胞を2μmのシスプラチンで前処理して、NRF2発現を刺激した。各細胞試料のランダムフィールドを特定し、画像化し、総細胞数を決定した。以下の観察された結果に基づいて細胞を定量した:NRF2の染色なし、核染色のみまたは細胞質染色のみ。図7Aは、データセットに組み込んだ少なくとも10の視野でのいくつかの実験の複数の複製の平均定量化を表す。本発明者らは、野生型A549とクローン2-11細胞との間でそれぞれ、NRF2の核局在化の程度に統計的に有意な差を観察した。野生型細胞では、NRF2の大部分は核内に位置しているが、機能的ノックアウト細胞株(2-11)では、図7Bに見られるように、NRF2は主に細胞質内に見出される。シスプラチンにより誘導した野生型およびノックアウト細胞の画像(図7B)は図7Aに示したデータを反映している。
【0130】
細胞株2-11は、漸増投薬量のシスプラチンに対して高い感度、および比較的程度は小さいが、漸増濃度のカルボプラチンに対する応答を示した。シスプラチンをビノレルビンと組み合わせると、同様に高い感度が観察される。標準的なMTSアッセイによって細胞死滅を決定した。次いで、ホモ接合性ノックアウト細胞株2-11の化学感度を、細胞をヌードマウスの背部に移植し、16日間増殖させた、異種移植マウスモデルにおいて評価した。その後、腫瘍が約100mm3に成長してから様々な日後におけるシスプラチン、カルボプラチンまたはシスプラチンとビノレルビンの尾静脈注射により、次の16日間にわたって腫瘍増殖の低減がもたらされた。興味深いことに、細胞株2-11のみは、化学療法薬を添加しなくても異種移植マウスモデルにおいて、より遅い成長表現型を示した。この結果は、NRF2遺伝子自体の破壊が増殖活性をわずかに低減させるが、シスプラチン、カルボプラチンまたはシスプラチン/ビノレルビンの添加が腫瘍細胞増殖の有意な低減をもたらすことを示す。
【0131】
シスプラチンまたは生理食塩水のいずれかで処置した野生型A549細胞またはクローンノックアウト細胞を移植したマウスから単離した腫瘍を切片化し、細胞増殖のために一般的に使用されているマーカーであるKi67について染色した。Ki67は細胞増殖と厳密に関連しており、細胞周期の全ての活動期の間に存在するが、休止細胞には存在しない。本発明者らの結果は、異種移植モデルにおいて成長させた処置または未処置の野生型A549細胞においてKi67レベルに差がないことを示唆しており、シスプラチンに対するA549細胞の周知の耐性を再び反映している。対照的に、シスプラチンで処置したNRF2ノックアウト細胞におけるKi67レベルは、野生型の対応物と比較して実質的に低いことが見出された。これらの結果は、NRF2ノックアウト細胞を移植したマウスにおいて見出される腫瘍の低減したサイズ、CRISPR指向遺伝子編集の機能としての腫瘍細胞増殖の低減についてのもっともらしい説明を提供する。これらの結果は、シスプラチンにより処置した細胞が、濃度の増加に応じてG0/G1の境で停止したことを報告した、Velmaら(Biomark Insights 11、BMI.S39445、2016)の結果を反映する。シスプラチンは、G0とG1との間の境界に影響を及ぼし、増殖または細胞周期の進行の遅延を低減させる。これらのデータは、A549細胞におけるNRF2の破壊が増殖表現型の低減をもたらすことを確かに示し、16日目に解析された腫瘍のアポトーシスの出現を排除することができる。アポトーシスは、実験の初期に行われたシスプラチンの4つの処置のいずれかの導入の直後に明らかになり得る可能性がある。
【0132】
ストレッサーで刺激されると、機能的NRF2は核に移行し、そこでARE(抗酸化応答エレメント)配列に結合し、種々の下流の細胞保護遺伝子の転写を活性化する。NRF2の核への移行(紫色として表す)は、野生型A549細胞の画像で見ることができる(図7B)。しかしながら、また図7Bに見られるように、クローン2-11におけるNRF2の遺伝子ノックアウトはNRF2機能の喪失を引き起こし、タンパク質の移行を停止させ、代わりに細胞質に残っているように見える。機能的ノックアウトは、CRISPRが、臨床用途、特にがん療法へと進むと、価値を有する可能性がある。
【0133】
本発明者らの結果は、遺伝子編集活性および化学療法の組合せが相乗的に作用して腫瘍細胞成長を低減させるという概念の支持を提供している。本発明者らの事例では、遺伝子のレベルでNRFを無効にするためのCRISPR/Cas9によるA549細胞の処置がまた、より低い投薬量の複数の化学療法剤で効果的な死滅をもたらした。
【0134】
[実施例4]
黒色腫、ESC、HNSCC、および乳がんのin vitroおよび異種移植マウスモデルにおける化学感度(予言的)
上記の実施例の方法に従って、CRISPR/Cas9媒介NRF2ノックダウンの効果を、in vitroおよび異種移植マウスモデルの両方においてさらなるがんについて評価する。例えば、上記の実施例1の方法に従って、gRNA1配列(5'-UCGAUGUGACCGGGAAUAUCAGG)(配列番号2)またはgRNA2配列(5'-UGAUUUAGACGGUAUGCAACAGG)(配列番号4)を使用して、ヒト悪性黒色腫A375細胞株(Wangら、2018、Oxidative Medicine and Cellular Longevity Volume 2018、Article ID 9742154)、食道扁平上皮がん(ESC)細胞株KYSE-30、-50、-70、-110、-140、-150、-170、-180、-220、および270(Shibataら、2015、Neoplasia 13:864)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)HSC-4細胞株(Kitamura & Motohashi、2018、Cancer Science 109:900)、ならびに乳がん(腺癌)細胞株MCF7(Kangら、2014、Scientific Reports 4:7201)のNRF2ノックダウン細胞株を生成する。遺伝子操作されたNRF2欠損がん細胞株の化学感度を、上記の実施例2に提供した方法に従って、in vitroで対応する野生型がん細胞株の化学感度と比較する。各細胞株について、以下の化学療法剤に対する化学感度を以下の表4に示すように評価する。
【0135】
【表4】
【0136】
上記の表4に示すように野生型およびNRF2欠損がん細胞株をヌードマウスに移植し、上記の実施例3に記載したように化学感度を評価する。
【0137】
[実施例5]
RF2 gRNA設計
ppx458プラスミドベクター
エクソン4 gRNA1-5' TCGATGTGACCGGGAATATCAGG 3'(配列番号9)
エクソン4 gRNA2-5' TGATTTAGACGGTATGCAACAGG 3'(配列番号10)
NRF2遺伝子コード配列をZhang研究室のオンラインジェネレーター(http://crispr.mit.edu/)に入力し、最も高いスコアを有するgRNAを、gRNA1(5' TCGATGTGACCGGGAATATCAGG 3'(配列番号9))として選択し、以前に検証されたNRF2を標的化するgRNAも、gRNA2(5' TGATTTAGACGGTATGCAACAGG 3'(配列番号10))として選択した(1)。単一ステップの消化-ライゲーションによる標準的なクローニング法を使用してCRISPRプラスミドをクローニングした。適切な5'オーバーハングを有するCRISPRガイド配列を、BbsIで消化したpx458バックボーンベクター(プラスミド48138、Addgene)にクローニングした。これらの2つのプラスミドを別々にトランスフェクトして、A549細胞株においてNRF2をノックアウトし、切断部位に小さなインデルを有する、細胞株1-40および2-11を作製した(2)。
【0138】
両方のプラスミド構築物、gRNA1およびgRNA2を、NRF2を標的化するA549細胞株においてトランスフェクトして(リポフェクション)、103塩基対断片を切断し、除去した。トランスフェクトした細胞を単一細胞に選別し、増殖させた。PCRおよびゲル電気泳動を使用してクローン集団を最初にスクリーニングして、アンプリコンサイズの変化を視覚的に解析した。スクリーニングしてから、NRF2のエクソン4にわたって配列決定するようにDNAを送信した。図8はインデル形成について解析した10個のクローンを示す。
【0139】
エクソン3 gRNA3-5' AAGTACAAAGCATCTGATTTGGG 3'(配列番号11)
エクソン3 gRNA4-5' AGCATCTGATTTGGGAATGTGGG 3'(配列番号12)
以前に記載した実験をエクソン4内で切断するように設計した。NRF2の完全なノックアウトを確実にするために、gRNA3(5' AAGTACAAAGCATCTGATTTGGG 3'(配列番号11))およびgRNA4(5' AGCATCTGATTTGGGAATGTGGG 3'(配列番号12))(NRF2配列をBenchlingに入力し、gRNAを戦略的に選択した)を、px458バックボーンベクターにクローニングしてエクソン3内で切断するように設計した。新たに設計したgRNAを、以前に設計したgRNA1およびgRNA2と併用して使用してエクソン3からエクソン4までを切断する。gRNA4は、782塩基を除去するgRNA1と使用するように設計した。gRNA3は、877塩基を除去するgRNA2と使用するように設計した。これらの組合せの両方は、エクソン3およびエクソン4の大部分の喪失を生じ、エクソン3の最初およびエクソン4の最後のみを残す。(Sanjanaら、Nat. Methods 11:783 (2014);Bialkら、Mol. Ther. - Oncolytics 11:75-89 (2018))
【0140】
Cas9 RNP
エクソン2 gRNA-5' TGGATTTGATTGACATACTTTGG 3'(NRF2 KOについてのNeh2)(配列番号13)
エクソン5 gRNA-5' GCTTCTTACTTTTGGGAACAAGG 3'(NRF2 KOについてのNeh3)(配列番号14)
tracrRNAおよびCas9タンパク質と複合化するように以下のgRNAを設計してリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成した。BenchlingにおいてNRF2配列を使用してgRNAを設計した。
【0141】
エクソン2 gRNA(5' TGGATTTGATTGACATACTTTGG 3'(配列番号13))をエクソン2におけるNeh2の最初で切断するように設計してNRF2をノックアウトした。RNPをA549細胞にトランスフェクトし、様々な時点で収集して、図9に示すようにインデル形成(TIDE解析)を評価した。細胞をFACSによって単一細胞に選別してクローン集団を得て、NRF2 KOの範囲を決定することができる。
【0142】
エクソン5 gRNA(5' GCTTCTTACTTTTGGGAACAAGG 3'(配列番号14))を、エクソン5におけるNeh3の最後で切断し、エクソン2 gRNAと併用して使用するように設計した。両方のgRNAを使用することによって、NRF2遺伝子全体を除去する(3429bp)。両方のRNP複合体を細胞にトランスフェクトし、FACSによって単一細胞に選別した。クローン集団をNRF2 KOについて解析した。
【0143】
Cas12a RNP
エクソン2 gRNA-5' TTTGATTGACATACTTTGGAGGCAA 3'(NRF2 KOについてのNeh2)(配列番号15)
エクソン5 gRNA-5' TTTTCCTTGTTCCCAAAAGTAAGAA 3'(NRF2 KOについてのNeh3)(配列番号16)
tracrRNAおよびCas12aタンパク質と複合体化するように以下のgRNAを設計してリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成した。BenchlingにおいてNRF2配列を使用してgRNAを設計した。
【0144】
エクソン2 gRNA(5' TTTGATTGACATACTTTGGAGGCAA 3'(配列番号15))をエクソン2におけるNeh2の最初で切断するように設計してNRF2をノックアウトした。RNPをA549細胞にトランスフェクトし、様々な時点で収集して、図10に示すようにインデル形成を評価した。細胞をFACSによって単一細胞に選別してクローン集団を得て、NRF2 KOの範囲を決定することができる。
【0145】
エクソン5 gRNA(5' TTTTCCTTGTTCCCAAAAGTAAGAA 3'(配列番号16))を、エクソン5におけるNeh3の最後で切断し、エクソン2 gRNAと併用して使用するように設計した。両方のgRNAを使用することによって、NRF2遺伝子全体を除去する(3432bp)。両方のRNP複合体を細胞にトランスフェクトし、FACSによって単一細胞に選別した。クローン集団をNRF2 KOについて解析した。
【0146】
[実施例6]
CRISPR/Cas9を使用してR34G突然変異を標的とするために使用するgRNAは、
(下線-PAM部位、太字-R34G突然変異)である。概念実証として、リボ核タンパク質複合体(RNP)におけるR34G gRNAを使用して、in vitro切断反応を実行して識別のレベルを評価した。野生型および突然変異(R34G)NRF2配列をR34G RNP複合体とインキュベートし、切断産物をゲル電気泳動によって解析した(図11)。
【0147】
正常細胞と突然変異細胞におけるCRISPR/Cas9の特異性および特異的認識を試験するために、本発明者らは、正常なヒト気管支上皮に由来するBEAS-2B細胞株を使用して、内因性R34G突然変異を作製する。これは、Neh2ドメイン内で切断するように設計した2つのCRISPR/Cas9構築物(プラスミドベクターまたはRNP)をトランスフェクトすることによって行う。R34G突然変異を作製する単一塩基変化を除いて同じ配列で、一本鎖オリゴヌクレオチドを使用して切断する断片を置き換える。トランスフェクトした細胞を、クローン増殖およびクローン配列解析のために蛍光活性化単一細胞選別(FACS)によって選別する。突然変異は、操作された細胞株において腫瘍形成を誘導するはずである。
【0148】
確立してから、本発明者らは、新しい突然変異細胞株においてR34G標的化CRISPR/Cas9の特異性および効率を試験する。本発明者らは、R34G標的化CRISPRを新しいクローン細胞株にトランスフェクトした後、インデル形成についての切断部位を解析することによって遺伝子編集活性を評価する。R34G標的化CRISPRの特異的認識を示す対照として、本発明者らは、R34G CRISPRを野生型細胞株にトランスフェクトし、インデル形成を評価する。これらの実験後、本発明者らは種々の技法を使用して、遺伝子編集後のNRF2の機能性および細胞経路に対するCRISPR切断の効果を解析する。本発明者らは、MTSアッセイを使用して遺伝子編集前に突然変異細胞株において化学耐性のベースラインを決定して細胞生存率を測定する。本発明者らは、R34G CRISPRのトランスフェクション後、同じ実験を実行して化学療法薬に対する応答を評価する。本発明者らはウェスタンブロット解析を行って、遺伝子編集後のNRF2ノックアウトの程度を決定する。
【0149】
異種移植モデルにおいて同様のアプローチを行って、突然変異細胞と正常(すなわち非がん性)細胞におけるR34G CRISPRの特異的認識を示す。本発明者らは、確立した突然変異細胞株を使用してマウスに異種移植片を注入する。腫瘍が確立したら、R34G CRISPRを全身に送達する。腫瘍を切除し、切断部位にわたるNRF2遺伝子の全体的な遺伝子解析のために使用する。正常(すなわち、非がん性)組織を無作為にサンプリングして、オフ標的遺伝子編集の存在/不在を評価する。
【0150】
【表5-1】
【表5-2】
【0151】
[実施例7]
H1703(NCI-H1703)は、そのp53遺伝子のコドン285においてミスセンス突然変異(GAG→AAG)を有する肺扁平上皮癌細胞株である。Youら、Cancer Res. 60:1009-13 (2000)。NCI-H1703は、主にFGFR1cを発現し、FGF2で刺激するとErk1/2リン酸化を誘導することが示されている。Marekら、Mol. Pharmacol. 75:196-207 (2009)。
【0152】
Cas9 RNP
エクソン2 gRNA3-5' TGGAGGCAAGATATAGATCTTGG 3'(NRF2 KOについてのNeh2)(配列番号64)
【0153】
エクソン2 gRNA3を、NRF2遺伝子のエクソン2におけるD29コドンで切断するように設計してR34G突然変異を再作製した。gRNAをCas9タンパク質と複合体化してRNPを形成し、R34GテンプレートDNAと共に使用してDNA修復を促進し、NRF2遺伝子に目的のR34G突然変異を導入した。この実験により、さらに特徴付けられている、いくつかのクローン由来細胞株が得られた。図30は、インデル形成についてDECODRによって遺伝子解析されたクローンを示す。クローン26(G9_H1703-26)は、トランスフェクションに使用されるgRNAの切断部位において4bp欠失が先行する、ホモ接合性R34G突然変異を含有する。クローン53(G2_H1703_R34G_53)は、トランスフェクションに使用されるgRNAの切断部位において2bp欠失が先行する、ホモ接合性R34G突然変異を含有する。クローン2-31(H1703_R34G_2-31)は、トランスフェクションに使用されるgRNAの切断部位において、2つの異なるインデルパターン、対立遺伝子の一方に6bpの欠失、対立遺伝子の他方に4bpの欠失を有する2つの野生型対立遺伝子を含有する。クローン2-91(H1703_R34G_2-91)は、トランスフェクションに使用されるgRNAの切断部位において20bpの欠失を含有する野生型対立遺伝子と一緒にヘテロ接合性R34G突然変異を含有する。これらのクローンを使用して、H1703細胞株のエクソン2におけるR34G突然変異およびNRF2 KOの効果をさらに特徴付ける。
【0154】
以下のgRNAを、H1703細胞株でのさらなる実験のためにpx458プラスミドベクターにおいて、およびCas9 RNPと共に使用するように設計した。個々および両方のRNP複合体を使用して、H1703細胞株におけるNRF2 KOを特徴付けるためのNRF2 KOクローン由来細胞株を作製する。クローン由来細胞株をMTS増殖アッセイのために使用して化学感度を決定する。
【0155】
Cas9 RNP
エクソン4 gRNA1-5' TCGATGTGACCGGGAATATCAGG 3'(NRF2 KO)(配列番号66)
エクソン4 gRNA2-5' TGATTTAGACGGTATGCAACAGG 3'(NRF2 KO)(配列番号67)
【0156】
[実施例8]
(予言的)化学感度はNRF2ノックアウトH1703細胞株において増加する。
方法
MTS細胞増殖アッセイ
CellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay(Promega、Madison、WI)を使用して細胞生存率を評価する。H1703細胞株をウェル当たり2×103細胞でプレーティングし、24時間培養する。次いで細胞培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、次いでMTS試薬に3時間曝露する。増殖細胞による3時間のMTS生物還元後、ホルマザン生成物の吸光度を、Infinite 2000 PROマイクロプレートリーダー(Tecan、Mannadorf、スイス)における450nmフィルターを使用して測定する。CellTiter 96 Aqueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assayを使用して薬物曝露後の細胞生存率を評価する。H1703細胞株をウェル当たり2×103細胞でプレーティングし、24時間培養する。次いで細胞を、シスプラチン、カルボプラチン、またはシスプラチンとビノレルビンの組合せで3日間処理する。次いで細胞培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、次いでMTS試薬に3時間曝露する。増殖細胞による3時間のMTS生物還元後、ホルマザン生成物の吸光度を、Infinite 2000 PROマイクロプレートリーダーにおいて450nmフィルターを使用して測定する。
【0157】
結果
遺伝子操作されたNRF2欠損H1703細胞株の化学感度を調べるために、MTSアッセイを利用する。野生型およびNRF-2欠損H1703細胞を漸増投薬量のシスプラチンに曝露する。72時間後、シスプラチンを除去し、MTS試薬を3時間添加し、その時間後、集団をホルマザンの吸光度について測定する。データは、野生型H1703細胞が高投薬量のシスプラチンに対して耐性があることを示す。遺伝子操作されたノックアウト細胞株では、本発明者らは、用量依存的に化学感度の増加を観察する。NRF2ノックアウト細胞は高い感度を示す。したがって、本発明者らは、ヘテロ接合性細胞株が、少なくとも1つの生存可能な遺伝子コピーを含有するので、ホモ接合性ノックアウト細胞よりシスプラチンに対して高い耐性を示すという、ある種の遺伝子量効果を観察することができる。
【0158】
[実施例9]
単一ガイドRNAをSynthego(Menlo Park、CA)に注文した。IDT製のALT-R SpCas9を使用した。
【0159】
【0160】
H1703親細胞をトランスフェクション前に48時間培養し、トランスフェクションの日に約60~80%コンフルエントにした。100ul当たり106細胞をトランスフェクションごとに使用し、各条件を2連で実行した。
【0161】
各CRISPR/Cas9 RNPを、5:1の比のsgRNAとCas9で複合体化した。250pmolのsgRNAを、2連で50pmolのCas9と室温で複合体化した。次いでSF Nucleofectionキットを用いたnucleofection(Lonza)を使用してRNP複合体をH1703親細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をプレーティングし、72時間回復させた。72時間後、細胞の各試料をトリプシン処理によって収集し、さらなる解析のためにペレット化した。ゲノムDNA単離、PCRおよびサンガー配列決定のために細胞ペレットを使用した。TIDEによるインデル解析のためにサンガー配列決定を使用した(全体的なスキームは図12に示す)。
【0162】
gRNAの長さは標的特異性に影響を及ぼし得ることが報告されている(Fuら、Nat. Biotechnol. 32:279-84 (2014))。野生型「オン標的」部位に対する種々の長さのR34G sgRNAのインデル形成の効率を評価した。各長さについてのsgRNAを合成し、精製したCas9と複合体化した。反復実験を、各RNPをトランスフェクトしたH1703肺扁平上皮を用いて実行し、72時間回収し、次いでインデル形成について解析した。R34G部位はH1703細胞株の野生型NRF2遺伝子に存在しないので、最小限またはバックグラウンド遺伝子編集活性のみが予測される。
【0163】
反復実験からの種々の長さのsgRNAのインデル効率を図13および14に示す。各gRNAの長さは最小限の統計的に有意ではないインデルを生じ、TIDEによって解析したように全インデル効率は全体で3.8%を超えなかった(p値<0.05)。両方の複製において、17ヌクレオチド長のsgRNAは1.5%および1.6%の全インデル効率を生じ、配列の98.0%および97.7%が野生型のままであった。18ヌクレオチド長のsgRNAは1.9%および2.6%の全インデル効率を生じ、配列の97.4%および96.6%が野生型のままであった。20ヌクレオチド長のsgRNAは0.8%および2.9%の全インデル効率を生じ、配列の98.4%および96.2%が野生型のままであった。22ヌクレオチド長のsgRNAは1.2%および2.3%の全インデル効率を生じ、配列の98.2%および96.5%が野生型のままであった。23ヌクレオチド長のsgRNAは3.4%および3.8%の全インデル効率を生じ、配列の95.8%および95.2%が野生型のままであった。各グラフの挿入図によって示すように、全ての試験試料(緑色のバー)を対照試料(黒色のバー)と整列させ、異常な配列シグナルを示す。各挿入図は両方のシグナルのほぼ完全な重複を示し、主要グラフおよび合計インデル効率によって示すように、試験試料中にインデル活性がほとんどないことを示している。このことから、本発明者らは、各sgRNAの標的配列に対してその特異性が高いと結論付けることができる。インデル活性の欠如は、CRISPR切断に必要とされる、野生型配列における欠損したPAM部位に起因する可能性がある。sgRNAの長さの差はインデル効率に最小限の影響を与えるように見え、長さが増加するにつれて効率が高くなる傾向がわずかにあり、より長いgRNAは、より容易にミスマッチを許容することができ、野生型「オン標的」配列を切断することができることを示唆する(図15に要約を示す)。
【0164】
[実施例10]
A549 Neh2ノックアウト
肺腺癌由来細胞株、A549を使用して、NRF2のエクソン2を標的とするように設計したCRISPR/Cas9をトランスフェクトして、ランダムなインデルパターンを有する個々のクローンを作製した。合計3つのクローン、1-17、2-16、および2-23を単離し、増殖させた。ゲノムDNA単離およびサンガー配列決定のために3つ全てのクローンを収集して、インデルの存在を確認した。DECODRプログラムを使用して、各クローンのサンガー配列決定をデコンボルーションした。A549細胞株は倍数体であるため、これらのクローンはNRF2遺伝子の3つの対立遺伝子を含有する。クローン1-17は、-2、-2、-13塩基対の欠失を含有する。クローン2-16は、全ての対立遺伝子にわたって-1塩基対の欠失を含有する。クローン2-23は、2つの野生型対立遺伝子および2塩基対の欠失を含有する。図16を参照のこと。細胞増殖アッセイを使用して、シスプラチン処理と組み合わせたCRISPR標的化の後、NRF2の機能性を評価した。MTSアッセイを使用して、A549野生型、クローン1-17、2-16、および2-23細胞の細胞増殖を測定した。細胞を各ウェルに同じ濃度でプレーティングし、24時間回復させた。試験した各濃度のシスプラチン(0、1、2、3、5、および10μM)について、細胞を4連でプレーティングした。各MTS実験を、濃度ごと、クローンごとに合計8つの複製について2連で実施した。各クローンおよび濃度についての吸光度値を、その吸光度を各対照ウェル(0μM)の吸光度で割ることによって正規化した。次いで各濃度での各クローンについて正規化した値を全体にわたって平均化し、平均の標準誤差を計算した。各濃度の平均化した正規化値を散布図にグラフ化した。
【0165】
いくつかのA549 NRF2ノックアウトクローンを作製し、シスプラチンおよびカルボプラチン(0~10uM濃度)での用量曲線のために使用した。単一ガイドRNAを使用してNRF2遺伝子のエクソン2を標的とし、NRF2ノックアウトクローンを作製した。選択したA549クローンは、クローン1-17、2-16、2-23であった。これらの3つは、Neh2ドメインをコードするエクソン2における単一ガイドRNAを用いてNRF2を標的化することによって作製した。クローン1-17は、-2(62%)、-2 318%)および13(6%)bp欠失を含有する。クローン2-16は、-1(100%)bp欠失を含有する。クローン2-23は、2つの野生型対立遺伝子(79%)および2(21%)bp欠失を含有する。これらのゲノムプロファイルをTIDEおよびDECODRによって解析した。MTSアッセイを使用して、各NRF2 KOクローンの細胞増殖および化学感度プロファイルを決定した。細胞を種々の濃度のシスプラチン(1、2、3、5、10uM)で処理して、異なる程度のNRF2 KO後、化学感度を評価した。図17および18の両方は、それぞれ散布図および棒グラフとして示される緑色で示される野生型A549細胞と比較して、実験の2つの複製からの正規化および平均化データを含む。クローン2-23は、主要な野生型対立遺伝子を含有し、これが野生型細胞よりもさらに高い耐性を示す要因となる。クローン1-17および2-16は、NRF2遺伝子のエクソン2におけるCRISPR切断部位での種々のインデルの結果として感度の比較的同じ傾向を示す。NRF2ノックアウト後、シスプラチンに対する細胞の感度に対して遺伝子量依存効果が存在する。このデータは、CRISPRおよび化学療法を用いてがん細胞を標的化する場合に見られる可能性のある応答の種類を模倣する。
【0166】
[実施例11]
DNAレベルでのCRISPR指向腫瘍細胞選択性
NRF2が正常細胞において発現すると、それは、酸化ストレスに対して細胞生存を促進する腫瘍抑制因子として作用する。しかしながら、腫瘍細胞内で過剰発現すると、それは、腫瘍細胞生存を有利にし、酸化ストレスおよび化学予防化合物から防御するがん遺伝子として作用するので、化学耐性を与える(Menegonら、Trends Mol. Med. doi:10.1016/j.molmed.2016.05.002 (2016))。NRF2の過剰発現はKEAP1および/またはNRF2の突然変異の結果として発生する可能性があり、肺がんにおいて最も一般的に見出される。タンパク質のドメインの全てに見出されるKEAPIの機能喪失型突然変異はNRF2の結合を妨げる。NRF2の機能獲得型突然変異は、図19(報告され、特徴付けられたNRF2突然変異の概略図)に示す、DLGおよびETGEモチーフにおいて主に見出され(Frankら、Clin. Cancer Res. 24:doi:10.1158/1078-0432.CCR-17-3416 (2018); Kerinsら、Sci. Rep. 8:12846 (2018); Menegonら、Trends Mol. Med. 22:578-93 (2016); Shibataら、Source 105:13568-73 (2008); Fabrizioら、Oxid. Med. Cell. Longev. 2018:1-21 (2018); Fabrizioら、Oxid. Med. Cell. Longev. 2018:2492063 (2018); Fukutomiら、Mol. Cell. Biol. 34:832-46 (2014))、これはKEAP1への結合に関与する。これらの突然変異はKEAP1とNRF2との間のタンパク質間相互作用を排他的に妨げ、腫瘍細胞内でNRF2の過剰発現を引き起こす。NRF2のこの過剰発現は、タンパク質の蓄積および分解の欠如により腫瘍抑制因子からがん遺伝子へその機能を変化させる。KEAP1結合が喪失すると、NRF2はもはや分解のために隔離されず、細胞質および核内にタンパク質の蓄積を引き起こし、次に下流経路の活性化を通じて細胞保護および解毒をもたらす。
【0167】
最近、Scientific ReportsでのKerinsおよびOoiによる研究により、The Cancer Genome Atlas(Kerinsら、Sci. Rep. 8:12846 (2018))に報告された種々のがん症例において体細胞NRF2突然変異が分類された。この研究により、33種の異なる腫瘍型にわたって見出されるNRF2およびKEAP1突然変異ならびに構成的NRF2活性化に関与する一般的な突然変異のパーセンテージが特定された。彼らは、主に肺扁平上皮癌(LUSC)において見られるNRF2突然変異の214の症例を報告した。これらのNRF2突然変異のいくつかは以前に報告され、特徴付けられており、図19に示す。これらの214の症例のうち、LUSCにおいて報告されている最も一般的な突然変異はR34Gである。R34G突然変異は、NRF2安定性および核内蓄積の増加を引き起こすNRF2のKEAP1により媒介される分解を阻害することが特徴付けられている(Kerinsら、Sci. Rep. 8:12846 (2018); Fabrizioら、Oxid. Med. Cell. Longev. 2018:2492063 (2018))。R34G突然変異は、NRF2のコドン34の最初の塩基におけるシトシンからグアニンへの塩基変化(CGA→GGA)の結果として発生し、これにより、アルギニンからグリシンへアミノ酸が変化する。この突然変異は、Cas9認識、結合および切断のための新たなプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を生じるので、CRISPR指向遺伝子編集アプローチから特に興味深い(図20)。PAMはCRISPRシード配列に隣接する2~6ヌクレオチドからなり、Casヌクレアーゼタンパク質が、標的DNAを認識、結合および切断することができるようにする。Cas9ヌクレアーゼは5'NGG3'を認識し、ここでNは任意のヌクレオチドであり得る。切断後、Cas9は平滑末端二本鎖切断を生じ、次いでこれは2つの機構:非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)のうちの1つによって修復される。NHEJは切断部位での挿入または欠失(インデル)に関与し、遺伝子の遺伝子ノックアウト(KO)を生じ、タンパク質発現の喪失を引き起こす可能性がある。このような特異的Cas9認識部位は腫瘍細胞ゲノムの選択的切断の基礎となる可能性がある。このアプローチに適用可能であることが報告され、特徴付けられているいくつかの他のNRF2突然変異が存在する。これらの突然変異は図19にマゼンタ色で示され、赤色の塩基は、新たなCas9 PAM部位を生じるように突然変異されているヌクレオチドを示す。
【0168】
DLGモチーフにおける突然変異は、KEAP1結合を阻害する分子内相互作用を破壊することが示されている(Fukutomiら、Mol. Cell. Biol. 34:832-46 (2014))。より最近、KerinsおよびOoiはNRF2におけるR34G突然変異の性質を調査し、突然変異自体がタンパク質安定性を増加させることを見出した。したがって、R34G突然変異の性質に起因して、それは、腫瘍ゲノムDNAと正常ゲノムDNAとの区別を可能にするがん性細胞にのみ存在するはずである。このアプローチはまた、送達方法および送達の特異性を改善する。CRISPR/Cas9によるR34G突然変異を標的とするために使用されるガイドRNA(gRNA)は、
(太字-PAM部位、下線-R34G突然変異(配列番号25))である。いくつかの実験を行って、R34G突然変異特異的CRISPR/Cas9複合体の識別および特異性のレベルを評価した。
【0169】
概念実証として、in vitro切断反応を行って、リボ核タンパク質複合体(RNP)におけるR34GガイドRNAを使用して識別のレベルを評価した。in vitro切断反応は、標的特異的ガイドRNAをCas9タンパク質と複合体化してリボ核タンパク質(RNP)を形成することを包含する。RNPを目的のDNA(100ng)とインキュベートし、反応および切断産物をゲル電気泳動によって可視化する。この実験では、NRF2発現プラスミド(図21)からの野生型およびR34G突然変異NRF2 PCR産物(901bp)をR34G標的化RNP複合体(1μM)とインキュベートし、図22に示すように切断産物をゲル電気泳動によって可視化した。非特異的RNP(HBB RNP)も使用して、新たな部位およびその標的化RNPの特異性を実証した。ゲル画像のレーン6(R34G NRF2-R34G RNP)では、2つの新たなバンド(222および679bp)がRNP切断の結果として見られ、R34G標的化RNPのみが、変異型DNA配列を認識し、切断することを示す。
【0170】
最初の概念実証の後、in vivo実験を行って、特異性および有効性をさらに評価した。最初のin vivo研究は、ヒト肺腺癌に由来するA549細胞株において行った。A549細胞株を、NRF2遺伝子にR34G突然変異を含有するように遺伝子操作した。A549細胞株において行った研究を、ヒト肺扁平上皮癌に由来するH1703細胞株においても行う。親A549細胞株、R34G突然変異A549細胞株(A549 R34G-6)およびH1703親細胞株をエクソン2にわたって配列決定した。A549およびH1703親細胞株の両方はNRF2遺伝子のエクソン2内に突然変異を含有しないが、A549 R34G-6細胞株はヘテロ接合性R34G突然変異を含有する(図23)。A549細胞株は二および三対立遺伝子であることが知られているので、A549 R34G-6クローンにおけるR34G突然変異は、赤色の矢印によって示される、「C」ヌクレオチドのピーク(青色のピーク)と比較して「G」ヌクレオチドの二重ピーク(黒色のピーク)によって見られるように3つの対立遺伝子のうちの2つに存在すると考えられる(図23)。
【0171】
配列を確認してから、各細胞株からのゲノムDNAを使用してNRF2のエクソン2を増幅させた。次いで各細胞株からのPCR産物(530bp)を種々のパラメーター下でin vitro切断反応に使用して、R34G標的化RNAPの特異性および忠実度を試験した。これらの切断反応では、予測される切断産物は、ラダーに沿った赤色の線によって示されるように385および145bpに現れ、未切断産物は530bpに現れる。図24は、親A549細胞からの野生型NRF2配列およびA549 R34G-6細胞からのR34G突然変異NRF2配列を使用したin vitro切断反応からのゲル画像を示す。漸増濃度(0.5~5pmol)のR34G標的化RNPを使用して配列の閾値および忠実度を決定した。ゲル画像は、使用した5倍の標準濃度のRNPが野生型NRF2配列の切断を生じないこと(レーン2~5)を示すが、R34G突然変異NRF2配列では、切断産物はR34G標的化RNPの半分の標準濃度でも見ることができる(レーン7)。未切断産物(一番上のバンド、530bp)がレーン7~10にまだ見ることができ、これは、A549 R34G-6細胞株におけるR34G突然変異のヘテロ接合性に対応する。したがって、A549 R34G-6細胞株における野生型NRF2対立遺伝子は内部陰性対照として機能する。
【0172】
野生型NRF2配列の切断効率を評価するために別のin vitro切断反応を行って、R34G標的化RNPが、実際には、R34G突然変異の欠如のため、野生型NRF2配列を切断しないことを確認した。R34G RNP切断部位から29bp上流(標識したNeh2 RNP)に切断部位を有するガイドRNAを選択し、陽性切断対照として使用した。両方のRNPを使用したin vitro切断反応の結果を図25のゲル画像に示す。レーン1~8は野生型NRF2配列を使用した反応であり、一方、レーン9~16はR34G突然変異NRF2配列を使用した反応であった。レーン2~4および10~12では、PCR産物を、エクソン2(Neh2 RNP)の最初を標的とする漸増濃度(1、3および5pmol)のRNPとインキュベートした。Neh2ガイドRNA配列は、5' TGGATTTGATTGACATACTTTGG 3'(配列番号13)であり、これは天然CRISPR部位であり、これらの反応についての切断のための陽性対照として使用する。Neh2 RNPを使用した切断産物は116および414bpであり、野生型およびR34G突然変異NRF2配列の両方に見ることができ、野生型およびR34G突然変異NRF2配列の両方は、標的領域内のCRISPR/Cas9切断に適していることを示す。レーン6~8および14~16では、PCR産物を、漸増濃度(1、3および5pmol)のR34G標的化RNPとインキュベートした。切断産物は145および385bpであり、レーン14~16に明確に見ることができ、最小限の切断は野生型NRF2配列のレーン6~8に見える。これは、NRF2のエクソン2におけるR34G突然変異の存在下でのみ標的DNAを認識するR34G標的化RNPの特異性をさらに強化する。野生型NRF2配列の残りの切断は、切断反応の性質および標的DNAとのガイドRNAの配列相同性によって説明することができる。切断反応のパラメーターには、最大限の切断のために標的DNAとRNPとを1時間インキュベートすることが含まれる。したがって、この反応の性質は非特異的切断を誘導し得る。
【0173】
in vivo研究に移る前に、最後のin vitro切断反応を、野生型NRF2を含有する、H1703およびA549親細胞株、ならびにR34G突然変異NRF2を含有する、A549 R34G-6細胞株からのゲノムDNAおよびNRF2エクソン2 PCR産物を使用して行った(図26)。R34G標的化RNPを、各PCR産物(レーン2、3、5、6、8、9)で漸増濃度(1および5pmol)において使用した。H1703およびA549親細胞株(レーン3および6)の両方において野生型NRF2配列で最小限の切断が見られるが、切断産物(145および385bp)は、R34G突然変異NRF2配列を有するA549 R34G-6細胞株(レーン8および9)において明確に見られる。再び、このデータは、以前の図に提示されるデータに示されるようにR34G標的化RNPの特異性および有効性を強化する。
【0174】
in vitro切断反応を、同じ細胞株:A549およびH1703親細胞株ならびにA549 R34G-6細胞株を使用した細胞ベースの実験によってさらに評価した。細胞株を標準的な条件下で培養し、以前に確立したパラメーターを使用してエレクトロポレーション(Lonza、Nucleofection)によってトランスフェクトした。図27~29は、R34G標的化RNPのトランスフェクション後の3つ全ての細胞株を使用した8つの別々の実験の遺伝子解析を示す。この実験は3つの異なる条件下で行った。第1の条件は、Cas9に対して等モル濃度の二重ガイドRNAを使用することであった。第2の条件は、トランスフェクション効率を測定し、さらなる解析のためにGFP陽性集団を選別するためにGFP(緑色蛍光タンパク質)発現ベクターを使用することと共に、Cas9に対して5倍の量の二重ガイドRNAを使用することであった。第3の条件は、GFP発現ベクターおよびさらなる解析のためのGFP陽性集団の選別と共に、Cas9に対して5倍の量の単一ガイドRNAを使用することであった。
【0175】
図27は、A549親細胞におけるR34G標的化RNPのトランスフェクション後の遺伝子解析を示す。A549親細胞は野生型NRF2遺伝子を含有するので、R34G標的化RNPについての天然CRISPR/Cas9認識部位は存在しない。トランスフェクト細胞からのゲノムDNAをTIDE解析によって解析した(図27に示す)。上側のパネルは、非選別集団のインデル効率および配列アラインメントを示す。TIDE解析によれば、合計インデル効率は11.8%であり、統計的に有意ではない挿入および欠失が存在する(黒いバー-p値>0.001)。中央のパネルは、GFP陽性選別集団からの4.3%の合計インデル効率を示し、統計的に有意ではない挿入または欠失のみが存在する。下側のパネルは、GFP陽性選別集団からの11.4%の合計インデル効率を示し、1つの統計的に有意な挿入(+1bp)が存在する。
【0176】
図28は、A549 R34G突然変異クローン細胞株(A549 R34G-6)におけるR34G標的化RNPのトランスフェクション後の遺伝子解析を示す。A549 R34G-6細胞はNRF2遺伝子のエクソン2においてヘテロ接合性R34G突然変異を含有し、R34G標的化RNPについての新たなCRISPR認識部位を生じる。トランスフェクト細胞からのゲノムDNAを、TIDE解析による遺伝子編集活性について解析した(図28に示す)。上側のパネルは、非選別集団のインデル効率および配列アラインメントを示し、合計インデル効率は43.0%であり、いくつかの有意ではない欠失と共に統計的に有意な挿入(+1、30bp)および欠失(-9、41bp)が存在する。中央のパネルは、GFP陽性選別集団からの55.7%の合計インデル効率を示し、統計的に有意な挿入(+1、30bp)および欠失(-1、9bp)ならびに有意ではない欠失が存在する。有意な合計インデル効率は、R34G標的化RNPが非常に活性であることを示す。このクローン細胞株は、R34G突然変異に対してヘテロ接合性であり、1つの野生型NRF2対立遺伝子を含有するので、本発明者らは、配列の1/3が野生型のままであると予測し(0の目盛りで示される)、これはこの実験データに見られる(解析した配列の32.0%は野生型である)。下側のパネルは、32.7%の合計インデル効率を示し、GFP陽性選別集団からの有意な挿入(+1、30bp)および欠失(-2bp)ならびに有意ではないインデルが存在する。より低いR2値は、配列解析の一部が、おそらく配列品質のために不明であることを示す。このデータから全体として、本発明者らは、細胞ベースの実験において試験した場合にR34G突然変異が、能動的に切断される新たなCRISPR認識部位を実際には生じていると推測し得る。推測に過ぎないが、R34G標的化RNPは、クローン細胞株内の野生型とR34G突然変異対立遺伝子とを区別する。
【0177】
図29は、野生型NRF2遺伝子を含有し、天然CRISPR認識部位を含有しない、NCI-H1703細胞株におけるR34G標的化RNPのトランスフェクション後の遺伝子解析を示す。トランスフェクト細胞からのゲノムDNAを、TIDE解析による遺伝子編集活性について解析した(図29に示す)。上側パネルは、非選別集団からの0.0%の合計インデル効率を示す。下側パネルは、4.6%の合計インデル効率を示し、GFP選別集団からの有意ではないインデルのみが存在する。
【0178】
さらなる研究は、下流の実験において肺扁平上皮癌についてのモデル系として使用するR34G突然変異を含有するようにH1703細胞株を操作することを含む。これは、Neh2ドメインを含有する、NRF2遺伝子のエクソン2内で切断するように設計したCRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNP)をトランスフェクトすることによって行う。R34G突然変異を含有する一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)は、二本鎖切断を橋渡しするテンプレート鎖として機能する。RNPおよびssODNをエレクトロポレーション(Nucleofection、Lonza)によってトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞を、クローン増殖および配列解析のために蛍光活性化単一細胞選別(FACS)によって選別する。R34G突然変異H1703細胞株を確立すると、本発明者らは、いくつかの細胞ベースの実験および異種移植マウスモデルを使用して新たな突然変異細胞株においてR34G標的化CRISPR/Cas9(5' GATATAGATCTTGGAGTAAGTGG 3'(配列番号25))の特異性および効率を試験する。本発明者らは、R34G標的化RNPによるR34G突然変異H1703細胞株のトランスフェクション後、インデル形成についての切断部位を解析することによってR34G標的化RNPの遺伝子編集活性を評価する(TIDE解析、Desktop Geneticsウェブサイト、https://tide.deskgen.com/)。トランスフェクション後に細胞を収集し、配列決定し、解析した。本発明者らはまた、親細胞株におけるR34G標的化RNPの特異性を評価して野生型NRF2配列の認識度を決定する。再現性を確保するために実験を反復する。異種移植マウスモデルでの実験を模倣するために、細胞増殖および細胞生存率実験を行って、CRISPR/Cas9によるR34G標的化後のNRF2ノックアウトの効果を評価する。そうするために、細胞増殖および細胞生存率を、Ki67染色およびMTSアッセイによって測定する。R34G標的化後、これらの細胞の感度をさらに評価するための条件としてシスプラチン処理により実験を反復する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
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図7B
図8
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【配列表】
2022533268000001.app
【国際調査報告】