(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/22 20150101AFI20220714BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220714BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220714BHJP
A61K 9/40 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
A61K35/22
A61P13/12
A61K9/06
A61K9/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564695
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020031093
(87)【国際公開番号】W WO2020223660
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516108269
【氏名又は名称】プロキドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム, ティモシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン, ディーパク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076CC17
4C076EE42
4C076FF17
4C076FF35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA28
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA81
(57)【要約】
本明細書において、とりわけ、腎臓及び/又は尿路の先天性異常を有する対象における慢性腎臓疾患を治療する方法、細胞集団、及び組成物が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎臓疾患(CKD)を患う対象における腎臓疾患を治療する方法であって、
(i)生物活性腎細胞集団、
(ii)前記腎細胞集団によって分泌された小胞、及び/又は、
(iii)前記腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイド、
を含む組成物の有効量を前記対象に投与することを含み、
ここで、前記対象は腎臓及び/又は尿路の異常を有する、
方法。
【請求項2】
前記対象は、先天性腎尿路異常(CAKUT)からのCKDを患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は、腎臓発達における異常を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、感染及び/又は炎症を伴って又は伴わずに、原発性膀胱尿管逆流症又は二次性膀胱尿管逆流症、逆流性腎症、腎瘢痕、又は腎低異形成を患っている又は患ったことがある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象は、尿路感染症に罹患しやすい、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、高血圧又はタンパク尿を患っている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、逆流防止後手術を受けたことがある、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、90mL/分/1.73m
2未満の糸球体濾過速度(GFR)、微量アルブミン尿、又は顕性アルブミン尿を伴う、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、18歳未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、腎実質の奇形を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、尿道重複、腎盂尿管移行部閉塞、腎無形成、膀胱尿管逆流症、腎異形成、低形成腎、腎低異形成、先天性水腎症、馬蹄腎、後部尿道弁及びプルーンベリー症候群、閉塞性腎異形成、又は非運動性繊毛症を患っている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CAKUTは、遺伝的要因によって引き起こされている又は遺伝的要因と相関している、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CAKUTは、非遺伝的要因によって引き起こされている又は非遺伝的要因と相関している、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記非遺伝的要因は、環境的要因である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記異常は、アラジール症候群、アペール症候群、バルデー・ビードル症候群、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、鰓耳腎症候群(BOR)、屈曲肢異形成症、セナニ・レンツ症候群、ディジョージ症候群、フレイザー症候群、副甲状腺機能低下症、感音性難聴及び腎臓疾患(HDR)、カルマン症候群、尺骨・乳房症候群、メッケル・グルーバー症候群、ネフロン癆、オキヒロ症候群、パリスター・ホール症候群、腎コロボーマ症候群、低異形成、異形成、腎異形成、嚢胞性異形成、非嚢胞性異形成、VUR嚢胞性異形成、腎低異形成、孤立性嚢胞性腎低異形成、孤立性非嚢胞性腎低異形成、孤立性腎尿細管形成不全、ルビンシュタイン・テイビ症候群、シンプソン・ゴラビ・ベーメル症候群、タウンズ・ブロックス症候群、ツェルベーガー症候群、スミス・レムリ・オピッツ症候群、水腎症、髄質異形成、一側性/両側性無形成/異形成、集尿系異常、無形成、腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)無形成、異形成無形成、一側性無形成、VUR、回転異常、交叉性融合腎、VUR異形成、二重セリン/スレオニン及びチロシンプロテインキナーゼ(DSTYK)突然変異、UPJOに関連するDSTYK突然変異、尿細管異形成、嚢胞、及び/又は形成不全を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、末期腎臓疾患を患っている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記慢性腎臓疾患は、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV、又はステージVの腎臓疾患である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象は、少なくとも週に1回、2回、又は3回透析を受けている、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記生物活性腎細胞集団中の細胞の少なくとも80%超は、GGT-1を発現する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生物活性腎細胞集団中の細胞の4.5%~81.2%は、GGT-1を発現し、前記生物活性腎細胞集団内の細胞の3.0%~53.7%は、AQP2を発現し、かつ前記生物活性腎細胞集団内の細胞の81.1%~99.7%は、CK18を発現する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生物活性腎細胞集団は、腎生検からの腎細胞の初代培養物と比較して腎尿細管細胞について濃縮されており、かつ前記尿細管細胞は、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS-2)の作用を通じて、in vitro及びin vivoの両方で、より高分子量の種のヒアルロン酸(HA)を発現する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記生物活性腎細胞集団は、腎臓生検からの腎臓細胞の初代培養物と比較してより低い割合の遠位尿細管細胞、集合管細胞、内分泌細胞、血管細胞、及び/又は前駆細胞様細胞を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記小胞は、傍分泌因子を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)及び/又はTGFβ1を阻害するmiRNAを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの非腎細胞集団は、内皮細胞集団又は内皮前駆細胞集団である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの非腎細胞集団は、間葉系幹細胞集団である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記投与は、前記対象の一方の腎臓又は両方の腎臓への注射によるものである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物は、(i)8℃以下で実質的に固体の状態を維持し、かつ(ii)周囲温度以上で実質的に液体の状態を維持する温度感受性の細胞を安定化するバイオマテリアルを更に含み、ここで、前記バイオマテリアルはヒドロゲルを含み、該バイオマテリアルは8℃から周囲温度以上の間で固体-液体遷移段階にある、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記生物活性腎細胞集団、前記小胞、及び/又は前記スフェロイドは、前記細胞を安定化するバイオマテリアル中に懸濁されてその全体にわたって分散されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒドロゲルは、ゼラチンを含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記生物活性腎細胞集団、前記小胞、及び/又は前記スフェロイドは、18ゲージ~30ゲージの針を通した注射によって投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記針は、約27ゲージ、約26ゲージ、約25ゲージ、約24ゲージ、約23ゲージ、約22ゲージ、約21ゲージ、又は約20ゲージの直径を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記腎臓疾患の治療は、前記対象の腎機能の改善を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記腎機能の改善は、前記対象におけるアルブミン対クレアチニン比(ACR)の減少を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ACRの減少は、前記対象のベースラインACRに対して少なくとも50%の減少である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ACRの減少は、前記対象のベースラインACRに対して少なくとも60%の減少である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ACRの減少は、30mg/gから300mg/gの間までのACRの減少であり、ここで、対象は、前記組成物の第1の用量を投与する前に300mg/gを超えるACRを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ACRの減少は、30mg/g未満までのACRの減少であり、ここで、前記対象は、前記組成物の第1の用量を投与する前に30mg/gから300mg/gの間のACRを有する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ACRの減少は、前記組成物の第1の用量を投与した後に3ヶ月~6ヶ月以内に達成される、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ACRの減少は、前記組成物の第1の用量を投与した後に2ヶ月~3ヶ月以内に達成される、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記腎機能の改善は、前記対象のeGFRの増加を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記eGFRの増加は、前記組成物の第1の用量を投与した後に2ヶ月~4ヶ月以内に達成される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記eGFRの増加は、前記組成物の第1の用量を投与した後に2ヶ月以内に達成される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記eGFRの増加は、前記対象のベースラインeGFRに対して少なくとも5%である、請求項41~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記eGFRの増加は、前記対象のベースラインeGFRに対して少なくとも10%である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腎臓及び/又は尿路の異常は、後部尿道弁を含む、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物は、前記(i)生物活性腎細胞集団を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記生物活性腎細胞集団の有効量は、前記対象の推算腎臓重量1グラム当たり3×10
6個の細胞を含む、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、腎臓疾患を有する対象を治療する方法、組成物、及び細胞集団に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性腎尿路異常(CAKUT)及び/又は後天性異常等の腎臓の異常は、慢性腎臓疾患及び末期腎臓疾患を含む腎障害につながる場合がある。CAKUTは、出生前期において確認された全ての異常のおよそ20%~30%を構成する。Queisser-Luft et al. (2002) Malformations in newborn: results based on 30,940 infants and fetuses from the Mainz congenital birth defect monitoring system (1990-1998). 2002;266(3):163を参照(その全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において、とりわけ、腎臓及び/又は尿路の先天性異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法、細胞集団、及び組成物が提供される。
【0004】
一態様では、本明細書において、慢性腎臓疾患(CKD)を患う対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)腎細胞集団によって分泌された小胞、及び/又は、(iii)腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含み、ここで、対象は腎臓及び/又は尿路の異常を有する、方法が提供される。
【0005】
実施の形態において、対象は腎臓の異常を有する。実施の形態において、対象は尿路の異常を有する。実施の形態において、対象は腎臓及び尿路の異常を有する。実施の形態において、異常は出生前に獲得される。実施の形態において、異常は出生後に獲得される。実施の形態において、異常は先天性異常である。実施の形態において、対象は腎臓の先天性異常を有する。実施の形態において、対象は尿路の先天性異常を有する。実施の形態において、対象は先天性腎尿路異常を有する。本明細書で使用される場合に、「先天性」異常は、出生時又は出生前に存在する異常である。実施の形態において、先天性異常は、出生後に悪化する又は追加の異常を引き起こす。
【0006】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される1つ以上の産物、及び/又は(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの他の細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、本質的に投与することからなる、又は投与することからなる、方法が提供される。
【0007】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される1つ以上の産物(例えば小胞)、及び/又は(iii)該腎細胞集団及び非腎細胞集団等の少なくとも1つの他の細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0008】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される小胞、又は(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0009】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される小胞、並びに(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0010】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、生物活性腎細胞集団を含む組成物を対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。実施の形態において、組成物は、腎細胞集団によって分泌される小胞を更に含む。実施の形態において、組成物は、腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを更に含む。
【0011】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、腎細胞集団によって分泌される小胞を対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0012】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0013】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【0014】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団によって分泌される産物(例えば小胞)並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【0015】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団を含むスフェロイド並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】REACT治療の前及び後の推算糸球体濾過速度(eGFR)を示すグラフである。
【
図2】REACT治療の前及び後の血清クレアチニンを示すグラフである。
【
図3】REACTの製品送達システムの写真である。
【
図6】全体的なNKAの製造方法の非限定的な例の流れ図である。
【
図7A-D】
図6に示される非限定的な例示的な方法の更なる詳細を示す流れ図である。
【
図8】CAKUTに起因する腎臓疾患に対するREACT治療を受けている患者におけるeGFRによって測定される腎機能の改善を示すグラフである。星印は、CAKUTの影響前の患者の初期腎機能を示す。(注射に対して-1ヶ月~0ヶ月にプロットされた)灰色の実線は、REACT注射前のeGFRによって測定される患者の腎機能の低下を示す。(注射に対して0ヶ月~3ヶ月にプロットされた)黒色の破線は、REACT注射後の患者のeGFRを示す。
【
図9】CAKUTに起因する腎臓疾患に対するREACT治療を受けている患者におけるアルブミン対クレアチニン比によって測定される腎機能の改善を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、本発明により含まれる或る特定の実施形態及び実施例が参照される。本発明は例示的な実施形態と併せて記載されるが、例示的な実施形態は、本発明をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解される。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれ得るあらゆる選択肢、変更形態、及び同等物を網羅することを意図している。当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明は、決して記載された方法及び材料に限定されるものではない。
【0018】
本開示全体を通して引用される全ての参考文献は明確に、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。限定されるものではないが、定義された用語、用語の用法、記載された技術等を含めて、引用することにより本明細書の一部をなす文献、特許及び同様の資料の1つ以上が本出願と異なる又は矛盾する場合に、本出願が優先される。
【0019】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。実際、本発明は、決して記載された方法及び材料に限定されるものではない。
【0020】
本明細書で使用される場合に、数値又は範囲の文脈における「約」という用語は、その文脈がより限定された範囲を必要としない限り、列挙又は特許請求の範囲に記載される数値又は範囲の±10%を意味する。
【0021】
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲において、「~の少なくとも1つ」又は「~の1つ以上」等の句の前に要素又は特徴の連言的なリストが存在し得る。「及び/又は」という用語が2つ以上の要素又は特徴のリスト内に存在する場合もある。使用される文脈によって特段の暗黙的又は明示的な食い違いがない限り、そのような句は、要素若しくは特徴のリストのいずれかを個別に意味すること、又は列挙された要素若しくは特徴のいずれかと、他の列挙された要素若しくは特徴のいずれかとの組合せを意味することを意図している。例えば、「A及びBの少なくとも1つ」、「A及びBの1つ以上」、及び「A及び/又はB」という句はそれぞれ、「A単独、B単独、又はA及びBを一緒に」を意味することを意図している。3つ以上の項目を含むリストにも同様の解釈が当てはまる。例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCの1つ以上」、「A、B、及び/又はC」という句はそれぞれ、「A単独、B単独、C単独、A及びBを一緒に、A及びCを一緒に、B及びCを一緒に、又はA及びB及びCを一緒に」を意味することを意図している。さらに、上記及び特許請求の範囲における「~に基づく」という用語の使用は、「少なくとも部分的に~に基づく」ことを意味することを意図しているため、列挙されていない特徴又は要素も許容され得る。
【0022】
パラメーターの範囲が示される場合に、その範囲内の全ての整数及びその10分の1もまた、本発明によって示されることが理解される。例えば、「0.2mg~5mg」は、5.0mg以下を含む0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg等を開示している。
【0023】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「~を特徴とする(characterized by)」と同義である「含む(comprising)」という移行語は、非排他的又はオープンエンド形式であり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではない。それに対して、「~からなる(consisting of)」という移行句は、特許請求の範囲で特定されていない全ての要素、工程、又は成分を除外する。「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句は、特許請求の範囲を、特許請求の範囲に記載された発明の特定された材料又は工程「並びに基礎的で新規な特質(複数の場合もある)に実質的に影響しない材料又は工程」に限定する。
【0024】
本明細書で使用される場合に、単数形("a," "an," and "the")は、文脈上特に明記されていない限り、複数の参照を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合に、「治療する(treating)」は、例えば、障害の進行の阻止、退行、又は停滞を包含する。「治療する」はまた、障害のあらゆる単数又は複数の症状の防止又は改善も包含する。本明細書で使用される場合に、対象における疾患進行又は疾患合併症の「阻止」は、対象における疾患進行及び/又は疾患合併症を防止又は低減することを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合に、障害に関連する「症状」は、障害に関連するあらゆる臨床的徴候又は検査的徴候を含み、対象が感じ得る又は認め得るものに限定されない。
【0027】
本明細書で使用される場合に、治療剤の量について言及する場合の「有効」は、本開示のように使用した場合に合理的なベネフィット/リスク比に見合った過度の有害副作用(毒性、刺激、又はアレルギー応答等)なく、所望の治療奏効を得るのに十分な治療剤の量を指す。
【0028】
本明細書で使用される「生物活性腎細胞」すなわち「BRC」という用語は、対象の腎臓に投与されたときに以下の特性:慢性腎臓疾患又はその症状の悪化又は進行を低減する(例えば、遅延又は停止する)能力、腎機能を増強する能力、腎ホメオスタシスに影響を与える(それを改善する)能力、及び腎組織又は腎臓の治癒、修復及び/又は再生を促進する能力の1つ以上を有する腎細胞を指す。実施形態において、これらの細胞には、機能的尿細管細胞(例えば、クレアチニン排泄及びタンパク質保持の改善に基づく)、糸球体細胞(例えば、タンパク質保持の改善に基づく)、血管細胞及び皮髄境界部の他の細胞が含まれ得る。実施形態において、BRCは、腎臓組織からの腎細胞の分離及び増殖から得られる。実施形態において、BRCは、生物活性細胞を選択する方法を使用して、腎臓組織からの腎細胞の分離及び増殖から得られる。実施形態において、BRCは、腎臓に対して再生効果を有する。実施形態において、BRCは、選択腎細胞(SRC)を含む、本質的に選択腎細胞(SRC)からなる、又は選択腎細胞(SRC)からなる。実施形態において、BRCはSRCである。
【0029】
実施形態において、SRCは、適切な腎組織供給源からの腎細胞の単離及び増殖から得られる細胞であり、ここで、SRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、1つ以上の細胞型をより高いパーセンテージで含み、1つ以上の他の細胞型を欠いている又はより低いパーセンテージで有する。実施形態において、SRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、増加した割合のBRCを含む。実施形態において、SRC集団は、腎臓疾患の治療に使用される、すなわち腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、特定の生物活性成分及び/又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性及び/又は不所望な成分若しくは細胞型が枯渇された単離された腎臓細胞の集団である。SRCは、出発集団と比較して、優れた治療転帰及び再生転帰をもたらす。実施形態において、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から得られる。実施形態において、SRCは、それらの1つ以上のマーカーの発現に基づいて(例えば、蛍光活性化セルソーティング、すなわち「FACS」によって)選択される。実施形態において、SRCは、細胞型に対する1つ以上のマーカーの発現に基づいて1つ以上の細胞型が(例えば、蛍光活性化セルソーティング、すなわち「FACS」によって)枯渇される。実施形態において、SRCは、生物活性腎細胞の集団から選択される。実施形態において、SRCは、増殖された腎細胞の密度勾配分離によって選択される。実施形態において、SRCは、密度境界、密度障壁、若しくは密度界面を越える遠心分離、又は単一段階の不連続的な密度勾配分離による増殖された腎細胞の分離によって選択される。実施形態において、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な密度勾配分離によって選択される。実施形態において、SRCは、低酸素条件下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間又は24時間培養された増殖された腎細胞の密度勾配分離によって選択される。実施形態において、SRCは、低酸素条件下で培養された増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離によって選択される。実施形態において、SRCは、低酸素条件下で少なくとも約8時間、12時間、16時間、20時間又は24時間培養された増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離(例えば、単一段階の不連続的な密度勾配分離)による分離によって選択される。実施形態において、SRCは、主に腎尿細管細胞から構成される。実施形態において、SRC中に他の実質(例えば、血管)細胞及び間質(例えば、集合管)細胞が存在し得る。実施形態において、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が血管細胞である。実施形態において、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が集合管細胞である。実施形態において、SRCの集団中の細胞の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満が血管細胞又は集合管細胞である。
【0030】
「スフェロイド」という用語は、単層としての成長ではなく、三次元的成長を可能にするように培養された細胞の凝集体又は集成体を指す。「スフェロイド」という用語は、凝集体が幾何学的な球であることを意味するわけではないことに留意される。実施形態において、凝集体は、明確に定義された形態をもって高度に組織化されていてもよく、又は凝集体は、組織化されていない塊であってもよい。実施形態において、スフェロイドは、単一の細胞型又は2つ以上の細胞型を含み得る。実施形態において、細胞は、初代分離株若しくは永久細胞系統、又はそれらの2つの組合せであり得る。実施形態において、スフェロイド(例えば、細胞凝集体又はオルガノイド)は、スピナーフラスコ内で形成される。実施形態において、スフェロイド(例えば、細胞凝集体又はオルガノイド)は、三次元マトリックス内で形成される。
【0031】
「自然臓器」という用語は、生きている対象の臓器を意味するものとする。実施形態において、対象は、健康又は不健康であってもよい。実施形態において、不健康な対象は、その特定の臓器に関連する疾患を有し得る。
【0032】
「自然腎」という用語は、生きている対象の腎臓を意味するものとする。実施形態において、対象は、健康又は不健康であってもよい。実施形態において、不健康な対象は、腎臓疾患を有し得る。実施形態において、不健康な対象は、腎臓及び/又は尿路の異常を有し得る。
【0033】
本明細書において、腎臓等の自然臓器に利益をもたらす細胞型及び細胞の集団(例えばSRC)が提供される。実施形態において、利益には、慢性腎臓疾患の進行(例えば、1つ以上の症状の悪化)の停止又は遅延が含まれる。実施形態において、利益には、再生効果、例えば、慢性腎臓疾患の症状の低減及び/又は生来の腎臓機能の改善が含まれる。実施形態において、利益には、限定されるものではないが、自然臓器への障害の程度の減少、又は自然臓器の機能若しくは構造の改善、回復、若しくは安定化が含まれる。腎障害は、線維化、炎症、糸球体肥大、萎縮等の形であり得る。
【0034】
実施形態において、濃縮された細胞集団又は調製物は、出発集団における特定の細胞型のパーセンテージより高いパーセンテージでその細胞型を含む出発臓器細胞集団(例えば、腎臓からの未分画の異種細胞集団)に由来する細胞集団である。例えば、出発腎臓細胞集団は、対象となる第1の細胞型、第2の細胞型、第3の細胞型、第4の細胞型、第5の細胞型等について濃縮され得る。
【0035】
本明細書で使用される「低酸素」培養条件という用語は、細胞が大気酸素レベル(約21%)で培養される標準的な培養条件と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの減少に曝される培養条件を指す。非低酸素条件は、本明細書において正常培養条件又は正常酸素圧培養条件と呼ばれる。
【0036】
本明細書において、バイオマテリアル及び1つ以上の細胞型を含む組成物が含まれる。実施形態において、バイオマテリアルは、細胞を生存可能な状態で支持する、生体組織への導入に適した天然又は合成の生体適合性材料である。天然のバイオマテリアルは、生物系によって作られる又はそれに由来する材料である。合成のバイオマテリアルは、生物系によって作られない又はそれに由来しない材料である。実施形態において、本明細書に開示されるバイオマテリアルは、天然及び合成の生体適合性材料の組合せであり得る。本明細書で使用される場合に、バイオマテリアルには、例えば(限定されるものではないが)、ポリマーマトリックス及びスキャフォールドが含まれる。当業者は、バイオマテリアル(複数の場合もある)が、様々な形態で、例えば多孔性のフォーム、ゲル、液体、ビーズ、固体として構成され得て、1つ以上の天然又は合成の生体適合性材料を含み得ることを認識するであろう。実施形態において、バイオマテリアルは、ヒドロゲルになることができる溶液の液体形である。実施形態において、バイオマテリアルは、液体になることができるヒドロゲルである。
【0037】
本明細書で使用される「腎臓疾患」という用語には、血液濾過並びに血液からの過剰な流体、電解質、及び老廃物の排除の機能を発揮する腎臓の能力の低下又は喪失をもたらす任意の段階又は程度の急性腎疾患又は慢性腎疾患(例えば、急性腎不全又は慢性腎不全)に関連する障害が含まれる。実施形態において、腎臓疾患にはまた、貧血(エリスロポエチン欠乏症)及びミネラル平衡異常(ビタミンD欠乏症)等の内分泌機能異常も含まれる。実施形態において、腎臓疾患は、腎臓に起因し得る、又は(限定されるものではないが)先天性腎尿路異常(CAKUT)、膀胱尿管逆流症、心不全、高血圧、糖尿病、自己免疫疾患、若しくは肝臓疾患を含む様々な状態に続発し得る。実施形態において、腎臓疾患は、腎臓への急性損傷の後に発症する慢性腎不全の状態であり得る。例えば、虚血及び/又は毒物への曝露による腎臓の損傷は、急性腎不全を引き起こし得る。急性腎臓損傷後の不完全な回復は、慢性腎不全の発症につながり得る。
【0038】
実施形態において、「治療」という用語は、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害に対する治療的処置及び/又は予防措置又は防止措置を指し得て、その目的は、標的とする障害を逆転、防止、又は減速(軽減)することである。治療を必要とする者には、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、又は糸球体濾過障害を既に有する者だけでなく、腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、若しくは糸球体濾過障害に罹りやすい者、又は腎臓疾患、貧血、尿細管輸送障害、若しくは糸球体濾過障害が防止されるべき者が含まれる。実施形態において、治療を必要とする対象は、腎臓及び/又は尿路の先天性異常を含む。本明細書で使用される「治療」という用語には、腎臓機能の安定化及び/又は改善が含まれる。
【0039】
本明細書において、1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性材料でできたスキャフォールド又はマトリックスの表面上又はその中に堆積された1つ以上の細胞型(例えば、SRC等の細胞集団)を含むコンストラクト又は製剤が含まれる。実施形態において、1つ以上の細胞集団は、1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性バイオマテリアル、ポリマー、タンパク質、又はペプチドでできたバイオマテリアルで被覆され、その上に堆積され、その中に埋設され、それに結合され、その中に播種され、又はその中に捕捉され得る。実施形態において、1つ以上の細胞集団は、in vitro又はin vivoで、バイオマテリアル又はスキャフォールド又はマトリックスと組み合わされ得る。実施形態において、コンストラクト又は製剤を作製するのに使用される1つ以上のバイオマテリアルは、コンストラクトの細胞成分が内因性宿主組織と共に分散及び/又は統合されるのを誘導、促進、若しくは可能にする、又はコンストラクト若しくは製剤の細胞成分の生存、生着、忍容、若しくは機能的性能を誘導、促進、若しくは可能にするように選択され得る。
【0040】
「Neo-Kidney Augment(NKA)」という用語は、ゼラチンベースのヒドロゲルから構成されるバイオマテリアル中で製剤化された自家で同種のSRCから構成される注射可能な製品である生物活性細胞製剤を指す。「先進的細胞療法(Advance Cell Therapy)(ACT)」という用語も、NKAによる治療を指す。
【0041】
実施形態において、対象は生きている動物である。実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、マウス、ラット、又はモルモット等の哺乳動物である。実施形態において、対象は、ヒト、チンパンジー、オランウータン、サル、又はヒヒ等の霊長類である。実施形態において、対象はヒトである。実施形態において、対象は、腎臓疾患の1つ以上の兆候、症状、又はその他の指標を起こしている又はそれを起こしたことがある治療に適格な患者である。そのような対象には、限定されるものではないが、新たに診断され又は以前に診断され、原因を問わず、再発若しくは再燃を現在起こしている又は腎臓疾患のリスクがある対象が含まれる。実施形態において、対象は、腎臓疾患について以前に治療されていてもよく、又はこうして治療されていなくてもよい。実施形態において、対象は腎臓及び/又は尿路の先天性異常を有する。実施形態において、対象は、先天性腎尿路異常を有するヒトである。実施形態において、対象は、腎臓疾患、貧血、又はエリスロポエチン(EPO)欠乏症等の臓器関連疾患の1つ以上の兆候、症状、又はその他の指標を起こしている又はそれを起こしたことがある。実施形態において、対象は糖尿病を患っていない。実施形態において、対象はI型糖尿病を患っていない。実施形態において、対象はII型糖尿病を患っていない。
【0042】
先天性腎尿路異常(CAKUT)には、腎臓の異常並びに膀胱及び尿道の異常を含む様々な解剖学的範囲の一群の疾患が含まれる。実施形態において、「CAKUT」という用語は、(例えば、CAKUTを有する対象について言及する場合に)1つの先天性異常を指す。実施形態において、CAKUTという用語は、(例えば、CAKUTを有する対象について言及する場合に)2つ以上の先天性異常を指す。実施形態において、CAKUTを有する対象は、腎臓、膀胱、及び/又は尿道の1つ以上の異常を有する。実施形態において、CAKUTを有する対象は、1つ又は2つの腎臓において異常を有する。実施形態において、CAKUTを有する対象は、尿道において異常を有する。実施形態において、CAKUTは、遺伝的突然変異又は遺伝的異常に起因している。実施形態において、CAKUTは環境的要因に起因している。実施形態において、CAKUTを有する対象は、膀胱において異常を有する。CAKUTと関連する非限定的な記載は、Ristoska-Bojkovska (2017) Pril (Makedon Akad Nauk Umet Odd Med Nauki) 38(1):59-62、及びRodriguez (2014) Fetal Pediatr Pathol. 33(5-6):293-320に示されており、それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。実施形態において、CAKUTを有する対象は糖尿病を患っていない。実施形態において、CAKUTを有する対象はI型糖尿病を患っていない。実施形態において、CAKUTを有する対象はII型糖尿病を患っていない。
【0043】
CAKUTは、出生前期において確認された全ての異常のおよそ20パーセント~30パーセントを構成する。Queisser-Luft et al. (2002) Malformations in newborn: results based on 30,940 infants and fetuses from the Mainz congenital birth defect monitoring system (1990-1998). 2002;266(3):163を参照(その全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。実施形態において、欠損は両側性又は一側性であり得て、しばしば個々の小児に異なる欠損が共存する。
【0044】
実施形態において、CAKUTは、腎実質の奇形、腎遊走の異常、又は発達中の集尿系での異常による異常胚形成性の腎発達に起因する広範囲の障害を表す。実施形態において、CAKUTは広範囲の障害を表し、異常な腎発達過程の結果である。実施形態において、腎実質の奇形は、腎異形成、関節リウマチ(RA)、腎尿細管形成不全、及び幾つかの種類のネフロン癆に見られるように、正常なネフロン発達の不全をもたらす。いかなる科学的理論によっても縛られるものではないが、分子遺伝学を利用する調査により、腎奇形がシグナル伝達及び転写因子をコードする遺伝子における欠陥に起因することが示された。実施形態において、催奇形物質への出生前曝露等の環境的要因が腎形態形成を破壊して、CAKUTをもたらす場合もある。実施形態において、異常は、腎転位症(例えば、骨盤腎)に見られるような腎臓の異常な胚性遊走、及び馬蹄腎等の融合異常を含む。実施形態において、重複集尿系、後部尿道弁、及び腎盂尿管移行部閉塞に見られるような、発達中の尿集合管系の異常は、CKD/ESRDを引き起こす場合がある。腎異形成は一側性又は両側性であり得て、1000人の出生当たり2人~4人で発生する。両側性腎異形成の男性対女性比は1.3:1であり、一側性異形成の男性対女性比は1.9:1である。
【0045】
CAKUTは、小児での末期腎疾患(ESRD)の症例の30%~50%で原因として働くため(Seikaly et al. 2003 Chronic renal insufficiency in children: the 2001 Annual Report Pediatr Nephrol. 18(8):796)、実施形態において、これらの異常を診断し、療法を開始して、腎障害を最小限に抑え、ESRDの発症を防止又は遅延させ、ESRDの合併症を回避する支持療法を提供することが重要である。腎臓の数又はサイズの減少を伴う奇形を有する患者は、腎予後が不良となる可能性が最も高い(Sanna-Cherchi et al. 2009 Renal outcome in patients with congenital anomalies of the kidney and urinary tract. Kidney Int. 76(5):528)。実施形態において、30歳までにほとんどの患者が透析を受けることとなる。
【0046】
透析のリスクは、単腎又は後部尿道弁に関連する腎低異形成(renal hypodysplasia:腎低形成)を伴う患者について、一側性若しくは両側性の腎低異形成、又は多嚢胞性腎臓若しくは馬蹄腎を有する患者と比較して大幅に高い。実施形態において、単腎の不顕性欠損は、より良性の形態のCAKUTと比較してより不良な予後の原因となり得る。実施形態において、いかなる科学的理論によっても限定されるものではないが、単腎を有する小児は、糸球体過剰濾過によるものと考えられる長期CKDのリスクがある。実施形態において、患者の約3分の1は、タンパク尿(例えば、尿蛋白対クレアチニン比0.2mg/mg超[2歳を超える小児では22.6mg/mmol超])、高血圧(例えば、年齢、性別、及び身長についての95パーセンタイル以上の血圧)、血清クレアチン及びSchwartzの式に基づく推算クレアチニンクリアランスの上昇、又は腎保護用の薬剤(例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤)の使用として規定される腎損傷の証拠を有し得る。
【0047】
実施形態において、腎異形成は、定型的な出生前スクリーニングの間に又は出生後に異形乳児において腎超音波検査が行われたときに発見され得る。実施形態において、特に羊水過少症が存在する場合に、両側性異形成は一側性異形成よりも早期に診断される可能性が高い。実施形態において、腎超音波特徴には、異常な腎実質組織、不十分な皮質髄質分化、及び実質嚢胞の結果としてのエコー源性の増加が含まれる。
【0048】
実施形態において、両側性異形成を伴う乳児は、出生時に腎機能が損なわれている場合があり、その後に進行性腎不全が起こる場合がある。実施形態において、関連する泌尿器学的所見には、腎盂、腎杯(例えば、先天性水腎症)及び尿管の異常、例えば重複集尿系の巨大尿管症、尿管狭窄症、及び膀胱尿管逆流症[VUR]が含まれる。実施形態において、結果として、尿路感染症(UTI)、血尿、発熱、及び腹痛を含む、これらの泌尿器学的異常に関連する合併症のために症候性症状が起こり得る。
【0049】
実施形態において、腎異形成と集尿系異常とが高頻度に関連するため、腎異形成を伴ってUTIを伴う又は伴わない患者において、排泄性膀胱尿道造影が考慮され得る。実施形態において、正常な対側腎にVUR等の関連する泌尿器学的異常がある場合に、一側性腎異形成を伴う小児は、再発性UTIによる腎瘢痕の長期後遺症のリスクが高くなり得る。実施形態において、DMSA放射性核種スキャンは、各腎臓の種々の機能についての更なる情報を提供し得る。実施形態において、多嚢胞性異形成腎(MCDK)は、典型的には、生存可能な機能的腎組織を有しないため、検出可能な腎血流又は腎機能を有しない。しかしながら、実施形態において、分節性異形成の稀な別形が存在し得る。実施形態において、画像化研究は、ベースラインの腎機能及び将来の腎障害のリスク、並びに正常に機能する腎実質を再生する能力を規定するのに有用であり得る。
【0050】
「試料」又は「患者試料」又は「生体試料」という用語は一般的に、対象若しくは患者、体液、体組織、細胞系統、組織培養物、又はその他の供給源から得られるあらゆる生体試料を含むものとする。この用語には、例えば、腎臓生検等の組織生検が含まれる。この用語には、例えば、培養された哺乳動物腎臓細胞等の培養された細胞が含まれる。哺乳動物から組織生検及び培養された細胞を得る方法は、当該技術分野で既知である。実施形態において、試料は、限定されるものではないが、血液、精液、血清、尿、骨髄、粘膜、組織等を含む哺乳動物対象における様々な供給源に由来し得る。
【0051】
「コントロール試料」という用語は、陰性又は陽性の結果が試験試料での結果との相関に役立つものと期待されるネガティブコントロール試料又はポジティブコントロール試料を指す。実施形態において、適しているコントロール試料には、限定されるものではないが、正常な腎臓機能に特徴的な指標を示すことが既知の試料、腎臓疾患を有しないことが既知の対象から得られた試料、及び腎臓疾患を有することが既知の対象から得られた試料が含まれる。実施形態において、コントロール試料は、本明細書で提供される方法によって治療される前の対象から得られる試料であり得る。実施形態において、コントロール試料は、任意の種類又は段階の腎臓疾患を有することが既知の対象から得られた試験試料、及び任意の種類又は段階の腎臓疾患を有しないことが既知の対象からの試料であり得る。実施形態において、コントロール試料は、正常の健康な適合されたコントロールであり得る。当業者は、使用するのに適したその他のコントロール試料を理解するであろう。
【0052】
本明細書において、とりわけ、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象(例えば、CAKUTを有する対象)における慢性腎臓疾患を治療する方法及び組成物が提供される。
【0053】
一態様では、本明細書において、慢性腎臓疾患を患う対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌された小胞、及び/又は、(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含み、本質的に投与することからなり、又は投与することからなり、ここで、対象は腎臓及び/又は尿路の異常を有する、方法が提供される。実施形態において、対象は腎臓の異常を有する。
【0054】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される1つ以上の産物、及び/又は(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの他の細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、本質的に投与することからなる、又は投与することからなる、方法が提供される。
【0055】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される1つ以上の産物(例えば小胞)、及び/又は(iii)該腎細胞集団及び非腎細胞集団等の少なくとも1つの他の細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0056】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される小胞、又は(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0057】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、(i)生物活性腎細胞集団、(ii)該腎細胞集団によって分泌される小胞、並びに(iii)該腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0058】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、生物活性腎細胞集団を含む組成物を対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。実施形態において、組成物は、腎細胞集団によって分泌される小胞を更に含む。実施形態において、組成物は、腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを更に含む。
【0059】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、腎細胞集団によって分泌される小胞を対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0060】
一態様では、本明細書において、腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療する方法であって、腎細胞集団及び少なくとも1つの非腎細胞集団を含むスフェロイドを対象に有効量、投与することを含む、方法が提供される。
【0061】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【0062】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団によって分泌される産物(例えば小胞)並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【0063】
一態様では、本明細書において、生物活性腎細胞集団を含むスフェロイド並びに腎臓及び/又は尿路の異常を有する対象における腎臓疾患を治療するためのその使用が提供される。
【0064】
実施形態において、対象は尿路の異常を有する。実施形態において、対象は腎臓及び尿路の異常を有する。実施形態において、異常は出生前に獲得される。実施形態において、異常は出生後に獲得される。実施形態において、異常は先天性異常である。実施形態において、対象は腎臓の先天性異常を有する。実施形態において、対象は尿路の先天性異常を有する。実施形態において、対象は先天性腎尿路異常を有する。実施形態において、先天性異常は、出生後に悪化する又は追加の異常を引き起こす。実施形態において、対象は一方の腎臓に異常を有する。実施形態において、対象は各腎臓に1つ以上の異常を有する。実施形態において、対象は尿路に異常を有し、ここで、その異常は尿道にある。実施形態において、対象は尿路に異常を有し、ここで、その異常は膀胱にある。実施形態において、対象は尿路に異常を有し、ここで、その異常は尿管にある。実施形態において、異常は出生時に存在するが、出生後まで症状を発現しない又は症状を示さない。
【0065】
実施形態において、腎臓疾患はCKDである。実施形態において、対象は、腎臓及び尿路の異常(例えば、先天性)からのCKDを有する。
【0066】
実施形態において、異常は先天性異常を含む。実施形態において、対象はCAKUTを有する。
【0067】
実施形態において、異常は形態学的異常である。実施形態において、対象は異常に発達した腎臓を有する。
【0068】
実施形態において、対象は、原発性膀胱尿管逆流症、逆流性腎症、腎瘢痕、又は腎低異形成を患っている又は患ったことがある。実施形態において、対象は逆流性腎症を患っている又は患ったことがある。実施形態において、対象は腎瘢痕を患っている又は患ったことがある。実施形態において、対象は腎低異形成を患っている又は患ったことがある。
【0069】
実施形態において、対象は尿路感染症に罹患しやすい。実施形態において、対象は、少なくとも約1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回の尿路感染症を患ったことがある。
【0070】
実施形態において、対象は、高血圧又はタンパク尿を患っている。
【0071】
実施形態において、対象は、逆流防止後手術を受けたことがある。
【0072】
実施形態において、対象は、90mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過速度(GFR)、微量アルブミン尿、又は顕性アルブミン尿を伴う。実施形態において、対象は、80mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、70mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、60mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、50mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、40mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、30mL/分/1.73m2未満のGFRを有する。実施形態において、対象は、少なくとも10mL/分/1.73m2のGFRを有する。実施形態において、対象は、少なくとも15mL/分/1.73m2のGFRを有する。実施形態において、対象は、少なくとも20mL/分/1.73m2のGFRを有する。実施形態において、対象は、少なくとも30mL/分/1.73m2のGFRを有する。実施形態において、対象は、10mL/分/1.73m2、15mL/分/1.73m2、20mL/分/1.73m2、25mL/分/1.73m2、又は30mL/分/1.73m2から50mL/分/1.73m2、60mL/分/1.73m2、70mL/分/1.73m2、80mL/分/1.73m2、又は90mL/分/1.73m2までのGFRを有する。実施形態において、GFRは推算GFR(eGFR)である。実施形態において、対象は微量アルブミン尿症を患っている。実施形態において、対象は顕性アルブミン尿症を患っている。
【0073】
実施形態において、対象は18歳未満である。実施形態において、対象は60歳未満である。実施形態において、対象は50歳未満である。実施形態において、対象は40歳未満である。実施形態において、対象は35歳未満である。実施形態において、対象は30歳未満である。実施形態において、対象は25歳未満である。実施形態において、対象は20歳未満である。実施形態において、対象は1歳~16歳である。実施形態において、対象は、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、又は10歳から20歳、25歳、30歳、35歳、又は40歳までである。
【0074】
実施形態において、対象は、20歳、25歳、30歳、35歳、又は40歳から50歳、55歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、又は100歳までである。実施形態において、対象は少なくとも50歳である。実施形態において、対象は少なくとも55歳である。実施形態において、対象は少なくとも60歳である。実施形態において、対象は少なくとも65歳である。実施形態において、対象は少なくとも70歳である。
【0075】
実施形態において、対象は、腎実質の奇形を有する。
【0076】
実施形態において、対象は、尿道重複(ureteral duplication)、腎盂尿管移行部閉塞、腎無形成、膀胱尿管逆流症、腎異形成、低形成腎、腎低異形成、先天性水腎症、馬蹄腎、後部尿道弁及びプルーンベリー症候群、閉塞性腎異形成、又は非運動性繊毛症を患っている。
【0077】
実施形態において、異常は、遺伝的要因によって引き起こされている又は遺伝的要因と相関している。実施形態において、CAKUTは、遺伝的要因によって引き起こされている又は遺伝的要因と相関している。実施形態において、異常は、非遺伝的要因によって引き起こされている又は非遺伝的要因と相関している。実施形態において、CAKUTは、非遺伝的要因によって引き起こされている又は遺伝的要因と相関している。実施形態において、非遺伝的要因は、環境的要因である。
【0078】
実施形態において、対象は、尿道重複、腎盂尿管移行部閉塞、腎無形成、膀胱尿管逆流症、腎低異形成、先天性水腎症、馬蹄腎、後部尿道弁及びプルーンベリー症候群、閉塞性腎異形成、又は非運動性繊毛症を患っている。実施形態において、対象は尿道重複を患っている。実施形態において、対象は腎盂尿管移行部閉塞を患っている。実施形態において、対象は腎無形成を患っている。実施形態において、対象は膀胱尿管逆流症を患っている。実施形態において、対象は腎低異形成を患っている。実施形態において、対象は先天性水腎症を患っている。実施形態において、対象は馬蹄腎を患っている。実施形態において、対象は後部尿道弁及びプルーンベリー症候群を患っている。実施形態において、対象は閉塞性腎異形成を患っている。実施形態において、対象は非運動性繊毛症を患っている。実施形態において、CAKUTは、遺伝的要因によって引き起こされている又は遺伝的要因と相関している。
【0079】
実施形態において、異常は、アラジール症候群、アペール症候群、バルデー・ビードル症候群、ベックウィズ・ヴィーデマン症候群、鰓耳腎症候群(BOR)、屈曲肢異形成症、セナニ・レンツ症候群、ディジョージ症候群、フレイザー症候群、副甲状腺機能低下症、感音性難聴及び腎臓疾患(HDR)、カルマン症候群、尺骨・乳房症候群、メッケル・グルーバー症候群、ネフロン癆、オキヒロ症候群、パリスター・ホール症候群、腎コロボーマ症候群、低異形成、異形成、腎異形成、嚢胞性異形成、非嚢胞性異形成、VUR嚢胞性異形成、腎低異形成、孤立性嚢胞性腎低異形成、孤立性非嚢胞性腎低異形成、孤立性腎尿細管形成不全、ルビンシュタイン・テイビ症候群、シンプソン・ゴラビ・ベーメル症候群、タウンズ・ブロックス症候群、ツェルベーガー症候群、スミス・レムリ・オピッツ症候群、水腎症、髄質異形成、一側性/両側性無形成/異形成、集尿系異常、無形成、腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)無形成、異形成無形成(dysplasia agenesis)、一側性無形成、VUR、回転異常、交叉性融合腎、VUR異形成、二重セリン/スレオニン及びチロシンプロテインキナーゼ(DSTYK)突然変異、UPJOに関連するDSTYK突然変異、尿細管異形成、嚢胞、及び/又は形成不全を含む。
【0080】
実施形態において、腎臓疾患は慢性腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV、又はステージVの腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージIの腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージIIの腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージIIIの腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージIVの腎臓疾患である。実施形態において、慢性腎臓疾患は、ステージVの腎臓疾患である。実施形態において、対象は、少なくとも週に1回、2回、又は3回透析を受けている。
【0081】
実施形態において、生物活性腎細胞の集団は、本明細書に記載される製剤の部分として自然臓器に投与される。実施形態において、生物活性腎細胞の集団の分泌された産物は、本明細書に記載される製剤の部分として自然臓器に投与される。実施形態において、該細胞は、投与対象である自然臓器又は標的自然臓器ではない供給源を起源としている。
【0082】
実施形態において、腎細胞集団の細胞はスフェロイドの形で存在する。実施形態において、生物活性腎細胞を含むスフェロイドが対象に投与される。実施形態において、スフェロイドは、少なくとも1つの非腎細胞型又は細胞集団を含む。
【0083】
実施形態において、対象は、30mg/g以上の尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)又は24時間の採尿での30mg/日以上の尿中アルブミン排泄量によって規定され得る微量アルブミン尿症により見積もられる腎疾患を有する。
【0084】
実施形態において、患者の腎臓機能は、治療の結果として改善される。患者の腎臓機能の改善は、患者の腎臓機能の安定化であり得る又は腎臓機能を改善する腎臓機能の変化であり得る。実施形態において、改善された腎臓機能は、推算糸球体濾過速度(eGFR)の低下率の減少、安定化、又は増加によって示される。改善された腎臓機能がeGFRの増加によって示される実施形態において、eGFRの増加は、患者のベースラインeGFRに対する少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、又は少なくとも25%の増加であり得る。そのような実施形態において、患者のベースラインeGFRは、治療の初回用量の前の患者のeGFRであり得る、例えば、治療の初回用量を投与する最大3ヶ月前、2ヶ月前、1ヶ月前、3週間前、2週間前、10日前、7日前、6日前、5日前、4日前、3日前、2日前、又は1日前に決定される患者のeGFRであり得る。患者のベースラインeGFRの増加は、治療の初回用量の投与後の1ヶ月~6ヶ月以内、又は2ヶ月~6ヶ月以内、又は3ヶ月~6ヶ月以内、又は4ヶ月~6ヶ月以内、又は5ヶ月~6ヶ月以内、又は1ヶ月~5ヶ月以内、又は1ヶ月~4ヶ月以内、又は1ヶ月~3ヶ月以内、又は2ヶ月~5ヶ月以内、又は2ヶ月~4ヶ月以内、又は3ヶ月~4ヶ月以内、又は2ヶ月~3ヶ月以内、又は2ヶ月以内、又は3ヶ月以内、又は4ヶ月以内、又は5ヶ月以内、又は6ヶ月以内に達成され得る。患者のベースラインeGFRに対する増加は、一定のレベル又は一定の程度である必要はない、すなわち、患者は、腎臓機能を「改善」する治療についてのベースラインに対する同じ初期レベルの増加を維持する必要はない。患者のベースラインeGFRの増加は一度達成されると低下する場合があるが、但し、患者のeGFRは患者のベースラインeGFRと比較して増加し続ける。患者のベースラインeGFRの増加はまた、一度達成されると更に増加する場合がある又はベースラインに対するその初期レベルの増加と同じレベルのベースラインに対する増加を維持する場合がある。患者のベースラインに対するeGFRの増加は、少なくとも12ヶ月、12ヶ月、少なくとも18ヶ月、18ヶ月、少なくとも24ヶ月、24ヶ月、少なくとも30ヶ月、30ヶ月、少なくとも36ヶ月、36ヶ月、少なくとも42ヶ月、42ヶ月、少なくとも48ヶ月、48ヶ月、少なくとも54ヶ月、54ヶ月、少なくとも60ヶ月、60ヶ月、少なくとも66ヶ月、66ヶ月、少なくとも72ヶ月、72ヶ月、少なくとも78ヶ月、78ヶ月、又は患者の残りの寿命の期間にわたるものであり得る。
【0085】
実施形態において、改善された腎臓機能は、患者におけるアルブミン対クレアチニン比(ACR)の減少によって示される。改善された腎臓機能が患者におけるACRの減少によって示される実施形態において、その減少は、患者のベースラインACRに対して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%だけであり得る。代替的には、ACRの減少は、患者のベースラインACRが中程度に、例えば30mg/gから300mg/gの間で増加する場合に、ACRの減少が、患者のACRを軽度ないし正常な範囲のレベルに、例えば30mg/g未満に減少し得るようなものであり得る。代替的には、ACRの減少は、患者のベースラインACRが重度に、例えば300mg/g超増加する場合に、ACRの減少が、患者のACRを中程度に増加するレベルに、例えば30mg/gから300mg/gの間で、又は軽度に通常まで増加するレベルに、例えば30mg/g未満に減少し得るようなものであり得る。そのような実施形態において、患者のベースラインACRは、治療の初回用量の前の患者のACRであり得る、例えば、治療の初回用量を投与する最大3ヶ月前、2ヶ月前、1ヶ月前、3週間前、2週間前、10日前、7日前、6日前、5日前、4日前、3日前、2日前、又は1日前に決定される患者のACRであり得る。患者のベースラインACRの減少は、治療の初回用量の投与後の1ヶ月~6ヶ月以内、又は2ヶ月~6ヶ月以内、又は3ヶ月~6ヶ月以内、又は4ヶ月~6ヶ月以内、又は5ヶ月~6ヶ月以内、又は1ヶ月~5ヶ月以内、又は1ヶ月~4ヶ月以内、又は1ヶ月~3ヶ月以内、又は2ヶ月~5ヶ月以内、又は2ヶ月~4ヶ月以内、又は3ヶ月~4ヶ月以内、又は2ヶ月~3ヶ月以内、又は2ヶ月以内、又は3ヶ月以内、又は4ヶ月以内、又は5ヶ月以内、又は6ヶ月以内に達成され得る。患者のベースラインACRに対する減少は、一定のレベル又は一定の程度である必要はない、すなわち、患者は、腎臓機能を「改善」する治療についてのベースラインに対する同じ初期レベルの減少を維持する必要はない。患者のベースラインACRの減少は一度達成されると増加する場合があるが、但し、患者のACRは患者のベースラインACRと比較して減少し続ける。患者のベースラインACRの減少はまた、一度達成されると更に減少する場合がある又はベースラインに対するその初期レベルの減少と同じレベルのベースラインに対する減少を維持する場合がある。患者のベースラインに対するACRの減少は、少なくとも12ヶ月、12ヶ月、少なくとも18ヶ月、18ヶ月、少なくとも24ヶ月、24ヶ月、少なくとも30ヶ月、30ヶ月、少なくとも36ヶ月、36ヶ月、少なくとも42ヶ月、42ヶ月、少なくとも48ヶ月、48ヶ月、少なくとも54ヶ月、54ヶ月、少なくとも60ヶ月、60ヶ月、少なくとも66ヶ月、66ヶ月、少なくとも72ヶ月、72ヶ月、少なくとも78ヶ月、78ヶ月、又は患者の残りの寿命の期間にわたるものであり得る。
【0086】
実施形態において、改善された腎臓機能は、総血清クレアチニンの減少若しくは血清クレアチン(sCr)の増加率、又は同等の尺度(例えば、シスタチンC、イヌリン、又は糸球体濾過の他の尺度)によって示される。実施形態において、改善された腎臓機能は、改善された腎皮質の厚さによって示される。実施形態において、改善された腎臓機能は、構造的変化及び機能的変化によって示され得る。実施形態において、改善された腎臓のサイズ及び/又は構造は、腎臓の画像化によって決定される。実施形態において、腎臓の画像化の方法は、超音波検査、MRI、又は腎シンチグラフィーである。実施形態において、改善された腎臓機能は、腎臓の構造又は機能の以前の状態よりも優れている。
【0087】
実施形態において、本明細書で提供される対象における腎臓疾患の有効な治療は、腎臓機能の様々な指標を通して観察され得る。実施形態において、腎臓機能の指標には、限定されるものではないが、血清アルブミン値、アルブミン対グロブリン比(A/G比)、血清リン値、血清ナトリウム値、腎臓サイズ(超音波により測定可能)、血清カルシウム値、リン:カルシウム比、血清カリウム値、タンパク尿、尿クレアチニン値、血清クレアチニン値、血中尿素窒素(BUN)値、コレステロール値、トリグリセリド値、及び糸球体濾過速度(GFR)が含まれる。実施形態において、健康全般及びウェルビーイングの幾つかの指標には、限定されるものではないが、体重の増減、生存率、血圧(平均全身血圧、拡張期血圧、又は収縮期血圧)、及び身体持久能力が含まれる。
【0088】
実施形態において、生物活性腎細胞製剤による有効な治療は、腎臓機能の1つ以上の指標の安定化によって証明される。実施形態において、腎臓機能の安定化は、本明細書で提供される方法によって治療されていない対象における指標と比較して、本明細書で提供される方法によって治療された対象における同じ指標の変化を観察することによって実証される。実施形態において、腎臓機能の安定化は、治療前の対象における指標と比較して、本明細書で提供される方法によって治療された同じ対象における同じ指標の変化を観察することによって実証され得る。実施形態において、1つ目の指標の変化は、値の増加又は減少であり得る。実施形態において、本明細書で提供される治療には、対象における血清クレアチニン値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察されるBUN値は、本明細書で提供される方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。実施形態において、該治療には、対象における血清クレアチニン値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察される血清クレアチニン値は、本明細書で提供される方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。実施形態において、腎臓機能の上記の指標のうちの1つ以上の安定化は、選択された腎細胞製剤による治療の結果である。
【0089】
当業者は、本明細書に記載される又は当該技術分野で知られる1つ以上の更なる指標を測定して、対象における腎臓疾患の有効な治療を決定することができることを理解するであろう。
【0090】
実施形態において、生物活性腎細胞製剤による有効な治療は、腎臓機能の1つ以上の指標の改善によって証明される。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、血清クレアチニン値の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、血清中のタンパク質の維持の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、血清コレステロール値及び/又はトリグリセリド値の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、ビタミンD値の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、リン:カルシウム比の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、ヘモグロビン値の改善をもたらす。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、濃縮されていない細胞集団と比較して、血清クレアチニン値の改善をもたらす。実施形態において、腎臓機能の上記の指標のうちの1つ以上の改善は、選択された腎細胞製剤による治療の結果である。
【0091】
本明細書において、再生を必要とする対象における自然腎を再生する方法が含まれる。実施形態において、該方法は、本明細書に記載される生物活性細胞集団、製剤、又はコンストラクトを対象に投与又は移植する工程を含む。実施形態において、再生された自然腎は、限定されるものではないが、自然腎における機能又は能力の発達、自然腎における機能又は能力の改善、及び自然腎における或る特定のマーカーの発現を含む多くの指標によって特徴付けられ得る。実施形態において、機能又は能力の発達又は改善は、上記の腎臓機能の様々な指標に基づいて観察され得る。実施形態において、再生された腎臓は、1つ以上の幹細胞マーカーの差次的発現によって特徴付けられる。実施形態において、幹細胞マーカーは、以下の1つ以上であり得る:SRY(性決定領域Y)-ボックス2(Sox2)、未分化胚性細胞転写因子(UTF1)、マウス由来Nodalホモログ(NODAL)、プロミニン1(PROM1)又はCD133(CD133)、CD24、及びそれらの任意の組合せ(Ilaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)を参照)(Genheimer et al., 2012. Molecular characterization of the regenerative response induced by intrarenal transplantation of selected renal cells in a rodent model of chronic kidney disease. Cells Tissue Organs 196: 374-384(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)も参照)。実施形態において、幹細胞マーカー(複数の場合もある)の発現は、コントロールと比較して上方制御されている。
【0092】
実施形態において、上記効果は、細胞自体によって、及び/又は細胞から分泌される産物によってもたらされ得る。実施形態において、細胞から分泌された産物が対象に投与される。実施形態において、産物は、細胞、例えばこれを産生した細胞から単離されたものである。実施形態において、産物は本明細書に記載される小胞である。実施形態において、小胞(例えば、エクソソーム)は、これを産生した腎細胞集団から単離されたものである。実施形態において、小胞には、以下:傍分泌因子、内分泌因子、接触分泌因子、微小胞、エクソソーム、及びRNAのうちの1つ以上が含まれ得る。分泌された産物には、限定されるものではないが、傍分泌因子、内分泌因子、接触分泌因子、及びRNAを含む微小胞内に存在しない産物も含まれ得る。実施形態において、分泌された産物は、腎細胞に由来する小胞の部分であり得る。実施形態において、小胞は分泌された小胞である。実施形態において、分泌された小胞は、エクソソーム、微小胞、エクトソーム、膜粒子、エクソソーム様小胞、又はアポトーシス小胞である。実施形態において、分泌された小胞はエクソソームである。実施形態において、分泌された小胞は微小胞である。実施形態において、分泌された小胞は1つ以上の細胞成分を含有する又は含む。実施形態において、該成分は、以下:膜脂質、RNA、タンパク質、代謝産物、細胞質ゾル成分、及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上であり得る。実施形態において、分泌された小胞は1つ以上のマイクロRNAを含む。実施形態において、1つ以上のmiRNAには、本明細書に開示されるRNA(例えば、miRNA)分子の1つ又は任意の組合せが含まれる。実施形態において、小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)及び/又はTGFβ1を阻害するmiRNAを含む。実施形態において、分泌された産物は、α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、カルビンジン、クラステリン、結合組織成長因子、シスタチンC、グルタチオン-S-トランスフェラーゼα、腎臓損傷分子-1、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、オステオポンチン、トレフォイル因子3、タム-ホルスフォール尿糖タンパク質、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、血管内皮成長因子、フィブロネクチン、インターロイキン-6、又は単球走化性タンパク質-1等の傍分泌因子及び/又は接触分泌因子を含む。
【0093】
実施形態において、効果は、細胞自身によって、及び/又は細胞から分泌される産物によってもたらされ得る。実施形態において、再生効果は、以下:上皮間葉転換の減少(これは、TGF-βシグナル伝達の減弱を介し得る)、腎線維症の軽減、腎炎の軽減、自然腎における幹細胞マーカーの差次的発現、移植された細胞及び/又は自然細胞の腎障害、例えば尿細管障害の部位への遊走、腎障害、例えば尿細管障害の部位での移植された細胞の生着、(本明細書に記載される)腎臓機能の1つ以上の指標の安定化、腎発生に関連するS字体/C字体のde novo形成、腎尿細管又はネフロンのde novo形成、(本明細書に記載される)赤血球ホメオスタシスの回復、並びにそれらの任意の組合せの1つ以上によって特徴付けられ得る(Basu et al., 2011. Functional evaluation of primary renal cell/biomaterial neo-kidney augment prototypes for renal tissue engineering. Cell Transplantation 20: 1771-90、Bruce et al., 2015. Selected renal cells modulate disease progression in rodent models of chronic kidney disease via NF-κB and TGF-β1 pathways. Regenerative Medicine 10: 815-839も参照され、それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0094】
実施形態において、組織生検に加えて、又は組織生検の代替として、治療を受けている対象における再生転帰は、体液、例えば、尿の検査から評価され得る。対象由来の尿供給源から得られた微小胞は、限定されるものではないが、腎細胞集団に最終的に由来する特定のタンパク質及びmiRNAを含む或る特定の成分を含むことが見出された。実施形態において、これらの成分には、幹細胞の複製及び分化、アポトーシス、炎症及び免疫調節に関与する因子が含まれ得る。実施形態において、微小胞に関連するmiRNA/タンパク質発現パターンの時間的分析は、本明細書に記載される細胞集団、又はコンストラクトが投与される対象の腎臓内の再生転帰の連続的なモニターを可能にする。
【0095】
腎臓疾患患者が治療用製剤による治療に奏効するかどうかを評価する方法も提供される。実施形態において、該方法は、療法薬で治療された腎臓疾患患者から得られた試験試料中の小胞又はその単数又は複数の内腔内容物の量を、コントロール試料中の小胞の量と比較して又はその量に対して測定又は検出する工程を含み得て、ここで、試験試料中の小胞又はその1つ以上の内腔内容物の量がコントロール試料中の小胞又はその内腔内容物(複数の場合もある)の量と比較してより多い又はより少ないことが、療法薬での治療に対する治療された患者の奏効性の指標である。
【0096】
実施形態において、これらの腎臓由来の小胞及び/又は腎臓由来の小胞の内腔内容物を、対象の尿中に放出させることもでき、再生転帰又は治療有効性の指標であるバイオマーカーについて分析することができる。実施形態において、非侵襲的予後診断法は、本明細書に記載される細胞集団、組成物、製剤、細胞産物、又はコンストラクトの投与又は移植の前及び/又は後に対象から尿試料を得る工程を含み得る。小胞及びその他の分泌産物は、限定されるものではないが、不要のデブリを除去する遠心分離(Zhou et al. 2008. Kidney Int. 74(5):613-621、Skogらによる米国特許出願公開第20110053157号、それぞれは、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)を含む標準的な技術を使用して尿試料から単離され得る。
【0097】
実施形態において、小胞には、以下:傍分泌因子、内分泌因子、接触分泌因子、微小胞、エクソソーム、及びRNAのうちの1つ以上が含まれ得る。分泌された産物には、限定されるものではないが、傍分泌因子、内分泌因子、接触分泌因子、及びRNAを含む微小胞内に存在しない産物も含まれ得る。
【0098】
実施形態において、分泌された産物は、腎細胞に由来する小胞の部分であり得る。実施形態において、小胞は分泌された小胞である。実施形態において、分泌された小胞は、エクソソーム、微小胞、エクトソーム、膜粒子、エクソソーム様小胞、又はアポトーシス小胞である。実施形態において、分泌された小胞はエクソソームである。実施形態において、分泌された小胞は微小胞である。実施形態において、分泌された小胞は1つ以上の細胞成分を含有する又は含む。実施形態において、該成分は、以下:膜脂質、RNA、タンパク質、代謝産物、細胞質ゾル成分、及びそれらの任意の組合せのうちの1つ以上であり得る。実施形態において、分泌された小胞は1つ以上のマイクロRNAを含む。実施形態において、1つ以上のmiRNAには、miR-30b-5p、miR-449a、miR-146a、miR-130a、miR-23b、miR-21、miR-124、及びmiR-151の1つ又は任意の組合せが含まれる。実施形態において、1つ以上のmiRNAには、let-7a-1、let-7a-2、let-7a-3、let-7b、let-7c、let-7d、let-7e、let-7f-1、let-7f-2、let-7g、let-7i、mir-1-1、mir-1-2、mir-7-1、mir-7-2、mir-7-3、mir-9-1、mir-9-2、mir-9-3、mir-10a、mir-10b、mir-15a、mir-15b、mir-16-1、mir-16-2、mir-17、mir-18a、mir-18b、mir-19a、mir-19b-1、mir-19b-2、mir-20a、mir-20b、mir-21、mir-22、mir-23a、mir-23b、mir-23c、mir-24-1、mir-24-2、mir-25、mir-26a-1、mir-26a-2、mir-26b、mir-27a、mir-27b、mir-28、mir-29a、mir-29b-1、mir-29b-2、mir-29c、mir-30a、mir-30b、mir-30c-1、mir-30c-2、mir-30d、mir-30e、mir-31、mir-32、mir-33a、mir-33b、mir-34a、mir-34b、mir-34c、mir-92a-1、mir-92a-2、mir-92b、mir-93、mir-95、mir-96、mir-98、mir-99a、mir-99b、mir-100、mir-101-1、mir-101-2、mir-103-1、mir-103-1-as、mir-103-2、mir-103-2-as、mir-105-1、mir-105-2、mir-106a、mir-106b、mir-107、mir-122、mir-124-1、mir-124-2、mir-124-3、mir-125a、mir-125b-1、mir-125b-2、mir-126、mir-127、mir-128-1、mir-128-2、mir-129-1、mir-129-2、mir-130a、mir-130b、mir-132、mir-132、mir-133a-1、mir-133a-2、mir-133b、mir-134、mir-135a-1、mir-135a-2、mir-135b、mir-136 MI101351120、mir-137、mir-138-1、mir-138-2、mir-139、mir-140、mir-141、mir-142、mir-143、mir-144、mir-145、mir-146a、mir-146b、mir-147、mir-147b、mir-148a、mir-148b、mir-149、mir-150、mir-151、mir-152、mir-153-1、mir-153-2、mir-154、mir-155、mir-181a-1、mir-181a-2、mir-181b-1、mir-181b-2、mir-181c、mir-181d、mir-182、mir-183、mir-184、mir-185、mir-186、mir-187、mir-188、mir-190、mir-190b、mir-191、mir-192、mir-193a、mir-193b、mir-194-1、mir-194-2、mir-195、mir-196a-1、mir-196a-2、mir-196b、mir-197、mir-198、mir-199a-1、mir-199a-2、mir-199b、mir-200a、mir-200b、mir-200c、mir-202、mir-203、mir-204、mir-205、mir-206、mir-208a、mir-208b、mir-210、mir-211、mir-212、mir-214、mir-215、mir-216a、mir-216b、mir-217、mir-218-1、mir-218-2、mir-219-1、mir-219-2、mir-221、mir-222、mir-223、mir-224、mir-296、mir-297、mir-298、mir-299、mir-300、mir-301a、mir-301b、mir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、mir-320a、mir-320b-1、mir-320b-2、mir-320c-1、mir-320c-2、mir-320d-1、mir-320d-2、mir-320e、mir-323、mir-323b、mir-324、mir-325、mir-326、mir-328、mir-329-1、mir-329-2、mir-330、mir-331、mir-335、mir-337、mir-338、mir-339、mir-340、mir-342、mir-345、mir-346、mir-361、mir-362、mir-363、mir-365-1、mir-365-2、mir-367、mir-369、mir-370、mir-37、mir-372、mir-373、mir-374a、mir-374b、mir-374c、mir-375、mir-376a-1、mir-376a-2、mir-376b、mir-376c、mir-377、mir-378、mir-378b、mir-378c、mir-379、mir-380、mir-381、mir-382、mir-383、mir-384、mir-409、mir-410、mir-411、mir-412、mir-421、mir-422a、mir-423、mir-424、mir-425、mir-429、mir-431、mir-432、mir-433、mir-448、mir-449a、mir-449b、mir-449c、mir-450a-1、mir-450a-2、mir-450b、mir-451、mir-452、mir-454、mir-455、mir-466、mir-483、mir-484、mir-485、mir-486、mir-487a、mir-487b、mir-488、mir-489、mir-490、mir-491、mir-492、mir-493、mir-494、mir-495、mir-496、mir-497、mir-498、mir-499、mir-500a、mir-500b、mir-501、mir-502、mir-503、mir-504、mir-505、mir-506、mir-507、mir-508、mir-509-1、mir-509-2、mir-509-3、mir-510、mir-511-1、mir-511-2、mir-512-1、mir-512-2、mir-513a-1、mir-513a-2、mir-513b、mir-513c、mir-514-1、mir-514-2、mir-514-3、mir-514b、mir-515-1、mir-515-2、mir-516a-1、mir-516a-2、mir-516b-1、mir-516b-2、mir-517a、mir-517b、mir-517c、mir-518a-1、mir-518a-2、mir-518b、mir-518c、mir-518d、mir-518e、mir-518f、mir-519a-1、mir-519a-2、mir-519b、mir-519c、mir-519d、mir-519e、mir-520a、mir-520b、mir-520c、mir-520d、mir-520e、mir-520f、mir-520g、mir-520h、mir-521-1、mir-521-2、mir-522、mir-523、mir-524、mir-525、mir-526a-1、mir-526a-2、mir-526b、mir-527、mir-532、mir-539、mir-541、mir-542、mir-543、mir-544、mir-544b、mir-545、mir-548a-1、mir-548a-2、mir-548a-3、mir-548ah-1、mir-548ah-2、mir-548b、mir-548c、mir-548d-1、mir-548d-2、mir-548e、mir-548f-1、mir-548f-2、mir-548f-3、mir-548f-4、mir-548f-5、mir-548g、mir-548h-1、mir-548h-2、mir-548h-3、mir-548h-4、mir-548i-1、mir-548i-2、mir-548i-3、mir-548i-4、mir-548j、mir-548k、mir-5481、mir-548m、mir-548n、mir-548o、mir-548p、mir-548s、mir-548t、mir-548u、mir-548v、mir-548w、mir-548x、mir-548y、mir-548z、mir-549、mir-550a-1、mir-550a-2、mir-550b-1、mir-550b-2、mir-551a、mir-551b、mir-552、mir-553、mir-554、mir-555、mir-556、mir-557、mir-558、mir-559、mir-561、mir-562、mir-563、mir-564、mir-566、mir-567、mir-568、mir-569、mir-570、mir-571、mir-572、mir-573、mir-574、mir-575、mir-576、mir-577、mir-578、mir-579、mir-580、mir-581、mir-582、mir-583、mir-584、mir-585、mir-586、mir-587、mir-588、mir-589、mir-590、mir-591、mir-592、mir-593、mir-595、mir-596、mir-597、mir-598、mir-599、mir-600、mir-601、mir-602、mir-603、mir-604、mir-605、mir-606、mir-607、mir-608、mir-609、mir-610、mir-611、mir-612、mir-613、mir-614、mir-615、mir-616、mir-617、mir-618、mir-619、mir-620、mir-621、mir-622、mir-623、mir-624、mir-625、mir-626、mir-627、mir-628、mir-629、mir-630、mir-631、mir-632、mir-633、mir-634、mir-635、mir-636、mir-637、mir-638、mir-639、mir-640、mir-641、mir-642a、mir-642b、mir-643、mir-644、mir-645、mir-646、mir-647、mir-648、mir-649、mir-650、mir-651、mir-652、mir-653、mir-654、mir-655、mir-656、mir-657、mir-658、mir-659、mir-660、mir-661、mir-662、mir-663、mir-663b、mir-664、mir-665、mir-
668、mir-670、mir-671、mir-675、mir-676、mir-708、mir-711、mir-718、mir-720、mir-744、mir-758、mir-759、mir-760、mir-761、mir-762、mir-764、mir-765、mir-766、mir-767、mir-769、mir-770、mir-802、mir-873、mir-874、mir-875、mir-876、mir-877、mir-885、mir-887、mir-888、mir-889、mir-890、mir-891a、mir-891b、mir-892a、mir-892b、mir-920、mir-921、mir-922、mir-924、mir-933、mir-934、mir-935、mir-936、mir-937、mir-938、mir-939、mir-940、mir-941-1、mir-941-2、mir-941-3、mir-941-4、mir-942、mir-942、mir-943、mir-944、mir-1178、mir-1179、mir-1180、mir-1181、mir-1182、mir-1183、mir-1184-1、mir-1184-2、mir-1184-3、mir-1185-1、mir-1185-2、mir-1193、mir-1197、mir-1200、mir-1202、mir-1203、mir-1204、mir-1205、mir-1206、mir-1207、mir-1208、mir-1224、mir-1225、mir-1226、mir-1227、mir-1228、mir-1229、mir-1231、mir-1233-1、mir-1233-2、mir-1234、mir-1236、mir-1237、mir-1238、mir-1243、mir-1244-1、mir-1244-2、mir-1244-3、mir-1245、mir-1246、mir-1247、mir-1248、mir-1249、mir-1250、mir-1251、mir-1252、mir-1253、mir-1254、mir-1255a、mir-1255b-1、mir-1255b-2、mir-1256、mir-1257、mir-1258、mir-1260、mir-1260b、mir-1261、mir-1262、mir-1263、mir-1264、mir-1265、mir-1266、mir-1267、mir-1268、mir-1269、mir-1270-1、mir-1270-2、mir-1271、mir-1272、mir-1273、mir-1273c、mir-1273d、mir-1273e、mir-1274a、mir-1274b、mir-1275、mir-1276、mir-1277、mir-1278、mir-1279、mir-1280、mir-1281、mir-1282、mir-1283-1、mir-1283-2、mir-1284、mir-1285-1、mir-1285-2、mir-1286、mir-1287、mir-1288、mir-1289-1、mir-1289-2、mir-1290、mir-1291、mir-1292、mir-1293、mir-1294、mir-1295、mir-1296、mir-1297、mir-1298、mir-1299、mir-1301、mir-1302-1、mir-1302-10、mir-1302-11、mir-1302-2、mir-1302-3、mir-1302-4、mir-1302-5、mir-1302-6、mir-1302-7、mir-1302-8、mir-1302-9、mir-1303、mir-1304、mir-1305、mir-1306、mir-1307、mir-1321、mir-1322、mir-1323、mir-1324、mir-1468、mir-1469、mir-1470、mir-1471、mir-1537、mir-1538、mir-1539、mir-1825、mir-1827、mir-1908、mir-1909、mir-1910、mir-1911、mir-1912、mir-1913、mir-1914、mir-1915、mir-1972-1、mir-1972-2、mir-1973、mir-1976、mir-2052、mir-2053、mir-2054、mir-2110、mir-2113、mir-2114、mir-2115、mir-2116、mir-2117、mir-2276、mir-2277、mir-2278、mir-2355、mir-2861、mir-2909、mir-3065、mir-3074、mir-3115、mir-3116-1、mir-3116-2、mir-3117、mir-3118-1、mir-3118-2、mir-3118-3、mir-3118-4、mir-3118-5、mir-3118-6、mir-3119-1;mir-3119-2、mir-3120、mir-3121、mir-3122、mir-3123、mir-3124、mir-3125、mir-3126、mir-3127、mir-3128、mir-3129、mir-3130-1、mir-3130-2、mir-3131、mir-3132、mir-3133、mir-3134、mir-3135、mir-3136、mir-3137、mir-3138、mir-3139、mir-3140、mir-3141、mir-3142、mir-3143、mir-3144、mir-3145、mir-3146、mir-3147、mir-3148、mir-3149、mir-3150、mir-3151、mir-3152、mir-3153、mir-3154、mir-3155、mir-3156-1、mir-3156-2、mir-3156-3、mir-3157、mir-3158-1、mir-3158-2、mir-3159、mir-3160-1、mir-3160-2、mir-3161、mir-3162、mir-3163、mir-3164、mir-3165、mir-3166、mir-3167、mir-3168、mir-3169、mir-3170、mir-3171、mir-3173、mir-3174、mir-3175、mir-3176、mir-3177、mir-3178、mir-3179-1、mir-3179-2、mir-3179-3、mir-3180-1、mir-3180-2、mir-3180-3、mir-3180-4、mir-3180-5、mir-3181、mir-3182、mir-3183、mir-3184、mir-3185、mir-3186、mir-3187、mir-3188、mir-3189、mir-3190、mir-3191、mir-3192、mir-3193、mir-3194、mir-3195、mir-3196、mir-3197、mir-3198、mir-3199-1、mir-3199-2、mir-3200、mir-3201、mir-3202-1、mir-3202-2、mir-3605、mir-3606、mir-3607、mir-3609、mir-3610、mir-3611、mir-3612、mir-3613、mir-3614、mir-3615、mir-3616、mir-3617、mir-3618、mir-3619、mir-3620、mir-3621、mir-3622a、mir-3622b、mir-3646、mir-3647、mir-3648、mir-3649、mir-3650、mir-3651、mir-3652、mir-3653、mir-3654、mir-3655、mir-3656mir-3657、mir-3658、mir-3659、mir-3660、mir-3661、mir-3662、mir-3663、mir-3664、mir-3665、mir-3666、mir-3667、mir-3668、mir-3669、mir-3670、mir-3670、mir-3671、mir-3671、mir-3673、mir-3673、mir-3675、mir-3675、mir-3676、mir-3663、mir-3677、mir-3678、mir-3679、mir-3680、mir-3681、mir-3682、mir-3683、mir-3684、mir-3685、mir-3686、mir-3687、mir-3688、mir-3689a、mir-3689b、mir-3690、mir-3691、mir-3692、mir-3713、mir-3714、mir-3907、mir-3908、mir-3909、mir-3910-1、mir-3910-2、mir-3911、mir-3912、mir-3913-1、mir-3913-2、mir-3914-1、mir-3914-2、mir-3915、mir-3916、mir-3917、mir-3918、mir-3919、mir-3920、mir-3921、mir-3922、mir-3923、mir-3924、mir-3925、mir-3926-1、mir-3926-2、mir-3927、mir-3928、mir-3929、mir-3934、mir-3935、mir-3936、mir-3937、mir-3938、mir-3939、mir-3940、mir-3941、mir-3942、mir-3943、mir-3944、mir-3945、mir-4251、mir-4252、mir-4253、mir-4254、mir-4255、mir-4256、mir-4257、mir-4258、mir-4259、mir-4260、mir-4261、mir-4262、mir-4263、mir-4264、mir-4265、mir-4266、mir-4267、mir-4268、mir-4269、mir-4270、mir-4271、mir-4272、mir-4273、mir-4274、mir-4275、mir-4276、mir-4277、mir-4278、mir-4279、mir-4280、mir-4281、mir-4282、mir-4283-1、mir-4283-2、mir-4284、mir-4285、mir-4286、mir-4287、mir-4288、mir-4289、mir-4290、mir-4291、mir-4292、mir-4293、mir-4294、mir-4295、mir-4296、mir-4297、mir-4298、mir-4299、mir-4300、mir-4301、mir-4302、mir-4303、mir-4304、mir-4305、mir-4306、mir-4307、mir-4308、mir-4309、mir-4310、mir-4311、mir-4312、mir-4313、mir-4314、mir-4315-1、mir-4315-2、mir-4316、mir-4317、mir-4318、mir-4319、mir-4320、mir-4321、mir-4322、mir-4323、mir-4324、mir-4325、mir-4326、mir-4327、mir-4328;mir-4329、mir-4329、及びmir-4330の1つ又は任意の組合せが含まれる。
【0099】
実施形態において、miRNAには、以下:miR-21、miR-23a、miR-30c、miR-1224、miR-23b、miR-92a、miR-100、miR-125b-5p、miR-195、miR-10a-5pのいずれか1つ又は2つ以上、及びそれらの任意の組合せが含まれる。実施形態において、miRNAには、以下:miR-30b-5p、miR-449a、miR-146a、miR-130a、miR-23b、miR-21、miR-124、miR-151のいずれか1つ又は2つ以上、及びそれらの任意の組合せが含まれる。実施形態において、miRNAには、以下:miR-24、miR-195、miR-871、miR-30b-5p、miR-19b、miR-99a、miR-429、let-7f、miR-200a、miR-324-5p、miR-10a-5pのいずれか1つ又は2つ以上、及びそれらの任意の組合せが含まれる。実施形態において、miRNAの組合せには、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれより多くの個々のmiRNAが含まれ得る。
【0100】
実施形態において、分泌された産物は、NFκBシグナル伝達経路を減弱させる化合物を含む。
【0101】
実施形態において、分泌された産物は傍分泌因子を含む。実施形態において、傍分泌因子は、短い距離にわたって拡散することで、隣接する細胞の変化、すなわち傍分泌相互作用を誘発又は引き起こすことができる細胞によって合成される分子である。実施形態において、拡散性分子が傍分泌因子と呼ばれる。実施形態において、接触分泌因子は、細胞膜のオリゴ糖、脂質、又はタンパク質成分を介して伝達される細胞間コミュニケーションを促進し、放出する細胞又は直接隣り合う細胞のいずれかに影響を及ぼし得る分子である。実施形態において、接触分泌シグナル伝達は、典型的には、関与する2つの細胞間の物理的接触を伴う。
【0102】
実施形態において、小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)及び/又はTGFβ1を阻害するmiRNAを含む。
【0103】
実施形態において、分泌された産物は、α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、カルビンジン、クラステリン、結合組織成長因子、シスタチンC、グルタチオン-S-トランスフェラーゼα、腎臓損傷分子-1、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、オステオポンチン、トレフォイル因子3、タム-ホルスフォール尿糖タンパク質、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、血管内皮成長因子、フィブロネクチン、インターロイキン-6、又は単球走化性タンパク質-1等の傍分泌因子及び/又は接触分泌因子を含む。
【0104】
実施形態において、本明細書に開示される方法による対象における腎臓疾患の有効な治療は、赤血球形成及び/又は腎臓機能の様々な指標を通して観察され得る。実施形態において、赤血球ホメオスタシスの指標には、限定されるものではないが、ヘマトクリット(HCT)、ヘモグロビン(HB)、平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、赤血球数(RBC)、網状赤血球数、網状赤血球%、平均赤血球容積(MCV)、及び赤血球分布幅(RDW)が含まれる。実施形態において、腎臓機能の指標には、限定されるものではないが、血清アルブミン、アルブミン対グロブリン比(A/G比)、血清リン、血清ナトリウム、腎臓サイズ(超音波により測定可能)、血清カルシウム、リン:カルシウム比、血清カリウム、タンパク尿、尿クレアチニン、血清クレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、コレステロール値、トリグリセリド値、及び糸球体濾過速度(GFR)が含まれる。さらに、健康全般及びウェルビーイングの幾つかの指標には、限定されるものではないが、体重の増減、生存率、血圧(平均全身血圧、拡張期血圧、又は収縮期血圧)、及び身体持久能力が含まれる。
【0105】
実施形態において、生物活性腎細胞製剤による有効な治療は、腎臓機能の1つ以上の指標の安定化によって証明される。実施形態において、腎臓機能の安定化は、本明細書の方法によって治療されていない対象における同じ指標と比較して、本明細書に提供される方法によって治療された対象における指標の変化を観察することによって実証される。実施形態において、腎臓機能の安定化は、治療前の対象における指標と比較して、本明細書の方法によって治療された同じ対象における同じ指標の変化を観察することによって実証され得る。実施形態において、1つ目の指標の変化は、値の増加又は減少であり得る。実施形態において、本開示により提供される治療には、対象における血中尿素窒素(BUN)値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察されるBUN値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。実施形態において、該治療には、対象における血清クレアチニン値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察される血清クレアチニン値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより低い。実施形態において、該治療には、対象におけるヘマトクリット(HCT)値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察されるHCT値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより高い。実施形態において、該治療には、対象における赤血球(RBC)値の安定化が含まれ得て、ここで、この対象で観察されるRBC値は、本開示の方法によって治療されていない同様の病態を有する対象と比較してより高い。実施形態において、本明細書に記載される又は当該技術分野で知られる1つ以上の更なる指標を測定して、対象における腎臓疾患の有効な治療を決定することができる。
【0106】
実施形態において、再生された自然腎は、限定されるものではないが、自然腎における機能又は能力の発達、自然腎における機能又は能力の改善、及び自然腎における或る特定のマーカーの発現を含む多くの指標によって特徴付けられ得る。実施形態において、機能又は能力の発達又は改善は、本明細書に記載される赤血球ホメオスタシス及び腎臓機能の様々な指標に基づいて観察され得る。実施形態において、再生された腎臓は、1つ以上の幹細胞マーカーの差次的発現によって特徴付けられる。実施形態において、幹細胞マーカーは、以下の1つ以上であり得る:Sox2、UTF1、NODAL、PROM1又はCD133、CD24、及びそれらの任意の組合せ(Ilaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)を参照)。実施形態において、幹細胞マーカー(複数の場合もある)の発現は、コントロールと比較して上方制御されている。
【0107】
実施形態において、濃縮された細胞集団及び/又はそれらの混合物を含む本明細書に記載される細胞集団、並びにそれを含むコンストラクトを使用して、自然腎に再生効果をもたらすことができる。実施形態において、上記効果は、細胞自体によって、及び/又は細胞から分泌される産物によってもたらされ得る。実施形態において、再生効果は、以下:上皮間葉転換の減少(これは、TGF-βシグナル伝達の減弱を介し得る)、腎線維症の軽減、腎炎の軽減、自然腎における幹細胞マーカーの差次的発現、移植された細胞及び/又は自然細胞の腎損傷、例えば尿細管損傷の部位への遊走、腎損傷、例えば尿細管損傷の部位での移植された細胞の生着、(本明細書に記載される)腎臓機能の1つ以上の指標の安定化、(本明細書に記載される)赤血球ホメオスタシスの回復、並びにそれらの任意の組合せの1つ以上によって特徴付けられ得る。
【0108】
実施形態において、本明細書で提供される治療組成物又は製剤は、特定の生物活性成分又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性又は不所望な成分又は細胞型が枯渇された単離された異種腎臓細胞集団を含有する。実施形態において、そのような組成物及び製剤は、腎臓疾患の治療において使用され、例えば、腎臓機能及び/又は構造の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす。実施形態において、該組成物は、健康な個体と比較して細胞成分を欠くが、治療特性を保持する、例えば、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、単離された腎細胞画分を含有する。実施形態において、本明細書に記載される細胞集団は、健康な個体、腎臓疾患を患う個体、又は本明細書に記載される対象に由来し得る。
【0109】
本明細書において、対象における標的臓器又は組織に投与される選択された腎細胞集団の治療用組成物が含まれる。実施形態において、選択された生物活性腎細胞集団は一般的に、対象への投与時に治療特性を潜在的に有する細胞集団を指す。実施形態において、必要とする対象に投与すると、生物活性腎細胞集団は、対象における腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は修復及び/又は再生をもたらし得る。実施形態において、治療特性には、修復効果又は再生効果が含まれ得る。
【0110】
実施形態において、腎細胞集団は、腎臓に由来する、未分画の異種細胞集団又は濃縮された均一な細胞集団である。実施形態において、異種細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から単離される。実施形態において、腎細胞集団は、組織生検又は全臓器組織から樹立された哺乳動物細胞のin vitro培養物に由来する。実施形態において、腎細胞集団は、生物活性成分(例えば、生物活性腎細胞)について濃縮され、不活性又は不所望な成分又は細胞が枯渇された、異種腎細胞集団の亜画分又は亜集団を含む。
【0111】
実施形態において、腎細胞集団はGGT及びサイトケラチンを発現する。実施形態において、GGTは、約10%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%を超える発現のレベルを有する。実施形態において、GGTはGGT-1である。実施形態において、腎細胞集団の細胞はGGT-1、サイトケラチン、VEGF、及びKIM-1を発現する。実施形態において、腎細胞集団中の18%を超える細胞がGGT-1を発現する。実施形態において、腎細胞集団中の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。実施形態において、サイトケラチンは、CK8、CK18、CK19及びそれらの組合せから選択される。実施形態において、サイトケラチンは、CK8、CK18、CK19、CK8/CK18、CK8/CK19、CK18/CK19又はCK8/CK18/CK19であり、「/」は、それに隣接するサイトケラチンの組合せを指す。実施形態において、サイトケラチンは、約80%、約85%、約90%、又は約95%を超える発現のレベルを有する。実施形態において、腎細胞集団中の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。実施形態において、腎細胞集団はAQP2を発現する。実施形態において、40%未満の細胞がAQP2を発現する。実施形態において、腎細胞集団中の少なくとも3%の細胞がAQP2を発現する。
【0112】
実施形態において、細胞集団内の18%を超える細胞がGGT-1を発現し、細胞集団内の80%を超える細胞がサイトケラチンを発現する。実施形態において、サイトケラチンはCK18である。実施形態において、細胞集団中の細胞の4.5%~81.2%がGGT-1を発現し、細胞集団内の細胞の3.0%~53.7%がAQP2を発現し、細胞集団内の細胞の81.1%~99.7%がCK18を発現する。
【0113】
実施形態において、腎細胞集団は、AQP1、AQP2、AQP4、カルビンジン、カルポニン、CD117、CD133、CD146、CD24、CD31(PECAM-1)、CD54(ICAM-1)、CD73、CK18、CK19、CK7、CK8、CK8、CK18、CK19、CK8、CK18及びCK19の組合せ、コネキシン43、キュビリン、CXCR4(フュージン)、DBA、E-カドヘリン(CD324)、EPO(エリスロポエチン)、GGT1、GLEPP1(糸球体上皮タンパク質1)、ハプトグロブリン、Itgbl(インテグリン01)、KIM-1(腎臓障害分子-1)、T1M-1(T細胞免疫グロブリン及びムチン含有分子)、MAP-2(微小管関連タンパク質2)、メガリン、N-カドヘリン、ネフリン、NKCC(Na-K-Cl-共輸送体)、OAT-1(有機陰イオン輸送体1)、オステオポンチン、パンカドヘリン、PCLP1(ポドカリキシン様1分子)、ポドシン、SMA(平滑筋α-アクチン)、シナプトポディン、THP(タム-ホースフォールタンパク質)、ビメンチン及びαGST-1(アルファグルタチオンS-トランスフェラーゼ)から選択されるバイオマーカーの任意の組合せの1つ以上を発現する細胞を含む。
【0114】
実施形態において、腎細胞集団は、腎臓組織生検又はその初代培養物における細胞集団等の出発集団と比較して、上皮細胞について濃縮されている(例えば、腎細胞集団は、出発集団より少なくとも約5%、10%、15%、20%、又は25%多い上皮細胞を含む)。実施形態において、腎細胞集団は、腎臓組織生検又はその初代培養物における細胞集団等の出発集団と比較して、尿細管細胞について濃縮されている(例えば、腎細胞集団は、出発集団より少なくとも約5%、10%、15%、20%、又は25%多い尿細管細胞を含む)。実施形態において、尿細管細胞は近位尿細管細胞を含む。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の遠位尿細管細胞、集合管細胞、内分泌細胞、血管細胞、又は前駆細胞様細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の遠位尿細管細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の集合管細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の内分泌細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の血管細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、出発集団と比較して、より低い割合の前駆細胞様細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、濃縮されていない集団(例えば、出発腎臓細胞集団)と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合のEPO産生細胞、糸球体細胞、及び血管細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、濃縮されていない集団と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合のEPO産生細胞及び血管細胞を有する。実施形態において、腎細胞集団は、濃縮されていない集団と比較して、より高い割合の尿細管細胞を有し、より低い割合の糸球体細胞及び血管細胞を有する。
【0115】
実施形態において、腎細胞集団の細胞はヒアルロン酸(HA)を発現する。実施形態において、HAのサイズ範囲は、約5kDa~約20000kDaである。実施形態において、HAは、5kDa、60kDa、800kDa、及び/又は3000kDaの分子量を有する。実施形態において、腎細胞集団は、特に腎内移植後に、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS-2)の発現を通じて高分子量のHAを合成する及び/又はその合成を刺激する。実施形態において、腎細胞集団の細胞は、HAS-2の作用を通じてin vitro及び/又はin vivoで、より高分子量の種のHAを発現する。実施形態において、腎細胞集団の細胞は、HAS-2の作用を通じてin vitro及びin vivoの両方で、より高分子量の種のHAを発現する。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも100kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約800kDa~約3500kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約800kDa~約3000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも800kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも3000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約800kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約3000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、HAS-2は、2×105Da~2×106Daの分子量を有するHAを合成する。実施形態において、より小さな種のHAは、分解性ヒアルロニダーゼの作用によって形成される。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約200kDa~約2000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約200kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約2000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも200kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも2000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも5000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも10000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、少なくとも15000kDaの分子量を有するHAである。実施形態において、より高分子量の種のHAは、約20000kDaの分子量を有するHAである。
【0116】
実施形態において、集団は、受容体を介したアルブミン輸送の能力を有する細胞を含む。
【0117】
実施形態において、腎細胞集団の細胞は低酸素耐性である。
【0118】
実施形態において、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、N-カドヘリン、E-カドヘリン、アクアポリン-1、及びアクアポリン-2の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0119】
実施形態において、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質輸送体ファミリー9(ナトリウム/水素交換体)メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーB1(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA3(Aldh1a3)、及びカルパイン-8(Capn8)の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0120】
実施形態において、腎細胞集団は、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子4(Fxyd4)、溶質輸送体ファミリー9(ナトリウム/水素交換体)メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバー81(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA3(Aldh1a3)、及びカルパイン-8(Capn8)及びアクアポリン-4(Aqp4)の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0121】
実施形態において、腎細胞集団は、アクアポリン-7(Aqp7)、FXYDドメイン含有イオン輸送制御因子2(Fxyd2)、溶質輸送体ファミリー17(リン酸ナトリウム)メンバー3(Slc17a3)、溶質輸送体ファミリー3メンバー1(Slc3a1)、クローディン2(Cldn2)、napsin Aアスパラギン酸ペプチダーゼ(Napsa)、溶質輸送体ファミリー2(促進型グルコース輸送体)メンバー2(Slc2a2)、アラニル(膜)アミノペプチダーゼ(Anpep)、膜貫通タンパク質27(Tmem27)、アシル-CoAシンターゼ中鎖ファミリーメンバー2(Acsm2)、グルタチオンペルオキシダーゼ3(Gpx3)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ1(Fbp1)、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ2(Agxt2)、血小板内皮細胞接着分子(Pecam)、及びポドシン(Podn)の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0122】
実施形態において、腎細胞集団は、PECAM、VEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146、ポドシン(Podn)、及びネフリン(Neph)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(Cxcr4)、エンドセリン受容体B型(Ednrb)、V型コラーゲンα2(Col5a2)、カドヘリン5(Cdh5)、組織プラスミノーゲン活性化因子(Plat)、アンジオポエチン2(Angpt2)、キナーゼ挿入ドメインタンパク質受容体(Kdr)、分泌型システインリッチ酸性タンパク質(オステオネクチン)(Sparc)、セルグリシン(Srgn)、TIMPメタロペプチダーゼインヒビター3(Timp3)、ウィルムス腫瘍1(Wt1)、ウイングレス型MMTV組み込み部位ファミリーメンバー4(Wnt4)、Gタンパク質シグナル伝達制御因子4(Rgs4)、エリスロポエチン(EPO)の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0123】
実施形態において、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、ポドシン、ネフリン、EPO、CK7、CK8/18/19の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0124】
実施形態において、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0125】
実施形態において、腎細胞集団は、ポドシン(Podn)及びネフリン(Neph)の任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0126】
実施形態において、腎細胞集団は、PECAM、vEGF、KDR、HIF1a及びEPOの任意の組合せの1つ以上を発現する1つ以上の細胞型を含む。
【0127】
実施形態において、試料又は細胞集団中の様々なバイオマーカーの存在(例えば、発現)及び/又はレベル/量は、多くの技法によって分析することができ、その技法の多くは当該技術分野で知られており、当業者に理解されており、限定されるものではないが、該技法には、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン解析、ノーザン解析、全ゲノムシーケンシング、定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)及び他の増幅型検出法(例えば、分岐DNA法、SISBA、TMA等)を含むポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ解析、遺伝子発現プロファイリング、及び/又は遺伝子発現連続解析(「SAGE」)、並びにタンパク質、遺伝子、及び/又は組織アレイ解析によって実施され得る多岐にわたるアッセイのいずれか1つが含まれる。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するプロトコルの非限定的な例には、ノーザンブロット法、サザンブロット法、免疫ブロット法、及びPCR分析が含まれる。実施形態において、Rules Based Medicine又はMeso Scale Discoveryから入手可能であるようなマルチプレックスイムノアッセイを使用することもできる。実施形態において、試料又は細胞集団中の様々なバイオマーカーの存在(例えば、発現)及び/又はレベル/量は、多くの技法によって分析することができ、その技法の多くは当該技術分野で知られており、当業者に理解されており、限定されるものではないが、該技法には、ゲノムワイドトランスクリプトミクス、プロテオミクス、セクレトミクス、リピドミクス、ホスファトミクス、エクソソミクス等の「-オミクス(-omics)」プラットフォームが含まれ、ここで、ハイスループットな技法は、計算生物学及びバイオインフォマティクス技術と連動して、検討中の細胞集団によって発現される、また発現されない遺伝子、miRNA、タンパク質、分泌型タンパク質、脂質等の完全な生物学的シグネチャーを明らかにする。
【0128】
実施形態において、腎細胞集団中の2つ以上のバイオマーカーの存在を検出する方法は、抗体とそのコグネートなリガンド(すなわち、バイオマーカー)との結合を可能にする条件下で、試料をバイオマーカーに対する抗体と接触させることと、例えば、抗体とバイオマーカーとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することによって、結合された抗体の存在を検出することとを含む。実施形態において、1つ以上のバイオマーカーの存在は、免疫組織化学によって検出される。本明細書で使用される「検出する」という用語は、定量的検出及び/又は定性的検出を含む。
【0129】
実施形態において、腎細胞集団は、本明細書に開示されるバイオマーカー、例えば、AQP1、AQP2、AQP4、カルビンジン、カルポニン、CD117、CD133、CD146、CD24、CD31(PECAM-1)、CD54(ICAM-1)、CD73、CK18、CK19、CK7、CK8、CK8/18、CK8/18/19、コネキシン43、キュビリン、CXCR4(フュージン)、DBA、E-カドヘリン(CD324)、EPO(エリスロポエチン)、GGT1、GLEPP1(糸球体上皮タンパク質1)、ハプトグロブリン、Itgbl(インテグリンp)、KIM-1(腎臓障害分子-1)、T1M-1(T細胞免疫グロブリン及びムチン含有分子)、MAP-2(微小管関連タンパク質2)、メガリン、N-カドヘリン、ネフリン、NKCC(Na-K-Cl-共輸送体)、OAT-1(有機陰イオン輸送体1)、オステオポンチン、パンカドヘリン、PCLP1(ポドカリキシン様1分子)、ポドシン、SMA(平滑筋α-アクチン)、シナプトポディン、THP(タム-ホースフォールタンパク質)、ビメンチン及びαGST-1(アルファグルタチオン5-トランスフェラーゼ)の検出を可能にする1つ以上の試薬で特定される。実施形態において、バイオマーカーは、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体によって検出される。
【0130】
実施形態において、細胞の供給源は、意図される標的臓器又は組織と同じである。実施形態において、BRC又はSRCは、腎臓に投与される製剤に使用するために腎臓を起源とすることができる。実施形態において、細胞集団は腎臓生検に由来する。実施形態において、細胞集団は全腎臓組織に由来する。実施形態において、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。
【0131】
実施形態において、BRC又はSRCは、生物活性腎細胞の異種混合物又は画分を含む。実施形態において、BRC又はSRCは、健康な個体に由来し得る、又は健康な個体からの腎細胞画分自体である。実施形態において、本明細書において、(例えば、腎臓又はその生検において)健康な個体の腎細胞集団と比較して或る特定の細胞型を欠いている場合がある不健康な個体から得られた腎細胞集団又は画分が含まれる。実施形態において、本明細書において、健康な個体と比較して細胞型を欠いている治療的活性のある細胞集団が提供される。実施形態において、細胞集団は、自家細胞集団から単離及び増殖される。
【0132】
実施形態において、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。実施形態において、腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、増殖された腎細胞から密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離によって選択される。実施形態において、腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖され、増殖された腎細胞から連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離によって選択される。実施形態において、SRCは、主として再生能力について知られている腎上皮細胞から構成される。実施形態において、その他の実質(血管)細胞及び間質細胞が自家SRC集団中に存在していてもよい。
【0133】
実施形態において、生物活性腎細胞は、腎臓組織から酵素消化によって単離され、標準的な細胞培養技術によって増殖された腎細胞から得られる。実施形態において、細胞培養培地は、再生能力を有する生物活性腎細胞を増殖させるように設計される。実施形態において、細胞培養培地は、組換え又は精製された分化因子を一切含有しない。実施形態において、増殖された異種腎細胞の混合物は、再生能力を有する細胞の組成を更に濃縮するために低酸素条件下で培養される。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、以下の現象:1)低酸素培養期間の間の特定の細胞成分の選択的な生存、死、又は増殖、2)低酸素培養に応答して細胞の粒度及び/又はサイズが変化し、それにより浮遊密度の変化に引き続き、密度勾配分離の間又は密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離の間の局在性の変化がもたらされること、並びに3)低酸素培養期間に応答して細胞遺伝子/タンパク質発現が変化し、それにより単離及び増殖された集団内の細胞の種々の特質が生ずることの1つ以上に起因し得る。
【0134】
実施形態において、生物活性腎細胞集団は、腎臓再生を可能にする細胞について濃縮する培養条件下での腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。
【0135】
実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を1回、2回、3回、4回、5回又はそれ以上の回数、継代して、増殖された生物活性腎細胞(腎臓再生を可能にする細胞について濃縮された細胞集団等)が作製される。実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を1回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を2回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を3回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を4回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。実施形態において、腎臓組織(生検から得られる組織等)からの腎細胞を5回継代して、増殖された生物活性腎細胞が作製される。実施形態において、細胞を継代すると、非生物活性腎細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、少なくとも1つの細胞型の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、1.095g/mlを超える密度を有する細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、低い粒度の小さい細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、赤血球よりも小さい細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、6μm未満の直径を有する細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、2μm未満の直径を有する細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞を継代すると、赤血球よりも低い粒度を有する細胞の細胞集団が枯渇する。実施形態において、細胞集団の生存力は、1回以上の継代後に増加する。実施形態において、小さい細胞及び低い粒度という記載は、蛍光活性化セルソーティング(FACs)によって、例えば、細胞の出現箇所の散布図のX-Y軸を用いて細胞を分析するときに使用される。
【0136】
実施形態において、増殖された生物活性腎細胞を、低酸素条件下で少なくとも約6時間、9時間、10時間、12時間、若しくは24時間であるが48時間未満にわたり、又は6時間~9時間、若しくは6時間~48時間、若しくは約12時間~約15時間、若しくは約8時間、若しくは約12時間、若しくは約24時間、若しくは約36時間、若しくは約48時間にわたり成長させる。実施形態において、低酸素条件下で成長した細胞を密度に基づいて選択する。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な(単一段階又は多段階の)密度勾配分離後(例えば、低酸素条件下での継代及び/又は培養の後)に得られる選択賢細胞(SRC)集団である。実施形態において、生物活性腎細胞集団は、増殖された腎細胞の密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離後(例えば、低酸素条件下での継代及び/又は培養の後)に得られる選択賢細胞(SRC)集団である。実施形態において、低酸素培養条件は、細胞が大気酸素レベル(約21%)で培養される標準的な培養条件と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの減少に曝される培養条件である。実施形態において、低酸素培養条件下で培養された細胞は、約5%~約15%、若しくは約5%~約10%、若しくは約2%~約5%、若しくは約2%~約7%、又は約2%、若しくは約3%、若しくは約4%、若しくは約5%の酸素レベルで培養される。実施形態において、SRCは、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す。実施形態において、SRCは、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す。実施形態において、SRCは、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す。実施形態において、BRC又はSRCは、出発腎臓細胞集団と比較して、1つ以上の細胞集団をより高いパーセンテージで含有し、その他の1つ以上の細胞集団を欠いている又はそれらが少ない。
【0137】
実施形態において、増殖された生物活性腎細胞を密度勾配分離に供して、SRCを得ることができる。実施形態において、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。実施形態において、増殖された生物活性腎細胞を密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離によって分離して、SRCを得ることができる。実施形態において、密度境界又は密度界面を越える遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。実施形態において、SRCは、非イオン性ヨウ素化合物のイオジキサノールの60%(重量/容量)水溶液を含むOPTIPREP(Axis-Shield)培地を一部で使用することによって作製される。しかしながら、当業者は、その他の培地、密度勾配(連続的又は不連続的)、密度境界、密度障壁、密度界面、又は他の手段、例えば、本明細書に記載される細胞集団の単離に必要な特徴を有する当該技術分野で知られる細胞表面マーカーを使用した免疫学的分離を使用して、生物活性腎細胞を得ることができることを理解するであろう。実施形態において、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。
【0138】
実施形態において、細胞浮遊密度を使用して、SRC集団を得る及び/又は腎細胞集団が生物活性腎細胞集団であるかどうかを決定する。実施形態において、細胞浮遊密度を使用して、生物活性腎細胞を単離する。実施形態において、細胞浮遊密度は、単一段階のOptiPrep(7%イオジキサノール、OptiMEM中60%(重量/容量))密度界面を越える遠心分離(単一段階の不連続的な密度勾配)によって決定される。Optiprepは、イオジキサノールの60%(重量/容量)水溶液である。例示的な密度界面又は単一段階の不連続的な密度勾配で使用される場合に、OptiprepをOptiMEM(細胞培養基本培地)で希釈して、イオジキサノールの7%の最終溶液(水中及びOptiMEM中)を形成する。OptiMEMの配合は、HEPES及び重炭酸ナトリウムで緩衝化され、ヒポキサンチン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン又はGLUTAMAX、微量元素、及び成長因子が補充されたイーグル最小必須培地の改変である。タンパク質レベルは最小(15μg/mL)であり、ここで、インスリン及びトランスフェリンが唯一のタンパク質サプリメントである。pH指示薬としてフェノールレッドが低濃度で含まれている。実施形態において、使用前にOptiMEMに2-メルカプトエタノールが補充され得る。
【0139】
実施形態において、OptiPrep溶液を調製し、使用前に所望の密度の指標となる屈折率を測定する(屈折率1.3456±0.0004)。実施形態において、その溶液の上面に腎細胞が成層される。実施形態において、密度界面又は単一段階の不連続的な密度勾配は、遠心分離チューブ(例えば、50mlコニカルチューブ)又は細胞処理装置(例えば、COBE 2991)のいずれかにおいて、室温(ブレーキなし)にて800gで20分間遠心分離される。実施形態において、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、細胞密度の評価又は密度に基づく選択の前に、細胞は、それらが少なくとも50%コンフルエントとなるまで培養され、2%酸素に設定された低酸素インキュベーターにおいて5%のCO2環境下で37℃にて一晩(例えば、少なくとも約8時間又は12時間)インキュベートされる。
【0140】
実施形態において、腎臓試料から得られた細胞を増殖させた後に、処理(例えば、低酸素及び遠心分離による)して、SRC集団が得られる。実施形態において、SRC集団は、本明細書に記載される試薬及び手法を使用して作製される。実施形態において、SRC集団からの細胞の試料を生存力について試験した後に、該集団の細胞を対象に投与する。実施形態において、SRC集団からの細胞の試料を本明細書に開示されるマーカーの1つ以上の発現について試験した後に、該集団の細胞を対象に投与する。
【0141】
SRCを作製する組成物及び方法の非限定的な例は、米国特許出願公開第2017/0281684号に開示されており、その全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0142】
実施形態において、BRC又はSRCは、天然の自家又は同種異系の腎臓試料に由来する。実施形態において、BRC又はSRCは、非自家の腎臓試料に由来する。実施形態において、試料を腎臓生検によって得ることができる。
【0143】
実施形態において、腎細胞の単離及び増殖により、腎上皮細胞及び間質細胞を含む腎細胞型の混合物が得られる。実施形態において、SRCは、増殖された腎細胞の連続的又は不連続的な密度勾配分離によって得られる。実施形態において、密度勾配分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。実施形態において、SRCは、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による増殖された腎細胞の分離によって得られる。実施形態において、密度境界/密度障壁/密度界面を越えて分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。実施形態において、増殖された腎細胞から得られたSRCの特質は、多方面からのアプローチを使用して評価される。実施形態において、腎細胞増殖過程の間に細胞形態、増殖動態、及び細胞生存力がモニターされる。実施形態において、SRCの浮遊密度及び生存力は、密度勾配媒体上での又は密度勾配媒体を介した遠心分離及びトリパンブルー排除によって特徴付けられる。実施形態において、SRC表現型はフローサイトメトリーによって特徴付けられ、SRC機能はVEGF及びKIM-1の発現によって示される。実施形態において、SRCの細胞機能のプレフォーミュレーションは、腎臓近位尿細管に見られる2つの特定の酵素GGT(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)及びLAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)の活性を測定することによっても評価され得る。
【0144】
実施形態において、密度媒体を介した細胞亜集団の分離に寄与する細胞の特徴(サイズ及び粒度)を利用して、細胞亜集団を、フローサイトメトリーを介して分離することができる(前方散乱=フローサイトメトリーによるサイズを反映、及び側方散乱=粒度を反映)。実施形態において、密度勾配媒体又は分離媒体は、対象となる特定の細胞に対して低い毒性を有するべきである。実施形態において、密度媒体は、対象となる特定の細胞に対して低い毒性を有するべきである一方で、本開示は、対象となる細胞の選択過程での役割を担う媒体の使用を企図している。実施形態において、理論に拘束されることを望むものではないが、負荷工程と回収工程との間で細胞の相当な損失があるので、イオジキサノールを含む媒体によって回収された本明細書に開示される細胞集団はイオジキサノール耐性であると思われ、密度勾配、又は密度境界、密度障壁若しくは密度界面の条件下でのイオジキサノールに対する曝露が、或る特定の細胞の排除をもたらすことが示唆される。実施形態において、イオジキサノール密度勾配又は密度界面分離後に現れる細胞は、イオジキサノール及び/又は密度勾配若しくは界面曝露のあらゆる有害作用に対して耐性である。実施形態において、軽度から中程度までの腎毒素を含む造影剤が、例えばSRC集団等の細胞集団の単離及び/又は選択に使用される。実施形態において、SRCはイオジキサノール耐性である。実施形態において、密度媒体は、ヒト血漿中のタンパク質に結合すべきでない、又は対象となる細胞の主要な機能に悪影響を及ぼすべきではない。
【0145】
実施形態において、細胞集団は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して1つ以上の腎臓細胞型が濃縮及び/又は枯渇されている。実施形態において、BD FACSAria(商標)又は同等物を使用して腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。実施形態において、FACSAria III(商標)又は同等物を使用して腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。
【0146】
実施形態において、細胞集団は、磁気セルソーティングを使用して1つ以上の腎臓細胞型が濃縮及び/又は枯渇されている。実施形態において、MiltenyiのautoMACS(商標)システム又は同等物を使用して1つ以上の腎臓細胞型を濃縮及び/又は枯渇させることができる。
【0147】
実施形態において、腎細胞集団は三次元培養に供されている。実施形態において、細胞集団を培養する方法は、連続灌流によるものである。実施形態において、三次元培養及び連続灌流を介して培養された細胞集団は、静置培養された細胞集団と比較してより高い細胞充実性及び相互結合性を示す。実施形態において、三次元培養及び連続灌流を介して培養された細胞集団は、そのような細胞集団の静置培養物と比較してより高いEPOの発現だけでなく、E-カドヘリン等の腎尿細管関連遺伝子の発現強化を示す。実施形態において、連続灌流を介して培養された細胞集団は、静置培養された細胞集団と比較してより高いレベルのグルコース及びグルタミンの消費を示す。
【0148】
実施形態において、本明細書に提供される細胞集団を作製する方法で低い酸素条件又は低酸素条件を使用することができる。実施形態において、細胞集団を作製する方法は、低い酸素条件にする工程なしで使用され得る。実施形態において、正常酸素圧条件を使用することができる。
【0149】
実施形態において、腎細胞集団は腎臓組織から単離及び/又は培養されたものである。腎臓疾患、貧血、EPO欠乏症、尿細管輸送障害、及び糸球体濾過障害の治療を含む治療用の製剤に使用される腎細胞成分、例えば濃縮された細胞集団を分離及び単離する方法の非限定的な例を本明細書に開示する。実施形態において、細胞集団は、新たに消化された、すなわち機械的若しくは酵素的に消化された腎臓組織から、又は哺乳動物腎臓細胞の異種in vitro培養物から単離される。
【0150】
実施形態において、腎細胞集団は、EPO産生腎臓細胞を含む。実施形態において、対象は、貧血及び/又はEPO欠乏症を有する。実施形態において、EPO産生腎臓細胞集団は、EPOの発現及び酸素に対する生物学的反応性を特徴とするため、培養システムの酸素圧の低下の結果として、EPOの発現の誘導がもたらされる。実施形態において、EPO産生細胞集団は、EPO産生細胞について濃縮されている。実施形態において、標準大気(約21%)レベルの有効酸素で培養された細胞集団と比較して、細胞が培養システムにおいて有効酸素レベルの低下に曝される条件下で細胞集団を培養した場合に、EPO発現が誘導される。実施形態において、より低い酸素条件で培養されたEPO産生細胞は、通常の酸素条件で培養されたEPO産生細胞と比較して、より高いレベルのEPOを発現する。一般的に、低下したレベルの有効酸素(低酸素培養条件とも呼称される)での細胞の培養とは、低下した酸素のレベルが、標準大気レベルの有効酸素(標準培養条件又は正常酸素圧培養条件とも呼称される)での細胞培養と比較して低下していることを意味する。実施形態において、低酸素細胞培養条件は、細胞を約1%未満の酸素、約2%未満の酸素、約3%未満の酸素、約4%未満の酸素、又は約5%未満の酸素で培養することを含む。実施形態において、正常培養条件又は正常酸素圧培養条件は、細胞を約10%の酸素、約12%の酸素、約13%の酸素、約14%の酸素、約15%の酸素、約16%の酸素、約17%の酸素、約18%の酸素、約19%の酸素、約20%の酸素、又は約21%の酸素で培養することを含む。
【0151】
実施形態において、細胞を約5%未満の有効酸素で培養し、EPO発現レベルを大気(約21%)酸素で培養された細胞と比較することによって、EPOの誘導又は発現の増加を得て、これらを観察することができる。実施形態において、EPOを発現することができる細胞の培養物において、細胞の培養物が幾らかの期間にわたり大気酸素(約21%)で培養される第1培養期と、有効酸素レベルを低下させて同じ細胞を約5%未満の有効酸素で培養する第2培養期とを含む方法によって、EPOの誘導が得られる。実施形態において、低酸素条件に応答するEPO発現は、HIF1αによって調節される。実施形態において、本明細書に記載される細胞のために、当該技術分野で知られる他の酸素操作培養条件を使用することができる。
【0152】
実施形態において、製剤は、灌流条件に対する生体反応性(例えば、EPO発現)を特徴とするEPO産生哺乳動物細胞の濃縮された集団を含有する。実施形態において、灌流条件には、一過性、間欠性、又は連続性の流体流動(灌流)が含まれる。実施形態において、細胞を培養する培地を、流動を介して細胞に動的な力が伝えられるように間欠的又は連続的に循環又は撹拌した場合に、EPO発現が機械的に誘導される。実施形態において、一過性、間欠性、又は連続性の流体流動に曝された細胞を培養することで、これらの細胞は、三次元構造の形成のための骨格及び/又は空隙を提供する材料中又は材料上に三次元構造として存在する。実施形態において、細胞は多孔質ビーズ上で培養され、揺動プラットフォーム、軌道旋回プラットフォーム、又はスピナーフラスコによって、間欠的又は連続的な流体流動に曝される。実施形態において、細胞は三次元スキャフォールド上で培養され、スキャフォールドを固定し、流体がスキャフォールドを通過して又は横切って指向的に流れるデバイス中に配置される。当業者は、本明細書に記載される細胞のために、当該技術分野で知られる他の灌流培養条件を使用することができることを理解するであろう。
【0153】
実施形態において、細胞集団は腎臓生検に由来する。実施形態において、細胞集団は全腎臓組織に由来する。実施形態において、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。実施形態において、腎細胞集団は、SRC集団である。実施形態において、細胞集団は、本明細書で濃縮されていない細胞集団とも呼称される未分画細胞集団である。
【0154】
様々な活性作用物質(例えば、腎細胞以外)を含有する組成物は本明細書に含まれる。適切な活性作用物質の非限定的な例には、限定されるものではないが、細胞凝集体、無細胞バイオマテリアル、生物活性細胞からの分泌産物、高分子療法薬及び低分子療法薬、並びにそれらの組合せが含まれる。例えば、或る生物活性細胞型を、治療用分子又は別の生物活性細胞型と共に又はそれらなしで、バイオマテリアルベースのマイクロキャリアと組み合わせることができる。実施形態において、付着していない細胞を無細胞粒子と組み合わせることができる。
【0155】
実施形態において、腎細胞集団の細胞はスフェロイド内に存在する。実施形態において、腎細胞集団はスフェロイドの形で存在する。実施形態において、生物活性腎細胞を含むスフェロイドは対象に投与される。実施形態において、スフェロイドは、少なくとも1つの非腎細胞型又は細胞集団を含む。実施形態において、スフェロイドは、(i)生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団を組み合わせることと、(ii)その生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団を、スフェロイドが形成されるまでスピナーフラスコを含む三次元培養システムにおいて培養することとを含む方法で作製される。
【0156】
実施形態において、非腎細胞集団は、内皮細胞集団又は内皮前駆細胞集団を含む。実施形態において、生物活性細胞集団は内皮細胞集団である。実施形態において、内皮細胞集団は細胞系統である。実施形態において、内皮細胞集団は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含む。実施形態において、非腎細胞集団は、間葉系幹細胞集団である。実施形態において、非腎細胞集団は、造血系起源、乳房起源、腸起源、胎盤起源、肺起源、骨髄起源、血液起源、臍帯起源、内皮起源、歯髄起源、脂肪起源、神経起源、嗅覚器起源、神経堤起源、又は精巣起源の幹細胞集団である。実施形態において、非腎細胞集団は、脂肪由来の前駆細胞集団である。実施形態において、細胞集団は、異種、同系、同種異系、自家の細胞集団、又はそれらの組合せである。実施形態において、生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団は、0.1:9.9~9.9:0.1の比率で培養される。実施形態において、生物活性腎細胞集団及び非腎細胞集団は、約1:1の比率で培養される。実施形態において、腎細胞集団及び生物活性細胞集団は成長培地中に懸濁される。
【0157】
増殖された生物活性腎細胞を連続的又は不連続的な密度媒体分離に更に供して、SRCを得ることができる。特に、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。実施形態において、増殖された生物活性腎細胞を、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による分離に更に供して、SRCを得ることができる。特に、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離する。実施形態において、SRCは、非イオン性ヨウ素化合物のイオジキサノールの60%水溶液を含むOPTIPREP(Axis-Shield)培地を一部で使用することによって作製される。しかしながら、当業者は、特定の媒体若しくは他の手段、例えば、本発明によって包含される細胞集団の単離に必要な特徴を有する当該技術分野で知られる細胞表面マーカーを用いた免疫学的分離に限らず、任意の密度勾配媒体を使用することができることを認識するであろう。例えば、Percoll又はショ糖を使用して、密度勾配又は密度境界を形成することができる。実施形態において、約1.04g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.04g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.0419g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.0419g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。実施形態において、約1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分が、遠心分離後に別個のペレットとして収集される。実施形態において、1.045g/mL未満の浮遊密度を維持する細胞は除外されて廃棄される。
【0158】
治療用組成物及びその製剤は、腎臓疾患の治療、すなわち、腎臓機能及び/又は構造の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらすのに使用される特定の生物活性成分又は細胞型について濃縮され、及び/又は特定の不活性又は不所望な成分又は細胞型が枯渇された、例えば、以前にPresnellらによる米国特許第8,318,484号及びIlaganらによる国際出願PCT/US2011/036347号(それぞれの全内容は、引用することにより本明細書の一部をなす)に記載された、単離された異種腎臓細胞集団、及び/又はそれらの混合物を含有し得る。組成物は、健康な個体と比較して細胞成分を欠くが、治療特性を保持する、すなわち、腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は再生をもたらす、単離された腎細胞画分を含有し得る。本明細書に記載される細胞集団、細胞画分、及び/又は細胞の混合物は、健康な個体、腎臓疾患を患っている個体、又は本明細書に記載される対象に由来し得る。
【0159】
本開示は、必要とする対象の標的臓器又は組織に投与される選択された腎細胞集団の治療用組成物を企図している。選択された生物活性腎細胞集団は一般的に、対象への投与時に治療特性を潜在的に有する細胞集団を指す。例えば、必要とする対象に投与すると、生物活性腎細胞集団は、対象における腎臓機能の安定化及び/又は改善及び/又は修復及び/又は再生をもたらし得る。治療特性には、再生効果が含まれ得る。
【0160】
実施形態において、細胞の供給源は、意図される標的臓器又は組織と同じである。例えば、BRC及び/又はSRCは、腎臓に投与される製剤に使用するために腎臓を起源とすることができる。実施形態において、細胞集団は腎臓生検に由来する。実施形態において、細胞集団は全腎臓組織に由来する。1つの他の実施形態において、細胞集団は、腎臓生検又は全腎臓組織から樹立された哺乳動物腎臓細胞のin vitro培養物に由来する。実施形態において、BRC及び/又はSRCは、生物活性腎細胞の異種混合物又は画分を含む。BRC及び/又はSRCは、健康な個体に由来し得る、又は健康な個体からの腎細胞画分自体である。さらに、本開示は、不健康な個体から得られる腎細胞画分であって、健康な個体の対応する腎細胞画分と比較して或る特定の細胞成分を欠き得るが、それでも依然として治療特性を維持し得る、腎細胞画分を提供する。本開示はまた、健康な個体と比較して細胞成分を欠いた治療活性のある細胞集団であって、実施形態において、様々な疾患状態での自家の供給源から単離及び増殖され得る、細胞集団を提供する。
【0161】
実施形態において、SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織からの腎細胞の単離及び増殖から得られる。腎細胞は酵素消化によって腎臓組織から単離され、標準的な細胞培養技術を用いて増殖され、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える増殖された腎細胞の遠心分離によって選択される。この実施形態において、SRCは、その再生能力について知られる腎尿細管上皮細胞から主として構成される(Bonventre JV. Dedifferentiation and proliferation of surviving epithelial cells in acute renal failure. J Am Soc Nephrol. 2003;14(Suppl. 1):S55-61、Humphreys BD, Czerniak S, DiRocco DP, et al. Repair of injured proximal tubule does not involve specialized progenitors. PNAS. 2011;108:9226-31、Humphreys BD, Valerius MT, Kobayashi A, et al. Intrinsic epithelial cells repair the kidney after injury. Cell Stem Cell. 2008;2:284-91)。その他の実質(血管)細胞及び間質細胞が、自家SRC集団中に存在していてもよい。実施形態において、腎細胞は、連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の勾配を通じた遠心分離によって選択される。
【0162】
本明細書に記載されるように、本発明は、部分的に、生物活性成分について濃縮され、不活性又は不所望な成分が枯渇された腎細胞の異種の集団の或る特定の亜画分が、出発集団より優れた治療転帰及び再生転帰をもたらすという驚くべき知見に基づいている。
【0163】
腎細胞の分離及び増殖により、腎尿細管上皮細胞及び間質細胞を含む腎細胞型の混合物が得られる。上記のように、SRCは、密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える遠心分離による増殖された腎細胞の分離によって得られる。分離されたSRC集団における初代細胞型は、尿細管上皮表現型である。増殖された腎細胞から得られたSRCの特質は、多方面からのアプローチを使用して評価される。腎細胞増殖過程の間に細胞形態、増殖動態、及び細胞生存力がモニターされる。SRCの浮遊密度及び生存力は、密度界面及びトリパンブルー排除によって特徴付けられる。SRC表現型はフローサイトメトリーによって特徴付けられ、SRC機能はVEGF及びKIM-1の発現によって示される。
【0164】
当業者は、当該技術分野で知られる他の分離方法及び培養方法を本明細書に記載される細胞のために使用することができることを理解するであろう。当業者はまた、生物活性細胞集団が、具体的に上記で列挙されたもの以外の、限定されるものではないが、腎臓、体液及び脂肪以外の組織及び臓器を含む供給源に由来し得ることも理解するであろう。
【0165】
実施形態において、様々なバイオマテリアルのうちの1つ以上を活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)と組み合わせて、治療用製剤を得ることができる。実施形態において、バイオマテリアルは、任意の適切な形状(例えば、ビーズ)又は形態(例えば、液体、ゲル等)で存在し得る。ポリマーマトリックスの形の適切なバイオマテリアルの非限定的な例は、Bertramらによる米国特許出願公開第20070276507号(引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす)に記載されている。実施形態において、ポリマーマトリックスは、多様な合成材料又は天然に存在する材料から形成される生体適合性材料とすることができ、これらの材料には、限定されるものではないが、連続気泡(open-cell)ポリ乳酸(OPLA(商標))、セルロースエーテル、セルロース、セルロースエステル、フッ素化ポリエチレン、フェノール類、ポリ-4-メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、ポリシアノアリールエーテル、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタン、ポリビニル、ポリフッ化ビニリデン、再生セルロース、シリコーン、尿素ホルムアルデヒド、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸塩、ラミニン、フィブロネクチン、シルク、エラスチン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、アガロース、又はそれらのコポリマー若しくは物理的ブレンドが含まれる。実施形態において、バイオマテリアルはヒドロゲルである。スキャフォールド構成物は、柔らかい多孔質のスキャフォールドから硬質の形状を保持する多孔質のスキャフォールドまでの多岐にわたり得る。実施形態において、スキャフォールドは、ヒドロゲルとなることができる液体溶液、例えば、溶融温度を上回っているヒドロゲルとして構成される。
【0166】
実施形態において、スキャフォールドは、自然細胞集団が、当業者に知られる界面活性作用物質及び/又は他の化学的作用物質及び/又は他の酵素的技法及び/又は物理的技法の適用によって排除されたヒト起源又は動物起源の既存の腎臓又は他の臓器に由来する。この実施形態において、起源とする臓器の天然の三次元構造は、全ての関連する細胞外マトリックス成分と一緒にそれらの天然の生物活性のある状況で保持される。実施形態において、スキャフォールドは、ヒト又は動物の腎臓又は他の臓器に由来する細胞外マトリックスである。実施形態において、その構成物は三次元バイオプリンティング技法を適用することによって集成されて組織様構造となる。実施形態において、その構成物は、ヒドロゲルとなり得る溶液の液体形である。
【0167】
ヒドロゲルは、様々なポリマー材料から形成され得て、様々な生物医学的用途に有用である。ヒドロゲルは、物理的には親水性ポリマーの三次元網目構造として説明され得る。ヒドロゲルの種類に応じて、ヒドロゲルは、様々なパーセンテージの水を含有するものの、概して水中に溶解しない。それらの高い含水量にもかかわらず、ヒドロゲルは、親水性残基の存在のため、大容量の液体を更に結合することができる。ヒドロゲルは、そのゼラチン状の構造を変えることなく広範囲に膨潤する。ヒドロゲルは、そのゼラチン状の構造を変えることなく広範囲に膨潤する。ヒドロゲルの基本的な物理的特徴は、使用されるポリマーの特性及びヒドロゲルを投与するのに使用されるデバイスに従って特別に変更され得る。
【0168】
実施形態において、ヒドロゲルは、有機ポリマー(例えば、天然又は合成)が共有結合、イオン結合、又は水素結合を介して架橋されて三次元開格子構造を生成し、これが水分子を閉じ込めてゲルを形成するときに形成される。実施形態において、ヒドロゲルを形成するのに使用される材料には、張度によって(tonically)架橋されるアルギン酸塩等の多糖類、ポリホスファジン、及びポリアクリレート、又はそれぞれ温度若しくはpHによって架橋されるPluronic(商標)若しくはTetronic(商標)等のブロックコポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマーが含まれる。実施形態において、ヒドロゲルはゼラチンを含む(例えば、ヒドロゲルは、生分解性のゼラチンベースのヒドロゲルである)。
【0169】
実施形態において、ヒドロゲル材料は、炎症応答を誘発しない。ヒドロゲルを形成するのに使用され得る他の材料の非限定的な例には、(a)変性アルギン酸塩、(b)一価陽イオンへの曝露によりゲル化する多糖類(例えば、ジェランガム及びカラギーナン)、(c)非常に粘性のある液体であり又は揺変性であり、ストラクチャーのゆっくりとした発生によって時間とともにゲルを形成する多糖類(例えば、ヒアルロン酸)、(d)ゼラチン又はコラーゲン、及び(e)ヒドロゲルポリマー前駆物質(例えば、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー及びタンパク質)が含まれる。米国特許第6,224,893号は、本明細書に記載される或る特定の実施形態に従ってヒドロゲルを作製するのに適した様々なポリマー及びそのようなポリマーの化学的特性の詳細な説明を提供する。
【0170】
実施形態において、バイオマテリアルを製剤化するために使用されるヒドロゲルは、ゼラチンベースである。ゼラチンは、コラーゲン由来の非毒性で生分解性の水溶性タンパク質であり、間葉組織細胞外マトリックス(ECM)の主要な構成成分である。ゼラチンはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む情報シグナルを保持し、これは細胞接着、増殖、及び幹細胞分化を促進する。ゼラチンの特徴的な特性は、それが上限臨界溶液温度挙動(UCST)を示すことである。実施形態において、40℃の特定の温度閾値を上回ると、ゼラチンは、フレキシブルでランダムな一重らせんを形成することによって水に溶解することができる。冷却すると、水素結合及びファンデルワールス相互作用が生じ、結果として、三重らせんの形成がもたらされる。実施形態において、これらのコラーゲン様三重らせんは接合領域として作用するため、ゾル-ゲル転移を引き起こす。ゼラチンは薬学用途及び医学用途に広く使用されている。
【0171】
コラーゲンは、動物の身体の様々な結合組織内の細胞外空間における主要な構造タンパク質である。コラーゲンは、結合組織の主成分として、哺乳動物において最も豊富なタンパク質であり、全身のタンパク質含有量の25%~35%を構成している。石灰化の程度に応じて、コラーゲン組織は、硬質であり得る(骨)、伸展性であり得る(腱)、又は硬質から伸展性までの勾配を有し得る(軟骨)。細長い小線維の形のコラーゲンは、主として腱、靭帯、及び皮膚等の線維組織中に見られる。コラーゲンは、角膜、軟骨、骨、血管、消化管、椎間板、及び歯の象牙質にも豊富にある。筋肉組織では、コラーゲンは、筋内膜の主成分としての役割を果たす。コラーゲンは筋肉組織の1%~2%を構成し、強力な腱の筋肉の重量の6%を占める。コラーゲンは身体全体の多くの場所に存在する。しかしながら、人体のコラーゲンの90%より多くはI型である。
【0172】
これまでに、28種類のコラーゲンが同定され、記載されている。コラーゲンは、これらが形成する構造に従って幾つかの群に分けることができる:線維性(I型、II型、III型、V型、XI型)、非線維性FACIT(中断された三重らせんを有する線維結合性コラーゲン(Fibril Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(IX型、XII型、XIV型、XVI型、XIX型)、短鎖(VIII型、X型)、基底膜(IV型)、マルチプレキシン(複数の中断を有する多数の三重らせんドメイン(Multiple Triple Helix domains with Interruptions))(XV型、XVIII型)、MACIT(中断された三重らせんを有する膜結合性コラーゲン(Membrane Associated Collagens with Interrupted Triple Helices))(XIII型、XVII型)、その他(VI型、VII型)。最も一般的な5つの型は以下の通りである:I型:皮膚、腱、血管、靭帯、臓器、骨(骨の有機部分の主成分)、II型:軟骨(軟骨の主要コラーゲン成分)、III型:細網(細網線維の主成分)(通常I型と共存する)、IV型:基底層(上皮が分泌する基底膜の層)を形成、V型:細胞表面、毛髪、及び胎盤。
【0173】
ゼラチンはアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む情報シグナルを保持し、これは細胞接着、増殖、及び幹細胞分化を促進する。ゼラチンの特徴的な特性は、それが上限臨界溶液温度挙動(UCST)を示すことである。40℃の特定の温度閾値を上回ると、ゼラチンは、フレキシブルでランダムな一重らせんを形成することによって水に溶解することができる。冷却すると、水素結合及びファンデルワールス相互作用が生じる結果として、三重らせんの形成がもたらされる。これらのコラーゲン様三重らせんは接合領域として作用するため、ゾル-ゲル転移を引き起こす。ゼラチンは薬学用途及び医学用途に広く使用されている。
【0174】
実施形態において、本明細書で注射可能な細胞組成物を製剤化するのに使用されるヒドロゲルはブタゼラチンに基づくものであり、これはブタの皮膚を起源とすることができ、例えば、Nitta Gelatin NA Inc(米国、ノースカロライナ州)又はGelita USA Inc.(米国、アイオワ州)から市販されている。ゼラチンは、例えば、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中に溶解して、種々の温度でゲル化及び液化し得る熱応答性ヒドロゲルを形成することができる。実施形態において、本明細書で注射可能な細胞組成物を製剤化するのに使用されるヒドロゲルは、当業者に知られる方法によって発現されて精製された組換えのヒトゼラチン又は動物ゼラチンに基づくものである。実施形態において、I型のαIヒトコラーゲンについてのcDNAの全て又は一部を含む発現ベクターは、酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現される。他の発現ベクター系及び生物は当業者に知られている。特定の実施形態において、ゼラチンベースのヒドロゲルは室温(22℃~28℃)以上で液体であり、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却するとゲル化するものとすることができる。
【0175】
実施形態において、SRCをNKAへと製剤化するのに使用されるゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアルは、緩衝液中に溶解されると熱応答性ヒドロゲルを形成するブタゼラチンである。実施形態において、このヒドロゲルは、室温では流体であるが、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却されるとゲル化する。SRCをヒドロゲルとともに製剤化して、NKAが得られる。実施形態において、NKAは冷却によりゲル化されて、冷蔵温度下(2℃~8℃)で診療所に輸送される。実施形態において、NKAは3日の保存寿命を有する。実施形態において、臨床現場では、製品を室温に温めてから、患者の腎臓に注射する。実施形態において、NKAは、経皮的手法又は腹腔鏡的手法によるNKAの送達に適した針及び注射器を使用して腎臓皮質中に移植される。実施形態において、ヒドロゲルは、ゼラチン又は組換え起源の別の細胞外マトリックスタンパク質に由来する。実施形態において、ヒドロゲルは、腎臓又は別の組織若しくは臓器を起源とする細胞外マトリックスに由来する。実施形態において、ヒドロゲルは、組換え細胞外マトリックスタンパク質に由来する。実施形態において、ヒドロゲルは、組換えコラーゲンに由来するゼラチン(すなわち、組換えゼラチン)を含む。
【0176】
実施形態において、スキャフォールド又はバイオマテリアルの特質により、細胞がスキャフォールド又はバイオマテリアル材料に付着してこれらと相互作用することが可能となり得る、及び/又は細胞が捕捉され得る多孔質空間が提供され得る。実施形態において、多孔質のスキャフォールド又はバイオマテリアルにより、多孔質スキャフォールドとして構成されるバイオマテリアル上(例えば、細胞の付着による)及び/又はスキャフォールドの細孔内(例えば、細胞の捕捉による)に、1つ以上の細胞の集団を付加又は堆積させることが可能となる。実施形態において、スキャフォールド又はバイオマテリアルが、スキャフォールド内の細胞:細胞及び/又は細胞:バイオマテリアルの相互作用を可能にし、又は促進して、本明細書に記載されるコンストラクトが形成される。
【0177】
実施形態において、バイオマテリアルは、5.1kDaから2×106kDa超までのサイズ範囲のHA分子を含むヒドロゲルの形のヒアルロン酸(HA)から構成されている。実施形態において、バイオマテリアルは、5.1kDaから2×106kDa超までのサイズ範囲のHA分子も含む多孔質フォームの形のヒアルロン酸から構成されている。実施形態において、バイオマテリアルは、連続気泡構造及び約50ミクロン~約300ミクロンの細孔サイズを有するポリ乳酸(PLA)ベースのフォームから構成されている。実施形態において、腎細胞集団は、特に腎内移植後に、ヒアルロン酸シンターゼ2(HAS-2)を通じて高分子量のヒアルロン酸の合成を直接もたらす及び/又はその合成を刺激する。
【0178】
実施形態において、本明細書に記載されるバイオマテリアルは、例えばin vitro又はin vivoで、或る特定の外部条件に反応する。実施形態において、バイオマテリアルは温度感受性である(例えば、in vitro又はin vivoのどちらでも)。実施形態において、バイオマテリアルは酵素分解への曝露に反応する(例えば、in vitro又はin vivoのどちらでも)。実施形態において、バイオマテリアルの外部条件への反応は、本明細書に記載されるように微調整され得る。実施形態において、記載される製剤の温度感受性は、製剤中のバイオマテリアルのパーセンテージを調整することによって変化させることができる。例えば、溶液中のゼラチンのパーセンテージを調整して、最終製剤中のゼラチンの温度感受性を調節することができる(例えば、液体、ゲル、ビーズ等)。実施形態において、ゼラチン溶液は、PBS、DMEM、又は別の適切な溶媒中で提供され得る。実施形態において、バイオマテリアルを化学的に架橋して、酵素分解に対してより高い耐性を与えることができる。例えば、カルボジイミド架橋剤を使用して、ゼラチンビーズを化学的に架橋することによって、内在性酵素に対する感受性の低下をもたらすことができる。
【0179】
実施形態において、外部条件に対するバイオマテリアルによる反応は、バイオマテリアルの構造的完全性の喪失に関係する。温度感受性及び酵素分解に対する耐性が本明細書に示されているが、種々のバイオマテリアルで材料の完全性の喪失が起こり得る他のメカニズムが存在する。これらのメカニズムには、限定されるものではないが、熱力学的なメカニズム(例えば、溶融等の相転移、拡散(例えば、バイオマテリアルから周囲組織へのイオン性架橋剤の拡散))、化学的なメカニズム、酵素的なメカニズム、pH(例えば、pH感受性リポソーム)、超音波、及び光不安定性のメカニズム(光透過)が含まれ得る。実施形態において、バイオマテリアルが構造的完全性を失う正確なメカニズムは多様であるが、典型的には、このメカニズムは、移植の時点又は移植後のいずれかで誘発される。
【0180】
実施形態において、本明細書に記載される製剤は、対象に投与される活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)にとって好ましい環境を生み出す特性を有するバイオマテリアルを含む。実施形態において、該製剤は、活性作用物質をバイオマテリアルとともに製剤化した時点から対象に投与される時点まで好ましい環境をもたらす第1のバイオマテリアルを含有する。実施形態において、好ましい環境は、対象に投与する前に(本明細書に記載される)流体に対して実質的に固体の状態で懸濁された1つ以上の活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)を有することの優位性に関係する。実施形態において、第1のバイオマテリアルは、温度感受性バイオマテリアルである。実施形態において、温度感受性バイオマテリアルは、(i)約8℃以下で実質的に固体の状態、及び(ii)周囲温度以上で実質的に液体の状態を有し得る。実施形態において、周囲温度は、組成物が投与される温度を指す。実施形態において、周囲温度は温度制御された環境の温度である。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。実施形態において、周囲温度は約18℃~約30℃の範囲である。実施形態において、周囲温度は、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、又は約30℃である。実施形態において、本明細書に記載される1つ以上の活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)は、温度感受性バイオマテリアルで被覆され、その上に堆積され、その中に埋設され、それに結合され、その中に播種され、その中に懸濁され、又はその中に捕捉され得る。
【0181】
実施形態において、1つ以上の活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)は、細胞を安定化するバイオマテリアルの体積全体にわたって均一に分散されている。
【0182】
実施形態において、製剤は、1つ以上の活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)と、(i)8℃以下で実質的に固体の状態を維持し、かつ(ii)周囲温度以上で実質的に液体の状態を維持する温度感受性の細胞を安定化するバイオマテリアルとを含む注射可能な製剤であり、ここで、該バイオマテリアルはヒドロゲルを含み、該バイオマテリアルは8℃から周囲温度以上の間で固体-液体遷移段階にあり、かつ1つ以上の活性作用物質は、細胞を安定化するバイオマテリアル中に懸濁されてその全体にわたって分散されている。実施形態において、周囲温度は18℃~30℃の範囲である。実施形態において、バイオマテリアルは37℃にて液体状態で存在する。実施形態において、実質的に固体の状態はゲル状態である。実施形態において、ヒドロゲルはゼラチンを含む。実施形態において、ゼラチンは製剤中に0.5%(重量/容量)~1%(重量/容量)で存在する。実施形態において、ゼラチンは製剤中に0.75%(重量/容量)で存在する。
【0183】
実施形態において、製剤は、酸化防止剤、酸素担体、免疫調節因子、細胞動員因子、細胞接着因子、抗炎症剤、免疫抑制剤、血管新生因子、又は創傷治癒因子を更に含む。
【0184】
実施形態において、製剤は酸化防止剤を更に含む。実施形態において、酸化防止剤は6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸である。実施形態において、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸は50μM~150μMで存在する。実施形態において、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸は100μMで存在する。
【0185】
実施形態において、製剤は酸素担体を更に含む。実施形態において、酸素担体はパーフルオロカーボンである。
【0186】
実施形態において、製剤は免疫調節因子を更に含む。
【0187】
実施形態において、製剤は免疫抑制剤を更に含む。
【0188】
実施形態において、製剤は、0.75%(重量/容量)のゼラチンと、100μMの6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸とを含む。
【0189】
実施形態において、製剤は、バイオマテリアルを含む生体適合性ビーズを更に含む。実施形態において、ビーズは架橋されている。実施形態において、架橋されたビーズは、架橋されていない生体適合性ビーズと比べて、酵素分解への受けやすさが低下している。実施形態において、架橋されたビーズはカルボジイミド架橋されたビーズである。実施形態において、カルボジイミドは、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC))及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)からなる群から選択される。実施形態において、カルボジイミドは、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)である。実施形態において、架橋されたビーズは、架橋されていないビーズと比べて遊離の第一級アミン数が減少している。実施形態において、遊離の第一級アミンの数は、355nmで分光光度的に検出可能である。実施形態において、ビーズに、活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)が播種されている。実施形態において、製剤は、(i)周囲温度以下で実質的に固体の状態を維持し、かつ(ii)37℃以上で実質的に液体の状態を維持する温度感受性バイオマテリアルを含む追加の生体適合性ビーズを更に含む。実施形態において、バイオマテリアルは、周囲温度から37℃の間に固体-液体遷移状態を有する。実施形態において、実質的に固体の状態はゲル状態である。実施形態において、バイオマテリアルはヒドロゲルを含む。実施形態において、ヒドロゲルはゼラチンを含む。実施形態において、ビーズはゼラチンを5%(重量/容量)から10%(重量/容量)で含む。実施形態において、追加の生体適合性ビーズはスペーサービーズである。実施形態において、スペーサービーズには、活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)は播種されていない。
【0190】
実施形態において、製剤は、腎細胞集団によって分泌される産物を含む又は更に含む。実施形態において、産物は傍分泌因子を含む。実施形態において、産物は内分泌因子を含む。実施形態において、産物は接触分泌因子を含む。実施形態において、産物は小胞を含む。実施形態において、小胞は微小胞を含む。実施形態において、小胞はエクソソームを含む。
【0191】
実施形態において、小胞は、傍分泌因子、内分泌因子、接触分泌因子、及びRNAからなる群から選択される分泌された産物を含む。実施形態において、RNAはmiRNAである。実施形態において、小胞は、プラスミノーゲン活性化阻害剤-1(PAI-1)及び/又はTGFβ1を阻害するmiRNAを含む。
【0192】
実施形態において、分泌された産物は、α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、カルビンジン、クラステリン、結合組織成長因子、シスタチンC、グルタチオン-S-トランスフェラーゼα、腎臓損傷分子-1、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、オステオポンチン、トレフォイル因子3、タム-ホルスフォール尿糖タンパク質、メタロプロテイナーゼ1の組織阻害剤、血管内皮成長因子、フィブロネクチン、インターロイキン-6、又は単球走化性タンパク質-1等の傍分泌因子及び/又は接触分泌因子を含む。
【0193】
本明細書の開示によって、数秒、数分、数時間、又は数日の規模の期間をかけて分解するバイオマテリアルを含有する製剤が更に含まれる。これは、数日、数週間、又は数ヶ月をかけてゆっくりと分解する固体材料の移植に焦点を当てた数多くの研究とは対照的である。実施形態において、バイオマテリアルは、以下の特質の1つ以上を有する:生体適合性、生分解性/生体吸収性、対象への移植の前及びその間の実質的に固体の状態、移植後の構造的完全性(実質的に固体の状態)の喪失、及び細胞生存力を支持する細胞適合性のある環境。実施形態において、移植された粒子間の間隔を移植の間に空けたままにするバイオマテリアルの能力は、天然組織の内部成長を増進する。実施形態において、バイオマテリアルはまた、固体製剤の移植を促進する。実施形態において、固体ユニットの挿入は移植の間に送達された材料が組織内で分散しないようにする手助けとなるので、バイオマテリアルは本明細書に記載される製剤の局在化をもたらす。実施形態において、細胞ベースの製剤の場合に、固体バイオマテリアルはまた、流体中に懸濁された細胞と比較して、足場依存性細胞の安定性及び生存力を改善する。実施形態において、構造的完全性の短い持続時間は、移植直後にバイオマテリアルが、組織の内部成長又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさないことを意味する。
【0194】
実施形態において、コンストラクトには、混合物の捕捉及び/又は付着に適した三次元(3D)多孔質バイオマテリアルとして構成されたバイオマテリアルが含まれる。実施形態において、コンストラクトには、哺乳動物細胞の埋設、付着、懸濁、又は被覆に適した液体又は半液体ゲルとして構成されたバイオマテリアルが含まれる。実施形態において、コンストラクトには、ヒドロゲルの形のヒアルロン酸(HA)の主に高分子量の種類から構成されたバイオマテリアルが含まれる。実施形態において、コンストラクトには、多孔質フォームの形のヒアルロン酸の主に高分子量の種類から構成されたバイオマテリアルが含まれる。実施形態において、コンストラクトには、約50ミクロンから約300ミクロンの間の細孔を有するポリ乳酸ベースのフォームから構成されたバイオマテリアルが含まれる。実施形態において、コンストラクトには、改善された腎臓機能を必要とする対象に対して自家である腎臓試料に由来し得る1つ以上の細胞集団が含まれる。実施形態において、試料は腎臓生検である。実施形態において、対象は腎臓疾患を患っている。実施形態において、細胞集団は、非自家の腎臓試料に由来する。実施形態において、コンストラクトは腎機能の増加をもたらす。実施形態において、コンストラクトは腎臓再生をもたらす。実施形態において、コンストラクトは赤血球ホメオスタシスをもたらす。
【0195】
実施形態において、製剤は、製剤化の時点から対象に投与した後の時点まで細胞の組合せにとって好ましい環境をもたらす第2のバイオマテリアルと組み合わされた生物活性細胞を含有する。実施形態において、第2のバイオマテリアルによってもたらされる好ましい環境は、対象に投与する時点までと投与後の期間にわたって構造的完全性を保持するバイオマテリアル中の細胞を投与することの優位性に関係する。実施形態において、移植後の第2のバイオマテリアルの構造的完全性は、数分、数時間、数日、又は数週間である。実施形態において、構造的完全性は1ヶ月未満、1週間未満、1日未満、又は1時間未満である。実施形態において、比較的短期間の構造的完全性は、活性作用物質及びバイオマテリアルを、組み込まれた要素とその要素が内部に配置された組織又は臓器との相互作用に対する妨害又は障害とならずに、制御された取り扱い、配置、又は分散によって組織又は臓器内の標的部位に送達することができる製剤をもたらす。
【0196】
実施形態において、第2のバイオマテリアルは、第1のバイオマテリアルとは異なる感受性を有する温度感受性バイオマテリアルである。第2のバイオマテリアルは、(i)ほぼ周囲温度以下で実質的に固体の状態を有し、かつ(ii)約37℃以上で実質的に液体の状態を有し得る。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。
【0197】
実施形態において、第2のバイオマテリアルは、架橋されたビーズである。実施形態において、架橋されたビーズは、本明細書に記載されるように、架橋の程度に応じて微調整可能なin vivoでの滞留時間を有し得る。実施形態において、架橋されたビーズは、生物活性細胞を含み、本明細書に記載される酵素分解に耐性である。
【0198】
実施形態において、本開示の製剤は、活性作用物質、例えば生物活性細胞と組み合わされた第2のバイオマテリアルを有する又は有しない、活性作用物質、例えば生物活性細胞と組み合わされた第1のバイオマテリアルを含み得る。実施形態において、製剤が第2のバイオマテリアルを含む場合に、第2のバイオマテリアルは温度感受性ビーズ及び/又は架橋されたビーズであり得る。
【0199】
実施形態において、本明細書に記載される生物活性細胞調製物及び/又はコンストラクトは、生物活性細胞製剤として投与され得る。実施形態において、製剤は、細胞と、本明細書に記載される生物活性細胞調製物及び/又はコンストラクトに安定性をもたらす1つ以上のバイオマテリアルとを含む。実施形態において、バイオマテリアルは、温度に応じて少なくとも2つの異なる相又は状態を維持することができる温度感受性バイオマテリアルである。実施形態において、バイオマテリアルは、第1の温度で第1の状態を維持することができ、第2の温度で第2の状態を維持することができ、及び/又は第3の温度で第3の状態を維持することができる。実施形態において、第1の状態、第2の状態、又は第3の状態は、実質的に固体状態、実質的に液体状態、又は実質的に半固体状態若しくは半液体状態であり得る。実施形態において、バイオマテリアルは、第1の温度で第1の状態を有し、第2の温度で第2の状態を有し、ここで、第1の温度は第2の温度より低い。
【0200】
実施形態において、温度感受性バイオマテリアルの状態は、約8℃以下の温度で実質的に固体の状態である。実施形態において、実質的に固体の状態は、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、又は約8℃で維持される。実施形態において、実質的に固体の状態はゲルの形態を有する。実施形態において、温度感受性バイオマテリアルの状態は、周囲温度以上で実質的に液体の状態である。実施形態において、実質的に液体の状態は、約25℃、約25.5℃、約26℃、約26.5℃、約27℃、約27.5℃、約28℃、約28.5℃、約29℃、約29.5℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、又は約37℃で維持される。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。
【0201】
実施形態において、温度感受性バイオマテリアルの状態は、ほぼ周囲温度以下の温度で実質的に固体の状態である。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。実施形態において、実質的に固体の状態は、約17℃、約16℃、約15℃、約14℃、約13℃、約12℃、約11℃、約10℃、約9℃、約8℃、約7℃、約6℃、約5℃、約4℃、約3℃、約2℃、又は約1℃で維持される。実施形態において、実質的に固体の状態はビーズの形態を有する。実施形態において、温度感受性バイオマテリアルの状態は、約37℃以上の温度で実質的に液体の状態である。実施形態において、実質的に固体の状態は、約37℃、約38℃、約39℃、又は約40℃で維持される。
【0202】
実施形態において、温度感受性バイオマテリアルは、溶液の形で、ビーズの形で、又は本明細書に記載される及び/又は当業者に知られる他の適切な形で提供され得る。実施形態において、本明細書に記載される細胞集団及び調製物は、温度感受性バイオマテリアルで被覆され、その上に堆積され、その中に埋設され、それに結合され、その中に播種され、その中に懸濁され、又はその中に捕捉され得る。実施形態において、温度感受性バイオマテリアルは、一切細胞なしで、例えばスペーサービーズの形で提供され得る。
【0203】
実施形態において、温度感受性バイオマテリアルは、第1の状態と第2の状態との間の遷移状態を有する。実施形態において、遷移状態は、約8℃の温度からほぼ周囲温度の間で固体-液体遷移状態である。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。実施形態において、固体-液体遷移状態は、約8℃、約9℃、約10℃、約11℃、約12℃、約13℃、約14℃、約15℃、約16℃、約17℃、及び約18℃の1つ以上の温度で生ずる。
【0204】
実施形態において、温度感受性バイオマテリアルは、センチポアズ(cP)で測定される所与の温度での或る特定の粘度を有する。実施形態において、バイオマテリアルは、約1cP~約5cP、約1.1cP~約4.5cP、約1.2cP~約4cP、約1.3cP~約3.5cP、約1.4cP~約3.5cP、約1.5cP~約3cP、約1.55cP~約2.5cP、又は約1.6cP~約2cPの25℃での粘度を有する。実施形態において、バイオマテリアルは、約1.0cP~約1.15cPの37℃での粘度を有する。37℃での粘度は、約1.0cP、約1.01cP、約1.02cP、約1.03cP、約1.04cP、約1.05cP、約1.06cP、約1.07cP、約1.08cP、約1.09cP、約1.10cP、約1.11cP、約1.12cP、約1.13cP、約1.14cP、又は約1.15cPであり得る。実施形態において、バイオマテリアルはゼラチン溶液である。実施形態において、ゼラチンは、溶液中に約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、又は約1%(重量/容量)で存在する。実施形態において、バイオマテリアルは、PBS中の0.75%(重量/容量)ゼラチン溶液である。実施形態において、0.75%(重量/容量)溶液は、25℃で約1.6cP~約2cPの粘度を有する。実施形態において、0.75%(重量/容量)溶液は、37℃で約1.07cP~約1.08cPの粘度を有する。実施形態において、ゼラチン溶液は、PBS、DMEM、又は別の適切な溶媒中で提供され得る。
【0205】
実施形態において、生物活性細胞製剤は細胞生存剤も含む。実施形態において、細胞生存剤は、酸化防止剤、酸素担体、免疫調節因子、細胞動員因子、細胞接着因子、抗炎症剤、血管新生因子、マトリックスメタロプロテアーゼ、創傷治癒因子、及び生物活性細胞から分泌された産物からなる群から選択される。
【0206】
実施形態において、酸化防止剤は、他の分子の酸化を阻害する能力を特徴とする。酸化防止剤には、限定されるものではないが、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(Trolox(商標))、カロテノイド類、フラボノイド類、イソフラボン類、ユビキノン、グルタチオン、リポ酸、スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸、ビタミンE、ビタミンA、混合カロテノイド類(例えば、βカロテン、αカロテン、γカロテン、ルテイン、リコペン、フィトペン、フィトフルエン、及びアスタキサンチン)、セレン、コエンザイムQ10、インドール-3-カルビノール、プロアントシアニジン類、レスベラトロール、ケルセチン、カテキン類、サリチル酸、クルクミン、ビリルビン、シュウ酸、フィチン酸、リポ酸、バニリン酸、ポリフェノール類、フェルラ酸、テアフラビン類、及びそれらの誘導体の1つ以上が含まれる。当業者は、本開示で使用するのに適した他の酸化防止剤を理解するであろう。
【0207】
実施形態において、酸素担体は、酸素を運搬して放出する能力を特徴とする作用物質である。酸素担体には、限定されるものではないが、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンを含有する医薬品が含まれる。好適なパーフルオロカーボン系酸素担体には、限定されるものではないが、パーフルオロオクチルブロミド(C8F17Br)、パーフルオロジクロロオクタン(C8F16Cl2)、パーフルオロデシルブロミド、パーフルブロン、パーフルオロデカリン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロメチルシクロピペリジン、Fluosol(商標)(パーフルオロデカリン及びパーフルオロトリプロピルアミン)、Perftoran(商標)(パーフルオロデカリン及びパーフルオロメチルシクロピペリジン)、Oxygent(商標)(パーフルオロデシルブロミド及びパーフルブロン)、Ocycyte(商標)(パーフルオロ(tert-ブチルシクロヘキサン))が含まれる。当業者は、本開示で使用するのに適した他のパーフルオロカーボン系酸素担体を理解するであろう。
【0208】
免疫調節因子には、限定されるものではないが、オステオポンチン、FASリガンド因子、インターロイキン、形質転換増殖因子β、血小板由来増殖因子、クラステリン、トランスフェリン、作用時に調節され、正常T細胞で発現される分泌タンパク質(regulated upon action, normal T-cell expressed, secreted protein)(RANTES)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(Pai-1)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン6(IL-6)、α1ミクログロブリン、及びβ2ミクログロブリンが含まれる。当業者は、本開示で使用するのに適した他の免疫調節因子を理解するであろう。
【0209】
実施形態において、抗炎症剤又は免疫抑制剤が製剤の部分である場合もある。当業者は、本製剤及び/又は治療で使用するのに適した他の酸化防止剤を理解するであろう。
【0210】
細胞動員因子には、限定されるものではないが、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、及びCXCL-1が含まれる。当業者は、本製剤及び/又は治療で使用するのに適した他の細胞動員因子を理解するであろう。
【0211】
細胞接着因子には、限定されるものではないが、フィブロネクチン、プロコラーゲン、コラーゲン、ICAM-1、結合組織増殖因子、ラミニン、プロテオグリカン類、RGD及びYSIGR等の特定の細胞接着ペプチドが含まれる。当業者は、本製剤及び/又は治療で使用するのに適した他の細胞接着因子を理解するであろう。
【0212】
血管新生因子には、限定されるものではないが、血管内皮増殖因子F(VEGF)及びアンジオポエチン-2(ANG-2)が含まれる。当業者は、本開示の或る特定の実施形態で使用するのに適した他の血管新生因子を理解するであろう。
【0213】
マトリックスメタロプロテアーゼには、限定されるものではないが、マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)、マトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP2)、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)、並びに組織阻害剤及びメタロプロテアーゼ-1(TIMP-1)が含まれる。
【0214】
創傷治癒因子には、限定されるものではないが、ケラチノサイト増殖因子1(KGF-1)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、カルビンジン、クラステリン、シスタチンC、トレフォイル因子3が含まれる。当業者は、本製剤及び/又は治療で使用するのに適した他の創傷治癒因子を理解するであろう。
【0215】
本開示はまた、腎臓疾患の治療用の、バイオマテリアル及び生物活性腎細胞を含む移植可能なコンストラクトを含有する生物活性細胞製剤を提供する。実施形態において、コンストラクトは、生体適合性材料又はバイオマテリアル、1つ以上の合成又は天然に存在する生体適合性材料から構成されるスキャフォールド又はマトリックスと、付着及び/又は捕捉によってスキャフォールドの表面上に堆積された又はその表面に埋設された本明細書に記載される1つ以上の細胞集団とから作製される。実施形態において、コンストラクトは、バイオマテリアルと、バイオマテリアル成分(複数の場合もある)で被覆され、その上に堆積され、その中に堆積され、そこに付着され、その中に捕捉され、その中に埋設され、播種され、又はそれと組み合わされた本明細書に記載される1つ以上の細胞集団とから作製される。濃縮された細胞集団(例えば、SRC)を含む本明細書に記載される細胞集団のいずれかをマトリックスと組み合わせて使用して、コンストラクトを形成することができる。実施形態において、生物活性細胞製剤は、生体適合性材料又はバイオマテリアルと、本明細書に記載されるSRC集団とから作製される。
【0216】
実施形態において、生物活性細胞製剤は、Neo-Kidney Augment(NKA)であり、これはバイオマテリアル(ゼラチンベースのヒドロゲル)中で製剤化された自家で同種の選択腎細胞(SRC)から構成される注射可能な製品である。実施形態において、自家で同種のSRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から腎細胞を分離及び増殖させて、増殖された腎細胞を密度境界、密度障壁、又は密度界面を越える分離(例えば、単一段階の不連続的な密度勾配分離)により選択することで得られる。実施形態において、自家SRCは、腎臓生検を介して患者の腎皮質組織から腎細胞を分離及び増殖させて、増殖された腎細胞を連続的又は不連続的な単一段階又は多段階の密度勾配に対して選択することで得られる。実施形態において、SRCは、主として再生能力について既知の腎上皮細胞から構成される(Humphreys et al. (2008) Intrinsic epithelial cells repair the kidney after injury. Cell Stem Cell. 2(3):284-91)。実施形態において、レシピエントの腎臓へとSRCを注射すると、動物の生存率、尿中濃度、及び濾過機能の大幅な改善がもたらされる。実施形態において、SRCは限られた保存寿命及び安定性を有する。実施形態において、ゼラチンベースのヒドロゲルバイオマテリアル中でSRCを製剤化すると、細胞の安定性の増強がもたらされ、こうして製品の保存寿命が延び、臨床的有用性のためにNKAを腎臓皮質へと輸送及び送達する間のNKAの安定性が改善される。
【0217】
実施形態において、NKAは、臨床ケア基準の腎臓生検処置を使用してドナーから腎皮質組織を最初に得ることによって製造される。実施形態において、ドナーは治療される対象である。実施形態において、腎細胞は、腎臓組織から酵素消化によって分離され、標準的な細胞培養技術を使用して増殖される。実施形態において、初代腎細胞の増殖に使用される細胞培養培地は、分化因子を一切含まない。実施形態において、採取された腎細胞を密度境界若しくは密度界面を越える分離又は密度勾配分離に供して、SRCを得る。
【0218】
実施形態において、製剤は、本明細書に記載される外部条件に反応するように設計又は適合されたバイオマテリアルを含む。結果として、生物活性細胞集団とコンストラクト中のバイオマテリアルとの会合の性質は、外部条件に応じて変化する。実施形態において、細胞集団と温度感受性バイオマテリアルとの会合は温度に伴って変化する。実施形態において、コンストラクトは、生物活性腎細胞集団と、約8℃以下で実質的に固体の状態及びほぼ周囲温度以上で実質的に液体の状態を有するバイオマテリアルとを含有し、ここで、細胞集団は、約8℃以下でバイオマテリアル中に懸濁されている。実施形態において、細胞集団は、ほぼ周囲温度以上でバイオマテリアルの体積全体にわたって実質的に移動が自由である。実施形態において、細胞集団がより低い温度で実質的に固相中に懸濁されていることで、流体中の細胞と比較して、足場依存性細胞等の細胞に安定性の利点がもたらされる。実施形態において、細胞が実質的に固体の状態で懸濁されていることで、以下の利点の1つ以上がもたらされる:i)細胞の沈降を防ぐこと、ii)懸濁された状態で細胞をバイオマテリアルに固定させたままにすること、iii)細胞をバイオマテリアルの体積全体にわたってより均一に分散させたままにすること、iv)細胞凝集体の形成を防ぐこと、並びにv)製剤の貯蔵及び輸送の間の細胞のより良好な保護を提供すること。対象への投与に至るまでそのような特徴を保持することができる製剤は、少なくとも該製剤中の細胞の健康全般がより良好であり、より均一で一貫した投与量の細胞が投与されるため有利である。
【0219】
実施形態において、生物活性細胞製剤の製造方法は、患者の生検から製品の移植までほぼ4週間で製品を配送するように設計されている。実施形態において、患者間の組織のばらつきにより、固定された移植スケジュールで製品を配送するには難題が突きつけられる。実施形態において、増殖された腎細胞は、細胞増殖におけるこの患者に応じたばらつきに対応するために、細胞増殖中に凍結保存される。実施形態において、凍結保存された腎細胞は、別の治療が必要とされる事象で(例えば、患者の病気による遅延、予期せぬ経過事象等)、必要に応じて再移植用の多回用量を製造するのに継続した細胞供給源を提供する。
【0220】
実施形態において、生物活性細胞組成物は、バイオマテリアル(ゼラチンベースのヒドロゲル)中で製剤化された自家で同種の細胞から構成される。実施形態において、組成物は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を含むゼラチン溶液中で1mL当たり約20×106個の細胞~1mL当たり約200×106個の細胞を含む。実施形態において、製品1mL当たりの細胞の数は、1mL当たり約20×106個の細胞、1mL当たり約40×106個の細胞、1mL当たり約60×106個の細胞、1mL当たり約100×106個の細胞、1mL当たり約120×106個の細胞、1mL当たり約140×106個の細胞、1mL当たり約160×106個の細胞、1mL当たり約180×106個の細胞、又は1mL当たり約200×106個の細胞である。実施形態において、ゼラチンは、溶液中に約0.5%、約0.55%、約0.6%、約0.65%、約0.7%、約0.75%、約0.8%、約0.85%、約0.9%、約0.95%、又は約1%(重量/容量)で存在する。実施形態において、バイオマテリアルは、DPBS中の0.88%(重量/容量)ゼラチン溶液である。実施形態において、注射可能な製剤は、約0.88%(重量/容量)のゼラチンを含むバイオマテリアルと、生物活性腎細胞集団(BRC)を含む組成物とを含み、ここで、BRCは、約1.04g/mLを超える密度を有する尿細管腎細胞の濃縮された集団を含む。実施形態において、注射可能な製剤は、約0.88%(重量/容量)のゼラチンを含むバイオマテリアルと、生物活性腎細胞集団(BRC)を含む組成物とを含み、ここで、BRCは、約1.0419g/mL又は約1.045g/mLを超える密度を有する尿細管腎細胞の濃縮された集団を含む。
【0221】
実施形態において、NKAは、無菌の使い捨て10mL注射器中で与えられる。実施形態において、最終容量は、NKA1mL当たり100×106個のSRCの濃度及び腎臓重量1g当たり3.0×106個のSRCの目標用量から計算される。実施形態において、腎臓重量はMRIによって推算された重量である。実施形態において、治療用投与量は、注射時点で(例えば、外科医等の医療専門家によって)患者の腎臓重量に基づいて決定される。実施形態において、用量は、腎臓重量1g当たり約2.5×106個のSRC~腎臓重量1g当たり約3.5×106個のSRCである。
【0222】
実施形態において、製剤に対して細胞の総数を選択することができ、適切な治療用投与量に達するように製剤の容量を調整することができる。実施形態において、製剤は、単一投与量又は単一投与量に加えて追加の投与量である対象への細胞の投与量を含み得る。実施形態において、投与量は、本明細書に記載されるコンストラクトによって提供され得る。実施形態において、本明細書に記載される生物活性腎細胞集団の治療的有効量は、対象によって安全に受容される細胞の最大数から、腎臓疾患の治療、例えば、1つ以上の腎臓機能の安定化、低下率の減少、又は改善に必要とされる細胞の最小数までの範囲であり得る。
【0223】
実施形態において、本明細書に記載される治療的有効量の生物活性腎細胞集団は、薬学的に許容可能な担体又は添加剤中に懸濁され得る。このような担体には、限定されるものではないが、基礎培養培地に加えて1%血清アルブミン、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、コラーゲン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、フィブリン糊、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの組合せが含まれる。製剤は投与方式に適合しているべきである。
【0224】
実施形態において、生物活性腎細胞調製物又は組成物は、ヒトへの投与に適合された医薬組成物として、定型的な手順に従って製剤化される。実施形態において、例えば、静脈内投与用、動脈内投与用、又は腎臓被膜内投与用の組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。実施形態において、組成物はまた、注射部位のあらゆる痛みを和らげる局所麻酔薬を含み得る。実施形態において、これらの成分は、別々に又は一緒に混合されて単位投与形で、例えば、活性作用物質の量を指示するアンプル等の気密封止された容器内の凍結乾燥濃縮物として供給される。実施形態において、上記組成物が輸注によって投与される場合に、無菌の医薬品グレードの水又は生理食塩水を収容する輸液ボトルを用いて該組成物を投薬することができる。実施形態において、上記組成物が注射により投与される場合に、これらの成分が投与前に混合され得るように、無菌の注射用水又は生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0225】
実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、部分的に、投与される特定の組成物によるだけでなく、組成物を投与するのに使用される特定の方法によっても決められ得る。したがって、医薬組成物の多岐にわたる適切な製剤が存在する(例えば、Alfonso R Gennaro (ed), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, formerly Remington's Pharmaceutical Sciences 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 2003(引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす)を参照)。実施形態において、医薬組成物は一般に、無菌で、実質的に等張性に、かつ米国食品医薬品局の全ての適正製造規範(GMP)の規制に完全に準拠して製剤化される。
【0226】
実施形態において、生物活性細胞製剤は、酸化防止剤、酸素担体、免疫調節因子、細胞動員因子、細胞接着因子、抗炎症剤、血管新生因子、創傷治癒因子、及び生物活性細胞から分泌された産物からなる群から選択される細胞生存剤を含む。
【0227】
実施形態において、本明細書に記載される生物活性細胞から分泌された産物を、細胞生存剤として生物活性細胞製剤に添加することもできる。
【0228】
実施形態において、上記製剤は、本明細書に記載される温度感受性バイオマテリアルと、バイオマテリアルを含有する生体適合性ビーズの集団とを含む。実施形態において、ビーズは架橋される。架橋は、当業者に既知の任意の好適な架橋剤、例えばカルボジイミド類;アルデヒド類(例えば、フルフラール、アクロレイン、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリセリルアルデヒド)、スクシンイミド系架橋剤(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、ビス(スルホスクシンイミジル)グルタレート(BS2G)、ジスクシンイミジルタルトレート(DST));エポキシド類(エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエービス);糖類(グルコース及びアルドース糖);スルホン酸及びp-トルエンスルホン酸;カルボニルジイミダゾール;ゲニピン;イミン類;ケトン類;ジフェニルホスホリルアジド(DDPA);テレフタロイルクロリド;硝酸セシウム(III)六水和物;微生物性トランスグルタミナーゼ;並びに過酸化水素を用いて達成され得る。当業者は、本方法、本製剤及び/又は治療で使用するのに適した他の架橋剤及び架橋方法を理解するであろう。
【0229】
実施形態において、ビーズはカルボジイミド架橋されたビーズである。実施形態において、カルボジイミド架橋されたビーズは、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC))及びN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)からなる群から選択されるカルボジイミドで架橋され得る。
【0230】
実施形態において、架橋されたビーズは、架橋されていない生体適合性ビーズと比べて、酵素分解への受けやすさが低下しており、それにより、in vivoでの滞留時間を微調整することができるビーズが得られる。実施形態において、架橋されたビーズは、コラゲナーゼ等の内在性酵素に耐性である。実施形態において、架橋されたビーズの供給は、以下の1つ以上を促進する送達系の一部である:(a)付着した細胞を所望の部位に送達し、天然組織の再生及び内部成長並びに血管供給のための空間を作り出すこと、(b)細胞がその微小環境を確立し、機能し、再構築し、その細胞自身の細胞外マトリックス(ECM)を分泌するのを可能にするほど十分に長い間、その部位で存続することができること、(c)移植された細胞と周囲組織との統合の促進、(d)細胞を実質的に固体の形で移植することができること、(e)組織の内部成長、又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさない短期的な構造的完全性、(f)実質的に固体の形での局所的なin vivo送達により、移植の間に組織内での細胞の分散を防ぐこと、(g)流体中に懸濁された細胞と比較した、足場依存性細胞の安定性及び生存力の改善、並びに(h)細胞がi)(例えば、ビーズに付着された)実質的に固体の形で、及びii)(例えば、流体中に懸濁された)実質的に液体の形で送達される場合の二相放出プロファイル。
【0231】
実施形態において、本開示はゼラチンを含有する架橋されたビーズを提供する。実施形態において、架橋されていないゼラチンビーズは、これらが急速に完全性を失い、細胞が注射部位から散逸するため、生物活性細胞製剤に適していない。実施形態において、高度に架橋されたゼラチンビーズは、過度に長く注射部位で存続する可能性があり、de novoでのECM分泌、細胞統合、及び組織再生を妨げる恐れがある。実施形態において、本開示は、架橋されたビーズのin vivoでの滞留時間を微調整することを可能にする。実施形態において、バイオマテリアルの生分解性の適合のために、種々の架橋剤濃度のカルボジイミドが使用されるが、全ての試料について反応条件全体は一定に保たれる。実施形態において、カルボジイミド架橋されたビーズの酵素感受性は、架橋剤の濃度を約0Mから約1Mまで変化させることによって微調整され得る。実施形態において、濃度は、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、又は約100mMである。架橋剤の濃度はまた、約0.15M、約0.2M、約0.25M、約0.3M、約0.35M、約0.4M、約0.45M、約0.5M、約0.55M、約0.6M、約0.65M、約0.7M、約0.75M、約0.8M、約0.85M、約0.9M、約0.95M、又は約1Mであり得る。別の実施形態において、架橋剤は、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)である。実施形態において、EDC架橋されたビーズはゼラチンビーズである。
【0232】
実施形態において、架橋されたビーズは、播種、付着、又は被包に有利な或る特定の特質を有し得る。実施形態において、該ビーズは、多孔質表面を有し得る及び/又は実質的に中空であり得る。実施形態において、細孔の存在は、非多孔質、すなわち平滑な表面と比較してより多数の細胞の付着を可能にする細胞付着表面の増加をもたらす。実施形態において、細孔構造は、de novoの組織の形成を支持する多孔質ビーズとの宿主組織の統合を支持し得る。実施形態において、ビーズは、一般的な粒子分布パターンに対応するワイブルプロットに当てはめることができるサイズ分布を有する。実施形態において、架橋されたビーズは、約120μm、約115μm、約110μm、約109μm、約108μm、約107μm、約106μm、約105μm、約104μm、約103μm、約102μm、約101μm、約100μm、約99μm、約98μm、約97μm、約96μm、約95μm、約94μm、約93μm、約92μm、約91μm、又は約90μm未満の平均直径を有する。実施形態において、架橋されたビーズの特質は、キャスティング法に応じて変動する。実施形態において、気流を使用して液体ゼラチン溶液をエアロゾル化し、それを薄層クロマトグラフィー試薬噴霧器(ACE Glassware)により液体窒素中に噴霧する方法を使用して、上述の特質を有するビーズが得られる。当業者は、キャスティング法のパラメーターの調節により、ビーズの種々の特質、例えば種々のサイズ分布を適合させる機会が与えられることを理解するであろう。
【0233】
実施形態において、架橋されたビーズの細胞適合性は、最終的な生物活性細胞製剤に対応する細胞とともにビーズを培養する細胞培養技術を使用して製剤化前にin vitroで評価される。実施形態において、生物活性腎細胞製剤の作製前にビーズを初代腎細胞とともに培養し、生/死細胞アッセイを使用して細胞適合性を確認する。実施形態において、生体適合性の架橋されたビーズは、溶液の容量の約5%(重量/重量)~約15%(重量/重量)で溶液中の温度感受性バイオマテリアルと組み合わせられる。実施形態において、架橋されたビーズは、溶液の容量の約5%(重量/重量)、約5.5%(重量/重量)、約6%(重量/重量)、約6.5%(重量/重量)、約7%(重量/重量)、約7.5%(重量/重量)、約8%(重量/重量)、約8.5%(重量/重量)、約9%(重量/重量)、約9.5%(重量/重量)、約10%(重量/重量)、約10.5%(重量/重量)、約11%(重量/重量)、約11.5%(重量/重量)、約12%(重量/重量)、約12.5%(重量/重量)、約13%(重量/重量)、約13.5%(重量/重量)、約14%(重量/重量)、約14.5%(重量/重量)、又は約15%(重量/重量)で存在し得る。
【0234】
実施形態において、本開示は、数分、数時間、又は数日の規模の期間をかけて分解するバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、数日、数週間、又は数ヶ月をかけてゆっくりと分解する固体材料の移植に焦点を当てた数多くの研究とは対照的である。実施形態において、バイオマテリアルは、以下の特質の1つ以上を有する:生体適合性、生分解性/生体吸収性、対象への移植の前及びその間の実質的に固体の状態、移植後の構造的完全性(実質的に固体の状態)の喪失、並びに細胞生存力及び増殖を支持する細胞適合性のある環境。移植された粒子間の間隔を移植の間に空けたままにするバイオマテリアルの能力は、天然組織の内部成長を増進する。バイオマテリアルはまた、固体製剤の移植を促進する。固体ユニットの挿入は移植の間に送達された材料が組織内で分散しないようにする手助けとなるので、バイオマテリアルは本明細書に記載される製剤の局在化をもたらす。細胞ベースの製剤の場合に、固体バイオマテリアルはまた、流体中に懸濁された細胞と比較して、足場依存性細胞の安定性及び生存力を改善する。しかしながら、構造的完全性の短い持続時間は、移植直後にバイオマテリアルが、組織の内部成長又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさないことを意味する。
【0235】
一態様では、本開示は、実質的に固体の形で移植された後に液化/融解されるか、又は体内に移植した後に別の形で構造的完全性を失うバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。これは、液体として注射された後に体内で固化し得る材料の使用に焦点を当てた多数の研究とは対照的である。
【0236】
実施形態において、本開示は、生物活性細胞が播種された生体適合性の架橋されたビーズと一緒に送達マトリックスを有する製剤を提供する。実施形態において、送達マトリックスは、以下の特質の1つ以上を有する:生体適合性、生分解性/生体吸収性、対象への移植の前及びその間の実質的に固体の状態、移植後の構造的完全性(実質的に固体の状態)の喪失、並びに細胞生存力を支持する細胞適合性のある環境。実施形態において、移植された粒子(例えば、架橋されたビーズ)間の間隔を移植の間に空けたままにする送達マトリックスの能力は、天然組織の内部成長を増進する。実施形態において、送達マトリックスがないと、移植の間の細胞化されたビーズの圧縮により、十分な組織の内部成長には不向きな空間がもたらされ得る。実施形態において、送達マトリックスはまた、固体製剤の移植を促進する。実施形態において、さらに、構造的完全性の短い持続時間は、移植直後に、該マトリックスが、組織の内部成長、又は送達された細胞/材料と宿主組織との統合に対して重大な障害をもたらさないことを意味する。実施形態において、固体ユニットの挿入は移植の間に送達された材料が組織内で分散しないようにする手助けとなるので、送達マトリックスは本明細書に記載される製剤の局在化をもたらす。実施形態において、細胞ベースの製剤の場合に、固体の送達マトリックスは、流体中に懸濁された細胞と比較して、足場依存性細胞の安定性及び生存力を改善する。
【0237】
実施形態において、送達マトリックスは、細胞が播種されていない生体適合性ビーズの集団である。実施形態において、個々の細胞が播種されたビーズ全体にわたってその間に、播種されていないビーズが分散配置されている。実施形態において、播種されていないビーズは、移植の前及びその直後に、細胞が播種されたビーズの間で「スペーサービーズ」としての役割を果たす。実施形態において、スペーサービーズは、第1の温度で実質的に固体の状態を有し、第2の温度で実質的に液体の状態を有し、第1の温度が第2の温度より低い温度感受性のバイオマテリアルを含有する。実施形態において、スペーサービーズは、ほぼ周囲温度以下で実質的に固体の状態を有し、約37℃で実質的に液体の状態を有するバイオマテリアル、例えば、本明細書に記載されるバイオマテリアルを含有する。実施形態において、周囲温度は、ほぼ室温である。実施形態において、バイオマテリアルはゼラチン溶液である。実施形態において、ゼラチン溶液は、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、又は約11%(重量/容量)で存在する。実施形態において、ゼラチン溶液は、PBS、細胞培養培地(例えば、DMEM)、又は別の適切な溶媒中で提供され得る。
【0238】
実施形態において、本開示は、実質的に固体の形(例えば、スペーサービーズ)で移植された後に液化/融解されるか、又は体内に移植した後に別の形で構造的完全性を喪失するバイオマテリアルを含有する製剤を提供する。
【0239】
実施形態において、スペーサービーズの温度感受性は、製剤化前にin vitroで評価され得る。実施形態において、スペーサービーズを標識し、未標識の温度非感受性ビーズと混合することができる。実施形態において、次いでその混合物を37℃でインキュベートし、物理的遷移における変化を観察する。実施形態において、より高温での標識された温度感受性ビーズの形崩れを経時的に観察する。実施形態において、温度感受性ゼラチンビーズは、物理的遷移のマーカーとして働くようにアルシアンブルー色素を用いて作製され得る。実施形態において、青色のゼラチンビーズをCultispher Sビーズ(白色)と混合し、カテーテル内に装填した後に、押し出して、1×PBS(pH7.4)中で37℃にてインキュベートする。実施形態において、青色のゼラチンビーズの形崩れを種々の時点で顕微鏡検査により追跡する。実施形態において、青色のゼラチンビーズの物理的状態の変化は30分後に視認可能となり、インキュベート時間を延長することでより一層顕著になる。実施形態において、材料の粘性のため、ビーズは完全には散逸しない。
【0240】
実施形態において、本明細書に記載される生物活性細胞製剤を使用して、腎臓への注射用の腎細胞ベースの製剤を調製することができる。しかしながら、当業者は、該製剤が多くの他の種類の生物活性細胞集団に適していることを理解するであろう。例えば、本開示は、任意の実質臓器又は組織への注射用の生物活性細胞についての製剤を企図している。
【0241】
実施形態において、本明細書に記載される生物活性細胞製剤は、定められた数の細胞を含むこととなる。実施形態において、製剤に対する細胞の総数は、約104個、約105個、約106個、約107個、約108個、又は約109個である。実施形態において、本明細書に記載される製剤に対する細胞の投与量は、標的臓器又は組織の推定質量又は機能的質量を基準として計算され得る。実施形態において、生物活性細胞製剤は、製剤による治療の対象となる宿主臓器の重量を基準とする細胞の数に対応する投与量を含む。実施形態において、生物活性腎細胞製剤は、ヒト腎臓については約150グラムの平均重量を基準とする。実施形態において、腎臓の1グラム(g)当たりの細胞の数は、約600個の細胞/g~約7.0×107個の細胞/gである。実施形態において、腎臓1グラム当たりの細胞の数は、約600個の細胞/g、約1000個の細胞/g、約1500個の細胞/g、約2000個の細胞/g、約2500個の細胞/g、約3000個の細胞/g、約3500個の細胞/g、約4000個の細胞/g、約4500個の細胞/g、約5000個の細胞/g、約5500個の細胞/g、約6000個の細胞/g、約6500個の細胞/g、約7000個の細胞/g、約7500個の細胞/g、約8000個の細胞/g、約8500個の細胞/g、約9000個の細胞/g、約9500個の細胞/g、又は約10000個の細胞/gである。
【0242】
実施形態において、腎臓1グラム当たりの細胞の数は、約1.5×104個の細胞/g、約2.0×104個の細胞/g、約2.5×104個の細胞/g、約3.0×104個の細胞/g、約3.5×104個の細胞/g、約4.0×104個の細胞/g、約4.5×104個の細胞/g、約5.0×104個の細胞/g、約5.5×104個の細胞/g、約6.0×104個の細胞/g、約6.5×104個の細胞/g、約7.0×104個の細胞/g、約7.5×104個の細胞/g、約8.0×104個の細胞/g、約9.5×104個の細胞/gである。
【0243】
実施形態において、腎臓1グラム当たりの細胞の数は、約1.0×105個の細胞/g、約1.5×105個の細胞/g、約2.0×105個の細胞/g、約2.5×105個の細胞/g、約3.0×105個の細胞/g、約3.5×105個の細胞/g、約4.0×105個の細胞/g、約4.5×105個の細胞/g、約5.0×105個の細胞/g、約5.5×105個の細胞/g、約6.0×105個の細胞/g、約6.5×105個の細胞/g、約7.0×105個の細胞/g、約7.5×105個の細胞/g、約8.0×105個の細胞/g、約8.5×105個の細胞/g、約9.0×105個の細胞/g、又は約9.5×105個の細胞/gである。
【0244】
実施形態において、腎臓1グラム当たりの細胞の数は、約1.0×106個の細胞/g、約1.5×106個の細胞/g、約2.0×106個の細胞/g、約2.5×106個の細胞/g、約3.0×106個の細胞/g、約3.5×106個の細胞/g、約4.0×106個の細胞/g、約4.5×106個の細胞/g、約5.0×106個の細胞/g、約5.5×106個の細胞/g、約6.0×106個の細胞/g、約6.5×106個の細胞/g、約7.0×106個の細胞/g、約7.5×106個の細胞/g、約8.0×106個の細胞/g、約8.5×106個の細胞/g、約9.0×106個の細胞/g、約9.5×106個の細胞/g、1.0×107個の細胞/g、又は約1.5×107個の細胞/gである。
【0245】
実施形態において、製剤に対して細胞の総数を選択することができ、適切な投与量に達するように製剤の容量を調整することができる。
【0246】
実施形態において、製剤は、単一投与量又は単一投与量に加えて追加の投与量である対象への細胞の投与量を含み得る。実施形態において、投与量は、本明細書に記載されるコンストラクトによって提供され得る。実施形態において、本明細書に記載される腎細胞集団の治療的有効量は、対象によって安全に受容される細胞の最大数から、腎臓疾患の治療、例えば、1つ以上の腎臓機能の安定化、低下率の減少、又は改善に必要とされる細胞の最小数までの範囲であり得る。
【0247】
実施形態において、本明細書に記載される治療的有効量の腎細胞集団は、薬学的に許容可能な担体又は添加剤中に懸濁され得る。このような担体には、限定されるものではないが、基礎培養培地に加えて1%血清アルブミン、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、コラーゲン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、フィブリン糊、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの組合せが含まれる。製剤は投与方式に適合しているべきである。
【0248】
実施形態において、本開示は、対象における腎臓疾患を治療する医薬を製造するための腎細胞集団を含有する製剤の使用を提供する。実施形態において、医薬は、成長因子、ケモカイン、又はサイトカイン等の組換えポリペプチドを更に含む。実施形態において、医薬は、ヒト腎臓由来の細胞集団を含む。実施形態において、医薬を製造するのに使用される細胞は、本明細書に記載される方法について示される変形形態のいずれかを使用して、分離、誘導、又は濃縮され得る。
【0249】
実施形態において、本明細書に開示される腎細胞調製物(複数の場合もある)又は組成物は、ヒトへの投与に適合された医薬組成物として、定型的な手順に従って製剤化される。実施形態において、例えば、静脈内投与用、動脈内投与用、又は腎臓被膜内投与用の組成物は、無菌の等張水性緩衝液中の溶液である。実施形態において、組成物はまた、注射部位のあらゆる痛みを和らげる局所麻酔薬を含み得る。実施形態において、これらの成分は、別々に又は一緒に混合されて単位投与形で、例えば、活性作用物質の量を指示するアンプル等の気密封止された容器内の凍結乾燥濃縮物として供給される。実施形態において、上記組成物が輸注によって投与される場合に、無菌の医薬品グレードの水又は生理食塩水を収容する輸液ボトルを用いて該組成物を投薬することができる。実施形態において、上記組成物が注射により投与される場合に、これらの成分が投与前に混合され得るように、無菌の注射用水又は生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0250】
実施形態において、薬学的に許容可能な担体は、部分的に、投与される特定の組成物によるだけでなく、組成物を投与するのに使用される特定の方法によっても決められる。したがって、医薬組成物の多岐にわたる適切な製剤が存在する(例えば、Alfonso R Gennaro (ed), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, formerly Remington's Pharmaceutical Sciences 20th ed., Uppincott, Williams & Wilkins, 2003(引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす)を参照)。実施形態において、医薬組成物は一般に、無菌で、実質的に等張性に、かつ米国食品医薬品局の全ての適正製造規範(GMP)の規制に完全に準拠して製剤化される。
【0251】
実施形態において、本開示の製剤は放出調節製剤として提供される。実施形態において、放出調節は、投与したときの第1の活性作用物質の初期放出に続く、少なくとも1回の追加の後続の第2の活性作用物質の放出を特徴とする。実施形態において、第1の活性作用物質及び第2の活性作用物質は、同じであってもよく、又はこれらは異なっていてもよい。実施形態において、該製剤は、同じ製剤中の複数の成分によって放出調節をもたらす。実施形態において、放出調節製剤は、活性作用物質が製剤の体積全体にわたって自由に移動することを可能にすることにより、投与されると標的部位での即時放出を可能にする第1の成分の一部として活性作用物質を含有する。実施形態において、第1の成分は、実質的に液相及び実質的に固相を有する温度感受性バイオマテリアルであり得て、ここで、第1の成分は、投与の時点では実質的に液相である。実施形態において、活性作用物質は、製剤の体積全体にわたって実質的に移動が自由であるように実質的に液相で存在するため、投与されると標的部位に即時放出される。
【0252】
実施形態において、放出調節製剤は、第2の成分の一部として、第2の成分に付着し、その上に堆積され、それで被覆され、その中に埋設され、その上に播種され、又はその中に捕捉されており、標的部位への投与前及びその後に存続する活性作用物質を有する。実施形態において、第2の成分は、活性作用物質を会合させることができ、それにより投与の時点で第2の成分から活性作用物質が即時放出されるのを妨げる構造要素を含有している。実施形態において、第2の成分は、実質的に固体の形で提供され、例えば、架橋することでin vivoでの酵素分解を防ぐ又は遅らせることができる生体適合性ビーズである。実施形態において、実質的に固相である活性作用物質は、投与の前及びその後で製剤内でその構造的完全性を保持するため、投与されても直ちに活性作用物質を標的部位に放出しない。放出調節製剤に適した担体は本明細書に記載されているが、当業者は、本明細書で使用するのに適切な他の担体を理解するであろう。
【0253】
実施形態において、上記製剤は、細胞、ナノ粒子、治療用分子等を含む送達される要素の最初の迅速な送達/放出に続いて、その後の要素の遅延放出をもたらす。実施形態において、本開示の製剤は、送達される作用物質が、付着されていない形(例えば、溶液中の細胞)及び付着された形(例えば、ビーズ又は別の適切な担体と一緒の細胞)の両方で提供されるような二相放出プロファイルのために設計され得る。実施形態において、最初の投与に際して、動きが妨げられていない作用物質は送達部位に直ちに供給される一方で、動きが妨げられた作用物質の放出は、担体(例えば、ビーズ)の構造的完全性が損なわれるまで遅延され、その時点で事前に付着していた作用物質が放出される。本明細書に論じられるように、その他の適切な放出機構は、当業者によって理解されるであろう。
【0254】
実施形態において、放出の遅延時間は、活性作用物質の性質に基づいて調整され得る。実施形態において、生物活性細胞製剤における放出の遅延時間は、数秒、数分、数時間、又は数日の規模であり得る。実施形態において、数週間の規模での遅延が適切であり得る。実施形態において、小分子又は大分子等の他の活性作用物質については、製剤における放出の遅延時間は、数秒、数分、数時間、数日、数週間、又は数ヶ月の規模であり得る。実施形態において、製剤は、異なる時間遅延放出プロファイルを与える異なるバイオマテリアルを含有することも可能である。実施形態において、第1の活性作用物質を有する第1のバイオマテリアルは、第1の放出時間を示し得て、第2の活性作用物質を有する第2のバイオマテリアルは、第2の放出時間を示し得る。実施形態において、第1の活性作用物質及び第2の活性作用物質は、同じ又は異なっていてもよい。
【0255】
実施形態において、遅延放出の期間は、一般的に、バイオマテリアルが構造的完全性を失う時間に相当し得る。しかしながら、当業者は、他の遅延放出機構を理解するであろう。実施形態において、活性作用物質は、任意の特定のバイオマテリアルの分解時間と無関係に、例えば、ポリマーマトリックスからの薬物の拡散で長時間にわたって連続的に放出され得る。実施形態において、生物活性細胞は、バイオマテリアル及び生物活性細胞を含有する製剤から出て天然組織へと遊走し得る。実施形態において、生物活性細胞はバイオマテリアル、例えばビーズから天然組織へと遊走する。
【0256】
実施形態において、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる。実施形態において、製剤中に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることによって、注射可能な製剤の持続的吸収がもたらされ得る。そのような製剤を作製する、非限定的な例示の多くの方法は特許化されており、又は当業者に一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。ポリペプチド作用物質の制御放出又は持続放出に適用可能な、非限定的な例示の更なる方法は、例えば、米国特許第6,306,406号及び同第6,346,274号とともに、例えば米国特許出願公開第20020182254号及び米国特許出願公開第20020051808号にも記載されており、その全ては、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0257】
実施形態において、本明細書で提供される製剤は単独で投与される。実施形態において、本明細書で提供される製剤は1つ以上の他の活性組成物と組み合わせて投与される。実施形態において、該製剤は、組み込まれた組織工学要素を実質臓器の内部に注射又は移植して、組織を再生するのに適している。実施形態において、該製剤は、組織工学要素を中空臓器の壁部に注射又は移植して、組織を再生させるのに使用される。
【0258】
また、本明細書の開示によって、対象に生物活性細胞製剤を供給する方法も提供される。実施形態において、生物活性細胞の供給源は、自家、同種異系、同系(自己又は同種同系)、及びそれらの任意の組合せであり得る。供給源が自家ではない場合の実施形態において、該方法は、免疫抑制剤の投与を含み得る(例えば、米国特許第7,563,822号を参照)。免疫抑制薬の例には、限定されるものではないが、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミゾリビン、シクロスポリン、タクロリムス水和物、クロラムブシル、ロベンザリット二ナトリウム、オーラノフィン、アルプロスタジル、グスペリムス塩酸塩、ビオシンソルブ(biosynsorb)、ムロモナブ、アレファセプト、ペントスタチン、ダクリズマブ、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、バシリキシマブ、ドルナーゼアルファ、ビンダリド(bindarid)、クラドリビン、ピメクロリムス、イロデカキン、セデリズマブ、エファリズマブ、エベロリムス、アニスペリムス、ガビリモマブ、ファラリモマブ(faralimomab)、クロファラビン、ラパマイシン、シプリズマブ、柴苓湯、LDP-03、CD4、SR-43551、SK&F-106615、IDEC-114、IDEC-131、FTY-720、TSK-204、LF-080299、A-86281、A-802715、GVH-313、HMR-1279、ZD-7349、IPL-423323、CBP-1011、MT-1345、CNI-1493、CBP-2011、J-695、UP-920、L-732531、ABX-RB2、AP-1903、IDPS、BMS-205820、BMS-224818、CTLA4-1g、ER-49890、ER-38925、ISAtx-247、RDP-58、PNU-156804、UP-1082、TMC-95A、TV-4710、PTR-262-MG、及びAGI-1096が含まれる(米国特許第7,563,822号を参照)。当業者は、他の適切な免疫抑制薬を理解するであろう。
【0259】
実施形態において、少なくとも1つの活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)は、例えば注射によって、意図された利益の部位に直接投与される。実施形態において、対象は、自然腎を1つ以上の濃縮された腎細胞集団から分泌された産物、及び/又は該産物を含有する混合物若しくはコンストラクトと一緒に、本明細書に記載される生物活性細胞製剤とin vivoで接触させることによって治療され得る。実施形態において、in vivoでの接触工程は、自然腎に再生効果をもたらす。
【0260】
選択腎細胞等の活性作用物質の組成物を対象に投与する様々な手段は、本明細書を踏まえて、当業者には明らかであろう。そのような方法には、対象における標的部位への細胞の注射が含まれる。
【0261】
製剤の投与方式には、限定されるものではないが、全身注射、腎内(例えば、実質)注射、静脈内注射又は動脈内注射、及び意図された活性部位での組織への直接的な注射が含まれる。本明細書の或る特定の実施形態に従って使用される追加の投与方式には、直接開腹術による、直接腹腔鏡検査による、経腹的、又は経皮的な単回注射又は頻回注射が含まれる。実施形態に従って使用されるなおも更なる追加の投与方式には、例えば、逆行注入及び腎盂尿管注入が含まれる。外科的な投与手段には、限定されるものではないが、部分腎切除術及びコンストラクト移植、部分腎切除術、部分腎盂切除術、網±腹膜を用いた血管新生、多病巣の生検針追跡、円錐形又はピラミッド形から円筒形への腎極状の置換等の1段階処置だけでなく、例えば、再移植用のオルガノイド-体内バイオリアクターを含む2段階処置も含まれる。実施形態において、種々の活性作用物質を含有する製剤は、同時に同じ経路を介して送達される。実施形態において、活性作用物質は、本明細書に記載される方法の1つ以上によって、同時に又は時間的に制御された様式のいずれかで、特定の位置に又は特定の技法を介して別々に送達される。実施形態において、少なくとも1つの活性作用物質(例えば、腎細胞集団、その産物、又は腎細胞集団及び1つ以上の非腎細胞型若しくは集団を含むスフェロイド)は、腎臓の腎皮質へと経皮的に注射される。実施形態において、誘導用カニューレが経皮的に挿入され、組成物を腎臓に注射する前に腎臓被膜を穿刺するのに使用される。
【0262】
実施形態において、腹腔鏡的技術又は経皮的技術を使用して、製剤化されたBRC集団又はSRC集団の注射のために腎臓にアクセスすることができる。実施形態において、腹腔鏡手術の技術を使用すると、腎臓を直接視覚化することができるため、注射の間に何らかの出血又はその他の有害事象を突き止めて直ちに対処することができる。実施形態において、腎臓への経皮的アプローチの使用は、主に腎内腫瘤を切除するために10年以上にわたって使用されている。実施形態において、これらの処置は、腎臓内の規定の腫瘤中に電極又は極低温針を挿入し、病変の切除の間に(典型的に)10分間~20分間接触したままにする。実施形態において、治療用製剤の注射の場合に、経皮的装置はそれほど大きくも複雑でもなく、このアプローチは手術を伴わない(腹部の穿刺創傷及びガスによる膨張が避けられる)という安全上の利点を提供し、拘束時間も最低限に抑えられる。実施形態において、重大な出血の可能性を更に低下させるために、アクセス路には、止血用の生分解性材料が留置されてもよい。
【0263】
実施形態において、治療用製剤は腎皮質に注射される。実施形態において、治療用製剤を腎皮質内にできる限り広く分布させることが重要である。実施形態において、治療用製剤を腎皮質内に分布させることは、治療用製剤を腎皮質内にできる限り広く配置することを可能にする角度で腎皮質に穿刺することによって達成される。実施形態において、個々の患者の特質に応じて、超音波ガイダンスを使用する縦方向若しくは横方向のアプローチで、又はアキシャルコンピューター断層撮影(CT)画像化により、腎臓が画像化される。実施形態において、注射は、注射針/カニューレが徐々に引き抜かれる際に複数回の配置を伴う。実施形態において、治療用製剤の全容量は、単一又は複数の穿刺点で配置され得る。実施形態において、最大2つの穿刺点を使用して、治療用製剤の全容量が腎臓内に配置され得る。実施形態において、1つ以上の穿刺点、例えば1つ又は2つの穿刺点を使用して単一の腎臓に注射を実施することができる。実施形態において、それぞれの腎臓に1つ以上の穿刺点、例えば1つ又は2つの穿刺点を使用して、両方の腎臓に注射される。実施形態において、本明細書で提供される組成物は、所与の期間にわたって複数回、例えば2回以上、対象に投与され、ここで、各投与は、前の投与の少なくとも約1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、又は12ヶ月後である。実施形態において、SRCは、単独の治療として一方の腎臓内に投与される。実施形態において、BRC(例えば、SRC)は、注射による単独の治療として両方の腎臓内に投与される。実施形態において、BRC(例えば、SRC)は、反復注射又は頻回注射として一方又は両方の腎臓内に投与される。実施形態において、1回目の注射及び2回目の注射は、少なくとも3ヶ月離して、少なくとも6ヶ月離して、又は少なくとも1年離して投与される。実施形態において、BRC(例えば、SRC)は、3回以上の注射にわたって投与される。実施形態において、組成物は、特定された期間にわたって単回注射又は頻回注射として投与される。実施形態において、組成物は一方の腎臓に最低1回の注射で投与される。実施形態において、組成物は2回以上の注射として投与される。実施形態において、1回目の注射及び2回目の注射は、最大3ヶ月離していつでも、最大6ヶ月離していつでも、又は年1回の間隔で投与され得る。実施形態において、2回目の注射は、1回目の注射から最大3年後のいつでも投与される。実施形態において、組成物はまた、一方又は両方の腎臓に1回、2回、又はそれ以上の回数の注射として投与され得る。実施形態において、組成物は、NKAの注射を受ける前に、CKDの標準治療を同時に受ける対象に投与される。実施形態において、2回以上の注射は、免疫原性の有害効果を引き起こさない。実施形態において、組成物は患者の一方の腎臓へと注射される。実施形態において、組成物は患者の両方の腎臓へと注射される。実施形態において、単一又は複数の穿刺点を使用して、組成物を患者の腎臓へと注射することができる。実施形態において、注射は腎実質への注射である。実施形態において、患者には、治療的用量が任意の所与の注射部位で投与される。実施形態において、患者には、腎臓1g当たり1×106個のSRC~9×106個のSRCの用量が任意の所与の注射部位で投与される。
【0264】
実施形態において、in vivoで自然腎を分泌産物と接触させる工程は、細胞培養培地、例えば、馴化培地からの分泌産物の集団を含む製剤の使用/投与によって、及び/又は濃縮された細胞集団及び/又は該産物をin vivoで分泌することができるコンストラクトの移植によって達成され得る。実施形態において、in vivoでの接触工程は、自然腎に再生効果をもたらす。
【0265】
細胞及び/又は分泌産物を対象に投与する様々な手段は、本明細書を踏まえて、当業者には明らかであろう。実施形態において、そのような方法には、対象における標的部位への細胞の注射が含まれる。
【0266】
実施形態において、細胞及び/又は分泌産物は、対象へと注射又は移植することによる導入を促進する送達デバイス又は送達媒体中に挿入され得る。実施形態において、送達媒体は、天然材料を含み得る。実施形態において、送達媒体は、合成材料を含み得る。実施形態において、送達媒体は、臓器構造を模倣する又は臓器構造に適切に適合する構造物をもたらす。実施形態において、送達媒体は、流体状の性質である。実施形態において、そのような送達デバイスには、レシピエント対象の体内へと細胞及び流体を注射するチューブ、例えばカテーテルが含まれ得る。実施形態において、チューブは更に、細胞を対象へと所望の位置で導入することができる針、例えば注射器を有する。実施形態において、哺乳動物の腎臓由来の細胞集団は、カテーテルを介して血管内に投与するために製剤化される(ここで、「カテーテル」という用語は、血管に物質を送達する様々なチューブ様のシステムのいずれかを含むことが意図される)。実施形態において、細胞は、限定されるものではないが、織物、編物、組物、メッシュ、及び不織布等のテキスタイル、有孔フィルム、スポンジ及びフォーム、並びに中実ビーズ又は多孔質ビーズ、マイクロ粒子、ナノ粒子等のビーズ(例えば、Cultispher-Sゼラチンビーズ、Sigma)を含むバイオマテリアル又はスキャフォールド中又は上に挿入され得る。実施形態において、細胞は、送達のために様々な異なる形で調製され得る。実施形態において、細胞は、溶液又はゲル中に懸濁され得る。実施形態において、細胞は、細胞が生存可能な状態を維持する薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と混合され得る。実施形態において、薬学的に許容可能な担体及び希釈剤には、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒、及び/又は分散媒が含まれる。このような担体及び希釈剤の使用は、当該技術分野で既知である。幾つかの実施形態において、溶液は、無菌流体であり、しばしば等張性である。実施形態において、溶液は、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の使用によって細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保存される。当業者は、細胞集団及び/又はその混合物の送達において使用される送達媒体が、上述の特質の組合せを含み得ることを理解するであろう。
【0267】
一態様では、本明細書において、対象における腎臓疾患を治療する方法であって、本明細書に開示される製剤、組成物、又は細胞集団を対象へと注射することを含む、方法が提供される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、18ゲージ~30ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、20ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、21ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、22ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、23ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、24ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、25ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、26ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、27ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、28ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、29ゲージより小さい針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約20ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約21ゲージの針を通して注射される。
【0268】
実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約22ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約23ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約24ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約25ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約26ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約27ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約28ゲージの針を通して注射される。実施形態において、製剤、組成物、又は細胞集団は、約29ゲージの針を通して注射される。
【0269】
実施形態において、針の内径は0.84mm未満である。実施形態において、針の内径は0.61mm未満である。実施形態において、針の内径は0.51mm未満である。実施形態において、針の内径は0.41mm未満である。実施形態において、針の内径は0.33mm未満である。実施形態において、針の内径は0.25mm未満である。実施形態において、針の内径は0.20mm未満である。実施形態において、針の内径は0.15mm未満である。実施形態において、針の外径は1.27mm未満である。実施形態において、針の外径は0.91mm未満である。実施形態において、針の外径は0.81mm未満である。実施形態において、針の外径は0.71mm未満である。実施形態において、針の外径は0.64mm未満である。実施形態において、針の外径は0.51mm未満である。実施形態において、針の外径は0.41mm未満である。実施形態において、針の外径は0.30mm未満である。或る特定の実施形態において、針は以下の表中のサイズの1つを有する:
【0270】
【0271】
細胞含有の治療用製品の非制限的な例は、Neo Kidney Augment(NKA)である。NKAは、生物学的に活性な成分としてSRC(すなわち、同種で自家の選択腎細胞)を含む。いかなる科学的理論によっても縛られるものではないが、この細胞集団は腎臓の修復及び再生に本来関与している(Bruce et al. Regen Med. 2015;10:815-39、Bruce et al. Experimental Biology Meeting, Washington, DC, 2011、Genheimer et al. Cells Tissues Organs. 2012;196:374-84、Ilagan et al. TERMIS Conference, Orlando, FL, 2010、Ilagan et al. TERMIS Conference, Orlando, FL, 2010、Ilagan et al. KIDSTEM Conference, Liverpool, UK, 2009、Kelley et al. Cell Transplant. 2013;22:1023-39、Kelley et al. ADA Conference, San Diego, CA, 2011、Kelley et al. ISCT Conference, Philadelphia, PA, 2010、Kelley et al. KIDSTEM Conference, Liverpool, UK, 2008、Kelley et al. TERMIS Conference, Orlando, FL, 2010、Presnell et al. Tissue Engineering Part C Methods. 2010;17:261-73、Presnell et al. Experimental Biology Meeting, New Orleans, LA, 2009、Wallace et al. ISCT Conference, Philadelphia, PA, 2010、Yamaleyeva et al. TERMIS Conference, Orlando, FL, 2010)。実施形態において、NKAによる治療的介入は、CKD及びCAKUTを有する対象における腎機能を改善し、現在の標準治療に基づいて、ESRDにとって避けることができない腎透析又は腎移植の必要性を遅らせる。
【0272】
NKAは、それぞれ個々の対象の腎生検から得られた増殖された自家選択腎細胞(SRC)から作製される。実施形態において、NKAを製造するには、対象からの腎臓生検組織を処理して、腎細胞を増殖させ、SRCを選択する。
【0273】
実施形態において、NKAは、無菌の使い捨て注射器中で与えられる。実施形態において、SRCは、100×106個の細胞/mLの濃度にてゼラチンベースのヒドロゲル中で製剤化され、10mL注射器中に包装され、使用される臨床現場に出荷される。実施形態において、最終容量は、NKA1mL当たり100×106個のSRCの濃度及び腎臓重量1g当たり3.0×106個のSRCの目標用量から計算される(例えば、MRIによって推算される)。実施形態において、文献に記載されるように、種々の方法によって得られたmLでの腎臓の容量測定値は、腎周囲脂肪をトリミングした摘出臓器を測定することによって得られたグラムでの乾燥重量測定値のおよそ92%~97%である。実施形態において、NKAの用量は、1gが1mLに等しいという換算を使用して計算される。実施形態において、投与量は、注射時点で患者の腎臓重量に基づいて決定される。実施形態において、任意の患者についての最大容量は8.0mLである。つまり、任意の対象の左腎臓の計算された重量が259g以上であれば、その対象には8mLのNKAが投与されることとなる。
【0274】
増殖された腎細胞は、細胞増殖における患者に応じたばらつきに対応するために、細胞増殖中に凍結保存され得る。凍結保存された腎細胞は、別の治療が必要とされる事象で(例えば、患者の病気による遅延、予期せぬ経過事象等)、再注射用の生物活性細胞製剤の多回用量を製造するために継続した細胞供給源を提供する。
【0275】
本発明のより完全な理解を容易にするために、以下に実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を作製及び実施する例示的な方式を示している。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例に開示された特定の実施形態に限定されず、これらの実施例は、同様の結果を得るのに代替的な方法を利用することができるため、例示のみを目的とするものである。
【実施例】
【0276】
実施例1-先天性腎尿路異常(CAKUT)からの慢性腎臓疾患を伴う患者における腎自家細胞療法(REACT)の第I相、オープンラベル安全性、忍容性、及び早期有効性研究(REGEN-044)
プロトコルシノプシス
治療用製品
REACTは、個々の対象の腎臓生検から得られた増殖された自家選択腎細胞(SRC)から作製される。REACTを製造するために、登録された各対象からの腎臓生検組織がTwin City Bio LLCに送られ、そこで腎細胞が増殖されて、SRCが選択される。SRCは、100×106個の細胞/mLの濃度にてゼラチンベースのヒドロゲル中で製剤化され、10mL注射器中で包装され、使用される臨床現場に出荷される。
【0277】
研究目的
主要目的:本研究の主要目的は、一方のレシピエントの腎臓に注射されたREACTの安全性を評価することである。
【0278】
主要評価項目:
2回のREACT注射後6ヶ月間を通したeGFRの変化
注射後6ヶ月を通した腎特異的な処置及び/又は製品関連の有害事象(AE)の発生率
【0279】
副次的目的:本研究の副次的目的は、注射後24ヶ月間にわたる腎特異的な有害事象を評価することにより、REACT投与の安全性及び忍容性を評価することである。
【0280】
副次的評価項目:
注射後24ヶ月間を通した腎特異的な臨床検査評価
【0281】
探索的目的:本研究の探索的目的は、注射後24ヶ月間にわたる腎機能に対するREACTの影響を評価するように設計されている。
【0282】
探索的評価項目:
腎疾患の進行速度の変化を評価する腎構造及び腎機能(eGFR、血清クレアチニン、及びタンパク尿を含む)の臨床診断評価及び臨床検査評価
ビタミンD値
イオヘキソール画像化
血圧コントロール
腎臓容積のMRI評価
【0283】
研究デザイン
多施設、前向き、オープンラベル、単群研究。全ての対象を、生検後に3ヶ月(+12週間)離して2回のREACT注射で治療する。
【0284】
無作為化
オープンラベル、非無作為化
【0285】
コントロール群
各対象は、自身のコントロールとしての役割を果たす。最低6ヶ月の期間の腎機能の観察を含まなければならない患者の以前の病歴は、腎不全の進行速度についてのコントロールとしての役割を果たす。
【0286】
試料サイズ
最大15人の患者をREACTで治療する。これは第I相安全性試験であるため、ロバストな統計分析を行う必要はない。したがって、この研究に提案される試料サイズは、第1相研究に典型的なサイズであり、限られた集団での安全性転帰を確認することを可能にする。
【0287】
研究集団
CAKUTの結果として14mL/分/1.73m2~50mL/分/1.73m2のeGFRとして規定されるCKDを伴う18歳~65歳の男性又は女性の患者。患者は、CKDの個々の進行速度を決定するのに十分な履歴臨床データ(3つ以上のeGFR測定値)を有するべきである。
【0288】
選択基準:特段の記載がない限り、対象は、研究に参加するには各選択基準を満たさなければならない。選択基準は、特に指定がない限り、スクリーニング来院時、腎生検前、及び各REACT注射前に評価されるべきである。
1.インフォームドコンセントの日付で18歳~65歳の男性又は女性の患者。
2.CAKUTの病歴の記録に加えて、腎臓及び/又は尿路の異常の病歴の記録を有する患者。
3.REACT注射前のスクリーニング来院時に境界も含めて14mL/分/1.73m2から50mL/分/1.73m2の間のeGFRを有すると規定される腎透析を必要としないステージIII/IVのCKDの確定診断を受けている患者。
4.スクリーニング来院時、腎生検前、及びREACT注射(複数の場合もある)前に140/90未満の血圧を有する対象。血圧が115/70を大幅に下回るべきでないことに留意する。
5.CKDの進行速度を規定するのに、スクリーニング来院前で、かつ過去24ヶ月以内に少なくとも3ヶ月離してeGFR又はsCrの最低3回の測定値が取得されるべきである。
6.腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの期間中に、NSAIDの摂取(アスピリンを含む)だけでなく、クロピドグレル、プラスグレル、又はその他の血小板阻害剤の摂取を控える意思も能力もある患者。
7.腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの期間中に、魚油及びジピリダモール(すなわち、Persantine(商標))等の血小板凝集阻害剤の摂取を控える意思も能力もある患者。
8.プロトコルの全ての局面に協力する意思も能力もある患者。
9.署名されたインフォームドコンセントを提供する意思も能力もある患者。
【0289】
除外基準:以下に列記される除外基準を満たす対象は、研究に参加するのに適格でない。除外基準は、特に記載がない限り、スクリーニング来院時、腎生検前、及び各REACT注射前に評価される。
1.腎移植歴を有する患者。
2.水腎症のSFUグレード4又はSFUグレード5の診断を受けている患者。
3.非補正のVURグレード5を有する患者。
4.皮質の厚さがMRIで5mm未満である患者。
5.既知のアレルギー若しくは禁忌(複数の場合もある)を有する、又はカナマイシン若しくは構造的に類似したアミノグリコシド系抗生物質(複数の場合もある)に対して重度の全身反応(複数の場合もある)を起こしたことがある患者。
6.ヒトの血液製剤又は動物由来(例えば、ウシ、ブタ)の材料に対するアナフィラキシー反応若しくは重度の全身反応(複数の場合もある)の病歴又は禁忌(複数の場合もある)を有する患者。
7.局所麻酔薬又は鎮静薬に対する重度の全身反応(複数の場合もある)の病歴又は何らかの禁忌を有する患者。
8.REACT注射の6週間以内に非経口抗生物質を必要とする臨床的に重要な感染症を患っている患者。
9.REACT注射前の過去3ヶ月間に急性腎損傷を患っている又は腎機能の急速な低下を起こしたことがある患者。
10.REACT注射前に以下の状態:腎腫瘍、多発性嚢胞腎、REACT注射処置を妨害すると思われる解剖学的異常、又は尿路感染症の証拠のいずれかを有する患者。
注:腎臓がアクセス可能な状態にあり、REACT注射を受ける基準を満たしていれば、解剖学的異常は除外されない。
11.クラスIII又はクラスIVの心不全(NYHA機能分類)を患っている患者。
12.70%以上のFEV1/FVCを有する患者。
13.過去3年以内に癌の病歴を有している患者(非黒色腫皮膚癌及び子宮頸部の上皮内癌を除く)。
14.スクリーニング来院時に評価したときに、臨床的に重要な肝疾患(ALT又はASTが正常の上限の3倍を超える)を患っている患者。
15.スクリーニング来院時に評価したときに、B型肝炎ウイルス(HBV)若しくはC型肝炎ウイルス(HCV)、及び/又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)による活動性感染症に陽性である患者。
16.過去3年以内に治療を必要とする活動性結核(TB)の病歴を有する患者。
17.REACT注射の3ヶ月以内に慢性糸球体腎炎の治療を受けた個人を含む、免疫無防備状態である又は免疫抑制剤を投与している患者。
注:間欠性の症状(例えば、喘息)のための短時間のパルスコルチコステロイドと同様に吸入コルチコステロイド及び常習的な低用量コルチコステロイド(1日当たり7.5mg以下)は許可される。
18.2年未満の平均余命を有する患者。
19.研究の過程で妊娠中、授乳中(母乳を与えている)、又は妊娠を計画している女性の患者、又は出産の可能性があり、かつ性的禁欲を含む非常に効果的な避妊方法(複数の場合もある)を使用していない女性の患者、又は研究期間を通して、非常に効果的な避妊方法を使用し続けることを望んでいない女性の患者。
20.治験責任医師の判断で、プロトコルを遵守する能力を損なうと思われる活発な飲酒及び/又は薬物乱用歴を有する患者。
21.治験責任医師の判断で、研究に参加することによって健康状態が危険にさらされると思われる患者。
22.メディカルモニターからの書面による同意を受けずに、REACT注射前の3ヶ月以内に治験薬を使用した患者。
【0290】
研究期間
治療は、REACT製品が利用可能となったら直ちに開始するが、1回目のREACT注射を受ける前に1ヶ月の間隔を想定し、2回目の注射を受ける前に3ヶ月の間隔を想定し、加えて最後の注射後に24ヶ月のフォローアップ期間を想定して、治療期間は、
一連の2回のREACT注射について28ヶ月
となる。
【0291】
研究登録
最大15人の対象が研究に登録される。全てのI/E基準を満たすスクリーニング処置を完了した患者が生検の直前に研究に登録される。生検を取る前に全ての基準を満たさない患者はスクリーニング不適格とみなされる。生検を受けているが、何らかの理由で注射されない患者は研究を中止し、交換され得る。患者が注射されたら、患者は治療を完了し、患者が全てのフォローアップ来院を完了することを確実にするようあらゆる努力が払われる。
【0292】
治験の計画
スクリーニング:適格基準を満たし、かつ書面によるインフォームドコンセントを提供する対象が研究に参加することができる。対象はメディカルモニターとの対診後にCKDの進行速度の合理的な推定値をもたらす適切な履歴臨床データを有しているべきである。スクリーニング処置には、全身身体検査、ECG、及び臨床検査評価(血液学、臨床化学、及び尿検査)が含まれる。超音波検査を行って、生検及び注射を受ける腎臓の解剖学的特徴を確認する。MRI又は超音波検査を終えて、腎臓のサイズ及び容積を測定し、投与容量を求める。
【0293】
腎生検:腎生検を受ける前の3日以内に、登録された対象は診療所に出向き、ECG及び腎MRI(スクリーニング来院中又はその後に完了していない場合)とともに暫定的身体検査を受ける。腎機能検査、ヘモグロビン検査、及び女性については妊娠検査を含む臨床検査も行われる。全ての選択基準及び除外基準を満たす適格な対象は、腎臓生検を受けるために病院/臨床研究センターに入院する。REACTの製造に十分な材料を提供するには、16ゲージの生検針を使用して1個あたり1.5cmの大きさの組織コアを最低2つ収集しなければならない。生検による合併症を起こしていない対象は、現場の標準的な慣行に従って同日に退院することができる。それぞれの個々の対象の腎臓生検組織はTwin City Bio LLCに送られる。
【0294】
REACT注射:注射予定日の10日~14日前に、対象は、選択基準及び除外基準の継続的な検証のために暫定的身体検査を受ける。対象はまた腎シンチグラフィー(すなわち、分腎機能スキャン)を受けて、各腎臓が全体的なベースラインの腎臓機能に何パーセント寄与するかを調べる。REACT注射の予定日に、適格な対象は病院/臨床研究ユニットに入院する。ヒドロゲルを温めて液状化した後に、経皮的アプローチを使用して以前に生検されたのと同じ腎臓にREACTを注射する。この処置は、高周波法又は極低温法による腎腫瘤の切除に使用されるような標準的技術に従う。合併症を有しない対象は、現場の標準的な慣行に沿って同日に退院することができる。注射の翌日に超音波検査を行って、可能性のある不顕性のAEを検出する。対象は3ヶ月(+12週間)離して2回のREACT注射を受ける。1回目及び2回目の注射は、生検を取ったのと同じ腎臓に行われる。したがって、この研究の期間にわたって一方の腎臓のみが使用される。
【0295】
フォローアップ:対象は1回目及び2回目のREACT注射後の1日目、7日目、14日目、28日目(±3日)及び2ヶ月目(±7日)にフォローアップ評価を終える。2回目の注射がいつ投与されるか(すなわち、3ヶ月[+12週間])に応じて、対象は1回目のREACT注射の3ヶ月後及び6ヶ月後に評価を受ける場合がある。最後のREACT注射に続いて、対象は治療後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、21ヶ月、及び24ヶ月を通じて安全性及び有効性の長期のフォローアップ評価を終える。
【0296】
安全性モニタリング:REACT注射後の出血は、本研究に参加している対象にとって既知の予測可能なリスクである。したがって、以下の時間:a)処置前、b)処置後に、現場の地元の検査所によって現場の標準的な慣行に従ってヘモグロビンが測定される。
【0297】
治験薬、投与量、及び投与方式
治験薬:REACTは、それぞれの個々の対象の腎生検から得られた増殖された自家選択腎細胞から作製される。REACTを製造するのに、登録された各対象からの生検組織がTwin City Bio LLCに送られ、その施設で腎細胞が増殖されて、SRCが選択される。SRCは、1mL当たり100×106個の細胞の濃度でゼラチンベースのヒドロゲル中で製剤化され、10mL注射器中で包装され、臨床現場に出荷される。
【0298】
投与量:投与されるREACTの容量は、処置前のMRI容積測定による3D評価又は楕円体式(長さ×幅AP平面×幅横断面×0.62)によって決定される。前臨床データに基づくと、REACTの用量は、推算腎臓重量1g(gKWest)当たり3×106個の細胞となる。REACT 1mL当たりのSRCの濃度は1mL当たり100×106個の細胞であるため、投与容量は100gの腎臓重量につき3.0mLとなる。この投与パラダイムを使用して、以下の表は、推算腎臓重量に対する、投与容量及び送達されるSRCの数を示している。生検を受けた腎臓に注入されるREACTの最大容量は8.0mLとなる。
【0299】
【0300】
対象に2回の計画されたREACT注射を投与して、用量設定を可能にし、効果持続時間を評価する。1回目及び2回目の注射は、生検を取ったのと同じ腎臓に行われる。場合によっては、対象又は治験責任医師は、2回目のREACT注射の延期又は差し控えを決定する場合がある。例えば、何らかの不適当な安全上のリスク、又は腎機能の急速な悪化、又は制御不能な糖尿病若しくは制御不能な高血圧の発症、又は悪性腫瘍若しくは併発感染症の発症があると思われる場合は、2回目のREACT注射を実施するべきではない。
【0301】
投与方式:REACTは、経皮的アプローチを使用して生検を受けた腎臓に注射される。経皮的方法は(高周波法又は極低温法による腎腫瘤の切除に利用されるような)標準的技術を使用する。
【0302】
統計分析法
統計分析は主として記述的な性質であり、本研究には統計的仮説検定は計画されていない。特段の指定がない限り、連続変数は、非欠損型の観測値の数(n)、平均、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を表すことによって要約される。カテゴリー変数は、各カテゴリーについての頻度数及びパーセンテージを表すことによって要約される。
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
1.CAKUT及び慢性腎臓疾患
CAKUTの一般的な要素は、膀胱尿管逆流症であり、膀胱から一方若しくは両方の尿管、腎盂、又はその両方への尿の逆流として定義される。原発性膀胱尿管逆流症(VUR)は、小児期に最も一般的な先天性尿路異常であり、これは、大抵は尿路感染症(UTI)のエピソード後に診断される。VURは、尿路感染症(UTI)及び腎瘢痕に罹患しやすくなると考えられている。VURに関連する腎瘢痕は逆流性腎症(RN)としても知られている。RNの長期の潜在的合併症には、高血圧、タンパク尿、及び末期腎疾患(ESRD)への進行が含まれる[5]。異常発達した腎臓を有する患者は、VURが矯正された後でさえも腎臓が悪化し続けるため、ESRDの発症に対して最も脆弱である(Brakeman)。Ardissinoらは、低異形成を有する患者における末期腎疾患のほぼ26%が膀胱尿管逆流症に関連していることを発見した。小児又は成人におけるRNの正確な発生率は未知である。RNは慢性腎不全を有する全ての小児の12%~21%を占めている[1、2]。2008年の北米小児腎試験及び共同研究(North American Pediatric Renal Trials and Collaborative Studies)の報告によると、RNは小児の8.4%で慢性腎臓疾患の4番目に一般的な原因であり、移植患者の5.2%及び透析患者の3.5%で主要な病状である[3]。1歳~16歳の年齢の586人の小児のコホートを伴うCKID研究において、30mL/分/1.73m2~90mL/分/1.73m2の推算GFRを有した。RNは87人(14.8%)の患者においてCKDの根底にある原因であった。成人では、閉塞性尿路疾患は2005年にESRDの点有病症例(point prevalent cases)の0.3%を占め、その一部はRNを原因とし得る。逆流防止手術後の患者の長期フォローアップを行ったコホート研究はほとんどない。イスラエルからの或るコホートでは、100人の患者のうち1人だけが20年後にCKDを発症した。IVPによって腎瘢痕を有することが確認された患者の別のコホートでは、18%が20年後にCKDを発症した。それとは関係なく、RNによる成人でのESRDの発生率は低い。
【0307】
慢性腎臓疾患(CKD)は、治療的介入なしでは患者がESRDに達するまで悪化することとなる進行性腎症を特徴とする。CKDは、糸球体濾過速度(GFR)の低下、又は尿中アルブミンの排泄の増加等の腎臓障害の証拠によって裏付けられる腎臓機能の低下として定義される。CKDの世界的な有病率は8%~16%と推算されている。生存するには、ESRD患者は腎置換療法(透析又は腎移植)を必要とする。早期介入によるCKDの有害転帰の防止又は遅延がCKD管理の主要な戦略である。それにもかかわらず、早期治療は最善とは言えないことから、CKDを管理し、ESRDへの進行を遅延させる改善された介入戦略に対する重大な未だ満たされていない医療ニーズがもたらされる。
【0308】
CKDを伴う患者の治療は、進行を遅らせ、腎不全/置換の準備をすることに焦点が当てられている。患者の多くには、CKDは複合的な併存症クラスターの一部として発生する。患者がESRDに達すると、腎置換療法(すなわち、透析又は移植)が適応である。ステージ5の患者の大多数は血液透析を受ける[4]。透析は、強度及び使用の頻度に応じて、腎臓機能の約5%~15%を置き換える。透析はまた、腎臓が機能しなくなったときに体液と電解質とのバランスを回復することにも役立つ。しかしながら、血液透析を開始するESRD患者の平均余命はわずか4年~5年である[5]。さらに、血液透析は、週に3回まで透析を受ける必要がある等、多くの重篤な合併症だけでなく、生活の質の妨害と関連している。現時点では、腎臓移植が依然として最も効果的な治療形態である。臓器は慢性的に不足している。患者が移植のために腎臓を確保することができれば、拒絶反応を防ぐために長期の免疫抑制療法が必要とされる。これらのレジメンを使用すると、感染症のより高い発生率がもたらされ、長期的には一部の種類の癌が引き起こされる[6]。まとめると、CKDについての改善された療法には、疾患の進行を劇的に遅らせ、腎移植の必要性を大幅に遅らせる又はその必要性を減らすことができるという重大な医療ニーズがある。表4は、GFR測定に従ってCKDのステージを定義している。腎症の初期段階(ステージ1)は、数年の期間にわたって発生し、微量アルブミン尿(30mg/24時間~300mg/24時間)及びそれに続く顕性アルブミン尿(300mg/24時間超)を特徴としている。腎臓が血液老廃物を濾過する能力が低下すると、血清クレアチニンが上昇する。腎臓障害が増加すると(ステージ2~ステージ4)、血圧の上昇により腎臓疾患が更に悪化する。腎臓が完全に機能を停止すると(ステージ5[ESRD])、腎置換療法(透析又は移植)が必要とされる。
【0309】
【0310】
1.1 非臨床薬理学研究
一連の前臨床研究において、Tengion(元再生医療会社)は、SRCの薬理学的特質を定義し、腎臓の構造及び機能を増強することによりCKDの実験モデルの進行を遅らせた[7~12]。その後、Tengionは安全性薬理学及びGLP毒性学研究を実施した。これらの非臨床試験の概要を表5に表す。
【0311】
【0312】
1.1.1.薬力学
REACTの生物学的に活性な成分としてのSRCの原理実証は、CKDの多数の動物モデルで確立された。例えば、CKDの5/6腎摘(Nx)齧歯動物質量減少モデルにより、治療に関連するSRC細胞集団の最適化された選択が可能となった。CKDの70%Nxイヌモデルは大型哺乳動物のSRC活性を確認する一方で、ZSF-1ラットはT2DMに関連するモデルでSRCの効果を実証するための原理実証としての機能を果たした[13]。CKDの多数の実験モデルで腎皮質へと直接送達されたSRCは、直接生着又は組織置換を介して再生応答を誘発するとともに、推定上の傍分泌機構を介して分泌因子も誘発した[9、14~17]。
【0313】
この介入戦略は、CKDの5/6Nxモデル及びZSF-1齧歯動物モデルの両方で、生存を大幅に改善し、疾患の進行を安定化させ、寿命を延ばした。多数のネフロン構造の形態学的正常化には、糸球体濾過、尿細管タンパク質の運搬、電解質のバランス、及び尿を濃縮する能力を含む機能的改善が付随した。ZSF-1ラットモデルでは、血圧の低下及び循環レニン値の低下も観察された。SRC治療後に観察された機能改善には、糸球体硬化症、尿細管変性、並びに間質性炎症及び線維症の大幅な減少が付随した。標的臓器又はその他の組織において、毒物学的に重要な生存中の臨床病理学又は組織学的変化は認められなかった。種々のCKD動物モデルで実施された多数の前臨床研究の結果に基づいて、SRC(すなわち、REACTの活性成分)は、不可逆性腎症の前に罹患臓器に注射された場合に、CKDの進行を大幅に遅らせるのに有効であった。これらの結果は、ESRDの前の患者におけるこの細胞ベースの介入の効果を調査するための理論的根拠をもたらす。
【0314】
1.1.2.安全性薬理学
1.1.2.1.腎外活性
REACT(すなわち、ゼラチンベースのヒドロゲル中で製剤化されたSRC)を様々なラットモデル及びイヌモデルに投与して、即時的な心臓血管及び呼吸器の薬理学的効果を評価した。様々なパーセンテージのゼラチン(0.75%~1.0%)中で製剤化されたより低いSRC濃度及びより高いSRC濃度の急性効果を、齧歯動物の5/6Nxモデルで評価した。血圧の潜在的な変化を、正常なイヌモデルにおいてREACT送達の直前、その最中、及びその直後に評価した。中枢神経系に対するREACTの効果に関する研究は、1)動物がREACT注射の前、その最中、及びその後に正常な行動を示し、2)無傷の腎細胞を含む治験薬から中枢神経系に対する効果が予想されず、かつ3)REACTが腎臓に送達されたため、行われなかった。
【0315】
1.1.2.2.血行動態的効果
5/6Nx研究(研究番号4)におけるラットに、REACT又はビヒクルコントロールを投与して、潜在的な血行動態的効果を4日間にわたってモニターした。このREACT製剤研究で治療された77匹の動物のうち、16匹の動物がREACT送達の最中又はその直後に無呼吸を起こした。合計9匹の動物が死亡した。死因は、無呼吸(n=3)、腎出血(n=2)、及びCKDに関連する死(n=4)に分類された。無呼吸を起こした16匹の動物のうち6匹はアトロピンで予備治療されていなかった。無呼吸を起こしたこれらの動物のうち、2匹はアトロピンの使用前に麻酔の影響下で死亡した。無呼吸を起こした16匹の動物のうち10匹をアトロピンで治療したところ、全てが外科的処置及びREACT注射から回復した。
【0316】
一方で、5/6Nxラット研究で起きた無呼吸、腎出血、及び死亡は、ZSF-1ラット研究、又はイヌ薬理学研究、又は血圧に対する大量投与の短期的効果を評価する2つの(インタクトな)イヌ予備研究では観察されなかった。いかなる理論によっても縛られるものではないが、まとめると、このモデル特有の血行動態的応答は、1)重度に質量減少した齧歯動物の残存腎臓の血行動態の変化[18]、2)中枢自律性応答を引き起こす腎臓間質圧管理の一過性の変化[19、20]、及び3)腎臓への送達後の出血による組織の灌流不足又は急性低酸素の原因となる可能性があり得る。副交感神経系の競合的拮抗薬であるアトロピンによる予備治療は、モデル特有の血行動態的変化を緩和するのに役立った。アトロピンの効果は、重度に質量減少したCKDの5/6Nx齧歯動物モデルに特有のREACT送達に対する自律神経応答の可能性を示唆した。
【0317】
1.1.2.3.投与容量
様々なREACTの用量、容量、及び濃度を使用して(研究番号5)、正常なイヌを選択して、腎臓へのREACTの送達の直前、その最中、及びその後の血圧を評価した。この研究では、各腎臓の各極に2.5mLのREACTを投与し、したがって、合計10mL/120g、すなわち0.083mL/gを、腎臓質量1グラム当たり12.5×106個の細胞の投与量で送達した。REACT治療は忍容性に優れ、全身的副作用(身体的又は血清学的)はなく、REACT送達の結果としての腎臓損傷又は他の組織の損傷を示す重大な毒物学的変化又は組織形態学的変化も一切なかった。重度に質量減少したCKDの齧歯動物モデルとは対照的に、無呼吸、腎出血、又は死亡は認められなかった。
【0318】
1.1.3.動態、移行、及び持続性
軟性臓器を標的とする他の細胞ベースの療法と同様に、治験薬の生体内分布に関するデータは限られている。そのために、3つの追加研究により、送達後の選択された試料採取時間での腎臓内のREACTの潜在的な移行及び持続性に関する証拠が提供される[16、17、21]。これらの研究の結果はこのセクションに要約されている。詳細情報は治験薬概要書に示されている。
【0319】
1.1.3.1.ZSF-1ラット
SRCを、ローダミンB超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子で標識した。この造影剤は、細胞標識用に特別に製剤化されており、非食細胞によって容易に取り込まれる。SPIO標識細胞をZSF-1ラット腎臓に投与した。送達の24時間後に、SPIO標識細胞をMRI及び全臓器光学的画像化によって検出した。さらに、ZSF-1ラットにCelSense-19Fで標識されたSRCを投与し、これを注射の3時間後、24時間後、及び7日後に核磁気共鳴によって定量化した[16、22]。
【0320】
CKDの5/6Nxモデルを使用した急性のZSF-1検出及び長期ドナー細胞検出の両方で、SPIO標識細胞の大幅な保持が示された。細胞送達の24時間後の臨床的に関連するMRI検出により、SPIO標識細胞が注射された腎臓の前極の領域が明らかになった。全腎臓の切片化及びプルシアンブルーによる染色により、皮質注射部位から移行及び分布する鉄標識SPIO細胞のボーラスが示されたことから、腎皮質及び髄質の尿細管及び尿細管周囲腔においてそれらが存在することが確認された。
【0321】
同様に、全臓器蛍光画像化により、ZSF-1ラット腎臓の前極の上部皮質に位置する注射部位及びその周辺の細胞検出が強調された。送達の3時間後及び24時間後の19F標識SRCの検出により、腎臓でほぼ100%の保持が確認された。7日後に、19F標識SRCの検出は、継続的な尿排泄と一致して桁違いに減少した。
【0322】
1.1.3.2.非腎組織のブタ非GLP分析
前臨床的な非GLP研究において、SPIO標識SRCを生きているブタ(n=11)の腎臓に送達した。細胞分布を、MRIを使用して30日間の研究期間にわたってモニターした。標識SRCは、膀胱及び腎実質の2つの主要な区画に分布していた。主な排泄経路は尿であった。特に、非標的臓器部位での異所性SRC移行又は部位特異的生着の証拠は見られなかった[23]。
【0323】
1.1.3.3.非腎組織のイヌ非GLP分析
前臨床的な非GLP研究において、SPIO標識SRCを生きているイヌ宿主の腎臓に送達した。細胞分布を、MRIを介して注射の30分後にモニターした。注射されたSPIO標識SRCが腎実質に保持されること又は尿中に排泄されることを示す生きているブタモデルからの観察と一致して、SPIO標識SRCは同様に注射部位の腎実質内に30分後に保持された。
【0324】
1.1.3.4.結論
SRCは、SPIO及びCelSense-19Fを用いたSRC標識研究に基づいて、注射部位(腎実質)に分布し、尿を介して排泄された。
ラット、ブタ、及びイヌの腎臓に送達されたSRCは、広範な組織学的評価に基づいて、非標的臓器(排泄中の尿路以外)には検出されなかった。
同種間葉系幹細胞に関する報告、及び臨床試験における自家間葉系幹細胞の安全性に関する公表されたデータに基づくと、自家REACT関連材料も、異所性の組織成長、臓器機能不全、又は腫瘍発生を引き起こさないはずである[24~28]。
【0325】
1.2.毒性学研究
REACTの安全性を評価するために、3つのGLP安全性研究を実施した。つまり、1つの研究をCKDのラットZSF-1疾患モデルで実施し、他の2つの試験を正常なイヌにおいて実施した。
【0326】
1.2.1.ZSF-1ラット単回用量研究
この研究の目的は、T2DM、高血圧、及び重度の肥満を含む制御不能なメタボリックシンドロームのモデルであるZSF-1ラットにおけるREACTの単回投与の安全性を評価することであった。ラットに、1)高用量のREACT、2)低用量のREACT、3)シャム、又は4)バイオマテリアルのみを投与した。各動物には、各腎臓の各極に1回の計4回で試験物品を注射した。治療の3ヶ月後及び6ヶ月後に結果を評価した。
【0327】
1.2.1.1.腎臓関連の所見
腎臓当たり150個の糸球体の評価及びスコアリングを含む、各腎臓の8つの領域(1領域当たり3つの染色)の評価後に、治療に関連する腎臓所見は認められなかった。注射及び/又は注射部位の線状瘢痕に関連する変化を除いて、全ての腎臓は、疾患モデルの文脈内で正常であるとみなされた。治療の3ヶ月後又は6ヶ月後に、試験物品に関連する腎臓所見は観察されなかった。全ての巨視的及び微視的な腎臓の変化は、ZSF-1肥満ラットにおける腎疾患の自然な進行又は注射処置に関連しているとみなされた。
【0328】
全ての群での腎臓の変化は、男性でより重度であり、性別間の病期の違いと一致していた。全体として、処置の6ヶ月後のシャムコントロール群と比較して、低濃度REACT治療群で一貫して認められた腎組織学的重症度スコアがより低い(すなわち、糸球体損傷スコア、尿細管間質性損傷スコア、及び全ネフロンスコア(global nephron score)がより低い)という明らかな傾向が見られた。
【0329】
研究群間で差がないことに基づいて、無毒性量(NOAEL)は高用量の6.25×106個の細胞/gKWestであった。
【0330】
1.2.1.2.非腎性の所見
非標的組織では、REACT安全性に関連する所見は観察されなかった。尿管又は膀胱(REACT排泄の主要経路)のREACT関連の変化は観察されなかった。REACTに関連する効果は見られず、検査された排出組織(リンパ節)又は濾過組織(肝臓、肺、脾臓)のいずれにも観察可能なREACT細胞物質は見られなかった。
【0331】
1.2.1.3.臨床病理学
臨床検査試験(血液学、臨床化学、及び特別な尿検査パネルを含む)の結果を、ベースラインと研究終了(治療の3ヶ月後又は6ヶ月後)との間、及び治療群とコントロール群との間の差について評価した。REACT関連の臨床的に重要な臨床検査値異常は確認されなかった。
【0332】
1.2.1.4.結論
全ての動物は研究終了(治療の3ヶ月後又は6ヶ月後)まで生き残った。
治療に起因する重大な安全性関連の臨床病理所見又は毒性学的に重要な安全性関連の所見は見られなかった。
REACT関連の臨床的に重要な臨床検査値異常は確認されなかった。
観察されたNOAELは、6.25×106個の細胞/gKWestであった。
【0333】
1.2.2.最初の単回用量イヌ研究
最初のイヌ毒性学研究は、シャム治療又はバイオマテリアルによる治療と比較した、2つの異なる用量のREACTの単回投与の安全性を評価した。試験物品を、各腎臓の1つの極に送達した。合計32匹の雑種犬を研究に参加させた。16匹を1ヶ月で評価し、16匹を3ヶ月で評価した。
【0334】
1.2.2.1.一般的な結果
32匹全ての動物が、治療の1ヶ月後又は3ヶ月後の指定された終了時点まで生き残った。研究を通して動物は健康であるように見えた。重要な臨床病理所見は見られなかった。腎不全(高窒素血症)の兆候は見られず、GFR低下の適応症も見られなかった。
【0335】
1.2.2.2.腎臓関連の結果
1ヶ月又は3ヶ月の終点で、REACT送達に関連する巨視的又は微視的な所見は観察されなかった。腎臓当たり150個の糸球体の評価及びスコアリングを含む、各腎臓の8つの領域(1領域当たり3つの染色)の評価向上の後に、治療関連の腎臓の所見は認められなかった。注射部位の瘢痕に関連する変化を除いて、全ての腎臓は正常であった。全ての巨視的及び微視的な腎臓の変化は、背景所見である又は注射処置に関連しているとみなされた。
【0336】
1.2.2.3.非腎性の所見
他の(非腎臓)組織では、試験物品に関連する所見は確認されなかった。全ての巨視的及び微視的な変化は背景変化とみなされ、通常の範囲内とみなされた。
【0337】
1.2.2.4.処置関連の所見
最も一般的な異常には、切開部位の腫脹(漿液腫の形成)及び研究終了時の体重減少が含まれていた。切開部位の腫脹に関しては、16匹中10匹(10/16)の動物が注射後に無菌の漿液腫を形成し、16匹中9匹(9/16)がこれを治療後に形成した。
【0338】
動物は後腹膜切開時に様々な程度の腫脹を有し、獣医により必要であると考えられるように治療された。
【0339】
多くの動物は、REACT投与後(32匹中29匹)及び治療処置後(32匹中18匹)に軽い食欲不振を示した。ほとんどの動物(32匹中28匹)は、ベースライン(注射前)から終了までに体重減少を起こした。注目すべきことに、ベースライン(治療の2週間前)から治療(0日目;腎注射)の間には、治療から終了の間よりも多量の体重減少が起こった。体重減少は全ての治療群にわたっても起こったことから、研究のストレスの多い性質に関連していると判断された。
【0340】
1.2.2.5.結論
全ての動物は、指定された終了時点まで生き残っており、臨床病理学、尿検査、及び獣医評価に基づいて、研究全体を通して全般的な健康は良好であった。
低用量のREACT又は高用量のREACTのどちらも、シャム治療又はバイオマテリアルによる治療後の観察と同様に、治療の1ヶ月後又は3ヶ月後に巨視的又は微視的な有害効果を引き起こさなかった。
病理学的評価では、検査された標的臓器(腎臓)又は非標的臓器においてREACTの安全性に関連する(巨視的又は微視的な)所見は示されなかった。
解剖病理学に基づくと、観察されたNOAELは、より高い試験濃度、すなわち11.7×106個の細胞/gKWestであった。
【0341】
1.2.3.反復用量イヌ研究
第2のイヌ毒性学研究により、REACTの2回の反復用量の投与の安全性を評価した。ベースライン(時間ゼロ)及び3ヶ月時に各用量を両方の腎臓に送達した。全ての動物は、ベースラインの注射処置の4週間前~6週間前に腎臓につき2回の腎生検を受けた。コントロール動物にはPBSを注射した。ベースライン注射後に動物を6ヶ月間モニターした。
【0342】
1.2.3.1.研究結果
8匹全ての動物は、研究全体を通して良好な臨床的健康状態にあり、6ヶ月時というそれらの指定された終了時点まで生き残った。8匹中5匹の動物で軽度又はわずかな体重減少が見られ、2匹の動物は研究期間にわたって3%を超える体重を失った。腎注射から初期治療の間に、初期治療から終了の間よりも大きな体重減少が起こった。臨床病理学及び尿検査データには異常な傾向は見られなかった。腎不全の兆候も、GFR低下の適応症も見られなかった。
【0343】
1.2.3.2.腎臓関連の所見
6ヶ月の時点で、REACT注射の安全性に関連する巨視的又は微視的な所見は観察されなかった。腎臓当たり150個の糸球体の評価及びスコアリングを含む、各腎臓の8つの領域(1領域当たり3つの染色)の評価向上の後に、治療関連の腎臓の所見は認められなかった。注射部位の瘢痕に関連する変化(被膜内の線維症/慢性炎症;線状線維症/慢性炎症、及び皮質/髄質における炎症細胞)を除いて、全ての腎臓は正常に見えた。
【0344】
1.2.3.3.非腎臓関連の所見
非標的組織では、試験物品の安全性に関連する所見は確認されなかった。全ての巨視的及び微視的な変化は背景変化とみなされ、こうして通常の範囲内とみなされた。
【0345】
1.2.3.4.結論
全ての動物は、指定された終了時点まで生き残っており、臨床病理学、尿検査、及び獣医評価データに基づいて、良好な健康状態に見えた。
病理学的評価では、検査された標的臓器(腎臓)又は非標的臓器のいずれにおいてもREACTの安全性に関連する(巨視的又は微視的な)所見は示されなかった。
6ヶ月の時点で、PBSが注射されたコントロール動物と比較して、REACTの2回の反復用量の有害な効果は観察されなかった。
【0346】
1.3.非臨床的結論
幅広い用量(注射された腎臓組織1g当たり300万個~1500万個のSRC)及び3つのGLP研究を含むREACT治療後の長期間(最大1年)にわたる多数の動物研究からの証拠により、腎臓へのREACT送達による合併症の潜在的なリスクは、標準的な腎生検の実施に関連する合併症の潜在的なリスクと同様であった[1~3]。
【0347】
注射処置に関連する変化及びCKDの5/6腎摘齧歯動物質量減少モデルに特有の心臓血管所見を除いて、REACTの送達後に、標的臓器又は非標的組織に予期しない生存中の、血液学的、泌尿器学的、血清学的、又は組織学的な変化は見られなかった。
【0348】
1.4.第1相臨床試験:暫定的結果
1.4.1.
2013年4月に、スウェーデンのストックホルムのフッディンゲにあるカロリンスカ大学病院で、ファースト・イン・ヒューマン臨床試験が開始された:慢性腎臓疾患を伴う患者における自家腎臓増強剤(REACT)の第1相、オープンラベル、安全性、及び送達最適化研究(RMTX-CL001)。これは、CKDを伴う対象に注射されたREACTの第1相、オープンラベル、安全性、及び送達最適化研究である。REACTは、対象の腎生検から得られたSRCから製造され、ゼラチンバイオマテリアルを用いて製剤化されて、対象の左腎臓に注射して戻される。主要目的は、治療後12ヶ月を通した処置関連及び/又は製品関連の有害事象(AE)によって見積もられる、レシピエントの腎臓の1つの部位に注射されたREACTの安全性及び最適な送達を評価することである。副次的目的は、ベースラインからREACT注射後12ヶ月までの臨床検査に続く18ヶ月の追加の観察期間の結果を比較することによって腎機能を評価することである。各対象のベースラインのCKD疾患進行速度は、経時的な腎不全の変化をモニターするための対象自身の「コントロール」としての機能を果たす。カロリンスカ大学病院から採用された6人の対象を研究に登録した。さらに、1人の対象をノースカロライナ大学での研究に登録した。
【0349】
1.4.2.有害事象
透析前糖尿病性腎症(CKDのステージ3b/4)を伴う53歳~70歳の7人の男性対象のコホートの中で、全ての対象は、即時の周術期合併症なく腹腔鏡下REACT送達処置から回復した。特に、先を見越して最も可能性の高い有害事象であるとみなされる血尿を起こした対象はいなかった。1人の対象はREACT注射後2日目に腸捻転を発症し、部分的結腸切除が必要となり、それに伴って吻合部出血が併発した。治験責任医師の判断では、この事象は治験薬又は処置とは無関係であった。1人の対象は、腹腔鏡下注射処置に関連する皮膚感染症を起こした。別の対象は、気道の炎症を伴って外科的処置から回復した。臨床試験に関連する全ての重篤な有害事象(SAE)を表6に表す。
【0350】
9つのSAEのうち8つは、注射手術に関連している可能性があるとみなされた。生検処置に関連するとみなされるAE又はSAEは見られなかった。現在まで、REACT又は他の研究処置に関連する遅延有害反応又は遅発性の有害反応は確認されていない(例えば、陰性の免疫介在性反応)。現在のデータに基づけば、REACT治療に関連する最も高いリスクは注射手術に起因するものと思われる。その結果として、外科的処置の期間を短縮し、かつ外科的転帰を改善するための対策が講じられている。
【0351】
【0352】
1.4.3.推算糸球体濾過速度(eGFR)
T2DM及びCKDのステージ3b/4を伴う7人の男性患者にREACTを左腎臓に注射した。これらの対象からの注射前の情報によれば、eGFRの平均低下が6.1ml/分/年であることが示された。REACT治療後に、合わせた群(全ての対象)についてのeGFRの低下は-3.1ml/分/年であった(
図1中の灰色の線)。
【0353】
このコホートでのCKD進行に対するREACT治療の潜在的な影響をおよそ1年間モニターした後に、腎機能の予想される低下は、REACTを単一の腎臓に単回注射することによって変更されたように見える。
図1において、REACT治療後のeGFR(灰色の線)とREACT治療前のeGFR(黒色の線)とを比較すると、7人中6人の対象は治療後にeGFR低下率の減少を示した。REACT治療前及び治療後のeGFRについての年間変化速度を、各対象について表7に示す。
【0354】
【0355】
1.4.4.血清クレアチニン
治療前の血清クレアチニン(sCR)値は、このコホートでは総じて上昇し、これはT2DM及び中等度ないし重度の腎不全(CKDのステージ3b/4)を伴う対象から予想されることである。REACT治療前及び治療後のsCRについての年間変化速度を、各対象について表8に示す。全ての対象は、REACT治療前に観察されたsCr増加速度と比較して、REACT治療後のsCrの個々の増加速度に減少が見られた。
【0356】
【0357】
このコホートについての治療前の総sCR値は100μmol/L/年を上回った。REACT治療後に、sCRは50μmol/L/年未満に減少した。
図2に示されるように、REACT治療後のsCR(灰色の線)とREACT治療前のsCr(黒色の線)とを比較すると、このコホートは、REACT治療後にsCrについての増加速度に減少が見られることが分かった。この変更は各対象について一貫していた。
【0358】
1.4.5.腎臓皮質の厚さ
慢性腎臓疾患を患う患者は、腎臓の機能的部分、すなわち皮質の菲薄化を被る。腎皮質の厚さは、CKDにおいては疾患の進行につれて線維症及び瘢痕化の結果として減少する。皮質の厚さの増加は、REACTの前臨床研究における腎臓再生と関連しており、研究された4つ全ての動物種において組織学的に確認された。臨床試験TNG-CL010及びTNG-CL011において、画像化技術を使用して皮質の厚さを評価した。厚さの増加の根拠の確認には生検を取らなかった。右腎臓及び左腎臓の両方で皮質の厚さを測定して、注射された左腎臓がREACT注射に起因する可能性のある皮質の厚さの何らかの変化を示したかどうかを判断した。右腎臓は注射されていないコントロールとしての役割を果たした。
【0359】
平均して、皮質の厚さは、左腎臓においてREACT治療の1年後にベースラインの14mmからおよそ16mmに増加した。皮質の厚さのこの変化は、左腎臓の総容積の増加を引き起こすのに十分ではなかった(データは示していない)。右腎臓の皮質では皮質の厚さの変化は観察されなかった。
【0360】
1.4.6.ヘモグロビン
CKDは、腎エリスロポエチン産生の変化による貧血だけでなく、慢性尿毒症に起因する代謝異常と関連している可能性がある[29]。臨床試験RMTX-CL001において、7人中3人の対象がREACT治療後にヘモグロビン値の改善を示したが、残りの4人の対象は研究の間に正常値を維持した。
【0361】
1.4.7.血圧
臨床試験TNG-CL010及びTNG-CL011の過程において、血圧をモニターした。対象は薬剤を摂取して血圧をコントロールした。特に、抗高血圧性の薬剤の摂取量は、REACT治療後の最初の6ヶ月間に6人中3人の対象で減少した。
【0362】
1.5.潜在的なリスク
一般に、REACTの臨床的使用に関連する潜在的なリスクは、腎生検、REACT製品、及びレシピエントの腎臓への送達の3つのカテゴリーに大きく分けることができる。これらの各ステップに関連する潜在的なリスクの評価は、このセクションに示されている。
【0363】
現時点では、REACTの使用に関連する特定の警告又は注意事項は存在しない。しかしながら、この製品を使用する場合は、腎生検及び経皮注射処置に関する警告及び注意事項を考慮しなければならない。腎生検のリスクは、この処置が使用され開発された100年間で十分に特徴付けられている。腎臓の経皮針器具の歴史はより短い。
【0364】
腎生検及び経皮針腎注射のリスクには、以下が含まれる:
1.脇腹/注射部位/生検部位における痛み、
2.腎臓の周囲又は針跡に沿った任意の場所で発生する可能性があり、かつ臨床的に重要な貧血、急性腎臓損傷(AKI)、血腫、及び被膜下出血の場合は「ページ腎」及び急性高血圧を伴うのに十分であり得る注射/生検時の出血、
3.針による損傷、並びに結合組織、骨、及び腹部内臓器を含む他の構造物の損傷による腎臓への外科的障害。
【0365】
1.5.1.腎生検に関連する潜在的なリスク
自家腎細胞は、標準的な医療行為[1~3]に従って実施され、かつ参加病院/医療機関での標準的な操作手順と一致する腎生検を介して、個々の対象から取得される。REACTの製造に十分な腎皮質組織を取得するには、単一の腎臓生検から最低2つの組織コアが必要とされる。およそ10mmの長さの16ゲージの生検針により、罹患した腎臓の平均総容積の0.01%~0.02%が取り除かれることとなる。腎糸球体の総数のおよそ0.001%が採取されるため[3]、生検が腎臓機能に悪影響を与えることは予想されない。
【0366】
診断処置のための腎臓生検はリスクが低く、米国では外来患者ベースで鎮静下に行われることが多い[30、31]。資格のある介入医によって実施される場合に、適切に皮質を狙った腎生検により限定的な腎障害しか引き起こされない[27]。一方、生検部位での腎臓障害の報告は、血管損傷並びに様々な程度の虚血及び梗塞を説明している。障害の重症度は、生検処置中に損傷した血管のサイズ及び数に左右される[32]。
【0367】
出血は、定型的な腎臓生検に関連する最も一般的な有害事象である。ほぼ全ての患者が生検の結果として微視的血尿を起こすが、これは臨床的に重要ではない[2、31]。一方、肉眼的血尿は患者の3%~9%で発生し[30、31]、一般的に生検後24時間までに軽快する。最も重篤な合併症は、輸血を必要とする及び/又は患者の死亡につながる重度の出血である。輸血は腎生検の1%未満で必要とされ、死亡は症例の0.01%未満で発生する[33~35]。
【0368】
1.5.2.REACT製品に関連する潜在的なリスク
治験薬のREACTは、同じ対象から腎臓生検を介して得られた自家選択腎細胞から構成されている。自家幹細胞移植での経験に基づくと、腎臓へのREACT注射によって引き起こされる免疫応答(例えば、移植片拒絶反応)のリスクはありそうにない。
【0369】
腎臓は高度に灌流される臓器であるため、注射されたSRCが注射部位に局在化したままとなるかは疑わしい。移行したSRCの最も可能性の高い行き先であると考えられる3つの場所は、1)被膜下腔、2)体循環、及び3)尿路である。被膜下腔へのSRCの漏出は、対象にリスクを及ぼすとは予想されない。例えば、被膜下腔は、膵島細胞等の内分泌組織の注射に一般的に使用される[36]。腎被膜はまた、腎実質へと移行することができる自然幹細胞のためのニッチとしても機能する[37]。さらに、腎臓への直接注射は、尿路を介した自然な排泄経路を提供することにより、体循環へのSRCの侵入の可能性を軽減する。さらに、異なる種の異種(heterologous, allogeneic)幹細胞(すなわち、間葉系幹細胞)の静脈内投与は、臨床試験で評価されており、対象に重大なリスクをもたらさなかった[24~28]。
【0370】
REACTの製剤化で使用されるブタ皮タイプBゼラチンは、医薬品及び食用ゼラチンのモノグラフ(Pharmaceutical and Edible Gelatin Monograph)(欧州薬局方7.0、米国薬局方-国民医薬品集USP35 NF30)の要件を満たしている。ゼラチンは、再生製品のための細胞移植を含めて、薬学用途及び医療用途に広く使用されている。ゼラチンは、その生体適合性、広範な使用、及びREACTを含むブタゼラチンを用いたGLP毒性研究の結果に基づいて、研究対象に有害効果を引き起こすとは予想されることはない。
【0371】
1.5.3.REACT治療に関連する潜在的なリスク
経皮的技術は、REACT送達のために腎臓にアクセスするのに使用される。経皮的アプローチは、腎腫瘤の切除に10年以上使用されてきた。この方法の簡潔なレビューは、Salagierski and Salagierski (2010)[38]に見出すことができる。過度の出血及びその他の有害事象の可能性を減らすために、REACT治療及び術後のフォローアップの間に安全措置が実行される。セクション6で論じられるように、患者は厳重にモニターされる。
【0372】
Cainと共同研究者ら(1976年)[39]は、齧歯動物の腎臓に注射された腎細胞均質物が重大な有害事象を引き起こさないことを報告した。同様に、腎臓へのREACT送達後に観察された形態学的効果は、イヌから繰り返し取られた腎臓生検について報告されたものと一致していた。つまり、機能障害を有しない成熟した結合組織跡の存在は最小限の構造変化につながる[32]。イヌにおける被膜内腎臓水分量の増加は、腎臓内圧を上昇させるだけでなく、腎臓重量及び全身血圧の一過性の上昇を高める場合もある[19、20]。しかしながら、血圧に対する大量投与の短期的効果を評価したイヌ予備研究では、REACTの腎臓当たり6mLまでの容積増加後に血圧への有害効果はなかった。
【0373】
1.6.潜在的な利益
CKDにおける臨床的に重要な改善を達成する可能性は、腎不全の前臨床動物モデル、すなわち、他の点では健康なラット及びイヌにおける腎臓機能低下についての外科的モデルに加えてT2DMのZSF-1ラットモデルにおいてREACTを試験した研究によって裏付けられている。主要所見は、REACTが、既に損傷された腎臓における構造的悪化及び機能的悪化の速度を、動物モデルに臨床的に関連する程度まで大幅に減少させたことであった。したがって、この臨床試験に参加している対象には、CKDの進行速度が減少する可能性のようなREACT治療による治療的利益を実現する可能性が存在する。
【0374】
2.第I相試験の目的及び目標
この臨床試験は、CKD及びT2DMを有する対象の腎機能を改善することを目的とした、再生細胞ベースの製品である-Kidney Augment(REACT)に関連している。REACTによる治療的介入は、現在の標準治療に基づいて、末期CKDを伴う患者にとって避けられない腎置換療法(透析又は移植)の必要性を遅らせることを意図している。本研究の目的は、REACT製品が利用可能となったら直ちに1回目の治療を受けるように無作為化された対象における3ヶ月(+12週間)離して(最大)与えられたREACTの最大2回の注射の安全性及び有効性を、REACTの最大2回の注射を受ける前の最初の12ヶ月~18ヶ月の間にCKDについての同時の標準治療を受けるように無作為化された対象に対して比較することである。さらに、スクリーニング来院の18ヶ月前からの適切な履歴臨床データに基づく各対象の年間腎機能低下率は、REACT注射前及び注射後の腎不全の進行速度をモニターする比較器として機能する。
【0375】
REACT治療は、eGFRの低下率(傾き)を減少させ、最後のREACT注射後24ヶ月の期間をかけて腎機能を改善する。
【0376】
2.1.主要目的
一方のレシピエントの腎臓に注射されたREACTの安全性を評価すること。
【0377】
主要評価項目:
2回のREACT注射後6ヶ月間を通したeGFRの変化
注射後6ヶ月を通した腎特異的な処置及び/又は製品関連の有害事象(AE)の発生率
【0378】
2.2.副次的目的
注射後24ヶ月間にわたる腎特異的な有害事象を評価することにより、REACT投与の安全性及び忍容性を評価すること。
【0379】
副次的評価項目:注射後24ヶ月間を通した腎特異的な臨床検査評価
【0380】
2.3.探索的目的
注射後24ヶ月間にわたる腎機能に対するREACTの影響を評価すること。
【0381】
探索的評価項目:
腎疾患の進行速度の変化を評価する腎構造及び腎機能(eGFR、血清クレアチニン、及びタンパク尿を含む)の臨床診断評価及び臨床検査評価
ビタミンD値
イオヘキソール画像化
血圧コントロール
腎臓容積のMRI評価
【0382】
3.治験薬
3.1.研究薬物の説明
REACTは、バイオマテリアル(ゼラチンベースのヒドロゲル)中で製剤化されたSRCから構成される注射可能な製品である。表9は治験薬の概要を表す。SRC及びREACTの詳細な説明、並びに製造方法については、治験薬概要書を参照のこと。
【0383】
【0384】
3.2.REACTの調達及び製造
REACTは、米国ノースカロライナ州、ウィンストン・セーラムに位置するTwin City Bio LLCのGMP施設内で製造される。
【0385】
3.2.1.生検
左腎臓又は右腎臓を評価するのに、標準的な外科的技術を使用して生検材料が収集される。自家REACTの製造に十分な材料を提供するには、16ゲージの生検針を使用してそれぞれ1.5cmの大きさの組織コアを最低2つ収集しなければならない。Twin City Bio LLCで生検材料を受け取ると、試料にラベルが付けられ、製品のトレーサビリティの維持が保証されるように厳格な文書化措置が講じられる。Twin City Bio LLCは、REACTの製造用の生検試料の適切性及び品質に関して現場に通知し、REACT注射をする予定日を確認する。生検材料を使用することができない場合は、対象は研究を中止するべきである。
【0386】
3.2.2.SRCの選択
対象の計画されたREACT治療のおよそ4週間前に、自家腎細胞を液体窒素フリーザーの気相から取り出し、解凍し、酵素消化によって腎臓組織から分離する。標準的な技術を使用して、細胞を培養し、増殖させる。
【0387】
細胞培養培地は、初代腎細胞が増殖されるように設計され、分化因子を一切含まない。採取された腎細胞を密度勾配分離に供して、再生能があることが知られる腎上皮細胞から主に構成されるSRCを得る[40]。自家SRC集団において、他の実質(血管)細胞及び間質(集合管)細胞がまばらに存在する場合がある。
【0388】
十分な細胞が利用可能であれば、同じ生検材料を使用して、調査研究用の追加のREACT調製物を作製し、GMP条件下で液体窒素フリーザーの気相内に貯蔵する。
【0389】
全ての対象に一連の2回のREACT注射を投与する。時間及び事象の表は、一連の2回のREACT注射が12週間の研究来院期間で3ヶ月離して投与されることを示している。それとは関係なく、1回目の注射の3ヶ月後に2回目のREACT注射を投与することを確実にするようあらゆる試みがなされる。Twin City Bio LLCは、2回目の注射をする予定日に関する情報を取得するために現場に通知する。
【0390】
3.2.3.製剤
SRCは、腎皮質への注射時の輸送及び送達の間の安定性を改善するように、ゼラチンベースのヒドロゲル中で製剤化されている。ブタゼラチンを緩衝液に溶解して、熱応答性ヒドロゲルを形成する。このバイオマテリアルは、室温では流動性であるが、冷蔵温度(2℃~8℃)に冷却するとゲル化する。注射前に、REACT治験薬を20℃以上~26℃に温めて、ヒドロゲルを液状化させなければならない。
【0391】
3.2.4.注射用REACT製品
REACT注射をする予定日の10日~14日前に、対象は診療所に出向き、継続的な適格性を確認する評価を受ける。対象がREACT注射に適格でない場合に、治験責任医師及び治験依頼者は、例えば、将来REACT注射を試みるのに十分な安定性があるかどうか等、考えられる選択肢について話し合う。対象が依然として適格である場合に、REACT製品が製造され、臨床センターに出荷される。REACTの出荷物が現場担当者に直接配送されるのを確実にすることは、現場の責任である。REACTは、経皮的アプローチを使用して適格な対象の生検を受けた腎臓に注射される。経皮的方法は(高周波法又は極低温法による腎腫瘤の切除に利用されるような)標準的技術を使用する[38]。
【0392】
各対象につき2回のREACT注射が計画されている。しかしながら、何らかの不適当な安全上のリスク、又は腎機能の急速な悪化、又は制御不能な糖尿病若しくは制御不能な高血圧の発症、又は悪性腫瘍の発症若しくは併発があると思われる場合は、2回目のREACT注射を実施するべきではない。
【0393】
凍結されている場合があるが、REACTの製造に使用されていない腎細胞は、EOS来院までTwin City Bio LLCの液体窒素フリーザーの気相中に留まる。その時、これらの腎細胞がもはや必要なくなった場合には、全ての個人情報を匿名化し、液体窒素フリーザーの気相内で最大5年間貯蔵する。その目的は、検査所の調査研究でこれらの腎細胞を試験することである。インフォームドコンセントの過程で、各対象は、REACT注射に使用されない自家細胞の貯蔵及び将来の使用について書面による同意を提供する。対象は、研究の完了時にこれらの細胞を破棄する選択を有する。
【0394】
3.2.5.REACT用量
第1相臨床試験(TNG-CL010及びTNG-CL011)における対象に対するREACTの用量は、推算腎臓重量1g(gKWest)当たり3×106個のSRCであった。同様に、本研究では、各REACT注射は3×106個の細胞/gKWestを含有している。SRCの濃度はREACT 1mL当たり100×106個の細胞であるため、投与容量は100gの腎臓重量につき3.0mLである。投与されるREACTの容量は、処置前のMRI容積測定による3D評価又は楕円体式(長さ×幅AP平面×幅横断面×0.62)によって決定される。推算腎臓重量に基づく投与容量の例を表10に示す。
【0395】
【0396】
REACTの用量は、MRIを介して計算された腎臓の容積を基準とする。他の方法とは対照的に、MRIを使用した腎容積の測定はより正確であり、電離放射線又は腎毒性造影剤のリスクなく任意の方向に沿って真の断層撮影データが取得される。MRIから推算された腎容積測定値(mL)は、腎周囲脂肪をトリミングした摘出臓器についてのグラムでの乾燥重量測定値のおよそ92%~97%である。伝統的なアプローチとして、REACT用量は、1gが1mLに等しいという換算を使用して計算される。投与されるREACTの容量は、処置前のMRI容積測定による3D評価又は楕円体式(長さ×幅AP平面×幅横断面×0.62)によって決定される。これにより、以前に動物研究で試験された用量よりも高いREACT用量が対象に投与されないことが保証される。
【0397】
3.2.5.1.2回のREACT注射についての理論的根拠
全ての対象は、2回の計画されたREACT注射を受けて、用量設定を可能にし、効果持続時間を評価することが意図されている。非臨床研究に基づく科学的根拠は、REACTの生物学的に活性な成分(同種の自家SRC)が腎の構造及び機能を増強することによりCKDの実験モデルの進行を遅らせることである[7~12]。結果として、注入することができる細胞が多いほど、腎機能の潜在的な改善が大きくなる。一度に腎臓に送達することができる細胞の総数は、腎臓のサイズだけでなく、腎被膜の非弾性によっても制限される。その結果、1回目の注射からの細胞が腎臓に組み込まれた後に投与される2回目の注射を介して、より多数のSRCを投与することによって治療効果を改善することが可能である場合がある。
【0398】
同じ腎臓に2回のREACT注射を投与することによってSRC数を増やすこととは別に、効果の持続時間を評価することができる。機能性ネフロンがCKDを伴う腎臓において不能となる過程は、時間の経過とともに、REACT注射を介して送達される「新しい」細胞に悪影響を与える場合がある。その結果、REACTは長期的な治療効果をもたらさない可能性がある。1回目の注射後に適切な間隔で投与された2回目のREACT注射からの効果を調べることで、この問題に対処することとなる。
【0399】
本研究では、対象は1回目の注射の3ヶ月後に2回目のREACT注射が投与され、12週間の研究来院期間を有する。それとは関係なく、1回目の注射の3ヶ月後に2回目のREACT注射を投与することを確実にするようあらゆる試みがなされるべきである。しかしながら、何らかの不適当な安全上のリスク、又は腎機能の急速な悪化、又は制御不能な糖尿病若しくは制御不能な高血圧の発症、又は悪性腫瘍若しくは併発感染症の発症があると思われる場合は、2回目のREACT注射は投与されない。
【0400】
3.2.5.2.2回のREACT注射の安全性
生検を受けた腎臓に2回の用量のREACTを投与することの安全性を評価するのに、イヌGLP毒性研究を実施した(セクション1.2.2を参照)。臨床研究デザインと同様に、研究動物(n=8)は、ベースラインの4週間~6週間前に腎生検を受けた。各用量を、ベースライン時及び3ヶ月で両方の腎臓に送達し、動物をベースライン注射後に6ヶ月間観察した。コントロール動物にPBSを投与したが、REACTで治療された動物には本臨床研究で使用される用量より2倍多い用量を投与した。
【0401】
簡潔には、ベースライン治療の6ヶ月後のコントロール動物と比較して、生検を受けた腎臓へのREACTの2回の用量の有害効果は観察されなかった。病理学的評価では、検査された標的臓器(腎臓)又は非標的臓器のいずれにおいてもREACTの安全性に関連する(巨視的又は微視的な)所見は示されなかった。腎臓当たり150個の糸球体の評価及びスコアリングを含む、各腎臓の8つの領域(1領域当たり3つの染色)の評価向上の後に、治療関連の腎臓の所見は認められなかった。注射部位の瘢痕に関連する変化を除いて、全ての腎臓は正常に見えた。腎不全の兆候も、GFR低下の適応症も見られなかった。詳細情報は治験薬概要書に示されている。
【0402】
3.3.研究薬物の包装
製品送達システムは、3つの構成要素:
1)10mLの標準的なLuer-Lok(商標)注射器、
2)注射器を収容する包装、
3)包装を臨床現場に運送するREACTの出荷容器、
からなる。
【0403】
REACTを収容する注射器は、製品の完全性並びに製品及び注射器の無菌性を維持するように設計された包装に包まれて臨床現場に出荷される。製品送達システムの代表的な画像は
図3に示されている。
【0404】
製品送達システムは、表11に列記された構成要素から作製される。REACT製品と接触する材料は、USPクラスVI又は同等物である。注射器、チューブ、及び付属部品は、表11に列記されたベンダー、又は生体適合性の分類及び製品の互換性試験の要件を満たす他のベンダーから取得される。注射器は、ガンマ線滅菌によって包装内で事前に滅菌されている。充填後に、チューブを密封して切断する。
【0405】
【0406】
3.4.研究薬物のラベル
REACT製品は、個々の対象の腎生検から得られた増殖された自家SRCから作製されるため、対象特異的である。注射器を収容する各包装には、以下の「自家使用専用」を含むラベルが貼られている。さらに、ラベルは、この薬物(REACT)が「治験専用」であることを示している。
【0407】
3.5.研究薬物の運送
全ての生検標本は、連邦規則集(CFR第42条第72章)で義務付けられている包装を使用し、個々の運送業者のガイドラインに従ってTwin City Bio LLCに運送される。
【0408】
REACTヒドロゲル製剤は出荷中に2℃~8℃の温度を維持しなければならないため、REACT製品は、温度を2℃~8℃に維持することが検証された出荷容器内でTwin City Bio LLCから臨床現場に運送される。REACT包装を、プラスチック製の外側収納バッグに入れた後に、Minnesota Thermal Sciences製の冷蔵出荷容器内に入れる。出荷容器内には温度記録計も含まれている。出荷容器の代表的な画像は
図4に示されている。
【0409】
出荷容器が予定された注射に間に合うように診療所に到着したら、内側のREACT包装を出荷容器から取り出し、制御された室温(20℃以上から26℃まで)に平衡化させる。
【0410】
2人の個人が対象の面前で独立して識別情報を検証することにより、その情報が特定の研究参加者に正確に一致していることを確認する。
【0411】
ヒドロゲルが液体になったら、外科助手が無菌野で容器を開き、医師に注射器を渡して、その医師が、生検を受けた腎臓の腎皮質にREACTの経皮注射を行う。
【0412】
3.5.1.貯蔵された標本の処分
標本は、液体窒素フリーザーの気相中で貯蔵される。
【0413】
4.治験の計画
4.1.治験の全般的デザイン
研究フローの概要は、
図5の流れ図に示されている。
【0414】
患者がICFに署名した後に、これらの患者を研究に参加するためにスクリーニングする。スクリーニング評価には、臨床検査評価、身体検査、並びにECG及びMRI研究が含まれ、これらは全て生検を取る前に行われる。最初のスクリーニング評価の45日以内に全てのI/E基準を満たす患者から左腎臓の生検を取る。生検処置の間に、2つの組織コアを収集し、REACTの製造のためにTwin City Bioに送る。生検の後に患者が安全な注射を阻む重大なAE/SAE(例えば、過度の出血、AV瘻の発生)を起こした場合に、患者は研究を中止する。
【0415】
米国ノースカロライナ州のTwin City BioのGMP施設で受け取った1週間~2週間後に、Twin City Bioは、受け取った組織がREACTの製造に十分なサイズ及び品質のものであるかどうかを現場に通知する。結果が肯定的である場合に、現場は注射の予定日を確認する。生検をREACTの製造に使用することができない(何らかの理由で)場合に、患者は研究を中止する。
【0416】
注射の予定の10日~14日前に、患者はI/E基準の最終的なレビュー及び腎シンチグラフィー研究を含む注射前の適格性確認来院のために診療所に出向く。現場は、患者が注射に適格である場合に、凍結腎細胞からREACT製品を製造するようTwin City Bioに通知する。注射の日(0日目)に、患者は病院に到着し、生検を受けた腎臓にREACT注射を受ける。
【0417】
4.2.対象の数
スクリーニング処置を完了し、全ての選択基準及び除外基準を満たす最大15人の対象が登録される。
【0418】
4.3.治療コンプライアンス
適格な対象には、最大2回の一連の注射を介して自家REACT調製物を投与する。この治験薬は、経皮的アプローチを使用して生検を受けた腎臓に投与される。REACT製品の調製及び投与手順はこのプロトコル及び研究リファレンスマニュアルに明記されている。
【0419】
全ての対象は、2回のREACT注射を受けることが意図されている。何らかの不利な安全性のリスクがあると思われる場合、又は対象の健康状態が危険にさらされると思われる場合は、2回目のREACT注射は投与されない。
【0420】
4.4.研究期間
対象は、自家REACT調製物が利用可能となったら直ちに一連のREACT注射(複数の場合もある)を開始する。1回目のREACT注射前の1ヶ月の間隔及び2回目の注射前の3ヶ月の間隔に加えて、最後の注射後の24ヶ月のフォローアップ期間で、一連の2回のREACT注射についての研究期間は28ヶ月である。
【0421】
5.研究集団
5.1.対象の選択基準
特段の記載がない限り、対象は、研究に参加するには各選択基準を満たさなければならない。選択基準は、特に指定がない限り、スクリーニング来院時、腎生検前、及び各REACT注射前に評価される。
1.インフォームドコンセントの日付で18歳~65歳の男性又は女性の患者。
2.CAKUTの病歴の記録に加えて、腎臓及び/又は尿路の異常の病歴の記録を有する患者。
3.REACT注射前のスクリーニング来院時に境界も含めて14mL/分/1.73m2から50mL/分/1.73m2の間のeGFRを有すると規定される腎透析を必要としないステージIII/IVのCKDの確定診断を受けている患者。
4.スクリーニング来院時、腎生検前、及びREACT注射(複数の場合もある)前に140/90未満の血圧を有する対象。血圧が115/70を大幅に下回るべきでないことに留意する。
5.CKDの進行速度を規定するのに、スクリーニング来院前で、かつ過去24ヶ月以内に少なくとも3ヶ月離してeGFR又はsCrの最低3回の測定値が取得される。
6.腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの期間中に、NSAIDの摂取(アスピリンを含む)だけでなく、クロピドグレル、プラスグレル、又はその他の血小板阻害剤の摂取を控える意思も能力もある患者。
7.腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの期間中に、魚油及びジピリダモール(すなわち、Persantine(商標))等の血小板凝集阻害剤の摂取を控える意思も能力もある患者。
8.プロトコルの全ての局面に協力する意思も能力もある患者。
9.署名されたインフォームドコンセントを提供する意思も能力もある患者。
【0422】
5.2.対象の除外基準
以下に列記される除外基準を満たす対象は、研究に参加するのに適格でない。除外基準は、特に記載がない限り、スクリーニング来院時、腎生検前、及び各REACT注射前に評価される。
1.腎移植歴を有する患者。
2.水腎症のSFUグレード4又はSFUグレード5の診断を受けている患者。
3.非補正のVURグレード5を有する患者。
4.皮質の厚さがMRIで5mm未満である患者。
5.既知のアレルギー若しくは禁忌(複数の場合もある)を有する、又はカナマイシン若しくは構造的に類似したアミノグリコシド系抗生物質(複数の場合もある)に対して重度の全身反応(複数の場合もある)を起こしたことがある患者。
6.ヒトの血液製剤又は動物由来(例えば、ウシ、ブタ)の材料に対するアナフィラキシー反応若しくは重度の全身反応(複数の場合もある)の病歴又は禁忌(複数の場合もある)を有する患者。
7.局所麻酔薬又は鎮静薬に対する重度の全身反応(複数の場合もある)の病歴又は何らかの禁忌を有する患者。
8.REACT注射の6週間以内に非経口抗生物質を必要とする臨床的に重要な感染症を患っている患者。
9.REACT注射前の過去3ヶ月間に急性腎損傷を患っている又は腎機能の急速な低下を起こしたことがある患者。
10.REACT注射前に以下の状態:腎腫瘍、多発性嚢胞腎、REACT注射処置を妨害すると思われる解剖学的異常、又は尿路感染症の証拠のいずれかを有する患者。
注:腎臓がアクセス可能な状態にあり、REACT注射を受ける基準を満たしていれば、解剖学的異常は除外されない。
11.クラスIII又はクラスIVの心不全(NYHA機能分類)を患っている患者。
12.70%以上のFEV1/FVCを有する患者。
13.過去3年以内に癌の病歴を有している患者(非黒色腫皮膚癌及び子宮頸部の上皮内癌を除く)。
14.スクリーニング来院時に評価したときに、臨床的に重要な肝疾患(ALT又はASTが正常の上限の3倍を超える)を患っている患者。
15.スクリーニング来院時に評価したときに、B型肝炎ウイルス(HBV)若しくはC型肝炎ウイルス(HCV)、及び/又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)による活動性感染症に陽性である患者。
16.過去3年以内に治療を必要とする活動性結核(TB)の病歴を有する患者。
17.REACT注射の3ヶ月以内に慢性糸球体腎炎の治療を受けた個人を含む、免疫無防備状態である又は免疫抑制剤を投与している患者。
注:間欠性の症状(例えば、喘息)のための短時間のパルスコルチコステロイドと同様に吸入コルチコステロイド及び常習的な低用量コルチコステロイド(1日当たり7.5mg以下)は許可される。
18.2年未満の平均余命を有する患者。
19.研究の過程で妊娠中、授乳中(母乳を与えている)、又は妊娠を計画している女性の患者、又は出産の可能性があり、かつ性的禁欲を含む非常に効果的な避妊方法(複数の場合もある)を使用していない女性の患者、又は研究期間を通して、非常に効果的な避妊方法を使用し続けることを望んでいない女性の患者。
20.プロトコルを遵守する能力を損なうと思われる活発な飲酒及び/又は薬物乱用歴を有する患者。
21.研究に参加することによって健康状態が危険にさらされると思われる患者。
22.REACT注射前の3ヶ月以内に治験薬を使用した患者。
【0423】
5.3.禁止薬剤及び併用薬剤
腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの研究中に、NSAIDの摂取(アスピリンを含む)だけでなく、クロピドグレル、プラスグレル、又はその他の血小板阻害剤の摂取も禁止されている。
100g/日の用量までのアスピリンは、40歳を超える又は心血管疾患若しくは発作についての追加のリスク因子を有し、アスピリン療法の認められた利益が治療に関連するリスクを上回る糖尿病を伴う対象における心臓疾患の一次予防には許容される。
腎生検及びREACT注射(複数の場合もある)の両方の7日前に始まってその両方の7日後までの研究中に、魚油及びジピリダモール(すなわち、Persantine)等の血小板凝集阻害剤の摂取は禁止されている。
ACEI又はARBによる治療を受けている対象は、腎生検の少なくとも8週間前に療法を開始しなければならない。治療は、REACT注射の直前の6週間の期間中は安定的でなければならない。安定的な治療は、現在の投与量の半分以上で、現在の投与量の2倍以下の用量調整と定義される。さらに、医学的に必要な場合を除いて、スクリーニングから12ヶ月のEOS来院までACEI又はARB投与レジメンに変更を加えるべきではない。医学的必要性により最大7日間の投与中断は許容される。
トリメトプリム、ドロネダロン、及びシメチジン等のsCrの測定を妨げる薬剤は研究中に避けるべきである。医学的必要性に基づいてそのような薬剤が必要とされる場合は、状況をメディカルモニターと話し合い、CRF内に文書化するべきである。
研究の過程では治験薬の使用は禁止されている。治験薬は、FDAによる使用が承認されていない薬物として定義される。
【0424】
5.4.対象の離脱
対象が腎生検を受ける前に研究から離脱する場合に、その対象はスクリーニング不適格とみなされる。対象が腎生検後であるが、1回目のREACT注射前に研究から離脱する場合に、対象はスクリーニング不適格ではないが、登録済みとはみなされず、交換される場合がある。対象がREACT注射後であるが、フォローアップ期間の終了前に研究から離脱する場合に、対象を交換することはできない。
【0425】
AKAを注射された対象がEOS来院を含むその後の全てのフォローアップ来院及び処置に戻ることを確実にするようあらゆる努力が払われるべきである。
【0426】
6.研究来院
研究中に実施される臨床評価及び処置のスケジュールは、時間及び事象の表、すなわち表1に示されている。同様に、研究のために計画された試料収集及び臨床検査評価のスケジュールは、検査時間及び事象の表、すなわち表2に示されている。任意の研究特有の評価又は処置(スクリーニングを含む)を実施する前に、対象は、ICH GCPガイドライン及びCFR第21条第50章に従って、書面によるインフォームドコンセントを提供する。
【0427】
6.1.スクリーニング
全てのスクリーニング評価は、スクリーニング来院の60日以内に腎生検を予定することができる時間枠内で行われる。例えば、対象が同意書に署名した後に、2日後に採血のために検査所に行く場合に、採血の日付は、最初のスクリーニング評価の日付とみなされる(すなわち、同意書に署名した日付ではない)。
【0428】
腎超音波検査をスクリーニング来院時に実施して、ベースラインのエコー源性の読み取り値を取得するとともに、対象の適格性(すなわち、腎腫瘍、多発性嚢胞腎、腎嚢胞、又はREACT注射処置を妨げると思われる他の解剖学的異常の証拠がないこと)を検証する。さらに、スクリーニング来院時から腎生検前の-1日目までに造影剤を用いないMRI研究を行って、腎臓のサイズ及び容積を測定する。
【0429】
研究登録に適格であるには、対象のeGFRは、スクリーニング来院時に境界も含めて15mL/分/1.73m2から50mL/分/1.73m2の間でなければならない。参加基準のeGFRを定義するのに、現場はスクリーニング中に評価されたeGFRを使用し、CKD-EPIの式を使用して計算する[41]。
【0430】
6.2.生検
生検は、スクリーニング来院の60日以内に予定される。生検は、およそ1ヶ月後の1回目のREACT注射を予定することができる時間枠内で行われる。腎生検コアは典型的には、水曜日又は木曜日に収集される。
【0431】
対象は、生検前の評価のために、生検の1日~3日前に病院又は臨床研究センターに出向く。生検前の検査試料をできる限り多く収集し、評価して、継続的な適格性を検証する。入院並びに選択基準及び除外基準の最終検証の後に、セクション7.5.1に記載されるように生検を実施する。
【0432】
登録された各対象から無菌条件下で16ゲージの生検針を使用して1個当たり1.5cmの大きさの生検コアを少なくとも2つ収集し、冷蔵出荷容器を使用してTwin City Bio LLCに送る。Twin City Bio LLCは現場に連絡して、REACTの製造に十分な生検材料を受け取ったことを確認する。生検をREACTの製造に使用することができない場合に、対象は研究を中止する。
【0433】
生検による合併症を起こしていない対象は、現場の標準的な慣行に沿って同日に退院する。そうでなければ、対象は観察のために病院に一晩留まる。あらゆる生検に関連するAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻っている限り、対象は生検の翌日に退院する。
【0434】
6.3.REACT注射
対象に2回の計画されたREACT注射を投与して、用量設定を可能にし、効果持続時間を評価する。時間及び事象の表(すなわち、表1)に示されるように、一連の2回のREACT注射を、12週間の研究来院期間で3ヶ月離して投与する。それとは関係なく、1回目の注射の3ヶ月後に2回目のREACT注射を投与することを確実にするようあらゆる試みがなされる。
【0435】
何らかの不適当な安全上のリスク、又は腎機能の急速な悪化、又は制御不能な糖尿病若しくは制御不能な高血圧の発症、又は悪性腫瘍若しくは併発感染症の発症があると思われる場合は、2回目のREACT注射を投与しない。
【0436】
適格な対象は、REACT治療の朝に病院又は臨床研究センターに到着する。対象には、セクション7.5.2で論じられるように、経皮的アプローチを使用して自家REACTが注射される。
【0437】
6.4.REACT注射後の退院
REACT注射の翌日で、退院の前に、超音波検査を実施して、可能性のある不顕性の有害効果(例えば、腫脹、体液貯留)を検出する。REACT注射後に製品又は処置に関連するAEが発生した場合に、対象はAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻るまで退院する。現場の標準的な慣行に沿えば、対象は2時間以上の観察及びモニターの後に、REACT注射と同日に退院する。
【0438】
6.5.フォローアップ来院
対象は1回目及び2回目のREACT注射後の7日目、14日目、及び28日目(±3日)並びに2ヶ月目(±7日)にフォローアップ来院のために診療所に戻る。一連の2回のREACT注射が3ヶ月離して投与される場合に、対象は3ヶ月及び6ヶ月に予定されているフォローアップ来院には参加しない。これらの来院は、時間及び事象の表(表1)、並びに検査時間及び事象の表(表2)には「任意」として示されている。代わりに、対象は、治療前の評価を受けるために、計画された最終的なREACT注射の10日~14日前に臨床センターに出向く。
【0439】
最後のREACT注射に続いて、対象は治療後6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、21ヶ月、及び24ヶ月(±7日)を通じて安全性及び有効性の長期のフォローアップ評価を終える。
【0440】
6.6.研究終了来院
このセクションは、例えば、早期の研究の中止又はプロトコルで指定された全てのフォローアップ来院の完了が原因で、対象がEOS来院を行う状況を説明する。
対象が腎生検を受けた後であるが、REACT注射前に研究を中止する場合に、その対象はMRI及び/又は腎シンチグラフィー研究を除く全てのEOS評価を完了する。対象が治験薬又は研究処置に関連するSAEを起こしている場合に、対象は、SAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻るまで中止されない。
1回又は2回のREACT注射を受けた後であるが、プロトコルで指定された全てのフォローアップ来院を完了する前に対象が研究を中止する場合に、その対象は中止時にEOS来院する。対象が治験薬又は研究処置に関連するSAEを起こしている場合に、対象は、SAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻るまで中止されない。
対象がプロトコルで指定された全てのフォローアップ来院を完了した場合に、対象は最後のREACT注射の24ヶ月後にEOS来院時に全てのEOS評価を受ける。対象が治験薬又は研究処置に関連するSAEを起こしている場合に、対象は、SAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻るまで中止されない。
【0441】
6.7.研究の完了
研究の完了は、最後の対象がEOS来院を完了したとき、又は最後の対象がフォローアップ不能とみなされ、同意を撤回し、若しくは死亡したときとして定義される。
【0442】
7.研究の評価及び処置
7.1.人口統計及び病歴
スクリーニング来院時に各対象について、人口統計学的特質を取得する。
【0443】
全てのCKD関連の病歴及び全ての他の重要な病歴は、スクリーニング来院時に開始してCRFに記録される。研究全体を通して、依然として進行中の病状はCRFで定期的に更新される。
【0444】
7.2.臨床評価
7.2.1.バイタルサイン
測定されるバイタルサインには、収縮期血圧/拡張期血圧、心拍数、呼吸数、及び体温が含まれる。血圧は、対象が最低5分間座位で休んだ後に測定される。生検前の来院(-3日目~-1日目)及び注射前の来院(-14日目~-10日目の来院)では、3回のBP測定値が取られ、参加基準を満たすのに3回の測定値(収縮期圧及び拡張期圧について)の平均が使用され、CRFに入力される。
【0445】
7.2.2.身体検査
総合的検査では、全ての関連する体組織が評価されるのに対して、暫定的検査では、その対象に適切と思われる体組織の特定の評価が含まれる。暫定的検査の原則として、対象の有害事象は、検査の前に又は検査と併せて調べられ、これには、適宜、関連する体組織の評価が含まれる。臨床的に重要な異常のみがCRFに記録される。
【0446】
対象の体重は、完全身体検査又は暫定的身体検査を含む全ての来院で測定される。ボディマス指数(BMI)はkg/m2として計算される。
【0447】
7.2.3.ECG
血圧カフを当てるが、心臓の高さで膨らませない状態で対象を5分間仰向けに休ませた後に12誘導ECGを取得する。ECGの記録を評価し、結果をCRFに入力する。
【0448】
7.2.4.併用薬
併用薬は、以下のようにCRFに記録される:
スクリーニング来院から1回目のREACT注射まで:あらゆるCKD特有の薬剤だけでなく、腎血行動態及び/又は血清クレアチニン測定値に影響を与え得る薬剤を記録する。さらに、CRFに文書化されているAEの治療に使用されるあらゆる薬剤を記録する。生検処置の間に使用される外科用薬剤は、それらの使用が予想される投与量及び/又は投与頻度の範囲外でない限り、CRFに取り込む必要はない。
1回目のREACT注射から3ヶ月~6ヶ月のフォローアップまで:2回目のREACT注射がいつ投与されるかに応じて、治療の3ヶ月後~6ヶ月後までに摂取したあらゆる薬剤を記録する。REACT注射処置の間に使用される外科用薬剤は、それらの使用が予想される投与量及び/又は投与頻度の範囲外でない限り、CRFに取り込む必要はない。
2回目の(最後の)REACT注射から6ヶ月のフォローアップまで:最後のREACT注射の6ヶ月後までに摂取したあらゆる薬剤を記録する。REACT注射処置の間に使用される外科用薬剤は、それらの使用が予想される投与量及び/又は投与頻度の範囲外でない限り、CRFに取り込む必要はない。
6ヶ月のフォローアップからEOS来院まで:腎血行動態に影響を与え得るCKD特有の薬剤、及び血清クレアチニン測定値に影響を与え得る薬剤を記録する。CRFに文書化されているあらゆるAEの治療に使用される薬剤を記録する。
【0449】
7.3.臨床検査評価
計画される臨床検査評価を表12に列記する。特に指定のない限り、分析は中央研究所によって実施されることとなる。研究の間に生体試料を収集するスケジュールは表2に示されている。
【0450】
【0451】
7.3.1.eGFR
GFRは、血清クレアチニン及びシスタチンCの両方を含む慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)の式を使用して推算される[41]。各対象の履歴値と比較するために、履歴データの生成に使用された現場検査所で2回目の分析を実施することが必要となる場合がある。
【0452】
7.3.2.定型的な尿検査
尿を収集して、標準的なパネルを介して分析する。各種の尿試料を収集するスケジュールは表2に示されている。
【0453】
尿は2つの異なる期間にわたって収集される:24時間収集尿及び「スポット」尿。ディップスティック尿検査(検査スティック)評価には、スポット採尿が使用される。各種の尿試料を収集するスケジュールは表2に示されている。タンパク質及びアルブミンの排泄の包括的な実態を提供するために、全ての試料において総タンパク質及びアルブミンの両方を評価する。
【0454】
7.3.3.血液学
REACT注射後の出血は、この研究に参加している対象にとって既知の予測可能なリスクである。したがって、a)それぞれのREACT注射前、b)その4時間後に、現場の地元の検査所によってヘモグロビン及びヘマトクリットが測定され、ベースライン値と比較される。他の出血パラメーター(例えば、APTT、PTT-INR、血小板)も測定される。
【0455】
7.3.4.ウイルス血清学
各対象から得られた生検コアを、SRCの増殖及び選択に使用する。HIV、HBV、及び/又はHCVによる汚染は、その対象用のREACT製品の製造を妨げることとなる。したがって、各対象は、HIV、HBV、及びHCVを含むウイルス性血液由来病原体の検査を受ける。
【0456】
7.3.5.薬物スクリーニング
除外基準番号24(セクション5.2を参照)と一致して、対象が「プロトコルを遵守する対象の能力を損なうこととなる薬物乱用の活動歴」を有する場合に、対象は研究に参加するには適格ではない。したがって、対象は乱用薬物の検査を受ける。
【0457】
7.3.6.妊娠スクリーニング
定性的な尿妊娠検査を、現場で検査ストリップを使用して実施する。検査が陽性である場合に、臨床検査所によって確認検査が行われる。現場の慣行により検査ストリップの結果が受け入れられない場合に、尿試料は分析のために中央研究所に送られる。FSH確認検査による閉経後の女性は、研究全体を通して妊娠検査を受ける必要はない。
【0458】
7.4.腎画像化
7.4.1.超音波検査
腎超音波検査をスクリーニング来院時に実施して、ベースラインのエコー源性の読み取り値を取得するとともに、対象の適格性(すなわち、腎腫瘍、多発性嚢胞腎、腎嚢胞、又はREACT注射処置を妨げると思われる他の解剖学的異常の証拠がないこと)を検証する。また、0日目及び1日目の入院患者の腎生検に続いて、かつ0日目及び1日目の入院患者のREACT注射(複数の場合もある)に続いて、考えられる不顕性のAEをモニターする目的で超音波検査が行われる。超音波検査からの所見(例えば、抵抗指数、長さ等)をCRFに記録する。
【0459】
7.4.2.コンピューター断層撮影
コンピューター断層撮影(CT)は、治験現場での通常の標準治療によるREACT注射処置の間に超音波検査と組み合わせて使用され得る。
【0460】
7.4.3.磁気共鳴画像化
スクリーニング来院時から腎生検前の-1日目までに造影剤を用いないMRI研究を行って、腎臓のサイズ及び容積を測定する。試験開始来院の間に、利用可能なMRI機器に応じて、各現場ごとにMRIプロセスが規定される。一般に、1.5-Tユニットが使用されるべきである。MRI画像研究は、腎臓容積を求めるのに役立つ(投与計算のため)。MRIは、造影剤を注入せずに標準シーケンスを使用して行われる。腎容積測定値は、例えば、高速3DグラジエントエコーシーケンスVIBEを使用して、22秒の取得時間及び2×1.4×1.2mmの空間分解能で計算され得る。画像化パラメーターは、原資料及びCRFに記録される。患者に対して合計4回のMRIが行われる。
【0461】
7.4.4.腎シンチグラフィー
放射性トレーサー99mTc-ジメルカプトコハク酸(DMSA)又はTc99m MAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)を使用して、左腎臓機能及び右腎臓機能を評価するために腎シンチグラフィーが使用される。この方法は、腎皮質機能を測定するために最も信頼することができる方法と考えられている。現場の標準的な慣行が99mTc-DMSA又はTc99m MAG3を使用した手順と十分に同等であるとみなされる場合に、現場はその手順に従う。この研究における全ての患者は、4回の腎シンチグラフィー研究を受ける。腎シンチグラフィーは、全ての患者に対して1回目のREACT注射前、最後のREACT注射前、最後のREACT注射の6ヶ月後の来院時、及びEOS来院時に行われる。
【0462】
7.5.外科的処置
7.5.1.生検
腎生検は、超音波ガイド下又はCTガイド下アプローチを使用して無菌条件下で現場の慣行に沿って実施される。SRCの選択及びREACTの製造に十分な材料を提供するには、2つの生検コアが必要とされる。同様に、適切な皮質材料が確実に得られるように16ゲージの針が使用される。必要に応じて、15ゲージの針を使用することができる。可能な場合は、十分な皮質材料が確実に得られるように生検コアのベッドサイド検査が実施され得る。
【0463】
生検組織はREACTの製造に使用されるため、現場では、後の細胞増殖及び選択の間の汚染のリスクを最小限に抑えるように、組織コアが無菌条件を使用して採取されることが保証される。
【0464】
対象は、ヘモグロビン、血圧、肉眼的血尿、腹痛/脇腹痛、及び側腹部斑状出血をモニターしながら4時間仰向けになる。生検関連のAEが軽快し、安定化し、又はベースラインに戻っている限り、対象は、現場の標準的な慣行に沿って生検の翌日に退院する。重要なのは、腎生検後に投与されるどの鎮痛薬も、腎毒性の可能性を有する薬剤を避けて慎重に選択される。
【0465】
対象が生検後に重大な有害事象を起こし、それにより対象がREACT注射後の重大な有害効果のリスク増加にさらされると考えられる場合に、その対象はREACTで治療されずに、事象(複数の場合もある)が軽快するまで追跡され、その後に研究が中止される。
【0466】
7.5.2.REACT注射
REACT注射を行う前に、手術を行う医師は対象を以下の通りに評価する:
身体検査を実施して、処置の実行可能性を判断する。
凝固パネル、PTT-INR、血小板、ヘモグロビン、ヘマトクリット、及び他の関連する検査所研究を含む出血パラメーターを評価する。
注釈:REACT注射後の出血は、この研究に参加している対象にとって既知の予測可能なリスクである。したがって、a)それぞれのREACT注射前、b)その4時間後、及びc)その24時間後に、ヘモグロビン及びヘマトクリットが測定され、ベースライン値と比較される。
超音波検査、MRI、及び/又はCTを含む画像化研究を検討して、アクセス経路、腎臓の深さ、及び皮髄境界部の外観を調べる。
潜在的なREACT細胞堆積部位をマッピングする。
気道評価、病歴、アレルギー、及び投薬に関して、米国麻酔科学会(ASA)に従って、分類及び関連する周術期リスク/術後リスクを判断する。
対象及び対象の家族/支援者にインタビューして、処置、そのリスク、及び考えられる合併症について話し合う。質問に答え、書面によるインフォームドコンセントを取得する。
【0467】
予防的抗生物質は、現場の標準的な慣行に従って静脈内投与される。必要に応じて、隣接する内臓、腎の位置、及び腎嚢胞の存在を評価するために、初期CTスキャンを指示することができる。超音波検査と組み合わせて、CTスキャンは皮髄境界部の位置を突き止めるのにも役立ち得る。
【0468】
REACTは、細胞送達に適合した針/カニューレ及び注射器を介した腎皮質への注射を対象としている。その目的は、腎被膜の貫通によってREACTを導入し、腎皮質の複数の部位にREACTを堆積させることである。最初に、15ゲージ~20ゲージのトロカール/アクセスカニューレを使用して、腎被膜に穴を開け、腎皮質におよそ1cm挿入する。
【0469】
第1相臨床研究では、18ゲージの針を介してREACTを投与した。提案される第2相研究では、REACT送達に18ゲージ以下の針を使用する。針をアクセスカニューレの内側に通し、腎臓内に進めて、そこからREACTを投与する。REACTは1ml/分~2ml/分の速度で注射される。それぞれ1分~2分の注射の後に、針の先端がアクセスカニューレの端に到達するまで又はREACT製品が全部注射されるまで、内側の針を皮質内の針の経路に沿って2回目の注射部位等まで後退させる。経皮的送達アプローチを使用して、アクセスカニューレ/トロカール及び送達針の配置は、直接的なリアルタイム画像化を使用して行われる。選択肢としては、超音波検査のみ、又は超音波検査とともに補完的なCTが含まれる。
【0470】
処置の間には、中等度の意識下鎮静が使用され、バイタルサインが継続的に測定される。中枢若しくは末梢腎血管、腎臓の髄質部分への若しくは腎皮質を通る後腹膜軟部組織への細胞溢出の画像化の証拠、又は活発な出血の証拠がある場合には、REACT注射を中止する。
【0471】
REACT注射の完了後に、内側の針を引き抜き、外側のカニューレを針跡塞栓(track embolization)のために適所に留める。外側カニューレ(トロカール)を取り外す間に、腎皮質穿刺部位及び後腹膜を通る針跡は、吸収性ゼラチン粒子/綿撒糸(例えば、Gelfoam(商標)[Pfizer])又はフィブリンシーラント(例えば、TISSEEL[Baxter])又は過度の腎出血を防ぐのに適した他の作用物質で塞栓される。
【0472】
処置が完了したら、非造影CTスキャン又はカラードップラー評価を伴う超音波検査を実施して、穿刺部位の細胞注射及びあらゆる血腫若しくは出血の事象を画像化する。対象は、看護アセスメント及びバイタルサインの測定を伴って回復室環境で処置後2時間~3時間にわたりモニターされる。合併症を起こしていない対象は、現場の標準的な慣行に沿ってREACT注射と同日に退院する。
【0473】
8.安全性の評価及び管理
8.1.有害事象及び重篤な有害事象
8.1.1.有害事象の定義
AEは、研究処置又は治験薬との因果関係があるとみなされるかどうかにかかわらず、研究治療への曝露後又は曝露中の望ましくない病状(異常な検査所見を含む)の発生又は既存の病状の悪化である。既存の状態は、対象がインフォームドコンセントのフォームに署名する前に診断され、対象の病歴の一部として文書化されている臨床状態(治療される状態を含む)である。安定した又は不変の既存の状態は、有害事象とみなされるべきでない。
【0474】
治験責任医師は、生検処置日からREACTの最後の注射後12ヶ月までに発生する治験責任医師によって認められた、又は対象によって報告された全てのAEをモニターし、対象の医療記録及び支援者又はその被指名人によって提供されるCRFに記録することを確実にする責任がある。同意時から生検処置日の前に発生したAEは、全ての対象についての病歴として記録されるべきである。
【0475】
治療関連有害事象(TEAE)は、REACTの1回目の注射後に開始した又は1回目の注射前に開始したが、REACTの1回目の注射後に重症度又は頻度が増加したあらゆるAEとして定義される。
【0476】
AEを評価して、AEに対するフォローアップを実施するのに必要であると判断された場合に、研究の間に予定外の来院をいつでも行うことができる。
【0477】
8.1.1.1.重篤な有害事象の定義
重篤な有害事象(SAE)は、治験薬、対象薬、又はプラセボの任意の用量で、研究の任意の段階(すなわち、ベースライン、治療、ウォッシュアウト、又はフォローアップ)中に発生し、以下:
死に至ること、
直ちに生命を脅かすこと、
院内患者の入院又は既存の入院の延長を必要とすること、
永続的又は重大な能力障害又は不能をもたらすこと、
先天性異常又は先天性欠損症を引き起こすこと、
対象を危険にさらす可能性がある又は上記で列記された転帰の1つを防止するのに医学的介入を必要とする可能性がある重要な医療事象であること、
の1つ以上を満たす有害事象である。
【0478】
生検処置の日から、治療の間に、又は最後のREACT注射後12ヶ月以内に発生する全てのSAEは、これらが研究処置又は治験薬に関連するかどうかにかかわらず、対象の医療記録だけでなく、CRFに記録しなければならない。
【0479】
8.1.1.2.その他の重大な有害事象
特に臨床的に重要な重大な事象には、対象が研究を早期に中止することにつながるSAE及びAEが含まれる。これらの事象は、対象の医療記録及びCRFに記録される。これらの事象のナラティブは、臨床研究報告に含めるために準備され得る。
【0480】
以下のセクションでは、処置及び製品に関連する事象に関する「特に注目すべき有害事象」を記載する。対象は、これらの潜在的なAEの発生について慎重にモニターされる。
【0481】
8.1.1.3.処置に関連する事象
術後の痛み:生検又はREACT注射後に対象が痛みを起こした場合には、パラセタモール又はパラセタモール-コデインの組合せの投与が推奨される。腰部又は腹部のより激しい痛みには、重大な腎周囲出血を除外するために超音波検査が必要とされる。激しい痛みが発生した場合は、アヘン剤の投与が必要となる場合がある。痛みを和らげるために許可された最大用量よりも高い鎮痛用量が必要とされる場合に、治験責任医師は、過度の痛みの考えられる原因(複数の場合もある)を確認するために追加の臨床評価を行わなければならない。
【0482】
出血:腎生検及びREACT注射処置に続いて、対象は定期的にヘモグロビン及び血圧のモニタリングを受ける。対象はベッドに横たわり、正常な凝固指数の維持についてモニターされる。出血が起こり、臥床安静にもかかわらず対象が低血圧である場合は、輸血が検討され得る。それでも出血が抑えられない場合は、手術が検討され得る。まれに、出血の原因を特定するために腎血管造影が行われる場合がある。同じ処置の間に、コイル塞栓術が行われる場合がある。
【0483】
その他の合併症:非常にまれに、生検処置の間に他の臓器(例えば、肝臓、胆嚢、及び肺)を貫通する場合がある。このような場合に、適切な治療及びフォローアップについて顧問医師と話し合うことができる。
【0484】
死亡:腎生検に起因する死亡は、患者の0.01%未満で起こる[26、34、35]。厳格な選択/除外基準を順守することで、制御不能な又は過度の出血を起こしやすい可能性がある対象がこの試験に登録されないことが保証される。
【0485】
8.1.1.4.製品に関連する事象
REACT製品に関連する事象は起こらない。
【0486】
8.2.有害事象の強度及び関連性の評価
8.2.1.強度スケール
強度は、アメリカ国立癌研究所からの「有害事象共通用語規準」(CTCAE)バージョン4.03(evs.nci.nih.gov/ftp1/CTCAE/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_8.5x11.pdfを参照)を使用して評価される。
【0487】
AEがCTCAEに含まれない場合に、AEの強度は以下の基準:
軽度(グレード1):AEが対象に目立つが、日常の活動は妨害しない。
中等度(グレード2):AEが日常的な活動を妨害するが、対症療法又は休息に対して奏効する。
重度(グレード3):AEが、対症療法にもかかわらず、対象の日常的な活動を行う能力を大幅に制限する。重大な事象は通常、不能化する。
生命を脅かす(グレード4):対象が直ちに死亡するリスクがある。
死亡(グレード5)
に従って決められる。
【0488】
強度(グレード)が1日以内に変化した場合は、最大強度(グレード)が記録される。強度(グレード)がより長期間にわたって変化する場合は、その変化は個別の事象(各グレードごとに個別の開始日及び停止日を有する)として記録される。
【0489】
重篤なAEと重度のAEとを区別することが重要である。重度は強度の尺度であるが、重篤度は重篤な有害事象の定義下の基準によって定義される(セクション8.1.1.1を参照)。したがって、重度の強度のAEは、必ずしも重篤度についての基準を満たさない場合がある。
【0490】
8.2.2.関連性の評価
治験責任医師は、AEが研究処置又は治験薬によって引き起こされ得るという妥当な可能性があるかどうかを判断すべきである。関連性を示唆する正当な理由が存在しない場合は、AEは「関連なし」として分類される。考えられる因果関係を疑う正当な理由がある場合は、不確定であるとしても、AEは研究処置又は治験薬に「多分関連あり」又は「関連あり」とみなされる。
【0491】
関連性カテゴリーの定義は、以下の通りである:
関連なし:研究治療への曝露が行われなかった、又はAEの発生が時間的に合理的に関連していない、又はAEが研究治療におそらく関連性なしとみなされる。
おそらく関連性なし:研究治療及びAEが時間的に密接に関連していなかった、及び/又はAEが研究治療製品への曝露以外の原因によってより一貫して説明可能であった。
多分関連あり:研究治療及びAEが時間的に合理的に関連しており、かつAEが研究治療製品への曝露以外の原因によって同様に十分に説明可能であった。
関連あり:研究治療及びAEが時間的に合理的に関連しており、かつAEが他の原因よりも研究製品への曝露によって説明される可能性が高い、又は研究治療がAEの原因である可能性が最も高かった。
【0492】
安全性分析の目的で、「多分関連あり」又は「関連あり」と判断された全てのAEが、治療に関連する有害事象とみなされる。
【0493】
8.3.有害事象の記録及び報告
対象によって自発的に報告された、及び/又は研究担当者から未解決の質問に応答して報告された、又は観察によって明らかにされた、又は検査報告、画像化報告、コンサルトノート、調査機器、及び他のデータ収集ツールを介して文書化された有害事象は、対象の医療記録及びCRFに記録される。
【0494】
有害事象は、可能な限り、標準的な医学用語を使用して報告される。検査値又はバイタルサインにおける臨床的に重要な変化は、異常な変化がSAEを構成する場合及び/又は治療の中止若しくは研究からの離脱につながる場合を除いて、AEとして報告する必要はない。
【0495】
各AEについて、開始日、停止日、報告可能な各事象の強度、研究処置又は治験薬との関連性の判断、取られた措置、重症度(該当する場合)、及び事象が治療の中止又は研究からの離脱をもたらしたかどうかが記録される。
【0496】
8.3.1.妊娠
妊娠に関連する合併症が発生しない限り、妊娠はAEでもSAEでもない。先天性異常/先天性欠損症の全ての報告はSAEである。自然流産はSAEとして報告され、扱われるべきである。しかしながら、合併症のない人工妊娠中絶はAEとして扱われるべきではない。
【0497】
この研究に登録された女性の対象が起こした全ての妊娠は、CRFの妊娠フォームを使用してSAEと同じ時間枠で報告される。対象が研究への参加を中止したかどうかにかかわらず、周産期及び出産の転帰を含む全ての妊娠の経過は、6週齢までの新生児の健康状態のフォローアップを含め、軽快するまで追跡される。
【0498】
妊娠中の女性又は発育中の胎児に対する治験薬の投与の影響は未知である。したがって、研究の過程で妊娠を計画している、又は非常に効果的な避妊方法(複数の場合もある)を使用していない、又は研究期間を通して、非常に効果的な避妊方法を使用し続けることを望んでいない妊娠可能な女性の対象は、研究に参加するのに適格ではない(除外基準番号23を参照;セクション5.2)。
【0499】
8.4.個々の対象についての中止基準
TA対象は、以下の理由で研究から除かれる場合がある:
研究への継続的な参加が対象の最善の利益とならないあらゆる臨床的有害事象、臨床検査値異常、併発疾患、その他の病状、又は状況。
いずれかの除外基準の発生。
【0500】
対象が研究を終了する場合に、EOS評価が最後の来院時に行われるべきである。
【0501】
以下の事象のいずれかが発生した場合に、レビューが完了するまで、追加の対象はREACT注射を受けることができない:
重症又は生命を脅かすと評価され、かつREACT又は研究処置に関連しているSAE、
登録された対象の死、
REACTに関連している2人以上の対象における同様のSAE、
外科的な問題又はその他の問題により、2人以上の対象に最低50%の用量のREACTを送達することができないこと。
【0502】
9.統計的方法及び計画分析
9.1.試料サイズ
スクリーニング処置を完了し、全ての選択基準及び除外基準を満たす最大15人の対象が登録される。
【0503】
統計分析は、主として記述的な性質である。特段の指定がない限り、連続変数は、非欠損型の観測値の数(n)、平均、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を表すことによって要約される。カテゴリー変数は、各カテゴリーについての頻度数及びパーセンテージを表すことによって要約される。
【0504】
9.2.評価基準
9.2.1.分析の目的及び評価項目
9.2.1.1.主要
一方のレシピエントの腎臓に注射されたREACTの安全性を評価すること。
【0505】
主要評価項目:注射後24ヶ月を通した処置及び/又は製品関連の有害事象(AE)
【0506】
9.2.1.2.副次
注射後24ヶ月間にわたる腎特異的な有害事象を評価することにより、REACT投与の安全性及び忍容性を評価すること。
【0507】
副次的評価項目:注射後24ヶ月間を通した腎特異的な臨床検査評価
【0508】
9.2.1.3.探索
注射後24ヶ月間にわたる腎機能に対するREACTの影響を評価すること。
【0509】
探索的評価項目:腎疾患の進行速度の変化を評価する腎構造及び腎機能(eGFR、血清クレアチニン、及びタンパク尿を含む)の臨床診断評価及び臨床検査評価
【0510】
9.3.人口統計学的特質及びベースラインの特質
人口統計学的データ及びベースラインの特質は、連続変数については試料サイズ、平均、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を介して要約され、同様にカテゴリー変数については頻度及び割合を介して要約される。これらの要約は、最大の解析対象集団及び注射解析集団の両方について作成される。人口統計学的特質及びベースラインの特質の情報は記述統計として表され、推測統計の生成は計画されていない。これらのデータは表形式のリストで提供される。
【0511】
9.4.有効性分析
有効性の主要評価項目は、最後のREACT注射の1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、及び12ヶ月後に得られたeGFRの連続測定値である。GFRは、血清クレアチニン及びシスタチンCの両方を含む慢性腎臓病疫学共同研究(CKD-EPI)の式を使用して推算される[1]。
【0512】
各時点で測定された推算GFRは、生データの記述統計及び各治療群についてのベースライン値からの変化を表すことによって要約される。
【0513】
9.5.探索的解析
探索的分析を行って、健康関連の生活の質(HR-QoL)の潜在的な変化を調べる。
【0514】
9.6.統計的方法
対象はKDQOL-SF(商標)調査(すなわち、腎臓疾患及び生活の質の短縮版(Kidney Disease and Quality of Life Short Form))を終える。KDQOL-SFは、腎臓疾患を伴う患者に関連する36項目の検証済みのHR-QoL尺度(instrument)である[42]。この疾患特有のHR-QoL尺度は、以下の下位尺度からなる:
「身体的(PCS)機能及び精神的(MCS)機能のSF-12尺度」は、全般的な健康状態、活動制限、所望のタスクを遂行する能力、鬱病及び不安症、活力の程度、並びに社会的活動に関する項目を含む。
「腎臓疾患による負担の下位尺度」は、腎臓疾患がどのように日常生活に支障をきたすか、時間をとるか、欲求不満を引き起こすか、又は回答者に負担を感じさせるかに関する項目を含む。
「症状及び問題の下位尺度」は、筋肉痛、胸痛、痙攣、痒み若しくは乾燥肌、息切れ、失神/眩暈、食欲不振、倦怠感若しくは疲労感、手若しくは足のしびれ感、吐き気、又は透析アクセスに関する問題によって、回答者がどれほど苦に感じるかに関する項目を含む。
「腎臓疾患が日常生活に及ぼす影響の下位尺度」は、水分制限、食事制限、家中で作業する能力又は旅行する能力、医師及び他の医療スタッフへの依存感、ストレス又は心配、性生活、並びに容姿によって、回答者がどれほど苦に感じるかに関する項目を含む。
【0515】
9.7.安全性分析
9.8.臨床検査評価
ベースライン値は、REACT注射の直前に収集される。ベースラインの検査データから観察された変化は、連続変数については試料サイズ、平均、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値を介して要約され、同様にカテゴリー変数については頻度及び割合を介して要約される。臨床検査値異常は、NCI CTCAE格付けスキームを使用して定義される。異常な検査値は、正常範囲より上又は下としてフラグ付けされる。腎機能、特にsCr、BUN、及び尿中アルブミンについての臨床検査試験の結果は、この研究にとって特に興味深いものである。
【0516】
ベースラインとベースライン後のREACT注射後6ヶ月までの任意の時点との間で少なくとも1つの毒性グレードを高める値として定義される治療関連臨床検査値異常の発生率が要約される。ベースラインのデータが欠如している場合は、生検と注射との間の最新の値がベースライン値として使用される。ベースラインのデータ及び注射前のデータが欠如している場合は、あらゆる格付けされた異常(つまり、少なくともグレード1)が治療関連とみなされる。これらの値は、最大の解析対象集団及び注射解析集団の両方について要約される。ベースライン値から観察された変化は記述統計として表され、推測統計の生成は計画されていない。これらのデータは表形式のリストで提供される。
【0517】
9.9.有害事象
臨床的AE及び検査AEは、医薬規制用語集(MedDRA)バージョン18.1を使用して、器官別大分類(SOC)及び基本語(PT)によってコード化されている。有害事象は、アメリカ国立癌研究所からのCTCAEバージョン4.03を使用して格付けされる。
【0518】
治療関連AEは、REACTの1回目の注射後に開始した又は1回目の注射前に開始したが、REACTの1回目の注射後に重症度又は頻度が増加したあらゆる有害事象として定義される。治療関連AEの要約(頻度及び割合)は、SOC及びPTによって表される。追加の要約には、限定されるものではないが、処置及び/又は治験薬に関連すると判断された治療関連AE、強度、対象の離脱理由、SAE、並びに死亡が含まれる。事象の数(発生)及び治療関連AEを起こした対象の数(発生率)は、治療群ごとに報告される。有害事象データはデータリストで提供される。
【0519】
9.10.その他の安全性評価
バイタルサインについてのベースラインからの変化は、各対象ごとに計算され、データリストで提供される。身体検査において(例えば、正常から異常への)変化(複数の場合もある)を示す対象の数及びパーセントは、データリストを介して要約される。研究の間に異常な心拍リズム又はQT時間延長を生じる対象の数及びパーセントは、データリストで提供される。病歴、併用薬、超音波検査、腎シンチグラフィー、及びMRI評価からのデータはデータリストで提供される。必要に応じて、これらの評価の記述統計が生成される。
【0520】
9.11.生検及びREACT注射(複数の場合もある)
生検及びREACT注射のデータはデータリストで提供される。
【0521】
10.結果
CAKUTに起因する腎臓疾患を伴う患者にREACTを注射した。患者は後部尿道弁を有する55歳の男性であった。データが入手可能となった最新の時点であるREACT注射の3ヶ月後に、eGFRの増加及びアブミン対クレアチニン比(ACR)の減少によって示されるように、患者は腎臓機能における検出可能な改善を示した。
図8に示されるように、患者にREACTを注射すると、eGFRにより測定される患者の腎機能が改善した、つまり高まった。REACT注射の前月には、患者のeGFRは低下しており、注射の1ヶ月前のおよそ40mL/分/1.73m
2から注射時のおよそ33mL/分/1.73m
2まで低下していた(
図8、灰色の実線)。患者にREACTを注射すると、注射時の値に対して、患者のeGRFは、注射の2ヶ月後におよそ34mL/分/1.73m
2に増加し、注射の3ヶ月後におよそ35mL/分/1.73m
2に増加した(
図8、黒色の破線)。
【0522】
図9は、患者のアルブミン対クレアチニン比(ACR)の減少の観察によって、患者の腎臓機能の改善の更なる証拠を示している。REACT注射の時点で、患者のACRは、およそ47mg/gのレベルで上昇した。しかしながら、REACT注射の3ヶ月後に、患者のACRは50%超減少して、およそ21mg/gとなり、これは「正常な」範囲、つまり30mg/g未満の範囲のACR値とみなすことができる。
【0523】
REACT注射後の腎臓機能の改善のこれらの観察は臨床的に重要であり、CKDを治療する現在の治療の選択肢では、根本的な原因にかかわらず、腎臓機能を改善することはできず、むしろ臓器機能の低下率を減少させるだけである。
【0524】
参考文献
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【0525】
実施例2-SRCを製造する方法及び組成物の非限定的な例
実施例2.1-溶液の調製
この実施例のセクションは、この実施例における、異種の腎細胞集団の分離及び特性評価、並びに再生治療製品の製造に使用される様々な培地配合物及び溶液の組成を示す。
【0526】
【0527】
ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を全ての細胞洗浄に使用した。
【0528】
実施例2.2-異種の未分画腎細胞集団の分離
この実施例のセクションは、未分画(UNFX)の異種腎細胞集団をヒトから分離する方法を説明する。最初の組織解離を行って、ヒト腎臓組織から異種細胞懸濁液を作製した。
【0529】
腎生検による腎組織が異種腎細胞集団の原材料を提供した。皮質組織、皮髄境界部組織、又は髄質組織のうちの1つ以上を含む腎組織が使用され得る。一実施形態において、皮髄境界部組織が使用される。CKD腎臓からは、瘢痕組織を避けて複数の生検コア(最低2つ)が必要とされた。最終的なNKAの計画された移植のおよそ4週間前に、腎組織は、治験責任医師によって臨床現場で患者から得られた。実施例2.1の組織運送培地中で組織を運送した。
【0530】
次に、入り込むバイオバーデンを減らすために、組織を実施例2.1の組織洗浄溶液で洗浄してから、細胞抽出のために組織を処理した。
【0531】
腎組織を細かく切り刻み、秤量し、実施例2.1の消化溶液で解離させた。得られた細胞懸濁液をダルベッコ改変イーグル培地(D-MEM)+10%ウシ胎児血清(FBS)(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)中で中和し、洗浄し、無血清でサプリメント不含のケラチノサイト培地(KSFM)(Invitrogen)中に再懸濁した。次に、細胞懸濁液を15%(重量/容量)のイオジキサノール(OptiPrep(商標)、Sigma)勾配に供して、赤血球及び破片を除去した後に、組織培養処理されたポリスチレンフラスコ又はディッシュで、実施例2.1の腎細胞成長培地において1cm2当たり25000個の細胞の密度で培養を開始した。例えば、細胞をT500 Nuncフラスコへと、150mlの50:50培地中でフラスコ当たり25×106個の細胞で播種することができる。
【0532】
実施例2.3-分離された腎細胞集団の細胞増殖
腎細胞の増殖は、受け取った組織の量と、納入組織からの腎細胞の分離の成功とに依存する。分離された細胞は、必要に応じて凍結保存され得る(以下参照)。腎細胞成長動態は、個々の患者から分離された細胞に固有のばらつきがあるため、試料ごとに異なる場合がある。
【0533】
納入組織(表14)のばらつきに起因する細胞回収の範囲に対応する、規定された細胞増殖法が開発された。腎細胞の増殖には、規定された細胞培養手順を使用した、腎細胞成長培地(表13)における密閉された培養容器(例えば、Tフラスコ、Cell Factories、HyperStacks(商標))内での連続継代が含まれる。
【0534】
BPE不含の培地は、BPEの使用に関連する固有のリスクを排除するために、ヒト臨床試験用に開発された。細胞成長、表現型(CK18)及び細胞機能(GGT及びLAPの酵素活性)をBPE不含の培地中で評価し、動物研究で使用されるBPE含有培地と比較した。腎細胞成長、表現型、及び機能は、2つの培地中で同等であった(データは示していない)。
【0535】
【0536】
最初のTフラスコ(継代0)で細胞成長が観察され、目に見える汚染の兆しがなければ、培養培地を交換し、その後2日~4日ごとに交換した(
図7B)。顕微鏡下で培養物を視覚的に観察することにより、細胞を評価して腎細胞の形態を確認した。細胞同士がクラスター化するため、培養物は特徴的に緊密な舗装又は石畳の外観を示した。これらの形態学的特質は増殖の間に変化し、どの継代でも存在するとは限らない。細胞培養コンフルエンスは、細胞増殖全体を通して使用される培養容器内の様々なレベルのコンフルエンスにある細胞の画像ライブラリを使用して推定された。
【0537】
培養容器が少なくとも50%のコンフルエントになったら、腎細胞をトリプシン処理によって継代した(
図7B)。剥離した細胞を腎細胞成長培地の入った容器中に収集し、計数し、細胞生存率を計算した。各細胞継代で、細胞を十分な数の培養容器において1cm
2当たり500個~4000個の細胞で播種して、細胞数をNKAの製剤化に必要とされる数に増やした(
図7B)。培養容器を5%CO
2環境の37℃のインキュベーター内に入れた。上記のように、細胞の形態及びコンフルエンスをモニターし、組織培養培地を2日~4日ごとに交換した。表15に、ヒトドナーからの6つの腎臓生検の細胞分離及び増殖中に認められたヒト腎細胞の生存率を列記する。
【0538】
【0539】
異なる患者からの組織の固有のばらつきにより、培養において異なる細胞収率が得られた。したがって、細胞継代のタイミング又は各継代で目標の細胞数を達成するのに必要とされる培養容器の数及び種類を厳密に規定することは現実的ではなかった。典型的には、腎細胞は2回又は3回継代されるが、培養期間及び細胞収率は、細胞成長速度に応じて変動し得る。
【0540】
採取又は継代のために、EDTAを含む0.25%のトリプシン(Invitrogen)を用いて細胞を剥離した。生存率をトリパンブルー排除によって評価し、計数を、血球計算盤を使用して手動で又は自動式のCellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience、マサチューセッツ州ローレンス)を使用して実施した。
【0541】
実施例2.4 培養細胞の凍結保存
増殖された腎細胞を、個々の患者からの細胞成長の固有のばらつきに対応し、かつ予め決められた臨床スケジュールで製品を配送するために定型的に凍結保存した。凍結保存された細胞はまた、別のNKAが必要とされる場合に(例えば、患者の病気による遅延、予期せぬ経過事象等)、細胞の予備の供給源を提供した。細胞を凍結保存し、解凍時に生存可能な機能的な細胞を回復するのに使用された条件が確立された。
【0542】
凍結保存のために、細胞を凍結保存溶液(実施例2.1を参照)中に1mL当たり約50×106個の細胞の最終濃度に懸濁し、バイアル中に分注した。1mL当たり約50×106個の細胞を含む1mlバイアルを、制御速度フリーザーの凍結室に入れ、予めプログラムされた速度で凍結させた。凍結後に、工程内貯蔵のために細胞を液体窒素フリーザーに移した。
【0543】
実施例2.5 SRC細胞集団の調製
選択腎細胞(SRC)は、スケジュールに応じて、凍結保存された細胞から成長させた又は増殖培養物から直接的に成長させた最終培養容器から調製され得る(
図7B)。
【0544】
凍結保存された細胞を使用する場合に、細胞を解凍し、組織培養容器に播種して、1回の最後の増殖工程を行った。最終培養容器がおよそ50%~100%のコンフルエントになったら、細胞はSRCを分離する処理の準備ができている。培地交換及びNKAの最終洗浄により、最終産物中の残りのあらゆる凍結保存溶液が希釈される。
【0545】
最終的な細胞培養容器が少なくとも50%のコンフルエンスに達したら、培養容器を、37℃で5%のCO
2環境において2%の酸素に設定された低酸素インキュベーターに移し(
図7C)、一晩培養した。細胞は、2%の酸素に設定された酸素制御インキュベーターに48時間ほど保持され得る。より生理学的に関連性のある低酸素(2%)環境への曝露は、細胞分離効率を改善し、VEGF等の低酸素誘発性マーカーのより優れた検出を可能にした。
【0546】
細胞を低酸素条件に十分な時間(例えば、一晩ないし48時間)曝露した後に、細胞を、EDTAを含む0.25%のトリプシン(Invitrogen)で剥離した。生存率をトリパンブルー排除によって評価し、計数を、血球計算盤を使用して手動で又は自動式のCellometer(商標)計数システム(Nexcelom Bioscience、マサチューセッツ州ローレンス)を使用して実施した。細胞をDPBSにより1回洗浄し、DPBS中で1mL当たり約850×106個の細胞に再懸濁した。
【0547】
密度勾配遠心分離を使用して、採取された腎細胞集団を細胞浮遊密度に基づいて分離した。腎細胞懸濁液を単一段階の7%イオジキサノール密度勾配溶液(OptiPrep、OptiMEM中60%(重量/容量)、実施例2.1を参照)において分離した。
【0548】
7%のOptiPrep勾配溶液を調製し、使用前に所望の密度を指示する屈折率を測定した(屈折率1.3456±0.0004)。採取された腎細胞を勾配溶液の上面に成層させた。密度勾配を、遠心分離管又は細胞プロセッサー(例えば、COBE 2991)のいずれかにおいて、室温で800gにて20分間(間断なく)遠心分離した。およそ1.045g/mLを超える浮遊密度を示す細胞画分を、遠心分離後に別個のペレットとして収集した。1.045g/mL未満の浮遊密度を維持している細胞は除外し、廃棄した。
【0549】
SRCペレットをDPBS中に再懸濁した(
図7C)。最終産物中の残留OptiPrep、FBS、培養培地、及び補助物質の繰り越しは、4回のDPBS洗浄及び1回のゼラチン溶液の工程によって最小限に抑えられる。
【国際調査報告】