(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】被覆研磨材粒子を用いる溶接方法、被覆研磨材粒子、層システム及び密閉システム
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20220714BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220714BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20220714BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20220714BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20220714BHJP
【FI】
C09K3/14 550C
H01L21/304 622B
H01L21/304 622F
B24D3/00 330D
B24D3/00 340
B24D3/06 Z
B23K26/342
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566591
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020060951
(87)【国際公開番号】W WO2020233919
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】102019207350.6
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ドゥネルト,ヨハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ラドル,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】メルホーン,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,トシュテン
【テーマコード(参考)】
3C063
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C063BB02
3C063BB15
3C063BC02
3C063CC16
3C063EE40
3C063FF08
3C063FF30
4E168BA33
5F057AA23
5F057DA01
5F057DA11
5F057EB02
5F057EB06
5F057EB10
5F057EB16
5F057EB18
5F057EB20
(57)【要約】
被覆された立方晶窒化ホウ素を用いることにより、これらを肉盛溶接の際に問題なく用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料化合物で被覆された研磨材微粒子(4)、
特に立方晶窒化ホウ素粒子(4)、
を有する、
粒子(1)。
【請求項2】
被覆部(7)の硬質材料化合物が炭化物、
特に炭化チタン、
を有する、
請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
1つの層のみ又は1つの被覆部(7)のみが、
特に前記研磨材微粒子(4)の周囲に1つの材料のみで構成されて、
特に立方晶窒化ホウ素粒子の周囲に、
設けられている、
請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれか1項又は複数項に記載の粒子(1)が用いられる、層(16)を製造するための方法。
【請求項5】
前記粒子(1)が、金属のマトリックス材料(15)と混合され、又は、混合された状態で、
適用される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
肉盛溶接プロセス、
特に粉体肉盛溶接プロセスが用いられ、
マトリックス材料(15)が、特に粉末形態の、粒子(1)と、
共に塗布される、
請求項4又は5のいずれか一方又は両方に記載の方法。
【請求項7】
層システム(10)であって、
ベース部(13)、
特に金属的なベース部(13)、を含み、
その上に、少なくとも部分的にまた多くとも部分的に、請求項1、2、3のうちの1つ又は複数に記載の粒子(1)を有する層(16)が、
マトリックス材料(15)内に存在し、
特に請求項4、5又は6のうちの1つ又は複数に記載の方法によって製造される、層システム(10)。
【請求項8】
前記マトリックス材料が、NiCoCrAlY-X(X=Si、Re、Ta、Fe)を含み、
特にそれにより構成されている、
請求項5、6又は7の1つ又は2つに記載の方法又は層システム。
【請求項9】
前記マトリックス材料が、ニッケルベース又はコバルトベースの超合金である、
請求項5、6又は7の1つ又は2に記載の方法又は層システム。
【請求項10】
特にロータブレード上に、
請求項7又は8に記載の層システムを有する、ステータ及びロータブレードからなる密閉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を用いる溶接方法であって、硬質材料層が立方晶窒化ホウ素(cBN)のような研磨材微粒子の周囲に塗布され溶接中の酸化に対して保護する溶接方法、層システム及び密閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン又は航空機エンジンにおける最適なクリアランスは、これらの機械の効率及び性能に決定的な影響を及ぼす。クリアランスを調整するための確立されたシステムは、ハウジング面/ステータ(例えば、ハニカム)上の摩擦層であり、そこに回転部品(例えば、タービンブレード、ロータ)がそれ自体を摩擦させる。
【0003】
その結果、製造誤差、非対称的なハウジングの変形、ロータの変位などにかかわらず、最適なクリアランスギャップに研磨される。
【0004】
更に、摩擦中にブレード先端を保護するための、立方晶窒化ホウ素(cBN)によるブレード先端の外装が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかし、cBNは他の材料と特に良好には結合しないので、cBNの適用には問題がある。更に、タービン領域のために、埋め込み材料(マトリックス)は、耐高温性でなければならない。したがって、研磨材の製造のような樹脂誘導体への埋め込み(特許文献2)は、不可能である。
【0006】
特許文献3は、2層の被覆部を有する立方晶窒化ホウ素からなる被覆微粒子を開示している。
【0007】
特許文献4は、研磨材微粒子の金属被膜を開示している。
【0008】
特許文献5は、はんだ層を有する被覆研磨材微粒子を開示しており、このはんだ層は製造される層のマトリックスである。
【0009】
周知の製造方法は、特殊なcBNテープを使用するガルバニック塗布又は誘導はんだ付けである。どちらもコストが高く、技術的にも複雑である。
【0010】
しかしながら、いずれの方法においても、埋め込みマトリックスは特に耐腐食性ではないという欠点がある。更に、層厚を任意に設定することはできない。
【0011】
cBNの高温ガス腐食とそれに伴う腐食は、最初の100時間の運転時間内に認められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0377039号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/004938号明細書
【特許文献3】米国特許第8,308,830号明細書
【特許文献4】米国特許第4,399,167号明細書
【特許文献5】米国特許第10,183,312号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1に記載の微粒子、請求項4に記載の方法、請求項7に記載の層システム、及び請求項10に記載の密閉システム、によって解決される。
【0015】
解決には3つの側面がある。
・新規の耐腐食性マトリックス材料MCrAlY。
・レーザ肉盛溶接によりMCrAlYを適用したこと。
・変化されたcBN粒子(保護ジャケット)。
実験により、純粋なcBNはレーザビーム内での必要な温度に対して損傷なく残存することができないことが示された。特に、TiCのような耐高温ガス性の炭化物被覆を使用することによってのみ、cBNはレーザビーム内での滞留時間に対して損傷なしで残存する。
・保護コーティングを使用することによって、cBN強化コーティングのレーザ肉盛溶接は、ようやく可能となる。
・コーティングは、特殊なマトリックス材料によって、向上した高温ガス耐食性を有する。したがって、機能層は、何百時間もの動作時間の後でも、依然としてその機能を果たすことができる。
・レーザ肉盛溶接は、層厚をより自由に定義することが可能であり、0.1mmから数mmまで可能。
・cBN粒子の「親結合性の」被覆部(TiC)によるマトリックス内でのcBN微粒子の非常に良好な結合。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、
図2による例示的な層システムにおいて適用された例示的な粒子を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図及び説明は、本発明の例示的実施形態のみを表す。
【0018】
図1は、特に立方晶窒化ホウ素(cBN)といった被覆された微粒子4を示しており、それは、内部に研磨材の塊状粒子を有し、ここでは立方晶窒化ホウ素を有し、特にそれから構成されており、被覆部7を有し、そのようにして粒子1を形成する。
【0019】
レーザ肉盛溶接の際の酸化から保護するために、研磨材粒子4は、好ましくは炭化物、特に炭化チタン(TiC)、のような硬い材料化合物からなる被覆部7を用いて被覆されている。
【0020】
このような粒子1は、肉盛溶接プロセスで使用することができ、これらの被覆された研磨材微粒子4は、他の金属粉末と混合され、好ましくはニッケルベースの超合金又はコバルトベースの超合金並びにNiCoCrAlY合金とで混合されているか、又は、肉盛溶接プロセスで用いられるワイヤ内にプレス又は加工されている。
【0021】
NiCoCrAlYは、NiCoCrAlY+Xを意味しており、Xは、X=タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)及び/又は鉄(Fe)の添加物である。このリストは、網羅的であることが望ましい。
【0022】
マトリックス材料は、研磨材微粒子4及びその被覆部7とは異なるが、その理由は、それが金属であること、すなわち好ましくは金属合金であることによる。
【0023】
SLM粉末焼結積層プロセス又はSLS粉末焼結積層プロセスでの使用も可能である。
【0024】
このような溶接プロセス、及び
図1に従うそのような粒子1を用いて、
図2に従う層システム10が製造され、当該層システム10において、部材10は、特にタービン部材は、ベース部13や表面14を有しており、当該ベース部13上や当該表面14上には、粒子を含む層が適用された。粒子1は、マトリックス内部で完全に層16内に存在しているか、又は層16から突出している。
【0025】
層16は、このような密閉システムでは、更に、好ましくは、タービン動翼の翼端にのみ適用されている。
【0026】
タービン動翼は、通常、ガスタービンの場合、ブレード及び/又はブレードプラットフォーム上にも同様に、金属の被覆部及び/又はセラミックの被覆部を有することができる又は有することになるが、これらは粒子1を有してはいない。
【0027】
ステータ又はタービンの、特にガスタービンのハウジングも、この研磨層16がすり入る保護コーティングを有する。ハウジング又はステータ上の被覆部は、金属層のみ、セラミック層のみであってもよく、又は、金属の接着促進剤層及び外側のセラミックの層からなる層システムを有していてもよい。
【0028】
ハウジングの層システム又は複数の層は、それらが研磨層16よりも機械的に軟らかいように形成されており、その結果、研磨が可能である。これは、金属の被覆部又はセラミックの被覆部の組成によって、及び/又は、1つの層又は複数の層の気孔率を調整することによっても、達成することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 粒子
4 微粒子
7 被覆部
10 層システム
13 ベース部
15 マトリックス材料
16 層
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料化合物で被覆された研磨材微粒子
(4)を有する、
粒子(1)。
【請求項2】
被覆部(7)の硬質材料化合物が
炭化物を有する、
請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
1つの層のみ又は1つの被覆部(7)のみが
、設けられている、
請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
請求項1、2又は3のいずれか1項又は複数項に記載の粒子(1)が用いられる、層(16)を製造するための方法。
【請求項5】
前記粒子(1)が、金属のマトリックス材料(15)と混合され、又は、混合された状態で、
適用される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
肉盛溶接
プロセスが用いられ、
マトリックス材料(15)が
、前記粒子(1)と、
共に塗布される、
請求項4又は5のいずれか一方又は両方に記載の方法。
【請求項7】
層システム(10)であって、
ベース部
(13)を含み、
その上に、少なくとも部分的にまた多くとも部分的に、請求項1、2、3のうちの1つ又は複数に記載の粒子(1)を有する層(16)が、
マトリックス材料(15)内に存在
する、層システム(10)。
【請求項8】
前記マトリックス材料が、NiCoCrAlY-X(X=Si、Re、Ta、Fe)を含
む、
請求項5、6又は7の1つ又は2つに記載の方法又は層システム。
【請求項9】
前記マトリックス材料が、ニッケルベース又はコバルトベースの超合金である、
請求項5、6又は7の1つ又は2
つに記載の方法又は層システム。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の層システムを有する、ステータ及びロータブレードからなる密閉システム。
【国際調査報告】