(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】人工心臓弁用のステント器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568538
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2020063739
(87)【国際公開番号】W WO2020234199
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/062842
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519097755
【氏名又は名称】ティー-ハート・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディビ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】エル・ガズワニ,ソード
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC05
4C097MM02
4C097MM03
4C097SB03
(57)【要約】
本発明は、欠陥のある房室心臓弁、特に三尖弁を置き換える分野に関し、三尖弁の生来の解剖学的構造を歪ませることなく改善された固定を提供する、ステント器具、人工心臓弁、送達システム、および対応する方法を含む。したがって、人工心臓弁用のステント器具(10)が提案され、ステント器具は、軸線方向に延在するメッシュ形状の本体(12)であって、オリフィスに嵌合するように構成され、本体(12)の近位端(16)から遠位端(17)までの通路を提供するための内側チャネル(15)を画定する、メッシュ形状の本体(12)と、本体(12)の遠位端(17)から近位端(16)に向かって本体(12)から延在する少なくとも3つの外側支持アーム(18)であって、各支持アーム(18)は、遠位端(17)に第1の支持領域(20)を備え、近位端(16)に第2の支持領域(22)を備え、第2の支持領域(22)は、展開状態において半径方向外側に延在する、少なくとも3つの外側支持アーム(18)と、を備える。各支持アーム(18)は、第1の支持領域(20)と第2の支持領域(22)との間に、軸線方向における支持アーム(18)のテーパ部分として形成された可撓性領域(24)を備え、および/または、各支持アーム(18)は、近位端(16)に向かってテーパが付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁用のステント器具(10)であって、
軸線方向に延在するメッシュ形状の本体(12)であって、オリフィスに嵌合するように構成され、前記本体(12)の近位端(16)から遠位端(17)までの通路を提供するための内側チャネル(15)を画定する本体(12)と、
本体(12)の遠位端(17)から近位端(16)に向かって本体(12)から延在する少なくとも3本の外側支持アーム(18)であって、各支持アーム(18)は、遠位端(17)に第1の支持領域(20)を、および、近位端(16)に第2の支持領域(22)を備え、第2の支持領域(22)は、展開状態において半径方向外側に延在する外側支持アーム(18)と、
を備え、
各支持アーム(18)は、第1の支持領域(20)と第2の支持領域(22)との間に、軸線方向における支持アーム(18)のテーパ部分として形成された可撓性領域(24)を備え、および/または、
各支持アーム(18)は、近位端(16)に向かって先細になっている、ステント器具(10)。
【請求項2】
本体(12)は、心臓弁の弁輪(26)に適合するように構成され、可撓性領域(24)は、弁輪(26)に順応するように構成され、第1の支持領域(20)は、弁輪(26)の心室部分(28)に順応するように構成され、および/または、第2の支持領域(22)は、弁輪(26)の心房部分(30)に順応するように構成される、請求項1に記載のステント器具(10)。
【請求項3】
本体(12)は、本質的に管状または円筒状の形状を備える、請求項1または2に記載のステント器具(10)。
【請求項4】
各支持アーム(18)は閉ループとして形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項5】
閉ループは、本体(12)の近位端(16)を越えて延在し、かつ/または、丸みを帯びたおよび/または先細の近位端を備える、請求項4に記載のステント器具(10)。
【請求項6】
閉ループは、支持アーム(18)の長手方向断面において凸部分(32)および凹部分(34)を有するプロファイルを画定し、凸部分(32)は第1の支持領域(20)を画定し、凹部分(34)は好ましくは凸部分(32)に隣接する、請求項4または5に記載のステント器具(10)。
【請求項7】
各支持アーム(18)は、第1の支持領域(20)と第2の支持領域(22)との間に可撓性領域(24)を備え、凹部分(34)は可撓性領域(34)を画定する、請求項6に記載のステント器具(10)。
【請求項8】
凸部分(32)の半径方向最外点の半径方向延長部は、凹部分(34)の半径方向最内点よりも大きく、および/または、凸部分(32)の半径方向最外点は、凹部分(34)の半径方向最内点と第2の支持領域(22)の近位先端部との間にある、請求項6または7に記載のステント器具(10)。
【請求項9】
プロファイルは、軸線方向および/または半径方向に逆S字形、正弦波形、N字形、またはM字形として形成される、請求項6~8のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項10】
各支持アーム(18)は、第1の支持領域(20)の湾曲部によって形成された少なくとも1つの連結アーム(36)を介して本体(12)に連結されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項11】
各支持アーム(18)は、2本の連結アーム(36)を介して本体(10)に連結されている、請求項10に記載のステント器具(10)。
【請求項12】
湾曲部は、90°を超える角度を具備し、および/または、丸みを帯びた肩部を画定し、前記肩部は、好ましくは遠位半径(46)および近位半径を有し、遠位半径(46)は近位半径(48)よりも大きい、請求項10または11に記載のステント器具(10)。
【請求項13】
奇数本の支持アーム(18)、好ましくは5、7、もしくは9本の支持アーム(18)、または多数/2の倍数または3の倍数の本数の支持アーム(18)を備え、前記支持アーム(18)は三尖弁または僧帽弁に適合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項14】
6本の支持アーム(18)を備え、これら支持アームは三尖弁用に構成されている、請求項13に記載のステント器具(10)。
【請求項15】
支持アーム(18)間の円周方向間隔は非対称もしくは対称であり、および/または、三尖弁もしくは僧帽弁に適合される、請求項1~14のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項16】
本体(12)のメッシュ形状は、液滴形状、菱形形状、または本質的に楕円形状を具備する、請求項1~15のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項17】
本体(12)のメッシュ形状は、互いに直接接続されるか、または支柱(13)を介して接続される複数の菱形形状セル(14)の格子によって形成され、前記セル(14)は、好ましくはサイズおよび/または形状が本質的に等しい、請求項1~16のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項18】
本体(12)の近位端(16)の一部分(38)は、半径方向外側に延在する、請求項1~17のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項19】
本体(12)の近位端(16)の一部分(38)は、本体(12)の軸線方向に対して70°~110°で延在する、請求項18に記載のステント器具(10)。
【請求項20】
一部分(38)は、複数の第2の閉ループによって画定され、これら閉ループは、好ましくは遠位端(17)に配置された支持アーム(18)に対して円周方向に互い違いに配置される、請求項18または19に記載のステント器具(10)。
【請求項21】
一部分(38)は、ステント器具(10)を送達システムに固定するための少なくとも1つのアイレット(44)、好ましくは少なくとも2つのアイレット(44)を備え、少なくとも1つのアイレット(44)の各々は、それぞれの第2の閉ループに、好ましくは2番目もしくは3番目の第2の閉ループごとに、および/または、第2の閉ループの近位端(16)もしくは半径方向最外端に配置される、請求項20に記載のステント器具(10)。
【請求項22】
本体(12)および複数の支持アーム(18)は、単一ピースとしておよび/またはワイヤフレームとして形成される、請求項1~21のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項23】
本体(12)または本体(12)によって画定された通路は、29mm~36mm、好ましくは約30mmまたは約35mmの内径を具備する、請求項1~22のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項24】
支持アーム(18)の少なくとも第2の支持領域(22)および/または外側本体(12)の近位端(16)は、支持アーム(18)と本体(12)との間および/または支持アーム(18)間にカフを形成するように液体不透過性もしくは半不透過性材料のフォイルで覆われている、請求項1~23のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項25】
本体(12)は、弁アセンブリを受け入れるための少なくとも2つもしくは少なくとも3つの固定手段または窓(40)を備えるか、あるいはメッシュ形状本体(12)のセルは、弁アセンブリを受け入れて固定するように構成される、請求項1~24のいずれか一項に記載のステント器具(10)。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載のステント器具(10)と、内側チャネル(15)内および/または本体(12)の近位端(16)もしくは遠位端(17)に配置され、かつ、固定手段もしくは窓(40)によって、またはメッシュ形状本体(12)の1つもしくは複数のセルへの直接固定によって本体(12)に固定される弁アセンブリと、を備える人工心臓弁。
【請求項27】
三尖弁または僧帽弁を置換するように構成された、請求項26に記載の人工心臓弁。
【請求項28】
折り畳まれた状態にある請求項1~25のいずれか一項に記載のステント器具を備える送達システム。
【請求項29】
三尖弁または僧帽弁を置換するための方法であって、
請求項1~25のいずれか一項に記載のステント器具を、送達システム内に折り畳まれた状態で提供するステップと、
ステント器具を、本体の遠位端が心室部分にあり、本体の近位端が心房部分にあり、本体および支持アームが弁輪を跨ぐように、前記送達システムを介して患者の三尖弁または僧帽弁領域内に経皮的に導入するステップと、
ステント器具を、可撓性領域が弁輪に順応し、外側支持アームの第2の支持領域が心房側に順応するように拡張することによって、ステント器具を展開するステップと、
を備える方法。
【請求項30】
請求項1~25のいずれか一項に記載のステント器具を製造する方法であって、
形状記憶金属材料から本体および支持アームをレーザ切断するステップと、
本体および支持アームの所定の形状を提供するように、本体および支持アームを熱成形するステップと、
本体および支持アームを折り畳むステップと、
を備える方法。
【請求項31】
ステント器具は、単一ピースから作製される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント器具、人工心臓弁、および送達システムを含む、欠陥のある房室心臓弁、特に三尖弁を置き換える分野、ならびにそのようなステント器具を製造する方法、およびそのようなステント器具を使用して三尖弁または僧帽弁を置き換える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物における血液循環は、主に心臓のポンピング機能によって駆動される。そのような心機能は、組織が十分に灌流されることを確実にするためだけでなく、組織を通過した後の流出血液の脱炭素化および再酸素化を提供するためにも提供される。ヒトの心臓は、2つの心室、左心室および右心室を備え、これらはそれぞれ、呼吸機能を提供し、血液を酸素化するために、大動脈を介して血管系を通り、肺動脈を介して肺系を通って血液を送り出す。前記心室の充填は、肺静脈および大静脈にそれぞれ接続された対応する左心房および右心房によって可能にされる。
【0003】
心房および心室の適切な機能を提供するために、ヒトの心臓は4つの心臓弁を有する。これらの弁のうちの2つは房室弁と呼ばれ、すなわち心房と心室との間の接合部に位置する。三尖弁は、右心房と右心室との間に位置する。二尖弁としても知られる僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置する。他の2つの弁は、心室と血管系との間に配置され、半月形状を含む。大動脈弁は大動脈から左心室を分離し、肺動脈弁は肺動脈から右心室を分離する。
【0004】
心房および心室の充満および排出は、拡張期および収縮期の間に高度に同期した計画で続く。しかしながら、心機能の効率は、心筋組織の複雑な神経支配だけでなく、房室弁の封止効率にも依存する。そのような封止効率は、様々な病理学的状態に起因して、例えば三尖弁の機能的病変に起因して損なわれる可能性があり、この病変は、捉えにくい、深刻な、および三尖弁輪の著しい拡張に続発する可能性がある。よりまれには、この病態は、リウマチ性または感染性の弁膜疾患、または狭窄もしくは漏出性のバイオプロテーゼの変性に起因する。
【0005】
機能不全の三尖弁は、三尖弁逆流につながる可能性があり、これは一般的な医学的問題であり、重大な課題に関連する。例えば、三尖弁逆流症に罹患している患者は、一般に、慢性的に機能不全の体液貯留に罹患しており、低い心拍出量を有する。さらに、弁輪の直径は、右心室と右心房との間の解剖学的ランドマークが徐々に失われ、それによって三尖弁の治療、修復および交換を損ない、複雑にするように、40mmを超えて延在する場合がある。
【0006】
より一般的には、特に経皮経路または低侵襲経路による、欠陥のある心臓弁の置換技術が確立される。しかしながら、そのようなシステムおよび技術は、主に僧帽弁の交換を目的としており、三尖弁の交換に直接適用可能ではない。とりわけ、右心室は固有の解剖学的構造を備える。三尖弁輪は、本質的にわずかに線維性である。その寸法は、僧帽弁輪と比較して一般に薄い構造を有するが、より卵形である。さらに、三尖弁の寸法は、僧帽弁よりも実質的に大きい。これらの差は、三尖弁輪が40mmを超える、例えば最大50mmを超える直径まで拡張可能であるのに対して、僧帽弁輪の寸法は病理学的条件下で約30から35mmであるように、体積状態および肺圧の変動を伴う右房室解剖学的構造の形状および寸法の構造変化を引き起こす病態生理学的状態の結果としてさらに顕著なる可能性がある。前記差は、機械的安定性と人工装具周囲の漏れの傾向の両方に直接影響し、文献の主張とは対照的に、僧帽弁置換技術は典型的には三尖弁には適用できない。
【0007】
大動脈弁に関する臨床診療は現在、大動脈弁が経皮弁に日常的に置き換えられるようにはるかに進歩している。経皮的僧帽弁のためのバイオプロテーゼモデルも現在臨床評価の過程にある。対照的に、三尖弁置換のための経皮的同所性、すなわちin situバイオプロテーゼを含む臨床治療は、開発の非常に初期段階にある。三尖弁置換もまた複雑であり、それは、その身体部位が一般に、人工装具器具を定位置に保持する身体組織容積を欠いているためである。様々な技術は、固定を容易にするために円錐形プラグ形状を有する人工装具器具に基づいている。それらは一般に、右房室部位で解剖学的構造をさらに歪める可能性がある外向きの半径方向の力を及ぼす。三尖弁の弁尖を使用する代替的な固定ベースの技術は、三尖弁の限られた部分にのみ適合され、同時に30mmを超えるプロファイル高さを必要とし、これはかさばり、脱落のリスクを高め、血流を損なう可能性がある。
【0008】
例えば、三尖弁用の人工弁が国際公開第2016/098104号から知られており、これは、三尖弁の生来の弁尖に係合する剛性心室安定器を有する可撓性本体を含む。そのような配置は、三尖弁の解剖学的構造の支持および適応性が限られており、生来の弁尖のクランプを必要とし、これは残りの解剖学的ランドマークにとって有害となり得る。
【0009】
さらに、国際公開第2017/089179号は、三尖房室弁を交換するためのアセンブリを開示しており、支持アームまたは固定要素がメッシュ本体の中央部分から延在する。そのような配置は、中央部分での固定を必要とする。
【0010】
したがって、上記の問題を低減し、三尖弁の生来の解剖学的構造の歪みなしに改善された固定を提供する、三尖弁の置換に特に適合された器具、システム、および方法が必要とされている。そのような器具またはシステムはまた、僧帽弁置換のための支持を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2016/098104号
【特許文献2】国際公開第2017/089179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、臨床診療にとって望ましくない上記の観察の少なくとも一部を回避する人工心臓弁用のステント器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様では、軸線方向に延在するメッシュ形状の本体を備える人工心臓弁用のステント器具が提案され、本体は、オリフィスに嵌合するように構成され、本体の近位端から遠位端への通路を提供するための内側チャネルを画定する。ステント器具は、さらに、本体から、すなわち、メッシュ形状の本体の遠位端から近位端に向かって延在する少なくとも3本の外側支持アームを備え、各支持アームは、遠位端に第1の支持領域を、および、近位端に第2の支持領域を備え、それらの間に可撓性領域を備える。各支持アームの可撓性領域は、軸線方向における支持アームのテーパ部分として形成され、各支持アームの第2の支持領域は、展開状態において半径方向外側に延在する。
【0014】
したがって、ステント器具の本体は、例えば三尖弁または僧帽弁の弁輪によって提供される開口部に収容され得る支持構造体またはコアフレームを形成する。本体は、弾性ではないか、または撓みを許容しないが、本体およびステント器具全体が折り畳まれた状態と拡張された状態または展開された状態との間で移行することができるように変形可能であると理解されるべきである。例えば、ステント器具は、形状記憶金属、例えば、編組されたニチノールから形成されてもよく、それにより、本体の形状が、例えば、熱形成によって予め規定されてもよく、かつ/または、本体の剛性が、好ましくは、例えば、0°Cと体温との間の温度に依存して、かつ/または温度間隔で変化してもよく、一方、本体の寸法が変化してもよい。
【0015】
対照的に、可撓性領域は、第2の支持領域が、例えば、可撓性領域を介して第1の支持領域に対して曲げられ、偏向され、折り畳まれ、または枢動可能となるように、弾性であるか、または偏向を可能にするものとして理解されるべきである。
【0016】
さらに、メッシュ形状は、例えば、格子として、または互いに直接または支柱を介して接続された複数の多角形または楕円形セルとして形成されてもよい。例えば、メッシュ形状は、閉じた構造を形成するように互いに横方向に配置され、本質的にハニカム構造を形成するように軸線方向に複数、例えば2つ、3つ、またはそれ以上の多角形を具備する複数の多角形から構成されてもよい。軸線方向における複数の多角形またはセルは、好ましくは等しい支柱長さを有する対応する支柱を介して接続されてもよい。好ましくは、本体のメッシュ形状は、互いに直接接続された、または支柱を介して接続された複数の菱形形状セルの格子によって形成され、セルのサイズおよび/または形状は本質的に等しいことが好ましい。菱形形状は、軸線方向および円周方向に実質的に等しい応力および歪み抵抗を提供するという利点を有し、製造中に加えられる変形および歪みの量が低減されて本体の安定性を高めることができる。
【0017】
展開状態では、本体の軸線方向または長手方向は本質的に矢状に配向され、半径方向は本質的に横方向に配向される。したがって、近位および遠位という用語は、ヒトの心臓内の血流方向を指すように、解剖学的意味で理解されるべきである。換言すれば、近位端は、心房(「心房部分」)内に展開状態で配置されたステント器具の末端を指してもよく、一方、遠位端は、三尖弁および僧帽弁の心室(「心室部分」)内に展開状態で配置されたステント器具の末端をそれぞれ指してもよい。したがって、内側チャネルまたは通路はまた、血液が最初にステント器具の「心房部分」を通過するその軸線に沿って前記通路を通って心房から心室に向かって流れることができるように、同じ方向に、すなわち本体の近位端から遠位端に向かって配向される。
【0018】
少なくとも3つの支持アームを設けることは、例えば2本の支持アームと比較して固定の安定性が改善されるという利点を有し、その結果、展開時にステント器具が適切に支持されることができる。支持アームは、遠位端でステント本体から、すなわち展開時に本体の「心室部分」から延在し、近位端、すなわち「心房部分」に向かって延在する。したがって、本体からの延長部は、支持アームの各々がその遠位端で本体から始まることを可能にし、したがってその遠位端でのみ本体に取り付けられる。
【0019】
したがって、支持アームの各々は、「心室部分」において本体の自由端の片側のみで支持される。その概念は、例えば支持アーム全体を通って延在する適合可能なばね力を提供することによって、改善された支持機能を保証するだけでなく、本体の中央部分での中央固定のための任意の要件の省略も可能にする。それにより、支持アームは、改善された力分布を提供することによって、弁および弁輪の解剖学的構造に対する改善された適合を示すことができる。さらに、可撓性領域と共にこのような配置は、改善された可撓性を確保し、第2の支持領域が半径方向外側方向の撓みに起因して解剖学的構造により良好に順応することを可能にする。したがって、支持アーム構成および可撓性領域の提供は、第1の支持領域と第2の支持領域との間の改善された相互関係または相互作用を提供する。
【0020】
代替的に、または可撓性領域に加えて、各支持アームは、近位端に向かってテーパが付けられてもよい。換言すれば、各支持アームのテーパ部分は、例えば、ステント本体の遠位端から、可撓性領域から、または、近位先端部、すなわち、それぞれの支持アームの第2の支持領域において開始して設けられてもよい。テーパは、本質的に三角形または円錐形状として提供されてもよく、近位先端部に向かって連続していてもよく、または近位先端部に丸みを帯びた部分によって切り取られていてもよい。例えば第1の支持領域の後に開始する連続的なテーパは、製造中に加えられる歪みがより少なく、それによって支持アームのある程度の可撓性を維持または提供しながら安定性を高めることができるという利点を有する。さらに、この特徴は、支持アームのもつれ、絡み合い、かみ合い、ねじれ、および/またはひねりが効果的に回避されるように、送達システムにおけるステント器具の装填中のもつれを防止することができる。同時に、支持アームが弁および弁輪の解剖学的構造に順応するように、ばね機能が第2の支持領域と第1の支持領域との間に維持される。
【0021】
加えて、遠位端からの支持アームの延長は、例えば中央または中央部分での別個の固定がもはや必要とされないため、改善された安定性のみを可能にする。さらに、展開前、すなわち、ステント器具を拡張する前の所望の解剖学的位置におけるステント器具の挿入および位置決めは、遠位部が最初に位置決めされ、その後に、ステント器具が近位端に向かって拡張されることを可能にすると同時に、送達システムを引き出すことが容易になる。同じトークンによって、この配置は、支持アームが中央または中央領域に設けられるときはいつでも制限され得る展開中のさらなる調整を可能にする。
【0022】
ステント器具は、房室心臓弁の様々な領域に展開されるように適合されてもよいが、メッシュ形状本体は、好ましくは、心臓弁の弁輪に嵌合するように構成され、可撓性領域は弁輪に順応するように適合されてもよい。第1の支持領域は、弁輪の心室部分に順応するように適合されてもよく、および/または第2の支持領域は、弁輪の心房部分に順応するように適合されてもよい。
【0023】
したがって、ステント器具は、それぞれの弁の弁輪に沿って三尖弁または僧帽弁に嵌合することができる。好ましくは、各支持アームの第2の支持領域、すなわち近位端は、半径方向外側に延在する部分が弁輪の心房部分に順応するように配向されることができるように、弁輪の心房部分に配置されるように構成される。この形状は、第2の支持領域の心房部分への接触面が増加されるように、支持アームの近位端の撓みを可能にする可撓性領域によって促進される。同じ意味で、各支持アームの第1の支持領域、すなわち遠位端は、好ましくは、ステント器具がその可撓性領域によって弁輪の最も半径方向内側に配置された部分に配置され、支持アームの対応する支持領域によって弁輪の両端で支持されるように、弁輪の心室部分に配置されるように構成される。したがって、可撓性領域は、好ましくは、弁輪の形状に適合するように構成され、したがって、第2の支持領域に必要な可撓性を提供するだけでなく、弁輪の解剖学的構造に順応するように可撓性も具備する。
【0024】
それにより、ステント器具は、房室弁および対応する弁輪の幾何学的形状または解剖学的構造に対する最適な適合を提供する。さらに、各単一の支持アームに対して2つの支持領域を確立することによって、ステント器具の本体は、クランプ力を及ぼすことなく、かつ解剖学的構造を把持することなく、所定の位置にしっかりと保持される。組織を穿刺してステント器具を固定することを可能にするアンカー機構は必要とされない。したがって、病態生理学的弁輪および房室弁の解剖学的構造は(さらに)歪まず、さらに損なわれず、残りの心機能はさらに損なわれない。支持アームを解剖学的構造に適合させることはまた、ステント器具のメッシュ本体が可撓性である必要がなく、本質的に剛性の構造として形成されてもよく、それにより、例えば、弁アセンブリに対してさらなる安定性を提供することを可能にする。同時に、本発明の概念は、ステント器具が半径方向外側に向けられた力によって単に固定されるだけではないので、ステント器具の本体がより小さい寸法を呈することを可能にする。
【0025】
弁または弁輪の幾何学的形状または解剖学的構造への適合は、三尖弁のより複雑な解剖学的構造の観点から特に有利である。しかしながら、任意のそのような構成はまた、僧帽弁ステント器具の機能性にも有利に寄与するので、僧帽弁置換ステント器具として適用されてもよい。
【0026】
ステント器具の本体は、さらに、本質的に管状または円筒状の形状を呈してもよい。そのような幾何学的形状は、より複雑でないおよび/またはより堅牢な弁アセンブリがステント器具に実装されることができるという利点を有する。それでも、本体の向きまたは位置決めが容易になり、解剖学的構造の対応する形状に依存しないため、より汎用性の高いステント器具が保証される。さらに、より小さい曲率を有する弁輪の領域での改善された支持が可能にされ、血流を改善するための内側チャネルの容積を最大にする。
【0027】
接触面を増やし、材料の量を減らし、支持アームの可撓性または適応性を維持するために、各支持アームは、有利には閉ループとして形成されてもよい。各支持アームは、一般に、例えば軸線方向に変化する厚さを有し、先細またはくびれ部分を有する単一の延在要素として形成されてもよいが、閉ループは、第1および第2の支持領域によって提供されるさらに大きな接触領域または表面で安定性を高めることを可能にする。例えば、閉ループは、可撓性領域と比較して、遠位端および/または近位端でより大きい幅を有することができる。同様に、閉ループは、典型的には、可撓性領域および第2の支持領域のみが閉ループによって形成されるように、可撓性領域から遠位の位置に設けられてもよい。あるいは、閉ループは、第1の支持領域から遠位であるが、本体の遠位端と支持アームの第1の支持領域との間の位置に設けられてもよい。
【0028】
好ましくは、閉ループは、本体の近位端を越えて延在する。これは、丸みを帯びた(ほとんどの)またはテーパ状の近位端を具備することができる。本体の近位端を越えた延長は、心房または心室のそれぞれの領域に突出する潜在的にかさばるステント構成要素を減らすために、本体の寸法を最小限に必要なサイズに保つことができるという利点を有する。これにより、弁輪の心房部分により大きな接触領域が設けられることができ、したがって支持をさらに改善することができる。
【0029】
同じ意味で、丸みを帯びたまたはテーパが付けられた近位端は、例えば心房領域の組織を潜在的に穿刺する鋭い表面縁部または先端部を回避し、同時に、例えば尖ったまたはスパイクされた近位端と比較して、より大きな接触面積を提供する。さらに、丸みを帯びた形状は、閉ループの安定性を高め、ループ要素の分離または破損のリスクを低減する。例えば、閉ループは、対応する解剖学的構造に対する必要な適応性または順応性を確実にするために、典型的には近位端において本質的に花弁形状を有してもよい。
【0030】
閉ループは、支持アームの長手方向断面に凸部分および凹部分を有するプロファイルをさらに画定することができ、凸部分は第1の支持領域によって画定される。好ましくは、凹部分は凸部分に隣接している。
【0031】
例えば、遠位端に配置された第1の支持領域は、弁輪の心室部分に順応し得る丸みを帯びた形状として形成されてもよく、凹部分は、少なくとも部分的に可撓性領域によって形成されてもよい。可撓性領域またはテーパ部分は、例えば、凹部分がテーパ部分と少なくとも部分的に一致するように、特に凸部分の変曲点から始まる凸部分の近位部分に設けられてもよい。それにより、凹部分は、ある程度の可撓性を含むことができ、これにより、例えば環状解剖学的構造への順応および近位端の偏向する第2の支持領域との相互作用がさらに容易になる。
【0032】
さらに、凸部分の半径方向最外点の半径方向延長部は、凹部分の半径方向最内点よりも大きくてもよく、および/または凸部分の半径方向最外点は、凹部分の半径方向最内点と第2の支持領域の近位先端部との間に半径方向に配置されてもよい。
【0033】
換言すれば、第2の支持領域の近位先端部は、各支持アームの最大半径方向延長部を有することができ、第1の支持領域は、凸部分に直接隣接する凹部分を越えて延在するように配置される。したがって、支持アームの円錐形または円錐台形の延長部ではなく、肩部が凸部分および隣接する凹部分によって形成されてもよく、これにより、支持アームのばね機能が改善され、弁輪および心室の解剖学的構造への適合が改善される。さらに、そのような構成は、各支持アームの支持領域がより広い延在部を有し、それにより、弁輪領域と相互作用する大きな表面積が展開状態において達成され、したがって、ステント器具に作用する力が、支持アームを介してより良好に拡散されることが可能になるようにする。
【0034】
あるいは、可撓性領域は、凸部分と少なくとも部分的に重なってもよく、例えば、凸部分の近位端で始まり、凹部分の遠位端を越えて延在してもよい。言い換えると、可撓性領域は、第1の支持領域と少なくとも部分的に重なってもよく、第2の支持領域の半径方向外側に延在する部分を超えて延長しなくてもよい。
【0035】
好ましくは、プロファイルは、軸線方向および/または半径方向に反転したS字形、正弦波形、N字形、またはM字形として形成される。そのような形状は、変化する領域間のシームレスな移行を可能にし、三尖弁または僧帽弁の解剖学的形状、特に対応する弁輪への最適な適合を可能にする。さらに、そのような形状は、第2の支持領域によって形成され得る第2の凸部分を備えてもよい。ステント器具は、付勢され、したがって、弁輪内に配置されてもよく、好ましくはクランプ力または把持力を及ぼすことなく、支持アームの支持領域によって形成される対応する凸部分によって弁輪の両端で支持されてもよい。
【0036】
さらに、凸部分および凹部分は、対称的なプロファイルを示す必要はなく、異なる曲率を有していてもよく、例えば、一方または両方の凸部分は、非対称的な輪郭を有していてもよく、ステント器具の「心室部分」または遠位端における曲率は、例えば、凹部分の曲率および/またはステント器具の「心房部分」または近位端の曲率と比較して、より小さくてもよく、またはより急であってもよい。そのようなより急な湾曲、例えばN字形またはM字形の湾曲に似た湾曲は、例えば、限定された組織容積の場合であっても、ステント器具が弁輪の心室部分に固定されることを容易にすることができ、一方、「心房部分」または近位端での、例えばS字形に似た、より大きな湾曲は、より大きな心房領域または部分を覆って支持体のより良好な分布および/または改善された封止を提供するように予測されることができる。
【0037】
上記の特定の形状は、閉ループとして形成された支持アームを有する構成を考慮して説明されているが、これらの形状は、閉ループ構成に限定されず、例えば軸線方向に変化する厚さを有する単一の延長要素として形成された支持アームを有する実施形態においても実施されてもよい。
【0038】
各支持アームは、第1の支持領域の湾曲部によって形成された少なくとも1つ、好ましくは2本の連結アームを介してメッシュ本体に連結されてもよい。例えば、そのような湾曲部は、ステント器具の本体の遠位端から生じる凸部分によって形成されてもよい。しかしながら、それはまた、そのような凸状の第1の支持領域の存在とは無関係の湾曲部として形成されてもよい。換言すれば、各連結アームは、ステント器具の本体の延長部として設けられ、典型的には、連続的な、例えば単一ピース構造を形成するように各支持アームの第1の支持領域と一体的に形成される。湾曲は、鋭い縁部が回避されることが可能であるという利点を有し、それにより、ステント器具の構造的安定性、および、各アームとステント器具の本体との間の接続が改善される。加えて、湾曲部は、心室へのステント器具の部分の延長を減少させるように、心室部分へと延在する本体および支持アームの両方の遠位端がより小さく寸法付けられることが可能であることを保証する。
【0039】
さらに、湾曲部は、房室弁の解剖学的構造に向かって支持アームを付勢するばね力、剛性の低い支持体、および解剖学的構造に対するより高い適応性が提供されるように、弾性要素を表すことができる。湾曲部は、必要なばね力に適合させることができる。
【0040】
有利には、各支持アームは、2本の連結アームを介して本体に連結される。単一のアームによる連結は、材料の量を減らすことができ、構造的安定性に関して十分となり得るが、2本の連結アームの提供は、例えば弁輪の心室部分との第1の支持領域の接触面および力分布を増加させる。さらに、そのような「2本の連結アーム」の概念は、ステント器具の本体に2箇所の固定点または固定点を設けることによって、支持アームの回転または横方向の撓みを防止することができる。
【0041】
連結アームの湾曲は、90°を超える角度を示してもよく、かつ/または丸みを帯びた肩部を画定してもよく、前記肩部は、好ましくは、例えばステント本体の遠位端に遠位または第1の半径を有し、かつ例えば肩部の近位部分に第2または近位半径を有し、これは遠位半径の近位にあってもよく、かつ/または遠位半径から半径方向および/または横方向に離間していてもよく、肩部の遠位半径は肩部の近位半径よりも大きい。上記で概説したように、より広い肩部は、例えば凸部分および任意選択的に隣接する凹部分によって形成され得る湾曲部の角度と共に、支持アームが弁輪領域および心室の解剖学的構造により良好に適合することができ、ステント器具および支持アームに作用する力が、例えば第2の支持領域との改善された相互作用によって確立される改善されたばね機能を提供することによって、より良好に拡散され得るという利点を有する。さらに、丸みを帯びた肩部の遠位端におけるより大きい半径は、支持アームとステント本体との間に生じる破断の可能性を低減し、それにより、ステント器具の安定性および堅牢性を高める一方で、丸みを帯びた肩部の近位端におけるより小さい半径は、弁輪領域のための十分な支持を維持する。
【0042】
さらに、湾曲部または肩部の特定の構成は、心室部分に存在する生来の腱索との絡み合いの可能性が増加し、その結果、固定の改善、したがってステント器具の安定性が達成され得ることを提供する。
【0043】
したがって、本体から軸線方向または半径方向外側の方向に延在する代わりに、湾曲部は、追加の丸みを帯びた部分または最初の凹部分を形成するように、最初に半径方向内側に延在してもよい。これは、第1の支持領域によって対応する解剖学的構造にさらに低い力が加えられることができるように、さらにより柔軟な支持が提供されるという利点を有する。加えて、鋭い縁部を避けることによって、ステント器具の本体からの支持アームの破損または切断の危険性がさらに低減され、組織損傷が本質的に防止される。
【0044】
上述したように、少なくとも3本の支持アームを設けることにより、例えば2本の支持アームと比較して固定の安定性を向上させることができ、その結果、展開時にステント器具が適切に支持されることができる。ステント器具の開口部または弁輪への支持をさらに増大させ、解剖学的構造に対するさらなる適応性を提供するために、ステント器具は、多数または複数の2つおよび/または3つの支持体、例えば、三尖弁または僧帽弁に適合された4本、6本または8本のアームを含むことができる。
【0045】
あるいは、不均一な数の支持アーム、好ましくは5、7、または9本の支持アームが設けられることもできる。それにより、ステント器具の本体内に挿入される弁輪領域および/または弁アセンブリの解剖学的構造に対する改善された適応性が保証されることが可能となる。
【0046】
好ましくは、ステント器具は、6本の支持アームを備えてもよい。6本の支持アームを設けることにより、例えば、3つの尖頭または弁尖を生来備える三尖弁のための構成を提供することができ、支持アームの各対は、それぞれの弁尖を備える三尖弁の領域に対応することができる。したがって、6本の支持アームは、三尖弁に対するステント器具の安定性および適応性の両方を高めることができる。
【0047】
6本の支持アームはまた、元々2つの弁尖を備える二尖弁としても知られる僧帽弁に適している場合がある。3つの支持アームは、それぞれの弁尖を備える僧帽弁の領域に対応するように配置されてもよい。
【0048】
あるいは、ステント器具はまた、例えば、4本の支持アームを備えてもよく、支持アームは、三尖弁の形状に順応するように非対称に配置される。同じ意味で、4本の支持アームはまた、僧帽弁置換のための構成を容易にすることができ、支持アームの各対は、それぞれの弁尖を備える対応する僧帽弁領域に関連付けられる。単一の対の支持アームの代わりに、ステント器具はまた、例えば、僧帽弁のための8本の支持アーム、または、例えば、三尖弁のための9本の支持アームを備えてもよく、それに応じて、4本および3本の支持アームを各生来の弁尖にそれぞれ関連付ける。
【0049】
支持アーム間の円周方向間隔は、三尖弁または僧帽弁に適合されてもよく、および/または非対称または対称であってもよい。
【0050】
上述したように、例えば、3本の支持アームは、例えば本質的に等距離の間隔を提供することによって、三尖弁のそれぞれの生来の弁尖に関連付けられるように配置されてもよいが、例えば、僧帽弁構成の場合、例えば、単一の支持アームが第1の生来の弁尖に関連付けられ、一対の支持アームが第2の弁尖に関連付けられるように、非対称に配置されてもよい。したがって、前記配置は、例えば弁輪の解剖学的構造に依存してもよく、さらに、使用される弁アセンブリおよび/またはステント器具の向きに依存してもよい。
【0051】
ステント器具のさらなる構造的安定性を提供するために、本体のメッシュ形状は、菱形形状、または液滴形状、または本質的に楕円形状を呈することができる。したがって、セルはまた、ステント器具の本体の拡張および崩壊を容易にし得る多角形またはハニカム形状の代わりに、丸みを帯びた形状を備えてもよい。さらに、ステント器具が展開されるとき、半径方向外側方向への付勢力のより均一なまたはバランスのとれた分配が可能にされる。したがって、ステント本体は、ステント器具に軸線方向に作用する引張力または圧縮力に起因する構造的変化の影響を受けにくい場合がある。液滴形状または本質的に楕円形状は、セルおよび/または支柱間のよりシームレスな移行を可能にし、したがって鋭い縁部を回避する。
【0052】
ステント器具の本体の心房への延長を減少させるために、ステント本体の近位端の一部が半径方向外側に延在してもよい。好ましくは、本体の近位端の前記一部は、本体の軸線方向に対して70°~110°で延在する。
【0053】
心房内に延在する本体の近位端の嵩高性が低減される。また、ステント器具の流体密封安定性および支持安定性は、例えば、本体の近位端が支持アームの第2の支持領域の近位端に隣接するかまたは接触することを予測することによって高められる。例えば、本体の近位端は、前記近位端が弁輪の心房部分と本質的に整列するように、ステント器具の長手方向軸線に対して本質的に垂直な角度で偏向されてもよい。さらに、例えば、弁アセンブリの挿入は、このように、面取り部を提供することによって容易にされ、一方、減少したプロファイルが提示され、血流が妨げられないか、または少なくとも著しく妨げられない。
【0054】
ステント本体の近位領域の前記一部は、さらに好ましくは、好ましくは遠位端に配置された支持アームに対して円周方向に互い違いに配置された複数の第2の閉ループによって画定される。したがって、例えば、支持アームの閉ループと第2の閉鎖ループとの重なりが、一方では回避され、他方では、近位端によって支持される弁輪の心房部分の面積またはサイズが増加される。第2の閉ループは、本体の近位端の一部と共に、例えば、本体の近位端における最終的なセルまたは支柱ラインの長さの1/4~1/2または1/3だけ半径方向外側に延在することができる。
【0055】
例えば、第2の閉ループは、典型的には、2つの支持アームの2つの隣接する第2の支持領域の遠位端に嵌合するように、例えば第2の支持領域と可撓性領域との間に嵌合するように、支持アームの閉ループよりも小さくなるように寸法決めされてもよい。別の例によれば、第2の閉ループは、それらが支持アームの閉ループと本質的に同等またはそれよりも大きくなるように寸法決めされてもよい。あるいは、第2の閉ループは、2つの支持アームの2つの隣接する第2の支持領域の間に配置されてもよい。そのような互い違いの構造は、支持アームの半径方向外側に延在する部分のうちの1つまたは複数が例えば弁輪の解剖学的構造に完全には順応しないという条件でさえ、ステント器具の「心房部分」においてステント器具のための十分な支持をさらに確実にすることができる。しかしながら、第2の閉ループはまた、遠位端に配置された支持アームに関して、部分的に円周方向に互い違いに配置されてもよく、または非互い違いに配置されてもよく、または本質的に重なり合って配置されてもよい。
【0056】
支持アームを本体の遠位端の延長部として画定することによって、高度の構造的および機械的安定性が保証される。
【0057】
半径方向外側に延在する本体の近位端の部分は、ステント器具を送達システムに固定するための少なくとも1つのアイレットをさらに備えてもよい。好ましくは、前記一部は、少なくとも2つのアイレットを備え、2つのアイレットは、ステント本体の半径方向の対向する端部に任意選択的に配置される。アイレットの各々は、それぞれの第2の閉ループに、好ましくは第2または第3の第2の閉ループごとに、および/または第2の閉ループの近位端または半径方向最外端に配置される。換言すれば、1つまたは複数のアイレットは、半径方向外側に広がる第2のループによって画定されるステント本体の近位先端部に配置されてもよい。固定を容易にするために、アイレットの各々は、固定および展開が容易にされ、アイレットと送達システムとの間の特定の相対的な向きを必要としないように、本質的に円形または丸みを帯びた形状を備えてもよい。
【0058】
さらに、本体および複数の支持アームは、単一ピースとして、および/またはワイヤフレームとして形成されてもよい。したがって、ステント器具の本体および支持アームは、同じ材料から形成され得るだけでなく、ステント器具が破損、脱落および/または製造誤差の影響を受けにくいように、接続部品なしで形成されてもよい。
【0059】
そのような実施形態により、ステント本体、支持アーム、メッシュの異なるセル、および支持アームの異なる領域は、連続的かつシームレスな移行によって連結されてもよい。したがって、本体アームおよび支持アームは、ステント器具の一体部品として形成されてもよく、ステント器具は、レーザ切断技術によって製造され得る単一ピースとして形成され、それにより、ステント器具の構造的完全性が大幅に改善される。
【0060】
生来の組織への固定をさらに改善するために、特に並進および/または回転におけるアセンブリの保持を改善するために、ステント器具は、国際公開第2017/089179号に開示されているような少なくとも1つの固定要素を備えてもよい。一実施形態では、固定要素は、「ラケット」または「ループ」または「タブ」の形態を有する。一実施形態では、固定要素はニチノール製である。固定要素は、8~10mm程度の高さおよび10~12mmの長さを有する。一実施形態では、これらの任意選択の固定要素のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の支持アーム、より具体的にはその可撓性領域に接合され、心房側でのみ開いている。本発明の一実施形態では、単一の固定要素が使用される。本発明の一実施形態では、2つの固定要素が対称的に配置される。
【0061】
ステント器具を病的な弁輪領域の解剖学的寸法に適合させ、可能な限り残りの生来の組織との有害な係合を回避するために、本体または本体によって画定される通路は、好ましくは29mm~36mm、好ましくは約30mmまたは約35mmの内径を具備する。そのような寸法はさらに、弁輪領域における展開および任意の潜在的なさらなる医療用途が容易にされるという利点を有する。
【0062】
本体および支持アームに加えて、ステント器具は、血液の漏出および/または逆流を防止するためのカフを備えてもよい。したがって、支持アームの少なくとも近位端、典型的には支持アームの第2の支持領域、および/または外側本体の近位端は、支持アームと本体との間および/または支持アームの間にカフを形成するように、液体不透過性または半不透過性材料のフォイルによって覆われてもよい。あるいは、そのようなフォイルは、支持アームと本体との間および/または支持アームの間にカフを形成するために、支持アームの少なくとも第1の支持領域および/または外側本体の遠位端を覆ってもよい。
【0063】
したがって、液体不透過性または半不透過性材料のフォイルは、典型的には、特に半透過性材料の場合に制限するか、または中央(管状)通路の外側のステント器具のそれぞれの要素を通る血液の通過または血液の逆流を少なくとも本質的に防止する被覆材料を表すことができる。したがって、それは、例えば、弁輪の解剖学的構造とステント器具の本体または内側チャネルとの間のゾーンまたは接触領域を封止する。そのようなフォイルまたはカバーは、展開部位におけるステント器具と周囲との間のシールを強化することができる。また、適切なフォイルの特徴、例えば適切な表面粗さによって、展開された器具の耐移動性を高めることができる。
【0064】
例えば可撓性シート状材料で作られたフォイルは、天然または合成材料で作られてもよい。例えば、材料は、ウシ、ブタ、ヒツジまたはウマの心膜などの天然組織を含むことができ、組織は、好ましくはグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドまたはトリグリシジルアミン(TGA)溶液または他の組織架橋剤を使用して化学的に処理される。あるいは、フォイルは、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のポリマー、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル、シリコーン、ウレタン、他の生体適合性ポリマー、ダクロン(R)、コポリマー、またはそれらの組合せおよび部分的組合せなどの合成材料を少なくとも含んでもよい。好ましい実施形態によれば、不透過性または半不透過性材料は、ポリエステル、ダクロン(R)織物、またはPTFEなどの低多孔性織物である。
【0065】
さらに、フォイル材料は、フォイル材料の特定の物理的特性を高める1つまたは複数の化学的または物理的プロセスによって改質されてもよい。例えば、親水性コーティングがフォイル材料に適用されて、フォイル材料の濡れ性およびエコー透過性を改善することができる。代替的または追加的に、フォイル材料は、内皮細胞付着、内皮細胞移動、内皮細胞増殖、および血栓症に対する耐性の1つまたは複数を促進または阻害する化学的部分で改質されてもよい。また、フォイル材料は、共有結合したヘパリンによって改質されてもよく、またはin situで放出される1つまたは複数の原薬によって、例えば制御放出モードによって含浸されてもよく、例えば制御放出配合物はフォイルの片面または両面にコーティングされる。
【0066】
フォイルによって確立されたカフは、ステント器具と生来の組織(例えば、弁輪)との接触領域での人工装具周囲の漏れが低減または防止され得るという利点を有する。好ましくは、フォイルは、ステント器具の「心房部分」または近位端上の弁輪の高さおよび本体の近位端を覆うように配置され、典型的には第2の支持領域も覆う。フォイルは、例えば、縫製、接着または熱成形によってステント器具に固定されてもよい。
【0067】
ステント器具の本体は、さらに好ましくは、ステント本体の管状通路内に弁アセンブリを受け入れて固定するための少なくとも2つまたは少なくとも3つの固定手段あるいは窓または部位を備える。そのような窓または部位は、例えば、ステント器具が追加の構成要素を必要としないように、セル間の対応する支柱またはメッシュ形状本体のセルを支持することによって形成されてもよい。前記窓または部位は、ステント器具の本体と一体的に形成される。あるいは、そのような窓はまた、セルの対応する部分によって形成されてもよい。
【0068】
窓は、好ましくは、それらの各々を分離する間隔で円周方向に配置される。それらは、弁アセンブリに対応する、すなわち、特定の弁、例えば三尖弁または僧帽弁の想定される弁尖配置に対応する。
【0069】
したがって、前記固定手段または窓は、弁アセンブリの配置時に外科医が支援されるように、バルブアセンブリの意図された領域を示すことができる。固定手段または窓は、例えば合成弁アセンブリの場合、ポジティブロックを提供するように、弁アセンブリと一致する幾何学的形状を提供することができ、または例えば縫合または縫合による、バイオプロテーゼ、例えば尖頭または弁尖の固定を可能にすることができる。
【0070】
あるいは、メッシュ形状本体のセルは、弁アセンブリがメッシュ形状本体の1つまたは複数のセルに直接取り付けまたは固定され得るように、弁アセンブリを受け入れて固定するように構成されてもよい。これは、弁アセンブリの取り付けおよび固定のためにより大きな可撓性が提供され、ステント本体の構成を適合させる必要なく、本体がより多様な弁アセンブリに適合されるという利点を有する。さらに、そのような構成は、複雑さを低減し、ステント本体およびステント器具の安定性を高めることができる。したがって、弁アセンブリの固定ならびにステント器具の製造および展開が容易にされることができる。
【0071】
別の態様によれば、上述のステント器具を含み、さらに、内側チャネル内および/または本体の近位端もしくは遠位端に配置され、固定手段または窓によってステント本体に固定されている弁アセンブリを備える人工心臓弁が開示される。例えば、人工心臓弁は、上述のように、例えば対応する弁アセンブリ、ステント本体の構成、および/または支持アームの構成によって、三尖弁または僧帽弁を置き換えるように構成されてもよい。
【0072】
例えば、人工心臓弁は、三尖弁プロテーゼとして構成されてもよく、弁アセンブリは3つの尖頭または弁尖で構成される。例えば、三尖弁プロテーゼはバイオプロテーゼを含むことができ、3つの尖頭は、好ましくは例えばグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドまたはトリグリシジルアミン(TGA)溶液または他の組織架橋剤で事前に処理された動物組織、例えばウシまたはブタの心膜から作製される。バルブアセンブリを形成する3つの尖頭または弁尖は、互いに接合するように構成され、例えば一般的な縫合技術によって、内側チャネル内の本体、またはステント本体の近位端もしくは遠位端に連結される。バイオプロテーゼは、右心房に到達し、収縮期に右心室の充填室に注入される血流の生理学的方向に機能する。
【0073】
また、人工心臓弁は、僧帽弁プロテーゼとして構成されてもよく、弁アセンブリは2つの尖頭または弁尖で構成される。
【0074】
さらに、弁アセンブリの尖頭または弁尖はまた、合成布で作製されてもよく、固定はまた、例えば溶接、接着、固定リンクまたはばね、および/または可撓性または部分的に回転可能な接触点によって提供されてもよい。合成弁尖の例は、米国特許第9,301,837号明細書に提供されている。
【0075】
別の態様によれば、折り畳まれた状態にある上記に記載のステント器具を備える送達システムが提案される。
【0076】
例えば、送達システムは、経皮送達および房室領域への展開を可能にするカテーテルまたはシースとして構成されてもよい。送達システムは、ステント器具を受け入れるための管腔を画定することができ、制御ストリングを具備することができ、制御ストリングは、制御ストリングの張力がステント器具を収縮させることができ、制御ストリングの緩みがステント器具を拡張させることができるようにステント器具と摺動可能に係合される。したがって、ステント器具は、管腔内に収容するための低プロファイル送達構成または折り畳み状態と、拡張構成または展開構成との間で再構成可能である。
【0077】
本発明はさらに、経皮的送達および房室領域への展開を可能にする送達システム(例えば、カテーテルまたはシース)と、上記のステント器具とを備える部品キットに関する。
【0078】
本発明はさらに、上述の折り畳まれたステント器具を備えるカテーテルまたはシースに関する。
【0079】
別の態様によれば、三尖弁または僧帽弁を置換するための方法が開示され、本方法は、
送達システム、好ましくはカテーテルまたはシース内に折り畳まれた状態で上記のステント器具を提供するステップと、
ステント本体の遠位端が心室部分にあり、ステント本体の近位端が心房部分にあり、本体および支持アームが弁輪を跨ぐように、前記送達システムを介して患者の三尖弁または僧帽弁領域にステント器具を経皮的に導入するステップと、
可撓性領域が弁輪に順応し、外側支持アームの近位端または第2の支持領域が心房側に順応するように、ステント器具を拡張することによってステント器具を展開するステップと、
を備える。
【0080】
弁機能を提供するために、本方法は、弁アセンブリを内側チャネルおよび/またはステント本体の近位端もしくは遠位端に固定することをさらに含んでいてもよく、前記固定は、好ましくは、ステント器具の折り畳みの前に行われてもよく、または、房室弁領域におけるステント器具の展開および拡張の後に送達システムを使用して行われてもよい。
【0081】
別の態様によれば、上記のステント器具を製造する方法が開示され、本方法は、
形状記憶金属材料から本体および支持アームをレーザ切断するステップと、
本体および支持アームの所定の形状を提供するように、本体および支持アームを熱成形するステップと、任意選択的に、
本体および支持アームを折り畳むステップと、
を備える。
【0082】
形状記憶金属材料は、例えば編組ニチノールであってもよい。さらに、本体および支持アーム、またはステント器具全体の折り畳みは任意であり、例えば輸送目的のために、または送達システム、例えばカテーテルもしくはシースへの組み立てもしくはパッケージングのために必要とされることができる。
【0083】
好ましくは、ステント器具は、単一ピースから作製される。例えば、レーザ切断は、支持アームが本体の遠位端の延長部として形成され、したがって高度の構造的および機械的安定性を提供するように、編組されたニチノールの単一ピースに対して行われてもよい。換言すれば、ステント器具の本体および支持アームは、単一の材料から形成されるだけでなく、ステント器具が破損、脱落、および/または製造誤差の影響を受けにくく、したがって、例えば、ステント器具の構造的完全性を著しく改善するように、単一ピースとしての接続部品なしで形成されてもよい。
【0084】
本発明の設計は、アセンブリの長手方向における固定要素の対向する端部における適応性の任意の限界を克服することを可能にする。したがって、本設計は、解剖学的構造に係合することができ、それによってさらなる調整を潜在的に防止することができる固定要素の対向する端部に起因し得る、(従来技術によって観察されるような)アセンブリの展開時の位置決めのいかなる調整も制限しない。したがって、本発明の設計は、従来技術のアセンブリによってまだ対処されていない優れた特性を示す。
【0085】
本開示は、添付の図面に関連して考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1】三尖弁の心室部分における人工心臓弁の従来技術の実施形態を示す図である。
【
図2】三尖弁の解剖学的構造の周りに展開された本発明によるステント器具を示す図である。
【
図3A】レーザ切断後および熱成形前の本発明によるステント器具の概略図である。
【
図3B】レーザ切断後および熱成形前の本発明によるステント器具の概略図である。
【
図3C】レーザ切断後および熱成形前の本発明によるステント器具の概略図である。
【
図3D】レーザ切断後および熱成形前の本発明によるステント器具の概略図である。
【
図4A】拡張状態にある本発明によるステント器具の斜視図である。
【
図4B】拡張状態にある本発明によるステント器具の斜視図である。
【
図5】本体の代替的な近位端を有する本発明によるステント器具の概略斜視図である。
【
図6】
図5によるステント器具の概略側面図である。
【
図7】第2の閉ループを備える本体の代替的な近位端を有する本発明によるステント器具の概略図である。
【
図8】
図7によるステント器具の近位端の互い違いの形成の概略図である。
【
図9A】代替的な第2の閉ループを有する、
図7による互い違いの形成の異なる図である。
【
図9B】代替的な第2の閉ループを有する、
図7による互い違いの形成の異なる図である。
【
図9C】代替的な第2の閉ループを有する、
図7による互い違いの形成の異なる図である。
【
図10】レーザ切断後かつアイレットを有する、熱成形前の本発明によるステント器具の概略図である。
【
図11A】代替的な支持アーム構成を有する、本発明によるステント器具の異なる図である。
【
図11B】代替的な支持アーム構成を有する、本発明によるステント器具の異なる図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、添付の図面を参照して、本発明がより詳細に説明される。なお、各図において、対応する要素には同一の符号が付され、冗長を避けるために重複する説明が省略される場合がある。
【0088】
図1には、三尖弁内に配置された人工心臓弁の従来技術の実施形態が図示されている。したがって、人工心臓弁は、送達システム42、例えばカテーテルまたはシースによって三尖弁内に配置される。人工心臓弁は、人工心臓弁の本体12またはフレームワークが三尖弁の近位端16から遠位端17まで長手方向に配向されるように配置される。したがって、人工心臓弁の展開または拡張時に、人工心臓弁の支持アーム18は、三尖弁の弁尖27を把持し、それによって心室安定器を形成する。したがって、支持アーム18は、三尖弁の心室側28に配置され、弁尖27の安定化を提供するように構成される。人工心臓弁の展開後に、人工心臓弁の本体12またはフレームワークは近位端16に向かって延在し、本体12は、弁尖27の解剖学的構造に順応し、弁尖27に向かって半径方向外向きの力を加えるために可撓性メッシュ体として形成され、それにより、人工心臓弁は弁尖27によって保持され、支持アーム18も本体12も弁輪の心室部分28または心房部分30と実際には接触していない。
【0089】
本発明によるステント器具10の実施形態が
図2にグラフィック表示で示されており、ステント器具10は、
図1による解剖学的構造に対応する三尖弁の解剖学的構造の周りに展開される。ステント器具10は、拡張状態または展開状態で示されており、ステント器具10および本体12の長手方向軸線は、三尖弁の近位端16および遠位端17によって画定される軸線に沿って配向される。本体12は、ニチノールで作られたメッシュ状の配線で構成され、円筒形または円形の形状を有する本質的に管状の本体12として形成される。
【0090】
複数の支持アーム18が、本体12の遠位端17から延在する。断面図は、2本の支持アーム18のみを示しているが、本体12の遠位端17の円周に沿って、例えば等距離の間隔で、3本以上、好ましくは6本、9本、または12本の支持アーム18が実現されることができ、または互いに隣接して配置されるように形成されることができる。支持アーム18は、本体12の外面に沿って本体12の近位端16に向かって延在する。内面は、心臓の収縮期中に心臓の近位端16から遠位端17、すなわち右心房から右心室への血流のための通路を確立する内側チャネル(図示せず)によって画定される。
【0091】
支持アーム18は、ステント器具10の長手方向断面においてS字形または逆S字形をさらに備え、したがって、長手方向軸線に沿って半径方向外側および内側に延在する。これにより、支持アーム18は、遠位端17に第1の支持領域を画定し、近位端16に第2の支持領域を画定し、第2の支持領域は、第1の支持領域と第2の支持領域との間に配置された可撓性領域によって提供される撓みに起因して近位端16で半径方向外側に延在する。
【0092】
その結果、支持アーム18の形状、特に支持領域は、支持アーム18が弁輪26の心室部分28および心房部分30に順応することを可能にする。さらに、可撓性領域は、三尖弁の弁輪26に順応するように適合される。それにより、支持アーム18は、ステント器具10が三尖弁の両側で支持され、三尖弁の弁輪26に嵌合されることを確実にし、それにより、ステント器具10が三尖弁領域内に、特にその弁輪26内に付勢される。
【0093】
したがって、支持アーム18の構成は、縫製または縫合などの侵襲的な技術を必要とせずに、また、いかなるクランプ力または把持力も必要とせずに、あるいは、残りの解剖学的ランドマークおよび組織を潜在的に破壊する半径方向外側の力を及ぼすことなく、ステント器具10を好ましくは弁輪26に固定することができるようにする。代わりに、そのような構成は、ステント器具10の本体12の機能が支持アームの機能から切り離されることを可能にし、それにより、本体12が剛性であり得、したがって、例えば、弁アセンブリのための安定した支持構造体またはフレームワークを提供する。
【0094】
図3Aは、例えば
図2による実施形態に示すようなステント器具の概略図であり、ステント器具は、レーザ切断後に、熱形成プロセス前に示される。左側、すなわち、ステント器具の近位端16において、本体12は、メッシュ形状として形成されて示されている。前記メッシュは、ステント器具の長手方向軸線に沿って隣接して配置される2つの接続されたセル14を備えるように示されている。したがって、本体12は、複数のセル14を備え、これらセルは、例えば、血流のための通路として構成された内側チャネルを画定する円筒形状を形成するように、管状または楕円形の構造体への熱形成によって形成されることができる。
【0095】
さらに、本体12は、本体12の遠位端17に配置された3つの固定手段または窓40を備え、前記窓40は、長手方向に延在する3つの対応する支柱13によって形成される。その結果、本体12がその所定の形状に形成されると、窓40は、互いに実質的に等しい間隔で円周方向に配置される。窓40は、例えば、患者に適合した必要な弁機能を提供するために、合成または処理された生来の尖頭または弁尖などの弁アセンブリを取り付けるために使用されることができる。
【0096】
窓40は本体12の遠位端17に示されているが、前記窓40はまた、近位端16の対応する支柱13に設けられてもよく、前記窓40間の間隔は変化してもよい。同じ意味で、ステント器具は、好ましくは、例えば、三尖弁のための少なくとも3つの尖頭の固定のための少なくとも3つの窓40を備えるが、医師または外科医により多くの固定の可能性を提供するために、3つより多くの窓40を備えることもできる。
【0097】
図3Aの実施形態によれば、ステント器具は、本体12の遠位端17から延在する6本の支持アーム18をさらに備える。所定の形状に熱成形した後に、前記支持アーム18は、本体12の外面で近位端16に向かって延在し、
図2を参照して上述したように、2箇所の支持領域および可撓性領域を画定する。支持アーム18は、さらに、閉ループとして設けられ、その各々が、支持アーム18の構造的および機械的安定性が増大されるように、2本の連結アームを介して本体12に連結される。さらに、支持アーム18は、本質的に花弁形状を具備し、熱形成後に丸みを帯びた近位端を備える。それにより、支持アーム18は、接触面積の増加に起因して改善された支持機能を提供し、一方、丸みを帯びた近位端は、鋭い縁部および潜在的な組織損傷が回避され、近位端の破損のリスクが低減されることを確実にする。
【0098】
図3Bから
図3Dは、代替的な実施形態を示し、近位端16は、支持アーム18に対して互い違いに配置された第2の閉ループ38を備える。第2の閉ループの近位端16は、
図3Bおよび
図3Dの左側に示すように、第2の閉ループ38の脚部間の連結強度を高めるために、より厚い領域によって形成された補強材を備えてもよい。第2の閉ループ38は、以下の
図5から
図9を参照してさらに詳細に説明するように、第2の閉ループ38が半径方向外側に延在するように、例えばフレア形状に熱形成されてもよい。
【0099】
熱成形に先立ち、ステント器具は、
図3Cに示すように、長手方向に延在する本質的に平坦な形状を具備する。ステント器具は、
図3Dに示すように、近位端から延在する第2の閉ループ38と、遠位端から延在する支持アーム18とを有する本質的に円筒形の本体12を形成するために、長手方向軸線に沿ってコイル状に巻かれてもよい。それにより、ステント器具の本体12は、さらなる構造的安定性を与えられ、支持アーム18および第2の閉ループ38を熱形成することによって、容易にその最終的な形状にされることができる。
【0100】
図4Aによる実施形態は、
図2および
図3による実施形態に本質的に対応し、熱形成後に拡張状態にあるステント器具10を示す。したがって、ステント器具10はまた、2本の連結アーム36を介して本体12の遠位端17から延在する閉ループとして形成される、合計で6本の支持アーム18を備える。
図2を参照して説明したように、支持アーム18は、遠位端17の第1の支持領域20、近位端16の第2の支持領域22、およびそれらの間の可撓性領域24によって画定される、本質的に逆S字形またはS字形を含む縦断面のプロファイルを備える。前記可撓性領域24は、テーパ部分として形成され、例えば、第2の支持領域22の撓みを可能にするように、ステント器具10の長手方向軸線に沿った狭窄部によって形成される。
【0101】
各支持アーム18の第1の支持領域20は、凸部分32として形成され、この凸部分32は、少なくとも部分的に、各連結アーム36を形成する湾曲部を画定する。湾曲部は、血流が妨げられず、ステント器具10が移植された、ステント器具10によって接触されるべきではない心筋領域と接触しないように、弁の心室部分への延長が低減され得ることを保証する。可撓性領域24は、凸部分32の変曲点の周りに配置され、半径方向外側に延在する第2の支持領域22内に延在する凹部分34として構成される。
【0102】
それにより、凸部分32、凹部分34、および半径方向外側に延在する第2の支持領域22は、三尖弁の心室部分、弁輪部分、および心房部分をそれぞれ支持するように適合され、それによって、各領域は本質的に一致する幾何学的形状を提供する。したがって、ステント器具10は、それぞれの解剖学的構造に侵襲的に係合または圧縮することなく、三尖弁の弁輪内に付勢されることが可能となる。したがって、残りの解剖学的構造の破壊が効果的に回避されることが可能となる。
【0103】
さらに、
図4Aによる実施形態において示されている内側チャネル15は、ステント器具10のメッシュ形状の本体12によって画定される。したがって、本体12および内側チャネル15の両方は、本質的に管状および円筒形状を備え、本体12の剛性ならびにサイズおよび寸法は、近位端16から遠位端17への血流を最大にするように、最大の内側チャネル容積が提供されることを確実にする。メッシュ本体12は、複数のセル14および対応する支柱13からさらに構成され、セル14は、本体12の構造的完全性をさらに改善するために、隣接するセル14間に鋭い縁部のない液滴形状を備える。
【0104】
ステント器具がその展開状態にあるとき、近位端16における
図4Bの上面図に示すように、本体12の外面と支持アーム18との間に間隙が形成されてもよい。したがって、本体12は、好ましくは、弁輪の解剖学的構造に半径方向外向きの力を及ぼさず、弁輪内でステント器具を付勢するように、心室部分および心房部分の両方に適合することができる支持アーム18によって本体12の一方の側でのみ保持される。間隙に起因して、最大の可撓性および適応性が支持アーム18に対して確保されると同時に、解剖学的形状がステント器具の本体12によって劣化または損なわれないことが確保される。
【0105】
本体12の近位端16の代替的な構成が、
図5の実施形態による概略斜視図に示されており、ステント器具10は、半径方向外側の方向に延在する、すなわち、フレア面を形成する本体12の代替的な近位端部分38を有する本体12を備える。したがって、本体12の遠位端17から本体12の近位端16に向かって延在する支持アーム18は、本体12の近位端部分38に近接または接触することができる。
【0106】
例えば、遠位端17の第1の支持領域20および隣接する可撓性領域24に加えて、近位端16の第2の支持領域22を備える支持アーム18は、半径方向外向きに延在する近位端部分38と接触するように第2の支持領域22で半径方向外向きに撓むことができる。それにより、近位端部分38は、ステント器具10の封止を改善するだけでなく、例えば、面取り部を画定するためにステント器具12の長手方向軸線に対する角度を選択することによって、血流および/または本体12の内側チャネルへの挿入を同時に促進することができる。加えて、そのような配置は、第2の支持領域22が所望の効果を有しない場合、弁輪または弁の対応する心房部分と位置合わせされて追加の支持機構を提供することができる追加の表面によって、ステント器具10の支持をさらに増加させることができる。
【0107】
図5による実施形態は、
図6による側面図にさらに概略的に示されている。ここで、本体12の半径方向外側に延在する近位端領域は、本体12および支持アーム18の外面に向かって、例えば70°~90°の角度でわずかに傾斜している。そのような角度は、例えば、弁輪の心房部分に順応するように選択されることができ、さらに、支持アーム18の近位端16に向かって最適な封止を確実にすることができる。他の角度も可能であり、近位端部分38の形状は、
図5および
図7に示す形状に限定されず、例えば本体12のメッシュ形状に対応する形状を備えてもよいことを理解されたい。
【0108】
結果として、例示的な実施形態において、ステント器具は、
図7に概略的に示すように、複数の第2の閉ループを具備する本体の近位端部分38を備えてもよい。したがって、前記第2の閉ループは、前記第2の閉ループが本体の近位端で2つの隣接するセル14に接続されるように、本体の近位端からの延長部、すなわち本体のメッシュ形状からの延長部として形成される。破線によって示されるように、半径方向外側に延在する近位端部分38、すなわち、ステント器具の長手方向軸線に対して本質的に垂直な方向に広がる近位端部分は、本体の近位端にある最後のセル14の各々の支柱13の最後の列の一部を含む。
【0109】
例えば、半径方向外側に延在する部分は、支柱13の最後の列の1/4~1/2を具備することができる。
図7による実施形態において、前記一部は、ステント器具の長手方向における支柱13の最後の列または最終的な列の長さの約1/3を具備する。したがって、患者の病態生理学的状態に対応する解剖学的構造に応じて、第2の閉ループおよび近位端部分38は、各支持アームの第2の支持領域と等しいサイズまたはそれより小さいサイズであってもよい。
【0110】
近位端部分38はさらに、
図8による実施形態に概略的に示すように、複数の支持アームの第2の支持領域22の近位端から見て互い違いの構成で配置されてもよい。結果として、近位端部分38は、例えば
図7を参照して説明したように、本体の近位端から延在する複数の第2の閉ループを備えてもよく、これらは半径方向外側に偏向され、隣接する支持アームの各対の第2の支持領域22の間に配置される。結果として、ステント器具は、対応する第2の支持領域22を有する合計で6本の支持アームと、ステント器具の本体12の周囲に沿って円周方向に互い違いになる近位端部分38によって画定される合計で6本の第2の閉ループとを備えてもよい。内側チャネル15も示されており、したがって、第2の支持領域22および近位端部分38によって遮られていない。支持領域22の先端部は、端部領域に鋭角を形成する三角形の形態であってもよいが、丸みを帯びた先端(
図8には示されていない)がより好ましい場合がある。
【0111】
あるいは、近位端部分38は、例えば、第2の閉ループの数と支持アームの数とが一致しない場合、代替的な互い違いの構成で設けられてもよい。例えば、近位端部分38は、第2の閉ループが隣接する第2の支持領域22のあらゆる第2の対の間にのみ配置されるように、3つの第2の閉ループのみを具備してもよい。同様に、近位端部分38は、例えば、隣接する第2の支持領域22の各対の間に2つの第2の閉ループが配置されるように、支持アームの第2の支持領域22よりも小さい寸法のより多くの第2の閉ループを具備してもよい。上記の数の第2の閉ループおよび第2の支持領域22は、例示のみを目的としており、実施形態を限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。言い換えれば、より多くの数の支持アームを有するか、または3~6本の支持アームを有する他の配置も可能であり、実施形態の範囲内である。
【0112】
図9Aから
図9Cに示す実施形態では、第2の閉ループ38および支持アーム18の代替的な互い違いの形成が示されており、第2の閉ループ38は、それらが支持アーム18の閉ループと同様であるような寸法にされている。結果として、例えば、
図9Aに概略上面図(左)および斜視上面図(右)で示すように、第2の閉ループ38は、半径方向外側に延在し、支持アーム18の断面積と同様の断面積を具備することができる。これは、支持アーム18の第2の支持領域22が、実施形態の側面図および斜視図をそれぞれ表す
図9Bおよび
図9Cにも示されるように、さらに半径方向外側に延在してもよいことに当てはまる。
【0113】
さらに、
図9Bおよび
図9Cは、
図4Bによる実施形態と同様に、ステント器具の支持アーム18と本体12との間に生じ得る間隙を示す。これにより、支持アーム18と本体12との間に公差が確保される。したがって、支持アーム18の弾性が増大する。換言すれば、例えば、
図9Bに示すように、支持アーム18のS字形状、すなわち、長手方向断面における凸状領域および凹状領域と、ステント器具の本体12との間の間隙は、ステント器具を弁輪内に収容し、それにより、ステント器具をその解剖学的構造に適合させるように、少なくとも部分的にまたは部分的に変化してもよい。
【0114】
さらに、フレア状の第2の閉ループ38は、本体12が弁輪に半径方向外側に向けられた力を加えないように、本体12と解剖学的構造との間の直接接触が回避され得ることを確実にする。残りの解剖学的風景に有害な潜在的に有害な力が低減または回避される。しかしながら、フレア配置は、近位端から遠位端への流体の流れが著しく損なわれないことを保証する。さらに、
図9Cに示すように、近位端16および遠位端17は反転している。
【0115】
このような第2の閉ループのフレアは、面取り面を形成することによって、例えば弁アセンブリの本体12への挿入を容易にする。
【0116】
図10において、レーザ切断後かつ熱成形前の、本発明によるステント器具10の概略図が、
図3Bに示す実施形態の代替として示される。この実施形態において、アイレット44は、ステント本体12の第2のループ38の近位端16または近位先端に設けられ、これにより、ステント器具10が解剖学的対象領域への挿入のために送達システムに固定されることができる。したがって、前記アイレット44はまた、ステント器具10の解放および最終展開のために挿入後に使用されてもよい。この実施形態では、合計2つのアイレット44が設けられ、これらは、組み立てられた状態でステント器具10の半径方向の両側にあるように閉ループ38上に配置される。しかしながら、アイレット44の配置および数は、所望に応じて選択されてもよい。さらに、アイレット44は、送達システムへの固定および送達システムからの解放を容易にするために、円形または丸みを帯びた形状を有する。あるいは、アイレットはまた、他の形状、好ましくは多角形または楕円形などの対称設計を具備してもよい。
【0117】
図11Aおよび
図11Bには、代替的な支持アーム構成を有するステント器具10の概略上面図および斜視側面図がそれぞれ示されている。
【0118】
この構成では、
図9Aによる実施形態との直接的な比較によって最もよく示されているように、テーパ部を有する可撓性領域「間に」は提供されず、狭窄部は鋭利なV字形のノッチによって概略的に示されている。代わりに、
図11Aの実施形態によれば、各支持アーム18は、本質的に凹部分34から第2の支持領域22に向かって、すなわち支持アーム18の近位先端に向かって徐々に延在するテーパ部を備える。テーパは、本質的に三角形または円錐形または楕円形として提供され、組織損傷のリスクを低減するために、第2の支持領域22の近位先端、例えば端部部分またはループ部分に丸みを帯びた部分を備える。
【0119】
同時に、ばね機能が、第2の支持領域22と第1の支持領域20との間で維持され、これは、
図11Bの斜視側面図に示すように、隣接する凹部分34を有する第1の支持領域20の肩部または湾曲部を画定し、ステント本体12の遠位端に連結される凸部分32によって改善される。肩部は、肩部の近位端の半径48よりも大きい肩部の遠位端の半径46を有する。したがって、ステント本体12の遠位端にはより広い角度がもたらされ、この角度は、凸部分32の半径方向の延長と共に、支持アームとステント本体12との間に生じる折損の可能性が低減され、ステント器具10および支持アーム18に作用する力がより良好に分散され得ることを確実にする。
【0120】
肩部の近位端のより小さい半径48は、隣接する凹部分34と共に、弁輪領域および心室の解剖学的構造に対する改善された適応が提供されることをさらに保証する。さらに、凸部分32の半径方向最外点の半径方向の延長部は、-半径方向において-凹部分34の半径方向最内点と第2の支持領域22の近位先端との間にあり、第2の支持領域22の近位先端は、各支持アーム18のすべての部分の最大の半径方向延長部を有する。それにより、解剖学的弁輪領域に対する改善された嵌合または適合を提供しながら、心房部分で接触面が増加され、弁輪領域の残りの生来の構造に悪影響を及ぼすことなく、より広い支持が提供される。
【0121】
換言すれば、各支持アームの支持領域のより広い延在は、より大きな係合面または相互作用面を提供し、一方、凸部分32および凹部分34の特定の構成ならびに第2の支持領域22の半径方向延在は、ステント器具に作用する力の改善された吸収および分配を伴って改善されたばね機能が確立されることを確実にする。
【0122】
この実施形態には、本体のメッシュ形状も示されており、これはここでは、互いに直接接続され、サイズおよび/または形状が本質的に等しい複数の菱形形状セルの格子によって形成される。上記で概説したように、菱形形状は、軸線方向および円周方向に実質的に等しい応力および歪み抵抗を提供するという利点を有し、製造中に加えられる変形および歪みの量が低減されて本体の安定性を高めることができる。さらに、例えば近位端および/または遠位端に向かって厚さを変えることによって、必要な柔軟性が保持され得ることとなる。
【0123】
これらの実施形態および項目が複数の可能性の例を示しているにすぎないことは、当業者にとって明らかであろう。したがって、ここに示す実施形態は、これらの特徴および構成の限定を形成すると理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組合せおよび構成は、本発明の範囲に従って選択されることができる。
【符号の説明】
【0124】
10 ステント器具
12 本体
13 支柱
14 セル
15 内側チャネル
16 近位端
17 遠位端
18 支持アーム
20 第1の支持領域
22 第2の支持領域
24 可撓性領域
26 弁輪
27 生来の尖頭または弁尖
28 心室部分
30 心房部分
32 凸部分
34 凹部分
36 連結アーム
38 近位端部分または第2の閉ループ
40 固定手段または窓
42 送達システム
44 アイレット
46 遠位半径
48 近位半径
【国際調査報告】