(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】縦収縮を伴うフィルム延伸設備の戻り収縮およびチェーンテンショナ
(51)【国際特許分類】
B29C 55/20 20060101AFI20220714BHJP
B29C 55/08 20060101ALI20220714BHJP
B29C 55/16 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B29C55/20
B29C55/08
B29C55/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568634
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020057500
(87)【国際公開番号】W WO2020233865
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】102019207261.5
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、ベイル
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト、キーブ
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AM04
4F210QA02
4F210QC03
4F210QC07
4F210QL03
4F210QL04
4F210QL06
4F210QL09
(57)【要約】
本発明は、それぞれ延伸領域と戻り領域とを通って循環する2つのクリップチェーンを備えるフィルム延伸設備に関する。クリップチェーンは、第1の制御レールと第2の制御レールとの変位を介して調整可能であり、縦収縮用の第1の制御レールは、延伸領域に配置されており、戻り収縮用の第2の制御レールは、戻り領域に配置されている。第2の制御レールの変位は、ただ1つの駆動装置によって調節装置を介して少なくとも2つの変位支持部にて一緒に調整可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム延伸設備(1)であって、それぞれ延伸領域(10)と戻り領域(30)とを通って循環する2つのクリップチェーン(2)を備え、該クリップチェーン(2)は、第1の制御レール(20)及び第2の制御レール(40)の変位を介して調整可能であり、前記第1の制御レール(20)は、縦収縮用に前記延伸領域(10)に配置されており、前記第2の制御レール(40)は、戻り収縮用に前記戻り領域(30)に配置されており、前記第2の制御レール(40)の前記変位は、ただ1つの駆動装置によって調節装置を介して少なくとも2つの変位支持部(41)にて一緒に調節可能である、フィルム延伸設備(1)。
【請求項2】
前記調節装置は、チェーン軌道支持体(5)に支持されたレバー(42)を有し、該レバー(42)は、第1の端部において前記第2の制御レール(40)の前記変位支持部(41)のうちの1つの変位支持部に結合されていて、前記第1の端部と反対側の第2の端部においてプッシュロッド(43a,b)に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項3】
前記プッシュロッド(43a,b)は、スピンドル(44)を介して、好ましくは電動モータ(45)によって駆動されることを特徴とする、請求項2記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項4】
前記スピンドル(44)は、連続的に延びるスピンドルであり、該スピンドルは、内的な推力が補償されるように、両方の端部においてそれぞれ1つのプッシュロッド(43a,b)に結合されていることを特徴とする、請求項3記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項5】
前記駆動装置は、プッシュロッド縦方向もしくはスピンドル縦方向に対して直交する横方向に可動に支持されていることを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項6】
前記レバー(42)は、偏心的な揺動レバーとして形成されており、好ましくは、前記プッシュロッド(43a,b)により提供された力を、前記戻り収縮のために前記変位支持部(41)に加えられる力に徐々に変換することを特徴とする、請求項2~5のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項7】
前記第2の制御レール(40)は、少なくとも2つの制御レール要素(40a,b)を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項8】
各々の制御レール要素(40a,b)は、該制御レール要素(40a,b)の両方の端部から離れて配置された2つの変位支持部(41)を備えることを特徴とする、請求項7記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項9】
前記レバー(42)は2つのレバー要素(42a,b)から成っており、該2つのレバー要素(42a,b)は、前記チェーン軌道支持体(5)を貫通した支持部によって結合されていて、特にそれぞれ1つの変位支持部(41)を備えるスライダ(41’)を介して前記制御レールに係合していることを特徴とする、請求項2~8のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項10】
各々のクリップチェーン(2)用に、前記延伸領域(10)と前記戻り領域(30)との間に、駆動スプロケット(3)および次いでチェーンテンショナ(60)が配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項11】
フィルム延伸設備(1)であって、それぞれ延伸領域(10)と戻り領域(30)とを通って循環する2つのクリップチェーン(2)を備え、該クリップチェーン(2)では、前記延伸領域(10)において第1の制御レール(20)の変位を介して縦収縮が調整可能であり、各々のクリップチェーン(2)用に、前記延伸領域(10)と前記戻り領域(30)との間に、駆動スプロケット(3)および次いでチェーンテンショナ(60)が配置されている、フィルム延伸設備(1)。
【請求項12】
前記駆動スプロケット(3)及び前記チェーンテンショナ(60)は、出口台(6)に組み付けられていることを特徴とする、請求項10または11記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項13】
前記チェーンテンショナ(60)はチェーン転向部を備え、該チェーン転向部は、作業範囲内においてチェーン循環経路を変えるために、チェーン走行方向に対して横方向に移動可能であることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項14】
前記チェーン転向部は、力操作式の駆動装置、特に空気圧シリンダ(62)を介して移動可能であることを特徴とする、請求項13記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項15】
前記作業範囲内の予め定められた第1の限界値を上回ると、前記戻り領域(30)において前記第2の制御レール(40)の前記変位が調節され、前記チェーンテンショナ(60)が前記作業範囲内の予め定められた目標範囲に戻される、請求項1~10のいずれか1項および請求項12~14のいずれか1項記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項16】
予め定められた第2の限界値を上回ると、縦収縮領域(12)において前記第1の制御レール(20)の前記変位の調節が停止されることを特徴とする、請求項15記載のフィルム延伸設備(1)。
【請求項17】
前記作業範囲の限界に達すると、前記フィルム延伸設備(1)が停止されることを特徴とする、請求項15または16記載のフィルム延伸設備(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ延伸領域と戻り領域とを通って循環する2つのクリップチェーンを備えるフィルム延伸設備に関する。
【0002】
独国特許発明第3503909号明細書に基づき、熱可塑性のフィルムウェブ用の同時二軸延伸機械が公知である。この公知の同時二軸延伸機械は、フィルムウェブの縁部を挟持するための連結された複数のクリップを備えている。これらのクリップは、押し合わされた状態で密に詰められて転向湾曲部に予め保持され、クリップの緊締レバー用の開き装置に供給され、これによって、フィルムウェブを縁部で把持することができる。クリップチェーンが最大の長さに伸長させられている返送区間の終端部では、クリップが、傾斜部として形成された制御レールに対して走行し、これによって、クリップを押し合わされた状態で転向湾曲部に供給することができる。制御レールは、手前側の領域で可撓性であるかもしくは調節可能であり、これによって、縦延伸比の変化および機械のその他の長さ変化が補償される。
【0003】
さらに、独国特許出願公開第3741582号明細書に基づき、フィルムウェブを鋏状リンクチェーンによって同時に二軸延伸するための装置が公知である。出口領域と寄集めゾーンとの間の返送領域にチェーンテンショナが設けられている。このチェーンテンショナは、外向きに引っ張られて湾曲させられた鋼製ばねから成っている。撓みばねの形態で形成されたこのチェーンテンショナは、可能な限り正弦波形に形成されていることが望ましく、これによって、ガイドローラの穏やかな転動が行われる。
【0004】
仏国特許出願公開第2922810号明細書には、プラスチックから製造されたフィルムを横方向への延伸後に縦方向に延伸するための装置が示されている。横延伸装置は、第1および第2の無端チェーンを有している。これら両方の無端チェーンは、スプロケットによって駆動される。また、両方の無端チェーンには、それぞれ複数のグリッパが組み付けられている。これらのグリッパは、連続的にかつ閉じられた軌道で駆動される。縦延伸設備は、中心平面に対して対称的に配置された2つの無端チェーンを有している。縦延伸プロセスを実施するために、無端チェーンの2つの連続したグリップ装置の間の間隔は、最小値から最大値に調整可能である。
【0005】
独国特許出願公開第1504823号明細書には、縦方向にも横方向にも同時に延伸するための熱可塑性のフィルム用の延伸装置が開示されている。両方の無端チェーンは、間隔調整可能な複数のリンクを有している。延伸装置は、フィルムの送り方向に対して斜め外向きに傾けられた方向にチェーンのリンク列をガイドするためのガイド装置を備えている。リンクの個々の連結箇所の間の間隔は、フィルムの送り方向で連続的に増加している。このガイド装置は、有利には2つのガイドレールを含んでいる。これら両方のガイドレールは、互いに傾けられて取り付けられている。ガイドレール相互の相対的な傾きを変えることによって、フィルムの縦延伸量を稼動中でさえ変えることができる。
【0006】
本発明の課題は、チェーン張力が調整され、特に延伸調整の変化をも補償することができる簡単な装置を提供することにある。
【0007】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明に係るフィルム延伸設備の好適な実施形態は、各々の従属請求項から明らかである。
【0008】
第1の態様では、本発明に係るフィルム延伸設備は、それぞれ延伸領域と戻り領域とを通って循環する2つのクリップチェーンを備えている。これら両方のクリップチェーンは、第1の制御レール及び第2の制御レールの変位を介して調整可能である。第1の制御レールは、縦収縮用に延伸領域に配置されており、第2の制御レールは、戻り収縮(Rueckschrumpf)用に戻り領域に配置されている。第2の制御レールの変位は、ただ1つの駆動装置によって調節装置を介して少なくとも2つの変位支持部にて一緒に調節可能である。
【0009】
循環する両方のクリップチェーンは、通常、縦方向軸線に対して対称的に形成されており、この縦方向軸線に沿ってフィルムウェブが搬送される。循環するクリップチェーンのクリップは、フィルムウェブを延伸領域の始端部で把持する。延伸領域に沿って、フィルムは少なくとも一方の主方向、つまり、縦方向または横方向に延伸される。両方の主方向に沿った延伸プロセス時には、個々の延伸プロセスが同時にまたは連続して行われてよい。延伸領域の終端部では、クリップがフィルムウェブをリリースし、戻り領域を介して延伸領域の入口に返送される。
【0010】
クリップおよびクリップチェーンの軌道は、通常、ガイドレールによって定められる。チェーンリンクに取り付けられたクリップは、ガイドレールによってガイドされる。例えば、1つのクリップには、複数のローラを備えた支持機構が設けられている。この支持機構はガイドレールに係合していて、このガイドレールに沿ってガイドされる。通常では、各々の第2のチェーンリンクにこのような支持機構が設けられている。稼動中、クリップチェーンは張力下に保たれ、これによって、個々のチェーンリンクは基本位置で一列になっている。クリップチェーンは、さらに、クリップを有していないチェーンリンクに取り付けられた上側および下側のピンもしくは上側および下側のローラを有していることが多い。これらのローラに制御レールが係合し、これによって、個々のクリップの間の間隔が短縮される。このためには、個々のチェーンリンクもしくはブリッジが、チェーン運動方向に対して横方向に移動させられ、チェーンがジグザグ形状にもたらされる。このために、制御レールは、対応するピンもしくは対応するローラに係合される上側および下側の制御レールを有していることが多い。
【0011】
本発明による第2の制御レールは、好ましくは、循環方向で相前後してまたは部分的に重畳して配置された少なくとも2つの制御レール要素を有している。このためには、これらの制御レール要素がその端部において、好ましくは櫛歯状に形成されていて、互いに内外で係合しており、これによって、ピンもしくはローラに対して穏やかな移行部が提供されている。この場合、それぞれ上側および下側の制御レールが、少なくとも2つの制御レール要素を有していてよい。通常、制御レールは、循環方向において、クリップチェーンのピンまたはローラを変位させる傾斜部として働く、いわゆる進入側要素を有している。この進入側要素は、通常、能動的に変位させられるのではなく、結合部、例えば回動ピンを介して後続の制御レール要素に結合され、この制御レール要素によって(受動的に)連動させられることが多い。また、戻り領域における循環方向で最後の制御レール要素の後、負の傾斜部として形成された進出側要素が配置されていることも多く、これによって、この進出側要素を介してクリップチェーンの変位が戻され、クリップチェーンが最大に伸長させられる。進出側要素も最後の制御レール要素を介して受動的に連動させられることが多い。振動または短時間のチェーン長さ変化を補償するために、進出側要素はばね弾性的に支持されていてよい。
【0012】
好ましくは、調節装置は、同じくチェーン軌道支持体に支持された複数のレバーを有している。レバーの第1の端部は、第2の制御レールの複数の変位支持部のうちの1つの変位支持部にそれぞれ結合されている。第1の端部と反対側の第2の端部は、プッシュロッドに結合されている。好適には、このプッシュロッドは、チェーン軌道支持体に沿ってクリップチェーンの運動方向に対して実質的に平行に延在している。プッシュロッドの縦方向移動によって、チェーン軌道支持体に支持されたレバーが回転させられ、第2の制御レールに運動を伝達し、これによって、第2の制御レールの変位量が変えられる。したがって、好ましくは、プッシュロッドの運動は、レバーを介して90°転向され、クリップチェーンの運動軌道に対して直交する第2の制御レールの変位運動になる。
【0013】
好ましくは、プッシュロッドは、スピンドルを介して運動させられるかもしくは駆動され、さらに好ましくは、このスピンドルは、電動モータによって回動させられるかもしくは駆動される。電動モータとスピンドルとの間には、回転数およびトルクを変換するための伝動機構が配置されていることが多い。代替的には、プッシュロッドの駆動装置として、並進運動を発生させるために、例えば液圧シリンダまたはリニア駆動装置が使用されてもよい。
【0014】
好ましくは、スピンドルは、両方の端部でそれぞれプッシュロッドに結合されている。好ましくは、スピンドルに加えられる内的な推力は十分に補償される。これは、例えば、プッシュロッドが互いに逆方向に運動させられることによって達成でき、また、レバーがスピンドルに対して対称的に配置されていることによっても達成できる。第2の制御レールは、縦方向で、好ましくは、モータに対して対称的に形成されている。つまり、変位支持部およびレバーの長さ、個数が等しい。好ましくは、スピンドルは、連続的に延びるスピンドルとして形成されている。つまり、両方の端部がプッシュロッドに結合されていて、スピンドルの中間に駆動装置、特に電動モータが配置されている。この場合、スピンドルは、3つに分割されて形成されていてよい。つまり、両方の端部がスピンドルプロファイルを有しており、中間の区分が軸として形成されていて、場合により駆動歯車を有している。この駆動歯車には、電動モータが係合しているかまたはモータとスピンドルとの間に設けられた中間伝動機構が係合している。スピンドルは、一体形に形成されていてもよいし、例えば互いに接着かつ/またはピン結合された個々の軸区分から組み立てられていてもよい。
【0015】
好ましくは、駆動装置は、特にプッシュロッド縦方向もしくはスピンドル縦方向に対して直交する横方向に可動に支持されている。縦方向は、クリップチェーン縦方向にも実質的に対応している。回動レバーによる第2の制御レールへのプッシュロッドの運動の伝達によって、プッシュロッドの並進が横方向への運動も含んでいる。この横方向運動を受け止めかつシステムの内部の応力を回避するために、駆動装置、特にスピンドルを備えた電動モータが、同じく横方向に可動に支持されている。このような支持は、例えばリニアガイドを介して実現されてよい。
【0016】
好ましくは、レバーは、偏心的な揺動レバーとして形成されている。偏心的な揺動レバーとは、特に、変位支持部と、レバーをプッシュロッドに結合している押進支持部とを結ぶ線上に、回動支持部が配置されていないことを意味している。むしろ、回動点が、両方の支持部の間ではあるものの、両方の支持部をじかに結ぶ線から離間させられて配置されている。制御レールを最小の変位から最大の変位に調節するためには、好適には、プッシュロッド側における死点、つまり、レバーのプッシュロッド支持部がチェーン軌道支持体から最大の間隔を有している点もしくは回動支持部と押進支持部とを結ぶ線がプッシュロッド縦方向に対して直交方向に配置されている点が、乗り越えられる。第2の制御レールの最小の変位から第2の制御レールの最大の変位への、制御レバーの最大の運動は、好ましくは、死点に対して対称的に形成されている。さらに好ましくは、偏心的な揺動レバーは、プッシュロッドにより提供される力を、戻り収縮のために変位支持部に加えられる力に徐々に変換するように形成されている。好ましくは、プッシュロッドによって提供される前述の力は、プッシュロッドにより提供される力が並進もしくは変位に実質的に比例するのに対して、変位支持部に加えられる変位力が指数関数的に増加するように、変換されている。クリップチェーンのジオメトリとジグザグ形状への変位とによって、変位量が増加するにつれて、変位力はシステムに起因して指数関数的により大きくなる。ただし、相応の変換によって、プッシュロッドに加えるべき力は並進ストロークと比例関係にあることを達成することができる。
【0017】
好ましくは、各々の制御レール要素は、この制御レール要素の両方の端部から離れて配置された2つの変位支持部を有している。変位支持部を制御レール要素の端部から離れて配置することによって、クリップチェーンからの力による個々の制御レール要素の撓みを減じることができる。変位支持部は、第2の制御レールの任意の箇所に設けられてよい。しかしながら、好ましくは、この変位支持部は、第2の制御レールの全長にわたって実質的に均等に分配されて配置されている。これによって、個々の支持部に均等に荷重が加えられ、制御レール要素の撓みが少なくなる。
【0018】
好ましくは、レバーは、2つのレバー要素、特に上側のレバー要素と下側のレバー要素とから成っており、これら2つのレバー要素は、チェーン軌道支持体を貫通した支持部を介して互いに結合されている。レバーの変位支持部は、それぞれスライダを介して第2の制御レール、特に上側および下側の制御レールに係合している。このためには、第2の制御レールに縦方向スリット、つまり、チェーンの走行方向におけるスリットが形成されている。これによって、第2の制御レールの縦方向のずれなしに、変位を達成することができる。縦方向での第2の制御レールの支持は、通常、別体の支持部、特に同じくスライダ-溝システムを介して行われる。
【0019】
第2の制御レールは、通常、実質的に戻り領域全体または一部、特に通常では延伸領域に対して平行に配置された戻り領域の広範な部分にわたって延在している。戻り領域におけるクリップ(チェーン)の主運動方向は、延伸領域におけるフィルム運動方向と逆向きである。クリップチェーンは、通常、延伸領域と戻り領域との間でそれぞれ180°転向させられ、これによって、閉じられたクリップチェーン軌道が形成される。第2の制御レール用のただ1つの駆動装置の利点は、この駆動装置をスペースおよびコストに関して有利にチェーン軌道支持体の内側に配置することができる点にある。戻り領域では、延伸領域と異なり、各々の変位支持部、つまり、各々の制御レール要素を別個に調整する必要はない。むしろ、チェーン全長を調整するために、変位を介した積分が重要となる。特にプッシュロッドを備えかつ回動レバーによる90°の力変換を伴う調節装置の構成によって、フィルム延伸設備内への、しかも、戻り領域のチェーン軌道支持体に対して実質的に平行な省スペースの配置が可能となる。クリップチェーン長さのこのような適合によって、延伸領域における可変性が高まるため、フィルム延伸設備を停止してチェーンリンクを取り外す必要なしに、例えば、最大25%の収縮が自由に調整可能となる(つまり、クリップ間隔が収縮領域で最大25%だけ減じられる)。
【0020】
クリップチェーンは、通常、最大に伸長させられた状態で第2の制御レールに向かって走行し、また再び最大に伸長させられた状態で第2の制御レールから進出する。このためには、通常、始端部に正の傾斜部、特にいわゆる進入側要素が使用され、終端部に負の傾斜部、いわゆる進出側要素が使用される。両者間には、1つまたはそれ以上の制御レール要素が配置されていてよい。第2の制御レールの短い構成では、この第2の制御レールが、ただ1つのモータを介して2つの変位支持部にて調節可能であるただ1つの制御レール要素と、場合により、進入側要素および/または進出側要素と、を有している。したがって、1つの制御レール要素が、1つの駆動装置によって2つの変位支持部にて調節される。より長い制御レールの場合には、この制御レールが、複数の制御レール要素に分割されることが多く、その上、長い制御レール要素の場合には、1つの制御レール要素が2つよりも多くの変位支持部を備えることが可能となる。進入側要素と進出側要素との間では、第2の制御レールが、好ましくは、制御レールの長さにわたって一定の変位を伴う。しかしながら、この変位は、ただ1つの駆動装置によって調節装置を介して簡単に連続的に可変となる。したがって、変位の連続的な可変性と同様に、クリップチェーン長さも、第2の制御レールの最小の変位時における最大値から、制御レールの最大の変位時における最小値に連続的に調整可能となる。さらに、本発明の思想には、戻り領域が1つよりも多くの第2の制御レールを有していることが含まれているものとする。クリップチェーンの長さ変化によって、フィルム延伸設備の稼動時の高められた可変性、特に延伸領域におけるクリップ間隔の調整に関する可変性が簡単に提供されている。
【0021】
本発明の第2の態様では、本発明に係るフィルム延伸設備は、それぞれ延伸領域と戻り領域とを通って循環する2つのクリップチェーンを備えている。これら両方のクリップチェーンでは、延伸領域において第1の制御レールの変位を介して縦収縮が調整可能である。各々のクリップチェーン用に、延伸領域と戻り領域との間に、駆動スプロケットおよび次いでチェーンテンショナが配置されている。好ましくは、戻り領域に第2の制御レールが配置されている。
【0022】
先行技術では、チェーンテンショナが、延伸領域への入口の領域で入口台に配置されていることが多い。しかしながら、このことは、チェーンテンショナが、チェーン張力を加えるために、駆動装置とチェーンテンショナとの間のチェーンにおける慣性および摩擦力も克服しなければならないという欠点を有している。さらに、本発明による配置形態によって、入口台にもはやクロスキャリッジが不要となるため、構成が簡略化される。なお、クロスキャリッジは、チェーン相互の間隔、つまり、フィルムウェブ幅を調整することができ、その上、チェーン張力調整を可能にする。入口台においてクロスキャリッジを省略することによって、掴み点(Einklupp-Punkt)が一定となり、チェーンテンショナに基づき、z方向、つまり、フィルムウェブの運動方向に移動してしまわないという利点も得られる。
【0023】
好ましくは、チェーンテンショナは、駆動スプロケットの直後に配置されている。この駆動スプロケットはチェーンを約90°転向させ、引き続き配置されたチェーンテンショナもチェーンを70°~110°の角度範囲、好ましくは同じく約90°転向させることが多い。好適には、駆動スプロケット及びチェーンテンショナは、出口台に組み付けられている。特にクリップ用のガイドレールを有する、チェーンテンショナのチェーンガイドは、出口台上において可動となるように組み付けられている。このチェーンガイドもしくはチェーン転向部は、好ましくは、チェーン走行方向に対して横方向に移動可能である。好適には、運動方向は、x方向、つまり、フィルムの運動方向に対して直交方向に延びている。チェーンガイドの運動によって、クリップチェーンのガイド軌道もしくは循環経路の長さが変えられるため、これによって、クリップチェーンが張力調整される。チェーンテンショナによって、チェーン長さは実質的に変えられない。
【0024】
好ましくは、チェーン張力は、力操作式の駆動装置、特に空気圧シリンダを介してチェーンガイドに加えられる。したがって、このチェーンガイドは、力操作式の駆動装置を介して移動可能となる。クリップチェーンを張力調整するために、代替的には、空気圧シリンダの代わりに、リニアモータまたは液圧式の駆動装置が使用されてもよい。好ましくは、フィルム延伸設備は、チェーンテンショナの変位量に応じて制御レール、特に第1および/または第2の制御レールの調節量を変える制御装置もしくは制御機構を備えている。さらに、制御装置を介して、チェーンテンショナの駆動装置、つまり、張力調整リアクタを制御することができる。チェーンテンショナは、力操作式の駆動装置、例えば空気圧シリンダの最大の作業ストロークに大きく依存する作業範囲を有している。この作業範囲は、例えば300mmの調節ストロークを含んでいる。好適には、中間にゼロ位置が設けられており、これによって、このゼロ位置を中心として±150mmの調節ストロークが提供される。作業範囲内には、例えば±60mmである少なくとも1つの閾値が定められている。作業範囲内の1つもしくはそれ以上の第1の限界値に達すると、戻り領域において第2の制御レールの変位が調節されて、チェーンテンショナが、作業範囲内の予め定められた目標範囲に戻される。特に、チェーンテンショナはそのゼロ位置に戻される。通常、フィルム延伸設備の稼動中の通常の長さ変化を補償するためには、第1の限界値の範囲内の作業範囲で十分である。なお、チェーン長さの変動は、例えば、摩耗の結果または例えば炉の加熱時の温度変化の結果として生じてしまう。
【0025】
さらに好ましくは、1つもしくはそれ以上の第2の限界値が定められている。この第2の限界値は、特に±100mmに定められている。予め定められた第2の限界値に達するかもしくはこれを上回ると、チェーンテンショナが再び第1の限界値の範囲内または中立位置に位置するようになるまで、第1の制御レールの変位の調節が停止され、つまり、延伸パラメータにおける変化が停止される。
【0026】
好ましくは、作業範囲の限界、つまり、特に最大の作業範囲に達すると、フィルム延伸設備が停止される。このためには、特にチェーン駆動ホイールと第1もしくは第2の制御レールの調節とが停止される。場合により、チェーンリンクを組み立てるかもしくは分解することをオペレータに促す信号送出が、例えばディスプレイにて行われる。
【0027】
チェーンリンクを組み立てるかもしくは分解するためにチェーンを開きたい場合には、好ましくは、チェーンテンショナをそのゼロ位置に移動させ、収縮を20%に調整し、つまり、第1の制御レールを変位させて、収縮領域の終端部におけるクリップ間隔を収縮領域の始端部と比較して20%減じ、かつ戻り収縮を0%に調整する、つまり、第2の制御レールを変位させない信号を制御装置が送出する。
【0028】
力操作式の補償要素を備えたチェーンテンショナの使用によって、延伸パラメータ、特に延伸領域における収縮パラメータも稼動中に、つまり、クリップチェーンを含めてフィルム延伸設備を停止することなしに、連続的に変えることができることが達成される。ここでは、チェーンテンショナは、特に、第1の制御レールの調節に後続する程度の第2の制御レールの慣性を補償するための補償要素として働く。その上、チェーンテンショナは、例えば、摩耗に基づくまたは例えば炉の加熱時の温度変動に基づく長さ変化を補償する。この機能は、第2の制御レールの存在もしくは調節可能性なしでも提供される。
【0029】
以下に、本発明の好適な実施形態および詳細を図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】延伸領域と戻り領域とを備えた、フィルム延伸設備の一方のクリップチェーンを上方から見た原理図である。
【
図2】第2の制御レールと調節装置とを備えた戻り領域の一区分の平面図である。
【
図2a】第2の制御レールの進入側要素の平面図である。
【
図2b】第2の制御レールの進出側要素の平面図である。
【
図3a】制御レール用の調節装置のレバーを示す図である。
【
図3b】レバーを通るA-A平面に沿った断面図である。
【0031】
図1には、フィルム延伸設備1の一方のクリップチェーン2を上方から見た原理図が示してある。このクリップチェーン2は、循環する無端チェーンとして形成されていて、稼動中、循環方向Uで延伸領域10と戻り領域30とを走行する。フィルム延伸設備1は、通常、中心軸線4に対して対称的に形成されていて、鏡像対称的に配置された第2のクリップチェーンを備えている。なお、この第2のクリップチェーンは図示していない。フィルム9は、延伸領域の入口13でクリップチェーン2のクリップによって把持され、延伸領域10を搬送される。フィルム9は、まず、横延伸領域11を走行し、次いで、縦収縮領域12を走行する。この縦収縮領域12では、縦収縮が第1の制御レール20を介して調整可能となる。この第1の制御レール20によって、縦収縮領域12で個々のクリップ相互の間隔が減少可能かつ調整可能となる。付加的には、縦収縮領域で横収縮が行われてもよい。これは、通常、鏡像対称的に配置された両方のクリップチェーン2が、縦収縮領域12で台形状に互いに近づく方向に走行し、互いに平行に配置されていないことによって実現される。好ましくは、横収縮も同様に調整可能である。延伸領域10の終端部には、駆動スプロケット3が配置されている。この駆動スプロケット3はクリップチェーン2に係合していて、このクリップチェーン2を駆動する。好ましくは、駆動スプロケット3は電動モータによって駆動される。好ましくは、駆動スプロケット3と電動モータとは、出口台6に配置されている。駆動スプロケットの直後には、チェーンテンショナ60が配置されている。好適には、このチェーンテンショナ60も同じく出口台6に取り付けられている。
図1に示した実施形態では、チェーンテンショナ60が、x方向の張力調整方向を有している。しかしながら、この張力調整方向は、y方向に形成されていてもよいし、組み合わされたx-y方向に形成されていてもよい。チェーンテンショナ60と延伸領域の入口13との間には、戻り領域30が配置されている。この戻り領域30には、第2の制御レール40が配置されている。戻り領域30に設けられた第2の制御レール40によって、戻り領域で戻り収縮が調整可能となる。戻り収縮、つまり、戻り領域でのクリップ同士の間隔は、通常、延伸領域10での収縮調整に相応して調整され、この収縮調整に適合させられる。
【0032】
図2には、戻り領域30に配置された第2の制御レール40が示してある。この第2の制御レール40の図示の区分は、2つの制御レール要素40a,40bを有している。しかしながら、第2の制御レール40は、この第2の制御レール40を延長する更なる制御レール要素を有していてよい。ただし、この更なる制御レール要素は図示していない。第2の制御レールは、1つの制御レール要素しか有していなくてもよい。両方の制御レール要素40a,bは、それぞれ変位支持部41を介してレバー42に結合もしくは溶接されている。このレバー42は、チェーン軌道支持体5において回動支持部47に支持されている。この回動支持部47の回動軸線47’を中心としたレバー42の回動を介して、制御レール要素40a,bひいては第2の制御レール40全体の変位量が可変となる。第2の制御レール40の変位量を変えることによって、クリップチェーン2の長さが変えられる。特にクリップチェーン2は、第2の制御レール40の変位によって、最大の長さを有する真っ直ぐなチェーンからジグザグ形状にもたらされる。個々のレバー42ひいては第2の制御レール40全体は、ただ1つの駆動装置によって駆動される。戻り領域には、さらに少なくとも1つの別の第2の制御レール40(図示せず)が配置されていてもよく、これによって、戻り領域に、例えば2つの第2の制御レール40が存在している。さらに、レバー42において変位支持部と反対側の押進支持部46にプッシュロッド43が結合されている。個々のレバー42は、プッシュロッド43を介して結合されていて、連結された運動もしくは回動を実施する。
図2に示したプッシュロッド43は、1つの駆動装置の互いに向かい合う端部から離れる方向に延在する2つのプッシュロッド43a,43bから成っている。両方のプッシュロッド43a,bは、特に第2の制御レール40に対して平行に延在している。駆動装置は、電動モータ45と、この電動モータ45に接続され、伝動機構ハウジング45’内に設けられた伝動機構と、から成っていて、この伝動機構を介して、スピンドル44が駆動される。このスピンドル44は、プッシュロッド43a,bに結合された少なくとも両方の端部にスピンドルプロファイルを有している。スピンドルの回動によって、プッシュロッド43a,bは、通常ではフィルム延伸設備のz方向を成す縦方向に沿って移動できる。
図2に示した実施形態では、スピンドル44の回動によって、プッシュロッド43aがプッシュロッド43bに対して逆方向に移動させられる。レバーは、電動モータ45を通るx-y平面に対して対称的に配置されている。このことは、プッシュロッド要素の長さもしくは制御レール要素の個数が等しければ、駆動装置の両方の側において、z方向への縦方向の力が実質的に補償されるという利点を有している。
【0033】
伝動機構を含む電動モータ45は、リニアガイド49に支持されたキャリッジに配置されている。これによって、伝動機構モータがx方向に沿って移動可能となるため、この方向への補償を行うことができる。押進支持部46は、回動軸線47’を中心としたレバー42の回動時に円軌道にて運動させられる。したがって、プッシュロッド43a,bが、z軸に沿った移動時にx方向の強制運動を実施する。x方向へのこの運動による応力を回避するために、駆動装置も同じくx方向に移動可能に形成されていて、連動することができる。
【0034】
複数の駆動装置を有する従来の制御レールでは、駆動が、通常、2つの制御レール要素同士の移行部で行われる。なぜならば、駆動装置が、2つの制御レール要素を一緒に調節することができ、駆動装置の個数を全体的に減じることができるからである。第2の制御レール40全体にただ1つの駆動装置を使用することに基づき、全ての制御レール要素40a,bの調節が一緒に行われ、好ましくは互いに均等にもまたは均整のとれた状態でも行われる。好適には、制御レール要素40a,bをx方向で支持している変位支持部41は、制御レール要素40a,bの長さにわたって均等に分配されて配置されている。変位支持部41は、
図2では、制御レール要素40a,bの端部から離れ、制御レール要素40a,bの中間に向かってずれている。これによって、チェーンから制御レール40に加えられる撓み荷重がより均等になる。z方向では、制御レール要素40a,bは、それぞれ2つの横方向ガイド48を介して支持されている。これらの横方向ガイド48は、図示の実施形態では、制御レール要素40a,bにおいてx方向に設けられたスリットと、このスリット内を走行するスライダであって、チェーン軌道支持体5にねじ締結されたスライダと、から成っている。したがって、制御レール要素40a,bは、x方向の支持およびz方向の支持を分けている。
【0035】
図2aには、第2の制御レール40の進入側要素50の平面図が示してある。この進入側要素50は、第1の回動ジョイント51を介して制御レール要素40bに結合されている。この制御レール要素40bは、
図2aでは、チェーン走行方向において第1の制御レール要素である。反対側の端部において進入側要素50は、チェーン軌道支持体5に結合されているか、もしくはチェーン軌道支持体5に可動に支持されている。進入側要素50内にチェーン軌道支持体5に沿って設けられ、結合部を介して互いに結合された2つの平行な回動軸から、第1の揺動支持機構52が成っている。このような支持の方法によって、進入側要素は、クリップチェーンを外向きに走行させる傾斜部として機能する。回動ジョイント51を介した制御レール要素40bへの結合によって、進入側要素50が第2の制御レール40の変位に従い、これによって、傾斜部がその端部において第2の制御レール40の変位を伴う。チェーン軌道支持体5には、ガイドレール8が取り付けられており、このガイドレール8において、クリップチェーン2は、クリップに設けられた支持部を介してガイドされている。
【0036】
図2bには、第2の制御レール40の進出側要素53が示してある。この進出側要素53は、第1の側で第2の回動ジョイント54を介して制御レール要素40aに結合されている。この制御レール要素40aは、
図2bでは、循環方向における最後の制御レール要素である。進出側要素53は、反対側の端部において、進入側要素50に類似して第2の揺動支持機構55を介してチェーン軌道支持体5に結合されている。進入側要素50と異なり、第2の揺動支持機構55はばね弾性を有しており、つまり、チェーン軌道支持体5と進出側要素53とに設けられた両方の回動軸の間に皿ばね積層体56が配置されており、これによって、チェーンにおける振動が吸収されるようになっている。
図2bに示したように、進出側要素53は負の傾斜部として形成されている。
【0037】
図3aは、制御レール要素40aの変位量を変えるためのレバー42を平面図で示し、
図3bは、A-A線に沿ったレバー42の断面図を示している。断面は、変位支持部41と、回動支持部47と、押進支持部46と、を通過している。
図3bに示したように、レバーは2つの部材から形成されていて、上側のレバー要素42aと下側のレバー要素42bとを備えている。これら上側および下側のレバー要素42a,bは、チェーン軌道支持体5を貫通した回動支持部47を介して互いに結合されている。チェーン軌道支持体5に対して相対的な両側への配置によって、つまり、上側および下側のレバー要素42a,bによって、チェーン軌道支持体5に加えられるねじりモーメントが減じられるかもしくは回避される。プッシュロッド43aは断面四角形材として形成されている。プッシュロッド43aは上面および下面に各々のレバー要素42a,bの押進支持部46用の収容体を有している。レバー42の反対側の端部には、変位支持部41が配置されている。この変位支持部41はスライダ41’に結合されている。変位支持部41は、レバー42に沿って設けられたピンを備えている。このピンは、スライダ41’に設けられた滑りブシュ内に支持されている。スライダ41’は、制御レール要素40aに設けられた縦方向ガイド41’’内に係合している。この縦方向ガイド41’’はz方向に形成されており、これによって、スライダ41’を縦方向ガイド41’’の内部でz方向に運動させることができる。チェーン軌道支持体5には、ガイドレール8が溶接もしくはねじ締結されている。
【0038】
レバー42は偏心的な揺動レバーとして形成されている。つまり、3つの支持部(変位支持部41、回動支持部47、押進支持部46)は一直線に配置されていない。むしろ、回動支持部47もしくは回動軸線47’は、変位支持部41と押進支持部46とを結ぶ線から外れて配置されている。その上、回動支持部47と変位支持部41との間の間隔は、回動支持部47と押進支持部46との間の間隔よりも短い。レバーの変換及び揺動レバーの折れ曲がりによって、調節装置の動きが可変となる。レバー42により行われる90°の力転向によって、プッシュロッド43と、スピンドル44と、電動モータ45とを含む駆動装置を、チェーン軌道支持体5の内面に沿って省スペースで配置することができる。
【0039】
偏心的な揺動レバーとしての構成によって、押進支持部46に加えられる力がストロークに比例するのに対して、変位支持部41に加えられる変位力は、チェーンのジオメトリに基づき、変位量が増加するにつれて指数関数的に増加する。このことは、制御レール44の変位時にジグザグ形状に移行させられるチェーンのジオメトリに基づいている。さらに、力変換は、レバー42におけるてこ比によって定められていて、構造的に可変である。
【0040】
図4には、レバー42の動きが示してある。レバー42は、回動軸線47’と、変位支持部41と、押進支持部46とによって概略的に図示してある。押進支持部46と変位支持部41とは両方とも回動運動を実施し、回動軸線47’を中心とした円軌道上に位置している。偏心的な揺動レバーは3つの位置で図示してある。位置1は制御レールの最小の変位量を図示しており、位置2は揺動レバーの死点を図示しており、位置3は制御レールの最大の変位量を図示している。両方の位置1,3は、死点、つまり、位置2に対して対称的に配置されている。押進支持部46にはプッシュロッド43が作用し、変位支持部41はスライダ41’に結合されている。
【0041】
図5には、駆動スプロケット3とチェーンテンショナ60とが配置された出口台6の平面図が示してある。クリップチェーン2は、延伸領域10から駆動スプロケット3に進入する。この駆動スプロケット3は駆動装置(図示せず)、特に電動モータによって駆動される。駆動スプロケット3によって、循環するクリップチェーン2全体が駆動される。クリップチェーン2は駆動スプロケット3から進出し、チェーンテンショナ60に直接到達する。このチェーンテンショナ60はチェーンガイド61を備えている。クリップチェーン2は、好ましくは、チェーンガイド61内でガイドレール8を介してガイドされている。チェーンガイド61は、
図5では、クリップチェーンを転向させる湾曲したガイドレール8を備えている。
【0042】
クリップチェーン2はチェーンテンショナ60から進出し、戻り領域30に引き続き搬送される。チェーンテンショナ60は、駆動スプロケット3の直後且つ戻り領域30の直前に配置されている。チェーンテンショナ60もしくはチェーンテンショナ60のチェーンガイド61は、x方向に可動に出口台6に取り付けられている。
【0043】
図6に示したように、チェーンガイド61の下方に複数のリニアガイド63が配置されている。このリニアガイド63には、チェーンガイド61がx方向に可動に配置されている。チェーンテンショナ60は、
図6に示した実施形態では、空気圧シリンダ62をさらに備えている。この空気圧シリンダ62はx方向に配置されていて、チェーンガイド61をx方向に移動させるように形成されている。空気圧シリンダ62の操作時には、チェーンガイド61全体がリニアガイド63に対して平行に移動させられる。空気圧シリンダ62は、チェーンガイド61を外向きに、つまり、駆動ホイール3から離れる方向に引っ張る力操作式の駆動装置である。これによって、クリップチェーン2が張力下で保持される。チェーンテンショナ60を駆動ホイール3のすぐ背後に配置することによって、チェーンテンショナ60により加えるべき力を大幅に減じることができる。駆動スプロケット3のすぐ背後では、クリップチェーン2に実際に力は加えられない。なぜならば、システムに起因して、チェーンに引張り荷重しか加えられないからである。したがって、通常、空気圧シリンダ62には、好ましくは一桁barの範囲内の低い空気圧を作用させれば十分である。さらに、チェーンテンショナ60は、稼動中、事前に定められた作業範囲内に保つことができ、閾値を上回ると、チェーンが第1もしくは第2の制御レール20,40を介して短縮されるかまたは伸長させられ、これによって、チェーンテンショナ60が、引き続き好適な作業範囲内にとどめられる。外方に向けてチェーンテンショナ60を引っ張る力によって、クリップチェーン2がその循環経路の変化により張力下で保持される。チェーンテンショナ60を引っ張る動作は、空気圧シリンダ62への圧力作用を介して簡単に調整可能であるかもしくは可変である。
【符号の説明】
【0044】
1 フィルム延伸設備
2 クリップチェーン
3 駆動スプロケット
4 中心軸線
5 チェーン軌道支持体
6 出口台
8 ガイドレール
9 フィルム
10 延伸領域
11 横延伸領域
12 縦収縮領域
13 延伸領域の入口
20 第1の制御レール
30 戻り領域
40 第2の制御レール
40a,b 制御レール要素
41 変位支持部
41’ スライダ
41’’ 縦方向ガイド
42 レバー
42a,b 上側および下側のレバー要素
43a,b プッシュロッド
44 スピンドル
45 電動モータ
45’ 伝動機構ハウジング
46 押進支持部
47 回動支持部
47’ 回動軸線
48 横方向ガイド
49 リニアガイド
50 進入側要素
51 第1の回動ジョイント
52 第1の揺動支持機構
53 進出側要素
54 第2の回動ジョイント
55 第2の揺動支持機構
56 皿ばね積層体
60 チェーンテンショナ
61 チェーンガイド
62 空気圧シリンダ
63 リニアガイド
U 循環方向
【国際調査報告】