(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ベッセル様ビームを用いる走査型投影法のための画像生成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/09 20060101AFI20220714BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
G02B27/09
G02B26/10 C
G02B26/10 104Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568685
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 DE2020100407
(87)【国際公開番号】W WO2020228907
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102019207073.6
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521500487
【氏名又は名称】オクメンテッド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・ヤネス
【テーマコード(参考)】
2H045
【Fターム(参考)】
2H045AB13
2H045CB24
(57)【要約】
本発明は、ガウシアン放射特性を有する1以上の出力ビーム(1)用の放射源(1a)、特にレーザービーム源を有する画像生成装置に関し、この画像生成装置は、1以上の出力ビームからベッセル様ビームを生成するための装置(2、4、5、28、29)と、制御可能に駆動可能なMEMSスキャナ(8、9、32、36、41)であって、ベッセル様ビームがMEMSスキャナに向けられ、MEMSスキャナ(8、9)によって意図的に偏向されて画像を生成する、MEMSスキャナと、ベッセル様ビームに対して少なくとも部分的に透過性のある少なくとも1つの表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)であって、表示体上でベッセル様ビームがMEMSスキャナによって案内される、少なくとも1つの表示体と、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガウシアン放射特性を有する1以上の出力ビーム(1)用の放射源(1a)、特にレーザービーム源を有する画像生成装置であって、
1以上の出力ビームからベッセル様ビームを生成するための装置(2、4、5、28、29)と、
制御可能に駆動可能なMEMSスキャナ(8、9、32、36、41)であって、前記ベッセル様ビームが前記MEMSスキャナに向けられ、前記MEMSスキャナ(8、9)によって意図的に偏向されて画像を生成する、MEMSスキャナ(8、9、32、36、41)と、
前記ベッセル様ビームに対して少なくとも部分的に透過性のある少なくとも1つの表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)であって、前記表示体上で前記ベッセル様ビームが前記MEMSスキャナによって案内される、少なくとも1つの表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)と、
を有する画像生成装置。
【請求項2】
投影装置(46)が、前記表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)からの画像を投影光学ユニットによって投影面に投影する、請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項3】
ベッセル様ビームを生成するための前記装置が少なくとも1つのアキシコン(4、5、28、29)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記アキシコン(4、5、28、29)が、ミラーまたは屈折要素、特にレンズとして設計されることを特徴とする、請求項3に記載の画像生成装置。
【請求項5】
ベッセル様ビームを生成するための前記装置が、互いに同軸に並べられた少なくとも2つの前記アキシコン(4、5、28、29)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の画像生成装置。
【請求項6】
ベッセル様ビームを生成するための前記装置が、リング状隙間を有する開口を有し、前記出力ビームが、前記開口に向けられ、特に、少なくとも1つの集光レンズが、前記放射源から見て前記リング状隙間の後に設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像生成装置。
【請求項7】
前記MEMSスキャナが、複数の軸を中心に回転可能または枢動可能なミラーを有する2次元MEMSスキャナ(8、9、32、36、41)として設計されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項8】
前記MEMSスキャナ(8、9、32、36、41)のカプセル壁が、前記表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)として設計され、
画像生成のための前記カプセル壁が、特に平面部または球状キャップの形態の部分を有し、
前記球状キャップの球中心点が、MEMSミラー(8、32、36)の2つの枢動軸が交差する点と一致することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項9】
前記表示体(10、16、18、20、22、24、26、30)が、フォーカシングスクリーンとして設計され、または燐光または蛍光物質、特に燐光または蛍光フィルムで被覆されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【請求項10】
少なくとも1つのMEMSミラー(36、41)が、特に円形または楕円形の凹部(40、45)を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学および画像生成の分野である。例えば、画像プロジェクタ用に使用可能であることが特に有利である。
【背景技術】
【0002】
走査型画像投影法は原理的に知られている。このような方法では、ビーム、例えばレーザービームは、典型的には、制御可能なミラーによって意図的に偏向され、ビーム強度は偏向時に調節される。このようにして、認識可能な画像が投影面上に生じる。
【0003】
既知の投影法の解像度は、結像光学ユニットおよびビームを偏向させるミラーまたは他の要素の制御の質だけでなく、画像生成ビーム自体の質、特に寸法によっても制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第19941363号明細書
【特許文献2】独国特許第102004060576号明細書
【特許文献3】独国特許第102006058536号明細書
【特許文献4】欧州特許第2102096号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102008012384号明細書
【特許文献6】欧州特許第2514211号明細書
【特許文献7】欧州特許第2828701号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第102013206396号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術のこの背景に対して、可能な限り高い解像度を有する画像を生成することができる走査型投影法および画像生成装置を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1による本発明の特徴によって達成される。請求項2から10は、本装置の可能な実施態様を提示する。
【0007】
したがって、本発明は、ガウシアン放射特性を有する1以上の出力ビーム用の放射源、特にレーザービーム源を有する画像生成装置であって、1以上の出力ビームからベッセル様(Bessel-like)ビームを生成するための装置と、制御可能に駆動可能なMEMSスキャナであって、ベッセル様ビームがMEMSスキャナに向けられ、MEMSスキャナによって意図的に偏向されて画像を生成する、MEMSスキャナと、ベッセル様ビームに対して少なくとも部分的に透過性のある表示体であって、表示体上でベッセル様ビームがMEMSスキャナによって案内される、表示体と、を有する画像生成装置に関する。
【0008】
本発明は、走査投影法の解像度が、特に、例えばレーザービームの形態で典型的に使用されるガウシアンビームのビームプロファイルによっても制限されるという概念に基づいている。小さなビーム径を形成するためのガウシアンビームの集光およびビームフォーミングは、原理的に物理的な制限を受ける。
【0009】
基本的な電磁放射を記述するヘルムホルツ方程式の解からヘルムホルツ方程式の可能な解を記述するベッセル関数から名付けられたいわゆるベッセルビームによって、典型的なガウシアンビームを用いるよりも小さなビーム径が可能になることがわかる。前述のベッセル関数によって記述される理想的なベッセルビームは、理想的なガウシアンビームを生成することができないのと同じように、実際には生成することができない。したがって、本発明では、以下、理想的なベッセル放射の性質に近い性質を有するベッセル様ビームについて言及する。ベッセル様ビームを生成することの実用的な可能性は知られており、それは、ガウシアンビームを使用して、それをベッセル様ビームに形成することから始まる。ベッセルビームおよびベッセル様ビームの性質は、図の説明と併せてより詳細に説明される。
【0010】
したがって、本発明によれば、MEMSスキャナを用いて、より高い解像度で表示体上に画像を可視化することができる。画素の解像度は、例えば、1平方センチメートル当たり1000×1000画素程度にすることができる。
【0011】
本発明の一の有利な実施形態は、表示体からの画像を投影光学ユニットによって投影面に投影する投影装置が提供されることであり得る。表示体は、まず、一種のフォーカシングスクリーンのように機能することができ、ベッセル様ビームによってその上に生成された画像が可視化される。使用者が画像をより良く、および/または、より快適に見ることができるように、この画像は、投影装置によって、例えば、より大きな面に投影することができる。
【0012】
本発明の一の可能性のある実施形態は、ベッセル様ビームを生成するための装置が少なくとも1つのアキシコンを有するようにすることができる。アキシコンは、反射型または屈折型の形態で提供することができ、ほとんどの場合、回転対称に作られ、遠方界近似でリング状のビームプロファイルを生成する光学構成部品として理解されている。この目的のためには、レーザービーム、したがってガウシアンビームを、アキシコンの光軸と共線になるように放射することが最適である。さらなるビーム案内によって、リング状のビームプロファイルはできるだけ小さな領域に集中され、例えば、集光またはコリメートされる。この目的のために、結像光学ユニットまたはさらなるアキシコンを使用することができる。
【0013】
ここでは、少なくとも1つのアキシコンは、ミラーまたは光屈折要素、特にレンズとして設計されるようにすることができる。
【0014】
このような場合、出力ビームは両方のアキシコンを連続して通過し、2つのアキシコンからなる組合せは、さらに結像光学ユニットと組み合わせることができる。
【0015】
詳細には、ベッセル様ビームを生成するための装置は、互いに同軸に並べられた少なくとも2つのアキシコンを有するようにすることができる。
【0016】
別の実施形態では、例えば、ベッセル様ビームを生成するための装置がリング状隙間を有する開口を有し、出力ビームが開口に向けられ、特に、少なくとも1つの集光レンズが、放射源から見てリング状隙間の後ろに設けられるようにすることもできる。このような装置によって、極めて狭い強度分布を有するベッセル様ビームも生成することができる。
【0017】
原理的には、使用されるMEMSスキャナは、2次元画像を生成するためにビームが2次元に偏向可能であるように、異なる軸を中心に枢動可能な1以上の駆動可能な枢動可能または回転可能ミラーを有することができる。ここで、ミラーの軸は互いに垂直であることは合理的であり得る。また、いくつかの用途では、単一の軸だけを中心に回転可能または枢動可能なミラー、特にMEMSミラーを設けることも原理的には可能である。
【0018】
ここでは、枢動軸が複数設けられる場合、これらの軸が交差していることが特に有利である。これは、一のビームが2つの枢動可能なミラーを連続して通過する場合、反射損失と偏向誤差の両方が合算されるためである。これは、1枚目のミラーによって既に偏向されたビームが2枚目のミラーに入り、その結果、ミラー表面の不均一性が誤差を生じさせ得ることも部分的に原因になる。
【0019】
したがって、本発明により、MEMSスキャナが、複数の軸を中心に回転可能または枢動可能なミラーを有する2次元MEMSスキャナとして設計されていることが有利になり得る。基本的に既知の2次元MEMSスキャナでは、単一のミラーが2つの異なる軸を中心に適切な駆動装置によって回転させられて2次元画像を生成する。このような2次元MEMSスキャナを用いることによって、画像生成の誤差を最小限にすることができる。
【0020】
本発明のさらに有利な実施形態は、MEMSスキャナのカプセル壁が表示体として設計され、画像生成のためのカプセル壁が特に平面部または球状キャップの形態の部分を有し、球状キャップの球中心点が、MEMSミラーの2つの枢動軸が交差する点と一致するようにすることができる。多くの場合、前述のMEMSスキャナは封止されており、使用される放射に対して少なくとも部分的に透明なカプセル壁を有する。例えば、スキャナは、カプセルによって環境の影響から保護することができ、駆動可能なミラーが動く空間はまた真空にされて、例えば、空気摩擦損失を最小限にし、ミラーの偏向を最適化することができる。
【0021】
カプセルの壁の一部分は、カプセルの外から認識できるようにこの部分に走査投影を生成するために、一種のフォーカシングスクリーンとして働くように使用することができる。フォーカシングスクリーンとしてのカプセル壁の典型的な設計(例えば、カプセル壁の内側または外側を粗くすること)は、ベッセル様ビームの使用によって達成可能になり得る解像度がそのようなフォーカシングスクリーンの解像度を超え得るので、ここでは十分でないことが多い。したがって、カプセル壁の材料は、高い位置分解能で入射光の前方散乱を可能にする構造を有することが有利である。この目的のために、カプセル壁は、例えば、燐光物質と混ぜられてもよく、または燐光物質で被覆されてもよく、例えば、燐光フィルムで被覆されてもよい。しかしながら、高解像度の前方散乱を可能にするこのようなカプセル壁の任意の他のタイプの構成体もまた考えられる。
【0022】
カプセル壁の形状、または詳細には、画像を生成することができるカプセル壁の部分は、例えば、球中心点がMEMSミラーの2つの枢動軸が交差する点と一致する球状キャップに相当することができる。このような場合、計算することが簡単で、画像の範囲にわたって一様な位置分解能を有する画像が生成される。また、カプセル壁の平面部分を画像投影のために使用することも考えられる。基本的な形状が、画像生成時に既知であれば、すなわち、個々の画素に対してMEMSスキャナのそれぞれの偏向角を設定するときに、生成される画像の歪みは、簡単な形で数学的に考慮されることになる。
【0023】
単一の軸だけを中心に枢動可能な単一の偏向ミラー/MEMSミラーが用いられる場合、円筒形または半円筒形のカプセルハウジングを設ける、またはカプセルハウジングの円筒部分を設けることもできる。この場合、円筒軸を枢動軸と平行に並べることができることが有利である。
【0024】
原理的には、画像はカプセル壁の内側と外側の両方で、またはその間に位置する層でも生成することができることに留意されたい。
【0025】
燐光物質が使用される場合は、したがって、燐光が生成されるようにベッセル様ビームの波長をその物質に合わせるべきであることは明らかである。
【0026】
本発明による画像生成装置では、ビームプロファイルの断面において少なくとも部分的にリング状の強度分布を有するベッセル用ビームが用いられるため、ビームがMEMSスキャナの後で最適化されたビーム径に圧縮されているだけなので、MEMSミラーでの反射時にもこのようなリング状の強度分布が存在することができる。これは、多くの場合、MEMSミラーの中心領域は反射のためには必要でないことを意味する。したがって、このような領域は、MEMSミラーの質量削減のために省くことができる。このような凹部は、例えば、ベッセル様ビームがMEMSミラーに平坦な角度で入射する場合、円形または楕円形に形成することができる。
【0027】
ベッセルビーム
ベッセルビームは1987年に理論的に記述され、その後まもなく実験的に生成された。ベッセルビームは、ヘルムホルツ方程式の解の1つ、すなわち、振幅が第1種ベッセル関数によって記述される電磁場として理解される。通常の使用では、回転対称のm=0の特別な場合がベッセルビーム、または、より正確にはベッセル様ビームと称される。ベッセルビームを生成するためには、無限に広がる平面波を必要とし、これは、実際には生成されない。以下の本文では、ベッセルビームという表現を使うことがあるが、これはベッセル様ビームを意味する。
【0028】
ベッセルビームを生成するために、レーザービーム(ガウスビームまたはガウシアンビーム)が特殊なレンズを用いて形成される。ガウシアン特性を有するレーザービームとは対照的に、ベッセルビームには回折効果が生じず、伝播中にビーム形状が変化しない。ベッセルビームの有用な特性は、中心極大が高いビーム密度を有し、この中心極大が半径方向に小さな寸法を有することである。
【0029】
ベッセル様ビームを生成するために、ガウシアンビームが、例えばアキシコンを使って重ね合わされる。アキシコンは円錐形の光学構成部品で、反射型またはレンズ形の屈折実施形態に適用することができる。アキシコンは、凹状および凸状の両方の形態が生産されている。これらは、任意の適切な(特に、波長、レーザー出力に関して適切な)光学材料から構成することができる。反射型およびレンズ形の実施形態では両方とも、レーザービームが、例えば、アキシコンの光軸と共線またはほぼ共線になるように放射されると同時に、アキシコンは、遠方界近似においてリング状のビームプロファイルを生成する。リング状のビームのリング幅は、ガウシアン入力ビームの直径の約半分になる。さらなるアキシコンまたはレンズが光軸上に使用されると、異なる形状を有するビームプロファイルを生成することができる。
【0030】
ここで説明する装置においてアキシコンを適用するためには、生成されるベッセルビームのタイプが、ビーム形状を定めるアキシコン角に本質的に依存することが不可欠である。
【0031】
例えば、光学的外科手術においてレーザービームに対して行われるのと同じように、リング状の強度分布を有するコリメートされたビームを生成するために、2つのアキシコンが互いに組み合わされる。この場合、2つのアキシコンの距離がリング状の強度分布の直径を定める。ベッセルビーム、または、詳細には、ベッセル様ビームの生成に対して、その横方向の分布および深さは入力の直径に依存することもまた事実である。アキシコンを、(例えば、ビームエキスパンダとして)ビーム形状を定めるために使用される様々な光学レンズと組み合わせることも知られている。
【0032】
しかしながら、ベッセルビームの生成に使用されるのはアキシコンだけではない。代替の生成法は、コリメートされたレーザービームを適切な直径のリング状隙間を通して入射させるというものである。レーザービームはこのリング状隙間で回折させられる。リング状隙間までの距離とほぼ同じ焦点距離を有するレンズはリング状の強度分布をコリメートし、したがって、ベッセル様ビームを生成する。
【0033】
MEMSスキャナ
ここでは、本発明の用途として、2次元MEMSスキャナを用いた画像生成を考える。このようなスキャナは、例えば、以下の文献に記載されている。
- 特許文献1:マイクロアクチュエータ構成部品を製造するための方法
- 特許文献2:光電子レーザー走査方法およびそれを動作させるための構成
- 特許文献3:封止可能なマイクロミラーアクチュエータおよびその製造方法
- 特許文献4:モバイル態様で使用可能な光学的MEMS用ハーメチックウエハレベルパッケージ
- 特許文献5:封止されたマイクロミラーの幾何学的反射の抑制
- 特許文献6:単軸または多軸ビーム偏向のための方法および装置
- 特許文献7:高レーザー出力の偏向のためのマイクロメカニカルミラーアクチュエータ
- 特許文献8:大きな振動振幅を有する共振マイクロミラーアクチュエータ
【0034】
2次元スキャナは、その実施形態および駆動様式に関して何ら制限を受けない。
【0035】
MEMSスキャナは、例えば、静電的に、圧電的に、磁気的に、機械的に、または別の方法で駆動することができる。両方向の角度位置に対して、十分に正確な測定方法が提供されていることが確実でありさえすればよい。2次元スキャナを選択する際の一の有利な点は、両方の捩れ軸が一の平面にあり、したがって2つの独立した方向の偏向のための共通の枢動点が存在することである。
【0036】
2台の1次元スキャナを使用して、所望の空間角度範囲をカバーする構造も可能であるが、いくつかの用途では幾何学的な理由であまり有利ではない。
【0037】
両方の軸の走査周波数は用途に依存する。現在生産されている2次元MEMSスキャナの振動周波数は、例えば、一方の軸で数百ヘルツ、他方の軸で最高数十キロヘルツに達している。しかしながら、両方の振動方向において同一または類似の走査周波数を有する2次元MEMSスキャナを使用することもできる。2つの軸の周波数は、ある体積が照射される最大繰り返し速度を定める。
【0038】
画像生成のための条件は、画像生成中の各時点での両軸におけるスキャナの角度位置を正確に把握することである。例えば、静電容量読み出し方式、光学式位置感応型検出器、歪みゲージ、圧電方式、さらにその他の方式が角度位置の測定のために利用可能である。
【0039】
ガラス封止/真空封止
MEMSミラーユニットを真空密閉被覆するために、様々な設計および方法が利用可能である。少なくとも1つの軸を中心に振動するミラーが懸架されたキャリア基板と共に透明なカバーが密閉封止されたMEMSミラー構成体を製造するための1つの例示的な方法は、以下のステップを有する。
- シリコンウエハを用意する;
- それぞれがカバーのフットプリントに対応する複数の窪みが生成されるように、シリコンウエハを構造化する;
- 構造化されたシリコンウエハ上にガラス状材料から作られたカバーウエハを接合し、カバーウエハの窪みによって形成された空洞に不活性ガスを所定の圧力で封入する;
- 封入された不活性ガスの膨張によって複数のドームが形成されるように、シリコンウエハとカバーウエハとから作られた複合体を焼き固める;
- シリコンウエハとカバーウエハとから作られた複合体を冷却した後、シリコンウエハを部分的または完全に除去する;
- キャリア基板に懸架された複数のミラーを備えるミラーウエハを、ミラーの中心がそれぞれ、ドームの中心点にあるように、カバーウエハに対して配置する;
- カバーウエハをミラーウエハと接合して密閉封止する;
- カバーウエハとミラーウエハとから作られた複合体を、個別にキャップされたMEMSミラー構成体に分離する。
【0040】
別の方法では、シリコンウエハの代わりに、高温のガラス状物質が付着するのを防ぐ材料からなる治具、または高温のガラス状物質が付着するのを防ぐ材料を用いて被覆された治具が使用される。この治具は、通路開口を備えている、または後で備えることになる。ガラス状材料からなるカバーウエハを、通路開口を備えた治具の上に置き、カバーウエハから離れた側に負圧をかける。負圧によりカバーウエハを通路開口内に吸引することによって複数のドームが形成されるように、治具とカバーウエハとから作られた複合体を大気条件で焼き固める。治具とカバーウエハとから作られた複合体が冷却された後、治具が取り外される。この後のステップは、上記の方法と同じである。
【0041】
表示スクリーン、フォーカシングスクリーン
提案された装置を用いて実像を生成し、それに続いて、例えば対応する投影光学ユニットを用いてスクリーンに投影することが可能である。このような画像の最も簡単な生成可能法は、かつての写真で典型的であったように、フォーカシングスクリーンを使用することである。フォーカシングスクリーンは、MEMSスキャナのガラスカプセルの内側または外側に作られ、そこに実像が生成される。しかし、実像が走査ベッセルビームによって生成され、したがって、特に横方向の解像度が高いビームを用いて生成されるという背景に対しては、典型的なフォーカシングスクリーンの粒径または粒状性は、利用できる解像度を完全には利用していない。ベッセルビームを用いて可能な画素解像度は、フォーカシングスクリーンを使用すると低下する。
【0042】
装置の特定の用途に応じて、真空カプセルのガラス体の表面の一方に燐光層を施すことも可能である。燐光層には、典型的には、「青色」レーザー光が照射される。燐光層での既知の変換過程の結果、より長い波長を有する光がそこから放出される。
【0043】
数年前から、「透明蛍光フィルム」または「スーパーイメージングフィルム」(「透明蛍光フィルム」)とも呼ばれる投影面が存在している。このフィルムは、基本的にナノ粒子から構成されており、粒子の直径が小さいことにより、可視波長域で透明である。このフィルムは、例えば波長405nmのレーザー光を用いて照射された場合、フィルムは全方向に、例えば青または赤のより長い波長のインコヒーレントな光を放射する。2方向に振動するMEMSスキャナから反射され、真空カプセルの表面部分上を通るベッセルビームは、この小さな表示スクリーンにこのように画像を投影する。
【0044】
例えば2次元MEMSスキャナによって偏向されたレーザービームまたはベッセルビームを走査することによって、例えば2000×1000画素からなる画像を生成するには、2つの走査方向のMEMSミラーの瞬間的な角度位置の正確な検出が必要である。
【0045】
角度位置の検出は、様々な方法によって行うことができる。これらの方法には、特に、互いに対向する導電面の静電容量測定、光学測定、圧電測定、または歪みゲージを用いる測定などが含まれる。
【0046】
レーザーの出力は、MEMSミラーの瞬間的な角度位置に応じて設定され、その結果、照射された画素が表示スクリーンの所望の位置に可視化される。これを達成するために、レーザー出力は、ミラーの両枢動方向の角度位置の関数として制御される。この目的のために、高い位置分解能で画素強度を定めるために2次元MEMSスキャナの位置とレーザー出力とを結びつけるコントローラまたはレギュレータが設けられている。
【0047】
多くの用途でMEMSスキャナが真空カプセルを備えているという事実は、本発明による画像生成装置に利用することができる。真空カプセルのガラス面を利用して、その上に実像を生成することができる。
【0048】
既知の方法を用いてベッセルビームを生成し、時間依存でMEMSスキャナから2方向に反射させ、表示体としての真空カプセルのガラス体の一部に照射することで高画素化が実現される。
【0049】
表示体の表面に実像を生成するためには、この表面の光学特性を設計することが有利である。MEMSスキャナの真空カプセルの表面特性は、透明な材料、例えば、ガラス、サファイア、または石英を用いて実像を生成できるように変更することができる。この目的のために、様々な可能性がある。
【0050】
まず強調すべきは、表面の変更は、真空カプセルの実像が生じる部分でのみ行うべきであるということである。MEMSミラーによって反射される前にレーザービームが通過する真空カプセルの領域は、変化がなく、可能な限り透明なままでなければならない。ここで言う表面の変更または付加とは、例えば、フォーカシングスクリーンの形成、燐光材料の施工および透明な蛍光フィルムの施工を含む。
【0051】
実際、完全に透明な面にも実像が生成されることがあり、その結果、いくつかの場合には、真空カプセルの単純なガラス面でも表示スクリーンとして十分である。しかしながら、この設計ではガラス体の両面に走査実像が生じ、この二重の像が用途にとって有害になりかねない。いずれにしても、このように画像の解像度は悪くなる。表面を調整する最も簡単になり得る方法は、フォーカシングスクリーンが生じるように処理することである。ここで、ガラス体の2つの表面のうちどちらをフォーカシングスクリーンとして具現化するかを選択することができる。このようにして、原理的には実像を生成することが可能になる。しかしながら、例えば、かつて、システムカメラを用いた写真で典型的であったようなフォーカシングスクリーンでの解像度は最適とは言えない。MEMS構成部品の真空カプセルの表面に設ける適切な材料が見出されるという条件の下で、本発明の最も有望な用途の1つは、表面に生じた画像を適切な投影光学ユニットを用いて大型表示スクリーンに投影することである。
【0052】
ベッセルビームを生成するために様々な方法が利用可能である。反射型アキシコン、レンズ状アキシコン、またはこれらの組合せの使用は知られ、利用されている方法である。これに代えて、レーザービームがリング状隙間を通過し、隙間の後に生じる回折パターンが、ベッセルビームが生じるように適切なレンズを用いて集光されることでもベッセルビームを生成することができる。しかしながら、本発明は、ベッセルビームの生成方法に依存するものではない。
【0053】
本発明の明白な用途は、2次元MEMSスキャナの真空カプセルの表面の一方に実像を生成し、それに続いて、投影光学ユニットを用いて表示スクリーンにその実像を投影することである。
【0054】
本発明は、2次元MEMSスキャナに限定されるものではないことを強調することが重要である。1次元MEMSスキャナのみが必要とされる用途も含まれる。
【0055】
数平方メートルの投影面積を用いて、数平方センチメートル程度の小さな実像を数メートル離れた場所に投影する典型的な投影光学ユニットは、かつてはスライドプロジェクタ、現在では「ビデオプロジェクタ」に使用されている。これらは、光学的性質が上述の役割に合致する適切なレンズの組合せから構成されている。このような構造を用いて、本発明は、例えばDLPおよび投影光学ユニットを用いて画像生成が行われる現在の「ビデオプロジェクタ」の代替品および代用品に対応するものである。
【0056】
以下、本発明を例示的な実施形態に基づき図面に示し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】ベッセル様ビームを生成するための光学的構造の図である。
【
図2】ベッセルビームのビーム密度分布の計算結果の図である。
【
図3】ベッセル様ビームによって球状ガラスドームに実像を生成するための装置の断面図である。
【
図4】
図3に対応する、実像を生成するための装置の斜視図である。
【
図5】走査ベッセル様ビームによってMEMSミラーのカプセルの外側の表示スクリーンに実像を生成するための装置の断面図である。
【
図6】MEMS構成部品の平面真空カプセルのカプセル壁に実像を生成するための装置の断面図である。
【
図7】MEMS構成部品の平面真空カプセルの外側の表示スクリーンに実像を生成するための装置の断面図である。
【
図8】MEMS構成部品の角度に対して傾斜した平面カプセル壁に実像を生成するための装置の断面図である。
【
図9】
図8と類似の図であり、像は、傾斜したカプセル壁を越えたところにある表示スクリーンに生成される。
【
図10】MEMS要素の球状カプセル壁に実像を生成するための装置の断面図であり、球状カプセル壁の中心点はMEMSミラーの枢動点に対してずらされている。
【
図11】不規則な表面形状を有するカプセル壁に実像を生成するための装置の断面図である。
【
図12】走査ベッセル様ビームによって像を生成するための装置の断面図であり、ベッセル様ビームはガラス体アキシコンによって生成される。
【
図13a】凹部を有するMEMSスキャナのミラーの可能な実施形態の図である。
【
図13b】凹部を有するMEMSスキャナのミラーの可能な実施形態の図である。
【
図13c】凹部を有するMEMSスキャナのミラーの可能な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
ベッセルビームを生成するために、第1の実施形態では、
図1に示されるように、ガウシアンビームの重ね合わせを可能にするように構成された反射型アキシコンが使用される。ガウシアンビーム1はビームフォーミング光学ユニット2を通過し、それを用いて、ガウシアンビーム1の直径およびビーム発散角は主に設定される(
図1ではビームフォーミング光学ユニットは象徴的に示されているだけである)。ビーム1は、構成部品5の開口3を通過した後、「アキシコン」と呼ばれる円錐形ミラー4に入射する。数学用語では、円錐形ミラーは円錐体である。円錐形ミラーの光学的機能は、ガウシアンビーム1を反射して、反射後にリング状のビーム断面が生じるようにすることである。これらの条件では、ガウシアンビームはアキシコンの光軸(円錐体軸線)に延びることが有利である。
【0059】
アキシコン4での反射後のビーム1のリング状の強度分布がアキシコン5の円錐面から完全に反射されるように、さらなる反射型アキシコン5がビーム経路に配置される。この配置が機能することができるための1つの必須条件は、2つのアキシコン4、5の2つの光軸6が理想的には共線であることである。アキシコン5は、光軸6の方向にリング状の強度分布を反射する。この構成体の幾何形状は、アキシコン5によってコリメートされたリング状の強度分布のビーム経路内にアキシコン4がないようにしなければならない。リング状の強度分布は、アキシコン4、5の反射角に依存する距離にある体積7に転送される。
【0060】
図1に示されたシミュレーションでは、要素2、3、4、5、6、7の構造長の合計は約15mm~約20mmであり、レーザービーム1の入力ビームの直径は、ここでは例えば、1mmである。
【0061】
体積7でのリング状の光分布の重ね合わせから生じる計算強度分布を
図2に示す。この計算は、例えば、シミュレーションが帯域幅のないまさに1波長で実行されたような理想的な条件に基づいている。さらに、入力ビームは理想的な位相および平面波面を有する。図では、シミュレートされたビーム密度は、体積7内の軸6の方向の軸方向位置の横方向の距離の関数として示されている。
【0062】
図2は、
図1に示した構造を用いて達成されたベッセルビームの理論的なビーム密度分布を示す。上記の目的のためのベッセルビームの本質的な特性は、シミュレーションで見出される横方向の寸法が、中央極大と、中央極大の強度の10%より低い強度を有するいくつかの二次極大とに対して数マイクロメートルであることである。加えて、
図2を見ると、中央極大は、光軸に沿う比較的小さな強度変化しか有していないことがわかる。
【0063】
図3は、ベッセルビームを生成するための本発明による構造および球面へのその投影の断面図である。(ガウシアン)レーザービーム1を有する放射源としてのレーザー1aは、ビームフォーミング光学ユニット2を用いて、その直径および発散に関して設定される。レーザーユニット1aはまた、実像を生成するための必要な条件に合致するレーザーの組合せから構成することができる。レーザービームは、開口3を通過した後、第1のアキシコン4に入射する。アキシコン4から反射されたビームはリング状の強度分布を形成し、次いで第2のアキシコン5に入射する。アキシコン4、5の光軸は共線である。レーザービーム1の中心もまた、理想的には光軸6上にあるが、必ずしもその必要はない。レーザーおよびアキシコンの軸方向のある程度のずれは両方ともあり得て、後で画像生成時に補正または算出することができる。
【0064】
MEMSスキャナ8の枢動点もまた、光軸6上にあることが有利である。MEMSスキャナは、スキャナの機械的および電気的な機能を含むMEMS構成部品9の一部である。光軸6に対するMEMS構成部品9の取付角度は、一方では用途によって、他方ではスキャナミラー8によって可能にされる光学走査角度によって定められる。MEMS構成部品は、光学的に透明な真空カプセル10を備え、ここでは球状の形態に具現化されている。真空カプセル10は、ミラーの捩り振動のQ値、したがって振動の角振幅を増大させる。真空カプセル10は光学的に透明な材料から構成され、これはまた、MEMS構成部品のプロセス制御の境界条件を満たす(例えば、熱膨張係数を合わせる)必要がある。
【0065】
アキシコン5で反射されたリング状の強度分布は、真空カプセル10の球状の形態の材料を通過する。カプセル10の幾何学的形状が正確であっても、材料厚さ/ガラス厚さが実質的に一定であることが有利であることもまた、以下に示す実施形態に対して真実である。ガラス厚さにムラがある場合には、レンズ効果によって、生成される画像に大きな歪みが生じ得る。MEMS真空カプセルの材料厚さ/ガラス厚さは約50μm~約500μmの範囲であり、通常はできるだけ薄いガラス厚さが望まれる。ここに示す実施形態では、球状真空カプセル10の中心は光軸6上にある。アキシコン5のアキシコン角度は、リング状の強度分布がMEMSスキャナ8に向かってコリメートされ、次いで、真空カプセル10での強度の重ね合わせが部分11において生じるように設定される。したがって、ベッセルビームが部分11に生じ、そのプロファイルはシミュレートされて
図2に示されている。MEMSスキャナ8が、可能な方向の1つまたは2つに捩り振動を行う場合、部分11はMEMSスキャナ8の枢動点を中心に一定の距離を反射条件に応じて移動する。その結果、
図2に示した強度分布もまたスキャナ8の枢動点を中心に移動する。
【0066】
アキシコン4、5の光軸がMEMSスキャナの枢動点に絶えず一致することを確実にするために、アキシコン4、5は保持要素12、13を用いてMEMS構成部品に接続される。
【0067】
透明な蛍光フィルムがカプセル10の球面に施されることが好ましい。このフィルムは、カプセルの内面および外面の両方に機能を損なうことなく施すことができる。このフィルムは、走査ベッセルビームによって照射される。
図2に示した強度分布は画素ごとに蛍光を発生させる。2次元MEMSスキャナ8を用いてベッセルビームが2方向に時間依存させて走査される場合、複数の画素が生じる。レーザー出力を適宜制御すると、異なる輝度の画素により、実像が球面上のフィルムに生じる。
【0068】
カプセル10は適切なガラス材料から構成される。例えば、球状ガラスドームを有する真空カプセルの製造のプロセス上の理由からボロフロート(borofloat)ガラスが使用される。
【0069】
ガラス材料の厚さにかかわらず、2つの表面が存在する。ドーム状カプセル部分の両面の外面および内面は、投影面として選択することができる。次いで、選択された表面の一方には、例えば、燐光材料が被覆される、または蛍光フィルムが覆われる、またはその他の手段で処理される。したがって、選択された表面の一方に投影スクリーンが生じ、その上に、走査ベッセルビームによって生成された画素が実像を生成する。
【0070】
アキシコン4、5の両方およびスキャナミラー8の枢動点も、できるだけ正確に1つの軸上にあるべきであるという事実により、対応する構成部品を互いに対して位置合わせして、それらを恒久的に取り付けることが有利である。ここで、接続する要素がレーザー1aのビーム経路に悪影響を及ぼさないことを考慮すべきである。このため、アキシコン4は、カプセル10のドームに固定された台12に取り付けられる。
【0071】
現場での位置合わせの既知の方法を用いて、これらの構成部品を互いに対して位置合わせし、アキシコン軸をスキャナミラー8の枢動点と位置合わせする。アキシコン5は、例えば、円筒形の台13に取り付けられる。この場合、アキシコン軸と円筒軸もまた互いに共線になるように位置合わせされることが重要である。次いで、台13もアキシコン5と共に、現場での位置合わせの既知の方法を用いて、スキャナミラー8の枢動点およびアキシコン4の対称軸が位置する軸に対して位置合わせされ、カプセル10のガラスドームの表面に固定される。
【0072】
アキシコンの使用およびそれから生じるレーザー光のリング状の強度分布によって、スキャナミラー8の有利な実施形態が可能となる。リング状の強度分布はまた、ここで説明した例示的な実施形態のスキャナミラー8のミラー面に見出されるので、このミラーはまた、中央凹部を有する楕円形のリングの形態に製造することができる。これはまた円形のリングの形状も含む。ある入射角(ここでは例えば45°)でスキャナミラー8に入射したレーザービーム1のリング状の強度分布は、ミラー表面においては楕円形の強度分布になる。スキャナミラー8に対する凹部の利点は、画定された外側境界を有する楕円形のリングの質量が、完全な楕円形のディスクとして具現化されたスキャナミラー8の質量よりも小さいことである。スキャナミラー8の質量がより小さい結果、同じ角度振幅を達成するために必要なトルクが、中実材料から製造されたスキャナミラーの場合よりも小さい。これは、スキャナミラー8の駆動方式にかかわらず、駆動力がより小さい、例えば、駆動方式に応じて駆動電圧がより低い、または駆動電流がより少ないことを意味する(これに関しては、
図13a~
図13cを参照のこと)。
【0073】
画素精度の高い実像を生成するためには、MEMSスキャナ8の両方の振動方向の角度位置を決定または検出し、MEMSスキャナ8の対応する角度位置の方向に正確に投影される画素の必要照度を調整または制御する必要がある。検出・調整ユニット14は、投影される各画素に対するレーザー強度を制御するために、MEMSスキャナ8の角度位置をレーザー1aの作動に関連付ける。また、検出・調整ユニット14はまた、レーザーの組合せを制御または調整するように設計することができる。
【0074】
カプセル10のガラスドームに生成される画像は、せいぜい、数平方センチメートル(1cm2~2cm2)の面積を有し、投影面内にベッセルビームによって達成される画素解像度に応じて、一の方向に1センチメートル当たり2000画素までの画素密度を有することができる。このような実像は、典型的な投影光学ユニットを用いて、例えば、MEMSミラーから数メートルの典型的な距離にある大型表示スクリーンに投影することができる。
【0075】
図4は、
図3に断面図として既に提示した構造の斜視図である。レーザービーム1およびそれに続くリング状の強度分布は、説明の都合上、鉛直面の一部分として示されている。アキシコン4、5およびMEMSスキャナ8の破線は、レーザービーム1またはそれに続くリング状の強度分布のいずれかによって照射される領域を示す。MEMSスキャナ8は、ここでは、図示の捻れ軸を有する2次元MEMSミラーとして示されている。
【0076】
図5は、
図3と基本的に同じベッセルビーム生成のための構造を示す断面図である。リング状の強度分布の重なり領域15が、球状真空カプセル10の外側にあり、したがって、
図3よりもアキシコン5から遠い距離にあるように、アキシコン5の角度だけが調節されている。もちろん、アキシコン4とアキシコン5の距離およびアキシコン4のアキシコン角を調節すれば、同様の配位も達成可能である。ベッセルビームはここでもまた、
図2にシミュレートされて示されたようなリング状の強度分布の重なり体積内で形成される。次いで、ベッセルビームは表示スクリーン15に入射し、表示スクリーン15を用いて
図2に示すような強度分布が可視化される。この構造においても同様に、MEMSスキャナの捩り振動によって、ベッセルビームが反射条件に従って表示スクリーン15上を通ることになる。この例示的な実施形態では、
図3に示した実施形態とは対照的に、表示スクリーンは、燐光材料で被覆されている、または蛍光フィルムを備える。このようにして得られた実像は、典型的な投影光学ユニットを用いて、例えば、数メートルの典型的な距離にある大型表示スクリーンなどに投影することができる。
【0077】
真空カプセルの幾何学的形態は、球状の実施形態に限定されるものではない。
【0078】
図6は、MEMS構成部品9に平行に配置された平面ガラス板16を有する真空カプセルの実施形態を示す。アキシコン4、5のアキシコン角およびにそれらの距離は、領域17においてリング状の強度分布の重なり、したがって、ベッセル様ビームの形成が生じるように設定されている。このようにして、
図2に示したベッセルビームの強度分布が平面ガラスカバー16に生じる。MEMSスキャナが捩り振動を起こすと、それに応じて、重ねられた強度分布の領域17は移動し、したがって平面ガラスカバー上を通る。
図3の実施形態とは対照的に、MEMSスキャナの枢動点と平面ガラスカバー16の領域17の位置との距離もまた、MEMSスキャナの走査角度と共に変化する。
【0079】
図2を見ると、ベッセルビームの強度分布は(例えばアキシコンからの)特定の距離の範囲で生じていることがわかる(
図2のシミュレーションでは、この距離は約10mmである)。この距離の範囲は、主にレーザービーム1の直径、および17におけるリング状の強度分布の交差角に依存する。次いで、平面ガラスカバー16上の実像の生成は、
図3の例示的な実施形態と同じ態様で行われる。例えば、燐光層がガラスカバー16の外側または内側に施される、または両側の一方が蛍光フィルムを備える、または実像を生成するために別の方法が適用される。
【0080】
MEMSスキャナ8の枢動点も通って延在する共通軸上にアキシコン4、5を固定し位置合わせすることは、個々のMEMSスキャナシステムに対して個別に解決されなければならない。
【0081】
図7は、
図6と基本的に同じベッセルビーム生成のための構造を示す断面図である。リング状の強度分布の重なり領域が、平面ガラスカバー18の外側にあるように、アキシコン4、5のアキシコン角度だけが調節されている。アキシコン4とアキシコン5との距離を調節すれば、同じ目標が達成される。ベッセルビームはここでもまた、
図2にシミュレートされて示されたようなリング状の強度分布の重なり体積内で形成される。次いで、ベッセルビームは表示スクリーン19に入射し、表示スクリーン19を用いて強度分布が可視化される。この構造において、MEMSスキャナの捩り振動によって、また、ベッセルビームの強度分布が反射条件に従って表示スクリーン19上を通ることになる。この例示的な実施形態では、
図6に示した実施形態とは対照的に、表示スクリーン19は、燐光材料で被覆される、または蛍光フィルムを備える。
【0082】
図6の例示的な実施形態と同様に、MEMS構成部品の平面真空カプセル20が設けられた実施形態が
図8に示されているが、
図6とは対照的に、平面真空カプセル20は構成部品の表面を0°より大きな角度で取り囲んでいる。真空カプセルのこのような設計は、レーザー投影法における反射スポットの方向を設定することができるように適用されている(特許文献5参照)。
図6に示した例示的な実施形態と同様に、
図2に示したものと同様の強度分布が領域21に生じる。
【0083】
次いで、傾斜した平面ガラスカバー20上での実像の生成は、
図6の例示的な実施形態と同様に行われる。例えば、燐光層がガラスカバーの外側または内側に施される、または両側の一方が蛍光フィルムを備える、または実像を生成するための別の方法が適用される。次いで、実像は、
図8に概略的に示された投影光学ユニット46によって、さらに表示スクリーン(図示せず)に投影することができ、そこで拡大された形態で可視化される。
【0084】
図7に示したものと同様に、表示スクリーンは、
図9に示すように、スキャナシステムの外側に構成することができる。この図は、
図7と基本的に同じベッセルビーム生成のための構造を示す。リング状の強度分布の重なり領域23が、平面ガラスカバー22の外側にあるように、アキシコン4、5のアキシコン角度だけが選択されている。
【0085】
アキシコン4とアキシコン5との距離を調節すれば、同じ状況にすることができる。ベッセルビーム、またはベッセル様ビームはここでもまた、
図2にシミュレートされて示されたようなリング状の強度分布の重なり体積内に形成される。次いで、ベッセルビームは表示スクリーン23に入射し、表示スクリーン23を用いて強度分布が可視化される。この構造においても同様に、MEMSスキャナの捩り振動によって、ベッセルビームの強度分布が反射条件に従って表示スクリーン23上を通ることになる。この例示的な実施形態では、
図7に示した実施形態とは対照的に、表示スクリーン23は、燐光材料を用いて被覆される、または蛍光フィルムを備える。
【0086】
図10は、真空カプセルが中心対称の形状ではないように製造された例示的な実施形態を示す。ここでは、同じく球状のガラスドーム24の中心は、もはやスキャナミラーの枢動軸にはない。これは、リング状の強度分布の通路は、ガラスドーム24に対してもはや軸対称ではないことを意味する。
【0087】
図10は、
図3に示したものと基本的に同じベッセルビーム生成のための光学構造の断面図を示す。この場合、球状ガラスドーム24の中心は、MEMS構成部品9の平面に対してx、y、またはz方向にずらすことができる。
図3に示した例示的な実施形態と同じように、
図10に示した場合も、ドーム24の内側の一部または外側の一部のいずれかが、25における実像の生成を可能にする光学特性を備えている。
【0088】
図3では、リング状の強度分布が真空カプセルのガラスドームを対称に通過している。したがって、波面はどこでも同じ位相シフトを受ける。これは、ビームに対するカバーの角度に関係なく、平面ガラスカバーにも当てはまる。
図10に示した状況では、もはやそのようなことはない。断面図に示したビーム経路において、上部に示したビームは、下部に示したビームとはガラスドームを通過する通路角度が異なる。これは、上部に示したビームが異なる位相シフトを受けることを意味する。したがって、ベッセルビームの強度分布は、
図2に示した対称の場合の分布とは全く異なって現れる。ここで説明した球状ガラスドーム24の製造技術の理由で、これは最も多く生じる場合である。球状ガラスドームの中心と枢動点とが一致することが望ましいが、残念ながらそのような場合は必ずしも達成可能とはならない。
【0089】
図11は、不規則な形状を有するMEMSスキャナのガラスカプセル26の一実施形態を示す。ここで示す形状は、任意の多くの不規則な幾何学的形態を代表している。これらの幾何学的形態はまた、数学的意味において不規則でないものに包摂されるものとする。例えば、楕円形の実施形態のガラスカプセルは、円筒形の実施形態において、特に、それらに含められるものとする。
【0090】
ベッセルビームの生成は、レーザー1aおよびビームフォーミング光学ユニット2を用いて、さらにアキシコン4、5も用いて実行される。
図10の例示的な実施形態と同様に、真空カプセル26の不規則な形態の結果、リング状の強度分布の通過は、もはやガラスドーム26に対して軸対称には行われない。重なり領域27も不規則に形成された表面26にあるので、そこで生成された実像は、画像制御アルゴリズムを用いて表面形態に従って補正されなければならない。
【0091】
図12は、光学的に透明な屈折材料から作られたガラス製アキシコン28、29を用いたベッセルビーム生成のための装置の可能な実施形態を示す。ガウシアン特性を有するレーザービーム1を有するレーザー1aは、主にその直径およびその発散に関してビームフォーミング光学ユニット2を用いて調節されている。続いて、光学領域で透明な屈折材料から製造され、(少なくとも)一方の側が凹状の円錐になるように切断されたアキシコン28に入射する。したがって、レーザービーム1はリング状の強度分布になり、適切な距離および適切な角度でアキシコン29に入射する。アキシコン29も屈折材料から構成され、両側が凸状の円錐形態を有する。アキシコン28、29およびビームフォーミング光学ユニットの光軸6と、レーザービーム1の中心軸とは共線になる。アキシコン28、29のアキシコン角は、リング状の強度分布がアキシコン29を通過した後にコリメートされるように設定されている。
【0092】
図3の実施形態と同様に、リング状の強度分布は、MEMS構成部品9内のMEMSミラー8に入射する。MEMSミラー8は、その振動軸に沿って捩り振動を行い、その結果、リング状の強度分布の偏向が生じる。MEMSミラーの枢動点は、光学構成部品2、28、29の光軸6上にあることが理想的である。ここに示した例示的な実施形態では、MEMSミラー8を有するMEMS構成部品9は、球状真空カプセル30を備える。リング状の強度分布が球状ガラスドームの周りの領域31で重なり、
図2で説明したベッセルビームを形成するように、アキシコン角度および構成部品の互いからのそれぞれの距離をともに設定する。
【0093】
図3に関して既に述べたように、アキシコンによって引き起こされるリング状の強度分布は、2次元(1次元も含む)MEMSスキャナのレイアウトに関して大きな利点を有する。
【0094】
MEMSミラーはその縁領域のみ照射されるので、リング状の強度分布の偏向のためにはこの領域を設計することだけが必要である。したがって、ミラーもリング状の領域で反射するだけでよい。
【0095】
図13には、標準的なMEMSミラーとリング状に照射するためのMEMSミラーとの形状比較が示されている。
図13aには、スプリングサスペンションのない円形の標準的なMEMSミラー32が例として示されている。MEMSミラーは、軸33、34を中心に捩り振動を行う。リング状の強度分布は、破線によって境界が定められたMEMSミラーの領域35内に入射する。この領域35の外では、MEMSミラーは照射されない。このため、MEMSミラー32を、質量節約する凹部を有するように構成された形態で設計することが可能であり、有利である。
【0096】
このように構成された形態のMEMSミラー36が
図13bに例として示されている。MEMSミラー36は、2つの軸37、38を中心に捩り振動を行う。破線によって境界が定められた領域39は、リング状の強度分布によって照射されるMEMSミラー36の領域を示す。照射されないMEMSミラー36の領域の内側に、MEMSミラー36は凹部40を有する。この結果、MEMSミラー36は、外半径が等しい場合、
図13aのMEMSミラー32よりも質量が小さくなる。質量がより小さいことにより、MEMSミラー36は、凹部のないMEMSミラー32よりも慣性モーメントが小さい。したがって、MEMSミラー36は、
図13aのMEMSミラー32よりも、軸37、38を中心にした2つの捩り振動を維持するための駆動力が小さくて済む。全体として、凹部40はミラー性能にプラスの影響を与える。
【0097】
図13cには、リング状の強度分布がMEMSミラーの面法線に対してより大きな入射角(10°~80°)を持つ、より一般的な場合のMEMSミラーの類似の実施形態が示されている。より大きな入射角に対しては、リング状の強度分布によって照射される領域は、明白な楕円形状を有する。
【0098】
MEMSミラー41は、楕円形の実施形態を有して、捻れ軸42、43を中心に振動することが有利である。MEMSミラー41へのリング状の強度分布の入射角のため、破線によって境界が定められた照射領域44は、それに応じて楕円形になる。
【0099】
凹部45もまた、それに応じて楕円形に具現化されることが有利である。凹部45は、MEMSミラー41の外側の幾何学的形状にかかわらず、楕円形として具現化される。
【0100】
適切にさらに処理することができる高解像度の画像を、説明した画像生成装置によって適度な手間で走査することによって生成することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 レーザービーム、1a レーザー,放射源、2 ビームフォーミング光学ユニット、3 開口、4 アキシコン、5 アキシコン、6 光軸、7 体積、8 MEMSスキャナ、9 MEMS構成部品、10 真空カプセル、11 部分、12 保持要素、13 保持要素、14 検出・調整ユニット、15 表示スクリーン、16 ガラスカバー、17 領域、18 平面状ガラスカバー、19 表示スクリーン、20 平面ガラスカバー、21 領域、22 平面ガラスカバー、23 表示スクリーン、24 球状ガラスドーム、25 領域、26 ガラスカプセル、27 領域、28 アキシコン、29 アキシコン、30 球状真空カプセル、31 領域、32 MEMSミラー、33 軸、34 軸、35 領域、36 MEMSミラー、37 軸、38 軸、39 領域、40 凹部、41 MEMSミラー、42 軸、43 軸、44 領域、45 凹部、46 投影光学ユニット
【国際調査報告】