(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】設計されたエレクトロスプレー蒸着のための装置及び設計されたナノスケールエレクトロスプレー蒸着によってナノ構造を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/34 20210101AFI20220714BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20220714BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20220714BHJP
B22F 12/55 20210101ALI20220714BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20220714BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B22F10/34
B22F10/25
B22F10/38
B22F12/55
B22F1/054
B28B1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568776
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020033528
(87)【国際公開番号】W WO2020236776
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521375106
【氏名又は名称】バーミンガム テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Birmingham Technologies,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バーミンガム,ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4K018AA04
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA15
4K018AA25
4K018AA40
4K018AB02
4K018AB03
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA16
4K018BA20
4K018BB05
4K018BC12
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA63
(57)【要約】
実施形態は、調整された勾配特性を有するナノ構造を製造するための装置及び方法に関する。第1及び第2組成物が提供される。組成物の各々は、ナノ構造材料と、複数の粒子成長阻害物質ナノ粒子と、調整溶質及び/又は複数の調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つと、を含む。蒸着層は、エレクトロスプレー技術を通じて組成物の各々によってオブジェクトホルダに近接して形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの組成物を保持する少なくとも1つのリザーバであって、前記少なくとも1つの組成物は、
第1組成物であって、
第1ナノ構造材料と、
1以上の第1粒子成長阻害物質を備える複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子と、
1以上の第1調整溶質材料を備える第1調整溶質、及び/又は、
1以上の第1調整ナノ粒子材料を備える複数の第1調整ナノ粒子、のうちの少なくとも1つと、を備える第1組成物と、
第2組成物であって、
第2ナノ構造材料と、
1以上の第2粒子成長阻害物質を備える複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子と、
1以上の第2調整溶質材料を備える第2調整溶質、及び/又は、
1以上の第2調整ナノ粒子材料を備える複数の第2調整粒子、のうちの少なくとも1つと、を備える第2組成物と、を備える、少なくとも1つのリザーバと、
前記リザーバに動作可能に結合された少なくとも1つのノズルと、
前記少なくとも1つのノズルに近接して位置決めされたステージであって、前記ステージは、前記少なくとも1つのノズルに対して移動するように適合され、前記ステージは、オブジェクトを保持するように適合される、ステージと、
前記ステージに近接して位置決めされた表面プロファイル決定デバイスであって、前記オブジェクトのプロファイルデータを取得するための表面プロファイル決定デバイスと、
前記デバイス及び前記ステージに動作可能に結合され、ピン止めナノ構造の製造を調整するための制御ユニットであって、
前記第1組成物によって、前記オブジェクトホルダに近接して位置決めされた第1蒸着層を形成し、
前記第2組成物によって、前記オブジェクトホルダに近接して位置決めされた第2蒸着層を形成するための制御ユニットと、を備える装置。
【請求項2】
段階的ナノ構造としての前記ピン止めナノ構造の製造を調整するための前記制御ユニットをさらに備え、前記段階的ナノ構造は、前記第1蒸着層、前記第2蒸着層又は前記第1蒸着層及び前記第2蒸着層の組み合わせを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記段階的ナノ構造は1以上の傾斜合金を備え、前記1以上の傾斜合金は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記段階的ナノ構造の製造は、
前記第1ナノ構造材料の濃度、前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第1調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第1調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整するためを含む、
前記第1組成物の形成を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1ナノ構造材料は、少なくとも第3及び第4ナノ構造材料を備え、前記第3ナノ構造材料は前記第4ナノ構造材料と異なり、
前記段階的ナノ構造の製造は、前記第3及び第4ナノ構造材料の濃度を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記段階的ナノ構造の製造は、
前記第2ナノ構造材料の濃度、前記第2粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第2調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第2調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整するためを含む、前記第2組成物の形成を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2ナノ構造材料は、少なくとも第5及び第6ナノ構造材料を備え、前記第5ナノ構造材料は前記第6ナノ構造材料と異なり、
前記段階的ナノ構造の製造は、前記第5及び第6ナノ構造材料の濃度を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1組成物は均質であり、前記第2組成物は均質であり、前記第1組成物及び前記第2組成物は同様であり、
前記装置は、前記第1及び第2蒸着層による均質結合蒸着層の形成を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第1組成物は均質であり、前記第2組成物は均質であり、前記第1組成物及び前記第2組成物は異なり、
前記装置は、前記第1及び第2蒸着層による段階的結合蒸着層の形成を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのノズル及び前記制御ユニットに動作可能に結合された少なくとも1つの引き出し電極であって、電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも1つの引き出し電極をさらに備え、前記少なくとも1つの引き出し電極は、
前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整し、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第1組成物を向けて、前記第1蒸着層を蒸着させるための第1単分散液滴を形成し、
前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第2組成物の抽出を調整し、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第2組成物を向けて、前記第2蒸着層を蒸着させるための第2単分散液滴を形成するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記オブジェクトホルダに向かって前記第1及び第2単分散液滴を駆動するための前記電場を設定するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのノズルから前記オブジェクトホルダに向かう前記第1及び第2単分散液滴の分散を制限するための前記磁場を設定するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのノズルに対する前記基材の移動を調整して、前記少なくとも1つのノズルと前記オブジェクトホルダ上の前記第1及び第2蒸着層との間の目標スタンドオフ距離を維持するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記目標スタンドオフ距離は、前記第1及び第2蒸着層のプロファイルデータに基づいて計算される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記オブジェクトホルダを前記少なくとも1つのノズルに整列させるために前記ステージの移動を制御し、
前記リザーバ内の前記第1組成物が使い果たされるまで前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整し、
前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第2組成物の順次の抽出及び前記オブジェクトへの前記第2組成物の送達を調整するための前記制御ユニットをさらに備え、
順次の前記抽出が組成勾配を形成する、請求項8に記載の装置。
【請求項16】
前記リザーバ及び前記少なくとも1つのノズルに結合されて、前記リザーバ及び前記少なくとも1つのノズルの間に延在する導管であって、前記リザーバは前記第1ナノ構造材料を貯蔵する、導管と、
前記導管に結合されて注入システムと、をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子並びに前記第1調整溶質及び/又は前記第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つの前記第1ナノ構造材料への第1注入を調整するために、前記注入システムに動作可能に結合された前記制御ユニットをさらに備え、前記第1注入は前記第1組成物を形成する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記第2ナノ構造材料を貯蔵するための前記リザーバをさらに備え、前記第1ナノ構造材料及び前記第2ナノ構造材料が前記リザーバ内で層状にされる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記第1及び第2単分散液滴を生成するための前記少なくとも1つの引き出し電極をさらに備え、前記第1及び第2単分散液滴は、前記少なくとも1つの引き出し電極に伝達される少なくとも1つの電気的特性の調整を通じて実質的に均一なナノ粒子サイズを有し、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項20】
それぞれ、前記第1及び第2単分散液滴の前記第1及び第2組成物を調整するための前記少なくとも1つの引き出し電極をさらに備え、前記調整は、前記第1及び第2単分散液滴を生成するためである、請求項10に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのノズルは既定の電位に維持され、
前記少なくとも1つのノズルは、前記少なくとも1つの組成物のジェットを放出するための出口ポートを含み、
前記ジェットは、液滴の流れに前記少なくとも1つの組成物を変換するための電気的せん断応力を受け、各液滴は電荷を有しており、
各液滴のサイズは、
前記少なくとも1つの引き出し電極に伝達される少なくとも1つの電気的特性の調整であって、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、調整、及び/又は、
前記液滴の流れの流量及び前記液滴の流れの前記組成物の調整、を通じて前記制御ユニットによって制御される、請求項10に記載の装置。
【請求項22】
前記第1組成物は第1結合剤をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記第2組成物は第2結合剤をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記第1ナノ構造材料は複数の第1ナノ構造材料ナノ粒子を備え、前記第2ナノ構造材料は複数の第2ナノ構造材料ナノ粒子を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品をさらに備え、前記コンピュータプログラム製品は前記制御ユニットに動作可能に結合され、前記プログラムコードは、前記オブジェクトホルダ上に前記第1及び第2蒸着層を蒸着させるためのプログラム命令を備え、前記蒸着は、1以上のオブジェクト構成特性を有するオブジェクト構成を作成するためである、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記第1ナノ構造材料は、少なくとも2つの異なる第1ナノ構造材料のブレンドを備え、
前記第2ナノ構造材料は、少なくとも2つの異なる第2ナノ構造材料のブレンドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子は少なくとも2つの第1粒子成長阻害物質のブレンドを備え、
前記複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子は少なくとも2つの第2粒子成長阻害物質のブレンドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記1以上の第1調整溶質材料は、前記1以上の第1調整特性で前記第1蒸着層を少なくとも部分的に調整し、
前記1以上の第2調整溶質材料は、前記1以上の第2調整特性で前記第2蒸着層を少なくとも部分的に調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記1以上の第1調整溶質ナノ粒子材料は、前記1以上の第1調整特性で前記第1蒸着層を少なくとも部分的に調整し、
前記1以上の第2調整溶質ナノ粒子材料は、前記1以上の第2調整特性で前記第2蒸着層を少なくとも部分的に調整する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記第1及び第2調整特性のうちの1以上は、前記第1及び第2蒸着層のうちの1以上の1以上の調整勾配特性を決定する、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つのノズルは、導電材料から製造され、かつ、絶縁材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つのノズルは、誘電材料から製造され、かつ、導電材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記リザーバは複数の同心壁を備え、前記同心壁は前記第1及び第2組成物を分離する、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つのリザーバは、
前記第1組成物を貯蔵するための第1リザーバと、
前記第2組成物を貯蔵するための第2リザーバと、を備え、
前記少なくとも1つのノズルは、
前記第1リザーバに結合された第1ノズルと、
前記第2リザーバに結合された第2ノズルと、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルに対する前記オブジェクトホルダの選択的な整列を調整し、かつ、前記選択的な整列に応答して前記オブジェクトホルダ上への前記第1組成物及び前記第2組成物の蒸着を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記第1及び第2組成物の蒸着は組成勾配を作成する、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、それぞれ、複数の1次ノズル及び複数の2次ノズルを備え、
前記装置は、前記複数の1次ノズル及び前記複数の2次ノズルに動作可能に結合された少なくとも1つのマニホールドをさらに備え、
前記オブジェクトホルダは、横平面を規定する表面を備え、前記複数の2次ノズルは、前記横平面の周りに延在する弧状配向内に配向される、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
前記1次ノズルのうちの1以上は、導電材料から製造され、かつ、絶縁材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記2次ノズルのうちの1以上は、導電材料から製造され、かつ、絶縁材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項37に記載の装置。
【請求項40】
前記1次ノズルのうちの1以上は、誘電材料から製造され、かつ、導電材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項37に記載の装置。
【請求項41】
前記2次ノズルのうちの1以上は、誘電材料から製造され、かつ、導電材料によって少なくとも部分的に被覆される、請求項37に記載の装置。
【請求項42】
段階的ナノ構造としての前記ピン止めナノ構造の製造を調整するための前記制御ユニットをさらに備え、前記段階的ナノ構造は、前記第1蒸着層、前記第2蒸着層又はその組み合わせを備える、請求項34に記載の装置。
【請求項43】
前記段階的ナノ構造は1以上の傾斜合金を備え、前記1以上の傾斜合金は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成を備える、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記段階的ナノ構造の製造は、前記第1組成物の形成を調整するための前記制御ユニット、前記第1ナノ構造材料の濃度、前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第1調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第1調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記第1ナノ構造材料は少なくとも第3及び第4ナノ構造材料を備え、前記第3ナノ構造材料は前記第4ナノ構造材料とは異なり、
前記段階的ナノ構造の製造は、前記第3及び第4ナノ構造材料の濃度を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記段階的ナノ構造の製造は、
前記第2ナノ構造材料の濃度、前記第2粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第2調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第2調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整するためを含む、前記第2組成物の形成を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記第2ナノ構造材料は少なくとも第5及び第6ナノ構造材料を備え、前記第5ナノ構造材料は前記第6ナノ構造材料とは異なり、
前記段階的ナノ構造の製造は、前記第5及び第6ナノ構造材料の濃度を調整するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記少なくとも1つのノズルは複数のノズルを備え、前記装置は、
前記複数のノズル及び前記制御ユニットに結合された少なくとも1つの引き出し電極であって、電場及び/又は磁場を生成するための少なくとも1つの引き出し電極をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項49】
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整し、かつ、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記基材に前記第1組成物を向けて、前記第1蒸着層の蒸着のための第1単分散液滴を形成し、
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルを通じた前記第2組成物の抽出を調整し、かつ、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記基材に前記第2組成物を向けて、前記第2蒸着層の蒸着のための第2単分散液滴を形成する、ための前記制御ユニットをさらに備える、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記オブジェクトホルダに向かって前記第1及び第2単分散液滴を駆動するための前記電場を設定するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記複数のノズルから前記オブジェクトホルダに向かう前記第1及び第2単分散液滴の分散を制限するための前記磁場を設定するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記複数のノズルに対する前記オブジェクトホルダの移動を調整して、前記複数のノズルと前記オブジェクトホルダ上の前記第1及び第2蒸着層との間の目標スタンドオフ距離を維持するための前記制御ユニットをさらに備える、請求項49に記載の装置。
【請求項53】
前記目標スタンドオフ距離は、前記第1及び第2蒸着層のプロファイルデータに基づいて計算される、請求項51に記載の装置。
【請求項54】
前記オブジェクトホルダを前記複数のノズルに整列させるための前記ステージの移動を制御し、
前記少なくとも1つのリザーバ内の前記第1組成物が使い果たされるまで前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整し、
前記少なくとも1つのノズルを通じた前記第2組成物の順次の抽出及び前記基材への前記第2組成物の送達を調整するための前記制御ユニットをさらに備え、
順次の前記抽出が組成勾配を形成する、請求項49に記載の装置。
【請求項55】
前記少なくとも1つのリザーバ及び前記複数のノズルに結合されて、前記少なくとも1つのリザーバ及び前記複数のノズルの間に延在する導管であって、前記少なくとも1つのリザーバは前記第1ナノ構造材料を貯蔵する、導管と、
前記導管に結合された注入システムと、をさらに備える、請求項49に記載の装置。
【請求項56】
前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子並びに前記第1調整溶質及び/又は前記第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つの前記第1ナノ構造材料への第1注入を調整するために、前記注入システムに動作可能に結合された前記制御ユニットをさらに備え、前記第1注入は前記第1組成物を形成する、請求項55に記載の装置。
【請求項57】
前記第2ナノ構造材料を貯蔵するための前記リザーバをさらに備え、前記第1ナノ構造材料及び前記第2ナノ構造材料が前記リザーバ内で層状にされる、請求項55に記載の装置。
【請求項58】
前記第1及び第2単分散液滴を生成するための前記少なくとも1つの引き出し電極をさらに備え、前記第1及び第2単分散液滴は、前記少なくとも1つの引き出し電極に伝達される少なくとも1つの電気的特性の調整を通じて実質的に均一なナノ粒子サイズを有し、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、請求項49に記載の装置。
【請求項59】
それぞれ、前記単分散液滴の前記第1及び第2組成物を調整するための前記少なくとも1つの引き出し電極をさらに備え、前記調整は、前記第1及び第2単分散液滴を生成するためである、請求項49に記載の装置。
【請求項60】
前記少なくとも1つのノズルは既定の電位で維持され、
前記少なくとも1つのノズルは、前記少なくとも1つの組成物の少なくとも1つのジェットを放出するための出口ポートを含み、
前記少なくとも1つのジェットは、液滴の少なくとも1つの流れに前記少なくとも1つの組成物を変換するための電気的せん断応力を受け、各液滴は電荷を有しており、
各液滴のサイズは、
前記少なくとも1つの引き出し電極に伝達される少なくとも1つの電気的特性の調整であって、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、調整、及び/又は、
前記液滴の少なくとも1つの流れの流量及び前記液滴の少なくとも1つの流れの前記組成物の調整のうちの少なくとも1つ、を通じて前記制御ユニットによって制御される、請求項49に記載の装置。
【請求項61】
前記オブジェクトホルダは基材ホルダであり、前記オブジェクトは基材である、請求項1に記載の装置。
【請求項62】
第1組成物を提供することであって、前記第1組成物は、
第1ナノ構造材料と、
1以上の第1粒子成長阻害物質を含む複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子と、
1以上の第1調整溶質材料を含む第1調整溶質、及び/又は、
1以上の第1調整ナノ粒子材料を含む複数の第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つと、を含む、提供することと、
第2組成物を提供することであって、前記第2組成物は、
第2ナノ構造材料と、
1以上の第2粒子成長阻害物質を含む複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子と、
1以上の第2調整溶質材料を含む第2調整溶質、及び/又は、
1以上の第2調整ナノ粒子材料を含む複数の第2調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つと、を含む、提供することと、
1以上の調整勾配特性を有するピン止めナノ構造を製造することであって、
前記第1組成物によって第1蒸着層を形成することであって、前記第1層はオブジェクトホルダに近接して位置決めされる、形成することと、
前記第2組成物によって第2蒸着層を形成することであって、前記第2組成物は前記オブジェクトホルダに近接して位置決めされる、形成することと、を含む、製造することと、を含む方法。
【請求項63】
段階的ナノ構造として前記ピン止めナノ構造を製造することをさらに含み、前記段階的ナノ構造は、前記第1蒸着層、前記第2蒸着層又はその組み合わせを備える、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記段階的ナノ構造を製造することは、1以上の傾斜合金を製造することを含み、前記1以上の傾斜合金は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成物を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記段階的ナノ構造を製造することは、
前記第1ナノ構造材料の濃度、前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第1調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第1調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記段階的ナノ構造を製造することは、
少なくとも第3ナノ構造材料及び第4ナノ構造材料を混合することを含む前記第1ナノ構造材料を形成することであって、前記第3ナノ構造材料は前記第4ナノ構造材料とは異なる、形成することと、
前記第3及び第4ナノ構造材料の濃度を調整することと、をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記段階的ナノ構造を製造することは、
前記第2ナノ構造材料の濃度、前記第2粒子成長阻害物質ナノ粒子の濃度、前記第2調整溶質材料の濃度、及び/又は、前記第2調整ナノ粒子材料の濃度のうちの1以上を調整することをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第2ナノ構造材料は、少なくとも第5及び第6ナノ構造材料を含み、前記第5ナノ構造材料は前記第6ナノ構造材料とは異なり、
前記段階的ナノ構造を製造することは、前記第5及び第6ナノ構造材料の濃度を調整することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第1及び第2蒸着層を備える均質結合蒸着層を形成することをさらに含み、前記第1組成物は均質であり、前記第2組成物は均質である、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記第1及び第2蒸着層によって段階的結合蒸着層を形成することをさらに含み、前記第1組成物は均質であり、前記第2組成物は均質である、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1つのノズルに近接して、電場及び/又は磁場を生成することと、
前記少なくとも1つのノズルを通じて前記第1組成物を抽出して、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第1組成物を向け、それによって、第1単分散液滴を形成し、かつ、前記第1蒸着層を形成することと、
前記少なくとも1つのノズルを通じて前記第2組成物を抽出して、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第2組成物を向け、それによって、第2単分散液滴を形成し、かつ、前記第2蒸着層を形成することと、を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記オブジェクトホルダに向かって前記第1及び第2単分散液滴を駆動するために前記電場を設定することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1つのノズルから前記オブジェクトホルダに向かう前記第1及び第2単分散液滴の分散を制限するために前記磁場を設定することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1つのノズルに対する前記オブジェクトホルダの移動を調整して、前記少なくとも1つのノズルと前記オブジェクトホルダ上の前記第1及び第2蒸着層との間の目標スタンドオフ距離を維持することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記第1及び第2蒸着層のプロファイルデータに基づいて前記目標スタンドオフ距離を計算することをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも1つのノズルは第1ノズル及び第2ノズルを備え、前記方法は、
前記第1ノズルに適合して結合された第1リザーバに前記第1組成物を貯蔵することと、
前記第2ノズルに適合して結合された第2リザーバに前記第2組成物を貯蔵することと、をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項77】
前記第1ノズルに前記オブジェクトホルダを選択的に整列させることと、
前記選択的な整列に応答して前記オブジェクトホルダ上に前記第1組成物を蒸着させることと、
前記第2ノズルに前記オブジェクトホルダを選択的に整列させることと、
前記選択的な整列に応答して前記オブジェクトホルダ上に前記第2組成物を蒸着させることと、をさらに含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記第1及び第2組成物を蒸着させることは、組成勾配を形成することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記ステージの移動を制御することであって、前記移動は、前記少なくとも1つのノズルに前記オブジェクトホルダを整列させるためである、制御することと、
前記第1組成物がリザーバから使い果たされるまで前記少なくとも1つのノズルを通じて前記第1組成物を抽出することと、
前記少なくとも1つのノズルを通じて前記第2組成物を順次抽出して前記オブジェクトホルダに前記第2組成物を送達し、それによって、順次の前記抽出を通じて組成勾配を形成することと、を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項80】
リザーバ内に前記第1ナノ構造材料を貯蔵することと、
前記リザーバと前記少なくとも1つのノズルとの間に延在する導管に注入システムを結合することと、をさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項81】
前記第1ナノ構造材料への、前記第1粒子成長阻害物質ナノ粒子と前記第1調整溶質及び/又は前記第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つとの第1注入を調整することを含む、前記第1組成物を形成することをさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記リザーバ内に前記第2ナノ構造材料を貯蔵することであって、前記第1ナノ構造材料及び前記第2ナノ構造材料は前記リザーバ内で層状にされる、貯蔵することを含む、前記第2組成物を形成することをさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記電場及び前記磁場を形成するために伝達される少なくとも1つの電気的特性を調整することを通じて実質的に均一なナノ粒子サイズを有する前記単分散液滴を生成することをさらに含み、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項84】
前記単分散液滴を生成することを含む、前記単分散液滴の組成を調整することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項85】
既定の電位に前記少なくとも1つのノズルを維持することと、
前記少なくとも1つのノズルの出口ポートを通じて前記少なくとも1つの組成物のジェットを放出することと、
電気的せん断応力に前記ジェットをさらすことを含む、少なくとも1つの材料を液滴の流れに変換することであって、各液滴は電荷を有する、変換することと、
各液滴のサイズを制御することであって、
前記引き出し電極に伝達される少なくとも1つの電気的特性を調整することであって、前記電気的特性は、電圧、電流、周波数及び/又は波形を含む、調整すること、及び/又は、
前記液滴の流れの流量及び前記液滴の流れの組成を調整すること、を通じて各液滴のサイズを制御することと、をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項86】
第1組成物を提供することは、前記第1組成物に第1結合剤を添加することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項87】
第2組成物を提供することは、前記第2組成物に第2結合剤を添加することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項88】
複数の第1ナノ構造材料ナノ粒子を混合することを含む前記第1ナノ構造材料を形成することと、
複数の第2ナノ構造材料ナノ粒子を混合することを含む前記第2ナノ構造材料を形成することと、をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項89】
前記少なくとも1つのノズルに動作可能に結合されたマニホールドを結合することと、
前記マニホールドに複数の2次ノズルを動作可能に結合することと、
前記オブジェクトホルダの表面によって規定された横平面の周りに延在する弧状配向に前記複数の2次ノズルを配向することと、をさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項90】
導電材料から各2次ノズルを製造することと、
絶縁材料で前記導電材料を少なくとも部分的に被覆することと、をさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
誘電材料から各2次ノズルを製造することと、
導電材料で前記誘電材料を少なくとも部分的に被覆することと、をさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記第1ナノ構造材料を形成することは、前記第1ナノ構造材料のうちの2以上をブレンドすることを含み、
前記第2ナノ構造材料を形成することは、前記第2ナノ構造材料のうちの2以上をブレンドすることを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項93】
前記複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子を形成することは、前記第1粒子成長阻害物質のうちの2以上をブレンドすることを含み、
前記複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子を形成することは、前記第2粒子成長阻害物質のうちの2以上をブレンドすることを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項94】
前記少なくとも1つのノズルは複数のノズルを備え、前記方法は、
前記複数のノズルに結合された少なくとも1つの引き出し電極で電場及び/又は磁場を生成することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項95】
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整し、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第1組成物を向けて、前記第1蒸着層の蒸着のための第1単分散液滴を形成することと、
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルを通じた前記第2組成物の抽出を調整し、前記電場及び/又は前記磁場を通じて前記オブジェクトホルダに前記第2組成物を向けて、前記第2蒸着層の蒸着のための第2単分散液滴を形成することと、をさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記オブジェクトホルダに向かって前記第1及び第2単分散液滴を駆動するために前記電場を設定することをさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記複数のノズルから前記オブジェクトホルダに向かう前記第1及び第2単分散液滴の分散を制限するために前記磁場を設定することをさらに含む、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記複数のノズルに対する前記オブジェクトホルダの移動を調整して、前記複数のノズルと前記オブジェクトホルダ上の前記第1及び第2蒸着層との間の目標スタンドオフ距離を維持することをさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
前記ステージの移動を制御して前記複数のノズルに前記オブジェクトホルダを整列させることと、
前記第1組成物が少なくとも1つのリザーバで使い果たされるまで前記複数のノズルを通じた前記第1組成物の抽出を調整することと、
前記複数のノズルを通じた前記第2組成物の順次の抽出、及び、前記オブジェクトホルダへの前記第2組成物の送達を調整することであって、順次の前記抽出は組成勾配を形成する、調整することと、を含む、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
前記少なくとも1つのリザーバ内に前記第2ナノ構造材料を貯蔵することをさらに含み、
前記第1ナノ構造材料及び前記第2ナノ構造材料は前記少なくとも1つのリザーバ内で層状にされる、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記1以上の第1調整ナノ粒子材料を通じて前記1以上の第1調整特性で前記第1蒸着層を少なくとも部分的に調整し、
前記1以上の第2調整ナノ粒子材料を通じて前記1以上の第2調整特性で前記第2蒸着層を少なくとも部分的に調整する、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記第1及び第2蒸着層のうちの1以上の1以上の調整勾配特性を決定することをさらに含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
導電材料から前記少なくとも1つのノズルを製造することと、
絶縁材料で前記導電材料を少なくとも部分的に被覆することと、をさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項104】
誘電材料から前記少なくとも1つのノズルを製造することと、
導電材料で前記誘電材料を少なくとも部分的に被覆することと、を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項105】
前記オブジェクトホルダは、その上に前記第1及び第2蒸着層が形成される基材を保持する、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本実施形態は、エレクトロスプレー技術を使用してナノ構造材料を直接合成するための方法及び当該方法を実行するための装置に関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、調整された(tailored)固有の特性を有するナノ構造を製造するためのエレクトロスプレー技術を実施するための方法並びに当該方法を実行するためのシングルノズル及びマルチノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 3次元(3D)印刷を通じてオブジェクトを製造するための様々な手法には、インクジェット印刷、溶融フィラメント製造(FFF)及び電子ビーム積層造形(EBAM)などの付加製造技術が含まれる。多くの既知のインクジェットデバイスによれば、サテライト滴の形成を通じて不十分な蒸着の制御及び精度が証明されている。FFFプロセスは材料の選択に関して制限される。したがって、付加製造技術のこれらの例は、FFF及びEBAM製造の場合はミリメートル(mm)、並びに、インクジェット印刷の場合はミクロンなどの材料蒸着の規模に起因して、微小オブジェクトの製造に最適である。
【発明の概要】
【0003】
[0003] オブジェクトを製造している間にオブジェクトに調整された特性を有するナノ構造を形成するための方法及び装置が提供される。
【0004】
[0004] 一態様では、装置は、その中に少なくとも1つの組成物を保持するリザーバを備える。少なくとも1つの組成物は第1組成物及び第2組成物を含む。第1組成物は、第1ナノ構造材料と、1以上の第1粒子成長阻害物質を含む複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子と、を含む。第1組成物はまた、第1調整溶質及び/又は複数の第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つを含む。第1調整溶質は1以上の第1調整溶質材料を含む。第1調整ナノ粒子は1以上の第1調整ナノ粒子材料を含む。第2組成物は、第2ナノ構造材料と、1以上の第2粒子成長阻害物質を含む複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子と、を含む。第2組成物はまた、第2調整溶質及び/又は複数の第2調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つを含む。第2調整溶質は1以上の第2調整溶質物材料質を含む。第2調整ナノ粒子は1以上の第2調整ナノ粒子材料を含む。装置はまた、リザーバに動作可能に結合された少なくとも1つのノズルと、少なくとも1つのノズルに近接して位置決めされたステージと、を含む。ステージは、少なくとも1つのノズルに対して移動するように適合される。ステージは、オブジェクトを保持するように適合されたオブジェクトホルダを含む。装置は、ステージに近接して位置決めされた表面プロファイル決定装置をさらに含む。デバイスはオブジェクトのプロファイルデータを取得する。制御ユニットは、デバイス及びステージに動作可能に結合され、かつ、ピン止めナノ構造の製造を調整する。制御ユニットは、第1組成物によって、オブジェクトホルダに近接して位置決めされた第1蒸着層を形成する。制御ユニットはまた、第2組成物によって、オブジェクトホルダに近接して位置決めされた第2蒸着層を形成する。
【0005】
[0005] 別の態様では、方法は、第1組成物及び第2組成物を提供することを含む。第1組成物は、第1ナノ構造材料と、1以上の第1粒子成長阻害物質を含む複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子と、1以上の第1調整溶質材料を含む第1調整溶質及び/又は1以上の第1調整ナノ粒子材料を含む複数の第1調整ナノ粒子のうちの少なくとも1つと、を含む。第2組成物は、第2ナノ構造材料と、1以上の第2粒子成長阻害物質を含む複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子と、1以上の第2調整溶質材料を含む第2調整溶質及び/又は1以上の第2調整ナノ粒子材料を含む複数の第2調整粒子のうちの少なくとも1つと、を含む。方法はさらに、1以上の調整勾配特性を有するピン止めナノ構造を製造することを含む。製造は、第1組成物によって第1蒸着層を形成することであって、第1層はオブジェクトホルダに近接して位置決めされる、形成することと、第2組成物によって、オブジェクトホルダに近接して位置決めされた第2蒸着層を形成することと、を含む。
【0006】
[0006] 本明細書に開示される他の態様には、システム、アセンブリ、サブアセンブリ、装置、方法及びプロセスが含まれる。これらの態様及び他の態様の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[0007] 本明細書で参照される図面は、明細書の一部を形成し、かつ、参照により本明細書に組み込まれる。図面に示されている特徴は、特に別途明示されない限り、すべての実施形態ではなく、ある実施形態のみを例示することを意図している。
【0008】
【
図1】[0008] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システムの断面概略図を示している。
【
図2】[0009] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の一実施形態の断面概略図を示している。
【
図3】[0010] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の拡大部分の断面概略図を示している。
【
図4】[0011] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図5】[0012] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置のさらに別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図6】[0013] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置のさらに別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図7】[0014] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置のさらに別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図8】[0015] エレクトロスプレーされた液滴及び粒子成長阻害物質ナノ粒子によって形成された架橋単分子層の概略図を示している。
【
図9】[0016] 基材上にエレクトロスプレーされた液滴の概略図を示している。
【
図10】[0017] 線形傾斜を有する傾斜合金の概略図を示している。
【
図11】[0018] 非線形傾斜を有する傾斜合金の概略図を示している。
【
図12】[0019] 線形に段階的な結合蒸着層の概略図を示している。
【
図13】[0020] 非線形に段階的な結合蒸着層の概略図を示している。
【
図14】[0021] 同種結合蒸着層の概略図を示している。
【
図15】[0022] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システムの別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図16】[0023] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システムのさらに別の実施形態の断面概略図を示している。
【
図17】[0024] その上にナノ構造を有するオブジェクトを製造するためのプロセスを示すフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0025] 本明細書の図面に概略的に記載及び図示されているように、例示的な実施形態の構成要素は、多種多様な異なる構成で配列及び設計され得ることが容易に理解されよう。したがって、図面に表されるような例示的な実施形態の装置、システム及び方法の以下の詳細な説明は、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではなく、単に選択された実施形態を表すものである。
【0010】
[0026] 本明細書全体を通して、「選択された実施形態」、「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所での「選択された実施形態」、「一実施形態において」又は「実施形態において」という語句の出現が必ずしも同一の実施形態を参照するとは限らない。実施形態は様々な組み合わせで互いに組み合わせられてもよい。
【0011】
[0027] 図示する実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解され、同様の部分は全体を通して同様の符号によって示される。以下の説明は、例としてのみ意図されており、本明細書で特許請求される実施形態と一致するデバイス、システム及びプロセスの特定の選択された実施形態を単に示している。
【0012】
[0028] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システムの構成
[0029] 本開示の選択された実施形態の理解を向上させるためのさらなる詳細を提供するため、ここで
図1を参照し、
図1は、複合ナノ粒子、すなわち、粒子状ナノ複合物と、段階的ナノ構造及び傾斜合金を含む、そうしたナノ複合物から製造されたオブジェクトと、を生産するように構成されたナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)の一実施形態の断面概略図を示している。本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」及び「ナノ複合物」という用語は、約1ナノメートル(nm)~約10nmのオーダの特性長スケールを有する微細構造を有する粒子及び複合物を示す。
【0013】
[0030] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は材料供給ビン(102)を有するように示されている。示すように、材料供給ビン(102)は、その中にキャビティ(106)を規定する外部ケーシング(104)を含む。キャビティ(106)は、その中の原材料(108)の供給を維持する。原材料(108)の一部のリストは以下の表1に示される。一実施形態では、ナノ粒子の添加に加えて、供給される原材料は、アルミニウム(Al)などの第1材料と、チタン(W)などの第2材料と、を含み得るが、そうした材料は限定的であると見なされるべきではない。アルミニウム(Al)及びチタン(W)又は他の材料が、傾斜合金を作成するために使用されることが理解される。その充填を可能にするビン(102)の装置は図示されていない。ビン(102)は、ガス供給導管(112)、シール装置(114)、並びに、ガス入口導管(118)及びその中のキャビティ(120)を形成するガス入口スタブ(116)を含む不活性ガス入力調整システム(110)を含む。ガス入口導管(118)はガス供給導管(112)と流体連通している。調整システム(110)はまた、ガス圧力調整装置(図示せず)を含む。ビン(102)は材料出口導管(122)をさらに含む。少なくとも1つの実施形態では、材料供給ビン(102)は、原材料(108)の供給を予熱するように構成された加熱サブシステムを含む。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は、原材料(108)を投入及び供給するために必要な機構を提供する。
【0014】
[0031] 調整システム(110)の動作において、不活性ガス(124)は、原材料に実質的に空気のない環境を提供するために使用される。不活性ガス(124)は、供給源(図示せず)からガス供給導管(112)に入る。不活性ガスの例には、窒素、アルゴン及び二酸化炭素が含まれるが、これらに限定されない。ガス(124)は、ガス供給導管(112)を通ってシール装置(114)に向かって流れる。ガス調整装置(図示せず)は、キャビティ(106)内のガス圧を既定値又は構成値(configurable value)に調整する。キャビティ(106)内のガス圧が既定値又は構成値(configured value)を下回るとき、調整装置は、ガス供給導管(112)を通ってキャビティ(106)内に不活性ガス(124)を入れることを許容する又は可能にする。不活性ガス(124)は、ガス入口導管(118)のキャビティ(120)内及び材料供給ビン(102)のキャビティ(106)内に流れ込む。したがって、原材料(108)は、不活性ガス(124)のブランケットを通じて空気に長時間曝されることから保護される。
【0015】
[0032] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)はまた、材料出口導管(122)を通じて材料供給ビン(102)に動作可能に結合された原材料移送デバイス(130)を含む。原材料移送デバイス(130)は、スクリュー要素又はフライティング(flighting)(136)を包含するキャビティ(134)をその中に規定するケーシング(132)を有するように本明細書に示されている。
図1に示す実施形態では、原材料移送デバイス(130)はスクリューコンベヤ又はオーガーコンベヤである。同様に、一実施形態では、原材料移送デバイス(130)は、ベルトコンベヤ、容量測定供給装置及び重量測定供給装置などを含むが、これらに限定されない、固体原材料を移送する任意の固体材料処理装置であり得る。さらに、少なくとも1つの実施形態では、原材料移送デバイス(130)は、液相で、及びある実施形態では、その中に同伴された固体と共に、材料を輸送するように適合されている。そうした実施形態のための材料移送デバイス(130)はスクリューコンベヤ、ベルトコンベヤ及び容積移送式ポンプのタイプを含むが、これらに限定されない。フライティング(136)は、ヘリコイド構成を規定する1以上の突起(138)を含む。突起(138)は、フライティングシャフト(140)を矢印(144)によって示される方向に回転させる駆動デバイス(142)に動作可能に結合されたフライティングシャフト(140)に結合される。駆動デバイス(142)は、定速電気モータ及び可変速ドライブを含むが、これらに限定されない、任意の運動装置である。ヘリコイド突起(138)のピッチは、フライティング(136)の回転あたりの原材料(108)の所望の容積に比例する。少なくとも1つの実施形態では、原材料移送デバイス(130)は、システム(110)と同様の不活性ガス入力調整システムを含む。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)の少なくともある実施形態は複数の移送デバイス(130)を含む。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は、1以上の材料移送デバイス(130)を通じてナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)内で原材料(108)を移送する能力を含む。
【0016】
[0033] 原材料移送デバイス(130)は、タンディッシュ(150)と流体連通して結合される。示すように、タンディッシュ(150)は、断熱材(154)の少なくとも1つの層上に広がるケーシング(152)を含み、断熱材(154)の1つの層は同様に内部ライナ(156)上に広がる。内部ライナ(156)は、その中に溶融材料キャビティ(158)を規定する。ライナ(156)は、原材料デバイス(130)まで延在してタンディッシュ入口導管(160)を形成し、かつ、そこから原材料(108)を受け取るためにフライティング(136)と流体連通して結合されるキャビティ(162)をその中に規定する。タンディッシュ(150)は、加熱サブシステム又は加熱素子(図示せず)を含み、以下、加熱サブシステムと呼ばれ、原材料(108)を溶融状態に溶融して溶融材料(164)を形成する。加熱サブシステムは、原材料(108)を溶融させる又は原材料(108)を溶融状態(164)に変化させるのに十分な発熱能力を有する任意の加熱機構を含む。加熱機構の例には、誘導加熱デバイス及び天然ガス燃焼装置が含まれるが、これらに限定されない。ライナ(156)は、タンディッシュ(150)からさらに延在してタンディッシュ出口導管(166)を形成し、かつ、溶融材料キャビティ(158)と流体連通して結合されてそこから溶融材料(164)を受け取るキャビティ(168)をその中に規定する。タンディッシュ(150)はまた、ガス供給導管(172)と、シール装置(174)と、ガス入口導管(178)及びその中のキャビティ(180)を形成するガス入口スタブ(176)と、を含む不活性ガス入力調整システム(170)を含み、ガス入口導管(178)はガス供給導管(172)と流体連通している。不活性ガス入力調整システム(170)の動作は、本明細書の他の箇所で記載される不活性ガス入力調整システム(110)の動作と実質的に同様である。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は、本明細書でさらに議論するように、原材料(108)を溶融させ、溶融した原材料を溶融状態に又はエレクトロスプレー製造プロセスでさらに使用するための状態に維持するツールを含む。
【0017】
[0034] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)はナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)をさらに含む。示すように、装置(182)は、その中に溶融材料リザーバ(186)を規定するケーシング(184)を含む。リザーバ(186)は、タンディッシュ出口導管(166)と流体連通して動作可能に結合されて、そこから溶融材料(164)を受け取り、かつ、その中に溶融材料(164)を維持する。追加の材料(
図1には図示せず)が溶融材料(164)に添加されて1以上のナノスケール組成物(188)を形成してもよい。ケーシング(184)は、溶融材料リザーバ(186)と流体連通して動作可能に結合されたリザーバ出口キャピラリ(192)を規定するケーシング延長部(190)を含む。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)はまた、リザーバ出口キャピラリ(192)と流体連通して動作可能に結合されてナノスケール材料、例えば、ナノ粒子又はナノ複合物(196)を製造する、出口ノズル(194)を含む。装置(182)は、本明細書において誘導加熱コイルとして示される加熱デバイス(198)と、不活性ガス入力調整システム(110)及び(170)と、をさらに含む。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)の追加の構造上及び動作上の記載は本明細書でさらに議論される。したがって、特定のナノスケール組成物(188)の形態の溶融材料(184)は、エレクトロスプレーされて特定のナノ粒子又はナノ複合物(196)を製造する。
【0018】
[0035] 動作中、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は、材料供給ビン(102)のキャビティ(106)内に原材料(108)の供給を受ける。ビン(102)が原材料で既定のレベルまで充填されると、ビン(102)は、不活性ガス入力調整システム(110)によって密封されて、キャビティ(106)内のガス(124)圧を調整する。ガス圧は既定値又は構成値であってもよい。材料供給ビン(102)内のガス(124)圧の既定の構成値は、ビン(102)内への空気の進入を低減し、かつ、原材料(108)の空気への曝露を軽減する。一実施形態では、ガス圧は、約10ポンド/平方インチ(psi)(約69キロパスカル(kPa))~約20psi(約138kPa)の範囲である。一部の原材料(108)は空気と反応する可能性があることが理解される。さらに、不活性ガス(124)圧は、重力に加えて、原材料(108)をビン(102)から材料出口導管(122)を通じて原材料移送デバイス(130)に移送するための輸送力を提供する。さらに、ガス(124)は、材料(108)がビン(102)を出るときの真空ロックの形成を阻止する。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)は、1以上の材料移送デバイス(130)を通じて原材料(108)を移送する。
【0019】
[0036] 動作中、デバイス(130)は、既定の構成可能な速度で原材料(108)をタンディッシュ(150)に移送する。タンディッシュ(150)は、原材料(108)を材料(108)の融点まで加熱して、溶融材料キャビティ(158)内に溶融状態で貯蔵される溶融材料(164)を生成する。一実施形態では、溶融材料(164)の温度は、摂氏約800度(℃)(華氏約1472度(°F))~約1000℃(1832°F)の範囲であり、温度は組成物の融点に依存する。不活性ガス入力調整システム(170)は、キャビティ(158)内のガス(124)圧を既定の構成値に調整して、溶融材料(164)の空気への曝露を最小限にし、重力に加えて輸送力を提供して溶融材料(164)をタンディッシュ(150)からタンディッシュ出口導管(166)を通じてナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)に移送し、かつ、溶融材料(164)がタンディッシュ(150)を出るときの真空ロックの形成を阻止する。一実施形態では、調整システム(170)は、ガス(124)の圧力を約10psi(69kPa)~約20psi(138kPa)の範囲で調整する。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)は、溶融材料リザーバ(186)内で溶融材料(164)を受け取り、材料(164)を他の材料と混合してその中に1以上のナノスケール組成物(188)を生産する。不活性ガス入力調整システム(110)及び(170)は、リザーバ(186)内のガス(124)圧を既定値又は一実施形態では構成値に調整して、ナノスケール組成物(188)の空気への曝露を最小限にし、重力(及び、本明細書の他の箇所でさらに議論する電場)に加えて輸送力を提供して、ナノスケール材料、例えば、ナノ粒子及びナノ複合物(196)を製造する。また、ガス(124)は、ナノ複合物(196)がビン(102)を出るときの真空ロックの形成を阻止する。一実施形態では、システム(110)は、ガス(124)のガス圧を約10psi(69kPa)~約20psi(138kPa)に調整する。したがって、原材料(108)は、溶融させられ、かつ、ナノ粒子及びナノ複合物(196)並びに調整された特性を有する設計された(engineered)製品を製造するためのナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)に移送される。
【0020】
[0037] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の構成
[0038]
図2を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)の一実施形態を示す断面概略図が提供される。高さ(「Y」)、長さ(「X」)及び幅(又は深さ)(「Z」)を含む寸法の各々が参考のために示され、寸法は物理的空間において互いに直交している。装置(200)は、溶融材料(210)をその中に保持するための溶融材料リザーバ(208)を規定するケーシング(206)を有するように示されている。一実施形態では、溶融材料(210)の温度は、800℃(1472°F)~約1000℃(1832°F)の範囲にあり、温度は組成物の融点に依存する。リザーバガス(212)が、溶融材料(210)に隣接する溶融材料リザーバ(208)の一部(214)を占める。装置(200)は、ガス供給導管(218)及びシール装置(220)を含む不活性ガス入力調整システム(216)をさらに含み、システム(216)は、溶融材料リザーバ(208)の一部(214)と流体連通している。不活性ガス入力調整システム(216)は、導管(218)を通るガス流(222)を調整して、リザーバ(208)内のリザーバガス(212)圧を既定値又は構成値に調整する。一実施形態では、システム(216)は、貯蔵ガス、例えば、不活性ガス(212)のガス圧を約10psi(69kPa)~約20psi(138kPa)に調整する。リザーバ(208)のガス圧(212)は、リザーバ(208)内への空気の進入を低減し、それによって、溶融材料(210)の空気への曝露を軽減する。一実施形態では、溶融材料(210)の選択された形態は、空気と反応性を有してもよく、及びしたがって、空気への暴露の軽減が保証され得る。さらに、リザーバガス(212)圧は、重力(及び電場)に加えて、装置(200)を通じて溶融材料(210)を移送するための輸送力を提供し、かつ、溶融材料(210)が装置(200)を出るときの真空ロックの形成を阻止する。したがって、溶融材料(210)は圧力下に維持され、かつ、空気の浸透は、不活性ガス(212)でリザーバ(208)を加圧することを通じて阻止される。
【0021】
[0039] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)は、ケーシング(206)の外面の周りに延在する複数の誘導加熱コイル(224)を有するように示されている。加熱コイル(224)は、ケーシング(206)内にある溶融材料(210)を加熱し、混合を引き起こすのに役立つ。一実施形態では、加熱コイル(224)は、材料(210)に補助的な加熱を提供するために代替の加熱方法で置き換えられる。代替の加熱方法の非限定的な例には天然ガスの燃焼が含まれる。ファラデーケージ(226)がケーシング(206)に動作可能に結合されて示されている。この図では、ファラデーケージ(226)がケーシング(206)の外面の周りに位置決めされている。ファラデーケージ(226)は、ケーシング(206)内の材料を、生成された電磁放射から保護するように機能し、一実施形態では、電磁放射は誘導加熱コイル(224)の副産物である。通気された熱シールド(228)がファラデーケージ(226)に動作可能に結合されて示されている。この図示の実施形態では、通気された熱シールド(228)は、ファラデーケージ(226)の外面の周りに位置決めされている。通気された熱シールド(228)は、誘導加熱コイル(224)によって生成された熱のかなりの部分から、熱シールド(228)の外面に隣接する環境を保護するように機能する。エレクトロスプレーノズル(230)が、材料リザーバ(208)のケーシング(206)の底部(232)に結合されている。キャピラリチューブ(234)が、ケーシング(206)の底部(232)に規定され、かつ、エレクトロスプレーノズル(230)を通って延在する。キャピラリチューブ(234)は、材料リザーバ(208)と流体連通して結合されている。引き出し電極(236)が、エレクトロスプレーノズル(230)に結合され、キャピラリチューブ(234)がキャピラリチューブ出口(240)を規定するエレクトロスプレーノズル(230)の底部(238)の近くに位置決めされる。図示の実施形態では、出口はオリフィス(240)である。一実施形態では、本明細書に記載の装置(200)などのナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の動作を可能にする任意の他の出口構成がオリフィスに代えて使用される。エレクトロスプレーノズル(230)が導電性ノズルである一実施形態では、ノズルは、絶縁性被覆(図示せず)で被覆されている。同様に、エレクトロスプレーノズル(230)が誘電体材料で製造される一実施形態では、ノズル(230)は導電性被覆(図示せず)で被覆される。したがって、溶融材料(210)は、リザーバ(208)からキャピラリチューブ(234)を通ってエレクトロスプレーノズル(230)に向かって移動する準備として溶融状態に維持される。
【0022】
[0040]
図3を参照すると、破線ボックス(3)(
図2に示す)によって輪郭を描かれた領域周りで切り取られたナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(300)の拡大部分を示す断面概略図が提供される。引き出し電極(336)は、2つの構成要素、すなわち、電場を生成するための電極と、磁場を生成するための誘導コイルと、の組み合わせである。一実施形態では、電極及び誘導コイルは別個の要素である。
【0023】
[0041] 組み合わされた引き出し電極及び誘導要素(336)(以下、引き出し電極(336)として参照する)は、電界を生成して、エレクトロスプレーノズル(330)を既定の又は規定の構成された電位に維持する。電場は、エレクトロスプレーノズル(330)から矢印(344)の方向にジェット(310)の形態で溶融材料(210)を抽出して、ナノ粒子サイズの液滴(346)の流れを形成し、液滴(346)をステージ(342)に向かって駆動する。図示の実施形態では、エレクトロスプレーノズル(330)は、エレクトロスプレーノズル(230)と同様であり、ステージ(342)は、以下に記載するステージ(242)と同様である。引き出し電極(336)は、液滴(346)の流れの分散を制限するために磁場を生成する。エレクトロスプレーされた液滴(346)は同じ極性で帯電し、それにより、液滴(246)は、それらが分散される際に互いに反発する。当技術分野では、磁力線を横切って移動する荷電粒子は、磁力線及び荷電粒子の運動の両方に直交する力を経験することが理解される。磁場が荷電粒子の速度に比べて強い場合、荷電粒子はそれらに沿って移動しながら磁力線を周回する傾向がある。したがって、帯電した液滴(346)の流れの分散傾向は磁場によって打ち消される。したがって、引き出し電極(336)は、ナノスケールレベルでの蒸着の制御及び精度を提供するのに十分に集束される液滴(346)の排出された流れを生成する。
【0024】
[0042] 例示的な実施形態では、引き出し電極(336)は、トロイドの中心がエレクトロスプレーノズル(330)によって貫通されたトロイダル形状を有する。トロイダル形状の例には、トーラス又はトロイド形状が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、引き出し電極(336)は、1以上のワイヤの巻き(
図3には図示せず)を含み、巻きは、同じ量の電流に対して強度を増加させる磁場を生成する。一実施形態では、巻数は磁場の増加強度に比例する。引き出し電極(336)は、エレクトロスプレーノズル(330)から溶融材料ジェット(310)を抽出し、液滴(346)の流れをステージ(342)に向かって駆動し、かつ、液滴(346)の流れをステージ(342)上の蒸着領域(348)に集束させるのに有用な特性を有する電界及び磁場を提供するように形成される。本明細書に記載の図示の実施形態では、液滴(346)は、約1.0026メートル/秒(m/s)のそれらの関連の終端速度でオリフィス(340)から排出される。一実施形態では、終端速度は、1.00m/s~約1.05m/sの範囲であってもよい。一実施形態では、本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の動作を可能にする任意の放出速度が使用されてもよい。エレクトロスプレーされた液滴(346)内の荷電ナノ粒子(図示せず)が蒸着領域(348)上の標的位置に向けられる際、液滴(346)の速度は、オブジェクト(378)に対する液滴(346)の比較的穏やかな衝突を提供するための既定の構成可能な距離について、組み合わされた引き出し電極及び誘導要素(336)を介して制御される。この穏やかな衝突は、オブジェクト(378)に対する液滴(346)の飛沫及び跳ね返り活動を軽減し、さらに、オブジェクト(378)への液滴(346)の結合を開始させる。低減された衝突速度は、各液滴(346)の軌道の制御を提供し、オブジェクト(378)などの複雑なオブジェクトを構築及び製造することを可能にする。したがって、液滴(346)の供給は、既定の構成可能なパターンで狭い流れに向けられ、エレクトロスプレーノズル(330)から選択された速度で、オブジェクトホルダ(以下で記載される(254)と同様)又は製造オブジェクトの新しく形成された層(378)などの標的上に放出される。引き出し及び誘導要素(336)の組み合わせによる整列は、既定の構成可能な接触点に液滴(346)を蒸着させる。
【0025】
[0043] 再び
図2を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)は、液滴(346)のエレクトロスプレーされた流れの標的として機能するステージ(242)を有するように示されている。ステージ(242)は、3つの直交する寸法X、Y及びZにおいてエレクトロスプレーノズル(230)に対して移動するように構成される。ステージ(242)は、通常、電気的に接地され、その結果、ステージ(242)は、電界についての平面的なエンドポイントを形成する。例示的な実施形態では、ステージ(242)は、ユーティリティベースプレート(250)、冷却チャック(252)及びオブジェクトホルダ(254)を備える。オブジェクトホルダ(254)は、エレクトロスプレープロセスから生じる製造オブジェクト(
図2には図示せず)を保持するように構成される。オブジェクトホルダには、横平面(254
平面)を規定する表面(254
表面)を含む。一実施形態では、オブジェクトホルダ(254)は、その上に液滴(346)のエレクトロスプレーされた流れが蒸着される基材(図示せず)を保持する。他の実施形態では、基材は使用されず、エレクトロスプレーはオブジェクトホルダ(254)上に直接蒸着する。冷却チャック(252)は、オブジェクトホルダ(254)の下に位置決めされ、オブジェクトホルダ(254)に結合される。冷却チャック(252)は、オブジェクトホルダ(254)を冷却するか、又は、そうでなければオブジェクトホルダ(254)の温度を低下させるように構成される。少なくとも1つの実施形態では、冷却チャック(252)は、直流(DC)を使用して熱をオブジェクトホルダ(254)からユーティリティベースプレート(250)に伝達する1以上の熱電冷却チップ(図示せず)を備える。一実施形態では、オブジェクトホルダ(254)の温度の制御を可能にする、オブジェクトホルダ(254)から熱を伝達する任意の方法が冷却チャック(252)及び/又はオブジェクトホルダ(254)に適用される。熱伝達方法の例には伝導性熱伝達が含まれるが、これに限定されない。ユーティリティベースプレート(250)は、周囲空気に曝されて、冷却される若しくは自然対流又は強制空気流を伴う冷却プロセスの対象となってもよい。配線(256)は、冷却チャック(252)に電力を供給するため、及び、オブジェクトホルダ(254)に埋め込まれ得る任意のセンサ(図示せず)のために、ユーティリティベースプレート(250)に動作可能に結合される。引き出し電極配線(258)は引き出し電極(236)に電流を提供する。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)は、エレクトロスプレーノズル(230)から出るときの液滴(346)の適切な取り扱いを提供するための構成要素を含む。
【0026】
[0044]
図2の参照を続けると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)は、エレクトロスプレーノズル(230)及び溶融材料リザーバ(208)に動作可能に結合されたエンクロージャ(260)を有する。一実施形態では、エンクロージャ(260)は石英又は別の適切な材料から構成される。エンクロージャ(260)は、ステージ(242)と接触して配置されると、エンクロージャ(260)及びステージ(242)が、エレクトロスプレープロセスの制御された環境として機能するエンクロージャキャビティ(262)を規定するように形成される。エンクロージャ(260)は、エンクロージャ(260)の外縁(266)にスライド式に結合されたフレーム(264)を有する。フレーム(264)は、ステージ(242)が移動させられる際にステージ(242)との接触を維持する。この接触により、エレクトロスプレーオブジェクトの製造中にエンクロージャキャビティ(262)が完全に密閉された状態に維持される。ユーティリティベースプレート(250)は、ガス(図示せず)をエンクロージャキャビティ(262)内に注入するための流体入口(268)を有する。エンクロージャフレーム(264)の底部(272)に対して位置決めされたエンクロージャガスケット(270)が、エンクロージャキャビティ(262)のシーリングを改善し、かつ、ステージ(242)が横方向に、すなわち、X及びZ寸法に、エンクロージャキャビティ(262)のシーリングを妨げることなく移動することを許容する又は可能にする。一実施形態では、エンクロージャガスケット(270)はフェルト材料から構成されているが、この材料は限定的であると見なされるべきではない。例えば、一実施形態では、ガスケット(270)は、ガスケット(270)の機能をサポートする1以上の代替材料から形成されてもよい。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)は、エレクトロスプレーノズル(230)から出るときの液滴(346)の適切な取り扱いを提供するための構成要素を含む。
【0027】
[0045] ガス入口(268)は、不活性ガスを送達するためのエンクロージャキャビティ(262)の入口として機能する。一実施形態では、キャビティ(262)内のガスは、キャビティ(262)内の既定の構成可能な温度プロファイル及び大気条件で提供される。一実施形態では、不活性ガスはアルゴンである。同様に、一実施形態では、不活性ガスは、本明細書に記載されるように、エンクロージャキャビティ(262)内で所望の環境をサポートする任意の材料又は流体であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、エンクロージャキャビティ(262)内のアルゴンガスは、ほぼ大気圧、例えば、14.7ポンド/平方インチ(psi)(101.325キロパスカル(kPa))の既定の構成可能な圧力に維持される。同様に、一実施形態では、アルゴンガスは、本明細書に記載されるように、装置(200)などのナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の動作を可能にする任意の圧力に維持される。一実施形態では、部分的な真空が、エンクロージャキャビティ(262)内で、例えば、約1psi(6.9kPa)~約10psi(69kPa)に引かれる。図示の実施形態では、アルゴンガスは、約25℃~約500℃(約77°F~932°F)の温度でエンクロージャキャビティ(262)内に注入される。一実施形態では、アルゴンガスは、本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(装置(200)を含むがこれに限定されない)の動作を可能にする任意の温度でエンクロージャキャビティ(262)内に注入される。したがって、不活性ガスが使用されて、オブジェクトの製造中に液滴(346)に望ましい環境を維持する。
【0028】
[0046] 再び
図3を参照すると、少なくとも1つの実施形態では、エレクトロスプレーノズル(330)は、ノズル(330)を通る溶融材料ジェット(310)の流量を制御して液滴(346)を形成するためのバルブ(374)を有する。一実施形態では、可変速駆動デバイスに動作可能に結合されたポンプを含むが、これに限定されない、溶融材料ジェット(310)の流れを調整する方法が使用される。さらなる実施形態では、調整装置は使用されず、溶融材料ジェット(310)の流れは、例えば、限定されないが、溶融材料リザーバ(208)の上部(210)のリザーバガス(212)の圧力を変化させることによって制御される。さらなる実施形態では、溶融材料ジェット(310)の流量は、溶融材料ジェット(310)内において約10
-4重量パーセント(wt%)~約100wt%の間で、
図8に関してさらに議論されるように、個々の成分の濃度の調節を通じて決定される。
【0029】
[0047] 溶融材料ジェット(310)の流れは電気流体力学的に制御されてもよい。溶融材料ジェット(310)の流れのそうした制御は、引き出し電極(336)に伝達される電力の1以上の電気的特性の調整を通じて達成される。これらの電気的特性の例には、電圧、電流、周波数及び/又は波形の調整が含まれるが、これらに限定されない。例えば、制御された電圧は、約0.5キロボルト(kv)~約40kvの範囲内であってもよく、電流は約0.1マイクロアンペア(μamps)~3.0アンペアの範囲内に維持されてもよく、かつ、周波数は、0ヘルツ(Hz)の実質的に一定の周波数の直流(DC)から約100ギガヘルツ(GHz)の交流(AC)まで制御されてもよい。一実施形態では、本明細書に記載の引き出し電極(336)の動作を可能にする任意の電圧、電流及び周波数が使用されてもよい。また、一実施形態では、正弦波形、方形波形及び三角波形を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載の引き出し電極の動作を可能にする任意の波形が使用さされてもよい。したがって、溶融材料ジェット(310)の流量の制御は、液滴(346)のサイズの制御を提供し、流量制御は、約10-3ナノグラム/分(ng/min)~約108ng/minの流量を生成するために、溶融材料ジェット(310)内の成分濃度の制御、引き出し電極(336)の電気的特性の調整、溶融材料リザーバ(208)内の圧力の調整、及び、バルブ(374)の位置の調整のうちの1以上を通じて可能にされる。
【0030】
[0048] エレクトロスプレーされた液滴(346)の流れは、電界が溶融材料ジェット(310)をキャピラリチューブ(334)から引き出すときに、キャピラリチューブ出口ポート又はオリフィス(340)上に形成されるテイラーコーン(376)から現れる。液滴(346)の流れの分散は磁場によって制限される。液滴(346)の流れが衝突する製造オブジェクト(378)上の領域は蒸着領域(348)と呼ばれる。製造オブジェクト(378)は、連続する蒸着層を含む(
図10~
図14を参照)。液滴(346)の流れが製造オブジェクト(378)に衝突する間、ステージ(342)は横方向に移動させられ、以前の蒸着層の上に現在の蒸着層を形成する。エレクトロスプレー装置(300)と製造オブジェクト(378)との間の距離はスタンドオフ距離(380)又は蒸着までの距離と呼ばれる。目標スタンドオフ距離(380)は、各層を蒸着させるために、製造オブジェクト(378)上でのノズル(330)の各通過について決定される。液滴(346)が製造オブジェクト(378)上に蒸着される際、実際のスタンドオフ距離(380)は、製造オブジェクト(378)上のノズル(330)の各通過中に減少する傾向がある。一実施形態では、目標スタンドオフ距離(380)は、各通過について約2ミリメートル(mm)である。当技術分野では、距離(380)は、溶融材料ジェット(310)の組成、及び一実施形態では、溶融材料ジェット(310)内の組成物の流量に基づいて、約1.5~約2.5mmの範囲であってもよいことが理解される。同様に、一実施形態では、スタンドオフ距離(380)は、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(200)の動作を可能にする任意の値であってもよい。何のアクションも取られなかった場合、スタンドオフ距離(380)は、製造オブジェクト(378)上のノズル(330)の通過ごとに減少する。したがって、スタンドオフ距離(380)は、ステージ(342)の垂直位置を調整して、既定の構成された速度で既定の構成された温度で製造オブジェクト(378)上に液滴(346)を蒸着させることを促進することによって、目標スタンドオフ距離又はその近くに維持される。
【0031】
[0049] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置の追加の構成の実施形態
[0050]
図4を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(400)の別の実施形態を示す断面概略図が提供される。示すように、装置(400)は、液滴(446)の流れに熱エネルギーを提供するための加熱デバイス(402)を含む。一実施形態では、加熱デバイス(402)は、製造オブジェクト(478)と衝突する前に液滴(446)の温度が十分に低下したときに、液滴(446)の流れに熱エネルギーを付加するために使用される。図示の実施形態では、製造オブジェクト(478)は製造オブジェクト(378)と同様である。少なくとも1つの実施形態では、加熱デバイス(402)は、放射ビーム(404)を用いて液滴(446)の流れに熱エネルギーを供給する放射源である。加熱デバイス(402)は、例えばエネルギースペクトルの一部、及び限定されないが、赤外線部分で放射を放出し、かつ、放射ビーム(404)は、例えばコヒーレント光子源、及び限定されないが、レーザビームである。一実施形態では、加熱デバイス(402)は、例えば、エネルギースペクトルの他の任意の部分、及び限定されないが、X線部分で放射ビーム(404)を放出する。また、ある実施形態では、放射ビーム(404)は、液滴(446)が不透明に見える、様々な波長の非コヒーレント光子を含む。図示の実施形態では、加熱デバイス(402)は、エンクロージャ(460)の外側に装着され、放射線ビーム(404)は、図示の実施形態では石英から形成されるエンクロージャ(460)を通過する。ある実施形態では、加熱デバイス(402)は、ステージ(442)のユーティリティベースプレート(450)に動作可能に結合される。図示の実施形態では、ステージ(442)はステージ(342)と同様である。一実施形態では、ステージ(442)がエレクトロスプレーノズル(430)、及びしたがって液滴の流れ(446)に対して移動するとき又は移動させられるときに、放射ビーム(404)の照準制御機能が採用されて、ビーム(404)による液滴(446)の照明を提供する。図示の実施形態では、エレクトロスプレーノズル(430)はエレクトロスプレーノズル(330)と同様である。代替として、加熱デバイス(402)は、エンクロージャ(460)又はエレクトロスプレーノズル(430)に動作可能に結合されてもよい。したがって、温度制御デバイスが使用されて液滴(446)の温度を制御してもよい。
【0032】
[0051] 液滴(446)の温度が最適温度範囲を下回ったときに液滴(446)が衝突すると、製造オブジェクト(478)の特性が悪影響を受ける可能性がある。一実施形態では、液滴(446)の最適温度範囲は、約800℃~約1000℃(1472°F~1832°F)である。液滴(446)の温度の制御は、1以上の所望のナノ構造を構築するために使用される。一実施形態では、リザーバ(408)内の溶融材料(410)の温度は、誘導加熱コイル(424)によって提供される熱エネルギーを通じて約1000℃、例えば、1832°Fに維持される。また、この実施形態では、ステージ(442)及び製造オブジェクト(478)は電気的に接地され、それらの温度は冷却チャック(452)を通じた制御を受ける。冷却チャック(452)は冷却チャック(252)と同様である。液滴(446)は、エレクトロスプレーノズル(430)から排出されてステージ(442)に衝突する。ノズル(430)からの放出点では、誘導加熱コイル(424)から溶融材料(410)への熱エネルギーの伝達によって、液滴(446)は約1000℃、例えば1832°Fである。この実施形態では、製造オブジェクト(478)への衝突点での液滴(446)の目標温度は、約500℃、例えば、932°Fであり、これは、この実施形態では、関連の配合についての再結晶温度よりも低い。液滴(446)は、製造オブジェクト(478)に向かって移動させられるので、加熱デバイス(402)は、ビーム(404)の放出を通じて液滴(446)の流れに熱エネルギーを付加する。さらに、エンクロージャキャビティ(462)内の不活性アルゴンガスは、液滴(446)が、ノズル(430)から製造オブジェクト(478)への加熱されたアルゴンガスを通過する際の液滴(446)の温度の制御をサポートするために、約500℃、例えば、932°Fの温度に維持される。
【0033】
[0052] 例示的な実施形態では、液滴(446)の温度は、液滴(446)の蒸着のシーケンス全体を通して制御される。ノズル(430)からの排出時点での溶融材料(410)の初期温度は、既定の構成値に制御される。ノズル(430)と製造オブジェクト(478)との間の距離、すなわちスタンドオフ距離(380)は構成目標値に制御される。製造オブジェクト(478)の温度は、冷却チャック(452)を通じて既定の構成温度に維持される。液滴(446)がスタンドオフ距離(380)を横断する際、液滴(446)が横断するアルゴンガスの温度は既定値又は構成値に維持される。液滴(446)がオブジェクト(478)に衝突する前に、加熱デバイス(402)からのビーム(404)を通じて液滴(446)に熱エネルギーを付加することにより、液滴(446)を既定の構成温度値に維持することを促進する。したがって、オブジェクト(478)の製造プロセスの熱力学的特性の少なくとも一部のバランスが取られる。
【0034】
[0053]
図5を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(500)のさらに別の実施形態を示す断面概略図が提供される。装置(500)は、第1光学側面計(582)から製造オブジェクト(578)までの距離を測定するように構成された第1光学側面計(582)を有するように示されている。図示の実施形態では、製造オブジェクト(578)は製造オブジェクト(478)と同様である。ステージ(542)は移動させられる際、第1側面計(582)は、ステージ(542)から製造オブジェクト(578)までの距離を特定の時間間隔で測定する。製造オブジェクト(578)の現在蒸着されている層(
図5には図示せず)に関するプロファイルデータが作成される。図示の実施形態では、ステージ(542)はステージ(442)と同様である。現在蒸着されている層に関連するプロファイルデータは、有線又は無線であり得る側面計通信リンク(586)を介して主制御ユニット(584)に送信される。ある実施形態では、第2光学側面計(588)が採用され、ある他の実施形態では、3以上の光学側面計が採用される。
【0035】
[0054] 主制御ユニット(584)は、収集されたプロファイルデータを使用して、後続の蒸着層の蒸着中にエレクトロスプレー装置(500)を制御する。後続の蒸着層の蒸着のために、主制御ユニット(584)は、ステージ(542)を垂直方向に移動させて、進行中の蒸着層のプロファイルデータに基づいて、目標スタンドオフ距離にスタンドオフ距離(例えば、
図3の(380))を維持する。主制御ユニット(584)はまた、プロファイルデータを使用して、以前の蒸着層で任意の検出されたエラーを補償する。例えば、進行中の蒸着層のプロファイルデータが、製造オブジェクト(578)のある領域が所望又は予想よりも大きいことを示す場合、主制御ユニット(584)は、検出されたエラーで識別された製造オブジェクト(578)の領域にわたるときのエレクトロスプレーノズル(530)を通る溶融材料(510)の流量を変更することによって後続の蒸着層を修正することができる。図示の実施形態では、エレクトロスプレーノズル(530)はエレクトロスプレーノズル(430)と同様である。同様に、進行中の蒸着層のプロファイルデータが、製造オブジェクト(578)のある領域が予想よりも浅すぎる又はより浅すぎることを示している場合、主制御ユニット(584)は、検出されたエラーで識別された製造オブジェクト(578)の関連領域上にノズル(530)があるときのエレクトロスプレーノズル(530)を通る溶融材料(510)の流量を変更することによって後続の蒸着層を修正することができる。主制御ユニット(584)は、バルブ(例えば、
図3のバルブ(374))を使用することを通じて、若しくは、例えば、材料リザーバ(508)内のリザーバガス(512)の圧力を変化させること又は引き出し電極(536)の電気的条件を変化させることなどの他の方法で、溶融材料(510)の流量を制御する。
【0036】
[0055] 主制御ユニット(584)は、主制御ユニット通信リンク(590)によって、デバイス通信リンク(592)を通じて関連のデバイスに動作可能に結合された1以上のサブ制御ユニットに接続される。図示の実施形態は、ステージ(542)を制御するための第1サブ制御ユニット(594)、引き出し電極(536)を制御するための第2サブ制御ユニット(596)、加熱デバイス(例えば、
図4のデバイス(402))を制御するための第3サブ制御ユニット(598)を有する。他の実施形態は、調整されるべき構成要素に応じて、異なる量のサブ制御ユニットを有してもよい。引き出し電極(536)、溶融材料リザーバ(508)に作用される圧力、誘導加熱コイル(524)によって制御される溶融材料(510)の温度、ステージ(542)及び製造オブジェクト(578)に動作可能に結合される冷却チャック(例えば、
図4のチャック(452))、加熱デバイス(例えば、
図4のデバイス(402))、及び、エンクロージャキャビティ(462)内の不活性アルゴンガス温度は、液滴(例えば、それぞれ
図3及び
図4の液滴(346)及び(446))及び製造オブジェクト(578)の温度を制御するために、主制御ユニット(584)を通じて制御される。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(500)は、様々なレベルの複雑さを有するオブジェクトの製造をサポートするために、制御ユニット及び1以上のサブ制御ユニットを含む。
【0037】
[0056]
図6を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(600)のさらに別の実施形態を示す断面概略図が提供される。示すように、装置(600)は、溶融材料(610)を包含する溶融材料リザーバ(608)を含む。示すように、リザーバ(608)は、
図2、
図4及び
図5に示すシングルノズルの実施形態、例えば、より大量の溶融材料(610)を収容するためのリザーバ(208)、(408)及び(508)よりも広い。しかしながら、リザーバ(608)のサイズ及び寸法は制限的であるとみなされるべきではない。装置(600)は、リザーバ(608)内の圧力を調整するためのガス入口導管(618)を含む。一実施形態では、ガス入口導管(618)は、リザーバガス、例えば、不活性ガスの圧力を、約10psi(69kPa)~約20psi(138kPa)に調整する。図示の実施形態では、装置(600)は、溶融材料リザーバ(608)の外面の周りに広がり、溶融材料(610)を加熱及び液相に維持し、かつ、溶融材料(610)の混合を引き起こすのに有用な複数の誘導加熱コイル(624)を含む。ある実施形態では、天然ガス燃焼を含むがこれに限定されない補足的な加熱を提供するために代替の加熱方法が使用される。
図2、
図4及び
図5に示すシングルノズルの実施形態の容積を超える溶融材料(610)の容積の増加は、加熱コイル(624)から材料リザーバ(608)内への熱エネルギー伝達の決定を変化させる。溶融材料(610)の中心領域(612)は、より小さなリザーバ(208)、(408)及び(508)の場合よりも、加熱コイル(624)からより遠い距離に位置決めされる。溶融材料(610)に熱エネルギーを導入して材料(610)を既定の温度範囲、例えば、約800℃~約1000℃(1472°F~1832°F)に維持又は誘導する方法に関わらず、溶融材料(610)の中心領域(612)への熱流束は、中心領域(612)を既定の温度範囲内に維持するのに十分である。溶融材料リザーバ(608)内に入力される既定の熱エネルギー速度は、これらに限定されないが、特定の溶融材料(610)の物理的特性並びにリザーバ(608)のサイズ及び容積などの物理的特性に依存する。
【0038】
[0057] 装置(600)は、キャピラリチューブ(634)のアレイ及びバルブ(674)のアレイを収容するマニホールド(632)を通じて材料リザーバ(608)と流体連通して結合されたエレクトロスプレーノズル(630)のアレイを含む。各バルブ(674)は、関連のキャピラリチューブ(634)内に位置決めされ、かつ、
図3のバルブ(374)と同様である。各バルブ(674)は、関連のノズル(630)を通る溶融材料(610)の流量を制御するように構成される。図示の実施形態では、エレクトロスプレーノズル(630)の各々はエレクトロスプレーノズル(530)と同様である。少なくとも1つの実施形態では、可変速駆動デバイスに動作可能に結合されたポンプを含むが、これに限定されない、溶融材料(610)の流れを調整する代替の方法が使用される。さらなる実施形態では、調整装置は使用されず、溶融材料(610)の流れは、例えば、限定されないが、リザーバ(608)の圧力を変化させることによって制御される。装置(600)は、エレクトロスプレーノズル(630)のうちの関連の1つが少なくとも部分的に延在する複数の開口部(638)を有する引き出し電極プレート(636)を含む。引き出し電極プレート(636)は、プレート(636)が、エレクトロスプレーノズル(630)から溶融材料(610)を抽出するのに有用な特性を有する電場及び磁場の両方を提供するように形成され、それにより、関連の液滴(646)の流れを駆動するという点で、引き出し電極(336)と同様である。一実施形態では、溶融材料(610)の流れは、これらに限定されないが、例えば、電圧、電流、周波数及び/又は波形などの、引き出し電極プレート(636)に伝達される電力の1以上の電気的特性の調整によって制御される。したがって、製造オブジェクト(578)の既定の生産速度を達成するために、複数のエレクトロスプレーノズル(630)が使用されて、既定の蒸着速度を達成し、既定の材料で所望のパターンを形成する。
【0039】
[0058]
図7を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)の別の実施形態を示す断面概略図が提供される。装置(700)は、
図6の装置(600)と同様のマルチノズルエレクトロスプレー装置である。装置(700)は、複数の溶融材料又は溶融組成物(710)を包含する溶融材料リザーバ(708)を含む。溶融組成物(710)は、第1溶融組成物(712)、第2溶融組成物(714)、第3溶融組成物(716)、第4溶融組成物(718)及び第5溶融組成物(720)を含む。
【0040】
[0059] 一実施形態では、溶融組成物(710)は、各々実質的に異なる材料から構成され、すなわち、各々異なる化学組成物を有する5つの溶融組成物(710)から構成される。しかしながら、組成物(710)の各々は他の組成物と化学的に適合性がある。一実施形態では、組成物(710)は、いくつかの化学的特性、例えば、限定されないが、特定の化学元素又は化合物の同位体を共有する。組成物(710)の量は非限定的な値である。一実施形態では、任意の数の組成物(710)がリザーバ(708)内に配置される。示すように、組成物(710)は、複数の層(710a)を規定するために実質的に層状にされている。層状化は、それぞれ、既定の順序でリザーバ(708)内に既定の高さ(それぞれ、H1-H5)で、組成物(712)、(714)、(716)、(718)及び(720)の層(712a)、(714a)、(716a)、(718a)及び(720a)の位置決めを許容し又は可能にし、それにより、組成物(710)の各々の既定の容量をリザーバ(708)内に位置決めする。キャピラリチューブ(734)内の第1組成物(712)の容積はキャピラリチューブ(734)の高さ(HCT)に基づいて決定される。一実施形態では、上述した垂直層化ではなく、水平層化が使用される。例えば、水平層状化は、溶融材料リザーバ(708)内の同心チャンバの使用を通じて可能にされ得る。
【0041】
[0060] 5つの層(710a)の厳密な分離が必要とされる場合、第1、第2、第3及び第4界面(712b)、(714b)、(716b)及び(718b)は、それぞれ、5つの層(710a)の隣接する対の間に規定される。具体的には、第1界面(712b)は第1層(712a)と第2層(714a)との間に規定される。同様に、第2界面(714b)は第2層(714a)と第3層(716a)との間に規定され、第3界面(716b)は第3層(716a)と第4層(718b)との間に規定され、第4界面(718b)は第4層(718a)と第5層(720a)との間に規定される。界面(712b)、(714b)、(716b)及び(718b)での層(710a)間の組成混合は、所望の調整された特性を製造オブジェクト(578)に付与するために、組成物(710)間の迅速な移行を提供するために最小化される。一実施形態では、それらの界面(712b)、(714b)、(716b)及び(718b)での組成物(710)のいくらかの混合がエレクトロスプレー蒸着プロセスに組み込まれる。例えば、特定の製造オブジェクト(578)は、第1組成物からその後の組成物への段階的な移行を必要とする又はその恩恵を受ける。したがって、界面(712b)、(714b)、(716b)及び(718b)のうちの1以上は、2つの隣接する組成物のブレンドされた混合物を含むように設計される。したがって、突然の又は段階的な移行を伴う調整された特性を有する、
図5のオブジェクト(578)などのオブジェクトを製造することが可能にされる。
【0042】
[0061] 粒子成長抑制及びピン止め
[0062] 3D電子ナノ構造を形成するための少なくともいくつかの既存ツールは、例えば、化学蒸気前駆体の電子ビーム及びイオンビーム分解を採用している。これらのビーム書き込み技術は、表面を帯電させるための連続した時間のかかるステップ並びにエッチング及びリフトオフ手順に必要とされる時間、前駆体ガスの汚染の可能性、及び、蒸着されることができる材料が本質的に少ないという欠点に悩まされている。追加の方法には、不活性ガス凝縮(IGC)、及び、適切な材料の硬化に向けられた技術と結合されたその他のナノ粉末製造方法が含まれる。ナノ粉末の製造方法に関する少なくとも1つの製造上の欠陥は、粉末の硬化中に加えられる熱及び圧力を通じて引き起こされる粒子成長であり、これにより、材料のナノ特性が失われ、製造オブジェクト内に過度の多孔が生じる。同様に、ナノスケール製造のために設計された少なくともいくつかの既存の技術は、サイズが100nm未満のオブジェクトを製造するための既知の方法を含む。これらの方法のいくつかには、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、原子間力顕微鏡(AFM)、液体の直接書き込み(例えば、ディップペンナノリソグラフィ)及び酸化物の走査型トンネル顕微鏡(STM)書き込みが含まれる。これらの製造方法には、低速に向けられた制限と、2次元(2D)構造への制約と、がある。
【0043】
[0063]
図8を参照すると、エレクトロスプレーされた液滴(802)及び粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)によって形成された関連の架橋単分子層(804)を示す図(800)が提供される。また、
図9を参照すると、基材(912)上にエレクトロスプレーされた液滴(902)を示す図(900)が提供される。
図7に関連して上述した組成物(710)などの溶融組成物がエレクトロスプレーノズル(730)を通過すると、組成物(710)は、引き出し電極プレート(736)によって生成された電界を通じて引き起こされる、ノズル(730)の電位に起因する電気的せん断応力を受ける。引き起こされたせん断応力は、溶融組成物(710)の流れ(図示せず)を、エレクトロスプレーされた液滴(746)の1以上の流れに変換する。図示の実施形態では、エレクトロスプレーノズル(730)はエレクトロスプレーノズル(630)と同様である。エレクトロスプレーされた液滴(346)、(446)の流れ又はエレクトロスプレーされた液滴(646)、(746)の複数の流れが基材(912)に向けられると、液滴(802)、(902)はエレクトロスプレーノズル(730)から基材(912)に移動する。ナノサイズの液滴(802)がエレクトロスプレーノズル(730)から放出されると、溶融材料(710)の表面張力が液滴(802)を球形にする。一実施形態では、ステージ(542)上のオブジェクトホルダ(254)は、エレクトロスプレープロセスから生じる製造オブジェクト(578)を位置決めする。最初に、オブジェクトホルダ(254)は、その上に液滴(746)のエレクトロスプレーされた流れが蒸着される、製造オブジェクト(578)の基材(912)を保持する。ある実施形態では、基材(912)はオブジェクトホルダ(254)である。
【0044】
[0064] 図示の実施形態では、液滴(802)及び(902)は、各々が1以上の成分を含む組成物(712)、(714)、(716)、(718)及び(720)のうちの1つを含む。示すように、組成物(710)の成分は、
図8に(806)で示され、かつ、
図9に(906)で示される、ナノ粒子(808)及び粒子成長阻害物質ナノ粒子の形態のナノ構造材料を含む。液滴(802)及び(902)はまた、1以上の第1設計溶質材料(図示せず)を含む設計溶質(810)を含む。代替として、又は、溶質(810)に加えて、液滴(802)及び(902)は、1以上の設計ナノ粒子物質を含む複数の設計ナノ粒子(812)を含む。また、溶質(810)とは異なる1以上の結合剤/湿潤剤(910)が液滴(802)及び(902)に含まれる。ある実施形態では他の材料が追加される。図示するように、エレクトロスプレーされた液滴(802)及び(902)の成分は異質に分散されている。組成物(710)内の成分の異質な混合物は、組成物(710)全体、及びしたがって、液滴(802)及び(902)にわたって変化する成分の相対濃度を含む。しかしながら、液滴(802)及び(902)の成分も均質に分散されてもよい。組成物(710)内の成分の均質な混合物は、組成物(710)全体、及びしたがって、液滴(802)及び(902)にわたって実質的に一定の成分の相対濃度を含む。
【0045】
[0065] エレクトロスプレーされた液滴(802)が移動すると、粒子成長阻害物質粒子(806)は、液滴(802)に引き起こされた表面張力に打ち勝ち、液滴(802)の表面境界に移動して、隣接する液滴(802)に結合する架橋単分子層(804)を形成し始める。液滴(902)が基材(912)に衝突してスプラット(908)に変わるとき、粒子成長阻害物質粒子(906)は架橋単分子層(904)の形成を終了する。架橋単分子層(904)は、他の粒子の粒子成長をスプラット(908)内に制限し、それにより、製造オブジェクト(578)のナノ特性を維持する。したがって、液滴(802)及び(902)がエレクトロスプレーノズル(730)から標的表面までの距離を横断する際の液滴(802)及び(902)のダイナミクスが利用されて製造オブジェクト(578)を形成する。
【0046】
[0066] 本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)、(200)、(300)、(400)、(500)、(600)及び(700)の成分として使用するのに適したナノ構造材料(808)は、金属、金属合金、金属セラミック(特に金属炭化物及び金属窒化物)、金属間化合物、セラミック及びセラミック-セラミック複合物を含む。より具体的には、ナノ構造材料(808)は以下の材料、Cu、FeCu、FeCo、MoSi、MoC、NbC、NiCr、TiC、NiAl、Mo2Si、NiCr/Cr3C2、Fe/TiC、Mo/TiC、WC/Co、又は、Ti、TiC、Mn、W、B、Y、Cr、Mo、Ni、Zr、Ce、Fe、Al、Si、Vのうちの1以上を有する前述の合金のいずれか、及び、前述の金属の混合物、のうちの1以上を含む。
【0047】
[0067] 粒子成長阻害物質(806)及び(906)は、その粒子成長を制限することを通じてナノ粒子構造をピン止めし、それによって、ナノ粒子構造及びそれと共に形成される境界を安定化させるために使用されるナノ粒子ピン止め化合物である。粒子成長阻害物質(806)及び(906)は、熱処理、反応、化学的手段による還元、浸炭又は窒化によって修飾されて、粒子成長阻害物質(806)及び(906)を変換又は部分的に変換して、所望のナノ粒子境界の安定化を誘導してもよい。一実施形態では、粒子成長阻害物質(806)及び(906)は、材料供給ビン(102)内に入る前に、ナノ構造材料(808)又はナノ構造材料の前駆体の混合物内に、結合剤/湿潤剤(910)と共に導入される。一実施形態では、ナノ構造材料(808)及び粒子成長阻害物質(806)及び(906)は、湿潤剤/結合剤(910)を有する溶液に別個に添加される。一実施形態では、結合剤/湿潤剤(910)及び粒子成長阻害物質(806)及び(808)は同じ材料であるが、液相の結合剤/湿潤剤(910)及び固体粒子相のナノ粒子ピン止め化合物を有する。一実施形態では、アルミニウム(Al)及びチタン(W)溶質(810)などであるがこれらに限定されない結合剤/湿潤剤(910)は傾斜合金を生成するために使用され、粒子成長阻害物質(806)及び(808)は異なる材料である。アルミニウム(Al)及びチタン(W)は結合剤/湿潤剤の前駆体と呼ばれ得る。送達のための機構に関わらず、本明細書に記載の単分散ナノ液滴のエレクトロスプレー蒸着は、ナノ構造材料全体に粒子成長ピン止め剤を均一に分布させることを可能にする。
【0048】
[0068] 本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置での使用に適した粒子成長阻害物質は、好ましくは化学的に不活性であり、ナノ構造材料(808)の粒界上又は粒界で均一に分布しやすく、そこから形成されるナノ構造に望まれる、化学的、物理的及び機械的特性を実質的に低下させない。本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)、(200)、(300)、(400)、(500)、(600)、(700)と共に使用するための組成物(710)の成分として使用するのに適した粒子成長阻害物質(806)及び(906)には、金属、金属合金、金属セラミック(特に金属炭化物及び金属窒化物)、金属間化合物、セラミック及びセラミック-セラミック複合物が含まれる。より具体的には、粒子成長阻害物質(806)及び(906)は、B、Si、Al、Cr、Ni、Mo、Hf、Ta、Fe、W、Zr、Ce、Ti、Mo、TiC、AlSi、TiSi、TiAl及びTiB2並びにそれらの組み合わせを含む材料である。さらに、希土類金属、シリコン系炭化物、チタン系炭化物、アルミニウム系窒化物、チタン系窒化物、BN、金属ケイ化物及び金属アルミナイドなどの材料が使用されてもよい。
【0049】
[0069] 表1は、設計(又は調整)溶質(810)及び関連の融点の一部のリストを示している。アルミニウム及びチタン合金は、原材料(108)及び結合剤/湿潤剤(910)の前駆体として使用されてもよい。
【0050】
[0070] 表2は、調整ナノ粒子(812)及び関連の融点の一部のリストを示している。
【0051】
[0071] エレクトロスプレーされた液滴(802)及び(902)の蒸着は3段階のシーケンスをたどる。シーケンスの第1段階は、ノズル(730)からの液滴(802)及び(902)の放出後、約21ミリ秒(msec)内に発生する衝突段階である。液滴(802)及び(902)の速度は約1.0026m/sであり、スタンドオフ距離(380)は約2mmである。衝突開始時の0マイクロ秒(μsec)から約20μsecの範囲内で、液滴(802)及び(902)は、約500℃(932°F)の温度で加熱された基材(912)に接触する。液滴(802)及び(902)は、球形から液体ディスク形状に向かって変形し、最大広がり直径に到達する。液滴(802)及び(902)は、エレクトロスプレーノズル(730)から落下すると、急速に冷却され、選択された粘度及び温度に到達して、基材(912)又は製造オブジェクト(578)に付着すると同時に、粒子成長抑制物質(806)を液滴(802)の境界に移動させる。
【0052】
[0072] 第2段階は、衝突の開始時に約20μsec~約45μsec以内に発生する跳ね返り段階である。液滴(802)及び(902)は液体ディスク形状から球形に向かって跳ね返り始める。しかしながら、液滴(802)及び(902)の運動エネルギーは、液滴(802)及び(902)の表面張力に起因して少なくとも部分的に散逸するので、液滴(802)及び(902)の形状の変動が、液滴(802)及び(902)が静的で平らな形状になるまで発生する。液滴(802)及び(902)のサイズが小さいので、衝突後及び跳ね返り中の液滴(802)及び(902)の変動が最小限に抑えられる。
【0053】
[0073] 第3段階は、衝突の開始時に約45μsec以上発生する準定常凝固段階であり、その間、現在は動かない液滴(802)及び(902)は、スプラット(908)と呼ばれる平らな形状を保持する。スプラット(908)は、液滴(802)、(902)の温度が低下するにつれて収縮し、それによってその中に機械的応力を引き起こす。この応力は、スプラット(908)が共に拡散するように、基材(912)を既知の再結晶温度未満に維持することによって緩和される。応力が緩和されない場合、基材(912)の微小亀裂が発生する可能性がある。
【0054】
[0074] ナノスケールのオブジェクトを3D製造するためのいくつかの既存のナノ粉末製造技術には何らかの焼結方法を必要とする。これらの技術には、ステレオリソグラフィ、不活性ガス凝縮、レーザ気化、放電加工、ワイヤの電気爆発及びマイクロ波プラズマ技術が含まれる。焼結は、製造されるオブジェクトにクリープ、反り及び粒子成長を引き起こし得る。したがって、ナノ構造の所望のナノ特性は焼結プロセス中に失われる。
【0055】
[0075] 液滴(802)及び(902)が蒸着されると、液滴(902)は互いに接触させられ、それによって、基材(912)上の関連の層の多孔性の大幅な減少を促進する。スプラット(908)は、それらの平らな形状を維持しながら、基材(912)上に結合ナノ凝集体を形成する。エレクトロスプレー条件に曝されると、液滴(802)及び(902)内で傾斜合金を生成するバインダ前駆体、例えば、アルミニウム(Al)及びチタン(W)が結晶、例えば(814)及び(914)を形成する。これらの結晶(814)及び(914)は、液滴(902)内でそれぞれ粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)及び(906)を被覆し、かつ、隣接するナノ粒子間のギャップを埋めるナノ粒子間の接続を形成する。さらに、液滴(802)及び(902)の冷却速度及び電荷を制御することにより、エレクトロスプレーされた蒸着物が、基材(912)上に形成された層内の任意の空隙を埋めることをさらに可能にし、それによって、製造オブジェクト(578)の多孔性がさらに減少する。特に、凝固スプラット(908)上の電荷は、スプラット(908)の隣接する蒸着物、すなわち、下にあるスプラット(908)への共有結合を可能にして、均一なナノ構造を形成する。したがって、エレクトロスプレー蒸着で作成された共有金属イオンタイプの化学結合の組み合わせにより、蒸着された材料を圧縮して多孔性を除去するための製造後の焼結が不要になる。したがって、製造オブジェクト(578)の材料の完全性のロバスト性は、
図4に関して記載するように、溶融材料(410)の流れ制御を通じた特定の組成物の液滴(802)及び(902)の温度制御の方法によって改善される。材料の完全性のロバスト性は、エンクロージャキャビティ(462)内で温度を維持することと、
図4に関連して記載したように、再結晶温度未満で蒸着された材料を維持することと、によって達成される。
【0056】
[0076] 再び
図7を参照すると、第1組成物(712)は、第1ナノ構造材料(808)と、1以上の第1粒子成長阻害物質を含む複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)及び(906)と、を含む。第1組成物(712)はまた、1以上の第1設計溶質材料(図示せず)を含む第1設計溶質(810)を含む。代替として、又は、溶質材料に加えて、第1組成物(712)は、1以上の第1設計ナノ粒子材料(図示せず)を含む複数の第1設計ナノ粒子(812)を含む。
【0057】
[0077] 第2組成物(714)は、第2ナノ構造材料(808)と、1以上の第2粒子成長阻害物質を含む複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)及び(906)と、を含む。第2組成物(714)はまた、1以上の第2設計溶質材料(図示せず)を含む第2設計溶質(810)を含む。代替として、又は、溶質材料に加えて、第2組成物(714)は、1以上の第2設計ナノ粒子材料(図示せず)を含む複数の第2設計粒子(812)を含む。
【0058】
[0078] 同様に、第3、第4及び第5組成物(716)、(718)及び(720)は、それぞれ、第3、第4及び第5ナノ構造材料(808)を含む。第3、第4及び第5組成物(716)、(718)及び(720)はまた、それぞれ、複数の第3、第4及び第5粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)及び(906)を含む。粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)及び(906)は、それぞれ、1以上の第3、第4及び第5粒子成長阻害物質を含む(図示せず)。第3、第4及び第5組成物(716)、(718)及び(720)はまた、それぞれ、1以上の第3、第4及び第5設計溶質材料(図示せず)のうちの少なくとも1つを含む、第3、第4及び第5設計溶質物質(810)のうちの少なくとも1つを含む。代替として、又は、溶質材料に加えて、第3、第4及び第5組成物(716)、(718)及び(720)は、それぞれ、1以上の第3、第4、及び第5設計ナノ粒子材料(図示せず)を含む、それぞれ、複数の第3、第4及び第5設計ナノ粒子(812)を含む。
【0059】
[0079] 組成物(710)は、既定の構成可能なナノ構造材料(808)を含む。本明細書で使用される場合、ナノ構造材料(808)は、特性長スケールが約1nm~約10nmのオーダである微細構造を有する材料を含む。ナノ構造材料(808)は、剛性、強度、延性、硬度及び靭性を含むが、これらに限定されない、既定の構成可能な機械的特性を有するオブジェクト構造を製造するように設計される。ナノ構造材料(808)はまた、密度、電気伝導率及び熱伝導率を含むが、これらに限定されない、既定の構成可能な物理的特性を提供するように設計される。さらに、ナノ構造材料(808)は、耐食性を含むが、これに限定されない、既定の構成可能な化学的特性を提供するように設計されている。ナノ構造材料(808)は、成形性、機械加工性及び他のオブジェクトとの接合の容易さを含むが、これらに限定されない、既定の構成可能な製造特性を提供するようにさらに設計される。したがって、ナノ構造材料(808)は、それらの設計された及び固有の機械的、物理的、電気的及び製造特性に基づいて選択され、所望の機能特性を有する製造オブジェクト(578)を製造する。
【0060】
[0080] 組成物(710)はまた、既定の構成可能な粒子成長阻害物質ナノ粒子を含む。一実施形態では、組成物(710)の各々は、ナノ粒子形態の単一種の粒子成長阻害物質に対応する単一種の粒子成長阻害物質ナノ粒子をその中に有する。一実施形態では、組成物(710)のうちの少なくとも1つは、その中に2以上の種の粒子成長阻害物質ナノ粒子を有し、その結果、関連の組成物は、その中にナノ粒子形態の2以上の種の粒子成長阻害物質を含む。
【0061】
[0081] ナノ構造材料(808)及びナノ粒子形態の粒子成長阻害物質に加えて、組成物(710)のうちの少なくとも1以上は、設計溶質(810)及び設計ナノ粒子(812)のうちの少なくとも1つを含む。設計溶質(810)は、関連の沈殿物が、溶液から沈殿すると、設計された、すなわち、調整された特性を提供して、製造オブジェクト(578)上の蒸着層のナノ粒子構造を安定化させるのを助けるように、設計溶液中に1以上の設計溶質物質を含む。一実施形態では、沈殿物の一部は境界に移動する一方、沈殿物の他の部分はナノ粒子構造全体に移動し、それによって、ナノ粒子構造を強化する。一実施形態では、沈殿物は、例えば、より低い溶融温度で選択された材料、例えば、表1のチタン合金よりも高い溶融温度を有する材料であり、例えば、表2を参照されたい。沈殿物は、例えば、特性長スケールが約1nm~約10nmのオーダであるナノ粒子サイズである。ある実施形態では、設計溶質(810)ではなく又は設計溶質(810)に加えて、組成物(710)のうちの少なくとも1以上はその中に設計ナノ粒子(812)を含む。設計ナノ粒子(812)は、設計ナノ粒子(812)が溶液に溶解されず、かつ、流動促進液と共に、又は、一実施形態では流動促進液なしで、流動性固体の形態で関連の組成物に添加されるという点で、設計沈殿物とは異なる。表1を参照されたい。設計ナノ粒子(812)は、その中に1以上の設計ナノ粒子材料を含む。したがって、設計溶質(810)、設計溶質材料、設計ナノ粒子(812)及び設計ナノ粒子材料は、調整された製造オブジェクト(578)を規定する調整されたナノ構造を生成するために使用される、(設計ナノ粒子(812)の形態の)調整されたナノ複合物を生成するために選択又は特別に製造される。
【0062】
[0082] 本明細書で使用される場合、用語「ナノ構造」は、特性長スケールが約1nm~約100nmのオーダである微細構造を有するエレクトロスプレー蒸着プロセスを通じて形成される構造をいう。本明細書で使用される用語「オブジェクト」は、その上にナノ構造が形成される、特性長スケールが約100nm超のエレクトロスプレー蒸着プロセスを通じて製造されたオブジェクト(578)をいう。そうして製造されたオブジェクト(578)には、ナノスケールのエネルギー変換デバイス用の電極、事実上すべての産業用のマイクロデバイス及びマイクロツール、並びに、肉眼で容易に識別可能な巨視的なデバイス及びツールが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
[0083] 本明細書で使用されるように、設計ナノ粒子(812)の形態の調整されたナノ複合物を定義することに加えて、用語「設計された」及び「調整された」は、エレクトロスプレー蒸着プロセスを通じて生成されたナノ複合物ナノ粒子の、エレクトロスプレー蒸着を通じて生成されたナノ構造の、特定のプログラムされた、構成された又は構成可能な特性及び特性を示している。設計ナノ構造は、構成された非段階的特性及び構成された段階的特性のうちの少なくとも1つを含む。ナノ構造の構成された非段階的特性の非限定的な例には、製造オブジェクト(578)全体にわたる均一な色及び均一な強度が含まれる。
【0064】
[0084] 構成された段階的ナノ構造特性の非限定的な例には、段階的特性が少なくとも1つの物理的寸法の関数として変化する、段階的強度特性並びに不均一な電気伝導率及び熱伝導率が含まれる。プロパティの段階は線形及び非線形のうちの1つである。さらに、段階的特性には、本明細書に記載のエレクトロスプレープロセスを通じて基材(図示せず)上に蒸着された材料の材料組成が少なくとも1つの物理的寸法の関数として変化する傾斜合金が含まれる。段階的特性は、第1特性及び第2特性のバリエーションを含んでもよく、第1特性及び第2特性は、類似の特性又は異なる特性のいずれかである。一実施形態では、特性の変化は、1以上の成分を除去し、かつ、1以上の成分を追加することを含むがこれらに限定されない、組成物の成分の濃度を変化させることを通じて作成される。したがって、本明細書に記載のエレクトロスプレー蒸着プロセスを通じて製造された設計された製造オブジェクト(578)は、3つの物理的寸法に関して相対的に均一であるか、又は、3つの物理的寸法のうちの1以上に関して変化する、特定の調整された特性及び特徴を含む。
【0065】
[0085] ナノ材料(層)の蒸着及びナノ構造の形成
[0086]
図10を参照すると、線形勾配(1004)を有する傾斜合金(1002)を示す図(1000)が提供される。3つの蒸着層(1006)、(1008)及び(1010)が示されているが、この蒸着層の数は非限定的な値である。示すように、第1蒸着層(1006)は第2蒸着層(1008)で覆われ、第2蒸着層(1008)が今度は第3蒸着層(1010)で覆われる。層(1006)、(1008)及び(1010)の材料組成は実質的に同様であり、各層は1以上の成分を含む。一実施形態では、層(1006)、(1008)及び(1010)の各々は、層(1006)、(1008)及び(1010)の各々について順次蒸着される1以上の異なる組成物を含む。層(1006)、(1008)及び(1010)の各々は、層(1006)、(1008)及び(1010)の各々が同様の厚さを有するように、Y次元でほぼ同様の距離で延在する。一実施形態では、3つの層(1006)、(1008)及び(1010)は、3次元空間に広がる任意の次元値を有している。特性の値がより高い領域(1012)が示されており、特性の値がより低い領域(1014)が別の領域に示されている。特性の値は、X軸に沿って矢印(1016)の方向に直線的に減少する。一実施形態では、形成される段階的ナノ構造は、その中に1以上の傾斜合金を含み、傾斜合金の各々は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成を有する段階的ナノ構造の1以上の種を規定する。変化し得る特性の非網羅的なリストには、成分濃度、剛性、強度、延性、硬度、密度、電気伝導率、熱伝導率、耐食性及び機械加工性が含まれる。
図10では、1つの特性が一次元で線形に変化して示されているが、別の実施形態では、特性は多次元で変化する。一実施形態では、2以上の特性が1以上の次元で変化する。したがって、線形勾配を有する傾斜合金を含む段階的ナノ構造は、本明細書に記載されるように複数の層の蒸着を通じて形成される。
【0066】
[0087]
図11を参照すると、非線形勾配(1104)を有する傾斜合金(1102)を示す図(1100)が提供される。3つの蒸着層(1106)、(1108)及び(1110)が示されているが、層の数は非限定的な値である。示すように、第1蒸着層(1106)は第2蒸着層(1108)で覆われ、第2蒸着層(1108)は今度は第3蒸着層(1110)で覆われる。さらに、3つの層(1106)、(1108)及び(1110)の材料組成は実質的に同様であり、各層は、本明細書の他の箇所で記載されるように、1以上の成分を含む。一実施形態では、層(1106)、(1108)及び(1110)の各々は、層(1106)、(1108)及び(1110)の各々について順次蒸着される1以上の異なる組成物を含む。さらに、示すように、層(1106)、(1108)及び(1110)の各々は、層(1106)、(1108)及び(1110)の各々が同様の厚さを有するように、Y次元でほぼ同様の距離で延在する。一実施形態では、層(1106)、(1108)及び(1110)は、3次元(X、Y、Z)に広がる任意の次元値を有している。
図11の左の第1領域(1112)は、例えば右の第2領域(1114)に示されるよりも低い特性の値を有し、特性の値は、界面(1116)においてX軸に沿って実質的に瞬時に増加する。一実施形態では、形成される段階的ナノ構造は、その中に1以上の傾斜合金を含み、傾斜合金の各々は、少なくとも1つの物理的次元に関して変化する材料組成を有する段階的ナノ構造の1以上の種を規定する。変化し得る特性の非網羅的リストには、成分濃度、剛性、強度、延性、硬度、密度、電気伝導率、熱伝導率、耐食性及び機械加工性が含まれる。
図11では、1つの特性が一次元で変化して示されているが、一実施形態では、特性は多次元で変化する。一実施形態では、2以上の特性が1以上の次元で変化する。したがって、非線形勾配を有する傾斜合金を含む段階的ナノ構造は、本明細書に記載されるように複数の層の蒸着を通じて形成される。
【0067】
[0088]
図12を参照すると、線形に段階的な結合蒸着層(1202)を示す図(1200)が提供される。また、
図7を参照すると、一実施形態では、組成物(710)の各々は、関連の層(710a)内で実質的に均質であり、実質的に均質な組成物(710)の各々は互いに異なる。関連の蒸着層がナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)を通じて基材(1208)上に蒸着されるとき、層は、各層(1204)及び(1206)が実質的に均質である段階的結合蒸着層(1202)を形成する。具体的には、第1蒸着層(1204)は、第1均質組成物(712)を含む基材上に蒸着され、第2蒸着層(1206)は、第1蒸着層(1204)の少なくとも一部上に蒸着され、第2蒸着層(1206)は、第2組成物(714)、例えば、均質な組成物を含む。段階的結合蒸着層(1202)の全体的な材料組成は、少なくとも1つの物理的次元に関して変化する。1つの非限定的な例は、基材(1208)の長さ(X次元)に沿った位置の関数として変化する基材(1208)の上方の層(1206)の高さ(Y次元)を含み、それによって、実質的に直線的な界面(1210)を有する段階的結合蒸着層(1202)を形成する。一実施形態では、段階的結合蒸着層(1202)はまた、第1均質組成物(712)及び第2組成物(714)の適切な蒸着を通じて、幅、例えば、Z寸法で変化し得る。一実施形態では、このプロセスは、各層又は一部の層が、割り当てられた特性に関して以前の層及び後続の層から変化するように、装置(700)によって蒸着される後続の蒸着層のすべてに外挿される。一実施形態では、第1組成物(712)及び/又は第2組成物(714)は均質ではなく、そこから蒸着される第1蒸着層(1204)及び/又は第2蒸着層(1206)もまた均質ではない。一実施形態では、形成される段階的ナノ構造は、その中に段階的結合線形蒸着層(1202)の1以上を含み、段階的蒸着層(1202)の各々は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成を有する段階的ナノ構造の1以上の種を規定する。したがって、結合された段階的蒸着層(1202)を形成することによって、製造オブジェクト(578)上に段階的ナノ構造が形成される。
【0068】
[0089]
図13を参照すると、非線形に段階的な結合蒸着層(1302)を示す図(1300)が提供される。また、
図7は、実質的に均質な組成物(710)の各々が互いに異なる実施形態の例示のために参照される。関連の蒸着層がナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)を通じて基材(1310)上に蒸着されるとき、層は、第1蒸着層(1304)、第2蒸着層(1306)及び第3蒸着層(1308)を備える段階的結合蒸着層(1302)を形成し、層(1304)、(1306)及び(1308)の各々は実質的に均質である。第1蒸着層(1304)は、第1均質組成物(712)を含む基材(1310)上に蒸着される。第2蒸着層(1306)は第1蒸着層(1304)の少なくとも一部上に蒸着され、第2蒸着層(1306)は均質な第2組成物(714)を含む。第3蒸着層(1308)は第2蒸着層(1306)の少なくとも一部上に蒸着され、第3蒸着層(1308)は均質な第3組成物(716)を含む。一実施形態では、第3蒸着層(1308)も第1蒸着層(1304)の少なくとも一部上に蒸着される。段階的結合蒸着層(1302)の全体的な材料組成は、少なくとも1つの物理的次元に関して変化する。1つの非限定的な例は、基材(1310)に沿った長さ(X次元)における位置の関数として基材(1310)の上方で変化する第2蒸着層(1306)の高さ(Y次元)を含み、それによって、段階的結合蒸着層(1302)を形成する。一実施形態では、段階的結合蒸着層(1302)はまた、第1均質組成物(712)、第2組成物(714)及び第3組成物(716)の適切な蒸着を通じて幅(Z寸法)が変化し得る。一実施形態では、このプロセスは、装置(700)によって蒸着されたすべての蒸着層に外挿され、その結果、層(1304)、(1306)及び(1308)の各々又は一部の層は、割り当てられた特性に関して以前及び後続の層から変化する。一実施形態では、第1組成物(712)及び/又は第2組成物(714)及び/又は第3組成物(716)は均質ではなく、第1蒸着層(1304)及び/又は第2蒸着層(1306)及び/又は第3蒸着層(1308)も均質ではない。一実施形態では、形成される段階的ナノ構造は、その中に1以上の段階的結合非線形蒸着層(1302)を含み、段階的蒸着層(1302)の各々は、少なくとも1つの物理的寸法に関して変化する材料組成を有する段階的ナノ構造の1以上の種を規定する。したがって、結合された段階的蒸着層(1302)を形成することによって、製造オブジェクト(578)上に段階的ナノ構造が形成される。
【0069】
[0090]
図14を参照すると、均質な結合蒸着層(1402)を示す図(1400)が提供される。一実施形態では、
図7を参照すると、実質的に均質な組成物(712)及び(714)の各々は互いに異なる。関連の蒸着層(1404)及び(1406)がナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)を通じて基材(1408)上に蒸着されるとき、層(1404)及び(1406)は均質な結合蒸着層(1402)を形成し、層(1404)及び(1406)の部分は実質的に均質である。第1蒸着層(1404)は、基材(1408)上に蒸着され、かつ、第1均質組成物(712)を含む。第2蒸着層(1406)は、第1蒸着層(1404)の少なくとも一部に蒸着され、第2蒸着層(1406)は均質な第2組成物(714)を含む。1つの非限定的な例は、基材(1408)の上方の高さ(Y)並びに基材(1408)に沿った2つの層(1404)及び(1406)の長さ(X)及び幅(Z)の寸法に関して実質的に均質であり、それによって、界面(1410)を有する均質な結合蒸着層(1402)を形成する、2つの層(1404)及び(1406)の材料組成を含む。示すように、界面(1410)はX軸に実質的に平行である。一実施形態では、界面(1410)は、本明細書に記載の装置(700)の動作を可能にする任意の向きで形成される。一実施形態では、このプロセスは、装置(700)によって蒸着された各層又は一部の層が、割り当てられた特性に関する以前の及び後続の層と実質的に同様であるように、装置(700)によって蒸着された蒸着層(1404)及び(1406)のすべてに外挿される。一実施形態では、形成される段階的ナノ構造は、その中に1以上の均質な結合蒸着層(1402)を含み、蒸着層(1402)の各々は、少なくとも1つの物理的寸法に関して実質的に一定である材料組成を有する段階的ナノ構造の1以上の種を規定する。したがって、均質な結合蒸着層(1402)を形成することによって、製造オブジェクト(578)上に実質的に均質なナノ構造が形成される。
【0070】
[0091] 一実施形態では、組成物(710)の層(710a)のうちの少なくとも1つは1以上のナノ構造材料(808)のブレンドを含む。一実施形態では、関連の層(710a)内のブレンドは、均質ブレンド、異質ブレンド又はそれらの組み合わせのうちの1つである。一実施形態では、ナノ構造材料(808)ナノ粒子は、製造オブジェクト(578)の一部又は全体内に既定の構成された電気導電性を提供するために、絶縁性、導電性及び半導電性ナノ粒子の特性のうちの1以上を有してもよい。複数のナノ構造材料(808)の均質なブレンドは、関連の層(710a)全体に実質的に均質に分散された様々なナノ構造材料(808)を含む。一実施形態では、エレクトロスプレー装置(700)によって蒸着された層は、蒸着された層全体に実質的に均質に分散された様々なナノ構造材料(808)を含む。そうしたブレンドを製造するための1つの非限定的な方法は、材料供給ビン(102)内に導入する前に原材料(108)としてナノ構造材料(808)の所望のブレンドを混合することを含む。例えば、一実施形態では、ブレンドは磁束線に従う。したがって、組成物(710)の1以上内での複数のナノ構造材料(808)の均質なブレンドは、エレクトロスプレー装置(700)で製造された製造オブジェクト(578)上に蒸着材料の実質的に均一な層を配置することを提供する。
【0071】
[0092] 一実施形態では、複数のナノ構造材料(808)の異質なブレンドは、関連の層(710a)全体に実質的に異質に分散している様々なナノ構造材料(808)を含む。エレクトロスプレー装置(700)によって蒸着された層は、例示的な実施形態によれば、蒸着された層全体に実質的に異質に分散された様々なナノ構造材料(808)を含む。ナノ構造材料(808)のブレンドのそうした異質な分散は、エレクトロスプレー装置(700)を使用して蒸着された関連の層の既定の部分全体に段階的特性を位置決めすることを提供する。ナノ構造材料(808)の異質なブレンドを製造するための非限定的な方法は、材料供給ビン(102)内に挿入する前に、原材料(108)の混合物に凝集添加剤を加えることを含む。したがって、組成物の1以上内での複数のナノ構造材料(808)の異質なブレンドは、エレクトロスプレー装置(700)で製造された製造オブジェクト(578)上の蒸着された材料の層の既定の部分内に段階的特性を位置決めすることを提供する。
【0072】
[0093] 一実施形態では、組成物(710)の層(710a)の1以上は複数の副層(図示せず)によって形成され、副層の1以上は、複数のナノ構造材料(808)の均質なブレンドを含み、1以上の副層は、複数のナノ構造材料(808)の不均質なブレンドを含む。異質なブレンドと均質なブレンドとの組み合わせを組成物(710)の2以上の層(710a)に外挿すると、製造オブジェクト(578)に複数の均質な部分及び異質な部分を与える複数の蒸着層が生じる。したがって、溶融材料リザーバ(708)内の異質及び均質な副層の組み合わせは、製造オブジェクト(578)に、エレクトロスプレー装置(700)を通じて蒸着された層の部分に均質な特性を、かつ、蒸着された層の他の部分に異質な特性を提供し、それにより、その中の既定の部分に均一な特性及び段階的な特性を有する製造オブジェクト(578)を形成する。
【0073】
[0094] 実施形態では、上述したように、組成物(710)の1以上内の複数のナノ構造材料(808)のブレンドは、段階的特性を規定するその少なくとも一部を有するオブジェクト(578)の製造を可能にする。さらに、実施形態では、ブレンド中のナノ構造材料(808)の相対濃度も段階的特性を規定するために変化させられる。一実施形態では、複数の粒子成長阻害物質のうちの1以上、複数の設計溶質材料及び複数の設計ナノ粒子材料が、ナノ構造材料(808)のブレンドに加えて又はその代わりにブレンドされる。粒子成長阻害物質、設計溶質材料及び設計ナノ粒子材料のブレンドも異質、均質又はそれらの組み合わせのうちの1つである。したがって、製造オブジェクト(578)の設計された特性は、粒子成長阻害物質、設計溶質材料及び設計ナノ粒子材料のうちの1以上の濃度を調節することを通じてさらに可能にされる。
【0074】
[0095] 蒸着プロセス全体にわたる液滴(746)の温度制御が検討される。一実施形態では、組成物(710)の各々は、異なる温度条件を使用して蒸着される。したがって、本明細書に記載の液滴(746)の温度を制御するための装置及び方法は、拡張可能であり、かつ、組成物(710)の各々に適応可能である。
【0075】
[0096] 一実施形態では、製造オブジェクト(578)上に調整ナノ構造を形成するための設計ナノ構造材料(808)の既定の配置に加えて、犠牲材料(図示せず)が溶融組成物(710)の1以上に含まれる。製造オブジェクト(578)上に蒸着された1以上の組成物(710)は、製造オブジェクト(578)をさらに形成するためにその後に除去される犠牲材料を含むように変更される。一実施形態では、犠牲物質を除去するためにアセトンが使用される。したがって、様々な材料蒸着物のうちの1つが取り去られて異常な3D形状を作成するときの設計状況を含め、製造後の機械加工なしで任意の3次元(3D)設計が製造されることができる。
【0076】
[0097]
図7に図示する実施形態を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)は、マニホールド(732)内にアレイで配列された複数のエレクトロスプレーノズル(730)を含む。示すように、ノズル(730)は直線的に配列されている。一実施形態では、ノズルの配列はX軸の方向にある。一実施形態では、エレクトロスプレーノズル(730)は、本明細書に記載されるような迅速な製造の態様を可能にする任意の構成で配列され、例えば、任意の数のノズル(730)がX軸及びZ軸に関して任意の構成で配列される。一実施形態では、ノズル(730)は、1以上の1次ノズル(ノズル(730)として示される)及び関連の2次マニホールド(782)に動作可能に結合された複数の2次ノズル(780)として配列され、オブジェクトホルダ(754)は、横平面(754
平面)を規定する表面(754
表面)を含み、複数の2次ノズル(780)が横平面(754
平面)の周りに延在する弧状配向内に向けられる。2次ノズル(780)の各々は、2次スプレー液滴(784)の流れを表面(754
表面)に向ける。図示の実施形態では、1つのマニホールド(782)及び3つの2次ノズル(780)が示され、マニホールド(782)及び2次ノズル(780)の数は非限定的である。一実施形態では、2次ノズル(780)は、横平面(754
平面)に対して直交して配向されている。一実施形態では、2次ノズル(780)は、横平面(754
平面)に対して非直交に配向されている。一実施形態では、2次マニホールド(782)はマニホールド(732)に結合されている。一実施形態では、2次マニホールド(782)は別個の材料源(図示せず)に結合されている。一実施形態では、ノズル(730)はY軸の方向に配置されてもよい。しかしながら、エレクトロスプレー液滴(746)並びにステージ(242)及び(442)の温度制御に関して本明細書の他の箇所に記載されるような制限は、ノズル(730)の配列において検討されるべき要因である。一実施形態では、単一のオリフィス(240)及び(340)ではなく、キャピラリチューブ(734)は、製造オブジェクト(578)上に非常に均一なフィルム又はパターンを生成するための蒸着ノズルとして、1以上のオリフィス(図示せず)又はノズル(図示せず)を有する被覆又はパターニングヘッド(図示せず)を含む。パターニングヘッドは、マニホールド(732)内の単一又は2以上の列に配列された単一又は複数の導電性キャピラリオリフィスを有する引き出し電極プレート(736)に近接している。一実施形態では、オリフィス又はノズルの終了位置、例えば、先端は、オブジェクトホルダ(754)の横平面(754
平面)の下に配置される。一実施形態では、オリフィス又はノズルは横平面(754
平面)の上方又は平行に配置される。オリフィス又はノズルが導電性である実施形態では、オリフィス及び/又はノズルは、絶縁性被覆(図示せず)で被覆されている。オリフィス又はノズルが誘電体物質で製造されている一実施形態では、オリフィス又はノズルは、導電性被覆(図示せず)で被覆されている。したがって、本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(700)の動作を可能にするノズル(730)及び(780)の任意の数及び任意の構成が使用される。
【0077】
[0098] エレクトロスプレーノズル(730)のアレイを通る組成物(710)の流量は、オブジェクト(578)上の液滴(746)の流れの蒸着パターンを制御する。蒸着パターンはまた、ステージ(242)及び(442)の位置決めを通じたオブジェクト(578)に対するノズル(730)の整列を通じて制御される。流量は、抽出器/誘導プレート(736)の組み合わせによって生成される電界及び磁界の調整を通じた液滴(746)の流れの整列を通じて制御される。エレクトロスプレープロセス中、個々のノズル(746)を通る蒸着速度は、関連のバルブ(774)の調整を通じて制御される。一実施形態では、オブジェクト(578)の一部は、その上に様々な速度の材料蒸着を受け、それによって、オブジェクト(578)への調整された特性の送達をさらに強化する。組成物(710)の各々について、オブジェクト(578)への材料の蒸着の調整が同様に行われる。ある組成物(710)の場合、オブジェクト(578)へのその蒸着は、液滴(746)を受け取るオブジェクト(578)の一部に関して選択的であってもよい。したがって、複数のエレクトロスプレーノズル(730)を通じた液滴(746)の複数の流れの調整及びステージ(242)及び(442)のノズル(730)との選択的整列による組成物(710)の蒸着は、オブジェクト(578)上への組成勾配の形成を提供する。
【0078】
[0099] 一実施形態では、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)、(200)、(300)、(400)、(500)、(600)及び(700)は主制御ユニット(584)を含む。主制御ユニット(584)は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス、すなわち、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)及び分散処理システム(DCS)などのプログラマブルハードウェアデバイスに実装される。主制御ユニット(584)は、機能を有効にし、かつ、本明細書に記載の例示的な実施形態の方法を実行するためのプロセッサユニット、メモリデバイス及びストレージデバイスを含むがこれらに限定されない十分なハードウェアデバイスを含む。さらに、主制御ユニット(584)は、機能を有効にし、かつ、本明細書に記載される例示的な実施形態の方法を実行するのに十分なソフトウェアを含む。さらに、主制御ユニット(584)は、機能を有効にし、かつ、本明細書に記載の方法の実施形態を実行するために、ワイヤ及びケーブルを通じて又は無線で、十分な通信チャネルを通じて関連の測定及び制御デバイスに動作可能及び通信可能に結合される。したがって、本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(182)、(200)、(300)、(400)、(500)、(600)及び(700)の動作を有効にするハードウェア及びソフトウェアの任意の組み合わせが使用される。
【0079】
[0100] 例示的な実施形態では、層の蒸着(1006)、(1008)、(1010)、(1106)、(1108)、(1110)、(1204)、(1206)、(1304)、(1306)、(1308)、(1404)及び(1406)、以下、総称して蒸着層と呼ぶ、は、第1光学側面計(582)及び第2光学側面計(588)から収集されたプロファイルデータを使用して、蒸着層の蒸着中、エレクトロスプレー装置(182)、(200)、(300)、(400)、(500)、(600)及び(700)、以下、総称してナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置と呼ぶ、を制御する主制御ユニット(584)を通じて制御される。光学側面計(582)及び(588)は、側面計(572)及び(588)から製造オブジェクト(578)までの距離を特定の時間間隔で測定して、ステージ(542)がエレクトロスプレーノズル(530)及び(730)に関して製造オブジェクト(578)を移動させる際に、製造オブジェクト(578)のプロファイルデータを作成する。後続の蒸着層の蒸着のために、主制御ユニット(584)は、後続の蒸着層のプロファイルデータに基づいて、測定されたスタンドオフ距離(380)を目標スタンドオフ距離に維持するために、必要に応じてステージ(542)を垂直に移動させる。主制御ユニット(584)はまた、プロファイルデータを使用して、以前の蒸着層におけるエラーを補償する。例えば、後続の蒸着層のプロファイルデータが、製造オブジェクト(578)のある領域が厚すぎることを示している場合、主制御ユニット(584)は、製造オブジェクト(578)の関連領域上にあるとき、エレクトロスプレーノズル(530)及び(730)を通る溶融材料(510)及び(710)の流速を遅くすることによって、後続の又は隣接して位置決めされた蒸着層を修正することができる。同様に、例えば、後続の蒸着層のプロファイルデータが、製造オブジェクト(578)のある領域が薄すぎることを示している場合、主制御ユニット(584)は、製造オブジェクト(578)の関連の領域上にあるときに、エレクトロスプレーノズル(530)及び(730)を通る溶融材料(510)及び(710)の流速を上げることによって、後続の又は隣接して位置決めされた蒸着層の厚さ誤差を補正することができる。主制御ユニット(584)は、バルブ(374)及び(774)を使用すること、リザーバ(508)及び(708)のガスの圧力を変化させること、又は、引き出し電極(536)及び(736)の電気的条件を変更することを通じて、溶融材料(510)及び(710)の流量を制御する。
【0080】
[0101] 例示的な実施形態では、主制御ユニット(584)は、ステージ(542)の位置決めを制御して、基材(912)、(1208)、(1310)、(1408)及び/又は製造オブジェクト(578)と、液滴(746)の流れの既定の開始及び停止を通じて組成物(710)を蒸着させるためのエレクトロスプレーノズル(730)のアレイと、を選択的に整列させる。一実施形態では、第1組成物(712)は、溶融材料リザーバ(708)から抽出され、かつ、第1組成物(712)が使い果たされるまで、ノズル(730)の起動及びステージ(542)の位置決めの既定のシーケンスにおいて製造オブジェクト(578)上に蒸着される。その後、主制御ユニット(584)は、第2、第3、第4及び第5組成物(714)、(716)、(718)及び(720)をそれぞれ順次蒸着させて、組成勾配、傾斜合金及び本明細書の他の箇所に記載される段階的ナノ構造のうちの1以上を形成する。
【0081】
[0102] 一実施形態では、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品は、主制御ユニット(584)内に存在する又は主制御ユニット(584)に動作可能に結合されたネットワーク化されたコンピュータコンポーネントに存在する。プログラムコードは、蒸着層が1以上の既定のオブジェクト構成特性を有するオブジェクト構成を作成するように、基材(912)又は製造オブジェクト(578)上に蒸着層を蒸着するのに十分なプログラム命令を含む。一実施形態では、製造オブジェクト(578)は、ステージ(542)を案内し、かつ、製造オブジェクト(578)への選択された組成物(710)の蒸着を開始又は終了するために、主制御ユニット(584)内に存在するコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアプログラムを通じて製造される。一実施形態では、CADソフトウェアプログラムは、主制御ユニット(584)に動作可能に結合された別のネットワーク化されたコンピュータコンポーネントに存在している。したがって、2次元及び/又は3次元(3D)製造オブジェクト(578)は、ソフトウェアによって、所望の材料の正確な蒸着が案内されるコンピュータモデルから製造される。
【0082】
[0103] 一実施形態では、制御ユニット(584)は、
図1の原材料(108)が追加されてナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(100)の材料ハンドリング部分を通って輸送される際に組成物(710)の個々の成分を調節する。一実施形態では、複数の材料供給ビン(102)及び複数の原材料移送デバイス(130)が使用されて、組成物(710)のバリエーションを生成する。ナノ構造材料(808)、粒子成長阻害物質ナノ粒子、設計溶質材料及び/又は設計ナノ粒子材料の濃度は変更されて、最終的に任意の所望の種の溶融組成物(710)を提供し得る。1つの非限定的な例は、既定の構成されたナノ構造材料混合物のバリエーションを生成し、既定の構成可能な溶融組成物(710)及び後続の段階的ナノ構造のバリエーションを製造オブジェクト(578)上に形成することを促進するために、一緒に混合される複数の異なるナノ構造材料(808)の濃度を含む。したがって、その例では、溶融組成物(710)の各々は、特定の混合物のバリエーションであり、構成可能なバリエーションの程度が事前に決定される。他の実施形態では、実質的に異なる特性を有する複数のナノ構造材料(808)が混合されて、固有の混合物及び固有の溶融組成物を形成する。同様に、粒子成長阻害物質ナノ粒子、設計溶質材料及び設計ナノ粒子材料は変更されてもよい。一実施形態では、本明細書に記載のナノ構造を製造するために必要な他の任意の材料が使用されて変更されてもよい。一実施形態では、上記の表1及び表2にリストされているものなどの他の航空宇宙材料が使用されて変更されてもよい。一実施形態では、さらなる下流の製造を容易にする他の材料が使用されてもよい。したがって、本明細書に記載の溶融組成物(710)の製造は、製造オブジェクト(578)を製造するために必要な成分濃度のスペクトル全体にわたって組成物(710)を製造することを提供する。
【0083】
[0104] 追加のナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム
[0105]
図15を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)の別の実施形態を示す断面概略図が提供される。示すように、3つのナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582
A)、(1582
B)及び(1582
C)は、平行又は相対的に平行に配置されている。3つのエレクトロスプレー蒸着装置が示されているが、この数は説明の目的のためであり、非限定的な数と見なされるべきである。第1ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582
A)は、第1溶融組成物(1510
A)を包含する第1溶融材料リザーバ(1508
A)を含む。第1ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582
A)はまた、第1エレクトロスプレーノズル(1530
A)に動作可能に結合された第1引き出し電極(1536
A)でエンクロージャ(1560)を貫通する第1エレクトロスプレーノズル(1530
A)を含む。第1エレクトロスプレーノズル(1530
A)は、概して、ステージ(1542)上に位置決めされた製造オブジェクト(1578)に向かって配向される。
【0084】
[0106] 同様に、第2及び第3ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582B)及び(1582C)は、それぞれ、第2及び第3溶融組成物(又は組成物)(1510B)及び(1510C)を包含する、それぞれ、第2及び第3溶融材料リザーバ(1508B)及び(1508C)を含む。第2及び第3ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582B)及び(1582C)は、それぞれ、ノズル(1530B)及び(1530C)に動作可能に結合された、それぞれ、第2及び第3引き出し電極(1536B)及び(1536C)でエンクロージャ(1560)を貫通する、それぞれ、第2及び第3エレクトロスプレーノズル(1530B)及び(1530C)も含む。第2及び第3エレクトロスプレーノズル(1530B)及び(1530C)は、ステージ(1542)上に位置決めされた製造オブジェクト(1578)に向かって配向される。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)などの製造システムは、製造オブジェクト(1578)を効率的に製造するために、複数のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582A)、(1582B)及び(1582C)を含む。一実施形態では、複数の引き出し電極(1536A)、(1536B)及び(1536C)に代えて、引き出し電極プレート(736)と同様の1以上の引き出し電極プレートが使用される。
【0085】
[0107] 各ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582
A)、(1582
B)及び(1582
C)は、本明細書の他の箇所に記載されるように、単分散ナノ液滴(
図15には図示せず)のエレクトロスプレー蒸着を実行する。3つの溶融組成物(1510
A)、(1510
B)及び(1510
C)の各々は、実質的に類似しているか、特定の組成物の漸進的バリエーションであるか、又は、異なる。ステージ(1542)は、その上に既定の構成されたナノ構造を構築するために、製造オブジェクト(1578)が適切な材料組成物(1510
A)、(1510
B)及び(1510
C)をそれぞれ受け取るように、スケジュールされたスプレーノズル(1530
A)、(1530
B)及び(1530
C)の下に必要に応じて位置決めされるエンクロージャ(1560)を横断するように移動可能である。
図5の制御ユニット(584)などの1以上の制御ユニットは、本明細書の他の箇所に記載されているのと同様の方法でナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)の動作を制御する。
【0086】
[0108] 動作中、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)は、ステージ(1542)をエレクトロスプレーノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)の下に連続的に位置決めすることを通じて、製造オブジェクト(1578)を生産し、3つの材料組成物(1510A)、(1510B)及び(1510C)は実質的に類似しており、ステージ(1542)の再位置決めは、それぞれ溶融材料リザーバ(1508A)、(1508B)及び(1508C)からの材料組成物(1510A)、(1510B)、及び(1510C)の枯渇を条件とする。ステージ(1542)は、製造オブジェクト(1578)をそれぞれのノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)の下で適切な向きで輸送するための単一ステージとして示されている。しかしながら、本明細書に記載のナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)の動作を可能にする任意の数のステージ(1542)が、特に、製造オブジェクト(1578)の複数のコピーを実質的に同時かつ継続的に大量生産するように動作可能なシステム(1500)の実施形態に使用されてもよい。実施形態では、3つのエレクトロスプレーノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)が、ノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)のうちの2以上による同じ組成物(1510A)、(1510B)及び(1510C)の同時エレクトロスプレーを許容又は可能にするように配向されるように、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582A)、(1582B)及び(1582C)が配列される。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)は、実質的に同様に製造オブジェクト(1578)を大量生産するために拡張可能である。
【0087】
[0109] 一実施形態では、動作中、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)は、エレクトロスプレーノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)の下にステージ(1542)を連続的に位置決めすることを通じて、製造オブジェクト(1578)を生産することができる。3つの材料組成物(1510A)、(1510B)及び(1510C)は異なり、ステージ(1542)の再位置決めは、製造オブジェクト(1578)上に既定の構成されたナノ構造を生産するためにステージ(1578)のスケジュールされた位置決めを伴う既定の構成可能なシーケンスでの材料組成物(1510A)、(1510B)及び(1510c)の時限エレクトロスプレーに依存する。同様に、特定の材料組成物のこれらのバリエーションもエレクトロスプレーされて製造オブジェクト(1578)を生産する。一実施形態では、3つのエレクトロスプレーノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)が、ノズル(1530A)、(1530B)及び(1530C)のうちの2以上による異なる組成物(1510A)、(1510B)及び(1510C)の同時エレクトロスプレーを許容又は可能にするように配向されるように、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1582A)、(1582B)及び(1582C)が配列される。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1500)は、本明細書の他の箇所に記載される組成勾配、傾斜合金及び段階的ナノ構造のうちの1以上を形成するために、異なる製造オブジェクト(1578)を大量生産するように拡張可能である。
【0088】
[0110]
図16を参照すると、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1600)のさらに別の実施形態を示す断面概略図が提供される。単一のナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1682)が示されているが、1つの装置(1682)は非限定的な数であり、一実施形態では、複数の装置(1682)があってもよい。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1682)は、第1溶融組成物(1610
A)を包含する第1材料リザーバ(1608
A)を有するように示されている。第1材料リザーバ(1608
A)内の第1溶融組成物(1610
A)を構成する材料は、複数の第1誘導加熱コイル(1624
A)を通じて溶融状態に維持される。第1材料リザーバ(1610
A)内の圧力は、第1不活性ガス入力調整システム(1616
A)によって少なくとも部分的に維持される。ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1682)はまた、エレクトロスプレーノズル(1630)に動作可能に結合された第1引き出し電極(1636
A)でエンクロージャ(1660)を貫通する第1キャピラリチューブ(1634
A)と流体連通して結合されたエレクトロスプレーノズル(1630)を含む。エレクトロスプレーノズル(1630)は、概して、ステージ(1642)上に位置決めされた製造オブジェクト(1678)に向かって配向される。
【0089】
[0111] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1600)はまた、製造オブジェクト(1678)の製造に向けて設計材料を供給する第1追加設計材料注入システム(1602)を含み、システム(1602)からのそれらの設計材料は第1溶融組成物(1610A)に追加されなかった。追加設計材料には、粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)、設計溶質(810)及び設計ナノ粒子(812)並びにそれらの任意の組み合わせなどの調整材料が含まれるがこれらに限定されない。追加設計材料は、均質混合物又は異質混合物のうちの1つに混合される。ある実施形態では、追加設計材料は層状である。第1追加設計材料注入システム(1602)は、第1追加設計材料(1610B)を包含する第1追加材料リザーバ(1608B)を含む。一実施形態では、第1追加材料(1610B)は、組成物を形成する複数の成分を含んでもよい。第1追加材料リザーバ(1610B)内の圧力は、第1追加不活性ガス入力調整システム(1616B)によって少なくとも部分的に維持される。第1追加設計材料注入システム(1602)はまた複数の第1追加誘導加熱コイル(1624B)を含む。第1追加誘導加熱コイル(1624B)が利用可能であるが、第1追加設計材料(1610B)を溶融状態に維持するために必ずしも必要ではない場合がある。第1追加設計材料注入システム(1602)は、第1追加キャピラリチューブ(1634B)及び導管、すなわち、第1キャピラリチューブ(1634A)と流体連通して結合された第1キャピラリチューブ延長部(1634D)を含む。ある実施形態では、第1追加キャピラリチューブ(1634B)及び第1キャピラリチューブ延長部(1634D)は、第2追加誘導加熱コイル(1624D)(第1追加キャピラリチューブ(1634B)に動作可能に結合されて示される)を含む。またある実施形態では、第1追加設計材料注入システム(1602)は、第1追加材料リザーバ(1608B)からの抽出及び第1キャピラリチューブ(1634A)へのさらなる輸送のために関連の電場及び/又は磁場を必要とするそれらの第1追加設計材料(1610B)のための第1追加引き出し電極(1636B)を含む。
【0090】
[0112] ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1600)は、製造オブジェクト(1678)の製造に向けて設計された材料を供給する第2追加設計材料注入システム(1604)も含み、システム(1604)の供給された設計材料が第1溶融組成物(1610A)に追加されなかった。2つの追加設計材料注入システム(1602)及び(1604)に含まれるものに制限はない。第2追加設計材料注入システム(1604)は、第2追加設計材料(1610c)を包含する第2追加材料リザーバ(1608C)を含む。一実施形態では、第2追加設計材料(1610C)は、組成物を形成する複数の成分を含んでもよい。第2追加材料リザーバ(1610C)内の圧力は、第2追加不活性ガス入力調整システム(1616C)によって少なくとも部分的に維持される。第2追加設計材料注入システム(1604)はまた、複数の第3追加誘導加熱コイル(1624C)を含む。第3追加誘導加熱コイル(1624C)が利用可能であるが、第2追加設計材料(1610C)を溶融状態に維持するために必ずしも必要ではない場合がある。第2追加設計材料注入システム(1604)は、第2追加キャピラリチューブ(1634C)及び導管、すなわち、第1キャピラリチューブ(1634A)と流体連通して結合された第2キャピラリチューブ延長部(1634E)を含む。一実施形態では、第2追加キャピラリチューブ(1634C)及び第2キャピラリチューブ延長部(1634E)は、第4追加誘導加熱コイル(1624E)(第2追加キャピラリチューブ(1634C)に動作可能に結合されて示される)を含む。また一実施形態では、第2追加設計材料供給装置(1604)は、第2追加設計材料リザーバ(1608C)からの抽出及び第1キャピラリチューブ(1634A)へのさらなる輸送のために関連の電場及び/又は磁場を必要とする第2追加設計材料(1610C)のための第2追加引き出し電極(1636C)を含む。したがって、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム(1600)は、ナノスケールエレクトロスプレー蒸着装置(1682)の材料を補足して設計された(調整された)製造オブジェクト(1678)を生産するため、それぞれ第1及び第2追加設計材料注入システム(1602)及び(1604)を含む。
【0091】
[0113] 動作中、第1及び第2追加設計材料注入システム(1602)及び(1604)の制御は、調整弁(374)、それぞれ、第1及び第2追加引き出し電極(1636B)及び(1636C)、並びに、それぞれ、第1及び第2追加不活性ガス入力調整システム(1616B)及び(1616C)などのフィールドデバイスに動作可能に結合された主制御ユニット(584)などのデバイスを含むが、これらに限定されない。第1及び/又は第2追加設計材料(1610B)及び/又は(1610C)を必要とする製造オブジェクト(1678)を生産するためのある状況は、第1キャピラリチューブ(1624A)の第1溶融材料(1610A)に追加されるべき溶融状態ではないナノ材料の化学的又はその他の物理的要件、及び、第1キャピラリチューブ(1624A)内の第1溶融材料(1610A)の温度制御を含むが、これらに限定されない。第1及び第2追加設計材料(1610B)及び(1610C)の流れは、それぞれ、第1及び/又は第2追加キャピラリチューブ(1634B)及び/又は(1634C)、並びに、それぞれ、第1キャピラリチューブ(1634A)内への、それぞれ、関連の第1及び第2キャピラリチューブ延長部(1634D)及び(1634E)を通じて調節される。ある実施形態では、第1溶融組成物(1610A)と第1追加設計材料(1610B)及び/又は第2追加設計材料(1610c)との組み合わせは、本明細書の他の箇所で記載されるように、蒸着層を形成するために使用される組成物(又は複数の組成物)(図示せず)を生産する。追加設計材料が層状にされるそれらの実施形態では、エレクトロスプレーノズル(1630)を通じて放出される材料の組成は、層が使い果たされる際に第1組成物から第2組成物で変化する。一実施形態では、第1及び第2追加設計材料注入システム(1602)及び(1604)は、それぞれ、ナノスケールエレクトロスプレーマルチノズル蒸着装置(700)と共に使用される。したがって、第1及び第2追加設計材料注入システム(1602)及び(1604)は、それぞれ、製造オブジェクト(1678)を設計ナノ構造で調整して、1以上の組成勾配、傾斜合金及び本明細書の他の箇所で記載される段階的ナノ構造を形成する代替方法を提供する。
【0092】
[0114]
図17を参照すると、その上にナノ構造を有するオブジェクトを製造するためのプロセスを示すフローチャート(1700)が提供される。
図17に示されて記載されるように、少なくとも1つのリザーバ(208)、(708)、(1508
A)、(1508
B)又は(1508
C)は、少なくとも1つの組成物(210)、(710)、(1510
A)、(1510
B)又は(1510
C)を、それぞれ、保持するように設けられる(1702)。例示的な実施形態では、複数のリザーバ(1508
A)、(1508
B)及び(1508
C)が、同様の組成物又は異なる組成物のいずれかを保持して、組成物(210)、(710)、(1510
A)、(1510
B)及び(1510
C)の蒸着の効率を、単一ノズル装置、例えば、装置200、400及び500(それぞれ、
図2、
図4及び
図5に示す)よりも向上させることを可能にするために設けられる。第1組成物(712)及び(1510
A)は、第1ナノ構造材料(808)、1以上の第1粒子成長阻害物質を含む複数の第1粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)を組み合わせることを通じて生成される(1704)。第1組成物(712)及び(1510
A)はまた、第1設計溶質材料(図示せず)を含む第1設計溶質(810)、及び、1以上の第1設計ナノ粒子材料を含む複数の第1設計ナノ粒子(812)のうちの少なくとも1つを含む。
【0093】
[0115] 第2組成物(714)又は(1510B)は、第2ナノ構造材料(808)、1以上の第2粒子成長阻害物質(図示せず)を含む複数の第2粒子成長阻害物質ナノ粒子(806)を組み合わせることを通じて生産される(1706)。第2組成物(714)又は(1510B)はまた、1以上の第2設計溶質材料を含む第2設計溶質(810)、及び、1以上の第2設計ナノ粒子材料を備える複数の第2設計粒子(812)のうちの少なくとも1つを含む。第1及び第2組成物(712)又は(1510A)及び(714)又は(1510B)は、少なくとも1つのリザーバ(208)、(708)、(1508A)、(1508B)又は(1508C)に動作可能に結合された、1以上のエレクトロスプレーノズル(230)、(730)、(1530A)、(1530B)又は(1530C)を通じて、それぞれ、導かれる(1708)。ステージ(242)又は(1542)がノズル(230)、(730)、(1530A)、(1530B)又は(1530C)に近接して位置決めされ(1710)、ステージ(242)又は(1542)は、ノズル(230)、(730)、(1530A)、(1530B)又は(1530C)に対して移動するように適合される。ステージ(242)又は(1542)は、基材(912)を保持するように適合されたオブジェクトホルダ(254)を含む。表面プロファイル決定デバイス(582)及び(588)はステージ(242)又は(1542)に近接して位置決めされ(1712)、デバイス(582)又は(588)は基材(912)のプロファイルデータを取得する(1714)。デバイス(582)及び/又は(588)に動作可能に結合された主制御ユニット(584)並びにステージ(242)又は(1542)は、ピン止めされたナノ構造の製造を調整(1716)し、基材(912)の近位にある第1組成物(712)で第1蒸着層(1006)を形成し(1718)、及び、基材(912)の近位にある第2組成物(714)で第2蒸着層(1008)を形成する(1720)。
【0094】
[0116] 本明細書に記載されるように、本開示の例示的な実施形態は、概して、オブジェクトを製造している間にオブジェクト上に調整された特性を有するナノ構造を形成する装置及び方法に向けられている。特定の組成物が混合されて、製造オブジェクトに特定の特徴及び特性を生成する。例示的な実施形態の組成物は、本明細書に記載されるように形成されるナノ構造の基本的な構造的特性を生成するための1以上のナノ構造材料(ナノ粒子の形態)を含む。粒子成長阻害物質ナノ粒子は、それらが材料の基材上に蒸着される際にピン止めを通じて材料の粒界の成長を制限するため、例示的な実施形態の組成物に含まれる。さらに、例示的な実施形態の組成物はまた、設計溶質及び/又は設計ナノ粒子並びに1以上の結合剤/湿潤剤を含む。
【0095】
[0117] 例示的な実施形態によれば、組成物は、組成、サイズ、温度、均一性、蒸着の速度、及び/又は、ナノ液滴の蒸着の精度が制御される複数の溶融ナノ液滴としてエレクトロスプレーされる。さらに、ナノ液滴の異なる層を蒸着するシーケンスが制御される。制御可能な組成物及び選択可能な温度の溶融液滴のエレクトロスプレー製造により、ほとんどボイドのない最終製品を所望の特性を有するように製造することを可能にする。特性の調整により、傾斜合金の直接印刷を可能にし、埋め込まれた加工硬化効果はプロセスの本質的な結果であり、既定の硬度値はナノ粒子組成物に起因する。アルミニウム6061 T6などの既存の合金の現在の組成物は、本明細書に開示される例示的な実施形態のエレクトロスプレープロセスを通じた製造によって単純に改善された特性を有することができる。ナノ構造材料の直接印刷は、プロセスパラメータ制御の欠如及び最終組成物で所望の特性を得るために必要な固有の成分の欠如のために、自然のプロセスでは形成されることができない新規な材料の製造を提供する。
【0096】
[0118] 本明細書に記載の例示的な実施形態のナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム及び装置は、エレクトロスプレー蒸着における結合共有金属イオンタイプの化学結合の作成を促進し、それによって、焼結の必要性を排除する。本明細書に記載の例示的な実施形態の装置は、物品の型を必要とせずに、自由形状の2次元及び3次元(3D)物品の直接かつ正確な形成を提供する。さらに、本明細書に記載の例示的な実施形態の装置は、溶融材料内の組成物の一定の変化のための手段を提供する。例示的な実施形態では、粒界を固定し、蒸着層の組成物を変化させることにより、ナノ構造の固有の調整された特性を作成して、本明細書の他の箇所で記載される組成勾配、傾斜合金及び段階的ナノ構造のうちの1以上を形成することが許容する又は可能にする。本明細書に記載の例示的な実施形態のナノスケールエレクトロスプレー蒸着システム及び装置は、拡張可能であり、固有の特殊なサービスのための既定の構成可能な特性を有する個々のオブジェクトを生産し、かつ、一般的な商業消費のためにナノスケールサイズのデバイスを大量生産する。
【0097】
[0119] 本実施形態の態様は、実施形態に係る方法及び装置(システム)のフローチャート図及び/又はブロック図のうちの1以上を参照して本明細書に記載される。
【0098】
[0120] 本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、用語「備える」及び/又は「備えている」は、説明された特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらのグループの存在を排除するものではないことがさらに理解される。特定の数の導入された請求項の構成要素が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような限定は存在しないことが当業者によって理解されるであろう。非限定的な例として、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の構成要素を導入するための導入句「少なくとも1つ」及び「1以上」の使用法を含む。しかしながら、そのような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の構成要素の導入が、同じ請求項に「1以上」又は「少なくとも1つ」という導入句と「a」又は「an」などの不定冠詞とが含まれている場合、そのような導入された請求項の構成要素を包含する特定の請求項を、そのような要素を1つだけ包含する実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない;同じことが定冠詞の請求項での使用にも当てはまる。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、いずれか又は両方(若しくは、任意の組み合わせ又は用語のすべて又は言及されて表現される)を意味する。
【0099】
[0121] 以下の特許請求の範囲におけるすべてのミーンズ又はステッププラスファンクション構成要素の対応の構造、材料、行為及び同等物は、具体的に特許請求されたような他の特許請求された構成要素と組み合わせて機能を実行するための任意の構造、材料又は行為を含むことを意図している。本実施形態の説明は、例示及び説明の目的で提示されたが、網羅的又は開示された形態の実施形態に限定されることを意図するものではない。多くの修正及び変形が、実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。実施形態は、実施形態の原理及び実際の適用を最もよく説明し、かつ、当業者が、考えられる特定の用途に適するように様々な修正を有する様々な様々な実施形態のための実施形態を理解することができるようにするために選択及び説明された。本明細書に記載のナノスケール製造システム及び装置の実装は、幅広い用途にわたるオブジェクトの製造を容易にする。したがって、ナノスケール製造システム及び装置並びに
図1~
図17に示されて記載される関連の実施形態は、ナノ構造の固有の調整された特性を作成して、組成勾配、傾斜合金及び段階的ナノ構造のうちの1以上を形成することを提供する。
【0100】
[0122] 例示の目的で特定の実施形態が本明細書に記載されたが、実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正が行われてもよいことが理解されよう。特に、例示的な実施形態のナノスケール製造システム及び装置は、ナノスケール基準フレーム上に固有の2次元及び3次元(3D)オブジェクトを生産するように構成されたものとして示されている。代替として、ナノスケール製造システム及び装置は、肉眼で簡単に識別可能なデバイス及びツールを含む巨視的スケールを通じた、ナノスケールエネルギー変換デバイス用の電極、事実上すべての産業用のマイクロデバイス及びマイクロツールなどのナノスケールからサイズスペクトルに沿った製品を生産するように構成されてもよい。したがって、実施形態の保護の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等物によってのみ制限される。
【国際調査報告】