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特表2022-533402リチウム塩の混合物を含有する電解質組成物
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  • 特表-リチウム塩の混合物を含有する電解質組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】リチウム塩の混合物を含有する電解質組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20220714BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20220714BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20220714BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220714BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220714BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M4/40
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568895
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 FR2020050829
(87)【国際公開番号】W WO2020234538
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1905387
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, グレゴリー
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM06
5H029AM07
5H029CJ03
5H029DJ04
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029HJ01
5H029HJ10
5H029HJ12
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA13
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA27
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA10
(57)【要約】
本発明は:リチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、硝酸リチウム、並びにSEIパッシベーション層の形成を可能にする少なくとも1つの添加剤(A)、及び少なくとも1つの非水溶媒を含む電解質組成物に関する。本発明は、Li-イオンバッテリーにおけるその使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- リチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート、
- リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、
- 硝酸リチウム、並びに
- SEIパッシベーション層の形成を可能にする少なくとも1つの添加剤(A)、及び
- 少なくとも1つの非水溶媒
を含む電解質組成物。
【請求項2】
添加剤(A)が、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、ケイ皮酸メチル、ホスホネート、ビニル含有シラン化合物、2-シアノフラン、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、LiPO、及びこれらの混合物からなる群に属する、請求項2に記載の組成物。
【請求項3】
添加剤(A)が、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、LiPO、及びこれらの混合物からなる群から選択され、添加剤(A)は好ましくはフルオロエチレンカーボネートである、請求項1及び2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
添加剤(複数可)(A)の重量での総含有量が、組成物の総重量に対して、重量で0.01%から10%、好ましくは0.1%から4%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
電解質組成物中におけるリチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレートのモル濃度が、3mol/l以下、好ましくは2mol/l以下、優先的には1mol/l以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
電解質組成物中におけるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのモル濃度が、5mol/l以下、好ましくは4mol/l以下、優先的には3mol/l以下、有利には2mol/l以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
電解質組成物中における硝酸リチウムのモル濃度が、3mol/l以下、好ましくは2mol/l以下、優先的には1mol/l以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
硝酸リチウム、リチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドのモル濃度が:
[LiFSI]+[LiTDI]+[LiNO]≦5mol/l
を満たし、有利には4mol/l以下、好ましくは3mol/l以下、優先的には1.5mol/lである、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
非水溶媒が、エーテル、カーボネート、ケトン、部分的に水素化された炭化水素、ニトリル、アミド、スルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
負電極、正電極、及び特に負電極と正電極の間に配置される、請求項1から9のいずれか一項に記載の電解質組成物を含む電気化学セル。
【請求項11】
負電極が、電気化学的に活性の物質としてリチウムを含む、請求項10に記載の電気化学セル。
【請求項12】
請求項10及び11のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
【請求項13】
前記電極の表面上でのリチウム樹状突起の成長を低減又は排除するための、リチウム、特にリチウム金属を含む少なくとも1つの負電極を含む電気化学セルにおける、請求項1から9のいずれか一項に記載の電解質組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つのリチウム塩を含む電解組成物と、リチウムバッテリーにおけるその使用とに関する。
【0002】
本発明は、樹状突起の形成を低減するための、そのような電解組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリーの分野における主な課題の1つは、特に電気自動車の自律性を向上させるという目的で、エネルギー密度を高めることである。考えられる解決策の1つは、アノード材料の変更である。現在、アノード材料は通常、350mAh/mgの容量を有するグラファイトである。3860mAh/gの容量を有するリチウム金属アノードへ切り替えることにより、Li-イオンバッテリーのエネルギー密度を著しく高めることが可能になると思われる。リチウム金属アノードを含む複数のLi-イオンバッテリー:「従来式の」リチウム-イオンバッテリー又はLi-硫黄バッテリーが存在している。
【0004】
しかしながら、リチウム金属アノードを含むLi-イオンバッテリーは、樹状突起の形成に主に関連するバッテリー寿命の問題により、この段階では販売されていない。樹状突起とは、バッテリーが充電されるときに形成されるリチウムのフィラメントである。このフィラメントは、その後セパレーターを通過し、Li-イオンバッテリーの不可逆的な劣化を招く短絡を発生させるまで成長することがある。
【0005】
このような樹状突起と戦うために、固体電解質又はポリマーゲル電解質といった新規技術が開発された。しかしながら、これら2つの技術は、特にそれらのイオン伝導性が低いために、液体電解質に得られるLi-イオンバッテリーの性能レベルを達成することを可能にしない。
【0006】
したがって、上記欠点の1つを少なくとも部分的に改善する新規電解質に対する需要が存在している。
【0007】
さらに詳細には、電極の表面上での樹状突起の形成を低減するか、又は場合によっては排除することを可能にする新規電解質組成物に対する需要が存在している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本出願は:
- リチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、
- リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、
- 硝酸リチウム(LiNO)、並びに
- SEIパッシベーション層の形成を可能にする少なくとも1つの添加剤(A)、及び
- 少なくとも1つの非水溶媒
を含む電解質組成物に関する。
【0009】
本発明の文脈では、別段の記載がない限り、用語「電解質組成物」,「電解組成物」、及び「電解質」は、互換可能に使用される。
【0010】
本発明の文脈で、用語「ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩」、「リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド」,「LiFSI」,「LiN(FSO」又は「リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド」は、同等に使用される。
【0011】
本発明の文脈で、用語「SEI」は、「固体電解質界面」を意味するものと理解され、これはバッテリーの分野でよく知られているパッシベーション層である。一般的には、SEIは、主にアノードに形成され、電解質の低減を防止可能にするパッシベーション層である。それは、Li-イオンバッテリーの正しい動作のためにリチウムカチオンを透過する。
【0012】
リチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレートは、LiTDIという名で知られており、次のような構造を有する。
【0013】
組成物
好ましくは、電解質組成物は、バッテリー、特にLi-イオンバッテリーのための電解質組成物である。
【0014】
SEIパッシベーション層の形成を可能にする添加剤(A)は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、ケイ皮酸メチル、ホスホネート、ビニル含有シラン化合物、2-シアノフラン、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、LiPO、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0015】
添加剤(A)は、好ましくは、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、LiPO、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
さらに好ましくは、添加剤(A)はフルオロエチレンカーボネート(FEC)である。
【0017】
電解質組成物中における添加剤(複数可)(A)の重量での総含有量は、組成物の総重量に対して重量で0.01%から10%、好ましくは0.1%から4%の範囲とすることができる。優先的には、電解質組成物中における添加剤(複数可)(A)の含有量は、組成物の総重量に対して、重量で3%以下である。
【0018】
電解質組成物は、他の電解質塩を含むことができる。これは、例えばLiTFSI、LiPF又はLiBFとすることができる。
【0019】
好ましくは、LiFSI塩、LiTDI及びLiNOは、電解質組成物中に存在するすべての塩の、重量で2%と100%の間、好ましくは重量で25%と100%の間、優先的には重量で50%と100%の間を占める。
【0020】
好ましくは、電解質組成物は、LiFSI、LiTDI及びLiNO以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を含まない。特に、組成物はLiPF又はLiTFSIを含まない。
【0021】
電解質組成物中におけるリチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)のモル濃度は、3mol/l以下、好ましくは2mol/l以下、優先的には1mol/l以下とすることができる。
【0022】
電解質組成物中におけるリチウム 2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)のモル濃度は、0.01mol/lと3mol/lの間、好ましくは0.01mol/lと2mol/lの間、優先的には0.02mol/lと1mol/lの間とすることができる。
【0023】
電解質組成物中におけるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のモル濃度は、5mol/l以下、好ましくは4mol/l以下、優先的には3mol/l以下、有利には2mol/l以下とすることができる。
【0024】
電解質組成物中におけるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のモル濃度は、0.01mol/lと5mol/lの間、好ましくは0.1mol/lと5mol/lの間、優先的には0.5mol/lと4mol/lの間、例えば0.5mol/lと2mol/lの間とすることができる。
【0025】
電解質組成物中における硝酸リチウム(LiNO)のモル濃度は、3mol/l以下、好ましくは2mol/l以下、優先的には1mol/l以下とすることができる。
【0026】
電解質組成物中における硝酸リチウム(LiNO)のモル濃度は、0.01mol/lと3mol/lの間、好ましくは0.01mol/lと2mol/lの間、優先的には0.05mol/lと1mol/lの間とすることができる。
【0027】
一実施態様によれば、電解質組成物中におけるLiFSI、LiTDI及びLiNOのモル濃度は:
[LiFSI]+[LiTDI]+[LiNO]≦5mol/l
を満たし、有利には4mol/l以下、好ましくは3mol/l以下、優先的には1.5mol/lである。
【0028】
一実施態様によれば、上述の電解質組成物では:
- LiFSIのモル濃度が0.05mol/l以上であり、
- LiTDIのモル濃度が1.5mol/l以上であり、
- LiNOのモル濃度が1.5mol/l以下である。
【0029】
電解質組成物は、非水溶媒又は例えば2つ、3つ、又は4つの異なる溶媒といった、異なる非水溶媒の混合物を含みうる。
【0030】
電解質組成物の非水溶媒は、任意選択でポリマーによりゲル化された、液体溶媒、又は任意選択で液体により可塑化された極性ポリマー溶媒とすることができる。
【0031】
一実施態様によれば、非水溶媒は非プロトン性有機溶媒である。好ましくは、溶媒は極性非プロトン性有機溶媒である。
【0032】
一実施態様によれば、非水溶媒は、エーテル、カーボネート、ケトン、部分的に水素化された炭化水素、ニトリル、アミド、スルホキシド、スルホラン、ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
エーテルの中でも、例えば、ジメトキシエタン(DME)、2から5のオキシエチレン単位のオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、1,3-ジオキソラン(CAS No.646-06-0)、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びこれらの混合物といった、線状又は環状エーテルを挙げることができる。
【0034】
特に、ケトンの中で、シクロヘキサノンを挙げることができる。
【0035】
ニトリルの中では、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチルニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0036】
例として、カーボネートの中で、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)又はこれらの混合物といった、環状カルボネートを挙げることができる。
【0037】
好ましくは、非水溶媒は、カーボネート、エーテル 及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
特に、以下の混合物を挙げることができる:
- ジメトキシエタン(DME)、
- 重量で1/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 重量で2/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 重量で3/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 容量で1/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 容量で2/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 容量で3/1のジメトキシエタン/1,3-ジオキソラン、
- 重量で1/1/1のエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/ジメチルカーボネート、
- 重量で1/1/1のエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/ジエチルカーボネート、
- 重量で1/1/1のエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート、
- 重量で1/1のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート、
- 重量で1/1のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート、
- 重量で1/1のエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート、
- 容量で3/7のエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート、
- 容量で3/7のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート、
- 容量で3/7のエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート。
【0039】
好ましくは、上述の電解質組成物はジメトキシエタンを含む。
【0040】
電解質組成物中における非水溶媒(複数可)の重量での総含有量は、組成物の総重量に対して、重量で40%以上、好ましくは重量で50%以上、有利には重量で60%以上でありうる。
【0041】
好ましい一実施態様によれば、電解質組成物では、添加剤(A)は非水溶媒とは異なる。
【0042】
電解質組成物は、溶媒(複数可)及び/又は添加剤(複数可)の適切な割合の塩を、好ましくは撹拌しながら、溶解することにより調製することができる。
【0043】
電気化学セル
本出願は、負電極、正電極、及び特に負電極と正電極の間に配置された、上記に定義された電解質組成物を含む電気化学セルにも関する。電気化学セルは、上記に定義された電解質組成物を含浸させたセパレーターも含むことができる。
【0044】
本発明は、上記に記載された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーにも関する。バッテリーが本発明による複数の電気化学セルを含むとき、前記セルは、直列及び/又は並列に組み立てることができる。
【0045】
本発明の文脈で、負電極は、バッテリーが電流を生成するとき(即ち、バッテリーが放電中であるとき)アノードとして働き、バッテリーが充電中であるときカソードとして働く電極を意味することを意図している。
【0046】
負電極は、一般的に、電気化学的に活性の物質、任意選択で電子導体材料、及び任意選択でバインダーを含む。
【0047】
本発明の文脈で、用語「電気化学的に活性の物質」は、可逆的にイオンを挿入することのできる物質を意味することを意図している。
【0048】
本発明の文脈で、「電子導体材料」は、電子を伝導することのできる物質を意味することを意図している。
【0049】
好ましい一実施態様によれば、電気化学セルの負電極は、電気化学的に活性の物質としてリチウムを含む。
【0050】
さらに詳細には、電気化学セルの負電極は、リチウム金属又はリチウムベースの合金を含み、これは膜又はロッドの形態であってよい。リチウムベースの合金の中で、例えば、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-シリカ合金、リチウム-スズ合金、Li-Zn、Li-Sn、LiBi、LiCd及びLiSBを挙げることができる。
【0051】
負電極の一例は、リチウムのストリップをローラ間で圧延することにより調製された活性リチウム膜でありうる。
【0052】
本発明の文脈で、正電極は、バッテリーが電流を生成するとき(即ち、バッテリーが放電中であるとき)カソードとして働き、バッテリーが充電中であるときアソードとして働く電極を意味することを意図している。
【0053】
正電極は、一般的に、電気化学的に活性の物質、任意選択で電子導体材料、及び任意選択でバインダーを含む。
【0054】
電気化学セルの正電極は、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウム/マンガン複合酸化物(例えばLiMn又はLiMnO)、リチウム/ニッケル組成酸化物(例えばLiNiO)、リチウム/コバルト組成酸化物(例えばLiCoO)、リチウム/ニッケル/コバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoO2)、リチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えばLiNiMnCo、ここでx+y+z=1)、リチウム富化リチウム/ニッケル/コバルト/マンガン複合酸化物(例えばLi1+x(NiMnCo)1-x)、リチウム/遷移金属複合酸化物、スピネル型構造のリチウム/マンガン/ニッケル複合酸化物(例えばLiMn2-yNi)、かんらん石構造のリチウム/リン酸化物(例えばLiFePO、LiFe1-yMnPO又はLiCoPO)、硫酸鉄、酸化バナジウム、及びこれらの混合物から選択される電気化学的に活性の物質を含むことができる。
【0055】
好ましくは、正電極は、LiCoO、LiFePO(LFP)、LiMnCoNi(NMC、ここでx+y+z=1)、LiFePOF、LiFeSOF、LiNiCoAlO及びこれらの混合物から選択される電気化学的に活性の物質を含む。
【0056】
正電極の材料は、電気化学的に活性の物質の他に、炭素源などの電子導体材料も含むことができ、これには例えば、カーボンブラック、Ketjen(登録商標)カーボン、Shawiniganカーボン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維(例えば蒸気成長炭素繊維(VGCF))、有機前駆体の炭素化により得られる非粉末カーボン、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせが含まれる。他の添加剤、例えばセラミック若しくはガラスタイプの無機粒子又はリチウム塩、又はさらには他の適合性の活性物質(例えば硫黄)が、正電極の材料中に存在してもよい。
【0057】
正電極の材料は、バインダーを含むこともできる。バインダーの非限定的な例には、直鎖状、分枝状及び/又は架橋したポリエーテルポリマーのバインダー(例えばポリ(エチレンオキシド)(PEO)、若しくはポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、又はそれら2つの混合物(即ちEO/PO共重合体)に基づくポリマー、任意選択で架橋可能な単位を含む)、水溶性バインダー(例えばSBR(スチレン/ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル/ブタジエンゴム)、HNBR(水素化NBR)、CHR(エピクロロヒドリンゴム)、ACM(アクリレートゴム))、又はフルオロポリマータイプのバインダー(例えばPVDF(ポリビニリデンフルオリド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))、及びこれらの組み合わせが含まれる。また、いくつかのバインダー、例えば水中で可溶型のものは、CMC(カルボキシメチルセルロース)などの添加剤を含むことができる。
【0058】
使用
本出願は、バッテリー、特にLi-イオンバッテリーにおける、上記に定義された電解質組成物の使用にも関し、前記バッテリーは、好ましくは、リチウムに基づく負電極、特にリチウム金属に基づく負電極を含む。
【0059】
これらバッテリーは、移動式デバイス、例えば携帯電話、カメラ、タブレット若しくはラップトップ、電気自動車、又は再生可能エネルギーの貯蔵において使用することができる。
【0060】
本発明は、前記電極の表面上でのリチウム樹状突起の成長を低減又は排除するための、リチウム、特にリチウム金属を含む少なくとも1つの負電極を含む電気化学セルにおける上記に記載の電解質組成物の使用にも関する。
【0061】
本発明による電解質組成物は、有利には、電気化学的に活性なアノード材料としてリチウムを含む電気化学セルにおける、リチウム樹状突起の形成を低減すること、又は場合によっては排除することを可能にする。これは、有利には、内部短絡のリスクを低下させ、したがってバッテリーの寿命を改善することを可能にする。
【0062】
本発明の文脈で、用語「xとyの間の」又は「xとyの間」は、限界値x及びyを含む間隔を意味することを意図している。例えば、「85%と100%の間の」又は「85%から100%の」範囲は、特に値85%及び100%を含む。
【0063】
上記に記載されるすべての実施態様は、互いと組み合わせることができる。
【0064】
以下の実施例は本発明を説明するが、それを限定しない。
【実施例
【0065】
略称
EC:エチレンカーボネート
EMC:エチルメチルカーボネート(CAS623-53-0)
FEC:フルオロエチレンカーボネート
DO:ジオキソラン
DME:ジメトキシエタン
【0066】
これら上記試薬のすべてはBASF Corporationにより販売されている。
【0067】
使用されるLiFSIは、特に国際公開第2015/158979号に記載される方法により得られ、LiTDIは、国際公開第2013/072591号に記載の方法から得られている。
【0068】
実施例1:電解質の生成
以下の電解質を調製した:
- 組成物1(本発明による):1MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.10MのLiNO、3/7(容積比)のEC/EMC溶媒混合物、2重量%のFEC(EC/EMC溶媒混合物の総重量に対して);
- 組成物2(本発明による):1MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO、1/3(重量比)のDOL/DME溶媒混合物、2重量%のFEC(DOL/DME溶媒混合物の総重量に対して);
- 組成物3(本発明による):DME中、1MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物4(本発明による):DME中、1.5MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物5(本発明による):DME中、2MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物6(本発明による):DME中、4MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物7(比較例):DME中1MのLiFSI;
- 組成物8(比較例):DME中、1MのLiFSI、0.05MのLiTDI、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物9(比較例):DME中、1MのLiFSI、0.1MのLiNO、2重量%のFEC(DMEの総重量に基づいて);
- 組成物10(比較例):DME中、1MのLiFSI、0.05MのLiTDI及び0.1MのLiNO
【0069】
組成物は、以下の手順に従って調製した:
溶媒はガラス製反応器内で混合する。均一な溶液を得た後、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を加えた。次いでリチウム塩を、以前に得られた溶液中で溶解した。
【0070】
実施例2:樹状突起試験
樹状突起試験を、実施例1で調製した組成物3、7、8、9及び10を用いて実行した。
【0071】
方法:この方法は、対称なLi金属/Li金属バッテリーを充電すること及び放電することから構成される;次いでバッテリーの電位を測定する。この電位は、電極の表面積に比例しており、したがって樹状突起の出現は電位の上昇を招く。
【0072】
使用した系:
カソード:リチウム金属
アノード:リチウム金属
【0073】
バッテリーは、0.25mAの正電流を0.25mAhのエネルギー密度に使用して充電する。次いでバッテリーを、0.25mAの負電流を0.25mAhのエネルギー密度に使用して放電する。
【0074】
結果:
図1は、組成物3、7、8、9及び10について、電位(e/V)を時間(日)の関数として示している。
【0075】
図1は、比較例の組成物7、8、9及び10について、電位が時間と共に上昇することを示しており、リチウム樹状突起の形成を反映している。逆にこれは、本発明による組成物3には当てはまらず、このことは、リチウム樹状突起の形成の非存在を有利に反映している。
【0076】
本発明による電解質3は、有利には、リチウム金属アノードを含むバッテリーに、安全性を損なうことなく使用することができ、バッテリー寿命を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】実施例2における組成物に対する樹状突起試験の結果を示している。
図1
【国際調査報告】