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特表2022-533433[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの薬学的に許容される塩、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの薬学的に許容される塩、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 317/22 20060101AFI20220714BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220714BHJP
   C07C 55/02 20060101ALI20220714BHJP
   C07C 55/10 20060101ALI20220714BHJP
   C07C 57/145 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
C07C317/22
A61K31/138
A61P25/00 101
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/20
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P43/00 111
A61P25/16
C07C55/02 CSP
C07C55/10
C07C57/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569359
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020064046
(87)【国際公開番号】W WO2020239568
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】19176514.8
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20166361.4
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513263020
【氏名又は名称】インテグレイティブ・リサーチ・ラボラトリーズ・スウェーデン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】イネセ・レイネ
(72)【発明者】
【氏名】クラス・ソーネソン
(72)【発明者】
【氏名】ロース・ニコラス・ウォーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・ミッケル・テドロフ
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206JA19
4C206KA01
4C206KA15
4C206KA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA02
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA16
4C206ZA18
4C206ZA70
4C206ZC42
4H006AA01
4H006AB20
4H006BS10
4H006BS70
4H006TA02
(57)【要約】
【化1】
式IIIの塩、その生産方法およびその使用が開示される。(式III)、式中、XはHまたはOHであり、YはH、またはLi、NaおよびKからなる群から選択されるカチオンであり、
【化2】
は単結合または二重結合であり、nは0.5または1である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIIの塩:
【化1】
であって、該塩が、式Iの化合物と式IIの酸:
【化2】
の1:nの比での組合せであり、
式中、
XはHまたはOHであり、
YはH、またはLi、NaおよびKからなる群から選択されるカチオンであり、
【化3】
は単結合または二重結合であり、
nは0.5または1である、
前記塩。
【請求項2】
XはOHであり、
YはHであり、
【化4】
は単結合であり、
それにより式Iの化合物と酒石酸との組合せである、式IVの塩:
【化5】
が提供される、請求項1に記載の式IIIの塩。
【請求項3】
酒石酸は、L-(+)-酒石酸および/またはD-(-)-酒石酸である、請求項1または2に記載の式IIIの塩。
【請求項4】
XはHであり、
YはHであり、
【化6】
は二重結合であり、
それにより式Vの化合物とフマル酸塩との組合せである、式Vの塩:
【化7】
が提供される、請求項1に記載の式IIIの塩。
【請求項5】
nは0.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項6】
nは1である、請求項1~4のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項7】
式Iの化合物の水素原子のうちの1個またはそれ以上が、重水素で置き換えられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項8】
結晶性であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項9】
図1に示すXRPディフラクトグラムを特徴とする、請求項1~3、5もしくは7のいずれか1項、または
図2に示すXRPディフラクトグラムを特徴とする、請求項1、4、5もしくは7のいずれか1項
に記載の式IIIの塩。
【請求項10】
13.0 2θのピークおよび12.4、14.4、21.1、24.4 2θから選択される1つまたはそれ以上のピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とする、請求項1~3、5または7のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項11】
15.3 2θのピークおよび7.6、13.0、21.8、23.0 2θから選択される1つまたはそれ以上のピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とする、請求項1、4、5または7のいずれか1項に記載の式IIIの塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIIの塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤と混合して含む、医薬組成物。
【請求項13】
2.0mg~最大10.0mgの量で式Iの化合物を含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
式Iの化合物の量は、2.5mg、5.0mgまたは7.5mgである、請求項12または13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬組成物は、単一剤形で提供される、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
医薬としての使用のための請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIIの塩または請求項12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害からなる群から選択される疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の塩または請求項12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
疾患、障害および/または状態は、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である、請求項17に記載の使用のための塩または医薬組成物。
【請求項19】
疾患、障害および/または状態は、L-DOPA誘発性ジスキネジアである、請求項17または18に記載の使用のための塩または医薬組成物。
【請求項20】
塩または医薬組成物は、2.5mg、5.0mgまたは7.5mgのような2.0mg~最大10.0mgの投与量で患者に投与される、請求項17~19のいずれか1項に記載の使用のための塩または医薬組成物。
【請求項21】
疾患、障害および/もしくは状態、または
前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状は、
10mg以上の投与量での患者への塩または医薬組成物の投与と比較してより大きく軽減および/または低減される、請求項20に記載の使用のための塩または医薬組成物。
【請求項22】
10mg以上の投与量の投与および2.0~最大10.0mgの投与量の投与は、同じ回数、例えば1日あたり同じ回数行われる、請求項21に記載の使用のための塩または医薬組成物。
【請求項23】
精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害からなる群から選択される疾患、障害および/または状態の処置および/または予防のための医薬の生産のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の塩または請求項12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
疾患、障害および/または状態は、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
疾患、障害および/または状態は、L-DOPA誘発性ジスキネジアである、請求項23または24に記載の使用。
【請求項26】
塩または医薬組成物は、2.5mg、5.0mgまたは7.5mgのような2.0mg~最大10.0mgの投与量で患者に投与される、請求項23~25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
疾患、障害および/もしくは状態、または
前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状は、
10mg以上の投与量での患者への塩または医薬組成物の投与と比較してより大きく軽減および/または低減される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
10mg以上の投与量の投与および2.0mg~最大10.0mgの投与量の投与は、同じ回数、例えば1日あたり同じ回数行われる、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防方法であって、
有効量の、請求項1~11のいずれか1項に記載の塩または請求項12~15のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
疾患、障害および/または状態は、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
疾患、障害および/または状態は、L-DOPA誘発性ジスキネジアである、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
塩または医薬組成物は、2.5mg、5.0mgまたは7.5mgのような2.0mg~最大10.0mgの投与量で患者に投与される、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
疾患、障害および/もしくは状態、または
前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状は、
10mg以上の投与量での患者への塩または医薬組成物の投与と比較してより大きく軽減および/または低減される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
10mg以上の投与量の投与および2.0~最大10.0mgの投与量の投与は、同じ回数、例えば1日あたり同じ回数行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIIの塩を製造する方法であって:
- 式Iの化合物と式IIの酸を1:0.5または1:1の比で得る工程と、
- 前記式Iの化合物を前記式IIの酸と溶媒中で組み合わせて、溶液を形成する工程と、
- 沈殿物が形成されるまで、前記溶液を静置する工程と、
- 前記沈殿物を濾過により単離し、それにより式IIIの塩を得る工程と
を含む、前記方法。
【請求項36】
前記溶媒は、溶媒の混合物である、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化合物[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの薬学的に許容される塩に関する。より具体的には、本開示は、各々[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの酒石酸塩および[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのフマル酸塩に関する。本開示はまた、前述の塩の製造方法および前述の塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、皮質および大脳基底核ドーパミン作動性およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体介在グルタミン酸神経伝達の調節因子として、ならびにより具体的には中枢神経系におけるドーパミン作動性およびグルタミン酸作動性機能の調節に応答する疾患の処置に有用なフェノキシ-エチル-アミン誘導体を開示する。化合物[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンは、その非塩形態および実施例1の塩酸塩の形態で開示されている。前記塩酸塩は、191℃の融点を有することが記載されている。
【0003】
化合物[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンは、パーキンソン病におけるジスキネジア、即ち、L-dopaによる長年の処置後にしばしば起こる不随意運動の処置のため、およびパーキンソン病における精神症の処置のために現在臨床開発中である。
【0004】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのさらなる調査および開発から、特に工業的規模で、十分な製薬特性、ならびに十分な取り扱いおよび薬物特性を示す[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの一形態が必要とされていることが明らかとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2012/143337
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、十分な製薬特性、ならびに十分な取り扱いおよび薬物特性を示す[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの一形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、式IIIの塩:
【化1】
であって、
前記塩が、式Iの化合物と式IIの酸:
【化2】
との1:nの比での組合せであり、
式中、
XはHまたはOHであり、
YはH、またはLi、NaおよびKからなる群から選択されるカチオンであり、
【化3】
は単結合または二重結合であり、
nは0.5または1である、
前記塩を提供する。
【0008】
本開示はまた、本明細書に記載される式IIIの塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤と混合して含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本開示はまた、治療法における医薬としての使用のための本明細書に記載される式IIIの塩を提供する。
【0010】
本開示はまた、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための本明細書に記載される式IIIの塩を提供する。
【0011】
本開示はまた、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための医薬の生産のための本明細書に記載される式IIIの塩の使用を提供する。
【0012】
本開示はまた、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防方法であって、有効量の本明細書に記載される式IIIの塩を、それを必要とするヒトまたは動物のような哺乳動物に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0013】
本開示はまた、本明細書に記載される式IIIの塩を製造する方法であって:
- 本明細書に記載される式Iの化合物と本明細書に記載される式IIの酸を1:0.5または1:1の比で得る工程と、
- 前記式Iの化合物を前記式IIの酸と溶媒中で組み合わせて、溶液を形成する工程と、
- 沈殿物が形成されるまで、前記溶液を静置する工程と、
- 前記沈殿物を濾過により単離し、それにより式IIIの塩を得る工程と
を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】式IVaの塩のXRPディフラクトグラムを示すグラフである。
図2】式Vaの塩のXRPディフラクトグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、式IIIの塩:
【化4】
であって、
前記塩が、式Iの化合物と式IIの酸:
【化5】
式中、
XはHまたはOHであり、
YはH、またはLi、NaおよびKからなる群から選択されるカチオンであり、
【化6】
は単結合または二重結合であり、
nは0.5または1である
前記塩を提供する。
【0016】
本明細書に記載される式IIの酸は、
【化7】
で表すことができることが理解されるであろう。
【0017】
例えば、YがH、即ち水素である場合、式IIの酸は、
【化8】
で表すことができる。
【0018】
さらなる例において、YがNa、即ちナトリウムである場合、式IIの酸は、
【化9】
で表すことができる。
【0019】
X、Y、
【化10】
およびnのさらなる値が次に続くであろう。このような値は、本明細書に記載される定義、実施例および/または特許請求の範囲のいずれかで使用できることが理解されるであろう。
【0020】
例えば、
XがOHであり、
YがHであり、
【化11】
が単結合である場合、
式IIの酸は、L-(+)-酒石酸および/またはD-(-)-酒石酸のような酒石酸である。酒石酸は、本明細書に記載される式Iの化合物と組み合わせることができる。
【0021】
したがって、式IIIの塩については、
XがOHであり、
YがHであり、
【化12】
が単結合である場合、
式Iの化合物と酒石酸との組合せである、式IVの塩:
【化13】
が提供される。
【0022】
本明細書に記載される酒石酸は、L-(+)-酒石酸および/またはD-(-)-酒石酸であってよい。例えば、酒石酸は、L-(+)-酒石酸であってよい。さらなる例において、酒石酸は、D-(-)-酒石酸であってよい。さらにさらなる例において、酒石酸は、L-(+)-酒石酸とD-(-)-酒石酸とのラセミ混合物のような混合物であってよい。
【0023】
式Iの化合物と酒石酸の比は、1:n、即ち、nが0.5または1のような数である、式Iの化合物の酒石酸に対する比であってよい。
【0024】
例えば、式Iの化合物の酒石酸に対する比が1:0.5である場合、式IVaの塩が提供される。さらなる例において、式Iの化合物の酒石酸に対する比が1:1である場合、式IVbの塩が提供される。
【化14】
【0025】
さらなる例において、
XがHであり、
YがHであり、
【化15】
が二重結合である場合、
式IIの酸はフマル酸である。フマル酸は、本明細書に記載される式Iの化合物と組み合わせることができる。
【0026】
したがって、式IIIの塩については、
XがHであり、
YがHであり、
【化16】
が二重結合である場合、
式Iの化合物とフマル酸との組合せである式Vの塩:
【化17】
が提供される。
【0027】
式Iの化合物とフマル酸の比は1:nであってよく、nは0.5または1のような数である。例えば、nは0.5であってよい。さらなる例において、nは1であってよい。
【0028】
例えば、式Iの化合物のフマル酸に対する比が1:0.5である場合、式Vaの塩が提供される。さらなる例において、式Iの化合物のフマル酸に対する比が1:1である場合、式Vbの塩が提供される。
【0029】
【化18】
【0030】
また、式IVの塩または式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩が提供され、ここで式Iの化合物の水素原子のうちの1個またはそれ以上は、重水素で置き換えられている。さらに、またはあるいは、式IIIの塩は、本明細書に記載される重水素以外の同位体で標識できる。
【0031】
本明細書に記載される式IIIの塩は、薬学的に許容され、意外にも、高い結晶化度(即ち、実質的に結晶性であり)、吸湿性ではなく、高い融点および/または十分な水溶解性を示す特性を示すことが見出された。さらに、式IIIの塩は、高い純度と良好な化学収率で単離できる。
【0032】
結晶性であることを特徴とする、本明細書に記載される式IIIの塩が提供される。結晶化度は、XRPDまたは当技術分野で公知の任意の他の適当な方法により決定できる。式IIIの塩の高い結晶化度は、例えば融点およびXRPDに関して、該塩を十分に定義する。これは、錠剤を作る際の利点であり、貯蔵安定性を向上させると考えられる。本明細書において、高い結晶化度は、XRPDまたは当技術分野で公知の任意の他の適当な測定方法により測定された場合に約85%、約90%、約95%、約99%または約100%のような約80%以上の結晶化度を意図する。
【0033】
本明細書に記載される式IIIの塩は、図1または図2に示されるXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。式IVaの塩のような式IIIの塩は、13.0 2θのような約13.02 2θのピーク、および場合により約12.4のような約12.43、約14.4のような約14.40、約21.1のような約21.10、約24.4のような約24.36 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。式IVaの塩はまた、約12.43、約13.02、約14.40、約21.10、約24.36 2θのピーク、および場合により約18.07、約19.92 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。例えば、XRPディフラクトグラムは、約12.4、約13.0、約14.4、約21.1および約24.4 2θのピークを含み得る。式IVaの塩はまた、約12.43、約13.02、約14.40、約18.07、約19.92、約21.10、約24.36 2θのピーク、および場合により約19.62、約21.44 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。さらに、式Vaの塩のような式IIIの塩は、約15.27 2θのピーク、および場合により約7.6のような約7.62、約13.0のような約12.98、約21.8のような約21.84、約23.0のような約22.98 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。式Vaの塩はまた、約7.62、約12.98、約15.27、約21.84、約22.98 2θのピーク、および場合により約18.55、約24.08 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。例えば、XRPディフラクトグラムは、約7.6、約13.0、約15.3、約21.8および約23.0 2θのピークを含み得る。式Vaの塩はまた、約7.62、約12.98、約15.27、約18.55、約21.84、約22.98、約24.08 2θ、および場合により約22.65、約30.79 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPディフラクトグラムを特徴とし得る。
【0034】
式IVの塩および式Vの塩のような式IIIの塩は、高い融点および十分な水溶解性を有することが見出された。式IIIの塩の高い融点は、例えば錠剤を作る際の利点である。式IIIの塩の十分な水溶解性は、該塩を経口投与のようなヒトへの任意の投与に適したものにする。式IVaの塩は、約187.6℃の融点を有することが見出された。さらに、式IVaの塩の水溶解性は、約185mg/mLであることが見出された。式Vaの塩は、約184.9℃の融点を有することが見出された。さらに、式Vaの塩の水溶解性は、約92mg/mLであることが見出された。融点および/または水溶解性は、本明細書の実施例の項に記載されるように決定できる。
【0035】
さらに、式IVの塩は、任意の試験相対湿度で吸湿性でないことが見出され、該塩は周囲湿度により変化することなく貯蔵できるため有利である。式IVの塩は、本明細書に記載される任意の相対湿度のような任意の湿度で、その重量を±0.3重量%以下変化させる、即ち該塩は、吸湿性でないまたは実質的に吸湿性でないことが見出された。一例において、式IVの塩は、任意の試験相対湿度のような任意の湿度でその重量を変化させない。
【0036】
また:
式IVの塩または式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤と混合して含む、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤などの単一剤形で提供できる。単一剤形における式IIIの塩の式Iの化合物の量は様々であってよい。例えば、前記塩の式Iの化合物の量は、約2.5mg~約7.5mgのような約2.0mg~最大約10.0mgであってよい。さらに、前記塩の式Iの化合物の量は、約5.0mg、約7.5mgまたは約2.5mgであってよい。
【0037】
驚くべきことに、ヒトのような患者への前述の量の投与は、10mg以上の量のような多量の式IIIの塩の式Iの化合物の投与と比較して、本明細書に記載される疾患、障害または状態、特にL-DOPA誘発性ジスキネジアに関連する症状をより大きく低減することが見出された。したがって、少量の投与は、多量の投与よりも有利である。
【0038】
さらに、医薬としての使用のための式IVの塩または式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩が提供される。
【0039】
さらに、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物が提供される。
【0040】
さらに、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物が提供される。さらに、L-DOPA誘発性ジスキネジアである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物が提供される。
【0041】
また、本明細書に記載される使用のための式IIIの塩または本明細書に記載される使用のための医薬組成物であって、塩または医薬組成物が、約2.5mg、約5.0mgまたは約7.5mgのような約2.0mg~最大約10.0mgの投与量でヒトのような患者に投与される、前記塩または医薬組成物が提供される。その結果、疾患、障害および/もしくは状態、または前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状が、10mg以上の投与量での患者への塩または医薬組成物の投与と比較してより大きく軽減または低減される。約10mg以上の投与量での投与、および約2.0mg~最大約10.0mgの投与量を提供するための投与は、同じ回数、例えば1日2回など1日あたり同じ回数行うことができる。
【0042】
本明細書で使用する表現「...~最大...」は、「...~最大...であるがそれを含まない」を意図する。例えば、表現「2.0mg~最大10.0mg」は、「2.0mg~最大10.0mgであるがそれを含まない」を意図する。後者の場合、量9.99mgは含まれるが、量10.0mgは含まれない。
【0043】
また、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための医薬の生産のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物の使用が提供される。
【0044】
さらに、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための医薬の生産のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物の使用が提供される。さらに、L-DOPA誘発性ジスキネジアである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防における使用のための医薬の生産のための、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物の使用が提供される。
【0045】
また、本明細書に記載される式IIIの塩または本明細書に記載される医薬組成物の使用であって、塩または医薬組成物が、約2.5mg、約5.0mgまたは約7.5mgのような約2.0mg~最大約10.0mgの投与量でヒトのような患者に投与される、前記使用が提供される。その結果、疾患、障害および/もしくは状態、または前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状が、10mg以上の投与量での患者への塩または医薬組成物の投与と比較してより大きく軽減または低減される。約10mg以上の投与量を提供するための投与、および約2.0mg~最大約10.0mgの投与量を提供するための投与は、同じ回数、例えば1日2回など1日あたり同じ回数行うことができる。
【0046】
また、精神症、統合失調症、統合失調症様障害、双極性障害、精神性障害、薬物誘発性精神性障害、気分障害、不安障害、鬱病、強迫性疾患、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、脳損傷、睡眠障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張亢進を特徴とする状態における疼痛、パーキンソン病、パーキンソン症候群、ジスキネジア、L-DOPA誘発性ジスキネジア、遅発性ジスキネジア、ジストニア、チックおよび振戦認知症、ハンチントン病、薬物誘発性運動障害、レストレスレッグス、ナルコレプシー、アルツハイマー病およびアルツハイマー病に関連する障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防方法であって、有効量の、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物、ヒトまたは動物のような患者に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0047】
また、統合失調症、L-DOPA誘発性ジスキネジアおよび/またはハンチントン病である疾患、障害および/または状態の処置および/または予防方法であって、有効量の、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物、ヒトまたは動物のような患者に投与することを含む、前記方法も提供される。さらに、L-DOPA誘発性ジスキネジアである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防方法であって、有効量の、式IVの塩もしくは式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩、または本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要とする哺乳動物、ヒトまたは動物のような患者に投与することを含む、前記方法が提供される。
【0048】
本明細書に記載される処置および/または予防方法において、有効量の式IIIの塩または医薬組成物は、約2.5mg、約5.0mgまたは約7.5mgのような約2.0mg~最大約10.0mgの投与量の投与を伴い得る。その結果、疾患、障害および/もしくは状態、または前記疾患、障害および/もしくは状態に関連する症状が、10mg以上の投与量で式Iの化合物を提供するための患者への塩または医薬組成物の投与と比較して、より大きく軽減または低減される。約10mg以上の量の投与量を提供するための投与、および約2.0mg~最大約10.0mgの投与量を提供するための投与は、同じ回数、例えば1日2回など1日あたり同じ回数行うことができる。
【0049】
本明細書に記載される式IIIの塩または医薬組成物の約2.0mg~最大約10.0mgの投与量のような本明細書に記載される投与量は、式Iの化合物、即ち非塩形態の式Iの化合物に基づく投与量の計算を意図することが理解されるであろう。例えば、投与量が7.5mgである場合、これは7.5mgの量の式Iの化合物が提供されることを意味する。
【0050】
式IIIの塩は、本明細書に記載される式Iの化合物を本明細書に記載される式IIの酸と組み合わせることにより製造できる。式Iの化合物は、本明細書に記載されるように、WO2012/143337に記載されるようにおよび/または当技術分野で公知の方法を用いて製造できる。
【0051】
したがって、本開示はまた、式IVの塩または式Vの塩のような本明細書に記載される式IIIの塩を製造する方法であって、
- 本明細書に記載される式Iの化合物と本明細書に記載される式IIの酸を1:0.5または1:1の比のような1:nの比で得る工程と、
- 前記式Iの化合物を前記式IIの酸と溶媒中で組み合わせて、溶液を形成する工程と、
- 沈殿物が形成されるまで、前記溶液を静置する工程と、
- 前記沈殿物を濾過により単離し、それにより式IIIの塩を得る工程と
を含む、前記方法を提供する。
【0052】
本明細書に記載される式IIIの塩を製造する方法において、式Iの化合物の式IIの酸に対する比は1:0.5または1:1であってよい。さらに、溶媒は、単一の溶媒または溶媒の混合物であってよい。溶媒または溶媒の混合物は、エタノールのような有機溶媒を含み得るかまたはこれからなり得る。さらに、沈殿物を形成する工程は、室温で行うことができる。本明細書において、室温は、約20℃~約22℃のような約20℃~約25℃の範囲内の温度を意図する。式IIの酸は酒石酸またはフマル酸であってよい。
【0053】

本明細書において、式Iの化合物と式IIの酸の組合せを含む式IIIの塩の化学構造は、酸の酸性プロトンが前記酸に結合している複合体として図示されている。しかし、当業者は、式IIの酸の酸性プロトンが、式Iの化合物の窒素原子に結合でき、且つ/または式Iの化合物の窒素原子と式IIの酸との間で共有でき、これはまた、本明細書に記載される複合体/塩に包含されることが意図されることを理解する。例えば、式Iの化合物と式IIの酸との1:1との組合せである式IIIの塩はまた:
【化19】
で表すことができる。
【0054】
本明細書に記載される式IIIの塩が、当技術分野で公知の標準的な手順を用いて、式IIIの別の塩に変換できることが理解されるであろう。
【0055】
同位体
本開示の式IIIの塩の式Iの化合物は、前記化合物を構成する原子のうちの1個またはそれ以上に、原子同位体を含有できる。即ち、前記化合物は同位体で標識できる。例えば、式Iの化合物は、例えばトリチウム(H)、重水素(H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)のような1個またはそれ以上の同位体で標識できる。一例において、化合物は、1個またはそれ以上の重水素原子で標識されている。本開示の化合物の同位体変種はすべて、放射性であるかどうかにかかわらず、本開示の範囲内に包含されることが意図される。
【0056】
したがって、本開示は、重水素のような1個またはそれ以上の同位体で標識されている、式Iの化合物のような本明細書に記載される化合物を提供する。本明細書に記載される同位体で標識されている化合物は、本明細書に記載される酸と組み合わせることができ、それにより本明細書に記載される塩が提供される。
【0057】
本開示をさらに、以下の非限定的な実施例により例示する。
【実施例
【0058】
本明細書において、別段に示されない限り、化学化合物の図を、ソフトウェアパッケージChem Doodle、ver.9.0.3を用いて作成した。化合物の命名を、プログラムMarvinSketch16.10.17.0を用いて行った。図面および化学名が一致しない場合、化学構造が正確であると判断されるものとする。
【0059】
概要
試薬および溶媒を精製せずに購入したままで使用した。
【0060】
HPLC分析を、Dionex UVD 170U検出器およびThermo Finnigan MSを備えたDionex HPLC Moduleで行った。カラム:Waters XBridge(商標)C18、4.6×50mm、移動相A:0.1%ギ酸(水性)、移動相B:アセトニトリル、流速:1mL/分、注入量:3~20μL、検出:220~320nm、勾配:5分で0%~100%B、緩衝液AまたはCを使用した。
【0061】
NMR分析を、400MHzで動作するVarian Mercury400装置で行った。残留溶媒のピークを、内部標準として使用した。
【0062】
化合物のアッセイおよび純度測定を、グラジエント液体クロマトグラフィーにより、260nmでのUV検出で行った。これは、溶液の一定量を蒸発させ、残留物をクロマトグラフィーにより分析し、公知の量の前記中間体のクロマトグラムのものと比較したことを意味する。カラム:Hypersil Gold C18、4.6×150mm、3μm(Thermo)、カラム温度:40℃、カラムオーブン:Dionex TCC-3000 SD、ポンプ:Dionex LPG-3400 SD、流速:1mL/分、注入器:Dionex WPS-3000 SL、注入量:10μL、検出器:Dionex DAD-3000、波長:260nm、データ収集システム:Chromeleon。
【0063】
XRPDデータをBruker D8 Advance(2005)装置で収集した。放射性銅Ka、λ=1.54180Å、Kbフィルター0.020mm Niホイル、陽極電圧:40kV、陽極電流40mA、検出器:LynxEye(1D-位置敏感型)、スリット0.6mmおよび8mm、ステップサイズ0.02°、走査速度0.2秒/ステップ、2θスケールで間隔(2θ)(3~35)°。
【0064】
通常の水溶解性試験
別段に示されない限り、本明細書に記載される塩の水溶解性試験を以下のように行った。0.05gの各塩をフラスコに秤量し、フラスコ+塩の質量(m-vs)を記録した。肉眼で観察して完全に溶解するまで、水を、塩を含むフラスコに徐々に滴下添加した。フラスコ+塩+溶媒の質量(m-svs)を記録した。「gの溶質/kgの溶媒」、即ち「gの塩/kgの溶媒」で表される溶解性を、次式:
【数1】
に従って計算した。
【0065】
式I中:
(s)は、kgで測定された塩の重量を表し、
(m-svs)は、kgで測定されたフラスコ+塩+溶媒の質量を表し、
(m-sv)は、kgで測定されたフラスコ+塩の質量を表す。
【0066】
(s)の値は0.05/1000kgであった。
【0067】
溶解性が水中で測定され、且つ水が1g/mLの密度を有するため、溶解性の単位はg/Lまたはmg/mLであってよい。
【0068】
フラスコ法水溶解性試験
場合によっては、さらなる水溶解性試験(フラスコ法水溶解性試験)を以下のように行った。過剰の塩を水に添加した。混合物を少なくとも24時間平衡化(振とう)し、それにより飽和塩溶液を得た。次いで、飽和溶液を、清澄濾過し、予め秤量したきれいなフラスコ(mv)に移した。フラスコ+飽和溶液の質量(mvs)を記録した。溶媒を、一定の質量まで減圧下で蒸発させた。乾燥残留物を含有するフラスコを秤量した(mvdr)。「gの溶質/kgの溶媒」、即ち「gの塩/kgの溶媒」で表される溶解性を、次式:
【数2】
に従って計算した。
【0069】
式2中:
(mvdr-mv)は、(i)溶媒の蒸発後の乾燥残留物を含有するフラスコの質量と(ii)フラスコの質量との間のkgでの重量差であり、
(mvs-mvdr)は、(i)飽和塩溶液を含むフラスコの質量と(ii)乾燥残留物を含有するフラスコの質量との間のkgでの重量差である。溶解性が水中で測定され、且つ水が1g/mLの密度を有するため、溶解性の単位はg/Lまたはmg/mLであってよい。
【0070】
吸湿性試験
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩の吸湿性試験を、塩の正確な重量試料を様々な湿度で30℃で維持することにより行った。1週間後、試料を再び秤量し、元の重量に基づき重量差のパーセンテージを計算した。
【0071】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの塩酸塩の吸湿性試験を、TA装置Q550000SAで記録した。温度は25℃で、2連続サイクルにおいてRH0%~95%で10%のステップ間隔を用いた。
【0072】
略記
g グラム
mg ミリグラム
HCl 塩酸塩
EtOH エタノール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
M モーラー、即ち、モル/リットル
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
min. 分
mg ミリグラム
mL ミリリットル
mol モル
mmol(e) ミリモル
MS 質量分析
nM ナノモーラー
NMR 核磁気共鳴
i-PrOAc 酢酸イソプロピル
THF テトラヒドロフラン
XRP X線粉末
XRPD X線粉末回折
UV 紫外線
Å オングストローム
DVS 動的水蒸気吸着
RH 相対湿度
b.i.d. 1日2回(2回)
TA 熱分析
【実施例1】
【0073】
2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)-N-プロピルアセトアミドの合成:
【化20】
i-PrOAc(290mL)中の3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノール溶液(WO2006/137790参照;20.6g、152mmol)に、2-クロロ-N-プロピルアセトアミド(29.0g、152mmol)、次いで炭酸カリウム(42.0g、304mmol)を添加した。反応混合物を還流温度に加熱し、この温度で20時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次いで水(320mL)を添加した。形成されたスラリーを2時間撹拌し、沈殿物を濾過により単離した。濾過ケーキを水(2×115mL)、次いでエタノール(3×90mL)で洗浄した。生成物を、そこから空気を抜くことにより4時間乾燥した。>99面積%の純度(HPLC)を有する固体として40.0g(91%)の2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)-N-プロピルアセトアミドを得た。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ 0.83(t,3H),1.45(m,2H),3.09(m,2H),3.26(s,3H),4.63(s,2H),7.23(m,1H),7.38(m,2H),8.20(m,1H)。
【実施例2】
【0074】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの合成:
【化21】
2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)-N-プロピルアセトアミド(39.0g、135mmol)とTHF(390mL)との混合物を35℃に加熱し、THF中のBH THF複合体の1M溶液(277mL、277mmol)を1時間かけて添加した。混合物を35℃で4時間、次いで室温で一晩撹拌し、次いで7℃に冷却した。水(195mL)、次いで37%HCl(6.3mL、200mmol)を徐々に添加し、混合物を56℃に3.5時間加熱した。追加量の水(40mL)、次いで37%HCl(2.5mL)を添加し、56℃で28時間撹拌を続けた。混合物を室温に冷却させた後、これを水(195mL)で希釈し、次いでMTBE(2×200mL)で洗浄した。pHを、NaOH(50%)の水溶液を添加することにより11.1に調整し、次いで混合物をMTBE(2×215mL)で抽出した。有機溶液を水(2×120mL)で洗浄し、次いで残量が60mLになるまで減圧濃縮した。EtOH(120mL)を添加し、残量が約60mLになるまで、蒸留を続けた。EtOHとの共蒸発を2回繰り返し、最終的に残量が約60mLになるまで蒸発を続けた。所望の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンを、>99面積%の純度(HPLC)を有するEtOH溶液(1.5M)として得、収率(66%)をアリコート蒸発法を用いて決定した。H NMR(400MHz,CDCl):δ 0.95(t,3H),1.56(m,2H),2.67(t,2H),3.04(m,2H),3.06(s,3H),4.14(t,2H),6.90(m,1H),7.2-7.3(m,2H)。
【実施例3】
【0075】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンヘミ-L-酒石酸塩の合成:
【化22】
実施例2からの[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのEtOH溶液(推定量:24.5g、88.9mmol)を、濃度が0.40MになるまでEtOHで希釈した。水(20mL)中のL-酒石酸(6.81g、45.4mmol)の溶液を添加した。形成されたスラリーを、還流温度に加熱し、追加量のEtOH(50mL)および水(5mL)を添加した。固体がすべて溶解するまで加熱を続けた。混合物を室温に冷却させた後、形成されたスラリーを室温で一晩、次いで5~10℃で5時間撹拌した。沈殿物を濾過により単離し、濾過ケーキをEtOH(3×35mL)で洗浄した。生成物を、そこから空気を抜くことで20分間乾燥した。99.9%のLC純度を有する固体として29.9g(96%)の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンヘミ-L-酒石酸塩を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d):δ 0.89(t,3H),1.55(m,2H),2.74(t,2H),3.13(t,2H),3.28(s,3H),3.89(s,1H),4.27(t,2H),7.25(m,1H),7.3-7.4(m,2H)。
【0076】
X線粉末回折分析を、概説に記載した装置、備品および条件を用いて標準的な方法に従って上記で製造した[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのヘミ-L-酒石酸塩の結晶試料で行った。分析により、図1に示すディフラクトグラムが得られた。位置および相対強度の特徴的な主ピークを、図1のディフラクトグラムから抽出し、以下の表1に示した。
【0077】
ピークの相対強度が、試験での試料の配向により、ならびに使用した装置のタイプおよび設定で変化し得るので、本明細書に含まれるXRDトレースの強度が例であり、絶対的な比較のために用いられることを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0078】
表1:式Iの化合物とL-(+)-酒石酸との1:0.5の比での組合せである式IVaの塩のXRPディフラクトグラム中の主ピークの位置および強度
【0079】
【表1】
【0080】
実施例4~7:[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの様々な酸付加塩の合成のための一般的な手順
適当な酸を、エタノール中の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのEtOH溶液に添加し、混合物を完全に溶解するまで加熱還流し、次いで室温に冷却した。沈殿が生じた場合、得られた固体を濾取した。得られた塩の塩基/酸の比を、少なくとも10秒の緩和時間でH NMR分光法により決定した。融点をDSC(示差走査熱量測定)により決定し、固体状態特性化をXRPDにより決定し、これを使用して、沈殿した塩が結晶性であるかどうかを決定した。
【実施例4】
【0081】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのフマル酸塩
表題の塩を、上記の一般的な手順に従って製造した。塩は、XRPDにより決定されたように結晶性であった。
収率:78%。
塩基/酸の比:2:1。
融点:184.9℃。
水に対する溶解性:92mg/mL。
【0082】
XRPD分析により、図2のディフラクトグラムが得られた。位置および相対強度の特徴的な主ピークを、図2のディフラクトグラムから抽出し、以下の表2に示した。
【0083】
表2:式Iの化合物とフマル酸との1:0.5の比での組合せである式Vaの塩のXRPディフラクトグラム中の主ピークの位置および強度
【0084】
【表2】
【実施例5】
【0085】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのマレイン酸塩
表題の塩を、上記の一般的な手順に従って製造した。塩は、XRPDにより決定されたように結晶性であった。
収率:88%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:141.5℃。
水に対する溶解性:35mg/mL。
【実施例6】
【0086】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのコハク酸塩
沈殿が生じるまで溶液を-18℃に冷却したことを除いては、表題の塩を、上記の一般的な手順に従って製造した。塩は、XRPDにより決定されたように結晶性であった。
収率:75%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:109.2℃。
水に対する溶解性:285mg/mL。
【実施例7】
【0087】
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩
表題の塩を、上記の一般的な手順に従って製造した。塩は、XRPDにより決定されたように結晶性であった。
収率:73%。
塩基/酸の比:2:1。
融点:187.6℃。
水に対する溶解性(通常の水溶解性試験):185mg/mL。
水に対する溶解性(フラスコ法水溶解性試験):252.6mg/mL。
【0088】
比較実施例(水溶解性)
[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの塩酸塩の水溶解性の決定のための比較試験において、前記塩酸塩(即ち、WO2012/143337の実施例1)は、各々197mg/mL(通常の水溶解性試験)および270mg/mL(フラスコ法水溶解性試験)の水溶解性を有していたと結論付けられた。
【0089】
実施例7による[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩の吸湿性の決定
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示すように、実施例7による[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩は、いずれの湿度でも、任意の相当量の水を吸着または脱着しない。したがって、塩は、73%、75%、83%または97%のような非常に高い相対湿度に30℃で7日間曝露された場合でも、非常に低い吸湿性、即ち、±0.3%以下の重量変化を有する。
【0092】
比較実施例(吸湿性)
DVS技術を利用して、[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの塩酸塩の吸湿性を決定する別の試験において、前記塩酸塩(即ち、WO2012/143337の実施例1)は、95%の相対湿度および25℃で約3重量%増加したと結論付けられた。サイクルは繰り返し可能であった。
【0093】
所見
上記の実施例から分かるように、マレイン酸塩は、低い溶解性および比較的低い融点を有するのに対して、コハク酸塩は非常に良好な溶解性を有するが、融点が低い。他方で、フマル酸塩および特にL-酒石酸塩は、高い融点および水に対する高い溶解性を有する。また、WO2012/143337の実施例1による塩酸塩は、高い融点および高い水溶解性を有するが、高い相対湿度で吸湿性である。本開示によるL-酒石酸塩は、いかなる相対湿度でも吸湿性でない。製薬特性、即ち、取り扱いおよび/または貯蔵特性のような、医薬品としての使用に適したものにする特性を有することに関して言えば、これらの有益な物性は、総合すると、[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのフマル酸塩および特にL-酒石酸塩を非常に良好な薬物候補にする。
【0094】
実施例7の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩を用いたL-dopa誘発性ジスキネジア(LID)を有するパーキンソン病患者におけるヒト臨床試験
ホームダイアリーは、処置に関連する運動合併症を低減することを目的とした治療法の臨床開発の評価項目として広く受け入れられている[2]。運動変動は、日常生活の活動および健康関連の生活の質の低下に関連する。Integrative Research Laboratories Sweden ABにより行われた臨床試験において、患者は深夜から開始して30分間隔で24時間の運動機能を記録した。患者は、30分間隔ごとに、過去30分間の状態を評価した;厄介なジスキネジアを伴わないオフ、オン、または厄介なジスキネジアを伴うオン。患者はまた、睡眠時間も示した。厄介なジスキネジアを伴うオフ時間およびオン時間は、一般に、運動機能に関して「不良な時間」と患者によって判断されるのに対して、ジスキネジアを伴わないオン時間および厄介なジスキネジアを伴わないオン時間は、一般に、「良好なオン時間」と判断されることが実証された[3,4]。
【0095】
一般に、1時間の「オフ時間」の減少または「良好なオン時間」の増加は、臨床的に有意と判断でき、これを臨床試験の検出力計算の仮定として使用した[2]。したがって、1日あたりのオン状態(厄介なジスキネジアを伴うおよび伴わないオン)に費やされる合計時間が、処置による悪影響を受けないことを考慮すると、1日あたり最低1時間の「良好なオン時間」の増加への移行は、臨床的に意味のある効果を表すと仮定できる。
【0096】
臨床試験に含むために、患者は、24時間の患者のホームダイアリーを完成させる能力を実証する必要がある。有効なダイアリーは、所与の24時間にわたって2時間超の無効なデータの記入(4回の無効な記入)がないと定義される。無効なダイアリーの記入は、30分間隔ごとに記録された1回超の記入、判読不可能な記入、または30分間隔ごとの記入の不在として定義される。診察ごとに3つの有効なダイアリー(利用可能な場合)からの平均ダイアリー情報を使用して、ダイアリーに基づく効能の評価項目を計算することとする。一診察に対して2つしか有効なダイアリーがない場合、2つの有効なダイアリーからの平均情報を使用することとする。1つのダイアリーのみが有効である場合、単一の有効なダイアリーからの情報を使用することとする。患者の一診察に対して有効なダイアリーが入手できなかった場合、ダイアリー情報が不足していると判断された。
【0097】
方法
処置中および処置後、患者は、30分間隔で24時間の運動状態を示すホームダイアリーを完成させることが求められた。患者は、過去30分の運動状態を4つのカテゴリーのうちの1つで示すことが求められた:睡眠、オフ、オン、または厄介なジスキネジアを伴うオン。各カテゴリーの説明は、以下のようにダイアリーに含まれていた:
オン:良好または実質的に正常な可動性
厄介なジスキネジアを伴うオン:不随意のねじれ、回転運動に悩まされる。これらの運動は、パーキンソン病自体の症状である律動的な「振戦」とは異なる。
オフ:硬直、可動性の著しい低下または不動
睡眠:睡眠に費やされた時間
【0098】
結果および結論
ヒト試験において、L-DOPA(レボドパ)で処置したパーキンソン病を患う患者の厄介なジスキネジア(LID)の減少により、午前中の薬物投与の2時間後に測定された50~200nMの血漿中薬物濃度で良好な可動性の1日あたりの時間(良好なオン時間)が増加したことが見出された。この血漿中濃度の範囲は、2.5mg b.i.d.~10mg b.i.d.の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩を患者に投与することにより得られた。用量(2.5mg~10mg)は、[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの非塩形態で計算した。
【0099】
表4.実施例7の[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンのL-酒石酸塩またはプラセボを用いた、L-dopa誘発性ジスキネジア(LID)を有するパーキンソン病患者の良好なオン時間(即ち、良好または実質的に正常な可動性を意味する「オン」として患者が示した時間)の改善
【0100】
【表4】
【0101】
2.5mg、5.0mgまたは7.5mgのような2.0mg~最大10mgの量でのパーキンソン病を患う患者への[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの投与では、厄介なジスキネジア(LID)の減少により、良好な可動性の1日あたりの時間(良好なオン時間)が増加したと結論付けられた。さらに、2.5mg、5.0mgまたは7.5mgのような2.0mg~最大10mgの量での[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの投与は、10mg以上の量での[2-(3-フルオロ-5-メタンスルホニルフェノキシ)エチル](プロピル)アミンの投与より良好なオン時間をさらに大きく増加させたと結論付けられた。
【0102】
参考文献
1.WO 2012/143337
2. Papapetropoulos SS. Patient diaries as a clinical endpoint in Parkinson's disease clinical trials. CNS Neurosci Ther. 2012;18:380-7
3.Hauser RA, Friedlander J, Zesiewicz TA, et al. A home diary to assess functional status in patients with Parkinson’s disease with motor fluctuations and dyskinesia. Clin Neuropharmacol 2000;23:75-81
4. Hauser RA, Deckers F, Lehert P. Parkinson’s disease home diary: Further validation and implications for clinical trials. Movement Disorders 2004, 19 (12), 1409-1413.
図1
図2
【国際調査報告】