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特表2022-533451アルツハイマー病のための遺伝子治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】アルツハイマー病のための遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220714BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220714BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220714BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220714BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220714BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220714BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220714BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20220714BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20220714BHJP
   A61K 38/48 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
A61P25/28
A61K48/00
A61K35/76
A61K47/69
A61K9/51
A61K47/46
A61K47/44
C07K14/47
C07K14/705
A61K38/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569550
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020034040
(87)【国際公開番号】W WO2020242892
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,716
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ケレハー 三世,レイモンド ジェー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC01
4C076CC41
4C076EE54
4C076EE54A
4C076EE57
4C076EE57A
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC02
4C084MA38
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA161
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA38
4C087NA14
4C087ZA15
4C087ZA16
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本開示では、プレセニリン1をコードするヒトコドン最適化配列、ならびに、それらに限定されないが、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ピック病、レヴィ小体認知症、記憶喪失、および軽度認知機能障害(MCI)を含む認知機能障害を含む、神経変性疾患を治療するための遺伝子治療で前記配列を使用するための方法を、特に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトプレセニリン1(PSEN1)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドを含む組成物。
【請求項2】
ヒトPSEN1をコードする前記ヒトコドン最適化ポリヌクレオチドが、配列番号9と少なくとも95%同一であり、少なくとも1つのコドンが野生型に対して最適化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒトPSEN1をコードする前記ヒトコドン最適化ポリヌクレオチドが配列番号9を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エキソソームまたは脂質をベースとするナノ粒子(LNP)を伴う(例えば、これを使用して送達のために製剤化される)、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
プロモーターに作動可能に連結している請求項1から3のいずれか一項に記載のヒトコドン最適化ポリヌクレオチドを含む、細胞においてヒトPSEN1を発現させるためのベクターを含む組成物。
【請求項6】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記AAVベクターがAAV9またはAAVrh10である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記プロモーターが汎神経プロモーターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
前記汎神経プロモーターがシナプシンIプロモーターである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記プロモーターが神経細胞サブタイプ特異的プロモーターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
前記神経細胞サブタイプ特異的プロモーターがアルファ-カルシウム/カルモジュリンキナーゼ2Aプロモーターである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
神経変性疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を、治療を必要とするヒト対象に投与するステップを含み、前記対象が、PSEN1の少なくとも1つのアレルにおける1つまたは複数の変異、好ましくは、ドミナントネガティブPSEN1タンパク質アイソフォームをコードする変異を有する、方法。
【請求項15】
前記神経変性疾患、障害または状態が、アルツハイマー病である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルツハイマー病が、家族性アルツハイマー病である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、PSEN1遺伝子において、E280A、Y115H、L166P、C410Y、Δex9、G548、D257A、R278I、L435F、G384AもしくはL392V変異、またはPSEN1遺伝子において、N141I、G206A、H163R、A79V、S290C、A260P、A426P、A431E、R269H、L271V、C1410Y、E280G、P264L、E185D、L235VもしくはM146V変異を有する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルツハイマー病が、孤発性アルツハイマー病である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記アルツハイマー病が、遅発型または早期発症型アルツハイマー病である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記神経変性疾患、障害または状態が、前頭側頭型認知症、記憶喪失、認知機能低下または認知機能障害である、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記認知機能障害が、軽度認知機能障害(MCI)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、治療を必要とする前記対象のCNSに投与される、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
PSEN1および/もしくはPSEN2遺伝子またはmRNAをコードするポリヌクレオチドが、静脈内送達、くも膜下腔内送達、大槽内送達、脳室内送達、または特定の脳領域、任意選択で大槽、脳室、腰部髄腔内への定位的実質内注射、または海馬もしくは皮質野への直接注射によりCNSに投与される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年5月24日出願の米国特許仮出願第62/852,716号の利益を主張する。前述の全内容は、参照により本明細書に組み込む。
【0002】
連邦支援による研究または開発
本発明は、国立衛生研究所により与えられた認可番号NS041783の下、政府の援助により行った。政府は、本発明に対する特定の権利を有する。
【0003】
プレセニリン遺伝子治療構築物を使用して、アルツハイマー病(AD)および他の神経変性疾患を治療するための組成物および方法を本明細書において、特に記載する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(Alzheimer disease)としても知られるアルツハイマー病(Alzheimer's disease)は、神経変性認知症の大多数を占め、心疾患、がんおよび脳卒中に次ぐ、米国における第4の主要な死因である。これは、認知機能の進行性喪失、神経変性、神経原線維変化および患者の脳におけるアミロイド斑により特徴づけられる。進行速度は、患者によって異なるが、診断後の平均余命は、3~9年である。現在、アルツハイマー病のための治療は存在しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
アルツハイマー病(AD)および他の神経変性疾患、障害または状態を有する対象を治療するのに使用可能な方法および組成物を本明細書において記載する。本開示は、確立した家族性アルツハイマー病モデルである、異種または同種接合ドミナントネガティブPsen1変異を保有する細胞に、コドン最適化された野生型PSEN1 cDNAを供給すると、予想外に高い発現レベルがもたらされ、このような細胞において障害されたγセクレターゼ活性が回復したという発見に、少なくとも部分的に基づく。したがって、本開示では、PSEN1(PS1発現のため)および/またはPSEN2(PS2発現のため)をベースとする、アルツハイマー病および他の神経変性認知症に有効な遺伝子治療のための方法を提供し、この疾患領域における大きな突破口を示す。
【0006】
本明細書では、ヒトプレセニリン1タンパク質(PS1)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチド、例えば、配列番号9、または配列番号9と少なくとも80%、90%、95%、もしくは99%同一の配列を含むポリヌクレオチド(少なくとも1つのコドンが野生型に対して最適化されている)を含む組成物が提供される。典型的なヒトPS1タンパク質配列としては配列番号5および6が挙げられ、また、ヒトプレセニリン1(PSEN1)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドをそこに少なくとも含む配列を挙げることができる。一部の実施形態では、組成物は、エキソソームまたは脂質をベースとするナノ粒子(LNP)を伴う(例えば、これを使用して送達のために製剤化される)。
【0007】
本明細書では、プロモーターに作動可能に連結している本明細書において記載するヒトコドン最適化ポリヌクレオチドを含む、細胞においてヒトPSEN1を発現させるためのベクターを含む組成物も提供される。
【0008】
本明細書では、対象における神経変性疾患、障害、または状態を治療するための方法における、本明細書において記載する組成物のいずれかの使用も提供される。
【0009】
一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(AAV9またはAAVrh10など)、レンチウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである。
【0010】
一部の実施形態では、プロモーターは、汎神経プロモーター、例えばシナプシンIプロモーター、または神経細胞サブタイプ特異的プロモーター、例えばアルファ-カルシウム/カルモジュリンキナーゼ2Aプロモーターである。
【0011】
本明細書では、神経変性疾患、障害、または状態を治療するための方法であって、本明細書において記載する組成物を、治療を必要とするヒト対象に投与するステップを含み、対象が、PSEN1の少なくとも1つのアレルにおける1つまたは複数の変異、好ましくは、ドミナントネガティブPSEN1タンパク質アイソフォームをコードする変異を有する、方法も提供される。
【0012】
一部の実施形態では、神経変性疾患、障害または状態は、アルツハイマー病である。
【0013】
一部の実施形態では、アルツハイマー病は、家族性アルツハイマー病である。一部の実施形態では、アルツハイマー病は、遅発型アルツハイマー病である。一部の実施形態では、アルツハイマー病は、孤発性アルツハイマー病である。一部の実施形態では、アルツハイマー病は、早期発症型アルツハイマー病である。
【0014】
一部の実施形態では、対象は、E280、Y115、L166、C410、Δex9、G548、D257、R278、L435、G384、L392、N141、G206、H163、A79、S290、A260、A426、A431、R269、L271、C1410、E280、P264、E185、L235、M146での変異、例えば、PSEN1遺伝子におけるE280A、Y115H、L166P、C410Y、Δex9、G548、D257A、R278I、L435F、G384A、もしくはL392V変異、または、PSEN1遺伝子におけるN141I、G206A、H163R、A79V、S290C、A260P、A426P、A431E、R269H、L271V、C1410Y、E280G、P264L、E185D、L235V、もしくはM146V変異を有する。
【0015】
一部の実施形態では、神経変性疾患、障害または状態は、前頭側頭型認知症、記憶喪失、認知機能低下または認知機能障害である。一部の実施形態では、認知機能障害は、軽度認知機能障害(MCI)である。
【0016】
一部の実施形態では、組成物は、治療を必要とする対象のCNSに投与される。
【0017】
一部の実施形態では、PSEN1および/もしくはPSEN2遺伝子またはmRNAをコードするポリヌクレオチドは、静脈内送達、くも膜下腔内送達、大槽内送達、脳室内送達、または特定の脳領域、任意選択で脳室への定位的実質内注射、または海馬もしくは皮質野への直接注射によりCNSに投与される。
【0018】
他に定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書において記載し、当技術分野において既知の適する他の方法および材料も、使用することができる。材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、制限することを意図しない。本明細書において言及するすべての公表文献、特許出願、特許、配列、データベースの項目、および他の参照は、これらの全体を参照により組み込む。矛盾する場合は、定義を含む本明細書により規制する。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態および図、ならびに特許請求の範囲により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(図1A-B)変異体MEFへのWT hPS1の導入によって、障害されたγセクレターゼ活性が回復することを示す図である。Aでは、NICD生成により測定したγセクレターゼ活性が、変異MEF細胞において、PS用量依存的に低下する(WT>PS1異種接合KIまたはKO>同種接合PS1 KIまたはKO>DKO)。Bでは、障害されたγセクレターゼ活性が、WT hPS1により回復する。増加量のpCI-hPSEN1プラスミドDNAは、指示するように、異なる遺伝子型のMEFにトランスフェクトする。ウェスタン解析では、両PS1 NTFおよびNICDが、種々のPS変異MEFにおいて回復することを示した。異種接合L435F KI細胞は、KI/+またはPS1L435F/+として標識する。N=3による独立的実験。データは、平均値±SEMを表す。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001(一元配置ANOVAとともにチューキーの事後検定分析)。
図2-1】内因性ヒトPSEN1(hPSEN1)cDNAおよびコドン最適化hPSEN1 cDNA(Opti-hPSEN1)の配列比較を示す図である。
図2-2】内因性ヒトPSEN1(hPSEN1)cDNAおよびコドン最適化hPSEN1 cDNA(Opti-hPSEN1)の配列比較を示す図である。
図3】(図3A-B)コドン最適化PSEN1 cDNAでPS1 NTFの発現レベルが増大したことを示す図である。A、Psen-null MEFに、野生型内因性hPSEN1 cDNA(wt_PS1)またはコドン最適化hPSEN1 cDNA(opti_PS1)を発現する増大量のプラスミドをトランスフェクトし、PS1のN末端に特異的な抗体を使用してウェスタン分析を行った。untransは、陰性対照としてのトランスフェクトされていないMEFである。B、野生型内因性hPSEN1 cDNA(wt_PS1)またはコドン最適化hPSEN1 cDNA(opti_PS1)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるPS1 NTFレベルの定量。データは、平均±SEM(n=3回の独立した実験)として表されている。
図4】コドン最適化により、γセクレターゼ活性が増大したことを示す図である。PS DKO MEFに、増大量(12.5、25、50または100ng)のpCI-hPS1またはpCI-hPS1optiプラスミドDNAおよびCMV-NΔEをトランスフェクトし、その後、NICDのウェスタン分析を行った。トランスフェクトされていないまたは空のベクターをトランスフェクトされたMEFを、陰性対照として含めた。本発明者らは、pCI-hPS1optiにより、NICD生成によって測定されるγセクレターゼ活性レベルがpCI-hPS1と比較して有意に高くなったことを見出した。データは、平均±SEM(n=5回の独立した実験)として表されている。2元配置ANOVAを使用して統計学的有意性を評価した。**p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本開示をさらに容易に理解するために、特定の用語を最初に以下の通り定義する。以下の用語および他の用語のさらなる定義は、本明細書を通して記載する。
【0022】
投与:
本明細書において使用する場合、用語「投与」は、対象または系への組成物の送達または適用を指す。動物対象(例えば、ヒト)への投与は、任意の適切な経路によってであり得る。例えば、一部の実施形態では、投与は、気管支(気管支滴下によるものを含む)、頬側、経腸、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、粘膜、経鼻、経口、直腸内、皮下、舌下、局所、気管(気管内注入によるものを含む)、経皮、膣内および硝子体内投与であり得る。
【0023】
生物学的に活性:
本明細書において使用する場合、句「生物学的に活性」は、生物系(例えば、細胞培養物、生物等)における活性を有する任意の物質の特性を指す。例えば、生物に投与した場合、この生物に対する生物学的作用を有する物質は、生物学的に活性であると考えられる。また、生物学的活性は、in vitroでのアッセイ(例えば、in vitroでの酵素アッセイ)により判定することができる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性である場合、このタンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するタンパク質またはポリペプチドの部分は、典型的に、「生物学的に活性」な部分と呼ぶ。一部の実施形態では、タンパク質は、対象に投与した場合、生物学的活性を呈する細胞培養系から生成および/または精製する。
【0024】
対照:
本明細書において使用する場合、用語「対照」は、結果を比較する標準であるという、当技術分野において理解される意味を有する。典型的には、対照は、変数を分離して、このような変数についての結論を出すことによる実験における完全性の拡大に使用する。一部の実施形態では、対照は、試験反応またはアッセイと同時に実施して比較物を提供する、反応またはアッセイである。一実験では、「試験」(すなわち、試験する変数)を適用する。第2の実験では、試験する変数である「対照」は、適用しない。一部の実施形態では、対照は、歴史的対照(すなわち、それまでに実施した試験またはアッセイ、またはそれまでに既知の量もしくは結果)である。一部の実施形態では、対照は、印刷されたか、もしくは保存された記録であるか、またはこれを含む。対照は、陽性対照または陰性対照であり得る。一部の実施形態では、対照は、差を調べるための試験試料との比較のため、または特性決定の目的のために使用する試料である「参照対照」であり得る。
【0025】
遺伝子治療:
本明細書において使用する場合、用語「遺伝子治療」は、核酸の対象への直接的または間接的投与を含む任意の治療を指す。特定の例では、治療的価値を有するタンパク質は、投与した核酸から発現する。
【0026】
同一性:
本明細書において使用する場合、用語「同一性」は、高分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子および/またはRNA分子)間および/またはポリペプチド分子間に全体的関連性を指す。例えば、2つの核酸配列の同一性の割合の計算は、最適に比較する目的で2つの配列をアラインメントすることにより実施することができる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2の核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較目的で非同一配列を無視することができる)。特定の実施形態では、比較目的でアラインメントした配列の長さは、参照配列の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%の長さである。次いで、対応するヌクレオチド位置のヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同一のヌクレオチドにより占有される場合、分子は、この位置において同一である。2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮すると、2つの配列間の同一性の割合は、配列により共有される同一の位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較および同一性の割合の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成することができる。例えば、2つのヌクレオチド配列間の同一性の割合は、メイヤーズおよびミラーのアルゴリズム(CABIOS, 1989, 4: 11-17)を使用して決定することができ、これは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120残基重み付け表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用する。あるいは、2つのヌクレオチド配列間の同一性の割合は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して決定することができ、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用する。例えば、Clustalのような他の種々の配列アラインメントプログラムが利用可能であり、配列同一性の決定に使用することができる。
【0027】
向上、増加/上昇(increase)、または減少/低下(reduce):
本明細書において使用する場合、用語「向上」、「増加/上昇(increase)」もしくは「減少/低下(reduce)」、または文法的等価な用語は、ベースライン測定値、例えば、本明明細書に記載する治療の開始前の同一の個体における測定値、または本明細書に記載する治療の非存在下での対照個体(または複数の対照個体)における測定値と関連する値を示す。「対照個体」は、治療する個体と同一型であり、ほぼ同一の重症度の例えば、アルツハイマー病を患っている個体であり、治療する個体とほぼ同年齢である(治療する個体および対照個体(複数可)の病期が比較可能であることを確実とするため)。
【0028】
神経変性:
本明細書において使用する場合、用語「神経変性」は、1つまたは複数の神経細胞が、損傷し、機能が低下し、機能不全となり、および/または細胞死により失われるプロセスを意味する。神経変性は、急速と漸進の両型および中間型を包含する。したがって、神経変性疾患、状態、または症状は、疾患が神経細胞損傷および/または細胞死と典型的に関連しているという点において特徴づけられるものである。
【0029】
対象:
本明細書において使用する場合、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類などの哺乳動物)を指す。ヒトは、出生前および出生後の形態を含む。多くの実施形態では、対象は、ヒトである。対象は、患者であってもよく、疾患の診断または治療のために医療機関を受診するヒトを指す。用語「対象」は、「個体」または「患者」と互換的に本明細書において使用する。対象は、疾患もしくは障害を患っているか、またはこれに感受性であり得るが、疾患もしくは障害の症状を呈するかどうかはわからない。
【0030】
~に罹患している:
疾患、障害、および/または状態(例えば、アルツハイマー病)「に罹患している」個体は、疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状と診断されているか、またはこれらを呈する。
【0031】
~に感受性:
疾患、障害、および/もしくは状態「に感受性である」個体は、疾患、障害、および/もしくは状態の症状と診断されておらず、ならびに/またはこれらを示していない場合がある。一部の実施形態では、疾患、障害、および/または状態(例えば、アルツハイマー病)に感受性の個体は、(1)疾患、障害、および/または状態の発症と関連する遺伝子変異、(2)疾患、障害、および/または状態の発症と関連する遺伝子多型、(3)疾患、障害、および/または状態と関連するタンパク質の発現および/または活性の上昇および/または低下、(4)疾患、障害、および/または状態の発症と関連する習慣および/または生活様式、(5)疾患、障害、および/または状態の家族歴、(6)特定の細菌またはウイルスに対する反応、(7)特定の化学物質への曝露、のうちの1つまたは複数により特徴づけられ得る。一部の実施形態では、疾患、障害、および/または状態に感受性の個体は、疾患、障害、および/または状態を発症する。一部の実施形態では、疾患、障害、および/または状態に感受性の個体は、疾患、障害、および/または状態を発症しない。
【0032】
治療有効量:
本明細書において使用する場合、用語「治療有効量」は、任意の医学的処置に適用可能な合理的ベネフィット/リスク比で、治療した対象に治療作用を付与する、治療タンパク質の量を指す。治療作用は、客観的(すなわち、一部の試験またはマーカーにより測定可能)であるか、または主観的(すなわち、対象が作用の徴候を示すか、または作用を感じる)であり得る。特には、「治療有効量」は、例えば、疾患と関連する症状を回復させ、疾患の発症を予防もしくは遅延させ、および/または同様に、疾患の症状の重症度もしくは頻度を低減させることにより、所望の疾患もしくは状態を治療、回復、もしくは予防するのに、または検出可能な治療もしくは予防作用を示すのに有効な治療タンパク質または組成物の量を指す。治療有効量は、複数の単位用量を含み得る投薬レジメンにより、一般に投与する。特定の任意の治療タンパク質では、治療有効量(および/または有効な投薬レジメンにおける適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬品との組合せに応じて、変化し得る。また、特定の任意の患者のための特定の治療有効量(および/または単位用量)は、治療する障害および障害の重症度;利用する特定の医薬品の活性;利用する特定の組成物;患者の年齢、体重、総体的健康、性別および食事;投与時間、投与経路、および/または利用する特定の融合タンパク質の排せつ率もしくは代謝率;治療の持続時間;ならびに医学的技術分野において周知のような同様の因子を含む多様な因子に依存し得る。
【0033】
治療:
本明細書において使用する場合、用語「治療(treatment)」(また「治療する(treat)」または「治療(treating)」)は、その広い意味において、特定の疾患、障害、および/または状態の1つまたは複数の症状、特徴、および/または原因を部分的または完全に、軽減、回復、緩和、阻害、これらの発症を遅延、これらの重症度を低下、および/またはこれらの発症率を低下させる、物質(例えば、提供する組成物)の任意の投与を指す。一部の実施形態では、このような治療は、関連する疾患、障害および/もしくは状態の徴候を示さない対象、ならびに/または疾患、障害、および/もしくは状態の初期徴候のみを示す対象に投与し得る。あるいは、または加えて、一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害および/または状態の1つまたは複数の確立された徴候を示す対象に投与し得る。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態に罹患していると診断された対象への治療であり得る。一部の実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、および/または状態の発症リスクの上昇と統計学的に相関する、1つまたは複数の感受性因子を有することがわかっている対象への治療であり得る。
【0034】
一般的に言えば、「PS1」は、プレセニリン1タンパク質を指し、「PS2」は、プレセニリン2タンパク質を指すが、一部の例では、PS1またはPS2は、mRNAまたは遺伝子を指すために使用する。
【0035】
詳細な説明
本開示では、それを必要とする対象への機能性プレセニリン-1(PS1)タンパク質の送達に基づく、アルツハイマー病ならびに他の神経変性疾患、障害および状態を有する対象を治療するための組成物および方法を、特に提供する。特には、本開示では、プレセニリン-1(PS1)をコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチドを、AD、例えば早期発症型家族性アルツハイマー病(FAD)または晩期発症型孤発性ADに関連するPSEN1またはPSEN2変異、例えばドミナントネガティブ変異を有する、治療を必要とする対象に提供することによる遺伝子治療を検討する。
【0036】
本発明の種々の態様は、以下の節において詳細に記載する。この節の使用は、本発明を制限することを意味しない。各節は、本発明の任意の態様に適用することができる。この適用では、「または」の使用は、他に述べない限り「および/または」を意味する。
【0037】
治療の方法
非限定的な例としては、本発明の方法は、例えば、PSEN1またはPSEN2におけるドミナントネガティブ変異と関連する神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病に罹患しているか、またはこれに感受性の対象(例えば、PSEN1もしくはPSEN2変異を保有する家族性AD患者または孤発性AD患者)において、野生型ヒトプレセニリン1を発現させる遺伝子治療を含む。このような遺伝子治療の目的は、特に、家族性または孤発性AD患者の脳において、PS1の発現を促進して、PS1またはPS2の発現および/または活性における欠陥を補正または克服することである。FAD患者では、本明細書に記載する遺伝子治療方法により、脳において野生型PS1の発現の増加が生じ、PS1またはPS2の変異と関連するγセクレターゼ活性の機能障害が回復することが期待される。
【0038】
プレセニリン遺伝子、PSEN1およびPSEN2における変異は、高度に浸透性であり、家族性AD(FAD)における同定されたすべての変異の約90%を占め、ADの病態形成におけるこれらの重要性を強調している。PSEN1において260種を超える別個の変異が報告されており、これらは、顕性遺伝性であって、ほとんどはミスセンス変異である。PSEN1およびPSEN2遺伝子におけるドミナントネガティブ変異は、早期発症型家族性アルツハイマー病に関連していることが知られている。PS1およびプレセニリン2(PS2)タンパク質は、γセクレターゼ複合体の一部であり、PSEN1およびPSEN2遺伝子における変異は、アルツハイマー病患者におけるアミロイドベータ(Aβ)タンパク質の蓄積の一因となっていることが、一般に考えられている。病原性PSEN1変異は、シスで作用して変異PS1機能を障害し、トランスで作用して、野生型プレセニリン1(PS1)機能を阻害する(Heilig et al. J Neurosci 33:11606-717 (2013)、Zhou et al. Proc Natl Acad Sci USA 114:12731-12736 (2017))。典型的には、これらの性質そのものによって、ドミナントネガティブ変異は、野生型タンパク質の発現により回復させることができない(Herskowitz, I. Nature, 329:219-222 (1987))。しかし、驚くべきことに、本明細書に示すように、異種または同種接合PS1変異を保有する不死化MEFに、コドン最適化hPSEN1 cDNAをトランスフェクトすると、野生型ヒト配列よりも、このような細胞において障害されたγセクレターゼ活性がはるかに回復し得(以下の実施例を参照)、コドン最適化された外因性配列からの野生型PS1の発現により、変異プレセニリンタンパク質のドミナントネガティブ作用を克服することができることを示す。いずれの特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、PS1の発現は、野生型PS1の総レベルを上昇させることによってこの目的を達成し得、AD患者におけるγセクレターゼの発現および/または活性の機能障害を回復させる。
【0039】
本明細書に記載の方法および組成物は、同様に使用して、他の神経変性疾患、障害または状態を治療することができる。
【0040】
アルツハイマー病
本明細書に記載の方法は、それらに限定されないが、家族性および孤発性アルツハイマー、早期発症型または遅発型アルツハイマー病を含む、すべての型のアルツハイマー病を有する、発症している対象を治療するか、またはこのリスクを低下させるのに使用し得る。一部の実施形態では、本発明の方法は、プレセニリン1(PS1)および/またはプレセニリン2(PS2)における変異と関連する、早期発症型家族性アルツハイマー病(AD)の発症を治療するか、またはこのリスクを低下させるのに使用し得る(Sherrington, et al., Nature 375:754-760 (1995);Rogaev, et al., Nature 376:775-778 (1995);Levy-Lahad, et al., Science 269:970-973 (1995);Hiltunen, et al., Eur. J. Hum. Genet. 8:259-266 (2000);Jonghe, et al., Hum. Mol. Genet. 8:1529-1540 (1999);Tysoe, et al., Am. J. Hum. Genet. 62:70-76 (1998);Crook, et al., Nat. Med. 4:452-455 (1998)、これらすべては、参照により本明細書に組み込む)。
【0041】
一部の実施形態では、本発明の方法は、PSEN1またはPSEN2アレルにおける変異、例えば、野生型PSタンパク質に対するドミナントネガティブ作用を有する変異を有する対象を治療するのに使用し得る。例となる変異としては、C410Y、Δex9、G548、D257A、L166P、R278I、L435F、G384A、Y115H、およびL392V、ならびにN141I、G206A、H163R、A79V、S290C、A260P、A426P、A431E、R269H、L271V、C1410Y、E280G、P264L、E185D、L235V、およびM146V変異が挙げられる(例えば、Heilig et al., J. Neurosci., 33(28):11606-11617 (2013);Watanabe et al., J. Neurosci. 32(15):5085-5096 (2012);Brouwers et al., 2008 Ann Med 40 (8): 562-83);Watanabe and Shen, PNAS November 28, 2017 114 (48) 12635-12637;Zhou et al., PNAS November 28, 2017 114 (48) 12731-12736;Hsu et al., Alzheimers Res Ther. 2018 Jul 18;10(1):67を参照)。野生型PSタンパク質に対するドミナントネガティブ作用を有し得る、さらに例となる変異としては、PSEN1においては:N32N;R35Q;D40del(delGAC);D40del(delACG);E69D;A79V;V82L;I83_M84del(DelIM、ΔI83/M84、ΔI83/ΔM84);I83T;M84V;L85P;P88L;V89L(G>T);V89L(G>C);C92S;V94M;V96F;V97L;T99A;F105C;F105I;F105L;F105V;R108Q;L113_I114insT(Intron4、InsTAC、p.113+1delG、splice5);L113P;L113Q;Y115C;Y115D;Y115H;T116I;T116N;T116R;P117A;P117L;P117R;P117S;E120D(A>C);E120D(A>T);E120G;E120K;E123K;Q127_R128del(CAGA);InsG(G)(c.379_382delXXXXinsG);H131R;S132A;L134R;N135D;N135S;N135Y;A136G;M139I(G>C);M139I(G>A);M139K;M139L;M139T;M139V;V142F;I143F;I143M;I143N;I143T;I143V;M146I(G>C);M146I(G>T);M146I(G>A);M146L(A>C);M146L(A>T);M146V;T147I;T147P;L150P;L153V;Y154C;Y154N;Y156F;Y156_R157insIY;R157S;H163P;H163R;H163Y;A164V;W165C(G>C);W165C(G>T);W165G;L166H;L166P;L166R;L166V;L166del;I167del(TTAdel);I167del(TATdel);I168T;S169del(ΔS169、Ser169del、ΔS170);S169L;S169P;S170F;S170P;L171P;L173F(G>C);L173F(G>T);L173W;L174del;L174M;L174R;F175S;F176L;F177L;F177S;S178P;G183V;E184D;E184G;V191A;I202F;G206A;G206D;G206S;G206V;G209A;G209E;G209R;G209V;S212Y;I213F;I213L;I213T;H214D;H214N;H214Y;G217D;G217R;L219F;L219P;L219R;R220P;Q222H;Q222P;Q222R;Q223R;L226F;L226R;I229F;S230I;S230N;S230R;A231P;A231T;A231V;L232P;M233I(G>A);M233I(G>C);M233L(A>T);M233L(A>C);M233T;M233V;L235P;L235R;L235V;F237I;F237L;I238M;K239N;T245P;A246E;A246P;L248P;L248R;L250F;L250S;L250V;Y256S;A260V;V261F;V261L;L262F;L262V;C263F;C263R;P264L;G266S;P267A;P267L;P267S;R269G;R269H;L271V;V272A;E273A;E273G;T274R;A275V;R278I;R278K;R278S;R278T;E280A;(Paisa);E280G;E280K;L282F;L282R;L282V;F283L;P284L;P284S;A285V;L286P;L286V;T291A;T291P;K311R;E318G;D333G;R352C;R352_S353insR;T354I;R358Q;S365A;S365Y;R377M;R377W;G378E;G378V;G378fs;L381F;L381V;G384A;F386I;F386S;F388L;S390I;S390N;V391F;V391G;L392P;L392V;G394V;A396T;N405S;I408T;A409T;C410Y;V412I;I416T;G417S;L418F;L420R;L424F;L424H;L424R;L424V;A426P;A431E;(Jalisco);A431V;A434C;A434T;L435F;P436Q;P436S;I437V;I439S;I439V;T440del;869-2A>G;869-22_869-23ins18(ΔE9、Δ9、deltaE9);I238_K239insI;S290C;T291_S319del(ΔE9Finn、Δ9Finn、Δ9);S290C;T291_S319del(ΔE9、Δ9);S290C;T291_S319del A>G(ΔE9、Δ9);S290C;T291_S319del G>A(ΔE9、Δ9);S290C;T291_S319del G>T(ΔE9、Δ9);またはS290W;S291_R377del(Δ9-10、Delta9-10、p.Ser290_Arg377delinsTrp、g.73671948_73682054del)(変異は、Uniprot P49768.1/GenBank参照番号NM_000021.4に対して名付けられる)における変異、およびPSEN-2においては:T18M;R29H;G34S;R62C;R62H;P69A;R71W;K82R;A85V;V101M;K115Efs*;T122P;T122R;P123L;E126fs;E126K;S130L;V139M;N141I(Volga German);N141Y;L143H;V148I;K161R;R163H;H169N;M174V;S175C;G212V;V214L;Q228L;Y231C;I235F;A237V;L238F;L238P;M239I;M239V;A252T;A258T;T301M;K306fs;P334A;P334R;P348L;A377V;V393M;T430M;またはD439A(変異は、Uniprot P49810.1/GenBank参照番号NP_000438.2に対して名付けられる)の変異が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Sun et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2017;114:E476-E485;Heilig et al., J Neurosci. 2013 Jul 10;33(28):11606-17;Zhou et al., PNAS November 28, 2017 114 (48) 12731-12736を参照されたい。一部の実施形態では、方法は、例えば、当技術分野において既知の方法を使用して、対象がこのような変異を有することを判定するステップを含み得る。一部の実施形態では、対象は、本明細書に記載する変異を有し(例えば、当技術分野において既知の方法を使用して、本明細書に記載する変異を有すると同定されている)、また任意選択で、ADおよび/またはADの1つもしくは複数の症候の家族歴を有しており、また、対象は、本明細書において記載する方法を使用して治療される。一部の実施形態では、対象は、完全症状のADはまだ有していない。
【0042】
典型的には、健忘または軽度の錯乱の増加は、アルツハイマー病の初期の症状である。徐々に、アルツハイマー病と関連する認知機能障害により、記憶喪失、特には、近時記憶、見当識障害および空間関係の誤解;言語、記述、思考、推理における困難;うつ、不安、引きこもり、気分変動、他人への不信、易刺激性および攻撃性を生じる人格および行動における変化;睡眠習慣における変化、徘徊、抑制の喪失、妄想、ならびに最終的に死に至る。
【0043】
他の神経変性疾患、障害または状態
アルツハイマー病に加えて、本発明の方法は、前頭側頭型認知症、種々の型の記憶喪失、それに限定されないが軽度認知機能障害(MCI)を含む認知機能障害、または例えば、ドミナントネガティブアイソフォームを生成する、例えば、PSEN1もしくはPSEN2における変異による、PS1もしくはPS2の欠失と関連する他の状態を含む、他の神経変性疾患、障害または状態を治療するのに使用し得る。
【0044】
コドン最適化プレセニリン1(PSEN1)
本明細書に記載の組成物および方法における使用に適する、コドン最適化プレセニリン1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、例えば、実施例の節に記載されているアッセイを含むin vitroでのγセクレターゼアッセイにより判定された(また、Watanabe et al., J. Neurosci. 32(15):5085-5096 (2012)を参照)、野生型タンパク質の相当なガンマセクレターゼ活性、例えば、少なくとも50%のガンマセクレターゼ活性、あるいは少なくとも60、70、80、90、もしくは95%、または100%を超える野生型タンパク質の活性を保持するタンパク質をコードする、完全長cDNAまたはこの部分もしくは断片を含み得る。一部の実施形態では、適切なコドン最適化PSEN1は、完全長野生型PS1またはPS2タンパク質配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のタンパク質配列をコードする。ヒトPSEN1/PS1もしくはPSEN2/PS2の例となる野生型ゲノム、cDNAまたはタンパク質配列は、表1ならびに図4A-Cおよび5A-Bに示す。PS1は、通常、活性型のNおよびC末端断片に切断される。PS1は、処理して、N末端断片28kDaおよびC末端断片18kDaの2つの断片を生じ、主要な細胞内タンパク質切断が、大型の親水性ループの近位部のMet298において、およびこの付近で生じる(Podlisny et al., Neurobiol Dis. 1997;3(4):325-37;Marambaud et al., EMBO J. 2002 Apr 15;21(8):1948-56)。また、このような切断された形態を含むか、またはこれをコードする配列、例えば、配列番号5のアミノ酸1~291、1~292、1~293、1~294、1~295、1~296、1~297、1~298もしくは1~299をコードする配列、または配列番号6~8の対応する断片は、本明細書に記載の方法および組成物において使用することができる。
【0045】
【表1】
【0046】
>NM_000021.3ヒト(Homo sapiens)プレセニリン1(PSEN1)、転写変異体1、mRNA(配列番号1)
【0047】
【化1-1】
【0048】
【化1-2】
【0049】
【化1-3】
【0050】
>NM_007318.2ヒト(Homo sapiens)プレセニリン1(PSEN1)、転写変異体2、mRNA(配列番号2)
【0051】
【化2-1】
【0052】
【化2-2】
【0053】
【化2-3】
【0054】
>NM_000447.2ヒト(Homo sapiens)プレセニリン2(PSEN2)、転写変異体1、mRNA(配列番号3)
【0055】
【化3】
【0056】
>NM_012486.2ヒト(Homo sapiens)プレセニリン2(PSEN2)、転写変異体2、mRNA(配列番号4)
【0057】
【化4】
【0058】
>NP_000012.1プレセニリン1アイソフォームI-467[ヒト(Homo sapiens)](配列番号5)
【0059】
【化5】
【0060】
>NP_015557.2プレセニリン1アイソフォームI-463[ヒト(Homo sapiens)](配列番号6)
【0061】
【化6】
【0062】
>NP_000438.2プレセニリン2アイソフォーム1[ヒト(Homo sapiens)](配列番号7)
【0063】
【化7】
【0064】
>NP_036618.2プレセニリン2アイソフォーム2[ヒト(Homo sapiens)](配列番号8)
【0065】
【化8】
【0066】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性の割合を決定するために、最適に比較する目的で、配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較する目的で、非相同配列を無視することができる)。比較する目的でアラインメントする参照配列の長さは、参照配列の少なくとも80%の長さであり、一部の実施形態では、少なくとも90%または100%の長さである。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占有される場合、分子は、この位置において同一である。2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮すると、2つの配列間の同一性の割合は、配列により共有される同一の位置の数の関数である。別の実施形態では、2つのアミノ酸配列の同一性の割合は、両アミノ酸配列の対応する位置における同一のアミノ酸ファミリー内でのアミノ酸残基の保存の関数(例えば、正電荷、負電荷、極性および無電荷、疎水性)として評価することができる(例えば、両配列の特定の位置におけるバリン残基に代わるアラニン残基の存在は、高レベルの保存を示すが、両配列の特定の位置におけるアスパラギン酸残基に代わるアルギニン残基の存在は、低レベルの保存を示す)。
【0067】
例えば、2つのアミノ酸配列の同一性の割合は、ニードルマンおよびヴンシュのアルゴリズム((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)を使用して決定することができ、これは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれており、ブロッサムスコアマトリックスを使用し、例えば、ギャップペナルティについては初期値、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティを使用する。
【0068】
コドン最適化プレセニリン1
コドン最適化は、特異的宿主細胞、例えば細菌、マウス、ヒトの細胞においてタンパク質を発現することが望ましい。遺伝子コードの縮重の結果、その一部があらゆる既知のおよび天然の遺伝子のcDNAに最小の類似性を有している、ヒトプレセニリン1をコードする多数のcDNAを生成することができることは、当業者に理解されよう。したがって、本発明は、考えられるコドン選択に基づく組合せの選択によって生じ得る、考えられるcDNAのバリエーションのそれぞれおよびすべてを検討する。これらの組合せは、天然ヒトプレセニリン変異体をコードするポリヌクレオチドに適用されるような標準的なトリプレット遺伝子コードに従って作製され、すべてのこのようなバリエーションは、具体的に開示されることが考慮されるものである。典型的なコドン最適化ヒトPSEN1ヌクレオチド配列は、本明細書において開示されており、例えば配列番号9である。図2を参照。このコドン最適化ヒトPSEN1ヌクレオチド配列は、ヒト細胞において低頻度で生じる天然PSEN1ヌクレオチド配列内のコドンを、ヒト細胞において高頻度で生じるコドンに置換することによって生成された。コドン最適化ヒトPSEN1ヌクレオチド配列としては、コドンの100%未満が最適化されている配列、例えば、野生型非最適化コドンのわずか20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が最適化されている配列を挙げることができる。コドンの発生頻度は、当技術分野において既知の方法によって計算的に決定することができる。これらのコドン頻度の典型的な計算を表1に開示する。
【0069】
典型的なコドン最適化ヒトPSEN1配列は、以下の通りである。
>コドン最適化ホモサピエンスプレセニリン1(PSEN1)cDNA(配列番号9)
【0070】
【化9】
【0071】
【表2-1】
【0072】
【表2-2】
【0073】
突然変異プレセニリン1
一部の実施形態では、PS1タンパク質は、変異を含む。一部の実施形態では、変異は、保存的置換である。このような変異は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のうちのいずれかと、このような疎水性アミノ酸のうちの他のいずれかとの置換、アスパラギン酸(D)とグルタミン酸(E)との置換およびこの逆、グルタミン(Q)とアスパラギン(N)との置換およびこの逆、ならびにセリン(S)とスレオニン(T)との置換およびこの逆を含む。また、他の置換は、タンパク質の3次元構造における、特定のアミノ酸の環境およびこの役割に応じて、保存的であると考えることができる。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、アラニン(A)およびバリン(V)と同様に、しばしば互換的であり得る。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシンおよびイソロイシン、ならびに場合によりバリンとしばしば交換することができる。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の顕著な特徴がこの電荷であり、このような2つのアミノ酸残基の異なるpKが顕著でない位置において、しばしば互換的である。さらなる他の変異は、特定の環境において「保存的」であると考えることができる(例えば、Table III of US20110201052; pages 13-15 “Biochemistry” 2nd ED. Stryer ed (Stanford University);Henikoff et al., PNAS 1992 Vol 89 10915-10919;Lei et al., J Biol Chem 1995 May 19; 270(20):11882-6を参照)。
【0074】
一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のさらなる変異をヒトPS1配列(配列番号5または6)に導入するステップを含む。したがって、一部の実施形態では、配列は、ヒトPS1と少なくとも60%、70%、80%、90%または100%同一のヌクレオチド配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%または99%同一であり得る。
【0075】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性の割合を決定するために、最適に比較する目的で、配列をアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのために、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入し、比較する目的で、非相同配列を無視することができる)。比較する目的でアラインメントする参照配列の長さは、典型的に、参照配列の少なくとも80%の長さであり、一部の実施形態では、少なくとも90%または100%の長さである。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占有される場合、分子は、この位置において同一である(本明細書において使用する場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と等価である)。2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮すると、2つの配列間の同一性の割合は、配列により共有される同一の位置の数の関数である。別の実施形態では、2つのアミノ酸配列の同一性の割合は、両アミノ酸配列の対応する位置における同一のアミノ酸ファミリー内でのアミノ酸残基の保存の関数(例えば、正電荷、負電荷、極性および無電荷、疎水性)として評価することができる(例えば、両配列の特定の位置におけるバリン残基に代わるアラニン残基の存在は、高レベルの保存を示すが、両配列の特定の位置におけるアスパラギン酸残基に代わるアルギニン残基の存在は、低レベルの保存を示す)。
【0076】
本発明の方法のために、配列の比較および2つの配列間の同一性の割合の決定は、ブロッサム62スコアマトリックスを使用し、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を用いて達成することができる。
【0077】
送達ベクター
PS1ポリペプチドをコードするコドン最適化核酸または治療的に活性なその断片は、遺伝子構築物に組み込んで、遺伝子治療プロトコールの一部として使用することができる。例えば、in vivoでの送達のための発現ベクターの標的化、およびPS1ポリペプチドをコードするコドン最適化ポリヌクレオチドまたはその活性断片の、特定の細胞型、特には、大脳皮質神経細胞における発現を本明細書において記載する。このような成分の発現構築物は、有効な任意の担体、例えば、遺伝子成分を細胞にin vivoで効果的に送達することが可能な、任意の製剤または組成物により投与することができる。方法は、遺伝子をウイルスベクター、好ましくは、アデノ随伴ウイルスに挿入するステップを含む。ウイルスベクターは、典型的に、細胞に直接形質導入する。
【0078】
CNS神経細胞への高度に効率的な形質導入が可能なウイルスベクターを利用することができ、これには任意の血清型のrAAV(例えば、AAV1~AAV12)ベクター、組換えまたはキメラAAVベクター、ならびにレンチウイルスまたは適する他のウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、PS1をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、CNSにおける発現に適するプロモーターに動作可能に結合する。例えば、神経細胞サブタイプ特異的プロモーター、例えば、アルファ-カルシウム/カルモジュリンキナーゼ2Aプロモーターを使用して、興奮性神経細胞を標的化し得る。あるいは、汎神経プロモーター、例えば、シナプシンIプロモーターを使用して、PS1発現を引き起こし得る。例となる他のプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサー/プロモーター;ハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβアクチン(CBA)プロモーター;CMV初期エンハンサーエレメント、ニワトリβアクチン遺伝子の第1のエキソンおよび第1のイントロン、ならびにウサギβグロブリン遺伝子のスプライス受容部位を含むプロモーター(一般に「CAGプロモーター」と呼ぶ);またはCMV前初期エンハンサー、およびCBAイントロン1/エキソン1からなる1.6kbのハイブリッドプロモーター(一般にCAGGSプロモーターと呼ばれる;Niwa et al. Gene, 108:193-199 (1991))が挙げられるが、これに限定されない。CAGGSプロモーター(Niwa et al., 1991)は、脳において、遍在性をもたらし、長期に発現することがわかっている(Klein et al., Exp. Neurol. 176:66-74 (2002))。細胞に核酸をin vivoで導入するための1つのアプローチは、核酸、例えばPS1をコードするコドン最適化cDNAを有するウイルスベクターの使用によるものである。特には、ウイルスベクターによる細胞の感染は、標的化細胞の大部分が核酸を受け取ることができるという利点を有する。加えて、例えば、ウイルスベクターに含まれるcDNAにより、ウイルスベクター内でコードされた分子は、ウイルスベクター核酸を受け取った細胞において効率的に発現する。
【0079】
核酸の送達に特に有用なウイルスベクター系は、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。アデノ随伴ウイルスは、天然に存在する欠損ウイルスであり、効率的な複製、および増殖的生活環のためのヘルパーウイルスとして別のウイルス、例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスを必要とする(総説については、Muzyczka et al., Curr. Topics in Micro and Immunol.158:97-129 (1992)を参照)。AAVベクターは、種々の細胞型に効率的に形質導入し、導入遺伝子の長期発現をin vivoで生じることができる。AAVベクターゲノムは、エピソームとして細胞内に存続することができるが、ベクターの組込みが、観察されている(例えば、Deyle and Russell, Curr Opin Mol Ther. 2009 Aug; 11(4): 442-447;Asokan et al., Mol Ther. 2012 April;20(4): 699-708; Flotte et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 7:349-356 (1992);Samulski et al., J. Virol. 63:3822-3828 (1989);およびMcLaughlin et al., J. Virol. 62:1963-1973 (1989)を参照)。AAVベクター、例えば、AAV2は、遺伝子の増強または置換のために大規模に使用されており、広範な動物モデルはもちろん臨床における治療有効性がわかっている。例えば、Mingozzi and High, Nature Reviews Genetics 12, 341-355 (2011);Deyle and Russell, Curr Opin Mol Ther. 2009 Aug; 11(4): 442-447;Asokan et al., Mol Ther. 2012 April; 20(4): 699-708を参照されたい。わずか300塩基対のAAVを含むAAVベクターは、パッケージングすることができ、組換えタンパク質発現を生じることができる。組換えレトロウイルスの生成のため、およびこのようなウイルスによるin vitroまたはin vivoでの細胞への感染のためのプロトコールは、当技術分野において既知であり、例えば、Ausubel, et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates, (1989), Sections 9.10-9.14および他の標準的手引書に見出すことができる。脳における発現のための構築物を送達するAAVベクターの使用は、例えば、Iwata et al., Sci Rep. 2013;3:1472;Hester et al., Curr Gene Ther. 2009 Oct;9(5):428-33;Doll et al., Gene Therapy 1996, 3(5):437-447;およびFoley et al., J Control Release. 2014 Dec 28;196:71-8に記載されている。
【0080】
したがって、一部の実施形態では、核酸をコードするコドン最適化PSEN1は、遺伝子治療のためのベクター、例えば、AAVベクターに存在する。一部の例では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAV11およびAAV12からなる群から選択される。好ましい実施形態では、AAVは、AAV9またはAAVrh10である。
【0081】
本明細書に記載するベクターは、シュードタイプベクターであり得る。シュードタイピングにより、ベクターの標的細胞集団を調節するための機構がもたらされる。例えば、シュードタイプAAVベクターは、本明細書に記載の種々の方法において利用することができる。シュードタイプベクターは、1つのベクターのゲノム、例えば、1つのAAV血清型のゲノムを、第2のベクター、例えば、第2のAAV血清型のカプシドに含むベクターである。シュードタイピングの方法は、当技術分野において周知である。例えば、ベクターは、ラブドウイルス水疱性口内炎ウイルス(VSV)血清型(インディアナおよびチャンディプラ(Chandipura)株)、狂犬病ウイルス(例えば、種々のエブリン-ロキツニツキ-アベルセス(Evelyn-Rokitnicki-Abelseth)ERA株および攻撃ウイルス標準(CVS))、リッサウイルス属モコラ(Lyssavirus Mokola)ウイルス、狂犬病関連ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、モコラウイルス(Mokola virus)(MV),リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RV-G)、糖タンパク質B型(FuG-B)、FuG-Bの変異体(FuG-B2)またはモロニーマウス白血病(Moloney murine leukemia)ウイルス(MuL V)に由来するエンベロープ糖タンパク質によりシュードタイピングされ得る。ウイルスは、1つまたは複数の神経細胞または細胞群の形質導入のためにシュードタイピングし得る。
【0082】
シュードタイプベクターの例示的な例としては、組換えAAV2/1、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV9、AAVrh10、AAV11およびAAV12血清型のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ヒトタンパク質または他のタンパク質をコードする導入遺伝子を含むように、このようなベクターを改変し得ることが当技術分野において知られている。特定の例では、本開示は、本明細書に開示する核酸を含むシュードタイプAAV9またはAAVrh10ウイルスベクターを含み得る。Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照されたい。
【0083】
一部の例では、特定のAAV血清型のベクターは、目的の使用に基づいて、例えば、目的の投与経路に基づいて選択され得る。
【0084】
AAVベクター構築物の遺伝子治療における適用のための種々の方法は、当技術分野において既知であり、ヒト対象への投与のための修飾、精製、および調製の方法を含む(例えば、Viral Vectors for Gene Therapy: Methods and Protocols, ed. Machida, Humana Press, 2003を参照)。加えて、CNS細胞を標的化する、AAVをベースとする遺伝子治療は、記載されている(例えば、米国特許第6,180,613号および第6,503,888号を参照)。高力価AAVの調製は、例えば、米国特許第5,658,776号に記載のような当技術分野において既知の技術を使用して行うことができる。
【0085】
ベクター構築物は、ウイルスゲノムおよび導入遺伝子のすべてまたは一部を含むポリヌクレオチド分子を指す。一部の例では、遺伝子導入は、DNAウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(Ad)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)により媒介され得る。遺伝子治療の方法において有用な他のベクターは、当技術分野において既知である。例えば、本明細書において開示する構築物は、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、またはワクシニアウイルスを含み得る。
【0086】
アデノウイルスは、相対的に十分特徴づけられている群のウイルスであり、50種を超える血清型を含む(例えば、参照により本明細書に組み込む、国際公開第95/27071号を参照)。アデノウイルスは、分子生物学の技術の適用により扱い易く、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない場合がある。野生型ウイルスの組換えおよび生成の可能性を低下させるベクターを含む組換えAd由来のベクターが、構築されている(例えば、参照により本明細書において組み込む、国際特許公開第95/00655号および第95/11984号を参照)。野生型AAVは、高い感染性を有し、高度な特異性で宿主ゲノムに組み込むことが可能である(例えば、Hermonat and Muzyczka 1984 Proc. Natl. Acad. Sci., USA 81:6466-6470およびLebkowski et al. 1988 Mol. Cell. Biol. 8:3988-3996を参照)。
【0087】
非天然制御配列、遺伝子調節配列、プロモーター、非コード配列、イントロン、またはコード配列は、本明細書に開示の核酸に含むことができる。核酸タグもしくはシグナル伝達配列、またはタンパク質タグもしくはタンパク質シグナル伝達配列をコードする核酸の包含は、本明細書においてさらに検討する。典型的には、コード領域は、1つまたは複数の制御核酸成分と動作可能に結合する。
【0088】
本明細書において開示する核酸に含まれるプロモーターは、組織もしくは細胞型特異的プロモーター、複数の組織もしくは細胞型に対して特異的なプロモーター、臓器特異的プロモーター、複数の臓器に対して特異的なプロモーター、全身性もしくは遍在性プロモーター、またはほぼ全身性もしくは遍在性プロモーターであり得る。また、確率的発現、誘導性発現、条件的発現、または反対に非連続的、不規則、もしくは予測不可能な発現を有するプロモーターは、本開示の範囲内に含む。プロモーターは、上記の特性または当技術分野において既知の他のプロモーター特性のいずれかを含み得る。
【0089】
臨床環境では、治療遺伝子のための遺伝子送達系は、いくつかの方法のいずれかにより対象に導入することができ、このそれぞれは、当技術分野において知られている。例えば、遺伝子治療系の医薬調製物は、例えば、静脈内注射により全身的に導入することができ、標的細胞におけるタンパク質の特異的形質導入は、受容体遺伝子の発現を調節する転写制御配列による遺伝子送達媒体、細胞型もしくは組織型発現、またはこれらの組合せによりもたらされる、トランスフェクションの特異性によって、主に生じる。他の実施形態では、組換え遺伝子の最初の送達は、さらに制限され、対象への導入は、非常に局在的となる。例えば、遺伝子送達媒体は、カテーテルにより(米国特許第5,328,470号を参照)または例えば、任意選択で、大槽、脳室、腰部髄腔内への定位的注射、海馬への直接注射により導入することができる(例えば、Chen et al., PNAS USA 91: 3054-3057 (1994))。好ましい実施形態では、プレセニリンを発現するウイルスの送達方法は、静脈内、くも膜下腔内、脳室内、大槽内、および定位的実質内投与を含む。
【0090】
方法は、前臨床試験により、さらに最適化して、プレセニリン条件的二重ノックアウトマウスおよびFAD変異を発現するプレセニリン1ノックインマウスにおいて、神経変性、認知症、シナプス機能不全および分子変性の最良の回復を達成することができる。
【0091】
遺伝子治療構築物の医薬調製物は、許容される希釈剤に遺伝子送達系を本質的に含み得るか、または遺伝子送達媒体を包埋する徐放マトリックスを含み得る。あるいは、完全遺伝子送達系、例えば、レトロウイルスベクターが、組換え細胞からインタクトで生成可能である場合、医薬調製物は、1つまたは複数の細胞を含み、これにより遺伝子送達系を生成し得る。
【0092】
送達製剤および医薬組成物
一部の実施形態では、標的組織へのin vivoでの送達のための本明細書に記載のポリヌクレオチドは、被包性であるか、またはナノ粒子と結合する。ナノ粒子へパッケージングするための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Bose S, et al (Role of Nucleolin in Human Parainfluenza Virus Type 3 Infection of Human Lung Epithelial Cells. J. Virol. 78:8146. 2004);Dong Y et al. Poly(d,l-lactide-co-glycolide)/montmorillonite nanoparticles for oral delivery of anticancer drugs. Biomaterials 26:6068. 2005);Lobenberg R. et al (Improved body distribution of 14C-labelled AZT bound to nanoparticles in rats determined by radioluminography. J Drug Target 5:171.1998);Sakuma S R et al (Mucoadhesion of polystyrene nanoparticles having surface hydrophilic polymeric chains in the gastrointestinal tract. Int J Pharm 177:161. 1999);Virovic L et al. Novel delivery methods for treatment of viral hepatitis: an update. Expert Opin Drug Deliv 2:707.2005);およびZimmermann E et al, Electrolyte- and pH-stabilities of aqueous solid lipid nanoparticle (SLN) dispersions in artificial gastrointestinal media. Eur J Pharm Biopharm 52:203. 2001)に記載されている。一部の実施形態では、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、小胞、例えば、リポソームによりin vivoで標的組織に送達する(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989);Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327を参照;一般的に同書を参照)。一部の実施形態では、脂質をベースとするナノ粒子(LNP)を使用する。例えば、Robinson et al., Mol Ther. 2018 Aug 1;26(8):2034-2046;米国特許第9956271号明細書を参照されたい。
【0093】
本発明の方法および組成物は、微小胞またはその調製物を含み、これは、本明細書に記載の1つまたは複数の治療分子、例えば、ポリヌクレオチドまたはRNAを含み得る。「微小胞」は、用語として、本明細書において使用し、エキソソーム、微小粒子、および正常な生理学および病理学的両条件下で多くの細胞型により分泌される排出された微小胞を含む広範な細胞外小胞を含む、膜由来の微小胞を指す。例えば、欧州特許第2010663号明細書を参照されたい。本明細書に記載の方法および組成物は、あらゆるサイズの微小胞に適用することができ、一実施形態では、30~200nm、一実施形態では、30~800nm、一実施形態では、最大2μmである。また、本明細書に記載の方法および組成物は、あらゆる細胞外小胞に広く適用することができ、この用語は、エキソソーム、排出された微小胞、オンコソーム(oncosome)、エクトソーム、およびレトロウイルス様粒子を包含する。このような微小胞または調製物は、本明細書において記載する方法により生成する。この用語を本明細書において使用する場合、微小胞調製物は、同一の細胞源から入手/調製した微小胞の集団を指す。このような調製物は、例えば、in vitroで、本発明の核酸分子を発現する細胞を培養し、細胞により生成された微小胞を単離することにより生成する。このような微小胞を単離する方法は、当技術分野において既知であり(Thery et al., Isolation and characterization of exosomes from cell culture supernatants and biological fluids, in Current Protocols Cell Biology, Chapter 3, 322, (John Wiley, 2006);Palmisano et al., (Mol Cell Proteomics. 2012 August; 11(8):230-43)およびWaldenstrom et al., ((2012) PLoS ONE 7(4): e34653.doi: 10.1371/journal.pone.0034653))、この一部の例は、本明細書において記載する。微小胞を培養中の細胞から単離するためのこのような技術は、それらに限定されないが、スクロース勾配精製/分離および分画遠心分離を含み、本明細書に記載の方法または組成物における使用に適応し得る。例えば、欧州特許第2010663号明細書を参照されたい。
【0094】
一部の実施形態では、微小胞は、ドナー細胞の培養培地を、細胞を培地から分離するのに十分な期間(例えば、約15分)穏やかに遠心分離すること(例えば、約300g)により単離する。これにより上清に微小胞が残り、したがって微小胞調製物が得られる。一実施形態では、穏やかな遠心分離からの培養培地または上清を、細胞残屑を沈殿させるのに十分な期間(例えば、約30分)さらに強力に遠心分離する(例えば、約16,000g)。これにより、微小胞が上清に残り、したがって微小胞調製物が得られる。一実施形態では、培養培地、穏やかに遠心分離した調製物、または強力に遠心分離した調製物は、ろ過に供し(例えば、0.22μmフィルターまたは0.8μmフィルターを通して)、これにより、微小胞がフィルターを通過する。一実施形態では、ろ液は、微小胞を十分に沈殿させる期間(例えば、約80分間)最終的な超遠心分離に供する(例えば、約110,000g)。結果として得られるペレットは、微小胞を含み、さらなる使用のために有用な濃度が得られる大量のバッファーに再懸濁させて、これにより微小胞調製物が得られ得る。一実施形態では、微小胞調製物は、スクロース密度勾配精製により生成する。一実施形態では、微小胞は、DNAse(例えば、DNAseI)および/またはRNAseおよび/またはプロテイナーゼによりさらに処理して、外部から混入する任意のDNA、RNA、またはタンパク質をそれぞれ除去する。一実施形態では、微小胞調製物は、1つまたは複数のRNAse阻害物質を含む。
【0095】
微小胞調製物内に含まれる分子は、治療分子を含む。典型的には、調製物中の微小胞は、異種性集団であり、各微小胞は、調製物中の他の微小胞の分子と異なるか、または異ならない分子の補体を含む。微小胞調製物中の治療分子の内容物は、定量的または定性的のいずれかにより表すことができる。このような方法の1つは、内容物を、微小胞調製物における総分子の割合として表すことである。例として、治療分子がmRNAである場合、内容物は、微小胞調製物の、総RNA内容物の割合として、あるいは総mRNA内容物の割合として表すことができる。同様に、治療分子がタンパク質である場合、内容物は、微小胞における総タンパク質の割合として表すことができる。一実施形態では、本明細書に記載の方法により生成した治療微小胞またはその調製物は、対照細胞(治療分子の発現を増加させるように科学的操作を受けていない同一源から得た細胞)から得た微小胞と比較した場合、検出可能で統計学的に有意な増加量の治療分子を含む。一実施形態では、治療分子は、対照細胞から得た微小胞における量よりも少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%多い量で存在する。さらに高レベルの濃縮をも達成し得る。一実施形態では、治療分子は、対照細胞微小胞よりも少なくとも2倍多く微小胞またはその調製物中に存在する。さらに高い倍率の濃縮をも得られ得る(例えば、3、4、5、6、7、8、9または10倍)。
【0096】
一実施形態では、相対的に高い割合の微小胞内容物は、治療分子である(例えば、分子の高発現または微小胞に対する特異的標的化により達成される)。一実施形態では、治療分子の微小胞内容物は、総(同種)分子内容物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である(例えば、治療分子は、mRNAであり、微小胞の総mRNA内容物の約10%である)。さらに高レベルの濃縮をも達成し得る。一実施形態では、治療分子は、他のすべてのこのような(同種)分子よりも少なくとも2倍多く微小胞またはその調製物中に存在する。さらに高い倍率の濃縮をも得られ得る(例えば、3、4、5、6、7、8、9または10倍)。
【実施例
【0097】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載し、これらは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を制限しない。
【0098】
[実施例1]異なるPS遺伝子型:PS1+/+、PS1L435F/+、PS1+/-、PS1L435F/L435F、PS1-/-およびPS1-/-;PS2-/-を有するMEFにおけるγセクレターゼ活性の用量依存的回復
PSEN1変異と関連する、低下したγセクレターゼ活性が、野生型(WT)hPS1の導入により補正可能かどうかを判定するために、異なるPS遺伝子型、PS1+/+、PS1L435F/+、PS1+/-、PS1L435F/L435F、PS1-/-およびPS1-/-;PS2-/-(DKO)を保有する胚由来の初代MEFを得た。不死化MEFを、CMV-NΔEを用いて一過性にトランスフェクトし、NICDおよびPS1 NTF/CTFのレベルを測定することによりγセクレターゼ活性を評価した。NICDレベルは、PS1用量感受性に低下し、DKO細胞において検出不可能であった(図1A)。NICDレベルは、低下したが、PS1L435F/L435FMEF(「L435F KI/KI」MEF)およびPS1-/-MEFにおいて検出可能であったが(図1A)、de novoNICD生成は、L435F KI/KIおよびPS1-/-胚性脳を使用したin vitroでのγセクレターゼアッセイによって検出不可能であった(Xia et al., Neuron. 2015 Mar 4;85(5):967-81)。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、出願人は、これが、胚性脳において通常発現するPS2が、MEFと比較して低レベルであり、L435F KI/KIおよびPS1-/-脳において、MEFと比較して低い総PS活性が生じるためであり得るということに従う。この仮説を試験するために、PS1L435F/+;PS2-/-MEFにおいてγセクレターゼ活性を測定し、PS1L435F/+MEFと比較した。γセクレターゼ活性は、PS1L435F/+;PS2-/-MEFにおいて、PS1L435F/+MEFと比較して低かった(図1B)。
【0099】
種々のPS変異MEFにおける障害されたγセクレターゼ活性が、WT hPS1の導入により回復可能かどうかを判定するために、異なる量(0、20、40、80ng)の野生型hPS1 cDNA(pCI-hPS1)を、CMV-NΔEとともにMEFにトランスフェクトした。注目すべきことには、MEFにトランスフェクトした増加量のpCI-hPS1により、PS1タンパク質の蓄積、ならびに変異体(PS1L435F/+、PS1L435F/+;PS2-/-およびDKO)MEFにおけるPS1 NTFおよびNICDレベルの回復が生じた(図1B)。このような結果は、外因性WT hPS1により、障害されたγセクレターゼ活性が、種々のPS変異MEFにおいて回復可能であることを示す。
【0100】
[実施例2]最適化野生型ヒトPS1のin vitro発現系の開発
方法
細胞培養およびトランスフェクション
内因性PS1およびPS2を欠いているPsen-nullマウス胎児線維芽細胞(MEF)を、10%FBSを添加したDMEM中に維持し、γセクレターゼレポーターCMV-NΔEの存在下または不存在下で、リポフェクタミン3000を指示に従って使用して、野生型内因性hPSEN1 cDNA(wt_PS1)またはコドン最適化hPSEN1 cDNA(opti_PS1)のいずれかを発現するプラスミドを一過性にトランスフェクトした。細胞溶解物を24時間の時点で回収した。
【0101】
ウェスタンブロッティング
細胞溶解物をSDS-PAGEにかけ、タンパク質をニトロセルロース膜に移した。TBST/5%脱脂粉乳でブロックした後、膜を一次抗体と終夜インキュベートした。ロードを制御するために、膜をはぎ取り、抗β-アクチン抗体で再プローブした。ImageJソフトウェアを使用してバンドの強度を定量し、結果をβ-アクチンレベルに対して正規化した。使用した抗体としては、ラット抗PS1-NTF、ウサギ抗切断型Notch(Val1744)(NICD)、およびマウス抗β-アクチンが挙げられる。
【0102】
結果
まず、本発明者らは、wt_hPS1またはopti_hPS1をPsen-null MEFで発現させて、内因性PS1またはPS2のあらゆる影響を排除した。本発明者らは、wt_hPS1またはopti_hPS1をコードする増大量のベクターをPsen-null MEFにトランスフェクトした場合の、PS1 NTFレベルの漸進的な増大を検出した。最適化hPS1は、wt_hPS1よりも多くのPS1を一貫して発現した(図3A~3B)。
【0103】
γセクレターゼによって媒介される切断の基質としてのNotchΔEを、wt_hPS1またはopti_hPS1と共発現させて、γセクレターゼ活性を直接測定した。Notchはγセクレターゼによって切断されて、Notch細胞内ドメイン(NICD)を放出する。本発明者らは、γセクレターゼによって媒介されるNotchΔE切断についての用量-応答の関係を評価して、γセクレターゼ活性に応じてNICDを生成した。NICDの生成は、少なめの量のPS1ベクタートランスフェクションの間では直線的に増大したが、高めのレベルでは飽和に近づく。さらに重要なことには、各ポイントで、最適化hPS1がより高いγセクレターゼ活性を有する(図3)。
【0104】
分泌された内因性Aβ40および42のレベルを、ELISAを使用して培地で測定する。別のγセクレターゼ基質であるAPP C99を使用して、CMV-C99を、増大量のpCI-hPS1optiとともに、MEF細胞系の各々に一過性でトランスフェクトすることによって、γセクレターゼ活性を評価する。一次および不死化C410Y、E280AおよびD385A KI/+およびKI/KI MEFならびにPS1 KI/+;PS2-/-MEFを確立する。KI/+およびKI/KI MEFがKI/+およびKI/KI脳と類似の表現型を再現するかどうかを決定し、また、WT hPS1の導入が、低減したγセクレターゼ活性を用量依存性の様式で回復させ得るかどうかが、NICDおよびAICDの生成によって測定される。実験は、遺伝子型ごとに複数の独立したMEF細胞系で反復する。検定力分析を行って、試料のサイズおよびこの研究を完了するために必要な独立した実験の数を決定する。
【0105】
[実施例3]最適化野生型ヒトPS1のin vivo発現系の開発
CAMK2Aプロモーターの制御下でヒトPSEN1野生型cDNAを構成的にまたは誘導的に発現するトランスジェニックマウスを開発する。PS1の生成および活性を最大にするために、hPS1をコドン最適化し(hPS1opti)、次いで、PS1レベルおよびγセクレターゼ活性を、増大量のpCI-hPS1またはpCI-hPS1optiのいずれかおよびCMV-NΔEをPS DKO MEFにコトランスフェクトすることによって、内因性hPS1 cDNAとhPS1opti cDNAとの間で比較した。NICD生成によって測定すると、内因性hPS1 cDNAと比較して、hPS1opti cDNAは、より高いレベルのPS1 NTFおよびより高いγセクレターゼ活性をもたらした(図3)。
【0106】
[実施例4]hPS1optiの産後送達がPS cDKOマウスにおける表現型を回復させ得るかどうかを決定する
表2に列挙するベクターが準備された。注射後4週間目および8週間目に最も高いGFP染色をもたらすベクターを同定する。このために、PS cDKO子マウス(ロット- F/F;-/-;F/Fと交配したCre/Cre;-/-の10個の飼育ケージ)に、P0~2に注射する。
【0107】
【表3】
【0108】
AAV、例えばAAV9/hCaMKII-イントロン-hPS1opti-T2A-EGFP-SV40pAまたはAAV9/hCaMKII-イントロン-EGFP-SV40pAを選択し、P0~P2にICVによってPS cDKOマウスに注射する。ウェスタン分析を4週齢および8週齢で行って、PS1、APP、ニカストリン、PEN-2のレベルを決定する。対照およびPS cDKOマウスを、さらなる対照として4週間目および8週間目に含める。ガンマセクレターゼ活性、NICD生成、およびAβレベル(皮質溶解物のELISAによる)を8週齢で測定する。さらに、2カ月齢で、電気生理学的分析、例えばシェファー側枝、PPF、FF、およびLTPを行い、行動分析、例えば水迷路を、2~3カ月齢で行う。神経障害分析を6カ月齢で行う。
【0109】
[実施例5]hPS1optiの産後送達がFAD変異によって生じる表現型を回復させ得るかどうかを決定する
表3に列挙するマウスを生成し、PS1およびAPPレベルを測定するためのウェスタンブロット分析;in vitroでのガンマセクレターゼ活性アッセイ;ELISA、6カ月齢での電気生理学的分析;6カ月齢および12カ月齢での行動分析;6、12、および18カ月齢での神経病分析を使用して分析する。
【0110】
【表4】
【0111】
[実施例6]成体の脳に送達されたAAV9/hPS1optiがPS機能の喪失によって生じる表現型(PS cDKO、FAD KI)をin vivoで回復させ得るかどうかを決定する
表2に列挙するようにベクターを調製し、CSF内を介して、10ulの注射液を大槽に送達するための50ulのHamiltonシリンジを使用した(1×1012vg)ICMを介して、実質内送達を介して、または10ulの3.3×1011vgの腰椎穿刺を使用したくも膜下腔内送達を介して、マウスに注射する。研究対象のマウスとしては、(i)PS cDKO、(ii)KI/+、(iii)KI/+;PS2-/-、および(iv)KI/fPS1;PS2-/-;Creが含まれる。本発明者らは、以下の分析をマウスで行う:PS1およびAPPレベルを測定するためのウェスタン分析;in vitroでのγセクレターゼアッセイ;AβペプチドのELISA測定、6カ月齢での電気生理学的分析;6カ月齢および12カ月齢での行動分析;6、12、および18カ月齢での神経病分析。
【0112】
他の実施形態
本発明を、この発明を実施するための形態とともに記載したが、前述の記載は例示することを意図し、本発明の範囲を制限せず、本発明は添付の特許請求の範囲により定義されることが理解される。他の態様、利点、および変更形態は、以下の特許請求の範囲内に存在する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
【配列表】
2022533451000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
コドン最適化プレセニリン1(PSEN1)
本明細書に記載の組成物および方法における使用に適する、コドン最適化プレセニリン1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、例えば、実施例の節に記載されているアッセイを含むin vitroでのγセクレターゼアッセイにより判定された(また、Watanabe et al., J. Neurosci. 32(15):5085-5096 (2012)を参照)、野生型タンパク質の相当なガンマセクレターゼ活性、例えば、少なくとも50%のガンマセクレターゼ活性、あるいは少なくとも60、70、80、90、もしくは95%、または100%を超える野生型タンパク質の活性を保持するタンパク質をコードする、完全長cDNAまたはこの部分もしくは断片を含み得る。一部の実施形態では、適切なコドン最適化PSEN1は、完全長野生型PS1またはPS2タンパク質配列とそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のタンパク質配列をコードする。ヒトPSEN1/PS1もしくはPSEN2/PS2の例となる野生型ゲノム、cDNAまたはタンパク質配列は、表1及び以下に示す。PS1は、通常、活性型のNおよびC末端断片に切断される。PS1は、処理して、N末端断片28kDaおよびC末端断片18kDaの2つの断片を生じ、主要な細胞内タンパク質切断が、大型の親水性ループの近位部のMet298において、およびこの付近で生じる(Podlisny et al., Neurobiol Dis. 1997;3(4):325-37;Marambaud et al., EMBO J. 2002 Apr 15;21(8):1948-56)。また、このような切断された形態を含むか、またはこれをコードする配列、例えば、配列番号5のアミノ酸1~291、1~292、1~293、1~294、1~295、1~296、1~297、1~298もしくは1~299をコードする配列、または配列番号6~8の対応する断片は、本明細書に記載の方法および組成物において使用することができる。

【国際調査報告】