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特表2022-533455ヘモクロマトーシスの処置のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ヘモクロマトーシスの処置のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220714BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220714BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/88 Z
A61P43/00 111
A61P3/00
A61P7/00
A61K48/00
A61K9/107
A61K9/127
A61K9/72
A61K47/20
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569849
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 US2020034377
(87)【国際公開番号】W WO2020243002
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,549
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/991,907
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516134291
【氏名又は名称】ウルトラジェニクス ファーマシューティカル インク.
【氏名又は名称原語表記】ULTRAGENYX PHARMACEUTICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ドガーティ,ショーン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ティモシー プレストン
(72)【発明者】
【氏名】カーソン,ロザリン ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】カタルド,ジェイソン ロバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC14
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD16
4C076DD55
4C076FF11
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084CA56
4C084DC50
4C084MA05
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
(57)【要約】
本発明は、機能的に活性な遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)またはその機能的に活性なフラグメントのためのコード配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。本発明は、該ポリヌクレオチドを含む組成物および対象におけるヘモクロマトーシスの予防または処置におけるその使用方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)またはそのフラグメントを発現するためのポリヌクレオチドであって、ここで、該ポリヌクレオチドは天然ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドを含み、ヒトHFEまたはHFE活性を有するそのフラグメントを提供するように発現し得る、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリヌクレオチドがヒトHFE野生型mRNAと比較してコドン最適化されている、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項3】
修飾ヌクレオチドが
5-ヒドロキシシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-メトキシシチジン、5-プロピニルシチジン、2-チオシチジン;
5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5,6-ジヒドロ-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン、2’-アジド-2’-デオキシウリジン、4-チオウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-ヨードウリジン、5-フルオロウリジン;
シュードウリジン、2’-O-メチル-シュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジン、N-メチルシュードウリジン、2’-O-メチル-N-メチルシュードウリジン、N-エチルシュードウリジン、N-ヒドロキシメチルシュードウリジン、アラウリジン;
-メチルアデノシン、2-アミノアデノシン、3-メチルアデノシン、7-デアザアデノシン、8-オキソアデノシン、イノシン;
チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシンおよび6-O-メチルグアニン
から選択される、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項4】
修飾ヌクレオチドが5-メトキシウリジンである、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項5】
修飾ヌクレオチドがN-メチルシュードウリジンである、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項6】
修飾ヌクレオチドがシュードウリジンとN-メチルシュードウリジンの組み合わせである、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項7】
修飾ヌクレオチドが5-メトキシウリジンとN-メチルシュードウリジンの組み合わせである、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが5’-キャップ、5’非翻訳領域、コード領域、3’非翻訳領域およびテイル領域を含む、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項9】
ポリヌクレオチドがヒトHFEまたはHFE活性を有するそのフラグメントを発現するよう哺乳動物細胞で翻訳可能である、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項10】
ポリヌクレオチドが、対象でインビボでヒトHFEまたはHFE活性を有するそのフラグメントを発現するよう翻訳し得る、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項11】
ポリヌクレオチドがヒトHFE野生型mRNAと比較して免疫原性が低減されている、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項12】
ポリヌクレオチド配列番号4~31から選択される核酸塩基配列を含む、請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項13】
5’-キャップがN7-メチル-Gppp(2’-O-メチル-A)を含む、請求項8のポリヌクレオチド。
【請求項14】
5’非翻訳領域が配列番号33を含むまたはそれからなる、請求項8のポリヌクレオチド。
【請求項15】
3’非翻訳領域が配列番号35を含むまたはそれからなる、請求項8のポリヌクレオチド。
【請求項16】
テイル領域がポリAテイル領域である、請求項8のポリヌクレオチド。
【請求項17】
ポリAテイル領域が60~220アデノシンヌクレオチドである、請求項16のポリヌクレオチド。
【請求項18】
ポリAテイル領域が約80ヌクレオチド長である、請求項17のポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列番号4~31から選択される核酸塩基配列と少なくとも95%同一である核酸塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項20】
ポリヌクレオチドが配列番号4~31から選択される核酸塩基配列と少なくとも99%同一である核酸塩基配列を含む、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項21】
ポリヌクレオチドが配列番号4~31から選択される核酸塩基を含む、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項22】
少なくとも1つのウリジンヌクレオチドが5-メトキシウリジンヌクレオチドで置換されている、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項23】
全ウリジンヌクレオチドが5-メトキシウリジンヌクレオチドで置換されている、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項24】
少なくとも1つのウリジンヌクレオチドがN-メチルシュードウリジンヌクレオチドで置換されている、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項25】
全ウリジンヌクレオチドが5-メトキシウリジンヌクレオチドで置換されている、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項26】
ポリヌクレオチドが5’-キャップ、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域および/またはテイル領域をさらに含む、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項27】
5’-キャップがN7-メチル-Gppp(2’-O-メチル-A)を含む、請求項26のポリヌクレオチド。
【請求項28】
5’非翻訳領域が配列番号33を含むまたはそれからなる、請求項26のポリヌクレオチド。
【請求項29】
3’非翻訳領域が配列番号35を含むまたはそれからなる、請求項26のポリヌクレオチド。
【請求項30】
テイル領域がポリAテイル領域である、請求項26のポリヌクレオチド。
【請求項31】
ポリAテイル領域が60~220アデノシンヌクレオチドである、請求項30のポリヌクレオチド。
【請求項32】
ポリAテイル領域が約80ヌクレオチド長である、請求項31のポリヌクレオチド。
【請求項33】
ポリヌクレオチドが配列番号4の核酸塩基配列を含む、請求項19のポリヌクレオチド。
【請求項34】
1以上の請求項1~33の何れかに記載のポリヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項35】
担体がトランスフェクション試薬、脂質ナノ粒子またはリポソームを含む、請求項34の組成物。
【請求項36】
担体が脂質ナノ粒子である、請求項35の組成物。
【請求項37】
脂質ナノ粒子がATX-002、ATX-081、ATX-095またはATX-126から選択されるカチオン性脂質を含む、請求項36の組成物。
【請求項38】
薬物療法において使用するための、請求項34~37のいずれかの組成物。
【請求項39】
ヒトまたは動物身体の処置に使用するための、請求項34~37のいずれかの組成物。
【請求項40】
処置を必要とする対象における、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の活性低減に関連する疾患または障害の改善、予防、発症遅延または処置用医薬の調製または製造のための、請求項34~37のいずれかの組成物の使用。
【請求項41】
疾患が遺伝性ヘモクロマトーシスである、請求項40の使用。
【請求項42】
対象に請求項34~37のいずれかの組成物を投与することを含む、処置を必要とする対象における、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の活性低減に関連する疾患または障害の改善、予防、発症遅延または処置のための方法。
【請求項43】
疾患が遺伝性ヘモクロマトーシスである、請求項42の方法。
【請求項44】
対象に請求項34~37のいずれかの組成物を投与することを含む、処置を必要とする対象における、ヘモクロマトーシスを改善、予防、発症遅延または処置する方法。
【請求項45】
ヘモクロマトーシスが遺伝性ヘモクロマトーシスおよび続発性ヘモクロマトーシスから選択される、請求項44の方法。
【請求項46】
ヘモクロマトーシスが遺伝性ヘモクロマトーシスである、請求項45の方法。
【請求項47】
ヘモクロマトーシスが続発性ヘモクロマトーシスある、請求項45の方法。
【請求項48】
投与が静脈内、皮下、肺、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、経鼻または吸入である、請求項42~47の何れかの方法。
【請求項49】
投与が1日1回、毎週、2週毎、毎月、2か月毎、四半期または毎年である、請求項42~48の何れかの方法。
【請求項50】
投与が0.01~10mg/kgの用量を含む、請求項42~49の何れかの方法。
【請求項51】
組成物が約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kgまたは約10mg/kgの用量で投与される、請求項42~49の何れかの方法。
【請求項52】
投与が対象の肝臓におけるHFE発現を増加させる、請求項42~51の何れかの方法。
【請求項53】
0.1~500mg用量の1以上の請求項1~33の何れかに記載のポリヌクレオチドおよび該用量を投与するためのデバイスを含む、インビボでヒトHFEを発現させるためのキット。
【請求項54】
デバイスが注射針、静脈注射針または吸入デバイスである、請求項53のキット。
【請求項55】
配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列を含み、ヒトHFEコード配列が配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である、ポリヌクレオチド。
【請求項56】
配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列からなり、ヒトHFEコード配列が配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である、ポリヌクレオチド。
【請求項57】
配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列を含み、ヒトHFEコード配列が配列番号4と少なくとも95%同一である、ポリヌクレオチド。
【請求項58】
配列番号4~31から選択される配列と少なくとも98%同一である核酸塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項59】
配列番号4~31から選択される配列と少なくとも99%同一である核酸塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項60】
配列番号4~31から選択される核酸塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項61】
配列番号4の核酸塩基配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項62】
配列番号67の核酸塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2019年5月24日出願の米国仮出願62/852,549および2020年3月19日出願の米国仮出願62/991,907に基づく利益を主張し、それら各々の内容を、引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)をコードする核酸分子およびヘモクロマトーシスの処置に使用するためのそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1型ヘモクロマトーシスまたは遺伝的ヘモクロマトーシスとしても知られる遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は、変異HFEタンパク質(遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質としても知られる)が原因の常染色体劣性障害である。HFEタンパク質における変異は、通常の食事摂取量であっても、体内、特に肝臓、膵臓、心臓、甲状腺、下垂体および関節への多量の鉄沈着に至る、鉄の腸吸収の増加を引き起こす。過剰の鉄沈着は、処置しないままであれば、肝硬変、糖尿病、関節症、うっ血性心不全、性腺機能低下症および皮膚色素沈着を生じる可能性のある組織損傷および線維症を起こす。
【0004】
30を超える種々の疾患を引き起こすHFE変異がHHで究明されており、Cys282Tyr(C282Y)、His63Asp(H63D)およびSer65Cys(S65C)を含む。最も多く見られる変異は、HFEタンパク質におけるCys282Tyrアミノ酸置換(すなわち、C282Y)を起こす845G多型である。C282Y変異は、HFEタンパク質におけるジスルフィド結合の形成を妨害し、β2-ミクログロブリンに結合する能力を損なわせる。その結果、HFEタンパク質は細胞表面に到達できず、細胞内で凝集し、これが、ヘプシジンmRNA発現減少、血漿ヘプシジンレベル低下および過剰な全身性の鉄蓄積に至るシグナル伝達障害を起こす。遺伝的疾患は、鉄過負荷および臓器損傷が最小である初期に認識され得る。この段階で、疾患は、漸く早期または前硬変期ヘモクロマトーシスと称される。
【0005】
HHの現在の標準治療は瀉血である。体内の鉄の主要動員因子である赤血球の除去により、鉄毒性は最小化され得る。患者は、鉄レベルを正常まで下げるために、各500mLで100回を超える瀉血を必要とし得る。瀉血は、通常誘導期の間、3年間まで週1回または2回実施される。過剰の体内鉄が除去され、フェリチンレベルが50μg/L未満の定値に達したら、生涯の、しかし低頻度の、瀉血(一般に年4~8回)が、50μg/L未満の血清フェリチンレベルを維持するために、維持期の間必要である。
【0006】
瀉血は、一部患者で有効な治療ではあるが、静脈アクセス困難、低血圧、うっ血性心不全またはHHに関連する合併症により瀉血が不適格である患者小集団がある。さらに、一部HH患者は、瀉血(例えば、注射針恐怖症による)に対するコンプライアンスが低い可能性がありまたは処置後貧血、皮下出血および/または意識朦朧に苦しみ得る。
【0007】
瀉血に付随する合併症を考慮して、特に、瀉血レジメンの開始または維持が本意でないまたは不可能である患者のための、HHの別の治療法の必要がある。
【0008】
HHに加えて、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、サラセミアおよび鉄芽球性貧血)、先天性溶血性貧血および骨髄異形成を有する患者に起こり得る続発性ヘモクロマトーシスとして知られる、もう一つの形態のヘモクロマトーシスがある。続発性ヘモクロマトーシス(二次鉄過負荷としても知られる)を有する患者において、鉄過負荷は、鉄吸収増加、貧血処置のために与えられた外因性鉄および反復輸血が原因である。これらの患者の一部における鉄吸収増加は、鉄吸収の損害因子であるヘプシジンの欠乏または抑制が原因である可能性がある。Papanikolaou et al., 2005, Blood 105(10): 4103-5参照。事実、Kautzらは、ヘプシジン合成および鉄恒常性の赤血球系調節因子であるエリスロフェロン(EFRE)が、βサラセミアのマウスモデルで異常に高いレベルで発現され、ERFEがヘプシジンmRNA発現の抑制に介在し、鉄過負荷に寄与できることを示した。Kautz et al., 2015, Blood 126(17): 2031-7参照。続発性ヘモクロマトーシスは、通常、デフェロキサミンまたはデフェラシロクスなどの鉄キレート剤で処置されるが、残念ながら、これらの治療は投与が複雑であり、患者を非常に長時間拘束することが必要であるおよび/または低血圧、GI障害、盲聾障害ならびに肝機能および腎機能異常などの有害作用を伴うことがある。故に、続発性ヘモクロマトーシスを有する患者のための別の治療法の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、HHなどの機能的HFEタンパク質の欠乏に関連する疾患または状態または続発性ヘモクロマトーシスなどのヘプシジンの減少または抑制に関連する他の疾患または状態を改善、予防または処置できる、機能的HFEタンパク質を提供するように翻訳されることができる核酸分子の提供により、ヘモクロマトーシスの別の治療法の必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
本発明は、機能的に活性なタンパク質またはそのフラグメントを提供するために使用できる、新規核酸分子を含む組成物を提供する。本発明は、さらに、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)および続発性ヘモクロマトーシスを含む種々の障害の予防または処置のための、新規核酸分子を含むこれら組成物の使用方法も提供する。より具体的に、本発明の実施態様は、機能的に活性な遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFEタンパク質)またはその機能的に活性なフラグメントを提供するための翻訳可能核酸分子を含む組成物およびヘモクロマトーシスの処置のためのその使用方法を提供する。ある実施態様において、本発明の核酸分子は、HHなどのHFEタンパク質欠乏に関連する疾患または状態または続発性ヘモクロマトーシスなどのヘプシジンの減少または抑制に関連する他の疾患または状態の改善、予防または処置のために機能的に活性であるHFEタンパク質産物を提供するように発現可能であり得る。
【0011】
第一の態様において、本発明は、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFEタンパク質)のmRNAコード配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチドに関する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの混合物を含む。故に、ある実施態様において、本発明は、ヒト遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)またはそのフラグメントを発現するためのポリヌクレオチドに関し、ここで、ポリヌクレオチドは天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドを含み、ヒトHFEまたはHFE活性を有するそのフラグメントを提供するように発現可能である。
【0012】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列は、野生型コード配列である。別の実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列は、コドン最適化配列である。ある例示的実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列は、ヒトでの発現のためにコドン最適化されている。
【0013】
ある実施態様において、HFEタンパク質は、配列番号1に示す野生型コード配列によりコードされる。他の実施態様において、UniProtKB/Swiss-Prot Accession Nos. Q6B0J5(配列番号2)またはF8W7W8(配列番号3)に示されるHFEタンパク質などのHFEタンパク質の天然アイソフォームを発現するコード配列が使用され得る。別の実施態様において、HFEタンパク質は、配列番号1に示す野生型コード配列と95%未満同一であるコドン最適化コード配列によりコードされる。ある例示的実施態様において、HFEタンパク質は、配列番号4~31から選択される核酸を含むまたはそれからなるコドン最適化コード配列によりコードされる。ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドは、コドン最適化コード配列のすぐ下流に停止コドン(UGA、UAAまたはUAG)をさらに含む。ある実施態様において、発現されたHFEタンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列(GenBank Accession No. NP_000401.1、UniProtKB Accession No. Q30201、348アミノ酸)を含むまたはそれからなる。ある実施態様において、発現されたポリペプチドは、機能的HFE活性を保持する配列番号32のフラグメントである。
【0014】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、5’-キャップをさらに含む。ある実施態様において、5’-キャップは、N7-メチル-Gppp(2’-O-メチル-A)を含む。当業者には認識されるとおり、5’-キャップは、RNAオリゴマーの5’末端にA残基を提供できる。
【0015】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、5’非翻訳領域(5’UTR)配列をさらに含む。ある実施態様において、5’UTR配列は、配列番号33~34から選択される。例示的実施態様において、5’UTR配列は、配列番号33を含むまたはそれからなる。
【0016】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、3’非翻訳領域(3’UTR)配列をさらに含む。ある実施態様において、3’UTR配列は、配列番号35~36から選択される。例示的実施態様において、3’UTR配列は、配列番号35を含むまたはそれからなる。
【0017】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、3’ポリAテイル配列をさらに含む。ある実施態様において、ポリAテイル配列の長さは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200または300ヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、3’ポリAテイル配列は、約5~300アデノシンヌクレオチド(例えば、約30~250アデノシンヌクレオチド、約60~220アデノシンヌクレオチド、約80~200アデノシンヌクレオチド、約90~約150アデノシンヌクレオチドまたは約100~約120アデノシンヌクレオチド)含む。ある実施態様において、3’ポリAテイル配列は、60~220アデノシンヌクレオチドである。例示的実施態様において、3’ポリAテイル配列は、約80ヌクレオチド長である。他の例示的実施態様において、3’ポリAテイル配列は約100ヌクレオチド長である。さらに他の例示的実施態様において、3’ポリAテイル配列は約115ヌクレオチド長である。
【0018】
ある実施態様において、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFEタンパク質)のmRNAコード配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチドは、5-ヒドロキシシチジン、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、5-カルボキシシチジン、5-ホルミルシチジン、5-メトキシシチジン、5-プロピニルシチジン、2-チオシチジン、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5,6-ジヒドロ-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-フルオロ-2’-デオキシウリジン、2’-アミノ-2’-デオキシウリジン、2’-アジド-2’-デオキシウリジン、4-チオウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-ヨードウリジン、5-フルオロウリジン、シュードウリジン、2’-O-メチル-シュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジン、N-メチルシュードウリジン、2’-O-メチル-N-メチルシュードウリジン、N-エチルシュードウリジン、N-ヒドロキシメチルシュードウリジン、アラウリジン、N-メチルアデノシン、2-アミノアデノシン、3-メチルアデノシン、7-デアザアデノシン、8-オキソアデノシン、イノシン、チエノグアノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソグアノシンおよび6-O-メチルグアニンから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含む。
【0019】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、1以上のシュードウリジンを含む。ある実施態様において、シュードウリジン残基は、N-メチルシュードウリジン、N-エチルシュードウリジン、N-プロピルシュードウリジン、N-シクロプロピルシュードウリジン、N-フェニルシュードウリジン、N-アミノメチルシュードウリジン、N-メチルシュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジンおよびN-ヒドロキシメチルシュードウリジンから選択される。例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりにN-メチルシュードウリジン残基を含むよう完全に修飾される。
【0020】
別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-フルオロウリジン、5-ヨードウリジン、2-チオウリジンおよび6-メチルウリジンから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含む。例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりに5-メトキシウリジン残基を含むよう完全に修飾される。
【0021】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりに修飾ヌクレオチドの混合物、例えば、5-メトキシウリジン残基とN-メチルシュードウリジン残基の混合物を含み得る。
【0022】
他の態様において、本発明は、HFEをコードする新規コドン最適化mRNA配列を提供する。ある実施態様において、HFEをコードするコドン最適化核酸配列は、配列番号4~31と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一である。ある実施態様において、本発明は、配列番号1に示す野生型コード配列と80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%または95%未満同一であるHFEをコードする核酸配列を提供する。例示的実施態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される配列を含むまたはそれからなるHFEをコードする核酸配列を提供する。機能的HFE活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号4~31に示す核酸配列のフラグメントもさらに提供される。ある実施態様において、核酸配列は、3’末端に停止コドン(UGA、UAAまたはUAG)をさらに含み得る。
【0023】
さらに他の態様において、本発明は、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関し、ここで、ヒトHFEコード配列は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である。例示的実施態様において、本発明は、配列番号4の核酸塩基配列を含むポリヌクレオチドに関する。
【0024】
さらに他の態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関する。ある実施態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関する。他の実施態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される配列と少少なくとも98%同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関する。さらに他の実施態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも99%同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関する。さらに他の実施態様において、本発明は、配列番号4~31から選択される核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドに関する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、HFEをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る新規コドン最適化DNA配列を提供する。従って、本発明は、さらに、配列番号37~64と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一である核酸配列に関する。例示的実施態様において、本発明は、配列番号37~64から選択されるHFEをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る核酸配列を提供する。機能的HFE活性を有するポリペプチドをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る配列番号37~64に示す核酸配列のフラグメントもさらに提供される。ある実施態様において、コドン最適化DNA配列は、3’末端に停止コドン(TGA、TAAまたはTAG)をさらに含み得る。
【0026】
他の態様において、本発明は、(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。ある実施態様において、薬学的に許容される担体は、トランスフェクション試薬、ナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)またはリポソームから選択される。
【0027】
例示的実施態様において、薬学的に許容される担体は脂質ナノ粒子である。例示的実施態様において、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質、凝集低減剤(例えばポリエチレングリコール(PEG)脂質またはPEG修飾脂質)、非カチオン性脂質(例えば中性脂質)およびステロールを含む。さらなる例示的実施態様において、脂質ナノ粒子は、約20~60%カチオン性脂質:5~25%非カチオン性脂質:25~55%ステロール:0.5~15%PEG-脂質のモル比で、少なくとも1つのカチオン性脂質、非カチオン性脂質、ステロール、例えば、コレステロールおよびPEG-脂質を含む。さらに他の実施態様において、カチオン性脂質は、下記詳細な記載に記載のとおり、ATX-002、ATX-081、ATX-095およびATX-126から選択される。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、例えば、ヒトまたは動物身体の処置における、薬物療法における(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物の使用に関する。
【0029】
他の態様において、本発明は、処置を必要とする対象における、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の活性低減に関連する疾患または障害の改善、予防、発症遅延または処置のための医薬の調製または製造のための、(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物の使用に関する。ある実施態様において、疾患または障害は、遺伝性ヘモクロマトーシスである。
【0030】
さらに他の態様において、本発明は、処置を必要とする対象における、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の活性低減に関連する疾患または障害の改善、予防、発症遅延または処置のための方法であって、対象、(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。ある実施態様において、疾患または障害は、遺伝性ヘモクロマトーシスである。
【0031】
さらに他の態様において、本発明は、ヒト対象におけるヘモクロマトーシスを処置する方法であって、ヒト対象に治療有効量の本発明の医薬組成物、例えば、(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。ある実施態様において、ヘモクロマトーシスは遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)である。ある実施態様において、ヘモクロマトーシスは続発性ヘモクロマトーシスある。ある実施態様において、本発明は、ヒト対象におけるヘモクロマトーシスを処置する方法であって、ヒト対象に(1)HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントおよび(2)薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。例示的実施態様において、薬学的に許容される担体は脂質ナノ粒子である。さらなる例示的実施態様において、ナノ粒子は、カチオン性脂質、凝集低減剤(例えばポリエチレングリコール(PEG)脂質またはPEG修飾脂質)、非カチオン性脂質(例えば中性脂質)およびステロールを含む。他のさらなる例示的実施態様において、ナノ粒子は、約20~60%カチオン性脂質:5~25%非カチオン性脂質:25~55%ステロール:0.5~15%PEG-脂質のモル比で、少なくとも1つのカチオン性脂質、非カチオン性脂質、ステロール、例えば、コレステロールおよびPEG-脂質を含む。ある実施態様において、カチオン性脂質は、ATX-002、ATX-081、ATX-095およびATX-126から選択される。ある実施態様において、医薬組成物は、配列番号4~31と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一であるHFEをコードするコドン最適化核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。例示的実施態様において、医薬組成物は、配列番号4と少なくとも95%同一であるHFEをコードするコドン最適化核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。他の例示的実施態様において、医薬組成物は、配列番号4と少なくとも98%同一であるHFEをコードするコドン最適化核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0032】
さらに他の態様において、本発明は、ヒト対象における遺伝性ヘモクロマトーシスを処置する方法であって、HFEに少なくとも1変異を有すると診断されたヒト対象に、治療有効量のここに記載する医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0033】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、静脈内、皮下、肺、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、経鼻または吸入投与を介して投与される。
【0034】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、1日1回、毎週、2週毎、毎月、2か月毎、四半期毎または毎年投与される。
【0035】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、約0.01~約10mg/kgの用量で投与される。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、約0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kgまたは約10mg/kgの用量で投与される。
【0036】
さらに他の態様において、本発明は、インビボでヒトHFEを発現するためのキットに関する。ある実施態様において、キットは、0.1~500mg用量の1以上の本発明のポリヌクレオチドおよび該用量を投与するためのデバイスを含む。ある実施態様において、デバイスは、注射針、静脈内針または吸入デバイスである。
【0037】
本発明のこれらおよび他の態様および特性は、本明細書の次のセクションに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】種々の濃度のヒトHFEタンパク質をコードするmRNAでトランスフェクトしたヒト初代肝細胞からトランスフェクション24時間後単離したライセートからのウェスタンブロットを示す。これは、mRNA構築物がインビトロで相当量のHFEタンパク質を産生する能力を示す。
【0039】
図2】500ngのヒトHFEタンパク質をコードするmRNAでトランスフェクトしたヒト初代肝細胞から種々の時点(トランスフェクション1~6日後)で単離したライセートからのウェスタンブロットデータを示す。これは、HFEコードmRNAの単回トランスフェクション後、相当期間のHFE発現を示す。
【0040】
図3】脂質ナノ粒子封入HFEコードmRNA静脈内投与48時間後取ったHfeノックアウトマウスの肝臓ホモジネートからのウェスタンブロットデータを示す。mRNAを、0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgで投与した。これは、肝臓HFEタンパク質発現が、HFEコードmRNA単回投与後用量依存的方法で検出され得ることを示す。
【0041】
図4】脂質ナノ粒子封入HFEコードmRNA静脈内投与48時間後のHfeノックアウトマウスの肝臓ヘプシジン発現を示す。mRNAを、0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgで投与した。これは、肝臓ヘプシジン発現が、HFEコードmRNA単回投与後、再構築され得ることを示す。
【0042】
図5】脂質ナノ粒子封入HFEコードmRNA静脈内投与48時間後のHfeノックアウトマウスの血清鉄レベルを示す。mRNAを、0.3mg/kg(雌=F)、1mg/kg(雌=F)および3mg/kg(雄=M)で投与した。これは、末梢鉄レベルが、HFEコードmRNAの単回投与に応答して低減されることを示す。
【0043】
図6】脂質ナノ粒子封入HFEコードmRNA静脈内投与48時間後のHfeノックアウトマウスにおける血液トランスフェリン(Tf)飽和レベルを示す。mRNAを、0.3mg/kg(雌=F)、1mg/kg(雌=F)および3mg/kg(雄=M)で投与した。これは、Tf飽和レベルが、HFEコードmRNAの単回投与に応答して低減されることを示す。
【0044】
図7】脂質ナノ粒子封入HFEコードmRNA静脈内投与7日後のHfeノックアウトマウスにおける肝臓鉄レベルを示す。mRNAを、1mg/kgで投与した。肝臓鉄レベルは、処置群の雌(F)および雄(M)マウスで、媒体(veh)対照で処置された動物より減少した。
【発明を実施するための形態】
【0045】
発明の詳細な記載
本発明は、治療適用に使用するための、広範な新規薬剤および組成物に関する。ある実施態様において、本発明の核酸分子および組成物は、対象における遺伝性ヘモクロマトーシスおよび/または遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の存在もしくは機能の減少に関連するあらゆるさらなる疾患の改善、予防または処置に使用され得る。他の実施態様において、本発明の核酸分子および組成物は、続発性ヘモクロマトーシスの改善、予防または処置に使用され得る。
【0046】
ある実施態様において、本発明は、ヒト遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質の発現のための合成、精製、翻訳可能ポリヌクレオチド分子を包含する。分子は天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドを含んでよく、ヒト遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)またはHFE活性を有するそのフラグメントをコードする。
【0047】
ここで使用する用語「翻訳可能」は用語「発現可能」と相互交換可能に使用でき、ポリヌクレオチドまたはその一部が宿主細胞によりポリペプチドに変換され得る能力をいう。当分野で理解されるとおり、翻訳は、細胞の細胞質におけるリボソームがポリペプチドを作る過程である。翻訳において、メッセンジャーRNA(mRNA)は、特定のアミノ酸鎖またはポリペプチドを生じるようリボソーム複合体におけるtRNAにより解読される。さらに、用語「翻訳可能」は、本明細書でオリゴマーを参照して使用するとき、オリゴマーの少なくとも一部、例えば、オリゴマー配列のコード領域(コード配列またはCDSとしても知られる)が、タンパク質またはそのフラグメントに変換され得ることを意味する。
【0048】
ここで使用する用語「モノマー」は、オリゴマーを形成するために同一または異なるタイプの他の分子と結合され得る単一単位、例えば、単一核酸をいう。
【0049】
その一方で、用語「オリゴマー」は「ポリヌクレオチド」と相互交換可能に使用でき、少なくとも2個のモノマーを含む分子をいい、DNAおよびRNAなどのオリゴヌクレオチドを含む。RNAモノマーを含むオリゴマーの場合、本発明のオリゴマーは、コード配列(CDS)に加えて、複数配列含み得る。これらのさらなる配列は、非翻訳配列、すなわち、宿主細胞によりタンパク質に変換されない配列であり得る。これらの非翻訳配列は、5’-キャップまたはその一部、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)およびテイル領域、例えば、ポリAテイル領域を含み得る。本発明において、「翻訳可能オリゴマー」、「翻訳可能分子」、「翻訳可能ポリヌクレオチド」または「翻訳可能化合物」は、タンパク質またはそのフラグメント、例えば、ヒトHFEタンパク質またはそのフラグメントに変換され得る領域、例えば、RNAのコード領域(例えば、ヒトHFEまたはそのコドン最適化版のコード配列)を含む、配列をいう。
【0050】
ここで使用する用語「コドン最適化」は、タンパク質発現レベルを増加させる、コードされるタンパク質アミノ酸配列を変えることなく、異なるコドンを選択することにより再設計されている天然(または意図的に設計された天然のバリアント)コード配列を意味する(Gustafsson et al., 2004, Trends Biotechnol 22: 346-53)。高コドン適応指標(CAI)、LowU方法、mRNA二次構造、シス制御配列、GC含量などの変数および多くの他の類似変数は、タンパク質発現レベルとの幾分かの相関を示している(Villalobos et al., 2006, BMC Bioinformatics 7:285)。高CAI(コドン適応指標)方法は、タンパク質コード配列全体の最も高頻度で使用される同義コドンを選択する。各アミノ酸の最も高頻度で使用されるコドンを、ヒトゲノムからの74218タンパク質コード遺伝子から推定する。LowU方法は、U部分が少ない同義コドンに置き換えられ得るU含有コドンのみ標的とする。置き換えの選択肢が少なければ、より高頻度で使用されるコドンが選択される。LowU方法により、配列の残りのコドンは変えられない。この方法は、N-メチルシュードウリジンまたは5-メトキシウリジンなどの1以上の修飾ヌクレオチドを含み合成されるコード配列の設計のために、ここに開示するmRNAと組み合わせて使用され得る。
【0051】
本開示を理解する当業者には認識されるとおり、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物が、対象における、遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFEタンパク質)の活性低減(例えば、濃度、存在および/または機能の低減に起因する)に関連するあらゆる疾患または障害の改善、予防または処置に使用され得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)の改善、予防または処置のための方法に使用され得る。ここで処理される疾患または障害(例えば、HH)は、過剰の鉄沈着、組織損傷、線維症、肝硬変、糖尿病、関節症、うっ血性心不全、性腺機能低下症および皮膚色素過剰に関連し得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物が、これら前記症状の何れかまたは全ての改善、予防または処置に使用され得る。
【0052】
当業者により理解されるとおり、遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は、HFE欠乏、HFE遺伝性ヘモクロマトーシス、HFE関連遺伝性ヘモクロマトーシス、ヘモクロマトーシスI型、古典的ヘモクロマトーシス、原発性ヘモクロマトーシス、青銅色糖尿病またはヘモジデリン沈着症を含むが、これらに限定されない多くの別名で呼ばれ得る。従って、HHは、本明細書、実施例、図面および特許請求の範囲において、これら別名と相互交換可能に使用され得る。
【0053】
本開示を理解する当業者には認識されるとおり、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物は、対象におけるヘプシジンの減少または抑制に関連するあらゆる疾患または障害の改善、予防または処置に有用であり得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、続発性ヘモクロマトーシスの改善、予防または処置のための方法において使用され得る。ある実施態様において、続発性ヘモクロマトーシスは、赤血球新生の遺伝的または後天的障害を有する患者で起こる。ある実施態様において、疾患は、サラセミア(例えば、βサラセミア)、鎌状赤血球貧血、ピルビン酸キナーゼ欠乏、先天性赤血球異形成貧血(CDA)、ダイアモンド・ブラックファン貧血、遺伝性球状赤血球症またはX連鎖鉄芽球性貧血(ALAS2欠乏)などの遺伝的疾患である。ある実施態様において、疾患は、後天的特発性鉄芽球性貧血(AISA)、ある種の骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症および難治性再生不良性貧血などの後天的疾患である。ある実施態様において、続発性ヘモクロマトーシスは、過剰の鉄沈着、組織損傷、線維症、肝硬変、糖尿病、関節症、うっ血性心不全、性腺機能低下症および皮膚色素沈着と関連し得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物が、これら前記症状の何れかまたは全ての改善、予防または処置に使用され得る。
【0054】
当業者により理解されるとおり、続発性ヘモクロマトーシス(SH)は、鉄代謝の原発性、遺伝性障害によるものではない、鉄過負荷の全例を広く指称または包含するよう使用され得る。Gattermann, 2009, Dtsch Arztebl Int. 106(30): 499-504参照。続発性ヘモクロマトーシスはほぼ常に赤血球新生の遺伝的または後天的障害および/または輸血によるこのような障害の処置によるものである。続発性ヘモクロマトーシス(SH)は、二次鉄過負荷および非HFEヘモクロマトーシス、これらに限定されない多くの別名で呼ばれ得る。従って、続発性ヘモクロマトーシス(SH)は、本明細書、実施例、図面および特許請求の範囲において、これら別名と相互交換可能に使用され得る。
【0055】
機能的HFEタンパク質またはその機能的フラグメントをコードする本発明のポリヌクレオチドは、それを必要とする患者(例えば、HHまたはSHを有する患者)の肝臓、特に肝細胞に送達され得て、患者の機能的に活性なHFEレベルを上昇できる。ポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物を、患者におけるHHまたはSHのあらゆる症状の予防、処置、改善または回復に使用され得る。例示的実施態様において、患者はヒトである。
【0056】
さらなる態様において、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物は、HH患者の疾患管理のための瀉血への依存の低減のためにも使用され得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドおよびそれを含む組成物は、血清フェリチンレベルを50μg/L未満に維持するためにHH患者で必要とされる総瀉血回数を減少(例えば、週1回または月/年期間の頻度の減少)させ得る。
【0057】
本発明の実施態様は、ヒト遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の発現ができるポリヌクレオチドの製造方法を包含する。方法は、インビトロで天然および修飾ヌクレオシド三リン酸存在下でHFE DNA鋳型を転写して産生混合物を形成させ、該産生混合物を精製して、ポリヌクレオチドを単離することを含む。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、当分野で知られる方法により製造され得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、インビトロ、エクスビボまたはインビボでポリペプチドまたはタンパク質を発現するよう設計された核酸塩基配列を示し得る。
【0058】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、5’-キャップ、モノマーの5’非翻訳領域、モノマーのコード領域、モノマーの3’非翻訳領域およびモノマーのテイル領域を含み得る。
【0059】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、約200~約4,000モノマー長であり得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、800~2,000モノマー長、1,000~1,600モノマー長または1,100~1,500モノマー長であり得る。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは1,200~1,400モノマー長である。さらなる例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、約1,300モノマー長である。
【0060】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは天然ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの混合物を含み、ヒトHFEまたはHFE活性を有するそのフラグメントを提供するように発現可能である。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドは5-メトキシウリジンである。例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりに5-メトキシウリジン残基を含むよう完全に修飾される。ある実施態様において、修飾ヌクレオチドはN-メチルシュードウリジンである。例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりにN-メチルシュードウリジン残基を含むよう完全に修飾される。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりに5-メトキシウリジン残基とN-メチルシュードウリジン残基の混合物を含むよう修飾される。
【0061】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、RNAモノマーおよび/またはアンロック核酸(UNA)およびロック核酸(LNA)モノマーなどの代替モノマーを含む翻訳可能分子であり得る。
【0062】
ある実施態様において、翻訳可能ポリヌクレオチドは、1~約80個のアンロック核酸(UNA)モノマーを含み得る。ある実施態様において、翻訳可能ポリヌクレオチドは、1~50個のUNAモノマーまたは1~20個のUNAモノマーまたは1~10個のUNAモノマーを含み得る。
【0063】
ある実施態様において、翻訳可能ポリヌクレオチドは、1~約80個のロック核酸(LNA)モノマーを含み得る。ある実施態様において、翻訳可能ポリヌクレオチドは、1~50個のLNAモノマーまたは1~20個のLNAモノマーまたは1~10個のLNAモノマーを含み得る。
【0064】
ある実施態様において、1以上の本発明のポリヌクレオチドは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで、細胞に送達され得る。当分野で知られるようなウイルスおよび非ウイルス導入方法を使用して、本発明のポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入できる。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、薬学的に許容される媒体、例えば、ナノ粒子またはリポソームで送達され得る。さらなる例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ナノ粒子、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)を介して送達される。
【0065】
さらなる実施態様において、本発明は、対象に本発明のポリヌクレオチドを含む組成物を投与することによる、対象における疾患または状態を処置する方法を提供する。
【0066】
ある態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物は、疾患または障害、例えば、対象におけるヘプシジンの活性低減(例えば、濃度、存在および/または機能の低減に起因する)に関連する疾患または障害の改善、予防または処置のために使用され得る。この態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物は、対象におけるヘプシジンの濃度または効力を制御、調節または増加するために投与される。ヘプシジンの活性低減に関連する疾患または障害は、HHおよびSHを含む。
【0067】
ある態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物は、疾患または障害、例えば、対象における遺伝性ヘモクロマトーシスタンパク質(HFE)の活性低減(例えば、濃度、存在および/または機能の低減に起因する)に関連する疾患または障害の改善、予防または処置ために使用され得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物は、対象におけるHFEタンパク質の濃度または効力の制御、調節または増加のために投与され得る。ある実施態様において、発現されるHFEタンパク質は、患者が欠損している非修飾、天然タンパク質であり得る(例えば、機能的HFE活性が部分的にまたは完全にないHFEの変異型を有する患者)。ある態様において、本発明のポリヌクレオチドにより発現されるHFEタンパク質は、非修飾、天然、機能的に活性なHFEタンパク質と同一であってよく、これは、変異型のHFEタンパク質を担持する患者のHHの処置に使用され得る。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物は、HHの改善、予防または処置のために使用され得る。
【0068】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは細胞または対象に送達されて、翻訳されて、細胞または対象におけるHFEレベルを増加させ得る。
【0069】
ここで使用する用語「対象」は、ヒトまたはあらゆる非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊長類)をいう。ヒトは、出生前および出生後の形態を含む。多くの実施態様において、対象はヒトである。対象は、疾患の診断または処置のために医療提供者を訪れるヒトをいう患者であり得る。用語「対象」は、ここでは、「個体」または「患者」と相互交換可能に使用される。対象は、疾患または障害を有してよくまたは有することが疑われるが、該疾患または障害の症状を示しても示していなくてもよい。
【0070】
例示的実施態様において、本発明の対象は、ヘプシジンの活性低減(例えば、濃度、存在および/または機能の低減に起因する)を有する対象である。他の例示的実施態様において、本発明の対象は、HFEの活性低減(例えば、濃度、存在および/または機能の低減に起因する)を有する対象である。さらなる例示的実施態様において、対象はヒトである。
【0071】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置対象の機能的に活性なHFEタンパク質レベルを増加させ得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、対象の処置前のベースラインレベルに比して、機能的に活性なHFEタンパク質レベルの約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、500%またはそれ以上の増加をもたらす。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、対象の処置前のベースライン肝臓HFEレベルに比して、肝臓HFEレベルの増加をもたらす。ある実施態様において、肝臓HFEレベルの増加は、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、500%またはそれ以上であり得る。
【0072】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドから発現されるHFEタンパク質は、肝臓、血清、血漿、腎臓、心臓、筋肉、脳、脳脊髄液またはリンパ節で検出可能である。例示的実施態様において、HFEタンパク質は、肝臓細胞、例えば、対象における肝細胞で発現される。
【0073】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置対象の肝臓における総タンパク質の1mgあたり約10ng、約20ng、約50ng、約100ng、約150ng、約200ng、約250ng、約300ng、約350ng、約400ng、約450ng、約500ng、約600ng、約700ng、約800ng、約900ng、約1000ng、約1200ngまたは約1500ngまたはそれ以上の天然、非変異ヒトHFE(すなわち、異常または変異HFEではなく正常または野生型HFE)タンパク質レベルの発現をもたらす。
【0074】
興味のある1以上の値に適用される、ここで使用する用語「約」または「おおよそ」は、記載される対照値に類似する値をいう。ある実施態様において、用語「おおよそ」または「約」は、特に断らない限りまたは他に文脈から明らかではない限り、記載される対照値のいずれかの方向で(超えるまたは少ない)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満の範囲内に入る広範な値をいう(このような数値が
可能な値の100%を超える場合は例外である)。
【0075】
ある実施態様において、天然の、変異していない機能的に活性なヒトHFEタンパク質またはその機能的に活性なフラグメントの発現は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与後検出可能である。ある実施態様において、機能的に活性なHFEタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与2時間、4時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、48時間、60時間および/または72時間後検出可能である。ある実施態様において、機能的に活性なHFEタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与1日、2日、3日、4日、5日、6日および/または7日後検出可能である。ある実施態様において、機能的に活性なHFEタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与1週間、2週間、3週間および/または4週間後検出可能である。ある実施態様において、機能的に活性なHFEタンパク質は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与後、肝臓、例えば、肝細胞で検出可能である。
【0076】
ヒトHFE
ヒトHFE遺伝子は、約40.1kDaの分子量を有する348アミノ酸タンパク質をコードする。HFEタンパク質は、肝細胞鉄センサーおよびヘプシジンの上流制御因子である。HFEは、ヘプシジンのシグナル伝達に不可欠であり、より大型の鉄感知複合体の構成要素として働くと考えられる。この方法で、HFEは、肝臓における鉄恒常性維持のための重要な制御因子である。上記のとおり、正常な機能的HFE活性の遺伝的欠乏は、処置しないままであれば、重度臓器損傷に至り得る食事による鉄の慢性過剰吸収に起因する遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)を起こし得る。
【0077】
コンセンサスヒトHFE mRNAコード配列は、1,044核酸塩基(停止コドン不在)の配列を有し、配列番号1に示す。翻訳されたとき、コンセンサスヒトHFE mRNAコード配列は、配列番号32の野生型HFEタンパク質である348アミノ酸をコードする。
【0078】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、機能的に活性なヒトHFEタンパク質または機能的HFE活性を示すそのフラグメントに翻訳されることができるmRNA配列を含む。機能的に活性なヒトHFEタンパク質を発現する本発明のポリヌクレオチドは、正常HFE活性の欠乏に関連する疾患の改善、予防または処置のための方法の使用に適し得る。
【0079】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチは、5’-キャップ、5’UTR、ヒトHFEコード配列(CDS)、3’UTRおよび/またはテイル領域を含み得る。例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは、5’-キャップ((例えば、N7-メチル-Gppp(2’-O-メチル-A))、配列番号33を含むまたはそれからなる5’UTR、HFE CDS、配列番号35を含むまたはそれからなる3’UTRおよび/またはテイル領域を含み得る。さらなる例示的実施態様において、HFE CDSは、下に詳述する配列番号4~31のコドン最適化配列を含む。ここに記載するこれらおよび他の実施態様の何れかにおいて、ポリヌクレオチドは、1以上の(または全)ウリジン残基の代わりに1以上の修飾ヌクレオチド、例えば、5-メトキシウリジンおよび/またはN-メチルシュードウリジンを含み得る。
【0080】
ある実施態様において、分子の翻訳効率は、HFEの天然mRNAと比較して増加され得る。例えば、分子の翻訳発現は、HFEの天然mRNAに比して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%またはそれ以上増加され得る。
【0081】
ある実施態様において、本発明の適当なmRNA配列は、HFEタンパク質をコードするmRNA配列を含む。天然に存在する、機能的に活性なヒトHFEタンパク質の配列を配列番号32に示す。
【0082】
ある実施態様において、適当なmRNA配列は、ヒトHFEのホモログまたはバリアントをコードするmRNA配列であり得る。ここで使用する、ヒトHFEタンパク質のホモログまたはバリアントは、実質的機能的HFEタンパク質活性を保持しながら、野生型または天然に存在するヒトHFEタンパク質と比較して1以上のアミノ酸置換、欠失および/または挿入を含む修飾ヒトHFEタンパク質であり得る。ある実施態様において、本発明に適するmRNAは、ヒトHFEタンパク質と実質的に同一であるタンパク質をコードする。ある実施態様において、本発明に適するmRNAは、配列番号32と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有するHFEタンパク質をコードし、ここで、該HFEタンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するHFEタンパク質と比較して、実質的に等しいまたは増加した機能的活性を示す。ある実施態様において、本発明に適するmRNAは、ヒトHFEタンパク質の機能的に活性なフラグメント、機能的に活性な部分または機能的に活性な部分をコードする。
【0083】
ある実施態様において、本発明に適するmRNAはヒトHFEタンパク質のフラグメントまたは部分をコードし、ここで、タンパク質のフラグメントまたは部分は、野生型タンパク質に類似するHFE活性をなお保持する。
【0084】
ある実施態様において、本発明に適するmRNAは、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一である配列を含む。例示的実施態様において、本発明に適するmRNAは、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である配列を含む。他の例示的実施態様において、本発明に適するmRNAは、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも98%同一である配列を含む。さらなる例示的実施態様において、本発明に適するmRNAは、配列番号4と少なくとも98%同一である配列を含む。
【0085】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一であるコード配列を含む。ある実施態様において、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%またはそれ以上同一であるコード配列を含むポリヌクレオチドは、さらに5’-キャップ、5’UTR、3’UTRおよびテイル領域から選択される1以上の配列を含む。
【0086】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%未満同一であるコード配列を含み、機能的に活性なヒトHFEタンパク質を発現する。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列に95%未満同一であるコード配列を含み、機能的ヒトHFEタンパク質を発現する。他の例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列に95%未満同一であるコード配列を含み、機能的ヒトHFEタンパク質を発現し、ここで、コード配列は、配列番号4~31から選択される配列に少なくとも95%同一である。従って、ある実施態様において、本発明は、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供し、ここで、ヒトHFEコード配列は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である。例示的実施態様において、本発明は、配列番号1の完全長ヒトHFEコード配列にわたり野生型ヒトHFEコード配列と95%未満同一である核酸塩基配列を含むまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供し、ここで、ヒトHFEコード配列は、配列番号4~31から選択される配列と少なくとも95%同一である。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号4~31から選択される配列および該配列のすぐ下流に停止コドン(UGA、UAAまたはUAG)を含み得る。特定の実施態様において、本発明は、配列番号4の核酸塩基配列を含むポリヌクレオチドを提供する。さらに別の具体的実施態様において、本発明は、配列番号67のヌクレオチド塩基配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0087】
ある実施態様において、本発明は、HFEをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る新規コドン最適化DNA配列をさらに提供する。従って、本発明は、さらに、配列番号37~64から選択される配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一である核酸配列に関する。例示的実施態様において、本発明は、配列番号37~64から選択されるHFEをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る核酸配列を提供する。さらに提供されるのは、機能的HFE活性を有するポリペプチドをコードするmRNA配列を提供するよう翻訳され得る配列番号37~64に示す核酸配列のフラグメントである。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号37~64から選択される配列および該配列のすぐ下流の停止コドン(TGA、TAAまたはTAG)を含み得る。特定の実施態様において、本発明は、配列番号37のDNA配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0088】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、1以上のアンロックヌクレオモノマー(すなわち、UNAモノマー)を含み得る。例えば、米国特許9,944,929参照。
【0089】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、1以上のロック核酸(すなわち、LNAモノマー)を含み得る。例えば、米国特許6,268,490、6,670,461、6,794,499、6,998,484、7,053,207、7,084,125、7,399,845および8,314,227参照。
【0090】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、他の配列に融合した(例えば、NまたはC末端融合)HFEタンパク質の完全長、フラグメントまたは部分を含む融合タンパク質をコードする。ある実施態様において、NまたはC末端配列は、シグナル配列または細胞ターゲティング配列である。
【0091】
修飾ヌクレオチド
ここに記載する種々の実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、天然および修飾核酸モノマー(すなわち、ヌクレオチド)の組み合わせを含み得る。修飾ヌクレオチドの種々の例は、引用により全体として本明細書に包含させるWO/2018/222926に開示される。
【0092】
ある実施態様において、アルキル、シクロアルキルまたはフェニル置換基は、置換されていなくても、1以上のアルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノまたはニトロ置換基でさらに置換されていてもよい。
【0093】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、1以上のシュードウリジンを含む。シュードウリジンの例は、N-アルキルシュードウリジン、N-シクロアルキルシュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジン、N-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N-フェニルシュードウリジン、N-フェニルアルキルシュードウリジン、N-アミノアルキルシュードウリジン、N-アルキルシュードウリジン、N-アルキルシュードウリジン、N-アルコキシシュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジン、N-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N-モルホリノシュードウリジン、N-フェニルシュードウリジンおよびN-ハロシュードウリジンを含む。シュードウリジンの例は、N-アルキル-N-アルキルシュードウリジン、N-アルキル-N-アルコキシシュードウリジン、N-アルキル-N-ヒドロキシシュードウリジン、N-アルキル-N-ヒドロキシアルキルシュードウリジン、N-アルキル-N-モルホリノシュードウリジン、N-アルキル-N-フェニルシュードウリジンおよびN-アルキル-N-ハロシュードウリジンを含む。これらの例において、アルキル、シクロアルキルおよびフェニル置換基は、置換されていなくても、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アミノまたはニトロ置換基でさらに置換されていてもよい。シュードウリジンの例は、N-メチルシュードウリジン、N-エチルシュードウリジン、N-プロピルシュードウリジン、N-シクロプロピルシュードウリジン、N-フェニルシュードウリジン、N-アミノメチルシュードウリジン、N-メチルシュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジンおよびN-ヒドロキシメチルシュードウリジンをさらに含む。
【0094】
ある実施態様において、シュードウリジン残基は、N-メチルシュードウリジン、N-エチルシュードウリジン、N-プロピルシュードウリジン、N-シクロプロピルシュードウリジン、N-フェニルシュードウリジン、N-アミノメチルシュードウリジン、N-メチルシュードウリジン、N-ヒドロキシシュードウリジンおよびN-ヒドロキシメチルシュードウリジンから選択される。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりにN-メチルシュードウリジン残基を含むよう完全に修飾される。
【0095】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、5-ヒドロキシウリジン、5-メチルウリジン、5-ヒドロキシメチルウリジン、5-カルボキシウリジン、5-カルボキシメチルエステルウリジン、5-ホルミルウリジン、5-メトキシウリジン、5-プロピニルウリジン、5-ブロモウリジン、5-フルオロウリジン、5-ヨードウリジン、2-チオウリジンおよび6-メチルウリジンから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含む。例示的実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、ウリジン残基の代わりに5-メトキシウリジン残基を含むよう完全に修飾される。
【0096】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-O-メチルプリンヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロピリミジンヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシプリンヌクレオチド、ユニバーザル塩基ヌクレオチド、5-C-メチル-ヌクレオチドおよび逆位デオキシ脱塩基モノマー残基から選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0097】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、3’末端安定化ヌクレオチド、3’-グリセリルヌクレオチド、3’-逆位脱塩基ヌクレオチドおよび3’-逆位チミジンから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0098】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、アンロック核酸ヌクレオチド(UNA)、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)、2’-O,4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド、2’-メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド、2’-メチル-チオ-エチル、2’-デオキシ-2’-フルオロヌクレオチドおよび2’-O-メチルヌクレオチドから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。ある例示的実施態様において、修飾ヌクレオチドは、アンロック核酸ヌクレオチド(UNA)である。アンロック核酸およびポリヌクレオチドへのそれらの取り込みの方法の詳細な概要は、引用により全体として本明細書に包含させるWO/2018/222926に見られる。他の例示的実施態様において、修飾ヌクレオチドは、ロック核酸ヌクレオチド(LNA)である。
【0099】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、2’,4’-拘束2’-O-メトキシエチル(cMOE)および2’-O-エチル(cEt)修飾DNAから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0100】
ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドは、2’-アミノヌクレオチド、2’-O-アミノヌクレオチド、2’-C-アリルヌクレオチドおよび2’-O-アリルヌクレオチドから選択される1以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0101】
上に記載する塩基修飾の例を、糖修飾および結合修飾を含むヌクレオシドまたはヌクレオチド構造のさらなる修飾と組み合わせ得る。
【0102】
分子キャップ構造
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、5’-キャップをさらに含む。
【0103】
5’-キャップおよびそのアナログは、当分野で知られる。5’-キャップ構造のいくつかの例は、WO/2017/053297、WO/2015/051169、WO/2015/061491および米国特許8,093,367および8,304,529に示される。
【0104】
ある実施態様において、本発明は、5’-キャップRNAを提供し、ここで、開始キャップオリゴヌクレオチドプライマーは、一般形態m7Gppp[N2’Ome][N](式中、m7GはN7-メチル化グアノシンまたは何れかのグアノシンアナログであり、Nは何れかの天然、非修飾もしくは非天然ヌクレオシドであり、「n」は0~4の何れかの整数であってよく、「m」は1~9の何れかの整数であってよい)を有する。このような5’-キャップRNAを合成するための組成物および方法は、WO/2017/053297に記載される。
【0105】
例示的実施態様において、5’-キャップは、N7-メチル-Gppp(2’-O-メチル-A)を含む。
【0106】
例示的実施態様において、5’-キャップは、次の構造を有する。
【化1】
【0107】
ある実施態様において、5’-キャップは、m7GpppGmキャップであり得る。さらなる実施態様において、5’-キャップは、m7GpppA、m7GpppC;非メチル化キャップアナログ(例えば、GpppG);ジメチル化キャップアナログ(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャップアナログ(例えば、m2,2,7GpppG)、ジメチル化対称キャップアナログ(例えば、m7Gpppm7G)またはアンチリバースキャップアナログ(例えば、ARCA;m7、2’OmeGpppG、m72’dGpppG、m7,3’OmeGpppG、m7,3’dGpppGおよびその四リン酸誘導体)(例えば、Jemielity et al., 2003, RNA 9: 1108-1122参照)から選択され得る。他の実施態様において、5’-キャップは、ARCAキャップ(3’-OMe-m7G(5’)pppG)またはmCAP(m7G(5’)ppp(5’)G、N-メチル-グアノシン-5’-Triホスフェート-5’-グアノシン)であり得る。
【0108】
5’および3’非翻訳領域(UTR)
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、5’非翻訳領域(5’UTR)および/または3’非翻訳領域(3’UTR)をさらに含み得る。当分野で理解されるとおり、5’および/または3’UTRは、mRNAの安定性または翻訳効率に影響し得る。例示的実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、5’UTRおよび3’UTRを含む。
【0109】
5’UTRおよび3’UTR配列の例は、米国特許9,149,506およびWO/2018/222890に見られ得る。
【0110】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、少なくとも約25、50、75、100、125、150、175、200、300、400または500ヌクレオチドである5’UTRを含み得る。ある実施態様において、5’UTRは、約10~150ヌクレオチド(例えば、約25~100ヌクレオチド、約35~75ヌクレオチド、約40~60ヌクレオチドまたは約50ヌクレオチド)含む。例示的実施態様において、5’UTRは、約45、46、47、48、49または50ヌクレオチド長である。
【0111】
ある実施態様において、5’UTRは、ポリヌクレオチドの安定性を増加するために、当分野で比較的安定として知られるmRNA分子(例えば、ヒストン、チューブリン、グロビン、GAPDH、アクチンまたはクエン酸サイクル酵素)に由来する。他の実施態様において、5’UTR配列は、CMV前初期1(IE1)遺伝子の部分的配列を含み得る。ある実施態様において、5’UTRは、ヒトIL-6、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノゲンアルファ鎖、ヒトトランスチレチン、ヒトハプトグロビン、ヒトアルファ-1-抗キモトリプシン、ヒト抗トロンビン、ヒトアルファ-1-抗トリプシン、ヒトアルブミン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト補体C5、SynK、AT1G58420、マウスベータグロビン、マウスアルブミンおよびタバコエッチウイルスまたは前記の何れかのフラグメントの5’UTRから選択される配列を含む。
【0112】
例示的実施態様において、5’UTRは、配列番号33に示す配列を含むまたはそれからなる。さらに他の例示的実施態様において、5’UTRは、配列番号33に示す配列のフラグメント、例えば、配列番号33の少なくとも10、15、20、25、30、35、40または45連続ヌクレオチドのフラグメントである。
【0113】
別の実施態様において、5’UTRは、タバコエッチウイルス(TEV)由来である。ある実施態様において、5’UTRは、配列番号34に示す配列を含むまたはそれからなる。他の実施態様において、5’UTRは、配列番号34に示す配列のフラグメント、例えば、配列番号34の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120または125連続ヌクレオチドのフラグメントである。
【0114】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。当分野で理解されるとおり、IRESは、末端非依存的様式での翻訳開始を可能とするRNA要素である。例示的実施態様において、IRESは5’UTRにある。他の実施態様において、IRESは5’UTR外にあり得る。
【0115】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、少なくとも約25、50、75、100、125、150、175、200、300、400または500ヌクレオチドである3’UTRを含み得る。ある実施態様において、3’UTRは、約25~200ヌクレオチド(例えば、約50~150ヌクレオチド、約75~125ヌクレオチド、約80~120ヌクレオチドまたは約100ヌクレオチド)含む。例示的実施態様において、3’UTRは、約100、101、102、103、104、105、106、107、108、109または110ヌクレオチド長である。
【0116】
ある実施態様において、3’UTRは、アラニンアミノトランスフェラーゼ1、ヒトアポリポタンパク質E、ヒトフィブリノゲンアルファ鎖、ヒトハプトグロビン、ヒト抗トロンビン、ヒトアルファグロビン、ヒトベータグロビン、ヒト補体C3、ヒト増殖因子、ヒトヘプシジン、MALAT-1、マウスベータグロビン、マウスアルブミンおよびアフリカツメガエルベータグロビンまたは前記の何れかのフラグメントの3’UTRから選択される配列を含む。
【0117】
例示的実施態様において、3’UTRは、配列番号35に示す配列を含むまたはそれからなる。他の例示的実施態様において、3’UTRは、配列番号35に示す配列のフラグメント、例えば、配列番号35の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90または100連続ヌクレオチドのフラグメントである。
【0118】
別の実施態様において、3’UTRは、アフリカツメガエルベータグロビンに由来する。ある実施態様において、3’UTRは、配列番号36に示す配列を含むまたはそれからなる。他の実施態様において、3’UTRは、配列番号36に示す配列のフラグメント、例えば、配列番号36の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150連続ヌクレオチドのフラグメントである。
【0119】
ある例示的実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドは、配列番号33の5’UTR配列および配列番号35の3’UTR配列を含む。
【0120】
テイル領域
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護するのに役立ち得るテイル領域を含む。ある実施態様において、テイル領域は、ポリAテイルであり得る。
【0121】
ポリAテイルは、当分野で知られる多様な方法を使用して、例えば、合成またはインビトロ転写RNAにテイルを付加するポリ(A)ポリメラーゼを使用して、付加できる。他の方法は、ポリAテイルをコードするための転写ベクターの使用またはリガーゼの使用(例えば、T4 RNAリガーゼおよび/またはT4 DNAリガーゼを使用するスプリントライゲーションを経て)を含み、ここで、ポリAは、センスRNAの3’末端にライゲートされ得る。ある実施態様において、上記方法の何れかの組み合わせが利用される。
【0122】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、3’ポリAテイル構造を含む。ある実施態様において、ポリAテイルの長さは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200または300ヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、3’ポリAテイルは、約5~300アデノシンヌクレオチド(例えば、約30~250アデノシンヌクレオチド、約60~220アデノシンヌクレオチド、約80~200アデノシンヌクレオチド、約90~約150アデノシンヌクレオチドまたは約100~約120アデノシンヌクレオチド)含む。例示的実施態様において、3’ポリAテイルは、約80ヌクレオチド長である。他の例示的実施態様において、3’ポリAテイルは約100ヌクレオチド長である。さらに他の例示的実施態様において、3’ポリAテイルは約115ヌクレオチド長である。さらに他の例示的実施態様において、3’ポリAテイルは、約250ヌクレオチド長である。
【0123】
ある実施態様において、3’ポリAテイルは、1以上のUNAモノマーを含む。ある実施態様において、3’ポリAテイルは、2、3、4、5、10、15、20またはそれ以上のUNAモノマーを含む。例示的実施態様において、3’ポリAテイルは、2個のUNAモノマーを含む。さらなる例示的実施態様において、3’ポリAテイルは、は、連続して見られる2個のUNAモノマーを含み、すなわち、3’ポリAテイルで互いに連続している。
【0124】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、3’ポリCテイル構造を含む。ある実施態様において、ポリCテイルの長さは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200または300ヌクレオチドであり得る。ある実施態様において、3’ポリCテイルは、約5~300シトシンヌクレオチド(例えば、約30~250シトシンヌクレオチド、約60~220シトシンヌクレオチド、約80~約200シトシンヌクレオチド、約90~150シトシンヌクレオチドまたは約100~約120シトシンヌクレオチド)含む。例示的実施態様において、3’ポリCテイルは、約80ヌクレオチド長である。他の例示的実施態様において、3’ポリCテイルは約100ヌクレオチド長である。さらに他の例示的実施態様において、3’ポリCテイルは約115ヌクレオチド長である。さらに他の例示的実施態様において、3’ポリCテイルは、約250ヌクレオチド長である。ポリCテイルをポリAテイルに付加してよくまたはポリAテイルを置き換えてよい。ポリCテイルは、ポリAテイルの5’末端またはポリAテイルの3’末端に付加され得る。
【0125】
ある実施態様において、ポリAおよび/またはポリCテイルの長さを、本発明の修飾ポリヌクレオチドの安定性、故に、タンパク質の転写を制御するために調節する。例えば、ポリAテイルの長さがポリヌクレオチドの半減期に影響し得るため、ポリAテイルの長さを、mRNAのヌクレアーゼ抵抗性のレベルを修飾するよう調節し、それにより、標的細胞におけるポリヌクレオチド発現および/またはポリペプチド産生の時間経過を制御することができる。
【0126】
トリプル停止コドン
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、CDSのすぐ下流に、トリプル停止コドンを作る配列を含み得る。トリプル停止コドンは、翻訳効率を増強するために取り込まれ得る。ある実施態様において、翻訳可能オリゴマーは、配列番号4~31に例示される、ここに記載するHFE CDSのすぐ下流に、配列AUAAGUGAA(配列番号65)を含み得る。
【0127】
翻訳開始部位
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、翻訳開始部位を含み得る。このような配列は当分野で知られ、コザック配列を含む。例えば、Kozak, Marilyn, 1988, Mol. and Cell Biol. 8: 2737-2744; Kozak, Marilyn, 1991, J. Biol. Chem. 266: 19867-19870; Kozak, Marilyn, 1990, PNAS USA 87:8301-8305;およびKozak, Marilyn, 1989, J. Cell Biol. 108: 229-241参照。当分野で理解されるとおり、コザック配列は、mRNAの効率的翻訳開始を可能とする、真核生物mRNAの訳開始部位周囲を中心とする短コンセンサス配列である。リボソーム翻訳機構は、コザック配列の状況でAUG開始コドンを認識する。
【0128】
ある実施態様において、翻訳開始部位、例えば、コザック配列は、HFEのコード配列の上流に挿入される。ある実施態様において、翻訳開始部位は、5’UTRの下流に挿入される。ある例示的実施態様において、翻訳開始部位は、HFEのコード配列の上流および5’UTRの下流に挿入される。
【0129】
当分野で理解されるとおり、コザック配列の長さは種々であり得る。一般に、リーダー配列の長さの延長は、翻訳を増強する。
【0130】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、配列番号66の配列を有するコザック配列を含む。ある例示的実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは配列番号66の配列を有するコザック配列を含み、ここで、コザック配列は5’UTRのすぐ下流およびHFEのコード配列のすぐ上流である。
【0131】
合成方法
種々の態様において、本発明は、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチドを合成する方法を提供する。
【0132】
本発明のポリヌクレオチドは、ここに開示する方法および当分野で知られるあらゆる関連技術を使用して、合成および単離され得る。
【0133】
核酸を調製するある方法は、例えば、Merino, Chemical Synthesis of Nucleoside Analogues, (2013); Gait, Oligonucleotide synthesis: a practical approach (1984); Herdewijn, Oligonucleotide Synthesis, Methods in Molecular Biology, Vol. 288 (2005)に示される。
【0134】
ある実施態様において、HFEタンパク質のためのmRNAコード配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメントは、インビトロ転写(IVT)反応により製造され得る。ヌクレオシド三リン酸(NTP)の混合物を、T7試薬を使用して重合して、例えば、DNA鋳型からRNAを産生し得る。DNA鋳型をRNaseフリーDNaseおよびRNAカラム分離で分解し得る。
【0135】
ある実施態様において、リガーゼを使用して、合成オリゴマーをRNA分子またはRNA転写物の3’末端に結合し、本発明のポリヌクレオチドを形成できる。3’末端にライゲートされた合成オリゴマーは、ポリAテイルの官能基を提供でき、有利に3’-エキソリボヌクレアーゼによる抵抗性を提供する。ライゲート産物は比活性が増加し得て、タンパク質発現レベルを増加する。
【0136】
ある実施態様において、ライゲート産物は、天然特異性を有するRNA転写物で産生され得る。ライゲート産物は、天然特異性との適合性を確実にするために、5’末端にRNA転写物の構造を保持する合成分子であり得る。
【0137】
さらなる実施態様において、ライゲート産物は、外因性RNA転写物または非天然RNAで産生され得る。ライゲート産物は、RNAの構造を保持する合成分子であり得る。
【0138】
理論に拘束されることを意図しないが、細胞における標準的mRNA分解経路は、(i)ポリAテイルが3’エキソヌクレアーゼにより徐々に切断されて、小さくなり、効率的翻訳に必要なループ相互作用を遮断し、キャップをオープンにして攻撃させる;(ii)キャップ除去複合体は、5’-キャップを除去する;(iii)転写物の非保護および翻訳不適格残余物を、5’および3’エキソヌクレアーゼ活性により分解する工程を含む。
【0139】
本発明の実施態様は、天然転写物より増加した翻訳活性を有し得る、新規ポリヌクレオチド構造に関する。数ある中で、ここに提供されるポリヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼが脱アデニル化過程においてポリAテイルを逆トリミングすることを阻止し得る。
【0140】
脂質ベースの製剤
脂質ベースの製剤は、生体適合性および大規模産生の容易さにより、RNAの最も有望な送達系の一つとしての認識が高まっている。カチオン性脂質は、RNA送達のための合成物質として広く試験されている。互いに混合された後、核酸は、カチオン性脂質により凝縮して、リポプレックスとして知られる脂質/核酸複合体を形成する。これらの脂質複合体は、遺伝物質をヌクレアーゼから保護し、負荷電細胞膜との相互作用により、細胞に送達させることができる。リポプレックスは、正荷電脂質を、生理学的pHで負荷電核酸と直接混合することにより調製され得る。
【0141】
慣用のリポソームは、カチオン性、アニオン性または中性(ホスホ)脂質およびコレステロールからなり得る脂質二重層からなり、水性コアを封入する。脂質二重層および水性空間両者が、それぞれ、疎水性または親水性化合物を取り込み得る。リポソーム特徴およびインビボ行動は、立体安定化を提供するために、リポソーム表面への親水性ポリマーコーティング、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の付加により修飾され得る。さらに、リポソームを、表面または結合PEG鎖の末端へのリガンド(例えば、抗体、ペプチドおよび炭水化物)への結合により、特異的ターゲティングのために使用できる。
【0142】
リポソームは、水性区画を囲むリン脂質二重層からなる、コロイド状脂質ベースおよび界面活性剤ベースの送達系である。球形小胞として存在でき、サイズは20nm~数ミクロンの範囲であり得る。カチオン性脂質ベースのリポソームは、静電相互作用を介して負荷電核酸と複合体化でき、生体適合性、低毒性およびインビボ臨床適用に必要な大規模産生の可能性を提供する複合体をもたらす。リポソームは、取り込みのために原形質膜と融合できる;細胞に入ったら、リポソームは、エンドサイトーシス経路を介して処理され、次いで、遺伝物質がエンドソーム/担体から細胞質に放出される。リポソームは、リポソームが基本的に生物学的膜のアナログであると考えると優れた生体適合性であり、天然および合成両者のリン脂質から合成できるため、薬物送達媒体として長く認識されている。
【0143】
カチオン性リポソームは、プラスミドDNA、アンチセンスオリゴおよびsiRNA/小ヘアピンRNA-shRNAを含むオリゴヌクレオチドのための、伝統的に最も一般的に使用される非ウイルス送達系である。DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)およびDOTMA(N-[l-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルフェート)などのカチオン性脂質は、静電相互作用により負荷電核酸と複合体またはリポプレックスを形成でき、ナノ粒子を形成し、高インビトロトランスフェクション効率を提供する。さらに、例えば、中性1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)ベースのナノリポソームなどのRNA送達のための中性脂質ベースのナノリポソームが開発された。
【0144】
一部実施態様によると、HFEをコードするここに記載するポリヌクレオチドは、脂質製剤化される。脂質製剤は、好ましくは、リポソーム、リポプレックス、PLGAなどのコポリマーおよび脂質ナノ粒子から選択されるが、これらに限定されない。例示的実施態様において、脂質製剤は脂質ナノ粒子である。さらなる例示的実施態様において、ポリヌクレオチドは脂質ナノ粒子に封入され、ここで、脂質ナノ粒子は、リポソームがない医薬組成物の一部である。
【0145】
ある好ましい実施態様において、脂質ナノ粒子(LNP)は
(a)核酸(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチド)、
(b)カチオン性脂質、
(c)凝集低減剤(例えばポリエチレングリコール(PEG)脂質またはPEG修飾脂質)、
(d)所望により非カチオン性脂質(例えば中性脂質)および
(e)所望により、ステロール
を含む。
【0146】
ある実施態様において、脂質ナノ粒子製剤は、(i)少なくとも1つのカチオン性脂質;(ii)中性脂質;(iii)ステロール、例えば、コレステロール;および(iv)PEG-脂質からなり、約20~60%カチオン性脂質:5~25%中性脂質:25~55%ステロール;0.5~15%PEG-脂質のモル比である。
【0147】
チオカルバメートおよびカルバメート含有脂質製剤
HFEをコードするポリヌクレオチドを送達するための脂質および脂質組成物のいくつかの例が、WO/2015/074085および米国特許公報US2018/0169268およびUS20180170866に示される。ある実施態様において、脂質は、次の式
【化2】
〔式中、
およびRはいずれも1~14炭素からなる直鎖状アルキルまたは2~14炭素からなるアルケニルもしくはアルキニルであり;
およびLはいずれも5~18炭素からなる直鎖状アルキレンまたはアルケニレンであるかまたはNとヘテロ環を形成し;
XはSであり;
は結合または1~6炭素からなる直鎖状アルキレンからなるかまたはNとヘテロ環を形成し;
は1~6炭素からなる直鎖または分枝鎖アルキレンからなり;そして
およびRは、同一または異なって、水素または1~6炭素からなる直鎖もしくは分枝鎖アルキルからなる。〕
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0148】
脂質製剤は、次のものから選択される、1以上のイオン化可能カチオン性脂質を含み得る。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0149】
カチオン性脂質
本発明のポリヌクレオチドを封入する脂質ナノ粒子(LNP)は、好ましくは脂質ナノ粒子の形成に適するカチオン性脂質を含む。好ましくは、カチオン性脂質は、ほぼ生理学的pHで正味正電荷を有する。
【0150】
カチオン性脂質は、例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロライド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロライド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドおよび1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロライド塩としても知られる)、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-y-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、l-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TMA.CI)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TAP.CI)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノアート(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノアート(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン(MC4エーテル)または前記の何れかの何らかの組み合わせであり得る。他のカチオン性脂質は、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロマイド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE)および2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(XTC)を含むが、これらに限定されない。さらに、例えば、リポフェクチン(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)およびリポフェクタミン(DOSPAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)などの市販のカチオン性脂質調製物を使用できる。
【0151】
他の適当なカチオン性脂質は、国際公開WO09/086558、WO09/127060、WO10/048536、WO10/054406、WO10/088537、WO10/129709およびWO2011/153493;米国特許公報2011/0256175、2012/0128760および2012/0027803;米国特許8,158,601;およびLove et al., 2010, PNAS 107(5): 1864-69に開示される。他の適当なアミノ脂質は、アルキル置換基が異なるもの(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-およびN-プロピル-N-エチルアミノ-)を含む、別の脂肪酸基および他のジアルキルアミノ基を有するものを含む。一般に、低飽和アシル鎖を有するアミノ脂質は、特に、濾過滅菌の目的で、複合体が約0.3ミクロンより小さくなければならないとき、より容易にサイズ調整される。C14~C22の範囲の炭素鎖長の不飽和脂肪酸を含むアミノ脂質が使用され得る。他の足場を使用して、アミノ脂質のアミノ基と脂肪酸または脂肪アルキル部分を分けることもできる。
【0152】
ある実施態様において、本発明のアミノまたはカチオン性脂質は、脂質が生理学的pH以下(例えば、pH7.4)のpHで正荷電であり、好ましくは生理学的pH以上の第二のpHで中性あるように、少なくとも1つのプロトン化可能または脱プロトン化可能基を有する。当然、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は、平衡化過程であり、荷電または中性脂質との記載は、優勢種の性質をいい、全脂質が該荷電または中性形態で存在する必要がないことは理解される。1を超えるプロトン化可能または脱プロトン化可能基を有するまたは双性イオン性である脂質は、本発明における使用から除外されない。ある実施態様において、プロトン化可能脂質は、プロトン化可能基の約4~約11のpKa、例えば、約5~約7のpKaを有する。
【0153】
カチオン性脂質は、粒子に存在する総脂質の約20mol%~約70mol%または75mol%または約45mol%~約65mol%または約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または約70mol%を構成し得る。他の実施態様において、脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質のモルベースで約25%~約75%、例えば、モルベースで約20%~約70%、約35%~約65%、約45%~約65%、約60%、約57.5%、約57.1%、約50%または約40%含む(脂質ナノ粒子中の脂質の100%総モルに基づく)。ある実施態様において、カチオン性脂質対核酸比は、約3~約15、例えば、約5~約13または約7~約11である。
【0154】
医薬組成物
ある態様において、本発明は、機能的に活性なHFEタンパク質またはその機能的フラグメントをコードできる本発明のポリヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0155】
医薬組成物は、局所または全身投与され得る。ある態様において、医薬組成物は、あらゆる投与方法で投与され得る。ある態様において、投与は、静脈内、皮下、肺、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、吸入または経鼻投与を含むあらゆる経路により得る。
【0156】
本発明の実施態様は、脂質製剤、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)にHFEをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物を含む。
【0157】
ある実施態様において、医薬組成物は、カチオン性脂質、アニオン性脂質、ステロール、ペグ化脂質および前記の何れかの組み合わせから選択される1以上の脂質を含み得る。ある実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、カチオン性脂質、リン脂質、コレステロールおよびペグ化脂質を含む。
【0158】
ある例示的実施態様において、本発明の医薬組成物は、リポソームを含まない。
【0159】
さらなる実施態様において、医薬組成物は、ナノ粒子を含み得る。
【0160】
ある例示的実施態様において、本発明の医薬組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)に封入された本発明のHFEをコードするポリヌクレオチドを含み、リポソームを含まない。
【0161】
本発明のHFEをコードするポリヌクレオチド送達のための脂質および脂質組成物のいくつかの例は、引用により全体として本明細書に包含させる、WO/2015/074085に示される。ある実施態様において、脂質はカチオン性脂質である。ある実施態様において、カチオン性脂質は、式II
【化3】
〔式中、RおよびRは、同一または異なって、各々直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、LおよびLは、同一または異なって、各々少なくとも5炭素原子を有する直鎖アルキルであるかまたはNとヘテロ環を形成し、Xは結合または--CO--O--であり、それにより、L-CO--O--Rが形成され、XはSまたはOであり、Lは結合または低級アルキルであり、Rは低級アルキルであり、RおよびRは、同一または異なって、各々低級アルキルである。〕
の化合物を含む。Lが存在せず、RおよびRが各々少なくとも7炭素原子からなり、Rがエチレンまたはn-プロピレンであり、RおよびRがメチルまたはエチルであり、LおよびLが各々少なくとも5炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lが存在せず、RおよびRが各々少なくとも7炭素原子からなり、Rがエチレンまたはn-プロピレンであり、RおよびRがメチルまたはエチルであり、LおよびLが各々少なくとも5炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lが存在せず、RおよびRが各々少なくとも9炭素原子のアルケニルからなり、Rがエチレンまたはn-プロピレンであり、RおよびRがメチルまたはエチルであり、LおよびLが各々少なくとも5炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lがメチレンであり、RおよびRが各々少なくとも7炭素原子からなり、Rがエチレンまたはn-プロピレンであり、RおよびRがメチルまたはエチルであり、LおよびLが各々少なくとも5炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lがメチレンであり、RおよびRが各々少なくとも9炭素原子からなり、Rがエチレンまたはn-プロピレンであり、RおよびRが各々メチルであり、LおよびLが少なくとも7炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lがメチレンであり、Rが少なくとも9炭素原子を有するアルケニルからなり、Rが少なくとも7炭素原子を有するアルケニルからなり、Rがn-プロピレンであり、RおよびRが各々メチルであり、LおよびLが少なくとも7炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。Lがメチレンであり、RおよびRが各々少なくとも9炭素原子を有するアルケニルからなり、Rがエチレンであり、RおよびRが各々メチルであり、LおよびLが少なくとも7炭素原子を有する直鎖アルキルからなる式IIの化合物もここに記載される。
【0162】
例示的実施態様において、カチオン性脂質は、ATX-001、ATX-002、ATX-003、ATX-004、ATX-005、ATX-006、ATX-007、ATX-008、ATX-009、ATX-010、ATX-011、ATX-012、ATX-013、ATX-014、ATX-015、ATX-016、ATX-017、ATX-018、ATX-019、ATX-020、ATX-021、ATX-022、ATX-023、ATX-024、ATX-025、ATX-026、ATX-027、ATX-028、ATX-029、ATX-030、ATX-031、ATX-032、ATX-081、ATX-095およびATX-126またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を含む。
【0163】
例示的実施態様において、カチオン性脂質は、ATX-002、ATX-081、ATX-095またはATX-126から選択される。
【0164】
ある実施態様において、カチオン性脂質またはその薬学的に許容される塩は、脂質分子のナノ粒子または二重層を含む脂質組成物に存在し得る。脂質二重層は、好ましくは中性脂質またはポリマーをさらに含む。脂質組成物は、好ましくは液体媒体を含む。組成物は、好ましくは本発明のHFEコード配列を含むポリヌクレオチドをさらに封入する。脂質組成物は、好ましくは本発明のポリヌクレオチドおよび中性脂質またはポリマーをさらに含む。脂質組成物は、好ましくはHFEコード配列を含むポリヌクレオチドを封入する。
【0165】
さらなる実施態様において、カチオン性脂質は、式III
【化4】
〔RおよびRは、同一または異なって、各々1~9炭素からなる直鎖または分枝鎖アルキル、2~11炭素からなるアルケニルまたはアルキニルまたはコレステリルであり、LおよびLは、同一または異なって、各々5~18炭素からなる直鎖アルキレンまたはアルケニレンであり、Xは--CO--O--であり、それにより-L-CO--O--Rが形成され、XはSまたはOであり、Xは--CO--O--であり、それにより-L-CO--O--Rが形成され、Lは結合であり、Rは1~6炭素からなる直鎖または分枝鎖アルキレンであり、RおよびRは、同一または異なって、各々水素または1~6炭素からなる直鎖または分枝鎖アルキルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含むである。ある実施態様において、XがSである。他の実施態様において、Rがエチレン、n-プロピレンまたはイソブチレンから選択される。さらに他の実施態様において、RおよびRが別々にメチル、エチルまたはイソプロピルである。さらに他の実施態様において、LおよびLが同一である。さらに他の実施態様において、LおよびLが異なる。さらに他の実施態様において、LまたはLが7炭素を有する直鎖アルキレンからなる。さらに他の実施態様において、LまたはLが9炭素を有する直鎖アルキレンからなる。さらに他の実施態様において、RおよびRが同一である。さらに他の実施態様において、RおよびRが異なる。さらに他の実施態様において、RおよびRが各々アルケニルからなる。さらに他の実施態様において、RおよびRが各々アルキルからなる。さらに他の実施態様において、アルケニルは1個の二重結合からなる。さらに他の実施態様において、RまたはRは9炭素からなる。さらに他の実施態様において、RまたはRは11炭素からなる。さらに他の実施態様において、RまたはRは7炭素からなる。さらに他の実施態様において、Lが結合であり、Rがエチレンであり、XがSおよびRおよびRが各々メチルである。さらに他の実施態様において、Lが結合であり、Rがn-プロピレンであり、XがSであり、RおよびRが各々メチルである。さらに他の実施態様において、Lが結合であり、Rがエチレンであり、XがSおよびRおよびRが各々エチルである。
【0166】
当業者には認識されるとおり、式IIおよびIIIの化合物は塩を形成し、それもまた本開示の範囲内である。ここでの式IIおよびIIIの化合物の記載は、特に断らない限り、その塩の記載を含むと」理解される。ここで使用する用語「塩」は、無機および/または有機酸と形成される酸性塩ならびに無機および/または有機塩基と形成される塩基性塩を意味する。さらに、式IIまたはIIIの化合物が、ピリジンまたはイミダゾールを含むが、これらに限定されない塩基性部分と、カルボン酸などの、しかしこれに限定されない酸性部分両者を含むとき、双性イオン(「分子内塩」)が形成され得て、ここで使用する用語「塩」に含まれる。塩は、薬学的に許容される(すなわち、非毒性の、生理学的に許容される)塩であり得るが、他の塩も有用である。式IIまたはIIIの化合物の塩は、例えば、式IIまたはIIIの化合物と、等量など一定量の酸または塩基を、塩が沈殿するものなどの媒体または水性媒体中で反応させ、その後凍結乾燥により形成され得る。
【0167】
酸付加塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩(例えばここに記載のもの)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸(トシル酸としても知られる)、ウンデカン酸塩などを含む。さらに、塩基性医薬化合物からの薬学的に有用な塩の形成に適すると一般に考えられる酸は、例えば、Berge et al., 1977, J. Pharmaceutical Sciences 66(1) 1-19; P. Gould, 1986, International J. Pharmaceutics 33 201-217; Anderson et al., 1996, The Practice of Medicinal Chemistry Academic Press, New York; and in The Orange Book (Food & Drug Administration, Washington, D.C.)に記載される。
【0168】
塩基性塩の例は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、有機塩基(例えば、有機アミン)との塩、例えば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N-ビス(デヒドロアビエチル)エチレンジアミンと形成)、N-メチル-D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミド、t-ブチルアミンおよびアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩などを含む。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルクロライド、ブロマイドおよびアイオダイド)、ジアルキル硫酸(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロライド、ブロマイドおよびアイオダイド)、アリールアルキルハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロマイド)およびその他などの薬剤で四級化され得る。
【0169】
全てのこのような酸および塩基塩は、本開示の範囲内で薬学的に許容される塩であると意図され、全ての酸および塩基塩は、本開示の目的で、遊離形態の対応する化合物と同等であると考える。式IIまたはIIIの化合物は、溶媒和されていない形および水和を含む溶媒和された形で存在し得る。一般に、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態は、本開示の目的で、溶媒和されていない形態と同等であると考える。式IIまたはIIIの化合物およびその塩、溶媒和物は、互変異性形態(例えば、アミドまたはイミノエーテルとして)で存在し得る。全てのこのような互変異性形態は、本開示の一部としてここでは考慮される。
【0170】
ここに記載するカチオン性脂質化合物を、HFEをコードするポリヌクレオチドと組み合わせて、微粒子、ナノ粒子、リポソームまたはミセルを形成し得る。粒子、リポソームまたはミセルにより送達される本発明のポリヌクレオチドは、ガス、液体または固体の形であり得る。カチオン性脂質化合物およびポリヌクレオチドを、他のカチオン性脂質化合物、ポリマー(合成または天然)、界面活性剤、コレステロール、炭水化物、タンパク質、脂質などと組み合わせて、粒子を形成し得る。次いで、これらの粒子を、所望により医薬添加物と合わせて、医薬組成物を形成し得る。
【0171】
ある実施態様において、カチオン性脂質化合物は、比較的非細胞毒性である。カチオン性脂質化合物は、生体適合性および生分解性であり得る。カチオン性脂質は、約5.5~約7.5、より好ましくは約6.0~約7.0の範囲のpKaを有し得る。約3.0~約9.0または約5.0~約8.0の所望のpKaを有するよう設計し得る。
【0172】
カチオン性脂質化合物を含む組成物は、30~70%カチオン性脂質化合物、0~60%コレステロール、0~30%リン脂質および1~10%ポリエチレングリコール(PEG)であり得る。好ましくは、組成物は30~40%カチオン性脂質化合物、40~50%コレステロールおよび10~20%PEGである。他の好ましい実施態様において、組成物は50~75%カチオン性脂質化合物、20~40%コレステロールおよび5~10%リン脂質および1~10%PEGである。組成物は、60~70%カチオン性脂質化合物、25~35%コレステロールおよび5~10%PEGを含み得る。組成物は、90%までのカチオン性脂質化合物および2~15%ヘルパー脂質を含み得る。製剤は、例えば8~30%化合物、5~30%ヘルパー脂質および0~20%コレステロール;4~25%カチオン性脂質、4~25%ヘルパー脂質、2~25%コレステロール、10~35%コレステロール-PEGおよび5%コレステロール~アミン;または2~30%カチオン性脂質、2~30%ヘルパー脂質、1~15%コレステロール、2~35%コレステロール-PEGおよび1~20%コレステロール~アミン;または90%までのカチオン性脂質および2~10%ヘルパー脂質を含むまたは100%カチオン性脂質を含む、脂質粒子製剤であり得る。
【0173】
ある実施態様において、1以上のコレステロールベースの脂質は、コレステロール、ペグ化コレステロールおよびDC-Chol(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)および1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジンから選択される。例示的実施態様において、コレステロールベースの脂質はコレステロールである。
【0174】
ある実施態様において、1以上のペグ化脂質、すなわち、PEG修飾脂質。ある実施態様において、1以上のPEG修飾脂質は、C-C20長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した5kDa長までのポリ(エチレン)グリコール鎖を含む。ある実施態様において、PEG修飾脂質は、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000]などの誘導体化セラミドである。ある実施態様において、PEG修飾またはペグ化脂質は、ペグ化コレステロールまたはジミリストイルグリセロール(DMG)-PEG-2Kである。例示的実施態様において、PEG修飾脂質はペグ化コレステロールである。
【0175】
さらなる実施態様において、医薬組成物は、ウイルスまたは細菌ベクター内に本発明のHFEをコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号4~31から選択される配列を含むポリヌクレオチド)を含み得る。
【0176】
本発明の医薬組成物は、当分野で知られるとおり、担体、希釈剤または添加物を含み得る。医薬組成物および方法の例は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro ed. 1985), and Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition (2005)に記載される。
【0177】
医薬組成物のための添加物は、抗酸化剤、懸濁化剤、分散剤、防腐剤、緩衝剤、等張化剤および界面活性剤を含む。
【0178】
本発明の薬剤または医薬製剤の有効用量は、細胞でHFEをコードするポリヌクレオチドの翻訳を引き起こすのに十分な量であり得る。
【0179】
治療有効用量は、治療効果をもたらすのに十分な薬剤または製剤の量であり得る。治療有効用量を、1以上の別々の投与でおよび異なる経路で投与し得る。当分野で認識されるとおり、治療有効用量または治療有効量は、本発明の医薬組成物に含まれる治療剤の総量に基づき、主として決定される。一般に、治療有効量は、対象に有意義な利益(例えば、ヘモクロマトーシスの処置、調節、治癒、予防および/または改善)の達成に十分である。例えば、治療有効量は、所望の治療および/または予防効果の達成に十分な量であり得る。一般に、処置を必要とする対象に投与される治療剤(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチドまたはその機能的に活性なフラグメント)の量は、対象の特徴による。このような特徴は、対象の状態、疾患重症度、一般的健康状態、年齢、性別および体重を含む。当業者は、これらおよび他の関連因子によって適切な投与量を容易に決定できる。さらに、最適投与量範囲を決定するために、客観的および主観的両アッセイを、所望により用いてよい。
【0180】
ここに提供される方法は、治療有効量のここに記載するポリヌクレオチド(例えば、HFEまたはその機能的に活性なフラグメントをコードするポリヌクレオチド)の単回および複数回投与を意図する。HFEをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物は、対象の状態の態様、重症度および程度(例えば、対象のヘモクロマトーシス疾患状態およびヘモクロマトーシスの関連症状の重症度および/または対象のHFE活性レベル)により、一定間隔で投与され得る。ある実施態様において、治療有効量の本発明のポリヌクレオチド(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメント)を、定常的間隔(例えば、年1回、6か月毎に1回、4か月毎に1回、3か月毎に1回、2か月毎に1回、月1回)、2週毎に1回、毎週、毎日、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回または連続的に周期的に投与し得る。例示的実施態様において、治療有効量の本発明のポリヌクレオチド(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメント)は、毎週、2週毎に1回または毎月投与される。
【0181】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、その中に含まれるHFEをコードするポリヌクレオチドの長期放出に適するように製剤化される。このような長期放出組成物は、長い投与間隔で、好都合に対象に投与される。例えば、ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、対象に1日2回、毎日または隔日投与される。ある実施態様において、本発明の医薬組成物は、対象に週2回、週1回、10日毎、2週毎、28日毎、毎月、6週毎、8週毎、一か月おき、3か月毎、4か月毎、6か月毎、9か月毎または年1回投与される。HFEをコードするポリヌクレオチドを長期にわたり送達または放出するためにデポー投与(例えば、皮下、筋肉内)に製剤化された、医薬組成物も考慮される。好ましくは、用いられる長期放出手段は、安定性を増強するためにHFEをコードするポリヌクレオチドになされる修飾と組み合わせる。
【0182】
ある実施態様において、治療有効用量は、投与により、機能的HFEの1~1000pg/mlまたは1~1000ng/mlまたは1~1000μg/mlまたはそれ以上の血清または血漿レベルをもたらし得る。
【0183】
ある実施態様において、治療有効用量の本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置した対象の患者の機能的HFEタンパク質のレベルを増加させ得る。ある実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置前の対象のベースライン機能的HFEタンパク質レベルに比して、肝臓における機能的HFEタンパク質レベルを5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%増加させる。ある実施態様において、治療有効用量の本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置前の対象の肝臓におけるベースライン機能的HEFレベルに比して、機能的HFEタンパク質レベルを増加させる。ある実施態様において、肝臓におけるベースライン機能的HFEレベルに比した肝臓の機能的HFEレベル増加は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%またはそれ以上である。
【0184】
ある実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、処置前のベースラインレベルと比較して、肝臓における機能的HFE発現レベルを増加させる。ある実施態様において、治療有効用量の本発明のポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置対象の肝臓における総タンパク質のmgあたり約10ng、約20ng、約50ng、約100ng、約150ng、約200ng、約250ng、約300ng、約350ng、約400ng、約450ng、約500ng、約600ng、約700ng、約800ng、約900ng、約1000ng、約1200ngまたは約1500ng以上の機能的HFEタンパク質発現レベルをもたらす。
【0185】
ある実施態様において、治療有効用量のHFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、ヘプシジンmRNA発現増加、血漿ヘプシジンレベル増加、血清フェリチン減少、血漿鉄減少、尿中排泄鉄減少および/または肝臓鉄減少をもたらす。
【0186】
ある実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、生物学的サンプルにおけるフェリチンレベル減少をもたらす。ある実施態様において、治療有効用量のHFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置前のベースラインフェリチンレベルと比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%生物学的サンプル(例えば、血清サンプル)におけるフェリチンレベル減少をもたらす。例示的実施態様において、生物学的サンプルは血清サンプルである。
【0187】
ある実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血清フェリチンを、500μg/L、600μg/L、700μg/L、800μg/L、900μg/L、1000μg/L、2000μg/L、3000μg/L、4000μg/L、5000μg/L以上のレベルから、500μg/L、400μg/L、300μg/L、200μg/L、100μg/Lまたは50μg/L未満のレベルまで減少できる。例示的実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血清フェリチンを1000μg/L以上のレベルから200μg/L未満のレベルまで減少できる。さらなる例示的実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血清フェリチンを1000μg/L以上のレベルから50μg/L未満のレベルまで減少できる。
【0188】
血清フェリチンレベルの測定は、当分野で知られる何れかの方法を使用してなされ得る。例えば、血清フェリチンは、免疫アッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、免疫化学発光法(Abbott Architectアッセイ、ADVIA CentaurアッセイまたはRoche ECLIAアッセイ)または免疫比濁アッセイ(Tinta-quantアッセイ)を使用して、測定できる。例えば、Cullis et al., 2018, British Journal of Haematology 181(3): 331-340参照。
【0189】
ある実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、生物学的サンプルにおける鉄レベルを減少させる。ある実施態様において、治療有効用量のHFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物の投与は、処置前のベースライン鉄レベルと比較して、生物学的サンプル(例えば、血漿または尿サンプル)における鉄レベルを、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%減少させる。例示的実施態様において、生物学的サンプルは、血漿サンプルである。他の例示的実施態様において、生物学的サンプルは、尿サンプルである。
【0190】
ある実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血漿鉄を、180μg/dL、190μg/dL、200μg/dL、210μg/dL、220μg/dL、230μg/dL、240μg/dL、250μg/dL、260μg/dL、270μg/dL以上のレベルから180μg/dL、150μg/dL、125μg/dL、100μg/dLまたは75μg/dL未満のレベルに減少できる。例示的実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血漿鉄を、180μg/dL以上のレベルから150μg/dL未満のレベルまで減少できる。さらなる例示的実施態様において、治療有効用量は、定常的に投与したとき、血漿を180μg/dL以上のレベルから100μg/dL未満のレベルまで減少できる。
【0191】
さらなる実施態様において、治療有効用量、定常的に投与したとき、処置対象の血漿ヘプシジンレベルを増加させる。ある実施態様において、治療有効用量、定常的に投与したとき、瀉血の必要性を減らすかまたは無くす。
【0192】
インビボの活性剤(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物)の治療有効用量は、約0.001~約500mg/kg体重の用量であり得る。例えば、治療有効用量は、約0.001~0.01mg/kg体重または0.01~0.1mg/kgまたは0.1~1mg/kgまたは1~10mg/kgまたは10~100mg/kgであり得る。ある実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、約0.1~約10mg/kg体重、例えば、約0.3~約5mg/kg、約0.5~約4.5mg/kgまたは約2~約4mg/kg範囲の用量で提供される。
【0193】
インビボの活性剤(例えば、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物)の治療有効用量は、少なくとも約0.001mg/kg体重または少なくとも約0.01mg/kgまたは少なくとも約0.1mg/kgまたは少なくとも約1mg/kgまたは少なくとも約2mg/kgまたは少なくとも約3mg/kgまたは少なくとも約4mg/kgまたは少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、少なくとも約50mg/kgまたはそれ以上の用量であり得る。ある実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約1.5mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kgまたは約6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、75mg/kgまたは100mg/kgの用量で提供される。例示的実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、約0.3mg/kgの用量で提供される。他の例示的実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、約1mg/kgの用量で提供される。さらに他の例示的実施態様において、HFEをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、約3mg/kgの用量で提供される。
【0194】
本明細書をとおして、組成物が特定の成分を有する、含むまたは包含すると記載されるときまたは過程および方法が特定の工程を有する、含むまたは包含すると記載されるとき、さらに、記載の成分から本質的になるまたはそれからなる本発明の組成物および記載する工程から本質的になるまたはそれからなる本発明の過程および方法があることが意図される。
【0195】
本発明において、要素または成分が記載する要素または成分に含まれるおよび/または記載の一覧から選択されるとされるとき、要素または成分は、記載する要素または成分の何れか一つであってよく、または記載する要素または成分は、2以上の記載する要素または成分からなる群から選択されてよいことは理解されるべきである。
【0196】
さらに、ここに記載する組成物または方法の要素および/または特性は、本明細書で明示または暗示されているかに関わらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な方法で組み合わせ得る。例えば、特定の化合物が記載されているとき、その化合物は、文脈から他の解釈が必要でない限り、本発明の組成物の種々の実施態様および/または本発明の方法で使用され得る。換言すると、本明細書内で、実施態様は、記載しかつ描かれるべき明確かつ簡潔な適用を可能とするよう記載および記述されているが、本教示および発明から離れることなく、実施態様を種々に組み合わせまたは分離し得ることが意図されかつそうされるであろう。例えば、ここに記載しかつ記述する全ての特性を、ここに記載しかつ記述する本発明の全ての態様に適用し得ることは理解される。本明細書に開示する全特性を、何れかの組み合わせで組み合わせ得る。本明細書に開示された各特性を、同一、同等または類似目的を果たす別の特性に置き換え得る。
【0197】
「少なくとも1つ」なる表現は、文脈および用途から他の解釈がされない限り、該表現の後に記載する物質の個々の各々および2以上の記載する物質の種々の組み合わせを含むと理解されるべきである。3以上の物質に関連する「および/または」の表現は、文脈から他の解釈が必要でない限り、同様の意味を有すると理解されるべきである。
【0198】
用語「含む」、「含み」、「含んで」、「有する」、「有し」、「有して」、「含有」、「含有する」または「含有して」は、それらの文法的等価物を含み、他に具体的に記載されるかまたは文脈から解釈されない限り、一般にオープンエンドかつ非限定的として、例えば、さらなる未記載の要素または工程の包含を排除しないと理解されるべきである。
【0199】
工程の順序またはある行為の実施の順序は、本発明が操作可能なままである限り、重要でないと解釈されるべきである。さらに、2以上の工程または行為を同時に実施し得る。
【0200】
例えば、「など」または「含む」などの、任意かつ全ての例または例示的用語の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、請求されない限り、本発明の範囲の限定を意図しない。本明細書におけるいかなる用語も、請求されていない何らかの要素を、本発明の実施に必須であるとして示すものと解釈されてはならない。
【0201】
本発明は、記載する特定の方法、プロトコール、物質および試薬に、これらが変わり得るため、限定されないことは理解される。ここで使用する用語は、特定の実施態様を記載する目的のみであり、本発明の範囲を限定することを意図せず、それは、添付する特許請求の範囲により包含される。
【実施例
【0202】
一般に記載してきた本発明は、単に本発明のある態様および実施態様の説明の目的のみで記載し、本発明の限定を意図しない、次の実施例を参照して、より容易に理解される。
【0203】
実施例1:肝細胞におけるHFE mRNAからのHFEタンパク質の発現。
この実施例は、外因性HFEタンパク質が、市販の送達剤を使用するmRNAのトランスフェクション後、培養ヒト初代肝細胞で産生され得ることを示す。
ヒト初代肝細胞を購入し(Thermo-Fisher Scientific)、ベンダーの推奨法に従い凍結回収し、播種した。コドン最適化HFEコードmRNA(ウリジンをN-メチル-シュードウリジン[「N1MPU」]または5-メトキシウリジン[「5MOU」]に置き換える修飾)を、種々の量のLipofectamine MessengerMAX(Thermo-Fisher Scientific)を使用してトランスフェクトした。本実施例で使用したRNA配列は配列番号67に記載し、これは、5’-キャップ(単一5’ A残基を提供)、配列番号33の5’UTR、配列番号4のHFEコード配列(配列番号32のタンパク質をコード)および配列番号35の3’UTRを含む。
トランスフェクション24時間後、細胞を、続くウェスタンブロッティングのためにRIPA緩衝液に溶解した。各サンプルから10μgの総タンパク質をSDS-PAGEゲルに負荷し、電気泳動を実施した。次いで、分離したタンパク質を、ベンダーが推奨する条件で、iBlot 2 Blotting System(Thermo-Fisher Scientific)を使用してPVDF膜に移した。次いで、膜を抗HFE抗体(Abcam)および抗シクロフィリンB(内因性対照として)抗体でプローブした。二次抗体検出をECL基質により実施し、ブロットを市販の撮像装置で造影した。
結果を図1に示し、トランスフェクトmRNAの量が高いほどシグナル強度が増強することにより示されるとおり、MOCK-トランスフェクト細胞に対して有意かつ濃度依存的外因性HFEタンパク質発現が達成される。
データは、相当量の外因性HFEタンパク質が、コドン最適化mRNA(N-メチル-シュードウリジンまたは5-メトキシウリジンを含む)により翻訳され得ることを示す。
【0204】
実施例2:肝細胞におけるHFE mRNAからのHFEタンパク質発現の期間。
この実施例は、市販の送達剤を使用するHFE mRNAのトランスフェクション後の外因性HFE発現の期間を示す。
ヒト初代肝細胞を購入し(Thermo-Fisher Scientific)、ベンダーの推奨法に従い凍結回収し、播種した。500ngのコドン最適化HFEコードmRNA(ウリジンをN-メチル-シュードウリジン[「N1」]または5-メトキシウリジン[「5MU」]に置き換える修飾)を、Lipofectamine MessengerMAX(Thermo-Fisher Scientific)を使用してトランスフェクトした。本実施例で使用したRNA配列は配列番号67に記載し、これは、5’-キャップ(単一5’ A残基を提供)、配列番号33の5’UTR、配列番号4のHFEコード配列(配列番号32のタンパク質をコード)および配列番号35の3’UTRを含む。
トランスフェクション24時間後(およびその後毎日)、細胞をウェスタンブロッティングのためにRIPA緩衝液で溶解した。各サンプル時点から10μgの総タンパク質をSDS-PAGEゲルに負荷し、電気泳動を実施した。次いで、分離したタンパク質を、ベンダーが推奨する条件を使用して、iBlot 2 Blotting System(Thermo-Fisher Scientific)を使用してPVDF膜に移した。次いで、膜を抗HFE抗体(Abcam)および抗シクロフィリンB(内因性対照として)抗体でプローブした。直接検出を、近赤外(NIR)蛍光色素で標識した二次抗体を使用して実施し、ブロットを市販の撮像装置で造影した。
結果を図2に示し、MOCK-トランスフェクト細胞に対して、トランスフェクション後6日まで相当量の外因性HFEタンパク質発現が検出されることを示す。
データは、ヒト肝細胞において、持続性HFE発現が、mRNAの1回投与で得られ得ることを示す。
【0205】
実施例3:Hfeノックアウトマウスにおける肝臓HFEタンパク質の発現および末梢鉄レベルの減少。
この実施例は、脂質ナノ粒子に封入されたHFEをコードするmRNAの投与が、Hfeノックアウトマウスにおいて用量依存的様式で肝臓HFEタンパク質発現をもたらし得ることを示す。
この実施例において、ヒトHFE(配列番号67)をコードできるmRNAを脂質ナノ粒子に封入し、Hfeノックアウトマウスに、尾静脈注射により、0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgで投与した。投与約48時間後、鉄レベルアッセイのために、肝臓を摘出し、血液を集めた。
HFEコードmRNAの1回投与後、抗HFE免疫ブロットにより、マウス肝臓ホモジネートにおいて用量依存的HFEタンパク質発現が観察された(図3)。処置マウスにおいて、その後のヘプシジン遺伝子発現の回復が分岐DNA(bDNA)アッセイにより観察され、野生型対照に類するレベルであった(図4)。HFEおよびヘプシジン発現の増加に伴い、HFEコードmRNA-LNPの1回の投与後、血中で血清鉄(図5)およびトランスフェリン飽和(図6)レベルの減少が観察された。
これらの所見は、HFEコード化mRNAと脂質ナノ粒子送達系の組み合わせが、ヘモクロマトーシスの処置に有望であることを示す。
【0206】
実施例4:HFEコード化mRNAで処置したHfeノックアウトマウスにおける肝臓鉄減少。
この実施例は、脂質ナノ粒子封入HFEをコードするmRNAの投与が、Hfeノックアウトマウスにおける肝臓鉄レベルを減少できることを示す。
この実施例において、ヒトHFE(配列番号67)をコードできるmRNAを脂質ナノ粒子に封入し、Hfeノックアウトマウスに尾静脈注射により1mg/kgで投与した。投与7日後、その後の分析のために肝臓を摘出した。
肝臓鉄濃度を測定するために、肝臓をまず乾燥状態で重さを量り、65℃で一夜、3M HCl、10%TCA混合物中で消化させた。次に、消化抽出物をバトフェナントロリンクロマゲン試薬と混合し、その後分光光度計で535nm吸光度を測定した。吸光度値を、既知Fe濃度の標準曲線に対して定量した。
図7に示すとおり、Hfeノックアウトマウスにおいて、1mg/kg HFEコードmRNAの1回静脈内投与後、肝臓鉄レベルの減少(約20%)が観察された。効果は、HHマウスの雄および雌両コホートで観察された。
【0207】
ここに具体的に記載する全ての刊行物、特許および文献は、全ての目的のために、引用により全体として本明細書に包含させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】