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特表2022-533460ドラムブレーキの動作変数を特定するための方法、ドラムブレーキアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】ドラムブレーキの動作変数を特定するための方法、ドラムブレーキアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20220714BHJP
   F16D 51/50 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D51/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569939
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2020064749
(87)【国際公開番号】W WO2020245008
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】102019208356.0
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ベーム・ユルゲン
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB21
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
3D048QQ02
3D048QQ07
3D048RR25
3J058AA03
3J058AA08
3J058AA24
3J058AA29
3J058AA30
(57)【要約】
本発明は、ドラムブレーキの動作変数を特定するための方法であって、異なる車輪速度範囲に対する計算方法を提供する方法に関する。本発明は更に、この種の方法を実施するためのドラムブレーキアセンブリに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式アクチュエータ(40)によって作動させることができるドラムブレーキ(15)の動作変数を、少なくとも1つの第1の車輪速度範囲及び1つの第2の車輪速度範囲において特定するための方法であって、前記第1の車輪速度範囲の車輪速度(ωRad)は、前記第2の車輪速度範囲の車輪速度(ωRad)よりも高く、
前記第1の車輪速度範囲において、
前記ドラムブレーキ(15)のリーディングブレーキシュー(20、25)の少なくとも1つの支持力(FAb,Aufl)と、トレーリングブレーキシュー(20、25)の更なる支持力(FAb,Abl)とを特定するステップと、
前記支持力(FAb,Aufl)及び前記更なる支持力(FAb,Abl)に基づいて前記動作変数を計算するステップと、
前記第2の車輪速度範囲において、
少なくとも1つの現在のアクチュエータ位置(XSp)を特定し、前記アクチュエータ位置(XSp)と、前記ドラムブレーキ(15)のブレーキシュー(20、25)が前記ドラムブレーキ(15)のドラム(30)と係合するアクチュエータ接触位置(X)とに基づいて、前記動作変数を計算するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記ドラムブレーキ(15)の回転ドラム(30)の場合の前記動作変数は、制動トルクである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の車輪速度範囲において、前記動作変数は、前記支持力(FAb,Aufl)と前記更なる支持力(FAb,Abl)との間の差として計算される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の車輪速度範囲において、前記回転方向が不明である場合、前記動作変数は、前記支持力(FAb,S1)及び前記更なる支持力(FAb,S2)のうちの高い方から、前記支持力(FAb,S1)及び前記更なる支持力(FAb,S2)のうちの低い方を引いた差として計算される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の車輪速度範囲において、前記動作変数は、第1の乗数(K1)及び関数(f)の積として計算され、前記アクチュエータ位置(XSp)と前記アクチュエータ接触位置(X)との間の差は前記関数(f)の入力変数である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の乗数(K1)は、被除数及び除数の商として計算され、
前記被除数は、所定の期間にわたる前記支持力(FAb,Aufl)と前記更なる支持力(FAb,Abl)との間の差の平均として計算され、
前記除数は、所定の値範囲にわたる前記関数(f)の平均として計算される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記関数(f)は線形関数よりも急激に上昇する、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
所定の車輪速度閾値(ε)を下回る場合に、前記第1の車輪速度範囲から前記第2の車輪速度範囲への移行が行われる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
適用状態において前記ドラムブレーキ(15)によって停止まで制動する場合、停止における前記動作変数の計算は、前記第2の車輪速度範囲における計算と同一の方法で実行される、
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
停止時に前記ドラムブレーキ(15)を解放状態から作動させる場合、停止時の前記動作変数は、第2の乗数(K2)と、前記支持力(FAb,S1)及び前記更なる支持力(FAb,S2)のうちの高い方との積として計算される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の乗数(K2)は、最大達成可能トルクフリークランプ力を最大支持力差で除算した商として計算される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
静止時の前記動作パラメータは、クランプ力である、
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所定の車輪速度閾値(ε)にヒステリシス(εHysterese)を加えた値を超える場合に、前記第2の車輪速度範囲又は静止状態から前記第1の車輪速度範囲への移行が行われる、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記支持力(FAb,Aufl)は、前記ブレーキシュー(20)のための支持軸受(50)において測定され、
及び/又は、
前記更なる支持力(FAb,Abl)は、更なるブレーキシュー(25)のための更なる支持軸受(55)において測定される、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ドラムブレーキアセンブリ(10)であって、
少なくとも1つのブレーキシュー(20)及び1つの更なるブレーキシュー(25)と、
前記ブレーキシュー(20)のための少なくとも1つの支持軸受(50)と、前記更なるブレーキシュー(25)のための1つの更なる支持軸受(55)と、
前記ブレーキシュー(20)によって前記支持軸受(50)に生成される支持力(FAb,Aufl)を測定するための、前記支持軸受(50)における少なくとも1つの力センサ(51)と、前記更なるブレーキシュー(25)によって前記更なる支持軸受(55)に生成される更なる軸受力(FAb,Abl)を測定するための、前記更なる支持軸受(55)における少なくとも1つの更なる力センサ(56)と、
前記請求項のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成される評価装置(60)と、
を有する、ドラムブレーキアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキの動作変数を特定するための方法及びこの種の方法を実行するためのドラムブレーキアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキは、例えば電気機械的に作動させることができ、例えばパーキングブレーキ機能を有する常用ブレーキとして操作することができる。測定される力に基づいて制動トルクを特定するために、例えば、支持軸受上に支持されるスプレッダユニットによって印加される力の反力を測定することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、公知の実施形態よりも代替的又は良好な方法で実施されるドラムブレーキの動作変数を特定するための方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、この種の方法を実施するためのドラムブレーキアセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これは、本発明によれば、それぞれのメインクレームに記載の方法及びドラムブレーキアセンブリによって達成される。有利な実施形態は、例えば、それぞれの従属請求項において見出すことができる。それらの請求項の内容は、明示的な参照により本明細書の内容に組み込まれる。
【0005】
本発明は、ドラムブレーキの動作変数を特定するための方法に関する。ドラムブレーキは、電気機械式アクチュエータによって作動させることができる。この種のアクチュエータは、一般に、画成された経路に沿って移動させることができる。方法は、少なくとも第1の車輪速度範囲及び第2の車輪速度範囲において採用することができ、第1の車輪速度範囲の車輪速度は、第2の車輪速度範囲の車輪速度よりも高い。この場合、車輪速度範囲は、一般に、以下でより詳細に説明するように、重複しないか、又はヒステリシス内でのみ重複する。
【0006】
本方法は、
第1の車輪速度範囲において、
ドラムブレーキのリーディングブレーキシューの少なくとも1つの支持力と、トレーリングブレーキシューの更なる支持力とを特定するステップと、
支持力及び更なる支持力に基づいて動作変数を計算するステップと、
第2の車輪速度範囲において、
少なくとも1つの現在のアクチュエータ位置を特定するステップと、
アクチュエータ位置と、ドラムブレーキのブレーキシューがドラムブレーキのドラムと係合するアクチュエータ接触位置とに基づいて、動作変数を計算するステップと、を有する。
【0007】
本発明による方法は、高い車輪速度及び低い車輪速度の両方において動作変数の有利な計算を可能にする。高い車輪速度において、提案される手順は第1の車輪速度範囲に従って用いられ、高い車輪速度の場合には上述の支持力を測定し、それに応じてそれらを用いることが有利であることが判明した。低い車輪速度において、この手順は有利ではないことが判明した。従って、アクチュエータ接触位置に対するアクチュエータ位置を用いる方がよい。これは低い車輪速度に対して有利であることが証明された。
【0008】
アクチュエータ接触位置は、例えば、非作動状態からのアクチュエータの適用移動中に支持軸受における力を測定することによって特定することができる。所定の力閾値を超えると、ドラムへのブレーキシューの適用が検出され、関連するアクチュエータ位置がアクチュエータ接触位置として定義される。
【0009】
車輪速度範囲は、また、例えばヒステリシスによって重複してもよく、従って、車輪速度範囲間の頻繁な切り替えが、特に移行範囲において防止される。第1の車輪速度範囲から第2の車輪速度範囲へ切り替えが行われる閾値は、第2の車輪速度範囲から第1の車輪速度範囲へ切り替えが行われる閾値よりも低くすることができることが好ましい。
【0010】
アクチュエータ位置は、例えば、アクチュエータの移動経路に沿って特定又は定義することができる。ここで、アクチュエータ接触位置は、ブレーキシューがドラムと正に係合する位置である。このアクチュエータ接触位置は、摩耗又は温度等の要因に応じて変化してもよい。
【0011】
ドラムブレーキの回転ドラムの場合の動作変数は、例えば制動トルクとすることができる。これは、ドラムブレーキを制御するために有利に用いることができる。
【0012】
第1の車輪速度範囲において、動作変数は、支持力と更なる支持力との間の差として有利に計算することができる。これは、一般に、有効な制動トルクを与える。
【0013】
第1の車輪速度範囲において、回転方向が不明である場合、動作変数は、支持力及び更なる支持力のうちの高い方から、支持力及び更なる支持力のうちの低い方を引いた差として計算することができる。これにより、回転方向に関する情報が利用できない場合であっても、この方法を採用することができる。この場合、一般に、どちらのブレーキシューがリーディング又はトレーリングブレーキシューであるかも最初はわからない。
【0014】
第2の車輪速度範囲において、特に、動作変数を第1の乗数及び関数の積として計算することが可能であり、アクチュエータ位置とアクチュエータ接触位置との間の差は関数の入力変数である。このように、動作変数を確実に計算できることが判明した。
【0015】
特に、第1の乗数を、被除数及び除数の商として計算することが可能であり、被除数は、所定の期間にわたる支持力と更なる支持力との間の差の平均として計算することができ、除数は、所定の値範囲にわたる関数の平均として計算することができる。これにより、第1の車輪速度範囲と第2の車輪速度範囲との間の移行時に、計算された動作変数にジャンプが存在しないように、動作変数計算の適合を行うことが可能である。
【0016】
特に、関数は線形関数よりも急激に上昇することができる。これは典型的な動作状態を再現する。
【0017】
特に、所定の車輪速度閾値を下回る場合に、第1の車輪速度範囲から第2の車輪速度範囲への移行が可能である。車輪速度閾値は、それによって、特に、第1の車輪速度範囲と第2の車輪速度範囲との間の境界を示す。移行は、従って、例えば、車両を運転から停止まで制動する場合に生じることができる。
【0018】
適用状態においてドラムブレーキによって停止まで制動する場合、停止における動作変数の計算は、第2の車輪速度範囲における計算と同一の方法で実行することができる。これは、既に説明した計算を用い続けることを可能にする。それに応じて得られた値は適切であることが証明されている。
【0019】
停止時にドラムブレーキを解放状態から作動させる場合、停止時の動作変数は、第2の乗数と、支持力及び更なる支持力のうちの高い方との積として計算することができる。これは、車両がドラムブレーキによって停止まで制動されてはいないが、何らかの他の方法で停止し、その後にのみドラムブレーキが作動される場合に、有利な計算方法であることが証明されている。この場合、ドラムブレーキによる制動の場合とは対照的に、ドラムブレーキのセルフロックは存在せず、この事実は修正された計算方法によって許容される。
【0020】
ここに説明する計算において所定の値を用いることができる限り、これらは、特に、考慮中のドラムブレーキの設計点における値とすることができる。
【0021】
停止状態において、特に、動作パラメータがクランプ力であることが可能である。これは、ドラムブレーキを制御するための有利な方法において用いることができ、例えば、車両が斜面上で進んでしまうことを防止することができる。
【0022】
特に、所定の車輪速度閾値にヒステリシスを加えた値を超える場合に、第2の車輪速度範囲又は停止から第1の車輪速度範囲への移行が可能である。特に、これは、第1の車輪速度範囲と第2の車輪速度範囲との間の移行を示す、既に上述した車輪速度閾値の問題である可能性がある。ヒステリシスを設けることにより、移行範囲における頻繁な切り替えを防止することが可能となる。
【0023】
特に、支持力は、ブレーキシューのための支持軸受において測定することができる。更なる支持力は、更なるブレーキシューのための更なる支持軸受において同様に測定することができる。その時点で、関連する力が直接発生する。
【0024】
本発明は、更に、ドラムブレーキアセンブリに関する。ドラムブレーキアセンブリは、少なくとも1つのブレーキシューと、1つの更なるブレーキシューとを有する。それは、ブレーキシューのための少なくとも1つの支持軸受と、更なるブレーキシューのための1つの更なる支持軸受とを有する。ドラムブレーキアセンブリは、ブレーキシューによって支持軸受に生成される支持力を測定するための、支持軸受における少なくとも1つの力センサと、更なるブレーキシューによって更なる支持軸受に生成される更なる支持力を測定するための、更なる支持軸受における少なくとも1つの更なる力センサとを有する。ドラムブレーキアセンブリは、更に、本発明による方法を実行するよう構成される評価装置を有する。この文脈において、本明細書中に説明する実施形態及び変形例の全てを用いることが可能である。
【0025】
更に上で既に説明した利点は、ドラムブレーキアセンブリによって達成することができる。特に、ドラムブレーキアセンブリは、追加として、ブレーキシューを作動させることができるアクチュエータを有することができる。
【0026】
本発明は更に、プログラムコードが格納され、その実行中にプロセッサが本発明による方法を実行する不揮発性のコンピュータ読取可能記憶媒体に関する。この文脈において、本明細書中に説明する実施形態及び変形例の全てを用いることが可能である。
【0027】
更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下で説明する例示的な実施形態から当業者によって推測されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ドラムブレーキアセンブリの詳細を示す。
図2】状態図を示す。
図3】出力変数を与える入力変数の処理を示す。
図4】関数曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、ドラムブレーキ15を有するドラムブレーキアセンブリ10の一部を略図で示している。ドラムブレーキアセンブリ10はブレーキシュー20と更なるブレーキシュー25とを有している。それはブレーキドラム30を有し、2つのブレーキシュー20、25は、ブレーキドラム30に対して押圧されてドラムブレーキアセンブリ10を作動させることができる。アクチュエータ40はこの目的のために用いられる。これは電気的に作動される。
【0030】
ドラムブレーキアセンブリ10は支持軸受50と更なる支持軸受55とを有している。ここで、ブレーキシュー20は支持軸受50に支持されている。更なるブレーキシュー25は更なる支持軸受55に支持されている。支持軸受50内に配置されるのは、ブレーキシュー20を支持軸受50内で支持する支持力を測定するための力センサ51である。更なる支持軸受55内に配置されるのは、更なるブレーキシュー25を更なる支持軸受55内で支持する更なる支持力を測定するための更なる力センサ56である。
【0031】
ドラムブレーキアセンブリ10は更に、ここでは概図のみを示している評価装置60を有する。これは、本発明による方法を実行するよう設計されている。可能性のある一実施形態を以下で説明する。
【0032】
支持力である支持軸受50、55において測定される力を、リーディングシューに対してFAb,Aufl、トレーリングシューに対してFAb,Ablとする。これらは、同じアクチュエータ位置に対して大きく異なる値をとることができる。これは、力のフィードバックのための出力値の再スケーリングを実施することを必要とする可能性があり、従って、ドラムブレーキアセンブリ10の動作状態は、実際値計算においてのみ考慮され、用いられる力コントローラの設定値計算及びパラメータ調整においては考慮されない。ここで、制動トルクMBrは、例えば、以下のように計算することができる。
Br=m×(FAb,Aufl-FAb,Abl)=m×ΔF
【0033】
この文脈において、mは予め設定可能なパラメータを示し、ΔFは力差を示す。
【0034】
力差ΔFは、例えば、ドラムブレーキ15の閉ループ又は開ループ制御のための制御変数として用いることができる。
【0035】
閾値εを超える全ての車輪速度ωRadを含む第1の車輪速度範囲内にある比較的高い車輪速度ωRadの場合、制御変数FCtrlは、力差と支持軸受50、55において測定される力とによって動作パラメータとして以下のように計算することができる。
Ctrl=ΔF=FAb,Aufl-FAb,Abl
【0036】
車輪速度ωRadに対する回転方向に関する情報が存在しない場合、リーディング及びトレーリングブレーキシューがまだ識別されていない場合に対する力の一般化された形態である支持軸受50、55において測定される2つの力FAb,S1及びFAb,S2の割り当ては、最大値及び最小値の特定によって実行することができる。次に、以下が適用される。
Ctrl=ΔF=最大{FAb,S1,FAb,S2}-最小{FAb,S1,FAb,S2
【0037】
上述の閾値εを下回る特に低い車輪速度ωRadへの移行範囲において、ここで動的補償プロセスが行われるため、力の曲線は明確には定義されない。制動がどの程度強力であるかによって、トルクの短時間の反転が存在する可能性がある。この補償プロセスの完了時、略FAb,Aufl≒FAb,Ablとなる。動作パラメータの計算に関して、特性曲線から計算される力信号は、従って、この移行範囲において以下のように特定される。
Ctrl=K×f(XSp-X
【0038】
ここで、Kは第1の乗数を示し、fは関数を示し、XSpは現在のアクチュエータ位置を示し、Xはアクチュエータ接触位置を示し、ブレーキシュー20、25はそれらそれぞれのライニングによってブレーキドラム30に当接している。
【0039】
車輪速度範囲間の切換えをジャンプすることなく行うことができるようにするために、一定の所定の力が与えられた場合、用いられる力/変位特性曲線又は関数fは、第1の乗数Kをスケーリングパラメータとして特定することによって、切換え前に更新されることが好ましい。この関係の基礎となるのは、例えば、トルクのない状態で停止時に測定された特性曲線である。この場合、好ましくは低い車輪速度で特定されるべきスケーリング係数又は第1の乗数Kに対して、以下が適用される。
=平均{ΔF}/平均{f(XSp-X)}
【0040】
これにより、動作パラメータの実質的又は完全にジャンプの無い計算が可能になる。この場合、このプロセスにおいて得られる力の差は、一般に、所定期間にわたって、例えば、それぞれの計算の前に計算される。関数fは、一般に、XSpの所定の値範囲にわたって計算される。
【0041】
停止の場合、即ちωRad=0の場合、ドラムブレーキアセンブリ10の作動がドラムブレーキアセンブリ10による制動後に行われるかどうか、又は車両がそれとは無関係に停止したかどうかに関して区別される。
【0042】
車両がドラムブレーキアセンブリ10によって制動されている第1の場合において、特別な場合に対処することを回避するために、計算は力制御下で形成され続け、従って、特性曲線又は関数から計算された信号が、動作パラメータ又は制御変数として特定され続ける。
Ctrl=K×f(XSp-X
【0043】
停止時に、ドラムブレーキアセンブリ10の作動が以前に解放された状態から行われた場合、フィードバック信号として、FAb,Aufl≒FAb,Ablであるため、2つの力値のうちの高い方が特定される。
Ctrl=K×最大{FAb,S1,FAb,S2
【0044】
この場合、第2の乗数Kは、停止状態且つトルクの無い作動の場合に、設計点において達成可能な最大支持力が設計点における最大差分力に略対応するように定義される。
【0045】
図2は、既に述べた4つの状態を示す状態図を示している。
【0046】
状態1は、車輪速度ωRadが駆動中の典型的な通常動作範囲にあり、車輪速度ωRadが、従って、第1の車輪速度範囲にある場合である。この場合、動作パラメータの計算は、リーディング力とトレーリング力との差に基づいて行うことができる。
【0047】
車輪回転数ωRadが閾値εを下回った場合、状態2が生じる。状態1への復帰は、車輪速度が閾値εにヒステリシスεHystereseを加えたものを超えた場合にのみ想定される。状態間の前後の連続的な切り替えと、状態に格納された計算方法とは、それによって、移行範囲において回避される。
【0048】
第2の車輪速度範囲に対応する状態2において、計算は、関数f及びアクチュエータ位置XSp並びにアクチュエータ接触位置Xに基づいて、上で説明したように行われる。
【0049】
制動力FAb,Aufl及びFAb,Ablが略等しい場合、又は本実装形態において所定の移行時間が経過した場合、手順は状態3に切り替わる。この場合、車輪速度ωRadは0に等しく、即ち、車両は静止していると仮定される。しかし、車両がドラムブレーキアセンブリ10によって制動されているこの場合、計算は修正されない。
【0050】
進展において、状態3を備えることにより、この状態において力を再び用いて動作変数を特定する可能性が出てくる。ここでも、信号ジャンプなしに切り替えを保証する更に適応可能なスケーリング係数をこの目的のために提供することができることが好ましい。そうでない場合、ここで説明するように、状態2に従って計算を行うことができる。
【0051】
状態4は、車両がドラムブレーキアセンブリ10とは無関係に停止する場合、即ち、例えば、単に惰性で停止し、ドラムブレーキアセンブリ10がその後にのみ作動する場合に対応する。この場合、ドラムブレーキ15のセルフロックが機能していないため、異なる力の条件が適用される。この場合、動作パラメータの計算は、既に上で説明したように、2つの測定された力のうちの高い方に基づいて行われる。
【0052】
その上、状態4は、車両が対応する方法で停止した場合、状態2から直接到達することもできる。
【0053】
図示するように、状態1は、基本的に、車輪速度ωRadが閾値εに所定のヒステリシスεHystereseを加えたものを超える場合に採用される。
【0054】
示すシーケンス又は示す状態によって、ドラムブレーキアセンブリ10の動作パラメータが常に最良の可能性のある利用可能な計算方法で計算されることを保証することが可能である。
【0055】
図3は、入力変数からの出力変数の1つの可能性のある計算を略図で示している。ここで、既に説明した力FAb,Aufl及びFAb,Ablは、回転方向が不明である場合、FAb,S1及びFAb,S2としてもよく、入力変数として機能する。また、入力変数として機能するのは、車輪速度ωRad、方向(Dir_ωRad)、アクチュエータ位置XAktuator又はXSp、アクチュエータ接触位置XAktuator,Kontakt又はX、及びドラムブレーキアセンブリ10が現在作動しているかどうかを示す情報eDB_Betaetigtである。特に、計算は、既に述べた動作パラメータFCtrl及び関連する状態を生成する。
【0056】
図4は、既に上で説明した関数fの典型的な曲線を示している。ここで、アクチュエータ40の利用可能な移動範囲又は動作範囲を横軸に示している。ここで、利用可能な動作範囲全体を二重矢印VABによって示している。図示する原点からの実際に使用可能な移動範囲をVBとする。
【0057】
一方、図は、関数f(X)をその原形で示しており、アクチュエータ接触位置Xの量だけ右にシフトされると、関数f(X-X)となる。この関数曲線から開始して、関数は、拡大又は縮小、即ち、第1の乗数Kによって拡大又は縮小することができ、Kの異なる値を有する2つの関数曲線を図4に示している。そのため、それに応じて関数fを適合させることが可能である。図示するように、関数fは線形関数よりも急激に上昇し、これは一般的な用途に対して実行可能であり、適切であることが証明されている。
【0058】
本発明による方法の上述のステップは、示した順序で実行されてもよい。しかし、技術的に適切であれば、それらは異なる順序で実行されてもよい。その実施形態のうちの1つにおいて、例えば、ステップの特定の組合せにより、本発明による方法は、更なるステップが実行されないような方法で実行されてもよい。しかし、原則として、言及していないステップであっても、更なるステップを実行することもできる。
【0059】
特徴は、例えば理解を容易にするため、特許請求の範囲及び説明において組み合わせて説明され得るが、これらは互いに別々で用いられてもよいことを指摘しておく。当業者は、かかる特徴が他の特徴と組み合わされてもよいか、又は互いに独立した特徴の組み合わせであってもよいことを推測するであろう。
【0060】
従属クレームにおける従属の参照は、それぞれの特徴の好ましい組み合わせを特徴付けてもよいが、他の特徴の組み合わせを排除するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10 ドラムブレーキアセンブリ
15 ドラムブレーキ
20 ブレーキシュー
25 更なるブレーキシュー
30 ブレーキドラム
40 アクチュエータ
50 支持軸受
51 力センサ
55 更なる支持軸受
56 更なる力センサ
60 評価装置
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】