(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】種子、肥料および有害生物防除剤用のPLA/PHA生分解性コーティング
(51)【国際特許分類】
C05G 5/30 20200101AFI20220714BHJP
C05G 3/60 20200101ALI20220714BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20220714BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20220714BHJP
A01C 1/06 20060101ALI20220714BHJP
A01C 21/00 20060101ALI20220714BHJP
A01M 17/00 20060101ALI20220714BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20220714BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
C05G5/30 ZBP
C05G3/60
A01N25/12
A01N25/10
A01C1/06 Z
A01C21/00 Z
A01M17/00 B
C08L67/04
C08L101/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515971
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020033943
(87)【国際公開番号】W WO2020242871
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521514831
【氏名又は名称】メレディアン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラブス,ジョー・ビー,ザサード
(72)【発明者】
【氏名】ロックリン,ジェイソン・ジョン
【テーマコード(参考)】
2B051
2B052
2B121
4H011
4H061
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BB14
2B052BA02
2B052BC08
2B121CA90
2B121CC04
2B121CC29
2B121EA25
4H011BA01
4H011BC19
4H011DA04
4H011DF02
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4H011DH29
4H061AA01
4H061DD07
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4H061EE35
4H061FF08
4H061FF15
4J002CF18W
4J002CF18X
4J002GA00
4J002GH00
4J200AA04
4J200AA21
4J200BA14
4J200BA15
4J200DA04
4J200DA05
4J200EA11
4J200EA14
(57)【要約】
農業用の粒状組成物が開示される。粒状組成物は、粒状物上に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物から構成される。粒状物は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される。生分解性コーティングは、ポリ乳酸およびポリヒドロキシアルカノエートから構成される。コーティングされた粒状組成物の作成法、および田畑への粒状物質の制御された放出法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状物上に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物を含んでなる農業用の使用のための粒状組成物であって:
粒状物が種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料を含んでなり、そして
生分解性コーティングが約5重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸、および約25重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる、
前記粒状組成物。
【請求項2】
粒状物が種子を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項3】
粒状物が肥料を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項4】
粒状物が有害生物防除剤を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項5】
生分解性コーティングが、約10,000から約250,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ乳酸を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項6】
生分解性コーティングが、約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項7】
粒状物が、コーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有する請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項8】
生分解性コーティングが、約10重量パーセントから約50重量パーセントのポリ乳酸および約50重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項9】
ポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項10】
ポリヒドロキシアルカノエートが、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含んでなる請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項11】
生分解性コーティングが、中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含んでなり、小球が約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する請求項1に記載の粒状組成物。
【請求項12】
コーティングされた粒状組成物の作成法であって:
ポリ乳酸およびポリヒドロキシアルカノエートを、任意に溶媒の存在下で約25℃から約180℃の温度で混合してコーティング混合物を提供し;
コーティング混合物を複数の粒状物の外面に適用し;そして
コーティング混合物を凝固して複数の粒状物の外面に生分解性コーティングを作成する;
工程を含んでなり、
粒状物が種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料を含んでなり
、そして
生分解性コーティングが、中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含んでなり、小球が約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する、
前記方法。
【請求項13】
生分解性コーティングが適用後、150-170℃で数秒間、一時的にアニーリングされるか、または生分解性コーティングがコーティング後に溶媒蒸気に暴露される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
粒状物が種子を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
粒状物が肥料を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項16】
粒状物が有害生物防除剤を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項17】
生分解性コーティングが、約10,000から約250,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ乳酸を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項18】
生分解性コーティングが、約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項19】
粒状物が、コーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有する請求項12に記載の方法。
【請求項20】
固体生分解性コーティングが、約10重量パーセントから約30重量パーセントのポリ乳酸、および約70重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項21】
ポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項22】
ポリヒドロキシアルカノエートが、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基を含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項23】
粒状物質の制御された放出法であって:
粒状物が種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料を含んでなり、そして生分解性コーティングが約10重量パーセントから約30重量パーセントのポリ乳酸、および約70重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる、粒状物、に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物を含んでなる粒状組成物を準備し;
粒状組成物を小区画の土壌に散布し;
小区画の土壌およびその中に分散されている粒状組成物を湿気に暴露することにより、
生分解性コーティング中の少なくともポリヒドロキシアルカノエートを溶解する;
工程を含んでなり、ポリヒドロキシアルカノエートの分解が、粒状物質がそれを通って土壌に放出され得る通路を、生分解性コーティングに形成する、
前記方法。
【請求項24】
生分解性コーティングが、約10重量パーセントから約30重量パーセントのポリ乳酸および約70重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートを含んでなる請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基を含んでなる請求項23に記載の方法。
【請求項26】
生分解性コーティングが、中に安定に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含んでなり、小球が約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する請求項23に記載の方法。
【請求項27】
小区画の土壌の湿気に約21日間暴露された後、生分解性コーティング中の少なくとも約50パーセントのポリヒドロキシアルカノエートが溶解される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生分解性高分子組成物に関する。より詳細には本開示は種子および肥料用の、ポリ乳酸(PLA)およびポリヒドロキシアルカノエート(PHA’s)から構成された生分解性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
植物は環境条件に基づき様々な速度で栄養を摂取するが、栄養を摂取するための最も重要な時期は植物の初期発生の期間である。この時期には栄養が十分でなければならない。しかし過剰な窒素の取り込みは栄養成長を刺激しすぎ、そして作物の熟成を遅らせる恐れがある。このように栄養の摂取時期は農地を最大にするために重要である。
【0003】
このような課題に取り組むため、制御放出型肥料(CRF)が生産され、ここで肥料は、土壌に肥料をゆっくりと放出する石油系ポリマーコーティングにカプセル化されている。すなわち栄養は植物の代謝の必要に適したペースで送達されることができる。しかし温度、湿度または土壌の生物活性の変化がこの速度を予期せずに変え、正しくない時期に正しくない栄養量を提供することにより作物の収量に良くない影響をもたらす。すなわちこれまで、CRFの商業的適用は、様々な環境条件での放出の動力学に関するデータの不足により限定されている。さらに肥料に適用される石油系コーティングは環境に優しくなく、しかも肥料を与えた後何年も環境に存続する可能性がある。
【0004】
このように環境に無害で、しかも成長時期が過ぎたら存続しない新規な放出制御型の肥料配合物を提供することが望まれる。またより予測可能で、しかも制御可能な肥料の放出速度を有する新規な放出制御型の肥料配合物を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
前記および他のニーズは、本開示に従い農業用に使用するための粒状組成物(granular composition)により満たされる。1つの態様によれば、この粒状組成物は粒状物(granulate)上に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物により構成されている。これらの粒状物は今度は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。生分解性コーティングは、約5重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸、および約25重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成されている。
【0006】
特定の態様では、組成物の粒状物は好ましくは種子から構成されている。他の態様では、組成物の粒状物は肥料から構成されることが好ましく、尿素系肥料がより好ましい。
【0007】
記載したように、生分解性コーティングはポリ乳酸(PHA)およびポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の両方を含む。特定の態様では、生分解性コーティングは約10,000から約250,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ乳酸を含むことが好ましい。また特定の態様では、生分解性コーティングは約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含むことが好ましい。
【0008】
より好適な態様では、生分解性コーティングは約10重量パーセントから約50重量パーセントのポリ乳酸および約50重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成されることが好ましい。
【0009】
特定の態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることが好ましい。
【0010】
幾つか態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成され得る。
【0011】
好適な態様では、粒状物はコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することが好ましい。
【0012】
さらに特定の態様では、生分解性コーティングは中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含むことが好ましく、ここで小球は約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する。
【0013】
別の観点では、本開示はコーティングされた粒状組成物の作成法を提供する。1つの態様では、この方法は、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、および任意に溶媒を、約25℃から約180℃の温度で混合してコーティング混合物を提供する工程を含む。次いでこのコーティング混合物を複数の粒状物の外面に適用する。またこの方法はコーティング混合物を凝固して複数の粒状物の外面に生分解性コーティングを作成する工程を含む。この方法によりコーティングされた粒状物は、種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。いったん凝固されれば、生分解性コーティングは、中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相から構成される。これらの小球は約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する。
【0014】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティングが適用後、150-170℃で数秒間、一時的にアニーリングされるか、または生分解性コーティングがコーティング後に溶媒蒸気に暴露される。
【0015】
この方法の特定の態様では、組成物の粒状物は種子から構成されることが好ましい。この方法の他の態様では、組成物の粒状物は好ましくは肥料、より好ましくは尿素系肥料から構成される。
【0016】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティングが約10,000から約250,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ乳酸を含むことが好ましい。またこの方法の特定の態様では、生分解性コーティングが約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含むことが好ましい。
【0017】
この方法のより好適な態様では、生分解性コーティングが、約10重量パーセントから約50重量パーセントのポリ乳酸、および約50重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成されることが好ましい。
【0018】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることが好ましい。
【0019】
この方法の幾つかの態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエー
トは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されることができる。
【0020】
この方法の好適な態様では、粒状物はコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することが好ましい。
【0021】
さらなる観点では、本開示は粒状物質(granular material)の制御された放出法を提供する。1つの態様によれば、この方法は粒状物上に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物から構成される粒状組成物を準備する最初の工程を含む。これらの粒状物は今度は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。生分解性コーティングは、約5重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸、および約25重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。
【0022】
第二工程では、粒状組成物が小区画の土壌に散布される。
【0023】
小区画の土壌、および中に分散されている粒状組成物を湿気に暴露することにより生分解性コーティング中の少なくともポリヒドロキシアルカノエートが溶解(dissolved)される。ポリヒドロキシアルカノエートの分解で、粒状物質が通って土壌に放出され得る複数の通路が生分解性コーティング中で形成されることを導く。
【0024】
この方法のより好適な態様では、生分解性コーティングが約10重量パーセントから約50重量パーセントのポリ乳酸および約50重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成されることが好ましい。
【0025】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートが約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることが好ましい。
【0026】
この方法の幾つかの態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されることができる。例えば幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートが3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基および3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることができる。
【0027】
他の場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、4-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、3-ヒドロキシオクタノエートのモノマー残基、および3-ヒドロキシデカノエートのモノマー残基からなる群から選択される少なくとも3種のモノマー残基から構成されることができる。
【0028】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティングは中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含むことが好ましく、ここで小球は約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する。
【0029】
この方法の特定の態様では、小区画の土壌の湿気に約21日間暴露された後、生分解性コーティング中の少なくとも約10から約50パーセントのポリヒドロキシアルカノエートが減成(degrade)し始めたか、または減成した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
粒状組成物
本開示によれば、農業用の使用のための粒状組成物が提供される。この粒状組成物は、粒状物に適用された生分解性コーティングを有する複数の粒状物から構成されている。
【0031】
粒状物は、農業的に有用な物質である様々な材料から構成されることができる。一般に、粒状物は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成されることができる。組成物の粒状物が種子から構成されることが好ましい場合もある。粒状組成物に使用され得る種子の例には、草の種、果樹および堅果樹の種、および野菜の種を含む。
【0032】
他の態様では、組成物の粒状物は肥料から構成されることが好ましい。本開示に従いコーティングされた粒状組成物として提供され得る肥料は、窒素、リンおよびカリウム系肥料を含む。特に好適な例には、肥料は尿素系肥料であることができる。
【0033】
さらに他の場合では、粒状物は有害生物防除剤から構成されることができる。一般に、任意の固体有害生物防除剤材料を、本開示に従いコーティングされた粒状組成物として提供でき、それらには無機有害生物防除剤、有機有害生物防除剤および生物有害生物防除剤を含む。そのような有害生物防除剤の例には限定するわけではないが、硝酸アンモニウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸カルシウムを含む有害生物防除剤、クロルピリホス、メトリブジン、クロリムロンエチル、アトラジン、S-メトラクロル、シアナジン、ウイルス系生物有害生物防除剤、およびバクテリア系生物有害生物防除剤を含む。
【0034】
粒状物のサイズは、粒状物材料の性質に依存して変動することになる。一般に、粒状物はコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することになる。種子に関して、より具体的には粒状物は好ましくはコーティング前に約1mmから約25mmの平均粒子サイズを有することができる。肥料に関して、好ましくは粒状物はコーティング前に約1mmから8.5mmの平均粒子サイズを有することができる。有害生物防除剤に関して、好ましくは粒状物はコーティング前に約1mmから約10mmの平均粒子サイズを有することができる。
【0035】
本開示に従い、ポリ乳酸(PHA)およびポリヒドロキシアルカノエート(PHA’s)の両方を含む生分解性コーティングが粒状物に適用される。
【0036】
生分解性コーティング中のPLAとPHA’sの厳密な比率は幾分変動することができるが、コーティングは一般に約5重量パーセントから約75重量パーセントのポリ乳酸、および約25重量パーセントから約95重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。より好ましくは、生分解性コーティングは約10重量パーセントから約50重量パーセントのポリ乳酸、および約50重量パーセントから約90重量パーセントのポリヒドロキシアルカノエートから構成される。
【0037】
PLAおよびPHAsに関する分子量範囲も幾分変動できる。特定の態様では、生分解性コーティングが、約10,000から約250,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ乳酸を含むことが好ましい。さらに幾つかの例では、生分解性コーティングが、約50,000から約2.5ミリオンダルトンの重量平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートを含むことが好ましい。
【0038】
さらに例えば3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、4-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエー
ト、ヒドロキシオクタノエートおよびヒドロキシデカノエートのモノマー残基を含むポリヒドロキシアルカノエートの多くの形態が存在する。好ましくは生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートは、約70モルパーセントから約99モルパーセントの3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、および約1モルパーセントから約30モルパーセントの3-ヒドロキシヘキサノエートから構成される。
【0039】
この方法の幾つかの態様では、生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートは、それぞれ5から22個の炭素原子を有する3種以上のヒドロキシアルカノエートのモノマー残基から構成されることができる。例えば幾つかの場合では、ポリヒドロキシアルカノエートが3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、および3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基から構成されることができる。
【0040】
他の場合では、ポリヒドロキシアルカノエートは3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、4-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシバレレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、3-ヒドロキシオクタノエートのモノマー残基、および3-ヒドロキシデカノエートのモノマー残基からなる群から選択される少なくとも3種のモノマー残基から構成されることができる。
【0041】
幾つかの態様では、生分解性コーティングは相対的に少量(典型的には0.3から10重量%)の他の添加剤、例えばポリビニルアセテート、クレイ、カルシウム、タルク、多糖(澱粉のような)、ペンタエリスリトール、および硫黄を含んでもよい。
【0042】
重要なことは、本開示の適用した生分解性コーティングが拡大下で検査された場合に、生分解性コーティングは、中に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含むことが好ましい。好ましくはこれらの小球が約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する。
【0043】
本明細書で使用するように、用語「生分解性」とは土壌中の微生物または生物により分解(decomposed)または崩壊(broken down)されることができる物質を記載する。一般に、少なくとも約50重量パーセントのコーティングが生分解性である物質により構成されることが好ましい。より好ましくは、コーティングを構成する物質の100パーセントが生分解性である。
【0044】
また生分解性コーティングは、約1.0重量パーセント未満のポリウレタンを含むことが好ましい。より好ましくは、生分解性コーティングはポリウレタンを全く含まない。
【0045】
粒状組成物の調製
別の観点では、本開示はコーティングされた粒状組成物の作成法を提供する。1つの態様では、方法はポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、および任意に溶媒を、約25℃から約180℃の温度で混合してコーティング混合物を提供する工程を含む。次いでこのコーティング混合物を複数の粒状物の外面に適用する。また方法は、コーティング混合物を凝固して複数の粒状物の外面に生分解性コーティングを作成する工程を含む。この方法に従いコーティングされた粒状物は、種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成される。いったん凝固すれば生分解性コーティングは、中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相から構成される。これらの小球は約2nmから約10ミクロンの平均サイズを有する。
【0046】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティングは適用後、150-170℃で数秒間、一時的にアニーリングされるか、または生分解性コーティングはコーティング後に溶
媒蒸気に暴露される。
【0047】
この方法の特定の態様では、組成物の粒状物が好ましくは種子から構成される。この方法の他の態様では、組成物の粒状物が好ましくは肥料から構成され、より好ましくは尿素系肥料から構成される。
【0048】
粒状組成物の用途
本開示のコーティングされた粒状組成物は、農業用の目的の使用に適している。特に、本開示の粒状組成物は、粒状物質の制御された放出法を提供するために使用できる。
【0049】
この方法によれば、コーティングされた粒状組成物は上で検討したように提供される。ここでも粒状物は種子、肥料および有害生物防除剤からなる群から選択される材料から構成され得る。
【0050】
この粒状組成物は、組成物で処理することになる土壌の小区画に散布される。適用率は適用する粒状物の性質に依存して変動することができる。コーティングされた肥料粒状物については、粒状組成物を土壌に1エーカーあたり約10ポンドから50ポンドの率で散布することができる。コーティングされた有害生物防除剤粒状物については、粒状組成物を土壌に1エーカーあたり約1ポンドから10ポンドの率で散布することができる。
【0051】
いったん土壌に散布されれば、土壌の小区画は雨、灌漑および/または周辺の水蒸気の形で湿度に暴露される。結果としてコーティングされた粒状組成物の粒状物が同様に湿気に暴露される。
【0052】
この湿気への暴露は、少なくとも生分解性コーティング中のポリヒドロキシアルカノエートが加水分解により分解を受け始めることを引き起こす。このように少なくともポリヒドロキシアルカノエートは次第により小さいオリゴマーおよびモノマーに溶解する。幾つかの場合では、ポリ乳酸もより小さいオリゴマーおよびモノマーに分解することができる。しかしポリ乳酸は一般にポリヒドロキシアルカノエートよりもゆっくりした速度で分解または加水分解することになると考えられる。
【0053】
この分解が進行すると、より低分子量の分解産物は水に溶解されるか、またはそうではなく粒状物から漏れ出る可能性があり、これにより生分解性コーティング内にずれ(gap)を作り、そしてコーティング下の粒状物材料の一部を露出する。この粒状物材料の露出部分は、次いで土壌中に放出される。
【0054】
前記のように、生分解性コーティングは、中に均一に分散されたポリヒドロキシアルカノエートの小球を有するポリ乳酸の連続相を含むことが好ましく、そして小球のポリヒドロキシアルカノエートは一般に隣接する連続相のポリ乳酸よりも早い速度で溶解する。結果としてこのポリヒドロキシアルカノエートの分解が、生分解性コーティングに複数の通路または孔の形成を好ましく導く。
【0055】
このように、より好適な態様では下にある粒状物材料が、今、生分解性コーティング中に形成されたこれらの通路または孔を介して土壌に放出され得る。
【0056】
粒状物は通路または孔を通って放出されるので、粒状物材料の放出速度は環境湿度に暴露された時のポリヒドロキシアルカノエートの分解速度によりほぼ定まる。次いで分解の速度は、コーティングに使用した具体的なポリヒドロキシアルカノエート(3-ヒドロキシブチレートのモノマー残基、3-ヒドロキシヘキサノエートのモノマー残基、等)、およびポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量のような因子により影響を受け得る
。
【0057】
次いで有利には、当業者は生分解性コーティング用に適切な種類および量のポリヒドロキシアルカノエートを選択することにより、粒状物材料(種子、肥料、有害生物防除剤等)の放出速度を効果的に制御することができる。
【0058】
この方法の特定の態様では、生分解性コーティング中、好ましくは少なくとも約50パーセントのポリヒドロキシアルカノエートが、小区画の土壌中の湿気に約21日暴露された後、溶解する。
【0059】
本発明に関する好適な態様の前記説明は、具体的説明および記載の目的で提示した。それらは網羅的であること、または開示する厳密な形態に本発明を限定することを意図していない。明らかな修飾または変更が、前記教示に照らして可能である。態様は本発明の原理の最も良い説明、およびその実践的応用を提供するために、そしてそれにより当業者が本発明を様々な態様で、様々な修飾を用いて意図する特定の使用に適するように選択され、そして記載するものである。すべてのそのような修飾および変更は、それらが適正に、合法的かつ公平に権利を与えられる幅に従い解釈される場合に、添付する請求の範囲により定められる本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】