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特表2022-533521下滑り防止凹部を有する切削インサート、インサート・ホルダ及び切削工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】下滑り防止凹部を有する切削インサート、インサート・ホルダ及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/22 20060101AFI20220715BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20220715BHJP
   B23B 29/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B23C5/22
B23B27/16 B
B23B29/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559328
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 IL2020050472
(87)【国際公開番号】W WO2020240533
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】16/421,828
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022MM03
3C022MM04
3C046EE13
3C046KK01
(57)【要約】
切削インサート(22)はインサート外周面(34)を含み、インサート外周面(34)は、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面(40)と、滑り防止凹部を中に含むインサート下面(30,32)と、を含む。滑り防止凹部は少なくとも1つの細長くまっすぐな滑り防止溝(56,58)を含む。各主インサート側当接面(40)はそれぞれの滑り防止溝(56,58)の溝長手方向軸に平行に向けられる。インサート・ホルダ(24)はホルダ・ポケット(26,28)を含む。ホルダ・ポケット(26,28)はポケット外周面(84)を含み、ポケット外周面(84)は、平坦主ポケット側当接面(88)と、細長くまっすぐな滑り防止リブを有するポケット基部面(82)と、を含む。切削インサート(22)をインサート・ホルダ(24)に解放可能に取り付け切削工具(20)の締結位置を構成した際、滑り防止リブは滑り防止溝(56,58)内に位置し、滑り防止溝(56,58)は主ポケット側当接面(88)に当接する主インサート側当接面(40)に平行に向けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反対の上方向(D)及び下方向(D)を画定するインサート中心軸(A)を有する切削インサート(22)であって、前記切削インサート(22)は、
反対のインサート上面(30)及びインサート下面(32)並びに前記インサート上面(30)と前記インサート下面(32)との間に延在するインサート外周面(34)であって、前記インサート外周面(34)は、前記インサート中心軸(A)回りで円周方向に延在し、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面(40)を備える、反対のインサート上面(30)及びインサート下面(32)並びにインサート外周面(34)と、
前記インサート外周面(34)と前記インサート上面(30)との交線に形成され、前記少なくとも1つの主インサート側当接面(40)から円周方向に変位する少なくとも1つの上切れ刃(44)と、
前記インサート下面(32)内に凹み、下滑り防止凹部(56a)を画定する滑り防止凹部(56)と、を備え、
前記下滑り防止凹部(56a)は、少なくとも1つの細長くまっすぐな滑り防止溝(58)を備え、
前記滑り防止溝(58)は、
溝長手方向軸(G)と、
前記溝長手方向軸(G)及び前記インサート中心軸(A)を含む第1の溝平面(GP1)と、
前記第1の溝平面(GP1)に直交し、前記インサート中心軸(A)を含む第2の溝平面(GP2)と、
2つの軸方向に延在する反対の溝末端(60)、及び前記溝末端(60)の間の溝中間部分(62)と、を有し、
前記溝中間部分(62)には、前記インサート中心軸(A)が交差し、
前記切削インサート(22)には、保持ねじを受け入れるために前記インサート上面(30)及び前記インサート下面(32)に開口する貫通穴がなく、
各前記主インサート側当接面(40)は、それぞれの前記滑り防止溝(58)の前記溝長手方向軸(G)に平行に向けられる、切削インサート(22)。
【請求項2】
前記切削インサート(22)は、前記インサート上面(34)上でN通りに刃先交換可能であり、
前記少なくとも1つの上切れ刃(44)は、前記インサート中心軸(A)回りで円周方向に離間するN個の上切れ刃(44)を備え、Nは、2以上の正の整数であり、
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、M個の滑り防止溝(58)を備え、
Nが偶数である場合M=N/2であるか、又は、Nが奇数である場合M=Nである、請求項1に記載の切削インサート(22)。
【請求項3】
前記下滑り防止凹部(56a)は、複数の滑り防止溝(58)を備え、前記複数の滑り防止溝(58)は、前記インサート中心軸(A)回りに等しい角度で配置され、互いに交差する、請求項1又は2に記載の切削インサート(22)。
【請求項4】
前記複数の滑り防止溝(58)は、同一である、請求項3に記載の切削インサート(22)。
【請求項5】
前記下滑り防止凹部(56a)は、前記第1のインサート中心軸(A)回りに回転対称を呈する、請求項1~4のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、前記第1の溝平面(GP1)及び更には前記第2の溝平面(GP2)回りに鏡面対称を呈する、請求項1~5のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、前記インサート外周面(34)から離間する、請求項1~6のいずれか1項に記載の切削工具(22)。
【請求項8】
前記インサート下面(32)は、インサート下支承面(36)を備え、
前記インサート下支承面(36)は、平坦で、前記インサート中心軸(A)に直交して向けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、2つの反対の溝側壁(64)と、前記2つの反対の溝側壁(64)の間に延在する溝中心面(66)と、を備え、
前記2つの反対の溝側壁(64)及び前記溝中心面(66)は全て、前記溝長手方向軸(G)に沿って長手方向に延在し、
前記第1の溝平面(GP1)で取った断面図において、前記溝中心面(66)は、前記溝中間部分(62)から離れて前記2つの溝末端(60)に向かう方向で深さが減少する、請求項1~8のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項10】
前記溝中心面(66)は、前記溝長手方向軸(G)に沿った方向で凹形に湾曲し、溝半径(GR)を有する、請求項9に記載の切削インサート(22)。
【請求項11】
前記溝長手方向軸(G)に直交し、前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)を通過する平面で取った断面図において、前記2つの溝側壁(64)は、前記インサート下面(32)から前記インサート上面(34)に向かう方向で互いの方に収束する、請求項9又は10に記載の切削インサート(22)。
【請求項12】
前記下滑り防止凹部(56a)は、前記インサート上面(30)に開口しない、請求項1~11のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項13】
前記インサート外周面(34)は、平坦副インサート側当接面(42)を更に備え、
前記平坦副インサート側当接面(42)は、前記インサート中心軸(A)回りに前記少なくとも1つの主インサート側当接面(40)から円周方向に離間する、請求項1~12のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項14】
前記インサート外周面(34)と前記インサート下面(32)との交線に形成される少なくとも1つの下切れ刃(46)と、
前記インサート上面(30)内に凹み、上滑り防止凹部(56b)を画定する更なる滑り防止溝(56)と、を更に備え、
前記上滑り防止凹部(56a)及び前記下滑り防止凹部(56b)は、同じ数の滑り防止溝(58)を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項15】
前記上滑り防止凹部(56a)及び前記下滑り防止凹部(56b)は、同一である、請求項14に記載の切削インサート(22)。
【請求項16】
前記切削インサート(22)は、厳密に2つの上切れ刃(44)と、厳密に2つの下切れ刃(46)と、を備え、
前記上滑り防止凹部(56a)及び前記下滑り防止凹部(56b)はそれぞれ、厳密に1つの滑り防止溝(58)を備え、
前記下滑り防止凹部(56a)の前記滑り防止溝(58)は、前記上滑り防止凹部(56b)の前記滑り防止溝(58)に直交して向けられる、請求項14又は15に記載の切削インサート(22)。
【請求項17】
前記切削インサート(22)は、厳密に4つの上切れ刃(44)を備え、
前記下滑り防止凹部(56a)は、互いに直交して向けられた厳密に2つの滑り防止溝(58)を備える、請求項1~16のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項18】
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、プレス加工溝であり、研磨によって形成される痕跡がなく、前記インサート中心軸(A)に沿った方向で切欠きがない、請求項1~17のいずれか1項に記載の切削インサート(22)。
【請求項19】
前記少なくとも1つの滑り防止溝(58)は、前記溝長手方向軸(G)に沿って連続的に延在する、請求項1~18のいずれか1項に記載の切削工具(22)。
【請求項20】
反対の前方向(D)から後方向(D)までを画定するホルダ長手方向軸(H)を有するインサート・ホルダ(24)であって、前記インサート・ホルダ(24)は、
ホルダ端面(72)に交差するホルダ主面(70)と、
前記ホルダ主面(70)内に凹み、ポケット主開口(74)で前記ホルダ主面(70)に開口するホルダ・ポケット(26)と、を備え、
前記ホルダ・ポケット(26)は、ポケット長軸(B)を有し、
ポケット基部面(82)と、
前記ポケット基部面(82)に実質的に直交して向けられ、前記ポケット基部面(82)の部分境界を形成するポケット外周面(84)であって、前記ポケット基部面(82)は、前記ポケット主開口(74)では前記ポケット外周面(84)に隣接せず、前記ポケット外周面(84)は、前記ポケット長軸(B)回りで円周方向に延在し、平坦主ポケット側当接面(88)を備え、前記平坦主ポケット側当接面(88)は、前記ポケット主開口(74)の反対に位置し、前記ポケット主開口(74)の方を向く、ポケット外周面(84)と、
前記ホルダ・ポケット(26)と一体に形成され、前記ポケット基部面(82)上に張り出すポケット張出し部分(92)と、
前記ポケット基部面(82)から突出する細長くまっすぐな滑り防止リブ(100)と、
を備え、
前記滑り防止リブ(100)は、リブ長手方向軸(R)に沿って長手方向に延在し、
前記リブ長手方向軸(R)及び前記ポケット長軸(B)を含む第1のリブ平面(RP1)と、
前記第1のリブ平面(RP1)に直交し、前記ポケット長軸(B)を含む第2のリブ平面(RP2)と、を備え、
前記主ポケット側当接面(88)は、前記リブ長手方向軸(R)に平行に向けられる、インサート・ホルダ(24)。
【請求項21】
前記滑り防止リブ(100)は、2つの軸方向に延在する反対のリブ末端(102)と、前記リブ末端(102)の間のリブ中間部分(104)と、を備え、
前記リブ中間部分(104)には、前記ポケット長軸(B)が交差する、請求項20に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項22】
前記ポケット基部面(82)は、少なくとも1つのポケット支持面(86)を備え、
前記少なくとも1つのポケット支持面(86)は、平坦で、前記ポケット長軸(B)に直交して向けられる、請求項20又は21に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項23】
前記少なくとも1つのポケット支持面(86)は、厳密に2つの同一平面ポケット支持面(86)を備え、
前記同一平面ポケット支持面(86)は、前記滑り防止リブ(100)の両側に位置する、請求項22に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項24】
前記ポケット長軸(B)は、前記ポケット張出し部分(92)に交差する、請求項20~23のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項25】
前記ポケット外周面(84)は、平坦副ポケット側当接面(90)を更に備え、
前記平坦副ポケット側当接面(90)は、前記ポケット長軸(B)回りに前記主ポケット側当接面(88)から円周方向に離間する、請求項20~24のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項26】
前記滑り防止リブ(100)は、前記副ポケット側当接面(90)から離間する、請求項25に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項27】
前記ホルダ・ポケット(26)は、前記副ポケット側当接面(90)の反対側のポケット副開口(78)で前記インサート・ホルダ(24)のポケット外側面(76)に開口し、
前記ポケット基部面(82)は、前記ポケット副開口(78)では前記ポケット外周面(84)に隣接しない、請求項25又は26に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項28】
前記ポケット外側面(76)は、前記ホルダ端面(72)上に形成される、請求項27に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項29】
前記滑り防止リブ(100)は、前記ポケット副開口(78)から離間する、請求項28に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項30】
前記滑り防止リブ(100)は、前記第1のリブ平面(RP1)及び更には前記第2のリブ平面(RP2)回りに鏡面対称を呈する、請求項20~29のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項31】
前記滑り防止リブ(100)は、2つのリブ側壁(106)と、前記2つのリブ側壁(106)の間に延在するリブ中心面(108)と、を備え、
前記2つのリブ側壁(106)及び前記リブ中心面(108)は全て、前記リブ長手方向軸(R)の方向で長手方向に延在し、
前記第1のリブ平面(RP1)で取った断面図において、前記リブ中心面(108)は、前記リブ中間部分(104)から離れて前記2つのリブ末端(102)に向かう方向で高さが減少する、請求項20~30のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項32】
前記リブ中心面(108)は、前記リブ長手方向軸(R)に沿った方向で凸形に湾曲し、リブ半径(RR)を有する、請求項31に記載の切削インサート・ホルダ(24)。
【請求項33】
前記リブ長手方向軸(R)に直交し、前記滑り防止リブ(100)を通過する平面で取った断面図において、前記2つのリブ側壁(106)は、前記ポケット基部面(82)から離れて前記ポケット張出し部分(92)に向かう方向で互いに向かって収束する、請求項32に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項34】
前記ホルダ・ポケット(26)には、保持ねじを螺合するために前記ポケット基部面(82)に開口するねじ穴がない、請求項20~33のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項35】
前記ポケット張出し部分(92)は、
前記ポケット基部面(82)の方を向く張出し内面(94)と、
前記張出し内面(94)に交差し、前記張出し内面(94)に横断的に向けられる張出し横断面(96)と、を備え、
前記ホルダ・ポケット(26)は、ポケットねじ穴(98)を備え、
前記ポケットねじ穴(98)は、前記少なくとも1つの張出し横断面(96)内に凹み、前記少なくとも1つの張出し横断面(96)に開口する、請求項20~34のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項36】
前記滑り防止リブ(100)は、前記リブ長手方向軸(R)に沿って連続的に延在する、請求項20~35のいずれか1項に記載のインサート・ホルダ(24)。
【請求項37】
切削工具(20)であって、前記切削工具(20)は、
反対の上方向(D)及び下方向(D)を画定するインサート中心軸(A)を有する切削インサート(22)と、
反対の前方向(D)から後方向(D)までを画定するホルダ長手方向軸(H)を有するインサート・ホルダ(24)と、を備え、
前記切削インサート(22)は、
反対のインサート上面(30)及びインサート下面(32)並びに前記インサート上面(30)と前記インサート下面(32)との間に延在するインサート外周面(34)であって、前記インサート外周面(34)は、前記インサート中心軸(A)回りで円周方向に延在し、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面(40)を備える、反対のインサート上面(30)及びインサート下面(32)並びにインサート外周面(34)と、
前記インサート外周面(34)と前記インサート上面(30)との交線に形成され、前記少なくとも1つの主インサート側当接面(40)から円周方向に変位する少なくとも1つの上切れ刃(44)と、
前記インサート下面(32)内に凹み、下滑り防止凹部(56a)を画定する滑り防止凹部(56)と、備え、
前記下滑り防止凹部(56a)は、少なくとも1つの細長くまっすぐな滑り防止溝(58)を備え、
前記滑り防止溝(58)は、
溝長手方向軸(G)と、
前記溝長手方向軸(G)及び前記インサート中心軸(A)を含む第1の溝平面(GP1)と、
前記第1の溝平面(GP1)に直交し、前記インサート中心軸(A)を含む第2の溝平面(GP2)と、
2つの軸方向に延在する反対の溝末端(60)、及び前記溝末端(60)の間の溝中間部分(62)と、を有し、
前記溝中間部分(62)には、前記インサート中心軸(A)が交差し、
各前記主インサート側当接面(40)は、それぞれの前記滑り防止溝(58)の前記溝長手方向軸(G)に平行に向けられ、
前記インサート・ホルダ(24)は、
ホルダ端面(72)に交差するホルダ主面(70)と、
前記ホルダ主面(70)内に凹み、ポケット主開口(74)で前記ホルダ主面(70)に開口するホルダ・ポケット(26)と、を備え、
前記ホルダ・ポケット(26)は、ポケット長軸(B)を有し、
ポケット基部面(82)と、
前記ポケット基部面(82)に実質的に直交して向けられ、前記ポケット基部面(82)の部分境界を形成するポケット外周面(84)であって、前記ポケット基部面(82)は、前記ポケット主開口(74)では前記ポケット外周面(84)に隣接せず、前記ポケット外周面(84)は、前記ポケット長軸(B)回りで円周方向に延在するとともに平坦主ポケット側当接面(88)を備え、前記平坦主ポケット側当接面(88)は、前記ポケット主開口(74)の反対に位置し、前記ポケット主開口(74)の方を向く、ポケット外周面(84)と、
前記ポケット基部面(82)から突出する細長くまっすぐな滑り防止リブ(100)と、を備え、
前記滑り防止リブ(100)は、リブ長手方向軸(R)に沿って長手方向に延在し、
前記リブ長手方向軸(R)及び前記ポケット長軸(B)を含む第1のリブ平面(RP1)と、
前記第1のリブ平面(RP1)に直交し、前記ポケット長軸(B)を含む第2のリブ平面(RP2)と、を備え、
前記主ポケット側当接面(88)は、前記リブ長手方向軸(R)に平行に向けられ、
前記切削工具(20)は、解放位置と締結位置との間で調節可能であり、
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記切削インサート(22)は、前記ホルダ・ポケット(26)に解放可能に保持され、
前記主ポケット側当接面(88)は、有効な主インサート側当接面(40)に当接し、
前記ポケット基部面(82)に位置する少なくとも1つのポケット支持面(86)は、前記インサート下面(32)に位置するインサート下支承面(36)に当接し、
前記滑り防止リブ(100)は、有効な滑り防止溝(58)内に位置し、
前記有効な滑り防止溝(58)は、有効な前記主インサート側当接面(40)に平行に向けられる、切削工具(20)。
【請求項38】
前記下滑り防止凹部(56a)は、複数の滑り防止溝(58)を備え、
前記切削工具(20)の締結位置において、
有効な前記主ポケット側当接面(88)に非平行に向けられた全ての滑り防止溝(58)は、空いている、請求項37に記載の切削工具(20)。
【請求項39】
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記滑り防止リブ(100)は、有効な前記滑り防止溝(58)に当接しない、請求項37又は38に記載の切削工具(20)。
【請求項40】
前記インサート外周面(34)は、少なくとも1つの平坦副インサート側当接面(42)を更に備え、
前記平坦副インサート側当接面(42)は、前記インサート中心軸(A)回りに前記少なくとも1つの主インサート側当接面(40)から円周方向に離間し、
前記ポケット外周面(84)は、平坦副ポケット側当接面(90)を更に備え、
前記平坦副ポケット側当接面(90)は、前記ポケット長軸(B)回りに前記主ポケット側当接面(88)から円周方向に離間し、
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記副ポケット側当接面(90)は、有効な前記副インサート側当接面(42)に当接する、請求項37~39のいずれか1項に記載の切削工具(20)。
【請求項41】
前記インサート上面(30)は、インサート上締付け面(38)を備え、
前記インサート・ホルダ(24)は、締付け雄ねじ部分(110)と締付け雌部分(112)とを備える個別の締付け部材(28)を備え、
前記ホルダ・ポケット(26)は、
前記少なくとも1つの張出し横断面(96)内に凹み、前記少なくとも1つの張出し横断面(96)に開口するポケットねじ穴(98)と、
前記ホルダ・ポケット(26)と一体に形成され、前記ポケット基部面(82)上に張り出すポケット張出し部分(92)と、を更に備え、
前記ポケット張出し部分(92)は、
前記ポケット基部面(82)の方を向く張出し内面(94)と、
前記張出し内面(94)に交差し、前記張出し内面(94)に横断的に向けられる張出し横断面(96)と、を備え、
前記切削工具(20)の締結位置において、
前記切削インサート(22)は、前記ポケットねじ穴(98)に螺入される前記締付け雄ねじ部分(110)、及び前記インサート上面(38)と締付け当接する前記締付け雌部分(112)によって、前記インサート・ホルダ(24)に解放可能に保持される、請求項37~40のいずれか1項に記載の切削工具(20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、切削インサートがインサート・ホルダのホルダ・ポケット内に解放可能に保持される種類の切削工具に関し、より詳細には、滑り防止構成を有するそのような切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削インサートは、保持ねじ又は締付けアーム等の組付け機構によって、インサート・ホルダのホルダ・ポケット内に解放可能に締め付けることができる。この組付け機構が故障すると、切削インサートは、ホルダ・ポケット内で変位することがある。そのような事象は、回転切削工具(例えば、フライス・カッタ)等の非固定式切削工具である切削工具では特に問題であり、切削インサートがホルダ・ポケットから高速で完全に外れ、機械及び/又はユーザに損傷及び/又は傷害を与えることがある。したがって、切削工具は、切削インサートがホルダ・ポケットから滑らないように、滑り防止構成を備えることができる。
【0003】
一部のそのような滑り防止構成では、切削インサートは、凹部を含むことができ、ホルダ・ポケットは、凸部を含むことができ、凸部は、切削工具が組立て位置にある際に凹部内に位置する。一例は、例えば、米国特許第7,645,100号で開示されており、旋削インサートは、境界面を介してインサートの座と係合し、境界面は、互いに係合する細長くまっすぐな雌状係合部材と雄状係合部材とを含み、旋削インサートがインサート・ポケット内で回転しないようにする。
【0004】
別の例は、米国特許第9,481,038号で開示されており、切削インサートの滑り防止構成は、ダブテール部分を含む第1のインサート当接面と、第2のインサート当接面と、第3のインサート当接面とを含み、それぞれ、インサート基部面と外側及び鋭角のダブテール角度を形成する。ダブテール部分は、切削インサートを機械工具に固着するように構成される。
【発明の概要】
【0005】
本出願の主題の第1の態様によれば、インサート中心軸を有する切削インサートが提供され、インサート中心軸は、反対の上方向から下方向までを画定し、切削インサートは、
反対のインサート上面及びインサート下面並びにインサート上面とインサート下面との間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、インサート中心軸回りで円周方向に延在し、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面を備える、反対のインサート上面及びインサート下面並びにインサート外周面と、
インサート外周面とインサート上面との交線に形成され、少なくとも1つの主インサート側当接面から円周方向に変位する少なくとも1つの上切れ刃と、
インサート下面内に凹み、下滑り防止凹部を画定する滑り防止凹部と、備え、
下滑り防止凹部は、少なくとも1つの細長くまっすぐな滑り防止溝を備え、
滑り防止溝は、
溝長手方向軸と、
溝長手方向軸及びインサート中心軸を含む第1の溝平面と、
第1の溝平面に直交し、インサート中心軸を含む第2の溝平面と、
2つの軸方向に延在する反対の溝末端、及び溝末端の間の溝中間部分と、を有し、
溝中間部分には、インサート中心軸が交差し、
切削インサートには、保持ねじを受け入れるためにインサート上面及びインサート下面に開口する貫通穴がなく、
各主インサート側当接面は、それぞれの滑り防止溝の溝長手方向軸に平行に向けられる。
【0006】
本出願の主題の第2の態様によれば、ホルダ長手方向軸を有するインサート・ホルダが提供され、ホルダ長手方向軸は、反対の前方向から後方向までを画定し、インサート・ホルダは、
ホルダ端面に交差するホルダ主面と、
ホルダ主面内に凹み、ポケット主開口でホルダ主面に開口するホルダ・ポケットと、を備え、
ホルダ・ポケットは、ポケット長軸を有し、
ポケット基部面と、
ポケット基部面に実質的に直交して向けられ、ポケット基部面の部分境界を形成するポケット外周面であって、ポケット基部面は、ポケット主開口ではポケット外周面に隣接せず、ポケット外周面は、ポケット長軸回りで円周方向に延在し、平坦主ポケット側当接面を備え、平坦主ポケット側当接面は、ポケット主開口の反対に位置し、ポケット主開口の方を向く、ポケット外周面と、
ポケット基部面上に張り出すホルダ・ポケットと一体に形成されるポケット張出し部分と、
ポケット基部面から突出する細長くまっすぐな滑り防止リブと、を備え、
滑り防止リブは、リブ長手方向軸に沿って長手方向に延在し、
リブ長手方向軸及びポケット長軸を含む第1のリブ平面と、
第1のリブ平面に直交し、ポケット長軸を含む第2のリブ平面と、を備え、
主ポケット側当接面は、リブ長手方向軸に平行に向けられる。
【0007】
本出願の主題の第3の態様によれば、切削工具を提供し、切削工具は、
反対の上方向及び下方向を画定するインサート中心軸を有する切削インサートと、
反対の前方向及び後方向を画定するホルダ長手方向軸を有するインサート・ホルダと、を備え、
切削インサートは、
反対のインサート上面及びインサート下面並びにインサート上面とインサート下面との間に延在するインサート外周面であって、インサート外周面は、インサート中心軸回りで円周方向に延在し、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面を備える、反対のインサート上面及びインサート下面並びにインサート外周面と、
インサート外周面とインサート上面との交線に形成され、少なくとも1つの主インサート側当接面から円周方向に変位する少なくとも1つの上切れ刃と、
インサート下面内に凹み、下滑り防止凹部を画定する滑り防止凹部と、備え、
下滑り防止凹部は、少なくとも1つの細長くまっすぐな滑り防止溝を備え、
滑り防止溝は、
溝長手方向軸と、
溝長手方向軸及びインサート中心軸を含む第1の溝平面と、
第1の溝平面に直交し、インサート中心軸を含む第2の溝平面と、
2つの軸方向に延在する反対の溝末端、及び溝末端の間の溝中間部分と、を有し、
溝中間部分には、インサート中心軸が交差し、
各主インサート側当接面は、それぞれの滑り防止溝の溝長手方向軸に平行に向けられ、
インサート・ホルダは、
ホルダ端面に交差するホルダ主面と、
ホルダ主面内に凹み、ポケット主開口でホルダ主面に開口するホルダ・ポケットと、を備え、
ホルダ・ポケットは、ポケット長軸を有し、
ポケット基部面と、
ポケット基部面に実質的に直交して向けられ、ポケット基部面の部分境界を形成するポケット外周面であって、ポケット基部面は、ポケット主開口ではポケット外周面に隣接せず、ポケット外周面は、ポケット長軸回りで円周方向に延在し、平坦主ポケット側当接面を備え、平坦主ポケット側当接面は、ポケット主開口の反対に位置し、ポケット主開口の方を向く、ポケット外周面と、
ポケット基部面から突出する細長くまっすぐな滑り防止リブと、を備え、
滑り防止リブは、リブ長手方向軸に沿って長手方向に延在し、
リブ長手方向軸及びポケット長軸を含む第1のリブ平面と、
第1のリブ平面に直交し、ポケット長軸を含む第2のリブ平面と、を備え、
主ポケット側当接面は、リブ長手方向軸に平行に向けられ、
切削工具は、解放位置と締結位置との間で調節可能であり、切削工具の締結位置において、
切削インサートは、ホルダ・ポケット内に解放可能に保持され、
主ポケット側当接面は、有効な主インサート側当接面に当接し、
ポケット基部面に位置する少なくとも1つのポケット支持面は、インサート下面に位置するインサート下支承面に当接し、
滑り防止リブは、有効な滑り防止溝内に位置し、有効な滑り防止溝は、有効な主インサート側当接面に平行に向けられる。
【0008】
上記は概要であり、以下で説明する特徴は、あらゆる組合せで本出願の主題に適用可能であり、例えば、以下の特徴のいずれかは、切削インサート、インサート・ホルダ又は切削工具に適用可能であり得ることを理解されたい。
【0009】
切削インサートは、インサート上面上でN通りに刃先交換可能である。少なくとも1つの上切れ刃は、インサート中心軸回りで円周方向に離間するN個の上切れ刃を備え、Nは、2以上の正の整数である。少なくとも1つの滑り防止溝は、M個の滑り防止溝を備えることができ、Nが偶数である場合M=N/2であるか、又は、Nが奇数である場合M=Nである。
【0010】
下滑り防止凹部は、複数の滑り防止溝を備えることができ、複数の滑り防止溝は、インサート中心軸回りに等しい角度で配置され、互いに交差する。
【0011】
複数の滑り防止溝は、同一とし得る。
【0012】
下滑り防止凹部は、インサート中心軸回りに回転対称を呈することができる。
【0013】
少なくとも1つの滑り防止溝は、第1の溝平面及び更には第2の溝平面回りに鏡面対称を呈することができる。
【0014】
少なくとも1つの滑り防止溝は、インサート外周面から離間することができる。インサート下面は、インサート下支承面を備えることができ、インサート下支承面は、平坦で、インサート中心軸に直交して向けられる。
【0015】
少なくとも1つの滑り防止溝は、2つの反対の溝側壁と、2つの反対の溝側壁の間に延在する溝中心面と、を備えることができ、2つの反対の溝側壁及び溝中心面は全て、溝長手方向軸に沿って長手方向に延在する。第1の溝平面で取った断面図において、溝中心面は、溝中間部分から離れて2つの溝末端に向かう方向で深さを減少させることができる。
【0016】
溝中心面は、溝長手方向軸に沿って方向で凹形に湾曲することができ、ある溝半径を有することができる。
【0017】
溝長手方向軸に直交し、少なくとも1つの滑り防止溝を通過する平面で取った断面図において、2つの溝側壁は、インサート下面からインサート上面に向かう方向で互いの方に収束することができる。
【0018】
下滑り防止凹部は、インサート上面に開口しなくてよい。
【0019】
インサート外周面は、平坦副インサート側当接面を更に備えることができ、平坦副インサート側当接面は、インサート中心軸回りで少なくとも1つの主インサート側当接面から円周方向に離間する。
【0020】
切削インサートは、インサート外周面とインサート下面との交線に形成される少なくとも1つの下切れ刃と、インサート上面内に凹む更なる滑り防止凹部と、を更に備えることができ、滑り防止凹部は、上滑り防止凹部を画定し、上滑り防止凹部及び下滑り防止凹部は、同じ数の滑り防止溝を有する。
【0021】
上滑り防止凹部及び下滑り防止凹部は、同一とし得る。
【0022】
切削インサートは、厳密に2つの上切れ刃と、厳密に2つの下切れ刃と、を備えることができる。上滑り防止凹部及び下滑り防止凹部はそれぞれ、厳密に1つの滑り防止溝を備えることができる。下滑り防止凹部の滑り防止溝は、上滑り防止凹部の滑り防止溝に直交して向けることができる。
【0023】
切削インサートは、厳密に4つの上切れ刃を備えることができる。下滑り防止凹部は、互いに直交して向けられた厳密に2つの滑り防止溝を備えることができる。
【0024】
少なくとも1つの滑り防止溝は、プレス加工溝とすることができ、このプレス加工溝には、研磨によって形成される痕跡がなく、インサート中心軸に沿った方向の切欠きがない。
【0025】
少なくとも1つの滑り防止溝は、溝長手方向軸に沿って連続的に延在することができる。
【0026】
滑り防止リブは、2つの軸方向に延在する反対のリブ末端と、リブ末端の間のリブ中間部分と、を備えることができ、リブ中間部分には、ポケット長軸が交差する。
【0027】
ポケット基部面は、少なくとも1つのポケット支持面を備えることができ、少なくとも1つのポケット支持面は、平坦で、ポケット長軸に直交して向けられる。
【0028】
少なくとも1つのポケット支持面は、厳密に2つの同一平面ポケット支持面を備えることができ、同一平面ポケット支持面は、滑り防止リブの両側に位置する。
【0029】
ポケット長軸は、ポケット張出し部分に交差することができる。
【0030】
ポケット外周面は、平坦副ポケット側当接面を更に備えることができ、平坦副ポケット側当接面は、ポケット長軸回りで主ポケット側当接面から円周方向に離間する。
【0031】
滑り防止リブは、副ポケット側当接面から離間することができる。
【0032】
ホルダ・ポケットは、副ポケット側当接面の反対側のポケット副開口でインサート・ホルダのポケット外側面に開口することができ、ポケット基部面は、ポケット副開口でポケット外周面に隣接しない。
【0033】
ポケット外側面は、ホルダ端面上に形成することができる。
【0034】
滑り防止リブは、ポケット副開口から離間することができる。
【0035】
滑り防止リブは、第1のリブ平面及び更には第2のリブ平面回りに鏡面対称を呈することができる。
【0036】
滑り防止リブは、2つのリブ側壁と、2つのリブ側壁の間に延在するリブ中心面と、を備えることができ、2つのリブ側壁及びリブ中心面は全て、リブ長手方向軸の方向で長手方向に延在する。第1のリブ平面で取った断面図において、リブ中心面は、リブ中間部分から離れて2つのリブ末端に向かう方向で高さを減少させることができる。
【0037】
リブ中心面は、リブ長手方向軸に沿った方向で凸形に湾曲することができ、あるリブ半径を有することができる。
【0038】
リブ長手方向軸に直交し、滑り防止リブを通過する平面で取った断面図において、2つのリブ側壁は、ポケット基部面から離れポケット張出し部分に向かう方向で互いの方に収束することができる。
【0039】
ホルダ・ポケットには、保持ねじを螺合するためにポケット基部面に開口するねじ穴がなくてよい。
【0040】
ポケット張出し部分は、張出し内面を備えることができ、張出し内面は、ポケット基部面及び張出し横断面の方を向き、張出し横断面は、張出し内面に交差し、張出し内面に横断的に向けられる。ホルダ・ポケットは、ポケットねじ穴を備えることができ、ポケットねじ穴は、少なくとも1つの張出し横断面内に凹み、少なくとも1つの張出し横断面に開口する。
【0041】
滑り防止リブは、リブ長手方向軸に沿って連続的に延在することができる。下滑り防止凹部は、複数の滑り防止溝を備えることができる。切削工具の締結位置において、有効な主ポケット側当接面に非平行に向けられたあらゆる滑り防止溝は、空いていてよい。
【0042】
切削工具の締結位置において、滑り防止リブは、有効な滑り防止溝に当接しなくてよい。
【0043】
インサート外周面は、少なくとも1つの平坦副インサート側当接面を更に備えることができ、平坦副インサート側当接面は、インサート中心軸回りで少なくとも1つの主インサート側当接面から円周方向に離間する。ポケット外周面は、平坦副ポケット側当接面を更に備えることができ、平坦副ポケット側当接面は、ポケット長軸回りで主ポケット側当接面から円周方向に離間する。切削工具の締結位置において、副ポケット側当接面は、有効な副インサート側当接面に当接することができる。
【0044】
インサート上面は、インサート上締付け面を備えることができる。インサート・ホルダは、締付け雄ねじ部分と締付け雌部分とを備える個別の締付け部材を備えることができる。ホルダ・ポケットは、ポケットねじ穴を更に備えることができ、ポケットねじ穴は、少なくとも1つの張出し横断面内に凹み、少なくとも1つの張出し横断面に開口し、ポケット張出し部分は、ポケット基部面上に張り出すホルダ・ポケットと一体に形成され、ポケット張出し部分は、ポケット基部面の方を向く張出し内面と、張出し横断面と、を備え、張出し横断面は、張出し内面に交差し、張出し内面に横断的に向けられる。切削工具の締結位置において、切削インサートは、ポケットねじ穴に螺入される締付け雄ねじ部分、及びインサート上締付け面と締付け当接する締付け雌部分によって、インサート・ホルダに解放可能に保持することができる。
【0045】
本出願をより良好に理解し、本出願を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】切削工具のホルダ・ポケット及び両側切削インサートの斜視図である。
図2図1の分解図である。
図3】本発明による、図1の切削インサートの斜視図である。
図4図5の線IV-IVに沿って取った図5の切削インサートの断面図である。
図4a図4の詳細図である。
図5図3の切削インサートの底面図である。
図6】本発明による片側切削インサートの斜視図である。
図7】本発明による別の両側切削インサートの斜視図である。
図8図1のホルダ・ポケットの斜視図である。
図9】締付け部材を取り付けた、ポケット副開口の前面における図8のホルダ・ポケットの第1の側面図である。
図10】締付け部材を取り付けた、ポケット主開口の前面における図8のホルダ・ポケットの第2の側面図である。
図10a図11の線Xa-Xaに沿って取った断片的な断面図である。
図11図8のホルダ・ポケットの上面図である。
図12】リブ長手方向軸に直交し、滑り防止リブを通過する平面で取った、締結位置における切削工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
例示を簡単、明確にするため、図示する要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを了解されたい。例えば、要素の一部の寸法は、明確にするため、他の要素と比較して誇張されていることがある、又はいくつかの物理的構成要素は、一機能ブロック若しくは要素内に含まれることがある。適切とみなされる場合、参照数字は、対応する又は類似する要素を示すために図面の中で繰り返すことがある。
【0048】
以下の説明において、本出願の主題の様々な態様を説明する。説明のため、特定の設定及び詳細は、本出願の主題に対し完全な理解をもたらすように十分詳細に示す。しかし、本明細書に提示する構成及び詳細を伴わずに本出願の主題を実行し得ることも当業者には明らかであろう。
【0049】
まず、本出願の主題の実施形態によるチップ除去のための切削工具20を示す図1及び図2に注意を向けられたい。切削工具20は、典型的には超硬合金又はセラミックから作製し得る切削インサート22を有する。切削工具20は、ホルダ・ポケット26を有するインサート・ホルダ24も有する。インサート・ホルダ24は、典型的には鉄鋼から作製する。この非限定的な例において、切削工具20は、回転フライス工具であり、切削インサート22は、フライス・インサートである。しかし、本出願の主題は、他の種類の切削工具及び切削インサート、例えば、限定はしないが、旋削工具及び旋削インサートにも適用されることを留意されたい。切削工具20は、解放位置と締結位置との間で調節可能である。切削工具20の締結位置において、切削インサート22は、例えば、切削インサート22をホルダ・ポケット26内に締め付ける締付け部材28によってインサート・ホルダ24に解放可能に取り付けられる。
【0050】
次に、本発明の第1の態様に関連する、本出願の主題による切削インサート22を示す図3図6を参照されたい。切削インサート22は、単一の一体化構造を有する。切削インサート22は、インサート中心軸Aを有する。インサート中心軸Aは、反対の上方向D及び下方向Dを画定する。切削インサート22は、対向するインサート上面30及びインサート下面32と、インサート上面30とインサート下面32との間に延在するインサート外周面34と、を含む。インサート上面30及びインサート下面32は、切削インサート22の厚さを画定する。インサート中心軸Aは、インサート上面30及びインサート下面32を通って延在する(即ち、インサート上面30及びインサート下面32に交差する)。切削インサート22は、インサート中央平面Mを有し、中央平面Mは、インサート中心軸Aに直交して向けられ、インサート上面30とインサート下面32との間の中間を通過する。図4を参照すると、切削インサート22は、インサート高さIHを有し、インサート高さIHは、インサート中心軸Aの方向でインサート上面30とインサート下面32との間で測定される。
【0051】
用語「上」及び「下」の使用は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、図4及び図4aにおける工具インサート長手方向軸Aの方向に対する上及び下に垂直に向かうそれぞれの相対的な位置を指すことを了解されたい。
【0052】
図4図6を参照すると、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート下面32は、インサート下支承面36を含むことができる。インサート下支承面36は、切削インサート22をホルダ・ポケット26内に据え付けた際にホルダ・ポケット26内の対応する面に接触するように構成される。インサート下支承面36は、平坦であり、インサート中心軸Aに直交して向けることができる。インサート上面30は、インサート上締付け面38を含むことができる。インサート上締付け面38は、締付け部材28によって締め付けられるように構成される。インサート下支承面36と同様に、インサート上締付け面38は、平坦であり、インサート中心軸Aに直交して(即ち、インサート下支承面36に平行に)向けることができる。
【0053】
インサート外周面34は、インサート中心軸A回りで円周方向に延在する。インサート外周面34は、少なくとも1つの平坦主インサート側当接面40を含む。少なくとも1つの主インサート側当接面40は、切削インサート22をホルダ・ポケット26内に据え付けた際にホルダ・ポケット26内の対応する面に接触するように構成される。図示するこの非限定的な例では、インサート外周面34は、厳密に4つの主インサート側当接面40を含み、これにより、切削インサート22を各側で(4通りに)刃先交換可能とすることができる。各隣接対の主インサート側当接面40は、互いに直交することができる。全ての主インサート側当接面40は、互いに同一とすることができる。(図示する非限定的な例に示す)そのような構成において、切削インサート22は、立方体基本形状を有することができ、インサート上面30及びインサート下面32は丸くない。
【0054】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート外周面34は、少なくとも1つの平坦副インサート側当接面42を含むことができ、平坦副インサート側当接面42は、インサート中心軸A回りで少なくとも1つの主インサート側当接面40から円周方向に離間する。図示するこの非限定的な例において、インサート外周面34は、厳密に4つの副インサート側当接面42を含む。各副インサート側当接面42は、それぞれの主インサート側当接面40に形成することができる。
【0055】
切削インサート22は、少なくとも1つの上切れ刃を含む。少なくとも1つの上切れ刃44は、インサート外周面34とインサート上面30との交線に形成される。少なくとも1つの上切れ刃44は、米国特許第7,121,769351号で開示される切れ刃とは異なり、切削インサート22の厚さ方向で延在しないことに留意されたい。各上切れ刃44は、少なくとも1つのインサート側当接面40の対応するインサート側当接面40から円周方向に変位する。4つの側のインサートの場合、各上切れ刃44は、対応するインサート側当接面40に円周方向で(インサート中心軸A回りに180°回転ずつ)対向する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、N個の上切れ刃44を含むことができ、上切れ刃44は、インサート中心軸A回りで円周方向に離間し、Nは2以上の正の整数である。即ち、切削インサート22は、インサート上面30上でN通りに刃先交換可能であり得る。したがって、3つの側の切削インサートの場合、上切れ刃44は、対応する側当接面に円周方向で(インサート中心軸A回りに120°回転ずつ)隣接する。
【0056】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、少なくとも1つの下切れ刃46を含むことができ、少なくとも1つの下切れ刃46は、インサート外周面34とインサート下面32との交線に形成される。そのような場合、切削インサート22は、両側切削インサートであり、ホルダ・ポケット26内で、インサート上支承面36及びインサート下支承面38の両側で据え付けることができる。言い換えれば、切削インサート22は、「可逆的」(即ち、インサート中心軸Aに直交して向けられ、インサート中央平面M内に含まれるインサート短軸I回りに180°回転可能)であり、このため、インサート下面32はインサート上面30になり、その逆も同様である。切削インサート22は、上切れ刃44と同じ数の下切れ刃46を含むことができる。したがって、切削インサート22は、インサート中心軸A回りで円周方向に離間するN個の下切れ刃46を含むことができる。即ち、切削インサート22は、インサート下面30上でN通りに刃先交換可能であり得る。
【0057】
インサート上面30は、少なくとも1つの上切れ刃44に沿って延在する少なくとも1つの上すくい面48を含む。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの上すくい面48は、少なくとも1つの上切れ刃44をインサート上締付け面38に接続することができる。インサート外周34は、上切れ刃44に沿って延在する少なくとも1つの上逃げ面50を含む。両側構成の切削インサートでは、同様に、インサート下面32は、少なくとも1つの下すくい面52を含むことができ、少なくとも1つの下すくい面52は、少なくとも1つの上すくい面48と同様に構成し、向けることができる。インサート外周34は、下切れ刃46に沿って延在する少なくとも1つの下逃げ面54を含む。
【0058】
切削インサート22は、インサート下面32内に凹む滑り防止凹部56を含み、滑り防止凹部56は、下滑り防止凹部56aを画定する。下滑り防止凹部56aは、主に、切削インサート22がホルダ・ポケット26から滑らないように働く。第2の機能として、下滑り防止凹部56aは、切削インサート22がホルダ・ポケット26内で正確な刃先交換可能位置にあることを知らせるように働く。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、下滑り防止凹部56は、インサート下面32上の中心に位置することができる。下滑り防止凹部56aは、インサート上面30に開口しなくてよい。即ち、下滑り防止凹部56aは、単一開口部でインサート下面32にのみ開口する非貫通凹部である。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート下面32内に凹む厳密に1つの下滑り防止凹部56aを含むことができる。
【0059】
下滑り防止凹部56aは、まっすぐで細長い少なくとも1つの滑り防止溝58を含む。少なくとも1つの滑り防止溝58は、ホルダ・ポケット26内に位置する相補形滑り防止リブを受け入れるように設計される。少なくとも1つの滑り防止溝58は、溝長手方向軸Gを有する。少なくとも1つの滑り防止溝58は、それぞれの溝長手方向軸Gに沿って連続的に延在する。好ましくは、少なくとも1つの滑り防止溝58は、2つ(以上)の離間区分を有するのとは反対に、それぞれの溝長手方向軸Gに沿って連続的に延在することができる。各主インサート側当接面40は、それぞれの滑り防止溝58の溝長手方向軸Gに平行に向けられる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの滑り防止溝58は、溝長手方向軸G及びインサート中心軸Aを含む第1の溝平面GP1回りに鏡面対称を呈することができる。少なくとも1つの滑り防止溝58は、第2の溝平面GP2回りに鏡面対称を呈することができ、第2の溝平面GP2は、溝長手方向軸Gに直交して向けられ、インサート中心軸Aを含む。したがって、少なくとも1つの滑り防止溝58は、インサート中心軸A回りに2通りの回転対称を呈することができる。少なくとも1つの滑り防止溝58は、インサート外周面34から離間することができる(即ち、インサート外周面34まで延在しない)。即ち、下滑り防止凹部56aは、インサート外周面34から離間してよい。したがって、有利には、切削インサート22、特にインサート外周面34は、溝58の生成のために材料を除去する又は材料をなくすことによって好ましくなく弱められない。
【0060】
各滑り防止溝58は、2つの反対の溝末端60と、2つの反対の溝末端60の間の溝中間部分62と、を含む。2つの溝末端60は、溝長手方向軸Gに沿って延在する、したがって、「軸方向に延在する」。溝中間部分62には、インサート中心軸Aが交差する。
【0061】
図5に示されているように、滑り防止溝58は、インサート長さILよりも短い溝長さGLを有してよく、溝長さGL及びインサート長さILの両方は、溝長手方向軸Gに沿って測定される。いくつかの実施形態では、溝長さGLは、インサート長さILの20%~80%の間である。したがって、そのような実施形態では、溝58の両端(即ち、溝末端60)は、インサート長さILの10%~40%の間でインサート外周面34から離間する。滑り防止溝58は、溝長手方向軸Gに直交する方向で測定される溝幅GWも有する。いくつかの実施形態では、溝幅GWは、溝長さGLの10%~40%の間である。
【0062】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの滑り防止溝58は、2つの反対の溝側壁64と、溝側壁64の間に延在する溝中心面66と、を含むことができる。2つの反対の溝側壁及び溝中心面66は全て、溝長手方向軸Gの方向で長手方向に延在することができる。言い方を変えれば、2つの溝側壁64及び溝中心面66の全ては、2つの溝末端60の間に延在する。図4aを参照すると、第1の溝平面GP1で取った断面図において、溝中心面66は、インサート下支承面36からインサート中心軸Aの方向で測定される溝深さGDを有し、溝深さGDは、溝中間部分62から離れて2つの溝末端60に向かう方向で減少することができる。したがって、溝深さGDは、インサート中心軸Aで最大とすることができる。最大溝深さGDは、2mm未満とすることができる。最大溝深さGDは、インサート高さIHの20%より小さくすることができる。第1の溝平面GP1で取った断面図において、溝中心面66は、溝長手方向軸Gに沿った方向で凹形に湾曲することができ、溝半径GRを有することができる。溝長手方向軸Gに直交し(即ち、第2の溝平面GP2に平行であり)、少なくとも1つの滑り防止溝58を通過する平面で取った断面図において、2つの溝側壁64は、インサート下面30からインサート上面32に向かう方向で互いに向かって収束することができる。
【0063】
したがって、切削インサート22は、プレス加工によって製造することができ、溝56を形成するのに後処理(例えば研磨)を一切伴わずに製造可能である。したがって、溝58は、研磨によって形成される痕跡のないプレス加工溝58(即ち、非研磨溝)である。当業者であれば、そのような溝が、表面の滑らかさ及び/又は研磨マークの存在等の痕跡に基づき、研磨によって形成されたかどうかを決定することができる。更に、プレス加工溝には、インサート中心軸Aに沿った方向で切欠きがない。
【0064】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、下滑り防止凹部56aは、M個の滑り防止溝58を含むことができ、Mは正の整数である。
【0065】
滑り防止溝58の数は、切削インサート22をホルダ・ポケット26内に据え付けた際に、切削インサート22が各側に(即ち、インサート下面30又はインサート上面32上に)有する刃先交換可能位置の数を決定する。切れ刃の数Nが偶数である場合、MはN/2に等しくすることができる。したがって、各滑り防止溝58は、2つの刃先交換可能位置を可能にする。Nが奇数である場合、MはNに等しくすることができる。したがって、各滑り防止溝58は、1つの刃先交換可能位置を可能にする。1つの滑り防止溝58が両側のうち片側にある構成では、1つの滑り防止溝58は、マイナス符号の数学記号の外観を有することができる。
【0066】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、下滑り防止凹部56aは、複数の滑り防止溝58を含むことができる(即ち、M≧2)。そのような構成では、複数の滑り防止溝58は全て、溝中間部分62で互いに交差する。あらゆる滑り防止溝58の溝中間部分62は、全ての他の滑り防止溝58に共通であることに留意されたい。複数の滑り防止溝58は、同一とし得る。複数の滑り防止溝58は、インサート中心軸A回りに等しい角度で配置し、互いに交差することができる。特に、複数の滑り防止溝58は、下滑り防止凹部56aが中心軸A回りに回転対称を呈し得るように配置することができる。
【0067】
両側構成の切削インサート22において、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、インサート上面30内に凹む更なる滑り防止溝56を含むことができ、更なる滑り防止溝56は、上滑り防止凹部56bを画定する。下滑り防止凹部56aに関連する本明細書で説明する全ての特徴は、上滑り防止凹部56bに適用し得ることに留意されたい。上滑り防止凹部56bは、下滑り防止凹部56aに同一とし得る。上滑り防止凹部56bは、下滑り防止凹部56aから離間することができる(即ち、下滑り防止凹部56aと接続していない)。下滑り防止凹部56aの場合と同様に、切削インサート22は、インサート下面30内に凹む厳密に1つの上滑り防止凹部56bを含むことができる。
【0068】
更に、両側構成の切削インサート22において、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、厳密に2つの上切れ刃44と、厳密に2つの下切れ刃46とを含むことができる(図7)。切削インサート22は、片側につき2通りに刃先交換可能である。インサート外周面34は、複数の湾曲コーナ面68を含むことができ、複数の湾曲コーナ面68は、複数の主インサート側当接面40と円周方向で交互である。下滑り防止凹部56a及び上滑り防止凹部56bのそれぞれは、厳密に1つの溝58を含むことができる。下滑り防止凹部56aの滑り防止溝58は、上滑り防止凹部56bの滑り防止溝58に直交して向けることができる。したがって、下滑り防止凹部56a及び上滑り防止凹部56bは、インサート中心軸Aに沿った面で位置合わせされない。このことにより、ユーザが、切削インサート22をホルダ・ポケット26に不正確な位置で取り付けないようにする。
【0069】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22は、厳密に4つの切れ刃44を含むことができる(図3)。したがって、切削インサート22は、インサート下面32上で4通りに刃先交換可能である。下滑り防止凹部56aは、互いに直交して向けられた厳密に2つの滑り防止溝58を含むことができる。2つの滑り防止溝58は、十字形状を形成することができる。2つの滑り防止溝58は、プラス符号の数学記号の外観を有することができる。両側構成の切削インサートにおいて、切削インサート22は、厳密に4つの下切れ刃46を含むことができる。上滑り防止凹部56bは、互いに直交して向けられた厳密に2つの滑り防止溝58を含むことができる。下滑り防止凹部56aの各滑り防止溝58は、上滑り防止凹部56bのそれぞれの滑り防止溝58に平行に向けることができる。したがって、下滑り防止凹部56a及び上滑り防止凹部56bは、インサート中心軸Aに沿った面で位置合わせすることができる。
【0070】
本出願の主題の第2の態様は、インサート・ホルダ24に関する。図8図10に注意を向けられたい。インサート・ホルダ24は、反対の前方向Dから後方向Dまでを画定するホルダ長手方向軸Hを有する。インサート・ホルダ24は、ホルダ端面72に交差するホルダ主面70を含む。ホルダ主面70は、ホルダ長手方向軸H回りで円周方向に延在する。ホルダ端面72には、ホルダ長手方向軸Hが交差し、全体が前方向Dに面する。
【0071】
用語「前」及び「後」の使用は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、図10における工具ホルダ長手方向軸Bの垂直に上及び下に向かう(図9では読者に向かい、図11では読者から離れる)それぞれの相対的な位置を指すことを了解されたい。概して、前方向Dは、切削インサート22に向かう方向である。
【0072】
インサート・ホルダ24は、切削インサート22を中に解放可能に取り付けるホルダ・ポケット26を含む。ホルダ・ポケット26は、ポケット長軸Bを有する。ホルダ・ポケット26は、単一の一体化構造を有する。ホルダ・ポケット26は、ホルダ主面70内に凹んでいる。ホルダ・ポケット26は、ポケット主開口74でホルダ主面70に開口する。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ・ポケット26は、ポケット副開口78でインサート・ホルダ24のポケット外側面76に開口することができる。図示する非限定的な例において、ポケット外側面76は、ホルダ端面72に形成することができる。代替的に、インサート・ホルダ24は、外周凹部を含むことができ、外周凹部は、ホルダ・ポケット26に隣接するホルダ主面70内に凹み、ホルダ主面70に開口する(図示せず)。ポケット外側面76は、外周凹部に形成することができる。ホルダ長手方向軸H及びポケット長軸Bは、互いに非平行とすることができる。ホルダ長手方向軸Hは、ポケット長軸Bに対して傾斜させることができる。
【0073】
ホルダ・ポケット26は、ポケット基部面82と、ポケット外周面84とを含む。ポケット外周面84は、ポケット基部面82に実質的に直交して向けられ、ポケット基部面82の部分境界を形成する。ポケット基部面82は、ポケット主開口74で、及び任意で、存在する場合、ポケット副開口78で、ポケット外周面84に隣接しない。ポケット基部面82には、ポケット長軸Bが交差する。
【0074】
図8図10を参照すると、ポケット基部面82は、少なくとも1つのポケット支持面86を含む。少なくとも1つのポケット支持面86は、切削インサート22を切削インサート22内に据え付けた際に切削インサート22内の対応する面に接触するように構成される。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのポケット支持面86は、平坦で、ポケット長軸Bに直交して向けることができる。
【0075】
ポケット外周面84は、ポケット長軸B回りで円周方向に延在する。ポケット外周面84は、平坦主ポケット側当接面88を含み、平坦主ポケット側当接面88は、ポケット主開口74の反対に位置し、ポケット主開口74の方を向く。主ポケット側当接面88は、切削インサート22を切削インサート22内に据え付けた際に切削インサート22内の対応する面に接触するように構成される。
【0076】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット外周面84は、平坦副ポケット側当接面90を更に含むことができ、平坦副ポケット側当接面90は、ポケット長軸B回りで主ポケット側当接面88から円周方向に離間する。副ポケット側当接面90は、切削インサート22を切削インサート22内に据え付けた際に切削インサート22内の対応する面に接触するように構成される。副ポケット側当接面90は、ポケット副開口78の反対に位置することができる。
【0077】
副ポケット側当接面90は、主ポケット側当接面88に直交して向けることができる。
【0078】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ・ポケット26は、ホルダ・ポケット26と一体に形成したポケット張出し部分92を含むことができる。ポケット張出し部分92は、ポケット基部面82上に張り出すことができる。ポケット長軸Bは、ポケット張出し部分92に交差することができる。ポケット張出し部分92は、切削インサート22をホルダ・ポケット26内に解放可能に締め付けるため、ポケット基部面82内へねじ穴を螺合する保持ねじへのアクセスを妨害する程度までポケット基部面82上に張り出してよい。したがって、ホルダ・ポケット26には、保持ねじを締付け目的で使用できないため、ポケット基部面82に開口するねじ穴がなくてよい。
【0079】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ポケット張出し部分92は、ポケット基部面82の方を向く張出し内面94を含むことができる。張出し内面94は、平坦で、少なくとも1つのポケット支持面86に平行とすることができる。ポケット張出し部分92は、張出し横断面96を含むことができ、張出し横断面96は、張出し内面94に交差し、張出し内面94に横断的に向けられる。概して、張出し横断面96は、ホルダ主面70上に形成することができる。好ましくは、張出し横断面96は、緩やかにすることができる(即ち、ホルダ長手方向軸Hの方に傾斜する)。
【0080】
図2及び図11を参照されたい。保持ねじを切削インサート22に通過させるのではなく、本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダ・ポケット26は、ポケットねじ穴98を含むことができ、ポケットねじ穴98は、締付け部材28を螺入し、切削インサート22をインサート・ホルダ24に固着するように設計される。ポケットねじ穴98は、少なくとも1つの張出し横断面96内に凹み、少なくとも1つの張出し横断面96に開口することができる。任意で、ポケットねじ穴98は、張出し内面94にも開口することができる。ポケットねじ穴98は、ねじ穴軸Sに沿って延在する。ねじ穴軸S及びポケット長軸Bは、互いに非平行とすることができる。即ち、ねじ穴軸Sは、ポケット長軸Bに対して傾斜することができる。
【0081】
ホルダ・ポケット26は、ポケット基部面82から突出する細長くまっすぐな滑り防止リブ100を含む。滑り防止リブ100は、滑り防止溝58のそれぞれ1つの中に受け入れられるように設計される。滑り防止リブ100は、リブ長手方向軸Rを有する。滑り防止リブ100は、リブ長手方向軸Rに沿って長手方向に延在する。好ましくは、滑り防止リブ100は、リブ長手方向軸Rに沿って連続的に延在することができる。主ポケット側当接面88は、リブ長手方向軸Rに平行に向けられる。したがって、有利には、主ポケット側当接面88を製造する際に(滑り防止リブ100の製造に使用する)回転切削工具の回転角度を再構成する必要がない(又はその逆も同様である)。
【0082】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、滑り防止リブ100は、リブ長手方向軸R及びポケット長軸Bを含む第1のリブ平面RP1回りに鏡面対称を呈することができる。滑り防止リブ100は、第2のリブ平面RP2回りに鏡面対称を呈することができ、第2のリブ平面RP2は、リブ長手方向軸Rに直交して向けられ、ポケット長軸Bを含む。したがって、滑り防止リブ100は、ポケット長軸B回りに2通りの(180°)回転対称を呈することができる。滑り防止リブ100は、副ポケット側当接面90から離間することができる(即ち、副ポケット側当接面90まで延在しない)。同様に、滑り防止リブ100は、ポケット副開口78から離間してよい。リブ長手方向軸Rは、ホルダ長手方向軸Hに平行とすることができる。
【0083】
滑り防止リブ100は、2つの反対のリブ末端102と、2つの反対のリブ末端60の間のリブ中間部分104とを含む。2つのリブ末端102は、リブ長手方向軸Rに沿って延在し、したがって「軸方向に延在する」。リブ中間部分104には、ポケット長軸Bが交差する。
【0084】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、滑り防止リブ100は、2つのリブ側壁106と、リブ側壁106の間に延在するリブ中心面108とを含むことができる。2つのリブ側壁106及びリブ中心面108は全て、リブ長手方向軸Rの方向で長手方向に延在することができる。言い方を変えれば、2つのリブ側壁106及びリブ中心面108の全ては、2つのリブ末端102の間に延在する。滑り防止リブは、それぞれの滑り防止溝58に対応する形状を有することができる。例えば、第1のリブ平面RP1で取った断面図において、リブ中心面108は、ポケット支持面86からポケット長軸Bの方向で測定されるリブ高さRHを有し、リブ高さRHは、リブ中間部分104から離れて2つのリブ末端102のいずれかまでの方向で減少させることができる(図10aを参照)。したがって、リブ高さRHは、ポケット長軸Bで最大である。最大リブ高さRHは、2mm未満とすることができる。第1のリブ平面RP1で取った断面図において、リブ中心面108は、リブ長手方向軸Rに沿った方向で凸形に湾曲することができ、リブ半径RRを有することができる。リブ長手方向軸Rに直交し(即ち、第2のリブ平面RP2に平行であり)、滑り防止リブ100を通過する平面で取った断面図において、2つのリブ側壁106は、ポケット基部面82から離れてポケット張出し部分92に向かう方向で互いに向かって収束することができる。
【0085】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのポケット支持面86は、厳密に2つの同一平面ポケット支持面86を備えることができ、同一平面ポケット支持面86は、滑り防止リブ100の両側に位置する。
【0086】
ホルダ・ポケット26内への切削インサート22の据付け及び支持を図1図2及び図11を参照して説明する。切削工具20の締結位置において、切削インサート22は、インサート・ホルダ24のホルダ・ポケット26に解放可能に取り付けられる。図示するこの非限定的な例では、締付け部材28は、締付け雄ねじ部分110と、締付け雌部分112と、を含む。図2に示すように、締付け雄ねじ部分110は、ポケットねじ穴98を係合するように構成した第1の端部と、締付け雌部分112を係合するように構成した第2の端部とを有することができる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、締付け雌部分110及び締付け雌部分112は、互いに螺着可能とすることができる。締付け雄ねじ部分110は、締付け部材の長手方向軸に沿って締付け非ねじ部分112から離間することができる。
【0087】
切削インサート22は、ポケットねじ穴98に螺入される締付け雄ねじ部分110、及びインサート上面30と締付け当接する締付け雌部分112によって、インサート・ホルダ24に解放可能に保持される。そのような締付け構成において、切削インサート22には、(米国特許第7,645,100号で開示される種類の)保持ねじを収容するインサート上面30及びインサート下面32に開口する貫通穴がなくてよいことに留意されたい。インサート中心軸A及びポケット長軸Bは、一致することができる。したがって、ポケット基部面82は、上方向D内に面する。
【0088】
リブ長手方向軸Rに直交し、滑り防止リブ100を通過する平面で取った切削工具20の断面図を示す図11を参照すると、組立て位置において、少なくとも1つのポケット支持面86は、インサート下支承面36に当接する。主ポケット側当接面88は、「有効な」主インサート側当接面40に当接する。滑り防止リブ100は、「有効な」滑り防止溝58内に位置し、この滑り防止有効溝58は、主ポケット側当接面88に当接する主インサート側当接面40に平行に向けられる。このことにより、切削インサート22が、動作中、径方向外側で(ホルダ長手方向軸Hに対して)ホルダ・ポケット28から滑らないようにする。しかし、切削インサート22の取替え又は刃先交換は、切削インサート22をリブ長手方向軸Rの方向で変位させることによって可能である。複数の滑り防止溝58を含む下滑り防止凹部56aの構成において、主ポケット側当接面88に横断的に(例えば非平行に)向けられた滑り防止溝58の溝末端60は、空いていてよい。即ち、前記「非有効な」滑り防止溝58は、(共通の溝中間部分(複数可)62が中に配置した滑り防止リブ100を有するにもかかわらず)空いているとみなされる。
【0089】
本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、副ポケット側当接面90は、「有効な」副インサート側当接面42に当接することができる。滑り防止リブ100を有効な滑り防止溝58内に配置し得るにもかかわらず、滑り防止リブ100は、有効な滑り防止溝58に当接しなくてよい。したがって、主ポケット側当接面88とそれぞれの主インサート側当接面40との間の当接に関する配置の過剰な制約が回避される。
【0090】
上記で説明した滑り防止溝は、セラミック・インサートに特に適していることを更に留意されたい。例えば、溝中心面66は、切削動作中の工具応力を低減する半径及び/又は浅い深さで構成することができる。更に、切削インサート22には、保持ねじを受けるために使用される種類の貫通穴がなくてよい。
【0091】
本出願の主題は、ある程度の詳細まで説明しているが、以下で請求する本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく様々な代替形態及び修正形態を行い得ることを理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図4a
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図10a
図11
図12
【国際調査報告】