(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】高送り旋削工具アセンブリ
(51)【国際特許分類】
B23B 29/00 20060101AFI20220715BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20220715BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20220715BHJP
B23B 27/22 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B23B29/00 A
B23B27/16 A
B23B27/14 C
B23B27/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559329
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(85)【翻訳文提出日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 IL2020050510
(87)【国際公開番号】W WO2020234866
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046CC00
3C046EE01
3C046JJ00
(57)【要約】
2方向高送り旋削工具アセンブリ(10)は、工具ホルダ(14)と、切削インサート(14)と、工具ホルダ(14)に切削インサート(12)を固定するクランプ要素(16)と、を含む。切削インサート(12)は、中心に配置された最前刃部分(34)と、最前刃部分(34)から後方向に、かつ、工具ホルダ(14)のフランク工具側(46、48)よりもさらに遠くまで側方に延在する第1主刃部分(36A)及び第2主刃部分(36B)と、を有するアクティブ切れ刃(24A、24B)を含む。第1主刃部分(36A)及び第2主刃部分(36B)はまた、2つの側方方向(D
S1、D
S2)での高送り旋削を促進する比較的小さな切り込み角度(K1、K2)を各々有することができる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2方向高送り旋削工具アセンブリであって、
工具ホルダ、切削インサート及びクランプ要素を備え、
前記工具ホルダは、
反対の前工具端及び後工具端であって、前記前工具端に向かう前方向と、前記前方向に反対の後方向と、を含む長手方向を規定する反対の前工具端及び後工具端と、
反対の上工具側及び下工具側であって、前記上工具側に向かう上方向と、前記上方向に反対の下方向と、を含む垂直方向を規定する反対の上工具側及び下工具側と、
反対の第1フランク工具側及び第2フランク工具側であって、前記第1フランク工具側に向かう第1側方向と、前記第1側方向に反対の第2側方向と、を含む側方方向を規定する反対の第1フランク工具側及び第2フランク工具側と、
前記長手方向及び前記垂直方向に平行に延在し、かつ、前記前工具端に隣接して前記第1フランク工具側及び前記第2フランク工具側を二等分する垂直二等分平面と、
シャンク部分と、
前記シャンク部分から延在するヘッド部分と、
前記前工具端と前記ヘッド部分の上工具側との交差部に形成されたインサートポケットであって、ポケットベース表面を備えるインサートポケットと、を備え、
前記切削インサートは、前記クランプ要素を介して前記インサートポケットに固定され、
前記切削インサートは、
反対の上面及び下面と、前記上面及び前記下面を接続するインサートフランク表面と、
前記インサートフランク表面と前記上面との交差部の少なくとも一部に沿って形成された周辺切れ刃であって、少なくとも1つのアクティブ切れ刃を備える周辺切れ刃と、を備え、
前記アクティブ切れ刃は、
前記前工具端の前方に配置されて、前記アクティブ切れ刃の残りの部分よりも前記前方向にさらに延在する最前刃部分であって、前記側方方向に平行に測定可能な横刃長さを有する最前刃部分と、
前記最前刃から、前記第1側方向及び前記後方向の両方に、前記前工具端に隣接する前記第1フランク工具側よりも前記第1側方向にさらに遠い位置まで延在する第1主刃部分であって、前記側方方向に平行に測定可能な第1刃長さと、前記長手方向に平行に測定可能な第1刃深さと、を有する第1主刃部分と、
前記最前刃から、前記第2側方向及び前記後方向の両方に、前記前工具端に隣接する前記第2フランク工具側よりも前記第2側方向にさらに遠い位置まで延在する第2主刃部分であって、前記側方方向に平行に測定可能な第2刃長さと、前記長手方向に平行に測定可能な第2刃深さと、を有する第2主刃部分と、を備え、
前記第1刃長さは前記第1刃深さ及び前記横刃長さの各々よりも大きく、
前記第2刃長さは前記第2刃深さ及び前記横刃長さの各々よりも大きい、2方向高送り旋削工具アセンブリ。
【請求項2】
前記第1主刃部分及び前記第2主刃部分は、前記側方方向に対して、6°≦K1、K2≦30°の条件を満たす、第1切り込み角度K1及び第2切り込み角度K2を規定する、請求項1に記載の工具アセンブリ。
【請求項3】
前記第1切り込み角度K1及び前記第2切り込み角度K2は、12°≦K1、K2≦20°の条件を満たす、請求項2に記載の工具アセンブリ。
【請求項4】
前記第1主刃部分及び前記第2主刃部分は、等しい値の第1切り込み角度K1及び第2切り込み角度K2を規定する、請求項2又は3に記載の工具アセンブリ。
【請求項5】
前記切削インサートは、前記インサート下面に隣接するフランクインサート当接表面をさらに備え、かつ、前記ポケットベース表面は、フランクポケット当接表面をさらに備え、かつ、前記フランクインサート当接表面は前記フランクポケット当接表面に当接する、請求項1~4のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項6】
前記フランクインサート当接表面は前記インサート下面の内部凹部に設けられ、かつ、前記フランクポケット当接表面は、前記ポケットベース表面に形成された突起に設けられる、請求項5に記載の工具アセンブリ。
【請求項7】
前記突起は、前記第1側方方向及び前記第2側方方向の他方にではなく、前記第1側方方向及び前記第2側方方向の一方にさらに延在する、請求項6に記載の工具アセンブリ。
【請求項8】
前記内部凹部は、前記第1側方方向又は前記第2側方方向の一方で片側がより短い、請求項6に記載の工具アセンブリ。
【請求項9】
前記フランクインサート当接表面は、前記アクティブ切れ刃に対して前記切削インサートの最も近い当接表面である、請求項5~8のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項10】
前記最前刃部分は、前記切削インサートの平面視において直線である、請求項1~9のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項11】
前記第1主刃及び前記第2主刃はその平面視において直線である、請求項1~10のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項12】
前記第1主刃部分及び前記第2主刃部分はその長さが等しい、請求項1~11のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項13】
前記第1主刃及び前記第2主刃の各々は、前記最前刃の長さの少なくとも2倍であり、好ましくは、前記最前刃の長さの少なくとも3倍である、請求項1~12のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項14】
前記インサートポケットは、前記ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前記前方向及び前記第2フランク工具側方向の両方に面する第1ポケット当接壁と、前記ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前記前方向及び前記第1フランク工具側方向の両方に面する第2ポケット当接壁と、備え、前記第1ポケット当接壁及び前記第2ポケット当接壁の両方が前記切削インサートのインサートフランク表面に当接する、請求項1~13のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項15】
前記インサートポケットの平面視において、前記第1ポケット当接壁及び前記第2ポケット当接壁は、前記第1ポケット当接壁及び前記第2ポケット当接壁が当接する場所で、前記垂直二等分平面に対して非対称である、請求項14に記載の工具アセンブリ。
【請求項16】
前記インサートフランク表面は、
前記後方向及び前記第2フランク工具側方向の両方に面する第1インサートフランクサブ表面と、
前記後方向及び前記第1フランク工具側方向の両方に面する第2インサートフランクサブ表面と、をさらに備え、
前記インサート下面は、前記第1フランク工具側方向に面するフランクインサート当接表面をさらに備え、
前記インサートポケットは、
前記ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前記前方向及び前記第2フランク工具側方向の両方に面する第1ポケット当接壁と、
前記ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前記前方向及び前記第1フランク工具側方向の両方に面する第2ポケット当接壁と、をさらに備え、
前記ポケットベース表面は、前記第2フランク工具側方向に面するフランクポケット当接表面をさらに備え、前記フランクポケット当接表面は、前記第1ポケット当接壁及び前記第2ポケット当接壁よりも前記前工具端の近くに配置され、
前記インサート及び前記インサートポケットの当接位置は、
前記第1インサートフランクサブ表面が前記第2ポケット当接壁に当接する位置、
前記第2インサートフランクサブ表面が前記第1ポケット当接壁に当接する位置、
前記フランクインサート当接表面が前記フランクポケット当接表面に当接する位置、及び、
前記下面が前記ポケットベース表面に当接する位置のみである、請求項1~13のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項17】
前記第2インサートフランクサブ表面は、前記長手方向において、前記前工具端から、前記第1インサートフランクサブ表面が前記第2ポケット当接壁に当接する場所よりもさらに遠くで前記第1ポケット当接壁に当接する、請求項16に記載の工具アセンブリ。
【請求項18】
前記フランクポケット当接表面及び前記第2ポケット当接壁は前記垂直二等分平面の同じ側にあり、かつ、前記第1ポケット当接壁は前記垂直二等分平面の他方の側にある、請求項17に記載の工具アセンブリ。
【請求項19】
前記切削インサートは、前記第1主刃部分及び前記第2主刃部分の各々に沿って形成された同一のチップフォーマ構成を備える、請求項1~18のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項20】
同じチップフォーマ構成が前記切れ刃全体に沿って形成される、請求項19に記載の工具アセンブリ。
【請求項21】
前記切削インサートが3方向割り出し可能インサートである、請求項1~20のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項22】
前記切削インサートが片側インサートである、請求項1~21のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項23】
前記切削インサートが、特定のインサートフランク表面位置に向かってクランプ力を向けるように構成された非円形ねじ孔表面を有するように形成される、請求項1~22のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項24】
前記第1主刃部分及び前記第2主刃部分が、前記第1フランク工具側及び前記第2フランク工具側よりもそれぞれ前記第1側方向及び前記第2側方向にさらに延在し、それによって、前記ヘッド部分の薄い部分を規定し、
前記薄い部分は、前記長手方向に平行に測定される前記インサートポケットの長手インサートポケット長さと少なくとも同じ長さで、前記長手方向に測定される長さで延在し、好ましくは、前記ヘッド部分の前記薄い部分は、前記長手インサートポケット長さの少なくとも2倍の長さで前記長手方向に延在する、請求項1~23のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項25】
前記インサート下面及び前記ポケットベース表面は平坦である、請求項1~24のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【請求項26】
前記最前刃部分は前記垂直二等分平面に交差する、請求項1~25のいずれか1項に記載の工具アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本願の主題は、いわゆる高送り旋削インサート、旋削工具ホルダ、並びに、高送り旋削インサート及び旋削工具ホルダを備える旋削工具アセンブリ(簡略化のため、以下、「インサート」、「工具ホルダ」及び「工具アセンブリ」という。)に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] いわゆる高送り旋削インサート、工具ホルダ及び工具アセンブリ(工具アセンブリは、インサート、工具ホルダ及びクランプ要素であり、クランプ要素は、例えば工具ホルダにインサートを保持するためのねじ又はクランプである。)は、特定の機械加工作業、すなわち、高送り用に設計された特定の目的のための工具である。
【0003】
[003] 一般的に言えば、高送り旋削機械加工の概念は、ゆっくりした速度で比較的大きな削り屑を除去することではなく、比較的速く回転するワークピースから金属又は同様の材料の比較的小さな削り屑を除去することである。
【0004】
[004] 米国特許第10,086,435号の
図8には、高送り(その中で「高効率切削」又は「高速送り切削」と呼ばれている。)旋削工具アセンブリの1つの公知例が示されている。
【0005】
[005] 特に、
図8には、比較的小さないわゆる「切り込み(immersion)角度λ4」。ミリング加工高速送りの刊行物では、相対的な角度が、角度「k」として共通に表されており、かつ、本願でも同様に表される。この刊行物に戻ると、切り込み角度λ4は、15°~30°の範囲であることが述べられている。別の言い方をすれば、この刊行物では、主切れ刃124の長さlは深さdよりも著しく(使用されている言葉では「2倍以上」)大きい。このことは、機械加工されたより小さな削り屑が工具ホルダに小さな切削力しか作用させないので、いわゆる高速送り切削を可能にする。
【0006】
[006] 本願は、米国特許第10,086,435号の特定の角度及び定義によって制限的に限定されることは意図されていない一方で、この刊行物は、本願で取り組む機械加工作業のタイプ、すなわち、高送り旋削に対する理解の助けとなり得る。本願では、定量的に、「高送り」は、0.8≦F≦3.5mm/rev、好ましくは1.5≦F≦3.0の条件を満たす送り速度(F)、及び、0.3≦ap≦3.0mm、好ましくは0.5≦ap≦2.0mmの条件を満たす切削深さ(ap)の両方(例えば、約150m/minの切削速度(V))を含む機械加工条件を含むものとみなされ得る。切り込み角度「k」は通常、約6°≦k≦30°、好ましくは12°≦k≦20°の条件を満たす。
【発明の概要】
【0007】
[007] 本願の主題の第1態様によれば、概して、工具ホルダと、クランプ要素によって工具ホルダに固定されるインサートと、を備える2方向高送り旋削工具アセンブリが提供される。インサートは、工具ホルダの前端の両側よりさらに側方に延在するアクティブ切れ刃を備え(すなわち、切削インサートの各割り出し可能位置に1つのアクティブ切れ刃を備える切削インサート)、少なくともアクティブ切れ刃で機械加工が行われ(すなわち、工具ホルダのヘッド部分)、かつ、アクティブ切れ刃は、1つの側方方向で機械加工するように構成された1つの主切れ刃部分と、反対の側方方向で機械加工するように設計された別の主切れ刃部分と、を有し(言い換えれば、切れ刃は、1方向で作動するように設計された切れ刃の設計に従って、片側に逃げが形成されていない)、それによって、単一の機械加工作業中に1つの側方方向のみならず、両方の側方方向で急速に機械加工をするように工具アセンブリを構成し、公知の従来技術に対して格別な利点を提供する。
【0008】
[008] 米国特許第10,086,435号に関して差別化するために、切れ刃は、
図7及び
図8の両方を参照して説明された様々な角度から、図示される平面視において、かつ、上述した前記フランク壁を考慮すると、対称であるように見える一方で、切れ刃には逃げが形成されることが理解される。この理解は、任意の小さな深さにおいて工具ホルダが、フランク壁及び外部の物体(例えば、もはや円筒形ではないワークピースの側壁、又は、機械加工ステーションの一部)によって1つの側方方向に制限されるので、示される工具アセンブリが1つの側方方向の高送り旋削用のみであったことを示すより大きなフランク壁によって支持される。言い換えれば、工具アセンブリは、工具アセンブリの前切れ刃を超えてかなりの深さまで溝入れする(前方向に移動している間に材料を除去する)ことができない、又は、前記フランク側が前工具端に隣接する場所に隣接するワークピースを機械加工することができない。
【0009】
[009] 前記刊行物の、インサートポケットに隣接して位置決めされたフランク壁のサイズは、予想される大きな機械加工力に起因して、単一の方向だけでも高送りでの機械加工中に切削インサートを確実に保持するために強度が必要とされることを理解するのに役立つ。
【0010】
[0010] 本態様の特徴のより特有の説明に戻ると、2方向高送り旋削工具アセンブリは、工具ホルダと、切削インサートと、クランプ要素と、を備えることができ、工具ホルダは、前工具端に向かう前方向及び前方向に反対の後方向を含む長手方向を規定する反対の前工具端及び後工具端と、上工具側に向かう上方向及び上方向に反対の下方向を含む垂直方向を規定する反対の上工具側及び下工具側と、第1フランク工具側に向かう第1側方向及び第1側方向に反対の第2側方向を含む側方方向を規定する反対の第1フランク工具側及び第2フランク工具側と、長手方向及び垂直方向に平行に延在し、かつ、前工具端に隣接する第1フランク工具側及び第2フランク工具側を二等分する垂直二等分平面と、シャンク部分と、シャンク部分から延在するヘッド部分と、前工具端及びヘッド部分の上工具側の交差部に形成されたインサートポケットと、を備え、インサートポケットはポケットベース表面を備え、切削インサートは、クランプ要素を介してインサートポケットに固定され、切削インサートは、反対の上面及び下面と、上面及び下面を接続するインサートフランク表面と、インサートフランク表面及び上面の交差部の少なくとも一部に沿って形成された周辺切れ刃と、を備え、周辺切れ刃は少なくとも1つのアクティブ切れ刃を備え、アクティブ切れ刃は、前工具端の前方に配置され、アクティブ切れ刃の残りの部分より前方向にさらに延在する最前刃部分であって、側方方向に平行に測定可能な横刃長さを有する最前刃部分と、最前刃から第1側方向及び後方向の両方に、前工具端に隣接する第1フランク工具側より第1側方向にさらに遠くの位置まで延在する第1主刃部分であって、側方方向に平行に測定可能な第1刃長さと、長手方向に平行に測定可能な第1刃深さと、を有する第1主刃部分と、最前刃から第2側方向及び後方向の両方に、前工具端に隣接する第2フランク工具側より第2側方向にさらに遠くの位置まで延在する第2主刃部分であって、側方方向に平行に測定可能な第2刃長さと、長手方向に平行に測定可能な第2刃深さと、を有する第2主刃部分と、を備え、第1刃長さは第1刃深さ及び横刃長さの各々よりも大きく、第2刃長さは第2刃深さ及び横刃長さの各々よりも大きい。
【0011】
[0011] 従来技術の説明した制限的な側壁がないものの、上述した高送り2方向機械加工作業を実行することができるインサートをクランプする他の方法があり得る一方で、そうした高送り作業を実現するための1つの好適な構成を以下に説明する。
【0012】
[0012] 具体的には、本発明の第2態様によれば、2つの反対方向に機械加工するための非対称のクランプ構成を提供することが考案された。これはいくらか直感に反するものである一方で、2つの反対方向について検討する際、対称のクランプ構成に利点があり、剛性要素であって、かつ、4以上の横当接表面に同時に接触することができる切削インサート及び工具ホルダを製造することは困難であり、かつ、対称の当接のために4つの横当接表面が必要であると考えられる(特に、この説明は、横又は側方当接に向けられ、すなわち、例えば、下部インサート表面及びポケットベース表面当接の垂直の当接を含まない)。理論に拘束されるものではないが、上述した困難が、2方向の高送り機械加工がこれまで知られていない理由の1つである可能性がある。
【0013】
[0013] より正確には、2方向高送り旋削工具アセンブリは、工具ホルダと、切削インサートと、クランプ要素と、を備えることができ、工具ホルダは、前工具端に向かう前方向及び前方向に反対の後方向を含む長手方向を規定する反対の前工具端及び後工具端と、上工具側に向かう上方向及び上方向に反対の下方向を含む垂直方向を規定する反対の上工具側及び下工具側と、第1フランク工具側に向かう第1側方向及び第1側方向に反対の第2側方向を含む側方方向を規定する反対の第1フランク工具側及び第2フランク工具側と、長手方向及び垂直方向に平行に延在し、かつ、前工具端に隣接する第1フランク工具側及び第2フランク工具側を二等分する垂直二等分平面と、シャンク部分と、シャンク部分から延在するヘッド部分と、前工具端及びヘッド部分の上工具側の交差部に形成されたインサートポケットと、を備え、切削インサートはクランプ要素を介してインサートポケットに固定され、切削インサートは、切削インサートは、反対の上面及び下面と、上面及び下面を接続するインサートフランク表面と、インサートフランク表面及び上面の交差部の少なくとも一部に沿って形成された周辺切れ刃と、を備え、インサートフランク表面は、後方向及び第2フランク工具側方向の両方に面する第1インサートフランクサブ表面と、後方向及び第1フランク工具側方向の両方に面する第2インサートフランクサブ表面と、を備え、下面は、第1フランク工具側方向に面するフランクインサート当接表面を備え、インサートポケットは、ポケットベース表面と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、後方向及び第2フランク工具側方向の両方に面する第1ポケット当接壁と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前方向及び第1フランク工具側方向の両方に面する第2ポケット当接壁と、を備え、ポケットベース表面は、第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁よりも前工具端の近くに配置され、かつ、第2フランク工具側方向に面するフランクポケット当接表面を備え、インサート及びインサートポケットの当接位置が、第1インサートフランクサブ表面が第2ポケット当接壁に当接する位置、第2インサートフランクサブ表面が第1ポケット当接壁に当接する位置、フランクインサート当接表面がフランクポケット当接表面に当接する位置、及び、下面がポケットベース表面に当接する位置のみである。
【0014】
[0014] 簡略化のため、例えば、フランクインサート当接表面は、第1フランク工具側方向に面するように上で規定され、当接するように意図されるフランクポケット当接表面は、第2フランク工具側方向に面するように規定される。これらの方向は、逆でもよいこと、及び、選択された特定の方向が簡潔さのためだけである(「第1」または「第2」はいずれの側方方向であってもよい)。
【0015】
[0015] 上述の非対称の当接について詳細に説明するため、ポケット及びインサートの両方が、インサートポケットのより前部に、2つの方向の各々に面する2つの表面を有している一方、フランクポケット当接表面及び対応のフランクインサート当接表面は、反対の側方方向における機械加工が見たところ欠けている1つの側方方向についてのみ安定性を提供する。
【0016】
[0016] 本発明の新規な両方向高送り旋削方法は、いかなるフランクインサート当接表面及びフランクポケット当接表面なしで実現可能であり(例えば、インサートフランク当接壁及びポケット当接壁に完全に依存する)、又は、他の側方方向に面する第2対のフランクインサート当接表面及びフランクポケット当接表面に依存することができる(4つの横接続表面に起因した対称であるが過度な制限を提供する)。高い精度の研削によって、こうした解決策が実現可能である一方、上述の構成は、簡略化されてはるかに精度が低い製造による大きな利点があると考えられる。それにも関わらず、本願の独創的な方法及び第1態様は、この独立した独創的な構成に制限されるものと解釈されるべきではない。
【0017】
[0017] 前述の段落は、フランクインサート当接表面及びフランクポケット当接表面が、理論的に必須ではないことを説明した一方で、確実に、(工具の前端に隣接した側当接を妨げることなく)前記2つの反対方向について機械加工を依然として可能にするとともに、インサートの安定的な装着を提供することを支援する。このことは、例えば仕上げ作業などの他の機械加工作業と比較して相対的に大きな力を生じさせる高送り作業において特に重要である。高送り作業又はその作業に適切な構成が、急速に材料を除去するように設計された荒加工作業であることが理解される。
【0018】
[0018] 追加された安定性に起因して、2つの方向での機械加工を可能にするとともに、高送り機械加工以外の用途のために設計された異なるインサート形状又は切れ刃についてそうした利点を提供することに有用であり得る。したがって、第2態様は、特定の切れ刃構成にのみ制限されるものとしてみなされるべきではない。
【0019】
[0019] それにも関わらず、この装着構成は、第1態様に関連して説明したように、高送り機械加工用に設計された切れ刃によって明らかに特に利点を有する。
【0020】
[0020] 同様に、第1態様及び説明した方法が、異なる構成によって実現されることが可能であることに留意されたい一方で、明らかに、第2態様で規定された装着構成の特徴(当接表面等)が好ましい。
【0021】
[0021] 本発明の第3態様によれば、第1態様又は第2態様のいずれかで説明した工具ホルダが提供される。
【0022】
[0022] 本発明の第4態様によれば、第1態様又は第2態様のいずれかで説明したインサートが提供される。
【0023】
[0023] 例えば、ある実施形態によれば、前記インサートは、反対の上面及び下面と、上面及び下面を接続するインサートフランク表面と、インサートフランク表面及び上面の交差部の少なくとも一部に沿って形成された周辺切れ刃と、を備え、切れ刃はアクティブ切れ刃を備え、アクティブ切れ刃は、側方方向に平行に測定可能な横刃長さを有する最前刃部分と、最前刃から第1側方向及び後方向の両方に延在する第1主刃部分であって、側方方向に平行に測定可能な第1刃長さと、側方方向に垂直な長手方向に平行に測定可能な第1刃深さと、を有する第1主刃部分と、最前刃から第2側方向及び後方向の両方に延在する第2主刃部分であって、側方方向に平行に測定可能な第2刃長さと、長手方向に平行に測定可能な第2刃深さと、を有する第2主刃部分と、を備え、第1刃長さは第1刃深さ及び横刃長さの各々よりも大きく、第2刃長さは第2刃深さ及び横刃長さの各々よりも大きく、第1主刃部分及び第2主刃部分の各々は、6°≦K1、K2≦30°の条件を満たす第1切り込み角度及K1及び第2切り込み角度K2を規定し、少なくとも下面は、内部凹部又は突起のいずれかに設けられるフランクインサート当接表面を備え、フランクインサート当接表面は、切れ刃の任意の他の部分よりも、最前端部に第1主刃部分が接続する位置に近い(すなわち、割り出し可能インサートにおいて、切れ刃は、他方の最前刃部分並びに第1主刃部分及び第2主刃部分を有してもよいが、前記フランクインサート当接表面はそれらのうちの1つのみに最も近い)。
【0024】
[0024] 上述した好適な2方向高送りインサートは、第2態様又は以下のいずれかで言及する好適な特徴を有することが好ましい。
【0025】
[0025] 本発明の第5態様によれば、上述したような2つの反対の側方方向で機械加工する方法が提供される。この方法は、第1態様又は第2態様のいずれか又は両方に係る工具アセンブリを提供することを含み得ることが理解される。同様に、前述の態様に係る工具ホルダ又はインサートはこうした方法で使用されることができる。しかしながら、上述したように、第2態様の構成又は第1態様の高送り構成のいずれかによる、2つの側方方向で及び/若しくは側面又はワークピース又は機械の近くでの機械加工はこれまで知られていない。したがって、機械加工の方法がいずれかの特徴に厳格に限定されることはないことに留意されたい。
【0026】
[0026] 前記方法は、上述したような高送り条件、すなわち、0.8≦F≦3.5mm/rev、好ましくは1.5≦F3.0の条件を満たす送り速度(F)、0.3≦ap≦3.0mm、好ましくは0.5≦ap≦2.0mmの条件を満たす切削深さ(ap)の両方(例えば、約150m/minの切削速度(V)を含む条件での機械加工のステップを含んでもよい。
【0027】
[0027] より具体的には、上述した高送り条件での1方向の機械加工のステップと、その後の同じ高送り条件での反対方向の機械加工のステップと、を含んでもよい。
【0028】
[0028] さらにより具体的には、前記方法は、ワークピース又はワークピースを保持する機械の側面に隣接して機械加工するステップを含んでもよい。さらに方法は、側方方向のいずれか又は両方において、ワークピース又はワークピースを保持する機械の側面に隣接して機械加工するステップを含んでもよい。
【0029】
[0029] さらに、こうした方法は、インサート全体の半分の深さ、又は、好ましくはインサート全体のすべての深さよりもさらに溝入れする(前方向に機械加工する)ステップを含んでもよい。
【0030】
[0030] 態様に関連するある優先的な特徴を以下に説明する。
【0031】
[0031] 第1主刃部分及び第2主刃部分は、6°≦K1、K2≦30°及び好ましくは、12°≦K1、K2≦20°の条件を満たす、側方方向に対する第1切り込み角度K1及び第2切り込み角度K2を規定してもよい。ある好適な実施形態では、第1切り込み角度K1及び第2切り込み角度K2は等しい値である。
【0032】
[0032] クランプ要素は、従来知られたレバー、上クランプ又はねじであってもよい。クランプの各々知られた方法は公知の利点を有している。
【0033】
[0033] インサートは、理論的には、片面インサート又は両面インサートであってもよい。ある実施形態では、2方向機械加工作業に起因した切れ刃からの逃げの提供が格段に単純であるので、両面インサートがより多くの切れ刃を提供するにも関わらず、片面インサートが好ましい。
【0034】
[0034] インサートは割り出し可能であることが好ましい。言い方を変えると、インサートは、インサートの中心を通って延在する中心インサート軸周りで割り出し可能である。3方向割り出し可能インサートが最も好適な実施形態として例示された一方で、非割り出し可能インサート又は4方向以上の割り出しのために構成されたインサートが可能であることが理解される。3方向割り出し可能インサートは、非割り出し可能インサート又は2方向割り出し可能インサートよりも多くの切れ刃を有しており、さらに、4方向以上の割り出し可能性を有するインサートよりも長い切れ刃を有しているので、各設計は利益及び利点を有する、
【0035】
[0035] 最前刃部分は、ワイパー部分であることが好ましい(すなわち、インサートの平面視で直線、かつ、通常、約1mmの長さを有する)。それにも関わらず、高送り作業は荒加工作業であるので、最前部分が、例えば、半径コーナーであることは実行可能である(すなわち、表面の仕上げがより不十分になるが、おそらくわずかに長い主刃を提供し;半径は、できる限り直線刃に近いことが好ましい)。代替的に、最前刃部分は、インサートの平面視において凹形状を有してもよい。
【0036】
[0036] 最前刃部分自体は、2つの機能的な主刃部分を結合するために必要なコーナーであるだけでなく、第1主刃部分及び第2主刃部分の間の分離ギャップを提供する、すなわち、異なる方向に移動する時に前記刃の使用を分割する(すなわち、理論的には、一方向に移動する時に生じる摩耗を低減するが、反対側に配置された主刃の部分を摩耗させる)ことが理解される。最前刃部分が、示される直線の刃ではなく、例えば、内側に凹んだ刃であることも実現可能であり、これは、第1主刃部分及び第2主刃部分の間のそうした分離ギャップを提供するからである。
【0037】
[0037] 第1主刃及び第2主刃は、その平面視において直線であることが好ましい。しかしながら、送り用途において、そうした刃は、その平面視においてわずかに湾曲してもよいことが知られている。第1主刃及び第2主刃は両方とも、それらが高送り作業で主とした切削機能を提供するので、最前刃より長いことが理解される。例えば、第1主刃及び第2主刃の各々は(分離して)、最前刃部分の長さの少なくとも2倍であることが好ましく、最前刃部分の長さの少なくとも3倍であることが好ましい。
【0038】
[0038] 第1主刃部分及び第2主刃部分が角度において対称であることが極めて好ましい一方で、このことは、両方向で作動する時に両方について同様の工具寿命を維持するので、第1主刃部分及び第2主刃部分がわずかに非対称を有してもよいことが可能である。
【0039】
[0039] 第1主刃部分及び第2主刃部分は長さが等しいことが好ましいが、これは、両方向で作動する時に両方について同様の工具寿命を維持するからである。
【0040】
[0040] アクティブ切れ刃は、前工具端の前方に延在する切れ刃の一部として規定されてもよい。
【0041】
[0041] 第1主刃部分及び第2主刃部分は、前工具端に隣接するフランク工具側よりも側方向にさらに遠い位置まで延在することが好ましい。このことは、溝入れ作業(すなわち、そのフランク工具側が平面視において第1主刃部分及び第2主刃部分よりも小さい幅を有しているので、前工具端よりもさらに前方向における機械加工)を可能にすることが理解される。
【0042】
[0042] さらに、インサートポケットに少なくとも隣接する工具のヘッド部分の好適なより短い幅は側方方向の機械加工を妨げない。より簡易な言い回しで説明すると、側方方向に測定されたインサートのアクティブ切れ刃の幅は、工具の前端に隣接するヘッド部分の対応の幅より大きい。別の言い方をすると、インサートの平面視におけるインサートの切れ刃の外接円(又は、切れ刃がそこに沿って連続的に延在しない場合、上面及びフランク表面の交差部)は、前端で工具ヘッド部分の最大幅より大きい直径を有してもよい。別の言い方をすると、前記直径はインサートポケットの最大幅より大きくてもよい。
【0043】
[0043] 好適な実施形態は、旋削のためであって切断のためではないヘッド部分を有する工具ホルダであるので、ヘッド部分は、より顕著な幅を有し、かつ、力に耐えることができ、及びしたがって、インサートポケットの長さよりも大きくてもよい。以下の好適な例に示すように、前記ヘッド部分、少なくとも前端に隣接するヘッド部分は、インサートポケットが長手方向に平行に測定される長さと少なくとも同じ長手方向に測定される長さについて、(側方方向に第1主刃及び第2主刃の最大延在部を介して測定される)インサートの幅よりも薄くてもよい(以後、「薄い部分」という)。好ましくは、ヘッド部分の薄い部分は、インサートポケットの長さの少なくとも2倍の長さで長手方向に延在してもよい。より正確には、第1主刃部分及び前記第2主刃部分は、ヘッド部分の薄い部分を規定する第1フランク工具側及び第2フランク工具側よりもそれぞれ第1側方向及び第2側方向にさらに延在してもよく、かつ、薄い部分は、長手方向に平行に測定されるインサートポケットの長手インサートポケット長さと少なくとも同じ長さで長手方向に測定される長さで延在し、好ましくは、ヘッド部分の薄い部分は、長手インサートポケット長さの少なくとも2倍の長さで長手方向に延在する。
【0044】
[0044] 第1主刃部分及び第2主刃部分の各々は、好ましくは、長手方向よりも側方方向により大きな長さで延在する必要がある。機械加工によって生じた力が増大するので、そうした特徴を有しない高送り作業は異なることが理解される。このことは、切り込み角度kを参照して、具体的には、上述されるその好適な角度を参照して別に説明されることができる。同様の工具ホルダを有するある従来技術の工具アセンブリでは、割り出しを容易にするために設けられたピンを有する円形刃インサートが示される。本願は、上述した理由のためにそうした円形刃によっては適切ではない高送り作業に関連することが理解される。別の言い方をすると、平面視で見た時、主刃部分は、切れ刃の外接円の後方に後退する。同様に、ピンは、単に位置決めのためのものであり、かつ、機械加工力に耐えるためのものとしては知られていない。
【0045】
[0045] 好適には、第1主刃部分及び第2主刃部分が両方とも同様の機能を提供するので、第1主刃部分及び第2主刃部分の各々に沿って同一のチップパフォーマ構成が形成される。割り出し可能インサートの場合、この同じチップパフォーマ構成が切れ刃全体に沿って形成されることが好ましい。
【0046】
[0046] 好適には、インサートポケットは、ポケットベース表面と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前方向及び第2フランク工具側方向の両方に面する第1ポケット当接壁と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前方向及び第1フランク工具側方向の両方に面する第2ポケット当接壁と、をさらに備える。
【0047】
[0047] 好適には、インサート下面及びポケットベース表面は平坦である。ある工具アセンブリの設計は、横移動を阻止するためにインサート下面及びポケットベース表面の間のプリズム/隆起の接続を有する一方で、高送り用途の大きな力には、平坦であるインサートの当接(すなわち、インサート下面及びポケットベース表面の当接)の大部分によって達成されるインサートがより安定的であることが好ましい。前記フランクインサート当接表面及びフランクポケット当接表面はこの安定的な当接からそらされることに不利益がある一方で、それらは、横当接のための有利な特徴であるとみなされ、及びしたがって、妥協がある。それにも関わらず、垂直当接は、平坦な表面当接を介してであることが確かに好ましい。
【0048】
[0048] 同様に、そうした当接が、例えば、インサート下面(例えば、内部凹部)に隣接する表面に対してなされることが可能であるとはいえ、インサートフランク表面は当接に使用されることが好ましい。また、この選択は、言及した相対的に大きな力に起因するものであり、かつ、インサートフランク表面が、インサート下面又は内部凹部に隣接する表面の代替物よりも概して大きいという推定に起因するものである。
【0049】
[0049] それにも関わらず、所望の2方向機械加工性能を横の制限なしで有効にするため、今回の設計は、インサート下面に隣接する1つの側当接表面、すなわち、インサートフランク表面と、もちろん、相補的なフランクポケット当接表面と、をインサートに設ける。
【0050】
[0050] ある実施形態によれば、切削インサートは、インサート下面に隣接するフランクインサート当接表面をさらに備え、かつ、ポケットベース表面はフランクポケット当接表面をさらに備え、フランクインサート当接表面はフランクポケット当接表面に当接する。
【0051】
[0051] 有利なことに、フランクインサート当接表面はインサート下面の内部凹部に設けられる。この場合、フランクポケット当接表面は、ポケットベース表面に形成された突起に設けられる。フランクインサート当接表面が、例えば、インサートの突出部分の外面、すなわち、研磨することがより容易である突起の外面に設けられることが可能であるが(及び、そうした場合、フランクポケット当接表面は、ポケットベース表面内の凹部に設けられる)、切削インサートの内部凹部設計は、インサートをよりコンパクトにすることが可能であるので好ましく、かつ、前記好ましいインサートの研磨が阻止される(少なくともこの特定の表面、すなわち、インサート下面の場合)。
【0052】
[0052] 別の利点は、インサートに形成された非中心の突起がポケットベース表面の形成に不都合であることであり、割り出し可能なインサートの場合に複数のインサートベース凹部を必要とする。後者の理由は、中心に配置された突起に適用することはできない一方で、非中心に配置されたインサートフランク表面(すなわち、工具前端に又はアクティブ切れ刃に近接したインサートフランク表面)を有することによって、インサートにより大きな安定性を提供する。別の言い方をすれば、フランクインサート当接表面は、インサートの中心よりもアクティブ切れ刃により近いことが好ましい。
【0053】
[0053] 上と同じ理由で、フランクポケット当接表面は、突出部分、すなわち、突起に形成されることが好ましい。
【0054】
[0054] フランクインサート当接表面は、アクティブ切れ刃に対してインサートの最も近い当接表面であることが好ましい。工具アセンブリに関して述べると、フランクインサート当接表面は、工具前端に対して最も近い当接表面であることが好ましい。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて、より近くてより遠い当接表面のすべてのそうした特徴は、インサート下面及びポケットベース表面を含むことを意図されないことを理解されたい。
【0055】
[0055] 大きな力を考慮すると、インサートフランク当接表面及びフランクポケット当接表面は、少なくともの所望の接触がある場所で平坦である。2つの平坦な表面の当接は単一点の接触領域上にあることが好ましいことが理解される。確かに、相対的に大きな力を有する機械加工高送り作業の場合である。
【0056】
[0056] 垂直平面の反対側に配置された表面の接触ではなく、ポケットフランク当接表面のみの接触を確実にする。突起は、第1側方方向及び第2側方方向の他方にではなく、第1側方方向又は第2側方方向の一方にさらに延在することができることが好ましい。別の言い方をすれば、突起は、垂直平面PV周りで非対称であってもよい。こうした構成は、インサートにおける凹部が、完全に対称に形成されることを可能にする。代替的に、インサートの下面の各凹部は、片側でわずかにより短くてもよく、かつ、突起は、インサートが各凹部について回転対称である限り、垂直平面PV周りに対称に形成されてもよい。異なる言い方をすると、インサートの下面の各凹部は、第1側方方向又は第2側方方向の一方における片側でより短い。
【0057】
[0057] フランクインサート当接表面の目的が、その切れ刃の近くでインサートを安定化することであるので、フランクインサート当接表面は作業用の切れ刃の近くにあることが好ましい。異なる言い方をすると、フランクインサート当接表面は、インサートポケットに対する後ろの当接のために使用されるインサートフランク表面よりも、アクティブ切れ刃に近いことが好ましい。異なる言い方をすれば、フランクインサート当接表面は、インサートの中心軸及びアクティブ切れ刃の間にあることが好ましい。
【0058】
[0058] すべての好適な実施形態では、インサートフランク表面は第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁の両方に当接する。詳しく述べると、第1インサートフランクサブ表面は第1ポケット当接壁に当接し、かつ、第2インサートフランクサブ表面は第2ポケット当接壁に当接する。
【0059】
[0059] 当接位置は、反対方向の機械加工を依然として可能にする一方で、3点接触を可能にするために、非対称であることが好ましい。異なる言い方をすると、インサートポケットの平面視において、第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁は、切削インサートに当接する位置で、垂直二等分平面に対して非対称である。
【0060】
[0060] 第1当接位置(例えば、第1インサートフランクサブ表面及び第1ポケット当接壁)は、第2当接位置(例えば、第2インサートフランクサブ表面及び第2ポケット当接壁)よりも工具ホルダ前端からより遠くにあることが好ましい。
【0061】
[0061] より正確には、上述した第2当接位置(工具ホルダ前端により近い方)は、第3当接位置、すなわち、フランクインサート当接表面がフランクポケット当接表面に当接する位置と、工具ホルダの同じ側にあることが好ましい。
【0062】
[0062] 異なる言い方をすると、インサートは、インサート下面に隣接するフランクインサート当接表面を備えてもよく、かつ、インサートポケットはポケットベース表面をさらに備え、フランクインサート当接表面はフランクポケット当接表面に当接し、フランクインサート当接表面は、第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁に対する切削インサートの当接より、前工具端に対して長手方向においてより近いフランクポケット当接表面に当接する。
【0063】
[0063] 切削インサートに対する第1ポケット当接壁の当接は、第1インサートフランクサブ表面が第2ポケット当接壁に当接する場所よりも、前工具端から、長手方向において、さらに遠くにあることが好ましい。そうした場合、フランクポケット当接表面及び第2ポケット当接壁は垂直二等分平面の同じ側にあり、かつ、第1ポケット当接壁は、垂直二等分平面の他方の側にあることが好ましい。
【0064】
[0064] 上の例は好適な構成(インサートポケットが非対称である)を規定する一方で、非対称な当接が所望され、及びしたがって、すべての当接表面に対する代替が以下で例示される。要約すると、非対称の当接設計は様々な方法で提供されることができる。
【0065】
[0065] 特に、例示された両方の方法のみが、工具前端に隣接する片側で当接されるインサートを提供する(すなわち、インサートポケットベース表面の前記突起にわずか1つの当接位置がある)。これは、研磨されないインサート(又は、より研磨されない、切れ刃又は下面が研磨されてもよいが、横当接表面には研磨は必要とされない場合があることに留意されたい)が、過度に制約されず、また、両方のポケット当接壁に適切に当接することができることを確実にする。
【0066】
[0066] 示される1つの好適な例では、ねじが特定のインサートフランク表面位置にクランプ力を向けることを可能にするために非円形ねじ孔表面が使用される。
【0067】
[0067] 好適には、インサートフランク表面は、後方向及び第2フランク工具側方向の両方に面する第1インサートフランクサブ表面と、後方向及び第1フランク工具側方向の両方に面する第2インサートフランクサブ表面と、をさらに備え、インサートの下面は、第2フランク工具側方向に面するフランクインサート当接表面をさらに備え、インサートポケットは、ポケットベース表面と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前方向及び第1フランク工具側方向の両方に面する第1ポケット当接壁と、ポケットベース表面から上向きに延在し、かつ、前方向及び第2フランク工具側方向の両方に面する第2ポケット当接壁と、をさらに備え、ポケットベース表面は、第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁よりも前工具端の近くに配置され、かつ、第1フランク工具側方向に面するフランクポケット当接表面を備え、インサートとインサートポケットとの当接位置は、第1インサートフランクサブ表面が第1ポケット当接壁に当接する位置、第2インサートフランクサブ表面が第2ポケット当接壁に当接する位置、フランクインサート当接表面がフランクポケット当接表面に当接する位置、及び、下面がポケットベース表面に当接する位置のみである。
【0068】
[0068] 示される他の好適な例では、非対称の当接は、標準のねじ孔を単に備えているが、ポケット当接壁に逃げを形成することによって、工具ホルダ前端から様々な距離でポケット当接壁に対称のインサートフランクサブ表面が接触することを確実にする。
【0069】
[0069] 上述した例のいずれかに適用することができる代替の又は追加の特徴は、工具ホルダ前端から様々な距離での当接位置を確実にするため、当接するように意図される少なくともその部分で、ポケット当接壁が(平面視で)非対称に延在することであってもよい。
【0070】
[0070] 好ましくは、最前刃部分は垂直二等分平面に交差する。こうした対称性は、2方向機械加工に利点を有する。
【0071】
[0071] 本願の主題のより良い理解のため、かつ、本願の主題が実際にどのように実行されることができるかを示すため、ここで添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1A】ワークピースの概略部分が示された状態の、本願の主題に係る例示の高送り工具アセンブリの平面図である。
【
図2A】ワークピースの概略部分が示された状態の、
図1Aのインサートの平面図である。
【
図4A】
図3Aの工具ホルダのインサートポケットの拡大図である。
【
図4B】
図3Cのインサートポケットと同様の視点で示された、
図4Aのインサートポケットの拡大側面斜視図である。
【
図5A】本願の主題に係る別の例示の高送り工具アセンブリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[0072]
図1A~
図1Dを参照すると、3方向割り出し可能インサート12と、工具ホルダ14と、工具ホルダ14にインサート12を固定するねじ16と、を備える高送り工具アセンブリ10が図示されている。
【0074】
[0073] 切削インサート12をさらに詳細に説明するため、
図2A~
図2Cに着目されたい。
【0075】
[0074] インサート12は、反対の上面18及び下面20と、上面18及び下面20を接続するインサートフランク表面22と、を備える。
【0076】
[0075] インサート12は、上面18とインサートフランク表面22との交差部に形成された周辺切れ刃35をさらに備える。周辺切れ刃35は、第1アクティブ切れ刃24A、第2アクティブ切れ刃24B、第3アクティブ切れ刃24Cを備える。第1アクティブ切れ刃24A、第2アクティブ切れ刃24B、第3アクティブ切れ刃24Cの各々は、3方向割り出し可能インサート12の異なる側に形成される(すなわち、切削インサート12が、中心に配置されたインサート軸AI回りに120度回転させられる時、アクティブ切れ刃の異なる1つが提示される)。
【0077】
[0076]
図2Aから分かるように、第1アクティブ切れ刃24Aは、最前刃部分34と、第1主刃部分36Aと、第2主刃部分36Bと、を備える。各「アクティブ切れ刃」は、工具ホルダ14に装着された時にワークピース35を機械加工する際にアクティブである周辺切れ刃35の部分であるので、そう呼ばれている。切削インサート12が割り出された後、異なるアクティブ切れ刃がアクティブになる。
図2Aから分かるように、第1アクティブ切れ刃24Aがワークピース25の切削に関与する。
【0078】
[0077] インサートの3つすべての側が回転的に同一であるので、3つの対称的な特徴のセットのうちの1つのみに関連して説明する。
【0079】
[0078] インサート12の当接又は装着を説明するために、第1アクティブ切れ刃24Aが
図2Aの下部に示される一方で、説明を容易にするために、第1アクティブ切れ刃24Aが
図2Cの下面視の右側に配置される。
【0080】
[0079] 下面20は、内部凹部26を備え、内部凹部26は、同様に、その片側に第2側方方向DS2に面する平坦なフランクインサート当接表面28を備える。
【0081】
[0080] 以下で説明するように、工具ホルダ14に装着される時、フランクインサート当接表面28は、遠位に配置された第1インサートフランクサブ表面30A及び第2インサートフランクサブ表面30Bに対して当接する。
【0082】
[0081] インサート12は、
図2Bに示すように、インサート12の下部32が周辺切れ刃35に対して内側に逃げを形成するポジティブインサートである。
【0083】
[0082]
図2Aに最もよく示すように、最前刃部分34は、側方方向D
Sに平行に測定可能な横刃長さL
Fを有する。最前刃部分34は、インサート12の平面視において直線であることが好ましい。
【0084】
[0083] 第1主刃部分36Aは、最前刃部分34から第1側方向DS1及び後方向DRの両方に延在し、かつ、第1刃長さLE1及び第1刃深さLD1(この場合、apで指定される値と同一である)を有する。
【0085】
[0084] 第2主刃部分36Bは、最前刃部分34から第2側方向DS2及び後方向DRの両方に延在し、かつ、第2刃長さLE2及び第1刃深さLD2(この場合、apで指定される値と同一である)を有する。
【0086】
[0085] 上述したように、第1主刃36A及び第2主刃36Bは、その平面視(すなわち、
図2A)において直線であることが好ましい。これらの刃は、図示するように、その半径コーナー36C、36Dの途中まで材料をさらに除去することができることに留意されたい。半径コーナー36C、36Dの半分が上述の長さに含まれる。3つのアクティブ切れ刃のすべて、すなわち、第1アクティブ切れ刃24A、第2アクティブ切れ刃24B、第3アクティブ切れ刃24Cはコーナーで交わることが理解される。主刃部分の大部分が直線であるので(小さな避けられないコーナー部分を除く)、主刃部分は直線であるとみなされる。
【0087】
[0086] 図示するように、第1主刃部分36A及び第2主刃部分36Bの各々は、長手方向DLよりも側方方向DSに著しく大きな長さで延在する。
【0088】
[0087] したがって、第1切り込み(immersion)角度K1及び第2切り込み角度K2は両方とも、好適な本実施形態では、相対的に小さな角度である15°である。
【0089】
[0088] この形状は、以下で説明する距離Rにも関連する。
【0090】
[0089] 上面18(「すくい面」としても知られている)の説明に戻ると、図示する例では、周辺切れ刃35全体に沿って同一の切りチップフォーマ構成37が形成される。
【0091】
[0090]
図2Cを参照すると、上面に沿って配置された周辺切れ刃35の通常の仮想外接円I
Cが
図2Aに典型的には描かれるが、視認性を良くするため、
図2Cに示されている。例示されたインサート12はいわゆるポジティブインサートであるので、周辺切れ刃35は下面視で目に見える。
【0092】
[0091] インサートの外接円ICは直径DCの計算を可能にする。
【0093】
[0092] 同様のサイズを有するインサートは、
図2Cに示す外接円I
Cに一致する切れ刃を有するが、例えば
図2Cの距離Rによって示すように、高送り切れ刃は外接円I
Cから奥まったところに配置される(一例としてこれまで説明されたものと異なるが、それと対称的である異なるアクティブ切れ刃に関する)。
【0094】
[0093]
図2Cを参照すると、フランクインサート当接表面28は、第1フランクインサート当接サブ表面30A及び第2フランクインサート当接サブ表面30Bよりも第1アクティブ切れ刃24Aに近い。別の言い方をすると、フランクインサート当接表面28は、第2アクティブ切れ刃24B及び第3アクティブ切れ刃24Cよりも第1アクティブ切れ刃24Aに近い。
【0095】
【0096】
[0095] 工具ホルダ14は、前工具端38に向かう前方向DF及び前方向DFとは反対の後方向DRを含む長手方向DLを規定する反対の前工具端38及び後工具端40と、上工具側に向かう上方向DU及び上方向DUとは反対の下方向DDを含む垂直方向DVを規定する反対の上工具側42及び下工具側44と、第1フランク工具側46に向かう第1側方向DS1及び第1側方向DS1とは反対の第2側方向DS2を含む側方方向DSを規定する反対の第1フランク工具側46及び第2フランク工具側48と、を備える。
【0097】
[0096] より具体的には、工具ホルダ14は、シャンク部分50と、シャンク部分50から延在するヘッド部分52と、ヘッド部分52の前工具端38及び上工具側42の交差部に形成されたインサートポケット54と、を備える。
【0098】
[0097] 垂直二等分平面P
V(
図1A)が、長手方向D
L及び垂直方向D
Vに平行に延在し、かつ、前工具端38に隣接して第1フランク工具側46及び第2フランク工具側48を二等分する。
図7Aに示す例では、垂直二等分平面P
V’が、付随的にシャンク部分50’の中心を通って延在する一方で、本発明の特徴を規定する目的のため、垂直二等分平面PVの重要性は、工具ヘッド部分52に関してのみであり、シャンク部分50に関してではない。
【0099】
[0098] 工具ホルダ12は、この好適な例では、複数の冷却剤出口56A、56B、56C、56D、56E、56F(
図3Dで指定される)を示す冷却剤構成を任意選択的に備える。
【0100】
[0099]
図1Aを簡単に参照すると、ヘッド部分52は、薄い部分、すなわち、前端に隣接するインサート幅W
C部分より小さいヘッド部分幅W
Hを有することができる。特に、インサート幅W
Cは、アクティブ切れ刃長さ、すなわち、横刃長さL
Fと第1刃長さL
E1及び第2刃長さL
E2とを組み合わせた長さと同一である。
【0101】
[00100] 長手方向に測定される長手インサートポケット長さL
ILが
図3Aに示されている。
【0102】
[00101] 第1主刃部分36A及び第2主刃部分36Bが、第1フランク工具側46及び第2フランク工具側48よりもそれぞれ第1側方向D
S1及び第2側方向D
S2にさらに延在し、それによって、薄い部分(この場合、ヘッド部分52の全長に延在する)を規定することが理解される。
図1Aに示すように、薄い部分は、長手方向に測定された長さにわたって、少なくともかつさらに、インサートポケット54の長手インサートポケット長さL
IL(
図3A)の2倍より長く、延在することが理解される。
【0103】
[00102]
図4A及び
図4Bも参照して、インサートポケット54を説明する。
【0104】
[00103] インサートポケット54は、ポケットベース表面58と、ポケットベース表面58から上向きに延在し、かつ、前方向DF及び第2側方向DS2の両方に面する第1ポケット当接壁60Aと、ポケットベース表面58から上向きに延在し、かつ、前方向DF及び第1側方向DS1の両方に面する第2ポケット当接壁60Bと、を備える。
【0105】
[00104] ポケットベース表面58は、上向きに突出する突起62を備え、突起62は、突起62の片側に第2側方方向DS2に面する平坦なフランクポケット当接表面64を備える。
【0106】
[00105] ポケットフランク当接表面64のみに接触し、突起62の反対側に配置されたポケットフランク非当接表面66には接触しないことを確実にするため、ねじ孔68のねじ孔軸AHは、図示するように、垂直平面PVからオフセットされてもよい。代替的に、突起は、垂直平面PV周りに非対称であり、かつ、第2側方方向DS2(図示せず)にさらにわずかに延在してもよい。同様の効果を有する他の解決策があってもよいことに留意されたい。それでもなお、両方の解決策(垂直平面PV周りの非対称を含む)において、インサート12内の凹部26が対称に形成されることが可能である。
【0107】
[00106] 代替的に、インサートポケット54は、対称であってもよく、かつ、インサートの下面20の各凹部26は、インサート12が各凹部26について回転対称である限り、片側でわずかに短くてもよい。
【0108】
[00107] 特に、
図4Aでは、インサートポケット54の所望の横当接表面(すなわち、第1ポケット当接壁60A、第2ポケット当接壁60B及びフランクポケット当接表面64;この説明は、横支持を提供しないポケットベース表面58を参照しない)が各々、前端38から長手方向D
Lに沿って測定可能な異なる距離にある。第1ポケット当接壁60A及び第2ポケット当接壁60Bが、ある実施形態では、前端38からの距離において部分的に重なっている一方で、用語「異なる距離」は、第1ポケット当接壁60A及び第2ポケット当接壁60Bが長手方向D
Lで同一の延在を有しないことを意味する。別の言い方をすれば、第1ポケット当接壁60A及び第2ポケット当接壁60Bのうちの一方が、他方よりも前端38からさらに遠くで始まってもよい又は終わってもよい。
【0109】
[00108] フランクポケット当接表面64は、工具ホルダの前端38の最も近くにある。
【0110】
[00109] 第1ポケット当接壁60Aは、前端から最も遠くにあり、かつ、他方よりも第1側方方向にさらに遠くに配置される。
【0111】
[00110] 第2ポケット当接壁60Bは、長手方向DLに沿って測定可能であり、フランクポケット当接表面64及び第1ポケット当接壁60Aの間に配置され、かつ、他方よりも第2側方方向にさらに遠くに配置される。
【0112】
[00111] 工具アセンブリがワークピースを機械加工する側方方向に関わらず、同じ当接表面がインサート12に常に接触することが理解される。
【0113】
[00112] すなわち、第1インサートフランクサブ表面30Aは第2ポケット当接壁60Bに当接し、第2インサートフランクサブ表面30Bは第1ポケット当接壁60Aに当接し、フランクインサート当接表面28はフランクポケット当接表面64に当接し、かつ、インサートの下面20はポケットベース表面58に当接する。
【0114】
[00113] しかしながら、様々な当接位置への力の分布は機械加工の方向に応じて変動する。
【0115】
[00114] したがって、工具アセンブリが、切削インサート14によって機械加工する時、相対的に言うと、第2側方方向DS2に移動する場合(前記移動はワークピースに対してであり、ワークピースは、インサート14が静止している状態で第2側方方向DS2に移動することができるが、インサートが第1側方方向DS1に移動してワークピースが静止している場合と同じ力が作用する)、フランクポケット当接表面64に大きな力が作用する。一方で、反対の機械加工の方向、第1側方方向DS1の場合、フランクポケット当接表面64にははるかに小さい力が作用し、かつ、著しく大きな力が第2ポケット当接壁60Bに作用する。工具ホルダの前端38からの異なる距離が、インサートポケット内でのインサートの回転を阻止することを助ける。
【0116】
[00115]
図3Aにおいてインサートポケットの後方部分が対称であるように見える一方で、
図4Aにおいて拡大されたインサートポケットをより詳細に見ると、そうではないことが分かることに留意されたい。
【0117】
[00116] 特に、構造的な強度の目的のため、第1ポケット当接壁60Aは、より大きな第1壁70Aの一部であり、第2ポケット当接壁60Bは、より大きな第2壁70Bの一部である。
【0118】
[00117] 指定された当接部分での接触を確実にするため、より大きな第1壁70A及び第2壁70Bが、第1ポケット当接壁60A及び第2ポケット当接壁60Bから逃げを形成される。こうした角度は、理解の目的のためのみに人為的に誇張されており、かつ、第1逃げ角α1、第2逃げ角α2及び第3逃げ角α3として概略的に示されている。
【0119】
[00118]
図5A~
図7Dに示す他の例示の工具アセンブリ10’を参照すると、代替の当接構成が示されている。対応の要素が、アポストロフィ(’)の付加とともに上述されたものと同じ参照符号を有する。
【0120】
[00119] 高送り工具アセンブリ10’は、3方向割り出し可能インサート12’と、工具ホルダ14’と、工具ホルダ14’にインサート12’を固定するねじ16’と、を備える。
【0121】
[00120] 大きな違いのみを説明する。シャンク部分50’に相違があることは明確である一方で、主な相違はインサート装着構成である(前述のインサート装着構成は、このシャンク部分50’とともに使用されることができ、また逆も同様であることに留意されたい)。
【0122】
[00121] 具体的には、工具ホルダ10’において、第1ポケット当接壁60A’及び第2ポケット当接壁60B’は、垂直平面PV’周りで対称である。
【0123】
[00122] 非対称力構成を確実にするため、インサートのねじ孔74(
図6A)は非円形である。より正確には、3つの直線ねじ孔当接表面、すなわち、第1ねじ孔当接表面72A、第2ねじ孔当接表面72B、第3ねじ孔当接表面72C、3つの割り出し可能位置の各々に1つ、が設けられる。一方で、インサートポケット孔68’(
図7A)は、インサート軸A
I’に対してオフセットされた孔軸A
H’を有する。その結果、付勢力Fが生成され、異なって配置された第1ポケット当接壁及び第2ポケット当接壁を使用した前述の例と同様の非対称力分布効果を提供する。
【0124】
[00123] 付勢力Fは、後方向DR及び(この任意選択的な例では)第1側方方向DS1におけるものである。
【0125】
[00124] より正確には、付勢力Fは、第1側方方向DS1ではなくより後方向DRに向かうものである。言い換えれば、付勢力Fの方向と後方向DRの垂直平面PVとの間に形成された第1付勢角α4は、力Fの方向と側方方向DSとの間に形成された第2付勢角α5よりも小さい。図面の矢印及び角度は、概略的であり、かつ、測定向けではないことが理解されるべきである。
【0126】
[00125] このことは、インサート14’単独から理解されることもでき、第1ねじ孔当接表面72Aは、第1ねじ孔当接表面72Aに隣接するインサートフランク当接サブ表面(この例では、第1インサートフランクサブ表面30A’)に平行ではないが、第1ねじ孔当接表面72Aに対して傾斜している。
【0127】
[00126] より幾何学的に傾斜を説明すると、ねじ孔当接表面72Aに対する第1法線方向DB1は、第1当接サブ表面30A’に対する第2法線方向DB2と平行ではない。言い方を変えれば、インサート12’の中心(すなわち、インサート軸AI’を通る)及び第1アクティブ切れ刃24A’の中心から延在する仮想線LIは、ねじ孔当接表面72Aに対する前記第1法線方向DB1に第1鋭角β1を形成してもよく、かつ、仮想線LIは、第1当接サブ表面30A’の前記第2法線方向DB2に第2鋭角β2を形成してもよい。第1鋭角β1は第2鋭角β2よりも大きい。さらに言い方を変えれば、第2法線方向DB2は、第1法線方向DB1よりも最前刃部分34’により向かう方向に向けられる。
【0128】
[00127]
図1Bに戻ると、両方の実施形態に共通であるが、最前刃部分34は、前工具端38の前方に配置され、かつ、アクティブ切れ刃、この例では、第1アクティブ切れ刃24Aの残りの部分よりも前方向にさらに配置される。最前刃部分34は、
図1Aに最もよく示すように、垂直二等分平面P
Vに交差する。
【0129】
[00128]
図1Aに最もよく示すように、第1主刃部分36Aは、前工具端に隣接する第1フランク工具側46よりも第1側方向にさらに延在し、かつ、第2主刃部分36Bは、前工具端に隣接する第2フランク工具側48よりも第2側方向にさらに延在する。したがって、インサート12(又はインサート12’)は、上述した従来技術の設計において可能ではなかった深さまでワークピース内に切れ込むように示され、かつ、ワークピース25内に完全に延在することができる。このことは格別な利点である一方で、現時点で、(したがって、本発明にさらなる利益である)そうした格別な利点がなくても、2つの反対の側方方向に機械加工するように構成された高送り工具ホルダ12又は工具アセンブリ10は知られてさえいない。
【国際調査報告】