(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】放射熱を利用した色付きの衣類生地
(51)【国際特許分類】
A41D 31/02 20190101AFI20220715BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220715BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20220715BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20220715BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A41D31/02 A
A41D31/00 502E
A41D31/00 502C
A41D31/00 503H
A41D31/00 504C
A41D31/00 503C
A41D31/00 503G
A41D31/00 503B
A41D31/00 503D
A41D31/00 503F
A41D31/00 502J
A41D31/06
A41D31/04 Z
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563403
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020028488
(87)【国際公開番号】W WO2020226869
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521465315
【氏名又は名称】ライフラボズ デザイン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キュイ、イ
(72)【発明者】
【氏名】カイ、リリ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA05A
4F100AA09A
4F100AA17A
4F100AA23A
4F100AA25A
4F100AB01C
4F100AB09C
4F100AB10C
4F100AB12C
4F100AB16C
4F100AB17C
4F100AB20C
4F100AB24C
4F100AB25C
4F100AB31C
4F100AJ02D
4F100AJ04D
4F100AJ05D
4F100AJ09D
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK41D
4F100AK48D
4F100AK52A
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100DG01A
4F100DG11D
4F100DG12A
4F100DG13A
4F100DJ00B
4F100DJ00C
4F100GB72
4F100JD04
4F100JD10A
4F100JD12
4F100JM02C
4F100JN02
4F100JN06
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
分光選択性衣類生地が開示される。前記衣類生地は、外層、中間層および内層を備えることができる。外層は、赤外線透過性を有し、ポリオレフィン繊維と、ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。上記中間層は、赤外線透過性の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に赤外線反射性の多孔質金属膜を含むことができ、多孔質ポリオレフィン膜は外層の内表面に結合されている。上記内層は、多孔質金属膜の内表面に結合された生地を備えることができる。粒子状充填材は、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有する無機粒子を備えることができる。多孔質金属膜は、平均孔径が10nm~4,000nmの範囲にある細孔を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン繊維と、前記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含む外層であって、前記外層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%である、外層と、
多孔質ポリオレフィン膜の内表面に多孔質金属膜を含む中間層であって、前記多孔質ポリオレフィン膜が前記外層の内表面に結合され、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であり、前記多孔質金属膜の波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%である、中間層と、
前記多孔質金属膜の内表面に結合された内層であって、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地を含む、内層と
を備える、衣類生地であって、
前記粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒子サイズを有し、前記粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含み、
前記多孔質金属膜が、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を含む
衣類生地。
【請求項2】
前記中間層は、前記多孔質ポリオレフィン膜の外表面上に、5%~60%の範囲の波長9.5μmの赤外線放射の放射率を有する、請求項1に記載の衣類生地。
【請求項3】
前記粒子状充填材は、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の衣類生地。
【請求項4】
前記多孔質金属膜は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項5】
前記多孔質ポリオレフィン膜は、5μm~500μmの範囲の厚さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項6】
前記多孔質金属膜は、10nm~800nmの範囲の厚さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項7】
前記内層は、不繊維製品、織物、編み物、かぎ針編み物、フェルト編み物、または編み込み物であり、前記外層が、不繊維製品、織物、編み物、かぎ針編み物、フェルト編み物、または編み込み物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項8】
前記ポリオレフィン繊維内の前記粒子状充填材の重量パーセントが、少なくとも0.10%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項9】
前記多孔質ポリオレフィン膜は、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項10】
前記多孔質ポリオレフィン膜内の前記細孔の体積パーセントが少なくとも5%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項11】
前記多孔質金属膜は、インターコネクトメッシュ構造を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項12】
前記衣類生地は、少なくとも0.005g/cm
2/時間の水蒸気透過率を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項13】
前記衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%である、請求項1から12のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項14】
前記外層は、50μm~約800μmの範囲の厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項15】
前記粒子状充填材が、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する、請求項1から14のいずれか一項に記載の衣類生地。
【請求項16】
ポリオレフィン繊維と、前記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含む第1の層であって、前記第1の層は、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%である、第1の層と、
第1の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に第1の多孔質金属膜を有する第2の層であって、前記第1の多孔質ポリオレフィン膜は、前記第1の層の内表面に結合されており、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%であり、前記第1の多孔質金属膜は、9.5μmの波長における赤外線の反射率が少なくとも40%である、第2の層と、
前記第1の多孔質金属膜の内表面に結合された第3の層であって、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地を含む、第3の層と、
第2の多孔質ポリオレフィン膜の外表面に第2の多孔質金属膜を有する第4の層であって、前記第2の多孔質金属膜が前記第3の層の内表面にさらに結合され、9.5μmの波長の赤外線の反射率が少なくとも40%であり、前記第2の多孔質ポリオレフィン膜が9.5μmの波長の赤外線透過率が少なくとも38%である、第4の層と、
前記第2の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に結合された第5の層であって、前記第5の層がポリオレフィン繊維および前記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を含み、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%である、第5の層と、
を備える、衣類生地。
【請求項17】
前記第2の層は、前記第1の多孔質ポリオレフィン膜の外表面上に、5%~60%の範囲の波長9.5μmの赤外線放射の放射率を有する、請求項16に記載の衣類生地。
【請求項18】
前記第1の層および前記第5の層のそれぞれにおける前記粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項16または17に記載の衣類生地。
【請求項19】
前記第1の層および前記第5の層のそれぞれにおける前記粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の衣類生地。
【請求項20】
前記第1の多孔質金属膜および前記第2の多孔質金属膜のそれぞれが、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択された金属を含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の衣類生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月8日に出願された米国出願シリアル第16/406、964号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により全体が本開示に組み込まれている。
【0002】
本発明は、概しては放射熱衣類に関するものであり、より具体的には、可視色を反射する無機顔料粒子を有する放射熱衣類生地に関するものである。
【背景技術】
【0003】
室内の暖房、換気、空調(HVAC)は、世界のエネルギー消費量の約3分の1を占めている。HVACの使用量を節約することは、経済的にも環境的にもメリットがある。例えば、HVACの設定範囲を華氏プラスマイナス4度程度調整することで、建物のエネルギー消費量の約30%超を節約することができる。
【0004】
人体と環境の間の熱の流れを効果的に調節することで、熱的快適性を向上させ、建物のエネルギー消費量を節約することができる。人体の放熱には、伝導、対流、放射の3つの形態がある。この3つの放熱経路のうち、通常の皮膚状態での熱損失の約50%超を占めるのが放射である。従来の繊維製品は、人体の周囲に空気を閉じ込めて対流または伝導による放熱には影響を与えるが、放射による放熱は十分に調整できなかった。
【0005】
近年、人工繊維製品は、効果的な人体の冷却および保温のために、放射放熱を受動的に調節することが示されている。しかし、人工繊維製品の赤外線特性を損なうことなく、その繊維製品の通気性および水蒸気透過率などの着用感および(可視色の調整による)魅力を最適化することは、依然として主要な課題となっている。このような背景から、本開示に記載されている実施形態を開発する必要性が生じた。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、衣類生地の様々な実施形態を記載する。一実施形態では、衣類生地は、外層、中間層および内層を有する。外層は、ポリオレフィン繊維、およびポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。外層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。
【0007】
中間層は、多孔質ポリオレフィン膜の内表面に多孔質金属膜を備えることができる。多孔質ポリオレフィン膜は、外層の内表面に結合することができ、少なくとも38%の波長9.5μmの赤外線透過率を有することができる。多孔質金属膜は、波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%以上であることができる。
【0008】
内層は、多孔質金属膜の内表面に結合することができ、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびそれらの混合物からなる群から選択された生地を備えることができる。
【0009】
一実施形態では、粒子状充填材は、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有することができる。別の実施形態では、粒子状充填材は、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。さらなる実施形態では、多孔質金属膜は、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有することができる。追加の実施形態では、粒子状充填材は、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射することができる。
【0010】
一実施形態では、上記ポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%であることができる。別の実施形態では、粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含むことができる。さらなる実施形態、上記外層は、50μm~約800μmの範囲にある厚さを有することができる。追加の実施形態では、外層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。
【0011】
一実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜は、平均孔径が10nm~4,000nmの範囲にある細孔を有することができる。別の実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜の細孔の平均孔径は、50nm~1,000nmの範囲であることができる。さらなる実施形態、上記多孔質ポリオレフィン膜内の細孔の体積割合が少なくとも5%であることができる。追加の実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜は、5μm~500μmの範囲の厚さを有することができる。さらに別の実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜の厚さは、10μm~20μmの範囲であることができる。
【0012】
一実施形態では、多孔質金属膜が、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含むことができる。別の実施形態では、多孔質金属膜は、10nm~800nmの範囲の厚さを有することができる。さらなる実施形態では、多孔質金属膜の厚さは、100nm~200nmの範囲であることができる。追加の実施形態では、多孔質金属膜は、インターコネクトメッシュ構造を備えることができる。
【0013】
一実施形態では、中間層は、多孔質ポリオレフィン膜の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。
【0014】
一実施形態では、内層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、衣類生地は、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有することができる。別の実施形態では、衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%であることができる。
【0015】
上記の各特徴または概念は独立しており、上で説明した他の特徴または概念、または本願で開示した他の特徴または概念と組み合わせることができる。
【0016】
別の実施形態では、衣類生地は、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層、および第5の層を備える。第1の層は、ポリオレフィン繊維、およびポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。第1の層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。
【0017】
第2の層は、第1の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に設けられた第1の多孔質金属膜を備えることができる。第1の多孔質ポリオレフィン膜は、第1の層の内表面に結合することができ、少なくとも38%の波長9.5μmの赤外線透過率を有することができる。第1の多孔質金属膜は、波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%以上であることができる。
【0018】
第3の層は、第1の多孔質金属膜の内表面に結合することができ、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびそれらの混合物からなる群から選択された生地を備えることができる。
【0019】
第4の層は、第2の多孔質ポリオレフィン膜の外表面に設けられた第2の多孔質金属膜を備えることができる。第2の多孔質金属膜は、第3の層の内表面にさらに結合することができ、少なくとも40%の波長9.5μmの赤外線の反射率を有することができる。第2の多孔質ポリオレフィン膜は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。
【0020】
第5の層は、第2の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に結合することができ、ポリオレフィン繊維と、ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含むことができる。第5の層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。
【0021】
一実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材は、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有することができる。別の実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合は、少なくとも0.10%とすることができる。さらなる実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれにおける粒子状充填材は、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。追加の実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材は、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含むことができる。さらに別の実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれは、50μm~800μmの範囲の厚さを有することができる。一実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれは、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材は、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する。
【0022】
一実施形態では、第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれは、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有することができる。別の実施形態では、第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれの中の細孔の体積割合は、少なくとも5%とすることができる。さらなる実施形態では、第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれは、5μm~500μmの範囲の厚さを有することができる。
【0023】
一実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含むことができる。別の実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、10nm~800nmの範囲の厚さを有することができる。さらなる実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有することができる。追加の実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、インターコネクトメッシュ構造を備えることができる。
【0024】
一実施形態では、第2の層は、第1の多孔質ポリオレフィン膜の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。
【0025】
一実施形態では、第3の層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、衣類生地は、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有することができる。さらなる実施形態では、衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%であることができる。
【0026】
上記の各特徴または概念は独立しており、上で説明した他の特徴または概念、または本願で開示した他の特徴または概念と組み合わせることができる。
【0027】
さらなる実施形態では、衣類生地は、外層と内層を備える。外層は、ポリオレフィン層の内表面における多孔質金属膜を備えることができる。ポリオレフィン層は、ポリオレフィン繊維、およびポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。さらに、ポリオレフィン層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。多孔質金属膜は、波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%以上であることができる。
【0028】
一実施形態では、内層は、多孔質金属膜の内表面に結合することができ、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびそれらの混合物からなる群から選択された生地を備えることができる。
【0029】
一実施形態では、粒子状充填材は、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有することができる。別の実施形態では、粒子状充填材は、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。さらなる実施形態では、多孔質金属膜は、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有することができる。追加の実施形態では、粒子状充填材は、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射することができる。
【0030】
一実施形態では、上記ポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%であることができる。別の実施形態では、粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含むことができる。さらなる実施形態、上記ポリオレフィン層は、50μm~約800μmの範囲にある厚さを有することができる。追加の実施形態では、外層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。
【0031】
一実施形態では、多孔質金属膜が、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含むことができる。別の実施形態では、多孔質金属膜は、10nm~800nmの範囲の厚さを有することができる。さらなる実施形態では、多孔質金属膜は、インターコネクトメッシュ構造を備えることができる。
【0032】
一実施形態では、外層は、ポリオレフィン層の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。
【0033】
一実施形態では、内層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、衣類生地は、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有することができる。さらなる実施形態では、衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%であることができる。
【0034】
上記の各特徴または概念は独立しており、上で説明した他の特徴または概念、または本願で開示した他の特徴または概念と組み合わせることができる。
【0035】
追加の実施形態では、衣類生地は、外層、中間層および内層を有する。外層は、第1のポリオレフィン層の内表面における第1の多孔質金属膜を備えることができる。第1のポリオレフィン層は、ポリオレフィン繊維、およびポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。さらに、第1のポリオレフィン層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。第1の多孔質金属膜は、波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%以上であることができる。
【0036】
中間層は、第1の多孔質金属膜の内表面に結合することができ、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびそれらの混合物からなる群から選択された生地を備えることができる。
【0037】
内層は、第2のポリオレフィン層の外表面に設けられた第2の多孔質金属膜を備えることができる。第2の多孔質金属膜は、中間層の内表面にさらに結合することができ、少なくとも40%の波長9.5μmの赤外線の反射率を有することができる。第2のポリオレフィン層は、ポリオレフィン繊維、およびポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を備えることができる。さらに、第2のポリオレフィン層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であることができる。
【0038】
一実施形態では、外層および内層のそれぞれに含まれる粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有することができる。別の実施形態では、外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%であることができる。さらなる実施形態では、外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含むことができる。追加の実施形態では、外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含むことができる。さらに別の実施形態では、第1のポリオレフィン層および第2のポリオレフィン層のそれぞれは、50μm~800μmの範囲の厚さを有することができる。一実施形態では、第1のポリオレフィン層および第2のポリオレフィン層のそれぞれは、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、外層および内層のそれぞれに含まれる粒子状充填材は、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する。
【0039】
一実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含むことができる。別の実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、10nm~800nmの範囲の厚さを有することができる。さらなる実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれの平均孔径は、50nm~300nmの範囲であることができる。さらに別の実施形態では、第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれは、インターコネクトメッシュ構造を備えることができる。
【0040】
一実施形態では、外層は、第1のポリオレフィン層の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。
【0041】
一実施形態では、中間層は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。別の実施形態では、衣類生地は、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有することができる。さらなる実施形態では、衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%であることができる。
【0042】
上記の各特徴または概念は独立しており、上で説明した他の特徴または概念、または本願で開示した他の特徴または概念と組み合わせることができる。本開示の他の特徴および利点は、本開示の原理を例示する添付の図面と併せて、好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【
図5】一実施形態に係るポリオレフィン繊維の透視図、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
衣類生地の赤外線特性を調整することで、人体の局所的な冷却および加熱に強い効果を発揮することができる。例えば、赤外線透過性ナノポーラス・ポリエチレン(nanoPE)は、受動的に体を約2℃冷やすことができ、赤外線放射率の低い金属化されたnanoPEは、体を約7℃温めることができる。これは、ヒトの皮膚は放射率が高く、黒体のように赤外線波長域(7μm~14μm)の熱放射を強く放射し、9.5μmに強度のピークがあるためである。そのため、人体の放熱には熱放射が大きな役割を果たしており、室内状態では50%超を占めている。
【0049】
熱放射関係ε=1-ρ-τ(ここでε、ρ、τはそれぞれ放射率、反射率、透過率)に基づき、本開示の一部の衣類生地は、赤外線反射性金属薄膜と赤外線透過性ポリオレフィン層とを備えている。赤外線透過層の上に赤外線反射層を構成することで、分光選択性衣類生地は、外表面の放射率を最小限に抑え、快適性を損なうことなく熱放射の損失を効果的に抑制することができる。これにより、通常の繊維製品に比べて設定温度を7℃下げることができ、他の放射熱繊維製品に比べて3℃超の差をつけている。この大きな設定値の拡張により、費用対効果の高い方法で建物の暖房エネルギーを35%超節約することができる。
【0050】
しかし、このような分光選択性繊維製品の可視色の外観を調整することは困難であった。ウェアラブル市場では色が重要な要素であるため、このジレンマがこれらの繊維製品の実用化を制限していた。一般的に使用されている有機色素分子は、異なる種類の化学結合を持っており、人体の放射線を強く吸収することができる。例えば、C-O伸縮(7.7~10μm)、C-N伸縮(8.2~9.8μm)、芳香族C-H屈曲(7.8~14.5μm)、S=O伸縮(9.4~9.8μm)などがある。このように、有機色素は赤外線透過性を低下させることができるため、放射冷却効果には適していない。さらに、ポリエチレンは化学的に不活性であり、極性基を持たないため、化学染料の表面付着が抑制される。
【0051】
本開示の実施形態では、無機ナノ粒子をポリオレフィンマトリクスに組み込み、安定した着色のための均一な複合体を形成することで、可視と赤外線特性調整の間のこのジレンマを克服する。埋め込まれた無機ナノ粒子は、特定の可視色を反射する一方で、赤外線領域での吸収が無視できる程度である。
【0052】
ここで、例示的な図面の
図1を参照すると、外層101、中間層102、および内層103を有する衣類生地100が示されている。外層101は、ポリオレフィン層110を備えることができる。中間層102は、外層101の内表面115に結合されたポリオレフィン膜120と、ポリオレフィン膜120の内表面125に結合された多孔質金属膜130とを備えることができる。内層103は、生地142を有する繊維製品層140を備えることができる。内層103は、多孔質金属膜130の内表面135に結合されることができる。
【0053】
一実施形態では、中間層102は、エレクトロビーム物理蒸着法などの物理蒸着法によりまたはスパッタリング堆積により、多孔質ポリオレフィン膜120上に多孔質金属膜130を堆積して形成することができる。次に、外層101はポリオレフィン膜120の外表面123に積層され、内層103は多孔質金属膜130の内表面135に積層されることができる。
【0054】
以下でより詳細に説明するように、ポリオレフィン膜120は赤外線の高透過率を示すことができ、一方、多孔質金属膜130は赤外線の高反射率を示すことができる。結果として、中間層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における赤外線の放射率を低くすることができる。例えば、一実施形態では、中間層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。別の実施形態では、中間層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%であることができる。
【0055】
驚くべきことに、これらの放射率の数値は、マイラー毛布(60.6%)、オムニヒート繊維製品(85.4%)、または綿(89.5%)の放射率の数値よりもはるかに低い。金属コーティングの赤外線反射率が同等であるにもかかわらず、マイラー毛布のプラスチックシート上の赤外線放射率は、中間層102のポリオレフィン膜120側よりもはるかに高くなっている。この結果は、下地の金属層の低い赤外線放射率を維持するために、外側の保護層の高い赤外線透過率が重要であることを示している。
【0056】
一実施形態では、衣類生地100は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であることができる。別の実施形態では、衣類生地100は、0.005g/cm2/時間から0.015g/cm2/時間の範囲の水蒸気透過率を有することができる。
【0057】
ここで、例示的な図面の
図2を参照すると、第1の層101、第2の層102、第3の層103、第4の層104、および第5の層105を有する衣類生地200が示されている。第1の層101および第5の層105のそれぞれは、ポリオレフィン層110を備えることができる。第2の層102および第4の層104のそれぞれは、ポリオレフィン膜120の表面における多孔質金属膜130を備えることができる。第2の層102において、多孔質ポリオレフィン膜120は第1の層101の内表面115に結合され、多孔質金属膜130は多孔質ポリオレフィン膜120の内表面125にある。第4の層104において、多孔質ポリオレフィン膜120は第5の層105の外表面113に結合され、多孔質金属膜130は多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123にある。第3の層103は、生地142を有する繊維製品層140を備えることができる。第3の層103は第2の層102における多孔質金属膜130の内表面135と、第4の層104における多孔質金属膜130の外表面133と、に結合されることができる。
【0058】
一実施形態では、第2の層102および第4の層104のそれぞれは、エレクトロビーム物理蒸着法などの物理蒸着法により、またはスパッタリング堆積により、多孔質ポリオレフィン膜120上に多孔質金属膜130を堆積させて形成することができる。次に、第1の層101は、第2の層102の多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123に積層することができ、第3の層103は、第2の層102の多孔質金属膜130の内表面135と第4の層104の多孔質金属膜130の外表面133の両方に積層することができ、第5の層105は、第4の層104の多孔質ポリオレフィン膜120の内表面125に積層することができる。
【0059】
以下でより詳細に説明するように、ポリオレフィン膜120は赤外線の高透過率を示すことができ、一方、多孔質金属膜130は赤外線の高反射率を示すことができる。結果として、第2の層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における赤外線の放射率を低くすることができる。例えば、第2の層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。一実施形態では、第2の層102は、多孔質ポリオレフィン膜120の外表面123における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%であることができる。
【0060】
一実施形態では、衣類生地200は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であることができる。別の実施形態では、衣類生地200は、0.005g/cm2/時間から0.015g/cm2/時間の範囲の水蒸気透過率を有することができる。
【0061】
ここで、例示的な図面の
図3を参照すると、外層106および内層103を有する衣類生地300が示されている。外層106は、ポリオレフィン層110の内表面115に結合される多孔質金属膜130を備えることができる。内層103は、生地142を有する繊維製品層140を備えることができる。内層103は、多孔質金属膜130の内表面135に結合されることができる。
【0062】
一実施形態では、外層106は、エレクトロビーム物理蒸着法などの物理蒸着法により、またはスパッタリング堆積により、ポリオレフィン層110上に多孔質金属膜130を堆積させて形成することができる。次に、内層103は多孔質金属膜130の内表面135に積層されることができる。
【0063】
以下でより詳細に説明するように、ポリオレフィン層110は赤外線の高透過率を示すことができ、一方、多孔質金属膜130は赤外線の高反射率を示すことができる。結果として、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における赤外線の放射率を低くすることができる。例えば、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。一実施形態では、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%であることができる。
【0064】
一実施形態では、衣類生地300は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であることができる。別の実施形態では、衣類生地300は、0.005g/cm2/時間から0.015g/cm2/時間の範囲の水蒸気透過率を有することができる。
【0065】
ここで、例示的な図面の
図4を参照すると、外層106、中間層103、および内層107を有する衣類生地400が示されている。外層103および内層107のそれぞれは、ポリオレフィン層110の表面上に多孔質金属膜130を備えることができる。外層106において、多孔質金属膜130は、ポリオレフィン層110の内表面115にある。外層107において、多孔質金属膜130は、ポリオレフィン層110の外表面113にある。中間層103は、生地142を有する繊維製品層140を備えることができる。中間層103は外層106における多孔質金属膜130の内表面135と、内層107における多孔質金属膜130の外表面133と、に結合されることができる。
【0066】
一実施形態では、外層106および内層107のそれぞれは、エレクトロビーム物理蒸着法などの物理蒸着法により、またはスパッタリング堆積により、ポリオレフィン層110上に多孔質金属膜130を堆積させて形成することができる。次に、外層106は中間層103の外表面143に積層され、内層107は中間層103の内表面145に積層されることができる。
【0067】
以下でより詳細に説明するように、ポリオレフィン層110は赤外線の高透過率を示すことができ、一方、多孔質金属膜130は赤外線の高反射率を示すことができる。結果として、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における赤外線の放射率を低くすることができる。例えば、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲であることができる。一実施形態では、外層106は、ポリオレフィン層110の外表面113における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%であることができる。
【0068】
一実施形態では、衣類生地400は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であることができる。別の実施形態では、衣類生地400は、0.005g/cm2/時間から0.015g/cm2/時間の範囲の水蒸気透過率を有することができる。
【0069】
[ポリオレフィン層110]
図1~
図4が示した衣類生地100、200、300および400は、ポリオレフィン層110を含むことができる。一実施形態では、ポリオレフィン層110は、50μm~800μmの範囲の厚さを有することができる。別の実施形態では、ポリオレフィン層110は、約50μm~500μmの範囲、約50μm~300μmの範囲、または約100μm~300μmの範囲の厚さを有することができる。さらなる実施形態では、ポリオレフィン層110は、約50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm。430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μm、510μm、520μm、530μm、540μm、550μm、560μm、570μm、580μm、590μm、600μm、610μm、620μm、630μm、640μm、650μm、660μm、670μm、680μm、690μm、700μm、710μm、720μm、730μm、740μm、750μm、760μm、770μm、780μm、790μm、または800μmの厚さを有することができる。
【0070】
ポリオレフィン層110は、ポリオレフィン繊維を備えることができる。
図5は、本開示のいくつかの実施形態に係るポリオレフィン繊維500の透視図、断面図を示す概略図である。繊維500は、細長い部材502と、細長い部材502内に分散された粒子状充填材504とを含む。
【0071】
細長い部材502は、単一のポリオレフィンまたは2つ以上の異なるポリオレフィンの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態において赤外線透過性を付与するために、赤外線の吸収が低いポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物を使用することができる。そのような実施形態において、適切なポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、および他の熱可塑性ポリオレフィンまたはポリオレフィンエラストマを含む。ポリエチレンの場合、好適な分子量は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、および超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の範囲とすることができる。ポリエチレンは、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ビニロン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリフッ化ビニル(PVF)、共重合体、他の熱可塑性ポリマ、天然ポリマなどの他のポリマと混合し、または少なくとも部分的に置き換えることなどができる。例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの混合物(より一般的には2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物)は、赤外線透過性を維持しながら改善された機械的強度を付与するために使用することができ、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの合計重量に対するポリプロピレンの重量割合が、約1%~約60%、約1%~約50%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、または約10%などの範囲にある場合が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、適切なポリオレフィンは、波長9.5μmの赤外線透過率が、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%である。いくつかの実施形態では、適切なポリオレフィンは、7~14μmの波長範囲における赤外線の加重平均透過率が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。
【0073】
上述したように、このような赤外線透過性繊維製品の可視色の外観を調整することは困難であった。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン繊維502に、特定の可視色を反射する一方で、赤外線領域での吸収が無視できるような独特の粒子状充填材504を組み込むことで、この課題を克服している。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン内に分散された粒子状充填材504は、所望のスペクトルの光を選択的に散乱させるために、繊維製品に含まれるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物に対する屈折率のコントラストを提供することができる。特に、粒子状充填材504は、所望のスペクトルで光を強く散乱させるが、中赤外線領域では低散乱である。いくつかの実施形態では、粒子状充填材は、約400nm~約700nmの可視領域の放射線および700nm~約4μmの近赤外線領域の放射線を包含する、約300nm~約4μmの範囲の日射スペクトルの光を選択的に散乱させる大きさであり、かつ材料組成を有し、それによって直射日光下で冷却効果を提供する。他の実施形態では、粒子状充填材は、可視領域の特定の波長または色を選択的に散乱させる材料組成を有するようにサイズ設定されおよび構成されており、それによって、着色効果を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、粒子状充填材504と細長い部材502との間の屈折率の相対的な差は、細長い部材502に含まれるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物の屈折率(例えば、589nmで測定される可視光について)に対して、少なくとも約±1%である。一実施形態では、粒子状充填材504と細長い部材502との間の屈折率の相対的な差は、少なくとも約±5%、少なくとも約±8%、少なくとも約±10%、少なくとも約±15%、少なくとも約±20%、少なくとも約±25%、少なくとも約±30%、少なくとも約±35%、少なくとも約±40%、少なくとも約±45%、または少なくとも約±50%のようになっている。
【0076】
いくつかの実施形態では、粒子状充填材504と細長い部材502との間の屈折率の絶対差は、細長い部材502に含まれるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物の屈折率(例えば、589nmで測定される可視光について)に対して、少なくとも約±0.01である。一実施形態では、粒子状充填材504と細長い部材502との間の屈折率の絶対差は、少なくとも約±0.05、少なくとも約±0.10、少なくとも約±0.15、少なくとも約±0.20、少なくとも約±0.25、少なくとも約±0.30、少なくとも約±0.35、少なくとも約±0.40、少なくとも約±0.45、少なくとも約±0.50、または少なくとも約±0.55のようになっている。粒子状充填材504の屈折率は、細長い部材502に含まれるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物の屈折率よりも高くても低くてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、粒子状充填材504は、充填材の材料に起因する屈折率のコントラストを提供する。ポリオレフィン繊維500内に分散された粒子状充填材504は、可視色を示す赤外線透過性の無機顔料であってもよい。充填材の適切な材料の例としては、可視領域の放射線、近赤外線領域の放射線、および中赤外線領域の放射線を包含する、約300nm~約20μmの範囲の放射線の吸収が低い無機材料、例えば、メタロイド(シリコンなど)、金属酸化物(酸化亜鉛および酸化鉄など)、メタロイド酸化物(酸化シリコンなど)、金属ハロゲン化物(臭化カリウム、ヨウ化セシウム、塩化カリウム、および塩化ナトリウムなど)、金属硫化物(硫化亜鉛など)、金属シアン化物(プルシアンブルーなど)などがある。例えば、粒子状充填材504は、酸化亜鉛(白色を加えることができる)、フェロシアン化第二鉄または「プルシアンブルー」(青色を加えることができる)、酸化鉄(赤色を加えることができる)シリコン(黒色または黄色を加えることができる)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0078】
これらの無機固体は、4μm~14μmの赤外線波長域において、C≡N伸縮振動に起因する4.8μmのプルシアンブルーの強くて狭いピークと、表面のネイティブなシリコン酸化物に起因する8μm~10μm付近のシリコンの弱くて広いピークを除いて、無視できる吸光度を有している。いくつかの実施形態では、充填材に適切な材料は、9.5μmの波長での赤外線透過率が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または最大約98%である。いくつかの実施形態では、充填材に適切な材料は、7~14μmの波長範囲における赤外線の加重平均透過率が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または最大で約95%である。
【0079】
充填材は、中赤外線領域の放射線の代わりに、主に可視領域および近赤外線領域の放射線を散乱させるサイズである。例えば、充填材は、ナノサイズ(例えば、ナノ粒子として)であり、可視光の波長に同等であり、かつ中赤外線放射の波長以下のサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、充填材は、約10nm~約4,000nm、約20nm~約1,000nm、約50nm~約1,000nm、約50nm~約900nm、約50nm~約800nm、約50nm~約700nm、約50nm~約600nm、約50nm~約500nm、約50nm~約400nm、約100nm~約400nm、または約500nm~約1,000nmの範囲内の平均またはピーク粒径を有する。
【0080】
一方で、このナノスケールのサイズ範囲は、人体の熱放射波長である4~14μmよりもはるかに小さい。したがって、これらのナノ粒子は、着色されたポリオレフィン混合物の赤外線透過性を低下させる赤外線光の強い散乱を誘発しない。一方、特定のサイズ範囲の高屈折率誘電体または半導体ナノ粒子は、Mie理論に基づいて、可視スペクトル範囲で強い共鳴光散乱を有することができる。したがって、ナノスケールの寸法を調整することで、異なる可視光色を作り出すことができる。
【0081】
例えば、バルクシリコンが黒色であるのに対し、直径100nm~200nmのシリコンナノ粒子(633nmでの屈折率>3.8)は、磁気および電気双極子モードの両方の励起に伴う顕著なMie共鳴反応により、黄色を呈している。シリコンナノ粒子とは異なり、プルシアンブルーと酸化鉄ナノ粒子との両方は、バルクとして自然な色を示す。プルシアンブルーの強烈な青色は、Fe(II)からFe(III)への原子価間電荷移動に関連している一方で、酸化鉄の暗赤色は、~2.2eVのその光学バンドギャップにより決定される。このように青、赤、黄の3原色があれば、それらを異なる比率で混ぜ合わせることで、可視スペクトル上のすべての異なる色を作り出すことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、粒径の分布を調整して、繊維500(および結果として得られる繊維製品)に所望の色調を付与することができる。例えば、充填材は、粒径の標準偏差が平均粒径の約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、または約20%以下であるような、比較的均一なサイズであることができる。いくつかの実施形態では、細長い部材502内の充填材の重量割合は、少なくとも約0.10%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約0.50%である。いくつかの実施形態では、繊維製品内の充填材の数密度は、少なくとも約0.1μm3、少なくとも約0.5μm3、少なくとも約1μm3、少なくとも約2μm3、少なくとも約4μm3、少なくとも約6μm3、または少なくとも約8μm3である。充填材は、規則的または不規則的な形状であり得、約3以下、または約3以上のアスペクト比を有することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、細長い部材502は、細孔をさらに備えることができる。繊維製品の細孔は、充填材との結合により、所望のスペクトルの光の選択的散乱に寄与するサイズにすることができる。例えば、細孔は、ナノサイズ(例えば、ナノ細孔のような)であってよく、可視光の波長に同等であり、かつ中赤外線放射の波長未満であるようにすることができる。いくつかの実施形態では、細孔は、約10nm~約4,000nm、約10nm~約2,000nm、約10nm~約1,000nm、約10nm~約900nm、約10nm~約800nm、約10nm~約700nm、約10nm~約600nm、約10nm~約500nm、約10nm~約40nm、または約10nm~約300nmの範囲内の平均またはピーク孔径を有する。いくつかの実施形態では、孔径の分布を調整して、所望の波長の散乱放射線を付与することができる。例えば、細孔は、孔径の標準偏差が平均孔径の約50%以下、約45%以下、約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、または約20%以下であるような、比較的均一なサイズであることができる。孔径は、例えばBarret-Joyner-Halendaモデルを用いて決定することができる。いくつかの実施形態では、細長い部材502内の細孔の体積割合は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、または少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または少なくとも約70%である。いくつかの実施形態では、細孔の少なくとも一部を相互に結合して、空気透過性を高め、かつ相互に結合した細孔を介して伝導および対流の放熱を高めることができる。細孔は、規則的または不規則的な形状であり得、約3以下、または約3以上のアスペクト比を有することができる。
【0084】
繊維500の形成時には、酸化防止剤、抗菌剤、着色剤または染料、吸水剤(例えば、綿)、金属、木材、シルク、ウールなどの1または複数の添加剤を含めることができる。1または複数の添加剤は、細長い部材502に含まれるポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物内に分散させることができる。
【0085】
図5は、円形の断面形状を有する繊維500を示しているが、マルチグローバル、八角形、楕円形、五角形、長方形、四角形、台形、三角形、くさび形など、様々な他の規則的または不規則な断面形状などを有する繊維が企図されている。繊維500の表面を化学的または物理的に改質して、親水性、抗菌性、着色、テクスチャなどの付加的な特性などを付与することができる。例えば、
図5には示されていないが、親水性を付与するために、繊維500の表面上にコーティングを施すことができ、例えば、親水剤としてのポリドーパミン(PDA)のコーティングなどが挙げられる。
【0086】
ポリオレフィン繊維500の他の実施形態が企図されている。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン繊維は、複数の(例えば、2つ以上の)細長い部材を含み、それらは接合されるか、または他の方法で結合されて、繊維の単一本体を形成する。細長い部材の少なくとも1つは、その中に分散された粒子状充填材504を含み、細長い部材は、同じポリオレフィン(またはポリオレフィンの同じ混合物)または異なるポリマ(またはポリマの異なる混合物)を含むことができる。細長い部材は、様々な構成で配置することができる。例えば、細長い部材は、芯鞘構造、海中の島構造、マトリクスまたは市松模様構造、セグメントパイ構造、サイドバイサイド構造、ストライプ構造などに配置することができる。ポリオレフィン繊維のさらなる実施形態は、中空構造、ブロック構造、グラフト構造などを有するように実現することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン繊維は、その中に分散された粒子状充填材(例えば、赤外線透過性無機ナノ粒子)を有するポリオレフィンを含むことができる。これらの2つの成分は、調合工程を介して均一に混合することができ、形成された複合体は、その後、交絡編み物の織りまたは編みのための繊維形状に押し出すことができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン繊維は、押し出しおよび溶媒抽出のプロセスによって形成することができる。具体的には、ポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合をパラフィン油などの溶媒に溶解して混合物を形成することができる。混合物中の溶媒の体積割合は、溶媒抽出後に得られる繊維内の細孔の所望の体積割合を得るために選択することができる。パラフィン油の代わりに、またはパラフィン油と組み合わせて、他の適切な液体溶媒または固体を使用することができ、例えば、固体ワックス、ミネラルオイルなどが挙げられる。その後、混合物を、押し出し装置(例えば、スピナレットまたはシリンジ)を通して押し出して、繊維中に分散した溶媒を含むポリオレフィン繊維を形成し、溶媒を抽出してポリオレフィン繊維中にナノ細孔を残すことができる。溶媒の抽出は、塩化メチレンのような抽出剤の化学浴に浸すことによって行うことができるが、蒸発などの他の抽出の方法も考えられている。
【0088】
一旦形成されたいくつかの実施形態のポリオレフィン繊維は、個々の繊維として、または複数の繊維の糸に含まれる形でのいずれかで、繊維製品を形成するために様々なプロセスを受けることができる。例えば、織る、編む、フェルト化する、編む、編むなどがある。使用するプロセスに応じて、平織り、バスケット織り、綾織り、サテン織り、ヘリンボーン織りおよびハウンドトゥース織りなどの編み目、並びにジャージー、リブ、パール編み、インターロック、トリコットおよびラッシェルなどの編みパターンなど、様々な織構造を実現することができる。いくつかの実施形態のポリオレフィン繊維は、他の繊維(例えば、熱可塑性ポリマまたは天然ポリマで形成された他の繊維)と組み合わせて製織に供され、繊維製品を形成することができる。
【0089】
結果として得られるいくつかの実施形態の赤外線透過性繊維製品(例えば、ポリオレフィン層110)は、様々な利点を示すことができる。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン層は、9.5μmの波長での赤外線透過率が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または最大約98%である。いくつかの実施形態では、繊維製品は、7~14μmの波長範囲における赤外線の加重平均透過率が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または最大で約95%である。いくつかの実施形態では、繊維製品は、400~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度([100-透過率]としてパーセンテージで表される)が、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または最大で約99%である。いくつかの実施形態では、繊維製品は、少なくとも約0.005g/cm2/時間、少なくとも約0.008g/cm2/時間、少なくとも約0.01g/cm2/時間、少なくとも約0.012g/cm2/時間、少なくとも約0.014g/cm2/時間、少なくとも約0.016g/cm2/時間、または最大で約0.02g/cm2/時間の水蒸気透過率を有する。いくつかの実施形態では、繊維製品は、少なくとも約10cm3/s/cm2、少なくとも約20cm3/s/cm2、少なくとも約30cm3/s/cm2、少なくとも約40cm3/s/cm2、少なくとも約50cm3/s/cm2、少なくとも約60cm3/s/cm2、または最大約80cm3/s/cm2の空気透過性を有する。いくつかの実施形態では、繊維製品は、少なくとも約10N、少なくとも約20N、少なくとも約30N、少なくとも約40N、少なくとも約50N、または最大約60Nの引張強度を有する。
【0090】
図1~
図4に示されるように、いくつかの実施形態の赤外線透過性繊維製品(例えば、ポリオレフィン層110)は、単層布の中の単層として、または多層布の複数(例えば、2つ以上)の層の間で、のいずれかで衣類生地(例えば、100、200、300、400)に組み込むことができる。多層布の場合、赤外線透過性繊維製品は、他の繊維製品材料(例えば、綿やポリエステル)の1または複数の層などの1または複数の追加の層と積層またはその他の方法で組み合わせることができる。このようにして得られた布は、アパレルや靴などの様々な衣類、および医療品などの他の製品に使用することができる。
【0091】
[多孔質ポリオレフィン膜120]
図1および
図2によって図示された衣類生地100および200は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせなどのポリオレフィンからなる多孔質ポリオレフィン膜120を含むことができる。多孔質ポリオレフィン膜120は、後述する多孔質金属膜130の外表面を支持して覆うことができる。
【0092】
一実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜120は、5μm~500μm、5μm~400μm、5μm~300μm、5μm~200μm、5μm~100μm、5μm~90μm、5μm~80μm、5μm~70μm、5μm~60μm、5μm~50μm、5μm~40μm、5μm~30μm、5μm~20μm、10μm~15μm、10μm~20μm、10μm~25μm、10μm~30μm、10μm~35μm、または10μm~40μmの範囲内の厚さを有することができる。
【0093】
一実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜120は、9.5μmの波長における赤外線透過率が、少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%であることができる。
【0094】
一実施形態では、多孔質ポリオレフィン膜120は、10nm~4,000nm、50nm~1,000nm、50nm~900nm、50nm~800nm、50nm~700nm、50nm~600nm、50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nm、または50nm~100nmの範囲の平均孔径を有する細孔122を有することができる。多孔質ポリオレフィン膜120の細孔は、空気透過性を有することができる。さらに、約400nm~約700nmの範囲の平均孔径を有する細孔は、可視光を散乱させ、人間の目には不透明な層とすることができる。孔径は、赤外線波長(~9μm)よりもはるかに小さくすることができるが、多孔質ポリオレフィン膜120は、赤外線に対して高い透過性を維持する。
【0095】
多孔質ポリオレフィン膜120内の細孔122の体積割合は、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、または少なくとも75%とすることができる。
【0096】
[多孔質金属膜130]
図1~
図4に例示された衣類生地100、200、300、および400は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択された金属からなる多孔質金属膜130を含むことができる。一実施形態では、多孔質金属膜130は、異なる組み合わせの金属の二層または三層で構成することができる。
【0097】
一実施形態では、多孔質金属膜130は、10nm~800nm、10nm~700nm、10nm~600nm、10nm~500nm、50nm~100nm、50nm~200nm、50nm~300nm、50nm~400nm、100nm~200nm、100nm~300nm、100nm~400nm、または100nm~500nmの範囲内の厚さを有することができる。
【0098】
多孔質金属膜130は、9.5μmの波長における赤外線の反射率が、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%であることができる。
【0099】
通気性を提供しながら所望の反射率を維持するために、多孔質金属膜130は、赤外線波長よりは小さいが、水分子よりは大きい孔132を有することができる。これにより、他の放射熱繊維製品の制限を克服することができ、金属コーティングは、通気性を確保するには密度が高すぎる(例えば、マイラー毛布)か、高反射率を確保するには疎すぎる(例えば、Omni-Heat)か、のいずれかである。一実施形態では、多孔質金属膜130は、10nm~4,000nm、50nm~1,000nm、50nm~900nm、50nm~800nm、50nm~700nm、50nm~600nm、50nm~500nm、50nm~400nm、50nm~300nm、50nm~200nm、または50nm~100nmの範囲の平均孔径を有する細孔132を有することができる。
【0100】
多孔質金属膜の構造は、反射率および通気性にも影響を与え得る。例えば、上述の範囲の孔径を有する多孔質金属膜は、薄膜が孤立した島の形をしている場合、所望の範囲以下の反射率を示す可能性がある。しかし、相互接続されたメッシュの形態の多孔質金属膜は、同じ被覆密度の孤立した島の形態の膜よりもはるかに高い反射率を有する。したがって、いくつかの実施形態では、多孔質金属膜130は、相互接続された多孔質メッシュの状態にあり、最適な反射率と通気性を提供することができる。
【0101】
いくつかの実施形態(例えば、
図1および
図2に示す実施形態)では、多孔質ポリオレフィン膜120の内表面125に、多孔質金属膜130を付加することができる。他の実施形態(例えば、
図3および
図4に示す実施形態)では、ポリオレフィン層110の内表面115に、多孔質金属膜130を付加することができる。いずれの場合も、多孔質金属膜130は、エレクトロビーム物理蒸着法などの物理蒸着法によって、またはスパッタリング堆積により、堆積させることができる。
【0102】
[繊維製品層140]
図1~4に例示されている衣類生地100、200、300、および400は、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択される生地142からなる繊維製品層140を含むことができる。一実施形態では、繊維製品層142は、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物であることができる。この繊維製品層層140は、衣類生地の機械的強度を高め、快適性および熱伝導に対する断熱性を維持することができる。
【0103】
前述の説明から、本開示は、効果的な人体の冷却と温暖化のために放熱を調節するだけでなく、色の変化および魅力を損なうことなく、快適性および耐久性も提供する、改良された分光選択性の衣類生地を提供することが理解されるべきである。
【0104】
具体的な方法、装置、材料について説明するが、説明したものと同様または同等の方法および材料は、本実施形態の実施またはテストに使用することができる。別の定めがない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本実施形態が属する技術分野の当業者が普通に理解するのと同じ意味を有する。
【0105】
「1」、「1つ」、「少なくとも1つ」という用語は、特定の要素の1または複数を包含している。すなわち、特定の要素が2つ存在する場合、これらの要素の1つも存在するため、「1つの」要素が存在することになる。「複数」および「複数の」という用語は、特定の要素の2つ以上を意味する。要素のリストの最後の2つの間で使用される用語「または」は、リストされた要素のいずれか1または複数を意味する。例えば、「A、B、またはC」という表現は、「A、B、および/またはC」を意味し、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」、または「A、B、およびC」を意味する。「結合」という用語は、一般的に物理的に結合または連結されていることを意味し、特定の反対の文言がない限り、結合されたアイテムの間に中間要素が存在することを排除するものではない。
【0106】
これ以上詳しく説明しなくても、当業者であれば、進行中の説明を利用して、本発明を最大限に作り、利用することができると考えられる。本実施形態の他の目的、特徴、および利点は、以下の具体例から明らかになるであろう。具体例は、具体的な実施形態を示しているものの、説明のためにのみ提供されている。したがって、本発明は、この詳細な説明から当業者に明らかになり得、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正をも含む。以下の例は例示のみであり、何ら本開示を限定するものではない。
【0107】
[実施例]
例1:無機-有機マトリクスを有する分光選択性衣類生地
酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子をナノポーラス・ポリエチレン(PE)に埋め込むことで、材料特性と構造的フォトニック・エンジニアリングとを組み合わせて、選択的な分光感度を持つ衣類生地の開発に使われた。
【0108】
ZnO-PE層は、約104W/m2(ヒトの皮膚と同程度)の発熱量を持つ皮膚模擬ヒータでも、約10℃超の過熱を回避できることが実験的に示されている。これは、ピーク時の日射量が約900W/m2を超える一般的な屋外環境下で、綿などの通常の繊維製品と比較して、約200W/m2以上の冷却力に相当します。さらに、汗の蒸発を考慮すると、放射冷却繊維製品は、綿に比べて皮膚模擬熱の過熱を最大で約8℃回避することができる。これらの結果は、受動的な屋外冷却のために、繊維製品の放射特性を選択的に調整する優れた能力を証明している。
【0109】
皮膚温度が約34℃のとき、人体は主に約7~14μmの中赤外線領域の熱放射し(波長約9.5μmに放射のピークがある)、正味の放射電力密度は約100W/m2になる。綿(白色)のような典型的な繊維製品は、平均太陽光反射率が約60%で、日射パワーの大部分が皮膚に吸収される。同時に、綿は赤外線透過率が低いため、人体の熱放射が効率よく放散することは妨げられている。
【0110】
一方、日射と人体の熱放射とのスペクトルは重なり合っているため、分光選択性の高い(太陽光反射が強く、中赤外線透過率が高い)放射線繊維製品は、屋外冷却のための放射伝達の入力を減らす同時に、出力を高めることができる。
【0111】
ポリエチレンは、脂肪族のC¬C結合とC¬H結合を持ち、赤外線透過性があり、室内冷却のために人体の放射線を実質的に完全に透過させることができる。しかし、その屈折率が約1.5と比較的低いため、その太陽光反射率が屋外での使用には適していない。無機固体は一般的にポリマよりも高い屈折率を持っている。例えば、酸化亜鉛の屈折率が約2で、可視光波長(約400nm)から中赤外線光波長(約16μm)までの吸収がほとんどない。これらの材料特性により、酸化亜鉛(ZnO)とポリエチレン(PE)の組み合わせは、屋外冷却目的で所望の放射選択性を構築するためのベース材料として適している。
【0112】
構造的フォトニック・エンジニアリングを用いて無機-有機マトリクス設計の数値最適化を行い、スペクトル選択性のある放射特性を導き出した。粒径が0.1μm以下または1μm以上の場合、球状酸化亜鉛の散乱断面積は全波長範囲で小さいか大きいかのいずれかであり、その結果、スペクトルに対する選択性が低いことが示されている。0.1μm~1μm(太陽光の波長範囲に相当)の粒径では、強いMie散乱が発生し、可視領域と近赤外線領域の散乱が大幅に増加したが、中赤外線領域の散乱は小さいままであった。この結果から、酸化亜鉛の粒径を約0.1μm~約1μmの範囲内で適切に選択することで、可視光と近赤外線で高い反射率、中赤外線で高い透過率が提供されることが示されている。さらに、酸化亜鉛の粒径と密度が太陽電池の太陽光反射率と中赤外線透過率に与える影響を詳細に計算した。粒径および密度の増加に伴い、太陽光反射率は増加し、中赤外線透過率は減少し、最適化された領域が明らかになった。
【0113】
パラフィン油(PEとオイルとの比率は約1対5)中で酸化亜鉛粒子と溶融ポリエチレンをZnO:PE=約2:5の重量比で混合した後、その複合混合物溶融プレスして薄膜を作り、塩化メチレンで薄膜からパラフィン油を抽出することで、数値最適化のガイダンスを得て、ナノポーラスZnO/PE繊維製品を作製した。得られたZnO/PE薄膜は、太陽の下では白色を呈し、あらゆる角度からのすべての可視光を強く散乱することが示されている。走査型電子顕微鏡で観察すると、ポリエチレンマトリクス中にZnO粒子がランダムに埋め込まれた多孔質構造(孔の占有体積は約20%~約30%)の繊維製品であることが示されている。X線顕微鏡を用いて繊維製品サンプルのX線コンピュータ断層撮影走査を行ったところ、体積全体に酸化亜鉛粒子が均一に分布していることが示されている。(動的光散乱法で)粒径を測定したところ、主に約0.3~0.8μmであることが分かられ、約0.5μmにピークがあり、数値的に最適化された粒径と一致した。
【0114】
ZnO/PE繊維製品の赤外線反射率(ρ)と透過率(τ)は、FTIR分光器(Thermo Scientific Model 6700)と拡散金積分球(PIKE technologies)を用いて測定した。その後、赤外線放射率(ε)は、ε=100%-ρ-τの式を用いて算出した。測定されたスペクトルは、太陽光の領域では約90%超の高反射率を示し、人体の熱放射が集中する約7~14μmの領域では約80%の高い透過率を示した。したがって、ZnO/PE複合体は、熱放射率が低く(代わりに熱透過率が高い)、強い太陽光反射率を有していた。可視光の不透明度は、紫外可視分光器(Agilent、Cary 6000i)で測定した。
【0115】
ZnO/PE繊維製品の屋外性能は、皮膚模擬ヒータを使ってテストした。測定セットアップには、皮膚模擬のヒータ、模擬皮膚の温度を測定するためのヒータ表面の熱電対、模擬皮膚を覆う繊維製品サンプルが含まれている。ヒータは、底面への熱損失を防ぐため、泡状物質の上に置かれた。皮膚の代謝熱生成率を模擬するために、ヒータには約104W/m2の加熱電力が入力された。セットアップ全体が直射日光と空気に露出された状態で、約4時間にわたり、皮膚模擬ヒータの温度をリアルタイムで記録した。風の対流があり、ピーク時の日射量が約910W/m2の場合、ZnO/PEで覆われた皮膚模擬ヒータの温度は約33.5℃で、裸の皮膚模擬ヒータ(53.1℃)、または白色の綿で覆われた皮膚模擬ヒータ(45.6℃)よりもはるかに低い値を示した。実際、繊維製品サンプルを使用していない皮膚模擬ヒータの温度は、太陽光の下でも日陰でも同じであり、測定された温度差は繊維製品の影響によるものであることが確認された。ZnO/PEで覆われた皮膚模擬ヒータの温度が著しく低いことは、ZnO/PE繊維製品の優れた冷却力を示している。この冷却力の向上は、太陽光反射率が高いために太陽からの熱入力が減少することと、人体の熱放射の透過率が高いために放射熱出力が増加することによってもたらされる。伝熱モデル解析を用いて、皮膚温度を約34℃に達成するために必要な繊維製品サンプルの追加冷却力を算出した。綿で覆われた皮膚模擬ヒータは約116W/m2から約219W/m2の追加冷却力を示し、裸の皮膚模擬ヒータは約305W/m2から約454W/m2の追加冷却力を示した。一方、ZnO/PE繊維製品は、追加冷却力を供給しなくても、皮膚模擬ヒータを受動的に冷却して34℃を少し下回る温度に維持した。
【0116】
さらに、この差を蒸発による冷却力で補うことはできなかった。汗の蒸発を考慮して、ヒータの上に水を含ませた多孔質層を置き、風の対流および日射量が約900W/m2~約1050W/m2の条件で屋外でのリアルタイム測定を行った。汗の蒸発効果を考慮した結果、皮膚模擬ヒータの温度をZnO/PE繊維製品では約34℃に保つことができたが、綿で覆われた皮膚模擬ヒータでは約5℃~約8℃、裸の皮膚模擬ヒータでは約9℃~約15℃の過熱がそれぞれ観察された。
【0117】
例2:金属化ポリエチレンおよび綿を有する分光選択性衣類生地
多孔質ポリエチレン膜に多孔質アルミニウム膜をメッキし、その後、金属化ポリエチレン膜(PE/Al)と編物または織物の綿(PE/Al/綿)を積層して衣類生地を製作した。
【0118】
PE/Al/綿の衣類生地の屋外性能を、皮膚模擬ヒータを使ってテストした。テストでは、電源(Keithley2400)に接続されたヒータ(Omega、72cm2)で皮膚を模擬した。リボン型ホットジャンクション熱電対(Omega、直径0.3mm、K型)を模擬皮膚の上表面に接触させ、皮膚温度を測定した。模擬皮膚ヒータの下にはガードヒータと断熱泡状物質を置き、皮膚ヒータで発生した熱が環境に伝達するようにした。テーブルへの下向きの熱伝導を避けるために、ガードヒータの温度は皮膚ヒータと同じにした。装置全体をチャンバ内に収め、チャンバ内の周囲温度を調整した。
【0119】
皮膚ヒータの電力密度は73W/m2に設定し、周囲温度25℃の時に33.5℃の皮膚温度が得られた。皮膚を繊維製品サンプル(5cm×7cm)で覆った状態で、皮膚温度を33.5±0.1℃に保つために必要な定常状態の周囲温度を測定した。
【0120】
これらの測定により、PE/Al層の良好な保温性能が確認された。PE/Al/綿の織物サンプルとPE/Al/綿の編み物サンプルとは、織物および編み物の綿サンプルよりも優れた保温性能を示した。より具体的には、PE/Al/綿の織物生地は、周囲温度が11.1℃でも33.5℃の皮膚温度を維持することができ、これは、皮膚ヒータを綿の織物サンプルで覆った場合に同じ皮膚温度を維持するのに必要な周囲温度よりも7.2℃低い値であった。同様に、PE/Al/綿の編み物の生地は、周囲温度が10.5℃でも33.5℃の皮膚温度を維持することができ、これは、皮膚ヒータを綿の編み物の綿サンプルで覆った場合に同じ皮膚温度を維持するのに必要な周囲温度よりも8.5℃低い値であった。したがって、PE/Al/綿の衣類サンプルは、通常の綿と比較して良好な保温特性を示した。
【0121】
衣類生地の洗浄耐久性をテストするため、サンプルをきれいな水(400ml)に入れ、マグネティックスターラー・ホットプレート(Torrey Hills Technologies、 LLC)で500rpm、50℃で30分間撹拌した。その結果、生地サンプルは本来の性能を維持し、剥離または破壊は見られなかった。
【0122】
衣類生地の水蒸気透過率は、ASTM E96に準拠したテスト方法でテストした。100mlのメディアボトル(Fisher Scientific)に60mlの蒸留水を入れ、オープントップキャップとシリコンガスケット(Corning)を用いて繊維製品サンプルを密封した。その後、密封されたボトルは、35°C、相対湿度30%±10%の環境チャンバに12時間入れられた。サンプルを入れたボトルの総質量を定期的に測定した。次に、蒸発した水に相当する減少した質量を露出面積(7cm2)で割って、水蒸気透過率を算出した。その結果、サンプルの生地は空気柔軟性が高く、水蒸気透過率は綿の織物サンプル(0.187g/cm2)と同程度であることが分かられた。より具体的には、PE/Al/綿の編み物のサンプルの水蒸気透過率は0.178g/cm2、PE/Al/綿の織物のサンプルの水蒸気透過率は0.181g/cm2であることが示された。
【0123】
例3:無機顔料粒子を有する分光選択性衣類生地
顔料には赤外線透過性無機ナノ粒子を、柔軟なポリマホストにはポリエチレンを選択した。赤外線透過性の無機固体としては、プルシアンブルー(PB)、酸化鉄(Fe2O3)、シリコン(Si)などを選択した。ナノ粒子を180℃の温度で溶融したポリエチレンペレットと機械的に混合し、均一な無機固体ポリマ複合体を製造する調合工程を採用した。ナノ粒子の質量比が1%の複合体は、任意の形状に成形するための良好な熱的加工性を維持し、可視領域および赤外線領域で良好な光学特性を示した。
【0124】
粒径は20nm~1,000nmの範囲にあるように選択された。このナノスケールのサイズ範囲は、人体の熱放射波長である4~14μmよりもはるかに小さい。したがって、ナノ粒子が赤外線の強い散乱を誘発する、またはポリエチレン混合物の赤外線透過性を低下させることはないと考えられた。実際、フーリエ変換赤外線分光法で測定すると、無機固体は約4μm~約14μmの赤外線波長域では、プルシアンブルーの4.8μmにあるC≡N伸縮振動による強くて狭いピークと、約8μm~約10μmにある表面のネイティブなシリコン酸化物によるシリコンの弱くて広いピークとを除いて、無視できる吸光度を持っていたことが示されている。
【0125】
同時に、特定のサイズ範囲の高屈折率誘電体または半導体ナノ粒子は、Mie理論に基づいて、可視スペクトル範囲で強い共鳴光散乱を有することができる。結果として、無機粒子のナノスケールの寸法を調整することで、異なる可視光色を作り出すことができる。例えば、バルクシリコンが黒色であるのに対し、直径100nm~200nmのシリコンナノ粒子(633nmにおいて3.8未満の屈折率)は、磁気および電気双極子モードの励起に伴う顕著なMie共鳴反応により、黄色を呈している。プルシアンブルーと酸化鉄ナノ粒子とは両方バルクとして自然な色を示す。プルシアンブルーの強烈な青色は、Fe(II)からFe(III)へのインターバル電荷移動に関連しており、酸化鉄の暗赤色は、その光学バンドギャップが約2.2eVであることに起因している。このように青、赤、黄の3原色があれば、顔料粒子を異なる比率で混ぜ合わせることで、可視スペクトル上のすべての異なる色を作り出すことができる。
【0126】
ポリエチレンポリママトリクスの内部に顔料ナノ粒子が均一に分布しているため、成形されたPB-PE、Fe2O3-PE、Si-PE複合膜は、膜厚が約100μmでありながら、それぞれ青、赤、黄の均一で強い発色を示した。複合体の紫外可視(UV-VIS)分光法測定の結果、約450nm、600nm、750nmに支配的な反射波長が見られ、それぞれプルシアンブルー、酸化鉄、シリコンナノ粒子の本来の色とよく一致していた。可視光を強く反射および吸収することで、可視領域での不透明度(1-鏡面透過率と定義される)は80%超となった。さらに、赤外線領域では、着色された複合体は全て約80%の高い透過率を示し、体の放射熱を環境中に透過させて放射冷却効果を実現することができた。
【0127】
着色ポリエチレン複合体は、ハイスループットの溶融紡糸機を用いて糸に押し出された。顔料ナノ粒子は繊維内に均一に埋め込まれていた。機械的強度テストの結果、着色ポリエチレン複合体の糸は、通常の衣類生地に使用されている綿糸と同等の、約1.9N~約2.8Nの最大引張力に耐えることができた。
【0128】
この糸の機械的強度を利用して、通気性、柔軟性、機械的強度に優れた大型の交絡編み物を編むことがさらにできた。編み目を入れた着色ポリエチレン複合生地の赤外線透過率は約80%で、平面状の固体膜と同程度の透過率を維持した。
【0129】
さらに、着色ポリエチレン生地の安定性および耐久性を、誘導結合プラズマ質量分光解析を用いて、洗濯の前後で水中のFe、K、Siの濃度を測定して評価した。イオン濃度の変化は無視できる程度であったことので、プルシアンブルー、酸化鉄、シリコンナノ粒子がポリエチレンポリママトリクスにしっかりと包まれていることが確認された。これにより、洗濯を繰り返しても、顔料ナノ粒子が水中に放出されることなく、元の色を維持することができる。
【0130】
最後に、着色ポリエチレン繊維製品の熱性能を評価した。皮膚の発熱を模擬するためにゴム製の断熱フレキシブルヒータを使用し、異なる繊維製品サンプルで覆った場合の皮膚の温度応答を記録した。セットアップ全体はチャンバ内に収められ、チャンバ内の周囲の空気温度は25℃で一定に保たれた。人体の代謝熱生成率に相当する80W/m2の加熱電力密度では、皮膚ヒータの温度は33.5℃でした。皮膚ヒータを通常の綿の繊維製品で覆うと、温度は36.5℃まで上昇した。PB-PE、Fe2O3-PE、Si-PE繊維製品で覆った場合、皮膚温度は34.7~34.9℃の範囲で測定され、綿に比べて1.6~1.8℃も受動的に人体を冷却できるという生地の性能が証明された。この冷却効果は、着色していないナノポーラスポリエチレンと同様であり、赤外線透過性顔料ナノ粒子を放射性繊維製品の着色に使用することの有効性がさらに確認された。
【0131】
[本開示の態様]
態様1.ポリオレフィン繊維と、上記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含む外層であって、上記外層は、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%以上である、外層と、多孔質ポリオレフィン膜の内表面に多孔質金属膜を含む中間層であって、上記多孔質ポリオレフィン膜が外層の内表面に結合し、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であり、上記多孔質金属膜の波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%である、中間層と、上記多孔質金属膜の内表面に結合された内層であって、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地を含む、内層とを備える、衣類生地であって、上記粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有し、粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含み、上記多孔質金属膜が、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を含む衣類生地。
【0132】
態様2.上記中間層は、上記多孔質ポリオレフィン膜の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲である、態様1に記載の衣類生地。
【0133】
態様3.上記粒子状充填材は、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンの少なくとも1つを含む、態様2に記載の衣類生地。
【0134】
態様4.上記多孔質金属膜は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびそれらの合金からなる群から選択される金属を含む、態様3に記載の衣類生地。
【0135】
態様5.上記多孔質ポリオレフィン膜は、5μm~500μmの範囲の厚さを有する、態様4に記載の衣類生地。
【0136】
態様6.上記多孔質金属膜は、10nm~800nmの範囲の厚さを有する、態様5に記載の衣類生地。
【0137】
態様7.上記内層は、不繊維製品、織物、編み物、かぎ針編み物、フェルト編み物、または編み込み物であり、上記外層が、不繊維製品、織物、編み物、かぎ針編み物、フェルト編み物、または編み込み物である、態様6に記載の衣類生地。
【0138】
態様8.上記ポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%である、態様7に記載の衣類生地。
【0139】
態様9.上記多孔質ポリオレフィン膜は、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を含む、態様8に記載の衣類生地。
【0140】
態様10.上記多孔質ポリオレフィン膜内の細孔の体積割合が少なくとも5%である、態様9に記載の衣類生地。
【0141】
態様11.上記多孔質金属膜は、インターコネクトメッシュ構造を有する、態様10に記載の衣類生地。
【0142】
態様12.上記衣類生地は、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有する、態様11に記載の衣類生地。
【0143】
態様13.上記衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%である、態様12に記載の衣類生地。
【0144】
態様14.上記外層は、50μm~約800μmの範囲にある厚さを有する、態様13に記載の衣類生地。
【0145】
態様15.上記粒子状充填材が、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する、態様14に記載の衣類生地。
【0146】
態様16.ポリオレフィン繊維と、上記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含む第1の層であって、上記第1の層は、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%である、第1の層と、第1の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に上記第1の多孔質金属膜を有する第2の層であって、上記第1の多孔質ポリオレフィン膜は、上記第1の層の内表面に結合されており、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%であり、上記第1の多孔質金属膜は、9.5μmの波長における赤外線の反射率が少なくとも40%である、第2の層、上記第1の多孔質金属膜の内表面に結合された第3の層であって、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地を含む、第3の層と、第2の多孔質ポリオレフィン膜の外表面に第2の多孔質金属膜を有する第4の層であって、上記第2の多孔質金属膜が上記第3の層の内表面にさらに結合され、9.5μmの波長の赤外線の反射率が少なくとも40%であり、上記第2の多孔質ポリオレフィン膜が9.5μmの波長の赤外線透過率が少なくとも38%である、第4の層と、上記第2の多孔質ポリオレフィン膜の内表面に結合された第5の層であって、上記第5の層がポリオレフィン繊維および上記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材を含み、9.5μmの波長における赤外線透過率が少なくとも38%である、第5の層とを備える、衣類生地。
【0147】
態様17.上記第2の層は、上記第1の多孔質ポリオレフィン膜の外表面における波長9.5μmの赤外線放射の放射率が5%~60%の範囲である、態様16に記載の衣類生地。
【0148】
態様18.上記第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含む、態様17に記載の衣類生地。
【0149】
態様19.上記第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含む、態様18に記載の衣類生地。
【0150】
態様20.上記第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択された金属を含む、態様19に記載の衣類生地。
【0151】
態様21.第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれが、5μm~500μmの範囲の厚さを有する、態様20に記載の衣類生地。
【0152】
態様22.上記第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、10nm~800nmの範囲の厚さを有する、態様21に記載の衣類生地。
【0153】
態様23.第1の層、第3の層、および第5の層のそれぞれが、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物である、態様22の衣類生地。
【0154】
態様24.第1の層および第5の層のそれぞれに含まれる上記粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有する、態様23に記載の衣類生地。
【0155】
態様25.第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有する、態様24の衣類生地。
【0156】
態様26.第1の層および第5の層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%である、態様25に記載の衣類生地。
【0157】
態様27.第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれが、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有する、態様26の衣類生地。
【0158】
態様28.第1および第2の多孔質ポリオレフィン膜のそれぞれの中の細孔の体積割合が少なくとも5%である、態様27の衣類生地。
【0159】
態様29.第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、インターコネクトメッシュ構造を有する、態様28に記載の衣類生地。
【0160】
態様30.上記衣類生地が、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有する、態様29の衣類生地。
【0161】
態様31.上記衣類生地が、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%である、態様30の衣類生地。
【0162】
態様32.第1の層および第5の層のそれぞれが、50μm~800μmの範囲の厚さを有する、態様31の衣類生地。
【0163】
態様33.上記第1の層および上記第5の層のそれぞれに含まれる粒子状充填材が、赤、橙、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する、態様32の衣類生地。
【0164】
態様34.ポリオレフィン層の内表面に多孔質金属膜を含む外層であって、上記ポリオレフィン層は、ポリオレフィン繊維と、上記ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とを含み、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であり、上記多孔質金属膜は、波長9.5μmの赤外線反射率が少なくとも40%である、外層と、上記多孔質金属膜の内表面に結合する内層であって、上記内層は、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地を含む、内層とを備える、衣類生地であって、上記粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有し、粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含み、上記多孔質金属膜が、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を含む、衣類生地。
【0165】
態様35.上記外層が、ポリオレフィン層の外表面における波長9.5μmの赤外線の放射率が5%~60%の範囲である、態様34の衣類生地。
【0166】
態様36.上記粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含む、態様35に記載の衣類生地。
【0167】
態様37.上記多孔質金属膜が、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択される金属を含む、態様36の衣類生地。
【0168】
態様38.上記多孔質金属膜は、10nm~800nmの範囲の厚さを有する、態様37の衣類生地。
【0169】
態様39.内層と外層とのそれぞれが、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物である、態様38の衣類生地。
【0170】
態様40.
上記ポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%である、態様39に記載の衣類生地。
【0171】
態様41.上記多孔質金属膜は、インターコネクトメッシュ構造を有する、態様40に記載の衣類生地。
【0172】
態様42.上記衣類生地が、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有する、態様41の衣類生地。
【0173】
態様43.上記衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%である、態様42に記載の衣類生地。
【0174】
態様44.上記ポリオレフィン層が、50μm~800μmの範囲の厚さを有する、態様43の衣類生地。
【0175】
態様45.上記粒子状充填材が、赤、オレンジ、黄、緑、青、紫、黒、および白からなる群から選択される少なくとも1つの可視色を反射する、態様44に記載の衣類生地。
【0176】
態様46.第1のポリオレフィン層の内表面に第1の多孔質金属膜を有する外層と、第1のポリオレフィン層がポリオレフィン繊維と上記ポリオレフィン繊維中に分散された粒子状充填材からなり、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%であり、第1の多孔質金属膜が波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%である中間層と、第1の多孔質金属膜の内表面に結合された中間層と、を含む衣類生地であって、第1の多孔質金属膜の内表面に結合された中間層であって、綿、ポリエステル、シルク、ウール、ダウン、レーヨン、麻、ナイロン、ヘンプ、およびこれらの混合物からなる群から選択された生地からなる中間層と、第2のポリオレフィン層の外表面に設けられた第2の多孔質金属膜からなる内層であって、上記第2の多孔質金属膜は、上記中間層の内表面にさらに結合されており、波長9.5μmの赤外線の反射率が少なくとも40%以上であり、上記第2のポリオレフィン層は、ポリオレフィン繊維と、ポリオレフィン繊維内に分散された粒子状充填材とからなり、波長9.5μmの赤外線透過率が少なくとも38%である、衣類生地。
【0177】
態様47.上記外層が、第1のポリオレフィン層の外表面における波長9.5μmの赤外線の放射率が5%~60%の範囲である、態様46の衣類生地。
【0178】
態様48.上記外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材が、メタロイド、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物、または金属シアン化物のうちの少なくとも1つを含む、態様47の衣類生地。
【0179】
態様49.上記外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材が、酸化亜鉛、フェロシアン化第二鉄、酸化鉄、またはシリコンのうちの少なくとも1つを含む、態様48に記載の衣類生地。
【0180】
態様50.上記第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、金、チタン、タングステン、モリブデン、およびこれらの合金からなる群から選択された金属を含む、態様49に記載の衣類生地。
【0181】
態様51.上記第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、10nm~800nmの範囲の厚さを有する、態様50に記載の衣類生地。
【0182】
態様52.第1のポリオレフィン層、中間層、および第2のポリオレフィン層のそれぞれが、不繊維製品、織物、編物、かぎ針編み物、フェルト、または編み込み物である、態様51の衣類生地。
【0183】
態様53.第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、10nm~4,000nmの範囲の平均孔径を有する細孔を有する、態様52の衣類生地。
【0184】
態様54.外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材の重量割合が、少なくとも0.10%である、態様53の衣類生地。
【0185】
態様55.上記外層および内層のそれぞれに含まれる粒子状充填材が、10nm~4,000nmの範囲の平均粒径を有する、態様54の衣類生地。
【0186】
態様56.第1および第2の多孔質金属膜のそれぞれが、インターコネクトメッシュ構造を有する、態様55に記載の衣類生地。
【0187】
態様57.上記衣類生地が、少なくとも0.005g/cm2/時間の水蒸気透過率を有する、態様56の衣類生地。
【0188】
対応58.上記衣類生地は、400nm~700nmの波長範囲の可視光に対する不透明度が少なくとも40%である、態様57に記載の衣類生地。
【0189】
態様59.第1のポリオレフィン層および第2のポリオレフィン層のそれぞれが、50μm~800μmの範囲の厚さを有する、態様58の衣類生地。
【0190】
態様60.上記外層および内層のそれぞれにおけるポリオレフィン繊維内の粒子状充填材が、可視色を反射する、態様59の衣類生地。
【0191】
本発明を、現在の好ましい実施形態のみを参照して詳細に説明した。当業者であれば、本発明から逸脱することなく様々な変更が可能であることを理解できるであろう。したがって、本発明は、以下の請求項によってのみ定義される。
【国際調査報告】