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特表2022-533566半導体材料を処理するための方法及び光学系
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】半導体材料を処理するための方法及び光学系
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
H01L21/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566325
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020061677
(87)【国際公開番号】W WO2020225016
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】102019112141.8
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520220951
【氏名又は名称】イノバベント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ゲブルト
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ユルゲン カーラート
【テーマコード(参考)】
5F152
【Fターム(参考)】
5F152CE05
5F152EE02
5F152FF05
5F152FG03
5F152FG05
5F152FG22
5F152FG23
5F152FH03
(57)【要約】
半導体材料層を処理、特に結晶半導体層を生成するための方法及び光学系が開示される。第1のレーザーパルス76を持つ第1のレーザービーム74及び第2のレーザーパルス86を持つ第2のレーザービーム84を用意し、第1のレーザーパルス76及び第2のレーザーパルス86をビーム成形装置を用いて短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形し、結像装置を用いて半導体材料層上に短軸及び長軸を有する照射ラインとして結像する。さらに、第1のレーザーパルス76の偏光方向を照射ライン36の短軸方向に調整し、第2のレーザーパルス86の偏光方向を照射ラインの長軸方向に調整し、第2のレーザーパルス86を第1のレーザーパルス76に対して所定の時間間隔Δtだけ時間遅延させ、時間間隔Δtは半導体材料層上に結像された照射ラインが第1の最大値M1及び第2の最大値M2を持つパルスの形態の合成時間強度曲線96を有するように選択される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料層を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための方法であって、
第1のレーザーパルス(76)を持つ第1のレーザービーム(74)及び第2のレーザーパルス(86)を持つ第2のレーザービーム(84)を用意するステップと、
前記第1のレーザーパルス(76)及び前記第2のレーザーパルス(86)を、ビーム成形装置を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するステップと、
こうして成形された線状のレーザーパルスを、結像装置(34)を用いて、短軸及び長軸を有する照射ライン(36)として半導体材料層(12)上に結像するステップと、を有し、
さらに、前記方法は、
前記第1のレーザーパルス(76)の偏光方向を前記照射ライン(36)の短軸方向に調整するステップと、
前記第2のレーザーパルス(86)の偏光方向を前記照射ライン(36)の長軸方向に調整するステップと、
前記第2のレーザーパルス(86)を前記第1のレーザーパルス(76)に対して所定の時間間隔Δtだけ時間遅延させるステップと、を有し、前記時間間隔Δtは前記半導体材料層(12)上に結像された前記照射ライン(36)が第1の最大値(M1)及び第2の最大値(M2)を持つパルスの形態の合成時間強度曲線(96)を有するように選択されている方法。
【請求項2】
前記照射ライン(36)を前記半導体材料層(12)に対して相対的に送り方向に動かすことを含み、前記第1のレーザーパルス(76)は送り方向で直線偏光されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のレーザーパルス(76)と前記第2のレーザーパルス(86)の相対強度は、前記合成時間強度曲線(96)における前記第1の最大値(M1)と前記第2の最大値(M2)の比が、0.8~1.4の範囲、特に0.9~1.2の範囲にあり、特に1.0である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射ライン(36)の前記合成時間強度曲線(96)は、前記合成時間強度曲線の前記第1の最大値を基準として40~50nsの時間半値幅(102)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1のレーザー(66)及び第2のレーザー(70)を用意することを含み、前記第1のレーザー(66)及び前記第2のレーザー(70)は、それぞれ前記第1のレーザービーム(74)及び前記第2のレーザービーム(84)を放出するように設計され、前記第2のレーザーパルス(86)が前記第1のレーザーパルス(76)に対して時間間隔Δtだけ遅延して放出されるように制御される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パルスを持つレーザービーム(52)を提供するように設計された第1のレーザーを用意することと、
前記レーザービーム(52)を第1のレーザービーム部分(58)と第2のレーザービーム部分(60)に分割することと、を含み、前記第1のレーザービーム部分(58)は前記第1のレーザーパルス(76)を備えた前記第1のレーザービーム(74)を形成し、前記第2のレーザービーム部分(60)は前記第2のレーザーパルス(86)を備えた前記第2のレーザービーム(84)を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のレーザービーム部分(60)のビーム分割の位置から前記半導体材料層(12)までの光路長は、前記第1のレーザービーム部分(58)のビーム分割の位置から前記半導体材料層(12)までの光路長よりも大きい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のレーザーパルス(76)は、前記第1のレーザービーム(74)の複数の第1のレーザーパルスの内の1つのレーザーパルスであり、前記第2のレーザーパルス(86)は、前記第2のレーザービーム(84)の複数の第2のレーザーパルスのうちの1つのレーザーパルスであり、パルス化された第2のレーザービーム(84)の複数のレーザーパルスの各々は、パルス化された前記第1のレーザービーム(74)の他の複数のレーザーパルスに対してそれぞれ所定の時間間隔Δtだけ時間遅延されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
送り速度、前記第1のレーザービーム(74)及び前記第2のレーザービーム(84)のパルス繰り返し周波数、並びに短軸方向における前記照射ライン(36)の幾何学的半値幅(36)は、前記半導体材料層(12)の箇所が前記照射ライン(36)によって数回露光されるように選択される、請求項2から7のいずれか一項を参照して請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第3のレーザーパルス(80)を有する第3のレーザービーム(78)及び第4のレーザーパルス(90)を有する第4のレーザービーム(88)を用意するステップと、
第1のレーザーパルス(76)、第2のレーザーパルス(86)、前記第3のレーザーパルス(80)、及び前記第4のレーザーパルス(90)を、ビーム成形装置を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するステップと、
こうして成形された線状のレーザーパルスを、結像装置(36)を用いて、短軸及び長軸を有する照射ライン(36)として半導体材料層(12)上に結像するステップと、を有し、
さらに、
前記第3のレーザーパルス(80)の偏光方向を前記照射ライン(36)の短軸方向に調整するステップと、
前記第4のレーザーパルス(90)の偏光方向を前記照射ライン(36)の長軸方向に調整するステップと、
前記第4のレーザーパルス(90)を前記第3のレーザーパルス(80)に対して所定の時間間隔Δtだけ時間遅延させるステップと、を有し、前記時間間隔Δtは前記半導体材料層(12)上に結像された前記照射ライン(26)が第1の最大値(M1)及び第2の最大値(M2)を持つパルスの形態の合成時間強度曲線(96)を有するように選択されている方法。
【請求項11】
半導体材料層(12)を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための光学系(30)であって、
第1のレーザービーム(74、38)の第1のレーザーパルス(76)及び第2のレーザービーム(84、40)の第2のレーザーパルス(86)を、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するように設定されたビーム成形装置(32)と、
こうして成形された線状のレーザーパルスを、短軸及び長軸を有する照射ライン(36)として前記半導体材料層(12)上に結像するように設定された結像装置(34)と、を含み、
さらに、前記光学系(30)は、
前記第1のレーザーパルス(76)の偏光方向を前記照射ライン(36)の短軸方向に位置合わせし、前記第2のレーザーパルス(86)の偏光方向を前記照射ライン(36)の長軸方向に位置合わせするように設定及び配置された偏光装置(50)と、
前記第2のレーザーパルス(86)を前記第1のレーザーパルス(76)に対して所定の時間間隔Δtだけ遅延させるように設定された遅延装置(94)と、を含み、前記時間間隔Δtは前記半導体材料層(12)上に結像された前記照射ライン(26)が第1の最大値(M1)及び第2の最大値(M2)を持つパルスの形態の合成時間強度曲線(96)を有するように選択されている光学系(30)。
【請求項12】
前記偏光装置は、
第1のλ/2板(50)を含み、前記第1のλ/2板(50)は、前記第1のレーザービーム(74、38)のビーム経路内に、特に前記ビーム成形装置(32)の前に配置され、λ/2板(50)に当たる前記第1のレーザーパルス(76)に対して、前記第1のレーザーパルス(76)がλ/2板(50)を通過した後で短軸方向に直線偏光されるように向けられ、
第2のλ/2板(50)を含み、前記第2のλ/2板(50)は、前記第2のレーザービーム(84、40)のビーム経路内に、特に前記ビーム成形装置(32)の前に配置され、λ/2板(50)に当たる前記第2のレーザーパルス(86)に対して、前記第2のレーザーパルス(86)がλ/2板(50)を通過した後に短軸方向に直線偏光されているように向けられている、請求項11に記載の光学系(30)。
【請求項13】
前記遅延装置は、遅延回路(94)を含んでおり、前記遅延回路(94)は、前記第2のレーザーパルス(86)を持つ前記第2のレーザービーム(84、40)を第1のレーザー(66)のトリガ信号(82)に対して時間間隔Δtだけ遅延させるように設定されたトリガ信号(92)を発し、前記第1のレーザー(66)は前記第1のレーザーパルス(76)を持つ前記第1のレーザービーム(74)を放出するように設定されている、請求項11又は12に記載の光学系(30)。
【請求項14】
前記遅延装置は、前記第2のレーザービーム(84、40)の前記半導体材料層(12)の画像面までの光路長を、前記第1のレーザービーム(74、38)の前記半導体材料層(12)の画像面までの光路長より大きくするビーム迂回路(Δs)を含む、請求項11又は12に記載の光学系(30)。
【請求項15】
前記ビーム成形装置(32)は、前記第1のレーザービーム(74)の前記第1のレーザーパルス(76)、前記第2のレーザービーム(84)の前記第2のレーザーパルス(86)、第3のレーザービーム(78)の第3のレーザーパルス(80)、及び第4のレーザービーム(88)の第4のレーザーパルス(90)を、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するように設定され、
前記結像装置(34)は、こうして成形された線状のレーザーパルスを、短軸及び長軸を有する前記照射ライン(36)として前記半導体材料層(12)上に結像するように設定され、
前記偏光装置(50)は、前記第3のレーザーパルス(80)の偏光方向を前記照射ライン(36)の短軸方向に位置合わせし、前記第4のレーザーパルスの偏光方向(90)を前記照射ライン(36)の長軸方向に位置合わせするように設定及び配置され、
前記遅延装置(94)は、前記第4のレーザーパルス(80)を前記第3のレーザーパルス(80)に対して所定の時間間隔Δtだけ遅延させるように設定され、前記時間間隔Δtは前記半導体材料層(12)上に結像された前記照射ライン(36)が前記第1の最大値(M1)及び前記第2の最大値(M2)を持つパルスの形態の前記合成時間強度曲線(96)を有するように選択されている、請求項11から14のいずれか一項に記載の光学系(30)。
【請求項16】
前記半導体材料層(12)を処理するための、特に結晶半導体層を生成するためのシステムであって、
請求項11から15のいずれか一項に記載の光学系(30)を含み、前記システムは、前記半導体材料層(12)を前記照射ライン(36)に対して相対的に送り方向に動かすように設計され、ここで送り方向は前記照射ライン(36)の短軸方向に対応しているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体材料を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための方法、及び半導体材料を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄膜トランジスタ(英語:Thin Film Transistor、略称:TFT)を製造するための薄膜層の結晶化にレーザーが使用される。処理される半導体として、シリコン(略称:Si)、より正確にはアモルファスシリコン(略称:a-Si)が使用される。半導体層の厚さは例えば50nmであり、これは典型的には基板、例えばガラス基板、又はその他の支持体上にある。
【0003】
この層は、レーザーの光、例えばパルス固体レーザーで照射される。例えば343nmの波長を有する光が照射ラインに成形されて、半導体材料の画像面上に結像される。この照射ラインは短い(狭い)軸と均質な長いビーム軸を有する。短い若しくは狭い軸はガウス強度分布又は平坦な強度分布を有する。
【0004】
照射ラインは、通常約5~50mm/sの送り速度で半導体層上を短軸方向に移動する。光線の電力密度(連続波レーザーの場合)又はパルスエネルギー密度(パルスレーザーの場合)は、例えばアモルファスシリコンの場合、シリコンが部分的に溶融し、続いて溶融したシリコンがガラス基板上の溶融していない固体シリコンから始まり結晶構造に固化するように調整される。この溶融と固化は通常10~100nsの時間スケールで行われ、それに続くフィルムの室温下での冷却は通常数100μsかかる。
【0005】
アモルファスシリコンからなる層を照射して多結晶シリコンからなる層に変換する場合は、特に照射ラインの均一な強度、即ち短軸及び/又は長軸に沿って積分された空間強度分布の均質性が重要である。照射ラインの強度分布が均質若しくは均一であるほど、薄膜層の結晶構造(例えば多結晶層の粒径)は均質若しくは均一であり、例えば薄膜トランジスタなどの薄膜層から形成された最終製品は良好である。均質な結晶構造は、例えば、電子と正電荷の正孔の高い移動度により、高い導電率を生じさせる。
【0006】
照射ラインが半導体層上で短軸方向に移動すると、特に長いビーム軸に沿って、並びにそれと垂直に短いビーム軸に沿って不均一性が生じることがある。これらの不均一性は「ムラ」と呼ばれる。いわゆる「走査ムラ」は、ビーム軸に沿った不均一性に原因があり、走査方向又は送り方向に延びる縞状の不均質性として発生する。これに垂直に、いわゆる「ショットムラ」が発生するが、これらはパルス間の強度とエネルギー密度の変動に起因する。
【0007】
「ショットムラ」をできるだけ小さくするためには、レーザーパルス間のエネルギー密度や時間強度曲線の変動は、例えばパルス安定性が非常に良好なレーザーを使用し、複数のレーザー源のレーザービームを重ね合わせることによって可能な限り小さくする必要がある。「走査ムラ」をできるだけ小さくするためには、照射ラインの強度は長軸に沿ってできるだけ均質にする必要がある。さらに、走査中に、回転軸を中心に振動するミラーの助けを借りて、照射ラインを10Hz~200Hzの周波数で1mm~2mm前後に動かして、長軸に沿って発生した不均質な部分を「塗りつぶす」ことによって、「走査ムラ」を減らすことも知られている。
【0008】
さらに、いわゆる「窒素ムラ」が知られているが、その原因は、照射中に、基板露光面、つまり処理される材料層、例えば半導体層の表面に窒素を流し、そこでの酸素濃度を10ppm~20ppmの値まで低下させて、シリコンなどの材料の酸化を防止することにある。この目的のために、露光すべき材料層の上に直接層状の窒素層流を通す。その際に層流内の不均一性が、結晶構造中の不均一性、いわゆる「窒素ムラ」を招くことがある。
【0009】
結晶化の際に規則的な多結晶構造を生成するために、表面干渉効果を利用することが知られている。この効果により露光中に調節された強度分布が生じ、送り中に繰り返し露光することにより粒子構造がほぼ光の波長の大きさに伴って強化される。この効果は「レーザー誘起周期的表面構造」(略称:LIPPS)と呼ばれる。例えば波長が343nmの場合、約0.3μm~0.4μmの粒子構造が生じる。直線偏光の場合、調節された強度分布は偏光の方向、即ち電界ベクトルの方向にのみ形成され得る。実験研究の結果、長いビーム軸に沿って規則的な構造が形成されるのは、光が長軸で偏光された場合であることが示された。同様に、光が送り方向に偏光されていると、その効果は送り方向で観察できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、半導体材料を処理するための改良された方法、特に均一に結晶化した半導体層を製造するための方法を提供する。本発明はさらに、半導体材料を処理するための改良された装置、特に均一に結晶化した半導体層を製造するための装置を提供する。ここで、均一に結晶化した半導体層とは、特に結晶粒径が均一な半導体層である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の特徴を有する方法、及び請求項11の特徴を有する光学系が提供される。
【0012】
次のステップを含む、半導体材料層を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための方法が開示される。
第1のレーザーパルスを持つ第1のレーザービーム及び第2のレーザーパルスを持つ第2のレーザービームを用意し、
第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスを、ビーム成形装置を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形し、
こうして成形された線状のレーザーパルスを、結像装置を用いて、半導体材料層上に短軸及び長軸を有する照射ラインとして結像し、
第1のレーザーパルスの偏光方向を照射ラインの短軸方向に調整し、
第2のレーザーパルスの偏光方向を照射ラインの長軸方向に調整し、
第2のレーザーパルスを第1のレーザーパルスに対して所定の時間間隔Δtだけ時間遅延させ、この時間間隔Δtは半導体材料層上に結像された照射ラインが第1の最大値及び第2の最大値を持つパルスの形態の合成時間強度曲線を有するように選択されている。
【0013】
ここで、上記の方法ステップの順序は、ステップが実行される時間的順序を表していない。典型的には、例えばビーム経路における偏光方向の調整は、個々のビーム、即ち第1のレーザービームと第2のレーザービームが分離されているところで行われる。個々のビームの成形、均質化及び重ね合わせは、必ず第1のレーザービーム及び第2のレーザービームが用意された後に行われる。時間遅延のステップは、第1のレーザービームと第2のレーザービームの偏光の位置合わせの前又は後に行うことができる。しかし原則として上記のステップの時間的順序は異なることもある。
【0014】
処理される半導体材料は、ガラス基板などの支持体に塗布された、例えば、厚み約50nmのアモルファスシリコンを有する薄層であってよい。
【0015】
第1のレーザービーム及び第2のレーザービームは、後で詳細に説明されるように、少なくとも1つのレーザーによって用意される。レーザーは、例えば波長343nmの光を放出する固体UVレーザーであってよい。第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスの典型的な時間半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)は、15ns~20nsである。ここで、第1のレーザービーム及び第2のレーザービームは、典型的には直線偏光されている。
【0016】
別の方法ステップでは、第1のパルス及び第2のパルスの偏光は、例えば偏光装置を用いて、それぞれ事前に定義された特定の方向に調整される。このように、第1のレーザーパルスは照射ラインの短軸方向に直線偏光され、第2のレーザーパルスは照射ラインの長軸方向に直線偏光される。固体レーザーによって放出されるパルスは、典型的には直線偏光されている。放出されたパルスが直線偏光されている場合、開示された方法に従って放出された第1のパルス及び第2のパルスの偏光方向は、事前に規定された特定の方向に回転する。これはλ/2板に当たるビーム又はパルスに対して相応の向きを持つλ/2板などの偏光装置を用いて行うことができる。具体的には、第1のパルスの偏光方向は、後でより詳しく説明する短軸方向に回転する。したがって第1のパルスの偏光は短軸方向に位置合わせされて、偏光がほぼ専ら短軸方向に位置合わせされているように、例えば短軸に対して垂直な方向に直線偏光された光の割合が1%(偏光比100:1)であるか、又は例えば偏光比が95:5となるようにする。第2のパルスの偏光方向は、後でより詳しく説明する、短軸に対して垂直な長軸方向に回転する。したがって第2のパルスの偏光は短軸方向に位置合わせされて、偏光がほぼ専ら長軸方向に位置合わせされているように、例えば長軸に対して垂直な方向に直線偏光された光の割合が1%(偏光比100:1)であるか、又は例えば偏光比が95:5となるようにする。
【0017】
さらに、第2のパルスは第1のパルスに対して所定の時間間隔Δtだけ遅延される。典型的な時間的な遅延時間は5ns~20nsである。ごく一般的に時間間隔Δtは、後でより詳しく説明される照射ラインが半導体材料層上に結像される際に、両パルスが単一のパルスに時間的に重ね合わされるように選択される。この時間的な重ね合わせの結果、第1の最大値及び第2の最大値を持つ合成強度曲線が生じる。
【0018】
別の方法ステップで、第1のパルス及び第2のパルスは、ビーム成形装置を用いて、レーザーライン、即ち線状のレーザーパルスに成形される。ビーム成形装置はアナモルフィック光学系を形成できる。アナモルフィック光学系は、例えば、レンズアレイホモジナイザーを有してよいが、これは入射レーザービームを多くの部分ビームに分解してから空間的に重ね合わせるという原理に基づいている。レーザーラインは短軸及び長軸を有する。
【0019】
こうして形成されたレーザーラインは、結像装置によって半導体材料の画像面上に照射ラインとして結像される。この照射ラインも同様に短軸及び長軸を有し、それらの方向が第1のパルス及び第2のパルスの偏光を指定する。典型的には、照射ラインの短軸及び長軸方向は、線状のレーザーパルスの短軸及び長軸方向と合致する。照射ラインの長さ、つまり長軸方向における幾何学的延長は、典型的には100mm~1000mm、例えば100mm、250mm、750mm又は1000mmである。照射ラインの長さは、ビーム成形装置及び/又は結像装置が相応に設計されていれば、これより長くすることもできる。照射ラインの幅、つまり短軸方向における幾何学的延長は、ガウス分布の半値幅(FWHM)として示され、典型的に20μm~200μmである。平坦な分布では、幅は強度90%(「全幅の90%」)で測定され、典型的に20μm~200μmである。
【0020】
別の方法ステップでは、照射ラインは半導体材料層に対して相対的に送り方向に移動できる。次いで、送り方向が短軸方向に対応しているため、第1のパルスは送り方向に直線偏光されている。照射ラインが半導体材料層を擦過することにより、半導体材料層全体又は少なくとも半導体材料層のより大きい範囲を露光し、それによって処理することができる。半導体材料を載せた支持体は、例えば送り方向に移動するテーブル上に配置されて、照射ラインに対して相対的に可動させることができる。典型的な送り速度は5mm/s~50mm/sである。
【0021】
別の態様によれば、第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスの相対強度は、合成時間強度曲線における第1の最大値と第2の最大値の比が0.8~1.4の範囲、特に0.9~1.2の範囲にあるように、特に1.0となるように選択することができる。合成時間強度曲線は第1のパルスと第2のパルスの時間強度曲線の重ね合わせによって生じるため、合成時間強度曲線における第1の最大値と第2の最大値の比は、第1のパルスと第2のパルスの強度によって時間間隔Δtを考慮して調整できる。上述したように第1のパルス及び第2のパルスの定義された偏光方向と組み合わせると、上記の第1の最大値と第2の最大値の比の範囲に対して、形成された(多)結晶半導体層に特に均質な粒子構造が生じたことが明らかになった。
【0022】
照射ラインの合成時間強度曲線は、合成時間強度曲線の第1の最大値を基準として40~50nsの時間半値幅を持つことができる。比較的長いパルス持続時間によって、結晶化プロセスは数10nsにわたって影響され、均一な粒子構造の形成が促進される。
【0023】
別の態様によれば、それぞれ第1のレーザービーム及び第2のレーザービームを放出するように設計された第1のレーザー及び第2のレーザーが用意され、第2のレーザーパルスが第1のレーザーパルスに対して時間間隔Δtだけ遅延して放出されるように制御される。遅延は、例えば第1のレーザーのトリガ信号に対して第2のレーザーのトリガ信号を電子的に遅延させることによって達成できる。
【0024】
この代替として、パルスを持つレーザービームを提供するように設計された第1のレーザーを用意すること、及び第1のレーザーのレーザービームが第1のレーザービーム部分と第2のレーザービーム部分に分割され、第1のレーザービーム部分は第1のレーザーパルスを持つ第1のレーザービームを形成し、第2のレーザービーム部分は第2のレーザーパルスを持つ第2のレーザービームを形成することが提供される。したがってこの代替例では、パルスモードで駆動されるレーザーが用意され、その放出されたレーザービームがビームスプリッターによって第1のレーザービームと第2のレーザービームに分割される。
【0025】
この代替例において、第1のパルスに対する第2のパルスの時間遅延は、第2のレーザービームのビーム分割の位置から半導体材料の画像面までの光路長が、第1のレーザービームのビーム分割の位置から半導体材料の画像面までの光路長よりも大きいことによって達成され、その結果として第2のパルスに対する第1のパルスの位相シフトが生じる。
【0026】
原理的には2つのレーザーを有する変形例においても、第1のパルスに対する第2のパルスの時間遅延が第2のパルスの光路長の方が大きいことによって提供されることはもちろん可能である。
【0027】
別の態様によれば、第1のレーザーパルスは、第1のレーザービームの複数の第1のレーザーパルスのうちの1つのレーザーパルスであり、第2のレーザーパルスは、第2のレーザービームの複数の第2のレーザーパルスのうちの1つのレーザーパルスであってよく、パルス化された第2のレーザービームの複数のレーザーパルスの各々は、パルス化された第1のレーザービームの複数のレーザーパルスの各々に対してそれぞれ所定の時間間隔Δtだけ時間遅延されている。したがってレーザーはパルス駆動されて、複数のレーザーパルスを特定のパルス繰り返し周波数、例えば10kHzで放出する。この場合、第2のレーザービームのレーザーパルスは第1のレーザーパルスに対して時間遅延されて、常に第1のレーザーパルスと第2のレーザーパルスが重ね合わされて第1の最大値及び第2の最大値を持つパルスの形態の照射ラインとして半導体材料上で結像されるようにされる。換言すれば、半導体材料は、レーザーのパルス繰り返し周波数でパルス化されて照射ラインで露光される。
【0028】
ここで、送り速度、第1のレーザービーム及び第2のレーザービームのパルス繰り返し周波数、及び照射ラインの短軸方向における幾何学的半値幅は、半導体材料の箇所が照射ラインによって数回露光されるように選択することができる。換言すれば、半導体材料は照射ラインに対してそのようにゆっくり移動し、短軸方向における照射ラインの幾何学的半値幅が非常に大きいため、レーザービームのパルス繰り返し周波数若しくはパルス繰り返し周波数の倍数に相当する時間の後で、半導体材料はごく小さい距離を移動しており、そのため前に露光された箇所が再度若しくは複数回露光される。
【0029】
開示された方法の別の態様によれば、第3のレーザーパルスを持つ第3のレーザービーム及び第4のレーザーパルスを持つ第4のレーザービームが用意され、第1のレーザーパルス、第2のレーザーパルス、第3のレーザーパルス、及び第4のレーザーパルスは、ビーム成形装置を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形され、こうして成形された線状のレーザーパルスが、結像装置を用いて、照射ラインとして半導体材料層の画面上に結像される。さらに、第3のレーザーパルスの偏光方向は照射ラインの短軸方向に調整され、第4のレーザーパルスの偏光方向は照射ラインの長軸方向に調整され、第4のレーザーパルスが第3のレーザーパルスに対して所定の時間間隔Δtだけ時間遅延され、この時間間隔Δtは半導体材料層上に結像された照射ラインが第1の最大値及び第2の最大値を持つパルスの形態の合成時間強度曲線を有するように選択されている。
【0030】
したがって本方法のこの態様によれば、4本のレーザービームは均一に重ね合わされて結像され、4本のレーザービームのうちそれぞれ2本のレーザービームは、それぞれ照射ラインの短軸方向に直線偏光されたパルスを持ち、時間同期されており、4本のレーザービームのうち他の2本のレーザービームは、それぞれ照射ラインの長軸方向に直線偏光されたパルスを持ち、これらのパルスは最初の2本のレーザービームのパルスに対して時間遅延されている。
【0031】
本開示の別の態様により、半導体材料層を処理するための、特に結晶半導体層を生成するための光学系が提供され、この光学系は、
第1のレーザービームの第1のレーザーパルス及び第2のレーザービームの第2のレーザーパルスを、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するように設定されたビーム成形装置と、
こうして成形された線状のレーザーパルスを照射ラインとして半導体材料層上に結像するように設定された結像装置と、
第1のレーザーパルスの偏光方向を照射ラインの短軸方向に位置合わせし、第2のレーザーパルスの偏光方向を照射ラインの長軸方向に位置合わせするように設定された偏光装置と、
第2のレーザーパルスを第1のレーザーパルスに対して所定の時間間隔Δtだけ遅延させるように設定された遅延装置と、を含んでおり、この時間間隔Δtは半導体材料層上に結像された照射ラインが第1の最大値及び第2の最大値を持つパルスの形態の合成時間強度曲線を有するように選択されている。
【0032】
したがって偏光装置は、第1のレーザーパルスがほぼ専ら照射ラインの短軸方向への偏光成分を含み(偏光比は例えば1:100となる)、第2のレーザーパルスがほぼ専ら照射ラインの長軸方向への偏光成分を含む(偏光比は例えば1:100となる)ように設計及び配置されている。ここで偏光装置は、第1のレーザーパルスを持つ第1のレーザービームのための第1の偏光装置と、第2のレーザーパルスを持つ第2のレーザービームのための第2の偏光装置を有してよい。第1の偏光装置は、特に第1のレーザービームのビーム経路内に配置され、第2の偏光装置は特に第2のレーザービームのビーム経路内に配置されている。
【0033】
ビーム成形装置はアナモルフィック光学系を形成することができる。アナモルフィック光学系は、例えばレンズアレイホモジナイザーを有してよいが、これは入射レーザービームを多くの部分ビームに分解してから空間的に重ね合わせるという原理に基づいている。レーザーラインは短軸及び長軸を有する。
【0034】
こうして形成されたレーザーラインは、結像装置によって半導体材料の画像面上に照射ラインとして結像される。この照射ラインも同様に短軸及び長軸を有し、それらの方向が第1のパルス及び第2のパルスの偏光を指定する。典型的には、照射ラインの短軸及び長軸方向は、線状のレーザーパルスの短軸及び長軸方向と合致する。
【0035】
光学系の偏光装置は、特に第1のλ/2板を含んでよく、この第1のλ/2板は、第1のレーザービームのビーム経路内に、特にビーム成形装置の前に配置されていて、λ/2板に当たる第1のレーザーパルスに対して、第1のレーザーパルスがλ/2板を通過した後で短軸方向に直線偏光されているように向けられており、及び第2のλ/2板を含んでよく、この第2のλ/2板は、第2のレーザービームのビーム経路内に、特にビーム成形装置の前に配置されていて、λ/2板に当たる第1のレーザーパルスに対して、第2のレーザーパルスがλ/2板を通過した後で長軸方向に直線偏光されているように向けられている。
【0036】
したがって第1のλ/2板は、第1のレーザーパルスを持つ直線偏光された第1のレーザービームの偏光方向を短軸方向に回転させるように向けられている。第2のλ/2板は、第2のレーザーパルスを持つ直線偏光された第2のレーザービームの偏光方向を長軸方向に回転させるように向けられている。
【0037】
変形例によれば、遅延装置は遅延回路を含んでおり、この遅延回路は、第2のレーザーパルスを持つ第2のレーザービームを第1のレーザーのトリガ信号に対して時間間隔Δtだけ遅延させるように設定されたトリガ信号を発し、第1のレーザーは第1のレーザーパルスを持つ第1のレーザービームを放出するように設定されている。したがって第2トリガ信号は、第1トリガ信号に対して電子的に遅延させることができる。
【0038】
代替変形例によれば、遅延装置は、第2のレーザービームの半導体材料層の画像面までの光路長を、第1のレーザービームの半導体材料層の画像面までの光路長より大きくするビーム迂回路を含んでよい。したがってこの変形例によれば、時間遅延は、第2のレーザーパルスが重ね合わせまで第1のパルスより大きい光路長を通過したことによる経路差によって引き起こされる。
【0039】
光学系の第1のレーザービーム及び第2のレーザービームは、第1のレーザー源及び第2のレーザー源によって提供でき、又は代替的に放出されたレーザービームがビームスプリッターを用いて第1のレーザービームと第2のレーザービームに分割されるレーザー源によって提供できる。
【0040】
別の態様によれば、ビーム成形装置は、第1のレーザービームの第1のレーザーパルス、第2のレーザービームの第2のレーザーパルス、第3のレーザービームの第3のレーザーパルス、及び第4のレーザービームの第4のレーザーパルスを、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形するように設定されており、結像装置は、こうして成形された線状のレーザーパルスを照射ラインとして半導体材料層上に結像するように設定されており、偏光装置は、第3のレーザーパルスを照射ラインの短軸方向に直線偏光し、第4のレーザーパルスを照射ラインの長軸方向に直線偏光するように設定されており、遅延装置は、第4のレーザーパルスを第3のレーザーパルスに対して所定の時間間隔Δtだけ遅延させるように設定されていて、この時間間隔Δtは半導体材料層上に結像された照射ラインが第1の最大値及び第2の最大値を持つパルスの形態の合成時間強度曲線を有するように選択されている。
【0041】
したがってこの態様によれば、光学系は、4本のレーザービームが均一に重ね合わされて照射ラインとして半導体材料層に結像され4ビーム構成を含んでおり、4本のレーザービームのうちそれぞれ2本のレーザービームは、それぞれ照射ラインの短軸方向に直線偏光されたパルスを持ち、時間同期されており、4本のレーザービームのうち他の2本のレーザービームは、それぞれ照射ラインの長軸方向に直線偏光されたパルスを持ち、これらのパルスは最初の2本のレーザービームのパルスに対して時間遅延されている。
【0042】
本開示はさらに、上記の態様に従う光学系を含む、半導体材料層を処理するための、特に結晶半導体層を生成するためのシステムを含んでおり、このシステムは、半導体材料層を照射ラインに対して相対的に送り方向に動かすように設計されており、ここで送り方向は照射ラインの短軸方向に対応している。半導体材料層は、例えば送り方向に可動なテーブルなどの送り装置を用いて照射ラインに対して相対的に移動させることができるため、半導体材料層の広い範囲ないし全体を照射ラインによって露光でき、ひいては処理できる。この場合、送り方向は短軸方向に対応しているため、第1のパルス及び/又は第3のパルスの偏光の向きは送り方向に対応している。
【0043】
以下に本開示を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、半導体材料層を処理するために半導体材料層に対して送り方向に移動する照射ラインで露光された半導体材料層の概略図を示す。
図2a図2aは、結像された照射ラインの線形状を示す。
図2b図2bは、結像された照射ラインの線形状を示す。
図2c図2cは、結像された照射ラインの線形状を示す。
図3a図3aは、照射ラインを成形して半導体材料上に結像することができる、半導体層を処理するシステムのための光学系の概略図を示す。
図3b図3bは、照射ラインを成形して半導体材料上に結像することができる、半導体層を処理するシステムのための光学系の概略図を示す。
図4図4は、レーザービームのビーム分割によって第1のレーザービーム及び第2のレーザービームが提供される光学系の実施形態の概略図を示す。
図5図5は、4つのレーザー源によって4本のレーザービームが提供されて、2本のレーザービームのパルスがそれぞれ他の2本のレーザービームのパルスに対して時間遅延されて放出される実施形態の概略図を示す。
図6図6は、2つのレーザー源によって2本のレーザービームが提供されて、一方のレーザービームのパルスが他方のレーザービームのパルスに対して時間遅延されている実施形態の概略図を示す。
図7図7は、個々のパルスの均質な重ね合わせから生じる照射ラインの合成時間強度曲線を概略的に示す。
図8a図8aは、開示された方法により生成された結晶シリコン層の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図8b図8bは、比較対象の方法により生成された結晶シリコン層の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1には、開示された方法に従って均質な結晶化層を生成するために半導体材料がレーザービームによって照射される様子が概略的に示されている。支持体10、例えばガラス基板が、処理される半導体材料からなる層12で被覆されている。本例では、処理される半導体材料はアモルファスシリコンである。半導体材料層12の厚さは、典型的には約50nmである。
【0046】
線状のレーザービーム14は、半導体材料上に結像されて、半導体材料に対して相対的に送り方向xに移動するため、レーザーライン14は半導体材料層12の少なくとも部分範囲を擦過して照射する。ここに示す例では、半導体材料層12を載せた支持体10は空間内を、静止しているレーザービーム14に対して相対的に移動される。レーザーライン14は、半導体材料層12全体がレーザーライン14によって照射されるように半導体材料層12に対して相対的に動かすことができる。典型的には、レーザーライン14は半導体材料層12に対して相対的に移動されて、特定の範囲がレーザーライン14によって複数回照射される。典型的な送り速度は、5mm/s~50mm/sの範囲にある。
【0047】
レーザービーム14の伝搬方向は、ここに示す実施形態では半導体材料層12の表面に対して垂直である。即ち、レーザービーム14は、ここでは半導体材料層12の表面に0°の入射角度で垂直に当たる。
【0048】
レーザービーム14の線形状は、図2a~図2cに示されている。図2a~図2cでは、強度はそれぞれ特定の方向の関数として示されている。
【0049】
図2aは、長軸方向におけるレーザーラインの強度、即ち短軸に沿って(x軸に沿って)積分された強度分布16を示しており、このように積分された強度分布16が長軸に沿って(y軸に沿って)示されている。慣例に従い、図では短軸はx軸に対して平行に延び、長軸はy軸に対して平行に延びている。この図に見られるように、分布16はほぼ長方形であり、したがって長軸に沿って理想的には均質に形成されている。y方向における照射ラインの長さは、通常100mm~1000mm、例えば100mm、250mm、750mm又は1000mm、又は1000mm以上であってよい。
【0050】
図2b及び図2cには、それぞれ短軸方向におけるレーザーラインの強度、即ち長軸に沿って(したがってy軸に沿って)積分された強度分布18、20を示しており、このように積分された強度分布が短軸に沿って(即ちx軸に沿って)示されている。この場合、図2bにおける強度はガウス曲線18を有する。これと代替的に、強度は、図2cに示すように、平坦な曲線20(「フラットトップ」)、即ちほぼ長方形の曲線を有してよい。
【0051】
x方向における強度の典型的な幅は、20μm~200μmである。図2bのガウス曲線18では、幅は半値幅(英語:Full Width at Half Maximum、FWHM)として示され、図2cの平坦化された曲線20では、最大強度の90%(FW90%:90%での全幅)に相当する強度で曲線が持つ幅として示されている。
【0052】
照射ライン14がa-Siなどの処理される半導体材料層12上に案内されると、半導体材料層12が短時間溶融して、電気的特性が改善された結晶層として固化する。
【0053】
図3a及び図3bには、半導体層を処理するシステムのための光学系30が概略的に示されており、このシステムにより、図1及び図2に関して説明したように、照射ライン14を成形して半導体材料上に結像することができる。
【0054】
光学系30は、後述するように、レーザービームのビームプロファイルが長軸及び短軸を有するようにレーザービームを成形するように設定されたビーム成形装置32と、このように成形されたレーザービームを照射ライン36として結像するように設定された、レーザービームのビーム経路内でビーム成形装置32の後に配置された結像装置34を含んでいる。ここに示す例では、後で例を用いて説明するように、4本のレーザービーム、即ち第1のレーザービーム38、第2のレーザービーム40、第3のレーザービーム42及び第4のレーザービーム44がビーム成形装置32に当たることが示されている。しかしまた本開示によれば、後で例を用いて説明するように、2本のレーザービームがビーム成形装置32に当たってもよい。原則として、レーザービームの数は4本にも2本にも制限されておらず、他のいかなる数も可能であり、本開示に包含されている。
【0055】
ここに示す例では、レーザービームは、複数の固体UVレーザーによって放出される波長343nmのレーザービームである。しかしながら原理的には、他のレーザー源、特に他の固体レーザー源、例えば、緑色のスペクトル範囲で放出される固体レーザーを使用することも可能である。
【0056】
図3a及び図3bには、既に図1及び図2で見たように、短軸はx軸に対して平行に示され、長軸はy軸に対して平行に示されている。光学系の光軸は、z軸に対して平行に延びる。
【0057】
図3aは、y方向における、即ち成形されたレーザービームと照射ラインの長軸に沿った光学系30の結像特性を示し、図3bは、x方向における、即ち成形されたレーザービームと照射ラインの短軸に沿った光学系30の結像特性を示す。
【0058】
図3a及び図3bの光学系30のビーム成形装置32は、入射レーザービームの強度をy軸方向に均質化するアナモルフィック均質化光学系46を有する。このアナモルフィック均質化光学系46は、例えば互いに平行に配置された2つのシリンダーレンズアレイを含む。シリンダーレンズアレイは、入射ビームを個々の部分ビームに分割して、これらを全面的に重ね合わせ、その結果としてレーザービームはほぼ均質化される。複数の入射レーザービームの場合は、各レーザービームは個々の部分ビームに分割され、均質化されて重ね合わせされる。このような種類の均質化光学は、例えばここで本開示に包含される独国特許出願DE4220705A1、独国特許出願DE3829728A1又は独国特許出願DE10225674A1でより詳細に説明される。
【0059】
光学系30のビーム成形装置32は、さらにビーム経路内でアナモルフィック均質化光学系46の後に集光用シリンダーレンズ48を有しており、これはアナモルフィック均質化光学系46を用いて再分散及び均質化されたレーザービームをテレセントリックに照射ライン36に誘導し、そこで長軸に関して、即ちy方向で重ね合わせるように設定されている。したがって、アナモルフィック均質化光学系46と集光用シリンダーレンズ48の組合せにより、入射レーザービームが画像面上で照射ライン36として均質化される。
【0060】
集光用シリンダーレンズ48の後のビーム経路には、結像装置34が配置されており、これはレーザービームを短軸に関して、即ちx方向で照射ライン36に集束するように設定されている。又は換言すれば、結像装置34はレーザービームを照射ライン36として結像し、その際に専らビームプロファイルの短軸が均質化されるが、ビームプロファイルの均質化されている長軸は均質化されない。結像装置34は、例えば集束シリンダーレンズ光学系であってもよい。
【0061】
アナモルフィック均質化光学系46と集光用シリンダーレンズ48の組合せは、アナモルフィック光学系又はそのような光学系の一部であってよい。それらは特にアナモルフィック光学系42に関して本開示に包含される独国特許出願DE102012007601A1の図4~6に記載されているアナモルフィック光学の一部であってよい。
【0062】
ビーム成形装置32は、さらに以下の光学素子を1つ以上含むことができる。
・x軸に関して放出されたレーザービームのコリメーションのための、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号54が付されている第1のコリメーションシリンダーレンズ
・y軸に関して放出されたレーザービームのコリメーションのための、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号56が付されている第2のコリメーションシリンダーレンズ
・光線をx軸に関して、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号60が付されている中間像に集束させるために、ビーム経路内で第1のコリメーションシリンダーレンズの後に配置された、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号58が付されているシリンダーレンズ
・第1の中間像の光線のコリメーションのために、ビーム経路内で第1のコリメーションシリンダーレンズ54の後に配置された、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号58´が付されている中間コリメーションシリンダーレンズ、及び/又は
・光線をx軸に関して、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号60が付されている中間像に集束させるために、ビーム経路内で第1の中間像の後、特に中間コリメーションシリンダーレンズの後に配置された、独国特許出願DE102012007601A1で参照符号62が付されている別のシリンダーレンズ。
【0063】
上述したアナモルフィック均質化光学系46は、例えば独国特許出願DE102012007601A1の図4図6に示す構成要素68であるか、又はこれを含んでよい。
【0064】
上述した集光用シリンダーレンズ48は、例えば、独国特許出願DE102012007601A1の図4図6に示す集光用シリンダーレンズ74であるか、又はこれを含んでよい。
【0065】
最後に、上述した結像装置34は、例えば独国特許出願DE102012007601A1の図4図6に示す構成要素66であるか、又はこれを含むことができる。
【0066】
光学系はさらに、アナモルフィック光学系に入射するレーザービーム38、40、42、44の各々に対して偏光装置50を有する。偏光装置は、ここでは偏光方向50を調整するための光学系であり、例えば各入射レーザービーム38、40、42、44のビーム経路内のλ/2板である。光学系50は、ビーム経路内でアナモルフィック光学系若しくはアナモルフィック均質化光学系46の前に配置されている。各入射レーザービームは光学系50を通過し、光学系50を通過するレーザービーム38、40、42、44は定義された方向に直線偏光されている。より正確に言えば、レーザーから放出されたレーザービームは、例えばここで示す固体UVレーザーの例におけるように既に直線偏光されており、偏光の向きは光学系50により定義された方向に回転される。この場合、光学系50、例えばλ/2板は、直線偏光された入射光の偏光方向に対して、4本のレーザービームのうち2本が長軸方向に光学系50を通過した後に直線偏光されるように、そして4本のレーザービームのうちの残りの2本は光学系50を通過した後に短軸方向に直線偏光されるように向けられている。その際に、送り方向は短軸方向に対応し、4本のレーザービームのうちの残りの2本は送り方向に直線偏光されている。より正確に述べると、本開示によれば、第1のレーザービーム38及び第2のレーザービーム40のビーム経路内に配置された光学系50、例えばλ/2板は、第1のレーザービーム38及び第2のレーザービーム40がそれぞれ短軸方向、即ちx方向若しくは送り方向に偏光され、第3のレーザービーム42及び第4のレーザービーム44のビーム経路内に配置された光学系50、例えばλ/2板は、第3のレーザービーム42及び第4のレーザービーム44がそれぞれ長軸方向、即ちy方向に偏光されているように向けられている。本例ではレーザーはさらにパルス駆動され、それぞれのレーザービームの個々のパルスが、それぞれのレーザービームの上述した偏光方向を有する。
【0067】
4本のレーザービーム38、40、42、44は、4つのレーザー源から放出されたレーザービームであってよく、したがって各レーザービームは別々のレーザー源に割り当てられている。
【0068】
代替的に、レーザービーム38、40、42、44は、ビームスプリッターを用いて1つのレーザー源から放出されたレーザービームを第1の部分ビームと第2の部分ビームに分割することによって生じたものであってよい。ビームスプリッターは、第1の部分ビーム、即ち透過ビームと、第2の部分ビーム、即ち伝導ビームに、例えばそれぞれ約50%ずつ分割するように設計することができる。このために例えば偏光光学、例えばいわゆる薄膜偏光子を用いることができる。薄膜偏光子は、p偏光(入射ビームと基板表面上の垂線からなる面に対して平行な電気ベクトルの振動面)を通過させ、s偏光(入射ビームと基板表面上の垂線からなる面に対して垂直な電気ベクトルの振動面)を有する光を反射する特殊なコーティングを施した光学基板である。ビーム経路内で薄膜偏光子の前にあるλ/2板によってレーザー源から放出されるレーザービームの偏光方向を回転させることにより、ビーム経路内で薄膜偏光子の前にp偏光とs偏光の等しい割合が生じて約50%ずつの分割を達成することができる。しかしながら薄膜偏光子の前のλ/2板を回転させて、ビーム経路内で薄膜偏光子の前にp偏光とs偏光の異なる割合が生じて、50%とは異なる分割を達成することもできる。原理的には、λ/2板の向きによって第1の部分ビームの第2の部分ビームに対する相対強度を調整することができる。
【0069】
このような構成は図4に概略的に示されている。レーザー源から放出され直線偏光されたレーザービーム52は、ビーム経路内でビームスプリッター56、ここでは薄膜偏光子の前に配置されたλ/2板54に当たる。λ/2板54は、一般的に上述したように、ビーム経路内でλ/2板後のレーザービームのs偏光とp偏光の相対割合が、ビームスプリッター56後の両部分ビーム58、60の所望の相対強度に対応するように向けられている。この場合、第1の部分ビーム58は、例えば、図3a及び図3bの構成の第1のレーザービーム38であってよく、第2の部分ビーム60は、例えば図3a及び図3bの第3のレーザービーム42であってよい。第2の部分ビーム60は反射素子62によって、第1の部分ビーム58に対して平行に進むように偏向される。これに加えて、ビーム経路でビームスプリッター56の後では、第1の部分ビーム及び第2の部分ビームのビーム経路内にそれぞれλ/2板64が配置されており、これらは図3a及び図3bで第1のレーザービーム38及び第3のレーザービーム42のビーム経路内のλ/2板50に対応している。即ち、第1の部分ビーム58のビーム経路で後に配置されたλ/2板64は、短軸方向での偏光に用いられる。その場合、第2の部分ビーム60のビーム経路で後に配置されたλ/2板64は、長軸方向での偏光に用いられる。
【0070】
第2のレーザービーム40と第4のレーザービーム44は、図4の構成に対応しているがビームスプリッター56を有する別の構成によりビーム分割によって提供できる。その後に配置されたλ/2板64は再び、第3の部分ビームと第4の部分ビームをそれぞれ短軸方向と長軸方向に偏光するように向けられている。代替的に、図3a及び図3bの4本のレーザービームは2つのレーザー源によって提供でき、それらから放出されたレーザービームは、それぞれ第1の部分ビーム58と第2の部分ビーム60、若しくは第3の部分ビームと第4の部分ビームに分割される。
【0071】
図3a及び図3bの光学系30は、既に上述したように、4本のレーザービーム以外の数、例えば2本のレーザービームを重ね合わせるためにも使用することができる。この場合、2本のレーザービームは、4本のレーザービームに対応して2つのレーザー源によって提供でき、又は1つのレーザー源によって、図4に対応する構成又は同じ構成を用いて、ビーム分割により第1の部分ビームと第2の部分ビームに分割することによって提供できる。
【0072】
さらに図3a及び図3bの光学系30は、異なる偏光のパルスがそれぞれ所定の時間間隔Δtで互いに時間的にずれるように設定されている。これは、各レーザービームに対してそれぞれ別個のレーザー源を使用する場合に、レーザー源のトリガ信号を電子的に遅延させることで達成できる。部分ビームを用いてレーザービームを提供する場合、時間遅延はビーム迂回路によって達成することができる。図4に示すように、第2の部分ビーム60は、第1の部分ビーム58よりも長い距離を移動する。経路Δsは、第1の部分ビーム58に対して第2の部分ビーム60の所定の時間間隔Δtによる時間遅延が生じるように選択することができる。この所定の時間間隔は、10ns~20nsであることが好ましい。
【0073】
上述した光学系30を用いて、それぞれ短軸方向に偏光された少なくとも1つのレーザーパルスと、長軸方向に偏光されたレーザーパルスを、照射ライン上で均質に重ね合わせて結像され、その際に長軸方向に偏光されたパルスは短軸方向に偏光されたパルスに対して時間間隔Δtだけ遅延されている。4本のレーザービームを重ね合わせると、2本のレーザービームは短軸方向に偏光され、2本のレーザービームは長軸方向に偏光されており、その際に長軸方向に偏光されたレーザービームは時間同期されており、短軸方向に偏光されたレーザービームは同じ時間間隔Δtで時間遅延されている。2つ(又はそれ以上の)異なるレーザー源からの2本(又はそれ以上)の時間同期されたレーザービームを重ね合わせることにより、場合によって生じるパルス間のエネルギー密度の変動を減らすことができる。このような変動は照射ラインがパルス間で短軸方向にずれると異なる結晶化の結果を招き、移動方向に沿って結晶構造の不均一性(「ショットムラ」)につながる可能性がある。この場合に注意すべきは、このように重ね合わされた2本(又はそれ以上)のレーザービーム(レーザーパルス)の合成強度分布は、存在する時間ジッタ、即ち強度の理想的な値からの短期的な時間的偏差により、時間の経過とともに(合成強度分布間で)変化し得ることである。具体的には、これらの不均一性は2つ(又はそれ以上)のレーザー源を組み合わせる場合に、各レーザー源が互いに独立した時間ジッタを有することに起因する。それゆえns範囲のできる限り小さい時間ジッタを有する(パルス化された)レーザー源を使用することが有利である。
【0074】
アナモルフィック均質化光学系46は、各入射光線が部分的な光線に分解され、長軸方向で均質化されて重ね合わされるように設計されている。即ち、個々のビームが均質な線を生じる。上述した2本のレーザービームを用いるパルス化された構成では、短軸方向に偏光されて時間的に先行するレーザーパルスも、長軸方向に偏光されて最初のパルスに対して時間遅延されているレーザーパルスも、均質な線として重ね合わされて結像される。したがって4本のレーザービームを用いる構成では、短軸方向に偏光されて時間的に先行する各レーザーパルスも、長軸方向に偏光されて最初のパルスに対して時間遅延されている各レーザーパルスも、それぞれ均質な線として重ね合わされて結像される。
【0075】
以上のことを開示された方法に基づき再度より詳細に説明する。
【0076】
図5には開示された方法が、例として4つのレーザー源、即ち第1のレーザー源66、第2のレーザー源68、第3のレーザー源70及び第4のレーザー源72を有する構成に基づいて記載されている。第1のレーザー源66及び第2のレーザー源68はそれぞれ、第1のレーザーパルス76を有する第1のレーザービーム74と、第2のレーザーパルス80を有する第2のレーザーパルス78を提供するようになっており、第1のレーザーパルス76及び第2のレーザーパルス80は、第1のレーザー源66及び第2のレーザー源68の同期トリガ信号82によって同時に放出される。第3のレーザー源70及び第4のレーザー源72は、それぞれ第3のレーザーパルス86を有する第3のレーザービーム84と、第4のレーザーパルス90を有する第4のレーザービーム88を提供するようになっており、第3のレーザー源70及び第4のレーザー源72のトリガ信号92は、それぞれ例えば電子遅延回路94によって時間間隔Δtだけ電子的に遅延されて、第3のレーザーパルス86及び第4のレーザーパルス90は、それぞれ第1のパルス76及び第2のパルス80に対して時間間隔Δtだけ時間遅延されて放出され、時間遅延されて伝搬する。開示された方法によればさらに、例えば図3a及び図3bに関して説明されたλ/2板50を用いて、第1のレーザーパルス76及び第2のレーザーパルス80は、送り方向、即ちx軸方向に直線偏光され、したがって偏光は送り方向に位置合わせされ、第3のレーザーパルス86及び第4のレーザーパルス90は長軸方向に直線偏光され、したがって偏光は長軸方向に位置合わせされる。第1のレーザーパルス~第4のレーザーパルス76、80、86、90は、通常15ns~20nsの範囲の時間半値幅(FWHM)を有する。時間間隔Δtの典型的な時間は10ns~20nsである。
【0077】
次いで、4つのレーザーパルス76、80、86、90を有する4本のレーザービーム74、78、84、88は、例えば図3a及び図3bに基づいて説明したビーム成形装置32を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形される。こうして成形された線状のレーザーパルスは続いて、例えば図3a及び図3bに基づいて説明した結像装置34を用いて、半導体材料の画像面に照射ライン36として結像される。
【0078】
図6には、開示された方法が例として2つのレーザー源を有する構成に基づいて記載されている。ここで第1のレーザー源66は図5の第1のレーザー源に対応し、第2のレーザー源70は図5の第3のレーザー源に対応している。これにより第2のレーザー源70のトリガ信号92は、第1のレーザー源66のトリガ信号82に対して電子的に時間間隔Δtだけ遅延されるため、第2のレーザーパルス86は第1のレーザーパルス76に対して時間間隔Δtだけ遅延されて伝搬する。さらに第1のレーザーパルス76は、例えば図3a及び図3bに関して説明したλ/2板80を用いて、後に成形される線状のレーザーパルス若しくは照射ラインの短軸方向に直線偏光され、第2のレーザーパルス86はこれと垂直に長軸方向に直線偏光される。ここで短軸方向は、処理される半導体材料12に対して、後に成形される照射ライン36が移動する送り方向に対応している。次いで、図5の方法と同様に、2つのレーザーパルス76、86を持つ2本のレーザービーム74、84は、例えば図3a及び図3bに基づいて説明したビーム成形装置32を用いて、短軸及び長軸を有する線状のレーザーパルスに成形される。こうして成形されたレーザーパルスは続いて、例えば図3a及び図3bに基づいて説明した結像装置34を用いて、半導体材料12の画像面に照射ライン36として結像される。
【0079】
こうして成形された照射ライン36の線形状は、図2a~図2cに基づいて説明された。こうして成形された照射ライン36の合成時間強度曲線、即ち重ね合わされて互いに時間遅延されたパルスの時間の関数としての強度を、図7に基づいて説明する。図7には、図6で開示された2本のレーザービームを用いる方法の例として、合成時間強度曲線96が示されている。図7にはさらに、両レーザービーム74、84の合成強度と並んで、個々のレーザービームのパルスの強度も時間の関数として示されている。
【0080】
図7で、参照符号98で表示された強度曲線は、第1のレーザービーム74の第1のレーザーパルス76の強度曲線に対応し、参照符号100で表示された強度曲線は、第2のレーザービーム84の第2のレーザーパルス86の強度曲線に対応し、参照符号96で表示された強度曲線は、第1のパルス76と第2のパルス86の合成時間強度に対応する。第1のレーザーパルス76及び第2のレーザーパルス86は、それぞれ15ns~20nsである時間半値幅(FWHM)を有する。さらに図7に見られるように、第2のレーザーパルス86は、第1のレーザーパルス76に対して、約10ns~20nsの持続時間で時間遅延されている。図7では、この持続時間は約20nsである。これにより合成時間強度曲線96に第1の最大値M1及び第2の最大値M2を持つパルス曲線が生じる。このパルス曲線は単一のパルス持続時間よりも幅の広いパルス持続時間102を持ち、総パルス長は40ns~50nsとなる。総パルス長102は、再び時間半値幅、即ち第1の最大値に関する半値全幅(「Full Width at Half Maximum of First Maximum」)、つまり第1のパルスの強度が最大値M1の半分を有する時点でのパルス幅に対応する。
【0081】
図7にも示されているように、第1のレーザーパルス76の最大強度M1は、第2の時間遅延されたレーザーパルス86の最大強度M2よりも大きい。具体的には、第1のレーザーパルス76の強度は第2のレーザーパルス86の強度に対して相対的に、合成時間強度曲線96の第1の最大値M1と第2の最大値M2の比、即ち比M1/M2が1/1.2~1/0.7、即ち0.8~1.4となるように調整される。これは、各レーザービームが別々のレーザー源によって提供される実施形態において、個々のレーザービームの強度が互いに同調されることによって達成することができる。図4に概略的に示した、1本のレーザービームを分割することによって2本のレーザービームが提供される構成では、薄膜偏光子56の前でλ/2板54を相応に回転させることにより光線のs成分とp成分を変化させることにより相対強度を達成できる。
【0082】
既に詳細に上述したように、本開示によれば第1のレーザーパルス76は短軸方向、即ち送り方向に直線偏光されており、第2のレーザーパルス86は長軸方向に直線偏光されている。
【0083】
本開示の根底にある知見の一つは、上述した第1のパルス76及び第2のパルス86の直線偏光は、レーザーラインで処理される半導体材料層12の均質性に肯定的な効果を有することである。例えば時間的に最初のパルスが送り方向に偏光され、時間的に遅延されたパルスが長軸方向に偏光されていると、規則的な粒子構造を有する非常に均質な層厚50nm~60nmの結晶シリコンが生じることが分かった。この場合、合成時間強度曲線の第1の最大値M1と第2の最大値M2の比は、約1:1、即ち0.8~1.4であった。
【0084】
これに対して逆の偏光、つまり即ち第1のパルスが長軸方向に直線偏光され、第2の遅延されたパルスが短軸方向に直線偏光される場合は、この肯定的な効果は観察できなかった。
【0085】
この知見を、次の実験データに基づいて明確にする。
【0086】
処理される半導体材料は、支持体としてガラス基板上に塗布されたアモルファスシリコンの50nm薄層であった。使用した光学的構成は、波長343nmの光を放出する4つの固体UVレーザーを備えるラインビーム構成であった。4つのレーザーは10kHzのパルス繰返し速度で駆動された。放出されるパルスのパルス長、即ち時間半値幅は、15ns~20nsであった。レーザーパルスのエネルギーは最大20mJであった。基板、即ちシリコン層のエネルギー密度は220mJ/cm2であった。図5の方法と同様に、4つのレーザーのうちの第1のレーザー及び第2のレーザーの複数の第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスを、レーザー源の同期されたトリガ信号によって時間同期して、それぞれ第1のレーザーパルスが第2のレーザーパルスと同時に放出されるようにした。第3のレーザー及び第4のレーザーの複数の第3のレーザーパルス及び第4のレーザーパルスが、それぞれ複数の第1のレーザーパルス及び第2のレーザーパルスに対して10ns~20nsだけ時間遅延された。4本のレーザービームの強度は、合成時間強度曲線における第1の最大値及び第2最大値の比(M1/M2)が1/1になるように調整された。
【0087】
4本のレーザービームのレーザーパルスが、図3a及び図3bに対応する構成によってレーザーラインに成形され、アモルファスシリコン上の照射ラインとして結像された。照射ラインは、半導体層に対して20mm/sの送り速度で、照射ラインの短軸方向に移動された。照射ラインの長軸方向における長さは、均質性1.5%(2σ)で90mmであった。照射ラインの短軸方向における長さは、均質性3%(2σ)で67μmであった。合成時間強度曲線の総パルスは長45ns(「第1の最大値に関する半値全幅」)であった。
【0088】
第1回の実験(実験a))では、第1のレーザービーム74及び第2のレーザービーム78のパルス76、80を短軸方向に直線偏光させ、遅延された第3のレーザービーム84及び第4のレーザービーム88のパルス86、90を長軸方向に偏光させた。
【0089】
第2回の実験(実験b))では、第1のレーザービーム及び第2のレーザービームのパルスを長軸方向に直線偏光させ、遅延された第3のレーザービーム84及び第4のレーザービームのパルスを短軸方向に偏光させた。
【0090】
図8aは、実験a)によりレーザー露光後に走査型電子顕微鏡で撮影したシリコン表面の画像を示し、図8bは実験b)によりレーザー露光後に走査型電子顕微鏡で撮影したシリコン表面の画像を示す。両画像において、送り方向はx軸(照射ラインの短軸)の方向、即ち図8a及び図8bで垂直方向であった。
【0091】
図8aは、送り方向に対して垂直に、即ちy方向若しくは長軸方向に規則的な粒子構造が生じていることを示す。特に粒子は、UVレーザーの波長に対応して約1.5μmのほぼ等間隔で垂直に延びる列内に配置されていることが分かる。言い換えれば、粒子構造は送り方向に延びる縞模様を示しており、縞は等間隔であるため長軸方向に均質性が生じている。したがって長軸方向(y方向)における粒径は大きな均質性を有する。短軸方向(x方向)では.長軸に比べて均質性が少ない。
【0092】
これに対して図8bは、短軸(x方向)の方向にも長軸方向(y方向)にも顕著な均質性がないことを示している。粒子構造は、粒子の向き及び大きさの両方に関して、図8aの粒子構造と比較して無秩序に見える。
【0093】
既に上述したように、レーザー結晶化プロセスは、a-Si層が部分的に溶融し、続いてガラス基板上の溶融していない固体シリコンから始まり結晶構造に固化することに基づいている。この溶融及び固化は10~100nsの時間スケールで行われ、それに続くフィルムの室温下での冷却は通常数100μsかかる。10kHzのパルス繰り返し周波数は100μsの期間に相当する。パルス繰り返し周波数、送り速度、及び送り方向における照射ラインのパルス幅は、半導体材料の1箇所が露光プロセス中に複数回、即ち連続する複数のパルスによって露光されるように、且つ、パルス繰り返し周波数に対応する期間はフィルムを室温に冷却するのに必要な時間よりも短くなるように寸法が設定されているため、半導体材料は結晶化プロセス中に繰り返しUV光で照射される。これに加えてレーザーパルスの時間的推移が数10nsと比較的長いためにパルスによる露光が比較的長い。この多重露光は均一な粒子構造の形成を促進する。
【0094】
冒頭で述べたように、さらにレーザービームの偏光は、特に上述の多重露光と組み合わせると、規則的な多結晶シリコン粒子構造に肯定的な効果を及ぼすことができることが知られている。これは調節された強度分布を生じさせる表面干渉効果(「レーザー誘起周期的表面構造」、LIPPS)に起因する。このように光が長軸方向に直線偏光されていると長軸に沿って規則的な構造が形成され、光が短軸方向(送り方向)に直線偏光されていると送り方向で相応の効果が観察できることが分かった。
【0095】
LIPPS効果は、例えば以下に掲げる参考文献(1)~(4)など複数の文献で議論されている。これらの文献において、調節された強度分布は、入射光線と表面上で及び表面方向に偏光された光線との相互作用と、それによって引き起こされるパルスエネルギー密度の周期的分布によって発生すると仮定されている。周期的パルスエネルギー密度分布は、いわゆる「リップル」の形を有しており、これらは波長λと入射角Θを有する光線レーザービームについてλ/(1±sinΘ)の大きさで離間している。したがって垂直入射(Θ=0°)に対しては、波長λのオーダーの離間が生じる。この場合、「リップル」は電界ベクトルに対して垂直な方向、即ち光線若しくは光パルスの偏光方向に延びて、電界ベクトルの方向に周期性を有する。パルスエネルギー密度は、「リップル」に沿って最小又は最大である。周期パルスエネルギー密度は、露光された半導体材料層上に空間的に周期的な温度分布を引き起こし、この周期的温度分布は周期的パルスエネルギー密度分布と類似している。さらに周期的温度分布においては、半導体材料層内の熱拡散も考慮に入れなければならない。また、パルスエネルギー密度の周期的分布は、半導体材料層の内部における多重反射に基づき半導体材料層の厚みによって変化することが確認された。
【0096】
したがって総括的に確認できるのは、これらの観察によれば、長軸方向の周期性若しくは規則性を得るためには、電界ベクトルは長軸方向になければならず、したがって光若しくは光パルスは長軸方向に直線偏光されていなければならないということである。
【0097】
そのため従来、長軸方向に規則的な粒子構造を生成できるようにするためには、各パルスは長軸方向の偏光成分を含んでいなければならないことが前提とされてきた。
【0098】
さて、本開示により明らかになったのは、時間的に第1のパルス76又は時間的に第1のパルス76、80が短軸方向、即ち送り方向に偏光されており、第2の遅延されたパルス86又は第2の遅延されたパルス86、90が長軸方向に偏光されていると、多結晶シリコン粒子構造の均質性に関して特に有利なことである。
【0099】
第2のパルスが長軸において偏光されていると規則的な粒子構造が促進されることの1つの考えられる説明は、この長軸の光がレーザー波長の干渉調節(LIPPS)を生み出し、それによってこの方向の構造化された粒子形成を助長するというものである。第2のパルスが送り方向に直線偏光されている場合、長軸において干渉調節は形成されない。
【0100】
第1の最大値における光、したがって第1のパルスの短軸方向(送り方向)への偏光が粒子構造にとって有利である理由の説明の試みは、この照射の時間区分にフィルムは長軸において、長軸方向の偏光成分がある場合よりも均一に加熱されるというものであろう。なぜならそこでは干渉調節は起こらず、第2のパルス成分が初めて部分的な液相を構造化して生成し粒子構造を促進するからである。
【0101】
さらに、実験a)に従って第1のパルスの偏光を送り方向、即ち短軸方向に調整し、第2の遅延されたパルスの偏光を長軸方向に調整すると、エネルギー密度プロセスウィンドウの大きさは20~25mJ/cm2(エネルギー密度プロセスウィンドウは210~230~235mJ/cm2)に拡大することが観察された。第1のパルスと第2の遅延されたパルスが両方向に同じ偏光分布を有する露光と比較すると、この場合はエネルギー密度プロセスウィンドウの大きさは約10mJ/cm2(エネルギー密度プロセスウィンドウは215~225mJ/cm2)しか観察されなかった。
【0102】
最後に、例えば図4に示す「光遅延」において、例えば図5及び図6に示す「電子遅延」と比較して有利な結果が得られることを確認することができた。特に、「光遅延」においては運動方向における結晶構造の不均一性(「ショットムラ」)が、「電子遅延」に比べて低減できることを確認することができた。
【0103】
既に上述したように、2つの(又はそれ以上)の異なるレーザー源からの2本(又はそれ以上)の時間同期されたレーザービームの重ね合わせは、レーザー源に時間ジッタが存在することにより互いに強度分布の変動を生じる可能性がある。
【0104】
例えば、図7で2つのレーザーパルス76、86について示されている合成時間強度曲線96を観察して4つのレーザーパルスについて形成すると、第1のレーザーパルス76の強度曲線98は、2つの第1のレーザーパルス76、80の合成強度曲線98から構成され、第2のレーザーパルス86の合成強度曲線100は2つの第2のレーザーパルス86、90の合成強度曲線100から構成される。この場合、可能な限り最小の時間ジッタ(例えばns範囲)を有するパルス化されたレーザー源によって、合成強度曲線98間若しくは合成強度曲線100間の変動を最小化することが可能である。第1の両レーザーパルス76、80及び第2の両レーザーパルス86、90は、光遅延を有する装置においても電子遅延を有する装置においても異なるレーザー源から発生するため、この時間ジッタの存在による「スミア化」に関しては、電子遅延と光遅延で異なる状況は生じない。
【0105】
図7の合成時間強度曲線96は、(合成された)強度曲線98、100の重ね合わせによって得られる。図7に示されているように、パルス幅及び遅延は、先行するパルス98若しくは先行する合成パルス98が後続のパルス100若しくは後続の合成パルス100と重ね合わされるように選択されている。その結果として生じる第1の最大値M1は、遅延されたパルス100若しくは遅延された合成パルス100にほとんど影響されず(遅延されたパルス100若しくは遅延された合成パルス100は、合成強度曲線96の最大値M1に全く又はほとんど寄与しないため)、第2の最大値M2の位置と発現は遅延されたパルス100又は遅延された合成パルスによって明確に影響を受ける。
【0106】
このように存在していて変化する時間ジッタが、第1のパルス98と第2の時間遅延されたパルス100との間で最大値M2の変化する位置及び発現において、特に合成強度曲線96間で変化する最大値M2の位置及び発現において結像する。結晶化プロセスはこれらの強度変化に粒子構造の偏差、例えば粒径の偏差によって反応することができる。
【0107】
この場合、光遅延において電子遅延とは異なりビーム分割と、光遅延区間を設けることにより(例えば可能な限り最小の時間ジッタを有するパルス化されたレーザー源と組み合わせて)、先行するパルス98と遅延されたパルス100がほぼ同じ時間ジッタを有することを達成することができる。そうすることによってパルス98、100若しくは合成パルス98、100を重ね合わせたときに強度曲線の変動が最小化され、非晶質半導体層の多結晶半導体層への均質な変換が大面積で達成される。
【0108】
第1のパルス98に対して第2のパルス100の典型的な時間遅延20nsを達成するために、約6mの追加の光路が必要である。この追加の光路は、例えば長焦点距離の球面望遠鏡を用いて達成できる。これは遅延区間内(例えば図4の第2の部分ビーム60のビーム経路内)に配置され、遅延区間の入口及び出口に共役面を有する。このようにしてレーザービーム(図4の部分ビーム60)は長距離にわたって制御されて結像され得る。例えば1:1の結像に対して、レンズの焦点距離が接眼レンズの焦点距離と同じ望遠鏡を設けることができる。さらに遅延区間は、(その長さが)例えば移動可能に配置された鏡のような偏向素子によってその変化可能であるように設計することができる。これにより結晶化プロセスに最適なパルス長を調整することができる。
【0109】
ビーム分割とそれに続く光遅延によって時間遅延されたレーザービーム若しくはレーザーパルスを得る代わりに、本開示により、UVレーザー源を利用して、IRレーザービーム(1030nm)から第3高調波(343nm)を生成することによりIR光源から2つのUVレーザービームを得ることが想定されている。このようなUVレーザー源は、第1のSHG(「第2高調波発生」)/THG(「第3高調波発生」)結晶で変換されていないIRパルスエネルギー(通常50%)を利用して、第2のSHG/THG結晶で第2のUVレーザービームを生成する。これらの両UVビームは、互いに変化する時間ジッタを持たない。次いで両UVレーザービームのうちの1本は、例えば長焦点距離の球面望遠鏡を用いて、上記のように光学的に遅延させることができる。したがってこの解決策においてビーム分割は必要ない。
【0110】
さらに、長軸における周期構造の形成は、遅延されたパルス100で長軸におけるレーザービームの角度分布が小さいほど成功しやすいことが分かった。これは、LIPPS効果に関して上述したように、周期的なパルスエネルギー密度分布は表面に沿って発生する干渉に依存している(λ/(1±sinθ)、ここで、θは表面法線に対する入射角)と考えられている。その変化が少ないほど、つまり鋭角であるほど、入射光の角度分布は小さくなる。遅延されたパルスにおけるビームは長軸方向に直線偏光されている。それゆえ遅延は、光軸に近く結像されるレーザービームに対して調整されることが好ましい。逆に言えば、このことは光軸から離れて結像されたビームは、主に長軸に対して垂直な偏光を有する先行パルスのビームでなければならないことを意味する。
【0111】
参考文献(1)~(4)
(1)P.ファン・デル・ウィルト、「エキシマレーザーアニール:微細構造の進化と新しい特性化技術」、SID2014、ダイジェスト、p.194
(2)S.堀田、H.河貴、K.西岡、「直線偏光Nd:YAGパルスレーザービームによって結晶化したアモルファスSi薄膜の表面改変」、応用物理学誌、102、013501(2007)
(3)H.M.ファン・ドリエル、J.E.サイプ、J.F.ヤング、「固体のレーザー誘起周期的表面構造:普遍的現象」、フィジカルレビューレターズ、49、1955-1958(1982)、及び、S.E.クラーク、D.C.エモニー、「紫外レーザー誘起周期的表面構造、」フィジカルレビューB、40、2031-2041(1989)
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図1
図2a
図2b
図2c
図3a-3b】
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
【国際調査報告】