IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ-スター セラピューティクス リミテッドの特許一覧

特表2022-533578LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画
<>
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図1
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図2
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図3A
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図3B
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図4
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図5
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図6
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図7
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図8
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図9
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図10
  • 特表-LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】LAG-3/PD-L1二重特異性抗体の投与のための投与計画
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220715BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220715BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C07K16/28
A61P35/00 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C12N15/13
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566974
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020063529
(87)【国際公開番号】W WO2020229626
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】1906807.1
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1914040.9
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2000318.2
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521490915
【氏名又は名称】エフ-スター セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】モロー,ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルマシェウスキ,フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】グリッドン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レオン,キン-メイ
(72)【発明者】
【氏名】グラディナル,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ホルツ,ジョセフィン-ビート
(72)【発明者】
【氏名】カイタリレ,ルイ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA16
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】ヒト患者又は非ヒト霊長類における、FS118を含むLAG-3/PD-L1抗体の挙動に関するデータ(投与量を含む)は、これまで入手可能でなかった。
【解決手段】本出願は、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)に結合する抗体分子の投与のための投与計画並びにヒト患者の癌の処置におけるそれらの医学的使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)に結合する抗体分子であって、
配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
前記方法が、前記抗体分子を前記患者の体重1kgあたり3mgから20mgの用量で週1回、前記患者に投与することを含む、
抗体分子。
【請求項2】
ヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子を前記患者に投与することを含み、
前記抗体分子が、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
当該方法が、前記抗体分子を前記患者の体重1kgあたり3mgから20mgの用量で週1回、前記患者に投与することを含む、
方法。
【請求項3】
前記方法が、前記抗体分子を前記患者の体重1kgあたり10mgから20mgの用量で投与することを含む、請求項1又は2に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項4】
前記方法が、前記抗体分子を前記患者の体重1kgあたり10mgの用量で投与することを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項5】
前記方法は、前記抗体分子を210mgから1400mgの用量で前記患者に投与することを含む、請求項1又は2に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項6】
前記方法は、前記抗体分子を700mgから1400mgの用量で前記患者に投与することを含む、請求項1から3又は5のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項7】
前記方法は、前記抗体分子を700mgの用量で前記患者に投与することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項8】
前記腫瘍が、1つ以上のチェックポイント阻害剤による処置に抵抗性であるか、1つ以上のチェックポイント阻害剤による処置中若しくは処置後に再発しているか、又は1つ以上のチェックポイント阻害剤による処置に応答する、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)又はPD-L1阻害剤である、請求項8に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項10】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
前記患者の腫瘍が、前記以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍が、前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、
抗体分子。
【請求項11】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を前記患者に投与することを含み、
前記患者の腫瘍が、前記以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍が、前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、
方法。
【請求項12】
前記抗体による処置前に前記患者から得られた前記腫瘍のサンプルにおける腫瘍細胞の少なくとも15%が、PD-L1陽性であると決定されている、請求項10又は11に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項13】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けた癌患者が、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子による処置に応答する可能性があるかを決定する方法であって、
前記患者の腫瘍が前記以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型又は一次耐性表現型を有するかを決定することを含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍が、一次耐性表現型を有する腫瘍よりも高い、前記抗体による処置に応答する可能性を有し;
獲得耐性表現型を有する腫瘍が、前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は前記以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
一次耐性表現型を有する腫瘍が、進行性疾患の最良の全体的応答を有する腫瘍を含む、前記以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月以下にわたって安定性疾患を達成した腫瘍である、
方法。
【請求項14】
前記抗体による処置前に前記患者から得られた前記腫瘍のサンプルにおける腫瘍細胞の少なくとも15%がPD-L1陽性であるかを決定することをさらに含み、
少なくとも15%のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む、獲得耐性表現型を有する腫瘍が、一次耐性表現型を有する腫瘍又は15%未満のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む、獲得耐性表現型を有する腫瘍よりも高い、前記抗体による処置に応答する可能性を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記癌が、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、胃癌、食道癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、黒色腫、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌(CRC)、食道胃接合部(GEJ)の腺癌、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、小細胞肺癌(SCLC)、子宮癌、外陰癌、精巣癌、陰茎癌、白血病、メルケル細胞癌及び鼻咽頭癌からなるリストから選択される、請求項1から14のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項16】
前記癌が、肉腫、甲状腺癌、多形性膠芽腫(GBM)、卵巣癌、基底細胞癌、MSI-H固形腫瘍、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、子宮頸癌、食道癌、多発性骨髄腫(MM)、膵臓癌、髄膜腫、子宮内膜癌、胸腺癌、妊娠性絨毛性新生物、リンパ腫、腹膜癌腫症、マイクロサテライト安定(MSS)結腸直腸癌及び消化管間質腫瘍(GIST)からなるリストから選択される、請求項1から14のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項17】
前記癌が、頭頸部癌、胃癌、食道癌、NSCLC、中皮腫、子宮頸部癌、甲状腺癌及び軟部肉腫からなるリストから選択され;好ましくは、前記頭頸部癌は、SCCHNである、請求項1から14のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項18】
前記癌が、頭頸部癌、好ましくはSCCHNである、請求項1から14のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項19】
SCCHN疾患部位が、口腔、中咽頭、喉頭又は下咽頭である、請求項18に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項20】
前記方法が、前記抗体分子を前記患者の体重1kgあたり10mgの用量で週1回、前記患者に投与することを含む、請求項18又は19に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【請求項21】
前記抗体分子が、静脈内投与される、請求項1から20のいずれか1項に記載の使用のための抗体分子又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)に結合する抗体分子の投与のための投与計画並びにヒト患者の癌の処置におけるそれらの医学的使用に関する。本発明は、抗体に対するヒト患者の応答の可能性を予測するための予後閾値をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌は、満たされていない重要な必要性が依然として存在する複雑な疾患である。宿主の免疫系と腫瘍との相互作用は、近年、非臨床的及び臨床的評価が集中している分野である。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍細胞の増殖を制御する能力を有し、増加したTILを有する患者は、良好な予後を有するという新たな臨床的証拠がある。全体として、T細胞は、癌に対する免疫防御において主要な役割を果たし、T細胞活性化の調節は、腫瘍細胞が免疫抑制の重要なメディエーターとして機能する、T細胞、腫瘍細胞及び腫瘍微小環境間の刺激性及び阻害性のリガンド-受容体相互作用の複雑な関係によって媒介される。
【0003】
腫瘍細胞の免疫抑制活性に対抗する免疫チェックポイント阻害剤の開発は、臨床腫瘍学の実践において急速に成長している処置の手段を代表するものであり、PD-1/PD-L1(PD-1リガンド)を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は、抗腫瘍活性のいくつかの注目すべき証拠を示している。単剤療法で処置された患者の約20%は、深く持続的な応答で臨床的利益を達成する。しかし、大多数の患者は、癌免疫療法に対する一次耐性、適応耐性及び獲得耐性を克服するための組み合わせアプローチを要するようであり、ここで、一次耐性は、処置に応答せず、したがって進行する癌として分類され、獲得耐性は、初期に治療に応答するが、最終的に進行する癌として分類され、適応耐性は、一次耐性又は獲得耐性として臨床的に発現し得る、治療に対する耐性メカニズムを進化させる癌として分類されている(Sharma et al., 2017)。PD-1/PD-L1療法に対する耐性の確立は、環境的及び遺伝的要因、個々の病歴及び以前の療法の効果を含めて複雑且つ多因子的である(Sharma et al., 2017)。
【0004】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、免疫チェックポイント阻害剤に対する一次耐性及び潜在的な獲得耐性の主要なメディエーターの1つであり、抗PD-1/PD-L1療法に対して再発性又は難治性である、高度に前処置された進行性黒色腫患者を対象とした最初の抗体組み合わせ試験では、この集団におけるPD-(L)1耐性の克服の初期の証拠が示された。
【0005】
単一特異性抗PD-1/PD-L1抗体及び抗LAG-3抗体の同時投与に対する優れたアプローチは、国際公開第2017/220569 A1号(F-star Delta Limited)に記載されており、これは、癌の処置のための、抗体FS118を含む、PD-L1及びLAG-3の両方の結合部位を包含する二重特異性抗体を開示している。FS118は、Fc領域にLAG-3抗原結合部位及びPD-L1のFab結合部位を含む二重特異性IgG1(148,247Da)モノクローナル抗体であり、これは、ヒトPD-L1(hPD-L1)及びヒトLAG-3(hLAG-3)の両方を比較的高い親和性で標的とし、LAG-3の遮断及びT細胞活性化のPD-L1媒介性阻害を示す。この特徴、並びにLAG-3及びPD-L1の二重標的化を介してT細胞と腫瘍細胞との間の架橋を強化する能力、並びに腫瘍微小環境内に局在化する能力は、強力な抗腫瘍活性を駆動することが予想されるFS118独自の特質である。
【0006】
具体的には、リンパ節の活性化T細胞は、LAG-3を発現し、FS118などの抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体は、リンパ節のプライミングされたLAG-3陽性T細胞に結合し、腫瘍部位に移動して、それらとともに二重特異性抗体を運ぶと予想される。腫瘍微小環境内に入ると、二重特異性抗体を運ぶT細胞は、腫瘍細胞上のPD-L1に結合して遮断できると予想される。代わりに、プライミングされたLAG-3陽性リンパ球は、既に腫瘍微小環境に浸潤している可能性がある(いわゆる「腫瘍浸潤リンパ球」又は「TIL」)。したがって、FS118などの抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体は、腫瘍微小環境内において、プライミングされたLAG-3陽性TIL(例えば、T細胞)に直接結合し得る。したがって、抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体が結合したT細胞は、LAG-3及びPD-L1/PD-1の両方のシグナル伝達に耐性があり、それにより、これらの免疫チェックポイントタンパク質を介したT細胞枯渇の誘導/維持を防ぐことが予想される。
【0007】
同様に、PD-L1の発現は、腫瘍で有意に増加するため、FS118などの抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体は、PD-L1に結合することにより、最初に腫瘍の微小環境に局在化し、集中し得る。次に、抗LAG-3部分は、腫瘍微小環境に存在するT細胞の表面に発現されるLAG-3に結合し、T細胞のLAG-3媒介性抑制を防ぐことができる。
【0008】
FS118などの抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体を使用して、T細胞と腫瘍細胞との間の接触を維持又は延長すると、これらの標的に対する個々のモノクローナル抗体の組み合わせと比較して、T細胞が良好に腫瘍抗原を認識し、活性化され、腫瘍細胞の死滅を進めることができる時間が増加する。
【0009】
FS118は、マウスLAG-3又はPD-L1と交差反応せず、及び/又はそれらに関して機能しない。マウス実験においてFS118の代理として作用することができるマウス抗LAG-3/PD-L1(mLAG-3/mPD-L1;FS18m-108-29/S1、LALA変異を有する)二重特異性抗体が記載されている。癌の同系マウスモデルでは、mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体は、1つ/複数の抗体を3日間隔で3回投与した場合、それぞれ同じLAG-3及びPD-L1結合部位を含む2つの抗体分子の組み合わせ投与と比較して強化された又は同様の腫瘍増殖抑制ができることが示された。抗mLAG-3/mPD-L1抗体は、9匹中7匹のマウスで腫瘍増殖を防ぐことができることも示された一方、同じLAG-3及びPD-L1結合部位を含む2つの抗体分子の組み合わせ投与は、試験した動物のいずれにおいても腫瘍増殖を妨げなかった(国際公開第2017/220569号;P2399 A LAG-3/PD-L1 mAb2 can overcome PD-L1-mediated compensatory upregulation of LAG-3 induced by single-agent checkpoint blockade, Faroudi et al., American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2019, 29 March - 03 April 2019, Atlanta, Georgia, USA)。
【0010】
その腫瘍阻害活性に加えて、FS118代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体がマウス腫瘍モデルで用量応答を示し、より高い用量(1mg/kgから20mg/kg)が一般的に腫瘍体積の減少と相関しているという初期の兆候がある。mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体は、LAG-3を発現する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対してLAG-3抑制を誘導することも示されている一方、LAG-3発現は、代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体と同じmLAG-3及びmPD-L1結合部位を含む2つの抗体分子でマウスを処置した場合に増加した。代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体及び単剤の組み合わせの両方は、処置されたマウスの血清中の可溶性LAG-3及びPD-L1レベルを増加させることが示されている(P348 Dual blockade of PD-L1 and LAG-3 with FS118, a unique bispecific antibody, induces T-cell activation with the potential to drive potent anti-tumour immune responses, Journal for ImmunoTherapy of Cancer 20175 (Suppl 2): 87;Abstract 2719: Dual blockade of PD-L1 and LAG-3 with FS118, a unique bispecific antibody, induces CD8+ T-cell activation and modulates the tumour microenvironment to promote antitumourimmune responses, Cancer Research, July 2018 Volume 78, Issue 13 Supplement;P2399 A LAG-3/PD-L1 mAb2 can overcome PD-L1-mediated compensatory upregulation of LAG-3 induced by single-agent checkpoint blockade, Faroudi et al., American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2019, 29 March - 03 April 2019, Atlanta, Georgia, USA)。
【0011】
しかし、FS118代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体に関連するデータは、FS118分子自体がヒトで治療的に有効であることを強く示しているが、使用されるマウスモデルは、ヒトにおける使用のための特定の治療的用量を予測することに関連する欠点がある。特に、代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体は、マウスにおける強力な免疫原性応答及び抗薬物抗体(ADA)の産生を自然に誘発するヒトIgG1骨格を有する。したがって、当業者は、マウスで使用される有効量がNHP及び最終的にヒトで有効であることを合理的に予想しないであろう。
【0012】
ヒト患者又は非ヒト霊長類における、FS118を含むLAG-3/PD-L1抗体の挙動に関するデータ(投与量を含む)は、これまで入手可能でなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の記載
FS118は、LAG-3及びPD-L1の両方に結合する二重特異性抗体であり、上記の背景の節で説明されているように、単一特異性抗PD-L1及びLAG-3抗体と比較して独自の方法でその抗腫瘍効果を媒介することが予想される。FS118の二重特異性、四価の性質及び結果として生じる、単一特異性、二価抗体と比較した結合の化学量論における違い並びにFS118の作用機序の予想される違いを考慮すると、ヒトの単一特異性抗PD-L1及び抗LAG3抗体に使用される用量レベル及び投与スケジュールを使用してFS118を投与できるかどうかは、不明であった。
【0014】
アベルマブ、デュルバルマブ及びアテゾリズマブなどのヒト患者の癌処置に承認された抗PD-L1抗体は、それぞれ800mg(固定用量)又は10mg/kg(2週間に1回)、10mg/kg(2週間に1回)及び1200mg(3週間に1回)(標準的な100kgの患者では約12mg/kgに相当)の用量で癌患者に投与される。抗LAG3モノクローナル抗体レラトリマブ(relatlimab)と、抗PD1モノクローナル抗体ニボルマブとの組み合わせは、現在、第I相臨床試験で試験されており、4週間に1回投与される。レラトリマブ処置のみも、抗体が2週間ごとに投与される第I相試験で評価されている。
【0015】
マウス実験においてFS118の代理として作用することができるマウスLAG-3/PD-L1(mLAG-3/mPD-L1;FS18m-108-29/S1、LALA変異を有する)二重特異性抗体は、抗体が同じ投与量レベル(1mg/kg、3mg/kg及び10mg/kg)で同じ投与スケジュール(3回投与、3日間隔)に従って投与された場合、mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体と同じmLAG-3及びmPD-L1結合部位を含む2つの単一特異性抗体分子と比較して、同系マウス腫瘍モデルにおいて優れた又は類似の抗腫瘍効果を示した。しかし、代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体は、マウスにおける強力な免疫原性応答及び抗薬物抗体(ADA)の産生を自然に誘発するヒトIgG1骨格を有する。したがって、マウスで使用される有効量が非ヒト霊長類(NHP)及び最終的にヒトで有効であるかを予測することはできなかった。
【0016】
mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体のPKをマウスで評価した場合(1、3、10及び20mg/kgで)、本発明者らは、驚くべきことに、mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体が、mLAG-3/mPD-L1抗体と同じmPD-L1結合部位を含む単一特異性抗体よりも早い速度で血清から除去されることを見出した。mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体の不飽和クリアランスは、mPD-L1結合と、対照の抗mPD-L1 mAbと比較したCH3ドメインの許容残基の標的特異的変化との組み合わせの結果であるように見えることがさらに示されている。(実施例1)。
【0017】
本発明者らによって得られたマウスPKデータをマウスにおける抗腫瘍有効性データと組み合わせることにより、本発明者らは、6μg/mL以上のマウス代理mAbへの曝露(Cmax)がマウスにおける抗腫瘍有効性に必要であることと、驚くべきことに、投与期間を通してこのレベルの曝露を維持する必要がなかったこととを見出した。しかし、ADA形成が発生しているように見えた(実施例1)。
【0018】
カニクイザルでは、単回投与(4mg/kg)PK試験、非医薬品安全性試験実施基準(GLP)用量範囲所見(DRF)試験(4週間にわたり週1回、10、50、200mg/kgの静脈内投与)及び4週間のGLP毒性試験(60及び200mg/kg)での週2回の静脈内反復投与から、FS118は、単一特異性抗hPD-L1 mAbよりも早く除去されることが見出された(実施例1)。
【0019】
投与期間を通して10μg/ml以上のFS118血漿レベルを維持することは、PD-L1の捕捉を維持するのに十分であり、カニクイザルのPD-L1抑制及び免疫薬理学を推測することによって十分であることがわかった。これらの研究はまた、FS118が高用量でも十分に許容されることを示し、高用量がヒトでも十分に許容されることを示した。マウスと同様に、ADA形成も観察された(実施例1)。
【0020】
したがって、マウス及びカニクイザルのPK研究から得られた結果は、予想外にも、それぞれの単一特異性抗PD-L1抗体と比較したFS118及びFS18m-108-29AA/S1のクリアランス速度にも関わらず、用量間で観察された非常に低い抗体Cトラフレベルが、それぞれ持続的な抗腫瘍及び薬力学的応答を提供するのになお十分であったことを示した。それにも関わらず、マウス及びカニクイザルにおいてADA形成が観察され、これは、これらの動物モデルには、観察された結果からヒトへの外挿に関して制限があったことを示している。
【0021】
その後、以前の抗PD-1/PD-L1療法以降に進行した進行性悪性腫瘍を有する患者(研究対象)におけるFS118の安全性、忍容性、薬物動態及び活性に関する第I相用量漸増及びコホート拡大のヒトでの最初の研究を設計し、開始した。安全性を評価するために、単一の患者コホートに800μg、2400μg、0.1mg/kg、0.3mg/kg及び1.0mg/kgのFS118を投与した。第I相試験の用量漸増部分では、患者に3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgのFS118を投与した。全ての用量は、週1回(すなわち1週間あたり1回)投与され、そのため、投与頻度は、マウス及びカニクイザルのPKデータのみに基づいて当初必要と考えられていたよりも低かった(実施例1及び2)。
【0022】
第I相試験の最初の24人の対象(43人の患者に増加)からの中間結果は、最大観察濃度(Cmax)が、カニクイザル試験から予測されたCmaxと一致していることを確認したが、驚くべきことに、FS118のクリアランス速度は、予測よりも高く、AUC(濃度対時間曲線下の面積)は、予想よりも30%低かった。これは、初めにヒトにおいてより高用量のFS118が必要であることを示唆していた可能性がある。しかし、クリアランス速度が当初の予測よりも速いにも関わらず、治療効果を示すより長期の薬力学的効果が観察された(実施例2)。
【0023】
特に、FS118は、週1回投与される3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの用量で可溶性LAG-3(sLAG-3)レベルの持続的な増加及び持続的なLAG-3受容体占有を誘導することが示された。sLAG-3は、MHCIIに結合することにより、マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞を刺激してT細胞応答を活性化し、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を強化することが報告されており、それによって抗腫瘍免疫応答を増強することが予想される。さらに、sLAG3レベルは、マウスの腫瘍増殖抑制と関連していることが以前に示されており、これは、sLAG3レベルの増加が治療効果を示すことを示している。初期の結果は、sPD-L1レベルもFS118処置後に増加したことを示唆した(実施例2)。
【0024】
したがって、第I相試験で採用された最初の24人の対象(43人の患者に増加)からの中間結果は、驚くべきことに、
(i)FS118をヒト癌患者に週1回3mg/kgから20mg/kgの用量で投与すると、持続的な薬力学的応答が得られ、これは、患者の血清からのFS118の予測よりも速いクリアランス速度にも関わらず、抗腫瘍効果と相関すると予想されること、及び
(ii)投与間隔全体にわたるFS118曝露は、ヒト患者における薬力学的効果に必要でなかったこと
を示した。
【0025】
さらに、進行中の第I相試験の最初の結果は、(これは、試験の主要目的ではないが)癌の処置におけるFS118の有効性の初期の直接的な証拠を提供した。より具体的には、2019年5月までに、少なくとも1回の「研究中」スキャンが報告された14人の患者のうちの5人が何らかの安定性疾患を示した。2019年8月までに、これは、22人中11人の患者に増加し、2020年4月までに30人中17人の患者に増加した(実施例2)。
【0026】
第I相試験からのデータは、将来の試験のための用量選択を導くために分析された(実施例6)。第I相の最良の全体的応答(BOR/iBOR)データのベイズ分析では、10mg/kg又は20mg/kgのFS118を週1回投与した場合、3mg/kgのFS118を週1回投与した場合よりも、患者がBOR/iBORとして安定性疾患を示す可能性が高いと推定された。3mg/kgのFS118を週1回投与された患者は、10mg/kg又は20mg/kgのFS118を週1回投与された患者と比較して抗薬物抗体のレベルも高かった。したがって、潜在的な免疫原性及び毒性を最小限に抑えるという観点から、FS118を10mg/kgから20mg/kgで週1回投与することが好ましい。三量体複合体形成の薬物動態/薬力学的モデリング及びシミュレーションは、三量体LAG3:FS118:PD-L1複合体濃度が、生体内分布係数が10%であると仮定して、週1回、10mg/kgのFS118の用量で最高になると予想されることをさらに示した。より高い三量体複合体形成は、T細胞の活性化及び腫瘍増殖の阻害につながると仮定されている。週1回、3mg/kgの低用量を投与された患者は、安定性疾患を示したが(表8)、有効性の増加並びに毒性及び免疫原性の低下の予想から、週1回、10mg/kgから20mg/kgのFS118の投与が好ましい。週1回、10mg/kgのFS118など、この範囲の下限の投与量は、T細胞の過剰刺激、したがってT細胞の枯渇のリスクを低減し、それにより持続的な治療効果の可能性を高め、処置のコストを削減すると考えられるために特に好ましい。
【0027】
FS118抗体は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む。
【0028】
したがって、一態様において、本発明は、ヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、
配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を患者の体重1kgあたり少なくとも3mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、抗体分子を提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、ヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子を患者に投与することを含み、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を患者の体重1kgあたり少なくとも3mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、ヒト患者の癌を処置するための医薬の製造における、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子の使用であって、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
処置は、抗体分子を患者の体重1kgあたり少なくとも3mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、使用を提供する。
【0031】
FS118は、患者の体重1kgあたり少なくとも4mg(mg/kg)、少なくとも5mg/kg、少なくとも6mg/kg、少なくとも7mg/kg、少なくとも8mg/kg、少なくとも9mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも11mg/kg、少なくとも12mg/kg、少なくとも13mg/kg、少なくとも14mg/kg、少なくとも15mg/kg、少なくとも16mg/kg、少なくとも17mg/kg、少なくとも18mg/kg、少なくとも19mg/kg又は少なくとも20mg/kgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも10mg/kgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも20mg/kgの用量で患者に投与される。少なくとも1mg/kgの用量でのFS118の投与などの他の用量も企図される。
【0032】
加えて又は代わりに、FS118は、最大10mg/kg、最大11mg/kg、最大12mg/kg、最大13mg/kg、最大14mg/kg、最大15mg/kg、最大16mg/kg、最大17mg/kg、最大18mg/kg、最大19mg/kg又は最大20mg/kgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、最大10mg/kgの用量で投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、最大20mg/kgの用量で投与される。
【0033】
したがって、FS118は、1mg/kgから20mg/kg、3mg/kgから20mg/kg又は10mg/kgから20mg/kgの用量で投与され得る。代わりに、FS118は、1mg/kgから10mg/kg又は3mg/kgから10mg/kgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、3mg/kgから20mg/kgの用量、より好ましくは、10mg/kgから20mg/kgの用量で投与される。
【0034】
一実施形態において、FS118は、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg又は20mg/kgの用量で患者に投与される。例えば、FS118は、3mg/kgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、10mg/kgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、20mg/kgの用量で患者に投与される。
【0035】
FS118は、上記のようにキログラム(kg)単位の患者の体重に基づいて計算された用量で患者に投与され得る。したがって、10mg/kgの用量を受け、且つ体重が70kgの患者は、700mgのFS118の用量を投与されることになる。代わりに、FS118は、固定用量、すなわち患者の個々の体重に基づかない用量で患者に投与され得る。FS118の適切な固定用量は、70kg、75kg、80kg、85kg、90kg、95kg又は100kgなど、患者集団の患者の平均体重に基づいて計算できる。好ましい実施形態において、FS118の固定用量は、患者の平均体重として70kgに基づいて計算される。代替的な好ましい実施形態において、FS118の固定用量は、患者の平均体重として80kgに基づいて計算される。さらに好ましい実施形態において、FS118の固定用量は、患者の平均体重として100kgに基づいて計算される。
【0036】
したがって、患者の平均体重を100kgと仮定して、本発明は、以下を提供する。
【0037】
ヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、
配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を少なくとも300mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、抗体分子。
【0038】
ヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子を患者に投与することを含み、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を少なくとも300mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、方法。
【0039】
ヒト患者の癌を処置するための医薬の製造における、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子の使用であって、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
処置は、抗体分子を少なくとも300mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、使用。
【0040】
したがって、患者の平均体重を100kgと仮定すると、FS118は、代わりに、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1000mg、少なくとも1100mg、少なくとも1200mg、少なくとも1300mg、少なくとも1400mg、少なくとも1500mg、少なくとも1600mg、少なくとも1700mg、少なくとも1800mg、少なくとも1900mg又は少なくとも2000mgの用量で患者に投与され得る。例えば、FS118は、少なくとも300mgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも1000mgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも2000mgの用量で患者に投与される。少なくとも100mgの用量でのFS118の投与などの他の用量も企図される。
【0041】
加えて又は代わりに、FS118は、患者の平均体重を100kgと仮定すると、最大1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg又は2000mgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、最大1000mgの用量で投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、最大2000mgの用量で投与される。
【0042】
したがって、FS118は、患者の平均体重を100kgと仮定すると、100mgから2000mg、300mgから2000mg又は1000mgから2000mgの用量で投与され得る。代わりに、FS118は、100mgから1000mg又は300mgから1000mgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、300mgから2000mgの用量、より好ましくは、1000mgから2000mgの用量で投与される。
【0043】
例えば、FS118は、患者の平均体重を100kgと仮定すると、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg又は2000mgの用量で患者に投与され得る。例えば、FS118は、300mgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、1000mgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、2000mgの用量で患者に投与される。
【0044】
FS118の代替的な固定用量及び固定用量範囲は、70kg、75kg、80kg、85kg、90kg又は95kgなど、特に70kg又は80kgの、患者集団の代替的な平均体重を使用して計算でき、本発明に従ってヒト癌患者に投与できる。
【0045】
例えば、患者の平均体重を70kgと仮定して、本発明は、以下を提供する。
【0046】
ヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、
配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を少なくとも210mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、抗体分子。
【0047】
ヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子を患者に投与することを含み、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、抗体分子を少なくとも210mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、方法。
【0048】
ヒト患者の癌を処置するための医薬の製造における、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子の使用であって、
抗体分子は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
処置は、抗体分子を少なくとも210mgの用量で週1回、患者に投与することを含む、使用。
【0049】
したがって、患者の平均体重を70kgと仮定すると、FS118は、代わりに、少なくとも280mg、少なくとも350mg、少なくとも420mg、少なくとも490mg、少なくとも560mg、少なくとも630mg、少なくとも700mg、少なくとも770mg、少なくとも840mg、少なくとも910mg、少なくとも980mg、少なくとも1050mg、少なくとも1120mg、少なくとも1190mg、少なくとも1260mg、少なくとも1330mg又は少なくとも1400mgの用量で患者に投与され得る。例えば、FS118は、少なくとも210mgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも700mgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、少なくとも1400mgの用量で患者に投与される。
【0050】
加えて又は代わりに、FS118は、患者の平均体重を70kgと仮定すると、最大700mg、770mg、840mg、910mg、980mg、1050mg、1120mg、1190mg、1260mg、1330mg又は1400mgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、最大700mgの用量で投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、最大1400mgの用量で投与される。少なくとも70mgの用量でのFS118の投与などの他の用量も企図される。
【0051】
したがって、FS118は、患者の平均体重を70kgと仮定すると、70mgから1400mg、210mgから1400mg又は700mgから1400mgの用量で投与され得る。代わりに、FS118は、70mgから700mg又は210mgから700mgの用量で投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、210mgから1400mgの用量、より好ましくは、700mgから1400mgの用量で投与される。
【0052】
例えば、FS118は、患者の平均体重を70kgと仮定すると、210mg、280mg、350mg、420mg、490mg、560mg、630mg、700mg、770mg、840mg、910mg、980mg、1050mg、1120mg、1190mg、1260mg、1330mg又は1400mgの用量で患者に投与され得る。例えば、FS118は、210mgの用量で患者に投与され得る。好ましい実施形態において、FS118は、700mgの用量で患者に投与される。代替的な好ましい実施形態において、FS118は、1400mgの用量で患者に投与される。
【0053】
さらなる代替として、FS118は、用量間で少なくとも0.1~10μg/mLの平均トラフ血漿濃度(Cトラフ)を達成するのに十分な用量で患者に投与され得る。理論に拘束されることを望むものではないが、これらのCトラフレベルは、インビトロでのヒト一次細胞機能アッセイにおけるFS118のEC50と相関しており、したがってFS118の薬理学的に活性なレベルを表している可能性がある。
【0054】
少なくとも10μg/mLの平均トラフ血漿濃度血漿濃度は、PD-L1の継続的な阻害を提供すると予想される。
【0055】
FS118が患者に週1回投与される場合、FS118の用量は、7日間又は8日間で時間的に分離され得る。当技術分野で理解されるように、用量間の時間は、ある程度変化し得、各用量は、正確に同じ時間で分離されない。これは、多くの場合、主治医の裁量下で指示される。したがって、FS118の用量は、約7日間又は8日間などの臨床的に許容可能な時間範囲によって時間的に分離され得る。
【0056】
FS118は、3週間の処置サイクルで患者に投与され得る。
【0057】
FS118は、好ましくは、静脈内注射によって患者に投与される。
【0058】
本発明に従って処置される癌は、好ましくは、FS118以外の1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による前処置を受けている。
【0059】
本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置に対して、(i)抵抗性であり得るか、(ii)処置中若しくは処置後に再発したものであり得るか、又は(iii)応答性であり得る。好ましい実施形態において、本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118以外)による以前の処置中又は処置後に再発したものである。免疫チェックポイント阻害剤は、好ましくは、PD-1又はPD-L1阻害剤であり、より好ましくは抗PD-1又は抗PD-L1抗体である。1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118以外)による以前の処置は、単独で又は1つ以上の追加の治療剤(例えば、1つ以上の化学療法剤)と組み合わせて投与されたものであり得る。
【0060】
本発明者らは、驚くべきことに、FS118処置の結果として、長寿命の疾患制御、すなわち持続的な疾患制御を経験する可能性が高い癌患者のサブグループを特定した。このサブグループの患者は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法に対して部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍を有する患者である。したがって、これらの腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対して「獲得耐性表現型」を有すると見なされる。抗PD-1又は抗PD-L1療法に対して完全応答を示した患者もこのサブグループに入ると予想される。腫瘍が抗PD-1又は抗PD-L1療法などの抗癌療法による処置中に完全応答、部分応答、安定性疾患又は進行性疾患を示すかどうかは、RECIST 1.1基準(Eisenhauer, 2009)又はiRECIST基準(Seymour, 2017)、好ましくはRECIST1.1基準に従って評価することができる。これには、患者の腫瘍のスキャン(例えば、MRIスキャン)の取得及び腫瘍病変のサイズ/体積の測定が含まれ得る。本明細書で獲得耐性を定義する目的で、例えば患者が、安定性疾患(又は部分応答若しくは完全応答)を示すと分類された最初のスキャンに続いて、進行性疾患を示すと分類された後のスキャンを行った場合、患者は、進行性疾患を示すスキャンが得られるまでの期間、安定性疾患(又は部分応答又は完全応答)を示したと仮定される。換言すれば、獲得耐性表現型は、(a)以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法に対する完全応答若しくは部分応答の最良の全体的応答(BOR)を有したか、又は(b)最良の全体的応答(BOR)として安定性疾患を有し、抗PD-1若しくは抗PD-L1療法で3ヶ月を超えて処置された、腫瘍として定義され得る。BORなどの臨床エンドポイントは、RECIST 1.1基準(Eisenhauer, 2009)又はiRECIST基準(Seymour, 2017)、好ましくはRECIST1.1基準に従って定義され得る。
【0061】
対照的に、3ヶ月以内に安定性疾患を示した腫瘍(したがって安定性疾患を示さず、処置の開始から進行性の疾患を示した腫瘍を含む)を有する患者は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法を受けている間(換言すると、進行性疾患のBORを有する腫瘍を含む、安定性疾患のBORを有し、3ヶ月以内に処置された腫瘍)、長寿命の疾患制御を経験せず、したがって、これらの腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対して「一次耐性表現型」を有すると見なされる。以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍を有する患者は、抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性を有すると称され得る。同様に、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する一次耐性表現型を有する腫瘍を有する患者は、抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する一次耐性を有すると称され得る。以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法は、単独で又は1つ以上の追加の治療剤(例えば、1つ以上の化学療法剤及び/又は免疫療法剤)と組み合わせて投与されたものであり得る。
【0062】
具体的には、FS118処置を18週間以上完了した全ての患者は、BORが不明であった1人の患者を除いて、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対して獲得耐性表現型を有する腫瘍を有することが示された(図7及び8)。しかし、BORが不明な後者の患者は、以前の抗PD-1療法を、1年を超えて継続していたことが知られており、したがって、この患者は、獲得耐性を有すると分類されるBORを有していたと考えられる。以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する一次耐性表現型を有する腫瘍を有する患者のいずれも、第I相試験で17週間を超えるFS118処置を受けていなかった(図7及び8)。以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍を有する患者におけるFS118療法に対する応答の寿命延長の可能性の増加は、投与されたFS118の用量及び腫瘍タイプとは無関係に観察された(図7から9)。したがって、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する腫瘍の耐性状態は、FS118療法に対する持続的応答の可能性を示している。具体的には、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する一次耐性表現型を有する腫瘍よりも高い、FS118による処置に応答する可能性、特に18週間以上、19週間以上又は20週間以上、好ましくは18週間以上のFS118療法に応答する可能性を有する。したがって、FS118による処置への応答は、例えば、18週間以上、19週間以上又は20週間以上、好ましくは18週間以上にわたり、好ましくは安定性疾患、FS118処置に対する部分応答又は完全応答を示す腫瘍を指す。
【0063】
処置計画を含む以前のPD-(L)1での疾患進行後のPD-(L)1抗体による患者の再処置は、推奨されておらず、歴史的に、患者は、そのような治療から利益をほとんど得られていないため、本発明者らの上記の知見は、特に重要である(Fujita et al., Anticancer Res.2019;Fujita et al., Thoracic Cancer, 2019;Martini et al., J. Immunotherapy Cancer, 2017)。
【0064】
したがって、さらなる態様において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、抗体分子を提供する。
【0065】
本明細書で言及される場合、腫瘍は、腫瘍病変であり得る。
【0066】
本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、患者の腫瘍が抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有するかを決定することを含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有すると決定された腫瘍を抗体で処置する、抗体分子も提供する。
【0067】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を患者に投与することを含み、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法も提供される。
【0068】
さらに、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を患者に投与することを含み、
患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有するかを決定することを含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有すると決定された腫瘍を抗体で処置する、方法が提供される。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置するための医薬の製造における、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子の使用であって、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、使用を提供する。
【0070】
さらなる別の実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けた癌患者が、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子による処置に応答する可能性があるかを決定する方法であって、
患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型又は一次耐性表現型を有するかを決定することを含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、一次耐性表現型を有する腫瘍よりも高い、抗体による処置に応答する可能性を有し;
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
一次耐性表現型を有する腫瘍は、進行性疾患の最良の全体的応答を有する腫瘍を含む、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月以下の間安定性疾患を達成した腫瘍である、方法を提供する。
【0071】
応答の可能性は、好ましくは、例えば18週間以上、19週間以上又は20週間以上、好ましくは18週間以上にわたり、腫瘍が安定性疾患、FS118による処置に対する部分応答又は完全応答を示す可能性を指す。
【0072】
本発明は、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子に対する癌患者の応答の可能性を予測する方法であって、
患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定された場合、患者は、抗体に応答する可能性が高いと予測され、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法も提供する。
【0073】
別の実施形態において、本発明は、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子による処置のために、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けた患者を選択する方法であって、
患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型又は一次耐性表現型を有するかを決定することを含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
一次耐性表現型を有する腫瘍は、進行性疾患の最良の全体的応答を有する腫瘍を含む、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月以下の間安定性疾患を達成した腫瘍であり;
抗体による処置のために、獲得耐性表現型を有すると決定された腫瘍を有する患者を選択する、方法を提供する。
【0074】
抗PD-1又は抗PD-L1療法は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ又はアテゾリズマブによる処置を含むが、これらに限定されない抗PD-1又は抗PD-L1抗体(FS118など、PD-L1及びLAG-3の両方に結合する抗体以外)による処置を指し得る。
【0075】
本発明者らは、獲得耐性表現型を有する腫瘍において、FS118による処置前にPD-L1に対して陽性染色を示した腫瘍細胞のパーセンテージが、FS118処置の結果としての疾患制御の寿命と正の相関を示したことをさらに示した。獲得耐性群では、FS118で30週間以上にわたって処置された3人の患者はまた、ベースラインでPD-L1の陽性染色を示した腫瘍細胞の割合が最も高かった。抗PD-1療法又は抗PD-L1療法に一次耐性を有する患者では、そのような相関関係が見られなかった(図10)。これらの結果は、15%以上、20%以上又は25%以上、好ましくは15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍がFS118による処置に応答する可能性がより高いことを示す。例えば、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍は、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上又は19%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含み得る。
【0076】
腫瘍サンプルにおけるPD-L1陽性腫瘍細胞のパーセンテージを決定するための方法は、当技術分野で公知であり、抗PD-L1抗体で腫瘍サンプルを染色し、腫瘍細胞への抗体の結合を直接的又は間接的に検出することを含み得る。PD-L1陽性腫瘍細胞のパーセンテージは、腫瘍細胞の数を例えば5高倍率視野において数え、及び抗体が結合している前記腫瘍細胞のパーセンテージを決定することにより決定することができる。
【0077】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルは、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むと決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、抗体分子を提供する。
【0078】
本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み;
方法は、
(i)患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有するか;及び
(ii)抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルが15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むか
を決定することと;
獲得耐性表現型を有すると決定され、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む腫瘍を抗体で処置することと
を含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、抗体分子も提供する。
【0079】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を患者に投与することを含み、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルは、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むと決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法も提供される。
【0080】
さらに、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を患者に投与することを含み、
(i)患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有するか;及び
(ii)抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルが15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むか
を決定することと;
獲得耐性表現型を有すると決定され、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む腫瘍を抗体で処置することと
を含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法が提供される。
【0081】
さらなる実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌を処置するための医薬の製造における、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子の使用であって、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルは、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むと決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、使用を提供する。
【0082】
さらなる別の実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けた癌患者が、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子による処置に応答する可能性があるかを決定する方法であって、
(i)患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型又は一次耐性表現型を有するか;及び
(ii)抗体による処置前に患者から得られた腫瘍サンプルのサンプルが15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むか
を決定することを含み、
少なくとも15%のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む獲得耐性表現型を有する腫瘍は、一次耐性表現型を有する腫瘍又は15%未満のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む獲得耐性表現型を有する腫瘍よりも高い、抗体による処置に応答する可能性を有し;
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
一次耐性表現型を有する腫瘍は、進行性疾患の最良の全体的応答を有する腫瘍を含む、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月以下の間安定性疾患を達成した腫瘍である、方法を提供する。方法は、処置のために、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有すると決定され、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む腫瘍を選択すること、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有すると決定され、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む癌を有する腫瘍を抗体で処置することをさらに含み得る。
【0083】
本発明は、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子に対する癌患者の応答の可能性を予測する方法であって、
患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルが15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むと決定されている場合、患者は、抗体に応答する可能性が高いと予測され、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法も提供する。
【0084】
別の実施形態において、本発明は、PD-L1及びLAG-3に結合し、且つ配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子による処置のために、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けた患者を選択する方法であって、
(i)患者の腫瘍が以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型又は一次耐性表現型を有するか;及び
(ii)抗体による処置前に患者から得られた腫瘍のサンプルが15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含むか
を決定することと;
抗体による処置のために、獲得耐性表現型を有すると決定され、15%以上のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む腫瘍を有する患者を選択することと
を含み、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍であり、及び
一次耐性表現型を有する腫瘍は、進行性疾患の最良の全体的応答を有する腫瘍を含む、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月以下の間安定性疾患を達成した腫瘍である、方法を提供する。
【0085】
本発明及び実施形態の上記の態様において、抗体は、本明細書に開示される投与スケジュール及び/又は投与経路に従ってある用量で患者に投与され得る。
【0086】
したがって、特に好ましい実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌、好ましくは頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)を処置する方法における使用のための、PD-L1及びLAG-3に結合する抗体分子であって、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含み、方法は、抗体分子を患者の体重1kgあたり10mgの用量で週1回、患者に投与することを含み、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、抗体分子を提供する。
【0087】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置を受けたヒト患者の癌、好ましくはSCCHNを処置する方法であって、治療有効量の、PD-L1及びLAG-3に結合し、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む抗体分子を患者に投与することを含み、抗体分子を患者の体重1kgあたり10mgの用量で週1回、患者に投与することを含み、
患者の腫瘍は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に関して獲得耐性表現型を有すると決定されており、
獲得耐性表現型を有する腫瘍は、以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置に対して完全若しくは部分応答を示したか、又は以前の抗PD-1若しくは抗PD-L1療法による処置を受けている間、3ヶ月を超えて安定性疾患を示した腫瘍である、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図面の簡単な説明
図1】抗PD-1/PD-L1単剤療法(左側のパネル)、抗PD-1/PD-L1及び抗LAG-3単剤療法の組み合わせ(中央のパネル)並びに二重特異性抗PD-1/PD-L1抗体FS118(右側のパネル)による腫瘍の処置後のT細胞LAG-3発現への影響を示す。
図2】抗PD-1/PD-L1療法に対して抵抗性であるか、又はその後に再発した腫瘍及び抗PD-1/PD-L1療法に応答する腫瘍に対するFS118処置の予想される効果を示す。
図3A】腫瘍移植後3、6及び9日目に10mg/kgの治験薬(マウスあたり200μg)を投与した後の平均(±SEM)腫瘍体積を示す。FS118マウス代理mAb=mLAG-3/PD-L1;FS18m-108-29AA/4420=mLAG-3/モックmAb;PD-L1 BM1 mAb=抗PD-L1 mAb;mLAG-3 BM1 mAb=抗LAG-3 mAb;IgG対照=G1AA/4420。
図3B】PKデータ-mLAG-3/PD-L1(白丸及び白三角)及び抗PD-L1 mAb(黒丸及び黒三角)の単回静脈内投与10mg/kgを示す。それぞれ丸及び三角で表される2つの異なる研究からのデータが示される。
図4】G1AA/4420(IgG対照、10mg/kg)及び抗マウスLAG-3/PD-L1 mAb FS18m-108-29AA/S1を4つの異なる用量(1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kg)で3回投与したC57BL/6マウスで皮下増殖させた、MC38同系腫瘍モデルの腫瘍体積測定値を示す。各用量は、x軸上の垂直の黒矢印で示される。平均腫瘍体積プラス又はマイナス標準誤差平均(SEM)がy軸に示される。一元配置分散分析(ANOVA)を使用して、アイソタイプ対照群(G1AA/4420)及びLAG-3/PD-L1 mAb処置群間で研究17日目の腫瘍サイズの比較を行った。群間の有意差は、テューキーの多重比較検定:***P≦0.001;****P≦0.0001を使用して決定された。
図5】NHP非GLP及びGLP PKデータ(投与後0~7日)から構築されたFS118への全身曝露を説明する2コンパートメント集団PKモデルの構造を示す。V(V1とも呼ばれる)=中心体積;V(V2とも呼ばれる)=末梢体積;CL(CL2とも呼ばれる)=交換係数;CL(CL1とも呼ばれる)=FS118クリアランス;C=血漿コンパートメント;C=組織コンパートメント。
図6】実施例2の第I相試験のヒト初回(FIH)研究設計を示す。
図7】2020年3月25日時点で完了したFS118処置の週数を耐性群及び用量に関連して示す(ダイヤ=1mg/kg、丸=3mg/kg、三角=10mg/kg、四角=20mg/kg)。本明細書で定義される抗PD-1/PD-L1療法に対する一次耐性を有する患者と比較して、本明細書で定義される抗PD-1/PD-L1療法に対する獲得耐性を有する患者間で有意差が観察され、ここで、獲得耐性を有する患者は、投与されたFS118の用量に関係なく、一次耐性を有する患者よりも平均して長い間にわたってFS118処置を継続する。
図8】FS118処置を受けている間に2019年11月27日の時点で評価可能な腫瘍スキャンを受けた、抗PD-1/PD-L1療法に対する一次又は獲得耐性を有すると分類された39人の患者のスイマープロットを示す(FS118用量順)。一次耐性を有する患者は、灰色のバーで示され、獲得耐性を有する患者は、濃い灰色のバーで示される。完了したFS118処置の週数が示される(PD=進行性疾患、SD=安定性疾患)。18週間を超えるFS118処置が完了した全ての患者(そのうちの1人は、獲得耐性表現型の腫瘍を有していた)は、安定性疾患の測定値を少なくとも1回有していた。
図9図7で提示されたものと同じデータに基づいて、2020年3月25日時点で完了したFS118処置の週数を示しているが、耐性群及び腫瘍タイプに関連している。FS118処置に対する応答の可能性は、獲得耐性表現型を有する腫瘍に関連していたが、臨床的適応(腫瘍タイプ)とは無関係であるように見える。
図10】2019年12月12日時点でFS118処置が完了した週数に対する、FS118処置前のPD-L1の陽性染色を示す腫瘍生検サンプル中の腫瘍細胞の割合(PD-L1パーセント腫瘍陽性スコア[PD-L1%TPS])を示す。A:高いベースラインPD-L1%TPSは、PD-1/PD-L1療法に対する獲得耐性を有する患者のFS118処置の長さと正の相関を示した。獲得耐性群の中でPD-L1%TPSが最も高かった3人の患者は、FS118で30週間以上処置され、FS118による疾患制御が証明された。B:抗PD-1/PD-L1療法に一次耐性を有する患者では、PD-L1%TPSとFS118処置の長さとの間に相関関係は観察されなかった。
図11】抗PD-1/PD-L1療法に対する獲得耐性を有する患者が、抗PD-1/PD-L1療法に対する一次耐性を有する患者より、FS118処置でより高い免疫細胞応答を示したことを示す。経時的な免疫細胞数の変化率(白丸:CD3T細胞、黒四角:CD4T細胞、黒三角:CD8T細胞、黒ダイヤ:NK細胞)は、FS118処置開始前のベースラインからの変化率として表される。A:患者1004-0003は、一次耐性を有する代表的な患者プロファイルである。B:患者1002-0014は、獲得耐性を有する代表的な患者プロファイルである。示されているデータは、2019年11月26日に取得された。
【発明を実施するための形態】
【0089】
詳細な説明
抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体
本発明における使用に適した抗LAG-3/PD-L1二重特異性抗体(本明細書に記載のFS118など)は、国際公開第2017/220569 A1号に記載されており、その内容は、その全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれる。FS118抗体は、配列番号1に記載の重鎖配列及び配列番号2に記載の軽鎖配列を含む。
【0090】

PD-1、そのリガンドPD-L1及びLAG-3は、免疫チェックポイントタンパク質の例である。これらのタンパク質に結合し、阻害する抗体などの分子は、集合的に免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる。単剤療法としての抗PD-1/PD-L1抗体による癌患者の処置は、T細胞上のLAG-3発現のアップレギュレーションをもたらし、抗PD-L1/PD-1療法に対する耐性をもたらすことが示されている(図1)。抗PD-1/PD-L1抗体及び抗LAG-3抗体の併用処置では、抗PD-L1/PD-1療法のみと比較して発現の増加は減少したものの、T細胞におけるLAG-3発現の増加を防ぐことはできなかった(図1)。対照的に、FS118(及びマウス代理抗体FS18m-108-29AA/S1)による処置は、T細胞LAG-3発現の低下及びsLAG-3レベルの上昇をもたらすことが示されている(図1)。したがって、FS118は、抗PD-L1/PD-1及び抗LAG-3抗体と異なる作用機序を有し、抗PD-1/PD-L1療法剤の投与中又は投与後に進行した局所進行性、切除不能若しくは転移性の固形腫瘍又は血液悪性腫瘍の患者でFS118処置を行った後、数人の患者で薬力学的応答及び安定性疾患を示した第I相試験の初期の結果が示すように、PD-L1/PD-1阻害剤に対するLAG-3を介した耐性を予防及び/又は逆転させることができる。
【0091】
理論に拘束されるものではないが、抗PD-1/PD-L1単剤療法に対して抵抗性であるか、又はその間若しくはその後に再発した腫瘍及び抗PD-1/PD-L1単剤療法に応答する腫瘍に対するFS118処置の予想される効果が図2に示される。
【0092】
1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置に抵抗性である癌は、好ましくは、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)による処置に耐性がある癌を指す。1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置中又は処置後に再発した癌は、好ましくは、前記免疫チェックポイント阻害剤による処置中又は処置後、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)に対する獲得耐性を有する癌を指す。
【0093】
具体的には、図2は、抗PD-1/PD-L1単剤療法に抵抗性であるか、又はその間若しくは後に再発し、T細胞の枯渇又は免疫抑制を示す腫瘍において、FS118処置が、T細胞表面に発現するLAG-3への結合の結果としてT細胞の枯渇/免疫抑制を逆転させ(そうでなければ免疫細胞に対する阻害性シグナルとして作用する)、LAG-3のT細胞表面の過剰発現を減少させ、可溶性LAG-3(sLAG-3)の放出を促進することにより、免疫介在性抗癌効果を増強することが予想されていることを示す。したがって、FS118は、「標準治療」免疫チェックポイント阻害剤療法に対する一次耐性又は適応耐性を有する患者を救済する能力を有するため、免疫チェックポイント遮断の臨床的利益を大幅に拡大する可能性がある。
【0094】
PD-1/PD-L1単剤療法に応答する腫瘍では、TILは、その表面にLAG-3を発現し、腫瘍は、高PD-L1であると予想される。FS118は、前記LAG-3及びPD-L1に結合することにより、抗PD-1/PD-L1単剤療法に加えて、これらの患者のT細胞活性化を増強し、抗PD-L1処置に応じたLAG-3の過剰発現を防止することが予想される。したがって、PD-L1遮断に対する耐性の発現は、抑制されることが予想される。本明細書に開示されるFS118の投与量は、薬力学的応答及び抗PD-1/PD-L1療法剤の投与中又は投与後に進行した腫瘍又は血液悪性腫瘍を有する数人の患者に安定性疾患をもたらすことが示されており、したがってPD-1/PD-L1単剤療法に応答する癌を効果的に処置することにも適していると予想される。
【0095】
免疫チェックポイント阻害剤処置に応答を示す癌は、前記効果を媒介するTILを含まなければならない。したがって、抗PD-1/PD-L1阻害剤以外の免疫チェックポイント阻害剤による処置中又は処置後に抵抗性であるか又は再発した癌は、不活性なTIL(すなわち枯渇又は免疫抑制)を含むと予想されるが、抗PD-1/PD-L1阻害剤以外の免疫チェックポイント阻害剤による処置に応答する癌は、活性化TILを含むと予想される。結果として、上記で抗PD-1/PD-L1阻害剤による処置に対して抵抗性であるか、又は再発したか、又は応答性である癌について説明したように、FS118は、抗PD-1/PD-L1阻害剤以外の免疫チェックポイント阻害剤による処置中若しくは処置後に抵抗性であるか若しくは再発したか、又は抗PD-1/PD-L1阻害剤以外の免疫チェックポイント阻害剤による処置に応答する、PD-L1を発現する癌に対して同様の効果を有することが予想される。
【0096】
したがって、好ましい実施形態において、本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)による前処置を受けている。
【0097】
したがって、本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)による処置に対して抵抗性であり得るか、又は抵抗性であると決定されていることがあり得る。代わりに、本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)による処置中又は処置後に再発したものであり得る。さらなる代替として、本発明に従って処置される癌は、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置に応答するものであるか、又は応答すると決定されたものであり得る。1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置中又は処置後の癌の再発は、好ましくは、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤による処置中又は処置後の癌の進行を指す。癌の進行の検出は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0098】
免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1、PD-L2、CTLA-4、CD80、CD86、LAG-3、B7-H3、VISTA、B7-H4、B7-H5、B7-H6、NKp30、NKG2A、ガレクチン9、TIM-3、HVEM、BTLA、KIR、CD47又はSiRPアルファ阻害剤であり得る。免疫チェックポイント阻害剤は、対象の免疫チェックポイント分子を阻害することができる抗体であり得る。好ましい実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD1/PD-L1抗体などのPD-1又はPD-L1阻害剤である。免疫チェックポイント分子を阻害することができる抗体は、当技術分野で公知であり、CTLA-4の阻害についてイピリムマブ;PD-1についてニボルマブ、ペンブロリズマブ及びセミプリマブ;並びにPD-L1についてアテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブを含む。免疫チェックポイント分子、それらのリガンド及び阻害剤は、Marin-Acevedo et al. Journal of Hematology & Oncology (2018)でレビューされている。
【0099】
本発明に従って処置される癌は、PD-L1を発現する。好ましくは、癌は、PD-L1を発現すると決定されている。さらに、本発明に従って処置される癌は、TILなどのLAG-3発現免疫細胞を含む。好ましくは、癌は、LAG-3発現免疫細胞を含むと決定されている。好ましい実施形態において、癌は、癌細胞によるPD-L1の発現及び免疫細胞の表面でのLAG-3の発現により、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤(FS118などのLAG-3/PD-L1二重特異性抗体以外)による処置に耐性がある癌であり得る。特定の実施形態において、癌細胞の表面でのPD-L1の発現及び腫瘍微小環境内の免疫細胞の表面でのLAG-3の発現は、それぞれ正常組織細胞及び活性化免疫細胞と比較して高い可能性がある。
【0100】
本発明者らは、驚くべきことに、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する腫瘍、特に以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有し、且つFS118による処置前に少なくとも15%のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む腫瘍は、FS118による処置に応答して、持続的な応答、特に持続的な安定性疾患を示す可能性が高くなることを示した。この効果は、腫瘍の種類及び投与されたFS118の投与量とは無関係に観察された。
【0101】
したがって、本発明に従って処置される癌は、好ましくは、本明細書で定義されるように、抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有する。さらにより好ましくは、本発明に従って処置される癌は、本明細書で定義されるように、抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する獲得耐性表現型を有し、癌の腫瘍は、FS118による処置前に少なくとも15%のPD-L1陽性腫瘍細胞を含む。
【0102】
本発明の抗体分子を使用して処置される癌は、頭頸部癌(頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)など)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、無痛性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、線維肉腫、腎細胞癌腫、黒色腫、膵臓癌、乳癌、多形神経膠芽腫、肺癌(非小細胞肺癌又は小細胞肺癌など)、胃癌(stomach cancer)(胃癌(gastric cancer))、膀胱癌、子宮頸癌、子宮癌、外陰癌、精巣胚細胞癌、陰茎癌、白血病(慢性リンパ性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ芽球性白血病など)、多発性骨髄腫、扁平上皮癌、精巣癌、食道癌(食道胃接合部の腺癌など)、カポジ肉腫及び中枢神経系(CNS)リンパ腫、肝細胞癌腫、上咽頭癌、メルケル細胞癌腫、中皮腫、甲状腺癌(未分化甲状腺癌など)並びに肉腫(軟部組織肉腫など)からなる群から選択され得る。これらの癌の腫瘍は、細胞表面にPD-L1を発現すること、及び/又はPD-L1及び/又はLAG-3を発現するTILなどの免疫細胞を含有することが知られているか又はそれが予想される。
【0103】
抗LAG-3抗体を使用した腎細胞癌、肺癌(非小細胞肺癌又は小細胞肺癌など)、鼻咽頭癌、結腸直腸癌、黒色腫、胃癌(stomach cancer)(胃癌(gastric cancer))、食道癌(食道胃接合部の腺癌など)、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、頭頸部癌(SCCHNなど)、白血病(慢性リンパ性白血病など、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、無痛性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)及び多発性骨髄腫の処置が臨床試験で調査され、有望な結果が示されている。したがって、本発明の抗体分子を使用して処置される癌は、頭頸部癌(SCCHNなど)、腎細胞癌、肺癌(非小細胞肺癌又は小細胞肺癌など)、鼻咽頭癌、結腸直腸癌、黒色腫、胃癌(stomach cancer)(胃癌(gastric cancer))、食道癌(食道胃接合部の腺癌など)、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、白血病(慢性リンパ性白血病など、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、無痛性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫など)又は多発性骨髄腫であり得る。
【0104】
PD-L1抗体を使用した黒色腫、結腸直腸癌、乳癌、膀胱癌、腎細胞癌、膀胱癌、胃癌、頭頸部癌(SCCHNなど)、中皮腫、肺癌(非小細胞肺癌又は小細胞肺癌など)、卵巣癌、メルケル細胞癌、膵臓癌、黒色腫及び肝細胞癌の処置も臨床試験で調査され、有望な結果が示されている。したがって、本発明の抗体分子を使用して処置される癌は、頭頸部癌(SCCHNなど)、黒色腫、結腸直腸癌、乳癌、膀胱癌、腎細胞癌、膀胱癌、胃癌、中皮腫、肺癌(非小細胞肺癌など)、卵巣癌、メルケル細胞癌、膵臓癌、黒色腫又は肝細胞癌であり得る。
【0105】
本発明の抗体分子を使用する処置に好ましい癌は、頭頸部癌(SCCHNなど)、肺癌(非小細胞肺癌など)、膀胱癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌及び肝細胞癌である。これらの癌の腫瘍は、LAG-3を発現する免疫細胞を含み、細胞表面にPD-L1を発現するか、又はPD-L1を発現する免疫細胞を含むことが知られている。
【0106】
好ましい実施形態において、癌は、頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、胃癌、食道胃接合部(GEJ)の腺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)(肺腺癌又は肺扁平上皮組織学的サブタイプなど)、黒色腫(皮膚黒色腫など)、前立腺癌、膀胱癌(膀胱尿路上皮癌など)、乳癌(トリプルネガティブ乳癌など)、結腸直腸癌(CRC;例えば、腺癌又は結腸又は直腸)、腎細胞癌(RCC)、肝細胞癌(HCC)、小細胞肺癌(SCLC)及びメルケル細胞癌からなる群から選択される。
【0107】
代替の好ましい実施形態において、癌は、甲状腺癌(好ましくは未分化甲状腺癌)、肉腫(好ましくは軟部組織肉腫)、多形性膠芽腫(GBM)、肉腫(例えば、脱分化した脂肪肉腫、未分化の多形性肉腫及び平滑筋肉腫を含む、軟部組織肉腫)、卵巣癌(例えば、卵巣の高/低悪性度の漿液性又は明細胞組織学)、基底細胞癌、MSI-H固形腫瘍、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、子宮頸癌、食道癌(例えば、食道胃接合部の腺癌(GEJ)又は食道の扁平上皮癌)、多発性骨髄腫(MM)、膵臓癌(膵臓腺癌など)、髄膜腫、甲状腺癌、子宮内膜癌(MSI-H子宮内膜癌など)、胸腺癌、妊娠性絨毛性新生物、リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)又は末梢T細胞リンパ腫など)、腹膜癌腫症、マイクロサテライト安定(MSS)結腸直腸癌及び消化管間質腫瘍(GIST)(切除不能なGISTなど)からなる群から選択される希少な癌である。
【0108】
好ましい一実施形態において、癌は、甲状腺癌、好ましくは未分化甲状腺癌である。代替的な好ましい実施形態において、癌は、肉腫、好ましくは軟部組織肉腫である。近年、肉腫腫瘍組織内の三次リンパ構造(TLS)の存在は、免疫チェックポイント遮断療法に対する応答を予測し得ることが示された(Petitprez et al., 2020)。
【0109】
別の実施形態において、処置される癌は、頭頸部癌(SCCHNなど)、胃癌、食道癌、NSCLC、中皮腫、子宮頸部癌、甲状腺癌(未分化甲状腺癌など)及び肉腫(軟部組織肉腫など)から選択され得る。
【0110】
1つの特定の実施形態において、処置される癌は、頭頸部癌、好ましくは頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)、より好ましくは口腔、中咽頭、喉頭又は下咽頭の扁平上皮癌である。癌は、再発又は転移している可能性がある。SCCHN患者の腫瘍微小環境におけるT細胞でのLAG-3及びPD-1の高レベルの共発現は、抗PD-1/PD-L1剤に対する応答性の欠如と相関しており(Hanna et al., 2018)、リンパ節の状態が陰性のSCCHN患者のTILでのLAG-3発現は、生存率低下の予後マーカーであることが示されている(Deng et al., 2016)。LAG-3及びPD-L1の両方を同時に標的とするFS118などの二重特異性抗体による処置は、本明細書に記載されているように免疫応答を再活性化し得る。頭頸部癌(SCCHNなど)は、単独で又は別の療法剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて投与される以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法(FS118以外)で既に処置され、進行しているか又はそうでない可能性がある。患者は、ヒトパピローマウイルス(HPV)について陽性又は陰性であり得る。一実施形態において、全ての患者は、HPVについて陽性である。代替的な実施形態において、全ての患者は、HPVについて陰性である。
【0111】
別の実施形態において、処置される癌は、胃癌であり、これは、高レベルのLAG-3を発現することが知られている(Morgado et al., 2018)。胃癌は、単独で又は別の療法剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて投与される以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法(FS118以外)で既に処置され、進行しているか又はしていない可能性がある。さらなる実施形態において、処置される癌は、NSCLC、好ましくはステージIVの扁平上皮及び/又はステージIIIのNSCLCである。NSCLCは、単独で又は別の療法剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて投与される以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法(FS118以外)で既に処置され、進行している可能性がある。さらなる実施形態において、処置される癌は、SCLC、好ましくは進行期のSCLCである。SCLCは、単独で又は別の療法剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて投与される以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法(FS118以外)で既に処置され、進行している可能性がある。さらに別の実施形態において、処置される癌は、卵巣癌である。卵巣癌は、プラチナ不応性であり得、及び/又は以前に免疫療法(単独で又は別の療法剤(例えば、化学療法剤)と組み合わせて投与される抗PD-1又は抗PD-L1療法(FS118以外))で処置されているか又はされていない可能性がある。
【0112】
用途が乳癌などの特定の種類の癌に言及している場合、これは、関連する組織、この場合には乳房組織の悪性形質転換を指す。異なる組織、例えば卵巣組織の悪性形質転換に起因する癌は、乳房などの身体の別の位置に転移性病変をもたらし得るが、これは、本明細書で言及される乳癌ではなく、卵巣癌である。
【0113】
本発明に従って処置される癌は、原発性癌であり得る。代わりに、癌は、転移性癌であり得る。
【0114】
投与経路
FS118は、好ましくは、静脈内注射によって患者に投与される。例えば、FS118は、静脈内ボーラス注射又は静脈内注入(例えば、連続注入ポンプを使用)によって患者に投与され得る。静脈内注入は、最大2400μgの用量で30分超、2400μgを超える用量で60分超、連続注入ポンプを使用して行われ得る。これらの投与タイプは、第I相試験(実施例2)でFS118に問題なく採用された。
【0115】
製剤
治療用途の場合、FS118抗体は、薬学的に許容され、静脈内投与などの選択された投与経路によってFS118抗体を送達するのに適切な担体とともに製剤化される。適切な薬学的に許容される担体は、希釈剤及び賦形剤などの抗体分子の静脈内投与に従来から使用されているものである。治療的使用のための薬学的に許容される担体は、製薬分野で周知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0116】
組み合わせ処置
本明細書に開示される癌を処置する方法は、単独で又は他の処置と組み合わせて患者へのFS118抗体の投与を含み得る。例えば、FS118抗体は、処置される癌に応じて、同時に若しくは連続して又は別の処置剤と組み合わせた調製物として投与され得る。例えば、FS118抗体は、処置される癌のための既知の治療剤と組み合わせて投与され得る。例えば、FS118抗体は、化学療法、抗腫瘍ワクチン接種(癌ワクチン接種とも呼ばれる)、放射線療法、免疫療法、腫瘍溶解性ウイルス、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法又はホルモン療法などの第2の抗癌療法と組み合わせて患者に投与され得る。
【0117】
FS118抗体は、化学療法、抗腫瘍ワクチン接種又は放射線療法などの抗癌療法においてアジュバントとして作用することが予想される。理論に拘束されることを望むものではないが、化学療法、抗腫瘍ワクチン接種又は放射線療法と組み合わせた患者へのFS118抗体の投与は、腫瘍関連抗原に対して、化学療法、抗腫瘍ワクチン接種又は放射線療法のみで達成されるよりも大きい免疫応答を誘発すると考えられている。
【0118】
したがって、患者の癌を処置する方法は、治療有効量のFS118抗体を化学療法剤、抗腫瘍ワクチン、放射性核種、免疫療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞又はホルモン療法剤と組み合わせて患者に投与することを含み得る。化学療法剤、抗腫瘍ワクチン、放射性核種、免疫療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞又はホルモン療法剤は、好ましくは、対象の癌のための化学療法剤、抗腫瘍ワクチン、放射性核種、免疫療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞又はホルモン療法剤、すなわち対象の癌の処置に効果的であることが示されている化学療法剤、抗腫瘍ワクチン、放射性核種、免疫療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞又はホルモン療法剤である。適切であり、対象の癌に対して効果的であることが示されている化学療法剤、抗腫瘍ワクチン、放射性核種、免疫療法剤、腫瘍溶解性ウイルス、CAR-T細胞又はホルモン療法剤の選択は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0119】
例えば、方法が治療有効量のFS118抗体を化学療法剤と組み合わせて患者に投与することを含む場合、化学療法剤は、タキサン、細胞傷害性抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、PARP阻害剤、B_RAF酵素阻害剤、HDAC阻害剤、mTOR阻害剤、アルキル化剤、プラチナ類似体、ヌクレオシド類似体、サリドマイド誘導体、抗悪性腫瘍化学療法剤などからなる群から選択され得る。タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル及びnab-パクリタキセルを含み;細胞傷害性抗生物質は、アクチノマイシン、ブレオマイシン、アントラサイクリン、ドキソルビシン及びバルルビシンを含み;チロシンキナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、PLX3397、イマチニブ、コビミチニブ、トラメチニブ、レンバチニブ、カボザンチニブ、アンロチニブ、ソラフェニブ、セディラニブ、レゴラフリニブ、シトラバチニブ、パゾピニブ及びデファクチニブを含み;PARP阻害剤は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ及びベリパリブを含み;B-Raf酵素阻害剤は、ベムラフェニブ及びダブラフェニブを含み;アルキル化剤は、ダカルバジン、シクロホスファミド、テモゾロミドを含み;プラチナ類似体は、カルボプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチンを含み;ヌクレオシド類似体は、ゲムシタビン及びアザシチジンを含み;抗悪性腫瘍剤は、フルダラビンを含む。HDAC阻害剤は、エンチノスタット、パノビノスタット及びバリノスタットを含み;mTOR阻害剤は、エベロリムス及びシロリムスを含む。本発明における使用に適した他の化学療法剤には、メトトレキサート、ペメトレキセド、カペシタビン、エリブリン、イリノテカン、フルオロウラシル及びビンブラスチンが含まれる。
【0120】
癌の処置のためのワクチン接種戦略は、いずれもクリニックで実施され、科学文献で詳細に議論されている(Rosenberg S. 2000 Development of Cancer Vaccinesなど)。これは、主に、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を伴う場合又は伴わない場合の両方において、ワクチン接種方法としてこれらの細胞を使用することにより、自己又は同種異系の癌細胞によって発現される様々な細胞マーカーに応答するように免疫系を刺激する戦略を含む。GM-CSFは、抗原提示において強い反応を引き起こし、前記戦略で使用される場合に特によく機能する。
【0121】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、以下の実験的例示を含む本開示を与えられた当業者に明らかであろう。
【0122】
本明細書で言及されている全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、2つの特定の特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示として、他方の有無に関わらず解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、まさにそれぞれが本明細書に個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBのそれぞれの特定の開示として解釈されるべきである。
【0124】
文脈上別段の指示がない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明のいずれの特定の態様又は実施形態にも限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0125】
本発明の他の態様及び実施形態は、文脈上別段の指示がない限り、「含む」という用語を「からなる」又は「から本質的になる」という用語に置き換えて上記の態様及び実施形態を提供する。
【0126】
ここで、本発明の特定の態様及び実施形態を、上記の図を参照して例として説明する。
【実施例
【0127】
実施例
実施例1:FS118のヒト初回(FIH)用量正当化及び用量漸増戦略
FS118は、2つの免疫チェックポイントタンパク質であるLAG-3及びPD-L1を同時に標的とする二重特異性抗体分子である。FS118は、抗PD-L1抗体などの単一特異性免疫チェックポイント阻害剤と多くの重要な点で異なることが示されている。これらの違いにより、ヒト患者におけるFS118の第I相試験に適切な投与量を決定するための詳細な分析が必要になった。具体的には、FS118をインビトロ及びインビボ試験で試験して、以前のPD-1/PD-L1を含む療法中又はその後に進行した進行性悪性腫瘍を有する患者におけるFS118の安全性、忍容性、薬物動態及び活性を決定するために設計された第I相ヒト試験の最適な開始用量及び用量漸増戦略を決定した(以下の実施例2を参照されたい)。
【0128】
1.1 FS118及びmLAG-3/PD-L1:非臨床試験の概要
非臨床試験には、臨床候補FS118によるC57/BL6野生型wtマウス、LAG-3ノックアウト(KO)マウス(実施例1.3.1.1を参照されたい)及び非ヒト霊長類(NHP;カニクイザル)でのPK試験が含まれた。NHP試験には、単回投与PK試験(実施例1.3.2.1を参照されたい)、抗薬物抗体(ADA)及び可溶性PD-L1(実施例1.3.2.2を参照されたい)の定量化を含む用量範囲所見毒性試験並びに同様の定量化パラメーターを使用したGLP(優良試験所基準)毒性試験(実施例1.3.2.3を参照されたい)が含まれた。
【0129】
マウスでの研究に関して、FS118は、それぞれhLAG-3及びhPD-L1と比較して、mLAG-3及びmPD-L1に結合する能力が低下している。その結果、インビボPK試験は、C57/BL6野生型マウス及びC57/BL6バックグラウンドのLAG-3ノックアウトマウスで、代理マウスmAb二重特異性抗体(mLAG-3/PD-L1[FS18-7-108-29/S1、LALA変異あり])を使用して実施された(実施例1.3.1.2を参照されたい)。このマウス代理mAbは、FS118と比較してより高い親和性でそれぞれのマウス標的タンパク質に結合する。薬理学研究の一環として、マウス代理mAbをマウスMC38同系腫瘍モデルでも使用し、投与期間中の選択した時間に曝露データを収集して、分子のPK及び有効性を評価した(実施例1.3.1.3を参照されたい)。
【0130】
これらの研究の結果は、NHP PKモデルの開発(実施例1.5.1を参照されたい)及び最高の非重度毒性用量(HNSTD;実施例1.5.2を参照されたい)の決定に反映され、それがFIH開始用量に対する正当化につながった(実施例1.5.3を参照されたい)。
【0131】
1.2 方法
1.2.1 FS118の薬物動態(PK)を理解するための、マウス及びNHPにおける血清/血漿FS118及び血清mLAG-3/PD-L1の測定
マウスPK研究では、血清FS118及びmLAG-3/PD-L1は、製造元の指示に従ってMesoscale Discovery(MSD)ヒトIgGキット(MSD Kit K150JLD-2)を使用して検出された。そのため、PKアッセイでは、「総」FS118を測定すること(すなわちsLAG-3又はsPD-L1への結合に関わらず)が予想されていた。
【0132】
最初の単回投与NHP研究(実施例1.3.2.1を参照されたい)では、血清FS118を検出するために、カスタマイズされた電気化学発光(ECL)Mesoscale Discovery(MSD)イムノアッセイが開発された。簡単に説明すると、FS118(Abcam #ab124055)を捕捉するために、MSD 96ウェルプレート(MSD #L15XB)を抗ヒトFc mAbでコーティングし、MSD遮断剤Aで室温において2時間遮断した。血清サンプルをMSD希釈液で1:10に希釈し、ウェルに加え、振とうしながら室温で2時間インキュベートした後、プレートをリン酸緩衝生理食塩水+0.05%Tweenで3回洗浄した。結合したFS118を検出するために、プレートをスルホタグ付き抗ヒトIgGとともに室温で2時間インキュベートし、前のステップと同様に洗浄し、2X MSD読み取り緩衝液を使用して検出した。読み取り値は、50μg/mLから始まる12のFS118濃度の標準曲線を使用して較正された。
【0133】
その後のNHPでの反復投与研究(実施例1.3.2.2及び1.3.2.3を参照されたい)では、血漿FS118の検出にカスタマイズされたLAG-3捕捉/PD-L1検出フォーマットを採用した。予備的なDRF毒物学研究は、ECL MSDイムノアッセイを使用した適格PKアッセイで分析された。標準物質及びサンプルは、捕捉試薬として組換えヒトLAG-3 Fcキメラ(R&D #2319-L3)でプレコートされたMSDマイクロタイタープレートの適切なウェルに追加された。洗浄ステップに続いて、ビオチン化組換えヒトPD-L1 Fc融合タンパク質(BPS, #71105)を各ウェルに添加し、インキュベートした。さらなる洗浄ステップ後、スルホタグ付きストレプトアビジン検出試薬(MSD, #R32AD)を添加し、インキュベートした。別の洗浄ステップに続いて、MSD読み取り溶液を添加し、FS118の存在を検出するためにECLを測定した。優良試験所基準(GLP)毒性試験では、血漿FS118レベルを、ビオチン化LAG-3捕捉及びAlexa Fluor(登録商標)647標識PD-L1検出を備えた検証済みのGyrosイムノアッセイプラットフォーム(Gyrolab)を使用して測定した。簡単に説明すると、サンプルをRexxip H緩衝液で1:10に希釈し、プレートに添加し、次いでGyrolab xPワークステーションにロードした。FS118は、蛍光発光により検出された。標準曲線は、Gyrolab Evaluatorソフトウェアの重み係数(1/Y)として応答を使用して、4パラメーターのロジスティック曲線を使用して回帰された。検証されたアッセイのLLOQは、39.1ng/mLであった。
【0134】
1.2.2 NHPにおける血漿抗FS118抗体(ADA)の測定
FS118に応答する抗体の存在は、標準的な電気化学的発光ブリッジングフォーマットを使用して、NHP用量範囲所見(DRF)及び4週間の優良試験所基準(4週間GLP)毒性試験(それぞれ実施例1.3.2.2及び1.3.2.3を参照されたい)で測定された。薬物干渉を制限するために、ビオチン化FS118及びスルホタグ付きFS118を酸解離サンプルとインキュベートし、標識ADA複合体をストレプトアビジンプレートに固定化した後、洗浄及びその後の検出を行った。アッセイ感度は、ポリクローナルウサギ陽性対照抗FS118抗体で75ng/mLであり、96.5μg/mL FS118の存在下で150ng/mLの陽性対照を検出できた。
【0135】
1.2.3 血漿総可溶性PD-L1(sPD-L1)の測定
FS118投与後の総sPD-L1の変化は、製造元のプロトコルに従い、Quantikine(登録商標)ヒト/カニクイザルB7-H1/PD-L1イムノアッセイ(R&D Systems #DB7H10)を使用して、NHP DRF及び4週間GLP毒性試験(それぞれ実施例1.3.2.2及び1.3.2.3を参照されたい)で定量化された。このアッセイでは、FS118は、Fc標識PD-L1の検出に干渉したが、内因性PD-L1の検出に干渉するように見えなかったため、このアッセイは、総PD-L1(すなわち遊離PD-L1及びFS118-PD-L1複合体)を測定すると想定された。このアッセイで検証されたLLOQは、25pg/mLであった。
【0136】
1.3 動物における薬物動態及び薬力学
1.3.1 マウス
1.3.1.1 野生型及びLAG-3ノックアウトマウスにおけるFS118 PK
FS118は、mLAG-3に結合するが(hLAG-3と比較して親和性が低い)、mPD-L1に結合せず、いずれの標的に対しても機能的活性を有しない。FS118は、C57/BL6野生型マウスで正常なIgG動態を有し、アイソタイプ対照抗体と同等であった(表1)。FS118は、LAG-3 KOマウスにも投与され、これらの動物において、FS118は、正常なIgG動態を示した(表1)。
【0137】
【表1】
【0138】
1.3.1.2 野生型及びLAG-3ノックアウトマウスにおけるmLAG-3/PD-L1 mAb PK
FS118とは対照的に、マウス代理mAb(mLAG-3/PD-L1)は、野生型マウスの血清からより迅速に除去された(表2)。野生型マウスに単回投与した後、マウス代理mAbのPK特性を抗PD-L1 mAb(同じIgG1フレームワーク、同じFab PD-L1結合部分)と比較した。PD-L1結合エピトープが同じであるにも関わらず、mAb構築物のクリアランス速度は、mAbのクリアランス速度よりも高かった(図3B)。初めに、これは、抗PD-L1 mAbが同じクリアランス速度を示さなかったため、mLAG-3標的結合がマウス代理mAbのクリアランス速度に関与している可能性があることを示唆した(図3B)。しかし、LAG-3 KOマウスを用いたその後の研究では、マウス代理mAbは、以前に観察されたクリアランス速度を引き続き表し(表2)、最初に、このプロセスがmAbフォーマットと組み合わせたPD-L1結合によって駆動される可能性が高いことを示唆していた。しかし、この現象は、他のmAbで観察されておらず、mAbフォーマット自体が原因ではないことを示している。したがって、代理mAbクリアランスは、抗PD-L1 mAbと比較して、PD-L1結合及びCH3ドメインの許容残基の標的特異的変化の組み合わせによる可能性がある。
【0139】
抗PD-L1 mAbと比較してマウス代理mAbのクリアランス速度が高いにも関わらず、両方の構築物がMC38同系腫瘍モデルで有意な抗腫瘍応答を達成したことにも留意されたく(図3A)、これは、観察されたクリアランス速度が長期の薬力学的効果から切り離されているように見え、抗腫瘍効果を排除しないことを示している。
【0140】
【表2】
【0141】
1.3.1.3 MC38腫瘍モデルにおけるmLAG-3/PD-L1 mAb PK
10~11週齢で体重17.73~21.23g(平均19.49g)のメスのC57/BL6マウス(The Jackson Laboratory(Street Bar Harbor, ME, USA))の動物の右肩の直下の皮下にそれぞれ1×10個のMC38マウス結腸癌細胞(National Cancer Institute(Bethesda, MD, USA))を接種した。接種の8日後(研究0日目)、接種された動物の60匹は、腫瘍サイズ(平均腫瘍体積は、約55.6mm(ばらつき2.1%)であった)に基づくマッチドペア分布法を使用して12匹の6つの群にランダム化され、処置が開始された。各群の動物は、FS18m-108-29AA/S1(0.40、0.20、0.06又は0.02mg/動物の用量、約20、10、3及び1mg/kgに相当)又は200μL/動物の固定容量での陰性対照抗体G1AA/4420(0.20mg/動物、約10mg/kgに相当)のいずれかによる腹腔内(i.p.)処置を受けた。それぞれの3用量が投与された(研究0日目、3日目及び6日目)。FS18m-108-29AA/S1を製剤緩衝液で希釈し、G1AA/4420をダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。全ての腫瘍測定値は、同じ手持ちカリパス(Fowler Ultra-Cal V電カリパス)により取得した。腫瘍の寸法(長さ及び幅)は、最初の処置日(研究0日目)に全ての動物について測定され、その後、研究53日目まで週2回(すなわち1週間に2回)測定された。腫瘍体積は、以下の式を使用して計算された:腫瘍体積(mm)=長さ×幅×π/6。
【0142】
血清サンプルは、初回投与の1時間前及び初回投与の71時間後、143時間後、148時間後、152時間後、168時間後、192時間後、240時間後及び288時間後に終末心臓出血を介して採取された。用量は、0時間、71時間及び143時間で投与された。サンプルは、-80℃で保管され、分析のためにドライアイス上で輸送された。血清代理mAb濃度は、用量ごとに定量化された。Cトラフ及びCmaxレベル及びAUCを表3に示す。2回目及び最後の投与前のトラフ濃度は、大幅に減少し、これは、ADA応答を示している。
【0143】
【表3】
【0144】
投与期間中の曝露のこの明らかな減少にも関わらず、試験した全ての用量で顕著な腫瘍縮小が観察され、G1AA/4420と比較した混合モデル分析(p≦0.05)を使用して、3、10及び20mg/kgの用量のFS18m-108-29AA/S1で観察された研究の全期間にわたって腫瘍増殖速度の有意な阻害が観察された(図4)。一元配置分散分析(ANOVA)を使用して、アイソタイプ対照群(G1AA/4420)及びFS18m-108-29AA/S1処置群間で研究17日目の腫瘍サイズの比較を具体的に行った。テューキーの多重比較検定を使用して、全ての用量群(1、3、10及び20mg/kg)でのFS18m-108-29AA/S1処置後の腫瘍サイズは、アイソタイプ対照群と比較して有意に減少したことがわかった(p<0.05)。カプランマイヤー生存分析は、FS18m-108-29AA/S1 mAbが3、10又は20mg/kgで投与された場合、MC38同系モデルのアイソタイプ対照と比較して統計的に有意な延命効果を誘導することを示した。最後の投与後に観察されたCmax及びAUC(0~3日)は、非常に変動性が高く、この研究から用量比例性に関して決定的な結論を出すことはできなかった。
【0145】
全体として、これらのデータは、マウス代理mAb≧6μg/mL(Cmax、最終用量、3mg/kg)への曝露(Cmax)が抗腫瘍効果に必要であり、投与期間全体を通してこのレベルの曝露を維持する必要がないことを示唆している。野生型マウスでは、マウス代理mAbの10mg/kg単回投与後の平均Cmaxは、82.9μg/mLであった(表2)。用量比例性を仮定すると、3mg/kgの用量で25μg/mLに相当する。ADA形成の影響の可能性があるため、この高いCmaxは、MC38担癌マウスに3mg/kgの用量で最初に投与した後に達成された可能性がある。
【0146】
1.3.2 非ヒト霊長類
NHPにおけるFS118の薬物動態-薬力学的挙動は、3つの別々の試験:(i)単回投与(4mg/kg)PK試験、(ii)非GLP DRF試験(週1回、4週間で10、50及び200mg/kgの静脈内投与)、及び(iii)4週間のGLP毒性試験(60及び200mg/kg)での週2回の静脈内投与でのFS118の静脈内投与で特徴付けられた。
【0147】
FS118のクリアランス速度は、NHPのヒトIgG様分子で予想されるよりも高く、クリアランス速度は、200mg/kgまでの用量で典型的な「標的媒介」挙動(すなわち高曝露レベルでの標的媒介クリアランスの飽和)を示さなかった。全体として、NHP試験では、4~200mg/kgの用量範囲において、初回投与後にCmaxがおおよその用量比例で増加し、初回投与後、定常状態で、1回の投与間隔でAUCがわずかに過剰に増加した。試験された全ての用量レベルでのPKプロファイルは、線形PKモデルによって適切に記述され、クリアランスプロセスが週2回投与される200mg/kgまでの用量で飽和しなかったことを示している。
【0148】
1.3.2.1 FS118単回投与PK
この単回静脈内用量試験では、4mg/kgのFS118のクリアランスを抗hPD-L1 mAbの単回静脈内投与と比較した。この抗hPD-L1 mAbは、FS118と比較して、同じヒトIgG1フレームワーク及び異なる抗PD-L1 Fab結合部分(クローンS1)を有していたことに留意されたい。抗hPD-L1 mAbは、投与後最初の7日間で典型的なIgG動態を示し、その後、ADA応答を示す曝露が急速に失われた。対照的に、FS118は、著しく速いクリアランスを示した。結合エピトープの類似性は、不明であるが、FS118及び抗hPD-L1 mAbの両方がPD-L1に結合する。この現象は、他のmAbで観察されておらず、mAbフォーマット自体が原因ではないことを示している。代わりに、FS118のCH3ドメイン及び/又はLAG-3結合の許容残基の標的化された変化が、抗hPD-L1 mAbと比較してFS118のより高いクリアランス速度の原因であるように思われる。
【0149】
1.3.2.2 FS118用量範囲所見(DRF)研究
DRF研究(4週間にわたって10、50及び200mg/kgの週1回の静脈内投与)において、血漿FS118及び血漿ADAの測定は、それぞれ実施例1.2.1及び1.2.2に記載されているように実施された。FS118(AUC)への曝露は、最後の投与後に減少した。これは、10mg/kg用量群で特に顕著であり、免疫応答を示し、ADAの存在によって確認された。この免疫応答のため、DRF試験では、FS118への曝露は、10及び50mg/kg用量群でも、200mg/kg用量群の1/3動物でも投与間隔全体にわたって維持されなかった。この現象は、NHPモデルでヒトIgGに対する免疫原性応答が予想されるため、NHPに投与されたヒトIgGでは珍しいことではない。
【0150】
1.3.2.3 FS118 4週間GLP毒性試験
50mg/kg/週未満の反復投与後、曝露の維持が達成される可能性は低いため、4週間のGLP毒性試験において、FS118は、60及び200mg/kgで週2回静脈内投与した。4週間のGLP毒性試験で処置された全ての動物がADA応答を示したが、FS118曝露への影響は、ほとんどなく、予測された臨床曝露と比較して適切な曝露マージンが維持された。
【0151】
週2回の投与を繰り返した後、FS118の有意な蓄積はなく、FS118のPKに対する性別の影響もなかった。
【0152】
1.3.2.4 総可溶性PD-L1(sPD-L1)
総sPD-L1の血漿レベルは、実施例1.2.3に記載されるように、DRF及び4週間のGLP毒性試験で測定された。sPD-L1の捕捉は、sPD-L1-FS118複合体のクリアランスがsPD-L1のクリアランスよりも遅い場合に標的の関与を示し、血漿中のsPD-L1-FS118複合体のレベルの増加につながる。膜結合PD-L1が主要な標的であるが、全身の総sPD-L1の増加は、標的飽和の潜在的なバイオマーカーであり得る。
【0153】
10~200mg/kgの範囲の用量でFS118を投与した後、24時間以内に血漿総sPD-L1の10倍以上の増加が観察された。DRF試験では、3つの用量群全てで、初回投与後0~96時間で総sPD-L1が同様に増加する軌跡が見られ、200mg/kg投与群についてのみ、最初の投与間隔で総sPD-L1が継続的に増加した。この研究では、FS118に対するADAの存在により、初回投与後7日を超える総sPD-L1の増加のさらなる分析が損なわれた。4週間のGLP毒性試験で達成されたより高い曝露レベルでは、平均総sPD-L1捕捉は、試験期間中に増加し続け、特に200mg/kg用量群で動物間のばらつきが大きかった。プラトー(最大の標的捕捉を示す)は、週2回、60又は200mg/kgのいずれかで処置した後2~4週間まで観察されなかった。ばらつきが大きいことを考えると、この研究で最大の標的捕捉が達成されたと結論付けることはできない。しかし、予想どおり、回復動物でのFS118曝露の喪失は、FS118濃度が10μg/mLを下回った場合、sPD-L1捕捉の喪失と明らかに関連していた。60mg/kg用量群の一部の動物の試験22日目のFS118曝露の一過性の低下を別として、血漿FS118は、60及び200mg/kg用量群の両方で投与期間を通して10μg/mLを超えて維持され、これは、PD-L1抑制もこの期間中に維持されたことを意味する。
【0154】
モルベースで表した場合、血漿sPD-L1-FS118複合体(すなわち総sPD-L1)は、総FS118濃度のごく一部にすぎないことに留意されたい。例えば、週2回、200mg/kgを反復投与した後の平均FS118トラフ濃度は220μg/mL(1.5μM)である。同じ時点での平均総sPD-L1濃度は、約5ng/mL(0.2nM)である。したがって、全身のFS118-PD-L1複合体は、FS118のクリアランス速度の原因とはなり得ない。
【0155】
結論として、総sPD-L1の急速な増加は、FS118の全ての用量レベルで観察され、増加率は、全ての用量レベルで同様であった。最大の標的捕捉が達成されたかに関して、決定的な結論を引き出すことはできなかった。しかし、標的の結合は、10mg/kg以上のFS118で飽和していた可能性がある。合計sPD-L1値は、回復期間の終わりまでにベースラインに戻った。動物の血漿中の10μg/mLを超えるFS118の閾値は、持続的な総sPD-L1レベルの増加と関連していた。
【0156】
1.4 FS118及びmLAG-3/PD-L1のクリアランスの調査
全体として、入手可能なPKデータは、野生型及びLAG-3 KOマウスにおけるmLAG-3/PD-L1 mAbのクリアランス速度が、主に機能的PD-L1と、LAG-3への結合を可能にするCH3ドメインの許容残基の標的特異的変化との組み合わせの結果であることを示唆していた。NHPで観察されたFS118のクリアランス速度は、同じメカニズムによって駆動された可能性が最も高いが、NHP及びヒト(マウスと比較して)でのより高い親和性のLAG-3結合からの寄与を排除することはできない。
【0157】
このクリアランス速度に寄与し得る追加の要因が調査され、以下に要約される。
・FS118は、FcRnへの予想されるpH感受性結合特性を示し、これは、LAG-3への結合による影響を受けなかった。
・NHP及びヒト組織におけるFS118を用いた組織交差反応性研究では、FS118の観察されたクリアランスを説明できるオフターゲットの結合は、示されなかった。さらに、FS118は、密接に関連する標的への結合を全く示さなかった。
・FS118は、37℃で最大15日間インキュベートした場合、血清中で機能的活性を維持した。これは、異化作用が説明になる可能性が低いことを示している。
・FS118及びマウス代理mAbをそれぞれ活性化ヒト及びマウスT細胞とインキュベートしても、抗CD3抗体と比較して、3時間のインキュベーション期間にわたって試験品の内在化は生じなかった。これらの結果は、他の細胞で発現された標的による標的の関与及び内在化は評価されていないが、FS118のクリアランスは、内在化によって媒介されなかったことを示す。
【0158】
全体として、これらのデータは、LAG-3結合からの追加の寄与の可能性がNHPで除外することはできないが、FS118及びマウス代理mAbの不飽和クリアランス速度がPD-L1標的駆動型であり、mAb構築物のLAG-3標的化CH3修飾に関連付けられていることを示す。NHP PD-L1及びLAG-3並びにヒトPD-L1及びLAG-3に対して同様の結合特性を有するFS118により、ヒトでも同様のクリアランス速度が予測された。
【0159】
1.5 予測される薬物動態 - ヒトにおける薬力学的挙動
1.5.1 NHP PKモデル
FS118への全身曝露を説明する2コンパートメント集団PKモデルは、NHP単回投与PK、DRF及びGLP研究PKデータから構築された(投与後0~7日;実施例1.3.2.1~1.3.2.3を参照されたい)。全てのPKモデリング、フィッティング及びシミュレーションは、ADAPTバージョン5(D’Argenio et al 2009)を使用して実行された。
【0160】
個々の動物のPKは、最初に2コンパートメントモデルに適合しており、その結果、動物ごとに4つのPKパラメーター(CL1、CL2、V1及びV2)が得られた。これは、全ての動物のPKを一緒にプールし、集団PKモデルの一部として使用できるかを評価するために行われた。
【0161】
集団のPK適合は、各動物のPKパラメーターが、特定の集団の平均ベクトル及び共分散行列によって特徴付けられる対数正規分布から抽出されたという仮定の下で実施された。これにより、未知の数が劇的に減少し、個々のPKケースが4×(動物の数)=112から14(4×4共分散行列の4つの集団平均値及び10個の異なる共分散行列要素)になり、既知-未知率が大幅に改善された。
【0162】
FS118の線形動力学を説明するNHP及びヒトPKモデルの全体的な構造を図5に示す。モデルは、NHPで観察されたデータを十分に説明し(表4)、4週間のGLP毒性試験で反復投与した後の観察データを予測した。換言すれば、FS118のクリアランスにおける有意な可飽和成分を示唆する証拠はなかった。このモデルは、FS118のヒトPKを予測するために非比例的にスケーリングされ、クリアランス及びコンパートメント間交換に0.75、体積に1.0の指数を使用した(表4)。標的を介した動態が観察されなかったため、標的結合親和性は、PKモデルに組み込まれなかった。これらの仮定を前提として、ヒトにおけるFS118曝露は、異なる投与計画について予測された。これらのパラメーター値を使用して、1000人のヒト対象のPKのシミュレーションを実施して、ヒト初回(FIH)臨床試験前にヒト集団のPK範囲を評価した。シミュレーションは、20mg/kg以下の用量がインビボでFS118曝露レベルをさらに生成し、これが最高の非重度毒性用量(HNSTD;以下の実施例1.5.2を参照されたい)をはるかに下回ると予測した。したがって、これらの用量は、安全性の懸念を示さなかった。
【0163】
NHPにおけるFS118の観察されたクリアランス速度は、NHPにおける単一特異性抗体について典型的に観察されるよりも高いが、薬理学的効果を排除するほど高くはないことに留意されたい。
【0164】
【表4】
【0165】
1.5.2 最高の非重度毒性用量(HNSTD)
FS118は、NHP 4週間GLP毒性試験で十分に許容され(実施例1.3.2.3を参照されたい)、HNSTDは、週2回、200mg/kgであることが確証された。ヒトPBMCを用いたウェットコーティング固定化フォーマット又はヒト全血フォーマットのいずれかを使用したインビトロアッセイでは、FS118に関連したサイトカインの増加は観察されなかった。さらに、NHP 4週間GLP毒性試験では、血清サイトカイン(IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ及びTNF-α)のパネルでFS118処置に関連した増加は観察されなかった。
【0166】
ICH S9ガイダンス(ICH S9)は、進行性癌患者におけるFIH研究のためにHNSTDの1/6での初期臨床投与(表5)を推奨している。しかし、FDAからの最近の刊行物は、これが免疫腫瘍薬に適切でない可能性があり、標的の占有及び機能的活性に関連する追加の要因を考慮する必要があることを示唆している(Saber et al 2016)。
【0167】
提案されたFIH開始固定用量800μgから20mg/kgに上昇する週投与量(実施例1.5.3.1を参照されたい)は、HNSTDより少なくとも10倍低く、推奨されるICH S9ガイダンスを十分に下回っている。
【0168】
【表5】
【0169】
1.5.3 FIH研究設計
初回ヒト試験(実施例2)は、非盲検、複数回投与、用量漸増及びコホート拡大試験として設計された。FS118の安全性、忍容性、薬物動態(PK)及び活性を特徴付けるために、進行性腫瘍と診断された成人患者を対象に研究を実施することが決定された。さらに、最初の患者を加速用量設定設計に採用し、そこで単一の患者コホートを評価し、続いて3+3の上昇用量漸増設計を行うことが決定された(図6)。この研究は、安全性及び耐容性を体系的に評価し、進行性腫瘍を有する患者におけるFS118の最大耐量(MTD)及び/又は推奨される第2相用量(RP2D)を特定するように設計された。RP2Dは、許容される毒性を伴う最大の生物学的有効用量として定義された。
【0170】
安全な用量漸増を可能にするために、開始用量及び最高用量間の用量増分が選択され、適切なFS118用量-曝露関係を捉えるためにPKモデリングによって導かれた。遊離FS118(LAG-3捕捉/PD-L1検出フォーマット)を測定する検証済みのGyrosアッセイを使用してヒトのPKを評価し、予測されたヒトPKと比較した用量-曝露関係の評価を可能にするため、患者内の用量漸増段階の終わりにPKデータが利用可能であることを確認することが決定された。また、標的結合の潜在的なバイオマーカーとして総血漿sLAG-3及びsPD-L1の増加を測定し、各3週間の処置サイクル後に採取されたサンプルからADAが生成される可能性を評価することも決定された。
【0171】
1.5.3.1 FIH開始用量及び用量漸増戦略の正当化
臨床試験の許容可能な開始用量を設定する際、潜在的な薬理学的活性及び同様の分子を用いた公に利用可能な臨床経験を考慮することが重要であった(Saber et al 2016)。入手可能な全てのデータに基づいて、提案されたFIH開始用量は、静脈内800μgであり、抗腫瘍効果で予想されるものへのFS118曝露を安全に増加させ、潜在的に効果のない投与計画への曝露を最小限に抑えるために、患者内加速用量漸増段階が提案された。FIH研究は、投与間隔を通して標的抑制を維持する投与計画の必要性を調査するようにも設計された。
【0172】
選択された投与戦略をサポートする重要なポイントは、以下のとおりである。
・マウス代理mAbを用いたマウス同系腫瘍モデルからの曝露データは、FS118への継続的な高曝露が抗腫瘍効果に必要ではなく、これが単一特異性抗PD-L1 mAbとは著しく対照的であることを示唆している。この腫瘍モデルでは、マウス代理mAb≧1mg/kgの用量が腫瘍進行の阻害と関連しており、3、10及び20mg/kgの用量が統計的に有意であった。3日ごとに10mg/kgで投与(3回投与)された抗PD-L1 mAb及びマウス代理mAbの抗腫瘍効果並びに野生型非担癌マウスにおける両方の分子の単回投与後の曝露プロファイルを図3Aに示す。抗PD-L1 mAbへの曝露は、3日間にわたって100μg/mL超に維持されたが、mLAG-3/PD-L1への曝露は、同じ期間に約10μg/mLに低下した。MC38モデルでは、マウス代理mAbへのトラフ曝露が経時的に減少し、これは、ADA形成に関連している可能性があることに留意されたい。3mg/kgで、マウス代理mAbは、3日ごとに、最初の投与後の推定Cmaxが25μg/mLであり、最後の投与後に観察されたCmaxが6μg/mLであった。
・FS118は、NHP 4週間GLP毒性試験で十分に許容された。他の免疫チェックポイント阻害剤で観察されたものと同様に、脳及び他の組織における混合単核細胞浸潤が観察された。
・FS118に関連したサイトカインの増加は、インビトロアッセイで観察されず、NHP 4週間GLP毒性試験では、血清サイトカインレベルの増加は、観察されなかった。これは、90%を超える標的占有率に関連する用量が急性サイトカイン放出症候群に関連しない、他の免疫腫瘍学生物学的製剤と一致している(Herbst et al 2014、Heery et al 2017)。
・マウス代理mAbのmPD-L1へのBiacore結合親和性は、FS118のhPD-L1への結合と比較した場合、約10倍高いことが示されている。対照的に、マウス代理mAbのmLAG-3へのBiacore結合親和性は、FS118のhLAG-3への結合と比較した場合、約20倍低いことが示されている。しかし、これらの違いは、それぞれの標的タンパク質を過剰発現するHEK細胞への結合のEC50値と、機能的T細胞活性化アッセイのEC50値とを比較した場合にあまり明白ではなかった。機能的なPD-L1標的結合の存在下でFS118及びマウス代理mAbのクリアランス速度が類似していることを考えると、標的結合親和性のこれらの観察された違いは、ヒトのFS118 PKの予測に影響を与える可能性は低い。
・免疫腫瘍薬の利用可能な非臨床及び臨床安全性データの分析により、20~80%の標的占有率及び/又は20~80%のインビトロ機能活性に基づくFIH用量が許容可能な臨床毒性を有することが示される。標的飽和を超えるFIH全身曝露は、ADCC活性が正常であるか、又は抑制されている抗体でも許容され(Saber et al 2016)、FS118は、ADCC活性を低下させるLALA変異を有することに留意されたい。全身標的占有率及びインビトロ機能活性(最大のパーセンテージとして)の推定値は、提案された開始用量800μgでのCmax(0.26μg/mL)で35.8%から79.2%であり、FIH用量に適切であると見なされた。
・最適以下の活性化を伴うヒトT細胞活性化アッセイでは、かなりのばらつきが観察されたものの、FS118は、平均EC50が0.22μg/mLでIFNγ産生を刺激した。
・FS118は、同じ標的に対する単一特異性抗体と比較して高いクリアランス速度を有することが示され、メカニズムは、少なくともマウスでは、この二重特異性構築物のPD-L1結合成分によって主に駆動されるようであった。FS118は、野生型及びLAG-3 KOマウスで正常なIgG動態を示したが(機能的なPD-L1結合なし)、代理mAbは、野生型及びLAG-3 KOマウスの両方で迅速に除去されたことに留意されたい。クリアランスプロセスは、NHPで200mg/kgまでの用量で飽和せず、ヒトでの予測される終末半減期は、3.7日であった(95%信頼区間0.35~10.4日)。
・NHP 4週間毒性試験におけるHNSTDの定常状態でのCmax及びAUC(1つの7日間の投与間隔の下)を、提案された用量漸増計画の各用量について、ヒトの定常状態での予測される曝露と比較し、結果として生じる曝露の安全性マージンを表6に示す。提案された800μgの開始用量(70kgの対象で約11μg/kg)は、NHPにおけるHNSTDよりも15,000倍を超えて低い曝露をもたらすと予想され、これは、患者内の加速用量設定段階の終わりに190倍を超えて減少する。FIH用量の安全性マージンが大きいため、FS118は、ヒトで予想外の正常なIgG動態を有することができ、研究の用量漸増部分に進む前にヒトでのFS118のPK挙動が確認される。クリニックでは、20mg/kg/週の用量でFS118のCトラフ濃度が10μg/mLを超え、NHPのHNSTDよりも10倍低い曝露(Cmax及びAUC)が得られると予想される。この標的濃度を達成するための投与量及び投与頻度は、加速用量設定段階の終わりに調整され得る。
【0173】
【表6】
【0174】
・血漿総sPD-L1は、PKモデルに含まれていなかったが、これが標的結合の優れたバイオマーカーである可能性を示唆するNHPからの証拠があり、これは、FIH研究で測定される。マウス同系腫瘍モデルは、PD-L1の完全な抑制が各処置サイクルを通して必要とされない可能性があることも示唆している。NHPでは、10μg/mL以上の血漿FS118濃度は、PD-L1捕捉の維持(及び推測によるとPD-L1抑制)と関連していた。FIH臨床試験は、限られた期間でのPD-L1の最大抑制(Cmax≧10μg/mL)及び各投与サイクル全体でのPD-L1の継続的な抑制(Cトラフ≧10μg/mL)の両方を調査するように設計された。
【0175】
全体として、これらのデータは、800μgがFS118の臨床試験を開始するための適切な開始用量であることを示した。この提案された開始用量は、1時間の注入の終わりに最大濃度(Cmax 0.26μg/mL)を与えると予測され、これは、標的受容体の占有率及びインビトロの機能的活性の観点から許容できる。さらに、このCmaxは、FS118 mAb代理分子の抗腫瘍効果に関連するCmaxよりも約10~100倍低く、NHPにおけるHNSTDでのFS118へのCmax曝露よりも15,000倍を超えて低くなっている。同様の曝露マージンは、投与間隔の下でAUCに対して維持される(表6)。FS118への治療に関連する曝露を迅速且つ安全に達成し、安全性を維持しながら治療量以下の用量への患者の曝露を最小限に抑えるために、患者内用量漸増スキームが提案されている。患者内用量漸増段階の終わりに、平均Cmaxは、25μg/mLであると予想された。これは、MC38腫瘍モデルにおけるマウス代理mAbの抗腫瘍効果に関連する曝露範囲内であり、NHPでのsPD-L1捕捉の維持に関連するFS118曝露(10μg/mL)を上回っている。
【0176】
非臨床腫瘍有効性データは、PD-L1の継続的な抑制が必要でないことを示唆しているが、FIH研究中の投与間隔全体でPD-L1の捕捉を維持するFS118の投与量を調査することも決定され、10mg/kg/週以上のFS118の用量は、10μg/mL以上の平均Cトラフ濃度を与えると予想された。
【0177】
1.6 概要及び結論
マウス代理mAb(mLAG-3/PD-L1)を用いたマウス同系腫瘍モデルからの曝露データは、単一特異性抗PD-L1 mAbとは対照的に、FS118への継続的な高曝露が抗腫瘍効果に必要ではないことを示唆していた。この腫瘍モデルでは、マウス代理mAb≧1mg/kgの用量が腫瘍進行の阻害と関連しており、3、10及び20mg/kgの用量が統計的に有意であった。
【0178】
機能的なPD-L1結合の存在下では、FS118及びマウス代理mAbの両方のクリアランス速度は、標準的な単一特異性IgG様分子で観察されるよりも高くなる。用量の増加に伴って曝露がわずかに過剰に増加するが、このクリアランスプロセスは、NHPでは週2回200mg/kgまでの用量で飽和していないようであり、線形PKモデルによって適切に説明される。換言すれば、FS118は、膜受容体を標的とするIgG様分子で観察されることがあるように、飽和可能な標的媒介性の動的挙動を示さない。しかし、野生型及びLAG-3 KOマウスではFS118で通常のIgG動態が観察されるため、このクリアランスプロセスは、mAb構築物の機能的なPD-L1結合に依存しているようである(FS118は、マウスで有意なPD-L1結合を欠いている)。
【0179】
NHP 4週間GLP毒性試験では、FS118は、臨床試験に十分な曝露マージンを提供する用量で十分に許容されることが示されている。提案されたFIHの開始用量800μgは、1時間の0.26μg/mLの注入終了時に最大濃度(Cmax)を与えると予測されており、これは、マウス代理mAb分子の抗腫瘍効果に関連するCmaxよりも約10倍低く、NHPにおけるHNSTDでのFS118へのCmax曝露よりも15,000倍を超えて低くなっている。同様の曝露マージンは、投与間隔の下でAUCに対して維持される。
【0180】
血漿総sPD-L1は、NHPにおけるPD-L1標的結合の有用なバイオマーカーであることが示されている。NHPでは、10μg/mL以上の血漿FS118濃度は、PD-L1捕捉の維持(及び推測によるとPD-L1抑制)と関連しており、FIH臨床試験は、限られた期間でのPD-L1の最大抑制(FS118 Cmax≧10μg/mL)及び各投与サイクル全体でのPD-L1の継続的な抑制(FS118 Cトラフ≧10μg/mL)の両方を調査するように設計された。用量漸増戦略は、患者内加速用量設定段階(1mg/kg/週のFS118)の終了時に約10μg/mLのCmaxを達成し、投与間隔内でFS118≧10μg/mLを維持するより高い曝露レベルを調査するように設計された。10及び20mg/kg/週の用量は、投与間隔全体で10μg/mLを超える平均血漿FS118濃度を達成すると予測された。
【0181】
実施例2:以前のPD-1/PD-L1を含む療法時又はその後に進行した進行性悪性腫瘍患者における、LAG-3/PD-L1二重特異性抗体であるFS118の安全性、忍容性、薬物動態及び活性に関する第I相、非盲検、用量漸増及びコホート拡大のヒト初回試験
2.1 研究設計及びパラメーター
この研究は、FS118の安全性、忍容性、薬物動態(PK)及び活性を特徴付けるために、進行性腫瘍と診断された成人患者を対象に実施された。この第I相、多施設、非盲検、複数回投与、ヒト初回試験は、加速用量設定設計(その間に単一患者コホートが評価された)で始まり、その後、3+3上昇用量漸増設計が続いた。この研究は、安全性及び耐容性を体系的に評価し、進行性腫瘍を有する患者におけるFS118の最大耐量(MTD)及び/又は推奨される第2相用量(RP2D)を特定するように設計された。RP2Dは、許容される毒性を伴う最大の生物学的有効用量として定義された。薬物動態、薬力学、免疫原性及び応答も評価された。
【0182】
インフォームドコンセントに続いて、全ての患者は、処置開始前の28日以内に適格性を決定するためにスクリーニングを受けた。患者への投与は、iCPD(すなわち免疫が確認された進行性疾患)(又はリンパ腫患者のLugano分類による進行性疾患)、許容できない毒性、患者による同意の撤回、治験責任医師による患者の中止、治験又は処置を終了するスポンサーの決定、代替の抗癌療法の開始又は死亡まで、3週間の処置サイクルで、毎週静脈内(IV)で行われた。患者は、FS118の最後の投与からおよそ28日(±7日)後の処置終了(EOT)訪問及びFS118の最後の投与からおよそ90日(±7日)後の90日フォローアップ訪問を受けたか又は受ける予定である。確認されたiCPD(又はリンパ腫患者のLugano分類による進行性疾患)後の全ての患者について、全生存期間(OS)は、生存率及び研究後の投与された癌療法剤を評価するために3ヶ月ごとに評価されたか又は評価される予定である。
【0183】
最初の5つのコホートは、単一患者コホートとして順次登録され、患者は、サイクル1中に用量制限毒性(DLT)について観察された。患者の基礎疾患、他の病状又は併用薬若しくは手順に明確に起因しないDLT又はグレード2以上の有害事象は、各コホートで観察されなかったため、新しい患者は、次の高用量のコホートで投与され、DLT期間にわたって観察された。患者の基礎疾患、他の病状又は併用薬若しくは手順に明確に起因しないDLT又はグレード2以上の有害事象がなくコホート5のサイクル1が完了した後、コホート6以降、用量漸増計画は3+3設計として継続された。患者が最初の投与を忍容し、次の高用量コホートの患者が、患者の基礎疾患、他の病状又は併用薬若しくは手順に明確に起因しないDLT又はグレード2以上の有害事象の証拠なくDLT期間を完了し、用量が安全性審査委員会(SRC)によって安全であると宣言されている場合、患者内用量漸増は、単一患者コホートで進行した。
【0184】
単一患者コホートのいずれかで、患者がDLT期間中に患者の基礎疾患、他の病状又は併用薬若しくは手順に明確に起因しないグレード2以上の有害事象を経験した場合、追加の2人の患者がその用量レベルで登録され、3+3の設計ルールを使用して評価されるはずであったが、これは、発生しなかった。その後の全てのコホートは、3+3設計に登録された。DLTが発生した場合、コホートは、6人の患者に拡大されるはずであったが、DLTは、観察されなかった。
【0185】
毒性は、米国国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE)バージョン4.03に従って評価された。
【0186】
主要目的
この研究の主要目的は、以下のとおりである。
1.安全性を評価し、FS118のMTD及び/又はRP2Dを決定すること、及び
2.FS118のPKパラメーターを決定すること。
【0187】
副次的目的
この研究の副次的目的は、以下のとおりである。
1.固形腫瘍の応答評価基準(RECIST)1.1又はLugano分類(該当する場合)及びiRECIST(免疫系治療用に修正されたRECIST 1.1)に従ってFS118の抗癌活性の予備的証拠を評価すること。
2.FS118の免疫原性(抗薬物抗体[ADA])を特徴付けること。
【0188】
探索的目的
この研究の探索的目的は、薬力学的プロファイルを特徴付け、潜在的な主要薬理学を曝露と相関させることであった。
【0189】
患者集団及び患者数
2019年5月までに24人の患者が登録され、2019年8月までに40人に、2020年4月までに43人に増加した。患者は、米国の4つの研究施設にわたって登録された。患者は、18歳以上で進行した腫瘍を有していた。
【0190】
処置投与
FS118は、緩徐なボーラス注射として最初のコホートに静脈内投与され、iCPD(又はリンパ腫患者のLugano分類による進行性疾患)、許容できない毒性、患者による同意の撤回、治験責任医師による患者の中止、治験又は処置を終了するスポンサーの決定、代替の抗癌療法の開始又は死亡まで、3週間の処置サイクルで毎週後続のコホートに持続注入ポンプによって投与された。
【0191】
処置及び研究の期間
FS118処置を16サイクル(又は12ヶ月)完了した場合又は進行性疾患が確認された場合、患者は、処置を完了したと見なされた。治験に登録された全ての患者がFS118による処置の16サイクルを完了する機会があり、最後の治験薬投与後90日間フォローされた後、主要エンドポイントの最終分析が実施され、単一の最終臨床試験報告書がまとめられる。研究完了の推定期間は、36ヶ月である。
【0192】
適格基準
登録された各患者は、研究への登録に適格であるために、以下のさらなる要件を全て満たす必要があった。
1.用量漸増の場合:効果的な標準治療が利用できないか又は標準治療が失敗した患者について、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)若しくは抗プログラム死リガンド1(PD-L1)療法中又は療法後に進行した、組織学的に確認された局所進行性、切除不能若しくは転移性の固形腫瘍又は血液悪性腫瘍を有する患者。
2.用量拡大の場合:効果的な標準治療が利用できないか又は標準治療が失敗した患者について、抗PD-1又はPD-L1療法中又は療法後に進行した、組織学的に確認された局所進行性、切除不能若しくは転移性の子宮頸部、卵巣、膀胱、腎臓、頭頸部扁平上皮癌、黒色腫、非小細胞肺癌、トリプルネガティブ乳癌又は非ホジキン若しくはホジキンリンパ腫を有する患者。
3.以前のPD-1又はPD-L1を含む計画の最小処置期間が12週間(又は2つの応答評価に相当)であった。
4.RECIST 1.1又はLugano分類(該当する場合)を使用して治験責任医師が決定した、測定可能な疾患(中枢神経系[CNS]の外側にある少なくとも1つの測定可能な病変として定義される)。
5.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス1以下。
6.少なくとも3ヶ月と推定される平均余命。
7.患者は腫瘍の処置前及び処置中の生検を受けることに同意し、生検手順は、研究者によって高リスクであると判断されなかった。単一患者コホートの患者の場合、許容可能なベースライン腫瘍サンプルには、新たに得られた腫瘍生検サンプル及び/又は元の診断から得られたアーカイブ組織サンプル(生後6ヶ月未満)が含まれる(可能な場合)。
8.受胎のリスクが存在する場合、男性及び女性の両方の患者に対して非常に効果的な避妊(すなわち1年に1%未満の失敗率の方法)。非常に効果的な避妊は、最初の治験処置の投与の28日前、治験処置の期間中及び治験処置の中止後少なくとも60日間使用する必要があった。女性患者又はそのパートナーがこの研究に参加している間に女性患者が妊娠した場合又は妊娠した疑いがある場合、処置を行う医師及び治験依頼者(又は被指名人)に直ちに通知される。
9.書面によるインフォームドコンセントを提供する意思及び能力。
【0193】
スクリーニングで以下の基準のいずれかを満たした患者は、研究への参加適格を有しなかった。
1.治験薬、標準治療ではなかった複数の免疫チェックポイント阻害剤(承認された適応症の組み合わせを除く)による以前の処置又はリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤若しくは多重特異性免疫チェックポイント阻害剤分子による標準治療又は以前の処置の初回投与の28日又は5半減期のいずれか短い方の期間内に全身抗癌化学療法を受けた。
2.過去2年間に処置が必要な活動性の自己免疫疾患を有する患者及び自己免疫疾患の既往歴を有する患者。注記:これには、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病、関節リウマチ、全身性進行性硬化症(強皮症)、全身性エリテマトーデス、自己免疫性血管炎(例えば、ウェゲナー肉芽腫症)、CNS又は自己免疫起源と考えられる運動神経障害(例えば、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、多発性硬化症)並びに中等度又は重度の乾癬の既往症を有する患者が含まれる。ただし、関節リウマチ又は乾癬が少なくとも6ヶ月間安定して寛解し、免疫関連の有害事象、白斑、シェーグレン症候群、間質性膀胱炎、グレイブス病若しくは橋本病又はホルモン補充で安定した甲状腺機能低下症に対する、コルチコステロイドとの可能な併用処置が禁忌でない患者については、メディカルモニターの承認を得て治験が許可された。
3.以下を含むが、これらに限定されないコントロール不良の併発疾患の病歴:
○標準的治療での処置によるコントロール不良の高血圧の確認(150/90mmHg以下に安定化されていない)、又は
○確認されたコントロール不良の糖尿病。注記:安定したインスリン補充療法を少なくとも6ヶ月間受け、免疫関連の有害事象に対するコルチコステロイドとの可能な併用処置が禁忌でない、十分にコントロールされた糖尿病を有する患者は検討対象となり得た。
4.既知の感染症:
○ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)(すなわちB型肝炎表面抗原陽性)又はC型肝炎ウイルス(HCV)(すなわち検出可能なHCVリボ核酸[RNA])。注記:抗原陰性である処置されたHBV感染の既往歴のある患者又はHCV RNAが検出できない処置されたHCV感染の既往歴のある患者は、検討対象となり得た。
○活動性感染症(ウイルス力価が陽性の無症候性感染症及び治験処置又は病状により病状が悪化する可能性があるという治験責任医師の判断を含む)は、患者の治験への参加を障害/禁止する。
5.コントロール不良のCNS転移、原発性CNS腫瘍又は唯一の測定可能な疾患としてCNS転移を伴う固形腫瘍。活動性疾患であるが、安定したCNS疾患を有する患者は、登録され得る。
6.以前のPD-1/PD-L1を含む療法による活動性間質性肺疾患又は肺炎、脳炎、発作、重度の免疫関連有害事象(すなわち肺炎、肝炎、大腸炎、下垂体炎、膵炎、心筋炎、CNS又は眼科)の既往歴、他の免疫刺激性抗癌剤による以前の処置での重度又は生命を脅かす皮膚の有害反応の既往症。
7.免疫抑制剤の使用、免疫抑制を必要とする以前の臓器移植、モノクローナル抗体又はその賦形剤に対する過敏症又は不耐性又は以下の例外を除いて、NCI CTCAE v4.03のグレード1を超える以前の治療に関連する持続性毒性。
○全グレードの脱毛症は許容された。
○補充療法での内分泌機能障害は許容された(ホルモン補充療法での安定した下垂体炎を含む)。
○非全身性ステロイド;局所、眼内、鼻腔内、関節内又は吸入ステロイドは許容された。
○副腎不全を有する患者では、プレドニゾンと同等の10mg/日以下の全身ステロイド補充療法は許容された。
○緩和処置又は対症療法の一部として10mg/日以下のプレドニゾンと同等の全身ステロイド処置を受けている患者の登録については、メディカルモニター及び/又はスポンサーと話し合う必要があった。
8.長いQTc症候群及び/又はペースメーカーの病歴、脳血管障害/脳卒中(登録前6ヶ月未満)、心筋梗塞(登録前6ヶ月未満)、不安定狭心症、うっ血性心不全(New York Heart Association分類クラスII以上)又は少なくとも6ヶ月間薬物療法でコントロールされなかった臨床的に重大且つ症候性の心不整脈。
9.以下の基準による検査値のスクリーニング(NCI CTCAE、バージョン4.03を使用):
○ヘモグロビン<9.0g/dL(5.7μmol/L);
○好中球絶対数(ANC)<1.0×10/L;
○血小板<100×10/L;
○血清クレアチニン>1.5×正常上限(ULN);
○総ビリルビン>1.5×ULN;又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>2.5×ULN(肝転移の場合には5×ULN以上);又は
10.治験責任医師の判断による、治験製品又はその賦形剤に対する不耐性又は患者の治験への参加を著しく障害する及び/又は禁止する状態。
【0194】
評価及び分析の主な基準
この研究の主要なエンドポイントは、以下のとおりである。
・有害事象の発生率、重症度及び期間。
・観察された最大濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、観察されたトラフ血清濃度(Cトラフ)、終末除去半減期(t1/2)、1回の投与間隔における濃度-時間曲線下面積(AUC)[AUC(TAU)]、投与間隔にわたる平均濃度[AUC(TAU)/tau]、全身クリアランス(CL)、定常状態での分布体積(Vss)及び初回投与から定常状態までの蓄積率を含むPKパラメーター。
【0195】
この研究の副次的エンドポイントは、以下のとおりである。
・RECIST 1.1又はLugano分類(該当する場合)及びiRECISTによって評価される応答。これらの応答は、病勢コントロール率(DCR)、客観的応答率(ORR)、応答期間(DoR)及び無増悪生存期間(PFS)/iPFSを決定するために使用されている。全生存期間も評価される。
・ADAの検出及び分析を含むFS118免疫原性の発生率。
【0196】
この研究の探索的エンドポイントは、以下を含む。
・末梢血単核細胞のフローサイトメトリーによるCD3、CD4及びCD8T細胞集団におけるPD-L1及びLAG-3受容体占有率。
・可溶性PD-L1及びLAG-3の定量化。
【0197】
統計的考察
登録された全ての患者について、患者の性質が表にされている。人口統計データ及びベースラインデータ(すなわち年齢、性別、人種、民族、身長及び体重)並びに病歴及び特徴は、安全性分析セットの記述統計を使用して要約された。
【0198】
有効性分析は、有効性分析セットを使用して実施されている。RECIST 1.1基準又はLugano分類(該当する場合)及びiRECIST基準ごとの腫瘍応答データが採用されている。ORR及びDCRの場合、点推定値及び95%の正確な信頼区間が提供されている/提供される。応答が不明であるか又は欠落している患者は、非応答者として扱われる(すなわちパーセンテージを計算するときの分母に含まれる)。
【0199】
全体として最良の応答は、RECIST 1.1基準又はLugano分類(該当する場合)及びiRECIST基準に従って決定されている。
【0200】
治癒期間、DoR、PFS、iPFS及びOSを含む、事象までの時間変数は、カプランマイヤー法を使用して記述的に要約されている/要約される。事象までの時間変数の打ち切り方法は、統計分析計画で説明する。事象までの時間変数についてカプランマイヤー曲線が生成される。
【0201】
PK分析セットは、全てのPKデータの要約に使用されている。血清濃度対時間プロファイルは、必要に応じて、各患者の投与間隔及び投与コホートごとのノンパラメトリックパラメーターCmax、Tmax、Cトラフ及びAUCの表形式の要約とともにグラフで表示されている。必要に応じて、総AUCは、濃度対時間プロファイルの最終段階から無限大への外挿を使用して計算され、これにより血清t1/2、CL及びVssも導出できる。
【0202】
薬力学的分析セットは、薬力学的分析に使用されている。
【0203】
研究中のFS118 ADA陽性の患者の割合及び中和FS118 ADA陽性の患者の割合が要約されている。FS118 ADA力価とPKの相関分析が実施された。
【0204】
安全性プロファイルは、有害事象(DLT及び重大な有害事象を含む)、身体検査所見(ECOGパフォーマンスステータスを含む)、バイタルサイン測定、標準的な臨床検査室測定及び心電図記録に基づいている。
【0205】
サンプルサイズの正当化
2019年5月までに24人の患者が登録され、2019年8月までに40人に、2020年4月までに43人に増加した。加速用量設定部分は、最低5人の患者で構成され、研究の3+3上昇用量漸増部分は、用量レベルごとに3から6人の患者で構成されていた。コホートは、安全上の理由から(最大3人の患者)、PK及び/又は薬力学の強化のため(最大10人の患者)及びRP2Dレベル又はそれ以前の臨床効果をさらに特徴付けるため(最大24人の患者)に拡大され得た。研究のサンプルサイズは、実践的な考慮事項によって決定されている。正式な統計的評価は行われていない。
【0206】
2.2 中間結果(2019年5月)
2.2.1 中間臨床データ
2019年5月までに、加速用量設定設計の単一患者コホート(800μg、2400μg、0.1mg/kg、0.3mg/kg及び1.0mg/kgの用量)が完了した。第I相試験の3+3上昇用量漸増設計部分では、3mg/kgが完了し、10mg/kg及び20mg/kgの用量レベルでの投与が進行していた。コホートの2つは、拡大された(1mg/kgは3人の対象へ;3mg/kgは10人の対象へ)。
【0207】
2019年5月までに第I相試験に登録された24人の患者のうち、8人の患者が処置中であった。16人の患者が処置を中止し、4人の患者がiCPDのために、2人の患者が進行性疾患のRECIST 1.1のために、10人の患者が他の考慮事項:TBC/臨床PD/PIの決定のためによる。
【0208】
2019年5月までの第I相試験中に観察された処置中に発現した有害事象のうち、20%がFS118に関連していると評価され、その全てが軽度から中等度であった。観察された10の重篤な有害事象のうち、FS118に関連するものはなかった。試験したいずれの投与量でもDLTは観察されなかった。これは、最大20mg/kgの用量が十分に忍容され、FS118の安全性プロファイルが他の免疫チェックポイント阻害剤と一致していることを示した。
【0209】
FS118による処置期間は、平均9.2週間=3サイクル(0~24週間)継続した。14人の対象について、少なくとも1回の「研究中」スキャンが報告された。14人の患者のうち、5人は、安定性疾患を有し、9人は、進行性疾患を有していた。有効性の決定は、第I相試験の主な目的ではなかったが、患者がFS118処置に費やした平均時間及び研究中スキャンが14人の患者のうちの5人で疾患の安定化を示したという事実は、FS118が疾患の安定化が可能であり、したがってヒト患者の腫瘍増殖を阻害する可能性を有することを示す。このデータを評価する際、第I相試験に登録された患者全員が進行した悪性腫瘍を有しており、FS118による処置の恩恵を受けることができないほど危険にさらされていた可能性があることに留意すべきである。第2相試験で調査され得るように、感染性がより低い癌患者の処置は、FS118のさらに高い有効性を示し得る。
【0210】
2.2.2 中間薬物動態/薬力学的データ
最初の7つのコホート(800μg、2400μg、0.1、0.3、1、3、10mg/kg/Q1wk用量)にわたる20人の患者の薬物動態/薬力学的分析を実施し、PK及び薬力学(血液中のLAG-3又はPD-L1受容体[可溶性又はT細胞発現]のFS118結合)を測定した。PK分析は、20mg/kg/Q1wk用量コホートの1人の患者に対してのみ実施された。
【0211】
2.2.2.1 PK分析
PK分析では、血清FS118レベルを、ビオチン化LAG-3捕捉及びAlexa Fluor(登録商標)647標識PD-L1検出を備えたGyroLabプラットフォームを利用した検証済みのリガンド結合アッセイを使用して測定した。簡単に説明すると、血清サンプルをRexxip HNで1:10の最小必要希釈率(MRD)に希釈し、プレートに添加し、次いでBioAffy 1000 CDとともにGyrolab XPワークステーションにロードした。FS118は、蛍光発光により検出された。標準曲線は、Gyrolab Evaluatorアプリケーションの重み係数(1/y2)として応答を使用して、5パラメーターのロジスティック曲線を使用して回帰された。検証されたアッセイのLLOQは、100ng/mLであった。
【0212】
結果は、7つのコホート(800μg、2400μg、0.1、0.3、1、3、10mg/kg/Q1wk用量)(Cmax、AUC)全体で用量の増加に伴う曝露の用量線形増加を示した。Cmaxは、ヒト以外の霊長類からスケーリングされた予測とほぼ同じであったが、クリアランス速度は、予測よりも高かった(AUCは予測よりも30%低かった)。3mg/kgの用量までの毎週の投与では、曝露(Cmax)が直線的に増加し、FS118の蓄積がなかった。3、10及び20mg/kgコホートの一部の対象は、測定可能なCトラフFS118濃度を示した。投与後7日(次の注入前)の血清FS118濃度は、1mg/kg未満の用量の全ての患者で100ng/mL(LLOQ)未満であった。
【0213】
2.2.2.2 可溶性LAG-3
血清総sLAG-3は、飽和量のFS118の存在下で検証済みの酵素結合免疫アッセイ(ELISA)を使用して定量化された。簡単に説明すると、血清サンプル中のsLAG-3は、プレートコーティングされた抗LAG-3モノクローナル抗体(非競合的結合)で捕捉された。FS118は、sLAG-3の結合を飽和させるためにインビトロで添加された。捕捉されたsLAG-3:FS118複合体は、sLAG-3受容体と結合したFS118 Fcabドメインに対するビオチン化抗イディオタイプ抗体で検出され、続いてストレプトアビジンコンジュゲートHRP及び色原体が添加された。検証されたアッセイのLLOQは、0.675ng/mLであった。
【0214】
1、3及び10mg/kg/Q1wkの用量レベルでの可溶性LAG-3(sLAG-3)の分析では、サイクル1及びサイクル2の初回投与後に総sLAG-3が約10倍に増加し、投与後2~3日でCmaxがピークに達することが示された。
【0215】
sLAG-3レベルの上昇は、受容体のFS118関与を確認する。1mg/kgの用量レベルでは、総sLAG-3濃度は、次の用量(サイクル1、8日目;C1D8)の前にベースライン値に戻った。3及び10mg/kg/Q1wkコホートでは、次の投与前に総sLAG-3(トラフ濃度)が蓄積したという証拠がいくつかあった。3mg/kg及び10mg/kgの用量での総可溶性LAG-3の増加の程度及び持続時間は、FS118による可溶性LAG-3捕捉の飽和がほぼ達成されたことを示唆した。
【0216】
2.2.2.3 可溶性PD-L1
血漿総可溶性PD-L1(sPD-L1)は、飽和量のFS118の存在下でMeso-Scale Discoveryイムノアッセイを使用して定量化された。アッセイのLLOQは、0.458ng/mLである。結果は、各投与後の総可溶性PD-L1(sPD-L1)の一過性の増加の初期の証拠を示したが、これは、全ての患者で一貫しているわけではなく、多くの患者のベースライン濃度は、アッセイの定量化レベルを下回った。
【0217】
2.2.2.4 PD-L1及びLAG-3受容体の占有率
PD-L1及びLAG-3受容体の占有率は、全血T細胞及び単球で測定された。簡潔には、この方法は、Cyto-Chex(登録商標)チューブに全血を採取し、処理するまで4℃で保存することを含む(1試験あたり100μL)。まず、非特異的結合を5μLのヒトBD Fc遮断液により室温で10分間遮断した。次に、サンプルを3つのパネル(遊離受容体、総受容体、FMO/アイソタイプ)の抗体カクテル(50μL)のいずれかで染色し、室温で30分間インキュベートした後、赤血球を溶解し、室温で10分間、900μLのBD FACS溶解液で固定した。次に、サイトメーター(LSR Fortessa)で取得する前にサンプルを2%FBSで2回洗浄した。受容体の占有率は、以下の式を使用して計算された(仮定:PD-L1又はLAG-3の標的発現レベルは、調査期間中に変化しないままである)。
【数1】
C - アイソタイプ遊離標的(競合)mAbからの蛍光強度中央値(MdFI)
D - 遊離標的(競合)mAbからのMdFI
、D:薬物投与前のサンプルからのMdFI値
、D:所与の時点での薬物投与後サンプルからのMdFI
【0218】
全体として、LAG-3の発現は、PD-L1の発現と比較して40から130倍低く、推定される受容体占有率のばらつきは、非常に大きかった(CVは典型的には50%超)。最初の投与から3時間後、平均PD-L1受容体占有率は、3及び10mg/kg用量コホートでそれぞれ49及び54%であり、PD-L1受容体占有率と血清FS118濃度との間に明らかな関係はなかった。同様に、最初の投与から3時間後、平均LAG-3受容体占有率は、3及び10mg/kg用量コホートでそれぞれ23及び32%であり、LAG-3受容体占有率と血清FS118濃度との間に明らかな関係はなかった。2回目の投与の直前、PD-L1及びLAG-3受容体の占有率は、投与後3時間の時点と比較して低かった。
【0219】
PK値が定量化レベルを下回っているか又は非常に低い場合、3、10及び20mg/kg/Q1wkコホートのCトラフレベルでの一部の患者の血液中の総sLAG-3及びsPD-L1及びLAG-3 T細胞受容体占有率の蓄積は、Cトラフレベルでの持続的な薬力学的応答の証拠を提供し、したがって、驚くべきことに、投与間隔全体にわたるFS118曝露は、ヒト患者における薬力学的効果には必要でないことを示す。
【0220】
FS118と複合体を形成したsLAG-3のクリアランスは、FS118のクリアランスよりも遅いことがわかったため、上記の結果は、マウス代理抗LAG3/PD-L1抗体を有するマウスで観察された結果とは対照的に、ヒトにおけるFS118のクリアランスが主にLAG-3媒介、より具体的には膜LAG-3媒介であることを示している。
【0221】
2.2.3 結論
2019年5月までに第I相試験で得られた中間結果は、FS118の忍容性が高く、観察された最大濃度(Cmax)が、カニクイザル試験から予測されたCmaxと一致しているが、FS118のクリアランス速度が、予想外にも、予測より高かったことを示している。これは、当初、ヒトでより高用量のFS118が必要である可能性があることを示唆していたが、クリアランスの速度がより速いにも関わらず、試験されたより低い用量で持続的な薬力学的応答が観察され、これは、治療効果を示している。
【0222】
特に、得られた結果は、FS118が、週1回投与される3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの用量で可溶性LAG-3(sLAG-3)レベルの持続的な増加及び持続的なLAG-3受容体占有率を誘導できることを示した。sLAG3レベルは、マウスの治療効果と関連していることが示されている。これらの中間結果は、sPD-L1レベルがFS118処置後に増加したことも示唆した。
【0223】
2.3 中間データ(2019年8月)
2.3.1 中間臨床データ(2019年8月)
2019年8月までに、さらに16人の患者が第I相試験に登録された。したがって、合計40人の患者が登録された。これらの40人の患者のうち、16人が処置中であった。残りの24人の患者は、処置を中止した。11人の患者は、iCPDにより、3人の患者は、無関係の有害事象により、8人の患者は、医師の決定又は進行性疾患の臨床的兆候により、2人の患者は、他の考慮事項による。
【0224】
週1回のFS118投与は、20mg/kgまで十分に許容され、サイクル1又はそれ以降のサイクルでは用量制限毒性(DLT)が観察されなかった。研究関連の処置中に発現した有害事象(TEAE)は、患者の62.5%で観察された。これらのいずれも、処置中に発現した重篤な有害事象(TE-SEAE)と見なされなかった。2つは、トランスアミナーゼのレベルの上昇に基づいてグレード3のTEAEと見なされた。後者の2つのケースは、高レベルが明らかな臨床的影響を有しないと判断し、高レベルを非限定的な毒性として分類した、治験の安全性委員会によってレビューされた。TEAE及びFS118処置間に明らかな用量関係は観察されなかった。観察された死亡又はTE-SAEで、FS118に関連していると見なされたものはなかった。
【0225】
3、10又は20mg/kgを投与されたコホートの32人の対象のうちの22人は、評価可能な腫瘍スキャンを受けた。これらの22人の患者のうちの11人は、何らかの安定性疾患を有し、11人は、最良の全体的応答(BOR及びiBOR)に基づく進行性疾患を有していた。これは、34.4%の病勢コントロール率(DCR)を表す。
【0226】
例えば、表7(下記)の全ての患者は、進行中の試験中に何らかの安定性疾患を示し、少なくとも10週間研究を継続した。
【0227】
【表7】
【0228】
特に、対象1004-0001(NSCLCに罹患している)は、安定性疾患(RECIST 1.1の最良の応答)を示し、FS118投与後8週目及び16週目に観察された28.13パーセントの最良の腫瘍減少(直径の合計(SoD)のベースラインからの変化)を示し、24週目に25%の腫瘍減少へわずかに減少した。したがって、この特定の患者は、その標的病変の測定に基づいてほぼ部分応答を示した。
【0229】
したがって、これらの結果は、患者集団に複数の異なるタイプの癌が含まれ、全ての患者が進行した悪性腫瘍を有し、治験に入る前に複数の代替処置計画に失敗し、一部の患者がFS118による処置の恩恵を受けることができないほど危険にさらされていた可能性があったことを念頭に置くと、FS118が疾患を安定化できることを示している。
【0230】
2.3.2 中間薬物動態/薬力学的データ
2019年8月までに、8つのコホート(800μg、2400μg、0.1、0.3、1、3、10及び20mg/kg/Q1wk用量)で最大29人の患者に対して薬物動態/薬力学的分析が実施された。実施例2.2.2に記載されているように、遊離FS118血清濃度を可溶性LAG-3とともに測定した。さらに、血液中の増殖(Ki67)及び総エフェクターメモリー又はセントラルメモリーCD4及びCD8T細胞の頻度を測定し、免疫細胞サブセットを列挙し、FS118の初回投与前及び後に腫瘍組織のLAG-3及びPD-L1発現を定量化した。
【0231】
2.3.2.1 PK分析
2019年5月の結果(実施例2.2.2.1を参照されたい)に続いて、毎週投与される20mg/kg(Q1W)コホートの患者を含むさらに9人の患者で遊離FS118血清濃度レベルが定量化された。遊離FS118血清濃度レベルは、実施例2.2.2.1に記載されている検証済みのリガンド結合アッセイを使用して定量化された。
【0232】
処置サイクル1及びサイクル2(1サイクルあたり3週間)の開始後の最初の1週間にわたる遊離FS118血清PKプロファイルの分析は、800μg、2400μg、0.1、0.3、1、3又は10mg/kg Q1Wのいずれかを投与された患者コホート全体での曝露(Cmax、AUC)の用量線形増加を示した。20mg/kgを投与された患者からのサンプルのPK分析が進行中であった。推定Cmax及びAUC値は、各患者コホート内のサイクル1及びサイクル2のPKプロファイル間で同等であり、これは、抗薬物抗体(ADA)応答が低いか、ADAを介したFS118のクリアランスの加速が低いか又はその欠如を示している。
【0233】
2019年5月の結果に見られるように、Cmaxは、ヒト以外の霊長類からスケーリングされた予測とほぼ同じであったが、クリアランス速度は、予測よりも高かった(AUCは、予測よりも30%低かった)。利用可能な第I相試験データに適合した1コンパートメントモデリングからの遊離FS118の終末クリアランス半減期(T1/2)は、19.6時間と推定される。
【0234】
投与開始の1週間後(サイクル1及び2)且つ次のFS118用量の前に、1mg/kg以下の投与を受けた患者の血清中の遊離FS118のCトラフレベルは、アッセイの定量下限(LLOQ)を下回り、これは、1mg/kg Q1W未満の投与スケジュールで血液中に遊離FS118蓄積が欠如していることを示唆している。3、10及び20mg/kgコホートの一部の対象は、投与後7日目に、およそ0.1から10μg/mLの範囲で定量可能な遊離FS118のCトラフレベルを示した。
【0235】
2.3.2.2 可溶性LAG-3
2019年5月の結果(実施例2.2.2.2を参照されたい)に続いて、毎週投与される20mg/kg(Q1W)コホートの患者を含むさらに9人の患者で血清総可溶性LAG-3(sLAG-3)レベルが定量化された。血清総可溶性LAG-3(sLAG-3)レベルは、実施例2.2.2.2に記載される検証済みELISAを使用して定量化された。
【0236】
2019年5月の中間結果と一致して、分析は、血清総sLAG-3の用量依存的な増加を示した。より具体的には、1、3、10又は20mg/kg/Q1wkの用量レベルを投与された患者は、サイクル1及びサイクル2の最初の投与後に総sLAG-3においておよそ10から150倍の増加を示し、最大濃度までの時間(Tmax)は、投与後およそ2~3日で観察された。1mg/kgの用量レベルでは、総sLAG-3濃度は、次の用量(C1D8)の前にベースライン値に戻った。3、10及び20mg/kg/Q1wkコホートでは、次の投与前に総sLAG-3(トラフ濃度)が蓄積したという証拠がいくつかあった。これは、サイクル1と比較してサイクル2で観察されたsLAG-3のレベルがより高いことによってさらに証明される。2019年5月の分析をさらに発展させ、10及び20mg/kgの用量での総可溶性LAG-3の増加の程度及び持続時間は、特に、これらの用量レベルでのFS118による可溶性LAG-3捕捉の飽和がほぼ達成されたことを示唆している。しかし、この明らかな観察結果を確認するには、20mg/kgの患者コホートに追加の患者数が必要である。
【0237】
このデータを利用して、1コンパートメントモデリングは、sLAG-3:FS118複合体の15.8日間の終末クリアランス半減期(T1/2)を推定した。遊離sLAG-3の推定終末T1/2は、1.6時間であった。FS118 PK及びsLAG-3データの集団及び個別の分析と、薬物動態/薬力学モデリングデータとの高い相関が観察された。これにより、ADA干渉及びADAを介したFS118の加速クリアランスの両方がないことが確認される。
【0238】
要約すると、この分析は、FS118投与後の総sLAG-3レベルの用量依存的増加が標的LAG-3受容体のFS118結合の薬力学的マーカーとして使用できることを示した。この発見は、それによりFS118が標的細胞表面に発現するLAG-3受容体に結合することにより、潜在的に、細胞表面に発現するLAG-3のシェディングを介して、全身の可溶性LAG-3レベルが上昇するという、FS118の提案された作用機序をサポートする。
【0239】
2.3.2.3 血液中の増殖及び総エフェクター並びにセントラルメモリーCD4及びCD8T細胞の頻度
血液中の増殖しているKi67CD4及びKi67CD8エフェクターメモリー及びセントラルメモリーT細胞の頻度をフローサイトメトリー分析によって経時的にモニターした。簡潔には、全血をCyto-Chex(登録商標)に収集し、処理するまで冷蔵保存した。試験ごとに100μLの各サンプルを使用した。まず、非特異的結合をヒトBD Fc遮断液で遮断した。次に、サンプルを表面抗体カクテル(50μL)で染色した後、赤血球を溶解し、BD FACS溶解液で固定した。洗浄した細胞をFix/Perm Bufferで透過処理した後、1X Perm Bufferで2回洗浄した。細胞内抗体カクテル(50μL)を添加し、2~8°Cで30分間インキュベートした。次に、細胞を2%FBSで2回洗浄し、サイトメーター(BD LSR)での取得のためにTruCountチューブに移した。
【0240】
CD4又はCD8セントラルメモリーT細胞(それぞれCD45CD3CD19negCD4又はCD8によって定義される、CD45RAnegCCR7pos発現)又はCD4又はCD8エフェクターメモリーT細胞(それぞれCD45CD3CD19negCD4又はCD8によって定義されるCD45RAnegCCR7neg)の頻度が決定された。さらに、CD4又はCD8エフェクター又はセントラルメモリーT細胞集団内のKi67細胞の頻度が決定された。3、10及び20mg/kgの患者コホートから入手可能なデータの分析により、FS118は、ベースライン測定と比較して、サイクル1での投与後に増殖するKi67CD4及びKi67CD8エフェクターメモリー及びセントラルメモリーT細胞の頻度の増加を誘導できることが示された。この末梢薬力学的応答の動態学的及び一過性の性質は、前臨床データで観察されたものと一致するT細胞活性化を示している。
【0241】
上記と同じフローサイトメトリー分析では、経時的な血液中の免疫細胞サブセットの列挙が実施された。初期データは、FS118投与により、CD3、CD4、CD8T細胞及びNK細胞の絶対数が増加することを示した。応答動態は、一過性であり、血液中の増殖エフェクター又はセントラルメモリーCD4及びCD8T細胞の頻度で観察された薬力学的効果と同様であった。これは、中皮腫、子宮頸癌、未分化甲状腺癌及び喉頭癌にそれぞれ罹患している4人の患者で特に観察された。まとめると、予備データは、FS118が患者の全身性免疫活性化応答を誘発できることを示唆している。
【0242】
2.3.2.4 腫瘍におけるPD-L1及びLAG-3の発現
マウス腫瘍モデルの前臨床試験では、以前に、mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体が、LAG-3を発現する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に対してLAG-3抑制を誘導することができる一方、LAG-3発現が、代理mLAG-3/mPD-L1二重特異性抗体と同じmLAG-3及びmPD-L1結合部位を含む2つの抗体分子でマウスを処置した場合に増加したことが示されている(P2399 A LAG3/PD-L1 mAb2 can overcome PD-L1-mediated compensatory upregulation of LAG-3 induced by single-agent checkpoint blockade, Faroudi et al., American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2019, 29 March - 03 April 2019, Atlanta, Georgia, USA)。
【0243】
二重特異性hPD-L1/hLAG-3抗体であるFS118に関連してこの潜在的な効果を調査するために、対の腫瘍サンプル(N=4)が患者の投与前(-3日目から-12日目まで)及び投与後(19日目から41日目まで)から取得された。ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍コア針生検におけるPD-L1及びLAG-3の発現は、それぞれインビトロ診断(IVD)抗PD-L1(クローンSP263)アッセイ(Roche Diagnostics/Ventana Medical Systems)及び検証済みの抗LAG-3(クローン17B4)免疫組織化学(IHC)アッセイ(Ventana BenchMark Ultra染色プラットフォーム)を使用して評価した。IHC染色後の評価では、100以上の腫瘍細胞及び25%を超える腫瘍含有量の選択基準が適用された。評価には、腫瘍細胞の膜性抗PD-L1染色のパーセンテージ及び強度に基づくパーセント腫瘍陽性スコア(%TPS)の決定及び以下のコンパートメント:腫瘍内間質、上皮内腫瘍成分又は該当する場合には腫瘍周囲領域における、最大5つの高出力フィールドでのPD-L1又はLAG-3免疫細胞の定量化が含まれる。
【0244】
全体として、研究のこの時点での予備的な結果は、FS118投与後の腫瘍におけるPD-L1又はLAG-3発現の代償的なアップレギュレーションの兆候を示さなかった。
【0245】
2.3.3 結論
2019年8月までに入手可能な中間結果は、2019年5月に観察された結論をサポートする(実施例2.2.3を参照されたい)。簡潔には、FS118は、十分に忍容され、最大観察濃度(Cmax)は、カニクイザル試験から予測されたCmaxと一致していた。FS118のクリアランス速度は、予想外に予測より高かったが、試験された用量で持続的な薬力学的応答が観察され、これは、治療効果を示している。実際に、2019年8月までに、11人の患者は、34.4%の病勢コントロール率(DCR)を表す何らかの安定性疾患を有することが観察された。これらの結果は、患者集団に複数の異なるタイプの癌が含まれ、全ての患者が進行した悪性腫瘍を有し、治験に入る前に複数の代替処置計画に失敗し、他の処置の選択肢がなく、一部の患者がFS118による処置の恩恵を受けることができないほど危険にさらされていた可能性があったことを念頭に置くと、FS118が疾患を安定化できることを示している。
【0246】
さらなるサポートとして、2019年8月の結果は、FS118が、週1回投与される3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの用量で可溶性LAG-3(sLAG-3)レベルの持続的な増加を誘導できることを示した。sLAG3レベルは、マウスの治療効果と関連していることが示されている。
【0247】
さらに、FS118は、3、10及び20mg/kgの患者コホートでT細胞の活性化を示す速度論的及び一過性の末梢薬力学的応答を誘発することが示されている。さらに、CトラフレベルでのCD4及びCD8セントラルメモリー及びエフェクターT細胞の増殖の増加は、Cトラフレベルでの持続的な薬力学的応答のさらなる証拠を提供し、FS118の仮定された作用機序と一致するFS118投与後の腫瘍におけるPD-L1又はLAG-3発現の代償性アップレギュレーションの兆候はなかった。
【0248】
2.4 中間データ(2020年4月)
2.4.1 中間臨床データ(2020年4月)
2020年4月までに、さらに3人の患者が研究に登録された。したがって、合計43人の患者が登録された。これらの43人の患者のうち、2人の患者が処置中であった。残りの41人の患者は、処置を完了/中止した。14人の患者は、iCPDにより、4人の患者は、無関係の有害事象により、10人の患者は、医師の決定又は進行性疾患の臨床的兆候により、10人の患者は、他の考慮事項による。これらの41人の患者のうち、14人がフォローアップ中であり、27人が治験を完了した。
【0249】
研究に登録されたさらに3人の患者に関して、20mg/kgの用量レベルでのFS118のIV投与による週1回の投与は十分に忍容され、スポンサーに報告された用量制限毒性はなかった。
【0250】
治験に登録された全ての患者に関して、観察された処置中に発現した有害事象の約20%は、FS118に関連しており、大部分は軽度から中等度の重症度であった(グレード1又は2、有害事象の共通用語基準v4.3)。FS118関連の有害事象のおよそ5%がグレード3に分類された。FS118との関係で報告された重篤な有害事象(SAE)はなかった。SAEは、死亡を生じる、生命を脅かす、入院を必要とする、障害、患者の身体への恒久的な損傷又は先天性異常/先天性欠損症を引き起こす、恒久的な障害又は損傷又は他の重大な事象、例えばアレルギー性気管支痙攣を防ぐための介入を必要とする有害事象として定義される。研究中に発生した死亡で、FS118に関連していると見なされたものはなかった。要約すると、新たな安全上のリスクは特定されなかった。
【0251】
2020年3月25日の時点で、3、10又は20mg/kgコホートの30/36人の患者が評価可能な腫瘍スキャンを受けた。FS118(BOR及びiBOR)による処置に対する最良の応答として、17人の患者が安定性疾患(SD)を有し、13人が進行性疾患(PD)を有すると記録された。これは、47.2%の病勢コントロール率(DCR)を表し、2019年8月から12.8%の増加に相当する。安定性疾患を有すると記録された17人の患者は、表8(下記)に列挙されている。
【0252】
【表8】
【0253】
第I相試験の残りの2人の患者(両方とも週1回、20mg/kgの用量を投与)のうち、1人の患者は、平滑筋肉腫(軟部組織肉腫)を有し、2020年3月25日時点で32週間にわたって治験を受けていた。もう1人の患者は、注目すべきことに、未分化甲状腺癌(ATC)を有し、2020年3月25日時点で1年を超えて(55週間)治験を受けていた。
【0254】
2.4.2 結論
これらの結果は、FS118が長期間投与すると良好な忍容性を示し、より重要なことに、1~20mg/kgの範囲内の投与量でのFS118による処置が長期の疾患安定化をもたらし得る(18週間を超える複数の患者がBOR/iBORとしてSDを完了し、1人の患者が1年を超えて治験を継続)ことを継続して示す。治験の患者集団に複数の異なるタイプの癌が含まれ、全ての患者が進行した悪性腫瘍を有し、治験に入る前に複数の代替処置計画に失敗し、一部の患者がFS118による処置の恩恵を受けることができないほど危険にさらされていた可能性があったため、これは、特に重要である。この困難な患者集団にも関わらず、FS118は、47.2%の病勢コントロール率(DCR)を達成することができた。これは、2019年8月から12.8%の増加に相当する。この増加は、3~20mg/kgの範囲のFS118の用量が安定性疾患化を達成できることをさらに示している。
【0255】
実施例3:以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する耐性に基づいたFS118に応答する可能性が高い患者の選択
3.1 背景
進行中のFS118試験に含まれる全ての患者は、以前に、PD-1/PD-L1を含む療法を受けている間又は受けた後に悪化していた。
【0256】
初期の結果(2019年8月)は、FS118が34.4%の病勢コントロール率(DCR)で一部の患者の疾患安定化が可能であり(実施例2.3.1を参照されたい)、2020年4月までに47.2%に上昇することを示した(実施例2.4.1を参照されたい)。本発明者らは、PD-L1阻害と組み合わせたLAG-3阻害(二重チェックポイント阻害)又はPD-L1及びLAG-3の二重特異性標的化によって提供される新規生物学によって提供される追加の利益のために、FS118がこれらの患者に利益を提供し得ると仮定した(国際公開第2017220569A1号)。抗PD-1又は抗PD-L1を含む計画のみによる再処置で患者が臨床的利益を達成することは予想されていなかった(Fujita et al., Anticancer Res.(2019);Fujita et al., Thoracic Cancer (2019);Martini et al., J. Immunotherapy Cancer (2017))。
【0257】
PD-1/PD-L1遮断に対する耐性のメカニズムの1つは、T細胞の機能を損ない得るシグナル伝達受容体のアップレギュレーションである可能性がある(Nowicki et al., The Cancer Journal (2018))。このクラスの受容体には、LAG-3が含まれる。この耐性のメカニズムは、T細胞が最初に応答するが、その後、枯渇してT細胞機能の喪失につながる獲得耐性の一形態であると考えられている。これは、患者が初期治療に応答しない一次耐性とは対照的である。
【0258】
したがって、本発明者らは、FS118が、抗PD-1/PD-L1療法に対する獲得耐性を有する患者に臨床的利益を提供する可能性が最も高いと仮定し、FS118による処置のために患者を選択するために使用できる特定の基準を定義するために分析を行った。これらの基準を定義するために、抗PD-1/PD-L1療法による各患者の以前の処置歴に基づくサブグループが定義された(これらの療法に対する最良の全体的応答(BOR)及びこれらの療法による処置の月数)。FS118から得られる臨床的利益は、各患者がFS118処置を受けた週数に基づいており、「FS118完了週数」と名付けられた。
【0259】
3.2 方法論
2019年12月までに第I相試験に登録された患者のうち、43人の患者で抗PD-1又は抗PD-L1療法による処置歴が知られていた。これらの以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法には、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、セミプリマブ、MSB-2311又はKN035の単独又は別の薬剤(例えば、化学療法又は免疫療法(例えば、抗CTLA-4))との組み合わせによる処置が含まれていた。以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法がFS118による処置の直前に行われたとは限らず、むしろ、以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法は、対象の癌に対する患者の処置歴のいずれの時点でも行われ得た。
【0260】
初めに、処置歴に基づく6つのサブグループは、以下のように定義された。
・PD(処置期間に関わらず、以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法のBORとしての進行性疾患(RECIST 1.1による;Eisenhauer et al., 2009))。
・SD(BORとしての安定性疾患(RECIST 1.1による)であり、以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法による処置期間が3ヶ月以下(「0~3ヶ月」として表される)。
・SD(BORとしての安定性疾患(RECIST 1.1による)であり、以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法による処置期間が3ヶ月を超えるが、6ヶ月未満(「3~6ヶ月」として表される)。
・SD(BORとしての安定性疾患(RECIST 1.1による)であり、以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法による処置期間が6ヶ月以上(「6ヶ月+」として表される)。
・PR(以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法に対するBORとしての部分応答(RECIST 1.1による))。
・以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法による処置期間に関わらず、以前の抗PD-1/PD-L1療法(「UNK」)に対する不明なRECIST基準(BOR)。
【0261】
この研究で評価された患者のいずれも、以前の抗PD-1又は抗PD-L1を含む療法に対するCR(完全応答)を有しなかったため、CR患者のサブグループは、確立されなかった。
【0262】
上記で定義された各サブグループの患者は、最初に、各患者がFS118処置を受けた週数「FS118完了週数」に対してプロットされた。
【0263】
この最初の分析に続いて、以下の一次耐性及び獲得耐性の定義が導かれた。
・PDサブグループ及びSD0~3ヶ月サブグループの組み合わせとして定義される「一次耐性」。
・SD3~6ヶ月、SD6ヶ月+及びPRサブグループの組み合わせとして定義される「獲得耐性」。
・不明(以前の抗PD-1/PD-L1療法に対するBORは不明)
【0264】
以前の抗PD-1又は抗PD-L1含有療法に対するCRを有する患者が試験に参加していた場合、患者は、SD 3~6ヶ月、SD 6ヶ月+及びPRサブグループと同様に、進行前の以前の治療から有意な臨床的利益を達成したことにも基づいて獲得耐性群に分類されたであろう。これは、抗PD-1及び抗PD-L1療法が完全応答をもたらす可能性があり、これらの患者の一部は、その後、耐性メカニズム及び進行性疾患を発症するためである。抗PD-1又は抗PD-L1の後に完全応答を達成する患者の耐性のメカニズムは、部分応答を達成する患者のものと同様であると予想される。
【0265】
一次耐性、獲得耐性及び不明なサブグループのそれぞれが「FS118週間完了」に対してプロットされた。
【0266】
プロットについて、「FS118週間完了」データは、2020年3月25日まで正確であった。これらのデータは、進行中の治験からのものであった。全てのプロットは、パッケージ「ggplot」を使用したRバージョン3.6.1(www.cran.r-project.org)を使用して作成され、ノンパラメトリックウィルコクソン順位検定計算を使用した統計分析は、同じバージョンのRを使用して実施された。
【0267】
3.3 結果
2019年12月までの正確な患者データを使用して、抗PD-1/PD-L1を含む療法(PD、SD 0~3m、SD 3~6m、SD 6m+、PR、UNK)に対する以前の応答に基づいて定義された6つの初期サブグループの分析は、分析時にこれらの患者が完了したFS118処置の週数に関して、これらの群間で有意差(ウィルコクソン順位和検定p>0.05)を示さなかった。しかし、この抗PD-1又は抗PD-L1処置を、3ヶ月を超えて受けた、安定性疾患(SD)の以前の抗PD-1/PD-L1を含む療法に対して最良の全体的応答(BOR)を有する患者(部分応答者を含む)は、PD及びSD 0~3mサブグループと比較した場合、FS118に対する応答時間がより長いという傾向が観察された。
【0268】
この驚くべき観察に基づいて、6つの初期サブグループは、その後、抗PD-1/PD-L1を含む療法による以前の処置に対する患者の応答に基づいて2つの群に解析された。最初の群は、PD及びSDの0~3ヶ月のサブグループを含み、これらの患者が以前の抗PD-1/PD-L1療法から有意な臨床的利益を得られなかったという事実に基づき、「一次耐性」と呼ばれた。2番目の群は、SD 3~6ヶ月、SD 6ヶ月+及びPRサブグループを含み、その後、進行性疾患を経験する前に3ヶ月超にわたる以前の抗PD-1/PD-L1療法で臨床的利益を得た患者に基づき、「獲得耐性」と名付けられた。
【0269】
患者を一次耐性群及び獲得耐性群にグループ化した場合、それぞれの群の患者がFS118処置を継続した週数とそれぞれを比較すると、これらの2つの患者群間に著しい差異が観察された(マン・ホイットニー・ウィルコクソン検定、p=0.059)。より具体的には、獲得耐性群の患者は、FS118による処置に応答し、処置から利益を得る可能性がより高いことが観察された。特に、FS118処置で18週間以上を完了した全ての患者は、以前の抗PD-1療法のBORが不明であった1人の患者を除いて、獲得耐性群からの患者であった。しかし、BORが不明な後者の患者は、以前の抗PD-1療法を、1年を超えて継続していたことが知られており、したがって、この患者は、獲得耐性を有すると分類されるBORを有していたと考えられる。一次耐性患者のいずれも、17週間を超えて研究を続けることができなかった。これらの観察結果は、獲得耐性群の患者が処置を継続しているため、一次耐性患者群と獲得耐性患者群との間で観察された差の統計的有意性が改善されたことを見出した、2020年3月25日に入手可能な追加の臨床データによってさらにサポートされた(マン・ホイットニー・ウィルコクソン検定p=0.048、図7)。
【0270】
さらに、この分析は、進行中の研究からのものであるが、一次耐性患者のいずれも研究に残っていないことに留意することが重要である。
【0271】
2019年12月までに、39人の患者がFS118処置中に評価可能な腫瘍スキャンを受けた。これらの患者を図8に示し、各患者が獲得耐性又は一次耐性のいずれの表現型を有するかを示す。獲得耐性及び一次耐性集団の両方で安定性疾患が観察されたが、18週間を超えるFS118処置が完了した全ての患者(獲得耐性表現型を有していた)は、安定性疾患の測定値を少なくとも1回有していた(図8)。
【0272】
FS118処置への応答の可能性に関して獲得耐性患者で観察された現象は、特定の用量レベル(図7)又は臨床的適応(図8及び9)とは無関係であるように見えた。
【0273】
3.4 結論
要約すると、獲得耐性を有する患者(SD、PR又はCRのBORを有し、したがって、その後、進行性疾患を経験する前に、3ヶ月を超える処置期間にわたり以前の抗PD-1/PD-L1療法を受けている間、何らかの臨床的利益を得たと定義される)は、驚くべきことに、一次耐性を有する患者(3ヶ月以下継続した以前の抗PD-1/PD-L1療法から臨床的利益を得なかったか、又は何らかの臨床的利益を得た患者として定義される)よりも長くFS118処置に陽性応答する可能性が高いことが見出されている。処置計画を含む以前のPD-(L)1での疾患進行後のPD-(L)1抗体による患者の再処置は、推奨されておらず、歴史的に、患者は、利益をほとんど得られないため、これは、特に重要である(Fujita et al., Anticancer Res.2019;Fujita et al., Thoracic Cancer, 2019;Martini et al., J. Immunotherapy Cancer, 2017)。したがって、本発明者らは、FS118処置に応答する可能性がより高い患者を選択するための閾値を特定した。この閾値は、FS118の用量又は癌のタイプとは無関係のようである。
【0274】
補足として、本発明者らは、次に、BI-754091(抗PD-1 mAb)と組み合わせたIgG4モノクローナル抗体BI-754111(抗LAG-3)を調査している進行中の3つの臨床研究、NCT03697304、NCT03780725及びNCT03156114を特定した。これらの研究は、以前の抗PD-1又は抗PD-L1ベースの治療に対して二次耐性(獲得耐性)を示す患者コホートの使用に言及している。これらの臨床研究に関連して公に入手可能な情報のいずれも、これらのコホートが選択された理由、二次耐性の定義がどのように導き出されたかを示しておらず、一次耐性患者集団と比較して二次耐性患者コホートの応答が改善されていることを示す提案又はデータも提供していない。したがって、これらの臨床研究は、FS118に関連して補助を提供せず、現在の研究に関連していないようである。
【0275】
実施例4:以前の抗PD-1又は抗PD-L1療法に対する耐性に基づいてFS118による処置を受ける患者を選択するためのマーカーとしてのPD-L1発現
4.1 背景
進行中のFS118治験に参加している全ての患者は、抗PD-1又は抗PD-L1療法による以前の処置を受けており、これらの経路を標的にすると、チェックポイント受容体のレベルが変化し得ることは、Faroudi et al.(American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2019, 29 March - 03 April 2019, Atlanta, Georgia, USA)によって示されているため、本発明者らは、FS118による処置前にPD-L1及びLAG-3の発現レベル(「ベースライン」)を決定し、これらの発現レベルとFS118による処置期間との間に相関関係が存在するかどうかを判断しようとした。この分析では、患者は、実施例3で定義されているように、抗PD-1又はPD-L1療法による以前の処置に対して「獲得」又は「一次」耐性を有するものとしてグループ化された。
【0276】
4.2 方法
PD-L1発現は、FS118による処置前に患者から採取した生検で測定された(「ベースライン」)。生検が分析に適格であるために、腫瘍細胞含有量が25%以上である必要があり、100以上の腫瘍細胞が存在する必要があった。腫瘍サンプルをホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)し、染色し、実施例2.3.2.4に記載されるように評価した。PD-L1パーセント腫瘍陽性スコア(%TPS)は、PD-L1の陽性染色を示す生検サンプル中の腫瘍細胞のパーセンテージとして計算された。%TPSは、利用可能な全てのサンプルについて測定された。これらのサンプルは、獲得耐性を有する13人の対象及び一次耐性を有する4人の対象であった。
【0277】
4.3 結果
ベースライン時のPD-L1%TPS及びFS118による処置の週数を比較すると、獲得耐性群で正の相関が観察された(片側スピアマン相関係数r=0.57、p=0.022)。逆に、一次耐性患者グループでは、PD-L1%TPSとFS118処置時間との間に相関関係は見られなかった(片側スピアマン相関係数r=-0.40、p=0.37)。さらに、獲得耐性群では、3人の患者がFS118で30週間以上処置され、FS118による疾患制御が証明された。これらの3人の患者は、群内で最も高いPD-L1%TPSも有していた(図10を参照されたい)。獲得耐性群の正の相関を使用して、FS118による処置に応答する可能性がより高い患者を選択するために使用できる予後閾値が決定された。これは、相関傾向線をプロットし、内挿を介してこれを使用して、18週間のFS118処置と相関するPD-L1%TPSスコアを決定することによって行われた。18週間以上の処置の継続が獲得耐性群で観察されたが、一次耐性群で観察されなかったため、FS118による臨床的有益性を示していると見なされ、18週間が選択された。このようにして決定されたPD-L1%TPSスコアは、15%であった。
【0278】
4.4 結論
全体として、これらの結果は、獲得耐性患者における腫瘍によるPD-L1の発現(PD-L1%TPS)が、FS118によって達成される疾患制御の寿命と正の相関があることを示す。獲得耐性群でPD-L1%TPSが最も高かった3人の患者の全ては、FS118による長期の疾患制御を示した(FS118処置で30週間以上)。獲得耐性群の正の相関を使用して、15%のPD-L1%TPSが、FS118による処置に対して持続的な応答を示す可能性が特に高い獲得耐性群の患者を選択するための予後閾値として確立された。
【0279】
実施例5:獲得耐性及び一次耐性患者の免疫応答に対するFS118の効果
5.1 背景
獲得耐性患者は、一次耐性患者よりもFS118処置を長く継続する可能性が高いという実施例3の観察に続いて、本発明者らは、これら2つの群間でFS118に対する薬理学的応答に差があるかどうかを決定しようとした。一次耐性を有する患者は、腫瘍の抑制因子又は免疫系による腫瘍の認識の欠如の結果としての不十分なT細胞機能のため、以前の抗PD-1/PD-L1療法に失敗し得る(Nowicki et al., 2018)。獲得耐性を有する患者は、最初にT細胞応答を示し得るが、LAG-3のアップレギュレーションを含む複数のメカニズムに起因する可能性のあるT細胞機能の喪失があると考えられている。FS118によるT細胞の活性化は、インビトロでのFS118の作用機序であることが実証されている(国際公開第2017220569A1号)。したがって、本発明者らは、FS118に応答する患者の免疫系の能力が、以前の抗PD-1/PD-L1療法に対する患者の応答に依存し得、免疫応答を増強するFS118の能力が、臨床的利益を提供するFS118において重要であり得ると仮定した。
【0280】
5.2 方法論
FS118による処置の過程中、治験中の35人の患者の血流中の末梢免疫細胞数に対するFS118の効果が評価された(実施例3で定義されているように、24人の患者は、獲得耐性を有し、8人の患者は、一次耐性を有し、3人は、不明)。血液サンプルは、患者から採取し、全血免疫細胞のCD3リンパ球、CD4T細胞、CD8T細胞、B細胞及びNK細胞の絶対細胞数(TBNK細胞数)は、CaprionBiosciences(CaprionBiosciences, Inc., Montreal, Quebec, Canada)によって実施された。端的には、採取した血液は、処理するまで4℃でCyto-Chex(登録商標)BCTチューブに保存した。次に、100μLの全血を使用して、Caprionによる単回複製で予め定義されたTBNKパネルで染色した。染色後、サンプルをBD LSRフローサイトメーターで24時間以内に取得し、FlowJoソフトウェアを使用して定量した。絶対細胞数は、FS118処置前(「ベースライン」と呼ばれる)及びFS118処置中の両方のいくつかの時点で測定された。
【0281】
その後の絶対細胞数のデータ分析では、1mg/kg以上の用量のFS118を投与された患者のみが考慮された。
【0282】
細胞タイプごとのベースラインからの細胞数の変化率は、以下のように計算された。
ベースラインからの変化率=[(細胞数処置日における-細胞数ベースラインにおける)/細胞数ベースラインにおける]×100
【0283】
次に、各細胞タイプについて、ベースラインからの変化率をFS118処置の時間に対してプロットした。免疫細胞数に基づく免疫応答プロファイルは、患者ごとに個別に計算された。
【0284】
患者は、実施例3で定義されるように、「一次」又は「獲得」耐性に分類された。
【0285】
5.3 結果
図11は、2人の代表的な患者のベースラインからの変化率を示す。「一次耐性」を有する患者の免疫細胞応答プロファイルの代表的な例としての患者1004-0003及び「獲得耐性」を有する患者の免疫細胞応答の代表的な例としての患者1002-0014である。獲得耐性を有する患者は、一次耐性を有する患者よりも、CD3リンパ球、CD4T細胞、CD8T細胞及びNK細胞の数が増加する傾向を示した(これらの細胞サブセットのベースラインからの変化率に基づく)。
【0286】
さらに、FS118処置の過程で観察されたベースラインからのCD3リンパ球の最大倍率変化を各患者のFS118処置の時間に対してプロットした。これは、一次及び獲得耐性グループの両方に対して行われた。ベースラインと比較した免疫細胞数の倍率変化によって測定されるCD3リンパ球応答の大きさは、獲得耐性群のFS118処置の期間と有意に正の相関があることがわかった(片側スピアマン相関係数r=0.45、p=0.025)が、これは、一次耐性群では有意でなかった(片側スピアマン相関係数r=0.52、p=0.098)。
【0287】
5.4 結論
これらのデータは、患者の血液で観察されたT細胞及びNK細胞の増加及びCD3リンパ球の倍数変化の増加がFS118による処置の結果であることを示しており、獲得耐性を有する患者の免疫系が、FS118処置による免疫応答をより上昇させられることを示している。したがって、本明細書で定義される獲得耐性は、FS118に応答する可能性がより高い患者を選択するための閾値として使用することができる。
【0288】
実施例6:FIHデータ及びモデリングに基づく第I相拡大及び/又は第II相試験の用量推奨
6.1 概要
将来の臨床研究のための用量選択を導くために、FIH第I相試験データ(実施例2~5に記載)の複数のパラメーターを収集及び分析した。FIH第I相試験で試験された用量ごとに、これらのパラメーターは、抗薬物抗体(ADA)及び処置中に発現した有害事象(TEAE)の存在並びに処置時間、腫瘍増殖速度、直径の合計による腫瘍サイズ及び応答者の数によって評価される有効性を含んでいた。血清中のLAG3:FS118:PD-L1受容体三量体複合体形成、総sLAG3及び総sPD-L1プロファイルのシミュレーションも実施された。用量、ADAレベル、応答者の数によって評価される有効性及び三量体複合体形成のシミュレーションを比較した場合、ほとんどのパラメーターで違いは観察されなかったが、好ましい用量をさらなる研究に推奨できるように、用量間に十分な差異が示された。
【0289】
6.2 FIH血清サンプルのADA分析
FS118などのタンパク質治療剤の投与は、抗薬物抗体(ADA)を誘導する可能性があり、薬物動態/薬力学的特性に影響を与える可能性がある。FIH研究におけるヒト血清サンプル中のFS118に対するADAの検出及び特性評価は、臨床試験をサポートするために実施された。FS118 ADAアッセイは、BioAgilytix Labsで開発された。簡単に説明すると、実施例1.2.2で説明したものと同様の電気化学発光(ECL)MSDプラットフォームを使用したブリッジングアッセイを使用して、ヒト血清中のFS118に結合する抗体を測定した。ビオチン化FS118を使用してADAを捕捉し、次にMSD TAG-NHS-ester(MSD #R91BN)でタグ付けされたFS118を使用して検出した。患者の血清サンプルからのADAレベル(ECLシグナル)を測定し、プールされた未処置のヒト血清からなる陰性対照に正規化し、FS118用量でグループ化した(表9)。
【0290】
【表9】
【0291】
3mg/kgの週1回投与群は、10mg/kg又は20mg/kgの週1回投与計画と比較してADAのレベルが有意に高かった(p≦0.05、マンホイットニー検定)。より低い薬物用量でのより高いADAレベルは、ADA応答「を通して投与する」高用量とも呼ばれることがあり、一般的に観察される現象である(Chirmule, 2012)。ADAのレベルの違いにも関わらず、TEAEとFS118処置との間に明らかな用量関係は観察されなかった(実施例2.3.1を参照されたい)。免疫原性、薬物動態/薬力学的特性及び毒性に対するADAの影響の可能性を最小限に抑えるために、将来の研究では、週1回、10mg/kg及び20mg/kgの投与計画が好ましいであろう。
【0292】
6.3 FIH第I相試験の有効性データのベイズ分析
FS118による処置に応じて収集されたFIH BOR/iBOR有効性データを使用して、3、10及び20mg/kg、週1回の各投与群内において、将来の試験で安定性疾患を示す患者の頻度を予測するためにベイズ分析を使用した。
【0293】
FIH第I相試験の患者におけるBOR/iBORとしての安定性疾患の発生は、3mg/kg、10mg/kg及び20mg/kgの週1回投与群の患者について計算された。このデータは、以下の表10に示すように、将来の試験において各用量レベルで患者が安定性疾患を示す確率を推定するために使用された。
【0294】
【表10】
【0295】
例えば、将来の治験(例えば、第I相拡大又は第II相)に24人の患者が登録され、90%の信頼区間を考慮して表10に示されている推定確率を利用するものとすると、FS118の用量あたりの応答者(すなわちBOR/iBORとして少なくとも安定性疾患を示す患者)の数は、以下のようになると推定される。
週1回3mg/kg:4~14人の応答者
週1回10mg/kg:11~19人の応答者
週1回20mg/kg:11~19人の応答者
【0296】
上に示したように、週1回の10mg/kg及び週1回の20mg/kgの両方の用量は、最も高い割合の患者で安定性疾患を誘発することにより、最良の応答結果を達成すると予測される。したがって、このベイズ分析に基づく将来の試験では、これらの用量のいずれかが好ましい。
【0297】
6.4 薬力学的マーカーとしての三量体LAG3:FS118:PD-L1受容体複合体形成
FS118によるT細胞の活性化は、インビトロでのFS118の作用機序であることが実証されている(国際公開第2017220569A1号)。腫瘍におけるFS118の治療効果は、FS118がLAG-3及びPD-L1に同時に結合し、そうでなければLAG-3及びPD-L1シグナル伝達によって生成される免疫抑制シグナルを阻害する結果として、腫瘍特異的T細胞が腫瘍微小環境で活性化された結果であると仮定された。FIH第I相試験の血清由来データを使用して、血清及び腫瘍微小環境の両方で三量体複合体形成をシミュレーションし、特に10mg/kgから20mg/kg、週1回の投与計画を選択するための投与計画選択の薬力学的マーカーとして使用した。
【0298】
FIH研究で収集された薬物動態/薬力学的データから、1週目及び4週目の用量別の遊離FS118の中央値、総sLAG3及び総sPD-L1血清濃度プロファイルが得られた。これらのデータは、FS118の用量が大きいほど、血清及び腫瘍微小環境の両方で遊離FS118濃度が高くなることを予測するための基礎を提供した。これらのデータから、進行性固形腫瘍患者における遊離FS118、総sLAG-3及び総sPD-L1血清濃度の集団モデルが開発された。このモデルは、将来の試験のための投与計画の選択を通知するために、投与計画を腫瘍内の三量体複合体の形成と関連付けるシミュレーションを実行するために使用された。モデル開発には、段階的アプローチが使用された(表11)。まず、遊離FS118血清濃度を1コンパートメントPKモデル及び線形除去でモデリングした。次に、総sLAG-3及び総sPD-L1血清濃度を追加し、結合モデルをフィッティングした。遊離sLAG-3及び遊離sPD-L1と比較してFS118への結合並びにFS118:sLAG-3及びFS118:sPD-L1複合体のより遅い除去のシミュレーションは、患者に見られるFS118処置時の総sLAG-3及び総sPD-L1血清濃度の増加が観察されたことを説明することができた。当初、インビトロで測定された平衡解離定数がそれぞれの複合体に使用されたが、推定された平衡解離定数を有するモデルは、観察されたプロファイルをよりよく説明することができた。遊離FS118血清濃度プロファイルの適合は、sLAG-3及びsPD-L1の結合の追加及び除去によって変更されなかった。sLAG-3及びsPD-L1は、不特定のソースから一定に生成されると想定されていた。
【0299】
この時点で、モデルは、観察された遊離FS118、総sLAG-3及び総sPD-L1血清濃度を説明することができた。FS118投与計画を有効性と関連付けるために、血清及び腫瘍微小環境の両方における細胞表面LAG-3及びPD-L1受容体への結合をパラメーター推定後にモデルに追加して、血清及び腫瘍微小環境における三量体FS118:LAG-3:PD-L1複合体を決定した。
【0300】
腫瘍微小環境をモデリングするために、単純な仮定が行われた。第一に、遊離FS118腫瘍濃度は、常に遊離FS118血清濃度(生体内分布係数として表される)の一部であり、血清と腫瘍との間に即時平衡があったと仮定された。腫瘍の質量が小さく、全身のFS118濃度に影響を与えないという仮定の下において、血清から腫瘍へのFS118の質量流量は、モデリングされなかった。したがって、腫瘍中の遊離FS118濃度は、生体内分布係数(BC)により、[FS118]腫瘍=BC[FS118]血清として推定された。LAG-3及びPD-L1の腫瘍濃度は、一定であると仮定されたLAG-3及びPD-L1受容体の血清濃度と同じであると仮定された。細胞表面受容体への結合は、可溶性標的への結合について推定されたのと同じ平衡解離定数を使用してモデリングされた。
【0301】
【表11】
【0302】
以下の投与計画がシミュレーションされた:(i)1時間のIV注入として週1回投与される1、3、10又は20mg/kg、又は(ii)1時間のIV注入として2週間に1回投与される3、10又は20mg/kg。シミュレーションは、mlxR 4.0.0ライブラリを使用してR3.6.0(R Development Core Team 2008)で実行された。シミュレーションでは、FIH第I相試験患者からのMonolix(条件付き分布のモード)による個々のパラメーター推定値を使用した。次に、これらの個々の予測プロファイルの平均をプロットした。シミュレーションされた投与計画のいずれが血清及び腫瘍において最高の三量体複合体濃度(LAG3:FS118:PD-L1)を生成したかが調査された。
【0303】
シミュレーションされた個々の細胞表面三量体複合体(LAG3:FS118:PD-L1)の平均は、第I相試験患者からの個々の推定値を使用して、異なるBCの血清及び腫瘍における総LAG-3受容体のパーセンテージとして得られ、プロットされた。シミュレーションにより、遊離FS118濃度が高いほど、三量体LAG3:FS118:PD-L1複合体濃度が低くなり、二量体FS118:LAG3及びFS118:PD-L1複合体が有利になることが明らかになった。また、FIH研究で収集されたデータを使用して、FS118の投与量が多いほど、遊離FS118濃度が高くなることが示された。最適な遊離FS118の濃度範囲は、約0.1~1μg/mLであった。BCが10%である場合、インビボで腫瘍微小環境を最もよく模倣すると想定され、10mg/kgの週1回投与は、0.1~1μg/mLの範囲の遊離FS118濃度を生成する可能性がより高いため、20mg/kgの週1回投与よりも三量体複合体濃度が高かった。
【0304】
これは、高すぎる用量及び/又は多すぎる投与が三量体複合体濃度を低下させ、したがってFS118がLAG-3及びPD-L1に同時に結合することによって誘発されるT細胞の活性化を低下させ、腫瘍の阻害に対する効果を低下させることも意味する。
【0305】
6.5 結論
FIH第I相試験データの複数の要素が分析され、将来の試験のための用量選択を導くために使用された。第一に、異なるFS118用量でのADAの分析は、週1回の投与で10mg/kg又は20mg/kgと比較して、週1回の投与で3mg/kgにおいてより高いレベルのADAが検出されたことを示した。潜在的な免疫原性及び毒性を最小限に抑えるために、10mg/kgで週1回、20mg/kgで週1回の計画は、3mg/kgで週1回よりも好ましいであろう。第二に、第I相BORデータのベイズ分析では、週1回3mg/kgの計画よりも、週1回10mg/kg又は週1回20mg/kgの計画で投与した場合、患者がBOR/iBORとしてSDを示す可能性が高いと推定された。最後に、三量体複合体形成の薬物動態/薬力学的モデリング及びシミュレーションにより、三量体LAG3:FS118:PD-L1複合体濃度は、BCを10%と仮定して、週1回10mg/kgの用量で最高であることが明らかになった。より高い三量体複合体は、T細胞の活性化及び腫瘍増殖の阻害につながると仮定されている。
【0306】
上記の観察を組み合わせると、将来の試験では、10mg/kg、週1回の投与が好ましい。
【0307】
上記のデータから導き出される週1回700mgの固定用量の代替案も提案されている。集団の平均患者体重が70kgであると仮定すると、週1回、700mgの用量は、週1回、10mg/kgの用量に相当する。集団の患者の実際の体重が35~100kgの範囲である場合、週1回、700mgの用量は、患者の実際の体重に応じて、週1回、20mg/kgから7mg/kgの範囲の用量に相当する。これは、FIH第I相試験でTEAEを伴わず安定性疾患応答が観察された用量範囲内であり、したがって有効であることが予想される。同様の理論的根拠を対象の任意の特定の患者集団に採用することができ、したがって、当業者は、本明細書の教示に基づいて任意の特定の患者集団に適切な固定用量を特定することができるであろう。例えば、集団の患者の平均体重が80kgと推定される場合、週1回、800mgの用量は、週1回、10mg/kgの用量に相当する。集団の患者の実際の体重が40~100kgの範囲である場合、週1回、800mgの用量は、患者の実際の体重に応じて、週1回、20mg/kgから7mg/kgの範囲の用量に相当する。これも、上記の理由から効果的であることが予想される。
【0308】
実施例7:第I相拡大試験のためのSCCHNプロトコル
特定の腫瘍タイプにおけるFS118の臨床活性を調査するために、第I相臨床試験への拡大が計画されている。これは第I相拡大コホートと呼ばれ、FS118の安全性、薬物動態/薬力学及び臨床効果をさらに評価するために、予め指定された数の患者を募集することを含む。
【0309】
計画されている拡大コホートには、再発性又は転移性の頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)を有する患者のみが含まれる。SCCHNが特に選択されたのは、FIH第I相試験(実施例2を参照されたい)で週1回、それぞれ3、10及び20mg/kgのFS118を投与された3人のSCCHN患者が、それぞれ26、15及び27週間、治験を継続したためであり(実施例2.4.1、表8を参照されたい)、これは、FS118がSCCHNの処置に特に効果的であり得ることを示している。さらに、PD-1のレベルの上昇(Hanna et al., 2018;Deng et al., 2016)と同様に、SCCHN患者の腫瘍微小環境におけるT細胞上のLAG-3のレベルの増加が以前に観察されており、これは、PD-L1のレベルの上昇も示唆している。したがって、LAG-3及びPD-L1の両方を標的とするFS118がSCCHN腫瘍微小環境で有効であるという明確な生物学的根拠がある。より具体的には、拡大コホートには、口腔、中咽頭、喉頭又は下咽頭の疾患部位を有し、手術又は放射線などの治癒的療法を受ける適格のないSCCHN患者が含まれる。抗PD-1抗体は、現在、これらの疾患部位について規制当局によって承認されているため、募集される患者は、以下に説明する患者募集戦略にとって重要な抗PD-1抗体で前処置されている。ヒトパピローマウイルス(HPV)は、SCCHNのおよそ20%、特に中咽頭癌として知られる中咽頭の疾患を引き起こすと考えられている。これらの患者は、典型的には、タバコ及び/又はアルコールの使用によって疾患が引き起こされ得る他のSCCHN患者よりも、抗癌処置に応答してより良い臨床転帰を示す。したがって、HPVの状態は、患者が研究に参加する前に記録され、不明な場合、研究に参加した後に検査される。
【0310】
上記で説明した理由により、全ての患者は、研究に入る前に、単剤療法又は化学療法との組み合わせのいずれかとして、承認された抗PD-1抗体で以前に処置されており、進行性疾患を有している。患者は、本明細書で定義されている以前のPD-1療法に対して獲得耐性を有している必要がある(すなわち、患者は、以前の抗PD-1療法で完全応答又は部分応答を示したか、又は3ヶ月を超えて安定性疾患を示したが、その後、進行性疾患に移行した)。これは、獲得耐性を有する患者がFS118によりよく応答する可能性が有意に高い(例えば、安定性疾患を示し、より長く処置を継続することによって)という本発明者らの発見を考慮したものである(実施例3を参照されたい)。
【0311】
承認された抗PD-1抗体による前処置を受けるには、薬剤ラベルに従い、患者のPD-L1レベルが組み合わせ陽性スコア(CPS)又は腫瘍比率スコア(TPS)のいずれかで1%を超えている必要がある。したがって、第I相拡大試験に参加する全ての患者のPD-L1レベルは、1%を超えると予想され、これらが記録される。本発明者らは、獲得耐性患者におけるFS118処置前のベースラインPD-L1レベルがFS118による処置の長さと正の相関関係を有することを実証したため、これは、重要である(実施例4を参照されたい)。以前の抗PD-1療法剤が各患者の系からウォッシュアウトされるために、計画された第I相拡大試験に入る前に最低28日待つ必要がある。さらに、患者は、最後の抗PD-1療法の終了及びFS118による処置の開始から12週間を超えていてはならない。これにより、第I相拡大試験に参加する患者は、その進行性疾患に対して直ちにさらなる治療を要することが保証される。
【0312】
第I相拡大試験に参加する前に、全ての患者は、腫瘍の生検及び血液サンプルを提供する必要がある。生検から、腫瘍細胞及びT細胞のベースラインPD-L1及びLAG-3発現レベルが、腫瘍微小環境内のCD8T細胞のパーセンテージなどの癌の他の特徴に加えて、それぞれ測定及び分析される。血液サンプルは、実施例2.3.2.3に記載されているKi67免疫細胞及び/又は血漿中の可溶性LAG-3又は可溶性PD-L1を含む免疫細胞集団のレベルを測定及び分析するために使用される。全ての患者は、実施例6に記載されている投与計画の推奨と一致して、週1回、10mg/kgのFS118を投与される。SCCHNにおけるFS118の有効性は、処置後24週間後の病勢コントロール率(DCR)の臨床エンドポイントを使用して評価される。これは、FS118による処置の開始から24週間にわたって完全応答(CR)、部分応答(PR)及び/又は安定性疾患(SD)を有する患者の割合である。したがって、これは、例えば、最初に部分応答を示すが、次に安定性疾患に移行するか又はその逆の患者を対象とする。抗PD-1療法(例えば、ドセタキセル若しくはパクリタキセルなどのタキサン、セツキシマブ又はメトトレキサート)後に標準治療を受けた患者は、主任研究員の経験に基づき、典型的には24週間で20%未満のDCR率を示し得る。これは、そのような患者の80%超が標準治療の開始から24週間までに進行性疾患を有するであろうことを意味する。FS118が抗PD-1療法後に投与される標準治療の前記DCR率を超えることが最小の目的である。第I相拡大試験の患者は、FIH及び用量漸増第I相臨床試験の患者よりも前処置が少ないことを考慮すると(実施例2を参照されたい)、この目的は、達成可能であると考えられる。
【0313】
第I相拡大試験の統計的設計では、Simonの2段階ミニマックス設計と呼ばれる方法を利用する(Simon, 1989)。第1段階では、10人の患者が採用される。継続的な採用を保証するため、前記10人の患者のうちの1人のみ又は0人がFS118による処置の開始から24週間にわたって疾患制御(CR、PR及び/又はSD)を達成する場合、登録は、終了し、FS118は、標準治療と比較して十分に有効であると見なされない。それ以外の場合、さらに12人の患者が第2段階として登録される。第2段階の完了時、22人の評価可能な患者のうちの6人以上の患者がFS118による処置の開始から24週間にわたって疾患制御(CR、PR及び/又はSD)を達成した場合、FS118は、これらの患者に有効であると見なされる。
【0314】
いずれの患者がFS118による処置から最も恩恵を受け得るかをさらに理解するために、患者の癌におけるPD-L1及びLAG-3の発現レベル(必須の生検材料を使用してベースラインで記録)を、FS118に対する臨床的有益性(治験中のCR、PR及び/又はSD及び処置期間)と比較して、相関関係が存在するかどうかを特定する。さらに、患者の血漿サンプル中の可溶性LAG-3のレベルの変化並びに末梢免疫細胞集団の頻度及びKi67発現レベルの変化も、FS118への応答の薬力学的マーカーとして監視される。
【0315】
配列表
抗ヒトLAG-3/PD-L1 mAb FS118の重鎖のアミノ酸配列(LALA変異を有する)(配列番号1)
CDRに下線が付されている。AB、CD及びEFループ配列は、太字で下線が付されている。
【化1】
【0316】
抗ヒトLAG-3/PD-L1 mAb FS118の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)
CDRに下線が付されている。
【化2】
【0317】
抗マウスLAG-3/PD-L1 mAb FS18-7-108-29/S1の重鎖のアミノ酸配列(LALA変異を有する)(配列番号3)
CDRに下線が付されている。AB、CD及びEFループ配列の位置は、太字で下線が付されている。LALA変異の位置は、太字で示されている。
【化3】
【0318】
抗マウスLAG-3/PD-L1 mAb FS18-7-108-29/S1の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)
CDRに下線が付されている。
【化4】
【0319】
抗FITC mAb G1AA/4420(LALA変異を含む)の重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)
CDRの位置に下線が付されている。LALA変異の位置は、太字で示されている。
【化5】
【0320】
抗FITC mAb G1AA/4420軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)
CDRの位置に下線が付されている。
【化6】
【0321】
参考文献
本明細書で言及されている全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
Chirmule et al., Immunogenicity to Therapeutic Proteins: Impact on PK/PD and Efficacy, The AAPS Journal, 2012, 14:296-302
D’Argenio DZ, Schumitzky A, Wang X. ADAPT 5 User’s Guide: Pharmacokinetic/Pharmacodynamic Systems Analysis Software. Los Angeles: Biomedical
Simulations Resource; 2009.
Deng et al., LAG-3 confers poor prognosis and its blockade reshapes antitumor response in head and neck squamous cell carcinoma, Oncoimmunology, 2016, 5(11):e1239005
Eisenhauer et al., New response evaluation criteria in solid tumours:
Revised RECIST guideline (version 1.1), European Journal of Cancer, 2009, 28-247
Fujita et al., Retreatment With Anti-PD-L1 Antibody in Advanced Non-small Cell Lung Cancer Previously Treated With Anti-PD-1 Antibodies, Anticancer Res, 2019, 39(7):3917-3291
Fujita et al., Retreatment with anti‐PD‐1 antibody in non‐small cell lung cancer patients previously treated with anti‐PD‐L1 antibody, Thoracic Cancer, 2019, 1759-7706
Hanna et al., Frameshift events predict anti-PD-1/L1 response in head and neck cancer, JCI Insight, 2018, 3(4):e98811
Heery CR, O’Sullivan-Coyne G, Madan RA et al. Avelumabfor metatstatic or locally advanced previously treated solid tumours (JAVELIN Solid Tumour): a phase 1a, muticohort, dose-escalation trial. The Lancet Oncol 2017; 18(5): 587-598
Herbst R, Soria J-C, KowanetzM et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature 2014; 515(7528): 563-567
Marin-Acevedo et al. Next generation of immune checkpoint therapy in cancer: new developments and challenges. Journal of Hematology & Oncology (2018); 11:39
Martini et al., Response to single agent PD-1 inhibitor after progression on previous PD-1/PD-L1 inhibitors: a case series, J. Immunotherapy Cancer, 2017, 5:66
Morgado et al., Simultaneous measurement and significance of PD-1, LAG-3 and TIM-3 expression in human solid tumors, Cancer Res., 2018, 78(13 Suppl):Abstract nr 1681
Nowicki et al., Mechanisms of Resistance to PD-1 and PD-L1 Blockade, The Cancer Journal, 2018, 24(1):47-53
Petitprez et al., B cells are associated with survival and immunotherapy response in sarcoma, Nature, 2020, 577(7791):556-560
Saber H et al. An FDA oncology analysis of immune activating products and first-in-human dose selection. Regulatory Toxicology and Pharmacology 2016; 81: 448-456.
Sharma et al., Primary, Adaptive and Acquired Resistance to Cancer Immunotherapy. Cell, 2017, 168(4):707-723
Seymour et al., iRECIST: guidelines for response criteria for use in trial testing immunotherapeutics, Lancet Oncol., 2017, 18(3):e143-e152
Simon R, Optimal Two-Stage Designs for Phase II Clinical Trials, Controlled Clinical Trials, 1989, 10:1-10
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022533578000001.app
【国際調査報告】