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特表2022-533591リンホトキシンアルファ遮断剤によりターゲットされた制御性T細胞及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】リンホトキシンアルファ遮断剤によりターゲットされた制御性T細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220715BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220715BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/17 Z
A61P37/06
A61P1/04
A61P35/00
A61P37/08
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021567954
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020063346
(87)【国際公開番号】W WO2020229546
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19305618.1
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イルラ,マガリ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA05
4C087ZB08
4C087ZB13
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞及びその使用に関する。その免疫抑制活性及び抗炎症活性により、制御性T細胞は、末梢性寛容において中心的役割を果たし、このため、自己免疫障害及び炎症性障害の発症を決定的に予防する。本発明者らにより、Foxp3+CD4+ Tregが、高レベルのLTαを発現し、LTαが、それらの免疫抑制サインを負にレギュレーションすることが示された。本発明者らにより、可溶性リンホトキシンβレセプターと共に予めインキュベーションされたTregのマウスへの養子移入によりデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎が保護されることが実証された。このため、養子移入において注入されるべき細胞数を減少させることができ、トランスフェクション又はトランスダクション工程を回避することができる。これにより、技術的容易化が提供される。特に、本発明は、自己免疫障害及び炎症関連ガンの治療又は予防を必要とする対象における自己免疫障害及び炎症関連ガンを治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の、有効量の可溶性リンホトキシンβレセプターと共に予めインキュベーションされた制御性T細胞を対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされた、
制御性T細胞。
【請求項2】
リンホトキシンアルファ遮断剤が、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である、請求項1記載の制御性T細胞。
【請求項3】
請求項1又は2記載の制御性T細胞の集団。
【請求項4】
TCR又は自己抗原を認識する/自己抗原に結合するキメラ抗原レセプターを発現することを特徴とする、請求項1記載の制御性T細胞。
【請求項5】
請求項4記載の制御性T細胞の集団。
【請求項6】
キメラ抗原レセプター又はTCRをコードするベクターを使用して、in vitro又はex vivoで制御性T細胞をトランスフェクションし又はトランスダクションする工程を含む、
請求項4記載の制御性T細胞を製造する方法。
【請求項7】
養子細胞療法を必要とする対象における養子細胞療法に使用するための、請求項3及び/又は5記載の制御性T細胞の集団。
【請求項8】
請求項3及び/又は5記載の制御性T細胞の集団を含む、
医薬組成物。
【請求項9】
制御性T細胞免疫抑制活性を刺激するためのex vivo方法であって、
i.対象から生体サンプルを取得することと、
ii.前記サンプルから制御性T細胞を単離することと、
iii.制御性T細胞をin vitroで増殖させることと、
iv.LTα1β2/LTβR又はLTα2β1/LTβR相互作用を遮断するために、前記単離された制御性T細胞を有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共にインキュベーションすることとを含む、
方法。
【請求項10】
生体サンプルが、血液サンプルである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
自己免疫障害の治療又は予防を必要とする対象における自己免疫障害を治療し又は予防する方法であって、
治療上有効量の請求項3又は/及び5記載の制御性T細胞の集団を対象に投与する工程を含む、
方法。
【請求項12】
自己免疫障害が、炎症性腸疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
炎症関連ガン若しくはアレルギーの治療又は予防を必要とする対象における炎症関連ガン若しくはアレルギーを治療し又は予防する方法であって、
治療上有効量の請求項3記載の制御性T細胞の集団を対象に投与する工程を含む、
方法。
【請求項14】
炎症関連ガンが、大腸炎関連ガンである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
外因的に投与された分子に対する免疫反応又は移植組織もしくは移植細胞に対する免疫反応の治療又は予防を必要とする対象におけるこれらの免疫反応を治療し又は予防する方法であって、
治療上有効量の請求項3記載の制御性T細胞の集団を対象に投与する工程を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、自己免疫障害及び炎症関連ガンの治療又は予防を必要とする対象における自己免疫障害及び炎症関連ガンを治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団が、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。
【0002】
発明の背景
CD4+CD25+Foxp3+ 制御性T細胞(Treg)は、末梢自己寛容の維持に重要な役割を果たすCD4+ T細胞のサブセットを構成する(1)。この細胞型は、胸腺の負の選択を免れた有害な自己反応性T細胞を免疫抑制する固有の能力を有し、それにより、炎症性障害及び自己免疫障害の発症を予防する。Foxp3+Treg細胞は、胸腺と、末梢でのナイーブCD4+ T細胞からの変換との両方に由来し、それぞれ天然Treg及び誘導性Tregと呼ばれる(2)。個体発生の間、天然Tregの発生は、従来のCD4+ T細胞の発生と比較して実質的に遅延する。Tregの第一波が、周産期の間に発生し、一方で、従来のCD4+ T細胞は、胚の段階でより早く現れるためである(3)。
【0003】
ヒトの免疫系の制御及び維持におけるFoxp3+ Treg細胞の重要性は、切断された非機能的Foxp3タンパク質が生じるFoxp3遺伝子における突然変異を示す壊血病マウスで実証された(4)。これらのマウスは、若齢で死亡してしまう。胸腺由来Foxp3+ Tregを産生できず、このため、多臓器炎症を伴う致死的なリンパ増殖症候群を発症するためである。続けて、Foxp3は、Tregの発生、機能及びホメオスタシスのマスターレギュレーターとして特定された。Foxp3遺伝子における遺伝子突然変異が、ヒトでも特定されており、免疫調節異常多腺性内分泌不全症腸疾患X連鎖(IPEX)症候群と呼ばれる重症自己免疫疾患の原因となっている(5)。Foxp3+ Tregは、幾つかのメカニズムを使用して、免疫応答を抑制する(Workman et al., 2009)。4つの主な作用機序:免疫抑制サイトカイン(IL-10、TGF-β及びIL-35)、エフェクターT細胞及び樹状細胞の細胞溶解(マウス及びヒトそれぞれにおけるグランザイムB及びA)、代謝破壊(CD39、CD73及びCD25)並びに樹状細胞における抗原提示のモデュレーション(CTLA-4及びLAG-3)が記載されている。
【0004】
マウスにおいて、炎症性腸疾患(IBD)におけるWT Tregの養子移入は、確立された腸炎症(6)、I型糖尿病(7)、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)(8)及び喘息(9)を予防し、治癒することが示されている。さらに、Treg細胞は、多くの場合、腫瘍の免疫監視機構を減弱させることにより腫瘍形成を促進するが、対照的に、大腸炎関連ガン(CAC)等の炎症を抑制することにより、慢性炎症を介したガンにおいて抗腫瘍的な役割を果たす(10)。ヒトにおいて、Treg系細胞治療が現実のものとなりつつある(11)。例えば、ヒトTregを使用する第I相臨床試験が、I型糖尿病(12)、難治性クローン病(13)又は幹細胞移植時の急性移植片対宿主病(GVHD)(14)を患っている患者において報告されている。しかしながら、自己免疫疾患及び炎症性疾患の新規な治療法の開発が依然として必要とされている。
【0005】
さらに、Treg養子移入技術には、主な制限段階が存在する。ヒトにおける有効な治療には、大量の細胞が必要である。このため、Treg細胞療法の分野において、効率的に炎症性障害及び自己免疫障害を所定するのに必要な細胞数を減少させる必要性が依然として存在する。
【0006】
発明の概要
Foxp3CD4 制御性T細胞(Treg)は、その免疫抑制活性及び抗炎症活性により、末梢寛容において中心的な役割を果たし、このため、自己免疫障害及び炎症性障害の発症を決定的に予防する。本発明者らにより、胸腺及び脾臓Foxp3CD4 Tregが、膜アンカーLTα1β2ヘテロ複合体として、従来のCD4 T細胞より高レベルのリンホトキシンα(LTα)を発現することが実証された。LTα-/-マウス由来の胸腺及び脾臓Foxp3CD4 Treg(LTα-/- Treg)は、高度に抑制性の細胞のサインを示す。これは、LTαがこの細胞型の免疫抑制機能を負にレギュレーションすることを示す。興味深いことに、腸炎を制限することにより、LTα-/- Tregの養子移入(AT)は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎を保護し、炎症性腸疾病(IBD)を治癒し、大腸炎関連ガン(CAC)の発症を減弱させる。重要なことに、混合骨髄キメラを使用することにより、本発明者らにより、造血細胞において特異的なLTα発現によりTregの抑制サインが負に制御されることが見出された。本発明者らにより、LTαによりTregの免疫抑制特性が負にレギュレーションされるため、Tregの抑制活性を向上させるための治療における有益で新規なターゲットとなる可能性があることを特定された。また、本発明者らにより、Tregと抗原提示細胞(すなわち、樹状細胞と胸腺上皮細胞)との間のLTα1β2/LTβR相互作用それぞれによりTregの免疫抑制サインが制御されることが明らかにされた。最後に、本発明者らにより、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)と共に予めインキュベーションされた制御性T細胞のATによりDSS誘発大腸炎が減弱されることが見出された。Tregを可溶性リンホトキシンβレセプターと共にインキュベーションすることにより、養子移入において注入される細胞数を減少させることができ、トランスフェクション又はトランスダクション工程を回避することができ、これは、技術的容易性を表わす。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされた、制御性T細胞に関する。このリンホトキシンアルファ遮断剤とのインキュベーションにより、制御性T細胞の抑制活性を高めることが可能となる。
【0008】
本明細書で使用する場合、「リンホトキシンアルファ遮断剤」という用語は、LTαリガンドがLTβRに結合するのを遮断することができる、例えば、LTα1β2/LTBR(優勢な形態)又はLTα2β1/LTβR相互作用を遮断することができる薬剤を指す。
【0009】
本明細書で使用する場合、「リンホトキシンアルファ」又は「LTα」(腫瘍壊死因子ベータ(TNF-β)としても公知)という用語は、腫瘍壊死因子ファミリーのメンバーを指す。リンホトキシンアルファは、リンパ球により分泌されるサイトカインである。リンホトキシンアルファ(Uniprot reference:P01374(Homo sapiens)、P09225(Mus musculus))は、リンホトキシンアルファ(LTA)遺伝子(NCBI reference:遺伝子ID:4049(Homo sapiens)、遺伝子ID:16992(Mus musculus))によりコードされる。LTαとLTβとの相互作用により、LTβRと相互作用することができる膜結合複合体LTα1β2(優勢型)又はLTα2β1/LTβRの形成がもたらされる。本発明者らにより、LTα1β2/LTβR相互作用を遮断することにより制御性T細胞の抑制活性を増大させることが可能となることが示される。
【0010】
一部の実施態様では、リンホトキシンα遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0011】
このため、本発明は、有効量の可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)と共に予めインキュベーションされた、制御性T細胞を指す。
【0012】
本明細書で使用する場合、「リンホトキシンβレセプター(LTβR)」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)ファミリーのメンバーを指す。LTβR(そのUniprot reference:P36941(Homo sapiens)、P50284(Mus musculus))は、リンホトキシン膜型LTα1β2又はLTα2β1(リンホトキシンアルファとリンホトキシンベータとの複合体)に結合し、アポトーシス及びサイトカイン放出に関与するリンホトキシンについての細胞表面レセプターである。
【0013】
本明細書で定義された「可溶性LTβR」は、LTβRの細胞外領域のリンホトキシン(LT)結合フラグメントを含むポリペプチドである。例えば、可溶性LTβRは、ヒトLTβRの細胞外ドメインの全て又はフラグメントを含むことができる。ヒトLTβRの細胞外ドメインは、配列番号:1として示されるアミノ酸配列からなる。
【0014】
【化1】
【0015】
可溶性形態のリンホトキシンβレセプターは、当技術分野において周知であり、WO第97/03687号に開示されている。一部の実施態様では、LTβRポリペプチドは、任意の種(例えば、任意のほ乳類(例えば、マウス、ラット又はサル))由来の全長未成熟LTβRポリペプチドである。好ましい実施態様では、LTβRポリペプチドは、ヒトである。
【0016】
一部の実施態様では、可溶性LTβRは、配列番号:1のアミノ酸配列を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に使用され、長さ又は翻訳後修飾にかかわらず、アミノ酸の任意のペプチド連結鎖を意味する。本発明の方法のいずれかにおいて使用されるLTβR、異種ポリペプチド又はそれらの融合タンパク質は、ヒトタンパク質を含有することができもしくはヒトタンパク質であることができ又は50以下の保存的アミノ酸置換を有する変異体であることができる。
【0018】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチドフラグメント」は全長の未成熟ポリペプチドより短いポリペプチドのセグメントを指す。ポリペプチドの「機能的フラグメント」は、成熟ポリペプチドの活性の少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は100%)を有する。ポリペプチドのフラグメントは、ポリペプチドの末端及び内部欠失変異体を含む。
【0019】
一部の実施態様では、LTβR部分自体が可溶性である。一部の実施態様では、LTβRは、その溶解度を向上させる異種部分、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域に結合される。一部の実施態様では、異種部分は、LTβR部分に共有結合することができる。
【0020】
一部の実施態様では、可溶性LTβRを第2のポリペプチド部分、例えば、異種ポリペプチド(例えば、LTβR融合タンパク質を形成するため)又は非ポリペプチド部分の共有結合により改変することができる。
【0021】
幾つかの場合において、このような部分により、薬力学的又は薬物動態学的パラメーター、例えば、溶解性又は半減期を改善することができる。LTβR融合タンパク質は、抗体の定常領域(例えば、Fcドメイン)、トランスフェリン又はアルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)もしくはウシ血清アルブミン(BSA)の全部又は一部を含むことができる。融合タンパク質は、LTβR配列と非LTβRタンパク質ドメインとの間にリンカー領域を含むことができる。一部の実施態様では、可溶性LTβRは、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)への共有結合により改変される。特定の理論又はメカニズムにより何ら限定されないが、このような可溶性LTβRは、LTβR活性を減少させ(遮断する又は中和する)ためのデコイレセプターとして作用することができる。
【0022】
一部の実施態様では、LTβR融合タンパク質は、免疫グロブリン定常重鎖ドメインに融合したLTβR細胞外リガンド結合ドメインを有する。より好ましくは、LTβRリガンド結合ドメインは、ヒトIgG Fcドメインに融合される。
【0023】
抗体の「Fcドメイン」という用語は、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むが、抗原結合部位を欠く分子の一部を指す。また、この用語は、IgM又は他の抗体アイソタイプの等価な領域を含むことも意味する。
【0024】
一部の実施態様では、可溶性LTβRは、バミネルセプトである。バミネルセプトは、Biogen Idecにより開発されたリンホトキシンベータレセプターアンタゴニストである。そのCAS番号は、909110-25-4であり、そのアミノ酸配列は、配列番号:2からなる。
【0025】
一部の実施態様では、可溶性LTβRタンパク質は、配列番号:2のアミノ酸配列を含む。
【0026】
【化2】
【0027】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、抗LTα遮断抗体である。
【0028】
本明細書で使用する場合、「抗体」は、天然の抗体及び非天然の抗体の両方を含む。具体的には、「抗体」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体並びにその一価及び二価フラグメントを含む。さらに「抗体」は、キメラ抗体、完全合成抗体、一本鎖抗体及びそのフラグメントを含む。抗体は、ヒト又は非ヒト抗体であることができる。非ヒト抗体は、ヒトにおけるその免疫原性を減少させるために、リコンビナント法によりヒト化されていることができる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「抗LTα遮断抗体」は、他の抗体又はレセプターがLTαと結合するのを妨げる抗LTα抗体を指す。抗LTα遮断抗体は、LTα1β2/LTβR又はLTα2β1/LTβR相互作用を妨げる。
【0030】
抗LTα遮断抗体の例は、下記のもの:
【表1】

を含む。
【0031】
抗体は、従来の方法に従って調製される。モノクローナル抗体を、Kohler and Milstein(Nature, 256:495, 1975)の方法を使用して生成することができる。本発明において有用なモノクローナル抗体を調製するために、マウス又は他の適切なホスト動物を、抗原形態のLTαで適切な間隔(例えば、週2回、週1回、月2回又は月1回)において免疫化する。この動物に、殺処分の1週間以内に抗原の最終「追加免疫」を投与することができる。免疫化の間、免疫学的アジュバントを使用するのが望ましい場合が多い。適切な免疫学的アジュバントは、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Ribiアジュバント、Hunter's Titermax、サポニンアジュバント、例えば、QS21もしくはQuil A又はCpG含有免疫刺激オリゴヌクレオチドを含む。他の適切なアジュバントは、当技術分野において周知である。動物を皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、鼻腔内又は他の経路により免疫化することができる。所定の動物を複数の経路により複数の形態の抗原で免疫化することができる。
【0032】
簡潔に、抗原をLTαにおける目的の抗原性領域に対応する合成ペプチドとして提供することができる。免疫化計画に続けて、リンパ球を動物の脾臓、リンパ節又は他の臓器から単離し、ポリエチレングリコール等の作用剤を使用して適切な骨髄腫細胞系統と融合させて、ハイブリドーマを形成する。融合後、細胞を記載されているように(Coding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology, 3rd edition, Academic Press, New York, 1996)、標準的な方法を使用して、ハイブリドーマの増殖を許容するが、融合パートナーの増殖を許容しない培地に入れる。ハイブリドーマの培養後、細胞上清を所望の特異性の抗体、すなわち、抗原に選択的に結合する抗体の存在について分析する。適切な分析技術は、ELISA、フローサイトメトリー、免疫沈降及びウェスタンブロッティングを含む。他のスクリーニング技術は、当技術分野において周知である。好ましい技術は、コンホメーション的にインタクトなネイティブに折り畳まれた抗原への抗体の結合を確認するもの、例えば、非変性ELISA、フローサイトメトリー及び免疫沈降である。
【0033】
重要なことに、当技術分野において周知のように、抗体分子のごく一部であるパラトープが、そのエピトープへの抗体の結合に関与する(一般的には、Clark, W. R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc., New York;Roitt, I. (1991) Essential Immunology, 7th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxfordを参照のこと)。例えば、Fc’及びFc領域は、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。pFc’領域が酵素的に開裂されたか又はpFc’領域なしに産生された抗体(F(ab’)2フラグメントと呼ばれる)は、インタクトな抗体の抗原結合部位の両方を保持する。同様に、Fc領域が酵素的に開裂され又はFc領域なしに産生された抗体(Fabフラグメントと呼ばれる)は、インタクトな抗体分子の1つの抗原結合部位を保持する。さらに進めて、Fabフラグメントは、共有結合した抗体軽鎖とFdと呼ばれる抗体重鎖の一部とからなる。Fdフラグメントは、抗体特異性の主な決定因子であり(1つのFdフラグメントを抗体特異性を変化させることなく、最大10種類の軽鎖と会合させることができ)、Fdフラグメントは、単離された状態でエピトープ結合能を保持する。
【0034】
当技術分野において周知のように、抗体の抗原結合部分内には、抗原のエピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)及びパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)が存在する(一般的には、Clark, 1986;Roitt, 1991を参照のこと)。IgG免疫グロブリンの重鎖Fdフラグメント及び軽鎖の両方において、3つの相補性決定領域(CDR1~CDRS)によりそれぞれ分離された4つのフレームワーク領域(FR1~FR4)が存在する。CDR、特にm、CDRS領域、とりわけ、重鎖CDRSは、抗体特異性を主に担う。
【0035】
ほ乳類抗体の非CDR領域を元の抗体のエピトープ特異性を保持しながら、同種又は異種特異性抗体の類似領域により置き換えることができることが、現在、当技術分野において十分に確立されている。これは、非ヒトCDRがヒトFR及び/又はFc/pFc’領域に共有結合して機能的抗体を産生する「ヒト化」抗体の開発及び使用において最も明白に示される。
【0036】
本発明は、特定の実施態様では、ヒト化形態の抗体を含む、組成物及び方法を提供する。本明細書で使用する場合、「ヒト化」は、CDR領域外のアミノ酸の幾つか、大部分又は全てがヒト免疫グロブリン分子に由来する対応するアミノ酸により置き換えられている抗体を説明する。ヒト化の方法は、US第4,816,567号、同第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号及び同第5,859,205号に記載されている方法を含むが、これらに限定されない。これらの文献は、参照により本明細書に組み入れられる。また、上記US第5,585,089号及び同第5,693,761号並びにWO第90/07861号には、ヒト化抗体を設計するのに使用することができる4つの可能性のある基準も提案されている。最初の提案は、アクセプターについて、ヒト化されるドナー免疫グロブリンと異常に相同である特定のヒト免疫グロブリンからのフレームワークを使用するか又は多くのヒト抗体からのコンセンサスフレームワークを使用することであった。第2の提案は、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク中のアミノ酸が異常であり、その位置のドナーアミノ酸がヒト配列に典型的である場合には、アクセプターではなくドナーアミノ酸を選択することができるというものであった。第3の提案は、ヒト化免疫グロブリン鎖における3つのCDRに直接隣接する位置において、アクセプターアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を選択することができるというものであった。第4の提案は、アミノ酸が抗体の三次元モデルにおいてCDRの3A内に側鎖原子を有すると予想され、CDRと相互作用可能であると予想されるフレームワーク位置に存在するドナーアミノ酸を使用することであった。上記方法は、当業者がヒト化抗体を調製するのに利用することができた方法の一部の例でしかない。当業者であれば、抗体ヒト化のための他の方法に精通しているであろう。
【0037】
ヒト化形態の抗体の一実施態様では、CDR領域外のアミノ酸の幾つか、大部分又は全てが、ヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸により置き換えられているが、この場合、1つ以上のCDR領域内の幾つか、大部分又は全てのアミノ酸は変化していない。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換又は改変は、抗体が所定の抗原に結合する能力を無効にしないであろう限り許容される。適切なヒト免疫グロブリン分子は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgM分子を含むであろう。「ヒト化」抗体は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。ただし、ヒト化の特定の方法を使用して、抗体の結合の親和性及び/又は特異性を、Wu et al., /. Mol. Biol. 294:151, 1999に記載されているように、「指向性進化」の方法を使用して向上させることができる。この文献の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0038】
また、完全なヒトモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ローカスの大部分についてトランスジェニックなマウスを免疫化することによっても調製することができる。例えば、US第5,591,669号、同第5,598,369号、同第5,545,806号、同第5,545,807号、同第6,150,584号及びそれらに引用された参考文献を参照のこと。これらの文献の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。これらの動物は、内因性(例えば、マウス)抗体の産生において機能的欠失が存在するように、遺伝的に改変されている。この動物をさらに改変して、これらの動物の免疫化により目的の抗原に対する完全なヒト抗体の産生がもたらされるであろうように、ヒト生殖細胞系統免疫グロブリン遺伝子ローカスの全部又は一部を含ませるようにする。これらのマウス(例えば、XenoMouse(Abgenix)、HuMAbマウス(Medarex/GenPharm))の免疫化後、モノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術に従って調製することができる。これらのモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有し、したがって、ヒトに投与された場合、ヒト抗マウス抗体(KAMA)応答を誘発しないであろう。
【0039】
ヒト抗体を産生するためのin vitro法も存在する。これらは、ファージディスプレイ技術(US第5,565,332号及び同第5,573,905号)及びヒトB細胞のin vitro刺激(US第5,229,275号及び同第5,567,610号)を含む。これらの特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0040】
このため、当業者に明らかであろうように、本発明は、F(ab’)2、Fab、Fv並びにFdフラグメント;Fc及び/又はFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同ヒト又は非ヒト配列により置き換えられているキメラ抗体;FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同ヒト又は非ヒト配列により置き換えられているキメラF(ab’)2フラグメント抗体;FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3領域が相同ヒト又は非ヒト配列により置き換えられているキメラFabフラグメント抗体並びにFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2領域が相同ヒト又は非ヒト配列により置き換えられているキメラFdフラグメント抗体も提供する。また、本発明は、いわゆる一本鎖抗体も含む。
【0041】
種々の抗体分子及びフラグメントは、IgA、分泌型IgA、IgE、IgG及びIgMを含むが、これらに限定されない、一般的に公知の免疫グロブリンクラスのいずれかから得ることができる。また、IgGサブクラスも、当業者に周知であり、ヒトIgGl、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが、これらに限定されない。
【0042】
別の実施態様では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「VHH」という用語は、本来軽鎖を欠くラクダ科ほ乳類において見出すことができるタイプの抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。このようなVHHは、「nanobody(登録商標)」とも呼ばれる。本発明によれば、sdAbは、特に、ラマsdAbであることができる。「VHH」という用語は、3つの相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2及びCDR3を有する単一重鎖を指す。「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、VHHの結合親和性及び特異性を規定する超可変アミノ酸配列を指す。
【0043】
本発明のVHHを、通常の実験を使用して当業者により容易に調製することができる。VHH変異体及びその改変形態を当技術分野において公知の任意の技術、例えば、in vitro成熟で産生することができる。
【0044】
VHH又はsdAbは、通常、免疫化された動物から得られた血液、リンパ節又は脾臓cDNAから、ファージディスプレイベクター、例えば、pHEN2へのV-ドメインレパートリーのPCRクローニングにより生成される。抗原特異的VHHは、一般的には、固定化抗原、例えば、試験管のプラスチック表面上に被覆された抗原、ストレプトアビジンビーズ上に固定化されたビオチン化抗原又は細胞の表面上に発現された膜タンパク質上にファージライブラリーをパニングすることにより選択される。ただし、このようなVHHは、多くの場合、幾らかの免疫化を受けた動物に由来するVHHより、それらの抗原に対して低い親和性を示す。免疫ライブラリーからのVHHの高い親和性は、免疫化動物のリンパ器官におけるB細胞のクローン性増殖中の変異VHHの自然選択に起因する。非免疫ライブラリーからのVHHの親和性を多くの場合、このストラテジーをin vitroで模倣することにより、すなわち、CDR領域の部位特異的突然変異誘発及び高まったストリンジェンシー(より高い温度、高い又は低い塩濃度、高い又は低いpH及び低い抗原濃度)の条件下での固定化抗原上での更なるラウンドのパニングにより改善することができる。ラクダに由来するVHHは、従来の抗体の対応するドメインよりはるかに高いレベルで、E. coliペリプラズムにおいて容易に発現され、そこから精製される。VHHを一般的には、高い溶解性及び安定性を表わし、酵母、植物及びほ乳類細胞において容易に産生することができる。例えば、「Hamers特許」には、任意の所望のターゲットに対してVHHを生成するための方法及び技術が記載されている(例えば、US第5,800,988号;同第5,874,541号及び同第6,015,695号を参照のこと)。「Hamers特許」には、とりわけ、細菌ホスト、例えば、E. coli(例えば、US第6,765,087号を参照のこと)及び下等真核生物ホスト、例えば、カビ(例えば、Aspergillus又はTrichoderma)又は酵母(例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、Hansenula又はPichia)(例えば、US第6,838,254号を参照のこと)におけるVHHの産生が記載されている。
【0045】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞」又は「Treg」という用語は、免疫系をモデュレーションし、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患及び炎症性疾患を抑制するT細胞の部分集団を指す。これらの細胞は、一般的には、エフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制し又はダウンレギュレーションし、抗原提示細胞機能をモデュレーションする。Tregは、細胞間接触又は免疫抑制サイトカインの放出のいずれかにより、抑制活性(すなわち、従来のT細胞の増殖を阻害すること)が可能な細胞である。
【0046】
本発明の別の目的は、本発明の制御性T細胞の集団に関する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「集団」という用語は、細胞の集団を指す。ここで、細胞の総数の大部分(例えば、少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約60%、より好ましくは、少なくとも約70%、さらにより好ましくは、少なくとも約80%)が、目的の細胞の特定の特徴を有し、目的のマーカーを発現する。
【0048】
本発明の別の目的は、制御性T細胞免疫抑制活性を刺激するためのex vivo方法であって、
i)対象から生体サンプルの取得することと、
ii)前記サンプルから制御性T細胞を単離することと、
iii)制御性T細胞をin vitroで増殖させることと、
iv)LTα1β2/LTβR又はLTα2β1/LTβR相互作用を遮断するために、前記単離された制御性T細胞を有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤、例えば、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)と共にインキュベーションすることとを含む、方法に関する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ほ乳類、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を指す。好ましくは、本発明の対象は、ヒトである。
【0050】
本明細書で使用する場合、「生体サンプル」という用語は、任意の体液又は組織を指す。一実施態様では、生体サンプルは、血液サンプルである。
【0051】
本明細書で使用する場合、「制御性T細胞免疫抑制活性」という用語は、当技術分野において周知であり、エフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制し又はダウンレギュレーションするTregの能力を指す。本明細書で使用する場合、「制御性T細胞免疫抑制活性の刺激」という用語は、制御性T細胞免疫抑制活性の向上を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「単離する」は、その本来の環境から細胞又は細胞集団を取り出すことを指す。本明細書で使用する場合、「単離された」は、その本来の環境(例えば、血液サンプル)から取り出され、単離され、精製され又は分離され、本来存在する他の細胞を少なくとも約75%、80%、85%、好ましくは、約90%、95%、96%、97%、98%、99%含まない細胞又は細胞集団を指す。
【0053】
本発明の方法によれば、本発明の制御性T細胞は、サンプルから単離される。当業者に公知の全ての技術を使用することができる。一実施態様では、制御性T細胞は、CD8及びCD19細胞の枯渇によるCD4 T細胞の事前濃縮後に、セルソーターにより単離される。選別された制御性T細胞の純度は、97%超であった。
【0054】
本発明の更なる目的は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現することを特徴とする、本発明の予めインキュベーションされた制御性T細胞に関する。
【0055】
本明細書で使用する場合、「TCR」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、MHC分子に結合した抗原を認識することを担うT細胞の表面上に見出される分子を指す。特に、「TCRを発現することを特徴とするT細胞」は、T細胞が例えば、前記TCRをコードする核酸分子によりin vitro又はex vivoで前記T細胞をトランスフェクションし又はトランスダクションすることにより、前記TCRを発現するように遺伝子操作されたことを意味する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗原レセプター」又は「CAR」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含有する人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドを指す。本発明の文脈において、抗体の抗原結合ドメインは、自己抗原を認識する/自己抗原に結合する。
【0057】
本明細書で使用する場合、「認識する」又は「結合する」という用語は、TCR又はキメラ抗原レセプターが抗原に対する親和性を有することを意味する。
【0058】
本明細書で使用する場合、「自己抗原」という用語は、免疫系により認識される内因性抗原又はその活性フラグメントを指す。自己抗原は、細胞タンパク質、リンタンパク質、細胞表面タンパク質、細胞脂質、核酸、細胞表面レセプターを含む糖タンパク質を含むが、これらに限定されない。自己抗原の例は、プレプロインスリン(PPI)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ関連タンパク質2(IA-2)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、亜鉛トランスポーター8(ZnT8)及びT1D用クロモグラニンA;多発性血管炎を伴う肉芽腫症に対するミエロペルオキシダーゼ及びプロテイナーゼ3;多発性硬化症におけるミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)及びミエリン塩基性タンパク質(MBP);セリアック病におけるグリアジンを含むが、これらに限定されない。
【0059】
別の目的は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現する、本発明の制御性T細胞の集団に関する。
【0060】
一実施態様では、本発明の制御性T細胞は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するキメラ抗原レセプター又は抗原特異的TCRを発現するために、キメラ抗原レセプター又は抗原特異的TCRをコードするベクターによりin vitro又はex vivoでトランスフェクションされ又はトランスダクションされている。このため、本発明の別の目的は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するキメラ抗原レセプター又は抗原特異的TCRを発現する本発明の制御性T細胞を製造する方法に関する。この方法は、キメラ抗原レセプター又は抗原特異的TCRをコードするベクターにより、in vitro又はex vivoで本発明の制御性T細胞をトランスフェクションし又はトランスダクションする工程を含む。
【0061】
「トランスダクション」又は「トランスダクションする」という用語は、レシピエント細胞における遺伝物質のウイルス移入及びその発現を指す。
【0062】
本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」又は「トランスフェクションする」という用語は、DNA(例えば、組み立てられたDNA発現ベクター)を細胞に導入し、それにより、細胞トランスフォーメーションを可能にするプロセスを指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、ホスト細胞において複製しかつ/又は組み込むベクターの能力を破壊することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子を指す。
【0064】
本発明の制御性T細胞集団(有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤、例えば、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現するか又は発現しない制御性T細胞の集団)は、治療的使用に特に適している。
【0065】
本発明の更なる目的は、養子細胞療法に使用するための、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現するか又は発現しない、制御性T細胞の集団に関する。
【0066】
本明細書で使用する場合、「養子細胞療法」という用語は、遺伝的に改変されている又は改変されていない自己又は同種リンパ球の注入に関連する細胞系免疫療法を指す。
【0067】
本発明のTregの集団を本開示に基づいて当業者に明らかであろう公知の技術又はその変形例に従って養子細胞療法のための方法及び組成物に利用することができる。例えば、Gruenberg et alのUS第2003/0170238号を参照のこと。RosenbergのUS第4,690,915号も参照のこと。一部の実施態様では、細胞をまず、それらの培養培地からそれらを収集し、ついで、投与に適した培地及び容器システム(「薬学的に許容し得る」担体)中で、処置有効量に洗浄し、濃縮することにより配合される。適切な注入媒体は、任意の等張媒体配合物、典型的には、通常の生理食塩水、Normosol R(Abbott)又はPlasma-Lyte A(Baxter)であることができるが、水中の5% デキストロース又は乳酸リンゲル液も利用することができる。注入媒体に、ヒト血清アルブミンを補充することができる。組成物中の細胞の処置上有効量は、レシピエントの年齢及び体重、ターゲットとする状態の重症度により決まる。古典的には、注入されるTregの数は、約1~3×10個/kgである(Adair et al. Human Tregs Made Antigen Specific by Gene Modification: The Power to Treat Autoimmunity and Antidrug Antibodies with Precision. Front Immunol 2017)。ただし、本発明のTregを使用する場合、それらの免疫抑制活性が向上するため、用量を減らすことができる。一実施態様では、用量を少なくとも50%減少させることができる。一実施態様では、用量を75%減少させることができる。一実施態様では、標準的な細胞治療用量を使用することができる。これらの細胞量は、約10個/kg、好ましくは、5×10個/kg程度少なくすることができ、10個/kg、好ましくは、10個/kg程度多くすることができる。細胞数は、組成物が意図される最終的な用途により決まり、その中に含まれる細胞の型も同様であろう。臨床的に関連する数の免疫細胞を、細胞の所望の総量に累積的に等しいか又はそれを超える複数回の注入に配分することができる。
【0068】
本発明の目的で、養子細胞療法に使用される本発明の制御性T細胞を対象(「自己細胞」)又は別の個体(「同種細胞」)から単離することができる。
【0069】
本明細書で使用する場合、「同種細胞」は、ある対象(ドナー)から単離され、別の対象(レシピエント又はホスト)に注入される細胞を指す。
【0070】
本明細書で使用する場合、「自己細胞」は、単離され、同じ対象(レシピエント又はホスト)に注入されて戻される細胞を指す。
【0071】
一実施態様では、養子細胞療法に使用される本発明の制御性T細胞は、幹細胞に由来することができる。
【0072】
本明細書で使用する場合、「幹細胞」という用語は、自己再生の特性を有し、発達の可能性(すなわち、全能性、多能性、多能性等)に関して特定の暗示的意味なしに、複数の細胞タイプに分化する発達の可能性を有する、未分化又は部分的に分化した状態にある細胞を指す。
【0073】
特定の実施態様では、養子細胞療法に使用される本発明の制御性T細胞は、誘導された多能性幹細胞に由来することができる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「iPSC」及び「誘導多能性幹細胞」という用語は、互換的に使用され、非多能性細胞、典型的には、成体体細胞から、例えば、1つ以上の遺伝子の強制発現を誘引することにより人工的に誘導される(例えば、誘導され又は完全な逆転により)多能性幹細胞を指す。
【0075】
特定の実施態様では、養子細胞療法に使用される本発明の制御性T細胞制御性T細胞は、胚性幹細胞に由来することができる。
【0076】
本明細書で使用する場合、「胚性幹細胞」という用語は、胚性胚盤胞の内部細胞塊の天然の多能性幹細胞を指す(例えば、US第5,843,780号;同第6,200,806号;同第7,029,913号;同第7,584,479号を参照のこと。これらの文献は、参照により本明細書に組み入れられる)。このような細胞を、体細胞核移植(核移植)に由来する胚盤胞の内部細胞塊からも同様に得ることができる(例えば、US第5,945,577号、同第5,994,619号、同第6,235,970号を参照のこと。これらの文献は、参照により本明細書に組み入れられる)。胚性幹細胞は多分化能を有し、発生の過程で外胚葉、内胚葉及び中胚葉という3つの一次胚葉の全ての誘導体を生じる。すなわち、それらは、特定の細胞種に十分かつ必要な刺激を与えると、成体の200以上の細胞種それぞれに発生することができる。それらは、胚体外膜や胎盤には寄与しない。すなわち、全能性ではない。
【0077】
一実施態様では、養子細胞療法に使用される本発明の制御性T細胞は、従来のCD4+ T細胞の変換に由来することができる。
【0078】
本発明の更なる目的は、自己免疫障害を治療し又は予防する方法であって、自己免疫障害を必要とする患者に、制御性T細胞免疫抑制活性を刺激するのに有効な量のリンホトキシンアルファ遮断剤を投与することを含む、方法に関する。とりわけ、本発明は、自己免疫障害又は炎症関連ガンの処置又は予防を必要とする対象における自己免疫障害又は炎症関連ガンを治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞の集団を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。このリンホトキシンアルファ遮断剤とのインキュベーションにより、制御性T細胞の抑制活性を高めることが可能となる。
【0079】
一実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0080】
一実施態様では、制御性T細胞は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現する。
【0081】
一部の実施態様では、制御性T細胞は、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現しない。
【0082】
このため、本発明は、自己免疫障害の治療又は予防を必要とする対象における自己免疫障害を治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の、有効量の可溶性LTβRと共に予めインキュベーションされた制御性T細胞の集団及び/又は有効量の可溶性LTβRと共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現する制御性T細胞の集団を対象に投与する工程を含む、方法を指す。
【0083】
本明細書で使用する場合、「自己免疫疾患」という用語は、対象における自己免疫応答(自己又は自己抗原に対して向けられる免疫応答)の存在を指す。自己免疫疾患は、適応免疫系が自然免疫系の細胞と共同して、自己抗原に応答し、細胞及び組織の損傷を媒介するような自己寛容の破綻により引き起こされる疾患を含む。一部の実施態様では、自己免疫疾患は、少なくとも部分的に、体液性及び/又は細胞性免疫応答の結果であると特徴付けられる。自己免疫疾患の例は、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経失調症、自己免疫性肝炎、自己免疫性高脂血症、自己免疫性免疫不全、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性蕁麻疹、軸索及び神経障害、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、自己免疫性心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜類天疱瘡、クローン病、コガンス症候群、寒冷凝集素症、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合性クリオグロブリン血症、脱髄性ニューロパチー、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維筋痛、線維性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、多発血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性ヘルペス、低ガンマグロブリン血症、高ガンマグロブリン血症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgAニューロパチー、IgG4関連硬化性疾患、免疫制御性リポタンパク質、封入体筋炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病(1型)、間質性膀胱炎、若年性関節炎、川崎症候群、ランバート-イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、線状IgA病(LAD)、ループス(SLE)、ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、混合性結合組織病(MCTD)、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、モーレン潰瘍、ムシャ-ハバーマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(Devic’s)、自己免疫性好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、腫瘍随伴性小脳変性症、発作性夜間血色素尿症(PNH)、ペイリーロンベルグ症候群、パーソネージ-ターナー症候群、扁平部炎(末梢性ブドウ膜炎)、天疱瘡、末梢神経障害、静脈周囲脳脊髄炎、悪性貧血、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型及びIII型自己免疫性多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発筋炎、心筋梗塞後症候群、心外膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、純赤血球無形成症、レイノー現象、反射性交感神経性ジストロフィ、ライター症候群、再発性多発軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、シェーグレン症候群、精子及び精巣の自己免疫、全身硬直症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、サッカ症候群、交感神経性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少性紫斑病(TTP)、トローザ-ハント症候群、横断性脊髄炎、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病(UCTD)、ブドウ膜炎、血管炎、小水疱性皮膚症、白斑、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)及びヴェーゲナー肉芽腫症[多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)]を含むが、これらに限定されない。一部の実施態様では、自己免疫疾患は、関節リウマチ、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス(ループス又はSLE)、重症筋無力症、多発性硬化症、強皮症、アジソン病、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、ギラン-バレー症候群、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、血栓性血小板減少性紫斑病、高ガンマグロブリン血症、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)、橋本脳症(HE)、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ヴェーゲナー肉芽腫症[多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)]からなる群より選択される。
【0084】
一実施態様では、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患である。
【0085】
一実施態様では、自己免疫疾患は、多発性硬化症又は1型糖尿病である。
【0086】
本発明の更なる目的は、炎症関連ガンの治療又は予防を必要とする対象における炎症関連ガンを治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。
【0087】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0088】
本明細書で使用する場合、「炎症関連ガン」という用語は、炎症がガンの開始及び発生に関与する病因メカニズムの少なくとも1つと考えられる任意のガンを指す。炎症関連ガンの例は、大腸炎関連ガン、胃腺ガン、膀胱ガン、肝臓ガン、直腸ガン、胆管ガン、結腸ガン、結腸直腸ガン、胆のうガン、肝細胞ガン、卵巣ガン、子宮頸ガン、皮膚ガン、食道ガン、膀胱ガン、中皮腫、肺ガン、口腔扁平上皮ガン、膵ガン、外陰扁平上皮ガン、唾液腺ガン、肺ガン、MALTリンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0089】
一実施態様では、炎症関連ガンは、大腸炎関連ガンである。大腸炎関連ガンは、大腸ガンのサブタイプである。
【0090】
本発明の更なる目的は、アレルギーの治療又は予防を必要とする対象におけるアレルギーを治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。
【0091】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0092】
本明細書で使用する場合、「アレルギー」という用語は、一般的には、炎症を特徴とする不適切な免疫応答を指し、食物アレルギー、呼吸器アレルギー並びに例えば、クインケ浮腫及びアナフィラキシー等の全身応答を引き起こすか又は引き起こす可能性がある他のアレルギーを含むが、これらに限定されない。この用語は、アレルギー、アレルギー性疾患、過敏性関連疾患又は気道炎症に関連する呼吸器疾患、例えば、喘息もしくはアレルギー性鼻炎を包含する。一部の実施態様では、本発明の方法は、アナフィラキシー、薬剤過敏症、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患、アレルギー性接触アレルギー、食物過敏症、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、職業性喘息、アトピー性喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連する1つ以上の症状を予防し、治療し又は軽減するのに有効である。本発明の方法により治療することができる過敏症関連疾患又は障害は、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患[又は乾燥性角膜炎(KCS)(乾性角膜炎、眼球乾燥症とも呼ばれる)と呼ばれるその他の疾患]、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー及び気道炎症に関連する呼吸器疾患、例えば、IgE媒介喘息及び非IgE媒介喘息を含むが、これらに限定されない。気道炎症に関連する呼吸器疾患は、鼻炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性(外因性)喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、職業性喘息、アトピー性喘息、運動誘発喘息、咳誘発喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の更なる目的は、外因的に投与される分子に対する免疫反応の治療又は予防を必要とする対象における該免疫反応を治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。
【0094】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0095】
この種の非限定的な例は、遺伝的欠損症に関する補充療法に対する免疫反応を含む。遺伝的欠損症は、血友病A、血友病B、他の凝固因子、例えば、第II因子、プロトロンビン及びフィブリノーゲンの先天的欠損、原発性免疫不全症(例えば、重症複合免疫不全症、X連鎖無ガンマグロブリン血症、IgA欠損症)、原発性ホルモン欠損症、例えば、成長ホルモン欠損症及びレプチン欠損症、先天性酵素異常症及び代謝障害、例えば、炭水化物代謝障害(例えば、スクロース-イソマルターゼ欠損症、糖原病)、アミノ酸代謝障害(例えば、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、1型グルタル酸血症)、尿素サイクル障害(例えば、カルバモイルリン酸シンターゼI欠損症)、有機酸代謝障害(例えば、アルカプトン尿症、2-ヒドロキシグルタル酸尿症、脂肪酸酸化及びミトコンドリア代謝障害(例えば、中鎖アシルコエンザイムAデヒドロゲナーゼ欠損症)、ポルフィリン代謝障害(例:ポルフィリン症)、プリン又はピリミジン代謝障害(例えば、レッシュ-ナイハン症候群)、ステロイド代謝障害(例えば、リポイド先天性副腎過形成、先天性副腎過形成)、ミトコンドリア機能障害(例えば、カーンズ-セイヤー症候群)、ペルオキシソーム機能障害(例えば、ツェルウェーガー症候群)、リソソーム蓄積障害(例えば、ゴーシェ病、ニーマンピック病)を含むが、これらに限定されない。
【0096】
本発明の更なる目的は、移植組織又は移植細胞に対する免疫反応の治療又は予防を必要とする対象における該免疫反応を治療し又は予防する方法であって、治療上有効量の制御性T細胞を対象に投与する工程を含み、ここで、制御性T細胞の集団は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされている、方法に関する。
【0097】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0098】
本明細書で使用する場合、「移植」という用語は、第1の生物(又はドナー)から得ることができ、第2の生物(又はレシピエント)に移植することができる臓器及び/又は組織及び/又は細胞を指す。典型的には、対象に、心臓、腎臓、肺、肝臓、膵臓、膵島、脳組織、胃、大腸、小腸、角膜、皮膚、気管、骨、骨髄、筋肉又は膀胱からなる群より選択される移植片を移植することができる。また、本発明の方法は、レシピエント対象によるドナー組織、細胞、移植片又は臓器移植の拒絶に関連する免疫応答を予防し又は抑制するのにも特に適している。移植片関連疾患又は障害は、骨髄移植に関連するような移植片対宿主病(GVHD)及び例えば、皮膚、筋肉、ニューロン、膵島、臓器、肝臓の実質細胞等の移植片を含む臓器、組織又は細胞移植片移植(例えば、組織又は細胞同種移植片又は異種移植片)の拒絶を生じ又は拒絶に関連する免疫障害を含む。このため、本発明の方法は、宿主対移植片病(HVGD)及び移植片対宿主病(GVHD)を予防するのに有用である。キメラ構築物を移植前、移植中及び/又は移植後(例えば、移植の少なくとも1日前、移植の少なくとも1日後及び/又は移植法自体の間)に対象に投与することができる。一部の実施態様では、キメラ構築物を移植前及び/又は移植後に定期的に対象に投与することができる。
【0099】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、ほ乳類、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を指す。好ましくは、本発明の対象は、ヒトである。
【0100】
本明細書で使用する場合、「処置」又は「処置する」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。本発明の目的で、有益な又は所望の臨床結果は、下記:疾患から生じる1つ以上の症状を軽減すること、疾患の程度を減少させること、疾患を安定化させること(例えば、疾患の悪化を予防し又は遅延させること)、疾患の広がりを予防しもしくは遅延させること、疾患の再発を予防しもしくは遅延させること、疾患の進行を遅延させもしくは遅くさせること、疾患状態を改善すること、疾患の寛解(部分的又は全体的)を提供すること、疾患を処置するのに必要とされる1つ以上の他の薬剤の用量を減少させること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上させること及び/又は生存を延長することのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。「処置」という用語は、予防的処置を包含する。本明細書で使用する場合、「予防する」又は「予防」という用語は、所定の状態を獲得する又は発症するリスクの減少を指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、「投与する」又は「投与」という用語は、体外に存在する物質を対象内に、例えば、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達及び/又は本明細書に記載されるかもしくは当技術分野において公知の任意の他の物理的送達方法により、注入し又は何等かの方法で物理的に送達する行為を指す。疾患又はその症状が処置される場合、物質の投与を典型的には、疾患又はその症状の発症後に行う。疾患又はその症状が防止される場合、物質の投与を典型的には、疾患又はその症状の発症前に行う。
【0102】
「治療上有効量」は、「改善された治療アウトカム」が得られるように、当業者により日常的に利用される手法を使用して決定される。ただし、本発明の組成物の毎日の用法は全体として、正しい医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろうことが理解されるであろう。任意の特定の対象についての特定の治療上有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重症度;利用される特定の化合物の活性;利用される特定の組成物;対象の年齢、体重、健康全般、性別及び食事;投与期間、投与経路並びに利用される特定の化合物の排泄速度;処置の期間;組み合わせて使用される薬剤並びに医療分野において周知の要因をも含む各種の要因により決まるであろう。本発明によれば、制御性T細胞を1~500μg/ml 可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)の広範囲にわたって、5~120分の広範囲の時間インキュベーションすることができる。このため、制御性T細胞を1、2、5、10、30、50、100、150、200又は500μg/mlと共に、5、10、30、60、90又は120分間インキュベーションすることができる。
【0103】
一部の実施態様では、制御性T細胞を50μg/ml 可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)と共に30分間インキュベーションする。
【0104】
自然免疫系は、組織治癒過程に関与することが周知であるが、適応免疫系が、キープレイヤーとして最近出現してきた。T細胞、特に、制御性T細胞(Treg)は、種々の臓器系の修復及び再生を促進することが示されている(15)。このため、本発明の更なる目的は、再生療法に使用するための、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現するか又は発現しない、制御性T細胞の集団に関する。
【0105】
本明細書で使用する場合、「再生療法」という用語は、正常な機能を回復させ又は確立するために、ヒト又は動物の細胞、組織又は臓器を再生するプロセスを指す。再生医療は、加齢、疾患又は外傷により損傷した組織及び臓器を治癒し又は置き換え、先天性欠損を正常化する可能性を有する。この分野には、以前は回復不能であった組織又は臓器を機能的に治癒させるために、身体自身の修復機構を刺激することにより、損傷した組織及び臓器を工学的に改良するという見込みがある。
【0106】
再生療法は、組織治癒プロセス、例えば、皮膚再生並びに臓器再生、例えば、心筋再生、肝臓再生、腎臓再生、膵臓再生、肺再生、毛包再生、心臓再生;膀胱再生;筋肉再生(例えば、骨格筋再生及び心筋再生)、骨再生及び中枢神経系再生を含むが、これらに限定されない。
【0107】
一部の実施態様では、再生療法は、筋肉再生、皮膚再生、骨再生又は中枢神経系再生である。
【0108】
使用する場合、「臓器又は組織再生」という用語は、臓器又は組織における分化した常在細胞の増殖活性を再開始させ、臓器損傷後の細胞のそれらの多量の喪失を置き換えることを指す。
【0109】
本明細書で使用する場合、「臓器損傷」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、臓器の細胞に対する任意の種類の可逆的又は不可逆的損傷を指す。臓器損傷は、任意の状態により生じる場合がある。典型的な臓器損傷は、アブレーション療法(例えば、骨髄移植(BMT)に対して患者が準備するのに必要なもの等)、HIV/AIDSに関連する合併症、加齢過程、栄養不良及び放射線中毒を含む。また、この用語は、加齢に関連する退縮、すなわち、加齢に伴う臓器の漸進的な収縮を含む。臓器損傷、例えば、胸腺損傷は、例えば、医学的処置としての放射線照射により生じる場合がある。放射線照射で部分的に処置される疾患の例は、ガン、例えば、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、急性骨髄性白血病、神経芽腫、卵巣ガン、胚細胞腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、慢性リンパ性白血病、若年性慢性骨髄性白血病及び他の疾患、例えば、自己免疫障害、アミロイドーシス、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、ファンコニ貧血、ブラックファン-ダイアモンド貧血、重症型サラセミア、鎌状赤血球貧血、重症複合免疫不全症、ヴィスコット-オールドリッチ症候群、先天性代謝異常症を含むが、これらに限定されない。
【0110】
一部の実施態様では、臓器損傷は、虚血によっても生じる場合がある。虚血は、可逆的又は持続的(すなわち、永続的)虚血であることができる。持続性虚血は、臓器が血液により不適切に供給され、このため、安静時の対象においても低酸素状態にあることを特徴とする。
【0111】
一部の実施態様では、臓器損傷は、任意の形態の化学的もしくは物理的物質、例えば、薬剤、環境毒物又は対象に接触し、臓器もしくは組織への損傷を直接的もしくは間接的に生じる任意の他の物質により生じる場合がある。また、対象の治療的処置、例えば、臓器の細胞アポトーシスの誘導をもたらす処置(例えば、化学療法)等の成功により生じる損傷も含まれる。
【0112】
このため、本発明は、組織又は臓器を再生するのに使用するための、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現するか又は発現しない、制御性T細胞の集団に関する。
【0113】
一部の実施態様では、臓器又は組織は、骨格筋、心筋、骨、皮膚又は中枢神経系である。
【0114】
このため、本発明は、骨格筋、心筋、骨、皮膚又は中枢神経系を再生するのに使用するための、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現するか又は発現しない、制御性T細胞の集団に関する。
【0115】
本発明によれば、本発明の制御性T細胞の集団は、医薬組成物の形態で対象に投与される。
【0116】
したがって、本発明の更なる目的は、有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされた制御性T細胞の集団及び/又は有効量のリンホトキシンアルファ遮断剤と共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現する制御性T細胞の集団を含む、医薬組成物に関する。
【0117】
一部の実施態様では、リンホトキシンアルファ遮断剤は、可溶性リンホトキシンβレセプター(LTβR)である。
【0118】
このため、本発明は、有効量の可溶性LTβRと共に予めインキュベーションされた制御性T細胞の集団及び/又は有効量の可溶性LTβRと共に予めインキュベーションされ、自己抗原を認識する/自己抗原に結合するTCR又はキメラ抗原レセプターを発現する制御性T細胞の集団を含む、医薬組成物に関する。
【0119】
典型的には、Tregの集団を薬学的に許容し得る賦形剤及び場合により、徐放性マトリックス、例えば、生分解性ポリマーと組み合わせて、治療組成物を形成することができる。「薬学的に」又は「薬学的に許容し得る」は、ほ乳類、特に、ヒトに適宜投与された場合に、有害なアレルギー性又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容し得る担体又は賦形剤は、任意のタイプの無毒性固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は製剤補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与のための本発明の医薬組成物において、有効成分を単独で又は別の有効成分と組み合わせて、単位投与形態で、従来の医薬支持体との混合物として、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口懸濁剤又は液剤、舌下及び頬側投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下及び鼻腔内投与形態並びに直腸投与形態を含む。
【0120】
一実施態様では、本発明のTreg集団は、非経口経路により投与される。好ましい実施態様では、本発明のTreg集団は、静脈内経路により投与される。
【0121】
典型的には、該医薬組成物は、注射製剤のための薬学的に許容し得る媒体を含有する。これらは、特に、等張性で無菌の生理食塩水(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウム等又はこのような塩の混合物)又は乾燥、特に、凍結乾燥組成物であることができる。これらは、場合に応じて、滅菌水又は生理食塩水の添加により、注射溶液の構成が可能となる。注射液用途に適した薬学的形態は、滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び注射溶液又は懸濁液の即時調製のための無菌粉末を含む。全ての場合に、この形態は滅菌され、容易に注入できる程度の液状でなければならない。この形態は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染作用に対して保持されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容し得る塩としての本発明の溶液を界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースと適切に混合された水中で調製することができる。また、分散液をグリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれら混合物中並びに油中で調製することもできる。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有する。Tregの集団は、中性形態又は塩形態にある組成物に製剤化することができる。薬学的に許容し得る塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含む。酸付加塩は、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸等又は有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等と形成される。また、遊離カルボキシル基と形成される塩も、無機塩基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム又は水酸化第二鉄等及び有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等から得ることができる。また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることもできる。適切な流動性を例えば、レシチン等の被覆の使用により、懸濁液の場合には必要な粒径の維持により及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止を種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含ませるのが好ましいであろう。注射可能な組成物の延長された吸収を、吸収を遅延させる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアラート及びゼラチンを組成物に使用することによりもたらすことができる。無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上記列記された他の成分の幾つかと共に包含させ、続けて、ろ過滅菌することにより調製される。一般的には、分散液は、基本的な分散媒体及び上記列記されたものからの必要とされる他の成分を含有する無菌媒体に種々の滅菌された有効成分を包含させることにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の典型的な方法は、その予めろ過滅菌された溶液から有効成分と任意の更なる所望の成分との粉末を生成する真空乾燥技術及び凍結乾燥技術である。直接注射のためのより多くの又は高度に濃縮された溶液の調製も企図される。この場合、溶媒としてのDMSOの使用は、非常に迅速な浸透を生じ、小さな腫瘍領域に高濃度の活性剤を送達することが想定される。製剤に応じて、液剤は、投与製剤に適合した様式でかつ治療上有効なような量で投与されるであろう。製剤は、各種の剤形、例えば、上記された注射溶液のタイプで容易に投与されるが、薬剤放出カプセル等も利用することができる。水溶液中での非経口投与のために、例えば、液剤を必要に応じて適切に緩衝化させるべきであり、まず、液体希釈剤を十分な生理食塩液又はグルコースにより等張にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。この関係で、利用することができる無菌水性媒体は、本開示を考慮して、当業者に公知であろう。処置される対象の状態に応じて、ある程度の用量の変更が必然的に生じるであろう。いずれにしても、投与責任者が、個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0122】
本発明を下記図面及び実施例によりさらに説明するものとする。ただし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1図1.LTα-/-Tregの養子移入によりDSS誘発大腸炎の重症度が保護される。(A)WT及びLTα-/-マウス由来の精製脾臓CD4+CD25+細胞におけるFoxp3発現の代表的なフローサイトメトリープロファイル。(B)実験設定:2×10個のWT又はLTα-/-Tregを2日前に注入したWTマウスにおいて、飲料水中の2% DSSを7日間投与し、続けて、水のみを11日目まで投与することにより、大腸炎を誘発した。結腸炎症及び腸間膜リンパ節におけるCD4 T細胞プライミングをプロトコールの11日目及び4日目のそれぞれに分析した。(C)2×10個のWT又はLTα-/-Tregを注入したWTマウスの0日目での初期体重に対する体重減少。データを、群あたりに4匹のマウスを使用した3回の独立した実験から得る。(D)疾患活動性指数(DAI)をDSS誘発大腸炎の経過中にモニターした。(E)ヒストグラムは、両群のマウスにおける結腸の組織学的スコアを示す。
図2図2.可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に予めインキュベーションされたWT Tregの養子移入によりDSS誘発大腸炎が減弱される。(A)実験設定:LTβR-Fcタンパク質で予めインキュベーションされもしくはインキュベーションされなかった2×10個のWT Tregのいずれか又はLTα-/-Tregを2日前に注入したWTマウスにおいて、飲料水中の2% DSSを7日間投与し、続けて、水のみを11日目まで投与することにより、大腸炎を誘発した。体重を毎日モニターし、結腸の長さをプロトコールの11日目に測定した。(B)可溶性LTβR-Fcタンパク質で予めインキュベーションされもしくはインキュベーションされなかったWT Tregのいずれか又はLTα-/-Tregを注入したWTマウスの0日目での初期体重に対する体重減少。データを、群あたりに3~9匹のマウスを使用した1回の独立した実験から得る。(C)ヒストグラムは、実験プロトコールの最後に観察された結腸の長さを示す。
図3図3.Treg細胞の抑制サインをLTα1β2/LTβR軸により制御する。(A)Il10、Ebi3、Tgfb1、Ifn-γ、Gzmb及びFasl mRNAの発現レベルをドナー群からの精製CD45.2 WT及びLTα-/-Tregにおいて、qPCRにより測定した。(B)可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に予めインキュベーションされ又はインキュベーションされず、精製CD11c+樹状細胞と共に24時間共培養された精製WT Foxp3+CD4+ TregをqPCRにより、Klrg1、Il10、Ebi3、Tgfb1、Gzmb及びFaslの発現レベルについて分析した。
【0124】
実施例
材料及び方法
マウス
全てのマウス-CD45.1 WT、CD45.1×CD45.2 WT、CD45.2 WT及びCD45.2 LTα-/-マウスを純粋なC57BL/6バックグラウンドにおき、CIML(フランス)での特定の無菌条件下で維持した。標準的な食物及び水を自由に与えた。オス及びメスを、6~8週齢で使用した。動物に関わる全ての手法を施設及び倫理ガイドラインに準拠して行った。
【0125】
Treg細胞単離
脾臓Treg細胞を、70μmメッシュを通して脾臓を引っ掻くことにより単離した。脾臓赤血球を溶解バッファー(eBioscience)により溶解した。細胞選別の前に、CD4+ T細胞を、AutoMACS(Miltenyi Biotech)による抗ビオチンマイクロビーズを伴う抗CD8α(クローン53.6.7)及び抗CD19(クローン1D3)ビオチン化抗体を使用して、CD8+及びCD19+細胞を枯渇させることにより、枯渇プログラムを介して予め濃縮した。CD4+CD25+ Tregを、FACSAriaIIIセルソーター(BD)を使用して選別した。
【0126】
DSS誘発大腸炎実験
大腸炎の誘発の2日前に、WTレシピエントマウスに、WT又はLTα-/-マウスから選別された2.10個のCD4+CD25+脾臓Tregを静脈内注入した。大腸炎の誘発を、飲料水中の2% DSS(Alfa Aesar)を7日間与え、続けて、11日目に殺処分するまで水のみを与えることにより評価した。体重、直腸出血及び便の硬さをDSS投与後毎日モニターし、DAIを決定するのに使用した。
【0127】
in vitro共培養アッセイ
共培養アッセイのために、2.10個の細胞選別総CD11chi樹状細胞を可溶性LTβR-Fcリコンビナントタンパク質(2μg/ml;R&D systems)と共に1時間予めインキュベーションされ又はされなかった10個の精製CD4CD25 Tregと共に、37℃で24時間共培養した。
【0128】
DSS誘発大腸炎モデルにおける可溶性LTβR-Fcタンパク質とのTreg細胞インキュベーション
CD45.2 WTマウスから精製された2.105個のCD4+CD25+脾臓Tregを可溶性LTβR-Fc融合タンパク質(50μg/ml;R&D Systems)と共に又は伴わずに、培養培地(10% FBS(Sigma Aldrich)、2mM L-グルタミン(ThermoFisher)、1mM ピルビン酸ナトリウム(ThermoFisher)及び2×10-5M 2-メルカプトエタノール(ThermoFisher)を含むRPMI ThermoFisher)中で30分間予めインキュベーションし又はインキュベーションしなかった。ついで、TregをCD45.2 WTレシピエントに養子的に静脈内移入した。LTα-/-マウス由来の2.105個のCD4+CD25+脾臓Tregを対照として使用した。2日後、大腸炎を、飲料水中の2% DSS(Alfa Aesar)を7日間与え、続けて、11日目に殺処分するまで水のみを与えることにより誘発した。体重をDSS投与後毎日モニターした。
【0129】
フローサイトメトリー
抗CD4(RM4.5)抗体をBDから得た。Foxp3抗体による細胞内染色のために、細胞を固定し、透過性にし、製造メーカー(eBioscience)の説明書に従って、Foxp3染色キットにより染色した。染色された細胞をFACSCanto II(BD)により分析し、データを、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。
【0130】
定量RT-PCR
全RNAを、TRIzol(Invitrogen)を使用して単離し、cDNAを、ランダムオリゴdTプライマー及びSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)を使用して合成した。qPCRを、ABI 7500高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem)上でのSYBR Premix Ex Taqマスターミックス(Takara)を使用して行った。結果をアクチンmRNAに対して正規化した。
【0131】
統計的分析
統計的有意差を、GraphPad Prism 6ソフトウェアを使用し、独立スチューデントt検定又はマン-ホイットニー検定を使用して評価した。ボンフェローニ補正による二方向Anova検定を、腫瘍増殖、体重減少及びDAIの分析に使用した。、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001;****、P<0.0001。データの正規分布を、ダゴスティーノ-ピアソンオムニバス正規性検定を使用して評価した。エラーバーは、平均±SEMを表わす。
【0132】
結果
LTα-/- Tregの養子移入により潰瘍性大腸炎から保護される
LTα-/- Tregが、Treg抑制機能に関与する幾つかの遺伝子を高発現することを考慮して(データを示さず)、LTα-/- Tregの養子移入は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎から保護するための治療的利益を示すかどうかを評価した。WT又はLTα-/-マウスから精製されたFoxp3 Tregを主に含有する2.10個のCD4CD25細胞(図1A)を、2% DSSによる大腸炎の誘発2日前にWTレシピエントマウスに注入した(図1B)。LTα-/- Tregが注入されたマウスが、WT Tregが注入されたマウスより有意に体重減少が少ないことが観察された(図1C)。さらに、便の硬さ、直腸出血及び体重減少を組み合わせた疾患活動性指数(DAI)は、これらのマウスでは実質的に重要性が低かった(図1D)。体重減少及びDAIに従って、これらのマウスでは、実験終了時に結腸上皮の損傷が少なく(データを示さず)、大腸炎の組織学的スコアが低下した(図1E)。また、LTα-/- Tregが移入されたマウスの結腸における炎症促進性サイトカイン、例えば、Il6、Ifnγ、Tnf-α、Il17A、Il1α及びIl33並びに免疫細胞のリクルートに関与するケモカイン、例えば、Ccl2及びCxcl12の発現の低下が観察された(データを示さず)。さらに、フローサイトメトリーにより結腸浸潤免疫細胞の性質を分析した。好中球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞及びCD4 T細胞の数は、LTα-/- Tregが移入されたマウスでは、WT Tregが移入されたマウスと比較して劇的に減少した(データを示さず)。CD3及びB220細胞における浸潤の減少が、組織学的結腸切片で確認された(データを示さず)。Th1及びTh17エフェクターCD4 T細胞の数も減少した(データを示さず)。その結果、Treg/Th1及びTreg/Th17比が、LTα-/- Tregが移入されたマウスの結腸において上昇した(データを示さず)。ついで、養子移入された細胞数を2.10個から1.10個に、ついで、0.5.10個に減らすことにより、LTα-/- Tregが大腸炎に対する保護の可能性を評価した。1.10個のLTα-/- Tregであっても、重量減少の低減を特徴とする2.10個のWT Tregより良好な保護を示すことが観察された(データを図示せず)。興味深いことに、0.5.10個のLTα-/- Tregは、2.10個のWT Tregと同じ保護効果を示す。これは、LTα-/- Tregが、対応するWTよりin vivoにおいて、約4倍抑制性であることを示す。
【0133】
次に、LTα-/- Tregの養子移入により、DSS投与5日後に腸間膜リンパ節におけるCD4 T細胞プライミングが阻害されるかどうかをさらに決定した。注目すべきことに、LTα-/- Tregが注入されたマウスが、既にこの時点で、より長い結腸長及び結腸重量/長さ比の低下を示したことが見出された。これは、結腸炎症の減弱を示す(データを示さず)。驚くべきことに、Th1及びTh17エフェクターCD4 T細胞数は、これらのマウスの腸間膜リンパ節において実質的に減少した(データを示さず)。これは、LTα-/- Tregにより、ナイーブCD4 T細胞のエフェクターへの変換が阻害されることを示す。要するに、これらのデータから、LTα-/- Tregの養子移入により、腸間膜リンパ節における結腸炎症及び病原性CD4 T細胞のプライミングを緩和することにより潰瘍性大腸炎の発症から保護されることが示される。
【0134】
可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に予めインキュベーションされたWT Tregの養子移入によりDSS誘発大腸炎が減弱する
次に、可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に予めインキュベーションされたTregの養子移入が、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎から保護する治療的利益を示すかどうかを評価した。LTα-/-又はWTマウスから精製されたFoxp3 Tregを主に含有する2.10個のCD4CD25細胞(図1A)を、可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に又は伴わずに、培地媒体中で30分間予めインキュベーションした。2% DSSにより大腸炎を誘発する2日前に、TregをWTレシピエントマウスに注入した(図2A)。LTβR-Fcで予めインキュベーションされたTregが注入されたマウスでは、LTα-/-が注射されたマウスと同様に、WT Tregが注入されたマウスより有意に体重減少が少なかったことが観察された(図2B)。さらに、可溶性LTβR-Fcで予めインキュベーションされたTregが注入されたマウスの結腸は、WT Tregが注入されたマウスより有意に長い。一方、LTα-/-が注入されたマウスの長さと同様である(図2C)。
【0135】
要するに、これらのデータから、可溶性LTβR-Fcと共に予めインキュベーションされたWT Tregの養子移入により、LTα-/- Tregと同程度に効果的に潰瘍性大腸炎の発症から保護されることが示される。
【0136】
造血細胞におけるLTα発現及びLTα1β2/LTβR軸によりTreg細胞の抑制サインが負に制御される
LTα-/-マウスが、無秩序な胸腺及び脾臓微小環境を示すため、LTα-/- Tregの高度免疫抑制表現型における非造血間質細胞の寄与を分析した。このために、致死的に照射されたCD45.2 WT又はLTα-/-レシピエントマウスをCD45.1コンジェニックマウス(それぞれWT CD45.1:WT及びWT CD45.1:LTα-/-マウス)からのWT BM細胞で再構成した骨髄(BM)キメラを生成した。BM移植の6週間後、CD45.1ドナー起源のCD4CD25 Treg細胞を脾臓から細胞選別し、Tregエフェクター機能に関連する幾つかの遺伝子の発現について分析した(データを示さず)。同様の頻度及び数のFoxp3 Tregが、両群のマウスにおいて観察された(データを示さず)。さらに、幾つかの遺伝子、例えば、Klrg1、Tgfb、Gzmb及びFaslの発現は、両群のマウスで類似していた。これは、非造血細胞がLTα-/-マウスで観察されたTregの高度な抑制サインに関与していないことを示す(データを示さず)。
【0137】
次に、致死的に照射されたCD45.1×CD45.2 WTレシピエントマウスをWT CD45.1及びWT CD45.2(WTドナー群)又はWT CD45.1及びLTα-/- CD45.2(LTα-/-ドナー群)からのBM細胞(50:50)で再構成した混合骨髄キメラを生成することにより、造血区画のそれぞれの寄与を決定した(データを示さず)。6週間後、脾臓におけるWT CD45.2 BM細胞に由来するものと比較して、LTα-/- CD45.2 BM細胞に由来するCD4Foxp3 Tregの頻度及び数の増加が見出された(データを示さず)。驚くべきことに、精製されたLTα-/- CD45.2 Tregにより、WT CD45.2 Tregと比較して、Il10、Ebi3、Tgfb1、Ifng、Gzmb及びFasl遺伝子の発現の向上が示された(図3A)。これらのデータから、造血細胞におけるLTαの発現により、Treg細胞の免疫抑制サインが負に制御されることが示される。
【0138】
Tregが、LTαを膜アンカーLTα1β2ヘテロ複合体として発現することが観察されたため(データを示さず)、Tregの抑制サインの制御におけるLTα1β2/LTβR軸の寄与を評価した。特に、Tregと樹状細胞との間のLTα1β2/LTβR相互作用の遮断が、Treg細胞の抑制サインに影響を及ぼすかどうかを分析した。このため、可溶性LTβR-Fc融合タンパク質と共に予めインキュベーションされ又はインキュベーションされていない精製されたWT CD4CD25 Tregを、精製されたCD11c樹状細胞と共培養した。興味深いことに、LTβR-Fcと共に予めインキュベーションされたTregにより、予め処理されていないTregと比較して、Treg抑制機能に関連する幾つかの遺伝子、例えば、Klrg1、Il10、Ebi3、Tgfb1、Gzmb及びFaslの発現がアップレギュレーションされた(図3B)。このように、これらのデータから、Tregと樹状細胞との間のLTα1β2/LTβR相互作用により、Tregの抑制サインが負にレギュレーションされることが示される。
【0139】
LTαの発現は末梢血由来のヒトTregにおいて保存されている
次に、LTα発現が女性及び男性の健康なドナーの末梢血由来のヒトTregにおいて保存されているかどうかを評価した。Foxp3CD4 Tregを古典的に、CD4CD25CD127lo細胞として特定した。細胞内LTαタンパク質(データを示さず)及び細胞表面LTα1β2ヘテロ複合体(データを示さず)を分析された全てのドナーのTregにおいて、フローサイトメトリーにより実質的に検出した。これは、この発現がマウスからヒトにおいて保存されていることを示している。
【0140】
議論
幾つかの研究から、Treg細胞の発生及び機能の正のレギュレーションに関与する多数の分子が特定された。対照的に、Treg機能を負にレギュレーションするシグナルが記載されているレポートはほとんどない。ここでは、制御性特性が付与された別個のT細胞集団を分析することにより、Foxp3+ Tregが膜アンカーLTα1β2ヘテロ複合体として、LTαを実質的に発現することを見出した。LTβR-/-マウスと同様に、LTα-/-マウスは、胸腺におけるCD4Foxp3 Treg細胞の発達に明らかな欠損を何ら示さない。一方、抑制機能に関連する遺伝子のサインは、LTα-/- Tregの両方において大幅に向上する。これは、LTα、より正確には、Tregと樹状細胞との間のLTα1β2/LTβR相互作用により、それらの免疫抑制サインが負にレギュレーションされることを示す。
【0141】
興味深いことに、LTα-/- Tregの養子移入により、DSS誘発大腸炎から保護され(図1)、WT Tregより効率的にIBDが処置されることが、以前に実証されている。これは、WT Tregが注入されたマウスと比較して、LTα-/- Tregが移入されたマウスにおいて、体重減少の低下、結腸の長さの増加及び組織学的スコアの減少により反映された。さらに、LTα-/- Tregにより、結腸炎症及び炎症性免疫細胞の浸潤が実質的に減少することが観察された。DSS誘発大腸炎モデルにおいて、大腸炎誘発前でのLTα-/- Tregの移入により、腸間膜リンパ節におけるTh1及びTh17病原性細胞のプライミング及び/又は増殖が減少することが見出された。重要なことに、Treg/Th1及びTreg/Th17の比率は、DSS誘発大腸炎とIBDモデルの両方で結腸において上昇した。これは、Tregがこの組織で局所的にそれらの抑制効果も発揮することができることを示唆している。結腸炎症を抑制する能力により、LTα-/- Tregの養子移入により、慢性炎症により促進されることが公知のCACの発症も減弱する。要するに、これらのデータから、対応するWTと比較して、LTα-/- Tregが、大腸炎を処置し、大腸炎及びCAC発症の両方から保護するより高い能力を示すことが示される。また、Tregと樹状細胞、特に、Sirpα従来型樹状細胞及び形質細胞様樹状細胞との間のLTα1β2/LTβR相互作用により、Treg細胞の抑制サインが負に制御されることも明らかとなった。抗原提示細胞との直接的な細胞接点により、Treg抑制活性がレギュレーションすることが示唆される。
【0142】
本明細書において、可溶性LTβR-Fcと共に予めインキュベーションされたWT Tregの養子移入により、LTα-/- Tregと同程度に効果的に潰瘍性大腸炎の発症から保護されることが示される(図2B図2C)。さらに、可溶性LTβR-Fcと共に予めインキュベーションされたWT Tregは、LTα-/- Tregと同様の抑制サインを示す(図3)。したがって、可溶性LTβR-Fcと共に予めインキュベーションされたWT Tregの養子移入は、DSS誘発大腸炎から保護するだけでなく、IBDも処置し、LTα-/- Tregの養子移入と同程度に効果的にCACの発生を減弱させることも期待される。
【0143】
参考文献
本願全体を通して、種々の参考文献に、本発明が属する最新技術が記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
【表2】
図1A
図1B
図1C-1D】
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A-3B】
【配列表】
2022533591000001.app
【国際調査報告】