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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】運動発生器
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/02 20060101AFI20220715BHJP
   G09B 9/12 20060101ALI20220715BHJP
   F16H 7/02 20060101ALI20220715BHJP
   F16H 7/04 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G09B9/02
G09B9/12
F16H7/02 Z
F16H7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568076
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020025225
(87)【国際公開番号】W WO2020228992
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】1906881.6
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1918748.3
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521467456
【氏名又は名称】ディニズマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DYNISMA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100224683
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 詩織
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー ウィリアム ホーカー ウォーン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ピーター ベル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル チャームベリー ウォード
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049AA06
3J049BB11
(57)【要約】
本発明によれば、表面に対するペイロードに力、モーメントおよび動きを加えるためのエフェクタを含む運動発生器が提供される。各ストラットは、その一端で第1の継手によってエフェクタに連結され、その他端で第2の継手によって、関連付けられるロッカーに連結される。ロッカーは、旋回軸を有し、その旋回軸の周りでのロッカーの動きによりエフェクタの動きを生じさせ、かつ、関連付けられるロッカーに加えられる力によりエフェクタに加えられる力を生じさせるように構成される。ロッカーの動きとロッカーによって加えられる力とは、アクチュエータによって制御される。アクチュエータは、ロッカーの旋回軸から離れる力を、関連付けられるロッカー上の点に加えるように配置される。また、本発明は、運動システムと、運動発生器を含む運転シミュレータと、運動発生器およびシステムを使用する方法とに関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に対するペイロードに力、モーメントおよび動きを加えるためのエフェクタを備える運動発生器であって、
前記エフェクタが1本以上の細長い剛性ストラットに連結され、
各ストラットは、その一端で第1の継手によって前記エフェクタに連結され、かつ、その他端で第2の継手によって、関連付けられるロッカーに連結され、
前記ロッカーは旋回軸を有し、前記旋回軸の周りでのロッカーの動きにより前記エフェクタの動きを生じさせ、かつ、関連付けられるロッカーに加えられる力により前記エフェクタに加えられる力を生じさせるように構成され、
ロッカーの前記動きと前記ロッカーによって加えられる力とがアクチュエータによって制御され、前記アクチュエータは、長尺ベルト、ケーブル、ロープ駆動装置またはリニアモータとして形成され、前記ロッカーの前記旋回軸から離れる力を、関連付けられるロッカー上の点に加えるように配置される、
運動発生器。
【請求項2】
表面に対するペイロードに力、モーメントおよび動きを加えるためのエフェクタを備える運動発生器であって、
前記エフェクタが4本以上の細長い剛性ストラットに連結され、
各ストラットはその一端で第1の継手によって前記エフェクタに連結され、かつ、その他端で第2の継手によって、関連付けられるロッカーに連結され、
前記ロッカーは旋回軸を有し、ロッカーの動きにより前記エフェクタの動きを生じさせ、かつ、関連付けられるロッカーに加えられる力により前記エフェクタに加えられる力を生じさせるように構成され、
ロッカーの前記動きと前記ロッカーによって加えられる力とがアクチュエータによって制御され、前記アクチュエータは、前記ロッカーの前記旋回軸から離れる力を、関連付けられるロッカー上の点に加えるように配置される、
運動発生器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の運動発生器において、前記アクチュエータが、長尺ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置、あるいはリニアモータとして形成されている、運動発生器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の運動発生器において、3つの対で配置される6本のストラットを備え、前記ストラットの各一端は、関連付けられるロッカーと連結され、前記対になったストラットの各他端は、前記エフェクタにおける3つの取り付け点または継手に連結する、運動発生器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の運動発生器において、少なくとも1つのアクチュエータは、ベルトを備え、前記ベルトは、前記関連付けられるロッカーに少なくとも1つの端で取り付けられる、および1つまたは複数の力を前記ロッカーに加えるものである、運動発生器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記第1の継手および第2の継手の自由度の総数が、共に少なくとも5である、運動発生器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記第1の継手または第2の継手のうちの一方は自在継手、カルダン継手、球面継手または屈曲部を含み、他方は、外旋継手と直列の、球面継手または自在継手またはカルダン継手または屈曲部である、運動発生器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記運動発生器は、各々の前記ロッカーの前記旋回軸が前記表面に対して固定される複数のロッカーを含む、運動発生器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記運動発生器は、各々のロッカーの前記旋回軸が互いに固定される複数のロッカーを含む、運動発生器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の運動発生器において、少なくとも1つのロッカーの旋回軸が前記表面に対して傾斜している、運動発生器。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の運動発生器において、少なくとも1つのロッカーの旋回軸が前記表面に対して垂直である、運動発生器。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の運動発生器において、ロッカーは、連結されるストラットと鈍角を形成する、運動発生器。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記運動発生器は、5本または6本の細長いストラットを備える、運動発生器。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記運動発生器は、X本の細長いストラットを含み、Xは6未満であり、さらに、前記エフェクタの総数Yの自由度を拘束する少なくとも1つの機械的拘束手段を含み、Y=6-Xである、運動発生器。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の運動発生器において、少なくとも1つのアクチュエータは、長尺ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置を含み、そのアクチュエータは、ベルト車またはキャプスタンによって作動される、運動発生器。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記アクチュエータはベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置を含み、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の両端は、関連付けられるロッカーに取り付けられ、前記関連付けられるロッカー上の2つの取り付け点の間で、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置は閉じられたループを形成する、運動発生器。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の運動発生器において、ベルト車を含む受動引張装置が、前記閉じられたベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置に適用され、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の張力を維持する、運動発生器。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の一端が関連付けられるロッカーに連結され、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の他端が、前記ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の張力を維持するための受動力付与装置に取り付けられる、運動発生器。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記アクチュエータは、関連付けられるロッカーに連結され、リンク装置およびリニアモータを含み、前記リンク装置は前記ロッカーを前記リニアモータに連結する、運動発生器。
【請求項20】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の運動発生器において、前記リンク装置は、固定の長さの細長いストラットで構成され、かつ、いずれかの端に、外旋継手、球状継手、自在継手またはカルダン継手および屈曲部から選択される継手を有する、運動発生器。
【請求項21】
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の運動発生器において、受動力付与装置がロッカーに連結され、前記アクチュエータに、静的前負荷または減衰力などの助力を提供する、運動発生器。
【請求項22】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の運動発生器において、1つ以上の受動力付与装置が、バネ、ガスストラット、バンジーなどで構成され、前記エフェクタまたは前記ペイロードに連結されて前記アクチュエータに助力を提供する、運動発生器。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の運動発生器において、少なくとも1つのロッカーおよび/またはアクチュエータが、前記表面に取り付けられ、または前記表面に対して固定される、運動発生器。
【請求項24】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の運動発生器を含む組合せにおいて、前記運動発生器は、一次運動発生器と直列の二次運動発生器として動作するように配置される、組合せ。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の組合せにおいて、前記二次運動発生器の少なくとも1つのロッカーおよび/またはアクチュエータが、前記一次運動発生器のエンドエフェクタまたはペイロードに取り付けられる、組合せ。
【請求項26】
請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の組合せにおいて、前記一次運動発生器がフレームを含み、前記二次運動発生器の前記ロッカーのうちの少なくとも1つが、前記一次運動発生器の前記フレームに枢動可能に取り付けられる、組合せ。
【請求項27】
請求項24から請求項26のいずれか一項に記載の組合せにおいて、前記二次運動発生器が6本のストラットを有する、組合せ。
【請求項28】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の少なくとも1つの運動発生器または請求項24から請求項27のいずれか一項に記載の少なくとも1つの組合せと、制御システムとを含む運動システム。
【請求項29】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の運動発生器、請求項24から請求項27のいずれか一項に記載の組合せ、または請求項28に記載の運動システムと、視覚投影手段若しくは視覚表示手段および音声手段から選択される少なくとも1つの環境シミュレーション手段とを含む運転シミュレータ。
【請求項30】
請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の運動発生器を製造する方法において、前記方法は、表面に対するペイロードに力、モーメントおよび動きを加えるのに適したエフェクタを提供するステップと、4本以上の細長い剛性ストラットに連結するステップと、各ストラットをその一端で第1の継手によって前記エフェクタに、その他端で第2の継手によってロッカーに連結するステップとを含み、前記ロッカーは、固定された旋回軸を有し、ロッカーの動きにより前記エフェクタの動きを生じさせ、ロッカーに加えられる力により前記エフェクタに加えられる力を生じさせるように構成され、ロッカーの前記動きと前記ロッカーによって加えられる力とがアクチュエータによって制御され、前記アクチュエータが前記ロッカーの前記旋回軸から離れる力をロッカー上の点に加えるように配置される、方法。
【請求項31】
請求項28に記載の運動システムを製造する方法において、前記方法は、請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の運動発生器に制御システムを接続するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に運転または飛行のような運動をシミュレートするための運動システムの分野に関連する。特に、排他的ではないが、本発明は、運動発生器と、そのような運動発生器を含む運動システムと、運動発生器を使用する方法と、例えば、運転シミュレータとして使用するための運動システムと、それらの生産方法とに関連する。
【背景技術】
【0002】
運動発生器は、1つ以上の方向または自由度で、ペイロードに動き、力および加速度を加えることができる装置である。ペイロードは、例えば、運動発生器を組み込む運動シミュレータでシミュレートされる経験を受けている人間とすることができる。あるいは、ペイロードは、第1の運動発生器と直列であるといわれる他の運動発生器とすることもできる。運動発生器は、運動システムにおいて使用される。運動システムは、運動発生器を制御するための制御システムを含む。
【0003】
運動システムは、運動シミュレータにおいて使用される。運動システムは、運動シミュレーション(例えば、飛行シミュレータ、車両および運転シミュレータ)、ロボット工学、3D印刷、振動および地震シミュレーションを含む様々な用途で使用される。運動シミュレーションで現在使用される最も一般的な種類の運動システムは、スチュワートプラットフォーム(または「ヘキサポッド」)運動発生器である。これは、6個のアクチュエータを有する並列マニピュレータの種類であり、通常、プラットフォームの底部上の3つの位置に対で取り付けられ、プラットフォームまたは上板(または「エンドエフェクタ」)上の3つの取り付け点に交差する。装置またはプラットフォーム上に置かれた人間のユーザなどのペイロードを、通常、操縦室、運転領域、またはモデル車両の何らかの形で、自由に吊り下げられた物体が動くことが可能な6の自由度、すなわち、3つの直線運動x、y、z(横、縦および垂直)と、3つの回転(縦揺れ、横揺れおよび偏揺れ)とで動かすことができる。一般的に言って、並列マニピュレータでは、いくつかのコンピュータ制御アクチュエータがペイロードを支持するために並列に動作するように配置される。この文脈において、「並列」とは、ペイロードと底部との間のそれぞれ別々の負荷経路内に1個のアクチュエータのみが存在することを意味する。一方で、直列マニピュレータでは、ペイロードと底部との間の可能な負荷経路の1つ以上が少なくとも2個のアクチュエータを含む。
【0004】
運動シミュレータは、乗員に対して、動いている車両にいることの効果または感覚を生成することができる少なくとも1つの運動発生器を組み込むシミュレーションシステムである。運動シミュレータは、運転シミュレータと飛行シミュレータとのそれぞれの形で運転者と操縦士とを訓練するために、専門的に使用される。また、これらは、車両自体の製造、設計、及び試験、並びに車両部品の設計に工業的に使用される。運転および飛行シミュレーションに使用される専門運動シミュレータは、通常、例えば、投影システムならびに関連付けられる画面および音声信号によって提供される視覚表示装置を、運転者または操縦士が占める搬器(またはシャーシ)の動きと同期させ、運動効果のより良い感覚を提供する。仮想現実(VR)型の頭部装着表示装置(HMD)の出現は、没入型シミュレーションの態様を現在の運動システムを用いてより低コストに実現し、仮想現実アプリケーションを余暇使用に配信可能とするものであり、そのようなアプリケーションには、遊園地またはアーケードにおける受動的なドライブ、本人視点での乗車または飛行搭乗、あるいは1人以上のプレーヤが、運転、乗車、飛行または本人視点のゲーム体験に対して何らかの制御を及ぼす能動的なゲームなどが含まれる。運動シミュレーションで使用される運動発生器のペイロード、例えば、シャーシまたは操縦室などは、比較的重い場合が多く、約100kgである。運動発生器の運動シミュレーション用途では、多くの場合、このような比較的重いペイロードを、約1メートル以上の大きな動きにわたって精密に制御する必要がある。
【0005】
人間の参加者のための運動シミュレーションに通常使用されるヘキサポッドの種類は、典型的には約20Hzまでの比較的狭い帯域幅を有する。これは、毎秒最大20回の周波数で、一貫した振幅の振動的な動きと振動とを作り出すことができることを意味し、それを超えると、周波数が高くなるにつれて運動の振幅が減少する。これは、ほとんどの車のサスペンションの動きを複製するには十分であるが、車のエンジンからの振動、タイヤの振動、道路の騒音、レーストラック上の鋭いカーブと関連付けられる周波数の容量を伝えるものではない。また、狭い帯域幅は、信号が遅れていることを意味し、つまり、運転者はそれほど素早く応答できない。
【0006】
現在の運動システム、特に軍事用および商業上の飛行指導および訓練用途のような最高仕様の使用を意図したものは、典型的には非常に大きく、重く、複雑で、非常に高価である。それらの複雑さは、大規模なプログラミングおよび保守を必要とし、ユーザのコストをさらに増大させる。
【0007】
専用の運転シミュレータ運動システムは、McLaren/MTS、Williams/ABDおよびAnsibleのようなグループによって開発されてきたが、これらは非常に機械的に複雑な傾向があり、従って、高価であり、精密に機械加工された特注の部品、例えば高価なリニアモータを特徴とする。これらの専用の運転シミュレータ運動システムは、ある方向に動くときにはヘキサポッドよりも応答が速いが、それ以外の場合にはまだ限られる。このようなシステムにおいてボールねじを使用することは、位置を確立するのに優れているが、力の伝達を阻止し、より狭い帯域幅しか達成できないという点で不利である。これは、人間のユーザに、より自然でない運動シミュレーション体験をもたらす。
【0008】
特許文献1に開示される運動シミュレータは、ベルクランクにより駆動される3個の直立アームを含む3の自由度の並列マニピュレータを用いて、縦揺れ、上下揺れ及び横揺れにおける動きを制御する機構を含む。従って、それらの自由度において応答性があり、広い帯域幅を有する。リニアアクチュエータによって回転駆動される回転テーブルが、偏揺れを与えるために必要とされる。運動シミュレータは比較的小型であることを意図される。しかし、その水平自由度は、順応性と、慣性と、水平自由度におけるシステムの応答性および帯域幅を制限する摩擦とを導入する直列マニピュレータによって提供される。
【0009】
特許文献2は対話型レーシングカーシミュレータを開示する。対話型レーシングカーシミュレータは、空気圧制御の下で、X方向及びY方向にそれぞれリニアガイド上で動くように配置され、「Xフレーム及びYフレーム」と称される長方形フレームを重ねる単純な配置を含む一次運動発生器を含む。この文献に開示される種類のフレームの単純な配置は、X方向及びY方向に良好な可動域を提供するが、フレームは運動発生器において互いに積み重ねられるので、上下の寸法において特に小型ではない。さらに、X方向およびY方向の動きは、特に正確ではなく、また、シミュレータは比較的狭い帯域幅を有することになる。
【0010】
運転シミュレータに使用するための一次運動発生器の例は、特許文献3に記載される。本明細書は、一次運動発生器を用いて水平面内の大きな動きを維持することができ、同時に二次運動発生器の最大の上下方向の運動を達成することができる6の自由度の運動発生器と直列の3の自由度の運動発生器を開示する。したがって、直列の2個の運動発生器は、同様のサイズのヘキサポッドでは不可能である異なる自由度の動きの組み合わせを達成することができる。しかしながら、その明細書に記載されるヘキサポッドは、リニアアクチュエータを使用し、特にボールねじ駆動リニアアクチュエータを再回転させる。上述のように、ボールねじアクチュエータの再回転は、かなりの摩擦を有し、したがって、応答性および帯域幅が悪くなる。ヘキサポッド構造における他のリニアアクチュエータの使用は、さらなる問題をもたらす。リニアアクチュエータが可動ストラットの一部として可動である場合には、それは低い周波数で機械的共振をもたらす高い可動質量を有し、システムの応答性および帯域幅を制限する。リニアアクチュエータが底部に対して固定され、ヘキサポッドのストラットの一方の端部がリニアアクチュエータに沿って並進する場合、システムの重みと慣性負荷は、さらにかなりの摩擦を伴うリニア軸受けによって作用される。
【0011】
特許文献4は、大きな低摩擦固定底部上で摺動可能であり、およびプラットフォームの大きな水平運動を可能にするケーブル/アクチュエータ制御のプラットフォームを含む運動システムを開示する。ケーブルおよびアクチュエータは、大きな底部の周囲に配置され、プラットフォームの大きな水平運動を可能にする。ヘキサポッドをベースとした二次運動発生器は、次に、プラットフォーム上に取り付けられ、操縦室の他の動きを提供するためにモデル操縦室を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第2486558号明細書
【特許文献2】米国特許第5,919,045号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2810268号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0053548号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、改良された運動発生器、特に、運転及び車両の運動の種類のシミュレーション用途に有用なものと、このような運動発生器を組み込む改良された運動システムとを提供することであり、これらの用途に関してさらに特に適している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、表面に対するペイロードに力、モーメントおよび動きを加えるためのエフェクタを備える運動発生器が提供される。この運動発生器は、エフェクタが1本以上の細長い剛性ストラットに連結され、各ストラットはその一端で第1の継手によってエフェクタに連結され、かつ、その他端で第2の継手によって、関連付けられるロッカー(すなわち、特定のストラットが連結されるロッカー)に連結され、ロッカーは旋回軸を有し、旋回軸の周りでのロッカーの動きによりエフェクタの動きを生じさせ、かつ、ロッカーに加えられる力によりエフェクタに加えられる力を生じさせるように構成され、ロッカーの動きとロッカーによって加えられる力とがアクチュエータによって制御され、アクチュエータは、長尺ベルト、ケーブル、ロープ駆動装置またはリニアモータとして形成され、ロッカーの旋回軸から離れる力を、ロッカー上の点に加えるように配置される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、表面に対するペイロードに、力、モーメントおよび動きを加えるためのエフェクタを含む運動発生器が提供される。この運動発生器は、エフェクタが4本以上の細長い剛性ストラットに連結され、各ストラットはその一端で第1の継手によってエフェクタに連結され、かつ、その他端で第2の継手によって、関連付けられるロッカー(すなわち、特定のストラットが連結されるロッカー)に連結され、ロッカーは旋回軸を有し、ロッカーの動きによりエフェクタの動きを生じさせ、かつ、ロッカーに加えられる力によりエフェクタに加えられる力を生じさせるように構成され、ロッカーの動きとロッカーによって加えられる力とがアクチュエータによって制御され、アクチュエータは、ロッカーの旋回軸から離れる力を、ロッカー上の点に加えるように配置される。
【0016】
表面は、概ね平面とすることができる。例えば、多くの用途において、表面は、本発明のいずれかの態様による運動発生器が設置される建物の床とすることができるが、運動発生器用の台板とすることができる。以下に記載される組合せ、および二次運動発生器が本発明による運動発生器である場合などの他の状況では、表面は、組合せが設置される物理的表面の上方の基準平面とすることができ、典型的には、一次運動発生器によって提供されるか、または一次運動発生器によって画定される。その表面は一次運動発生器と共に動くことができる。
【0017】
この文脈では、ロッカーは、従来通り、細長い外旋継手またはピボットの一端に取り付けられる固形物本体を意味し、本体は、この継手またはピボットによって提供される旋回軸を中心に回転可能であり、それによって、継手の他端に取り付けられる別の固形物本体に対して回転可能である。また、ロッカーは、通常、他の継手とピックアップポイントとをその本体上に有し、他の可動構成要素に取り付けられるであろう。ロッカーは、通常、機械的システムにおいて、可動構成要素の相対運動を制御して、機械的利点を制御し、運動の方向を変更するために使用される。ベルクランクおよびレバーのような機械的構成要素はロッカーとして形成される。例えば、ロッカーは、例えばプッシュロッド又はプルロッドサスペンション装置などの自動車のサスペンションにしばしば使用される。また、用語「ロッカー」は、本開示の目的のために、屈曲部に取り付けられる、または屈曲部と一体化される固形物本体を包含するため、本体は屈曲部上の中点で概して上方に延在する想像軸の周りで弧を描くことができ、その想像軸は、他のロッカーについて上記で言及されたような旋回軸と同等である。
【0018】
このように、本発明は、総数が1~5、または好ましくは6の自由度を有する並列マニピュレータとして形成された運動発生器を提供し、この運動発生器は、1個、2個、3個、4個、またはそれ以上、典型的には6個のアクチュエータを含み、それぞれ、応答性と広い帯域幅の動きとを生成することができる。したがって、本発明の運動発生器は、総数6の自由度すべてにおいて、応答性と広い帯域幅の動きとを提供することができる。
【0019】
本発明のいずれかの態様による運動発生器は、既知の運動発生器と比較して、いくつかの点の一部またはすべてにおいて利点とすることができる。可動部分内で摩擦の低いレベルを有することができる。本発明の運動発生器の設計は、摩擦を最小限にし、したがって、従来の設計で使用されるリニア軸受けまたはリニア誘導装置よりも摩擦の少ないロッカー(典型的には、その回転軸受けと共に)によって、ペイロードに与えられる重量および負荷が作用されるので、応答性があり、広い帯域幅を有する。既知の設計と比較して、可動構成要素の質量が低いため、低慣性を有することができる。典型的には50Hzよりも良好な広い帯域幅を、1の自由度より多い自由度で有することができる。いくつかの実施形態では、複数の自由度において、例えば、80Hz、90Hzまたは100Hzまたはそれ以上の、50Hzよりも著しく広い帯域幅を有することができ、これは同等の価格の運動発生器の設計よりもかなり利点である。本発明による運動発生器の別の利点は、ある現在の運動発生器の設計と比較して、上下方向に比較的小型とすることができることである。さらに、例えば、特許文献3の運動発生器によって必要とされる精密機械加工された金属底部は、従来の建物床に設置されることができるので、必要としない。
【0020】
本発明の運動発生器における第1および第2の継手は、共に、自由度の総数を少なくとも5とすることができる。第1または第2の継手のうちの一方は、自在継手、カルダン継手、球状継手、または屈曲部を含むことができ、他方は、球状継手とすることができる。
【0021】
本発明のいずれかの態様による運動発生器は、典型的には複数のロッカーを含む。ほとんどの装置において、運動発生器は、6個のロッカーを含むことができる。少なくとも1個の、好ましくは各々の、ロッカーの旋回軸は、表面が、運動発生器が設置される物理的表面である表面に対して固定されることができる。代替的に、(典型的には、一次運動発生器上に二次運動発生器として取り付けられる、本発明による運動発生器を含む組合せの文脈において)、ロッカーの旋回軸はその表面に対して固定されることができず、物理的表面の上方の平面、すなわち一次運動発生器と共に動く平面に対して固定される。ロッカーピボットは、外旋継手、軸受け付き軸、または屈曲部とすることができる。各ロッカーは、表面と平行に動くことができる。代替的には、少なくとも1個の、好ましくは各々の、ロッカーは、表面に対して0度より大きい角度で傾斜することができる。例えば、少なくとも1個の、好ましくは各々のロッカーは、表面に対して0度から90度、好ましくは約45度(例えば、40度から50度)の傾斜した旋回軸を中心に回転することができる。ロッカーのうちの一部または全ては、それらの連結されるストラットと鈍角を形成することができる。これは、運動発生器の共振を低減することができる。追加的に、または代替的に、これは運動発生器をより小型にすることができる。
【0022】
本発明のいずれかの態様による運動発生器は、典型的には総数で4本、5本、6本、またはそれ以上の細長いストラットを含むことができる。例えば、運動発生器は、X本の細長いストラットを含み、Xは6未満であり、エフェクタの総数Yの自由度を拘束するための少なくとも1つの機械的拘束手段を含み、エフェクタの自由度の総数Yは、Y=6-Xとすることができる。あるいは、6本以上の細長いストラットを含むことができる。細長いストラットの対を、エフェクタの反対側に配置することができる。典型的な一実施形態では、運動発生器が3つの細長いストラットの対を含む。
【0023】
少なくとも1つのアクチュエータは、負荷を表面に戻して作用させることができるように配置されることができる。アクチュエータは、例えば、ベルト、ケーブル又はロープ駆動装置又はリニアモータなどの細長いアクチュエータとすることができる。各形態のアクチュエータは、それ自体の利点を有することができる。例えば、ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置で構成されるアクチュエータは、比較的安価とすることができる。アクチュエータがリニアモータである場合、それは、関連付けられるロッカーにリンク装置を介して連結されることができる。
【0024】
運動発生器が、長尺ベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置などのアクチュエータによって動力を供給される場合、長尺ベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置は、ベルト車またはキャプスタンによって作動されることができる。このようなベルト車又はキャプスタンは、電動モータ又は歯車モータによって駆動されることができる。
【0025】
アクチュエータがベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置を含む場合、ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の両端は、関連付けられるロッカーに取り付けられ、ロッカー上の2つの取り付け点の間で、ベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置は閉じられたループを形成することができる。ベルト車を含む受動引張装置が、閉じられたベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の一端またはその一部に適用されることができ、ベルト、ケーブルまたはロープ駆動装置の張力を維持し、システムの変化する幾何学的形状内でその固定の長さに適応する。ベルト車を含む受動引張装置は、ロッカーの幾何学的形状の変化に適応することができる。ベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置の他端、または別の部分は、ベルト、ケーブル、またはロープ駆動装置の張力を維持する受動力付与装置に取り付けられることができる。この場合の受動力付与装置は、例えば、バネ、ガスストラット、またはバンジーとすることができる。
【0026】
本発明のいずれかの態様による運動発生器では、受動力付与装置がロッカーに連結されることができ、静的な前負荷または減衰力などの助力をアクチュエータに提供し、またはペイロードの重量を支持する。この助力は、バネ、ガスストラット、またはバンジーなどの受動力付与装置によって提供されることができる。
【0027】
1つ以上の受動力付与装置は、バネ、ガスストラット、バンジーなどで構成され、エフェクタまたはペイロードに連結されることができ、静的前負荷または減衰力などの、他のまたは代替の助力をアクチュエータに提供する。
【0028】
少なくとも1つのロッカーおよび/またはアクチュエータが、表面上または表面に取り付けられることができる。代替的に、または追加的に、少なくとも1つのロッカーおよび/またはアクチュエータが、表面に固定されるフレームまたは他の支持体上に取り付けられることができる。
【0029】
エフェクタによって支持されるペイロードは、10kgを超えることができ、好ましくは80kgを超えることができ、好ましくは250kgを超えることができ、または好ましくは500kgを超えることができる。典型的には、運動シミュレーション用途では、ペイロードが車両シャーシ、操縦室、またはそれらのモデルとすることができる。
【0030】
本発明のいずれかの態様による運動発生器は、一次運動発生器と直列の二次運動発生器として動作するように配置されることができる。一次および二次の運動発生器を含むこのような組合せの装置は、ペイロードのより大きな運動範囲をユーザに提供することができる。例えば、組合せは、特に車両、シミュレーション用途の運動において必要とされる1メートルほどの可動域を達成することができる。さらに、そのような組合せ装置は、比較的単純で、従って、費用対効果の高い一次運動発生器の使用を可能にすることができ、より複雑な運動を提供する二次運動発生器のみを用いて、例えばX方向およびY方向に運動を提供する。代替として、一次運動発生器は、X、Y、偏揺れの自由度を有することができる。二次運動発生器として本発明による運動発生器を用いて、一次運動発生器として使用するのに適した既知の運動発生器の一例は、特許文献4に開示されるものである。そのような組み合わせにおいて、本発明による運動発生器は、少なくとも1つのロッカーおよび/またはその発生器のアクチュエータが一次運動発生器のフレームに、エンドエフェクタに、またはペイロードとして、取り付けられる二次運動発生器として配置される。例えば、一次運動発生器は、エンドエフェクタとしてフレームまたはプラットフォームを含むことができ、二次運動発生器のうちの少なくとも1つのロッカーは、一次運動発生器のフレームに枢動可能に取り付けられることができる。
【0031】
本発明の別の態様によれば、運動システムが提供され、運動システムは、本発明のいずれかの態様による少なくとも1つの運動発生器と、制御システムとを含む。制御システムは、少なくとも1つの運動発生器のアクチュエータ、好ましくはそのすべてのアクチュエータの動作を制御することができる。制御システムは、各アクチュエータで生成される必要がある位置、加速度、および/または力を計算することができ、要求される運動プロファイルを生成する。
【0032】
本発明の別の態様によれば、運転または車両シミュレータが提供される。この場合、運転または車両シミュレータは、本発明のいずれかの態様による運動発生器または本発明による運動システムと、視覚投影手段若しくは視覚表示手段および音声手段から選択される少なくとも1つの環境シミュレーション手段とを含む。運転又は車両シミュレータは、操縦室又はシャーシおよび/または車両のシミュレーションの構成要素を含むことができる。運転または車両シミュレータは、表示装置、仮想現実装置、投影装置、および仮想環境をモデル化するためのソフトウェア手段、および車両モデルのうちの少なくとも1つを含む環境をシミュレートするための手段を含むことができる。
【0033】
本発明の別の態様は、本発明のいずれかの態様による運動発生器を製造または提供するステップと、制御システムを運動発生器に接続するステップとを含む運動システムを製造する方法を提供する。
【0034】
運動発生器、運動システムおよび運転シミュレータの他の特徴は、説明およびさらに特許請求の範囲から明らかになるであろう。運動発生器、運動システム、運動シミュレータ、および本発明の特定の態様または実施形態などの装置を参照する場合、当業者は、本発明の他の態様および実施形態がそのような装置に等しく適用することができることを理解するであろう。本発明によるそのような装置への言及は、本発明の任意の態様を指すことができる。
【0035】
本発明による運動発生器と、運動システムと、運転シミュレータと、それらの動作と製造とは、単なる例として、添付図面の図1から図28を参照してここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による運動システムの上側および片側からの概略斜視図である。
図2】明確にするためにフレームが取り除かれた、図1の運動システムの概略斜視図である。
図3図2に示される運動システムの平面図である。
図4図1の運動システムのロッカーの詳細な概略平面図である。
図5図4に示されるロッカーの概略斜視図である。
図6】本発明による運動発生器に使用するための異なるロッカーの詳細な平面図である。
図7】本発明による運動発生器の受動引張装置の詳細な図である。
図8】前後揺れ前向き状態における、図2に示される運動システムの斜視図である。
図9図8の前後揺れ前向き状態における運動システムの下側からの平面図である。
図10】左右揺れ左向き状態における、図2に示される運動システムの斜視図である。
図11図10の左右揺れ左向き状態における運動システムの下側からの平面図である。
図12】上下揺れ上向き状態における、図2に示される運動システムの斜視図である。
図13図12の上下揺れ上向き状態における運動システムの下側からの平面図である。
図14】横揺れ右側下向き状態における、図2に示される運動システムの斜視図である。
図15】横揺れ右側下向き状態における、図14に示される運動システムの下側からの平面図である。
図16】縦揺れ先端部下向き状態における、図2に示される運動システムの斜視図である。
図17図16の縦揺れ先端部下向き状態における運動システムの下側からの平面図である。
図18】偏揺れ先端部左向き状態における、図1に示される運動システムの斜視図である。
図19図18に示される偏揺れ先端部左向き状態における運動システムの下側からの平面図である。
図20】本発明による、運転シミュレータの斜視図である。
図21】本発明による、別の運動システムの概略斜視図である。
図22】本発明による、別の運動発生器の詳細な斜視図である。
図23図22の運動発生器の他の詳細図である。
図24】代替のロッカー装置を示す別の運動発生器の部分図である。
図25】ロッカー装置の傾斜を示す、図24の運動発生器の他の部分背面図である。
図26】本発明の運動発生器と共に使用するための制御システムの概略図である。
図27A】本発明による運動発生器と別の運動発生器とを含む組合せの概略図である。
図27B】本発明による運動発生器と別の運動発生器とを含む別の組合せの概略図である。
図28】代替のロッカー装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において、上側または下側などの特定の向きおよび位置への言及は、添付の図面に示される向きまたは位置を指す。
【0038】
<運動発生器を含む運動システム>
本発明の第1の態様による、運動発生器2を含む運動システム1が、図1から図19に示さる。運動システム1は、表面4上に取り付けられる運動発生器2を備え、この実施形態では、運動発生器2のペイロードを構成する車両シャーシ3と、(例えば、図26に関連して説明されるように)フレーム5の上方にある制御手段とを支持する。フレーム5は、略三角形の形状を有し、アルミニウムなどの軽量の剛性材料で構成される。スペースフレームなどの他の形状および種類のフレームと、他の材料とが、そのようなフレームで使用するために考えられる。図示の実施形態では、シャーシ3がレーシングカーの操縦室の複製である。シャーシ3は、細長い剛性ロッドまたはストラット11、12、13、14および15、16の対によって支持され、これらのロッドまたはストラットは、それらの上端で、上側継手11UJ、12UJ、13UJ、14UJ、15UJ、および16UJによって、それぞれシャーシ3に連結される。細長い剛性ロッド11から16は、共振を低減するために、例えば炭素繊維で作られることができる。上側継手11UJから16UJは、球面継手、カルダン継手、または自在継手とすることができ、および/または屈曲部を含むことができる。各細長いロッド11から16の下端は、下側継手11LJ、12LJ、13LJ、14LJ、15LJ、および16LJによって、関連付けられるロッカー11R、12R、13R、14R、15R、16Rにそれぞれ連結され、これらのロッカーは、それぞれ、運動発生器2の三角フレーム5の内側に枢動運動するように配置される。下側継手11LJから16LJは、球面継手、カルダン継手、または自在継手とすることができ、および/または屈曲部を含むことができる。例えば、ベルト駆動装置とすることができるリニアアクチュエータ11LAから16LA、リニアモータ(その適切な例は、パーカーによるI-Forceアイアンレスリニアモータであろう)、またはボールねじ駆動装置のアクチュエータ(その適切な例は、コルモーゲンによるAKM2Gサーボモータによって駆動されるトムソンによるPC直列アクチュエータであろう)。ベルト駆動装置が好まれる。ロッカー11Rから16Rとリニアアクチュエータ11LAから16LAとの間の連結は、図4から図7にさらに詳細に示される。
【0039】
本発明による運動発生器は、フレーム5を含まないことができると考えられる。このような装置では、ロッカー及び/又はアクチュエータのうちの少なくとも一部または全ては、フレームではなく表面4上に直接取り付けられることができる。そのような運動発生器は、表面がフレームよりもより剛性とすることができるという点で利点とすることができる。フレームは、特に、一次運動発生器と直列の二次運動発生器として使用されるときに、運動発生器全体を支えるために使用されることができるという利点を有する。
【0040】
図4および図5は、ロッカー16Rおよび連結される構成要素をより詳細に示す。連続歯付ベルトBは、連結されるベルトBの摩耗を減少させる丸い構成要素Eを介してロッカー16Rと連結する。適切な歯付ベルトの例は、コンチネンタル製のConti(登録商標)シンクロチェーンカーボンベルトである。図4および図5では、構成要素Eは円形である。図6では、対応する構成要素Eは湾曲している。図6に示されるベルトBは、明確にするために、単に湾曲した構成要素から離間して配置されており、実際には、ベルトは湾曲した構成要素に密接に適合するであろうことに留意されたい。歯付きベルトBは、(「C」と表示される)駆動可能な対応する歯付き電動キャプスタンに巻き付く。電動キャプスタンの適切な例は、コルモーゲンによるAKM2Gサーボモータによって駆動される、マーティンによるシンクロベルトのスプロケットであろう。キャプスタンCは、(例えば、図26に関連して説明されるように)制御システムの制御下で動作する。
【0041】
また、図4および図5の実施形態における受動引張構成要素Pは、バンジーまたはバネであることに留意されたい。図6および図7に示される実施形態では、受動引張の構成要素は圧縮バネである。ベルトBは、Pとして示される丸い自由に回転するベルト車に巻き付き、このベルト車は受動引張装置PTによって張力を与えられ、この受動引張装置PTは、ロッカーに連結されるベルトBに対して、連結されるロッカー11Rから16Rに前負荷張力を与える。制御システムの制御下で、関連付けられるベルトBとキャプスタンCとによって駆動されるロッカー11Rから16Rのうちの1つ以上の動きによって、ロッドまたはストラット11から16は、シャーシ4を、6の自由度のいずれかの広い帯域幅で、多種多様な状態に移動させ、そのうちのいくつかは以下に説明される。
【0042】
運動発生器2は、上下方向に特に小型である。この小型さは、運動発生器が運転シミュレータで使用される運動システムに含まれるときに利点である。
【0043】
以下の説明では、使用中のロッカー11Rから16Rの位置がさらに詳細に説明される。簡潔にするため、ロッカー11Rから16Rの位置のみが記載され、それらのロッカーは、図面で特定され、いくつかの図面では他の構成要素は番号が付されていない。細長いストラット11から16、ベルト駆動装置、および連結される受動引張装置などの他の構成要素もロケットの動きによって影響を受けることが当業者によって理解されるであろうが、これについては、図1から図3および図7から図17に関連して以下の説明では詳細に説明されない。
【0044】
運動発生器2は、図1から図3において中立状態のシャーシ3を用いて示される。この状態において、ロッカーの状態は表1の通りである。
【表1】
【0045】
運動発生器は、図8および図9において前後揺れ前向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態において、ロッカーの状態は表2の通りである。
【表2】
【0046】
運動発生器は、図10および図11において左右揺れ左向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態では、ロッカーの位置は表3の通りである。
【表3】
【0047】
運動発生器は、図12および図13において上下揺れ上向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態では、ロッカーの位置は表4の通りである。
【表4】
【0048】
運動発生器は、図14および図15において横揺れ右側下向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態では、ロッカーの位置は表5の通りである。
【表5】
【0049】
運動発生器は、図16および図17において縦揺れ先端部下向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態では、ロッカーの位置は表6の通りである。
【表6】
【0050】
運動発生器は、図18および図19において偏揺れ先端部左向き状態のシャーシ3を用いて示される。この状態では、ロッカーの位置は表7の通りである。
【表7】
【0051】
限られた数の状態のみが、運動発生器2に関連して上述されることに留意されたい。運動発生器2は、前後揺れ後向き、左右揺れ右向き、上下揺れ下向き、横揺れ左側下向き、縦揺れ先端部上向きおよび偏揺れ先端部右向きを含むが、これらに限定されない、より多くの状態に動作されることできることが、当業者によって理解されるであろう。さらに、運動発生器2は、このような状態の複数の組み合わせに動作されることができることも、当業者によって理解されるであろう。例えば、運動発生器は、上下揺れ上向きと偏揺れ先端部左向きとを組み合わせた状態に動作されることができる。運動発生器は、ペイロード、シャーシ3の動きの精度を高める、広帯域幅、低摩擦及び低慣性を含む本発明の利点を有する。
【0052】
<制御システム>
図26は、本発明による、運動発生器の動作を制御する際に使用するための制御システム501を示す。図26に関連して、運動発生器は502として参照されるが、制御システム501は、本明細書に記載される、他の運動発生器、運動システム、および運動シミュレータに適用可能である。制御システム501は、運動制御部504を含む。運動制御部504は、好ましくは決定論的またはリアルタイムの方法でコンピュータプログラムを実行し、シミュレーション環境503またはセットポイント生成器506などの要求生成器から運動要求入力505を取得する。運動制御部は、各アクチュエータ509で生成される必要がある位置、加速度および/または力507を計算して、要求される運動プロファイル505を生成する。また、制御システム501は、サーボドライバ508を備える。サーボドライバ508は、アクチュエータ509を駆動するために正確に制御される電流510を提供する。
【0053】
動作中、運動制御部は、要求される位置または力507を各サーボドライバ508に送る。アクチュエータ509は、符号化器などの運動測定装置511を有する。運動測定装置511は、任意選択でサーボドライバを介して、運動フィードバック512を運動制御部に提供する。運動制御部は、要求される運動プロファイル505を測定されたもの512と比較し、それに応じてアクチュエータ要求507を更新する。
【0054】
また、図26は、シミュレーション環境503を有する制御システムを示し、運転シミュレーションなど、シミュレートされる車両とレーストラックまたは市内道路などのその環境との物理学が計算される。この実施形態では、制御システム501は、仮想車両の運動を表すシミュレーション環境503から運動要求を受信する。コンピュータプログラムは、仮想世界514における車両の運動を判定し、次に、運動キューイングアルゴリズム513(MCA、ウォッシュアウトフィルタとしても知られる)を適用して、シミュレートされる車両運動を、運動発生器によって表されることができる運動に変換する。次に、これらの計算される運動は、運動要求505として制御システムに提供される。MCA513は、シミュレーション環境503若しくは制御システム501の一部とすることができ、または両方に分離することができる。シミュレーション環境503は、制御装置516から入力信号515を受信することができる。制御装置516は、操舵、スロットル、またはブレーキ入力など、操作者、すなわち運転者、乗客、または操縦士などの人間のユーザが、シミュレーション環境内の仮想車両を制御するために使用する。操作者は、運動発生器502の乗客である可能性が高い。これらの入力515は、制御システムを介して、または直接、シミュレーション環境に戻されることができる。また、シミュレーション環境は、運転者、乗客、または他のユーザもしくは操作者のための出力を視覚表示装置517上に生成する可能性が高い。また、シミュレーション環境は、運動発生器の位置、または制御装置入力信号に関連するような、制御システムからの追加データ518を必要とすることができる。
【0055】
<運動発生器の組み合わせ>
本発明のいずれかの態様による運動発生器は、他の運動発生器と直列に使用されることができる。例えば、本発明による運動発生器は、二次運動発生器として使用されることができ、すなわち、運動発生器自体が一次運動発生器のペイロードとなる。図27Aは、組み合わせ600を示す。組み合わせ600は、本発明による、第1の(または「一次」)運動発生器602と、(本発明による運動発生器である)第2の(または「二次」)運動発生器604とを備える。この組み合わせは、通常、建物床面である平面表面601(図示せず)上に設置される。一次運動発生器602は、単純なXとYとのフレーム装置である。このフレーム装置は、下側フレーム部材607、608を含む下側フレーム606と、上側フレーム610とを備える。下側フレーム部材608はモータ612を支持する。モータ612は、(例えば、図26に示されるように)制御システム605からの命令の下に動作されることができ、フレーム610をX方向に動かす。同様のモータ614は、フレーム610に同様に配置され、制御システム605からの命令の下で、そのフレームをY方向に動かす。二次運動発生器604は、一次運動発生器602に取り付けられる、本発明の第1の態様による運動発生器であり、二次運動発生器604は、(一次運動発生器の上側フレーム610に直接取り付けられる、すなわち表面601の上方の平面に取り付けられる)ロッカー616を備える。ロッカー616は、(モータ617と、キャプスタン618CAに巻き付く、ロッカーの可動端に取り付けられる長尺ベルト618とを備える)アクチュエータと、細長い剛性ストラット620とを駆動可能に連結される。細長いストラット620は、関連付けられるロッカー616の自由端に継手によって一端で連結され、ペイロード619を支持するエンドエフェクタに継手によって他端で連結される。モータ617は、制御システムからの命令の下で動作されると、駆動キャプスタン618CAを駆動し、次にベルト618を駆動して、関連付けられるロッカー616を動かす。ロッカー616は、(Aとして示される)水平な弧を描いて動くロッカーアームを用いて、(ロッカーピボット616Pを通る)垂直な旋回軸の周りで旋回する。ロッカー616の動きは、関連付けられるストラット620を動かして、エンドエフェクタ618/ペイロード619をX方向およびY方向に動かし、同様に、偏揺れ、上下揺れ、および縦揺れの運動を可能にする。組み合わせ600は、一次運動発生器602は、比較的安価であるが、X方向およびY方向に良好な可動域の範囲を提供し、二次運動発生器604は、より広い帯域幅とより低いレベルの慣性とより低いレベルの摩擦とを提供して、これがペイロードに付与される動きの精度を高めるという点で利点である。
【0056】
<運動発生器の組み合わせ>
図27Bは、本発明による別の組み合わせ300を示す。組み合わせ300は、第1の(または「一次」)運動発生器302と、(本発明による運動発生器である)第2の(または「二次」)運動発生器304とを含む。組み合わせ300は、運転シミュレータ建物内の床などの平面表面301上に設置される。一次運動発生器302は、一般に、一次運動発生器602に関連して上述されたように、単純なXとYとのフレーム装置であり、下側フレーム部材307、308を含む下側フレーム306と、上側フレーム310とを備える。下側フレーム部材308は、モータ312を支持し、モータ312は、(例えば、図26に示されるように)制御システム305からの命令の下に動作されることができ、フレーム310をX方向に動かす。同様のモータ314は、フレーム310に同様に配置され、制御システムからの命令の下でそのフレームをY方向に動かす。本発明の第2の態様による運動発生器である二次運動発生器304は、6個のロッカー316Aから316Fを備え、各ロッカーは、概ね図1の運動発生器に関連して説明されるように、アクチュエータ(モータ317Aから317Fを備え、および関連付けられるモータ317Aから317Fの対応するスプライン付きキャプスタンと、例えば、318CAまたは318CBなどの自由に動くキャプスタンとに巻き付く、関連付けられる細長い歯付きベルト318Aから318Fを備える)と、細長い剛性ストラット(ストラット320Aから320F)とに駆動可能に連結される。細長い剛性ストラット320Aから320Fの各々は、ある端で、関連付けられるロッカー316Aから316Fの自由端に継手によって接続され、その他方の端で、エンドエフェクタ(ペイロード3322を支持するプラットフォーム321)に継手によって接続される。ロッカー316Aから316Fは、表面301より上方に離れたフレーム310の上面によって画定される平面において、一次運動発生器302の上側フレーム310に取り付けられることに留意されたい。モータ317Aから317Fが制御システムからの命令の下で動作されるとき、それは、関連付けられるベルト318Aから318Fを駆動し、その結果、関連付けられるロッカー316Aから316Fは、(例えば、ロッカー316Aに対してAとして示されるように)弧を描いて動くロッカーアームを用いて、水平旋回軸を中心に旋回する。したがって、ロッカー316Aから316Fの動きは、関連付けられるストラット320Aから320Fを動かして、エンドエフェクタ318/ペイロード319をX方向およびY方向に動かし、同様に、偏揺れ、上下揺れ、縦揺れの動きを可能にする。組み合わせ300は、一次運動発生器302は比較的安価であるが、X方向およびY方向に良好な可動域の範囲を提供し、二次運動発生器304はより広い帯域幅とより低いレベルの慣性とより低いレベルの摩擦とを提供して、これがペイロードの動きの精度を高めるという点で利点である。
【0057】
<運転シミュレータ>
本発明による運転シミュレータ200は図20に示される。運転シミュレータ200は、例えば、図1から図19に関連して上述されたような、若しくは図21から図23に関連して以下に説明されるような本発明、または図27Bに関連して説明されたような組み合わせ、による運動発生器204を含む運動システム202を備える。運動システム202は、運転環境の画像を表示されることができる投影システム206の前の表面206上に取り付けられ、投影システムが環境シミュレーション手段の一例を構成する。音声システム(図示せず)は、運転環境の音を複製して、ユーザに音を提供し、環境シミュレーション手段の別の例を構成する。運転シミュレータ200の運動発生器204は、(例えば、図26に関連して記載されるように)制御システム207の命令の下で動作される。
【0058】
本発明による運動発生器は、上記のいくつかの実施形態で説明されるように、この実施形態で説明されるような運転シミュレータで使用するのに適しており、このような用途のための既知の運動発生器と比較して、いくつかの点の一部またはすべてにおいて利点とすることができる。第1に、a)重量および慣性負荷に作用するため、リニア軸受けよりも、外旋継手または回転軸受けを使用すること、b)再循環ボールねじリニアアクチュエータを不要にすること、により、その可動部分内で低レベルの摩擦を有することができる。第2に、特に、リニアモータよりも回転モータが使用される場合、特に、機械装置内のストラットを用いて全体を動かすリニアアクチュエータは、低慣性を有することができる。本発明による運動発生器のアクチュエータとしてリニアモータが使用される場合、そのフォーサのみが動く必要があるが、その固定子または磁路は静止したままであることができる。第3に、典型的には50Hzよりも良好な広い帯域幅を、1よりも多い自由度で有することができる。いくつかの実施形態では、50Hzよりも著しく広い帯域幅、例えば、80Hz、90Hz、100Hz、またはそれよりも広い帯域幅を有することができる。また、運転シミュレータ200に使用される運動発生器204は、上下方向に特に小型とすることができることを理解されたい。これは、ユーザが運転シミュレータに出入りするために昇降台/橋を必要とする他の運動システムと比較して、シミュレートされる車両の高さをより良く複製する。
【0059】
<運動発生器を含む運動システム>
本発明による別の運動システム700は、図21に示される。運動システム700は、本発明による運動発生器702を含み、運動発生器702は、表面706の上方のペイロード704を支持する。運動発生器702は、4個のロッカーシステム710、712、714および716(ロッカーシステム714と716とは図21では不明瞭である)を備え、これらは概ね上述される。リニア拘束720と722とは、ロッカー装置710、716と716、714との間にそれぞれ直角に配置される。また、運動システム700は、(例えば、図26に関連して説明されるように)制御システムを含む。
【0060】
使用時には、ロッカー710から714が、概ね上述されたように、ベルト駆動Bによって動かされ、(さらに概ね上述されたように)ロッカーとペイロード704との間に介在される細長いストラットが、広い帯域幅で4の自由度においてペイロードを動かす。拘束720、722は、ペイロード704が前後および左右方向にそれぞれ過度に動くことを防止する。
【0061】
運動システム700は、比較的単純だが、帯域幅に関して良好な性能を提供することができることを、当業者によって理解される。システムは、より狭い帯域幅の一次運動発生器を有するにもかかわらず、全ての自由度において50Hzを超える、または100Hzさえも超える帯域幅を有することができる。なぜならば、二次運動発生器がこの点で高く機能しているからである。
【0062】
<他の運動発生器>
本発明による他の運動発生器400が、図22図23とに示される。運動発生器400は、6個のベルト駆動リニアアクチュエータ11LAから16LAが6個のリニアモータと6個のリンク装置とによって置き換えられることを除いて、図1から図19に示される運動発生器2に関連して概ね上述されたように構成および配置され、対応するロッカーとストラットとを駆動してプラットフォーム402を動かし、エフェクタを構成する。6個のリニアモータは、6の自由度でプラットフォーム402を動かすように動作可能である。図22図23とは、6個のリニアモータ411のうちの1個をより詳細に示す。より具体的には、図22は、リニアモータ411のコイル412と磁路414とを示す。リニアモータ411は、ピボット416によって細長い下側ストラット418に、枢動可能に連結される。他のピボット419は、ストラット418をロッカー420に連結する。ロッカー420は、運動発生器400が取り付けられる表面の上方で並列に、ピボット421に、水平方向の枢動のために取り付けられる。上側ストラット422は、その下端を、クレビス継手424によってロッカー420に連結される。上側ストラット422は、次に、その上端において、他のクレビス継手425(図23に示される)によってプラットフォーム402(図23では明確化のために省略される)に、枢動可能に連結される。使用時には、(例えば、図26に関連して説明されるように)制御システムによって制御されるように、リニアモータ(例えば411)の動作中のコイル(例えば、412)の直線運動は、関連付けられるロッカー(例えば、420)と連結されるストラット(例えば、418、422)とを動かして、6の自由度でプラットフォーム(402)を動かす。
【0063】
<代替のロッカー装置>
代替のロッカー装置が、図24から図25に概略的に示される。この実施形態では、運動発生器100は、102として概ね示される平面表面上に取り付けられ、運動発生器102のペイロードを構成するシャーシ103と、(明確に省略される)三角形フレーム105の上方の制御手段(図示せず)とを支持する。シャーシ103は、アルミニウム又は炭素繊維などの軽量の剛性材料で構成されており、レーシングカーの操縦室の複製である。シャーシ103は、細長い剛性ロッドまたはストラットの対111、112、113、114および115、116によって支持され、細長い剛性ロッドまたはストラットの対は、それらの上端で、それぞれ上側継手111UJ、112UJ、113UJ、114UJ、115UJおよび116UJによってシャーシ103に接続される。細長い剛性ロッド111から116は、例えば、共振を低減するために炭素繊維製とすることができる。上側継手111UJから116UJは、球形継手、カルダン継手、または自在継手とすることができ、および/または屈曲部を含むことができる。各細長いロッド111から116の下端は、下側継手111LJ、112LJ、113LJ、114LJ、115LJおよび116LJ(また、それらは、球形継手、カルダン継手または自在継手とすることができ、および/または屈曲部を備えることができる)によって、それぞれ、ロッカー111R、112R、113R、114R、115Rおよび116Rに結合され、ロッカーは運動発生器100の三角形フレーム105の内側で枢動するように配置され、リニアアクチュエータ111LA、112LA、113LA、114LAおよび115LA、116LAに連結されるリンク装置111L、112L、113L、114Lおよび115L、116Lによって駆動される。
【0064】
これまでの実施形態とは対照的に、ロッカーが、運動発生器が取り付けられる表面と平行して動く場合、各ロッカーに対する旋回軸が表面に対して垂直であるように、ロッカー111R、112R、113R、114R、115Rおよび116Rは、運動発生器が取り付けられる表面(この場合、102)とは非平行である角度で枢動するように配置される。この説明では、旋回軸に対するロッカーの反対端が自由端と呼ばれる。この実施形態では、ロッカーは表面から45度で傾斜する(表面102とロッカー113Rが旋回する軸Aとの間の、
として示される角度が図25に示される)。他の実施形態では、ピボットロッカーが表面から0度から45度で傾斜することができる。運動発生器が取り付けられる表面が平面でない場合、ロッカーの傾き角度は基準線からとる。運動発生器が二次運動発生器として組み合わされて配置される場合、ロッカーの傾き角度は、ロッカーが取り付けられる一次運動発生器の上側フレームの平面表面などによって、表面の上方に画定される平面からとることができる。このような平面は、「表面」と見なされることができる。いくつかの状況では、このような傾斜したロッカー装置が、望ましくない共振を低減することができるので好ましい。また、傾斜したロッカー装置は、より小型とすることができる。また、軸受けが作用する負荷を減少させ、それによって、摩擦をさらに減少させることができる。
【0065】
<他の代替のロッカー装置>
図28Aおよび図28Bには、本発明による運動発生器での使用に適した他の代替のロッカー装置が示される。図28Aはロッカー400を示す。ロッカー400は、屈曲部404によってロッカーアーム406に連結されるロッカー底部402を含む。屈曲部は、バネ鋼、工具鋼、またはE-ガラス若しくはS-ガラスなどの複合物のような予測可能な弾性材料から形成される。屈曲部404は、屈曲部404の中央の想像軸の周りの回転を近似する、屈曲部404に垂直な平面において、ロッカーアーム406の弧の動き(弧Cとして示される)を可能にする。ロッカーアーム406は、図28Bの弧C上の1つの位置に示される。想像軸は、上述された他のロッカーの旋回軸と同等であるとみなされることができる。屈曲部を組み込むこのようなロッカー装置は、軸受けの使用を回避し、バックラッシュを排除し、および/または剛性を増大させる点で利点とすることができる。
【0066】
<運動システムを製造する方法>
上述されたような運動発生器と制御手段とを含む本発明による運動システムは、従来の手段によってカスタムおよび標準構成部品から組み立てられることができる。特に、運動システムは、本発明による運動発生器を制御システムと接続することによって製造されることができる。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
【国際調査報告】