(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】風力発電所の設計運転方法、風力発電所、およびウィンドファーム
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
F03D1/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568127
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2020063692
(87)【国際公開番号】W WO2020234182
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】102019113044.1
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Borsigstrasse 26, 26607 Aurich Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メッシング ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】キミリ ムスタファ オヌール
(72)【発明者】
【氏名】ボット ステファニー
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178AA51
3H178BB31
3H178CC02
3H178DD54Z
(57)【要約】
本発明は、風力から発電するための風力発電所(100)を設計および運転するための方法に関し、風力発電所(100)は、ブレード設定角が調整可能なロータブレード(108)を有する空力的ロータ(106)を有し、ロータブレード(108)には、ロータブレード根元(114)とロータブレード先端(116)との間に複数の渦発生器(118)の配置が行われる。それぞれのロータブレード(108)の長手方向における渦発生器(118)の配置は、風力発電所(100)の敷地における空気密度(ρ
A、ρ
B)に応じて決定される半径位置(r/R)まで実施されることを特徴とするものである。本発明はさらに、風力発電所(100)のロータブレード(108)と、関連する風力発電所(100)と、ウィンドファームとに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力から発電するための風力発電所(100)を設計および運転する方法であって、前記風力発電所(100)は、ブレード設定角が調整可能なロータブレード(108)を有する空力的ロータ(106)を備え、前記ロータブレード(108)は、長手方向の複数の半径位置において、ロータブレード根元(114)とロータブレード先端(116)との間に複数の渦発生器(118)が配置され、それぞれの前記ロータブレード(108)の長手方向の渦発生器(118)の配置は、前記風力発電所(100)の敷地における空気密度(ρ
A、ρ
B)に応じて決定される半径位置(r/R)まで行われる、方法。
【請求項2】
前記渦発生器(118)が終了する半径位置(r/R)の決定は、空気密度の減少によって生じるロータブレード(108)の迎え角(α)の増加により予想される出力損失が補償されるように、前記空気密度(ρ
A、ρ
B)に応じて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半径位置(r/R)の決定は、比較的低い空気密度(ρ
A)の場合に必要となるブレード設定角(γ)の増加が補償されるように、前記空気密度(ρ
A、ρ
B)に応じて実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記渦発生器(118)の配置は、空気密度の減少に伴い前記半径位置(r/R)の値が増加するように行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレード設定角(γ)の設定は、前記渦発生器(118)の配置に対して決定された前記半径位置(r/R)に応じて行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータブレード(108)への渦発生器(118)の配置は、特定の運転管理、特に1つの敷地の風力発電所(100)を運転する特定の定格出力(P
rated)を考慮して行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
それぞれの前記ロータブレード(108)への前記渦発生器(118)の配置が行われる上限の半径位置(r/R)の値は、定格出力(P
rated)に達したときの定格風速に対する定格ロータ速度でのロータブレード先端(116)の速度の比として定められる先端速度比が減少するにつれて増加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数のブレード設定特性曲線(142、144)が記憶されており、前記渦発生器(118)の配置について決定された半径位置(r/R)に応じて、記憶された前記複数のブレード設定特性曲線(142、144)の中から1つのブレード設定特性曲線(144)が選択され、前記ブレード設定角(γ)の設定に使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
風力発電所(100)は、前記敷地に応じた定格ロータ速度で運転され、前記渦発生器(118)の配置は、前記定格ロータ速度に応じて決定される半径位置(r/R)まで、それぞれの前記ロータブレード(108)の長手方向に実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
それぞれのロータブレード(108)の長手方向への渦発生器(118)の配置が行われる上限の前記半径位置(r/R)が、前記風力発電所(100)の敷地で設定される騒音レベルに応じて追加で決定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
吸引側と圧力側とを有するロータブレード(108)であって、ロータブレード根元(114)とロータブレード先端(116)との間の少なくとも吸引側に複数の渦発生器(118)が配置されており、それぞれのロータブレード(108)の長手方向に渦発生器(118)を半径位置(r/R)まで配置することが、敷地に固有の空気密度(ρ
A,ρ
B)に応じて実施される、ロータブレード(108)。
【請求項12】
ロータブレード根元(114)から始まり、ロータブレード先端(116)の方向に、ロータブレード(108)の半径位置(r/R)まで渦発生器(118)を配置することは、敷地に固有の先端速度比によって制限され、特に半径位置(r/R)は、相対的に高い先端速度比から相対的に低い先端速度比まで増加する、請求項11に記載のロータブレード(108)。
【請求項13】
ブレード設定角(γ)が調整可能なロータブレード(108)を有する空力的ロータ(106)であって、ロータ(106)が設定可能な定格ロータ速度で運転可能である、空力的ロータ(106)と、制御システム(200)とを備える風力発電所(100)であって、前記制御システム(200)は、請求項1から10の少なくとも一項に記載の方法に沿って前記風力発電所(100)を運転するように設計されている、風力発電所(100)。
【請求項14】
前記ロータ(106)は、請求項11および12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのロータブレード(108)を有する、請求項13に記載の風力発電所(100)。
【請求項15】
請求項13または14に記載の複数の風力発電所(100)を備える、ウィンドファーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力から発電するための風力発電所を設計および運転するための方法に関し、風力発電所は、ブレード角が調整可能なロータブレードを備えた空力的ロータを有し、ロータブレードは、ロータブレード根元とロータブレード先端との間に複数の渦発生器が配置されている。さらに、本発明は、風力発電所のロータのロータブレード、風力発電所、およびウィンドファームに関するものである。
【0002】
ロータブレードの空力特性に影響を与えるために、ロータブレードの断面に、表面に対して垂直に走る複数の渦要素を備える渦発生器を設けることが知られている。渦発生器は、流れの分離に対する抵抗を高めるために、ロータブレードの表面上に乱流の局所領域を発生させる役割を果たす。この目的のために、渦発生器は、ロータブレードの壁に近い流れを旋回させる。その結果、壁に近い流れの層と壁から離れた流れの層の間の運動量の交換が大幅に増加し、壁に近い境界層の流速が増加する。
【0003】
製造コストの最適化を背景に、一般的にロータブレードには標準的な方法で渦発生器が取り付けられている。つまり、各敷地で同じように渦発生器が搭載されている。
【0004】
風力発電所は敷地によって様々な環境条件にさらされており、特に日中や季節の変わり目に風力発電所がさらされる風場の特性は大きく異なる場合がある。風場は、数多くのパラメータによって特徴づけられる。最も重要な風場パラメータは、平均風速、乱流、垂直水平シア、高さ方向の風向変化、斜め入射流、空気密度である。
【0005】
空気密度の変化、特に空気密度の低下によるロータブレードの迎え角の増加は、特にロータブレードの中央領域での流れの分離の危険性を避けるために、通常ピッチ角とも呼ばれるブレード設定角を定められた出力から増加させることで相殺され、流れの分離はそうでなければ大きな出力損失につながる。
【0006】
独国特許商標庁は、本願の優先出願において、以下の先行技術、独国特許発明第60110098号明細書、米国特許出願公開第2013/280066号明細書、国際公開第2007/114698号、国際公開第2016/082838号、国際公開第2018/130641号の調査を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第60110098号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/280066号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/114698号
【特許文献4】国際公開第2016/082838号
【特許文献5】国際公開第2018/130641号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの背景に対して、本発明の目的は、風力発電所をより効率的に運転することで特徴づけられる風力発電所を設計および運転する方法を開発することだけでなく、より効率的な運転を可能にするロータブレード、風力発電所、ウィンドファームを特定することである。
【0009】
一態様によれば、本発明が基づく目的は、請求項1に記載の特徴を有する風力発電所を設計および運転する方法によって達成される。請求項1は、風力から発電するための風力発電所を設計および運転するための方法を提案するものであり、風力発電所は、ブレード設定角が調整可能なロータブレードを有する空力的ロータを有し、ロータブレードは、長手方向の半径位置において、ロータブレード根元とロータブレード先端との間に複数の渦発生器が配置されていることを特徴とする。風力発電所の運転効率を向上させるという目的は、それぞれのロータブレードの長手方向の渦発生器による配置が風力発電所の敷地における空気密度に応じて決定される半径位置まで行われて達成される。
【0010】
したがって、本発明によれば、比較的低い空気密度の敷地で、それぞれのロータブレードに渦発生器を備えた適応された配置を提供することが提案される。これは、渦発生器によって、失速が発生する最大迎角が増加することにより、渦発生器のロータブレードへの敷地に依存しない従来の配置と比較して、比較的低い空気密度を理由とする流れの分離の発生が防止されるためである。敷地に応じた、即ち、標準化されていない仕方で渦発生器をロータブレードに配置することによって、全体として、敷地に依存しない配置の場合の生産に関してなされた節約を、おそらくはかなり補って余りある生産の増加をもたらすことができる。
【0011】
例えば、本方法は、所定の空気密度、例えば前記空気密度ρAまでは、特定のロータブレードには渦発生器がない方が有利であると判断し、空気密度が所定の空気密度ρA未満になった場合にのみ、渦発生器を伴う配置を導入する。
【0012】
渦発生器の配置は、ロータブレードの根元で直ちに始めることもでき、ロータブレードの根元から長手方向に離れた位置で始めることもできる。本発明の成功のためには、空気密度に応じて本発明に従って決定された半径位置で配置が終了することが重要である。渦発生器の連続的または定常的な配置もいずれも行われるべきでなく、つまり配置の中断も可能であるということである。
【0013】
渦発生器の形で流れに影響を与えるための受動的要素の場合、「配置」とは、特に、そのような要素をロータブレードに対してまたはロータブレードの上に装着することを意味すると理解される。流れに影響を与えるための能動的要素の場合、「配置」とは、特に、そのような要素の活性化または非活性化を意味するだけでなく、そのような要素をロータブレードに対してまたはロータブレードの上に装着することも意味すると理解することができる。流れに影響を与えるための能動的な要素としては、空気を吸い込んだり吹き出したりするためのスロットや開口部、制御可能なフラップなどが挙げられる。
【0014】
流れに影響を与える能動的および受動的な要素の組み合わせは、特に好ましくは渦発生器として使用することができる。したがって、この場合、受動的な渦発生器は、例えば、ロータブレードの根元に近い内側の領域で使用することができ、一方、能動的な渦発生器は、さらに外側に位置する領域で使用することができる。したがって、ロータブレードに渦発生器を配置する上限となる半径位置は、流れに影響を与えるための能動的な要素を制御することによって、進行中の運転中にも変化させることができ、特に空気密度に合わせることができる。同時に、能動的な渦発生器の割合が比較的少ないため、能動的な渦発生器のみの場合と比較して、設計の複雑さを低く抑えることができる。
【0015】
空気密度は一定ではなく、時間とともに変化する。したがって、空気密度の値としては、平均値、たとえば空気密度の年間平均値、あるいは年間空気密度の最小値を用いることが好ましい。代わりに、または追加で、敷地の地理的な高さを含めることができ、既知であるように、これは、空気密度に影響を与える。空気密度は、地理的な高さと、例えば敷地の平均気温から算出するのが好ましい。
【0016】
半径位置は、ロータの外径に対するそれぞれの位置の半径として、ロータブレード長手方向軸に沿ったロータブレード上の位置を表すか、またはロータブレード長さを表す。外径とロータブレード長の2つの基準変数は、ロータブレードハブの直径の半分だけ異なるため、差し引かなければならない場合がある。
【0017】
その結果、半径の位置としてロータブレード上の関連する位置は、0(零)から1(一)の範囲の値で示すことができる。ロータブレードに沿った位置を記述するために半径を使用する理由は、ロータブレードは、その意図された用途を果たすために風力発電所のロータに取り付けられることを意図しているからである。したがって、ロータブレードは、常にロータと恒久的に関連しており、したがって、半径が基準変数として使用される。半径位置は、好ましくは、ロータの中心点、すなわちロータ回転軸において値0(零)を有する。半径の位置は、ロータの外側に位置する最も遠い点を特徴づけるブレードの先端で、好ましくは値1(一)を有する。
【0018】
半径位置の決定は、好ましくは、空気密度が減少したときにロータブレードの迎え角の増加が発生するように、かつ、流れの分離により予想される出力損失が補償されるように、空気密度に応じて行うことができる。空気密度に応じて渦発生器の配置を敷地ごとに設計することで、流れの分離が発生しても迎え角を大きく上げることができる。これにより、最適化された迎え角の範囲でロータブレードを運転することが可能になる。
【0019】
好ましい発展例では、渦発生器が終了する半径位置の決定は、比較的低い空気密度の場合に必要となるブレード設定角の増加が補償されるように、空気密度に応じて行うことができる。そのため、ブレード設定角やピッチ角の増加を抑えることができ、さらには完全に回避することもできる。
【0020】
特に、渦発生器の配置は、空気密度の減少に伴い、半径位置の値を増加させて行われることが提案される。渦発生器は、比較的高い空気密度の場合に比べて、ロータブレードの中央領域のより広い領域に配置することができ、その結果、低い空気密度の場合の流れの分離が、より広い中央領域でも防止される。比較的高い空気密度の場合の占有率を超えて、渦発生器がそれぞれのロータブレードを占有することにより、風力発電所の敷地で決定される低い空気密度の場合に、最大許容迎え角を大きくすることができる。
【0021】
ブレードの設定角の設定は、好ましくは、渦発生器の配置に対して決定された半径位置に応じて行うことができる。その結果、最適な設計を確実にすることができる。
【0022】
渦発生器のロータブレードへの配置は、好ましくは、特定の運転管理、特に1つの敷地において風力発電所が運転される特定の定格出力を考慮して実施することができる。運転管理に関しては、風力発電所の種類に応じて敷地に応じた定格出力を提供することが考えられる。この目的のために、定格出力の増加は、定格ロータ速度を増加させることによって実施することができる。それぞれの定格ロータ速度および定格出力での風力発電所の運転は、敷地に応じた方法で永続的に行われるべきである。比較的高い定格ロータ速度は、特に定格ロータ速度と定格出力の比に応じて、定格出力の領域で比較的高い先端速度比をもたらし、したがって、迎え角が減少し、その結果、流れの分離のリスクが減少する。その結果、半径方向の渦発生器の数を減らすことができ、騒音の低減や出力の向上につながる。したがって、様々な定格出力で運転される発電所の種類の風力発電所には、半径方向に異なる範囲で渦発生器を配置することが有利である。
【0023】
この場合、定格出力到達時の定格風速に対する定格ロータ速度でのロータブレード先端の速度の比である先端速度比が小さくなるほど、渦発生器のそれぞれのロータブレードへの配置を行う半径位置の上限値が大きくなる可能性がある。
【0024】
好ましい発展例によれば、複数のブレード設定特性曲線を記憶しておき、渦発生器の配置について決定されたロータ位置に応じて、記憶されたブレード設定特性曲線の中から1つのブレード設定特性曲線を選択し、ブレード設定角の設定に使用することができる。
【0025】
風力発電所は、好ましくは、敷地に応じた定格ロータ速度で運転することができ、渦発生器の配置は、定格ロータ速度に応じて決定される半径位置まで、それぞれのロータブレードの長手方向に行うことができる。
【0026】
この場合、渦発生器のそれぞれのロータブレードへの配置が行われる半径位置の上限値は、定格回転速度が増加するにつれて、特に先端速度比が同時に増加するにつれて低くなってもよい。
【0027】
好ましい発展例では、特定の風力発電所で可能であれば、固定された低い空気密度でも定格ロータ速度を増加させることができ、定格ロータ速度の増加と同時に、先端速度比が全体的に増加した場合には、ロータブレードに渦発生器が配置される上限の半径位置を減少させることができることである。
【0028】
異なる敷地の異なる環境条件に加えて、風力発電所はその敷地に応じて様々な一般的条件に従うこともある。これらは例えば、周囲の騒音からの許容される騒音レベルの距離、または、運転中に風力発電所から特定の距離で発生する、超えてはならない騒音レベルなどの規定である場合がある。例えば、フランスでは、風力発電所の部分負荷運転時に、周囲の騒音に対して5~6dBの騒音レベル要件が適用される。
【0029】
騒音レベルを低減するために、風力発電所は一般的に、騒音低減運転モードで出力を最適化した運転モードと比較して、低減された定格ロータ速度で、即ち、低減された部分負荷ロータ速度と低減された定格負荷ロータ速度の双方で運転される。特にロータブレードの中央領域での流れの分離の危険性を回避するために、そうでなければ流れの分離が大きな出力損失につながるため、ブレード設定角を、定められた出力から増加させる。
【0030】
また、それぞれのロータブレードの長手方向の渦発生器の配置を行う上限の半径位置は、風力発電所の敷地内で設定される騒音レベルに応じて追加で決定することが好ましい。
【0031】
この場合、風力発電所の敷地での雑音要件を満たすように、設定する雑音レベルが選択される。また、それぞれのロータブレードの長手方向のさらに外側に位置する半径位置までのロータブレードの配置によって、比較的低い回転速度にもかかわらず、流れの分離を防止するために風力発電所の運転中に小さいブレード設定角を設定することが可能になる。その結果、風力発電所は、出力最適化運転モードと比較して低減されたロータ速度で、また、雑音低減運転モードではより高い出力係数で運転することができる。これにより、風力発電所の年間エネルギー生産量を増加させることが可能となる。年間エネルギー生産量の増加は、数パーセント、例えば2%から4%の領域にありうる。
【0032】
超えてはならない設定の雑音レベルを決定する雑音レベル要件は、時間の経過とともに敷地で変化することがある。例えば、夜間と日中、あるいは特定の休憩時間など、異なる時間帯に異なる雑音レベル要件が適用される場合がある。このことと、風力発電所の全運転期間における出力最適化運転モードに加えて音低減運転モードに対応する割合とは、それぞれのロータブレードの長手方向における渦発生器の配置が行われる上限の半径位置を決定する際に考慮されてもよい。
【0033】
この方法では、例えば、風力発電所の敷地における空気密度と設定される騒音レベルに応じて、回転数、ロータブレードのブレード設定角、およびそれぞれのロータブレードの長手方向に渦発生器の配置を行う上限の半径位置に応じたパラメータを、境界条件が満たされるまで、互いに繰り返し最適化することができる。なお、パラメータは、例えば、一定期間に風力発電所で発電する生産量、例えば、風力発電所の年間エネルギー生産量などであってもよい。ここでは、全運転期間におけるそれぞれの運転モードの割合を考慮することができる。境界条件は、例えば、反復ステップの最大数に達することや収束条件であってもよい。収束条件とは、例えば、連続する2つの反復ステップで設定された年間エネルギー生産量の差分が、予め設定された限界値よりも低いことである。これにより、風力発電所の敷地内の空気密度と騒音レベルの要求を考慮して、最大の年間エネルギー生産量を達成するように、ロータ速度、ロータブレードのブレード設定角、および、それぞれのロータブレードの長手方向における渦発生器の配置が行われる上限の半径位置を互いに合致させることが可能になる。
【0034】
第2の態様によれば、本発明はさらに、吸引側と圧力側とを有するロータブレードであって、ロータブレード根元とロータブレード先端との間の吸引側に、少なくとも複数の渦発生器が配置されており、それぞれのロータブレードの長手方向に渦発生器を半径位置まで配置することが、敷地に固有の空気密度に応じて実行される、ロータブレードに関するものである。敷地に固有の空気密度に応じて渦発生器をそれぞれのロータブレードに配置することによって、流れの分離を防ぐことができ、その結果、変化した空気密度の結果として必要となるピッチ角の増加を減らす、あるいは完全に排除することが可能となり、全体的な生産量を増やすことができる。
【0035】
この場合、ロータブレードの根元からロータブレードの先端方向に向かって、ロータブレードの半径位置まで渦発生器を配置することは、敷地に固有の先端速度比によって制限することができ、特に半径位置は、比較的高い先端速度比から比較的低い先端速度比まで増加させることができる。
【0036】
それ故、例えば定格出力が異なるなど、異なる先端速度比で運転される発電所の一種の風力発電所のロータブレードには、先端速度比が低いほど外側に渦発生器が装着されるように、半径方向に異なる範囲で渦発生器を設置するように準備するのが有利であるかもしれない。
【0037】
先端速度比は、説明されているとおり、定格出力に達したときの定格ロータ速度におけるロータブレード先端の速度の定格風速に対する比で定義される。先端速度比は、定格ロータ速度と定格出力の比に応じて変化する。定格ロータ速度および/または定格出力が変化することにより、それに応じて相対的に高いまたは相対的に低い先端速度比が得られる。第3の態様では、本発明はさらに、ブレード設定角が調整可能なロータブレードを有する空力的ロータを備え、ロータが設定可能な定格ロータ速度で運転可能な風力発電所と、制御システムとを含み、制御システムが、好ましいものとして記載されている第1の態様による方法またはその改良に沿って風力発電所を運転するように設計されていることを特徴とする風力発電所に関するものである。
【0038】
ロータは、好ましくは、第2の態様による少なくとも1つのロータブレードを有してもよい。
【0039】
第4の態様では、本発明はさらに、第3の態様による複数の風力発電所を有するウィンドファームにも関する。
【0040】
本発明は、添付の図面を参照しながら、考えられる例示的な一実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】
図2は、単一のロータブレードの斜視図を示す。
【
図3】
図3は、一例として、4つの異なる運転状況における、正規化されたロータ半径上に風力発電所の特定の定格出力を与えた場合のロータブレードの迎え角の異なる曲線を示す。
【
図4】
図4は、風力発電所の4つの異なる運転状況における揚抗比の例示的な曲線を示す。
【
図5】
図5は、異なる運転状況における例示的な出力曲線を示す。
【
図6】
図6は、一例として、2つの異なる運転状況における2つのブレード設定角特性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面を参照した実施例に基づく本発明の説明は、実質的に図式的な仕方で行われ、それぞれの図で説明される要素は、説明を改善するために図において誇張され、その他の要素は簡略化され得る。したがって、例えば、
図1は、それ自体が風力発電所を図式的に示しており、その結果、設けられている渦発生器の配置が明確には見られないようになっている。
【0043】
図1は、タワー102とナセル104を備えた風力発電装置100を示している。ナセル104には、3枚のロータブレード108とスピナーを備えたロータ106が配置されている。運転中、ロータ106は、風によって回転運動をし、その結果、ナセル104内の発電機を駆動することになる。また、ロータブレード108のブレード角度を設定することができる。ロータブレード108のブレード設定角γは、それぞれのロータブレード108のロータブレード根元114(
図2参照)に配置されているピッチモータによって変更可能である。ロータ106は、調整可能な定格ロータ速度nで動作する。ロータ速度nは、動作モードに応じて異なる場合がある。出力最適化動作モードでは、ロータ106を可能な限り高い定格ロータ速度で運転することができ、一方、部分負荷動作モードでは、ロータ106を比較的低いロータ速度で運転する。
【0044】
この例示的な実施形態では、風力発電所100は、風力発電所100の包括的な制御システムの一部である制御システム200によって制御される。制御システム200は、一般的には、風力発電所100の制御システムの一部として実装される。
【0045】
風力発電所100は、制御システム200によって、出力最適化運転モード、および任意選択で部分負荷運転モード、例えば騒音低減運転モードでも運転することができる。出力最適化運転モードでは、風力発電所100は、騒音レベルの要件とは無関係に、風力発電所100の敷地の空気密度に応じて、風力発電所100で発電可能な最適な定格出力を発生させる。音低減運転モードでは、騒音レベル要求によって予め規定された騒音レベル以下の騒音レベルを設定するために、風力発電所100は、出力最適化運転モードと比較して低減されたロータ速度で運転される。風力発電所100は、任意選択で、空気密度に応じて、かつ、風力発電所100の敷地での騒音レベル要件を遵守しながら、年間のエネルギー生産量が最大化されるように設計することおよび制御システム200によって運転することができる。
【0046】
このような複数の風力発電所100がウィンドファームの一部を構成してもよい。この場合の風力発電所100は、その敷地に応じて様々な環境条件にさらされる。特に、日内変動や季節変動の際に、風力発電所がさらされる風場の特性は大きく異なる場合がある。風場は多数のパラメータによって特徴づけられる。最も重要な風場のパラメータは、平均風速、乱流、垂直および水平シア、高さ方向の風向きの変化、斜め入射流、空気密度である。さらに、風力発電所に要求される雑音レベルなどの一般的な条件は、その敷地によって異なる場合がある。また、日中と夜間や休息時とでは異なるなど、時間帯によっても異なる場合がある。
【0047】
風力発電所を運転するための1つの対策は、風場のパラメータである空気密度を考慮して、大きな出力損失につながる、ロータブレード108の中央領域における流れの分離の危険性を回避するために、ある出力から始めてピッチ角とも呼ばれるブレード設定角γを増加させることによって、空気密度の減少によって生じるロータブレードの迎え角の増加に対抗することである。この場合のブレード設定角γの上昇は、風力発電所100の出力損失につながるが、この出力損失は、一般に、それぞれのロータブレード108で発生する流れの分離の結果として生じる出力損失よりも小さいことが分かる。さらに、空気密度が低い敷地で定格速度を上げることによって、空気密度によって引き起こされる先端速度比の低下に対抗するように準備される。
【0048】
本発明によれば、今、一例として
図2に示されているように、比較的低い空気密度ρ
Aを有する敷地に合致した設計である、渦発生器118の配置の設計を考慮することが提案される。風力発電所100
Aの敷地で決定された空気密度ρ
Aに応じてロータブレード108の中央部の拡張領域にわたって装着された渦発生器118は、中央部での流れの分離を防止し、その結果、ブレード設定角γの上昇を減少させるか、あるいは完全になくすことが可能であり、これは、風力発電所100によるより大きい全体的な生産量につながり得る。
【0049】
図2は、ロータブレード前縁110とロータブレード後縁112を有する単一のロータブレード108の斜視図である。ロータブレード108は、ロータブレード根元114とロータブレード先端116を有する。ロータブレード根元114とロータブレード先端116との間の距離は、ロータブレード108の外径Rと呼ばれる。ロータブレード前縁110とロータブレード後縁112との間の距離は、プロファイル深さTと呼ばれる。ロータブレード根元114において、または、一般的に、ロータブレード根元114に近い領域において、ロータブレード108は、大きなプロファイル深さTを有する。対照的に、ロータブレード先端116において、プロファイル深さTは、非常に小さい。プロファイル深さTは、ロータブレード根元114から始まって、この例では、ブレード内側領域での増加の後、中間領域まで大きく減少する。中間領域には、分離点(ここでは図示せず)が設けられてもよい。中間領域からロータブレード先端116までは、プロファイル深さTはほぼ一定であるか、またはプロファイル深さTの減少が著しく抑えられる。
【0050】
図2の説明図では、ロータブレード108の吸引側を示している。渦発生器118は、吸引側に配置されている。流れに影響を与えるための能動的または受動的な要素としての渦発生器118の代替的な改良が考えられる。図示された例の渦発生器118がロータブレード108の吸引側に配置されていることが示されているのに対し、本発明による配置を伴うロータブレード108の圧力側の渦発生器118は、代替として、或いは追加として可能である。渦発生器118の配置は、ロータブレード前縁110の領域で行われるか、或いは、ロータブレード前縁110とロータブレード後縁との間の別の位置で行われもよい。渦発生器118の配置の範囲は、ロータブレード根元114の領域で始まり、ロータブレード先端116の方向に走る。
【0051】
ロータ106に関して、渦発生器118は、ロータブレード108上の位置PAまたはPBまで半径方向に延びている。この場合、ロータブレード108上のそれぞれの位置PAまたはPBは、正規化された半径r/Rに関する半径位置として規定される。正規化された半径r/Rに関する半径位置は、ロータ108の外径Rまたはロータブレード長さに対するそれぞれの位置PA,PBの半径ra,rbとして、ロータブレード長手方向に沿ったロータブレード108上の位置を表す。その結果、半径位置としてのロータブレード108上の相対位置PAまたはPBは、0(零)から1(一)までの範囲の値で示すことができる。
【0052】
図3は、以下の表に記載されている4つの例示的な異なる運転状況(事例1~事例4)について、半径位置r/Rにわたるロータブレード108の迎え角αについて、定格出力の領域の出力での異なる曲線120(事例1)、122(事例2)、124(事例3)、126(事例4)を例示的に示している。運転状況の事例1~事例は、空気密度ρ
A,ρ
Bの値と、渦発生器118のロータブレード108への配置の位置P
A,P
Bの値と、運転のために選択されたブレード設定角特性曲線P
ρA,P
ρBと、の点で互いに異なる。
【0053】
【0054】
事例1は、空気密度ρBに基づいており、例えば、標準空気密度ρB=1.225kg/m3である。この空気密度の場合、位置PBまで配置された渦発生器のおかげで、風力発電所は、ロータブレードに沿って発生する失速なしに、好ましいブレード設定角特性曲線PρBで運転することができる。
【0055】
そして、事例2~4は、空気密度ρBよりも低い空気密度ρAに基づいている。
【0056】
事例2では、事例1の構成が採用されている。即ち、他の点で同じ運転パラメータがより低い空気密度での運転に使用されている。ここでは不利な失速が発生している。
【0057】
このような失速に対して、事例3ではブレード設定角特性曲線PρAを伴うため失速は発生しないが、ブレード設定角特性曲線PρBを伴う事例2と同様に、全体的に生産量の大きな損失が発生する。
【0058】
事例4は、本発明による解決策を説明したもので、PAまでの渦発生器の変化により、低い空気密度ρAにもかかわらず、失速することなく、好ましいブレード設定角特性曲線PρBでのより信頼性の高い運転が可能となっている。代替例として、ブレード設定角特性曲線PρA,PρBの間にあるブレード設定角特性曲線を使用してもよい。
【0059】
具体的には、
図3には、一例として、4つの運転状況の事例1~事例4について、半径位置r/Rに対する風力発電所100の定格出力に近い出力、例えば定格出力の95%における迎え角αの様々な曲線120,122,124,126が示されている。曲線120は、事例1に対して確立される。曲線122は、事例2に対して確立される。曲線124は、事例3に対して確立される。曲線126は、事例4に対して確立される。
【0060】
さらに、最大許容迎え角αA、αB、α0または失速角を破線で図示している。最大許容迎え角α0は、ロータブレード108に渦発生器118が配置されていない場合に確立される。最大許容迎え角αBは、ロータブレード108上の位置PBまでの渦発生器118の配置が提供されるときに確立され、これは、図示された例示的な実施形態において約0.55の半径位置r/Rに対応する。最大許容迎え角αAは、ロータブレード108上の位置PAまでの渦発生器118の配置が提供されるときに確立され、これは、約0.71の半径位置r/Rに対応する。
【0061】
約0.71または0.55の半径位置r/Rでの最大許容迎え角αA,αBの突然の増加と、ブレードの根元114の方向に急激に上昇した許容迎え角αA,αBは、装着されている渦発生器118によって引き起こされる。渦発生器118のロータブレード108への配置によって、流れの分離を大幅に増加した迎え角αA,αBに切り替え、したがって、かなり拡張された迎え角の範囲で翼を運転させることができる。
【0062】
0.71または0.55以下の半径位置r/Rまで渦発生器118を使用しなければ、この半径範囲に到達するまでの最大許容迎え角α
A、α
Bは著しく低下し、これは
図3に最大許容迎え角α
0の線で示されている。このロータブレードの範囲の空気密度ρ
Bで発生する迎え角αは、線120で示される事例1ではすでに、最大許容迎え角α
0をオーバーシュートし、したがって渦発生器118がない場合に失速につながることが明らかである。
【0063】
事例2で想定されているように、風力発電所100およびそれぞれのロータブレード108が低減された空気密度ρ
Aで運転される場合、さらなる対策を講じることなく、
図3の線122によって例示されるような迎え角曲線を確立することができる。事例2では、最大許容迎え角α
Bは、半径位置0.55<r/R<0.78の間でオーバーシュートしており、そこでは出力を低下させる流れの分離が発生している。事例2では、ブレード先端116の方向の位置P
Bから始まる最大許容迎え角α
Bのオーバーシュートが典型的に発生する。これは、空気密度の低下によって引き起こされる迎え角の増加が、ブレード先端116からブレード根元114に向かって増加するためであり、すなわち、翼部がロータブレード108上で半径方向内側に位置するほど、翼部が経験する迎え角の増加が大きくなるためである。換言すると、最大許容迎え角α
Bのオーバーシュートは、ブレード先端116の方向に向かって減少し、迎え角がオーバーシュートする危険性が最も高いのは、位置P
Bである。
【0064】
この関係は、
図4の説明によって明らかになる。
図4は、4つの異なる運転状況事例1~事例4の揚抗比の例示的な曲線128,130,132,134を示している。曲線128は、事例1に対して確立されている。曲線130は、事例2に対して確立されている。曲線132は、事例3に対して確立されている。曲線134は、事例4に対して確立されている。
【0065】
事例1については、第一に、半径位置r/R<0.55までの曲線128による揚抗比は小さく、この半径位置r/Rから始まって急に上昇し、ロータブレード先端116まで外側に向かって、より高い半径位置r/R>0.55まで増加することが分かる。曲線128の揚抗比の値が低いのは、一般的に抗力係数の増加をもたらす渦発生器118の配置によるものである。
【0066】
事例2から4における揚抗比の曲線130、132、134は、約0.55の半径位置r/Rまでは、曲線128と実質的に質的に類似している。事例2の場合、曲線130を参照すると、揚抗比は、事例2で渦発生器118が配置される上限の半径位置r/R=0.55で提供される位置PBから始まって低いレベルまで著しく低下し、このことは、そこで発生する流れの分離に関連していることが分かる。一例として示される事例2では、流れの分離は、ロータブレード108の半径方向の中央領域に限定されており、そのため、事例2では、外側領域r/R>0.8は、ロータブレード領域の周りに分離のない流れがあるレベルに落ち着いている。
【0067】
ロータブレード108上での流れの分離という望ましくない現象を回避するために、迎え角α
Bのオーバーシュートは、従来技術によれば、風力発電所100が、迎え角α
Bのオーバーシュートが予想される風速または出力からブレード設定角γを増加させることによって対策が講じられる。そのため、例えば、空気密度ρ
Aに特性のあるブレード設定角γ、すなわちブレード設定角特性曲線P
ρAが選択される。ブレード設定角の増加は、ロータ半径R全体にわたってロータブレード108の迎え角αの減少をもたらし、その結果、迎え角αは、以前にクリティカルであったロータブレード領域において再び許容範囲に入り、これは、事例3についての
図3の曲線124によって示される。
【0068】
しかしながら、この手順には、ロータブレード108のブレード設定角γを増加させる、いわゆるピッチングの結果として、ロータブレード108の外側領域、すなわち、典型的に流れの分離のリスクがない領域においても、迎え角αが減少するという欠点がある。したがって、ピッチングのために、迎え角の減少は、風力発電所100の出力損失に直接つながる可能性がある。
【0069】
したがって、それぞれのロータブレード108への長手方向の渦発生器118の配置は、敷地で決定された風力発電所100の空気密度ρAまたはρBに応じて決定される半径位置r/Rまで行われることが提案される。その結果、空気密度の変化を補償するためのピッチングに起因する風力発電所100の出力損失の記述された欠点を特に低減することができる。
【0070】
既に、さらに上述したように、迎え角の最大の増加は、比較的低い空気密度ρAでの風力発電所100の運転中に、ロータブレード108の中央部分で生じる。これは、特に、既に装着されている渦発生器118の位置PBに半径方向に隣接する半径位置において当てはまる。これに対抗するために、比較的低い空気密度ρAを有する敷地での風力発電所100の運転の場合に、ロータブレード108への渦発生器118のロータブレード108の配置を、位置PBを半径方向に越えて位置PAまで拡張することが提案される。その結果、ロータブレードの中央部、特に位置PBと位置PAとの間での流れの分離のリスクに対して対策が講じられる。
【0071】
本発明による更なる態様は、ロータブレード108上の渦発生器118の拡張された配置または装着の間に、比較的低い空気密度ρ
Aを有する敷地でブレード設定角γが低減されるように、比較的低い空気密度ρ
Aを有する敷地でブレード設定角γの制御を調整することである。この制御による例示的な手順についての迎え角曲線は、
図3に動作状況の事例4の線126で示されている。位置P
Bを超えてそれぞれのロータブレード108に渦発生器118が配置されているために、最大許容迎え角α
Aは、半径位置0.55<r/R<0.71の間で増加する。したがって、許容範囲内にある迎え角αは、風力発電所100の運転中に、このロータブレードの部分、すなわち半径位置0.55<r/R<0.71の間で確立される。さらに、線124で示される事例3と比較して、ロータブレード108全体の迎え角αが上昇していることが明らかであり、これにより、ロータブレードの外側部分を中心とした電力引き込み量の増加による、風力発電所100による生産量の向上がもたらされる。ピッチモータは、制御システム200によって駆動される。
【0072】
ロータブレード108への渦発生器118の配置は、さらに上述したように、揚抗比の減少を伴う。
図4の例示を参照して、渦発生器118の配置による揚抗比の低減の問題を、事例4の動作状況について説明する。位置P
Aの半径位置r/R=0.71まで渦発生器118の配置を拡張する仕方では、この位置までの揚抗比は、動作状況事例1および事例3の場合よりも低いレベルに留まる。しかし、適切な設計により、ロータブレード108の外側領域、すなわち半径位置r/R>0.71の位置では、再びより多くの出力が発生し、これは、その後に確立される生産量の増加に関連する。
【0073】
ロータブレード108の外側領域での発電量の増加によるこの生産量の増加は、
図5に例として示されている。
図5は、一例として、動作状況の事例1、事例3、事例4に対する異なる出力曲線136、138、140を示している。出力曲線136は事例1で確立され、出力曲線138は事例3で確立され、出力曲線140は事例4で確立される。
【0074】
異なる空気密度ρAおよびρBで風力発電所100を運転する点のみ異なる事例1および事例3の運転状況を最初に比較することによって、相対的に高い空気密度ρBから相対的に低い空気密度ρAへの切り替えが行われたときに、出力曲線136が出力曲線138に低下することを判断することができる。事例3の出力曲線138に対する事例1の出力曲線136のこの急激な低下は、密度の低下およびそれに関連したそれぞれのロータブレード108の周りの分離のない流れを確実にするためのブレード設定角γの増加による結果である。事例4については、風力発電所100による増加した電力引き込みが、風速v’および出力P’から始まって確立される。この出力P’に到達すると、事例4によれば、風力発電所100の敷地で決定された空気密度ρAに応じた位置PAまでのそれぞれのロータブレード108への渦発生器118の配置とともに、ブレード設定角γの制御が、事例3でブレード設定角γの制御の基準として使用されたブレード設定角の値と比較して低減されたブレード設定角の値に基づいて行われる。定格出力Pratedに到達するまで増加するこの電力引き込みは、事例4では、位置PBを超えた位置PAまでの渦発生器118の追加の配置領域における増加した抗力を補償することができるように、生産量の増加をもたらす。
【0075】
図6は、一例として、2つの異なる運転状況に対する2つのブレード設定角特性曲線142,144を示している。ブレード設定角特性曲線142は、ブレード設定角γを制御する事例3の運転状況に基づくものである。ブレード設定角特性曲線144は、制御装置200によってブレード設定角γを制御する事例4の運転状況に基づくものである。曲線142,144から分かるように、事例4の風力発電所100は、正規化された出力P’/P
ratedに達したときに、ブレード設定角γの増加量を事例3で可能であるよりも小さくして運転することができる。
【0076】
事例3では、ロータブレード108への渦発生器118の敷地に依存しない位置PBまでの配置を有する正規化された出力P’/Pratedから始まり、風力発電所100の敷地を覆う比較的低い空気密度ρAは、大きなブレード設定角γを有するピッチングによって打ち消される。しかし、事例4では、ロータブレード108への渦発生器118の敷地に応じた位置PAまでの配置を伴い、正規化された出力P’/Pratedから始まり、より小さいブレード設定角γでのピッチングが可能になり、その結果、迎え角の減少がより小さくなることが判明した。
【0077】
さらなる態様では、1つの風力発電所のタイプの運転管理のために、敷地に応じた定格出力Pratedが提供されることを考慮する。この場合、定格速度を上げることで定格出力Pratedを上げることができる。同じ出力であれば、定格速度が比較的高いと、定格出力Pratedの領域で先端速度比が比較的高くなり、その結果、迎え角αが小さくなる。これにより、流れの分離の危険性が低減される。
【0078】
その結果、半径方向の渦発生器の取り付けを減らすことができ、騒音の低減や出力の向上につながる。したがって、様々な定格出力Pratedで運転される1つの発電所タイプの風力発電所100のロータブレード108にも、定格出力Pratedまたは定格ロータ速度が低いほど渦発生器118が外側に装着されるように、半径方向の異なる位置PA、PBまで渦発生器118を配置するようにするのが有利である。
【0079】
定格出力Pratedまたは定格ロータ速度の代わりに、またはそれに加えて、渦発生器118の配置を調整するために使用されるさらに適切な基準変数は、したがって、風力発電所100の先端速度比である。ロータ速度が一定で出力が相対的に低い場合、これは相対的に高い先端速度比をもたらし、この相対的に高い先端速度比に基づいて、ロータブレード108に渦発生器118が配置される上限の半径位置r/Rが減少する、すなわち、ロータブレード根元114の近くに移動される。したがって、半径位置r/Rは、低下するロータ速度および一定の出力を伴って増加してもよく、すなわちロータブレード先端116に近づけることができる。
【0080】
ロータ速度と出力の両方が下がった場合、先端速度比が最終的に下がるか上がるかは比率によって決まる。先端速度比が下がるか上がるかの問題は、より正確な情報がなければ明らかにならない。先端速度比が最終的に下がるか上がるかは、好ましくは、ロータブレードに渦発生器が配置される上限の半径位置r/Rを決定するために使用することができる。
【0081】
ロータブレード108への渦発生器118の配置は、任意選択で、風力発電所100の敷地で設定される騒音レベルに応じて追加で行うことも可能である。例えば、ロータ速度と、ロータブレードのブレード設定角と、およびそれぞれのロータブレードの長手方向における渦発生器の配置が行われる上限の半径位置と、に応じた生産量または別のパラメータは、境界条件が満たされるまで、空気密度および風力発電所の敷地で設定される雑音レベルに応じて、互いに関連して反復的に最適化することができる。境界条件は、例えば、連続する2つの反復ステップで確立された生産量の差分が、予め指定された限界値よりも低いことであってもよい。これにより、空気密度だけでなく、風力発電所の敷地内で必要とされる騒音レベルも考慮して、最大の生産量を達成することができる。
【国際調査報告】