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特表2022-533629マルチチャネルFCR:電力網および電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】マルチチャネルFCR:電力網および電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20220715BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568344
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2020060402
(87)【国際公開番号】W WO2020229072
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】19174037.2
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521497121
【氏名又は名称】トリメット アルミニウム エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ハウック,ヘリベルト
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE09
5G066HB08
5G066HB09
5G066JB02
5G066JB03
5G066JB04
(57)【要約】
本発明は、公称ネットワーク周波数からネットワーク周波数の周波数逸脱が生じた際に、公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を提供するシステムおよび方法に関する。周波数偏差の時間曲線は、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲にスペクトル分割される。各スペクトル範囲は、制御パワーを提供するため、少なくとも2つの異なる技術ユニットの1つに割り当てられる。次に、周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割に従って、技術ユニットにより、必要な制御電力が個別に、または共同で提供される。制御電力における各技術ユニットのそれぞれの電力シェアは、対応する技術ユニットに割り当てられたスペクトル範囲の周波数偏差の時間曲線におけるスペクトルシェアに対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公称ネットワーク周波数からのネットワーク周波数偏差の事象の際に、前記公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給する方法であって、
前記周波数偏差の時間曲線は、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲にスペクトル的に分割され、
前記スペクトル範囲の各々は、制御電力を提供する少なくとも2つの異なる技術ユニットの1つに割り当てられ、
必要な制御電力は、前記周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割に応じて、前記技術ユニットにより、個々にまたは一緒に提供され、
前記制御電力における各技術ユニットのそれぞれの電力シェアは、対応する技術ユニットに割り当てられたスペクトル範囲の、前記周波数偏差の時間曲線における前記スペクトルシェアに対応する、方法。
【請求項2】
前記周波数偏差の時間曲線は、
ハイパスシェアと残留シェアに分割され、または
ローパスシェアと残留シェアに分割され、または
ハイパスシェアとローパスシェアに分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの技術ユニットにおいて、
第1の技術ユニットは、第1のスペクトル範囲に割り当てられ、第1の反応速度および第1のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、
第2の技術ユニットは、第2のスペクトル範囲に割り当てられ、第2の反応速度および第2のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、
前記第1のスペクトル範囲は、前記第2のスペクトル範囲よりも遅い周波数偏差をカバーし、
前記第1の技術ユニットは、前記第2の技術ユニットよりも低い反応速度、および高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御電力は、前記電力網の一次制御のために提供される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
公称ネットワーク周波数からのネットワーク周波数偏差の事象の際に、前記公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給するシステムであって、
当該システムは、制御電力を提供する少なくとも2つの異なる技術ユニットを有し、
当該システムは、制御器を有し、該制御器は、制御電力のそれぞれの電力シェアを提供するため、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲への周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割に基づいて、前記技術ユニットを動作するように構成され、
前記技術ユニットの電力シェアは、組み合わされて制御電力を形成する、システム。
【請求項6】
前記制御器は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも2つの技術ユニットにおいて、
第1の技術ユニットは、第1の反応速度および第1のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、
第2の技術ユニットは、第2の反応速度および第2のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、
前記第1の技術ユニットは、前記第2の技術ユニットよりも低い反応速度、および高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、
特に、前記第1の技術ユニットは、例えばアルミニウム電解プロセスのような手続きプロセスであり、
特に、前記第2の技術ユニットは、スーパーキャパシタ、フライホイールエネルギー貯蔵器、またはバッテリである、請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
公称ネットワーク周波数、および周波数偏差により前記公称ネットワーク周波数から逸脱したネットワーク周波数を有する電力網であって、
当該電力網は、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のシステムに動作可能に接続される、電力網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を提供する方法に関する。この方法では、公称ネットワーク周波数からネットワーク周波数の周波数逸脱が生じた際に、公称ネットワーク周波数で動作が行われる。
【0002】
本願は、さらに、電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給するシステムに関する。このシステムでは、公称ネットワーク周波数からネットワーク周波数の周波数逸脱が生じた際に、公称ネットワーク周波数で動作が行われる。システムは、制御電力を供給する少なくとも2つの異なる技術ユニットを有する。
【0003】
最後に、本願は、公称ネットワーク周波数、および周波数偏差によりそれから逸脱したネットワーク周波数を有する電力網に関する。
【背景技術】
【0004】
「リザーブ電力」としても知られる制御電力は、電力網における電力需要および電力供給に相応の変動があっても、民間および産業上の電力消費者に必要な電力量が正確に供給されることを保証する。この目的のため、短期的には、制御可能な発電所での電力調整が可能であり、高速起動発電所(例えば、ガスタービン発電所)の立ち上げ、または揚水発電所の設置が可能である。また、特に、産業用電力消費者は、負荷制御を使用して、ネットワークから引き出される電力を抑制したり、完全に停止したりすることができる。
【0005】
従って、制御電力は、電力網へのフィードインと電力網からのフィードアウトとの間の差に等しい。このプロセスにおいて、必要な制御電力は、電力網全体の標準的なネットワーク周波数に基づいて決定される。電力網は、公称ネットワーク周波数に基づいて機能する。例えば、ヨーロッパでは50Hzであり、これは、ネットワーク周波数の設定値を構成する。引き出される電力よりも多くの電力が電力網に供給されると、電力網は、いかなるエネルギーも貯蔵できないため、ネットワーク周波数は増加する。逆の状況、すなわちフィードインよりも高いフィードアウトまたは電力引き出しの場合、ネットワーク周波数は低下する。本願では、実際のネットワーク周波数と公称ネットワーク周波数との間の差異を周波数偏差と称する。
【0006】
このような背景から、ネットワーク事業者は、伝送ネットワークを高信頼性で運用する義務の一環として、様々な制御電力製品を調達する。これらの製品の中で最も洗練されたものは、いわゆる「周波数制御予備力」(FCR)である。この制御エネルギー製品では、絶えずネットワーク周波数を特定の許容限界内に維持することを確実に行える。
【0007】
例えば、ヨーロッパでは、周波数制御予備力は、上方変動または下方変動にかかわらず、公称ネットワーク周波数50.0Hzから最大200mHzまで、すなわち49.8Hzと50.2Hzの間の周波数における周波数偏差の事象の際、30秒以内に提供される必要がある。このプロセスでは、状況によっては、10mHz未満の極めて小さな偏差、すなわちネットワーク周波数が49.99Hzから50.01Hzの間の場合、偏差は修正されない。
【0008】
周波数制御予備力を提供する1つの問題は、ネットワーク周波数が公称ネットワーク周波数に対して変化する速度が比較的高速であることである。周波数偏差の全ての変化を追跡することは、制御電力を提供するように意図された技術ユニットにおいて、極めて高い要求である。特に、産業用電力消費者がネットワーク周波数の早い変化速度に合わせて手続きプロセスを調整しなければならない場合、産業用電力消費者は、効率の大きな低下を登録しなければならない。
【0009】
従って、周波数制御予備力を単独で、要件に合致する方法で提供することは、しばしば、単一の技術ユニット(例えば、発電所、産業施設などの産業用電力消費者の手続きプロセス)にとって容易ではなく、経済的にも魅力がない。
【0010】
急激な変化速度を緩和するため、いわゆる「合成周波数制御予備力」を提供する概念がある。最もよく知られている方法は、制御帯域を分割する方法であり、例えば、+/-200mHzの制御帯域を、複数のサブバンド、例えば、+/-100mHzの対称コア帯域、すなわち49.9Hzから50.1Hzに分割し、2つのサイドバンド、+/-(100-200m)Hzの各々、すなわち、49.8Hzから49.9Hz、および50.1Hzから50.2Hzに分割することである。これらは、異なる供給業者によって提供され、必要とされる全生成を形成するため集積者によって「合成」される。また、この種の生成物は、「合成FCR」と称される。例えば、欧州特許第3136532A1号には、この種の合成周波数制御予備力のシステムおよび方法が記載されている。この文献では、制御電力の大部分がコア帯域で発生する一方、大きな制御電力は、サイドバンドでの周波数要求が少なく、高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有する技術ユニットの負担が軽減されるという考え方が用いられる。
【0011】
しかしながら、サイドバンドにおいても、すなわち公称ネットワーク周波数から離れたネットワーク周波数でも、周波数偏差は、高速で変化する。その結果、実際には、サイドバンドを担う技術ユニットは、従来技術から知られている方法では、あまり使用されず、それらが使用される場合、それらの効率は、電力網から引き出される電力の高変化速度により、再度、深刻な影響を受ける。
【0012】
従って、ネットワーク周波数が公称ネットワーク周波数に対して変化する比較的高速の問題が残り、周波数制御予備力に寄与するため、ネットワーク周波数の高速変化に従って、産業用電力消費者が手続きプロセスを調整すべき際に、関連する大きな効率低下が生じる。
【0013】
米国特許第2013/0321040 A1号には、負荷信号を使用して、周波数調整を提供する方法およびシステムが開示されている。
【0014】
独国第102012113051A1号および独国102011055231A1号は、エネルギー貯蔵装置を有する、AC電力網を安定化する制御電力を提供する方法に関する。
【0015】
国際公開WO2014/208292A1には、電力安定化のためのシステム、および周波数偏差を補償するための対応する制御装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような背景に鑑み、本発明の目的は、前述の技術分野における制御電力を提供する方法、およびシステムを提供することである。その結果、産業用電力消費者は、より効率的な方法で、電力網の周波数制御、特に一次制御を使用することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1に記載の方法および請求項5に記載のシステムにより達成される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0018】
公称ネットワーク周波数からのネットワーク周波数偏差の事象の際に、前記公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給する方法において、前記周波数偏差の時間曲線は、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲にスペクトル的に分割され、前記スペクトル範囲の各々は、制御電力を提供する少なくとも2つの異なる技術ユニットの1つに割り当てられる。必要な制御電力は、前記周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割に応じて、個々に提供され、または前記技術ユニットにより一緒に提供され、前記制御電力における各技術ユニットのそれぞれの電力シェアは、対応する技術ユニットに割り当てられたスペクトル範囲の、周波数偏差の時間曲線における前記スペクトルシェアに対応する。
【0019】
換言すれば、周波数偏差が変化する速度、すなわち増加または減少する速度を用いて、適切な技術ユニットが選択され、制御が効率的に実行されるように、対応する制御電力が提供される。具体的には、この方法では、周波数偏差は、ゆっくりと変化するシェアと急速に変化するシェアとに分割される。ゆっくりと変化するシェアは、急速に変化するシェアに比べて大きな振幅を有し、すなわち補正により多くの制御パワーを必要とする一方、急速に変化するシェアは、ゆっくりと変化するシェアに比べて小さな振幅を有し、すなわちより小さな制御パワーにより補正され得る。
【0020】
本発明では、周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割による制御電力の分割により、急速に変化する制御電力を提供するため、大規模な手続きプロセスに関して、小さなエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有する技術ユニットを、目標とした方法で選択することが可能になる。例えば、これらには、スーパーキャパシタ(スーパーキャップ)、フライホイールエネルギー貯蔵またはバッテリが含まれる。
【0021】
有意な結果として、周波数偏差における電力集中シェアは、ゆっくりと作用する技術ユニット、例えば、ゆっくりとしか変化しない工業施設、発電所等における手続きプロセスにより、補正できる。制御パワーにおける急速に変化するシェアの分離により、遅く作動する技術ユニットによって提供されるパワーシェアの変化の速度は、従来よりも低く維持することができる。その結果、制御電力は、全体として、従来よりも効率的に提供できる。なぜなら、いったん、急速に変化する周波数偏差が、補正され、あるいは迅速に作動する技術ユニットにより少なくとも緩和されると、遅く作動する技術ユニットでは、周波数偏差の全ての変化を追跡する必要がないためである。従って、迅速な技術ユニットと遅い動作の技術ユニットの合計により、周波数偏差が極値、例えば100mHzを超える場合であっても、必要な制御電力を全体としてより効率的に利用できるようになる。
【0022】
好ましくは、周波数偏差の時間曲線は、ハイパスシェアと残留シェアとに分割され、あるいはローパスシェアと残留シェアとに分割され、あるいはハイパスシェアとローパスシェアとに分割される。
【0023】
従って、周波数偏差の時間曲線をスペクトル的に分割する際、アナログまたはデジタルハイパスフィルタは、高い変化速度(ハイパスシェア)をフィルタ除去して、制御電力の対応する電力シェアを、比較的迅速な技術ユニットに割り当てることができる。一方、制御電力の周波数偏差の残り(残留シェア)に対応する電力シェアは、ゆっくり作動する技術ユニットに割り当てられる。
【0024】
同様に、周波数偏差の時間曲線をスペクトル的に分割する際、アナログまたはデジタルローパスフィルタは、低い変化速度(ローパスシェア)をフィルタ除去して、制御電力の対応する電力シェアを、比較的遅く作動する技術ユニットに割り当てることができる。一方、制御電力の周波数偏差の残り(残留シェア)に対応する電力シェアは、迅速な技術ユニットに割り当てられる。
【0025】
同様に、周波数偏差の時間曲線をスペクトル的に分割する際、アナログまたはデジタルハイパスフィルタは、高い変化速度(ハイパスシェア)をフィルタ除去して、制御電力の対応する電力シェアを、比較的迅速な技術ユニットに割り当てることができる。一方、アナログまたはデジタルローパスフィルタは、低い変化速度(ローパスシェア)をフィルタ除去して、制御電力の対応する電力シェアを、ゆっくりと作動する技術ユニットに割り当てることができる。その後、制御電力の周波数偏差の任意の残りの部分(残留シェア)に対応する電力シェアは、その速度に関して、迅速に作動する技術ユニットとゆっくりと作動する技術ユニットとの間に分類される別の技術ユニットに割り当てられる。また、必ずしも必要ではないが、可能な場合、前記技術ユニットの間に分類できるエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有してもよい。
【0026】
次に、周波数偏差の時間曲線の定められた値は、例えば、アルゴリズムまたは周波数依存回路(等価回路の文脈において)により、閾値を上回るか下回るかが評価され、従って、閾値を上回るスペクトル範囲または閾値を下回るスペクトル範囲に割り当てられる。
【0027】
少なくとも2つの技術ユニットのうち、第1のスペクトル範囲に割り当てられた第1の技術ユニットは、第1の反応速度および第1のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有し、第2のスペクトル範囲に割り当てられた第2の技術ユニットは、第2の反応速度および第2のエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有する。本方法において、第1のスペクトル範囲は、第2のスペクトル範囲よりも遅い周波数偏差をカバーし、第1の技術ユニットは、第2の技術ユニットよりも低い反応速度、および高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有する。
【0028】
あるいは、第2の技術ユニットが、第1の技術ユニットよりも高い反応速度、および高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有することも可能である。好適実施形態を使用することにより、制御電力を提供する方法は、特に効率的となる。なぜなら、第2の技術ユニットの高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量のコストは、代替として記載された実施形態と同程度には負荷されないからである。
【0029】
好ましくは、制御電力は、電力網の一次制御用に提供される。これは、制御電力が、例えば30秒以内で、その全体が迅速に利用可能となり、例えば最大200mHzで、例えば50Hzの公称ネットワーク周波数の周りで、例えば、10mHzのデッドゾーンまたはデッドバンドを超えて、第1の周波数偏差を補正できることを意図することを意味する。
【0030】
特に好ましい実施形態の方法は、基本的に、設定点の形態で制御の基礎として採用される周波数偏差信号を含み、これは、双方向または多方向ラウドスピーカシステムのダイプレクサと同様、時間曲線のスペクトル分割により、少なくともハイパスシェアとローパスまたは残留シェアとに分割され、異なる技術ユニットの分割周波数シェアは、特定の制御エネルギーシェアを形成する設定点として処理される。その後、2または3以上の制御エネルギー寄与の合計は、ネットワークオペレータに要求される完全な制御電力となり、特に周波数制御予備力となる。
【0031】
公称ネットワーク周波数からのネットワーク周波数偏差の事象の際に、前記公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数を制御するため、制御電力を供給するシステムにおいて、当該システムは、制御電力のそれぞれの電力シェアを提供するため、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲への、周波数偏差の時間曲線のスペクトル分割に基づいて、技術ユニットを動作するように構成された制御器を有し、前記技術ユニットの電力シェアは、組み合わされて制御電力を形成する。制御器は、プロセッサを有することが好ましく、これは、少なくとも2つの異なるスペクトル範囲への周波数偏差のスペクトル分割に基づいて、そのような方法で技術ユニットが作動されるように調整され、制御電力のそれぞれの電力シェアが提供され、技術ユニットの電力シェアは、結合して制御電力を形成する。
【0032】
ある実施形態では、制御器またはプロセッサは、前述の方法を実施するように構成されることが好ましい。あるいは、制御器は、技術ユニットを作動させるため、他の方法ステップを実行してもよい。例えば、制御器自体により周波数偏差の時間曲線をスペクトル的に分割することは、厳密には必要ではなく、むしろ、それに応じて調製された信号が、異なるサイトにおいて形成されてもよい。
【0033】
好ましくは、第1の技術ユニットは、工業プラントの手続きプロセス、例えばアルミニウム電解プロセスである。また、これは、電力網に接続された発電所または別の要素であり、その時間ダイナミクスの点で比較的遅く、好ましくは比較的高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有してもよい。第2の技術ユニットは、好ましくは、スーパーキャパシタ、フライホイールエネルギー貯蔵装置もしくはバッテリ、または電力網に接続され、その時間ダイナミクスに関して比較的速く、好ましくは比較的低いエネルギーシフト容量もしくは貯蔵容量を有する別の要素であってもよい。これらの技術ユニットは、ネットワーク周波数の特に効率的な制御を可能にする。
【0034】
公称ネットワーク周波数、および周波数偏差によりそれから逸脱したネットワーク周波数を有する電力網は、前述のシステムに動作可能に接続される。
【0035】
本発明のさらなる利点および発展は、以下の図面の記載および全ての特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1の好ましい実施形態に係るシステムのブロック図である。
図2】第2の好ましい実施形態に係るシステムのブロック図である。
図3】ネットワーク周波数の時間曲線の例を示した図である。
図4】周波数偏差の時間曲線の例を示した図である。
図5図4からの周波数偏差の時間曲線の例の高周波数スペクトル範囲を示した図である。
図6図4からの周波数偏差の時間曲線の例の低周波数スペクトル範囲を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、第1の好ましい実施の形態によるシステムのブロック図である。図1に示すシステムでは、公称ネットワーク周波数で動作する電力網のネットワーク周波数fnetworkが供給され、周波数偏差△fnetworkが連続的に検出される。その結果、周波数偏差△fnetworkの時間曲線を求めることができる。
【0038】
ハイパスフィルタおよびローパスフィルタの配置により、前記配置は、連続的に検出される周波数偏差△fnetworkを供給し、周波数偏差△fnetworkは、2つの異なるスペクトル範囲にスペクトル分割される。従って、ハイパスフィルタにより、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の高周波数スペクトル範囲△fHFが生じ、一方、ローパスフィルタにより、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の低周波数スペクトル範囲△fLFが生じる。
【0039】
ここに示す実施形態では、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタは、これらが相互にシームレスに隣接し、結合して、周波数偏差△fnetworkを形成するように構成される。あるいは、図1に示す実施形態に代えて、周波数偏差△fnetworkをさらに多くのスペクトル範囲に分割するため、1または2以上の別のフィルタを提供することも可能である。
【0040】
周波数偏差△fnetworkの時間曲線の高周波数スペクトル範囲△fHFは、ハイパスフィルタにより第2の技術ユニットに供給され、従って、高周波数スペクトル範囲△fHFに割り当てられ、前記第2の技術ユニットは、システムにより提供される全制御電力における電力シェアを提供する。これは、高周波数スペクトル範囲△fHFに対応する。このプロセスでは、第2の技術ユニットは、周波数偏差△fnetworkの高周波数スペクトルシェアに応じて、全制御電力におけるその電力シェアを効果的かつ効率的に提供できるようにするため、これが高い反応速度を有するように選択されることが好ましい。例えば、第2の技術ユニットは、スーパーキャパシタ、フライホイールエネルギー貯蔵またはバッテリであってもよい。
【0041】
同様に、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の低周波数スペクトル範囲△fLFは、ローパスフィルタにより、第1の技術ユニットに供給され、この第1の技術ユニットは、低周波数スペクトル範囲△fLFに割り当てられ、前記第1の技術ユニットは、システムにより提供される全制御電力における電力シェアを提供する。これは、低周波数スペクトル範囲△fLFに対応する。このプロセスでは、第1の技術ユニットは、以下のグラフに示すように、これが周波数偏差△fnetworkの低周波数スペクトルシェアの高い振幅に応じて、全制御電力におけるその電力シェアを効果的かつ効率的に提供することを可能にするため、高いエネルギーシフト容量または貯蔵容量を有するように選択されることが好ましい。例えば、第1の技術ユニットは、アルミニウム電解プロセスのような手続きプロセス、または発電所であってもよい。
【0042】
第1および第2の技術ユニットの電力シェアは、電力網の公称ネットワーク周波数にできるだけ近いネットワーク周波数を維持するため、相互に制御電力として、好ましくは周波数制御予備力として、電力網に供給される。
【0043】
図2は、第2の好ましい実施形態によるシステムのブロック図である。第2の好ましい実施形態によるシステムの基本構成は、第1の好ましい実施の形態と同様であり、説明の繰り返しは提供されない。
【0044】
図1の第1の好適実施形態とは異なり、図2のシステムは、ローパスフィルタを含まず、ハイパスフィルタのみを含む。第1の好適実施形態と同様、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の高周波数スペクトル範囲△fHFは、ハイパスフィルタにより生成される。全制御電力の供給を可能にするため、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の高周波数スペクトル範囲△fHFに加えて、周波数偏差△fnetworkから高周波数スペクトル範囲△fHFを差し引くことにより、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の残留シェアが求められる。従って、第1の好適実施形態では、残りの残留シェアは、ローパスフィルタにより定められた低周波数スペクトル範囲△fLFに正確に対応するが、ローパスフィルタの使用は要求されない。
【0045】
また、逆の手順も可能であり、図1に示した実施例のハイパスフィルタを省略して、周波数偏差△fnetworkから低周波数スペクトル範囲△fLFを差し引くことにより、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の高周波数スペクトル範囲△fHFが定められる。
【0046】
図1および図2のブロック図は、従来のスイッチ素子を用いて、制御電力を供給するシステムをどのように構成できるかを示すことを意図した等価回路図である。現状では、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタは、しばしば、デジタル素子により表される。最後に、スペクトル分割が生じ、これは、現代のコンピュータを使用して容易に得られる。
【0047】
図3には、ネットワーク周波数fnetworkの時間曲線の例を示す。この曲線は、図1および図2に示すシステムに入力される信号の一例である。ネットワーク周波数fnetworkは、図3では、「揺動波」として示されており、これは、例えば、図3では50Hzである公称ネットワーク周波数の周囲で変動する。ネットワーク周波数fnetworkの振幅および曲線は、電力ネットワークに供給され、電力ネットワークから引き出される電力の合計から生じる。(周波数)制御、特に一次制御の目的は、これらの変動を平滑にすること、すなわち、50Hzでの揺動波をできるだけ直線にすることである。これは、ネットワーク周波数fnetworkの変動につながる(過剰なネットワーク周波数での)電力網の電力過多、または(不十分な周波数での)電力網における電力不足を、追加の消費者により、または(過剰なネットワーク周波数での)電力供給の減少により、あるいは、(不十分なネットワーク周波数での)消費の減少/電力供給の増加により、補償することによって達成できる。
【0048】
図4には、周波数偏差△fnetworkの時間曲線の例を示す。この曲線は、周波数偏差△fnetworkを検出する装置から得られた信号の一例であり、スペクトル分割のため、ハイパスフィルタおよび/またはローパスフィルタに供給することができる。周波数偏差△fnetworkは、測定ネットワーク周波数fnetworkから求められ、ネットワーク周波数fnetworkと公称ネットワーク周波数の差から得られる。この例では、後者は、50Hzである。本実施例では、この時間曲線は、約-100mHzから+100mHzの間で変動し、これを補償する必要がある。図4のグラフから容易に明らかなように、低振幅の迅速な揺動が遅い高振幅の揺動に重畳され、これにより、揺動波が生じる。本発明の目的は、これらの2つの波のスペクトルシェアを互いに分離し、これらを別々に補償して、周波数制御のため、個々の利用可能な技術ユニットの強度の目標とした使用を可能にし、さらには全体的な効率向上を達成することである。
【0049】
図5には、図4からの周波数偏差△fnetworkの時間曲線例の高周波数スペクトル範囲を示す。この信号は、高周波数スペクトル範囲△fHFにおける周波数偏差△fnetworkの時間曲線のハイパスフィルタから生じるシェアの一例であり、これは、制御電力におけるその電力シェアを特定するため、第2の技術ユニットに供給することができる。
【0050】
図6には、図4からの周波数偏差の時間曲線例の低周波数スペクトル範囲を示す。この信号は、低周波数スペクトル範囲△fHFにおける周波数偏差△fnetworkの時間曲線のローパスフィルタから生じるシェアの一例であり、これは、制御電力におけるその電力シェアを特定するため、第1の技術ユニットに供給することができる。図2からの実施形態による周波数偏差△fnetworkの残留シェアは、前記低周波数スペクトル範囲△fLFとほぼ同じに見える。
【0051】
図5および図6を比較すると、高周波シェアおよび低周波シェアに、全周波数偏差をスペクトル分割することにより、比較的揺動の遅い高い制御電力を提供することが可能となり、これにより、制御効率を大幅に向上させることができることは明らかである。これが可能になるのは、周波数偏差の急激な変動、すなわち高周波数シェアは、小さな制御電力のみを必要とし、すなわち小さな振幅のみが必要となるためである。従って、迅速かつ弱い技術ユニットを用いて、迅速で小さな変動を補償するができる一方、遅くて強力な技術ユニットを、大きな遅い変動の補償に利用することができる。この信号の分割により、技術ユニットに分割してマッピングすることができるという知見により、特に効率的な合成制御電力、特に周波数制御予備力を提供することが可能となる。本発明は、マルチチャネルラウドスピーカシステムにおける同様の原理に基づいて、「マルチチャネル周波数制御予備力」と称することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】