(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】グリコシドヒドロラーゼ酵素を使用する網膜細胞への遺伝子治療ベクターの送達の改善
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20220715BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20220715BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220715BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220715BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220715BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20220715BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220715BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220715BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K38/47
A61P43/00 121
A61P27/02
A61K48/00
A61P27/06
A61P3/10
A61K9/08
A61P27/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568543
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020028207
(87)【国際公開番号】W WO2020236351
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, キャスリン クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】リキッテ, シビ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB21
4C076BB40
4C076CC10
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084DC22
4C084MA17
4C084MA66
4C084MA70
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC35
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA17
4C087MA66
4C087MA70
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA33
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、ノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素との組み合わせにおいて、最適化された遺伝子治療ベクターを使用して、網膜内の特定の細胞型を標的化する方法に関する。具体的には、本開示は、グリコシドヒドロラーゼ酵素とともに投与されて網膜細胞を特異的に標的化する遺伝子治療ベクター、ならびに視覚障害、網膜変性および視覚関連障害を治療する方法を提供する。眼を標的化して視力関連障害を治療するためのAAV遺伝子治療の最適化には、様々な細胞型への特異的な標的化が必要である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子治療ベクターと、グリコシドヒドロラーゼ酵素とを含む、組成物。
【請求項2】
前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遺伝子治療ベクターが、AAV8、AA9またはAnc80である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達または髄腔内送達のために処方されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記遺伝子治療ベクターおよび前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、同時に投与するために混合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
遺伝子治療ベクターと、グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、対象の網膜細胞に導入遺伝子を送達するために含む、キット。
【請求項7】
前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記遺伝子治療ベクターが、AAV8、AA9またはAnc80である、請求項6または7に記載のキット。
【請求項9】
対象の網膜細胞に導入遺伝子を送達する方法であって、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項10】
対象における視覚障害または視覚関連障害を治療する方法であって、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を前記対象に投与することを含み、前記導入遺伝子の送達が前記視覚障害または前記視覚関連障害を効果的に治療する、方法。
【請求項11】
前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記網膜細胞が、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞またはアマクリン細胞である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子治療ベクターが、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達または髄腔内送達を使用して前記対象に投与される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記導入遺伝子をコードする前記遺伝子治療ベクターおよび前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、前記対象に同時に投与される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子治療ベクターおよび前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、混合される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子治療ベクターおよび前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、別々に投与される、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記視覚関連障害が、バッテン病、先天性白内障、先天性緑内障、網膜変性、視神経萎縮、眼奇形、斜視、眼球のずれ、緑内障、湿性加齢性黄斑変性症、乾性加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、コロイデレミア、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経症、早期発症網膜ジストロフィー、色覚異常、x連鎖網膜分離症、アッシャー症候群1B、新生血管性加齢性黄斑変性症、シュタルガルト黄斑変性症、糖尿病性黄斑変性症、または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための組成物であって、i)前記導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、組成物。
【請求項19】
対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための組成物であって、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、組成物。
【請求項20】
導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための組成物であって、前記組成物が前記導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含み、前記組成物がグリコシドヒドロラーゼ酵素を含む第2の組成物とともに投与される、組成物。
【請求項21】
対象における治療視覚障害または視覚関連障害を治療するための組成物であって、前記組成物が導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含み、前記組成物がグリコシドヒドロラーゼ酵素を含む第2の組成物とともに投与される、組成物。
【請求項22】
導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための組成物であって、前記組成物がグリコシドヒドロラーゼ酵素を含み、前記組成物が前記導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む第2の組成物とともに投与される、組成物。
【請求項23】
対象における治療視覚障害または視覚関連障害を治療するための組成物であって、前記組成物がグリコシドヒドロラーゼ酵素を含み、前記組成物が導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む第2の組成物とともに投与される、組成物。
【請求項24】
前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記網膜細胞が、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞またはアマクリン細胞である、請求項19~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達または髄腔内送達のために処方されている、請求項19~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物および前記第2の組成物が、前記対象に同時に投与される、請求項20~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物および前記第2の組成物が、混合される、請求項20~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物および前記第2の組成物が、別々に投与される、請求項20~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記視覚関連障害が、バッテン病、先天性白内障、先天性緑内障、網膜変性、視神経萎縮、眼奇形、斜視、眼球のずれ、緑内障、湿性加齢性黄斑変性症、乾性加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、コロイデレミア、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経症、早期発症網膜ジストロフィー、色覚異常、x連鎖網膜分離症、アッシャー症候群1B、新生血管性加齢性黄斑変性症、シュタルガルト黄斑変性症、糖尿病性黄斑変性症、または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項19、21または23~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
対象の網膜細胞に導入遺伝子を送達するための薬剤の調製のための組成物の使用であって、前記組成物が、i)前記導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、使用。
【請求項32】
対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のための組成物の使用であって、前記組成物が、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、使用。
【請求項33】
対象の網膜細胞に導入遺伝子を送達するための薬剤の調製のための導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターの使用であって、前記薬剤が、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含む組成物とともに投与される、使用。
【請求項34】
対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のための導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターの使用であって、前記薬剤が、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含む組成物とともに投与される、使用。
【請求項35】
対象の網膜細胞に導入遺伝子を送達するための薬剤の調製のためのグリコシドヒドロラーゼ酵素の使用であって、前記薬剤が、前記導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む組成物とともに投与される、使用。
【請求項36】
対象における治療視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のためのグリコシドヒドロラーゼ酵素の使用であって、前記薬剤が、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む組成物とともに投与される、使用。
【請求項37】
前記グリコシドヒドロラーゼ酵素が、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである、請求項32~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記網膜細胞が、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞またはアマクリン細胞である、請求項32~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記薬剤が、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達または髄腔内送達のために処方されている、請求項32~38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記薬剤および前記組成物が、前記対象に同時に投与される、請求項33~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記組成物および前記組成物が、混合される、請求項33~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記薬剤および前記組成物が、別々に投与される、請求項33~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
前記視覚関連障害が、バッテン病、先天性白内障、先天性緑内障、網膜変性、視神経萎縮、眼奇形、斜視、眼球のずれ、緑内障、湿性加齢性黄斑変性症、乾性加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、コロイデレミア、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経症、早期発症網膜ジストロフィー、色覚異常、x連鎖網膜分離症、アッシャー症候群1B、新生血管性加齢性黄斑変性症、シュタルガルト黄斑変性症、糖尿病性黄斑変性症、または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項32、34または36~42のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月17日に出願された米国仮特許出願第62/849,794号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本開示の一部である配列表を明細書と同時にテキストファイルとして提出する。配列表を含むテキストファイルの名称は、「55603_Seqlisting.txt」であり、これは、2020年4月13日に作成されたものであり、15,459バイトのサイズである。配列表の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示はグリコシドヒドロラーゼ酵素との組み合わせにおいて、最適化された遺伝子治療ベクターを使用して、網膜内の特定の細胞型を標的化する方法に関する。特に、本開示は、網膜細胞を特異的に標的化する遺伝子治療ベクター、ならびに視覚障害、網膜変性、および視覚関連障害を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
遺伝子治療ベクターの眼内投与は、眼の解剖学的構造が明確であるため、多くの利点を有する。具体的には、眼内への容易なアクセスが迅速かつ前進的な検査を可能にし、眼の比較的密閉された構造および小さなサイズにより送達に要するベクター用量が少なく、血液網膜関門が体循環へのベクターの漏出を防ぎ、比較的免疫特権のある環境が維持され、特定の眼障害に主にまたは部分的に関与する個々のまたは複数の遺伝子が同定されている。
【0005】
遺伝子治療ベクターの眼内投与は、いくつかの有望な結果を示している。現在、視力喪失関連疾患を対象とした臨床遺伝子治療試験が数多く行われ、これらの試験は主に、遺伝性網膜疾患を対象としている。例えば、臨床試験では、レーバー先天性黒内障(LCA)、レーバー遺伝性視神経症、網膜色素変性症が試験されている。今日まで、AAVベクター、特にAAV2血清型は、眼の遺伝子治療で最も一般的に使用されてきた。Lee et al.,Progress in retinal and eye research 68:31-53,2019を参照されたい。
【0006】
神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、まとめてバッテン病と称される一群の重度の神経変性障害である。これらの障害は神経系に影響を及ぼし、典型的には、例えば、行動、視覚および思考の能力上の問題を悪化させる。異なるNCLは、それらの遺伝学的原因によって区別される。バッテン病の小児期の患者では、部分的または完全な視力喪失がしばしば発症する。特にバッテン病に罹患する人では、リポフスチンが脳や網膜などの細胞内に蓄積する。リポフスチンの蓄積は、網膜、視神経、および視力を処理する脳の領域の光受容体に損傷を与える。
現在、網膜の特定のタイプの細胞を標的化する改良された遺伝子治療法が必要とされている。さらに、バッテン病の徴候を改善することができる療法は存在しない。したがって、当該技術分野においてバッテン病の治療に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lee et al.,Progress in retinal and eye research 68:31-53,2019
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、網膜の特定の細胞などの特定の細胞型を標的化する最適化された遺伝子治療ベクターと、グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む組成物を提供する。これらの最適化された遺伝子治療ベクターは、グリコシドヒドロラーゼ酵素の投与と組み合わせた硝子体内送達を使用して、特定の網膜細胞に導入遺伝子を送達するのに有用である。グリコシドヒドロラーゼ酵素の投与は、網膜内への遺伝子治療の浸透を強化した。本開示は、グリコシドヒドロラーゼ酵素の投与との組み合わせで、硝子体内送達を使用して最適化された遺伝子治療ベクターを投与することを含む、視覚関連障害の治療方法を提供する。網膜の特定の細胞型を標的化する遺伝子治療法は、視力喪失関連疾患の治療に対する利点を有する。
【0009】
本開示は、遺伝子治療ベクターと、グリコシドヒドロラーゼ酵素とを含む、組成物を提供する。例えば、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである。いくつかの実施形態では、遺伝子治療ベクターは、AAV8、AA9またはAnc80である。
【0010】
例示的な実施形態では、本開示は、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内または髄腔内送達のために処方された組成物を提供する。例えば、本開示は、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素が、同時に投与するために混合されている組成物を提供する。
【0011】
さらに、本開示は、遺伝子治療ベクターと、グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む、対象の細胞に導入遺伝子を送達するためのキットを提供する。例えば、細胞は網膜細胞である。例示的な実施形態では、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである。さらに、遺伝子治療は、AAV8、AA9またはAnc80である。任意選択で、キットは、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素を対象に送達するための説明書を含む。
【0012】
本開示は、対象に、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を投与することを含む、対象に導入遺伝子を送達する方法を提供する。例えば、細胞は網膜細胞である。いくつかの実施形態では、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、もしくはリゾチームであり、かつ/または遺伝子治療ベクターは、AAV8、AAV9、もしくはAnc80である。本開示は、遺伝子治療ベクターおよび/またはグリコシドヒドロラーゼ酵素が、局所静脈内(IV)送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内送達、実質内送達または髄腔内(脳脊髄液内)送達を使用して対象に投与される方法を提供する。例えば、開示される方法は、限定されないが、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞および/またはアマクリン細胞などのすべての網膜細胞への導入遺伝子の送達をもたらす。網膜細胞への送達が本明細書で例示されるが、開示される方法、組成物および使用は、グリコシドヒドロラーゼ酵素が細胞膜上の受容体を除去する任意の細胞型を標的化し得る。他の細胞型としては、筋細胞、星状細胞などの神経細胞、ニューロン、オリゴデンドロサイト、およびシュワン細胞が挙げられる。
【0013】
本開示はまた、導入遺伝子を対象の細胞に送達するための組成物を提供し、組成物は、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む。例えば、細胞は網膜細胞である。さらなる実施形態では、本開示は、導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための組成物を提供し、組成物は、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含み、組成物は、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含む第2の組成物とともに投与される。例えば、組成物は、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達、大槽内注入、脳室内送達、筋肉内送達または髄腔内注入を使用して遺伝子治療ベクターを投与するために処方される。
【0014】
本開示はまた、導入遺伝子を対象の細胞に送達するための薬剤の調製のための組成物の使用を提供し、組成物は、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む。例えば、細胞は網膜細胞である。いくつかの実施形態では、本開示は、導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための薬剤の調製のための、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターの使用を提供し、薬剤は、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含む組成物とともに投与される。他の実施形態では、本開示は、導入遺伝子を対象の網膜細胞に送達するための薬剤の調製のための、グリコシドヒドロラーゼ酵素の使用を提供し、薬剤は、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む組成物とともに投与される。例えば、薬剤は、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達または髄腔内送達を使用して遺伝子治療ベクターを投与するために処方される。
【0015】
本開示はまた、対象に、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を投与することを含む、対象における視覚障害、網膜変性または視覚関連障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、もしくはリゾチームであり、かつ/または遺伝子治療ベクターは、AAV8、AAV9もしくはAnc80である。本開示は、遺伝子治療ベクターおよび/またはグリコシドヒドロラーゼ酵素が、局所静脈内(IV)送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内送達、実質内送達、筋肉内送達または髄腔内送達を使用して投与される方法を提供する。
【0016】
本開示はまた、対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための組成物を提供し、組成物は、i)導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターと、ii)グリコシドヒドロラーゼ酵素と、を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、対象における治療視覚障害または視覚関連障害の治療を治療するための組成物を提供し、組成物は、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含み、組成物は、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む第2の組成物とともに投与される。例えば、組成物は、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内送達、筋肉内送達または髄腔内送達を使用して遺伝子治療ベクターを投与するために処方される。
【0017】
さらなる実施形態では、本開示は、対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のための組成物の使用を提供し、組成物は、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む。本開示はまた、対象における視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のための導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターの使用を提供し、薬剤は、グリコシドヒドロラーゼ酵素を含む組成物とともに投与される。さらに、本開示は、対象における治療視覚障害または視覚関連障害を治療するための薬剤の調製のためのグリコシドヒドロラーゼ酵素の使用を提供し、薬剤は、導入遺伝子をコードする遺伝子治療ベクターを含む組成物とともに投与される。例えば、薬剤は、局所静脈内送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内送達、筋肉内送達または髄腔内送達を使用して遺伝子治療ベクターを投与するために処方される。
【0018】
例えば、視覚関連障害は、バッテン病、先天性白内障、先天性緑内障、網膜変性、視神経萎縮、眼奇形、斜視、眼球のずれ、緑内障、湿性加齢性黄斑変性症、乾性加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症、コロイデレミア、レーバー先天性黒内障、レーバー遺伝性視神経症、早期発症網膜ジストロフィー、色覚異常、x連鎖網膜分離症、アッシャー症候群1B、新生血管性加齢性黄斑変性症、シュタルガルト黄斑変性症、糖尿病性黄斑変性症、または糖尿病性黄斑浮腫である。特定の実施形態では、視覚関連障害は、CLN1疾患、CLN2疾患、CLN3疾患、CLN4疾患、CLN5疾患、CLN6疾患またはCLN8疾患などのCLNバッテン病である。
【0019】
開示される方法、使用または組成物のいずれかにおいて、導入遺伝子は、目的のポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド配列であるか、またはsiRNAもしくはmiRNAなどの目的遺伝子の発現を阻害、妨害もしくはサイレンシングする核酸である。例示的な導入遺伝子は、RPE65、RPGR、ORF15、CNGA3、CMH、ND4、PDE6B、ChR2、MERTK、hRS1、hMYOJA、hABCA4、CD59、抗hVEGF抗体、エンドスタチン-アンギオスタチン、sFLT01、またはsFLT-1をコードするポリヌクレオチドである。さらなる例示的な導入遺伝子としては、RTP801に対するsiRNA、VEGFR-1に対するsiRNA、VEGFに対するsiRNA、またはADRB2に対するsiRNAが挙げられる。一実施形態では、導入遺伝子は、CLN1、CLN2、CLN3、CLN4、CLN5、CLN6またはCLN8などのCLNポリペプチドをコードする。
【0020】
本明細書に開示される方法、組成物または使用のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、同時に、または連続して投与される。さらに、開示される方法、組成物または使用のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、同じ送達様式を使用してそれぞれ投与されるかもしくは投与されるか、または異なる送達様式を使用してそれぞれ投与される。開示される方法、使用または組成物のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、単回投与として投与され、例えば、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は混合される。あるいは、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、別々に投与される。いくつかの実施形態では、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、遺伝子治療ベクターの投与の少なくとも約30分前に投与される。
【0021】
開示される方法、使用または組成物のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVRH10、AAVRH74、AAV11、AAV12、AAV13、AAVTTまたはAnc80、AAV7m8およびそれらの誘導体である。
【0022】
開示される方法、使用または組成物のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターは、CMVプロモーター、p546、またはCBプロモーターを含む。
【0023】
さらに、開示される方法、使用または組成物のいずれかにおいて、遺伝子治療ベクターおよび/またはグリコシドヒドロラーゼ酵素は、髄腔内送達を使用して投与され、方法ではさらに、遺伝子治療ベクターの投与後に対象をトレンデレンブルグ体位に置くことを含む。
【0024】
提供される方法または使用のいずれにかおいて、組成物は、非イオン性、低浸透性の造影剤を含み得る。例えば、組成物は、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性低浸透圧性造影剤を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2A】硝子体内送達後のGFP導入遺伝子の網膜送達を示し、ノイラミニダーゼとの併用投与が導入遺伝子の浸透を促進したことを示す。
【
図2B】硝子体内送達後のGFP導入遺伝子の網膜送達を示し、ノイラミニダーゼとの併用投与が導入遺伝子の浸透を促進したことを示す。
【
図2C】硝子体内送達後のGFP導入遺伝子の網膜送達を示し、ノイラミニダーゼとの併用投与が導入遺伝子の浸透を促進したことを示す。
【
図2D】硝子体内送達後のGFP導入遺伝子の網膜送達を示し、ノイラミニダーゼとの併用投与が導入遺伝子の浸透を促進したことを示す。
【
図2E】硝子体内送達後のGFP導入遺伝子の網膜送達を示し、ノイラミニダーゼとの併用投与が導入遺伝子の浸透を促進したことを示す。
【
図3】8週目の野生型マウスにおける、ノイラミニダーゼの有無による、硝子体内注入のタイミングの詳細を示す概略図である。
【
図4A】ノイラミニダーゼの添加による、双極細胞へのウイルス形質導入の顕著な増加を示す。GFPおよび双極細胞特異的マーカーであるOtxについて組織を染色した。
【
図4B】ノイラミニダーゼの添加による、双極細胞へのウイルス形質導入の顕著な増加を示す。GFPおよび双極細胞特異的マーカーであるOtxについて組織を染色した。
【
図4C】ノイラミニダーゼの添加による、双極細胞へのウイルス形質導入の顕著な増加を示す。GFPおよび双極細胞特異的マーカーであるOtxについて組織を染色した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
眼を標的化して視力関連障害を治療するためのAAV遺伝子治療の最適化には、様々な細胞型への特異的な標的化が必要である。本開示では、マウスおよび非ヒト霊長類の網膜における特定の細胞型への、導入遺伝子の標的特異的な送達のために最適な遺伝子治療ベクターを決定するための、様々な遺伝子治療ベクター、プロモーターおよび投与経路を比較する実験データを提供する。
【0027】
データは、AAV9およびAnc80ベクターの投与に焦点を当てているが、本開示は、網膜細胞を特異的に標的化するプロモーターを含む任意の遺伝子治療ベクターの使用を想定しており、これらの最適化されたベクターは、局所静脈内(IV)送達、網膜下送達、硝子体内送達、脳室内送達、筋肉内送達、実質内送達または髄腔内送達を使用して投与される。例えば、データは、脳室内注入を介して脳脊髄液に直接注入されたAAV9が、網膜の双極細胞における導入遺伝子発現を標的化するのに効果的であることを示した。したがって、髄腔内注入は、遺伝子治療ベクターを眼に送達するために、また具体的には遺伝子治療ベクターを双極細胞に送達するために使用することができる。
【0028】
遺伝子治療ベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの145個のヌクレオチドの逆方向末端反復(ITR)を含む約4.7kbの長さであり、ウイルスそれ自体またはその誘導体を指すように使用することができる。この用語は、他に特定されない限り、すべてのサブタイプおよび天然に存在する形態および組換え形態の両方を包含する。AAVの複数の血清型がある。AAVの血清型は、各々特定のクレードと関連しており、そのメンバーは血清学的および機能的類似性を共有している。したがって、AAVはまた、クレードによって称され得る。例えば、AAV9配列は、「クレードF」配列と称される(Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004))。本開示は、特定のクレード、例えばクレードF内の任意の配列の使用を企図する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は既知である。例えば、AAV-1の完全なゲノムは、GenBank受入番号NC_002077に提供されており、AAV-2の完全なゲノムは、GenBank受入番号NC_001401およびSrivastava et al.,J.Virol.,45:555-564(1983)に提供されており、AAV-3の完全なゲノムは、GenBank受入番号NC_1829に提供されており、AAV-4の完全なゲノムは、GenBank受入番号NC_001829に提供されており、AAV-5ゲノムは、GenBank受入番号AF085716に提供されており、AAV-6の完全なゲノムは、GenBank受入番号NC_00 1862に提供されており、AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも部分は、それぞれ、GenBank受入番号AX753246およびAX753249に提供されており、AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)に提供されており、AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提供されており、AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提供されており、AAV-12ゲノムの部分は、GenBank受入番号DQ813647に提供されており、AAV-13ゲノムの部分は、GenBank受入番号EU285562に提供されている。AAV rh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,434,928号に提供されている。AAV-B1ゲノムの配列は、Choudhury et al.,Mol.The.,24(7):1247-1257(2016)に提供されている。Anc80は、AAV1、AAV2、AAV8、およびAAV9のAAVベクターである。Anc80の配列は、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるZinn et al.,Cell Reports 12:1056-1068,2015、Vandenberghe et al,PCT/US2014/060163、ならびにGenBank受入番号KT235804-KT235812に示されている。
【0029】
ウイルスDNA複製(rep)、キャプシド形成/パッケージング、および宿主細胞染色体組み込みを指示するCis作用配列は、ITR内に含有される。3つのAAVプロモーター(それらの相対マップ位置に対してp5、p19、およびp40と名付けられる)は、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を駆動する。単一のAAVイントロンの差異的スプライシング(ヌクレオチド2107および2227における)と相まって、2つのrepプロモーター(p5およびp19)により、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、およびrep40)が産生される。repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連キャプシドタンパク質の産生に関与する。単一コンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環および遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)に概説されている。
【0030】
AAVは、例えば、遺伝子治療において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的にする固有の特徴を有する。培養中の細胞のAAV感染は、非細胞変性であり、ヒトおよび他の動物の自然感染は、サイレントかつ無症候性である。さらに、AAVは、多くの哺乳動物細胞を感染させ、インビボで多くの異なる組織を標的化する可能性を可能にする。さらに、AAVは、緩徐に分裂する細胞および非分裂細胞を形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外要素)として本質的にそれらの細胞の寿命にわたって存続し得る。天然のAAVプロウイルスゲノムは、組換えゲノムの構築を実現可能にするプラスミド中のクローン化DNAとして感染性である。さらに、AAV複製、ゲノムキャプシド形成および組み込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれるので、ゲノムの内部約4.3kb(複製および構造キャプシドタンパク質、rep-capをコードする)のいくつかまたはすべてを置換することができるプロモーター、目的のDNAおよびポリアデニル化シグナルを含む遺伝子カセットのような外来DNAと接触させる。場合によっては、repおよびcapタンパク質は、トランスで提供される。AAVの別の重要な特徴は、それが極めて安定した頑健なウイルスであることである。それは容易にアデノウイルスを不活性化させるのに使用される条件(56~65℃で数時間)に耐え、AAVの低温保存の重要性を低下させる。AAVは、凍結乾燥され得る。最後に、AAV感染細胞は、重複感染に耐性を示さない。
【0031】
本明細書で使用される「AAV」という用語は、野生型AAVウイルスまたはウイルス粒子を指す。「AAV」、「AAVウイルス」、および「AAVウイルス粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「rAAV」という用語は、組換えAAVウイルスまたは組換え感染性のカプセル化ウイルス粒子を指す。「rAAV」、「rAAVウイルス」、および「rAAVウイルス粒子」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0032】
「rAAVゲノム」という用語は、修飾されている天然のAAVゲノムに由来するポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは、天然のcapおよびrep遺伝子を除去するために修飾されている。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは内因性5’および3’逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは、AAVゲノムが由来するAAV血清型とは異なるAAV血清型からのITRを含む。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは、逆方向末端反復(ITR)が5’末端および3’末端に隣接する目的の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、rAAVゲノムは、「遺伝子カセット」を含む。
【0033】
「scAAV」という用語は、自己相補的ゲノムを含むrAAVウイルスまたはrAAVウイルス粒子を指す。「ssAAV」という用語は、一本鎖ゲノムを含むrAAVウイルスまたはrAAVウイルス粒子を指す。
【0034】
本明細書に提供されるrAAVゲノムは、いくつかの実施形態では、導入遺伝子のポリヌクレオチドに隣接する1つ以上のAAV ITRを含む。導入遺伝子のポリヌクレオチドは、標的細胞内で機能を発揮する転写制御因子(限定されないが、プロモーター、エンハンサーおよび/またはポリアデニル化シグナル配列が挙げられる)に作動可能に連結されて、遺伝子カセットを形成する。プロモーターの例は、CMVプロモーター、ニワトリβアクチンプロモーター(CB)、およびP546プロモーターである。シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即時型プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター(例えば、限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子-1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない追加のプロモーターが本明細書で企図される。
【0035】
さらに、本明細書では、CMVプロモーター配列、CBプロモーター配列、P546プロモーター配列、および転写促進活性を示すCMV、CBまたはP546配列のヌクレオチド配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のプロモーター配列が提供される。
【0036】
転写制御因子の他の例は、組織特異的制御因子、例えば、ニューロン内での特異的発現を可能にするか、または星状細胞内での特異的発現を可能にするプロモーターである。例としては、ニューロン特異的エノラーゼおよびグリア線維性酸性タンパク質プロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターもまた、企図される。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリン調節プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子カセットはまた、哺乳動物細胞中で発現されたときに導入遺伝子のRNA転写産物のプロセシングを促進するためのイントロン配列を含み得る。このようなイントロンの一例は、SV40イントロンである。
【0037】
「パッケージング」とは、AAV粒子の組み立ておよびキャプシド形成をもたらす一連の細胞内事象を指す。「産生」という用語は、充填細胞によるrAAV(感染性のカプセル化されたrAAV粒子)の産生プロセスを指す。
【0038】
AAV「rep」および「cap」遺伝子は、それぞれアデノ随伴ウイルスの複製タンパク質およびキャプシド形成タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。AAV repおよびcapは、本明細書においてAAV「パッケージング遺伝子」と称される。
【0039】
AAVについての「ヘルパーウイルス」は、AAV(例えば、野生型AAV)が哺乳動物細胞によって複製およびパッケージングされることを可能にするウイルスを指す。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびワクシニアなどのポックスウイルスを含む、AAVに対する様々なこのようなヘルパーウイルスは、当該技術分野において既知である。アデノウイルスは、いくつかの異なるサブグループを包含し得るが、サブグループCのアデノウイルス5型が最も一般的に使用される。ヒト、非ヒト哺乳動物、およびトリ起源の多数のアデノウイルスが既知であり、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペス科のウイルスには、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタイン-バーウイルス(EBV)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)および偽狂犬病ウイルス(PRV)が含まれ、これらはATCCなどの寄託機関からも入手可能である。
【0040】
「ヘルパーウイルス機能」とは、(本明細書に記載の複製およびパッケージングのための他の要件と併せて)AAV複製およびパッケージングを可能にするヘルパーウイルスゲノムにコードされている機能を指す。本明細書中に記載されるように、「ヘルパーウイルス機能」は、ヘルパーウイルスを提供すること、または例えば必要な機能をコードするポリヌクレオチド配列をトランスでプロデューサー細胞に提供することによることを含む多くの方法で提供され得る。
【0041】
本明細書で提供されるrAAVゲノムは、AAV repおよびcap DNAを欠く。本明細書で企図されるrAAVゲノム内のAAV DNA(例えば、ITR)は、組換えウイルスを導出するのに好適な任意のAAV血清型に由来するものであり得、限定されないが、AAV血清型Anc80、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、AAV rh.74、およびAAV-B1が挙げられる。上記に記載されるように、様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が、当該技術分野において既知である。キャプシド変異を有するrAAVもまた、企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。本明細書中の修飾キャプシドもまた、企図され、グリコシル化および脱アミド化などの種々の翻訳後修飾を有するキャプシドを含む。アスパラギンまたはグルタミン側鎖を脱アミド化してアスパラギン残基をアスパラギン酸またはイソアスパラギン酸残基に変換すること、およびグルタミンをグルタミン酸またはイソグルタミン酸に変換することは、本明細書に提供されるrAAVキャプシドにおいて企図される。例えば、Giles et al.Molecular Therapy,26(12):2848-2862(2018)を参照されたい。本明細書中の修飾キャプシドもまた、治療を必要とする罹患組織および臓器にrAAVを指向させる標的化配列を含むと企図される。
【0042】
本明細書で提供されるDNAプラスミドは、本明細書に記載されるrAAVゲノムを含む。DNAプラスミドは、AAV9キャプシドタンパク質を用いて感染性ウイルス粒子中にrAAVゲノムを組み立てるために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠損アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)による感染を許容できる細胞に導入される。パッケージングされるべきrAAVゲノム、repおよびcap遺伝子、およびヘルパーウイルス機能が細胞に提供されるrAAVを産生する技術は、当該技術分野において標準的である。rAAV粒子の産生は、以下の成分、rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離した(すなわち、その中に存在しない)AAV repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一細胞(本明細書でパッケージング細胞と表される)内に存在することを必要とする。AAVのrepおよびcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型に由来してもよく、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型に由来してもよい。偽型rAAVの生成は、例えば、WO01/83692に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。様々な実施形態では、AAVキャプシドタンパク質は、組換えrAAVの送達を増強するために修飾され得る。キャプシドタンパク質に対する修飾は、一般的に当該技術分野において既知である。例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる、US2005/0053922およびUS2009/0202490を参照されたい。
【0043】
パッケージング細胞を生成する方法は、rAAVの産生に必要な成分をすべて安定して発現する細胞株を作成することである。例えば、AAV repおよびcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムから分離したAAV repおよびcap遺伝子、およびネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれてもよい。rAAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、または直接平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)などの手順により細菌プラスミドに導入されてもよい。その後、パッケージング細胞株は、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させられ得る。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模産生に好適であることである。好適な方法の他の例は、rAAVゲノムならびに/またはrepおよびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するためにプラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いる。
【0044】
rAAV粒子産生の一般的原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、およびMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)に概説されている。様々なアプローチは、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、およびLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)、Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO95/13365および対応する米国特許第5,658,776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、および米国特許第6,258,595号に記載されている。前述の文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、rAAV粒子産生に関する文書の部分を特に強調する。
【0045】
本明細書でさらに提供されるのは、感染性rAAV粒子を産生するパッケージング細胞である。一実施形態では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、およびPerC.6細胞(同種293株)などの安定して形質転換されたがん細胞であり得る。別の実施形態では、パッケージング細胞は、形質転換されたがん細胞ではない細胞、例えば、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、およびFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)であり得る。
【0046】
本開示のrAAVゲノムを含むrAAV(例えば、感染性キャプシド形成したrAAV粒子)も本明細書で提供される。rAAVのゲノムは、AAVのrepおよびcap DNAを欠いており、すなわち、rAAVのゲノムのITR間にAAVのrepまたはcap DNAが存在しない。rAAVゲノムは自己相補的(sc)ゲノムであり得る。scゲノムを有するrAAVは、本明細書中でscAAVと称される。rAAVゲノムは一本鎖(ss)ゲノムであり得る。一本鎖ゲノムを有するrAAVは、本明細書中でssAAVと称される。
【0047】
rAAVは、当該技術分野で標準的な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配によって精製され得る。ヘルパーウイルスからrAAVベクターを精製するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999)、Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号、およびWO98/09657に開示される方法を含み得る。
【0048】
rAAVを含む組成物もまた提供される。組成物は、CLN6ポリペプチドをコードするrAAVを含む。組成物は、対象とした異なるポリペプチドをコードする2つ以上のrAAVを含み得る。いくつかの実施形態では、rAAVはscAAVまたはssAAVである。
【0049】
本明細書で提供される組成物は、rAAVと、薬学的に許容される1つまたは複数の賦形剤を含む。許容される賦形剤は、レシピエントにとって非毒性であり、好ましくは、用いられる投薬量および濃度で不活性であり、リン酸塩[例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)]、クエン酸塩、もしくは他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/またはTween(登録商標)、ポロキサマー188などのコポリマー、プルロニック(登録商標)(例えば、プルロニック(登録商標)F68)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される組成物は、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、またはイオキシランなどの非イオン性、低浸透圧性の化合物を含有する薬学的に許容される水性賦形剤を含むことができ、非イオン性、低浸透圧性化合物を含有する水性賦形剤は、以下の特性、すなわち約180mgl/mL、約322mOsm/kg水の蒸気圧浸透圧法によるオスモル濃度、約273mOsm/Lのオスモル濃度、20℃で約2.3cpのおよび37℃で約1.5cpの絶対粘度、ならびに37℃で約1.164の比重、のうちの1つ以上を有することができる。例示的な組成物は、約20~40%の非イオン性低浸透圧性化合物、または約25%~約35%の非イオン性低浸透圧性化合物を含む。例示的な組成物は、20mMのトリス(pH8.0)、1mMのMgCl2、200mMのNaCl、0.001%のポロキサマー188、約25%~約35%の非イオン性の低浸透圧性化合物中に配合されたscAAVまたはrAAVウイルス粒子を含む。別の例示的な組成物は、1×PBSおよび0.001%プルロニック(登録商標)F68中に配合されたscAAVを含む。
【0050】
本開示の方法で投与されるrAAVの投薬量は、例えば、特定のrAAV、投与モード、投与の時間、治療目標、個体、および標的とされる細胞型に応じて異なることになり、当該技術分野における標準の方法によって決定され得る。投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表されてもよい。本明細書で企図される投薬量は、1×107、1×108、1×109、5×109、6×109、7×109、8×109、9×109、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、1×1011、約1×1012、約1×1013、約1.1×1013、約1.2×1013、約1.3×1013、約1.5×1013、約2×1013、約2.5×1013、約3×1013、約3.5×1013、約4×1013、約4.5×1013、約5×1013、約6×1013、約1×1014、約2×1014、約3×1014、約4×1014約5×1014、約1×1015~約1×1016、またはそれ以上の総ウイルスゲノムを含む。1×109~約1×1010、約5×109~約5×1010、約1×1010~約1×1011、約1×1011~約1×1015vg、約1×1012~約1×1015vg、約1×1012~約1×1014vg、約1×1013~約6×1014vg、および約6×1013~約1.0×1014vgの投薬量も企図される。本明細書中に例示される1用量は、6×1013vgである。本明細書中に例示される他の用量は、1.5×1013vgである。
【0051】
標的網膜細胞にrAAVを形質導入する方法が提供される。網膜細胞としては、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞またはアマクリン細胞が挙げられる。
【0052】
「形質導入」という用語は、レシピエント細胞による機能性ポリペプチドの発現をもたらす、本開示の複製欠損rAAVを介した、インビボまたはインビトロのいずれかでの、標的細胞へのCLN6ポリヌクレオチドの投与/送達を指すように使用される。本開示のrAAVによる細胞の形質導入は、rAAVによってコードされるポリペプチドまたはRNAの持続的発現をもたらす。したがって、本開示は、髄腔内、局所IV送達、脳室内、筋肉内、網膜下注入、硝子体内送達または実質内送達、またはそれらの任意の組み合わせによって、導入遺伝子によりコードされるポリペプチドをコードするrAAVを対象に投与/送達する方法を提供する。髄腔内送達は、脳または脊髄のくも膜の下の空間への送達を指す。いくつかの実施形態では、髄腔内投与は槽内投与による。
【0053】
導入遺伝子
目的の導入遺伝子を網膜細胞に送達する方法が開示される。導入遺伝子は、目的のポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド配列であるか、またはsiRNAまたはmiRNAなどの目的遺伝子の発現を阻害、妨害またはサイレンシングする核酸である。
【0054】
例示的な導入遺伝子は、RPE65、RPGR、ORF15、CNGA3、CMH、ND4、PDE6B、ChR2、MERTK、hRS1、hMYOJA、hABCA4、CD59、抗hVEGF抗体、エンドスタチン-アンギオスタチン、sFLT01、またはsFLT-1をコードするポリヌクレオチドである。一実施形態では、導入遺伝子は、CLN1、CLN2、CLN3、CLN4、CLN5、CLN6またはCLN8などのCLNポリペプチドをコードする。さらなる例示的な導入遺伝子としては、RTP801に対するsiRNA、VEGFR-1に対するsiRNA、VEGFに対するsiRNA、またはADRB2に対するsiRNAが挙げられる。
【0055】
網膜で発現されるmiRNAは、開示される最適化された遺伝子治療ベクターに含まれる導入遺伝子として企図される。miRNAの例は、Karali et al.,Nucleic Acids Res.2016 Feb 29;44(4):1525-1540に示され、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0056】
本明細書で提供されるrAAVゲノムは、RPE65、RPGR、ORF15、CNGA3、CMH、ND4、PDE6B、ChR2、MERTK、hRS1、hMYOJA、hABCA4、CD59、PEDF、エンドスタチン-アンギオスタチン遺伝子、sFLT-1、抗hVEGF抗体をコードする遺伝子のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含む導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含み得る。例えば、導入遺伝子によってコードされるポリペプチドは、導入遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0057】
本明細書で提供されるrAAVゲノムは、CLN1、CLN2、CLN3、CLN4、CLN5、CLN6およびCLN8などのCLNポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。ポリペプチドには、CLNポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり、CLN活性(例えば、リソソーム自己蛍光貯蔵物質のクリアランスの増加、ATPシンターゼサブユニットCのリソソーム貯蔵の減少、および例えば治療前の患者と比較して治療した場合の患者における星状細胞ならびにミクログリアの活性化の減少、のうちの少なくとも1つ)を有するポリペプチドをコードするアミノ酸配列を有するポリペプチドが含まれる。
【0058】
本明細書で提供されるrAAVゲノムは、いくつかの場合、CLNポリペプチド、または、CLNポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり、CLN活性(例えば、リソソーム自己蛍光貯蔵物質のクリアランスの増加、ATPシンターゼサブユニットCのリソソーム貯蔵の減少、および例えば治療前の患者と比較して治療した場合の患者における星状細胞ならびにミクログリアの活性化の減少、のうちの少なくとも1つ)を有するポリペプチドをコードするアミノ酸配列を有するポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0059】
本明細書で提供されるrAAVゲノムは、いくつかの実施形態では、所望の活性を有するポリペプチドをコードし、かつ、ストリンジェントな条件下で目的の公知の導入遺伝子の核酸配列のうちのいずれか1つ、またはその相補物にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、本明細書で提供されるrAAVゲノムは、CLN活性を有するポリペプチドをコードし、かつ、ストリンジェントな条件下でCLNポリペプチドをコードする核酸配列のいずれか1つまたはその相補物にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。
【0060】
以下は、視覚的要素に重点を置いた、各バッテン病のサブタイプの疾患特性の概要を示す。「主な影響を受ける網膜細胞」の列に含まれるデータは、マウス網膜から編集された単一細胞のRNAデータに基づいて決定した。このデータの解析はいまだ進行中である。
【表1】
【0061】
「ストリンジェントな」という用語は、ストリンジェントとして当該技術分野において一般に理解される条件を指すために使用される。ハイブリダイゼーションストリンジェシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度によって決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の際のストリンジェントな条件の例は、65~68℃での0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、または42℃での0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミドである。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,(Cold Spring Harbor,N.Y.1989)を参照されたい。
【0062】
投与方法
髄腔内投与が本明細書に例示される。髄腔内送達は、脳または脊髄のくも膜の下の空間への送達を指す。いくつかの実施形態では、髄腔内投与は、槽内注射または腰椎内注射を介したものである。これらの方法には、標的細胞への本明細書に記載の1つ以上のrAAVの形質導入が含まれる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子を含むrAAVウイルス粒子は、患者の脳および/または脊髄に投与または送達される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脳に送達される。送達が企図される脳の領域としては、運動皮質、視覚野、小脳、および脳幹が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脊髄に送達される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、下位運動ニューロンに送達される。ポリヌクレオチドは、双極細胞、桿体視細胞、錐体視細胞、神経節細胞、ミューラーグリア細胞、ミクログリア細胞、水平細胞またはアマクリン細胞などの網膜細胞に送達され得る。
【0063】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、患者は、rAAVの投与後(例えば、約5、約10、約15または約20分間)、トレンデレンベルク体位(頭低位)に維持される。例えば、患者は、頭低位で約1度~約30度、約15~約30度、約30~約60度、約60~約90度、または約90~約180度傾けられてもよい。
【0064】
網膜下投与の場合、眼の赤道またはその後方に、30G針などの針により小規模な強膜切開を行う。切開部を通じて、例えば、ハミルトン注入器にチューブで取り付けられた細いガラスピペットを介して、または30G針およびハミルトン注入器を介して、ウイルスまたはビヒクルを網膜下に送達する。例えば、網膜下投与は、当該技術分野で公知の方法を使用して、臨床的に訓練された外科医によって実施される。
【0065】
脳室内注入の場合、頭蓋骨に針が挿入され、脳脊髄液を含む心室に液体が注入される。例えば、脳室内注入は、当該技術分野で公知の方法を使用して、臨床的に訓練された外科医によって実施される。
【0066】
投与方法のいずれかにおいて、組成物は、非イオン性、低浸透圧性の造影剤を含み得る。例えば、組成物は、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性低浸透圧性の造影剤を含み得る。
【0067】
本明細書で提供される方法は、本明細書で提供されるrAAVを含む組成物の有効用量または有効複数用量をそれを必要とする対象(例えば、ヒト患者を含むが、これに限定されない動物)に投与する工程を含む。用量が視覚関連障害の発症前に投与される場合、投与は予防的である。用量が視覚関連障害の発症後に投与される場合、投与は治療的である。有効用量は、視覚関連障害に関連する少なくとも1つの症状を緩和(排除または減少)する用量であり、障害の進行を遅らせ、または予防する用量であり、障害の範囲を縮小する用量であり、その結果、障害の寛解(部分的または完全な)をもたらす用量であり、かつ/または生存および/もしくは視力を延長させる用量である。治療前の対象と比較して、または未治療の対象と比較して、本明細書で提供される方法は、視力喪失または網膜変性の安定化、進行の減少、または視力もしくは黄斑変性の改善をもたらす。
【0068】
視覚関連障害がCLNバッテン病であるとき、本明細書で提供される方法は、治療前の対象と比較して、または未治療の対象と比較して、CLNバッテン病の進行および/または改善を評価するために使用される尺度、例えば、統一バッテン病評価システム(UBDRS)またはハンブルク運動言語尺度のうちの1つ以上の安定化、進行の減少、または改善をもたらす。UBDRS評価スケール尺度(Marshall et al.,Neurology.2005 65(2):275-279に記載)[CLNバッテン病の進行および/または改善を評価するために使用される、例えば統一バッテン病評価システム(UBDRS)またはハンブルク運動言語尺度などの、UBDRSの身体的な1つ以上の尺度を含む。UBDRS評価尺度(Marshall et al.,Neurology.2005 65(2):275-279)[UBDRS身体評価尺度、UBDRS発作評価尺度、UBDRS行動評価尺度、UBDRS能力評価尺度、UBDRS症状発現順序、およびUBDRS臨床全般印象(CGI)を含む]、小児科の生活の質の尺度(PEDSQOL)は、運動機能、言語機能、認知機能、および生存を量る。治療前の対象と比較して、または未治療の対象と比較して、本明細書で提供される方法は、以下の:自己蛍光貯蔵物質のリソソーム蓄積の減少または遅延、ATPシンターゼサブユニットCのリソソーム蓄積の減少または遅延、グリア活性化(星状細胞および/またはミクログリア)活性化の減少または遅延、星状細胞増加症の減少または遅延、およびMRIによって測定された脳容積損失の減少または遅延のうちの1つ以上をもたらし得る。
【0069】
グリコシドヒドロラーゼ酵素
本開示は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素との組み合わせで、ベクターとしての最適化された遺伝子治療を投与することを提供する。エキソグルコシダーゼは、グリカン鎖から末端シアル酸を除去する。これらのシアル酸は、すべての細胞型のグリカン鎖の最も外側の端部およびほとんどの分泌タンパク質に見られる。グリコシドヒドロラーゼ酵素は、細胞膜の残渣を除去することが知られており、この除去により、ウイルス受容体の標的化および細胞内侵入が促進されると考えられている。例えば、ノイラミニダーゼ処理によりN-結合型ガラクトシル残基が除去され、それによって細胞への侵入の際の受容体としてN-結合型ガラクトース残基を使用するAAV、例えばAAV9の浸透を促進する(Shen et al.,J.Biol.Chem.286:13532-13540,2011を参照)。網膜細胞への送達が本明細書で例示されるが、開示される方法、組成物および使用は、グリコシドヒドロラーゼ酵素が細胞膜上の受容体を除去する任意の細胞型を標的化し得る。
【0070】
最適化された遺伝子治療ベクターを含む併用療法も提供される。「併用療法」および「併用治療」という用語は、酵素などの網膜細胞への標的化を改善する薬剤を用いた、開示される最適化された遺伝子治療ベクターの投与を指す。いくつかの実施形態では、かかる方法は、遺伝子治療ベクターの投与との組み合わせで、グリコシドヒドロラーゼ酵素を対象に投与することを含む。例えば、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、ノイラミニダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、セルラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、またはリゾチームである。薬剤は、本明細書に記載の投与経路のいずれかによって、ベクターと同時にまたは連続して投与することができる。
【0071】
本明細書で使用される併用は、同時治療または連続治療のいずれかを含む。例えば、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、同じ投与様式を使用して同時に投与されるか、または遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、それぞれ異なる投与様式を使用して同時に投与される。さらなる例では、遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、同じ投与様式を使用して連続して投与されるか、または遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、それぞれ異なる投与様式を使用して連続して投与される。本明細書に記載の方法と標準的な薬物療法との組み合わせが特に企図される。
【0072】
いくつかの実施形態では、最適化された遺伝子治療ベクターは、ノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素と同時に投与される。他の実施形態では、最適化された遺伝子治療ベクターは、ノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素の直前または直後に投与される。他の実施形態では、最適化された遺伝子治療ベクターは、ノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素の投与から約15分以内、約20分以内、約25分以内、約30分以内、約45分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、12時間以内、24時間以内、36時間以内、または48時間以内に投与される。いくつかの実施形態では、グリコシドヒドロラーゼ酵素は、最適化された遺伝子治療ベクターの投与前、または最適化された遺伝子治療ベクターの投与後に投与される。
【0073】
いくつかの実施形態では、最適化された遺伝子治療ベクターおよびノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素は、単一の硝子体内注入において投与される。しかしながら、本開示はまた、最適化された遺伝子治療ベクターとノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素との組み合わせを、別々の硝子体内注入において投与することを提供する。例えば、ノイラミニダーゼなどのグリコシドヒドロラーゼ酵素は、最適化された遺伝子治療ベクターの投与の約30分前に投与される。さらに、最適化された遺伝子治療ベクターおよびグリコシドヒドロラーゼ酵素は、異なる投与様式を使用して投与され得る。
【実施例】
【0074】
以下の実施例により特定の実施形態を説明するが、当業者には変形および修正が発生するであろうことが理解される。したがって、請求項に見られるそのような制限のみが、本発明に課せられるべきである。
【0075】
実施例1
SCAAV9.GFPおよびAnc80.GFPの産生
ヒトGFP cDNAクローンは、Origene(メリーランド州ロックビル)から入手した。GFP cDNAはさらに、ハイブリッドニワトリβ-アクチンプロモーター(CB)、CMVエンハンサープロモーター、またはP546プロモーター下で、自己相補的AAV9ゲノムまたはAnc80ゲノムにサブクローニングされin vitroおよびin vivoで試験した。AAV2 ITR間に挿入されたGFP cDNAを示すプラスミド構築物の概略図を
図1に示す。プラスミド構築物はまた、1つ以上のCBプロモーター、シミアンウイルス40(SV40)キメライントロンなどのイントロン、およびウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル(BGH PolyA)を含むものであった。
図1の構築物を、AAV9ゲノムまたはAnc80ゲノム(総称して「AAV」と称する)のいずれかにパッケージ化した。
【0076】
実施例2
ノイラミニダーゼとの組み合わせによるscAAV9.CB.GFPの硝子体内注入
マウスを上記のように麻酔し、硝子体内注入に供した。30Gの針で腰部および強膜の間に小さな切開を形成させた。ハミルトン注入器にチューブで取り付けられた細いガラスピペットを使用した切開、または30G針およびハミルトン注入器を介して、ウイルスまたはビヒクルを硝子体腔に送達する。注入の前後に、オプテインおよびベトロポリシンを局所投与し、マウスを標準治療(回復のための加熱ケージ、ケージ底の餌料、長いシッパーチューブ)を介して回復させ、安定するまで監視する。
【0077】
scAAV9.CB.GFPを1回の硝子体内注入でマウス(1~5か月齢)に投与し、2か月のコースにわたり、様々な時点で発現をモニターした。AAVおよびAnc80を、PBSで希釈し、または直接のrAAV注入により、9×10
9~3.2×10
10VGの範囲の用量で投与した。さらに、rAAVを、ノイラミニダーゼと同時に、またはノイラミニダーゼなしで、1回の硝子体内注入により投与した。同時投与の場合、rAAVを注入直前にノイラミニダーゼと混合し、単一の溶液として投与した。
図2Aに示すように、硝子体内注入は網膜でのGFPの発現をもたらす。さらに、ノイラミニダーゼとの組み合わせによるscAAV9.CB.GFPの投与は、網膜の外層への導入遺伝子の浸透を増強した。網膜染色マーカーの概略を以下に示す。
【表2】
【0078】
カルレチニンは水平細胞のマーカー(赤い染色)であり、網膜の内顆粒層を染色する。
図2Bに示すように、AAV9.CB.GFPの硝子体内注入により、導入遺伝子が水平細胞に送達され、ノイラミニダーゼが導入遺伝子の網膜内顆粒層への浸透を促進した。
【0079】
Otx2は、すべての双極細胞の核マーカー(赤い染色)であり、網膜の内顆粒層を染色する。
図2Cに示すように、AAV9.CB.GFPの硝子体内注入により、導入遺伝子が双極細胞に送達され、ノイラミニダーゼが導入遺伝子の網膜内顆粒層への浸透を促進した。
【0080】
Pax6は、アマクリン細胞のマーカー(赤い染色)であり、網膜の内顆粒層を染色する。
図2Dに示すように、AAV9.CB.GFPの硝子体内注入により、導入遺伝子がアマクリン細胞に送達され、ノイラミニダーゼが導入遺伝子の網膜内顆粒層への浸透を促進した。
【0081】
Sox2は、ミューラーグリア細胞のマーカー(赤い染色)であり、網膜の内層のすべての核を染色する。
図2Eに示すように、AAV9.CB.GFPの硝子体内注入により、導入遺伝子がミューラーグリア細胞に送達され、ノイラミニダーゼが導入遺伝子の網膜内顆粒層への浸透を促進した。
【0082】
実施例3
図3に示すように、8週齢の野生型マウスの形質導入に対するノイラミニダーゼの効果をさらに解析するため、ノイラミニダーゼの有無において、AAV9.CB.GFPの硝子体内注入を実施した。実施例2に詳細に記載されるように、約2×10
10vgのAAV9.CB.GFPをマウスに注入した。
図4Aおよび
図4Bの網膜組織を、導入遺伝子GFPおよび双極細胞特異的マーカーOtx2で染色した。AAVベクターの硝子体内注入の前または後のいずれかにノイラミニダーゼを添加すると、双極細胞へのウイルス形質導入が顕著に増加した(
図4Cを参照)。
【0083】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載しているが、そのような実施形態が例としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換を思い付くであろう。本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替形態を採用してもよいことを理解されたい。以下の請求項が本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物がそれによって包含されることが意図される。
【0084】
本出願で参照されるすべての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0085】
参考文献
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【化1】
【化2-1】
【化2-2】
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【国際調査報告】