(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】オキシム再循環を伴うヒドラジン水和物の改善された製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 241/02 20060101AFI20220715BHJP
C07C 243/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C07C241/02
C07C243/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568627
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 FR2020050788
(87)【国際公開番号】W WO2020229773
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セージ、ジャン-マルク
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC59
4H006BB31
4H006BC10
4H006BD33
(57)【要約】
本発明は、活性化剤の存在下で、アンモニアを過酸化水素で酸化することにより、メチルエチルケトンから得られるメチルエチルケトンアジンからヒドラジン水和物を製造する改良方法であって、メチルエチルケトンオキシムのパージを再循環する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程と、
得られたメチルエチルケトンアジンを加水分解してヒドラジン水和物を生成する工程であって、ここで前記加水分解工程中、メチルエチルケトンオキシムがパージされる工程と、
を含み、
前記メチルエチルケトンオキシムのパージを前記加水分解工程の上流に再循環する、ヒドラジン水和物の製造方法。
【請求項2】
(a)アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程;
(b)工程(a)の反応混合物を処理して、
前記活性化剤を含む水性相、及び
前記得られたアジン及びメチルエチルケトンオキシム並びに任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトンを含む有機相、
を分離する工程;
(c)任意に(optionally)、前記水相を、任意に行われる(optional)処理の後、工程(a)に再循環する工程;
(d)前記有機相を洗浄、好ましくは向流洗浄する工程;
(e) 任意に(optionally)、洗浄した前記有機相を蒸留してアジンを回収する工程;
(f)アジンを加水分解して、ヒドラジン水和物を生成し、メチルエチルケトンを再生するとともに、メチルエチルケトンオキシムをパージする工程;
(g) 任意に(optionally)、工程(f)で得られたメチルエチルケトンを工程(a)に再循環する工程;
(h)工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する工程、
を含む、請求項1に記載のヒドラジン水和物の製造方法。
【請求項3】
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、工程(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、有機相洗浄工程(d)に再循環する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、前記有機相洗浄を水の添加無しに行うために十分である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、引出しによって、好ましくは連続的な側方取り出しによって実施される、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記再循環工程(h)が連続的に行われる、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
アジン加水分解及びメチルエチルケトン再生工程(f)が、充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔中で実施され、前記充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔は、好ましくは2~25バールの圧力及び150℃~200℃の底部温度で運転している、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
メチルエチルケトンオキシムの量が、前記トレイにおける液相の全重量に対して、又はメチルエチルケトンオキシムの濃度が最大となる塔のパーツ内における液相の全重量に対して、20重量%以下、好ましくは5重量%~13重量%である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記活性化剤がアセトアミドである、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドラジン水和物の製造方法に関する。更に具体的には、本発明は、メチルエチルケトンの存在下で、過酸化水素及び活性化剤を用いてアンモニアを酸化することによって得られるメチルエチルケトンアジンからヒドラジン水和物を調製するための改良された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドラジンは、様々な異なる用途、主に(例えば原子力発電所の)ボイラー水の脱酸素に使用され、また、医薬誘導体及び農薬誘導体の調製に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、ヒドラジン水和物の製造のための工業的必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ヒドラジン水和物は、ラシヒ法、バイエル法、または過酸化水素法により工業的に製造される。
【0005】
ラシヒ法では、アンモニアを次亜塩素酸塩で酸化してヒドラジン水和物希釈溶液を得るが、その後、この溶液を蒸留によって濃縮しなければならない。この方法はあまり選択されず、比較的非生産的であり、非常に汚染的であり、事実上もはや使用されていない。
【0006】
バイエル法は、ラシヒ法の代替方法であり、アジン形態(CH3)2C=N-N=C-(CH3)2で形成されるヒドラジンを、アセトンを用いて捕捉することによって化学平衡をシフトさせることを含む。
続いてアジンを単離し、ヒドラジン水和物に加水分解する。収率は改善されるが、環境への排出物に関しては改善がみられない。
【0007】
過酸化水素法は、過酸化水素を活性化する手段の存在下でアンモニアとケトンとの混合物を過酸化水素で酸化し、続いて、加水分解してヒドラジン水和物とするのに十分なアジンを直接形成することを含む。収率は高く、この方法は汚染的ではない。この過酸化水素を用いる方法に関する多数の特許文献があり、例えば、米国特許第 3,972,878号、第3,972,876号、第3,948,902号及び第4,093,656に記載されている。
【0008】
アジンからヒドラジン水和物への加水分解は、米国特許第4,724,133号(Schirmannら)、第4,725,421号(Schirmannら)及び英国特許GB 1,164,460号に開示されている。この加水分解は、水及びアジンが供給される蒸留塔で行われる。ケトンはその頂部で回収され、ヒドラジン水和物は底部で回収される。
【0009】
これらの方法は、ウルマンの工業化学百科辞典(Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry)(1989年)、A13巻、182~183頁及びそこに含まれる参考文献にも記載されている。
【0010】
過酸化水素法では、アジンが形成される以下の全体的な反応に従い、ケトン及び過酸化水素を活性化するための手段の存在下で、アンモニアを過酸化水素で酸化する。
【0011】
【0012】
活性化の手段(活性化剤)は、ニトリル、アミド、カルボン酸、又はセレン、アンチモン若しくはヒ素誘導体であってもよい。次に、以下の反応に従い、アジンを加水分解してヒドラジンとし、ケトンは下記反応に従い再生させる。
【0013】
【0014】
この加水分解は、ヒドラゾン中間体の形成を伴って、実際には2段階で行われる。
【0015】
【0016】
アジンが過酸化水素法で製造されようと、別の方法で製造されようと、メチルエチルケトンは水性媒体中での溶解度が小さいため有利に用いられる。
【0017】
過酸化水素法においては、30重量%~70重量%濃度の市販の過酸化水素水溶液が用いられるために必然的に水性である反応混合物中で、メチルエチルケトンアジンは比較的不溶性である。従って、このアジンは回収が容易であり、単にデカントすることによって単離することができる。これは、特にアルカリ性環境下において、すなわち、アンモニア性反応混合物中で非常に安定である。この方法では、続いてこのアジンを反応性蒸留塔で精製した後、加水分解して、最終的には、再循環されるメチルエチルケトンを頂部で放出し、そして特に不純物として含まれる炭素質生成物が可能な限り少なく、かつ無色であることが所望されるヒドラジン水和物を底部で放出する。
【0018】
メチルエチルケトン(MEKとも称する)を使用するこれらの過酸化水素プロセスでは、しかしながら、少量の副生成物であるメチルエチルケトンのオキシム(MEKオキシム)が形成され、これが存在することによってプロセスの円滑な操作が妨げられる。MEKオキシムは以下の式を有する。
【0019】
【0020】
MEKオキシムは、主として加水分解工程の上流で、アジン合成工程及び合成工程から出る際の水相の任意の処理の間に形成される。この副生成物は加水分解塔のトレイ上に蓄積して塔操作上の問題を引き起こし、また、一定濃度を超える副生成物の蓄積により、ヒドラジン分解の問題を引き起こし得る。メチルエチルケトンオキシムの量は、塔のトレイにおける液相の全重量に対して、又はメチルエチルケトンオキシムの濃度が最大となる塔のパーツ内における液相の全重量に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは5重量%~13重量%である。
【0021】
残念ながら、MEKオキシムは蒸留によって主生成物であるアジンから分離することが困難であり、その結果、工業プロセスにおいては、それらは、アジンからヒドラジン水和物への加水分解を可能にする装置に同時に搬送される。加水分解が、反応トレイ塔などの蒸留塔中で行われる場合、オキシムは塔中の特定の位置(例えば、特定のトレイ上)で濃縮される。ヒドラジン水和物の異常分解も観察され、これが収率の大幅な低下を引き起こす。
【0022】
従って、オキシム、より具体的にはMEKオキシムなどの副生成物の処理に関して改善されたヒドラジン水和物を製造するための工業的方法が必要とされている。
【0023】
文献WO 99/58446には、アジンがヒドラジン水和物に加水分解される工程中にメチルエチルケトンオキシムをパージすることが記載されている。水相から分離した後に得られるアジンは、未反応のメチルエチルケトン及びMEKオキシムを含む種々の副生成物を伴うことが記載されている。
【0024】
しかしながら、この文献には、このパージのいかなる処理に関しても教示がない。
【0025】
従って、副生成物が、より経済的で、より環境に優しい方法で処理される、ヒドラジン水和物を調製するための改善された方法が必要とされている。
【0026】
驚くべきことに、本発明者は、MEKオキシムのパージを加水分解工程の上流で再循環させると、平衡レジームが確立され、プロセスにおいてオキシムの量が安定化し、加水分解塔の満足な操作を可能にすることを見出した。
【0027】
実際に、再循環されたオキシムの一部が加水分解条件下で消費され、予想に反して、プロセス中のオキシム濃度の安定化達成を可能にし、増加しないことが見出された。
【0028】
本発明によるオキシムパージの再循環は、多くの利点を有する。ヒドラジンへの中間体である、アジン及びヒドラゾンを含有する流出液の排出が回避され、一方でオキシム副生成物は、操作を追加することなく、又はプロセスに追加のコストをかけることなく、プロセスから除去される。
【0029】
オキシム含有流出液が排出される場合には、それが環境中に放出される前に、例えば焼却又は酸化処理のような追加の処理が必要とされるであろう。
【0030】
本発明に係るプロセスでは、ヒドラゾン及びアジンが加水分解を介してヒドラジン水和物となるため、オキシムパージに含有され得るアジン化合物及びヒドラゾン化合物を保持する。また、複雑な単位操作をプロセスに加えることなく、形成されたオキシムを除去することを可能にする。「アジン」は特に、メカジンとも呼ばれるメチルエチルケトンのアジンを指す。
【0031】
従って、本発明は、
アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジン(及び、任意に(optionally)メチルエチルケトンオキシム)を生成する工程と、
得られたメチルエチルケトンアジンを加水分解してヒドラジン水和物を生成する工程であって、ここで前記加水分解工程中、メチルエチルケトンオキシムがパージされる工程と、
を含み、
前記メチルエチルケトンオキシムのパージを前記加水分解工程の上流に再循環する、ヒドラジン水和物の製造方法、に関する。
【0032】
アジンの形成中に、メチルエチルケトンオキシム副生成物も形成されることが理解されるであろう。
【0033】
本発明はより詳細にはヒドラジン水和物を調製するための方法に関し、以下の工程を含む。
【0034】
(a)アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程
(b)工程(a)からの反応混合物を処理して、
前記少なくとも1つの活性化剤を含む水性相、及び
前記得られたアジン及びメチルエチルケトンオキシム並びに任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトンを含む有機相、
を分離する工程
(c)任意に(optionally)、前記水相を、任意に行われる(optionally)処理の後、工程(a)に再循環する工程
(d)前記有機相を洗浄、好ましくは向流洗浄する工程
(e) 任意に(optionally)、洗浄した前記有機相を蒸留してアジンを回収する工程
(f)アジンを加水分解して、ヒドラジン水和物を生成し、メチルエチルケトンを再生するとともに、メチルエチルケトンオキシムをパージする工程
(g) 任意に(optionally)、工程(f)で得られたメチルエチルケトンを工程(a)に再循環する工程
(h)工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する工程
【0035】
本発明によれば、MEKオキシムのパージは、加水分解工程(f)の上流で行われる。オキシムパージはMEKオキシムを含むが、アジン、ヒドラゾン及び水を含む場合もある。このパージは、特に水性形態である。
【0036】
本方法の一連の工程は、好ましくは連続的に実施される。
【0037】
工程(a):メチルエチルケトンアジンの形成
【0038】
工程(a)において、アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジン、すなわちメチルエチルケトンアジンを生成する。
【0039】
アンモニアは、無水であっても、水溶液であってもよい。
【0040】
過酸化水素は通常市販されている形態、例えば、30重量%~90重量%のH2O2を含む水溶液として用いることができる。過酸化物溶液には、1種以上の慣用の安定化剤、例えばリン酸、ピロリン酸、クエン酸、ニトリロ三酢酸もしくはエチレンジアミン四酢酸、又はこれらの酸のアンモニウムもしくはアルカリ金属塩を有利に添加することができる。使用される量は、反応器導入口において、反応物及び少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の全量に対して10~1000ppm、好ましくは50~250ppmであると有利である。
【0041】
活性化剤とは、過酸化水素を活性化させる化合物、すなわち、アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンからアジンを生成させる化合物をいう。
【0042】
この活性化剤は、有機若しくは無機オキシ酸、それらのアンモニウム塩、及びそれらの誘導体:無水物、エステル、アミド、ニトリル、アシル過酸化物、又はそれらの混合物から選択することができる。アミド、アンモニウム塩及びニトリルを用いることが有利である。
【0043】
例として、(i)式R5COOH(式中、R5は、水素、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3~12個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル基、又は、無置換の又は置換されていてもよいフェニル基である)のカルボン酸のアミド、又は(ii)式R6(COOH)n(式中、R6は1~10個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、nは2以上の整数であるか、又はR6は単結合であってもよく、この場合nは2の価である)のポリカルボン酸のアミドを挙げることができる。
【0044】
R5基及びR6基は、ハロゲン又はOH、NO2若しくはメトキシ基で置換されていてもよい。ヒ素の有機酸のアミドを挙げることもできる。ヒ素の有機酸は、例えば、メチルアルソン酸、フェニルアルソン酸、及びカコジル酸である。
【0045】
好ましいアミドはホルムアミド、アセトアミド、モノクロロアセトアミド及びプロピオンアミドであり、より好ましくはアセトアミドである。
【0046】
アンモニウム塩として、水素酸、無機オキシ酸、アリールスルホン酸、式R5COOHの酸若しくは式R6(COOH)nの酸(式中、R5、R6及びnは上記で定義されているとおりである)、又はヒ素の有機酸、の塩を用いることが有利である。
【0047】
好ましいアンモニウム塩は、ギ酸塩、酢酸塩、モノクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、フェニルアルソン酸塩及びカコジル酸塩である。
【0048】
ニトリルとしては、式R7(CN)nの化合物(式中、nは、R7の原子価に依存して1~5に変化することが可能であり、R7は、1~12個の炭素原子を有する環状若しくは非環状アルキル又はベンゼン若しくはピリジンである)が有利である。R7は、工程(a)の反応器内において酸化されない基、例えば、ハロゲン、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン基、ヒドロキシル基又はスルホン酸基で置換することができる。
【0049】
好ましいニトリルは、アセトニトリル及びプロピオニトリルである。
【0050】
少なくとも1つの活性化剤を含む溶液は、有機又は無機オキシ酸、それらのアンモニウム塩及びそれらの誘導体:例えば上記したとおり、無水物、エステル、アミド、ニトリル、アシル過酸化物又はそれらの混合物、から選択される化合物を一つ以上溶解することによって形成される。前述のアミド、アンモニウム塩又はニトリルを用いることが有利である。単一の活性化剤、すなわちアセトアミドを使用することが特に好ましい。
【0051】
前記溶液は、水溶液であってもよく、又はアルコールに基づく溶液若しくはアルコールと水の混合物に基づく溶液であってもよい。アルコールのうち、1~6個の炭素原子、好ましくは1~2個の炭素原子を有する飽和脂肪族アルコールを用いることが有利である。
【0052】
ジオール、更に詳細には、2~5個の炭素原子を有するジオールを用いることも有利である。例えば、グリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、並びに1,5-ペンタンジオールを挙げることができる。
【0053】
一実施形態では、前記溶液は、ヒ素の有機酸のアルコール溶液であってもよく、これは欧州特許EP70,155号に開示されている。
【0054】
別の実施形態では、前記溶液は、欧州特許EP487,160号に開示された、弱酸のアミドの水溶液及びこの酸に対応するアンモニウム塩の水溶液であってもよい。
【0055】
これらの弱酸のアミドは、3x10-3未満の解離定数を有する対応するカルボン酸、すなわち、25℃において水溶液中で3を超えるpKを有する酸から誘導される。
【0056】
ポリカルボン酸に関しては、これらは第一イオン化定数が3x10-3未満の酸である。
【0057】
例として、式R8COOH(式中、R8は、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基又は3~12個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル基又は、無置換の又は置換されていてもよいフェニル基である)のカルボン酸、式R9(COOH)n(式中、R9は1~10個の炭素原子を有するアルキレン基を表わし、この場合nは2以上である。又はR9は単結合であってもよく、この場合nは2である)のポリカルボン酸を挙げることができる。R8基及びR9基は、ハロゲン又はOH、NO2若しくはメトキシ基で置換されていてもよい。アセトアミド、プロピオンアミド、n-ブチルアミド又はイソブチルアミドを用いることが好ましい。
【0058】
アセトアミドに対応するアンモニウム塩は酢酸アンモニウムである。
【0059】
アンモニウム塩をその場で形成すること、すなわち、アンモニアとの反応によってアンモニウム塩をもたらす対応するカルボン酸を用いることは、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0060】
アミドと対応するアンモニウム塩との割合は、広い範囲内で変化させることができる。通常、5部のアミドに対して1~25部、好ましくは2~10部のアンモニウム塩が用いられる。
【0061】
これらの反応体は、化学量論量で用いてもよいが、過酸化物1molに対して、0.2~5mol、好ましくは1.5~4molのメチルエチルケトン、及び0.1~10mol、好ましくは1.5~4molのアンモニアを用いることができる。少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の量は、過酸化水素1molに対して、0.1~2kgの間であってよい。この量は、その品質、すなわち、その触媒力、つまり、反応体をアジンに変換することを可能にするその活性に依存する。上記で規定された反応体の割合によれば、過酸化水素の完全な変換、及び、投入した過酸化水素の50%を上回り、90%にも到達し得るものに相当するアジンの生成を可能にする。
【0062】
過酸化水素、アンモニア及びメチルエチルケトンは、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液と任意の方法で接触させることができる。
【0063】
この操作には、均一媒体、又は少なくともアジンの生成を可能にするのに十分な反応体の可溶化を確実にする媒体を使用することができる。反応は、非常に幅広い温度範囲、例えば、0~100℃の間で行うことができ、30~70℃の間で行うことが有利である。任意の圧力で操作可能であるが、大気圧で行うことがより簡単である。しかしながら、工程(a)の反応を液相に好ましく維持するために必要である場合には、圧力を約10バールまで上昇させることができる。
【0064】
反応体は、同時に又は別々に、及び任意の順序で、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液中に導入することができる。
【0065】
全ての種類の反応器を、それが攪拌であっても非攪拌であっても、単純なタンクでさえ用いることが可能であり、これらは並列に配列しても、若しくは直列に配列してもよく、並流式で、若しくは向流式で、又はこれらの可能性のあるあらゆる組み合わせで配置することができる。
【0066】
これにより工程(a)の反応の後、形成されたアジン及びメチルエチルケトンオキシムを含み、任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトン、任意に(optionally)活性化剤、及び任意に(optionally)他の副生成物又は不純物を含む反応混合物が得られる。
【0067】
工程(b):相分離
【0068】
活性化剤を含む水相は、形成されたアジン及びメチルエチルケトンオキシムを含み、任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトンを含む有機相から、液-液抽出、蒸留、デカンテーション、又はこれらの可能性のあるあらゆる組み合わせなどの既知の手段を用いて分離される。デカンテーションが好ましく使用される。
【0069】
得られた有機相には、形成されたアジン及びメチルエチルケトンオキシム、未反応のメチルエチルケトン、活性化剤、並びに任意に(optionally)他の不純物が含まれ得る。
【0070】
工程(c):水相の再循環
【0071】
工程(c)において、水相を工程(a)への再循環の前に処理してもよく、例えば、任意に行う(optional)後続の濃縮を伴う熱再生によって処理されてもよい。
工程(a)、(b)及び(c)は例えば、欧州特許第399 866号及び欧州特許第 518 728号に記載されている。
【0072】
工程(d):有機相の洗浄
【0073】
工程(b)で得られた有機相を洗浄する工程は、当業者に公知の技術によって実施することができる工程であり、例えばWO2018/065997(p.13、「有機層処理セクション」、第2段落)に示されている。特に、洗浄工程では、恐らく有機相中に依然として存在する活性化剤、例えばアセトアミドを回収することができる。
【0074】
洗浄は向流洗浄塔中で行ってもよい。
【0075】
洗浄は、加水分解工程(f)で行われるオキシムパージによって、任意に(optionally)水の添加後に向流的に行われることが好ましい。洗浄は、オキシムパージの全部又は一部によって行うことができる。パージが水を添加せずに洗浄を行うのに十分であることがより好ましく、これにより、工程において追加で水を取り込むことを節約することができる。
【0076】
例えば、上記で定義したオキシムパージは塔頂部で添加され、洗浄される有機相は塔底部で添加される。有機相中に依然として存在する可能性のある活性化剤は、従って水性洗浄相中に移行する(すなわち、オキシムパージ)。
【0077】
一実施形態では、洗浄塔を通過した後、得られた水相は工程(b)で回収された水相と共に工程(a)に再循環されてもよく、又は加水分解塔に直接戻されてもよい。
【0078】
工程(e):有機相の蒸留
【0079】
洗浄された有機相を蒸留する工程は、例えばWO2018/065997(p.13、「有機層処理セクション」)に示されているように、特に蒸留塔において、当業者に知られている技術によって実施することができる工程である。
【0080】
蒸留工程は特に、高沸点の重質不純物からアジンを分離するために使用される。前記不純物は、例えば塔底部で回収される。蒸留工程は、工程(a)で形成されたアジンを未反応メチルエチルケトンから分離するためにも使用され、未反応メチルエチルケトンは塔頂部で回収されてもよい。このようにして回収されたメチルエチルケトンは、アジン合成工程(a)に再循環させてもよい。
【0081】
これにより、洗浄工程及び蒸留工程の後、アジン及びメチルエチルケトンオキシムを含む精製された有機相が得られる。
【0082】
工程(f):アジンの加水分解、MEKの再生及びオキシムのパージ
【0083】
アジンの加水分解とメチルエチルケトンの再生
加水分解工程は、工程(d)又は工程(e)からの、アジン及びオキシムを含む有機相並びに水が注入される反応性蒸留塔中で、加圧下で連続的に行うことが好ましい。
【0084】
加水分解は、充填蒸留塔中又はトレイ蒸留塔中で実施されてもよく、充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔は、好ましくは、2~25バールの圧力下、150℃~200℃の底部温度で運転している。
【0085】
従来の充填塔も適切であり得るが、トレイ塔が一般に使用される。トレイ上での滞留時間及び圧力、並びに運転温度に応じて、トレイの数は大きく変化し得る。実際には8~10バールの圧力下で運転する場合、必要とされるトレイの数は40~50のオーダーである。
【0086】
加水分解の後、
頂部において、メチルエチルケトンが、特に水との共沸混合物の形態で得られ、
底部において、ヒドラジン水和物水溶液が得られる。
【0087】
アジンの加水分解は公知である。例えば、E.C.Gilbertは、Journal of the American Chemical Society、51巻、3397~3409頁(1929年)の論文において、アジンを形成するための平衡反応及びアジンの加水分解反応を記載しており、水溶性アジンの場合の系の熱力学的パラメータを提供している。例えば、アセトンアジンの加水分解は、米国特許第4,724,133号に開示されている。水溶液に不溶性であるアジン(例えば、メチルエチルケトンアジン)については、加水分解は反応塔内で行わなければならず、すなわち、メチルエチルケトンを蒸留塔頂部で、及びヒドラジン水和物を塔底部で連続的に分離することによって完全な加水分解を達成することができる。勿論、フランス特許第1,315,348号、英国特許第1,211,547号、又は米国特許第4,725,421号に開示されたように、この系は操作を連続的に行うと、最良に機能する。
【0088】
これらすべての特許において、反応は、2~25バールの圧力下、150℃~200℃の底部温度で運転している、充填蒸留塔において、又はより好ましくはトレイ蒸留塔において行われる。
【0089】
純粋なアジン、すなわち、ヒドラジン水和物及びメチルエチルケトンから得られるアジンを用いて操作を行うと、これらの特許に従って操作することによって、ヒドラジン水和物希釈溶液が良好な収率で得られることが実際に見出される。
【0090】
この塔において、アジンを加水分解し、ヒドラジン水和物をメチルエチルケトンから分離する。これらの条件は公知である。当業者は、トレイの数又は充填高、並びにアジン及び水の供給点を容易に決定することができる。ヒドラジン水和物を30重量%、又は45重量%までさえも含む溶液が底部で得られる。この塔への供給における、水のアジンに対する(水/アジン)モル比は少なくとも化学量論比を上回り、5~30であると有利であり、好ましくは10~20である。塔底部の温度は150~200℃、好ましくは175~190℃である。圧力は、アジン、水、及びカルボニル基を有する反応体の沸点に依存する。こうした加水分解は、米国特許第4,725,721号及びWO 00/37357に開示されている。
【0091】
工程(a)の反応によって、有機相の総重量に対して5重量%までのオキシムを含有する有機相を生成することができる。工程(a)又は工程(b)の最後に生成される有機相は、0.1重量%~5重量%、例えば1.5重量%~2.5重量%のメチルエチルケトンオキシムを含む。
【0092】
例えば、特許EP 70 155に従って、又は特許EP 399 866、EP 518 728若しくはEP 487 160に従って、過酸化水素を用いる酸化操作から生じるメチルエチルケトンアジンで操作を行う場合、このアジンは純粋ではなくて特定の量のオキシムを含むことが観察され、このオキシムは0.1%~1%のメチルエチルケトンオキシムであり得、その沸点は、大気圧で、メチルエチルケトンアジンが161℃であるのと比較して、151℃である。
【0093】
オキシムのパージ
本発明によれば、MEKオキシムは、加水分解工程(f)の間にパージされる。
当業者は、トレイの数若しくは充填高、アジン供給の位置及び水供給の位置、還流、アジンの性質等によって、その塔のどの部分で最大オキシム濃度が得られるかを容易に決定することができる。実際、オキシムをその最大濃度の点で引出すことによってオキシムをパージすることがより簡単である。引出しは、連続的に又はバッチ方式で、好ましくは連続的に行うことができる。
【0094】
引出し量は、オキシム濃度のガスクロマトグラフィー分析によって容易に決定することができる。
【0095】
文献WO99/58446によれば、オキシムを含むアジンを加水分解塔に導入することが可能である。水との共沸挙動の観点から、このオキシムは、塔中において、ヒドラジン水和物とメチルエチルケトンとの間の位置を占めており、従って、側方取り出しによってかなり容易に分離することができる。
【0096】
従って、好ましくは、メチルエチルケトンオキシムパージは、引出しによって、好ましくは連続的な側方取り出しによって実施される。
【0097】
工程(g):再生されたメチルエチルケトンの再循環
【0098】
工程(f)で得られたメチルエチルケトンは、工程(a)に再循環させることができる。
【0099】
工程(h):オキシムパージの再循環
【0100】
再循環工程(h)は、好ましくは連続的に実施される。工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージは、本発明による方法の工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つ、好ましくは工程(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環させることができる。工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージは、好ましくは有機相洗浄工程(d)に再循環される。
【0101】
オキシムパージは、或いは以下のように再循環されてもよい:
-分離工程(b)から得られた水相に再循環されて、工程(a)に再循環される;
-加水分解塔の頂部で回収されたメチルエチルケトンを用いて、工程(a)に再循環される;又は
-洗浄工程(d)へ再循環される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】本発明によるヒドラジン水和物の製造方法。
図1は、本発明による方法の工業的実施の一例を示す。
【0103】
Aはメカジン合成工程(a)を示し;流れ1は、アンモニア、過酸化水素、必要な補充量の酢酸、酢酸アンモニウム、アセトアミド、又は他の化合物、及び必要な補充量のメチルエチルケトンを含み、更に、合成工程中に使用される種々の添加剤を含んでもよく、例えば、過酸化物安定剤等が挙げられる。流れ13は、熱的に再生、濃縮して過剰の水を除去した後の、工程(c)による水相の再循環に相当する。流れ8は、加水分解工程中に再生され、工程(g)に従って加水分解塔Eからの出口で回収されたメチルエチルケトンの再循環に相当する。
【0104】
Bは、アジン合成工程(a)の出口にある沈降器を示し、反応混合物2を受容する。これにより、工程(b)のとおり、粗メカジンを含有し流れ3に対応する有機相と、活性化剤(例えばアセトアミド)を含有し流れ4に対応する水相とに分けることができる。
【0105】
Cは、工程(d)による向流洗浄塔を示す。有機相、すなわち流れ3は、Cの塔底部で導入され、流れ10により向流洗浄される。流れ10は、工程(h)によるアジン加水分解塔Eのトレイから抽出されたメチルエチルケトンオキシムのパージに対応する。次いで、洗浄塔Cからの出口での水相に相当する流れ12を、セクションGに送る。セクションGは、水相を流れ4とともに熱再生及び濃縮する工程に相当する。
【0106】
洗浄された有機相、すなわち流れ5は、蒸留塔Dに送られ、工程(e)による精製が行われる。この塔を用いて、Aで再循環される少量のメチルエチルケトンを頂部で回収し、アジン中に存在する重質不純物を底部で除去することが可能である(図示せず)。
【0107】
次いで、蒸留したアジンを含む有機相、すなわち流れ6は加水分解塔Eに送られる。加水分解塔Eは加圧下で稼働する蒸留塔である。蒸留されたアジン6は、加水分解に必要な水、すなわち流れ7とともに、塔Eに導入される。
【0108】
加水分解工程(f)の後、頂部で、蒸気の凝縮及びF中でのデカンテーションの後、主にメチルエチルケトン、水及び少量のアジンを含む流れ8が得られる。この相をアジン合成工程Aに再循環させる。
【0109】
デカントした水相、すなわち流れ9を加水分解塔の頂部に送る。
【0110】
流れ11は、塔底部で得られ、回収されたヒドラジン水和物溶液に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0111】
実施例は、単に例示の目的で示すものであり、本発明を限定しない。
【0112】
実施例
実施例1:本発明による製造方法
図1に記載した方法を使用する。
塔Eは、以下の条件下で運転させる:
【0113】
底部温度 178°C~190°C
塔頂コンデンサー温度 160°C
塔頂圧力 7.5 ~ 9.7バール 絶対圧
再沸騰 温度200℃、圧力16 バール
蒸留したアジン6の供給 5000kg/時
水7の供給 10000kg/時
底部でのヒドラジン取り出し ヒドラジン水和物換算で22.2%水溶液12t/h(又はヒドラジンN2H4換算で14.2%)
【0114】
加水分解工程(f)の後、頂部で、蒸気の凝縮及びデカンテーションの後、主にメチルエチルケトン、水及び少量のアジンを含む約6,500kg/時間の有機相、すなわち流れ8を引出す。この相は、アジンAの合成工程に再循環される。
デカントされた水相、すなわち流れ9は、頂部で加水分解塔に戻される。
【0115】
パージ、すなわち流れ10は、メチルエチルケトンオキシムが蓄積する位置で、1477kg/hの速度で加水分解塔のトレイ上で実施される。このパージは、分離器Bから有機相を洗浄するために洗浄塔Cに送られる。
洗浄塔C周囲における流速及び実施された分析を表1に記載する。
【0116】
【0117】
流れ3をオキシムパージ10で洗浄すると、150kg/hのアジンが有機相(流れ5)中に回収されることが分かる。分析上の不確実性を条件として、これは、このパージ10に含まれるアジン37kg及びヒドラゾン88kgの回収に相当する。パージ10に含まれるオキシムは、洗浄塔からの出口でアジン5の流れの中にほぼ定量的に送られる。
【0118】
加水分解塔E周囲で実施された分析を表2に記載する。
【0119】
【0120】
本発明のプロセスをパージ10の再循環を伴って実施する場合、主に塔E中のアジンの加水分解の間にオキシムが消費されることが分かる。
【0121】
流れ3(表1)はアジンAの合成工程及び水相Gの熱再生の工程による加水分解の上流で生成された154kg/hのオキシムを表す。この生成は、洗浄工程Cと加水分解Eとの間、すなわち流れ5(318kg/hのオキシム)と流れ10との間で生じるオキシムの損失を十分に補填し、318-171=147kg/hのオキシムの消費に対応して、171kg/hでオキシムを再循環させる。
【0122】
オキシムは加水分解塔Eのトレイ上に11%の濃度で残っているが、本発明の方法では増加しないことがわかる。
【手続補正書】
【提出日】2021-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程と、
得られたメチルエチルケトンアジンを加水分解してヒドラジン水和物を生成する工程であって、ここで前記加水分解工程中、メチルエチルケトンオキシムがパージされる工程と、
を含み、
前記メチルエチルケトンオキシムのパージを前記加水分解工程の上流に再循環する、ヒドラジン水和物の製造方法。
【請求項2】
(a)アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程;
(b)工程(a)の反応混合物を処理して、
前記活性化剤を含む水性相、及び
前記得られたアジン及びメチルエチルケトンオキシム並びに任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトンを含む有機相、
を分離する工程;
(c)任意に(optionally)、前記水相を、任意に行われる(optional)処理の後、工程(a)に再循環する工程;
(d)前記有機相を洗浄
する工程;
(e) 任意に(optionally)、洗浄した前記有機相を蒸留してアジンを回収する工程;
(f)アジンを加水分解して、ヒドラジン水和物を生成し、メチルエチルケトンを再生するとともに、メチルエチルケトンオキシムをパージする工程;
(g) 任意に(optionally)、工程(f)で得られたメチルエチルケトンを工程(a)に再循環する工程;
(h)工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する工程、
を含む、請求項1に記載のヒドラジン水和物の製造方法。
【請求項3】
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、工程(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、有機相洗浄工程(d)に再循環する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、前記有機相洗浄を水の添加無しに行うために十分である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、引出しによって
実施される、
請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記再循環工程(h)が連続的に行われる、
請求項2~請求項6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
アジン加水分解及びメチルエチルケトン再生工程(f)が、充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔中で実施され、前記充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔は、
2~25バールの圧力及び150℃~200℃の底部温度で運転している、
請求項2~請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
メチルエチルケトンオキシムの量が、前記トレイにおける液相の全重量に対して、又はメチルエチルケトンオキシムの濃度が最大となる塔のパーツ内における液相の全重量に対して、20重量%以下
である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記活性化剤がアセトアミドである、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
オキシムは加水分解塔Eのトレイ上に11%の濃度で残っているが、本発明の方法では増加しないことがわかる。
<付記>
本開示は以下の態様を含む。
<項1>
アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程と、
得られたメチルエチルケトンアジンを加水分解してヒドラジン水和物を生成する工程であって、ここで前記加水分解工程中、メチルエチルケトンオキシムがパージされる工程と、
を含み、
前記メチルエチルケトンオキシムのパージを前記加水分解工程の上流に再循環する、ヒドラジン水和物の製造方法。
<項2>
(a)アンモニア、過酸化水素及びメチルエチルケトンを、少なくとも1つの活性化剤を含む溶液の存在下で反応させて、アジンを生成する工程;
(b)工程(a)の反応混合物を処理して、
前記活性化剤を含む水性相、及び
前記得られたアジン及びメチルエチルケトンオキシム並びに任意に(optionally)未反応のメチルエチルケトンを含む有機相、
を分離する工程;
(c)任意に(optionally)、前記水相を、任意に行われる(optional)処理の後、工程(a)に再循環する工程;
(d)前記有機相を洗浄、好ましくは向流洗浄する工程;
(e) 任意に(optionally)、洗浄した前記有機相を蒸留してアジンを回収する工程;
(f)アジンを加水分解して、ヒドラジン水和物を生成し、メチルエチルケトンを再生するとともに、メチルエチルケトンオキシムをパージする工程;
(g) 任意に(optionally)、工程(f)で得られたメチルエチルケトンを工程(a)に再循環する工程;
(h)工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを工程(a)、(b)、(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する工程、
を含む、項1に記載のヒドラジン水和物の製造方法。
<項3>
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、工程(c)、(d)及び(g)のうち少なくとも1つに再循環する、項2に記載の製造方法。
<項4>
工程(f)で得られたメチルエチルケトンオキシムのパージを、有機相洗浄工程(d)に再循環する、項2に記載の製造方法。
<項5>
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、前記有機相洗浄を水の添加無しに行うために十分である、項4に記載の製造方法。
<項6>
前記メチルエチルケトンオキシムのパージが、引出しによって、好ましくは連続的な側方取り出しによって実施される、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
<項7>
前記再循環工程(h)が連続的に行われる、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
<項8>
アジン加水分解及びメチルエチルケトン再生工程(f)が、充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔中で実施され、前記充填蒸留塔又はトレイ蒸留塔は、好ましくは2~25バールの圧力及び150℃~200℃の底部温度で運転している、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
<項9>
メチルエチルケトンオキシムの量が、前記トレイにおける液相の全重量に対して、又はメチルエチルケトンオキシムの濃度が最大となる塔のパーツ内における液相の全重量に対して、20重量%以下、好ましくは5重量%~13重量%である、項8に記載の製造方法。
<項10>
前記活性化剤がアセトアミドである、先行するいずれか1項に記載の製造方法。
【国際調査報告】