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  • 特表-溶融塩浴中での酸化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】溶融塩浴中での酸化方法
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/57 20060101AFI20220715BHJP
   C10B 49/14 20060101ALI20220715BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20220715BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220715BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220715BHJP
【FI】
C10J3/57 A
C10B49/14
C10J3/00 L
B09B3/00 303A
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568735
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2020063512
(87)【国際公開番号】W WO2020234121
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】1905204
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509265302
【氏名又は名称】アンスティテュ・ポリテクニック・ドゥ・グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】521502481
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・サヴォワ・モン・ブラン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファルーク・テジャール
(72)【発明者】
【氏名】エリック・シェイネ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・フールティエ
(72)【発明者】
【氏名】マギー・ナーラ
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA28
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA29
4D004CB01
4D004CB31
4D004CB33
4D004CC09
4D004CC12
4D004DA03
4D004DA06
(57)【要約】
溶融塩浴中での酸化方法:本発明は、以下のステップを含む、溶融塩浴中で有機成分を含む廃棄物を再利用する方法に関する:反応器に、少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物を含む、少なくとも1つの塩又は塩類の混合物を入れるステップ(1);反応器に廃棄物を入れるステップ(2);前記の塩の融点より高い温度に反応器を加熱するステップ(3)。したがって、投入した塩は溶融して液体反応媒体を形成し、有機成分の少なくとも部分的な酸化を引きおこす(4)。この酸化(4)によって生じる少なくとも1つの化合物が回収される(5)。少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物は結晶水を含み、それが二水素(H)の生成に関与するように、反応媒体中の有機化合物に対する酸化剤として作用し、二水素はその再利用のために回収される(52)。(図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塩(1又は複数の塩)の浴中で、有機成分を含む廃棄物を再利用するための方法であって、以下のステップ:
- 反応器に、少なくとも1つの塩又は塩類の混合物を入れるステップ(1)であって、そのうちの少なくとも1つの塩が、少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物を含むステップ;
- 廃棄物を反応器に入れるステップ;
- 前記塩又は塩類の混合物の融点より高い温度に反応器を加熱(3)して、
・入れられた前記塩又は塩類の混合物(1)を溶融し、それによって液体反応媒体を形成し;次いで、
・入れられた廃棄物(2)の有機成分の少なくとも部分的な酸化(4)を引きおこすステップ;及び
- 前記の有機化合物の酸化によって生じる少なくとも1つの化合物を回収(5)するステップ、
を含み、
前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物は、結晶水を含み、反応媒体中で有機化合物に対する酸化剤として作用して、二水素(H)の生成を引きおこし、後者は、酸化によって生じる化合物として、その再利用のために回収される(52)、
方法。
【請求項2】
反応器に入れられる廃棄物(2)が金属成分をさらに含み、反応器が前記の金属成分の沸点よりも低い温度で加熱され、前記の方法が、反応媒体の金属成分を濾過することによって回収するステップ(6)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記廃棄物の有機成分の熱分解を防ぐやり方で反応器を加熱する(3)、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物が、低い融点をもつ化合物を形成し、前記化合物が共融混合物であることができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水酸化カリウムが結晶水とともに式KOH+KOH・HOを有する共融混合物を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加熱のステップ(3)が、反応媒体の温度が100℃~450℃となるやり方で構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記廃棄物が自動車のシュレッダーダストを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記廃棄物が固形回収燃料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器が不活性処理ガスを含む雰囲気に維持されている(7)、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器が、前記液体反応媒体に耐性のある材料から作られている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応器内に水以外の酸化剤を添加するステップがない、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機化合物の酸化によって生じる少なくとも1つの化合物を回収するステップ(5)が、生成された二水素(H)を含むガス画分の回収(50)を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反応媒体に、水素化触媒から選択される少なくとも1つの触媒を添加するステップ(8)をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの触媒が、ニッケル又は鉄ベースの金属粒子、あるいはそのような粒子の混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機成分、さらには有機及び金属成分を含む廃棄物を再利用する分野に関する。特に有利な用途には、自動車シュレッダーダスト(automobile shredder residue, ASR)の再利用がある。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは廃棄物の増えている且つかなりの部分を占めているが、まだそのリサイクル及び再利用は少ないままである。
【0003】
一般廃棄物の再利用を容易にするために、一般廃棄物のための分別施設が設置されている。しかし、これらの選別モードは、有機成分を含む廃棄物、特に自動車から生じる廃棄物、より具体的には細断された残留物(シュレッダーダスト)及び/又は使用済み自動車から生じる混合物には適用されない。
【0004】
たとえば、自動車シュレッダーダスト(シュレッダー残留物)は不均一であり、さらに環境に有害な液体の残留物、例えばそれらには限定されないがブレーキフルード、不凍液、モーターオイルの残留物を含む可能性があるので、再利用することが困難である。さらに、これらの自動車シュレッダーダストは、たとえばエアバッグの排出装置から発生する爆発性物質を含んでいる可能性がある。自動車のシュレッダーダストの約90%は、埋め立て地に送られるか、又は焼却プラントで処理される。これらの方法により、これらの残留物の有機成分は、有機及び金属成分でさえ、ごくわずかしか再利用されないか、まったく再利用されない。
【0005】
それでも、物理的分離法、「高温」法、及び湿式製錬法などの、有機成分、さらには有機及び金属成分を含む廃棄物の再利用を可能にする方法が存在する。
【0006】
例えば浮選による混合物中の廃棄物の物理的分離方法は、廃棄物の有機成分と金属成分の分離を可能にする。しかし、回収率は比較的低く、かつ大量の水を使用する必要があり、それは後で排水として処理されなければならない。
【0007】
例えば燃焼による、例として焼却による「高温」法は、大量の二酸化炭素、並びにダイオキシン又はハロゲン水素酸などの有毒ガスを放出する。これらの方法はさらに、850℃~1100℃の温度のヒュームを生成するために約1200℃の高温を必要とし、したがってエネルギーの観点から費用がかかる。
【0008】
湿式製錬法に関しては、それらはかなりの量の酸又は塩基溶液、又はシアン化物を必要とし、したがって、その実施の下流で処理されるかなりの量の流出物を生成する。さらに、これらの方法は金属部品の再利用にのみ関係している。
【0009】
したがって、上述した方法は限界を示している。特に、それらのいずれも、環境へのその影響を制限することによって、有機成分、さらには有機及び金属成分を含む廃棄物の再利用を可能にしてはいない。
【0010】
既存の解決策の中で、溶融塩浴中での酸化は、例えば、直接焼却及び排水の処理が困難である、有害廃棄物及び使用済みタイヤなどの廃棄物の処理に使用される方法である。この方法は、炭酸塩を含む塩又は塩類の混合物、あるいはこれらの化合物と水酸化ナトリウムの混合物の使用に基づいている。前記塩または塩類の混合物は、その溶融温度を超えて加熱されて反応媒体を形成し、前記廃棄物の有機成分の酸化を引きおこす。
【0011】
溶融塩は、有機成分の酸化反応を可能にする幅広い電気化学的安定性を有している。それらの高いイオン伝導性は、反応媒体中での高い交換速度を引きおこす。さらに、それらは環境レベルで実質的な危険を有していない。
【0012】
それは、特に、Flandinetらの文書「溶融塩を使用する、廃プリント回路基板(WPCB)からの金属の回収」, Journal of Hazardous Materials, 213-214, 2012, 485-490によって知られており、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの共融混合物を含む溶融塩を使用する、電子機器から生じる廃棄物を処理する方法である。前記の共融混合物は、170℃の溶融温度を有し、それは低温、特に250℃からの温度において前記廃棄物の有機成分の酸化を可能にしている。したがって、エネルギーコストが削減され、その結果、この方法が環境に与える影響が軽減される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Flandinetら, Journal of Hazardous Materials, 213-214, 2012, 485-490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の点に関連して、本発明は、前述の欠点の少なくとも1つを克服することを可能にする、塩浴中での酸化の代替方法を提案する。
【0015】
より具体的には、本発明による方法は、低減されたエネルギーコストを有しながら、有機成分、さらには有機及び金属成分を含む廃棄物の再利用を可能にすることを目的としている。有利には、本発明による方法はまた、前記の廃棄物の処理時の有害な化合物の放出を制限することも目的としている。
【0016】
本発明のその他の目的、特徴、及び利点は、以下の説明及び添付した図面を検討するときに明らかになる。その他の利点がありえることが理解される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を達成するために、一実施形態によれば、本発明は、溶融塩(1又は複数の塩)の浴中で、有機成分を含む廃棄物を再利用するための方法を提供し、それは以下のステップ:
- 反応器に、少なくとも1つの塩又は塩類の混合物を入れるステップであって、そのうちの少なくとも1つの塩、好ましくは各塩が、少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物を含むステップ;
- 上述した廃棄物を上記反応器に入れるステップ;
- 前記塩又は塩類の混合物の融点より高い温度に反応器を加熱して、入れられた前記塩又は塩類の混合物を溶融し、それによって液体反応媒体を形成し、次いで、入れられた廃棄物の有機成分の少なくとも部分的な、より好ましくは全体的な酸化を引きおこすステップ;及び
- 前記の有機化合物の酸化によって生じる少なくとも1つの化合物を回収するステップ、
を含み、
前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物は、結晶水を含み、反応媒体中の有機化合物に対する酸化剤として作用して、二水素(H)の生成を引きおこし、後者は、酸化によって生じる化合物として、その再利用のために回収される。
【0018】
本発明による方法は、有機成分を含む廃棄物の再利用を、特に、その方法の下流で可燃性ガス又は化学原料として使用することができる二水素(dihydrogen, H)の回収によって再利用を可能にする。さらに、前記の廃棄物の有機成分の酸化が液体媒体中で行われるので、本発明による方法は、有害な化合物の放出を制限し、その結果、その方法の環境への影響を低減することを可能にする。
【0019】
任意選択により場合によっては、本発明は、以下の特徴の少なくともいずれかをさらに有することができる。
【0020】
反応器に入れられる廃棄物は、金属成分をさらに含むことができ、反応器は、前記の金属成分の沸点よりも低い温度で加熱される。好ましくは、反応器は、前記の金属成分の少なくとも一部の溶融温度よりも低い温度に加熱される。前記の方法は、反応媒体の金属成分を濾過によって回収するステップをさらに含むことができる。この特徴による方法は、本発明の好ましい実施形態を構成する。上述した特徴による塩又は塩類(salts)の混合物は、金属に対して腐食性ではなく、すなわち、廃棄物の処理の継続中に金属成分の顕著な酸化反応は起こらない。したがって、この特徴による方法は、これらの金属を後で再利用することを可能にする。さらに、加熱温度は、金属成分の少なくとも一部の溶融温度よりも低くすることができるので、前記の成分の少なくとも一部の溶融が防止される。金属成分は固体状態のままであることができ、したがって、反応器の加熱温度において反応媒体から物理的に分離することができる。
【0021】
反応器は、前記の廃棄物の有機成分の熱分解を防ぐような方法で加熱することができる。好ましくは、反応器は、有機成分の熱分解温度よりも低い温度で加熱することができる。より好ましくは、反応器は、有機成分の少なくとも一部のものの沸点よりも低い温度で加熱することができる。したがって、反応媒体の温度は、塩の融解温度と前記の成分の沸点との間に制限することができる。結果として、有機成分の少なくとも部分的、好ましくは全体的な酸化反応を液体媒体中で実施することができる。これにはいくつかの利点がある。第一に、液体媒体中での有機物の酸化は炭酸塩の生成を引きおこし、それは溶融塩中に閉じ込められる。その結果、記載されているような方法は、二酸化炭素の排出を大幅に削減することができ、かつダイオキシンの放出を防ぐ。第二に、ハロゲン化化合物も溶融塩中に閉じ込められる。したがって、この方法は、ハロゲン化水素酸、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸の放出を防ぎ、ここで臭素化化合物は難燃剤としてしばしば使用され、例えば、ポリブロモジフェニルエーテル類(PBDE)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、及びポリブロモビフェニル類(PBB)である。
【0022】
この方法の実施要素の中で、少なくとも反応器は大気圧であることができる。記載されているものなどの溶融塩は低い蒸気圧を有し、酸化反応は液体媒体中で行われ、この方法は実際に大気圧で行うことができる。
【0023】
前記少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物は、低い融点をもつ化合物を形成することができる。例えば、前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物は、溶融温度が50℃~300℃である化合物を形成することができる。低い融点の化合物を使用することは、反応媒体の形成に必要とされるエネルギーを節約させることができる。その結果、この方法のエネルギーコストは最小限に抑えられる。前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物は、定義された又は定義されていない化合物であることができる。さらに、前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物は、結晶水と共融混合物を形成することができる。前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物と水との間の共融混合物を使用することは、その塩又は塩類の混合物の融点の低下を可能にする。
【0024】
特定の実施形態によれば、前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物は、水酸化カリウムである。より特に、水酸化カリウムは、式KOH+KOH・HO(1:1)の、一水和物部分との共融混合物を形成する。したがって、式KOH+KOH・HOの共融混合物の融点は、実質的に100℃に等しい。
【0025】
本発明による方法の加熱のステップは、反応媒体の温度が100℃~450℃、好ましくは170℃~350℃、さらにより好ましくは170℃~250℃となるように構成することができる。
【0026】
特定の実施形態によれば、廃棄物は、自動車のシュレッダーダストを含むことができる。好ましくは、廃棄物は、自動車のシュレッダーダストから構成されることができる。
【0027】
特定の実施形態によれば、廃棄物は、固形回収燃料を含むことができる。好ましくは、廃棄物は、固形回収燃料から構成されていることができる。
【0028】
この方法の実施要素の中で、少なくとも反応器は、不活性処理ガス、例えばアルゴン又は窒素を含む雰囲気に維持することができる。好ましくは、処理ガスは窒素である。したがって、気相中の生成された二水素(H)と前記の雰囲気との反応は制限され、抑制さえされ、これが爆発のリスクを最小化する。
【0029】
この方法の実施要素の中で、少なくとも反応器は、前記の液体反応媒体に耐性のある材料から作製することができる。好ましくは、反応器は、ステンレス鋼、例えば、炭素鋼、タイプ304及び316のステンレス鋼の範囲から選択さえるステンレス鋼から作製され、あるいはコバルト合金ベース、例えばステライト、又はニッケル合金ベース、例えばインコネル(登録商標)及びハステロイ(登録商標)で作製される。実際に、金属に対してほとんど又は全く腐食性ではない反応媒体を使用すること、並びにハロゲン水素酸の放出を低減することは、この方法の実施要素の少なくともいくつかを形成するためにステンレス鋼を使用することを有利なことに可能にする。特に、反応器はステンレス鋼から作ることができ、廃棄物の処理の期間にわたって反応器の壁の顕著な腐食が生じることはない。
【0030】
特定の実施形態によれば、この方法は、反応器内に水以外の酸化剤を添加するステップがなくてよい。結晶水は、有機化合物の酸化剤として作用し、反応器に別の酸化剤、例えば二酸素(O)を添加することは必要ない。二酸素の添加が回避されるので、生成された二水素(H)に加えて二酸素の存在に関連する爆発のリスクが最小限に抑えられる。さらに、結晶水の存在は、この方法において水の添加を制限することを可能にし、したがって、水の消費量、及びこの方法の下流で処理される流出物の量を減らすことを可能にする。好ましくは、この方法は、アルカリ金属水酸化物に最初に含まれていた結晶水以外の酸化剤を反応器に添加するステップがない。
【0031】
前記の有機化合物の酸化によって生じる前記の少なくとも1つの化合物を回収するステップは、生成された二水素を含むガス画分の回収をさらに含むことができる。前記ガス画分は、生成された二水素に加えて、複数の無害なガス、例えば、メタン、窒素、並びに揮発性有機化合物を含むことができる。これらのガスは、任意選択により場合によってはその再利用のために、当業者に知られている技術によってさらに分離することができる。
【0032】
この方法は、水素化触媒から選択される少なくとも1つの触媒を添加するステップをさらに含むことができる。反応媒体に水素化触媒を添加することは、不均一系触媒作用によるレドックス反応速度を高め、並びに生成される二水素の量を増やすことを可能にする。前記の少なくとも1つの触媒は、金属粒子、例えばニッケル又は鉄ベースの金属粒子、あるいはそのような粒子の混合物を含むことができる。
【0033】
<図の簡単な説明>
本発明の目的及び対象並びに特徴及び利点は、以下の添付する図面によって示される、以下の実施形態の詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の一実施形態による、溶融塩の浴中で有機成分を含む廃棄物を再利用するための方法のステップを示している。
図2図2は、本発明の別の実施形態による、溶融塩の浴中で有機成分を含む廃棄物を再利用するための方法のステップを示している。
【0035】
図面は例として与えられており、本発明を限定するものではない。それらは、本発明の理解を容易にすることを目的とした概略図を構成している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<詳細な説明>
本発明の実施形態の詳細なレビューを開始する前に、本方法の一般的な側面、ならびにおそらく組み合わせて又は代替的に使用される任意選択によって有していてもよい特徴を以下に述べる。
【0037】
本発明による廃棄物の再利用方法は、有機成分を含む全ての種類の廃棄物に関する。より具体的には、この方法は、不均一な廃棄物、すなわち、潜在的に多様な性質の有機成分を含み、さらには金属成分と混合されている廃棄物の再利用に関する。例えば、前記の廃棄物は、電気及び電子機器からの廃棄物;自動車のシュレッダーダスト、特に使用済み自動車(ASR)のシュレッダーによって生じるもの;又は、家庭ごみから生じる固形回収燃料(SRF)であることができる。
【0038】
前記方法は、類似した性質の有機成分を含むように均一に分類された廃棄物の再利用にさらに関係することができる。たとえば、そのような廃棄物は、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレングリコールなどの材料から生じるか、あるいはポリエステル繊維から生じる。別の例によれば、この廃棄物はさらに、油、例えば車両からの使用済み油であるか又はそれらを含むことができる。
【0039】
前記の方法は、使用済みの有機分子、例えば、合成された又は購入したもの、例えば、シュウ酸ナトリウム、エチレングリコール、又はセルロースを用いてさらに試験をした。溶融塩はイオン性媒体であるので、極性結合を持つ分子は一般に可溶であり、以下に説明する温度において容易に酸化可能である。
【0040】
廃棄物が固形の性質を有する場合、前記の廃棄物は、一般に、その方法の上流で、特に選別施設におけるその回収中に、機械的作用、例えば、チッピング、シュレッダー、又は粉砕によって形づけされる。前記の成形が本方法の上流で行われない場合は、本発明による再利用のための方法は、それを反応器に入れる前に廃棄物の形状を整えることを可能にするステップを含むことができる。このように細断された廃棄物は、溶融塩浴中においてその有機成分の酸化に対してより実質的である反応可能な表面を有する。適用可能な場合、前記の方法は、前記の廃棄物の反応可能な表面を増やすために、本方法の上流で実施される形状付与に加えて、形状を付与するための前述のステップを含むことができる。たとえば、廃棄物の機械的形状付与は、5mm未満のサイズを有する小片をもたらす。
【0041】
上述した特徴によれば、この方法に関連する廃棄物は、固体、さらには液体の形態である。しかしながら、ガス状の廃棄物は除外されるべきではなく、前記の廃棄物は、バブリングによって反応媒体に供給することができる。
【0042】
前記の廃棄物の有機成分の酸化を可能にするために、本発明による方法は、少なくとも1つの塩、好ましくは各塩が少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物を含む塩又は塩の混合物、あるいはそのような水酸化物の混合物の使用を含む。前記の少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物は結晶水を含み、結晶水は反応媒体中において有機化合物のための酸化剤として作用する。結晶水はさらに、塩又は塩類の混合物の融点を下げることを可能にすることができる。
【0043】
一般に、そして本発明の枠組みにおいて、「結晶水」という用語は、塩の結晶構造中にある水の分子を指すことが特定される。
【0044】
一般に、そして本発明の枠組みにおいて、「酸化剤」という用語は、レドックス反応中に別の化学種の少なくとも1つの電子を受け取る化合物を意味する。
【0045】
塩の結晶構造中に含まれる場合、結晶水は静電相互作用によって安定化される。したがって、その蒸発は、反応器の加熱のステップの間、より具体的には、液体反応媒体の形成のために入れられた前記の塩又は塩類の混合物の溶融時に、制限される。したがって、結晶水は、特に酸化剤の追加の添加をしないで、有機成分の液相中での酸化を可能にする。
【0046】
さらに、結晶水は二水素(H)の生成を誘発し、これは、以下に示す例を読むと、より明確に現れる利点である。より具体的には、生成される二水素は、少なくとも部分的、大部分、又は完全に、廃棄物による結晶水の還元による結果である。
【0047】
少なくとも1つの塩、好ましくは各塩は、少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物又はそのような水酸化物の混合物を含む。実際、例えばその方法のコストに適合するやり方で、再利用される廃棄物のタイプにしたがって異なるアルカリ金属水酸化物を使用することが有利でありえる。さらに、したがって、前記の水酸化物と、有機成分との、さらには有機及び金属成分との、並びに前記の有機成分の酸化によって生じる化合物との相互作用特性を変えることが可能である。
【0048】
少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物、好ましくは各アルカリ金属水酸化物は、結晶水を含む。例えば、水酸化物は、共融混合物又は定義された相の形態の水酸化ナトリウム、又は好ましくは水酸化カリウムである。
【0049】
少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物は、好ましくは、結晶水と共融混合物を形成する。したがって、共融混合物を用いることは、純粋なアルカリ金属水酸化物の溶融温度よりも低い塩の溶融温度を生じさせ、このことが、反応器の加熱温度を制限することを可能にする。その結果、この方法のより低いエネルギーへの影響が得られる。
【0050】
例として、結晶水を伴うアルカリ水酸化物の主な明確にされた相を以下の表に示し、それはアルカリ金属水酸化物で特徴づけられる主な化合物をまとめている(P. Pascal, Nouveau traite de chimie minerale, Masson及びCie, Volume II(1及び2), Paris, 1963; F.-Z. Roki, M.-N. Ohnet, S. Fillet, C. Chatillon, I. Nuta, J. Chem. Thermodynamics, 80, 2015, 147-160)。
【0051】
【表1】
【0052】
例として、次の表は、結晶水を伴うアルカリ金属水酸化物の主な共融混合物とその融解温度(融点)を示している。ただし、記号(?)で示されているように、それらの相(フェーズ)は常に識別されるとは限らない。
【0053】
【表2】
【0054】
前記の少なくとも1つの塩に含まれるアルカリ金属水酸化物の混合物は、さらに共融混合物を形成することができる。無水アルカリ金属水酸化物の二元状態図は確立されたが、水とのアルカリ金属水酸化物の三元図はなく、それは特に水のモル分率に応じた可能な相の数とその混合物のアルカリ金属による水の分子の共有による。しかし規定された相をもつ水性媒体中の化合物、例えば、NaOH-LiOH-HO(A. Lach, L. Andre, A. Lassin, M. Azaroual, J.-P. Serin, P. Cezac, J. Solution Chem., 44, 2015, 1424-1451)がある。次の表は、溶融塩として使用することができる無水水酸化物と水との二成分系に対する共融混合物の融解温度(融点)を示している。
【0055】
【表3】
【0056】
アルカリ水酸化物MOH(M=K、Na、Rb、又はCs)を使用して140℃~200℃で測定した溶融媒体中の水の過渡状態の測定は、水酸化カリウムが、水を最もよく保持する水酸化物であり、一方、水酸化ナトリウムは水を最も容易に放出することを示している(W. M. Vogel, K. J. Routsis, V. J. Kehrer, D. A. Landsman, J. G. Tschinkel, Journal of Chemical and Engineering Data, 12(4), 1967, 465-472)。さらに、500℃で1日のあいだ溶融させた水酸化リチウム一水和物は、LiOH1モル当たり0.05モルのHOをさらに保持できることが知られている(P. Pascal, Nouveau traite de chimie minerale, Masson and Cie, Volume II(分冊1), パリ, 1963)。
【0057】
経済的基礎、並びに結晶水を保持するその能力を考慮して、水酸化ナトリウムが、本発明による方法において少なくとも部分的に溶融塩の浴を形成するために、好ましくは、選択される。
【0058】
より好ましくは、したがって、塩は、100℃に融点を有する、式KOH+KOH.HOを有する水酸化カリウムを含む。(P. Pascal, Nouveau traite de chimie minerale, Masson and Cie, Volume II(分冊2), パリ, 1963)。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの混合物を使用することも提供することができる。たとえば、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合物は、式NaOH-(KOH+KOH.HO)のものである。
【0059】
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムのあいだの様々なモル比について、NaOH-(KOH+KOH.HO)の混合物を使った試験を行った。混合物NaOH-(KOH+KOH.HO)の不完全に規定された相をさらに使用した。いずれにせよ、水酸化カリウムの結晶水は有機物質の酸化を引き起こした。
【0060】
さらに、式MOH-HO-Xを有する、少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物Mを含む化合物を使用することができ、ここで、Xは、例えば、アルコール(メタノール、エタノール)又はアンモニアであることができ、その場合アルコール又は水は溶媒を構成する。Xは、アルカリ金属塩又は遷移金属であることもできる。
【0061】
有機成分の全体的な酸化反応は、溶融塩酸化メカニズムに従って展開する。この反応は、加溶媒分解による有機成分の溶液処理を含む。加溶媒分解は、一般に、そして本発明の枠組みにおいて、有機成分と反応媒体に含まれる化学種との間の反応に相当し、前記の成分の全部又は一部を溶解するようなやり方での反応である。加溶媒分解の後に、均質な液相中で、有機成分の加溶媒分解によって生じる生成物の、結晶水による酸化が続く。加溶媒分解と酸化反応は、しかしながら同時に起こりうる。さらに、有機成分の全体的又は部分的な溶解は、前記の成分の酸化によって直接生じうる。
【0062】
廃棄物の有機成分の酸化は、ダイオキシンの放出を防ぐことにより、特に炭酸塩の生成を引きおこす。これらの炭酸塩は反応媒体に溶解したままであり、炭素酸化物、特に一酸化炭素又は二酸化炭素の放出を低減し、さらには防止する。実際に、反応媒体から生じるガス状画分中に、20ppmを超える二酸化炭素の放出は測定されず、20ppmは、測定を行うのに使用したデバイスの検出限界である。さらに、廃棄物から生じるハロゲン化された部分は、ハロゲン化物イオンに変換される。このハロゲン化物イオンは、静電相互作用によって反応媒体中に捕捉され、したがって、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸などのハロゲン水素酸の放出が制限される。浴中での滞留時間に応じて、かつこれらのハロゲン水素酸の低い沸点を考慮して、いかなる微量のハロゲン化水素酸の放出をも防ぐために、反応器の出口において、高温ガスのスクラビングをしかしながら実施することができる。
【0063】
廃棄物の有機成分の酸化も二水素(H)の生成を引きおこす。水素生成のための酸化剤としての結晶水の役割は、再利用される廃棄物としてシュウ酸ナトリウムを用いた本発明による方法の実施によって明らかにされた。シュウ酸ナトリウムは水素原子をもたない有機分子である。本方法によるこの分子の酸化時に、水素の生成が反応器内で観察される。生成される二水素の量は、シュウ酸ナトリウムの酸化に必要なモル数に対応する。二水素は、したがって、シュウ酸ナトリウムの酸化剤の役割を果たし、かつ水素原子を含む化学種からもたらされ、結晶水がそれにあたる。
【0064】
同様に、再利用される廃棄物としてポリエチレンテレフタレートボトルを用いた本発明による方法の実施は、二水素の生成を引きおこし、その量は、ポリエチレンテレフタレートのモノマー中に含まれる水素のモル数よりも多い。この場合、生成された二水素は、有機物質から及び結晶水の還元から合わせて生じる。この結論はまた、粉末セルロースを使用して検証されている。
【0065】
特定の実施形態によれば、水素化触媒が液体反応媒体に添加される。これらの触媒を追加すると、均一な液相中でよりむしろ、触媒の表面上での有機成分の酸化に換えられる。酸化反応は、次に、不均一系触媒作用によって生じ、これは実際には水分子と有機成分の間のより少ない接触しか必要としない。結晶水の還元反応速度、及びその結果生成される二水素の量が、したがって増加する。水素化触媒は、金属粒子、好ましくはニッケル又は鉄系の金属粒子、さらにはそのような粒子の混合物を含む。
【0066】
例として、本方法を図1及び2に示し、ここで、本方法の代替法は並列した経路で示され、かつ任意選択による(オプション)のステップは点線で示されている。図1に示されているように、本方法は、上述した特徴に従って少なくとも1つの塩又は塩類の混合物を反応器に入れるステップ(1);廃棄物を反応器に入れるステップ(2);及び、塩又は塩類の混合物の融点(融解温度)T1よりも高い温度Tにおいて反応器を加熱するステップ(3)を含む。好ましくは、温度Tは、温度T1と温度T2との間であり、温度T2は、廃棄物の有機成分の熱分解温度から選択され、且つ好ましくは、これらの成分の少なくとも一部の沸点から選択される。廃棄物が金属成分を含む場合、温度Tは、さらに、その金属成分の沸点、好ましくは金属成分の融点よりも低い。特定の実施形態によれば、反応媒体の温度は、100℃~450℃、好ましくは170℃~350℃である。100℃より高い温度で操作することは確かに有利であって、それによって一方では酸化反応に熱エネルギーを供給する。他方で、溶融塩の液による廃棄物の表面のより良い湿潤、並びに反応媒体の効果的な撹拌を促進するために、溶融塩の低い粘度を得ることができる。特定の実施形態によれば、反応媒体の温度は170℃~250℃であり、特に有機成分が結晶水によって低い温度において酸化されうる場合にそうである。
【0067】
上述した3つのステップによって液体反応媒体が得られ、それは廃棄物の有機成分の全体的な酸化反応(4)を引きおこすようなやり方で、塩又は溶融塩類の混合物並びに廃棄物を含むものである。これらの3つのステップの相対的な順序は、その方法の実施形態に従って変更することができる。特に、図1に示すように、塩又は塩類の混合物及び廃棄物を、順次又は混合物として反応器に導入することができる(1、2)。次に、反応器を温度Tに加熱することができる(3)。あるいは、塩又は塩類の混合物及び廃棄物を含む混合物を、温度Tに予め加熱した反応器(3)に全てを一度に又は好ましくは漸進的に導入することができる。この代替法を図2に示している。したがって、塩類の漸進的な溶融は、廃棄物の熱分解を防ぐことによって、廃棄物の加溶媒分解及び酸化反応を可能にすることができる。この混合物を漸進的に添加することは、さらに、反応媒体の温度の低下を防ぐことを可能にする。塩はさらに溶解され、廃棄物は反応器に導入する前に加熱することができる。したがって、この特定の実施形態による方法は、反応器の加熱(3)時に反応器内の温度の上昇によって引き起こされる待ち時間を防止することを可能にする。この実施形態はまた、この方法を連続的に実施することを可能にし、これによれば塩又は塩類の混合物及び廃棄物が連続的に反応器に導入され、その一方で反応器を連続的に空にすることをも可能にする。
【0068】
図1及び2に示すように、塩又は塩類の混合物の導入(1)中又は導入(1)後に、触媒を反応器にさらに添加することができる(8)。好ましくは、触媒は塩と混合される。触媒の添加(8)を後で実施することもでき、例えば、液体反応媒体が形成されたら触媒を導入することができる。
【0069】
有機成分の全体的な酸化反応(4)は、上述したやり方で起こる。この酸化(4)の間、反応器は温度Tに維持され、温度Tが変わるとしても、なおT1~T2、さらにはT1~T3内に留まり、ここでT3は、有機成分と混合可能である金属成分の少なくとも一部の沸点である。好ましくは、T3は、有機成分と混合することができるほとんどの金属成分の融点である。特に、有機成分の酸化反応を加速させるために熱エネルギーを供給するようなやり方で温度Tを上昇させることが可能である。さらには、反応媒体の混合は、反応を促進するようなやり方で有利に実施される。
【0070】
本発明による方法を実施するための反応器は、伝導(例えば、抵抗器による加熱)、対流(例えば、反応器内を循環する高温ガスの流れによる)による、又は光又は電磁放射(誘導、マイクロ波)による加熱モードを有する反応器であることができる。固相、液相、又は気相中で処理される有機廃棄物の体積又は質量にしたがって、その構築に必要な材料を含むオーブンの性質は異なる。加熱方法はまた、当業者に知られている技術に従って適合させることができる。加熱方法は、さらに、反応器内での融合物中での物質の撹拌方法についての選択肢を生み出す。例えば、反応媒体の混合を確実にするために、抵抗器によって加熱される反応器は、反応媒体を混合することができる少なくとも1つの要素、例えば、回転壁、ローター、又はブレードを含む。
【0071】
本発明による反応媒体は加熱温度(3)の範囲内で金属に対して本質的に腐食性ではなく、かつハロゲン水素酸の放出が避けられるので、反応器は、金属、好ましくはステンレス鋼で作ることができ、ここでの方法の実施時に反応器の壁の顕著な腐食はない。反応器は、コバルト合金ベース、例えばステライト、又はニッケル合金、例えばインコネル(登録商標)及びハステロイ(登録商標)であることも可能である。金属の種類に属さない他の材料、例えば、炭素又は窒化ホウ素も使用することができることに注意されたい。実際に、二酸素(O)及び二酸化炭素の不存在下で、例えば、カーボングラファイト又はガラス状炭素は、450℃以下の加熱温度において水によって酸化されないであろう。
【0072】
有機成分の酸化反応(4)のあいだに、以下の2つ又は3つの画分が得られる:反応媒体及び酸化生成物(4)、例えば炭酸塩を含む液体画分;有機成分の酸化(4)によって生じる複数のガス、より特に二水素(H)を含む気体画分;固体画分、例えば廃棄物が金属成分を含む場合の固体画分。
【0073】
図1及び2に示すように、本発明による方法は、有機成分の酸化(4)によって生じる少なくとも1つの化合物を回収するステップ(5)を含む。この方法は、より具体的には、反応媒体から放出された気体画分の回収(50)を含む。酸化によって生じる1つ又は複数のガスは、キャリアガスによって運び去られる可能性がある。好ましくは、反応器には、酸化(4)によって生じる1つ又は複数のガスを運ぶためのキャリアガスの連続流が供給される(7)。したがって、反応器には、有機成分の酸化(4)の上流にある本方法の任意のステップの間にキャリアガスが供給される。さらに好ましくは、キャリアガスは中性ガス、例えばアルゴン又は窒素であり、それは生成した二水素(H)による爆発のリスクを防ぐためである。好ましくは、キャリアガスは窒素であり、それによってこの方法のコストが制限される。
【0074】
さらに、熱重量分析(略語TGA-TDAで表される)によって行われる測定は、水酸化カリウムに含まれる結晶水は少なくとも部分的に300℃より高い温度で放出されうることを示している。酸化反応に必要な結晶水の排出を克服するためにキャリアガスを水和することができ、特に反応器の高い加熱温度(3)の場合、例えば、350~450℃の温度範囲に対してキャリアガスを水和することができる。したがって、蒸気のかたちでの水バランスは、液体反応媒体とその液体の上の気相との間で保たれる。キャリアガスのこの水和は350℃以下(容易に酸化される分子に対応する温度ゾーン)では重要とは思われないが、350℃より高い温度における酸化によって生じるガスの生成に増加がみられる。
【0075】
回収されたガス画分(50)は、複数のガス、例えば、二水素(H)、メタン、及び窒素、並びに揮発性有機化合物から構成されている。これらの様々な構成成分は、当業者に知られている技術によって分離することができる(51)。たとえば、揮発性有機化合物は、ガス画分の温度を80℃未満に下げることによって凝縮される。その目的は、ガスを再利用するために分離することである。特に、二水素(H)は可燃性燃料として又は化学原料として再利用するために回収される(52)。メタンは可燃性ガスとして再利用するために回収することができる。さらに、反応器に供給すること(7)を意図したキャリアガスとして使用するために、窒素を回収することができる。
【0076】
廃棄物の金属成分を含む固形画分は、濾過(6)によって回収することができる。少なくとも1つのグリッド、好ましくは金属成分の大きさ(サイズ)よりも小さい濾過の寸法、例えば実質的に0.8mmに等しいサイズを有するステンレス鋼グリッドを使用して、反応媒体から、濾過が行われる。この濾過ステップ(6)は、反応媒体が反応器の加熱温度(3)であるとき、かつ特に金属成分の少なくとも一部が反応器の加熱温度(3)よりも高い融点を有する場合に実施することができる。さらに、濾過のこのステップ(6)は、塩又は塩類の混合物の融点と、廃棄物が含みうる全ての金属成分の融点との間にある温度において実施することができる。例えば、この温度は、反応器の加熱温度(3)に対応することができ、又は反応媒体の冷却後に到達することができる。反応媒体は、塩又は塩類の混合物の融点よりも低い温度までさらに冷却することができる。固体相からの反応媒体は、少なくとも1つのグリッドを使用する濾過(6)を進める前に、ある量の水に溶かすことができる。この例によれば、グリッドは、塩又は塩類の混合物が融解される場合に使用されるものよりも小さい寸法であることができる。
【0077】
反応媒体及び酸化生成物(4)、例えば炭酸塩を含む液体画分は、本方法において再利用するための塩又は塩類の混合物を再生するやり方で処理することができる(8)。例えば、ある量の水に溶かした反応媒体は、式Ca(OH)を有する生石灰又は消石灰で、好ましくは室温で処理される(8)。石灰を添加することは、炭酸カルシウムの低温沈殿を引きおこし、CaCOサンプル、例えばカルサイト(方解石)、カルサイトとアラゴナイトの混合物さえ生成し、それはコンクリートに使用することができる。
【0078】
処理(8)はさらに、アルカリ金属水酸化物の再生のためのヒドロキシルイオンをもたらすことができる。したがって、塩又は塩類の混合物は、本方法で再利用することができる。
【0079】
気体、液体、及び固体の画分の管理又は回収に関連する方法の実施は、その実施の要素が市場に存在する単一操作、例えばミキサー、ろ過を使う。
【0080】
本方法は、「バッチ」タイプの従来の反応器、すなわちセルを含む反応器を使用することによって非連続的に実施することができる。塩又は塩類の混合物、並びに廃棄物がそのセルの中に導入される。このようにして導入された廃棄物は、本方法のステップに従って再利用される。新しい廃棄物は、塩又は塩類の混合物の新しいバッチでさえ、その再利用のためにそのセル中へ導入される。したがって、本方法は非連続的であり、廃棄物のさまざまなバッチを順次処理する。あるいは、本方法はさらに、廃棄物の供給、さらには有機成分の酸化によって生じる少なくとも1つの化合物、例えば二水素(H)の回収が連続的に実施されるように構成された、少なくとも1つの入口及び1つの出口を含む反応器を使用することによって連続的に実施することができる。このために、生成したガスの爆発性を考慮に入れて、エンドレススクリューを備えた反応器が考慮される。
【0081】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲によってカバーされる全ての実施形態に及ぶ。
【0082】
特に、本方法は、大気圧からより高い圧力までの範囲に及び圧力の範囲にわたって実施されることがもたらされうる。塩又は溶融塩の混合物は低い蒸気圧を有し、酸化反応は液体媒体中で行われるので、本方法は実際に大気圧において行うことができる。最大圧力は安全の側面のために選択され、したがって反応器と本発明の実施要素によって異なる。好ましくは、本方法は、8バール未満の圧力において実施することができる。
図1
図2
【国際調査報告】