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特表2022-533710Nを含むヘテロアリール誘導体およびこれを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】Nを含むヘテロアリール誘導体およびこれを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20220715BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220715BHJP
   C07D 491/048 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20220715BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20220715BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C07D401/14
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/02
A61P35/04
C07D491/048 CSP
A61K31/519
A61K31/517
A61K31/551
C07D495/04 105Z
C07D417/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569064
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2020006648
(87)【国際公開番号】W WO2020235945
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0059476
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521316497
【氏名又は名称】ボロノイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VORONOI CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】521316501
【氏名又は名称】ボロノイバイオ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VORONOIBIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ホア
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ヒスン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソク,ジユン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スンファ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジョンボム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナムドゥ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA03
4C050BB02
4C050BB04
4C050CC04
4C050CC08
4C050EE02
4C050FF01
4C050GG01
4C050HH04
4C063AA05
4C063BB02
4C063BB03
4C063BB09
4C063CC34
4C063CC36
4C063DD12
4C063EE01
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF05
4C071GG05
4C071HH17
4C071JJ05
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC50
4C086BC54
4C086CB02
4C086CB03
4C086CB22
4C086CB26
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
Nを含むヘテロアリール誘導体およびこれを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物に関し、前記誘導体は、さまざまなタンパク質キナーゼに対して高い阻害活性を示し、特に、RET(ret proto-oncogene)酵素阻害能に優れ、RET融合遺伝子を発現する甲状腺髄様がん細胞および肺がん細胞の増殖抑制効果に優れているところ、がん、例えば、甲状腺髄様がんまたは肺がんの治療に有用に使用でき、特にRET融合遺伝子が発現したがんの治療に有用に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1の化合物:
【化1】
(式中、
【化2】
は、フラン、チオフェン、ベンゼンまたはシクロペンテンであり、
は、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルであり、ここで、Rは、一つ以上のハロゲンで置換あるいは非置換され、
環Bは、ジアザビシクロヘプタン、ピペラジン、ジアゼパンまたはジアザスピロオクタンであり、ここで、環Bは、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換あるいは非置換され、
は、ピリジニル、チアゾリル、フェニル、イミダゾリル、ピラジニル、キノリニル、ピリミジニルまたはピリドニルであり、ここで、Rは、一つ以上のRで置換あるいは非置換され、
前記Rは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cハロアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコキシ、ハロゲン、C-Cアルカンスルホンイミド、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換されたアミノおよびニトリルからなる群から選ばれる一つ以上の置換基を表す。)
その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記環Bが、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピペラジン、ジアゼパンまたは4,7-ジアザスピロ[2,5]オクタンである、請求項1に記載の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記環Bが、2つの窒素原子を介して隣接する他の基と連結されている、請求項2に記載の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記Rがピリジニル、チアゾリル、フェニル、ピラジニル、ピリミジニル、またはピリドニルである場合、Rは、一つ以上のRで置換され、Rがイミダゾリルまたはキノリニルである場合、Rは、非置換であり、
前記Rは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cハロアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコキシ、ハロゲン、C-Cアルカンスルホンイミド、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換されたアミノおよびニトリルからなる群から選ばれる一つ以上の置換基である、請求項1に記載の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記化学式1の化合物は、下記化合物群:
<1>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン;
<2>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン;
<3>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<4>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン;
<5>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((5-メチルチアゾール-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<6>2-(6-(3-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<7>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-アミン;
<8>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<9>5-((3-(5-(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピコリノニトリル;
<10>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((6-メチルピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<11>2-(6-(6-(3,5-ジフルオロ-4-イソプロポキシベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<12>2-メトキシ-5-((3-(5-(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ベンゾニトリル;
<13>2-(6-(6-((1H-イミダゾール-5-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<14>2-(6-(6-(4-メトキシベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<15>2-(6-(6-((6-イソプロポキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<16>2-(6-(6-((5-クロロ-6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<17>2-(6-(6-((5-メトキシピラジン-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<18>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-(キノリン-6-イルメチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<19>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((4-メチルチアゾール-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<20>2-(6-(6-((6-(ジメチルアミノ)ピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<21>N-(4-((3-(5-(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)フェニル)メタンスルホンアミド;
<22>2-(6-(6-(4-フルオロベンジル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<23>2-(6-(6-((6-フルオロピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<24>2-(6-(6-((6-エトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<25>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((2-メチルピリミジン-5-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<26>N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)-2-(6-(6-((5-メチルピラジン-2-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<27>1-メチル-4-((3-(5-(4-((5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)キナゾリン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-イル)メチル)ピリジン-2(1)-オン;
<28>2-(6-((2S,5R)-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<29>2-(6-(4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<30>2-(6-(4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-1,4-ジアゼパン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<31>2-(6-((1S,4S)-5-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<32>2-(6-((2R,5S)-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<33>(S)-2-(6-(4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<34>2-(6-((1R,4R)-5-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<35>2-(6-((3R,5S)-4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,5-ジメチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;
<36>(R)-2-(6-(4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3-メチルピペラジン-1-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン;および
<37>2-(6-(4-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-4,7-ジアザスピロ[2.5]オクタン-7-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)キナゾリン-4-アミン
から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
化学式2の化合物:
【化3】
から化学式3の化合物:
【化4】
を製造する段階と、
当該化学式3の化合物から化学式4の化合物:
【化5】
を製造する段階と、
当該化学式4の化合物から化学式5の化合物:
【化6】
を製造する段階と、
当該化学式5の化合物から化学式6の化合物:
【化7】
を製造する段階と、
当該化学式6の化合物から化学式7の化合物:
【化8】
を製造する段階と、
当該化学式7の化合物から化学式1の化合物:
【化9】
を製造する段階と、を含む、化学式1の化合物の製造方法であって、
前記R、R
【化10】
および環Bは、それぞれ、請求項1に定義されたものと同じであり、
前記Gは、脱離基であり、
前記PGは、保護基であり、
前記環B’は、環Bと同じ構造を有するが、一つの窒素原子が保護基で保護された形態である、製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化学式1の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する、がんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記化合物は、ABL1(H396P)-nonphosphorylated,ABL1(H396P)-phosphorylated、ABL1(M351T)-phosphorylated、ABL1(Q252H)-phosphorylated、ABL1(T315I)-nonphosphorylated、ABL1(T315I)-phosphorylated、ABL1(Y253F)-phosphorylated、ABL1-phosphorylated、AMPK-alpha1、AURKA、AURKC、AXL、BLK、BTK、CSNK2A1、CSNK2A2、DAPK3、DDR1、DDR2、DLK、EGFR(L747-E749del,A750P)、EGFR(L858R、T790M)、EGFR(T790M)、EPHB6,FGFR1,FGR,FLT3,FLT3(D835H)、FLT3(D835V)、FLT3(D835Y)、FLT3(ITD)、FLT3(ITD、D835V)、FLT3(ITD、F691L)、FLT3(K663Q)、FLT3(N841I)、FLT3(R834Q)、FLT3-autoinhibited、FRK、GCN2(Kin.Dom.2,S808G)、HCK、ICK、ITK、JAK1(JH1domain-catalytic)、JAK1(JH2domain-pseudokinase)、JAK2(JH1domain-catalytic)、JAK3(JH1domain-catalytic)、KIT(A829P)、KIT(D816V)、KIT(V559D)、LCK、MAP3K2、MEK2、MEK3、MEK5、MERTK、MST1、PDGFRB、PLK4、RET、RET(M918T)、RET(V804L)、RET(V804M)、RIOK3、SNARK、SRC、SYK、TRKA、TRKB、TRKC、TYK2(JH1domain-catalytic)、YES、およびYSK4からなる群から選ばれる一つ以上のタンパク質キナーゼに対して阻害活性を示すことを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記化合物は、RET酵素阻害活性を示すことを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記がんは、偽粘液腫、肝内胆道がん、肝芽腫、肝がん、甲状腺がん、甲状腺髄様がん、結腸がん、睾丸がん、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔がん、口脣がん、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞がん、卵巣上皮がん、卵巣生殖細胞がん、男性乳がん、脳がん、脳下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆のうがん、胆道がん、大腸がん、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部がん、膀胱がん、腹膜がん、副甲状腺がん、副腎がん、鼻腔・副鼻腔がん、非小細胞肺がん、舌がん、星細胞腫、小細胞肺がん、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小児白血病、小腸がん、髄膜腫、食道がん、神経膠腫、腎盂がん、腎臓がん、心臓がん、十二指腸がん、悪性軟部組織がん、悪性骨腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼がん、外陰部がん、尿管がん、尿道がん、原発部位不明がん、胃リンパ腫、胃がん、胃カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、乳がん、肉腫、陰茎がん、咽頭がん、妊娠絨毛疾患、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、前立腺がん、転移性骨腫瘍、転移性脳腫瘍、縦隔腫瘍、直腸がん、直腸カルチノイド腫瘍、膣がん、脊髄がん、前庭神経鞘腫、すい臓がん、唾液腺腫瘍、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃がん、扁平上皮がん、肺腺がん、肺がん、肺扁平上皮がん、皮膚がん、肛門がん、横紋筋肉腫、喉頭がん、胸膜がん、血液がん、および胸腺がんからなる群から選ばれる1種以上のがんであることを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記がんは、RET融合遺伝子を発現するがんであることを特徴とする請求項7に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Nを含むヘテロアリール誘導体およびこれを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの発生は、化学物質、放射線、ウイルスを含む様々な環境要因と腫瘍遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、細胞死(apoptosis)とDNA復旧に関連した遺伝子の変化などに関連しているが、最近、このようながんの分子的メカニズムを理解することによって、新しい治療法である標的抗がん治療が可能になった。
【0003】
標的治療剤は、一般的にがん細胞が特徴的に持っている分子を標的として当該効果を示すことができるように製造され、分子的標的となるものは、がん細胞のシグナル伝達経路(signal transduction pathway)、血管新生(angiogenesis)、細胞基質(matrix)、細胞周期調節因子(cell cycle regulator)、細胞死 (apoptosis)などに関連した遺伝子である。現在、治療において重要な標的治療剤として使用されているものとしては、チロシンキナーゼ(tyrosine kinase)抑制剤をはじめとする「シグナル伝達経路抑制剤」と「新生血管生成抑制剤」がある。
【0004】
タンパク質内チロシン残基上のリン酸化(phosphorylation)は、細胞内シグナル伝達(signal transduction)の重要な要素である。このような反応を触媒できる酵素をチロシンキナーゼ(tyrosine kinase)という。多数のトランスメンブレン受容体は、チロシンキナーゼ活性を有するドメインを含み、受容体チロシンキナーゼ(RTK)として分類される。
【0005】
RTKは、細胞成長、分化、生存およびプログラム細胞死(programmed cell death)のようにさまざまな過程で細胞外シグナルを伝達する。細胞外リガンドとの結合に対する反応で、RTKは、一般的に二量化されて、リン酸化した形態のRTKを認識し相互反応するエフェクター(effector)を通した細胞内シグナル伝達および自動リン酸化を誘導する。このRTKファミリーの多くのメンバーが存在し、これらのうち一つは、RETガン原遺伝子(proto oncogene)であって、これは、120kDaのタンパク質RET(rearranged during transfection)をコード化する。RETは、膠細胞神経成長因子(GDNF)ファミリーの成長因子に対する受容体である。RETに対する2つのリガンドが同定された;GDNFおよびニュートリン(NTN)。RETは、そのリガンドが補助受容体と結合し、その後、複合体がRETと相互作用するとき、活性化する(Eng,1999 Journal Clinical Oncology:17(1) 380-393)。
【0006】
このような活性化は、チロシン残基でRETをリン酸化させ、RAS-RAFおよびPI3キナーゼ経路および可能な他の経路を通じて細胞成長および分化に対するシグナル伝達を誘導する。
【0007】
RETを活性化する点突然変異(point mutant)は、3つの関連した優性遺伝性がん症候群;多発性内分泌腫瘍症2A型と2B型(MEN2AおよびMEN2B)、および家族性甲状腺髄様がん(FMTC)を誘発することが知られている(Santoro et al.2004 Endocrinology:145,5448-5451)。
【0008】
ほぼすべてのMEN2Aの場合、および一部のFTMCの場合、細胞外および膜近傍システインに富んだドメイン(juxtamembrane cysteine-rich domain)でシステイン置換が起こる反面、MEN2Bの95%では、キナーゼドメイン(M918T)上の918番コドンで単一点突然変異が起こる。918番コドンは、触媒コア(catalytic core)内の基質認識ポケット上に位置すると見なされる。この部位における突然変異は、RET触媒ドメインの活性ループ構造を変えることで、RETを構造的に活性化すると思われる。M918T突然変異は、また、散発性髄様がんにおいて発見されるが、これは、進行性疾患の表現型(phenotype)と関連している。試験管内研究では、突然変異が基質特異性に影響を及ぼして、RETがc-srcおよびc-ablのような非受容体チロシンキナーゼにより好まれる基質を認識し、リン酸化することを示す(Eng et al.1996 JAMA276,1575-1579;Ponder et al.1999 Cancer Research59,1736-1741;Schilling et al.2001 International Journal of Cancer95,62-66;Santoro et al.1995 Science267,381-383;Zhou et al.1995 Nature273,536-539)。
【0009】
RET遺伝子上の突然変異がMEN2ファミリーの大部分で同定されることによって、分子診断テストが可能になり、また、臨床診断の確認のために有用である。RET突然変異テストは、ポリメラーゼ(polymerase)連鎖反応に基づくプロトコルを用いて行われ得るが、ここで、標的エクソン配列は、直接シーケンシング(direct sequencing)または制限酵素エンドヌクレアーゼ消化(restriction endonuclease digestion)のために増幅される(Zhong et al.2006 Clinica Chimica Acta364,205-208)。
【0010】
RTKファミリーの他のメンバーは、血管内皮成長因子受容体2(VEGFR2(キナーゼ挿入ドメインを含む受容体、KDR(Flk1ともいう)))である。VEGFR2は、血管内皮成長因子(VEGF)に対する受容体である。VEGFは、正常血管形成(angiogenesis)と疾患関連血管形成の両方(Jakeman,et al.1993 Endocrinology133,848-859;Kolch,et al.1995 Breast Cancer Research and Treatment36,139-155)および血管透過性(Connolly,et al.1989 J.Biol.Chem264,20017-20024)の重要な刺激剤であると見なされる。抗体とVEGFの隔離によるVEGFの拮抗作用は、腫瘍成長を抑制できる(Kim,et al.1993 Nature362,841-844)。VEGF遺伝子の異型分裂は、血管化(vascularisation)において致命的な欠陥を誘発する(Carmeliet,et al.1996 Nature 380435-439;Ferrara,et al.1996 Nature 380439-442)。
【0011】
VEGFのVEGFR2に対する結合は、受容体二量化(dimerisation)を誘導して、特定細胞内チロシン残基のVEGFR2自動リン酸化を招く。自動リン酸化は、チロシンキナーゼの触媒活性を増加させ、ホスホリパーゼC-γのような細胞質シグナル伝達のための潜在的なドッキング部位(docking site)を提供する。このタンパク質相互作用は、VEGFR2、例えば、内皮細胞の増殖、生存および移住に対する細胞反応を誘導するのに必須の細胞内シグナリングを媒介する(Ryan et al.2005 British Journal Cancer:92(Suppl.1) S6-S13)。
【0012】
病理的血管形成においてVEGF媒介VEGFR2シグナリングの重要な役割に対する認識は、VEGFR2活性化を抑制するためのさまざまな選択的な接近法の発展につながった。これらは、小分子ATP競合的チロシンキナーゼ抑制剤を含み、これは、ATP結合抑制において、自動リン酸化および連続的な細胞内シグナル伝達が起こらないようにする(Ryan,2005)。
【0013】
VEGF受容体チロシンキナーゼの抑制剤であるキナゾリン(Quinazoline)誘導体は、国際特許公開WO98/13354号およびWO01/32651号公報に開示されている。WO98/13354号およびWO01/32651号には、内皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼに対して一部活性を有し、VEGF受容体チロシンキナーゼに対する活性を有する化合物を開示している。
【0014】
VEGFR2チロシンキナーゼ抑制剤である、化合物4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(1-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリンが開示されている(Wedge et al.,2002 Cancer Research62,4645-4655)。この化合物は、コード番号ZD6474および一般商品名バンデタニブ(Vandetanib)である、Zactima(登録商標)とも知られている。以下、前記化合物をバンデタニブという。
【0015】
バンデタニブは、VEGFR2チロシンキナーゼに対するATP結合が強力であり、可逆的な抑制剤として開発された。また、バンデタニブは、EGFRチロシンキナーゼ活性を抑制する。EGFRシグナリング経路は、異常なEGFR活性が腫瘍細胞の増殖、生存および侵入だけでなく、VEGFが過発現を増加させるがんの進行においても重要な因子である。EGFRシグナリングの抑制は、腫瘍内皮細胞における選別的な細胞死(apoptosis)を誘導することが明らかにされている。
【0016】
2002年、バンデタニブは、リガンド依存性RETチロシンキナーゼ活性の強力な抑制剤であって、RETのシグナリングと変形能力を抑制できるという報告があった。また、バンデタニブは、試験管内でRET依存性甲状腺腫瘍細胞の成長に対する強力な成長抑制効果を有することが報告された(Carlomagno et al.2002 Cancer Research:62,7284-7290)。
【0017】
バンデタニブは、RETの突然変異した活性型の大部分および野生型受容体をも抑制した。したがって、VEGFR2およびEGFRチロシンキナーゼの抑制だけでなく、バンデタニブによるRETチロシンキナーゼの抑制は、RET依存性腫瘍細胞の成長を誘導するRET遺伝子の突然変異を伴う、腫瘍治療においてさらなる抗腫瘍効果を付与することもできる(Ryan,2005)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の一目的は、Nを含むヘテロアリール誘導体またはその異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、前記化合物の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、Nを含むヘテロアリール誘導体またはその異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するがんの予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、Nを含むヘテロアリール誘導体またはその異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するがんの予防または治療方法を提供することにある。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、がんの予防または治療に使用する薬剤の製造に用いるための前記Nを含むヘテロアリール誘導体またはその異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、下記化学式1の化合物:
【化1】
その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0024】
ここで、上記化学式1中
【化2】
は、フラン、チオフェン、ベンゼンまたはシクロペンテンであり、
【0025】
は、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルであり、ここで、Rは、一つ以上のハロゲンで置換あるいは非置換され、
環Bは、ジアザビシクロヘプタン、ピペラジン、ジアゼパンまたはジアザスピロオクタンであり、ここで、環Bは、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換あるいは非置換され、
は、ピリジニル、チアゾリル、フェニル、イミダゾリル、ピラジニル、キノリニル、ピリミジニルまたはピリドニルであり、ここで、Rは、一つ以上のRで置換あるいは非置換され、
前記Rは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cハロアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコキシ、ハロゲン、C-Cアルカンスルホンイミド、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換されたアミノおよびニトリルからなる群から選ばれる一つ以上の置換基である。
【0026】
本発明の他の一態様は、
化学式2の化合物:
【化3】
から化学式3の化合物:
【化4】
を製造する段階と、
【0027】
当該化学式3の化合物から化学式4の化合物:
【化5】
を製造する段階と、
【0028】
当該化学式4の化合物から化学式5の化合物:
【化6】
を製造する段階と、
【0029】
当該化学式5の化合物から化学式6の化合物:
【化7】
を製造する段階と、
【0030】
当該化学式6の化合物から化学式7の化合物:
【化8】
を製造する段階と、
【0031】
当該化学式7の化合物から化学式1の化合物:
【化9】
を製造する段階とを含む、化学式1の化合物の製造方法を提供する。
【0032】
ここで、前記R、R
【化10】
および環Bは、それぞれ、上記で定義されたものと同じであり、
前記Gは、脱離基であり、
前記PGは、保護基であり、
前記環B’は、環Bと同じ構造を有するが、一つの窒素原子が保護基で保護された形態である。
【0033】
本発明のさらに他の一態様は、本発明の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するがんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明による化学式1の化合物は、さまざまなタンパク質キナーゼに対して高い阻害活性を示し、特に、RET(ret proto-oncogene)酵素阻害能に優れ、RET融合遺伝子を発現する甲状腺髄様がん細胞および肺がん細胞の増殖抑制効果に優れているところ、がん、例えば、甲状腺髄様がんまたは肺がんの治療に有用に使用でき、特にRET融合遺伝子が発現したがんの治療に有用に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明の実施形態は、種々な他の形態に変形でき、本発明の範囲が以下に説明する実施態様に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。
【0037】
明細書全体において任意の構成要素を「含む」というのは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0038】
本明細書の構造式において、原子および/または基(group)を結合する符号「-」は、単一結合、符号「=」は二重結合を意味する。前記符号は、省略してもよく、結合原子または結合位置を特定する場合など必要な場合に表示してもよい。
【0039】
本明細書において原子間に「連結され」は、原子間に直接連結される場合だけでなく、他の原子および/または基(group)を媒介して原子間に間接連結される場合も含まれ得る。この際、他の原子および/または基(group)は、酸素、硫黄、C1-8アルキルアミノ、またはC1-8のアルキレン基などであってもよく、これらに制限されるものではなく、前記原子/およびまたは基(group)は、置換あるいは非置換されてもよい。
【0040】
本明細書において「置換あるいは非置換される」は、他の記載がない限り、一つまたは複数の水素原子が他の原子または置換基で置換あるいは非置換されることを意味する。前記置換基は、ハロゲン(クロロ(Cl)、ヨード(I)、ブロモ(Br)、フルオロ(F))、C1~10アルキル、C2~10アルケニル、C2~10アルキニル、ヒドロキシル、C1~10アルコキシ、アミノ、ニトロ、チオール(thiol)、チオエーテル、イミン、シアノ、ホスホナト(phosphonato)、ホスフィン(phosphine)、カルボキシ、カルバモイル(carbamoyl)、カルバミン酸、アセタール、ヨウ素、チオカルボニル、スルホニル、スルホンアミド(sulfonamide)、ケトン、アルデヒド、エステル、アセチル、アセトキシ、アミド、酸素(=0)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、置換アミノアシルとアミノアルキル、炭素環シクロアルキルであって、単環、または縮合あるいは非縮合多重環(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル)、あるいはヘテロシクロアルキルであって、単一環、または縮合あるいは非縮合多重環(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはチアジニル)、炭素環またはヘテロ環、単環または縮合あるいは非縮合多重環アリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル(pyrrolyl)、インドリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル(isoxazolyl)、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル(acridinyl)、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル(benzimidazolyl)、ベンゾチエニルまたはベンゾフラニル)、アミノ(1級、2級、または3級)、アリール、アリールオキシ、およびアリールアルキルからなる群の中から選ばれる一つ以上であってもよく、これらに制限されるものではない。また、前記例示された置換基それぞれは、さらに、これらの置換基の群の中から選ばれた置換基で置換あるいは非置換されてもよい。
【0041】
本明細書において、「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIであってもよい。
【0042】
本明細書において、「アルキル」は、他の記載がない限り、直鎖または分岐鎖の非環式;環式;またはこれらが結合した飽和炭化水素を意味する。また、「C1-8アルキル」は、炭素原子を1~8個含むアルキルを意味する。非環式アルキルは、一例として、メチル、エチル、N-プロピル、N-ブチル、N-ペンチル、N-ヘキシル、N-ヘプチル、N-オクチル、イソプロピル、2級(sec)-ブチル、イソブチル、3級(tert)-ブチル、イソペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどを含んでもよいが、これらに制限されない。環式アルキルは、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、またはシクロオクチルなどを含んでもよいが、これらに制限されない。非環式と環式アルキルが結合したアルキルは、例えば、メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、エチルシクロプロピル、シクロプロピルエチル、メチルシクロブチル、シクロブチルメチル、エチルシクロペンチル、またはシクロペンチルメチルなどを含んでもよいが、これらに制限されない。
【0043】
本明細書において、「シクロアルキル」と記載した場合、アルキルの中でも、特に、環式アルキルを意味し、ここで、アルキルは、上記で定義されたものと同じである。
【0044】
本明細書において、「アルコキシ」は、アルキルエーテル基であって、-(O-アルキル)を意味し、ここで、アルキルは、上記で定義されたものと同じである。また、「C1-8アルコキシ」は、C1-8アルキルを含有するアルコキシ、すなわち、-(O-C1-8アルキル)を意味し、一例として、C1-8アルコキシは、メトキシ(methoxy)、エトキシ(ethoxy)、n-プロポキシ(n-propoxy)、イソプロポキシ(isopropoxy)、n-ブトキシ(n-butoxy)、イソブトキシ(iso-butoxy)、sec-ブトキシ(sec-butoxy)、tert-ブトキシ(tert-butoxy)、n-ペントキシ(n-pentoxy)などを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0045】
本明細書において、「ヘテロシクロアルキル」は、環を形成する原子であって、N、O、およびSから選ばれた1~5個のヘテロ原子を含有する環を意味し、飽和または部分的に不飽和であってもよい。別途言及しない限り、ヘテロシクロアルキルは、単環、またはスピロ(spiro)環、架橋(bridged)環または縮合(fused)環のような多重環であってもよい。また、「3~12原子のヘテロシクロアルキル」は、環を形成する原子を3~12個含むヘテロシクロアルキルを意味し、一例として、ヘテロシクロアルキルは、ピロリジン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン、1,4-ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン-S-オキシド、チオモルホリン-S,S-オキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3-ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジン、トロパン、2-アザスピロ[3.3]ヘプタン、(1R,5S)-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、(1s,4s)-2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、または(1R,4R)-2-オキサ-5-アザビシクロ[2.2.2]オクタンなどを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0046】
本明細書において、「アルキルアミノ」は、-(NR’R’’)を意味し、ここで、R’および R’’は、それぞれ独立して、水素、およびC1-8アルキルからなる群の中から選択でき、前記選択されたR’および R’’は、それぞれ独立して、置換あるいは非置換されてもよい。また、「C1-8アルキルアミノ」は、C1-8アルキルを含有するアミノ、すなわち、-N-H(C1-8アルキル)または-N-(C1-8アルキル)を意味し、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、メチルプロピルアミノ、またはエチルプロピルアミノを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0047】
本明細書において、「アリール」は、芳香族炭化水素環から一つの水素が除去された芳香環を意味し、単環または多重環であってもよい。「3~12原子のアリール」は、環を形成する原子を3~12個含むアリールを意味し、一例として、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ビフェニル、またはテルフェニルなどを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0048】
本明細書において、「ヘテロアリール」は、環を形成する原子であって、N、O、およびSのうち一つ以上のヘテロ原子を含有する芳香環を意味し、単環または多重環であってもよい。また、「3~12原子のヘテロアリール」は、環を形成する原子を3~12個含むヘテロアリールを意味し、一例として、チエニル、チオフェン、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ビピリジル、ピリミジル、トリアジニル、トリアゾリル、アクリジル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリニル、キナゾリン、キノキサリニル、フェノキサジル、フタラジニル、ピリミジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピラジノピラジニル、イソキノリン、インドール、カルバゾール、イミダゾピリダジニル、イミダゾピリジニル、イミダゾピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピラジニルまたはピラゾロピリジニル、N-アリールカルバゾール、N-ヘテロアリールカルバゾール、N-アルキルカルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾカルバゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェニル、チエノチオフェン、ベンゾフラニル、フェナントロリン、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、テトラゾリル、フェノチアジニル、ジベンゾシロールまたはジベンゾフラニルなどを含んでもよいが、これらに制限されるものではない。
【0049】
本明細書において、「水和物(hydrate)」は、非共有的分子間力(non-covalent intermolecular force)により結合した化学量論的(stoichiometric)または非化学量論的(non-stoichiometric)量の水を含んでいる本発明の化合物またはその塩を意味する。本発明の前記化学式1の化合物の水和物は、非共有的分子間力で結合する化学量論的または非化学量論的量の水を含んでもよい。前記水和物は、1当量以上、好ましくは、1当量~5当量の水を含有することができる。このような水和物は、水または水を含有する溶媒から本発明の前記化学式1の化合物、その異性体またはこれらの薬剤学的に許容可能な塩を結晶化させて製造することができる。
【0050】
本明細書において、「溶媒和物(solvate)」は、非共有的分子間力により結合した化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含んでいる本発明の化合物またはその塩を意味する。それに関する好適な溶媒としては、揮発性、非毒性、および/またはヒトに投与するのに適した溶媒がある。
【0051】
本明細書において、「異性体(isomer)」は、同じ化学式または分子式を有するが、構造的または立体的に異なる本発明の化合物またはその塩を意味する。このような異性体には、互変異性体(tautomer)などの構造異性体と、非対称炭素中心を有するRまたはS異性体、幾何異性体(トランス、シス)などの立体異性体、光学異性体(enantiomer)が全部含まれる。これらのすべての異性体およびその混合物も、本発明の範囲に含まれる。
【0052】
本発明は、下記化学式1の化合物:
【化11】
その異性体、その溶媒和物、その水和物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0053】
ここで、前記化学式1中
【化12】
は、フラン、チオフェン、ベンゼンまたはシクロペンテンであり、
は、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルであり、ここで、Rは、一つ以上のハロゲンで置換あるいは非置換され、
環Bは、ジアザビシクロヘプタン、ピペラジン、ジアゼパンまたはジアザスピロオクタンであり、ここで、環Bは、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換あるいは非置換され、
は、ピリジニル、チアゾリル、フェニル、イミダゾリル、ピラジニル、キノリニル、ピリミジニルまたはピリドニルであり、ここで、Rは、一つ以上のRで置換あるいは非置換され、
前記Rは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cハロアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコキシ、ハロゲン、C-Cアルカンスルホンイミド、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換されたアミノおよびニトリルからなる群から選ばれる一つ以上の置換基である。
【0054】
本発明の一具体例において、前記環Bは、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピペラジン、ジアゼパンまたは4,7-ジアザスピロ[2,5]オクタンであってもよい。
【0055】
前記環Bの一具体例において、環Bは、2つの窒素原子を介して隣接する他と連結されてもよい。
【0056】
本発明のさらに他の具体例において、前記Rがピリジニル、チアゾリル、フェニル、ピラジニル、ピリミジニル、またはピリドニルである場合、Rは、一つ以上のRで置換されるか、あるいは、Rがイミダゾリルまたはキノリニルである場合、Rは、非置換され、
前記Rは、直鎖または分岐鎖のC-Cアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cハロアルキル、直鎖または分岐鎖のC-Cアルコキシ、ハロゲン、C-Cアルカンスルホンイミド、一つ以上の直鎖または分岐鎖のC-Cアルキルで置換されたアミノおよびニトリルからなる群から選ばれる一つ以上の置換基であってもよい。
【0057】
本発明による前記化学式1の化合物の例としては、下記実施例のうち[表1]に羅列された化合物1~37、またはその薬学的に許容可能な塩、または遊離塩基(表1に薬学的に許容可能な塩で示した場合)、その異性体、その溶媒和物またはその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0058】
本発明の前記化学式1の化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用でき、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、亜リン酸などのような無機酸類、脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル置換アルカノエート、ヒドロキシアルカノエートおよびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類などのような無毒性有機酸、トリフルオロ酢酸、アセテート、安息香酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、酒石酸、フマル酸などのような有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩の種類としては、サルフェート、ピロサルフェート、バイサルフェート、サルファイト、バイサルファイト、ニトラート、ホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ジハイドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、スクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マリエート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオエート、ベンゾアート、クロロベンゾアート、メチルベンゾアート、ジニトロベンゾアート、ヒドロキシベンゾアート、メトキシベンゾアート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチラート、シトレート、ラクテート、β-ヒドロキシブチラート、グリコレート、マレート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネート、マンダラートなどを含む。
【0059】
本発明による酸付加塩は、通常の方法で製造することができ、例えば、化学式1の誘導体をメタノール、エタノール、アセトン、メチレンクロリド、アセトニトリルなどのような有機溶媒に溶かし、有機酸または無機酸を加えて生成された沈殿物をろ過、乾燥させて製造したり、溶媒と過量の酸を減圧蒸留した後、乾燥させて、有機溶媒の下で結晶化させて製造することができる。
【0060】
また、塩基を使って薬学的に許容可能な金属塩を製造できる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解性化合物塩をろ過し、ろ液を蒸発、乾燥させて得られる。この際、金属塩としては、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが製薬上適合する。また、これに対応する塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、硝酸銀)と反応させて得られる。
【0061】
しかも、本発明は、前記化学式1の化合物およびその薬学的に許容可能な塩だけでなく、これから製造できる溶媒和物、光学異性体、水和物などを全部含む。
【0062】
本発明の他の態様は、化学式1の化合物の製造方法を提供するものであってもよい。
【0063】
化学式1の化合物の製造方法は、
化学式2の化合物:
【化13】
から化学式3の化合物:
【化14】
を製造する段階と、
当該化学式3の化合物から化学式4の化合物:
【化15】
を製造する段階と、
当該化学式4の化合物から化学式5の化合物:
【化16】
を製造する段階と、
当該化学式5の化合物から化学式6の化合物:
【化17】
を製造する段階と、
当該化学式6の化合物から化学式7の化合物:
【化18】
を製造する段階と、
化学式7の化合物から化学式1の化合物:
【化19】
を製造する段階と、を含んでもよい。
【0064】
ここで、前記R、R
【化20】
および環Bは、それぞれ、本明細書に定義された通りであり、前記Gは、脱離基であり、前記PGは、保護基であり、前記環B’は、環Bと同じ構造を有するが、一つの窒素原子が保護基で保護された形態である。
【0065】
前記脱離基は、ハロゲン、スルホン酸エステル、またはアルコキシなどの官能基であってもよく、化学式2~5の化合物から脱離基が離脱して目的化合物を製造できる官能基であれば、制限されない。前記保護基は、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、テトラヒドロ-2H-ピランなどの官能基であってもよく、化学式4~6の2級アミンを保護できる官能基であれば、制限されない。
【0066】
化学式2の化合物から化学式3の化合物を製造する段階は、化学式2の化合物が
【化21】
と反応する段階であってもよい。前記反応は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)をさらに添加してもよく、反応温度は、約40~100℃であってもよく、反応時間は、約10~14時間であってもよく、反応が円滑に進行される条件であれば、前記条件に制限されない。
【0067】
化学式3の化合物から化学式4の化合物を製造する段階は、化学式3の化合物でピラゾール基の2次アミンを保護基で保護する段階であってもよい。前記保護基は、2級アミンを保護できる官能基であれは、制限なしで利用でき、一例として、テトラヒドロ-2H-ピラン(THP)であってもよい。
【0068】
化学式4の化合物から化学式5の化合物を製造する段階は、化学式4の化合物が
【化22】
と反応する段階であってもよい。前記反応は、ジオキサンなどの溶媒で行われ得、Pd(dppf)Cl・CHClをさらに添加してもよく、反応温度は、約80~100℃であってもよく、反応時間は、約2~4時間であってもよい。反応が円滑に進行される条件であれば、前記条件に制限されない。
【0069】
化学式5の化合物から化学式6の化合物を製造する段階は、化学式5の化合物に環B’を連結する段階であってもよい。環B’は、本明細書に定義された環Bの一つの窒素原子が保護基で保護された形態であり、前記保護基は、2級アミンを保護できる保護基であれば、制限なしに利用でき、一例として、t-ブトキシカルボニル(BOC)であってもよい。
【0070】
本段階のより具体的な実施様態は、環B’の保護されない2次アミンが化学式5の化合物と反応して環B’を化学式5の化合物に連結する段階であってもよい。前記段階は、DMSOなどの溶媒で行われ得、KCOをさらに添加してもよく、反応温度は、約100~140℃であってもよく、反応時間は、約10~14時間であってもよい。反応が円滑に進行される条件であれば、前記条件に制限されない。
【0071】
化学式6の化合物から化学式7の化合物を製造する段階は、化学式6の化合物に付着している保護基を脱保護する段階であってもよい。前記段階は、化学式6の化合物をHCl溶液に溶かして脱保護することができる。
【0072】
化学式7の化合物から化学式1の化合物を製造する段階は、化学式7の化合物がCHO-Rと反応する段階であってもよい。前記反応は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)などの溶媒で行われ得、アルデヒドと2次アミンの還元性アルキル化反応を通じて化学式1の化合物を形成できる。アルデヒドと2次アミンを還元性アルキル化させる還元剤であれば、制限なしで利用でき、一例として、NaBH(OAc)を利用できる。反応温度は、約40~80℃であってもよく、反応時間は、約3~8時間であってもよい。反応が円滑に進行される条件であれば、前記条件に制限されない。
【0073】
本発明の他の態様は、前記化学式1の化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するがんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0074】
前記化合物は、ABL1(H396P)-nonphosphorylated、ABL1(H396P)-phosphorylated、ABL1(M351T)-phosphorylated、ABL1(Q252H)-phosphorylated、ABL1(T315I)-nonphosphorylated、ABL1(T315I)-phosphorylated、ABL1(Y253F)-phosphorylated、ABL1-phosphorylated、AMPK-alpha1、AURKA、AURKC、AXL、BLK、BTK、CSNK2A1、CSNK2A2、DAPK3、DDR1、DDR2、DLK、EGFR(L747-E749del、A750P)、EGFR(L858R、T790M)、EGFR(T790M)、EPHB6、FGFR1、FGR、FLT3、FLT3(D835H)、FLT3(D835V)、FLT3(D835Y)、FLT3(ITD)、FLT3(ITD、D835V)、FLT3(ITD、F691L)、FLT3(K663Q)、FLT3(N841I)、FLT3(R834Q)、FLT3-autoinhibited、FRK、GCN2(Kin.Dom.2,S808G)、HCK、ICK、ITK、JAK1(JH1domain-catalytic)、JAK1(JH2domain-pseudokinase)、JAK2(JH1domain-catalytic)、JAK3(JH1domain-catalytic)、KIT(A829P)、KIT(D816V)、KIT(V559D)、LCK、MAP3K2、MEK2、MEK3、MEK5、MERTK、MST1、PDGFRB、PLK4、RET、RET(M918T)、RET(V804L)、RET(V804M)、RIOK3、SNARK、SRC、SYK、TRKA、TRKB、TRKC、TYK2(JH1domain-catalytic)、YES、およびYSK4からなる群から選ばれる一つ以上のタンパク質キナーゼに対して阻害活性を示すことができる。
【0075】
また、前記化合物は、RET酵素阻害活性を示すことができる。
【0076】
前記がんは、偽粘液腫、肝内胆道がん、肝芽腫、肝がん、甲状腺がん、甲状腺髄様がん、結腸がん、睾丸がん、骨髄異形成症候群、膠芽腫、口腔がん、口脣がん、菌状息肉腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、基底細胞がん、卵巣上皮がん、卵巣生殖細胞がん、男性乳がん、脳がん、脳下垂体腺腫、多発性骨髄腫、胆のうがん、胆道がん、大腸がん、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、ファーター膨大部がん、膀胱がん、腹膜がん、副甲状腺がん、副腎がん、鼻腔・副鼻腔がん、非小細胞肺がん、舌がん、星細胞腫、小細胞肺がん、小児脳腫瘍、小児リンパ腫、小児白血病、小腸がん、髄膜腫、食道がん、神経膠腫、腎盂がん、腎臓がん、心臓がん、十二指腸がん、悪性軟部組織がん、悪性骨腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、眼がん、外陰部がん、尿管がん、尿道がん、原発部位不明がん、胃リンパ腫、胃がん、胃カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、ウィルムス腫瘍、乳がん、肉腫、陰茎がん、咽頭がん、妊娠絨毛疾患、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、前立腺がん、転移性骨腫瘍、転移性脳腫瘍、縦隔腫瘍、直腸がん、直腸カルチノイド腫瘍、膣がん、脊髄がん、前庭神経鞘腫、すい臓がん、唾液腺腫瘍、カポジ肉腫、パジェット病、扁桃がん、扁平上皮がん、肺腺がん、肺がん、肺扁平上皮がん、皮膚がん、肛門がん、横紋筋肉腫、喉頭がん、胸膜がん、血液がん、および胸腺がんからなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0077】
また、前記がんは、RET融合遺伝子を発現するがんであってもよい。
【0078】
前記RET融合遺伝子は、RET受容体チロシンキナーゼをコードするRET遺伝子と一つ以上の他の遺伝子が互いに連結された形態を意味し、RET融合遺伝子を構成するRET遺伝子以外の他の遺伝子は、kinesin family member 5B(KIF5B)、coiled-coil domain-containing protein 6(CCDC6)、nuclear receptor coactivator 4(NCOA4)またはtripartite motif containing 33(TRIM33)であってもよく、これらに限定されるものではない。
【0079】
本発明による化学式1の化合物は、RET(ret proto-oncogene)酵素阻害能に優れ(実験例1参照)、RET融合遺伝子を発現する甲状腺髄様がん細胞および肺がん細胞の増殖抑制効果に優れているところ(実験例2参照)、がん、例えば、甲状腺髄様がんまたは肺がんの治療に有用に使用でき、特にRET融合遺伝子が発現したがんの治療に有用に使用できる。
【0080】
前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、臨床投与時に経口および非経口の様々な剤形で投与できるが、より好ましくは、非経口剤形であってもよい。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使って調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0081】
前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分とする薬学的組成物は、非経口投与することができ、非経口投与は、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射を注入する方法による。
【0082】
この際、非経口投与用剤形で製剤化するために、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を安定剤または緩衝剤とともに水に混合して溶液または懸濁液で製造し、これをアンプルまたはバイアル単位投与型で製造することができる。前記組成物は、滅菌され/滅菌されるか、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩および/または緩衝剤などの補助剤、およびその他治療的に有用な物質を含有することができ、通常の方法である混合、顆粒化またはコーティング方法により製剤化することができる。
【0083】
経口投与用剤形としては、錠剤、丸剤、硬・軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤などが該当でき、このような剤形は、有効成分以外に、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸およびそのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール)を含有することができる。
【0084】
錠剤は、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリジンなどのような結合剤を含有することができ、場合によって、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩などのような崩解剤または共沸混合物および/または吸収剤、着色剤、香味剤、および甘味剤を含有することができる。
【0085】
前記化学式1の化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有するがんの予防または治療用薬学的組成物は、個別治療剤で投与したり、使用中の他の抗がん剤と併用投与して使用できる。
【0086】
本発明の他の態様は、前記化学式1の化合物、その異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する薬学的組成物を必要な対象に投与する段階を含むがんの予防または治療方法を提供する。
【0087】
本発明の他の態様は、がんの予防または治療に使用する薬剤の製造に用いるための前記化学式1の化合物またはその異性体、その溶媒和物、その水和物、またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【0088】
以下、本発明を実施例および実験例によって詳細に説明する。
【0089】
ただし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0090】
<分析および精製条件>
本発明の実施例で合成された化合物は、下記の方法で精製したり、または構造分析を実施した。
【0091】
1.精製用中圧液体クロマトグラフィー(Medium pressure liquid chromatography;MPLC)
中圧液体クロマトグラフィーは、TELEEDYNE ISCO社のCombiFlash Rf +UVを使用した。
【0092】
2.分析用LC-MS(ACQUITY UPLC H-Class Core System)
Waters社製のUPLC system(ACQUITY UPLC PDA Detector)にWaters社製のQDA Detectorが装着された装備を使用した。使用カラムは、Waters社のACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18(1.7μm、2.1×50mm)であり、カラム温度は、30℃で行った。
【0093】
移動相Aは、0.1%ギ酸が含まれた水、移動相Bは、0.1%のギ酸が含まれたアセトニトリルを使用した。
グラディエント条件(10-100% Bで3分、移動速度=0.6ml/min)
【0094】
3.精製用Prep-150 LC System(Preparative-Liquid chromatography UV spectrometry)
Waters社製のPrep 150 LC system(2545 Quaternary gradient module,2998 Photodiode Array Detector,Fraction collector III)にWaters社製の装備を使用した。使用カラムは、Waters社のXTERRA Prep(登録商標)RP18 OBDTM(10μm、30×300mm)であり、カラム温度は、室温で行った。
グラディエント条件(3-100% Bで120分、移動速度=40ml/min)
【0095】
4.キラル化合物分離用SFC条件
Waters社製の80Q Preparative SFC systemを使用した。使用カラムは、DAICEL社のCHIRALPAK(登録商標)AS(10μm、250×30mm I.D.)であり、カラム温度は、室温で行った。移動相としてCO、補助溶媒として0.1%アンモニア水が添加されたメタノールを使って130分間流した。
【0096】
5.NMR分析
NMR分析は、Bruker社製のAVANCE III 400またはAVANCEIII 400 HDを使って行い、データは、ppm(parts per million(δ))で示した。
【0097】
使用された市販試薬は、さらなる精製することなく使用した。本発明において室温とは、20~25℃程度の温度をいう。減圧下濃縮または溶媒留去は、回転蒸発装置(rotary evaporator)を使用した。
【0098】
<実施例1>2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンの製造
下記スキーム1:
【0099】
【化23】
で表示された方法によって表題の化合物を製造した。
【0100】
段階1:2-クロロ-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンの製造
2,4-ジクロロフロ[3,2-d]ピリミジン(50g、264.55mmol、1eq)、5-メチル-1H-ピラゾール-3-アミン(26.98g、277.78mmol、1.05eq)、DIPEA(102.57g、793.65mmol、138.24mL、3eq)をDMSO(250mL)に溶かした後、60℃で12時間撹拌した。反応混合物に水をゆっくり添加し、生成された固体をろ過した。固体を水で洗った後、回収して、目的化合物2-クロロ-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(62g)を収得した。
MS(m/z):250.1[M+1]
【0101】
段階2:2-クロロ-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンの製造
2-クロロ-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(60g、240.33mmol、1eq)、TsOH(8.28g、48.07mmol、0.2eq)をTHF(600mL)に溶かした後、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(60.72g、721.86mmol、66mL、3eq)を添加し、60℃で15時間撹拌した。反応混合物にNaHCO水溶液(500mL)とEtOAc(500mL)、水(1L)を添加し、有機層を回収して、有機層を飽和食塩水(400mL)で洗い、NaSOを用いて乾燥した。有機層をフィルターし、減圧濃縮装置で濃縮した後、中圧クロマトグラフィーを用いて精製した(Hexane/EtOAc=4/1 to 2/1)。精製後、減圧濃縮して、目的化合物2-クロロ-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(60.66g、181.74mmol、75.62% yield)を収得した。
MS(m/z):334.1[M+1]
H NMR(400MHz,CDCl)δ=7.77(d,J=2.0Hz,1H),7.69(s,1H),6.81(d,J=2.2Hz,1H),6.76(s,1H),5.20(dd,J=2.8,10.4Hz,1H),4.12-4.02(m,1H),3.681-3.618(m,1H),2.40-2.32(m,4H),2.14-2.04(m,1H),1.89(br dd,J=2.8,13.6Hz,1H),1.77-1.63(m,2H),1.62-1.55(m,1H)
【0102】
段階3:2-(6-フルオロピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンの製造
2-クロロ-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(20g、59.92mmol、1eq)、2-フルオロ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(16g、71.73mmol、1.20eq)、KCO(20.70g、149.80mmol、2.5eq)をジオキサン(400mL)、水(20mL)に溶かした後、Pd(dppf)Cl・CHCl(4.89g、5.99mmol、0.1eq)を添加した。反応混合物を窒素ガス下に90℃で3時間撹拌した。反応混合物をろ過した後、ろ液を濃縮し、水とEtOAcを添加した。有機層を集めて、飽和食塩水(1.0L)で洗った後、NaSOを用いて乾燥した。有機層をフィルターし、減圧濃縮装置で濃縮した後、中圧クロマトグラフィーを用いて精製した(Hexane/EtOAc=5/1 to 1/1)。精製後、減圧濃縮して、目的化合物2-(6-フルオロピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(22g、55.78mmol、93.09% yield)を収得した。
MS(m/z):395.4[M+1]
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=10.49(s,1H),9.10(d,J=2.4Hz,1H),8.78(dt,J=2.4,8.4Hz,1H),8.34(d,J=2.0Hz,1H),7.30(dd,J=2.8,8.4Hz,1H),7.11(d,J=2.4Hz,1H),6.64(s,1H),5.35(dd,J=2.4,9.6Hz,1H),3.91(br d,J=10.8Hz,1H),3.70-3.58(m,1H),2.37(s,3H),2.34-2.23(m,1H),2.05-1.95(m,1H),1.92-1.82(m,1H),1.75-1.62(m,1H),1.58-1.45(m,2H)
【0103】
段階4:tert-ブチル3-(5-(4-((5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートの製造
2-(6-フルオロピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(1g、2.54mmol、1eq)、tert-ブチル3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(700mg、3.53mmol、1.39eq)、KCO(2g、14.47mmol、5.71eq)をDMSO(10mL)に溶かした後、120℃で12時間撹拌した。反応混合物に水を入れ、生成された固体をフィルターした。段階4を21回繰り返して、目的化合物tert-ブチル3-(5-(4-((5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(22.5g、37.82mmol、71.02% yield)を収得した。
MS(m/z):573.1[M+1]
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=10.29(s,1H),9.08(br s,1H),8.43(br d,J=8.4Hz,1H),8.27(br s,1H),7.04(s,1H),6.74(br d,J=8.8Hz,1H),6.68(s,1H),5.35(br d,J=9.2Hz,1H),4.21(br d,J=5.2Hz,2H),4.05(br s,2H),3.92(br d,J=10.4Hz,1H),3.66(br d,J=7.2Hz,1H),3.48(br d,J=11.2Hz,2H),2.55(br d,J=7.2Hz,1H),2.38(s,3H),2.33-2.24(m,1H),2.05-1.96(m,1H),1.87(br d,J=12.0Hz,1H),1.76-1.61(m,1H),1.58-1.43(m,3H),1.26(s,9H)
【0104】
段階5:2-(6-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンジヒドロクロリドの製造
tert-ブチル3-(5-(4-((5-メチル-1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ)フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(22g、36.98mmol、1eq)を4M HCl/MeOH(250ml)に溶かした後、常温で1時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、アセトン(1L)を添加した。生成された固体をろ過して回収した後、乾燥して、目的化合物2-(6-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンジヒドロクロリド(22.4g)を収得した。
MS(m/z):389.1[M+1]
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=11.56(br s,1H),10.61(br s,1H),9.23(br s,1H),9.03(s,1H),8.76(dd,J=2.0,9.2Hz,1H),8.50(d,J=2.0Hz,1H),7.26(br d,J=9.2Hz,1H),7.20(d,J=2.0Hz,1H),6.57(s,1H),4.56(br s,2H),4.19(br s,4H),3.01-2.95(m,1H),2.39(s,3H),1.94(br dd,J=5.6,10.0Hz,1H)
【0105】
段階6:2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンの製造
2-(6-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンジヒドロクロリド(22.4g、48.55mmol)、6-メトキシピリジン-3-カバルデヒド(9.99g、72.83mmol、1.5eq)、TEA(39.31g、388.43mmol、54.06mL、8eq)をDMA(250mL)に溶かした後、aBH(OAc)(30.87g、145.66mmol、3eq)を添加し、55℃で5時間撹拌した。反応混合物に水(1L)、EtOAc(1.6L)を入れ、有機層を回収した。有機層を飽和食塩水(800mL)で洗った後、NaSOを用いて乾燥した。有機層をフィルターし、減圧濃縮装置で濃縮した後、RP-HPLCを用いて精製して、目的化合物2-(6-(6-((6-メトキシピリジン-3-イル)メチル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)ピリジン-3-イル)-N-(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)フロ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(11.7g、22.96mmol、47.29% yield)を収得した。
MS(m/z):510.4[M+1]
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=12.11(br s,1H),10.14(br s,1H),9.13(d,J=2.0Hz,1H),8.46(dd,J=2.0,8.8Hz,1H),8.26(s,1H),8.07(d,J=2.0Hz,1H),7.67(dd,J=2.4,8.8Hz,1H),7.05(s,1H),6.76(dd,J=6.0,8.8Hz,2H),6.61(br s,1H),3.82(s,3H),3.75(br d,J=12.0Hz,2H),3.66(br d,J=5.6Hz,2H),3.61-3.42(m,4H),2.54-2.51(m,1H),2.31(s,3H),1.56(br d,J=8.4Hz,1H)
【0106】
前記実施例1と同様の方法にすべての実施例化合物(実施例1~実施例37化合物)を製造し、各実施例化合物の化合物名、化学構造式、NMRおよびLC-MS分析結果を下記表1に整理して示した。
【0107】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【0108】
<実験例1>RET酵素阻害能の評価
本発明による実施例化合物のRET酵素阻害活性を評価するために、下記のような実験を行った。
【0109】
実施例化合物を精製されたヒトRET(658-end,signalchem)酵素と反応させて、下記のような方法で酵素阻害能を評価した。反応バッファーは、40mM Tris-HCl pH7.4、20mM MgCl、0.5mg/mL BSA、および50μM DTTの組成を使用し、すべての試験物は、反応バッファー上で反応を行った。試験時に、ヒトRET(658-end、0.8ng)酵素と精製ATP(10μM)、特異的な基質溶液を25℃で1時間反応させた後、酵素活性は、in vitro ADP-GloTM kinase assay(promega)を用いて確認した。2:2:1の割合で酵素活性反応液とADP-Glo反応液、酵素能検出溶液を反応させて、ルミネセンスを測定した。化合物を処理しない溶媒対照群の酵素活性の蛍光度を基準として各化合物の処理濃度に応じた酵素活性阻害程度を算出し、この際、酵素活性阻害を50%抑制する各化合物の濃度をIC50(nM)値に決定した。各化合物のIC50(nM)は、3個ずつのデータセットで決定し、プリズム(バージョン7.01、グラフパッド)ソフトウェアを用いて求めた。その結果を下記の表2に示した。
【0110】
<実験例2>RET融合遺伝子を発現する甲状腺髄様がんおよび肺がん細胞の増殖抑制活性の評価
本発明による化合物のRET融合遺伝子を発現する甲状腺髄様がん細胞および肺がん細胞の増殖に対する抑制活性を評価するために、下記のような実験を行った。
【0111】
RET融合遺伝子を発現する肺がん細胞株のうちでLC-2/ad細胞は、RPMI:F12(1:1)(Invitrogen)に10%FBS(HyClone)を入れた後に培養し、TT細胞は、10%FBSを添加したF-12(Invitrogen)を使用する。Ba/F3細胞は、10%FBSと5ng/mlのIL-3(R&D Systems)を入れたRPMI-1640を使用する。形質導入されたBa/F3細胞は、同じ培地に1μg/mlのピューロマイシン(Invitrogen)を追加して培養する。細胞は、化合物を処理する24時間前に、3000~5000個の細胞をwhite clear bottom 96 well plate(Corning)のウェルごとに分注しておく。化合物は、DMSOに希釈させて(3倍ずつ希釈、全体12個の濃度)最終濃度が0.3nM~50μMになるように、0.5μlずつ注入した。生きた細胞の測定は、化合物の処理後、72時間後にCellTiter-Glo luminescent cell-viability reagent(Promega)を使って常温で10分間保管した後に、リーダー(SynergyNeo,Biotek)を用いて発光強度を測定した。各試験は、3回ずつ繰り返した。結果値は、対照群と比較した細胞成長率(%)で算出した。GraphPad Prism version 5.0プログラムを使ってグラフを描いて、GI50(nM)値を計算した。その結果を下記の表2に示した。
【0112】
【表2】
前記Enzyme assayカラムでRET(WT)は、突然変異が起こらない形態、RET(V804M)は、RETの804番のVアミノ酸がMで置換された突然変異形態、CCDC6-RETは、RET(WT)遺伝子とCCDC6遺伝子が融合した形態である。
【0113】
前記Cell assayカラムでLC-2/ad(CCDC6-RET遺伝子を有する)は、肺がん細胞株、TT細胞株(RET(WT)遺伝子を有する)は、甲状腺がん細胞株であり、Ba/F3 CCDC6-RET(WT)、Ba/F3 KIF5B-RET(WT)、Ba/F3 KIF5B-RET(V804M)は、Ba/F3細胞に疾患関連形質(CCDC6-RET、KIF5B-RET、KIF5B-RET(V804M))を導入させたものであり、Ba/F3(naive)は、形質導入をさせないものである。
【0114】
前記表2に示されたように、LC-2/ad、Ba/F3 naive、Ba/F3 CCDC6-RET、Ba/F3 KIF5B-RET、Ba/F3 KIF5B-RET(V804M)、TT細胞に対する各実施例化合物の細胞成長阻害活性を測定した結果、本発明の実施例化合物が、RET融合遺伝子を発現するBa/F3細胞株および甲状腺髄様がんと肺がん細胞株の増殖を良好に阻害していることを確認できる。
【0115】
したがって、本発明による化合物は、前記実験から確認したように、がん細胞の増殖を抑制できて、がん疾患、例えば、甲状腺髄様がんと肺がんの予防および治療のための薬学的組成物として有用に使用できる。
【0116】
<実験例3>本発明による化合物のさまざまなキナーゼ阻害活性の評価
本発明による化合物のより多くの酵素に対する阻害活性を評価するために、下記のような実験を行った。具体的に、本発明の実施例化合物のうちで選別された実施例1、3に対して、DiscoverX社に依頼して酵素(kinase)選択性を測定することとし、scanMAXTM Kinase分析用パネルを使って実験を進めた。この際、酵素に処理される薬物の濃度は、DMSOに1μMとし、下記式1と同じ方法でコントロール百分率(% control)を定め、その結果を下記表3に示した。
【0117】
[式1]
(実施例化合物-陽性対照群)/(陰性対照群-陽性対照群)×100
【0118】
ここで、前記陽性対照群は、0%のコントロール百分率を示す化合物をいい、陰性対照群は、DMSOであり、100%のコントロール百分率を示す。また、本発明の酵素選択性は、それぞれの酵素に対してコントロール百分率が<35%(すなわち35%未満)であれば、当該酵素に対して活性を有するものと判断した。
【0119】
【表3】
【0120】
前記表3から確認できるように、本発明による化合物は、ABL1(H396P)-nonphosphorylated、ABL1(H396P)-phosphorylated、ABL1(M351T)-phosphorylated、ABL1(Q252H)-phosphorylated、ABL1(T315I)-nonphosphorylated、ABL1(T315I)-phosphorylated、ABL1(Y253F)-phosphorylated、ABL1-phosphorylated、AMPK-alpha1、AURKA、AURKC、AXL、BLK、BTK、CSNK2A1、CSNK2A2、DAPK3、DDR1、DDR2、DLK、EGFR(L747-E749del、A750P)、EGFR(L858R、T790M)、EGFR(T790M)、EPHB6、FGFR1、FGR、FLT3、FLT3(D835H)、FLT3(D835V)、FLT3(D835Y)、FLT3(ITD)、FLT3(ITD、D835V)、FLT3(ITD、F691L)、FLT3(K663Q)、FLT3(N841I)、FLT3(R834Q)、FLT3-autoinhibited、FRK、GCN2(Kin.Dom.2,S808G)、HCK、ICK、ITK、JAK1(JH1domain-catalytic)、JAK1(JH2domain-pseudokinase)、JAK2(JH1domain-catalytic)、JAK3(JH1domain-catalytic)、KIT(A829P)、KIT(D816V)、KIT(V559D)、LCK、MAP3K2、MEK2、MEK3、MEK5、MERTK、MST1、PDGFRB、PLK4、RET、RET(M918T)、RET(V804L)、RET(V804M)、RIOK3、SNARK、SRC、SYK、TRKA、TRKB、TRKC、TYK2(JH1domain-catalytic)、YES、またはYSK4キナーゼに対してコントロール百分率35%より小さい値を有することが分かる。これは、本発明による化合物が、前記羅列された酵素に対して抑制活性を有していることを示すのであり、これより前記羅列された酵素に関連した疾患に使用時に有用な効果があることを示唆するのである。したがって、本発明による誘導体化合物は、前記羅列された酵素に関連した疾患の治療または予防用組成物として有用に使用できる。
【国際調査報告】