IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォスタッグ、フォルメンボー、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2022-533729センタリング装置を有する射出成形用型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】センタリング装置を有する射出成形用型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569148
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2020063255
(87)【国際公開番号】W WO2020234065
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】00662/19
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(31)【優先権主張番号】00257/20
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515253164
【氏名又は名称】フォスタッグ、フォルメンボー、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】FOSTAG, FORMENBAU AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ、ミュールマン
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH55
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC01
4F202CR03
4F202CR06
4F202CR07
(57)【要約】
少なくとも1つのセンタリング装置を有する射出成形用ツールの場合、前記射出成形用ツールは、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニット(3)を有するダイ保持プレート(2)と、前記成形用ツールの閉鎖状態において前記ダイユニット(3)に挿入される少なくとも1つのコアユニット(5)を有するコア保持プレート(4)と、前記コア保持プレート(4)と前記ダイ保持プレート(2)との間のストリッピングプレート(12)と、を備える射出成形用ツールにおいて、前記センタリング装置は、センタリングインサート(6)と、中心軸MAを中心として回転対称であるとともに、前記センタリングインサート(6)を受容することが意図された間隙(8)を有するセンタリングインサート装着体(7)と、を有し、前記センタリングインサート(6)は、前記コアユニット(5)を受容するための開口部(9)を有し、前記センタリングインサート(6)および前記センタリングインサート装着体(7)の前記間隙(8)は、前記センタリングインサート(6)が、前記センタリングインサート(6)の中心軸MBを中心として回転可能である少なくとも3つの位置においてねじれのない態様で前記センタリングインサート装着体(7)の前記間隙(8)に挿入可能であるように設計され、前記間隙の前記中心軸MAと前記センタリングインサートの中心軸MBが互いに重なり、前記センタリングインサート(6)の前記開口部(9)の中心軸MCが、前記センタリングインサート(6)の前記中心軸MBに対して、オフセット量(V)でずれて配置され、少なくとも1つの前記センタリングユニットは、前記ストリッピングプレート(12)に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセンタリング装置を有する射出成形用型であって、
少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニット(3)を有するダイ保持プレート(2)と、
前記型の閉鎖状態において前記ダイユニット(3)に導入される少なくとも1つのコアユニット(5)を有するコア保持プレート(4)と、
前記コア保持プレート(4)と前記ダイ保持プレート(2)との間のストリッピングプレート(12)と、を備える射出成形用型において、
前記センタリング装置は、センタリングインサート(6)と、前記センタリングインサート(6)を装着するための凹部(8)を有するセンタリングインサートホルダ(7)と、を備え、凹部(8)は中心軸MAを中心として回転対称であり、
前記センタリングインサート(6)は、前記コアユニット(5)を装着するための開口部(9)を有し、
前記センタリングインサート(6)が、前記センタリングインサート(6)の中心軸MBを中心として回転可能である少なくとも3つの位置に回転しないように固定された態様で、前記センタリングインサートホルダ(7)の前記凹部(8)に挿入可能であるように、前記センタリングインサート(6)と前記センタリングインサートホルダ(7)の前記凹部(8)は、構成され、この場合、前記凹部の前記中心軸MAと前記センタリングインサートの中心軸MBとが重なり、
前記センタリングインサート(6)の前記開口部(9)の中心軸MCが、前記センタリングインサート(6)の前記中心軸MBに対して、オフセット量(V)だけ偏心して配置され、
少なくとも1つの前記センタリングユニットは、前記ストリッピングプレート(12)に配置される、
ことを特徴とする射出成形用型。
【請求項2】
前記センタリングインサート(6)は、前記ストリッピングプレート(12)に装着されたストリッピング要素(13)により形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形用型。
【請求項3】
前記コアユニット(5)は、前記コア保持プレート(4)に浮いた状態で保持される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形用型。
【請求項4】
前記センタリングインサート(6)の外側輪郭(10)は、正多角形の形状を有し、
前記センタリングインサートホルダ(7)の前記凹部(8)の内側輪郭(11)は、前記センタリングインサート(6)の前記外側輪郭(10)に対して相補的であるように構成され、
前記センタリングインサート(6)の前記開口部(9)の前記中心軸MCは、多角形の辺または多角形の角部の方向(方向R)に向かって、オフセット量(V)だけ偏心して位置決めされる、
ことを特徴とする請求項1~3の一項に記載の射出成形用型。
【請求項5】
前記正多角形は、3個~12個の側面を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の射出成形用型。
【請求項6】
前記センタリングインサート(6)は円筒状または円柱状の基体(6a)を備え、前記基体(6a)の円筒面上または円柱面上に、前記センタリングインサート(6)の前記中心軸MBに対して垂直に立った凸部(6b)が配置され、
前記センタリングインサートホルダ(7)の前記凹部(8)は、前記本体(6a)に対して相補的な形状を有し、前記凹部(8)は、前記センタリングインサート(6)の前記凸部(6b)を収容するように、前記凹部(8)の前記中心軸MAと平行に延びる回転対称に配置された少なくとも3つのスロット(8a)を有する、
ことを特徴とする請求項1~3の一項に記載の射出成形用型。
【請求項7】
前記センタリングインサート(6)の前記開口部(9)の前記中心軸MCは、前記凸部(6b)に向かう方向において、オフセット量(V)だけ偏心して位置決めされる、
ことを特徴とする請求項6に記載の射出成形用型。
【請求項8】
前記コアユニット(5)は、前記開口部(9)において、前記コアユニット(5)の長手方向に変位可能であるように装着され得る、
ことを特徴とする請求項1~7の一項に記載の射出成形用型。
【請求項9】
前記開口部(9)は、貫通孔または止まり孔である、または、
前記開口部(9)は、円筒状または円柱状、或いは円錐状に形成される、
ことを特徴とする請求項1~8の一項に記載の射出成形用型。
【請求項10】
前記センタリングインサート(6)は、円柱形状または円筒形状を有する、
ことを特徴とする請求項1~9の一項に記載の射出成形用型。
【請求項11】
前記オフセット量(V)は、0.01mm~0.1mmである、
ことを特徴とする請求項1~10の一項に記載の射出成形用型。
【請求項12】
前記射出成形用型は、少なくとも1つのセンタリングユニットをそれぞれ有する複数のキャビティ(1)を有する、
ことを特徴とする請求項1~11の一項に記載の射出成形用型。
【請求項13】
さらなるセンタリングユニットが、前記コア保持プレート(4)および/または前記ダイユニット(3)に配置される、
ことを特徴とする請求項1~12の一項に記載の射出成形用型。
【請求項14】
前記センタリングインサートホルダは、前記ダイユニット(3)、前記ストリッピングプレート(12)、および/または前記コア保持プレート(4)に装着される別部品として構成される、
ことを特徴とする請求項1~13の一項に記載の射出成形用型。
【請求項15】
前記センタリングインサートホルダは、前記ダイユニット(3)、前記ストリッピングプレート(12)、および/または前記コア保持プレート(4)により形成される、
ことを特徴とする請求項1~14の一項に記載の射出成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタリング装置を有する射出成形用型に関する。射出成形用型は、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニットを有するダイ保持プレートと、射出成形用型の閉鎖状態においてダイユニットに導入される少なくとも1つのコアユニットを有するコア保持プレートと、コア保持プレートとダイ保持プレートとの間のストリッピングプレートと、を備えている。
【背景技術】
【0002】
薄肉の容器状射出成形品、具体的にはカップ、チューブ、チューブヘッド、バイアル、ボトルブランク、シリンジ等の製造に際して、均一な壁の厚さが非常に重要である。なぜならば、容器の冷却中や型からの取出中に壁厚にわずかでもずれがあると、発生する体積収縮により容器の顕著な変形が生じ得るからである。
【0003】
このような射出成形品用のキャビティは、通常、ダイとその中に配置されたコアとによって構成されている。したがって、均一な壁厚を得るためには、型の閉鎖方向に垂直な分離平面におけるコアの位置を、キャビティ形成ダイにセンタリングするように位置決めしなければならない。複数のキャビティを有する型において、この場合には、各コアが別個にセンタリングされる。全てのキャビティで均一な壁厚を有する射出成形品を得るためには、それぞれのダイにおいてコアを別個にセンタリングすることが重要である。
【0004】
WO2017215801から知られるこのような薄肉の容器状射出成形品用の射出成形用型は、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニットまたはダイがしっかりと保持されるダイ保持プレートと、少なくとも1つのキャビティ形成コアユニットまたはコアが保持されるコア保持プレートと、コアユニットの凹部にポジティブ嵌合態様で配置されたストリッピングリングであって、型の開放後に完成した射出成形品をコアから剥がす(ストリッピング)ように閉鎖方向の逆方向に移動可能であるストリッピングリングと、を備えている。コアまたはコアユニットは、センタリング設定のためにコア保持プレートに浮いた状態で装着され、正しいセンタリングが実施されると、コア保持プレート上のその位置に締結手段によって固定される。
【0005】
コアセンタリング装置は、複数のセンタリングストリップ、多くの場合4つのセンタリングストリップを備えている。センタリングストリップは、射出成形用型の閉鎖方向に対して傾斜したセンタリング面を有し、これに対応して傾斜したコアユニットの接触面に支持される。センタリングストリップに調整フィルムを追加または除去することで、コアは関連するダイに厳密にセンタリングされ得る。したがって、各センタリングストリップは、ダイユニットのセンタリング面に対応するコアユニットのセンタリング面を形成する。コアとダイとが互いに対してセンタリングされると直ちに、コアユニットがコア保持プレートに固定され、型は射出成形品を製造する準備が整う。複数のコアユニットが存在する場合、個々のユニットの個々のセンタリグのために、隣接又は近接するコアユニットの間に空隙が存在する。
【0006】
WO2017215801に記載される別のセンタリング装置において、ストリッピングリングが、ダイ保持プレートとコア保持プレートとの間に配置されたストリッピングプレートに、浮いた態様で保持されている。少なくとも1つの調整可能なコアセンタリング装置は、コアユニットとコア保持プレートとの間に配置されている。
【0007】
DE3140711およびJPS5120258それぞれは、ダイに対するコアの位置を設定するために、円形の偏心プレートを基準として用いるセンタリング装置を記載している。
【0008】
このようなセンタリング装置の欠点は、コアユニットを偏心した態様で保持する円形の偏心プレートを、コアの所望の変位に合わせて調整することが困難であるとともに、位置決めネジにより回転しないように固定する必要があることである。位置決めネジがあるためにスペースが節約できず、多くの場合側方からの操作を確保する必要がある。さらに、固定されているにもかかわらず、型の操作中に円形ディスクが時間とともに変位する可能性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上記の欠点の少なくともいくつかを回避するセンタリング装置を有する射出成形用型を特定することである。さらなる目的は、センタリング装置を、スペースをより節約しつつより簡単な態様で設計することにある。
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴を有する射出成形用型によって達成される。
【0011】
射出成形用型は、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニットを有するダイ保持プレートと、前記型の閉鎖状態において前記ダイユニットに導入される少なくとも1つのコアユニットを有するコア保持プレートと、前記コア保持プレートとダイ保持プレートとの間のストリッピングプレートと、を備える。前記センタリング装置は、センタリングインサートと、前記センタリングインサートの交換可能な装着のための凹部を有するセンタリングインサートホルダと、を備え、凹部は中心軸MAを中心として回転対称である。前記センタリングインサートは、前記コアユニットを装着するための開口部を有する。前記センタリングインサート、および前記センタリングインサートホルダの前記凹部は、前記センタリングインサートが、前記センタリングインサートの中心軸MBを中心として回転可能である少なくとも3つの位置に回転しないように固定された態様で、前記センタリングインサートホルダの前記凹部に挿入可能であるように構成され、この場合、前記凹部の前記中心軸MAと前記センタリングインサートの中心軸MBとが重なる。さらに、前記センタリングインサートの前記開口部の中心軸MCが、前記センタリングインサートの前記中心軸MBに対して、オフセット量だけ偏心して配置される。少なくとも1つの前記センタリングユニットは、前記ストリッピングプレートに配置される。
【0012】
型、特に射出成形用型は、一般に複数のキャビティを有している。各製造サイクルでできるだけ多くの成形品を成形するためには、このようなキャビティを型にできるだけ密に配置する必要がある。記載されるセンタリング装置は、構造がシンプルで省スペースであるため、このような密な詰め込みを可能とする。これにより、製造公差を簡単な態様で補償することができる。横方向に射出する射出成形用型では、それぞれのコアユニットを射出ポイントに対して位置決めすることができるため、それらは、射出プロセス中にダイにおいて中心に配置される。
【0013】
本例において、コアユニットのセンタリングは、センタリングインサートのオフセットの大きさ、およびセンタリングインサートの挿入時のオフセットの位置決めを理由として実施される。コアユニットは、センタリングインサートの開口部に装着され、センタリングインサートは、センタリングインサートホルダの凹部に不動に装着されるとともに回転しないように固定される。オフセットの方向は、センタリングインサートが、少なくとも3つの回転位置のうちのひとつにおいて装着体に挿入されることで設定される。回転しないように固定するさらなる手段、例えば位置決めネジは、存在せず、むしろ必要ない。
【0014】
ダイにおいて正しく位置決めされていないコアユニットは、対応するセンタリングインサートを選択することによって、所望のオフセット量で変位させることができる。この対応するセンタリングインサートの開口部の中心軸MCは、センタリングインサートの中心軸MBに対してちょうど当該オフセット量だけ偏心してオフセットしている。本例において、コアユニットの長手方向は、オフセット方向に対して垂直である。補正が実施される方向は、少なくとも3つの位置のうちの1つにセンタリングインサートが挿入されることで決定される。したがって、任意の大きさのオフセットを有するセンタリングインサートを、少なくとも3方向において当該オフセットを補正するように挿入することができる。オフセットの大きさだけが異なる一連のセンタリングインサートを使用することにより、全てのコアユニットを、希望通りに簡単な態様でセンタリングすることができる。型の試運転後、コアユニットのセンタリングが正しくない場合には、センタリングインサートを交換するだけで、正しいセンタリングが得られる。
【0015】
必要に応じて、前記オフセット量は、0.01mm~0.1mmであり得る。複数のキャビティを有する型のコアユニットを微調整するように、例えば、0.01mmのオフセット刻みを有する複数のセンタリングインサートがセットで製造され得る。実施される補正に応じて、所望のオフセット量を有するセンタリングインサートを選択し、正しい位置に回転させて、センタリングインサートホルダに挿入する。多くの場合、0.01mm刻みの0.01~0.05mmのオフセット量を有するセンタリングインサートで十分である。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項で特定される。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記センタリングインサートは、前記ストリッピングプレートに装着されたストリッピング要素(またはストリッピングリング)により形成される。射出成形用型の開放時に射出成形品をコアユニットから剥がすために使用されるストリッピング要素は、これに対応して、コアユニットを装着するための開口部を有する。この場合、前記コアユニットは、前記コア保持プレートに浮いた状態で保持され得るとともに、閉鎖した射出成形用型においてストリッピング要素によりセンタリングされる。センタリングインサートホルダは、ストリッピングプレートに直接形成される、またはストリッピングプレートに装着される別部品として形成される。本実施形態は、特に省スペースである。なぜならば、ストリッピング要素がコアユニットの厳密なセンタリングの機能も担うため、センタリングのための追加部品が必要ないからである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記センタリングインサートの外側輪郭は、正多角形(すなわち、等辺かつ等角の多角形)の形状を有する。前記センタリングインサートホルダの前記凹部の内側輪郭は、前記センタリングインサートの前記外側輪郭に対して相補的であるように構成され、これにより、センタリングインサートは、センタリングインサートホルダの凹部に、回転しないように固定された態様で装着され得る。この場合、前記センタリングインサートの前記開口部の前記中心軸MCは、多角形の辺または多角形の角部(隅部)の方向に向かって、オフセット量だけ偏心して位置決めされる。正多角形の側面(多角形の辺)または角部(多角形の角部)の個数に応じて、対称的な外側輪郭を有するセンタリングユニットは、同数の位置に回転され得る。すなわち、n個の側面を有する多角形は、n個の異なる位置に回転され得る。正多角形の形状にある外側および内側輪郭により、挿入されたセンタリングインサートは、型の使用中に回転しないように固定される。回転しないようにするためのさらなる固定は必要ない。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記正多角形は、3個~12個の側面又は角部を有し得る。正八角形で良好な結果が得られた。八角形の使用により、8個の異なるオフセット方向が設定され得る。これらは、それぞれセンタリングインサートのそれぞれの45度のオフセット方向の刻みに対応する(多角形の辺/多角形の角部に向かうオフセットの場合)。1つが多角形の辺へのオフセット用、および1つが多角形の角部へのオフセット用の2つのセンタリングインサートが使用される場合、22.5度のオフセット方向の刻みすら可能である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記センタリングインサートは円筒状または円柱状の基体を備え、前記本体の円筒面上または円柱面上に、前記センタリングインサートの前記中心軸MBに対して垂直に立った、例えばピン、スタッドまたはボルトの形状である凸部が配置される。前記センタリングインサートホルダの前記凹部は、前記基体に対して相補的な形状を有し、前記凹部は、前記センタリングインサートの前記凸部を収容するように、前記凹部の前記中心軸MAに対して平行に延びる回転対称に配置された少なくとも3つのスロットを有する。前記センタリングインサートの前記開口部の前記中心軸MCは、全体として前記凸部に向かう方向において、オフセット量だけ偏心して位置決めされる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記コアユニットは、前記開口部において、前記コアユニットの長手方向に変位可能であるように装着され得る。これは特に、センタリング装置がダイユニットに設けられ、型の閉鎖時にコアユニットのみが開口部に沈む場合の例である。また、型、特にストリッピングプレートを有する射出成形用型において、センタリングユニットがストリッピングプレートに設けられる場合、コアユニットは、センタリングインサートの開口部において、コアの長手方向に変位可能な態様で装着され得る。開口部における装着は、コアの長手方向を横断する方向において不動であるため、厳密なセンタリングが可能となる。コアユニットの装着のための開口部は、円筒状または円柱状、或いは円錐状に形成され得るとともに、ストリッピングプレートの実質的に厚さ全体に亘って延び得る。これに伴い、コアユニットも同様にこの領域において円筒状または円柱状、或いは円錐状に形成される。生じ得る個々の部品の摩擦ひいては摩耗を低減するように、コアユニットは、閉鎖した型において開口部に保持される部分の中央領域に、円周方向のテーパを有し得る。閉鎖状態においてこの中央領域では、コアユニットとの接触はない。しかしながら、中央領域の両側に隣接する領域は、センタリングユニットに接触し、コアユニットを型の閉鎖状態において所望の位置に固定する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記開口部は、貫通孔(例えば、好適にはコア保持プレートまたはストリッピングプレートでの使用の場合)または止まり孔(例えば、好適にはダイユニットでの使用の場合)であり得る。センタリング装置がダイユニットで使用される場合、型の閉鎖時にコアユニットは開口部に導入される。この導入を容易にするとともに側縁部への不所望の付着を防止するように、前記開口部は、円錐状に形成され得る。したがって、開口部に沈むコアユニットの先端も、円錐状に形成され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、センタリングインサートは、例えば六角ナットに似た円筒形状を有し得るが、内ネジがなく偏心した穴を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、型は、少なくとも1つのセンタリングユニットをそれぞれ有する複数のキャビティを有し得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、さらなるセンタリングユニットが、前記コア保持プレートおよび/または前記ダイユニットに配置され得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記センタリングインサートホルダは、前記ダイユニット、前記ストリッピングプレート、および/または前記コア保持プレートに装着される別部品として構成され得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記センタリングインサートホルダは、前記ダイユニット、前記ストリッピングプレート、および/または前記コア保持プレートにより形成され得る。
【0028】
本発明を、図面に関連した例示的な実施形態に基づいて、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】センタリング装置を有する射出成形用型の一部の断面図。
図2】正八角形の形状にあるセンタリング装置を示す図。
図3】円に配置された複数のセンタリング装置を示す図。
図4a】センタリング装置のさらなる変形例を示す図であって、ピンを有するセンタリングインサートの端面の平面図。
図4b】センタリング装置のさらなる変形例を示す図であって、センタリングホルダの断面図。
図4c】センタリング装置のさらなる変形例を示す図であって、センタリングインサートの斜視図。
図5】センタリング装置として構成されたストリッピング要素を有する射出成形用型の一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、薄肉の細長い射出成形品用の少なくとも1つのキャビティ1を有する射出成形用型の一部の断面図である。射出成形用型は、少なくとも1つのキャビティ形成コアユニット5が保持されるコア保持プレート4と、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニットまたはダイ3が保持されるダイ保持プレート2と、を備えている。さらに、コア保持プレート4とダイ保持プレート2との間に、射出成形用型は、ストリッピング要素またはストリッピングリング13が保持されるストリッピングプレート12を備えている。図示の射出成形用型において、コアユニット5に対して横方向に配置された射出チャネル14を介して射出が実施される。
【0031】
図2は、型内でコアユニットをセンタリングするためのセンタリング装置を示す。センタリング装置は、センタリングインサート6とセンタリングインサートホルダ7とを備えている。センタリングインサートホルダ7は、センタリングインサート6を正確に装着するための凹部8を形成している。凹部8は、中心軸MAに対して回転対称に形成されている。図示の実施形態において、凹部8は、正八角形の形状にある内側輪郭11を有している。センタリングインサート6は、中心軸MBに対して回転対称であり、断面(コアユニットの長手方向軸または中心軸MBに対して垂直な断面平面)において、凹部8の内側輪郭11に対して相補的である外側輪郭10であって、正八角形の形状にある外側輪郭10を有している。さらに、コアユニット(図示せず)用の開口部9が、センタリングインサート6に形成されている。この開口部9に、コアユニットが長手方向に変位可能または変位不可能となるように正確に嵌合した態様で保持される。図示例において、開口部9の中心軸MCは、オフセットすることなく外側輪郭に対して厳密に中心に形成されている。すなわち、開口部9の中心軸MCは、センタリングユニット6の中心軸MBに重なる。センタリングユニット6がセンタリングインサートホルダ7に挿入された状態において、センタリングユニット6の中心軸MBは、センタリングインサートホルダ7の凹部8の中心軸MAに重なる。
【0032】
製造公差を理由としてキャビティまたはダイユニットに厳密にセンタリングされていないコアユニットを、補正用センタリングインサート6を使用してセンタリングすることができる。この目的のために、センタリングインサート6の開口部9の中心軸MCは、八角形の側面(または隅部)に向かう方向Rにおいて、通常、数百分の1ミリメートルの範囲内のオフセット量Vでオフセットするように構成される。偏心した開口部9を有するセンタリングインサート6を使用することにより、ダイ/キャビティに対するコアユニットの位置を、異なる8方向においてオフセット量Vで補正することができる。挿入状態においてオフセットの大きさやオフセットの方向が正しくない場合(これは型の試運転により判断できる)、センタリングインサート6を回転させる、またはより大きいかより小さいオフセット量Vを有するセンタリングインサート6と交換するだけでよい。
【0033】
図3は、射出成形用型の複数のセンタリング装置を示している。図示例において、センタリング装置は、円(半円のみ表示)上に配置されている。正多角形の形状にあるセンタリングインサートを有するセンタリング装置の非常に省スペースでシンプルな構成により、薄肉の細長い射出成形品のためのキャビティを非常に密に詰め込むことができる。図示例において、8個のキャビティが円(半円のみ表示)の形状で配置され、これらは中心で射出成形される。このタイプの型において、コアは、多くの場合、キャビティ内において、射出圧力のために射出ポイントに向けてわずかに偏心させて配置する必要がある。これにより、コアが射出プロセス中にその正しい中心位置をとる。このような密な詰め込みは、記載されたセンタリング装置を使用することにより可能であり、各コアユニットの位置を、簡単かつ個別に設定することができる。
【0034】
必要に応じて、図1に示すように、センタリングユニットは、コアユニットの単数または複数の領域(A、B、C)に形成される。センタリングユニットは、コアユニット5の下部(基部)となるコア保持プレート4と、ストリッピングプレート12と、コアの先端15の領域となるダイ保持プレート2と、に配置され得る。
【0035】
コアの先端15の領域(領域C)において、センタリングインサート6の開口部9は、通常、わずかに円錐形の止まり孔(有底孔)として形成されている。止まり孔の内部に、コアの先端15が、型の閉鎖中に沈んで保持される。型が閉鎖される際、コアユニットの長手方向を横断する横方向の変位は不可能であり、コアの先端の位置を、正しいセンタリングインサート6を使用して要望通りに設定することができる。センタリングインサート6は、センタリングインサートホルダ7に、保持されるとともに回転しないように固定されている。
【0036】
ストリッピングプレートの領域(領域B、センタリングユニットは図示せず)におけるセンタリング装置のセンタリングインサートは、貫通する開口部を有している。開口部の内部に、コアユニットがその長手方向において変位可能な態様で、型の操作中に保持される。
【0037】
コア保持プレートの領域(領域A、センタリングユニットは図示せず)、すなわちコアユニットの下部(基部)におけるセンタリング装置のセンタリングインサートは、貫通する開口部を有している。開口部の内部に、コアユニットが、その長手方向において変位可能な態様で保持される。コアユニットは、コア保持プレートにおける設定が実施された後に固定される。
【0038】
図4(a)から図4(c)は、センタリング装置のさらなる変形例を示す。そのセンタリングインサート6は、中心軸MBを有する円筒形状または円柱形状の基体6aと、基体6aの円筒面または円柱面に横方向に配置された凸部6bと、を備えている。図示の実施形態において、凸部6aは、中心軸MBに対して垂直に直立するピン6aとして構成されている。さらに、センタリングインサート6は、コアユニット(図示せず)を装着するための開口部9を有している。開口部9の中心軸MCは、センタリングインサートの中心軸MBに対して、オフセット量Vだけピン6aに向けてオフセットしている。
【0039】
センタリングインサート6に対して相補的である、センタリングインサートホルダ7の実質的に円筒形または円柱形の凹部8は、センタリングインサート6の凸部またはピン6bを収容するように長手方向に延びる複数のスロット8aを有している。これらのスロット8aは、凹部8の中心軸MAを中心として回転対称に配置されている。8個のこのようなスロット8aが、図示の実施形態に示されている。センタリングインサート6の挿入状態において、センタリングインサート6は、所望の方向に位置決めされたセンタリングインサートホルダ7に保持されるとともに、ピン6bを使用することにより回転しないように固定されている。回転しないようにするためのさらなる固定は必要ない。
【0040】
図4のセンタリング装置を使用することにより、コアユニットは、上述の八角形のセンタリング装置と同様にセンタリングされ得る。
【0041】
図5は、図1に類似したセンタリング装置を有する射出成形用型の一部の断面図である。射出成形用型は、少なくとも1つのキャビティ形成ダイユニット3を有するダイ保持プレート2と、型の閉鎖状態においてダイユニット3に導入されてキャビティ1を形成する少なくとも1つのコアユニット5を有するコア保持プレート4と、コア保持プレート4とダイ保持プレート2との間に配置されたストリッピングプレート12と、を備えている。ストリッピング要素またはストリッピングリング13は、ストリッピングプレート12に配置されている。ストリッピング要素13は、ストリッピング要素またはストリッピングリング13を有するストリッピングプレート12をコアユニット5に対して相対的に前方にコアの先端15に向かって移動させることで、射出成形プロセスに続く型の開放中に射出成形品を取り出すために使用される。
【0042】
ストリッピング要素13は、同時に、センタリング装置のセンタリングインサート6である。ストリッピングプレート12は、センタリングインサートホルダ7を形成する。図示の実施形態において、センタリング装置は、図4の変形例にしたがって構成されている。センタリングインサート6は、ピン6bを持つ基体6aを有している。ピン6bは、センタリングインサートホルダ7のスロット8aによって所望の回転位置に持ち込まれ得る(誘導され得る)。センタリングインサート6の開口部9は円錐状に形成されているため、ストリッピング要素13またはセンタリングインサート6は、コアユニット5に対して相対的にわずかに前方に変位され得る。コアユニットは、これに対応して同様に円錐状に構成されている。
【0043】
センタリングインサート6として構成されたストリッピング要素13は、ストリッピングプレート12の実質的に厚さ全体に亘って延びている。このようにして、センタリングインサート6の開口部9に案内されたコアユニットは、長い領域、すなわち2つの領域に亘って支持されて安定化され得る。コアユニット5は、これに対応して同様に円錐状に構成されている。生じ得る個々の部品の摩擦ひいては摩耗を低減するように、図示の設計のコアユニット5は、閉鎖した型において開口部9に保持される部分の中央領域に、円周方向のテーパ16を有している。閉鎖状態においてこの中央領域では、センタリングユニット5との接触はない。しかしながら、中央領域の両側に隣接する領域は、センタリングユニット5に接触し、コアユニットを型の閉鎖状態において所望の位置に固定する。
【0044】
コアユニット5は、図示の実施形態において、コア保持プレート4に浮いた状態で装着されている。型を閉鎖するとき、コアユニット5は、センタリングインサート6またはストリッピング要素13によって、センタリングされるとともに正しい位置に固定される。
【0045】
1 キャビティ
2 ダイ保持プレート
3 ダイユニット/ダイ
4 コア保持プレート
5 コアユニット/コア
6 センタリングインサート
6a 基体
6b 凸部、ピン
7 センタリングインサートホルダ
8 凹部
8a スロット
9 開口部
10 外側輪郭
11 内側輪郭
12 ストリッピングプレート
13 ストリッピングリング
14 射出チャネル
15 コアの先端
16 円周方向のテーパ
A、B、C センタリング装置の配置領域
MA 凹部8の中心軸
MB センタリングインサート6の中心軸
MC、MC’ 開口部9の中心軸
R オフセット方向
V オフセット量
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
【国際調査報告】