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特表2022-533746高価値の化学製品を製造するためのプラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油の混合物の処理および水蒸気分解
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  • 特表-高価値の化学製品を製造するためのプラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油の混合物の処理および水蒸気分解 図1
  • 特表-高価値の化学製品を製造するためのプラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油の混合物の処理および水蒸気分解 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】高価値の化学製品を製造するためのプラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油の混合物の処理および水蒸気分解
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/36 20060101AFI20220715BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20220715BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20220715BHJP
   C10G 21/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C10G9/36
C10G1/10
C10G45/02
C10G21/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569237
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2020054293
(87)【国際公開番号】W WO2020234679
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/851,520
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ゴイエヌー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ガラン‐サンチェス,ララ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC12
4H129CA17
4H129CA22
4H129DA03
4H129DA06
4H129DA14
4H129FA02
4H129HA14
4H129HA17
4H129HA19
4H129KA05
4H129NA20
4H129NA21
4H129NA22
4H129NA45
(57)【要約】
廃棄プラスチックと、使用済みの潤滑油を用いて、一種以上のオレフィンを製造するシステムおよび方法が開示されている。混合した廃棄プラスチックが熱分解ユニットで処理されて、プラスチック由来のオイルが生成される。その後、プラスチック由来のオイルは、使用済みの潤滑油と混合されて混合物が形成される。次いで、混合物は、(1)C1からC8の炭化水素を含むライトエンド流と、(2)重質の炭化水素供給流とに分離される。そして、重質の炭化水素供給流が処理されて、水蒸気分解供給材料流が生成される。ライトエンド流および/または水蒸気分解供給材料流は、その後、分解ユニットへ流されて、一種以上のオレフィンが生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上のオレフィンを製造する方法であって、
プラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油とを混合して、混合炭化水素供給材料を形成することと、
前記混合炭化水素供給材料を分離して、(1)主としてCからCの炭化水素を含むライトエンド流と、(2)重質の炭化水素供給材料とを形成することと、
前記ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流すことと、
前記重質の炭化水素供給材料を処理して水蒸気分解原料を製造することと、
(1)前記水蒸気分解原料の炭化水素と、(2)前記ライトエンド流の炭化水素とを分解して、一種以上のオレフィンを製造することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記混合の前に、熱分解ユニット内で、プラスチック材料を熱分解して、前記プラスチック由来のオイルを形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱分解は、100~500℃の範囲内の温度で実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱分解は、0.05barg~10bargの範囲内の圧力で実行される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ライトエンド流を前記水蒸気分解ユニットへ流す前に、当該ライトエンド流を水素処理することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ライトエンド流の前記水素処理は、250~400℃の範囲内の温度で実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ライトエンド流の前記水素処理は、30~100バールの圧力で実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記重質の炭化水素供給材料の前記処理は、
前記重質の炭化水素供給材料を減圧蒸留を介して蒸留して、減圧蒸留残留物と減圧蒸留炭化水素流を生成することと、
前記減圧蒸留炭化水素流を液液抽出を介して処理して、主に多環芳香族から成る多環芳香族流と、パラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素およびナフテン系炭化水素を含む中間体流とを生成することと、
前記中間体流を水素処理して、前記水蒸気分解原料を生成することと、
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記多環芳香族流および/または前記減圧蒸留残留物を前記熱分解ユニットへ再循環させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記減圧蒸留は、50から400℃の範囲内の供給温度で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記減圧蒸留は、1から900ミリバール(abs)の作動圧力で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記液液抽出は、スルホランまたは環状スルホン、ホルミルモルホリン、アセチルモルホリンおよびその他のモルホリン、アルキルメチルピロリドン、ジメチルスルホキシドおよびこれらの組合せから成る群から選択された溶媒を用いて実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記液液抽出は、一つ以上の抽出塔、一つ以上の抽出ドラム、一つ以上の接触槽、または、これらの組合せで実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記中間体流の前記水素処理は、200から450℃の範囲内の温度で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記中間体流の前記水素処理は、30から200bargの圧力で実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記分離の前に、混合供給物を脱水して、脱水された混合炭化水素供給物を生成することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記脱水は、コアレッサーと、デカンターと、樹脂ベースの吸水ユニットと、パーベーパレーションユニットと、膜ベースの脱水ユニットと、これらの組合せから成る群から選択された脱水ユニット内で実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分解は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの組合せから成る群から選択された芳香族をさらに生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記分解は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの組合せから成る群から選択された芳香族をさらに生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
前記分解は、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの組合せから成る群から選択された芳香族をさらに生成する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年5月22日に出願された米国特許仮出願第62/851,520号の優先権の利益を主張するものであり、この出願は、参照によって、その全体が本願明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般に、高価値の化学製品を製造するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、プラスチック由来のオイルおよび/または使用済みの潤滑油から高価値の化学製品を製造するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
軽質オレフィン(CからCのオレフィン)およびBTX(ベンゼン、トルエンおよびキシレン)を含有する高価値の化学製品は、一般的に、原油画分から製造される。軽質オレフィン(CからCのオレフィン)は、多くの化学的プロセスのための構成要素である。軽質オレフィンは、プラスチック加工業、建設業、繊維産業および自動車産業等の幅広い産業で同様に使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンオキシド、塩化エチレン、酸化プロピレンおよびアクリル酸を製造するのに使用される。一般に、軽質オレフィンは、水蒸気分解ナフサおよび脱水素パラフィンによって製造される。
【0004】
BTXは、化学工業の多くの異なる領域で、特にプラスチック分野および高分子分野で使用される芳香族である。例えば、ベンゼンは、ポリスチレン、フェノール樹脂、ポリカーボネートおよびナイロンを製造するための前駆体である。トルエンは、ポリウレタンを製造するのに、およびガソリンの成分として製造するのに使用される。キシレンは、ポリエステル繊維や無水フタル酸を製造するための原料である。従来、石油化学産業において、ベンゼン、トルエンおよびキシレンは、ナフサの接触改質によって製造されている。
【0005】
この数十年間にわたって、軽質オレフィンおよびBTXの両方に対する需要は、一貫して増加し続けてきた。軽質オレフィンおよびBTXを製造するための原料の不足は、長期の関心事になっている。現時点では、いくつかの代替原料(例えば、プロパン)が軽質オレフィンを製造するのに使用されている。しかし、プロパンは、接触脱水素反応を介してプロピレンを製造するのに使用され、このことは、高い資本支出および高い運転コストの両方を必要とする。さらに、接触脱水素反応は、一般に、対応するオレフィンのみを製造するために、パラフィンの高純度の原料を必要とし、このことが製造コストをさらに増加させる。
【0006】
米国特許第5,904,838号明細書は、供給材料を高温の水素リッチな気体流に接触させて、供給材料の温度を増加させて、それに含まれる蒸留可能な有機化合物の少なくとも一部を気化させて水素化反応ゾーンで急速に水素化することによって、合成原油を製造するための廃潤滑油と、有機廃棄物由来の熱分解油の同時転化用プロセスを開示している。水素化反応ゾーンからの結果として生じる流出物は、その後、より高い水素含有量の炭化水素を生成し、および例えば、硫黄、酸素、窒素およびハロゲン化物等の異種成分を取り除くために、水素処理ゾーンに導入される。その結果として生じる流出物は冷却されて、水素と気体の水溶性無機化合物とを含有する気体流と、炭化水素化合物を含有する液体流とを生成するために、一部が凝縮される。気体流は、気体の水溶性有機化合物を除去するために、およびそれによって、水素リッチな気体の再循環流を生成するために洗浄される。この参考文献は、合成石油の製造について記載しているが、軽質オレフィンおよび/またはBTXの製造については教示または提案していない。
【0007】
全般的には、高価値の石油化学製品を製造する方法が存在しているが、少なくとも従来の方法の場合の上述した欠点を考慮すると、この分野における改良に対する必要性が消えずに残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一種以上のオレフィンを製造する方法に関連する上述した問題のうちの少なくともいくつかに対する解決策は、既に見つかっている。この解決策は、プラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油を原料として使用して軽質オレフィンを製造する方法に存する。見つかっている方法は、軽質オレフィンおよび/またはBTXを製造するための代替原料を提供するため、それは、原料不足に関する長期の関心事に対応する。さらに、見つかっている方法に用いられる原料は、低コストでありおよび/またはリサイクル材料であり、それにより、環境への影響が低減され、および従来の方法と比べて、原料のコストが最小限になる。さらに、方法は、既存の軽質オレフィンおよび/またはBTX製造システム内に一体化することができるシステムで実施することができ、それによって、パラフィンの接触脱水素反応を含む従来の方法と比較して、資本支出が低減される。したがって、本発明の方法は、軽質オレフィンおよび/またはBTXを製造するための従来の方法に付随する問題のうちの少なくともいくつかに対する技術的解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、一種以上のオレフィンを製造する方法を含む。この方法は、プラスチック由来のオイルと使用済みの潤滑油を混合して、混合炭化水素供給材料を形成することを含む。この方法は、前記混合炭化水素供給材料を分離して(1)主としてCからCの炭化水素を含むライトエンド流(a light-end stream)と、(2)重質の炭化水素供給材料とを形成することを含む。また、この方法は、前記ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流すことも含む。この方法は、前記重質の炭化水素供給材料を処理して水蒸気分解原料を製造することをさらに含む。この方法は、さらに、(1)前記水蒸気分解原料の炭化水素と、(2)前記ライトエンド流の炭化水素を分解して、一種以上のオレフィンを製造することを含む。
【0010】
本発明の実施形態は、一種以上のオレフィンを製造する方法を含む。この方法は、プラスチック材料を熱分解して、プラスチック由来のオイルを形成することを含む。この方法は、前記混合炭化水素供給材料を分離して(1)主としてCからCの炭化水素を含むライトエンド流と、(2)重質の炭化水素供給材料とを形成することをさらに含む。この方法は、前記ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流すことを含む。この方法は、前記重質の炭化水素供給材料を処理して水蒸気分解原料を製造することをさらに含む。この方法は、さらに、(1)前記水蒸気分解原料の炭化水素と、(2)前記ライトエンド流の炭化水素を分解して、一種以上のオレフィンを製造することを含む。
【0011】
本発明の実施形態は、一種以上のオレフィンを製造する方法を含む。この方法は、熱分解ユニット内で、プラスチック材料を100~500℃の範囲内の温度で、および0.05~10bargの範囲内の圧力で熱分解して、プラスチック由来のオイルを形成することを含む。この方法は、前記混合炭化水素供給材料を分離して(1)主としてCからCの炭化水素を含むライトエンド流と、(2)重質の炭化水素供給材料とを形成することをさらに含む。この方法は、前記ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流すことを含む。この方法は、前記重質の炭化水素供給材料を処理して水蒸気分解原料を製造することをさらに含む。前記重質の炭化水素供給材料の前記処理は、前記重質の炭化水素供給材料を減圧蒸留を介して蒸留して、減圧蒸留残留物と減圧蒸留炭化水素流を生成することを含む。前記重質の炭化水素供給材料の前記処理は、前記減圧蒸留炭化水素流を液液抽出を介して処理して、主に多環芳香族から成る多環芳香族流と、中間体流とを生成することを含む。前記重質の炭化水素供給材料の前記処理は、前記中間体流を水素処理して、前記水蒸気分解原料を生成することを含む。この方法は、前記多環芳香族流および/または前記減圧残留物を前記熱分解ユニットへ再循環させることをさらに含む。この方法は、さらに、(1)前記水蒸気分解原料の炭化水素と、(2)前記ライトエンド流の炭化水素を分解して、一種以上のオレフィンを製造することを含む。
【0012】
以下は、この明細書全体を通して用いられるさまざまな用語および表現に関する定義を含む。
【0013】
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、当業者には理解されるように、ほぼ~であるとして定義される。一つの非限定的な実施形態において、この用語は、10%以内、好ましくは、5%以内、より好ましくは、1%以内、および最も好ましくは、0.5%以内であると定義される。
【0014】
「wt.%」、「vol.%」、「mol.%」は、それぞれ、成分を含む材料の総重量、総容積または総モルに基づく、成分の重量、容積またはモル百分率を指す。非限定的な実施例において、材料の100モル中の成分の10モルは、10モル%の成分である。
【0015】
「実質的に(substantially)」という用語およびその変形は、10%以内、5%以内、1%以内または0.5%以内の範囲を含むように定義される。
【0016】
「抑止する(inhibiting)」または「低減する(reducing)」または「阻止する(preventing)」または「回避する(avoiding)」という用語、またはこれらの用語の変形は、クレームおよび/または明細書において用いられている場合、所望の結果を得るための任意の測定可能な減少または完全な抑制を含む。
【0017】
明細書および/またはクレームで用いられている「有効な(effective)」という用語は、所望の、予想された、または意図された結果を達成するのに適していることを意味する。
【0018】
明細書および/またはクレームで用いられている「潤滑油」という用語は、互いに接触している機械的構成要素間の摩擦、熱および摩耗を低減するのに使用される一群のオイルを意味する。明細書および/またはクレームで用いられている「使用済みの潤滑油」という用語は、ある使用期間の後に、機械的構成要素間の摩擦、熱および摩耗を低減するその能力を一部または完全に失った潤滑油を、および/またはある使用期間の後に、汚染物が溜まった潤滑油を意味する。
【0019】
「一つの(「a」または「an」)」という言葉の使用は、クレームまたは明細書において「備えている(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「有する(having)」という用語と関連して用いられている場合、「一つの(one)」を意味することができるが、それは、「一つまたはそれ以上の(one or more)」、「少なくとも一つの(at least one)」および「一つまたは二つ以上の(one or more than one)」という意味とも一貫性がある。
【0020】
「備えている(comprising)」(および「備える(comprise)」および「備える(comprises)」等の備えている(comprising)の任意の形態)、「有している(having)」(および「有する(have)」および「有する(has)」等の有しているの任意の形態)、「含んでいる(including)」(および「含む(includes)」および「含む(include)」等の含んでいるの任意の形態)または「含有している(containing)」(および「含有する(contains)」および「含有する(contain)」等の含有している(containing)の任意の形態)という言葉は包含的または非制限的であり、および追加的な、列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0021】
本発明のプロセスは、明細書全体を通して開示されている特定の原材料、成分、組成等を「備え(comprise)」、それら「から本質的に成り(consist essentially of)」またはそれら「で構成する(consist of)」ことができる。
【0022】
明細書および/またはクレームで用いられている「主に(primarily)」という用語は、50wt.%、50モル%および50vol.%のいずれか以上を意味する。例えば、「主に」は、50.1wt.%から100wt.%およびそれらの間のすべての値および範囲を、50.1モル%から100モル%およびそれらの間のすべての値および範囲を、または、50.1vol.%から100vol.%およびそれらの間のすべての値および範囲を含んでもよい。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の図面、詳細な説明および実施例から明らかになるであろう。しかし、図面、詳細な説明および実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、単に例証として記述され、および限定を意味するものではないことを理解すべきである。さらに、本発明の趣旨および範囲内での変形および変更は、当業者にはこの詳細な説明から明らかになるであろうことが意図されている。さらなる実施形態においては、特定の実施形態からの特徴を、他の実施形態からの特徴と組合せてもよい。例えば、一つの実施形態からの特徴は、他のいずれかの実施形態からの特徴と組合せることができる。さらなる実施形態において、追加的な特徴を、本願明細書に記載されている特定の実施形態に付加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
より完全な理解のために、添付図面とともに解釈して以下の説明に関して言及する。
図1】本発明の実施形態による、一種以上のオレフィンを製造するシステムの概略図を示す。
図2】本発明の実施形態による、一種以上のオレフィンを製造する方法の場合の概略的フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
現在、一種以上のオレフィンおよび/またはBTXを含む高価値の石油化学製品は、ナフサと他の石油の画分の水蒸気分解および/または接触分解を介して製造されている。しかし、それらの化学製品に対する需要が一貫して増加しているため、供給材料の不足が長期の関心事になっている。軽質オレフィンを製造するのに用いられる別の方法は、パラフィンの接触脱水素反応である。しかし、接触脱水素反応プロセスは、独立した製造システムを必要とし、それにより、軽質オレフィンを製造するための資本支出が増加する。さらに、接触脱水素反応プロセスは、単一のアルカンである供給材料を必要とし、その結果として、供給材料の高コストを生じる。本発明は、これらの問題のうちの少なくともいくつかに対する解決策を提供する。この解決策は、プラスチック由来のオイルおよび/または使用済みの潤滑油を供給材料として使用して、一種以上のオレフィンを製造する方法を前提としている。この方法は、供給材料の代替的ソースを、従来の方法の場合の供給材料に提供することが可能であり、それによって、不十分な供給材料に関する関心事に対応する。特に、発見された方法の場合の供給材料は、廃棄物またはリサイクル可能なソースに由来し、その結果として、従来の方法と比較して、より環境に優しいプロセスをもたらす。また、この方法は、水蒸気分解および/または接触分解のための既存のシステムで実施することができ、その結果として、パラフィンの接触脱水素反応と比較して資本支出が低減される。本発明のこれらおよびその他の非限定的な態様は、以下の章節でさらに詳細に議論する。
【0026】
A.一種以上のオレフィンを製造するシステム
本発明の実施形態において、一種以上のオレフィンを製造するシステムは、熱分解ユニットと、分離ユニット、蒸留ユニットと、抽出ユニットと、水素処理ユニットと、水蒸気分解ユニットとを含むことができる。図1を参照すると、一種以上のオレフィンを製造するシステム100の概略図が図示されている。本発明の実施形態によれば、システム100は、熱分解ユニット101を含む。
【0027】
本発明の実施形態において、熱分解ユニット101は、熱分解条件下でプラスチックを転化させて、主にプラスチック由来のオイルから成るプラスチック由来のオイル流12を生成するように構成されている。本発明の実施形態において、熱分解ユニット101は、プラスチック熱分解ユニットおよび/または水素化熱分解ユニットを含むことができる。本発明の実施形態によれば、プラスチックは、熱分解ユニット101に流入する混合プラスチック廃棄物流11を含むことができる。本発明の実施形態において、プラスチック由来のオイル流12は、0から200℃の初期沸点と、300から750℃の最終沸点とを有する炭化水素を含む。
【0028】
本発明の実施形態によれば、熱分解ユニット101の出口は、プラスチック由来のオイル流12が、熱分解ユニットから混合装置102まで流れるように、混合装置102の入口と流体的に連通している。本発明の実施形態において、混合装置102は、プラスチック由来のオイル流12のプラスチック由来のオイルと、潤滑油流13の使用済みの潤滑油を混合して、混合された供給炭化水素流14を形成するように構成されている。
【0029】
本発明の実施形態において、混合装置102の出口は、混合された炭化水素供給流14が混合装置102から脱水ユニット103へ流れるように、脱水ユニット103と流体的に連通している。本発明の実施形態によれば、脱水ユニット103は、少なくともある程度の水を混合された供給流14から取り除いて、脱水された混合供給流15を生成するように構成されている。本発明の実施形態において、脱水ユニット103の非限定的な実施例は、一つ以上のコアレッサー(coalescer)と、一つ以上のデカンターと、一つ以上の樹脂ベースの吸水ユニットと、一つ以上のパーベーパレーションユニットと、一つ以上の膜ベースの脱水ユニットと、これらの組合せを含む。
【0030】
本発明の実施形態によれば、脱水ユニット103の出口は、脱水された混合供給流15が、脱水ユニット103から分離ユニット104へ流れるように、分離ユニット104の入口と流体的に連通している。本発明の実施形態において、分離ユニット104は、脱水された混合供給流15を分離して、ライトエンド流16と、重質の炭化水素供給流17とを生成するように構成されている。本発明の実施形態において、ライトエンド流16は、主にCからCの炭化水素を含む。重質の炭化水素供給流17は、主にCからC30の炭化水素を含む。本発明の実施形態において、分離ユニット104は、一つ以上の蒸留塔、一つ以上のフラッシュドラム、またはこれらの組合せを含む。
【0031】
本発明の実施形態によれば、分離ユニット104の第一の出口は、重質の炭化水素供給流17が分離ユニット104から減圧蒸留ユニット105へ流れるように、減圧蒸留ユニット105の入口と流体的に連通している。本発明の実施形態において、減圧蒸留ユニット105は、重質の炭化水素供給流17を蒸留して、減圧蒸留残留物流18と、減圧蒸留炭化水素流19とを形成するように構成されている。本発明の実施形態において、減圧蒸留残留物流18は、400から550℃の初期沸点と、600から750℃の最終沸点とを有する炭化水素を含む。減圧蒸留炭化水素流19は、150から300℃の初期沸点と、400から550℃の最終沸点とを有する炭化水素を含んでもよい。
【0032】
本発明の実施形態によれば、減圧蒸留ユニット105の第一の出口は、減圧蒸留残留物流18が減圧蒸留ユニット105から熱分解ユニット101へ流れるように、熱分解ユニット101と流体的に連通している。熱分解ユニット101はさらに、熱分解条件下で減圧蒸留残留物流18を転化して、いくらかのプラスチック由来のオイルを生成するように構成することができる。本発明の実施形態によれば、減圧蒸留ユニット105の第二の出口は、減圧蒸留炭化水素流19が減圧蒸留ユニット105から抽出ユニット106へ流れるように、抽出ユニット106と流体的に連通している。本発明の実施形態において、抽出ユニット106は、減圧蒸留炭化水素流19から多環芳香族を抽出して、多環芳香族流20と、中間体流(intermediate stream)21とを生成するように構成されている。本発明の実施形態において、多環芳香族流20は、主に多環芳香族から成る。中間体流21は、主にパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素および分枝芳香族炭化水素から成る。本発明の実施形態において、抽出ユニット106は、液液抽出ユニットを含む。抽出ユニット106は、一つ以上の抽出ドラム、一つ以上の抽出塔、一つ以上の抽出蒸留塔、一つ以上の接触槽、または、これらの組合せを備えていてもよい。本発明の実施形態において、抽出ユニット106で使用される溶媒は、モルホリン、2-ピロリドン、環状スルホン、または、これらの組合せを含む。
【0033】
本発明の実施形態において、抽出ユニット106の第一の出口は、多環芳香族流20が、抽出ユニット106から熱分解ユニット101へ流れるように、熱分解ユニット101と流体的に連通させることができる。熱分解ユニット101はさらに、熱分解条件下で、多環芳香族流20を転化して、プラスチック由来のオイルを生成するように構成することができる。本発明の実施形態によれば、抽出ユニット106の第二の出口は、中間体流21が、抽出ユニット106から水素処理ユニット107へ流れるように、水素処理ユニット107と流体的に連通している。本発明の実施形態において、水素処理ユニット107は、炭化水素分子を飽和させ、限定するものではないが、硫黄、酸素、窒素および塩素等のヘテロ原子を取り除き、および/または水素処理を介して、供給炭化水素流を低い沸点範囲を有する製品炭化水素流に分解して、水蒸気分解供給材料流22を生成するように構成されている。本発明の実施形態において、水素処理ユニット107は、一つ以上の固定層反応装置および/または一つ以上の流動層反応装置を含む。水素処理ユニット107は、コバルト、ニッケル、モリブデン、ゼオライト、酸性触媒またはこれらの組合せを含む触媒を含んでもよい。
【0034】
本発明の実施形態によれば、水素処理ユニット107の出口は、水蒸気分解供給材料流22が水素処理ユニット107から水蒸気分解ユニット108へ流れるように、水蒸気分解ユニット108の入口と流体的に連通している。本発明の実施形態によれば、分離ユニット104の第二の出口は、ライトエンド流16が、分離ユニット104から水蒸気分解ユニット108へ流れるように、水蒸気分解ユニット108の入口と流体的に連通している。本発明の実施形態において、水蒸気分解ユニット108は、水蒸気分解供給材料流22および/またはライトエンド流16の炭化水素を水蒸気分解して、製品流23を生成するように構成されている。製品流23は、一種以上のオレフィン、好ましくは、軽質オレフィンを含む。製品流23はさらに、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)を含んでもよい。
【0035】
B.高価値の化学製品を製造する方法
一種以上のオレフィンを含む高価値の化学製品を製造する方法は、既に発見されている。この方法の実施形態は、軽質オレフィン製造の場合の供給材料の不足に関する懸念を解消することが可能である。さらに、この方法の実施形態は、パラフィンの接触脱水素反応と比較して、軽質オレフィンおよび/またはBTXの製造に対する資本支出および製造コストを低減することが可能である。図2に図示されているように、本発明の実施形態は、一種以上の軽質オレフィンを製造する方法200を含む。方法200は、図1に示すように、システム100によって実施することができる。
【0036】
本発明の実施形態によれば、ブロック201に示すように、方法200は、熱分解ユニット101内で、混合プラスチック廃棄物流11のプラスチック材料を熱分解して、プラスチック由来のオイル流12のプラスチック由来のオイルを形成することを含む。本発明の実施形態において、ブロック201において熱分解することは、100から500℃の範囲内の温度で、および100から120℃、120から140℃、140から160℃、160から180℃、180から200℃、200から220℃、220から240℃、240から260℃、260から280℃、280から300℃、300から320℃、320から340℃、340から360℃、360から380℃、380から400℃、400から420℃、420から440℃、440から460℃、460から480℃、および480から500℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の温度で実行される。本発明の実施形態において、ブロック201において熱分解することは、0.05から10bargの範囲内の圧力で、および0.05から0.1barg、0.1から0.2barg、0.2から0.3barg、0.3から0.4barg、0.4から0.5barg、0.5から0.6barg、0.6から0.7barg、0.7から0.8barg、0.8から0.9barg、0.9から1barg、1から2barg、2から3barg、3から4barg、4から5barg、5から6barg、6から7barg、7から8barg、8から9barg、および9から10bargの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の圧力で実行される。本発明の実施形態において、プラスチック由来のオイルは、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素および芳香族炭化水素、または、これらの組合せを含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、ブロック202に示すように、方法200は、混合装置102において、プラスチック由来のオイル流12のプラスチック由来のオイルと、潤滑油流13の使用済みの潤滑油を混合して、混合炭化水素供給流14を形成することを含む。本発明の実施形態において、混合することは、20から400℃の範囲内の温度で、および20から40℃、40から60℃、60から80℃、80から100℃、100から120℃、120から140℃、140から160℃、160から180℃、180から200℃、200から220℃、220から240℃、240から260℃、260から280℃、280から300℃、300から320℃、320から340℃、340から360℃、360から380℃、および380から400℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の温度で実行される。
【0038】
本発明の実施形態においては、ブロック203に示すように、方法200は、混合炭化水素供給流14を脱水して、脱水された混合供給流15を生成することを含む。本発明の実施形態において、脱水された混合供給流15は、1wt.%未満の水を含む。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ブロック204に示すように、方法200は、分離ユニット104において、混合炭化水素供給流14(および/または脱水された混合供給流15)を分離して、(1)主にCからCの炭化水素から成るライトエンド流16と、(2)重質の炭化水素供給流17とを形成することを含む。本発明の実施形態において、重質の炭化水素供給流17は、主にCからC30の炭化水素を含む。本発明の実施形態において、分離ユニット104は、蒸留塔を含むことができ、蒸留塔は、150から250℃のオーバヘッド温度範囲および200から350℃のリボイラー範囲で運転される。分離ユニット104の蒸留塔は、1から30バールの作動圧力で、および1から3バール、3から6バール、6から9バール、9から12バール、12から15バール、15から18バール、18から21バール、21から24バール、24から27バール、および27から30バールの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の動作圧力で運転することができる。本発明の実施形態によれば、ブロック205に示すように、方法200は、ライトエンド流16を水蒸気分解ユニット108へ流すことを含む。
【0040】
本発明の実施形態によれば、ブロック206に示すように、方法200は、重質の炭化水素供給流17を処理して、水蒸気分解供給材料流22を生成することを含む。本発明の実施形態において、水蒸気分解供給材料流22は、主にパラフィン系炭化水素とナフテン系炭化水素を含む。本発明の実施形態においては、ブロック207に示すように、ブロック206における処理は、減圧蒸留を介して重質の炭化水素供給流17を蒸留して、減圧蒸留残留物流18と減圧蒸留炭化水素流19を生成することを含む。本発明の実施形態において、ブロック207における減圧蒸留は、200から300℃のオーバヘッド温度および350から400℃のリボイラー範囲で実行される。ブロック207における減圧蒸留のための供給温度(feed temprature)は、50から400℃の範囲であり、および50から60℃、60から80℃、80から100℃、100から120℃、120から140℃、140から160℃、160から180℃、180から200℃、200から220℃、220から240℃、240から260℃、260から280℃、280から300℃、300から320℃、320から340℃、340から360℃、360から380℃、および380から400℃の範囲を含むそれらの間のすべての範囲および値の範囲である。ブロック207における減圧蒸留は、1から900ミリバール(abs)の作動圧力で実行することができる。本発明の実施形態において、減圧蒸留残留物流18は、主に、沸点が500℃よりも高い炭化水素から成る。
【0041】
本発明の実施形態においては、ブロック208に示すように、ブロック206における処理は、抽出によって減圧蒸留炭化水素流19を処理して、主に多環芳香族から成る多環芳香族流20と中間体流21とを生成することを含む。本発明の実施形態において、ブロック208における抽出は、液液抽出を含む。ブロック208における抽出は、20から150℃の範囲、および20から30℃、30から40℃、40から50℃、50から60℃、60から70℃、70から80℃、80から90℃、90から100℃、100から110℃、110から120℃、120から130℃、130から140℃、および140から150℃の範囲を含むそれらの間のすべての範囲および値の範囲の温度で実行される。本発明の実施形態において、中間体流21は、30wt.%未満の多環芳香族を含む。
【0042】
本発明の実施形態においては、ブロック209に示すように、ブロック206における処理は、中間体流21を水素処理して、水蒸気分解供給材料流22を生成することを含む。本発明の実施形態において、ブロック209における水素処理は、コバルト、ニッケル、モリブデン、ゼオライト、酸性触媒またはこれらの組合せを含む触媒の存在下で実行される。本発明の実施形態において、ブロック209における水素処理は、30から200bargの範囲内の作動圧力で、および30から40barg、40から50barg、50から60barg、60から70barg、70から80barg、80から90barg、90から100barg、100から110barg、110から120barg、120から130barg、130から140barg、140から150barg、150から160barg、160から170barg、170から180barg、180から190barg、および190から200bargの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の作動圧力で実行される。本発明の実施形態において、ブロック209における水素処理は、200から450℃の範囲内、および200から210℃、210から220℃、220から230℃、230から240℃、240から250℃、250から260℃、260から270℃、270から280℃、280から290℃、290から300℃、300から310℃、310から320℃、320から330℃、330から340℃、340から350℃、350から360℃、360から370℃、370から380℃、380から390℃、390から400℃、400から410℃、410から420℃、420から430℃、430から440℃、および440から450℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の温度で実行される。本発明の実施形態において、ブロック209における水素処理は、0.05から10hr-1の範囲内の重量空間速度で、および0.05から0.10hr-1、0.10から0.20hr-1、0.20から0.30hr-1、0.30から0.40hr-1、0.40から0.50hr-1、0.50から0.60hr-1、0.60から0.70hr-1、0.70から0.80hr-1、0.80から0.90hr-1、0.90から1.0hr-1、1.0から2.0hr-1、2.0から3.0hr-1、3.0から4.0hr-1、4.0から5.0hr-1、5.0から6.0hr-1、6.0から7.0hr-1、7.0から8.0hr-1、8.0から9.0hr-1、および9.0から10hr-1の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の重量空間速度で実行される。本発明の実施形態において、ブロック209における水素処理は、不飽和の炭化水素分子を飽和させ、限定するものではないが、硫黄、酸素、窒素および塩素等のヘテロ原子を取り除き、および/または供給炭化水素流を低い沸点範囲を有する製品炭化水素流に分解するように構成されている。
【0043】
本発明の実施形態によれば、ブロック210に示すように、方法200は、炭化水素処理されたライトエンド流(図1には図示せず)を生成するのに十分な反応条件下でライトエンド流16を水素処理することを含むことができる。本発明の実施形態において、ブロック210におけるライトエンド流16の水素処理は、コバルト、ニッケル、モリブデンまたはこれらの組合せを含む触媒の存在下で実行される。ブロック210における水素処理条件は、ブロック209において中間体流21を水素処理するための水素処理条件の過酷さを低くすることができる。本発明の実施形態によれば、ブロック210における水素処理条件は、250から400℃の範囲内、および250から260℃、260から270℃、270から280℃、280から290℃、290から300℃、300から310℃、310から320℃、320から330℃、330から340℃、340から350℃、350から360℃、360から370℃、370から380℃、380から390℃、および390から400℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の温度を含む。ブロック210における水素処理条件は、30から100バールの範囲、および30から40バール、40から50バール、50から60バール、60から70バール、70から80バール、80から90バール、および90から100バールの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲の圧力を含むことができる。本発明の実施形態において、ブロック210における水素処理条件は、0.05から10hr-1の範囲内の重量空間速度で、および0.05から0.10hr-1、0.10から0.20hr-1、0.20から0.30hr-1、0.30から0.40hr-1、0.40から0.50hr-1、0.50から0.60hr-1、0.60から0.70hr-1、0.70から0.80hr-1、0.80から0.90hr-1、0.90から1.0hr-1、1.0から2.0hr-1、2.0から3.0hr-1、3.0から4.0hr-1、4.0から5.0hr-1、5.0から6.0hr-1、6.0から7.0hr-1、7.0から8.0hr-1、8.0から9.0hr-1、および9.0から10hr-1の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の重量空間速度を含む。
【0044】
本発明の実施形態によれば、ブロック211に示すように、方法200は、(1)水蒸気分解供給材料流22および/または(2)ライトエンド流の炭化水素(および/または水素処理したライトエンド流)を分解して、一種以上のオレフィンを生成することを含む。本発明の実施形態において、ブロック211における分解は、水蒸気分解ユニット内で実行される。ブロック211における分解は、750から950℃の範囲内、および750から760℃、760から770℃、770から780℃、780から790℃、790から800℃、800から810℃、810から820℃、820から830℃、830から840℃、840から850℃、850から860℃、860から870℃、870から880℃、880から890℃、890から900℃、900から910℃、910から920℃、920から930℃、930から940℃、および940から950℃の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の温度で実行することができる。ブロック211における分解は、10から1000msの範囲内、および10から20ms、20から30ms、30から40ms、40から50ms、50から60ms、60から70ms、70から80ms、80から90ms、90から100ms、100から200ms、200から300ms、300から400ms、400から500ms、500から600ms、600から700ms、700から800ms、800から900ms、および900から1000msの範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の水蒸気分解炉の滞留時間で実行することができる。本発明の実施形態において、ブロック211における分解は、0.1から1.5の範囲内、および0.1から0.2、0.2から0.3、0.3から0.4、0.4から0.5、0.5から0.6、0.6から0.7、0.7から0.8、0.8から0.9、0.9から1.0、1.0から1.1、1.1から1.2、1.2から1.3、1.3から1.4、および1.4から1.5の範囲を含む、それらの間のすべての範囲および値の範囲内の炭化水素供給対蒸気体積率で実行される。本発明の実施形態において、ブロック211において生成される一種以上のオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、またはこれらの組合せのうちの一つ以上を含む。本発明の実施形態において、ブロック211における分解はさらに、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)を生成する。本発明の実施形態によれば、ブロック212に示すように、方法200は、熱分解ユニット101において、(i)減圧蒸留残留物流18および/または(ii)多環芳香族流20の炭化水素のうちの少なくともいくつかを熱分解して、追加的なプラスチック由来のオイルを生成することを含んでもよい。本発明の実施形態において、(i)減圧蒸留残留物流18および/または(ii)多環芳香族流20の炭化水素の一部は廃棄することができる。
【0045】
本発明の実施形態を、図2のブロックを参照して説明してきたが、本発明の動作は、図2に示す特定のブロックに、および/またはブロックの特定の順番に限定されないことを正しく認識すべきである。したがって、本発明の実施形態は、図2のものとは異なる順序でさまざまなブロックを用いて、本願明細書に記載されているような機能性を提供することができる。
【0046】
本発明の観点においては、少なくとも次の十八の実施形態が記載されている。実施形態1は、一種以上のオレフィンを製造する方法である。この方法は、プラスチック由来のオイルを使用済みの潤滑油と混合して、混合炭化水素供給物を形成することを含む。この方法は、混合炭化水素供給物を分離して、(1)主にCからCの炭化水素から成るライトエンド流と、(2)重質の炭化水素供給物とを形成することをさらに含む。また、この方法は、ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流すことも含む。さらに、この方法は、重質の炭化水素供給物を処理して、水蒸気分解供給材料を生成し、(1)水蒸気分解供給材料の炭化水素および(2)ライトエンド流の炭化水素を分解して、一種以上のオレフィンを生成することを含む。実施形態2は、混合ステップの前に、熱分解ユニットにおいて、プラスチック材料を熱分解してプラスチック由来のオイルを形成することをさらに含む、実施形態1の方法である。実施形態3は、熱分解が、100から500℃の範囲の温度で実行される実施形態2の方法である。実施形態4は、熱分解が、0.05bargから10bargの範囲内の圧力で実行される、実施形態2または実施形態3のいずれかの方法である。実施形態5は、ライトエンド流を水蒸気分解ユニットへ流す前に、ライトエンド流を水素処理することをさらに含む、実施形態1から実施形態4のいずれかの方法である。実施形態6は、ライトエンド流の水素処理が、250から400℃の範囲内の温度で実行される、実施形態5の方法である。実施形態7は、ライトエンド流の水素処理が、30から100バールの圧力で実行される、実施形態5または実施形態6のいずれかの方法である。実施形態8は、重質の炭化水素供給物の処理が、重質の炭化水素供給物を減圧蒸留を介して蒸留して、減圧蒸留残留物と減圧蒸留炭化水素流を生成することと、減圧蒸留炭化水素流を液液抽出を介して処理して、主に多環芳香族から成る多環芳香族流と、パラフィン系炭化水素、芳香族炭化水素およびナフテン系炭化水素を含有する中間体流とを生成することと、中間体流を水素処理して、水蒸気分解原料を生成することとを含む、実施形態1から実施形態7のいずれかの方法である。実施形態9は、多環芳香族流および/または減圧蒸留残留物を熱分解ユニットへ再循環させることをさらに含む、実施形態8の方法である。実施形態10は、減圧蒸留が、50から400℃の範囲内の供給温度で実行される、実施形態8または実施形態9のいずれかの方法である。実施形態11は、減圧蒸留が、1から900ミリバール(abs)の作動圧力で実行される、実施形態8から実施形態10のいずれかの方法である。実施形態12は、液液抽出が、スルホランまたは環状スルホン、ホルミルモルホリン、アセチルモルホリンおよびその他のモルホリン、アルキルメチルピロリドン、ジメチルスルホキシドおよびこれらの組合せから成る群から選択された溶媒を用いて実行される、実施形態8から実施形態11のいずれかの方法である。実施形態13は、液液抽出が、一つ以上の抽出塔、一つ以上の抽出ドラム、一つ以上の接触槽、または、これらの組合せで実行される、実施形態8から実施形態12のいずれかの方法である。実施形態14は、中間体流の水素処理が、200から450℃の範囲内の温度で実行される、実施形態8から実施形態13のいずれかの方法である。実施形態15は、中間体流の水素処理が、30から200bargの範囲内の圧力で実行される、実施形態8から実施形態14のいずれかの方法である。実施形態16は、分離ステップの前に、混合供給物を脱水して、脱水された混合炭化水素供給物を生成することをさらに含む、実施形態1から実施形態15のいずれかの方法である。実施形態17は、脱水が、コアレッサーと、デカンターと、樹脂ベースの吸水ユニットと、パーベーパレーションユニットと、膜ベースの脱水ユニットと、これらの組合せから成る群から選択された脱水ユニット内で実行される、実施形態16の方法である。実施形態18は、分解ステップが、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびこれらの組合せから成る群から選択された芳香族をさらに生成する、実施形態1から実施形態17のいずれかの方法である。
【0047】
本出願の実施形態およびそれらの利点を詳細に説明してきたが、さまざまな変形、置換えおよび変更を、添付クレームによって定義される実施形態の趣旨および範囲から逸脱することなく行えることを理解すべきである。また、本出願の範囲は、明細書に記載されている事柄、手段、方法およびステップに関するプロセス、マシン、製造、構成の特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者は、事柄、手段、方法またはステップに関する上記の開示、プロセス、マシン、製造、構成から容易に認識するであろうが、実質的に同じ機能を実行するか、または、本願明細書に記載されている対応する実施形態と実質的に同じ結果を実現する既存のまたは後に開発されるものを利用してもよい。したがって、添付クレームは、事柄、手段、方法またはステップに関するこのようなプロセス、マシン、製造、構成がそれらの範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】