(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】トラセミドリン酸エステルプロドラッグ、その調製方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20220715BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220715BHJP
C07F 9/09 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K31/661
A61P13/02
C07F9/09 U CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569862
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2020084803
(87)【国際公開番号】W WO2020233289
(87)【国際公開日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】201910435995.7
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521510051
【氏名又は名称】シャンハイ シュンフェァ ファーマシューティカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI XUNHE PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】Zheng, Yongyong Room 216, Building 2,No. 1366 Qixin Road, Minhang District Shanghai 200000 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン ヨンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ノンノン
(72)【発明者】
【氏名】ジン ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ フォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン メイファー
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086DA34
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA15
4C086ZA83
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本発明は生物医薬技術分野に関し、具体的にトラセミドリン酸エステルプロドラッグ、その調製方法及び組成物に関する。本発明によって提供されるトラセミドプロドラッグN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル及び/又はその医薬上許容される塩は、トラセミドより溶解性が高く、より優れた創薬可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iによって示されるトラセミドリン酸エステルプロドラッグ及びその医薬上許容される塩。
【化I】
【請求項2】
前記トラセミドリン酸エステルプロドラッグの医薬上許容される塩は、薬学上許容される塩を含み、ナトリウム塩、カリウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、鉄塩、第一鉄塩および有機アミン塩から選ばれ得ることを特徴とする請求項1に記載のトラセミドリン酸エステルプロドラッグ及びその医薬上許容される塩。
【請求項3】
前記トラセミドリン酸エステルプロドラッグの医薬上許容される塩は、リン酸基の、二ナトリウム塩、二カリウム塩および有機アミン塩から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のトラセミドリン酸エステル系プロドラッグ及びその医薬用塩。
【請求項4】
前記有機アミン塩は、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリプロピルアミン塩およびトリブチルアミン(Tri-n-butylamine)塩から選ばれることを特徴とする請求項3に記載のトラセミドリン酸エステル系プロドラッグ及びその医薬用塩。
【請求項5】
前記トラセミドリン酸エステルプロドラッグの医薬上許容される塩は、以下の化合物から選ばれることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のトラセミドリン酸エステル系プロドラッグ及びその医薬上許容される塩。
【化Ia】
【化Ib】
【化Ic】
【化Id】
【請求項6】
(1)トラセミド1を、パラホルムアルデヒドとヒドロキシメチル化反応させることにより化合物2を得る工程と、
(2)化合物2を塩素化、エステル化、及び水素化することにより脱ベンジル化することによって化学式Iによって示される化合物を得る工程と
を含むこと、
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のトラセミドリン酸エステルプロドラッグの調製方法。
【請求項7】
化学式Iによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン又はトリブチルアミン(Tri-n-butylamine)とそれぞれ反応させ、化学式Iaによって示される化合物、化学式Ibによって示される化合物、化学式Icによって示される化合物又は化学式Idによって示される化合物をそれぞれ得る工程
をさらに含むこと、を特徴とする請求項6に記載のトラセミドリン酸エステル系プロドラッグの調製方法。
【請求項8】
治療量の請求項1~4のいずれか1項に記載のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル及び/又はその医薬上許容される塩と、薬学上許容される他の補助剤とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項9】
治療量の請求項5に記載のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル及び/又はその医薬上許容される塩と、薬学上許容される他の補助剤とを含むことを特徴とする薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の技術分野に関し、具体的にトラセミドリン酸エステルプロドラッグ、その調製方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラセミドの化学名は1-[4-(3-メチルフェニル)アミノピリジン-3-]スルホニル-3-イソプロピル尿素であり、新しい高効率なループ利尿薬である。pKaの値が6.44であり、水にほとんど溶解せず、0.1mol/lの水酸化ナトリウム溶液にわずかに溶解する。20年あまりの臨床応用により、トラセミドは適応範囲が幅広く、利尿作用に速効性があり、強力且つ持続性があり、臨床において普及する価値がある高効率な利尿薬であることが実証されている。
【0003】
現在、承認されているトラセミドの剤形は、注射剤、錠剤及びカプセル剤がある。注射剤の調製過程において、原薬が高い水溶性を有することが望ましい。トラセミドは水に非常に溶けにくく(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 53 (2002) 75-86)、トラセミドの注射剤を調製するとき、水酸化ナトリウムと、溶解しやすくする大量の補助剤を加える必要がある。使用される補助剤は、ポリエチレングリコール400、トロメタモール、水酸化ナトリウム、及び塩酸などを含む。上記の補助剤を加えることは、多くのよくないことをもたらす。1)水酸化ナトリウム水溶液中でトラセミドが溶解する過程において明らかに放熱し、製剤の分解不純物が生成しやすい。2)ポリエチレングリコール400、トロメタモールなどの有機ハイドロトロープ剤の添加は、注射剤の使用上の安全性に害をもたらす。患者に発生し得る副反応を減らせるように、配剤する成分の種類を減らすことが望まれる。
【0004】
したがって、水溶性がより高く、製剤の調製により適した新型のループ利尿薬を開発することが大きな挑戦である。
【0005】
本発明は、化学式Iによって示されるトラセミドリン酸エステルの化合物又はその医薬上許容される塩を提供する。
【0006】
本発明におけるトラセミドリン酸エステルプロドラッグは、溶解度が高く、安定性が高く、製剤の調製に使いやすいなどの特性を有し、産業上の利用可能性が拡大され、そして医薬用途に使用されやすい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、トラセミドリン酸エステルプロドラッグ及びその医薬上許容される塩を提供することである。具体的には、前記トラセミドリン酸エステルプロドラッグは化学式Iによって示さる。
【化1】
【0008】
上記構造の化学名はN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルである。
【0009】
好ましくは、前記トラセミドリン酸エステルプロドラッグの医薬上許容される塩は薬学上許容される塩を含み、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、リチウム塩、鉄塩、第一鉄塩および有機アミン塩から選ばれるものでもよい。
【0010】
さらに好ましくは、前記医薬用塩は、リン酸基の、二ナトリウム塩、二カリウム塩および有機アミン塩から選ばれる。
【0011】
さらに、前記有機アミン塩は、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、トリプロピルアミン塩および、トリブチルアミン(Tri-n-butylamine)塩から選ばれる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様として、前記N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルプロドラッグは、下記の化学式Iaによって示される化合物、化学式Ibによって示される化合物、化学式Icによって示される化合物および化学式Idによって示される化合物から選ばれる。
【化Ia】
【化Ib】
【化Ic】
【化Id】
【0013】
本発明の第2の目的は、上記トラセミドリン酸エステルプロドラッグの調製方法を提供することであり、この方法は以下の工程を含む。
(1)トラセミド1を、パラホルムアルデヒドとヒドロキシメチル化反応させることにより、化合物2を得る工程
(2)化合物2を塩素化、エステル化、及び水素化することにより脱ベンジル化することによって、化学式Iによって示される化合物を得る工程
【0014】
本発明は、さらに、上記トラセミドリン酸エステルプロドラッグに基づく医薬上許容される塩の調製方法を提供し、化学式Iによって示される化合物をさらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン又はトリブチルアミン(Tri-n-butylamine)とそれぞれ反応させ、化学式Iaによって示される化合物、化学式Ibによって示される化合物、化学式Icによって示される化合物、化学式Idによって示される化合物をそれぞれ得る。
【0015】
本発明の第3の目的は薬物組成物を提供し、治療量のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル及び/又はその医薬上許容される塩と、薬学上許容される他の補助剤とを含む。
【0016】
本発明の有益な効果は、トラセミドプロドラッグN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル及び/又はその医薬用上許容される塩を提供し、トラセミドより溶解性が高く、より優れた創薬可能性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例と併せて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、これらに限定されない。
【0018】
実施例1:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)の調製
ステップ1:N-ヒドロキシメチル-トラセミド(2)の調製
500mLの反応フラスコに無水エタノール(300mL)、トラセミド(34.8g,0.1mol,1eq)及び炭酸ナトリウム(15.9g,0.15mol,1.5eq)を加え、撹拌しながらパラホルムアルデヒド(15g,0.5mol,5eq)を数回に分けて加えた。加えた後に、フラスコ内の温度を80-85℃に昇温させ、2時間反応させ、フラスコ内の温度を20-25℃になるまで徐々に降温させた。白い固体が析出し、濾過し、水洗いをした。濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させて、N-ヒドロキシメチル-トラセミド(2)(32.5g,収率86%)を得た。MS: 379 [M +1]。
【0019】
ステップ2:N-クロロメチル-トラセミド(3)の調製
500mLの反応フラスコにジクロロメタン(200mL)、N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)及び化合物2(30g,79.3mmol,1eq)を加え、撹拌しながら塩化チオニル(28.3g,237.8mmol,3eq)を滴下し加えた。加えた後に、フラスコ内の温度を60-65℃に昇温させ、2時間反応させた。反応終了後、500mLビーカーに入れ、氷浴しながら10%の炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を数回に分けて滴下し、分液漏斗で液体を分離し、水層を除去した。有機層をさらに2回水洗し(50mL×2)、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄し、液体を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥するまで濃縮した。残ったものを酢酸エチル(50mL)によってスラリー洗浄し、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、N-クロロメチル-トラセミド(3)(29.9g,収率95%)を得た。MS: 398 [M +1]。
【0020】
ステップ3:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸ジベンジルの調製
500mLの反応フラスコにアセトニトリル(300mL)、化合物3(29g,73.1mmol,1eq)、炭酸ナトリウム(15.5g,146.1mmol,2eq)及びリン酸ジベンジルナトリウム塩4(24.1g,80.4mmol,1.1eq)を加えた。撹拌しながらフラスコ内温度を80-85℃に昇温させ、8時間反応させた。温度が高い間に無機塩を濾過除去し、濾液が乾燥するまで濃縮した。濃縮して残ったものにトルエン(50mL)を加え、再結晶化し、濾過した。濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させて、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸ジベンジル(5)(21.5g,収率46%)を得た。MS: 639 [M +1]。
【0021】
ステップ4:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)の調製
無水エタノール(400mL)、化合物5(20g,31.3mmol,1eq)及び10%のパラジウム炭素(2g,10%重量比)を高圧反応器に入れた。窒素で3回置換し、圧力が2MPaになるまで水素を導入し、撹拌しながら室温で5時間反応させた。反応が終了し、濾過し、濾液を乾燥するまで濃縮し、白色固体のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)(11.5g,収率80%)を得た。MS: 459 [M +1]。1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.56 (s, 1H), 7.99-8.00 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.23-7.26 (m, 1H), 6.98-7.03 (m, 3H), 6.89-6.90 (m, 1H), 5.91 (s, 2H), 3.55-3.57 (m, 1H), 2.25 (s, 3H), 0.95 (s, 3H), 0.94 (s, 3H)。
【0022】
実施例2:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム(Ia)の調製
100mLの反応フラスコに無水アルコール(50mL)、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)(10g,21.8mol,1eq)を加え、撹拌しながら25%の水酸化ナトリウム水溶液(1.83g,45.8mol,2.1eq)を滴下し、滴下が完了した後に、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(50mL)を加え、30分間撹拌を続け、ろ過し、二ナトリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(50mL)/H2O(5mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム(Ia)(7.6g、収率69%)を得た。HPLC純度は99.90%であった。MS: 503 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.55 (s, 1H), 7.99 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.25 (m, 1H), 6.98-7.05 (m, 3H), 6.92 (m, 1H), 5.92 (s, 2H), 3.56 (m, 1H), 2.24 (s, 3H), 0.94 (s, 3H), 0.93 (s, 3H)。ナトリウム含有量は、9.19%であった。
【0023】
実施例3:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二カリウム(Ib)の調製
100mLの反応フラスコに無水アルコール(50mL)及びN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)(10g,21.8mol,1eq)を加え、撹拌しながら20%の水酸化ナトリウム水溶液(2.57g,45.8mol,2.1eq)を滴下し、滴下が完了した後、1時間撹拌し反応させた。反応液にアセトン(50mL)を加え、30分間撹拌を続け、ろ過して、二カリウム塩の粗製品を得た。得られた粗製品にアセトン(50mL)/H2O(5mL)系を加えて再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(50℃)させ、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二カリウム(Ib)(7.6g、収率65%)を得た。HPLC純度は99.92%であった。MS: 535 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.57 (s, 1H), 7.99 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.27 (m, 1H), 6.99-7.04 (m, 3H), 6.94 (m, 1H), 5.91 (s, 2H), 3.55 (m, 1H), 2.23 (s, 3H), 0.94 (s, 6H)。カリウム含有量は、14.58%であった。
【0024】
実施例4:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルトリエチルアンモニウム塩(Ic)の調製
100mLの反応フラスコに無水アルコール(50mL)、N-ヒドロキシメチル基-トラセミドリン酸エステル(I)(10g,21.8mol,1eq)およびトリエチルアミン(2.2g,21.8mol,1eq)を加え、1時間撹拌し反応させた。乾燥するまで溶剤を濃縮し、泡状固体を得た。当該固体は、アセトン(30mL)によって再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルトリエチルアンモニウム塩(Ic)(6.7g、収率55%)を得た。HPLC純度は99.85%であった。MS: 459 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.55 (s, 1H), 7.99 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.25 (m, 1H), 6.97-7.04 (m, 3H), 6.95 (m, 1H), 5.91 (s, 2H), 3.57 (m, 1H), 3.07 (m, 6H), 2.25 (s, 3H), 1.07 (m, 9H), 0.93 (s, 6H)。
【0025】
実施例5:N-ヒドロキシメチル基-トラセミドリン酸エステルトリブチルアンモニウム(tri-n-butylammonium)塩(Id)の調製
100mLの反応フラスコに無水アルコール(50mL)、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)(10g,21.8mol,1eq)およびトリブチルアミン(Tri-n-butylamine)(4.04g,21.8mol,1eq)を加え、1時間撹拌し反応させた。乾燥するまで溶剤を濃縮し、泡状固体を得た。当該固体をアセトン(30mL)によって再結晶させ、濾過し、濾過ケーキを真空乾燥(40℃)させ、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルトリブチルアンモニウム(tri-n-butylammonium)塩(Id)(7.2g、収率51%)を得た。HPLC純度は99.88%であった。MS: 459 [M +1],1H NMR (400 MHz,D2O) δ: 8.56 (s, 1H), 8.01-8.02 (d, J = 4.0Hz, 1H), 7.26 (m, 1H), 6.98-7.04 (m, 3H), 6.94 (m, 1H), 5.93 (s, 2H), 3.55 (m, 1H), 3.05 (m, 6H), 2.23 (s, 3H), 1.35-1.42 (m, 12H), 0.93 (s, 6H) , 0.87 (m, 9H)。
【0026】
実施例6:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム注射液の調製
製剤の組成は、10gのN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム及び2000mLの注射用水である。
【0027】
調製方法
(1)注射用水を2000mLはかり、10gのトラセミドを加え、均一に撹拌し、プレートフレームろ過器で予備濾過し、溶液Aを得た。
(2)(1)の溶液Aを2つの0.22μmポリエーテルスルホンフィルタで除菌濾過し、中間体Bを得た。
(3)中間体Bを充填し、溶融して封をし、包装することにより製品を得た。
【0028】
実施例7:N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム凍結乾燥粉末注射剤の調製
製剤の組成は、10gのN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム及び2000mLの注射用水である。
【0029】
調製の過程は、以下の通りである。
(1)注射用水の70%体積分を取り、所定重量のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウムを加え、完全に溶解するまで撹拌し、溶液Aを得た。
(2)注射用水の30%体積分を取り、上記の溶液Aに加え、撹拌しながらpH値を8.5~9.5に調整し、プレートフレームろ過器で濾過し、溶液Bを得た。
(3)(2)の溶液Bを2つの0.22μmポリエーテルスルホンフィルタで除菌濾過し、溶液Cを得た。溶液Cを充填し、栓を半分打ち、中間体Dを得た。
(4)温度が-40℃~-50℃で、圧力が10Pa~22Paの条件下で、前記中間体Dを凍結乾燥処理した。前記凍結乾燥処理では、以下の昇温する工程を採用した。
(a)温度を-45℃~-30℃に設定し、2.0時間、予備凍結した。
(b)-30℃~-20℃に昇温し、4.0時間、昇華した。
(c)-20℃~-10℃に昇温し、1.5時間、昇華した。
(d)-10℃~0℃に昇温し、1.0時間、昇華した。
(e)0℃~15℃に昇温し、1.5時間、昇華した。
(f)15℃~25℃に昇温し、2.0時間、保温した。
栓をして、箱(凍結乾燥器)から出し、蓋を締め、N-ヒドロキシメチル基-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム凍結乾燥粉末注射剤を得た。
【0030】
溶解性の比較
トラセミド、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル(I)、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二ナトリウム(Ia)、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステル二カリウム(Ib)、N-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルトリエチルアンモニウム塩(Ic)及びN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルトリブチルアンモニウム塩(Id)の溶解性を比較した。以下に結果を示す。
【0031】
【0032】
溶解度の試験結果から、実施例1~5のN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルプロドラッグは、トラセミドより溶解性が高く、優れた創薬可能性を有することが分かった。
【0033】
利尿作用の比較
SD雄性ラット(体重180±20g)を、無作為に、7群に分けた。各群に3匹のラットがいる。各ラットの胃内に、30mL/kgの生理食塩水を投与した。生理食塩水を胃内へ投与した後、ブランク対照群以外は、各群に1種類の薬物(10mg/kg,iv,1mg/mL,製剤処方:0.5% methylcellulose)を与え、排尿の状況を4時間収集し、表2に結果を示している。
【0034】
【0035】
利尿作用の試験結果から、実施例1~5におけるN-ヒドロキシメチル-トラセミドリン酸エステルプロドラッグは、トラセミドに類似する、又はトラセミドより優れた利尿作用を示し、より優れた創薬可能性を有することが明らかであることがわかった。
【0036】
本発明で言及されたすべての文献は、各文献が参考として単独に引用されるように、本願において参考として引用されている。
【国際調査報告】