(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】鉄道用枕木
(51)【国際特許分類】
E01B 3/44 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
E01B3/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569940
(86)(22)【出願日】2020-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 IB2020020027
(87)【国際公開番号】W WO2020240285
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルド・マルコーニ・ウェッセン・マシャード
(72)【発明者】
【氏名】ジェズス・ヴァルデマール・ゴルサウヴェス・ダ・シルヴァ
(72)【発明者】
【氏名】レナト・テイシェイラ・ヴァルガス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウテル・ヴィドン・ジュニオール
(57)【要約】
鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するための鉄道用枕木であって、接触面であって、一対のレールの各レールは、接触面に固定され、互いに離間している、接触面と、接触面から下方に延び、かつ底面に支持点を有する定着壁であって、定着壁に形成された少なくとも1つの開口部を有する、定着壁と、接触面と定着壁とによって区切られた空隙部と、を含む、鉄道用枕木。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するための鉄道用枕木であって、
接触面であって、前記一対のレールの各レールは、前記接触面に固定され、互いに離間している、接触面と、
前記接触面から下方に延び、底面に支持点を有する定着壁であって、前記定着壁に形成された少なくとも1つの開口部を有する、定着壁と、
前記接触面および前記定着壁によって画定された空隙部と、
を備える、鉄道用枕木。
【請求項2】
前記鉄道用枕木がポリマー材料から形成される、請求項1に記載の鉄道用枕木。
【請求項3】
前記鉄道用枕木が、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物から形成される、請求項1または2に記載の鉄道用枕木。
【請求項4】
前記ガラス繊維が、前記組成物の5重量%~40重量%の範囲の量で存在する、請求項3に記載の鉄道用枕木。
【請求項5】
鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するために鉄道用枕木と共に使用するための締結ブロックであって、前記締結ブロックに形成されている少なくとも1つの開口部または空隙空間を備える、締結ブロック。
【請求項6】
前記締結ブロックが、ポリマー材料から形成される、請求項5に記載の締結ブロック。
【請求項7】
前記締結ブロックが、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物から形成される、請求項5または6に記載の締結ブロック。
【請求項8】
前記締結ブロックが、バージンポリエチレン、バイオポリエチレン、再生樹脂、使用済み樹脂、またはこれらの組合せから形成される、請求項5または6に記載の締結ブロック。
【請求項9】
前記締結ブロックが高密度ポリエチレンから形成される、請求項8に記載の締結ブロック。
【請求項10】
鉄道構造物アセンブリであって、
鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するための鉄道用枕木であって、
接触面であって、一対のレールの各レールは、前記接触面に固定され、互いに離間している、接触面と、
前記接触面から下方に延びる定着壁と、
前記接触面と前記定着壁とによって画定される空隙空間と、
を備える、鉄道用枕木と、
レールの位置に対応する前記鉄道用枕木の一部で前記空隙空間内に存在する少なくとも1つの締結ブロックと、
を備え、
前記定着壁または前記少なくとも1つの締結ブロックのうちの少なくとも一方は、前記定着壁または前記少なくとも1つの締結ブロックのうちの前記少なくとも一方に形成された開口部を有するか、または前記少なくとも1つの締結ブロックは、前記締結ブロックに形成された空隙空間を有する、
鉄道構造物アセンブリ。
【請求項11】
前記接触面に前記少なくとも1つの締結ブロックを介して固定された少なくとも1つのレールを更に備える、請求項10に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項12】
前記鉄道用枕木がポリマー材料から形成される、請求項10または11に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項13】
前記鉄道用枕木が、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物から形成される、請求項10~12のいずれか一項に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項14】
前記ガラス繊維が、前記組成物の5重量%~40重量%の範囲の量で存在する、請求項13に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの締結ブロックが、ポリマー材料から形成される、請求項10~14のいずれか一項に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの締結ブロックが、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物から形成される、請求項10~15のいずれか一項に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの締結ブロックが、バージンポリエチレン、バイオポリエチレン、再生樹脂、使用済み樹脂、またはこれらの組合せから形成される、請求項10~15のいずれか一項に記載の鉄道構造物アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
鉄道用枕木は、鉄道網の様々な構成要素のうちの1つを表しており、バラストおよび他の締結要素と共に、客車が走行するレールの正しい定着(固定)を促進する。従来、要素の大部分(約90%)は木材で作られており、残りは鋼鉄、コンクリートまたは再生プラスチック製の枕木である。
【0002】
木製枕木は、数十年と推定される耐用年数を有しており、この期間の後、それを交換する必要がある。世界中で毎年3000万本を超える木製枕木が交換されていると推定されており、所定のタイプの原材料の使用に関する法的規制があるため、セクターは木製枕木の代替物を探している。一般に、代替物は、木材、鋼、コンクリート、森林再生木材、(再生またはバージン)プラスチックで作られた枕木に集中している。
【0003】
バージンプラスチックで作られた枕木の使用は良好な挙動を示している。しかしながら、このタイプの枕木の使用は、積荷システムから生じる力以外の力を受ける狭軌の旅客輸送鉄道に制限されている。
【0004】
再生プラスチック製枕木は、いくつかの鉄道網で使用されており、特有の亀裂伝播、反り、および固定に関する問題などの構造的な問題を呈している。特に、再生された枕木では、枕木を形成する材料の均質性を得ることが困難になる。
【0005】
コンクリート製枕木は、世界中の鉄道網で広く普及しているにもかかわらず、最も一般的に利用可能な商業モデルの慣性および剛性が大きいために、一部の国(ブラジルおよび米国など)に存在する線路の路床およびバラストの特性にとって最良の解決策ではないことが分かっている。そのため大きなバラスト破損を引き起こす傾向があり、これにより鉄道の保守コストの増加や事故の発生を招くことになる。更に、材料の固有の吸水特性のために、湿度の高い国でのコンクリート製枕木の設置は困難である。
【0006】
その形状に応じて分類される場合、コンクリート製枕木は、剛性の高い連続した単一部材で形成されたモノブロックタイプのものであり得、枕木の各部位に現れる大きな曲げモーメントを受ける。また、コンクリート製枕木には、鉄筋コンクリート製の2つの剛性ブロックを各レールの下に配置して可撓性のある鋼棒で結合するバイブロックタイプ(混合枕木)もある。梁の弾性により、2つのコンクリートブロックは、プレストレストコンクリート製の枕木ではほとんど抵抗できない静的な曲げや繰り返し起きる曲げから成るほとんどの応力の影響を受けない。
【0007】
コンクリート製枕木の中には、バイブロックの枕木もあり、2つの鉄筋コンクリートブロックが、やはりコンクリートで作られた中間部材と連結して両端に配置される。側方のブロックおよび中間のブロックは、弾性限度の大きい鋼製の棒材手段によって結合され、両端で応力が加えられて定着される。
【0008】
一方、コンクリート製枕木の使用には、この枕木が木製枕木と比較して重量が大きいために輸送コストが高くなること、および脱線の発生後に枕木を再使用することに疑問の余地があることなど、いくつかの欠点がある。加えて、コンクリート製枕木を使用すると、締結システムは、レールの摩耗および鉄道の拡幅に対して調整ができない。更に、鉄道の敷設や保守のために高価な設備が必要であり、場合によっては、枕木の重量が大きいためにバラストに損傷を与える可能性がある。
【0009】
既に述べたように、コンクリート製およびプラスチック製の枕木に加えて、いくつかの枕木はまた、鋼製である。鋼製枕木は、使用時には満足のいく挙動を示す。しかしながら、そのコストは、非常に不安定な鋼の価格に直接依存するため、高くて不確かなものとなる可能性がある。更に、このタイプの枕木の締結は、通常、ねじおよびナットを用いて行われ、永続的な保守を必要とする。更に、ねじを用いて固定するため、枕木に開けられた穴によって、枕木を弱くさせてしまう。
【0010】
鋼製枕木の利点には、再利用の可能性、長い耐用年数(約60年)、不活性で毒性がないこと、設置コストが低いこと、輸送が簡単なことなどが挙げられ、その製造材料のおかげで不燃性である。その欠点は、鋼製枕木を使用するため、タンピング領域において、より多くの回数の介入および変更が必要になることである。更に、このタイプの枕木は、分離する危険性があるため、走行の中断を必然的に伴う可能性があり、そのうえ腐食の問題が起きる可能性がある。
【0011】
木製枕木に関して、これらは、使用に適するようにするために、事前に(化学的に)処理される必要がある。このような化学処理は、環境にとって有害である。化学処理ステーションは、枕木の耐用年数を延ばし、真菌や昆虫の増殖を防止することを視野に入れて、枕木を保管し、防腐剤を塗布する責任を負う。枕木を処理するプロセスは、多数の工程を含む長いプロセスであることに加えて、保存剤を格納する貯蔵タンク、処理シリンダおよび配管の破断により、空気汚染などの様々な環境問題を引き起こす可能性がある。加えて、従業員が誤って化学製品を吸収、吸入、摂取することも稀ではない。更に、除草剤および殺虫剤の使用は、土壌および河川を汚染し、動物相の行動の変化および種の絶滅の可能性を引き起こす可能性がある。
【0012】
更に、森林再生木材から作製された枕木を使用することも可能であり、このタイプの枕木は、堅木の枕木よりも耐性が著しく低い。加えて、環境に対して非常に攻撃的な一部の製品(クレオソートなど)で枕木を処理することが(いくつかの国では)できないことから、枕木に細菌やシロアリなどの生物学的病原体が付着する可能性があり、その結果、寿命が極めて短く(3年~4年程度)、堅木でできた枕木の耐用年数よりもはるかに短い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
この概要は、以下の詳細な説明で更に説明される概念の選択肢を紹介するために提供されている。この概要は、特許請求された主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求された主題の範囲を限定する際の助けとして使用することも意図していない。
【0014】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するための鉄道用枕木に関し、ここで、鉄道用枕木は、接触面であって、一対のレールの各レールは、接触面に固定され、互いに離間している、接触面と、接触面から下方に延び、かつ底面に支持点を有する定着壁であって、定着壁に形成された少なくとも1つの開口部を有する、定着壁と、接触面と定着壁とによって区切られた空隙部と、を含む。
【0015】
別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するために鉄道用枕木と共に使用するための締結ブロックに関し、ここで締結ブロックは、締結ブロックに形成された少なくとも1つの開口部または空隙部を含む。
【0016】
更に別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、鉄道網の少なくとも一対のレールを固定するための鉄道用枕木であって、鉄道用枕木は、接触面であって、一対のレールの各レールは、接触面に固定され、互いに離間している、接触面と、接触面から下方に延びる定着壁と、接触面と定着壁とによって区切られた空隙空間と、を含む、鉄道用枕木と、レールの位置に対応する鉄道用枕木の一部で空隙空間内に存在する少なくとも1つの締結ブロックと、を含む鉄道構造物アセンブリに関し、定着壁または少なくとも1つの締結ブロックのうちの少なくとも一方は、定着壁または少なくとも1つの締結ブロックのうちの少なくとも一方に形成された開口部を有するか、または少なくとも1つの締結ブロックは、締結ブロックに形成された空隙空間を有する。
【0017】
特許請求される主題の他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本開示の鉄道構造物を受け入れるのに適した単純な鉄道網の上面図である。
【
図1B】本開示の鉄道構造物を受け入れるのに適した複数のレールの鉄道網の上面図である。
【
図3】鉄道用枕木の一実施形態の追加の断面図であり、その寸法を示す。
【
図4A】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図である。
【
図4B】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図である。
【
図5】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図である。
【
図6】
図5に示す鉄道用枕木の構造的実施形態の断面図であり、その寸法を示す。
【
図7】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図である。
【
図8】
図7に示す鉄道用枕木の追加の断面図であり、その寸法を示す。
【
図14】その寸法を強調表示した、
図13(c)に示す枕木の構造的実施形態の断面図である。
【
図16】内壁および外壁、ならびに中間層を強調した、鉄道用枕木の構造的実施形態の断面図である。
【
図17】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図である。
【
図18】締結ブロックを備えた鉄道用枕木を有する鉄道網の断面図である。
【
図19】枕木に横方向に配置された固定要素による鉄道用枕木の締結ブロックへの固定の図である。
【
図21A】本発明で提案された鉄道用枕木と共に使用される締結ブロックの追加の実施形態を示す。
【
図21B】本発明で提案された鉄道用枕木と共に使用される締結ブロックの追加の実施形態を示す。
【
図22A】本発明で提案された鉄道用枕木の金属板を用いた締結を示す。
【
図22B】本発明で提案された鉄道用枕木の金属板を用いた締結を示す。
【
図23A】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図を示す。
【
図23B】鉄道用枕木の追加の実施形態の斜視図を示す。
【
図24】鉄道用枕木の追加の実施形態の断面図を示す。
【
図26】シミュレーションで使用される枕木および締結ブロックの設置設計を示す。
【
図27】シミュレーションで使用される比較例の枕木および締結ブロックの設置設計を示す。
【
図28】
図27に示す設置設計における応力のシミュレーション結果を示す。
【
図29】
図26に示す設置設計における応力のシミュレーション結果を示す。
【
図30】ゲージを測定するためのパラメータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、鉄道網の構成要素、具体的には、バラストおよび他の固定要素と共に、客車が走行するレールの正しい定着(固定)を促進することができる鉄道用枕木(一部の場所では、鉄道タイまたはクロスタイとも呼ばれる)および締結ブロックに関する。鉄道用枕木は、鉄道線路内のレールのための長方形の支持体であり、一般にレールに対して垂直に設置される。これは、軌道のバラストや路盤に荷重を伝達し、レールを直立に保持し、レールを正しいゲージ間隔に保つ役割を担っている。上述したように、従来、鉄道用枕木に使用されている様々なタイプの材料には、枕木の耐用年数を制限するものや、材料を使用できる鉄道線路のタイプを制限するものなどの懸念がある。本明細書で開示される実施形態は、積荷および/または乗客を輸送するための建設および運用の両方において鉄道線路上で使用され得る鉄道構成要素の使用に関する。
【0020】
従来技術から知られているプラスチック複合材で設計された枕木(バージンまたは再生のいずれか)は、部材の重量と弾性率との間で最適な組合せを示さない。枕木の最も知られているプラスチック製の提案は、木製枕木の形状を正確に模倣し、部材をより重くし、より多くの原材料だけでなく、部材を製造するためにかなりのマンアワーと機械時間も消費する。このような要因により、製造プロセスが遅くなり、枕木の最終価格が上昇する。
【0021】
しかしながら、本明細書に開示される実施形態は、例えば、ガラス繊維を含むポリプロピレンなどのポリオレフィン材料で作製され、高生産性プロセス、好ましくは押出成形から製造され、更に、堅木の枕木のものに近い剛性、および競争力のあるコストを達成できる構造的な形状を有する鉄道用枕木に関する。本明細書に開示される実施形態はまた、押出機のキャリブレータ内で枕木の製造に使用される組成物を圧縮し、また製造中の枕木の厚さ全体を均質に冷却することを可能にする、押出プロセスによる鉄道用枕木の製造プロセスに関する。
【0022】
有利なことに、本開示の枕木は、最終価格が引き下げられ、それにより、部材の輸送および設置が容易になる可能性がある。本明細書に記載の枕木はまた、木製の枕木に使用される標準的な固定装置を使用することができ、枕木の設置や保守に使用される標準的な機械を使用し、その製造材料により、枕木の耐用年数の終わりに製品を再利用することができる。
【0023】
構造的には、提案された鉄道用枕木は、逆U字形(ボーダースルーセクタ)を形成しており、これがバラストへの定着の機能および特性にとって重要な差異として機能する。提案された形状により、鉄道で使用されるバラストは、枕木に入り込むため、一体化した塊となる。更に、枕木内部でのバラストの圧縮により、バラスト/枕木システムの剛性がより大きくなり、最終的な慣性モーメントは、枕木とその内部に配置されたバラスト層との慣性モーメントの合計になる。
【0024】
加えて、鉄道用枕木の提案された形状により、実施形態は、設置および保守が容易であり、二人の作業者で運ぶことが容易であり、1つの部材を別の部材に(1つの枕木を別の枕木に)係合させて運搬するのに適した軽量の枕木を対象としており、その結果、特に、コンクリート製枕木ではバラスト層を損傷させる高い剛性および大きな重量を有し、低品質の木製枕木では耐用年数は短く、鋼製枕木では導電性を有し、再生樹脂を使用する枕木では信頼性の問題があるなどの、従来の枕木と比較して多くの物流上の利点がもたらされる。
【0025】
上述のように、本開示の実施形態は、例えば、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含むポリオレフィン組成物から製造された高性能鉄道構造物(枕木および/または締結ブロック)であって、組成物中のガラス繊維含有量が組成物の5重量%~40重量%の範囲であり得、好適には押出プロセスによって製造され得る高性能鉄道構造物に関する。1つまたは複数の実施形態では、枕木は、共押出プロセスによって適用される、ポリプロピレンおよびガラス繊維の組成物の層の周りの外皮としてのポリプロピレン(即ち、他の主要なポリマー種またはガラス繊維を含まないが、酸化防止剤、抗UV剤などの共通の添加剤を含む)の外層を含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、本開示の鉄道構造物は、1つまたは複数の開口部または構造的隙間が含まれて形成されてもよい。このような開口部または構造的隙間を含めることは、開口部のない設計よりも少ない材料で形成されているにもかかわらず、構成要素の機械的特性を犠牲にすることなく行うことができる。現在説明されている鉄道用枕木は、木材に近い高い弾性率および性能を示す可能性があるため、積荷や乗客を輸送するための鉄道に適用することが可能になる。
【0026】
含まれる図を参照すると、
図2~
図16、
図23A~
図23B、および
図24は、鉄道用枕木1の構造的実施形態を示しており、それらは全て空隙部4を有するとともに、本明細書に記載のポリオレフィンから形成されている。空隙部4により、鉄道網で使用されるバラストを枕木1に入り込ませて圧縮させることができるため、枕木/バラストアセンブリの剛性を高めることができる。また、図には、枕木1の側壁内に開口部または構造的隙間6を含むことも示されており、これについては以下で更に詳細に説明する。
【0027】
ここで
図1Aおよび
図1Bを参照すると、
図1Aは、本開示の鉄道構造物を受け入れるのに適した単純な鉄道網の上面図であり、
図1Bは、複数のレールの鉄道網を表す。
図1Aおよび
図1Bに示すように、枕木1は、枕木1の接触面3(好ましくは平面)上に鉄道の少なくとも一対のレール2、2’を固定するために使用され得る。枕木1は、
図1Aに示すように、一対のレール2、2’を備えた単純な鉄道網での使用に適していることが想定され、あるいは
図1Bに示すように、いくつかのレール2、2’を備える鉄道網の転てつ器で使用することができる。
【0028】
ここで
図2を参照すると、
図2は、
図1A~
図1Bに示す鉄道用枕木の第1の構造的実施形態の断面図を示す。図示のように、枕木1は、上部接触面3、好ましくは平面を形成する逆U字形に形成されてもよく、上部接触面3から定着壁または側壁5および5’が下方に延び、したがってそれらの間に空隙部4(上述)が画定される。1つまたは複数の実施形態では、定着壁または側壁5および5’は平行である。他の実施形態では、定着壁または側壁5および5’は、上部接触面3に対して直交している。
【0029】
設置時に、空隙部4はバラスト(図示せず)で充填されてもよい。定着壁5、5’の下部、即ち、枕木1を土壌で支持する部分は、支持点7、7’と呼ばれ、そのような支持点7、7’は、接触面3と定着壁5、5’との間の結合点の反対側にある。定着壁5、5’(側壁とも呼ばれ得る)内には、1つまたは複数の開口部6が形成されてもよい。開口部6は、定着壁5、5’内で構造的な隙間または材料の不在を反映し得、その数、サイズ、および幾何学的形状は、定着壁5、5’が減少した量のプロピレン系材料で形成されても定着壁5、5’の機械特性を維持するように、決定され得る。図示のように、各定着壁5、5’には一対の開口部6があり、各々が半楕円筒形状を有する。しかしながら、円形、楕円形、長方形などの他の幾何学的形状も想定される。更に、形状のサイズは、枕木1の機械的特性に悪影響を与えることなく(または鉄道網で使用する枕木にとって許容可能な程度までのみ)、定着壁5、5’を形成する材料の量を減らすことができるように選択されてもよい。
【0030】
図2および
図3を参照すると、定着壁5、5’(開口部6を含むように示されている)は、本明細書に説明の鉄道用枕木1の第1の幅L1を画定する。
図3に示すように、定着壁5、5’の厚さEを考慮すると、第1の幅L1は、定着壁5、5’の最も外側の部分(外壁)、即ち、空隙部4に面していない部分によって画定される。
図2および
図3に示す実施形態は、単純支持点7、7’を示しており、枕木1の地面との接触厚さは、定着壁5、5’の厚さEである。
【0031】
一方、
図4Aに示す実施形態は、定着壁5、5’から横方向に突出して支持点7、7’よりも大きな支持を与える、支持脚部8、8’を含む。したがって、枕木1の地面との接触厚さは、
図2および
図3に示す厚さEよりも大きい寸法を示す。支持面の厚さが異なると、枕木1の幅が異なり、L1は定着壁5、5’の外壁間の距離として定義され、L2(
図4Bに示す)は、突出した支持脚部8、8’を含む枕木1の最も広い範囲の間の距離として定義される。したがって、単純支持点7、7’が使用される実施形態では、
図3に示すように、第1の幅L1は第2の幅L2と等しい寸法を有する。一方、横方向に突出する支持脚部8、8’が使用される実施形態では、
図4Bに示すように、第1の幅L1は第2の幅L2よりも小さい。
【0032】
図5および
図6は、本開示の枕木1の別の実施形態を示す。この実施形態では、枕木1は、上述のように接触面3と定着壁5、5’とを含む(定着壁5、5’に形成された開口部6を含む)。
図5に示す実施形態は、単純支持点7、7’を含み、したがって、(
図6に示すように)第1の幅L1および第2の幅L2に対してそれぞれ等しい寸法を確立する。また、
図5および
図6に示す枕木1には、定着壁5、5’間で接触面3から延び、それによって2つの空隙空間4を形成する任意選択の支持突起部9(または支持脚部)が存在する。支持突起部9は、本明細書に開示される鉄道用枕木1の支持を増強することができる。更に、支持突起部9はまた、開口部6(上述のものなど)を含むことができることも想定される。
【0033】
ここで
図7を参照すると、
図7は、上述したように、開口部が形成された鉄道用枕木1の別の実施形態を示す。更に、この図示の実施形態では、枕木1は、
図4Aおよび
図4Bで説明する横方向に突出する支持脚部8、8’と、
図5および
図6で説明するように、開口部6が形成された支持突起部9と、を含む。
【0034】
図示のように、支持突起部9は、
図6および
図7に示す実施形態に示すように、空隙部4の全高さ(即ち、定着壁5、5’と同じ距離で終端する)を通じて突出してもよく、代替的に、支持突起部9は、
図9に示すように、接触面3から空隙部4に向かって自由に、但し、定着壁の高さよりも低く突出してもよい。支持突起部9は、
図9に示す実施形態では定着壁と同じ程度まで延びていないが、支持突起部9は、設置時に、空隙部4内に充填されたバラスト(図示せず)に荷重を伝達することによって、枕木1を支持することができる。更に、
図9を前述の図と比較すると、接触面3と定着壁5、5’との間の移行部は、
図9では丸みを帯びた移行部であるが、上述の実施形態では傾斜した移行部が存在することに注意すべきである。更に、
図23A~
図23Bに示すように、定着壁5、5’と横方向に突出する支持脚部8、8’との間の移行部は、丸みを帯びていてもよく、または鋭い交差部(図示せず)を有してもよい。特に、
図23A~
図23Bに示すように、接触面3と定着壁5、5’との間、定着壁5、5’と(壁5、5’の外面で)横方向に突出する支持脚部8、8’との間、横方向に突出する支持脚部8、8’の横方向への最延長部および横方向に突出する支持脚部8、8’の基部と定着壁5、5’の内面(空隙部4に隣接する)との間など、表面間の任意の(特定の実施形態では、各)移行部を丸みを帯びるようにしてもよい。更に、開口部6が滑らかな移行部を有して形成されてもよいことも想定される。
【0035】
図10に示すように、別の実施形態では、接触面3から突出する支持突起部9に加えて、枕木1は、定着壁5、5’の少なくとも一方から鉄道用枕木1の空隙部4に向かって横方向内側に突出する支持突起部9も含む。更に、
図10は、接触面3および定着壁5、5’の両方から延びる支持突起部9を示しているが、支持突起部9は、一方または他方、または両方から設けられてもよいことが想定される。更に、図に示す支持突起部9の数は、本開示を限定するものと考えるべきではない。
【0036】
ここで
図11を参照すると、枕木1の別の実施形態が示されている。図示のように、枕木1は、定着壁5、5’の外面に、複数の定着歯12を含むが、このような歯が、外面壁と同様にまたはその代わりに、内壁表面に含まれ得ることも、想定される。
図11に見られるように、定着歯12は、枕木1の全長に及ぶことができる凹部(チャネル)として構成されている。一般に、定着歯12は、枕木1の機械的特性に干渉しないが、その代わりに、歯12は、枕木1のバラスト(図示せず)に対する定着をより高めることができ、バラストが定着歯12の各々に入り込むことを可能にし得ると考えられる。加えて、定着歯12の配置は、好適には、枕木1の製造において材料の削減および最適化を提供することができる。
【0037】
ここで
図12を参照すると、1つまたは複数の実施形態は、定着壁5、5’を越えて突出する接触面3を有する鉄道用枕木1を対象とすることができる。更に、このような横方向に延びる接触面3を有する枕木1はまた、横方向に延びる支持脚部8、8’ならびに1つまたは複数の支持突起(図示せず)、歯(図示せず)などを含めて、上記の特徴のうちの1つまたは複数を含むことも意図されている。
【0038】
ここで
図24を参照すると、上記の実施形態では各定着壁5、5’に2つの開口部6が示されているが、1つまたは複数の実施形態は、各定着壁5、5’に3つ以上の開口部6を有する鉄道用枕木1を対象とすることができる。特に、図示のように、各定着壁5、5’は、4つの開口部6を有する。最上部および最下部の開口部6’、6’’は、それぞれその最上部および最下部の端部にアーチ状の端部を有し、一方、中央の開口部6’’’は、丸みを帯びた角を有する略長方形である。
【0039】
鉄道用枕木1が横方向に延びる支持脚部8、8’を備える実施形態では、このような脚部8、8’は、(
図12に示すように)空隙部4の外側に突出してもよいし、代替的に、
図13に示すように、このような脚部8、8’は、空隙部4の外側および内側の両方に突出してもよい。別の代替実施形態では、脚部8、8’は空隙部4内にのみ突出する可能性がある。この場合、枕木の第2の幅L2は、第1の幅L1と同じ寸法を想定する。
【0040】
上述の実施形態では(便宜上、
図14を特に参照して)、定着壁5、5’の厚さEは、1センチメートル~4センチメートルの範囲であってもよい。枕木1が定着歯12を備える実施形態では、このような歯は、0.2cm~0.5cm(
図11に示す)の範囲の厚さE1と、0.5cm~2.0cmの範囲の高さh1と、を備える。
【0041】
鉄道用枕木1について本明細書で説明したいずれの実施形態についても、第1の幅L1は、18cm~30cmの範囲であってもよい。横方向に延長された支持脚部8、8’を使用する実施形態では、明らかに第2の幅L2(延長された支持脚部)が第1の幅L1(単純支持点)よりも大きいという条件で、19~48の範囲の第2の好ましい幅L2を有してもよい。支持脚部8、8’が空隙部4内にのみ突出する実施形態では、第2の幅L2は、第1の幅L1に等しい値をとることになる。
【0042】
第3の幅L3(
図4B、
図8、
図11および
図14)と呼ばれる支持脚部8、8’の幅に関して、その幅は1.5cm~12cmの範囲であってもよい。
図14に示す実施形態の場合、2cm~20cmの範囲の好ましい第3の幅L3がある。
【0043】
本開示の鉄道用枕木1の高さは、第1の高さHとし、例えば、14cm~20cmの範囲であってもよい。支持突起部9を利用する実施形態では、このような要素は、0.5cm~19cmの範囲の値で接触面3から突出し、最大値は定着壁の高さである。L4と呼ばれる、定着壁から突出する定着突起部9の幅は、0.5cm~3.0cmの範囲であってもよい。
【0044】
定着壁5、5’と接触面3および/または支持脚部8、8’との間の移行部は、前の図に示すように、直交して、または角度を付けて実行されてもよく、代替的に、
図15に示す実施形態のように、湾曲した部分または丸みを帯びた移行部によって実行されてもよい。このような移行は、任意のタイプの移行にも含めることができる。
【0045】
1つまたは複数の実施形態では、開口部6は、厚さEの最大50%、または厚さEの40%(その最も幅広の点で測定)の幅、および高さHの最大80%、または高さHの70%の全長(全ての開口部の長さの合計)を有してもよい。特に、1つまたは複数の実施形態では、開口部6は、厚さEの20%~40%の範囲の幅、および高さHの50%~70%の範囲の全長を有してもよい。
【0046】
上述したように、枕木1がその適用分野の応力に耐えることができるようにするために、枕木1は、高い弾性率(高い剛性)を有し、また、高い耐衝撃性、耐疲労性および高い市場可用性を有する材料から作られてもよい。より具体的には、1つまたは複数の実施形態では、枕木は、単一の材料から形成されてもよいが、他の実施形態では、枕木は、
図16に示すように、内壁13(破線で表示)および外壁14(実線で表示)を有する多層製品であってもよい。枕木1の全体が単一の材料で形成されてもよいことが特に意図されているが、他の実施形態は多層構造体を含んでもよく、ここで外面(壁13および14)は第1の材料で形成され、枕木1の中間部分または内部部分15は第2の材料で形成される。例えば、単一材料または第2の材料は、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物を含んでもよい。1つまたは複数の実施形態では、ガラス繊維の重量含有率は、組成物の5重量%~40重量%、または他の実施形態では組成物の33重量%~37重量%の範囲であり得る。
【0047】
多層構造体を有する他の実施形態では、内壁13および外壁14は、ポリプロピレン(内層ポリプロピレンと同じまたは異なる)などのポリオレフィンを含む組成物で製造することができ、中間層15は、第2の材料から製造することができる。例えば、ポリプロピレンを外面層に使用してもよいし、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物を枕木の中間層に使用してもよい。
【0048】
単一材料としてまたは中間層15にガラス繊維を含むポリプロピレンの組成物を使用することは本開示の一実施形態であり、他の実施形態では、ISO178規格に従って決定されるように、5000MPa以上の曲げ弾性率を有する任意の材料または組成物を使用できる可能性があることに注意すべきである。
【0049】
ここで
図19を参照すると、提案された枕木1をレール2、2’に固定するために、締結ブロック10を枕木1の空隙部4内に配置してもよい。これらのブロックは、タイヤフォンド(tirefond)の設置とレール2、2’を枕木1に締結する固定装置の設置とを可能にする主要な機能を有する。より具体的には、このようなブロック10は、鉄道の横方向の動きを防止し、レール2、2’の下にある枕木1の一部、言い換えれば、接触面3上の軌道の配置点とは反対側の枕木1の一部に配置してもよい。
【0050】
図18は、本明細書に説明の枕木1が使用される鉄道網の断面図を示す。この図では、レール2、2’の各々は、支持板20およびタイヤフォンド21を用いて枕木1の接触面3に固定されている。枕木1の空隙部4では、鉄道網に固定された場合、鉄道のバラストが空隙部4に入り込むことができ、空隙部4内でのバラストの圧縮に伴い、バラスト/枕木システムの剛性がより高まることになる。
【0051】
図18では、締結ブロック10がレール2、2’のそれぞれの下に配置され、そのようなブロック10は中実ブロックとして構成され、木材、再生材料、コンクリート、ポリエチレン、ポリプロピレンから作製されてもよく、また、ポリプロピレンとガラス繊維とを含む組成物である枕木1の製造に使用されるのと同じ材料から作製されてもよいことに更に注意すべきである。特定の実施形態では、固定ブロック10はポリエチレンから作製される。特定の実施形態では、締結ブロックは、未使用ポリエチレン、Braskem社のI’m Green(商標)ファミリーのポリエチレンなどバイオポリエチレン、再生樹脂、使用済み樹脂、およびこれらの組合せから製造することができる。特定の実施形態では、締結ブロックは高密度ポリエチレンから作製される。
【0052】
このような締結ブロック10は、押出成形、引抜成形、射出成形および大規模なブロックを使用する機械加工プロセスなどの異なるプロセスによって製造されて、部材の最終形状を得ることができる。更に、1つまたは複数の特定の実施形態では、本明細書で説明した枕木におけるもののような締結ブロックは、締結ブロック10の機械的特性への悪影響なしに、または
図20Dに示すように、枕木構造物におけるそれらのブロックの使用を依然として可能とする機械的特性への影響を伴って、締結ブロック10を形成するのに必要な材料の量を低減する1つまたは複数の開口部16または構造的隙間を含むことができる。1つまたは複数の実施形態では、このような開口部16は、締結ブロック10の幅の最大50%または40%までの幅を有してもよい。例えば、開口部16の幅は、締結ブロック10の幅の20%~40%の範囲であってもよい。1つまたは複数の実施形態では、開口部16は、締結ブロックの高さの最大80%または70%までの高さを有してもよい。例えば、開口部16の高さは、締結ブロックの40%~70%の範囲であってもよい。より小さい開口部(または複数の開口部)を使用することもできるが、より大きい開口部で達成されるほどの重量削減が得られない可能性があると理解される。
【0053】
ブロック10を枕木1により良好に固定するために、好ましくは六角ねじ26として構成される固定要素は、好ましくは
図19に示すように、枕木1に対して横方向に配置される可能性がある。
図20A~
図20F、
図21A~
図21B、および
図31~
図32は、締結ブロック10について提案される形状を示す。鉄道用枕木1に対して提案された構造的実施形態のいずれかは、締結ブロック10の実施形態のいずれかと組み合わせて使用することができると理解される。
【0054】
図20Eおよび
図20Fに示す実施形態は、注入プロセスによって作製された締結ブロック10を提供する。このような図に示したブロック10は、鉄道客車の配置を参照して荷重を支持するように設計されたいくつかのリブ構造体27を備えていることに注意すべきである。
【0055】
したがって、リブ構造体27は、耐性と軽量化とを組み合わせており、締結ブロック10を配置する新たな可能性を確立する。更に、ブロック10は、適切なねじを配置するように設計されたオリフィス28を更に備えてもよい。構造体27の配置および形状は、
図20Eおよび
図20Fに示す実施形態に限定されるべきではないことを指摘しておく。
【0056】
図21A~
図21Bおよび
図31~
図32に示すように、締結ブロック10はまた、1つまたは複数の空隙空間24を含んでもよい。
図21A~
図21Bに示す実施形態では、空隙空間24は、枕木1に関して説明した逆U字形と同様の形態をとる締結ブロックとなる。
図31~
図32に示す実施形態では、各締結ブロック10は、2つの空隙空間24を含み、それにより、締結ブロック10はH字形をとる。1つまたは複数の実施形態では、空隙空間24は、締結ブロック10の幅の最大50%または40%までの幅を有してもよい。空隙空間24の例示的な幅は、締結ブロック10の幅の15%~40%の範囲であってもよい。1つまたは複数の実施形態では、空隙空間24は、締結ブロック10の高さの最大75%または最大65%の全高さ(全ての高さの合計)を有することができる。空隙空間24の例示的な全高さは、締結ブロック10の高さの50%~70%の範囲であってもよい。締結ブロック10のいくつかの実施形態は、
図20A~
図20Dおよび
図21A~
図21Bに示すように、概して(小さい半径の)鋭い縁部を有してもよいが、締結ブロックがより大きな丸みを帯びた縁部を有する可能性があることも想定される。更に、
図32に示すように(そして
図12に示す枕木の実施形態に示す突出部と同様に)、締結ブロック10の上面および/または下面が、締結ブロックの垂直面よりも更に突出してもよいことも想定される。
【0057】
1つまたは複数の実施形態では、
図20A~
図20F、
図21A~
図21B、および
図31~
図32に説明された締結ブロック10は、
図2~
図17および
図23~
図24に関して説明された枕木1のいずれかと組み合わせて使用することができるが、現在説明されている締結ブロック10は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2018/0327977号明細書に説明されている、開口部などを備えない他の枕木と組み合わせて使用できることも意図されている。
【0058】
1つまたは複数の実施形態では、本開示で論じられ、
図20A~
図20D、
図21A~
図21B、および
図31~
図32に開示された締結ブロック10のいずれかは、注入プロセスによって作製され、したがって(リブ構造体27を備えた、またはその中に)構造化ブロックを構成することができる。他の実施形態では、本開示で論じられ、
図20A~
図20D、
図21A~
図21B、および
図31~
図32に開示された締結ブロック10は、押出成形プロセスによって作製されてもよく、したがってリブ構造体27を持たない連続面を有する。
【0059】
1つまたは複数の実施形態では、枕木付きの締結ブロックを使用する代わりに、本開示の枕木1は、既存の鋳鉄板25を用いて、更にオリフィス(
図23Bにオリフィス29として示されている)を通して挿入されるねじ、プレスワッシャおよびナットなどの従来の固定要素23を用いて既存の板(板25)に固定された金属板22(好ましくは鋼製)を用いて固定されてもよいことも想定される。
【0060】
このような締結形態は、
図22Aおよび
図22Bに示されており、
図22Aは、
図22Bに表されたものと比較してより小さいサイズの金属板22を示している。
図22Bに示す実施形態は、鉄道網のレール間に完全に配置されているため、最終的には、枕木1の強度が向上する。使用される金属板22の数は、
図22A~
図22Bに示す数に限定されるべきではないことを更に指摘しておく。
【0061】
ここで
図17を参照すると、本開示の枕木は逆U字形を形成しないことも想定される。例えば、
図17に示すように、鉄道用枕木1’は、(レールが接触する)接触面3と、接触面3の反対側の(また、枕木1’の基部において定着壁5、5’間に延びる)支持面3’と、を含む。このような実施形態では、空隙部4は、実際には、接触面3、定着壁5、5’、および支持面3’によって画定される枕木の中空部分である。本明細書に開示された実施形態における鉄道用枕木1に対して提案された他の特性および実施形態は、
図17に示され、支持面3’を備える鉄道用枕木1’の実施形態にも有効であることを指摘しておく。更に、枕木1’の定着壁5、5’はまた、上述の開口部6を含んでよいことも意図されている。
【0062】
本明細書に説明の鉄道用枕木1、1’の構造的形状は、好ましくは押出/共押出プロセスによって得ることができる。このようなプロセスは、例えば、送り込み位置、スレッドキャノン(thread cannon)、鋳型、キャリブレータおよび減速機を備えた従来の押出機を用いて行われる。
【0063】
一般的に言えば、押出プロセスの間、溶融ポリマーが、ダイプレートならびに均質な冷却および真空の状態にあるキャリブレータ内を通過する際に、部材の断面全体によって起こる組成物(枕木1、1’を形成する構造体)の圧縮が可能となる。
【0064】
本明細書に説明のプロセスは、使用される組成物(好ましくはガラス繊維を含むポリプロピレン)を押出機のフィーダに添加し、次いで押出機の全ての溶融ゾーンおよびダイプレート内の温度を制御して材料の特性に適合させる最初のステップを含む。
【0065】
多層枕木を使用する実施形態では、上記の工程と同時に、第1のポリマー材料(ガラス繊維を含むポリプロピレン)を押出機に添加してもよく、ダイプレートの前に連結された共押出において、純粋なポリプロピレン、黒色マスターバッチを含むポリプロピレン、または添加剤を含むポリプロピレンなどの他の樹脂をポリプロピレンおよびガラス繊維の組成物と一緒に添加してもよい。
【0066】
したがって、ガラス繊維を含むポリプロピレンの組成物は、ポリプロピレン(ガラス繊維を含まない、純粋なポリプロピレンまたは他の添加剤を含むポリプロピレンなど)でコーティングしてもよく、したがって、(ガラス繊維を含まない)ポリプロピレンの内壁13および外壁14と、ポリプロピレンおよびガラス繊維の中間層15と、が配置された構造体が確立される。したがって、ABAとして知られる押出プロセスと同様の構造体が形成され、第1の層(層A)は所定の材料(この場合、ポリプロピレン)からなり、中間層(層B)は別の材料(この場合、ガラス繊維を含むポリプロピレンの組成物)からなり、第3の層は再び材料A(ポリプロピレン)からなる。内側層13または外側層14のみが中間層15と共押出される、したがってABまたはBA多層構造体を形成することも想定される。
【0067】
中間層15(この場合、ガラス繊維を含まないポリプロピレン)の製造に使用されるのと同じ材料から内壁13および外壁14を製造することは、単なる例示的な実施形態であることを指摘しておく。したがって、壁13および14は、明らかに部材に必要な接着性を提供する限り、層15に使用される材料以外の材料から作られる可能性がある。単一材料の構造体を使用する実施形態では、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物のみが押出機に添加され得ることも想定される。
【0068】
上述の工程の説明に従って、押出機のキャノンおよびスクリュー内で構造体を溶融した後、溶融構造体は鋳型内で押し出され、前記鋳型は、構造体を所望の形状に成形する主機能を有する。
【0069】
その後、構造体は、鋳型から出ると、水ベースの冷却システムを備えたキャリブレータを通過する。前記冷却システムは、部材の冷却を助けることに加えて、溶融構造体をその最終形状に維持することを目的とする。
【0070】
部材は、キャリブレータから出ると、押出機の速度を制御し、それによってプロセスの流量を制限し、キャリブレータ内での構造体の圧縮を可能にし、それによって材料の泡立ちおよび損失を防止するためのシステムに入る。最後に、溶融構造体を所望のサイズに切断する。
【0071】
鉄道用枕木1、1’の所望の形状に応じて、押出機のキャリブレータは、真空あり、または真空なしのキャリブレータとして構成されてもよい。真空なしのキャリブレータでは、長さの例は0.3メートル~0.5メートルの範囲、真空ありのキャリブレータでは、長さは1メートル~4メートルの範囲であり、冷却チャンバの真空は0バール~0.4バールであってもよい。
【0072】
開放された空隙部(
図2~
図16に示す)を含む鉄道用枕木1を成形するために、真空なしのキャリブレータが特に望ましい場合があることを指摘しておく。一方、支持面3’によって空隙部4が区切られている枕木1’を成形する際に、真空ありのキャリブレータを使用してもよい。
【0073】
加えて、押出機の以下の好ましいパラメータを使用することができる。
・好ましくは220℃~250℃の範囲の押出機の温度、
・25Aから350Aの範囲の押出機のアンペア数、
・5バール~70バールの範囲のヘッド圧力、
・0.1メートル/分~0.5メートル/分の範囲の押出機の速度(ライン速度)、
・好ましくは毎分10回転~45回転(rpm)の範囲のスクリューの回転
【0074】
鉄道用枕木1、1’を成形するプロセスは押出プロセスと呼ばれているが、このような特性は単なる好ましい実施形態であるため、貫入、射出成形または引抜成形プロセスなど他のプロセスが、提案中の枕木1の構造物成形に使用される可能性があることを理解すべきである。
【0075】
1つまたは複数の実施形態では、ポリプロピレンおよびガラス繊維を含む組成物は、組成物の5重量%~40重量%、より具体的には組成物の33重量%~37重量%の範囲のガラス繊維を含有する。
【0076】
実施例
図24に示すタイプの枕木(S1)(開口部あり)を、ABAQUS(Dassault Systemes社から入手可能な有限要素解析ソフトウェア)を使用したシミュレーションにより、
図25に示すタイプの比較例の枕木(S2)(開口部なし)と比較した。シミュレーションでは、S1およびS2の枕木設計を、それぞれ
図26~
図27に示すような締結ブロック、バラスト、およびレールと組み合わせた。S1設計で使用される締結ブロックは、
図20Dに示すタイプのものであり(その長さに沿って開口部または構造的隙間を含む)、一方、S2設計で使用される締結ブロックは、このような開口部を省略した中実ブロックである。
図24~
図25から、投影面積(垂直方向)が維持されているため、2つの設計間で接触面積が維持されていることに注意すべきである。特に、S1設計は、2.60m、170mm、および15mmの寸法を有していた。S2設計は、2.8m、190mm、および20mmの寸法を有していた。設計の重量を以下の表1に示す。
【表1】
【0077】
S2の設計に対して実施された検討では、
図28に示すように、枕木部の中央部の応力が低いことが判明した。枕木における支配的な応力は屈曲によるものである。これらの応力は、中立線から最も遠い領域を必要とし、この領域の応力レベルを低く維持する。S1モデルの数値シミュレーションの検討では、応力レベル(12,2MPa)が破壊応力70MPa未満のままであることを示している(
図29)。
【0078】
S1の剛性はS2より小さいので、この剛性の鉄道用軌道ゲージへの影響を試験した。通常の鉄道で特性荷重(垂直および水平)をかけると、
図30に示すように、S2設備のゲージ開度(X1+X2)は3.58mmであり、S1設備のゲージ開度は3.94mmである。枕木アセンブリの軽量化をもたらす開口部が存在しても、軌道ゲージの1%限界オフセット(16.8mm)の基準をクリアしているので、鉄道構造物での使用が可能であることがシミュレーションによって証明されている。
【0079】
有利には、本開示に説明された鉄道用枕木は、以下のうちの1つまたは複数を有することができる。
・市場の大規模需要を満たすための原材料の入手可能性および信頼性、
・良好な電気絶縁体、
・高弾性率、
・再利用性、
・木製枕木と同等の設置、固定、および保守が可能で、同じ工具および機器を使用可能、
・輸送および保守が非常に容易で、物流コストが削減可能、
・不活性かつ不浸透性、
・現在の木製枕木に使用されている固定システムが使用可能、
・異なる長さおよび形状の枕木を製造して、異なるゲージおよび転てつ機に適合することが可能。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態のみを上記で詳細に説明したが、当業者は、本発明から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解する。したがって、そのような修正は全て、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクション条項は、列挙された機能を実行するものとして本明細書に説明された構造物、および構造的均等物だけでなく、均等な構造物も包含することを意図している。したがって、釘およびねじは、釘が円筒形の表面を使用して木製部品を互いに固定するのに対し、ねじは螺旋状の表面を使用するという点で、構造的均等物ではないかもしれないが、木製部品を締結するという環境では、釘およびねじは均等な構造物であり得る。本出願人の明確な意図は、請求項が関連する機能と共に「~するための手段(means for)」という語を明示的に使用するものを除き、本明細書の請求項のいかなる制限に対しても、米国特許法第112条6段落を援用しないことである。
【符号の説明】
【0081】
1、1’ 鉄道用枕木
2、2’ レール
3 上部接触面
3’ 支持面
4 空隙部、空隙空間
5、5’ 定着壁、側壁
6 開口部、構造的隙間
6’、6” 最上部および最下部の開口部
6’” 中央の開口部
7、7’ 単純支持点
8、8’ 支持脚部
9 支持突起部、定着突起部
10 締結ブロック、固定ブロック
12 定着歯
13 内壁、内側層
14 外壁、外側層
15 中間層、中間部分、内部部分
16 開口部
20 支持板
21 タイヤフォンド
22 金属板
23 固定要素
24 空隙空間
25 鋳鉄板
26 六角ねじ
27 リブ構造体
28 オリフィス
29 オリフィス
【国際調査報告】