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▶ サンヨウ バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(54)【発明の名称】新規なCLDN18.2結合分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220715BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220715BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220715BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220715BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220715BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220715BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220715BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62
C07K16/30
C07K16/46
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516255
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 CN2020091441
(87)【国際公開番号】W WO2020238730
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910437800.2
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910437806.X
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521513605
【氏名又は名称】サンヨウ バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】タン,ヨンコン
(72)【発明者】
【氏名】ラン,グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】コン,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャンジュアン
(72)【発明者】
【氏名】デン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,チ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェンハイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,バオグオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC01
4C085CC04
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
新規なCLDN18.2結合分子である。当該CLDN18.2結合分子をコードする核酸分子、CLDN18.2結合分子を発現するための発現ベクター及び宿主細胞である。当該CLDN18.2結合分子の産生方法及びその途である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むCLDN18.2結合分子であって、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR3、及び、
(b)SEQ ID NO:30と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:32と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR3から選択される何れか1組のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【請求項2】
(a)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:1に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:2に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:3に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、又は、
(b)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:30に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:31に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:32に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する請求項1に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項3】
(a)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:1に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:2に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:3に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、又は、
(b)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:30に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:31に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:32に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する請求項1に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項4】
前記CLDN18.2結合分子は、CLDN18.2に対する抗体又はその抗原結合断片である請求項1~3の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項5】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、VHHであり、例えば、ラクダ科動物(例えばアルパカ)に由来するVHHである請求項1~4の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項6】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、式ISRGGXTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはT又はSである)、及び式NAQAWDXGTXRYLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはP又はVであり、XはF又はIである)、及び、
(b)SEQ ID NO:30、33、34、35、36、38、39又は40に示すアミノ酸配列のCDR1、式XSTGGTTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはI又はMである)、及び式NVLVXSGIGSXLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはI又はVであり、XはH又はTである)から選択される何れか1組のCDR1、CDR2及びCDR3を含む請求項1~5の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項7】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列のCDR3、
(b)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列のCDR3、
(c)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列のCDR3、
(d)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列のCDR3、
(e)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(f)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(g)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(h)SEQ ID NO:34に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(i)SEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(j)SEQ ID NO:36に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(k)SEQ ID NO:38に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(l)SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:41に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、又は、
(m)SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3を含む請求項1~6の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項8】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:7に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列、及び、
(b)SEQ ID NO:47に示すアミノ酸配列、SEQ ID NO:47と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:47に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列から選択される何れか1つを含む請求項1~7の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項9】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:7の第1、4、5、14、16、35、47、56、58、65、92、102、105又は121位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾され(例えば、アミノ酸の置換及び/又は付加)、又は、
(b)SEQ ID NO:47の第1、4、5、11、27、28、29、30、31、32、35、51、75、76、92、100、106又は120位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾される(例えば、アミノ酸の置換及び/又は付加)請求項1~8の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項10】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:7~14、SEQ ID NO:42~51及び63のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる請求項1~9の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項11】
前記CLDN18.2結合分子は、重鎖単一ドメイン抗体などの単一ドメイン抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である請求項1~10の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項12】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、別の分子に融合し、前記別の分子は、例えば免疫グロブリン(例えばIgG)のFcドメイン又は蛍光タンパク質である請求項1~11の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項13】
前記CLDN18.2結合分子は、ラクダ科動物に由来するVHH及びヒトIgG(例えば、ヒトIgG1又はIgG4)のFcドメインを含むキメラ抗体、又はラクダ科動物に由来するVHHをヒト化した後に得られたVHH及びヒトIgG(例えば、ヒトIgG1又はIgG4)のFcドメインを含むヒト化抗体である請求項12に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項14】
前記CLDN18.2結合分子は、アルパカに由来するVHH及びヒトIgG1のFcドメインを含むキメラ抗体である請求項13に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項15】
前記CLDN18.2結合分子は、ヒトCLDN18.2の細胞外ドメイン1(ECD1)に結合する請求項1~14の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項16】
同じエピトープについて請求項1~15の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子と競合するCLDN18.2結合分子。
【請求項17】
CLDN18.2に特異的に結合するが、CLDN18.1に結合しない請求項1~16の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子。
【請求項19】
SEQ ID NO:22~29、SEQ ID NO:52~61及び64のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる請求項18に記載された単離された核酸分子。
【請求項20】
請求項18又は19に記載された単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載された発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
前記宿主細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌(E.coli))、真菌細胞(例えば酵母)又は哺乳動物細胞である請求項21に記載された宿主細胞。
【請求項23】
少なくとも1つの請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子及び医薬上許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項24】
請求項21又は22に記載された宿主細胞において請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を発現するステップと、
宿主細胞からCLDN18.2結合分子を単離するステップと、を含む請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子の調製方法。
【請求項25】
被験者に治療有効量の請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を投与するステップを含む被験者におけるCLDN18.2に関連する病症を治療する方法。
【請求項26】
前記CLDN18.2に関連する病症は、CLDN18.2を発現する細胞が関与する疾患又はCLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患を含む請求項25に記載された方法。
【請求項27】
前記CLDN18.2に関連する病症は癌を含む請求項25又は26に記載された方法。
【請求項28】
前記癌は、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む請求項27に記載された方法。
【請求項29】
前記癌は胃癌である請求項28に記載された方法。
【請求項30】
請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子のCLDN18.2に関連する病症を治療又は予防するための薬物の調製における用途。
【請求項31】
請求項1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を含む容器を含むCLDN18.2に関連する病症を治療又は診断するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2019年5月24日に提出された中国特許出願201910437800.2及び201910437806.Xの優先権を主張し、その内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、配列表を含み、その内容の全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願は、一般的に抗体に関する。より具体的には、本出願は、CLDN18.2を特異的に認識する単一ドメイン抗体、その調製方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞結合は、細胞間のコミュニケーション構造であり、多細胞生物における隣接する細胞間の相互コミュニケーション、相乗作用の重要な基盤である。一般的には、動物細胞には、密着結合、接着結合、ギャップ結合及びデスモソーム/ヘミデスモソームという4つの種類の結合がある。
【0005】
密着結合は、閉鎖結合とも呼ばれ、内皮細胞又は上皮細胞間に形成されている構造であり、組織間の物質が細胞間隙を介して拡散することを防止でき、能動輸送のみによって細胞に入ることができるようにする。密着結合の構造は、数十種類のClaudinタンパクが細胞内及び細胞間のタンパク質相互作用によって形成され、これらのタンパク質の発現はある程度の組織特異性を有する。CLDN18は、密着結合に存在するClaudinタンパクの重要なタンパク質の1つである。
【0006】
CLDN18は、4回膜貫通領域を有する膜タンパクであり、2つの細胞外ドメインを含む。人体内に2種類のCLDN18変異体が存在し、それぞれCLDN18.1及びCLDN18.2である。両者は、異なる組織に分布し、前者は、主に肺上皮細胞において発現され、後者は、胃上皮細胞において特異的に発現され、且つ胃幹細胞において発現されない。タンパク質配列では、CLDN18.1とCLDN18.2の配列類似性が非常に高く、両者の主な違いは、N末端にあり、第1の細胞外ドメインにおいて両者には僅か8アミノ酸の違いがある。N末端を除き、C末端の配列は全く同じである。
【0007】
抗体療法は、癌患者を治療する最も有望な方法の1つとなっている。CLDN18.2は、腫瘍細胞及び正常組織における発現特異性によって、現在、高度に潜在力のある抗体薬物の作用標的となっている。しかしながら、CLDN18.1及びCLDN18.2の配列類似性が非常に高いため、CLDN18.1に対することなく、CLDN18.2のみに対する抗体の開発は、非常に困難になり、世界中でほとんど報告されていない。今まで、ドイツGanymed社が開発したIMAB362は、CLDN18.2を標的とする唯一の臨床的に研究されている抗体である。IMAB362は、2本のタンパク質重鎖と2本のタンパク質軽鎖とからなるモノクローナル抗体である。現在、CLDN18.2を標的とする単一ドメイン抗体は未だない。
【0008】
単一ドメイン抗体は、sdAb(single domain antibody,シングルドメイン抗体)と略称され、単一の単量体可変抗体ドメイン(例えば、抗体重鎖可変ドメイン)からなる抗体である。完全な抗体(例えばIgG)と同様に、特定の抗原に選択的に結合することができる。しかしながら、単一ドメイン抗体の分子量は、2本のタンパク質重鎖と2本のタンパク質軽鎖とからなる一般的な抗体よりも遥かに小さい。最初の単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物において見出された重鎖抗体から改造されたものである(Hamers-Casterman C,Atarhouch T,Muyldermans S,Robinson G,Hamers C,Songa EB,Bendahman N,Hamers R(1993)Naturally occurring antibodies devoid of light chains.Nature 363(6428):446-448)。これらのラクダ科動物において見出された重鎖抗体は、VHH断片とも呼ばれる。現在、単一ドメイン抗体に対する研究は、殆ど重鎖可変ドメインに基づくものである。
【0009】
単一ドメイン抗体は、多くの利点を有する。例えば、通常、高い溶解度、優れた熱安定性及び組織透過性を示し、単一ドメイン抗体は、第2対の分子内ジスルフィド結合が存在するため、更にパパインなどによる分解に耐えることができる。また、単一ドメイン抗体は、酵母、植物及び哺乳動物細胞などの様々な宿主細胞において発現することができ、且つ発現量が高いため、コストの面で非常に大きなメリットを有する。単一ドメイン抗体は、そのメリットによって、様々なバイオテクノロジー及び治療用途に適する。例えば、癌、感染性疾患、炎症性疾患及び神経変性疾患を含むが、これらに限定されない疾患を治療するために使用することができる。
【0010】
現在、CLDN18.2を標的とする臨床的に研究されているモノクローナル抗体薬物が既に存在しているが、治療剤として、CLDN18.2を標的とする抗体を開発し続けることが急務となっている。本分野では、CLDN18.2を標的とする新しい抗体、特にCLDN18.2のみを特異的に認識するがCLDN18.1を認識しない単一ドメイン抗体の開発が望まれている。
【発明の概要】
【0011】
広義には、本開示は、抗体の新規な化合物、調製方法、組成物及び製品を提供する。本開示により提供される利点は、抗体治療及び診断の分野に広く適用される。より具体的には、本開示は、CLDN18.2を標的とする単一ドメイン抗体、及び前記抗体の調製方法、前記抗体を発現するための発現ベクター及び宿主細胞などを提供する。本開示の抗体は、Claudinタンパクに関連する、特にCLDN18.2に関連する疾患を治療又は予防する方法及びその応用を提供する。
【0012】
本発明者らは、ヒトCLDN18.2の細胞外ドメイン1(ECD1)に特異的に結合できるCLDN18.2結合分子(例えば、CLDN18.2を標的とする単一ドメイン抗体)を初めて発見した。
【0013】
本開示は、それぞれ「N」(「N」は数字を表す)で順序付けられて列挙される、以下の実施形態を少なくとも含む。以下の列挙は網羅的ではなく、当業者は異なる技術的解決手段を組み合わせることができる。
【0014】
1.少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むCLDN18.2結合分子であって、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:2と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:3と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR3、及び、
(b)SEQ ID NO:30と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR2、及びSEQ ID NO:32と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCDR3から選択される何れか1組のCDR1、CDR2及びCDR3を含むCLDN18.2結合分子。
【0015】
2.
(a)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:1に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:2に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:3に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、又は、
(b)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:30に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:31に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:32に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する実施形態1に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0016】
3.
(a)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:1に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:2に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:3に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、又は、
(b)CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:30に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:31に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:32に対して1アミノ酸のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する実施形態1に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0017】
4.前記CLDN18.2結合分子は、CLDN18.2に対する抗体又はその抗原結合断片である実施形態1~3の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0018】
5.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、VHHであり、例えば、ラクダ科動物(例えばアルパカ)に由来するVHHである実施形態1~4の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0019】
6.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、式ISRGGXTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはT又はSである)、及び式NAQAWDXGTXRYLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはP又はVであり、XはF又はIである)、及び、
(b)SEQ ID NO:30、33、34、35、36、38、39又は40に示すアミノ酸配列のCDR1、式XSTGGTTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはI又はMである)、及び式NVLVXSGIGSXLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはI又はVであり、XはH又はTである)から選択される何れか1組のCDR1、CDR2及びCDR3を含む実施形態1~5の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0020】
7.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列のCDR3、
(b)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列のCDR3、又は、
(c)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列のCDR3、
(d)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列のCDR3、
(e)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(f)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(g)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(h)SEQ ID NO:34に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(i)SEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(j)SEQ ID NO:36に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(k)SEQ ID NO:38に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(l)SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:41に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、又は、
(m)SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3を含む実施形態1~6の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0021】
8.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列、SEQ ID NO:7と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:7に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列、及び、
(b)SEQ ID NO:47に示すアミノ酸配列、SEQ ID NO:47と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO:47に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列から選択される何れか1つを含む実施形態1~7の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0022】
9.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、
(a)SEQ ID NO:7の、第1、4、5、14、16、35、47、56、58、65、92、102、105又は121位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾され(例えば、アミノ酸の置換)、又は、
(b)SEQ ID NO:47の第1、4、5、11、27、28、29、30、31、32、35、51、75、76、92、100、106又は120位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾される(例えば、アミノ酸の置換及び/又は付加)実施形態1~8の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0023】
10.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、SEQ ID NO:7~14、SEQ ID NO:42~51及び63のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる実施形態1~9の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0024】
11.前記CLDN18.2結合分子は、重鎖単一ドメイン抗体などの単一ドメイン抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である実施形態1~10の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0025】
12.前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、別の分子に融合し、前記別の分子は、例えば免疫グロブリン(例えばIgG)のFcドメイン又は蛍光タンパク質である実施形態1~11の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0026】
13.前記CLDN18.2結合分子は、ラクダ科動物に由来するVHH及びヒトIgG(例えば、ヒトIgG1又はIgG4)のFcドメインを含むキメラ抗体である実施形態12に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0027】
14.前記CLDN18.2結合分子は、アルパカに由来するVHH及びヒトIgG1のFcドメインを含むキメラ抗体である実施形態13に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0028】
15.前記CLDN18.2結合分子は、ヒトCLDN18.2の細胞外ドメイン1(ECD1)に結合する実施形態1~14の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0029】
16.同じエピトープについて実施形態1~15の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子と競合するCLDN18.2結合分子。
【0030】
17.CLDN18.2に特異的に結合するが、CLDN18.1に結合しない実施形態1~16の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【0031】
18.実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子。
【0032】
19.SEQ ID NO:22~29、SEQ ID NO:52~61及び64のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる実施形態18に記載された単離された核酸分子。
【0033】
20.実施形態18又は19に記載されたような単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【0034】
21.実施形態20に記載された発現ベクターを含む宿主細胞。
【0035】
22.前記宿主細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌(E.coli))、真菌細胞(例えば酵母)又は哺乳動物細胞である実施形態21に記載された宿主細胞。
【0036】
23.少なくとも1つの実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子及び薬学的に許容されるベクターを含む薬物組成物。
【0037】
24.
実施形態21又は22の宿主細胞において実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を発現するステップと、
宿主細胞からCLDN18.2結合分子を単離するステップと、を含む実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子の調製方法。
【0038】
25.被験者に治療有効量の実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を投与するステップを含む被験者におけるCLDN18.2に関連する病症を治療する方法。
【0039】
26.前記CLDN18.2に関連する病症は、CLDN18.2を発現する細胞が関与する疾患又はCLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患を含む実施形態25に記載された方法。
【0040】
27.前記CLDN18.2に関連する病症は癌を含む実施形態25又は26に記載された方法。
【0041】
28.前記癌は、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む実施形態27に記載された方法。
【0042】
29.前記癌は胃癌である実施形態28に記載された方法。
【0043】
30.実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子のCLDN18.2に関連する病症を治療又は予防するための薬物の調製における用途。
【0044】
31.実施形態1~17の何れか一項に定義されたCLDN18.2結合分子を含む容器を含むCLDN18.2に関連する病症を治療又は予防するためのキット。
【0045】
以上の内容は、総括的な説明であり、必要に応じて細部の簡略化、総括及び省略を含んでよい。従って、当業者であれば、この総括的な説明は単なる例示であり、如何なる手段でも限定することを全く意図していないことが意識される。本明細書に記載された方法、組成物及び/又は装置及び/又は他の主題の他の態様、特徴及びメリットは、本明細書に示される教示において明らかになる。いくつかの選択された概念を簡単に紹介するために総括的な説明を提供し、これらの総括的な説明について、以下の詳細な説明において更に説明する。以上の総括的な説明は、保護を求めようとする主題の肝心な特徴又は基本的な特徴を特定することを意図しておらず、保護を求めようとする主題の範囲を特定する補助手段として用いられることも意図していない。なお、本出願全文において引用される全ての参照文献、特許及び公開された特許出願の内容は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a】実施例1における過剰発現細胞株及び腫瘍細胞株のフローサイトメトリーによる同定結果を示す。ここでは、図1aは、ヒトCLDN18.2-HEK293T、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293の過剰発現細胞株のフローサイトメトリーによる同定結果を示す。
図1b】実施例1における過剰発現細胞株及び腫瘍細胞株のフローサイトメトリーによる同定結果を示す。図1bは、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株のフローサイトメトリーによる同定結果を示す。
図2a】複数の候補抗体間の配列比較を示す。ここでは、候補抗体の可変領域全長配列及びその中のCDR配列が示され、且つ候補抗体間のアミノ酸配列の差異が示されている。
図2b】複数の候補抗体間の配列比較を示す。ここでは、候補抗体の可変領域全長配列及びその中のCDR配列が示され、且つ候補抗体間のアミノ酸配列の差異が示されている。
図3a】候補抗体NA1-SのヒトCLDN18.2-HEK293T、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293の過剰発現細胞株での交差結合実験結果を示す。
図3b】候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-SのヒトCLDN18.2-HEK293T、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293の過剰発現細胞株での交差結合実験結果を示す。
図4a】候補抗体NA1-S及び対照抗体の細胞レベルでの結合の比較実験結果を示す。ここでは、図4aは、抗体NA1-SのヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞でのフローレベルの比較実験結果を示す。
図4b】候補抗体NA1-S及び対照抗体の細胞レベルでの結合の比較実験結果を示す。図4bは、抗体NA1-S及び対照抗体のヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株でのフローレベルの比較実験結果を示す。
図5a】候補抗体NA3-S、NA5-S、NA6-S及び対照抗体の細胞レベルでの結合の比較実験結果を示す。ここでは、図5aは、抗体NA3-S、NA6-SのヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞でのフローレベルの比較実験結果を示す。
図5b】候補抗体NA3-S、NA5-S、NA6-S及び対照抗体の細胞レベルでの結合の比較実験結果を示す。図5bは、抗体NA5-SのヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞でのフローレベルの比較実験結果を示す。
図5c】候補抗体NA3-S、NA5-S、NA6-S及び対照抗体の細胞レベルでの結合の比較実験結果を示す。図5cは、抗体NA3-S、NA5-S、NA6-S及び対照抗体のヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株でのフローレベルの比較実験結果を示す。
図6a】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。ここでは、図6aは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tで抗体NA1-Sにより媒介されたCDCを示す。
図6b】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。図6bは、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で抗体NA1-Sにより媒介されたCDCを示す。
図7a】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。ここでは、図7aは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tで抗体NA3-Sにより媒介されたCDC細胞傷害効果を示す。
図7b】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。図7b及び図7cは、それぞれNA5-S及びNA6-SのヒトCLDN18.2-HEK293T細胞でのCDC殺傷効果を示す。
図7c】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。図7b及び図7cは、それぞれNA5-S及びNA6-SのヒトCLDN18.2-HEK293T細胞でのCDC殺傷効果を示す。
図7d】ヒトCLDN18.2-HEK293T過剰発現細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sにより媒介された補体依存性細胞傷害作用(CDC)を示す。図7dは、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で抗体NA3-Sにより媒介されたCDCを示す。
図8a】ヒトCLDN18.2-HEK293T及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を示す。ここでは、図8a及び図8cは、ヒトCLDN18.2-HEK293T細胞株で抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介されたADCCを示す。
図8b】ヒトCLDN18.2-HEK293T及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を示す。図8b及び図8dは、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介されたADCCを示す。
図8c】ヒトCLDN18.2-HEK293T及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を示す。ここでは、図8a及び図8cは、ヒトCLDN18.2-HEK293T細胞株で抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介されたADCCを示す。
図8d】ヒトCLDN18.2-HEK293T及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で候補抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)を示す。図8b及び図8dは、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株で抗体NA1-S及びNA3-Sにより媒介されたADCCを示す。
図9a】候補抗体NA1-S及びNA3-SのヒトCLDN18.2-HEK293T異種移植モデルにおける腫瘍阻害効果を示す。ここでは、マウスは、免疫不全マウスSCIDを採用し、NA1-S及びIMAB362の投与量は、質量濃度に応じて計算され、投与方法としては、尾静脈と腹腔の交差投与を採用する。
図9b】候補抗体NA1-S及びNA3-SのヒトCLDN18.2-HEK293T異種移植モデルにおける腫瘍阻害効果を示す。ここでは、マウスは、免疫不全マウスSCIDを採用し、NA1-S及びIMAB362の投与量は、質量濃度に応じて計算され、投与方法としては、尾静脈と腹腔の交差投与を採用する。
図10a】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。ここでは、図10a~図10bは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tでの候補抗体NA1-S(図10a)又はNA3-S(図10b)とIMAB362の競合結合アッセイを示す。
図10b】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。ここでは、図10a~図10bは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tでの候補抗体NA1-S(図10a)又はNA3-S(図10b)とIMAB362の競合結合アッセイを示す。
図10c】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10c~図10dは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tでの抗体IMAB362とNA1-S(図10c)又はNA3-S(図10d)の競合結合アッセイを示す。
図10d】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10c~図10dは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tでの抗体IMAB362とNA1-S(図10c)又はNA3-S(図10d)の競合結合アッセイを示す。
図10e】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10eは、抗CLDN18抗体を使用してヒトCLDN18.2突然変異体細胞株における突然変異又は野生CLDN18.2の発現レベルを測定した結果である。
図10f】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10f~図10gは、ヒトCLDN18.2突然変異体細胞株でのNA1-S(図10f)又はNA3-S(図10g)及びIMAB362とCLDN18.2突然変異体との結合レベルを示す。
図10g】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10f~図10gは、ヒトCLDN18.2突然変異体細胞株でのNA1-S(図10f)又はNA3-S(図10g)及びIMAB362とCLDN18.2突然変異体との結合レベルを示す。
図10h】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10h~図10iは、ヒトCLDN18.2突然変異体細胞株での野生細胞株に対するNA1-S(図10h)又はNA3-S(図10i)とIMAB362との相対的結合百分率を示す。
図10i】候補抗体NA1-S、NA3-S及びIMAB362がCLDN18.2に結合する場合のエピトープ及び結合時の肝心なアミノ酸部位を示す。図10h~図10iは、ヒトCLDN18.2突然変異体細胞株での野生細胞株に対するNA1-S(図10h)又はNA3-S(図10i)とIMAB362との相対的結合百分率を示す。
図11a】Fab-ZAPの存在下でのCLDN18.2-HEK293Tに対するNA1-S(図11a)又はNA3-S(図11b)及びIMAB362の細胞殺傷効率を示す。ここでは、試験は、hIgG及びFab-ZAPを対照とし、Fab-ZAP及び細胞の長時間インキュベーションも、細胞に対してある程度の傷害作用を有する。
図11b】Fab-ZAPの存在下でのCLDN18.2-HEK293Tに対するNA1-S(図11a)又はNA3-S(図11b)及びIMAB362の細胞殺傷効率を示す。ここでは、試験は、hIgG及びFab-ZAPを対照とし、Fab-ZAP及び細胞の長時間インキュベーションも、細胞に対してある程度の傷害作用を有する。
図12】配列がヒト化修飾される前後のNA3-SのCLDN18.2-HEK293T細胞での結合活性を示す。ここでは、NA3S-H1はヒト化された分子である。
図13a】高濃度でのNA3S-H1及びIMAB362のCLDN18.1-HEK293T細胞での抗体結合強度及び抗体結合陽性率を示す。ここでは、図13aは、異なる濃度のNA3S-H1及びIMAB362のCLDN18.1-HEK293T細胞での結合強度を示す。
図13b】高濃度でのNA3S-H1及びIMAB362のCLDN18.1-HEK293T細胞での抗体結合強度及び抗体結合陽性率を示す。図13bは、高濃度(100μg/ml)でのNA3S-H1及びIMAB362のCLDN18.1-HEK293T細胞での結合陽性率を示し、試験は、いずれもアイソタイプ抗体を対照とする。
図14】ヒト化分子NA3S-H1のヒトCLDN18.2-KATOIII胃癌細胞でのCDC細胞殺傷効率を示す。ここでは、対照抗体はIMAB362である。
図15a】NA3S-H1及びIMAB362により媒介されたNK細胞の異なる標的細胞でのADCC細胞殺傷効果を示す。ここでは、図15aは、ヒトCLDN18.2-KATOIIIを標的細胞とし、NA3S-H1及びIMAB362により媒介されたADCC細胞殺傷効果を示す。
図15b】NA3S-H1及びIMAB362により媒介されたNK細胞の異なる標的細胞でのADCC細胞殺傷効果を示す。図15bは、ヒトCLDN18.2-HEK293Tを標的細胞とし、NA3S-H1及びIMAB362により媒介されたADCC細胞殺傷効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、多くの異なる形態で実施可能であるが、ここに開示されたのは、本発明の原理を検証する具体的且つ例示的な実施形態である。本発明は、例示された具体的な実施形態に限定されないことを強調すべきである。また、本明細書で使用される如何なる章の見出しは、単なる構文のためのものであり、説明される主題を制限するものとして解釈すべきではない。
【0048】
ここで特に定義されていない限り、本発明と組み合わせて使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解されている意味を有する。また、文脈で別段の要求がない限り、単数形の用語は、複数形を含むべきであり、複数形の用語は、単数形を含むべきである。より具体的には、文脈で別途明らかに指摘されていない限り、本明細書及び添付される特許請求の範囲において使用される単数形「1」、「1つ」及び「当該」は、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1種類のタンパク質」に言及する場合、複数のタンパク質を含み、「1つの細胞」に言及する場合、細胞の混合物などを含む。本出願において、特に断りのない限り、「又は」を使用する場合、「及び/又は」を意味する。また、用語「からなる」及び他の形態(例えば「含む」及び「含有」)の使用は、限定的ではない。また、明細書及び添付される特許請求の範囲で提供される範囲は、端点及び端点間の全ての値を含む。
【0049】
通常、本明細書で説明される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質、並びに核酸化学及びハイブリダイゼーションに関する用語及びその技術は、当分野で公知であるとともに一般的に使用される用語である。特に断りのない限り、本発明の方法及び技術は、通常、当分野で公知である通常の方法によって行われ、且つ、本明細書全体において引用及び検討される様々な一般的及びより具体的な参照文献に記載されるように行われる。例えば、Abbasら,Cellular and Molecular Immunology,6th ed.,W.B.Saunders Company(2010);Sambrook J.& Russell D.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2000);Ausubelら,Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,John & Sons,Inc.(2002);Harlow and Lane Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1998);及びColiganら,Short Protocols in Protein Science,Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照する。本明細書で説明される分析化学、合成有機化学及び薬物化学に関する用語、実験室手順及び技術は、当分野で公知であるとともに一般的に使用される用語である。また、本明細書で使用される如何なる章の見出しは、単なる構文のためのものであり、説明される主題を制限するものとして解釈すべきではない。
【0050】
定義
本発明をより良好に理解するために、関連する用語の定義及び解釈は、以下のように提供される。
【0051】
本明細書で使用される「抗体」又は「Ab」という用語は、通常、所望の生物学的活性又は結合活性を示す任意の形態の抗体を指す。ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体及び単一ドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。抗体は、重鎖及び軽鎖を含み得る。重鎖は、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに定義するμ、δ、γ、α及びεに分けることができる。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とからなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とからなる。VH及びVL領域は、相対的に保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)及びFRにより離隔される超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に更に分けることができる。各VH及びVLは、N末端からC末端へのFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で3つのCDR及び4つのFRからなる。各種の領域又はドメインでのアミノ酸の分布は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))又はChothia & Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;Chothiaら,(1989)Nature 342:878-883における定義に従う。抗体は、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプを含む)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体などの異なる抗体アイソタイプを有することができる。
【0052】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を指す。ヒトフレームワーク配列内に更なるフレームワーク領域修飾を行うことができる。
【0053】
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、広く言えば、1つの抗体の1つ又は複数の領域及び1つ又は複数の他の抗体の1つ又は複数の領域に由来する操作された抗体を指す。具体的には、キメラ抗体は、非ヒト動物抗体に由来する可変領域及び別の抗体の定常領域を含み、例えば、マウスに由来する可変領域及びヒトに由来する定常領域を含む。キメラ抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して特異性を有する多重特異性抗体を更に指すことができる。
【0054】
本明細書で使用される「CLDN18.2結合分子」という用語は、CLDN18.2に特異的に結合する分子を指す。
【0055】
本明細書で使用される「CLDN18.2抗体」、「CLDN18.2に対する抗体」、「CLDN18.2に特異的に結合する抗体」、「CLDN18.2を特異的に標的とする抗体」、「CLDN18.2を特異的に認識する抗体」という用語は、交換して使用されてもよく、ClaudinタンパクCLDN18.2に特異的に結合できる抗体を意味する。特に、具体的な実施形態において、ヒトCLDN18.2に特異的に結合する抗体を指し、特にヒトCLDN18.2に特異的に結合するがヒトCLDN18.1に特異的に結合しない抗体を指す。ヒトCLDN18.2及びヒトCLDN18.1のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:15及びSEQ ID NO:16に示され、マウスCLDN18.2及びマウスCLDN18.1のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:17及びSEQ ID NO:18に示される。
【0056】
本明細書で使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「ISV」という用語は、本明細書において、通常、免疫グロブリンフォールドを含むか又は適当な条件(例えば、生理条件)で免疫グロブリンフォールド(即ちフォールドによって)を形成でき、即ち、免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、VH、VL又はVHHドメイン)を形成できるアミノ酸配列、及び、機能性抗原結合部位(別の免疫グロブリン可変ドメインとの相互作用(例えばVH-VL相互作用)を要することなく機能性抗原結合部位を形成する意味で)を含む免疫グロブリン可変ドメインを形成する(又は適用な条件で形成できる)アミノ酸配列として定義される。
【0057】
本明細書で使用される「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を表すことを意図し、本明細書で使用される「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速率を表すことを意図する。本明細書で使用される「K」又は「K値」という用語は、KdとKaの比率(即ち、Kd/Ka)から得られ且つモル濃度(M)として表される、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を表すことを意図する。抗体のK値は、当分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のK値を決定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用し、好ましくは、Biacore(登録商標)システムのようなバイオセンサシステムを使用することである。
【0058】
本明細書で使用される「特異的結合」又は「に特異的に結合する」という用語は、2つの分子間、例えば抗体と抗原の間の非ランダム結合反応を指す。
【0059】
本明細書で使用される「結合を阻害する」、「結合を遮断する」又は「同じエピトープについて競合する」能力は、抗体が2つの分子の結合を任意の検出可能な程度まで阻害する能力を指す。いくつかの実施形態において、2つの分子間の結合を遮断する抗体は、2つの分子間の結合相互作用を少なくとも50%阻害する。いくつかの実施形態において、当該阻害は、60%よりも大きく、70%よりも大きく、80%よりも大きく、又は90%よりも大きくてもよい。
【0060】
本明細書で使用される「高親和性」抗体という用語は、標的抗原に対して1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、更に好ましくは1×10-8M以下、更に好ましくは5×10-9M以下、更に好ましくは1×10-9M以下であるK値を有する抗体を指す。
【0061】
本明細書で使用される「EC50」という用語は、「半有効濃度」とも呼ばれ、特定の暴露時間後にベースラインと最大値の間の50%の応答を誘導する薬物、抗体又は毒剤の濃度を指す。本出願の文脈において、EC50の単位は「nM」である。本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原部分を指す。「エピトープ」は、「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープ又は抗原決定基は、通常、アミノ酸、炭水化物又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、且つ、通常、特定の3次元構造及び特定の電荷特徴を有する。例えば、エピトープは、通常、独特の立体構造における少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続又は不連続アミノ酸を含み、「線形エピトープ」又は「立体構造エピトープ」であってよい。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照する。線形エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば抗体)との間の全ての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線形に存在する。立体構造エピトープにおいて、相互作用部位は、タンパク質において互いに単離されたアミノ酸残基に跨る。当業者に知られている通常の技術により検出された同じエピトープへの結合の競合性に応じて、抗体をスクリーニングすることができる。例えば、競合又は交差競合を研究することによって抗原(例えばCLDN18.2)への結合について互いに競合又は交差競合する抗体を得ることができる。国際特許出願WO 03/048731には、交差競合に基づいて、同じエピトープに結合する抗体を得るための高スループット方法が記載されている。
【0062】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、手動で天然状態から得られた物質又は成分の状態を指す。ある「単離された」物質又は成分が天然に存在する場合、その位置する天然環境が変化したこと、又は天然環境で当該物質又は成分が単離されたこと、又は以上の両方による可能性がある。例えば、ある単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドがある生体動物体内に天然に存在し、当該天然状態で単離された同じ高純度ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチド又はポリペプチドと呼ばれる。「単離された」という用語は、混合された人工物質又は合成物質を排除するものではなく、単離された物質の活性に影響しない他の不純物質を排除するものでもない。
【0063】
本明細書で使用される「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する。また、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0064】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、その中にポリヌクレオチドを挿入できる核酸媒体を指す。ベクターがその中に挿入されるポリヌクレオチドによってコードされたタンパク質の発現を可能にする場合、当該ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。当該ベクターは、宿主細胞に形質転換、形質導入、トランスフェクションされることで運ばれる遺伝物質要素を宿主細胞において発現させることができる。ベクターは、当業者に熟知のものであり、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージ又はM13ファージなどのファージ及び動物ウイルスを含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス(例えば、SV40)を含むが、これらに限定されない。ベクターは、発現を制御する複数の要素を含むことができ、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素及びレポーター遺伝子を含むが、これらに限定されない。更に、ベクターは、複製起点を含むことができる。
【0065】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、ベクターに導入できる任意の種類の細胞系を指し、大腸菌(E.coli)又は枯草菌(Bacillus subtilis)などの原核細胞、酵母細胞又はアスペルギルス属(Aspergillus)などの真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞又はSf9などの昆虫細胞、及び線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞又はヒト細胞などの動物細胞を含むが、これらに限定されない。
【0066】
宿主細胞を利用して本発明の抗体を製造する方法は、当分野における通常のものであり、原核又は真核細胞において抗体を発現し、その後に抗体を単離し、且つ、通常、薬学的に許容される純度まで精製することを含む。例えば、いくつかの実施形態において、当分野で既知の標準的な技術によって抗体をコードする核酸を発現ベクターに挿入するとともに、発現ベクターを適切な原核又は真核宿主細胞に導入し、本発明の抗体又はその機能的断片を産生するために十分な条件及び時間で、CHO細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6(R)細胞、酵母又は大腸菌細胞などの宿主細胞を培養し、細胞(溶解後の上清又は細胞)から抗体を回收して抗体を精製する。抗体を製造するための通常の方法は、当分野の従来技術で公知のものであり、例えば、Makrides,S.C.,Protein Expr.Purif.17(1999)183-202;Geisse,S.ら,Protein Expr.Purif.8(1996)271-282;Kaufman,R.J.,Mol.Biotechnol.16(2000)151-160;Werner,R.G.,Drug Res.48(1998)870-880による総説論文で述べられている。
【0067】
本明細書で使用される「同一性」という用語は、配列をアラインメント又は比較することで決定された2つ以上のポリペプチド分子又は2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「同一性百分率」は、比較される分子におけるアミノ酸又はヌクレオチドの間の同じ残基の百分率を指し、且つ比較される最小分子の大きさに基づいて計算される。これらの計算では、アラインメントのギャップ(存在する場合)に対して、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(即ち、「アルゴリズム」)によってアドレス指定することが好ましい。アライメントされる核酸又はポリペプチドの同一性を計算するために使用できる方法は、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press;及びCarilloら,1988,SIAMJ.Applied Math.48:1073に記載されたものを含む。
【0068】
本明細書で使用される「免疫原性」という用語は、生物体における特異的抗体又は感作リンパ球の形成を刺激する能力を指す。それは、抗原が特定の免疫細胞の活性化、増殖及び分化を刺激して抗体及び感作リンパ球などの免疫エフェクター物質を最終的に生成する性質を指すだけでなく、抗原が生物体を刺激した後に生物体の免疫系において抗体又は感作Tリンパ球の特異的免疫応答を形成できる性質も指す。免疫原性は、抗原の最も重要な特性である。抗原が宿主における免疫応答の発生を誘導することに成功できるか否かは、抗原の性質、宿主の反応性及び免疫手段という3つの要因によるものである。
【0069】
本明細書で使用される「トランスフェクション」という用語は、核酸を真核細胞、特に哺乳動物細胞に導入するプロセスを指す。トランスフェクションに用いられる解決策及び技術は、リポフェクション、エレクトロポレーションなどの化学的及び物理的方法によるトランスフェクションを含むが、これらに限定されない。多くのトランスフェクション技術は、当分野で公知のものであり、例えば、Grahamら,1973,Virology 52:456;Sambrookら,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Davisら,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier;Chu et al,1981,Gene 13:197を参照する。
【0070】
本明細書で使用される「蛍光活性化細胞選別」又は「FACS」という用語は、特別なタイプのフローサイトメトリーを指す。それは、各細胞の特定の光散乱及び蛍光特徴に基づき、1回に1細胞、生物細胞の不均質混合物を2つ以上の容器に選別する方法を提供する(FlowMetric.「Sorting Out Fluorescence Activated Cell Sorting」.2017-11-09)。FACSを行うための機器は、当業者に知られて一般に市販されているものである。このような機器の例は、Becton Dickinson(Foster City,CA)のFACS Star Plus、FACScan及びFACSort機器、Coulter Epics Division(Hialeah,FL)からのEpics C及びCytomation(Colorado Springs,Colorado)からのMoFloを含む。
【0071】
「被験者」という用語は、如何なるヒト又は非ヒト動物を含み、好ましくは、ヒトである。
【0072】
本明細書で使用される「CLDN18.2に関連する病症」という用語は、CLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)の発現又は活性の増加又は低減によって引き起こされるか悪化する病症、又は他の形でそれに関連する如何なる病症を指す。
【0073】
本明細書で使用される「癌」という用語は、医学的病症を誘発する如何なる腫瘍又は悪性細胞の成長、増殖又は転移によって媒介される固形腫瘍又は白血病などの非固形腫瘍を指す。
【0074】
本明細書において病状を治療する場合に使用される「治療」という用語は、一般的に、進行速度の低下、進行速度の停滞を含む病状の進行の阻害、病状の退行、病状の改善及び病状の治癒などの望ましい治療効果を実現する、人又は動物の治療及び療法に関するものである。予防対策(即ち、予防)である治療も含む。癌に対して、「治療」は、腫瘍又は悪性細胞の成長、増殖や転移又はこれらの組み合わせの阻害又は緩和を指す場合がある。腫瘍に対して、「治療」は、腫瘍の全部又は一部の除去、腫瘍の成長及び転移の阻害又は緩和、腫瘍の進行の予防又は遅延又はそれらの組み合わせを含む。
【0075】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、所望の治療レジメンに応じて投与する場合に妥当な利益/リスク比に見合う所望の治療効果を発生させるために有効である、活性化合物又は活性化合物を含む材料、組成物又は剤形の量に関するものである。具体的には、「治療有効量」は、抗体又はその抗原結合部分がCLDN18.2に関連する病状を治療するために有効な量又は濃度を指す。
【0076】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、ベクター、希釈剤、賦形剤及び/又はその塩が化学的及び/又は物理的に製剤における他の成分と適合し、且つ受容者と生理学的に適合することを指す。
【0077】
本明細書で使用される「薬学的に許容されるベクター及び/又は賦形剤」という用語は、薬理学的及び/又は生理学的に被験者及び活性剤と適合するベクター及び/又は賦形剤を指し、当分野で公知のものであり(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences.Edited by Gennaro AR,19th ed.Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995を参照)、且つ、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント及びイオン強度強化剤を含むが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤は、リン酸緩衝液を含むが、これに限定されない。表面活性剤は、カチオン性、アニオン性又は非イオン性の界面活性剤を含むが、これらに限定されず、例えばTween(登録商標)80である。イオン強度強化剤は、塩化ナトリウムを含むが、これに限定されない。
【0078】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、抗原と共に生物体に送達されるか又は事前に生物体に送達される場合に生物体内の抗原に対する免疫応答を増強するか又は免疫応答のタイプを変更することができる、非特異的な免疫賦活薬を指す。従来の技術において、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、コリネバクテリウム・パルバム、リポ多糖、サイトカインなどを含む、種々のアジュバントが存在するが、これらに限定されない。フロイントアジュバントは、現在、動物実験において最も一般的に使用されているアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは、臨床試験においてより一般的に使用されている。
【0079】
CLDN18.2結合分子
いくつかの態様において、本開示は、CLDN18.2結合分子を含む。
【0080】
一般的に、CLDN18.2結合分子は、CLDN18.2に特異的に結合する如何なる分子を含み得る。いくつかの場合に、「CLDN18.2結合分子」は、「CLDN18.2アンタゴニスト」を含み得る。CLDN18.2結合分子又はCLDN18.2アンタゴニストは、抗体、より具体的には、CLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)に特異的に結合する抗体などのポリペプチド又はタンパク質である。
【0081】
抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は単一ドメイン抗体などを含むが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、CLDN18.2結合分子は、単一ドメイン抗体であり、通常、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体を指す。完全な抗体と同様に、単一ドメイン抗体は、特定の抗原に選択的に結合することができる。
【0082】
より具体的には、CLDN18.2結合分子は、重鎖単一ドメイン抗体であり、「VHH」、「VHH抗体」、「VHHドメイン」、「VHH抗体断片」、「VHH」又は「ナノ抗体」などの用語と交換して使用されてもよい。ラクダ科抗体に由来するVHH分子は、既知の最小の完全な抗原結合ドメインの1つ(約15KDa、又は通常のIgGの1/10)であるため、緻密な組織に送達されること、及び高分子間の限られた空間に入ることに非常に適する。
【0083】
本明細書で公開された単一ドメイン抗体は、当業者が当分野で知られている方法又は任意の将来の方法によって調製可能である。例えば、当分野で知られている方法によってVHHを得ることができ、例えばラクダを免疫することによって標的抗原に結合するとともに標的抗原を中和するVHHを得るか、又は当分野で知られている分子生物学技術を利用して本発明のVHHのライブラリーをクローニングし、その後にファージディスプレイを利用して選択する。いくつかの実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物において天然に産生され、即ち、本明細書において他の抗体について記載された技術を使用し、CLDN18.2又はその断片を用いてラクダを免疫することで製造される。
【0084】
いくつかの実施形態において、所望の抗原でラマ又はアルパカを免疫してから重鎖抗体をコードするmRNAを単離することによって単一ドメイン抗体を得る。逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応により、数百万個のクローニングされた単一ドメイン抗体を含む遺伝子ライブラリーが産生される。ファージディスプレイ及びリボソームディスプレイなどのスクリーニング技術は、抗原に結合するクローンを同定することに役立つ。ファージディスプレイは、ファージにおいて抗体ライブラリーを合成し、目的抗原又はその抗体結合部分を用いてライブラリーをスクリーニングし、抗原に結合するファージを単離し、そこから免疫反応性断片を得ることができる。このようなライブラリーを調製及びスクリーニングするための方法は、当分野で公知のものであり、且つ、ファージディスプレイライブラリーを産生するためのキットは、市販されているものであってよい(例えば、Pharmacia組換えファージ抗体系、カタログ番号27-9400-01;及びStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの産生及びスクリーニングに使用可能な方法は、他にもある(例えば、Barbasら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978-7982(1991)を参照)。
【0085】
最も効果的なクローンが同定される場合、例えば親和性成熟又はヒト化によってそのDNA配列を最適化することで、人体の抗体に対する免疫反応を防止することができる。
【0086】
従って、(1)天然に存在する重鎖抗体のVHHドメインの単離、(2)天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現、(3)天然に存在するVHHドメインの「ヒト化」又はこのようなヒト化されたVHHドメインをコードする核酸の発現、(4)任意の動物種、特に哺乳動物種、例えばヒトに由来する天然に存在するVHドメインの「ラクダ化」、又はこのようなラクダ化されたVHドメインをコードする核酸の発現、(5)「ドメイン抗体」又は「dAb」の「ラクダ化」(例えば、Wardら,1989、Nature 341:544-546を参照)、又はこのようなラクダ化されたVHドメインをコードする核酸の発現、(6)合成又は半合成技術によりタンパク質、ポリペプチド又は他のアミノ酸配列を調製すること、(7)核酸合成に用いられる技術によってVHHをコードする核酸を調製し、これによって得られた核酸を発現すること、及び/又は(8)それらの任意の組み合わせにより、本発明の単一ドメイン抗体を得ることができる。本明細書の開示内容に基づき、前記内容を実行するための好適な方法及び技術は、当業者にとって明らかであり、且つ、例えば以下で更に詳しく説明される方法及び技術を含む。
【0087】
単一ドメイン抗体は、通常、免疫された動物から得られた血液、リンパ節又は脾臓リンパ球のcDNAからファージディスプレイベクターに可変ドメインライブラリーをPCRクローニングすることによって産生される。通常、固定化抗原(例えば試験管のプラスチック表面に塗布された抗原、ストレプトアビジンビーズに固定されたビオチン化抗原又は細胞の表面で発現された膜タンパク)で対応するライブラリーをパンニングすることによって抗原特異的単一ドメイン抗体を選択する。この戦略をインビトロでシュミレーションすることによってsdAbの親和性を向上させることができ、例えば、CDR領域の部位特異的突然変異誘発により、追加した厳しい条件(より高い温度、高又は低塩濃度、高又は低pH及び低抗原濃度)で、固定化抗原を更にパンニングする(Wesolowskiら,Single domain antibodies:promising experimental and therapeutic tools in infection and immunity.Med Microbiol Immunol(2009)198:157-174)。
【0088】
抗原又はエピトープに特異的に結合するVHHを調製するための方法は、参考文献に記載されており、例えば、R.van der Lindenら,Journal of Immunological Methods,240(2000)185-195;Liら,J Biol Chem.,287(2012)13713-13721;Deffarら,African Journal of Biotechnology Vol.8(12),pp.2645,17 June,2009及びWO 94/04678を参照する。
【0089】
いくつかの実施形態において、CLDN18.2結合分子におけるVHHは、抗体のFcドメイン(例えばIgG(例えばIgG1又はIgG4)のFcドメイン)に融合する。VHHをFcドメインに融合させることにより、ADCC及びCDCなどのエフェクター機能をより効果的に動員することができる。また、VHHとFcドメインの融合により、CLDN18.2結合分子が二量体を形成するのに役立つことができるだけでなく、更にCLDN18.2結合分子のインビボ半減期の延長にも役立つことができる。
【0090】
本明細書で使用される「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用」又は「ADCC」という用語は、何らかの細胞傷害エフェクター細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合する分泌された抗体により、これらの細胞傷害エフェクター細胞が抗原を運ぶ標的細胞に特異的に結合でき、続いて細胞毒素で標的細胞を殺傷させる細胞傷害形態を指す。抗体で細胞傷害性細胞を「武装」することは、このような殺傷には絶対に必要なことである。ADCCを媒介する主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、単核細胞は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の第464ページの表3に纏められている。目的分子のADCC活性を評価するために、米国特許US 5500362又はUS 5821337に記載された測定方法などのインビトロADCC測定を行うことができる。このような測定に使用できるエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的又は付加的に、目的分子のADCC活性は、インビボで評価することができ、例えば、ClynesらPNAS(USA)95:652-656(1998)に開示された動物モデルで評価される。
【0091】
「補体依存性細胞傷害作用」又は「CDC」という用語は、補体存在下の標的細胞の溶解を指す。古典的補体経路の活性化は、補体系の第1成分(C1q)とその相同抗原に結合する抗体(適切なサブクラス)との結合によって開始される。補体の活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoroら,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載された方法により、CDC測定を実施することができる。
【0092】
説明の便宜上、以下、CLDN18.2結合分子をCLDN18.2抗体として説明する。
【0093】
CLDN18.2の特定のエピトープに特異的に結合できるCLDN18.2抗体
1つの態様において、本発明は、CLDN18.2に特異的に結合するが、CLDN18.1に結合しないか又は実質的に結合しない単一ドメイン抗体に関する。
【0094】
本発明者らは、ヒトCLDN18.2の細胞外ドメイン1(ECD1)に特異的に結合できるCLDN18.2結合分子(例えば、CLDN18.2を標的とする単一ドメイン抗体)を初めて発見した。
【0095】
前述したように、CLDN18.2は、2つの細胞外ドメイン(ECD)を有し、ヒトCLDN18.2の全長配列は、SEQ ID NO:15に示される。ECD1は、SEQ ID NO:19に示すように、SEQ ID NO:15の第28~80位のアミノ酸である。
【0096】
SEQ ID NO:15:
【化1】
【0097】
SEQ ID NO:19:
【化2】
【0098】
また、マウスCLDN18.2は、SEQ ID NO:17に示される。
【0099】
SEQ ID NO:17:
【化3】
【0100】
ヒト及びマウスのCLDN18.1について、その配列は、それぞれSEQ ID NO:16及びSEQ ID NO:18に示される。
【0101】
SEQ ID NO:16:
【化4】
【0102】
SEQ ID NO:18:
【化5】
【0103】
特定の配列と配列同一性を有するCDRを含むCLDN18.2抗体
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、且つ、CDR1は、SEQ ID NO:1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、CDR2は、SEQ ID NO:2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、CDR3は、SEQ ID NO:3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0104】
特に断りのない限り、Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th Ed.),US Dept.of Health and Human Services,PHS,NIH,NIH Publication no.91-3242;Chothiaら,1987,PMID:3681981;Chothiaら,1989,PMID:2687698;MacCallumら,1996,PMID:8876650;又はDubel,Ed.(2007)Handbook of Therapeutic Antibodies,3rd Ed.,Wily-VCH Verlag GmbH and Co.により提供された番号付けスキームのうちの1つに基づいてアミノ酸を各CDRに割り当てることができる。
【0105】
抗体配列における可変領域及びCDRは、当分野で既に開発された一般的な規則(前述したように、例えばKabat番号付けシステム)に基づき、又は配列と既知の可変領域のデータベースとのアライメントによって同定することができる。Kontermann and Dubel,eds.,Antibody Engineering,Springer,New York,NY,2001及びDinarelloら,Current Protocols in Immunology,John Wiley and Sons Inc.,Hoboken,NJ,2000には、これらの領域を同定する方法が記載されている。抗体配列の例示的なデータベースは、www.bioinf.org.uk/absの「Abysis」ウェブサイト(Department of Biochemistry & Molecular Biology University College London,London,EnglandのA.C.Martinによってメンテナンスされる)及びVBASE2ウェブサイトwww.vbase2.orgに記載され、且つそれらから得ることができ、Retterら,Nucl.Acids Res.,33(Database issue):D671-D674(2005)に記載された通りである。好ましくは、Kabat、IMGT及びタンパク質データベース(PDB)からの配列データとPDBからの構造データとを統合したAbysisデータベースを用いて配列を解析し、Dr.Andrew C.R.Martinの著書におけるProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In:Antibody Engineering Lab Manualを参照する(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg,ISBN-13:978-3540413547、ウェブサイトbioinforg.uk/absからも得られる)。Abysisデータベースウェブサイトは、本明細書の教示によって使用できるCDRを認識するために開発された一般的な規則を更に含む。
【0106】
2つのアミノ酸配列間の同一性百分率は、E.Meyers及びW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17(1988))により決定することができ、当該アルゴリズムは、既にALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、4のギャップペナルティを使用する。また、2つのアミノ酸配列間の同一性百分率は、Needleman及びWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.48:444-453(1970))により決定することができ、当該アルゴリズムは、既にGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから得られる)におけるGAPプログラムに組み込まれ、Blossum 62行列又はPAM250行列、16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重み、1、2、3、4、5又は6の長さ重みを使用する。
【0107】
付加的又は代替的に、本発明のタンパク質配列は、更に、例えば関連配列を認識するために、公開データベースに対する検索を実行するための「問い合わせ配列」として使用できる。このような検索は、Altschulら,(1990)J.MoI.Biol.215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)により実行することができる。本発明の抗体分子に相同のアミノ酸配列を得るために、スコア=50、ワード長=3としてXBLASTプログラムによりBLASTタンパク質の検索を行うことができる。比較目的のためのギャップありアライメントを得るために、Altschulら,(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されたように、Gapped BLASTを使用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合、各プログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができ、www.ncbi.nlm.nih.govを参照する。
【0108】
別の実施形態において、CDRのアミノ酸配列は、上記で与えられた各配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。
【0109】
アミノ酸付加、欠失又は置換を有するCDRを含むCLDN18.2抗体
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、且つ、CDR1は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:1に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、CDR2は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:2に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し、及び/又はCDR3は、アミノ酸配列においてSEQ ID NO:3に対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する。例えば、CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2及びSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列に対して1アミノ酸のみのアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する。
【0110】
好ましくは、単離された抗体又はその抗原結合部分のCDRは、2アミノ酸以下又は1アミノ酸以下の保存的置換を含有する。本明細書で使用される「保存的置換」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの基本性質に悪影響を及ぼしたり変化させたりしないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、当分野で知られている標準的技術(例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発)によって導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似する側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されるという置換を含み、例えば、物理的又は機能的に類似する残基(例えば、類似する大きさ、形状、電荷を有し、化学的性質は、共有結合又は水素結合を形成する能力などを含む)は、対応するアミノ酸残基で置換される。当分野では、類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが既に定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って、対応するアミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸残基で置換される。アミノ酸保存的置換を同定するための方法は、当分野で公知のものである(例えば、Brummellら,Biochem.32:1180-1187(1993);Kobayashiら,Protein Eng.12(10):879-884(1999);及びBurksら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412-417(1997)を参照し、それらは引用により本明細書に組み込まれる)。
【0111】
いくつかの実施形態において、CLDN18.2抗体の免疫グロブリン単一可変ドメインは、
i)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、
ii)式ISRGGXTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはT又はSである)、及び、
iii)式NAQAWDXGTXRYLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはP又はVであり、XはF又はIである)を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、CLDN18.2抗体の免疫グロブリン単一可変ドメインは、
i)SEQ ID NO:30、33、34、35、36、38、39又は40に示すアミノ酸配列のCDR1、
ii)式XSTGGTTに示すアミノ酸配列のCDR2(XはI又はMである)、及び、
iii)式NVLVXSGIGSXLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(XはI又はVであり、XはH又はTである)を含む。
【0113】
CDRを含むCLDN18.2抗体
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(b)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列を含むCDR3、又は、
(c)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列を含むCDR3から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(a)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(b)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(c)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(d)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(e)SEQ ID NO:34に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(f)SEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(g)SEQ ID NO:36に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(h)SEQ ID NO:38に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列を含むCDR3、
(i)SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:41に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列を含むCDR3、又は、
(j)SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列を含むCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列を含むCDR3から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(a)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列のCDR3、
(b)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:4に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:5に示すアミノ酸配列のCDR3、又は、
(c)SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:6に示すアミノ酸配列のCDR3から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(a)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列のCDR3、
(b)SEQ ID NO:30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(c)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(d)SEQ ID NO:33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(e)SEQ ID NO:34に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(f)SEQ ID NO:35に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(g)SEQ ID NO:36に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(h)SEQ ID NO:38に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:62にアミノ酸配列のCDR3、
(i)SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:41に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3、及び、
(j)SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO:37に示すアミノ酸配列のCDR3から選択されるCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0117】
VHH配列により定義されたCLDN18.2抗体
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つ(例えば、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(A)SEQ ID NO:7、47又は63に示すアミノ酸配列、
(B)SEQ ID NO:7、47又は63と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列、又は、
(C)SEQ ID NO:7、47又は63に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、少なくとも1つ(例えば、1つ)の免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えばVHH)を含み、前記VHHは、
(A)SEQ ID NO:7、47又は63に示すアミノ酸配列からなり、
(B)SEQ ID NO:7、47又は63と少なくとも80%、85%、90%又は95%同一であるアミノ酸配列からなり、又は、
(C)SEQ ID NO:7、47又は63に対して1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列からなる。
【0119】
他の実施形態において、前記VHHのアミノ酸配列は、上記各配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。例示的な例として、抗体は、SEQ ID NO:7、47又は63と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するVHHを含み得る。
【0120】
いくつかの更なる実施形態において、本開示のCLDN18.2抗体は、重鎖可変領域におけるアミノ酸の保存的置換又は修飾を含み得る。当分野において理解されるように、抗原結合特性を除去しない保存的配列修飾を行うことができる。例えば、Brummellら(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildtら(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarovら(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870;Hallら(1992)J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O’ Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquyら(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeersら(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照する。
【0121】
いくつかの実施形態において、本開示の単一ドメインCLDN18.2抗体は、SEQ ID NO:7の第1、4、5、14、16、35、47、56、58、65、92、102、105又は121位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾される(例えば、アミノ酸の置換)。いくつかの実施形態において、本開示の単一ドメインCLDN18.2抗体は、SEQ ID NO:47の第1、4、5、11、27、28、29、30、31、32、35、51、75、76、92、100、106又は120位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾される(例えば、アミノ酸の置換)。
【0122】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の単一ドメインCLDN18.2抗体の可変領域は、SEQ ID NO:7~14及びSEQ ID NO:42~51、63のうちの何れか1つを含む。
【0123】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の単一ドメインCLDN18.2抗体の可変領域は、SEQ ID NO:7~14及びSEQ ID NO:42~51、63のうちの何れか1つからなる。
【0124】
本開示の抗体をコードする核酸分子
いくつかの態様において、本発明は、本開示のCLDN18.2抗体又はその可変領域断片をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0125】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られた抗体(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)について、このような抗体をコードする核酸は、遺伝子ライブラリーから回収されることが可能である。
【0126】
本発明の例示的な核酸分子の配列は、SEQ ID NO:22~29、SEQ ID NO:52~61及び64のうちの何れか1つに示される。
【0127】
いくつかの実施形態において、前記核酸は、それぞれSEQ ID NO:22~29及び52~61、64のうちの何れか1つに示す核酸分子と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、同一性百分率は、遺伝暗号の縮重に由来するものであり、且つコードされたタンパク質配列が変わらない。
【0128】
当分野で知られている組換え技術により、本開示のCLDN18.2抗体をコードする核酸分子をベクターに挿入して更にクローニング(DNAの増幅)したり発現に使用したりすることができる。多くのベクターは利用可能である。ベクター又はベクター成分は、通常、シグナル配列、複製起点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター(例えば、SV40、CMV、EF-1α)、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞(例えば、米国特許第4,399,216、4,634,665及び5,179,017号を参照)を選択することに役立つ。例えば、通常、選択マーカー遺伝子は、ベクターが既に導入された宿主細胞の薬物(例えば、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサート)に対する抗性を付与する。1つの実施形態において、選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を有するdhfr-宿主細胞に用いられる)及びneo遺伝子(G418選択に用いられる)を含み得る。別の実施形態において、抗体は、当分野で知られている相同組換えによって産生可能である。モノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の方法で(例えば、抗体重鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)単離及び配列決定を行うことが容易である。
【0129】
いくつかの実施形態において、ベクター系は、哺乳動物、細菌、酵母系などを含み、且つ、pALTER、pBAD、pcDNA、pCal、pL、pET、pGEMEX、pGEX、pCI、pCMV、pEGFP、pEGFT、pSV2、pFUSE、pVITRO、pVIVO、pMAL、pMONO、pSELECT、pUNO、pDUO、Psg5L、pBABE、pWPXL、pBI、p15TV-L、pPro18、pTD、pRS420、pLexA、pACT2.2などを含むがこれらに限定されないプラスミド、及び他の実験室及び商業的に利用可能なベクターを含む。適切なベクターは、プラスミド又はウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)を含み得る。本発明の1つの実施形態において、ベクターは、ヘキサヒスチジンタグ及びc-Myc-タグ遺伝子を含有するpETbacなどのpETであり得る。
【0130】
本開示のCLDN18.2抗体をコードする核酸配列を含むベクターは、クローニング又は遺伝子発現のために宿主細胞に導入することができる。本明細書のベクターにおいてDNAをクローニング又は発現するための適切な宿主細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物細胞である。この目的に使用される適切な原核生物は、グラム陰性菌又はグラム陽性菌などの真正細菌、例えば、エシェリキア属などの腸内細菌科、例えば、大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、ネズミチフス菌などのサルモネラ属、セラチアマルセッセンス及び赤痢菌などのセラチア属、並びに枯草菌及びバシラス・リケニフォルミスなどのバシラス属、緑膿菌及びストレプトマイセスなどのシュードモナス属を含む。
【0131】
原核生物に加え、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、本開示のCLDN18.2抗体を発現するために適切な宿主細胞である。サッカロミセス・セルビシエ又は一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中で最も一般的に使用されている。しかしながら、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);クルイベロミセス(Kluyveromyces)宿主、例えばクルイベロミセス・ラクティス(K.lactis)、クルイベロミセス・フラギリス(K.fragilis)(ATCC 12,424)、クルイベロミセス・ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルイベロミセス・ウィッカーラミ(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、クルイベロミセス・ウォルティ(K.waltii)(ATCC 56,500)、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(K drosophilarum)(ATCC 36,906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)及びクルイベロミセス・マルキアヌス(K.marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(EP 402,226);ピキア・パストリス(pichia pastoris)(EP 183,070);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニオミセス属(schwanniomyces)、例えば、シュワニオミセス・オクシデンタリス(schwanniomyces occidentalis);並びに、糸状菌、例えばアカパンカビ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、及びアスペルギルス属宿主、例えばアスペルギルス・ニジュランス(A.nidulans)及びアスペルギルス・ニガー(A.niger)などの、多くの他の属、種及び菌株は、通常、入手可能で且つ本発明に使用可能である。
【0132】
本開示のCLDN18.2抗体を発現するための他の適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞を含む。現在、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera Frugiperda,毛虫)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti,蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus,蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)及びカイコ(Bombyx mori)といった宿主から多くのバキュロウイルス株及び変異体並びに対応する許容型昆虫宿主細胞が同定された。オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体及びカイコNPVのBm-5株などのトランスフェクションに使用される各種のウイルス株は、公的に入手可能であり、且つ、本開示によれば、これらのウイルスは、CLDN18.2抗体が適切な宿主細胞において発現される場合のトランスフェクションプロセス、特にツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用可能である。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養物も、宿主として使用可能である。
【0133】
本開示のCLDN18.2抗体の産生に用いられる前記ベクターで宿主細胞を形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅に用いられる、必要に応じて改変された通常の栄養培地で培養する。
【0134】
本開示のCLDN18.2抗体を産生するための宿主細胞は、各種の培地で培養することができる。Ham’s F10(Sigma)、Minimal Essential Medium(MEM)、(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM,Sigma)といった市販されている培地は、宿主細胞の培養に適する。また、Hamら,Meth.Enz.58:44(1979),Barnesrら,Anal.Biochem.102:255(1980),U.S.Pat.No.4,767,704、4,657,866、4,927,762、4,560,655、又は5,122,469;WO 90/03430、WO 87/00195、又はU.S.Pat.Re.30,985に記載された任意の培地は、宿主細胞の培地として使用可能である。必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン又は上皮成長因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN薬物)、微量元素(無機化合物として定義され、通常、マイクロモル範囲内の最終濃度で存在する)、及びグルコース又は等価エネルギー源をこれらの任意の培地に添加することができる。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に知られている適切な濃度で含まれてよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために以前に選択された宿主細胞と共に使用されたものであり、且つ当業者にとって明らかである。
【0135】
組換え技術を使用する場合、抗体は、細胞内において、ペリプラズム空間に産生することができ、又は培地に直接分泌することができる。抗体が細胞内に産生されると、最初のステップとして、例えば遠心分離又は限外濾過によって微粒子破片(宿主細胞又は溶解断片)を除去する。Carterら,Bio/Technology 10:163-167(1992)には、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される抗体の単離方法が記載されている。簡潔に言えば、約30分以内に、酢酸ナトリウム(pH 3.5)、EDTA及びフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で細胞を融解させる。細胞破片は、遠心分離によって除去することができる。抗体が培地に分泌された場合、通常、まず、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットなどの市販されているタンパク質濃縮フィルタによりこの発現系からの上清を濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために前記ステップのいずれに含まれてもよく、外来性の汚染物の成長を防止するために抗生物質を含んでもよい。
【0136】
例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、DEAE-セルロースイオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、塩析及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて細胞から調製された抗体を精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーは、好ましい精製技術である。
【0137】
任意の予備精製ステップの後、目的抗体及び汚染物を含む混合物に対してpHが約2.5~4.5の間の溶出緩衝液で低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを行うことができ、低塩濃度(例えば約0~0.25Mの塩)で行うことが好ましい。
【0138】
薬物組成物
いくつかの態様において、本発明は、少なくとも1つの本明細書に開示されたCLDN18.2結合分子(例えば、本開示のCLDN18.2抗体)及び薬学的に許容されるベクターを含む薬物組成物に関する。
【0139】
薬物組成物の成分
薬物組成物は、任意選択的に、別の抗体又は薬物などの1つ又は複数の追加の薬物有効成分を含み得る。本発明の薬物組成物は、更に、抗CLDN18.2抗体のワクチンに対する免疫反応を補強するように、例えば別の免疫刺激剤、抗癌剤、抗ウイルス剤又はワクチンと組み合わせて投与することができる。薬学的に許容されるベクターは、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル又は固体のベクター、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張化剤、緩衝剤、酸化防止剤、麻酔薬、懸濁/分散剤、キレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤又は無毒の補助物質、当分野で知られている各種の成分の組み合わせ又はより多くのものを含み得る。
【0140】
適切な成分は、例えば、酸化防止剤、充填剤、バインダー、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、滑沢剤、香味料、増粘剤、着色剤、乳化剤又は糖及びシクロデキストリンなどの安定剤を含み得る。適切な酸化防止剤は、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、メルカプトグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトソルビトール、ブチルメチルアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及び/又はプロピルヒ酸塩を含み得る。本発明に開示されるように、抗体又はその抗原結合断片を還元するメチオニンなどの1つ又は複数の酸化防止剤を含む、本発明に開示された組成物の抗体又は抗原結合断片を含有する溶媒において、抗体又は抗原結合断片が酸化されてよい。酸化還元は、結合親和性の低下を防止又は低減し、抗体の安定性を向上させるとともに保存期間を延長することができる。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、1つ又は複数の抗体又はその抗原結合断片及びメチオニンなどの1つ又は複数の酸化防止剤を含む組成物を提供する。本発明は、抗体又はその抗原結合断片とメチオニンなどの1つ又は複数の酸化防止剤を混合する多くの方法を更に提供する。それにより、抗体又はその抗原結合断片は、その酸化が防止され、保存期間を延長し、及び/又は活性を増加することができる。
【0141】
更に説明するために、薬学的に許容されるベクターは、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液又はデキストロース及び乳酸リンゲル注射液などの水性ベクター、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油又はピーナッツ油などの非水性ベクター、静菌剤又は静真菌濃度の抗微生物剤、塩化ナトリウム又はグルコースなどの等張化剤、リン酸塩又はクエン酸塩緩衝剤などの緩衝剤、硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンなどの懸濁剤及び分散剤、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はEGTA(エチレングリコール四酢酸)、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸などのキレート剤を含み得る。ベクターとしての抗微生物剤は、フェノール又はクレゾール、水銀製剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン及びプロピルパラベン、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含む多回投与容器における薬物組成物に添加することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン又はエタノールを含み得る。適切な无毒の補助物質は、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解増強剤又は酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート又はシクロデキストリンの試薬を含み得る。
【0142】
投与、製剤及び用量
本発明の薬物組成物は、種々の経路を介して必要のある被験者にインビボで投与することができ、前記経路は、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、頭蓋内、心臓内、心室内、気管内、口腔、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮及び髄腔内、又は植込み又は吸入を含むが、これらに限定されない。本発明の薬物組成物は、固体、半固体、液体又はガス形態の製剤に調製されてよく、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤及びエアロゾルを含むが、これらに限定されない。所期の応用及び治療レジメンに応じて適切な製剤及び投与経路を選択することができる。
【0143】
腸内投与用の適切な製剤は、硬又は軟ゼラチンカプセル、ピル、被覆錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤又は吸入剤及びその徐放性製剤を含む。
【0144】
非経口投与(例えば注射による)に適する製剤は、有効成分が溶解し、その中に懸濁するか又は他の方式で提供される(例えば、リポソーム又は他の微粒子に)水性又は非水性で、等張性で、発熱物質を含まない無菌液体(例えば溶液、懸濁剤)を含む。これらの液体は、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤及び製剤を対象受容者の血液(又は他の関連する体液)と等張化させる溶質などの、他の薬学的に許容される成分を更に含み得る。賦形剤の例は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油などを含む。このような製剤に適する等張ビヒクルの例は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液又は乳酸リンゲル注射液を含む。同様に、特定の用量レジメン(即ち、用量、時間及び反復は、特定の個人及び個人の病歴、並びに薬物動態(例えば、半減期、クリアランス率など)といった経験的考慮事項によって決定される。
【0145】
投与頻度は、治療プロセスにおいて決定して調節することができ、且つ増殖又は腫瘍形成性細胞の数の減少に基づき、このような腫瘍細胞の減少を維持し、腫瘍細胞の増殖を減少するか又は転移の進行を遅延させる。いくつかの実施形態において、投与の用量は、潜在的な副作用及び/又は毒性を制御するために調節したり減少したりすることができる。又は、本発明の治療用の薬物組成物の持続的な連続放出製剤が適切である場合がある。
【0146】
当業者であれば、適切な用量は、患者によって異なってよいことが理解される。通常、治療効果のレベルと任意のリスク又は有害な副作用とのバランスを考えながら、最適な用量を決定する。選択される用量レベルは、特定の化合物の活性、投与、投与時間、化合物クリアランス速度、治療持続時間、組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、病症の重症度、及び種、患者の性別、年齢、体重、病態、一般的な健康状態及び以前の病歴を含む多くの要因によるが、これらに限定されない。化合物の量及び投与経路は、最終的に医師、獣医又は臨床医によって決定されるが、通常、用量は、実質的な有害又は不利な副作用を引き起こすことなく、所望の効果を達成する作用位置での局所濃度に達するように選択される。
【0147】
通常、CLDN18.2結合分子は、各種の用量範囲で投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書により提供されるCLDN18.2結合分子は、約0.01mg/kg~約100mg/kg(例えば、約0.01mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、又は約100mg/kg)の治療有効量で投与することができる。これらの実施形態のいくつかにおいて、抗体は、約50mg/kg以下の用量で投与され、且つ、これらの実施形態のいくつかにおいて、用量は、10mg/kg以下、5mg/kg以下、1mg/kg以下、0.5mg/kg以下、又は0.1mg/kg以下である。いくつかの実施形態において、投与用量は、治療プロセスで変更することができる。例えば、いくつかの実施形態において、初期の投与用量は、後続の投与用量よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、被験者の反応により、投与用量を治療プロセスで変更することができる。
【0148】
とにかく、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、必要に応じて必要のある被験者に投与されることが好ましい。当業者であれば、投与頻度を決定することができ、例えば、主治医は、治療される病症、治療される被験者の年齢、治療される病症の重症度、治療される被験者の一般的な健康状態などに基づいて考慮する。
【0149】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部分に関する治療プロセスは、数週間又は数ヶ月の期間にわたって多回投与型の選択された薬物製品を投与することを含む。より具体的には、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、毎日、2日ごと、4日ごと、毎週、10日ごと、2週間ごと、3週間ごと、毎月、6週間ごと、2ヶ月ごと、10週間ごと又は3ヶ月ごとに投与することができる。これに関して、患者の応答及び臨床診療に基づいて用量を変更したり間隔を調整したりすることができることが理解される。
【0150】
一回又は複数回の投与を行う個体に対して、開示された治療に使用される薬物組成物の用量及びレジメンを経験的に決定することもできる。例えば、個体に本明細書に記載された薬物組成物を増量投与することができる。選択された実施形態において、用量は、それぞれ経験的に決定され、又は観察された副作用又は毒性に基づいて徐々に増加又は減少することができる。選択された組成物の効果を評価するために、特定の疾患、病症又は病態のマーカーを追跡することができる。癌に対して、これらは、触診又は目視観察による腫瘍の大きさの直接測定、X線又は他のイメージング技術による腫瘍の大きさの間接測定、直接腫瘍生検及び顕微鏡検査による腫瘍サンプルの評価の改善、本明細書に記載された方法に基づいて同定された間接腫瘍マーカー(例えば前立腺癌に使用されるPSA)又は腫瘍形成性抗原、痛みや麻痺の減少の測定、腫瘍に関する言語、視力、呼吸又は他の機能障害の改善、食欲の増加、又は受けた試験により測定された生活の質の向上又は生存期間の延長を含む。当業者であれば、用量は、個体、腫瘍病態のタイプ、腫瘍病態の階段、腫瘍病態が個体の他の位置に転移し始めたか否か、並びに、過去に使用された治療及び並行して使用される治療によって変化することを理解できる。
【0151】
非経口投与(例えば静脉内注射)に使用される製剤は、濃度が約10μg/ml~約100mg/mlの本明細書に提供されるCLDN18.2結合分子を含み得る。いくつかの実施形態において、CLDN18.2結合分子の濃度は、20μg/ml、40μg/ml、60μg/ml、80μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/ml又は1mg/mlを含み得る。他の好ましい実施形態において、CLDN18.2結合分子の濃度は、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、8mg/ml、10mg/ml、12mg/ml、14mg/ml、16mg/ml、18mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml又は100mg/mlを含む。モル濃度に基づいて計算すれば、いくつかの実施形態において、CLDN18.2結合分子の濃度は、例えば、133nM、266nM、400nM、533nM、667nM、1.3μM、2μM、2.67μM、3.33μM、4μM、4.67μM、5.33μM、6μM又は6.67μMを含み得る。
【0152】
本発明の応用
本発明のCLDN18.2結合分子は、多くのインビトロ及びインビボの用途を有する。
【0153】
疾患の治療
CLDN18.2に関連する病症及び障害は、免疫に関連する疾患又は病症であってよく、「CLDN18.2を発現する細胞が関与する疾患」又は「CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患」又は類似する表現を含むが、これらに限定されず、CLDN18.2の罹患組織又は器官の細胞での発現を意味する。1つの実施形態において、対応する健康な組織又は器官における状態と比べ、CLDN18.2の罹患組織又は器官の細胞での発現が増加する。増加は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%又はそれ以上の増加を意味する。1つの実施形態において、発現は、罹患組織のみで見られ、対応する健康な組織での発現が阻害される。本発明によれば、CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患は、癌疾患を含む。また、本発明によれば、癌疾患は、癌細胞がCLDN18.2を発現する疾患であることが好ましい。
【0154】
「癌疾患」又は「癌」という用語は、個体で通常、無秩序な細胞成長を特徴とする生理的状態を指すか又は説明する。癌の例は、上皮癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病を含むが、これらに限定されない。より具体的には、このような癌の例は、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、性器及び生殖器の癌、ホジキン病(Hodgkin′s Disease)、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む。本発明の「癌」という用語は、癌転移を更に含む。好ましくは、「癌疾患」は、CLDN18.2を発現する細胞、及び癌細胞によるCLDN18.2の発現を特徴とする。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくは、癌細胞であり、好ましくは、本明細書に記載された癌の癌細胞である。
【0155】
本開示によれば、「腫瘍」又は「腫瘍疾患」という用語は、細胞(新生物細胞、腫瘍形成性細胞又は腫瘍細胞と呼ばれる)の異常な成長、好ましくは、腫脹又は病変の形成を指す。「腫瘍細胞」は、急速な無制御の細胞増殖によって成長するとともに新たな成長を誘導する刺激が中断した後にも成長し続ける異常細胞を指す。腫瘍は、構造的組織及び正常組織との機能的協調の部分的又は完全な欠失を示し、通常、良性、前悪性又は悪性である可能性のある特別な組織塊を形成する。本発明によれば、「癌疾患」は、「腫瘍疾患」であることが好ましい。しかしながら、通常、「癌」及び「腫瘍」という用語は、本明細書において交換して使用することができる。
【0156】
1つの実施形態において、本開示による癌は、CLDN18.2を発現する癌細胞に関する。1つの実施形態において、癌は、CLDN18.2陽性である。1つの実施形態において、CLDN18.2は、細胞の表面において発現される。1つの実施形態において、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%又は90%の癌細胞は、CLDN18.2陽性であり、及び/又は、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%の癌細胞は、CLDN18.2の表面発現に対して陽性である。1つの実施形態において、少なくとも95%又は少なくとも98%の癌細胞は、CLDN18.2陽性である。1つの実施形態において、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の癌細胞は、CLDN18.2の表面発現に対して陽性である。
【0157】
1つの実施形態において、CLDN18.2を発現する癌、CLDN18.2を発現する癌細胞の癌又はCLDN18.2陽性癌は、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC))、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌及び胆嚢癌、及びそれらの転移、特に胃癌転移(例えばクルーケンベルグ腫瘍)、腹膜転移及びリンパ節転移から選択される。1つの実施形態において、癌は、腺癌、特に進行した腺癌である。特に好ましい癌疾患は、胃、食道、膵管、胆管、肺及び卵巣の腺癌である。1つの実施形態において、癌は、胃癌、食道癌(特に下部食道癌)、食道-胃接合部癌及び胃食道癌から選択される。1つの特に好ましい実施形態において、癌は、胃食道癌であり、例えば転移性、難治性又は再発性の進行した胃食道癌である。
【0158】
なお、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、化学療法又は放射線療法と組み合わせて使用することができる。
【0159】
化学療法との組み合わせ使用
抗体又はその抗原結合部分は、抗癌剤、細胞毒性剤又は化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
【0160】
「抗癌剤」又は「抗増殖剤」という用語は、癌などの細胞増殖性障害の治療に使用可能な如何なる薬剤を指し、細胞毒性剤、細胞阻害剤、抗血管新生剤、放射線療法と放射線療法剤、標的抗癌剤、BRM、治療用抗体、癌ワクチン、サイトカイン、ホルモン療法と抗転移剤及び免疫療法剤を含むが、これらに限定されない。上記の選択された実施形態において、このような抗癌剤は、コンジュゲートを含んでもよく、且つ投与前に開示された部位特異的抗体に結合してもよいことを理解すべきである。より具体的には、いくつかの実施形態において、選択された抗癌剤を操作された抗体の対になっていないシステインに連結し、本明細書に記載されたような操作されたコンジュゲートを提供する。従って、このような操作されたコンジュゲートは、本発明の範囲内にあることが明確に考慮されている。他の実施形態において、開示された抗癌剤は、上記の異なる治療剤を含む部位特異的コンジュゲートと組み合わせて投与される。
【0161】
本明細書で使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞に対して毒性があり、且つ細胞機能を低下させたり阻害したりし、及び/又は細胞破壊を引き起こす物質を指す。いくつかの実施形態において、当該物質は、生きている生物に由来する天然に存在する分子である。細胞毒性剤の例は、細菌(例えば、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素及び外毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンA)、真菌(例えばアルファサルシン及びレストリクトシン)、植物(アブリン、リシン、モデシン、ビスクミン、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニン、モモルジン(momoridin)、トリコサンチン、オオムギ毒素、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca mericana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ミテゲリン(mitegellin)、フェノマイシン、ネオマイシン及びトリコテセン)、動物(例えば、その断片及び/又は変異体を含む、細胞外膵臓RNアーゼなどの細胞毒性RNアーゼ、DNアーゼI)の低分子毒素又は酵素的活性毒素を含むが、これらに限定されない。
【0162】
本発明の目的のために、「化学療法剤」は、癌細胞の成長、増殖及び/又は生存を非特異的に低下させるか又は阻害する化学的化合物(例えば細胞毒性剤又は細胞阻害剤)を含む。これらの化学試薬は、通常、細胞成長又は分裂に必要な細胞内プロセスを対象とするため、一般的に急速に成長及び分裂する癌細胞に対して特に有効である。例えば、ビンクリスチンにより微小管を解重合させ、細胞が有糸分裂に入ることを阻害する。通常、化学療法剤は、癌細胞又は癌性になる可能性のある細胞又は腫瘍形成生後代(例えばTIC)を産生する細胞を阻害するか又は阻害するように設計された、任意の化学薬品を含み得る。これらの薬剤は、通常、組み合わせて使用され、例えば、CHOP又はFOLFIRIなどのレジメンで、通常、最も有効である。
【0163】
本発明の部位特異的構築物と組み合わせて使用できる抗癌剤(部位特異的コンジュゲートの成分として、又は非コンジュゲート状態)の例は、アルキル化剤、アルカンスルホン酸塩、アジリジン、エチレンイミン及びメチルメラミン、アセトゲニン(acetogenins)、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、CC-1065、クリプトフィシン(cryptophycins)、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エリュテロビン(eleutherobin)、パンクラチスタチン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンジスタチン(spongistatin)、ナイトロジェンマスタード、抗生物質、エンジイン類抗生物質、ダイネミシン(dynemicin)、ビスホスホネート、エスペラミシン、色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、アクチノマイシンC、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス類(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、エルロチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ソラフェニブ、イブルチニブ、エンザルタミド、葉酸類似体、プリン類縁体、アンドロゲン、抗アドレナリン、フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充薬、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトレキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エフロルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レンチナン、ロニダミン、マイタンシノイド(maytansinoids)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジン、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、バシロスポリンA及びジアセトキシスシルペノール);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシ卜シン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類;クロランブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン、NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノルビシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar,CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン;レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;PKC-α、Raf、H-Ras、EGFR及びVEGF-Aの阻害剤(細胞増殖を減少する)、及び上述の何れかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体を含むが、これらに限定されない。この定義には、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター、副腎中のエストロゲンの産生を調節するアロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、抗アンドロゲンなどの、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するための抗ホルモン剤;及びトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、VEGF発現阻害剤及びHER2発現阻害剤などのリボザイム、ワクチン、PROLEUKIN(登録商標) rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤、ABARELIX(登録商標) rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン、並びに上記の何れかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が更に含まれる。
【0164】
放射線療法との組み合わせ使用
本発明は、抗体又はその抗原結合部分と放射線療法(即ち、例えば、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子放出などの、腫瘍細胞においてDNA損傷を局所的に誘導する任意のメカニズム)との組み合わせを更に提供する。腫瘍細胞への放射性同位体の標的化送達を使用する併用療法も考慮され、且つ開示されたコンジュゲートは、標的化抗癌剤又は他の標的化手段と組み合わせて使用することができる。通常、放射線療法は、約1週間~約2週間の期間にわたってパルスで投与される。放射線療法は、頭頸部癌に罹患する被験者に約6~7週間投与することができる。任意選択的に、放射線療法は、単回投与又は複数回の連続投与を行うことができる。
【0165】
診断
本発明は、増殖性疾患の検出、診断及び監視に用いられるインビトロ及びインビボ方法、及び患者からの細胞をスクリーニングして腫瘍形成性細胞を含む腫瘍細胞を同定する方法を提供する。前記方法は、治療を必要とする、癌に罹患している個体を同定したり癌の進行を監視したりすることを含み、患者又は患者から得られたサンプル(インビトロ又はインビボ)を本明細書に記載された抗体に接触させるとともに、サンプルにおける結合又は遊離した標的分子に結合する抗体の有無又は結合レベルを検出することを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、検出可能なマーカー又はレポーター分子を含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、抗体とサンプルにおける特定の細胞との結合は、サンプルに腫瘍形成性細胞を含む可能性があることを示すことができ、癌を有する個体を本明細書に記載された抗体を用いて効果的に治療できることが証明される。
【0167】
放射免疫測定法、酵素免疫測定法(例えばELISA)、競合結合測定法、蛍光免疫測定法、免疫ブロット測定法、Westernブロット解析及びフローサイトメトリー測定法などの、多くの測定法によってサンプルを解析することができる。適合性を有するインビボ診断又は診断測定は、例えば、当業者に知られている磁気共鳴イメージング、コンピュータ断層撮影(例えばCATスキャン)、陽電子断層撮影(例えばPETスキャン)、放射線写真術、超音波などの、当分野で公知のイメージング又は監視技術を含み得る。
【0168】
薬物パック及びキット
本発明は、1つ又は複数の用量の抗体又はその抗原結合部分を含む1つ又は複数の容器の薬物パック及びキットを更に提供する。いくつかの実施形態において、所定量の組成物を含有する単位用量を提供し、前記組成物は、例えば、1つ又は複数の他の試薬を伴うか伴わない抗体又はその抗原結合部分を含む。他の実施形態に対して、この単位用量は、使い捨てのプレフィルド注射用注射器によって供給される。他の実施形態において、単位用量に含まれる組成物は、生理食塩水、スクロース又は類似体、リン酸塩などの緩衝液を含み、及び/又は安定且つ有効なpH範囲に調製され得る。又は、いくつかの実施形態において、前記組成物は、コンジュゲート組成物であり、凍結乾燥粉末として提供され、且つ適切な液体(例えば滅菌水又は塩溶液)を加えると再構成することができる。容器上の又は容器に関連する任意のラベルは、封入されたコンジュゲート組成物が選択された腫瘍疾患を治療するために使用されることを指示する。いくつかの好ましい実施形態において、組成物は、タンパク質の凝集を阻害する1つ又は複数の物質を含み、この物質は、スクロース及びアルギニンを含むが、これらに限定されない。
【0169】
本発明は、部位特異的コンジュゲート及び任意に1つ又は複数の抗癌剤の単回投与又は多回投与の投与単位を産生するためのキットを更に提供する。当該キットは、容器、及び容器上の又は容器に関連するラベル又は添付文書を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器などを含む。容器は、例えばガラス又はプラスチックなどの各種の材料で形成されてよく、且つ、薬学的有効量の開示されたコンジュゲート形態又は非コンジュゲート形態のコンジュゲートを含む。他の好ましい実施例において、容器は、無菌アクセスポートを含む(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針により穿刺可能な栓を有するバイアルであってよい)。このようなキットは、通常、適切な容器に操作されたコンジュゲートの薬学的に許容される製剤を含み、且つ、任意選択的に、同じ又は異なる容器に1つ又は複数の抗癌剤を含む。キットは、診断又は併用治療に用いられる、他の薬学的に許容される製剤を更に含有してもよい。例えば、本発明の抗体又はその抗原結合部分に加えて、このようなキットは、例えば化学療法剤又は放射線療法剤、抗血管新生剤、抗転移剤、標的抗癌剤、細胞毒性剤、及び/又は他の抗癌剤などの任意の1つ又は複数の抗癌剤を含んでもよい。
【0170】
より具体的には、キットは、別の成分を含むか含まない、開示された抗体又はその抗原結合部分を含有する単一の容器を有してもよく、又は所望の試薬ごとに異なる容器を有してもよい。コンジュゲートに用いられる併用治療剤を提供する場合、モル当量で組み合わせるか、又は1つの成分が別の成分よりも多いように単一の溶液を予備混合することができる。又は、キットのコンジュゲート及び任意選択的な抗癌剤は、患者に投与される前に異なる容器に別々に保存することができる。キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液及びグルコース溶液などの、無菌の薬学的に許容される緩衝液又は他の希釈剤を収容するための第2/第3の容器装置を更に含んでもよい。
【0171】
キットの成分が1つ又は複数の液体溶液として提供される場合、液体溶液は、好ましくは水溶液であり、特に好ましくは滅菌水溶液又は生理食塩水溶液である。しかしながら、キットの成分は、乾燥粉末として提供することができる。試薬又は成分が乾燥粉末として提供される場合、適切な溶媒を追加して粉末を再構成することができる。溶媒は、別の容器に提供されてもよいことが想定される。
【0172】
上記に簡潔に説明されたように、前記キットは、1つ又は複数の針、I.V.バッグ又は注射器、又は、更に点眼器、ピペット又は他の類似する装置などの、患者に抗体又はその抗原結合部分及び任意選択な成分を投与する器具を更に含んでもよく、前記器具によって製剤を動物体内に注射又は導入するか、或いは、身体の疾患領域に適用することができる。本発明のキットは、通常、その中に所望のバイアル及び他の装置が置かれて保持される、注射又はブロー成形プラスチック容器などの、バイアル又は類似体を収容するための装置、及び市販のために密閉された他の部品を更に含む。
【0173】
本発明のメリット
CLDN18.2、特にヒトCLDN18.2に対する抗体の開発は、少なくとも以下のメリットを有する。
【0174】
第1、ヒトCLDN18.2は、癌細胞において高度に発現されるが、正常細胞において、胃上皮細胞のみにおいて特異的に発現されるため、毒性及び副作用が低く、創薬可能性がより高い。
【0175】
第2、CLDN18.2は、胃上皮細胞の密着結合において発現され、抗体が緩んだ癌細胞に作用しにくく、上皮細胞が抗体によって殺傷されても、上皮細胞の下の幹細胞は、CLDN18.2を発現しないため、分化して損傷された胃上皮細胞を補充することができる。
【0176】
第3、CLDN18.2に対する抗体は、ADCC及びCDCを介して細胞を殺傷できるだけでなく、抗体をCLDN18.2と架橋させることで細胞のアポトーシスを媒介することもでき、且つ細胞の増殖をある程度阻害することができる。
【0177】
これまで、CLND18.2に対するナノ抗体がまだなく、ナノ抗体は、新規な抗体として、販売が承認された抗体caplacizumabがあり、ナノ抗体の創薬可能性が十分に説明された。このような抗体は、他の抗体に対して顕著な利点を有し、例えば、その半減期の長さは、化学修飾又はタンパク質融合による改変によって調節することができ、浸透性が高く、一般的な抗体がアクセスできない潜在性エピトープを認識することができ、ペプシン耐性、耐酸性及び耐熱性を有し、製造しやすく、且つ、単鎖であるため、他のタイプの抗体と組み合わせてダイアボディ及び多価抗体としやすい。
【0178】
本発明の一部の実施形態において、CLDN18.2に対する抗体は、アルパカ免疫ライブラリーを通してスクリーニングして得られ、これに基づき、C末端はIgG1のFc断片と融合し、現在、一部の候補抗体の細胞レベルでのCDC及びADCCの実験結果は、いずれも対照抗体よりも良好な活性又は少なくとも同等の活性を示す。CLDN18.2標的の特性と組み合わせ、この抗体は、癌の免疫療法に用いられ、より低い毒性及び副作用及びより優れた臨床的効力を有し、患者により多くの薬物の選択肢を提供する。
【0179】
実施例
以下の実施例を参照しながら、本明細書で一般的に説明される本発明がより容易に理解され、これらの実施例は、例示として提供され、且つ本発明を制限することを意図するものではない。これらの実施例は、以下の実験が全ての実験又は実施された実験のみであることを表す旨ではない。
【0180】
実施例1
過剰発現細胞株及び腫瘍細胞株の構築及び同定
本実施例において、それぞれ異なるタイプの過剰発現細胞株及び腫瘍細胞株を構築し、それらに対してフローサイトメトリーによる同定を行った。
【0181】
1.過剰発現細胞株の構築及び同定
全長ヒトCLDN18.1(SEQ ID NO:16)、マウスCLDN18.2(SEQ ID NO:17)、マウスCLDN18.1(SEQ ID NO:18)の核酸配列をpLVX-puroプラスミド(Clontech,Cat#632164)に構築する。その後、得られたプラスミドをHEK293細胞(ATCC(登録商標) CRL-1573(商標))に電気形質転換する。スクリーニングにより、全長ヒトCLDN18.1を発現する過剰発現細胞株(ヒトCLDN18.1-HEK293)、マウスCLDN18.2を発現する過剰発現細胞株(マウスCLDN18.2-HEK293)及びマウスCLDN18.1を発現する過剰発現細胞株(マウスCLDN18.1-HEK293)を得る。その後、IMAB362抗体(特許US 20180127489 A1に開示された配列情報に基づいて発現し、精製して得られる)及びC末端CLDN18細胞内セグメント(GFKASTGFGSNTKN,SEQ ID NO:21)を認識する抗CLDN18抗体[34H14L15](Abcam,ab203563)によってフローサイトメトリーによる同定を行い、形質転換に成功した過剰発現細胞株を得て、具体的な方法は、以下の通りである。
【0182】
1.1 電気形質転換
まず、HEK293細胞を蘇生して培養し、2~3回連続継代し、トランスフェクションの1日前に細胞を3×10個/mLの密度で細胞培養皿に接種し、翌日、細胞コンフルエンスが約70%に達すると使用できる。体積百分率が0.25%のEDTAを含有するTrypsin(Gibco,25200-072)で細胞を2min消化した後に細胞を収集し、常温、100gで細胞を5min遠心分離し、上清を捨てた後、1×DPBS(源培,B210)に細胞を再懸濁させてカウントし、5×10個の細胞を遠心分離して收集し、250μLのBuffer R(Invitrogen,Neon(商標) Kit,PK10096)緩衝液で細胞を再懸濁させ、その中に25μgの目的プラスミドを加え、ピペットで軽くて均一に混合する。その後、懸濁液をエレクトロポレーター(Invitrogen,NeonTM Transfection System,MP922947)に置いて電気形質転換し、反応条件を1100V/20ms/2回に設定して電気形質転換する。
【0183】
1.2 細胞培養
電気形質転換後、得られた細胞をそれぞれ体積百分率が10%のFBS(Gibco,15140-141)を含有するが抗生物質を含まないDMEM培地(Gibco,11995065)に移し、その後、細胞を10cm×10cmの細胞培養皿に接種して48h培養し、続いて平均0.5個/ウェルの密度で細胞を96ウェル細胞培養プレートに分注し、最終濃度が2μg/mLのピューロマイシン(Gibco,A111138-03)をスクリーニング圧力として加え、2週間程度で細胞株クローンの成長状況を観察し、クローンを形成する細胞株を選択して同定する。
【0184】
1.3 過剰発現細胞株のフローサイトメトリーによる同定
上記の1.2節で得られた細胞株をフローサイトメトリーによって同定し、具体的に以下の通りである。
【0185】
1.3.1 ヒトCLDN18.2-HEK293T及びマウスCLDN18.2-HEK293細胞株のフローサイトメトリーによる同定
ヒトCLDN18.2-HEK293T(康源博創,KC-0986)及びマウスCLDN18.2-HEK293細胞株に対して、IMAB362抗体を直接使用して同定する。
【0186】
1×10個の細胞を(300g)低速遠心分離し、上清を除去する。遠心分離管の底部の細胞を配合されたFACS緩衝液(体積百分率が2%のFBSを含む1×PBS緩衝液)で1回リンスし、リンスした後の細胞に12.5μg/mLの抗体IMAB362を加え、4℃で1hインキュベートし、続いて、更に上記のFACS緩衝液で3回リンスし、PE標識のヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Abcam,ab98596)を0.5μg加え、4℃で1hインキュベートする。その後、FACS緩衝液で3回リンスし、細胞に200μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、最後にフローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって検出する。
【0187】
1.3.2 ヒトCLDN18.1-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293細胞株のフローサイトメトリーによる同定
IMAB362抗体は、CLDN18.2のみを認識し、CLDN18.1を認識しないため、他の方法と組み合わせてヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.1-HEK293細胞株を同定する必要がある。ヒトCLDN18.1及びマウスCLDN18.1の配列一致性を考慮した上で、まず、細胞破裂キット(eBioscience,88-8824-00)の仕様書の方法に応じて細胞を固定して破裂させ、その後、抗CLDN18抗体[34H14L15]のC末端CLDN18細胞内セグメントに対する認識結果及びIMAB362抗体との特異的結合結果に基づいてフローサイトメトリーによる同定を行う。
【0188】
具体的な方法は、以下の通りである。1×10個の細胞を(300g)低速遠心分離し、上清を除去する。遠心分離管の底部の細胞をFACS緩衝液で1回リンスし、リンスした後の細胞に200μLのIC固定液(eBioscience,00-8222)を加え、4℃で1hインキュベートし、続いて、破裂緩衝液(eBioscience,00-8333)で2回リンスし、前記抗CLDN18抗体を加え、4℃で1hインキュベートする。再び上記破裂緩衝液で3回リンスした後、Alexa Fluor(登録商標) 488蛍光標識のロバ抗ウサギIgG H & L(abcam,ab150073)を0.5μg加え、4℃で1hインキュベートし、最後にフローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって検出する。
【0189】
同時に、前記1.3.1の方法により、IMAB362抗体を用いてヒトCLDN18.1-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293細胞株に結合するか否かを測定する。
【0190】
フローサイトメトリーによる同定の結果を図1aに示す。図1aから分かるように、抗CLDN18抗体は、ヒトCLDN18.2-HEK293T、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293、マウスCLDN18.1-HEK293、HEK293及びHEK293T細胞を認識することができるが、抗体IMAB362は、マウスCLDN18.2-HEK293及びヒトCLDN18.2-HEK293Tのみを認識し、マウスCLDN18.1-HEK293及びヒトCLDN18.1-HEK293を認識しない。これは、ヒトCLDN18.2-HEK293T、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293、マウスCLDN18.1-HEK293といった4つの細胞株がいずれも対応するCLDN18タンパク質の発現に成功したことを示す。
【0191】
2.過剰発現腫瘍細胞株の構築及び同定
ヒトCLDN18.2を過剰発現する胃癌細胞株KATOIII(ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株)の構築は、レンチウイルストランスフェクションの方法を採用し、且つ抗体IMAB362によって同定する。具体的な方法は、以下の通りである。
【0192】
状態が良好なヒト胃癌細胞KATOIII(ATCC(登録商標) HTB-103(商標))5×10個を30:1のMOI比で包装されたヒトCLDN18.2配列(SEQ ID NO:15)を含有するレンチウイルスに加え、十分に均一に混合し、その後、8μg/mLのポリブレン(Polybrene,Sigma,107689)を含有するIMDM完全培地(Gibco,12440061)を加え、均一に混合し、37℃、5% COの恒温インキュベーターで20hインキュベートした後に培地を除去し、新鮮なIMDM完全培地に交換して24hインキュベートし続け、平均0.5個の細胞/ウェルの密度でトランスフェクション後のKATOIII細胞を96ウェルプレートに接種し、最終濃度が2μg/mLのピューロマイシンを加えて耐性加圧スクリーニングを行い、37℃、5% COの恒温インキュベーターで2~3週間培養し、クローンを選択して同定する。
【0193】
上記1.3.1節と同様に、抗体IMAB362によって耐性スクリーニングされた細胞株にフローサイトメトリーによる同定を行う。
【0194】
フローサイトメトリーによる同定の結果を図1bに示す。図1bから分かるように、CLDN18.2がトランスフェクションされていないKATOIII細胞は、抗体IMAB362によってほとんど認識されず、このKATOIII細胞株においてCLDN18.2をほとんど発現しないか又は発現量が極めて低いことを示す。レンチウイルストランスフェクションによって構築できたヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株は、抗体IMAB362によって識別されることができ、この細胞株の構築に成功したことを示す。
【0195】
実施例2
動物免疫及び血清免疫力価の検出
1.免疫接種
本実施例において、アルパカ免疫を採用する。具体的な操作は、以下の通りである。免疫原としては、細胞株ヒトCLDN18.2-HEK293T(康源博創,KC-0986)及びヒトCLDN18.2 ECD1(SEQ ID NO:19)を含有するhCLDN18.2-pLVX-puroプラスミドを採用する。それぞれ2×10個のヒトCLDN18.2-HEK293T細胞(多点皮下注射)及び2mgのプラスミド(多点筋肉内注射)を用いてアルパカ(南昌大佳生物飼養)を週ごとに交互に免疫し、アルパカの記号はNSY002であり、合計で8回免疫する。最後に、2×10個のヒトCLDN18.2-HEK293T細胞を用いて追加免疫を行う。
【0196】
2.血清免疫力価の測定
免疫力価の検出は、ELISA方法によって、抗原組換えタンパク質CLDN18.2(ジェンスクリプト,CP0007)における免疫血清のシグナルに基づいて測定する。具体的な方法は、以下の通りである。
【0197】
免疫力価測定の1日前に、抗原組換えタンパク質CLDN18.2をPBSで1μg/mLに希釈し、希釈液を得る。30μLの希釈液をElisaプレートに加え、4℃で一晩コーティングする。血清免疫力価の測定の当日、コーティングされたプレートをPBSで2回リンスし、体積百分率が5%の脱脂粉乳を含有するPBSTにより室温で2時間ブロックし、更にPBSで2回リンスする。別の96ウェル希釈プレートで免疫されていない陰性血清及び免疫された血清をPBSで希釈し、最初のウェルを1000倍に希釈し、残りの7つのウェルを2倍に勾配希釈する。希釈した血清を抗原組換えタンパク質CLDN18.2がコーティングされた1枚目のElisaプレートに対応して加え、37℃で1hインキュベートし、PBSで2リンスした後に1:5000で二次抗体MonoRab(商標)ウサギ抗ラクダ科VHH抗体(金斯瑞,A01862-200)を加え、最後にマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,SpecterMax 190)によって450nmの波長でOD値を読み取る。結果を表1に示し、アルパカ免疫力価は、ほぼ1:8000程度である。
【0198】
【表1】
【0199】
実施例3
アルパカ免疫ライブラリーの構築及びスクリーニング
動物免疫が終了した後、アルパカから80mL採血し、Ficoll-Paque密度勾配分離溶液(GE,17144003S)でPBMCを分離してアルパカ免疫ライブラリーの構築に用いる。具体的な方法は、以下の通りである。
【0200】
Ficoll-Paque密度勾配分離溶液15mLを50mLの遠心分離管に徐々に加え、続いて、採取されたアルパカ血液15mLを徐々に加え、2つの液体が明確な分離界面を保持するようにする。15℃程度で、400g、20min、加速度3、減速0の条件で遠心分離を行う。遠心分離後、液面全体は、4つの層に分けられ、上層は血漿混合物であり、下層は赤血球及び顆粒球であり、中層はFicoll-Paque液体であり、上層と中層の境界にPBMCを主とする狭幅帯状白濁層があり、即ちPBMC細胞層である。まず、滅菌パスツールピペットで上層の血漿混合物を注意深く吸引し、続いて新しい滅菌パスツールピペットでPBMCを吸引し、単離されたPBMCを得る。PBSで2回リンスし、4℃、1500rpmで10min水平遠心分離し、最後に1.5mLのPBSで再懸濁させ、サイトメーター(CountStar,CountStar Altair)でカウントする。
【0201】
単離されたPBMCからそのRNAを抽出し、逆転写キット(TaKaRa,6210A)によってcDNAに逆転写する。アルパカ抗体の分子形態が一般的な抗体と異なり、軽鎖を含まず、且つ重鎖がCH1を含有しないため、VH germline遺伝子前端及びCH2にプライマーを設計することにより、PCRにより、大きさの異なる2つの断片を得て、タッピングにより小さい目的断片を回収する。VHH抗体の全てのV遺伝子及びJ遺伝子の全ての配列をアライメントすることにより、NcoI及びNotI制限酵素切断部位を含有する縮重プライマーを設計し、続いて、回収されたDNA断片産物をテンプレートとして全てのVHH遺伝子を増幅し、最後に二重酵素切断及び連結によって目的抗体の遺伝子断片をファージディスプレイ用のベクターに挿入し、VHHは、C末端にGIII遺伝子と融合した。連結産物を回収キット(Omega,D6492-02)によって回収し、最後にエレクトロポレーター(Bio-Rad,MicroPulser)によってコンピテント大腸菌SS320(Lucigen,MC1061 F)になるまで形質転換し、アンピシリン耐性を有する2-YT固体プレートに塗布する(トリプトン1.5%、酵母エキス1%、NaCl 0.5%、寒天1.5%で質量体積g/mLに応じて調製される)。ライブラリーサイズを計算するために、1μLの菌液で希釈した後にプレートに形成されたクローンで、電気形質転換によって形成された全てのクローンの総数、即ちライブラリーサイズを計算する。この免疫ライブラリーのライブラリーサイズは1×10cfuである。
【0202】
ライブラリーサイズに基づき、50個のOD(1つのODは5×10cfuである)のアルパカライブラリー菌を選択して新鮮な2-YT液体培地に加え、初期OD値を0.05にする。37℃、220rpmで対数増殖期まで培養し、この時、細菌数の5倍の量でVSCM13ヘルパーファージを加え、十分に均一に混合し、30min静置し、その後、220rpmの条件で1h培養し、10000rpmで5min遠心分離した後、上清を捨て、C+/K+2-YT培地に置き換え、30℃、220rpmで一晩培養する。翌日、13000gで10min遠心分離し、その上清に20%のPEG/NaCl(体積濃度が20%のPEG6000及び2.5MのNaClで調製される)を加えることにより、沈殿させてアルパカライブラリーに対応するファージを得て、PBSで1回リンスした後、ファージスクリーニングに使用する。
【0203】
細胞スクリーニング方法により、ヒトCLDN18.2-HEK293T細胞株をスクリーニング抗原とし、ファージディスプレイライブラリーからヒトCLDN18.2に対する抗体をスクリーニングし、具体的な方法は、以下の通りである。T25培養フラスコにヒトCLDN18.2-HEK293T又はヒトCLDN18.1-HEK293を培養する。90%程度の密度に成長した時、成長状態は最適であり、培養上清を除去し、PBS(源培,B310KJ)で1回リンスし、その後、5mLの4%パラホルムアルデヒド(生工,E672002-0500)を加えて1h固定し、最後にPBSで2回リンスし、抗原材料としてファージの細胞スクリーニングに使用することができる。スクリーニング時に、まず、アルパカライブラリーに対応するファージを固定されたヒトCLDN18.1-HEK293細胞と培養フラスコにおいて室温で1hインキュベートし、続いて、吸着後の上清ファージを吸引し、固定されたヒトCLDN18.2-HEK293T細胞と培養フラスにおいて2hコインキュベートする。PBSで2回リンスした後、3mLのグリシン-HCl(pH2.0)を加えて10min軽くて均一に混合し、目的膜タンパクCLDN18.2に特異的に結合するファージを溶出させ、続いて、溶出した上清で対数期のSS320菌体(Lucigen,60512-1)に感染し、30min静置し、続いて220rpmの条件下で1h培養し、更にVSCM13ヘルパーファージを加え、30min静置し、220rpmの条件下で1h培養し続け、遠心分離してC/K 2-YT培地に置き換え、最終的に得られたファージを引き続き2回目のスクリーニングに使用する。このように繰り返し、毎回ランダムに選択された10個のクローンに対して配列分析を行い、その結果、3回のスクリーニングを経て、3回目のスクリーニングを行った後に配列の富化が明らかにある。
【0204】
3回目にスクリーニングされたクローンを選択して96ウェルプレートにファージの上清を調製し、ファージELISAによってCLDN18.2組換えタンパク質に対する陽性クローンをスクリーニングし、その後、全ての陽性クローンを選択して配列決定分析を行い、続いて、配列が唯一のクローンをファージの上清として調製し、更にフローレベルで検証し、ヒトCLDN18.2のみに結合するがヒトCLDN18.1に結合しない候補抗体をスクリーニングする。
【0205】
具体的なフローレベルの検証方法は、以下の通りである。
【0206】
まず、それぞれ1×10個のヒトCLDN18.2-HEK293T及びヒトCLDN18.1-HEK293細胞を500gで低速遠心分離して上清を除去し、細胞を1.3.1に記載されたFACS緩衝液でリンスした後、10% FBS(Gibco,15140-141)で1hブロックされたファージを用いて上清を調製し、4℃で1hインキュベートし、続いてFACS緩衝液で2回リンスし、1:50で抗M13マウスモノクローナル抗体(Sino Biological,11973-MM05T)を加え、4℃で1hインキュベートする。続いて、FACS緩衝液で2回リンスし、APC標識の抗マウスFc二次抗体(Jackson,115136071)を加え、4℃で1hインキュベートし、FACS緩衝液で2回リンスし、最後にフローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって検出する。
【0207】
具体的な結果を以下の表2に示す。
【0208】
【表2】
【0209】
以上の結果から分かるように、本開示の抗体は、いずれもヒトCLDN18.2に特異的に結合することができる。
【0210】
それぞれクローン番号で対応する候補抗体に名付ける。各候補抗体のアミノ酸配列を以下の表3及び4に示す。
【0211】
【表3】
【0212】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0213】
スクリーニングされた複数の候補抗体間のアミノ酸配列を比較し、その結果を図2に示す。
【0214】
各候補抗体間の可変領域アミノ酸の配列同一性の比較を以下の表5-1及び表5-2に示す。
【0215】
【表5-1】
【0216】
【表5-2】
【0217】
実施例4
キメラVHH-Fc(hIgG1)抗体の産生及び発現
CLDN18.2は、胃癌などの癌細胞において高度に発現され、このような腫瘍関連標的の抗体薬物は、補体依存性細胞傷害作用(CDC)及び抗体依存性、細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)によって腫瘍を殺傷することができる。本実施例は、実施例3でスクリーニングされた候補ナノ抗体に基づいてキメラ抗体を設計し、発現して後続のCDC及びADCC実験に使用する。標的の特異性を考慮し、候補ナノ抗体遺伝子を一過性発現プラスミドpcDNA3.4(Thermofisher,A14697)に構築する場合、候補ナノ抗体のC末端にヒトIgG1 Fc断片
【化6】
を融合させ、この断片は、連結領域及びIgG1の定常領域を含み、ADCC及びCDCなどの効果を媒介するために用いられる。本実施例は、候補ナノ抗体A-2-4を選択し、これを基礎にヒトIgG1 Fc断片を融合させ、キメラ抗体NA1-S(本開示では、「候補抗体NA1-S」、「抗体NA1-S」又は「NA1-S抗体」とも呼ばれる)を得て、候補ナノ抗体A18-1-63、A18-1-42及びA293-34を選択し、それぞれを基礎にヒトIgG1 Fc断片を融合させ、それぞれキメラ抗体NA3-S(本開示では、「候補抗体NA3-S」、「抗体NA3-S」又は「NA3-S抗体」とも呼ばれ、候補ナノ抗体A18-1-63とヒトIgG1 Fcを融合させて得られたキメラ抗体である)、NA5-S(本開示では、「候補抗体NA5-S」、「抗体NA5-S」又は「NA5-S抗体」とも呼ばれ、候補ナノ抗体A18-1-42とヒトIgG1 Fcを融合させて得られたキメラ抗体である)及びNA6-S(本開示では、「候補抗体NA6-S」、「抗体NA6-S」又は「NA6-S抗体」とも呼ばれ、候補ナノ抗体A293-34とヒトIgG1 Fcを融合させて得られたキメラ抗体である)を得る。
【0218】
抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S及びNA6-Sの発現は、ExpiCHO一過性発現システム(Gibco,A29133)を採用し、具体的な方法は、以下の通りである。
トランスフェクションの当日、細胞密度が7×10~1×10個の生細胞/mL程度であり、細胞生存率>98%であることが確認され、この場合、37℃に予熱された新鮮なExpiCHO発現培地25mLを用いて細胞を最終濃度が6×10個の細胞/mLになるように調節し、4℃に予冷されたOptiPRO(商標)SFM 1mLを用いて目的プラスミド(合計25μg)を希釈し、同時に、920μLのOptiPRO(商標)SFMを80μLのExpiFectamine(商標)CHOを希釈し、更に両者を混合して軽くピペッティングして均一に混合し、ExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA混合液を調製し、室温で1~5minインキュベートした後に用意された細胞懸濁液に移し、徐々に加えながら細胞懸濁液を軽く振とうし、最後に細胞培養シェーカーに置いて、37℃、8% COの条件下で培養する。
【0219】
トランスフェクション後の18~22時間内にExpiCHO(商標)Enhancer及びExpiCHO(商標)Feedを加え、振とうフラスコを32℃のシェーカー及び5% COの条件下で培養し続け、トランスフェクションから5日目に、同体積のExpiCHO(商標)Feedを加え、徐々に加えながら細胞懸濁液を軽くて均一に混合し、トランスフェクションの12~15日後に、細胞発現上清を高速遠心分離(15000g,10min)し、得られた上清をProtein A(Millipore,P2545)で親和性精製し、その後、100mMの酢酸ナトリウム(pH3.0)で目的タンパク質を溶出させ、続いて1MのTris-HClで中和し、最後に得られたタンパク質(即ち、抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S又はNA6-S)を濃縮管(Millipore,UFC901096)の方法によってPBS緩衝液に置き換える。
【0220】
実施例5
候補抗体の特異的結合及び種の交差特異的結合の測定
候補抗体NA1-Sを例とし、0.25% EDTAを含有するTrypsin(Gibco,25200-072)で成長状態が良好なヒトCLDN18.2-HEK293T、HEK293T、HEK293、ヒトCLDN18.1-HEK293、マウスCLDN18.2-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293細胞を消化し、1×10個の細胞及び10μg/mLの候補抗体NA1-Sを1hインキュベートし、また、hIgG1アイソタイプ抗体を対照とする。FACS緩衝液で2回リンスし、その後、0.5μgのPE標識のヤギ抗ヒトIgG-Fc二次抗体(Abcam,ab98596)と4℃で1hインキュベートする。その後、FACS緩衝液で3回リンスし、フローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって候補抗体の細胞での結合を検出する。NA1-Sと同様の方法で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sの特異的結合及び種の交差特異的結合を測定する。
【0221】
フローサイトメトリー結果(図3に示す)に示すように、対照抗体IMAB362と類似し、候補抗体NA1-S(図3a)、NA3-S、NA5-S及びNA6-S(図3b)は、いずれもヒトCLDN18.2-HEK293T及びマウスCLDN18.2-HEK293に特異的に結合するが、HEK293T、HEK293、ヒトCLDN18.1-HEK293及びマウスCLDN18.1-HEK293細胞に結合しない。これは、候補抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S及びNA6-SがCLDN18.2に特異的に結合できるが、CLDN18.1に結合せず、且つヒトとマウスCLDN18.2を交差認識できることを示す。
【0222】
実施例6
候補抗体のヒトCLDN18.2-HEK293T細胞株及びヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株での結合能力の比較
培養状態が良好なヒトCLDN18.2-HEK293T細胞を、3倍に勾配希釈した候補抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S及びNA6-Sとそれぞれ4℃で1hインキュベートする。FACS緩衝液で2回リンスし、その後、PE標識のヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体(Abcam,ab98596)を0.5μg加え、4℃で1hインキュベートし、更にFACS緩衝液で2回リンスした後、フローサイトメータによって検出する。
【0223】
フローサイトメトリー結果を図4a、図5a及び図5bに示し、結果から分かるように、ヒトCLDN18.2-HEK293T細胞では、候補抗体は、いずれも対照抗体に相当する細胞結合活性を示す。
【0224】
同様の方法で候補抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S及びNA6-SのヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株での結合能力を測定する。フローサイトメトリー結果を図4b及び図5cに示し、結果から分かるように、ヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞株では、候補抗体は、いずれも対照抗体に相当する細胞結合活性を示す。
【0225】
実施例7
候補抗体の補体依存性細胞傷害作用(CDC)
MTS法を用いて候補抗体のCDC細胞殺傷効果を測定する。候補抗体NA1-S、NA3-S、NA5-S及びNA6-Sは、IgG1 Fc断片を含むため、CDCによって細胞を殺傷することができ、MTS試薬は、生細胞により産生されたNADPH又はNADHによって着色化合物に還元され得るため、色の濃淡は、抗体により媒介されたCDCの殺傷效果を代表する。具体的な操作方法は、以下の通りである。
【0226】
候補抗体NA1-Sを例とする。まず、trypsinにより培養状態が良好なヒトCLDN18.2-HEK293T細胞を消化した後、5×10個の細胞を5倍に希釈したウサギ血清と混合し、それぞれ勾配希釈した候補抗体NA1-S又は対照抗体IMAB362を50μLずつ加え、37℃で3hインキュベートする。その後、候補抗体NA1-S又は対照抗体IMAB362にそれぞれMTS試薬(Promega,G3580)を30μL加え、十分に均一に混合し、37℃、5% COの恒温インキュベーターに入れて4h培養し、この期間中に培地の色の変化を観察し、マイクロプレートリーダーによって492nm波長でのOD値を測定する。10%Triton X-100及び標的細胞を完全溶解対照とし、標的細胞のみをブランク陰性対照とし、ウサギ補体及び標的細胞をバックグラウンド陰性対照とする。
【0227】
細胞殺傷率は、以下の式によって計算される。細胞殺傷率(%)=(候補抗体ウェルOD値-バックグラウンドウェルOD値)/(完全溶解ウェルOD値-ブランクウェルOD値)×100%。
【0228】
候補抗体NA1-SのヒトCLDN18.2-HEK293T腫瘍細胞でのCDC殺傷効果の結果を図6aに示す。図6aから分かるように、対照抗体IMAB362に対して、候補抗体NA1-Sは、等モル濃度でより高いCDC細胞殺傷効果を示し、NA1-SのEC50は0.5289nMであり、IMAB362のEC50は0.936nMである。同様の方法で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-SのヒトCLDN18.2-HEK293T細胞でのCDC殺傷効果を測定し、その結果を図7a~図7cに示す。図7a~図7cから分かるように、対照抗体IMAB362に対して、候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-Sも、等モル濃度で同等のCDC細胞殺傷効果を示す。
【0229】
同様の方法で候補抗体NA1-SのヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞でのCDC殺傷効果を測定し、その結果を図6bに示す。図6bから分かるように、NA1-Sは、等モル濃度で対照抗体IMAB362よりも高いCDC細胞殺傷効果を示し、NA1-SのEC50は1.91nMであり、IMAB362のEC50は50.86nMである。NA1-Sと同じ方法で候補抗体NA3-S、NA5-S及びNA6-SのCDC効果を測定し、NA1-Sと類似し、それらも、対照抗体IMAB362よりも高いCDC細胞殺傷効果を有する。例えば、NA3-Sは、等モル濃度で対照抗体IMAB362より高いCDC細胞殺傷効果を示し、ナノ抗体NA3-SのEC50は4.831nMであり、IMAB362のEC50は85.83nM(図7d)である。
【0230】
実施例8
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)
乳酸脱水素酵素(LDH)放出法によってADCC効果を検出する。その原理は、以下の通りである。抗体の可変領域は、標的細胞上の目的抗原に結合し、抗体のFcセグメントがPBMCにおけるNKエフェクター細胞上のFcRIIIa(別名CD16a)に結合した後、NK細胞は、パーフォリン、グランザイムなどを放出して標的細胞を溶解し、その後、LDH乳酸脱水素酵素キット(Takara,MK401)によって細胞上清における乳酸脱水素酵素の放出を検出することができ、それによってNK細胞の標的細胞に対する殺傷程度を測定する。具体的な操作は、以下の通りである。
【0231】
96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに50μLの密度が2×10個/mLのヒトCLDN18.2-HEK293T細胞を加え、37℃のインキュベーターで一晩(16~20h)培養する。勾配希釈した候補抗体NA1-S又はNA3-Sを50μL加え、均一に混合した後に37℃のインキュベーターに20minインキュベートし、更に蘇生した5×10個/ウェルのヒトPBMC細胞(エフェクター細胞/標的細胞の比率が50:1)を加え、37℃のインキュベーターで4hインキュベートした後、300gで遠心分離することによって上清を得て、その後、LDH検出試薬を加え、60min反応させ、最後にマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,SpectraMax190)によって波長492nmでのOD値を測定して検出結果を分析する。10% Triton X-100及び標的細胞を完全溶解対照とし、標的細胞のみをブランク陰性対照とし、PBMC及び標的細胞をバックグラウンド陰性対照とする。
【0232】
細胞殺傷率は、以下の式によって計算される。殺傷率(%)=(候補抗体孔ODウェル-バックグラウンドウェルODウェル)/(完全溶解ウェルOD値-バックグラウンドウェルOD値)×100%
結果(図8a及び図8c)から分かるように、候補抗体NA1-S及びNA3-Sは、等モル濃度でいずれも対照抗体IMAB362に相当する細胞殺傷活性を有する。
【0233】
同様の方法で候補抗体NA1-S又はNA3-SのヒトCLDN18.2-KATOIII腫瘍細胞でのADCC殺傷効果を測定し、結果を図8b及び図8dに示す。図8bの結果から分かるように、NA1-Sは、等モル濃度で対照抗体IMAB362より高いADCC細胞殺傷効果を示し、候補抗体の殺傷率は45%と高く、IMAB362対照抗体の殺傷率は僅か17%である。図8dの結果から分かるように、NA3-Sも、等モル濃度で対照抗体IMAB362より高いADCC細胞殺傷効果を示し、候補抗体の殺傷率はほぼ50%であり、IMAB362対照抗体の殺傷率は僅か20~25%である。
【0234】
実施例9
インビボ腫瘍阻害実験(ヒトCLDN18.2-HEK293Tを腫瘍形成細胞株とする)
実験には、6~8週齢の雌SCIDマウス(体重24~26g)を使用する。実験マウスを恒温恒湿の独立した換気ボックスで飼育し、飼育室の温度は21~24℃であり、湿度は30~53%である。
【0235】
1×10個のヒトCLDN18.2-HEK293T細胞を右腋窩に皮下注射する。皮下腫瘍塊の体積が80~100mmに達した時、腫瘍の体積差が大きいマウスサンプルを除去し、腫瘍の体積に基づいてランダムに群分けし(1群当たり8匹のマウス)、それぞれPBS処置群、IMAB362抗体処置群、候補抗体NA1-S処置群である。細胞接種の6日後に抗体による処置を開始し(候補抗体NA1-Sは、分子量に基づいてIMAB362抗体と等モル濃度の用量を使用し、質量濃度に換算すれば、それぞれ2.5mg/kg及び5mg/kgである)、週に2回投与し、それぞれ静脈内注射及び腔内注射の両方で交互に投与する。腫瘍の長さ(mm)及び幅(mm)を随時観察して記録し、その腫瘍成長体積(V)を計算し、計算式は、V=(長さ×幅)/2である。同様の方法で候補抗体NA3-Sを試験し、候補抗体NA3-Sは、分子量に基づいてIMAB362抗体と等モル濃度の用量を使用し、質量濃度に換算すれば、それぞれ5mg/kg及び10mg/kgである。
【0236】
抗体による腫瘍阻害の結果を図9a~図9bに示し、結果から分かるように、対照抗体IMAB362に対して、候補抗体NA1-Sは、この質量用量では、低濃度での腫瘍成長阻害効果が高濃度の対照抗体と類似し、腫瘍成長阻害率は55%程度である。候補抗体NA3-Sは、低質量濃度の用量での腫瘍成長阻害効果が高濃度の対照抗体と類似し、ほとんど全てが腫瘍成長を阻害することができる。
【0237】
実施例10
候補抗体のヒトCLDN18.2での結合エピトープの測定
候補抗体及び対照抗体IMAB362は、いずれもCLDN18.2に特異的に結合するが、CLDN18.1に結合せず、CLDN18.2及びCLDN18.1の膜外領域は、ECD1領域のみに8アミノ酸の差異を有するため、候補抗体及び対照抗体IMAB362の抗原結合エピトープがECD1領域にあると推測し、候補抗体とIMAB362の抗原結合位置が一致するか否かを確認するために、本実施例は、競合結合方法を採用し、具体的な方法は、以下の通りである。
【0238】
2~4回継代し且つ成長状態が良好なCLDN18.2-HEK293T細胞を実験に使用し、4℃、300gで遠心分離して上清を除去し、その後、細胞をFACS緩衝液で再懸濁させ、カウント後に細胞密度を2×10個の細胞/mLに調節し、1ウェルあたり100μLで新しい96ウェル丸底プレートに加え、4℃、300gで遠心分離して上清を除去する。
【0239】
候補抗体NA1-Sを例とし、FACS緩衝液(1X PBS+2% FBS)を配合し、FACS緩衝液で競合抗体NA1-S(又はIMAB362)を勾配希釈し、同様にFACS緩衝液でビオチン標識のIMAB362(又はNA1-S)タンパク質を13.4nMに希釈し、それぞれ96ウェルプレートに100μLの勾配希釈液及び100μLのビオチン標識タンパク質希釈液を加え、マルチチャンネルピペットで軽くピペッティングして均一に混合し、96ウェルプレートを4℃で1hインキュベートする。インキュベート後の抗体と細胞の混合液を4℃、300gで遠心分離して上清を除去し、その後、対応するウェルにそれぞれ200μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、4℃、300gで遠心分離することによって上清を除去する。このステップを2回繰り返す。FACS緩衝液でPE標識ストレプトアビジン(eBioscience,12-4317-87)を1:200で希釈し、マルチチャンネルピペットで対応する細胞に200μL/ウェル加え、軽くピペッティングして細胞を再懸濁させ、その後、細胞を4℃で暗所で30minインキュベートし、インキュベート終了後、細胞を4℃、300gで遠心分離して上清を除去し、FACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、このステップを2回繰り返す。最後にフローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって検出する。
【0240】
フローサイトメトリー結果は、10aに示すように、NA1-S濃度の増加につれ、IMAB362-biotinのCLDN18.2-HEK293T細胞での結合が減少し、同様に、図10cのフローサイトメトリー結果に示すように、IMAB362濃度の増加につれ、NA1-S-biotinのCLDN18.2-HEK293T細胞での結合が減少し、これらは、全てNA1-S及びIMAB362のCLDN18.2での抗原エピトープが類似することを示す。NA3-Sの結果は、図10b及び10dに示すように、NA1-Sと類似する。
【0241】
NA1-S又はNA3-S及びIMAB362のCLDN18.2での肝心なアミノ酸部位を更に理解するために、CLDN18.2及びCLDN18.1がECD1に8アミノ酸の差異を有することに基づき、本実施例は、8つの突然変異体HEK293T細胞株を構築し、CLDN18.2上の8つの差異を有するアミノ酸をCLDN18.1に対応するアミノ酸に突然変異させ、その後、被測定抗体の野生株及び突然変異株での結合能力の差異を測定することによってこのアミノ酸が抗体結合に肝心なアミノ酸であるか否かを判定する。具体的な方法は、以下の通りである。
【0242】
まず、CLDN18.2野生及び突然変異体HEK293T細胞株の発現を測定し、方法は、1.3.2の方法と同様であり、細胞破裂キット(eBioscience,88-8824-00)の仕様書の方法に応じて細胞を固定して破裂させ、その後、抗CLDN18抗体[34H14L15]のC末端CLDN18細胞内セグメントに対する結合能力に基づいて発現を判定し、結果を図10eに示し、各突然変異細胞株及び野生株のCLDN18.2は、いずれも高い発現を有する。
【0243】
これに基づき、1.3.1の方法を参照し、候補抗体NA1-S又はNA3-S及びIMAB362のCLDN18.2野生及び突然変異体HEK293T細胞株での結合強度を測定し、また、候補抗体の結合強度を各細胞株の発現レベルで割り、候補抗体の野生株での結合を100%とし、正規化処理して最終的な相対結合強度とし、図10f~図10iに示すように、CLDN18.2ECD1における3つの部位は、それぞれNA1-S及びNA3-SのヒトCLDN18.2-HEK293Tでの結合に対して非常に肝心なQ29、Q47及びE56であり、A42、E56及びG65は、IMAB362がCLDN18.2に結合するための3つの肝心なアミノ酸である。
【0244】
実施例11
候補抗体により媒介されたFab-ZAP細胞殺傷効果
CLDN18.2は、多くの腫瘍において高度に発現され、且つ、正常組織において、胃上皮細胞の密着結合構造において特異的に発現されるため、望ましいADC薬物標的となる見込みがある。本実験は、抗体によりFab-ZAPエンドサイトーシスを媒介する場合の細胞傷害性によって抗体のエンドサイトーシス活性を検出し、Fab-ZAP(Atsbio,IT-51-100)は、saporin(サポリン)の抗Fc領域が連結されたFab断片であり、saporinは、リボソーム阻害剤であり、タンパク質の合成を阻害することで細胞死を引き起こすことができる。Fab-ZAP及びCLDN18.2の抗体をインキュベートした後にCLDN18.2の抗体にFab-ZAPを付け、CLDN18.2の抗体がエンドサイトーシスされる際に、Fab-ZAPは、抗体と共に細胞内に入り、細胞を殺し、その後、MTS(Promega,G3580)によって細胞の活性を検出することで候補抗体及び対照抗体のエンドサイトーシス活性を検出して比較する。具体的な方法は、以下の通りである。
【0245】
対数増殖期のCLDN18.2-HEK293T細胞を、細胞間が接着せず且つキャップが生じるまでトリプシン(0.25%(w/v)Trypsin 0.53mM EDTA)で消化し、完全培地で消化を終了する。細胞を十分に均一に混合した後、細胞をカウントしてその生存率を測定する。細胞密度を4x10細胞/mLに調節し、1ウェルあたり50μLで細胞培養プレートに加えて37℃の細胞インキュベーターに入れて16時間インキュベートする。同時に、DMEM完全培地でFab-ZAPを2μg/mLまで希釈し、これを希釈液として更に候補抗体NA1-S又はNA3-S及び対照抗体を勾配希釈し、且つ、マルチチャンネルピペットで50μL取って細胞培養プレートに加え、CLDN18.2-HEK293Tと軽くピペッティングして均一に混合し、細胞培養プレートを37℃の細胞インキュベーターに入れて72時間インキュベートし続ける。続いて、マルチチャンネルピペットで各ウェルに20μLのMTSを加えて軽くピペッティングして均一に混合し、37℃で2~4時間インキュベートし、最後に細胞プレートを卓上遠心分離機により1000rpmの回転数で5時間遠心分離した後、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices,SpectraMax190)からデータを読み取り、検出波長が492nmである。
【0246】
結果を図11a~図11bに示し、対照抗体IMAB362に対して、候補抗体NA1-S及びNA3-Sは、Fab-ZAPによって目的細胞CLDN18.2-HEK293Tをより効果的に殺傷することができ、NA1-S及びIMAB362のIC50は、それぞれ0.1nM及び0.24nMであり、NA3-S及びIMAB362のIC50は、それぞれ0.07nM及び0.32nMである。これは、候補抗体がCLDN18.2を介して細胞に入ることができることを十分に説明しただけでなく、更に対照抗体IMAB362よりも優れ、ADC抗体薬物複合体の開発に使用される見込みがある。
【0247】
実施例12
候補抗体NA3-Sのヒト化改変
マウス抗体に対して、アルパカ由来のナノ抗体はヒト抗体との相同性が高いが、その構造が特殊であるため、NA3-Sのヒト化設計プロセスにおいて、ヒトに最も近い生殖系遺伝子germlineを選択し、且つ、復帰突然変異を行う時に抗体の構造の維持をも考慮し、最終的に一連のヒト化抗体を設計し、そのうち、NA3S-H1は、最も好ましい分子であり、その抗体配列を以下の表に示す。
【0248】
【表6】
【0249】
可変領域配列(SEQ ID NO:63):
【化7】
【0250】
ただし、斜体の太字のV(第5位)及びS(最後)は、ヒト化部位である。当該可変領域配列をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:64に示される。
【0251】
NA3-Sのヒト化後の親和性が低下するか否かを考察するために、1.3.1に記載された方法でNA3-S及びNA3S-H1のCLDN18.2-HEK293T細胞での結合能力を比較し、結果を図12に示し、ヒト化された分子NA3S-H1及び親抗体NA3-Sは、類似する親和性を有し、且つ対照抗体IMAB362よりも優れる。
【0252】
実施例13
高濃度での候補抗体NA3S-H1の結合特異性
CLDN18.2及びCLDN18.1の候補抗体結合領域ECD1に8アミノ酸のみの差異が存在し、後者は、肺部上皮細胞において発現されるため、抗体薬物は、CLDN18.1に非特異的に結合すると、重篤な肺損傷又は毒性を引き起こし、臨床的応用を制限するため、本実施例は、インビトロで異なる濃度の抗体(100μg/mLの高濃度)及びCLDN18.1-HEK293を用いてインキュベートし、方法は、1.3.1に記載されたとおりであり、異なる濃度の抗体及び目的細胞CLDN18.1-HEK293を4℃で1hインキュベートし、続いて、上記FACS緩衝液で3回リンスし、PE標識のヤギ抗ヒトIgG Fc抗体(Abcam,ab98596)0.5μg(0.5mg/ml)を加え、4℃で1hインキュベートする。その後、FACS緩衝液で3回リンスした後、細胞に200μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁させ、最後にフローサイトメータ(Beckman,CytoFLEX AOO-1-1102)によって検出し、結合強度及び細胞結合陽性率を記録する。
【0253】
結果を図13aに示し、結合強度の面で、NA3S-H1及び対照抗体IMAB362のCLDN18.1-HEK293での結合は、濃度の増加につれて増加せず、アイソタイプ対照の結合強度とほとんど一致し、図13bの細胞結合陽性率の面で、100μg/mLの高濃度でも、NA3S-H1及びIMAB362の陽性率は、いずれも低く、0.04~0.18%の間であり、3回繰り返した場合、NA3S-H1の陽性率は、0.145%、0.17%及び0.173%であり、IMAB362の陽性率は、0.042%、0.128%及び0.041%であり、アイソタイプ対照hIgG1の陽性率は0.063%、0.233%及び0.115%である。図13a及び13bの結果を纏め、NA3S-H1及び対照抗体IMAB362は、いずれもCLDN18.1-HEK293細胞に結合せず、いずれもCLDN18.2に特異的に結合することができるが、CLDN18.1に結合しない。
【0254】
実施例14
候補抗体NA3S-H1の補体依存性細胞傷害作用(CDC)
本実施例は、ヒト化分子NA3S-H1及び対照抗体IMAB362の補体依存性細胞傷害作用を比較し、実施例7の方法を参照して測定し、簡単に言えば、5×10個のCLDN18.2-KATOIII細胞を5倍に希釈したウサギ血清と混合し、それぞれ勾配希釈した候補抗体NA3S-H1又は対照抗体IMAB362を50μLずつ加え、37℃で3hインキュベートする。続いて、MTS試薬(Promega,G3580)を30μL加え、十分に均一に混合し、37℃、5% CO2の恒温インキュベーターに入れて4h培養し、その間に培地の色の変化を観察し、最後にマイクロプレートリーダーによって波長492nmでのOD値を測定し、10% Triton X-100及び標的細胞を完全溶解対照とし、標的細胞のみをブランク陰性対照とし、ウサギ補体及び標的細胞をバックグラウンド陰性対照とし、抗体の細胞殺傷効果を推定するために使用する。
【0255】
結果を図14に示し、NA3S-H1は、対照抗体IMAB362に比べてより高いCDC細胞殺傷効果を有し、NA3S-H1のEC50は10.41nMであるが、IMAB362のEC50は149.4nMである。
【0256】
実施例15
ヒト化抗体NA3S-H1により媒介されたNK細胞の細胞傷害作用(ADCC)
本実施例は、ヒト化抗体NA3S-H1及び対照抗体により媒介された細胞傷害作用を比較し、方法としては、実施例8の方法を採用し、勾配希釈した候補抗体を一定の比率の標的細胞及びヒトPBMC細胞と4hインキュベートした後、LDH乳酸脱水素酵素キット(Takara,MK401)方法によって波長492nmで細胞上清における乳酸脱水素酵素の放出を検出し、それによって抗体により媒介されたNK細胞の標的細胞に対する殺傷效果を測定する。
【0257】
図15a及び図15bは、抗体により媒介されたNK細胞のCLDN18.2-KATOIII又はCLDN18.2-HEK293Tに対する細胞殺傷效果を示し、その結果、候補抗体NA3S-H1及び対照抗体IMAB362により媒介されたADCC効果が類似することを示す。
【0258】
当業者であれば、本発明は、その精神又は中心特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で実施されてもよいことを更に理解できる。本発明の前記説明がその例示的な実施形態のみを開示したため、他の変化は本発明の範囲内に属すると考えられることを理解すべきである。従って、本発明は、ここで詳しく説明された特定の実施形態に限定されない。逆に、添付される特許請求の範囲を参照して本発明の範囲及び内容を指示すべきである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図10f
図10g
図10h
図10i
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
【配列表】
2022533804000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-01-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むCLDN18.2結合分子であって,
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,CDR1、CDR2及びCDR3を含み,
(a)CDR1は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 1と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し,CDR2は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 2と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し,及び/又はCDR3は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 3と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し,又は
(b)CDR1は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 30と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し,CDR2は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 31と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在し,及び/又はCDR3は,アミノ酸配列においてSEQ ID NO: 32と同一であるかそれに対して2アミノ酸以下のアミノ酸付加、欠失又は置換の差異が存在する,
前記CLDN18.2結合分子。
【請求項2】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,VHHである請求項1に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項3】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,
(a)SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列のCDR1、式ISRGGX1Tに示すアミノ酸配列のCDR2(X1はT又はSである)、及び式NAQAWDX2GTX3RYLEVに示すアミノ酸配列のCDR3(X2はP又はVであり,X3はF又はIである)、及び
(b)SEQ ID NO: 30、33、34、35、36、38、39又は40に示すアミノ酸配列のCDR1、式X4STGGTTに示すアミノ酸配列のCDR2(X4はI又はMである)、及び式NVLVX5SGIGSX6LEVに示すアミノ酸配列のCDR3(X5はI又はVであり,X6はH又はTである)
から選択される何れか1組のCDR1、CDR2及びCDR3を含む,請求項1または2に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項4】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,
(a)SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 3に示すアミノ酸配列のCDR3、
(b)SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 4に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 5に示すアミノ酸配列のCDR3、
(c)SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 2に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 6に示すアミノ酸配列のCDR3、
(d)SEQ ID NO: 30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 32に示すアミノ酸配列のCDR3、
(e)SEQ ID NO: 30に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(f)SEQ ID NO: 33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(g)SEQ ID NO: 33に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(h)SEQ ID NO: 34に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 37に示すアミノ酸配列のCDR3、
(i)SEQ ID NO: 35に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(j)SEQ ID NO: 36に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(k)SEQ ID NO: 38に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 62に示すアミノ酸配列のCDR3、
(l)SEQ ID NO: 39に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 41に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 37に示すアミノ酸配列のCDR3、又は,
(m)SEQ ID NO: 40に示すアミノ酸配列のCDR1、SEQ ID NO: 31に示すアミノ酸配列のCDR2及びSEQ ID NO: 37に示すアミノ酸配列のCDR3
を含む請求項1~3の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項5】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,
(a)SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、SEQ ID NO: 7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 7に対して1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列、及び
(b)SEQ ID NO: 47に示すアミノ酸配列、SEQ ID NO: 47と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、又はSEQ ID NO: 47に対して1つ又は複数のアミノ酸の付加、欠失及び/又は置換を有するアミノ酸配列
から選択される何れか1つを含む,請求項1~4の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項6】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,
(a)SEQ ID NO: 7の第1、4、5、14、16、35、47、56、58、65、92、102、105又は121位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾され、又は
(b)SEQ ID NO: 47の第1、4、5、11、27、28、29、30、31、32、35、51、75、76、92、100、106又は120位のアミノ酸の1つ又は複数が修飾される,
請求項1~5の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項7】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,SEQ ID NO: 7~14、SEQ ID NO: 42~51及び63のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる,請求項1~6の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項8】
前記免疫グロブリン単一可変ドメインは,別の分子に融合し,前記別の分子は,免疫グロブリンのFcドメイン又は蛍光タンパク質である請求項1~11の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項9】
前記CLDN18.2結合分子は,ラクダ科動物に由来するVHH及びヒトIgG1又はIgG4のFcドメインを含むキメラ抗体、又はラクダ科動物に由来するVHHをヒト化した後に得られたVHH及びヒトIgG1又はIgG4のFcドメインを含むヒト化抗体である請求項8に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項10】
前記CLDN18.2結合分子は,アルパカに由来するVHH及びヒトIgG1のFcドメインを含むキメラ抗体である請求項9に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項11】
前記CLDN18.2結合分子は,ヒトCLDN18.2の細胞外ドメイン1(ECD1)に結合する請求項1~10の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項12】
同じエピトープについて請求項1~11の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子と競合するCLDN18.2結合分子。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子。
【請求項14】
SEQ ID NO: 22~29、SEQ ID NO: 52~61及び64のうちの何れか1つの配列を含むか又はそれからなる請求項13に記載された単離された核酸分子。
【請求項15】
請求項13又は14に記載された単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載された発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
少なくとも1つの請求項1~12の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子及び医薬上許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項18】
CLDN18.2結合分子をコードする発現ベクターを含有する宿主細胞を培養するステップと,
培養上清からCLDN18.2結合分子を単離するステップと,
を含む,請求項1~12の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子の調製方法。
【請求項19】
被験者におけるCLDN18.2に関連する病症を治療するための請求項1~12の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項20】
前記CLDN18.2に関連する病症は,CLDN18.2を発現する細胞が関与する疾患又はCLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患を含む請求項19に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項21】
前記CLDN18.2に関連する病症は癌である請求項19又は20に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項22】
前記癌は,骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚又は眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、性器及び生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫及び下垂体腺腫を含む請求項21に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項23】
前記癌は胃癌である請求項22に記載されたCLDN18.2結合分子。
【請求項24】
請求項1~12の何れか一項に記載されたCLDN18.2結合分子を含む容器を含むCLDN18.2に関連する病症を治療又は診断するためのキット。
【国際調査報告】